(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123359
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】香料成形物、お香用成形物、お香の方法、及び、香炉
(51)【国際特許分類】
C11B 9/02 20060101AFI20230829BHJP
A47G 35/00 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
C11B9/02
A47G35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012448
(22)【出願日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2022027124
(32)【優先日】2022-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】522073711
【氏名又は名称】合同会社球体光学研究社
(74)【代理人】
【識別番号】100137394
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】松浦 宏明
【テーマコード(参考)】
4H059
【Fターム(参考)】
4H059BC23
4H059BC44
4H059CA56
4H059DA09
4H059EA35
(57)【要約】
【課題】 破砕された香料を効率的に固形化したお香用成形物を提供する。
【解決手段】 本実施形態におけるお香用成形物1は、茶の木の破砕物を主成分として有し、前記破砕物の25重量パーセント以上が焙煎されたものであり、前記破砕物が圧縮成型されている。好ましくは、前記破砕物は、植物の枝葉、根茎、木皮、樹幹、種子、果実、果皮、花、樹木樹脂、又は、これら植物の少なくとも一部から得られる植物精油を含む担体を含む。破砕物は、例えば茶の茎を破砕したものであり、前記破砕物の100重量パーセントが焙煎されたものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然香料の破砕物を主成分として有し、
前記破砕物の25重量パーセント以上が焙煎されたものであり、
前記破砕物が圧縮成型されている
香料成形物。
【請求項2】
前記破砕物は、植物の枝葉、根茎、木皮、樹幹、種子、果実、果皮、花、樹木樹脂、又は、これら植物の少なくとも一部から得られる植物精油を含む担体を含む
請求項1に記載の香料成形物。
【請求項3】
前記破砕物は、茶の木の破砕物を主成分とし、
前記破砕物の25重量パーセント以上が焙煎されたものであり、
前記破砕物が圧縮成型されている
請求項2に記載の香料成形物。
【請求項4】
前記破砕物は、茶の茎を破砕したものであり、
前記破砕物の100重量パーセントが焙煎されたものである
請求項3に記載の香料成形物。
【請求項5】
天然香料の破砕物を主成分として有し、
前記破砕物の25重量パーセント以上が焙煎されたものであり、
前記破砕物が圧縮成型されている
お香用成形物。
【請求項6】
天然香料の破砕物を圧縮成型するステップと、
圧縮成型された破砕物を香炉で加熱するステップと
を有するお香の方法。
【請求項7】
香料成形物を加熱する加熱装置と、
ネットワーク経由で、ユーザの入力に基づいて、前記加熱装置に対する電力の供給を操作する通信機能付き給電装置と
を有し、
前記加熱装置は、前記給電装置から供給された電力により香料成形物を加熱する
香炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料成形物、お香用成形物、お香の方法、及び、香炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、香気成分が多く、合成が困難な天然物の香りを安定して持続させることが可能な、60℃から180℃の間の任意の温度域を維持する温度調整機能を備えた電気式香炉と、香りを発現させる素材として緑茶製造工程において発生し廃棄処理されていた未利用資源を粉砕し、水等の溶液を加えて混合後、板状に圧延しカード状固形物とした、電気式香炉用のチップが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、破砕された香料を効率的に固形化したお香用成形物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る香料成形物は、天然香料の破砕物を主成分として有し、前記破砕物の25重量パーセント以上が焙煎されたものであり、前記破砕物が圧縮成型されている。
