(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123354
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】ガスタービンの性能を予測し最適化するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
F02C 7/00 20060101AFI20230829BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20230829BHJP
【FI】
F02C7/00 A
G06N20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023003182
(22)【出願日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】202221005901
(32)【優先日】2022-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(71)【出願人】
【識別番号】510337621
【氏名又は名称】タタ コンサルタンシー サービシズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TATA Consultancy Services Limited
【住所又は居所原語表記】Nirmal Building,9th Floor,Nariman Point,Mumbai 400021,Maharashtra,India.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100196612
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】アビシェーク ボンダラパティ
(72)【発明者】
【氏名】クルディープ シン
(72)【発明者】
【氏名】スリ ハルシャ ニスタラ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカタラマーナ ルンカナ
(57)【要約】
【課題】ガスタービンの性能を予測し最適化するシステム及び方法を提供する。
【解決手段】ガスタービンは、低グリーンハウスガスエミッションを備えた発電の主な供給源の1つである。しかしながら、ガスタービンは、グリーン燃料の採用に移行しつつある。グリーン燃料への移行は、固有の課題のセットを備えている。既存の技術は、動作ラインでこれらの分析を実行し、他の動作ポイントでの性能推定は指示されていない。本出願は、広範な動作領域でガスタービンの性能を正確に推定するシステム及び方法を提供する。システムは最初に、圧縮機の各段の出口条件を正確に推定する。次にシステムは、推定した出口条件を利用してガスタービンの他の構成要素に関連する出口条件を決定する。次に出口条件は、ガスタービンの最適プロセス設定を識別する場合に更に手助けとなる定常状態及び過渡状態変数を推定するのに利用される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ実装方法であって、
1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したガスタービン性能最適化システム(GTPOS)によって、1又は2以上のデータソースからリアルタイムセンサデータ及び非リアルタイムデータを受信するステップ(402)と、
前処理データを取得するために、前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、前記リアルタイムセンサデータ及び前記非リアルタイムデータを前処理するステップ(404)と、
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、1又は2以上のソフトセンサを用いて、前記前処理データに基づいてガスタービンシステムに関連する1又は2以上のプロセスパラメータを推定するステップ(406)と、
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、前記1又は2以上のプロセスパラメータと前記前処理データとを組み合わせることによって、前記ガスタービンシステムに関連する入力データを生成するステップであって、前記入力データは、圧縮機関連入力データ、燃焼器関連入力データ、タービン関連入力データ、及びガスタービン性能データのうちの1又は2以上を含み、前記圧縮機関連入力データは、入口質量流量、入口温度、入口圧力、入口ガイドベーン(IGV)角度、及びシャフト回転速度を含み、前記ガスタービン性能データは、1又は2以上の定常状態ガスタービン性能パラメータの各定常状態ガスタービン性能パラメータに関連するリアルタイム値と1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数に関連するリアルタイム値とを含む、ステップ(408)と、
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、事前定義のマッハ数計算式を用いて、前記圧縮機断面積、前記IGV角度、実ガス定数、比熱定数率及び1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータに少なくとも一部基づいて、前記圧縮機の1又は2以上の段の第1段のマッハ数を推定するステップ(410a)であって、前記1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータは、知識データベースからアクセスされ、前記実ガス定数は、ラボラトリデータベースからアクセスされ、前記比熱定数率は、前記入口温度に基づいて決定される、ステップ(410a)と、
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、前記推定されたマッハ数が事前定義のマッハ数を下回るかどうかを決定するステップ(410b)と、
前記マッハ数が前記事前定義のマッハ数を下回ると決定すると、前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、前期推定されたマッハ数、前記入口質量流量、前記入口温度、前記入口圧力、前記シャフト回転速度、前記比熱定数率、及び前記1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータに少なくとも一部基づいて、前記第1段の相対流量係数を推定するステップ(410c)と、
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、1又は2以上の無次元特性プロット及び前記1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータを用いて、前記相対流量係数に基づいて前記第1段の相対圧力係数を決定するステップであって、前記1又は2以上の無次元特性プロットは、前記知識データベースからアクセスされる、ステップ(410d)と、
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、前記相対圧力係数、前記相対流量係数、及び前記1又は2以上の無次元特性プロットに少なくとも一部基づいて、前記第1段の効率を決定するステップ(410e)と、
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、前記相対流量係数、前記相対圧力係数、前記効率、及び前記マッハ数に少なくとも一部基づいて、前記第1段の出口質量流量、出口圧力、出口温度、及び出口速度を推定するステップ(410f)と、
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、前記1又は2以上の段の全ての段が識別されるまで、前記出口質量流量を前記入口質量流量として、前記出口圧力を前記入口圧力として、前記出口温度を前記入口温度として、及び前記1又は2以上の段の次の段を前記第1段として識別するステップ(410g)と、
を繰り返し実行することによって、前記圧縮機関連入力データ及び圧縮機断面積を用いて、前記圧縮機の1又は2以上の段の各段の前記出口質量流量、前記出口圧力、前記出口温度、及び前記出口速度を決定するステップ(410)と、
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、前記出口質量流量、前記出口圧力、前記出口温度及び前記出口速度、及び前記燃焼器関連入力データに少なくとも一部基づいて、前記ガスタービンシステムの燃焼ガスに関連する燃焼器出力データを推定するステップであって、前記燃焼出力データは、燃焼器圧力、燃焼器温度、燃焼器質量流量及び燃焼ガスの組成を含む、ステップ(412)と、
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、前記出口質量流量、前記出口圧力、前記出口温度及び前記出口速度、前記燃焼器出力データ、及び前記タービン関連入力データに少なくとも一部基づいて、前記ガスタービンシステムのタービンの排出ガスに関連するタービン出力データを推定するステップ(414)と、
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、前記出口質量流量、前記出口圧力、前記出口温度、前記出口速度、前記燃焼器出力データ、及び前記タービン出力データに少なくとも一部基づいて、前記1又は2以上の定常状態ガスタービン性能パラメータの各定常状態ガスタービン性能パラメータに関連する推定値を決定するステップ(416)と、
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルを用いて各定常状態ガスタービン性能パラメータに関連する推定値に基づいて、前記1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数に関連する推定値を決定するステップであって、前記1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルは、モデルデータベースからアクセスされ、前記1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルは、1又は2以上の物理ベースのモデル及び1又は2以上のデータ駆動モデルのうちの1つを含む、ステップ(418)と、
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、前記1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数の推定値が、前記それぞれの過渡的ガスタービン状態変数に対して定義された事前定義の閾値限界の範囲内であるかどうかを決定するステップ(420)と、
前記1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数の推定値が、前記それぞれの過渡的ガスタービン状態変数に対して定義された前記事前定義の閾値限界の範囲内にないと決定すると、前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、各過渡的ガスタービン状態変数の推定値を、前記それぞれの過渡的ガスタービン状態変数に対して定義された前記事前定義の閾値限界の範囲内に維持する最適プロセス設定を識別するためにプロセス最適化問題を解くステップ(422)と、
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、前記最適プロセス設定を表示するステップ(424)と、
を含む、プロセッサ実装方法。
【請求項2】
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、前記1又は2以上の定常状態ガスタービンプロセスパラメータの推定値を前記1又は2以上の定常状態ガスタービンプロセスパラメータのリアルタイム値と比較することによって、予測性能品質指数を計算するステップと、
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、計算された予測性能品質指数が、事前定義の予測性能品質指数閾値を下回るかどうかを決定するステップと、
前記計算された予測性能品質指数が、前記事前定義の予測性能品質指数閾値を下回ると決定すると、前記1又は2以上のハードウェアを介した前記GTPOSによって、前記計算された予測性能品質指数が前記事前定義の予測性能品質指数閾値を上回ったままであるように1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータをチューニングするための設計ポイント較正を開始するステップであって、前記1又は2以上のチューニングされた事前決定のガスタービンチューニングパラメータは、前記知識データベースに格納される、ステップと、
を更に含む、請求項1に記載のプロセッサ実装方法。
【請求項3】
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、前記1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の推定値を前記1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数のリアルタイム値と比較することによって、モデル品質指数を計算するステップと、
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、計算された前記モデル品質指数が、事前定義のモデル品質指数閾値を下回るかどうかを決定するステップと、
前記計算されたモデル品質指数が、前記事前定義のモデル品質指数閾値を下回ると決定すると、前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルの自己学習を開始するステップであって、前記自己学習は、前記モデル品質指数を前記事前定義のモデル品質指数閾値より上回って維持する、ステップと、
を更に含む、請求項1に記載のプロセッサ実装方法。
【請求項4】
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、圧縮機関連入力データの1又は2以上の新しいセットを受信するステップと、
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、前記圧縮機関連入力データの1又は2以上の新しいセットの圧縮機関連入力データの各新しいセットに対する圧縮機出口圧力を推定するステップと、
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、前記圧縮機関連入力データの1又は2以上の新しいセットの圧縮機関連入力データの各新しいセットに対して推定された前記圧縮機出口圧力に基づいて、圧縮機性能マップを作成するステップであって、前記圧縮機性能マップは、1又は2以上の等高線を含み、各等高線は、同じ無次元回転速度を有する圧縮機関連入力データの各新しいセットに関連付けられ、前記無次元回転速度は、前記圧縮機関連入力データのそれぞれの新しいセットに存在する新しい入口温度の平方根で新しいシャフト回転速度を除算することによって取得される、ステップと、
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、前記圧縮機性能マップにおける前記1又は2以上の等高線の各等高線の変曲点を識別するステップと、
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、前記対応する新しい圧縮機関連入力データに対して識別された前記変曲点に基づいて、各新しい圧縮機関連入力データのサージポイントを表示するステップと、
を更に含む、請求項1に記載のプロセッサ実装方法。
【請求項5】
前記マッハ数が、前記事前定義のマッハ数を下回らないと決定すると、
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、前記圧縮機関連入力データを前記第1段のチョークポイントとして識別するステップと、
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサを介した前記GTPOSによって、前記第1段の前記チョークポイント及びチョーキング通知を表示するステップであって、前記チョーキング通知は、前記第1段の前記圧縮機のチョーキングが回避されるように、前記入口質量流量及び前記入口IGV角度のうちの少なくとも1つを修正するメッセージを含む、ステップと、
を更に含む、請求項1に記載のプロセッサ実装方法。
【請求項6】
ガスタービン性能最適化システム(GTPOS)(200)であって、
命令を格納するメモリ(208)と、
1又は2以上の通信インタフェース(210)と、
前記1又は2以上の通信インタフェース(210)を介して前記メモリ(208)に結合された1又は2以上のハードウェアプロセッサ(206)と、
を備え、
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサ(206)は、前記命令によって、
1又は2以上のデータソースからリアルタイムセンサデータ及び非リアルタイムデータを受信することと、
前処理データを取得するために、前記リアルタイムセンサデータ及び前記非リアルタイムデータを前処理することと、
1又は2以上のソフトセンサを用いて、前記前処理データに基づいてガスタービンシステムに関連する1又は2以上のプロセスパラメータを推定することと、
前記1又は2以上のプロセスパラメータと前記前処理データとを組み合わせることによって、前記ガスタービンシステムに関連する入力データを生成することであって、前記入力データは、圧縮機関連入力データ、燃焼器関連入力データ、タービン関連入力データ、及びガスタービン性能データのうちの1又は2以上を含み、前記圧縮機関連入力データは、入口質量流量、入口温度、入口圧力、入口ガイドベーン(IGV)角度、及びシャフト回転速度を含み、前記ガスタービン性能データは、1又は2以上の定常状態ガスタービン性能パラメータの各定常状態ガスタービン性能パラメータに関連するリアルタイム値と1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数に関連するリアルタイム値を含む、生成することと、
事前定義のマッハ数計算式を用いて、前記圧縮機断面積、前記IGV角度、実ガス定数、比熱定数率及び1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータに少なくとも一部基づいて、前記1又は2以上の段の第1段のマッハ数を推定することであって、前記1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータは、知識データベースからアクセスされ、前記実ガス定数は、ラボラトリデータベースからアクセスされ、前記比熱定数率は、前記入口温度に基づいて決定される、推定することと、
前記推定されたマッハ数が事前定義のマッハ数を下回るかどうかを決定することと、
