(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123148
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】車両衝突試験装置
(51)【国際特許分類】
G01M 7/08 20060101AFI20230829BHJP
G01M 17/007 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
G01M7/08 A
G01M17/007 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027035
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】池戸 一祥
(57)【要約】 (修正有)
【課題】牽引ロープの伸び縮みの影響を極力受けない位置で牽引速度をフィードバックすることにより、車両の切り離し位置で車速が所定の速度から乖離するという問題を解決する。
【解決手段】牽引ロープ1と、この牽引ロープ1を牽引するドラム2と、牽引ロープ1に係り合う複数のシーブ3(3A、3B)と、ドラム2を駆動するモータ4と、牽引速度指令Vrefに基づきモータ4を制御する制御手段5とを具備し、牽引ロープ1上に設定した接続点Cに断接切替手段であるドーリー6を介し車両7を接続して衝突試験を行うものにおいて、車両の接続点Cに最も近い位置にあるシーブ3Bにシーブ速度検出部31を設け、このシーブ速度検出部31で検出したシーブ速度Vsを制御手段5に入力してモータ4を制御することとした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引ロープと、この牽引ロープを牽引するドラムと、前記牽引ロープに係り合う複数のシーブと、前記ドラムを駆動するモータと、牽引速度指令に基づき前記モータを制御する制御手段とを具備し、前記牽引ロープ上に設定した接続点に断接切替手段を介し車両を接続して衝突試験を行うものにおいて、
前記車両の接続点に最も近い位置にあるシーブにシーブ速度検出部を設け、このシーブ速度検出部で検出したシーブ速度を前記制御手段に入力して前記モータを制御することを特徴とする、車両衝突試験装置。
【請求項2】
前記モータにモータ速度検出部を設け、前記制御手段が、検出されたモータ速度を前記牽引速度指令に帰還して前記モータを制御するとともに、検出されたシーブ速度に基づいて前記牽引速度指令を補正する、請求項1に記載の車両衝突試験装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記モータの速度を帰還せず、検出されたシーブ速度を前記牽引速度指令に帰還して前記モータを制御する、請求項1に記載の車両衝突試験装置。
【請求項4】
少なくとも加速序盤又は加速終盤においてなまし制御が行われる、請求項1~3の何れかに記載の車両衝突試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両衝突試験中の牽引ロープの伸縮による影響を極力低減することが可能な、車両衝突試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車メーカーにおいては、車両の衝突事故を想定し、車両を実際に衝突させて車体の強度及び衝突の影響を評価する衝突試験が行われている。この種の車両衝突試験装置の一例として、例えば特許文献1に示すものが挙げられる。
【0003】
同文献に示された閉ループ方式と呼ばれるものに属する構成を
図5に示す。
【0004】
この車両衝突試験装置は、牽引ロープ101と、この牽引ロープ101を牽引するドラム102と、牽引ロープ101に係り合う複数のシーブ103と、ドラム102を駆動するモータ104と、モータ104の速度を検出するモータ速度検出手段104aと、検出されたモータ速度を換算部105aで実牽引速度に換算してフィードバックし、牽引速度指令Vrefとの偏差に基づき、PI制御部152を通じてモータ104にトルク指令Trを入力する制御手段105とを備える。
【0005】
