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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123172
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】樹脂封止装置及び樹脂封止方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20230829BHJP
   B29C 43/18 20060101ALI20230829BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
H01L21/56 T
B29C43/18
B29C43/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027078
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田上 秀作
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 誠
【テーマコード(参考)】
4F204
5F061
【Fターム(参考)】
4F204AA36
4F204AD19
4F204AH37
4F204FA01
4F204FB01
4F204FB17
4F204FN11
4F204FN15
4F204FN17
5F061AA01
5F061CA21
5F061DA11
(57)【要約】
【課題】型開きやフィルムの取り換えを行う際に、封止金型内で舞い上がる塵埃を除去することによって、塵埃に起因する成形不良の発生を防止することができる樹脂封止装置及び樹脂封止方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る樹脂封止装置1は、上型204及び下型206を有する封止金型202を備えたプレス装置250を用いて、ワークWを樹脂Rにより封止して成形品Wpに加工する樹脂封止装置であって、外部から空気を供給する供給ダクト267と、外部へ空気を排出する排出ダクト268とを備え、供給ダクト267から排出ダクト268へ空気を通流させる流路として、上型204と下型206との間に空気を通流させて塵埃を排出する第1流路272を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型及び下型を有する封止金型を備えたプレス装置を用いて、ワークを樹脂により封止して成形品に加工する樹脂封止装置であって、
外部から空気を供給する供給ダクトと、外部へ前記空気を排出する排出ダクトと、を備え、
前記供給ダクトから前記排出ダクトへ前記空気を通流させる流路として、前記上型と前記下型との間に前記空気を通流させて塵埃を排出する第1流路を有すること
を特徴とする樹脂封止装置。
【請求項2】
前記供給ダクトから前記排出ダクトへ前記空気を通流させる流路として、前記封止金型の上方に前記空気を通流させて前記封止金型の熱を排出する第2流路をさらに有すること
を特徴とする請求項1記載の樹脂封止装置。
【請求項3】
前記第1流路と前記第2流路とのいずれか一方に前記空気を通流させるシャッタをさらに備えること
を特徴とする請求項2記載の樹脂封止装置。
【請求項4】
巻出し部及び巻取り部を有して、前記上型と前記下型との間にロール状のフィルムを供給するフィルム供給機構をさらに備え、
前記第1流路は、前記巻出し部から前記巻取り部へ向かう方向と同一方向に前記空気を通流させる構成であること
を特徴とする請求項1記載の樹脂封止装置。
【請求項5】
前記プレス装置として、第1プレス装置及び第2プレス装置の二台を備え、それぞれに設けられる前記フィルム供給機構は、互いに前記巻出し部が遠い位置で且つ前記巻取り部が近い位置に配設されることによって、前記フィルムが向かい合う方向に送り出される構成であり、
前記第1プレス装置と前記第2プレス装置との中間位置に、それぞれに設けられる前記第1流路に共通の前記排出ダクトが配設されていること
を特徴とする請求項4記載の樹脂封止装置。
【請求項6】
前記第1流路は、前記供給ダクトから供給される前記空気を前記上型と前記下型との間へ向けて導入する導入整流板、及び、前記上型と前記下型との間から送出される前記空気を前記排出ダクトへ向けて導出する導出整流板、の少なくとも一方を有すること
を特徴とする請求項1記載の樹脂封止装置。
【請求項7】
上型及び下型を有する封止金型と、外部から供給された空気を前記上型と前記下型との間に通流させる流路を開閉するシャッタと、を備える樹脂封止装置を用いて、ワークを樹脂により封止して成形品に加工する樹脂封止方法であって、
前記上型と前記下型との型開きを行う時に前記シャッタを開いて、前記上型と前記下型との間に前記空気を通流させること
を特徴とする樹脂封止方法。
【請求項8】
前記樹脂封止装置は、巻出し部及び巻取り部を有して前記上型と前記下型との間にロール状のフィルムを供給するフィルム供給機構をさらに備えており、
前記上型と前記下型との間から前記フィルムを送り出す時に前記シャッタを開いて、前記上型と前記下型との間に前記空気を通流させること
を特徴とする請求項7記載の樹脂封止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂封止装置及び樹脂封止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材に電子部品が搭載されたワークを封止樹脂(以下、単に「樹脂」と称する場合がある)により封止して成形品に加工する樹脂封止装置及び樹脂封止方法の例として、トランスファ成形方式や圧縮成形方式によるものが知られている。
【0003】
トランスファ成形方式は、上型と下型とを備えて構成される封止金型に設けられる一対の封止領域(キャビティ)に所定量の樹脂を供給するポットを設け、当該各封止領域に対応する位置にワークをそれぞれ配置して、上型と下型とでクランプしポットからキャビティに樹脂を流し込む操作によって樹脂封止する技術である。また、圧縮成形方式は、上型と下型とを備えて構成される封止金型に設けられる封止領域(キャビティ)に所定量の樹脂を供給すると共に当該封止領域にワークを配置して、上型と下型とでクランプする操作によって樹脂封止する技術である。一例として、上型にキャビティを設けた封止金型を用いる場合、ワーク上の中心位置に一括して樹脂を供給して成形する技術等が知られている。一方、下型にキャビティを設けた封止金型を用いる場合、当該キャビティを含む金型面を覆うフィルム及び樹脂を供給して成形する技術等が知られている(特許文献1:特開2021-178411号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-178411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来より、ワークの樹脂封止を行う際に、樹脂の微粉末等からなる塵埃が封止金型やリリースフィルム(以下、単に「フィルム」と称する場合がある)等に付着することに起因して、成形不良が発生してしまうことが課題となっていた。
