(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123133
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】絶縁回路基板の製造方法及び絶縁回路基板用接合体
(51)【国際特許分類】
C04B 37/02 20060101AFI20230829BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20230829BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20230829BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20230829BHJP
B23K 20/00 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
C04B37/02 B
H01L23/12 D
H05K3/00 N
H05K3/00 R
B23K26/00 B
B23K20/00 310L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027016
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】青木 慎介
(72)【発明者】
【氏名】湯本 遼平
(72)【発明者】
【氏名】府金 卓見
【テーマコード(参考)】
4E167
4E168
4G026
【Fターム(参考)】
4E167AA06
4E167AA08
4E167AA29
4E167BA02
4E167BA05
4E167BA09
4E167CB01
4E168AA02
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA23
4E168DA24
4E168JA03
4G026BA17
4G026BB27
4G026BE01
4G026BF20
4G026BF42
4G026BF52
4G026BG02
4G026BG23
4G026BH07
(57)【要約】
【課題】本発明は、第二金属層との接合と生産管理とに適した接合体を提供する。
【解決手段】絶縁性の基板10の一方の面101に、アルミニウム又はアルミニウム合金から成る第一金属層41Aを有する接合体11を形成する接合体形成工程と、接合体11の第一金属層11Aの基板10とは反対側の面411にレーザーによって識別符号を形成する識別符号形成工程と、第一金属層41A′の識別符号が設けられた面411に銅又は銅合金から成る銅板42を固相拡散接合によって接合して、第二金属層を有する絶縁回路基板を形成する回路基板形成工程と、を備え、識別符号形成工程は、識別符号の少なくとも一部を凹部として形成し、回路基板形成工程では、接合体11′の第一金属層41A′に銅板42を重ねて成る積層体の厚み方向に荷重を加えると共に積層体を加熱することで、第一金属層41A′の凹部を変形させて第二金属層42Aと接合する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の基板の一方の面に、アルミニウム又はアルミニウム合金から成る第一金属層を有する接合体を形成する接合体形成工程と、
前記接合体の前記第一金属層の前記基板とは反対側の面にレーザーによって識別符号を形成する識別符号形成工程と、
前記第一金属層の前記識別符号が設けられた前記面に銅又は銅合金から成る銅板を固相拡散接合によって接合して、第二金属層を有する絶縁回路基板を形成する回路基板形成工程と、を備え、
前記識別符号形成工程では、前記識別符号の少なくとも一部を凹部として形成し、
前記回路基板形成工程では、前記接合体の前記第一金属層に前記銅板を重ねて成る積層体の厚み方向に荷重を加えると共に前記積層体を加熱することで、前記第一金属層の前記凹部を変形させて前記第二金属層と接合することを特徴とする、絶縁回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記識別符号形成工程は、深さ3μm~7μmの前記凹部を形成することを特徴とする、請求項1に記載の絶縁回路基板の製造方法。
【請求項3】
絶縁性の基板の一方の面に、アルミニウム又はアルミニウム合金から成る第一金属層を有する接合体であって、
前記第一金属層は、前記基板とは反対側の面に形成された識別符号を有し、
前記識別符号は少なくとも一部が前記第一金属層の前記面に形成された凹部によって構成されており、
