IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-充電システム 図1
  • 特開-充電システム 図2
  • 特開-充電システム 図3
  • 特開-充電システム 図4
  • 特開-充電システム 図5
  • 特開-充電システム 図6
  • 特開-充電システム 図7
  • 特開-充電システム 図8
  • 特開-充電システム 図9
  • 特開-充電システム 図10
  • 特開-充電システム 図11
  • 特開-充電システム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123261
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】充電システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20230829BHJP
   H02M 7/06 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M7/06 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027241
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細井 浩行
(72)【発明者】
【氏名】関 淳志
【テーマコード(参考)】
5H006
5H730
【Fターム(参考)】
5H006AA02
5H006CA02
5H006CA07
5H006CB01
5H006DA02
5H006DB01
5H006DC02
5H006DC05
5H730AA14
5H730AA18
5H730AS04
5H730AS05
5H730BB27
5H730BB37
5H730BB88
5H730CC04
5H730DD04
5H730EE04
5H730EE57
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FD61
5H730FG05
(57)【要約】
【課題】本開示は、電力損失を抑制できる充電システムを提供する。
【解決手段】本開示に係る充電システムは、ACDCコンバータとDCDCコンバータと制御回路とを有する。ACDCコンバータは、入力ノードと中間ノードとの間に接続される。ACDCコンバータは、入力ノードを介して電源に接続可能である。DCDCコンバータは、中間ノードと出力ノードとの間に接続される。DCDCコンバータは、出力ノードを介して電池に接続可能である。制御回路は、第1のパラメータと第2のパラメータと第3のパラメータとに応じて、ACDCコンバータの損失とDCDCコンバータの損失との和が小さくなるように中間ノードの電圧を制御する。第1のパラメータは、ACDCコンバータの入力電力に関連したパラメータである。第2のパラメータは、DCDCコンバータの出力電力に関連したパラメータである。第3のパラメータは、環境温度に関連したパラメータである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力ノードと中間ノードとの間に接続され、前記入力ノードを介して電源に接続可能であるACDCコンバータと、
前記中間ノードと出力ノードとの間に接続され、前記出力ノードを介して電池に接続可能であるDCDCコンバータと、
前記ACDCコンバータの入力電力に関連した第1のパラメータと前記DCDCコンバータの出力電力に関連した第2のパラメータと環境温度に関連した第3のパラメータとに応じて、前記ACDCコンバータの損失と前記DCDCコンバータの損失との和が小さくなるように前記中間ノードの電圧を制御する制御回路と、
を備えた充電システム。
【請求項2】
前記制御回路は、前記ACDCコンバータの損失と前記DCDCコンバータの損失との和が小さくなるように前記中間ノードの電圧の目標値を決定し、前記中間ノードの電圧が前記目標値になるように前記ACDCコンバータにおけるスイッチング素子の動作条件を制御する
請求項1に記載の充電システム。
【請求項3】
前記制御回路は、前記第1のパラメータと前記第2のパラメータと前記第3のパラメータと前記和と前記中間ノードの電圧とが前記中間ノードの複数の電圧値について対応付けられた対応情報を有し、
前記制御回路は、前記第1のパラメータ、前記第2のパラメータ、前記第3のパラメータを取得し、前記対応情報における前記取得された第1のパラメータと前記取得された第2のパラメータと前記取得された第3のパラメータとに対応する前記和が複数の存在する場合、前記複数の和のうち前記ACDCコンバータの損失と前記DCDCコンバータの損失との和が小さくなる和を目標値として決定し、
前記制御回路は、前記中間ノードの電圧が前記目標値になるように前記ACDCコンバータにおけるスイッチング素子を制御する
請求項1に記載の充電システム。
【請求項4】
入力ノードと中間ノードとの間に接続され、前記入力ノードを介して電源に接続可能であるACDCコンバータと、
前記中間ノードと出力ノードとの間に接続され、前記出力ノードを介して電池に接続可能であるDCDCコンバータと、
前記ACDCコンバータの入力電力に関連した第1のパラメータと前記DCDCコンバータの出力電力に関連した第2のパラメータとに応じて電力効率を求め、求められる電力効率が高くなる方向に前記中間ノードの電圧を制御する制御回路と、
を備えた充電システム。
【請求項5】
前記制御回路は、第1のタイミングで求められる電力効率と第2のタイミングで求められる電力効率とを比較し、比較結果に応じて電力効率が高くなる方向を判定し、判定された方向に前記中間ノードの電圧を制御する
請求項4に記載の充電システム。
【請求項6】
前記制御回路は、前記求められる電力効率が高くなる方向に前記ACDCコンバータにおけるスイッチング素子の動作条件を制御する
請求項4に記載の充電システム。
【請求項7】
前記制御回路は、山登り法により、前記求められる電力効率が高くなる方向に前記ACDCコンバータにおけるスイッチング素子の動作条件を制御する
請求項6に記載の充電システム。
【請求項8】
前記制御回路は、前記ACDCコンバータの入力電力に関連した第1のパラメータと前記DCDCコンバータの出力電力に関連した第2のパラメータとに応じて電力効率を求め、環境温度に関連した第3のパラメータを考慮しながら、求められる電力効率が高くなる方向に前記中間ノードの電圧を制御する
請求項4に記載の充電システム。
【請求項9】
前記制御回路は、前記求められる電力効率が高くなる方向に前記ACDCコンバータにおけるスイッチング素子の動作条件を制御する
請求項8に記載の充電システム。
【請求項10】
前記制御回路は、山登り法により、前記求められる電力効率が高くなる方向に前記ACDCコンバータにおけるスイッチング素子の動作条件を制御する
請求項9に記載の充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
