(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123135
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】装飾フィルム及びその製造方法、インク受容フィルム、並びに装飾フィルムキット
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20230829BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20230829BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20230829BHJP
B44C 1/17 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/40
B32B27/32 103
B44C1/17 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027020
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】阿部 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 公二
(72)【発明者】
【氏名】大友 信哉
【テーマコード(参考)】
3B005
4F100
【Fターム(参考)】
3B005EB01
3B005EB03
3B005FB13
3B005FB23
3B005FB37
3B005FC04Y
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3B005FE04
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3B005FF01
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3B005FG04X
3B005FG08Z
3B005FG20Z
4F100AK25E
4F100AK45B
4F100AK51B
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4F100AK54C
4F100AT00A
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4F100JL13G
4F100JN01A
4F100JN01C
4F100JN01G
(57)【要約】
【課題】高濃度の印刷を行ったときでも感圧接着層の接着力が低下しない装飾フィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】一実施態様の装飾フィルムは、ポリカーボネート系ポリウレタンを含む透明表面層、ポリエーテル系ポリウレタンを含む透明インク受容層、透明インク受容層の上に配置された印刷層、及び感圧接着層をこの順で含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート系ポリウレタンを含む透明表面層、ポリエーテル系ポリウレタンを含む透明インク受容層、前記透明インク受容層の上に配置された印刷層、及び感圧接着層をこの順で含む装飾フィルム。
【請求項2】
前記透明インク受容層の前記ポリエーテル系ポリウレタンが水系ポリエーテル系ポリウレタンである、請求項1に記載の装飾フィルム。
【請求項3】
前記透明表面層の前記ポリカーボネート系ポリウレタンが脂環式構造を有する、請求項1又は2に記載の装飾フィルム。
【請求項4】
前記印刷層がインクジェット印刷層である、請求項1~3のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
【請求項5】
前記感圧接着層が白色着色剤を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
【請求項6】
前記感圧接着層がアクリル系感圧接着層である、請求項1~5のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
【請求項7】
前記透明表面層と前記透明インク受容層との間に透明感圧接着層を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
【請求項8】
支持フィルム、ポリカーボネート系ポリウレタンを含む透明表面層、及びポリエーテル系ポリウレタンを含む透明インク受容層をこの順で含むインク受容フィルム。
【請求項9】
前記透明インク受容層の前記ポリエーテル系ポリウレタンが水系ポリエーテル系ポリウレタンである、請求項8に記載のインク受容フィルム。
【請求項10】
前記透明表面層の前記ポリカーボネート系ポリウレタンが脂環式構造を有する、請求項8又は9に記載のインク受容フィルム。
【請求項11】
支持フィルム、ポリカーボネート系ポリウレタンを含む透明表面層、及びポリエーテル系ポリウレタンを含む透明インク受容層をこの順で含むインク受容フィルムを用意すること、
感圧接着層、及び剥離ライナーを含む感圧接着フィルムを用意すること、
前記透明インク受容層の上にインクを印刷して印刷層を形成すること、
前記印刷層と前記感圧接着層とが接触するように、前記インク受容フィルムと前記感圧接着フィルムとを積層すること、及び
前記支持フィルムを除去して、装飾フィルムを形成すること
を含む、装飾フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記透明インク受容層の前記ポリエーテル系ポリウレタンが水系ポリエーテル系ポリウレタンである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記インクが溶剤系インクである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記透明表面層の前記ポリカーボネート系ポリウレタンが脂環式構造を有する、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
支持フィルム、ポリカーボネート系ポリウレタンを含む透明表面層、及びポリエーテル系ポリウレタンを含む透明インク受容層をこの順で含むインク受容フィルムと、
感圧接着層、及び剥離ライナーを含む感圧接着フィルムと
からなる、装飾フィルムキット。
【請求項16】
前記透明インク受容層の前記ポリエーテル系ポリウレタンが水系ポリエーテル系ポリウレタンである、請求項15に記載の装飾フィルムキット。
【請求項17】
前記透明表面層の前記ポリカーボネート系ポリウレタンが脂環式構造を有する、請求項15又は16に記載の装飾フィルムキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、装飾フィルム及びその製造方法、インク受容フィルム、並びに装飾フィルムキットに関する。
【背景技術】
【0002】
インク受容層を有するフィルムにインクジェット印刷することにより、装飾性が付与された装飾フィルムが知られている。インクジェット印刷は、顧客の要望に応じた製品を短納期で供給することが可能なオンデマンド技術の一つとして知られている。
【0003】
特許文献1(特許第6598343号明細書)は、「部分的印刷層を含むグラフィックシートであって、透明樹脂表面層と、前記透明樹脂表面層の裏面側の部分的印刷層と、インク下地層と、粘着層とをこの順に含み、前記透明樹脂表面層はポリカーボネート系ウレタン樹脂であり、前記インク下地層は、アルキドメラミン系樹脂であることを特徴とするグラフィックシート」を記載している。
【0004】
特許文献2(特開2014-46671号公報)は、「粘着剤層、印刷層及び基材フィルムがこの順で積層された積層体からなる印刷構造体であって、前記印刷層は、溶剤系インクを用いて印刷されてなり、前記基材フィルムは、平均重合度が600~1300の塩化ビニル系樹脂と可塑剤とを含有する塩化ビニル樹脂組成物からなり、かつ、前記可塑剤の含有量が前記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して15~40重量部であり、前記粘着剤層は、重量平均分子量60万~100万のアクリル系粘着剤を含有する粘着剤組成物からなり、前記積層体は、厚さが65~160μmであり、かつ、厚さ12.5mmの石膏ボードを下地材としたコーンカロリーメーター試験機による発熱性試験の総発熱量が8MJ/mm2以下であることを特徴とする印刷構造体」を記載している。
