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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012320
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】評価サーバ、評価システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20230118BHJP
   G06Q 50/02 20120101ALI20230118BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q50/02
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115896
(22)【出願日】2021-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】521310174
【氏名又は名称】岩田 仲弘
(71)【出願人】
【識別番号】521310185
【氏名又は名称】大関 芳沖
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】岩田 仲弘
(72)【発明者】
【氏名】大関 芳沖
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC01
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】洋上風力発電事業による漁業への影響を定量的かつ客観的に評価し得る技術を提供する。
【解決手段】洋上風力発電設備による漁業への影響を評価する評価サーバであって、出漁期間において取得された位置情報を用いて航行情報を導出する航行情報導出部と、出漁期間において取得された位置情報と出漁期間において取得された画像情報とのうちの少なくとも1つの情報を用いて操業情報を導出する操業情報導出部と、出漁期間において取得された画像情報を用いて漁獲情報を導出する漁獲情報導出部と、航行情報を用いて出漁期間における燃料費を算出する燃料費算出部と、航行情報を用いて出漁期間における人件費を算出する人件費算出部と、漁獲情報と操業情報とを用いて出漁期間における単位漁獲収入を算出する漁獲収入算出部と、洋上風力発電設備の設置前後の燃料費と人件費と単位漁獲収入とに基づいて漁業への影響を評価する評価部とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上風力発電設備による漁業への影響を評価する評価サーバであって、
出航から帰航迄の出漁期間における漁船の位置情報を用いて前記出漁期間における航行情報を導出する航行情報導出部と、
前記出漁期間の位置情報と前記出漁期間において漁船上で撮像された画像情報とのうちの少なくとも1つの情報を用いて前記出漁期間における操業情報を導出する操業情報導出部と、
前記出漁期間において漁船上で撮像された画像情報を用いて前記出漁期間における漁獲情報を導出する漁獲情報導出部と、
前記航行情報導出部によって導出された前記出漁期間における前記航行情報を用いて前記出漁期間における燃料費を算出する燃料費算出部と、
前記航行情報導出部によって導出された前記出漁期間における前記航行情報を用いて前記出漁期間における人件費を算出する人件費算出部と、
前記漁獲情報導出部によって導出された前記出漁期間における前記漁獲情報と前記操業情報導出部によって導出された前記出漁期間における前記操業情報とを用いて、前記出漁期間における単位漁獲収入として、操業1回当たり漁獲収入又は操業時間当たりの漁獲収入を算出する漁獲収入算出部と、
前記燃料費算出部によって算出された洋上風力発電設備の設置前後の前記燃料費と、前記人件費算出部によって算出された洋上風力発電設備の設置前後の前記人件費と、前記漁獲収入算出部によって算出された洋上風力発電設備の設置前後の前記単位漁獲収入と、に基づいて前記漁業への影響を評価する評価部と
を備えることを特徴とする評価サーバ。
【請求項2】
前記評価部は、
洋上風力発電設備の設置前後の事業実施区及び対照区における前記燃料費と、
洋上風力発電設備の設置前後の事業実施区及び対照区における前記人件費と、
洋上風力発電設備の設置前後の事業実施区及び対照区における前記単位漁獲収入と、に基づいて前記漁業への影響を評価する
ことを特徴とする請求項1に記載の評価サーバ。
【請求項3】
洋上風力発電設備による漁業への影響を評価する評価システムであって、
漁船の位置情報を取得する位置情報取得部と、
漁船上又は漁船周辺の画像情報を取得する画像情報取得部と、
出航から帰航迄の出漁期間において前記位置情報取得部によって取得された前記位置情報を用いて前記出漁期間における航行情報を導出する航行情報導出部と、
出航から帰航迄の出漁期間において前記位置情報取得部によって取得された前記位置情報と、前記出漁期間において前記画像情報取得部によって取得された画像情報とのうちの少なくとも1つの情報を用いて前記出漁期間における操業情報を導出する操業情報導出部と、
前記出漁期間において前記画像情報取得部によって取得された画像情報を用いて前記出漁期間における漁獲情報を導出する漁獲情報導出部と、
前記航行情報導出部によって導出された前記出漁期間における前記航行情報を用いて前記出漁期間における燃料費を算出する燃料費算出部と、
前記航行情報導出部によって導出された前記出漁期間における前記航行情報を用いて前記出漁期間における人件費を算出する人件費算出部と、
前記漁獲情報導出部によって導出された前記出漁期間における前記漁獲情報と前記操業情報導出部によって導出された前記出漁期間における前記操業情報とを用いて、前記出漁期間における単位漁獲収入として、操業1回当たり漁獲収入又は操業時間当たりの漁獲収入を算出する漁獲収入算出部と、
前記燃料費算出部によって算出された洋上風力発電設備の設置前後の前記燃料費と、前記人件費算出部によって算出された洋上風力発電設備の設置前後の前記人件費と、前記漁獲収入算出部によって算出された洋上風力発電設備の設置前後の前記単位漁獲収入と、に基づいて前記漁業への影響を評価する評価部と
を備えることを特徴とする評価システム。
【請求項4】
前記画像情報取得部によって取得された前記画像情報を用いて、魚種及び漁獲量を含む市場向けの速報情報を生成する速報情報を生成部と、
前記生成部によって生成された前記速報情報を送信する送信部と
を備えることを特徴とする請求項3に記載の評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、評価サーバ、評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
洋上風力発電事業では、漁場およびその近傍や漁船の航路において、新たな構造物を設置することから設置工事及び構造物の存在が漁業に影響を及ぼす可能性がある。「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」においては、海洋再生可能エネルギー発電設備整備促進区域として指定する際に「海洋再生可能エネルギー発電事業の実施により、漁業に支障を及ぼさないことが見込まれること。」と定めていることから、洋上風力発電事業が漁業に影響を及ぼす場合には、これを補償することによって影響を回避する必要がある。一方、洋上風力発電事業における電力販売収入は、すべての電気利用者から徴収される再生可能エネルギー発電促進賦課金に依存していることから、漁業に対する補償に対しては、電気利用者の理解が得られるような客観性や定量性が求められる。このため、洋上風力発電事業の実施に際しては、洋上風力発電事業による漁業への影響を定量的かつ客観的に評価する必要がある。
【0003】
洋上風力発電事業に係る漁業影響の調査方法としては、全国水産技術協会によって「洋上風力発電施設の建設に伴う漁業影響調査の実施について」が公開されている(例えば、非特許文献1)。ここでは、気象・海象などの漁場環境調査、魚卵・稚仔などの水産生物調査、聞き取り調査などの漁業実態調査について言及されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】全国水産技術協会:「洋上風力発電施設の建設に伴う漁業影響調査の実施について」http://www.jfsta.or.jp/activity/%E6%B4%8B%E4%B8%8A%E9%A2%A8%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%96%BD%E8%A8%AD%E3%81%AE%E5%BB%BA%E8%A8%AD%E3%81%AB%E4%BC%B4%E3%81%86%E6%BC%81%E6%A5%AD%E5%BD%B1%E9%9F%BF%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E3%81%AE%E5%AE%9F%E6%96%BD%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記「…漁業影響調査の実施について」では、漁場環境調査等の各調査の調査結果を漁業影響の評価に結び付ける方法については明らかにしていない。