(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123338
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】獣医療支援システム、獣医療支援方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20230829BHJP
G06Q 10/02 20120101ALI20230829BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q10/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171891
(22)【出願日】2022-10-27
(62)【分割の表示】P 2022540804の分割
【原出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】515158272
【氏名又は名称】株式会社PECO
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 純
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA03
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】動物患者に適した輸送手段を提供することができるようにする。
【解決手段】獣医療支援システムであって、動物種及び獣医療機関への到着前に必要な処置に対応付けて動物を輸送する移動体の条件を記憶する条件記憶部と、動物患者の動物種を含む動物患者情報を記憶する患者情報記憶部と、動物患者の輸送の依頼を受け付ける受付部と、動物患者に対して獣医療機関に到着前に必要な処置を取得する必要処置取得部と、動物患者の動物種及び必要な処置に対応する条件を満たす移動体を予約する予約部と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物種及び獣医療機関への到着前に必要な処置に対応付けて動物を輸送する移動体の条件を記憶する条件記憶部と、
動物患者の動物種を含む動物患者情報を記憶する患者情報記憶部と、
前記動物患者の輸送の依頼を受け付ける受付部と、
前記動物患者に対して獣医療機関に到着前に必要な処置を取得する必要処置取得部と、
前記動物患者の前記動物種及び前記必要な処置に対応する前記条件を満たす前記移動体を予約する予約部と、
を備えることを特徴とする獣医療支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の獣医療支援システムであって、
前記動物患者に対する過去の診断内容を含むカルテ情報を取得するカルテ情報取得部を備え、
前記必要処置取得部は、前記カルテ情報に応じて前記必要な処置を決定すること、
を特徴とする獣医療支援システム。
【請求項3】
請求項2に記載の獣医療支援システムであって、
前記動物患者の飼主に問診を行う問診部を備え、
前記必要処置取得部は、前記問診への回答及び前記カルテ情報に基づいて前記必要な処置を決定すること、
を特徴とする獣医療支援システム。
【請求項4】
請求項1に記載の獣医療支援システムであって、
獣医療従事者ごとに、前記獣医療従者が対応可能な前記動物種及び作業内容を記憶する従事者情報記憶部と、
前記必要な処置及び前記動物種に対応する前記獣医療従事者を特定し、特定した前記獣医療従事者を前記移動体による輸送に従事するようにアサインするアサイン部と、
をさらに備えることを特徴とする獣医療支援システム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の獣医療支援システムであって、
前記条件記憶部が記憶する前記条件には、前記動物種に応じた前記移動体の大きさに対する条件が含まれること、
を特徴とする獣医療支援システム。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の獣医療緯線システムであって、
前記条件記憶部が記憶する前記条件には、前記移動体内で処置を行うための機能に対する条件が含まれること、
を特徴とする獣医療支援システム。
【請求項7】
動物種及び獣医療機関への到着前に必要な処置に対応付けて動物を輸送する移動体の条件を記憶するステップと、
動物患者の動物種を含む動物患者情報を記憶するステップと、
前記動物患者の輸送の依頼を受け付けるステップと、
