(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123318
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】歯科用温水器
(51)【国際特許分類】
A61C 1/08 20060101AFI20230829BHJP
A61C 19/00 20060101ALI20230829BHJP
A61C 17/00 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
A61C1/08 F
A61C19/00 H
A61C17/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022039681
(22)【出願日】2022-02-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】516260800
【氏名又は名称】株式会社エム・ディ・インスツルメンツ
(72)【発明者】
【氏名】山中 通三
(72)【発明者】
【氏名】松村 洋志
(72)【発明者】
【氏名】西 祥穂
(72)【発明者】
【氏名】三浦 大司
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA06
4C052AA10
4C052LL04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、金属製の既存の歯科用温水器より保温性が高く、軽量で、結露しにくく、安価で、過酸化水素水等に耐性があり、樹脂のみで作製する歯科用温水器より放熱性があり、水温の精細な管理が可能で、空焚き時からの復帰時間が短い歯科用温水器を提供することを課題とする。
【解決手段】樹脂で形成された本体部2の中心に軸方向に延びるヒータ11が設けられ、被加熱水の取込口8と出水口9とが設けられ、取込口から水が供給され、樹脂製の本体部とヒータの間の空洞部16を通過して温められ出水路17を経由して出水口から温水として送り出されるように形成され、空焚き時はヒータへの電力供給回路を遮断した後に、本体部とヒータの間の空洞部に籠った熱を樹脂より熱伝導性の高い金属製のキャップ3、7から放熱し、空洞部の温度を下げ、ヒータへの電力供給回路の復帰時間を短縮できるように形成されたものとする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂で形成された袋状または筒状の本体部の中心に軸方向に延びるヒータが設けられ、本体部の上部または下部に設けられた取込口と出水口とがあり、取込口から水が供給され、樹脂製の本体部とヒータの間の空洞部を通過して温められ出水口から温水として送り出されるように形成された歯科用温水器において、本体部とヒータの間の空洞部に籠った熱を放熱する樹脂より熱伝導性の高い金属製のキャップを本体部の上部及び/または下部に設けることを特徴とする歯科用温水器。
【請求項2】
請求項1において、上部の金属製キャップに温度調節装置及び/または温度過昇防止装置が取り付けられていることを特徴とする歯科用温水器。
【請求項3】
請求項1または2において、金属製キャップはヒータの近傍に配置されたスリーブ部を有することを特徴とする歯科用温水器。
【請求項4】
請求項3において前述のスリーブ部はヒータを囲む筒状であることを特徴とする歯科用温水器。
【請求項5】
請求項4において前述のスリーブ部は筒状の円筒形であり、内径はヒータの外径より大きく、外径は本体部の内径より小さいことを特徴とする歯科用温水器。
【請求項6】
請求項3において前述のスリーブ部の下端はヒータの上端より下に位置することを特徴とする歯科用温水器。
【請求項7】
請求項3において前述のスリーブ部の下端は本体部内の温水の水面より下に位置することを特徴とする歯科用温水器。
【請求項8】
請求項1において本体部、ヒータ、金属製のキャップを過酸化水素水等に腐食されない材料で構成した歯科用温水器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用温水器に関するものであり、さらに詳細には、患部洗浄とうがい用の水を供給する機能を有する歯科治療用機器に供給する水を温めるための温水器に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療中の口腔内のうがい、スプレーによる治療箇所の洗浄には水が使用されている。また、歯科治療のため歯牙を切削する際に、切削チップと歯牙との摩擦抵抗を低減したり、切削屑を排出することを目的として、切削箇所に水が供給される。多くの場合、これらの水は水道水であり、比較的温度が低いため、これが歯牙の治療箇所や虫歯等にしみ込んで、患者が痛みを感じることがある。このような問題を解決するために、うがい水を体温と同程度の温度に温める温水器が使用されている。
【0003】
通常、夜間や休日に歯科治療機器は使用されず、放置される。この間に水道水の中で増殖した雑菌や、水配管経路の内壁に付着した汚損物、また、歯牙を切削したりした器具に付着した患部の汚れ等を消毒・滅菌するニーズが、昨今の衛生意識の高まりと共に強まっている。そこで、歯科業界では希釈された過酸化水素水や次亜塩素酸水等の薬液で治療器具の水系統の滅菌を行う傾向が進んでいる。尚、本書類では希釈された過酸化水素水や次亜塩素酸水等の薬液を過酸化水素水等と記載する。
【0004】
公知例として、分解して内部の洗浄や故障した部品の交換ができる構造を持つ歯科用温水器は特許文献1に開示されている。しかし、本体内部構成部品に過酸化水素水等に対して耐性のある部品を使用しているか、および後述する空焚き時に内部の温度を下げる方法についての記述は無い。
【0005】
