(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123400
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】処置具および処置具の操作方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/94 20060101AFI20230829BHJP
A61B 18/14 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
A61B17/94
A61B18/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025554
(22)【出願日】2023-02-21
(31)【優先権主張番号】63/313,659
(32)【優先日】2022-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】304050923
【氏名又は名称】オリンパスメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】矢沼 豊
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160EE01
4C160FF06
4C160KK03
4C160KK06
4C160KK18
4C160KL03
4C160MM43
4C160NN03
4C160NN13
4C160NN15
(57)【要約】
【課題】処置部の向きを所望の方向に容易に合わせることができる処置具および処置具の操作方法を提供する。
【解決手段】処置具は、長手軸に沿って延びたルーメンを有するチューブと、前記ルーメンに挿通され、前記チューブの前記長手軸に沿って延びるワイヤと、前記チューブの近位端部に取り付けられたハンドル本体と、前記ワイヤの近位端部に連結された回転ハンドルと、を備え、前記回転ハンドルは、前記ハンドル本体に対して前記回転ハンドルが回転軸周りに回転自在な第一形態と、前記回転ハンドルに対して前記回転ハンドルの回転方向に掛かる力が所定量以下のときに前記回転ハンドルの回転量が制限され、前記掛かる力が前記所定量を超えると前記回転ハンドルが回転可能な第二形態と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸に沿って延びたルーメンを有するチューブと、
前記ルーメンに挿通され、前記チューブの前記長手軸に沿って延びるワイヤと、
前記チューブの近位端部に取り付けられたハンドル本体と、
前記ワイヤの近位端部に連結された回転ハンドルと、を備え、
前記回転ハンドルは、
前記ハンドル本体に対して前記回転ハンドルが回転軸周りに回転自在な第一形態と、
前記回転ハンドルに対して前記回転ハンドルの回転方向に掛かる力が所定量以下のときに前記回転ハンドルの回転量が制限され、前記掛かる力が前記所定量を超えると前記回転ハンドルが回転可能な第二形態と、
を有する処置具。
【請求項2】
前記回転ハンドルは、ハンドルシャフトと、前記ハンドルシャフトに摺動自在に設けられたスライダと、を有し、
前記ハンドルシャフトが前記ハンドル本体と回転可能に係合し、前記スライダは前記ハンドルシャフトに対し回転不能かつ進退可能に係合し、
前記チューブの遠位端部には前記チューブから突出可能な電極を有し、
前記ワイヤの遠位端部に前記電極が連結されており、
前記ワイヤの近位端部に前記スライダが連結されている
請求項1に記載の処置具。
【請求項3】
前記第一形態と前記第二形態とは、前記回転ハンドルを前記ハンドル本体に対して前進または後退させることによって切替可能である
請求項1に記載の処置具。
【請求項4】
前記ハンドル本体には、前記回転ハンドルを嵌め込み可能なソケットを有し、
前記ソケットの内周面には複数の凹凸を有し、
前記回転ハンドルの外周面には突起を有し、
前記複数の凹凸と前記突起とが噛み合うことによって、前記回転ハンドルの前記ハンドル本体に対する回転が制御される
請求項1に記載の処置具。
【請求項5】
前記第二形態では、前記突起と前記複数の凹凸とが噛み合った状態である
請求項4に記載の処置具。
【請求項6】
前記第一形態では、前記突起と前記複数の凹凸との噛み合いが解除される
請求項4に記載の処置具。
【請求項7】
前記突起と前記複数の凹凸とが噛み合った状態から前記回転ハンドルを前記ハンドル本体に対して後退させることで、前記突起と前記複数の凹凸との噛み合いが解除される
請求項4に記載の処置具。
【請求項8】
前記突起と前記複数の凹凸とが噛み合った状態から、前記ソケットを移動することによって、前記突起と前記複数の凹凸との噛み合いが解除される
請求項4に記載の処置具。
【請求項9】
前記第一形態は、前記突起と前記複数の凹凸との位置が前記回転ハンドルの軸線方向に相対的にずれることによって前記突起と前記複数の凹凸の係止が解除された状態であり、
前記第二形態は、前記突起と前記複数の凹凸との位置を前記回転ハンドルの軸線方向において一致させることによって前記突起と前記複数の凹凸とを係止した状態である
請求項4に記載の処置具。
【請求項10】
前記第一形態では、前記ワイヤの捩れが解消され、前記第二形態では、前記ワイヤの捩れが許容される
請求項1に記載の処置具。
【請求項11】
前記第二形態から前記第一形態に遷移させることで、前記ワイヤの捩れが解消される
請求項1に記載の処置具。
【請求項12】
長手軸に沿って延びたルーメンを有するチューブと、
前記ルーメンに挿通され、前記チューブの前記長手軸に沿って延びるワイヤと、
前記チューブの近位端部に取り付けられたハンドル本体と、
前記ハンドル本体に対して進退可能であり、前記ワイヤの近位端部に連結された回転ハンドルと、を備え、
前記回転ハンドルは、前記ハンドル本体と前記回転ハンドルとが前記回転ハンドルの回転方向に係合する第一位置と、前記ハンドル本体と前記回転ハンドルとの係合を解除する第二位置とに移動可能に構成されている処置具。
【請求項13】
処置具の操作方法は以下の各ステップを含む:
長尺なチューブの遠位端部に連結され、前記チューブに収納されたワイヤを備える処置具を体内の処置対象部位まで前進させ、
前記ワイヤが前記チューブの長手軸回りに回転するように、前記ワイヤの近位端に連結された第一ハンドルを前記チューブの近位端に連結された第二ハンドルに対して操作し、
前記ワイヤが回転している間、前記第一ハンドルから第一ユーザフィードバックを発生させ、
前記ワイヤが回転している間、前記第一ハンドルから第二ユーザフィードバックを行えるように前記第一ハンドルを前記第二ハンドルと係合する、処置具の操作方法。
【請求項14】
前記第二ユーザフィードバックは、前記第二ハンドルに対して前記第二ハンドルの長手軸周りに前記第一ハンドルを回動させることによって発生する
請求項13に記載の処置具の操作方法。
【請求項15】
前記第一ハンドルと前記第二ハンドルが係止している間、前記ワイヤは捩れた状態で維持される
請求項13に記載の処置具の操作方法。
【請求項16】
前記第二ユーザフィードバックは、
前記第二ハンドルの複数の凹凸に対して前記第一ハンドルの突起が係止することで発生する
請求項13に記載の処置具の操作方法。
【請求項17】
前記第一ユーザフィードバックは、前記突起と前記複数の凹凸の係止が解除された状態で発生する
請求項16に記載の処置具の操作方法。
【請求項18】
前記突起と前記複数の凹凸とを前記第一ハンドルの長手軸方向において一致させることによって前記突起と前記複数の凹凸を係止し、
