(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012337
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】吊りボルト用支持金具
(51)【国際特許分類】
F16B 7/04 20060101AFI20230118BHJP
F16B 2/10 20060101ALI20230118BHJP
F16B 41/00 20060101ALI20230118BHJP
F16B 2/06 20060101ALI20230118BHJP
F16B 1/00 20060101ALI20230118BHJP
E04B 9/18 20060101ALI20230118BHJP
F16L 3/24 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
F16B7/04 301U
F16B7/04 301V
F16B2/10 A
F16B41/00 F
F16B2/06 A
F16B1/00 A
E04B9/18 B
F16L3/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115929
(22)【出願日】2021-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000136686
【氏名又は名称】株式会社ブレスト工業研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】弁理士法人にじいろ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅野 裕太
(72)【発明者】
【氏名】今野 洋一郎
【テーマコード(参考)】
3H023
3J022
3J039
【Fターム(参考)】
3H023AA05
3H023AB04
3H023AC01
3H023AE01
3J022DA13
3J022EA42
3J022ED23
3J022FA01
3J022FB04
3J022FB07
3J022FB12
3J022GA03
3J022GA06
3J022GA12
3J022GB23
3J022GB25
3J039AA08
3J039AA09
3J039BB04
3J039CA03
(57)【要約】
【課題】吊りボルトに対して被支持体を支持する作業効率を向上すること。
【解決手段】吊りボルト用支持金具1は、締結部材本体101と、締結部材本体との間に吊りボルト400を挟持するための挟持部材本体201と、締結部材本体に被支持体を締着するための第1ボルト106及びナット107と、締結部材本体からの第1ボルト及びナットの脱落を防止して第1ボルト及びナットが締結部材本体に仮組みされた状態を維持する第1脱落防止具111と、吊りボルトを締結部材本体と挟持部材本体とで締め付けるための第2ボルト208と、挟持部材本体からの第2ボルトの脱落を防止して第2ボルトが挟持部材本体に仮組みされた状態を維持する第2脱落防止具211とを具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊りボルトに対してチャンネル材その他の被支持体を支持する吊りボルト用支持金具において、
締結部材本体と、
前記締結部材本体との間に前記吊りボルトを挟持するための挟持部材本体と、
前記締結部材本体に前記被支持体を締着するための第1ボルト及びナットと、
前記締結部材本体からの前記第1ボルト及び前記ナットの脱落を防止して前記第1ボルト及び前記ナットが前記締結部材本体に仮組みされた状態を維持する第1脱落防止具と、
前記吊りボルトを前記締結部材本体と前記挟持部材本体とで締め付けるための第2ボルトと、
前記挟持部材本体からの前記第2ボルトの脱落を防止して前記第2ボルトが前記挟持部材本体に仮組みされた状態を維持する第2脱落防止具とを具備する、吊りボルト用支持金具。
【請求項2】
前記第1脱落防止具は、一部切り欠かれて前記第1ボルトに側方から圧嵌される第1円環部と、前記ナットの側面に当接する当接部とを有する、請求項1に記載の吊りボルト用支持金具。
【請求項3】
前記第1脱落防止具は一体的樹脂成形体である、請求項1または2に記載の吊りボルト用支持金具。
【請求項4】
