(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123333
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】機械を診断するための方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20230829BHJP
H02P 29/024 20160101ALI20230829BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
G01M99/00 A
H02P29/024
G01H17/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145088
(22)【出願日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】22158578.9
(32)【優先日】2022-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.JAVASCRIPT
3.SMALLTALK
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 哲司
(72)【発明者】
【氏名】山下 智彬
(72)【発明者】
【氏名】ポール キルスビー
(72)【発明者】
【氏名】上村 卓也
(72)【発明者】
【氏名】榎田 光一
(72)【発明者】
【氏名】林 剛資
(72)【発明者】
【氏名】出口 見多
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
5H501
【Fターム(参考)】
2G024AD01
2G024BA27
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB22
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC41
2G064CC43
2G064DD02
5H501BB08
5H501BB09
5H501DD03
5H501HB07
5H501JJ03
5H501LL01
5H501LL22
5H501LL53
5H501MM09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】計算上複雑な処理を回避しながら、少なくとも機械のスリップのより正確な決定を可能にする、少なくとも方法、デバイスおよびコンピュータプログラム製品を提供することである。
【解決手段】機械のスリップを判断するための方法は、測定信号を受信するステップであり、測定信号が機械の動作パラメータの測定値のセットを含む、ステップと、測定信号を周波数領域に変換することによって測定信号の周波数スペクトルを決定するステップと、異なる種類の故障モードの計算が同一のスリップ値を返す、周波数スペクトルにおける少なくとも2つのピークを周波数スペクトルが含むかを決定するステップと、を含み、決定ステップにおいて、周波数スペクトルにおいて同一のスリップ値を返す2つのピークが存在することが発見された場合、その値は機械のスリップ値であると決定される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械のスリップを判断するための方法であって、
前記機械の動作パラメータの測定値のセットを含む測定信号を受信するステップと、
前記測定信号を周波数領域に変換することによって前記測定信号の周波数スペクトルへの変換を実行するステップと、
異なる種類の故障モードの計算が同一のスリップ値を返す、前記周波数スペクトルにおける少なくとも2つのピークを、前記周波数スペクトルが含むかを決定するステップと、を含み、
前記決定するステップにおいて、前記周波数スペクトルにおいて同一のスリップ値を返す2つのピークが存在することが発見された場合、前記同一のスリップ値は前記機械の前記スリップ値であると判断される、機械のスリップを判断するための方法。
【請求項2】
請求項1に記載の機械のスリップを判断するための方法において、
前記故障モードの計算を実行するために、故障モードの特性周波数を計算するための式が使用される、機械のスリップを判断するための方法。
【請求項3】
請求項2に記載の機械のスリップを判断するための方法において、
前記機械はモーターであり、
前記故障モードの計算のために使用される第1の式は、前記機械の破損した回転子バーの特性周波数であり、第2の式は、前記機械の異常回転の特性周波数である、機械のスリップを判断するための方法。
【請求項4】
請求項3に記載の機械のスリップを判断するための方法において、
前記故障モードの計算は、前記周波数スペクトルから読み取られたピークの周波数値を前記式に代入し、前記スリップの値のために前記式を解くことによって実行される、機械のスリップを判断するための方法。
【請求項5】
請求項4に記載の機械のスリップを判断するための方法において、
前記決定するステップが実行される前に前記周波数スペクトルにおけるピークの数を減少させるさらなるステップを含み、ピークを減少させる前記ステップは、前記機械の前記周波数スペクトルにおける少なくとも2つのピークについて対称ではないピークを削除することによって実行される、機械のスリップを判断するための方法。
【請求項6】
請求項5に記載の機械のスリップを判断するための方法において、
折りたたみ周波数ピークに関係するピークが削除されない、機械のスリップを判断するための方法。
【請求項7】
請求項6に記載の機械のスリップを判断するための方法において、
前記方法は、スリップ値の所定の範囲を設定することによって、ピークを探索するための周波数範囲を縮小させるさらなるステップを含む、機械のスリップを判断するための方法。
【請求項8】
請求項7に記載の機械のスリップを判断するための方法において、
スリップ値の前記所定の範囲は0と0.1との間に設定される、機械のスリップを判断するための方法。
【請求項9】
請求項8に記載の機械のスリップを判断するための方法において、
前記動作パラメータは、時間の経過にともなって測定された前記機械の相電流である、機械のスリップを判断するための方法。
【請求項10】
請求項8に記載の機械のスリップを判断するための方法において、
前記動作パラメータは、時間の経過にともなって測定された前記機械のトルク電流である、機械のスリップを判断するための方法。
【請求項11】
請求項1に記載の機械のスリップを判断するための方法において、
ピークの複数の対が、前記決定するステップにおいて決定された場合、前記スリップ値は、事前に定義された決定規則にしたがって前記機械の前記スリップとして判断される、機械のスリップを判断するための方法。
【請求項12】
請求項2に記載の機械のスリップを判断するための方法において、
前記決定のステップは、前記故障モードの前記特性周波数の上位の値に対して実行される、機械のスリップを判断するための方法。
【請求項13】
請求項3に記載の機械のスリップを判断するための方法において、
加えて、または代替として、前記モーターの回転速度は、決定された前記スリップ値に基づいて出力される、機械のスリップを判断するための方法。
【請求項14】
請求項1に記載の機械のスリップを判断するための方法を実行するためのデバイスであって、