前記動物患者に対して獣医療機関に到着前に必要な処置を取得するステップと、
前記動物患者の前記動物種及び前記必要な処置に対応する前記条件を満たす前記移動体を予約するステップと、
をコンピュータが実行することを特徴とする獣医療支援方法。
【請求項8】
動物種及び獣医療機関への到着前に必要な処置に対応付けて動物を輸送する移動体の条件を記憶するステップと、
動物患者の動物種を含む動物患者情報を記憶するステップと、
前記動物患者の輸送の依頼を受け付けるステップと、
前記動物患者に対して獣医療機関に到着前に必要な処置を取得するステップと、
前記動物患者の前記動物種及び前記必要な処置に対応する前記条件を満たす前記移動体を予約するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、獣医療支援システム、獣医療支援方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には動物の緊急搬送を行うシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
動物患者の輸送中又は乗車前等、医療機関への到着前に行うことが好ましいことが存在する。
【0005】
本発明はこのような背景を鑑みてなされたものであり、動物患者に適した輸送手段を提供することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の主たる発明は、獣医療支援システムであって、動物種及び獣医療機関への到着前に必要な処置に対応付けて動物を輸送する移動体の条件を記憶する条件記憶部と、動物患者の動物種を含む動物患者情報を記憶する患者情報記憶部と、前記動物患者の輸送の依頼を受け付ける受付部と、前記動物患者に対して獣医療機関に到着前に必要な処置を取得する必要処置取得部と、前記動物患者の前記動物種及び前記必要な処置に対応する前記条件を満たす前記移動体を予約する予約部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
その他本願が開示する課題やその解決方法については、発明の実施形態の欄及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、動物患者に適した輸送手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】獣医療支援システムの全体構成例を示す図である。
【
図2】管理サーバ20のハードウェア構成例を示す図である。
【
図3】管理サーバ20のソフトウェア構成例を示す図である。
【
図4】管理サーバ20の動作について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<発明の概要>
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明は、たとえば、以下のような構成を備える。
[項目1](動物種に応じた大きさ機能等を満たす車を配車する)
動物種及び獣医療機関への到着前に必要な処置に対応付けて動物を輸送する移動体の条件を記憶する条件記憶部と、
動物患者の動物種を含む動物患者情報を記憶する患者情報記憶部と、
前記動物患者の輸送の依頼を受け付ける受付部と、
前記動物患者に対して獣医療機関に到着前に必要な処置を取得する必要処置取得部と、
前記動物患者の前記動物種及び前記必要な処置に対応する前記条件を満たす前記移動体を予約する予約部と、
を備えることを特徴とする獣医療支援システム。
[項目2](カルテ情報(過去の診察結果)から必要な処置を決定する)
項目1に記載の獣医療支援システムであって、
前記動物患者に対する過去の診断内容を含むカルテ情報を取得するカルテ情報取得部を備え、
前記必要処置取得部は、前記カルテ情報に応じて前記必要な処置を決定すること、
を特徴とする獣医療支援システム。
[項目3](過去の診察結果と問診から必要な処置を決定する)
項目2に記載の獣医療支援システムであって、
前記動物患者の飼主に問診を行う問診部を備え、
前記必要処置取得部は、前記問診への回答及び前記カルテ情報に基づいて前記必要な処置を決定すること、
を特徴とする獣医療支援システム。
[項目4](同乗者をアサインする)
項目1に記載の獣医療支援システムであって、
獣医療従事者ごとに、前記獣医療従者が対応可能な前記動物種及び作業内容を記憶する従事者情報記憶部と、
前記必要な処置及び前記動物種に対応する前記獣医療従事者を特定し、特定した前記獣医療従事者を前記移動体による輸送に従事するようにアサインするアサイン部と、