公知例として、給水部が水回路の一番下に配置しており、水の供給部から空気を送ることで内部の水が抜けやすい構造を持つ歯科用温水器は特許文献2に開示されている。しかし、水回路に過酸化水素水等に対して耐性のある部品を使用しているか、及び空焚き時に内部の温度を下げる方法についての記述は無い。
【0006】
公知例として、過酸化水素水等での洗浄が可能な構造を持つ金属製の歯科用温水器は流通している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3974908号公報
【特許文献1】実公昭13-007675
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
過酸化水素水等での洗浄が可能な構造を持ち、すでに流通している金属製の歯科用温水器に課題がないわけではない。
【0009】
水回路が全て過酸化水素水等に耐性がある金属で歯科用温水器を構成すると、保温性が低く、重量が重く、結露しやすく、高価であるという課題がある。また、樹脂で温水器を構成すると、過酸化水素水等に耐性があり、重さや保温性、結露の課題は解決するが、精細な水温の管理が困難であり、また、空焚き時からの復帰時間が長いという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の歯科用温水器は樹脂で形成された袋状または筒状の本体部の中心に軸方向に延びるヒータが設けられ、本体部の上部または下部に設けられた取込口と出水口とがあり、取込口から水が供給され、樹脂製の本体部とヒータの間の空洞部を通過して温められ出水口から温水として送り出されるように形成された歯科用温水器において、本体部とヒータの間の空洞部に籠った熱を放熱する樹脂より熱伝導性の高い金属製のキャップを本体部の上部及び/または下部に設けることを特徴とする。
【0011】
(2)(1)の歯科用温水器において、上部の金属製キャップに温度調節装置及び/または温度過昇防止装置が取り付けられていることを特徴とする。
【0012】
(3)(1)または(2)の歯科用温水器において、金属製キャップはヒータの近傍に配置されたスリーブ部を有することを特徴とする。
【0013】
(4)(3)の歯科用温水器において前述のスリーブ部はヒータを囲む筒状であることを特徴とする。
【0014】
(5)(4)の歯科用温水器において前述のスリーブ部は筒状の円筒形であり、内径はヒータの外径より大きく、外径は本体部の内径より小さいことを特徴とする。
【0015】
(6)(3)の歯科用温水器において前述のスリーブ部の下端はヒータの上端より下に位置することを特徴とする。
【0016】
(7)(1)の歯科用温水器において前述のスリーブ部の下端は本体部内の温水の水面より下に位置することを特徴とする。
【0017】
(8)(1)の歯科用温水器において本体部、ヒータ、金属製のキャップを過酸化水素水等に腐食されない材料で構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、本体部を樹脂で構成することで全てが金属製の既存の歯科用温水器より保温性が高く、軽量で、結露しにくく、安価に作製できる。また、樹脂より熱伝導性の高い金属製のキャップを持つことで樹脂のみで作製する歯科用温水器より放熱性が高く、水温が早く下がることでヒータのオン/オフを細かくできるため、水温の精細な管理が可能な歯科用温水器を提供できる。
【0019】
本発明において上部の金属製キャップに温度調節装置及び/または温度過昇防止装置を取り付けることで、金属より熱伝導率の低い樹脂部品に取り付けるよりも歯科用温水器内の水や空気の熱を温度調節装置及び/または温度過昇防止装置の温度検出部に伝えやすくなるため通常稼働時には水温のより精細な管理が可能となり、空焚き時は温度過昇防止装置の復帰時間がより短い歯科用温水器を提供できる。
【0020】
本発明においてヒータの近傍に配置されたスリーブ部を金属製キャップに設けると、スリーブ部を持たない歯科用温水器と比較してヒータ周辺の温められた水の熱をより効率的に収集し、金属製キャップを介して放熱し、水温が早く下がることでヒータのオン/オフを細かくできるため、水温のより精細な管理が可能な歯科用温水器を提供できる。また、スリーブ部を設けた金属製キャップに温度調節装置及び/または温度過昇防止装置を設けた場合、スリーブ部の無い金属製キャップに設けた場合と比較して、ヒータ周辺で温められた水や空気の熱をより効率的に収集し、金属製キャップに伝えることで歯科用温水器内の水や空気の熱を温度調節装置及び/または温度過昇防止装置の温度検出部に伝えやすくなるため通常稼働時には水温のより精細な管理が可能となり、空焚き時は温度過昇防止装置の復帰時間がより短い、または復帰時間を必要とする可能性が低い歯科用温水器を提供できる。
【0021】
本発明において前述のスリーブ部はヒータを囲む筒状とすることで針状とするよりヒータ周辺の温められた水の熱をより効率的に収集し、金属製キャップを介して放熱し、水温が早く下がることでヒータのオン/オフを細かくできるため、水温のより精細な管理が可能な歯科用温水器を提供できる。また、ヒータを囲む筒状のスリーブ部を持つ金属製キャップに温度調節装置及び/または温度過昇防止装置を設けた場合、針状のスリーブ部を持つ金属製キャップに設けた場合と比較して、ヒータ周辺で温められた水や空気の熱をより効率的に収集し、金属製キャップに伝えることで歯科用温水器内の水や空気の熱を温度調節装置及び/または温度過昇防止装置の温度検出部に伝えやすくなるため通常稼働時には水温のより精細な管理が可能となり、空焚き時は温度過昇防止装置の復帰時間がより短い、または復帰時間を必要とする可能性が低い歯科用温水器を提供できる。
【0022】