【0006】
好適には、前記破砕物は、植物の枝葉、根茎、木皮、樹幹、種子、果実、果皮、花、樹木樹脂、又は、これら植物の少なくとも一部から得られる植物精油を含む担体を含む。
【0007】
好適には、前記破砕物は、茶の木の破砕物を主成分とし、前記破砕物の25重量パーセント以上が焙煎されたものであり、前記破砕物が圧縮成型されている。
【0008】
好適には、前記破砕物は、茶の茎を破砕したものであり、前記破砕物の100重量パーセントが焙煎されたものである。
【0009】
また、本発明に係るお香用成形物は、天然香料の破砕物を主成分として有し、
前記破砕物の25重量パーセント以上が焙煎されたものであり、前記破砕物が圧縮成型されている。
【0010】
また、本発明に係るお香の方法は、天然香料の破砕物を圧縮成型するステップと、圧縮成型された破砕物を香炉で加熱するステップとを有する。
【0011】
また、本発明に係る香炉は、香料成形物を加熱する加熱装置と、ネットワーク経由で、ユーザの入力に基づいて、前記加熱装置に対する電力の供給を操作する通信機能付き給電装置とを有し、前記加熱装置は、前記給電装置から供給された電力により香料成形物を加熱する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、破砕された香料を効率的に固形化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態における香炉セット1を例示する斜視図である。
【
図2】
図1に例示した香炉セット1の分解図である。
【
図3】
図1に例示した香炉セット1の断面図である。
【
図4】お香の方法(S10)を説明するフローチャトである。
【
図5】破砕物の粒径、圧縮する圧力、及び厚みに関する関係性を例示する図である。
【
図6】コーヒー豆の焙煎の有無及び焙煎の程度による固形化の可否を例示する図である。
【
図7】実施形態の香炉セット1における変形例1を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照して説明する。ただし、本発明の範囲は、図示例に限定されるものではない。
まず、実施形態における香炉セット1の構成を説明する。
図1は、実施形態における香炉セット1を例示する斜視図である。
図2は、
図1に例示した香炉セット1の分解図である。
図3は、
図1に例示した香炉セット1の断面図である。
図1~
図3に例示するように、香炉セット1は、お香用成形物5、香炉10、加熱装置20、保温材30、押え板40、及び受け皿50を有する。
お香用成形物5は、植物性の天然香料の破砕物を主成分とし、この破砕物の25重量パーセント以上が焙煎されたものを圧縮成型した固形香料である。換言すると、お香用成形物5は、破砕物の少なくとも一部に焙煎された破砕物が含まれ、この破砕物を圧縮成型した固形香料である。具体的には、お香用成形物5は、未焙煎の破砕物と焙煎済の破砕物とを混合した破砕物、又は、焙煎済の破砕物のみを圧縮成型した固形香料である。ここで、植物性の天然香料とは、植物の枝葉、根茎、木皮、樹幹、種子、果実、果皮、花、樹木樹脂、又は、これら植物の少なくとも一部から得られる植物精油を含む担体であり、例えば、茶、木、コーヒー豆、乾果、又は生薬等である。お香用成形物5に採用する植物性の天然香料としては、焙煎することにより褐色物質(メラノイジン)を生み出すメイラード反応(褐色反応)が生じるものが好ましい。本例のお香用成形物5は、製茶場での茶製造過程で、規格外等で捨てられる茶の木の破砕物を主成分とし、この破砕物の25重量パーセント以上が焙煎されたもの、具体的には、茶の茎を破砕した破砕物を主成分とし、この破砕物の100重量パーセントが焙煎されたものを圧縮成型して茶葉の成形物とした固形香料である。お香用成形物5は、茶茎の他に、茶の木または茶葉が含まれてもよい。
【0015】
また、お香用成形物5は、破砕物を固形化するための蒸留水又は糊剤等は含まずに、無水で圧縮成型した固形香料である。これにより、お香用成形物5は、カビ等の発生が抑えられ、良好の品質を保持することができる。