前記第1脱落防止具には前記第1ボルトのネジ谷に歯合する線条突起が設けられる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の吊りボルト用支持金具。
【請求項5】
前記第2脱落防止具は、一部切り欠かれて前記第2ボルトに側方から圧嵌される第2円環部を有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の吊りボルト用支持金具。
【請求項6】
吊りボルトに対してチャンネル材その他の被支持体を支持する吊りボルト用支持金具において、
前記被支持体を締結するための締結部材本体と、
前記締結部材本体とともに前記吊りボルトを挟持するための挟持部材本体と、
前記挟持部材本体と前記締結部材本体との間に前記吊りボルトを仮止めするために、前記挟持部材本体を前記締結部材本体に押し付けるバネ部と、
前記仮止めされた吊りボルトを前記締結部材本体と前記挟持部材本体とで締め付けるためのボルトとを具備する、吊りボルト用支持金具。
【請求項7】
前記締結部材本体に孔が開けられ、前記孔に差し込まれ前記孔の縁に掛着される短冊形の掛合片が前記挟持部材本体に設けられ、
前記バネ部は、前記孔の縁と前記掛合片との間隙に圧嵌される横断面がU字形又はV字形の板バネである、請求項6記載の吊りボルト用支持金具。
【請求項8】
前記バネ部は、前記ボルトに外嵌されるコイルバネである、請求項6記載の吊りボルト用支持金具。
【請求項9】
前記締結部材本体に掛着される短冊形の掛合片が前記挟持部材本体に設けられ、
前記掛合片は、前記バネ部を構成する、請求項6記載の吊りボルト用支持金具。
【請求項10】
吊りボルトに対してチャンネル材その他の被支持体を支持する吊りボルト用支持金具において、
締結部材本体と、
前記締結部材本体に前記被支持体を締着する第1ボルト及びナットと、
前記締結部材本体に片持ちで支持される挟持部材本体と、
前記吊りボルトを前記締結部材本体と前記挟持部材本体とで締め付けるための第2ボルトとを具備する、吊りボルト用支持金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊りボルトに対してチャンネル材その他の被支持体を支持する吊りボルト用支持金具に関する。
【背景技術】
【0002】
天井スラブ等から吊り下げられた全ネジボルト(吊りボルト)にその中間位置においてチャンネル材などの各種鋼材を支持し固定するための吊りボルト用支持金具が各種知られている(例えば特許文献1)。当該従来技術では、吊りボルトを2種の金具(横断面コ字形の係止金具と連結金具)で挟み、一対のボルトで締め付けて固定する。そして連結金具のボルト孔に他のボルトを通し、鋼材を挟んで板ナットに螺込むことにより、鋼材を固定する。
【0003】
当該従来技術においては、2種の金具、3本のボルト、板ナットが各別に梱包され、作業現場において仮組みしながら吊りボルトに組み付ける必要があり、作業効率はあまり高いとはいえなかった。勿論、事前に仮組みすることも考えられるが、吊りボルトを2種の金具で挟むためには、仮組み状態から少なくとも一方のボルトを取り外す必要があり、そのための作業が必要になってしまう。また、仮組みした状態で出荷しても、配送の振動等によりボルトや板ナットが脱落してしまう事態を避けることは難しく、その場合、分散した2種の金具、3本のボルト、板ナットを拾い集めて、適宜組み合わせるという面倒な作業が増えてしまうので好ましいとは言えない。
【0004】
また吊りボルトに対して鋼材の高さを調整する作業が必要になるが、その際、ボルトを仮締めした後に位置を確認し、またボルトを緩めて移動するという作業を繰り返しながら金具の高さを微調整する必要があり、作業効率が非常に悪いものであった。
【0005】
また、吊りボルトを挟んで2種の金具を一対のボルトで締め付けるが、それら締め付けが不均等であると金具が偏って保持力が低下する等の不具合が生じるおそれがある。そのため一対のボルトを交互に少しずつねじ込みながら均等に締め付ける必要があり、これが作業効率を下げる要因の一つでもあった。
【0006】
また、鋼材を吊りボルトに取り付けるには3箇所をボルトで締め付ける必要があり、作業効率を向上するためにボルトによる締め付け箇所を減らすことが望まれている。
【0007】
