(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012328
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】工具クランプ装置
(51)【国際特許分類】
B23B 31/117 20060101AFI20230118BHJP
B23B 29/24 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
B23B31/117 601A
B23B29/24 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115913
(22)【出願日】2021-07-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】疋田 功男
(72)【発明者】
【氏名】水越 健一
【テーマコード(参考)】
3C032
3C046
【Fターム(参考)】
3C032AA01
3C046NN01
3C046NN02
(57)【要約】
【課題】小さいピストンストロークで、工具の引き込みに必要なドローバのスライド量を確保することが可能な工具クランプ装置、を提供する。
【解決手段】工具クランプ装置は、ハウジング51と、ドローバ61と、ドローバ61が、工具のクランプ状態を得る第1位置と、工具のアンクランプ状態を得る第2位置との間でスライドするようにストロークするピストン81と、中間部材71とを備える。ハウジング51は、第1周面56と、第1テーパ面57とを有する。所定軸210に対して第1周面56がなす角度は、所定軸210に対して第1テーパ面57がなす角度よりも小さい。中間部材71は、ドローバ61が第2位置に配置される場合に、第1周面56と接触する第2周面76と、ドローバ61が第1位置に配置される場合に、第1テーパ面57と接触する第2テーパ面77とを有する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定軸を中心に配置されるハウジングと、
前記ハウジング内に収容され、工具を前記所定軸の軸方向に沿った第1方向に引き込むことにより工具のクランプ状態を得る第1位置と、工具を前記所定軸の軸方向に沿った第2方向に押し出すことにより工具のアンクランプ状態を得る第2位置との間で、前記所定軸の軸方向にスライド可能なドローバと、
前記所定軸の軸上に配置され、前記ドローバを前記第2位置から前記第1位置にスライドさせるために前記第1方向にストロークし、前記ドローバを前記第1位置から前記第2位置にスライドさせるため前記第2方向にストロークするピストンと、
前記所定軸の半径方向において前記ハウジングおよび前記ピストンの間に介挿され、前記ドローバとともに前記所定軸の軸方向にスライド可能で、かつ、前記ドローバに対して前記所定軸の半径方向にスライド可能なように、前記ドローバにより支持される中間部材とを備え、
前記ピストンは、前記第1方向に向けたストローク時、前記中間部材に対して、前記第1方向かつ前記所定軸の半径方向外側に向けた力を付与するように構成され、
前記ハウジングは、
前記所定軸を中心として前記所定軸に沿って延在し、前記第1方向に向かうほど大きくなる直径、または、前記所定軸の軸方向に沿った位置に拘わらず一定の直径を有する第1周面と、
前記第1方向における前記第1周面の端部に接続され、前記所定軸を中心として前記所定軸に沿って延在し、前記第1方向に向かうほど大きくなる直径を有する第1テーパ面とを有し、
前記所定軸に対して前記第1周面がなす角度α(0°≦α<90°)は、前記所定軸に対して前記第1テーパ面がなす角度β(0°<β<90°)よりも小さく、
前記中間部材は、
前記所定軸に沿って延在し、前記第1方向に向かうほど大きくなる直径、または、前記所定軸の軸方向に沿った位置に拘わらず一定の直径を有し、前記ドローバが前記第2位置に配置される場合に、前記第1周面と接触する第2周面と、
前記第2方向における前記第2周面の端部に接続され、前記所定軸に沿って延在し、前記第1方向に向かうほど大きくなる直径を有し、前記ドローバが前記第1位置に配置される場合に、前記第1テーパ面と接触する第2テーパ面とを有し、
前記所定軸に対して前記第2周面がなす角度γ(0°≦γ<90°)は、前記所定軸に対して前記第2テーパ面がなす角度δ(0°<δ<90°)よりも小さい、工具クランプ装置。
【請求項2】
前記第1周面および前記第2周面の各々は、前記所定軸の軸方向に沿った位置に拘わらず一定の直径を有する、請求項1に記載の工具クランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工具クランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2004-314299号公報(特許文献1)には、工具のクランプ機構を備えたマシンスピンドルが開示されている。クランプ機構は、軸線方向に移動可能な第1引っ張り棒と、軸線方向における第1引っ張り棒の移動に伴って、軸線方向、かつ、半径方向に相対移動し、工具のクランプ力を増加させる第1楔部材および第2楔部材と、軸線方向における第1引っ張り棒の移動に伴って、工具を軸線方向に引き込み、工具のクランプを行なうクランプ部材とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に開示されるように、ピストン(第1引っ張り棒)のその軸線方向におけるストロークに伴って楔力を発生させ、工具のクランプ力を増強する工具クランプ装置が知られている。このような工具クランプ装置においては、クランプ時における工具の引き込み量が予め定められているため、その工具の引き込みに必要なドローバ(クランプ部材)のスライド量を確保する必要がある。
【0005】
