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特開2023-123406生体試料を分析するカートリッジおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123406
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】生体試料を分析するカートリッジおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/28 20060101AFI20230829BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20230829BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20230829BHJP
   C12N 1/12 20060101ALN20230829BHJP
   C12N 1/16 20060101ALN20230829BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20230829BHJP
   C12N 5/07 20100101ALN20230829BHJP
【FI】
C12M1/28
C12M1/34 C
C12Q1/02
C12N1/12 A
C12N1/16 A
C12N1/20 A
C12N5/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023026201
(22)【出願日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】2250252-0
(32)【優先日】2022-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(71)【出願人】
【識別番号】523064608
【氏名又は名称】シスメックス アステルゴ エービー
(71)【出願人】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ロバート,フレドリクソン
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル,オルソン
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン,オーマン
(72)【発明者】
【氏名】ロヴィーサ,ソダーバーグ
(72)【発明者】
【氏名】オズデン,バルテキン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB01
4B029FA11
4B029FA12
4B063QA06
4B063QQ03
4B063QR72
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AC14
4B065CA46
(57)【要約】      (修正有)
【課題】種々の薬剤に対する生体試料中の細胞の表現型応答を分析するために使用することができ、使用しやすく、必要とされる培養培地、薬剤および化学物質を用いて事前に製造することができ、それによって、生体試料の追加のみが必要であり、表現型応答の完全自動化分析が可能になるカートリッジを提供する。
【解決手段】カートリッジは、生体試料からの細胞を捕捉するように構成された細胞チャネルの複数のセットを含むマイクロ流体チップを収容するように構成されたチップチャンバを含み、生体試料を受け取るように構成され、細胞チャネルの複数のセットおよび複数の培地リザーバと流体接続している試料チャンバを含む。各培地リザーバは、細胞チャネルの各セットと流体接続するように構成され、カートリッジは、複数の培地リザーバと流体接続しており、培養培地を複数の培地リザーバに供給するように構成された培養培地源をさらに含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カートリッジ(1)であって、
生体試料から細胞を捕捉するように構成された細胞チャネル(530)の複数のセット(531)を含むマイクロ流体チップ(500)を収容するように構成されたチップチャンバ(105);
前記生体試料を受け取るように構成され、細胞チャネル(530)の前記複数のセット(531)と流体接続している試料チャンバ(140);
複数の培地リザーバ(170)の各培地リザーバ(170)が、細胞チャネル(530)の前記複数のセット(531)の細胞チャネル(530)の各セット(531)と流体接続するように構成されている、複数の培地リザーバ(170);ならびに
前記複数の培地リザーバ(170)と流体接続しており、前記複数の培地リザーバ(170)に培養培地を供給するように構成された培養培地源(110、400)
を含む、カートリッジ。
【請求項2】
前記複数の培地リザーバ(170)が、実質的に同じ形状および/または内部容積を有する、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
前記複数の培地リザーバ(170)の少なくともいくらかが、前記培養培地に溶解または分散されるように構成された異なる量の薬剤または異なる薬剤が事前にロードされている、請求項1または2に記載のカートリッジ。
【請求項4】
前記複数の培地リザーバ(170)の第1のセットには、前記異なる量の薬剤または前記異なる薬剤が事前にロードされており、前記複数の培地リザーバ(170)の第2のセットには、あらゆる薬剤が事前にロードされていない、請求項3に記載のカートリッジ。
【請求項5】
前記薬剤が、抗菌剤であるか、前記異なる薬剤が、異なる抗菌剤である、請求項3または4に記載のカートリッジ。
【請求項6】
さらに:
前記培養培地源(110、400)と流体連通している入口穴(121);および
複数の培地リザーバ穴(123)の各培地リザーバ穴(123)が前記複数の培地リザーバ(170)の各培地リザーバ(170)と流体連通している、複数の培地リザーバ穴(123)を含む
培地バルブチャンバ(120);ならびに
前記培養培地源(110、400)から前記入口穴(121)を通って供給された培養培地を前記複数の培地リザーバ穴(123)に向けるように構成された培養培地バルブ(420)
を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項7】
前記培養培地源(110、400)が:
前記培養培地を予めパッケージした培養培地容器(400);および
前記培養培地容器(400)を収容するように構成され:
前記複数の培地リザーバ(170)と流体連通している排水孔(113);および
前記培養培地容器(400)の表面を切断して前記培養培地を前記排水孔(113)に供給するように構成されたカッター(114)
を含むチャンバ(110)
を含む、請求項6に記載のカートリッジ。
【請求項8】
生体試料を前記試料チャンバ(140)から細胞チャネル(530)の前記複数のセット(531)に動かすように構成されたポンプ(410)をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項9】
細胞チャネル(530)の前記複数のセット(531)および前記培養培地源(110、400)と流体連通するように構成された界面活性剤チャンバ(128)をさらに含み、ここで、
前記界面活性剤チャンバ(128)には、前記培養培地源(110、400)から供給された培養培地中に溶解または分散するように構成された界面活性剤が事前にロードされており;そして
前記培養培地中に溶解または分散した前記界面活性剤が、細胞チャネル(530)の前記複数のセット(531)に供給されるように構成されている、
請求項1から8のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項10】
前記マイクロ流体チップ(500)に取り付けられ:
細胞チャネル(530)の前記複数のセット(531)と前記試料チャンバ(140)との間の流体接続を提供するように構成された穴(554)の第1のセット;および
穴(558)の第2のセットの各穴(558)が細胞チャネル(530)の前記複数のセット(531)の細胞チャネル(530)の各セット(531)と前記複数の培地リザーバ(170)の各培地リザーバ(170)との間の流体接続を提供するように構成されている、穴(558)の第2のセット
を含むチップ担体(550)
をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項11】
細胞チャネル(530)の前記複数のセット(531)の細胞チャネル(530)の各セット(531)が:
穴(554)の前記第1のセットの穴(554)と流体連通している第1のポート(514);および
穴(558)の前記第2のセットの穴(558)と流体連通している第2のポート(512)
を含む、請求項10に記載のカートリッジ。
【請求項12】
前記チップチャンバ(105)、前記試料チャンバ(140)、前記複数の培地リザーバ(170)および前記培養培地源(110、400)を含む基板(100);ならびに
前記基板(100)に取り付けられ、細胞チャネル(530)の前記複数のセット(531)を画像化することを可能にするように構成された窓(210)を含む蓋(200)
をさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項13】
細胞チャネル(530)の前記複数のセット(531)の細胞チャネル(530)の各セット(531)が、細胞チャネル(530)の前記複数のセット(531)の細胞チャネル(530)の他のセット(531)から分離されている前記マイクロ流体チップ(500)内の区画として形成される、請求項1から12のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項14】
前記チップチャンバ(105)が、前記生体試料からの細胞を捕捉するように構成された細胞チャネル(530)の前記複数のセット(531)を含む前記マイクロ流体チップ(500)を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項15】
生体試料を分析する方法であって:
細胞を含む生体試料をマイクロ流体チップ(500)内の細胞チャネル(530)の複数のセット(531)に移動させるステップ(S1);
培養培地を複数の培地リザーバ(170)に移動させるステップ(S2)であって、前記複数の培地リザーバ(170)の各培地リザーバ(170)が細胞チャネル(530)の前記複数のセット(531)の細胞チャネル(530)の各セット(531)と流体接続するように構成されており、前記複数の培地リザーバ(170)の前記培地リザーバ(170)の少なくとも1つには、前記培養培地を溶解または分散させるように構成された規定量の薬剤が事前にロードされている、ステップ;
前記溶解または分散された薬剤を有する培養培地を、前記薬剤が事前にロードされている各培地リザーバ(170)から細胞チャネル(530)の前記各セット(531)に移動させるステップ(S3);ならびに
細胞チャネル(530)の前記各セット(531)内で前記薬剤に対する前記細胞の応答をモニターするステップ(S4)
を含む、方法。
【請求項16】
前記溶解または分散された薬剤を有する前記培養培地を移動させるステップ(S3)が、前記溶解または分散された薬剤を有する前記培養培地またはあらゆる薬剤を有していない前記培養培地を、前記複数の培地リザーバ(170)の各培地リザーバ(170)から細胞チャネル(530)の前記各セット(531)に移動させるステップ(S3)を含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の培地リザーバ(170)の少なくともいくらかには、前記培養培地中に溶解または分散されるように構成された異なる量の前記薬剤または異なる薬剤が事前にロードされている、
請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記生体試料を移動させるステップ(S1)が、細胞を含む前記生体試料を、請求項1から14のいずれか一項に記載のカートリッジ(1)のチップチャンバ(105)内に配置されたマイクロ流体チップ(500)内の細胞チャネル(530)の複数のセット(531)に移動させるステップ(S1)を含み;そして
前記培養培地を移動させるステップ(S2)が、前記培養培地を、請求項1から14のいずれか一項に記載のカートリッジ(1)の複数の培地リザーバ(170)に移動させるステップ(S2)を含む、
請求項15から17のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にカートリッジ、特にマイクロ流体チップのためのそのようなカートリッジに関する。本発明はまた、一般に生体試料を分析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗生物質感受性試験(antibiotic sensitivity testing)とも呼ばれる抗生物質感受性試験(Antibiotic susceptible testing)(AST)は、抗生物質に対する細菌の感受性の測定である。感受性試験の結果は、臨床医が、細菌により引き起こされる疾患ならびにそれらの感受性および抵抗性の知識に基づいて適切な抗生物質または抗生物質の混合物を選択することを可能にする。
【0003】
