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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123250
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】充電制御方法及び充電制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20230829BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20230829BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20230829BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20230829BHJP
   B60L 53/24 20190101ALI20230829BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20230829BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
H02J7/00 L
H02M7/48 E
B60L50/60
B60L53/14
B60L53/24
B60L58/10
B60L9/18 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027219
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅野 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 仁
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 洋介
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
5H770
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503DA08
5G503FA06
5G503GB06
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC24
5H125BA01
5H125BB00
5H125BC01
5H125BC21
5H125DD02
5H125EE02
5H125EE13
5H770AA09
5H770BA02
5H770CA01
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA41
5H770EA01
5H770HA02Y
5H770HA03W
5H770HA07Z
5H770JA17W
5H770JA17Z
5H770KA01Z
(57)【要約】
【課題】モータ駆動用のインバータを力率改善回路として機能させて充電を行う際の意図しないモータトルクの発生を抑制する。
【解決手段】モータ駆動用のインバータ2を力率改善回路として機能させて充電を行う際に、バッテリ1の出力電圧に相当する直流出力電圧Vdcを検出し、モータ3の各相の相電流i,i,iを検出し、所定の直流電圧指令値Vdc と検出した直流電圧Vdcの差に基づいてバッテリ1の充電電流指令値idc を算出し、充電電流指令値idc に基づいてモータ3の各相の相電流指令値i ,i ,i を定め、検出された相電流i,i,iを相電流指令値i ,i ,i に相成分ごとに個別にフィードバックすることでインバータ2のPWM信号を生成する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと、前記バッテリから供給される電力を変換する電力変換装置と、前記電力変換装置における前記バッテリとの接続側に設けられる第1接続端子と、変換された電力が供給されるモータと、前記モータの中性点に設けられる第2接続端子と、を備えたモータ制御システムで実行され、前記第1接続端子及び前記第2接続端子に接続される充電用電源から前記バッテリへの充電を所定の制御信号に基づく前記電力変換装置の操作で制御する充電制御方法であって、
前記バッテリの出力電圧に相当する直流出力電圧を検出し、
前記モータの各相の相電流を検出し、
所定の直流電圧指令値と検出した前記直流出力電圧の差に基づいて、前記バッテリの充電電流指令値を算出し、
前記充電電流指令値に基づいて、前記モータの各相の相電流指令値を定め、
検出された前記相電流を前記相電流指令値に相成分ごとに個別にフィードバックすることで前記制御信号を生成する、
充電制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の充電制御方法であって、
前記充電用電源の出力電圧である電源電圧を検出し、
前記相電流指令値の各相成分を、
検出した前記電源電圧から電源位相を演算し、
前記充電電流指令値を振幅成分とし前記電源位相を位相成分とする交流電流指令値を演算し、
前記交流電流指令値を前記モータの相数で除することで算出する、
充電制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の充電制御方法であって、
前記交流電流指令値を、
前記電源位相に同期する基準正弦波を生成し、
前記充電電流指令値に前記基準正弦波を乗じることで求める、
充電制御方法。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の充電制御方法であって、
前記電力変換装置は、前記バッテリに対して順に並列に接続される平滑コンデンサ及びモータ駆動用パワーモジュールを含み、
前記平滑コンデンサは、相互に直列に接続された2つのコンデンサ素子を含み、
前記モータ駆動用パワーモジュールは、前記モータの各相に応じてそれぞれ設けられた一対のスイッチング素子を含み、
前記第1接続端子を、2つの前記コンデンサ素子の間に設定される中間電位点に構成するとともに前記充電用電源のコールド側に接続し、
前記第2接続端子を前記充電用電源のホット側に接続し、