また、お香用成形物5は、10μm以上2mm以下の粒径に破砕した破砕物を圧縮成型している。圧縮成型されたお香用成形物5は、10μm以上2mm以下の様々な粒径を含む破砕物を圧縮しているため、圧縮後でも内部に適度の空隙を保持している。また、お香用成形物5は、内部空隙量が多い方が燃焼時に燃えやすく、香りが立ちやすい。お香用成形物5は、粒径の細かいものであっても、お香としての成形は可能で、内部空隙量はプレス圧にも影響される。例えば、お香用成形物5として粒径10μm以上2mm以下の範囲の粒径を含む破砕物を圧縮成型する場合、2トン以上8トン以下の圧縮力で圧縮成型し、好ましくは、4トン以上5トン以下の圧縮力で圧縮成型している。粒径10μm以上2mm以下の範囲の粒径を含む破砕物を圧縮成型する場合、4トンより小さい圧縮力である場合に内部空隙量を多く確保することができるがエッジ部分に大きい粒径の物があると崩れやすく、5トンを超える圧縮力である場合に崩れにくいが厚みが薄くなりその分内部空隙が少なくなり、熱が伝わりにくくなって香りの持続時間が短くなる。よって、お香用成形物5として粒径10μm以上2mm以下の範囲の粒径を含む破砕物を圧縮成型する場合は、4トン以上5トン以下の範囲が好ましい。なお、本例のお香用成形物5は、粒径10μm以上2mm以下の範囲の粒径を含む破砕物を4トン以上5トン以下の圧縮力で圧縮成型したものである。
【0016】
また、お香用成形物5として、粒径10μm以上300μm以下の範囲の粒径を含む破砕物を圧縮成型する場合、1トン以上4トン以下の圧縮力、好ましくは、2トン以上4トン以下の圧縮力、より好ましくは2.5トン以上3.5トン以下の圧縮力で圧縮成型している。粒径10μm以上300μm以下の範囲の粒径を含む破砕物を圧縮成型する場合、2トンより小さい圧縮力である場合に内部空隙量を多く確保することができるが崩れやすく、4トンを超える圧縮力である場合に崩れにくいが内部空隙量が少なくなってしまう。よって、お香用成形物5として粒径10μm以上300μm以下の範囲の破砕物を圧縮成型する場合は、エッジが崩れにくく、内部空隙が大きく確保できる厚みとなるよう、2.5トン以上3.5トン以下の範囲が好ましい。なお、粒径10μm以上300μm以下の範囲の粒径を含む破砕物を圧縮成型する場合、エッジ部分に渡って折れ曲がる様な大きい粒径の茶茎が無いので崩れにくく、粒子1個1個がどこかで接触しているので、元々崩れにくい。
また、成型されたお香用成形物5は、例えば、円板、円錐、角柱等であり、本例では直径30mm厚み7mmの円板状である。
【0017】
香炉10は、お香用成形物5を加熱し、香気成分を発散させる器具である。香炉10は、例えば、セラミックス、金属、又は石で形成される。香炉10は、セラミックスにより形成される場合、例えば陶磁器である。なお、本例の香炉10は、色絵を施された磁器の香炉であり、具体的には九谷焼の香炉である。また、香炉10は、香炉本体101および蓋部102を含む。
香炉本体101は、所定の深さのある入れ物であり、後述する加熱装置20、保温材30、押え板40、及び受け皿50を収納することができる。また、香炉本体101は、香炉本体101の壁面に設けられた香炉本体101の内側と外側とを接続する挿通部1011を具備する。挿通部1011は、ケーブル201を通すことができる程度の隙間を設けたスリット、又は、ケーブル201及びUSB端子を通すことができる程度の穴を設けた貫通穴である。本例の挿通部1011は、楕円の形状をした貫通穴である。これにより、例えばケーブル201を引っ掛けた時に、香炉本体101から加熱用プレート200の飛び出しを防止する。
蓋部102は、香炉本体101の開口を塞ぐための蓋である。蓋部102は、その表面に、色、模様、色彩等を加飾した装飾1022を具備する。
【0018】
加熱装置20は、香炉本体101の内部に配置された状態で、受け皿50に入れられたお香用成形物5を加熱する加熱装置である。加熱装置20は、加熱用プレート200、ケーブル201、及び、バッテリー202を含む。
加熱用プレート200は、熱伝導性の高い材料で構成された加熱面200Aを含む加熱用の板材であり、例えばステンレス鋼、アルミニウム鋼、又は銅鋼の板材である。加熱用プレート200は、円板状のお香用成形物5の板面より大きく、香炉本体101内に配置できる程度の大きさである。加熱用プレート200は、例えば4mm以下の厚みであり、好ましくは、0.2mm以上2mm以下の厚みである。
また、加熱用プレート200は、お香用成形物5の加熱時において、加熱面200Aの温度が例えば160℃以上220℃以下、好ましくは180℃以上210℃以下、より好ましくは、180℃以上205℃以下の温度となる。
【0019】
ケーブル201は、加熱用プレート200とバッテリー202とを電気的に接続するケーブルである。ケーブル201は、一方を加熱用プレート200に接続され、他方をUSB端子に接続される。