【0005】
特許文献3(特表平9-509373号公報)は、「プレマスク層および保護層を含む、図形画像オーバーレイ複合体」を記載している。
【0006】
特許文献4(特開2009-282471号公報)は、「レセプター層、前記レセプター層に印刷を施すことにより作成した印刷層、及びアクリル系白色粘着剤からなるアクリル系白色粘着剤層をこの順で含み、前記アクリル系白色粘着剤が、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して8~150質量部の白色顔料、及び芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含むグラフィックス構造体」を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6598343号明細書
【特許文献2】特開2014-46671号公報
【特許文献3】特表平9-509373号公報
【特許文献4】特開2009-282471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
インクジェット印刷を用いて装飾フィルムを製造する場合、不透明性又は色均一性を実現するために、インク濃度が200%を超える高濃度の印刷が必要となる場合がある。しかし、そのような高濃度の印刷を装飾フィルムのインク受容層の上に行うと、インク中の溶媒又は低分子成分がインク受容層の内部に浸透し、更にインク受容層に隣接する層、例えば感圧接着層にまで到達して、隣接する層の機能を損なう、例えば感圧接着層の接着力を低下させるおそれがある。
【0009】
本開示は、高濃度の印刷を行ったときでも感圧接着層の接着力が低下しない装飾フィルム及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、特定の層構造を有するインク受容フィルムのインク受容層の上に高濃度印刷を行って印刷層を形成し、その印刷層の上に感圧接着層を積層することにより、インク中の溶媒及び低分子成分による感圧接着層の接着力低下の問題を改善できることを見出した。
【0011】
本開示の一実施態様によれば、ポリカーボネート系ポリウレタンを含む透明表面層、ポリエーテル系ポリウレタンを含む透明インク受容層、前記透明インク受容層の上に配置された印刷層、及び感圧接着層をこの順で含む装飾フィルムが提供される。
【0012】
本開示の別の実施態様によれば、支持フィルム、ポリカーボネート系ポリウレタンを含む透明表面層、及びポリエーテル系ポリウレタンを含む透明インク受容層をこの順で含むインク受容フィルムが提供される。
【0013】
本開示の別の実施態様によれば、支持フィルム、ポリカーボネート系ポリウレタンを含む透明表面層、及びポリエーテル系ポリウレタンを含む透明インク受容層をこの順で含むインク受容フィルムを用意すること、感圧接着層、及び剥離ライナーを含む感圧接着フィルムを用意すること、前記透明インク受容層の上にインクを印刷して印刷層を形成すること、前記印刷層と前記感圧接着層とが接触するように、前記インク受容フィルムと前記感圧接着フィルムとを積層すること、及び前記支持フィルムを除去して、装飾フィルムを形成することを含む、装飾フィルムの製造方法が提供される。
【0014】
本開示の別の実施態様によれば、支持フィルム、ポリカーボネート系ポリウレタンを含む透明表面層、及びポリエーテル系ポリウレタンを含む透明インク受容層をこの順で含むインク受容フィルムと、感圧接着層、及び剥離ライナーを含む感圧接着フィルムとからなる、装飾フィルムキットが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、高濃度の印刷を行ったときでも感圧接着層の接着力が低下しない装飾フィルムを提供することができる。本開示の装飾フィルムの製造方法、インク受容フィルム及び装飾フィルムキットは、インクジェット印刷を用いることを含む、装飾フィルムのオンデマンド製造に好適に使用することができる。
【0016】
上述の記載は、本発明の全ての実施態様及び本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施態様の装飾フィルムの概略断面図である。
【
図2】別の実施態様の装飾フィルムの概略断面図である。
【
図3】一実施態様の装飾フィルムの製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的で、必要に応じて図面を参照しながらより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。
【0019】
本開示において「フィルム」には、「シート」と呼ばれる物品も包含される。
【0020】
本開示において「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0021】
本開示において「感圧接着」とは、使用温度範囲で、例えば0℃以上、50℃以下の範囲で恒久的に粘着性を示し、すなわち短時間の軽い圧力で様々な表面に接着し、相変化(液体から固体へ)を呈さない材料又は組成物の特性を意味する。
【0022】
本開示において「透明」とは、JIS K 7375:2008に準拠して測定される可視光領域(波長400nm~700nm)の平均透過率が、約80%以上であることをいい、望ましくは約85%以上、又は約90%以上であってよい。平均透過率の上限値については特に制限はないが、例えば、約100%未満、約99%以下、又は約98%以下とすることができる。
【0023】
本開示において「半透明」とは、JIS K 7375:2008に準拠して測定される可視光領域(波長400nm~700nm)の平均透過率が、約40%以上、約80%未満であることをいい、望ましくは約75%以下であってよい。
【0024】
本開示において「不透明」とは、材料又は組成物が透明でも半透明でもないことをいう。
【0025】
本開示において「非PVC系」とは、装飾フィルムが実質的にポリ塩化ビニル、例えばポリ塩化ビニルフィルム又はポリ塩化ビニル層を含まないことを意味する。一実施態様では、装飾フィルムのポリ塩化ビニル含量は、約1質量%以下、約0.5質量%以下、又は約0.1質量%以下である。
【0026】
一実施態様の装飾フィルムは、ポリカーボネート系ポリウレタンを含む透明表面層、ポリエーテル系ポリウレタンを含む透明インク受容層、透明インク受容層の上に配置された印刷層、及び感圧接着層をこの順で含む。
【0027】
図1に、一実施態様の装飾フィルムの概略断面図を示す。装飾フィルム10は、透明表面層11、透明インク受容層12、印刷層14、及び感圧接着層16をこの順で含む。装飾フィルム10は、任意の要素として剥離ライナー18を更に含んでもよい。
【0028】
装飾フィルムは、透明表面層と透明インク受容層との間に透明感圧接着層を更に含んでもよい。透明表面層と透明インク受容層との間に介在する透明感圧接着層は、装飾フィルムのエンボス適性を高めることができる。この実施態様の装飾フィルムは、例えば、ライセンスプレート用グラフィックフィルムとして好適に用いることができる。
【0029】
図2に、別の実施態様の装飾フィルムの概略断面図を示す。装飾フィルム10は、透明表面層11、透明インク受容層12、印刷層14、及び感圧接着層16をこの順で含み、透明表面層11と透明インク受容層12との間に透明感圧接着層13を更に含む。
【0030】
以下、装飾フィルムを構成する透明表面層、透明インク受容層、印刷層、感圧接着層、ライナー、透明感圧接着層及びその他の要素については、装飾フィルムの製造方法に関連して説明する。
【0031】
