IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋計器株式会社の特許一覧

特開2023-123260膜式ガスメータおよびその磁気式ガス流量検出機構の交換方法
<>
  • 特開-膜式ガスメータおよびその磁気式ガス流量検出機構の交換方法 図1
  • 特開-膜式ガスメータおよびその磁気式ガス流量検出機構の交換方法 図2
  • 特開-膜式ガスメータおよびその磁気式ガス流量検出機構の交換方法 図3
  • 特開-膜式ガスメータおよびその磁気式ガス流量検出機構の交換方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123260
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】膜式ガスメータおよびその磁気式ガス流量検出機構の交換方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 3/22 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
G01F3/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027240
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000222657
【氏名又は名称】東洋計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】土田 泰秀
(72)【発明者】
【氏名】土田 泰正
(72)【発明者】
【氏名】岩原 伸宏
【テーマコード(参考)】
2F030
【Fターム(参考)】
2F030CA01
2F030CE16
2F030CH01
(57)【要約】
【課題】既存部品を使用してコストを押えつつ、容易に製造できる計測精度を向上した磁気式ガス流量検出機構を備えた膜式ガスメータを提供する。
【解決手段】膜式ガスメータ1の磁気式ガス流量検出機構40では、垂直回転軸11の回転が、ウォームギヤを介して大幅に減速されて、垂直回転軸に対して直交配置されている水平ウォーム軸20に伝達され、水平ウォーム軸20の回転は、ギヤボックスを介して増速されて、磁気式ガス流量検出機構40の磁石43に伝達される。磁石43は、必要な計測精度が得られる速度で磁石43が回転するように、ギヤボックスの増速比を設定しておけばよいので、磁石、磁気センサの数を増やして計測精度を上げる必要がない。メータ前後方向から磁石と磁気センサが対峙する精度の高い磁気式ガス流量検出機構40を備えた膜式ガスメータを廉価に製造できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流量の計量室を仕切っている計量膜の往復運動を、メータ上下方向に延びる垂直軸線を中心とする垂直回転軸の回転運動に変換するクランクアームと、
前記垂直回転軸の回転を、前記計量室の開閉弁を開閉する開閉運動に変換するリンクと、
前記垂直回転軸の回転を、メータ前後方向に延びる水平軸線を中心とする水平ウォーム軸の回転運動に変換するウォームギヤと、
前記水平ウォーム軸の回転に同期して回転する磁石および当該磁石の回転磁界を検出する磁気センサを備えた磁気式ガス流量検出機構と、
を備えた膜式ガスメータであって、
前記磁石は、前記水平ウォーム軸に対してメータ前方の側に位置し、
前記磁気センサは、前記磁石に対して前記メータ前方の側から対峙しており、
前記水平ウォーム軸の前記メータ前方の側には、メータ前後方向に延びる伝達歯車軸が同軸に配置され、
前記水平ウォーム軸のメータ前方の側の軸先端部には、前記伝達歯車軸のメータ後方の側の軸後端部が、前記伝達歯車軸が前記水平ウォーム軸と同一方向に同一速度で回転するように、機械的に係合しており、
前記伝達歯車軸と前記磁石との間には、前記伝達歯車軸の回転を増速して前記磁石に伝達する増速用歯車列が配置されており、
前記水平ウォーム軸の回転に同期して増速回転する前記磁石の回転磁界が前記磁気センサによって検出されることを特徴とする膜式ガスメータ。
【請求項2】
請求項1において、
前記水平ウォーム軸の前記軸先端部は、前記メータ前方に向かって、前記水平軸線から離れる方向に90°未満の角度で折れ曲がって延びており、
前記伝達歯車軸の前記軸後端部は、前記水平軸線から離れる方向に折れ曲がり、前記軸先端部に対して前記水平ウォーム軸の回転方向の側から係合している膜式ガスメータ。
