(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123361
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】粉塵飛散抑制剤および粉塵飛散抑制剤の散布方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/22 20060101AFI20230829BHJP
C09K 17/32 20060101ALI20230829BHJP
C09K 17/22 20060101ALI20230829BHJP
C09K 17/18 20060101ALI20230829BHJP
E01C 19/17 20060101ALI20230829BHJP
C08L 1/26 20060101ALI20230829BHJP
C08L 33/02 20060101ALI20230829BHJP
C08L 39/04 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
C09K3/22 E
C09K17/32 P
C09K17/22 P
C09K17/18 P
E01C19/17
C08L1/26
C08L33/02
C08L39/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015424
(22)【出願日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2022026649
(32)【優先日】2022-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128392
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】熊沢 紀之
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
(72)【発明者】
【氏名】冨貴 丈宏
(72)【発明者】
【氏名】稲邉 裕司
【テーマコード(参考)】
2D052
4H026
4J002
【Fターム(参考)】
2D052AA04
2D052AA05
2D052AA06
2D052AB01
2D052AB15
2D052BA20
4H026CA06
4H026CB08
4H026CC06
4J002AB031
4J002BG011
4J002BJ002
4J002GL00
4J002HA04
(57)【要約】
【課題】ダンプトラックが頻繁に走行する道路等の土壌において飛散する粉塵飛散を抑制する。
【解決手段】カチオン性高分子とアニオン性高分子との混合比率が、当量比で1:3~1:300、好ましくは1:5~1:100と、アニオン性高分子を過剰にした粉塵飛散抑制剤の水溶液を土壌に散布して粉塵飛散の抑制をする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉塵飛散のある土壌に散布する粉塵飛散抑制剤であって、該粉塵飛散抑制剤は、
カチオン性セルロース、カチオン性デンプン等のカチオン性高分子から選択される少なくとも1種のカチオン性高分子と、
カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルアミロース、リグニンスルホン酸及びその塩、ポリアクリル酸及びその塩、ポリスルホン酸及びその塩から選択される少なくとも1種のアニオン性高分子とを含む水溶液であって、アニオン性高分子がカチオン性高分子に対して過剰に含有することを特徴とする粉塵飛散抑制剤。
【請求項2】
カチオン性高分子とアニオン性高分子との混合比率が、当量比で1:3~1:300、好ましくは1:5~1:100であることを特徴とする請求項1記載の粉塵飛散抑制剤。
【請求項3】
カチオン性高分子はポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドであり、アニオン性高分子はポリカルボキシメチルセルロースであることを特徴とする請求項1または2記載の粉塵飛散抑制剤。
【請求項4】
カチオン性高分子はポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドであり、アニオン性高分子はポリカルボキシメチルセルロースである場合に、これらを、等量比で1:5~40の範囲で混合したものの濃度が0.1~7.0重量%、好ましくは0.3~5.0重量%の範囲に希釈されたものであることを特徴とする請求項3記載の粉塵飛散抑制剤。
【請求項5】
粉塵飛散のある土壌に散布する粉塵飛散抑制剤の散布方法であって、該粉塵飛散抑制剤は、
カチオン性セルロース、カチオン性デンプン、アミノ基を有する高分子若しくは4級アンモニウム塩の高分子から選択される少なくとも1種のカチオン性高分子と、
カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルアミロース、リグニンスルホン酸及びその塩、ポリアクリル酸及びその塩、ポリスルホン酸及びその塩から選択される少なくとも1種のアニオン性高分子とを含むコロイド水溶液であって、アニオン性高分子がカチオン性高分子に対して過剰に含有するものであり、
散布土壌に、前記カチオン性高分子に対し、アニオン性高分子が過剰に含有するよう混合した水溶液を散布することを特徴とする粉塵飛散抑制剤の散布方法。
【請求項6】
粉塵飛散のある土壌に散布する粉塵飛散抑制剤の散布方法であって、該粉塵飛散抑制剤は、
カチオン性セルロース、カチオン性デンプン、アミノ基を有する高分子若しくは4級アンモニウム塩の高分子から選択される少なくとも1種のカチオン性高分子と、
カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルアミロース、リグニンスルホン酸及びその塩、ポリアクリル酸及びその塩、ポリスルホン酸及びその塩から選択される少なくとも1種のアニオン性高分子とを含むコロイド水溶液であって、アニオン性高分子がカチオン性高分子に対して過剰に含有するものであり、
散布土壌にカチオン性高分子の水溶液を散布後、アニオン性高分子の水溶液を散布することを特徴とする粉塵飛散抑制剤の散布方法。
【請求項7】
粉塵飛散のある土壌に散布する粉塵飛散抑制剤であって、該粉塵飛散抑制剤は、
カチオン性セルロース、カチオン性デンプン、アミノ基を有する高分子若しくは4級アンモニウム塩の高分子から選択される少なくとも1種のカチオン性高分子と、
カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルアミロース、リグニンスルホン酸及びその塩、ポリアクリル酸及びその塩、ポリスルホン酸及びその塩から選択される少なくとも1種のアニオン性高分子とを含むコロイド水溶液あって、アニオン性高分子がカチオン性高分子に対して過剰に含有するものであり、
散布土壌にアニオン性高分子の水溶液を散布後、カチオン性高分子の水溶液を散布することを特徴とする粉塵飛散抑制剤の散布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宅地やビル地等の地盤の造成工事、道路工事、トンネル工事等の各種の土木工事の現場に接続するため仮設した道路等の地盤において、ダンプトラックが道路を走行することにより発生する粉塵の飛散を抑制するための粉塵飛散抑制剤および粉塵飛散抑制剤の散布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、宅地の造成工事等の土木現場に接続するため道路を仮設することがあり、この様な道路をダンプトラックが頻繁に走行することにより粉塵が飛散する。このような粉塵の飛散が公害となって社会的な問題になることもあり、そこでこのような粉塵の飛散抑制をするため、路面(土面)に水を散布することが昔から行われていたが、水は蒸発しやすいこともあって長時間の飛散抑制をすることが難しく、粉塵の飛散抑制効果を確実にするためには定期的または頻繁な水の散布作業が要求されることになって作業性に劣る等の問題がある。
そこでポリ酢酸ビニルとポリビニルアルコールを含む主剤に、アニオン性高分子とカチオン性高分子とを添加した粉塵飛散抑制剤が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが前記粉塵飛散抑制剤は、粉塵飛散抑制効果があるとされるアニオン性高分子とカチオン性高分子とを含有しているが、これらアニオン性高分子とカチオン性高分子とを混合したものは反応してゲル化、または固化して沈殿物が生成しやすく、この沈殿物(ダマ、固溶体)が生成した状態のまま散布した場合、散布用ノズルが早期のうちに詰まってしまうだけでなく、散布にムラが出て均一な粉塵飛散効果が期待できない等の問題がある。
そこで前記沈殿物の発生を抑制するため、反応抑制剤を添加する等の配慮をすることも提唱されるが、このようにした場合、原材料数が多くなってコスト的面は勿論のこと、これらを手順を間違えることなく効率よく混合する作業が別途必要になって作業性に劣る等の問題があり、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、粉塵飛散のある土壌に散布する粉塵飛散抑制剤であって、該粉塵飛散抑制剤は、カチオン性セルロース、カチオン性デンプン等のカチオン性高分子から選択される少なくとも1種のカチオン性高分子と、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルアミロース、リグニンスルホン酸及びその塩、ポリアクリル酸及びその塩、ポリスルホン酸及びその塩から選択される少なくとも1種のアニオン性高分子とを含む水溶液であって、アニオン性高分子がカチオン性高分子に対して過剰に含有することを特徴とする粉塵飛散抑制剤である。
請求項2の発明は、カチオン性高分子とアニオン性高分子との混合比率が、当量比で1:3~1:300、好ましくは1:5~1:100であることを特徴とする請求項1記載の粉塵飛散抑制剤である。