一実施態様では、装飾フィルムは、支持フィルム、ポリカーボネート系ポリウレタンを含む透明表面層、及びポリエーテル系ポリウレタンを含む透明インク受容層をこの順で含むインク受容フィルムを用意すること、感圧接着層、及び剥離ライナーを含む感圧接着フィルムを用意すること、透明インク受容層の上にインクを印刷して印刷層を形成すること、印刷層と感圧接着層とが接触するように、インク受容フィルムと感圧接着フィルムとを積層すること、及び支持フィルムを除去して、装飾フィルムを形成することにより製造される。
【0032】
以下、
図3を参照しながら装飾フィルムの製造方法を説明する。
【0033】
インク受容フィルムは、支持フィルム、透明表面層、及び透明インク受容層をこの順で含む。
図3(a)には、上から支持フィルム22、透明表面層11及び透明インク受容層12をこの順で含むインク受容フィルム20が示されている。
【0034】
支持フィルムは、インク受容フィルム及び装飾フィルムの取り扱い性を高めることができ、透明表面層を装飾フィルムの製造時、保管時、輸送時又は使用時に保護することもできる。支持フィルムは装飾フィルムの使用時までに除去される。
【0035】
支持フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、又はフッ素系ポリマーを含む樹脂フィルムを使用することができる。
【0036】
支持フィルムの厚さは、装飾フィルムの製造条件及び使用態様に従って適宜選択することができる。支持フィルムの厚さは、例えば、約5μm以上、又は約10μm以上、約500μm以下、又は約300μm以下とすることができる。
【0037】
支持フィルムは透明、半透明又は不透明であってよい。透明な支持フィルムを有するインク受容フィルムを用いた場合、支持フィルム側から透明表面層及び透明インク受容層を通して紫外線を照射することもでき、これにより透明インク受容層の上に印刷されたUV硬化型インクを硬化することができる。
【0038】
透明表面層と反対側の支持フィルムの表面(背面)は、耐ブロッキング処理等の表面処理が施されていてもよい。耐ブロッキング処理が施された支持フィルムを有するインク受容フィルム又は装飾フィルムは、シートとして重ねて、又はロール形状に巻き取って保管することができる。
【0039】
透明表面層はポリカーボネート系ポリウレタンを含む。ポリカーボネート系ポリウレタンは、比較的硬く剛直であるため、装飾フィルムの表面の損傷を抑えることができ、装飾フィルムに強度及び耐薬品性を付与することができる。また、ポリカーボネート系ポリウレタンは、耐候性及び耐水性にも優れていることから、装飾フィルムを、建築物の外壁、車両の外装、台所、洗面所、風呂等での使用に耐えるものとすることができる。
【0040】
ポリカーボネート系ポリウレタンは、ポリカーボネートポリオールに由来する構造単位とポリイソシアネートに由来する構造単位とを有する。ポリカーボネート系ポリウレタンは、ポリカーボネートポリオールと、ポリイソシアネートとを公知の方法で反応させることにより得ることができる。
【0041】
ポリカーボネートポリオールは、主鎖に複数のカーボネート基(-O-C(=O)-O-)を有し、複数の水酸基を有する化合物であり、ポリオールとカーボネート化合物とを公知の方法で反応させることにより得ることができる。
【0042】
ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール;グリセリン等の脂肪族トリオール;及び1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオールが挙げられる。ポリオールは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0043】
カーボネート化合物としては、例えば、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、及びジフェニルカーボネートが挙げられる。
【0044】
一実施態様では、ポリカーボネートポリオールは、カーボネート主鎖の両末端に水酸基を有するポリカーボネートジオールである。
【0045】
ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;4、4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トランス及び/又はシス-1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;並びにそれらのビュレット体、イソシアヌレート体及びアダクト体が挙げられる。ポリイソシアネートは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。ポリイソシアネートはブロッキング剤によってブロックされたブロックイソシアネートであってもよい。
【0046】
装飾フィルムの耐候性の観点から、ポリイソシアネートは、非黄変性の脂肪族ジイソシアネート又は脂環式ジイソシアネートであることが好ましく、強度の高い透明表面層を形成することのできる脂環式ジイソシアネートであることがより好ましい。
【0047】
ポリカーボネート系ポリウレタンは、ポリカーボネートポリオール以外のその他のポリオールに由来する構造単位を更に含んでもよい。その他のポリオールに由来する構造単位の含有量は、ポリカーボネート系ポリウレタンの約30質量%以下、約20質量%以下、又は約10質量%以下とすることができる。一実施態様では、ポリカーボネート系ポリウレタンはその他のポリオールに由来する構造単位を含まない。
【0048】
その他のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン等の炭素原子数2~20の低分子ポリオール;メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリル酸ジエステル等の水酸基非含有(メタ)アクリレートと、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールメタクリル酸モノエステル等の水酸基含有(メタ)アクリレートとの共重合物である(メタ)アクリルポリオール;ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオール等のポリエステルポリオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、これらのプロピレンオキシド付加物、グリセリンのプロピレンオキシド付加物、ソルビトール、スクロース等の糖類のプロピレンオキシド付加物、エチレンジアミン等の活性水素を有する化合物のプロピレンオキシド付加物等のポリエーテルポリオールが挙げられる。その他のポリオールは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0049】
透明表面層は、ポリカーボネートポリオール及びポリイソシアネート、並びに任意にその他のポリオールを含む反応性ポリウレタン組成物、又はポリカーボネート系ポリウレタンと有機溶媒若しくは水とを含むポリウレタン樹脂組成物を、例えば、ナイフコート、バーコート、ブレードコート、ドクターコート、ロールコート、キャストコート等を用いて支持フィルムの上に塗布し、必要に応じて加熱又は乾燥することにより形成することができる。反応性ポリウレタン組成物では、加熱又は乾燥時にポリカーボネートポリオールとポリイソシアネート及び任意のその他のポリオールとが反応してその場でポリカーボネート系ポリウレタンが生成する。
【0050】
反応性ポリウレタン組成物、又はポリウレタン樹脂組成物に含まれるポリカーボネート系ポリウレタンにおける、ポリイソシアネートとポリカーボネートポリオール及びその他のポリオールの合計との当量比については、ポリカーボネートポリオール及びその他のポリオールの合計1当量に対して、ポリイソシアネートを約0.7当量以上、約0.9当量以上、約2当量以下、又は約1.2当量以下とすることができる。
【0051】
反応性ポリウレタン組成物は触媒を含んでもよい。触媒としてポリウレタン樹脂形成に一般に使用されるもの、例えば、ジ-n-ブチルスズジラウレート、ナフテン酸亜鉛、オクテン酸亜鉛、及びトリエチレンジアミンが挙げられる。触媒の使用量は、一般に、反応性ポリウレタン組成物100質量部に対して約0.005質量部以上、又は約0.01質量部以上、約0.5質量部以下又は約0.2質量部以下である。