従って、各調査を行ったとしても、洋上風力発電事業による漁業への影響を定量的かつ客観的に評価することは困難である。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、洋上風力発電事業による漁業への影響を定量的かつ客観的に評価し得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するための本発明の一態様は、洋上風力発電設備による漁業への影響を評価する評価サーバであって、出航から帰航迄の出漁期間における漁船の位置情報を用いて前記出漁期間における航行情報を導出する航行情報導出部と、前記出漁期間の位置情報と前記出漁期間において漁船上で撮像された画像情報とのうちの少なくとも1つの情報を用いて前記出漁期間における操業情報を導出する操業情報導出部と、前記出漁期間において漁船上で撮像された画像情報を用いて前記出漁期間における漁獲情報を導出する漁獲情報導出部と、前記航行情報導出部によって導出された前記出漁期間における前記航行情報を用いて前記出漁期間における燃料費を算出する燃料費算出部と、前記航行情報導出部によって導出された前記出漁期間における前記航行情報を用いて前記出漁期間における人件費を算出する人件費算出部と、前記漁獲情報導出部によって導出された前記出漁期間における前記漁獲情報と前記操業情報導出部によって導出された前記出漁期間における前記操業情報とを用いて、前記出漁期間における単位漁獲収入として、操業1回当たり漁獲収入又は操業時間当たりの漁獲収入を算出する漁獲収入算出部と、前記燃料費算出部によって算出された洋上風力発電設備の設置前後の前記燃料費と、前記人件費算出部によって算出された洋上風力発電設備の設置前後の前記人件費と、前記漁獲収入算出部によって算出された洋上風力発電設備の設置前後の前記単位漁獲収入と、に基づいて前記漁業への影響を評価する評価部とを備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る漁業システムの概念図及び船上システムの構成図である。
図2】漁業システムの機能構成図である。
図3】船上システムに関連する各種情報について説明する図である。
図4】本部システムに関係する各種情報について説明する図である。
図5】本部システムに関係する各種情報について説明する図である。
図6】本部システムに関係する各種情報について説明する図である。
図7】本部システムに関係する各種情報について説明する図である。
図8】本部システムに関係する各種情報について説明する図である。
図9】本部システムに関係する各種情報について説明する図である。
図10】本部システムに関係する各種情報について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(漁業システム1の概要)
図1は、実施形態に係る漁業システム1の概念図及び船上システム10の構成図である。漁業システム1は、図1(A)に示すように、船上システム10-1~10-N(Nは、1以上の整数)、本部システム20、市場システム30を含む。
【0010】
船上システム10-X(Xは1~N)は、情報収集するN隻の漁船の夫々に設置(導入)される。つまり、船上システム10-Nの数Nは、情報収集する漁船の数である。漁船の数は、1以上であるが、本実施形態では複数としている。船上システム10-1~10-Nの夫々を区別しない場合には、船上システム10と総称する。なお、本実施形態では、乗組員(船員)が2人以上の漁船を想定している。
【0011】
船上システム10は、1以上の情報機器から構成される。船上システム10は、船上システム10を設置した漁船の出航から帰航迄の間(出漁期間)において種々の情報(例えば、位置情報、画像情報、音声情報)を取得(収集)する。
【0012】
本部システム20は、1以上の情報機器から構成される。本部システム20は、例えば、洋上風力発電設備による漁業への影響を評価する組織が管轄する場所(例えば、ビル内、クラウド上)に設置される。本部システム20は、船上システム10において取得された情報等を用いて洋上風力発電設備による漁業への影響を評価する。
【0013】
市場システム30は、1以上の情報機器から構成される。市場システム30は、例えば、魚市場に設置される。市場システム30は、船上システム10において取得された情報(例えば、画像情報)に基づいて生成される流通用の漁獲速報情報(以下、単に「速報情報」と称する)を記憶し、速報情報を市場関係者(例えば、仲買人等)に提供する。また、市場システム30は、水揚げに関する水揚げ情報を記憶し、本部システム20に提供する。
【0014】
なお、漁業システム1の全体(船上システム10、本部システム20及び市場システム30)を指して、洋上風力発電設備による漁業への影響を評価するシステム(以下、単に「評価システム」と称する場合がある)と称してもよいし、漁業システム1の一部(市場システム30を除外した船上システム10及び本部システム20、漁業システム1から船上システム10を除外した市場システム30及び本部システム20、又は、漁業システム1から船上システム10及び市場システム30を除外した本部システム20)を評価システムと称してもよい。
【0015】
図2は、漁業システム1(船上システム10、本部システム20、市場システム30)の機能構成図である。なお、図2では、説明の便宜上、一の漁船(事業実施区(Impact)の漁船。漁船名は「漁船〇〇丸」、漁業システム1において洋上風力発電設備による漁業への影響を評価するために漁船を識別する識別情報は「漁船I-1」)に設置された船上システム10を示している。
【0016】
(船上システム10)
図1(B)は、船上システム10の構成図である。図3は、船上システム10に関連する各種情報について説明する図である。以下、図1(B)、図2図3を用いて、船上システム10について詳しく説明する。
【0017】
船上システム10は、「全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)、例えば図1(B)に示すように、全地球測位システム(Global Positioning System、以下、GPS)」機能を備える1台の通信端末(例えば、スマートフォン、タブレット端末)と、通信機能を備える複数台のカメラと、通信機能を備える複数台のマイクとによって構成される。換言すれば、船上システム10を設置は、漁船上への、上記通信端末、上記複数台のカメラ、上記複数台のマイクの設置である。
【0018】
各カメラと通信端末との間の通信は、有線による通信であってもよいし、無線による通信(例えば無線LANのアドホック通信、デュアルBluetooth(登録商標)等)であってもよい。各マイクと通信端末との間の通信についても同様である。
【0019】
なお、船上システム10を実現する機器構成は、図1(B)に示した機器構成に限定されない。例えば、船上システム10は、GPS機能とカメラとを備える複数台の通信端末と、通信機能を備える複数台のマイクとによって構成されてもよい。また、カメラとマイクは別体ではなく同一の機器がカメラとマイクとを備えていてもよい。
【0020】
図2に示すように、船上システム10は、位置情報取得部101と、画像情報取得部102と、音声情報取得部103と、速報情報生成部110と、通信部120と、取得情報記憶部190とを備える。
【0021】
図1(B)に示した通信端末のGPS受信部は、図2に示した位置情報取得部101に相当する。図1(B)に示したカメラ(又はカメラが備える撮像部)の夫々は、図2に示した画像情報取得部102に相当する。図1(B)に示したマイク(又はマイクが備える収音部)の夫々は、図2に示した音声情報取得部103に相当する。図1(B)に示した通信端末のストレージは、図2に示した取得情報記憶部190に相当する。図1(B)に示した通信端末のCPUは、図2に示した速報情報生成部110に相当する。図1(B)3に示した通信端末の通信部は、図2に示した通信部120に相当する。
【0022】
なお、図2に示した通信部120は、当該船上システム10と、他のシステム(市場システム30、本部システム20)との間の通信(例えば、5th Generation Mobile Communication System、5Gによる通信)に係る通信部であり、船上システム10内における通信(無線LAN、Bluetooth(登録商標))に係る通信部(非図示)ではない。
【0023】
位置情報取得部101は、例えば、GPS機能を利用し、出漁期間において当該漁船の位置情報を取得する。画像情報取得部102は、当該漁船上又は当該漁船周辺を撮像し、出漁期間において撮像した撮像画像を画像情報として取得する。音声情報取得部103は、出漁期間において音声情報を取得する。
【0024】
取得情報記憶部190は、各取得部(位置情報取得部101、画像情報取得部102、音声情報取得部103)によって取得された情報を記憶する。例えば、取得情報記憶部190は、図3(A)に示すように、日時に対応付けて、位置情報取得部101によって取得された当該漁船の位置、画像情報取得部102によって取得された当該漁船上又は当該漁船周辺の画像、音声情報取得部103によって取得された当該漁船上の音声を記憶する。つまり、取得情報記憶部190には、各取得部によって取得された情報が経時的に蓄積される。
【0025】