【0020】
バッテリー202は、加熱用プレート200に電力を供給するための電源である。バッテリー202は、リチウムイオンポリマー電池を内蔵した可搬できるバッテリーであり、USB端子を接続できるUSBポートを備える。なお、バッテリー202に限定するものではなく、外部電源として例えばDC100V→DC5V電源アダプタを介して家庭用コンセントから電力を供給してもよい。
【0021】
保温材30は、断熱性の高い材料をリング状、又は、板状に形成した保温材である。本例の保温材30は、グラスウールをリング状に形成してなる保温材30Aと、グラスウールを円板状に形成してなる保温材30Bとを含む。保温材30は、加熱装置20よりお香用成形物5を加熱するときの熱が香炉10に伝達されることを防止する。
保温材30Aは、グラスウールをリング状に形成した保温材本体300と、後述する受け皿50の器部500が嵌る程度の大きさである穴部302とを含み、加熱用プレート200の上方に配置される。保温材30Aは、受け皿50に嵌めた状態において、受け皿50の器部500の胴回り部分を覆うよう配置される。これにより、保温材30Aは、受け皿50からの周囲への放熱を最小限に抑えることができる。また、保温材30Aの厚みは、受け皿50の器部500の胴回り部分の高さより低くしなければならない。保温材30Aの厚みが、器部500の高さより高いと、押え板40が受け皿50の鍔部502を押さえる事が出来ず、加熱用プレート200の加熱面200Aと接触しなくなるので、熱が伝わりにくくなる。
【0022】
また、保温材30Bは、加熱用プレート200の下方に配置され、加熱用プレート200の加熱面200Aの裏面から熱が香炉本体101の底部に伝わるのを防止する。保温材30Bは、例えば5mm以上が好ましい。保温材30Bは、5mmより薄い厚みだと香炉本体101の底部に熱が伝わり易く、加熱面200Aへの熱の供給が減る恐れがある。保温材30Bの厚みの上限は、香炉本体101に蓋部102を被せた場合、蓋部が浮き上がらないようであれば良い。
【0023】
押え板40は、受け皿50が加熱プレート200の加熱面200Aと密着する重量を備えた重しであり、リング状に形成される。押え板40は、例えばセラミックス、金属、又は石で形成され、セラミックスにより形成される場合、例えば陶磁器である。なお、本例の香炉10は、磁器製であり、具体的には九谷焼である。押え板40は、保温材30の上方に位置する。また、また、押え板40は、受け皿50の上方に位置するため、受け皿50の鍔部502を押えることで、加熱用プレート200の加熱面200Aに密着させることができる。
【0024】
受け皿50は、お香用成形物5を載せる容器である。受け皿50は、熱伝導性の高い材料、例えばアルミニウムにより形成される。また、受け皿50は、器部500の開口部分に鍔部502を具備する。鍔部502は、保温材30A、及び、押え板40の穴より大きく形成される。
図3に例示した受け皿50において、鍔部502は、保温材30Aに引っ掛かかるため、保温材30の穴の内部に脱落することを防止する。また、鍔部502は、押え板40に押圧されることで器部500の底面が加熱用プレート200の加熱面200Aに密着するため、お香用成形物5に熱を効率的に伝達することができる。なお、お香用成形物5を載せる容器は、アルミ製受け皿に限る必要はなく、アルミ製のシートであっても良い。
【0025】
次に、お香の製造方法を説明する。
図4は、お香の方法(S10)を説明するフローチャトである。
図4に例示するように、ステップ100(S100)において、ユーザは、例えば製茶場から茶製造過程で発生する製品規格外品、又は、製造ラインから外れた茶茎を入手する。ユーザは、入手した茶茎が焙煎前である場合は、焙煎機を用いて、入手した茶茎を加熱し焙煎する。茶茎を焙煎することにより、香気成分ピラジン類が生成される(メイラード反応)。また、ユーザは、入手した茶茎が焙煎後である場合は、次工程に移行する。
【0026】
ステップ102(S102)において、ユーザは、例えば石臼、ミキサー、又はコーヒーミル等の破砕機を用いて、焙煎された茶茎を破砕する。ユーザは、茶茎の破砕物の粒径が10μm以上2mm以下の粒径となるよう破砕する。これにより、茶茎の破砕物が生成される。
【0027】
