(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123405
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】血清耐性ビス-スルフヒドリル特異的ビオチン化試薬
(51)【国際特許分類】
C07D 495/04 20060101AFI20230829BHJP
C07K 1/13 20060101ALI20230829BHJP
A61K 49/16 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
C07D495/04 103
C07D495/04 CSP
C07K1/13
A61K49/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023026169
(22)【出願日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】22158475
(32)【優先日】2022-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】520094891
【氏名又は名称】ミルテニー バイオテック ベー.フェー. ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Miltenyi Biotec B.V. & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Friedrich-Ebert-Strasse 68, 51429 Bergisch Gladbach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨナタン ファウアーバッハ
(72)【発明者】
【氏名】ティナ ボアケ
(72)【発明者】
【氏名】イェアク ミッテルシュテート
(72)【発明者】
【氏名】ザンドラ ダパ
【テーマコード(参考)】
4C071
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C071AA01
4C071BB01
4C071CC02
4C071CC21
4C071EE13
4C071FF04
4C071GG06
4C071HH08
4C071JJ01
4C071LL01
4C085HH17
4C085KA04
4C085KB97
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA61
4H045DA76
4H045EA50
4H045EA60
4H045FA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】部位特異的位置でのAbおよび/またはFab当たりの一変数のタグ/親和単位(例えばビオチン)を有する化学的に十分に定義された血清耐性アダプター分子の提供。
【解決手段】式(I):
[式中、R
1は、1~50の炭素原子を含むアルキル基、ヒドロキシアルキル基またはカルボキシアルキル基であり、R
2は、1~50の炭素原子を有するアルキル基、グリコール基、アミン基またはペプチド基であり、R
3は、3~50の炭素原子を有するアリール、ヘテロアリールであり、R
4、R
5は、3~50の炭素原子を有するアリール、ヘテロアリール、アルキルである]によるビオチン化試薬。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
[式中、
R1は、1~50の炭素原子を含むアルキル基、ヒドロキシアルキル基またはカルボキシアルキル基であり、
R2は、1~50の炭素原子を有するアルキル基、グリコール基、アミン基またはペプチド基であり、
R3は、3~50の炭素原子を有するアリール、ヘテロアリールであり、
R4、R5は、3~50の炭素原子を有するアリール、ヘテロアリール、アルキルである]によるビオチン化試薬。
【請求項2】
前記ビオチン化試薬は、式(II)、(III)、(IV)または(V)
【化2】
の置換パターンを有することを特徴とする、請求項1記載のビオチン化試薬。
【請求項3】
少なくとも1つのジスルフィド結合を含むタンパク質またはペプチドをビオチン化するための、請求項1および2記載のビオチン化試薬の使用。
【請求項4】
前記タンパク質は、抗原結合部分を含み、前記ジスルフィド結合が、前記ビオチン化試薬に由来する3-炭素リンカー架橋により置き換えられかつ再構築されているタンパク質またはペプチドを生じる、請求項3記載のビオチン化試薬の使用。
【請求項5】
前記タンパク質は、抗原フラグメント(FAb)単位を含み、かつ前記ビオチン化試薬により修飾された前記ジスルフィド結合は、鎖間のジスルフィド結合である、請求項3記載のビオチン化試薬の使用。
【請求項6】