前記凹部の深さが3μm~7μmであることを特徴とする、絶縁回路基板用接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁回路基板の製造方法及び絶縁回路基板用接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の自動車、鉄道車両、エレベータ、産業機器などには種々の半導体素子を搭載した絶縁回路基板が用いられている。
特許文献1に開示の絶縁回路基板は、例えばAlN(窒化アルミニウム)やSi3N4(窒化珪素)などからなるセラミックス基板と、このセラミックス基板の一方の面に導電性、放熱性が優れた金属板を接合して形成した回路層を備え、他方の面に放熱性が優れた放熱層を備えている。また、回路層や金属層は、セラミックス基板に形成された純アルミニウム(4Nアルミニウム)を材料とした第一金属層と、この第一金属層に接合した、銅(無酸素銅)を材料とした第二金属層とで構成されている。
【0003】
この絶縁回路基板の製造では、セラミックス基板にアルミニウム板を接合して、第一金属層をセラミックス基板に形成する(第一接合工程)。次に、銅板をそれぞれの第一金属層に載せて、積層体を作り、この積層体に荷重をかけた状態で加熱して、銅板を拡散接合して、第二金属層を形成する(第二接合工程)。
【0004】
このような絶縁回路基板の製造において、品質管理の観点からシリアルナンバーや表面の状態等を示す識別のための符号(以下、識別符号と称す。)を付して、製造履歴の確認や追跡調査等を行うことが求められている。識別符号を付して生産管理を行う場合、識別符号は、例えば特許文献2に示されるように、製品の表面に印字や刻印を施したり、マイクロチップを貼り付けたりすることにより付与できる。また、特許文献3に示されるように、アルミナ基板にガラスを積層し、レーザーを照射することによりガラスを変色させ、基板上にバーコードを形成することも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-153670号公報
【特許文献2】特開2005-131646号公報
【特許文献3】特開平7-249090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、絶縁回路基板の製造過程において、製品の最終の形態にまでは至らない半製品として、第一接合工程を経て製造したセラミックス基板に第一金属層を設けた接合体を管理する場合、第一金属層に識別符号を設けると、銅板との接合の際に識別符号を構成する凹状の箇所が接合不良となり、品質が低下する恐れがある。
【0007】
そこで、本発明は、第二金属層との接合不良を生じさせることなく半製品を識別することができる絶縁回路基板の製造方法と、絶縁回路基板用接合体と、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の絶縁回路基板の製造方法は、絶縁性の基板の一方の面に、アルミニウム又はアルミニウム合金から成る第一金属層を有する接合体を形成する接合体形成工程と、前記接合体の前記第一金属層の前記基板とは反対側の面にレーザーによって識別符号を形成する識別符号形成工程と、前記第一金属層の前記識別符号が設けられた前記面に銅又は銅合金から成る銅板を固相拡散接合によって接合して、第二金属層を有する絶縁回路基板を形成する回路基板形成工程と、を備えている。前記識別符号形成工程では、前記識別符号の少なくとも一部を凹部として形成する。前記回路基板形成工程では、前記接合体の前記第一金属層に前記銅板を重ねて成る積層体の厚み方向に荷重を加えると共に前記積層体を加熱することで、前記第一金属層の前記凹部を変形させて前記第二金属層と接合する。
【0009】
前記接合体は、前記銅板との接合用の前記第一金属層の前記面に、前記識別符号を設けている。前記銅板を接合する前の半製品の状態では、前記識別符号が前記接合体の前記第一金属層の前記面に表れているため、前記接合体の識別に利用することができる。前記接合体に前記第二金属層を形成した絶縁回路基板の状態では、前記識別符号は前記第二金属層で覆われて外から見えなくなる。さらに、前記識別符号の前記凹部も固相拡散接合によって前記第二金属層との間に空隙を形成せずに接合する。
【0010】
本発明の絶縁回路基板の製造方法は、好ましくは、前記識別符号形成工程が、深さ3μm~7μmの前記凹部を形成する。
前記凹部の深さが3μm~7μmであると、前記第二金属層との接合性が良好である。前記識別符号の深さが3μmよりも浅いと、前記識別符号を読み取ることが難しく、7μmよりも深くなると前記第二金属層との接合の際に前記第二金属層との間に空隙として残り、初期接合性が不十分となる。