前記突起と前記複数の凹凸とを相対的に前記第一ハンドルの長手軸方向にずらすことによって前記突起と前記複数の凹凸の係止を解除する
請求項16に記載の処置具の操作方法。
【請求項19】
前記突起と前記複数の凹凸とが係止した状態では、前記ワイヤの捩れを許容し、
前記突起と前記複数の凹凸との係止が解除された状態では、前記ワイヤの捩れが解消される
請求項16に記載の処置具の操作方法。
【請求項20】
前記突起と前記複数の凹凸とが係止した状態から前記突起と前記複数の凹凸との係止が解除された状態に遷移させることで、前記ワイヤの捩れを解消させる
請求項16に記載の処置具の操作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処置具および処置具の操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経内視鏡的に胆管結石を除去するとき、胆管の出口である十二指腸乳頭が狭いため、そのままでは結石を排出できない場合がある。このような場合、例えば特許文献1に開示されるようなパピロトーム等、組織の切開処置を実施できる内視鏡用処置具が用いられている。すなわち、パピロトームなどの内視鏡用処置具を内視鏡に通して十二指腸乳頭、乳頭括約筋を切開して、胆管の出口を広げた後、結石を引き出している。はちまき襞の位置は、十二指腸乳頭の周囲で胆管が伸びる方向に略一致している。十二指腸乳頭の周囲で胆管が延びる方向は血管が少なく出血し難い為、一般に、乳頭括約筋は、はちまき襞の方向に切開される。
【0003】
このような乳頭括約筋の切開に用いられるパピロトームにおいては、胆膵用の内視鏡先端から突出させたときに、ナイフ部分(シース本体の先端部のプリカーブ部に配置され、シースの外周面から突出している)の向きが自動的に内視鏡画面のほぼ12時方向に向くことが望ましい。
患者の口から内視鏡挿入部を挿入して十二指腸乳頭まで到達させ、内視鏡挿入部のチャンネルにパピロトームを挿入して内視鏡挿入部の先端から突出させる。このとき、パピロトームの挿入部は、操作部から処置部までの間の複数箇所で受動的に湾曲する。処置部の軸周りの回転機能を備える従来のパピロトームでは、操作部の回動操作をナイフ部分の先端まで伝達可能な回転トルクを備える。このため、上述のように複数箇所での受動的な湾曲に伴い、ナイフ部分が12時方向と異なる向きに配向される場合があり、ナイフ部分の向きを意図した向きに合わせる必要がある。特に、手技中にプリカーブ部を所望の方向に向ける操作が煩雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0058426号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プリカーブ部を有する従来のパピロトームにおいて、カテーテルの向きを胆管の方向に合わせる操作、ナイフ部分を所望の切開方向に合わせる操作が難しい場合があった。この他、回転機能を有するパピロトームの場合、内視鏡の挿入時のカテーテルの回転により、パピロトームの遠位端の向きが変わり易いため、挿入したい胆管の方向にカテーテルの向きを合わせる操作や切開したい方向にナイフの向きを合わせる操作が難しい場合があった。
【0006】
上記事情を踏まえ、本発明は、処置部の向きを所望の方向に容易に合わせることができる処置具および処置具の操作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様に係る処置具は、長手軸に沿って延びたルーメンを有するチューブと、前記ルーメンに挿通され、前記チューブの前記長手軸に沿って延びるワイヤと、前記チューブの近位端部に取り付けられたハンドル本体と、前記ワイヤの近位端部に連結された回転ハンドルと、を備え、前記回転ハンドルは、前記ハンドル本体に対して前記回転ハンドルが回転軸周りに回転自在な第一形態と、前記回転ハンドルに対して前記回転ハンドルの回転方向に掛かる力が所定量以下のときに前記回転ハンドルの回転量が制限され、前記掛かる力が前記所定量を超えると前記回転ハンドルが回転可能な第二形態と、を有する。
【0008】
一態様に係る処置具は、長手軸に沿って延びたルーメンを有するチューブと、前記ルーメンに挿通され、前記チューブの前記長手軸に沿って延びるワイヤと、前記チューブの近位端部に取り付けられたハンドル本体と、前記ハンドル本体に対して進退可能であり、前記ワイヤの近位端部に連結された回転ハンドルと、を備え、前記回転ハンドルは、前記ハンドル本体と前記回転ハンドルとが前記回転ハンドルの回転方向に係合する第一位置と、前記ハンドル本体と前記回転ハンドルとの係合を解除する第二位置とに移動可能に構成されている。
【0009】
一態様に係る処置具の操作方法は以下の各ステップを含む:長尺なチューブの遠位端部に連結され、前記チューブに収納されたワイヤを備える処置具を体内の処置対象部位まで前進させ、前記ワイヤが前記チューブの長手軸回りに回転するように、前記ワイヤの近位端に連結された第一ハンドルを前記チューブの近位端に連結された第二ハンドルに対して操作し、前記ワイヤが回転している間、前記第一ハンドルから第一ユーザフィードバックを発生させ、前記ワイヤが回転している間、前記第一ハンドルから第二ユーザフィードバックを行えるように前記第一ハンドルを前記第二ハンドルと係合する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の処置具および処置具の操作方法によれば、処置部の向きを所望の方向に容易に合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第一実施形態に係る内視鏡処置システムの全体図である。
【
図3】第一実施形態に係る処置具の長手方向の部分断面図である。
【
図5】第一実施形態の回転ハンドルの長手方向の断面図である。
【
図6】第一実施形態の回転ハンドルの長手方向の断面図である。
【
図7】第一実施形態の回転ハンドルの斜視図である。
【
図9】変形例1の処置具の回転ハンドルの長手方向の断面図である。
【
図10】変形例1の処置具の回転ハンドルの斜視図である。
【
図11】変形例1の処置具の回転ハンドルの長手方向の断面図である。
【
図15】変形例の処置具の回転ハンドルの部分断面図である。
【
図17】変形例の処置具の回転ハンドルの部分断面図である。
【
図19】第二実施形態に係る処置具のハンドルの長手方向の断面図である。
【
図20】第二実施形態に係る処置具のハンドルの長手方向の断面図である。
【
図21】第二実施形態に係る処置具のハンドルの側面図である。
【
図22】第二実施形態に係る処置具のハンドルの側面図である。
【
図23】第二実施形態の変形例の処置具のハンドルの側面図である。
【
図24】第一実施形態の変形例の処置具のハンドルの側面図である。
【
図25】第二実施形態の変形例の処置具のハンドルの部分断面図である。
【
図26】第二実施形態の変形例の処置具のハンドルの部分断面図である。
【
図27】第二実施形態の変形例の処置具のハンドルの部分断面図である。
【
図28】実施形態の処置具の使用態様を示す模式図である。
【
図29】実施形態の処置具の使用時の態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第一実施形態)
[処置システム100]
第一実施形態に係る処置システム100について、
図1を参照して説明する。
図1は本実施形態に係る処置具1を備えた処置システム100の全体図である。処置システム100は、
図1に示すように、軟性内視鏡200と処置具1とを備えている。処置具1は、軟性内視鏡200に挿入して使用される。
【0013】