前記マッハ数が前記事前定義のマッハ数を下回ると決定すると、前記推定されたマッハ数、前記入口質量流量、前記入口温度、前記入口圧力、前記シャフト回転速度、前記比熱定数率、及び前記1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータに少なくとも一部基づいて、前記第1段の相対流量係数を推定することと、
1又は2以上の無次元特性プロット及び前記1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータを用いて、前記相対流量係数に基づいて前記第1段の相対圧力係数を決定することであって、前記1又は2以上の無次元特性プロットは、前記知識データベースからアクセスされる、決定することと、
前記相対圧力係数、前記相対流量係数、及び前記1又は2以上の無次元特性プロットに少なくとも一部基づいて、前記第1段の効率を決定することと、
前記相対流量係数、前記相対圧力係数、前記効率、及び前記マッハ数に少なくとも一部基づいて、前記第1段の出口質量流量、出口圧力、出口温度、及び出口速度を推定することと、
前記1又は2以上の段の全ての段が識別されるまで、前記出口質量流量を前記入口質量流量として、前記出口圧力を前記入口圧力として、前記出口温度を前記入口温度として、及び前記1又は2以上の段の次の段を前記第1段として識別することと、
を繰り返し実行することによって、前記圧縮機関連入力データ及び圧縮機断面積を用いて、前記圧縮機の1又は2以上の段の各段の前記出口質量流量、前記出口圧力、前記出口温度、及び前記出口速度を決定することと、
前記出口質量流量、前記出口圧力、前記出口温度及び前記出口速度、及び前記燃焼器関連入力データに少なくとも一部基づいて、前記ガスタービンシステムの燃焼ガスに関連する燃焼器出力データを推定することであって、前記燃焼出力データは、燃焼器圧力、燃焼器温度、燃焼器質量流量及び燃焼ガスの組成を含む、推定することと、
前記出口質量流量、前記出口圧力、前記出口温度及び前記出口速度、前記燃焼器出力データ、及び前記タービン関連入力データに少なくとも一部基づいて、前記ガスタービンシステムのタービンの排出ガスに関連するタービン出力データを推定することと、
前記出口質量流量、前記出口圧力、前記出口温度、前記出口速度、前記燃焼器出力データ、及び前記タービン出力データに少なくとも一部基づいて、前記1又は2以上の定常状態ガスタービン性能パラメータの各定常状態ガスタービン性能パラメータに関連する推定値を決定することと、
1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルを用いて各定常状態ガスタービン性能パラメータに関連する推定値に基づいて、前記1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数に関連する推定値を決定することであって、前記1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルは、モデルデータベースからアクセスされ、前記1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルは、1又は2以上の物理ベースのモデル及び1又は2以上のデータ駆動モデルのうちの1つを含む、決定することと、
前記1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数の推定値が、前記それぞれの過渡的ガスタービン状態変数に対して定義された事前定義の閾値限界の範囲内であるかどうかを決定することと、
前記1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数の推定値が、前記それぞれの過渡的ガスタービン状態変数に対して定義された前記事前定義の閾値限界の範囲内にないと決定すると、各過渡的ガスタービン状態変数の推定値を前記それぞれの過渡的ガスタービン状態変数に対して定義された前記事前定義の閾値限界の範囲内に維持する最適プロセス設定を識別するためにプロセス最適化問題を解くことと、
前記最適プロセス設定を表示することと、
を行うように構成される、
ガスタービン性能最適化システム(GTPOS)(200)。
【請求項7】
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサに更に、
前記1又は2以上の定常状態ガスタービンプロセスパラメータの推定値を前記1又は2以上の定常状態ガスタービンプロセスパラメータのリアルタイム値と比較することによって、予測性能品質指数を計算することと、
計算された前記予測性能品質指数が、事前定義の予測性能品質指数閾値を下回るかどうかを決定することと、
計算された予測性能品質指数が、前記事前定義の予測性能品質指数閾値を下回ると決定すると、前記計算された予測性能品質指数が前記事前定義の予測性能品質指数閾値を上回ったままであるように、1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータをチューニングするための設計ポイント較正を開始することであって、前記1又は2以上のチューニングされた事前決定のガスタービンチューニングパラメータは、前記知識データベースに格納される、開始することと、
を実行させる、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサに更に、
前記1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の推定値を前記1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数のリアルタイム値と比較することによって、モデル品質指数を計算することと、
計算された前記モデル品質指数が、事前定義のモデル品質指数閾値を下回るかどうかを決定することと、
前記計算されたモデル品質指数が、前記事前定義のモデル品質指数閾値を下回ると決定すると、前記1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルの自己学習を開始することであって、前記自己学習は、前記モデル品質指数を前記事前定義のモデル品質指数閾値より上回って維持する、開始することと、
を実行させる、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサに更に、
圧縮機関連入力データの1又は2以上の新しいセットを受信することと、
前記圧縮機関連入力データの1又は2以上の新しいセットの圧縮機関連入力データの各新しいセットに対する圧縮機出口圧力を推定することと、
前記圧縮機関連入力データの1又は2以上の新しいセットの圧縮機関連入力データの各新しいセットに対して推定された前記圧縮機出口圧力に基づいて、圧縮機性能マップを作成することであって、前記圧縮機性能マップは、1又は2以上の等高線を含み、各等高線は、同じ無次元回転速度を有する圧縮機関連入力データの各新しいセットに関連付けられ、前記無次元回転速度は、前記圧縮機関連入力データのそれぞれの新しいセットに存在する新しい入口温度の平方根で新しい回転速度を除算することによって取得される、作成することと、
前記圧縮機瀬能マップにおける前記1又は2以上の等高線の各等高線の変曲点を識別することと、
前記対応する新しい圧縮機関連入力データに対して識別された前記変曲点に基づいて、各新しい圧縮機関連入力データのサージポイントを表示することと、
を実行させる、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記1又は2以上のハードウェアプロセッサに更に、
前記マッハ数が、前記事前定義のマッハ数を下回らないと決定すると、前記圧縮機関連入力データを前記第1段のチョークポイントとして識別することと、
前記第1段の前記チョークポイント及びチョーキング通知を表示することであって、前記チョーキング通知は、前記第1段の前記圧縮機のチョーキングが回避されるように、前記入口質量流量及び前記入口IGV角度のうちの少なくとも1つを修正するメッセージを含む、表示することと、
を実行させる、請求項6に記載のシステム。
【請求項11】
1又は2以上の命令を含む1又は2以上の非一時的な機械可読情報ストレージ媒体であって、
前記1又は2以上の命令が、1又は2以上のハードウェアプロセッサによって実行されたときに、
ガスタービン性能最適化システム(GTPOS)によって、1又は2以上のデータソースからリアルタイムセンサデータ及び非リアルタイムデータを受信することと、
前処理データを取得するために、前記GTPOSによって、前記リアルタイムセンサデータ及び前記非リアルタイムデータを前処理することと、
前記GTPOSによって、1又は2以上のソフトセンサを用いて、前記前処理データに基づいてガスタービンシステムに関連する1又は2以上のプロセスパラメータを推定することと、
前記GTPOSによって、前記1又は2以上のプロセスパラメータと前記前処理データとを組み合わせることによって、前記ガスタービンシステムに関連する入力データを生成することであって、前記入力データは、圧縮機関連入力データ、燃焼器関連入力データ、タービン関連入力データ、及びガスタービン性能データのうちの1又は2以上を含み、前記圧縮機関連入力データは、入口質量流量、入口温度、入口圧力、入口ガイドベーン(IGV)角度、及びシャフト回転速度を含み、前記ガスタービン性能データは、1又は2以上の定常状態ガスタービン性能パラメータの各定常状態ガスタービン性能パラメータに関連するリアルタイム値と1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数に関連するリアルタイム値とを含む、生成することと、
前記GTPOSによって、
前記GTPOSによって、事前定義のマッハ数計算式を用いて、前記圧縮機断面積、前記IGV角度、実ガス定数、比熱定数率及び1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータに少なくとも一部基づいて、前記圧縮機の1又は2以上の段の第1段のマッハ数を推定することであって、前記1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータは、知識データベースからアクセスされ、前記実ガス定数は、ラボラトリデータベースからアクセスされ、前記比熱定数率は、前記入口温度に基づいて決定される、推定することと、
前記GTPOSによって、前記推定されたマッハ数が事前定義のマッハ数を下回るかどうかを決定することと、
前記マッハ数が前記事前定義のマッハ数を下回ると決定すると、前記GTPOSによって、前期推定されたマッハ数、前記入口質量流量、前記入口温度、前記入口圧力、前記シャフト回転速度、前記比熱定数率、及び前記1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータに少なくとも一部基づいて、前記第1段の相対流量係数を推定することと、
前記GTPOSによって、1又は2以上の無次元特性プロット及び前記1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータを用いて、前記相対流量係数に基づいて前記第1段の相対圧力係数を決定することであって、前記1又は2以上の無次元特性プロットは、前記知識データベースからアクセスされる、決定することと、
前記GTPOSによって、前記相対圧力係数、前記相対流量係数、及び前記1又は2以上の無次元特性プロットに少なくとも一部基づいて、前記第1段の効率を決定することと、
前記GTPOSによって、前記相対流量係数、前記相対圧力係数、前記効率、及び前記マッハ数に少なくとも一部基づいて、前記第1段の出口質量流量、出口圧力、出口温度、及び出口速度を推定することと、
前記GTPOSによって、前記1又は2以上の段の全ての段が識別されるまで、前記出口質量流量を前記入口質量流量として、前記出口圧力を前記入口圧力として、前記出口温度を前記入口温度として、及び前記1又は2以上の段の次の段を前記第1段として識別することと、
を繰り返し実行することによって、前記圧縮機関連入力データ及び圧縮機断面積を用いて、前記圧縮機の1又は2以上の段の各段の前記出口質量流量、前記出口圧力、前記出口温度、及び前記出口速度を決定することと、
前記GTPOSによって、前記出口質量流量、前記出口圧力、前記出口温度及び前記出口速度、及び前記燃焼器関連入力データに少なくとも一部基づいて、前記ガスタービンシステムの燃焼ガスに関連する燃焼器出力データを推定することであって、前記燃焼出力データは、燃焼器圧力、燃焼器温度、燃焼器質量流量及び燃焼ガスの組成を含む、推定することと、
前記GTPOSによって、前記出口質量流量、前記出口圧力、前記出口温度及び前記出口速度、前記燃焼器出力データ、及び前記タービン関連入力データに少なくとも一部基づいて、前記ガスタービンシステムのタービンの排出ガスに関連するタービン出力データを推定することと、
前記GTPOSによって、前記出口質量流量、前記出口圧力、前記出口温度、前記出口速度、前記燃焼器出力データ、及び前記タービン出力データに少なくとも一部基づいて、前記1又は2以上の定常状態ガスタービン性能パラメータの各定常状態ガスタービン性能パラメータに関連する推定値を決定することと、
前記GTPOSによって、1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルを用いて各定常状態ガスタービン性能パラメータに関連する推定値に基づいて、前記1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数に関連する推定値を決定することであって、前記1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルは、モデルデータベースからアクセスされ、前記1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルは、1又は2以上の物理ベースのモデル及び1又は2以上のデータ駆動モデルのうちの1つを含む、決定することと、
前記GTPOSによって、前記1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数の推定値が、前記それぞれの過渡的ガスタービン状態変数に対して定義された事前定義の閾値限界の範囲内であるかどうかを決定することと、
前記1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数の推定値が、前記それぞれの過渡的ガスタービン状態変数に対して定義された前記事前定義の閾値限界の範囲内にないと決定すると、前記GTPOSによって、各過渡的ガスタービン状態変数の推定値を、前記それぞれの過渡的ガスタービン状態変数に対して定義された前記事前定義の閾値限界の範囲内に維持する最適プロセス設定を識別するためにプロセス最適化問題を解くことと、
前記GTPOSによって、前記最適プロセス設定を表示することと、
を行わせる、1又は2以上の非一時的な機械可読情報ストレージ媒体。
【請求項12】
前記1又は2以上の命令は、前記1又は2以上のハードウェプロセッサによって実行されたときに、
前記GTPOSによって、前記1又は2以上の定常状態ガスタービンプロセスパラメータの推定値を前記1又は2以上の定常状態ガスタービンプロセスパラメータのリアルタイム値と比較することによって、予測性能品質指数を計算することと、
前記GTPOSによって、計算された予測性能品質指数が、事前定義の予測性能品質指数閾値を下回るかどうかを決定することと、
前記計算された予測性能品質指数が、前記事前定義の予測性能品質指数閾値を下回ると決定すると、前記GTPOSによって、前記計算される予測性能品質指数が、前記事前定義の予測性能品質指数閾値を上回ったままであるように1又は2以上の事前決定ガスタービンチューニングパラメータをチューニングするための設計ポイント較正を開始することであって、前記1又は2以上のチューニングされた事前決定ガスタービンチューニングパラメータは、前記知識データベースに格納される、ことと、
を更に起こす、請求項11に記載の1又は2以上の非一時的な機械可読情報ストレージ媒体。
【請求項13】
前記1又は2以上の命令は、前記1又は2以上のハードウェアプロセッサによって実行されたときに、
前記GTPOSによって、前記1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の推定値を前記1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数のリアルタイム値と比較することによって、モデル品質指数を計算することと、
前記GTPOSによって、計算された前記モデル品質指数が、事前定義のモデル品質指数閾値を下回るかどうかを決定することと、
前記計算されたモデル品質指数が、前記事前定義のモデル品質指数閾値を下回ると決定すると、前記GTPOSによって、1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルの自己学習を開始することであって、前記自己学習は、前記モデル品質指数を前記事前定義のモデル品質指数閾値より上回って維持する、ことと、
を更に行わせる、請求項11に記載の1又は2以上の非一時的な機械可読情報ストレージ媒体。
【請求項14】
前記1又は2以上の命令は、前記1又は2以上のハードウェアプロセッサによって実行されたときに、
前記GTPOSによって、圧縮機関連入力データの1又は2以上の新しいセットを受信することと、
前記GTPOSによって、前記圧縮機関連入力データの1又は2以上の新しいセットの圧縮機関連入力データの各新しいセットに対する圧縮機出口圧力を推定することと、
前記GTPOSによって、前記圧縮機関連入力データの1又は2以上の新しいセットの圧縮機関連入力データの各新しいセットに対して推定された前記圧縮機出口圧力に基づいて、圧縮機性能マップを作成することであって、前記圧縮機性能マップは、1又は2以上の等高線を含み、各等高線は、同じ無次元回転速度を有する圧縮機関連入力データの各新しいセットに関連付けられ、前記無次元回転速度は、前記圧縮機関連入力データのそれぞれの新しいセットに存在する新しい入口温度の平方根で新しいシャフト回転速度を除算することによって取得される、ことと、
前記GTPOSによって、前記圧縮機性能マップの前記1又は2以上の等高線の各等高線の変曲点を識別することと、
前記GTPOSによって、前記対応する新しい圧縮機関連入力データに対して識別された変曲点に基づいて、各新しい圧縮機関連入力データのサージポイントを表示することと、
を更に行わせる、請求項11に記載の1又は2以上の非一時的な機械可読情報ストレージ媒体。
【請求項15】
前記1又は2以上の命令は、前記1又は2以上のハードウェアプロセッサによって実行されたときに、
前記マッハ数が、前記事前定義のマッハ数を下回らないと決定すると、
前記GTPOSによって、前記圧縮機関連入力データを前記第1段のチョークポイントとして識別することと、
前記GTPOSによって、前記第1段のチョークポイント及びチョーキング通知を表示することであって、前記チョーキング通知は、前記第1段の圧縮機のチョーキングが回避されるように、前記入口質量流量及び前記入口IGV角度のうちの少なくとも1つを修正するメッセージを含む、ことと、