をさらに備えることを特徴とする獣医療支援システム。
[項目5](車の大きさの条件)
項目1又は2に記載の獣医療支援システムであって、
前記条件記憶部が記憶する前記条件には、前記動物種に応じた前記移動体の大きさに対する条件が含まれること、
を特徴とする獣医療支援システム。
[項目6](車の機能の条件)
項目1ないし3のいずれか1項に記載の獣医療緯線システムであって、
前記条件記憶部が記憶する前記条件には、前記移動体内で処置を行うための機能に対する条件が含まれること、
を特徴とする獣医療支援システム。
[項目7](方法)
[項目8](プログラム)
【0011】
<システムの概要>
以下、本発明の一実施形態に係る獣医療支援システムについて説明する。本実施形態の獣医療支援システムは、自宅と獣医療時間との間で動物患者1(及び飼主2)を輸送する移動体3の予約(移動体3を特定の期間中、動物患者1(及び飼主2)のために利用可能に設定することをいう。)を行う。移動体3は例えば自動車である。
【0012】
本実施形態の獣医療支援システムでは、移動体3は、大きさの違いや備える設備の違いなどを含む複数の異なる種類が存在することを想定する。なお、同一の獣医療機関が複数種類の移動体3を備えるようにしてもよいし、所定のエリア内の複数の獣医療機関で複数異なる種類の移動体3を備えるようにすることもできる。
【0013】
図1は、獣医療支援システムの全体構成例を示す図である。本実施形態の獣医療支援システムは、管理サーバ20を含んで構成される。管理サーバ20は、ユーザ端末10及び獣医療機関端末30と通信ネットワークを介して通信可能に接続される。通信ネットワークは、たとえばインターネットであり、公衆電話回線網や携帯電話回線網、無線通信路、イーサネット(登録商標)などにより構築される。
【0014】
ユーザ端末10は、飼主2が操作するコンピュータであり、例えばスマートフォンやタブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータなどである。ユーザ端末10はカメラ機能を備えることができる。飼主2はユーザ端末10を操作して管理サーバ20に対して動物患者1を移動体3により獣医療機関まで輸送する依頼(以下、輸送依頼という。)を送信することができる。また、飼主2は、ユーザ端末10を操作して問診に対する回答を行うことができる。
【0015】
獣医療機関端末30は、獣医療機関の従業者が操作するコンピュータであり、例えば、スマートフォンやタブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータなどである。獣医療機関の従事者は、例えば、獣医師4、看護師5、スタッフ6などを含む。獣医療機関端末30は管理サーバ20からのメッセージを受信して従事者に対して出力することができる。
【0016】
管理サーバ20は、例えばワークステーションやパーソナルコンピュータのような汎用コンピュータとしてもよいし、あるいはクラウド・コンピューティングによって論理的に実現されてもよい。管理サーバ20は、ユーザ端末10からの輸送依頼に応じて、問診を行い、問診結果を獣医療機関端末30に送信することができる。
【0017】
本実施形態の獣医療支援システムでは、移動体3の予約を行う際に、動物患者1に必要な処置に応じた機能や設備を備える移動体3を予約する。
【0018】
<管理サーバ>
図2は、管理サーバ20のハードウェア構成例を示す図である。なお、図示された構成は一例であり、これ以外の構成を有していてもよい。管理サーバ20は、CPU201、メモリ202、記憶装置203、通信インタフェース204、入力装置205、出力装置206を備える。記憶装置203は、各種のデータやプログラムを記憶する、例えばハードディスクドライブやソリッドステートドライブ、フラッシュメモリなどである。通信インタフェース204は、通信ネットワーク3に接続するためのインタフェースであり、例えばイーサネット(登録商標)に接続するためのアダプタ、公衆電話回線網に接続するためのモデム、無線通信を行うための無線通信機、シリアル通信のためのUSB(Universal Serial Bus)コネクタやRS232Cコネクタなどである。入力装置205は、データを入力する、例えばキーボードやマウス、タッチパネル、ボタン、マイクロフォンなどである。出力装置206は、データを出力する、例えばディスプレイやプリンタ、スピーカなどである。なお、後述する管理サーバ装置20の各機能部はCPU201が記憶装置203に記憶されているプログラムをメモリ202に読み出して実行することにより実現され、管理サーバ20の各記憶部はメモリ202及び記憶装置203が提供する記憶領域の一部として実現される。
