(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123198
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】力覚センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 1/24 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
G01L1/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027127
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田名網 克周
(72)【発明者】
【氏名】林 美由希
(72)【発明者】
【氏名】金森 義明
(72)【発明者】
【氏名】岡谷 泰佑
(57)【要約】
【課題】設計時に定めた所望の応答特性を得ることができる力覚センサを提供すること。
【解決手段】力覚センサ(10)は、第1基板(11)と、主面(111)に設けられたメタサーフェスパターン(14)と、メタサーフェスパターン(14)を覆う保護層(15)と、第1基板(11)と対向するように設けられた第2基板(12)と、第2主面(121)に設けられた反射層(16)と、第1基板(11)と第2基板(12)との間隔(G)を規定するスペーサ(13)と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する第1基板と、
前記第1基板の第1主面に設けられたメタサーフェスパターンと、
透光性を有し、且つ、前記メタサーフェスパターンを覆う保護層と、
前記第1基板と対向するように設けられた第2基板であって、前記第1主面に対向する第2主面を含む第2基板と、
前記第2主面に設けられた反射層と、
前記第1基板と前記第2基板との間隔を規定するスペーサと、を備えている、
ことを特徴とする力覚センサ。
【請求項2】
前記第2基板は、金属製又は樹脂製である、
ことを特徴とする請求項1に記載の力覚センサ。
【請求項3】
前記第2基板は、樹脂製であり、
前記第2基板の一対の主面のうち前記第2主面に対向する第3主面を覆うハードコート層を更に備えている、
ことを特徴とする請求項2に記載の力覚センサ。
【請求項4】
前記第1基板と、前記第2基板と、前記スペーサとにより取り囲まれ、且つ、前記メタサーフェスパターンと、前記保護層と、前記反射層とを収容する内部空間は、密閉されている、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の力覚センサ。
【請求項5】
前記第1基板、前記第2基板、及び前記スペーサの少なくとも何れかには、前記第1基板と、前記第2基板と、前記スペーサとにより取り囲まれ、且つ、前記メタサーフェスパターンと、前記保護層と、前記反射層とを収容する内部空間と、外部空間とを連通する通気孔が設けられている、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の力覚センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力覚センサに関する。
【背景技術】
【0002】
第1基板に設けられたメタサーフェスパターンと、当該メタサーフェスパターンに対向するように第2基板に設けられた反射層と、第1基板と第2基板との間隔を規定するスペーサとを備えた力覚センサが知られている(例えば、特許文献1)。このような力覚センサでは、メタサーフェスパターンに光を入射させ、メタサーフェスパターンを透過するとともに、反射層において反射される光を用いて、メタサーフェスパターンと反射層との間隔に関する情報を得る。当該間隔は、第2基板に対して作用する力の大きさに応じて決まるため、当該力覚センサは、光学的な手法を用いて、第2基板に対して作用する力の大きさを検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたような力覚センサを製造する場合、メタサーフェスパターンが設けられた第1基板、反射層が設けられた第2基板、及びスペーサを別個に製造したうえで、第1基板、スペーサ、及び第2基板を、この順番で積み重ね、接合する工程が実施される。
【0005】