【0011】
本発明の絶縁回路基板用の接合体は、絶縁性の基板の一方の面に、アルミニウム又はアルミニウム合金から成る第一金属層を有する接合体であって、前記第一金属層は前記基板とは反対側の面に形成された識別符号を有し、前記識別符号は少なくとも一部が前記第一金属層の前記面に形成された凹部によって構成されており、前記凹部の深さが3μm~7μmである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、前記の識別符号を第一金属層に設けることで、半製品の生産管理を行えると共に、最終製品では識別符号が設けられた箇所における第二金属層との接合不良を生じさせず、良好な品質を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る絶縁回路基板を示す図である。
【
図2】(a)~(c)は
図1の絶縁回路基板の製造方法を説明するための図である。
【
図3】(a)は
図1の絶縁回路基板の製造に用いる接合体を示す平面図であり、(b)は(a)のS1-S1線に沿った接合体の概略断面の拡大図である。
【
図4】(a)は本発明の実施例1の識別コードを示す写真像であり、(b)は(a)の一部を拡大した写真像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態の絶縁回路基板1を、図面を参照しながら説明する。絶縁回路基板1は、いわゆるパワーモジュール用基板であり、
図1に示すように、絶縁層であるセラミックス基板10と、このセラミックス基板10の一方の面101に接合された回路層20と、セラミックス基板10の他方の面102に接合された放熱層30とを備える。
セラミックス基板10(本発明の絶縁性の基板に相当)は、例えばAlN(窒化アルミニウム)、Si
3N
4(窒化珪素)等の窒化物系セラミックス、もしくはAl
2O
3(アルミナ)等の酸化物系セラミックスを用いることができる。また、セラミックス基板10の厚さは、0.2mm以上1.5mm以下とされる。
【0015】
回路層20及び放熱層30は、それぞれアルミニウム又はアルミニウム合金からなる第一金属層41A′,41Bと、銅又は銅合金からなる第二金属層42A,42Bとの二層構造とされており、セラミックス基板10の両面に第一金属層41A′,41Bが形成され、その第一金属層41A′,41Bのセラミックス基板10とは反対側の面上に第二金属層42A,42Bが形成されている。
【0016】
第一金属層41A′,41Bは、純度99質量%以上の純アルミニウム(例えば、JIS規格では1000番台の純アルミニウム、特に1N90(純度99.9質量%以上:いわゆる3Nアルミニウム)又は、1N99(純度99.99質量%以上:いわゆる4Nアルミニウム)や、A6063系等のアルミニウム合金等)を用いることができる。第二金属層42A,42Bとセラミックス基板10との熱伸縮差を緩衝するためには、第一金属層41A′,41Bとして純アルミニウム、特に4Nアルミニウムを用いるのが好ましい。
第二金属層42A,42Bは、例えば純度99.96質量%以上の銅(無酸素銅)や純度99.90質量%以上の銅(タフピッチ銅)が好適である。
【0017】
これら第一金属層41A′,41B及び第二金属層42A,42Bの厚さは、例えば、第一金属層41A′,41Bが0.1mm以上3.0mm以下、第二金属層42A,42Bが2.0mm以上5.0mm以下とされる。回路層20と放熱層30とで同じ厚さの第一金属層41A′,41Bと第二金属層42A,42Bとを用いてもよいし、異なる厚さの組み合わせとしてもよい。図示例では、回路層20と放熱層30とで区別することなく、第一金属層41A′,41B、第二金属層42A,42Bとして、同一符号を付している。
【0018】
このように構成される絶縁回路基板1の製造方法について説明する。
先ず、第一金属層41A,41Bをセラミックス基板10の両面101,102に設けた接合体11を形成する(接合体形成工程)。接合体形成工程では、
図2(a)に示すようにセラミックス基板10の両面に、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板41をろう材43を介して積層し、その積層体を加圧加熱することにより、セラミックス基板10とアルミニウム板41とを接合して、セラミックス基板10の両面に第一金属層41A,41Bを形成する。アルミニウム板41は回路のパターン形状に対応して形成されており、本実施形態では平面視で輪郭が矩形に構成されたアルミニウム板41を例に説明する。なお、接合荷重は0.2MPa~0.9MPaの範囲とし、接合温度は640℃~650℃の範囲とするとよい。