【0006】
この課題に対して、例えば、特許文献1には、プレス装置の封止金型内へ搬入される前の段階でワークのクリーニングを行うことによって成形不良の発生を防止する技術が開示されている。
【0007】
一方、成形不良の要因となる塵埃は、ワークに付着して封止金型内へ侵入するものに限らない。例えば、封止(成形)に用いられた樹脂が封止金型やフィルムに僅かに残存し、型開きやフィルムの取り換え等を行う際に、それらが封止金型内で微粉末として舞い上がって塵埃の発生源となる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、型開きやフィルムの取り換え等を行う際に封止金型内で舞い上がる塵埃を除去することによって、塵埃に起因する成形不良の発生を防止することができる樹脂封止装置及び樹脂封止方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、一実施形態として以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0010】
本発明に係る樹脂封止装置は、上型及び下型を有する封止金型を備えたプレス装置を用いて、ワークを樹脂により封止して成形品に加工する樹脂封止装置であって、外部から空気を供給する供給ダクトと、外部へ前記空気を排出する排出ダクトと、を備え、前記供給ダクトから前記排出ダクトへ前記空気を通流させる流路として、前記上型と前記下型との間に前記空気を通流させて塵埃を排出する第1流路を有することを要件とする。
【0011】
これによれば、第1流路に空気を通流させることで、上型と下型との間の空間に浮遊する塵埃を排出することができる。したがって、塵埃に起因する成形不良の発生を防止することができる。
【0012】
また、前記供給ダクトから前記排出ダクトへ前記空気を通流させる流路として、前記封止金型の上方に前記空気を通流させて前記封止金型の熱を排出する第2流路をさらに有することが好ましい。これによれば、第2流路に空気を通流させることで、封止金型の熱を排出することができる。
【0013】
また、前記第1流路と前記第2流路とのいずれか一方に前記空気を通流させるシャッタをさらに備えることが好ましい。これによれば、所定のタイミングで第1流路と第2流路とを切り替えていずれか一方に空気の通流を行うことができる。
【0014】
また、巻出し部及び巻取り部を有して、前記上型と前記下型との間にロール状のフィルムを供給するフィルム供給機構をさらに備え、前記第1流路は、前記巻出し部から前記巻取り部へ向かう方向と同一方向に前記空気を通流させる構成であることが好ましい。これによれば、使用済みフィルムの送り出し方向へ向けて空気を通流させることによって、上型と下型との間の空間に浮遊する塵埃が未使用フィルムに付着しないようにしつつ封止金型外へ排出させることができる。
【0015】
また、前記プレス装置として、第1プレス装置及び第2プレス装置の二台を備え、それぞれに設けられる前記フィルム供給機構は、互いに前記巻出し部が遠い位置で且つ前記巻取り部が近い位置に配設されることによって、前記フィルムが向かい合う方向に送り出される構成であり、前記第1プレス装置と前記第2プレス装置との中間位置に、それぞれに設けられる前記第1流路に共通の前記排出ダクトが配設されていることが好ましい。これによれば、機構の共通化によって、装置構造の簡素化を図ることができる。
【0016】
また、前記第1流路は、前記供給ダクトから供給される前記空気を前記上型と前記下型との間へ向けて導入する導入整流板、及び、前記上型と前記下型との間から送出される前記空気を前記排出ダクトへ向けて導出する導出整流板、の少なくとも一方を有することが好ましい。これによれば、導入整流板が設けられることで、供給ダクトから供給される空気を、上型と下型との間へ効率的に導くことができる。また、導出整流板が設けられることで、上型と下型との間から送出される空気を、排出ダクトへ効率的に導くことができる。
【0017】
また、本発明に係る樹脂封止方法は、上型及び下型を有する封止金型と、外部から供給された空気を前記上型と前記下型との間に通流させる流路を開閉するシャッタと、を備える樹脂封止装置を用いて、ワークを樹脂により封止して成形品に加工する樹脂封止方法であって、前記上型と前記下型との型開きを行う時に前記シャッタを開いて、前記上型と前記下型との間に前記空気を通流させることを要件とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、型開きやフィルムの取り換え等を行う際に封止金型内で舞い上がる塵埃を除去することができる。したがって、塵埃に起因する成形不良の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る樹脂封止装置の例を示す平面図である。
図2図1の樹脂封止装置のプレス装置の例を示す断面図である。
図3図1の樹脂封止装置の封止金型の例を示す断面図である。
図4図2のプレス装置を二台備える構成の例を示す断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る樹脂封止装置の動作説明図である。
図6】本発明の実施形態に係る樹脂封止装置の動作説明図である。
図7】本発明の実施形態に係る樹脂封止装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(全体構成)
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。図1は、本実施形態に係る樹脂封止装置1の例を示す平面図(概略図)である。尚、説明の便宜上、図中において矢印により樹脂封止装置1における左右方向(X方向)、前後方向(Y方向)、上下方向(Z方向)を示す。また、各実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰返しの説明は省略する場合がある。
