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特開2023-123182データ処理システム及びデータ処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123182
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】データ処理システム及びデータ処理方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
G05B23/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027097
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000233044
【氏名又は名称】株式会社日立パワーソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芹田 進
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA04
3C223AA11
3C223AA17
3C223BA01
3C223BB17
3C223CC01
3C223DD01
3C223EB01
3C223FF03
3C223FF04
3C223FF12
3C223FF22
3C223FF26
3C223FF45
3C223GG01
3C223HH03
3C223HH08
(57)【要約】
【課題】対象から測定されたデータに基づいて機械学習を行って、対象の異常予兆の検知モデルを作成する際に、学習データの選別を支援することによってモデルの検知精度を向上させる。
【課題解決手段】産業機械の測定センサから時系列データを受信し、プログラムを実行することにより、時系列データに基づいて、対象の異常の予兆を検知するためのデータ処理を実行するコントローラを備える、コントローラは、受信した時系列データから機械学習のための学習データを収集し、学習データは複数の測定データを含み、学習データに基づいて機械学習を行って、産業機械の異常の予兆を検知するためのモデルを構築し、モデルを検証データに適用して検証データの異常度を算出し、学習データに含まれる測定データのうち異常度に影響を及ぼす測定データを、注目されるべきデータとして特定し、注目されるべきデータを提示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の測定センサから時系列データを受信し、
プログラムを実行することにより、当該時系列データに基づいて、前記対象の異常の予兆を検知するためのデータ処理を実行するコントローラを備える、
データ処理システムであって、
前記コントローラは、
前記受信した時系列データから機械学習のための学習データを収集し、当該学習データは複数の測定データを含み、
当該学習データに基づいて機械学習を行って、前記対象の異常の予兆を検知するためのモデルを構築し、
当該モデルを検証データに適用して当該検証データの異常度を算出し、
前記学習データに含まれる測定データのうち前記異常度に影響を及ぼす測定データを、注目されるべきデータとして特定し、
当該注目されるべきデータを提示する、
データ処理システム。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記学習データから少なくとも一つの測定データを選択し、
当該選択された測定データを学習データから除いて前記機械学習を行った結果の異常度を第1の異常度とし、選択された測定データを除くことなく前記機械学習を行った結果の異常度を第2の異常度とし、当該第1の異常度と第2の異常度とを比較し、比較結果に基づいて前記注目されるべきデータを決定する、
請求項1記載のデータ処理システム。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記第1の異常度と前記第2の異常度との差分を最大にする測定データを前記注目されるべきデータとして決定する、
請求項2記載のデータ処理システム。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記学習データから優先して複数の測定データを選択し、
当該選択された複数の測定データの中から前記注目されるべきデータを決定する、
請求項3記載のデータ処理システム。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記対象の異常時の時系列データを前記検証データし、
前記対象の異常時を含まない時期の時系列データから前記学習データを収集する、