ここで、メタサーフェスパターン及び反射層の表面に異物(例えば空気中のゴミなど)が付着してしまうと、設計時に定めた所望の応答特性を得ることが困難になる。このようなゴミの付着を防ぐため、第1基板、スペーサ、及び第2基板を接合する工程に先立って、第1基板及び第2基板を洗浄する工程が実施されることが好ましい。
【0006】
しかしながら、このような洗浄を実施することにより、メタサーフェスパターンが直接に洗浄液に晒されることに起因して、メタサーフェスパターンの表面が酸化される可能性がある。このようなメタサーフェスパターンの表面における酸化は、上述した異物と同様に設計時に定めた所望の応答特性を変化させてしまう可能性がある。なお、メタサーフェスパターンは、ベタ膜である反射膜と異なり複数の小さなサブパターンにより構成されており、その膜厚は、反射膜と比較して薄い。そのため、メタサーフェスパターンは、反射膜と比較して、洗浄液による酸化の影響を受けやすい。
【0007】
本発明の一態様は、上述した課題に鑑みなされたものであり、その目的は、設計時に定めた所望の応答特性を得ることができる力覚センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る力覚センサは、透光性を有する第1基板と、前記第1基板の第1主面に設けられたメタサーフェスパターンと、透光性を有し、且つ、前記メタサーフェスパターンを覆う保護層と、前記第1基板と対向するように設けられた第2基板であって、前記第1主面に対向する第2主面を含む第2基板と、前記第2主面に設けられた反射層と、前記第1基板と前記第2基板との間隔を規定するスペーサと、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、製造工程においてメタサーフェスパターンに生じ得る酸化などの悪影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る力覚センサを含む力覚センサシステムの模式図である。
図1は、力覚センサの断面図を含んでいる。
【
図2】(a)~(c)の各々は、それぞれ、
図1に示した力覚センサを構成する第1基板、第2基板、及びスペーサの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る力覚センサ10と、力覚センサ10を備えた力覚センサシステム1とについて、
図1を参照して説明する。また、力覚センサ10について、
図2を参照して説明する。
図1は、力覚センサ10を含む力覚センサシステム1の模式図である。
図1は、力覚センサ10の断面図を含んでいる。
図2の(a)~(c)の各々は、それぞれ、力覚センサ10を構成する第1基板11、第2基板12、及びスペーサ13の平面図である。
【0012】
〔力覚センサの構成〕
図1に示すように、力覚センサ10は、第1基板11と、第2基板12と、スペーサ13と、メタサーフェスパターン14と、保護層15と、反射層16と、ハードコート層17と、を備えている。
【0013】
力覚センサ10では、第1基板11及び第2基板12のうち、第2基板12に対して点荷重Fを作用させた状態において、その点荷重Fを検出する。
【0014】
<第1基板>
第1基板11は、透光性を有する板状部材である。本実施形態では、第1基板11を構成する材料として、無アルカリガラスを採用している。ただし、第1基板11を構成する材料は、後述する光L1の波長帯域において透光性を有する固体の材料であればよく、市場で入手可能な材料の中から適宜選択することができる。第1基板11を構成する材料の他の例としては、石英及びポリカーボネート樹脂が挙げられる。なお、後述するように、本実施形態では、光L1の波長帯域を1400nm以上1600nm以下とする。
【0015】
本実施形態において、第1基板11を平面視した場合の形状(
図2の(a)参照)は、1辺が4cmである正方形である。また、本実施形態において、第1基板11の厚みは、500μmである。第1基板11の形状及び厚みは、上述した例に限定されず、適宜定めることができる。第1基板11の好ましい厚みは、500μm以上2000μm以下である。
【0016】
第1基板11は、互いに対向する一対の主面である主面111及び主面112を含む。
図1に示した状態において、主面111が上側に位置し、主面112が下側に位置するように、第1基板11は配置されている。主面111は、第1主面の一例である。
【0017】
