(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123121
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理装置及び情報処理方法。
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20230829BHJP
G06Q 50/20 20120101ALI20230829BHJP
【FI】
G06T7/00 350B
G06Q50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027004
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】592226372
【氏名又は名称】株式会社進学研究会
(71)【出願人】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】関口 正人
(72)【発明者】
【氏名】篠原 圭介
(72)【発明者】
【氏名】須鎗 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】森 康久仁
(72)【発明者】
【氏名】横尾 拓未
(72)【発明者】
【氏名】作田 航平
(72)【発明者】
【氏名】倉田 基成
【テーマコード(参考)】
5L049
5L096
【Fターム(参考)】
5L049CC34
5L096HA09
5L096JA03
5L096JA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】試験等での答案の正誤に関する採点者等による採点の中から採点者等により誤って採点された可能性があるものを検出することができるプログラム、情報処理装置、及び情報処理方法を提供する。
【解決手段】コンピュータに、答案データが示す答案の正誤を、答案データにより学習された分類モデルを用いて、複数回である所定の回数分類する分類機能と、答案の正誤に関する採点と、分類機能による所定の回数分の分類の結果のそれぞれとを比較する比較機能と、比較の結果に基づいて、採点が誤りである確信度を算出する算出機能と、確信度に基づいて、採点が誤りか否かを判定する判定機能と、を実現させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
答案データが示す答案の正誤を、前記答案データにより学習された分類モデルを用いて、複数回である所定の回数分類する分類機能と、
前記答案の正誤に関する採点と、前記分類機能による前記所定の回数分の前記分類の結果のそれぞれとを比較する比較機能と、
前記比較の結果に基づいて、前記採点が誤りである確信度を算出する算出機能と、
前記確信度に基づいて、前記採点が誤りか否かを判定する判定機能と、を実現させる、
プログラム。
【請求項2】
前記算出機能は、前記確信度として、前記比較の結果における前記採点と前記分類の結果のそれぞれとが異なる割合を算出し、
前記判定機能は、前記割合が閾値を超える場合、前記採点が誤りであると判定する、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記算出機能は、前記比較の結果における前記採点と前記分類の結果のそれぞれとが異なる回数をカウントし、前記カウントした回数を前記所定の回数で除算して前記割合を算出する、
請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記閾値は、前記答案に対する問題の種別、及び前記答案の形式の少なくともいずれかに応じて設定される、
請求項2又は3に記載のプログラム。
【請求項5】
前記分類機能は、前記答案データを分割し、前記分割されたデータの一部を訓練データとし前記分割されたデータの残りの一部を検証データとする組み合わせを行い、前記組み合わせにおいて訓練データとするデータと検証データとするデータを各回で入れ替えて前記分類モデルを複数回学習させる、
請求項1から4のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項6】
前記答案は、記述式問題に対する答案であり、
前記分類モデルは、前記答案に含まれる単語に重み付けをするアテンション機構を含み、前記重み付けされた単語に基づいて前記答案の正誤を分類する、
請求項1から5のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項7】
答案データが示す答案の正誤を、前記答案データにより学習された分類モデルを用いて、複数回である所定の回数分類する分類部と、
前記答案の正誤に関する採点と、前記分類部による前記所定の回数分の前記分類の結果のそれぞれとを比較する比較部と、
前記比較の結果に基づいて、前記採点が誤りである確信度を算出する算出部と、
前記確信度に基づいて、前記採点が誤りか否かを判定する判定部と、を備える、