請求項1記載のデータ処理システム。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記注目されるべきデータを学習データから除いて前記機械学習を行った結果の異常度を当該注目されるべきデータを除くことなく前記機械学習を行った結果の異常度と比較し、比較結果をユーザに提示し、
当該ユーザは前記学習データから前記注目データを除くか否かを選択できるようにした、
請求項1記載のデータ処理システム。
【請求項7】
前記コントローラは、
前記機械学習として教師無し学習を行う、
請求項1記載のデータ処理システム。
【請求項8】
前記コントローラは、
前記対象としての産業機械からの時系列データに基づいて、前記対象の異常としての産業機械の故障の予兆を検知する、
請求項1記載のデータ処理システム。
【請求項9】
前記コントローラは、
前記学習データを複数のブロックに分割し、
当該複数のブロックから前記注目されるべきデータを特定する、
請求項1記載のデータ処理システム。
【請求項10】
対象の測定センサからの時系列データに基づいて、前記対象の異常の予兆を検知するためのデータ処理方法であって、
コントローラがプログラムを実行することに基づいて、
前記受信した時系列データから機械学習のための学習データを収集し、当該学習データは複数の測定データを含み、
当該学習データに基づいて機械学習を行って、前記対象の異常の予兆を検知するためのモデルを構築し、
当該モデルを検証データに適用して当該検証データの異常度を算出し、
前記学習データに含まれる測定データのうち前記異常度に影響を及ぼす測定データを、注目されるべきデータとして特定し、
当該注目されるべきデータを提示する、
データ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象に生じる異常の予兆を検知するためのデータ処理技術に係り、特に、産業機械の故障予兆の検知のためのデータ処理の発明に関する。
【背景技術】
【0002】
分析対象から測定された時系列データに基づいて評価モデルを構築し、評価モデルを利用して分析対象の状態を評価することが、行われている。例えば、設備、機械、装置、そして、機器等の保全対象に対する保全の方式として、状態基準保全(予知保全:Condition Based Maintenance (CBM))が知られている。
【0003】
これは、現在安定して稼働している装置であっても、装置の状態を監視して、劣化の状態に応じて、装置の故障前に装置を保全するというものである。例えば、風力発電設備やガスタービン等の振動や発熱の状況など、装置の動作状態をモニタリングして、その結果に応じて、装置の故障予知が実行される。
【0004】
予知保全のためのシステムは、装置や設備から得られる時系列データに基づいて機械学習を行って学習モデルを作成し、このモデルにセンサからの時系列データを適用して装置の故障予知を実現する。システムは、センサデータのうち正常データを学習データとして取り込み、学習データに基づいて検知モデルを構築し、これに、検証データとして装置の過去の故障履歴を適用することによって、モデルの検知性能を検証する。
【0005】
この種のシステムでは評価モデルの性能を向上させるために、学習データとしての適格性を向上させることが望まれており、例えば、特開2020-102001号公報は、産業機械における測定データの取得に際して、同じ動作で測定されたデータであるか否かの確認を容易にすることを目的として、機械学習を用いた、産業機械の異常検知を行うため、予め正常データのみからなる学習用データを取得する際に不適切なデータの混入の確認を容易にする学習用データ確認支援装置であって、学習モデル生成時に、不適切なデータの混入を過去データとのマッチングで判定することを開示している。
【0006】
さらに、特開2021-33554号公報は、複数の学習データの各々について、一つのサンプルデータセットに対するモデルの予測精度に与える影響の強さを表すスコアに基づいて、有害学習データを特定し、学習データからこれを削除することにより、モデルの予測精度を向上させる学習データの精練方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-102001号公報
【特許文献2】特開2021-33554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のシステムは、装置が故障していない期間のセンサデータの中から正常データを選別し、選別データを学習データとして装置の予知保全モデルを生成している。しかしながら、データの学習データとしての適格性の可否を判断することはそもそも容易ではなく、例えば、装置が故障していない期間のデータであっても、記録されていない故障が発生している可能性があり、そして、明確な故障ではないが装置が通常とは異なる動作をしている可能性もある。従来、この種のデータは、所定のルールに基づいて、学習データから除かれるようにしていたが、新たな装置や、装置の新たな動作環境では、過去のルールが有効ではないことが多い。
