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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123214
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】循環型トイレシステム
(51)【国際特許分類】
   E03D 5/016 20060101AFI20230829BHJP
   E03D 1/00 20060101ALI20230829BHJP
   A47K 11/00 20060101ALI20230829BHJP
   E03D 11/00 20060101ALI20230829BHJP
   C02F 3/00 20230101ALI20230829BHJP
   C02F 1/78 20230101ALI20230829BHJP
【FI】
E03D5/016
E03D1/00 A
A47K11/00
E03D11/00 A
C02F3/00 E
C02F3/00 F
C02F1/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027154
(22)【出願日】2022-02-24
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】522055027
【氏名又は名称】株式会社TI plusホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100157428
【弁理士】
【氏名又は名称】大池 聞平
(72)【発明者】
【氏名】南 清孝
【テーマコード(参考)】
2D036
2D039
4D027
4D050
【Fターム(参考)】
2D036AA02
2D036BA33
2D036BA38
2D039AA02
2D039AC09
2D039CC09
2D039DA01
2D039DA02
4D027AA02
4D027AA14
4D027AA16
4D027BA05
4D050AA17
4D050AB07
4D050BB02
4D050BD02
4D050BD03
4D050BD06
4D050CA17
(57)【要約】
【課題】循環型トイレシステムのコンパクト化を図り、可搬型のトイレシステムを実現する。
【解決手段】循環型トイレシステム10は、循環水を浄化する複数段の浄化槽11~13と、複数段の浄化槽11~13を通過した循環水を脱色するオゾン処理槽14と、オゾン処理槽14を通過した循環水を貯留する洗浄水貯留槽15とを有する複数の処理槽11~15と、洗浄水貯留槽15の循環水をトイレ5に戻す洗浄水戻し部25,31と、複数の処理槽11~15が設置された槽設置用空間72を有する建屋60を備え、各処理槽11~15は、略直方体状に形成され、槽設置用空間72では、複数の処理槽11~15の一部は、隣り合う処理槽同士が互いに当接又は近接し、且つ、循環水が流れる順番で所定方向に並べられ、複数の処理槽11~15の残りは、隣り合う処理槽同士が互いに当接又は近接し、且つ、循環水が流れる順番で、所定方向に直交する方向に並べられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレから排出される汚水を浄化して、前記トイレの洗浄水として利用する、循環型トイレシステムであって、
トイレから排出される循環水を浄化する複数段の浄化槽と、前記複数段の浄化槽を通過した循環水を脱色するオゾン処理槽と、前記オゾン処理槽を通過した循環水を貯留する洗浄水貯留槽とを有する複数の処理槽と、
前記洗浄水貯留槽の循環水を前記トイレに戻す洗浄水戻し部と、
前記複数の処理槽が設置された槽設置用空間を有する建屋とを備え、
前記複数の処理槽の各々は、略直方体状に形成され、
前記槽設置用空間において、前記複数の処理槽の一部は、隣り合う処理槽同士が互いに当接又は近接し、且つ、循環水が流れる順番で所定方向に並べられ、前記複数の処理槽の残りは、隣り合う処理槽同士が互いに当接又は近接し、且つ、循環水が流れる順番で、前記所定方向に直交する方向に並べられている、循環型トイレシステム。
【請求項2】
前記隣り合う浄化槽は、軸方向に貫通孔が形成されたボルト状の接続管と、前記接続管の軸部に螺合されるナット状の締付部材とを有し、