初期AST法は、寒天プレート上または寒天もしくはブロス中での希釈物で細菌を抗生物質に曝露することに関与する表現型の方法であった。そのような表現型の方法は、Kirby-Bauer法とも呼ばれるディスク拡散法を含み、その中で、細菌は、寒天プレート上で培養され、抗生物質含浸ディスクの近くでの細菌の増殖を観察する。抗生物質が微生物増殖を阻害する場合、ディスクの周囲に透明なリング、または阻害ゾーンが見られる。その後、細菌は、阻害ゾーンの直径を、最小発育阻止濃度(MIC)と相関する規定の閾値と比較することにより、抗生物質に対して感受性、中間、または抵抗性として分類する。他の表現型の方法は、寒天上に配置された異なる濃度の抗生物質を含浸したプラスチック片を使用するEtestなどの勾配法を含み、培養期間後に増殖培地を調べる。MICは、片上のマーキングを用いる涙滴の形状の阻害ゾーンの検査に基づいて同定することができる。
【0004】
上記の例示された表現型の方法を用いる主な欠点は、それらが視覚的な応答を得るために、典型的に少なくとも一晩細菌を培養する必要があることである。したがって、ASTの結果が利用可能になる前に、比較的時間がかかる。別の欠点は、一般に1回のAST試験において、1種類の抗生物質または少数の抗生物質しか試験することができないことである。
【0005】
AST法の別の群は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、デオキシリボ核酸(DNA)マイクロアレイ、またはDNAチップに基づく遺伝子法である。これらの遺伝子法は、抗生物質に対する細菌の表現型応答を調べるのではなく、細菌が抗生物質抵抗性を付与する遺伝子を保持しているかどうか分析する。遺伝子法は、より迅速である点で、培養ベースの表現型の方法よりも有利である。欠点には、試験される抵抗性遺伝子の必要とされる知識を含み、費用がかかり、典型的に特別に訓練された担当者が必要である。さらに、時として、検出された抵抗性遺伝子の遺伝子型プロファイルは、表現型の方法で見られる抵抗性プロファイルと常に一致するわけではない。
【0006】
マイクロ流体デバイスおよびチップは、抗生物質のセットに対する細菌の表現型応答を迅速に、そして並行してモニターするために提案されている。マイクロ流体に基づくASTは、迅速であることから利益を得るが、多くの遺伝子法と関連する欠点に悩まされることはない。
【0007】
「マザーマシン」と表示される従来技術のマイクロ流体デバイスは、Wang et al.,Current Biology 2010,20:1099-1103に開示されている。マザーマシンは、多くの異なる細胞チャネルにおいて並行して細胞をモニターすることを可能にする。
【0008】
生体試料の分析に有用であるさらなるマイクロ流体デバイスは、国際公開第2016/007063号および国際公開第2016/007068号に示されている。
【0009】
Baltekin et al.,PNAS 2017,114(34):9170-9175は、マイクロ流体デバイスを使用する高速抗生物質感受性試験(AST)試験、FASTestを開示する。
【0010】
米国特許第7341841号および米国特許第8071319号は、試料中の微生物の検出方法を開示する。方法は、試料をバイオセンサ濃度モジュールと接触させ、微生物が第1の期間中増殖することを可能にし、そして微生物の存在の指標として別個の微生物の増殖を検出することを含む。
【0011】
細菌のASTなど、試料中の細胞の表現型解析に使用することができる、そのようなマイクロ流体チップのためのカートリッジの必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【0012】
試料中の細胞の表現型解析に使用することができる、そのようなマイクロ流体チップのためのカートリッジを提供することが、一般的な目的である。
【0013】
生体試料を分析する方法を提供することも、一般的な目的である。
【0014】
これらおよび他の目的は、本明細書に開示されている実施形態により満たされる。
【0015】
本発明は、独立請求項で定義されている。さらなる実施形態は、従属請求項で定義されている。
【0016】
本発明の一態様は、生体試料から細胞を捕捉するように構成された複数の細胞チャネルのセットを含むマイクロ流体チップを収容するように構成されたチップチャンバを含むカートリッジに関する。カートリッジはまた、生体試料を受け取るように、そして複数の細胞チャネルのセットと流体接続するように構成された試料チャンバも含む。カートリッジは、複数の培地リザーバをさらに含む。複数の培地リザーバの各培地リザーバは、細胞チャネルの複数のセットの細胞チャネルの各セットと流体接続するように構成されている。カートリッジは、複数の培地リザーバと流体接続し、そして複数の培地リザーバに培養培地を供給するように構成された培養培地源をさらに含む。
【0017】
本発明の別の態様は、生体試料を分析する方法に関する。方法は、細胞を含む生体試料を、マイクロ流体チップ内の細胞チャネルの複数のセットに移動させることを含む。方法はまた、培養培地を複数の培地リザーバに移動させることも含む。複数の培地リザーバの各培地リザーバは、細胞チャネルの複数のセットの細胞チャネルの各セットと流体接続するように構成されている。複数の培地リザーバの少なくとも1つの培地リザーバは、培地中に溶解または分散されるように構成された規定量の薬剤が事前にロードされている。方法は、各培地リザーバから溶解または分散された薬剤を有する培養培地を移動させることをさらに含み、薬剤は、細胞チャネルの各セットに事前にロードされている。方法は、細胞チャネルの各セットにおける薬剤に対する細胞の応答をモニターすることをさらに含む。
【0018】
本発明のカートリッジは、種々の薬剤に対する生体試料中の細胞の表現型応答を分析するために使用することができる。カートリッジは、使用しやすく、必要とされる培養培地、薬剤および化学物質を用いて事前に製造することができ、それによって、生体試料の追加のみが必要であり、表現型応答の完全自動化分析が可能になる。
【0019】
実施形態は、そのさらなる目的および利点と一緒に、添付の図面と一緒に以下の説明を参照することにより最もよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1A-図1B図1Aおよび図1Bは、上(1A)および下(1B)からの一実施形態によるカートリッジの分解立体図である。
図2図2A-図2H図2A図2Hは、試料フィルタのアタッチメント(2A)、裏蓋のアタッチメント(2B)、マイクロ流体チップのアセンブリ(2C)およびマイクロ流体チップのアタッチメント(2D)、バルブおよびドーム型ポンプのアタッチメント(2E)、培地ブリスターのアタッチメント(2F)、ガス透過膜の追加(2G)ならびに上蓋のアタッチメント(2H)を有する一実施形態によるカートリッジのアセンブリを概略的に示す。
図3図3A-図3B図3Aおよび図3Bは、一実施形態による試料チャンバ(3A)に生体試料を充填することおよびキャップ(3B)で試料チャンバを閉じることを概略的に示す。
図4図4A-図4B図4Aおよび図4Bは、上(4A)および下(4B)からの基板の一実施形態を例証する。
図5図5は、ブリスターチャンバの一実施形態を例証する基板の一部のクローズアップ図である。
図6図6は、培地バルブチャンバの一実施形態を例証する基板の一部のクローズアップ図である。
図7図7は、培地リザーバの一実施形態を例証する基板の一部のクローズアップ図である。
図8図8は、試料バルブチャンバおよび界面活性剤チャンバの一実施形態を例証する基板の一部のクローズアップ図である。
図9図9は、バックチャネルリザーバの一実施形態を例証する基板の一部のクローズアップ図である。
図10図10は、ドームポンプチャンバの一実施形態を例証する基板の一部のクローズアップ図である。
図11図11は、試料リザーバの一実施形態を例証する基板の一部のクローズアップ図である。
図12図12は、底面図におけるチップ担体に取り付けられたマイクロ流体チップを概略的に例証する。
図13図13は、部分透視図におけるチップ担体に取り付けられたマイクロ流体チップを概略的に例証する。
図14図14は、マイクロ流体チップの一部のクローズアップ図である。
図15図15は、ブリスターチャンバの一部のクローズアップ図である。
図16図16は、培地リザーバのクローズアップ図(上)および断面図(下)である。
図17図17は、一実施形態によるカートリッジの内の試料および培養培地の移動を概略的に例証する。
図18図18-図27図18図27は、図17において示されたような試料および培養培地充填操作中のカートリッジを概略的に例証する。
図28図28は、マイクロ流体チップおよび入口穴に入るかそれから出る流体を概略的に例証する。
図29図29-図31図29図31は、試料および培養培地充填操作中のマイクロ流体チップを概略的に例証する。
図32図32は、一実施形態による生体試料を分析する方法を例証するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面全体を通じて、同じ参照番号は、類似または対応する要素について使用される。
【0022】
本発明は、種々の薬剤に対する生体試料中の細胞の表現型応答を分析するために使用することができるマイクロ流体チップのためのカートリッジに関する。カートリッジは、使用しやすく、必要とされる培養培地、薬剤および化学物質を用いて事前に製造することができ、それによって、生体試料の追加のみが必要であり、表現型応答の完全自動化分析が可能になる。本発明はまた、生体試料を分析する方法に関する。
【0023】
本明細書で使用されるような「生体試料」は、任意の試料、好ましくは流体試料、より好ましくは細胞または単細胞微生物などの微生物を含む液体試料を含み、カートリッジのマイクロ流体チップに捕捉され、1つまたは複数の薬剤に対するその表現型応答が分析および決定される。生体試料は、好ましくは患者から採取された処理済み体液試料を含む、患者から採取された体液試料などの体液試料である。そのような体液試料の非限定であるが、例証的な例には、尿、血液、血漿、血清、羊水、脳脊髄液、リンパ液、唾液および髄液が含まれる。代わりに、生体試料は、生検などの固体の体の試料から得られた生体試料であり得、固体の体の試料の細胞は、流体、好ましくは培養培地などの液体に懸濁または分散されている。本明細書で使用されるような処理済みの体液試料は、本発明のカートリッジにロードされる前に何らかの方法で処理されている体液試料である。例えば、体液試料は、血液から得られた血清または血漿試料などの処理済みの体液試料を得るために異なる試料の部分に濾過または分離され得る。
【0024】
本明細書で使用されるような「薬剤」は、任意の分子、化合物、組成物またはマイクロ流体チップに捕捉された細胞に影響を与えることができる他の薬剤を指す。そのような薬剤の典型的ではあるが、限定されない例には、薬物候補を含む、薬物または医薬品が含まれる。薬剤は、必ずしも薬物または医薬品である必要はないが、例えば他の化学物質である可能性があり、薬剤が細胞になんらかの影響を及ぼすかどうかを決定することに関心がある可能性がある。そのような薬剤の例証的ではあるが、限定されない例には、抗菌性物質、抗真菌性物質、抗ウイルス性物質、または抗寄生虫物質などの抗菌剤が含まれる。特定の例には、抗菌性物質、すなわちベータ-ラクタム、セファロスポリン、スルホンアミド、アミノグリコシド、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、マクロライド、糖タンパク質、アンサマイシン、キノロン、ストレプトグラミン、オキサゾリジノン、およびリポペプチドを含むがこれらに限定されない抗生物質が含まれる。
【0025】
本明細書で使用されるような「細胞」は、生体試料中に存在し、マイクロ流体チップに捕捉することができる任意の細胞種または細胞の集団もしくは混合物または細胞集団を含む。細胞は、例えば被験者に疾患または障害を引き起こす可能性がある病原体であり得る。そのような病原体の、限定されないが例証的な例には、細菌、藻類、真菌類、原生動物および他の寄生虫が含まれる。あるいは、細胞は、ウイロイド、ウイルス、またはプリオンなどの病原体の病原体宿主である可能性がある。細胞は、必ずしも病原体である必要はないが、あるいは、微生物、特に単細胞微生物を含む、捕捉およびモニターされる任意の細胞種または細胞集団であり得る。
【0026】
例証的な例において、カートリッジは、薬剤の例として抗生物質を用いる、生体試料、特に尿路感染(UTI)に罹患している被験者から採取された尿試料中の細菌のASTに使用することができる。しかし、本発明のカートリッジは、生体試料として尿試料の使用に限定されない。実際には、カートリッジは、分析のために細菌、または実際には任意のタイプの細胞または微生物をマイクロ流体チップにロードするために使用することができ、それによって、他の生体試料と一緒に使用することができる。
【0027】
本発明の一態様は、生体試料からの細胞を捕捉するように構成された細胞チャネル530の複数のセット531を含むマイクロ流体チップ500を収容するように構成されたチップチャンバ105を含むカートリッジ1に関する。カートリッジ1はまた、生体試料を受け取るように、そして細胞チャネル530の複数のセット531と流体接続するように構成された試料チャンバ140も含む。カートリッジ1は、複数の培地リザーバ170を含む。複数の培地リザーバ170の各培地リザーバ170は、細胞チャネル530の複数のセット531の細胞チャネル530の各セット531と流体接続するように構成されている。カートリッジ1は、複数の培地リザーバ170と流体接続しており、複数の培地リザーバ170に培養培地を供給するように構成された培養培地源110、400をさらに含む。