【0052】
反応性ポリウレタン組成物及びポリウレタン樹脂組成物は、例えば作業性、塗工性の向上を目的として有機溶媒を含んでもよい。有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン等のケトン;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテルが挙げられる。有機溶媒の使用量は、一般に、組成物100質量部に対して約1質量部以上、又は約5質量部以上、約90質量部以下又は約80質量部以下である。
【0053】
ポリウレタン樹脂組成物は、溶媒として水を含む水系ポリウレタン樹脂組成物であってもよい。水系ポリウレタン樹脂組成物に含まれる水系ポリカーボネート系ポリウレタンは、ジアミン化合物等の鎖延長剤を構造単位として含んでもよく、カルボキシ基、スルホン酸基等のアニオン性基を有してもよい。
【0054】
ポリカーボネート系ポリウレタンは水系ポリカーボネート系ポリウレタンであることが好ましい。水系ポリカーボネート系ポリウレタンを使用することにより、装飾フィルムの製造に係る有機溶媒の使用量を削減することができる。水系ポリカーボネート系ポリウレタンは、有機溶媒又は低分子有機化合物との親和性が比較的低いため、透明表面層の耐薬品性をより高めることができる。
【0055】
一実施態様では、ポリカーボネート系ポリウレタンは脂環式構造を有する。脂環式構造を有するポリカーボネート系ポリウレタンの一例としては、脂環式構造を有するポリカーボネートジオールと、カルボキシ基を含有する脂肪族ジオールと、4、4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを含むポリイソシアネート成分とを反応させて得られるポリウレタンプレポリマーと、ジアミン鎖延長剤とを反応させて得られた直鎖ポリウレタン樹脂を、更に架橋剤で架橋させたものが挙げられる。
【0056】
脂環式構造を有するポリカーボネートジオールとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノール及び1,6-ヘキサンジオールから合成されるポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0057】
カルボキシ基を含有する脂肪族ジオールとしては、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、及び3,3-ジメチロールプロピオン酸が挙げられる。
【0058】
ポリイソシアネート成分に含まれる4、4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートの量は、特に限定されないが、例えば、ポリイソシアネート成分の約30質量%以上、又は約50質量%以上とすることができる。
【0059】
ポリウレタンプレポリマーは、脂環式構造を有するポリカーボネートジオールと、カルボキシ基を含有する脂肪族ジオールと、4、4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを含むポリイソシアネート成分とを公知の方法により反応させることにより得ることができる。
【0060】
直鎖ポリウレタン樹脂は、ポリウレタンプレポリマーにジアミン鎖延長剤を反応させることにより得ることができる。ジアミン鎖延長剤としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、プトレシン等のジアミン化合物が挙げられる。
【0061】
架橋剤としては、直鎖ポリウレタン樹脂に含まれるカルボキシ基と反応する公知の架橋剤を用いることができ、例えば、ポリカルボジイミド化合物、アジリジン化合物、及びオキサゾリン化合物が挙げられる。
【0062】
ポリカーボネート系ポリウレタンの重量平均分子量は、一般に約30,000以上、約50,000以上、又は約80,000以上、約300,000以下、約200,000以下、又は約150,000以下である。本開示において、ポリウレタンの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)法において、溶媒をテトラヒドロフラン(THF)又はN-メチルピロリドン(NMP)とし、標準ポリスチレン(溶媒がTHFの場合)又は標準ポリメチルメタクリレート(溶媒がNMPの場合)を用いて換算される分子量である。
【0063】
一実施態様では、透明表面層は、ポリカーボネート系ポリウレタンを約50質量%以上、約60質量%以上、又は約70質量%、100質量%以下、約95質量%以下、又は約90質量%以下含む。透明表面層の樹脂成分は、ポリカーボネート系ポリウレタンからなることが好ましい。
【0064】
透明表面層は、その他の任意成分として、UV吸収剤、光安定剤、熱安定剤、分散剤、可塑剤、フロー向上剤、レベリング剤等の添加剤を含んでもよい。
【0065】
透明表面層の厚さは、特に限定されないが、例えば、約5μm以上、約10μm以上、又は約25μm以上、約500μm以下、約200μm以下、又は約100μm以下とすることができる。透明表面層の厚さを約5μm以上とすることで、装飾フィルムに耐候性及び耐薬品性を付与することができる。透明表面層の厚さを約500μm以下とすることで、装飾フィルムに形状追従性を付与することができる。
【0066】
一実施態様では、透明表面層のぬれ張力は、JIS K 6768:1999に準拠して、ぬれ張力試薬を用いて評価したときに、約30mN/m以上、又は約35mN/m以上、約50mN/m以下、又は約48mN/m以下である。
【0067】
透明インク受容層はポリエーテル系ポリウレタンを含む。ポリエーテル系ポリウレタンは、透明インク受容層にインク受容能力を付与することができる。
【0068】
ポリエーテル系ポリウレタンは、ポリアルキレングリコールに由来する構造単位とポリイソシアネートに由来する構造単位とを有する。ポリエーテル系ポリウレタンは、ポリアルキレングリコールと、ポリイソシアネートとを公知の方法で反応させることにより得ることができる。
【0069】
ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びポリヘキサメチレングリコールが挙げられる。
【0070】
ポリイソシアネートとしては、透明表面層に含まれるポリカーボネート系ポリウレタンについて説明したものを使用することができる。装飾フィルムの耐候性の観点から、ポリイソシアネートは、非黄変性の脂肪族ジイソシアネート又は脂環式ジイソシアネートであることが好ましく、インク受容性に優れた透明インク受容層を形成することのできる脂肪族ジイソシアネートであることがより好ましい。
【0071】
ポリエーテル系ポリウレタンは、ポリアルキレングリコール以外のその他のポリオールに由来する構造単位を更に含んでもよい。その他のポリオールに由来する構造単位の含有量は、ポリエーテル系ポリウレタンの約30質量%以下、約20質量%以下、又は約10質量%以下とすることができる。一実施態様では、ポリエーテル系ポリウレタンはその他のポリオールに由来する構造単位を含まない。
【0072】
その他のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン等の炭素原子数2~20の低分子ポリオール;メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリル酸ジエステル等の水酸基非含有(メタ)アクリレートと、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールメタクリル酸モノエステル等の水酸基含有(メタ)アクリレートとの共重合物である(メタ)アクリルポリオール;ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオール等のポリエステルポリオール;ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコールのプロピレンオキシド付加物、グリセリンのプロピレンオキシド付加物、ソルビトール、スクロース等の糖類のプロピレンオキシド付加物、及びエチレンジアミン等の活性水素を有する化合物のプロピレンオキシド付加物が挙げられる。その他のポリオールは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0073】