前記隣り合う浄化槽の2枚の側壁が、前記接続管の頭部と前記締付部材とにより挟み込まれることで、前記隣り合う浄化槽が連結されている、請求項1に記載の循環型トイレシステム。
【請求項3】
前記複数段の浄化槽の少なくとも一部の浄化槽の液面下に空気を供給し、その浄化槽を曝気槽とする空気供給装置をさらに備え、
前記複数段の浄化槽のうち少なくとも前記曝気槽は、上側に開口部が形成された容器本体と、前記開口部を塞ぐように前記容器本体における開口部の縁部に載置される蓋部材とを有し、さらに、前記開口部の縁部の上面と前記蓋部材の下面との間は、シール部材を設けない非密着状態として、前記曝気槽で蒸発する水分が通る隙間が形成されるようにし、
前記槽設置用空間には、その槽設置用空間の湿度を低減するための湿度低減部が設けられている、請求項1又は2に記載の循環型トイレシステム。
【請求項4】
前記槽設置用空間には、前記湿度低減部として、屋外から吸気するための吸気口と、屋外に強制排気するファン付きの排気口とが設けられ、
前記槽設置用空間では、循環水が流れる順番で、前記複数の処理槽が並べられ、
前記槽設置用空間では、前記吸気口が、最下流の前記洗浄水貯留槽側に配置され、前記排気口が、最上流の前記曝気槽側に配置されている、請求項3に記載の循環型トイレシステム。
【請求項5】
当該循環型トイレシステムにおいて循環水が循環する循環系に、雨水を導入するための雨水導入部をさらに備えている、請求項1乃至4の何れか1つに記載の循環型トイレシステム。
【請求項6】
前記雨水導入部は、前記洗浄水貯留槽の液面が所定の水位を下回る場合に、前記洗浄水貯留槽に雨水を導入するように構成されている、請求項5に記載の循環型トイレシステム。
【請求項7】
トイレから排出される汚水を浄化して、前記トイレの洗浄水として利用する、循環型トイレシステムであって、
トイレから排出される循環水を浄化する複数段の浄化槽と、前記複数段の浄化槽により浄化された循環水を貯留する洗浄水貯留槽とを有する複数の処理槽と、
前記洗浄水貯留槽の循環水を前記トイレに戻す洗浄水戻し部と、
前記複数段の浄化槽の少なくとも一部の浄化槽の液面下に空気を供給し、その浄化槽を曝気槽とする空気供給装置と、
前記複数段の浄化槽が設置された槽設置用空間を有する建屋とを備え、
前記複数段の浄化槽のうち少なくとも前記曝気槽は、上側に開口部が形成された容器本体と、前記開口部を塞ぐように前記容器本体における開口部の縁部に載置される蓋部材とを有し、さらに、前記開口部の縁部の上面と前記蓋部材の下面との間は、シール部材を設けない非密着状態として、前記曝気槽で蒸発する水分が通る隙間が形成されるようにし、
前記槽設置用空間には、その槽設置用空間の湿度を低減するための湿度低減部が設けられている、循環型トイレシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレから排出される汚水を浄化して、トイレの洗浄水として利用する循環型トイレシステム等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トイレから排出される汚水を浄化して、トイレの洗浄水として利用する循環型トイレシステムが知られている。特許文献1には、循環式水洗トイレシステムが記載されている。
【0003】
具体的に、特許文献1に記載の循環式水洗トイレシステムは、水洗便器と、水洗便器からの汚水に含まれる有機物を分解すると共に硝化及び脱窒処理する生物処理槽と、生物処理槽で処理された一次処理水を固液分離するろ過装置と、ろ過装置での固液分離による残留高濃度汚泥を生物処理槽に循環させる第1の循環ポンプと、ろ過水をオゾンによって酸化・脱色処理するオゾン脱色装置と、オゾンにより酸化処理された処理水を、洗浄水として前記水洗便器に循環させる第2の循環ポンプと、酸化処理された処理水の余剰分を余剰処理水として生物処理槽に循環させる第3の循環ポンプとから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-105802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の循環型トイレシステムは、一方向に処理槽が配列されている。