前記制御信号を、検出した前記相電流と前記相電流指令値の相成分ごとの偏差をゼロとする前記モータ駆動用パワーモジュールのスイッチングパターンに基づいて定める、
充電制御方法。
【請求項5】
請求項1~3の何れか1項に記載の充電制御方法であって、
前記電力変換装置は、前記バッテリに対して順に並列に接続される平滑コンデンサ、充電時用パワーモジュール、及びモータ駆動用パワーモジュールを含み、
前記モータ駆動用パワーモジュールは、前記モータの各相に応じてそれぞれ設けられた一対のスイッチング素子を含み、
前記充電時用パワーモジュールは、相互に直列に接続された一対のスイッチング素子を含み、
前記第1接続端子を、前記充電時用パワーモジュールの一対のスイッチング素子の間に設定される中間電位点に構成するとともに前記充電用電源のコールド側に接続し、
前記第2接続端子を前記充電用電源のホット側に接続し、
前記制御信号を、
検出した前記相電流と前記相電流指令値の相成分ごとの偏差をゼロとする前記モータ駆動用パワーモジュールのスイッチングパターン、及び
前記モータ駆動用パワーモジュールのスイッチングに同期させた前記充電時用パワーモジュールのスイッチングパターンに基づいて定める、
充電制御方法。
【請求項6】
バッテリと、前記バッテリから供給される電力を変換する電力変換装置と、前記電力変換装置における前記バッテリとの接続側に設けられる第1接続端子と、変換された電力が供給されるモータと、前記モータの中性点に設けられる第2接続端子と、前記電力変換装置の動作を制御する制御装置と、を備えたモータ制御システムを含み、前記制御装置が、前記第1接続端子及び前記第2接続端子に接続される充電用電源から前記バッテリへの充電を所定の制御信号に基づく前記電力変換装置の操作で制御する充電制御システムであって、
前記バッテリの出力電圧に相当する直流出力電圧を検出する直流電圧検出装置と、
前記モータの各相の相電流を検出する相電流検出装置と、
前記制御装置は、
所定の直流電圧指令値と検出した前記直流出力電圧の差に基づいて、前記バッテリの充電電流指令値を算出し、
前記充電電流指令値に基づいて、前記モータの各相の相電流指令値を定め、
検出された前記相電流を前記相電流指令値に相成分ごとに個別にフィードバックすることで前記制御信号を生成する、
充電制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の相を有するモータを駆動するためのインバータを利用して、モータを駆動するバッテリを充電する充電制御方法及び充電制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータ駆動用のインバータを力率改善回路として利用する際に、モータの線間電圧がゼロになるように各スイッチング素子のスイッチングを制御することで、充電中にモータ巻線に電流が流れないようにする充電制御方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-058178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の充電制御方法では、各スイッチング素子の個体差、或いはモータの各相におけるインダクタンスの違いなどに起因した相電流のばらつきが生じることで充電中にモータ巻線に電流が流れ、意図しないトルクを発生させることがある。
【0005】
したがって、本発明の目的は、モータ駆動用のインバータを力率改善回路として機能させて充電を行う際の意図しないモータトルクの発生を抑制し得る充電制御方法及び充電制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、バッテリと、バッテリから供給される電力を変換する電力変換装置と、電力変換装置におけるバッテリとの接続側に設けられる第1接続端子と、変換された電力が供給されるモータと、モータの中性点に設けられる第2接続端子と、を備えたモータ制御システムで実行され、第1接続端子及び第2接続端子に接続される充電用電源からバッテリへの充電を所定の制御信号に基づく電力変換装置の操作で制御する充電制御方法が提供される。
【0007】
この充電制御方法では、バッテリの出力電圧に相当する直流出力電圧を検出し、モータの各相の相電流を検出する。また、所定の直流電圧指令値と検出した直流出力電圧の差に基づいてバッテリの充電電流指令値を算出し、充電電流指令値に基づいてモータの各相の相電流指令値を定め、検出された相電流を相電流指令値に相成分ごとに個別にフィードバックすることで制御信号を生成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、モータ駆動用のインバータを力率改善回路として機能させて充電を行う際の意図しないモータトルクの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態のモータ制御システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、各動作モード、各リレーの状態、及びスイッチング周波数の関係を説明する図である。
図3図3は、スイッチング素子の静特性を示すグラフである。
図4図4は、(A)モータ駆動時、及び(B)充電時における相電圧及び線間電圧の原則的な遷移を示すタイミングチャートである。
図5図5は、第1実施形態の制御回路の構成を示すブロック図である。
図6図6は、第2実施形態のモータ制御システムの構成を示すブロック図である。
図7図7は、第2実施形態の制御回路の構成を示すブロック図である。
図8図8は、第3実施形態のモータ制御システムの構成を示すブロック図である。
図9図9は、第4実施形態のモータ制御システムの構成を示すブロック図である。
図10図10は、比較例の制御回路の構成を示すブロック図である。
図11図11は、比較例による制御結果を示すタイミングチャートである。
図12図12は、実施例による制御結果を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態のモータ制御システム100の構成を示すブロック図である。図示のように、モータ制御システム100は、バッテリ1、電力変換装置としてのインバータ2、モータ3、及び車両コントローラ4等を備える。