なお、力覚センサ10では、上述したように第2基板12に対して点荷重Fを作用させる。そのうえで、力覚センサ10では、点荷重Fに起因して第2基板12が撓むことを利用して点荷重Fを検出する。したがって、第1基板11は、点荷重Fを第2基板12に作用させた場合に、撓まないように、あるいは、第2基板12のたわみ量に対して無視できる程度しか撓まないように、構成されていることが好ましい。
【0018】
(メタサーフェスパターン)
図1及び
図2の(a)に示すように、第1基板11の主面111には、メタサーフェスパターン14が設けられている。なお、
図2の(a)において、メタサーフェスパターン14は、保護層15により覆われているため、破線で図示されている。
【0019】
メタサーフェスパターン14は、周期的に配置された複数(
図2の(a)においては25個)のサブパターン141からなる。本実施形態においては、5行5列の行列状にサブパターン141を配置している。ただし、
図2の(a)は、サブパターン141を分かりやすく示すための模式図である。実際のメタサーフェスパターン14は、より多く(例えば、100行100列の配置の場合は10000個)のサブパターン141により構成されている。
【0020】
本実施形態において、各サブパターン141(すなわちメタサーフェスパターン14)は、金属製(本実施形態ではアルミニウム)である。
図2の(a)に示したようなメタサーフェスパターン14は、例えば、アルミニウムのベタ膜を主面111に形成したうえで、リソグラフィーの技術を用いることによって得ることができる。各サブパターン141は、一辺の長さが300nmの正方形状である。また、各サブパターン141の厚み(すなわちメタサーフェスパターン14の厚み)は、30nmである。
【0021】
ただし、メタサーフェスパターン14における周期的な配置、メタサーフェスパターン14を構成する材料、各サブパターン141の形状、各サブパターン141の大きさ、及び、各サブパターン141の厚みは、上述したものに限定されず、既存の技術を参考にし、適宜定めることができる。
【0022】
なお、力覚センサ10では、洗浄時にメタサーフェスパターン14が酸化することを低減又は防ぐことを目的として後述する保護層15を備えている。保護層15を用いることなくメタサーフェスパターン14の酸化を抑制するために、メタサーフェスパターン14を構成する材料として金及び白金に代表される酸化されにくい材料を採用することも考えられる。しかしながら、金及び白金は高価であるため、力覚センサ10の製造コストを削減するという観点において好ましくない。
【0023】
(保護層)
図2の(a)に示すように、第1基板11の主面111には、メタサーフェスパターン14を構成する各サブパターン141を完全に覆う保護層15が設けられている。保護層15は、第1基板11と同様に、透光性を有する。
【0024】
本実施形態において、保護層15は、石英ガラス(SiO2)製のベタ膜である。本実施形態において、保護層15の厚みは、35nmである。保護層15の厚みは、上述した例に限定されず、適宜定めることができる。保護層15の厚みの好ましいは、35nm以上60nm以下である。
【0025】
保護層15は、メタサーフェスパターン14が設けられた第1基板11を洗浄する工程において、メタサーフェスパターン14が直接に洗浄液(たとえば、純水など)に晒されることに起因して生じ得るメタサーフェスパターン14の酸化(特にその表面における酸化)を低減する、又は、防ぐことを目的として設けられている。したがって、保護層15は、透光性を有していることに加えて、洗浄液を透過させないように緻密な膜により構成されていることが好ましい。
【0026】
保護層15は、上述したメタサーフェスパターン14の酸化を低減又は防ぐことができるものであればよい。保護層15において、構成する材料や、その成膜方法や、厚みなどは、適宜定めることができる。
【0027】
<第2基板>
第2基板12は、点荷重Fを作用させた場合に撓むように構成された板状部材である。
図1に示すように、第2基板12は、第1基板11と対向するように設けられている。本実施形態では、第2基板12を構成する材料として、ポリカーボネート樹脂を採用している。ただし、第2基板12を構成する材料は、点荷重Fを作用させた場合に撓む固体の材料であればよく、市場で入手可能な材料の中から適宜選択することができる。第2基板12を構成する材料の他の例としては、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、及びシリコーン樹脂に代表される樹脂材料と、アルミニウム、銅、及びステンレスに代表される金属材料とが挙げられる。