そのため、可搬型のトイレシステムを構成する場合に、コンパクト化が容易ではない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、循環型トイレシステムのコンパクト化を図り、可搬型のトイレシステムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するべく、第1の発明は、トイレから排出される汚水を浄化して、トイレの洗浄水として利用する、循環型トイレシステムであって、トイレから排出される循環水を浄化する複数段の浄化槽と、複数段の浄化槽を通過した循環水を脱色するオゾン処理槽と、オゾン処理槽を通過した循環水を貯留する洗浄水貯留槽とを有する複数の処理槽と、洗浄水貯留槽の循環水をトイレに戻す洗浄水戻し部と、複数の処理槽が設置された槽設置用空間を有する建屋とを備え、複数の処理槽の各々は、略直方体状に形成され、槽設置用空間において、複数の処理槽の一部は、隣り合う処理槽同士が互いに当接又は近接し、且つ、循環水が流れる順番で所定方向に並べられ、複数の処理槽の残りは、隣り合う処理槽同士が互いに当接又は近接し、且つ、循環水が流れる順番で、所定方向に直交する方向に並べられている、循環型トイレシステムである。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、隣り合う浄化槽は、軸方向に貫通孔が形成されたボルト状の接続管と、接続管の軸部に螺合されるナット状の締付部材とを有し、隣り合う浄化槽の2枚の側壁が、接続管の頭部と締付部材とにより挟み込まれることで、隣り合う浄化槽が連結されている。
【0009】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、複数段の浄化槽の少なくとも一部の浄化槽の液面下に空気を供給し、その浄化槽を曝気槽とする空気供給装置をさらに備え、複数段の浄化槽のうち少なくとも曝気槽は、上側に開口部が形成された容器本体と、開口部を塞ぐように容器本体における開口部の縁部に載置される蓋部材とを有し、さらに、開口部の縁部の上面と蓋部材の下面との間は、シール部材を設けない非密着状態として、曝気槽で蒸発する水分が通る隙間が形成されるようにし、槽設置用空間には、その槽設置用空間の湿度を低減するための湿度低減部が設けられている。
【0010】
第4の発明は、第3の発明において、槽設置用空間には、湿度低減部として、屋外から吸気するための吸気口と、屋外に強制排気するファン付きの排気口とが設けられ、槽設置用空間では、循環水が流れる順番で、複数の処理槽が並べられ、槽設置用空間では、吸気口が、最下流の洗浄水貯留槽側に配置され、排気口が、最上流の曝気槽側に配置されている。
【0011】
第5の発明は、第1乃至第4の何れか1つの発明において、循環型トイレシステムにおいて循環水が循環する循環系に、雨水を導入するための雨水導入部をさらに備えている。
【0012】
第6の発明は、第5の発明において、雨水導入部は、洗浄水貯留槽の液面が所定の水位を下回る場合に、洗浄水貯留槽に雨水を導入するように構成されている。
【0013】
第7の発明は、トイレから排出される汚水を浄化して、トイレの洗浄水として利用する、循環型トイレシステムであって、トイレから排出される循環水を浄化する複数段の浄化槽と、複数段の浄化槽により浄化された循環水を貯留する洗浄水貯留槽とを有する複数の処理槽と、洗浄水貯留槽の循環水をトイレに戻す洗浄水戻し部と、複数段の浄化槽の少なくとも一部の浄化槽の液面下に空気を供給し、その浄化槽を曝気槽とする空気供給装置と、複数段の浄化槽が設置された槽設置用空間を有する建屋とを備え、複数段の浄化槽のうち少なくとも曝気槽は、上側に開口部が形成された容器本体と、開口部を塞ぐように容器本体における開口部の縁部に載置される蓋部材とを有し、さらに、開口部の縁部の上面と蓋部材の下面との間は、シール部材を設けない非密着状態として、曝気槽で蒸発する水分が通る隙間が形成されるようにし、槽設置用空間には、その槽設置用空間の湿度を低減するための湿度低減部が設けられている、循環型トイレシステムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、各処理槽が、略直方体状に形成されている。そして、建屋の槽設置用空間では、複数の処理槽の一部が、隣り合う処理槽同士が互いに当接又は近接し、且つ、循環水が流れる順番で所定方向に並べられ、複数の処理槽の残りが、隣り合う処理槽同士が互いに当接又は近接し、且つ、循環水が流れる順番で、前記所定方向に直交する方向に並べられている。例えば、複数の処理槽は、図4に示すL字状などに並べることができ、トイレ用空間を設けた建屋内にコンパクトに納まる。従って、循環型トイレシステムのコンパクト化を図り、可搬型のトイレシステムを実現することができる。