【0028】
それによって、本発明のカートリッジ1は、チップチャンバ105内に収容されたマイクロ流体チップ500内の細胞チャネル530の複数のセット531にある生体試料から細胞を捕捉することが可能になる。次いで、並行して異なる濃度の薬剤に対する、および/または異なる薬剤に対する細胞の応答など、操作に対する細胞の応答をモニターする間、種々の濃度での薬剤に、および/または複数の異なる薬剤に曝露させるなど、細胞を操作することができる。したがって、細胞の単一源、すなわち生体試料をカートリッジ1に適用して細胞チャネル530の異なるセット531に、その中で提供されている細胞を分配することができる。
【0029】
カートリッジ1はまた、複数の培地リザーバ170を含み、そのため細胞チャネル530の各セット531は、各培地リザーバ170と流体接続している。したがって、マイクロ流体チップ500が細胞チャネル530のN個のセットを含む場合、カートリッジ1は、N個の培地流体170を含む。これは、細胞チャネル530の各セット531が、それ自体の培地リザーバ170と流体接続しており、それから培養培地が供給されることを意味する。換言すると、複数の培地リザーバ170の各培地リザーバ170は、培養培地をマイクロ流体チップ500内の細胞チャネル530の単一のセット531に供給するのみである、すなわち、細胞チャネル530の単一のセット531と流体接続しているのみである。マイクロ流体チップ500内の細胞チャネル530のセット531に対する培地リザーバ170の配置は、マイクロ流体チップ500内の異なる培地リザーバ170からの培養培地の混合を防止し、それによって細胞チャネル530のセット531内に捕捉されている細胞を異なる培地リザーバ170からの培養培地に曝露することを防止する。
【0030】
カートリッジ1は、複数の培地リザーバ170と流体接続している培養培地源110、400をさらに含む。この培養培地源110、400は、培養培地を複数の培地リザーバ170に供給する。したがって、好ましい実施形態において、培養培地は、培養培地源110、400から供給され、複数の培養リザーバ170に分配される。
【0031】
一実施形態において、複数の培地リザーバ170は、チップチャンバ105に対して対称的に配置される。
【0032】
図4Aにおいてより明らかに示されるように、チップチャンバ105は、好ましくは、複数の培地リザーバ170間に提供される。好ましくは、培地リザーバ170の半分は、チップチャンバ105の他の側部に配置されている培地リザーバ170の残りの半分を有するチップチャンバ105の側部に配置されている。したがって、チップチャンバ105は、好ましくは培地リザーバ170の2つのセットまたは列の間に配置される。中央チップチャンバ105に対する培地リザーバ170のこの分配は、カートリッジ1内の比較的小さなスペースでの複数の培地リザーバ170の配置を可能にする。
【0033】
一実施形態において、複数の培地リザーバ170は、実質的に同じ形状および/または内部容積を有している。
【0034】
現在の好ましい実施形態において、複数の培地リザーバ170は、実質的に同じ内部容積および好ましくは実質的に同じ形状を有している。そのような場合において、複数の培地リザーバ170の各培地リザーバ170は、好ましくは実質的に同じ体積の、培養培地源110、400からの培養培地で充填されている。培地リザーバ170のそのようなデザインは、培地リザーバ170内で培養培地中に溶解または分散された任意の薬剤の正確で制御された濃度を達成するのを可能にする。例えば、培地リザーバ170は、規定量の薬剤が事前にロードされ得る。それによって、培養培地源110、400から供給された規定体積の培養培地での培地リザーバ170の充填は、培地リザーバ170内の培養培地中に溶解または分散された薬剤の明確に定義された濃度の形成を可能にする。それによって、1つまたは複数の薬剤の正確にそして明確に定義された濃度は、異なる培地リザーバ170が異なる量の薬剤または複数の薬剤が事前にロードされる場合および培地リザーバ170が実質的に同じ内部容積を有している場合、異なる培地リザーバ170内で達成され得る。
【0035】
一実施形態において、複数の培地リザーバ170の少なくともいくらかは、培養培地中に溶解または分散されるように構成された異なる量の薬剤または異なる薬剤が事前にロードされる。
【0036】
上述したように、培地リザーバ170内に事前にロードされた1つまたは複数の薬剤は、培養培地源110、400から培地リザーバ170に供給された培養培地中に溶解または分散される。溶解または分散された薬剤を有する培養培地は、その後、培地リザーバ170からマイクロ流体チップ500内の細胞チャネル530のその接続したセット531に供給され、それによって、細胞チャネル530のセット531の細胞チャネル530内で捕捉された細胞を培養培地中に溶解または分散された薬剤に曝露する。細胞チャネル530内の細胞の薬剤に対する応答は、その後、モニターおよび決定することができる。
【0037】
異なる量の同じ薬剤で複数の培地リザーバ170に事前にロードすることが可能であり、それによって、培地リザーバ170内に含まれている培養培地中に薬剤を異なる濃度で提供する。それによって、細胞チャネル530の異なるセット531内で捕捉された細胞は、異なる濃度の薬剤に曝露され、これらの異なる濃度に対する細胞の応答はモニターすることができる。
【0038】
代わりにまたはさらに、異なる薬剤を異なる培地リザーバ170に事前にロードすることができ、それによって、捕捉された細胞のこれらの異なる薬剤に対する応答をモニターすることが可能になる。
【0039】
特定の実施形態において、複数の培地リザーバ170の第1のセットは、異なる量の薬剤または異なる薬剤が事前にロードされ、複数の培地リザーバ170の第2のセットは、任意の薬剤が事前にロードされない。好ましい実施形態において、複数の培地リザーバ170の第1のセットは、異なる量の薬剤または異なる薬剤が事前にロードされ、複数の培地リザーバ170の残りのセットは、任意の薬剤が事前にロードされない。
【0040】
例えば、32の異なる培地リザーバ170を有するカートリッジ1において、5つの異なる濃度で5つの異なる薬剤を、32の培地リザーバ170のうち25に事前にロードすることができ、残りの7つの培地リザーバ170は、あらゆる薬剤が事前にロードされていない、または1つもしくは複数の対照の化学物質もしくは薬剤が事前にロードされているなどの種々の対照として使用される。
【0041】
それによって、あらゆる薬剤がない培地リザーバ170は、培養培地のみを含む。そのような培地リザーバ170は、細胞チャネル530の接続されたセット内で捕捉された細胞の、培養培地に対する応答をモニターすることを可能にするための対照として使用することができる。そのような場合において、細胞の1つまたは複数の薬剤に対する応答は、細胞の培養培地に対する応答に関連して決定することができる。
【0042】
一実施形態において、薬剤は抗菌剤である。現在の好ましい抗菌剤の例は、抗生物質である。
【0043】
一実施形態において、複数の培地リザーバ170の各培地リザーバ170は、2つの分離した相互接続チャンバ170A、170Bを含む。
【0044】
そのような一実施形態において、培養培地源110、400から供給された培養培地は、好ましくは培地リザーバ170のそれぞれの第1または後方チャンバ170Aに供給される。培養培地は、その後、第1または後方チャンバ170Aから培地リザーバ170のそれぞれの第2または前方チャンバ170Bに押される。そのようなアプローチは、第1または後方チャンバ170A内の培養培地の明確に定義された体積の計量を可能にし、その後の第2または前方チャンバ170Bへのこの体積の培養培地の供給を可能にする。そのような一実施形態において、培地リザーバ170に事前にロードされた任意の薬剤は、好ましくは第2または前方チャンバ170Bに事前にロードされる。比較的大量の薬剤が培地リザーバ170への事前のロードに必要である、および/または薬剤が培養培地中に溶解または分散されるようになるのに比較的長期間必要とする場合、薬剤の主要部分は、好ましくは第1または後方チャンバ170Aに事前にロードされた薬剤の補完量で第2または前方チャンバ170Bに事前にロードされる。
【0045】
一実施形態において、カートリッジ1は、培地バルブチャンバ120をさらに含む。培地バルブチャンバ120は、培養培地源110、400と流体連通している入口穴121を含む。培地バルブチャンバ120はまた、複数の培地リザーバ穴123を含む。複数の培地リザーバ穴123の各培地リザーバ穴123は、複数の培地リザーバ170の各培地リザーバ170と流体連通している。カートリッジ1はまた、培養培地供給源110、400から入口穴121を通って供給された培養培地を複数の培地リザーバ穴123に導くように構成された培養培地バルブ420を含む。
【0046】
特定の実施形態において、培養培地バルブ420は、培養培地源110、400から入口穴121を通り、複数の培地リザーバ170に複数の培地リザーバ穴123を通って供給された培養培地を導くように構成されている。
【0047】
培地チャンバ120および培養培地バルブ420は、入口穴121を通って培養培地源110、400からの培養培地の流入を、複数の培地リザーバ穴123を通って複数の培地リザーバ170への培養培地の流出に向け直すように構成されている。
【0048】
一実施形態において、培養培地バルブ420は、培養培地が複数の培地リザーバ170に供給されると、複数の培地リザーバ穴123を遮断するように構成されている。それによって、培養培地バルブ420は、1つの培地リザーバ170から培地チャンバ120へ、さらに複数の培地リザーバ170の別の培地リザーバ170への培養培地のあらゆる逆流を防止または制限する。
【0049】
一実施形態において、カートリッジ1は、試料チャンバ140から細胞チャネル530の複数のセット531に生体試料を移動させるように構成されたポンプ410を含む。
【0050】
一実施形態において、カートリッジ1は、細胞チャネル530の複数のセット531および培養培地源110、400と流体接続または連通するように構成された界面活性剤チャンバ128を含む。そのような実施形態において、界面活性剤チャンバ128は、培養培地源110、400から供給された培養培地中に溶解または分散されるように構成された界面活性剤が事前にロードされている。培養培地中に溶解または分散された界面活性剤は、細胞チャネル530の複数のセット531に供給されるように構成されている。
【0051】
特定の実施形態において、界面活性剤チャンバ128は、培養培地源110、400から供給された培養培地中に溶解または分散されるように構成された界面活性剤が事前にロードされている。培養培地中に溶解または分散された界面活性剤は、生体試料の前に細胞チャネル530の複数のセット531に供給されるように構成されている。
【0052】
そのような一実施形態において、細胞チャネル530およびマイクロ流体チップ500の任意の流体チャネルは、生体試料をマイクロ流体チップ500にロードする前に界面活性剤が供給された培養培地で湿らせていることが好ましい。界面活性剤は、好ましくは細胞チャネル530およびマイクロ流体チップ500の任意の他の流体チャネルの内面をコーティングし、それによって、生体試料をマイクロ流体チップ500にロードすることを容易にする。それによって、そのように湿らせることは、生体試料をマイクロ流体チップ500に押すのに必要なあらゆる圧力を低下させる。
【0053】
一実施形態において、培養培地源110、400は、培養培地を予めパッケージした培養培地容器400を含む。培養培地源100、400はまた、培養培地容器400を収容するように構成されたチャンバ110を含む。チャンバ110は、複数の培地リザーバ170と流体接続または連通した排水孔113を含む。チャンバ110はまた、培養培地容器400の表面を切断して培養培地を排水孔113に供給するように構成されたカッター114を含む。
【0054】
特定の実施形態において、培養培地容器400は、培養培地容器400上にガス圧力および好ましくは空気圧力などの流体圧力の適用により押され、カッター114上に培養培地容器400を押圧し、それによって培養培地容器400の表面を切断する。
【0055】
一実施形態において、カートリッジ1は、マイクロ流体チップ500に取り付けられたチップ担体550を含む。チップ担体550は、細胞チャネル530の複数のセット531と試料チャンバ140との間の流体接続を提供するように構成された穴554の第1のセットを含む。チップ担体550はまた、穴558の第2のセットを含む。穴558の第2のセットの各穴558は、細胞チャネル530の複数のセット531の細胞チャネル530の各セット531と、複数の培地リザーバ170の各培地リザーバ170との間の流体接続を提供するように構成されている。
【0056】
特定の実施形態において、細胞チャネル530の複数のセット531の細胞チャネル530の各セット531は、穴554の第1のセットの穴554と流体連通する第1のポート514および穴558の第2のセットの穴558と流体連通する第2のポート512を含む。
【0057】
一実施形態において、カートリッジ1は、チップチャンバ105、試料チャンバ140、複数の培地リザーバ170および培養培地源110、400を含む基板100をさらに含む。カートリッジ1はまた、基板100に取り付けられた蓋200を含み、細胞チャネル530の複数のセット531を画像化することを可能にするように構成された窓210を含む。
【0058】