請求項3の発明は、カチオン性高分子はポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドであり、アニオン性高分子はポリカルボキシメチルセルロースであることを特徴とする請求項1または2記載の粉塵飛散抑制剤である。
請求項4の発明は、カチオン性高分子はポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドであり、アニオン性高分子はポリカルボキシメチルセルロースである場合に、これらを、等量比で1:5~40の範囲で混合したものの濃度が0.1~7.0重量%、好ましくは0.3~5.0重量%の範囲に希釈されたものであることを特徴とする請求項3記載の粉塵飛散抑制剤である。
請求項5の発明は、粉塵飛散のある土壌に散布する粉塵飛散抑制剤の散布方法であって、該粉塵飛散抑制剤は、カチオン性セルロース、カチオン性デンプン、アミノ基を有する高分子若しくは4級アンモニウム塩の高分子から選択される少なくとも1種のカチオン性高分子と、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルアミロース、リグニンスルホン酸及びその塩、ポリアクリル酸及びその塩、ポリスルホン酸及びその塩から選択される少なくとも1種のアニオン性高分子とを含むコロイド水溶液であって、アニオン性高分子がカチオン性高分子に対して過剰に含有するものであり、散布土壌に、前記カチオン性高分子に対し、アニオン性高分子が過剰に含有するよう混合した水溶液を散布することを特徴とする粉塵飛散抑制剤の散布方法である。
請求項6の発明は、粉塵飛散のある土壌に散布する粉塵飛散抑制剤の散布方法であって、該粉塵飛散抑制剤は、カチオン性セルロース、カチオン性デンプン、アミノ基を有する高分子若しくは4級アンモニウム塩の高分子から選択される少なくとも1種のカチオン性高分子と、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルアミロース、リグニンスルホン酸及びその塩、ポリアクリル酸及びその塩、ポリスルホン酸及びその塩から選択される少なくとも1種のアニオン性高分子とを含むコロイド水溶液であって、アニオン性高分子がカチオン性高分子に対して過剰に含有するものであり、散布土壌にカチオン性高分子の水溶液を散布後、アニオン性高分子の水溶液を散布することを特徴とする粉塵飛散抑制剤の散布方法である。
請求項7の発明は、粉塵飛散のある土壌に散布する粉塵飛散抑制剤であって、該粉塵飛散抑制剤は、カチオン性セルロース、カチオン性デンプン、アミノ基を有する高分子若しくは4級アンモニウム塩の高分子から選択される少なくとも1種のカチオン性高分子と、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルアミロース、リグニンスルホン酸及びその塩、ポリアクリル酸及びその塩、ポリスルホン酸及びその塩から選択される少なくとも1種のアニオン性高分子とを含むコロイド水溶液あって、アニオン性高分子がカチオン性高分子に対して過剰に含有するものであり、散布土壌にアニオン性高分子の水溶液を散布後、カチオン性高分子の水溶液を散布することを特徴とする粉塵飛散抑制剤の散布方法である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、高濃度でも沈殿物発生が少ないものでありながら、高い粉塵飛散抑制効果を発揮するものとなる。
請求項2の発明とすることにより、カチオン性高分子とアニオン性高分子との混合比率が、当量比で1:3~1:300、好ましくは1:5~1:100となってより高い粉塵飛散抑制効果を発揮するものとなる。
請求項3の発明とすることにより、カチオン性高分子はポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アニオン性高分子はポリカルボキシメチルセルロースが汎用性が高く、安全性に優れた粉塵飛散抑制剤とすることができる。
請求項4の発明とすることにより、カチオン性高分子はポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アニオン性高分子はポリカルボキシメチルセルロースである場合に、これらを、等量比で1:5~40の範囲で混合したものの濃度が0.1~7.0重量%、好ましくは0.3~5.0重量%の範囲に希釈されたものが粉塵飛散効果が高く実用性のあるものとなる。
請求項5、6、7発明とすることにより、沈殿物発生がない状態での散布が可能になって、実用性に優れた粉塵飛散抑制剤の散布ができることになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】混合比を変化させた場合の粉塵飛散状態を示すグラフ図である。
【
図5】濃度を変化させた場合の粉塵飛散状態を示す表図である。
【
図6】濃度を変化させた場合の粉塵飛散状態を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。