交流電源及び電池の間に接続される充電システムは、交流電源から受ける交流電力を直流電力に変換し、その直流電力で電池を充電する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6024209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
充電システムでは、交流電力を直流電力に変換する際、及び/又は直流電力を他の直流電力に変換する際に、電力損失が発生することがある。
【0005】
本開示は、電力損失を抑制できる充電システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る充電システムは、ACDCコンバータとDCDCコンバータと制御回路とを有する。ACDCコンバータは、入力ノードと中間ノードとの間に接続される。ACDCコンバータは、入力ノードを介して電源に接続可能である。DCDCコンバータは、中間ノードと出力ノードとの間に接続される。DCDCコンバータは、出力ノードを介して電池に接続可能である。制御回路は、第1のパラメータと第2のパラメータと第3のパラメータとに応じて、ACDCコンバータの損失とDCDCコンバータの損失との和が小さくなるように中間ノードの電圧を制御する。第1のパラメータは、ACDCコンバータの入力電力に関連したパラメータである。第2のパラメータは、DCDCコンバータの出力電力に関連したパラメータである。第3のパラメータは、環境温度に関連したパラメータである。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る充電システムによれば、電力損失を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る充電システムの構成を示す回路図。
図2】実施形態におけるスイッチング素子のオン抵抗の温度依存性を示す図。
図3】実施形態における制御回路の機能構成を示す図。
図4】実施形態における対応情報のデータ構造を示す図。
図5】実施形態における整流素子の電圧電流特性の温度依存性を示す図。
図6】実施形態における絶縁トランスのコア損失の温度依存性を示す図。
図7】実施形態の第1の変形例に係る充電システムの構成を示す回路図。
図8】実施形態の第2の変形例に係る充電システムの構成を示す回路図。
図9】実施形態の第2の変形例における制御回路の機能構成を示す図。
図10】実施形態の第2の変形例における制御回路の動作を示す図。
図11】実施形態の第3の変形例における制御回路の機能構成を示す図。
図12】実施形態の第3の変形例における制御回路の動作を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る充電システムの実施形態について説明する。
【0010】
(実施形態)
実施形態に係る充電システムは、交流電源及び電池の間に接続され、交流電源からの交流電力を直流電力に変換しさらに他の直流電力に変換して電池に充電するが、それらの変換の際の電力損失を抑制するための工夫が施される。例えば、充電システム1は、図1に示すように構成され得る。図1は、充電システム1の構成を示す回路図である。
【0011】
充電システム1は、交流電源PSと電池BTとの間に接続される。充電システム1は、ACDCコンバータ10、DCDCコンバータ20、及び制御回路30を有する。DCDCコンバータ20は、LLCコンバータであってもよい。充電システム1は、制御回路30による制御のもと、交流電源PSからの交流電圧VinをACDCコンバータ10で昇圧しながら直流電圧Vsubに変換し、変換後の直流電圧VsubをDCDCコンバータ20で昇降圧しながら充電用の直流電圧Voutに変換し電池BTに充電する。例えば、充電システム1は電気自動車又はハイブリッド車に搭載される車載充電器であってもよく、交流電源PSは家庭又は充電スタンドにおける電力系統であってもよく、電池BTは車載電池であってもよい。交流電圧Vinのレベルは、充電システム1の仕向け地によって変わり得る。直流電圧Voutのレベルは、電池BTの充電状態によって変わり得る。
【0012】
充電システム1は、入力ノードNin1が交流電源PSの一端に接続され、入力ノードNin2が交流電源PSの他端に接続される。充電システム1は、出力ノードNout1が電池BTの正極に接続され、出力ノードNout2が電池BTの負極に接続される。
【0013】
充電システム1は、その電力損失が温度に依存して変化し得る。このため、制御回路30は、ACDCコンバータ10の入力電力とDCDCコンバータ20の出力電力と環境温度とに基づいて、ACDCコンバータ10の損失とDCDCコンバータ20の損失との和が現在の損失の和より小さくなるような制御を行う。これにより、充電システム1は、電力損失を抑制でき、交流電力から直流電力への変換と直流電力から他の直流電力への変換とを効率よく行うことができる。
【0014】
充電システム1は、ACDCコンバータ10、DCDCコンバータ20、及び制御回路30に加えて、ACフィルタ2、容量素子C1、DCフィルタ3、電圧センサVS1~VS3、電流センサCS1,CS2、温度センサTS1を有する。
【0015】
ACフィルタ2は、入力ノードNin1,Nin2とACDCコンバータ10との間に接続される。ACフィルタ2は、一端が入力ノードNin1とACDCコンバータ10の入力ノード10aとの間に接続され、他端が入力ノードNin2とACDCコンバータ10の入力ノード10bとの間に接続される。ACフィルタ2は、ACDCコンバータ10側からノイズ成分が流出する場合、ノイズ成分に対してフィルタ処理を施し減衰させる。これにより、ACフィルタ2は、ACDCコンバータ10側からノイズ成分が交流電源PSへ流出することを防止できる。
【0016】
ACDCコンバータ10は、入力ノードNin1,Nin2と中間ノードNmid1,Nmid2との間に接続される。ACDCコンバータ10は、入力ノードNin1,Nin2を介して交流電源PSに接続可能である。ACDCコンバータ10は、ACフィルタ2と中間ノードNmid1,Nmid2との間に接続される。ACDCコンバータ10は、交流電力の力率改善を行いつつ直流電力に変換するために、PFC(Power Factor Correction)回路が用いられる。
【0017】
ACDCコンバータ10は、例えばPFC回路として、複数の整流素子D1~D6、複数の誘導素子L1,L2、複数のスイッチング素子SW1,SW2を有する。整流素子D1~D4がブリッジ接続されてブリッジ回路が構成される。この構成では、ブリッジ回路にて交流電圧を全波整流した後、スイッチング素子SW1,SW2のスイッチング動作で誘導素子L1,L2へのエネルギーの蓄積と放出とが繰り返され、それに応じて、整流素子D5,D6を介した容量素子C1に対する電流の停止と注入とが繰り返される。これにより、ACDCコンバータ10は、交流電流の位相を交流電圧の位相に近づけながら直流出力電圧Vsubを生成でき、力率改善を図ることができる。