を更に行わせる、請求項11に記載の1又は2以上の非一時的な機械可読情報ストレージ媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照及び優先権)
本出願は、2022年2月3日に出願されたインド国特許出願第202221005901号に対する優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
本明細書の開示は、一般にガスタービンに関し、より詳細にはガスタービンの性能を正確に予測し最適化するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ガスタービンは、様々な火力発電機器の中でも二酸化炭素エミッションが最も少ないクリーンエネルギーを生成する代表的な供給源の1つと考えられる。ガスタービンは、発電、石油及びガス、製造プラント、航空機、並びに中小産業などの重要な産業において様々な様式で使用されている。一般的には、ガスタービンは、エネルギーを生成するためのエネルギー源として、天然ガス、或いはディーゼル油、ファーネス油などの液体燃料を用いる。しかしながら、環境的関心及び低炭素又はカーボンニュートラルなエネルギー生成に対する需要が増していることに起因して、ガスタービンは、グリーン水素、アンモニア、バイオガスなどのよりグリーンな燃料を導入することに移行しつつある。更に、グリーン燃料への転換を行うことは、複雑な燃料キネティックス、設計上の制約、窒素酸化物の高排出、及び最適動作の設定変更の必要性に起因して、燃焼器内での火炎安定及び動作安定の問題など、様々な運転上の課題を提起するのでガスタービンにとって容易ではない。
【0004】
圧縮機は、流入流体の圧力エネルギーを増大させ、次いでこれが燃焼器及びタービンによって機械エネルギーに変換され、その後機械エネルギーが電力に変換されるので、この圧縮機は、ガスタービンの極めて重要な構成要素の1つである。圧縮機におけるエネルギーの移行は、圧縮機のロータ及びステータ部分に配列された一連の翼形部を通って起こる。熱力学的効率の観点から、ロータ及びステータのサイクルにおける圧力比が高い程、効率は高くなる。従って、最新のガスタービンには、プロセス効率を最大にするのに必要とされる高圧力比動作ポイントを達成し維持するために、先進的な材料によってサポートされて堅牢なコントローラと統合された高度な設計を備えている。このような高い圧力では、ガスタービンの動特性は複雑である。このような条件では、計画されていない著しい停止時間及び高い維持コストを結果として生じる可能性があるガスタービンへの深刻な機械的損傷のリスクがあることに起因して、圧力変化が突発的であるタービン内の位置でのチョーキング及びサージングを回避することが最も重要である。
【0005】
更に、様々な流量で圧縮機の動的挙動を正確に予測することは、ガスタービンの専用設計データが利用可能でないこと、完全な設計外性能マップの欠如、及び経年損耗の影響を組み込むために構成要素性能マップに行う必要がある修正に起因して、困難なタスクである。一般的には、ガスタービンは、要件に基づいて設計外の条件で動作しており、設計外動作中に圧縮機の性能を正確に予測することが、ガスタービンの効率的なプロセスモニタリング、制御、最適化、及び安全並びに信頼性にとって重要である。設計外条件での実験を行うことができるが、これは高価で時間を要する。従って、よりグリーンな燃料を用いるガスタービンシステムを最適化するには、様々な動作条件でリアルタイムに圧縮機の性能を予測することができ、サージ及びチョーキング条件を正確に識別することができる精度の高い堅牢なモデルが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】インド出願第202221005901号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の実施形態は、従来のシステムにおいて発明者らによって認識された上述の技術上の問題の1又は2以上に対する解決策として技術的改良を提示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
例えば、1つの態様では、ガスタービンの性能を正確に予測し最適化するプロセッサ実装方法(processor implemented method)が提供される。本方法は、
1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したガスタービン性能最適化システム(gas turbine performance optimization system)(GTPOS)によって、1又は2以上のデータソースからリアルタイムセンサデータ及び非リアルタイムデータを受信する(受け取る)ステップと、
前処理データ(preprocessed data)を取得するために、1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、リアルタイムセンサデータ及び非リアルタイムデータを前処理するステップと、
1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、1又は2以上のソフトセンサを用いて、前処理データに基づいてガスタービンに関連する1又は2以上のプロセスパラメータを推定するステップと、
1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、1又は2以上のプロセスパラメータと前処理データとを組み合わせることによって、ガスタービンに関連する入力データを生成するステップであって、入力データは、圧縮機関連入力データ(compressor associated input data)、燃焼器関連入力データ(combustor associated input data)、タービン関連入力データ(turbine associated input data)、及びガスタービン性能データのうちの1又は2以上を含み、圧縮機関連入力データは、入口質量流量(inlet mass flow rate)、入口温度、入口圧力、入口ガイドベーン(inlet guide vane)(IGV)角度、及びシャフト回転速度を含み、ガスタービン性能データは、1又は2以上の定常状態ガスタービン性能パラメータ(steady state gas turbine performance parameters)の各定常状態ガスタービン性能パラメータに関連するリアルタイム値と、1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数(transient gas turbine state variables)の各過渡的ガスタービン状態変数に関連するリアルタイム値とを含む、ステップと、
1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、以下のステップ、
すなわち、
1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、事前定義のマッハ数計算式(Mach number calculation formula)を用いて、圧縮機断面積、IGV角度、実ガス定数、比熱定数率(specific heat constant ratio)及び1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータに少なくとも一部基づいて、圧縮機の1又は2以上の段の第1段(a first stage of the one or more stages)のマッハ数を推定するステップであって、1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータ及び実ガス定数は、知識データベースからアクセスされ、比熱定数率は、入口温度に基づいて決定される、ステップと、1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、推定されたマッハ数が事前定義のマッハ数を下回るかどうかを決定するステップと、マッハ数が事前定義のマッハ数を下回ると決定すると、1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、前期推定されたマッハ数、入口質量流量、入口温度、入口圧力、シャフト回転速度、比熱定数率、及び1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータに少なくとも一部基づいて、第1段の相対流量係数(relative flow coefficient)を推定するステップと、1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、1又は2以上の無次元特性プロット及び1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータを用いて、相対流量係数に基づいて第1段の相対圧力係数(relative pressure coefficient)を決定するステップであって、1又は2以上の無次元特性プロットは、知識データベースからアクセスされる、ステップと、1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、相対圧力係数、相対流量係数、及び1又は2以上の無次元特性プロットに少なくとも一部基づいて、第1段の効率を決定するステップと、1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、相対流量係数、相対圧力係数、効率、及びマッハ数に少なくとも一部基づいて、第1段の出口質量流量(outlet mass flow rate)、出口圧力、出口温度、及び出口速度を推定するステップと、1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、1又は2以上の段の全ての段が識別されるまで、出口質量流量を入口質量流量として、出口圧力を入口圧力として、出口温度を入口温度として、及び1又は2以上の段の次の段を第1段として識別するステップと、
を繰り返し実行することによって、圧縮機関連入力データ及び圧縮機断面積を用いて、圧縮機の1又は2以上の段の各段(each stage)の出口質量流量、出口圧力、出口温度、及び出口速度を決定するステップと、
1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、出口質量流量、出口圧力、出口温度及び出口速度、及び燃焼器関連入力データに少なくとも一部基づいて、ガスタービンシステムの燃焼ガス(combusted gases)に関連する燃焼器出力データ(combustor output data)を推定するステップであって、燃焼出力データは、燃焼器圧力、燃焼器温度、燃焼器質量流量及び燃焼ガスの組成を含む、ステップと、
1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、出口質量流量、出口圧力、出口温度及び出口速度、燃焼器出力データ、及びタービン関連入力データに少なくとも一部基づいて、ガスタービンシステムのタービンの排出ガスに関連するタービン出力データを推定するステップと、
1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、出口質量流量、出口圧力、出口温度、出口速度、燃焼器出力データ、及びタービン出力データに少なくとも一部基づいて、1又は2以上の定常状態ガスタービン性能パラメータの各定常状態ガスタービン性能パラメータに関連する推定値を決定するステップと、
1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデル(transient gas turbine component models)を用いて各定常状態ガスタービン性能パラメータに関連する推定値に基づいて、1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数に関連する推定値を決定するステップであって、1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルは、モデルデータベースからアクセスされ、1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルは、1又は2以上の物理ベースのモデル(physics-based models)及び1又は2以上のデータ駆動モデル(data-driven models)のうちの1つを含む、ステップと、
1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数の推定値が、それぞれの過渡的ガスタービン状態変数に対して定義された事前定義の閾値限界の範囲内であるかどうかを決定するステップと、
1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数の推定値が、それぞれの過渡的ガスタービン状態変数に対して定義された事前定義の閾値限界の範囲内にないと決定すると、1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、各過渡的ガスタービン状態変数の推定値を、それぞれの過渡的ガスタービン状態変数に対して定義された事前定義の閾値限界の範囲内に維持する最適プロセス設定(optimal process settings)を識別するためにプロセス最適化問題(process optimization problem)を解くステップと、
1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、最適プロセス設定を表示するステップと、
を含む。
【0009】
別の態様では、ガスタービンの性能を正確に予測し最適化するガスタービン性能最適化システム(GTPOS)を提供する。本システムは、命令を格納するメモリと、1又は2以上の通信インタフェースと、1又は2以上の通信インタフェースを介してメモリに結合された1又は2以上のハードウェアプロセッサとを備え、
1又は2以上のハードウェアプロセッサは、命令によって、
1又は2以上のデータソースからリアルタイムセンサデータ及び非リアルタイムデータを受信することと、
前処理データを取得するために、リアルタイムセンサデータ及び非リアルタイムデータを前処理することと、
1又は2以上のソフトセンサを用いて、前処理データに基づいてガスタービンシステムに関連する1又は2以上のプロセスパラメータを推定することと、
1又は2以上のプロセスパラメータと前処理データとを組み合わせることによって、ガスタービンシステムに関連する入力データを生成することであって、入力データは、圧縮機関連入力データ、燃焼器関連入力データ、タービン関連入力データ、及びガスタービン性能データのうちの1又は2以上を含み、圧縮機関連入力データは、入口質量流量、入口温度、入口圧力、入口ガイドベーン(IGV)角度、及びシャフト回転速度を含み、ガスタービン性能データは、1又は2以上の定常状態ガスタービン性能パラメータの各定常状態ガスタービン性能パラメータに関連するリアルタイム値と1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数に関連するリアルタイム値を含む、生成することと、
事前定義のマッハ数計算式を用いて、圧縮機断面積、IGV角度、実ガス定数、比熱定数率及び1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータに少なくとも一部基づいて、1又は2以上の段の第1段のマッハ数を推定することであって、1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータ及び実ガス定数は、知識データベースからアクセスされ、比熱定数率は、入口温度に基づいて決定される、推定することと、
推定されたマッハ数が事前定義のマッハ数を下回るかどうかを決定することと、
マッハ数が事前定義のマッハ数を下回ると決定すると、推定されたマッハ数、入口質量流量、入口温度、入口圧力、シャフト回転速度、比熱定数率、及び1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータに少なくとも一部基づいて、第1段の相対流量係数を推定することと、
1又は2以上の無次元特性プロット及び1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータを用いて、相対流量係数に基づいて第1段の相対圧力係数を決定することであって、1又は2以上の無次元特性プロットは、知識データベースからアクセスされる、決定することと、
相対圧力係数、相対流量係数、及び1又は2以上の無次元特性プロットに少なくとも一部基づいて、第1段の効率を決定することと、
相対流量係数、相対圧力係数、効率、及びマッハ数に少なくとも一部基づいて、第1段の出口質量流量、出口圧力、出口温度、及び出口速度を推定することと、
1又は2以上の段の全ての段が識別されるまで、出口質量流量を入口質量流量として、出口圧力を入口圧力として、出口温度を入口温度として、及び1又は2以上の段の次の段を第1段として識別することと、
を繰り返し実行することによって、圧縮機関連入力データ及び圧縮機断面積を用いて、圧縮機の1又は2以上の段の各段の出口質量流量、出口圧力、出口温度、及び出口速度を決定することと、
出口質量流量、出口圧力、出口温度及び出口速度、及び燃焼器関連入力データに少なくとも一部基づいて、ガスタービンシステムの燃焼ガスに関連する燃焼器出力データを推定することであって、燃焼出力データは、燃焼器圧力、燃焼器温度、燃焼器質量流量及び燃焼ガスの組成を含む、推定することと、
出口質量流量、出口圧力、出口温度及び出口速度、燃焼器出力データ、及びタービン関連入力データに少なくとも一部基づいて、ガスタービンシステムのタービンの排出ガスに関連するタービン出力データを推定することと、
出口質量流量、出口圧力、出口温度、出口速度、燃焼器出力データ、及びタービン出力データに少なくとも一部基づいて、1又は2以上の定常状態ガスタービン性能パラメータの各定常状態ガスタービン性能パラメータに関連する推定値を決定することと、
1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルを用いて各定常状態ガスタービン性能パラメータに関連する推定値に基づいて、1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数に関連する推定値を決定することであって、1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルは、モデルデータベースからアクセスされ、1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルは、1又は2以上の物理ベースのモデル及び1又は2以上のデータ駆動モデルのうちの1つを含む、決定することと、
1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数の推定値が、それぞれの過渡的ガスタービン状態変数に対して定義された事前定義の閾値限界の範囲内であるかどうかを決定することと、