【0021】
本実施形態に係る樹脂封止装置1は、上型204及び下型206を備える封止金型202を用いて、ワーク(被成形品)Wの樹脂封止成形を行う装置である。以下、樹脂封止装置1として、上型204に複数のキャビティ208(208A、208B、208C)が設けられ、下型206に対応する複数のワーク保持部205(205A、205B、205C)が設けられた封止金型202を用いて、複数のワークWを一括して樹脂Rにより封止する圧縮成形装置を例に挙げて説明する。但し、この構成に限定されるものではない。
【0022】
先ず、成形対象であるワークWは、基材Waに複数の電子部品Wbが行列状に搭載された構成を備えている。より具体的には、基材Waの例として、短冊状に形成された樹脂基板、セラミックス基板、金属基板、キャリアプレート、リードフレーム、ウェハ等の板状の部材(いわゆる、短冊ワーク)が挙げられる。また、電子部品Wbの例として、半導体チップ、MEMSチップ、受動素子、放熱板、導電部材、スペーサ等が挙げられる。尚、基材Waの他の例として、円形状、正方形状等に形成された上記部材を用いる構成としてもよい(不図示)。
【0023】
基材Waに電子部品Wbを搭載する方法の例として、ワイヤボンディング実装、フリップチップ実装等による搭載方法がある。あるいは、樹脂封止後に成形品Wpから基材(ガラス製や金属製のキャリアプレート)Waを剥離する構成の場合には、熱剥離性を有する粘着テープや紫外線照射により硬化する紫外線硬化性樹脂を用いて電子部品Wbを貼付ける方法もある。
【0024】
一方、樹脂Rの例として、顆粒状(円柱状等を含む)、粉砕状、もしくは粉末状(本願において「粒状」と総称する場合がある)の熱硬化性樹脂(例えば、フィラー含有のエポキシ系樹脂等)が用いられる。尚、樹脂Rは、上記の状態に限定されるものではなく、液状、板状、シート状等、他の状態(形状)であってもよく、エポキシ系熱硬化性樹脂以外の樹脂であってもよい。
【0025】
また、フィルムFの例として、耐熱性、剥離容易性、柔軟性、伸展性に優れたフィルム材、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(ポリテトラフルオロエチレン重合体)、PET、FEP、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリジン等が好適に用いられる。本実施形態においては、フィルムFとしてロール状のフィルムが用いられる。尚、変形例として、短冊状のフィルム用いる構成としてもよい(不図示)。
【0026】
続いて、本実施形態に係る樹脂封止装置1の概要について説明する。図1に示すように、樹脂封止装置1は、ワークWの供給を主に行うワーク供給ユニット100A、ワークWを樹脂封止して成形品Wpへの加工を主に行うプレスユニット100B、樹脂の供給を主に行う樹脂供給ユニット100C、及び樹脂封止後の成形品Wpの収納を主に行う成形品収納ユニット100Dを主要構成として備えている。尚、各ユニットにおける各機構の作動制御を行う制御部150がワーク供給ユニット100Aに配置されているが、他のユニットに配置される構成としてもよい。
【0027】
本実施形態においては、所定の一方向(一例として、図1中のX方向)に沿って、ワーク供給ユニット100A、プレスユニット100B、樹脂供給ユニット100C、プレスユニット100B、成形品収納ユニット100Dの順に配置されている。ここで、ワーク供給ユニット100Aとプレスユニット100Bとの間でワークWの搬送を行うワーク搬送部104、及び、プレスユニット100Bと成形品収納ユニット100Dとの間で成形品Wpの搬送を行う成形品搬送部106が設けられている。また、樹脂供給ユニット100Cとプレスユニット100Bとの間で樹脂Rの搬送を行う樹脂搬送部108が設けられている。
【0028】
また、本実施形態においては、ワーク搬送部104は、ワークローダ210、及びスライダ116、ガイド117等を有する移動装置130を備えて構成されている。また、成形品搬送部106は、成形品ローダ212、及びスライダ118、ガイド119等を有する移動装置132を備えて構成されている。また、樹脂搬送部108は、樹脂ローダ304、及びガイド305等を有する移動装置134を備えて構成されている。例えば、移動装置130及び移動装置132には、リニアコンベア等の直動機構が用いられる。また、移動装置134には、リニアコンベア等の直動機構及びエレベータ等の昇降機構が組み合わされて用いられる。但し、これらの構成に限定されるものではない。
【0029】
尚、樹脂封止装置1は、ユニットの構成を変えることによって、全体の構成態様を変更することができる。例えば、図1に示す構成は、プレスユニット100Bを二組設置した例であるが、プレスユニット100Bを一組のみ設置する構成や、他のユニットを追加設置する構成等も可能である(いずれも不図示)。
【0030】
(ワーク供給ユニット)
続いて、樹脂封止装置1が備えるワーク供給ユニット100Aについて詳しく説明する。
【0031】
ワーク供給ユニット100Aは、ワークWの収容に用いられるワークストッカ110と、ワークWを封止金型202内へ搬送するワーク搬送部104と、ワークストッカ110からワーク搬送部104へワークWを受け渡す供給ピックアップ120とを備えている。尚、ワークストッカ110には、公知のスタックマガジン、スリットマガジン等が用いられる。
【0032】
ワーク搬送部104のスライダ116は、供給ピックアップ120からワークWを受け取って、搬送し、ワークローダ210へ受け渡す作用をなす。構成例として、X方向に三列並設されてそれぞれ一個のワークWを保持可能なワーク保持部116A、116B、116Cが設けられている。また、ガイド117に沿ってワーク供給ユニット100Aとプレスユニット100Bとの間をX方向に移動可能に構成されている。尚、ワーク保持部116A、116B、116Cには、公知の保持機構(例えば、保持爪を有して挟持する構成、吸引装置に連通する吸引孔を有して吸着する構成、等)が用いられる(不図示)。
【0033】
ワーク搬送部104のワークローダ210は、スライダ116からワークWを受け取って、搬送し、封止金型202へ受け渡す作用をなす。構成例として、X方向に三列並設されてそれぞれ一個のワークWを保持可能なワーク保持部210A、210B、210Cが設けられている。また、プレスユニット100B内でY方向(X方向と水平面内で直交する方向)に移動可能に構成されている。尚、ワーク保持部210A、210B、210Cには、公知の保持機構(例えば、保持爪を有して挟持する構成、吸引装置に連通する吸引孔を有して吸着する構成、等)が用いられる(不図示)。