【0018】
整流素子D1は、入力ノード10aから出力ノード10cに向かう方向に整流する。整流素子D1は、例えばダイオードであり、アノードが入力ノード10aに接続され、カソードが誘導素子L1及び整流素子D5を介して出力ノード10cに接続される。
【0019】
整流素子D2は、入力ノード10bから出力ノード10cに向かう方向に整流する。整流素子D2は、例えばダイオードであり、アノードが入力ノード10bに接続され、カソードが誘導素子L1及び整流素子D5を介して出力ノード10cに接続される。
【0020】
整流素子D3は、入力ノード10aから出力ノード10dに向かう方向に整流する。整流素子D3は、例えばダイオードであり、アノードが入力ノード10aに接続され、カソードが出力ノード10dに接続される。
【0021】
整流素子D4は、入力ノード10bから出力ノード10dに向かう方向に整流する。整流素子D4は、例えばダイオードであり、アノードが入力ノード10bに接続され、カソードが出力ノード10dに接続される。
【0022】
整流素子D1,D2と出力ノード10cとの間には、誘導素子L1及び整流素子D5の直列接続と誘導素子L2及び整流素子D6の直列接続とが並列に接続される。誘導素子L1及び整流素子D5の間のノード10eと出力ノード10dとの間には、スイッチング素子SW1が接続される。誘導素子L2及び整流素子D6の間のノード10fと出力ノード10dとの間には、スイッチング素子SW2が接続される。
【0023】
誘導素子L1は、整流素子D1,D2とノード10eとの間に接続される。誘導素子L1は、例えばコイルであり、一端が整流素子D1,D2に接続され、他端がノード10eに接続される。誘導素子L1は、電磁エネルギーの蓄積・放出を行うことでACDCコンバータ10の力率改善に寄与し得る。
【0024】
整流素子D5は、ノード10eから出力ノード10cに向かう方向に整流する。整流素子D5は、例えばダイオードであり、アノードがノード10eに接続され、カソードが出力ノード10cに接続される。
【0025】
誘導素子L2は、整流素子D1,D2とノード10eとの間に接続される。誘導素子L2は、例えばコイルであり、一端が整流素子D1,D2に接続され、他端がノード10fに接続される。誘導素子L2は、電磁エネルギーの蓄積・放出を行うことでACDCコンバータ10の力率改善に寄与し得る。
【0026】
整流素子D6は、ノード10fから出力ノード10cに向かう方向に整流する。整流素子D6は、例えばダイオードであり、アノードがノード10fに接続され、カソードが出力ノード10cに接続される。
【0027】
スイッチング素子SW1は、ノード10eと整流素子D3,D4との間に接続される。スイッチング素子SW1は、制御回路30からの制御信号に応じて、ノード10eと整流素子D3,D4との間を電気的に接続・遮断させる。スイッチング素子SW1は、例えば、NチャネルMOSFET型のトランジスタであり、ソースが整流素子D3,D4に接続され、ドレインがノード10eに接続され、ゲートが制御回路30に接続される。
【0028】
スイッチング素子SW1は、制御回路30からアクティブレベルの制御信号をゲートで受けた際にオンしてノード10eと整流素子D3,D4とを電気的に接続する。スイッチング素子SW1は、制御回路30からノンアクティブレベルの制御信号をゲートで受けた際にオフしてノード10eと整流素子D3,D4とを電気的に遮断する。
【0029】
スイッチング素子SW2は、ノード10fと整流素子D3,D4との間に接続される。スイッチング素子SW2は、制御回路30からの制御信号に応じて、ノード10fと整流素子D3,D4との間を電気的に接続・遮断させる。スイッチング素子SW2は、例えば、NチャネルMOSFET型のトランジスタであり、ソースが整流素子D3,D4に接続され、ドレインがノード10fに接続され、ゲートが制御回路30に接続される。
【0030】
スイッチング素子SW2は、制御回路30からアクティブレベルの制御信号をゲートで受けた際にオンしてノード10fと整流素子D3,D4とを電気的に接続する。スイッチング素子SW2は、制御回路30からノンアクティブレベルの制御信号をゲートで受けた際にオフしてノード10fと整流素子D3,D4とを電気的に遮断する。
【0031】
容量素子C1は、ACDCコンバータ10とDCDCコンバータ20との間に接続される。容量素子C1は、例えばアルミ電解コンデンサやフィルムコンデンサ、セラミックコンデンサなどの平滑コンデンサであり、一端が中間ノードNmid1に接続され、他端が中間ノードNmid2に接続される。容量素子C1は、電荷の放電・充電を行うことで、ACDCコンバータ10の力率改善に寄与でき、直流電圧Vsubを生成できる。
【0032】
DCDCコンバータ20は、例えばLLCコンバータである。DCDCコンバータ20は、中間ノードNmid1,Nmid2と出力ノードNout1,Nout2との間に接続される。DCDCコンバータ20は、出力ノードNout1,Nout2を介して電池BTに接続可能である。DCDCコンバータ20は、中間ノードNmid1,Nmid2とDCフィルタ3との間に接続される。DCDCコンバータ20は、入力側(1次側)と出力側(2次側)との絶縁分離を行いつつ直流電力を充電用の直流電力に変換するために、絶縁トランスTRが用いられる。
【0033】
DCDCコンバータ20は、例えば、1次側回路21、絶縁トランスTR、2次側回路22を有する。1次側回路21は、複数のスイッチング素子SW11~SW14及び容量素子C11を含む。絶縁トランスTRは、1次巻線L11、2次巻線L12、コアCR1を含む。2次側回路22は、複数の整流素子D11~D14を含む。
【0034】
スイッチング素子SW11は、入力ノード20aとノード20eとの間に接続される。スイッチング素子SW11は、制御回路30からの制御信号に応じて、入力ノード20aとノード20eの間を電気的に接続・遮断させる。スイッチング素子SW11は、例えば、NチャネルMOSFET型のトランジスタであり、ソースがノード20eに接続され、ドレインが入力ノード20aに接続され、ゲートが制御回路30に接続される。
【0035】
スイッチング素子SW11は、制御回路30からアクティブレベルの制御信号をゲートで受けた際にオンして入力ノード20aとノード20eを電気的に接続する。スイッチング素子SW11は、制御回路30からノンアクティブレベルの制御信号をゲートで受けた際にオフして入力ノード20aとノード20eとを電気的に遮断する。
【0036】
スイッチング素子SW12は、入力ノード20aとノード20fとの間に接続される。スイッチング素子SW12は、制御回路30からの制御信号に応じて、入力ノード20aとノード20fの間を電気的に接続・遮断させる。スイッチング素子SW12は、例えば、NチャネルMOSFET型のトランジスタであり、ソースがノード20fに接続され、ドレインが入力ノード20aに接続され、ゲートが制御回路30に接続される。