そして、牽引ロープ101に断接切替手段106を介して車両107を接続し、車両107を走行路108上で走行させた後に断接切替手段106で切り離して、所定の速度で対象物109に衝突させることにより試験を行うように構成される。
【0006】
図6は、制御手段105が牽引速度指令Vrefを出す際の実行基準となる速度線図と加速度線図を示している。加速は基本加速時間A内で完了するように設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、車両107を限られた長さの走行路108内で所定の高速度まで加速しなければならないので、加速度は大きく、牽引ロープ101はバネ定数を有することによって加速中に大きく引き伸ばされ、加速終了前には逆に収縮する。
【0009】
このような牽引ロープ101の伸び縮みにより、車両107の速度とモータ104の速度との間に乖離が発生する。このため、
図7の牽引速度指令に対して、
図8に示すように実際の車速は加速完了後にオーバーシュート・アンダーシュートしながら振動して、車両107の切り離し位置Pで車速(実牽引速度)が所定の速度(目標牽引速度)から乖離するという問題があった。このような問題は牽引ロープ101が長いほど顕著に現われる。
【0010】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、牽引ロープの伸び縮みの影響を極力受けない位置から牽引速度をフィードバックすることにより、このような課題を解決することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0012】
すなわち、本発明に係る車両衝突試験装置は、牽引ロープと、この牽引ロープを牽引するドラムと、前記牽引ロープに係り合う複数のシーブと、前記ドラムを駆動するモータと、牽引速度指令に基づき前記モータを制御する制御手段とを具備し、前記牽引ロープ上に設定した接続点に断接切替手段を介し車両を接続して衝突試験を行うものにおいて、前記車両の接続点に最も近い位置にあるシーブにシーブ速度検出部を設け、このシーブ速度検出部で検出したシーブ速度を前記制御手段に入力して前記モータを制御することを特徴とする。
【0013】
このようにすると、車両に最も近い位置にある牽引速度で牽引速度指令に補正を掛けることができる。このため、加速完了後に車速がオーバーシュート・アンダーシュートする振動を抑制するように動作し、結果的に車両の速度が所定の速度から乖離する量を抑制することができる。
【0014】
具体的には、前記モータにモータ速度検出部を設け、前記制御手段が、検出されたモータ速度を前記牽引速度指令に帰還して前記モータを制御するとともに、検出されたシーブ速度に基づいて前記牽引速度指令を補正することが好ましい。
【0015】
このように構成すると、基本的にモータはモータ速度と牽引速度指令との間に構成されるフィードバック系によって制御される。そして、加減速時にフィードバック系が適正に作動しているとしても、牽引ロープの伸び縮みがあるときはシーブ速度に基づいて補正が掛けられる。このような構成によれば、本来のフィードバック系にモータの伝達関数が含まれるため、モータの特性に基づく適切なモータ制御を行いつつ、加速完了後に車速がオーバーシュート・アンダーシュートする振動を抑制することができる。
【0016】
或いは、前記制御手段は、前記モータの速度を帰還せず、検出されたシーブ速度を前記牽引速度指令に帰還して前記モータを制御することが好ましい。
【0017】
このように構成すると、基本的にモータはシーブ速度と牽引速度指令との間に構成されるフィードバック系によって制御される。このため、牽引ロープの伸縮の影響を殆ど受けずに、ダイレクトに最寄りのシーブ速度に基づいて牽引速度指令をフィードバック制御することができる。このような構成によれば、フィードバック系にモータの伝達関数が含まれないため、応答性の点で最適制御とはならない場合があり得るとしても、特段支障がなければ、部品点数を極力抑えてフィードバック系を構成することができる。
【0018】
本発明は、少なくとも加速序盤又は加速終盤においてなまし制御が行われる場合に好適である。