本発明において前述のスリーブ部の内径はヒータの外径より大きく、外径は本体部の内径より小さく設定する。このとき、温度調節装置及び/または温度過昇防止装置はスリーブ部とヒータの距離が近いと水が目的の温度まで昇温される前に動作してしまい、スリーブ部とヒータの距離が遠いと水が目的よりも高い温度まで昇温された後に動作するため、スリーブ部とヒータの間が温度調節装置及び/または温度過昇防止装置が目的の水温で動作するような距離になるよう、スリーブ部の内径の大きさを設定する必要がある。また、スリーブ部と本体部の距離が近いと空焚き時にスリーブ部で収集された熱が本体部に伝わり、本体部の表面が素手で触れないほど熱くなるため、過加熱時に本体部の表面の温度が過度に高くならない程度にスリーブ部と本体部の距離を確保できるよう、スリーブ部の外径の大きさを設定する。
【0023】
本発明において前述のスリーブ部の下端はヒータの上端より下に位置するように設定する。このとき、スリーブ部の下端とヒータの上端の距離が近いとスリーブ部とヒータが対面する面積が小さく、ヒータ周辺で温められた水の熱を収集するスリーブ部の面積が小さくなるため、水に対する温度調節装置及び/または温度過昇防止装置の温度の追従性が低くなるため、ヒータ周辺の温水に対する温度調節装置及び/または温度過昇防止装置の温度の追従性が高くなるよう、スリーブ部の下端とヒータの上端の距離を設定する。
【0024】
本発明において前述のスリーブ部の下端は水面より下に位置するように設定する。このとき、スリーブ部の下端と水面の距離が近いとヒータで温められて上部に移動した水の熱を収集するスリーブ部の面積が小さくなるため、水に対する温度調節装置及び/または温度過昇防止装置の温度の追従性が低くなり、距離が遠いとスリーブ部の下端が歯科用温水器内の下部にある低温の水の熱を収集し、ヒータ周辺の温水に対する温度調節装置及び/または温度過昇防止装置の温度の追従性が低くなるため、温められて上部に移動した水に対する温度調節装置及び/または温度過昇防止装置の温度の追従性が高くなるよう、スリーブ部の下端と水面の距離を設定する。
【0025】
本発明において歯科用温水器は本体内部構成部品を過酸化水素水等に腐食されない材料で構成しているため、水の代わりに取込口から過酸化水素水等を供給して内部を洗浄し、より衛生的に使用可能な歯科用温水器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係る歯科用温水器の一例の断面図である。
【
図2】本発明に係る
図1とは異なる歯科用温水器の一例であり、
図3におけるA-Aの断面図である。
【
図3】本発明に係る
図1とは異なる歯科用温水器の一例であり、
図2及び
図4の歯科用温水器の上面図である。
【
図4】本発明に係る
図1、
図2とは異なる歯科用温水器の一例であり、
図3におけるA-Aの断面図である。
【
図5】本発明に係る
図4におけるB-Bの断面の部分斜視図である。
【
図6】本発明に係る
図2、
図4の一部を変更した歯科用温水器の部分断面図である。
【
図7】実施例の歯科用温水器の通常稼働時における歯科用温水器内の水温の推移のグラフである。
【
図8】実施例の歯科用温水器の空焚き時における過加熱防止用サーモスタット検出部での温度の推移のグラフである。
【
図9】本発明に係る
図4の歯科用温水器の特徴的部分を実線であらわし他を破線であらわした斜視図である。
【
図10】本発明に係る
図4の歯科用温水器の特徴的部分を実線であらわし他を破線であらわした正面図である。
【
図11】本発明に係る
図4の歯科用温水器の特徴的部分を実線であらわし他を破線であらわした背面図である。
【
図12】本発明に係る
図4の歯科用温水器の特徴的部分を実線であらわし他を破線であらわした左側面図である。
【
図13】本発明に係る
図4の歯科用温水器の特徴的部分を実線であらわし他を破線であらわした右側面図である。
【
図14】本発明に係る
図4の歯科用温水器の特徴的部分を実線であらわし他を破線であらわした平面図である。
【
図15】本発明に係る
図4の歯科用温水器の特徴的部分を実線であらわし他を破線であらわした底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は本発明に係る歯科用温水器1の一実施例の断面図を示し、袋状に形成された樹脂製の本体部2の中心に軸方向に延びるヒータ11が設けられ、被加熱水の取込口8と出水口9とが設けられた金属製の下部キャップ7がOリング10を介して本体部2と接続され、温度過昇防止装置の一例である手動復帰型の過加熱防止用サーモスタット5と温度調節装置の一例である自己復帰型の温度制御用サーモスタット6が本体部2の上面および側面の温度を検出するように固定されている。金属製の下部キャップ7の最大外径部には雄ねじが形成され、その雄ねじとかみ合う雌ねじを内径側に形成した固定用リング14により本体部2と金属製の下部キャップ7は締結される。このように構成した歯科用温水器1で通常稼働時には水の流れ19に沿って取込口8から供給された水が樹脂製の本体部2とヒータ11の間の空洞部16を通過して温められ、水面15の付近から出水路17を経由して出水口9から温水として送り出される。ヒータ11の熱は伝熱の流れ20に沿って過加熱防止用サーモスタット5及び温度制御用サーモスタット6に伝わる。
【0028】
図1において歯科用温水器1の内部に満たされた被加熱水はヒータ11によって温められ、その熱が本体部2に伝わり、本体部2の表面の温度が上がったことを感知した温度制御用サーモスタット6によってヒータ11と電源との間の電流が遮断される。温度制御用サーモスタット6は自己復帰型なので、温水の消費に伴う被加熱水の供給や時間の経過により歯科用温水器1の内部に満たされた水の温度が下がり、本体部2の表面の温度が下がったことを温度検出部で感知するとヒータ11と電源を再び通電する。このとき、
図1の歯科用温水器1は全てが樹脂製で金属製のキャップを持たない歯科用温水器と比較して、空洞部16で温められた水は外部への放熱の流れ21に沿って樹脂製の本体部2よりも熱伝導率の高い金属製の下部キャップ7を経由して放熱され、空洞部16の水の温度が早く下がるため、