一実施形態において、細胞チャネル530の複数のセット531の細胞チャネル530の各セット531は、細胞チャネル530の複数のセット531の細胞チャネル530の他のセット531から分離されている、マイクロ流体チップ500内の区画として形成される。
【0059】
カートリッジおよびその含まれている部品は、ここで、添付の図面に関連してより詳細に説明されており、続いてカートリッジの典型的な使用を説明する。
【0060】
図1Aおよび図1Bは、上(図1A)および下(図1B)からの一実施形態によるカートリッジ1の一実施形態の分解立体図である。カートリッジ1は、典型的にチップ担体550に取り付けられたか結合されたマイクロ流体チップ500およびマイクロ流体チップ500内に捕捉されている細胞のための培養培地を含む培地ブリスター400を収容するようにデザインされたカートリッジ基板とも呼ばれる基板100を含む。カートリッジ1はまた、それぞれ培養培地および生体試料のための逆止弁ならびに生体試料の体積の正確な計量のためのドーム型ポンプ410として機能するバルブ420、430を含む。試料フィルタ630は、生体試料をマイクロ流体チップ500にロードする前に、生体試料を濾過するためにカートリッジ1に含まれることが好ましい。カートリッジ1は、操作圧力で空気などのガスを透過するが液体を透過させない多数のガス透過膜600、610をさらに含む。カートリッジ1は、場合によっては、ガス透過膜600と整列し、基板100と密閉接続しているガス透過膜600を維持する膜コンプレッサ620を含む。上蓋200は、基板100の下面または底面103に取り付けるようにデザインされた対応する裏蓋300とともに、基板100の上側面または上面102に取り付けるようにデザインされている。キャップ235は、生体試料が試料チャンバに添加されると、基板100内に試料チャンバを閉じるために上蓋200に収まるようにデザインされている。
【0061】
カートリッジ1は、種々の実施形態にしたがって組み立てることができる。例証的なアセンブリの実施形態において、図2Aに示されるように、試料フィルタ630は、基板100の底面103内に一致する開口を有しているフィルタチャンバまたはウェル146に挿入され、好ましくは押圧される。図2Bに示されるように、裏蓋300は、その後、例えば裏蓋300を基板100に溶接することにより、例えばレーザ溶接することにより、基板100の底面103に取り付けられる。図2Bに示唆されるように、固定具上の任意選択のガイドピンを使用して、裏蓋300および基板100を整列させることができる。図はまた、裏蓋300が基板100内の対応する開口104と整列するように構成されている開口または窓310を含むことを示す。これらの開口104、310は、順に使用中、細胞チャネル530を含むマイクロ流体チップ500の一部と整列させるように構成され、その中で生体試料中に存在する細胞が捕捉され、培養される。したがって、基板100内および裏蓋300内の開口104、310は、それぞれ、チップチャンバ105内に配置されるようなマイクロ流体チップ500の一部への視覚的アクセス、特にマイクロ流体チップ500内の細胞チャネル530のセット531への視覚的アクセスを可能にする。
【0062】
図2Cに示されるように、マイクロ流体チップ500は、例えばマイクロ流体チップ500をチップ担体550に結合することによりチップ担体550に取り付けられる。図2Cに示唆されるように、固定具上の任意選択のガイドピンを使用して、マイクロ流体チップ500およびチップ担体550を整列させることができる。図2Dに示唆されるように、その後、取り付けられたマイクロ流体チップ500を有するチップ担体550は、基板100内に一致するチップチャンバまたはウェル105に挿入される。チップ担体550は、好ましくは、例えばチップ担体550を基板100に溶接することにより、好ましくはレーザ溶接することにより、基板100に取り付けられる。図2Dに示されるように、固定具上の任意選択のガイドピンを使用して、チップ担体550および基板100を整列させることができる。
【0063】
図2Eに示されるように、ドーム型ポンプ410、培養培地バルブ420および試料バルブ430は、その後、基板100内の各チャンバまたはウェル120、150、180のそれぞれに挿入される。ドーム型ポンプ410およびバルブ420、430は、例えばドーム型ポンプ410およびバルブ420、430のそれぞれの円周に沿って、およびチャンバもしくはウェル120、150、180の底面に沿って、溶接、好ましくはレーザ溶接を適用することにより、好ましくは基板100に溶接される、例えばレーザ溶接される。図2Fは、培地ブリスター400を基板100内のブリスターチャンバまたはウェル110に挿入することを概略的に示す。培地ブリスター400は、好ましくは、培地ブリスター400の底面の周囲に沿って、例えば培地ブリスター400の底面の少なくとも一部および/またはブリスターチャンバもしくはウェル110の底面112の少なくとも一部に適用された接着剤、例えば接着テープにより基板100に取り付けられている。図2Gに示されるように、ガス透過膜600は、その後、基板100内の各膜チャンバまたはウェル106内に配置される。任意選択の実施形態において、膜コンプレッサ620を使用して、ガス透過膜600を膜チャンバ106内に密閉して取り付けることができる。膜チャンバ106内にガス透過膜600を固定するための他の技術を溶接または糊付けなどの代わりに使用することができる。ガス透過膜610は、基板100内の各圧力ポート108Aから108Eに対応して挿入される。最後に、図2Hに示されるように、例えば上蓋200を基板100に溶接することにより、好ましくはレーザ溶接することにより、上蓋200は基板100の上面102に取り付けられる。図2Hに示唆されるように、固定具上の任意選択のガイドピンを使用して、上蓋200および基板100を整列させることができる。図はまた、上蓋200が、マイクロ流体チップ500、ドーム型ポンプ410、培養培地バルブ420および試料バルブ430とそれぞれ整列させるように構成されている多数の開口または窓210、220、240、250を含むことを概略的に示す。上蓋200はまた、培地ブリスター400のためのブリスターカバー260として機能する隆起部を含むことが好ましい。
【0064】
カートリッジ1の異なる構成要素が組み立てられる順序は、上述され、図2Aから図2Hに示されるような順序と異なる可能性がある。
【0065】
カートリッジ1のすべての構成要素が、製造中に組み立てられ、その後、基板100ならびに上蓋200と裏蓋300により囲まれた構成要素を有するカートリッジ1として提供することができるので、本発明のカートリッジ1は、使用者により容易に取り扱うことができる。
【0066】
実際の使用に関連して、使用者は、図3Aに示されるように、上蓋200内の試料投入口230を通って、基板100内の試料チャンバまたはウェル140に生体試料を添加する(図17および図18も参照されたい)。一実施形態において、所定体積の生体試料は、好ましくは試料投入口230を通って試料チャンバ140に添加される。好ましい実施形態において、キャップまたは蓋235は、上蓋200内の試料投入口230に取り付けられ、図3Bに示されるように試料チャンバまたはウェル140内に生体試料を囲む。生体試料を有するカートリッジ1は、その後、生体試料をマイクロ流体チップ500にロードし、マイクロ流体チップ500内の生体試料中に存在する細胞を捕捉するように構成された機器(図示せず)に挿入することができる。機器はまた、マイクロ流体チップ500内で捕捉された細胞を本明細書にさらに記載されているように、好ましくは基板100内に事前にロードされている1つまたは複数の薬剤に曝露するように構成されていることが好ましい。1つまたは複数の薬剤に対するマイクロ流体チップ500内の細胞の応答、好ましくは表現型応答は、その後、機器によりモニターおよび分析することができる。
【0067】
基板100は、場合によっては、しかし好ましくは、カートリッジ1を機器に挿入する場合およびカートリッジ1を機器から取り外す場合など、カートリッジ1の手動の取り扱いが簡単になるグリップまたはハンドル101を含む。
【0068】
機器は、好ましくは加圧された液体、好ましくは加圧ガス、より好ましくは加圧空気を基板100内の圧力ポート108Aから108Hに適用することにより操作するように構成されている(図4Aを参照されたい)。加圧された流体のこれらの圧力ポート108Aから108Hへの適用を使用して、培地ブリスターを開き、基板100全体に、そしてマイクロ流体チップ500に向かって培養培地を輸送し、基板100全体に、そしてマイクロ流体チップ500に向かって生体試料を輸送し、そこで、生体試料中に存在するあらゆる細胞を捕捉する。
【0069】
図4A図4B図5、および図19に概略的に示されるように、培地ブリスター400は、本明細書においてブリスターポケットとも呼ばれるブリスターチャンバまたはウェル110内に提供される。好ましい実施形態において、ブリスターチャンバ110は、中央のくぼみ111および周囲の実質的に平坦なチャンバ底112を含む。そのような場合において、培地ブリスター400は、好ましくは、溶接することにより、例えばレーザ溶接することにより、または培地ブリスター400の底面の周囲部分に沿って適用された接着テープなどの接着剤により、周囲の平坦なチャンバ底112に取り付けられている。中央のくぼみ111は、排水孔113および1つまたは複数のカッター114を含む。中央のくぼみ111は、培地ブリスター400がブリスターチャンバ110内に配置される場合、カッター114が、培地ブリスター400の底面から離れた位置にあるように、十分に深い。
【0070】
培地ブリスター400は、マイクロ流体チップ500に輸送され、その中で、生体試料からマイクロ流体チップ500内で捕捉された細胞の培養のために使用される培養培地を含む。したがって、培地ブリスター400内に含まれる培養培地のタイプは、好ましくは捕捉されている細胞のタイプに基づいて選択される。
【0071】
培地ブリスター400は、金属および/またはプラスチックを含む種々の材料から製造することができる。培地ブリスター400の典型的な例は、プラスチックでコーティングされたアルミニウムブリスターである。培地ブリスター400の底は、好ましくは、カッター114により穴を開けて開くように構成された薄箔で製造される。例証的ではあるが、限定されない、そのような箔の例は、アルミ箔である。
【0072】
培地ブリスター400は、流体圧力、好ましくはガス圧力をブリスターチャンバ110と流体接続している圧力ポート108Eで適用することにより開かれる。より詳細には、加圧流体、好ましくは加圧ガス、より好ましくは加圧空気は、機器により圧力ポート108Eに導入され、圧力ポート108Eおよびブリスターチャンバ110を相互接続する圧力チャネル116を介してブリスターチャンバ110に流れる(図5を参照されたい)。加圧流体は、上蓋200と培地ブリスター400の上面との間のブリスターチャンバ110に導入される。それによって、加圧流体は、培地ブリスター400を中央のくぼみ111に向かって下方に押圧し、カッター114を培地ブリスター400の底に係合させて貫通させる。開いた培地ブリスター400内に含まれた培養培地は、適用された圧力により排水孔113を通って押され、本明細書では培地バルブポケットとも呼ばれる培地バルブチャンバまたはウェル120内の入口穴121に向かって基板100の底面103内のチャネル115に輸送される(図4B図6図17および図21を参照されたい)。
【0073】
図15は、排水孔113およびカッター114の一実施形態を示すブリスターチャンバ110の一部のクローズアップ図である。この実施形態において、カッター114は、好ましくは排水孔113に面するカッター114の側部117内のくぼみまたはチャネル118を含む。このくぼみまたはチャネル118は、培養培地を開いた培地ブリスター400から排水孔113に案内する。したがって、より効果的に培地ブリスター400を空にすることおよび培養培地を排水孔113に押すことは、カッター114がそのような案内または排水くぼみまたはチャネル118を含む場合に達成される。
【0074】
培養培地の排水孔113への排出を容易にするカッター114の別の特徴は、排水孔113に面しているカッター114の湾曲側部117を有していることである。図15で概略的に示されるように、排水孔113に面している側部117は、排水孔113の一部の周りでわずかに湾曲しているか弧状になっている。側部117のこの形状は、カッター114の側部117に沿った開いた培地ブリスター118から排水孔113に下がる培養培地の流れを促進する。
【0075】
図4A図4B図6および図21を参照して、培地バルブチャンバ120は、入口穴121に入る培養培地を多数の培地リザーバ170および後方チャネルリザーバ130に分配し、さらに基板100を通る培養培地の逆流を防止するようにデザインされている。培地バルブチャンバ120の底は、中央の入口穴121および後方チャネル穴122および入口穴121の周囲に円周状に配置された多数の培地リザーバ穴123を含む。培地バルブチャンバ120は、好ましくは、基板100内の培地リザーバ170につき、それぞれ培地リザーバ穴123を含む。
【0076】
培地バルブチャンバ120の底面の周囲または円周部分124は、好ましくは平坦であり、例えば溶接することにより、好ましくはレーザ溶接することにより、培養培地バルブ420を底面のこの周囲部分124に取り付けるのを可能にする。培養培地バルブ420は、好ましくは熱可塑性エラストマ(TPE)などの実質的に可撓性材料で製造されたディスクの形状である。培養培地が入口穴121に入る場合、培養培地は、培地バルブチャンバ120の底面と、圧力ポート108Eに加えられる圧力により上方に曲げられる培養培地バルブ420との間に押される。培養培地は、培地リザーバ穴123および後方チャネル穴122にさらに押される。