【請求項3】
膜式ガスメータの磁気式ガス流量検出機構の交換方法であって、
前記膜式ガスメータは、
ガス流量の計量室を仕切っている計量膜の往復運動を、メータ上下方向に延びる垂直軸線を中心とする垂直回転軸の回転運動に変換するクランクアームと、
前記垂直回転軸の回転を前記計量室の開閉弁を開閉する開閉運動に変換するリンクと、
前記垂直回転軸の回転を、メータ前後方向に延びる水平軸線を中心とする水平ウォーム軸の回転運動に変換するウォームギヤと、
を備えており、
前記水平ウォーム軸の軸先端部は、メータ前方に向かって、前記水平軸線から離れる方向に90°未満の角度で折れ曲がって延びており、
交換前の前記磁気式ガス流量検出機構である第1磁気検出機構は、
前記クランクアームに取り付けた第1磁石と、
前記クランクアームの揺動に伴って移動する前記第1磁石の通過位置に、メータ上方の側から対峙する第1磁気センサと、
を有しており、
交換後の前記磁気式ガス流量検出機構である第2磁気検出機構は、
第2磁石と、
前記第2磁石の回転磁界を検出するための第2磁気センサと、
前記水平ウォーム軸の回転を入力させるための伝達歯車軸と、
前記伝達歯車軸の回転を増速して前記第2磁石に伝達するための増速用歯車列と、
を有しており、前記伝達歯車軸の一方の軸端部は、当該伝達歯車軸の中心軸線から離れる方向に折れ曲がって延びる折れ曲がり軸端部となっており、
前記第1磁気検出機構から前記第2磁気検出機構への交換は、
前記第1磁石および前記第1磁気センサを取り外し、
前記第1磁石の代わりに、前記第2磁石を、前記水平ウォーム軸に対してメータ前方の側に配置し、
前記第1磁気センサの代わりに、前記第2磁気センサを、前記第2磁石に対して前記メータ前方の側から対峙する位置に配置して、前記第2磁石の回転磁界を検出可能とし、
前記伝達歯車軸の前記折れ曲がり軸端部が前記水平ウォーム軸の前記軸先端部の回転軌跡内に位置するように、前記水平ウォーム軸のメータ前方の側に前記伝達歯車軸を同軸に配置して、前記水平ウォーム軸の回転を前記伝達歯車軸に伝達可能とし、
前記伝達歯車軸と前記第2磁石との間に前記増速用歯車列を配置して、前記伝達歯車軸の回転を増速して前記第2磁石に伝達できるようにすることを特徴とする膜式ガスメータの磁気式ガス流量検出機構の交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気式ガス流量検出機構を備えた膜式ガスメータに関する。更に詳しくは、本発明は、メータ上下方向から対峙する磁石および磁気センサを備えた既設の磁気式ガス流量検出機構を、メータ前後方向から対峙する磁石および磁気センサを備えた高精度の検出機構に簡単に交換できるように構成した膜式ガスメータおよび、その磁気式ガス流量検出機構の交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膜式ガスメータには、ガス流量の計量室を仕切っている計量膜の往復運動に連動させて計量室の開閉弁を開閉するためのクランク機構が搭載されている。図4に示すように、膜式ガスメータのクランク機構100は、メータ上下方向に延びる中心軸線101を中心として回転可能に支持されている垂直回転軸102と、垂直回転軸102の回転に伴って中心軸線101を中心として一定の半径で公転運動を行うクランク軸103と、計量膜の往復運動に連動して揺動する一対のクランクアーム(大肘金および小肘金)とを備えている。クランクアームの揺動が垂直回転軸102の回転運動に変換される。垂直回転軸102の回転は、不図示のリンク機構を介して、計量膜の往復運動に連動する開閉弁の開閉運動に変換される。
【0003】
この構成の膜式ガスメータにおけるガス流量の検出機構としては一般に磁気センサ方式が採用されている。このような磁気式ガス流量検出機構では、計量膜の往復運動に伴って揺動運動を行うクランクアーム104(小肘金)に設けた磁石装着部105に、ガス流量検出用の磁石106が装着されている。クランクアーム104の揺動に伴う磁石106の通過位置に対してメータ上方の側には、磁気センサとしてリードスイッチ(図示せず)が配置される。クランク機構100が1回転する間にリードスイッチによる検出領域を磁石106が1回通過し、1周期1パルスの検出信号が出力され、この検出信号に基づきガス流量が計測される。
【0004】