図7に示すようにヒータ11のオン/オフを細かくでき、より精細な水温のコントロールが可能となる。
【0029】
次に、
図1の歯科用温水器1における被加熱水の流れについて説明する。水道水などの外部供給源から供給される被加熱水は水の流れ19に沿って、取込口8を通して歯科用温水器1の内部に取り込まれる。取込口8から取り込まれた被加熱水は、歯科用温水器1の内部で温められ、出水口9から温水として送り出される。そして、この送り出された温水は、患者の口腔内で歯牙の切削治療時に水を噴射する機能やうがい水を提供する機能を有する歯科医療用機器に供給される。
【0030】
図1の歯科用温水器1は、
図2及び
図4の他の実施例と比較して金属製の上部キャップ3が無く、部品点数が少ない。そのため、より保温性が高く、軽量で、結露しにくく、安価な歯科用温水器1を提供できる。
【0031】
図1の歯科用温水器1では温度制御用サーモスタット6より高い動作温度を持つ過加熱防止用サーモスタット5を本体部2の上面に設けている。温度制御用サーモスタット6が故障した場合には過加熱防止用サーモスタット5が動作してヒータ11への電力供給を遮断し、水温が上がり続けることを防止する。また、過加熱防止用サーモスタット5は手動復帰型とすることで、温度制御用サーモスタット6の故障時に、温水の消費に伴う被加熱水の供給や時間の経過により歯科用温水器1の内部に満たされた水の温度が下がり、本体部2の表面の温度が復帰温度以下となったことを温度検出部で感知しても手動で復帰操作を実施しなければ接点が復帰せず、ヒータ11への電力供給が遮断されたままの状態が保たれるため、ヒータ11の稼働を止めた状態で歯科用温水器1の点検を行うことができ、自己復帰型とするより安全に使用出来る。
【0032】
図1の歯科用温水器1において納品、検査または故障等により被加熱水が出水路17の上端の高さまで供給されない場合のヒータ11の稼働である空焚きが生じた場合においては空洞部16の空気が温められ、その熱が本体部2に伝わり、本体部2の表面の温度が上がったことを検出部で感知した温度制御用サーモスタット6がヒータ11と電源の間の電流を遮断する。しかし、その後、ヒータ11の余熱により空洞部16の空気がより温められ、その熱により本体部2の表面の温度がさらに上がり、過加熱防止用サーモスタット5の遮断動作温度を上回る場合がある。過加熱防止用サーモスタット5は手動復帰型であるため、空焚きにより動作した場合は外部供給源から歯科用温水器1に被加熱水が供給されていること及び検出部の温度が復帰温度以下まで下がったことを確認後、接点の復帰操作を行うことで、歯科用温水器1を使用できるようになる。
【0033】
図1の歯科用温水器1において温度制御用サーモスタット6の故障により水温が上がることで温められた空気層18や空焚き時に空洞部16で温められた空気は膨張して上部へ移動するため、過加熱防止用サーモスタット5は本体部2の最上部の表面温度を検出するように取り付けることで側面部に取り付けるよりも効率よく動作させることができる。
【0034】
図1の歯科用温水器1において空焚き時に過加熱防止用サーモスタット5がヒータ11と電源の間の電流を遮断した後は本体部2の表面の温度が過加熱防止用サーモスタット5の動作温度以下まで下がらなければ通電を復帰させることができない。このとき、空焚き後に外部への放熱の流れ21に沿って空洞部16で温められた空気は樹脂製の本体部2より熱伝導率の高い金属製の下部キャップ7を経由して放熱されるため、全てが樹脂製で金属製のキャップを持たない歯科用温水器と比較して空洞部16の空気の温度が早く下がり、本体部2の表面温度が下がる。これにより、
図8に示すように空焚き時の
図1の歯科用温水器における過加熱防止用サーモスタットの電流遮断温度tb0から
図1の歯科用温水器における過加熱防止用サーモスタットの復帰温度tb1に至るまでの
図1の歯科用温水器における過加熱防止用サーモスタットの復帰時間Tbは金属製のキャップを持たない樹脂製の歯科用温水器における過加熱防止用サーモスタットの電流遮断温度ta0から金属製のキャップを持たない樹脂製の歯科用温水器における過加熱防止用サーモスタットの復帰温度ta1に至るまでの金属製のキャップを持たない樹脂製の歯科用温水器における過加熱防止用サーモスタットの復帰時間Taと比較して短くなる。そのため、
図1の歯科用温水器1は金属製のキャップを持たない樹脂製の歯科用温水器と比較して空焚き後により早く歯科用温水器1の使用を再開できる。
【0035】
図1の歯科用温水器1は水面15の上部に空気層18があり、内部の水の凍結などによって内圧が上昇した際には空気層18を圧縮することで圧力を逃がし、金属製の下部キャップ7が本体部2から離脱しにくい構造になっている。また、金属製の下部キャップ7の最大外径部の雄ねじと固定用リング14の内側の雌ねじにより本体部2と金属製の下部キャップ7が締結することで、内圧がより上昇した際に下部キャップ7が本体部2から離脱することを防止する。
【0036】
図1の歯科用温水器1は過酸化水素水等で腐食されないような材料で形成された本体部2と上部キャップ3と下部キャップ7とOリング10で内部の水系統を構成しているため、水の代わりに取込口8から過酸化水素水等を供給して内部を洗浄することでより衛生的に使用できる。
【0037】
図1の歯科用温水器1は分解と再組立てが可能な構造を持つため、歯科用温水器1を分解し、部品の内部に付着した水垢を洗浄したり、故障した部品を交換することで長期間の使用ができる。
【0038】
図1の歯科用温水器1は水の取込口8が水回路の一番下に配置しており、水の出水口9から空気を送ることで内部の水が抜けやすい構造を持つため内部に水を残さず、より衛生的な使用が可能である。
【0039】