【0077】
一実施形態において、入口穴121から培地リザーバ穴123および後方チャネル穴122への培養培地の向け直しは、低圧(約2bar)を培養培地バルブ420の上側、すなわち培養培地バルブ420と上蓋200との間に適用することにより促進される。この低圧は、機器により圧力ポート108Gおよび圧力チャネル129Aを通って基板100の底面103および培地バルブチャンバ120の圧力入口129Bに適用される(図4Aおよび図4Bを参照されたい)。
【0078】
一実施形態において、培地バルブチャンバ120の底面は、後方チャネル穴122に接続された少なくとも1つのくぼんだ円形チャネル129を含む。この少なくとも1つのくぼんだ円形チャネル129は、培養培地を後方チャネル穴122に案内し、培養培地の培地バルブチャンバ120の排出を促進する(図6を参照されたい)。
【0079】
一実施形態において、培養培地は、培地バルブチャンバ120から培地リザーバ170へ最初に輸送され、培養培地を後方チャネルリザーバ130に輸送する前に等量で定義された体積の培養培地で各培地リザーバ170を充填する(図7図17および図21を参照されたい)。培地リザーバ170を充填した後の後方チャネルリザーバ130のこの連続的な充填は、流体圧力、好ましくはガス圧力、より好ましくは空気圧力を、後方チャネルリザーバ130と流体接続している圧力ポート108Aに適用することにより、制御することができる。最初に、圧力ポート108Aに適用された圧力は、各培地リザーバ穴123を培地リザーバ170と相互接続するチャネル内の任意の流動抵抗と比較して、後方チャネル穴122を後方チャネルリザーバ130と相互接続するチャネル内で、培養培地がより高い流動抵抗に曝露されることを意味する。
【0080】
培養培地バルブ420を有する培地バルブチャンバ120は、基板100の充填プロセス中にいくらかの機能を提供する。最初に、培地バルブチャンバ120および培養培地バルブ420は、1-対-(N+1)バルブとして動作し、Nは、培地リザーバ穴123の数および基板100内の培地リザーバ170の数を表す。換言すれば、培地バルブチャンバ120は、入口穴121を通る培養培地の流入をN個の培地リザーバ穴123および後方チャネル穴122に向け直す。
【0081】
培養培地バルブ420は、培養培地バルブ420の上への流体圧力、好ましくはガス圧力、より好ましくは空気圧力の適用により培地リザーバ170および/または後方チャネルリザーバ130から培地バルブチャンバ120に戻す培養培地の流れを防止する逆止弁としてさらに動作する。この圧力は、培養培地バルブ420を培地バルブチャンバ120の底面に向かって押し込み、それによって、培地バルブチャンバ120の底にある穴121、122、123を閉じる。結果として、穴121、122、123は密閉されるようになり、それによって、培地リザーバ170と後方チャネルリザーバ130との間のあらゆる望ましくないクロストークが防止される。これは、培養培地が、別の薬剤または同じ薬剤であるが異なる量で含むことができる別の培地リザーバに入る培養培地との混合からの1つの薬剤を含むことができる1つの培地リザーバ170に入るのを防止するために重要である。
【0082】
培養培地バルブ420を用いる培地バルブチャンバ120の閉鎖は、圧力ポート108Gで圧力を適用することにより達成され、加圧流体、好ましくは加圧ガス、より好ましくは加圧空気が圧力チャネル129Aを通って押され、圧力入口129Bを通って培地バルブチャンバ120に入るようにする(図4A図4Bおよび図6を参照されたい)。
【0083】
図4A図4Bおよび図7を参照して、各培地リザーバ穴123は、基板100の底面103内に配置された各培地チャネル126を通って培地リザーバ170の各入口穴171A、171Bに接続されている。培養培地は、培地チャネル126を通って押され、これらの入口穴171Aを通って培地リザーバ170に入る(図21も参照されたい)。
【0084】
培地リザーバ170は、所定体積の培養培地を収容するように、特に、複数の培地リザーバ170の各培地リザーバ170が同じまたは少なくとも実質的に同じ所定体積の培養培地を含むようにデザインされる。したがって、培地リザーバ170は、充填中の培地リザーバ170の内側で空気の除去を促進するようにデザインされており、それによって、存在する場合、培地リザーバ170を所定体積の培養培地で充填することを妨げる培地リザーバ170内のすべての気泡を捕捉するリスクを防止するか、少なくとも大いに低減する。
【0085】
培地リザーバ170は、培養培地と混合される薬剤が事前にロードされ、それによって培養培地中に薬剤を溶解または分散させるようにさらにデザインされる。複数の異なる培地リザーバ170を有することにより、異なる薬剤を異なる培地リザーバ170に含めること、および/または異なる培地リザーバ170内であるが異なる量で同じ薬剤を含み、それによって、所定体積の培養培地中に溶解または分散される場合、薬剤の異なる濃度を達成することが可能である。例えば、図4Aに概略的に示されるように、32の異なる培地リザーバ170を有する基板100に、5つの異なる濃度で5つの異なる薬剤を32の培地リザーバ170のうち25に事前にロードすることができ、残りの7つの培地リザーバ170は、あらゆる薬剤が事前にロードされていない、または1つもしくは複数の対照の化学物質もしくは薬剤が事前にロードされているなどの種々の対照として使用される。
【0086】
一実施形態において、各培地リザーバ170は、本明細書では後方チャンバまたはウェル170Aおよび前方チャンバまたはウェル170Bと示される、2つの別個ではあるが相互接続されたチャンバまたはウェルを含む。図4Bでより明らかに見えるように、培地バルブチャンバ120からの各培地チャネル126は、好ましくは、2つの入口穴171A、171Bに接続され、1つは後方チャンバ170Aに、1つは前方チャンバ170Bに接続される。前方チャンバ170Bは、マイクロ流体チップ500と流体接続しており、それによって、マイクロ流体チップ500内のマイクロ流体チャネルの微細な寸法により、後方チャンバ170Aにより及ぼされる流動抵抗よりも培地チャネル126内の培養培地に対してより高い流動抵抗を及ぼす。流動抵抗におけるこの差により、培地チャネル126内に流れる培養培地が後方チャンバ170Aの入口穴171Aに入るように押し込まれるが、前方チャンバ170Bの入口穴171Bには入らない。
【0087】
培地リザーバ170の後方チャンバ170Aは、好ましくは入口穴171Aを有するピラーチャンバまたはウェル172Aを含む。後方チャンバ170Aはまた、ピラーチャンバ172Aと後方チャンバ部分174Aとの間にウエスト173Aまたは狭い通路を有する後方チャンバまたはウェル部分174Aを含む。ウエスト173Aは、後方チャンバ170A内の培養培地の流れを制限し、そのため、培養培地が入口穴171Aを通って入る場合、培養培地が、ウエスト173Aを通過して後方チャンバ部分174Aに流れる前にピラーチャンバ172Aを最初に満たす。それによって、後方チャンバ170Aの初期の充填部分は、後方チャンバ部分174Aを充填し続ける前にピラーチャンバ172A内で培養培地のピラーを生成する。二段階での後方チャンバ170Aのこの連続的な充填は、後方チャンバ170A内に存在する空気をピラーチャンバ172Aから後方チャンバ部分174Aに、さらに基板100の底面103で配置されたチャネル176と一緒に、膜チャンバ106を有する後方チャンバ170Aを相互接続する通路175に排出することを容易にする。したがって、充填プロセス中に後方チャンバ170A内の小さい気泡の意図しない閉じ込めのリスクが最小化され、それによって、所定体積の培養培地での後方チャンバ170Aの正確な充填が可能になる。
【0088】
ピラーチャンバ172Aが培養培地で充填されると、培養培地はウエスト173Aを通って後方チャンバ部分174Aに押される。ピラーチャンバ172Aおよび後方チャンバ部分174Aが、両方とも培養培地で充填される場合、余分な培養培地はすべて、後方チャンバ部分174Aと通路175との間のパーティションまたは壁270の上で、後方チャンバ部分174Aおよび通路175を相互接続するチャネル271に押される(図16を参照されたい)。過剰の培養培地は、その後、通路175およびチャネル176を通って、膜チャンバ106に向かってさらに押される。
【0089】
膜チャンバ106は、それぞれ、空気などのガスがガス透過膜600を通過できるようにするが、培養培地がガス透過膜600を通過するのを制限するように構成されたガス透過膜600を含む。したがって、後方チャンバ170Aに存在する空気は、培養培地で充填する間、ガス透過膜600を通って、さらに膜チャンバ106と流体接続している圧力ポート108B、108Dを通って押される。これは、後方チャンバ170Aに存在するあらゆる空気が、充填プロセス中にそれから排出されることを意味する。後方チャンバ170Aが培養培地で充填されると、過剰の培養培地はすべて、通路175およびチャネル176を通って膜チャンバ106に押圧される。しかし、培養培地が膜チャンバ106内に存在するガス透過膜600に接触する場合、それ以上の流動が防止され、後方チャンバ170Aの充填プロセスが完了する。したがって、ガス透過膜106は、培地バルブチャンバ120内の培養培地バルブ420に圧力を加えることにより引き起こされる力よりも高い反力を培地に及ぼす。ガス透過膜600はまた、1つの後方チャンバ170A内の培養培地が膜チャンバ106および通路175およびチャネル176を通って別の後方チャンバ170Aに入るのを防止する。
【0090】
培地リザーバ170内の後方チャンバ170Aが所定体積の培養培地で充填されている場合、圧力ポート108Aを介して後方チャネルリザーバ130に適用された逆圧が開放される(図17を参照されたい)。これにより、残りの培養培地が、培地バルブチャンバ120から後方チャネル穴122および基板100の底面103の培地チャネル125を通って押されるようになる(図4Bを参照されたい)。さらに、培地リザーバ170が充填されると、培地ブリスター400には一定体積の培養培地が依然として存在する可能性がある。その後、この体積の培養培地は、培地バルブチャンバ120を通って後方チャネルリザーバ130に排出される。
【0091】
好ましい実施形態において、そして図4A図4B図8図17および図22を参照して、培養培地は、後方チャネルリザーバ130に到達する前に界面活性剤チャンバまたはウェル128を通って通過する。この界面活性剤チャンバ128は、好ましくは界面活性剤チャンバ128内の培養培地と混合および溶解される界面活性剤で事前にロードされる。界面活性剤は、好ましくは培養培地に溶解されるか、少なくとも分散され、生体試料をマイクロ流体チップ500に輸送する前にマイクロ流体チップ500内のマイクロ流体チャネルを湿らせるために使用される。
【0092】
培養培地に溶解または少なくとも分散することができ、マイクロ流体チップ500内のマイクロ流体チャネルを湿らせることができる任意の界面活性剤は、本発明にしたがって使用することができ、界面活性剤ウェル128に事前にロードすることができる。限定されないが、例証的な界面活性剤の例は、ポロキサマーなどの非イオン性界面活性剤である。ポロキサマーは、ポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))の2つの親水性鎖が隣接したポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))の中央の疎水性鎖で構成された三元ブロック共重合体である。界面活性剤として使用することができるポロキサマーの例には、商標名PLURONIC(登録商標)、例えばPLURONIC(登録商標)F108で販売されているポロキサマーが含まれる。
【0093】
界面活性剤チャンバ128は、好ましくは、界面活性剤チャンバ128の上部に配置され、それによって界面活性剤チャンバ128に入る培養培地が培地チャネル125から入口穴127Aを通って入るように強制され、出口穴127Bを通って界面活性剤チャンバ128を出る前に界面活性剤チャンバ128の底で事前にロードされた界面活性剤と接触させる入口穴127Aおよび出口穴127Bを有するようにデザインされる。これにより、界面活性剤チャンバ128を出る前に、界面活性剤を培養培地に溶解または分散されることが可能になる。界面活性剤を有する培養培地は、その後チャネルシステム127C、127Dを通ってカートリッジ103の底面103に、そして後方チャネルリザーバ130への入口穴131に到達する前に担体チップ550内の第1のチャネル551に輸送される。
【0094】
一実施形態において、そして図4A図4Bおよび図9を参照して、後方チャネルリザーバ130は、ピラーチャンバまたはウェル132に入る入口穴131を有する培地リザーバ170の後方チャンバ170Aと同様な方法でデザインされる。ピラーチャンバ132は、狭いウエスト133を通って後方チャンバまたはウェル134に接続される。後方チャンバ134はまた、通路135を通って後方チャネル廃棄物136にも接続される。
【0095】