【0034】
この構成によれば、ワーク搬送部104を用いて一度に最大三個のワークWを封止金型202内へ搬入して、下型206のワーク保持部205(205A、205B、205C)に保持させることができる。
【0035】
本実施形態においては、ワーク搬送部104として、スライダ116がX方向に移動し、ワークローダ210がY方向に移動してワークWを封止金型202内へ搬入する構成としている。但し、これに限定されるものではなく、ワーク搬送部104として、一つのワークローダがX方向及びY方向に移動して、ワークWを封止金型202内へ搬入する構成としてもよい(不図示)。
【0036】
また、スライダ116は、ワークWを下面側(基材Wa側)から加熱するヒータを備えている(不図示)。一例として、ヒータには、公知の加熱機構(例えば、電熱線ヒータ、赤外線ヒータ、等)が用いられる。これにより、ワークWが封止金型202内に搬入されて加熱される前に予備加熱をしておくことができる。尚、ヒータを備えない構成としてもよい。
【0037】
(プレスユニット)
続いて、樹脂封止装置1が備えるプレスユニット100Bについて詳しく説明する。ここで、プレスユニット100Bに設けられるプレス装置250の正面断面図(概略図)を図2に示す。また、プレス装置250に設けられる封止金型202の側面断面図(概略図)を図3に示す。
【0038】
プレスユニット100Bは、開閉される一対の金型(例えば、合金工具鋼からなる複数の金型ブロック、金型プレート、金型ピラー等やその他の部材が組み付けられたもの)を有する封止金型202と、当該封止金型202の型開閉を行うプレス装置250と、を備えている。本実施形態においては、一対の金型のうち、鉛直方向において上方側の一方の金型を上型204とし、下方側の他方の金型を下型206としている。この封止金型202は、上型204と下型206とが相互に接近・離反することで型閉じ・型開きがなされる。すなわち、鉛直方向(上下方向)が型開閉方向となる。
【0039】
プレス装置250は、図2に示すように、一対の固定プラテン252及び可動プラテン254と、当該プラテン252、254が架設される複数の連結機構256と、可動プラテン254を昇降させる駆動源(例えば、電動モータ)260及び駆動伝達機構(例えば、ボールねじやトグルリンク機構)262等を備えて構成されている。
【0040】
また、封止金型202は、プレス装置250における固定プラテン252と可動プラテン254との間に配設されている。本実施形態においては、上型204が固定プラテン252に組み付けられ、下型206が可動プラテン254に組み付けられている。但し、この構成に限定されるものではなく、上型204を可動プラテンに組み付け、下型206を固定プラテンに組み付けてもよく、あるいは、上型204、下型206共に可動プラテンに組み付けてもよい(いずれも不図示)。
【0041】
先ず、封止金型202の上型204について説明する。図3に示すように、上型204は、上プレート222、キャビティ駒226、クランパ228等を備え、これらが組み付けられて構成されている。本実施形態においては、上型204の下面(下型206側の面)にキャビティ208が設けられている。
【0042】
より具体的に、キャビティ駒226は、上プレート222の下面に対して固定して組み付けられる。一方、クランパ228は、キャビティ駒226を囲うように環状に構成されると共に、付勢部材232を介して、上プレート222の下面に対して離間(フローティング)して上下動可能に組み付けられる。このキャビティ駒226がキャビティ208の奥部(底部)を構成し、クランパ228がキャビティ208の側部を構成する。尚、本実施形態においては、図1に示すように、一個の上型204にキャビティ208がX方向に三組並設されて(図中の208A、208B、208C)、三個以下のワークWを一括して樹脂封止する構成としているが、これに限定されるものではない。
【0043】
ここで、クランパ228に対向する下型206の金型面206aには吸引溝(不図示)が設けられ、これが吸引装置(不図示)に連通している。また、これらを囲うシール構造が設けられることで、吸引装置を駆動させて減圧することにより、型閉じされた状態でキャビティ208内の脱気を行うことが可能となる。
【0044】
また、本実施形態においては、後述のフィルム供給機構214から供給されるフィルムFを上型204に吸引保持する吸着機構が設けられている。この吸着機構は、一例として、クランパ228を貫通して配設された吸引路230a、230b、及び上プレート222、キャビティ駒226を貫通して配設された吸引路230cを介して吸引装置(不図示)に連通している。具体的には、吸引路230a、230b、230cの一端が上型204の金型面204aに通じ、他端が上型204外に配設される吸引装置と接続される。これにより、吸引装置を駆動させて吸引路230a、230b、230cからフィルムFを吸引し、キャビティ208の内面を含む金型面204aにフィルムFを吸着させて保持することが可能となる。
【0045】
このように、キャビティ208の内面、及び上型204の金型面204a(一部)を覆うフィルムFを設けることにより、成形品Wpの上面における樹脂Rの部分を容易に剥離させることができるため、成形品Wpを封止金型202(この場合は、上型204)から容易に取り出すことが可能となる。
【0046】
尚、クランパ228の内周面とキャビティ駒226の外周面との間に設けられる所定寸法の隙間は、上記の吸引路230aの一部を構成する。そのため、当該隙間の所定位置にシール部材234(例えば、Oリング)が配設されて、フィルムFを吸引する際のシール作用をなす。
【0047】
また、本実施形態においては、上型204を所定温度に加熱する上型加熱機構が設けられている。この上型加熱機構は、ヒータ(例えば、電熱線ヒータ)、温度センサ、電源等を備えており、制御部150によって加熱の制御が行われる(いずれも不図示)。一例として、ヒータは、上プレート222やこれらを収容する金型ベース(不図示)に内蔵され、主に上型204全体及び樹脂Rに熱を加える構成となっている(後述)。これにより、上型204が所定温度(例えば、100℃~200℃)に調整されて加熱される。
【0048】