情報処理装置。
【請求項8】
コンピュータが、
答案データが示す答案の正誤を、前記答案データにより学習された分類モデルを用いて、複数回である所定の回数分類し、
前記答案の正誤に関する採点と、前記所定の回数分の前記分類の結果のそれぞれとを比較し、
前記比較の結果に基づいて、前記採点が誤りである確信度を算出し、
前記確信度に基づいて、前記採点が誤りか否かを判定する、
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、情報処理装置及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試験等での答案に対する採点を支援する技術が知られている。例えば、特許文献1には、解答用紙を表す画像から各答案の採点マークを抽出し、抽出した採点マークを識別して「〇(正解マーク)」「×(不正解マーク)」等に分類し、同じ分類の採点マーク間における類似度に基づき誤って識別された可能性がある採点マークを判定する情報処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、試験等での答案の正誤に関する採点者等による採点の中から採点者等により誤って採点された可能性があるものを検出したいというニーズがある。しかしながら、特許文献1の技術では、採点者等による採点は正しいという前提で採点マークを識別したり判定したりするため、採点者等により誤って採点された可能性があるものを検出することは難しい。
【0005】
そこで、本発明は、試験等での答案の正誤に関する採点者等による採点の中から採点者等により誤って採点された可能性があるものを検出することができるプログラム、情報処理装置及び情報処理方法を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、答案データが示す答案の正誤を、答案データにより学習された分類モデルを用いて、複数回である所定の回数分類する分類機能と、答案の正誤に関する採点と、分類機能による所定の回数分の分類の結果のそれぞれとを比較する比較機能と、比較の結果に基づいて、採点が誤りである確信度を算出する算出機能と、確信度に基づいて、採点が誤りか否かを判定する判定機能と、を実現させる。
【0007】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、答案データが示す答案の正誤を、答案データにより学習された分類モデルを用いて、複数回である所定の回数分類する分類部と、答案の正誤に関する採点と、分類部による所定の回数分の分類の結果のそれぞれとを比較する比較部と、比較の結果に基づいて、採点が誤りである確信度を算出する算出部と、確信度に基づいて、採点が誤りか否かを判定する判定部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る情報処理方法は、コンピュータが、答案データが示す答案の正誤を、答案データにより学習された分類モデルを用いて、複数回である所定の回数分類し、答案の正誤に関する採点と、所定の回数分の分類の結果のそれぞれとを比較し、比較の結果に基づいて、採点が誤りである確信度を算出し、確信度に基づいて、採点が誤りか否かを判定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、答案の正誤に関する採点者等による採点の中から採点者等により誤って採点された可能性があるものを検出することができるプログラム、情報処理装置及び情報処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る採点支援システムのシステム構成例を説明するための図である。
【
図2】本実施形態に係る採点システムの概要の一例を説明するための図である。
【
図3】本実施形態に係るサーバ装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る分類モデルの一例を説明するための図である。
【
図5】本実施形態に係る分類結果の一例を示す表である。
【
図6】本実施形態に係るサーバ装置の動作例を示す図である。
【
図7】本実施形態に係るサーバ装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態(以下、「本実施形態」という)について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0012】
本発明において、「部」や「手段」、「装置」、「システム」とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その「部」や「手段」、「装置」、「システム」が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの「部」や「手段」、「装置」、「システム」が有する機能が2つ以上の物理的手段や装置により実現されても、2つ以上の「部」や「手段」、「装置」、「システム」の機能が1つの物理的手段や装置により実現されても良い。