図1の歯科用温水器1はろう付け箇所が無い構成であるため、金属製の歯科用温水器より製作費用を低減し、安価な作製が可能となる。
【0040】
図1の歯科用温水器1において、過酸化水素水等に耐性があり、金属よりも軽量で熱伝導性が低い樹脂で成形された本体部2の材質の例として、歯科用温水器1で必要とされる耐熱性を有しているポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニルサルホン(PPSU)、ポリサルフォン(PSU)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)が挙げられる。
【0041】
図1の歯科用温水器1において、過酸化水素水等に耐性がある金属製の上部キャップ3と下部キャップ7の材質の例として、SUS304とSUS316が挙げられる。
【0042】
図1の歯科用温水器1において、過酸化水素水等に耐性があるOリング10の材質の例として、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)が挙げられる。
【0043】
図2は、本発明に係る他の実施例の断面図を示し、歯科用温水器1は筒状に形成された樹脂製の本体部2の中心に軸方向に延びるヒータ11が設けられ、被加熱水の取込口8と出水口9とが設けられた金属製の下部キャップ7と上部キャップ3がOリング10を介して本体部2と接続され、上部キャップ3と下部キャップ7は本体部2を挟んで金属バンド12により固定ねじ13で締結されている。
図3は
図2の実施例の上面図で、金属製の上部キャップ3に手動復帰型の過加熱防止用サーモスタット5と自己復帰型の温度制御用サーモスタット6が取り付けられている。このように構成した歯科用温水器1で通常稼働時には水の流れ19に沿って取込口8から供給された水が樹脂製の本体部2とヒータ11の間の空洞部16を通過して温められ、水面15の付近から出水路17を経由して出水口9から温水として送り出される。ヒータ11の熱は伝熱の流れ20に沿って過加熱防止用サーモスタット5及び温度制御用サーモスタット6に伝わる。
【0044】
図2において歯科用温水器1の内部に満たされた被加熱水がヒータ11によって温められ、その熱が樹脂製の本体部2と空気層18を介さずに上部キャップ3に伝わり、上部キャップ3の表面の温度が上がったことを温度検出部で感知した温度制御用サーモスタット6によってヒータ11と電源の間の電流が遮断される。温水の消費や時間の経過により歯科用温水器1の内部に満たされた水の温度が下がり、上部キャップ3の表面の温度が下がったことを感知した温度制御用サーモスタット6によってヒータ11と電源は再び通電される。このとき、
図2の歯科用温水器1は樹脂製の本体部2を介して熱を伝える
図1の実施例や全てが樹脂製で金属製のキャップを持たない歯科用温水器と比較して、空洞部16で温められた水が外部への放熱の流れ21に沿って樹脂製の本体部2や空気層18を介さず、熱伝導率の高い金属製の上部キャップ3および下部キャップ7を経由して放熱されることでより早く温度が下がり、ヒータ11のオン/オフが細かくでき、また、伝熱の流れ20に沿って樹脂より熱伝導率の高い金属製の上部キャップ3を介して水温の変化をより早く温度制御用サーモスタット6に伝えることで水温の変化に対する温度制御用サーモスタット6の追従性が高くなるため、
図7のグラフに示すように水のより精密な温度コントロールが可能となる。
【0045】
図2の歯科用温水器1では
図3の上面図に示すように温度制御用サーモスタット6より高い動作温度を持つ過加熱防止用サーモスタット5を上部キャップ3の上面に設けている。温度制御用サーモスタット6が故障した場合には過加熱防止用サーモスタット5が動作してヒータ11への電力供給を遮断し、水温が上がり続けることを防止する。過加熱防止用サーモスタット5を手動復帰型とすることで、温度制御用サーモスタット6の故障時にヒータ11の稼働を止めた状態で歯科用温水器1の点検を行うことができる点は
図1の実施例と同様のため、説明を省略する。このとき、
図2の歯科用温水器1は樹脂より熱伝導率の高い金属製の上部キャップ3を介して過加熱防止用サーモスタット5に熱を伝えているため、樹脂製の本体部2を介して熱を伝える
図1の実施例や全てが樹脂製で金属製のキャップを持たない歯科用温水器と比較して水に対する過加熱防止用サーモスタット5の温度の追従性が向上し、より短い時間で動作することでヒータ11の温度上昇が抑制されるため、歯科用温水器1表面の最高到達温度が低くなり、より安全に使用出来る。
【0046】
図2の歯科用温水器1は空焚きが生じた場合、空洞部16の空気が温められ、その熱が上部キャップ3に伝わり、上部キャップ3の表面の温度が上がったことを感知した温度制御用サーモスタット6がヒータ11と電源の間の電流を遮断する。しかし、その後、ヒータ11の余熱により空洞部16の空気がより温められ、その熱により上部キャップ3の表面の温度がさらに上がり、過加熱防止用サーモスタット5の遮断動作温度を上回る場合がある。このとき、
図2の歯科用温水器1は樹脂より熱伝導率の高い金属製の上部キャップ3を介して伝熱の流れ20に沿って空洞部16の空気の熱を
図3の上面図に示す温度制御用サーモスタット6に伝えているため、樹脂を介して熱を伝える
図1の実施例や全てが樹脂製で金属製のキャップを持たない歯科用温水器と比較して過加熱防止用サーモスタット5の空洞部16の空気に対する温度の追従性が良くなり、短い時間で動作することでヒータ11の温度上昇が抑制されるため、歯科用温水器1表面の最高到達温度が低くなり、より安全に使用出来る。
【0047】
図2の歯科用温水器1において温度制御用サーモスタット6の故障により水温が上がることで温められた空気層18や空焚き時に空洞部16で温められた空気は膨張して上部へ移動するため、過加熱防止用サーモスタット5は歯科用温水器1の最上部にあり熱伝導率の高い金属製の上部キャップ3に取り付けることで側面部に取り付けるよりも効率よく動作させることができる。