1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数の推定値が、それぞれの過渡的ガスタービン状態変数に対して定義された事前定義の閾値限界の範囲内にないと決定すると、各過渡的ガスタービン状態変数の推定値をそれぞれの過渡的ガスタービン状態変数に対して定義された事前定義の閾値限界の範囲内に維持する最適プロセス設定を識別するためにプロセス最適化問題を解くことと、
最適プロセス設定を表示することと、
を行うように構成される。
【0010】
更に別の態様では、1又は2以上のハードウェアプロセッサによって実行されたときにガスタービンの性能を正確に予測し最適化する方法を行わせる、1又は2以上の命令を含む1又は2以上の非一時的な機械可読情報ストレージ媒体が提供される。本方法は、1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したガスタービン性能最適化システム(GTPOS)によって、1又は2以上のデータソースからリアルタイムセンサデータ及び非リアルタイムデータを受信することと、
前処理データを取得するために、1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、リアルタイムセンサデータ及び非リアルタイムデータを前処理することと、
1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、1又は2以上のソフトセンサを用いて、前処理データに基づいてガスタービンシステムに関連する1又は2以上のプロセスパラメータを推定することと、
1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、1又は2以上のプロセスパラメータと前処理データとを組み合わせることによって、ガスタービンシステムに関連する入力データを生成することであって、入力データは、圧縮機関連入力データ、燃焼器関連入力データ、タービン関連入力データ、及びガスタービン性能データのうちの1又は2以上を含み、圧縮機関連入力データは、入口質量流量、入口温度、入口圧力、入口ガイドベーン(IGV)角度、及びシャフト回転速度を含み、ガスタービン性能データは、1又は2以上の定常状態ガスタービン性能パラメータの各定常状態ガスタービン性能パラメータに関連するリアルタイム値と1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数に関連するリアルタイム値とを含む、生成することと、
1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、
1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、事前定義のマッハ数計算式を用いて、圧縮機断面積、IGV角度、実ガス定数、比熱定数率及び1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータに少なくとも一部基づいて、圧縮機の1又は2以上の段の第1段のマッハ数を推定することであって、1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータ及び実ガス定数は、知識データベースからアクセスされ、比熱定数率は、入口温度に基づいて決定される、推定することと、
1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、推定されたマッハ数が事前定義のマッハ数を下回るかどうかを決定することと、
マッハ数が事前定義のマッハ数を下回ると決定すると、1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、前期推定されたマッハ数、入口質量流量、入口温度、入口圧力、シャフト回転速度、比熱定数率、及び1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータに少なくとも一部基づいて、第1段の相対流量係数を推定することと、
1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、1又は2以上の無次元特性プロット及び1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータを用いて、相対流量係数に基づいて第1段の相対圧力係数を決定することであって、1又は2以上の無次元特性プロットは、知識データベースからアクセスされる、決定することと、
1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、相対圧力係数、相対流量係数、及び1又は2以上の無次元特性プロットに少なくとも一部基づいて、第1段の効率を決定することと、
1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、相対流量係数、相対圧力係数、効率、及びマッハ数に少なくとも一部基づいて、第1段の出口質量流量、出口圧力、出口温度、及び出口速度を推定することと、
1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、1又は2以上の段の全ての段が識別されるまで、出口質量流量を入口質量流量として、出口圧力を入口圧力として、出口温度を入口温度として、及び1又は2以上の段の次の段を第1段として識別することと、
を繰り返し実行することによって、圧縮機関連入力データ及び圧縮機断面積を用いて、圧縮機の1又は2以上の段の各段の出口質量流量、出口圧力、出口温度、及び出口速度を決定することと、
1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、出口質量流量、出口圧力、出口温度及び出口速度、及び燃焼器関連入力データに少なくとも一部基づいて、ガスタービンシステムの燃焼ガスに関連する燃焼器出力データを推定することであって、燃焼出力データは、燃焼器圧力、燃焼器温度、燃焼器質量流量及び燃焼ガスの組成を含む、推定することと、
1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、出口質量流量、出口圧力、出口温度及び出口速度、燃焼器出力データ、及びタービン関連入力データに少なくとも一部基づいて、ガスタービンシステムのタービンの排出ガスに関連するタービン出力データを推定することと、
1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、出口質量流量、出口圧力、出口温度、出口速度、燃焼器出力データ、及びタービン出力データに少なくとも一部基づいて、1又は2以上の定常状態ガスタービン性能パラメータの各定常状態ガスタービン性能パラメータに関連する推定値を決定することと、
1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルを用いて各定常状態ガスタービン性能パラメータに関連する推定値に基づいて、1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数に関連する推定値を決定することであって、1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルは、モデルデータベースからアクセスされ、1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルは、1又は2以上の物理ベースのモデル及び1又は2以上のデータ駆動モデルのうちの1つを含む、決定することと、
1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数の推定値が、それぞれの過渡的ガスタービン状態変数に対して定義された事前定義の閾値限界の範囲内であるかどうかを決定することと、
1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数の推定値が、それぞれの過渡的ガスタービン状態変数に対して定義された事前定義の閾値限界の範囲内にないと決定すると、1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、各過渡的ガスタービン状態変数の推定値を、それぞれの過渡的ガスタービン状態変数に対して定義された事前定義の閾値限界の範囲内に維持する最適プロセス設定を識別するためにプロセス最適化問題を解くことと、
1又は2以上のハードウェアプロセッサを介したGTPOSによって、最適プロセス設定を表示することと、
を含む。
【0011】
前述の概要及び以下の詳細な説明の両方は、例証で説明のためのものに過ぎず、請求項に記載された本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【0012】
本開示の一部に組み込まれ且つその一部を構成する添付図面は、例示的な実施形態を例証しており、本明細書と共に開示される原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の少なくとも一部の例示的な実施形態に関する環境を示す例示的な図である。
【
図2】本開示の実施形態による、ガスタービンの性能を正確に予測し最適化するガスタービン性能最適化システム(GTPOS)の例示的なブロック図である。
【
図3A】本開示の実施形態による、ガスタービンの性能を正確に予測し最適化する
図2のシステム又は
図1のGTPOSに関連するプロセッサの概概略ブロック図である。
【
図3B】本開示の実施形態による、ガスタービンの性能を正確に予測し最適化する
図2のシステム又は
図1のGTPOSに関連する予測モジュールの概略ブロック図である。
【
図4A】本開示の実施形態による、
図2のシステム及び
図1のGTPOSを用いてガスタービンの性能を正確に予測し最適化する方法の例示的な流れ図である。
【
図4B】本開示の実施形態による、
図2のシステム及び
図1のGTPOSを用いてガスタービンの性能を正確に予測し最適化する方法を示す例示的な流れ図である。
【
図4C】本開示の実施形態による、
図2のシステム及び
図1のGTPOSを用いてガスタービンの性能を正確に予測し最適化する方法を示す例示的な流れ図である。
【
図4D】本開示の実施形態による、
図2のシステム及び
図1のGTPOSを用いてガスタービンの性能を正確に予測し最適化する方法を示す例示的な流れ図である。
【
図4E】本開示の実施形態による、
図2のシステム及び
図1のGTPOSを用いてガスタービンの性能を正確に予測し最適化する方法を示す例示的な流れ図である。
【
図5】本開示の実施形態による、圧縮機を較正するために行われる設計ポイント較正プロセスの概略ブロック図である。
【
図6】本開示の実施形態による、複数の動作条件での実験結果と圧縮機性能推定との比較を示すグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面を参照しながら例示的な実施形態について説明する。図では、参照数字の最も左の桁は、参照数字が最初に現れる図を表している。便宜上、同じ参照数字は、図面全体を通して同じ又は同様の部品を指すのに用いられる。開示される原理の実施例及び特徴について本明細書で説明するが、開示する実施形態の範囲から逸脱することなく、修正、適応、及び他の実施構成が可能である。
【0015】
ガスタービンは、圧縮機、燃焼器、及びタービン構成要素などの一部の主要構成要素を含む、複数の構成要素を包含する熱機械システムである。圧縮機は更に、シャフト上に取り付けられた一連のブレード(ロータベーンとも呼ばれる)及び外側ケーシング(ステータとも呼ばれる)を含む。圧縮機のロータ及びステータは、エネルギーを入口流体に移送することによって入口流体(空気、蒸気、ガスなど)を圧縮し、入口流体の圧力及び温度を上昇させる。圧縮された流体は次に、燃料と混合されて燃焼器チャンバで燃焼され、高温(すなわち、1500℃を上回る)の出口ガスを生成する。その後、高温及び高圧のガスがガスタービンのタービン構成要素で膨張し、ガスの運動エネルギーを仕事に変換する。生成された仕事の一部は、入口流体を圧縮するために圧縮機によって使用され、残りの仕事は、最終要件に応じて、電気、推進力、又は推進力などを生成するために補助システムによって使用される。
【0016】
ガスタービン運転の複雑性に起因して、ガスタービンの構成要素全てに起こる非線形的な物理化学現象を取り込んだ物理ベースモデルを開発することは、極めて困難である。更に、ガスタービンの性能を予測し最適化することができるフレームワーク/システムを想定するためには、複雑なシステムのベースにある物理的及び動的挙動の詳細な知識を有する必要がある。ガスタービンの設計及び動的性能情報は、通常は機密事項であり、相手先商標製品製造者(OEM)に専用であるので、このような最適化フレームワーク/システムを開発することは現在のセットアップでは不可能である。また、正確な設計外性能予測のためのモデルは、限定的なものであり、サージ及びチョークラインの近くでは特に正確さに欠ける。
【0017】
ガスタービンの性能を予測するのに利用可能な先行技術の一部は、一般的には、設計動作ラインでこれらの分析を実行する。他の動作ポイントでのこれらの性能は、規定されたものではなく、また満足のいくものでもない。また、現在の技術は、サージマージンがガスタービンの動作を最適化する際の重要な役割を果たすので、チョーキング又はサージング条件を識別する手段を指定していない。
【0018】
更に、ガスタービンへのグリーン燃料の導入は、既に複雑なシステムをより動的にする可能性が高く、最新の安定した動作形態を必要とする。最新の動作形態におけるガスタービンの性能を予測するには、ガスタービンシステムのモデリング及び反応速度論モデリングの知識を必要とする。
【0019】
本開示の実施形態は、サージ及びチョーク条件に近いものを含む広範囲の動作領域で圧縮機の性能を正確に推定することによって、ガスタービンの性能を正確に予測し最適化するシステム及び方法を提供することで上述の技術的問題を克服する。このシステムはまた、広範囲の動作領域における圧縮機の性能を用いて幅広い種類の燃料に対する最適動作のプロセス最適化を実行する。本開示のシステム及び方法は最初に、OEMによって提供される設計ポイント仕様から圧縮機の第1段(stage one)(すなわち、入口)における質量流量、入口温度、入口圧力、入口ガイドベーン角度、及びシャフトの回転速度などの基準条件を取得する。ロータ及びステータベーンの1つのセットは、圧縮機の単一段(single stage)としてみなされ、圧縮機は1又は2以上の段を含む点に留意されたい。従って、第1段に対して取得された基準条件は、本システムによって用いられて、圧縮機の第1段のマッハ数、相対圧力係数、相対流量係数、効率、出口質量流量、出口圧力、出口温度、及び出口速度を決定する。次いで、第1段で取得された出力は、次の段の入力としてシステムによって用いられ、圧縮機の最終段(last stage)の出力が決定されるまで同じプロセスが繰り返される。このようにして、システムは、異なる基準条件を用いることによって異なる入口条件での圧縮機の性能を取得することができる。
【0020】
更に、本システムは、特定の入力条件に対して取得された圧縮機の最終段の出力を用いて、燃焼器並びにガスタービンのタービン構成要素に関連する出力データを決定する。システムは次に、圧縮機の最終段の出力及び燃焼器及びタービン構成要素に関連する出力データを用いて、1又は2以上の定常状態ガスタービン性能パラメータを決定し、このパラメータは、1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルを用いて1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数を推定するために更に利用される。過渡的ガスタービン状態変数が利用可能になると、本システムは、1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数の推定値が、それぞれの過渡的ガスタービン状態変数に対して定義された事前定義の閾値限界の範囲内であるかどうかを決定する。各過渡的ガスタービン状態変数の推定値が、それぞれの過渡的ガスタービン状態変数に対して定義された事前定義の閾値限界の範囲内にないと決定すると、本システムは、プロセス最適化問題を解いて、それぞれの過渡的ガスタービン状態変数に対して定義された事前定義の閾値限界の範囲内に各過渡的ガスタービン状態変数の推定値を維持することができるガスタービンの最適プロセス設定を識別する。次に、識別された最適プロセス設定は、ガスタービンのオペレータに表示される。
【0021】
加えて、システムが様々な入力条件での圧縮機の性能を取得すると、システムは、様々な回転速度に対するx軸上の質量流量又は相対質量流量とy軸上の圧力比とを用いて圧縮機性能プロットを作成する。次に圧縮機性能プロットがシステムにより用いられ、様々な入口条件に対する圧縮機の各段でのサージ及びチョークポイントを識別することができる。
【0022】
本開示では、システム及び方法は、ガスタービンのリアルタイム多目的最適化を実行し、ガスタービンのオペレータに推奨される最適プロセス設定を識別して、これによって、燃料消費量、エミッション及び動作コストを最小にしながら、ガスタービンの熱効率を最大にする。システムはまた、リアルタイムで物理センサを用いては測定できないか又はリアルタイム処理に容易には利用できない主要ガスタービン変数を推定し、これによってプロセス動作をより可視化及び制御可能にする。更に、システムは、圧縮機の性能が全ての動作ポイントで正確に予測されることを保証し、これによって、設計外条件でも同様にチョーク及びサージポイントの正確な識別を保証する。
【0023】
次に、同様の参照文字が図全体を通して一貫して対応する特徴を示す図面、より具体的には
図1から
図6を参照すると、好ましい実施形態が示されており、これらの実施形態は、以下の例示的なシステム及び/又は方法の関連で記載されている。
【0024】
図1は、本開示の少なくとも一部の例示的な実施形態に関連する環境100の例示的な図を示す。環境100は、1つの構成で提示されているが、他の実施形態は、これ以外に、例えば、ガスタービンシステムの圧縮機、燃焼器、及びタービン構成要素に関連する出力データの推定、最適プロセス設定の決定などに応じて構成された環境100の一部(又は他の部分)を含むことができる。環境100は、一般に、ガスタービンプラント102、ガスタービン性能最適化システム(以下、「GTPOS」と示す)106、知識データベース108、データベース110及びモデルデータベース112を含み、各々が、ネットワーク104に結合されてネットワーク104と通信している(及び/又はアクセスできる)。
【0025】
ネットワーク104は、限定ではないが、ライトフィデリティ(Li-Fi)ネットワーク、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、都市規模エリアネットワーク(MAN)、衛星ネットワーク、インターネット、光ファイバネットワーク、同軸ケーブルネットワーク、赤外線(IR)ネットワーク、無線周波数(RF)ネットワーク、仮想ネットワーク、及び/又は