しかしながら、ピストンのその軸線方向における動作は、第1楔部材および第2楔部材を介してクランプ部材に伝達されるため、半径方向における第1楔部材および第2楔部材の移動に起因して、軸線方向におけるドローバの移動量が小さくなる。このため、工具の引き込みに必要なドローバのスライド量を確保しようとすると、ピストンストロークが大きくなり、その結果、工具クランプ装置の大型化を招いてしまう。
【0006】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、小さいピストンストロークで、工具の引き込みに必要なドローバのスライド量を確保することが可能な工具クランプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に従った工具クランプ装置は、所定軸を中心に配置されるハウジングと、ハウジング内に収容され、工具を所定軸の軸方向に沿った第1方向に引き込むことにより工具のクランプ状態を得る第1位置と、工具を所定軸の軸方向に沿った第2方向に押し出すことにより工具のアンクランプ状態を得る第2位置との間で、所定軸の軸方向にスライド可能なドローバと、所定軸の軸上に配置され、ドローバを第2位置から第1位置にスライドさせるために第1方向にストロークし、ドローバを第1位置から第2位置にスライドさせるため第2方向にストロークするピストンと、所定軸の半径方向においてハウジングおよびピストンの間に介挿され、ドローバとともに所定軸の軸方向にスライド可能で、かつ、ドローバに対して所定軸の半径方向にスライド可能なように、ドローバにより支持される中間部材とを備える。ピストンは、第1方向に向けたストローク時、中間部材に対して、第1方向かつ所定軸の半径方向外側に向けた力を付与するように構成される。
【0008】
ハウジングは、所定軸を中心として所定軸に沿って延在し、第1方向に向かうほど大きくなる直径、または、所定軸の軸方向に沿った位置に拘わらず一定の直径を有する第1周面と、第1方向における第1周面の端部に接続され、所定軸を中心として所定軸に沿って延在し、第1方向に向かうほど大きくなる直径を有する第1テーパ面とを有する。所定軸に対して第1周面がなす角度α(0°≦α<90°)は、所定軸に対して第1テーパ面がなす角度β(0°<β<90°)よりも小さい。中間部材は、所定軸に沿って延在し、第1方向に向かうほど大きくなる直径、または、所定軸の軸方向に沿った位置に拘わらず一定の直径を有し、ドローバが第2位置に配置される場合に、第1周面と接触する第2周面と、第2方向における第2周面の端部に接続され、所定軸に沿って延在し、第1方向に向かうほど大きくなる直径を有し、ドローバが第1位置に配置される場合に、第1テーパ面と接触する第2テーパ面とを有する。所定軸に対して第2周面がなす角度γ(0°≦γ<90°)は、所定軸に対して第2テーパ面がなす角度δ(0°<δ<90°)よりも小さい。
【0009】
このように構成された工具クランプ装置によれば、第1方向に向けたピストンのストローク時の前半において、第1テーパ面と比較して、所定軸に対して小さい角度をなす第1周面と、第2テーパ面と比較して、所定軸に対して小さい角度をなす第2周面とを接触させる。これにより、所定軸の半径方向外側に向けた中間部材のスライド量の割合を減少させ、第1方向に向けた中間部材のスライド量の割合を増大させることが可能となるため、ピストンのストローク量を抑えつつ、中間部材とともにドローバを第1方向に大きくスライドさせることができる。結果、小さいピストンストロークで、工具の引き込みに必要なドローバのスライド量を確保することができる。
【0010】
また好ましくは、第1周面および第2周面の各々は、所定軸の軸方向に沿った位置に拘わらず一定の直径を有する。
【0011】
このように構成された工具クランプ装置によれば、さらに小さいピストンストロークで、工具の引き込みに必要なドローバのスライド量を確保することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上に説明したように、この発明に従えば、小さいピストンストロークで、工具の引き込みに必要なドローバのスライド量を確保することが可能な工具クランプ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この発明の実施の形態1における工具クランプ装置を用いた工作機械を示す斜視図である。
【
図2】刃物台における工具の自動交換位置を示す側面図である。
【
図3】刃物台における工具のワーク加工位置を示す側面図である。
【
図5】
図1中の工具ホルダ(アンクランプ状態)を示す断面図である。
【
図6】
図1中の工具ホルダ(クランプ状態)を示す断面図である。
【
図7】
図4から
図6中のドローバおよび中間部材を示す斜視図である。
【
図8】
図5中の2点鎖線VIIIにより囲まれた範囲の工具クランプ装置(アンクランプ状態)を示す断面図である。
【
図9】工具クランプ装置(アンクランプ状態からクランプ状態への移行時)を示す断面図である。
【
図10】
図6中の2点鎖線Xにより囲まれた範囲の工具クランプ装置(クランプ状態)を示す断面図である。
【
図11】比較例における工具クランプ装置を示す断面図である。
【
図12】この発明の実施の形態2における工具クランプ装置(アンクランプ状態)を部分的に示す断面図である。
【
図13】
図12中の工具クランプ装置(アンクランプ状態からクランプ状態への移行時)を示す断面図である。
【
図14】
図12中の工具クランプ装置(クランプ状態)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1における工具クランプ装置を用いた工作機械を示す斜視図である。
図1中では、工作機械の外観をなすカバー体が透視されることにより、工作機械の内部構造が示されている。
【0016】