【0012】
すなわち、モータ制御システム100は、バッテリ1を電力源とし、インバータ2を介してモータ3を駆動するシステムである。モータ制御システム100は、例えば、電動車両(EV)やプラグインハイブリッド車両(PHEV)等に搭載される。
【0013】
バッテリ1は、モータ3の駆動電力源として機能する直流電源である。本実施形態では、バッテリ1は、リチウムイオン二次電池等の車載用の高電圧バッテリとして構成される。
【0014】
インバータ2は、モータ3を駆動するときに、バッテリ1が出力する直流電力を交流電力に変換してモータ3に供給する電力変換装置である。インバータ2の構成については詳細を後述する。
【0015】
モータ3は、三相交流の埋込磁石型同期電動機(IPMSM: interior permanent magnet synchronous motor)により構成され、車両の走行駆動源として機能する。
【0016】
車両コントローラ4は、車両の動作及びモータ制御システム100の動作を統括的に制御するためのコンピュータである。特に、車両コントローラ4は、車両のアクセル開度Apo等に応じてモータ3のトルク指令値Tを定めて、インバータ2に出力する。
【0017】
本実施形態のモータ制御システム100は上記のようにモータ3を駆動する他、バッテリ1を外部電源5によって充電する際にインバータ2を力率改善回路(PFC)として利用する充電制御システムとしても機能する。このため、モータ制御システム100は、外部電源5(商用の交流電源など)を接続するための接続端子である外部電源端子6と、DC/DCコンバータ7と、を備える。
【0018】
外部電源5は、商用の交流電源である。本実施形態においては、外部電源5は、単相交流電源であり、例えば100ボルト電源または200ボルト電源である。
【0019】
外部電源端子6は、外部電源5によってバッテリ1を充電するときに、インバータ2を介して外部電源5をバッテリ1に接続する。また、外部電源端子6は、第1端子6aと第2端子6bとを備える。第1端子6aは、外部電源5のホット側(非接地側)に接続され、第2端子6bは外部電源5のコールド側(接地側)に接続される。
【0020】
DC/DCコンバータ7は、外部電源5によってバッテリ1を充電するときに、降圧チョッパとして機能する。すなわち、DC/DCコンバータ7は、インバータ2から入力される直流電力を、バッテリ1の充電に適した電圧に降圧して、バッテリ1に供給する。本実施形態においては、DC/DCコンバータ7はいわゆる絶縁型である。
【0021】
リレー8は、車両コントローラ4から入力されるリレー駆動信号SRDに基づいて、インバータ2、DC/DCコンバータ7、及びバッテリ1の接続状態を切り替えるスイッチである。リレー8がオンのとき、バッテリ1は、DC/DCコンバータ7を介さず、実質的にインバータ2に直接的(直列)に接続する。リレー8がオフのとき、バッテリ1は、DC/DCコンバータ7を介してインバータ2に接続する。
【0022】
そして、モータ制御システム100では、インバータ2を用いたモータ駆動時の動作モード(以下、モータ駆動モードという)、及びインバータ2を用いた外部電源5による充電時の動作モード(以下、充電動作モードという)の一方を選択的に実行する。
【0023】
特に、モータ駆動モードではリレー8がオンにされ、及び充電動作モードではオフにされるようにリレー駆動信号SRDが生成される。
【0024】
<インバータの構成>
図示のように、インバータ2は、モータ駆動用パワーモジュールとしてのパワーモジュール10u~10w、駆動回路11、及び制御回路12を備える。
【0025】
パワーモジュール10u~10wは、モータ駆動モードにおいて、バッテリ1から入力される直流電力を三相交流電力に変換してモータ3の各相(U相、V相、及びW相)に入力する。一方、パワーモジュール10u~10wは、充電動作モードにおいて、外部電源5から入力される交流電力を直流電力に整流してバッテリ1に入力する。
【0026】
パワーモジュール10u~10wは、モータ3の各相のそれぞれに対応して設けられた一対のアームから成るレグを複数含む。より具体的に、U相パワーモジュール10uはモータ3のU相に接続され、U相スイッチング素子Tr1とU相還流ダイオードD1からなる上アームと、U相スイッチング素子Tr2とU相還流ダイオードD2からなる下アームと、を備える。同様に、V相パワーモジュール10vは、モータ3のV相に接続され、V相スイッチング素子Tr3とV相還流ダイオードD3からなる上アームと、V相スイッチング素子Tr4とV相還流ダイオードD4からなる下アームと、を備える。さらに、モータ3のW相に接続され、W相スイッチング素子Tr5とW相還流ダイオードD5からなる上アームと、W相スイッチング素子Tr6とW相還流ダイオードD6からなる下アームと、を備える。各スイッチング素子Tr1~Tr6は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体スイッチにより構成される。なお、1つのレグを構成する上アームと下アームは、原則として、交流電力の極性に応じて一方がオンになり、他方はオフになる。
【0027】
駆動回路11は、各スイッチング素子Tr1~Tr6を駆動する(オン又はオフに操作する)ための回路である。特に、駆動回路11は、制御回路10で生成される制御信号(PWM信号)に基づき、当該PWM信号によって定められたデューティ比(スイッチングパターン)にしたがい、各スイッチング素子Tr1~Tr6を駆動する。
【0028】
また、本実施形態においては、駆動回路11は、充電時にバッテリ1及び外部電源5からの入力電力を検出する入力電力検出回路としても機能する。具体的には、駆動回路11は、バッテリ1からパワーモジュール10u~10wに印加される直流電圧Vdcを検出する。さらに、駆動回路11は、充電時に外部電源5からパワーモジュール10u~10wに印加される交流電圧vac(すなわち、外部電源5の出力電圧)を検出する。検出された直流電圧Vdc及び交流電圧vacは、制御回路12に入力される。
【0029】