界面活性剤を有する培養培地は、入口穴131を通って後方チャネルリザーバ130に入り、ウエスト133を通って後方チャンバ134および通路135に、そして後方チャネル廃棄物136に空気を排出しながら、最初にピラーチャンバ132を充填する。後方チャネルウエスト136は、圧力ポート108Aと流体接続され、それによって後方チャネル廃棄物136に空気が入り、圧力ポート108Aを通って出ることを可能にする。界面活性剤を有する培養培地がピラーを形成し、完全にピラーチャンバ132を充填すると、界面活性剤を有する培養培地は、ウエスト133を通って後方チャンバ134に押される。界面活性剤を有する過剰の培養培地はいずれも、後方チャンバ134が充填される場合にも、通路135を通って後方チャネル廃棄物136に入る。したがって、後方チャネル廃棄物136は、後方チャネルリザーバ130に押される界面活性剤を有するすべての余剰の培養培地を収容することができる容積を有するようにデザインされる。
【0096】
基板100は、好ましくはドーム型ポンプ410を含むように構成されたドームポンプチャンバまたはウェル180を含む(図4A図4Bおよび図10を参照されたい)。ドーム型ポンプ410は、例えばドーム型ポンプ410の円周部分をドームポンプチャンバ180の底面の周囲部分181に溶接することにより、好ましくはレーザ溶接することによりドームポンプチャンバ180の底面に取り付けられる。ドーム型ポンプ410は、ドームポンプチャンバ180の底面に取り付けられる場合、規定体積の空気を囲む。
【0097】
圧力が圧力ポート108Eを通って培地チャンバ110内の培地ブリスター400に適用されると、圧力は、好ましくは同時に、ドームポンプチャンバ180内の圧力チャネル187および圧力入口183を介して圧力ポート108Hを通ってドーム型ポンプ410の上部に適用される(図17を参照されたい)。適用された圧力は、ドーム型ポンプ410をドームポンプチャンバ180の底面に向かって下方に押す。ドームポンプチャンバ180内のドーム型ポンプ410により含まれている所定体積の空気は、その後、好ましくはドームポンプチャンバ180の中央に配置されている排水孔182を通って押圧される。底面は、場合によっては、圧縮空気を排水孔182に案内するためのコイル状のくぼみ188を含む。
【0098】
排水孔182は、基板100の底面103内の空気チャネル184を介して試料チャンバまたはウェル140内の入口穴185と流体接続している。基板100の上面102にある入口穴185および空気通路186を通って試料チャンバ140に入る所定体積の空気は、制御された体積の生体試料を試料リザーバ140から排水孔141および試料輸送システムを通って、本明細書ではフィルタポケットとも示されるフィルタチャンバまたはウェル146に向かって押される。一実施形態において、輸送システムは、基板100の底面103内のチャネル142、基板100の底面103から上面102へのチャネル143、および基板100の上面102内のチャネル144を含む。それによって、生体試料は、入口穴145に、フィルタチャンバ146に、そしてフィルタチャンバ146内に配置された試料フィルタ630を通って押される(図17および図20も参照されたい)。試料フィルタ630は、フィルタチャンバ146内に配置され、生体試料に存在する大きな破片、塵または汚れをすべて濾過して除去するが、生体試料中に存在するあらゆる細胞が試料フィルタ630を通って通過することを可能にする。濾過済み生体試料は、基板100の底面103内のチャネル147を通って、本明細書では試料バルブポケットとも示される試料バルブチャンバまたはウェル150の入口穴148にさらに輸送される(図20も参照されたい)。
【0099】
図4A図4Bおよび図8を参照して、試料バルブチャンバ150は、好ましくは試料バルブ430の円周部分を試料バルブチャンバ150の底面の周囲部分に溶接することにより、例えばレーザ溶接することにより、試料バルブチャンバ150に取り付けられている試料バルブ430を含む。試料バルブ430は、TPEディスクの形状などの可撓性材料で製造され、逆止弁として機能する。試料バルブチャンバ150は、入口穴148に加えて、試料バルブチャンバ150の底面にある排水孔151を含む。入口穴148を通ってバルブチャンバに入る濾過済み生体試料は、さらにこの排水孔151を通って押され、輸送システムにより試料リザーバ160に輸送される。一実施形態において、輸送システムは、基板100の底面103に配置された第1のT字型チャネル152、チップ担体550内の第2のチャネル553および基板100の底面103に配置され、入口穴154で試料リザーバ160に入る第2のT字型チャネル153を含む(図17および図20を参照されたい)。
【0100】
一実施形態において、そして図4A図4Bおよび図11を参照して、試料リザーバ160は、ウエスト162を通って後方チャンバ163および通路164に、そして試料廃棄物165に空気を排出しながら、濾過済み生体試料で最初に充填されたピラーチャンバまたはウェル161内に入口穴154を有する後方チャネルリザーバ130と同様にデザインされる。試料廃棄物165は、圧力ポート108Fと流体接続しており、それによって空気が試料廃棄物165に入り、圧力ポート108Fを通って出ることを可能にする。濾過済み生体試料がピラーを形成し、ピラーチャンバ161を完全に充填すると、濾過済み生体試料は、ウエスト162を通って後方チャンバ163に押される。後方チャンバ163も充填されている場合、過剰の濾過済み生体試料はいずれも、通路164を通って試料廃棄物165に入る。したがって、試料廃棄物165は、試料リザーバ160に押されるすべての過剰の濾過済み生体試料を収容することができる容積を有するようにデザインされている。
【0101】
本明細書で以前考察されたように、試料バルブチャンバ150は、チャンバ120、150間の通路155を介して培地バルブチャンバ120と流体接続している。したがって、圧力が培地バルブチャンバ120に適用され、その中で培養培地バルブ420を培地バルブチャンバ120の底面に向かって押圧し、後方チャネルリザーバ130および培地リザーバ170からの培養培地の培地バルブチャンバ120に向かう逆流を防止する場合、圧力はまた、試料バルブチャンバ150に適用され、その中で試料バルブ430を試料バルブチャンバ150の底面に向かって押圧する。それによって、試料バルブ430は、試料リザーバ160から試料バルブチャンバ150に向かう濾過済み生体試料の逆流を防止する。
【0102】
図4A図4Bおよび図7を参照して、後方チャンバ170Aおよび通路175およびチャネル176に含まれている所定体積の培養培地は、その後、後方チャンバ170Aの入口穴171Aを通って、圧力ポート108B、108Dを通って膜チャンバ106に対する過剰圧力の適用により、前方チャンバ170Bの入口穴171Bに押圧される(図17および図23を参照されたい)。
【0103】
一実施形態において、前方チャンバ170Bは、ピラーチャンバまたはウェル172B、ウエスト173Bおよび前方チャンバ部分174Bを有する後方チャンバ170Aと同様な方法でデザインされる。培養培地は、入口穴171Bを通って前方チャンバ170Bに入り、ウエスト173B、前方チャンバ部分174Bおよび基板100の底面103の各チャネル178を通ってマイクロ流体チップ500と接続した排水孔177を通って空気を排出する間、ピラーチャンバ172Bを充填し始める。培養培地は、最初にピラーを形成するピラーチャンバ172Bを充填してから、ウエスト173Bを通って前方チャンバ部分174Bに流入する。
【0104】
前方チャンバ170Bの内部容積は、好ましくは後方チャンバ170Aの内部容積とほぼ等しい、より好ましくはそれより小さい。これは、後方チャンバ170Aに充填される前に前方チャンバ170Bを培養培地で完全に充填することができることを意味する。
【0105】
本明細書で以前開示されたように、複数の培地リザーバ170の少なくとも一部は、1つまたは複数の薬剤を含む。一実施形態において、薬剤は、培地リザーバ170の前方チャンバ170Bに、好ましくは前方チャンバ170Bの前方チャンバ部分174Bに事前にロードされる。別の実施形態において、薬剤は、培地リザーバ170の後方チャンバ170Aに、好ましくは後方チャンバ170Aの後方チャンバ部分174Aに事前にロードされる。薬剤の一部を前方チャンバ170B内、例えば前方チャンバ部分174B内に、および薬剤の残りの部分を後方チャンバ170A内、例えば後方チャンバ部分174A内に事前にロードすることも可能である。一般に培地リザーバ170の前方チャンバ170B内に薬剤を事前にロードすることは好ましい。しかし、いくらかの薬剤は、培養培地中に溶解または少なくとも分散するために比較的長い期間を必要とする。そのような場合において、薬剤のすべてまたは少なくとも一部を後方チャンバ170A内に事前にロードし、それによって薬剤を培養培地と接触している時間を延長することが有利である可能性がある。したがって、一実施形態において、薬剤は、前方チャンバ170B内、例えば前方チャンバ部分174Bに事前にロードされ、任意選択で補足または追加の薬剤が後方チャンバ170A、例えば後方チャンバ部分174Aに事前にロードされる。
【0106】
一実施形態において、前方チャンバ170Bは、実質的に均質な濃度の薬剤を有する培養培地を得るために、前方チャンバ170B内の任意の事前にロードされた薬剤および培養培地の混合を促進するように構成された混合装置273を含む(図16を参照されたい)。一実施形態において、この混合装置273または機能は、排水孔177と前方チャンバ部分174Aとの間に配置されたステップ273を有することにより達成される。これは、前方チャンバ部分174Aの底272が、このステップ273に対して、およびピラーチャンバ172Bに対して相対的に下げられることを意味する。したがって、図16に示されるように、薬剤をロードすることができる前方チャンバ部分174A内のへこみがある。培養培地が前方チャンバ170Bに押される場合、ステップ273は、前方チャンバ部分174Bの内側に乱流を引き起こし、底272で事前にロードされた薬剤および培養培地の効率的な混合を促進する。
【0107】
この点で、カートリッジ1の充填操作は、試料リザーバ160内に存在する濾過済み生体試料、後方チャネルリザーバ130および前方チャンバ170B内の培養培地を含む培地リザーバ170内の界面活性剤を有する培養培地で完了し、これらの前方チャンバ170Bの少なくとも一部内の培養培地は、溶解または分散された薬剤を含む。
【0108】
図12から図14および図28は、マイクロ流体チップ500およびチップ担体550を詳細に例証する。チップ担体550は、マイクロ流体チップ500にアクセスを提供する入口穴552、554、556、558のマトリックスまたはアレイを含む。このマトリックスは、好ましくは、4列の穴およびN行の穴を含む。チップ担体550内の中央の窓559に最も近い第1の列550A内の穴552は、好ましくはチップ担体550の底面に沿って走る第1のチャネル551を介して相互接続される。この第1のチャネル551は、順に、T字型チャネル127Dを介して後方チャネルリザーバ130と、輸送システム127を介して培地バルブチャンバ120と流体接続している。第2の列550B内の穴554はまた、好ましくは、チップ担体550の底面内の第2のチャネル553を介して相互接続されている。この第2のチャネル553は、T字型チャネル153を介して試料リザーバ160と、T字型チャネル152を介して試料バルブチャンバ150と流体接続している。第3の列550C内の穴556は、好ましくはチップ担体550の底面内のチャネル555を介して相互接続されている。このチャネルは、順に、基板100の底面103内のチャネル191を介して廃棄物チャンバ190と流体接続している。最も外側の第4の列550D内の穴558は、互いに相互接続されていない。はっきりと対照的に、この第4の列内の各穴558は、チャネル178を介して各培地リザーバ170に接続されている。
【0109】
N行の4つの穴552、554、556、558の各行は、細胞チャネル530のセット531のポート512、514、522と流体接続している(図14図29から図31を参照されたい)。したがって、マイクロ流体チップ500は、生体試料中に存在する細胞を捕捉するように構成された細胞チャネル530の複数のそのようなセット531を含む。細胞チャネル530の各セット531は、投入チャネル510のいずれかの端で各第1および第2の投入ポート512、514および出力ポート522を有する出力チャネル520を有する投入チャネル510を含む。その後、細胞チャネル530は、好ましくは、投入チャネル510と出力チャネル520との間で平行に配置される。したがって、セット内の各細胞チャネル530は、投入チャネル510と流体接続している第1の端532および出力チャネル520と流体接続している第2の端534を有している。細胞チャネル530の少なくとも一部は、投入チャネル510から細胞チャネル530に入る細胞が、細胞チャネル530を出て、出力チャネル520に入るのを遮断するように構成された細胞ブロック535をさらに含む。したがって、この細胞ブロック535は、細胞チャネル530に入るあらゆる細胞をトラップして捕捉する。細胞チャネル530ならびに投入および出力チャネル510、520のセット531のデザインの詳細な情報は、米国特許第10,041,104号に認めることができる。米国特許第10,041,104号は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0110】
第1の列550A内の穴552は、出力チャネル520の出力ポート522と流体接続しており(図29を参照されたい)、第2の列550B内の穴554は、投入チャネル510の一端で第2の投入ポート514と流体接続しており(図30を参照されたい)、一方で、第3および第4の列550C、550D内の穴556、558は、投入チャネル510の他の端で第1の投入ポート512と流体接続している(図31を参照されたい)。
【0111】