また、2種の金具を連結する一対のボルトは同じサイズであるが、板ナットにねじ込まれる他のボルトは一対のボルトとは異なるサイズであるため、ソケットやラチェットレンチの交換の手間を要していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
目的は、吊りボルトに対して被支持体を支持する作業を効率化できる吊りボルト用支持金具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態に係る吊りボルトに対してチャンネル材その他の被支持体を支持する吊りボルト用支持金具は、締結部材本体と、締結部材本体との間に吊りボルトを挟持するための挟持部材本体と、締結部材本体に被支持体を締着するための第1ボルト及びナットと、締結部材本体からの第1ボルト及びナットの脱落を防止して第1ボルト及びナットが締結部材本体に仮組みされた状態を維持する第1脱落防止具と、吊りボルトを締結部材本体と挟持部材本体とで締め付けるための第2ボルトと、挟持部材本体からの第2ボルトの脱落を防止して第2ボルトが前記挟持部材本体に仮組みされた状態を維持する第2脱落防止具とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る吊りボルト用支持金具を示す斜視図である。
【
図2】
図1の吊りボルト用支持金具の分解斜視図である。
【
図3】
図1の吊りボルト用支持金具の正面図である。
【
図4】
図1の吊りボルト用支持金具の側面図である。
【
図5】
図1の吊りボルト用支持金具の平面図である。
【
図7】
図1の吊りボルト用支持金具の吊りボルトへの取り付け工程を示す図である。
【
図8】
図1の吊りボルト用支持金具にチャンネル材を縦方向に装着した状態を示す図である。
【
図9】
図1の吊りボルト用支持金具にチャンネル材を横方向に装着した状態を示す図である。
【
図10】
図1の吊りボルト用支持金具の変形例を示す斜視図である。
【
図12】第2実施形態に係る吊りボルト用支持金具を示す斜視図である。
【
図15】第3実施形態に係る吊りボルト用支持金具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本実施形態に係る吊りボルト用支持金具を説明する。以下の説明において、同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0013】
(第1実施形態)
図1乃至
図6は第1実施形態に係る吊りボルト用支持金具1をそれ単体で示している。
図7は吊りボルト用支持金具1を吊りボルトに取り付ける工程を示している。
図8、
図9は吊りボルトに400に横断面コ字形のチャンネル材500を吊りボルト用支持金具1により支持した状態を示している。なお、ここでは被支持体として横断面コ字形のチャンネル材500を例に説明するが、チャンネル材500に限定されることはなく、L形アングル等他の鋼材であってもよい。また、吊りボルト用支持金具1は後述の円弧形の窪み209に収まる様々な外径の吊りボルト400に適合する。
【0014】
吊りボルト用支持金具1は、チャンネル材500を締結する締結部材100と、締結部材100との間に吊りボルト400を挟持する挟持部材200とを具備する。
【0015】
締結部材100は、締結部材本体101を有する。締結部材本体101は、鋼板が横断面L字形に折曲げられ、矩形の水平板102と矩形の垂直板103とからなる。水平板102の左右及び前方それぞれの縁部分は、チャンネル材500の回動を押さえるための押え板104として下方に垂直に折り曲げられている。
【0016】
水平板102の略中央にはボルト孔105が穿設される。ボルト孔105にはボルト(第1ボルト)106が上方から挿通され、板ナット107のネジ孔108にねじ込まれる。板ナット107は、鋼板が横断面コ字形に折り曲げられ、底板109と一対の側板110から溝形に構成される。板ナット107の底板109は矩形形状を有し、幅(短辺の長さ)はチャンネル材500の一対のリップ片502の間隙(開口)よりも短く、長さ(長辺の長さ)はチャンネル材500の一対の側板501の内側の距離(内寸)よりも短い。それにより板ナット107をチャンネル材500に対して平行に配置して、板ナット107をチャンネル材500のリップ片502の開口を通してチャンネル材500の内側に挿入することができ、また板ナット107を約90°回転して板ナット107の側板110と水平板102との間でチャンネル材500のリップ片502を挟み締結することができる。