制御回路12は、上記PWM信号を生成して駆動回路11に出力する。より具体的に、制御回路12は、モータ駆動時において、トルク指令値T、モータ3の各相に流れる電流(以下、相電流という)iu,iv,iw、直流電圧Vdc、及びモータ3の回転子の位置を表す回転子位置信号Rposに基づいて、PWM信号を生成する。このPWM信号に基づいて各スイッチング素子Tr1~Tr6を駆動することで、モータ3の出力トルクをトルク指令値Tに応じた値に調節することができる。なお、相電流iu,iv,iwは、各相に設けられた電流センサ13によって検出(サンプリング)される。また、モータ3の回転子の位置を表す回転子位置信号Rposは、レゾルバ14によって検出される。
【0030】
さらに、制御回路12は、充電時(充電動作モードの実行時)には、外部電源5からバッテリ1の充電を制御する制御装置としても機能する。すなわち、制御回路12は、モータ3の駆動を制御する駆動制御装置であり、かつ、外部電源5によるバッテリ1の充電を制御する充電制御装置である。したがって、制御回路12は、モータ駆動モード及び充電モードの動作におけるインバータ2の動作を予め定められた所定の制御周期で定期的に実行するようにプログラムされる。なお、制御回路12による充電時の制御に関する詳細は後述する。
【0031】
上記の他、バッテリ1の充電動作を行うために、インバータ2は、平滑コンデンサ21、リレー22、フィルタコンデンサ24、EMI(Electro Magnetic Interference)フィルタ25、及びリレー26を含む。
【0032】
平滑コンデンサ21は、外部電源5から入力される交流電力をパワーモジュール10u~10wによって整流して得た直流電力を平滑化する。平滑コンデンサ21は、パワーモジュール10u~10wとバッテリ1の間に、これらと並列に接続される。特に、本実施形態の平滑コンデンサ21は、互いに直列に接続された2つのコンデンサ素子21a,21bにより構成される。
【0033】
また、本実施形態では、2つのコンデンサ素子21a,21bの間に設けられる中間電位点が第1接続端子P1として構成され、外部電源5のコールド側、すなわち第2端子6bに接続される。
【0034】
リレー22は、外部電源5のホット側とモータ3の中性点に構成される第2接続端子P2との間の接続/遮断を切り替えるノーマルオープンリレーである。リレー22のオン/オフは、車両コントローラ4から入力されるリレー駆動信号(図示しない)によって制御される。リレー22は、モータ駆動時にオフにされ、充電時にオンにされる。
【0035】
特に、第2接続端子P2が外部電源5のホット側に直列に接続され、フィルタコンデンサ24が外部電源5に対して並列に接続される。このため、モータ3の零相インダクタンス及びフィルタコンデンサ24からなるLC回路により、充電時の各スイッチング素子Tr1~Tr6の動作によって発生するノイズが低減される。さらに、EMIフィルタ25は、外部電源端子6における電磁ノイズの発生及び侵入を抑える。なお、駆動回路11は、フィルタコンデンサ24の両端電圧を、外部電源5の出力電圧に相当する交流電圧vacとして検出する。
【0036】
リレー26は、外部電源5のコールド側と第1接続端子P1との間の接続/遮断を切り替えるノーマルオープンリレーである。リレー26のオン/オフは、車両コントローラ4から入力されるリレー駆動信号(図示しない)によって制御される。リレー26は、モータ駆動時にオフにされ、充電時にオンにされる。
【0037】
図2は、各動作モード、各リレーの状態、及びスイッチング周波数の関係を説明する図である。図示のように、車両の運転を開始する時刻t1から運転が終了する時刻t2の間は、モータ駆動モードが実行される。このため、直流電源側(すなわちバッテリ1側)のリレー8はオンにされ、交流電源側(すなわち外部電源端子6側)のリレー22,26はオフにされる。また、モータ駆動モードでは、パワーモジュール10u~10wのスイッチング周波数は、充電動作モードを実行する際よりも低く設定される。これは、モータ駆動時におけるインバータ2及びモータ3の電力損失を低減するためである。なお、モータ駆動モードにおけるスイッチング周波数は特定の数値に限定されるものではないが、例えば約10kHzに設定される。
【0038】
また、運転終了後の時刻t3に充電動作モードを開始してその後の時刻t4にこれを終了させる場合、時刻t3~t4において、直流電源側のリレー8はオフにされ交流電源側のリレー22,26はオンにされる。また、充電動作モードにおけるスイッチング周波数は、モータ駆動モードを実行する際よりも高く設定される。なお、充電動作モードにおけるスイッチング周波数は特定の数値に限定されるものではないが、例えば約60kHzに設定される。
【0039】
図3は、各スイッチング素子Tr1~Tr6の静特性を示すグラフである。図示のように、充電時の最大電流Ic1及び最大電圧Vec(sat)1は、モータ駆動時の最大電流Ic2及び最大電圧Vec(sat)2よりも小さい。このため、パワーモジュール10u~10wの動作点がその能力に対して十分な余裕がある。したがって、充電時においては、スイッチング周波数を高くしても、インバータ2の力率改善動作を低損失で行うことができる。このため、上記のように、充電動作モードでは、スイッチング周波数はモータ駆動モードのときよりも高く設定される。
【0040】
図4は、(A)モータ駆動時、及び(B)充電時における相電圧及び線間電圧の原則的な遷移を示すタイミングチャートである。図4(A)に示すように、モータ駆動時においては、制御回路12は、トルク指令値T等に応じて、モータ3が要求されたトルクを発生させるように、各相に印加する電圧(以下、相電圧Vu,Vv,Vwという)を制御する。すなわち、制御回路12は、各相の相電圧Vu,Vv,Vwはそれぞれに遷移する。その結果、各相の線間電圧Vu-v,Vu-w,Vw-uは図示のように遷移する。なお、図4の横軸は時刻であり、一点鎖線で示す周期はモータ制御システム100の制御周期である。
【0041】
また、充電時には、制御回路12は、複数のスイッチング素子Tr1~Tr6がオン及び/又はオフする動作タイミングを同期させる同期制御をする。このため、図4(B)に示すように、充電時においては、理想的な系において各相の線間電圧Vu-v,Vu-w,Vw-uはいずれもゼロとなる。一方で、同期制御におけるスイッチング素子Tr1~Tr6のデューティ比を適切に調節することで、バッテリ1の充電電力を所望の値に制御することができる。