前記デバイスは、測定信号を受信するための入力部を備え、前記測定信号は、前記機械の動作パラメータの測定値のセットを含み、前記デバイスは、前記測定信号を周波数領域に変換することによって前記測定信号の周波数スペクトルを決定することと、異なる種類の故障モードの計算が同一のスリップ値を返す、前記周波数スペクトルにおける少なくとも2つのピークを前記周波数スペクトルが含むかを決定することとを含む、前記方法のステップを実行するための演算部と、決定された前記スリップ値を出力するための出力部とをさらに備えるデバイス。
【請求項15】
コンピュータによって実行されたときに、請求項1に記載の方法を実施するように構成されたコンピュータプログラムロジックを有するコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機械診断および機械の故障予測の分野に関する。特に、本開示において、診断は、好ましくは回転機械、特にモーター、非常に好ましくは誘導型モーターである機械の回転速度またはスリップを確実に決定することに関する。本明細書に記載のスリップの正確な決定に基づいて、機械の欠陥または故障が確実に予測可能である。換言すれば、スリップ値を知ることによって、機械または機械部品の状態をより確実に判断できる。機械部品は、1つまたは複数のベアリング、アスクル、シャフト、ハウジングなどを含み得る。
【背景技術】
【0002】
機械の機械的欠陥は、致命的な故障につながり得るため、機械の動作上の安全性およびアップタイムを危うくする場合がある。したがって、好ましくは、機械の欠陥または劣化が機械の致命的な故障を引き起こすよりもかなり前に、その劣化または欠陥を確実に検出することが重要である。
【0003】
そのため、欠陥または劣化を避けるために、高い正確性で、欠陥または劣化が致命的な故障につながり得るよりもかなり前に、機械故障の兆候が検出されることが望ましい。
【0004】
機械の診断に関連して、特にモーターの診断に関して、モーター電流兆候解析(MCSA)が既に知られている。MCSAに基づいて、周波数スペクトルにおける特定の周波数または特定の周波数のピークが、異なる種類の欠陥または故障の指標として使用される。たとえば、モーターの異常回転は、以下の数式(数1)によって定義される相電流の特性周波数成分Fcharによって示され得る。
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特定の欠陥/故障モードを示す数1において、fはモーター電流の基本周波数、Pはモーターの極対の数、sはモーターのスリップ率(または「スリップ」)である。fおよびPは通常わかっているが、sの厳密値は通常わかっていない。スリップの値に関する情報の欠落は、結果的に、故障または欠陥の兆候検出の精度を低下させる。
【0007】
さらに、Fcharの信号レベルは、当然ながら周波数スペクトルにおけるノイズレベルと同等であり、さらに、周波数スペクトルは、故障または欠陥につながらないピークをさらに含む。その両方は、周波数スペクトルから直接スリップの値を読み取ることを困難にする。一方で、スリップがわかっておらず、または正確に判断されない場合、上述したように、欠陥または故障予測は困難であり、正確でない可能性がある。
【0008】
そのため、機械の診断の正確性に関する改善を可能とするためには、機械のスリップ値を高い正確性で特定することが望ましい。これに関連して、スリップを決定するための既に知られている概念、および周波数スペクトルの縮小された範囲の最大ピーク値の探索に基づく概念が存在する。この概念は、最大ピークが特定の欠陥の特性周波数を表すことと、これがスリップを決定可能とすることとを前提とする。ただし、この概念は、ピークが非常に小さく、ノイズと重なり得るという問題を有する。そのため、「正しい」ピークを特定することが困難であり、誤りを引き起こしやすい。同じ問題は、周波数信号の高調波がさらに小さいためにその高調波が分析されるという他の知られている概念と共通している。
【0009】
すなわち、特に、スリップ値の決定を改善することによって、機械の診断の改善を可能にすることが望ましい。
【0010】
本明細書に記載の開示の目的は、計算上複雑な処理を回避しながら、少なくとも機械のスリップのより正確な決定を可能にする、少なくとも方法、デバイスおよびコンピュータプログラム製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下の態様が特に提供される。
【0012】
第1の態様によれば、機械のスリップを判断する方法が提供される。好ましくは、その機械はモーターであり、非常に好ましくは、その機械は誘導型モーターである。
【0013】
上記方法は、スリップの値、すなわちスリップ値を決定し、任意で、出力するためのいくつかのステップを含み得る。その出力のステップは、ディスプレイを介してユーザに値を出力することを含んでもよく、および/または、その出力は、さらなる処理のために決定されたスリップ値を使用し得る他のエンティティまたは装置に対して、決定されたスリップ値を送信することを含んでもよい。たとえば、他の装置は、決定されたスリップ値に基づいて故障または欠陥を診断する、機械用の診断デバイスでもよく、他のエンティティは、本明細書に記載の方法が診断デバイス内で実行される場合に診断デバイスの他の部分でもよい。後者に関連した出力のステップは、さらに、データ接続を介してスリップ値に関係するデータを送信することに加えて、スリップの値がデータベースに格納され、他の装置またはその装置の他のエンティティがデータベースからその値を読み出すことも包含してもよい。
【0014】
方法のステップは、好ましくは、測定信号を受信するステップであって、測定信号が機械の動作パラメータの測定値の1つまたは複数のセットを含むステップ、測定信号を周波数領域に変換することによって測定信号の周波数スペクトルを決定するステップ、異なる種類の故障モードの計算が同一(数1及び数2の値が同じ)のスリップ値を返す、周波数スペクトルにおける少なくとも2つのピーク(その周波数値)を、周波数スペクトルが含むかを決定するステップ、および/または決定されたスリップ値を出力するステップをさらに含む。後者のステップは、代替的および/または追加的に、周波数スペクトルにおいて同一のスリップ値を返す2つのピークが存在することを決定ステップが発見した場合、その値が機械のスリップ値であると決定されることを含む/それに置き換えられる。
【0015】
測定信号は、時間の経過にともなう動作パラメータの測定値を記録/測定/感知する1つまたは複数のセンサから受信されてもよく、測定信号は2つの時点、すなわち開始時と終了時との間の測定値のセットである。2つの時点は、ユーザによって定義または設定されてもよく、または、測定値が記録される、事前に定義された時間スケジュールが設定されてもよい。さらに、1つまたは複数のセンサから測定信号を直接(またはデータロギングデバイスなどを介して)受信する代わりに、測定信号は、センサ(または任意の他のデバイス)の測定値が格納されたデータベースから読み出されてもよい。センサ(および/または他のデバイス)の測定値/データを直接使用することに関して、機械は瞬時的現在に診断され得る。データベースのデータを読み出すことによって、機械の動作後の任意の時点で機械を診断できるようになり、それによって診断のスケジューリングが可能となり、利便性が高い。
【0016】
さらに、測定信号を周波数領域に変換することによって測定信号の周波数スペクトルを決定するステップは、時間ベースの測定信号を周波数領域の周波数スペクトルに変換可能とする任意の知られている方法によって実行されることが可能であり、可能な一例は、高速フーリエ変換(FFT)の使用であり得る。