【0013】
<1.システム構成>
図1を参照して、本実施形態に係る採点支援システム1のシステム構成例を説明する。
【0014】
採点支援システム1は、ユーザに、学校や塾、自宅等で実施された試験の受験者の答案(以下、単に「答案」ともいう)に対する採点を支援するためのシステムである。なお、採点支援システム1は、試験だけではなく普段の学習の問題に対する答案に対する採点にも用いることができる。採点支援システム1は、答案の正誤に関する採点者による採点(以下、単に「採点」ともいう)の中からこの採点者により誤って採点された可能性があるもの(以下、「採点ミスの候補」ともいう)を検出し、検出した採点ミスの候補をユーザに画面等で提示する。
【0015】
図1に示すように、採点支援システム1は、この採点支援のサービスを提供する者が使用するサーバ装置100と、ユーザが使用するユーザ端末200と、スキャナ300とを含む。サーバ装置100とユーザ端末200とスキャナ300とは、ネットワークNを介して互いに通信可能に接続されている。
【0016】
ネットワークNは、無線ネットワークや有線ネットワークにより構成される。ネットワークNの一例としては、携帯電話網や、PHS(Personal Handy-phone System)網、無線LAN(Local Area Network)、3G(3rd Generation)、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)、5G(5th Generation)、WiMax(登録商標)、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、有線LAN、電話線、電灯線ネットワーク、IEEE1394等に準拠したネットワークがある。
【0017】
サーバ装置100は、採点支援のサービスを提供するための情報処理装置である。サーバ装置100は、所定のプログラムを実行することにより、ユーザから入力された答案データについて、この答案データの答案に対する採点が誤りか否かを判定して、この判定の結果をユーザに提供するための各種の機能を実現する。
【0018】
答案データは、答案に関するデータである。答案データは、例えば、受験者の答案が記入された答案用紙(以下、単に「答案用紙」ともいう)をスキャンすることにより生成された答案画像を含むデータであってもよい。また、答案データは、他の例として、問題の内容と、この問題に対する答案の内容と、を示すテキストを含むデータであってもよい。
【0019】
答案データは、例えば、各答案に対して、採点者による採点の結果がラベル付けされていてもよい。また、答案データは、他の例として、各答案に対する採点の結果を示す採点データを別に設けて、答案データにこの採点データを関連付けてもよい。
【0020】
答案データは、複数の教科及び/又は複数人による答案を示すものであってもよく、例えば、国語、理科及び社会の3教科の試験問題の1,000人分の答案を示すものであってもよい。
【0021】
ユーザ端末200は、ユーザが使用する情報処理装置であり、例えば、スマートフォンやラップトップ等の端末である。ユーザ端末200は、所定のプログラムを実行することにより、サーバ装置100と連携して検出された採点ミスの候補をユーザに対して出力するための画面に関する情報(以下、「出力情報」ともいう)を送受信したり、この画面を表示したり、ユーザからの後述する閾値の設定入力を受け付けたりする。
【0022】
スキャナ300は、答案用紙を、デジタル画像データである答案データに変換する画像入力装置である。なお、スキャナ300に関して、紙媒体の答案用紙を読み取ってデジタル画像データに変換できればどのような装置でもよく、カメラ機能を備えたスマートフォン、ラップトップ端末等の端末装置であってもよい。
【0023】
<2.概要>
図2を参照して、採点支援システム1の概要を説明する。
図2に示すように、採点支援システム1は、先ず、答案データを読み込む。次に、採点支援システム1は、機械学習の技術を用いて、答案データの答案に対する採点が誤りである確信度(以下、「ミス確信度T」ともいう)を算出する。採点支援システム1は、具体的には、採点者による答案の正誤に関する採点の結果と、サーバ装置100で複数回分類した答案の正誤の結果のそれぞれと、を比較して、その比較の結果に基づいてミス確信度Tを算出する、次に、採点支援システム1は、算出したミス確信度Tを、予め設定した閾値T
cと比較する。採点支援システム1は、この比較の結果、ミス確信度Tが閾値T
c以上である場合(Yesの場合)、採点ミスの候補として判定する。他方、採点支援システム1は、この比較の結果、ミス確信度Tが閾値T
c未満の場合(Noの場合)、採点ミスの候補でないとして判定する。閾値T