なお、取得情報記憶部190は、各時刻の位置情報からなる時系列の位置情報と時刻情報を含む音声付動画情報とを記憶してもよい。つまり、取得情報記憶部190は、出漁期間内の各時刻における当該漁船の位置、出漁期間内の各時刻における当該漁船上又は当該漁船周辺の画像、出漁期間内の各時刻における当該漁船上の音声が分かるような情報を記憶すればよい。
【0026】
速報情報生成部110は、取得情報記憶部190に記憶されている情報を用いて魚市場向けの速報情報を生成する。例えば、速報情報生成部110は、図3(B)に示すような、当該速報情報の生成日時、漁船名、漁獲詳細情報(獲得魚種、サイズ、漁獲量)を含む速報情報を生成する。例えば、速報情報生成部110は、取得情報記憶部190に記憶されている画像のなかから揚網作業時の画像を特定する。速報情報生成部110は、画像認識によって取得情報記憶部190に記憶されている画像のなかから揚網作業時の画像を特定してもよい。また、速報情報生成部110は、画像認識に代えて又は加えて音声認識によって取得情報記憶部190に記憶されている音声(例えば、船員の明示的な又は非明示的な声)のなかから揚網作業時の音声を特定し、当該時刻に対応する画像を揚網作業時の画像として特定してもよい。続いて、速報情報生成部110は、特定した揚網作業時の画像を画像認識し、漁獲魚種、サイズ、漁獲量を算出し、図3(B)に示したような速報情報を生成する。なお、速報情報生成部110は、揚網作業時の画像の画像認識と、揚網作業時の音声(例えば、船員の明示的な又は非明示的な声)の音声認識とに基づいて速報情報を生成してもよい。
【0027】
通信部120は、種々の情報を送受信する。例えば、通信部120は、速報情報生成部110によって生成された速報情報を市場システム30に送信する。例えば、通信部120は、揚網作業直後に、船員の操作に応じて(又は速報情報の生成後に自動的に)、速報情報を市場システム30に送信してもよい。つまり、速報情報生成部110は、揚網作業後に直ちに速報情報を生成し、通信部120は、速報情報生成部110が生成した速報情報を直ちに市場システム30に送信する。
【0028】
船上システム10は、水揚げ前に市場に対して速報情報を提供するため、帰港(漁港又は魚市場の港。本実施形態では、魚市場の港。以下同様)前に漁獲物の入札が可能になり、仲買単価の上昇が期待できる。このように、漁船への船上システム10の設置は、仲買単価の上昇機会を付与するものであるため、漁船への船上システム10の設置について漁業者の協力が得やすくなる。
【0029】
また、通信部120は、取得情報記憶部190に記憶されている取得情報(各取得によって取得された情報)を本部システム20に送信する。例えば、通信部120は、帰航後に、船員の操作に応じて(又は帰港後に自動的に)、取得情報記憶部190に記憶されている情報を本部システム20に送信してもよい。なお、船上システム10は、例えば、位置情報取得部101が取得する位置や、画像情報取得部102が取得する画像や、音声情報取得部103が取得する音声に基づいて、帰航した旨を認識してもよい。
【0030】
なお、通信部120は、取得情報記憶部190に記憶されている取得情報を何れの漁船の取得情報であるかを秘匿化(匿名化)して本部システム20に送信する。つまり、通信部120は、図3(A)に示したような取得情報を漁船I-1の情報として本部システム20に送信するが、当該漁船I-1は、上述したように、漁業システム1において洋上風力発電設備による漁業への影響を評価するために漁船を識別する識別情報であり、当該漁船の船名や当該漁船の所有者等を示した情報は、本部システム20に送信しない。
【0031】
また、通信部120は、市場システム30や本部システム20とは異なる装置(例えば、インターネット上のサーバ)に情報を送信し、該装置から情報を受信してもよい。
【0032】
(本部システム20)
図4図8は、本部システム20に関係する各種情報について説明する図である。以下、図2図4図8を用いて、本部システム20について詳しく説明する。
【0033】
本部システム20は、例えば、1台以上のサーバによって構成される。以下、本部システム20は、1台のサーバによって構成されるものとして説明する。図2に示すように、本部システム(サーバ)20は、通信部220と、取得情報記憶部290と、航行情報導出部231と、操業情報導出部232と、漁獲情報導出部233と、航行情報記憶部291と、操業情報記憶部292と、漁獲情報記憶部293と、算出用情報記憶部280と、燃料費算出部241と、人件費算出部242と、漁獲収入算出部243と、実績情報データベース(DB)294と、評価部250と、評価情報記憶部295とを備える。
【0034】
通信部220は、種々の情報を送受信する。例えば、通信部220は、各漁船の船上システム1から送信される情報(夫々の漁船において取得された取得情報)を受信する。また、通信部220は、市場システム30から送信される情報(水揚げ情報記憶部391に記憶されている水揚げ情報)を受信する。また、通信部220は、船上システム10や市場システム30とは異なる装置(例えば、パーソナルコンピュータ、インターネット上のサーバ。図2では「外部装置」と表記)に情報を送信し、該装置から情報を受信してもよい。
【0035】
取得情報記憶部290は、通信部220が各漁船の船上システム1から受信した情報(夫々の漁船において取得された情報)を記憶する。つまり、取得情報記憶部290には、図4に示すように、漁船毎、出漁(出航)毎の取得情報が記憶される。なお、上述したように、通信部120は何れの漁船の取得情報であるかが秘匿化して取得情報を送信するため、取得情報記憶部290に記憶される取得情報も、何れの漁船の取得情報であるかが秘匿化されている。なお、一次データである取得情報に由来する2次データ(航行情報、操業情報等)も同様である。
【0036】
なお、取得情報記憶部290は、船上システム1の取得情報記憶部190と同様、出漁期間内の各時刻における当該漁船の位置、出漁期間内の各時刻における当該漁船上又は当該漁船周辺の画像、出漁期間内の各時刻における当該漁船上の音声が分かるような情報を記憶すればよい。図9に示す例(対照区を設置する例)においても同様である。
【0037】
算出用情報記憶部280は、費用及び漁獲収入の算出に用いられる情報を記憶する。例えば、算出用情報記憶部280は、燃料費の算出に用いる燃料費算出用情報、人権費の算出に用いる人件費算出用情報、漁獲収入の算出に用いる漁獲収入算出用情報を記憶する。
【0038】
燃料費算出用情報は、例えば、現在及び過去の燃料単価を含む情報である。なお、本部システム20は、例えば、外部(インターネット上のサーバ)から現在及び過去の燃料単価を含む情報を取得し、燃料費算出用情報として算出用情報記憶部280に記憶してもよい。
【0039】
人件費算出用情報は、例えば、現在及び過去の時給、超過時間分の割増率を含む情報である。なお、人件費算出用情報は、例えば、当該組織が管轄するビル内に設置したパーソナルコンピュータ等によって入力された情報であってもよい。つまり、本部システム20は、上記パーソナルコンピュータ等から人件費算出用情報を取得し、算出用情報記憶部280に記憶してもよい。
【0040】
漁獲収入算出用情報は、例えば、現在及び過去の魚種別、サイズ別の魚価を含む情報である。漁獲収入算出用情報は、時刻別(水揚げ時刻、取引時刻、出荷時刻等)の情報(例えば、〇年〇月〇日に水揚げしたカニ(〇サイズ)の魚価について水揚げ時刻別に記憶した情報)であってもよい。なお、本部システム20は、市場システム30から取得した水揚げ情報を漁獲収入算出用情報として算出用情報記憶部280に記憶する。
【0041】
(航行情報の導出)
航行情報導出部231は、取得情報記憶部290に記憶されている位置情報(つまり、船上システム10の位置情報取得部101によって取得された位置情報)を用いて、漁船毎、出漁毎に、夫々の出漁期間における航行情報(例えば、出漁日時、航路情報、航行時間、航行距離を含む航行情報)を導出する。つまり、図4に示したように取得情報記憶部290には出漁期間内の各時刻における位置が記憶されているため、航行情報導出部231は、出漁期間内の各時刻における位置に基づいて、航路情報、航行時間、航行距離を導出する。なお、航路情報は、各位置の航行速度を含む。つまり、航路情報は、航行位置と航行速度とを対応付けた情報である。
【0042】
航行情報導出部231は、導出した航行情報を航行情報記憶部291に記憶する。図5は、航行情報記憶部291に記憶される航路情報(航行情報導出部231によって導出された航行情報)を示している。同図の航路情報内のドットに示した領域は、洋上風力発電設備の設置予定海域を示している。なお、同図の航路情報は、距離、面積等も含め、説明用に抽象化したものである。
【0043】
(操業情報の導出)
操業情報導出部232は、取得情報記憶部290に記憶されている位置情報を用いて、漁船毎、出漁毎に、夫々の出漁期間における操業情報(例えば、操業(何回目の操業であるかを示した情報)、開始日時、曳網距離、曳網時間を含む操業情報)を導出する。一般的に漁船は、漁場までは一定以上の航行速度で移動するが、漁場を探索、あるいは漁場に接近した場合には航行速度を低下させ、網入れなどの際には速度を更に低下させる。つまり、漁船の航行速度と、操業行為の有無及び内容とは、相互に関連するといった特徴がある。当該特徴を利用し、操業情報導出部232は、取得情報記憶部290に記憶されている位置情報を参照し、網入れ回数(操業回数)、網入れ1回あたりの曳網時間、曳網距離を導出する。