次に、封止金型202の下型206について説明する。図3に示すように、下型206は、下プレート224、保持プレート236等を備え、これらが組み付けられて構成されている。ここで、保持プレート236は、下プレート224の上面(上型204側の面)に対して固定して組み付けられている。
【0049】
また、本実施形態においては、ワークWを保持プレート236の上面における所定位置に保持するワーク保持部205が設けられている。このワーク保持部205は、一例として、保持プレート236及び下プレート224を貫通して配設され、吸引装置(不図示)に連通する吸引路240aを有している。具体的には、吸引路240aの一端が下型206の金型面206aに通じ、他端が下型206外に配設される吸引装置と接続される。これにより、吸引装置を駆動させて吸引路240aからワークWを吸引し、金型面206a(ここでは、保持プレート236の上面)にワークWを吸着させて保持することが可能となる。さらに、吸引路240aを備える構成と並設して、ワークWの外周を挟持する保持爪を備える構成としてもよい(不図示)。
【0050】
また、本実施形態においては、下型206を所定温度に加熱する下型加熱機構が設けられている。この下型加熱機構は、ヒータ(例えば、電熱線ヒータ)、温度センサ、電源等を備えており、制御部150によって加熱の制御が行われる(いずれも不図示)。一例として、ヒータは、下プレート224やこれらを収容する金型ベース(不図示)に内蔵され、主に下型206全体及びワークWに熱を加える構成となっている。これにより、下型206が所定温度(例えば、100℃~200℃)に調整されて加熱される。
【0051】
尚、本実施形態においては、前述の上型204の構成、すなわちキャビティ208がX方向に三組並設される構成(図中の208A、208B、208C)に対応して、一個の下型206にワーク保持部205がX方向に三組並設される構成(図中の205A、205B、205C)としているが、これに限定されるものではない。
【0052】
ここで、本実施形態に係る樹脂封止装置1は、外部から空気を供給する供給ダクト267と、外部へ空気を排出する排出ダクト268と、を備えている。さらに、供給ダクト267から排出ダクト268へ空気を通流させる流路として、封止金型202の上方に空気を通流させる第2流路271と、上型204と下型206との間に空気を通流させる第1流路272が設けられている。これによれば、第2流路271に空気を通流させることで、封止金型202の熱を排出する(クーリングする)ことができる。また、第1流路272に空気を通流させることで、封止金型202内外の空間(特に上型204と下型206との間の空間)に浮遊する塵埃を排出することができる。したがって、塵埃に起因する成形不良の発生を防止することができる。
【0053】
一例として、供給ダクト267は、プレスユニット100Bに配設されているが、これに限定されるものではなく、プレスユニット100Bに隣接するワーク供給ユニット100A、成形品収納ユニット100D等に配設される構成としてもよい。また、排出ダクト268は、プレスユニット100Bに隣接する樹脂供給ユニット100Cに配設されているが、これに限定されるものではなく、プレスユニット100B等に配設される構成としてもよい。
【0054】
また、本実施形態に係る樹脂封止装置1(具体的には、プレスユニット100B)は、ロール状のフィルムFを封止金型202の内部(具体的には、上型204と下型206との間)へ搬送(供給)するフィルム供給機構214を備えている。このフィルム供給機構214は、未使用のフィルムFが巻出し部214aから送り出されて型開きした封止金型202に供給され、封止金型202で樹脂封止に使用された後、使用済みのフィルムFとして巻取り部214bで巻取られる構成となっている。尚、変形例として、フィルム供給機構214は、キャビティ208の設置数等に応じて、個別にフィルムFを供給する構成等としてもよい(不図示)。
【0055】
本実施形態に係る樹脂封止装置1においては、プレス装置250として、第1プレス装置250A及び第2プレス装置250Bの二台を備えている。ここで、それぞれのプレス装置250に設けられるフィルム供給機構214(第1プレス装置250Aに設けられるフィルム供給機構214A、及び、第2プレス装置250Bに設けられるフィルム供給機構214B)は、互いに巻出し部214aが遠い位置で且つ巻取り部214bが近い位置に配設されている。すなわち、フィルム供給機構214AにおけるフィルムFの送り出し方向と、フィルム供給機構214BにおけるフィルムFの送り出し方向とが、向かい合う方向となるように構成されている。
【0056】
また、前述の第1流路272は、フィルム供給機構214A及びフィルム供給機構214Bのそれぞれにおいて、巻出し部214aから巻取り部214bへ向かう方向と同一方向に空気を通流させるように構成されている。これによれば、型開きをしてフィルムFの取り換え(送り出し)を行う際に封止金型202内で舞い上がる塵埃(樹脂Rの微粉末)を、使用済みフィルムFの送り出し方向と同じ方向に空気を通流させることによって、当該塵埃が未使用フィルムFに付着しないようにしつつ封止金型202外へ排出させることが可能となる。
【0057】
ここで、本実施形態においては、第1プレス装置250Aを有するプレスユニット100Bと、第2プレス装置250Bを有するプレスユニット100Bと、の間(中間位置)に樹脂供給ユニット100Cが配置される構成である。そこで、第1プレス装置250Aの第2流路271及び第1流路272、並びに第2プレス装置250Bの第2流路271及び第1流路272の全てに共通の排出ダクト268が樹脂供給ユニット100Cに設けられている(図4参照)。これにより、装置構造の簡素化を図ることができる。
【0058】
また、第1流路272には、上型204と下型206との間に空気が進入する位置よりも上流の位置に当該流路を開閉するシャッタ274が設けられている(図5(a)、図5(b)参照)。これにより、所定のタイミングで第1流路272を開閉して、上型204と下型206との間への空気の通流・停止を行うことができる(詳細は後述する)。
【0059】
さらに、第1流路272には、供給ダクト267から供給される空気を上型204と下型206との間へ向けて導入する導入整流板276が設けられている。これにより、供給ダクト267から供給される空気を、上型204と下型206との間へ効率的に導くことができる。また、第1流路272には、上型204と下型206との間から送出される空気を排出ダクト268へ向けて導出する導出整流板278が設けられている。これにより、上型204と下型206との間から送出される空気を、排出ダクト268へ効率的に導くことができる。尚、導入整流板276、導出整流板278は、一方もしくは両方を省略する構成としてもよい。