【0017】
ボルト106は、水平板102のボルト孔105に挿入され、板ナット107に緩くねじ込まれた仮組みの状態で出荷される。そのままでは搬送時の振動等によりボルト106と板ナット107とは相対的に自由回転し、互いに分離して、ボルト106が水平板102のボルト孔105から抜脱し、また板ナット107が締結部材本体101から離散する可能性がある。その事態を防止して、仮組み状態を維持したまま現場に届けるために、ボルト106には脱落防止具(第1脱落防止具)111が嵌め込まれている。
【0018】
図2に示すように脱落防止具111は、一部切り欠かれた円環部112と、当該切り欠きの反対側において円環部112に結合され、円環部112の外周から所定距離だけ両側に張り出した突起状の当接部114とからなる。円環部112と当接部114とは高い耐摩耗性、高い弾性を有するポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)又はポリカーボネート(PC)等の樹脂による一体成形体として構成される。円環部112の内径はボルト106の外径よりも若干狭く構成され、ボルト106に側方からその弾性により圧嵌され、装着される。円環部112の内面にはボルト106のネジ溝にかみ合うネジ山113が形成されていて、位置ずれが生じないようになっている。当接部114は板ナット107の一対の側板110の内側に収まることができるように、当接部114の全幅は、板ナット107の一対の側板110の内側の距離に等価又はそれよりも若干狭く構成されている。
【0019】
脱落防止具111は、水平板102のボルト孔105に挿通され、板ナット107に緩くねじ込まれたボルト106に対して、側方から圧嵌され装着される。脱落防止具111は、ボルト106に装着された板ナット107の内側に収まり、つまり底板109から側板110の縁までの間に配置される。
【0020】
脱落防止具111は、その円環部112がボルト106に圧嵌され、装着されるので、ボルト106に対する自由回転は抑制される。さらに脱落防止具111は、その当接部114の両端が板ナット107の一対の側板110の内面に当接するので、板ナット107は脱落防止具111に対して独立して回転しない。結果として、ボルト106と板ナット107とは脱落防止具111を介して相対的に自由回転することが抑制される。それにより仮組み状態が確保され得る。
【0021】
また、チャンネル材500を締結部材本体101に締結するためにボルト106を板ナット107に強く締め付ける際には、円環部112の内面に形成されたネジ山113がボルト106のネジ溝にかみ合って、ボルト106の軸回転に伴って板ナット107とともにボルト106の軸方向に沿って移動するので、脱落防止具111がチャンネル材500の締め付けを阻害する事態も生じない。これはボルト106を緩めてチャンネル材500を締結部材本体101から取り外す際にも同様である。
【0022】
垂直板103の後端付近には、垂直方向と平行に矩形孔115が穿設されている。矩形孔115は、矩形孔部分116とそれより少し短い矩形孔部分117とが連通されて、段差のある孔形状に構成される。短い矩形孔部分117はそれより少し長い矩形孔部分116に対して後端側に位置する。少し長い矩形孔部分116の長さは、後述する挟持部材本体201の短冊形の掛合片202が挿通可能な程度の長さに構成され、一方、少し短い矩形孔部分117の長さは、掛合片202は挿通不可であるが、掛合片202をその先端付近両側に切り欠かれた切り欠き203においてのみ受容する長さに構成される。それにより垂直板103の矩形孔115に、挟持部材本体201の掛合片202を矩形孔部分116から挿入し、矩形孔部分117に押し込まれることにより、掛合片202は切り欠き203において矩形孔部分117に掛け合わされる。挟持部材本体201は締結部材本体101に対して片持ちで傾動自在である。
【0023】
垂直板103の矩形孔115に挟持部材本体201の掛合片202を差し込み、後端側に押し込んだときに生じる矩形孔115の間隙には、横断面がU字形又はV字形の板バネ204が弾性に抗って少し閉じられた状態で嵌め込まれる。それにより矩形孔115から掛合片202が抜脱し、挟持部材本体201が締結部材本体101から分離することが防止されるとともに、矩形孔115と掛合片202との係合箇所を支点として挟持部材本体201の先端を締結部材本体101の垂直板103に押し付けるように回動付勢して、挟持部材本体201と締結部材本体101の垂直板103との間に吊りボルト400を一時的に固定する、つまり仮止めすることも実現されるようになっている。