【0037】
スイッチング素子SW12は、制御回路30からアクティブレベルの制御信号をゲートで受けた際にオンして入力ノード20aとノード20fを電気的に接続する。スイッチング素子SW12は、制御回路30からノンアクティブレベルの制御信号をゲートで受けた際にオフして入力ノード20aとノード20fとを電気的に遮断する。
【0038】
スイッチング素子SW13は、ノード20eと入力ノード20bとの間に接続される。スイッチング素子SW13は、制御回路30からの制御信号に応じて、ノード20eと入力ノード20bとの間を電気的に接続・遮断させる。スイッチング素子SW13は、例えば、NチャネルMOSFET型のトランジスタであり、ソースが入力ノード20bに接続され、ドレインがノード20eに接続され、ゲートが制御回路30に接続される。
【0039】
スイッチング素子SW13は、制御回路30からアクティブレベルの制御信号をゲートで受けた際にオンしてノード20eと入力ノード20bとを電気的に接続する。スイッチング素子SW13は、制御回路30からノンアクティブレベルの制御信号をゲートで受けた際にオフしてノード20eと入力ノード20bとを電気的に遮断する。
【0040】
スイッチング素子SW14は、ノード20fと入力ノード20bとの間に接続される。スイッチング素子SW14は、制御回路30からの制御信号に応じて、ノード20fと入力ノード20bとの間を電気的に接続・遮断させる。スイッチング素子SW14は、例えば、NチャネルMOSFET型のトランジスタであり、ソースが入力ノード20bに接続され、ドレインがノード20fに接続され、ゲートが制御回路30に接続される。
【0041】
スイッチング素子SW14は、制御回路30からアクティブレベルの制御信号をゲートで受けた際にオンしてノード20fと入力ノード20bとを電気的に接続する。スイッチング素子SW14は、制御回路30からノンアクティブレベルの制御信号をゲートで受けた際にオフしてノード20fと入力ノード20bとを電気的に遮断する。
【0042】
なお、各スイッチング素子SW1,SW2,SW11~SW14がNチャネルMOSFETであることを前提にトランジスタの電極をドレイン、ゲート、ソースと記載しているが、各スイッチング素子SW1,SW2,SW11~SW14がIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)の場合は、ドレインをコレクタ、ソースをエミッタと読み替えることができる。
【0043】
容量素子C11は、ノード20eと1次巻線L11との間に接続される。容量素子C11は、一端がノード20eに接続され、他端が1次巻線L11の一端に接続される。容量素子C11は、1次巻線L11とともに共振動作を行うことで、スイッチング素子SW11~SW14によるスイッチング損失を低減できる。
【0044】
絶縁トランスTRにおいて、1次巻線L11は、2次巻線L12から電気的に絶縁され、コアCR1を介して2次巻線L12に磁気的に結合される。絶縁トランスTRは、フライバック型で構成され得る。図1に●で示すように、コアCR1内の磁力線が通る経路に対して、1次巻線L11と2次巻線L12とは、互いに逆方向に巻き回されている。絶縁トランスTRは、1次巻線L11は、2次巻線L12が互いに磁気的に結合されていれば、コアCR1が省略された構成であってもよい。
【0045】
1次巻線L11は、一端が容量素子C11を介してノード20eに接続され、他端がノード20fに接続される。2次巻線L12は、一端がノード20gに接続され、他端がノード20hに接続される。
【0046】
整流素子D11は、ノード20gから出力ノード20cに向かう方向に整流する。整流素子D11は、例えばダイオードであり、アノードがノード20gに接続され、カソードが出力ノード20cに接続される。
【0047】
整流素子D12は、ノード20fから出力ノード20cに向かう方向に整流する。整流素子D12は、例えばダイオードであり、アノードがノード20fに接続され、カソードが出力ノード20cに接続される。
【0048】
整流素子D13は、出力ノード20dからノード20gに向かう方向に整流する。整流素子D13は、例えばダイオードであり、アノードが出力ノード10dに接続され、カソードがノード20gに接続される。
【0049】
整流素子D14は、出力ノード20dからノード20hに向かう方向に整流する。整流素子D14は、例えばダイオードであり、アノードが出力ノード20dに接続され、カソードがノード20hに接続される。
【0050】
DCフィルタ3は、DCDCコンバータ20と出力ノードNout1,Nout2との間に接続される。DCフィルタ3は、一端がDCDCコンバータ20と出力ノードNout1との間に接続され、他端がDCDCコンバータ20と出力ノードNout2との間に接続される。DCフィルタ32は、DCフィルタ3から供給された直流電力に対してフィルタ処理を施して電池BTへ供給する。これにより、DCフィルタ3は、直流電力に含まれるノイズを低減して電池BTへ供給することができる。
【0051】
電圧センサVS1は、充電システム1の入力電圧Vinを検知する。電圧センサVS1は、入力ノード10a及び入力ノード10bの間の電圧を入力電圧Vinとして検知する。電圧センサVS1は、検知された入力電圧Vinを制御回路30へ供給する。
【0052】
電圧センサVS2は、充電システム1の出力電圧Voutを検知する。電圧センサVS2は、出力ノード20c及び出力ノード20dの間の電圧を出力電圧Voutとして検知する。電圧センサVS2は、検知された出力電圧Voutを制御回路30へ供給する。
【0053】
電圧センサVS3は、充電システム1の中間電圧Vsubを検知する。電圧センサVS3は、中間ノードNmid1及び中間ノードNmid2の間の電圧を中間電圧Vsubとして検知する。電圧センサVS3は、検知された中間電圧Vsubを制御回路30へ供給する。
【0054】
電流センサCS1は、充電システム1の入力電流Iinを検知する。電流センサCS1は、入力ノードNin1及び入力ノード10aの間に流れる電流を入力電流Iinとして検知する。電流センサCS1は、検知された入力電流Iinを制御回路30へ供給する。
【0055】
電流センサCS2は、充電システム1の出力電流Ioutを検知する。電流センサCS2は、出力ノード20c及び出力ノードNout1の間に流れる電流を出力電流Ioutとして検知する。電流センサCS2は、検知された出力電流Ioutを制御回路30へ供給する。
【0056】
ここで、各スイッチング素子SW11~SW14は、電力損失に関連した特性が温度依存性を有する。例えば、各スイッチング素子SW11~SW14のオン抵抗は、図2に示すように環境温度に応じて変化し得る。図2は、スイッチング素子SW11~SW14のオン抵抗の温度依存性を示す図である。図2では、各スイッチング素子SW11~SW14のオン抵抗の温度依存性として、環境温度が高くなるほどオン抵抗が高くなる傾向が例示されている。