【0044】
なお、操業情報導出部232は、取得情報記憶部290に記憶されている位置情報に代えて又は加えて、取得情報記憶部290に記憶されている画像情報(つまり、船上システム10の画像情報取得部102によって取得された画像情報)を用いて、漁船毎、出漁毎に、夫々の出漁期間における操業情報を導出してもよい。つまり、操業情報導出部232は、漁船上又は漁船周辺の画像を画像認識し、網入れ回数(操業回数)、網入れ1回あたりの曳網時間、曳網距離を導出してもよい。操業情報導出部232は、海面等の背景部分を画像認識し、航行速度を導出してもよい。なお、取得情報記憶部290に記憶されている画像は、時系列的な画像であるため(時間的な要素を含むため)、操業情報導出部232は、画像の枚数(又はフレーム数)から時間を把握することができる。
【0045】
また、操業情報導出部232は、取得情報記憶部290に記憶されている位置情報、画像情報のうちの少なくとも一方に代えて又は加えて、取得情報記憶部290に記憶されている音声情報(つまり、船上システム10の音声情報取得部103によって取得された音声情報)を用いて、漁船毎、出漁毎に、夫々の出漁期間における操業情報を導出してもよい。つまり、操業情報導出部232は、漁船上の音声(例えば、船員の合図の声)を音声認識し、網入れ回数(操業回数)、網入れ1回あたりの曳網時間、曳網距離を導出してもよい。なお、取得情報記憶部290に記憶されている音声は、当然に、時系列的なものであるため、操業情報導出部232は、音声から時間を把握することができる。
【0046】
操業情報導出部232は、導出した操業情報を操業情報記憶部292に記憶する。図6は、操業情報記憶部292に記憶される操業情報(操業情報導出部232によって導出された操業情報)を示している。
【0047】
(漁獲情報の導出)
漁獲情報導出部233は、取得情報記憶部290に記憶されている画像情報を用いて、漁船毎、出漁毎に、夫々の出漁期間における漁獲情報(例えば、操業(何回目の操業であるかを示した情報)、漁獲詳細情報(獲得魚種、サイズ、漁獲量)を含む漁獲情報)を導出する。例えば、漁獲情報導出部233は、船上システム1の速報情報生成部110と同様の手法によって、漁獲情報を導出してもよい。
【0048】
漁獲情報導出部233は、導出した漁獲情報を漁獲情報記憶部293に記憶する。図7は、漁獲情報記憶部293に記憶される漁獲情報(漁獲情報導出部233によって導出された漁獲情報)を示している。
【0049】
(燃料費の算出)
燃料費算出部241は、航行情報記憶部291に記憶されている航行情報と、算出用情報記憶部280に記憶されている燃料費算出用情報とを用いて燃料費を算出する。具体的には、燃料費算出部241は、航行情報に基づいて燃料消費量を算出し、算出した燃料消費量に燃料単価を乗じて、漁船毎、出漁毎に、夫々の出漁期間における燃料費を算出する。なお、燃料費算出部241は、出漁毎に燃料費を算出しなくてもよい。例えば、燃料費算出部241は、評価部250による評価を実施する際に、過去の夫々の出漁の航行情報と過去の夫々の時期の燃料単価とを用いて、過去の夫々の出漁における燃料費を纏めて算出してもよい。
【0050】
なお、燃料費算出部241は、航行情報記憶部291に記憶されている航行情報に加えて、操業情報記憶部292に記憶されている操業情報(つまり、操業情報導出部232によって導出された操業情報)を用いて、漁船毎、出漁毎に、夫々の出漁期間における燃料費を算出してもよい。つまり、燃料消費量は操業回数や操業時間にも左右されるため、燃料費算出部241は、操業情報も参照し、燃料消費量を算出してもよい。
【0051】
燃料費算出部241は、算出した燃料費を実績情報(実績情報の一部)として実績情報DB294に記憶する。
【0052】
(人件費の算出)
人件費算出部242は、航行情報記憶部291に記憶されている航行情報と、算出用情報記憶部280に記憶されている人件費算出用情報とを用いて人件費を算出する。具体的には、人件費算出部242は、航行時間(即ち乗船時間)に時給等を乗じて、漁船毎、出漁毎に、夫々の出漁期間における人件費を算出する。なお、人件費算出部242は、出漁毎に人件費を算出しなくてもよい。例えば、人件費算出部242は、評価部250による評価を実施する際に、過去の夫々の出漁の航行情報と過去の夫々の時期の時給等とを用いて、過去の夫々の出漁における人件費を纏めて算出してもよい。
【0053】
なお、人件費算出部242は、航行情報記憶部291に記憶されている航行情報に加えて、操業情報記憶部292に記憶されている操業情報を用いて、漁船毎、出漁毎に、夫々の出漁期間における人件費を算出してもよい。つまり、人件費は操業回数や操業時間にも左右され得るため、人件費算出部242は、操業情報も参照し、人件費を算出してもよい。
【0054】
人件費算出部242は、算出した人件費を実績情報(実績情報の一部)として実績情報DB294に記憶する。
【0055】
(漁獲収入の算出)
漁獲収入算出部243は、漁獲情報記憶部293に記憶されている漁獲情報(つまり、漁獲情報導出部233によって導出された漁獲情報)と、算出用情報記憶部280に記憶されている漁獲収入算出用情報とを用いて漁獲収入を算出する。具体的には、漁獲収入算出部243は、漁獲情報(魚種別、サイズ別の漁獲量)に魚価(魚種別、サイズ別の魚価)を乗じて、漁船毎、出漁毎に、夫々の出漁期間における漁獲収入(後述する単位漁獲収入と区別して総漁獲収入と称する場合がある)を算出する。なお、漁獲収入算出部243は、出漁毎に漁獲収入を算出しなくてもよい。例えば、漁獲収入算出部243は、評価部250による評価を実施する際に、過去の夫々の出漁の漁獲情報と過去の夫々の時期の魚価とを用いて、過去の夫々の出漁における漁獲収入を纏めて算出してもよい。
【0056】
また、漁獲収入算出部243は、漁獲情報記憶部293に記憶されている漁獲情報と、操業情報記憶部292に記憶されている操業情報とを用いて、漁船毎、出漁毎に、夫々の出漁期間における単位漁獲収入を算出する。具体的には、漁獲収入算出部243は、単位漁獲収入として、総漁獲収入を操業回数で除した操業1回当たりの漁獲収入と、総漁獲収入を操業時間で除した操業時間当たりの漁獲収入と、を算出する。
【0057】
漁獲収入算出部243は、算出した総漁獲収入、及び、算出した単位漁獲収入を実績情報(実績情報の一部)として実績情報DB294に記憶する。
【0058】
図8(A)は、実績情報DB294に記憶される実績情報を示している。図8(A)に示したように、実績情報DB294には、漁船毎、出漁毎に、燃料費(燃料費算出部241によって算出された燃料費)、人件費(人件費算出部242によって算出された人件費)、総漁獲収入(漁獲収入算出部243によって算出された総漁獲収入)、単位漁獲収入である操業1回当たりの漁獲収入(漁獲収入算出部243によって算出された操業1回当たりの漁獲収入)、操業時間当たりの漁獲収入(漁獲収入算出部243によって算出された操業時間当たりの漁獲収入)が記憶されている。
【0059】
(評価/概要)
評価部250は、実績情報DB294に記憶されている、燃料費(燃料費算出部241によって算出された洋上風力発電設備の設置前後の燃料費)と、人件費(人件費算出部242によって算出された洋上風力発電設備の設置前後の人件費)と、単位漁獲収入(漁獲収入算出部243によって算出された洋上風力発電設備の設置前後の単位漁獲収入)と、に基づいて洋上風力発電設備の漁業への影響を評価する。
【0060】
洋上風力発電事業が漁業に影響を及ぼす場合、補償は、最終的に個人(船員)毎に行われる。このため、洋上風力発電設備の漁業への影響評価として、直接的に、個人毎に補償金額を算出する方法も考えられる。しかしながら、漁業活動が漁船単位になされ、船上システム10において取得する取得情報も漁船単位であるため、また、上述したように、評価部250は燃料費と人件費と単位漁獲収入とに基づいて洋上風力発電設備の漁業への影響を評価するのであるが、該評価に際し、少なくとも燃料費及び単位漁獲収入は漁船単位に把握される性質のものであるため、本実施形態では、漁船単位に補償金額を算出する。
【0061】
なお、本実施形態では、冒頭に説明したように、乗組員(船員)が2人以上の漁船を想定しているが、漁船単位の補償金額を総額として、例えば夫々の状況(出漁実績等)に応じて、当該漁船に属する個人(船員)の補償金額を決定(按分)すればよい。
【0062】
(市場システム30)
以下、図2を用いて、市場システム30について説明する。市場システム30は、例えば、1台以上のサーバによって構成される。以下、市場システム30は、1台のサーバによって構成されるものとして説明する。図2に示すように、市場システム(サーバ)30は、通信部320と、速報情報記憶部390と、水揚げ情報記憶部391とを備える。
【0063】
通信部320は、種々の情報を送受信する。例えば、通信部320は、各漁船の船上システム1から送信される情報(夫々の漁船において生成された速報情報)を受信する。また、通信部320は、水揚げ情報記憶部391に記憶されている水揚げ情報を本部システム20に送信する。また、通信部320は、船上システム10や本部システム20とは異なる装置(例えば、パーソナルコンピュータ、インターネット上のサーバ)に情報を送信し、該装置から情報を受信してもよい。