【0024】
板バネ204の一方のバネ板216は少し長い矩形孔部分116に収まるように矩形孔部分116の長さに適合する幅を有し、他方のバネ板215は少し短い矩形孔部分117に収まるように矩形孔部分117の長さに適合する幅を有している。それにより板バネ204は掛合片202を矩形孔部分117に押し付けることができる。
【0025】
板バネ204が矩形孔115に埋没することを防止するためにバネ板215,216の縁部分は外側に張り出され、つば部217,218が構成されている。バネ板215にはフック部219が外側に突出して設けられる。掛合片202にはフック部219を受容するフック受け孔220が穿設されている。板バネ204を矩形孔115に押し込んだときフック部219が掛合片202のフック受け孔220に嵌まり、板バネ204の脱落が防止される。またバネ板216には、つば部218から垂直板103の厚さにほぼ等価な距離を隔てて鉤部221が外側に突出して設けられる。板バネ204を矩形孔115に押し込んだとき、つば部218と鉤部221とが垂直板103を挟み込み、それにより板バネ204が垂直板103に固定される。
【0026】
矩形孔部分116の縁と掛合片202との間隙に板バネ204を嵌め込むことにより、矩形孔115からの掛合片202の抜脱が防止されるので、挟持部材本体201と締結部材本体101とは仮組みされた状態に維持される。それにより仮組みの状態で出荷し、そのまま作業現場に搬送することができる。また板バネ204の弾性により挟持部材本体201が回動付勢され、挟持部材本体201がその先端側において締結部材本体101の垂直板103に押し付けられる。それにより挟持部材本体201と締結部材本体101の垂直板103との間に吊りボルト400を一時的に固定(仮止め)することができるとともに、板バネ204の弾性力に抗して挟持部材本体201を締結部材本体101に対し拡開させながら吊りボルト400に対して吊りボルト用支持金具1を移動させ、吊りボルト400に取り付ける吊りボルト用支持金具1の高さを容易に調整することができる。
【0027】
挟持部材200は、挟持部材本体201を有する。挟持部材本体201は、矩形の鋼板が短手方向に折り曲げられて矩形の基板205と一対の側板206とにより横断面コ字形に構成されるとともに、当該鋼板が長手方向に折り曲げられて基板205の後端から短冊形の掛合片202が延設されて縦断面L字形に構成される。一対の側板206それぞれには吊りボルト400を受容するための半円等の円弧形の窪み209が形成される。側板206の窪み209を形成する縁は薄肉化されており、吊りボルト400のネジ溝にかみ合って、位置ずれが防止されるようになっている。なお、締結部材本体101の垂直板103にも吊りボルト400のネジ溝にかみ合う一対の線条突起119が設けられている。側板206は後端側から先端側に向かって細くなったテーパー形状に構成され、吊りボルト400を差し入れることが容易になっている。
【0028】
基板205の先端側には、ボルト(第2ボルト)208を挿通する長円形のボルト孔207が穿設される。ボルト208は、ボルト106と同形且つ同サイズである。ボルト孔207にボルト208を通し、締結部材本体101の垂直板103に穿設されたネジ孔118にねじ込むことにより、窪み209に受容された吊りボルト400を挟持部材本体201の側板206と締結部材本体101の垂直板103とで挟持する。それにより吊りボルト用支持金具1を吊りボルト400に固定することができる。
【0029】
出荷時にはボルト208は基板205のボルト孔207に挿入され、垂直板103のネジ孔118にはねじ込まれていない状態に仮組みされている。ボルト208が基板205のボルト孔207から抜脱することを防止し、仮組み状態を維持するために、ボルト208の先端付近には脱落防止具(第2脱落防止具)211が嵌め込まれている。脱落防止具211は、一部切り欠かれた円環部212を有する。円環部212はボルト208に圧嵌され、また円環部212は基板205のボルト孔207を通過できないので、ボルト208が基板205のボルト孔207から抜脱することが防止される。