【0009】
一方、学習データの選別を人の作業に委ねようとすると、時系列データの期間が長い場合、データ選別のパターンが膨大で負荷が大きくなることに加えて、選別基準が恣意的になり汎用性に欠ける。そこで、本発明は、対象から測定されたデータに基づいて機械学習を行って、対象の異常予兆の検知モデルを作成する際に、学習データの選別を支援することによってモデルの検知精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は、対象の測定センサから時系列データを受信し、プログラムを実行することにより、当該時系列データに基づいて、前記対象の異常の予兆を検知するためのデータ処理を実行するコントローラを備える、データ処理システムであって、前記コントローラは、前記受信した時系列データから機械学習のための学習データを収集し、当該学習データは複数の測定データを含み、当該学習データに基づいて機械学習を行って、前記対象の異常の予兆を検知するためのモデルを構築し、当該モデルを検証データに適用して当該検証データの異常度を算出し、前記学習データに含まれる測定データのうち前記異常度に影響を及ぼす測定データを、注目されるべきデータとして特定し、当該注目されるべきデータを提示する、ことを特徴とする。本発明はさらにこの特徴に係るデータ処理方法でもある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、対象から測定されたデータに基づいて機械学習を行って、対象の異常予兆の検知モデルを作成する際に、学習データの選別を支援することによってモデルの検知精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】データ処理システムの実施形態を含み、対象の異常の予兆を検知する全体システムのブロック図である。
図2】センサデータの記録テーブルの一例である。
図3】故障履歴テーブルの一例である。
図4】装置の測定センサから出力された時系列データの一例に係る波形図である。
図5】データ処理プログラムの一例に係るフローチャートである。
図6A】装置の測定センサから出力された時系列データを所定時間毎に分割することを説明するための波形図である。
図6B】装置の測定センサから出力された時系列データをクラスタリングによって分割することを説明するための図である。
図6C】時系列データをクラスタリングによる分割と時系列データの波形図との関係を示す図である。
図7】機械学習のためのデータからインパクトデータ(注目されるべきデータ)を特定する過程を説明するためのブロックである。
図8】対象異常度と基準異常度との時間変化のグラフである。
図9A】対象異常度と基準異常度との時間変化の他のグラフである。
図9B】対象異常度と基準異常度との時間変化の更に他のグラフである。
図9C】対象異常度と基準異常度との時間変化のまた更に他のグラフである。
図10】データ精錬モジュールがデータブロックの優先度を求める方式を説明するブロック図である。
図11】インパクトデータの情報表示態様の一つとしての表示リストの一例である。
図12】ユーザ装置に出力される、インパクトデータ関連情報の画面の例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係るデータ処理システムの実施形態について説明する。図1は、このデータ処理システム101を含む、対象の異常の予兆を検知する全体システム100のハードウェアブロック図である。対象としては、故障予兆の検知が必要な産業機械、例えば、風力発電装置、ガスタービンエンジンでよい。
【0014】
全体システム100は、夫々が対象としての複数の装置111を備える装置群110と、複数の装置夫々のセンサ121(センサ1~センサN)からなるセンサ群120と、センサからの測定データであるセンサデータ131と装置の故障履歴データ132とを格納するストレージ130と、データ処理システム101とを備えている。
【0015】
データ処理システム101は、データ精錬サーバ(データ精錬装置)150と、故障の予兆を検知する故障予知サーバ(故障予兆検知装置)160とを備えている。装置群110、センサ群120、ストレージ130、データ精錬サーバ150、そして、故障予知サーバ160は互いにネットワーク165を介して接続されている。
【0016】
ストレージ130は、センサ群からのセンサデータを受信すると、図2(センサデータの記録テーブル)に示すように、装置群の装置ID201毎で、かつ、センサ群のセンサ毎の測定データ203,204を、センサデータ(記録領域)131に記録する。202は測定時刻である。センサは、装置の制御に係る制御量の時系列データ、装置の制御に係る状態量の時系列データ、装置が動作している環境の時系列データ等、装置から測定された時系列データを出力する。