図1を参照して、工作機械10は、回転するワークに工具を接触させることによって、ワーク加工を行なう旋盤である。工作機械10には、停止するワークに回転する工具を接触させることによって、ワーク加工を行なうミーリング機能が備わっている。
【0017】
工作機械10は、コンピュータによる数値制御によって、ワーク加工のための各種動作が自動化されたNC(Numerically Control)工作機械である。
【0018】
まず、工作機械10の全体構造について説明する。工作機械10は、ベッド11と、主軸台21と、刃物台31と、自動工具交換装置18(後出の
図2を参照)とを有する。
【0019】
ベッド11は、主軸台21、刃物台31および自動工具交換装置18等を支持するためのベース部材であり、工場などの床面上に設置される。ベッド11は、鋳鉄などの金属から形成されている。
【0020】
主軸台21は、ベッド11に取り付けられている。主軸台21は、主軸(不図示)を有する。主軸は、水平方向に延びるZ軸に平行な中心軸101を中心に回転駆動する。主軸の先端には、ワークを着脱可能に保持可能なチャック機構が設けられている。チャック機構に保持されたワークは、主軸の回転駆動に伴って、中心軸101を中心に回転する。
【0021】
刃物台31は、カバー体(不図示)によって区画形成される加工エリア内に設けられている。刃物台31は、タレット型刃物台であり、Z軸に平行な中心軸(旋回中心軸)102を中心に旋回可能である。
【0022】
刃物台31は、刃物台ベース32と、タレット33と、複数の工具ホルダ121とを有する。刃物台ベース32には、刃物台31を旋回駆動させるためのモータ等が搭載されている。刃物台ベース32は、後述する横送り台に取り付けられている。
【0023】
タレット33は、刃物台ベース32から、Z軸方向において主軸台21に近接する方向に突出するように設けられている。タレット33は、旋回中心軸102の軸方向が厚み方向となる円盤形状を有する。タレット33は、旋回中心軸102を中心に旋回可能である。
【0024】
複数の工具ホルダ121は、タレット33に装着されている。複数の工具ホルダ121は、ボルトを用いてタレット33に締結されている。複数の工具ホルダ121は、旋回中心軸102の周方向に並んで設けられている。各工具ホルダ121は、工具を保持可能なように構成されている。
【0025】
なお、複数の工具ホルダ121は、回転工具を保持するための工具ホルダと、固定工具を保持するための工具ホルダとを含む。回転工具は、回転しながらワークを加工する工具であり、ドリル、エンドミルまたはリーマ等である。固定工具は、回転するワークを加工する工具であり、外径切削用バイト、内径切削用バイト、端面切削用バイトまたは突っ切りバイト等である。
【0026】
刃物台31は、サドル16および横送り台(不図示)を介して、ベッド11に取り付けられている。サドル16は、各種の送り機構、案内機構およびサーボモータなどによって、Z軸方向に移動可能である。横送り台は、各種の送り機構、案内機構およびサーボモータなどによって、Z軸に直交し、鉛直方向に対して傾斜するX軸方向に移動可能である。サドル16および横送り台が、それぞれ、Z軸方向およびX軸方向に移動することによって、工具ホルダ121に保持された工具によるワークの加工位置をZ軸-X軸平面内で移動させることができる。
【0027】
図2は、刃物台における工具の自動交換位置を示す側面図である。
図3は、刃物台における工具のワーク加工位置を示す側面図である。
【0028】
図1から
図3を参照して、タレット33が旋回中心軸102を中心に旋回することによって、工具ホルダ121に保持された工具が旋回中心軸102の周方向に移動する。自動工具交換装置(ATC:Automatic Tool Changer)18は、工具を把持可能なダブルアーム等を有しており、加工エリア内の刃物台31と、加工エリア外の工具マガジン(不図示)との間で工具を交換可能なように構成されている。
【0029】
図2に示されるように、自動工具交換装置18は、刃物台31の機械前方側に設けられている。自動工具交換装置18により刃物台31における工具を交換する場合、交換対象となる工具を保持する工具ホルダ121は、図中の工具自動交換位置Jに位置決めされる。
図3に示されるように、刃物台31における工具によりワークWの加工を行なう場合、加工に用いられる工具を保持する工具ホルダ121は、図中のワーク加工位置Kに位置決めされる。
【0030】
なお、上記の工具自動交換位置Jおよびワーク加工位置Kの各位置は、特に限定されるものではない。たとえば、自動工具交換装置18が機械後方側に設けられる場合、工具自動交換位置Jは、
図3に示されるワーク加工位置Kから180°ずれた位置であってもよい。
【0031】
本実施の形態における工具クランプ装置100は、工具ホルダ121に内蔵されている。工具クランプ装置100は、工具をクランプ可能なように構成されている。
【0032】
続いて、工具クランプ装置100のより具体的な構造を説明する。本実施の形態では、代表的に、回転工具を保持するための工具ホルダ121を例に挙げて、工具クランプ装置100の構造について説明する。
【0033】
図4は、
図1中の工具ホルダを示す斜視図である。
図5は、
図1中の工具ホルダ(アンクランプ状態)を示す断面図である。
図6は、
図1中の工具ホルダ(クランプ状態)を示す断面図である。
図5および
図6中には、工具ホルダ121により保持される工具Tのシャンク部分が示されている。
【0034】
図4から
図6を参照して、工具Tは、工具ホルダ121に対して、所定軸210に沿った矢印310に示される方向に挿入される。工具Tは、工具ホルダ121から、所定軸210に沿った矢印320に示される方向に引き抜かれる。
【0035】
工具クランプ装置100は、ハウジング51と、ドローバ61と、複数のコレット46と、ピストン81と、シリンダ91と、複数の中間部材71とを有する。