【0060】
(樹脂供給ユニット)
続いて、樹脂封止装置1が備える樹脂供給ユニット100Cについて詳しく説明する。
【0061】
樹脂供給ユニット100Cは、樹脂Rの収容に用いられる樹脂ストッカ302と、樹脂ストッカ302から樹脂Rを供給するディスペンサ312と、供給された樹脂Rを封止金型202内へ搬送する樹脂ローダ304とを備えている。また、ディスペンサ312は、三組のキャビティ208に対応して設けられる三個の押圧プレート314(後述)に対して、同時に樹脂Rの供給が可能なように三個配設されている。尚、本実施形態においては、樹脂ローダ304が、X方向に沿って樹脂Rを封止金型202内へ搬入する構成となっている。
【0062】
また、樹脂供給ユニット100Cは、ディスペンサ312に隣接する位置等に、樹脂ローダ304によって搬送される樹脂Rを加熱する樹脂ヒータ306を備えている。一例として、樹脂ヒータ306には、公知の加熱機構(例えば、電熱線ヒータ、赤外線ヒータ、等)が用いられる。これにより、押圧プレート314に載置された粒状の樹脂Rの表面を加熱して溶融もしくは軟化状態とすることができ、搬送中の樹脂Rから塵埃(樹脂Rの微粉末等)が発生することを防止して、製品の成形不良や、装置の動作不良の発生を防止することができる。尚、樹脂ヒータ306を備えない構成としてもよい。
【0063】
ここで、図6に示すように、樹脂ローダ304には、ディスペンサ312から投下された樹脂Rを上面314aに載置させる押圧プレート314と、押圧プレート314における上面314aよりも高い位置まで外周部の全周を囲う周壁部316aを有するガード316とが設けられている。本実施形態は、一個の上型204に三組のキャビティ208を有し、一個の下型206に三個のワークW(例えば、短冊状等のワーク)を配置して一括して樹脂封止を行い、同時に三個の成形品Wpを得る構成である(三個以下の設定も可能)。したがって、キャビティ208の位置に対応して、三個の押圧プレート314(314A、314B、314C)が設けられている。また、ガード316は、三個の押圧プレート314(314A、314B、314C)の全周を周壁部316aが囲うよう構成されている。すなわち、ガード316は、各押圧プレート314の周囲に設けられる枠体として構成されている。
【0064】
また、同図6に示すように、樹脂ローダ304は、昇降可能に(すなわち、Z方向に往復動可能に)構成されている。さらに、当該樹脂ローダ304には、押圧プレート314を上方へ移動させて、載置された樹脂Rをキャビティ208内でフィルムFに押圧させる移動貼着機構315が設けられている。これによれば、樹脂ローダ304を上昇させて、ガード316の周壁部316aを上型204(一例として、クランパ228における金型面204a)に当接させることができる。さらに、その状態で、移動貼着機構315により押圧プレート314を上方へ移動させて、所定温度に加熱された状態の上型204におけるキャビティ208内で押圧プレート314に載置された樹脂RをフィルムFに押圧させることができる(図7参照)。したがって、フィルムFを介して上型204の熱を樹脂Rに伝えることができるため、樹脂Rが軟化(溶融)状態となることによる接着力を発生させて、フィルムFの下面に貼着させることができる。但し、この構成に限定されるものではなく、ガード316を昇降させる機構を樹脂ローダ304に設けて、樹脂ローダ304に対して周壁部316aを取り外したガード316を昇降させる構成としてもよい(不図示)。
【0065】
尚、樹脂Rの供給に関する樹脂封止装置1の変形例として、ワーク供給ユニット100Aにディスペンサを設けて、ワークW上に樹脂Rを供給し、ワーク搬送部104等によりワークWと共に封止金型202内に搬送する構成を採用してもよい(不図示)。
【0066】
(成形品収納ユニット)
続いて、樹脂封止装置1が備える成形品収納ユニット100Dについて詳しく説明する。
【0067】
成形品収納ユニット100Dは、成形品Wpの収容に用いられる成形品ストッカ112と、成形品Wpを封止金型202外へ搬送する成形品搬送部106と、成形品搬送部106から成形品ストッカ112へ成形品Wpを受け渡す収納ピックアップ122とを備えている。尚、成形品ストッカ112には、公知のスタックマガジン、スリットマガジン等が用いられる。
【0068】
成形品搬送部106の成形品ローダ212は、封止金型202から成形品Wpを受け取って、搬送し、スライダ118へ受け渡す作用をなす。構成例として、X方向に三列並設されてそれぞれ一個の成形品Wpを保持可能な成形品保持部212A、212B、212Cが設けられている。また、プレスユニット100B内でY方向に移動可能に構成されている。尚、成形品保持部212A、212B、212Cには、公知の保持機構(例えば、保持爪を有して挟持する構成、吸引装置に連通する吸引孔を有して吸着する構成、等)が用いられる(不図示)。
【0069】
成形品搬送部106のスライダ118は、成形品ローダ212から成形品Wpを受け取って、搬送し、収納ピックアップ122へ受け渡す作用をなす。構成例として、X方向に三列並設されてそれぞれ一個の成形品Wpを保持可能な成形品保持部118A、118B、118Cが設けられている。また、ガイド119に沿ってプレスユニット100Bと成形品収納ユニット100Dとの間を移動可能に構成されている。尚、成形品保持部118A、118B、118Cには、公知の保持機構(例えば、保持爪を有して挟持する構成、吸引装置に連通する吸引孔を有して吸着する構成、等)が用いられる(不図示)。
【0070】
この構成によれば、樹脂封止されて上型204のキャビティ208(208A、208B、208C)に保持された状態の最大三個の成形品Wpを、成形品搬送部106を用いて一度に封止金型202外へ搬出することができる。
【0071】
本実施形態においては、成形品搬送部106として、成形品ローダ212がY方向に移動し、スライダ118がX方向に移動して、成形品Wpを封止金型202外へ搬出する構成となっている。但し、これに限定されるものではなく、成形品搬送部106として、一つの成形品ローダがX方向及びY方向に移動して成形品Wpを封止金型202外へ搬出する構成としてもよい(不図示)。
【0072】