cは、例えば、答案に対する問題の種別、及び前記答案の形式の少なくともいずれかに応じて設定される値であってもよい。
【0024】
従来、採点済みの答案データに対して採点に誤りがないか、人により長時間の確認作業を要することがあった。上記構成のもと、採点支援システム1は、答案データの答案に対する採点者等による採点の中から採点者等により誤って採点された可能性があるものを検出することができる。このため、採点支援システム1は、人による確認作業を減らし、精度よく誤って採点された可能性があるものを検出することができる。
【0025】
<3.機能構成>
図3を参照して、本実施形態に係るサーバ装置100の機能構成を説明する。
図3に示すように、サーバ装置100は、制御部110と、通信部120と、記憶部130と、を備える。
【0026】
[制御部]
制御部110は、取得部111と、分類部112と、比較部113と、算出部114と、判定部115と、を備える。また、制御部110は、例えば、設定部116、及び/又は出力部117を備えてもよい。
【0027】
[取得部]
取得部111は、ユーザ端末200又はスキャナ300等から、答案データを取得する。取得部111は、例えば、通信部120を介してスキャナ300が紙媒体の答案用紙を読み取って答案データに変換したものを取得してもよい。また、取得部111は、例えば、ユーザ端末200やその他の外部装置(不図示)から、通信部120を介して答案データを取得してもよい。取得部111は、この取得した答案データを記憶部130に記憶させる。
【0028】
[分類部]
分類部112は、モデル記憶部131及び答案データ記憶部132を参照して、答案データが示す答案の正誤を、答案データにより学習された分類モデルを用いて、所定の回数分類する。所定の回数は、答案の正誤を分類する回数であり、複数回である。また所定の回数は、N回(N:自然数)とも表現する。この答案の正誤を分類するとは、すなわち、答案データの各答案を正答か誤答かのいずれかに分類することである。分類部112は、例えば、所定の回数が10回の場合(N=10の場合)、答案データの各答案の正誤を10回分類する。分類部112は、例えば、答案データが画像データの場合、OCR(Optical Character Recognition)を用いて、スキャナ300等で読み取った答案用紙の画像を画像解析して問題や答案の文字列を認識してもよい。
【0029】
分類モデルは、答案の正誤を分類するためのモデルである。分類モデルは、例えば、学習データを用いて機械学習の手法により学習されたモデルである。
【0030】
分類部112は、例えば、答案データを用いて分類モデルを学習させてもよい。分類モデルは、例えば、ディープラーニングの手法を用いたモデルとして、再帰型ニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network)を含んでもよい。また、分類モデルは、例えば、RNNのうち、長期の時系列を考慮することができるLSTM(Long Short-Term Memory)を含んでもよい。
【0031】
ここで
図4を参照して、分類モデルによる分類処理の一例を説明する。本例では、記述式の問題に対する答案を例に説明する。なお、前提として、答案データが画像データの場合は、分類部112は、答案データ上の答案の文字列を認識しているものとする。
【0032】
(1)
図4に示すように、分類モデルは、答案データの答案文(答案の文字列)に対して形態素解析を行い、この文章を、単語の単位に分割(言い換えれば、品詞分割)する。この形態素解析の処理は、例えば、MecabやJUMAN++等の公知の形態素解析ソフトウェアを用いて実現してもよい。
【0033】
(2)分類モデルは、BERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)を含み、BERTにより、上記(1)で分解された単語のテキストをベクトル化する。このようにベクトル化する自然言語処理モデルの他の例として、Word2Vec等であってもよい。
【0034】
(3)分類モデルは、エンコーダ及びデコーダを構成するLSTMを含み、上記(2)でベクトル化した単語群をLSTMに入力する。
【0035】
(4)分類モデルは、答案に含まれる単語に重み付けをするアテンション機構(attention mechanism)を含み、この重み付けされた単語に基づいて答案の正誤を分類する。具体的には、アテンション機構は、LSTMのエンコーダから出力された中間表現に基づき、LSTMのデコーダの出力に重み付けを行う。このような構成によれば、アテンション機構によって各答案の重要な単語に重み付けをして学習することができる。
【0036】
(5)分類モデルは、アテンション機構から出力された値に対してsoftmax関数によって正規化して、各答案に対して正答か誤答かを表す2値(「0」又は「1」)を出力する。
【0037】
