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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123194
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】分析装置および分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
G01N21/17 610
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027118
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(71)【出願人】
【識別番号】505089614
【氏名又は名称】国立大学法人福島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001922
【氏名又は名称】弁理士法人日峯国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若松 孝
(72)【発明者】
【氏名】植 英規
(72)【発明者】
【氏名】尾形 慎
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB04
2G059BB09
2G059BB12
2G059EE01
2G059EE02
2G059FF01
2G059FF03
2G059FF04
2G059GG01
2G059GG02
2G059GG06
2G059KK01
2G059KK04
2G059LL01
2G059MM01
2G059MM10
(57)【要約】
【課題】同一対象に関し、一度に瞬時にDLSとSLSの測定が可能な分析装置および分析方法の提供。
【解決手段】前記光源110が発生した光に基づき、前記サンプル154内に焦点を形成する光照射部140と、サンプル154内の前記焦点が形成された分析微小領域156から小角散乱光160を受け、平行小角散乱光168を発生する平行散乱光変換部170と、前記平行小角散乱光168に基づき前記サンプル154からの前記小角散乱光160を計測する散乱光検出部200と、前記散乱光検出部200の計測結果に基づき前記サンプル154の解析を行う、記憶装置290を有する解析部250を有し、前記散乱光検出部200は、前記小角散乱光160を計測し、前記解析部250が前記計測結果に基づき、前記動的散乱光成分と前記静的散乱光成分の両方を解析する、分析装置および分析方法。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルの計測のために使用する光を発生する光源と、
前記光源が発生した光に基づき、前記サンプル内に焦点を形成する照射光を前記サンプルに照射する光照射部と、
前記照射光の前記焦点が形成された領域である分析微小領域において発生した前方あるいは後方の小角散乱光を受け、平行小角散乱光を発生する平行散乱光変換部と、
前記平行小角散乱光に基づき前記サンプルからの前記小角散乱光の状態を計測するための散乱光検出部と、
前記散乱光検出部の計測結果に基づき前記サンプルの解析を行う、記憶装置を備えた、解析部と、を有し、
前記解析部は、前記散乱光検出部の前記計測結果を、繰り返し前記記憶装置に記憶し、
前記解析部は、前記記憶装置に記憶された、前記散乱光検出部の前記計測結果に基づき、動的散乱光成分あるいは静的散乱光成分、または前記動的散乱光成分と前記静的散乱光成分の両方を解析して、前記サンプルの前記分析微小領域に関する分析を行うことを特徴とする、分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の分析装置において、
前記散乱光検出部は光検出器を備え、
前記光検出器に、前記分析微小領域に存在するサンプルの状態の拡大された画像である顕微鏡画像が生成され、
前記解析部は、前記顕微鏡画像を前記散乱光検出部の前記計測結果として繰り返し取り込んで、前記記憶装置に記憶する、ことを特徴とする、分析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の分析装置において、
前記解析部は、前記散乱光検出部から前記顕微鏡画像を繰り返し取り込むことにより、前記顕微鏡画像の動画像が前記記憶装置に記憶され、
前記解析部は、記憶された前記動画像に基づき、前記動的散乱光成分や前記静的散乱光成分の解析を行うことを特徴とする、分析装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3の内の一に記載の分析装置において、
前記平行散乱光変換部と前記散乱光検出部との間に、散乱角フィルターと散乱光集光部を設け、前記散乱角フィルターにより、前記平行散乱光変換部からの前記平行小角散乱光の内、特定角度であってしかも前記平行小角散乱光の光軸に垂直な面に於いて円弧状の形状を成す円弧状特定角度散乱光が、前記散乱光集光部を介して、前記散乱光検出部の前記光検出器に入射し、
前記平行小角散乱光の前記光検出器への入射により、前記光検出器によって、前記分析微小領域内のサンプルの状態を拡大表示した顕微鏡画像が検出される、ことを特徴とする、分析装置。
【請求項5】
請求項4に記載の分析装置において、
前記解析部は、前記光検出器によって検出された、前記分析微小領域内のサンプルの状態を拡大表示した前記顕微鏡画像を、繰り返し取り込み、前記に記憶することにより、前記分析微小領域内のサンプルの状態を拡大表示した前記顕微鏡画像の前記動画像が、前記記憶装置に記憶される、ことを特徴とする、分析装置。
【請求項6】
請求項第4あるいは請求項5の内の一に記載の分析装置において、
前記散乱角フィルターは光を遮断する材料で作られており、前記平行小角散乱光の光軸に対して前記特定角度に対応する長さを半径とする円弧状の開口を有していることを特徴とする、分析装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の内の一に記載の分析装置において、
前記光照射部に入射する入射光はその断面形状が円形の光ビームであり、前記入射光の光ビームの直径が1.6mm以下であることを特徴とする、分析装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7の内の一に記載の分析装置において、
前記光照射部は、前記照射光を集光するための集光レンズと、前記集光レンズを前記光照射部に入射する前記入射光の光軸に沿って移動するためのレンズ調整機構と、を備えており、
前記レンズ調整機構は、前記集光レンズを前記光軸に沿って移動できる距離が±10mm以下であり、移動調整できる最小長さが50μm以下であることを特徴とする、分析装置。
【請求項9】
請求項第1から請求項8の内の一に記載の分析装置において、
前記光照射部から前記サンプルに前記照射光が照射されることにより、前記サンプルの内部に形成される最小ビームスポットの直径が、10μm以上で100μm以下の範囲であることを特徴とする、分析装置。
【請求項10】
請求項第1から請求項9の内の一に記載の分析装置において、
試料部を有し、
前記試料部は前記サンプルを保持するためのサンプルセルと前記サンプルセルの位置を調整するためのサンプル位置調整機構とを備え、
前記解析部は、前記散乱光検出部の前記計測結果に基づき、前記サンプル位置調整機構により前記サンプルセルの位置を調整するための調整用画像を出力し、
前記解析部は、前記解析を行うための計測指示に基づき、前記散乱光検出部の前記計測結果を、繰り返し前記記憶装置に記憶し、
前記解析部は、前記記憶装置に繰り返し記憶した、前記散乱光検出部の前記計測結果に基づき、前記分析を行うことを特徴とする、分析装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10の内の一に記載の分析装置において、前記光照射部から前記サンプルへ照射される前記照射光の光軸に対する最大入射角θiは、0.5度から20度の範囲であることを特徴とする、分析装置。
【請求項12】
請求項第1から請求項11の内の一に記載の分析装置において、
前記解析部は、設定されたサンプリング条件に基づき、繰り返し散乱光検出部の前記計測結果を取り込む第1ステップと、
前記繰り返し取り込んだ散乱光検出部の前記計測結果から、動的散乱光分析領域の計測結果および静的散乱光分析領域の計測結果を抽出する第2ステップと、
前記動的散乱光分析領域の前記計測結果に基づく動的散乱光分析のための演算、および前記静的散乱光分析領域の前記計測結果に基づく静的散乱光分析のための演算を行う、第3ステップと 、
を有することを特徴とする、分析方法。
【請求項13】
請求項12に記載の分析方法において、
前記設定されたサンプリング条件に基づき前記散乱光検出部から繰り返し計測結果を取り込む第1ステップの後、前記解析部は、設定された撮影間隔の間、前記第1ステップの実行を停止し、
前記解析部は、設定された前記撮影間隔の終了後再び前記第1ステップの実行を開始し、
前記解析部は、設定された前記第1ステップの実行回数、あるいは設定された、前記第1ステップの実行とその後の実行停止とを繰り返し継続し続ける時間である総撮影時間、に従って、前記第1ステップの実行と前記撮影間隔の間の前記第1ステップの実行の停止との動作を繰り返す、ことを特徴とする、分析方法。
【請求項14】
請求項12あるいは請求項13の内の一に記載の分析方法において、
前記解析部は、指示に基づき調整モードとしての動作と計測解析モードとしての動作を行い、
前記調整モードの動作では、散乱光検出部からの計測データに基づく前記動的散乱光分析のための演算および静的散乱光分析のための演算を行う第3ステップを、停止する、ことを特徴とする、分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルに光を照射することにより得られた散乱光に基づき、上記サンプルの分析を行う分析装置および分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、サンプル液中における微粒子のサイズや形状等の状態、またその凝集体のサイズや構造等の状態、特にナノメートルからサブミクロンメートルサイズの微粒子や凝集体の状態が分析評価の対象になっている。例えば、サンプル液中に分散し比較的溶媒分子との相互作用が小さい、ナノからサブミクロンの金属やプラスチック及び無機物などの粒子、及びその凝集体の状態が分析評価される。また例えば、サンプル溶液中のペプチドや核酸等の低中分子、及びタンパク質等の生体高分子など、溶媒分子と強く相互作用し溶解している分子、及びその凝集体の液中における状態が分析評価の対象である。
【0003】
上記分析評価において、一般に2つの光散乱測定法が用いられている。その光散乱測定法の一つは、分析評価の対象物からの光散乱を所定の散乱角度で検出して、光散乱の時間的変動(揺らぎ)を計測する動的光散乱(DLS:Dynamic Light Scattering)測定法である。DLS測定法では、主に分析対象の散乱体の運動に関する情報が得られる。
【0004】
もう一つの光散乱測定法は、分析対象からの光散乱の平均強度に対して散乱角度の依存性を測定する方法で、静的光散乱(SLS:Static Light Scattering)測定法である。SLS測定法では、主に分析対象の散乱体の構造に関する情報が得られる。
【0005】
上記DLS測定法あるいはSLS測定法を用いたサンプルの分析装置が、以下に記載の特許文献1や特許文献2、特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5883233号公報
【特許文献2】特許第6757964号公報
【特許文献3】特表2019―536997号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】T.Wakamatsu,T.Onoda,M.Makoto,“Time-resolved forward-light-scattering monitoring of protein-lysozyme aggregation in precrystalline solutions”,Japanese Journal of Applied Physics,(2018),vol.57,058003-1~058003-3.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
サンプルである測定対象は時間経過と共にその状態が変化する。サンプルの経時変化は避けられない。同じ測定対象において、しかも同じ経過時間の状態において、多くの情報をえることが非常に重要である。例えば、同じ測定対象についてDLSとSLSの測定を同時に行うことができれば、上記測定対象に関してたいへん貴重な情報が得られる。これは一例に過ぎないが、粒子や凝集体等の分析対象の運動と構造に関する知見を分析・評価する、貴重な情報が得られる。
【0009】
公知文献について調査を行ったが、同じ測定対象に対して、同時にDLSとSLSの測定を行うことの重要性を記載あるいは示唆している公知文献は見つからなかった。またこれを実現するための構成を示唆している公知文献も見つからなかった。
【0010】
本発明の目的は、同じ測定対象に関して、同じ経過時間の状態に於ける、DLS計測法とSLS計測法の両方の計測を実行することが可能な、分析装置および分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
〔第1の発明〕
上記課題を解決する第1の発明は、
サンプルの計測のために使用する光を発生する光源と、
前記光源が発生した光に基づき、前記サンプル内に焦点を形成する照射光を前記サンプルに照射する光照射部と、
前記照射光の前記焦点が形成された領域である分析微小領域において発生した前方あるいは後方の小角散乱光を受け、平行小角散乱光を発生する平行散乱光変換部と、
前記平行小角散乱光に基づき前記サンプルからの前記小角散乱光の状態を計測するための散乱光検出部と、
前記散乱光検出部の計測結果に基づき前記サンプルの解析を行う、記憶装置を備えた、解析部と、を有し、
前記解析部は、前記散乱光検出部の前記計測結果を、繰り返し前記記憶装置に記憶し、
前記解析部は、前記記憶装置に記憶された、前記散乱光検出部の前記計測結果に基づき、動的散乱光成分あるいは静的散乱光成分、または前記動的散乱光成分と前記静的散乱光成分の両方を解析して、前記サンプルの前記分析微小領域に関する分析を行うことを特徴とする、分析装置である。
【0012】
〔第2の発明〕
上記課題を解決する第2の発明は、第1の発明の分析装置において、
前記散乱光検出部は光検出器を備え、
前記光検出器に、前記分析微小領域に存在するサンプルの状態の拡大された画像である顕微鏡画像が生成され、
前記解析部は、前記顕微鏡画像を前記散乱光検出部の前記計測結果として繰り返し取り込んで、前記記憶装置に記憶する、ことを特徴とする、分析装置である。
【0013】
〔第3の発明〕
上記課題を解決する第3の発明は、第2の発明の分析装置において、
前記解析部は、前記散乱光検出部から前記顕微鏡画像を繰り返し取り込むことにより、前記顕微鏡画像の動画像を前記記憶装置に記憶し、
前記解析部は、記憶された前記動画像に基づき、前記動的散乱光成分や前記静的散乱光成分を解析することを特徴とする、分析装置である。
【0014】
〔第1から第3の発明の作用効果〕
次に第1から第3の発明の作用効果について説明する。第1のから第3の発明の構成では、前記解析部は、前記散乱光検出部の計測結果を、例えば、定められた回数あるいは定められた時間、繰り返して前記記憶装置に記憶する構成を有している。従って、瞬時に、動的散乱光および静的散乱光の解析に必要なサンプルの計測結果を得ることができる。サンプルは時間経過と共にその状態が変化する場合が多いが、第1から第3の発明では、サンプルは時間経過と対比すると、動的散乱光および静的散乱光の解析に必要なサンプルの計測結果を同時に、瞬時に、得られるとみることができる。すなわち、同一の計測対象領域に対して、しかも同一の時間経過の状態において、動的散乱測定法および静的散乱測定法による分析評価が可能となる。
【0015】
また従来の技術では、サンプル内の解析可能領域が大きく、微小領域に絞り込んだ解析が不可能であった。第1の発明では、前記サンプル内に焦点を形成する照射光を前記サンプルに照射する光照射部を備えており、分析しようとする領域を非常に小さい分析微小領域に絞り込むことができる。
【0016】
例えば、特許文献1に記載の技術では、時間平均自己相関関数―相関関数の緩和データを取得する測定解析装置であって、すなわちDLS測定解析装置であり、回転機構(散乱角調整機構)により散乱角を変更させて、散乱角ごとにDLS測定を行っている。例えば、特許文献1の段落[0045]等を参照のこと。
【0017】
また、特許文献1では、走査型顕微光散乱測定解析装置の別の実施形態として、試料からの散乱光に対して、対物レンズとカバー部材の使用により、選択した散乱角での散乱光のみを選択検出するDLS測定法について、(例えば特許文献1の段落[0103]等に記載のように)、さらに対物レンズと結像用レンズの間に散乱角選択フィルターを配置して、同様に選択した散乱角での散乱光のみを選択検出するDLS測定法について(例えば、特許文献1の段落[0115]等に記載のように)、開示している。
【0018】
しかしながら、上記カバー部材ならびに上記散乱角選択フィルター(ここでは、便宜上、散乱角選択デバイスと呼ぶ)を使用し散乱角を連続的に変化させて、散乱光を計測する手段が開示されておらず、上記散乱角選択デバイスを用いて、散乱角度を瞬時に連続的に変化させて(例えば、1°~15°の散乱角範囲において角度分解能0.1°程度以下で、0.1秒以下の瞬時測定を行う場合等)、散乱光の強度空間パターン(散乱角に対する散乱光強度分布)を計測するSLS測定は、技術的に困難である。したがって、特許文献1の技術では、DLSとSLSを同時に測定することが困難であった。
【0019】
また、特許文献1では、試料の多数点におけるDLS測定について、例えば、走査機構により数μm間隔で測定位置を変えながら微小体積についてのDLS測定について開示されている。例えば、特許文献1の段落[0007]等を参照のこと。しかしながら、上述のように上記散乱角選択デバイスの使用によって顕微鏡スケールにおける試料からのSLSを瞬時で測定することは難しい上に、さらに顕微鏡スケールでDLSとSLSの測定を同時に瞬時に行うことは困難であった。
【0020】
また、特許文献2では、タンパク質結晶化溶液からの前方小角散乱光又は後方小角散乱光の測定において、これら散乱光を所定の散乱角範囲で取り込み、平行な散乱光に変換して、散乱光の強度分布(散乱角に対する分布関数)を一度にリアルタイムで計測していた。例えば、特許文献2の段落[0070]等を参照のこと。
【0021】
特許文献2には、リアルタイムのSLS測定法と、そのSLS測定データの解析方法については開示されている。例えば、特許文献2の段落[0107]等を参照のこと。しかし、リアルタイムのDLS測定法とその解析方法については開示も示唆もされておらず、さらに、DLSとSLSの同時測定法とその解析方法については記載されていない。さらにまた、特許文献2では、溶液セルに入射する入射光として平行光(コリメート光)である。例えば、特許文献2の段落[0056]を参照のこと。入射光ビームのサイズは、例えば直径0.7mm程度である。例えば、特許文献2の段落[0133]等を参照のこと。このためサンプルの例えば数十~百μm2程度以下の微小領域において、顕微鏡スケールでDLSとSLSの同時測定法を行い、局所的に粒子や凝集体の分析評価を行うことは困難である。したがって、特許文献2では、DLSとSLSの測定を同時に瞬時に行い、分析対象の粒子や凝集体等の拡散係数やサイズ、及び凝集体等の構造などを分析し、顕微鏡スケールにおいて溶液構造などの微細構造を分析評価することは難しい。
【0022】
さらにまた、特許文献3に記載の技術は、アキシコンレンズを含む光学素子によりサンプル中に干渉ビームを生成し実質的に照射されない暗領域を形成して、遠視野での暗領域において散乱光を検出するように配置し、照射軸から0°~10°の低角度の散乱角度でのDLSおよび/またはSLSの測定を行う技術である。上記散乱光の検出器は、0°~10°の範囲で複数の検出器が配置される。例えば、特許文献3の段落[0015]等を参照のこと。例えば、前記検出器または前記複数の検出器は、1°または2°または3°または4°または5°の範囲の散乱光を検出するように構成される。例えば、特許文献3の段落[0016]等を参照のこと。
【0023】
すなわち、複数の検出器を使用して、離散的な散乱角度で前記散乱光を検出するために、連続的なSLSの空間パターンを瞬時で測定することは困難である。ここで、0°~10°の間の任意角度での散乱光測定する場合について、検出器に光ファイバを結合させる、と記載がある。例えば、特許文献3の段落[0016]等を参照のこと。しかし具体的な方法についての開示は無く、様々な角度に関して光ファイバで取り込んだ散乱光を検出器で検出して、SLS信号すなわち散乱光強度関数(散乱光強度の散乱角依存)に変換して得ることは、技術的に困難である。したがって、特許文献2では、DLSとSLSを、同時に瞬時に行うことは困難である。
【0024】
〔第2の発明および第3の発明の作用効果〕
上記説明に加え、さらに第2の発明や第3の発明では、前記サンプル内の、前記照射光の前記焦点が形成された分析微小領域からの前方あるいは後方の小角散乱光を受け、平行散乱光変換部により形成された平行小角散乱光を散乱光検出部で検出する構成を備えている。第2の発明では上述したように、前記光検出器に、前記分析微小領域に存在するサンプルの状態の顕微鏡スケールで拡大された画像である顕微鏡画像が生成される。またこの顕微鏡画像を連続して繰り返し取り込むことにより、前記顕微鏡画像の時々刻々起こる変化を動画像として計測することが可能となった。時々刻々変わる変化を特定領域について解析することにより、DLS解析を行うことができる。また前記顕微鏡画像を光軸から半径方向に伸びる領域で捕らえて解析することにより、SLS解析が行える。すなわち同一の領域に於いて起こる、サンプルの時間経過に伴う変化の過程を、顕微鏡スケールで拡大された画像である顕微鏡画像の動画像として捉えることができる。さらにこの動画像から、サンプルの経時的な変化の過程における特定の時間経過時点での、DLS解析とSLS解析の両方の解析結果を得ることができる。しかも顕微鏡スケールで拡大された状態の計測結果を用いて、解析を行うことができる。従来技術に於いて、このような解析は行えなかった。
【0025】
〔第4の発明〕
上記課題を解決する第4の発明は、第1の発明から第3の発明の内の一の分析装置において、
前記平行散乱光変換部と前記散乱光検出部との間に、散乱角フィルターと散乱光集光部を設け、前記散乱角フィルターにより、前記平行散乱光変換部からの前記平行小角散乱光の内、特定角度であってしかも前記平行小角散乱光の光軸に垂直な面に於いて円弧状の形状を成す円弧状特定角度散乱光が、前記散乱光集光部を介して、前記散乱光検出部の前記光検出器に入射し、
前記平行小角散乱光の前記光検出器への入射により、前記光検出器によって、前記分析微小領域内のサンプルの状態を拡大表示した前記顕微鏡画像が検出される、ことを特徴とする、分析装置である。
【0026】
〔第5の発明〕
上記課題を解決する第5の発明は、第4の発明の分析装置において、
前記解析部は、前記光検出器によって検出された、前記分析微小領域内のサンプルの状態を拡大表示した前記顕微鏡画像を、繰り返し取り込み、前記に記憶することにより、前記分析微小領域内のサンプルの状態を拡大表示した前記顕微鏡画像の前記動画像が、前記記憶装置に記憶される、ことを特徴とする、分析装置である。
【0027】
〔第6の発明〕
上記課題を解決する第6の発明は、第4の発明あるいは第5の発明の内の一の発明の分析装置において、
前記散乱角フィルターは光を遮断する材料で作られており、前記平行小角散乱光の光軸に対して前記特定角度に対応する長さを半径とする円弧状の開口を有していることを特徴とする、分析装置である。
【0028】
〔第4の発明から第6の発明に関する作用効果〕