【0017】
さらに、異なる種類の故障モードの計算が同一(数1及び数2の値が同じ)のスリップ値を返す、周波数スペクトルにおける少なくとも2つのピークを、周波数スペクトルが含むかを決定するステップは、探索されたスリップ値を提供する。
【0018】
周波数スペクトルにおける「ピーク」または「周波数ピーク」は、好ましくは、極大値または最大値における単一の振幅値、または極大値または最大値の前後の振幅値の分布に関係することが理解されるであろう。ピークは、周波数スペクトルの周波数成分に関係する。周波数領域に変換された各入力/受信測定信号の場合、その変換された測定信号は複数の周波数成分を含み、周波数スペクトルの「周波数成分」という用語は、個別の周波数値における振幅値を示すものとする。たとえば、周波数領域に変換された測定信号が0Hzから100Hzの範囲を含む場合、0Hzと100Hzとの間(境界値を含む)の周波数値のそれぞれは、零でもあり得る任意の値をとり得る関連振幅値(周波数がx軸上にある場合はy軸値)を呈する。したがって、動作パラメータが電流の場合、特定の周波数成分における振幅値は、その周波数値におけるアンペアを単位とした電流の値となる。
【0019】
故障モードは、好ましくは、機械の特定のエラー/故障/欠陥などに関係するものとし、好ましくは、特定のエラーの特性周波数を示す数式(数1)によって記述されるものとする。たとえば、上記の数1は、モーターの異常回転を説明する故障モードに対する特性周波数Fcharを記述する。このステップの計算のために、周波数成分/ピークの周波数値は、「Fchar」に対して代入され、式は、スリップに対して解かれ、スリップ値を返すことが可能である。その計算のために、さらに、他の式によって定義される第2の故障モードが使用され、2つの異なる式が異なるピーク/周波数成分に対して同一のスリップ値を返す場合に、ピーク/周波数成分の「対」が特定され得る。対が発見された場合、対応するスリップ値が、機械のスリップ値であるスリップ値として決定される。この決定は、そのような1対のピークが発見された場合、すなわちスリップ値が決定された時に「真」をさらに返してもよく、「真」が返されたスリップのその値が出力され得る。
【0020】
スリップ値を決定するための計算プロセスは、計算が全ピークまたはピークのサブグループの全ピークに対して実行されるまで繰り返し実行されることが好ましい。
【0021】
周波数スペクトルは、ディスプレイユニットによってユーザに対して表示されることが可能であり、ユーザは(全)周波数成分/ピーク、または周波数成分のサブグループのみをさらなる処理のために印付けする/選択することが可能である。代替的または追加的に、診断デバイスまたは(リモートの)コンピュータシステムの分析ユニットまたは他のユニットは、決定ステップのためにスペクトルの1つまたは複数、あるいは全ての周波数成分を選択するタスクを実行し得る。非常に好ましくは、機械学習ロジック(ML)または人工知能(AI)は、ピークを特定および選択するタスクのために訓練されており、訓練されたML/AIは、そのタスクを実行するために使用可能である。さらに、上記に対して代替的または追加的に、周波数成分/ピークは、周波数値を有する(事前に)設定されたステップの距離を利用することが最も好ましい、事前に定義された範囲に基づいて選択され得る。たとえば、ステップ距離は、ユーザまたはAI/MLによって設定されてもよく、あるいはメモリに事前に格納/事前に設定されてもよい。そのステップ距離に基づいて、周波数成分は選択されてもよく、周波数成分は、ヘルツを単位とする複数のステップ距離と等しい場合に選択され得る。好ましくは、選択され得る第1の周波数成分は、周波数領域における測定信号によって含まれる周波数範囲の境界値である。たとえば、ステップ距離が0.1Hzに事前に設定された場合、さらにスペクトルが0Hzから開始する場合、0Hz、0.1Hz、0.2Hzなどにおける各振幅値が選択され得る。上記の例においてステップ距離が0.1Hzとは異なる値を有する場合、その選択は同様に進む。選択される周波数成分の上位の値は、(事前に)設定され得る。さらに、その選択は、極大値または最大値であるという意味の「ピーク」を表す周波数成分のみが選択されることをさらに考慮に入れ得る。
【0022】
最も好ましくは、故障モードの式(少なくとも2つの異なる式)に代入されるピーク、すなわち、その周波数値の選択は、入力として関連周波数スペクトルで訓練されスペクトルのピークの選択を出力するMLまたはAIによって実行される。他の方法では、その選択は、事前に定義された選択アルゴリズムにしたがって、ユーザによって手作業で、またはコンピュータによって実行されてもよい。
【0023】
とりわけ、ノイズと他の信号アーチファクトの悪影響が低減、または抑制されるため、スリップ値の決定は、高い正確性で実行される。この決定は、さらに、数学的/計算的に複雑でない非常に少ない数の処理ステップのため、計算上の負担または複雑性の増加にさらに関係しない。
【0024】
さらなる好適な態様によれば、故障モードの計算を含む、スリップ値を決定するステップは、故障モードの特性周波数成分を説明する少なくとも2つの異なる式を利用する。
【0025】
さらなる好適な態様によれば、故障モードの計算のために使用される第1の式は、モーターの破損した回転子バーの特性周波数であり、第2の式は、モーターの異常回転の特性周波数である。
【0026】
異常回転のための式は、数1として上記に記載したものである。破損した回転子バーは、以下の数式(数2)によって表される。
【0027】
【0028】
他の故障モードと、対応する特性周波数のそれぞれの式とが代わりに使用されてもよく、上記の2つの数1および数2は、特許請求の範囲に記載の方法に対して使用可能な1つの可能性のある対を表すに過ぎない。さらに、機械がモーターでない場合、他の式も使用され得る。たとえば、他のエラーモードは、回転子の静的な偏心、回転子の動的な偏心、固定子鉄芯の破損、配線の緩み、配線の短絡、ベアリングの劣化(ボール、外側の回転子など)に関係してもよく、他の機械は、歯車、発生器、モーターに接続された負荷装置、または同様のものを含み得る。
【0029】
周波数スペクトルなどを視覚的に検査することによって値を認識しようとしてノイズおよび他のアーチファクトの影響を受け得る従来技術の方法よりも、明確な計算結果を出力する解析的方程式を使用することによって正確性が高まる。
【0030】
さらなる好適な態様によれば、故障モードの計算は、周波数スペクトルから読み取られたピークまたは周波数成分の周波数値を異なる式に代入し、スリップの値のために式を解くことによって実行される。式の数は周波数値の数と一致することが好ましく、2つのピーク/周波数成分の2つの周波数値が2つの異なる故障モード式に代入されることが非常に好ましい。これは、選択されたピークが全体的に処理されるまで、または同一のスリップ値を返す少なくとも1対の周波数値が検出されるまで繰り返される。
【0031】
この処理の手法は、正しい機械のスリップを返し、計算的に、限定された数の周波数成分/ピークに対する2つの(分析的に解くことが可能な)式を解くことのみを必要とする。この比較は、読み取られたピークがノイズまたはアーチファクトに関係するか否かを明確に特定する。
【0032】