【0057】
そのため、温度センサTS1は、充電システム1の環境温度を検知する。温度センサTS1は、充電システム1の環境温度として、スイッチング素子SW11~SW14の付近の温度を検知してもよい。例えば、温度センサTS1は、スイッチング素子SW11~SW14が実装される基板に搭載されてもよいし、スイッチング素子SW11~SW14がパッケージで封止される場合にそのパッケージの表面に貼付されてもよい。
【0058】
温度センサTS1は、1つでもよいし、複数でもよい。例えば、1つの温度センサTS1は、スイッチング素子SW11~SW14が実装される基板に搭載されてもよいし、スイッチング素子SW11~SW14のいずれかのパッケージの表面に貼付されてもよい。複数の温度センサTS1は、スイッチング素子SW11~SW14が実装される基板の複数個所に分散配置されてもよいし、複数のスイッチング素子SW11~SW14のそれぞれの表面に貼付されてもよい。
【0059】
制御回路30は、ACDCコンバータ10の入力電力に関連した第1のパラメータとDCDCコンバータ20の出力電力に関連した第2のパラメータとに加えて、環境温度に関連した第3のパラメータを取得する。充電システム1は、第1のパラメータと第2のパラメータと第3のパラメータとに応じて、ACDCコンバータ10の損失とDCDCコンバータ20の損失との和が現在の損失の和より小さくなるように中間ノードNmid1,Nmid2の電圧Vsubを制御する。すなわち、制御回路30は、中間ノードNmid1,Nmid2の電圧Vsubの目標値を求める。充電システム1は、中間ノードNmid1,Nmid2の電圧Vsubがその求められた目標値になるようにACDCコンバータ10におけるスイッチング素子を制御する。これにより、充電システム1は、電力損失を抑制でき、交流電力から直流電力への変換と直流電力から他の直流電力への変換とを効率よく行うことができる。
【0060】
例えば、制御回路30は、図3に示すように構成され得る。図3は、制御回路30の機能構成を示す図である。図3に示す各機能構成は、ソフトウェア的に実装されてもよいし、ハードウェア的に実装されてもよいし、一部がソフトウェア的に実装され残りがハードウェア的に実装されてもよい。
【0061】
制御回路30は、第1のパラメータ取得部31、第2のパラメータ取得部32、第3のパラメータ取得部33、目標電圧決定部35、第1の制御部36、及び第2の制御部37を有する。
【0062】
第1のパラメータ取得部31は、第1のパラメータを取得する。第1のパラメータは、ACDCコンバータ10の入力電力に関連したパラメータである。第1のパラメータは、ACDCコンバータ10の入力電圧Vinでもよいし、ACDCコンバータ10の入力電流Iinでもよいし、ACDCコンバータ10の入力電力(=Vinの実効値×Iinの実効値)でもよい。
【0063】
第2のパラメータ取得部32は、第2のパラメータを取得する。第2のパラメータは、DCDCコンバータ20の出力電力に関連したパラメータである。第2のパラメータは、DCDCコンバータ20の出力電圧Voutでもよいし、DCDCコンバータ20の出力電流Ioutでもよいし、DCDCコンバータ20の出力電力(=Voutの実効値×Ioutの実効値)でもよい。
【0064】
第3のパラメータ取得部33は、第3のパラメータを取得する。第3のパラメータは、環境温度に関連したパラメータである。第3のパラメータは、スイッチング素子SW11~SW14付近の温度でもよい。
【0065】
記憶部34は、対応情報341を記憶する。対応情報341は、第1のパラメータと第2のパラメータと第3のパラメータと損失の和と中間ノードの電圧Vsubとが中間ノードの複数の電圧値について対応付けられている。対応情報341は、テーブル形式で実装されてもよいし、数式の形式で実装されてもよい。
【0066】
例えば、記憶部34は、図4に示すような対応情報341を有してもよい。図4は、対応情報341のデータ構造を示す図である。図4では、第1のパラメータがACDCコンバータ10の入力電圧Vinであり、第2のパラメータがDCDCコンバータ20の出力電圧Voutであり、第3のパラメータがスイッチング素子SW11~SW14付近の温度Tである場合が例示される。図4では、対応情報341が階層構造を有する情報として例示される。すなわち、同じ温度Tの情報が行方向に並ぶとともに異なる複数の温度Tについて列方向に配列される。同じ電圧Vsubの電圧値の情報が列方向に並ぶとともに異なる複数の電圧値について行方向に配列される。温度T及び電圧Vsubの組み合わせで特定される四角で囲われた領域では、同じ入力電圧Vinに対応する電力損失の情報が行方向に並ぶとともに異なる複数の入力電圧Vinについて列方向に配列される。同じ出力電圧Voutに対応する電力損失の情報が列方向に並ぶとともに異なる複数の出力電圧Voutについて行方向に配列される。電力損失の情報は、予め、各条件について、ACDCコンバータ10の電力損失とDCDCコンバータ20の電力損失との和が実験的に求められ記録されたものである。
【0067】
なお、対応情報341のデータ構造は図4に示す構造に限定されず、第1のパラメータと第2のパラメータと第3のパラメータと損失の和と中間ノードの電圧Vsubとが中間ノードの複数の電圧値について対応付けられた構造であれば他のデータ構造であってもよい。
【0068】
目標電圧決定部35は、第1のパラメータを第1のパラメータ取得部31から受け、第2のパラメータを第2のパラメータ取得部32から受け、第3のパラメータを第3のパラメータ取得部33から受ける。目標電圧決定部35は、第1のパラメータと第2のパラメータと第3のパラメータとに応じて、ACDCコンバータ10の損失とDCDCコンバータ20の損失との和が現在の損失の和より小さく(例えば、最小に)なるように中間ノードNmid1,Nmid2の電圧Vsubの目標値を決定する。
【0069】
目標電圧決定部35は、記憶部34にアクセスし、対応情報341を参照することで、現在におけるACDCコンバータ10の損失とDCDCコンバータ20の損失との和(現在の損失の和)を求める。目標電圧決定部35は、ACDCコンバータ10の損失とDCDCコンバータ20の損失との和が現在の損失の和より小さく(例えば、最小に)なるように中間ノードNmid1,Nmid2の電圧Vsubの目標値を決定してもよい。目標電圧決定部35は、対応情報341における取得された第1のパラメータと取得された第2のパラメータと取得された第3のパラメータとに対応する損失の和が複数存在する場合、複数の損失の和のうち現在の損失の和より小さい(例えば、最小の)損失の和を特定する。目標電圧決定部35は、特定された損失の和に対応する中間ノードの電圧値を電圧Vsubの目標値として決定する。
【0070】