【0064】
速報情報記憶部390は、通信部320が各漁船の船上システム1から受信した速報情報を記憶する。なお、図示は省略するが、速報情報記憶部390に記憶される速報情報は、市場関係者(例えば、仲買人等)によって参照される。例えば、仲買人が使用する携帯端末は、速報情報記憶部390にアクセスし、速報情報を表示する。
【0065】
水揚げ情報記憶部391は、当該魚市場に係る水揚げ情報を記憶する。水揚げ情報記憶部391が記憶する水揚げ情報は、日別、魚種別、サイズ別の仲買人等による入札の実際の魚価(実入札価格)の情報、例えば、当該日の個々の確定価格、又は、当該日の個々の確定価格の平均値である。水揚げ情報は、時刻別(水揚げ時刻、取引時刻、出荷時刻等)の情報(例えば、〇年〇月〇日に水揚げしたカニ(〇サイズ)の魚価について水揚げ時刻別に記憶した情報)であってもよい。なお、水揚げ情報は、当該魚市場に設置したパーソナルコンピュータ等によって入力された情報であってもよい。つまり、市場システム30は、上記パーソナルコンピュータ等から水揚げ情報を取得し、水揚げ情報記憶部391に記憶してもよい。
【0066】
(評価部250による評価)
以下、評価部250による評価について詳しく説明する。評価部250による評価方法には、幾つかの方法が考えられる。ここでは、2通りの方法(評価方法1、評価方法2)について説明する。なお、以下の説明において、洋上風力発電設備の設置は2024年2月1日であるものとし、工事期間は無視するものとする。
【0067】
(評価方法1)
評価方法1として、評価部250は、洋上風力発電設備の設置前の燃料費と人件費と漁獲収入とに基づいて洋上風力発電設備の設置前の収支金額を算出し、洋上風力発電設備の設置後の燃料費と人件費と漁獲収入とに基づいて洋上風力発電設備の設置後の収支金額を算出し、洋上風力発電設備の設置前後の収支金額の差に基づいて漁業への影響を評価する。評価方法1による評価は、例えば、下記の手順で行ってもよい。
【0068】
(1)評価部250は、実績情報DB294に記憶されている実績情報(図8(A))を、漁船単位に、洋上風力発電設備の設置前の期間(設置前期間)、洋上風力発電設備の設置後の期間(設置後期間)の夫々の期間で集計する。具体的には、評価部250は、図8(B)に示したように、漁船単位に、夫々の期間(設置前期間、設置後期間)内の全出漁における各項目(燃料費、人件費、1操業あたりの漁獲収入、操業時間当たりの漁獲収入)の平均値を算出する。図8(B)において、例えば、燃料費「A1I-1」は、漁船I-1の設置前期間内における全出漁の燃料費の平均である。また、燃料費「A2I-1」は、漁船I-1の設置後期間内における全出漁の燃料費の平均である。上述のように夫々の期間で集計(平均値を算出)した集計後の実績情報を「実績情報(期間集計情報)」と称する。評価部250は、実績情報(期間集計情報)を実績情報DB294に記憶する。
【0069】
(2)評価部250は、実績情報(期間集計情報)を参照し、漁船単位に、夫々の期間の収支金額を算出する。具体的には、評価部250は、ある漁船(漁船I-M)の設置前期間の収支金額を、{係数K3(係数K1×当該漁船I-Mの設置前期間の1操業当たりの漁獲収入)+係数K4(係数K2×当該漁船I-Mの設置前期間の操業時間当たりの漁獲収入)}-(当該漁船I-Mの設置前期間の燃料費+当該漁船I-Mの設置前期間の人件費)により算出し、漁船I-Mの設置後期間の収支金額を{係数K3(係数K1×当該漁船I-Mの設置後期間の1操業当たりの漁獲収入)+係数K4(係数K2×当該漁船I-Mの設置後期間の操業時間当たりの漁獲収入)}-(当該漁船I-Mの設置後期間の燃料費+当該漁船I-Mの設置後期間の人件費)により算出する。例えば、評価部250は、図8(C)に示したように、漁船I-1の設置前期間の収支金額「E1I-1」を、{係数K3(係数K1×C1I-1)+係数K4(係数K2×D1I-1)}-(A1I-1+B1I-1)により算出し、漁船I-1の設置後期間の収支金額「E2I-1」を、{係数K3(係数K1×C2I-1)+係数K4(係数K2×D2I-1)}-(A2I-1+B2I-1)により算出する。
【0070】
係数K1は、1出漁当りの基準操業回数として予め定めた値である。係数K2は、1出漁当りの操業時間として予め定めた値である。係数K3及び係数K4は、「1操業当たりの漁獲収入」と「操業時間当たりの漁獲収入」の評価(収支金額の算出)に対する寄与(重み)を按分するための係数であって、係数K3と係数K4の合計は1である。例えば、「1操業当たりの漁獲収入」と「操業時間当たりの漁獲収入」の重みを同一にする場合には、係数K3、K4は共に0.5とする。
【0071】
なお、夫々の期間の収支金額は、中間的に生成する情報であるが、評価部250は、夫々の期間の収支金額を評価情報記憶部295に記憶する。
【0072】
なお、評価部250は、「操業時間当たりの漁獲収入」を評価(収支金額の算出)に反映させなくてもよい。具体的には、評価部250は、「1操業当たりの漁獲収入」の係数K3を1とし、「操業時間当たりの漁獲収入」の係数K4を0として、収支金額を算出してもよい。また、評価部250は、「1操業当たりの漁獲収入」を評価(収支金額の算出)に反映させなくてもよい。具体的には、評価部250は、「1操業当たりの漁獲収入」の係数K3を0とし、「操業時間当たりの漁獲収入」の係数K4を1として、収支金額を算出してもよい。対照区を設置する場合(図10)においても同様である。
【0073】
(3)評価部250は、漁船単位に、補償金額を算出する。具体的には、評価部250は、ある漁船(漁船I-M)の補償金額を、当該漁船I-Mの設置前期間の収支金額から当該漁船I-Mの設置後期間の収支金額を減算した金額として算出する。例えば、評価部250は、漁船I-1の補償金額を、漁船I-1の設置前期間の収支金額「E1I-1」から漁船I-1の設置後期間の収支金額「E2I-1」を減算した金額として算出する。評価部250は、算出した補償金額を評価情報記憶部295に記憶する。
【0074】
(評価方法2)
評価方法2として、評価部250は、洋上風力発電設備の設置前後の燃料費の増減額と、洋上風力発電設備の設置前後の人件費の増減額と、洋上風力発電設備の設置前後の漁獲収入の増減額と、に基づいて漁業への影響を評価する。評価方法2による評価は、例えば、下記の手順で行ってもよい。
【0075】
(1)評価部250は、評価方法1と同様、実績情報DB294に記憶されている実績情報(図8(A))を、漁船単位に、夫々の期間で集計する。つまり、評価部250は、図8(B)に示したように、漁船単位に、夫々の期間内の全出漁における各項目の平均値を算出する。
【0076】
(2)評価部250は、実績情報(期間集計情報)を参照し、図8(D)に示したように、漁船単位に、設置前後の各項目の増減額を算出する。図8(D)において、例えば、燃料費増減「A3I-1」は、図8(B)に示した漁船I-1の設置後期間の燃料費「A2I-1」から図8(B)に示した漁船I-1の設置前期間の燃料費「A1I-1」を減算して得られる漁船I-1の設置前後の燃料費の増減額である。また、人件費増減「B3I-1」は、図8(B)に示した漁船I-1の設置後期間の人件費「B2I-1」から図8(B)に示した漁船I-1の設置前期間の人件費「B1I-1」を減算して得られる漁船I-1の設置前後の人件費の増減額である。上述のように設置前後の各項目の増減額を算出した算出後の実績情報を「実績情報(期間増減情報)」と称する。評価部250は、実績情報(期間増減情報)を実績情報DB294に記憶する。
【0077】
(3)評価部250は、漁船単位に、補償金額を算出する。具体的には、評価部250は、ある漁船(漁船I-M)の補償金額を、{係数K3(係数K1×当該漁船I-Mの1操業当たりの漁獲収入増減)+係数K4(係数K2×当該漁船I-Mの操業時間当たりの漁獲収入増減)}-(当該漁船I-Mの燃料費増減+当該漁船I-Mの人件費増減)により算出する。例えば、評価部250は、漁船I-1の補償金額を、{係数K3(係数K1×C3I-1)+係数K4(係数K2×D3I-1)}-(A3I-1+B3I-1)により算出する。係数K1~K4は、評価方法1と同様ある。評価部250は、算出した補償金額を評価情報記憶部295に記憶する。
【0078】
なお、評価部250は、「操業時間当たりの漁獲収入」を評価(補償金額の算出)に反映させなくてもよい。具体的には、評価部250は、「1操業当たりの漁獲収入増減」の係数K3を1とし、「操業時間当たりの漁獲収入増減」の係数K4を0として、補償金額を算出してもよい。また、評価部250は、「1操業当たりの漁獲収入」を評価(補償金額の算出)に反映させなくてもよい。具体的には、評価部250は、「1操業当たりの漁獲収入増減」の係数K3を0とし、「操業時間当たりの漁獲収入増減」の係数K4を1として、補償金額を算出してもよい。対照区を設置する場合(図10)においても同様である。
【0079】
