(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123200
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】点眼補助具
(51)【国際特許分類】
A61M 11/00 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
A61M11/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027131
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】522073722
【氏名又は名称】株式会社GUDair
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板橋 英之
(72)【発明者】
【氏名】綿貫 洋
(72)【発明者】
【氏名】上田 徹
(57)【要約】
【課題】点眼薬の投与が患者に負担をかけることなく行える点眼補助具が従来よりも手軽な構成で実現できるようにする。
【解決手段】点眼薬用ボトルが装着され、点眼薬用ボトルに充填された点眼薬を患者の目に投与する点眼補助具である。点眼補助具は、点眼薬用ボトルの点眼薬の吐出口を有する先端部を下側に配置した状態で、容器の内部に収容された点眼薬用ボトルの吐出口の周囲と密着して保持する保持部材と、保持部材により保持された点眼薬用ボトルの吐出口から点眼薬を吸い上げ、吸い上げられた薬液を、容器の外側に配置されたノズルから霧状に噴射する噴射機構部と、を備える。点眼薬用ボトルは、先端部の少なくとも1箇所を保持部材の孔に密着させた状態で容器に収容させるようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
点眼薬用ボトルが装着され、点眼薬用ボトルに充填された点眼薬を患者の目に投与する点眼補助具であり、
前記点眼薬用ボトルを内部に収容可能な容器と、
前記点眼薬用ボトルの点眼薬の吐出口を有する先端部を下側に配置した状態で、前記容器の内部に収容された前記点眼薬用ボトルの吐出口の周囲と密着して保持する保持部材と、
前記保持部材により保持された前記点眼薬用ボトルの吐出口から点眼薬を吸い上げ、吸い上げられた薬液を、前記容器の外側に配置されたノズルから霧状に噴射する噴射機構部と、を備える
点眼補助具。
【請求項2】
前記噴射機構部と前記保持部材との間は、パイプで接続され、
前記容器の外側に突出した部材が押されることで、前記点眼薬用ボトル内の点眼薬を吸い上げるようにした
請求項1に記載の点眼補助具。
【請求項3】
前記保持部材は、柔軟性を有する素材で形成されて、前記点眼薬用ボトルの吐出口の周囲と密着する形状の孔を有し、
前記孔の途中で、前記点眼薬用ボトルの先端部と密着するようにした
請求項1又は2に記載の点眼補助具。
【請求項4】
前記パイプは、途中が曲げられて、前記点眼薬用ボトルの先端部を下に向けた状態で、前記保持部材に取り付けられる
請求項1~3のいずれか1項に記載の点眼補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点眼薬を点眼する際に使用する点眼補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
点眼薬は、樹脂で形成された小型の点眼薬用ボトルに充填され、点眼薬の投与を受ける本人が、点眼薬用ボトルを手で持って、目の真上から目に点眼薬を滴下させている。この点眼薬を滴下させる点眼作業は、目を上に向けた姿勢で、目を見開いてまぶたやまつ毛を避けて、確実に目に滴下させる必要があり、容易な作業とは言えなかった。また、点眼薬の滴下量についても、点眼薬用ボトルを手で押す強さに対応するため、点眼薬用ボトルを押す強さが強いと、多く滴下されてしまい、薬液が無駄になってしまうという問題もあった。
【0003】
このように点眼薬については様々な問題が提起され、従来から点眼をより良好に行えるものが提案されている。
例えば特許文献1には、眼薬を霧化部にて霧化して霧状の薬液粒子とし、これを患者の眼球表面に向けて噴霧供給する眼薬噴霧供給装置が記載されている。特許文献1に記載の眼薬噴霧供給装置によれば、点眼薬を患者の眼球表面に向けて噴霧供給することで、従来よりも楽に患者に点眼薬を投与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された眼薬噴霧供給装置は、超音波振動子により眼薬を霧化するものであり、超音波振動子を振動させる駆動源などが必要であり、非常に大掛かりな装置構成になっている。
通常、点眼薬が充填された点眼薬用ボトルは、雑菌などが混入するのを防ぐために使い捨てであるのに対して、特許文献1に記載された眼薬噴霧供給装置は、超音波振動子やその駆動源などが必要であるため高価なものとなっており、繰り返し使用することが想定されている。したがって、繰り返し使用するためには洗浄などが必要になるため、医療機関などでの使用が想定され、患者が日常的に手軽に使用できるものではない。
【0006】
本発明は、患者に負担をかけることなく、従来よりも手軽な構成で点眼薬の投与を実現することが可能な点眼補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の点眼補助具は、点眼薬用ボトルが装着され、点眼薬用ボトルに充填された点眼薬を患者の目に投与する点眼補助具である。