【0015】
また、別の発明では、複数段の浄化槽のうち少なくとも曝気槽において、容器本体における開口部の縁部の上面と蓋部材の下面との間に、シール部材を設けずに、曝気槽で蒸発する水分が通る隙間が形成されるようにし、さらに、複数の処理槽が配置された槽設置用空間に、湿度低減部を設けている。ここで、従来の循環型トイレシステムでは、各処理槽が密閉構造となっている。そのため、トイレの利用者が多くなって循環水が増えた場合に、循環水が減少しにくい。循環水を減らす必要がある場合には、循環水を汲み取り散水を行う等のメンテナンスが必要であった。それに対し、本願発明者は、上記隙間を通じて曝気槽から適度に水分を排出可能とし、且つ、槽設置用空間の湿度低減がなされることで、これまでは循環水の汲み取りが必要となっていた問題が解消されると共に、循環水が不足する事態もほとんど生じないことに気が付いた。従って、循環水が増える場合でも、循環水の水量が自然に適正化される循環型トイレシステムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態に係る循環型トイレシステムの概略図である。
図2図2(a)は、循環型トイレシステムの浄化槽の蓋構造について説明するための浄化槽の上部の斜視図であり、図2(b)は、蓋部材の側面図である。
図3図3(a)は、循環型トイレシステムの建屋の外観を前側から見た斜視図であり、図3(b)は、建屋内部を後側から見た斜視図である。
図4図4は、循環型トイレシステムの建屋内の平面図である。
図5図5は、隣り合う浄化槽を連結する連結構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一例であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0018】
本実施形態は、便器6及びロータンク7を有するトイレ5と、便器6から排出される汚水を処理する汚水処理装置8とを備えた循環型トイレシステム10である。循環型トイレシステム10は、汚水処理装置8によって、便器6からの汚水を浄化してトイレ5の洗浄水として利用する循環型のシステムである。なお、便器6と後述する第1浄化槽11との間には、便器6から排出される汚水を第1浄化槽11に送ると共に、汚水に含まれる汚物(トイレットペーパーなど)を破砕する破砕ポンプ9が設けられている。
[汚水処理装置の構成]
【0019】
汚水処理装置8は、図1に示すように、複数段の浄化槽11~13と、複数段の浄化槽11~13から排出される処理水を酸化及び脱色するオゾン処理槽14と、オゾン処理槽14を通過した洗浄水を貯留する洗浄水貯留槽15とを備えている。
【0020】
複数段の浄化槽11~13は、微生物を利用して汚物を浄化する浄化槽11~13として、最も上流側に位置する第1浄化槽11と、第1浄化槽11の下流側に接続された第2浄化槽12と、第2浄化槽12の下流側に接続されて最も下流側に位置する第3浄化槽13とを備えている。
【0021】
第1浄化槽11は、便器6から排出される汚水(被処理水)を導入する導入管20が接続されている。第1浄化槽11の上部は、第1接続部21を介して第2浄化槽12の上部と繋がっている。第1浄化槽11の液面が上がって第1接続部21の高さに到達すると、オーバーフローにした被処理水が、第1接続部21を通って第2浄化槽12に流入する。ここで、導入管20は、第1浄化槽11において液面上に開口している。すなわち、導入管20は、第1接続部21の開口よりも上側に開口している。第1浄化槽11は、流量調整槽としての役割を果たす。
【0022】