[軟性内視鏡200]
軟性内視鏡200(以下、「内視鏡200」と記載する。)は、
図1に示すように、体内に挿入される挿入部202と、挿入部202に取り付けられた内視鏡操作部207とを備えている。以下の説明において、挿入部202を体内に挿入する挿入端側を遠位側と称し、内視鏡操作部207側を近位側と称する。
【0014】
挿入部202は、撮像部203、能動湾曲部204、軟性部205および先端硬質部211を有する。挿入部202の遠位端から、端硬質部211、能動湾曲部204、および軟性部205、およびの順でそれぞれが配されている。挿入部202の内部には、処置具1を挿入するためのチャンネル206が設けられている。挿入部202の遠位端には、チャンネル206の遠位端開口206aが形成されている。
【0015】
先端硬質部211の遠位端開口206a近傍のチャンネル206内には起上台212が設けられている。起上台212は、チャンネル206に挿通される処置具1を起上させる。起上台212の先端部には操作ワイヤ213が接続されていて、操作ワイヤ213の近位端は挿入部202を通して内視鏡操作部207に接続されている。操作ワイヤ213は
図1のみに示している。
【0016】
撮像部203は、先端硬質部211に設けられている。撮像部203は、例えばCCDやCMOSを備えており、処置対象部位を撮像可能である。撮像部203は、処置具1がチャンネル206の遠位端開口206aから突出している状態において、後述する処置具1の切開部3を撮像することができる。能動湾曲部204は、操作者による内視鏡操作部207の操作に従って能動的に湾曲することができる。軟性部205は、可撓性を有する管状の部位である。
【0017】
内視鏡操作部207は、軟性部205に接続されている。内視鏡操作部207は、グリップ208、入力部209、鉗子口206bおよびユニバーサルコード210を有する。グリップ208は、操作者によって把持される部位である。入力部209は、能動湾曲部204を湾曲動作させるための操作入力を受け付ける。鉗子口206bは、チャンネル206に連通し、チャンネル206に対して処置具を挿抜する開口である。ユニバーサルコード210は、撮像部203が撮像した画像を外部に出力する。ユニバーサルコード210は、プロセッサなどの画像処理装置を経由して、液晶ディスプレイなどの表示装置に接続することができる。
【0018】
[処置具1]
図2から
図4は、処置具1を示す全体図である。
図3は処置具1の一部を断面で示している。処置具1は、内視鏡200に挿入して使用される。
図2から
図4に示すように、処置具1は、シース4(チューブ)と、操作部20と、トルクワイヤ7(ワイヤ、
図3参照)と、切開部3とを有している。
【0019】
シース4は、長手軸に沿って延びたルーメン41を有する長尺部材である。シース4は、チャンネル206に挿入可能な外径を有する。シース4は、樹脂製の軟性シースである。シース4は、複数のルーメンを有するマルチルーメンチューブである。複数のルーメン41には、トルクワイヤ7、導電ワイヤ72等のワイヤ挿通用ルーメン、および送液用ルーメンを有する。
図3では、トルクワイヤ7を挿通する第一ルーメン411(ルーメン)および導電ワイヤ72を挿通する第二ルーメン412のみ図示している。
【0020】
シース4は、遠位シース42と、近位シース43と、複数の接続チューブ44とを有する。遠位シース42と近位シース43とは、長手軸方向に離間して直列に配置されている。遠位シース42と近位シース43との間には複数の接続チューブ44が設けられている。接続チューブ44は、遠位シース42の各ルーメンと近位シース43の各ルーメンとを接続するチューブである。
【0021】
図3に示すように、遠位シース42の基端部には、ブレード421が設けられている。ブレード421は、接着材や熱収縮チューブなどで遠位シース42に固定されている。ブレード421は、例えば、細いステンレス線を複数本の束にし、格子状に編んで管状にしたり、ステンレス線やステンレスの帯を単条または多条のコイル状に巻いて管状にしたり、単条または多条のコイルを巻き方向を交互に違えながら多層に巻いて管状にした部材が使用される。
【0022】
遠位シース42は、プリカーブ部45を備えてもよい。プリカーブ部45は遠位シース42が所定の方向へ湾曲する湾曲形状への復元力を有する。
図4に示すように、プリカーブ部45は、切開部3を遠位シース42の外側に引き出すための貫通孔423,424が形成された外周面が湾曲の内側となるように湾曲する。
【0023】
トルクワイヤ7は、シース4の長手軸に沿って中心軸Cが延びて近位シース43の第一ルーメン411内に挿通されている。トルクワイヤ7は、操作部20に入力された回転トルクを遠位シース42に伝達し、遠位シース42を中心軸C回りに回転させる。トルクワイヤ7の遠位端は近位シース43の遠位端よりも遠位側に延出してブレード421の近位端に固定されている。トルクワイヤ7の遠位端は平面部を有し、平面部がブレード421に当接して固定されている(
図3参照)。トルクワイヤ7の近位端部7bは平面部を有し、平面部が回転ハンドル6(第一ハンドル)に挿入されて固定されている(
図7参照)。トルクワイヤ7は、例えば、単線ワイヤである。トルクワイヤ7は複数の素線を束ねたワイヤ等であってもよい。トルクワイヤ7は例えば、ステンレス線やニッケルチタン合金で形成することができる。
【0024】
トルクワイヤ7は、中心軸C(回転軸)回りに回転ハンドル6を回転操作することによって、第一ルーメン411に対して、中心軸C周りに相対回転可能に挿通されている。一方、トルクワイヤ7の遠位端7aは、遠位シース42に固定されているため、回転ハンドル6を中心軸C周りに回転操作すると、トルクワイヤ7を介して回転トルクが伝達されて遠位シース42が近位シース43に対して長手軸周りに回動可能である。
【0025】
切開部3は、遠位シース42の外周面から突出し、シース4の長手軸方向に延びて設けられている。切開部3は導電ワイヤ72の一部で構成されている。具体的には、導電ワイヤ72は、導電性を有する芯線が適宜の合成樹脂からなる絶縁被膜(不図示)によって被膜されている。導電ワイヤ72は、遠位シース42の貫通孔423において第二ルーメン412からシース4の外側に突出し、シース4の長手軸に沿って遠位側に延び、遠位側の貫通孔424から第二ルーメン412内に入る。導電ワイヤ72の先端は第二ルーメン412内に固定されている。導電ワイヤ72のうち、貫通孔423,424からシース4の外側に露出している部分は、絶縁被膜が被膜されておらず、芯線が露出しており、組織を切開可能なワイヤ状の切開部3を構成する。切開部3は、電極の一例である。
【0026】
操作部20は、シース4の近位端部に取り付けられている。操作部20は、ハンドル本体2(第一ハンドル)と、回転ハンドル6と、ナイフハンドル8と、を備える。ハンドル本体2はシース4の近位端と接続されている。回転ハンドル6およびナイフハンドル8はハンドル本体2に対して進退可能に設けられている。
【0027】
ハンドル本体2は、近位部分が分岐して回転ハンドル6の接続部21と、ナイフハンドル8の接続部22とを備える。
図3に示すように、回転ハンドル6の接続部21はシース4の長手方向と同軸に配置されている。ハンドル本体2には、シース4の第一ルーメン411との中心軸Cと同軸上に延びるトルクワイヤルーメン2aが形成されている。ナイフハンドル8の接続部22は、シース4の長手方向に交差する方向に延びて設けられている。ハンドル本体2には、シース4の第二ルーメン412と連通する導電ワイヤルーメン2bが形成されている。導電ワイヤルーメン2bは、ハンドル本体2の遠位部ではシース4の中心軸Cと同軸上に延び、近位部において第二ルーメン412の長手軸に対して交差する方向に曲がって延びる。ナイフハンドル8の接続部22は、操作性を考慮し、回転ハンドル6の操作と干渉しない位置にあればよく、接続部22をシース4の長手方向に交差して設ける構成は必須の構成ではない。