以下で図10から図14に記載の実施例に基づき説明する如く、光照射部140より照射された照射光148に基づき、サンプル154内の分析微小領域156に存在するサンプルによって小角散乱光160が作られる。この小角散乱光160が平行散乱光変換部170により平行小角散乱光168に変えられる。平行小角散乱光168が散乱角フィルター180に入射することにより、特定の散乱角であってさらに光軸146に垂直な面における円弧状の形状の円弧状特定角度散乱光186が散乱角フィルター180を通過し、散乱光集光部190に入射する。この円弧状特定角度散乱光186が散乱光集光部190を介して光検出器202に入射することにより、分析微小領域156に存在するサンプルの状態を表す画像が拡大された状態の顕微鏡画像として、光検出器202により検出される。この顕微鏡画像を光検出器202の検出結果として解析部250に取り込み、保存することができる。
【0029】
公知文献を調査したが、分析微小領域156に存在するサンプルの状態を表す拡大画像、すなわち顕微鏡画像を表示できる技術を開示あるいは示唆している公知例は発見できなかった。なお特許文献1には、散乱角選択フィルタ19が記載されている。しかし、この散乱角選択フィルタ19の開口は点であり、円弧状の広がりがない。このため前記顕微鏡画像を作ることができない。
【0030】
〔第7の発明〕
上記課題を解決する第7の発明は、第1の発明から第6の発明の内の一の発明の分析装置において、
前記光照射部に入射する入射光はその断面形状が円形の光ビームであり、前記入射光の光ビームの直径が1.6mm以下であることを特徴とする、分析装置である。
【0031】
〔第8の発明〕
上記課題を解決する第8の発明は、第1の発明から第7の発明の内の一の発明の分析装置において、
前記光照射部は、光を集光するための集光レンズと前記集光レンズを、前記光照射部へ入射する前記入射光の光軸に沿って移動するためのレンズ調整機構を備えており、
前記レンズ調整機構は、前記集光レンズを前記光軸に沿って移動できる距離が±10ミリ以下であり、移動調整できる最小長さが50μm以下であることを特徴とする、分析装置である。
【0032】
〔第9の発明〕
上記課題を解決する第9の発明は、第1の発明から第8の発明の内の一の発明の分析装置において、
前記光照射部から前記サンプルに前記照射光が照射されることにより、前記サンプルの内部に形成される最小ビームスポットの直径が、10μm以上で100μm以下の範囲であることを特徴とする、分析装置である。
【0033】
〔第10の発明〕
上記課題を解決する第10の発明は、第1の発明から第9の発明の内の一の発明の分析装置において、
試料部を有し、
前記試料部は前記サンプルを保持するためのサンプルセルと前記サンプルセルの位置を調整するためのサンプル位置調整機構とを備え、
前記解析部は、前記散乱光検出部の前記計測結果に基づき、前記サンプル位置調整機構により前記サンプルセルの位置を調整するための調整用画像を出力し、
前記解析部は、前記解析を行うための計測指示に基づき、前記散乱光検出部の前記計測結果を、繰り返し前記記憶装置に記憶し、
前記解析部は、前記記憶装置に繰り返し記憶した、前記散乱光検出部の前記計測結果に基づき、前記分析を行うことを特徴とする、分析装置である。
【0034】
〔第10の発明の作用効果〕
第10の発明の作用効果を説明する。第1の発明では、前記サンプル内の解析したい領域に、前記照射光の前記焦点を形成することにより、分析したい領域の状態を正確に計測できる効果がある。しかしこの効果を活かすためには、分析したい領域に前記照射光の焦点が形成されるように、サンプルセルの位置を、例えば光軸に垂直な面において、サンプル位置調整機構により調整することが必要となる。この作業を簡単にしかも正確に行うことができるように、本発明では、調整用画像を表示する。この調整用画像は、例えば現在の照射光の焦点位置のサンプルから発生した小角散乱光に基づいて描かれる。この画像を見ながらサンプルセルの位置を、サンプル位置調整機構を用いて調整することにより、サンプルセルの位置を、より正確に、しかもよりスムーズに調整することができる
【0035】
〔第11の発明〕
上記課題を解決する第11の発明は、第1の発明から第10の発明の内の一の発明の分析装置において、前記光照射部から前記サンプルへ照射される照射光の光軸に対する最大入射角θiは、0.5度から20度の範囲であることを特徴とする、分析装置である。
【0036】
〔第12の発明〕
上記課題を解決する第12の発明は、第1の発明から第11の発明の内の一の発明の分析装置において、
前記解析部は、設定されたサンプリング条件に基づき、繰り返し散乱光検出部の前記計測結果を取り込む第1ステップと、
前記繰り返し取り込んだ散乱光検出部の前記計測結果から、動的散乱光分析領域の計測結果および静的散乱光分析領域の計測結果を抽出する第2ステップと、
前記動的散乱光分析領域の前記計測結果に基づく動的散乱光分析のための演算、および前記静的散乱光分析領域の前記計測結果に基づく静的散乱光分析のための演算を行う、第3ステップと 、
を有することを特徴とする、分析方法である。
【0037】
〔第13の発明〕
上記課題を解決する第13の発明は、第12の発明の分析方法において、
前記設定されたサンプリング条件に基づき前記散乱光検出部から繰り返し計測結果を取り込む第1ステップの後、前記解析部は、設定された撮影間隔の間、前記第1ステップの実行を停止し、
前記解析部は、設定された前記撮影間隔の終了後再び前記第1ステップの実行を開始し、
前記解析部は、設定された前記第1ステップの実行回数、あるいは設定された、前記第1ステップの実行とその後の実行停止とを繰り返し継続し続ける時間である総撮影時間、に従って、前記第1ステップの実行と前記撮影間隔の間の前記第1ステップの実行の停止との動作を繰り返す、ことを特徴とする、分析方法。
【0038】
〔第14の発明〕
上記課題を解決する第14の発明は、第12あるいは第13の発明の内の一の発明の分析方法において、
前記解析部は、指示に基づき調整モードとしての動作と計測解析モードとしての動作を行い、
前記調整モードの動作では、散乱光検出部からの計測データに基づく前記動的散乱光分析のための演算および前記静的散乱光分析のための演算を行う第3ステップを、停止する、ことを特徴とする、分析方法である。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、同じ測定対象に関して、同じ経過時間の状態における、DLS測定法とSLS測定法の両測定を実行することが可能な、分析装置および分析方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明が適用された、サンプルの分析微小領域の分析を行う分析装置の実施例を説明するための説明図である。
図2図1に記載の構成における、光照射部および試料部、平行散乱光変換部に関する構成および動作を説明する説明図である。
図3図1に記載のサンプルの分析微小領域に於ける照射光と小角散乱光の発生との関係を説明する説明図である。
図4】本発明が適用された実施例に於いて計測された顕微鏡画像の説明図である。
図5】小角散乱光の顕微鏡画像に基づく解析方法を説明するための説明図である。
図6】散乱光検出部における光検出器の一例において、その検出面を説明する説明図である。
図7】散乱光検出部により検出された検出結果と記憶状態との関係を説明する説明図である。
図8】散乱光検出部で検出された小角散乱光に基づく顕微鏡画像とDLS分析領域R1およびSLS分析領域R2との関係を説明する説明図である。
図9】SLS分析領域R2と散乱光検出部の検出エリアにおける検出結果との関係を説明する説明図である。
図10】本発明が適用された他の実施例を説明する説明図である。
図11図10に記載の他の実施例における散乱角フィルターおよび散乱光集光部の動作を説明する説明図である。
図12】散乱角フィルターを説明する説明図である。
図13】散乱光検出部としてレンズ付きカメラを使用した場合の説明図である。
図14】散乱光検出部としてレンズ付きカメラを使用して、散乱光像を測定する場合の他の実施例である。
図15図15は、分析装置の動作の一例を説明する説明図である。
図16図15の動作を行うためのフローチャートである。
図17】計測結果の記憶装置に於ける記憶状態、及び記憶されたデータを利用した分析結果の記憶状態、を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
1.散乱光に基づくサンプル154の分析を行うための分析装置100の説明
1.1 はじめに
本明細書においては、同一符号を付した構成は、同じ動作および作用を為し、同じ効果を奏する。煩雑さを避けるため、同じ符号の構成に対して繰り返しの説明を省略する場合がある。また本明細書の記載において、「検知」や「検出」、「計測」、「測定」の用語に関し、厳密な使い分けを行わない。同様の意味を持つものとして記載する。さらに「照射する」や「入射する」の用語に関し、厳密な使い分けを行わない。同様の意味を持つものとして記載する。
【0042】
1.2 分析装置100の概要の説明
図1に、本発明が適用された実施例である、分析装置100の構成を示す。以下で詳述するが、光源110で分析対象であるサンプル154を照射するのに適した光112を発生する。光源110で発生した光112は、入射光調整部120に導かれ、入射光調整部120で光112を調整して入射光126を発生する。入射光126は光照射部140に導入される。光照射部140は導入された入射光126に基づいてサンプル154を照射するための照射光148を発生する。照射光148はサンプル154の分析微小領域156に照射され、分析微小領域156に焦点を形成する。照射光148の照射により、サンプル154の分析微小領域156から、散乱光が、サンプル154の前方側および後方側に発生する。この前方側および後方側の散乱光の内の、少なくとも一方側の小角散乱光160が平行散乱光変換部170により平行小角散乱光168に変更され、散乱光検出部200で検出される。散乱光検出部200の検出結果に基づき、解析部250でサンプル154に関する解析が行われ、解析結果が解析部250の入出力装置266から出力される。
【0043】
なお後方側に発生した小角散乱光160、および前記後方側に発生した小角散乱光160を平行小角散乱光168に変換する構成、後方側の小角散乱光68に基づく平行小角散乱光168を検出する散乱光検出部200、に関する構成は、前方側に発生した小角散乱光160を平行散乱光変換部170により、平行小角散乱光168に変換して、散乱光検出部200で検知する構成と、ほぼ同じ構成であり、ほぼ同じ作用効果であるので、図を用いた記載を省略する。
【0044】
光照射部140が発生する照射光148は、サンプル154の解析精度を向上するうえで大変重要である。光照射部140では、入射光調整部120が発生した入射光126に基づいて照射光148が形成されるので、入射光調整部120は、照射光148を発生するのに適した状態の入射光126を発生することが重要となる。また光照射部140に入射光126以外の迷光が入射するのを防止することが望ましい。光学絞り138はこのような目的で設けられている。さらに光学絞り138は試料部150や平行散乱光変換部170等からの反射光が、再度、試料部150のサンプル154へ入射するのを防ぐ効果を発揮する。
【0045】
図1に記載の実施例では、照射光148に基づいてサンプル154が発生する小角散乱光160の内の前方の方向に発生する小角散乱光160を利用する構成を記載している。さらに図1の記載では、光軸146に対して一方側に発生した小角散乱光160のみを記載している。しかしこれらは説明の煩雑さや図示の煩雑さを避けたためである。サンプル154からは前方方向だけでなく、後方方向にも同様に散乱光が発生する。この散乱光の内の小角散乱光160に関して、前方だけでなく後方に向けて発生した小角散乱光160も同様に利用可能である。また前方および後方に向けて発生する小角散乱光160は、光軸146に対して特定角度だけでなく、全周に渡って発生する。この全周に渡って発生する散乱光を利用することが可能である。図1で散乱光の内の特定角にだけ限定した小角散乱光160が散乱光検出部200に入射しているように記載している。しかしこれは一例として記載したものであり、図1に記載の小角散乱光160以外の部分を含めた光軸146に対して全周に渡る散乱光が発生している。必要に応じて散乱光検出部200に入力可能であり、検出可能である。
【0046】
分析装置100において、光照射部140と入射光調整部120の配置関係に自由度を持たせることが好ましく、光照射部140に対して入射光126の光軸を変更することが必要となる場合が生じる。この場合には光路変更部130を設けることにより、光軸を変更することが可能である。この実施例では、入射光調整部120と光学絞り138との間に光路変更部130を設けているがこれは一例であり、必要に応じ他の部分に設けることも可能であり、また複数個設けても良い。
【0047】
上述したが、光照射部140では、光路変更部130からの入射光126を、焦点を有する集光ビームに変え、照射光148として、サンプル154に照射する。照射光148の焦点が、サンプル154の分析すべき対象領域の位置に一致するように、すなわち分析を行いたい分析微小領域156に焦点が位置するように光照射部140の集光レンズ142が設定されている。言い換えると集光レンズ142の焦点距離に基づいて、集光レンズ142とサンプル154との位置関係が設定される。
【0048】
照射光148の焦点位置が、サンプル154の内部の分析を試みたい分析対象点である分析微小領域156となるように、試料部150に設けられているサンプル位置調整機構158により、サンプル154を収納するサンプルセル152の位置を3次元において微調整することが可能である。このような構成により、以下で詳述するが、サンプル154の内の解析したい部分である分析微小領域156で、照射光148が焦点を結ぶように、サンプル位置調整機構158を調整することにより、分析したい領域から小角散乱光160を正確に発生させることができる。本実施例では、サンプル154内の目的とする部分で発生させた小角散乱光160を使用することができるので、目的とする部分の分析結果を得ることができる。
【0049】
照射光148の焦点位置とサンプル154との光軸146方向の関係は、集光レンズ142の焦点距離で定まるので、集光レンズ142とサンプルセル152との光軸146上の距離は、集光レンズ142とサンプルセル152との距離を正確に維持することで、照射光148の焦点をサンプル154の内部に位置させることができる。しかし、サンプル154における光軸146に垂直な面のどこに照射光148の焦点を結ばせるかは、操作者の意図により変わる。このため、サンプル位置調整機構158は、光軸146に垂直な面において、サンプルセル152を移動できることが重要である。以下で再度説明するが、本実施例および以下で説明する他の実施例でも同様、正式な計測に入る前に、散乱光検出部200の検知結果をもとに、平行小角散乱光168に基づく調整用画像を解析部250により調整用画像として入出力装置266に表示する。この調整用画像を見ながら、サンプル位置調整機構158で少なくともサンプルセル152を光軸146に垂直な面において移動調整する。このことにより、分析したい領域に照射光148の焦点を結ぶことができる。照射光148の焦点の領域が望ましい分析微小領域156となる。
【0050】
照射光148の焦点位置により定まる分析微小領域156の設定が行われた後、操作者による正式な計測開始の指示が解析部250の入出力装置266により行われる。これにより、解析部250により動的散乱光および静的散乱光の解析に必要な計測結果が散乱光検出部200より取り込まれる。取り込まれた散乱光検出部200の計測結果は、解析部250の記憶装置290に、散乱光検出部200の計測面に於ける計測素子の位置と関連付けられて記憶される。計測したい分析微小領域156が正確に設定でき、そこから繰り返し取り込まれる計測データが、光軸146に対する角度情報と関係づけられる光検出器202に於ける計測面上の位置関係に関連付けられて記憶されるので、記憶されたデータから以下で説明する動的光散乱や静的光散乱の両方に関する高い精度の解析が可能となる。記憶された計測結果は、共通の分析微小領域156に対する、しかも同じ時間的なタイミングで計測された値である。
【0051】
サンプル154に照射された照射光148は、その一部が散乱光となるが、大部分はサンプル154を貫通する透過光164となる。透過光164は平行散乱光変換部170により、光軸146に平行な光に変えられ、平行散乱光変換部170の後方または前方に配置された透過光遮光部176により遮断される。一方サンプル154の分析微小領域156により発生した散乱光の内、透過光164に近い角度である、言い換えると図3で述べる最大角度θ0Sより小さい角度である、小角散乱光160は、平行散乱光変換部170により、平行小角散乱光168に変換され、散乱光検出部200で検出される。
【0052】
図1に記載の実施例では、サンプル154の分析微小領域156に絞り込んで、照射光148を照射することができる。このためサンプル154の分析したい分析微小領域156で発生した散乱光を、動的光散乱と静的光散乱の両方に関して散乱光検出部200でリアルタイム(実時間)に検出でき、サンプル154である液中の粒子や凝集体の状態を、解析部250によりリアルタイム(実時間)で分析することができる。
【0053】
解析部250は、動的光散乱と静的光散乱の両方を検出し、これらの検出結果に基づいて、サンプル154内の粒子や凝集体の各種状態を分析し、その結果は解析部250の入出力装置266から出力することができる。各種状態を表す情報としては例えば、粒子や凝集体の拡散係数や、粒子や凝集体のサイズ、粒子や凝集体の構造パラメータ、等があり、これらの解析結果が入出力装置266から分析結果として出力される。
【0054】
図1に記載の実施例では、サンプル154が発生する前方および後方の小角散乱光160の内、前方の小角散乱光160を検出する構成を代表例として示している。サンプル154の分析微小領域156は、上述したとおり、前方だけでなく後方にも小角散乱光160を発生する。従って前方だけでなく後方に向けて発生する小角散乱光160を使用しても、前方の小角散乱光160を使用した場合と同様に、分析結果を得ることができる。従って前方の小角散乱光160の代わりに後方の小角散乱光160を利用することができる。以下に記載の実施例では、前方の小角散乱光160または後方の小角散乱光160に基づく実施例の代表例として、前方小角散乱光を使用した実施例を示して説明する。技術的な作用および効果は基本的な部分に於いて、これら両方の実施例に関しほぼ同じである。なお、透過光164は光の進行方向における前方に存在し、後方には存在しない。後方の小角散乱光160を利用する場合、透過光164と小角散乱光160との重なりを考慮する必要が無い。しかし、照射光148との重なりを考慮することが必要である。また光照射部140と平行散乱光変換部170との関係も考慮することが必要となる。
【0055】
1.3 分析装置100を構成する各構成の説明
(1)光源110の説明
図1に記載の光源110は、分析対象であるサンプル154に照射する照射光148を発生するのに適した光112を発生することが求められる。光源110が発生した光112に基づいて、入射光調整部120により入射光126が形成され、入射光126に基づいて、サンプル154へ照射する照射光148が光照射部140により形成される。照射光148をサンプル154に照射したときに、サンプル154から散乱光、特に小角散乱光160が効率よく発生することが望ましい。光源110はサンプル154に於いて小角散乱光160が効率よく発生するのに適した性質を持つ光112を発生することが求められる。
【0056】
光源110には、例えば、各種ガスレーザ、半導体レーザ(LD)、ダイオード励起固体(DPSS)レーザ、及び発光ダイオード(LED)等、色々なレーザを、用いることができる。その中でも光源110は、高輝度のレーザ光源であって、高いコヒーレンス長を持った、シングル縦モードの単一波長で発振するレーザ光源を用いることが好ましい。このようなレーザ光源としては、例えば、DPSSレーザがある。DPSSレーザは、レーザ光発振に必要な光共振器が内蔵された、小型のレーザ光源である。このDPSSレーザは、低電力で高効率の安定な高出力レーザ光が得られるという特長がある。このため、本発明の実施例である分析装置100の光源110として、好適である。
【0057】
また、光源110は、駆動電源と光源本体が小型で、粒子や凝集体を分析するための分析装置100への組み込むのに適したサイズであることが好ましい。このため、例えば、ペプチドや核酸等の低中分子やタンパク質等の生体高分子、及びその凝集体、また、ナノからサブミクロンの金属やプラスチック及び無機物等の微粒子、及びその凝集体などを分析対象とする場合は、数mW~数十mWのレーザ光源を用いることが好適である。
【0058】
光源110が出力する光112のパワーは、分析対象のサンプル154の散乱光の強度や、散乱光検出部200の光検出器202の感度、あるいは光検出用カメラ204の感度、散乱光強度計測で使用する増幅器の増幅度、光検出器202による散乱光強度測定の露光時間、あるいは光検出器202による散乱光強度測定の露光時間等の内の一つあるいは幾つかに対応して、調整することが好適である。なお、サンプル154への入射光126の強度は、光源110からの光112の強度を、入射光調整部120の光量調整素子122で調整することによって、適切な強度範囲に調整することができる。
【0059】
光源110から出射される光112のビームサイズはできる限り小さく細いことが好ましい。即ちスポット状の光ビームであることが好適である。また、光源110からの光112は、平行な光、即ち、コリメート光であることが好適である。さらに色々な種類のサンプルの分析に広く対応でき、しかも高い検知精度が得られるとの観点から、光112の断面が円形であることが好ましい。また光照射部140からの照射光148に関して、サンプル154の分析部分である分析微小領域156に、光を正確に収束できることが重要であり、この観点において、本実施例では、光112の断面サイズ即ちビームサイズが、直径1.6mm以下であることが好ましい。光112の断面サイズが1mm以下であることがさらに好ましい。光照射部140へ入射される入射光126の断面サイズ、すなわちビームサイズは、入射光調整部120で調整されるが、光112のビームサイズが直径1.6mm以下、特に1mm以下であれば、入射光調整部120でビームサイズの調整をほとんど加えることなく、入射光126のビームサイズが定まり、入射光126のビームサイズを直径1.6mm以下に、さらには特に1mm以下に維持することが容易となる。
【0060】
光源110から出射される光112の広がり角は、光照射部140から照射される照射光148の焦点位置での絞り込み精度に大きく影響する。照射光148の焦点位置での大きさをできる限り小さくすることが、分析精度の向上に非常に重要である。このような関係から、光112の広がり角は、全放射角度で1.5mrad以下、特に1mrad以下とすることが好適である。光源110から出射される光112の広がり角が大きい場合、光照射部140の集光用レンズ群、例えば対物レンズ等、によって、検知に必要な小さなスポット状の光ビームをサンプル154へ入射させることが困難になる。さらにまた、小角散乱光160の散乱角度との関係が乱れ、平行散乱光変換部170のレンズ群によって、所定の放射散乱角範囲でサンプルからの散乱光を平行光に正確に変換することが困難となる。これらは解析精度が低下する原因となる。
【0061】
光源110からの出射される光112の偏光性には特に制限はない。直線偏光や円偏光、楕円偏光、等の偏光した光を用いることができる。また無偏光であってもよい。この中で、TE偏光やTM偏光等の直線偏光が利用し易い。
【0062】
偏光解消光散乱法を用いて、サンプル154の測定対象粒子やその凝集体等の各運動要素、例えば並進運動と回転運動、を分析する場合や、高分子等の薄膜中の結晶粒などの配向性を分析する場合では、入射光として既知の偏光状態の光、例えば直線偏光を利用する。入射光に対して平行に偏光された散乱光成分、及び垂直に偏光された散乱光成分が、偏光子等を用いてそれぞれ別けて検出される。例えば、垂直方向に偏光された入射光の偏光状態であるV偏光状態に対して、水平方向に偏光された偏光状態であるH偏光状態の散乱光が検出される場合、「VH」と表記される。「VV」と「VH」、並びに「HH」と「HV」等を測定しそれらの評価から、液中の測定対象粒子やその凝集体等の各運動要素である並進運動と回転運動や、高分子等の薄膜中の結晶粒などの配向性を分析できる。また、高精度の散乱光計測には入射光の安定性が要求される。このため、光源110の出力安定度は、1時間当たり数%以下であることが好適である。さらに、散乱光の測定において、入射光の強度変化をモニターすることによって、入射光変動の影響を避けることも可能である。