構成としては、
点眼薬用ボトルを内部に収容可能な容器と、
点眼薬用ボトルの点眼薬の吐出口を有する先端部を下側に配置した状態で、容器の内部に収容された点眼薬用ボトルの吐出口の周囲と密着して保持する保持部材と、
保持部材により保持された点眼薬用ボトルの吐出口から点眼薬を吸い上げ、吸い上げられた薬液を、容器の外側に配置されたノズルから霧状に噴射する噴射機構部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、点眼薬用ボトルを収容させた上で、噴射機構部を操作するだけで簡単に点眼薬を患者の目に噴射させることができ、楽な姿勢で点眼薬の投与が可能になる。この場合、本発明の点眼補助具は、容器内に点眼薬用ボトルを収容させるため、点眼薬用ボトルから点眼液を移し替える必要がなく、比較的簡単な構成で手軽に点眼薬を患者の目に噴射させることができるので、使い捨てとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態例による点眼補助具の正面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態例による点眼補助具の使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態例(以下、「本例」と称する)の点眼補助具を、添付図面を参照して説明する。
【0011】
図は、本例の点眼補助具100を示す正面図である。
点眼補助具100は、点眼薬用ボトル200を内部に収容できる容器110と、容器110の上側に開閉自在に取り付けられる蓋120と、蓋120に取り付けられた噴射機構部140とで構成される。
【0012】
容器110は、例えば透明な樹脂で形成され、上部に蓋120を取り付けるための螺旋状の溝111を設け、その溝111に蓋120をねじ込むことで、容器110に蓋120を取り付けることができる。容器110に蓋120を取り付けたとき、容器110の内部が密着された状態になる。
なお、蓋120を容器110にねじ込む構成で取り付ける構成とするのは一例であり、その他の構成で蓋120が取り付けられるようにしてもよい。また、容器110を透明な樹脂で形成したのも一例であり、不透明な樹脂で形成してもよい。また、容器110の表面には、利用者が点眼補助具100を手で保持する際にフィットする窪みを設けてもよい。
【0013】
蓋120の上部(容器110の外側)には、噴射機構部140が取り付けられている。噴射機構部140は、ベース部141が、蓋120の中央の取り付け孔121にねじ込みなどで取り付けられる。
この噴射機構部140の、ベース部141には、側面にノズル143を有する突起部材142が配置され、突起部材142の上端142aが下側(矢印M方向)に押されることで、容器110内に装着された点眼薬用ボトル200から点眼薬が吸い上げられ、吸い上げられた点眼薬がノズル143から霧状に噴射される。なお、突起部材142は回転させることが可能であり、突起部材142の回転でノズル143の位置は調整が可能である。
【0014】
容器110内に装着される点眼薬用ボトル200は、
図1に仮想線で示すように、直径1.5cm~2cm程度の円筒形状の薬液貯蔵部210の上(
図1では下)に、径が細くなったキャップ取付部220が形成され、さらにキャップ取付部220の先端に点眼口230が取り付けられている。
そして、点眼口230に形成された細孔231から、点眼薬を取り出す構成になっている。
図1では、点眼薬用ボトル200の上下を反転させて示す。なお、点眼薬用ボトル200のサイズや形状には様々なものがあり、
図1に示すサイズのものは一例である。
このような構成の点眼薬用ボトル200は、
図1に示すように、キャップ取付部220の点眼口230を下側に向けた状態で、保持部材である樹脂部材130の孔132,133に挿入される。
【0015】
樹脂部材130は、シリコンなどの柔軟性を有する素材で成形され、円筒形状の孔132と、その円筒形状の孔132に連続した円錐形状の孔133とを有する。さらに、円錐形状の孔133の最も狭くなった箇所には、円錐形状の孔133に接続された細孔134を有する。
細孔134の周囲は、樹脂部材130の直径が細くなった段差部131となっており、その段差部131に、パイプ112の一端部112aが接続される。
なお、樹脂部材130は、少なくとも孔132,133の周辺が柔軟性を有する素材であればよく、その他の箇所は硬質の樹脂などで構成してもよい。
【0016】
樹脂部材130の円筒形状の孔132と、その円筒形状の孔132に連続した円錐形状の孔133は、最も直径が広い箇所は、点眼薬用ボトル200のキャップ取付部220が入るように、直径2cm程度のサイズとする。また、円錐形状の孔133の径が細い箇所(細孔134と接する箇所)は、点眼薬用ボトル200の点眼口230の先端と接触できる程度に非常に細いサイズとしている。
【0017】
このように樹脂部材130を構成することで、
図1に示すように、点眼薬用ボトル200の点眼口230側を樹脂部材130の孔132,133に嵌めることができる。
図1の例では、点眼薬用ボトル200のキャップ取付部220が円筒形状の孔132と接触し、樹脂部材130自身の柔軟性で、点眼薬用ボトル200を密着保持することが可能になる。
【0018】
但し、