透明インク受容層は、透明表面層について説明した方法と同様の方法により製造することができる。具体的には、透明インク受容層は、ポリアルキレングリコール及びポリイソシアネート、並びに任意にその他のポリオールを含む反応性ポリウレタン組成物、又はポリエーテル系ポリウレタンと有機溶媒若しくは水とを含むポリウレタン樹脂組成物を、例えば、ナイフコート、バーコート、ブレードコート、ドクターコート、ロールコート、キャストコート等を用いて透明表面層の上に塗布し、必要に応じて加熱又は乾燥することにより形成することができる。
【0074】
反応性ポリウレタン組成物、又はポリウレタン樹脂組成物に含まれるエーテル系ポリウレタンにおける、ポリイソシアネートとポリアルキレングリコール及びその他のポリオールの合計との当量比については、ポリアルキレングリコール及びその他のポリオールの合計1当量に対して、ポリイソシアネートを約0.7当量以上、約0.9当量以上、約2当量以下、又は約1.2当量以下とすることができる。
【0075】
反応性ポリウレタン組成物の触媒、並びに反応性ポリウレタン組成物及びポリウレタン樹脂組成物の有機溶媒としては、透明表面層について説明したものを使用することができる。
【0076】
ポリウレタン樹脂組成物は、溶媒として水を含む水系ポリウレタン樹脂組成物であってもよい。水系ポリウレタン樹脂組成物に含まれる水系ポリエーテル系ポリウレタンは、ジアミン化合物等の鎖延長剤を構造単位として含んでもよく、カルボキシ基、スルホン酸基等のアニオン性基を有してもよい。
【0077】
ポリエーテル系ポリウレタンは水系ポリエーテル系ポリウレタンであることが好ましい。水系ポリエーテル系ポリウレタンを使用することにより、装飾フィルムの製造に係る有機溶媒の使用量を削減することができる。水系ポリエーテル系ポリウレタンを含む透明インク受容層の溶剤系インクとの親和性は比較的低い。そのため、溶剤系インクを用いた印刷において、透明インク受容層内部へのインクの溶剤の吸収は適度に抑制され、インクの顔料は透明インク受容層の表面に比較的多く滞留する。その結果、ドットゲインを大きくすることができる。
【0078】
ポリエーテル系ポリウレタンは、架橋剤で架橋されていてもよい。架橋剤としては、カルボキシ基等と反応する公知の架橋剤を用いることができ、例えば、ポリカルボジイミド化合物、アジリジン化合物、及びオキサゾリン化合物が挙げられる。
【0079】
ポリエーテル系ポリウレタンの重量平均分子量は、一般に約30,000以上、約50,000以上、又は約80,000以上、約300,000以下、約200,000以下、又は約150,000以下である。
【0080】
一実施態様では、透明インク受容層は、ポリエーテル系ポリウレタンを約50質量%以上、約60質量%以上、又は約70質量%、100質量%以下、約95質量%以下、又は約90質量%以下含む。
【0081】
透明インク受容層は、ポリエステル系ポリウレタン、ポリアクリレート等の他の樹脂を更に含んでもよい。ポリエステル系ポリウレタン及びポリアクリレートは、透明インク受容層に耐ブロッキング性を付与することができる。そのため、インク受容フィルムの透明インク受容層を露出させたまま、インク受容フィルムを重ねる又はロール形状に巻き取ることができる。
【0082】
一実施態様では、透明インク受容層は、ポリカーボネート系ポリウレタンを含まない。
【0083】
透明インク受容層は、その他の任意成分として、UV吸収剤、光安定剤、熱安定剤、分散剤、可塑剤、フロー向上剤、レベリング剤等の添加剤を含んでもよい
【0084】
透明インク受容層の厚さは、特に限定されないが、使用される印刷方法及びインクに従って適宜決定することができる。透明インク受容層の厚さは、例えば、約1μm以上、又は約5μm以上、約100μm以下、又は約50μm以下とすることができる。
【0085】
透明表面層と透明インク受容層の合計厚さは、約10μm以上、又は約20μm以上、約80μm以下、又は約60μm以下とすることができる。透明表面層と透明インク受容層の合計厚さを上記範囲とすることで、装飾フィルムが適用される被着体の不燃性又は難燃性を損なわず、使用後の廃棄による環境負荷も低くすることができる。
【0086】
一実施態様では、透明インク受容層のぬれ張力は、JIS K 6768:1999に準拠して、ぬれ張力試薬を用いて評価したときに、約45mN/m以上、又は約50mN/m以上、約73mN/m以下、又は約65mN/m以下である。
【0087】
透明インク受容層は、印刷適性を高めるために、プライマー層を有してもよく、プラズマ処理、コロナ処理、フレーム処理、電子線照射処理、粗面処理、オゾン処理等の表面処理を有してもよい。
【0088】
インク受容フィルムは、透明表面層と透明インク受容層との間に透明感圧接着層を更に含んでもよい。透明感圧接着層は、装飾フィルムのエンボス適性を高めることができる。
【0089】
透明感圧接着層は、一般に使用されるアクリル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系又はゴム系の感圧接着剤を用いて、透明表面層の上に形成することができる。その後、透明インク受容層は、透明感圧接着層の上で直接形成されるか、別途ライナー上で形成され、その後透明感圧接着層の上に転写積層される。
【0090】
透明感圧接着層の厚さは、約10μm以上、又は約20μm以上、約50μm以下、又は約40μm以下とすることができる。
【0091】
感圧接着フィルムは、感圧接着層、及び剥離ライナーを含む。
図3(a)には、感圧接着層16、及び剥離ライナー18を含む感圧接着フィルム30が示されている。
【0092】
感圧接着層は、一般に使用されるアクリル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系又はゴム系の感圧接着剤を用いて、剥離ライナーの上に形成することができる。感圧接着層に含まれる感圧接着剤は、架橋剤で架橋されていてもよい。
【0093】
感圧接着層は、アクリル系感圧接着剤を含むアクリル系感圧接着層であることが好ましい。アクリル系感圧接着層は、耐久性、耐候性、及び接着力に優れている。アクリル系感圧接着剤は、ビスアミド架橋剤、アジリジン架橋剤、カルボジイミド架橋剤、エポキシ架橋剤、イソシアネート架橋剤等の架橋剤で架橋されていてもよい。
【0094】
一実施態様では、感圧接着層は白色着色剤を含む。感圧接着層を白色とすることにより、装飾フィルムが適用される下地色を隠蔽することができる。白色着色剤としては、例えば、酸化チタン、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛等の白色顔料が挙げられる。
【0095】
アクリル系感圧接着層は、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、酸化チタン等の白色着色剤とを含んでもよい。カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー及びアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、より多量の白色着色剤を感圧接着層中に安定に分散させて感圧接着層の隠蔽性を高めることができ、同時に白色着色剤の分散に起因する感圧接着層の凝集力の低下を抑制してその接着性を維持することができる。このように接着性が維持されるため、インク受容フィルムと感圧接着フィルムとを積層する際に、印刷層と感圧接着層をより強固に接着することもできる。カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー及び/又はアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、上記架橋剤で架橋されていてもよい。