図3に戻って説明を続ける。分類部112は、例えば、k分割交差検証の技術を用いて分類モデルを学習させてもよい。具体的には、先ず分類部112は、答案データを分割する。次に、分類部112は、この分割されたデータの一部を訓練データとし、分割されたデータの残りの一部を検証データとする組み合わせを行う。この分割されたデータを、以下、「分割データ」ともいう。そして、分類部112は、組み合わせにおいて訓練データとする分割データと検証データとする分割データを各回で入れ替えて(言い換えれば、各回でシャッフルして)分類モデルを複数回学習させる。
【0038】
分類部112は、例えば、4分割交差検証を用いる場合、答案データを4個(k=4)にランダムに分割する。分類部112は、分割データの1個を検証データ(テストデータともいう)とし、残りの3個の分割データを訓練データ(学習データともいう)とする組み合わせを行う。分類部112は、1回目、この組み合わせにより分類モデルを学習させる。次の2回目では、分類部112は、検証データを、1回目の分割データから他の分割データに入れ替える。また、分類部112は、この入れ替えた検証データに、1回目検証データだった分割データを訓練データとして組み合わせて、この組み合わせにより分類モデルを学習させる。このように、分類部112は、4個の分割データ全てが1回ずつ検証データになるように、訓練データとする分割データと検証データとする分割データを各回で入れ替えて分類モデルを学習させる。そして、分類部112は、この学習の結果により4つの分類モデルを生成し、この生成された4つの分類モデルを平均化して、最終的に1つの分類モデルに統合する。
【0039】
上記構成によれば、分類部112は、答案データの量が少なくても効率的に利用することができる。また、過学習を抑制し、汎化性能を向上させることができる。
【0040】
[比較部]
比較部113は、答案データの答案の正誤に関する採点と、分類部112による所定の回数分の分類の結果のそれぞれとを比較する。比較部113は、例えば、所定の回数が10回であって、かつ答案Aの正誤に関する採点者による採点が「正答」とする場合、この採点「正答」と、答案Aに対して分類部112が正答又は誤答を10回分類した結果のそれぞれと、を10回比較する。
【0041】
[算出部]
算出部114は、比較部113による比較の結果に基づいて、採点が誤りである確信度(すなわち、ミス確信度T)を算出する。
【0042】
算出部114は、例えば、ミス確信度Tとして、比較部113による比較の結果における採点と分類の結果のそれぞれとが異なる割合(以下、「割合」ともいう)を算出してもよい。このような構成によれば、算出部114は、採点と分類の結果のそれぞれとが異なる割合を算出して、ミス確信度Tを求めることができる。このため、採点と分類の結果がどの程度異なっているか否かにより採点ミスの確からしさの度合い(確信度)を求めることができる。
【0043】
算出部114は、例えば、ミス確信度Tとして、比較の結果における採点(a)と分類部112による分類の結果(d)のそれぞれとが異なる回数(Ca≠d)をカウントし、このカウントした回数を所定の回数で除算して割合を算出してもよい。このような構成によれば、算出部114は、簡易な演算で割合(ミス確信度T)を算出することができ、また、変数ではなく定数により除算して割合を算出するため、演算コストを低減させることができる。
【0044】
[判定部]
判定部115は、算出部114により算出されたミス確信度Tに基づいて、採点が誤りか否かを判定する。判定部115は、例えば、誤りであると判定した採点について、採点ミスの候補として答案データにラベル付けをして記憶部130に記憶させる。
【0045】
上記構成によれば、判定部115は、採点の誤りがどの程度確かなものか否かを示す統計的な指標をもって採点が誤りか否かを判定することができる。このため、判定部115は、答案に対する採点者による採点の中から採点者により誤って採点された可能性があるものを検出することができる。
【0046】
判定部115は、例えば、ミス確信度Tとして算出部114により算出された割合が閾値Tcを超える場合、採点が誤りであると判定してもよい。
【0047】
<分類処理、比較処理、算出処理、及び判定処理>
ここで、
図5を参照して、分類部112、比較部113、算出部114及び判定部115それぞれによる処理の一例を説明する。本例では、答案の正答を「〇」、誤答を「×」と表す。また、所定の回数を10回(N=10)とし、閾値T
cを「0.5」とする。
【0048】
答案1及び2を例に説明する。
図5に示すように、まず、答案1について、採点者による採点は正答「〇」とし、他方、分類部112による10回の分類の結果は、「〇,〇,〇,×,〇,〇,〇,〇,〇,〇」とする。算出部114は、答案1について、この採点と10回分の分類の結果のそれぞれとを比較して、採点と分類の結果とが異なる回数(C
a≠
d)をカウントする(本例の場合は、異なる回数は1回)。算出部114は、ミス確信度Tとして、採点と分類の結果が異なる割合を、このカウントした回数(1回)を所定の回数(本例では、10回)で除算して「0.1」と算出する。判定部115は、この算出したミス確信度T(0.1)は閾値T