【0063】
サンプル154からの散乱光の計測法、特にDLS測定法では、サンプル154の散乱体からの散乱光自体の時間自己相関をとって、時間相関関数を得るホモダイン計測法と、上記散乱体からの散乱光に、ある周波数で変調した参照光を混合して、それに対して時間相関関数を得るヘテロダイン計測法と、がある。DLS測定で用いるホモダイン計測法は、光学系が比較的簡単であり、高いS/N比で計測することができ、散乱光の時間相関関数を得られ易い。一方、電気泳動測定などのようにサンプル154の散乱体が一定の運動している場合などには、ヘテロダイン計測法がよく用いられる。
【0064】
ホモダイン計測法を用いるDLS測定では、光源110が発生する光112として、時間的に強度が一定である光を用いて、散乱光自体の時間的揺らぎから時間相関関数を得ることができる。また光源110が発生する光112として、ある周波数で変調した変調光を出力するようにしてもよい。また例えばある一定の周波数で回転又は振動するライトチョッパー等の光変調器や、光変調デバイス等の光変調素子を使用して、光源110から出射された光112をある所定の周波数で変調させて入射光126として用いてもよい。
【0065】
一方、ヘテロダイン計測法を用いるDLS測定では、サンプル154の散乱体からの散乱光に混合させる参照光として、ある所定の周波数で変調した光を用いることができる。例えば変調した参照光として、上述同様に光源110からの変調光を用いることができる。この場合、光源110から出射された光112を、例えば2つの光路に分岐させて、一つの光路上にある光を入射光126として光照射部140に導入し、光照射部140から照射光148としてサンプル154へ照射する。この照射光148の照射に基づくサンプル154からの散乱光を、平行散乱光変換部170を介して散乱光検出部200の光検出器202へ導く。さらにもう一つの光路の光を上記の光変調器や光変調素子等によって、ある所定の周波数に変調された変調光を、そのまま光検出器202へ入射させる。サンプル154の散乱体からの動的散乱光と、変調した参照光を混合させて光検出器202と、を光検出器202で計測する。このようにして、変調の参照光に対する散乱光の時間相関関数を得ることができる。
【0066】
(2)入射光調整部120の説明
入射光調整部120は、試料部150に設けられたサンプル154へ照射される照射光148の状態を調整する機能を有する。具体的には、例えば、入射光調整部120は光学素子群から構成されており、光源110からの光112をサンプル154に適した照射光148にするために、光量や偏光状態、及び光ビームの形状やサイズ、等を調整する。入射光調整部120より調整された入射光は、必要に応じ光路変更部130により光路が変更され、光照射部140に導かれる。なおこの実施例に於いて、入射光調整部120を光路変更部130の後に設けても良い。
【0067】
入射光調整部120は、一例として、光量調整素子122と偏光素子124を有している。光量調整素子122は、光源110からの光112を受け、分析対象であるサンプル154へ照射する照射光148の強度を調整する。光量調整素子122は例えばニュートラルデンシティー(ND)フィルター、等である。
【0068】
具体的には、光量調整素子122として、各種の光学フィルター、例えば、金属薄膜フィルターや誘電体フィルター等を用いることができる。光量調整素子122として、例えば透過率0.1%~50%までのNDフィルター等を用いることで、入射光の光量である光強度を容易に調整することができる。
【0069】
光量調整素子122の透過率は、分析対象サンプルの散乱光の強度、散乱光検出部200の光検出器202の検出感度や露光時間、及び検出信号の増幅度に対応して調節すればよい。ここで増幅度とは、増幅率や、利得、ゲインである。光検出器202により、分析対象のサンプル154からの散乱光が、光照射部140から出射される照射光148の光量に対して、良好なSN比、すなわちノイズ信号に対するシグナル信号の比率、が得られるように、入射光126の光量が設定されることが好ましい。
【0070】
入射光調整部120が有する偏光素子124は、光源110からの光112の偏光状態を調整して、入射光126の偏光状態を設定する機能を有しており、偏光状態を調整する光学素子で構成されている。偏光素子124としては、光源110からの光112が無偏光の光であれば、入射光126の偏光性を設定するために、各種の偏光板や偏光フィルターを用いることができる。
【0071】
また、光源110からの光112が直線偏光の光であれば、偏光子として、1/2波長板等を用いてもよい。これを用いることで、入射光126の偏光の方向を任意の方位角度に設定でき、電場ベクトルが光学系に対して水平であるTM偏光(p)偏光、又は垂直であるTE(s)偏光が得られる。さらにまた、光源110からの光112が直線偏光の光であれば、1/4波長板等を用いて、光源110からの光112の偏光を、円偏光又は楕円偏光に変換させて、光照射部140の入射光126として使用することも、必要に応じて可能となる。
【0072】
さらに、分析対象のサンプル154からの前方または後方の小角散乱光160の強度が、入射光126の偏光性に強く依存する場合には、入射光126の散乱強度が大きくなるように、偏光素子124により入射光126の偏光状態を調整することが望ましい。
【0073】
(3)光路変更部130の説明
実際に分析装置100を製造するためには、光源110から光照射部140に至る光路の光軸を変えることが好ましい場合がある。このような場合には光路変更部130を使用することが可能である。なお、光源110からの光112を、入射光調整部120にて上述の調整を行った後、入射光126のための光路変更を行う、図1に示す構成は一例である。光路変更が必要な場所に、光路変更部130を設けることで、光路変更が可能となる。
【0074】
光路変更部130は、例えば、一群のミラーや、レンズ、プリズム、等、の光学素子によって構成されている。光路変更部130は、例えば、光源110からの光112の光軸に対して、入射角45度となる状態に配置された平面ミラー132や、平面ミラー132なよる反射光に対して入射角45度となる状態に配置された平面ミラー134を備えている。この構成により、光112の進行方向を反転させた入射光126を光照射部140に入射することができる。入射光126の光軸146上に、光照射部140からの照射光148の光軸や、平行散乱光変換部170の光軸、散乱光検出部200の光検出器202を配置するための基準の軸、を設定している。
【0075】
このことにより、試料部150や平行散乱光変換部170、散乱光検出部200の配置関係の調整が容易となる。さらに分析装置100の形状の小型化にも役立つ。それに加え、入射光126の光軸146上に生じる照射光148の焦点位置が、サンプル154における解析したい位置に合うように、試料部150のサンプル位置調整機構158を調整する操作が容易となる。このことは調整精度の向上にも繋がる。光路変更部130を使用して、光路を最適な状態に設定することは、分析装置100の小型化だけでなく、解析精度の向上にも役立つ。
【0076】
サンプル154に対して異なる波長からなる光照射部140の照射光148を照射して、照射光148の波長の相違による、小角散乱光160の違いを解析することが有効な場合がある。この場合には、サンプル154への入射光126の光軸を一定に設定し、波長の異なる複数のレーザ光源を配置する構成が有効な構成となる。光路変更部130において、各レーザ光源等に対してそれぞれハーフミラーや、全反射ミラー、プリズム、等、を備えることにより、上述したサンプル154に対して異なる波長を入射する構成が可能となる。
【0077】
(4)光学絞り138の説明
図1に示すように、入射光調整部140の前段に光学絞り138が入射光126の光軸146に沿って配置されている。光学絞り138は、サンプル154への光照射部140からの照射光148以外の迷光の入射を防止する機能を有する。さらに試料部150や平行散乱光変換部170等からの反射光が、再度、サンプル154へ入射することを防ぐ機能も有している。光学絞り138はこの実施例では、並列に配置された2枚の絞り139を備えている。絞り139のそれぞれの口径は、入射光126を通過させるための入射光126の断面形状より大きい形状のスリットを有している。この実施例では、入射光126の断面形状が円形であるので、上記スリットは円形を成している。各絞り139に形成されたスリットである開口の径は、入射光126の径よりも大きく、上述の迷光や反射光を防止するために適切な口径を有している。入射光126の光ビームの径が、例えば、直径1mmφであれば、絞り139の口径は、直径1.2mm以上で2mm以下が好ましい。
【0078】
光学絞り138は、一個の絞り139から構成されていても、上述した迷光や反射光を防止する効果がある。しかしサンプル154への照射光148の光軸146に対して垂直で、間隔を隔てて平行にずらして配置した、複数の光学絞りで構成した方が、より大きな効果を奏する。特に、光学絞り138として、同一サイズの口径をもつ2つの絞りを間隔隔てた配置した構成が好適である。絞り139としては、例えば、直径1mmφの入射光126に対して、直径1.2mm以上で2mm以下程度の口径をもつ2つの絞りを、入射光の光軸方向に5cm以上で30cm以下程度の間隔で平行に配置した構成が、たいへん大きな効果を奏する。
【0079】
(5)光照射部140の説明
図1に加え、図2および図3を用いて、光照射部140と試料部150の動作を説明する。光照射部140は、入射光126を、サンプル154内に焦点を結ぶ光ビームに変え、照射光148として試料部150のサンプル154へ照射する。具体的には、光照射部140は、入射光調整部120により調整された入射光126を集光させるための光学素子と、サンプル154へ照射する照射光148のスポットサイズやサンプル154中における照射光148の焦点位置等を調整するレンズ調整機構144と、を有している。
【0080】
光照射部140に入射される入射光126の光ビームサイズに応じて、光照射部140の集光用レンズである対物レンズ等の種類とサイズ、サンプルセル152の形状とそのサイズが定まる。さらに入射光126の光ビームサイズにより、後述する平行散乱光変換部170を構成するレンズの種類とそれらのサイズ、あるいは散乱光集光部190を構成するレンズの種類とそれらのサイズ、散乱光検出部200の光検出器202や散乱光検出部200のとして光検出用カメラ204を使用した場合の光検出用カメラ204の受光部の形状とそのサイズ等が定まる。なお、散乱光検出部200は画像を検知して電気信号に変換する機能を有しており、光検出用カメラ204を備えていても良い。光検出用カメラ204は光検出器202の代わりとして使用できる。
【0081】
既に上述したが、試料部150は、サンプル154を収納するサンプルセル152と、サンプルセル152をX軸やY軸、Z軸方向に移動するためサンプル位置調整機構158を備えている。サンプルセル152に収納されたサンプル154における解析したい部分である分析微小領域156に、照射光148の照射位置である最小ビームスポット157が合致するように、サンプルセル152を、サンプル位置調整機構158により、3次元の軸である、X軸とY軸、Z軸に沿って、微細に移動することができる。これによりサンプル154における目的とする位置の分析微小領域156に最小ビームスポット157が重なるように照射光148が形成されて照射され、分析微小領域156から検出に適した小角散乱光160を発生させることができる。上述のように、3次元の軸に沿ってサンプル位置調整機構158により、サンプルセル152の位置を最小ビームスポット157に対して相対的に微細に移動可能とすることができる。しかし3次元の軸に沿った調整に限る必要はなく、例えば光軸146に沿う方向にだけサンプルセル152を移動できるように構成することも有効である。また光軸146に垂直な平面において、位置の微調整が可能となるようにしても良い。
【0082】
光照射部140からの照射光148のサンプル154における最小ビームスポット157と小角散乱光160との発生の関係を、図3を用いて説明する。サンプル154へ入射する照射光148の最大入射角を最大入射角θiとし、サンプル154を通過する透過光164の最大透過角度を最大透過角度θ0とし、サンプル154から放射され、測定される最大小角散乱光167の放射角度を放射角度θ0Sとする。なおこれらの各角度は、サンプル154への照射光148の中心軸である光軸146からの角度で表す。
【0083】
図3に示すように、試料部150のサンプル154へ入射した照射光148は、サンプル154を通過中に測定対象である粒子、凝集体、結晶粒などの散乱体により散乱されながら、その多くの光は透過して、サンプル154から透過光164が放射される。サンプル154への照射光148は、所定の入射角θiの範囲において様々な入射角度で入射する照射光148であるため、サンプル154からの透過光164は、ある放射角度θ0の範囲以内で様々な角度で放射される。
【0084】
ここで、サンプル154の透過光164の領域(θ<θ0)には、透過光164の他にサンプル154からの小角散乱光160も含まれる。粒子や凝集体を含むサンプルや固体薄膜など、測定対象の散乱体による散乱光は、一般に透過光に比べて非常に弱いために、透過光164の領域(θ<θ0)では、小角散乱光を透過光164と区別して測定することは、実質上困難である。このため測定可能な小角散乱光160としては、透過光164の領域外、つまり、θ>θ0に現れる散乱光となる。そのため、サンプル154の小角散乱光の角度として、光軸からの角度のθ0Sの他に、最大透過角度θ0から測った測定散乱角θSは次式となる。
[数1]
θS=θ0S―θ0 (式1)
【0085】
サンプル154へ照射させる照射光148を形成する光照射部140の集光レンズ142としては、各種レンズ、例えば球面平凸レンズ並びに球面両凸レンズ(以下、単に「球面凸レンズ」)、非球面レンズ、円筒面平凸レンズ並びに円筒面両凸レンズ(以下、単に「シリンドリカルレンズ」と呼ぶ)等の単レンズ、及び光学的に性質の異なる単レンズを、2つ以上貼り合わせた各種アクロマティックレンズ等を用いることが可能である。光照射部140は、試料部150のサンプル154へ微小なスポット状の照射光を形成して効率よく照射光148を照射する作用をなすように、上述の単レンズ、アクロマティックレンズ、又はこれら各種レンズを組み合わせた光学系等で構成されている。
【0086】
光源110からの光がレーザ光等の平行(コリメート)ビーム光である場合、例えば、光学絞り等によって光ビームサイズを形成して、光照射部140へ入射させて、微小サイズに変更された照射光148をサンプル154へ入射させる。ここで、上述の単レンズ、アクロマティックレンズ、又はこれら各種レンズを組み合わせで構成された集光レンズ142によって、例えば円形の平行ビーム光を集光させて得られる照射光148の最小ビームスポット157のサイズWは、次の式で表される。なお集光レンズ142の焦点距離をfとする。また最小ビームスポット157のサイズWは直径である。
[数2]
W=2λ/(π・NA) (式2)
【0087】
ここで、サイズWは、ガウシアン強度分布をもつレーザ光等の中央最大値の1/e2(=0.135)以内の範囲の円形ビームの最小ビームスポット157の直径であり、λは光の波長、NA(numerical aperture)は集光レンズ系の開口数である。さらに、光照射部140の集光レンズ142の開口数NAは、NA=D0/(2f)である。ここで、D0は集光レンズ系へ入射する光ビームの直径(中央最大値の1/e2以内の範囲)である。従って、集光レンズ142の焦点距離fで得られる最小ビームスポット157のサイズWは、次式で表される。
[数3]
W=4fλ/(π・D0) (式3)
例えば、光照射部140の集光レンズ142を焦点距離f=10mmの集光レンズで構成して、集光レンズ142へ入射する入射光126の直径D0=0.7mm、波長λ=473nmの平行レーザ光ビームを集光させた場合、最小ビームスポット157の直径Wとして8.6μmの最小ビームスポットが得られる。
【0088】
ここで、例えば光源110からの光がレーザ光である場合、集光レンズ142へ入射する入射光126は、レーザ光自身の広がり角によって、光源110の出射口におけるビーム径よりも大きくなる。すなわち、集光レンズ142へ入射する入射光126の径D0は、次の式で表される。
【0089】
[数4]
D0=Dout+ωL (式4)
ここで、Doutは光源110の出射口におけるビーム径で、ωはレーザ光ビームの広がり角(全角)で、Lは光源110の出射口から光照射部140の入射側までの距離である。なお、D0とDoutの光ビーム径は、ガウシアン強度分布をもつレーザ光の中央最大値の1/e2(=0.135)以内の範囲のビーム径を示す。
【0090】
例えば、光照射部140へ入射する入射光126の径D0の値は、ω=1.2mradのレーザ光源からDout=0.7mmで、例えばレーザ光源から集光レンズ142までの距離L=665mmである場合、上式から計算するとD0=1.5mmである。
【0091】
従って、例えば、焦点距離f=10mmの集光レンズ142を用いて、λ=473nm、ω=1.2mradの光源110から出力された径Dout=0.7mmのレーザ光に対して、例えば、集光レンズ142までの距離L=665mmである場合、集光レンズ142で集光させて得られる最小ビームスポット157の直径Wは、W=4.0μmと上記の値(8.6μm)よりも小さくなり、レーザ光ビームの広がりにより、より小さいサイズの最小ビームスポット157を形成する照射光148が得られる。
【0092】
ここで、上述のように、光照射部140の集光レンズ142でレーザ光等を集光させて得られる照射光148の最小ビームスポット157のサイズWは、集光スポット周辺の媒質が空気(屈折率n=1.00)である場合の計算値である。光照射部140のサンプル154中における最小ビームスポット157のサイズは、その媒質が空気よりも屈折率が大きいために(例えば水の場合n=1.33である)、実際のサイズWの値は、これら計算値よりも若干大きくなる。従って、図3に示すように、光照射部140の集光レンズ142からサンプル154へ照射される照射光148の最小ビームスポット157のサイズは、上記の計算値よりも若干大きい。
【0093】
光照射部140は、試料部150のサンプル154へ照射光148を照射させるための、集光レンズ142とサンプル154との間隔を微調整するレンズ調整機構144を備える。すなわち、光照射部140は、サンプル154への集光レンズ142の焦点位置(距離)を微調整する機構を備えている。集光レンズ142の焦点位置(距離)の微調整としては、例えば、マイクロメータで集光レンズ142を微小移動するマイクロメータ付き光学ステージなどを使用できる。より具体的には、例えば、集光レンズ142を搭載したステージの移動距離が±3mm、マイクロメータの最小目盛が10μmの精密光学ステージ等が使用でき、適切である。
【0094】
図1から図3に実施例として示すように、光照射部140の集光レンズ142で形成された照射光148が、サンプル154へ照射する状態での最大入射角θiは、光照射部140へ入射する入射光126の円形光ビームの直径D0と、集光レンズ142の焦点距離fとによって、次のように近似的に求められる。
[数5]
θi=tan-1(D0/2f) (式5)
【0095】
例えば、焦点距離f=10mmの集光レンズ142を用いて、D0=1.5mmのレーザ光ビームを集光させて、試料部150のサンプル154へ照射する場合、図3に示す最大入射角θiは4.3度であり、入射角度θ<4.3度の照射光148が、サンプル154に照射される。
【0096】
また、例えば、焦点距離f=4mmの集光レンズ142を用いて、D0=1.5mmのレーザ光ビームを集光させて、試料部150のサンプル154へ照射する場合、最大入射角θiは10.8度であり、入射角度θ<10.8度の照射光148が、測定サンプルサンプル154に照射される。集光レンズ142の焦点距離fが短くなるにつれて、最大入射角θiが大きくなり、透過光164の最大角度θ0も大きくなる。この結果測定散乱角θSが減少する。一方上述のとおり、最小ビームスポット157のサイズWを狭くでき、分析微小領域156が狭くなる。
【0097】
光照射部140によって、サンプル154へ照射する照射光148の最大入射角θiは、0.5度から20度の範囲が好ましく、特に0.5度から10度の範囲が好適である。照射光148の最大入射角θiを上述の条件で設定し、最大入射角θi以下の入射角度にある照射光148をサンプル154に入射して、サンプル154から散乱光を発生させることが望ましい。
【0098】
サンプル154へ照射する照射光148の最大入射角度θiは、より正確には、光照射部140の集光レンズ142の焦点距離fと、集光レンズ142へ入射させる入射光126の光ビームのサイズ(直径)と、集光レンズ142とサンプル154との距離と、サンプル154自体の屈折率や透過光がサンプル154を通過する光軸方向の長さ(光路長)と、サンプル154を収容するサンプルセル152の形状やその構成部材の材質(屈折率)等によって決定される。
【0099】
図3に示す最大入射角度θiは、0.5°よりも小さくてもよい。θi=0°、つまり、測定試料部4のサンプル154へ入射する光として、平行光(コリメート光)であってもよい。この場合、光照射部140を構成する、例えばレンズとピンホールと光学絞り等の光学素子を組み合わせたビーム光形成用の光学素子群を用いて、サンプル154へ照射する光ビームのサイズを調整して、サンプル154へ平行光(コリメート光)を入射させる。
【0100】
具体的な集光レンズ142としては、焦点距離が短く高いNAをもつ対物レンズが特に好適である。より具体的には、作動距離WDが比較的長く、無限遠補正の対物レンズが特に好ましい。集光レンズ142として、結像レンズが無い場合でも拡大像を結像できる、有限系タイプの顕微鏡用対物レンズを用いることも可能である。
【0101】
例えば、集光レンズ142として好適である、これらの対物レンズのNAの値は、それぞれ、5倍の対物レンズでは0.13、10倍の対物レンズでは0.3、20倍の対物レンズでは0.4、50倍の対物レンズでは0.55、及び100倍の対物レンズでは0.8である。また、例えば、好適である集光レンズ142としてのこれらの対物レンズの作動距離WDは、2mm(100倍の対物レンズの場合)~11.6mm(5倍の対物レンズの場合)程度と比較的長い。
【0102】
光照射部140の集光レンズ142として、例えば、無限遠補正の長作動距離用対物レンズで、20倍対物レンズ(焦点距離fが10mm、作動距離WDが11.1mm、NAが0.4、分解能が0.7μm)や、50倍対物レンズ(fが4mm、WDが8.2mm、NAが0.55、分解能が0.5μm)などが好適である。
【0103】
(6)試料部150の説明
試料部150について説明する。試料部150は、サンプル154を収納するサンプルセル152と、サンプルセル152を支持すると共にサンプルセル152の位置を照射光148の光軸146に対して微細に移動し調整するサンプル位置調整機構158を有する。光照射部140の集光レンズ142により形成された照射光148をサンプル154へ照射する分析微小領域156をサンプル位置調整機構158により、光軸146に垂直な2次元平面上を、あるいは3次元方向に、微細に移動できる機能を有する。さらに図示していないがサンプル154の温度を制御できる機能を有している。
【0104】
サンプルセル152は、サンプル154が液体である場合には、その液体を収容し、サンプル154からの散乱光を透過できる容器である。サンプル154が薄膜等の固体である場合では、サンプル154は、その固体を収容して固定し、サンプル154からの散乱光を透過できる構造であっても良い。さらに例えば、ガラス基板等の透明な基板上に形成された薄膜等を測定対象とする場合には、薄膜等を形成する基板自体が、サンプルセル152として機能し、上記基板上に形成された薄膜等がサンプル154として作用する。
【0105】