ステップ104(S104)において、ユーザは、圧縮機を用いて、茶茎の破砕物を圧縮成型し、お香用成形物5を成形する。ユーザは、圧縮機を用いて、4トン以上5トン以下の範囲の圧力で茶茎の破砕物を圧縮し、円板状の形状に成型する。ユーザは、圧縮機で圧縮する加圧力を、円板状の厚み、内部空隙量、及び、脆性に応じて適宜選択することができる。圧縮成型されたお香用成形物5は、10μm以上2mm以下の様々な粒径が混在した破砕物を圧縮しているため、圧縮後でも内部に適度の空隙を保持している。
【0028】
ステップ106(S106)において、ユーザは、香炉本体101の内部に、保温材30B、加熱装置20、保温材30A、受け皿50、及び押え板40の順に配置したものを準備する。そして、ユーザは、受け皿50にお香用成形物5を配置して、香炉本体101の開口を塞ぐように蓋部102を配置する。そして、ユーザは、ケーブル201とバッテリー202とを接続する。これにより、加熱装置20は、お香用成形物5を加熱する。
このように、今まで廃棄されていた食品を利用することにより、食品ロスを削減すると共に、より価値の高いお香として楽しむことができ、アップサイクル商品としてSDGsに貢献したモノづくりを提案することができる。
【0029】
破砕物の圧縮成型に関して、破砕物の固形化における下記の実験を行った。
<実験1>
煎茶の破砕物について、破砕物の固形化実験を行った。
[実験内容]
煎茶の茶葉をミキサーで、2μm以上2mm以下の粒径を含む破砕物になるよう破砕して得た破砕物において、未焙煎の破砕物と、焙煎済みの破砕物とを用意した。そして、各破砕物を3gずつ取り分けて、5tの圧力でそれぞれプレス成型した。
[実験結果]
未焙煎の破砕物では、プレス成型しても固形化できなかった。一方で、焙煎済みの破砕物では、プレス成型して固形化することが出来た。
【0030】
<実験2>
棒茶の破砕物について、破砕物の固形化実験を行った。
[実験内容]
献上加賀棒茶の茶茎をミキサーで、2μm以上2mm以下の粒径を含む破砕物になるように破砕して得た破砕物において、未焙煎の破砕物と、焙煎済みの破砕物とを用意した。そして、各破砕物を3gずつ取り分けて、5tの圧力でそれぞれプレス成型した。
[実験結果]
未焙煎の破砕物では、プレス成型しても固形化できなかった。一方で、焙煎済みの破砕物では、プレス成型して固形化することが出来た。
【0031】
<実験3>
図5は、破砕物の粒径、圧縮する圧力、及び厚みに関する関係性を例示する図である。
棒茶の破砕物について、破砕物の固形化実験を行った。
[実験内容]
焙煎工程中に床へ零れ落ちた加賀棒茶を粒径が10μm以上2mm以下の粒径を含む破砕物になるよう破砕して得た破砕物を3.0g用意し、円板状となるよう1.0トン、1.5トン、2.0トン、2.5トン、3.0トン、4.0トン、及び5.0トンの圧力でプレス成形した。また、粒径が10μm以上300μm以下の粒径を含む破砕物になるよう破砕して得た破砕物を4.0g用意し、円板状となるよう1.0トン、1.5トン、2.0トン、2.5トン、3.0トン、4.0トン、及び5.0トンの圧力でプレス成形した。そして、成形したお香成型物の厚みを「不可」「可」「良」「優」の4段階で評価をした。
[実験結果]
図5に例示するように、粒径が10μm以上2mm以下の粒径を含む破砕物を、1.0トンでプレス成形した場合、お香成型物の厚みが7.95mmとなり評価は「不可」となった。また、1.5トンでプレス成形した場合、お香成型物の厚みが7.10mmとなり評価は「不可」となった。また、2.0トンでプレス成形した場合、お香成型物の厚みが7.10mmとなり評価は「不可」となった。また、3.0トンでプレス成形した場合、お香成型物の厚みが5.65mmとなり評価は「可」となった。また、4.0トンでプレス成形した場合、お香成型物の厚みが5.11mmとなり評価は「良」となった。また、5.0トンでプレス成形した場合、お香成型物の厚みが5.02mmとなり評価は「優」となった。
【0032】
また、粒径が10μm以上300μm以下の粒径を含む破砕物を、1.0トンでプレス成形した場合、お香成型物の厚みが10.26mmとなり評価は「不可」となった。また、1.5トンでプレス成形した場合、お香成型物の厚みが9.23mmとなり評価は「不可」となった。また、2.0トンでプレス成形した場合、お香成型物の厚みが8.57mmとなり評価は「不可」となった。また、2.5トンでプレス成形した場合、お香成型物の厚みが8.57mmとなり評価は「可」となった。また、3.0トンでプレス成形した場合、お香成型物の厚みが8.07mmとなり評価は「良」となった。また、4.0トンでプレス成形した場合、お香成型物の厚みが7.37mmとなり評価は「優」となった。また、5.0トンでプレス成形した場合、お香成型物の厚みが6.69mmとなり評価は「優」となった。