【0042】
しかしながら、充電時に、種々の要因で各相間にアンバランス電流が発生することがある。具体的には、各スイッチング素子Tr1~Tr6の個体差に応じたターンオフ又はターンオンタイミングのずれ、パワー半導体のオン抵抗のばらつき、さらには、モータ3における各相間のインダクタンスのばらつきが要因となって各相間のアンバランス電流を生じ得る。そして、充電時に各相間のアンバランス電流が生じると、モータ3に電流が流れ意図しないトルクの発生をもたらす。その結果、充電時にモータ3の作動に起因する振動が車体に伝達され、音振の要因となる。したがって、本実施形態では、充電時における意図しないモータトルクの発生を抑制するべく、以下で説明する充電制御を実行する。
【0043】
図5は、本実施形態の充電制御方法を実行する制御回路12の構成を示すブロック図である。図示のように、制御回路12は、充電電流指令値算出部50と、基準正弦波生成部52と、相電流指令値算出部54と、電流制御部56と、PWM制御部58と、を有する。
【0044】
充電電流指令値算出部50は、直流電圧指令値Vdc 及び直流電圧Vdcを入力として、充電電流指令値idc を算出する。なお、直流電圧指令値Vdc は、DC/DCコンバータ7の出力電圧の指令値であり、バッテリ1の目標充電電力及び充電率などに応じて適宜定められる。また、充電電流指令値idc は、直流電圧指令値Vdc に応じたバッテリ1の充電電流の目標値に相当する。
【0045】
具体的に、充電電流指令値算出部50は、ローパスフィルタ処理した直流電圧Vdcと直流電圧指令値Vdc との偏差がゼロとなるように、フィードバック制御(PI制御)を実行することで充電電流指令値idc を演算する。充電電流指令値算出部50は、求めた充電電流指令値idc を相電流指令値算出部54に出力する。なお、ローパスフィルタの時定数は、バッテリ1、DC/DCコンバータ7、及び平滑コンデンサ21を含む直流電力系の応答特性を考慮し直流電圧Vdcの検出値からノイズ成分を除去する観点から好適な値に設定される。
【0046】
基準正弦波生成部52は、交流電圧vacを入力として基準正弦波sinθを生成する。具体的に、基準正弦波生成部52は、交流電圧vacの位相(電源位相θ)を推定し、当該電源位相θを位相成分とする正弦波を基準正弦波sinθとして生成する。基準正弦波生成部52は、例えば、位相同期回路により構成することができる。そして、基準正弦波生成部52は、求めた基準正弦波sinθを相電流指令値算出部54に出力する。
【0047】
相電流指令値算出部54は、充電電流指令値idc 及び基準正弦波sinθを入力として、各相の相電流指令値i ,i ,i を算出する。具体的に、相電流指令値算出部54は、先ず、充電電流指令値idc に基準正弦波sinθを乗じることで交流電流指令値iac を演算する。すなわち、交流電流指令値iac は、充電電流指令値idc を振幅成分として電源位相θを位相成分とする値として定まる。そして、相電流指令値算出部54は、交流電流指令値iac に1/3を乗じて(相数である3で除して)得られた値を、各相の相電流指令値i ,i ,i として算出する。そして、相電流指令値算出部54は、求めた相電流指令値i ,i ,i を電流制御部56に出力する。
【0048】
電流制御部56は、検出された相電流i,i,i及び相電流指令値i ,i ,i を入力として、三相電圧指令値v ,v ,v を算出する。特に、電流制御部56は、U相電圧指令値v 、V相電圧指令値v 、及びW相電圧指令値v をそれぞれ個別に演算するU相電流制御部56u、V相電流制御部56v、及びW相電圧指令値56wを有する。
【0049】
U相電流制御部56uは、ローパスフィルタ処理したU相電流指令値i と、検出したU相電流iと、の偏差がゼロとなるように、フィードバック制御(PI制御)を実行することでU相電圧指令値v を演算する。同様のロジックにより、V相電流制御部56v及びW相電圧指令値56wは、それぞれ、V相電圧指令値v 及びW相電圧指令値v を演算する。なお、各三相電圧指令値v ,v ,v に適用されるそれぞれのローパスフィルタの時定数は、各相の応答特性を考慮してノイズ成分を低減する観点から適切な値に定められる。特に、各ローパスフィルタの時定数は、各相に応じて相互に異なる値に設定されても良い。
【0050】
そして、電流制御部56は、求めた三相電圧指令値v ,v ,v をPWM制御部58に出力する。
【0051】
PWM制御部58は、直流電圧Vdc及び電圧指令値v ,v ,v を入力としてPWM信号を生成し、生成したPWM信号に基づいて駆動回路11を操作して各スイッチング素子Tr1~Tr6を駆動する。
【0052】
具体的に、PWM制御部58は、直流電圧Vdcに対するそれぞれの電圧指令値v ,v ,v の比として得られる各相の変調率と、適宜定められた周波数及びパルス幅を有するキャリア波と、の大小比較結果に基づいて各スイッチング素子Tr1~Tr6のデューティ比を定め、これをPWM信号とする。
【0053】
より詳細には、PWM制御部58は、U相変調率とキャリア波の大小比較結果に応じて、適宜デットタイムを設けつつ、各U相スイッチング素子Tr1,Tr2の一方がオンデューティであるときに他方がオフデューティとなるように、U相ゲート信号SUH,SULを生成する。同様のロジックにより、PWM制御部58は、V相ゲート信号SVH,SVL、及びW相ゲート信号SWH,SWLを生成する。そして、PWM制御部58は、各ゲート信号SUH,SUL,SVH,SVL,SWH,SWLを含むPWM信号を生成する。
【0054】