サンプルセル152は、サンプル位置調整機構158によって設置位置が調整可能である。調整が終了した後に、その上で計測動作に入る。サンプル154に於ける解析に望ましい計測スポットを見つけ、望ましい計測スポットにおいて、DLS計測やSLS計測の両方に利用できるデータを散乱光検出部200で計測して記憶装置290に取り込むことが望ましい。このため、以下で説明するが、調整用として光照射部140から照射光148を照射し、この照射光148の照射により発生した小角散乱光160を散乱光検出部200で計測し、計測結果に基づく画像を解析部250の入出力装置266において、調整用画像として表示する。この調整用画像を見ながら、サンプルセル152を、例えば光軸146に垂直な面上に於いて移動し、調整用画像に表示される画像が望ましい画像となる状態の照射位置を見つけることができる。この調整用画像により、調整が非常に効率的に最適に領域、分析微小領域156として設定することができる。
【0106】
サンプルセル152は、サンプル154が液体である場合には、図3に記載のサンプルセル152の入射面151と透過面153が平面となる角型セルを用いることが好ましい。また、光照射部140による照射光148を液体のサンプル154へスポット状に照射し、小角散乱光160を効率よく発生し測定するためには、サンプル154を通過する照射光148の光軸方向の長さであるサンプル154の光路長LSは、できる限り短いことが好ましい。サンプル154の光路長LSが短いほど、光照射部140の集光レンズ142により形成された照射光148のスポット状ビームは、サンプル154の中ではほとんど広がらず、サンプル154の局所部分から散乱光を放出させることができ、サンプル154内の局所的な分析が可能となる。
【0107】
そのため、サンプル154を収容するサンプルセル152は、光軸方向の長さである光路長LSが短い、つまり、可能な限り薄いサンプルセル152が好ましい。例えばサンプル154の光路長LSは1mm以下が好ましく、さらに0.5mm以下が好適である。従ってサンプルセル152の入射面151と透過面153との間の長さは、同程度のサイズ、すなわち1mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましい。また、使用するサンプル154の容量は、数百μl以下から数十μl以下が好ましい。上述のlはリットルを表す。
【0108】
このため、液体のサンプル154とするサンプルセル152として、例えば、2つの透明な平板状基板で、特定の厚さの平板状のスペーサーを挟み、このスペーサーによって形成される基板間にサンプル154を注入し保持する、サンドイッチ型構造のサンプルセル152を用いることが好適である。前方小角散乱光測定の場合、上記の2つの透明な平板状基板のうち、光照射部140からの照射光148が一方の基板側から入射して(入射側)、サンプル154を通過し、もう一方の基板側から放射される散乱光を測定する。また、後方小角散乱光測定の場合では、上記の2つの透明な平板状基板のうち、光照射部140から照射光148が一方の基板から入射して、この同じ基板側から放射される散乱光を測定する。すなわち、サンプル154の一方の基板側で、サンプル154への光入射と、散乱光放射が行われる。
【0109】
具体的には、上記の透明な平板状基板として、入射光側と散乱光放射側で、測定する光の波長領域で透明性に優れた光学材料を用いることが好ましい。このため、各種透明ガラスや透明プラスチック等が好適である。
【0110】
サンプル154が、タンパク質、ペプチド、核酸などの生体分子やその凝集体を含む溶液の場合、10度以下の小さい散乱角範囲で、特に8度以下の散乱角において、散乱光が顕著に大きく、小角散乱光が顕著である。サンプル154からの散乱光は、透明なサンプルセル152を通過して外部へ放出されるために、入射面151と透過面153で屈折の影響を受ける。
【0111】
また上述したように、光照射部140の集光レンズ142によって、好ましい最大入射角θiが0.5度から20度の範囲、特に最大入射角θiが0.5度から10度の範囲の入射角度で、サンプル154へ照射光148を入射させることが好ましい。サンプル154の入射光側の入射角度も、小角散乱光160の散乱角と同じ様に、小さい角度であることが好ましい。なお、本実施例においては、サンプルセル152の入射面151と透過面153が平板状であるために、その厚さがある程度薄ければ、入射角度が20度以下、特に10度以下と小角入射であって、散乱角度が10度以下という小角では、上記のような屈折に伴う屈折角における補正を特に必要としない。すなわち、ある特定程度の薄い平板状のサンプルセル152であれば、小角の入射角の照射光148に対する小角散乱光の測定において、サンプルセル152における屈折角を考慮した散乱角度の補正は、特に必要ではなくなる。
【0112】
従って、小角散乱光160の測定において、サンプルセル152を構成する入射面151と透過面153の平板は、可能な限り薄いことが好適である。具体的には、小角入射の照射光148における小角散乱光160の測定の場合、サンプルセル152の入射面151平板の厚さtinと透過面153の平板の厚さtoutは、光照射部140の集光レンズ142へ入射する入射光126の径D0の1/10~1/5の範囲以下が好ましい。すなわち、厚さtin<D0/10~D0/5、厚さtout<D0/10~D0/5の条件が好ましい。特に厚さtin<D0/10、厚さtout<D0/10がより好適である。
【0113】
また、小さい散乱角度の前方小角散乱光の発生が顕著である、タンパク質、ペプチド、核酸などの生体分子やその凝集体を含む溶液やプラスチックなどの高分子等の結晶粒を形成する固体薄膜などでは、サンプル154の構造や光学的な配置等によっては、照射光148の入射側と同じ側に散乱光が出射されることがある。この場合には、サンプル154から散乱光が照射光148の入射側で検出される。すなわち、サンプル154によっては、後方小角散乱光が前方小角散乱光より顕著に現れる場合がある。後方小角散乱光は、照射光148の透過光164の光軸146からの散乱角度が170度以上、180度(入射光の反転方向)までの散乱角範囲で、特に172度~180度の散乱角における散乱光である。
【0114】
後方小角散乱光は、具体的には、例えば、サンプル154への照射光148がサンプル154を収納しているサンプルセル152の反対側の壁で反射し、その反射光がサンプル154で小角散乱光を発生させ、照射光148の入射側と同じ側で散乱光が放射される。この場合は、後方小角散乱光を測定することになり、例えば、2つの透明な平板状基板で構成するサンプルセル152の入射側の平板は、散乱光出射側も兼ねるために、前方小角散乱光の測定と同様に、薄いことが好ましい。しかし、もう一方の反対側の平板は厚くても良く、測定サンプルを通過する透過光164を効率良く反射させることができればよい。後方小角散乱光を測定する場合に使用するサンプルセル152では、照射光148の前方側に設けられる平板は、光を反射する材質であればよく、ガラスをはじめ、各種プラスチックなどが使用できる。使用する上記前方側の平板は、それ自体から散乱光を放出しないような表面が滑らかであることが必要であり、上記透過光をよく反射することが好適である。
【0115】
また、サンプルセル152を構成する入射面151と透過面153の平板は、同じ材質及び同じ厚さの透明部材であってもよく、また異なる材質及び異なる厚さの部材であってもよい。同じ材質及び厚さの透明部材により、入射側と散乱光出射側の平板状基板を構成した場合には、サンプルセル152において入射面151と透過面153の区別はなくなる。すなわち、これらのどちら側から照射光148を入射させてもよい。この場合、サンプルセル152の平板として、例えば、同一規格の厚さ0.2mm以下のカバーガラスを用いることが可能である。
【0116】
サンプルセル152の上記の平板状スペーサーとしては、ガラスをはじめ、ポリスチレン、ポリプロピレン、フッ素ゴムやシリコンゴム等が適する。特にシリコンゴムが好ましく、シートやフイルムを使用する。シリコンゴムは、ガラス基板等との密着性が良く、サンプルセル152をバッチ法で分析する場合、数時間程度以内であれば、隙間からの溶媒蒸発でサンプル154の各種溶質の濃度変化は、ほとんど問題にならない。しかしながら、数十時間以上の長時間にわたり、測定サンプル溶液をサンプルセル152に保持した状態で使用する場合などでは、更に液漏れ防止のために、スペーサーと平板状基板との間をシリコングリースやフッ素グリース等でシールすることが好適である。
【0117】
サンプル154の溶媒が、エタノールやアセトニトリルなどの有機系である場合、サンプルセル152の上記スペーサーとして使用するシリコンゴムは、ガラス基板等との密着性が弱くなる。その場合、スペーサーと平板状基板との間をシリコングリースやフッ素グリース等でシールしたり、クリップ等を使用してサンプルセル152の平板へある程度の圧力を加えた状態で保持したりして、シリコンゴムとガラス基板等との密着性を高め、隙間からの溶媒蒸発や液漏れを防止する。あるいは、サンプルセル152を保持するサンプル位置調整機構158で平板基板へある程度の圧力を加えて保持する。
【0118】
上述したように、サンプル154を構成するスペーサーと、2枚の平板とは、サンプル154を保持するサンプルセル152として機能する。このため、例えば、平板状スペーサー内に円形、楕円形、長方形等の任意形状の溝孔を形成し、2枚の平板でこのスペーサーをサンドイッチすることで形成される溝孔空間に、サンプル154を収納することができる。すなわち、サンプルセル152は、この溝孔空間にサンプル154が注入され、保持される。
【0119】
溶液や固体薄膜等のサンプル154の分析は、多くは均一で一様として行われる。そのため、小角散乱光160の測定によるサンプル154の分析からは、光が照射されているサンプルの一部、あるいは全てにサンプル154の例えば粒子や凝集体等の運動や構造などに関する情報として、平均の情報が得られる。しかしながら、次のようなサンプル154の分析では、上述のような平均の情報のみならず、局所的な分析が必要になる。すなわち、例えば、液―液相分離のように液体中で局所的に構成成分の濃度差が発生するサンプル、タンパク質やペプチド及び核酸などの結晶化溶液について凝集体の形成や結晶核の形成が溶液中で不均一に生じるようなサンプル、高分子等の薄膜等で結晶粒の形成が不均一に発生するサンプルなど、が分析対象となる。このようなサンプル154を分析対象とする場合、散乱光の測定によって顕微鏡スケールでの測定サンプル内の分布を計測することになる。
【0120】
試料部150に用いる上記スペーサーの厚さtspは、サンプル154における光路長に対応する。集光レンズ142からの照射光148をサンプル154にできるだけ拡大させずに、適宜の微小スポットを保持したまま、サンプル154を通過させ、サンプル154において微小な照射部分からの散乱光を効率よく放射させるために、測定対象のサンプル154の光路長は短く、サンプル154の容量も微量であることが好適である。具体的には、測定対象のサンプル154の容量は、例えば、25μl以下と微量であることが好適である。この場合、上記スペーサーの厚さtspは、光照射部140の集光レンズ142へ入射する入射光126の径程度、例えば1mm以下、特に0.5mm以下が好適である。
【0121】
試料部150内にサンプル154を封止した状態での散乱光測定、すなわち、バッチ法におけるサンプル分析の他に、分析の際に外部からサンプルセル152へサンプル液や、凝集化剤や結晶化剤等の溶液を注入したり排出したりできるように構成することも可能である。この場合、サンプルセル152に液を注入、又は排出するための挿入口や排出口などを設けてもよい。その場合、サンプル154の散乱光測定による分析中に、各物質の濃度を調整したり、変化させたりして分析を行うことが可能である。
【0122】
サンプルセル152として、光吸収測定用の市販の角型や円筒形などの溶液セルを使用することも考えられる。多くの市販の溶液セルは、溶液セルの光路長LSが例えば5mm~1cmと長く、数ml以上のサンプル液が必要となるため、サンプルセル152として適用は難しい。しかし、市販の溶液セルの光路長が特に短い、例えば1mm程度以下のものであれば、利用することも可能である。ただし、この場合、前方小角散乱光の測定、又は後方小角散乱光の測定では、溶液セルの入射側と散乱光側の厚さ(例えば、厚さ1mm程度)に対して、サンプルセル152における屈折角を考慮した集光光の入射角度、及び散乱角度についての補正が必要となる。
【0123】
サンプルセル152を支持するサンプル位置調整機構158は、サンプル154への入射角度を調整するための回転機構や傾斜機構、入射光ビームの中心軸である光軸に対する位置移動等を行う機構を備える。
【0124】
サンプルセル152への入射光中心の入射角度としては、光照射部140の集光レンズ142による照射光148の中心軸、つまり、入射光126の光軸146に対して垂直(入射角度0°)が特に好ましい。また、垂直入射の入射角度付近の僅かな角度、例えば入射角度が1~2°以下であればよく、サンプルセル152の反射光が迷光となって散乱光検出部200の光検出器202の受光部へ入射しないように、サンプル位置調整機構158により入射角度を調整する。このような集光レンズ142の入射角度の調整には、回転ステージや傾斜ステージ等を利用できる。また、特に回転ステージや傾斜ステージ等を使用しなくても、サンプルセル152をサンプル位置調整機構158に固定する際に、例えば入射角度が1~2°以下で入射角度を設定できるように構成されていればよい。
【0125】
サンプルセル152を支持するサンプル位置調整機構158には、照射光148の光軸146に対して垂直方向にサンプルセル152を2次元で微小移動させ、サンプル154の面内方向で微小スポットの入射光ビームを相対的に走査して、サンプル154の微小領域からの散乱光を計測する。これにより、サンプル154の顕微鏡スケールにおける分析を行うことができる。
【0126】
サンプルセル152の微小移動は、具体的には、例えば、支持ホルダーを軸とXY軸の2軸ステージ上に設置して、X軸とY軸の2軸ステージを用いて行う。また、さらに支持ホルダーを光軸方向のZ軸ステージ上に設置して、つまり、支持ホルダーをX軸とY軸、Z軸の3軸ステージ上に設置して、サンプルセル152を微小移動させてもよい。また、サンプル154の局所的分析で、ある一次元的分布を調査する場合などでは、例えば、支持ホルダーをX軸ステージ又はY軸ステージ上に設置して、この1軸ステージを用いてサンプルセル152を微小移動させてもよい。
【0127】
また、支持ホルダーとして、サンプルセル152を微小移動させるためのXY2軸ステージ、或いはXYZ3軸ステージを使用してもよい。この場合、サンプルセル152をXY2軸ステージ、或いはXYZ3軸ステージに設置し、保持する。
【0128】
サンプルセル152を微小移動させる機構であるサンプル位置調整機構158として、上述したように、例えば、光を通過させることができる貫通孔のあるX軸とY軸の2軸ステージ、或いはX軸とY軸、Z軸の3軸ステージを使用できる。X軸とY軸の2軸、或いはX軸とY軸、Z軸の3軸の多軸ステージとして、マイクロメータで直動移動する手動型ステージで、例えば、テーブル面サイズが120mm×120mm、移動量が±20mm、マイクロメータの最小目盛10μmの多軸ステージ等が使用可能である。光照射部140の集光レンズ142によってサンプル154へ照射する照射光148の最小ビームスポット157が、例えば、直径10μm以下である場合、上記ステージをマイクロメータで、例えば最小10μmで移動させることによって、サンプル154内の照射位置を走査させることができる。従って、散乱光計測によって、サンプル154に対して顕微鏡スケールの局所分析が可能となる。
【0129】
また、サンプル154を極微動走査して、例えば分解能10μm程度以下の顕微鏡的分析を行う場合には、例えば、ピエゾ素子駆動の超精密ステージをサンプル位置調整機構158として利用できる。ピエゾ素子駆動の超精密ステージとして、例えば、テーブル面サイズが120mm×120mm、移動量100μm、最小位置決め分解能0.01μmなどが使用できる。ここで、サンプル154の走査において、マイクロメータ付きステージと、ピエゾ素子駆動のステージとを組み合わせて多軸ステージを構成して使用してもよい。この場合、例えば、サンプル154の走査で、10μm以上の微動移動ではマイクロメータ付きステージを使用し、10μm程度以下の極微動ではピエゾ素子駆動ステージを使用する。
【0130】
分析対象である、ペプチドや核酸等の低中分子、タンパク質等の生体高分子、金属やプラスチック等無機物などの粒子やそれら凝集体は、液体中で溶媒分子、例えば水溶液では水分子による熱運動による衝突を受けて、ランダムな拡散であるブラウン運動をする。このようなブラウン運動は、粒子や凝集体が存在する液の温度Tに対して敏感である。例えば、球形粒子のブラウン運動の拡散係数D[m2/s]は、次式のようにストークス・アインシュタインの式で表され、液体の温度T[K]に比例する。
[数6]
D=kBT/(6πηa) (6)
ここで、η[kg/m・s]は液体媒質の粘性率(粘性係数、粘度)、a[m]は粒子や凝集体の半径、kBはボルツマン定数(kB=1.380×10―23J/K)である。
動的光散乱(DLS)測定から、球形粒子として散乱体の拡散係数Dを評価することによって、上記のストークス・アインシュタインの式により、球形粒子のサイズ(半径)aを、a=kBT/(6πηD)から見積もることが可能である。ここで、液体媒質の粘性率ηと液体の温度Tは、別な適切な方法で測定して、それらの測定値が用いられる。なお、液体のサンプル154の温度は、所定の一定温度に調整して制御した状態で、散乱光の測定を行うことが好ましい
【0131】
一方、散乱光の測定中に、サンプル154の温度を変化させ、液体中の粒子や凝集体の状態をリアルタイムで分析するニーズが存在する。具体的には、例えば、タンパク質やペプチド等の溶液において、温度に依存して凝集体が形成される過程を分析する場合などである。例えば、サンプルからの散乱光を計測しながら、サンプルの温度を昇温、又は降温させて、凝集体の形成状態をリアルタイムで分析・評価する。このような分析の場合、液体のサンプル154の温度を所定の昇温速度、又は所定の降温速度で変化させながら、散乱光の計測を行う。従って、液体のサンプル154の温度は、所定の昇温速度、又は所定の降温速度で変化させることができ、サンプル154の温度を調整して制御した状態で、サンプル154が発生する散乱光の測定を行うことが可能となる。
【0132】
また、別な分析対象である、プラスチック等のような高分子等の結晶粒を形成する薄膜の場合では、結晶粒等の形成は温度に対して敏感に変化する。従って、液体のサンプル154と同様に、薄膜等のサンプル154の温度を所定の一定温度に維持するように制御した状態で、サンプル154が発生する散乱光の測定を行う。また、薄膜等のサンプル154の場合は、サンプル154の温度を、所定の昇温速度、又は所定の降温速度で変化させ、このような環境下でのサンプル154が発生する散乱光を測定することにより、薄膜等のサンプル154の分析を行うことが可能となる。
【0133】
光照射部140は、サンプル154の温度を調整して制御する機構を備える。サンプル154の温度を調整・制御する機器としては、各種温度制御器や冷却加熱ステージ等が使用できる。これらの温度制御器では、例えば、ヒーター等による加熱や冷媒等による冷却、ペルチェ素子等による加熱や冷却によって温度を変化させ、白金抵抗体や半導体等の温度センサで対象物の温度を計測して、加熱と冷却機構にフィードバックしながら、例えばPID制御方式で温度が調整・制御される。サンプル154の温度の調整・制御は、試料部150を収納するサンプルセル152を介して行うため、サンプル154を含む試料部150の熱的性質(熱容量、熱伝導率など)を考慮して、適切な温度制御器を使用する。
【0134】
温度制御器によってサンプル154の温度を室温以下で冷却する場合、結露を防止する必要がある。冷却による結露によってサンプルセル152に水滴が付着し、水滴による散乱光が強いバックノイズとなって、サンプル154の散乱光の測定が難しくなる。そのため、窒素やアルゴン等の不活性ガスをサンプルセル152の外側周囲部分に導入することが好ましく、温度制御器のサンプルセル152を取り付け部分などに不活性ガスの導入口を設ける。また、不活性ガスの導入は、プラスチック等のような高分子等の結晶粒を形成する薄膜等のサンプルの加熱時に発生の恐れある酸化を防止する効果があるため、特に高温での使用では不活性ガスの導入は好ましい。
【0135】
サンプル154の温度を調整・制御する機器として、ペルチェ素子等を使用した冷却加熱ステージは、小さなサイズのペルチェ素子等で加熱と冷却が行えるために小型であり、小サイズのサンプルセル152に対して特に好ましい。より具体的には、例えば、顕微鏡用のペルチェ式冷却加熱ステージが好適である。顕微鏡用ペルチェ式冷却加熱ステージは、例えば、ペルチェ素子と水循環ユニットの組み合わせによってサンプルの加熱と冷却を行う。
【0136】
液体のサンプル154が測定対象である場合、例えば、―20℃~120℃の温度範囲において、±0.05℃の精度でサンプルの温度を調整・制御できる。また、昇温・降温速度を例えば0.01~20℃/minで行える。
【0137】
また、薄膜等の固体物が測定対象である場合、例えば、―190℃又は室温~600℃の温度範囲において、温度精度±0.2℃(―190℃~室温)、±0.05℃(室温~600℃)でサンプルの温度を調整・制御できる。また、昇温・降温速度を例えば0.01℃/min~20℃/min(―190℃~室温)、0.01℃/min~150℃/min(室温~600℃)で行える。
【0138】
顕微鏡用のペルチェ式冷却加熱ステージには、サンプル154の顕微鏡観察を可能とする光学窓が設けられており、顕微鏡観察用の対物レンズに対応できる。顕微鏡用のペルチェ式冷却加熱ステージは、例えば、20倍、50倍、100倍の長作動距離用の対物レンズに対応し、サンプルの温度制御下においてサンプルの顕微鏡観察が可能であるため、実施例に係る粒子・凝集体の分析装置におけるサンプル154の温度制御器として好適である。
【0139】
液体のサンプル154を収納するサンプルセル152は、サンプル154の温度を調整・制御する構成を備えている。冷却加熱ステージ等の冷却加熱部位に直接、取り付け保持し、サンプル154の温度制御を行ってもよい。すなわち、この場合、冷却加熱ステージ自体が、試料部150の支持ホルダーとして機能を有し、サンプルセル152を保持する。また、サンプル154が薄膜等の固体物である場合には、上記冷却加熱ステージ等の冷却加熱部位にサンプル154を直接取り付けて保持し、サンプル154の温度制御を行ってもよい。
【0140】
サンプル154の温度を調整・制御する機器である、冷却加熱ステージ等は、散乱光測定によるサンプル154の顕微鏡的分析を行うためにサンプルセル152を微動走査する、上記のX軸とY軸の2軸、或いはX軸とY軸、Z軸の3軸の多軸ステージに搭載してもよい。また、冷却加熱ステージ等において、サンプルセル152やサンプル154自体を、例えばX軸とY軸の2軸方向に微小移動させる機構を備えてもよい。具体的には、例えば冷却加熱ステージ等に内蔵のマイクロメータ―ステージによってサンプルセル152や測定サンプルを微小走査し、サンプル154の局所領域からの散乱光を計測して、顕微鏡的分析を行うことができる。
【0141】
(7)平行散乱光変換部170の説明
平行散乱光変換部170は、試料部150に照射された照射光148のビームから放射されるサンプル154による散乱光の内の、小角散乱光160を、測定散乱角θSの範囲で取り込み、光軸146に平行な平行小角散乱光168に変換する。本実施例は、前方の小角散乱光160を使用する場合について記載しているが、考え方は後方の小角散乱光に対しても同じであり、同様の作用および効果が得られる。具体的には、光照射部140の集光レンズ142により、既定の大きさに集光した照射光148が、サンプル154に照射される。サンプル154からの透過光164に加え、小角散乱光が前方に放出される。この時後方にも同時に小角散乱光が放出されるが、上述のとおり、本実施例では前方に放出された小角散乱光を使用する構成を、前方および後方に向けて発生する散乱光の計測および分析を行う分析装置の代表例として説明する。照射光148がサンプル154の最小ビームスポット157に照射されたとすると、最小ビームスポット157から測定散乱角θSの範囲内において放出された小角散乱光160が、レンズ172に入射して、レンズ172により、平行光(コリメート光)である平行小角散乱光168に変換される。最小ビームスポット157の径は例えば、数十μmから数百μmの範囲であり、10μm以上で100μm以下の範囲が好適である図。