【0019】
特に、なまし制御は車両のオーバーシュートや蛇行防止のために有用な制御となるが、牽引ロープの伸縮による影響を受けると本来の効果が無くなるばかりか、逆に作用することにもなりかねない。そこで、本発明を適用することにより、牽引ロープの伸び縮みに起因する目標牽引速度と車両の実牽引速度との乖離が抑制されるため、なまし制御の実効を適切に図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明した本発明によれば、車両の速度が所定の速度から乖離する量を抑制できるだけでなく、この速度乖離(目標牽引速度に対して、車両の実牽引速度が上振れまたは下振れすること)によって生じる振動が抑制され、車両や車両内に設置したダミー人形の姿勢も安定させることが可能な、車両衝突試験装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る車両衝突試験装置の模式的な構成説明図。
【
図5】従来の車両衝突試験装置の模式的な構成説明図。
【
図6】牽引速度指令の実行基準となる速度線図および加速度線図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第1実施形態を、図面を参照して説明する。
【0023】
図1に示す車両衝突試験装置の基本構成は、
図5に基づいて前述したと同様、牽引ロープ1と、この牽引ロープ1を牽引するドラム2と、牽引ロープ1に係り合う複数のシーブ3と、ドラム3を駆動するモータ4と、牽引速度指令Vrefに基づきモータ4を制御する制御手段5とを備え、牽引ロープ1に断接切替手段6を介し車両7を接続し、車両7を走行路8上で走行させた後に断接切替手段6で車両7を切り離して、所定の速度で対象物9に衝突させて試験を行うように構成される。
【0024】
牽引ロープ1は無端状をなすもので、この実施形態では一端側に配置したドラム2と他端側に配置したリターンシーブ3Aに巻き掛けられ、中間部に配置した中間シーブ3Bが2か所で牽引ロープ1に係って同期回転しながら、ドラム2による巻き取り/繰り出しを通じて、エンドレスで循環するように構成される。
【0025】
モータ4には、各種の速度や加速度での牽引を可能するために可変速モータ(直流電動機、インバータモータなど)や加減速装置を備えた定速モータが使用される。モータ4にはモータ速度検出部4aが設けられている。
【0026】
制御手段5は、記憶部5bから牽引速度指令Vrefを取り出して入力信号とするとともに、モータ速度検出部4aで検出されたモータ速度を換算部5aで実牽引速度に換算して加減算部51にフィードバックし、牽引速度指令Vrefとの偏差に基づき、PI制御部52を通じてモータ4にトルク指令Trを入力する。
【0027】
車両1には実際の車両のほかダミーの車両が用いられる。接続点Cには断接切替手段としてドーリー6が配置され、ドーリー6に連結用ワイヤ6aを介して車両7が接続される。走行路8に沿って走行した車両7は、ドーリー6が連結用ワイヤ6aの連結を解除することによって切り離され、その後に対象物9に衝突する。対象物9は、障害物や他の車両である。
【0028】
制御手段5は、
図6に示した速度線図や加速度線図に関するデータを記憶部5bに記憶し、これらのデータに基づいて牽引速度指令Vrefをなす。
【0029】
図6の速度線図及び加速度線図に沿って、車両7を限られた長さの走行路8内で所定の高速度まで加速するために、加速序盤で加速度を所定値まで立ち上げ、加速中盤で一定加速度を保った後、加速終盤で車両の切り離し点の手前まで速度が落ちないように加速して、基本加速時間A内で加速を完了するように、各種条件が設定されて記憶5bに記憶されている。その際、牽引中における車両7の挙動を安定させるため、加速序盤及び加速終盤に丸み制御領域を設け、急激な加減速を避ける制御が行われる。
【0030】
具体的には、序盤の加速度域t1で加速度を所定値まで立ち上げ、中盤の定加速度域t2で一定加速度を保った後、終盤の加速度域t3で車両の切り離し位置Pの手前まで速度が落ちないように加速して、全体として
図6や
図7に示すようなS字を描く加速ラインに沿った加速制御が行われる。