【0028】
ハンドル本体2には送液ルーメンに連通する送液口金29が設けられている。送液口金29には、不図示のシリンジが着脱可能である。
図3に示す例では、第二ルーメン412が送液口金29と連通しており、第二ルーメン412が送液ルーメンとしても機能する。
【0029】
ナイフハンドル8は、導電ワイヤ72の進退操作および遠位シース42の湾曲操作を行う操作部である。ナイフハンドル8は、ハンドルシャフト81と、スライダ82と、端子口83とを備える。ハンドルシャフト81の遠位端は、ハンドル本体2の接続部22に取付けられている部材である。スライダ82は、ハンドルシャフト81に対してスライド可能に設けられている。端子口83はスライダ82に設けられている。導電ワイヤ72の近位端部は、ハンドル本体2の導電ワイヤルーメン2b内を通り、ハンドルシャフト81内に挿通されて端子口83近傍まで延び端子74に接続されている。端子74は、端子口83内に設けられてスライダ82に固定されている。端子74は、外部の高周波電源に接続可能である。高周波電源装置から供給された高周波電流が端子74を経由して導電ワイヤ72に供給される。ハンドルシャフト81に対してスライダ82を前進させると切開部3を直線状にするとともに遠位シース42の外周面に切開部3を沿わせた状態にできる。ハンドルシャフト81に対してスライダ82を後退させると遠位シース42が相対的に湾曲して、切開部3が張った状態にできる(
図2参照)。
【0030】
ハンドル本体2は、ソケット5を有する。ソケット5は、回転ハンドル6の接続部21に設けられている。ソケット5は、回転ハンドル6を嵌め込み可能に構成されている。
図5および
図6は、ソケット5および回転ハンドル6の部分の長手方向に沿う断面図である。
図5は、ソケット5に回転ハンドル6が嵌め込まれた状態を示しており、
図6は、回転ハンドル6がソケット5から引き出された状態を示している。
図8は、
図5に矢印A8-A8線で示す断面図である。
図5および
図6に示すように、ソケット5には、トルクワイヤルーメン2aの近位開口に連通する挿入口51が形成されている。挿入口51は、回転ハンドル6の挿入部が挿入可能な大きさの略円筒状の開口である。
【0031】
ソケット5の内周面511には、係止部53が形成されている。
図8に示すように、係止部53は、複数の凹凸531,532を有する。係止部53の複数の凹凸531,532は、ソケット5の挿入口51の周方向に並んで設けられている。複数の凹凸531,532は、内周面511に周方向に等間隔に設けられている。複数の凹凸531,532の数は図示例に限定されない。係止部53は、挿入口51の近位開口52から遠位側に延びて長手方向の中間部まで設けられている。係止部53は、挿入口51の内周面511の近位部分に複数の凹部532が形成されて構成されている。したがって、挿入口51の径方向において、凸部531の突出端は挿入口51の遠位側の内周面511と同じか、内周面511よりも外側に位置する。
【0032】
本実施形態ではソケット5はハンドル本体2と一体で構成されている例を示すが、ソケット5とハンドル本体2の接続部21とは別体であってもよい。回転ハンドル6に一対の突起を設けた例を示したが、突起の数は図示例に限定されない。突起は係止部53の凹凸に係止可能な構成であればよく、1以上の突起が設けられていればよい。
【0033】
回転ハンドル6は、トルクワイヤ7の近位端部7bに接続されている。回転ハンドル6は、ハンドル本体2に対して中心軸C回りに回転可能に設けられている。
図7は回転ハンドル6の斜視図である。回転ハンドル6は、グリップ61、挿入部62、および突起63を有する。グリップ61はユーザが把持して回転操作する硬質部位である。グリップ61は、中心軸C周りに回転操作しやすい形状であればよい。
【0034】
挿入部62は、グリップ61の遠位端から、中心軸Cに沿って突出している。挿入部62は略円柱形状を有する。挿入部62は、挿入口51内に挿入可能な大きさを有する。挿入部62とグリップ61との間に円形の基部64が設けられている。基部64および挿入部62内にはトルクワイヤ7が挿通するルーメンが形成されている。挿入部62の遠位端面にトルクワイヤ7の近位端部7bの平面部が挿入されている。
【0035】
突起63は、挿入部62の外周面から突出して設けられている。本実施形態では、突起63は、基部64から遠位側に長手方向に延びて、挿入部62の近位部に設けられている。
図7および
図8に示すように、突起63は、長手軸に直交する方向の断面形状が略三角形の突出片である。突起63の頂点631が長手軸に平行に延びるように設けられている。突起63と挿入部62の外周面との境界部分には、挿入口51の内周面511に連通するスリット65が形成されている。スリット65は突起63の遠位端及び周方向の両側に連続して形成されている。突起63は外力が掛かると径方向に弾性変形し、外力が掛からない自然状態では、
図8に示すように、挿入部62の外周面から突出した状態で保持される。突起63は、径方向外側から外力が掛かると径方向内側に撓む。突起63に周方向に外力が掛かると、突起63は、僅かに撓む。突起63の径方向の弾性変形量は、周方向に外力が掛かる時より径方向に外力が掛かる時の方が大きい。
【0036】
図8に示すように、本例では、突起63は、挿入部62の周方向に180度離れた位置に2つ設けられている。
図8に示すように、長手方向から見たとき、突起63は、トルクワイヤ7の端部の平坦面と直交する方向に突出している。突起63は、平坦面に沿う方向に突出していてもよい。
【0037】
突起63は、ソケット5の係止部53の凹部532内で係止部53と係止可能に構成されている。係止部53の複数の凹凸と回転ハンドル6の突起63とが噛み合うことによって、回転ハンドル6のハンドル本体2に対する回転が制御される。回転ハンドル6のハンドル本体2に対する回転の制御態様は後述する。
【0038】
上述の通り、回転ハンドル6には、トルクワイヤ7の近位端部7bが固定されており、トルクワイヤ7の遠位端7aは遠位シース42のブレード421に固定されている。処置具1を長手軸方向に直線状に配置した状態で、トルクワイヤ7の遠位端7aおよび近位端部7bの各平面部は、同じ向きを向く。回転ハンドル6を中心軸C回りに回転操作すると、トルクワイヤ7を介して回転ハンドル6の回転操作力が伝達され、ブレード421を回転させ、遠位シース42が中心軸C回りに回転し、切開部3の向きが変わる。切開部3の向きは回転ハンドル6を中心軸C回りに回転させる操作により変更できる。
【0039】
処置具1は、第一形態と第二形態とに切り替え可能に構成されている。第一形態は、ハンドル本体2に対して回転ハンドル6が中心軸C周りに回転自在な形態である。第二形態は、回転ハンドル6に対して回転ハンドル6の回転方向に掛かる力が所定量以下のときに回転ハンドル6の回転量が制限され、掛かる力が所定量を超えると回転ハンドル6が回転可能な形態である。
【0040】
図2、
図3および
図6は、第一形態の処置具1を示している。回転ハンドル6をハンドル本体2に対して後退した位置(第二位置)に配置すると、突起63はソケット5の挿入口51よりも近位側に露出し、係止部53との係合が解除された第一形態となる。係止部53と突起63との係合が解除されると、回転ハンドル6は回転自在な状態となる。
【0041】