図1に示された部品又はユーザのうちの2又は3以上の間での通信をサポートすることができる別の適切な公衆及び/又はプライベートネットワーク、或いはこれらの何れかの組み合わせを含むことができる。
【0026】
環境100の様々なエンティティは、伝送制御プロトコル及びインターネットプロトコル(TCP/IP)、ユーザデータグラムプロトコル(UDP)、第2世代(2G)、第3世代(3G)、第4世代(4G)、第5世代(5G)通信プロトコル、ロング・ターム・エボリューション(LTE)通信プロトコル、又はこれらの何れかの組み合わせなど、様々な有線及びワイヤレス通信プロトコルに従ってネットワーク104に接続することができる。
【0027】
ガスタービンプラント102は、ガスタービンシステム102a、プラント自動化システム102b、及びプラントデータソース102cを含む。ガスタービンシステム102aは、航空機、列車、船舶、発電機、ポンプ、ガス圧縮機、及びタンクなどの複数の補助システムの複数のモードで使用できる熱機械機器(基本的には、あるタイプの内燃機関)である。1つの実施形態では、ガスタービンシステム102aは、圧縮機、燃焼器、及びタービン構成要素を含み、これらが共に動作して仕事を生成可能にする。生成された仕事は、次に、最終要件に応じて、電気、推進力、駆動力などを生成するために補助システムで用いられる。プラント自動化システム102bは、ガスタービンシステム102aの運転を管理するように構成される。1つの実施形態では、プラント自動化システム102bは、外部供給源(例えば、パワーグリッド)、プラントデータソース102cから受信した入力、又はGTPOS106から受信した推奨に基づいて所望のレベルにガスタービンシステム102aの性能を維持する動的制御システムを含む。1つの実施形態では、ユーザ/オペレータは、所望のレベルにガスタービンシステム102aの性能を維持する制御システムを管理することができる。プラントデータソース102cは、電力需要、センサデータ、燃料特性、構成要素変数のセットポイントなど、ガスタービンシステム102aに関連するリアルタイムデータ及び非リアルタイムデータを格納する。1つの実施形態では、プラントデータソース102cは、センサデータベース、環境データベース、及びラボラトリデータベースを含む。センサデータベースは、ガスタービンシステム102aに存在する1又は2以上のセンサによってリアルタイムに記録されたセンサデータを格納するように構成される。環境データベースは、ガスタービンシステム102aに流入する周囲空気の湿度、温度、及び圧力のようなリアルタイムの環境条件を格納するように構成される。ラボラトリデータベースは、周囲空気の組成、ガスタービンシステム102aで用いられる燃料の化学組成、燃料のエネルギー密度、及び空気及び燃料の密度、比熱容量、分子量、実ガス定数、発熱量などの特性を格納するように構成される。
【0028】
1つの実施形態において、知識データベース108は、発電機、ファン、フィルタ、パイプラインなどのガスタービンシステム102aの様々な構成要素に関連する仕様、特性などの情報を格納する。知識データベース108はまた、1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータ及び圧縮機に関連する1又は2以上の無次元特性プロットを格納する。無次元特性プロットは、複数の圧縮機の流量係数、圧力係数及び効率係数などの1又は2以上の無次元パラメータ間で取得される関係を示す圧縮機プロットである。知識データベース108に格納された無次元特性は、当該技術分野で既に存在するプロットである点に留意されたい。1つの実施形態では、知識データベース108はまた、ガスタービンシステムの保守情報、ガスタービンシステムの様々な構成要素に関係するエンジニアリング及び設計文書、圧縮機断面積情報、標準運転手順、ハザード及びオペラビリティスタディ(HAZOP)文書などを格納する。保守情報及び格納された情報は、ガスタービンシステム102aの性能における様々な保守業務の効果を理解する際にGTPOS106を助けることができる。
【0029】
データベース110は、ガスタービンシステム(例えば、ガスタービンシステム102a)の性能データ、入口質量流量、圧力、温度、効率などの履歴のリアルタイムセンサデータ及び前処理データ、及びガスタービンプラント(例えば、ガスタービンプラント102)に関連する環境及びラボラトリデータベースからのデータを格納する。1つの実施形態では、前処理データ及び事前決定ガスタービンチューニングパラメータは、ガスタービンシステム102aを較正するためにGTPOS106により利用することができる。
【0030】
モデルデータベース112は、ガスタービンシステムの圧縮機、燃焼器、タービン、タービン冷却器、発電機、ファン、フィルタ、パイプライン、及び他の構成要素に関連するモデルなど、1又は2以上の定常状態及び過渡状態ガスタービン状態構成要素モデルを格納する。格納される1又は2以上の定常状態及び過渡状態ガスタービン状態構成要素モデルは、物理ベースのモデル及びデータ駆動モデルとすることができる。物理ベースのモデルは、圧縮機、燃焼器、タービン、タービン冷却器、発電機、ファン、フィルタ、パイプラインなどの保存則に基づく詳細な動的微分方程式及び代数方程式を含む。データ駆動モデルは、圧縮機、燃焼器、タービン、タービン冷却器、発電機、ファン、フィルタ、パイプラインなどの入出力関係をマップするよう開発された統計的、機械学習及び深層学習モデルを含む。1つの実施形態では、モデルデータベース112はまた、予測性能品質指数(predictive performance quality index)及びモデル品質指数(model quality index)と、事前定義の予測性能品質指数閾値及び事前定義のモデル品質指数閾値を推定するための1又は2以上のモデルを格納する。
【0031】
ガスタービン性能最適化システム(GTPOS)106は、1又は2以上のハードウェアプロセッサと、メモリとを含む。GTPOS106は、本明細書に記載される動作の1又は2以上を実行するように構成される。GTPOS106は、ネットワーク106を用いてガスタービンプラント102からリアルタイムセンサデータ及び非リアルタイムデータを受信するように構成される。詳細には、GTPOS106は、ガスタービンプラント102のプラントデータソース102cに存在するセンサデータベース、環境データベース、及びラボラトリデータベースなどの、1又は2以上のデータソースからリアルタイムセンサデータ及び非リアルタイムデータを受信する。1つの実施形態では、リアルタイムセンサデータは、ガスタービンシステム102aの圧縮機、燃焼器、及びタービン構成要素に存在する1又は2以上のセンサから取得されたリアルタイム値を含む。リアルタイムセンサデータの例は、温度、湿度などの周囲条件と、ガスタービンシステム102aの構成要素の様々な箇所での圧力及び温度、エミッション、冷却流量及び圧力などのプロセス変数と、タービン入口温度、発電、回転速度などの制御変数と、IGV角度、空気及び燃料の質量流量などの構成要素変数とを含む。非リアルタイムデータは、燃料の発熱量、密度、化学組成、周囲空気の組成などを含む。
【0032】
GTPOS106は次に、リアルタイムセンサデータ及び非リアルタイムデータを前処理して、前処理データを取得するように構成され、この前処理データは、1又は2以上のソフトセンサを用いてガスタービンシステム102aに関連する1又は2以上のプロセスパラメータを推定するために更に利用される。1つの実施形態では、1又は2以上のソフトセンサは、物理ベースのソフトセンサ及びデータ駆動ソフトセンサのうちの1つとすることができる。ソフトセンサの例は、ガスタービンによって生成電力、加湿後の入口流体の相対的湿度、タービン入口温度、及びタービン冷却空気の流量を含む。従って、GTPOS106は、1又は2以上のプロセスパラメータと前処理データとを組み合わせることによってガスタービンシステム102aに関連する入力データを生成するように構成される。入力データは、圧縮機関連入力データ、燃焼器関連入力データ、タービン関連入力データ、及びガスタービン性能データのうちの1又は2以上を含む。
【0033】
更に、GTPOS106は、圧縮機関連入力データ及び圧縮機断面積を用いて、ガスタービンシステム102aに存在する圧縮機の1又は2以上の段の各段の出口質量流量、出口圧力、出口温度、及び出口速度を推定するように構成される。第1段に対して決定された出口条件(例えば、出口質量流量、出口圧力、出口温度、及び出口速度)は、次の段の入力として用いられ、圧縮機の最終段の出口条件が決定されるまで、同じプロセスが繰り返されることに注目されたい。次に、圧縮機の最終段の推定された出口質量流量、出口圧力、出口温度、及び出口速度は、ガスタービンシステム102aの燃焼器に関連する燃焼器出力データを推定するための燃焼器関連入力データと共にGTPOS106によって利用される。従って、GTPOS106は、圧縮機に対して推定された出口条件、燃焼器出力データ、及びタービン関連入力データに基づいて、ガスタービンシステム102aのタービン構成要素の排出ガスに関連するタービン出力データを推定する。
【0034】
圧縮機の出口条件、燃焼器出力データ、及びタービン出力データが推定されると、GTPOS106は、これらを用いて、生成電力、推進力、出力熱などの1又は2以上の定常状態ガスタービン性能パラメータの各定常状態ガスタービン性能パラメータに関連する推定値を決定する。従って、GTPOS106は、1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルにアクセスし、各定常状態ガスタービン性能パラメータに対して決定された推定値に基づいて1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数に関連する推定値を決定する。1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の例は、限定ではないが、圧縮機出口圧力、燃焼ガス温度(タービン入口温度とも呼ばれる)、排出質量流量、排出ガス温度、ガスタービンの回転速度、生成電力、生成推進力、出力熱、及び排出ガス中の汚染物質(例えば、二酸化炭素、窒素酸化物、及び硫黄酸化物)を含む。加えて、GTPOS106は、各過渡的ガスタービン状態変数の推定値が、それぞれの過渡的ガスタービン状態変数に対して定義された事前定義の閾値限界の範囲内であるかどうかをチェックする。
【0035】
1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の推定値が、それぞれの過渡的ガスタービン状態変数に対して定義された事前定義の閾値限界の範囲内にないと決定すると、GTPOS106は、プロセス最適化問題を解いて、実施されたときにそれぞれの過渡的ガスタービン状態変数に対して定義された事前定義の閾値限界の範囲内に各過渡的ガスタービン状態変数の推定値を維持することになる最適プロセス設定を識別する。プロセス最適化問題は、多目的プロセス最適化問題であり、オペレータからの要件及び/又は送電網からの需要に応じて時間的に変化することができる1又は2以上の目的関数及び1又は2以上の制約関数を有することができる点に留意されたい。1つの実施形態では、1又は2以上の目的関数は、ガスタービンシステム102aの熱効率の最大化、及び燃料消費、エミッション及び動作コストの最小化を含む。1又は2以上の制約関数は、動作の物理的及び安全性の限界(例えば、タービン入口温度、空気対燃料比、サージポイント(surge points)、チョークポイント(choke points)などの上限値)、エミッション基準、生成電力、及び生成電力の周波数を含む。そのため、1つのプロセス最適化問題に対して決定された最適プロセス設定は、別のプロセス最適化問題に対する最適設定として機能しない可能性がある。1つの実施形態において、最適プロセス設定は、1又は2以上の燃料制御バルブに対するパーセンテージ開口、IGV角度、タービン冷却流量、蒸気制御弁のパーセンテージ開口、加湿水流量及び燃料混合物の組成のセットポイントを含む。
【0036】
最適プロセス設定が識別されると、GTPOS106は、ネットワーク104を用いて、プラント自動化システム102bで提供される動的制御システムに最適プロセス設定を指示することができる。プラント自動化システム102bは次に、提案される最適プロセス設定を実施することができ、又は最適プロセス設定を動的制御システムのユーザ/オペレータに表示することができる。ユーザ/オペレータは次に、ガスタービンシステム102aの動作を最適化するために提案される最適プロセス設定を用いることができる。
【0037】
1つの実施形態において、GTPOS106は、圧縮機関連入力データの1又は2以上のセットに対する圧縮機出口条件を推定するように構成される。推定される圧縮機出口条件は、GTPOS106により用いられ、各新しい圧縮機関連入力データのサージポイントを識別するのに更に利用される圧縮機性能マップを作成することができる。
【0038】
少なくとも1つの例示的な実施形態において、GTPOS106はまた、圧縮機の1又は2以上の段の各段に対するチョークポイントを識別するように構成される。圧縮機の各段に対するチョークポイントを識別するプロセスは、
図3を参照して詳細に説明する。
【0039】
図1に示したシステム、プラント、及び/又はネットワークの数及び構成は、実施例として提供されている。追加のシステム、プラント、及び/又はネットワーク、より少ないシステム、プラント、及び/又はネットワーク、異なるシステム、プラント、及び/又はネットワーク、及び/又は
図1に示したものとは異なるように構成されたシステム、プラント、及び/又はネットワークが存在してもよい。更にまた、
図1に示した2又は3以上のシステムは、単一のシステム内で実施することができ、又は
図1に示した単一のシステムは、複数の分散システムとして実施することができる。加えて、又は代替として、環境100のシステムのセット(例えば、1又は2以上のシステム)は、環境100のシステムの別のセットによって実行されるように記載された1又は2以上の機能を実行することができる(例えば、上述のシナリオを参照のこと)。
【0040】
図2は、本開示の実施形態による、ガスタービンの性能を正確に予測し最適化するガスタービン性能最適化システム(GTPOS)200の例示的なブロック図を示す。1つの実施形態において、ガスタービン性能最適化システム(GTPOS)はまた、システムと呼ぶことができ、本明細書では同義的に用いることができる。システム200は、
図1を参照して説明したGTPOS106と同様である。一部の実施形態において、システム200は、クラウドベース及び/又はSaaSベース(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)アーキテクチャとして具現化される。一部の実施形態において、システム200は、サーバシステムにおいて実施することができる。一部の実施形態において、システム200は、ラップトップコンピュータ、ノートブック、手持ち式デバイス、ワークステーション、メインフレームコンピュータなど、幅広い種類のコンピュータシステムで実施することができる。
【0041】
GTPOS200は、コンピュータシステム202及びシステムデータベース204を含む。コンピュータシステム200は、バス212を介して互いに通信する、命令を実行するための1又は2以上のプロセッサ206、メモリ208、通信インタフェース210、及びユーザインタフェース216を含む。
【0042】
メモリ208は、例えば、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)及び動的ランダムアクセスメモリ(DRAM)などの揮発性メモリ、及び/又は、読取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブルROM、フラッシュメモリ、ハードディスク、光学ディスク、及び磁気テープなどの不揮発性メモリを含む、当該技術分野で既知の何れかのコンピュータ可読媒体を含むことができる。1つの実施形態において、システムデータベース204は、メモリ208に格納することができ、システムデータベース204は、限定ではないが、システム200を用いて識別されるガスタービンの最適化プロセス設定、及び事前定義の予測性能品質指数閾値、事前定義のモデル品質指数閾値などを含むことができる。メモリ208は更に、本開示のシステム及び方法によって実行される各ステップの入力/出力に関する情報を含む(又は更に含むことができる)。換言すると、各ステップでフィードされた入力及び各ステップで生成された出力は、メモリ208に含まれ、更なる処理及び分析に利用することができる。
【0043】
一部の実施形態において、システムデータベース204は、コンピュータシステム202内に一体化される。例えば、コンピュータシステム202は、システムデータベース204として1又は2以上のハードディスクドライブを含むことができる。ストレージインタフェース214は、システムデータベース204へのアクセスを1又は2以上のプロセッサ206に提供することができる何れかの構成要素である。ストレージインタフェース214は、例えば、アドバンスドテクノロジーアタッチメント(ATA)アダプタ、シリアルATA(SATA)アダプタ、小型コンピュータシステムインタフェース(SCSI)アダプタ、RAIDコントローラ、SANアダプタ、ネットワークアダプタ、及び/又はシステムデータベース204へのアクセスを1又は2以上のプロセッサ206に提供する何れかの構成要素を含むことができる。1つの実施形態において、システムデータベース204は、
図1を参照して説明したデータベース110と同様である。
【0044】
1又は2以上のプロセッサ206は、1又は2以上のソフトウェア処理モジュール及び/又はハードウェアプロセッサとすることができる。1つの実施形態において、ハードウェアプロセッサは、1又は2以上のマイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、中央処理ユニット、状態機械、論理回路、及び/又は、動作命令に基づいて信号を操作する何れかのデバイスとして実施することができる。他の能力の中でも、プロセッサは、メモリ208に格納されたコンピュータ可読命令をフェチし実行するように構成される。
【0045】
メモリ208は、動作を実行するコンピュータ可読命令のセットを格納するのに適した論理、回路、及び/又はインタフェースを含む。メモリ208の例として、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、取り外し可能ストレージドライブ、ハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。本開示の範囲は、本明細書に記載するように、GTPOS200にてメモリ208を実施することに限定されないことは、当業者には明らかであろう。別の実施形態において、メモリ208は、本開示の範囲から逸脱することなく、GTPOS200と連携して作用するデータベースサーバ又はクラウドストレージの形態で実現することができる。
【0046】