図1に示すようにキャップ取付部220が円筒形状の孔132と接触するのは一例であり、点眼薬用ボトル200の直径が小さ場合には、キャップ取付部220の点眼口230などが孔132,133のいずれかの箇所と接触する場合もある。
このように本例の樹脂部材130を配置することで、樹脂部材130は、様々なサイズの点眼薬用ボトル200を密着保持することができる。
【0019】
そして、
図1に示すように、樹脂部材130の段差部131は、パイプ112の一端部112aに接続される。パイプ112は、容器110内に配置されて、他端部112bが蓋120に取り付けられた噴射機構部140から伸びた薬液吸い上げ管144の先端に接続されている。
図1では、パイプ112の途中をU字型に曲げることで、樹脂部材130と噴射機構部140とを接続しているが、この
図1に示す形状は一例であり、パイプ112をその他の形状で容器110の内部に配置してもよい。
【0020】
薬液吸い上げ管144は、突起部材142が下側に押し下げられることで気圧変化を発生させる。そして、この気圧変化で薬液吸い上げ管144を介してパイプ112に接続された点眼薬用ボトル200内の薬液が吸い出され、吸い出された薬液がノズル143から外部に霧状に噴射される。
突起部材142は、内部に配置されたバネ(不図示)の作用で上側に押し上げられているが、患者がバネの力に抗して突起部材142の上端142aを押し下げることで、ノズル143からの薬液(点眼薬)が霧状に噴射される。なお、図示は省略するが、薬液吸い上げ管144には、薬液吸い上げ管144内に吸い上げられた薬液がパイプ112側に逆流するのを防ぐ部材が設けられている。
【0021】
突起部材142を1回押し下げたときの点眼薬の噴射量は、例えば40~50μml程度とし、最大でも70μml程度とする。
ノズル143からの点眼薬の噴射角度は狭いほうが好ましいが、30°などのある程度広い角度でもよい。
なお、図示を省略しているが、噴射機構部140の内部で、突起部材142が下側に押し下げられることで気圧変化が発生する詳細な構成については、スプレーボトルなどとして既に実用化されている様々な構成が適用可能である。
【0022】
図2は、本例の点眼補助具100の使用例を示す。
点眼薬の投与を受ける患者Uは、点眼薬用ボトル200が装填された点眼補助具100を手に持って、ノズル143(
図1参照)を患者Uの目eの前に向け、突起部材142を押し下げて、点眼薬を霧状に噴射させる。これにより、患者Uの目eには、点眼薬を適切に投与できるようになる。なお、
図2ではノズル143の向きを
図1から90°回転させた状態で示す。
【0023】
点眼薬は、例えば1回の突起部材142を押し下げで40~50μml程度噴射させることで、目eの結膜のう等の点眼薬の効果のある部分には20μml程度の点眼薬が到達し、適切な量の点眼薬の投与が可能になる。
なお、本例の点眼補助具100を使用せずに、通常の点眼薬用ボトル200からの患者の目への直接の滴下を行った場合にも、点眼薬の多くは目から溢れてしまい、目の結膜のう等に残る点眼薬は多くても20μml程度である。したがって、本例の点眼補助具100による投与でも適切な量の投与が為されるといってよい。
【0024】
この
図2に示す使用例で判るように、本例の点眼補助具100による投与では、患者Uの顔を上側に向ける必要がなく、楽な姿勢で点眼薬の投与を行うことができる。これにより、例えば高齢者や幼児などであっても、点眼薬の投与を極めて容易に行うことができる。
また、本例の点眼補助具100は、非常に簡単な構成であるため、比較的安価に製作が可能であり、薬局などで点眼薬用ボトル200と一緒に患者に配布して、使い捨てとすることができるので、繰り返し使用で雑菌などが混入することを防ぐことができる。但し、殺菌などが可能であれば、本例の点眼補助具100を繰り返し使用してもよい。
【0025】
なお、上述した実施の形態例では、
図1に示すように点眼補助具100内で点眼薬用ボトル200の先端を下側に向けて配置する構成としたが、点眼薬用ボトル200を吸い上げることが可能であれば、パイプ112を直線形状としてより短くし、点眼薬用ボトル200を上側に向けて配置してもよい。
【0026】
また、点眼薬用ボトル200を密着保持する樹脂部材130は、様々な形状の点眼薬用ボトル200にフィットさせるようにしたが、孔132,133の形状を変えた複数種類のものを用意して、より多くのサイズの点眼薬用ボトル200を密着保持できるようにしてもよい。
【0027】
また、噴射機構部140についても、突起部材142を押し下げることで噴射される構成としたが、その他の形状としてもよい。例えば、レバーを配置して、レバーを押す操作で噴射される構成としてもよい。
【0028】
さらに、
図2に示す使用例では、人間の患者に投与する例を示したが、人間以外に点眼薬を投与する場合にも、本例の点眼補助具100は使用可能である。
例えば、本例の点眼補助具100は、犬や猫などの動物の目に点眼薬を投与する場合にも適用が可能である。動物の場合、従来の点眼薬を投与する姿勢を動物に取らせることは難しいため、本例の点眼補助具100の使用は、動物への投与に関しても非常に大きな効果がある。
【符号の説明】
【0029】
100…点眼補助具、110…容器、112…パイプ、120…蓋、130…樹脂部材、131…段差部、132,133…孔、134…細孔、140…噴射機構部、141…ベース部、142…突起部材、142a…上端、143…ノズル、144…薬液吸い上げ管、200…点眼薬用ボトル、210…薬液貯蔵部、220…キャップ取付部、230…点眼口、231…細孔