マイクロ流体チップ500に濾過済み生体試料をロードする前、マイクロ流体チップ500のマイクロ流体チャネルは、好ましくはこれらのマイクロ流体チャネル内に捕捉されたあらゆる空気を除去するように湿らされている(図17および図24を参照されたい)。マイクロ流体チップ500の湿潤は、後方チャネルリザーバ130内に含まれた界面活性剤を含む培養培地で実行される。したがって、圧力は、後方チャネル廃棄物136および狭いチャネル135を通って後方チャネルリザーバ130と流体接続している圧力ポート108Aに適用される。それによって、界面活性剤を含む培養培地は、後方チャネルリザーバ130から穴552およびチップ担体550内の第1の列550A内の第1のチャネル551に押される(図29を参照されたい)。それによって界面活性剤を有する培養培地は、出力ポート522および出力チャネル520を通ってマイクロ流体チップ500内の細胞チャネル520のセット531に入り、細胞チャネル530を通って投入チャネル510に流れ、第2の投入ポート512を通って出る。その後、界面活性剤を有する過剰の培養培地は、第3の列550Cの穴556に流れ、さらにチャネル191を介して廃棄物チャンバ190に流れる。マイクロ流体チップ500のこの初期の湿潤は、マイクロ流体チップ500内、すなわち細胞チャネル530のセット531ならびに投入および出力チャネル510、520内にトラップされたあらゆる空気を除去する。さらに、培養培地中に溶解または分散された界面活性剤は、細胞チャネル530ならびに投入および出力チャネル510、520の表面をコートし、それによって、生体試料および溶解または分散された薬剤を有する培養培地の流動抵抗を低減する。
【0112】
マイクロ流体チップ500の湿潤が終了すると、濾過済み生体試料は、マイクロ流体チップ500に押され、細胞チャネル530内の濾過済み生体試料中に存在するあらゆる細胞をその中で捕捉する(図17図26および図30を参照されたい)。それによって、機器は圧力を試料リザーバ160と流体接続している圧力ポート108Fに試料廃棄物チャンバ165および通路164を介して適用する。それによって、試料リザーバ160内の濾過済み生体試料は、入口穴154を通ってT字型チャネル153に押され、さらにチップ担体550内の第2の列550B内の穴554および第2のチャネル553に押される。濾過済み生体試料は、第2の投入ポート514を介して投入チャネル510に、その後細胞チャネル530にさらに押される。濾過済み生体試料は、細胞チャネル530の第2の端534を通ってさらに流出し、出力チャネル520に入り、出力ポート522を通って出、その後、マイクロ流体チップ500を離れる。濾過済み生体試料中に存在する細胞は、その中に提供された細胞ブロック535により細胞チャネル530内にトラップされる。過剰の濾過済み生体試料は、第1の列550A内の穴552および第1のチャネル511に、さらに後方チャネルリザーバ130および後方チャネル廃棄物チャンバ136に流れるのを可能にする。充填プロセス中、過剰の濾過済み生体試料はまた、第1の投入ポート512を通って投入チャネル510を離れ、その後第3の列550C内の穴556および第3のチャネル555に入り、それによって廃棄物チャンバ190に入る可能性がある。
【0113】
この点で、生体試料中に存在する細胞は、マイクロ流体チップ500内の細胞チャネル530内で捕捉されており、ここで、ロードされた培地リザーバ170内の培養培地中に溶解または分散された1つまたは複数の薬剤に曝露され得る(図17および図27を参照されたい)。したがって、機器は、チャネル176および膜チャンバ106を介して培地リザーバ170と流体接続している圧力ポート108B、108Dで圧力を適用する。適用された圧力は、溶解または分散された薬剤、溶解された対照の化学物質または溶解していない化学物質もしくは薬剤を有する培養培地を押圧し、基板100の底面103で排水孔177およびチャネル178を通って出て、チップ担体550の第4の列550D内の各穴558に入る(図31を参照されたい)。溶解または分散された薬剤もしくは化学物質を有する培養培地は、さらに投入チャネル520の第1の投入ポート512に押され、細胞チャネル530に流れ、出力チャネル520および出力ポート522に流出する。培養培地のこの流れは、細胞チャネル530の1つのセット531内の細胞チャネル530内で捕捉された細胞が、規定濃度の薬剤に曝露されるが、細胞チャネル530の別のセット531内の細胞チャネル530内で捕捉された細胞が、別の所定濃度の薬剤、所定濃度の別の薬剤、対照の化学物質、または単に培養培地に曝露され得ることを意味する。細胞チャネル530の複数のセット531、例えば図に示されるように2×N個または32個を有することにより、複数の異なる薬剤および種々の濃度のこれらの複数の異なる薬剤は、1つの特定の生体試料について試験することができ、内部対照が細胞チャネル530の1つまたは複数のセット531内にあることを依然として可能にする。任意の溶解または分散された薬剤もしくは対照の化学物質を有する過剰の培養培地は、出力ポート522から第1の列550Aの穴552および第1のチャネル551に流れ、その後、後方チャネルリザーバ130および後方チャネル廃棄物チャンバ136を通って流出する。過剰の培養培地はまた、第2の投入ポート514を通って投入チャネル510を離れ、第3の列550Cの穴554および第3のチャネル555に出て、その後、廃棄物チャンバ190に出る可能性がある。
【0114】
細胞チャネル530内でトラップされた細胞の種々の薬剤に対する応答は、その後機器によりモニターおよび分析することができる。特定の実施形態において、細胞の種々の薬剤に対する表現型応答は、機器によりモニターおよび分析される。増殖速度、形状、サイズ、経時的に増殖速度を規定する増殖速度曲線の形状、経時的に細胞の長さを規定する長さ曲線の形状、経時的に細胞面積を規定する面積曲線の形状、色、光学密度、電気伝導度、熱生成、アフィニティ試薬により観察されるような表面抗原組成、吸収スペクトルおよび少なくとも2つのそのような表現型特徴の混合を含むがこれらに限定されない種々のタイプの表現型応答および表現型特徴を、モニターおよび分析することができる。
【0115】
増殖速度は、捕捉された細胞の種々の薬剤に対する応答を決定するために好都合に使用することができる表現型特徴または形質である。増殖速度は、例えば各細胞チャネル530内の細胞の数を増殖する細胞について経時的に増殖する数としてモニターすることにより決定することができる。代わりに、またはさらに、増殖速度は、細胞により占められている細胞チャネル530の一部の長さをモニターすることにより決定することができる。この長さは、増殖する細胞について経時的に増加するが、生存不能および非増殖細胞については同じままである。代わりに、またはさらに、増殖速度は、細胞チャネル530の画像内で分割された面積または細胞の長さをモニターすることにより決定することができる。
【0116】
経時的な増殖速度は、典型的に、培養培地中のあらゆる薬剤の存在および/または薬剤の濃度に応じて変化する可能性がある。いくらかの場合において、細胞は、指数関数的に増殖するが、他の場合において、細胞はより周期的な方法で増殖する。したがって、増殖速度曲線の形または形状は、種々の薬剤に対する細胞の表現型応答を決定するために使用することができる。
【0117】
薬剤の不在下または存在下で細胞によって変化することができる他の表現型特徴には、形状、サイズ、色および光学密度が含まれる。光学密度、色または他のスペクトル特性は、細胞の内容物、細胞の形状などに応じて異なる可能性がある。したがって、光学特性は、種々の薬剤に対する細胞の応答を決定するために使用することができる。導電率および熱生成は、細胞の化学組成および代謝状態に依存し、そのため、薬剤に対する細胞応答を決定するための基礎を構成することができる。
【0118】
機器は、好ましくは細胞チャネル530内にトラップされた細胞を多かれ少なかれ連続的に、または溶解もしくは分散された薬剤を有する培養培地が細胞チャネル530を通って流れる複数の時点のいずれかでモニターするように構成されている。例えば、機器は、種々の薬剤に対する細胞の応答をモニターするための1つまたは複数のビデオカメラ、または選択された時点で細胞チャネルのセット531の写真を撮影する1つもしくは複数のカメラを含むことができる。
【0119】
特定の実施形態において、機器は、顕微鏡、例えば電荷結合素子(CCD)および相補型金属酸化膜半導体(CMOS)カメラ、または蛍光、ラマンイメージング、コヒーレント反ストークスラマン散乱(CARS)、誘導ラマン散乱(SRS)および死細胞および生細胞についてスペクトル変化を与える同様の化学的に敏感な技術のための共焦点走査システムなどのカメラに接続した位相差顕微鏡を使用して細胞チャネル530内の細胞の写真を撮影する。これには、化学的に特異的なプローブおよび染料など、増殖培地へのコントラスト増強添加物のありなしで、1つまたはいくらかの波長での測定が含まれる。
【0120】
導電率および/または熱生成は、細胞チャネル内に配置された、またはそれと接続した機器の電極またはセンサにより測定することができる。
【0121】
特定の実施形態において、カートリッジ1および機器は、生体試料、例えば尿試料中に存在する細菌のASTのために使用される。その後、図に示されるようにデザインされた基板100は、例えば、32の培地リザーバ170のうち25でそれぞれ5つの異なる濃度で、5つの異なる抗生物質を事前にロードすることができる。残りの7つの培地リザーバ170は、空である、すなわち化学物質で事前にロードされていない可能性があるか、その少なくとも一部は、1つまたは複数の対照の化学物質で事前にロードされている可能性がある。その後、生体試料、例えば尿試料中の細菌の増殖速度に関してなどの表現型応答は、カートリッジ1および機器を使用して、典型的には1時間または数時間以内、さらには1時間以内で、非常に短期間で決定することができる。これは、少なくとも一晩細菌の培養を必要とする従来の培養ベースのAST法と比較する必要がある。
【0122】
本発明の別の態様は、生体試料を分析する方法に関する(図32を参照されたい)。方法は、ステップS1において、細胞を含む生体試料をマイクロ流体チップ500内の細胞チャネル530の複数のセット531に移動させることを含む。方法はまた、ステップS2において、培養培地を複数の培地リザーバ170に移動させることも含む。複数の培地リザーバ170の各培地リザーバ170は、細胞チャネル530の複数のセット531の細胞チャネル530の各セット531と流体接続するように構成されている。複数の培地リザーバ170の培地リザーバ170の少なくとも1つは、培養培地中に溶解または分散するように構成された規定量の薬剤が事前にロードされている。方法は、ステップS3において、溶解または分散された薬剤を有する培養培地を、薬剤が事前にロードされている各培地リザーバ170から細胞チャネル530の各セット531に移動させることをさらに含む。方法は、ステップS4において、細胞チャネル530の各セット531内での薬剤に対する細胞の応答をモニターすることをさらに含む。
【0123】
一実施形態において、ステップS3は、複数の培養リザーバ170の各培地リザーバ170から溶解または分散された薬剤を有する培養培地またはあらゆる薬剤を含まない培養培地を細胞チャネル530の各セット531に移動させることを含む。
【0124】
一実施形態において、複数の培地リザーバ170の少なくともいくらかは、培養培地中に溶解または分散されるように構成された異なる量の薬剤または異なる薬剤が事前にロードされている。
【0125】
一実施形態において、ステップS1は、本明細書に開示されるような任意の実施形態にしたがって、細胞を含む生体試料を、カートリッジ1のチップチャンバ105内に配置されたマイクロ流体チップ500内の細胞チャネル530の複数のセット531に移動させることを含む。この実施形態において、ステップS2は、本明細書に開示されるような任意の実施形態にしたがって、培養培地をカートリッジ1の複数の培地リザーバ170に移動させることを含む。
【0126】
本明細書において、本発明の種々の追加の態様は、より詳細に説明されるであろう。これらの他の追加の態様はいずれも、互いにおよび/または本発明の以前記載された態様と組み合わせることができる。
【0127】
第1の追加の態様は、基板100を含むカートリッジ1に関する。基板100は、培養培地を含む培地ブリスター400を収容するように構成されたブリスターチャンバ110を含む。基板100はまた、加圧流体、好ましくは加圧ガス、より好ましくは加圧空気を圧力ポート108Eで適用するように構成された圧力源と流体接続するように構成された圧力ポート108Eを含む。基板100は、圧力ポート108Eおよびブリスターチャンバ110を相互接続する圧力チャネル116をさらに含む。カートリッジ1はまた、基板100の上面102に取り付けられ、ブリスターチャンバ110内の培地ブリスター400を囲むように構成された上蓋200を含む。この第1の追加の態様によれば、ブリスターチャンバ110は、中央のくぼみ111および周囲のチャンバ底112を含む。培地ブリスター400は、周囲のチャンバ底112に取り付けられている。中央のくぼみ111は、排水孔113および少なくとも1つのカッター114を含み、培地ブリスター400の底面から距離をとって少なくとも1つのカッター114を離すのに十分に深い深さを有する。少なくとも1つのカッター114は、圧力ポート108Eでの加圧流体、好ましくは加圧ガス、より好ましくは加圧空気の適用時に培地ブリスター400の底面を貫通するように構成されており、圧力チャネル116を通って上蓋200と培地ブリスター400の上面との間でブリスターチャンバ110に流入し、それによって、培地ブリスター400を中央のくぼみ111に向かって下方に押し、培地ブリスター400の底面を開き、排水孔113を通って培地ブリスター400内の培養培地を押す。