【0030】
脱落防止具211は、脱落防止具111と同形且つ同寸に構成されていてもよく、つまり円環部212と、当該切り欠きの反対側において円環部212に結合され、円環部212から所定距離だけ両側に張り出した突起状の当接部214とからなる。これら円環部212と当接部214とはポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)又はポリカーボネート(PC)等の樹脂による一体成形体として構成される。
【0031】
円環部212の内径はボルト208の外径よりも若干狭く構成され、ボルト208に対して側方からその弾性により圧嵌することができるようになっている。円環部212の内面にはボルト208のネジ溝に螺合するネジ山213が形成されている。当接部214は挟持部材本体201の一対の側板206の内側に収まることができるように、当接部214の全幅は、挟持部材本体201の一対の側板206の内側の距離(内寸)に等価又はそれよりも狭く構成されている。当接部214は、ボルト孔207の長孔の幅より大きく、抜け落ちない幅を有している。
【0032】
図7(a)に示すように、吊りボルト用支持金具1は、仮組みされて作業現場に届けられる。ボルト208は、基板205のボルト孔207に挿入された状態で、その先端側に脱落防止具211を装着される。それにより挟持部材本体201のボルト孔207からのボルト208の抜脱が抑えられ、挿入状態が維持され得る。また、挟持部材本体201の掛合片202が締結部材本体101の矩形孔115に挿入され、その間隙に板バネ204が嵌め込まれている。それにより矩形孔115からの掛合片202の抜脱が抑えられ、挟持部材本体201が締結部材本体101に組み付けられた状態が維持され得る。
【0033】
さらに、ボルト106は、締結部材本体101の水平板102のボルト孔105に挿入され、板ナット107に緩くねじ込まれる。このボルト106には板ナット107の内側に収まる位置において脱落防止具111が装着されている。脱落防止具111によりボルト106に対する板ナット107の自由回転は抑えられるので、ボルト孔105からのボルト106の抜脱が抑えられ、またボルト106から板ナット107が外れることもない。従ってボルト106と板ナット107とを締結部材本体101の水平板102に仮組みした状態が確保され得る。
【0034】
吊りボルト用支持金具1の仮組み状態が維持されるので、その仮組みのままで出荷され、作業現場に届けることができるので、作業現場では仮組み作業が不要とされ、直ちに吊りボルト用支持金具1を吊りボルト400に取り付ける作業、吊りボルト用支持金具1にチャンネル材500を取り付ける作業を開始することができる。
【0035】
図7(b)に示すように、吊りボルト用支持金具1を吊りボルト400に取り付けるに際しては、作業員は板バネ204の弾性に抗して矩形孔115と掛合片202との係合箇所を支点として挟持部材本体201と締結部材本体101の垂直板103とを拡開する。その状態で挟持部材本体201と締結部材本体101の垂直板103との間に吊りボルト400をその側方から挿入し、そのまま手を離す。勿論、板バネ204の弾性力と側板206がテーパー状に構成されているため、ボルト400を押し込んでも209に挿入することができる。
【0036】
図7(c)に示すように、板バネ204の弾性により挟持部材本体201と締結部材本体101の垂直板103とが吊りボルト400を挟持する。それにより吊りボルト用支持金具1は吊りボルト400に対して係止される(仮止め)。吊りボルト400に対する吊りボルト用支持金具1の高さを微調整するには、作業員は挟持部材本体201と締結部材本体101の垂直板103とを開けて、吊りボルト400に対する吊りボルト用支持金具1の係止を解除し、吊りボルト400に沿って移動し、適当な高さで手を離すことにより、その高さで吊りボルト用支持金具1は吊りボルト400に対して再び係止する。仮止めするためにボルトを緩めたり、締めたりする作業が不要になるので、高さの微調整作業が効率化する。
【0037】
図7(d)に示すように、吊りボルト用支持金具1を吊りボルト400に固定するには、ボルト208を垂直板103のネジ孔118に宛がい、締め付ける。締結部材本体101は掛合片202に垂直板103の矩形孔部分117に掛け合わされているので、単一のボルト208を締め付けることにより、吊りボルト用支持金具1を吊りボルト400に強固に固定することができるので、一対のボルトを交互に少しずつねじ込みながら均等に締め付けるような作業に比べて作業効率が高い。