【0019】
次いで、
図2(b)に示すようにレーザーマーカー100によってレーザーを回路層20側にある第一金属層41Aのセラミックス基板10とは反対側の面411に照射して、
図3(a)に示すように識別コード50を形成する(識別符号形成工程)。以下、レーザーを照射して、識別コード50を設けた第一金属層41Aを『第一金属層41A′』と呼び、第一金属層41A′を設けた接合体11を『接合体11′』と呼ぶ(本発明の絶縁回路基板用接合体に相当)。レーザーとしては、例えばCO
2レーザー(波長:10.6μm)、YAGレーザー(波長:1064nm)、YVO
4レーザー(波長:1064nm)などを用いることができる。
【0020】
識別コード50は、接合体11を識別するための識別符号として、2次元コードを示している。図示例の2次元コードは、データマトリックスコード(Data Matrix Code、以下DMCと呼ぶ。)であり、正方形又は長方形のセルが例えば12行×36列並んで構成される。DMCを構成するセルとしては、
図3(b)に示すように、レーザーが照射されて凹状に形成され且つ面411の色よりも暗色を呈するセル511(本発明の凹部に相当)と、レーザーが照射されなかった部分によって表されるセル512とがある。識別コード50では、DMCのファインダーパターンをセル511で構成し、セル511が『1』を表し、セル512が『0』を表す。これらのセル511,512を設けた識別コード50の全体の大きさは、例えば3mm×9mmである。凹状のセル511の面411からの深さh1は好ましくは3μm~7μmである。
【0021】
識別コード50は、例えば接合体11′に関する生産管理上の情報を示す。生産管理上の情報としては、例えば接合体11′のシリアルナンバー、表面の状態等がある。絶縁回路基板1の製造過程において、半製品である接合体11′は識別コードをリーダーで読み取られて、電子計算機などで構成された管理装置に記録される。なお、識別コード50の画像をソフトウェアによって処理して、各セル511,512の値を特定することができる。管理装置で識別コードを指定することで、製造履歴の確認や追跡を行うことが可能である。このように、識別コード50は、第二金属層42Aで覆われるまで、リーダーで読み取り可能に接合体11′に設けられる。
【0022】
次いで、
図2(c)に示すようにその第一金属層41A′,41Bの上に、外形が同じ大きさに形成された銅又は銅合金からなる銅板42,42を積層し、その積層体を加圧加熱することにより、アルミニウムと銅とを固相拡散接合して、第一金属層41A′,41Bのセラミックス基板10とは反対側の面に第二金属層42A,42Bを形成する(回路基板形成工程)。
【0023】
回路基板形成工程では、二枚の銅板42,42を、
図2(c)に示すように、接合体11′の第一金属層41A′,41Bそれぞれに一枚ずつ、厚さ方向に重ねる。そして、この積層体を厚み方向に加圧した状態で、真空加熱炉で加熱処理を行う。その際の荷重は0.3MPa以上、3.5MPa以下とすることが望ましい。3.5MPaよりも大きい荷重であると、第一金属層41A′,41Bが大きく変形するため好ましくない。銅板42と第一金属層41A′,41Bの固相拡散接合のための温度は500℃~540℃の温度範囲内で行う。これは第一金属層41A′,41Bを構成するアルミニウムと銅板42を構成する銅との共晶温度が548℃であるためアルミニウムと銅の共晶温度を超えない範囲で固相拡散接合を行うことが好ましいからである。
【0024】
固相拡散接合によって、第一金属層41A′で銅板42と合わさる面411に設けられた凹状のセル511は変形し、識別コード50の領域全体が銅板42Aと接合する。第一金属層41A′,41Bに銅板42Aを固相拡散接合させて第二金属層42A,42Bを形成することで、絶縁回路基板1を構成することができる。
【0025】
本実施形態によれば、接合体11は、識別コード50を回路層20側の第一金属層41A′の面411に設けていることで、他の接合体11と識別するために利用することができる。第二金属層42Aを設けた後は、識別コード50を設けた第一金属層41A′の面411が第二金属層42Aで覆われて、識別コード50は見えなくなる。
【0026】
接合体11において、識別コード50を形成するセル511を深さh1としておいたことにより、第二金属層42Aが形成された状態で各セル511は形が崩れて第二金属層42Aとの間に空隙を形成せずに接合する。識別コード50のセル511の深さh1が3μmよりも浅いと、リーダーなどで読み取ることが難しく、7μmよりも深くなると第二金属層42Aとの接合の際に第二金属層42Aとの間に空隙として残り、初期接合性が不十分となる。