c(0.5)未満であるため、答案1の採点は誤りではない(すなわち、採点ミスではない)と判定する。次に、答案2について、採点者による採点は正答「×」とし、他方、分類部112による10回の分類の結果は、「〇,〇,〇,〇,〇,〇,〇,〇,〇,〇」とする。算出部114は、答案2について、採点と分類の結果とが異なる回数(C
a≠
d)を10回とカウントし、このカウントした回数を所定の回数で除算して「1.0」と算出する。判定部115は、この算出したミス確信度T(1.0)は閾値T
c(0.5)を超えるため、答案2の採点は誤りである(すなわち、採点ミスである)と判定する。
【0049】
[設定部]
設定部116は、閾値Tcを設定する。設定部116は、例えば、答案に対する問題の種別、及び答案の形式の少なくともいずれかに応じて、閾値Tcを設定してもよい。言い換えれば、閾値Tcは、問題の種別、及び答案の形式の少なくともいずれかに応じて変更されてもよい。この「問題の種別」とは、例えば、問題が属する科目(例えば、理科や社会、国語等の試験科目)であってもよい。また、この「答案の形式」とは、例えば、穴埋め形式又は自由記述形式等の形式(言い換えれば、問題形式)であってもよい。また、設定部116は、他の例として、ユーザ端末200を介したユーザからの設定入力に応じて、閾値Tcを設定してもよい。
【0050】
上記構成によれば、閾値Tcヲ、問題の種別や問題が属する科目を考慮した設定にすることができる。例えば、実質的に同じ内容であれば理科や社会の答案は似たような表現になりやすく、他方、国語の答案は、様々な表現になりやすい。また、例えば、穴埋め形式よりも自由記述の方が、様々な表現になりやすい。このように問題の種別や答案の形式により表現のバリエーションが異なることをふまえて、閾値Tcを設定することができる。
【0051】
[出力部]
出力部117は、ユーザ端末200の画面等に出力させる出力情報を生成する。出力部117は、出力先のユーザ端末200に、通信部120を介して、この生成した出力情報を送信する。出力部117は、例えば、判定部115により誤りであると判定された採点について、採点ミスの候補として出力するための出力情報を生成し、この生成した出力情報を、通信部120を介してユーザ端末200に送信する。
【0052】
[通信部]
通信部120は、ネットワークNを介して、答案データや出力情報を含む各種情報をユーザ端末200やスキャナ300等と送受信する。
【0053】
[記憶部]
記憶部130は、分類モデルや答案データ、出力情報等を記憶する。記憶部130は、データベースマネジメントシステム(DBMS)を利用して各情報を記憶してもよいし、ファイルシステムを利用して各情報を記憶してもよい。DBMSを利用する場合は、上記情報ごとにテーブルを設けて、このテーブル間を関連付けて各情報を管理してもよい。
【0054】
記憶部130は、例えば、モデル記憶部131を備えてもよい。モデル記憶部131は、分類モデルを記憶する。また、記憶部130は、例えば、答案データ記憶部132を備えてもよい。答案データ記憶部132は、答案データを記憶する。
【0055】
<4.動作例>
図6を参照して、本実施形態に係るサーバ装置100の動作例を説明する。なお、以下に示すフロー図の処理の順番は一例であって、適宜、変更されてもよい。
【0056】
図6に示すように、サーバ装置100の取得部111は、答案データを取得する(ステップS11)。次に、ループ1では、分類部112は、ステップS11の処理をN回繰り返し実行する。分類部112は、答案データが示す答案の正誤を、答案データにより学習された分類モデルを用いて分類する(ステップS11)。
【0057】
サーバ装置100の比較部113は、答案の正誤に関する採点と、分類部112による上記N回分の分類の結果のそれぞれとを比較する(ステップS12)。算出部114は、この比較の結果に基づいて、採点が誤りであるミス確信度Tを算出する(ステップS13)。判定部115は、この算出されたミス確信度Tに基づいて、採点が誤りか否かを判定する(ステップS14)。
【0058】
出力部117は、ユーザ端末200に、判定部115による上記判定の結果を出力させる(ステップS15)。
【0059】
<5.ハードウェア構成>
図7を参照して、上述してきたサーバ装置100をコンピュータ800により実現する場合のハードウェア構成の一例を説明する。なお、それぞれの装置の機能は、複数台の装置に分けて実現することもできる。
【0060】
図7に示すように、コンピュータ800は、プロセッサ801と、メモリ803と、記憶装置805と、入力I/F部807と、データI/F部809と、通信I/F部811と、表示装置813とを含む。
【0061】