図5で説明した制御ロジックによれば、バッテリ1(DC/DCコンバータ7)の要求充電電流に相当する充電電流指令値idc をモータ3の相数(すなわち3相)に応じて均等に振り分けた値が各相電流指令値i ,i ,i の振幅値として定められることとなる。また、それぞれの相電流指令値i ,i ,i の位相は、電源位相θに同期するように定められることとなる。このため、それぞれの相電流指令値i ,i ,i はそれらの振幅及び位相が相互に一致するように定められる。そして、このように定められた相電流指令値i ,i ,i に対して検出された相電流i,i,iが相成分ごとにフィードバックされることで、PWM信号が生成されることとなる。したがって、このように生成されたPWM信号を用いることで、各スイッチング素子Tr1~Tr6のスイッチングパターン(オン/オフタイミング)を好適に同期させることができる。結果として、各相の特性のばらつきに依らずに充電時の相電流i,i,iの相互バランスをより確実に保つことができ、モータ3に電流が流れることによる意図しないトルク出力を抑制することができる。
【0055】
以上説明した本実施形態の構成及び作用効果をまとめて説明する。
【0056】
本実施形態では、バッテリ1と、バッテリ1から供給される電力を変換する電力変換装置(インバータ2)と、インバータ2におけるバッテリ1との接続側に設けられる第1接続端子P1と、変換された電力が供給されるモータ3と、モータ3の中性点に設けられる第2接続端子P2と、を備えたモータ制御システム100で実行され、第1接続端子P1及び第2接続端子P2に接続される充電用電源(外部電源5)からバッテリ1への充電を所定の制御信号(PWM信号)に基づくインバータ2の操作で制御する充電制御方法が提供される。
【0057】
この充電制御方法では、バッテリ1の出力電圧に相当する直流出力電圧(直流電圧Vdc)を検出し、モータ3の各相の相電流i,i,iを検出する。そして、所定の直流電圧指令値Vdc と検出した直流電圧Vdcの差に基づいてバッテリ1の充電電流の指令値である充電電流指令値idc を算出し(充電電流指令値算出部50)、当該充電電流指令値idc に基づいてモータ3の各相の相電流指令値i ,i ,i を定める(相電流指令値算出部54)。さらに、検出された相電流i,i,iを相電流指令値i ,i ,i に相成分ごとに個別にフィードバックすることでPWM信号を生成する(電流制御部56及びPWM制御部58)。
【0058】
これにより、モータ3の零相インダクタンスを利用してインバータ2を力率改善回路として機能させる充電制御において、各相の特性のばらつきに依らずにモータ3の各相に流れる電流(相電流i,i,i)の波形を相互に等しくすることができる。すなわち、充電時における各相のアンバランス電流を解消することができる。したがって、充電時の意図しないモータ3のトルク出力を低減することができる。
【0059】
また、本実施形態では、外部電源5の出力電圧である電源電圧(交流電圧vac)を検出する。そして、検出した交流電圧vacから電源位相θを演算し(基準正弦波生成部52)、充電電流指令値idc を振幅成分及び電源位相θを位相成分とする交流電流指令値iac を演算し、演算した交流電流指令値iac をモータ3の相数(本実施形態では3)で除することにより、相電流指令値i ,i ,i の各相成分を算出する。特に、本実施形態では、電源位相θに同期する基準正弦波sinθを生成し、充電電流指令値idc に基準正弦波sinθを乗じることで交流電流指令値iac を求める(相電流指令値算出部54)。
【0060】
これにより、充電電流指令値idc 及び交流電圧vacを入力として相電流指令値i ,i ,i を定めるための具体的な演算ロジックが実現される。
【0061】
さらに、本実施形態のインバータ2は、バッテリ1に対して順に並列に接続される平滑コンデンサ21及びモータ駆動用パワーモジュール(パワーモジュール10u~10w)を含む。また、平滑コンデンサ21は、相互に直列に接続された2つのコンデンサ素子21a,21cを含む。さらに、パワーモジュール10u~10wは、モータ3の各相に応じてそれぞれ設けられた一対のスイッチング素子(Tr1,Tr2)、(Tr3,Tr4)、(Tr5,Tr6)を含む。特に、第1接続端子P1を、2つのコンデンサ素子21a,21cの間に設定される中間電位点に構成するとともに外部電源5のコールド側に接続する。また、第2接続端子P2を外部電源5のホット側に接続する。
【0062】
そして、PWM信号を、検出した相電流i,i,iと相電流指令値i ,i ,i との偏差をゼロとするパワーモジュール10u~10wのスイッチングパターンに基づいて定める。
【0063】
これにより、充電時にインバータ2を力率改善回路として利用する際に意図しないモータトルク出力を低減する機能、及びモータ駆動時にインバータ2を駆動アクチュエータとして適切に動作させる機能の双方を両立させることのできる、具体的なシステム構成及び制御ロジックが実現される。
【0064】
また、本実施形態では、上記充電制御方法の実行に適した充電制御システムが提供される。この充電制御システムは、バッテリ1と、バッテリ1から供給される電力を変換する電力変換装置(インバータ2)と、インバータ2におけるバッテリ1との接続側に設けられる第1接続端子P1と、変換された電力が供給されるモータ3と、モータ3の中性点に設けられる第2接続端子P2と、インバータ2の動作を制御する制御装置(制御回路12)と、を備えたモータ制御システム100を含む。そして、制御回路12は、第1接続端子P1及び第2接続端子P2に接続される充電用電源(外部電源5)からバッテリ1への充電を所定の制御信号(PWM信号)に基づくインバータ2の操作で制御する。
【0065】
特に、この充電制御システムは、バッテリ1の出力電圧に相当する直流出力電圧(直流電圧Vdc)を検出する直流電圧検出装置(駆動回路11)と、モータ3の各相の相電流i,i,iを検出する相電流検出装置(電流センサ13)と、を備える。そして、制御回路12は、所定の直流電圧指令値Vdc と検出した直流電圧Vdcの差に基づいてバッテリ1の充電電流指令値idc を算出し(充電電流指令値算出部50)、充電電流指令値idc に基づいてモータ3の各相の相電流指令値i ,i ,i を定める(基準正弦波生成部52及び相電流指令値算出部54)。さらに、検出された相電流i,i,iを相電流指令値i ,i ,i に相成分ごとに個別にフィードバックすることでPWM信号を生成する(電流制御部56及びPWM制御部58)。
【0066】
[第2実施形態]