【0031】
このような構成において、前述したように車両7を限られた長さの走行路8内で所定の高速度まで加速しなければならないので、加速度は大きく、牽引ロープ1はバネ定数を有することによって加速中に大きく引き伸ばされ、車両7の速度が所定の目標速度に近づき、その速度に正しく合わせるために加速度を低減する際、モータ4の駆動力が低下するために引き伸ばされていた状態から収縮する。さらに、縮み過ぎると今度は元に戻り、再び伸びようとする。
【0032】
このため、
図1に示すドラム2の位置では牽引ロープ1は所定の牽引速度で牽引されている場合でも、牽引ロープ1の伸び縮みによって、ドーリー6の位置で牽引ロープ1に接続された車両7の速度とモータ4の速度(ドラム2の位置での実牽引速度)との間に乖離が発生し、
図7の牽引速度指令に対して、
図8に示したように実際の車速(実測値)は加速完了後にオーバーシュート・アンダーシュートしながら振動して、車両7の切り離し位置Pで車速が所定の速度から乖離するという問題が生じる。
【0033】
そこで本実施形態は、
図1に示すように、車両7の接続点Cに配置されたドーリー6に最も近い位置にあるシーブ3(中間シーブ3B)にシーブ速度検出部31を設け、このシーブ速度検出部31で検出したシーブ速度Vsを推定車速として制御手段5に入力して、モータ4を制御している。
【0034】
具体的には、モータ速度を牽引速度指令Vrefに帰還してフィードバック制御するだけでなく、検出されたシーブ速度Vsと牽引速度指令Vrefとを加減算部53に入力し、その偏差εを前記加減算部51に入力することで、牽引速度指令Vrefを補正している。
【0035】
このような構成の下に制御を行うと、加減速時にドラム2の位置では牽引ロープ1の牽引速度Vが牽引速度指令Vrefに合致しているとしても、ドラム2から接続点Cであるドーリー6の位置までの間で牽引ロープ1が伸びる過程にあって車両7が目標速度を下回っているときは、牽引速度指令Vrefとシーブ速度Vsとの間にプラスの偏差εが生じて牽引速度指令Vrefにプラスの補正が掛けられ、車両7が加速される。逆に、牽引ロープ1が縮む過程にあって車両7が目標速度を上回っているときは、牽引速度指令Vrefとシーブ速度Vsとの間にマイナスの偏差εが生じて牽引速度指令Vrefにマイナスの補正が掛けられ、車両7が減速される。
【0036】
すなわち、本実施形態によると、牽引ロープ1の伸縮による車両7の速度未達状態を補う方向にモータ駆動が変更されることになる。
【0037】
以上のように、本実施形態の車両衝突試験装置は、牽引ロープ1と、この牽引ロープ1を牽引するドラム2と、牽引ロープ1に係り合う複数のシーブ3(3A、3B)と、ドラム2を駆動するモータ4と、牽引速度指令Vrefに基づきモータ4を制御する制御手段5とを具備し、牽引ロープ1上に設定した接続点Cに断接切替手段であるドーリー6を介し車両7を接続して衝突試験を行うものにおいて、車両7の接続点Cに最も近い位置にあるシーブ3Bにシーブ速度検出部31を設け、このシーブ速度検出部31で検出したシーブ速度Vsを制御手段5に入力してモータ4を制御するものである。
【0038】
このようにすると、車両7に最も近い位置にある牽引速度で牽引速度指令Vrefに補正を掛けることができる。このため、加速完了後に車速がオーバーシュート・アンダーシュートする振動を抑制するように動作し、結果的に車両7の速度が所定の速度から乖離する量を抑制することができる。
【0039】
また、この速度乖離(目標牽引速度に対して、車両7の実牽引速度が上振れまたは下振れすること)によって生じる振動が抑制され、車両7の姿勢を安定させて、牽引の加速開始時や加速終了時での車両7の左右・前後ピッチの挙動変動、車両7に搭載した計測用ダミー人形の位置ズレ、などを抑制することで、衝突試験に係る収集データの精度を向上させることも可能となる。
【0040】
具体的には、モータ4にモータ速度検出部4aを設け、制御手段5が、検出されたモータ速度を換算部4bで実牽引速度に換算したうえで牽引速度指Vrefに帰還することでモータ4を制御するとともに、検出されたシーブ速度Vsに基づいて牽引速度指令Vrefを補正している。