【0028】
本実施形態において、第2基板12を平面視した場合の形状(
図2の(b)参照)は、第1基板11と同じく、1辺が4cmである正方形である。また、本実施形態において、第2基板12の厚みは、300μmである。第2基板12の形状及び厚みは、点荷重Fを作用させた場合に適切な量だけ撓むように構成されていればよく、上述した例に限定されない。第2基板12の好ましい厚みは、300μm以上400μm以下である。
【0029】
第2基板12は、互いに対向する一対の主面である主面121及び主面122を含む。第2主面の一例である主面121は、第1基板11の主面111と対向している。また、主面121に対向する主面122は、第3主面の一例である。
図1に示した状態において、主面121が下側に位置し、主面122が上側に位置するように、第2基板12は配置されている。
【0030】
(反射層)
図1及び
図2の(b)に示すように、第2基板12の主面121には、反射層16が設けられている。反射層16は、光L1を反射することによって反射光である光L2を生成する金属膜である。本実施形態では、反射層16を構成する材料として、アルミニウムを採用している。ただし、反射層16を構成する材料は、光L1を反射する固体の材料であればよく、市場で入手可能な金属の中から適宜選択することができる。反射層16を構成する材料の他の例としては、金及び銀が挙げられる。
【0031】
本実施形態において、反射層16の厚みは、50nmである。反射層16の厚みは、上述した例に限定されず、適宜定めることができる。反射層16の好ましい厚みは、50nm以上100nm以下である。
【0032】
ただし、反射層16において、構成する材料や、その成膜方法や、厚みなどは、適宜定めることができる。
【0033】
(ハードコート層)
図1に示すように、主面122には、ハードコート層17が設けられている。本実施形態において、ハードコート層17は、第2基板12の全てを覆うように設けられている。ハードコート層17は、第2基板12の表面であって、力覚センサ10の外部に露出している表面のできるだけ広い領域を覆っていることが好ましい。ハードコート層17は、第2基板12の側面を更に覆うように設けられていてもよい。
【0034】
ハードコート層17は、スマートフォンや表示パネルなどの表面に設けられている被覆層と同様に構成された被覆層である。本実施形態においては、ハードコート層17を構成する材料として、シリコーン樹脂を採用している。ただし、ハードコート層17を構成する材料は、これに限定されない。ハードコート層17を構成する材料の他の例としては、アクリル樹脂及びフッ素樹脂が挙げられる。
【0035】
ハードコート層17は、第2基板12を構成する材料(本実施形態においてはポリカーボネート)と比較して、硬いため、傷つきにくい。また、ハードコート層17は、ガスを透過させにくい特性を有する。
【0036】
<スペーサ>
図1に示すように、スペーサ13は、第1基板11と第2基板12との間隔(無負荷時における間隔)を規定するための部材である。本実施形態において、スペーサ13は、第1基板11と第2基板12とにより挟持されている。第1基板11とスペーサ13とは、互いに接合されており、第2基板12とスペーサ13とは、互いに接合されている。本実施形態では、スペーサ13を、第1基板11及び第2基板12の各々と接合するための接合部材として、光硬化型樹脂を用いている。ただし、接合部材は、これに限定されず、市場で入手可能な接合部材の中から適宜選択することができる。
【0037】
本実施形態では、保護層15と反射層16との間隔Gが190nmになるように、スペーサ13の厚みを定めている。また、第2基板12の中央近傍に点荷重Fを作用させた場合における第2基板12のたわみ量をたわみ量ΔGとする。点荷重Fを作用させた場合、第2基板12がたわみ量ΔGの分だけ撓むため、間隔Gは、無負荷の場合の間隔Gよりもたわみ量ΔGだけ狭くなる。
【0038】
このように、スペーサ13が第1基板11と第2基板12との間に介在することによって、第1基板11と第2基板12との間隔は、固定される。具体的には、
図2の(c)に示すように、外縁及び内縁の形状が何れも正方形である環状の枠体をスペーサ13として採用している。本実施形態において、スペーサ13は、外縁の1辺の長さが4cmであり、第1基板11及び第2基板12と輪郭の形状が同一である。ただし、スペーサ13の外縁の形状は、これに限定されず、適宜定めることができる。また、スペーサ13は、閉じた枠体に限定されず、その一部が切れていてもよい。また、スペーサ13は、1つの部材により構成されていてもよいし、複数の部材により構成されていてもよい。後者の場合、複数の部材の各々は、柱として機能する柱状部材あるいは筒状部材であってもよい。