以上の構成を備える樹脂封止装置1においては、ワークローダ210が、Y方向に沿ってワークWを封止金型202内へ搬入する構成であると共に、成形品ローダ212が、Y方向に沿って成形品Wpを封止金型202外へ搬出する構成である。一方、樹脂ローダ304が、X方向に沿って樹脂Rを封止金型202内へ搬入する構成である。これにより、封止金型202に対するワークWの搬入経路及び成形品Wpの搬出経路と、樹脂Rの搬入経路とがほぼ重ならないようにすることができ、且つ、ワーク搬送部104及び成形品搬送部106と、樹脂搬送部108との隔離を確実に行うことができる。したがって、成形品Wpから生じた異物(バリ等)や、搬送中の樹脂Rから生じた異物(粉塵等)がワークWや封止金型202に付着することを防止でき、成形品質を向上させることができる。
【0073】
また、ワークストッカ110及び前記成形品ストッカ112は相対的に装置上方側に配置され、樹脂ストッカ302は、相対的に装置下方側に配置されて構成されている。さらに、移動装置130及び132と、移動装置134とが、相互に移動方向を直交させる配置で構成されている。これにより、装置の全体寸法をコンパクトにすることができる。また、これらの構成も、ワーク搬送部104及び成形品搬送部106と、樹脂搬送部108との隔離の確実化に寄与するものとなる。さらに、作業者が腰をかがめることなくワークストッカ110及び成形品ストッカ112の交換作業を行えるため、作業性の向上を図ることができる。
【0074】
(樹脂封止動作)
続いて、本実施形態に係る樹脂封止装置1を用いて樹脂封止を行う動作(すなわち、本実施形態に係る樹脂封止方法)について説明する。ここでは、一個の上型204に三組のキャビティ208を設けると共に、一個の下型206に三個のワークW(例えば、短冊状等のワーク)を配置して一括して樹脂封止を行い、同時に三個の成形品Wpを得る構成を例に挙げる。但し、この構成に限定されるものではない。
【0075】
準備工程として、上型加熱機構によって、上型204を所定温度(例えば、100℃~200℃)に調整して加熱する加熱工程(上型加熱工程)を実施する。また、下型加熱機構によって、下型206を所定温度(例えば、100℃~200℃)に調整して加熱する加熱工程(下型加熱工程)を実施する。さらに、フィルム供給機構214によって、巻出し部214aから巻取り部214bへフィルムFを搬送して(送り出して)封止金型202における所定位置(上型204と下型206との間の位置)にフィルムFを供給する工程(初回のフィルム供給工程)を実施する。
【0076】
以下、ワークWをワーク供給ユニット100Aからプレスユニット100Bへ搬送するワーク搬送工程を実施した後、樹脂Rを樹脂供給ユニット100Cからプレスユニット100Bへ搬送する樹脂搬送工程を実施する順序で説明するが、樹脂搬送工程をワーク搬送工程の前に実施しても良い。
【0077】
先ず、ワーク搬送工程として、ワーク搬送部104によってワークWを封止金型202内へ搬送する工程を実施する。一例として、スライダ116によってワークWの予備加熱を行いつつ、プレスユニット100Bへ搬送する。次いで、ワークローダ210によってワークWを封止金型202内へ搬送し、下型206の所定位置に保持する(不図示)。本実施形態においては、三個のワークWを並設状態でワーク保持部205A、205B、205Cに保持する。尚、予備加熱工程を省略してもよい。
【0078】
次いで、樹脂搬送工程として、樹脂Rを樹脂供給ユニット100Cからプレスユニット100Bへ搬送する工程を実施する。一例として、樹脂ローダ304によって、三個の押圧プレート314がそれぞれ三個のディスペンサ312のノズルの直下位置となるように、押圧プレート314の周囲を囲うガード316と共に搬送する。このとき、押圧プレート314における上面314aよりも高い位置まで外周部の全周をガード316(周壁部316a)によって囲った状態となっている。その状態において、各ディスペンサ312のノズルから、それぞれの押圧プレート314の上面314aに規定量の樹脂Rを投下(供給)して載置する載置工程を実施する。前述の通り、ガード316は、押圧プレート314の外周部の全周を囲って配設される枠体である。したがって、樹脂Rを投下する際に、押圧プレート314から樹脂Rがこぼれ落ちないようにすることができる。尚、本実施形態においては、より平坦になるように樹脂Rを供給するが、変形例として、載置工程の後、押圧プレート314を振動させて、押圧プレート314の上面314aに載置された樹脂Rを最外周位置まで行き渡らせつつ、平坦化(厚さを均一化)させる工程を実施してもよい。
【0079】
次いで、樹脂ヒータ306によって、樹脂ローダ304による搬送中の樹脂Rの加熱(予備加熱)を行う工程を実施する。例えば、樹脂Rが完全に溶融もしくは溶解しない温度(例えば、60℃~80℃)に加熱部分の押し当てや輻射熱により予備加熱し、樹脂Rの粒同士を溶着(もしくは軟化)させ一体化させる。これにより、押圧プレート314に載置された粒状の樹脂Rの表面を溶着(もしくは軟化)させることができ、搬送中の塵埃(樹脂Rの微粉末等)の発生を防止して、製品の成形不良や、装置の動作不良の発生を防止することができる。尚、予備加熱工程を省略してもよい。
【0080】
ここで、樹脂ローダ304によって樹脂を搬送する工程と並行して(もしくは前後して)、フィルム供給機構214によって、巻出し部214aから巻取り部214bへフィルムFを搬送して(送り出して)封止金型202における所定位置(上型204と下型206との間の位置)にフィルムFを供給する工程(フィルム供給工程)を実施する。この工程は、初回は未使用フィルムFの供給のみを行う工程となるが、二回目以降は、使用済みフィルムFの送り出し(排出)と未使用フィルムFの供給とを同時に行う工程となる。
【0081】
本実施形態においては、フィルム供給工程を実施する時(すなわち、上型204と下型206との間からフィルムFを送り出す時)に、第1流路272のシャッタ274を閉じた状態(図5(a)参照)から開いた状態(図5(b)参照)に切り替えて、外部から供給された空気を、上型204と下型206との間へ導入し、フィルムFの送り出し方向に沿って通流させる工程を実施する。尚、当該空気を通流させる工程は、フィルム供給工程を実施する時に代えて、もしくはこれと共に、封止金型202の型開きを行う時に実施してもよい。
【0082】