【0036】
ハウジング51は、所定軸210を中心に配置されている。ハウジング51は、全体として、所定軸210を中心とする筒形状を有する。所定軸210は、
図1から
図3中に示される旋回中心軸102の半径方向に延びる仮想上の直線である。
【0037】
ハウジング51には、第1挿入孔52が設けられている。第1挿入孔52は、所定軸210を中心に配置されている。第1挿入孔52は、工具Tの挿入方向における手前側の端部で開口している。第1挿入孔52は、工具Tの挿入方向においてハウジング51を貫通している。
【0038】
図7は、
図4から
図6中のドローバおよび中間部材を示す斜視図である。
図4から
図7を参照して、ドローバ61は、ハウジング51内に収容されている。ドローバ61は、第1挿入孔52に挿入されている。ドローバ61は、所定軸210を中心に配置されている。
【0039】
ドローバ61は、
図6に示される第1位置PAと、
図5に示される第2位置PBとの間で、所定軸210の軸方向にスライド可能である。ドローバ61は、
図6に示される第1位置PAにスライドした場合に、工具Tを所定軸210の軸方向に沿った第1方向Da(矢印310に示される方向)に引き込むことによって、工具Tのクランプ状態を得る。ドローバ61は、
図5に示される第2位置PBにスライドした場合に、工具Tを所定軸210の軸方向に沿った第2方向Db(矢印320に示される方向)に押し出すことによって、工具Tのアンクランプ状態を得る。
【0040】
第1方向Daは、工具ホルダ121に対する工具Tの挿入方向に対応している。第2方向Dbは、工具ホルダ121からの工具Tの引き抜き方向に対応している。
【0041】
ドローバ61は、小径部66と、大径部67とを有する。小径部66および大径部67は、所定軸210の軸方向に連なっている。小径部66および大径部67は、挙げた順に、工具Tの挿入方向における手前側から奥側に並んでいる。所定軸210を中心とする小径部66の直径は、所定軸210を中心とする大径部67の直径よりも小さい。
【0042】
ドローバ61は、大径部67が第1挿入孔52を規定するハウジング51の内周面と摺接することによって、所定軸210の軸方向にスライド可能なように支持されている。
【0043】
小径部66の外周上には、複数のコレット46が設けられている。複数のコレット46は、所定軸210の軸方向に沿った第1方向Daおよび第2方向Dbにおけるドローバ61のスライド動作に伴って、所定軸210を中心とする半径方向に変形可能なように構成されている。
【0044】
ドローバ61が
図6に示される第1位置PAにスライドした場合に、複数のコレット46は、所定軸210を中心に拡径するように変形する。工具Tが、複数のコレット46により把持され、ドローバ61により第1方向Daに引き込まれることによって、工具Tのクランプ状態が得られる。一方、ドローバ61が
図5に示される第2位置PBにスライドした場合に、複数のコレット46は、所定軸210を中心に縮径するように変形する。複数のコレット46による工具Tの把持が解除され、ドローバ61により第2方向Dbに押し出されることによって、工具Tのアンクランプ状態が得られる。
【0045】
図5から
図7に示されるように、ドローバ61には、第2挿入孔62と、複数の開口部63とが設けられている。第2挿入孔62は、大径部67に設けられている。第2挿入孔62は、所定軸210を中心に配置されている。第2挿入孔62は、工具Tの挿入方向における奥側の端部で開口し、工具Tの挿入方向における手前側の端部で底部をなしている。
【0046】
複数の開口部63は、大径部67に設けられている。複数の開口部63は、所定軸210の周方向に互いに間隔を開けて設けられている。複数の開口部63は、所定軸210の周方向において等間隔に設けられている。各開口部63は、所定軸210の半径方向においてドローバ61(大径部67)を貫通し、第2挿入孔62に連通している。
【0047】
ピストン81は、所定軸210の軸上に配置されている。ピストン81は、所定軸210の軸上で延びている。ピストン81は、所定軸210の軸方向において、ドローバ61と並んで設けられている。ピストン81は、ドローバ61よりも、工具Tの挿入方向の奥側に配置されている。
【0048】
ピストン81は、ドローバ61に接続されている。ピストン81は、複数の中間部材71を介して、ドローバ61と接続されている。
【0049】
ピストン81は、ドローバ61を
図5に示される第2位置PBから
図6に示される第1位置PAにスライドさせるために、第1方向Daにストロークする。ピストン81は、ドローバ61を
図6に示される第1位置PAから
図5に示される第2位置PBにスライドさせるため第2方向Dbにストロークする。
【0050】
ピストン81は、先端部82と、胴部84と、基部83とを有する。先端部82、胴部84および基部83は、所定軸210の軸方向に連なっている。先端部82、胴部84および基部83は、挙げた順に、工具Tの挿入方向における手前側から奥側に並んでいる。
【0051】
所定軸210に直交する平面により切断された場合の基部83の断面積は、所定軸210に直交する平面により切断された場合の胴部84の断面積よりも大きい。胴部84は、所定軸210の軸方向における先端部82および基部83の間で、所定軸210の半径方向内側に向けてくびれた形状を有する。
【0052】
先端部82は、第2挿入孔62に挿入されている。先端部82は、第2挿入孔62の内部で、所定軸210の軸方向にスライド動作が可能なように設けられている。胴部84は、先端部82および基部83の間で延びている。胴部84は、第2挿入孔62の内部から外部に延出し、基部83に接続されている。
【0053】
シリンダ91は、全体として、所定軸210を中心とする筒形状を有する。ピストン81は、基部83がシリンダ91に挿入されることによって、所定軸210の軸方向にスライド可能なように支持されている。シリンダ91は、基部83とともに、第1油圧室92および第2油圧室93を区画形成している。