さらなる好適な態様によれば、方法は、決定ステップが実行される前に周波数スペクトルにおけるピーク/周波数成分の数を減少させるさらなるステップを含み、ピークを減少させるステップは、機械の基本周波数ピークについて対称ではないピークを削除、すなわち選択解除または選択しないことによって実行される。
【0033】
処理ステップの数、したがって計算上の負担をさらに減少させるために、周波数スペクトル、または処理対象のピークのリストが、故障モードに対応するように排除され得る周波数成分/ピークから消去されてもよい。たとえば数1および数2が示すように、1つの故障モードの特性周波数は、機械の基本周波数と比較して、左(低周波数値)に1つのピーク、右(高周波数値)に他のピークを有して配置され、これは±項を有する式から明らかである。これに基づいて、基本周波数について対称ではないピークは、たとえばノイズまたは他の理由によって引き起こされたものであるため、削除され得る。
【0034】
さらなる好適な態様によれば、折りたたみ周波数ピークに関係するピークは削除されない。
【0035】
正確性のわずかな低下も回避され得る場合、非対称のピークの上述した削除を鑑みると、折りたたみが検討され得る。換言すれば、折りたたみ関連の周波数成分/ピークは、維持されてもよく、すなわち削除されなくてもよい。
【0036】
さらなる好適な態様によれば、方法は、スリップ値の所定の範囲を設定することによって、ピークを探索するための周波数範囲を縮小させるさらなるステップを含む。周波数範囲の縮小は、好ましくは周波数スペクトル全体の1つまたは複数の部分範囲が探索対象の範囲として定義されることを含み得る。たとえば、スリップ値の所定の範囲が、好ましくは0.05まで、または0.1までの値の範囲に設定されなければならない場合、基本周波数前後の2つの比較的狭い周波数範囲は、探索対象の周波数範囲として返される。全ての他の周波数(ピーク/成分)が処理されず、計算上の複雑性および負担をさらに減らす。上述したように、スリップ値の好ましい範囲は、0、または0.001、0.005もしくは0.01などの0と等しくない小さい値と、0.5、0.1、または0.15もしくは0.2などの0.1よりも大きい値との間に設定され得る。
【0037】
さらなる好適な態様によれば、動作パラメータは、時間の経過にともなって測定された機械の相電流である。
【0038】
さらなる好適な態様によれば、動作パラメータは、時間の経過にともなって測定された機械のトルク電流である。
【0039】
上記のオプションは、異なる測定技法および測定後技法を可能とし、したがって測定値を測定するために使用される機器を鑑みた柔軟性を提供する。
【0040】
さらなる好適な態様によれば、決定ステップ中に複数の対のピークが決定された場合、(後処理)ステップは、スリップ値を出力する前に実行され、スリップ値は、事前に定義された要件またはスケジュールまたは判断基準にしたがって選択される。事前に定義された要件または判断基準は、最大スリップ値に対応する、または周波数スペクトルにおいて最も高いピークを有するなどの周波数成分を選択することを含み得る。
【0041】
したがって、スリップ値に対して複数の候補が返された場合でも、たとえば、低負担で特定され得る最大スリップ値の非常に好適な判断基準に基づいて、スリップ値が正確に決定され得る。
【0042】
さらなる好適な態様によれば、決定のステップは、故障モードの特性周波数の上位の値に対して実行される。
【0043】
上位の値は、基本周波数成分よりも高い周波数値を有する値として理解され得るものである。技術的な利点は、それらのピーク/周波数成分が受けるノイズの影響が少ないことである。
【0044】
さらなる好適な態様によれば、加えて、または代替として、速度は、決定されたスリップ値に基づいて出力される。スリップは、同一の周波数で、rpmで、または同期速度のパーセントまたは比率で、モーターなどの回転機械の同期速度と動作速度との差として定義される。したがって、電気モーターの場合、スリップは、[(固定子電気速度の速度-機械的速度)/固定子電気速度の速度]と表され得る。
【0045】
このように、この方法は、機械の回転速度の決定に対して、同時に、または排他的に使用され得る。
【0046】
さらなる態様は、前述の方法の態様のうちの少なくとも1つの方法を実行するためのデバイスに関係してもよく、そのデバイスは、測定信号を受信するための入力部を備え、測定信号は、機械の動作パラメータの測定値のセットを含み、デバイスは、測定信号を周波数領域に変換することによって測定信号の周波数スペクトルを決定することと、異なる種類の故障モードの計算が同一(数1及び数2の値が同じ)のスリップ値を返す、周波数スペクトルにおける少なくとも2つのピークを周波数スペクトルが含むかを決定することとを含む、方法のステップを実行するための演算部と、決定された前記スリップ値を出力するための出力部とをさらに備える。
【0047】
さらに、上記のデバイスは、さらなる構成要素、デバイスなどを備えるシステムが提供されてもよく、1つまたは複数の機械、センサ、PLCデバイス、格納デバイス、および/またはパーソナルコンピューティングデバイスを備える。
【0048】
さらなる態様は、コンピュータによって実行されたときに、上述したような方法の態様を実施するように構成されたコンピュータプログラムロジックを有するコンピュータプログラム製品に関係してもよい。
【0049】
全ての態様および好適なオプションは、相乗効果的に、少なくとも、計算上複雑な処理を避けながら、機械のスリップのより正確な決定を実現可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】本開示によって分析されるような周波数スペクトルの概略的な例を示す図である。
【
図2】開示されるような方法を実行するためのデバイスを含むシステムの概略を示す図である。
【
図3】本開示の方法のステップのフローチャートである。
【
図4】例示的な周波数スペクトルに対して実行される開示の方法の一ステップを示す図である。
【
図5】例示的な周波数スペクトルに対して実行される開示の方法の一ステップを示す図である。
【
図6】例示的な周波数スペクトルに対して実行される開示の方法の一ステップを示す図である。
【
図7】例示的な周波数スペクトルに対して実行される開示の方法の一ステップを示す図である。
【
図8】修正された方法による、本開示の方法のステップの他のフローチャートである。
【
図9】開示されるような方法を実行するためのデバイスを含む他のシステムの概略を示す図である。
【
図10】本開示によって分析されるような周波数スペクトルの他の概略的な例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下において、添付図面を参照して、好適な態様および例が詳細に説明される。異なる図面及び例における同一の特徴または類似の特徴は、同様の参照番号を用いて言及される。様々な好適な態様および好適な例に関係する以下の詳細な説明は、本開示の範囲を限定することが意図されないことを理解されたい。
【0052】
図1は、1つまたは複数の時間ベースの測定信号(不図示)から生成された周波数スペクトル1を示す。周波数はX軸上に示され、電気モーター10であることが好ましい機械の位相のアンペアを単位とする電流であることが好ましい測定値がY軸に示される。周波数スペクトル1は、たとえばFFTまたは他の適切な方法の使用によって測定信号を時間領域から周波数領域へ変換することによって生成されたものである。
【0053】
さらに図からわかるように、