図4、
図5および
図8は、第二形態の処置具1を示している。回転ハンドル6をハンドル本体2に対して前進した位置(第一位置)に配置すると、突起63と係止部53との位置を回転ハンドルの中心軸C方向において一致させることによって突起63と係止部53とが係止した状態となる。このとき、挿入部62はソケット5の挿入口51内に配置され、突起63と係止部53とが噛み合った第二形態となる。第二形態では、挿入部62は挿入口51の遠位部内に進入し、突起63は凹部532内に配置され、基部64が凸部531の基端面に接触する。つまり、第二形態では、突起63と係止部53とが噛み合った状態である。
【0042】
第二形態では、回転ハンドル6の中心軸C回りの回転が制限されるが、回転方向に所定量以上の力を加えると、回転ハンドル6は回転可能である。具体的には、回転ハンドル6に対して回転方向に所定量以上の力を加えると、突起63には周方向の力が加わり、突起63の斜面が凸部531に周方向から押されることによって、突起63が弾性変形して径方向の中心軸C側に撓む。突起63が所定量以上撓むと、突起63の頂点631が凸部531を乗り越えて周方向の隣の凹部532側に移動可能である。つまり、第二形態では、回転ハンドル6に所定量以上の回転方向の力を加えると、隣の凹部532まで段階的に移動可能である。第二形態では、回転ハンドル6の回転量を所定量ずつ段階的に調整できる。
【0043】
第二形態では、回転ハンドル6を持つユーザにクリック感をフィードバックする(ユーザフィードバック、第二ユーザフィードバック)。具体的には、ユーザが回転ハンドル6を把持しながら、回転ハンドル6を中心軸C回りに回転操作すると、突起63が凸部531を乗り越える時の振動がユーザの手に伝わり、クリック感としてユーザに伝わり、所定量回転したことがユーザにフィードバックされる。回転ハンドル6を回転操作すると、突起63が凸部531を乗り越える時に可聴音が発生する。このように、処置具1は、第二形態で回転ハンドル6を所定量以上の力で回転させると、ユーザは可聴音により回転ハンドル6の回転を認識できる。
【0044】
処置具1は、第一形態と前記第二形態とを切替えられる。処置具1において、第一形態と第二形態とは、回転ハンドル6をハンドル本体2に対して前進または後退させることによって切替可能である。本実施形態では、回転ハンドル6をハンドル本体2に対して前進させると第二形態になり、第二形態から回転ハンドル6をハンドル本体2に対して後退させると第一形態に切り替わる。第一形態の回転ハンドル6を前進させると第二形態に切り替わる。
【0045】
[処置具の使用方法]
処置具1を使用した手技を例に、処置具1の動作および使用方法を説明する。
以下の手技では、二人の術者U1、U2がユーザとして処置システム100を使用する。術者U1は、処置具1の操作部20を把持し、術者U2は、内視鏡操作部207及び処置具1のシース4の一部を保持する。術者U2は、モニタに表示された画像を確認しながら、必要に応じて入力部209を操作して、軟性部205を湾曲させつつ患者Pの口から挿入部202を挿入する。このとき、
図29に示すように、患者Pは、診察台300上に伏臥位で顔を右に向けて横たわっている。
【0046】
図示は省略するが、鉗子口206bからガイドワイヤをチャンネル206に挿入し、十二指腸を通して胆管内に導入しておく。鉗子口206bから外部に露出させたガイドワイヤを処置具1の遠位端部からガイドワイヤルーメンに挿通し、処置具1の手元側から外部に露出させる。ガイドワイヤは、処置具1の全長にわたって設けられる。
【0047】
挿入部202が患者Pの口から処置対象部位である胆管P3近傍に到達すると、処置具1のシース4及び挿入部202の軟性部205は、複数箇所で湾曲する。例えば、処置具1が鉗子口206bに挿入されて、術者U2が保持する部分、術者U2による内視鏡操作部207の保持位置から下垂した挿入部202が診察台300の上面近傍に達し、患者Pの口に向かって湾曲する部分、患者Pの喉に沿って湾曲する部分、患者Pの胃Stを通過する際に湾曲する部分、および処置具1の先端部において、内視鏡200の起上台212より起上されて湾曲する部分で湾曲する。
【0048】
術者U2は、チャンネル206にシース4を挿入して前進させることによって、遠位端開口206aからシース4を突出させる。
【0049】
ここで、処置具1を処置対象部位に前進させる過程で、上述の通り、トルクワイヤ7が複数箇所で湾曲し、捩れが生じる場合がある。そこで、回転ハンドル6を後退させ、第二形態から第一形態に遷移させることで、回転ハンドル6が自由に回転するため、トルクワイヤ7の捩れを解消できる。術者U2は、チャンネル206に挿入するシース4の挿入量を調整して、チャンネル206からシース4の遠位端から突出させる。
【0050】
その後、回転ハンドル6をハンドル本体2に対して前進させて第二形態に切り替え、遠位シース42を十二指腸乳頭P2に挿入する。例えば、
図28に示すように、胆管と膵管との分岐点等において、切開部3の向きを処置対象部位に位置合わせする場合、回転ハンドル6を中心軸C周りに回転操作して、切開部3の向きを調整する。術者U1は、画像を確認しながら回転ハンドル6に回転方向の力を加えると、突起63が凸部531を乗り越えて隣の凹部532に移動し、回転ハンドル6の回転操作がトルクワイヤ7を介して伝達され遠位シース42が所定量中心軸C回りに回転する。このとき、術者U1には、クリック感がフィードバックされる(ユーザフィードバック、第二ユーザフィードバック)。切開部3の向きを調整した後も処置具1は第二形態に保持し、切開部3を所望の向きで保持する。第二形態では、トルクワイヤ7の捩れが許容(維持)される。つまり、第二形態の回転ハンドル6を回転操作すると突起63が係止部53と係合した状態で保持可能であるため、トルクワイヤ7の捩れを許容しながら、切開部3を所望の向きに合わせた状態で保持する。
【0051】
術者U1は、撮像部203で撮像された画像ではちまき襞P4の位置を確認して切開する方向を決定するとともに、現在の切開部3の向きを確認する。切開すべき方向を決定し、第二形態に合わせた回転ハンドル6を中心軸周りに回転操作して切開部3の向きを画像上の12時方向に調整する。この状態で術者U2の操作によって起上台212を動かして遠位シース42を湾曲させると、遠位シース42は、切開すべき方向に近似する方向に向いた状態で突出させることができる。
【0052】
患者Pのはちまき襞P4の位置が画像の12時の方向とずれている場合、術者U2は、以下に説明するように切開部3の向きを11時方向に変える。
【0053】
術者U2は、回転ハンドル6を中心軸C周りに回動させることで、トルクワイヤ7の近位端部7bを周方向の一方側に所定量回転させる。
【0054】
回転トルクはトルクワイヤ7を介してブレード421に伝達され、遠位シース42に伝わる。これにより、術者U1が回転ハンドル6で入力した回転トルクがトルクワイヤ7を介して遠位シース42に伝達し、切開部3が中心軸C周りに回転する。
【0055】
術者U1は、回転ハンドル6を回転させてトルクワイヤ7を介してシース4に回転トルクを作用させつつ、画像で遠位シース42の中心軸C周りの向きを観察しながら、切開部3の向きを11時方向に位置合わせする。このように、処置具1は、患者の個人差などにより、切開すべき方向が12時方向とは異なる場合にも、切開部3の向きを調整することができる。この時、回転ハンドル6を第二形態で操作すると、切開部3の向きの少しずつ変えるこことができる。この他、回転ハンドル6を第二形態で操作すると、切開部3を所望の向きに合わせた状態を保持できる。
【0056】