【0096】
感圧接着層の厚さは、約10μm以上、約20μm以上、又は約30μm以上、約200μm以下、約120μm以下、又は約80μm以下とすることができる。
【0097】
剥離ライナーとして、例えば、シリコーン剥離剤等を用いて剥離処理された表面を有する紙;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、酢酸セルロース等のプラスチック材料を含むフィルム;及びこのようなプラスチック材料で被覆されたラミネート紙が挙げられる。
【0098】
剥離ライナーの厚さは、約5μm以上、約15μm以上、又は約25μm以上、約300μm以下、約200μm以下、又は約150μm以下とすることができる。
【0099】
印刷層は、インク受容フィルムの透明インク受容層の上にインクを印刷することにより形成される。インクを透明インク受容層の上に印刷することにより、印刷層が感圧接着層とは離れた状態で形成される。これにより、インクに含まれる溶媒及び低分子成分に起因する感圧接着層の接着力低下を防止することができる。インクに含まれる溶媒及び低分子成分が、透明インク受容層を貫通して透明表面層に接触又は浸透する場合もあるが、上述のとおり透明表面層は高い耐薬品性を有するため、その表面品質及び強度を実用的な範囲に維持することができる。
【0100】
図3(b)には、インク受容フィルム20のインク受容層12の上に形成された印刷層14が示されている。
【0101】
印刷方法としては、例えば、グラビアダイレクト印刷、グラビアオフセット印刷、インクジェット印刷、レーザー印刷、及びスクリーン印刷が挙げられる。
【0102】
オンデマンド製造に適していることから、インク層はインクジェット印刷により形成されたインクジェット印刷層であることが好ましい。インクジェット印刷は、例えば、インク濃度200%以上といった高濃度印刷であってよい。
【0103】
インクとしては、例えば、溶剤系インク、無溶剤系インク、水性インク、及びUV硬化型インクが挙げられる。一実施態様では、インクは印刷性に優れた溶剤系インクである。別の実施態様では、インクはUV硬化型インクである。UV硬化型インクはインクジェット印刷に好適な特性を備えており、インク受容フィルムに与える熱の影響を軽減することができる。
【0104】
印刷層の厚さは、特に制限されないが、例えば、約1μm以上、又は約2μm以上、約20μm以下、又は約10μm以下とすることができる。
【0105】
印刷層と感圧接着層とが接触するように、インク受容フィルムと感圧接着フィルムとが積層される。積層は、必要に応じて、加熱及び/又は加圧して行うことができる。
【0106】
図3(c)には、印刷層14と感圧接着層16とが接触するようにインク受容フィルムと感圧接着フィルムとが積層された状態が示されている。
【0107】
上記積層により得られた積層体から支持フィルムを除去することにより、装飾フィルムが形成される。支持フィルムは、装飾フィルムの使用直前まで透明表面層を被覆していてもよい。
【0108】
図3(d)には、支持フィルム22が除去された装飾フィルムが示されている。
【0109】
装飾フィルムの厚さは、約10μm以上、又は約20μm以上、約1mm以下、又は約500μm以下とすることができる。装飾フィルムの厚さには、支持フィルムの厚さ及び剥離ライナーの厚さは含まれない。
【0110】
一実施態様では、装飾フィルムは、透明表面層、透明インク受容層、印刷層及び感圧接着層からなり、約50μm以上、約150μm以下の厚さを有する。このような単純な積層構造を有する薄い装飾フィルムは、燃焼熱が低く、有機物質の使用量が少ない。そのため、装飾フィルムが適用される被着体の不燃性又は難燃性を損なわず、使用後の廃棄による環境負荷も低くすることができる。
【0111】
一実施態様では、装飾フィルムは非PVC系装飾フィルムである。
【0112】
装飾フィルムは、透明であってもよく、半透明又は不透明であってもよい。透明又は半透明の装飾フィルムは内照看板に使用することができる。
【0113】
一実施態様では、装飾フィルムの2%引張強度は、約4N/25mm以上、約5N/25mm以上、又は約6N/25mm以上、約40N/25mm以下、約30N/25mm以下、又は約20N/25mm以下である。装飾フィルムの2%引張強度は、実施例に記載の方法により決定される。
【0114】
一実施態様では、装飾フィルムの降伏強度は、約6N/25mm以上、約9N/25mm以上、又は約12N/25mm以上、約90N/25mm以下、約60N/25mm以下、又は約30N/25mm以下である。装飾フィルムの降伏強度は、実施例に記載の方法により決定される。
【0115】
一実施態様では、装飾フィルムの伸びは、約30%以上、約40%以上、又は約50%以上、約500%以下、約400%以下、又は約300%以下である。装飾フィルムの伸びは、実施例に記載の方法により決定される。
【0116】
一実施態様では、装飾フィルムの接着力は、温度20℃、剥離速度300mm/分で180度剥離を行ったときに、約4N/25mm以上、約6N/25mm以上、又は約8N/25mm以上、約50N/25mm以下、約40N/25mm以下、又は約30N/25mm以下である。装飾フィルムの接着力は、実施例に記載の方法により決定される。
【0117】
本開示の装飾フィルムは、装飾フィルムを構成する透明表面層及び透明インク受容層がポリウレタンに基づくものであるため、低温耐衝撃性に優れている。一実施態様の装飾フィルムは、温度-20℃でガードナー耐衝撃試験に合格することができる。この実施態様の装飾フィルムはライセンスプレート用グラフィックフィルムとして好適に使用することができる。
【0118】
本開示の装飾フィルムは、屋内外で使用される車両及びその部品、建築物(内外壁、柱等)、交通標識、包装材料、看板、内照看板等に使用することができる。
【0119】
一実施態様では、上記のインク受容フィルム及び感圧接着フィルムが組み合わされた装飾フィルムキットの形態で提供される。使用者は、装飾フィルムキットを用いて、オンデマンド印刷による印刷層の形成、及び装飾フィルムの製造をその場で行うことができる。
【実施例0120】
以下の実施例において、本開示の具体的な実施態様を例示するが、本発明はこれらに限定されない。部及びパーセントは全て、特に明記しない限り質量による。数値は本質的に測定原理及び測定装置に起因する誤差を含む。数値は通常の丸め処理が行われた有効数字で示される。
【0121】
装飾フィルムの作製に使用した原料、試薬等を表1に示す。
【0122】
【0123】
〈例1〉
ミキサー(TK Auto Homo Mixer、プライミクス株式会社(日本国兵庫県淡路市))を用いてポリウレタン1(PU1)及びポリウレタン2(PU2)を混合して、透明インク受容層組成物を調製した。PU1とPU2の質量比は、固形分を基準として100:10であった。透明インク受容層組成物の固形分は約30質量%であった。
【0124】
ナイフコーターを用いて厚さ50μmのポリエステルフィルム(支持フィルム)の上にポリウレタン3(PU3)を塗布し、95℃で5分間乾燥して、厚さ18μmの透明表面層を形成した。ナイフコーターを用いて透明表面層の上に透明インク受容層組成物を塗布し、95℃で5分間乾燥して、厚さ20μmの透明インク受容層を形成した。このようにして、支持フィルム/透明表面層/透明インク受容層がこの順で積層されたインク受容フィルムを作製した。
【0125】
白色顔料1(WP1、Ti-Pure(登録商標)R960、The Chemours Company(米国デラウェア州ウィルミントン))、分散剤1(D1)及びメチルエチルケトン(MEK)を含むプレミックスを調製した。WP1とD1の質量比は、固形分を基準として5:1であった。プレミックスの固形分は約66質量%であった。
【0126】
プレミックスと粘着性ポリマー1(ADH1)とを混合した。ADH1、白色顔料1及びD1の質量比は、固形分を基準として100:50:10であった。得られた混合物に架橋剤1(CL1)を混合して、白色感圧接着剤1(WA1)を調製した。ADH1とCL1の質量比は、固形分を基準として100:0.2であった。WA1の固形分は約35質量%であった。