本発明において採用されるカチオン性高分子としては、ポリカチオン性セルロース、ポリカチオン性デンプン等のポリカチオン性高分子から選択される少なくとも1種であり、具体的には、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(以下「DADMAC」と称する。)を例示することができるが、該DADMACは、繊維加工、紙・パルプ、塗料、インキ等の多くの分野で採用されている高分子であって、人体、環境に影響を与えることが殆どないものとして知られている。
【0009】
【化1】
ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(DADMAC)
【0010】
また、アニオン性高分子としては、ポリカルボキシメチルセルロース、ポリカルボキシメチルアミロース、ポリリグニンスルホン酸またはその塩、ポリアクリル酸またはその塩から選択される少なくとも1種であり、具体的には、ポリカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(以下「CMC」と称する。)、ポリアクリル酸ナトリウム(以下「PAAcNa」と称する。)を例示することができるが、該CMC、PAAcNaについても、食品、医薬、化粧品等の多くの分野で採用されている高分子であって、人体、環境に影響を与えることが殆どないものとして知られている。
【0011】
【化2】
ポリカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩
【0012】
【0013】
そして本発明は、特にアニオン性高分子がカチオン性高分子に対して過剰に含まれていることが特徴であり、このようにアニオン性高分子が過剰に含まれていることで、両高分子を高濃度で混合した水溶液を製造した場合において、両高分子同士が反応したときの沈殿物の生成が抑制され、また生成した沈殿物についても時間経過とともに過大化することが殆どなく、このため両高分子同士の反応を抑制するため従来公知の反応抑制剤(例えば塩化ナトリウム等の塩)を別途加える必要はない。
【0014】
また本発明が実施される粉塵飛散抑制剤の溶剤(媒体)としては原則として水であるが、必要において水溶性の有機溶剤、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、2プロパノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、またはアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類の水溶性の有機溶剤を水に配合して使用することができるが、有機溶剤の配合量としては、環境に影響を与えないよう10重量%以下程度とすることが好ましい。これらの有機溶剤は、本発明が実施される粉塵飛散抑制剤の水溶液の粘度調整や使用成分、生成した沈殿物の溶解を促進するものとして使用できるが、これらの有機溶剤を使用する場合、人体に対する影響と環境負荷を少なくするためにエチルアルコールとすることが好ましい。
【0015】
本発明が実施される粉塵飛散抑制剤のカチオン性高分子とアニオン性高分子との混合比であるが、当量比として1:3~1:300の範囲であり、好ましくは1:5~1:100の範囲である。
そしてカチオン性高分子とアニオン性高分子とが混合された水溶液の濃度としては、散布時において1重量%程度の低濃度に調整することが作業性等の観点から好ましいが、散布面積が広い場合、このような低濃度の粉塵飛散抑制剤を散布現場に搬送することは経済的観点から好ましいとは言えない。このため例えば数十重量%程度の高濃度の原液を調整し、該原液を散布現場に搬送後、水で希釈して散布するようにすることが好ましく、このためには、前記調整された高濃度の原液中に、両高分子を混合したことによる反応促進に伴う沈殿物の生成がないか、あっても僅かであって散布に支障がない程度であることが好ましい。
【0016】
次に、本発明の有効性を確認するため次の作業、実験を試みた。
【0017】
<供試土および供試土が充填されたコンテナの作成>
ある国内の造成現場において採取した土壌について、風乾後、4.5mmメッシュの篩を透過したものを供試土として作成した。該供試土の粒径加積曲線は
図2のグラフ図に示すとおりであり、その性状は、JIS(日本工業規格)A 1202の土粒子の密度試験、JIS A 1204の土の粒度実験、JIS A 1210の突固めによる供試土の締固め実験を行った結果を
図3の表図に示す。
前記作成した供試土1を、縦横内幅が166mm×106mm、深さが86mmのコンテナ(容器)に充填するが、その充填方法として、供試土を30mmの厚さになるよう自然落下する状態でコンテナに充填したものに、重さ150g、直径25mmの突き棒を、高さ50cmのところから自然落下させて供試土を締固めることをコンテナ全面に亘って均等に行った。この供試土のコンテナへの充填、締固め作業を3回繰り返すことで、締固められた供試土が深さ(高さ、厚さ)略9割の状態で充填されたコンテナを作成した。