以下、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0067】
図6は、本実施形態のモータ制御システム200の構成を示すブロック図である。図示のように、モータ制御システム200は、DC/DCコンバータ7と各相のパワーモジュール10u~10wとの間に、追加パワーモジュール31が設けられる。
【0068】
追加パワーモジュール31は、スイッチング素子Tr7及び還流ダイオードD7からなる上アームと、スイッチング素子Tr8及び還流ダイオードD8からなる下アームと、によって構成される。また、モータ制御システム200では、追加パワーモジュール31の各スイッチング素子Tr7,Tr8の間に設定される中間電位点に第1接続端子P1が設けられる。すなわち、追加パワーモジュール31内に設定される第1接続端子P1が、リレー26及びEMIフィルタ25を介して外部電源5のコールド側に接続される。
【0069】
なお、既に説明したように、モータ駆動時にはリレー26がオフとされるため、追加パワーモジュール31は、インバータ2による当該モータ駆動時の電流制御に影響を与えない。特に、追加パワーモジュール31にはモータ駆動時の大電流は流れない。このため、追加パワーモジュール31は、各相のパワーモジュール10u~10wに比べてより定格電流の低い半導体素子により構成することができ、製造コストの低減を図ることができる。また、追加パワーモジュール31に第1接続端子P1を設定したことで、平滑コンデンサ21を単一のコンデンサ素子21aにより構成することができるので、さらなる製造コストの低減を図ることができる。
【0070】
次に、本実施形態の制御回路12による処理について説明する。
【0071】
図7は、本実施形態の充電制御方法を実行する制御回路12の構成を示すブロック図である。特に、本実施形態の制御回路12では、PWM制御部58により生成されるPWM信号が、各相のスイッチング素子Tr1~Tr6を駆動するためのゲート信号SUH,SUL,SVH,SVL,SWH,SWLに加え、追加パワーモジュール31のスイッチング素子Tr7,Tr8を駆動するためのゲート信号SAH,SALを含む点で第1実施形態と異なる。
【0072】
PWM制御部58は、スイッチング素子Tr7,Tr8のスイッチングパターンがスイッチング素子Tr1~Tr6のスイッチングパターンに同期するようにゲート信号SAH,SALを定める。特に、PWM制御部58は、スイッチング素子Tr7,Tr8が、各相のスイッチング素子Tr1~Tr6の中でデューティ比が最も大きい相に合わせて動作するようにゲート信号SAH,SALを定める。
【0073】
例えば、PWM制御部58は、U相のデューティ比が最も大きい場合には、スイッチング素子Tr7,Tr8のオン/オフが、それぞれ、U相パワーモジュール10uにおけるスイッチング素子Tr1,Tr2のオン/オフに同期するようにゲート信号SAH,SALを定める。なお、V相のデューティ比又はW相のデューティ比が最も大きい場合も、同様のロジックでゲート信号SAH,SALを定めることができる。これにより、追加パワーモジュール31のスイッチング素子Tr7,Tr8が、各相のスイッチング素子Tr1~Tr6(特にデューティ比が最も大きい相の素子)に同期して駆動することとなる。
【0074】
なお、本実施形態において充電電流指令値算出部50で用いられるローパスフィルタの時定数は、バッテリ1、DC/DCコンバータ7、コンデンサ素子21a、及び追加パワーモジュール31を含む直流電力系の応答特性を考慮し直流電圧Vdcの検出値からノイズ成分を除去する観点から好適な値に設定される。
【0075】
以上説明した本実施形態のモータ制御システム200では、インバータ2は、バッテリ1に対して順に並列に接続される平滑コンデンサ21、充電時用パワーモジュール(追加パワーモジュール31)、及びモータ駆動用パワーモジュール(パワーモジュール10u~10w)を含む。また、パワーモジュール10u~10wは、モータ3の各相に応じてそれぞれ設けられた一対のスイッチング素子(Tr1,Tr2)、(Tr3,Tr4)、(Tr5,Tr6)を含む。さらに、追加パワーモジュール31は、相互に直列に接続された一対のスイッチング素子(Tr1,Tr2)を含む。
【0076】
特に、第1接続端子P1を、追加パワーモジュール31の一対のスイッチング素子(Tr1,Tr2)の間に設定される中間電位点に構成するとともに外部電源5のコールド側に接続する。一方、第2接続端子P2を外部電源5のホット側に接続する。
【0077】
そして、PWM信号を、検出した相電流i,i,iと相電流指令値i ,i ,i との偏差をゼロとするパワーモジュール10u~10wのスイッチングパターン、及び当該パワーモジュール10u~10wのスイッチングに同期させた追加パワーモジュール31のスイッチングパターンに基づいて定める。
【0078】
これにより、充電時にインバータ2を力率改善回路として利用する際に意図しないモータトルク出力を低減する機能、及びモータ駆動時にインバータ2を駆動アクチュエータとして適切に動作させる機能の双方を両立させつつ、製造コストのさらなる低減を可能とするシステム構成及び制御ロジックが実現される。
【0079】
[第3実施形態]
以下、第3実施形態について説明する。なお、第1又は第2実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0080】
図8は、本実施形態のモータ制御システム300の構成を示すブロック図である。図示のように、モータ制御システム300は、第1実施形態のモータ制御システム100の構成をベースとして、絶縁型のDC/DCコンバータ7に代え、非絶縁且つ双方向型のDC/DCコンバータ40が設けられる。
【0081】
DC/DCコンバータ40は、例えば、リアクトル41とパワーモジュールとから構成される。なお、DC/DCコンバータ40を構成するパワーモジュールは、スイッチング素子Tr9及び還流ダイオードD9からなる上アームと、スイッチング素子Tr10及び還流ダイオードD10からなる下アームと、によって構成される。
【0082】