前記タンパク質は、硫黄原子を有する少なくとも2つのアミノ酸を含み、前記少なくとも2つのアミノ酸は、前記ビオチン化試薬により連結されている、請求項3記載のビオチン化試薬の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
抗体および抗体フラグメントは、in-vitro用途においても、in-vivo用途および臨床用途においても、特異的細胞標的を標的とするために、全血製剤用に一般に使用される。
【0002】
このような生体分子のビオチン化は、例えば、幾つかを挙げると、ストレプトアビジン、アビジンまたは抗ビオチン抗体を基礎とする二次認識系により認識することができるように、タグまたはハンドルを導入するために使用されることが多い。
【0003】
多様なビオチン化試薬が公知であり、例えば、Liberatore et al., Bioconjugate Chem. 1990, 1, 36-50, doi: 10.1021/bc00001a005、欧州特許出願公開第3620464号明細書またはD. M. Mock & A. Bogusiewicz; pp.209; From: Methods in Molecular Biology, vol. 418: Avidin-Biotin Interactions, Methods and Applicationsに開示されている。
【0004】
多様な技術分野から、抗体のジスルフィド架橋を架橋することが公知である。例えば、予めジスルフィド架橋を形成している2つの隣接する還元されたチオールを認識する化学は、最初、1979年のSumita Mitra et al.による科学的刊行物、「Reagents for Cross-Linking of Proteins」、 JACS 101211 (1979)、Liberatore F. et al. Bioconjugate Chem, 1, (1990)、およびRosario et al. Bioconjugate Chem, 1990, 1, 51-59に記載され、この架橋剤は、平衡移動アルキル化架橋剤(equilibrium transfer alkylation crosslinker、ETAC)といわれた。全体の抗体を、この抗体を蛍光染料で標識する目的で架橋剤と反応させることが記載されている。他の科学的刊行物は、Fabに関する同様の使用を記載している(Wilbur et al., Bioconjugate Chem 1994, 5, 220-235)。
【0005】
米国特許出願公開第2016/0000933号明細書は、抗体複合体を調製するために、抗体のジスルフィド架橋での架橋を開示している。
【0006】
抗体のジスルフィド架橋での架橋に関連する別の刊行物は、例えば、国際公開第2016/168769号;HANIEH KHALILI ET AL: “Comparative Binding of DisuIfide-bridged PEG-Fabs”. BIOCONJUGATE CHEMISTRY, vol. 23, no. 11, 21 September 2012 (2012-09-21), pages 2262-2277;Greg T. Hermanson: “Antibody Modification and Conjugation” In: “Bioconjugate Techniques”, 1 January 2013 (2013-01-01), Academic Press, ISBN: 978-0-12-382239-O pages 867-920;国際公開第2016/154621号である。
【0007】
ビオチン化された抗体の血清関連用途(例えば、in-vivo用途および全血in-vitro用途)では、ビオチンタグは、数時間耐性である必要がある。通常の血清(ヒトおよびマウス)は、ビオチンアミドを分解する因子を含む。このような因子の例は、天然由来の酵素のビオチニダーゼ酵素である。この天然酵素は、ビオチンアミドを分解し、遊離ビオチンとアミンとを放出することができる。
【0008】
したがって、本発明の目的は、部位特異的位置でのAbおよび/またはFab当たりの一変数のタグ/親和単位(例えばビオチン)を有する化学的に十分に定義された血清耐性アダプター分子を提供することであった。
【0009】
概要
ここで、ヒト血清および酵素分解(例えば他の因子の中のビオチニダーゼによる)に耐性である新規のビオチン化試薬の合成を記載する。この理論に拘束されるものではないが、これは、特に劣化を妨げるアミド結合に対してアルファ位のカルボキシル基の存在による。
【0010】
本発明の試薬は、2つのスルフヒドリル基と特異的に反応する。これは、この試薬がスルフヒドリル基を再架橋することができるため、生体分子の構造または安定性を失うことなく、タンパク質(例えば抗体)中の還元されたジスルフィドを標的とするため、特に魅力的である。したがって、このようなビオチン化された抗体または抗体フラグメントは、ビオチン複合体が、ビオチンアミドを分解する因子の活性を低減または阻害するように処理されていない血液、血液製品、新鮮な血清または血漿サンプルに曝されるあらゆる用途、特にビオチンをタグとして使用する臨床的用途にも適している。