次に、処置具1の端子74を高周波電源に接続する。術者U2は、ナイフハンドル8のスライダ82に対してハンドルシャフト81を後退させ、切開部3を張る。高周波電源から高周波電流を流し、起上台212を起上させたり倒したりして遠位シース42を首振り動作させる。切開部3が接触する十二指腸乳頭P2の組織に高周波電流と切開部3の張力による圧力が加わって、十二指腸乳頭P2が切開される。例えば、画像により必要な切開量に達したことが確認できたら、高周波電流の通電を停止させる。
【0057】
十二指腸乳頭P2の切開が完了したら、スライダ82を押込んで遠位シース42に切開部3を沿わせ、その後、処置具1をチャンネル206から抜去する。処置具1の代わりに不図示のバスケット鉗子などをチャンネル206に挿入し、切開された十二指腸乳頭P2から胆管P3に挿入し、結石を捕捉する。結石を排出したら、バスケット鉗子および内視鏡200を体内から抜去し、手技を終了する。
【0058】
本実施形態に係る処置具1によれば、第二形態では、回転ハンドル6の回転を制限できる。ハンドル本体2に対する回転ハンドル6の周方向の位置を所定の位置で保持できるため、切開部3の向きを所定の向きに調整した状態を保持できる。したがって、処置具1の挿入経路においてシース4やトルクワイヤ7に捻じれが生じ、切開部3の向きが意図せず変わった場合も、所望の位置に近似した向きに保持できる。さらに、第二形態では、回転ハンドル6に対して回転方向に所定量以上の力を加えると、回転ハンドル6は、所定の回転量だけ回転する。したがって、切開部3の向きを調整するときに、シース4やトルクワイヤ7の捩れなどに起因して切開部3の向きが大幅に変動することを防ぎながら、切開部3の向きを調整できる。
【0059】
本実施形態に係る処置具1によれば、ハンドル本体2に対して回転ハンドル6を進退させるという簡易な操作で第一形態と、第二形態とを切り替えられる。
【0060】
本実施形態に係る処置具1によれば、第一形態では、回転ハンドル6は回転自在であるため、トルクワイヤ7の遠位側に捩れが生じた場合に、回転ハンドル6を把持しているユーザは、トルクワイヤ7の捩れ等で発生する反力を受け、回転ハンドル6の回転が逆方向に押し戻される感触を得る(第一ユーザフィードバック)。回転ハンドル6は回転自在であるため、トルクワイヤ7の遠位側に捩れが生じた場合に、第一形態でユーザが回転ハンドル6から手を離すと、回転ハンドル6が自由に回転しトルクワイヤ7の捩れを解消できる。したがって、トルクワイヤ7の捩れを容易に解消できる。
【0061】
以下に処置具1の変形例を説明する。以下、上記実施形態と共通する構成は同じ符号を付してその説明を省略する。
【0062】
(変形例1)
図9から
図14を参照して変形例1の処置具を説明する。上記実施形態は、回転ハンドル6をハンドル本体2に対して進退操作することによって、第一形態と第二形態とを切り替える例を示したが、第一形態と第二形態とに切り替える構成は上記の例に限定されない。本変形例では、ハンドル本体、ソケットおよび回転ハンドルの構成が上記実施形態と異なる。
図9および
図11は変形例1の処置具の回転ハンドル6Aと接続部21Aの近傍を示す長手方向に沿う断面図である。
図9は第二形態を示し、
図11は第一形態を示している。
【0063】
ソケット5Aは、ハンドル本体2の接続部21Aと別部材である。ソケット5Aは、接続部21Aに対して進退可能にハンドル本体2に取り付けられている。接続部21Aの外周面には、近位端から長手方向に延びる溝26が形成されている。ソケット5Aは、挿通路562および摺動部561を備える。挿通路562には、接続部21の近位端が挿入される。
図12に示すように、摺動部561は、挿通路562の内周面の周方向の一部が内側に突出して構成されている。摺動部561は、溝26に進入し、溝26内を長手方向に摺動可能である。
図9および
図11に示すように、ソケット5Aの挿入口51の遠位端部の内周面511に係止部53が形成されている。
【0064】
図10に示すように、回転ハンドル6Aの遠位端部の構成が上記実施形態と異なる。突起63Aは、基部64の遠位端面から中心軸Cに平行に遠位側に突出して設けられている。突起63Aの長手方向に直交する断面形状は上記実施形態と同様である。
【0065】
ソケット5Aの摺動部561が溝26内に挿入され、接続部21Aの近位端部が挿通路562内に挿入されている。ソケット5Aは、摺動部561が溝26内を摺動しながら、接続部21Aに対して進退する。回転ハンドル6Aは、ハンドル本体2に対する長手方向の位置が固定されている。
図9に示すように、ソケット5Aが後退位置に配置されたとき、突起63Aがソケット5Aの挿入口51内に挿入され、突起63Aが係止部53に係止され、回転ハンドル6Aは第二形態に設定される。第二形態では、
図13および
図14に示すように突起63Aが係止部53に係止され、第一実施形態と同様に、回転ハンドル6Aに所定量以上の回転方向の力を加えると所定量回転する。このとき、第一実施形態と同様に、ユーザがクリック感を得られる(ユーザフィードバック、第二ユーザフィードバック)。
図11に示すように、ソケット5Aを接続部21Aに対して前進させると、回転ハンドル6Aは第一形態に切り替えられる。第一形態では、ソケット5Aの摺動部561が溝26の遠位端に当接し、突起63Aは係止部53よりも近位側の挿入口51内に配置され、突起63Aと係止部53との係合が解除され、回転ハンドル6Aが回転自在になる。第一形態のとき、回転ハンドル6Aを把持しているユーザは、トルクワイヤ7の捩れ等で発生する反力を受け、回転ハンドル6Aの回転が逆方向に押し戻される感触を得る(第一ユーザフィードバック)。
【0066】
本変形例に係る処置具によれば、ソケット5Aを回転ハンドル6Aおよびハンドル本体2に対して長手方向に進退させることにより第一形態と第二形態とに切り替えられる。
【0067】
(変形例2)
図15から
図18を参照して変形例2の処置具を説明する。ソケットと回転ハンドルとは、突起と係止部により係止される構成であればよい。例えば、
図15および
図16に示す変形例のように、回転ハンドル6Bに複数の凹凸を設け、ソケット5Bの内周面に突起を設けてもよい。変形例2のソケット5Bは、変形例1と同様に接続部21Aと別体で構成され、接続部21Aに対して長手方向に進退可能かつ回転不能に取り付けられている。摺動部561が溝26内を摺動することによって、ソケット5Bは長手方向に進退する。
図16に示すように、ソケット5Bには突起58が設けられている。突起58は、挿入口51の内周面から径方向内側に向かって突出している。ソケット5Bにおいて突起58が設けられる部位の周方向に離れた2箇所にスリット581が形成されている。スリット581は、ソケット5Bの近位端から遠位側に長手方向に延びる。スリット581が形成された結果、突起58は外力が掛かると径方向に撓む。回転ハンドル6Bの基部64の外周面に複数の凹凸が形成され係止部66が形成されている。突起58は、係止部66に係止される。
【0068】
図15は、第二形態のときの回転ハンドル6Bおよび接続部21Aの領域を示し、
図17は、第一形態の回転ハンドル6Bおよび接続部21Aの領域を示している。
図15に示す第二形態では、ソケット5Bが接続部21Aに対して後退した位置に配置される。ソケット5Bが後退位置に配置されると、突起58が係止部66の凹部662に位置して係止される。第二形態で回転ハンドル6Bを回転すると、