このような磁気式ガス流量検出機構では、検出信号のパルス出力間隔が広く、検出精度が十分でない場合がある。また、膜式ガスメータの設置場所などによっては、周辺機器等からの磁気の影響を受けないように、磁石および磁気センサを、メータ上部側の部位においてメータ上下方向から対向させる代わりに、メータ前面の側の部位においてメータ前後方向から対向配置させる必要が生じる場合がある。
【0005】
特許文献1には、既存の膜式ガスメータにおける磁気式ガス流量検出機構によるガス流量の計測精度を高める方法、並びに、磁石および磁気センサの取付け位置を変更する方法が提案されている。特許文献1では、既設のクランク機構を磁石を取り付けたプラスチック製の一体成形品からなるクランク機構に交換する方式が採用されている。交換後の磁気式ガス流量検出機構では、ガス流量検出用の磁石がクランク機構の垂直回転軸上に位置し、垂直回転軸の回転中心線回りに回転する磁石の回転磁界がMRセンサ等の磁気センサを用いて検出される。これにより、1回転8パルスの検出信号を得て計測精度を高めている。また、メータ上下方向から磁石と磁気センサが対向する構成の磁気式ガス流量検出機構を、磁石と磁気センサがメータ前後方向から対向する構成に変更する場合においても、クランク機構を含めた部品一式を交換している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6436642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、上記の特許文献1に開示の方法では、既設の膜式ガスメータのクランク機構の全体を、磁石を取り付けたプラスチック製の一体成型品であるクランク機構に交換することで、検出精度を高めている。すなわち、図4に示すクランク機構100を構成している垂直回転軸102、クランク軸103、磁石106が搭載されたクランクアーム104を含むクランク機構100の部品一式を、新たなクランク機構に交換している。このように部品一式を交換する必要があるので、交換コストが高く、交換作業も簡単ではない。
【0008】
また、メータ上下方向から対峙する磁石と磁気センサを、メータ前後方向から対峙する構成に変更した場合、クランク機構の垂直回転軸の回転が、ウォームギヤを介して、直交配置されている水平ウォーム軸に伝達され、この水平ウォーム軸の先端に同軸に取り付けた磁石の回転磁界がMRセンサによって検出される。この場合、直交する軸の間で回転を伝達するウォームギヤは減速比が大きく、計量膜に連動する垂直回転軸の回転が大幅に減速されて磁石に伝達される。磁石の回転数が低下するので、MRセンサによる検出パルス精度が低下する。検出精度を高めるためには、複数個のMRセンサ、磁石を配置する必要があり、コストが掛かる。
【0009】
本発明の目的は、既設の膜式ガスメータのクランク機構における必要最小限の数の部品を交換するだけで、メータ前後方向から磁石と磁気センサとが対峙する検出精度の高い磁気式ガス流量検出機構に変更できる膜式ガスメータ、および、膜式ガスメータにおける磁気式ガス流量検出機構の交換方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の膜式ガスメータは、
ガス計量室を仕切っている計量膜の往復運動を、メータ上下方向に延びる垂直軸線を中心とする垂直回転軸の回転運動に変換するクランクアームと、
垂直回転軸の回転を、計量室の開閉弁を開閉する開閉運動に変換するリンクと、
垂直回転軸の回転を、メータ前後方向に延びる水平軸線を中心とする水平ウォーム軸の回転運動に変換するウォームギヤと、
水平ウォーム軸の回転に同期して回転する磁石、および、当該磁石の回転磁界を検出する磁気センサを備えた磁気式ガス流量検出機構と、
を備えている。
【0011】
磁気式ガス流量検出機構の磁石は、水平ウォーム軸に対してメータ前方の側に位置しており、磁気センサは、磁石に対してメータ前方の側から対峙している。
水平ウォーム軸のメータ前方の側には、メータ前後方向に延びる伝達歯車軸が同軸に配置されている。水平ウォーム軸のメータ前方の側の軸先端部は、伝達歯車軸のメータ後方の側の軸後端部に対して、水平ウォーム軸の一方向回転に同期して伝達歯車軸が同一方向に同一速度で回転するように機械的に係合している。
伝達歯車軸と磁石との間には、伝達歯車軸の回転を増速して磁石に伝達する増速用歯車列が配置されている。
この構成の磁気式ガス流量検出機構では、水平ウォーム軸の回転に同期して増速回転する磁石の回転磁界が磁気センサによって検出される。
【0012】