図1に示されるような周波数スペクトル1の最大ピークは、機械、すなわち本例ではモーター10の基本周波数成分3である50Hzに位置している。さらに、複数のさらなるピーク2aが
図1の例から特定され、ピーク2aは、最大と理解されることが好ましいものとする(極大であることが好ましい)。
図1において表示されているピーク2aの数は代表的なものではなく、ピーク2aを示す参照符号の数は、
図1の読みやすさを理由として減らされている。
【0054】
さらに、
図1は、およそ25Hz以上と、およそ75Hz以下とに、2つの斜線部分を含む。これらの周波数範囲は、本明細書に記載の方法がスリップ値の縮小された範囲に適用された場合のピーク2aの可能な縮小探索範囲の例として示される。スリップ値「s」の縮小された範囲は、
図1の例にあるように0から0.1の範囲となり得る。
図1の網掛け/斜線部分は、上記の数1を適用した結果であり、所定のスリップ値「s」の範囲=0・・・0.1であり、基本周波数成分「f」は50Hzで、極対の数「P」は2に設定される。
【0055】
図2は、本明細書に開示の方法、デバイスおよび/またはコンピュータプログラム製品によって分析または診断される機械、たとえばモーター10を含むシステム1000を示す。モーター10は、11a、11bおよび11cによって示される3つの電気位相のための3本の電線に接続される。電流センサ14は、時間の経過にともなう電流を測定するための少なくとも1つの電線に設けられる。本例において、参照符号11cによって示される線は、電流センサ14によって感知される。他の全位相も同様に使用され得る。電流センサ14は、モーター10とモーター10に電気的に接続されたインバータ15との間の任意の位置に設けられ得る。電流センサ14は、接続14aを介して、データロガー12、または時間領域における1つまたは複数の測定信号(不図示)をサンプリングするための任意の他の適切なユニットに接続される。電流センサ14によって生成されたデータ信号は、それぞれの接続14aを介してデータロガー12に転送される。データロガー12によって生成されたデータは、接続12aを介して、一時的および/または永続的な格納のためにデータベース13に供給/転送され得る。データベース13は、デバイス100(診断デバイス)の一部でもよく、またはデバイス100の外部に存在してもよい。デバイス100は、モーター10の位置に設けられてもよく、または破線矢印13aによって示される遠隔の場所に配置されてもよい。デバイス100自体は、入力部101、パーソナルコンピュータ104またはユーザが診断データにアクセスし得る任意の他の適切な装置に接続され得る出力部103、および演算部102を主に含み得る。演算部102は、「分析ユニット」または「診断ユニット」と呼ばれる場合もあり、1つまたは複数のプロセッサ、内部メモリなどを含むことが好ましく(またはそれらに接続されることが好ましく)、ASIC、CPUなどである。内部メモリは、たとえば、本明細書に開示するような方法を実行するためのコンピュータプログラム製品を格納し得る。
【0056】
図2は、インバータ15が、線15aを介して、
図2に示すように、システム1000に設けられ得るプログラマブルロジック制御装置(PLC)16と接続されることをさらに示す。PLC16は、機械/モーター10の動作の制御を実行するために設けられ得る。図には示さない変形例として、デバイス100(サブユニット101から104と、場合によっては13とを含む)がPLC16と一体化されることによって、電流センサ14がPLC16に測定データを供給し得ることも可能である。
【0057】
図示されるデータ接続または線は、無線または有線ベースの電気接続であり得る。
【0058】
図3は、好適なプロセスフローによる方法の第1の実施例を示す。第1のステップS1は、データベース13から、または電流センサ14から直接、測定信号を読み出すことを含む。この後、ステップS2において、その測定信号の周波数領域への変換が、知られている方法にしたがって実行される。両方のステップは、演算部102、またはデータロガー12、電流センサ14の内部演算部、または任意の他の適切なユニットによって実行され得る。好ましくは、ステップS1およびS2は、データベース13およびデバイス100に格納されたデータに基づいて実行される。これは、PLC16から分離され得る、またはそれと一体化し得るデバイス100によって実行されることが好ましいさらなるステップも同様である。
【0059】
次のステップS3は、周波数スペクトル1におけるピーク2aの探索であり、好ましくは特定されたピーク2aのリストが生成される。ただし、リストの代わりとして、周波数スペクトル1から特定されたピーク2aを少なくとも一時的に格納するための任意の他のフォーマットが可能である。特定された各ピーク2aは、その後、異なる故障モードに対して同一のスリップ値を有する少なくとも2つのピーク2aの対を発見するために使用される。換言すれば、ステップ4は、2つのサブステップS4aおよびS4bを含み、特定されたピーク2a、すなわちその周波数値が使用されて、2つの異なる故障モードに対するスリップ値を計算し、計算結果を比較してそれらが一致するかを判断する。
【0060】
好適な故障モードは、上記に記載の数1および数2によって説明され、それによって、たとえば、2つの異なる特定ピーク2a、すなわちその周波数値に対して、ステップS4aで数1が使用され、ステップS4bで数2が使用される。ステップS4aおよびS4bに対して、式中の未知の変数のみが「s」であると仮定される。たとえば、f=50HzおよびP=2を有するモーター10が使用されると仮定されてもよい。
【0061】
ステップS4aおよびS4bの繰り返しの実行中に同一のスリップ値が発見された場合、関連のピーク/周波数値が可能性のある対を形成し、その対がステップS5で特定されて判断される。ステップS4aおよびS4bによる計算は、全ての特定ピーク2aに対して、すなわち特定ピーク2aが処理されなくなるまで、実行される。
【0062】
さらに、任意で、推定/計算されたスリップ値と、それに関連するピーク2aとがコンピュータ104上でユーザに対して示されてもよく(S6)、および/またはその結果が、さらなる処理のために他のデバイスまたはエンティティに出力されてもよく、たとえば、スリップ値は、機械などの制御のためにその値を使用するために、PLC16にも入力されてもよい。
【0063】
さらに、修正例によれば、
図8は、ステップS4aおよびS4bで処理されるピーク2aの数を減らすために周波数スペクトル1が前処理される、追加ステップS3aおよびS3bを有する方法を示す。修正された方法では、ステップS3aおよびS3bのうちの一方のみが使用されることが可能であり、または好ましくは、修正された方法では、両方が使用される。ステップS3aは、折りたたみ周波数を発見するプロセスを含み、その特定は、本発明が属する分野で知られるようにして実行される。折りたたみ周波数または折りたたみに関係する周波数成分は、ステップS3aにしたがって周波数スペクトル1に維持される。さらに、ステップS3bは、両方が使用され得る、またはその一方が使用され得る2つのオプションに基づいた周波数スペクトル1からのピーク2aの削除を含む。第1のオプションは、基本周波数(
図1の本実施例における50Hz)に対して対称的に配置された対応ピークを有さない全ピーク2aを特定し、非対称のピーク2aを削除することであり、この場合、折りたたみに関係するピークは除く。第2のオプションは、0から0.1、または0から0.05、または0.01から0.1などの所定の許容可能なスリップ値/範囲だけ、ピークを求めて探索される周波数範囲を狭めることによって、ステップS4aおよびS4bで処理されるピーク2aの数を減らすことを含み得る。後者が、f=50HzおよびP=2のモーターのために数1を適用した場合の0から0.1のスリップ範囲を