【0011】
本発明は、Abおよび/またはFabのジスルフィド結合を標的とする部位特異的架橋剤を用いることに基づく。この利点は、次のことに依存している:i)固定された位置でのAbおよびFabの配列および構造において公知であるジスルフィド架橋の特定のロケーション;ii)この架橋剤は、ジスルフィド架橋の両方の還元されたチオールに共有結合し、したがって、AbおよびFabのネイティブな3D構造および機能を維持し、遊離チオールを後に残さない;iii)各架橋剤は、1つのタグまたは親和性単位部分(例えばビオチンまたはチアミン)だけを担持するので、各ジスルフィド架橋は、既知のかつ予測可能な化学量論(すなわち、fabは、C末端で1つのジスルフィド架橋を含むだけである)を提供する1つのビオチンを担持するリンカーにより修飾される;iv)架橋反応は定量的であり、AbおよびFabの95%超が標識されることを意味する;v)標識の程度は、化学量論的に制御することができる(すなわちAbに対して);vi)架橋複合体は、チオール還元および還元環境に不感応性である。
【0012】
したがって、本発明の対象は、式(I)
【化1】
[式中、
R1は、1~50の炭素原子を含み、好ましくは少なくとも1つのO原子またはN原子を含む、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、例えば-OH、-CO
2H、-CH
2CH
3、-CH(CH
3)
2、-OCH
3、-CH
2OHであり、
R2は、1~50の炭素原子を有し、好ましくは150kDa未満の分子量を有するアルキル基、グリコール基、アミン基またはペプチド基であり、
R3は、3~50の炭素原子を有するアリール、ヘテロアリールであり、
R4、R5は、3~50の炭素原子を有するアリール、ヘテロアリール、アルキルである]によるビオチン化試薬である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】全てのリンカー分子について血清安定性を評価するために設計されたワークフローを示す。
【
図2】細胞染色によるヒト血清およびネズミ血清の両方におけるオリジナルの修飾されていないリンカーMS9分子の血清安定性を示す。
【
図3】細胞染色による、全てのリンカー分子についての血清安定性スクリーニングおよび修飾されたリンカー(MS12、MS13、MS14およびMS15)についての陽性の結果を示す。
【
図4A】PBSvs血清中でインキュベートした場合の関心のあるリンカーの各々を有するビオチン化されたFAb産物についてのLCMS結果ならびに血清安定性特性に依存する標的m/z信号の存在または喪失を示す。
【
図4B】PBSvs血清中でインキュベートした場合の関心のあるリンカーの各々を有するビオチン化されたFAb産物についてのLCMS結果ならびに血清安定性特性に依存する標的m/z信号の存在または喪失を示す。
【
図4C】PBSvs血清中でインキュベートした場合の関心のあるリンカーの各々を有するビオチン化されたFAb産物についてのLCMS結果ならびに血清安定性特性に依存する標的m/z信号の存在または喪失を示す。
【
図4D】PBSvs血清中でインキュベートした場合の関心のあるリンカーの各々を有するビオチン化されたFAb産物についてのLCMS結果ならびに血清安定性特性に依存する標的m/z信号の存在または喪失を示す。
【
図4E】PBSvs血清中でインキュベートした場合の関心のあるリンカーの各々を有するビオチン化されたFAb産物についてのLCMS結果ならびに血清安定性特性に依存する標的m/z信号の存在または喪失を示す。
【
図5a】非血清耐性ビオチンリンカー(例えばMS9)で標識したビオチン化されたタンパク質の分解における役割が確認されたビオチニダーゼ酵素(哺乳類血清中に存在)と一緒のビオチン化されたタンパク質産物のインキュベーションを示す。
【
図5b】非血清耐性ビオチンリンカー(例えばMS9)で標識したビオチン化されたタンパク質の分解における役割が確認されたビオチニダーゼ酵素(哺乳類血清中に存在)と一緒のビオチン化されたタンパク質産物のインキュベーションを示す。
【0014】
詳細な説明
ビオチン化試薬の基R1~R5は、次の基を表してよい:
R1は、-CO2H、-CH2CO2H、-CH3、-C2H5、-C3H7、-CH-(CH3)2、-C4H9、-CH2OH、-C2H4OH、-C3H6OHを表し、
R2は、アルキルアミンまたはジアミン有機鎖を表し、これらは場合により置換されていて、例えばNH-(CH2)4;NH-(CH2)5;NH-(CH2)6;-NH-(CH2)2-NH-CO;-NH-(CH2)3-NH-CO;-NH-(CH2)4-NH-COを表し、