第2浄化槽12の上部は、第2接続部22を介して第3浄化槽13の上部と繋がっている。第2浄化槽12の液面が上がって第2接続部22の高さに到達すると、オーバーフローにした被処理水が、第2接続部22を通って第3浄化槽13に流入する。第3浄化槽13の上部は、第3接続部23を介してオゾン処理槽14と繋がっている。第3浄化槽13の液面が上がって第3接続部23の高さに到達すると、オーバーフローにした被処理水が、第3接続部23を通ってオゾン処理槽14に流入する。本実施形態では、第1接続部21と第2接続部22が、後述する接続構造80により構成され、第3接続部23が、配管により構成されている、なお、第1~第3接続部21~23の開口高さは互いに同じである。
【0023】
オゾン処理槽14の上部は、第4接続部24を介して洗浄水貯留槽15と繋がっている。オゾン処理槽14の液面が上がって第4接続部24の高さに到達すると、オーバーフローにした洗浄水が、第4接続部24を通って洗浄水貯留槽15に流入する。洗浄水貯留槽15には、循環ポンプ31が設けられた洗浄水供給管25が接続されている。洗浄水供給管25及び循環ポンプ31は、洗浄水戻し部を構成している。洗浄水供給管25の入口は、洗浄水貯留槽15の底部寄りの高さに開口している。洗浄水供給管25の出口はロータンク7に接続されている。これにより、循環型トイレシステム10では、汚水処理装置8による処理水を洗浄水としてロータンク7に戻す循環系が構成されている。以下では、循環系で循環する水を「循環水」という。
【0024】
各浄化槽11~13では、微生物の生息及び活動にとって好適な複数の濾材30が浸漬されている。濾材30には、天然成分の黒墨土を主体とした多孔質の排水処理濾材・生物脱臭用濾材(「ボルカナイト」と呼ばれる濾材)が用いられている。なお、濾材30は、ボルカナイトに限定されず、様々なものを使用することができる。
【0025】
本実施形態では、第1浄化槽11及び第2浄化槽12が、主に好気性微生物により汚水を浄化する好気槽として機能し、第3浄化槽13が、主に嫌気性微生物により汚水を浄化する嫌気槽として機能する。汚水処理装置8は、第1浄化槽11及び第2浄化槽12に送気するための曝気用配管32と、曝気用配管32に空気を供給する空気供給装置(ブロワーなど)33とをさらに備えている。曝気用配管32は、本管32aが空気供給装置33から延び出て、途中で2本の分岐管32b,32cに分岐し、第1分岐管32bが第1浄化槽11に接続され、第2分岐管32cが第2浄化槽12に接続されている。各分岐管32b,32cの出口側は、浄化槽11,12の底面近傍に配置されている。各分岐管32b,32cの出口側には、多数の孔が形成され、多数の孔から空気が排出される。
【0026】
オゾン処理槽14には、オゾン発生器34が接続されている。本実施形態では、空気供給装置33から供給される空気を利用して、オゾン発生器34で発生させるオゾンをオゾン処理槽14に供給できるように、オゾン発生器34が、曝気用配管32の本管32aから分岐した分岐管32dに設けられている。分岐管32dの出口は、オゾン処理槽14の底面近傍に開口している。
【0027】
汚水処理装置8は、第3浄化槽13から第1浄化槽11へ汚泥を戻すための汚泥戻し配管35と、汚泥戻し配管35により汚泥を移送するためのポンプ36とをさらに備えている。汚泥戻し配管35の入口側は、第3浄化槽13の底面近傍に配置されている。汚泥戻し配管35の入口側には、多数の孔が形成されている。また、ポンプ36は、空気供給装置33から供給される空気を利用して吸引力を発生させるエアーリフトポンプにより構成されている。ポンプ36には、曝気用配管32の本管32aから分岐した分岐管32eが接続されている。空気供給装置33は、曝気だけでなく、オゾンの供給及び汚泥の移送にも利用される。空気供給装置33からポンプ36に空気が供給されると、汚泥戻し配管35の入口端、及び、入口側の多数の孔から汚泥が吸引され、吸引された汚泥が、汚泥戻し配管35を介して第1浄化槽11に送られる。
[浄化槽の蓋部の構造]
【0028】
図2を参照しながら、各浄化槽11~13の蓋構造について説明を行う。なお、本実施形態の浄化槽11~13では、同じ蓋構造を採用している。
【0029】