通常、フィルムFの取り換え(送り出し)を行う時に、当該フィルムFの上型204への吸着を解除して移動が行われるため、封止金型202内における塵埃(使用済みフィルムF等に付着した樹脂Rの微粉末)の舞い上がりが発生し易い。これに対し、上記の工程によれば、使用済みフィルムFの送り出し方向に沿って封止金型202内へ空気を通流させて、当該塵埃を、未使用フィルムFに付着しないようにしつつ封止金型202外へ排出させることが可能となる。
【0083】
次いで、図6に示すように、吸着機構によって、キャビティ208の内面を含む金型面204aにフィルムFを吸着させて保持させる吸着工程(フィルム吸着工程)を実施する。次いで、樹脂ローダ304によって、押圧プレート314に載置された樹脂Rを封止金型202内(上型204と下型206との間)へ搬送する工程を実施する。この工程においては、封止金型202内(上型204と下型206との間)の所定位置に樹脂ローダ304を配置した状態として、その状態から樹脂ローダ304の上昇を開始する。尚、ガード316の周壁部316aが上型204(この場合は、クランパ228の金型面204a)に当接した状態となったときに樹脂ローダ304の上昇を停止する。
【0084】
次いで、図7に示すように、移動貼着機構315を駆動して押圧プレート314の上昇を開始する。このとき、押圧プレート314のみが上方へ(すなわち、キャビティ208内へ)移動し、上面314aに載置された樹脂RをフィルムFの下面に押圧して貼着させる工程を実施する。
【0085】
このように、所定温度に加熱された状態の上型204におけるキャビティ208内で、押圧プレート314に載置された樹脂RをフィルムFに押圧することができる。したがって、フィルムFを介して上型204の熱を樹脂Rに伝えることができるため、樹脂Rが軟化(溶融)状態となって接着力が発生し、フィルムFの下面に貼着する作用が得られる。尚、貼着工程は、輻射熱や樹脂Rを介した熱伝達により移動貼着機構315が加熱されることのないよう、短時間で行うことが好ましい。この点において、前述の予備加熱工程を実施して事前に樹脂Rを一体化させることにより、フィルムFの下面への樹脂Rの貼着工程を効率的に行うことができる。具体的には、樹脂Rが一体化していることで、短時間でフィルムFの下面への樹脂Rの貼着を行うことができる。また、樹脂Rが一体化していることで樹脂Rの粒が押圧プレート314上に残ってしまうのを防止することもできる。
【0086】
次いで、移動貼着機構315を駆動して押圧プレート314の下降を開始する工程、及び、樹脂ローダ304の下降を開始する工程を実施する。次いで、樹脂ローダ304を封止金型202外へ移動する工程を実施する。
【0087】
尚、樹脂搬送工程の変形例として、前述の通り、ワークW上に樹脂Rを供給し、ワーク搬送部104等によりワークWと共に封止金型202内に搬送する工程により実施してもよい(不図示)。
【0088】
次いで、型閉じ工程として、封止金型202の型閉じを行い、加熱加圧下でワークWをクランプする工程を実施する。このとき、第1流路272のシャッタ274は、閉じた状態とする(尚、開いた状態のままとしてもよいが、型閉じの状態となるため上型204と下型206との間へ空気を通流させることはできない)。
【0089】
上記の型閉じ工程では、各キャビティ208において、それぞれキャビティ駒226が相対的に下降して、ワークWに対して樹脂Rを加熱加圧する(ワーク保持部205A~205Cの幾つかにワークWが保持されていない場合もある)。これにより、樹脂Rが熱硬化して樹脂封止(成形)が完了する。
【0090】
次いで、型開き工程として、封止金型202の型開きを行い、成形品搬送部106(成形品ローダ212)によって、成形品Wpを封止金型202内から取り出す工程を実施する。
【0091】
本実施形態においては、封止金型202の型開きを行う時に、第1流路272のシャッタ274を閉じた状態(図5(a)参照)から開いた状態(図5(b)参照)に切り替えて、外部から供給された空気を、上型204と下型206との間へ導入し、フィルムFの送り出し方向に沿って通流させる工程を実施する。前述の通り、当該空気を通流させる工程は、封止金型202の型開きを行う時に代えて、もしくはこれと共に、フィルム供給工程を実施する時に実施してもよい。
【0092】
通常、封止金型202の型開きを行う時に、封止金型202の移動(開き動作)及び成形品Wpのエジェクトが行われるため、封止金型202内における塵埃(封止金型202等に付着した樹脂Rの微粉末)の舞い上がりが発生し易い。これに対し、上記の工程によれば、封止金型202内へ、すなわち、上型204と下型206との間へ空気を通流させて、当該塵埃を封止金型202外へ排出させることが可能となる。
【0093】
最後に、成形品搬送部106(スライダ118)によって、成形品Wpをプレスユニット100Bから成形品収納ユニット100Dへ搬送して、成形品ストッカ112に収納する工程を実施する。
【0094】
以上が樹脂封止装置1を用いて行う樹脂封止の主要動作である。但し、上記の工程順は一例であって、支障がない限り先後順の変更や並行実施が可能である。例えば、本実施形態においては、複数(一例として二組)のプレスユニット100Bを備える構成であるため、上記の動作を並行して実施することで、効率的な成形品形成が可能となる。
【0095】
以上、説明した通り、本発明に係る樹脂封止装置及び樹脂封止方法によれば、型開きやフィルムの取り換え等を行う際に封止金型内で舞い上がる塵埃を除去することができる。したがって、塵埃に起因する成形不良の発生を防止することができる。
【0096】
尚、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能である。特に、封止樹脂として、顆粒状、粉砕状、粉末状の熱硬化性樹脂を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、液状、板状、シート状等の樹脂を用いる構成にも適用し得る。
【0097】
また、上記の実施形態においては、上型にキャビティを備える圧縮成形方式による樹脂封止装置及び樹脂封止方法を例に挙げて説明したが、下型にキャビティを備える圧縮成形方式による樹脂封止装置及び樹脂封止方法にも適用可能である。さらに、トランスファ成形方式による樹脂封止装置及び樹脂封止方法にも適用可能である。
【符号の説明】
【0098】
1 樹脂封止装置
202 封止金型
267 供給ダクト
268 排出ダクト
271 第2流路
272 第1流路
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7