R3は、芳香族有機化合物およびその誘導体、好ましくはパラ位に2つのカルボニル基を有する5または6員の炭素環を表し、これらは場合により付加的に置換されているが、好ましくは置換なしであり、例えばベンゼンを表し、
R4、R5は、芳香族有機化合物およびその誘導体、典型的に5または6員の炭素環を表し、これらは場合により、オルト位、メタ位および/またはパラ位で、好ましくはパラ位で、アルキル炭素鎖で置換されていて、例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、メシチレンを表す。
【0015】
より好ましくは、本発明によるビオチン化試薬は、式(II)、(III)、(IV)または(V)
【化2】
の置換パターンを有する。
【0016】
本発明によるビオチン化試薬は、硫黄原子-リンカー-硫黄原子架橋により連結された重鎖および軽鎖を含む抗原結合ドメインを有する抗原結合分子のビオチン化のために特に有用である。
【0017】
「抗原認識ドメイン」の用語は、関心のある生物学的試料上に発現した標的部分に向けられたあらゆる種類の抗体、フラグメント化された抗体またはフラグメント化された抗体誘導体を指す。この用語は、完全に無損傷の抗体、フラグメント化された抗体またはフラグメント化された抗体誘導体、例えばFab、Fab¢、F(ab¢)2、sdAb、scFv、di-scFv、ナノボディに関する。このようなフラグメント化された抗体誘導体は、これらの種類の分子を含む共有および非共有複合体を含む組換え手順により合成されてよい。抗原認識部分の更なる例は、TCR分子を標的にするペプチド/MHC複合体、細胞接着受容体分子、共刺激分子についての受容体、人工的に操作された結合分子、例えば、例えば細胞表面分子を標的とするペプチドまたはアプタマーである。
【0018】
好ましくは、「抗原認識ドメイン」の用語は、IL2、FoxP3、CD154、CD33(Siglec-3)、CD123(IL3RA)、CD135(FLT-3)、CD44(HCAM)、CD44V6、CD47、CD184(CXCR4)、CLEC12A(CLL1)、LeY、FRβ、MICA/B、CD305(LAIR-1)、CD366(TIM-3)、CD96(TACTILE)、CD133、CD56、CD29(ITGB1)、CD44(HCAM)、CD47(IAP)、CD66(CEA)、CD112(Nectin2)、CD117(c-Kit)、CD133、CD146(MCAM)、CD155(PVR)、CD171(L1CAM)、CD221(IGF1)、CD227(MUC1)、CD243(MRD1)、CD246(ALK)、CD271(LNGFR)、CD19、CD20、GD2、EGFR、およびCD33のような、生物学的試料(標的細胞)により細胞外に発現された抗原に向けられる部分を指す。これらの抗原は、TMEと特異的に会合する可溶性抗原、例えばアルギナーゼ、癌胚抗原、CCL11、CCL18、CCL2、CCL5、CD282、循環腫瘍核酸、CXCL10、FAP、GM-CSF、IFN-γ、IL-4、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-11、IL-12、Il-13、IL-14、IL-15、IL-17、IL-23、IL-33、IL-1beta、IL-1Ra、INF、LAP、M-CSF、MMP12、MMP13、MMP7、NY-ESO-1抗体、前立腺特異的抗原、sCD106、sCD137、sCD152、sCD223、sCD25、sCD27、sCD253、sCD270、sCD273、sCD274、sCD279、sCD28、sCD30、sCD366、sCD40、sCD54、sCD80、sCD86、sGITR、TGFβ-1、TGFβ-2、TGFβ-3、TIMP1またはTNF-α、VEGFであってもよい。sCDx中の「s」は、正式に、それぞれのCDx分子の可溶性の形態を表す。
【0019】
本発明の使用
本発明の更なる対象は、少なくとも1つのジスルフィド結合を含むタンパク質またはペプチドをビオチン化するための、先に定義されたビオチン化試薬の使用または先に定義されたビオチン化試薬を使用する方法である。
【0020】
このタンパク質は、抗原結合部分を含んでよく、ジスルフィド結合が、ビオチン化試薬に由来する3-炭素リンカー架橋により置き換えられかつ再構築されているタンパク質またはペプチドを生じる。
【0021】
別の変形態様では、タンパク質は、抗体フラグメント(FAb)単位を含み、ビオチン化試薬により修飾されたジスルフィド結合は、鎖間のジスルフィド結合である。好ましくは、このタンパク質は、抗原結合部分を含み、ジスルフィド結合が、ビオチン化試薬に由来する3-炭素リンカー架橋により置き換えられかつ再構築されているタンパク質またはペプチドを生じる。
【0022】
別の変形態様では、タンパク質は、硫黄原子を有する少なくとも2つのアミノ酸を含み、少なくとも2つのアミノ酸は、ビオチン化試薬により連結されている。
【0023】