【0142】
平行散乱光変換部170によって光軸146に平行な平行小角散乱光168に変換され、平行小角散乱光168は、散乱光検出部200に入射して、平行小角散乱光168の光の強度が検出される。なお、後方に発生した小角散乱光を利用する場合は、後方に配置された図示しない平行散乱光変換部170により、光軸146に平行な光に変換されてその強度が、散乱光検出部200と同様の装置で検出される。具体的には、散乱光検出部200は、平行小角散乱光168を、所定の散乱角範囲の強度分布として一度に測定する、あるいは、所定の時間範囲で、上記強度分布を連続して測定する。なお、散乱光検出部200は、平行前方小角散乱光又は平行後方小角散乱光をそれぞれ平行前方小角散乱光像又は平行後方小角散乱光像として、動画撮影してもよい。
【0143】
散乱光検出部200による測定結果は解析部250に送られ、解析部250は、散乱光検出部200により測定された平行小角散乱光168の強度分布から、サンプル154の粒子や凝集体の状態を解析する。このため、解析部250は、例えば、散乱光検出部200により測定された平行小角散乱光168の計測データを一時的に演算処理部270の記憶装置290に記憶し、必要に応じて記憶装置290から読出し、解析を行う。
【0144】
平行散乱光変換部170は、レンズ172と、レンズ172を支える支持装置174を有している。支持装置174は、例えばレンズ172を支持し、レンズ172の位置や傾き角を調整する機構を備えている。
【0145】
平行散乱光変換部170のレンズ172としては、各種レンズ、例えば球面平凸レンズ、球面両凸レンズ、円筒面平凸レンズ並びに円筒面両凸レンズ(以下、単に、「シリンドリカルレンズ」と呼ぶ)等の単一レンズ、及び光学的性質の異なる単レンズを2つ以上貼り合わせた各種アクロマティックレンズ等を用いることができる。レンズ172は、所定の散乱角度範囲で広がった散乱光を効率よく取り込み、平行光に変換する作用を備えるように、上記の単一レンズ、アクロマティックレンズ、又はこれら各種レンズを組み合わせた光学系等で構成されている。
【0146】
平行散乱光変換部170のレンズ172は、光照射部140の集光レンズ142と散乱光検出部200の光検出器202との間に配置され、さらにサンプル154からの小角散乱光160を光軸146に平行な平行小角散乱光168に変換するのに好適な位置に配置される。レンズ172によって変換された平行小角散乱光168が、散乱光検出部200の光検出器202の検出面に垂直に入射するように散乱光検出部200が配置される。すなわち、散乱光検出部200の光検出器202は、光軸146に対して垂直になるように配置される。
【0147】
平行散乱光変換部170を構成するレンズとしては、球面収差の少ないアクロマティックレンズが好適である。例えば円形のアクロマティックレンズを使用した場合には、サンプル154の微小な円形スポット状光、図3に示す最小ビームスポット157、の照射領域から放射される散乱光を変換して、平行度の高い平行小角散乱光168を比較的容易に得ることができる。また、平行散乱光変換部170のレンズ172として、円形以外の形状、例えば円筒形のアクロマティックシリンダーレンズを使用することができる。単一レンズのシリンドリカルレンズやアクロマティックシリンダーレンズの使用の場合、それら円筒形の曲面方向のみで平行化された平行小角散乱光168が得られる。
【0148】
図2に記載の構成において、試料部150のサンプルセル152から平行散乱光変換部170のレンズ172までの距離を距離LBとすると、距離LBは、レンズ172の焦点距離f、入射光の入射角範囲、入射光のビームサイズ、サンプル154における照射光148のサイズ、及びサンプルセル152の構造等に依存する。これらの要因の中で特に、平行散乱光変換部170に使用するレンズ172の焦点距離fに大きく依存する。平行散乱光変換部170のレンズ172を配置する位置は、サンプル154の分析微小領域156から小角散乱光160が放射されるとすると、理論上は、距離LBは焦点距離fと等しくなる。
【0149】
しかしながら、平行散乱光変換部170のレンズ172の最も適切な配置は、レンズ172によって、サンプル154からの小角散乱光160が光軸146に平行(コリメート)となる位置である。具体的には、平行散乱光変換部170のレンズ172を通過した散乱光が平行像となり、平行な小角散乱光像となる位置に配置する。つまり、平行小角散乱光168が得られるレンズの位置が、平行散乱光変換部170のレンズ172を配置する位置となる。
【0150】
より具体的には、平行散乱光変換部170を構成するレンズとしてレンズ172は、例えば焦点距離fが50mm~150mmの範囲の直径50mmφの円形アクロマティックレンズを使用することができる。直径が同じ円形レンズでは、焦点距離が短いほど、サンプル154からより広い散乱角度範囲の散乱光を取り込むことができる。
【0151】
例えば、純水に分散させた直径0.1μmのラテックス粒子を測定対象とするサンプル154対して、光照射部140の集光レンズ142として、例えば20倍の無限遠補正の対物レンズを使用する。なお本対物レンズの焦点距離fは10mm、開口数NAは0.4である。図2において、集光レンズ142からサンプル154までの距離LAを例えば10mmとなるように配置する。図3に示す最大入射角θiが4.3度の照射光148をサンプルセル152へ入射する。ここでは、サンプル154を収納するサンプルセル152は、厚さ0.15mmの顕微鏡用カバーガラスの2枚で、直径7mmの孔を空けた厚さ0.5mmのシリコンゴムシートを挟んだ構造で構成している。この場合、平行散乱光変換部170のレンズ172として、例えば、焦点距離fが75mmの直径50mmφの円形アクロマティックレンズをその焦点距離75mmよりもやや短い距離LBが68mmの位置に配置する。レンズ172によって、サンプル154から、放射角θ0Sが20度より小さい角度範囲にある前方小角散乱光を取り込むことができ、平行な前方小角散乱光に変換できる。
【0152】
本実施例において、平行散乱光変換部170のレンズ172として、焦点距離が短く大きなNAをもつ対物レンズを使用することができる。特に作動距離WDが比較的長く、無限遠補正の対物レンズが好適である。試料部150のサンプル154からの小角散乱光160を、平行散乱光変換部170のレンズ172として対物レンズを使用した場合、対物レンズで平行小角散乱光168に正確に変換することは、上述の各種レンズ、特に焦点距離fの長い、例えば焦点距離fが75mmのアクロマティックレンズ等の場合と比べて、対物レンズの焦点距離が短いゆえに、対物レンズの位置調整が難しくなる。しかしながら、平行散乱光変換部170のレンズ172の位置を調整する機構を備える支持装置174に、精密光学ステージ等、例えばマイクロメータ使用の多軸精密光学ステージ等を使用して、対物レンズの微小な位置、特にサンプルセル152とレンズ172に使用する対物レンズとの間の距離定めることになる対物レンズの位置を微調整できる構造とすることにより、試料部150のサンプル154からの小角散乱光160を、対物レンズによって正確に変換できる。すなわち正確な平行小角散乱光168を得ることができる。
【0153】
なお、平行散乱光変換部170を用いずに、小角散乱光160を直接、散乱光検出部200の光検出器202の受光部に導くような構成をしてもよい。すなわち、平行散乱光変換部170を用いずに、光照射部140からの小角散乱光160を、一度に散乱光検出部200で測定するような構成にすることもできる。
【0154】
(8)透過光遮光部176の説明
サンプル154を通過した透過光164は、サンプル154からの散乱光に比べてその強度は極めて大きい。そのため、散乱光検出部200の光検出器202によって微弱な散乱光を測定するには、強い透過光が散乱光検出部200へ入射することによる光検出信号のスケールオーバーを避ける必要がある。また、透過光は、散乱光検出部200への迷光の原因となり、微弱な散乱光計測を妨げる。従って、図1図2に示すように透過光遮光部176によって、サンプル154からの透過光164が散乱光検出部200に入射しないように防止することが好適である。すなわち、透過光遮光部176は、サンプル154の透過光164が散乱光検出部200へ入射するのを遮断し、又は透過光164の強度を減衰させる。
【0155】
サンプル154からの透過光164は、サンプル154からの散乱光、特に前方の小角散乱光160と同様に、平行散乱光変換部170のレンズ172を通過するため、レンズ172のレンズ作用を受けて進む。すなわち、光照射部140の集光レンズ142で形成された照射光148がサンプル154へ入射し、その透過光164は、所定の最大透過角度θ0の範囲内で、様々な放射角度で広がってサンプル154から放射して、サンプル154からの散乱光と同様にレンズ172に取り込まれる。そして、レンズ172によって、サンプル154からの散乱光と同様、透過光164は平行透過光166に変換され、レンズ172で平行化された散乱光、特に平行小角散乱光168と平行して、散乱光検出部200の光検出器202へ進む。そのため、透過光遮光部176は、サンプル154からの透過光164が散乱光検出部200の光検出器202へ入射するのを防止するように、レンズ172によって平行化された平行透過光166の光軸146上に設置することが好適である。透過光遮光部176は、特にサンプル154からの小角散乱光160を計測する場合、例えば、レンズ172と散乱光検出部200の検出面との間、又はサンプルセル152とレンズ172との間に配置する。
【0156】
透過光遮光部176は、各種の吸収体やミラーなどを用いることができる。さらに透過光遮光部176は、散乱光を発生しないことが必要である。透過光遮光部176の材料としては、透過光を遮断する機能、又は透過光の強度を減衰させ、さらに散乱光を発生しない材料で構成すれば、特に制限はない。例えば、透過光遮光部176の材料として、紙、木材、金属、プラスチック、ガラスなどを用いることが可能である。透過光を遮断する効果、又は透過光を減衰させる効果を高めるために、これらの表面に特に黒色につや消しを施すことが好ましい。透過光遮光部176として、各種光学素子も使用することができる。例えば、フィルター、ミラー、ハーフミラー、ビームスプリッター、及び光路変更用光学素子等を用いることが可能である。より具体的には、金属、金属膜、及び誘電体多層膜等の各種フィルターやミラー及びハーフミラー、偏光板や波長板等の偏光素子、光吸収物質を含有する吸収型NDフィルター、金属膜等の反射型NDフィルター、各種プリズムやレンズ等の光路変更用光学素子などを用いてもよい。
【0157】
サンプル154からの透過光の形状とそのサイズは、試料部150のサンプルセル152又はサンプル154へ入射する照射光148の形状と入射角度の範囲、サンプルセル152の構造、サンプル154における照射光148のスポットサイズ、集光レンズ142の形状と焦点距離fなどに依存する。そのため、平行散乱光変換部170に使用する部材の形状とそのサイズは、サンプル154からの透過光164の形状とサイズに応じて選択する。例えば、円形状の透過光である場合、それよりも大きなサイズの円盤状等の部材を使用する。透過光遮光部176がレンズ172と散乱光検出部200との間に配置される場合には、レンズ172によって平行透過光166は平行化され、或いは拡散されるため、透過光遮光部176の配置する位置における透過光の形状とサイズに対応した部材を使用する。
【0158】
透過光遮光部176は、サンプル154からの平行透過光166を遮断、あるいは減衰させる。しかしそれだけではなく、サンプル154からの散乱光も遮断、あるいは減衰させる。すなわち、透過光遮光部176は、散乱光検出部200の光検出器202による散乱光の測定では、影体となり、散乱光検出部200の受光面上で表れるその影の部分に対応する散乱角範囲では、散乱光の測定は困難である。従って、サンプル154からの平行小角散乱光168をより低角度側まで正確に測定することが望ましく、そのために、透過光遮光部176に使用する部材としては、可能な限りにその大きさを小さくすることが好適である。このため、透過光遮光部176には、遮る透過光ビームのサイズよりやや大きい部材を使用することが好適である。
【0159】
例えば、直径0.1μmのラテックス粒子の純水分散のサンプル154に対して、光照射部140の集光レンズ142として20倍の無限遠補正の対物レンズ(f=10mm、NA0.4)を使用し、図2に示すように、集光レンズ142からサンプル154までの距離LAが10mmの位置に配置する。図3に示す最大入射角θiが4.3度で照射光148をサンプルセル152へ入射させ、平行散乱光変換部170のレンズ172として、焦点距離fが75mmの直径50mmφの円形アクロマティックレンズを距離LBが68mmの位置に配置する。ここで、サンプル154を収納するサンプルセル152は、厚さ0.15mmの顕微鏡用カバーガラスの2枚で、直径7mmの孔を空けた厚さ0.5mmのシリコンゴムシートを挟んだ構造で構成している。上記の場合、サンプル154からの透過光164は、172によって平行化され、円形の平行透過光のビームの直径D1は、10mmである。従って、この場合、透過光遮光部176として、例えば黒色つや消しを施した直径12mmの金属製の円盤やロッド等を使用することが好適である。
【0160】
また、透過光遮光部176は平行散乱光変換部170と散乱光検出部200との間、又はサンプル154と平行散乱光変換部170との間のどちらかに配置することで、効果が得られる。透過光遮光部176をサンプル154と平行散乱光変換部170との間に設置する場合、試料部150のサンプルセル152又はサンプル154からの透過光が、サンプル154の微小な照射光ビームスポットである最小ビームスポット157からの透過光であるゆえに、透過光遮光部176の部材のサイズは、レンズ172を通過した平行透過光166を遮光する場合よりも、小さくすることが可能であり、すなわち、透過光遮光部176をより小型にすることができる。よりサイズの小さい透過光遮光部176となることで、より小角の散乱角で散乱光を測定することが可能となる。
【0161】
また、透過光遮光部176は、試料部150と散乱光検出部200との間で、透過光の光軸上で、散乱光検出部200の光検出器202への透過光を入射させないように配置する。また、透過光遮光部176は、透過光の光軸(進む方向)上に配置すればよく、サンプル154と散乱光検出部200との間において、その位置(距離)には制限はない。なお、透過光遮光部176は、後方の小角散乱光を測定する構成では、配置されなくてもよい。
【0162】
(9)散乱光検出部200の構成および作用効果の説明
散乱光検出部200は、受光面203を有する光検出器202を備えていて、光検出器202により、平行散乱光変換部170からの平行小角散乱光168を検知する。光検出器202の受光面203は多数の光検出素子で構成されている。各光検出素子11は入射した平行小角散乱光168の光強度に対応する電気信号に出力し、該電気信号は、増幅・冷却部212で増幅されて、解析部250へ送られる。
【0163】
散乱光検出部200の受光面203に平行小角散乱光168が垂直に入射することが重要である。このため散乱光検出部200には、光検出器202の受光面203を光軸146すなわち平行小角散乱光168に対して垂直な状態に調整するための、言い換えると、散乱光検出部200の受光面203の光軸146に対する角度を調整するための、角度調整機構が位置調整機構220に設けられている。散乱光検出部200は、光検出器202の各光検出素子11からの信号を増幅したり、散光検出器202を冷却したりする増幅・冷却部212を備え、さらに散乱光検出部200からの出力信号や光検出器202並びに増幅・冷却部212への制御信号を電気的に送受信するための制御インターフェース(図示せず)と、光検出器202の駆動電源(図示せず)等、を有している。
【0164】
散乱光検出部200による、小角散乱光160に関する前方小角散乱光像の画像の検出について、光検出器202を使用した例を以下説明する。しかし、前記小角散乱光160に基づく前方小角散乱光像の画像の検出は、光検出用カメラ204を使用しても同様に検出でき、以下の説明がそのまま適用できる。すなわち、図13図14に示すカメラレンズ206を備えた光検出用カメラ204を用いても前記小角散乱光160に基づく前方小角散乱光像の画像を同様に検出することができる。なお図13図14に記載の実施例は、具体的には、記散乱角フィルター180のリング状の開口182の作用により作られる前方小角散乱光像の画像についての説明である。しかし上述したように、図1から図9を用いて説明する前方小角散乱光像の画像の検出においても、散乱光検出部200の代わりに、同様に使用でき、同様の効果を奏する。
【0165】
光検出器202は、サンプル154の散乱光の検出に適した光検出器である。具体的には光検出器202は、マルチチャンネルのフォトダイオードアレイやリニアイメージセンサ等の多数の光センサ素子アレイ、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等を含むマルチチャンネル光検出器(多数画素センサから構成した光検出器)を備える。本実施例では、光検出器202として、多数の微小光検出素子を高密度に並べた、又は集積した大面積の光検出器であるマルチチャンネル光検出器を用いることが好ましい。マルチチャンネル光検出器を用いる構成では、光検出器202を固定した静止状態で、平行小角散乱光168の強度分布を例えば空間パターンの状態で一度に、短時間に計測することができる。つまり、この場合は、マルチチャンネル光検出器で散乱光が描く散乱光像を、静止画像として計測する。さらに、マルチチャンネル光検出器によって、平行小角散乱光168を連続撮影する、言い換えると動画撮影することで、上記強度分布が描く空間パターンの時間的変化即ち経時的変化を計測することができる。
【0166】
この場合、マルチチャンネル光検出器によって、平行小角散乱光168を画像として連続撮影して、得られたそれら散乱光像の動画像には、サンプル154に関するSLSとDLSが含まれている。すなわち、画像として撮影された散乱光強度の位置依存性、つまり散乱光の強度分布は、SLSに対応する。一方、撮影された散乱光像のある特定点あるいは特定位置に着目した、その点における散乱光強度の時間変化は、DLSに対応する。ある所定の時間間隔で散乱光像を連続撮影することによって、散乱光像上の着目点での散乱光強度の時間変化が取得できる。この取得データに基づいて、必要に応じ、散乱光像上の各点において言い換えると複数の部分に於いて、散乱光強度の時間変化に対する周波数パワースペクトルあるいは周波数パワースペクトルの変化を解析により解析部250から出力することができる。
【0167】
光検出器202は、例えば、100ms以下、より好適には、50ms以下の瞬時に、一度に、例えば、所定の散乱角範囲で散乱光を計測することが好ましい。光検出器202によって、平行散乱光変換部170からの平行小角散乱光168を、散乱光の像として連続撮影、すなわち動画撮影できることが好適である。光検出器202として、例えば、CMOSイメージセンサを含むマルチチャンネル光検出器(以下、単に「CMOSカメラ」)が特に好適である。CMOSカメラで、例えば、露光時間10ms、フレームレート100f/sで、あるいは50f/sで連続撮影の長さ(撮影の画像枚数)150枚~300枚で連続撮影が可能である。
【0168】
散乱光検出部200の光検出器202は、散乱光測定に使用する光源110の光波長付近で高い受光感度をもつことが好ましい。溶液中のペプチドや核酸等の低中分子、及びタンパク質等の生体高分子など、溶媒分子と強く相互作用している分子やその凝集体に対する散乱光は、液体中に分散し比較的溶媒分子との相互作用が小さい、ナノからサブミクロンの金属やプラスチック及び無機物など粒子やその凝集体の場合と比較して、一般に微弱である。比較的散乱強度が大きい、前方小角散乱光又は後方小角散乱光でさえも、上記の溶媒に分散した粒子や凝集体の散乱光と比較して極端に散乱光強度は小さいため、散乱光散乱光検出部200の光検出器202には、高い検出感度をもった光検出器を用いることが好ましい。
【0169】
光源110の光波長付近で光検出器202自体の量子効率が高いことは必要であって、さらに、微弱な散乱光を計測するために、光検出器202は高感度な状態で使用する。そのためには、光検出器202の暗電流ノイズをできるだけ抑制するために、光検出器202の受光部を冷却する。光検出器の受光部の冷却には、送風、水流循環、電子素子等によって行うことが可能であり、特にペルチェ素子の電子素子を用いた場合、素子が小型であるために光検出器に冷却器を内蔵できる。例えば、量子効率が50%以上の光検出器で、ペルチェ素子を使用して光検出器の受光部を―10℃以下に冷却して、暗電流ノイズを低下させて使用することが好ましい。
【0170】
散乱光検出部200に適した光検出器202としては、特に受光面のサイズが大きい、CCDイメージセンサをもつCCDカメラ、又はCMOSイメージセンサをもつCMOSカメラが好適である。微弱光計測用のCCDカメラ又はCMOSカメラが特に適しており、量子効率が50%~70%以上と高く、暗電流が非常に小さく、飽和電荷量が大きく、ダイナミックレンジの広いリニアイメージセンサを受光面にもつカメラが好ましい。これらのカメラには、暗電流を抑制するために、増幅・冷却部61等にペルチェ素子等の電子冷却器を内蔵し、例えば―10℃以下まで受光面を冷却するように構成してもよい。
【0171】
散乱光検出部200の光検出器202として、例えば、受光部のサイズが横14.0mm×高さ16.6mmで、最小ピクセルサイズ6.5μm(量子効率50%以上)の有効画素2160×2560チャンネル(ピクセル)の5.5メガピクセルのCMOSエリアイメージセンサをもつCMOSカメラを使用することができる。ペルチェ素子を内蔵し―10℃まで、CMOSセンサを冷却でき、暗電流ノイズが0.02e-/(ピクセル・秒)と極めて低い。また、ダイナミックレンジは3300:1と広い。
【0172】
このCMOSカメラによって、散乱光像等の連続撮影(動画撮影)では、例えば、撮影に有効な受光面が全エリアの2160×2560ピクセルの場合、グローバルシャッター機構で撮影フレムレートが49f/s、ローリングシャッター機構で100f/sで連続的に画像を計測することができる。さらに高速で動画撮影する場合には、例えば、有効受光面エリアを例えば1080×1920ピクセルに設定して、グローバルシャッターで97f/s、ローリングシャッターで200f/sにおいて、散乱光像等を動画撮影することが可能となる。ただし、散乱光検出部200の光検出器202として好適なカメラとして、上記のCMOSカメラの仕様に限定するものではない。
【0173】
(10)解析部250の構成および作用効果の説明
入出力装置266から散乱光検出部200に対する計測条件を操作者が入力すると、入力された計測条件に基づいて、散乱光検出部200が制御され、光検出器202の位置や角度が、入力条件に基づいて設定され、固定される。光検出器202が固定された後に、入力条件に基づいて平行小角散乱光168の強度分布が計測される。入力条件が静止画像の計測であれば、静止画像が計測される。例えば静止画像を指定した間隔をあけて複数回撮影する指示内容であれば、指示内容に従った撮影が行われる。また入力条件が動画画像の計測であれば、平行小角散乱光168の強度分布が動画画像として連続撮影される。
【0174】
静止画像撮影や動画像撮影などの撮影タイミングや撮影時間は、時間経過に従って制御されることが多い。このため入出力装置266から入力された制御条件の内の時間経過が関係する条件は、一旦時間管理装置280により絶対時間を基準とする条件に変換されて記憶され、記憶された時間に関する条件と時間管理装置280で作られる絶対時間の経過との対応に基づき、分析装置100の関係する構成が制御される。各構成への制御は制御信号264により行われ、CPU276の動作に基づいてコントローラ260から関係する構成へ出力される。また各構成からの計測結果や各構成の状態を表す信号は、コントローラ260を介して、解析部250に取り込まれる。散乱光検出部200において計測されたデータも同様であり、散乱光検出部200からのデータはコントローラ260から取り込まれ、記憶装置290によって保存される。解析部250による具体的な解析動作等については、以下で改めて説明する。