【0017】
そして、ストレージ130は装置から故障に関連するデータを受信すると、図3(故障履歴テーブル)に示すように、故障ID301毎に、故障が生じた装置ID302、故障が発生した故障日303、故障の症状304、そして、故障に対する対策305を、故障履歴(記録領域)132のテーブルに記録する。データ処理システム101は、図4に示すように、装置111のセンサの出力データ400から、装置故障時406の出力データ等の異常データを含まない正常データ、換言すれば、正常データのみ、あるいは、正常データを主とするデータを学習データ402として設定し、学習データ402に基づいて機械学習を実行して、装置の故障予兆の検知モデルを構築する。
【0018】
正常データかそうでないかの区別は、装置の状態や装置の動作環境に応じて相対的なものであるため、データ処理システム101は、センサデータに基づいて、好ましくは、教師なし学習を実行して学習モデルを作成する。データ処理システム101は、故障予兆検知モデルを、装置故障時406以前のセンサデータを含む検証データ404に適用して、検証データ404の異常度を算出し、故障予兆検知モデルの検知性能の評価指標を求める。
【0019】
データ精錬サーバ150は、センサデータから収集される学習データを最適化するためのデータ精錬モジュール151と、最適化された学習データに基づいて機械学習を実行して、装置の故障予兆検知モデルを構築するモデル構築モジュール152とを備える。データ精錬サーバ150は、コントローラがメモリのプログラムを実行することにより、データ精錬モジュール151とモデル構築モジュール152とを実現する。なお、モジュールを手段、部、又は、ユニットと言い換えてもよい。故障予知サーバ160もコントローラがメモリのプログラムを実行することにより、故障予兆検知モデルをセンサデータに適用するモジュール161を実現する。
【0020】
データ精錬モジュール151は学習データ402を最適化するための支援処理をデータ処理システム101の管理者、ユーザ等に提供する。データ精錬モジュール151は学習データ402として収集したセンサデータの系内で、故障予兆検知の精度について所定以上に影響を与えるデータを相対的に特定し、これをインパクトデータ、即ち、ユーザに注目されるべきデータとして、その影響度と共にユーザに提示する。
【0021】
この提示を受けた、ユーザは、インパクトデータを学習データに含めたまま機械学習をするか、又は、インパクトデータを学習データから除いて機械学習をするかを判断でき、モデル構築モジュール152はユーザからの指令を受けて、何れかの方式で機械学習を実行する。
【0022】
データ処理システム101の動作を、図5のフローチャートに基づいて説明する。なお、フローチャートの実行主体は、プログラムを実行することによってデータ精錬モジュール151等を実現するプロセッサないしはコントローラである。なお、モジュールとフローチャートとの関係を明りょうにするために、モジュールを主語としてフローチャートの説明を続ける。
【0023】
データ精錬モジュール151は、モデル学習のためのセンサデータをストレージ130のセンサデータ131の記憶領域テーブル(図2)から読み込む。モデル学習のためのセンサデータの種類、及び、読み込む範囲は、ユーザ等の設定に基づいてよい。
【0024】
データ精錬モジュール151は学習データとして読み込まれた時系列データの前処理として、学習データを複数のデータブロックに分割する(図5:S500)。学習データを分割する方式は時間的な分割、又は、クラスタリングによる分類がある。図6Aは、学習データ402である、センサの時系列データの波形図である。符号600はスライディングウィンドウであり、データ精錬モジュール151がこれを時間軸に沿って規則的に移動させることにより、ウィンドウに囲まれた範囲の一つ又は複数のセンサデータを一つのデータブロックとして抽出できる。これが学習データを時間的に分割する方式の一例である。一つのデータブロックの特徴量は例えば、データセットに含まれる複数のデータの平均値やその標準偏差などの統計量でよい。
【0025】
これに対して、クラスタリングは、学習データをその特性に応じて複数のクラスタに分類することである。図6Bは、学習データが4つのクラスタに分類されていることを示している。このうち、符号610で示されるクラスタには3つのデータブロックが含まれている。図6Cに示されるように、3つのデータ610A,610B,610Cは夫々が時系列データである学習データ402に離散して存在している。
【0026】