【0039】
スペーサ13の厚みは、一定である。したがって、スペーサ13を挟み込む主面111と主面121とが平行になるように、第1基板11及び第2基板12を固定することができる。
【0040】
<内部空間>
図1に示すように、本実施形態の力覚センサ10は、メタサーフェスパターン14及び保護層15が設けられた第1基板11と、スペーサ13と、反射層16及びハードコート層17が設けられた第2基板12とをこの順番で積み重ねたうえで、各々を接合することによって得られる。そのため、メタサーフェスパターン14、保護層15、及び反射層16は、第1基板11と、第2基板12と、スペーサ13とにより取り囲まれた内部空間Sに収容されている。
【0041】
図1に示した力覚センサ10においては、内部空間Sが密閉されている。ただし、本発明の一態様において、内部空間Sは、密閉されていなくてもよい。内部空間Sを密閉しない場合には、第1基板11、第2基板12、スペーサ13の少なくとも何れかに、内部空間Sと、力覚センサ10の外部空間とを連通する通気孔を設けておけばよい。
【0042】
<効果>
力覚センサ10においては、第1基板11に設けられたメタサーフェスパターン14が保護層により保護されている。そのため、主面111にメタサーフェスパターン14を形成した後の工程において、メタサーフェスパターン14を含む第1基板11を洗浄する場合であっても、メタサーフェスパターン14が直接に洗浄液に晒されることを防ぐことができる。仮に、メタサーフェスパターンが直接に洗浄液に晒された場合、メタサーフェスパターンの表面が酸化する可能性がある。力覚センサ10は、製造工程においてメタサーフェスパターン14を含む第1基板11を洗浄する場合であっても、メタサーフェスパターン14に生じ得る酸化などの悪影響を抑制することができる。したがって、力覚センサ10は、設計時に定めた所望の応答特性を得ることができる。
【0043】
力覚センサ10において、第2基板12は、金属製又は樹脂製である、ことが好ましい。上記の構成によれば、第2基板12がガラス製である場合とは異なり、第2基板12に対して想定を超える力が作用した場合であっても、第2基板12が割れる可能性を低減することができる。したがって、このような力覚センサ10は、想定を超える力が作用する場合における安全性を高めることができる。
【0044】
また、金属製又は樹脂製の第2基板12を採用する場合、ガラス製の第2基板を採用する場合と比較して、第2基板12を構成する材料におけるヤング率及びポアソン比の選択肢を拡大することができる。力覚センサ10の応答特性(例えば、検出可能な力の範囲や、検出可能な力の分解能など)は、点荷重Fを作用した場合におけるたわみ量ΔGに異存している。すなわち、力覚センサ10の応答特性は、第2基板12を構成する材料におけるヤング率及びポアソン比に異存している。そのため、力覚センサ10は、第2基板12を構成する材料をガラスではなく金属及び樹脂から選択することにより、実現可能な応答特性のバリエーションを拡大することができる。すなわち、力覚センサ10は、製品ラインナップのバリエーションを拡大することができる。
【0045】
また、力覚センサ10は、ハードコート層17を備えていることが好ましい。第2基板12を構成する材料として樹脂を採用した場合、力覚センサ10の製造後にも第2基板12からガスが生じ続ける可能性がある。上記の構成によれば、第2基板12の主面122がハードコート層17により覆われている。ハードコート層17を構成する材料は、硬度が高いことに加えて、ガスの透過を抑制することができる。したがって、力覚センサ10は、第2基板12から生じ得るガスの量を抑制することができる。
【0046】
また、力覚センサ10においては、内部空間Sは、密閉されていることが好ましい。上記の構成によれば、異物(例えば空気中のゴミなど)が内部空間Sに侵入することを抑制することができる。したがって、力覚センサ10は、設計時に想定した応答特性を容易に維持することができる。
【0047】