図5に示されるように、第1油圧室92に油が供給されることによって、ピストン81は、所定軸210の軸方向に沿った第2方向Dbに向けてストロークする。
図6に示されるように、第2油圧室93に油が供給されることによって、ピストン81は、所定軸210の軸方向に沿った第1方向Daに向けてストロークする。
【0054】
中間部材71は、所定軸210の半径方向においてハウジング51およびピストン81の間に介挿されている。中間部材71は、ドローバ61とともに所定軸210の軸方向にスライド可能で、かつ、ドローバ61に対して所定軸210の半径方向にスライド可能なように、ドローバ61により支持されている。
【0055】
中間部材71は、金属製のブロック体からなる。複数の中間部材71は、それぞれ、複数の開口部63に配置されている。複数の中間部材71は、所定軸210の周方向に互いに間隔を開けて設けられている。複数の中間部材71は、所定軸210の周方向において等間隔に設けられている。中間部材71は、所定軸210の軸方向におけるスライド動作が規制され、かつ、所定軸210の半径方向におけるスライド動作が許容されるように、開口部63に配置されている。
【0056】
中間部材71は、第2挿入孔62の内部において、ピストン81(先端部82)と接触している。中間部材71は、第2挿入孔62の外部において、ハウジング51と接触している。
【0057】
図8は、
図5中の2点鎖線VIIIにより囲まれた範囲の工具クランプ装置(アンクランプ状態)を示す断面図である。
図9は、工具クランプ装置(アンクランプ状態からクランプ状態への移行時)を示す断面図である。
図10は、
図6中の2点鎖線Xにより囲まれた範囲の工具クランプ装置(クランプ状態)を示す断面図である。
【0058】
図8から
図10中には、所定軸210を含む平面により切断された場合の工具クランプ装置100の断面が示されている。
【0059】
図5から
図10を参照して、ピストン81は、第1方向Daに向けたストローク時、中間部材71に対して、第1方向Da、かつ、所定軸210の半径方向外側に向けた力を付与するように構成されている。
【0060】
ピストン81は、テーパ面86と、テーパ面87とを有する。テーパ面86およびテーパ面87は、先端部82に設けられている。テーパ面86およびテーパ面87は、所定軸210を中心として所定軸210に沿って延在している。テーパ面86およびテーパ面87は、所定軸210を中心に周回し、所定軸210に対して傾斜するテーパ形状をなす外周面(円錐面)からなる。
【0061】
テーパ面86およびテーパ面87は、所定軸210の軸方向に連なっている。テーパ面86およびテーパ面87は、挙げた順に、工具Tの挿入方向における手前側から奥側に並んでいる。工具Tの挿入方向における奥側のテーパ面86の端部が、工具Tの挿入方向における手前側のテーパ面87の端部と接続されている。
【0062】
テーパ面86は、第1方向Daに向かうほど小さくなる直径(外径)を有する。テーパ面86は、工具Tの挿入方向における手前側から奥側に向かうほど小さくなる直径(外径)を有する。テーパ面87は、第1方向Daに向かうほど小さくなる直径(外径)を有する。テーパ面87は、工具Tの挿入方向における手前側から奥側に向かうほど小さくなる直径(外径)を有する。
【0063】
所定軸210を含む平面により切断された場合のピストン81の断面において、テーパ面86およびテーパ面87の各々は、直線状に延びている。
【0064】
所定軸210に対するテーパ面87の傾きは、所定軸210に対するテーパ面86の傾きよりも急峻である。所定軸210に対してテーパ面87がなす角度(0°を越え90°未満の範囲)は、所定軸210に対してテーパ面86がなす角度(0°を越え90°未満の範囲)よりも大きい。
【0065】
中間部材71は、テーパ面78と、テーパ面79とを有する。テーパ面78およびテーパ面79は、所定軸210に沿って延在している。テーパ面78およびテーパ面79は、所定軸210の軸周りで所定の角度範囲で周回し、所定軸210に対して傾斜するテーパ形状をなす内周面からなる。
【0066】
テーパ面78およびテーパ面79は、所定軸210の軸方向に連なっている。テーパ面78およびテーパ面79は、挙げた順に、工具Tの挿入方向における手前側から奥側に並んでいる。工具Tの挿入方向における奥側のテーパ面78の端部が、工具Tの挿入方向における手前側のテーパ面79の端部と接続されている。
【0067】
テーパ面78は、第1方向Daに向かうほど小さくなる直径(内径)を有する。テーパ面78は、工具Tの挿入方向における手前側から奥側に向かうほど小さくなる直径(内径)を有する。テーパ面79は、第1方向Daに向かうほど小さくなる直径(内径)を有する。テーパ面79は、工具Tの挿入方向における手前側から奥側に向かうほど小さくなる直径(内径)を有する。
【0068】
所定軸210を含む平面により切断された場合の中間部材71の断面において、テーパ面78およびテーパ面79の各々は、直線状に延びている。
【0069】
所定軸210に対するテーパ面78の傾きは、所定軸210に対するテーパ面79の傾きよりも急峻である。所定軸210に対してテーパ面78がなす角度(0°を越え90°未満の範囲)は、所定軸210に対してテーパ面79がなす角度(0°を越え90°未満の範囲)よりも大きい。
【0070】
所定軸210に対するテーパ面78の傾きは、所定軸210に対するテーパ面87の傾きに対応している。所定軸210に対するテーパ面79の傾きは、所定軸210に対するテーパ面86の傾きに対応している。
【0071】
図5および
図8に示されるように、工具Tのアンクランプ状態において、ピストン81のテーパ面87と、中間部材71のテーパ面78とが接触している。