このように構成されるモータ制御システム300においても、第1実施形態と同様に、充電時におけるモータ3の意図しないトルクの発生を抑制し得る充電制御方法を実行することができる。特に、モータ制御システム300では、非絶縁且つ双方向型のDC/DCコンバータ40を採用したことで、リレー8の数が削減されるなどの回路構成の簡素化及び小型化が図られる。また、DC/DCコンバータ40は、充電時には上記実施形態と同様に降圧チョッパとして機能させ、モータ駆動時には昇圧コンバータとして機能させることができる。このため、充電時における電力調整を可能としつつ、モータ駆動時にはモータ3の出力を向上させることもできる。
【0083】
[第4実施形態]
以下、第4実施形態について説明する。なお、第1~第3実施形態の何れかと同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0084】
図9は、本実施形態のモータ制御システム400の構成を示すブロック図である。モータ制御システム400は、外部電源5が三相交流電源であるときに適用される回路構成である。特に、モータ制御システム400では、外部電源5のU相は第1端子6aに接続され、外部電源5のW相は第2端子6bに接続される。そして、外部電源端子6には、外部電源5のV相を接続する第3端子6cが追加されている。
【0085】
また、モータ3の中性点(第2接続端子P2)とフィルタコンデンサ24の間にリアクトル23が介在される。さらに、リレー26は、外部電源5のV相及びW相にそれぞれ設ける。この他、外部電源5のV相に新たに電流センサ42が追加されている。そして、制御回路12は、モータ駆動時にはモータ3のU相及びV相の相電流iu,ivからW相の相電流iwを演算により算出し、充電時には電流センサ42で検出する外部電源5のV相の電流(図示しない)を参照する。なお、本実施形態において、基準正弦波生成部52は、三相の交流電圧vacのU相、V相、及びW相の少なくとも一つの位相を上記電源位相θとして基準正弦波を生成する。
【0086】
さらに、モータ制御システム400では、パワーモジュール10u~10wの他に、パワーモジュール43が追加され、外部電源5のV相に接続される。パワーモジュール43は、スイッチング素子Tr11及び還流ダイオードD11からなる上アームと、スイッチング素子Tr12及び還流ダイオードD12からなる下アームと、から構成される。なお、パワーモジュール43は、充電時に動作させ、モータ駆動時には動作させない。このため、パワーモジュール43は充電時に要求される電流及び電圧に耐久すれば足りるので、パワーモジュール10u~10wよりも小規模のものでよい。また、充電時における電流のみを検出することを想定した電流センサ42についても、モータ駆動時の電流検出を想定した電流センサ13に比べて小型に構成することができる。
【0087】
したがって、このように構成されるモータ制御システム400では、外部電源5として三相交流電源が用いられる場合において、充電時におけるモータ3の意図しないトルクの発生を抑制し得る充電制御方法の実行に適したシステム構成が実現される。
【0088】
[制御結果]
以下では、上記実施形態の構成(実施例)による制御結果を比較例の構成による制御結果と比較しつつ説明する。なお、比較対象の明確化のため、実施例と比較例の間で共通する構成には同一の符号を付す。
【0089】
(比較例)
上記第1実施形態に係るモータ制御システム100と同様のシステム構成において、充電動作モードを図5で説明したものとは異なる制御ロジックにより行った。
【0090】
図10は、比較例における充電制御方法を実行する制御回路12の構成を示すブロック図である。図示のように、比較例では、相電流指令値算出部54が、演算した交流電流指令値iac をそのまま電流制御部56に出力する。電流制御部56は、検出された相電流i,i,iの和iacと交流電流指令値iac との偏差がゼロとなるように、フィードバック制御(PI制御)を実行することでU相電圧指令値v 、V相電圧指令値v 、及びW相電圧指令値v を全て演算する。そして、PWM制御部58は、このように演算された電圧指令値v ,v ,v 及び直流電圧VdcからPWM信号を生成し、当該PWM信号に基づいて各スイッチング素子Tr1~Tr6の同期制御を行う。
【0091】
図11は、比較例による制御結果を示すタイミングチャートである。図示のように、比較例では充電動作モードにおいて、一定以上の大きさを持つモータ3のトルク出力が発生している。これは、各スイッチング素子Tr1~Tr6の個体差(オン抵抗のばらつきなど)や各相のインダクタンスの違いに起因して三相間のアンバランス電流が発生したことによるものと考えられる。
【0092】
(実施例)
上記第1実施形態に係るモータ制御システム100のシステム構成において、充電動作モードを図5で説明した制御ロジックにより行った。
【0093】
図12は、実施例による制御結果を示すタイミングチャートである。図示のように、実施例では充電動作モードにおいて、発生するトルク出力の大きさが一定以下に抑えられている。これは、図5で説明した制御ロジックにより、三相間のアンバランス電流が解消されたことによるものと考えられる。
【0094】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、上記各実施形態で説明した構成は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。例えば、上記各実施形態では、外部電源5が交流電源である場合を前提とする充電制御を想定している。しかしながら、これに限られず、外部電源5が直流電源である場合にも、必要な変更を行うことで適用が可能である。このような変更としては、例えば、基準正弦波生成部52を設けず、充電電流指令値idc をそのまま各相電流指令値i ,i ,i の振幅として振り分けるなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0095】
1 バッテリ、2 インバータ、3 モータ、5 外部電源、11、駆動回路、12 制御回路、50 充電電流指令値算出部、52 基準正弦波生成部、54 相電流指令値算出部、56 電流制御部、58 PWM制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12