1又は2以上のプロセッサ206は、通信インタフェース210に動作可能に結合され、これによって1又は2以上のプロセッサ206は、ガスタービンプラント102などのリモートシステム218と通信するか、又はネットワーク104に接続された何れのエンティティ(例えば、知識データベース108、データベース110及びモデルデータベース112)と通信する。更に、1又は2以上のプロセッサ206は、最終要件として、ガスタービンシステム102aの性能を維持する役割を果たすガスタービンプラント102に存在する制御システムのユーザ/オペレータなどのユーザと対話するためのユーザインタフェース216に動作可能に結合される。
【0047】
例証され以下に記載されるGTPOS200は、単に本開示の実施形態から利益を得ることができるシステムの例示に過ぎない点に留意すべきであり、従って、本開示の範囲を限定するものと捉えるべきではない。GTPOS200は、
図2に示したものよりも少ないか又はより多い構成要素を含むことができる点に留意されたい。
【0048】
図3Aは、
図1及び
図2を参照して、本開示の実施形態による、ガスタービンシステム102aなどのガスタービンの性能を正確に予測し最適化するため、
図2のシステム200又は
図1のGTPOSに関連するプロセッサ206の概略ブロック
図300を示す。
【0049】
1つの実施形態において、1又は2以上のプロセッサ206は、受信モジュール302、データ前処理モジュール304、ソフト検知モジュール306、リアルタイムモニタリング及び最適化モジュール308、設計ポイント較正モジュール310、自己学習モジュール312及びオフラインシミュレーションモジュール314を含む。
【0050】
受信モジュール302は、ガスタービンプラント102のプラントデータソース102cに存在するセンサデータベース、環境データベース、及びラボラトリデータベースなどの1又は2以上のデータソースからリアルタイムセンサデータ及び非リアルタイムデータを受信するのに適した論理及び/又はインタフェースを含む。
【0051】
データ前処理モジュール304は、受信モジュール302と通信する。データ前処理モジュール304は、受信モジュール302によって受信されるリアルタイムセンサデータ及び非リアルタイムデータを受信するのに適した論理及び/又はインタフェースを含む。1つの実施形態において、データ前処理モジュール304は、受信したデータ、すなわち、リアルタイムセンサデータ及び非リアルタイムデータを処理するように構成される。1つの実施形態において、データ前処理モジュール304は、異常値及び誤った値を取り除くこと、ドメインベースのデータフィルタリングを実行すること、欠損値又は記録されていない値をインピュートすること、データタイプをテキストから数字に又はその逆に変換すること、サンプリング周波数を統一すること、データに適切なプロセスラグを導入すること、タイムスタンプなどに基づいて複数のデータソースからのデータを組み合わせることなど、複数の動作を受信データに対して実施して、前処理データ、すなわちクリーンデータを取得することができる。
【0052】
ソフト検知モジュール306は、データ前処理モジュール304と通信する。ソフト検知モジュール306は、1又は2以上のソフトセンサを用いて前処理データに基づいて、ガスタービンシステム102aに関連する1又は2以上のプロセスパラメータを推定するように構成される。ソフト検知モジュール306によって推定される1又は2以上のプロセスパラメータは、効率、レイノルド数、タービン入口温度、入口流体の相対的湿度など、計測器/物理センサを介して直接測定できないパラメータである。
【0053】
リアルタイムモニタリング及び最適化モジュール308は、ソフト検知モジュール306と通信する。リアルタイムモニタリング及び最適化モジュール308は、ソフト検知モジュール306によって推定された1又は2以上のプロセスパラメータとデータ前処理モジュール304によって提供された前処理データとを組み合わせることによって、ガスタービンシステム102aに関連する入力データを生成するように構成される。入力データは、圧縮機関連入力データ、燃焼器関連入力データ、タービン関連入力データ、及びガスタービン性能データのうちの1又は2以上を含む。
【0054】
1つの実施形態において、圧縮機関連入力データは、入口質量流量、入口温度、入口圧力、入口ガイドベーン(IGV)角度、及びシャフト回転速度を含む。燃焼器関連入力データは、燃料質量流量、燃料組成、燃料温度、燃焼ガス温度、及び燃焼ガス圧力を含む。タービン関連入力データは、ガス質量流量、ガス温度、クーラント質量流量、及びクーラント温度を含む。ガスタービン性能データは、1又は2以上の定常状態ガスタービン性能パラメータの各定常状態ガスタービン性能パラメータに関連するリアルタイム値と、1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数に関連するリアルタイム値とを含む。
【0055】
1つの実施形態において、リアルタイムモニタリング及び最適化モジュール308は、予測モジュール308a及び最適化モジュール308bを含む。予測モジュール308aは、モデルデータベース112に存在する1又は2以上の構成要素モデルを用いてガスタービンシステム102aの性能を推定するように構成される。詳細には、予測モジュール308aは、圧縮機出口圧力及び温度、冷却流体流量、タービン中間段温度、排出ガス組成などのようなリアルタイムで容易に利用可能でない1又は2以上の主要パラメータを推定するように構成される。1又は2以上の主要パラメータの正確な推定は、サージ及びチョークマージンを考慮した特定の燃料のタイプ、周囲条件及び動作要件に対するガスタービンシステム102aの動作の正確な予測及び最適化を更に助ける圧縮機性能マップを生成するのに役立つ。1つの実施形態において、予測モジュール308aはまた、推定パラメータを用いて、各定常状態ガスタービン性能パラメータに関連する推定値及び各過渡的ガスタービン状態変数に関連する推定値を決定する。予測モジュール308aについて、
図3Bを参照して詳細に説明する。
【0056】
1つの実施形態において、最適化モジュール308bは、予測モジュール308aから1又は2以上の推定パラメータを取得するように構成される。推定パラメータは次に、ガスタービンシステム102aの動作ポイントの最適化を実行するため最適化モジュール308bに存在する1又は2以上の解決器、アルゴリズム及びフレームワークによって利用される。
【0057】
設計ポイント較正モジュール310は、リアルタイムモニタリング及び最適化モジュール308と通信する。設計ポイント較正モジュール310は、1又は2以上の定常状態ガスタービンプロセスパラメータの推定値が、測定値又は実験値から著しく偏位する場合に、1又は2以上の事前決定ガスタービンチューニングパラメータをチューニングする設計ポイント較正を実行するように構成される。1つの実施形態において、設計ポイント較正モジュール310は、1又は2以上の定常状態ガスタービンプロセスパラメータの推定値を1又は2以上の定常状態ガスタービンプロセスパラメータのリアルタイム値と比較することによって、予測性能品質指数を計算する(compute)ように構成される。予測性能品質指数は、定常状態ガスタービンプロセスパラメータの推定値とリアルタイム値との間で計算される1又は2以上の統計的尺度を含む。1つの実施形態において、1又は2以上の統計的尺度は、平均絶対誤差(MAE)、二乗平均平方根誤差(RMSE)及び平均絶対パーセント誤差(MAPE)のうちの1又は2以上を含む。設計ポイント較正モジュール310はまた、計算された予測性能品質指数が、事前定義の予測性能品質指数閾値を下回るかどうかを決定するように構成される。圧縮機の定常状態ガスタービンプロセスパラメータの予測性能品質指数、詳細には、圧縮機の最終段後の圧力比が、事前定義の予測性能品質指数閾値を下回ると決定すると、設計ポイント較正モジュール310は、形状因子、入口マッハ数及び接線速度などの事前決定のガスタービンチューニングパラメータをチューニングして、
図5を参照して詳細に説明される設計ポイント較正プロセスを用いて、予測性能間、すなわちパラメータの推定値とパラメータのリアルタイム値との間の誤差を低減するように構成される。
【0058】
自己学習モジュール312は、ソフト検知モジュール306及びリアルタイムモニタリング及び最適化モジュール308と通信する。自己学習モジュール312は、1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の推定値が、1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数のリアルタイム値から著しく偏位する場合に、1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルの自己学習又はモデルアップデートを開始するように構成される。1つの実施形態において、自己学習モジュール312は、1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の推定値を1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数のリアルタイム値と比較することによって、モデル品質指数を計算するように構成される。モデル品質指数は、1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の推定値とリアルタイム値との間で計算される1又は2以上の統計的尺度を含む。1つの実施形態において、1又は2以上の統計的尺度は、MAE、RMSE、及びMAPEの1又は2以上を含む。自己学習モジュール312はまた、計算されたモデル品質指数が、事前定義のモデル品質指数閾値を下回るかどうかを決定するように構成される。計算されたモデル品質指数が、事前定義のモデル品質指数閾値を下回ると決定すると、自己学習モジュール312は、1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルの自己学習を開始するように構成される。少なくとも1つの例示的な実施形態において、自己学習は、過渡的ガスタービン構成要素モデルのタイプに基づいて実行される。例えば、物理ベースのモデルの場合、自己学習は、入力データの予測誤差を最小にすることによって過渡的ガスタービン構成要素モデルのパラメータを再チューニングすることによって実行される。データ駆動モデルの場合、自己学習は、ハイパーパラメータを再チューニングして過渡的ガスタービン構成要素モデルを再構築することによって、又は入力データの予測誤差を最小限にするためにベースとなる学習技術を変更することによって、実行される。1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルの自己学習は、ガスタービンシステム102aの最適化を助けることができる。
【0059】
オフラインシミュレーションモジュール312は、リアルタイムモニタリング及び最適化モジュール308と通信する。オフラインシミュレーションモジュール312は、様々な動作条件の下でガスタービンシステム102aの挙動をチェックするための仮想実験を実行するように構成される。1つの実施形態において、オフラインシミュレーションモジュール312によって実行される仮想実験の結果を用いて、リアルタイムモニタリング及び最適化モジュール308から受信された推奨を検証し微調整することができる。非限定的な実施例では、オフラインシミュレーションモジュールは、新しい燃料が導入された場合、又は入口質量流量が増加した場合など、ガスタービンシステム102aがどのように応答するかを推定することができる。詳細には、オフラインシミュレーションモジュール312は、ガスタービンシステム102aにおいて推奨を検証した後に推奨を実施する。
【0060】
図3Bは、
図1及び
図2を参照して、本開示の実施形態による、ガスタービンシステム102aなどのガスタービンの性能を正確に予測し最適化するための
図2のシステム200又は
図1のGTPOSに関連する予測モジュール308aの概略ブロック
図350を示している。1つの実施形態において、予測モジュール308aは、圧縮機モジュール352、燃焼器モジュール354、タービンモジュール356、及び定常状態性能推定モジュール358を含む。
【0061】
圧縮機モジュール352は、ガスタービンシステム102aに存在する圧縮機の性能を推定するように構成される。圧縮機の性能を推定するのに用いることができる、3つの広く使用されている方法、すなわち、性能推定が段毎に行われて全ての段の性能が累積されて圧縮機全体の性能を得るようにする段スタッキング法、利用可能な圧縮機性能マップの外挿/内挿を実行することによってマップが拡張されるマップ拡張法、及び圧縮機性能を推定するために1又は2以上のフィッティング法を用いるマップ表現法が存在する点に留意されたい。
【0062】
1つの実施形態において、圧縮機モジュール352は、リアルタイムモニタリング及び最適化モジュール308によって生成された圧縮機関連入力データとモデルデータベース112に格納された圧縮機に関連する1又は2以上の構成要素モデルとに基づいて、ガスタービンシステム102aに存在する圧縮機の性能を推定する段スタッキング法を用いる。一般的に、圧縮機の性能は、定常状態(steady state)と過渡状態(transient state)の各々に対して推定される。1つの実施形態において、定常状態性能推定モジュール358は、圧縮機、燃焼器、及びタービン構成要素の定常状態性能を推定するように構成される。
【0063】
定常状態性能推定モジュール358は、圧縮機モジュール352から圧縮機関連入力データを受信するように構成される。圧縮機関連入力データは、入口質量流量、入口温度、入口圧力、入口ガイドベーン(IGV)角度、及びシャフト回転速度を含む。圧縮機モジュール352はまた、圧縮機断面積情報を定常状態性能推定ユニット358に提供する。圧縮機入口情報を受信すると、定常状態性能推定ユニット358は、圧縮機関連入力データ及び圧縮機断面積を用いて、圧縮機の1又は2以上の段の各段の出口質量流量、出口圧力、出口温度、及び出口速度を推定するように構成される。計算された出口条件、すなわち、第1段に対して決定された出口質量流量、出口圧力、出口温度、及び出口速度は、次の段の入力として用いられ、圧縮機の最終段の出口条件が決定されるまでプロセスが繰り返される点に留意されたい。1つの実施形態において、定常状態性能推定ユニット358はまた、圧縮機の1又は2以上の段の各段の出口条件を推定した後、圧縮機がチョーキング条件にあるかどうかをチェックするように構成される。圧縮機が、チョーキング条件にあることが分かった場合、定常状態性能推定ユニット358は、チョーキング条件を克服するために質量流量又はIGV角度を変更するように構成される。出口条件の計算プロセスは、
図4を参照して詳細に説明される。
【0064】
圧縮機の出口条件が決定されると、定常状態性能推定モジュール358は、1又は2以上の定常状態保存方程式を用いて圧縮機関連入力データ及び出口条件に基づき力(F)及び仕事(W)を計算するように構成される。1又は2以上の定常状態保存方程式は、基本的には、以下に定義される1又は2以上の保存方程式の形式で一般的に表される、1又は2以上の事前設定定常状態保存則を検証する点に留意されたい。
連続方程式
運動量方程式
エネルギー平衡方程式
ここで、
は質量流量を表し、
Fは力を表し、
Aは圧縮機断面積を表し、
Pは出口圧力を表し、
Hは比エンタルピーを表し、
uは圧縮機断面積Aに対する速度の法線組成を表し、
Wは仕事を表し、
LHVは低発熱量を表し、
は熱又はエネルギー入力を表し、
添え字inは入口を表し、
添え字outは出口を表し、
添え字ssは定常状態を表す。
【0065】
計算された力(F)及び仕事(W)は、圧縮機モジュール352に移送される。定常状態性能推定モジュール358の仕事は、圧縮機構成要素に関してのみ説明さているが、定常状態性能推定モジュール358はまた、燃焼器及びタービン構成要素などのガスタービンシステム102aの他の構成要素に関する力(F)及び仕事(W)も計算することができる点に留意されたい。
【0066】
従って、圧縮機モジュール352は、1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルを解き、決定された定常状態出口条件及び圧縮機関連入力データを用いて、過渡状態圧力、温度、質量流量及び速度を取得するように構成される。1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルは、以下に記載する1又は2以上の保存方程式を解く物理ベースのモデルとすることができ、又はガスタービンシステム102aの履歴動作データを用いて作製されるデータ駆動モデルとすることができる。1又は2以上の保存方程式は、以下で定義される。
1)連続方程式
2)運動量方程式
3)エネルギー平衡方程式
ここで、
Vは体積を表し、
Rは実ガス定数を表し、
MWは分子量を表し、
ρは密度を表し、
tは時間を表し、
Cpは一定圧力の比熱定数を表し、
Tは温度を表す。
【0067】
1つの実施形態において、燃焼器モジュール354は、圧縮機の最終段の定常状態出口条件、リアルタイムモニタリング及び最適化モジュール308によって生成された燃焼器関連入力データ、及びモデルデータベース112に格納された燃焼器に関連する1又は2以上の構成要素モデルに基づいて、ガスタービンシステム102aの燃焼ガスに関連する燃焼器出力データを推定するように構成される。燃焼出力データは、燃焼器圧力、燃焼器温度、燃焼器質量流量、及び燃焼ガスの組成を含む。燃焼器出力データは、当該技術分野で既知の何れかの技術を用いて推定できる点に留意されたい。燃焼器出力データが推定されると、燃焼器モジュール354は、1又は2以上の定常状態保存方程式を用いて燃焼器関連入力データ及び圧縮機出力データに基づいて、燃焼器構成要素によって生成される熱又はエネルギー(Q)及び力(F)を計算するように構成される。従って、燃焼器モジュール354は、熱又はエネルギー(Q)及び力(F)を用いて、過渡的ガスタービン構成要素モデルを解き燃焼器の過渡性能を推定する。
【0068】
タービンモジュール356は、圧縮機の最終段の定常状態出口条件、燃焼器出力データ、タービン関連入力データ、及びモデルデータベース112に格納されたタービンに関連する1又は2以上の構成要素モデルに基づいて、ガスタービンシステム102aのタービンの排出ガスに関連するタービン出力データを推定するように構成される。タービン出力データは、当該技術分野で既知の何れの技術を用いても推定できる点に留意されたい。1つの実施形態において、圧縮機モジュール352と同様の段スタッキング法が採用される。段スタッキング法及びその後に続くタービンモジュール356では、各段で、ステータ冷却推定、ストドラの楕円を用いるタービンのガスの膨張、及びロータ冷却推定を含むスリーステップ方式が採用される。スリーステップ方式は、タービンの各段に適用され、性能がスタックされてタービン出力データを推定する。タービン出力データが推定されると、タービンモジュール356は、1又は2以上の定常状態保存方程式を用いてタービン関連入力データ及びタービン出力データに基づいてタービン構成要素による力(F)及び仕事(W)を計算するように構成される。従って、タービンモジュール356は、計算された力(F)及び仕事(W)を用いて過渡的ガスタービン構成要素モデルを解き、ガスタービンシステム102aのタービン構成要素の過渡性能を推定する。