【0019】
図3は、管理サーバ20のソフトウェア構成例を示す図である。管理サーバ20は、飼主情報記憶部231、動物情報記憶部232、医療機関情報記憶部233、従事者情報記憶部234、移動体情報記憶部235、質問記憶部236、回答記憶部237、条件記憶部238、輸送予約情報記憶部239、カルテ情報記憶部240、必要処置記憶部241、受付部211、問診部212、予約部213、カルテ情報取得部214、処置特定部215、アサイン部216、を備える。
【0020】
<記憶部>
飼主情報記憶部231は、飼主2に関する情報(以下、飼主情報という。)を記憶する。飼主情報には、飼主2を特定する飼主IDに対応付けて、飼主2の氏名、住所、連絡先などを含めることができる。
【0021】
動物情報記憶部232は、動物患者1に関する情報(以下、動物情報という。)を記憶する。動物情報には、動物患者1を特定する動物IDに対応付けて、当該動物患者1の飼主2を示す飼主ID、動物患者1が受診する獣医療機関を示す医療機関ID、ならびに動物患者1の名前、動物種及び品種などを含めることができる。
【0022】
医療機関情報記憶部233は、獣医療機関に関する情報(以下、医療機関情報という。)を記憶する。医療機関情報には、獣医療機関を特定する医療機関IDに対応付けて、獣医療機関の名称や住所を含めることができる。
【0023】
従事者情報記憶部234は、獣医療機関の従事者に関する情報(以下、従事者情報という。)を記憶する。従事者情報記憶部234は、獣医療従事者ごとに、獣医療従者が対応可能な動物種及び作業内容を記憶する。従事者情報記憶部234が記憶する従事者情報には、従事者を特定する従事者IDに対応付けて、従事者の氏名、従事者が所持している資格(獣医師、看護師、麻酔、検査機器の操作などを含む。)、対応可能作業を含めることができる。対応可能作業には、動物患者1の状態の判断、動物患者1に対して行うことが可能な処置の種類、検体の回収、移動体1の運転などを含めることができる。
【0024】
移動体情報記憶部235は、移動体3に関する情報(以下、移動体情報という。)を記憶する。移動体情報には、移動体3を特定する移動体IDに対応付けて、移動体3が待機している場所(待機場所)、移動体3の定員、移動体3が備える機能を含めることができる。移動体3の定員は、例えば、人間の定員としてもよいし、動物種ごとに定員を設定するようにしてもよいし、人間の人数(飼主の数)に対応付けて、動物種毎の動物の数の定員を設定するようにしてもよい。移動体3の機能は、例えば、人工呼吸器や検査装置の有無など、動物患者1の自宅において、又は自宅から獣医療機関までの道中に動物患者1に対して施す必要のある処置に用いる各種の機能の有無を設定することができる。
【0025】
質問記憶部236は、問診に係る質問を含む情報(以下、質問情報という。)を記憶する。質問情報には、獣医療機関を特定する医療機関IDと、当該獣医療機関において行う問診を示す問診IDとに対応付けて、質問を特定する質問ID、当該質問が対象とする動物種及び品種(動物種及び品種のいずれかを省略してもよい。)、ならびに質問内容を含む。なお、質問記憶部231は、例えば、医療機関ID、動物種、品種に対応付けて、複数の問診を管理するようにしてもよい。質問内容には、飼い主から取得する主観的な情報(主訴)を問い合わせる質問を含めることができる。主訴は、例えば、「ご飯をあまり食べていない」「足に擦り傷ができている」「太ってきた」「元気がない」「鼻水が出ている」等であり、飼い主が所有する動物を見たときに観察される症状である。質問内容には、回答の選択肢を含めるようにしてもよい。つまり、質問内容には、フリーテキストでの回答を予定する質問、2択または3択以上の選択肢から1つ以上を選択する回答を予定する質問、所定の範囲内での値(実数または整数)の回答を予定する質問などを含めることができる。本実施形態では、選択肢の中から1つを選択する回答を予定している。
【0026】
回答記憶部237は、質問に対する回答を含む情報(以下、回答情報という。)を記憶する。回答情報には、回答を行った飼い主を示す飼い主ID、動物患者を示す動物ID、獣医療機関を示す医療機関ID、回答日時及び質問に対する飼主2からの回答内容が含まれる。回答内容は画像であってもよい。すなわち、飼主2がユーザ端末10のカメラを用いて動物患者1を撮影した画像(静止画像又は動画像)が回答内容であってもよい。