【0048】
図2の歯科用温水器1は空焚き後、樹脂より熱伝導率の高い金属製の上部キャップ3と下部キャップ7を介して外部への放熱の流れ21に沿って空洞部16の空気の熱を放熱するため、
図8に示すように上部キャップ3を持たない
図1の実施例や全てが樹脂製で金属製のキャップを持たない歯科用温水器と比較して過加熱防止用サーモスタットの電流遮断温度tc0から
図2の歯科用温水器における過加熱防止用サーモスタットの復帰温度tc1に至るまでの
図2の歯科用温水器における過加熱防止用サーモスタットの復帰時間Tcは金属製のキャップを持たない樹脂製の歯科用温水器における過加熱防止用サーモスタットの復帰時間Ta及び
図1の歯科用温水器における過加熱防止用サーモスタットの復帰時間Tbと比較して短くなる。そのため、
図2の歯科用温水器1は金属製のキャップを持たない樹脂製の歯科用温水器や
図1の歯科用温水器と比較して空焚き後により早く歯科用温水器1の使用を再開できる。
【0049】
図2の歯科用温水器1は水面15の上部に空気層18があり、内部の水の凍結等によって内圧が上昇した際には空気層を圧縮することで圧力を逃がし、金属製の下部キャップ7が本体部2から離脱しにくい構造になっている。また、金属バンド12と固定ねじ13を使用して上部キャップ3と下部キャップ7を本体部2に固定しているので、内圧がより上昇した際に上部キャップ3と下部キャップ7が本体部2から離脱することを防止する。
【0050】
図2の歯科用温水器1は樹脂製の本体部2を単純な形状とすることで、本体部2単体の製作費用を
図1の実施例や全てが樹脂製で金属製のキャップを持たない歯科用温水器より低減でき、特に射出成形であればより安価な作製が可能となる。
【0051】
図2の歯科用温水器1は、
図4の歯科用温水器1と比較してスリーブ部品4が無く、加工費が削減されるため、より安価な歯科用温水器1を提供できる。
【0052】
図2の歯科用温水器1の被加熱水の流れ、過酸化水素水等への耐性、再組立て可能な構造であること、給水部が水回路の一番下に配置すること、ろう付け箇所が無い構成であることとその効果は、
図1の実施例と同様のため説明を省略する。
【0053】
図4は、本発明に係る他の実施例の断面図を示し、歯科用温水器1は筒状に形成された樹脂製の本体部2の中心に軸方向に延びるヒータ11が設けられ、被加熱水の取込口8と出水口9とが設けられた金属製の下部キャップ7と樹脂より熱伝導率の高い材料でできたスリーブ部品4が設けられた上部キャップ3がOリング10を介して本体部2と接続され、上部キャップ3と下部キャップ7は本体部2を挟んで金属バンド12により固定ねじ13で締結されている。
図3は
図4の実施例の上面図で、金属製の上部キャップ3に温度制御用サーモスタット6と過加熱防止用サーモスタット5が取り付けられている。このように構成した歯科用温水器1で通常稼働時には水の流れ19に沿って取込口8から供給された水が樹脂製の本体部2とヒータ11の間の空洞部16を通過して温められ、水面15の付近から出水路17を経由して出水口9から温水として送り出される。ヒータ11の熱は伝熱の流れ20に沿って過加熱防止用サーモスタット5及び温度制御用サーモスタット6に伝わる。
【0054】
図4において歯科用温水器1の内部に満たされた被加熱水がヒータ11によって温められ、その熱が樹脂製の本体部2と空気層18を介さずにスリーブ部品4を経由して上部キャップ3に伝わり、上部キャップ3の表面の温度が上がったことを温度検出部で感知した温度制御用サーモスタット6によってヒータ11と電源の間の電流が遮断される。温水の消費に伴う被加熱水の供給や時間の経過により歯科用温水器1の内部に満たされた水の温度が下がり、スリーブ部品4を経由して上部キャップ3の表面の温度が下がったことを温度検出部で感知した温度制御用サーモスタット6によってヒータ11と電源は再び通電される。このとき、
図4の歯科用温水器1は樹脂製の本体部2を介して熱を伝える
図1の実施例やスリーブ部品4を持たない
図2の実施例及び全てが樹脂製で金属製のキャップを持たない歯科用温水器と比較して、空洞部16で温められた水が外部への放熱の流れ21に沿って樹脂製の本体部2や空気層18を介さずに熱伝導率の高い材料でできたスリーブ部品4と金属製の上部キャップ3及び下部キャップ7を経由してより早く放熱されることでヒータ11のオン/オフを細かくでき、また、伝熱の流れ20に沿って樹脂より熱伝導率の高い材料でできたスリーブ部品4と金属製の上部キャップ3を介して水温の変化をより早く温度制御用サーモスタット6に伝えることで、水温の変化に対する温度制御用サーモスタット6の追従性が高くなるため、
図7のグラフに示すように水のより精密な温度コントロールが可能となる。
【0055】
図4の歯科用温水器1では
図3の上面図に示すように温度制御用サーモスタット6より高い動作温度を持つ過加熱防止用サーモスタット5を上部キャップ3の上面に設けている。温度制御用サーモスタット6が故障した場合には過加熱防止用サーモスタット5が動作してヒータ11への電力供給を遮断し、水温が上がり続けることを防止する。過加熱防止用サーモスタット5を手動復帰型とすることで、温度制御用サーモスタット6の故障時にヒータ11の稼働を止めた状態で歯科用温水器1の点検を行うことができる点は
図1及び
図2の実施例と同様のため、説明を省略する。このとき、
図4の歯科用温水器1は樹脂より熱伝導率の高い材料でできた金属製の上部キャップ3とスリーブ部品4を介して過加熱防止用サーモスタット5に熱を伝えているため、樹脂製の本体部2を介して熱を伝える
図1の実施例やスリーブ部品4を持たない