【0018】
<試験液の調整>
粉塵飛散抑制剤として、カチオン性高分子であるDADMAC(センカ株式会社製 商品名:ユニセンスFPA1001L 分子量10~50万)と、アニオン性高分子であるCMC(ダイセル化学工業株式会社製 商品名:CMCダイセル1330 分子量16~38万)とを選択し、そして当量比として、DADMAC:CMCを1:1、1:3、1:5、1:7、1:40、1:60、1:80、1:100、1:200、1:300、1:400、43:1となるよう試験液1~12を調整するが、これらの試験液1~12は、10重量%の高濃度水溶液である原液を調整し、該原液を6時間、温度20℃、湿度60%の室内に静置した後、1重量%の濃度の水溶液になるよう希釈することで作成した。
【0019】
<試験液の散布および粉塵飛散実験>
前記コンテナに充填された供試土に、前記調整された粉塵飛散抑制剤の試験液1~12を散布した後、温度20℃、湿度60%の屋内にて48時間養生した。1重量%の濃度に希釈された試験液1~12の散布量は、2L/m
2となるように調整した。因みに2L/m
2の散布量は、供試土の表面全体に、凡そ1~2mmの深さまで試験液が隙間なく浸透する程度に散布されるものである。
養生後、
図1に示すように、供試土1が充填されたコンテナ2を台座3に載置する一方、送風機(ボッシュ株式会社製、ブロアGBL800E)4を、前記台座3よりも高い台座5に載置し、該送風機4からの送風を行うことになる。その際に、台座3、5間の距離および高低差、送風機4の向き等の送風条件として、供試土1部位において送風機4からの送風が、気象庁が定める「風の強さと吹き方」において「強い風」に分類される風速15m/sとなるよう調整されたものとなっており、この条件下で、送風機4から5分間、供試土1の表面に送風をした。
そして送風前後の供試土の重量差(実際にはコンテナ2を含めた重量差)を測定し、その差分を飛散した粉塵量とした。
【0020】
<粉塵飛散結果および考察>
前記粉塵飛散実験を、各試験液1~12ごとに3回繰り返し、各飛散した粉塵量から平均粉塵飛散量を求めたところ、
図4に示すグラフ図のようになった。
尚、この粉塵飛散実験には、ブランクとして全く散水しないもの(ブランク1)、水のみを散水したもの(ブランク2)についても同様の実験をした。
これらの実験から、粉塵飛散の抑制効果があるものとして、DADMACとCMCとの当量比が、DADMACを1としたときに3~300の範囲であり、好ましくは、5~100の範囲であることが確認された。そしてこれらの実験から、DADMACとCMCとの当量比が1:5、7、40のものが粉塵飛散量が少なく、粉塵飛散防止効果が高いことが確認された。
DADMACを1としたときの当量比が1のものは、原液中に沈殿物の発生が視認され、これを水で希釈して試験液にしても沈殿物は残留しており、この結果、飛散抑制効果が低下したものと推定される。因みに、当量比が3の原液は沈殿物の発生が僅かではあるが視認され、当量費が5以上のものは沈殿物が視認されず、このため粉塵飛散抑制効果に差が出たものと推定される。
そしてこの高い粉塵飛散抑制効果は、当量比が100のものまでは凡そ維持され、これを越えて300までのものは、若干劣るがそれなりの粉塵飛散抑制効果を発揮したものとなって実用性が認められる。一方、当量比が400のものは、飛散抑制効果が低く、実用的ではないと判断される。
これに対し、逆にDADMACをCMCに対して過剰にした試験液12(DADMAC:CMC=43:1)のものは、水を散水したものよりも低い粉塵飛散抑制効果となった。
このようにカチオン性高分子であるDADMACを過剰にした場合には高い粉塵飛散抑制機能が確認されるのに対し、逆にアニオン性高分子であるCMCを過剰にしたものでは粉塵飛散抑制効果が認められないものとなったことにより本発明の有効性が確認される。
【0021】
<各別散布の実験>
次に、前記コンテナに充填された供試土を用い、カチオン性、アニオン性の高分子の水溶液を各別に散布した場合の粉塵飛散抑止効果があるか否かについて実験をした。
粉塵飛散抑制剤の成分としては、カチオン性高分子としては前記DADMACを採用し、アニオン性高分子としては前記CMCを用いた。DADMACとCMCとの当量比が、前記実験において粉塵飛散効果が高い(粉塵飛散抑制率(=試験液での粉塵飛散量/散水しない場合の粉塵飛散量×100)が97%)と認められる試験液4(DADMAC:CMC=1:7)のものについて、DADMACとCMCとの各水溶液を作成し、これら水溶液について、DADMACの水溶液を先に散布した5分後に、CMCの水溶液を散布したものと、逆にCMCの水溶液を先に散布した後、DADMACの水溶液を散布した後、前記実験例の場合と同様の養生をし、粉塵飛散実験をした。
その結果、粉塵飛散抑制率は、DADMACの水溶液を先に散布した前者の場合には87%、後から散布した後者の場合には82%であり、何れのものも高い粉塵飛散用癖効果が発揮され、実用性があることが認められる。