各浄化槽11~13は、図2(a)に示すように、上側に開口部50aが形成された容器本体50と、開口部50aを塞ぐための蓋部材51とを、蓋構造として備えている。開口部50aは、平面視で略矩形状を呈する。容器本体50の上面では、開口部50aの縁部が、その周囲に比べて少し低くなっており、蓋部材51が直接的に載置される蓋載置面50bが形成されている。蓋載置部50bは、開口部50aの全周に亘って設けられ、平面視で略矩形状を呈する。なお、図2(a)では、第1浄化槽11の蓋部材51が取り外された状態であり、第1浄化槽11と第2浄化槽12を繋ぐ接続構造80の記載は省略している。
【0030】
蓋部材51は、例えばFRPなどの硬質プラスチック製である。蓋部材51は、図2(b)に示すように、平板状の閉塞部材51aと、閉塞部材51aの上面に取り付けられた取っ手51bとを備えている。閉塞部材51aは、平面視で略矩形状を呈する。閉塞部材51aは、開口部50aよりも一回り大きく、蓋載置部50bの外周よりも僅かに小さい。蓋部材51を蓋載置部50bに載置すると、蓋載置部50bによる窪みに蓋部材51が嵌り込む。
【0031】
ここで、蓋載置部50bの上面と蓋部材51の閉塞部材51aの下面との間は、弾性又は柔軟性を有するシール部材(パッキンなど)を設けない非密着状態として、浄化槽11~13で蒸発する水分が通る微小隙間が形成されている。この微小隙間は、開口部50aの全周囲に形成される。本実施形態では、各浄化槽11~13で蒸発した水分の一部が、この微小隙間を通じて排出される。なお、蓋部材51は重量が比較的軽く、蓋部材51は自らの自重により蓋載置部50bに強く押し付けられないようにもしている。これによって、上記の微小隙間は、適度な水分の排出ために、より好適な隙間となる。
【0032】
また、本実施形態では、オゾン処理槽14と洗浄水貯留槽15にも、各浄化槽11~13と同様の非密着の蓋構造が採用されている。オゾン処理槽14と洗浄水貯留槽15は、上面の開口部が互いに繋がっており(図示省略)、1つの蓋部材50によってオゾン処理槽14と洗浄水貯留槽15に跨る開口部が閉塞される。
【0033】
本実施形態では、曝気槽となる第1浄化槽11及び第2浄化槽12において水分の蒸発量が多くなり、蒸発した水分の一部が、閉塞部材51aと蓋載置部50bの間の微小隙間を通じて排出される。また、第3浄化槽13、オゾン処理槽14及び洗浄水貯留槽15では、曝気槽に比べて蒸発量は少ないが、蒸発した水分の一部が、上述の微小隙間を通じて排出される。本実施形態では、少なくとも曝気槽となる第1浄化槽11及び第2浄化槽12において、非密着の蓋構造を採用することで、循環系において余剰水が増えることを抑制し、循環系の水量が適正化されるようにしている。
[雨水導入部]
【0034】
循環型トイレシステム10では、所定期間あたりの使用者数が少ない場合に、循環系の水量が徐々に低下していき、ロータンク7にて洗浄水が不足する虞がある。そのため、汚水処理装置8は、循環系に雨水を導入するための雨水導入部40をさらに備えている。雨水導入部40は、洗浄水貯留槽15の液面が所定の水位を下回る場合に、洗浄水貯留槽15に雨水を導入するように構成されている。
【0035】
具体的に、雨水導入部40は、建屋60の上部において雨水を集水する雨水取込み部41と、雨水取込み部41と洗浄水貯留槽15とを接続する雨水導入管42と、雨水導入管42を通って洗浄水貯留槽15に導入される雨水量を制御する雨水量制御弁43とを備えている。雨水導入管42には、フィルタ44が設けられている。
【0036】
雨水量制御弁43は、洗浄水貯留槽15内に開口する第1出口43aと、洗浄水貯留槽15外(屋外)に開口する第2出口43bとを備えている。雨水量制御弁43は、洗浄水貯留槽15の液面が所定の水位を下回る期間は第1出口43aを開弁し、第1出口43aを閉弁する期間は第2出口43bを開弁する。本実施形態では、雨水量制御弁43における弁機構として、ボールタップが用いられている。なお、本実施形態では、雨水取込み部41が洗浄水貯留槽15に接続されているが、雨水取込み部41は、オゾン処理槽14や浄化槽11~13に接続してもよい。また、雨水導入管42に、雨水を溜めるタンクを接続してもよい。
[トイレユニットの建屋内の配置]
【0037】
循環型トイレシステム10は、トイレ5及び汚水処理装置8を収容する建屋60を備えている。建屋60は、図3(a)及び図3(b)に示すように、略直方体状に形成されている。
【0038】