図2の実施例及び全てが樹脂製で金属製のキャップを持たない歯科用温水器と比較して水に対する過加熱防止用サーモスタット5の温度の追従性が向上し、より短い時間で動作することでヒータ11の温度上昇が抑制されるため、歯科用温水器1表面の最高到達温度が低くなり、より安全に使用出来る。
【0056】
図4の歯科用温水器1は空焚きが生じた場合、空洞部16の空気が温められ、その熱がスリーブ部品4を経由して上部キャップ3に伝わり、上部キャップ3の表面の温度が上がったことを温度検出部で感知した温度制御用サーモスタット6がヒータ11と電源の間の電流を遮断する。このとき、
図4の歯科用温水器1は樹脂より熱伝導率の高いスリーブ部品4と金属製の上部キャップ3を介して伝熱の流れ20に沿ってヒータ11によって温められた空洞部16の空気の熱を温度制御用サーモスタット6に伝えているため、樹脂製の本体部2と空気層を介して熱を伝える
図1の実施例、スリーブ部品4を持たない
図2の実施例及び全てが樹脂製で金属製のキャップを持たない歯科用温水器よりも温度制御用サーモスタット6で電流が遮断される際のヒータ11の温度は低くなる。
【0057】
図4の歯科用温水器1は空焚きが生じて温度制御用サーモスタット6が動作した後、空洞部16で温められた空気が外部への放熱の流れ21に沿って樹脂製の本体部2を介さずに熱伝導率の高い材料でできたスリーブ部品4と金属製の上部キャップ3および下部キャップ7を経由して放熱されるため、脂製の本体部2を介して熱を伝える
図1の実施例やスリーブ部品4を持たない
図2の実施例及び全てが樹脂製で金属製のキャップを持たない歯科用温水器と比較してより早く冷却される。
【0058】
図4の歯科用温水器1は脂製の本体部2を介して熱を伝える
図1の実施例やスリーブ部品4を持たない
図2の実施例及び全てが樹脂製で金属製のキャップを持たない歯科用温水器と比較して空焚きが生じて温度制御用サーモスタット6が動作した後に電流が遮断される際のヒータ11の温度が低く、空洞部16で温められた空気がより早く冷却されるため、ヒータ11の余熱により空洞部16の空気は温められ、その熱によりスリーブ部品4を経由して上部キャップ3の表面の温度は上がるものの、過加熱防止用サーモスタット5の遮断動作温度を上回る可能性が低くなる。そのため、
図8に示すように
図4の実施例は空焚き時に過加熱防止用サーモスタット5を動作させずに、空焚き時の動作に対処でき、過加熱防止用サーモスタット5の復帰時間を必要とする可能性が低くなる。
【0059】
図4の歯科用温水器1においてスリーブ部品4は
図5に示すようにヒータ11を囲む筒状とすることで針状とするよりもヒータ11からの熱をより効率的に収集し、上部キャップ3を介して放熱し、水温が早く下がることでヒータのオン/オフを細かくできるため、水温のより精細な管理が可能な歯科用温水器を提供できる。また、ヒータ11を囲む筒状のスリーブ部品4を持つ上部キャップ3に過加熱防止用サーモスタット5と温度制御用サーモスタット6を設けた場合、針状のスリーブ部を持つ上部キャップに設けた場合と比較して、ヒータ11により上部の空間22で温められた水や空気の熱をより効率的に収集し、上部キャップ3に伝えることで歯科用温水器内の水や空気の熱を過加熱防止用サーモスタット5と温度制御用サーモスタット6の温度検出部に伝えやすくなるため通常稼働時には水温のより精細な管理が可能となり、空焚き時は過加熱防止用サーモスタット5の復帰時間を必要とする可能性が低くなる。また、単純な形状となるため加工費は安くなる。
【0060】
図4の歯科用温水器1において筒状である円筒形としたスリーブ部品4は
図5に示すスリーブ部品の内径d1をヒータの外径d3より大きく設定する。このとき、
図3の上面図に示す過加熱防止用サーモスタット5及び温度制御用サーモスタット6はスリーブ部品4とヒータ11の距離が近いと水が目的の温度まで昇温される前に動作し、スリーブ部品4とヒータ11の距離が遠いと水が目的よりも高い温度まで昇温された後に動作するため、スリーブ部品4とヒータ11の間は過加熱防止用サーモスタット5及び温度制御用サーモスタット6が目的の水温で動作する距離になるよう、ヒータの外径d3に対してスリーブ部品の内径d1の大きさを設定する必要がある。
【0061】
図4の歯科用温水器1において筒状である円筒形としたスリーブ部品4は
図5に示すスリーブ部品の外径d2を本体部の内径d4より小さく設定する。このとき、スリーブ部品4と本体部2の距離が近いと空焚き時にスリーブ部品4で収集された熱が本体部2に伝わり、本体部2の表面が素手で触れないほど熱くなるため、過加熱時に本体部2の表面の温度が過度に高くならない程度にスリーブ部品4と本体部2の距離を確保できるよう、本体部の内径d4に対してスリーブ部品の外径d2の大きさを設定する必要がある。スリーブ部品4を介してヒータ11の熱を本体部2に伝え、本体部2の表面が素手で触れない温度まで高くならないようにすることで、本体部2の表面への素手での接触を避けるためのカバー等を歯科用温水器1の外側に設ける必要が少なくなる。
【0062】
図4の歯科用温水器1においてスリーブ部品下端の位置H3はヒータの上端の位置H2より下になるように設定する。このとき、スリーブ部品下端の位置H3とヒータの上端の位置H2の距離が近いとスリーブ部品4とヒータ11が対面する上部の空間22の面積が小さく、空焚き時にヒータ11の周辺で温められた空気の熱を収集するスリーブ部4の面積が小さくなり、温められた空気に対する過加熱防止用サーモスタット5と温度制御用サーモスタット6の温度の追従性が低くなるため、温度の追従性を確保できるようにヒータの上端の位置H2に対するスリーブ部品下端の位置H3を設定する必要がある。
【0063】