本発明の膜式ガスメータの磁気式ガス流量検出機構では、垂直回転軸の回転が、ウォームギヤを介して大幅に減速されて、垂直回転軸に対して直交配置されている水平ウォーム軸に伝達される。水平ウォーム軸の回転は、増速用歯車列を介して増速されて磁石に伝達される。磁石が必要な計測精度が得られる速度で回転するように、増速用歯車列の増速比を設定しておけばよい。よって、磁石、磁気センサの数を増やして計測精度を上げる必要がない。メータ前後方向から磁石と磁気センサが対峙する精度の高い磁気式ガス流量検出機構を備えた膜式ガスメータを廉価に製造できる。
【0013】
また、既存の膜式ガスメータに組み込まれている磁石と磁気センサがメータ上下方向から対峙している磁気式ガス流量検出機構を、メータ前後方向から磁石と磁気センサとが対峙する計測精度の高い磁気式ガス流量検出機構に交換する場合には、既存のクランク機構から磁石のみを外し、それ以外の部分はそのまま利用できる。ウォームギヤによって大幅に減速された回転は、増速用歯車列を介して増速されて磁石に伝達される。必要な検出パルス精度が得られる速度で、磁石を回転させることができる。よって、既存の膜式ガスメータに組み込まれているメータ上下方向から磁石と磁気センサが対峙する構成の磁気式ガス流量検出機構を、簡単な作業により、コスト高を招くことなく、前後方向から磁石と磁気センサが対峙する計測精度の高い磁気式ガス流量検出機構に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(A)は本発明を適用した膜式ガスメータの概略正面図、(B)はその概略縦断面図である。
図2】膜式ガスメータの計量室の上側に配置されているクランク機構および磁気式ガス流量検出機構を示す説明図である。
図3】(A)はクランク機構および磁気式ガス流量検出機構の主要部分を取り出して示す正面図、(B)はその左側面図、(C)はその右側面図、(D)はその平面図、(E)はその底面図である。
図4】一般的な膜式ガスメータのクランク機構および磁気式ガス流量検出機構を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る膜式ガスメータを説明する。図1(A)は膜式ガスメータの正面図であり、図1(B)はA-A´線で切断した場合の概略縦断面図である。図2は膜式ガスメータの計量室の上側に配置されているクランク機構および磁気式ガス流量検出機構を示す説明図である。膜式ガスメータ1の基本構造は従来のものと同様であり、本発明に関係する部分のみを以下に説明する。
【0016】
膜式ガスメータ1のメータケース2は、上ケース3および下ケース4から構成されており、下ケース4の内部には、前後にガス流量の計量室5F、5Rが配置されている。前後の計量室5F、5Rの内部は、それぞれ、計量膜6F、6Rによって前後に仕切られている。メータ左端の前後には、前後の計量膜6F、6Rの往復運動によって回動する前後の翼軸7F、7Rがメータ上下方向に延びている。前後の翼軸7F、7Rの上端部は上ケース3内に延びている。上ケース3の内部には、前後の翼軸7F、7Rの回動を、メータ上下方向に延びる垂直回転軸11の回転運動に変換するクランク機構10、および、垂直回転軸11の回転運動を、前後の計量室5F、5Rの開閉弁8F、8Rの開閉運動に変換するリンク機構9が配置されている。
【0017】
クランク機構10では、翼軸7F、7Rの回転運動が、一対のクランクアーム12A、12B(大肘金)および一対のクランクアーム13A、13B(小肘金)を介して、垂直回転軸11の回転運動に変換される。垂直回転軸11の回転は、リンク機構9を構成する前後のリンク9F、9Rを介して、前後の計量室5F、5Rの開閉弁8F、8Rに連結されている。計量膜6F、6Rの往復運動に連動して開閉弁8F、8Rが交互に開閉する。
【0018】
図3(A)はクランク機構10および磁気式ガス流量検出機構40の主要部分を取り出して示す正面図、(B)はその左側面図、(C)はその右側面図、(D)はその平面図、(E)はその底面図である。
【0019】
図3も参照して説明すると、クランク機構10の垂直回転軸11は、その垂直中心軸線11a回りに回転可能な状態で支持されている。具体的には、前後の計量室5F、5Rの上側には、下ケース4の上端部に取り付けられたクランク台14(図1(B)参照)が配置されている。クランク台14には、回転可能な状態で垂直回転軸11がメータ上下方向に延びる垂直状態に支持されている。垂直回転軸11の上端には下クランク板15が水平に固定されている。下クランク板15における垂直回転軸11から所定の距離だけ水平方向に離れた部位には、第1クランク軸16が垂直に取付けられている。第1クランク軸16には、図2に示すように、前後のリンク9F、9Rの一端が、揺動可能に連結されている。リンク9F、9Rの他端は、前後の計量室5F、5Rの開閉弁8F、8Rの側に連結されている。