なお、本部システム20(サーバ)は、当該本部システム20にアクセス可能な端末(例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン)からの指示に基づいて、上述したように、航行情報や操業情報や漁獲情報を導出し、燃料費、人件費、漁獲収入を算出し、補償金額を算出してもよい。また、本部システム20にアクセス可能な端末(上述した指示端末であってもよいし指示端末とは異なる端末であってもよい)は、本部システムの各記憶部に記憶されている情報を表示してもよい。例えば、上記端末は、取得情報記憶部290に記憶されている取得情報や、航行情報記憶部291に記憶されている航行情報や、操業情報記憶部292に記憶されている操業情報や、漁獲情報記憶部293に記憶されている漁獲情報や、実績情報DB294に記憶されている実績情報や、評価情報記憶部295に記憶されている評価情報(補償金額等)を自端末の画面に表示してもよい。
【0080】
(風力発電施設の存在による市場への影響を介した漁獲収入への影響)
風力発電施設の存在による漁獲収入への影響について補足的に説明する。漁獲収入は、漁獲量×魚価として算出される。この点、漁獲収入算出部243は、漁獲情報記憶部293に記憶されている漁獲情報(魚種別サイズ別の漁獲量)に算出用情報記憶部280に記憶されている漁獲収入算出用情報(魚種別サイズ別の魚価)を乗じて漁獲収入(総漁獲収入)を算出すると説明した。図2における、漁獲情報記憶部293から漁獲収入算出部243の矢印は漁獲量、算出用情報記憶部280から漁獲収入算出部243の矢印は上記魚価を示している。なお、操業情報記憶部292から漁獲収入算出部243の矢印は単位漁獲収入を算出する際に必要となる操業回数や操業時間を示している。
【0081】
風力発電施設の存在による市場への影響を介した漁獲収入への影響について、漁獲収入を漁獲量と魚価とに分けて考察する。一般に、水揚げ時刻の遅れはセリ(市場)の開始時刻の遅れとなるが、セリの開始時刻が遅れても、漁獲物(商品としての海産物)の消費地への到着時刻を遅らせることはできない。消費地への漁獲物の到着時刻を考慮した場合、水揚げ時刻の遅れは可能な限り避けるべきである。風力発電施設による航路変更後(つまり迂回等のロスが生じた後)も、航路変更前と同様の漁場で航路変更前と同様の操業を行った場合、少なくとも帰路の所要時間の増加分、水揚げ時刻に遅れが生じる。つまり、仮に航路変更後の出航時刻を航路変更前よりも早めることにより、航路変更前後で操業開始時刻も操業終了時刻も変えないようにすることは可能であるが、従来から操業終了後は最高速度で港に向かうようにしているため(これ以上速度を上げることはできないため)、操業終了時刻が航路変更前と同じである以上、水揚げ時刻に遅れが生じることとなる。水揚げ時刻に遅れが生じないように、例えば、最適な漁場(航路変更前と同様の漁場)における操業時間等を減らしたり、最適とは言えない漁場(航路変更前とは異なる漁場)において操業したりすれば、漁獲量が減少する。また、漁獲量の減少は、セリに参加する仲買人(買受人)の減少に繋がり、仲買人の減少は、魚価の低下や売れ残り(実質的な漁獲量の減少)に繋がる。一方、航路変更後も最適な漁場における操業時間等を確保し、水揚げ時刻の遅延を甘受した場合、消費地への到着時刻が問題になる。つまり、消費地に到着可能なタイミングを逸したり、ターゲットとしていた消費地の数が減少したりすれば(従来の消費地のうちの一部が水揚げ時刻(セリの開始時刻)の遅れによって対象から外れるようなことになれば)、魚価の低下や売れ残りに繋がる。あるいは、水揚げ時刻が遅れても到着時刻に影響がでないように、人やモノを投入したり、またサービス(輸送システム)を高度化させたりするといった方策も考えられる。しかしながら、コスト増大(価格競争力の低下)によって売れ残りが生じる虞や、価格競争力を維持させるべく結果的にコスト増大分を魚価が負担する(つまり、魚価が下がる)虞もある。
【0082】
以上のように、風力発電施設の存在によって漁船の航行に影響が生じ、漁船の航行への影響が市場(漁獲量、魚価)に影響し、漁獲収入に影響する。つまり、風力発電施設の存在は、環境(海洋)的に影響し環境的な影響を介して漁獲収入に影響する場合のほか、市場に影響し市場への影響を介して漁獲収入に影響する。図2における、漁獲情報記憶部293から漁獲収入算出部243の矢印は、直接的には上述したように漁獲量を示しているが、漁獲量は、水揚げ時刻の遅延や消費地との関係に影響されるため、当該矢印は、上記市場への影響を介した漁獲収入への影響(漁獲量の減少)についても反映している。また、算出用情報記憶部280から漁獲収入算出部243の矢印は、直接的には上述したように魚価を示しているが、魚価は、水揚げ時刻の遅延や消費地との関係に影響されるため、当該矢印は、上記市場への影響を介した漁獲収入への影響(魚価の減少)についても反映している。
【0083】
(対照区の設定)
図9及び図10は、本部システム20に関係する各種情報について説明する図である。続いて、図9及び図10を用いて、対照区を設定し、洋上風力発電設備による漁業への影響を評価する態様について説明する。
【0084】
船上システム10の設置範囲を対照区に拡大する。つまり、事業実施区(Impact)の漁船(漁船I-1~漁船I-N)に加え、対照区(Control)の漁船(漁船C-1~漁船C-N)にも、船上システム10を設置する。なお、「漁船I-N」と「漁船C-N」とで共に「N」を用いているが、説明の便宜上であって、事業実施区において船上システム10を設置する漁船数と、対照区において船上システム10を設置する漁船数とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。なお、対照区は、洋上風力発電設備の影響がないとされる場所であるため、以下では、事業実施区の漁船が水揚げする漁港(又は市場)と、対照区の漁船が水揚げする漁港(又は市場)とは異なる漁港(又は市場)であると想定する。
【0085】
対照区の漁船の速報情報(対照区の漁船に設置された船上システム10の速報情報生成部110が生成した速報情報)は、事業実施区の漁船の速報情報(事業実施区の漁船に設置された船上システム10の速報情報生成部110が生成した速報情報)とは異なる、市場システム30に送信される。事業実施区の漁船の速報情報は当該事業実施区の市場において活用され、対照区の漁船の速報情報は対照区の市場において活用される。
【0086】
対照区の漁船の取得情報(対照区の漁船に設置された船上システム10の各取得部によって取得された取得情報)は、最終的に、事業実施区の漁船の取得情報(事業実施区の漁船に設置された船上システム10の各取得部によって取得された取得情報)が送信される本部システム(サーバ)20に記憶される。つまり、対照区の漁船の取得情報は、本部システム20に送信されてもよいし、本部システム20とは異なる装置に送信され該装置で一旦記憶された後に本部システム20に送信されてもよい。
【0087】
つまり、本部システム20の取得情報記憶部290には、最終的には、図9に示すように、事業実施区、対照区の取得情報が区別可能に記憶される。図9に示した例では、取得情報記憶部290は、事業実施区の全漁船(漁船I-1~漁船I-N)の取得情報に加え、対照区の全漁船(漁船C-1~漁船C-N)の取得情報を記憶している。
【0088】
以降、本部システム20は、事業実施区、対照区の夫々について(夫々を区別して)、航行情報、操業情報、漁獲情報を導出し、燃料費、人件費、漁獲収入を算出する。その結果、図示は省略するが、実績情報DB294には、事業実施区に係る実績情報と、対照区に係る実績情報とが記憶される。続く、評価部250の評価(評価方法1、評価方法2)は、以下のようになる。
【0089】
(評価方法1)
(1)評価部250は、事業実施区、対照区の夫々について、対照区を設定しない場合の評価方法1と同様、漁船単位に、夫々の期間の収支金額を算出する。つまり、評価部250は、事業実施区に属する漁船単位に、各項目(燃料費、人件費、1操業あたりの漁獲収入、操業時間当たりの漁獲収入)を夫々の期間(設置前期間、設置後期間)で集計し(図8(B))、事業実施区に属する漁船単位に、夫々の期間の収支金額を算出する(図8(C))。同様に、評価部250は、対照区に属する漁船単位に、各項目を夫々の期間で集計し(図10(A))、対照区に属する漁船単位に、夫々の期間の収支金額を算出する(図10(B))。図10(A)において、例えば、燃料費「A1C-1」は、漁船C-1の設置前期間内における全出漁の燃料費の平均である。また、燃料費「A2C-1」は、漁船C-1の設置後期間内における全出漁の燃料費の平均である。図10(B)において、収支金額「E1C-1」は、{係数K3(係数K1×C1C-1)+係数K4(係数K2×D1C-1)}-(A1C-1+B1C-1)により算出される漁船C-1の設置前期間の収支金額である。また、収支金額「E2C-1」は、{係数K3(係数K1×C2C-1)+係数K4(係数K2×D2C-1)}-(A2C-1+B2C-1)により算出される漁船C-1の設置後期間の収支金額である。
【0090】
(2)評価部250は、事業実施区に属する漁船単位に、補償金額を算出する。具体的には、評価部250は、事業実施区に属するある漁船(漁船I-M)の補償金額を、[当該漁船I―Mの設置前期間の収支金額から当該漁船I―Mの設置後期間の収支金額を減算した金額]から[対照区に属する全漁船の設置前期間の収支金額(平均)から対照区に属する全漁船の設置後期間の収支金額(平均)を減算した金額]を減算した金額として算出する。