以上より、粒径が10μm以上2mm以下の粒径を含む破砕物をプレス成形したお香用成型物において、3.0トン以下の圧力でプレス成形したお香用成型物は、指で摘まんだり、受け皿50に移し替える時にエッジ部分からボロボロと崩れた。4.0トン以上の圧力でプレス成形したお香用成型物は、シッカリ固形化でき、崩れる事は無かった。また、粒径が10μm以上300μm以下の粒径を含む破砕物をプレス成形したお香用成型物において、2.0トン以下の圧力でプレス成形したお香用成型物は、指で摘まんだり、受け皿50に移し替える時にエッジ部分からボロボロと崩れた。2.5トン以上の圧力でプレス成形したお香用成型物は、シッカリ固形化でき、崩れる事は無かった。
【0033】
<実験4>
図6は、コーヒー豆の焙煎の有無及び焙煎の程度による固形化の可否を例示する図である。
コーヒー豆の破砕物について、破砕物の固形化実験を行った。
[実験内容]
コーヒー豆をミキサーで、10μm以上300mm以下の粒径に破砕して得た破砕物において、コーヒー生豆の破砕物、1分間焙煎したコーヒー豆の破砕物(浅めの焙煎品)、3分間焙煎したコーヒー豆の破砕物(少し深めの焙煎品)、及び、市販の焙煎したコーヒー豆の破砕物(完全な焙煎品)を用意した。そして、各破砕物を2.5gずつ取り分けて、4トンの圧力でそれぞれプレス成型した。プレス成型した破砕物をそれぞれ容器に入れて振動させ、固形化した状態を確認した。
[実験結果]
図6に例示するように、コーヒー生豆の破砕物、及び、浅めに焙煎した破砕物では、プレス成型で固形化したものの、振動を加えると簡単に崩れてしまった。また、少し深めに焙煎した破砕物では、振動を加えると少し崩れはするものの、概ね固形化した状態を保っていました。また、完全に焙煎した破砕物では、固形化した状態を維持し、崩れることはなかった。
【0034】
<実験1~実験4の実験結果>
実験1~実験4の実験結果より、焙煎を行わない又は焙煎度合が浅い破砕物を固形化した場合は、固形化できない又は固形化できたとしても、振動を加えるとすぐに崩れる程度の強度であることを確認した。また、焙煎度合が概ね深い又は完全に焙煎された破砕物を固形化した場合は、固形化でき、かつ、振動を加えも崩れにくい程度の強度となることを確認した。これらより、破砕物の焙煎度合、及び、破砕物中における焙煎された破砕物の含有割合に応じて、破砕物の固形化の可否、及び、固形化した破砕物の強度が変化すると考えられる。これは、焙煎することで生成された褐色物質が粘結剤的な働きをするため、固形化に寄与したものと考えられる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の香炉セット1におけるお香用成形物5によれば、植物性の天然香料の破砕物を主成分とし、破砕物の少なくとも一部に焙煎した破砕物を含めることにより、蒸留水又は糊剤等を加えることなく、破砕物を圧縮成型して固形化することができる。焙煎することにより、メイラード反応により生成された高分子化合物(これらはメラノイジン類と言われている。)が接着剤となり、破砕物の粒子同士をくっつけるため空隙が多い。そのため、加熱用プレート200による加熱時の熱がお香用成形物5の内部に伝わりやすく、香りも強く出やすくなる。
また、従来であれば製品規格外、又は、製造ラインから外れた食品を廃棄していたが、これを再利用することにより食品ロスを防ぐことができる。
【0036】
また、お香用成形物5は、製茶場での製造工程中において焙煎工程、計量・梱包工程で床に零れ落ちたもの、製造機械に付着した製品の掃きだしなど、食品として不適格品となったものを再利用しアップサイクルしたお香を提供する事、更にお香を焚いた後の焚きガラにはN、P,Kなどの成分が定性分析の結果65%程度含まれている事が判明し、例えばガーデニング用の土に混合する肥料として使用できることが分かった。
【0037】
持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の目標12である「つくる責任 つかう責任」に寄与すると共に、価値が低く処分していた食品をお香という価値の高い商品にする「アップサイクル商品」で製造から消費まで、廃棄物を一切出さない廃棄物0のシステムを作り上げた事は、地球環境に少しでも役立っているといえる。
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、これらに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、追加等が可能である。