例えば、入力電圧Vin=200V、出力電圧Vout=300V、温度T=80℃である場合、図4に示す対応情報341を参照することにより、それぞれ、電圧Vsub=400V,410V,420Vに対応する損失の和PL1,PL2,PL3が特定されるとする。このとき、目標電圧決定部35は、損失の和PL1,PL2,PL3の大小を比較する。目標電圧決定部35は、その比較結果が
PL1<PL2<PL3
であり、現在の電圧Vsub=410Vであれば、現在の損失の和がPL2である。この場合、PL2より小さくなるのがPL1であるので、電圧Vsubの目標値を、損失の和PL1に対応する400Vに決定する。あるいは、現在の電圧Vsub=420Vであれば、現在の損失の和がPL3である。この場合、PL3より小さくなるのがPL1,PL2であるので、電圧Vsubの目標値を、損失の和PL1に対応する400Vに決定してもよいし、損失の和PL2に対応する410Vに決定してもよい。
【0071】
図3に戻り、目標電圧決定部35は、電圧Vsubの目標値を第1の制御部36と第2の制御部37とへそれぞれ供給する。
【0072】
第1の制御部36は、電圧Vsubの目標値(例えば、400V)を目標電圧決定部35から受ける。第1の制御部36は、電圧Vsubの目標値に応じてACDCコンバータ10のスイッチング素子SW1,SW2を制御する。第1の制御部36は、電圧Vsubの目標値に応じた周波数及び/又はパルス幅で変調することなどにより調整されたゲート信号でスイッチング素子SW1,SW2をスイッチング動作させる。これにより、制御回路30は、ACDCコンバータ10が交流電圧Vinを受けて目標値に応じたレベルの直流電圧Vsubを出力するように制御できる。
【0073】
第2の制御部37は、電圧Vsubの目標値(例えば、400V)を目標電圧決定部35から受ける。第2の制御部37は、電圧Vsubの目標値に応じてDCDCコンバータ20のスイッチング素子SW11~SW14を制御する。第2の制御部37は、電圧Vsubの目標値に応じた周波数及び/又はパルス幅で変調することなどにより調整されたゲート信号でスイッチング素子SW11~SW14をスイッチング動作させる。これにより、制御回路30は、DCDCコンバータ20が目標値に応じたレベルの直流電圧Vsubを受けて充電用の直流電圧Voutを出力するように制御できる。
【0074】
以上のように、充電システム1において、制御回路30は、入力電力Vinに関連した第1のパラメータと出力電力Voutに関連した第2のパラメータと環境温度Tに関連した第3のパラメータとに応じて、ACDCコンバータ10の損失とDCDCコンバータ20の損失との和が現在の損失の和より小さく(例えば、最小に)なるように中間ノードの電圧Vsubを制御する。すなわち、制御回路30は、中間ノードの電圧Vsubの目標値を決定する。制御回路30は、中間ノードの電圧Vsubがその目標値になるようにACDCコンバータ10におけるスイッチング素子SW1,SW2を制御する。これにより、充電システム1は、電力損失を抑制でき、交流電力から直流電力への変換と直流電力から他の直流電力への変換とを効率よく行うことができる。したがって、充電システム1における放熱部材を減らすことができ、充電システム1を低コスト化・小型化できる。
【0075】
なお、基本的にパラメータは多い方が高精度になることを考慮し、制御回路30は、第1のパラメータとして、ACDCコンバータ10の入力電力、入力電圧、入力電流の内の2以上を取得してもよい。制御回路30は、第2のパラメータとして、DCDCコンバータ20の出力電力、出力電圧、出力電流の内の2以上を取得してもよい。これに応じて、対応情報341をさらに階層化してもよい。あるいは、パラメータが増大するとテーブルが大きくなり制御回路30の容量が不足する場合、これらデータを用いた近似式を制御回路30に与え、観測値を使った演算で電圧Vbusを導いても良い。
【0076】
また、温度センサTS1は、充電システム1の環境温度として、スイッチング素子SW11~SW14の付近の温度に代えて、又は、スイッチング素子SW11~SW14の付近の温度に加えて、スイッチング素子SW1,SW2付近の温度を検知してもよい。
【0077】
あるいは、充電システム1iの環境温度として、電力損失に関連した特性が温度依存性を有する他の素子付近の温度がさらに考慮されてもよい。
【0078】
例えば、整流素子D5,D6の電圧電流特性は、図5に示すように環境温度に応じて変化し得る。図5は、整流素子D1~D4の電圧電流特性の温度依存性を示す図である。図5では、温度がT1→T2→T3→T4と高くなるにしたがって、整流素子D1~D4の順方向電圧・順方向電流の特性が図5中の左上にシフトしていく傾向が例示されている。すなわち、温度がT1→T2→T3→T4と高くなるにしたがって、整流素子D1~D4の「オン抵抗」=「順方向電圧」/「順方向電流」が低くなっていき且つ順方向電圧が小さくなっていく傾向が例示されている。
【0079】
絶縁トランスTRのコアCR1の損失は、図6に示すように環境温度に応じて変化し得る。図6は、絶縁トランスTRのコア損失の温度依存性を示す図である。絶縁トランスTRは、1次巻線L11で電気エネルギーを磁気エネルギーに変換し、磁気エネルギーをコアCR1経由で2次巻線L12へ伝達し、2次巻線L12で磁気エネルギーから電気エネルギーに変換する。磁気エネルギーがコアCR1内を伝達される際にエネルギーの損失が発生する。図6では、複数の異なるコア材について温度依存性が示されている。ピッチの大きい点線で示されるコア材では、温度が高くなるにしたがってコア損失が小さくなっていく傾向が例示されている。ピッチの小さい点線、一点鎖線、二点鎖線で示されるコア材では、それぞれ、温度が高くなるにしたがって、コア損失がいったん小さくなっていくが途中から大きくなっていく傾向が例示されている。複数の異なるコア材の間で、コア損失が極小となる温度が互に異なっている。なお、各コア材の損失は、1次巻線L11に印加される電圧を下げることで抑えることができる。
【0080】
実施形態の第1の変形例として、図2図5図6に示す温度依存性を考慮し、図7に示すように、充電システム1iは、温度センサTS2,TS3をさらに有してもよい。図7は、実施形態の第1の変形例に係る充電システム1iの構成を示す回路図である。温度センサTS2は、充電システム1iの環境温度として、整流素子D5,D6付近の温度を検知してもよい。温度センサTS3は、充電システム1iの環境温度として、絶縁トランスTRのコアCR1付近の温度を検知してもよい。
【0081】
このとき、制御回路30iにおける第3のパラメータ取得部33は、各温度センサTS1,TS2,TS3で検知された温度を重みづけ平均して環境温度を求めてもよい。例えば、スイッチング素子SW11~SW14付近の温度の電力損失への影響度をW1とし、整流素子D1~D4付近の温度の電力損失への影響度をW2とし、絶縁トランスTRのコアCR1付近の温度の電力損失への影響度をW3とする。温度センサTS1,TS2,TS3で検知された温度を、それぞれ、TS1,TS2,TS3とすると、第3のパラメータ取得部33は、次の数式1で環境温度Tを第3のパラメータとして求めることができる。