【0038】
吊りボルト400に固定した吊りボルト用支持金具1にチャンネル材500を締結するためには、まず吊りボルト用支持金具1に対して
図8に示すように縦方向に又は
図9に示すように横方向にチャンネル材500を配置し、縦方向又は横方向に向きを揃えた板ナット107をチャンネル材500のリップ片502の間隙(開口)を通してチャンネル材500の内側に挿入する。そしてボルト106を締め付けると、ボルト106の回転に伴って板ナット107が回転し、板ナット107の長辺側の両端がチャンネル材500の側板501の内面に接した状態で停止する。さらにボルト106を締め付けると、板ナット107の側板110の上縁と水平板102の下面との間でチャンネル材500のリップ片502を締結することができる。板ナット107はボルト106に対して脱落防止具111により緩やかではあるが固定されているので、板ナット107をチャンネル材500のリップ片502の間隙に容易に挿入することができる。またボルト106は、ボルト208と同形且つ同サイズであるので、ソケットやラチェットレンチを交換する必要もない。2本のボルト106,208を締め付けることによりチャンネル材500を吊りボルト400に取り付けることができるので、3本のボルトを締める必要があった従来に比べて作業性が高い。脱落防止具111の当接部114により、ボルト106を締め付ける際に板ナット107は回転しない。よって、チャンネル材の向きに合わせて板ナット107を手で押さえる必要が無い。
【0039】
なお、締結部材本体101は
図10、
図11に示すチャンネル材500を横向きに支持する締結部材本体301に代替え可能である。締結部材本体301は鋼材が横断面コ字形に折り曲げられ、ネジ孔118に相当するネジ孔318、矩形孔115に相当する矩形孔315、ボルト孔105に相当するボルト孔305が穿設され、線条突起119に相当する線条突起319が形成されている。
【0040】
(第2実施形態)
図12乃至
図14は第2実施形態に係る吊りボルト用支持金具を示している。本実施形態に係る吊りボルト用支持金具2が第1実施形態に係る吊りボルト用支持金具1と相違する主要な部分としては、締結部材本体601に挟持部材本体701を仮組みする構造と、締結部材本体に挟持部材本体を押し付ける仮止め構造とにある。
【0041】
仮組み構造に関して、ボルト208が挟持部材本体701のボルト孔207に挿入され、締結部材本体601のネジ孔118にねじ込まれている。また締結部材本体601は横断面コ字形に折り曲げられて一対の側板602が形成されており、当該一対の側板602の間隙に挟持部材本体701の一対の側板206が、互いに回動を係止し合うように嵌め込まれている。さらに脱落防止具211がその当接部214が挟持部材本体701の一対の側板206に当接するようにボルト208に装着されている。ボルト208の挟持部材本体701に対する回転は抑えられ、さらに挟持部材本体701に対して締結部材本体601は回転しないので、ボルト208は締結部材本体601のネジ孔118から脱落することなく、挟持部材本体701が締結部材本体601に対して分離せず、仮組みが実現する。
【0042】
仮止め構造に関して、締結部材本体601の側板602各々には、挟持部材本体701の側板206の窪み209に対峙する位置に、半円等の円弧形の窪み603が形成されている。吊りボルトは挟持部材本体701の窪み209と締結部材本体601の窪み603とで構成される円形の間隙に受容される。さらに円錐形の圧縮コイルバネ702がボルト208に挿入され、ボルト208の頭部と挟持部材本体701の基板205との間に介在される。ボルト208は締結部材本体601のネジ孔118にねじ込まれ、締結部材本体601に対する相対位置が固定されているので、それらの間に配置された挟持部材本体701はコイルバネ702の反発力により締結部材本体601に押し付けられる。コイルバネ702は、挟持部材本体701を締結部材本体601に押し付けるバネ部を構成する。このような構造により、窪み209,603に受容された吊りボルトは、一時的に固定される(仮止めされる)。
【0043】