【0128】
一実施形態において、カッター114は、排水孔113に面するカッター114の側部117に排水チャネル118を含む。この実施形態において、排水チャネル118は、培養培地を培地ブリスター400から排水孔に向けるように構成されている。
【0129】
一実施形態において、排水孔113に面するカッターの側部117は、排水孔113の一部の周りで弧状になっている。
【0130】
第2の追加の態様は、基板100を含むカートリッジ1に関する。基板100は、培地バルブチャンバ120の底面に、培養培地源110、400と流体接続している入口穴121、後方チャネルリザーバ130と流体接続している後方チャネル穴122およびそれぞれ各培地リザーバ170と流体接続している複数の培地リザーバ穴123を含む培地バルブチャンバ120を含む。基板100はまた、培地バルブチャンバ120の底面の周囲部分124に取り付けられた培養培地バルブ420を含む。基板100は、加圧流体、好ましくは加圧ガス、より好ましくは加圧空気を圧力ポート108Gで適用するように構成された圧力源と流体接続するように構成された圧力ポート108G、ならびに圧力ポート108Gおよび培地バルブチャンバ120を相互接続する圧力チャネル129Aをさらに含む。培養培地バルブ420は、圧力ポート108Gでの第1の流体圧力、好ましくはガス圧力、より好ましくは空気圧力の適用時に、入口穴121からの培養培地の流入を後方チャネル穴122および複数の培地リザーバ穴123に、そして後方チャネルリザーバ130および培地リザーバ170に向かって向け直すように構成されている。培養培地バルブ420はまた、第1の流体圧力よりも高い、圧力ポート108Gでの第2の流体圧力、好ましくはガス圧力、より好ましくは空気圧力の適用時に、培地バルブチャンバ120の底面に対して入口穴121、後方チャネル穴122および複数の培地リザーバ穴123の近くで押圧して、培地リザーバ170と後方チャネルリザーバ130との間のあらゆる培養培地の流れを防止するように構成されている。
【0131】
一実施形態において、培地バルブチャンバ120は、培地バルブチャンバ120の底面に、中央の入口穴121、後方チャネル穴および中央の入口穴121の周囲に円周状に配置された複数の培地リザーバ穴123を含む。
【0132】
一実施形態において、培養培地バルブ420は、可撓性材料、好ましくは熱可塑性エラストマで製造されたディスクである。
【0133】
一実施形態において、圧力ポート108Eは、第1の圧力ポート108である。この実施形態において、基板100は、後方チャネルリザーバ130と流体接続している第2の圧力ポート108Aをさらに含む。培養培地バルブ420は、第1の圧力ポート108Gでの第1の流体圧力、好ましくはガス圧力、より好ましくは空気圧力の適用時に、そして第2の圧力ポート108Aでの流体圧力、好ましくはガス圧力、より好ましくは空気圧力の適用時に、最初に入口穴121から複数の培地リザーバ穴123への培養培地の流入を培地リザーバ170に向かって向け直すように、そして、培地リザーバ170が培養培地で充填される場合、入口穴121から後方チャネル穴122への培養培地の流入を後方チャネルリザーバ130に向かって順次向け直すように構成されている。
【0134】
一実施形態において、培養培地バルブ420は、第1の圧力ポート108Gでの第1の流体圧力、好ましくはガス圧力、より好ましくは空気圧力の適用時に、そして第2の圧力ポート108Aでの流体圧力、好ましくはガス圧力、より好ましくは空気圧力の適用時に、最初に入口穴121から複数の培地リザーバ穴123への培養培地の流入を培地リザーバ170に向かって向け直すように、そして、第2の圧力ポート108Aでの流体圧力、好ましくはガス圧力、より好ましくは空気圧力の解放時に、入口穴121から後方チャネル穴122への培養培地の流入を後方チャネルリザーバ130に向かって順次向け直すように構成されている。
【0135】
第3の追加の態様は、基板100を含むカートリッジ1に関する。基板は、複数の培地リザーバ170を含む。複数の培地リザーバ170の少なくとも一部は、異なる量の薬剤および/または異なる薬剤を含む。カートリッジ1はまた、生体試料からの細胞を捕捉するように構成された細胞チャネル530の複数のセット531を含むマイクロ流体チップ500を含む。細胞チャネル530の各セット531は、複数の培地リザーバ170の各培地リザーバ170と流体接続している。カートリッジ1は、複数の培地リザーバ170と流体接続している培養培地源110、400をさらに含む。各培地リザーバ170は、培養培地源110、400と流体接続している入口穴171A、171Bならびに入口穴171A、171Bを含むピラーチャンバ172A、172Bを含む。各培地リザーバ170はまた、培養培地に流動抵抗を及ぼすように構成されたウエスト173A、174Bを通る入口ピラーチャンバ172A、172Bと相互接続しているチャンバ部分174A、174Bおよび細胞チャネル530の複数のセット531の細胞チャネル530の各セット531と流体接続している排水孔177を含む。この態様において、入口穴171A、171Bを通って培地リザーバ170に入る培養培地は、ウエスト173A、173Bにより及ぼされる流動抵抗のため、最初に、ピラーチャンバ172A、172Bを充填し、ピラーチャンバ172A、172B内に存在する空気をウエスト173A、173Bを通って排出するように、そしてピラーチャンバ172A、172Bが培養培地で充填される場合、チャンバ部分174A、174Bを順次充填し、それによって、各所定体積の培養培地で培地リザーバ170を充填し、各所定濃度の薬剤または異なる薬剤を得るように構成されている。
【0136】
一実施形態において、複数の培地リザーバ170の各培地リザーバ170は、後方チャンバ170Aおよび前方チャンバ170Bを含む。後方チャンバ170Aは、培養培地源110、400と流体接続している入口穴171Aを含む。後方チャンバ170Aはまた、入口穴171Aを含むピラーチャンバ172Aおよび培養培地に流動抵抗を及ぼすように構成され、膜チャンバ106と流体接続しているウエスト173Aを通って入口ピラーチャンバ172Aと相互接続したチャンバ部分174Aを含む。前方チャンバ170Bは、培養培地源110、400と流体接続している入口穴171Bおよび入口穴171Bを含むピラーチャンバ172Bを含む。前方チャンバ170Bはまた、培養培地に流動抵抗を及ぼすように構成されたウエスト173Bを通って入口ピラーチャンバ172Bと相互接続したチャンバ部分174Bおよび細胞チャネル530の複数のセット531の細胞チャネル530の各セット531と流体接続している排水孔177を含む。
【0137】
一実施形態において、前方チャンバ170Bは、後方チャンバ170Aよりも培養培地に、より高い流動抵抗を及ぼし、培養培地を後方チャンバ170Aの入口穴171Aに向ける。
【0138】
一実施形態において、膜チャンバ106は、圧力ポート108B、108Dで加圧流体、好ましくは加圧ガス、より好ましくは加圧空気を適用して後方チャンバ170A内の培養培地を各前方チャンバ170Bに押圧するように構成された圧力源と流体接続するように構成された圧力ポート108B、108Dと流体接続している。
【0139】
一実施形態において、前方チャンバ170Bは、排水孔177とチャンバ部分174Bとの間に配置された各ステップ273を含み、ステップ273は、チャンバ部分174Bの充填中に培養培地に乱流を誘導して薬剤または異なる薬剤および培地の混合を促進するように構成されている。
【0140】
第4の追加の態様は、基板100を含むカートリッジ1に関する。基板100は、細胞を含む生体試料を含むように構成され、排水孔141を含む試料チャンバ140を含む。基板100はまた、試料チャンバ140と流体接続している排水孔182を含む底面を有するドームポンプチャンバ180を含む。カートリッジ1はまた、ドームポンプチャンバ180の底面の周囲部分181に取り付けられ、規定体積の空気を囲むように構成されたドーム型ポンプ410を含む。基板100は、ドームポンプチャンバ180と流体接続し、圧力ポート108Eで加圧流体、好ましくは加圧ガス、より好ましくは加圧空気を適用してドーム型ポンプ410をドームポンプチャンバ180の底面に向かって下方に押圧し、ドームポンプチャンバ180内のドーム型ポンプ410により含まれた規定体積の空気をドームポンプチャンバ180の排水孔182を通って試料チャンバ140に押圧し、規定体積の生体試料を試料チャンバ140の排水孔141に押すように構成された圧力源と流体接続するように構成された圧力ポート108Eをさらに含む。
【0141】
一実施形態において、ドーム型ポンプ410は、可撓性ドーム、好ましくは熱可塑性エラストマドームである。
【0142】
一実施形態において、基板100は、試料チャンバ140の排水孔141と流体接続している試料フィルタ630を含むフィルタチャンバ146をさらに含む。
【0143】
一実施形態において、基板100はまた、フィルタチャンバ146と流体接続している入口穴148および排水孔151を含む底面を有する試料バルブチャンバ150を含む。基板100は、圧力ポート108Gで加圧流体、好ましくは加圧ガス、より好ましくは加圧空気を適用するように構成された圧力源と流体接続するように構成された圧力ポート108G、ならびに圧力ポート108Gおよび試料バルブチャンバ150を相互接続する圧力チャネル129A、155をさらに含む。カートリッジ1は、試料バルブチャンバ150の底面の周囲部分に取り付けられた試料バルブ430をさらに含む。この実施形態において、試料バルブ430は、圧力ポート108Gでの流体圧力、好ましくはガス圧力、より好ましくは空気圧力の適用時で、試料バルブチャンバ150の底面に対して入口穴148および排水孔151の近くで押圧して、試料バルブチャンバ150への生体試料のあらゆる逆流を防止するように構成されている。
【0144】
上述した実施形態は、本発明のいくらかの例証的な例として理解されるべきである。本発明の範囲から逸脱することなく、種々の修正、組み合わせ、および変更を実施形態に行うことができることは、当業者に理解されるであろう。特に、異なる実施形態における異なる部分の解決策は、技術的に可能な他の構成に組み合わせることができる。しかし、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲により定義される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
【手続補正書】
【提出日】2023-03-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
図1図1A-図1B図1Aおよび図1Bは、上(1A)および下(1B)からの一実施形態によるカートリッジの分解立体図である。
図2図2A-図2H図2A図2Hは、試料フィルタのアタッチメント(2A)、裏蓋のアタッチメント(2B)、マイクロ流体チップのアセンブリ(2C)およびマイクロ流体チップのアタッチメント(2D)、バルブおよびドーム型ポンプのアタッチメント(2E)、培地ブリスターのアタッチメント(2F)、ガス透過膜の追加(2G)ならびに上蓋のアタッチメント(2H)を有する一実施形態によるカートリッジのアセンブリを概略的に示す。
図3図3A-図3B図3Aおよび図3Bは、一実施形態による試料チャンバ(3A)に生体試料を充填することおよびキャップ(3B)で試料チャンバを閉じることを概略的に示す。
図4図4A-図4B図4Aおよび図4Bは、上(4A)および下(4B)からの基板の一実施形態を例証する。
図5図5は、ブリスターチャンバの一実施形態を例証する基板の一部のクローズアップ図である。
図6図6は、培地バルブチャンバの一実施形態を例証する基板の一部のクローズアップ図である。
図7図7は、培地リザーバの一実施形態を例証する基板の一部のクローズアップ図である。
図8図8は、試料バルブチャンバおよび界面活性剤チャンバの一実施形態を例証する基板の一部のクローズアップ図である。
図9図9は、バックチャネルリザーバの一実施形態を例証する基板の一部のクローズアップ図である。
図10図10は、ドームポンプチャンバの一実施形態を例証する基板の一部のクローズアップ図である。
図11図11は、試料リザーバの一実施形態を例証する基板の一部のクローズアップ図である。
図12図12は、底面図におけるチップ担体に取り付けられたマイクロ流体チップを概略的に例証する。
図13図13は、部分透視図におけるチップ担体に取り付けられたマイクロ流体チップを概略的に例証する。
図14図14は、マイクロ流体チップの一部のクローズアップ図である。
図15図15は、ブリスターチャンバの一部のクローズアップ図である。
図16図16は、培地リザーバのクローズアップ図(上)および断面図(下)である。
図17図17は、一実施形態によるカートリッジの内の試料および培養培地の移動を概略的に例証する。
図18-27】図18-図27図18図27は、図17において示されたような試料および培養培地充填操作中のカートリッジを概略的に例証する。
図28図28は、マイクロ流体チップおよび入口穴に入るかそれから出る流体を概略的に例証する。
図29-31】図29-図31図29図31は、試料および培養培地充填操作中のマイクロ流体チップを概略的に例証する。
図32図32は、一実施形態による生体試料を分析する方法を例証するフローチャートである。
【外国語明細書】