【0175】
1.4 動的光散乱(DLS)と静的光散乱(SLS)の測定
(1)概要説明
上述したように、光散乱測定法の一つは、サンプル154からの光散乱を所定の散乱角度で検出して、光散乱の時間的変動、言い換えると揺らぎ、を計測する動的光散乱(DLS:Dynamic Light Scattering)測定法である。このDLS測定法では、例えば分析対象であるサンプル154の散乱体の運動に関する情報が得られる。
【0176】
所定の散乱角度θ0、つまりある一定の散乱ベクトルqにおいて、時間変化する光散乱強度I(q,t)から、時間に関するフーリエ解析や相関関数解析により、周波数パワースペクトルI(ω)や相関関数G(τ)、及び散乱因子S(q,ω)が得られる。ここで、ωは角周波数、τは緩和時間である。
【0177】
さらに、DLS測定法の解析では、しばしば相関関数G(τ)から散乱体の拡散係数Dを算出して、散乱体のサイズ、すなわち流体力学的粒径サイズRhの値が評価される。ここで、拡散係数Dから評価される散乱体の粒径サイズRhは、微粒子や凝集体等の分析対象が球状等の散乱体モデルが適用できる場合に限り、その評価値が有効であることに留意する必要がある。また、Rhの算出には、他に微粒子や凝集体を含むサンプル溶液の粘性係数(粘度)η、および温度Tの測定値を用いる必要があって、特にDLS測定とは別に粘性係数ηの値を測定することになる。
【0178】
もう一つの光散乱測定法は、分析対象からの光散乱の平均強度に対して散乱角度の依存性を測定する方法で、静的光散乱(SLS:Static Light Scattering)測定法である。SLS測定法では、主に分析対象であるサンプル154の散乱体の構造に関する情報が得られる。
【0179】
様々な散乱角度θ(散乱ベクトルq)で、ある時間tで平均化した光散乱の平均強度I(q,ω)を測定し、散乱体内の構造因子S(q,ω)が得られる。ここで、ωはtに対する角周波数である。SLS測定法では、しばしば、散乱体の濃度が十分薄く散乱体間における干渉効果が無視できるような、高分子やコロイド等の希薄溶液に対して、異なる濃度のサンプルにおける散乱光強度を測定し、SLS解析では、例えばジムプロット、ベリープロット等から、モル質量(分子量)、回転半径、及び第2ビリアル係数が分析評価される。
【0180】
また、SLS測定法では、特に低角度の前方又は後方において平均光散乱強度の散乱角度依存性が測定され、散乱体の構造パラメーター(構造因子)の一指標であるフラクタル次元が分析評価される。すなわち、低角度の前方光散乱又は後方小角散乱の平均強度I(q,ω)の空間パターン、つまり散乱ベクトルqの関数としてのI(q,ω)から得られる、構造因子S(q,ω)は、平均局所密度関数の空間フーリエ変換であるために、散乱体の微細な構造に直接関するファクターが評価できる。
【0181】
すなわち、粒子や凝集体に対して測定される、前方散乱光又は後方散乱光の平均強度I(q,ω)は、べき関数型を示す。つまり、I(q,ω)=I-αと表される。ここで、Iは定数、αはべき数であり、3次元空間の測定対象では0<α<3の値を示す。そして、測定された平均強度I(q,ω)のべき関数によるカーブフィッティングから、べき数αを評価して、測定粒子の集合体や凝集体のフラクタル次元Dfが評価される。
【0182】
従来は、光散乱計測による粒子の分析では、粒子サイズとその分布の分析評価にはDLS測定法が用いられ、一方、分子量など分析評価ではSLS測定法が用いられていた。すなわち、すなわち分析評価の目的によって、どちらか一方の光散乱測定法が採用された分析装置がそれぞれ別々に使用されていた。同一の分析装置で、DLS測定法とSLS測定法の両方の測定を行い両方の分析を行うことが可能な分析装置が存在しなかった。
【0183】
また、DLS測定法とSLS測定法では、上記のように光散乱の測定方法自体が大きく異なる上に、測定データの解析方法も大きく異なる。特徴的な光散乱の2つの側面、すなわち、同じ解析対象に対して、光散乱の時間的測定(DLS測定)と空間的測定(SLS測定)を同時に測定できれば、粒子や凝集体等の分析対象の運動と構造に関する知見を1つの光散乱測定装置で同時に分析・評価することができ、その効果は非常に大きい。
【0184】
さらに、高分子ゲル化をはじめ、タンパク質やペプチド等の結晶化、細胞内の代謝反応などで最近特に注目されている、液―液相分離によるミクロンオーダーのドロップレット形成や、溶液中で不均一に起こるタンパク質やペプチド等の凝集化などに対しては、サブミクロンメートルの顕微鏡スケールにおける溶液の微細構造分析及び評価が求める大きなニーズがある。実施例の分析装置100はこのようなニーズに十分答えることができる。
【0185】
(2)実施例の分析装置100における散乱光検出に関する説明
先に説明したように分析装置100において、分析の対象であるサンプル154に対して、散乱光検出部200によりDLS測定法とSLS測定法の両方に使用できる測定データを得ることができる。測定のための構成を説明する前に、分析装置100の構成により測定された結果を、図4および図5を用いて説明する。
【0186】
図4は散乱光検出部200の光検出器202で最小ビームスポット157から発生した小角散乱光160に基づく平行小角散乱光168を測定して解析した撮影画像230である。最小ビームスポット157からの小角散乱光160による小角散乱光像が、顕微鏡スケールで拡大され、散乱光検出部200の光検出器202に顕微鏡画像として表示され、この顕微鏡画像を計測結果として記憶装置290記憶し、計測結果である顕微鏡画像のデータに基づいて作成した撮影画像である。光軸146に近い側はサンプル154からの小角散乱光が透過光遮光部176により遮光されたために生じた暗部232である。暗部232の外周側に平行小角散乱光168の測定に基づく画像部234が広がる。
【0187】
(3)画像部234の中のDLS分析領域R1についての解析の説明
図4において、DLS分析領域R1における小角散乱光160の計測データは、DLS測定法に基づく解析を行う場合、所定時間の経過毎に測定が繰り返し行われる。この場合、本実施例では、繰り返し行われた測定で得られたDLS分析領域R1に関する測定データの特定が可能となり、DLS測定法が実施可能となる。
【0188】
例えばDLS測定法による解析対象として、操作者がDLS分析領域R1を特定すると、図5に記載のように、DLS分析領域R1の座標が、座標(xp,yp)であることが、解析部250における演算から求められる。求められた座標(xp,yp)における、X座標の値xpとY座標の値ypの、各測定時毎のDLS分析領域R1に関するデータを、解析部250において特定できる。従って所定時間毎に連続して繰り返し測定されて得られた測定データから、DLS分析領域R1の各測定時におけるデータを読み出し、その変化を、例えば時間をパラメータとするグラフとして表示することにより、DLS測定法に基づく解析結果を入出力装置266から出力することができる。
【0189】
(4)DLS分析領域R1に関する測定データの特定方法の説明
図6は、散乱光検出部200における光検出器202の一例における、画像検出面の部分拡大図である。各光検出素子は2次元平面を構成するように配列されており、例えばX軸方向に、光検出素子11から光検出素子12、光検出素子13、・・・が配列され、Y軸方向に光検出素子11から光検出素子21、光検出素子31、・・・が配列されている。X軸方向およびY軸方向に従って、各光検出素子の検出結果が定められた順序で散乱光検出部200から解析部250に送信され、解析部250の記憶装置290に、例えばアドレスの順に記憶されて保持される。記憶装置290に保持されているアドレスの順番は、各光検出素子と、定められた対応関係を有する。このため利用したい光検出素子の計測データを記憶装置290のアドレスを特定することにより、読み出すことができる。従って光検出器202により検出された、小角散乱光160に基づく像がX軸とY軸の2次元において、細かく分割され、その分割エリア毎の検出データが記憶装置290に、前記分割された各エリアと記憶装置290における記憶位置との相関関係を保って、記憶される。
【0190】
さらに操作者により設定された条件で、前記光検出器202は前記小角散乱光160に基づく像の検出動作を維持し、前記エリア毎の、言い換えると光検出素子11から光検出素子34で例示する各エリアの検出結果が、繰り返し上述の条件の下に、記憶装置290に記憶される。すなわち前記小角散乱光160に基づく像の時間的な変化が記憶装置290に記憶される。記憶装置290に記憶された検出結果に基づき、設定された領域に関して時間経過に基づく計測結果の変化が解析可能となり、解析部250によるDLS分析が可能となる。
【0191】
また光検出器202により検出される上記前方小角散乱光像には図4図5に記載のように、光軸146に対応するエリアや、光軸146から光軸146に対して垂直な面に於ける半径方向の像に関係するエリアが含まれている。操作者が指定した領域を含む光軸146から半径方向に伸びる領域の前記前方小角散乱光像が細かく分割され、前記細かく分割された計測単位のエリア毎に計測され、その計測結果が前記細かく分割された計測単位のエリア毎に、その位置が指定できる状態で記憶装置290に記憶される。従って前記指定された領域に於けるSLS解析に必要な検出結果を読み出して使用することができ、これにより上記指定された領域に関係するSLS分析が可能となる。
【0192】
光軸146と散乱光検出部200の光検出器202との位置関係が特定された状態においては、図5に示す光軸146の座標(x0,y0)やDLS分析領域R1座標(xp,yp)と、図6に記載の光検出素子との関係は、それぞれ対応付けられた状態となる。従って対応付けられた光検出素子から、検出データが保持されている記憶装置290のアドレスが定まり、利用したい座標(x0,y0)やDLS分析領域R1座標(xp,yp)の計測結果を、配線205を介して読み出すことができる。ここで上記各光検出素子は上述の各計測単位のエリアに相当する。
【0193】
DLS測定法に基づく解析を行う場合、DLS分析領域R1における定められた時間間隔で計測したデータをその都度記憶し、解析を行う場合に記憶された異なる計測時点でのデータを読み出すことが必要となる。図7は定められた時間間隔で計測したデータを記憶している状態を示す。測定時点T1、T2・・・TN、とN回測定する場合、一例として、測定時点T1、T2・・・TN、の測定時点毎の測定結果を記憶するために、記憶装置290にブロックB1、ロックB2、・・・TN、を確保する。測定時点T1に於ける光検出器202の各光検出素子の検出結果を、記憶装置290のブロックB1のエリアに於いて各光検出素子と対応付けられたアドレスに記憶する。同様に測定時点T2に於ける光検出器202の各光検出素子の検出結果を、ブロックB2のエリアに於いて各光検出素子と対応付けられたアドレスに記憶する。これをN回繰り返すことにより、測定時点TNまでの検出結果を、対応付けられたブロック内のアドレスに対応付けて光検出器202の各光検出素子の検出結果を記憶することができる。
【0194】
DLS分析領域R1におけるDLS測定法に基づく解析を行う場合に、記憶装置290の各ブロックB1・・・BNから、異なる検出時間T1・・・TNにおけるDLS分析領域R1の計測データを読み出すことができ、これらの計測データからDLS測定法に基づく解析を行うことが可能となる。
【0195】
DLS分析領域R1を分析したい位置に設定することがたいへん重要である。図4に記載の撮影画像230を解析部250で作成して表示し、撮影画像230を基にDLS分析領域R1を設定することにより、大変役に立つDLS分析結果を得ることができる。上述した方法により、撮影画像230の例えば画面上にDLS分析領域R1を設定する。解析部250の演算により、DLS分析領域R1に対応した光検出器202における光検出素子が特定され、図7のブロック毎にDLS分析領域R1に対応したデータが読み出され、このデータに基づいて分析したい領域に対してDLS分析が可能となる。
【0196】
(5)SLS分析領域R2に関する測定データの特定方法の説明
次に図8図9を用いて、分析装置100におけるSLS測定法について説明する。図8に記載されている撮影画像は、先に図4を用いて説明した撮影画像であり、散乱光検出部200の光検出器202により測定した、最小ビームスポット157から発生した小角散乱光160に基づく平行小角散乱光168を測定して解析した撮影画像である。SLS測定法は、低角度の光散乱強度の散乱角度依存性を測定する、測定法であり、いま図8に示すSLS分析領域R2の測定を行うことを例として説明する。図1に記載の光検出器202により、平行小角散乱光168を計測する。図8で、小角散乱光160の内、光軸146に近い暗部232は透過光遮光部176により、平行小角散乱光168および平行透過光166が遮光された部分である。画像部234は、平行小角散乱光168の光軸146を基準とした散乱角度に依存した小角散乱光の強度を表している。
【0197】
画像部234におけるSLS分析領域R2が特定されると、先に説明したように、SLS分析領域R2に対応した光検出器202の光検出素子が特定される。SLS分析領域R2のX軸方向に対応した光検出器202の光検出素子が例えば図9に記載の光検出素子21から光検出素子2Nである。またY軸方向のSLS分析領域R2の幅に対応する光検出素子は、光検出素子11や光検出素子21、検出素子31である。実際にはSLS分析領域R2のY軸方向の幅は、光検出素子21や検出素子2Nに対して広く、Y軸方向に複数あるいは多くの光検出素子が含まれる可能性がある。その場合は、Y軸方向の幅に含まれる光検出素子の測定結果の平均値を用いても良い。
【0198】
上記説明では、説明を簡単にするためにSLS分析領域R2をX軸方向とした。しかし散乱角度を決定する場合に、X軸方向以外の角度を自由に決定することができる。例えば図4図8に記載の画像部234を解析部250により表示し、図4図8に記載の画像部234に基づいて、操作者がSLS分析領域R2を設定することができる。SLS分析領域R2が設定されると、設定されたSLS分析領域R2に対応する光検出器202における光検出素子が決定され、光検出器202の対応する光検出素子の測定値を、図7に記載の記憶装置290のアドレスから読み出すことが可能となる。光軸146に対応する光検出素子からの距離に応じて、記憶装置290のアドレスから読み出した測定データを解析することにより、SLS分析領域R2の分析結果を得ることかできる。
【0199】
2.他の実施例の説明
(1)他の実施例の概要
図1から図9に記載の実施例に対し、さらに機能を追加あるいは変更した分析装置102を、他の実施例として、図10から図14に記載する。図10に記載の分析装置102の構成において、光源110や入射光調整部120、光路変更部130、光学絞り138、光照射部140、試料部150、平行散乱光変換部170、散乱光検出部200、解析部250、などは、既に分析装置100の構成として説明した。図1から図9に記載の符号と同じ符号の構成は、特に説明を追加しない限りは、同じ構成であり、同じ作用効果を奏する。分析装置102と分析装置100との大きな相違点は、散乱角フィルター180や散乱光集光部190を、平行散乱光変換部170と散乱光検出部200との間に設けたことである。これによる分析内容の違いや改良点などについては以下で説明する。
【0200】
(2)散乱角フィルター180および散乱光集光部190の説明
図11及び図12を用いて、散乱角フィルター180および散乱光集光部190について説明する。平行散乱光変換部170と散乱光集光部190との間に、開口182を持つ散乱角フィルター180を配置しており、散乱角フィルター180の開口182により平行小角散乱光168の内の設定された角度の特定角平行小角散乱光が選択され、選択された角度の特定角平行小角散乱光が以下で説明する円弧状特定角度散乱光186として散乱光集光部190に入射する。入射した円弧状特定角度散乱光186は散乱光集光部190により収束する小角散乱収束光196に変えられ、散乱光検出部200の光検出器202へ導かれ、その強度などが計測される。
【0201】
散乱光集光部190は、レンズ192と支持ホルダ194、などを備えている。支持ホルダ194は、レンズ192を保持し、レンズ192の位置や傾き角を調整する機構を備えている。また散乱角フィルター180は、平行小角散乱光168の内の、設定した角度に対応した長さを半径とする光軸146を中心とした円弧形状を成す光を、透過する。散乱角フィルター180により選択された、この円弧形状の光を、円弧状特定角度散乱光186として図10図11、及び図13図14に示す。散乱角フィルター180は平行小角散乱光168から、円弧状特定角度散乱光186を選択して透過する機能を備えている。この実施例では、散乱角フィルター180はさらに、サンプル154からの平行透過光166が散乱光検出部200へ入射するのを防止する、先の実施例における透過光遮光部176の機能も備えている。
【0202】
散乱角フィルター180は、図12に記載のように、リング形状の開口182が形成された遮光板181を有している。遮光板181によりサンプル154からの透過光164に基づく平行透過光166は遮光され、光検出器200への入射を防止できる。遮光板181は光軸146に対して垂直に配置され、遮光板181は光軸146に対する垂直な面に於ける特定の半径の光のみを透過する。前記特定の半径は特定の散乱光の散乱角に対応するので、設定された特定の散乱角の特定角平行小角散乱光のみを選択的に透過することができる。なお以下で説明するが、散乱角フィルター180に形成された開口182は、光軸146に対して前記特定角で定まる半径の円周の少なくとも一部をなす、円弧状の形状を有している。従って散乱角フィルター180の開口182を透過した光は円弧状の形状を成しており、平行小角散乱光168の内、円弧状特定角度散乱光186が散乱角フィルター180で選択され、散乱角フィルター180を通過して散乱光集光部190に入射する。
【0203】
図12において、遮光板181は、光軸146を中心とする円形の内側遮光部183と開口182と周囲遮光部185とを備えている。設定された散乱角である円弧状特定角度散乱光186を、開口182により、選択的に通過させる。このため、リング状の開口182の光軸146側に設けられた内側遮光部183により、特定の散乱角より内側の平行透過光166を遮光し、さらに周囲遮光部185により、平行小角散乱光168の内の開口182より外周側の平行小角散乱光168を遮光する。散乱角フィルター180は図12に記載のように、リング状開口182を形成し、内側遮光部183を支持するために、周囲遮光部185と内側遮光部183とを繋ぐ複数の架橋187を有している。
【0204】
散乱角フィルター180の開口182や、内側遮光部183、周囲遮光部185は、上述のように、平行小角散乱光168の形状、選択する散乱角における円弧状特定角度散乱光186の形状とその選択散乱角の範囲、遮光する平行透過光166の形状、散乱光検出部200の光検出器202の形状などに応じて決定される。平行小角散乱光168が円形像である場合、散乱角フィルター180の開口182の形状としては、リング状であることが好適である。例えば、平行小角散乱光168が長方形像である場合には、散乱角フィルター180の開口182の形状としては、直線形スリットであることが好適である。
【0205】
散乱角フィルター180の材質としては、試料部150のサンプル154からの透過光164が通過しない材料であれば、特に制限はない。例えば、各種の金属やプラスチック、木材等を使用することができる。また、サンプル154からの透過光164が散乱角フィルター180へ照射され、迷光が発生しないようすることが望ましい。例えば、散乱角フィルター180の表面、特に透過光164の照射面側につや消し黒塗り処理を施すことが好ましい。
【0206】
具体的に散乱角フィルター180として、図12に示すように例えば、中心部の内側遮光部183の半径188が4.5mm、円形の周囲遮光部185の中心半径189が5.5mmでは、中心部の内側遮光部183と円形の周囲遮光部185との間に、隙間1.0mmのリング状の開口182が形成される。この1.0mmのリング状開口182を持つ散乱角フィルター180を使用し、例えば、平行散乱光変換部170のレンズ172として、20倍の無限遠補正の対物レンズ(焦点距離fが10mm、開口数NAが0.4)を用い、サンプル154から平行散乱光変換部170の対物レンズ172までの距離LBを例えば15mmに設置する場合では、平行小角散乱光168は、計算上、サンプル154からの放射角度θ0S(図3参照)が16.7度から20.2度の散乱角度の範囲で選択され、この散乱角フィルター180のリング状開口182を通過することができる。また、平行散乱光変換部170の対物レンズ172によって、サンプル154からの透過光164のビーム径が、例えば半径1.5mmである場合、最大角度θ0S(図3参照)は、計算上、最大角度θ0Sが5.7度となるため、平行小角散乱光168の内の測定散乱角θSが11.0度から14.5度の範囲にある平行小角散乱光が散乱角フィルター180によって選択され、散乱光集光部190のレンズ192へ導入される。
【0207】
散乱角フィルター180により選択された、所定の狭い散乱角範囲の平行小角散乱光は、散乱光集光部190のレンズ192によって集束され散乱光像として、散乱光検出部200の光検出器202で検出される。従って、散乱光検出部200で検出される集束の散乱光像は、散乱角フィルター180の開口182を通過した円弧状特定角度散乱光186であるために、散乱角フィルター180の開口182の形状を縮小又は拡大した画像となる。なお、本実施例では理想的な画像を生じさせるために、開口182は円形に近い形状である。しかし、開口182は円弧であれば、円弧に相当した画像を作成することができる。例えば円周の6分の1程度の円弧であっても円弧に対応した像が生じる。しかし、開口が点であれば、それを通過する光量が非常に不十分なため、 実質的には画像が生じない。
【0208】
散乱角フィルター180を通過し、散乱光集光部190のレンズ192へ入射する円弧状特定角度散乱光186は、平行散乱光変換部170のレンズ172によって平行化(コリメート)された光であるゆえに、特に例えば、散乱光集光部190のレンズ192の焦点位置、すなわちレンズ192と散乱光検出部200の受光面との距離L1をレンズ192の焦点距離に等しく配置した場合には、円弧状特定角度散乱光186の集束した散乱光像は、最小サイズとなる。特に、サンプル154の無限小点から散乱光が放射されると見なせば、理論上、その散乱光像も無限小の点となる。
【0209】
しかしながら、実際には前述のように、サンプル154へ入射する照射光148は、例えば円形の入射ビーム径が数μm~数十μmと有限な微小サイズであるために、レンズ192と散乱光検出部200の受光面との距離をレンズ192の焦点距離に等しく配置した場合であっても、平行小角散乱光168の集束した散乱光像は、点状ではなく有限サイズの円形像として、散乱光検出部200で検出される。
【0210】
また、散乱光検出部200の受光面を、散乱光集光部190のレンズ192の焦点位置の前後に配置した場合、散乱角フィルター180を通過し、レンズ192によって集束した平行小角散乱光168の散乱光像は、散乱光検出部200の受光面上で散乱角フィルター180の開口182の形状が投影され、その開口182を通過した光像が 縮小又は拡大した形状の画像となる。
【0211】
光照射部140の集光レンズ142によって形成された照射光148が、サンプル154へ入射して、その微小な照射光領域である最小ビームスポット157(図3参照)から散乱光が放射される。サンプル154の照射光領域内における僅かに異なる位置、例えば、サンプル154中の数μm程度以下離れた2つの散乱体から放射される散乱光は、僅かに異なる位置から放射されるために、僅かに異なる光路をたどる。そのため、それらの散乱光は、平行散乱光変換部170のレンズ172により光路を変更され、散乱角フィルター180によりその一部が選択され、散乱光集光部190のレンズ192により光路変更されて、散乱光像が形成される。
【0212】