建屋60の内部空間は、第1仕切壁61及び第2仕切壁62により、便器6及びロータンク7が配置されたトイレ用空間71と、汚水処理装置8の各処理槽11~15などが配置された槽設置用空間72とに区画されている。建屋60の前面側の外壁には、トイレ用空間71に出入りするための扉63が設けられている。図4に示すように、平面視で、トイレ用空間71は略矩形状を呈し、槽設置用空間72は略L字状を呈する。なお、図4では、建屋60の外壁及び仕切壁61,62を太線で記載している。また、以下では、平面視における建屋60の前後方向を「第1方向」、第1方向に直交する方向を「第2方向」と言う。
【0039】
槽設置用空間72では、前側から見て、第1仕切壁61を挟んで、トイレ用空間71とは反対側の空間72aに、第1~第3浄化槽11~13が、前側から第1方向に、この順番で配置されている。ここで、各浄化槽11~13は、略直方体状に形成されている。第1~第3浄化槽11~13は、高さが互いに同じで、第1方向に見た時の水平方向の寸法も互いに同じである。第1~第3浄化槽11~13は、隣り合う浄化槽11~13同士が互いに当接又は近接し、且つ、循環型トイレシステム10の循環水が流れる順番で、第1方向に並べられている。
【0040】
また、槽設置用空間72では、第2仕切壁62を挟んで、トイレ用空間71の後側の空間72bに、オゾン処理槽14と洗浄水貯留槽15が配置されている。ここで、オゾン処理槽14及び洗浄水貯留槽15は、略直方体状に形成されている。オゾン処理槽14及び洗浄水貯留槽15は、高さが互いに同じで、第2方向に見た時の水平方向の寸法も互いに同じである。なお、図1に示すように、オゾン処理槽14及び洗浄水貯留槽15の高さは、各浄化槽11~13よりも少し低い。オゾン処理槽14は、第3浄化槽13に当接又は近接するように配置されている。オゾン処理槽14及び洗浄水貯留槽15は、互いに当接又は近接し、且つ、この順番で、第1方向に並べられている。
【0041】
また、本実施形態では、隣り合う浄化槽11~13が互いに当接又は近接する状態で連結されるように、図5に示す接続構造80を採用している。接続構造80は、第1浄化槽11と第2浄化槽12との連結、及び、第2浄化槽12と第3浄化槽13との連結に用いられている。
【0042】
接続構造80は、ボルト状の接続管(塩ビ製ニップルなど)81と、ナット状の締付部材82と、複数のパッキン83とを有する。接続管81は、外周面に雄ネジが形成された円筒状の軸部81aと、軸部81aの一端に一体化された頭部81bとを有する。接続管81には、軸方向の貫通孔により流路81cが形成されている。締付部材82の内周面には、雌ネジが形成されている。
【0043】
接続構造80は、隣り合う浄化槽11~13の2枚の側壁85の貫通孔に、接続管81の軸部81aを通した後、軸部81aに締付部材82を螺合することで、接続管81の頭部81bと締付部材82とにより、隣り合う浄化槽11~13の2枚の側壁85挟み込む。これにより、隣り合う浄化槽11~13は、内部空間が互いに繋がる状態で連結される。この連結の際に、接続管81の頭部81bと一方の側壁85との間、及び、締付部材82と他方の側壁85との間に、それぞれパッキン83を設ける。
【0044】
また、建屋60の外壁には、図4に示すように、屋外から吸気するための吸気口91と、屋外に排気するための排気口92が、湿度低減部として設けられている。吸気口91は、建屋60における洗浄水貯留槽15の上部空間に面するように、建屋60の外壁に設けられている。排気口92は、建屋60における第1浄化槽11の上部空間に面するように、建屋60の外壁に設けられている。槽設置用空間72では、循環型トイレシステム10の循環水が流れる順番に、複数の処理槽11~15が並べられ、吸気口91は、最下流の洗浄水貯留槽15側に配置され、排気口92は、最上流の曝気槽11側に配置されている。
【0045】
吸気口91は、ガラリで構成されている。排気口92は、排気を促す排気ファン(換気扇)を具備し、排気ファンを常時運転させる。これにより、建屋60内の空気が排気口92から強制排気され、それに伴って吸気口91からは自然吸気される。建屋60内では、吸気口91から排気口92に向かう空気の流れが形成される。
[本実施形態の効果等]
【0046】