図1に網掛けによって示される。
【0064】
図4は、周波数スペクトル1におけるピーク2aを特定するためのプロセスの一例を示し、それぞれの特定されたピーク2aは、ピークの頂点のドット(薄い灰色)によって表されている。
図4の左部分でわかるように、特定されたピーク2aの数は、予想可能なように非常に多い。したがって、いくつかのピーク2aを削除するプロセスは、さらに処理されるピーク2a(選択されたピークにおけるドット)の事前選択を可能とする。非対称のピーク2aを削除することは、たとえば、ピーク2aの数を大幅に減らすものであり、一例の結果が
図4の右側の周波数スペクトルに示される。この場合も、参照番号「2a」がグラフ/図の読みやすさを維持するために、少数のピークに対してのみ示される。
【0065】
ピーク2aの特定と、さらなる処理のための選択とともに、ピーク2aの削除は、ユーザによって手作業で行われることが可能であり、および/または自動で実行され得る。自動化は、それぞれに構成されたアルゴリズムおよびプログラムを含むコンピュータが使用されてもよく、非常に好ましくは、タスクのために訓練されたAIまたはMLユニットが使用されてもよい。訓練データは、周波数スペクトルデータを含んでもよい。
【0066】
ノイズに関連し得る非対称のピーク2aの削除に加えて、たとえば、上記の第2のオプションで説明したように、さらに
図5によって図示されるように、スリップ値の許容可能な範囲を縮小させることによって処理済みピーク2aの数をさらに減少させることがさらに可能である。
図5は、ステップS4a/S4bがモーター10の破損した回転子バーの故障モードを使用する場合にピーク2aが特定および処理される周波数範囲(斜線部分)を左側に示す。この故障モードのために使用される数2は、
図5のおよそ50Hzの可能性のある値を返し、斜線領域は0から0.1のスリップ値を示す。モーター回転異常の場合の範囲は、0から0.1のスリップ値のための
図5の右側の周波数スペクトルに示される。この範囲は、f=50HzおよびP=2の場合に上記で説明したように数1を適用した結果として得られたものである。この場合も、参照番号「2a」がグラフ/図の読みやすさを維持するために、少数のピークに対してのみ示されるが、
図5のグラフは、各ピーク2a/3の頂点のドットによって示されるように、より多くの事前に選択されたピーク2aを含むことに留意されたい。
【0067】
図からわかるように、許容可能な所定のスリップ値/範囲のための範囲の適用によって、ステップS4aおよびS4bに処理される必要があるピーク2aの数を大幅に減少させる。
【0068】
図6は、ステップS6における処理の結果とその出力の例を示す。左側の周波数スペクトル1は、各ピークの薄い灰色のドットにより特定されたピーク2aを示し、この例の場合、省略または事前選択は行われていない。
図5のグラフは、各ピーク2a/3の頂点のドットによって示されるように、より多くの事前に選択されたピークを含むが、上記と同様に、グラフ/図の読みやすさを維持するために、参照番号「2a」が少数のピークに対してのみ示されることに留意されたい。
図6の右側の周波数スペクトル1は、s=0.038となるように計算されたスリップ値を含む、可能な出力画面をユーザに対して示す。この例で、このスリップ値に属するピーク2aが示されている。当然ながら、ユーザに対する出力は異なって配置され得るが、その代わり、またはそれに加えて、スリップ値は、たとえばモーター制御などの改善のために、追加エンティティに渡され得る。
【0069】
左側および右側に周波数スペクトル1を有する
図7は、2つの異なる故障モード(左に破損した回転子バー、右に異常回転)が、スリップに対する複数の可能性のある値を返す状況を示す。ここでは、たとえば、0.038、0.088および0.094である。この場合、処理はデバイス100によって実行されてもよく、たとえば、最大または最小のスリップ値は、事前に定義された判断基準にしたがって選択されてもよい。さらに、
図7の例に示すように、最も高いピークに対応するスリップ値、この例ではs=0.038が選択可能である。
【0070】
図9は、他の例示的なシステム1000を示し、
図2の例とは異なり、上述したような処理のために、相電流の代わりにトルク電流が使用される。この場合、電流センサ14は、測定信号/データ/値をインバータ15および/またはPLC16に供給する。PLC16は、データベース17を含んでもよく、またはデバイス100と一体化もされ得る外部のデータベース17にデータを送信してもよい。デバイス100は、リモートでも、ローカルに配置されてもよく、データベース17から受信または読み出された測定信号を用いて、上述したステップと同一の方法のステップを実行してもよい。トルク電流に関する違いは、折りたたみ周波数が存在せず、したがって
図3による方法のステップが好ましい。ピーク2aを減少させるさらなる作業を回避し得る。
【0071】
図10は、トルク電流測定信号から生成された周波数スペクトル1の非常に概略的な例をさらに示し、スリップに対して、数1及び数2によって同一の値を返す2つのピーク2aの可能性のある対が
図10に示される。
【0072】
とりわけ、ノイズと他の信号アーチファクトの悪影響が低減または抑制されるため、本願によるスリップ値の判断は、高精度で実行される。この判断は、さらに、数学的/計算的に複雑でない非常に少ない数の処理ステップのため、計算上の負担または複雑性の増加に関係しない。
【0073】
当業者には理解されるように、本開示は、上記の説明および添付図面で説明したように、方法(たとえば、コンピュータ実施プロセスまたは任意の他のプロセス)、装置(デバイス、機械、システム、コンピュータプログラム製品、および/または任意の他の装置)、または上記の組み合わせとして具体化され得る。本開示の態様/例は、全体的にソフトウェア(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)、または「システム」と呼ばれ得るソフトウェア態様およびハードウェア態様の組み合わせでもよい。さらに、本開示は、媒体において具体化されたコンピュータ実行可能プログラムコードを有するコンピュータ可読媒体上のコンピュータプログラム製品の形態を有し得る。
【0074】
なお、2つ以上のエンティティが関与する通信、転送、または他のアクティビティを表すために矢印が図面中で使用され得ることに留意されたい。両方向矢印は、全般的に、アクティビティが両方向に発生し得ることを示す(たとえば、ある方向におけるコマンド/要求と他方向の対応する応答、またはいずれかのエンティティによって開始されるピアツーピア通信)が、状況によっては、アクティビティが必ずしも両方向で発生しなくてもよい。
【0075】
片方向矢印は、全般的に、一方向のみ、または主に一方向のアクティビティを示すが、特定の状況において、そのような方向性のアクティビティは両方向のアクティビティ(たとえば、送信元から受信先へのメッセージ、その受信先から送信元への受信通知、または転送前の接続の確立および転送後の接続の停止)を含み得ることに留意されたい。したがって、特定のアクティビティを表すために特定の図面で使用される矢印の種類は例示的なものであり、限定するとみなされるべきではない。