【0091】
例えば、上記(1)において算出した対照区の全漁船(漁船C-1~漁船C-N)の設置前期間の収支金額(「E1C-1」、「E1C-2」、…、「E1C-N」)の平均金額を「E1C-AVE」とし、上記(1)において算出した対照区の全漁船の設置後期間の収支金額(「E2C-1」、「E2C-2」、…、「E2C-N」)の平均金額を「E2C-AVE」とした場合、評価部250は、事業実施区に属する漁船I-Mの補償金額を、[「E1I-M」から「E2I-M」を減算した金額]から[「E1C-AVE」から「E2C-AVE」]を減算した金額]を減算した金額として算出する。例えば、評価部250は、事業実施区に属する漁船I-1の補償金額を、[図8(C)に示した「E1I-1」から図8(C)に示した「E2I-1」を減算した金額]から[「E1C-AVE」から「E2C-AVE」]を減算した金額]を減算した金額として算出する。
【0092】
(評価方法2)
(1)評価部250は、事業実施区、対照区の夫々について、対照区を設定しない場合の評価方法2と同様、漁船単位に、設置前後の各項目の増減額を算出する。つまり、評価部250は、事業実施区に属する漁船単位に、各項目を夫々の期間で集計し(図8(B))、事業実施区に属する漁船単位に、設置前後の各項目の増減額を算出する(図8(D))。同様に、評価部250は、対照区に属する漁船単位に、各項目を夫々の期間で集計し(図10(A))、対照区に属する漁船単位に、設置前後の各項目の増減額を算出する(図10(C))。図10(C)において、例えば、燃料費増減「A3C-1」は、図10(A)に示した漁船C-1の設置後期間の燃料費「A2C-1」から図10(A)に示した漁船C-1の設置前期間の燃料費「A1C-1」を減算して得られる漁船C-1の設置前後の燃料費の増減額である。また、人件費増減「B3C-1」は、図10(A)に示した漁船C-1の設置後期間の人件費「B2C-1」から図10(A)に示した漁船C-1の設置前期間の人件費「B1C-1」を減算して得られる漁船C-1の設置前後の人件費の増減額である。
【0093】
(2)評価部250は、事業実施区に属する漁船単位に、補償金額を算出する。具体的には、評価部250は、事業実施区に属するある漁船(漁船I-M)の補償金額を、[{係数K3(係数K1×当該漁船I-Mの1操業当たりの漁獲収入増減)+係数K4(係数K2×当該漁船I-Mの操業時間当たりの漁獲収入増減)}-(当該漁船I-Mの燃料費増減+当該漁船I-Mの人件費増減)]から[{係数K3(係数K1×対照区に属する全漁船の1操業当たりの漁獲収入増減(平均))+係数K4(係数K2×対照区に属する全漁船の操業時間当たりの漁獲収入増減(平均))}-(対照区に属する全漁船の燃料費増減(平均)+対照区に属する全漁船の人件費増減(平均))]を減算した金額として算出する。
【0094】
例えば、上記(1)において算出した対照区の全漁船(漁船C-1~漁船C-N)の燃料費増減(「A3C-1」、「A3C-2」、…、「A3C-N」)の平均金額を「A3C-AVE」とし、上記(1)において算出した対照区の全漁船の人件費増減(「B3C-1」、「B3C-2」、…、「B3C-N」)の平均金額を「B3C-AVE」とし、上記(1)において算出した対照区の全漁船の1操業当たりの漁獲収入増減(「C3C-1」、「C3C-2」、…、「C3C-N」)の平均金額を「C3C-AVE」とし、上記(1)において算出した対照区の操業時間当たりの漁獲収入増減(「D3C-1」、「D3C-2」、…、「D3C-N」)の平均金額を「D3C-AVE」とした場合、評価部250は、事業実施区に属する漁船I-Mの補償金額を、[{係数K3(係数K1×当該漁船I-Mの1操業当たりの漁獲収入増減)+係数K4(係数K2×当該漁船I-Mの操業時間当たりの漁獲収入増減)}-(当該漁船I-Mの燃料費増減+当該漁船I-Mの人件費増減)]から[{係数K3(係数K1×「C3C-AVE」)+係数K4(係数K2×「D3C-AVE」}-(「A3C-AVE」+「B3C-AVE」)]を減算した金額として算出する。例えば、評価部250は、事業実施区に属する漁船I-1の補償金額を、[{係数K3(係数K1×図8(D)に示した「C3I-1」)+係数K4(係数K2×図8(D)に示した「D3I-1」)}-(図8(D)に示した「A3I-1」+図8(D)に示した「B3I-1」)]から[{係数K3(係数K1×「C3C-AVE」)+係数K4(係数K2×「D3C-AVE」}-(「A3C-AVE」+「B3C-AVE」)]を減算した金額として算出する。
【0095】
以上、実施形態について説明したが、実施形態によれば、洋上風力発電事業による漁業への影響を定量的かつ客観的に評価することができる。つまり、漁業者による記録や報告によって情報を得る手法では、漁業者に記録や報告の負担を課すとともに、客観性や定量性を担保し難いが、本実施形態によれば、漁船の位置情報や画像情報等を用いて補償金額を算出するため、漁業者の負担もなく客観性や定量性が担保される。また、漁船に設置する設備(船上システム10)も、本部に設置する設備(本部システム20)も、市場に設置する設備(市場システム30)も比較的簡単な構成であり、洋上風力発電事業による漁業への影響を簡便に評価することができる。
【0096】
更に、本実施形態では、漁業者の努力量を加味した漁獲収入(単位漁獲収入)を用いて補償金額を算出するため、算出される補償金額は合理的な(あるいは、より客観性の高い)ものとなる。例えば、洋上風力発電設備の設置前の漁獲量を維持するために、漁業者が設備設置前に比べて設備設置後には網入れ回数を増加させるケースも想定される。当該ケースは、外形上は、設備設置前後において漁獲量の増減はないが、漁業者の努力によって漁獲量が維持されているのであるから設備設置前後で漁獲量が減少したと評価するのが合理的である。本実施形態では、漁業者の努力量を加味した漁獲収入(単位漁獲収入)を用いて補償金額を算出するため、算出される補償金額は漁業者の努力量が反映された合理的なものとなる。
【0097】
また、本実施形態では、水揚げ前に漁船から速報情報を送信するため、漁船への船上システム10の設置について漁業者の協力が得やすくなる。
【0098】
なお、漁船の航路や操業位置に関する情報は、漁業者からの聞き取りによらず、船舶自動識別装置(AIS:Automatic Identification System)によって取得する方法も考えられるが、漁場の位置を第三者に知られることを嫌うなどの理由により漁船では利用されない場合が多い。この点、本実施形態では、位置情報等の取得情報を秘匿化できるため、漁業者の理解も得やすい。
【0099】
なお、上記実施形態は、一例であって具体的な構成は上記実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。例えば、機器の構成、データの構成、処理の流れ、表示及び出力の態様などは、適宜変更が可能である。
【0100】
例えば、上記実施形態では、船上システム10から本部システム20に送信によってデータ(収集情報)を供給する例を説明したが、船上システム10から本部システム20に媒体(例えば、USBメモリ、SDカード)を介してデータを供給してもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、漁獲収入の算出において実際の魚価(算出用情報記憶部280に漁獲収入算出用情報として記憶されている魚価、水揚げ情報記憶部391に記憶されている実入札価格に由来する魚価)を用いているが、漁業への影響評価において代用可能であれば(同程度の精度の評価又は同程度未満ではあるが所望の精度の評価が可能であれば)、実際の魚価を用いなくてもよい。例えば、入手不可能又は入手困難な場合、入手コストが大きい場合には、仮想的、平均的、標準的な魚価を用いてもよい。燃料費の算出における燃料単価、人件費の算出における時給等についても同様である。
【0102】
また、上記実施形態では、船上システム10(通信部120)は、何れの漁船の取得情報であるかを秘匿化して本部システム20に送信し、本部システム20(取得情報記憶部290)は、何れの漁船の取得情報であるかが秘匿化された取得情報等を記憶すると説明したが、必ずしも秘匿化しなくてもよい。なお、秘匿化しない場合には、漁業者や漁業組合関係者は、特定の情報(例えば、差分を示した期間増減情報等)に限ってアクセスできるように制限してもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、本部システム20は、算出用情報記憶部280を備え、算出用情報記憶部280に燃料費算出用情報と人件費算出用情報と漁獲収入算出用情報とを記憶すると説明したが、燃料費算出用情報(人件費算出用情報、漁獲収入算出用情報も同様)は、本部システム20が参照可能であれば、外部(例えばインターネット上)に記憶されていてもよい。なお、燃料費算出用情報も人件費算出用情報も漁獲収入算出用情報も外部に記憶されている場合には、本部システム20は、算出用情報記憶部280を備えなくてもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、本部システム20は、1台以上のサーバであると説明したが、1台以上のパーソナルコンピュータ等であってもよい。
【0105】
(付記の開示)