ビオチン化されたタンパク質は、免疫磁気分離による細胞分離ワークフロー中での抗原結合分子としてまたはフローソーティング分離による細胞分離ワークフロー中での抗原結合分子として使用されてよい。この細胞分離ワークフローでは、標的細胞は、全血または全血製剤からまたは熱不活性化されていない血清または血漿または活性ビオチニダーゼを含む媒体からの非標的細胞から分離されてよい。
【0024】
実施例
ヒトおよびネズミの血液を、実験の同日に採取し、血清クロットアクティベータ管(serum cloth activator tubes)中に捕集した。RT(室温)で30minのインキュベーションの後に、これらの管を2200xgで15min遠心分離した。ヒト血清を含む上層を注意深く取り出し、新規の管内に移した。後のLC-MS分析と干渉するであろう抗体を血清から除去するために、この血清を、PBSで1:1に希釈し、PBSで平衡化したタンパク質Aカラム(Thermo Fisher Scientific,Order-Nr.:20356)に装填した。このフロースルーを、新規の管内に捕集した。H.I.(熱不活性化)血清対照のために、IgG不含血清の一部を、エッペンドルフ管内へ移し、56℃で30minインキュベーションした。このプレインキュベーションの後に、サンプルを分割し、一部を染色のために使用し、MACSQuantで分析し、残りのサンプルを精製して、LC-MSで分析した。
【0025】
ビオチン化された抗CD33Fabを、PBS中で、または新たに調製した血清中で、0.1μg/μlの濃度で、37℃で1の間インキュベーションした。
【0026】
染色のために、ウェル毎1×104のCD33発現OCI-ALM-2細胞を、先に記載したようにプレインキュベーションしたFab 10μlと一緒に4℃で10minインキュベーションした。PEB緩衝液(1×PBS/5mM EDTA/0.5%血清)で洗浄するステップと引き続く第2の染色を実施し、OCI-AML-2細胞を、抗ビオチン(Miltenyi Biotec: 120-000-898)または抗His抗体(Miltenyi Biotec: 120-047-112)および7-AAD(Miltenyi Biotec: Order-Nr.: 130-111-569)で染色した。最終的に、細胞をPEB緩衝液で洗浄し、MACSQuant Analyzer 10を用いて分析した。
【0027】
図2は、ヒト血清とネズミ血清とを比較する血清安定性試験の結果を示す。ビオチン化された抗CD33FAbを、新たに調製したヒト血清、ネズミ血清、熱不活性化したヒト血清またはPBS中で1hインキュベーションした。細胞結合(OCI-AML2)抗-CD33Fabに関するFAb部分(抗His)およびビオチン部分(抗ビオチン-PE、中央のパネル))の存在を、マルチカラーフローサイトメトリーにより決定した。MFI(平均蛍光強度)は、n=3の技術的複製について示されている。
【0028】
さらに、多様なリンカー部分(MS12、MS13、MS14またはMS15)を試験し、プレインキュベーション期間を4時間に延長した。
【0029】
したがって、多様なリンカー部分(MS9、MS12、MS13、MS14またはMS15)を有する抗CD33Fabは、PBS中で、または新たに調製された血清中で、0.1μg/μlの濃度で、37℃で4時間インキュベーションした。
【0030】
染色のために、ウェル毎1×104のCD33発現OCI-ALM-2細胞を、先に記載したようにプレインキュベーションしたFab10μlと一緒に4℃で10minインキュベーションした。PEB緩衝液(1×PBS/5mM EDTA/0.5%血清)で洗浄するステップと引き続く第2の染色を実施し、OCI-AML-2細胞は、抗ビオチン(Miltenyi Biotec: 120-000-898)/ストレプトアビジン-PE(Miltenyi Biotec: 120-045-655)または抗His抗体(Miltenyi Biotec: 120-047-112)および7-AAD(Miltenyi Biotec: Order-Nr.: 130-111-569)で染色した。
【0031】
最終的に、細胞をPEB緩衝液で洗浄し、MACSQuant Analyzer 10を用いて分析した。
【0032】
LC-MSによる分析のためのサンプルを調製するため、プレインキュベーションしたアダプターを、IgG-CH1アフィニティマトリックス(Thermo Fisher: 194320005)によって精製し、したがって、CH1樹脂25μLを、各サンプル用の1.5mLのマイクロ遠心分離管中に移し、全ての他のステップを、製造元のプロトコルに従って実施した。
【0033】