【0027】
条件記憶部238は、動物患者1のために予約する移動体3に対する条件を記憶する。条件記憶部238は、動物種(品種を含めてもよい。)及び来院前に必要な処置に対応付けて移動体3の条件を記憶することができる。条件記憶部238は、動物種に応じた移動体の大きさ(移動体情報の定員)に対する条件(サイズ条件)を記憶することができる。条件記憶部238は、来院前に行うべき処置のために移動体3が備える機能(移動体情報の機能)に対する条件(機能条件)を記憶することができる。
【0028】
輸送予約情報記憶部239は、移動体3の予約に関する情報(以下、輸送予約情報という。)を記憶する。輸送予約情報には、移動体3を特定する移動体IDに対応付けて、獣医療機関を示す医療機関ID、飼主2を示す飼主ID、来院フラグ、乗車日時、乗務員IDを含めることができる。来院フラグは、自宅から獣医療機関への輸送であるか否かを示す。例えば、来院フラグが「真」である場合には、自宅から獣医療機関への輸送であること、すなわち、飼主IDに対応する飼主情報の住所から、医療機関IDに対応する医療機関情報の住所までの輸送であることを示し、来院フラグが「偽」である場合には、獣医療機関から自宅への輸送であること、すなわち、医療機関IDに対応する医療機関情報の住所から飼主IDに対応する飼主情報の住所までの輸送であることを示す。乗車日時は、出発地点(自宅の住所又は獣医療機関の住所)において移動体3に動物患者1を乗せる予定の日時である。乗務員IDは、移動体3に乗車する予定の獣医療機関の従事者を示す従事者IDである。例えば、移動途中に何らかの処置を行ったり、検体を回収したりする場合には、獣医師4や看護師5が乗務員としてアサインされる必要がある。
【0029】
カルテ情報記憶部240は、獣医療機関に通院する動物のカルテ情報を管理する。なお、獣医療機関に一度でも通院した動物についてはカルテ情報が作成される。カルテ情報に含まれる項目には、例えば、患者動物1を特定する動物IDと、受診日(日付)とに対応付けて、身体所見、病歴、検査情報、診断情報、処置/投薬情報、処方情報、メモ、画像情報などが含まれ得る。カルテ情報記憶部240は、管理サーバ20とは別のカルテ情報管理システムに管理するようにして、当該カルテ情報管理システムにアクセスするようにすることもできる。
【0030】
身体所見とは、動物病院等において獣医師等が調べることができ、客観的な数値で表せる身体情報である。例えば「体重」「体温」「心拍」「呼吸数」等である。
【0031】
病歴とは、獣医師等が聴取した主観的な情報である。病歴は、上述した問診情報と同一になる場合も多いが、例えば「喉が赤い」というように飼い主だけでは実際に確認するのが困難な項目も含まれている。また、問診情報では「血尿が出ている」という情報が取得されたとしても、獣医師等によって診察したところ「肛門から出血している」という現病歴が聴取されることもある。
【0032】
検査情報には、少なくとも当該動物患者1が過去に受けた検査の内容を含んでいる。検査情報には、過去の通院、入院又は手術において受けたことのある検査や、検診において受けたことのある検査などを含めることができる。その際に、検査に対する反応(嫌がったかどうか等、検査自体の受容性・許容性に関する情報)を関連付けて記憶することとしてもよい。
【0033】
診断情報には、少なくとも当該動物患者1について過去に獣医師4により判断された内容(診断)の履歴が含まれうる。診断情報には、過去に罹患した具体的な疾患名や怪我等の情報を含めることができる。診断情報には、過去の通院、入院又は手術において疑われた診断に関する情報を含めてもよい。
【0034】
処置/投薬情報には、当該動物患者1が過去に受けた処置または投薬に関する情報を含んでいる。処置/投薬情報には、処置または投薬に対する反応(嫌がったかどうか、体調に影響を来たしたか等、処置又は投薬自体の受容性・許容性に関する情報)を関連付けて記憶することとしてもよい。処置の内容としては、例えば、肛門腺処置、爪切処置、足裏処置、耳処置、毛抜き、眼科処置、歯科処置、エリザベスカラー・腹帯など、鍼灸処置、留置、便出し、抜糸、消毒、酸素処置、催吐処置、緊急蘇生処置、水抜き、強制給餌、洗浄、圧排、マッサージ、マイクロチップ、トリミング、カテーテル、リハビリ、手術、麻酔、入院、注射、輸血、点滴、検査、放射線治療、各種ドック、介護、衛生処置、シャンプー、しつけ、サプリメント、おやつ、避妊、去勢、ノミダニ駆除、狂犬病薬、ワクチン、フード、内用薬、点耳薬、点鼻薬、点眼薬、外用薬(軟膏・クリーム)、外用薬(消毒薬・スプレー)、外用薬、フィラリア予防などが例示できるがこの限りではない。