【0127】
ナイフコーターを用いてシリコーン被覆ポリエチレンラミネート紙ライナーの上にWA1を塗布し、95℃で5分間乾燥して、厚さ65μmの白色感圧接着層を形成した。このようにして、白色感圧接着層及び剥離ライナーを含む感圧接着フィルムを作製した。
【0128】
JV5プリンター及びES3インク(株式会社ミマキエンジニアリング(日本国長野県東御市))を用いたインクジェット印刷により、インク受容フィルムの透明インク受容層の上に印刷層を形成した。インク濃度はC66、M67及びY67であった。白色感圧接着層を印刷層の上に積層し、支持フィルムを除去して、例1の装飾フィルムを作製した。
【0129】
〈例2〉
PU3をポリウレタン4(PU4)に変更し、透明表面層の厚さを30μm、透明インク受容層の厚さを20μmにそれぞれ変更したことを以外は、例1と同様の手順で例2の装飾フィルムを作製した。
【0130】
〈例3〉
ADH1を粘着性ポリマー3(ADH3)に変更し、CL1を架橋剤2(CL2)に変更した以外は、例1と同様の手順で白色感圧接着剤3(WA3)を調製した。ADH3、WP1及びD1の質量比は、固形分を基準として100:40:8であった。ADH3とCL2の質量比は、固形分を基準として100:0.05であった。WA3の固形分は約38質量%であった。
【0131】
ナイフコーターを用いてシリコーン被覆ポリエチレンラミネート紙ライナーの上にWA3を塗布し、95℃で5分間乾燥して、厚さ40μmの白色感圧接着層を形成した。このようにして、白色感圧接着層及び剥離ライナーを含む感圧接着フィルムを作製した。この感圧接着フィルムを使用した以外は、例1と同様の手順で例3の装飾フィルムを作製した。
【0132】
〈例4〉
例3で使用した感圧接着フィルムを使用した以外は、例2と同様の手順で例4の装飾フィルムを作製した。
【0133】
〈例5〉
透明表面層及び透明インク受容層を表2に記載のとおりとして、例5の装飾フィルムを作製した。
【0134】
〈例6〉
ADH1を粘着性ポリマー2(ADH2)に変更し、CL1をCL2に変更した以外は、例1と同様の手順で白色感圧接着剤2(WA2)を調製した。ADH2、WP1及びD1の質量比は、固形分を基準として100:50:10であった。ADH2とCL2の質量比は、固形分を基準として100:0.23であった。WA2の固形分は約58質量%であった。
【0135】
ナイフコーターを用いてシリコーン被覆ポリエチレンラミネート紙ライナーの上にWA2を塗布し、95℃で5分間乾燥して、厚さ30μmの白色感圧接着層を形成した。このようにして、白色感圧接着層及び剥離ライナーを含む感圧接着フィルムを作製した。この感圧接着フィルムを使用した以外は、例2と同様の手順で例6の装飾フィルムを作製した。
【0136】
〈例7~例9〉
透明表面層及び透明インク受容層を表2に記載のとおりとして、例7~例9の装飾フィルムを作製した。
【0137】
〈例10〉
例1の透明インク受容層組成物に架橋剤3(CL3)を混合して、透明インク受容層組成物を調製した。PU1及びPU2の合計100質量部を基準として、CL3の含有量は3質量部であった。この透明インク受容層組成物を使用し、透明インク受容層の厚さを9μmに変更した以外は、例1と同様の手順で例10の装飾フィルムを作製した。
【0138】
〈例11~例13〉
透明表面層及び透明インク受容層を表2に記載のとおりとして、例11~例13の装飾フィルムを作製した。
【0139】
〈例14〉
透明表面層及び透明インク受容層を表2に記載のとおりとして、例14の装飾フィルムを作製した。
【0140】
〈参考例1~参考例13〉
印刷層を設けなかったこと以外は、例1~例13と同様の手順で参考例1~参考例13の積層フィルムを作製した。参考例1~参考例13は、印刷層がないことを除いてそれぞれ例1~例13と同様の層構成を有するものであり、印刷層の有無が、2%引張強度、降伏強度等の装飾フィルムの特性に与える影響を調べる目的で用意した。
【0141】
〈参考例14〉
ナイフコーターを用いて厚さ50μmのポリエステルフィルム(支持フィルム)の上にPU3を塗布し、95℃で5分間乾燥して、厚さ18μmの透明表面層を形成した。支持フィルムを剥離して参考例14のフィルムを作製した。
【0142】
〈参考例15〉
ナイフコーターを用いて厚さ50μmのポリエステルフィルム(支持フィルム)の上にポリウレタン4(PU4)を塗布し、95℃で5分間乾燥して、厚さ30μmの透明表面層を形成した。支持フィルムを剥離して参考例15のフィルムを作製した。
【0143】
〈参考例16〉
ナイフコーターを用いて参考例15のフィルムの上に例1の透明インク受容層組成物を塗布し、95℃で5分間乾燥して、厚さ10μmの透明インク受容層を形成した。支持フィルムを剥離して参考例16の積層フィルムを作製した。
【0144】
〈比較例1〉
ナイフコーターを用いて厚さ50μmのポリエステルフィルム(支持フィルム)の上に例1の透明インク受容層組成物(PU1とPU2の混合物)を塗布し、95℃で5分間乾燥して、厚さ18μmの透明表面層を形成した。ナイフコーターを用いて透明表面層の上にPU3を塗布し、95℃で5分間乾燥して、厚さ20μmの透明インク受容層を形成した。このようにして、支持フィルム/透明表面層/透明インク受容層がこの順で積層されたインク受容フィルムを作製した。このインク受容フィルムを使用した以外は、例1と同様の手順で比較例1の装飾フィルムを作製した。
【0145】
〈比較例2〉
厚さ30μmのアクリルフィルム(透明表面層兼透明インク受容層)と厚さ50μmのポリエステルフィルム(支持フィルム)を積層してインク受容フィルムを作製した。このインク受容フィルムを使用した以外は、例1と同様の手順で比較例2の装飾フィルムを作製した。
【0146】
〈比較例3〉
ナイフコーターを用いて厚さ50μmのポリエステルフィルム(支持フィルム)の上に例1の透明インク受容層組成物(PU1とPU2の混合物)を塗布し、95℃で5分間乾燥して、厚さ30μmの透明表面層(兼透明インク受容層)を形成した。このようにして、支持フィルム及び透明表面層(兼透明インク受容層)を含むインク受容フィルムを作製した。このインク受容フィルムを使用した以外は、例1と同様の手順で比較例3の装飾フィルムを作製した。
【0147】
〈2%引張強度〉
フィルムを幅25mm、長さ150mmに切断して試験片を作製した。20℃における2%伸びの時点での引張強度を引張試験機(テンシロン万能試験機、型番:RTC-1210A、株式会社エー・アンド・デイ(日本国東京都豊島区))を用いて、20℃、掴み間隔100mm、引張速度300mm/分の条件で測定した。
【0148】
〈降伏強度〉
フィルムを幅25mm、長さ150mmに切断して試験片を作製した。20℃における降伏点での引張強度を引張試験機(テンシロン万能試験機、型番:RTC-1210A、株式会社エー・アンド・デイ(日本国東京都豊島区))を用いて、20℃、掴み間隔100mm、引張速度300mm/分の条件で測定した。
【0149】
〈伸び〉
フィルムを幅25mm、長さ150mmに切断して試験片を作製した。20℃における伸びを引張試験機(テンシロン万能試験機、型番:RTC-1210A、株式会社エー・アンド・デイ(日本国東京都豊島区))を用いて、20℃、掴み間隔100mm、引張速度300mm/分の条件で測定した。伸びは以下の式で定義される。
伸び(%)=(試験後の試験片の長さ-試験前の試験片の長さ)/試験前の試験片の長さ
【0150】
〈接着力1〉
フィルムを幅25mm、長さ150mmに切断して試験片を作製した。試験片をメラミン塗装パネル(株式会社パルテック(日本国神奈川県平塚市))の上に23℃でローラーを用いて貼り付けた。貼り付け方法はJIS Z 0237:2009に準拠した。試験片を20℃で48時間放置した。引張試験機(テンシロン万能試験機、型番:RTC-1210A、株式会社エー・アンド・デイ(日本国東京都豊島区))を用いて20℃、300mm/分の剥離速度で180度剥離を行ったときの接着力を測定した。
【0151】
〈耐候性1〉