図18に示すように、突起58が係止部66の凸部661に接触し、突起58が径方向外側に撓み、凸部661を乗り越えて隣の凹部662に相対移動し、再び係止される。このとき、ユーザがクリック感を得られる(ユーザフィードバック、第二ユーザフィードバック)。第一形態では、ソケット5Bが接続部21Aに対して前進した位置に配置される。第一形態では、係止部53がソケット5Bの挿入口51よりも近位側に露出し、突起58と係止部53との係合が解除される。第一形態で回転ハンドル6Bは回転自在である。第一形態では、トルクワイヤ7の捩れ等で発生する反力がユーザに伝わる(第一ユーザフィードバック)。
【0069】
(第二実施形態)
第二実施形態に係る処置具1Cについて、
図19から
図23を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0070】
本実施形態に係る処置具1Cは、第一実施形態と操作部の構成が異なる例である。本実施形態の操作部20Cは、ナイフハンドル8を備えず、一つのハンドル6C(回転ハンドル)で回転操作および切開部の操作を行う。操作部20Cは、ハンドル本体2Cおよびハンドル6Cを含む。
【0071】
ハンドル本体2Cは、第一実施形態のハンドル本体2の分岐した2つの接続部21、22を備えない。ハンドル本体2Cのの近位端部23が長手方向に直線状に延びている。近位端部23の外周部には、ハンドル6Cとの連結部861が設けられている。ハンドル本体2Cの近位端部23には送液口金29が設けられている。送液口金29には、不図示のシリンジが着脱可能である。送液口金29は、ハンドル本体2Cのルーメン231と連通している。ハンドル本体2Cのルーメン231に操作ワイヤ7Cが挿通されている。ルーメン231は送液ルーメンとしても機能する。
【0072】
ハンドル6Cは、ハンドルシャフト61C、スライダ62C、端子口68、およびソケット5Cを備える。ハンドルシャフト61Cは、ハンドル本体2Cの近位端部23に取り付けられている。ハンドルシャフト61Cの遠位端に連結部862が設けられている。ハンドル本体2の連結部861とハンドルシャフト61Cの連結部862とが連結することによって、ハンドルシャフト61Cは、ハンドル本体2Cに対して長手軸方向に移動不能かつ、中心軸C回りに回転可能に連結されている。ハンドルシャフト61Cは、ハンドル本体2Cに対して中心軸C回りに回転可能に係合している。ハンドルシャフト61Cの連結部862よりも近位側の外周面に、係止部67が設けられている。係止部67は複数の凹凸からなる。係止部67は、
図15に示した変形例2の係止部66と同様の構成を有する。
【0073】
スライダ62Cは、ハンドルシャフト61Cに対して長手方向に進退可能に設けられている。スライダ62Cは、ハンドルシャフト61Cに対して摺動自在に設けられている。スライダ62Cは、ハンドルシャフト61Cに対して進退可能かつ回転不能に係合している。第一実施形態のナイフハンドル8のスライダ82と同様の構成を有する。端子口68はスライダ62Cに設けられている。
【0074】
操作ワイヤ7Cは、導電性材料からなり、かつトルク伝達性を備えるワイヤである。導電ワイヤ72の遠位端部に切開部3(電極)が連結されている。切開部3は、シース4の遠位端から突出可能である。例えば、操作ワイヤ7Cは、遠位端部の切開部3以外の部位が絶縁性材料で覆われている。つまり、操作ワイヤ7Cは、第一実施形態の導電ワイヤ72およびトルクワイヤ7の機能を備える。操作ワイヤ7Cの近位端部は、第一実施形態の導電ワイヤ72と同様に端子74が設けられている。
【0075】
操作ワイヤ7Cの近位端部は、ハンドル本体2Cのルーメン231内を通り、ハンドルシャフト61C内に挿通されて端子口68近傍まで延び端子74に接続されている。端子74は、端子口68内に設けられてスライダ62Cに固定されている。端子74は、外部の高周波電源に接続可能である。第一実施形態のナイフハンドル8と同様に、ハンドルシャフト61Cに対してスライダ62Cを前進させると切開部3を直線状にするとともに遠位シース42の外周面に切開部3を沿わせた状態にできる。ハンドルシャフト61Cに対してスライダ62Cを後退させると遠位シース42が相対的に湾曲して、切開部3が張った状態にできる。
【0076】
ソケット5Cは、
図15に示した変形例2のソケット5Bと同様の構成を有する。ソケット5Cは、ハンドル本体2の近位端部23に対して、長手方向に進退可能かつ回転不能に取り付けられている。ハンドル本体2とハンドルシャフト61Cとの連結部86は、ソケット5Cの挿入口51内に配置されている。
【0077】
図19に操作部20Cの第二形態を示し、
図20に操作部20Cの第一形態を示している。ハンドル本体2Cに対してソケット5Cを前進させた位置に配置すると第一形態となり、ソケット5Cを後退させた位置に配置すると第二形態となる。
図20に示す第一形態では、上記変形例2と同様に、突起58と係止部67との係合が解除される。第一形態では、ハンドルシャフト61Cをハンドル本体2に対して中心軸C回りに回転することができる。第一形態では、ハンドルシャフト61Cを把持しているユーザは、トルクワイヤ7Cの捩れ等で発生する反力を受け、ハンドルシャフト61Cの回転が逆方向に押し戻される感触を得る(第一ユーザフィードバック)。
図19に示す第二形態では、ソケット5Cの後退により、突起58が係止部67に係止される。第二形態では、ハンドルシャフト61Cのハンドル本体2に対する回転が制限される。ハンドルシャフト61Cに所定量以上の回転方向の力を加えると、ソケット5Cの突起58が係止部67の凸部を乗り越えて隣の凹部に移動する構成は、変形例2と同様である。本実施形態に係る処置具1Cにおいても、第二形態では、ハンドルシャフト61Cを所定量以上の力で回転させると、ユーザがクリック感を得ることができる(ユーザフィードバック、第二ユーザフィードバック)。
【0078】
本実施形態に係る処置具1Cによれば、ソケット5Cを長手方向に進退させる簡単な操作によって、ハンドル6Cを第一形態と第二形態とに切り替えられる。第一形態ではハンドルシャフト61Cはハンドル本体2Cに対して回転自在である。このため、処置具1Cを用いた手技の際、シース4の経路の複数の湾曲に起因して、操作ワイヤ7Cに捩れが生じた場合でも、ソケット5Cを移動させて第一形態にすれば、ハンドルシャフト61Cが回転自在となり、操作ワイヤ7Cの捩れが解消できる。
【0079】
以上、本発明の第二実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0080】
(変形例3)
第二実施形態では、複数の凹凸を備える係止部67と、ソケット5Cの突起58とにより、ソケット5Cとハンドルシャフト61Cとが係止される例を示したが、第一形態と第二形態とに切り替える手段は上記例に限定されない。例えば、
図21および
図22に示す変形例3の構成であってもよい。
図21は、第一形態のハンドル6Cを示し、
図22では、第二形態のハンドル6Cを示している。本変形例では、第二実施形態と同様にハンドル本体2Cとハンドルシャフト61Cとが連結部86によって、回転可能かつ進退不能に連結されている。ハンドルシャフト61Cの遠位端に係止部を備えず、ソケット5Dに突起58を備えない。
図21および
図22に示すように、ハンドル本体2Cの近位端部23Dの外周面と、ハンドルシャフト61Cの遠位端部64Dの外周面とは、近位側に向かって拡径するテーパー面を形成する。ソケット5Dは、ハンドル本体2Cおよびハンドルシャフト61Cの外周面のテーパー形状に相似形の円筒形挿入口51Dを有するリング状の部材である。ソケット5Dは、ハンドル本体2Cおよびハンドルシャフト61Cに対して長手方向に進退可能に設けられている。
【0081】
ソケット5Dの近位端の挿入口51の内径は、ハンドルシャフト61Cの遠位端部の外径より大きい為、ソケット5Dを遠位側にずらすと、