【0076】
本開示は、方法および装置のフローチャートの図および/またはブロック図を参照して、さらに方法および/または装置によって生成されたグラフィカルユーザインターフェースの多くのサンプル図を参照して説明され得る。フローチャートの図および/またはブロック図の各ブロック、および/またはフローチャートの図および/またはブロック図中のブロックの組み合わせとともに、グラフィカルユーザインターフェースは、コンピュータ実行可能プログラムコードによって実施可能であることが理解されるであろう。
【0077】
コンピュータまたは他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサを介して実行されるプログラムコードがフローチャート、ブロック図のブロック、図、および/または記述された説明において明示された機能/動作/出力を実施するための手段を創出するように、上記のコンピュータ実行可能プログラムコードは、特定の機械を製造するために、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、または他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサに提供されてもよい。
【0078】
このコンピュータ実行可能プログラムコードは、コンピュータ可読メモリにも格納されてもよく、コンピュータ可読メモリに格納されたプログラムコードが、フローチャート、ブロック図のブロック、図、および/または記述された説明において明示された機能/動作/出力を実施する命令手段を含む製品を製造するように、コンピュータまたは他のプログラマブルデータ処理装置に特定の手法で機能させ得る。
【0079】
コンピュータまたは他のプログラマブル装置上で実行されるプログラムコードが、フローチャート、ブロック図のブロック、図、および/または記述された説明において明示された機能/動作/出力を実施するためのステップを提供するように、上記のコンピュータ実行可能プログラムコードは、一連の動作ステップがコンピュータ実施プロセスを創出するようにコンピュータまたは他のプログラマブル装置上で実行されるようにするためにコンピュータまたは他のプログラマブルデータ処理装置にさらにロードされてもよい。もしくは、コンピュータプログラム実施ステップまたは動作は、本開示の実施形態を実行するために、オペレータまたは人間が実施したステップまたは動作と組み合わされてもよい。
【0080】
なお、「サーバ」および「プロセッサ」などの用語は、本開示の特定の態様で使用され得るデバイスを説明するために本明細書で使用される場合があり、文脈上必要な場合を除いて、本開示を特定のデバイスの種類に限定すると解釈されるべきではないことに留意されたい。したがって、デバイスは、限定なく、ブリッジ、ルータ、ブリッジ-ルータ(ブロウタ)、スイッチ、ノード、サーバ、コンピュータ、機器、又は他の種類の装置を含み得る。そのようなデバイスは、典型的に、通信ネットワークを介して通信するための1つまたは複数のネットワークインターフェースと、それに応じてデバイスの機能を実行するように構成されたプロセッサ(たとえば、メモリおよび他の周辺機器および/または特定用途向けハードウェアを有するマイクロプロセッサ)とを含む。
【0081】
通信ネットワークは、全般的に、公衆ネットワークおよび/またはプライベートネットワークを含んでもよく、ローカルエリア、ワイドエリア、メトロポリタンエリア、ストレージおよび/または他の種類のネットワークを含んでもよく、アナログ技術、デジタル技術、光学技術、無線技術(たとえば、Bluetooth)、ネットワーキング技術、およびインターネットワーキング技術を含むが決してそれに限定されない通信技術を用いてもよい。
【0082】
また、デバイスは、通信プロトコルおよびメッセージ(たとえば、デバイスによって作成、送信、受信、格納、および/または処理されたメッセージ)を使用してもよく、そのようなメッセージは、通信ネットワークまたは媒体によって運ばれてもよいことに留意されたい。
【0083】
文脈上必要な場合を除き、本開示は、いずれかの特定の通信メッセージタイプ、通信メッセージフォーマット、または通信プロトコルに限定されると解釈されるべきではない。したがって、通信メッセージは、全般的に、限定なく、フレーム、パケット、データグラム、ユーザデータグラム、セル、または他のタイプの通信メッセージを含み得る。
【0084】
文脈上必要な場合を除き、特定の通信プロトコルへの言及は例示的なものであり、必要に応じて、代替例は、そのような通信プロトコル(たとえば、その時々に作成され得るプロトコルの修正または拡張)、または将来的に知られる、もしくは作成される、のいずれかの他のプロトコルの変形を用いてもよいことを理解されたい。
【0085】
また、本開示の様々な態様を実演するために、ロジックの流れが本明細書に記載される場合があるが、本開示を特定のロジックの流れまたはロジックの実施に限定すると解釈されるべきではないことに留意されたい。説明されたロジックは、本開示の全体的な結果を変更せずに、または他の方法で本開示の真の範囲から逸脱せずに、異なるロジックブロック(たとえば、プログラム、モジュール、関数、またはサブルーチン)に分割され得る。
【0086】
多くの場合、ロジック要素は、異なる順序で、追加、修正、削除、実行されてもよく、または本開示の全体的な結果を変更せずに、もしくは他の方法で本開示の範囲から逸脱せずに、異なるロジック構造(たとえば、ロジックゲート、ルーピングプリミティブ、条件付きロジック、および他のロジック構造)を使用して実施され得る。
【0087】
本開示は、グラフィック処理ユニットとともに、プロセッサ(たとえば、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、または汎用コンピュータ)とともに使用されるコンピュータプログラムロジック、プログラマブルロジックデバイス(たとえば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または他のPLD)とともに使用されるプログラマブルロジック、個別コンポーネント、集積サーキットリー(たとえば、特定用途向け集積回路(ASIC))、またはそれらの任意の組み合わせを含む任意の他の手段を含むが決してそれらに限定されない、多くの異なる形態で具体化され得る。上述された機能の一部または全部を実施するコンピュータプログラムロジックは、通常、それ自体がコンピュータ可読媒体に格納されオペレーティングシステムの制御の下でマイクロプロセッサによって実行されるコンピュータ実行可能形態に変換されるコンピュータプログラム命令のセットとして実施される。上述された機能の一部または全部を実施するハードウェアベースのロジックは、1つまたは複数の適切に構成されたFPGAを使用して実施され得る。
【0088】
本明細書で前述した機能の全部または一部を実施するコンピュータプログラムロジックは、ソースコード形態、コンピュータ実行可能形態、および様々な中間形態(たとえば、アセンブラ、コンパイラ、リンカ、またはロケータによって生成された形態)を含むが決してそれらに限定されない、様々な形態で具体化され得る。
【0089】