【0069】
1つの実施形態において、出口条件が、各構成要素、すなわち、圧縮機、燃焼器、及びガスタービンシステム102aのタービン構成要素について推定されると、予測モジュール308aは、当初は利用可能でなかった圧縮機出口圧力及び出口温度、冷却流量、タービン中間段温度、排出ガス組成などの1又は2以上の主要パラメータの値を取得することができ、従って、視認性を高めることができる。従って、予測モジュール308aは、1又は2以上の主要パラメータの測定値を用いて、モニタリング及び最適化目的で用いることができるガスタービンシステム102aの定常状態性能及び過渡状態性能を決定して、これにより信頼性を高めることができる。
【0070】
図4A、
図4B、
図4C、
図4D及び
図4Eは、
図1、
図2及び
図3A~
図3Bを参照して、本開示の実施形態による、
図2のシステム200又は
図1のGTPOS106を用いるガスタービンシステム102aなどのガスタービンの性能を正確に予測し最適化する方法の例示的な流れ
図400を示す。1つの実施形態において、システム200は、1又は2以上のハードウェアプロセッサ206に動作可能に結合された1又は2以上のデータストレージデバイス又はメモリ208含み、1又は2以上のハードウェアプロセッサ206による方法のステップを実行する命令を格納するように構成される。本開示の方法のステップについて、
図2に示したシステム200及び
図1のGTPOS106の構成要素を参照して説明する。
【0071】
本開示の1つの実施形態において、ステップ402において、ガスタービン性能最適化システム(GTPOS)200の1又は2以上のハードウェアプロセッサ206は、ガスタービンプラント102に存在する1又は2以上のデータソースからリアルタイムセンサデータ及び非リアルタイムデータを受信する。リアルタイムセンサデータ及び非リアルタイムデータは、ガスタービンプラント102のガスタービンシステム102aの構成要素に関連する。
【0072】
本開示のステップ404において、GTPOS200の1又は2以上のハードウェアプロセッサ206は、リアルタイムセンサデータ及び非リアルタイムデータを前処理して、前処理データを取得する。前述したように、ハードウェアプロセッサ206は、異常値除去、欠損データの補完、サンプリング周波数の統一、適切なラグの導入、データ同期などの1又は2以上を実行することによって、受信したリアルタイムセンサデータ及び非リアルタイムデータを処理する。
【0073】
本開示の1つの実施形態において、ステップ406において、GTPOS200の1又は2以上のハードウェアプロセッサ206は、1又は2以上のソフトセンサを用いて前処理データに基づいてガスタービンシステム102aに関連する1又は2以上のプロセスパラメータを推定する。1つの実施形態では、1又は2以上のソフトセンサは、物理ベースのモデル、物理ベースの公式及び式、並びに計測器は物理センサを介して直接測定することのできない、効率、レイノルド数などのプロセスパラメータを推定するのに用いられるデータ駆動モデルである。
【0074】
本開示のステップ408において、GTPOS200の1又は2以上のハードウェアプロセッサ206は、1又は2以上のプロセスパラメータと前処理データとを組み合わせることによって、ガスタービンシステム102aに関連する入力データを生成する。詳細には、ハードウェアプロセッサ206は、受信したデータと1又は2以上のプロセスパラメータとを統合して、ガスタービンシステム102aの性能を推定するのに用いられる入力データを生成する。入力データは、圧縮機関連入力データ、すなわち、圧縮機の性能を計算するための入力として用いられるデータと、燃焼器関連入力データ、すなわち、燃焼器の性能を計算するための入力として用いられるデータと、タービン関連入力データ、すなわち、タービンの性能を計算するための入力として用いられるデータと、ガスタービン性能データ、すなわち、ガスタービンシステム102aの実際の性能データのうちの1又は2以上を含む。圧縮機関連入力データは、入口質量流量、入口温度、入口圧力、IGV角度、及びシャフト回転速度を含む。ガスタービン性能データは、1又は2以上の定常状態ガスタービン性能パラメータの各定常状態ガスタービン性能パラメータに関連するリアルタイム値と、1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数に関連するリアルタイム値と、を含む。1又は2以上の定常状態ガスタービン性能パラメータの例は、限定ではないが、生成電力、生成推進力、及び出力熱を含む。1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の例は、限定ではないが、圧縮機出口圧力、燃焼ガス温度、排出質量流量、排出ガス温度、排出ガス組成、ガスタービンの回転速度、生成電力、生成推進力、及び出力熱を含む。
【0075】
本開示の1つの実施形態において、ステップ410において、GTPOS200の1又は2以上のハードウェアプロセッサ206は、1又は2以上の段の全ての段が識別されるまで、複数のステップ、すなわちステップ410aからステップ410gを繰り返し実行することによって、圧縮機関連入力データ及び圧縮機断面積を用いて、圧縮機の1又は2以上の段の各段の出口質量流量、出口圧力、出口温度、及び出口速度を決定する。
【0076】
より詳細には、本開示のステップ410aにおいて、GTPOS200の1又は2以上のハードウェアプロセッサ206は、事前定義されたマッハ数計算式を用いて、圧縮機断面積、IGV角度、実ガス定数、比熱定数率、及び1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータに少なくとも一部基づいて、圧縮機の1又は2以上の段の第1段のマッハ数を推定する。1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータは、知識データベース108からアクセスされ、実ガス定数は、プラントデータソース102cに存在するラボラトリデータベースからアクセスされる。ステップ410aは、以下の説明によって良好に理解される。
【0077】
マッハ数を計算するために、ハードウェアプロセッサ206は最初に、入口温度に基づいて比熱定数率を決定する。所与の温度での一定圧力の比熱定数を計算する関係式は、知識データベース108で利用可能である。比熱定数率は、以下に記載する式を用いることによって計算される。
ここで、
Cpは一定圧力の比熱定数を表し、
Rは実ガス定数を表し、
γは比熱定数率を表す。
【0078】
比熱定数率が利用可能になると、GTPOS200のハードウェアプロセッサ206は、次式によって表される事前定義のマッハ数計算式を用いてマッハ数を推定する。
ここで、
Mはマッハ数を表し、
γは比熱定数率を表し、
Rは実ガス定数を表し、
Aは圧縮機断面積を表し、
は、入口質量流量を表し、
αはIGV角度を表し、
Ttは入口温度を表し、
Ptは入口圧力を表す。
【0079】
事前定義のマッハ数計算式で分かるように、式の右辺(RHS)に存在するパラメータの値は既知である。未知のものは、マッハ数計算式の左辺(LHS)に存在するマッハ数Mのみである。ハードウェアプロセッサ206は、この式を解き、Mの値を決定する。
【0080】
本開示のステップ410bにおいて、GTPOS200の1又は2以上のハードウェアプロセッサ206は、推定されたマッハ数が、事前定義のマッハ数を下回るかどうかを決定する。1つの実施形態では、事前定義のマッハ数は、「1」とすることができる。ここで、ハードウェアプロセッサ206は、推定されるマッハ数が、1を下回るか又は等しいかどうかをチェックする。マッハ数が、事前定義のマッハ数、すなわち1を下回ることが分かった場合、ステップ410cが実行される。そうでなければ、1又は2以上のハードウェアプロセッサ206は、現在の段のチョークポイントとして圧縮機関連入力データを識別する。現在の段、すなわち、第1段のチョークポイント及びチョーキング通知は、ガスタービンシステム102aのオペレータに表示される。1つの実施形態では、チョーキング通知は、現在の入口流量及びIGV角度が圧縮機のチョーキングに繋がるときに第1段の圧縮機のチョーキングが回避されるように、入口質量流量及び入口IGV角度のうちの少なくとも1つを修正するメッセージを含む。
【0081】
本開示のステップ410cにおいて、GTPOS200の1又は2以上のハードウェア206は、マッハ数が、事前定義のマッハ数を下回ることを決定すると、推定されたマッハ数、入口質量流量、入口温度、入口圧力、シャフト回転速度、比熱定数率、及び1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータに少なくとも一部基づいて、第1段の相対流量係数を推定する。1つの実施形態では、1又は2以上のハードウェアプロセッサ206は、公式相対流量係数を計算するために相対流量係数計算式を用いることができる。相対流量係数計算式は、次式によって表される。
ここで
は相対流量係数を表し、
Nは回転速度を表す。
【0082】
上述の式の添え字refは、ハードウェアプロセッサ206によって既知であるとみなされる基準条件を指すことに留意されたい。基準条件は、基準質量流量(
)、基準合計圧力(
)、基準合計温度(
)、基準マッハ数(
)、基準断面積(A)、全ての位置における、すなわち、圧縮機の各段の入口及び出口における基準実ガス定数(R)、一定圧力(Cp)での基準比熱定数、基準比熱定数率(γ)、基準クーラント流量(m
cl)、基準効率(η
ref)などの特性を含む。1つの実施形態では、ハードウェアプロセッサ206は、相手先商標製品製造者(OEM)によって提供される設計ポイント仕様を用いてこれらの基準条件を推定する。
【0083】
本開示のステップ410dにおいて、GTPOS200の1又は2以上のハードウェアプロセッサ206は、1又は2以上の無次元特性プロット及び1又は2以上の事前決定ガスタービンチューニングパラメータを用いて相対流量係数に基づいて、現在の段すなわち第1段の相対圧力係数を決定する。1つの実施形態において、ハードウェアプロセッサ206は、知識データベース108から1又は2以上の無次元特性プロットにアクセスすることができる。相対圧力係数の計算は、以下の説明によって良好に理解される。
【0084】
現在の段の相対圧力係数
は、次式を用いて計算された相対流量係数に基づいて決定される。
ここで、Pは、相対流量係数と相対圧力係数を関係付ける関数である。
【0085】
相対流量係数が決定されると、ハードウェアプロセッサ206は、次式を用いて計算された相対圧力係数及び相対流量係数に基づいて相対効率
を決定する。
ここで、Qは、相対効率、相対圧力係数、及び相対流量係数を関係付ける関数である。
【0086】
本開示のステップ410eにおいて、GTPOS200の1又は2以上のハードウェアプロセッサ206は、次式を用いて、相対圧力係数、相対流量係数、及び1又は2以上の無次元特性プロットに少なくとも一部基づいて、現在の段すなわち第1段の効率ηを決定する。
ここで、η
refは基準効率を表す。
【0087】
本開示の1つの実施形態において、ステップ410fにおいて、GTPOS200の1又は2以上のハードウェアプロセッサ206は、相対流量係数、相対圧力係数、効率、及びマッハ数に少なくとも一部基づいて、第1段の出口質量流量、出口圧力、出口温度、及び出口速度を推定する。上記のステップは、以下の説明によって良好に理解される。
【0088】
1つの実施形態において、ハードウェアプロセッサ206は最初に、次式のように表される事前定義の圧力係数式を用いて決定された相対圧力係数、一定圧力での比熱定数、入口圧力、入口温度、及びシャフト回転速度に少なくとも一部基づいて、現在の段すなわち第1段の出口圧力を推定する。
ここで、実施された基準等エントロピー仕事は次式によって表すことができる。
ここで、
は、第1段の入口温度を表し、
Cpは一定圧力での比熱定数を表す。
【0089】
上式で分かるように、未知のパラメータは、圧力比PRだけである。ここで、ハードウェアプロセッサ206は、事前定義の圧力係数方程式を解くことによって、相対圧力係数、一定圧力の比熱定数、入口温度及びシャフト回転速度に少なくとも一部基づいて、第1段の圧力比を計算する。圧力比が決定されると、ハードウェアプロセッサ206は、次式を用いて現在の段すなわち第1段の出口圧力
を推定する。
ここで、
PRは、プロセッサ206によって事前に計算され、入口圧力
は既に既知である。
【0090】
第1段での出口圧力が決定されると、ハードウェアプロセッサ206は、出口圧力、比熱定数率、一定圧力での比熱定数、入口温度、及び入口質量流量に少なくとも一部基づいて、第1段の出口温度を推定する。
【0091】
1つの実施形態において、第1段の出口温度を計算するために、ハードウェアプロセッサ206は最初に、次式を用いて、第1段の圧力比、比熱定数率及び入口温度に基づいて、第1段の等エントロピー温度上昇を計算する。
【0092】
上述の方程式から分かるように、未知であるのは、等エントロピー温度上昇
だけである。ここで、ハードウェアプロセッサ206は、上述の式を解いて、
を得る。従って、ハードウェアプロセッサ206は、次式によって表される事前定義の等エントロピー比エンタルピー増加式を用いて、等エントロピー温度上昇及び比熱定数に基づいて第1段全体の等エントロピー比エンタルピー増加
を計算する。
ここで
To=298.15Kである。
【0093】
更に、ハードウェアプロセッサ206は、次式を用いて、等エントロピー比エンタルピー増加及び効率に基づいて実際の比エンタルピー増加
を計算する。
【0094】
実際の比エンタルピー増加が決定されると、ハードウェアプロセッサ206は、比エンタルピー増加が実際の比エンタルピー増加に等価である出口温度を決定し、すなわち、次式となる。
【0095】
1つの実施形態において、出口温度を決定するために、ハードウェアプロセッサ206は、ある出口温度
を想定して、第1段にわたる比エンタルピー変化を決定する。従って、ハードウェアプロセッサ206は、決定された比エンタルピー変化と以前に計算された実際の比エンタルピー増加を比較して、これらの間の誤差を決定する。誤差が、事前定義の許容範囲より大きい場合、ハードウェアプロセッサ206は、誤差が事前定義の許容範囲内に収まるまで、想定出口温度を変更する。誤差が事前定義の許容範囲内である想定出口温度が、第1段の出口温度とみなされる。
【0096】
現在の段の出口温度の推定後、ハードウェアプロセッサ206は、出口温度、出口圧力及び入口質量流量
に基づいて、第1段の出口質量流量を推定する。出口質量流量を推定するために、冷却目的に使用されるクーラント質量流量は、実際の質量流量から抽出する必要がある。ここで、ハードウェアプロセッサ206は最初に、次式を用いて現在の段で抽出されるクーラントの質量流量を推定する。
ここで、
は、現在の段で抽出されたクーラントの質量流量を表し、
は、事前に計算された出口圧力を表し、
は、事前に計算された出口温度を表す。
【0097】
基準条件が最初に既知であると仮定される場合、抽出されるクーラントの質量流量は、上記の式を用いて計算される。クーラントの質量流量が計算されると、第1段の出口質量流量
は、次式を用いて計算される。
【0098】
更に、ハードウェアプロセッサ206は、以下に記載する式を用いて第1段の出口速度を計算する。
ここで、
は、計算された出口温度を表し、
Rは実ガス定数を表し、
γは比熱比を表し、
Mはマッハ数を表し、
αは絶対速度角度を表す。
【0099】
1つの実施形態において、受信した圧縮機関連入力データに対する圧縮機の出口条件が決定されると、1又は2以上のハードウェアプロセッサ206は更に、圧縮機関連入力データの1又は2以上の新しいセットを受信する。1つの実施形態では、圧縮機関連入力データの1又は2以上の新しいセットは、入口の一部の変化並びに想定される基準条件を作ることによって生成される。圧縮機関連入力データの1又は2以上の新しいセットが利用可能になると、ハードウェアプロセッサ206は、上記に定義された同じプロセスを用いて、圧縮機関連入力データの1又は2以上の新しいセットの圧縮機関連入力データの各新しいセットに対する圧縮機出口圧力を推定する。従って、ハードウェアプロセッサ206は、圧縮機関連入力データの1又は2以上の新しいセットの圧縮機関連入力データの各新しいセットに対して推定された圧縮機出口圧力に基づいて、圧縮機性能マップを作成する。作成された圧縮機性能マップは、1又は2以上の等高線を含み、性能マップに存在する各等高線は、同じ無次元回転速度を有する圧縮機関連入力データの各新しいセットに関連する。1つの実施形態では、無次元回転速度は、圧縮機関連入力データのそれぞれの新しいセットに存在する新しい入口温度の平方根で新しいシャフト回転速度を除算することによって得られる。
【0100】
圧縮機性能マップが作成されると、ハードウェアプロセッサ206は、圧縮機性能マップの1又は2以上の等高線の各等高線の変曲点を識別する。1つの実施形態では、変曲点は、曲線が、等高線の上方傾斜から下方傾斜、又は下方傾斜から上方傾斜に変化する曲線上のポイントである。変曲点は、それぞれの等高線のサージポイントの表示である。従って、ハードウェアプロセッサ206は、対応する新しい圧縮機関連入力データに対して識別された変曲点に基づいて、各新しい圧縮機関連入力データにおけるサージポイントをガスタービンシステム102aのオペレータに表示する。サージポイントの以前の知識は、オペレータが、ガスタービンシステム102aの設定を選択する際にサージポイントを回避できるので、オペレータがガスタービンシステム102aを良好に管理するのを助けることができる。
【0101】
本開示の1つの実施形態において、ステップ410gにおいて、GTPOS200の1又は2以上のハードウェアプロセッサ206は、1又は2以上の段の全ての段が識別されるまで、出口質量流量を入口質量流量として、出口圧力を入口圧力として、出口温度を入口温度として、及び1又は2以上の段の次の段を第1段として識別する。基本的には、このステップにおいて、ハードウェアプロセッサ206は、圧縮機の第1段に対して決定された出口条件を次の段の入力条件として識別する。更にこのプロセスは、圧縮機の最終段の出口条件が決定されるまで繰り返される。
【0102】
本開示の1つの実施形態において、ステップ412において、GTPOS200の1又は2以上のハードウェアプロセッサ206は、出口質量流量、出口圧力、出口温度及び出口速度、及び燃焼器関連入力データに少なくとも一部基づいて、ガスタービンシステム102aの燃焼ガスに関連する燃焼器出力データを推定する。上記で決定された圧縮機の出口条件は、ここでは燃焼器関連入力データと共にハードウェアプロセッサ206によって用いられ、燃焼器出力データを推定する。ハードウェアプロセッサ206は、燃焼器出力データを推定するために当該技術分野で既知の何れか技術を用いることができる点に留意されたい。1つの実施形態では、定常状態及び過渡状態保存方程式を解くことによって燃焼器出力データが推定される物理ベースモデルを用いることができる。物理ベースモデルでは、燃焼ガスの組成を推定するために組成ベースの分析が用いられる。燃焼出力データは、燃焼器圧力、燃焼器温度、燃焼器質量流量、及び燃焼ガスの組成を含む。