【0027】
本発明は、前記の実施形態に限らず、発明の趣旨の範囲で様々な形態で実施をすることができる。
【0028】
識別符号は、前記のデータマトリックスコードに限らず、バーコード、QRコード(登録商標)などの2次元コード、或いは一つの記号、マークなどであってもよい。バーコードでは、複数のバーがそれぞれ凹部として形成される。
【0029】
絶縁性の基板としては、セラミックス基板に限らず、絶縁性樹脂で構成された樹脂基板などを用いることもでき、絶縁回路基板は樹脂基板と銅板とを順次接合して構成することができ、この絶縁回路基板の製造で銅板とアルミニウム板との固相拡散接合にも通用する。
【0030】
前述の実施形態では、回路層20側の第一金属層に識別コード50を設けたが、金属層30側の第一金属層41Bに識別コード50を設けてもよい。
【0031】
前述の実施形態では、セラミックス基板の両面に第一金属層とこれに接合した第二金属層とを設けたが、第一金属層と第二金属層はセラミックス基板の一方の面にだけ設けられてもよい。寸法や比率なども図示例に限られるものではなく、第二金属層は第一金属層よりも小さく形成されてもよい。第二金属層を第一金属層よりも小さくする場合には、第一金属層はセラミックス基板とは反対側の面で、第二金属層と重なる領域内に識別符号を設ける。
【実施例0032】
本発明の効果を確認すべく行った確認実験を行った。
(1)先ず、セラミックス基板(窒化珪素)の両面に厚さ0.4mmのアルミニウム板(4Nアルミニウム)をAl-Si合金から成るろう材箔を介して積層し、真空下で積層方向に0.2MPaの荷重を加えると共に温度650℃で加熱した状態を30分間保持して、セラミックス基板の一方の面及び他方の面に、それぞれ第一金属層を形成して、接合体を製造した後に、レーザーマーカーによって一方の第一金属層の面にDMCを形成する。
(1-1)DMCの印字条件
印字装置 : 株式会社キーエンス製 レーザーマーカー(クラス4レーザー,型番:MD-T1000W)
レーザー媒質 : Nd:YVO4
波長 : 532nm
最大平均出力 : 8W
平均出力 : 4W
スキャンスピード: 842mm/s
Qスイッチ周波数: 30kHz
印字内容 : 複数の凹状のセルを所定の位置に配置したDMC
印字方法 : 印字装置では、レーザーの照射によって対象物に文字を形成する場合に、その文字を表す線の幅を調整することが可能であると共に、文字を指定して印字処理を実行させることで対象物へのレーザー照射が行われる。本確認実験では、印字線幅と、最大出力に対するレーザーの強度と、印字処理の回数を変えて、セルの深さが異なる接合体を作製した(実施例1,実施例2,比較例1~4)。
【0033】
(2)接合体のDMCの読取評価
読取装置(株式会社キーエンス社製バーコードリーダSR-2000)によってDMCの読み取りを行った。読み取りを行えた場合に『良』と評価し、読み取りを行えなかった場合を『不良』と評価した。
これらの結果を表1に示す。
【0034】
(3)次に、接合体の第一金属層それぞれに、外形が同じ大きさに形成された銅板を重ねて積層体とし、この積層体に所定の荷重を加えると共に加熱して、第一金属層と銅板とを固相拡散接合によって接合する。
(3-1)接合の条件
銅板 : 銅(無酸素銅)
接合荷重 : 2.4MPa
加熱温度 : 500℃~540℃
保持時間 : 60分
接合雰囲気: 真空
【0035】
(4)DMCを設けた第一金属層と第二金属層との接合評価
(4-1)評価方法
接合後の第一金属層と第二金属層との界面を、超音波探傷装置を用いて評価した。超音波探傷の像(二値化した画像)から接合が不十分な箇所が白色で示されることから、凹状の各セル511の領域における白色部分の有無を確認した。全てのセル領域で白色部分が無い場合(接合率100%)に接合を『良』と評価し、白色箇所があれば接合を『不良』と評価した。これらの結果を表1に示す。
【0036】
【0037】
(5)DMC読取と接合の評価
表1に示すように、実施例1及び実施例2の接合体では、DMCを読み取ることができ、さらに接合率が100%で良好であり、剥離が進展し難いことも確認できた。
図4は実施例1の識別コードを示す写真像である。
比較例1~3の接合体では、DMCを構成するセルが実施例1及び実施例2のセルよりも深く形成されていて何れもDMCを読み取ることができたが、比較例4の接合体では、セルの深さが浅くDMCを読み取ることができなかった。第二金属層との接合性では、セルの深さが浅く形成された比較例4以外の何れも、未接合の領域が確認された。