フィルムを65mm角に切断して試験片を作製した。試験片を厚さ1mmのアルミニウムパネルに室温でスキージを用いて貼り付けた。キセノン耐候性試験装置Ci5000 Weather-Ometer(株式会社東洋精機製作所(日本国東京都北区))を用いて試験片をキセノン光に500時間暴露した。試験条件はJIS K 5600-7-7:2008に準拠した。試験片の褪色が観察されたなかったものをAと評価した。試験片の褪色が観察されたものをBと評価した。アルミニウムパネルから試験片が剥離したものをCと評価した。
【0152】
〈耐候性2〉
フィルムを65mm角に切断して試験片を作製した。試験片を厚さ1mmのアルミニウムパネルに室温でスキージを用いて貼り付けた。キセノン耐候性試験装置Ci5000 Weather-Ometer(株式会社東洋精機製作所(日本国東京都北区))を用いて試験片をキセノン光に2500時間暴露した。試験条件はJIS K 5600-7-7:2008に準拠した。試験片の褪色が観察されたなかったものをAと評価した。試験片の褪色が観察されたものをBと評価した。アルミニウムパネルから試験片が剥離したものをCと評価した。
【0153】
〈インクジェット印刷性〉
フィルムの透明インク受容層の上に、JV5プリンター及びES3インク(株式会社ミマキエンジニアリング(日本国長野県東御市))を用いてインクジェット印刷を行った。インク濃度はC66、M67及びY67であった。インク濃度が高く均一で斑のない印刷面が得られたものをAと評価した。インク濃度が低く斑のある印刷面が得られたものをBと評価した。Aを合格と判断した。
【0154】
〈耐溶剤性〉
フィルムの透明表面層の上にイソプロパノール(IPA)を滴下し、乾燥した後のフィルムの外観を観察した。IPAの跡が確認されないものをAと評価した。フィルムは溶解していないがIPAの跡が確認されたものをBと評価した。フィルムの溶解が確認されたものをCと評価した。A及びBを合格と判断した。
【0155】
〈ぬれ張力試験〉
JIS K 6768:1999に準拠して、ぬれ張力試薬を用いてフィルム表面のぬれ性を評価した。ぬれ性良好と判断された試薬番号の最大値を記録した。例1の透明インク受容層組成物(PU1とPU2の混合物)を用いて形成されたフィルムのぬれ張力は54mN/m以上、PU3を用いて形成されたフィルムのぬれ張力は42mN/m、PU4を用いて形成されたフィルムのぬれ張力は45mN/mであった。
【0156】
例1~例14、参考例1~参考例16、及び比較例1~3の詳細及び評価結果を表2に示す。
【0157】
【0158】
【0159】
〈例15〉
ミキサー(TK Auto Homo Mixer、プライミクス株式会社(日本国兵庫県淡路市))を用いてポリウレタン1(PU1)及びポリウレタン5(PU5)を混合して、透明インク受容層組成物を調製した。PU1とPU5の質量比は、固形分を基準として100:10であった。透明インク受容層組成物の固形分は約30質量%であった。
【0160】
ナイフコーターを用いて厚さ50μmのポリエステルフィルム(支持フィルム)の上にポリウレタン3(PU3)を塗布し、95℃で5分間乾燥して、厚さ18μmの透明表面層を形成した。
【0161】
ナイフコーターを用いて厚さ50μmのポリエステルフィルムの上に透明インク受容層組成物を塗布し、95℃で5分間乾燥して、厚さ20μmの透明インク受容層を形成した。
【0162】
粘着性ポリマー4(ADH4)と架橋剤1(CL1)とを混合して、透明感圧接着剤を調製した。ADH4とCL1の質量比は、固形分を基準として100:0.2であった。
【0163】
ナイフコーターを用いてシリコーン被覆ポリエチレンラミネート紙ライナーの上に透明感圧接着剤を塗布し、95℃で5分間乾燥して、厚さ10μmの透明感圧接着層を形成した。
【0164】
透明インク受容層の上に透明感圧接着層を積層した。透明インク受容層の上のポリエステルフィルムを除去した。透明感圧接着層の上のシリコーン被覆ポリエチレンラミネート紙ライナーを除去した。露出した透明感圧接着層の上に透明表面層を積層した。このようにして、支持フィルム/透明表面層/透明感圧接着層/透明インク受容層がこの順で積層されたインク受容フィルムを作製した。
【0165】
白色顔料1(WP1)、分散剤1(D1)及びメチルエチルケトン(MEK)を含むプレミックスを調製した。WP1とD1の質量比は、固形分を基準として5:1であった。プレミックスの固形分は約66質量%であった。
【0166】
プレミックスと粘着性ポリマー1(ADH1)とを混合した。ADH1、白色顔料1及びD1の質量比は、固形分を基準として100:50:10であった。得られた混合物に架橋剤4(CL4)を混合して、白色感圧接着剤4(WA4)を調製した。ADH1とCL4の質量比は、固形分を基準として100:0.2であった。WA4の固形分は約55質量%であった。
【0167】
ナイフコーターを用いてシリコーン被覆ポリエチレンラミネート紙ライナーの上にWA4を塗布し、95℃で5分間乾燥して、厚さ65μmの白色感圧接着層を形成した。このようにして、白色感圧接着層及び剥離ライナーを含む感圧接着フィルムを作製した。
【0168】
JV5プリンター及びES3インク(株式会社ミマキエンジニアリング(日本国長野県東御市))を用いたインクジェット印刷により、インク受容フィルムの透明インク受容層の上に厚さ6μmの印刷層を形成した。インク濃度はC66、M67及びY67であった。白色感圧接着層を印刷層の上に積層し、支持フィルムを除去して、例15の装飾フィルムを作製した。
【0169】
〈参考例17〉
印刷層を設けなかったこと以外は、例15と同様の手順で参考例17の積層フィルムを作製した。参考例17は、印刷層がないことを除いて例15と同様の層構成を有するものであり、印刷層の有無が、5%引張強度、エンボス適性等の装飾フィルムの特性に与える影響を調べる目的で用意した。
【0170】
〈5%引張強度〉
フィルムを幅25mm、長さ150mmに切断して試験片を作製した。20℃における5%伸びの時点での引張強度を引張試験機(テンシロン万能試験機、型番:RTC-1210A、株式会社エー・アンド・デイ(日本国東京都豊島区))を用いて、20℃、掴み間隔100mm、引張速度300mm/分の条件で測定した。
【0171】
〈エンボス適性〉
フィルムを厚さ1mmのアルミニウム板に室温で貼り付けて試験片を作製した。エンボス装置(株式会社アマダ(日本国神奈川県伊勢原市))を用いて、漢字及び数字のパターンを試験片にエンボス加工した。エンボス圧力は約15MPaであった。エンボス深さは約1.25mmであった。試験片を切断してその断面を光学顕微鏡で観察した。フィルムの浮きが観察されなかったものを良好、フィルムの浮きが観察されたものを不良と評価した。
【0172】
〈耐衝撃性〉
JIS K 5600-5-3:1999(ASTM D 2794)に準拠して耐衝撃性を評価した。具体的には、IM-201デュポン(登録商標)衝撃試験機(テスター産業株式会社(日本国埼玉県入間市))を用い、おもり500gf、高さ500mm、撃芯先端径6.3mm、温度-20℃の条件で、撃芯をフィルム表面に落下させた。試験後のフィルム外観を目視で観察し、フィルムの割れが観察されなかったものを良好、フィルムの割れが観察されたものを不良と評価した。
【0173】
〈接着力2〉
フィルムを幅25mm、長さ150mmに切断して試験片を作製した。試験片をA5052Pアルミニウムパネル(株式会社パルテック(日本国神奈川県平塚市))の上に23℃でローラーを用いて貼り付けた。貼り付け方法はJIS Z 0237:2009に準拠した。試験片を20℃で48時間放置した。引張試験機(テンシロン万能試験機、型番:RTC-1210A、株式会社エー・アンド・デイ(日本国東京都豊島区))を用いて20℃、300mm/分の剥離速度で180度剥離を行ったときの接着力を測定した。
【0174】
例15及び参考例17の詳細及び評価結果を表3に示す。
【0175】
【0176】
本発明の基本的な原理から逸脱することなく、上記の実施態様及び実施例が様々に変更可能であることは当業者に明らかである。また、本発明の様々な改良及び変更が本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに実施できることは当業者には明らかである。