図7はデータ精錬モジュール151によるデータ精錬過程を説明するためのブロック図であり、これを図5のフローチャートと対応させて説明する。データ精錬モジュール151が学習データ402を時間毎に互いに均等サイズのデータブロック7000に分割することは、既述のとおりである(図5:S500)。
【0027】
次いで、データ精錬モジュール151は、学習データの全てのデータブロック402BLから、既述のインパクトデータであるか否かの探索対象のデータブロックを絞りこむ(図5図7:S502)。図7において、7001~7004で示されるデータブロックが探索対象である。学習データの全てのデータブロックについてインパクトデータか否かのチェックを行うと計算負荷が大きくなるため、一部のデータブロックが探索対象とされている。探索対象になるデータブロックの決定方法については後述する。なお、全データブロックを探索対象にすることを妨げるものではない。
【0028】
次いで、データ精錬モジュール151は、探索対象のデータセットの中から、一つのデータセット7000を選択する(図5図7:S504)。モデル構築モジュール152は、学習データから選択されたデータブロックを除き(図7:S5041)、残りのデータブロック(404BL)に基づいて教師無し機械学習を実行して(図5、7:S506)、故障予兆検知モデル(対象モデル)を作成する(図7:7010)。
【0029】
さらに、モデル構築モジュール152は、学習データの全データブロック(402BL)に基づいて教師無し機械学習を実行して(図7:S507)、故障予兆検知モデル(基準モデル:図5:S508、図7、7012)を作成する。
【0030】
次いで、故障予知サーバのコントローラはモデル適用モジュール161を起動させて、モデル適用モジュール161は、モデル構成モジュール152から対象モデル7010を読み込み、さらに、ストレージ130から既述の検証データ404、即ち、装置故障時の所定以前のセンサデータである、時系列データを読み込んで、これに対象モデル7010を適用して、検証データの異常度(対象異常度)7014を演算し(図5,7:S510)、これをメモリに記憶する。モデル適用モジュール161は、同じように、検証データ404に基準モデル7012を適用して、検証データの異常度(基準異常度)7016を演算する(図5,7:S512)。
【0031】
次いで、モデル適用モジュール161は、対象異常度7014と基準異常度7016とを比較し、両者の差分を評価する(図5,7:S514)。この評価は次のようにして実行できる。800は前者が後者以上に増加している期間(増加期間)であり、802は前者が後者以下に減少している期間(減少期間)である。モデル適用モジュール161は、増加期間に於ける評価指標を、異常スコアの増加量800Aの増加期間幅800の積分値とし、減少期間に於ける評価指標を、異常スコアの減少量802Aの減少期間幅802の積分値とし、両方の差分を評価結果とする。なお、評価指標を異常値が増加したデータ数と異常値が減少したデータ数とし、両者の差分を評価結果とする態様でもよい。
【0032】
モデル適用モジュール161は、ステップS514において、選択したデータブロックの異常度に及ぼす影響度について評価を終了すると全てのデータブロックの評価が終了するまでこれを繰り返し(S516)、7001~7004のデータブロックのうち最も影響度が大きいデータブロックをインパクトデータとして決定し、そして、インパクトデータが故障予兆検知モデルの検知精度に与える影響を判定する(S518)。
【0033】
図9Aは、対象異常度7016の異常スコアと基準異常度7014の異常スコアとの時間変化を比較したグラフである。対象異常度7016の方が基準異常度7014より装置故障日前の早い段階で異常スコアが増加し、かつ、故障日に於ける異常スコアも大きい値になっている。したがって、モデル適用モジュール161は、故障予兆検知モデルの精度向上のためには、学習データからインパクトデータを除いて故障予兆検知モデルを構築した方が好適であると判定する。
【0034】
一方、図9Bでは、対象異常度7016の方が基準異常度7014より装置故障日前の段階で異常スコアが遅れて増加し、かつ、故障日に於ける異常スコアも小さくなっている。したがって、モデル適用モジュール161は、学習データからインパクトデータを除かない方が故障予兆検知モデルの精度の維持のために好適であると判定する。
【0035】
図9Cでは、対象異常度7016と基準異常度7014とは装置故障日を含めて異常スコアの変化の度合いには殆ど差が無い為、モデル適用モジュール161は、故障予兆検知モデルの精度にインパクトデータは影響がないことを判定する。
【0036】
データ処理システム101は、ステップS518を経て図5のフローチャートを終了する。なお、影響度の大きい順に複数のデータブロックをインパクトデータとして判定してもよい。データ処理システムは、故障予兆検知モデルの構築時、又は、そのメンテナンス時に図5のフローチャートを開始すればよい。