本実施形態では、複数の処理槽11~15の各々の形状を略直方体状として、さらに連結構造80により、隣り合う処理槽11~15が互いに当接又は近接するようにしたことで、省スペースで複数の処理槽11~15を設置することができる。さらに、建屋60の槽設置用空間72において、複数の処理槽11~15の一部は、循環水が流れる順番で所定方向に並べられ、複数の処理槽11~15の残りが、循環水が流れる順番で、所定方向に直交する方向に並べられている。複数の処理槽11~14は、図4に示すL字状などに並べることができ、トイレ用空間71を設けた建屋60内にコンパクトに納まる。従って、循環型トイレシステム10のコンパクト化を図り、可搬型のトイレシステムを実現することができる。建屋60にコンテナハウスを利用することもできる。また、複数の処理槽11~15の材料にFRPなどの硬質プラスチックを利用することで、循環型トイレシステム10の軽量化と共に耐震性の向上を図ることができる。
【0047】
本実施形態では、上述の微小隙間を通じて主に曝気槽11,12から適度に水分を排出可能とし、且つ、屋外への排気により槽設置用空間72の湿度低減がなされることで、これまでは循環水の汲み取りが必要となっていた問題が解消されると共に、循環水が不足する事態もほとんど生じない。本実施形態によれば、循環水が増える場合でも、循環水の水量が自然に適正化される循環型トイレシステム10を実現することができる。なお、本実施形態では、各浄化槽11~13の濾材30にボルカナイトを使用しているため、上記微小隙間を設けても臭気の問題は生じない。
【0048】
本実施形態では、排気口92による排気を促すファンを設けている。また、槽設置用空間72では、最下流の洗浄水貯留槽15側に吸気口91を配置し、最上流の第1浄化槽11側に排気口92を配置しているため、槽設置用空間72では吸気口91から排気口92に向かう空気の流れが形成される。これにより、槽設置用空間72の湿度が安定的に低減され、循環水の水量をより適正化することができる。
【0049】
本実施形態では、雨水導入部40を設けているため、循環型トイレシステム10の利用者が極めて少ない場合であっても、循環水が不足する事態が生じにくい。また、洗浄水貯留槽15の液面が所定の水位を下回る場合に、洗浄水貯留槽15に雨水が自動で導入されるため、循環系への雨水の導入に作業者の手間が必要ない。本実施形態によれば、メンテナンスが容易で、且つ、循環水の水量が自然に適正化される循環型トイレシステム10を実現することができる。
【0050】
本実施形態では、導入管20にフレキシブル管(図示省略)を使用しており、導入管20における圧損の低減が低減されるように、導入管20の曲げ形状の適正化が可能である。そのため、汚水に多くの汚物が含まれる場合であっても、便器6から第1処理槽11へ汚水をスムーズに移送することができる。
【0051】
[その他の実施形態]
上述の実施形態において、循環型トイレシステム10の利用者が増える場合でも、洗浄水の無色化を実現できるように、洗浄水貯留槽15に対し、自動逆洗機能付きの活性炭槽を接続してもよい。
【0052】
上述の実施形態において、建屋60の上面にソーラーパネルを設置すると共に、ソーラーパネルにより発電された電気を蓄えるバッテリーを設置して、バッテリーから循環型トイレシステム10の電気機器(ポンプ31,36など)に電力が供給されるようにしてもよい。
【0053】
上述の実施形態では、複数の処理槽11~15は、平面視でL字状配列となっているが、T字状配列など他の配列を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、トイレから排出される汚水を浄化して、トイレの洗浄水として利用する循環型トイレシステム等に適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
5 トイレ
8 汚水処理装置
10 循環型トイレシステム
11 第1浄化槽(処理槽、曝気槽)
12 第2浄化槽(処理槽、曝気槽)
13 第3浄化槽(処理槽)
14 オゾン処理槽(処理槽)
15 洗浄水貯留槽(処理槽)
25 洗浄水供給管及び(洗浄水戻し部)
31 循環ポンプ(洗浄水戻し部)
33 空気供給装置
50 容器本体
50a 開口部
50b 蓋載置部(開口部の縁部)
51 蓋部材
60 建屋
71 トイレ用空間
72 槽設置用空間
図1
図2
図3
図4
図5