【0020】
第1クランク軸16の上端には、上クランク板17が水平に固定されている。上クランク板17における中心軸線11aから所定の距離だけ水平方向に離れた部位であって、第1クランク軸16に対して中心軸線11a回りに所定の角度離れた部位、例えば略90°離れた部位には、第2クランク軸18が垂直に固定されている。第2クランク軸18には、図1に示すように、クランクアーム13A、13B(小肘金)の一端が水平に連結されている。
【0021】
ここで、一方のクランクアーム13Bには、図2に示すように、その長さ方向の途中の位置に、メータ上方に開口するカップ形状の磁石装着部19が取付けられている。この磁石装着部19に取り付けられていたガス流量検出用の磁石は、当該磁石装着部19から取り外されている。
【0022】
次に、クランク機構10の垂直回転軸11の側方には、メータ前後方向に延びる水平ウォーム軸20が配置されている。垂直回転軸11の回転は、ウォームギヤ30を介して、水平ウォーム軸20に伝達される。ウォームギヤ30は円筒状のウォーム31と円筒状のウォームホイール32から構成され、ウォーム31は垂直回転軸11に同軸に形成あるいは取り付けられており、ウォームホイール32は水平ウォーム軸20に同軸に形成あるいは取り付けられている。水平ウォーム軸20におけるメータ前方の側の軸先端部21は、メータ前方に向かって先細りの円錐台形状をしていると共に、水平ウォーム軸20の軸線20aから離れる方向に90°未満の角度で折れ曲がって延びている。
【0023】
(磁気式ガス流量検出機構)
水平ウォーム軸20のメータ前方の側の部位には、水平ウォーム軸20の回転を利用してガス流量を検出するための磁気式ガス流量検出機構40が配置されている。本例の磁気式ガス流量検出機構40は、図1(B)に示すように、水平ウォーム軸20の回転が伝達される伝達歯車軸41と、伝達歯車軸41の回転を増速するギヤボックス42(増速用歯車列)と、ギヤボックス42から出力される増速回転が伝達される円盤形状の磁石43と、磁石43の回転磁界を検出する磁気センサ44とを備えている。また、磁気センサ44の駆動制御回路、信号処理回路等が実装された回路基板45を備えている。
【0024】
図2図3から分かるように、伝達歯車軸41は、水平ウォーム軸20に対して、メータ前方の側の位置に同軸に配置されている。伝達歯車軸41のメータ後方の側の軸後端部は、その中心軸線41aから離れる方向に折れ曲がって延びる折り曲げ軸部41bとなっている。本例の折り曲げ軸部41bは、ほぼ直角に折れ曲がって延びており、水平ウォーム軸20の軸先端部21に対して、その回転方向とは反対側から係合している。これにより、水平ウォーム軸20が回転すると、その軸先端部21によって折り曲げ軸部41bが同一方向に押され、伝達歯車軸41は水平ウォーム軸20と同一方向に同一速度で回転する。
【0025】
伝達歯車軸41はギヤボックス42の回転入力軸であり、伝達歯車軸41の回転は、ギヤボックス42の増速歯車列を介して増速される。本例のギヤボックス42の増速歯車列は、伝達歯車軸41に同軸に取り付けた入力側伝達歯車42a、この入力側伝達歯車42aに小歯車がかみ合っている伝達用複合歯車42b、この伝達用複合歯車42bの大歯車にかみ合っている出力側伝達歯車42cから構成されている。出力側伝達歯車42cは出力軸42dに同軸に取り付けられている。
【0026】
ギヤボックス42の出力軸42dには、円盤形状の磁石43が同軸に取り付けられている。磁石43は円周方向に2極着磁された磁石である。磁気センサ44は、上ケース3に形成あるいは取り付けた内部仕切り板3aを挟み、磁石43に対してメータ前方の側から対峙している。磁気センサ44は例えばMRセンサであり、磁石43の回転磁界を検出する。
【0027】
(膜式ガスメータの磁気式ガス流量検出機構の交換作業)
本例の膜式ガスメータ1は、既存の膜式ガスメータの磁気式ガス流量検出機構を上記構成の磁気式ガス流量検出機構40に交換することによって得られる。
【0028】