吊りボルト用支持金具を吊りボルトに取り付けるに際しては、作業員はコイルバネ702の反発力に抗して挟持部材本体701と締結部材本体601とを拡開し、それらの間に吊りボルトをその側方から挿入し、そのまま手を離す。コイルバネ702の反発力により吊りボルト用支持金具は吊りボルトに一時的に固定される(仮止めされる)。
【0044】
本実施形態においても第1実施形態と同じ作用効果を奏することができる。
【0045】
(第3実施形態)
図15乃至
図17は第3実施形態に係る吊りボルト用支持金具を示している。本実施形態が第1実施形態と相違する主要な部分としては、締結部材本体に挟持部材本体を押し付ける仮止め構造と締結部材本体からの挟持部材本体の脱落を防止する構造とにある。
【0046】
挟持部材本体901の基板205にはその一端から板バネ部分911が内側に略垂直に折れ曲げられた状態で延出され、さらに板バネ部分911の先端側が板バネ部分912として外側に略垂直に折れ曲げられており、全体としてL字形の板バネ910が短冊形の掛合片として構成されている。板バネ部分912の先端から少し内側には矩形の係止孔913が開けられている。
【0047】
一方、締結部材本体801の垂直板103には、板バネ910を挿入するための矩形の挿入口807が開けられている。垂直板103にはその一側端から短冊形の押さえ片804が略垂直に折り曲げられた状態で延出されており、この押さえ片804と垂直板103との角部に両者を少し跨いだ状態で、板バネ部分912を差し込むための矩形の差込孔805が開けられている。差込孔805には垂直板103に向かって突出する係止部806が設けられ、この係止部806には板バネ部分912の係止孔913が嵌め込まれる。
【0048】
挟持部材本体901を締結部材本体801に仮組みするに際しては、挟持部材本体901の板バネ部分911及び板バネ部分912を、締結部材本体801の挿入口807に挿入し、板バネ910を圧縮しながら、板バネ部分912を押さえ片804の差込孔805に差し込み、係止孔913を係止部806に嵌め込む。なお、板バネ910を圧縮しながら差込孔805への板バネ部分912の差し込みを誘導するために、板バネ部分912の先端が板バネ部分911に向かって緩やかに曲げられている。
【0049】
板バネ910はその板バネ部分912が係止部806に係止された状態で圧縮されているので、その反発力により、挟持部材本体901の側板206の縁914が垂直板103に強く押し付けられる。板バネ910は挟持部材本体901を締結部材本体801に押し付けるバネ部を構成する。
【0050】
吊りボルト用支持金具を吊りボルトに取り付けるに際しては、作業員は板バネ910の弾性に抗して挟持部材本体901を締結部材本体801に対して拡開し、それらの間に吊りボルトをその側方から挿入し、そのまま手を離す。板バネ910の反発力により吊りボルト用支持金具は吊りボルトに一時的に固定される(仮止めされる)。側板は後端側から先端側に向かって細くなったテーパー形状に構成され、吊りボルトを差し入れることが容易になっている。
【0051】
本実施形態においても第1実施形態と同じ作用効果を奏することができ、さらに締結部材本体801に挟持部材本体901を仮組みする構造と、吊りボルトに仮止めする構造とを基板205と一体的に構成可能な板バネにより実現して、構造を簡素化できる。
【0052】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0053】
1…吊りボルト用支持金具、400…吊りボルト、500…チャンネル材、100…締結部材、101…締結部材本体、102…水平板、103…垂直板、104…押え板、105…ボルト孔、106…ボルト(第1ボルト)、107…板ナット、108…ネジ孔、109…底板、110…側板、111…脱落防止具(第1脱落防止具)、112…円環部、113…ネジ山、114…当接部、115…矩形孔、116…矩形孔部分、117…矩形孔部分、119…線条突起、200…挟持部材、201…挟持部材本体、202…掛合片、203…切り欠き、204…板バネ、205…基板、206…側板、207…ボルト孔、208…ボルト(第2ボルト)、209…窪み、211…脱落防止具(第2脱落防止具)、212…円環部、213…ネジ山、214…当接部、215…バネ板、216…バネ板、217,218…つば部、219…フック部、220…フック受け孔、221…鉤部。