散乱光検出部200で検出される散乱光像には、次の2種類の散乱光を含んで形成される。すなわち、一つは、サンプル154において微小な点と見なせる照射光領域から散乱体によって散乱光が放射され、平行散乱光変換部170のレンズ172によりその散乱光が平行化(コリメート化)されて平行小角散乱光168となる。平行小角散乱光168の内、散乱角フィルター180によって、ある所定の散乱角度範囲にある一部の散乱光が選択され、レンズ192によって集束した小角散乱収束光196が形成する散乱光像である。
【0213】
もう一つは、サンプル154において有限サイズと見なせる照射光領域内の異なる位置の散乱体群から散乱光が放射され、平行散乱光変換部170のレンズ172によりそれらの散乱光の光路が変更されて、それら散乱光は、レンズ172によってほぼ平行化される。散乱角フィルター180によってそれら一部の散乱光が選択され、レンズ192によって散乱光の光路が変更されて形成する散乱光像である。従って、上記後者の散乱光が形成する散乱光像は、サンプル154において照射光領域内の散乱体の位置分布を反映したものとなる。すなわち、上記後者の散乱光が形成する散乱光像は、サンプル154に対し散乱光の顕微鏡的な画像 である顕微鏡画像を表す。
【0214】
測定サンプル154に対して、上述する2種類の前方小角散乱光又は後方小角散乱光が形成する散乱光像は、それぞれ異なる光路をたどり、結像されるために、散乱光検出部200で検出される散乱光像としては散乱角フィルター180の開口部の形状が投影された散乱光像とは異なる位置に表れる。具体的には、例えば、上述のようにリング状の開口部をもつ散乱角フィルター180を使用した場合、レンズ192によって集束した平行前方小角散乱光又は平行後方小角散乱光が形成する、散乱角フィルター180のリング状開口部が投影された、明るいリング状の散乱光像が中央付近に表れ、例えば、その明るいリング状散乱光像の外側周辺領域に、サンプル154の照射光領域内の散乱体の位置分布を反映した散乱光像が表れる。すなわち、散乱角フィルター180のリング状開口部が投影された明るい散乱光像と異なる暗視野の領域に、上記散乱光の顕微鏡画像が表れる。従って、例えば図11に示す構成によって、サンプル154に対して、顕微鏡スケールにおいて動的及び静的前方小角散乱光の同時測定を行うことができる。
【0215】
なお、図11には、散乱光検出部200は顕微鏡画像の検出のために光検出器202を有している。図13に記載の実施例では、散乱光検出部200として、半透明スクリーン208とカメラレンズ206を備えた光検出用カメラ204を使用する。また図14に記載の実施例では、カメラレンズ206を備えた光検出用カメラ204を、散乱光検出部200として使用する。光検出用カメラ204の検出結果は、先に説明した散乱光検出部200の動作や効果と同様である。計測結果は解析部250に取り込まれ、記憶装置290に記憶され、DLS解析やSLS解析に、記憶された結果が使用される。
【0216】
上述の光検出器202の使用例では、平行小角散乱光168による顕微鏡画像が光検出器202の計測面に作られ、その画像が光検出器202により細分化されて計測される。図13図14に記載の光検出用カメラ204でも同様であり、カメラレンズ206を介して取り込まれた小角散乱収束光196により作られた顕微鏡画像が、細分化されたエリアに分けられて順に取り込まれ、記憶装置290に記憶される。
【0217】
図13に記載の実施例は、小角散乱収束光196に基づく画像をスクリーンに表示し、前記スクリーンに表示された顕微鏡画像を、カメラレンズ206を備える光検出用カメラ204により撮影し、撮影した顕微鏡画像を解析部250の記憶装置290に記憶する。図13で、前記スクリーンとして半透明スクリーン208を使用する。このようにすることで、半透明スクリーン208の裏側である、半透明スクリーン208の後方側から前記顕微鏡画像を撮影できる。この場合、光検出用カメラ204のカメラレンズ206を光軸146に合わせて配置することが容易であり、装置全体を小型にできるなどの効果がある。
【0218】
また図14に記載の実施例は、光検出用カメラ204のカメラレンズ206を小角散乱収束光196による焦点位置の後方に配置した例である。小角散乱収束光196の焦点位置の後方に配置するかあるいは前方に配置するかなどにより、小角散乱収束光196により作られる顕微鏡画像の大きさを変えることができる。
【0219】
なお、図13図14で、増幅・冷却部212は撮影した信号の増幅作用や、光検出用カメラ204の内部で生じる電気的なノイズのレベルを下げるための冷却装置である。図2に記載の増幅・冷却部212と同様の作用を為し、効果を奏する。
【0220】
3解析部250の説明
3.1解析部250の構成
解析部250はコントローラ260や入出力装置266、CPU276、記憶装置290、などを有している。解析部250は、分析装置100あるいは分析装置102の全体の動作を制御すると共に、光検出器202を備えた散乱光検出部200や散乱光検出部200として動作する光検出用カメラ204の計測結果を取り込み、DLS分析やSLS分析を実行し、その結果を入出力装置266から出力する。分析装置100や分析装置102の各構成を制御するためにコントローラ260を有しており、CPU276からの指令によりコントローラ260からそれぞれの構成に対して制御信号が送られる。また散乱光検出部200の光検出器202や散乱光検出部200として動作する光検出用カメラ204からの計測結果は、コントローラ260を介して取り込まれ、上述したように記憶装置290に記録される。
【0221】
操作者が指示内容を入力する場合には、入出力装置266から指示内容が入力される。また計測結果や分析結果は、入出力装置266から出力される。入出力装置266はこれらの動作を行うために、キーボードや表示装置、印刷装置等を備えている。
【0222】
3.2解析部250の動作の説明
図15は、分析装置100や分析装置102の動作の一例を説明する説明図である。例えばこの実施例では、DLS分析やSLS分析を行うための計測結果の取り込みや取り込んだ計測結果に基づくDLS分析やSLS分析の実行を行う計測解析モードM2の動作に入る前に、調整モードM1の動作が行われる。試料部150のサンプル位置調整機構158によるサンプルセル152の位置の調整を行うための調整モードM1は、調整モードM1の開始の指示が入出力装置266から入力されることにより開始される。調整モードM1において、サンプルセル152の位置がサンプル位置調整機構158により調整され、解析したい位置に照射光148の照射位置が一致するように調整される。実際には、照射光148の現在の照射位置からの小角散乱光160による画像が、散乱光検出部200や散乱光検出部200として動作する光検出用カメラ204から、解析部250に取り込まれ、上記画像が入出力装置266に、調整用画像として表示される。操作者は入出力装置266に表示された画像である調整用画像を見ながら、サンプル位置調整機構158により、サンプルセル152の位置を調整することができる。解析したい位置を入出力装置266に表示された画像をもとに見つけ出し、サンプル位置調整機構158によるサンプルセル152の位置の設定が終了すると、調整モードM1が終了する。この終了のための解析部250の制御および動作は、操作者の終了の指示により行われても良いし、操作者による計測解析モードM2の開始の指示により行われても良い。
【0223】
調整モードM1では散乱光検出部200あるいは光検出器202から取り込んだデータに基づく画像を調整用画像として入出力装置266で表示される。しかし、散乱光検出部200や散乱光検出部200として使用する光検出用カメラ204の検出結果に基づくDLS分析やSLS分析のための演算は実行されない。また散乱光検出部200あるいは散乱光検出部200として使用する光検出用カメラ204の計測結果の記憶装置290への連続した繰り返しの取り込み動作も停止される。
【0224】
なお、試験的に現在のサンプルセル152の設定位置で定まる照射光148の照射位置からの小角散乱光160に基づく、散乱光検出部200や乱光検出部200として使用する光検出用カメラ204の計測結果を試験的に繰り返し取り込み、その結果を使用して試験的にDLS分析やSLS分析を行い、この結果に基づきサンプルセル152の位置を再調整しても良い。この実施例では、上記以下で説明する計測解析モードM2で、上記試験的なDLS分析やSLS分析を行い、その結果に基づいて、サンプル位置調整機構158によるサンプルセル152の再調整を行うことも可能である。
【0225】
調整モードM1におけるサンプルセル152の位置決めの調整が終了した後、操作者の計測開始の指示が入出力装置266から入力され、計測解析モードM2が開始される。計測解析モードM2の一例を図15により説明する。後述する初期設定に基づき、撮影回数1から撮影回数Nの撮影、すなわち散乱光検出部200や光検出器202からの計測結果の取り込みが行われる。撮影回数1に於いてDLS解析を行うため、あるいは動画撮影を行うために、散乱光検出部200や散乱光検出部200として動作する光検出用カメラ204の計測結果を繰り返し連続的に取り込み、記憶装置290に保持する。ここでは一回の散乱光検出部200や光検出器202からの計測結果の取り込みをサンプリングと記載している。
【0226】
撮影回数1から撮影回数Nのそれぞれに於ける撮影時間T1が設定されると、各撮影回数に割り当てられた撮影時間T1の中で図15に記載のごとく、設定されたサンプリング周波数で繰り返し、上記計測結果の記憶装置290への取り込みが連続して行われる。サンプリングの実行周期は初期設定で入力されたサンプリング周波数で決定される。記憶装置290への繰り返しの取り込み回数である撮影時間T1におけるサンプリング数は、サンプリング回数を直接入力して設定しても良いし、撮影時間T1である繰り返しの継続時間を入力して設定しても良い。サンプリング動作が、設定された撮影時間T1に於いて、設定されたN回行われるあるいは、設定された上記計測結果の連続取り込みの継続時間である撮影時間T1の間行われる等の、設定条件に基づくサンプリング動作が連続的に繰り返し行われる。サンプリング動作の撮影時間T1が終了すると、例えば撮影回数1として図15に記載した動作が終了する。
【0227】
設定された撮影間隔T2の間は、サンプリング動作を停止する。解析部250の時間管理装置280は、制御動作の開始や終了のタイミングを管理するための機能を有しており、撮影間隔T2が終了すると、CPU276は時間管理装置280からの報告に基づき、撮影回数2の動作を開始するための指示を出す。先に撮影回数1の動作として説明した内容の動作が撮影回数2として行われる。その後、撮影間隔T2の間、再びサンプリング動作を停止する。
【0228】
上述の動作を繰り返し、撮影回数Nの実行を終了すると計測解析モードM2を終了し、DLS分析やSLS分析のためのデータの取り込みが終了する。このデータに基づきDLS分析やSLS分析のための演算が行われ、分析結果が入出力装置266から出力される。なお、上記撮影回数をN回繰り返すことにより、計測解析モードM2の動作を終了する方法は一例である。すなわち上記撮影回数の数Nを設定するのではなく、撮影を行う総撮影時間TAを設定する方法でも良い。連続して繰り返し散乱光検出部200の計測結果を取り込む動作を継続する撮影時間T1およびそれに続く撮影間隔T2の条件は同じくして、撮影時間T1およびそれに続く撮影間隔T2の繰り返しを、数ではなく、総撮影時間TAで定め、この総撮影時間TAを初期設定として設定することも可能である。この場合、総撮影時間TAが経過した後は、新たな撮影時間T1による散乱光検出部200の計測結果の取り込み動作は行われない。これにより、計測解析モードM2の終了を制御することができる。
【0229】
図15に記載の動作は、散乱光検出部200や散乱光検出部200の他の具体例である光検出用カメラ204からの計測結果の取り込みについて説明している。図15に記載の内容は一例であって、操作者の指示内容により変化する。またDLS分析やSLS分析のための演算は、取り込まれたデータを基に、撮影回数Nの終了を待たないで一部の解析を実行することが可能である。すなわち計測解析モードM2における散乱光検出部200の計測結果の取り込め動作と並行して、取り込まれた計測結果に基づき、上記DLS測定法やSLS測定法のための演算を行うことができる。
【0230】
図16は、CPU276が図15に記載の計測解析モードM2の動作を実行するためのフローチャートである。また図17は、計測結果の記憶装置290に於ける記憶状態、及び記憶されたデータを利用した分析結果の記憶状態、を説明する説明図である。図16は、既に調整モードM1を終了した状態である、計測解析モードM2の動作を示している。ステップS300で、動作が開始されると、ステップS302で、上述した初期設定が、操作者によって行われる。初期設定では、例えば、撮影回数1から撮影回数Nのそれぞれの撮影回数における撮影時間T1や、撮影回数1から撮影回数Nのそれぞれの撮影回数に於いて実行されるサンプリング周波数、間欠撮影の時間間隔T2、撮影回数の全体の繰り返し回数N、DLS分析領域、SLS分析領域、総撮影時間TA、等、図15に記載の設定内容が、入出力装置266から入力される。その後、ステップS304へCPU276の実行が移り、図15に記載の撮影回数1における散乱光検出部200からの計測結果の取り込みが実行、すなわち図15に示す、サンプリング1からサンプリングNによる計測結果の取り込みが実行され、図17に記載のメモリブロックB1に記憶される。
【0231】
撮影回数1の計測結果の取り込みの連続した動作が終了すると、ステップS310が実行され、DLS分析領域やSLS分析領に対応した計測結果が、メモリブロックB1に記憶された計測結果から選択的に抽出され、図17に示す記憶装置290のDD1やSD1として確保されたアドレスに記憶される。次にステップS312で、前記アドレスSD1に記憶されたデータに基づき、静的散乱光の分析のための演算が実行され、ステップS314で、その演算結果が記憶装置290のアドレスARS1に記憶される。
【0232】
さらにステップS322で、動的散乱光の分析のための演算が実行され、その結果がステップS324で、アドレスARD10やアドレスARD11に保存される。ステップS324の実行の後、ステップS330で実行終了かどうかの判断が行われ、撮影回数1の終了に基づき、次の撮影回数2に関する動作がステップS304で開始される。ステップS304の動作開始が撮影間隔T2の経過後であるが、図16のフローチャートでは、この撮影間隔T2の経過についての記載を省略している。実際には上述した時間管理装置280で時間の管理を行い、割り込み処理等を行って撮影回数2の動作開始のタイミングの制御が行われ、ステップS304の動作が開始される。
【0233】
撮影回数1から撮影回数Nで、計測解析モードM2の実行時間すなわち計測解析モードM2の終了条件を設定するのではなく、総撮影時間TAで計測解析モードM2の終了条件を設定した場合には、ステップS330で計測解析モードM2の時間経過が総撮影時間TAに達したかどうかを計測解析モードM2の時間経過に基づいて判断し、計測解析モードM2の時間経過が総撮影時間TAに達した場合には、ステップS304の実行を開始するのではなく、CPU276の実行がステップS340へ遷移する。ステップS340で、S300からのタスクの実行終了の動作が行われ、計測解析モードM2が終了する。なおステップS330で総撮影時間TAに達したかどうかの判断が実行されたときに、総撮影時間TAに達していないと判断された場合には、再びステップS304の実行が開始される。
【0234】
図15に記載の撮影回数1から撮影回数N-1までのサンプリングに基づく計測結果の取り込みが終了し、撮影回数Nのサンプリングに基づく計測結果の取り込みがステップS304で行われると、上記計測結果が記憶装置290のブロックBNに格納される。ステップS310が実行されると、DLS分析領域のデータが記憶装置290の前記アドレスDDNに記憶される。またSLS分析領域のデータが記憶装置290の前記アドレスSDNに記憶される。ステップS312で前記アドレスSDNに記憶されたデータに基づき、静的光散乱の分析のための演算が実行される。この演算結果がステップS314で、アドレスARSNに記憶される。さらにステップS322で、動的光散乱の分析が実行され、その演算結果がステップS324で、アドレスARDN0やアドレスARDN1に記憶される。
【0235】
CPU276の実行がステップS324からステップS330へ移る。ステップS330で、図15に記載の計測解析モードM2の終了条件である、撮影回数Nの終了、あるいは総撮影時間TAの終了、の判断で、終了条件が満たされたと判断されると、CPU276の実行がステップS340へ移る。ステップS340で、計測解析モードM2に於ける計測データの取り込みを終了すると共に、取り込んだ計測結果に基づく分析の動作が終了する。
【0236】
図16に記載のフローチャートに示す実施例では、CPU276による、ステップS312とステップS314の実行を、ステップS322とステップS324の実行より先に行っている。これは一例であり、ステップS312とステップS314の実行とステップS322とステップS324の実行は、順序が逆であっても良い。またステップS312とステップS314の実行とステップS322とステップS324の実行の両方を常に連続して行う必要性はなく、別々に行っても良い。また一方のみを行っても良い。ステップS304の実行により、散乱光検出部200からあるいは散乱光検出部200の一例である光検出用カメラ204から取り込まれた計測結果は、静的散乱光の分析と動的散乱光の分析の両方に使用できる。このため操作者は、前記取り込まれた計測結果を使用することにより、静的散乱光の分析と動的散乱光の分析の両方を行うことも可能であり、どちらかを選択的に行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0237】
本発明に基づくサンプルの分析装置および分析方法は、産業上利用することができる。
【符号の説明】
【0238】
11・・・光検出素子、100・・・分析装置、102・・・分析装置、110・・・光源、120・・・入射光調整部、122・・・光量調整素子、124・・・偏光素子、126・・・入射光、130・・・光路変更部、132・・・平面ミラー、134・・・平面ミラー、138・・・光学絞り、139・・・絞り、140・・・光照射部、142・・・集光レンズ、144・・・レンズ調整機構、146・・・光軸、148・・・照射光、150・・・試料部、151・・・入射面、152・・・サンプルセル、153・・・透過面、154・・・サンプル、156・・・分析微小領域、157・・・最小ビームスポット、158・・・サンプル位置調整機構、160・・・小角散乱光、162・・・最大小角散乱光、164・・・透過光、166・・・平行透過光、168・・・平行小角散乱光、169・・・選択平行小角散乱光、170・・・平行散乱光変換部、172・・・レンズ、174・・・支持装置、176・・・透過光遮光部、180・・・散乱角フィルター、182・・・開口、184・・・特定角平行小角散乱光、185・・・周囲遮光部、186・・・円弧状特定角度散乱光 、187・・・架橋、188・・・半径、189・・・中心半径、190・・・散乱光集光部、192・・・レンズ、194・・・支持機構、196・・・小角散乱収束光、200・・・散乱光検出部、202・・・光検出器、203・・・受光面 、204・・・光検出用カメラ、205・・・配線、206・・・カメラレンズ、208・・・半透明スクリーン、212・・・増幅・冷却部、220・・・位置調整機構、230・・・撮影画像、232・・・暗部、234・・・画像部、250・・・解析部、260・・・コントローラ、266・・・入出力装置、270・・・演算処理部、276・・・CPU、280・・・時間管理装置、290・・・記憶装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2023-03-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルの計測のための光を発生する光源と、
前記光源が発生した前記光に基づき、前記サンプル内に最小ビームスポットを形成する照射光を、前記サンプルに照射する光照射部と、
前記最小ビームスポットが形成された前記サンプルの分析微小領域において発生した前方あるいは後方の小角散乱光を受け、前記前方あるいは後方の小角乱光に基づく平行小角散乱光を発生する平行散乱光変換部と、
前記平行小角散乱光に基づき前記サンプルの前記分析微小領域内のサンプルの状態を計測する散乱光検出部と、
記憶装置を備え、前記散乱光検出部の計測結果を前記記憶装置に取り込み、前記記憶装置に取り込んだ前記計測結果に基づき、前記サンプルの前記分析微小領域の解析を行う解析部と、を有し、
前記散乱光検出部において、前記平行小角散乱光に基づいて、前記分析微小領域のサンプルの状態の拡大された画像である顕微鏡画像が生成され、さらに生成された前記顕微鏡画像が計測されて前記記憶装置に記憶され、
前記解析部は、前記記憶装置に記憶された前記顕微鏡画像を含む前記散乱光検出部の前記計測結果に基づき、動的散乱光成分あるいは静的散乱光成分、または前記動的散乱光成分および前記静的散乱光成分の両方を解析する、
ことを特徴とする、分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の分析装置において、
前記解析部は、前記散乱光検出部において生成された前記顕微鏡画像を繰り返し取り込むことにより、前記顕微鏡画像の動画像が前記記憶装置に記憶され、
前記解析部は、記憶された前記動画像に基づき、前記動的散乱光成分あるいは前記静的散乱光成分、または前記動的散乱光成分および前記静的散乱光成分の両方の解析を行うことを特徴とする、分析装置。
【請求項3】
サンプルの計測のための光を発生する光源と、
前記光源が発生した前記光に基づき、前記サンプル内に最小ビームスポットを形成する照射光を、前記サンプルに照射する光照射部と、
前記最小ビームスポットが形成された前記サンプルの分析微小領域において発生した前方あるいは後方の小角散乱光を受け、前記前方あるいは後方の小角乱光に基づく平行小角散乱光を発生する平行散乱光変換部と、
前記平行小角散乱光に基づき前記サンプルの前記分析微小領域の内のサンプルの状態を計測するための散乱光検出部と、
記憶装置を備え、前記散乱光検出部の前記計測結果を前記記憶装置に取り込み、前記記憶装置に取り込んだ前記計測結果に基づき、前記サンプルの前記分析微小領域の解析を行う解析部と、を有し
前記解析部は、前記散乱光検出部の前記計測結果を、前記記憶装置に記憶し、
前記解析部はさらに、前記記憶装置に記憶された、前記散乱光検出部の前記計測結果に基づき、動的散乱光成分あるいは静的散乱光成分、または前記動的散乱光成分と前記静的散乱光成分の両方を解析して、前記サンプルの前記分析微小領域に関する分析を行う、ことを特徴とする分析装置であって、
さらに、前記平行散乱光変換部と前記散乱光検出部との間に、散乱角フィルターと散乱光集光部とを設け、
前記散乱角フィルターにより、前記平行散乱光変換部からの前記平行小角散乱光の内、特定角度であってしかも前記平行小角散乱光の光軸に垂直な面に於いて円弧状の形状を成す円弧状特定角度散乱光を、前記散乱光集光部を介して、前記散乱光検出部に入射させ、
前記散乱光検出部は、前記円弧状特定角度散乱光に基づき、前記分析微小領域の状態を拡大表示した顕微鏡画像を検出する、ことを特徴とする、分析装置。
【請求項4】
請求項3に記載の分析装置において、
前記解析部は、前記散乱光検出器によって検出された、前記分析微小領域内のサンプルの状態を拡大表示した前記顕微鏡画像を、繰り返し取り込み、前記記憶装置に記憶することにより、前記分析微小領域内のサンプルの状態を拡大表示した前記顕微鏡画像の前記動画像が、前記記憶装置に記憶される、ことを特徴とする、分析装置。
【請求項5】
請求項3あるいは請求項4の内の一に記載の分析装置において、
前記散乱角フィルターは光を遮断する材料で作られており、前記平行小角散乱光の前記光軸に対して前記特定角度に対応する長さを半径とする円弧状の開口を有していることを特徴とする、分析装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の内の一に記載の分析装置において、
前記光照射部は、前記サンプルに前記最小ビームスポットを形成するための集光レンズを備えており、
前記光源で発生した前記光に基づいて前記光照射部に入射する入射光の光軸に沿って、前記光照射部の集光レンズと前記サンプルが配置されており、