[付記1]洋上風力発電設備による漁業への影響を評価する評価サーバであって、出航から帰航迄の出漁期間における漁船の位置情報を用いて前記出漁期間における航行情報を導出する航行情報導出部と、前記出漁期間の位置情報と前記出漁期間において漁船上で撮像された画像情報とのうちの少なくとも1つの情報を用いて前記出漁期間における操業情報を導出する操業情報導出部と、前記出漁期間において漁船上で撮像された画像情報を用いて前記出漁期間における漁獲情報を導出する漁獲情報導出部と、前記航行情報導出部によって導出された前記出漁期間における前記航行情報を用いて前記出漁期間における燃料費を算出する燃料費算出部と、前記航行情報導出部によって導出された前記出漁期間における前記航行情報を用いて前記出漁期間における人件費を算出する人件費算出部と、前記漁獲情報導出部によって導出された前記出漁期間における前記漁獲情報と前記操業情報導出部によって導出された前記出漁期間における前記操業情報とを用いて、前記出漁期間における単位漁獲収入として、操業1回当たり漁獲収入又は操業時間当たりの漁獲収入を算出する漁獲収入算出部と、前記燃料費算出部によって算出された洋上風力発電設備の設置前後の前記燃料費と、前記人件費算出部によって算出された洋上風力発電設備の設置前後の前記人件費と、前記漁獲収入算出部によって算出された洋上風力発電設備の設置前後の前記単位漁獲収入と、に基づいて前記漁業への影響を評価する評価部とを備えることを特徴とする評価サーバ。
【0106】
[付記2]前記評価部は、洋上風力発電設備の設置前後の事業実施区及び対照区における前記燃料費と、洋上風力発電設備の設置前後の事業実施区及び対照区における前記人件費と、洋上風力発電設備の設置前後の事業実施区及び対照区における前記単位漁獲収入と、に基づいて前記漁業への影響を評価することを特徴とする付記1に記載の評価サーバ。
【0107】
[付記3]前記評価部は、洋上風力発電設備の設置前の前記燃料費と前記人件費と前記漁獲収入とに基づいて洋上風力発電設備の設置前の収支金額を算出し、洋上風力発電設備の設置後の前記燃料費と前記人件費と前記漁獲収入とに基づいて洋上風力発電設備の設置後の収支金額を算出し、洋上風力発電設備の設置前後の収支金額の差に基づいて前記漁業への影響を評価することを特徴とする付記1又は付記2に記載の評価サーバ。
【0108】
[付記4]前記評価部は、洋上風力発電設備の設置前後の前記燃料費の増減額と、洋上風力発電設備の設置前後の前記人件費の増減額と、洋上風力発電設備の設置前後の前記漁獲収入の増減額と、に基づいて前記漁業への影響を評価することを特徴とする付記1又は付記2に記載の評価サーバ。
【0109】
[付記5]洋上風力発電設備による漁業への影響を評価する評価システムであって、漁船の位置情報を取得する位置情報取得部と、漁船上又は漁船周辺の画像情報を取得する画像情報取得部と、出航から帰航迄の出漁期間において前記位置情報取得部によって取得された前記位置情報を用いて前記出漁期間における航行情報を導出する航行情報導出部と、出航から帰航迄の出漁期間において前記位置情報取得部によって取得された前記位置情報と、前記出漁期間において前記画像情報取得部によって取得された画像情報とのうちの少なくとも1つの情報を用いて前記出漁期間における操業情報を導出する操業情報導出部と、前記出漁期間において前記画像情報取得部によって取得された画像情報を用いて前記出漁期間における漁獲情報を導出する漁獲情報導出部と、前記航行情報導出部によって導出された前記出漁期間における前記航行情報を用いて前記出漁期間における燃料費を算出する燃料費算出部と、前記航行情報導出部によって導出された前記出漁期間における前記航行情報を用いて前記出漁期間における人件費を算出する人件費算出部と、前記漁獲情報導出部によって導出された前記出漁期間における前記漁獲情報と前記操業情報導出部によって導出された前記出漁期間における前記操業情報とを用いて、前記出漁期間における単位漁獲収入として、操業1回当たり漁獲収入又は操業時間当たりの漁獲収入を算出する漁獲収入算出部と、前記燃料費算出部によって算出された洋上風力発電設備の設置前後の前記燃料費と、前記人件費算出部によって算出された洋上風力発電設備の設置前後の前記人件費と、前記漁獲収入算出部によって算出された洋上風力発電設備の設置前後の前記単位漁獲収入と、に基づいて前記漁業への影響を評価する評価部とを備えることを特徴とする評価システム。
【0110】
[付記6]前記画像情報取得部によって取得された前記画像情報を用いて、魚種及び漁獲量を含む市場向けの速報情報を生成する速報情報を生成部と、前記生成部によって生成された前記速報情報を送信する送信部とを備えることを特徴とする付記5に記載の評価システム。
【0111】
[付記7]サーバを用いて洋上風力発電設備による漁業への影響を評価する評価方法であって、前記サーバが、出航から帰航迄の出漁期間における漁船の位置情報を用いて前記出漁期間における航行情報を導出する航行情報導出ステップと、前記サーバが、前記出漁期間の位置情報と前記出漁期間において漁船上で撮像された画像情報とのうちの少なくとも1つの情報を用いて前記出漁期間における操業情報を導出する操業情報導出ステップと、前記サーバが、前記出漁期間において漁船上で撮像された画像情報を用いて前記出漁期間における漁獲情報を導出する漁獲情報導出ステップと、前記サーバが、前記航行情報導出ステップによって導出された前記出漁期間における前記航行情報を用いて前記出漁期間における燃料費を算出する燃料費算出ステップと、前記サーバが、前記航行情報導出ステップによって導出された前記出漁期間における前記航行情報を用いて前記出漁期間における人件費を算出する人件費算出ステップと、前記サーバが、前記漁獲情報導出ステップによって導出された前記出漁期間における前記漁獲情報と前記操業情報導出ステップによって導出された前記出漁期間における前記操業情報とを用いて、前記出漁期間における単位漁獲収入として、操業1回当たり漁獲収入又は操業時間当たりの漁獲収入を算出する漁獲収入算出ステップと、前記サーバが、前記燃料費算出ステップによって算出された洋上風力発電設備の設置前後の前記燃料費と、前記人件費算出ステップによって算出された洋上風力発電設備の設置前後の前記人件費と、前記漁獲収入算出ステップによって算出された洋上風力発電設備の設置前後の前記単位漁獲収入と、に基づいて前記漁業への影響を評価する評価ステップとを含むことを特徴とする評価方法。
【0112】
[付記8]洋上風力発電設備による漁業への影響を評価する評価サーバとしてコンピュータを機能させるプログラムであって、前記コンピュータを、出航から帰航迄の出漁期間における漁船の位置情報を用いて前記出漁期間における航行情報を導出する航行情報導出手段、前記出漁期間の位置情報と前記出漁期間において漁船上で撮像された画像情報とのうちの少なくとも1つの情報を用いて前記出漁期間における操業情報を導出する操業情報導出手段、前記出漁期間において漁船上で撮像された画像情報を用いて前記出漁期間における漁獲情報を導出する漁獲情報導出手段、前記航行情報導出手段によって導出された前記出漁期間における前記航行情報を用いて前記出漁期間における燃料費を算出する燃料費算出手段、前記航行情報導出手段によって導出された前記出漁期間における前記航行情報を用いて前記出漁期間における人件費を算出する人件費算出手段、前記漁獲情報導出手段によって導出された前記出漁期間における前記漁獲情報と前記操業情報導出手段によって導出された前記出漁期間における前記操業情報とを用いて、前記出漁期間における単位漁獲収入として、操業1回当たり漁獲収入又は操業時間当たりの漁獲収入を算出する漁獲収入算出手段、前記燃料費算出手段によって算出された洋上風力発電設備の設置前後の前記燃料費と、前記人件費算出手段によって算出された洋上風力発電設備の設置前後の前記人件費と、前記漁獲収入算出手段によって算出された洋上風力発電設備の設置前後の前記単位漁獲収入と、に基づいて前記漁業への影響を評価する評価手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【0113】
なお、以上に説明した装置(サーバ20等)の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上記各装置の処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部または外部に設けられた記録媒体も含まれる。配信サーバの記録媒体に記憶されるプログラムのコードは、端末装置で実行可能な形式のプログラムのコードと異なるものでもよい。すなわち、配信サーバからダウンロードされて端末装置で実行可能な形でインストールができるものであれば、配信サーバで記憶される形式は問わない。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に端末装置で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0114】
1…漁業システム、10…船上システム、20…本部システム(サーバ)、30…市場システム
図1
図2
図3
図4
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図6
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図10