【0041】
このように構成すると、基本的にモータ4はモータ速度(実牽引速度)と牽引速度指令Vrefとの間に構成されるフィードバック系によって制御される。そして、加減速時にフィードバック系が適正に作動しているとしても、牽引ロープ1の伸び縮みがあるときは、牽引速度指令Vrefとシーブ速度Vsとの間に偏差εが生じるため、この偏差εに基づいて補正が掛けられる。このようにすれば、本来のフィードバック系にモータの伝達関数が含まれるため、モータの特性に基づく適切なモータ制御を行いつつ、加速完了後に車速がオーバーシュート・アンダーシュートする振動を抑制することができる。
【0042】
特に、加速序盤や加速終盤において加速度を低減する際になまし制御を行っているが、上記の制御により、牽引ロープ1の伸び縮みに起因する目標牽引速度と車両7の実牽引速度との乖離が抑制されるため、なまし制御の実効を適切に図ることができる。
【0043】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態を、
図4を参照して説明する。
【0044】
この実施形態は、基本的に第1実施形態と同様、牽引ロープ1と、この牽引ロープ1を牽引するドラム2と、牽引ロープ1に係り合う複数のシーブ3(3A、3B)と、ドラム2を駆動するモータ4と、牽引速度指令Vrefに基づきモータ4を制御する制御手段5とを具備し、牽引ロープ1上に設定した接続点Cに断接切替手段を介し車両7を接続して衝突試験を行うものにおいて、車両の接続点Cに最も近い位置にあるシーブ3Bにシーブ速度検出部31を設け、このシーブ速度検出部31で検出したシーブ速度Vsを制御手段に入力してモータ4を制御するものである。
【0045】
但し、制御手段5は、モータ4の速度を帰還せず、検出されたシーブ速度Vsを加減算部54で牽引速度指令Vrefに帰還してモータ4を制御している。
【0046】
このように構成すると、基本的にモータ4はシーブ速度Vsと牽引速度指令Vrefとの間に構成されるフィードバック系によって制御される。このため、牽引ロープ1の伸縮の影響を殆ど受けずに、ダイレクトに最寄りのシーブ速度Vsに基づいて牽引速度指令Vrefをフィードバック制御することができる。このようにすれば、フィードバック系にモータ4の伝達関数が含まれないため、応答性の点で最適制御とはならない場合があり得るとしても、特段支障がなければ、部品点数を極力抑えてフィードバック系を構成することができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0048】
例えば、上記実施形態では1つのドラム2と複数のシーブ3(3A、3B)の間に牽引ロープ1を張設したが、一対の巻き取り/繰り出しドラムと折り返しのリターンシーブの間に牽引ロープを巻き掛けて、一方のドラムの駆動によってドーリーを介して車両の牽引、切り離しを行い、他方のドラムの駆動によってドーリーを元の位置に戻すように構成して、ドラムにモータを接続し、制御手段で制御するようにしても構わない。
【0049】
また、上記実施形態の牽引ロープは長円状に張られているが、レイアウトによっては途中に配置した中間シーブで曲がった状態で張られるなど、張設の形態やシーブの個数は限定されない。シーブが3個以上ある場合でも、本発明の制御が加速終盤に行われるのであれば、走行路上で加速終盤に接続点に最も近いシーブは1つに特定される。
【0050】
勿論、本発明の制御を加速序盤や加速中盤にも行いたいときは、走行路上で加速序盤や加速中盤において車両に最も近いシーブは別々であってもよい。
【0051】
また、上記実施形態では制御手段はPI制御を採用しているが、P制御であってもPID制御であっても構わない。
【0052】
また、上記実施形態では牽引ロープは無端状に張られていたが、有端状であっても構わない。
【0053】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…牽引ロープ
2…ドラム
3、3A、3B…シーブ
4…モータ
5…制御手段
6…断接切替手段(ドーリー)
7…車両
31…シーブ速度検出部
C…接続点
Vref…牽引速度指令
Vs…シーブ速度