図4の歯科用温水器1においてスリーブ部品下端の位置H3は水面の位置H1より下になるように設定する。このとき、スリーブ部品下端の位置H3と水面の位置H1の距離が近いとスリーブ部品4がヒータ11で温められて上部に移動した水の熱を収集する面積が小さくなるため、水に対する過加熱防止用サーモスタット5と温度制御用サーモスタット6の温度の追従性が低くなり、距離が遠いとスリーブ部品4の下端が歯科用温水器1内の下部にある低温の水の熱を収集し、ヒータ11の周辺の水に対する過加熱防止用サーモスタット5と温度制御用サーモスタット6の温度の追従性が低くなるため、温められて上部に移動した水に対する過加熱防止用サーモスタット5と温度制御用サーモスタット6の温度の追従性を確保できるように水面の位置H1に対するスリーブ部品下端の位置H3を設定する必要がある。
【0064】
図4の歯科用温水器1においてスリーブ部品4は上部キャップ3と一体成型する他に、上部キャップ3に後付けする方法で作製できる。
【0065】
図4の歯科用温水器1において、過酸化水素水等に耐性があるスリーブ部品4の材質の例として、SUS304とSUS316が挙げられる。
【0066】
図4の歯科用温水器1の被加熱水の流れ、過酸化水素水等への耐性、再組立て可能な構造であること、給水部が水回路の一番下に配置すること、ろう付け箇所が無い構成であることとその効果は、
図1の実施例と同様であり、水面15の上部に空気層18があり、金属バンド12と固定ねじ13を使用して上部キャップ3と下部キャップ7を本体部2に固定した構造であること、樹脂製の本体部2を単純な形状とすることで安価な作製が可能なこととその効果は
図2の実施例と同様のため、説明を省略する。
【0067】
図6は本発明に係る他の実施例を示す部分断面図であり、
図2の実施例及び
図4の実施例の出水口9を下部キャップ7ではなく上部キャップ3に設ける方法である。これにより、ヒータ11によって温められて上部に移動した温水を流水路17が無くても出水口9から送り出すことができ、流水路17の必要が無い分、
図3の実施例及び
図4の実施例より安価な歯科用温水器の作製が可能である。
【0068】
図9~
図15は
図4の実施例の外観図である。破線で示した金属バンド12は歯科用温水器1の内圧が上昇した際に上部キャップ3と下部キャップ7が本体部2から離脱することを防止するために設けられており、使用条件により内圧の上昇が少ないと想定される場合は金属バンド12の形状を簡易化したり、省略することができる。破線で示した過加熱防止用サーモスタット5と温度制御用サーモスタット6は歯科用温水器1内の水および空気の温度を検知するために設けられており、他の温度調節器及び温度過昇防止装置での置き換えが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 歯科用温水器
2 本体部
3 上部キャップ
4 スリーブ部品
5 過加熱防止用サーモスタット
6 温度制御用サーモスタット
7 下部キャップ
8 取込口
9 出水口
10 Oリング
11 ヒータ
12 金属バンド
13 固定ねじ
14 固定用リング
15 水面
16 空洞部
17 出水路
18 空気層
19 水の流れ
20 伝熱の流れ
21 外部への放熱の流れ
22 上部の空間
d1 スリーブ部品の内径
d2 スリーブ部品の外径
d3 ヒータの外径
d4 本体部の内径
H1 水面の位置
H2 ヒータ上端の位置
H3 スリーブ部品下端の位置
ta0 金属製のキャップを持たない樹脂製の歯科用温水器における過加熱防止用サーモ スタットの電流遮断温度
tb0
図1の歯科用温水器における過加熱防止用サーモスタットの電流遮断温度
tc0
図2の歯科用温水器における過加熱防止用サーモスタットの電流遮断温度
ta1 金属製のキャップを持たない樹脂製の歯科用温水器における過加熱防止用サーモ スタットの復帰温度
tb1
図1の歯科用温水器における過加熱防止用サーモスタットの復帰温度
tc1
図2の歯科用温水器における過加熱防止用サーモスタットの復帰温度
Ta 金属製のキャップを持たない樹脂製の歯科用温水器における過加熱防止用サーモス タットの復帰時間
Tb
図1の歯科用温水器における過加熱防止用サーモスタットの復帰時間
Tc
図2の歯科用温水器における過加熱防止用サーモスタットの復帰時間
【手続補正書】
【提出日】2022-11-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂で形成された筒状の本体部の中心に軸方向に延びるヒータが設けられ、本体部の下部に設けられた取込口と出水口とがあり、取込口から水が供給され、樹脂製の本体部とヒータの間の空洞部を通過して温められ出水口から温水として送り出されるように形成された歯科用温水器において、本体部とヒータの間の空洞部に籠った熱を放熱する樹脂より熱伝導性の高い金属製のキャップを本体部の上部に設け、上部の金属製キャップには温度調節装置と温度過昇防止装置が取り付けられ、上部の金属製キャップはヒータの近傍に配置された樹脂より熱伝導率の高い材料でできたスリーブ部を有し、スリーブ部の下端はヒータの上端より下に位置し、スリーブ部は筒状の円筒形であり、内径がヒータの外径より大きく、外径が本体部の内径より小さく、本体部との距離を確保できるよう、本体部の内径に対する外径の大きさが設定されており、上部の金属製キャップとスリーブ部を介して温度調節装置と温度過昇防止装置にヒータ周辺で温められた空洞部の水や空気の熱が伝わり、温度調節装置と温度過昇防止装置が動作することを特徴とする歯科用温水器。
【請求項2】
請求項1において前述のスリーブ部の下端は本体部内の温水の水面より下に位置することを特徴とする歯科用温水器。
【請求項3】
請求項1において前述の樹脂で形成された筒状の本体部はポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニルサルホン(PPSU)、ポリサルフォン(PSU)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)の耐熱性を有する樹脂のうちいずれかにより構成されることを特徴とする歯科用温水器。