既存の膜式ガスメータは、例えば、本例の膜式ガスメータ1と同様に、ガス計量室を仕切っている計量膜の往復運動を、メータ上下方向に延びる垂直軸線を中心とする垂直回転軸の回転運動に変換するクランクアームと、垂直回転軸の回転を計量室の開閉弁を開閉する開閉運動に変換するリンクと、垂直回転軸の回転を、メータ前後方向に延びる水平ウォーム軸の回転運動に変換するウォームギヤとを備えており、水平ウォーム軸の軸先端部は、メータ前方に向かって折れ曲がって延びている。
【0029】
既存の膜式ガスメータの磁気式ガス流量検出機構として、メータ上方を向く磁石と、メータ上方の側から磁石に対峙する磁気センサとを備えた検出機構が組み込まれている場合がある。この場合には、図4を参照して説明したように、計量膜の往復運動に伴って揺動運動を行うクランクアーム104に取り付けた磁石装着部105に、ガス流量検出用の磁石106が取り付けられている。クランクアーム104の揺動に伴う磁石106の通過位置に対してメータ上方の側には、磁気センサ107としてリードスイッチが配置される。クランク機構100が1回転する間に磁気センサ107による検出領域を磁石106が1回通過し、1周期1パルスの検出信号が出力され、この検出信号に基づきガス流量が計測される。
【0030】
既存の膜式ガスメータの磁気式ガス流量検出機構を、本例の磁気式ガス流量検出機構40に交換する作業においては、まず、既存の膜式ガスメータから、メータ上下方向から対峙する磁石(図4の磁石106)と磁気センサ(図4の磁気センサ107)とを取り外す。この状態は、磁気式ガス流量検出機構40が組み込まれる前の膜式ガスメータ1と同様である。
【0031】
この後は、本例の磁気式ガス流量検出機構40の構成部品である伝達歯車軸41が取り付けられているギヤボックス42を、上ケース3に形成されている仕切り板3aに取付ける。伝達歯車軸41を、水平ウォーム軸20に対してメータ前方の側に位置決めして、その軸後端部の折れ曲がり軸部41bを水平ウォーム軸20の軸先端部21に対して回転方向の側から係合させて、水平ウォーム軸20の回転を伝達歯車軸41に伝達可能にする。
【0032】
また、磁気センサ44が搭載された回路基板45を、上ケース3の内部仕切り板3aにおけるメータ前側の面に取り付け、磁気センサ44を、磁石43に対してメータ前方の側から対峙するように位置決めして、磁石43の回転磁界を検出可能にする。
【0033】
このように、既存の膜式ガスメータにおけるクランク機構および水平ウォーム軸をそのまま利用して、メータ上方において上下方向から磁石と磁気センサとが対峙する構成の磁気式ガス流量検出機構を、メータ前方の側において磁石と磁気センサとが前後方向から対峙する構成の磁気式ガス流量検出機構に取り換えることができる。クランク機構の構成部品も併せて交換する場合等に比べて、検出機構の取り換え作業を簡単かつ廉価に行うことができる。
【0034】
また、取り換え後の検出機構では、ギヤボックス42を介して水平ウォーム軸20の回転が増速されて磁石43に伝達される。ウォームギヤ30によって大幅に減速される水平ウォーム軸20の回転を、増速して磁石43に伝達できる。要求される計測精度が得られる速度で磁石43を回転させることができる。計測精度を高めるために、磁石43、磁気センサ44の数を増やす必要がなく、計測精度の向上を、コストの増加を伴うことなく達成できる。
【符号の説明】
【0035】
1 膜式ガスメータ
2 メータケース
3 上ケース
3a 仕切り板
4 下ケース
5F、5R 計量室
6F、6R 計量膜
7F、7R 翼軸
8F、8R 開閉弁
9 リンク機構
9F、9R リンク
10 クランク機構
11 垂直回転軸
11a 垂直中心軸線
12A、12B クランクアーム
13A、13B クランクアーム
14 クランク台
15 下クランク板
16 第1クランク軸
17 上クランク板
18 第2クランク軸
19 磁石装着部
20 水平ウォーム軸
20 伝達歯車軸
20a 軸線
21 軸先端部
30 ウォームギヤ
31 ウォーム
32 ウォームホイール
40 磁気式ガス流量検出機構
41 伝達歯車軸
41a 中心軸線
41b 軸部
42 ギヤボックス
42a 入力側伝達歯車
42b 伝達用複合歯車
42c 出力側伝達歯車
42d 出力軸
43 磁石
44 磁気センサ
45 回路基板
100 クランク機構
101 中心軸線
102 垂直回転軸
103 クランク軸
104 クランクアーム
105 磁石装着部
106 磁石
107 磁気センサ
図1
図2
図3
図4