前記入射光は、前記光軸に沿って前記集光レンズに入射し、前記入射光はその断面形状が円形の光ビームであり、また前記入射光の前記光ビームの直径が1.6mm以下であり、
前記光照射部が有する前記集光レンズの開口数NAまたは前記集光レンズの焦点距離f、あるいは前記集光レンズの前記開口数NAおよび前記集光レンズの前記焦点距離fは、前記光照射部に入射する前記入射光の前記光ビームの前記直径に基づいて定められている、ことを特徴とする、分析装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の内の一に記載の分析装置において、
前記光照射部は、前記照射光を集光するための前記集光レンズと、
前記集光レンズを、前記光照射部に入射する前記入射光の前記光軸に沿って移動するためのレンズ調整機構と、
を備えており、
前記レンズ調整機構は、前記集光レンズを前記光軸に沿って移動できる距離が±10mm以下であり、移動調整できる最小長さが50μm以下であることを特徴とする、分析装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7の内の一に記載の分析装置において、
前記光照射部から前記サンプルに前記照射光が照射されることにより、前記サンプルの内部に形成される前記最小ビームスポットの直径が、10μm以上で100μm以下の範囲であることを特徴とする、分析装置。
【請求項9】
請求項第1から請求項8の内の一に記載の分析装置において、
試料部を有し、
前記試料部は前記サンプルを保持するためのサンプルセルと前記サンプルセルの位置を調整するためのサンプル位置調整機構とを備え、
前記サンプル位置調整機構で前記サンプルの位置を前記照射光に対して相対的に移動することにより、前記最小ビームスポットが形成される前記サンプルの前記分析微小領域の位置を設定し、前記サンプルにおける設定された前記分析微小領域の状態を表す散乱光の顕微鏡画像が前記計測結果として、前記散乱光検出部において生成され、
前記解析部は、前記散乱光検出部において生成された前記計測結果に基づき、前記サンプル位置調整機構により前記サンプルセルの前記最小ビームスポットが形成される位置を調整するための調整用画像を出力し、
前記解析部は、前記解析を行うための計測指示に基づき、前記散乱光検出部において生成された前記計測結果を、繰り返し前記記憶装置に記憶し、
前記解析部は、前記記憶装置に繰り返し記憶した、前記散乱光検出部の前記計測結果に基づき、前記解析を行うことを特徴とする、分析装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9の内の一に記載の分析装置において、
前記サンプル内に前記最小ビームスポットを形成するために、前記光照射部から前記サンプルへ照射する前記照射光の最大入射角θiは、0.5度から20度の範囲の角度であることを特徴とする、分析装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10の内の一に記載の分析装置において、
前記解析部は、設定されたサンプリング条件に基づき、繰り返し前記散乱光検出部の前記計測結果を取り込む第1ステップと、
前記繰り返し取り込んだ前記散乱光検出部の前記計測結果から、動的散乱光分析領域の計測結果および静的散乱光分析領域の計測結果を抽出する第2ステップと、
前記動的散乱光分析領域の前記計測結果に基づく動的散乱光分析のための演算、および前記静的散乱光分析領域の前記計測結果に基づく静的散乱光分析のための演算、を行う第3ステップと
を有することを特徴とする、分析方法。
【請求項12】
請求項11に記載の分析方法において
前記設定されたサンプリング条件に基づき前記散乱光検出部から前記計測結果を繰り返し取り込む動作を実行する、前記第1ステップの後、前記解析部は、設定された撮影間隔の間、前記第1ステップの実行を停止し、
前記解析部は、設定された前記撮影間隔が経過した後に、再び前記第1ステップの実行を開始し、
前記第1ステップの実行回数が予め設定された実行回数に到達するまで、前記解析部は前記第1ステップの実行を繰り返して、前記散乱光検出部において生成された前記顕微鏡画像を含む前記計測結果を前記記憶装置に取り込み、
あるいは前記第1ステップの前記実行とその後の前記実行の停止の継続時間が、予め設定された総撮影時間に達するまで、前記第1ステップの前記実行とその後の前記実行の停止の動作を繰り返して、前記散乱光検出部において生成された前記顕微鏡画像を含む前記計測結果を前記記憶装置に取り込み、
前記解析部は、前記記憶装置に取り込まれた前記顕微鏡画像を含む前記計測結果に基づき、前記動的散乱光成分あるいは前記静的散乱光成分、または前記動的散乱光成分および前記静的散乱光成分の両方の解析を実行する、
ことを特徴とする、分析方法。
【請求項13】
請求項11あるいは請求項12の内の一に記載の分析方法において、
前記解析部は、指示に基づき調整モードとしての動作と計測解析モードとしての動作を行い、
前記調整モードの動作では、前記散乱光検出部からの前記計測結果に基づく前記動的散乱光分析のための演算および前記静的散乱光分析のための演算を行う第3ステップを、停止する、ことを特徴とする、分析方法。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルの計測のための光を発生する光源と、
前記光源が発生した前記光に基づき、前記サンプル内に最小ビームスポットを形成する照射光を、前記サンプルに照射する光照射部と、
前記最小ビームスポットが形成された前記サンプルの分析微小領域において発生した前方あるいは後方の小角散乱光を受け、前記前方あるいは後方の小角乱光に基づく平行小角散乱光を発生する平行散乱光変換部と、
前記平行小角散乱光が入射することにより、入射した前記平行小角散乱光を検出する散乱光検出部と、
記憶装置を備え、前記散乱光検出部の検出結果を前記記憶装置に取り込み、前記記憶装置に取り込んだ前記検出結果に基づき、前記サンプルの前記分析微小領域の解析を行う解析部と、を有し、
前記散乱光検出部において、前記平行小角散乱光に基づいて、前記分析微小領域のサンプルの状態の拡大された画像である顕微鏡画像が生成され、さらに生成された前記顕微鏡画像が検出されて前記記憶装置に記憶され、
前記解析部は、前記記憶装置に記憶された前記顕微鏡画像を含む前記散乱光検出部の前記検出結果に基づき、動的散乱光成分あるいは静的散乱光成分、または前記動的散乱光成分および前記静的散乱光成分の両方を解析する、
ことを特徴とする、分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の分析装置において、
前記解析部は、前記散乱光検出部において生成された前記顕微鏡画像を繰り返し取り込むことにより、前記顕微鏡画像の動画像を前記記憶装置に記憶し、
前記解析部は、記憶された前記動画像に基づき、前記動的散乱光成分あるいは前記静的散乱光成分、または前記動的散乱光成分および前記静的散乱光成分の両方の解析を行うことを特徴とする、分析装置。
【請求項3】
サンプルの計測のための光を発生する光源と、
前記光源が発生した前記光に基づき、前記サンプル内に最小ビームスポットを形成する照射光を、前記サンプルに照射する光照射部と、
前記最小ビームスポットが形成された前記サンプルの分析微小領域において発生した前方あるいは後方の小角散乱光を受け、前記前方あるいは後方の小角乱光に基づく平行小角散乱光を発生する平行散乱光変換部と、
前記平行小角散乱光が入射することにより、入射した前記平行小角散乱光を検出する散乱光検出部と、
記憶装置を備え、前記散乱光検出部の検出結果を前記記憶装置に取り込み、前記記憶装置に取り込んだ前記検出結果に基づき、前記サンプルの前記分析微小領域の解析を行う解析部と、を有し、
前記解析部は、前記散乱光検出部の前記検出結果を、前記記憶装置に記憶し、
前記解析部はさらに、前記記憶装置に記憶された、前記散乱光検出部の前記検出結果に基づき、動的散乱光成分あるいは静的散乱光成分、または前記動的散乱光成分と前記静的散乱光成分の両方を解析して、前記サンプルの前記分析微小領域に関する分析を行う、ことを特徴とする分析装置であって、
さらに、前記平行散乱光変換部と前記散乱光検出部との間に、散乱角フィルターと散乱光集光部とを設け、
前記散乱角フィルターにより、前記平行散乱光変換部からの前記平行小角散乱光の内、特定角度であってしかも前記平行小角散乱光の光軸に垂直な面に於いて円弧状の形状を成す円弧状特定角度散乱光を、前記散乱光集光部を介して、前記散乱光検出部に入射させ、
前記散乱光検出部は、前記円弧状特定角度散乱光に基づき、前記分析微小領域の状態を拡大表示した顕微鏡画像を検出する、ことを特徴とする、分析装置。
【請求項4】
請求項3に記載の分析装置において、
前記解析部は、前記散乱光検出部によって検出された、前記分析微小領域内のサンプルの状態を拡大表示した前記顕微鏡画像を、繰り返し取り込み、前記記憶装置に記憶することにより、前記分析微小領域内のサンプルの状態を拡大表示した前記顕微鏡画像の動画像を、前記記憶装置に記憶する、ことを特徴とする、分析装置。
【請求項5】
請求項3あるいは請求項4の内の一に記載の分析装置において、
前記散乱角フィルターは光を遮断する材料で作られており、前記平行小角散乱光の前記光軸に対して前記特定角度に対応する長さを半径とする円弧状の開口を有していることを特徴とする、分析装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の内の一に記載の分析装置において、
前記光照射部は、前記サンプルに前記最小ビームスポットを形成するための集光レンズを備えており、
前記光源で発生した前記光に基づいて前記光照射部に入射する入射光の光軸に沿って、前記光照射部の前記集光レンズと前記サンプルが配置されており、
前記入射光は、前記光軸に沿って前記集光レンズに入射し、前記入射光はその断面形状が円形の光ビームであり、また前記入射光の前記光ビームの直径が1.6mm以下であり、
前記光照射部が有する前記集光レンズの開口数NAまたは前記集光レンズの焦点距離f、あるいは前記集光レンズの前記開口数NAおよび前記集光レンズの前記焦点距離fは、前記光照射部に入射する前記入射光の前記光ビームの前記直径に基づいて定められている、ことを特徴とする、分析装置。
【請求項7】
請求項6に記載の分析装置において、
前記光照射部は、前記照射光を集光するための前記集光レンズと、
前記集光レンズを、前記光照射部に入射する前記入射光の前記光軸に沿って移動するためのレンズ調整機構と、
を備えており、
前記レンズ調整機構は、前記集光レンズを前記光軸に沿って移動できる距離が±10mm以下であり、移動調整できる最小長さが50μm以下であることを特徴とする、分析装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7の内の一に記載の分析装置において、
前記光照射部から前記サンプルに前記照射光が照射されることにより、前記サンプルの内部に形成される前記最小ビームスポットの直径が、10μm以上で100μm以下の範囲であることを特徴とする、分析装置。
【請求項9】
請求項第1から請求項8の内の一に記載の分析装置において、
試料部を有し、
前記試料部は前記サンプルを保持するためのサンプルセルと前記サンプルセルの位置を調整するためのサンプル位置調整機構とを備え、
前記サンプル位置調整機構で前記サンプルの位置を前記照射光に対して相対的に移動することにより、前記最小ビームスポットが形成される前記サンプルの前記分析微小領域の位置を設定し、前記サンプルにおける設定された前記分析微小領域の状態を表す散乱光の顕微鏡画像が前記散乱光検出部において生成されて、前記散乱光検出部により検出され、
前記解析部は、前記散乱光検出部において検出された前記顕微鏡画像の検出結果に基づき、前記サンプル位置調整機構により前記サンプルセルの前記最小ビームスポットが形成される位置を調整するための調整用画像を出力し、
前記解析部は、前記解析を行うための指示に基づき、前記散乱光検出部において生成された前記顕微鏡画像の前記検出結果を、繰り返し前記記憶装置に記憶し、
前記解析部は、前記記憶装置に繰り返し記憶した、前記散乱光検出部の前記検出結果に基づき、前記解析を行うことを特徴とする、分析装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9の内の一に記載の分析装置において、
前記サンプル内に前記最小ビームスポットを形成するために、前記光照射部から前記サンプルへ照射する前記照射光の最大入射角θiは、0.5度から20度の範囲の角度であることを特徴とする、分析装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10の内の一に記載の分析装置において、
前記解析部は、設定されたサンプリング条件に基づき、繰り返し前記散乱光検出部の前記検出結果を取り込む第1ステップと、
繰り返し取り込んだ前記散乱光検出部の前記検出結果から、動的散乱光分析領域の検出結果および静的散乱光分析領域の検出結果を抽出する第2ステップと、
前記動的散乱光分析領域の前記検出結果に基づく動的散乱光分析のための演算、および前記静的散乱光分析領域の前記検出結果に基づく静的散乱光分析のための演算、を行う第3ステップと、
を有することを特徴とする、分析方法。
【請求項12】
請求項11に記載の分析方法において、
前記設定されたサンプリング条件に基づき前記散乱光検出部から前記検出結果を繰り返し取り込む動作を実行する、前記第1ステップの後、前記解析部は、設定された撮影間隔の間、前記第1ステップの実行を停止し、
前記解析部は、設定された前記撮影間隔が経過した後に、再び前記第1ステップの実行を開始し、
前記第1ステップの実行回数が予め設定された実行回数に到達するまで、前記解析部は前記第1ステップの実行を繰り返して、前記散乱光検出部において生成された前記顕微鏡画像を含む前記検出結果を前記記憶装置に取り込み、
あるいは前記第1ステップの前記実行とその後の前記実行の停止の継続時間が、予め設定された総撮影時間に達するまで、前記第1ステップの前記実行とその後の前記実行の停止の動作を繰り返して、前記散乱光検出部において生成された前記顕微鏡画像を含む前記検出結果を前記記憶装置に取り込み、
前記解析部は、前記記憶装置に取り込まれた前記顕微鏡画像を含む前記検出結果に基づき、前記動的散乱光成分あるいは前記静的散乱光成分、または前記動的散乱光成分および前記静的散乱光成分の両方の解析を実行する、
ことを特徴とする、分析方法。
【請求項13】
請求項11あるいは請求項12の内の一に記載の分析方法において、
前記解析部は、指示に基づき調整モードとしての動作と計測解析モードとしての動作を行い、
前記調整モードの動作では、前記散乱光検出部からの前記検出結果に基づく前記動的散乱光分析のための演算および前記静的散乱光分析のための演算を行う前記第3ステップを、停止する、ことを特徴とする、分析方法。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルの計測のための光を発生する光源と、
前記光源が発生した前記光に基づき、前記サンプル内に最小ビームスポットを形成する照射光を、前記サンプルに照射する光照射部と、
前記最小ビームスポットが形成された前記サンプルの分析微小領域において発生した前方あるいは後方の小角散乱光を受け、前記前方あるいは後方の小角散乱光に基づく平行小角散乱光を発生する平行散乱光変換部と、
前記平行小角散乱光が入射することにより、入射した前記平行小角散乱光を検出する散乱光検出部と、
記憶装置を備え、前記散乱光検出部の検出結果を前記記憶装置に取り込み、前記記憶装置に取り込んだ前記検出結果に基づき、前記サンプルの前記分析微小領域の解析を行う解析部と、を有し、
前記散乱光検出部において、前記平行小角散乱光に基づいて、前記分析微小領域のサンプルの状態の拡大された画像である顕微鏡画像が生成され、さらに生成された前記顕微鏡画像が検出されて前記記憶装置に記憶され、
前記解析部は、前記記憶装置に記憶された前記顕微鏡画像を含む前記散乱光検出部の前記検出結果に基づき、動的散乱光成分あるいは静的散乱光成分、または前記動的散乱光成分および前記静的散乱光成分の両方を解析する、
ことを特徴とする、分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の分析装置において、
前記解析部は、前記散乱光検出部において生成された前記顕微鏡画像を繰り返し取り込むことにより、前記顕微鏡画像の動画像を前記記憶装置に記憶し、
前記解析部は、記憶された前記動画像に基づき、前記動的散乱光成分あるいは前記静的散乱光成分、または前記動的散乱光成分および前記静的散乱光成分の両方の解析を行うことを特徴とする、分析装置。
【請求項3】
サンプルの計測のための光を発生する光源と、
前記光源が発生した前記光に基づき、前記サンプル内に最小ビームスポットを形成する照射光を、前記サンプルに照射する光照射部と、
前記最小ビームスポットが形成された前記サンプルの分析微小領域において発生した前方あるいは後方の小角散乱光を受け、前記前方あるいは後方の小角散乱光に基づく平行小角散乱光を発生する平行散乱光変換部と、
前記平行小角散乱光が入射することにより、入射した前記平行小角散乱光を検出する散乱光検出部と、
記憶装置を備え、前記散乱光検出部の検出結果を前記記憶装置に取り込み、前記記憶装置に取り込んだ前記検出結果に基づき、前記サンプルの前記分析微小領域の解析を行う解析部と、を有し、
前記解析部は、前記散乱光検出部の前記検出結果を、前記記憶装置に記憶し、
前記解析部はさらに、前記記憶装置に記憶された、前記散乱光検出部の前記検出結果に基づき、動的散乱光成分あるいは静的散乱光成分、または前記動的散乱光成分と前記静的散乱光成分の両方を解析して、前記サンプルの前記分析微小領域に関する分析を行う、ことを特徴とする分析装置であって、
さらに、前記平行散乱光変換部と前記散乱光検出部との間に、散乱角フィルターと散乱光集光部とを設け、
前記散乱角フィルターにより、前記平行散乱光変換部からの前記平行小角散乱光の内、特定角度であってしかも前記平行小角散乱光の光軸に垂直な面に於いて円弧状の形状を成す円弧状特定角度散乱光を、前記散乱光集光部を介して、前記散乱光検出部に入射させ、
前記散乱光検出部は、前記円弧状特定角度散乱光に基づき、前記分析微小領域の状態を拡大表示した顕微鏡画像を検出する、ことを特徴とする、分析装置。
【請求項4】
請求項3に記載の分析装置において、
前記解析部は、前記散乱光検出部によって検出された、前記分析微小領域内のサンプルの状態を拡大表示した前記顕微鏡画像を、繰り返し取り込み、前記記憶装置に記憶することにより、前記分析微小領域内のサンプルの状態を拡大表示した前記顕微鏡画像の動画像を、前記記憶装置に記憶する、ことを特徴とする、分析装置。
【請求項5】
請求項3あるいは請求項4の内の一に記載の分析装置において、
前記散乱角フィルターは光を遮断する材料で作られており、前記平行小角散乱光の前記光軸に対して前記特定角度に対応する長さを半径とする円弧状の開口を有していることを特徴とする、分析装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の内の一に記載の分析装置において、
前記光照射部は、前記サンプルに前記最小ビームスポットを形成するための集光レンズを備えており、
前記光源で発生した前記光に基づいて前記光照射部に入射する入射光の光軸に沿って、前記光照射部の前記集光レンズと前記サンプルが配置されており、
前記入射光は、前記光軸に沿って前記集光レンズに入射し、前記入射光はその断面形状が円形の光ビームであり、また前記入射光の前記光ビームの直径が1.6mm以下であり、
前記光照射部が有する前記集光レンズの開口数NAまたは前記集光レンズの焦点距離f、あるいは前記集光レンズの前記開口数NAおよび前記集光レンズの前記焦点距離fは、前記光照射部に入射する前記入射光の前記光ビームの前記直径に基づいて定められている、ことを特徴とする、分析装置。
【請求項7】
請求項6に記載の分析装置において、
前記光照射部は、前記照射光を集光するための前記集光レンズと、
前記集光レンズを、前記光照射部に入射する前記入射光の前記光軸に沿って移動するためのレンズ調整機構と、
を備えており、
前記レンズ調整機構は、前記集光レンズを前記光軸に沿って移動できる距離が±10mm以下であり、移動調整できる最小長さが50μm以下であることを特徴とする、分析装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7の内の一に記載の分析装置において、
前記光照射部から前記サンプルに前記照射光が照射されることにより、前記サンプルの内部に形成される前記最小ビームスポットの直径が、10μm以上で100μm以下の範囲であることを特徴とする、分析装置。
【請求項9】
請求項第1から請求項8の内の一に記載の分析装置において、
試料部を有し、
前記試料部は前記サンプルを保持するためのサンプルセルと前記サンプルセルの位置を調整するためのサンプル位置調整機構とを備え、
前記サンプル位置調整機構で前記サンプルの位置を前記照射光に対して相対的に移動することにより、前記最小ビームスポットが形成される前記サンプルの前記分析微小領域の位置を設定し、前記サンプルにおける設定された前記分析微小領域の状態を表す散乱光の顕微鏡画像が前記散乱光検出部において生成されて、前記散乱光検出部により検出され、
前記解析部は、前記散乱光検出部において検出された前記顕微鏡画像の検出結果に基づき、前記サンプル位置調整機構により前記サンプルセルの前記最小ビームスポットが形成される位置を調整するための調整用画像を出力し、
前記解析部は、前記解析を行うための指示に基づき、前記散乱光検出部において生成された前記顕微鏡画像の前記検出結果を、繰り返し前記記憶装置に記憶し、
前記解析部は、前記記憶装置に繰り返し記憶した、前記散乱光検出部の前記検出結果に基づき、前記解析を行うことを特徴とする、分析装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9の内の一に記載の分析装置において、
前記サンプル内に前記最小ビームスポットを形成するために、前記光照射部から前記サンプルへ照射する前記照射光の最大入射角θiは、0.5度から20度の範囲の角度であることを特徴とする、分析装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10の内の一に記載の分析装置において、
前記解析部は、設定されたサンプリング条件に基づき、繰り返し前記散乱光検出部の前記検出結果を取り込む第1ステップと、
繰り返し取り込んだ前記散乱光検出部の前記検出結果から、動的散乱光分析領域の検出結果および静的散乱光分析領域の検出結果を抽出する第2ステップと、
前記動的散乱光分析領域の前記検出結果に基づく動的散乱光分析のための演算、および前記静的散乱光分析領域の前記検出結果に基づく静的散乱光分析のための演算、を行う第3ステップと、
を有することを特徴とする、分析方法。
【請求項12】
請求項11に記載の分析方法において、
前記設定されたサンプリング条件に基づき前記散乱光検出部から前記検出結果を繰り返し取り込む動作を実行する、前記第1ステップの後、前記解析部は、設定された撮影間隔の間、前記第1ステップの実行を停止し、
前記解析部は、設定された前記撮影間隔が経過した後に、再び前記第1ステップの実行を開始し、
前記第1ステップの実行回数が予め設定された実行回数に到達するまで、前記解析部は前記第1ステップの実行を繰り返して、前記散乱光検出部において生成された前記顕微鏡画像を含む前記検出結果を前記記憶装置に取り込み、
あるいは前記第1ステップの前記実行とその後の前記実行の停止の継続時間が、予め設定された総撮影時間に達するまで、前記第1ステップの前記実行とその後の前記実行の停止の動作を繰り返して、前記散乱光検出部において生成された前記顕微鏡画像を含む前記検出結果を前記記憶装置に取り込み、
前記解析部は、前記記憶装置に取り込まれた前記顕微鏡画像を含む前記検出結果に基づき、前記動的散乱光成分あるいは前記静的散乱光成分、または前記動的散乱光成分および前記静的散乱光成分の両方の解析を実行する、
ことを特徴とする、分析方法。
【請求項13】
請求項11あるいは請求項12の内の一に記載の分析方法において、
前記解析部は、指示に基づき調整モードとしての動作と計測解析モードとしての動作を行い、
前記調整モードの動作では、前記散乱光検出部からの前記検出結果に基づく前記動的散乱光分析のための演算および前記静的散乱光分析のための演算を行う前記第3ステップを、停止する、ことを特徴とする、分析方法。