【0038】
次に、上記実施例における変形例を説明する。
なお、変形例では、上記実施例と実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
[変形例1]
上記実施形態では、バッテリー202から加熱装置20の加熱用プレート200に給電する場合を説明したが、これに限定するものではない。本例では、家庭用コンセントから加熱装置20の加熱用プレート200に給電する場合を説明する。
図7は、実施形態の香炉セット1における変形例1を例示する図である。
図7に例示するように、香炉セット1は、バッテリー202に代えて、スマートプラグ60を有する。加熱装置20は、スマートプラグ60に電気的に接続されており、スマートプラグ60から供給された電力でお香成形物5を加熱する。具体的には、加熱装置20は、スマートプラグ60を介して、家庭用コンセント(コンセントC)から供給された電力でお香用成形物5を加熱する。
【0039】
スマートプラグ60は、家庭用コンセント(コンセントC)に設置され、加熱装置20に対して、外部電源から電力を供給する電気器具である。スマートプラグ60は、コンセントCに差し込むための差し込みプラグと、他の電化製品の差し込みプラグを受け付けるソケットとを含む。本例のスマートプラグ60のソケットは、一般的な家庭用100Vコンセント平行型のソケットと、USB端子の差し込みプラグ形状に合わせた形状のソケットとを含む。スマートプラグ60は、加熱用プレート200のケーブル201のUSB端子をソケットに差し込まれ、加熱装置20と電気的に接続している。
また、スマートプラグ60は、ネットワーク経由で、ユーザの入力に基づいて、加熱装置20の加熱用プレート200に対する電力の供給を操作する通信機能を有する。ここで、ユーザの入力とは、例えば、電源入/切を切り替える入力であり、具体的には、加熱装置20に給電開始及び給電終了を切り替える入力、所定の時刻又は所定の経過時間後に、給電開始及び給電終了を切り替える入力、又は、加熱装置20に供給する電力を指定する入力である。
また、スマートプラグ60は、有線又は無線でネットワークを介して、ユーザが操作する例えばスマートフォン等の携帯情報端末と、通信可能に接続している。本例のスマートプラグ60は、例えば、WI-FI(登録商標)又はBuetooth(登録商標)を介して、携帯情報端末と情報通信可能に無線接続している。なお、スマートプラグ60は、本発明に係る給電装置の一例である。
このように、本変形例の香炉セット1によれば、無線通信機能付きのスマートプラグ60を介して加熱装置20に電力を供給することにより、遠隔地から加熱装置20の電源入/切の操作を行うことができる。これにより、例えば、旅館の客室に香炉セット1を設置した場合に、従業員が客室に入室することなく遠方から加熱装置20を操作することができる。また、外出中であっても遠隔地から加熱装置20を操作することができる。なお、上記実施例のバッテリー202に無線通信機能を備えてもよい。また、加熱装置20に無線通信機能を備えてもよい。
【0040】
[変形例2]
上記実施形態では、加熱装置20の加熱用プレート200が金属製の板材である場合を説明したが、これに限定するものではなく、本例では、シリコンラバーヒーターである場合を説明する。
本例の加熱用プレート200は、発熱体をガラスクロスで補強した耐熱性シリコーンゴムで包んだシリコンラバーヒーターと、ステンレス板とをシリコン系接着剤で接着したものである。
シリコンラバーヒーターの電力密度は、0.6W/cm2以上1.0W/cm2以下、好ましくは、0.7W/cm2以上0.9W/cm2以下に設定してシリコンラバーヒーターが設計される。なお本例のシリコンラバーヒーターの電力密度は、0.86W/cm2であるため、220℃~230℃の温度で発熱する。
よって、お香用成形物5の加熱時において、加熱用プレート200の加熱面200Aの温度は、電力密度を0.86W/cm2と高く設定した本例のシリコンラバーヒーターとステンレス板の放熱とを考慮すれば、加熱面200Aとなるステンレス板の表面温度は215℃程度となる。
これが例えば、0.7W/cm2で設計されたシリコンラバーヒーターでは、200℃~215℃の温度で発熱し、ステンレス板を貼り付けた加熱用プレート200の表面温度は放熱により温度が下がり、190℃~205℃程度となる。
【符号の説明】
【0041】
1 香炉セット
5 お香用成形物
10 香炉
20 加熱装置
30 保温材
40 押え板
50 受け皿
60 スマートプラグ