図3は、血清安定性試験の結果を示す。細胞結合(OCI-AML2)抗CD33FAbに関するビオチン部分(ストレプトアビジン-PE(パネルAおよび抗ビオチン-PE、パネルB))およびFAb部分(抗HisAPC、パネルC)の存在を、マルチカラーフローサイトメトリーによって決定した。MFI(平均蛍光強度)は、n=2の技術的複製について示されている。抗ビオチン染色強度における顕著な低下が、熱不活性化されていない血清(血清)中でインキュベーションしたMS9修飾されたFAbについて観察されたが、MS12、MS13、MS14、またはMS15修飾されたFAbについては観察されなかった。
【0034】
図4は、A)MS9、B)MS12、C)MS13、D)MS14、およびE)MS15と一緒に、PBS(左パネル)または熱不活性化されていないヒト血清(右パネル)に37℃で4h曝されたリンカー複合体形成されたFab分子のLC/MSを示す。A)MS9:49924.68(PBS);49697.89(血清)、B)MS12:49967.33(PBS);49967.25(血清)、C)…。
【0035】
人体、とりわけヒト血清中に見られる酵素のビオチニダーゼが、ビオチンアミド結合の切断を引き起こすことを確認するために、ビオチニダーゼ阻害剤((+)ビオチン4アミド安息香酸、Cayman, CAS. 102418-74-6)を用いて実験を行った。したがって、(+)ビオチン4-アミド安息香酸を、1mMの濃度で、ヒト血清を含むプレインキュベーション混合物中に添加した。対照では、阻害剤を添加しなかった。MS9を有する抗CD33Fabを、37℃で4時間プレインキュベーションした。このインキュベーションの後に引き続き、このサンプルを先に記載されたようにIgG-CHIアフィニティマトリックスによって精製した。
【0036】
図5は、熱不活性化されていない血清中でのリンカーの不安定性の原因物質としてのビオチニダーゼを示す。ビオチン化(MS9)された抗CD33FAbを、1mMのビオチン4-アミド安息香酸の存在(左パネル)または不存在(右パネル)で、新たに調製したヒト血清中で37℃で4時間インキュベーションした。ビオチニダーゼ阻害剤は、ビオチンアミド結合を分解から保護する(阻害剤ありのMW:49922.91Da、阻害剤なしのMW:49696.58Da)。
【0037】
合成
ビス-スルホンNHS-エステル2の合成
【化3】
【0038】
この合成(4-[2,2-ビス([p-トリルスルホニル)メチル]アセチル]安息香酸)1は、Liberatore et al. (Bioconjugate Chem. 1990, 1, 36-50, doi: 10.1021/bc00001a005) により報告された。ビス-スルホン1(1当量)を、窒素のブランケット下で、乾燥テトラヒドロフラン(THF、100mg/mL)中に溶かした。N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS、1.5当量)を添加し、この混合物を氷浴中で冷却した。ジイソプロピルカルボジイミド(DIC、1.5当量)を、0℃で滴加した。約10min後に、この混合物を室温に戻した。生成物が、懸濁液を形成する白色固体として沈殿した。この反応は、約30分後に完了し、薄層クロマトグラフィーを続けた。
【0039】
生成物を塩化メチレン中に溶かし、水で抽出した。有機相を、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、次いで濾過し、真空中で濃縮して、2が白色粉末として得られた。
【0040】
N
ε
-(ビオチンアミド)-L-リジン4の合成
【化4】
【0041】
Nε-Boc-L-リジン(1.0当量)を、窒素雰囲気中で乾燥ジメチルホルムアミド(DMF、20mg/mL)に溶かした。トリエチルアミン(TEA)1.5当量を添加した。ビオチン-NHS(1.5当量)を、乾燥DMF(20mg/mL)に溶かし、窒素のブランケット下で攪拌しながらリジン溶液に滴加した。この混合物を、室温で16h攪拌して、化合物3が得られた。
【0042】
3を、トリフルオロ酢酸(TFA、60当量)の添加により脱保護し、室温で3h攪拌し、その後に真空中で濃縮した。ビオチン化されたリジン4を、そのアンモニウム塩の沈殿によって単離した。したがって、濃縮された粗製反応混合物を、水酸化アンモニウムの存在下で、エタノールで希釈した。白色沈殿物を濾過により捕集した。
【0043】
N
ε
-(ビオチンアミド)-N
α
-(4-[2,2-ビス[(p-トリルスルホニル)メチル]アセチル]ベンズアミド)-L-リジン5(MS12)の合成
【化5】
【0044】
ビオチン化されたリジン4(1.0当量)を、窒素雰囲気中で乾燥DMF(20mg/mL)に溶かした。ビス-スルホンNHSエステル2(1.10当量)を、乾燥DMF(50mg/mL)に溶かし、窒素のブランケット下で攪拌しながらビオチン溶液に滴加した。この混合物を、室温で16h攪拌し、次いで真空中で濃縮し、水100%+TFA0.1%→アセトニトリル100%+TFA0.1%の勾配を用いる分取逆相(C18)液体クロマトグラフィーにより精製した。標的画分を凍結乾燥して、白色粉末として5が得られた。
【外国語明細書】