尚、本実験においては、アニオン性高分子として、PAAcNaについても検討したところ、略同様の効果が認められた。
【0022】
<希釈濃度についての実験>
前述したように、DADMACとCMCとの混合物の当量比が1:5、7、40のものが高い粉塵飛散効果を発揮することが確認された。そこで次に、これら混合物の希釈濃度についての検討実験をした。DADMACとCMCとの混合物として等量比1:5、7のものを用意し、等量比1:5のものについては、濃度を1.0、0.5重量%に調整したもの(実験番号1、3)、等量比1:7のものについては、濃度を1.0、0.5、0.3、0.1、0.01重量%に調整したもの(実験番号2、4、5~7)をそれぞれ用意し、これら用意した粉塵飛散抑制剤を、前記同様にして2.0L/m
2の散布量となるよう散布し、粉塵飛散量の測定をした。
これらの結果を、
図5、
図6の表図およびグラフ図に示す。ブランク1、2は、
図4のブランクと同じである。
これらの結果から、等量比が1:5と1:7のものは、略同等の粉塵飛散効果を呈していることが認められる。また等量比が1:7のものは、濃度が0.3重量%以上の場合に粉塵飛散の逓減率が60%以上となっていて高い粉塵飛散効果を呈していて実用性があり、また0.1重量%のものについても40%を越える粉塵飛散効果を呈しており、粉塵飛散が低い性質の土壌に散布する等の場合には有効であり、このように使用場所によっては0.1重量%のものであっても実用性が認められる。
しかしながら0.01重量%のものは粉塵飛散効果が20%以下となって低く、実用性に乏しいものと判断される。
【0023】
前記実験は、本発明が実施された粉塵飛散防止剤の濃度について、どこまで希釈した(薄くした)ものについて実用性が認められるか、についての実験であり、これを見極めることができた。これに対し濃度を高くした場合については粉塵飛散防止効果のあることは期待できるが、高濃度にするほど粘度が高くなって散水ノズルを用いての散水機能が低下するという問題があり、一般に市販されている汎用の散水ノズルを用い、高い濃度に調整した粉塵飛散防止剤の散布実験をしたところ、5.0重量%の濃度に調整したものは問題なく散布することができたが、7.0重量%の濃度に調整したものでは散布粒子が大きくなったことが起因しているのか一部に散水斑が生じたが、この程度の散布までは実用性が認められる。さらに濃度を高くして10.0重量%に調整したものでは散水ノズルが詰まって実質的な散水できないものとなった。
この結果、粉塵飛散防止剤の高い濃度として実用的なものは、7.0重量%までであり、好ましくは5.0重量%までであると判断される。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、道路等の土壌からの粉塵飛散を抑制するための粉塵飛散抑制剤および粉塵飛散抑制剤の散布方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 供試土
2 コンテナ
3 台座
4 送風機
5 台座
【手続補正書】
【提出日】2023-02-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
<粉塵飛散結果および考察>
前記粉塵飛散実験を、各試験液1~12ごとに3回繰り返し、各飛散した粉塵量から平均粉塵飛散量を求めたところ、
図4に示すグラフ図のようになった。
尚、この粉塵飛散実験には、ブランクとして全く散水しないもの(ブランク1)、水のみを散水したもの(ブランク2)についても同様の実験をした。
これらの実験から、粉塵飛散の抑制効果があるものとして、DADMACとCMCとの当量比が、DADMACを1としたときに3~300の範囲であり、好ましくは、5~100の範囲であることが確認された。そしてこれらの実験から、DADMACとCMCとの当量比が1:5、7、40のものが粉塵飛散量が少なく、粉塵飛散防止効果が高いことが確認された。
DADMACを1としたときの当量比が1のものは、原液中に沈殿物の発生が視認され、これを水で希釈して試験液にしても沈殿物は残留しており、この結果、飛散抑制効果が低下したものと推定される。因みに、当量比が3の原液は沈殿物の発生が僅かではあるが視認され、当量費が5以上のものは沈殿物が視認されず、このため粉塵飛散抑制効果に差が出たものと推定される。
そしてこの高い粉塵飛散抑制効果は、当量比が100のものまでは凡そ維持され、これを越えて300までのものは、若干劣るがそれなりの粉塵飛散抑制効果を発揮したものとなって実用性が認められる。一方、当量比が400のものは、飛散抑制効果が低く、実用的ではないと判断される。
これに対し、逆にDADMACをCMCに対して過剰にした試験液12のDADMAC:CMCが等量比で43:1のものは、水を散水したものよりも低い粉塵飛散抑制効果となった。
このように
アニオン性高分子であるCMCを過剰にした場合には高い粉塵飛散抑制機能が確認されるのに対し、逆に
カチオン性高分子であるDADMACを過剰にしたものでは粉塵飛散抑制効果が認められないものとなったことにより本発明の有効性が確認される。