プロセッサ801は、メモリ803に記憶されているプログラムを実行することによりコンピュータ800における様々な処理を制御する。例えば、サーバ装置100の制御部110が備える各機能部等は、メモリ803に一時記憶されたプログラムをプロセッサ801が実行することにより実現可能である。
【0062】
メモリ803は、例えばRAM(Random Access Memory)等の記憶媒体である。メモリ803は、プロセッサ801によって実行されるプログラムのプログラムコードや、プログラムの実行時に必要となるデータを一時的に記憶する。
【0063】
記憶装置805は、例えばハードディスクドライブ(HDD)やフラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体である。記憶装置805は、オペレーティングシステムや、上記各構成を実現するための各種モデルや各種プログラムを記憶する。この他、記憶装置805は、答案データを登録するテーブルと、このテーブルを管理するDBを記憶することも可能である。このようなプログラムやデータは、必要に応じてメモリ803にロードされることにより、プロセッサ801から参照される。
【0064】
入力I/F部807は、ユーザからの入力を受け付けるためのデバイスである。入力I/F部807の具体例としては、キーボードやマウス、タッチパネル、各種センサ、ウェアラブル・デバイス等が挙げられる。入力I/F部807は、例えばUSB(Universal Serial Bus)等のインタフェースを介してコンピュータ800に接続されても良い。
【0065】
データI/F部809は、コンピュータ800の外部からデータを入力するためのデバイスである。データI/F部809の具体例としては、各種記憶媒体に記憶されているデータを読み取るためのドライブ装置等がある。データI/F部809は、コンピュータ800の外部に設けられることも考えられる。その場合、データI/F部809は、例えばUSB等のインタフェースを介してコンピュータ800へと接続される。
【0066】
通信I/F部811は、コンピュータ800の外部の装置と有線又は無線により、インターネットNを介したデータ通信を行うためのデバイスである。通信I/F部811は、コンピュータ800の外部に設けられることも考えられる。その場合、通信I/F部811は、例えばUSB等のインタフェースを介してコンピュータ800に接続される。
【0067】
表示装置813は、各種情報を表示するためのデバイスである。表示装置813の具体例としては、例えば液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、ウェアラブル・デバイスのディスプレイ等が挙げられる。表示装置813は、コンピュータ800の外部に設けられても良い。その場合、表示装置813は、例えばディスプレイケーブル等を介してコンピュータ800に接続される。また、入力I/F部807としてタッチパネルが採用される場合には、表示装置813は、入力I/F部807と一体化して構成することが可能である。
【0068】
なお、上記実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。さらに、当業者であれば、上記に述べる各要素を均等なものに置換した実施の形態を採用することが可能であり、かかる実施の形態も本発明の範囲に含まれる。
【0069】
上記実施形態で記載されたサーバ装置が備える構成要素は、記憶装置805に格納されたプログラムがプロセッサ801によって実行されることで、定められた処理が他のハードウェアと協働して実現されるものとする。また、言い換えれば、これらの構成要素は、ソフトウェア又はファームウェアとしても、それと対応するハードウェアとしても想定され、その双方の概念において、「機能」、「手段」、「部」、「処理回路」、「ユニット」、又は「モジュール」等とも記載され、またそれぞれに読み替えることができる。
【0070】
[変形例]
なお、本発明を上記実施の形態に基づいて説明してきたが、以下のような場合も本発明に含まれる。
【0071】
[変形例1]
上記実施形態に係るサーバ装置100における各構成の少なくとも一部は、ユーザ端末200が備えていてもよい。例えば、サーバ装置100の判定部115及び出力部117をユーザ端末200に実装させてもよい。
【0072】
[変形例2]
上記実施形態では、採点者が人である例を説明したが、本発明に係る採点を行う主体はこれに限定されない。採点は、例えば、機械により自動的に採点されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…採点支援システム、100…サーバ装置、110…制御部、111…取得部、112…分類部、113…比較部、114…算出部、115…判定部、116…設定部、117…出力部、120…通信部、130…記憶部、200…ユーザ端末、00…コンピュータ、801…プロセッサ、803…メモリ、805…記憶装置、807…入力I/F部、809…データI/F部、811…通信I/F部、813…表示装置。