図6および
図10に示されるように、工具Tのクランプ状態において、ピストン81のテーパ面86と、中間部材71のテーパ面79とが接触している。
【0072】
工具Tのアンクランプ状態からクランプ状態への移行時の前半において、テーパ面87およびテーパ面78が接触しながら、ピストン81が第1方向Daにストロークすることによって、ピストン81から中間部材71に対して、第1方向Da、かつ、所定軸210の半径方向外側に向けた力が付与される。工具Tのアンクランプ状態からクランプ状態への移行時の後半において、テーパ面86とテーパ面79とが接触しながら、ピストン81が第1方向Daにストロークすることによって、ピストン81から中間部材71に対して、第1方向Da、かつ、所定軸210の半径方向外側に向けた力が付与される。
【0073】
ハウジング51は、第1周面56と、第1テーパ面57とを有する。第1周面56は、所定軸210を中心として所定軸210に沿って延在している。第1周面56は、所定軸210を中心に周回する内周面からなる。第1テーパ面57は、所定軸210を中心に周回し、所定軸210に対して傾斜するテーパ形状をなす内周面からなる。
【0074】
第1周面56および第1テーパ面57は、所定軸210の軸方向に連なっている。第1周面56および第1テーパ面57は、挙げた順に、工具Tの挿入方向における手前側から奥側に並んでいる。第1テーパ面57は、第1方向Daにおける第1周面56の端部に接続されている。工具Tの挿入方向における奥側の第1周面56の端部が、工具Tの挿入方向における手前側の第1テーパ面57の端部と接続されている。
【0075】
第1周面56は、所定軸210の軸方向に沿った位置に拘わらず一定の直径(内径)を有する。第1周面56は、所定軸210に沿って、所定軸210と平行に延在している。第1テーパ面57は、第1方向Daに向かうほど大きくなる直径(内径)を有する。第1テーパ面57は、工具Tの挿入方向における手前側から奥側に向かうほど大きくなる直径(内径)を有する。
【0076】
所定軸210を含む平面により切断された場合のハウジング51の断面において、第1周面56および第1テーパ面57の各々は、直線状に延びている。
【0077】
所定軸210に対する第1周面56の傾きは、所定軸210に対する第1テーパ面57の傾きよりも緩やかである。所定軸210に対して第1周面56がなす角度α(=0°)は、所定軸210に対して第1テーパ面57がなす角度β(0°<β<90°)よりも小さい。たとえば、角度βは、10°以上45°以下の範囲であってもよいし、20°以上30°以下の範囲であってもよい。
【0078】
図5および
図8に示されるように、工具Tのアンクランプ状態において、第1周面56は、所定軸210の半径方向において、ピストン81のテーパ面86およびテーパ面87と対向している。
図6および
図10に示されるように、工具Tのクランプ状態において、第1周面56は、所定軸210の半径方向において、ピストン81のテーパ面86と対向している。第1テーパ面57は、所定軸210の半径方向において、ピストン81のテーパ面86およびテーパ面87と対向している。
【0079】
中間部材71は、第2周面76と、第2テーパ面77とを有する。第2テーパ面77および第2周面76は、所定軸210に沿って延在している。第2テーパ面77は、所定軸210の軸周りで所定の角度範囲で周回し、所定軸210に対して傾斜するテーパ形状をなす外周面からなる。第2周面76は、所定軸210の軸周りで所定の角度範囲で周回する外周面からなる。
【0080】
第2テーパ面77および第2周面76は、所定軸210の軸方向に連なっている。第2テーパ面77および第2周面76は、挙げた順に、工具Tの挿入方向における手前側から奥側に並んでいる。第2テーパ面77は、第2方向Dbにおける第2周面76の端部に接続されている。工具Tの挿入方向における奥側の第2テーパ面77の端部が、工具Tの挿入方向における手前側の第2周面76の端部と接続されている。
【0081】
第2周面76は、所定軸210の軸方向に沿った位置に拘わらず一定の直径(外径)を有する。第2周面76は、所定軸210に沿って、所定軸210と平行に延在している。第2テーパ面77は、第1方向Daに向かうほど大きくなる直径(外径)を有する。第2テーパ面77は、工具Tの挿入方向における手前側から奥側に向かうほど大きくなる直径(外径)を有する。
【0082】
所定軸210を含む平面により切断された場合の中間部材71の断面において、第2テーパ面77および第2周面76の各々は、直線状に延びている。
【0083】
所定軸210に対する第2周面76の傾きは、所定軸210に対する第2テーパ面77の傾きよりも緩やかである。所定軸210に対して第2周面76がなす角度γ(=0°)は、所定軸210に対して第2テーパ面77がなす角度δ(0°<δ<90°)よりも小さい。たとえば、角度δは、10°以上45°以下の範囲であってもよいし、20°以上30°以下の範囲であってもよい。
【0084】
所定軸210に対する第2周面76の傾きは、所定軸210に対する第1周面56の傾きに対応している。所定軸210に対する第2テーパ面77の傾きは、所定軸210に対する第1テーパ面57の傾きに対応している。
【0085】
本実施の形態では、所定軸210に対する第2テーパ面77の傾きが、所定軸210に対するテーパ面79の傾きよりも急峻である。第2周面76および第2テーパ面77の接続位置は、テーパ面79およびテーパ面78の接続位置よりも、工具Tの挿入方向における奥側に位置している。所定軸210の軸方向における第2テーパ面77の長さは、所定軸210の軸方向におけるテーパ面78の長さよりも大きい。
【0086】
図5および
図8に示されるように、工具Tのアンクランプ状態において、ドローバ61が第2位置PBに配置される場合に、中間部材71の第2周面76は、ハウジング51の第1周面56と接触している。