【0037】
図7の説明において、データ精錬モジュール151は、インパクトデータの探索対象を絞り込むことを説明した。そこで、データ精錬モジュール151は、学習データ402に属するデータブロック7000の優先度を利用する。データ精錬モジュール151は優先度が所定以上のデータブロック(図7:7001~7004)をインパクトデータであるか否かの探索の際の優先的な対象とする。
【0038】
データ精錬モジュール151は、データブロックの優先度を、データブロックが学習データに占める異常度(自己異常度)に基づいて算出する。自己異常度が高いデータブロックほどインパクトデータである可能性が高い。
【0039】
データ精錬モジュール151は、一例として、図10に説明する方式に従って、データブロックの自己異常度を計算する。データ精錬モジュール151は、学習データに含まれる全てのデータブロック402BLを二つのグループBL800,BL802に分割し、一方のグループのデータブロックBL800に基づいて機械学習810を実行して学習モデルを作成し、他方のグループのデータブロックBL802の異常度を計算812する。
【0040】
データ精錬モジュール151は、学習データに含まれる全てのデータブロックを二つのグループに分割の仕方には複数の組み合わせがあるが、全てのパターンについて、データブロックの自己異常度を計算する。この結果、全てのデータブロックについて自己異常度が計算される。
【0041】
データ精錬モジュール151は、全てのパターンについて、同一のデータブロックに対する複数の異常度を合計したものか、或いは、同一のデータブロックに対する複数の異常度を平均した等をデータブロックの優先度とする。モデル適用モジュール161は、優先度が大きい順に所定数のデータブロックをインパクトデータの探索対象とする。全てのデータブロックをインパクトデータの探索対象とした場合に比較して、インパクトデータを判定する負荷が軽減される。
【0042】
モデル適用モジュール161は、インパクトデータを判定すると、これをデータ処理システム101のユーザに表示させる。図11はインパクトデータの情報表示態様の一つとしての表示リストの一例である。この表示例は、インパクトデータとして、識別子1~4で区別される4つのデータブロックがあること、インパクトデータ毎の精度、即ち、インパクトデータを学習データから削除した際に、故障予兆検知の精度が向上するか、反対に精度が悪化するかの指標と、学習データに対するインパクトデータの出現率、即ち、学習データのサイズに対するインパクトデータのサイズの割合とを含んでいる。
【0043】
図12は、ユーザ装置に出力される、インパクトデータ関連情報の画面1000の他の例であり、センサ1,2の夫々においてインパクトデータの分布を含んでいる。横軸はセンサの出力値の目盛りであり、縦軸は、出力値のカウント数である。1202はセンサの出力を示し、1200はセンサ出力のうちのインパクトデータを示す。センサ1、センサ2共に、センサ出力値が大きい部分でインパクトデータが出現していることが分かる。さらに画面1000は、インパクトデータが出現する時間的分布を含んでいる。ユーザは、図11図12の表示態様に基づいて、インパクトデータの特徴や属性を詳しく知ることができる。
【0044】
管理ユーザは、インパクトデータ、そして、インパクトデータに関する既述の種々の解析情報を知ることによって、インパクトデータは、例えば、装置の不調や装置の動作環境の変化に基づくものであって、機械学習モデルの故障予兆検知の精度を向上させるために、インパクトデータを学習データから除いて故障予兆検知モデルを構築することがよいのか、あるいは、インパクトデータの出現タイミング等に基づいて、インパクトデータは装置の状態を正確に表したものであるから、学習データから除かず、故障予兆検知モデルを構築した方がよいかを、容易に判断することができる。
【0045】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0046】
既述の実施形態では、産業機械の故障の予兆を検知することについて説明したが、何らかの異常の予兆を検知できる対象であれば、産業機械に限らず、人体のバイタルの異常予兆の検知に本発明が適用されてもよい。また、既述の実施形態では、インパクトデータを一つのデータブロックから成るものとして説明したが、複数のデータブロックの組み合わせをインパクトデータとしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
101:データ処理システム、130:ストレージ、150:データ精錬サーバ、151:データ精錬モジュール、152:モデル構築モジュール、160:故障予知サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12