また、力覚センサ10においては、内部空間Sと、力覚センサ10の外部空間とが連通して構成も採用し得る。上記の構成によれば、内部空間Sが密閉されていないため、外部空間における圧力が変化するような場合であっても、第1基板11と第2基板12との無負荷時における間隔Gを所定の間隔に保つことができる。したがって、力覚センサ10の一変形例は、外部空間における圧力に関わらず、設計時に想定した応答特性を示すことができる。
【0048】
〔力覚センサシステムの構成〕
図1に示すように、力覚センサシステム1は、上述した力覚センサ10と、測定部20とを備えている。ここでは、測定部20について簡単に説明する。
【0049】
測定部20は、光源21と、光ファイバ22と、サーキュレータ23と、光ファイバ24と、コリメートレンズ25と、光ファイバ26と、光検出部27と、を備えている。
【0050】
光源21は、波長帯域が1400nm以上1600nm以下である光L1を出射するように構成されている。本実施形態においては、近赤外線を放射する発光ダイオード(LED)を光源21として用いている。ただし、光源21は、LEDに限定されず、市場で入手可能な光源の中から適宜選択することができる。また、光源21は、このLEDの後段に設けられたフィルタであって、光L1の波長帯域を1400nm以上1600nm以下に限定するフィルタを設けている。
【0051】
サーキュレータ23は、3個のポートP1,P2,P3を有する光学素子である。サーキュレータ23は、ポートP1に入射した光をポートP2から出射し、ポートP2に入射した光をポートP3から出射し、ポートP3から入射した光をポートP1から出射するように構成されている。
【0052】
光ファイバ22は、一方の端部が光源21に接続されており、他方端部がサーキュレータ23のポートP1に接続されている。したがって、光ファイバ22は、光源21が出射した光L1をサーキュレータ23のポートP1に入射する。
【0053】
光ファイバ24は、一方の端部がコリメートレンズ25に接続されており、他方端部がサーキュレータ23のポートP2に接続されている。したがって、光ファイバ24は、サーキュレータ23のポートP2から出射された光L1をコリメートレンズ25に出射するとともに、コリメートレンズ25から入射された光L2をポートP2に入射する。
【0054】
コリメートレンズ25は、光ファイバ24の一方の端部から出射された光L1をコリメート光に変換する。コリメートレンズ25によりコリメート化された光L1は、反射層16により反射されることにより光L2に変換され、同じ経路を逆方向に向かって伝搬する。光L2は、コリメートレンズ25を介して光ファイバ24の一方の端部に入射する。ここで、コリメートレンズ25は、光L1と同様にコリメート光であるL1を光ファイバ24の一方の端部に効率よく結合させる。
【0055】
光ファイバ26は、一方の端部が光検出部27に接続されており、他方端部がサーキュレータ23のポートP3に接続されている。したがって、光ファイバ26は、サーキュレータ23のポートP3から出射された光L2を光検出部27に出射する。
【0056】
光検出部27は、光L2のスペクトル(本実施形態では反射スペクトル)を計測するための構成である。本実施形態において、光検出部27は、光L2を分光する分光器と、分光された光L2の各波長成分の光を電気信号に変換するフォトダイオードと、を備えている。
【0057】
図1の挿入図は、力覚センサ10の入力光である光L1、及び、力覚センサ10の出力光である光L2の各々のスペクトルを模式的に示すグラフである。挿入図では、光L1のスペクトルを実線で図示し、光L2のスペクトルを破線で図示している。
【0058】
挿入図から分かるように、光L2のスペクトルは、光L1のスペクトルと中心波長同士で比較した場合に、シフト量Δλだけ長波長側へシフトする。シフト量Δλは、
図1に示す間隔Gに応じて定まる量である。また、間隔Gは、点荷重Fを第2基板12の中央近傍に作用させた場合における第2基板12のたわみ量ΔGに応じて定まる量である。したがって、力覚センサ10において、シフト量Δλは、点荷重Fの大きさに応じて定まる量である。力覚センサシステム1では、力覚センサ10における点荷重Fとシフト量Δλとの相関関係を予め取得しておく、あるいは、計算しておくことによって、点荷重Fを検知することができる。
【0059】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1 力覚センサシステム
10 力覚センサ
11 第1基板
12 第2基板
13 スペーサ
14 メタサーフェスパターン
15 保護層
16 反射層
17 ハードコート層
20 測定部