図22に示すように、ソケット5Dとハンドルシャフト61Cとの間に隙間ができる。この結果、ハンドルシャフト61Cはハンドル本体2Cに対して周方向の係止が解除され、回転自在な第一形態になる。
図21に示すように、ソケット5Dを遠位側に配置すると、ハンドルシャフト61Cの遠位端部が露出する構成にすると、ユーザが第一形態に切り替わったことを認識し易い。
図22に示すように、ソケット5Dを近位側に配置すると、ハンドルシャフト61Cの外周面とソケット5Dの内周面とが摩擦係合する。同時に、ハンドル本体2Cの外周面とソケット5Dの内周面とが摩擦係合する。この結果、ハンドル本体2Cとハンドルシャフト61Cとは、ソケット5Dを介して回転不能な状態に係止される。
【0082】
ハンドル本体2Cとハンドルシャフト61Cとの相対回転をソケット5Dで切り替える態様は、摩擦係合の例に限定されない。例えば、ハンドル本体2Cとハンドルシャフト61Cと、ソケット5Dとに溝と突起による係止部を設けて係止する構成であってもよい。
【0083】
この他、
図23および
図24に示すように、ソケット5Eの外周に係止部59を設けてもよい。ソケット5Eは、ハンドル本体2C側の遠位部材591とハンドルシャフト61C側の近位部材592とを有する。遠位部材591と近位部材592とは、長手方向に当接しており、遠位部材591と近位部材592とで略円錐台の外形を有する。近位部材592の外周面には複数の凹凸からなる係止部593が形成されている。遠位部材591の外周部には、突起594が設けられている。突起594は、アーム595を介して遠位部材591の外周面に取り付けられている。突起594は遠位部材591の径方向に移動可能に構成されている。
【0084】
図23は、第二形態の操作部20Eを示しており、
図24は、第一形態の操作部20Eを示している。
図23に示すように、第二形態では、突起594が係止部593に係止しており、ハンドルシャフト61Cのハンドル本体2Cに対する回転が制限される。
図24に示すように、第一形態では、アーム595がソケット5Eの径方向外側に離れており、突起594と係止部593との係合が解除され、ハンドルシャフト61Cはハンドル本体2Cに対して回転自在となる。アーム595は手動で移動させ、突起594と係止部593とを係合および係合解除する。本変形例によれば、ソケット5Eを中心軸C回りに回転する操作により、第一形態と第二形態とを切り替えられる。
【0085】
例えば、突起594は、アーム595の弾性変形により、径方向に移動可能な構成であってもよい。例えば、突起594は、アーム595が回動可能に遠位部材591に取り付けられて径方向に移動する構成であってもよい。
【0086】
ソケット5Eの例は、第一実施形態の操作部20にも適用可能である。
図25から
図27は、第一実施形態の操作部20にソケット5Eの変形例のソケット5Fを設けた例を示している。
図25は第二形態の例、
図26は第一形態の例を示している。
図27は第二形態で回転ハンドル6Fが回転操作される状態を示す模式図である。
【0087】
図25から
図27に示すように、回転ハンドル6Fは、基部64の遠位側にリム641および係止部642を備える。基部64よりも遠位側に円環形状のリム641が形成され、リム641の遠位端から遠位側に向かって略円柱形状の係止部642が形成されている。係止部642の外周面には複数の凹凸が形成されている。ハンドル本体61、基部64、リム641、および係止部642は同軸配置されている。
【0088】
ソケット5Fは、ハンドル本体2の接続部21の近位端23Fに設けられている。ソケット5Fは、挿入口51F、保持部571、アーム573、突起574、把手575を有する。挿入口51Fに回転ハンドル6Fの遠位部が挿入される。保持部571は、挿入口51Fの近位開口部に設けられている。保持部571はリム641の外周を囲んで保持する。リム641が保持部571に保持されることによって、回転ハンドル6Fは、ソケット5Eに対して回転可能かつ進退不能に保持される。
【0089】
アーム573は、ソケット5Fの外周壁の一部が回動可能に設けられている。アーム595は遠位端がソケット5Eと連続し、近位端が開閉可能である。アーム595の近位端には爪576が設けられている。把手575は、アーム595の外周面から外側に突出して設けられている。把手575は、ユーザがアーム595を開閉操作する際に掴む部位である。突起574はアーム573に一体に設けられている。突起574は、挿入口51Fの径方向内側に向かって突出している。保持部571の遠位端面には凹部577が設けられている。爪576が凹部577に係止されるとアーム573が閉じた状態で保持される。アーム573が閉じると突起574が係止部642に係止され、第二形態になる。
【0090】
ユーザが把手575を把持して把手575を遠位側に傾けると、アーム595が撓んで爪576が凹部577から外れ、アーム573が開く。アーム573が開くと、突起574と係止部642との係合が解除され第一形態となる。第一形態では、回転ハンドル6Fはハンドル本体2に対して回転自在である。
【0091】
第二形態では、突起574と係止部642との係合により、回転ハンドル6Fは回転が制限される。回転ハンドル6Fは回転方向に所定量より小さい力では回転しない。所定量以上の回転力が加わると、突起574が係止部642の凸部を乗り越えて隣の凹部に移動する。このとき、ユーザにクリック感がフィードバックされる(ユーザフィードバック、第二ユーザフィードバック)。
図27に示すように、アーム573が撓むと、把手575も動く。ユーザは、回転ハンドル6Fが所定量回転したことを目視によっても認識できる。
【0092】
図23から
図27に示す例では、回転ハンドルとハンドル本体との連結部分にソケットを設け、ソケットの外側に突起および係止部を設けている。突起は、アームに支持され、かつソケットの外方からソケットの外周面に向かって突出している。アームの遷移に伴って突起と係止部との係止が解除された第一形態と、突起と係止部とが係止された第二形態とに切り替えられる。この構成を有する結果、ユーザはソケットの回転操作によって第一形態と第二形態を切り替えられる。さらに、ユーザは突起と係止部との位置関係を視認できるため、回転ハンドルの状態が第一形態および第二形態のどちらのであるかを目視で確認できる。
【0093】
上記各実施形態では、回転ハンドルを自由に回転できる第一形態と、回転ハンドルの回転を制限し、所定量以上の力が加わったときに回転ハンドルが所定量ずつ回転する第二形態とに切り替えながら使用できる。
【0094】
本開示は例示的な実施形態に関連付けて説明したが、特許請求の範囲で規定された開示の精神および特徴から逸脱することなく当業者によって理解され得る、追加、削除、修正、組み合わせ、および置換を含む。したがって、本発明は、特許請求の範囲に記載された範囲内およびそれらの同等物の範囲内において、追加、削除、修正、組み合わせ、および置換されたものを包含する。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、処置部の向きを所望の方向に容易に合わせることができる処置具および処置具の操作方法を提供できる。
【符号の説明】
【0096】
1,1C 処置具
2,2C ハンドル本体
3 切開部(電極)
4 チューブ(シース)
5,5A,5B,5C,5D,5E,5F ソケット
6,6A,6B,6C,6F 回転ハンドル
7 トルクワイヤ(ワイヤ)
81,61C ハンドルシャフト
62C,82 スライダ
531,532 凹凸
63,63A 突起