図6および
図10に示されるように、工具Tのクランプ状態において、ドローバ61が第1位置PAに配置される場合に、中間部材71の第2テーパ面77は、ハウジング51の第1テーパ面57と接触している。
【0087】
図11は、比較例における工具クランプ装置を示す断面図である。
図11中では、所定軸210を挟んだ右側に、工具クランプ装置のアンクランプ状態が示され、所定軸210を挟んだ左だ側に、工具クランプ装置のクランプ状態が示されている。
【0088】
図11を参照して、本比較例では、ハウジング51が、第1周面56および第1テーパ面57に替わって、テーパ面222を有し、中間部材71が、第2周面76および第2テーパ面77に替わって、テーパ面221を有する。テーパ面221およびテーパ面222は、工具Tの挿入方向における手前側から奥側に向けて大きくなる直径を有する。
【0089】
本変形例においては、工具Tのアンクランプ状態からクランプ状態への移行時、テーパ面221およびテーパ面222が接触し続ける。この場合、第1方向Daに向けたピストン81のストロークに伴って、中間部材71が、所定軸210の半径方向外側にスライドしつつ、所定軸210の軸方向にスライドするため、ピストン81のストローク量と比較して、所定軸210の軸方向における中間部材71のスライド量が小さくなる。このような構成において、工具Tの引き込みに必要なドローバ61のスライド量Laを確保するために、ピストン81のストローク量Lbを大きく設定する必要が生じる。
【0090】
図8および
図9に示されるように、これに対して、本実施の形態では、工具Tのアンクランプ状態からクランプ状態への移行時、まず、ハウジング51の第1周面56と、中間部材71の第2周面76とを接触させながら、ピストン81を第1方向Daに向けてストロークさせる。ピストン81のストロークに伴って、中間部材71が、所定軸210の半径方向にスライドすることなく、所定軸210の軸方向にのみスライドする。このとき、第1方向Daにおけるピストン81のストローク量と、第1方向Daにおける中間部材71のスライド量とが等しくなるため、中間部材71とともにドローバ61を第1方向Daに向けて大きくストロークさせることができる。
【0091】
図9および
図10に示されるように、続いて、ハウジング51の第1テーパ面57と、中間部材71の第2テーパ面77とを接触させながら、ピストン81を第1方向Daに向けてストロークさせる。ピストン81のストロークに伴って、中間部材71が、所定軸210の半径方向外側にスライドしながら、所定軸210の軸方向にスライドする。このとき、ピストン81から中間部材71に対して所定軸210の半径方向外側に向けた力が付与されることによって、第2テーパ面77が第1テーパ面57に押し付けられ、工具Tのクランプ状態において、中間部材71と、ピストン81およびハウジング51との間に楔効果が発生する。これにより、シリンダ機構からピストン81に対する駆動力の供給が停止された場合であっても、工具Tのクランプ状態を保持することができる。
【0092】
このように本実施の形態では、工具Tのアンクランプ状態からクランプ状態への移行時の前半には、所定軸210に平行に延びる第1周面56および第2周面76を接触させることによって、ドローバ61を第1方向Daに向けて大きくストロークさせることができる。また、工具Tのアンクランプ状態からクランプ状態への移行時の後半には、所定軸210に対して傾斜する第1テーパ面57および第2テーパ面77を接触させることによって、中間部材71と、ピストン81およびハウジング51との間に楔効果を発生させることができる。これにより、小さいピストンストロークで、工具Tの引き込みに必要なドローバ61のスライド量を確保しつつ、工具Tのクランプ状態において工具Tのクランプ力を増強するための楔力を得ることができる。
【0093】
(実施の形態2)
図12は、この発明の実施の形態2における工具クランプ装置(アンクランプ状態)を部分的に示す断面図である。
図13は、
図12中の工具クランプ装置(アンクランプ状態からクランプ状態への移行時)を示す断面図である。
図14は、
図12中の工具クランプ装置(クランプ状態)を示す断面図である。
【0094】
本実施の形態における工具クランプ装置は、実施の形態1における工具クランプ装置100と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造については、その説明を繰り返さない。
【0095】
図12から
図14を参照して、本実施の形態では、ハウジング51の第1周面56が、所定軸210を中心に周回し、所定軸210に対して傾斜するテーパ形状をなす内周面からなる。第1周面56は、第1方向Daに向かうほど大きくなる直径(内径)を有する。第1周面56は、工具Tの挿入方向における手前側から奥側に向かうほど大きくなる直径(内径)を有する。
【0096】
所定軸210に対する第1周面56の傾きは、所定軸210に対する第1テーパ面57の傾きよりも緩やかである。所定軸210に対して第1周面56がなす角度α(0°<α<90°)は、所定軸210に対して第1テーパ面57がなす角度β(0°<β<90°)よりも小さい。
【0097】
中間部材71の第2周面76は、所定軸210の軸周りで所定の角度範囲で周回し、所定軸210に対して傾斜するテーパ形状をなす外周面からなる。第2周面76は、第1方向Daに向かうほど大きくなる直径(外径)を有する。第2周面76は、工具Tの挿入方向における手前側から奥側に向かうほど大きくなる直径(外径)を有する。
【0098】
所定軸210に対する第2周面76の傾きは、所定軸210に対する第2テーパ面77の傾きよりも緩やかである。所定軸210に対して第2周面76がなす角度γ(0°<γ<90°)は、所定軸210に対して第2テーパ面77がなす角度δ(0°<δ<90°)よりも小さい。