T=(W1×TS1+W2×TS2+W3×TS3)/(W1+W2+W3)・・・数式1
【0082】
このように、制御回路30iは、複数の素子付近の温度を考慮して、ACDCコンバータ10の損失とDCDCコンバータ20の損失との和が現在の損失の和より小さく(例えば、最小に)なるように中間ノードNmid1,Nmid2の電圧Vsubを制御することができる。これにより、ACDCコンバータ10の損失とDCDCコンバータ20の損失との和が現在の損失の和より小さく(例えば、最小に)なるような電圧Vsubの制御をさらに高精度に実行できる。
【0083】
なお、温度センサTS1は、充電システム1iの環境温度として、スイッチング素子SW11~SW14の付近の温度に代えて、又は、スイッチング素子SW11~SW14の付近の温度に加えて、スイッチング素子SW1,SW2付近の温度を検知してもよい。温度センサTS2は、充電システム1iの環境温度として、整流素子D5,D6付近の温度に代えて、又は、整流素子D5,D6付近の温度に加えて、整流素子D1~D4,D11~D14付近の温度を検知してもよい。
【0084】
あるいは、実施形態の第2の変形例として、充電システム1jは、第1のパラメータと第2のパラメータとを監視してシステム効率を演算し、動的に、効率が最大となるよう電圧Vbusを制御してもよい。すなわち、回路状態により、AC/DCコンバータ10の動作(主にデューティ比制御)を調整して電圧Vbusを制御してもよい。
【0085】
例えば、ACDCコンバータ10の後段のDC/DCコンバータ20は、Vbusと出力の蓄電池BTの電圧、充電したい出力電流(負荷条件)により、一意に動作条件(周波数又はデューティ比)が決まる。このため、山登り法のように、直前の効率と次のタイミングの効率とを比較し、その大小関係により最大効率に近づいている状態か否かを判定し、効率が高くなる方向へスイッチング素子SW1,SW2の動作条件(例えば、周波数又はデューティ比)を調整してもよい。
【0086】
充電システム1jは、図8に示すように、充電システム1(図1参照)に対して温度センサTS1が省略されている。図8は、実施形態の第2の変形例に係る充電システム1jの構成を示す回路図である。制御回路30jは、第1のパラメータと第2のパラメータとに応じて電力効率を求め、求められる電力効率が高くなる方向にACDCコンバータ10の動作を制御する。制御回路30jは、第1のタイミングで求められる電力効率と第2のタイミングで求められる電力効率とを比較する。制御回路30jは、比較結果に応じて電力効率が高くなる方向を判定する。制御回路30jは、判定された方向に電圧Vbusを制御する。すなわち、制御回路30jは、求められる電力効率が高くなる方向にACDCコンバータ10におけるスイッチング素子SW1,SW2の動作条件(例えば、周波数又はパルス幅)を制御する。
【0087】
制御回路30jは、図9に示すように構成され得る。図9は、実施形態の第2の変形例における制御回路30jの機能構成を示す図である。制御回路30jは、記憶部34及び目標電圧決定部35(図3参照)に代えて、システム効率演算部41j、記憶部42j、判定部43jを有し、第3のパラメータ取得部33が省略される。
【0088】
第1のパラメータ取得部31は、電流センサCS1から入力電流Iinを取得し、電圧センサVS1から入力電圧Vinを取得する。第1のパラメータ取得部31は、第1のパラメータとして、入力電力PWinを次の数式2により求めることができる。
PWin=Iin×Vin・・・数式2
【0089】
第2のパラメータ取得部32は、電流センサCS2から出力電流Ioutを取得し、電圧センサVS2から出力電圧Voutを取得する。第2のパラメータ取得部32は、第2のパラメータとして、出力電力PWoutを次の数式3により求めることができる。
PWout=Iout×Vout・・・数式3
【0090】
数式2、数式3で第1のパラメータ、第2のパラメータがそれぞれ求められると、システム効率演算部41jは、充電システム1jの電力効率Rを次の数式4により求めることができる。
R=(PWout)/(PWin)・・・数式4
【0091】
記憶部42jは、求められた電力効率Rをそのタイミングと関連付けて格納する。判定部43jは、第1のタイミングで求められる電力効率と第2のタイミングで求められる電力効率とを比較する。判定部43jは、比較結果に応じて、スイッチング素子SW1,SW2の動作条件(例えば、周波数又はパルス幅)とスイッチング素子SW11~SW14の動作条件(例えば、周波数又はパルス幅)とのそれぞれについて、電力効率が高くなる方向を判定する。判定部43jは、判定結果を第1の制御部36と第2の制御部37とへそれぞれ供給する。これに応じて、第1の制御部36は、電力効率が高くなる方向へ動作条件を調整して、スイッチング素子SW1,SW2をスイッチング動作させる。第2の制御部37は、電力効率が高くなる方向へ動作条件を調整して、スイッチング素子SW11~SW14をスイッチング動作させる。
【0092】
例えば、制御回路30jは、図10に示すように、山登り法で、電力効率Rの最大点を探索してもよい。図10は、実施形態の第2の変形例における制御回路30jの動作を示す図である。
【0093】
タイミングt1において、スイッチング素子SW1,SW2,SW11~SW14が動作条件C1で動作している状態でシステム効率演算部41jにより電力効率R1が求められ、これらの組み合わせP1(C1,R1)が記憶部42jに格納される。電力効率Rの最大点を探索するために、第1の制御部36及び第2の制御部37は、スイッチング素子SW1,SW2,SW11~SW14の動作条件(例えば、周波数Fsw)をC1からC2に増加する。
【0094】
タイミングt2において、スイッチング素子が動作条件C2で動作している状態でシステム効率演算部41jにより電力効率R2が求められ、これらの組み合わせP2(C2,R2)が記憶部42jに格納される。判定部43jは、電力効率R1,R2を比較する。比較結果が
R1<R2
であれば、判定部43jは、動作条件の増加方向の変更C1→C2が電力効率の高くなる方向の変更であると判定する。これに応じて、第1の制御部36及び第2の制御部37は、スイッチング素子SW1,SW2,SW11~SW14の動作条件をC2からC3に増加する。
【0095】
タイミングt3において、スイッチング素子が動作条件C3で動作している状態でシステム効率演算部41jにより電力効率R3が求められ、これらの組み合わせP3(C3,R3)が記憶部42jに格納される。判定部43jは、電力効率R2,R3を比較する。比較結果が
R2<R3
であれば、判定部43jは、動作条件の増加方向の変更C2→C3が電力効率の高くなる方向の変更であると判定する。これに応じて、第1の制御部36及び第2の制御部37は、スイッチング素子SW1,SW2,SW11~SW14の動作条件をC3からC4に増加する。