【0103】
本開示の1つの実施形態において、ステップ414において、GTPOS200の1又は2以上のハードウェアプロセッサ206は、出口質量流量、出口圧力、出口温度及び出口速度、燃焼器出力データ、及びタービン関連入力データに少なくとも一部基づいて、ガスタービンシステム102aのタービンの排出ガスに関連するタービン出力データを推定する。圧縮機の出口条件及び燃焼出力データの推定後、ハードウェアプロセッサ206は、タービン関連入力データと共にこれらを用いて、タービン出力データを推定する。ハードウェアプロセッサ206は、タービン出力データを推定するために当該技術分野で既知の何れかの技術を用いることができる点に留意されたい。
【0104】
本開示のステップ416において、GTPOS200の1又は2以上のハードウェアプロセッサ206は、出口質量流量、出口圧力、出口温度、出口速度、燃焼器出力データ、及びタービン出力データに少なくとも一部基づいて、1又は2以上の定常状態ガスタービン性能パラメータの各定常状態ガスタービン性能パラメータに関連する推定値を決定する。詳細には、ガスタービンシステム102aの各構成要素に対して決定された出口パラメータ値が、ハードウェアプロセッサ206によって用いられて、1又は2以上の定常状態ガスタービン性能パラメータに関連する推定値を計算する。1又は2以上の定常状態ガスタービン性能パラメータの例は、限定ではないが、ガスタービンシステム102aによって生成される、電力、出力、推進力などを含む。1又は2以上の定常状態ガスタービン性能パラメータは、ガスタービンシステム102aが設計される最終要件のタイプに応じて変わることができる点に留意されたい。
【0105】
1つの実施形態において、1又は2以上の定常状態ガスタービン性能パラメータの各定常状態ガスタービン性能パラメータに関連する推定値が決定されると、1又は2以上のハードウェアプロセッサ206は、1又は2以上の定常状態ガスタービンプロセスパラメータの推定値を1又は2以上の定常状態ガスタービンプロセスパラメータのリアルタイム値と比較することによって、予測性能品質指数を計算する。従って、1又は2以上のハードウェアプロセッサ206は、計算された予測性能品質指数が、事前定義の予測性能品質指数閾値を下回るかどうかを決定する。基本的には、ハードウェアプロセッサ206は、計算された予測性能品質指数を事前定義の予測性能品質指数閾値と比較する。計算された予測性能品質指数が、事前定義の予測性能品質指数閾値の範囲内であることが分かった場合、ステップ418が実行される。計算された予測性能品質指数が事前定義の予測性能品質指数閾値を下回ると決定されると、ハードウェアプロセッサ206は、計算された予測性能品質指数が事前定義の予測性能品質指数閾値を上回ったままであるように1又は2以上の事前決定のガスタービンチューニングパラメータをチューニングするための設計ポイント較正を開始する。事前定義の予測性能品質指数閾値は、検討中の誤差メトリックに依存する点に留意されたい。例えば、検討される誤差メトリックがMAPEである場合、事前定義の予測性能品質指数閾値は、1%と5%の間とすることができる。ここで、推定された排出質量流量とリアルタイムの質量流量の間のMAPEが1%から5%の範囲にない場合、ハードウェアプロセッサ206は、設計ポイント較正をトリガする。設計ポイント較正プロセスについて、
図5を参照して詳細に説明する。形状因子、マッハ入口及び接線速度などのガスタービンチューニングパラメータがチューニングされると、ハードウェアプロセッサ206は、知識データベース108に1又は2以上のチューニングされた事前決定のガスタービンチューニングパラメータを格納してステップ418を実行する。
【0106】
本開示のステップ418において、GTPOS200の1又は2以上のハードウェアプロセッサ206は、1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルを用いて各定常状態ガスタービン性能パラメータに関連する推定値に基づいて、1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数に関連する推定値を決定する。詳細には、1又は2以上の定常状態ガスタービン性能パラメータに関連する推定値は、ハードウェアプロセッサ206によって用いられ、モデルデータベース112からアクセスされる1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルを用いて1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数に関連する推定値を決定する。1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルは、1又は2以上の物理ベースのモデルと1又は2以上のデータ駆動モデルのうちの1つを含む。1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の例は、限定ではないが、圧縮機出口圧力、燃焼ガス温度、排出質量流量、排出ガス温度、排出ガス組成、ガスタービンの回転速度、マッハ数、生成電力、生成推進力、及び出力熱を含む。
【0107】
1つの実施形態において、1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数に関連する推定値が決定されると、ハードウェアプロセッサ206は、1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の推定値を1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数のリアルタイム値と比較することによって、モデル品質指数を計算する。従って、1又は2以上のハードウェアプロセッサ204は、計算されたモデル品質指数が、事前定義のモデル品質指数閾値を下回るかどうかを決定する。基本的には、ハードウェアプロセッサ206は、計算されたモデル品質指数と事前定義のモデル品質指数閾値とを比較する。計算されたモデル品質指数が、事前定義のモデル品質指数閾値の範囲内であることが分かった場合、ステップ420が実行される。他の場合では、計算されたモデル品質指数が、事前定義のモデル品質指数閾値を下回ると決定すると、ハードウェアプロセッサ206は、1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルの自己学習を開始する。事前定義のモデル品質指数閾値は、検討中の誤差メトリックに依存する点に留意されたい。自己学習では、1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルの何れかのモデルパラメータ及びハイパーパラメータがチューニングされるか、又は1又は2以上の過渡的ガスタービン構成要素モデルで用いられる機械学習技術が変更されるか、又は過渡的ガスタービン構成要素モデルで用いられる変数が変更されて、モデル品質指数が、事前定義のモデル品質指数閾値を上回って維持される。モデルパラメータの例は、基準効率、ストドラの定数、圧力損失、燃焼力学反応率、熱移動係数などを含む。1つの実施形態において、物理ベースのモデルのハイパーパラメータは、数値表の最大反復、収束許容差などを含み、データ駆動モデルのハイパーパラメータは、特徴数、隠れ層の数、ニューロン数、学習速度、学習アルゴリズムなどを含む。自己学習が完了すると、ハードウェアプロセッサ206はステップ420を実行する。
【0108】
本開示のステップ420において、GTPOS200の1又は2以上のハードウェアプロセッサ206は、1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数の推定値が、それぞれの過渡的ガスタービン状態変数に対して定義された事前定義の閾値限界の範囲内であるかどうか、及び熱効率、生成電力、排出ガス中のCO2及び窒素酸化物などの汚染物質といった主要性能指数(KPI)が、指定された範囲内にあるかどうかを決定する。詳細には、ハードウェアプロセッサ206は、各過渡的ガスタービン状態変数の推定値が、それぞれの変数に対して事前定義された閾値限界の通りであるかどうか、及びKPIが所望の範囲にあるかどうかをチェックする。各過渡的ガスタービン状態変数の推定値及びKPIが、事前定義の閾値限界の範囲内であることが分かった場合、ハードウェアプロセッサ206は、最適プロセス設定として1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数の推定値を識別する。詳細には、ハードウェアプロセッサ206は、現在の設定がガスタービンシステム102aの最良の可能な設定であるときに、ガスタービンシステム102aが、最適動作ポイントで動作しており、何れの入力パラメータの変更も必要ないとみなす。1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数及びKPIに対する推定値が、それぞれの過渡的ガスタービン状態変数に対して定義された事前定義の閾値限界の範囲内にないと決定された場合に、ステップ422がハードウェアプロセッサ206によって実行される。
【0109】
本開示のステップ422において、GTPOS200の1又は2以上のハードウェアプロセッサ206は、プロセス最適化問題を解いて、1又は2以上の過渡的ガスタービン状態変数の各過渡的ガスタービン状態変数の推定値及びKPIが、それぞれの過渡的ガスタービン状態変数に対して定義された事前定義の閾値限界の範囲内にないと決定すると、KPIを最適化して、それぞれの過渡的ガスタービン状態変数に対して定義された事前定義閾値限界内に各過渡的ガスタービン状態変数の推定値を維持する最適プロセス設定を識別する。前述のように、解決されるべきプロセス最適化問題は、ガスタービン出力の最終的使用からの要件及びリアルタイム需要に応じて変わる。ここで、プロセス最適化問題の1又は2以上の目標は、燃料消費率の低減、動作コストの削減、効率の向上、エミッション、及び、サージポイント、チョークポイント、タービン入口温度の上限、空気対燃料比制限及びエミッション基準、生成電力、生成電力の周波数及び過渡状態変数閾値(transient state variable thresholds)を含む、動作の物理的及び安全上の限界を含む1又は2以上の制約の削減とすることができる。詳細には、1又は2以上のハードウェアプロセッサ206は、プロセス最適化問題を解くことによって構成要素変数に対するセットポイントの新しい値を学習することができ、これによってKPIが最適化され、各過渡的ガスタービン状態変数の推定値が、それぞれの過渡的ガスタービン状態変数に対して定義される事前定義の閾値限界の範囲内に近づく。過渡的ガスタービン状態変数の値を事前定義閾値の範囲内に収める構成要素変数にて行われる変更は、ハードウェアプロセッサ206による最適プロセス設定としてみなされる。最適プロセス設定は次に、ハードウェアプロセッサ206によってガスタービンシステム102aのユーザ/コントローラに表示され(ステップ424)、実施のためにガスタービンプラント102に送信することができる。
【0110】
図5は、
図1から
図4Eを参照して、本開示の実施形態による、圧縮機の定常状態性能モデルを較正するために従われる設計ポイント較正プロセスの概略ブロック図表現500を示す。
【0111】
ブロック図表現500は、予測モジュール308a、及び設計ポイント較正モジュール310を含む。前述のように、予測モジュール308aは、1又は2以上の定常状態ガスタービンプロセスパラメータの推定値を1又は2以上の定常状態ガスタービンプロセスパラメータのリアルタイム値と比較することによって、予測性能品質指数を計算する。計算された予測性能品質指数が、事前定義された予測性能品質指数閾値を下回ると分かった場合、予測モジュール308aは、1又は2以上の信号を設計ポイント較正モジュール310に送り、設計ポイント較正プロセスを開始する。設計ポイント較正モジュール310が、1又は2以上の信号を受信すると、設計ポイント較正モジュール310は、設計ポイント較正プロセスを開始し、これはステップ502から508を用いて説明される。
【0112】
1つの実施形態において、ステップ502において、ハードウェアプロセッサ206は最初に、形状因子、入口のマッハ数、及び接線速度などの1又は2以上のチューニングパラメータを初期化する。
【0113】
ステップ504において、ハードウェアプロセッサ206は、圧縮機関連入力データの相対流量係数を推定する。相対流量係数を推定するプロセスは、
図4Aから
図4Eを参照して詳細に説明され、このプロセスは、簡潔にするためにここでは繰り返さない。相対流量係数が利用可能となると、ハードウェアプロセッサ206は、圧縮機の各段及び様々な入力条件に対する出口圧力、出口温度、及び出口質量流量などの出口条件を推定する(ステップ506)。様々な入力条件が、知識データベース108に存在する履歴データからアクセスされる点に留意されたい。様々な動作ポイントの圧縮機の性能が利用可能になると、ハードウェアプロセッサ206は、計算された出口条件と実際の出口条件の間の平均絶対誤差(MAE)、平方根誤差(RMSE)及び平均絶対パーセント誤差(MAPE)などの1又は2以上の誤差メトリックを計算する。誤差メトリックが事前定義の許容範囲未満であると分かった場合(508)、設計ポイント較正は完了したとみなされる。そうでない場合、ハードウェアプロセッサ206は、初期化された1又は2以上のチューニングパラメータを変更することができ、圧縮機の定常状態性能モデルが較正されるまで、ステップ504から508が繰り返される。
【0114】
図6は、本開示の実施形態による、推定される圧縮機性能と先行技術で利用可能な実験データとの比較を示すグラフ表示である。
【0115】
図6に示すように、方法400を用いて推定される性能は、当該技術分野で利用可能な実験データを正確に予測される。
【0116】
本明細書は、当業者が実施形態を実施及び利用できるようにするために本明細書で主題を記載している。本主題の実施形態の範囲は、請求項によって定められ、当業者に想起される他の修正形態を含むことができる。このような他の修正は、これらが請求項の文言と際のない同様の要素を有する場合、又はこれらが、請求項の文言と僅かな差異を有する均等な要素を含む場合には、請求項の範囲内にあるものとする。
【0117】
保護の範囲は、このようなプログラムに及び更にメッセージを有するコンピュータ可読手段に拡張され、このようなコンピュータ可読ストレージ手段は、プログラムがサーバ又はモバイルデバイスもしくは何れかの適切なプログラマブルデバイスで実行される時に本方法の1又は2以上のステップを実施するプログラムコード手段を包含することを理解されたい。ハードウェアデバイスは、例えば、サーバ又はパーソナルコンピュータのような何れかの種類のコンピュータなど、或いはこれらの何れかの組み合わせを含めて、プログラムすることができる何れかの種類のデバイスとすることができる。デバイスはまた、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などのハードウェア手段、或いはハードウェアとソフトウェア手段の組み合わせ、例えば、ASIC及びFPGA、又は少なくとも1つのマイクロプロセッサ及びソフトウェア処理構成要素が配置される少なくとも1つのメモリとすることができる手段を含むことができる。従って、本手段は、ハードウェア手段とソフト手段の両方を含むことができる。本明細書に記載される方法の実施形態は、ハードウェア及びソフトウェアで実施することができる。デバイスはまた、ソフトウェア手段を含むことができる。代替として、本実施形態は、例えば複数のCPUを用いる、様々なハードウェアデバイス上で実施することができる。
【0118】
本明細書の実施形態は、ハードウェア及びソフトウェア要素を含むことができる。ソフトウェアで実施される実施形態は、限定ではないが、ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む。本明細書に記載する様々な構成要素によって実行される機能は、他の構成要素又は他の構成要素の組み合わせで実施することができる。本明細書において、コンピュータ使用可能又はコンピュータ可読媒体は、命令実行システム、装置、又はデバイスによって、又はこれらと接続して使用するプログラムを含む、格納する、伝送する、伝播する、又は移送することができる何れかの装置とすることができる。
【0119】
例証のステップは、図示した例示的な実施形態を説明しようと試みており、進行中の技術的開発が、特定の機能が実行される方式を変えるであろうことを理解されたい。これらの実施例は、例証の目的であり、限定ではなく本明細書に提示されている。更に、機能的構成単位の境界は、説明の便宜上、本明細書では任意に定義されている。指定された機能及びこれらの関係性が適切に実行される限り、代替の境界を定義することができる。代替形態(本明細書に記載するものの均等物、拡張、変形形態、偏差などを含む)は、本明細書に包含される教示に基づいて当業者には明らかであろう。このような代替形態は、開示される実施形態の範囲内にある。また、「含む」、「有する」、「包含する」、及び「内包する」、及び他の同様の形態の用語は、意味において等価であるとし、これらの用語の何れか1つに続く1又は複数の項目が、このような1又は複数の項目の包括的リストであることを意味せず、又はリストされた1又は複数の項目だけに限定されることを意味しない点で、オープンエンドであるものとする。また、本明細書及び添付の請求項で用いられる場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上他の意味を明確に示さない限り、複数形の照応を含む点に注意されたい。
【0120】
更に、1又は2以上のコンピュータ可読ストレージ媒体は、本開示と適合する実施形態を実施するのに利用することができる。コンピュータ可読ストレージ媒体は、プロセッサによって可読な情報又はデータを格納することができる物理的メモリの何れかのタイプを指す。従って、コンピュータ可読ストレージ媒体は、本明細書に記載される実施形態と適合するステップ又は段階をプロセッサに実行させる命令を含む、1又は2以上のプロセッサによって実行される命令を格納することができる。「コンピュータ可読媒体」という用語は、有形の項目を含み、搬送波及び過渡信号を除外する、すなわち非一時的である点を理解されたい。実施例は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ハードドライブ、CD ROM、DVD、フラッシュドライブ、ディスク、及び他の何れかの既知の物理的ストレージ媒体を含む。
【0121】
本開示及び実施例は、単に例示的なものとしてみなされ、開示される実施形態の真の範囲は、添付の請求項によって示されるものとする。
【符号の説明】
【0122】
100 環境
102 ガスタービンプラント
102a ガスタービンシステム
102b プラント自動化システム
102c プラントデータソース
104 ネットワーク
106 ガスタービン性能最適化システム(GTPOS)
108 知識データベース
110 データベース
112 モデルデータベース
【外国語明細書】