ソースコードは、様々なオペレーティングシステムまたは動作環境とともに使用される様々なプログラミング言語(たとえば、オブジェクトコード、アセンブリ言語、またはFortran、python、C、C++、JAVA(登録商標)、JavaScript、またはHTMLなどの高級言語)のいずれかで実施される一連のコンピュータプログラム命令を含み得る。ソースコードは、様々なデータ構造および通信メッセージを定義および使用し得る。ソースコードは、コンピュータ実行可能形態(たとえば、インタプリタによる)を有してもよく、またはソースコード(たとえば、トランスレータ、アセンブラ、またはコンパイラによって)コンピュータ実行可能形態に変換され得る。
【0090】
本開示の実施形態の動作を実行するためのコンピュータ実行可能プログラムコードは、Java、Perl、Smalltalk、C++などのオブジェクト指向、スクリプトまたは非スクリプトプログラミング言語で記述されてもよい。ただし、本開示の形態の動作を実行するためのコンピュータプログラムコードは、同様に、「C」プログラミング言語または類似のプログラミング言語などの従来の手続き型プログラミング言語で記述されてもよい。
【0091】
本明細書で上述された機能の全部または一部を実施するコンピュータプログラムロジックは、単一のプロセッサ上で異なるタイミングで(たとえば同時に)実行されてもよく、または複数のプロセッサ上で同一もしくは異なるタイミングで実行されてもよく、さらに単一のオペレーティングシステムのプロセス/スレッドの下で、または異なるオペレーティングシステムのプロセス/スレッドの下で実行されてもよい。
【0092】
したがって、「コンピュータプロセス」という用語は、全般的に、異なるコンピュータプロセスが同一または異なるプロセッサ上で実行されるかに関わらず、および異なるコンピュータプロセスが同一のオペレーティングシステムのプロセス/スレッドまたは異なるオペレーティングシステムのプロセス/スレッドの下で実行されるかに関わらず、コンピュータプログラム命令のセットの実行を指す。
【0093】
コンピュータプログラムは、半導体メモリデバイス(たとえば、RAM、ROM、PROM、EEPROM、またはフラッシュプログラマブルRAM)、磁気メモリデバイス(たとえば、ディスケットまたは固定ディスク)、光学メモリデバイス(たとえば、CD-ROM)、PCカード(たとえば、PCMCIAカード)、または他のメモリデバイスなどの有形格納媒体で、永続的または一時的のいずれかで任意の形態(たとえば、ソースコード形態、コンピュータ実行可能形態、または中間形態)で固定され得る。
【0094】
コンピュータプログラムは、アナログ技術、デジタル技術、光学技術、無線技術(たとえば、Bluetooth)、ネットワーキング技術、およびインターネットワーキング技術を含むが決してそれに限定されない、様々な通信技術のいずれかを使用してコンピュータに送信可能である信号において任意の形態で固定され得る。
【0095】
コンピュータプログラムは、任意の形態で、印刷文書または電子文書を添付したリムーバブル記憶媒体として(例えば、シュリンクラップされたソフトウェア)配布されることができ、コンピュータシステムに予めロードしておくことができ(たとえば、システムROM上または固定ディスク上に)、または通信システム(例えば、インターネットまたはワールドワイドウェブ)を通じて、サーバまたは電子掲示板から配布され得る。
【0096】
本明細書で前述された機能の全部または一部を実施するハードウェアロジック(プログラマブルロジックデバイスとともに使用されるプログラマブルロジックを含む)は、従来の手作業の方法を使用して設計されてもよく、あるいはコンピュータ援用設計(CAD)、ハードウェア記述言語(たとえば、VHDLまたはAHDL)、またはPLDプログラミング言語(たとえば、PALASM、ABEL、またはCUPL)などの様々なツールを使用して、電子的に、設計、キャプチャ、シミュレート、または文書化され得る。
【0097】
任意の適切なコンピュータ可読媒体が用いられてもよい。コンピュータ可読媒体は、たとえば、電子、磁気、光学、電磁、赤外線、または半導体システム、装置、デバイス、または媒体でもよいが、それに限定されない。
【0098】
コンピュータ可読媒体のより特定の例は、1つまたは複数の配線、または、ポータブルコンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読出し専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読出し専用メモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、コンパクトディスク読出し専用メモリ(CD-ROM)、または他の光学もしくは磁気格納デバイスなどの他の有形格納媒体を有する電気接続を含むが、それに限定されない。
【0099】
プログラマブルロジックは、半導体メモリデバイス(たとえば、RAM、ROM、PROM、EEPROM、またはフラッシュプログラマブルRAM)、磁気メモリデバイス(たとえば、ディスケットまたは固定ディスク)、光学メモリデバイス(たとえば、CD-ROM)、または他のメモリデバイスなどの有形の格納媒体に永続的または一時的のいずれかで固定され得る。
【0100】
プログラマブルロジックは、アナログ技術、デジタル技術、光学技術、無線技術(たとえば、Bluetooth)、ネットワーキング技術、およびインターネットワーキング技術を含むが決してそれに限定されない、様々な通信技術のいずれかを使用してコンピュータに送信可能である信号で固定され得る。
【0101】
プログラマブルロジックは、印刷文書または電子文書を添付したリムーバブル記憶媒体として(例えば、シュリンクラップされたソフトウェア)配布されることができ、コンピュータシステムに予めロードしておくことができ(たとえば、システムROM上または固定ディスク上に)、または通信システム(例えば、インターネットまたはワールドワイドウェブ)を通じて、サーバもしくは電子掲示板から配布され得る。当然ながら、本開示のいくつかの実施形態は、ソフトウェア(たとえば、コンピュータプログラム製品)とハードウェアとの両方の組み合わせとして実施され得る。本開示のさらに他の態様は、全体的にハードウェアとして、または全体的にソフトウェアとして実施される。
【0102】
特定の例示的な態様が説明され、添付図面にて示されたが、そのような実施形態は広範な開示の例示に過ぎず、それに限定的ではなく、さらに、前項で記載されたものに加えて、様々な他の変更、組み合わせ、削除、修正および置換が可能であるため、本開示の態様は、説明および図示された特定の構造および構成に限定されないことを理解されたい。
【0103】
当業者は、上記の態様および例の様々な適応、修正、および/または、組み合わせが構成可能であることを理解するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲内において、本開示が本明細書で具体的に記載された以外で実践され得ることを理解されたい。たとえば、特記しない限り、本明細書に記載のプロセスのステップは、本明細書に記載の順序とは異なる順序で実行されてもよく、1つまたは複数のステップが、結合、分割、または同時実行されてもよい。当業者は、さらに本開示を鑑みて、本明細書に記載の本開示の異なる態様または例が、本開示の他の態様または例を形成するために結合され得ることを理解するであろう。
【符号の説明】
【0104】
10 モーター
11a、11b、11c 電線
12 データロガー
13 データベース
14 電流センサ
15 インバータ
16 PLC
100 デバイス
101 入力部
102 演算部
103 出力部
104 パーソナルコンピュータ