【0096】
タイミングt4において、スイッチング素子が動作条件C4で動作している状態でシステム効率演算部41jにより電力効率R4が求められ、これらの組み合わせP4(C4,R4)が記憶部42jに格納される。判定部43jは、電力効率R3,R4を比較する。比較結果が
R3>R4
であれば、判定部43jは、動作条件の増加方向の変更C3→C4が電力効率の低くなる方向の変更であると判定する。これに応じて、第1の制御部36及び第2の制御部37は、スイッチング素子SW1,SW2,SW11~SW14の動作条件をC4からC3に戻す。これに応じて、第1の制御部36及び第2の制御部37は、スイッチング素子SW1,SW2,SW11~SW14の動作条件をC4からC3に戻す。これにより、制御回路30jは、動作条件C3を最大電力効率付近の動作条件であるとして、探索を終了する。
【0097】
このように、制御回路30jは、第1のパラメータ及び第2のパラメータに応じて逐次的に電力効率を求め、電力効率が大きく(例えば、最大に)なるように探索しながら電圧Vbusの制御を行う。これにより、動的な変化に対応でき、リアルタイム的に電力効率を向上できる。
【0098】
なお、制御回路30jは、回路動作中も逐次(例えば、所定周期ごとに)電力効率を計算し、探索を行ってもよい。
【0099】
また、電力効率を大きく(例えば、最大に)する範囲は、充電システム1j全体に限定されない。例えば、制御回路30jは、DCDCコンバータ20の効率が大きく(例えば、最大に)なるよう、山登り法等による探索を行ってもよい。
【0100】
あるいは、実施形態の第3の変形例として、充電システム1kは、第1のパラメータ及び第2のパラメータを監視してシステム効率を演算し、第3のパラメータを考慮しながら、動的に、効率が大きく(例えば、最大と)なるよう電圧Vbusを制御してもよい。この場合、制御回路30kは、図11に示すように構成され得る。図11は、実施形態の第3の変形例における制御回路30kの機能構成を示す図である。制御回路30kは、記憶部34及び目標電圧決定部35(図3参照)に代えて、システム効率演算部41j、記憶部42j、判定部43jを有する。
【0101】
システム効率演算部41jの動作は、制御回路30kのシステム効率演算部41jの動作と同様である。記憶部42jは、電力効率R及び環境温度Tをそのタイミングと関連付けて格納する。判定部43jは、第1のタイミングで求められる電力効率と第2のタイミングで求められる電力効率とを比較する。判定部43jは、比較結果と第3のパラメータとに応じて、スイッチング素子SW1,SW2の動作条件(例えば、周波数又はパルス幅)とスイッチング素子SW11~SW14の動作条件(例えば、周波数又はパルス幅)とのそれぞれについて、電力効率が高くなる方向を判定する。判定部43jは、判定結果を第1の制御部36と第2の制御部37とへそれぞれ供給する。これに応じて、第1の制御部36は、電力効率が高くなる方向へ動作条件を調整して、スイッチング素子SW1,SW2をスイッチング動作させる。第2の制御部37は、電力効率が高くなる方向へ動作条件を調整して、スイッチング素子SW11~SW14をスイッチング動作させる。
【0102】
例えば、制御回路30kは、図12に示すように、山登り法で、電力効率Rの最大点を探索してもよい。図12は、実施形態の第3の変形例における制御回路30kの動作を示す図である。
【0103】
タイミングt11において、環境温度T11のもと、スイッチング素子SW1,SW2,SW11~SW14が動作条件C11で動作している状態でシステム効率演算部41jにより電力効率R11が求められ、これらの組み合わせP11(T11,C11,R11)が記憶部42jに格納される。電力効率Rの最大点を探索するために、第1の制御部36及び第2の制御部37は、スイッチング素子SW1,SW2,SW11~SW14の動作条件(例えば、周波数Fsw)をC11からC12に増加する。
【0104】
タイミングt12において、スイッチング素子が動作条件C12で動作している状態でシステム効率演算部41jにより電力効率R12が求められ、これらの組み合わせP12(T12,C12,R12)が記憶部42jに格納される。判定部43jは、電力効率R11,R12を比較する。比較結果が
R11<R12
であれば、判定部43jは、環境温度T11を考慮しながら、動作条件の増加方向の変更C11→C12が電力効率の高くなる方向の変更であると判定する。これに応じて、第1の制御部36及び第2の制御部37は、スイッチング素子SW1,SW2,SW11~SW14の動作条件をC12からC13に増加する。
【0105】
タイミングt13において、スイッチング素子が動作条件C13で動作している状態でシステム効率演算部41jにより電力効率R13が求められ、これらの組み合わせP13(T13,C13,R13)が記憶部42jに格納される。判定部43jは、電力効率R12,R13を比較する。比較結果が
R12<R13
であれば、判定部43jは、環境温度T11を考慮しながら、動作条件の増加方向の変更C12→C13が電力効率の高くなる方向の変更であると判定する。これに応じて、第1の制御部36及び第2の制御部37は、スイッチング素子SW1,SW2,SW11~SW14の動作条件をC13からC14に増加する。
【0106】
タイミングt14において、スイッチング素子が動作条件C14で動作している状態でシステム効率演算部41jにより電力効率R14が求められ、これらの組み合わせP14(T14,C14,R14)が記憶部42jに格納される。判定部43jは、電力効率R13,R14を比較する。比較結果が
R13>R14
であれば、判定部43jは、動作条件の増加方向の変更C13→C14が電力効率の低くなる方向の変更であると判定する。これに応じて、第1の制御部36及び第2の制御部37は、スイッチング素子SW1,SW2,SW11~SW14の動作条件をC14からC13に戻す。これに応じて、第1の制御部36及び第2の制御部37は、スイッチング素子SW1,SW2,SW11~SW14の動作条件をC14からC13に戻す。これにより、制御回路30kは、動作条件C13を最大電力効率付近の動作条件であるとして、探索を終了する。
【0107】
このように、制御回路30kは、第1のパラメータ及び第2のパラメータに加えて第3のパラメータに応じて逐次的に電力効率を求め、電力効率が大きく(例えば、最大に)なるように探索しながら電圧Vbusの制御を行う。これにより、動的な変化にさらに適切に対応でき、リアルタイム的に電力効率をさらに向上できる。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0109】
1,1i,1j,1k 充電システム
10 ACDCコンバータ
20 DCDCコンバータ
30,30i,30j,30k 制御回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12