【0099】
図12に示されるように、工具Tのアンクランプ状態において、ドローバ61が第2位置PBに配置される場合に、中間部材71の第2周面76は、ハウジング51の第1周面56と接触している。
図14に示されるように、工具Tのクランプ状態において、ドローバ61が第1位置PAに配置される場合に、中間部材71の第2テーパ面77は、ハウジング51の第1テーパ面57と接触している。
【0100】
図12および
図13に示されるように、工具Tのアンクランプ状態からクランプ状態への移行時、まず、ハウジング51の第1周面56と、中間部材71の第2周面76とを接触させながら、ピストン81を第1方向Daに向けてストロークさせる。ピストン81のストロークに伴って、中間部材71が、所定軸210の半径方向外側にスライドしつつ、所定軸210の軸方向にスライドする。
【0101】
このとき、第1周面56および第2周面76が、それぞれ、第1テーパ面57および第2テーパ面77と比較して、所定軸210に対して小さい角度をなすため、所定軸210の半径方向外側に向けた中間部材71のスライド量の割合を減少させ、所定軸210の軸方向における中間部材71のスライド量の割合を増大させることができる。これにより、中間部材71とともにドローバ61を第1方向Daに向けて大きくストロークさせることができる。
【0102】
このように構成された、この発明の実施の形態2における工具クランプ装置によれば、実施の形態1に記載の効果を同様に奏することができる。また、所定軸210に対して第1周面56および第2周面76がなす角度と、所定軸210に対して第1テーパ面57および第2テーパ面77がなす角度とをより近づけることによって、工具Tのクランプ動作およびアンクランプ動作をより円滑にすることができる。
【0103】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0104】
この発明は、たとえば、工作機械に搭載される工具ホルダに適用される。
【符号の説明】
【0105】
10 工作機械、11 ベッド、16 サドル、18 自動工具交換装置、21 主軸台、31 刃物台、32 刃物台ベース、33 タレット、46 コレット、51 ハウジング、52 第1挿入孔、55 接続部、56 第1周面、57 第1テーパ面、61 ドローバ、62 第2挿入孔、63 開口部、66 小径部、67 大径部、71 中間部材、76 第2周面、77 第2テーパ面、78,79,86,87,221,222 テーパ面、81 ピストン、82 先端部、83 基部、84 胴部、91 シリンダ、92 第1油圧室、93 第2油圧室、100 工具クランプ装置、101 中心軸、102 旋回中心軸、121 工具ホルダ、210 所定軸、Da 第1方向、Db 第2方向、J 工具自動交換位置、K ワーク加工位置、PA 第1位置、PB 第2位置、T 工具。
【手続補正書】
【提出日】2021-10-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】追加
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
【
図1】この発明の実施の形態1における工具クランプ装置を用いた工作機械を示す斜視図である。
【
図2】刃物台における工具の自動交換位置を示す側面図である。
【
図3】刃物台における工具のワーク加工位置を示す側面図である。
【
図5】
図1中の工具ホルダ(アンクランプ状態)を示す断面図である。
【
図6】
図1中の工具ホルダ(クランプ状態)を示す断面図である。
【
図7】
図4から
図6中のドローバおよび中間部材を示す斜視図である。
【
図8】
図5中の2点鎖線VIIIにより囲まれた範囲の工具クランプ装置(アンクランプ状態)を示す断面図である。
【
図9】工具クランプ装置(アンクランプ状態からクランプ状態への移行時)を示す断面図である。
【
図10】
図6中の2点鎖線Xにより囲まれた範囲の工具クランプ装置(クランプ状態)を示す断面図である。
【
図11】比較例における工具クランプ装置を示す断面図である。
【
図12】この発明の実施の形態2における工具クランプ装置(アンクランプ状態)を部分的に示す断面図である。
【
図13】
図12中の工具クランプ装置(アンクランプ状態からクランプ状態への移行時)を示す断面図である。
【
図14】
図12中の工具クランプ装置(クランプ状態)を示す断面図である。
【
図15】
図12中の2点鎖線XVで囲まれた範囲を拡大して示す断面図である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0093
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0093】
(実施の形態2)
図12は、この発明の実施の形態2における工具クランプ装置(アンクランプ状態)を部分的に示す断面図である。
図13は、
図12中の工具クランプ装置(アンクランプ状態からクランプ状態への移行時)を示す断面図である。
図14は、
図12中の工具クランプ装置(クランプ状態)を示す断面図である。
図15は、図12中の2点鎖線XVで囲まれた範囲を拡大して示す断面図である。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0095
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0095】
図12から
図15を参照して、本実施の形態では、ハウジング51の第1周面56が、所定軸210を中心に周回し、所定軸210に対して傾斜するテーパ形状をなす内周面からなる。第1周面56は、第1方向Daに向かうほど大きくなる直径(内径)を有する。第1周面56は、工具Tの挿入方向における手前側から奥側に向かうほど大きくなる直径(内径)を有する。