【0035】
処方情報は、当該動物患者1が過去に処方された薬剤等を含む。処方情報には、自宅にて処方された薬剤を服用できたか否か、嫌がったかどうか、体調に影響を来たしたか等、処置又は投薬自体の受容性・許容性に関する情報をユーザの携帯端末を介して取得して追加するようにしてもよい。
【0036】
メモは、診察、入院又は手術の担当医、担当看護師、担当事務などにより入力されたテキストデータである。
【0037】
画像情報は、動物患者1の様子を撮影した画像である。画像情報は、静止画像であっても動画像であってもよい。
【0038】
必要処置記憶部241は、来院前に必要な処置を決定するための情報(以下、必要処置情報という。)を記憶する。必要処置情報には、例えば、動物種及び品種に対応付けて、カルテ情報に含まれる内容についての条件(カルテ条件)と、カルテ条件が満たされた場合に必要な処置(必要処置)とを含めることができる。カルテ条件は、例えば、身体所見に含まれる情報が所定の数値範囲を超えていることや、動物患者の診断や病歴に、特定の病状や病気が含まれていること、処方情報に特定の薬の処方が含まれていること、メモに特定のキーワードが含まれていることなどとすることができる。
【0039】
また、必要処置情報には問診への回答に対する条件(問診条件)を含めることができる。この場合、カルテ条件及び問診条件の両方が満たされた場合に必要処置に設定されている処置が必要と判断することができる。
【0040】
なお、必要処置情報は、例えば、機械学習により必要な処置を学習させた学習モデルとすることができる。学習モデルは、例えば、カルテ情報や問診の回答などを特徴量として、必要な処置を教師データとして機械学習を行うことにより作成及び更新することができる。
【0041】
<機能部>
受付部211は、動物患者の輸送の依頼(以下、輸送依頼という。)を受け付ける。受付部211は、ユーザ端末10から輸送依頼を受信する。輸送依頼には、動物患者についての主訴が含まれる。主訴とは、飼主2が申し立てる動物患者1の状態である。本実施形態では、主訴の選択肢を管理サーバ2がユーザ端末10に送信し、ユーザ端末10において選択肢の中から主訴が選択されることを想定する。輸送依頼には、主訴以外にも、飼主2を示す飼主ID、動物患者1を示す動物ID及び獣医療機関を示す医療機関IDが設定されうる。輸送依頼に飼主IDが設定されていない場合には、輸送依頼受信部211は、動物IDに対応する飼主IDを動物情報記憶部232から読み出すことができる。輸送依頼に動物IDが設定されていない場合には、輸送依頼受信部211は、ユーザ端末10に対して動物IDを問い合わせるようにすることができる。輸送依頼には、受診希望日時(又は希望する期間)が設定されていてもよい。
【0042】
問診部212は、動物患者1に係る問診を行う。問診部212は、動物患者1の飼主2に対して質問を送信し、質問に対する回答を受信することができる。問診部212は、例えば、質問記憶部236に記憶されている質問をユーザ端末10に送信し、ユーザ端末10から質問に対する回答を受信することができる。問診部212は、例えば、1つの質問を送信し、当該質問に対する回答を受信して、回答に応じて次の質問を決定するようにしてもよいし、複数の質問を一度に送信して、複数の質問に対する回答を受信するようにしてもよい。問診部212は、受信した回答を、飼主を示す飼主ID、動物患者を示す動物ID、獣医療機関を示す医療機関ID及び日時に対応付けて回答記憶部237に登録することができる。
【0043】
予約部213は、患者動物1を輸送する移動体3を予約する。移動体3の予約とは、移動体3を特定の動物患者1を特定の日時に輸送可能な状態に確保することをいう。予約部216は、輸送予約情報を作成して輸送予約情報記憶部239に登録することができる。予約部213は、すぐに移動体3を使用する場合にも、現在日時を設定した予約をすることができる。
【0044】
予約部213は、後述する処置特定部215に来院前に必要な処置を特定させ、その結果(必要処置)に応じて移動体3を予約することができる。
【0045】
カルテ情報取得部214は、動物患者1に対応するカルテ情報を取得する。本実施形態では、カルテ情報取得部214は、カルテ情報記憶部240からカルテ情報を読み出すことができる。カルテ情報が外部のカルテ情報管理システムに管理されている場合、カルテ情報取得部214は、当該カルテ情報管理システムにアクセスしてカルテ情報を取得することができる。
【0046】
処置特定部215は、動物患者1の来院前に必要な処置を特定する。処置特定部215は、動物患者1の動物種(及び品種)に対応する必要処置情報を必要処置記憶部241から読み出し、カルテ情報取得部214が取得したカルテ情報が、読み出した必要処置情報のカルテ条件を満たす場合には、必要処置情報に含まれる必要処置を、来院前に必要な処置として特定することができる。
【0047】
また、必要処置情報に問診条件が含まれている場合には、処置特定部215は、カルテ情報がカルテ条件を満たし、かつ、問診への回答が問診条件を満たすときに、必要処置情報に含まれる必要処置を、来院前に必要な処置として特定することができる。
【0048】
なお、必要処置情報が学習モデルであるような場合には、処置特定部215は、カルテ情報や問診の回答を学習モデルに与えることにより、必要な処置を推論することもできる。
【0049】
また、処置特定部215は、主訴及び/又は問診の回答に応じて必要な処置を特定してもよい。処置特定部215は、回答に加えて又は代えて、カルテ情報に基づいて必要な処置を特定することもできる。
【0050】
なお、処置特定部215は、特定した処置を獣医療機関端末30に出力して、獣医療従事者から必要な処置の入力を受け付けるようにすることもできる。なお、処置特定部215は、移動体3における処置不要という判断を行うこともできる。
【0051】
予約部213は、処置特定部215が特定した処置と、動物患者1の動物種(及び品種)とに対応する機能条件(及びサイズ条件)を条件記憶部238から読み出し、読み出した機能条件(及びサイズ条件)を満たす移動体3を移動体情報記憶部235から特定し、特定した移動体3を予約することができる。これにより、動物患者1の動物種に応じた大きさや機能等を満たす移動体3により動物患者1を輸送することができる。例えば、嘔吐している動物患者の場合には、吐瀉物を容易に処理可能な床材を備え、消毒薬品及び作業道具を備えた移動体3を予約することができる。また、開口呼吸をしているような状態の動物患者1に対しては酸素吸入の可能な設備を備えた移動体3を予約することができる。
【0052】
予約部213はまた、機能条件を満たし、かつ、サイズ条件を満たす移動体3を移動体情報記憶部235から特定することもできる。
【0053】
アサイン部216は、移動体3に同乗する必要のある医療従事者を予約(輸送予約情報)に設定する。アサイン部216は、処置特定部215が特定した処置を行うことのできる医療従事者を従事者情報記憶部234から特定し、特定した獣医療従事者を示す乗務員IDを輸送予約情報に設定することができる。
【0054】
<動作>
図4は、管理サーバ20の動作について説明する図である。
【0055】
管理サーバ20は、動物患者1の飼主2のユーザ端末10から輸送依頼を受信すると(S301)、飼主2に対して動物患者1についての問診を行う(S302)。管理サーバ20は、例えば、輸送依頼の動物IDに対応する動物種及び品種を動物情報記憶部232から特定し、特定した動物種及び品種ならびに輸送依頼に設定されている医療機関IDに対応する質問内容を質問情報記憶部236から読み出して、ユーザ端末10に送信し、質問に対する回答をユーザ端末10から受信することができる。
【0056】
管理サーバ20は、動物患者1のカルテ情報を取得し(S303)、取得したカルテ情報と、問診結果(回答内容)に応じて、動物患者1の輸送中に必要な処置を特定する(S304)。
【0057】
処置が必要である場合には(S305:YES)、管理サーバ20は、動物患者の動物種及び必要な処置に対応する条件を条件記憶部238から読み出し(S306)、必要案処置を行うことが可能な獣医療従事者(医師4又は看護師5)を従事者情報記憶部234から特定して、移動体3を予約して、獣医療従事者をアサインする(S307)。
【0058】
来院前の処置が不要である場合には(S305:NO)、管理サーバ20は、動物種に対応するサイズ条件を読み出して(S308)、読み出したサイズ条件に合致する移動体3を予約して、獣医療従事者(スタッフ6)をアサインする(S309)。
【0059】
以上のようにして、本実施形態の獣医療支援システムによれば、動物患者1が来院前に必要な処置に応じた移動体3及び乗務員を手配することができる。
【0060】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1 動物患者
2 飼主
3 移動体
4 獣医師
5 看護師
6 スタッフ
10 ユーザ端末
20 管理サーバ
30 獣医療機関端末