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特開2023-123410導電性で防食性のマグネシウムチタン酸化物材料
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123410
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】導電性で防食性のマグネシウムチタン酸化物材料
(51)【国際特許分類】
   C25B 11/067 20210101AFI20230829BHJP
   H01M 8/0228 20160101ALI20230829BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20230829BHJP
   C25B 11/054 20210101ALI20230829BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20230829BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20230829BHJP
【FI】
C25B11/067
H01M8/0228
H01M4/86 B
C25B11/054
C25B1/04
C25B9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023027651
(22)【出願日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】17/679,480
(32)【優先日】2022-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】スー キム
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ ベルナー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ゲーロルト
(72)【発明者】
【氏名】レイ チェン
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ タファイル
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ ザウター
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
4K011AA12
4K011AA26
4K011AA31
4K011BA07
4K011DA01
4K021DB15
4K021DB18
4K021DB43
4K021DB53
5H018AA06
5H018DD05
5H018EE13
5H126AA12
5H126BB06
5H126DD14
5H126FF02
5H126GG13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】化学的に充分に不活性であり、導電性である電気化学セル材料および電気化学セル部品を含む電解槽システムを提供する。
【解決手段】電解槽システムは、酸素空孔および式(Ia):MgTi5-δ(Ia)[式中、δは、小数部分を含み、酸素空孔を示す0~3の任意の数である]を有する第1の酸化物と、式(II):Ti(II)[式中、小数部分を含む場合がある1≦a≦20および1≦b≦30である]を有する第2の酸化物とを含む防食性で導電性の材料を含み、式(Ia)および(II)の第1および第2の酸化物は、電解槽システム内で多結晶マトリクスを形成している、システムである。
【選択図】図1E
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解槽システムであって、
酸素空孔および式(Ia):
MgTi5-δ (Ia)
[式中、δは、小数部分を含み、前記酸素空孔を示す0~3の任意の数である]
を有する第1の酸化物と、
式(II):
Ti (II)
[式中、小数部分を含む場合がある1≦a≦20および1≦b≦30である]
を有する第2の酸化物と
を含む防食性で導電性の材料を含み、
式(Ia)および(II)の前記第1および第2の酸化物は、前記電解槽システム内で多結晶マトリクスを形成している、
電解槽システム。
【請求項2】
前記多結晶マトリクスが、多孔質である、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
多孔質の前記多結晶マトリクスが、触媒担持体として構造化されている、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
Mg/Ti比が、約0.01~0.8である、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記防食性で導電性の材料を含む多孔質輸送層(PTL)をさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記多結晶マトリクスが、約10~250nmの直径を有するナノファイバーを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記Tiが、Tiである、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記多結晶マトリクスを含むバイポーラプレートをさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
電気化学セル材料であって、
酸素空孔および式(Ib):
Mg1-xTi2+x5-δ (Ib)
[式中、δは、小数部分を含み、前記酸素空孔を示す0~3の任意の数であり、0≦x≦1である]
を有する第1の金属酸化物と、
式(II):
Ti (II)
[式中、小数部分を含む場合がある1≦a≦20および1≦b≦30である]
を有する第2の金属酸化物と
を有する防食性で導電性の多結晶マトリクスを含み、
第1および第2の酸化物が、多結晶マトリクスを形成している、
電気化学セル材料。
【請求項10】
前記材料が、多孔質マイクロファイバーである、請求項9記載の材料。
【請求項11】
前記マトリクスが、焼結繊維を含む、請求項9記載の材料。
【請求項12】
a、bまたはその両方の小数部分が含まれる、請求項9記載の材料。
【請求項13】
前記マトリクスが、前記電気化学セル内の部品の表面層を形成している、請求項9記載の材料。
【請求項14】
前記電気化学セルが、電解槽である、請求項9記載の材料。
【請求項15】
電気化学セル部品であって、
酸素空孔および式(Ib):
Mg1-xTi2+x5-δ (Ib)
[式中、δは、小数部分を含み、前記酸素空孔を示す0~3の任意の数であり、0≦x≦1である]
を有する第1の金属酸化物を有する防食性で導電性の非化学量論的材料を含み、
前記式(Ib)の前記材料中のMg/Ti比は、約0.01~約0.8である、
電気化学セル部品。
【請求項16】
前記部品が、バイポーラプレートである、請求項15記載の部品。
【請求項17】
前記部品が、多孔質輸送層材料である、請求項15記載の部品。
【請求項18】
電気化学セルが、電解槽である、請求項15記載の部品。
【請求項19】
前記材料が、0<x≦1となるように、過剰なTiを有する、請求項15記載の部品。
【請求項20】
前記部品が、触媒担持体である、請求項15記載の部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月20日に出願され、現在係属中の米国特許出願第16/825,638号明細書の一部継続出願であり、米国特許出願第16/825,638号明細書は、2019年11月6日に出願され、現在係属中の米国特許出願第16/675,538号明細書の一部継続出願である。これらの出願の開示はその全体が、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、酸素空孔を有する防食性で導電性のマグネシウムチタン酸化物材料に関する。
【0003】
発明の背景
金属は、何千年もの間、広く使用されてきた材料である。金属を維持し、金属が腐食または崩壊によって酸化物、水酸化物、硫酸塩および他の塩に変化してしまうことを防止するために、種々の方法が開発されてきた。一部の工業用途における金属は、厳しい動作環境に起因する腐食を特に受けやすい。非限定的な例は、電気化学セルの金属部品、例えば、燃料電池バイポーラプレート(BPP)もしくは燃料電池または電解槽触媒担持体材料である場合がある。加えて、特定の部品、例えば、BPPは、燃料電池の高腐食性環境における劣化に耐えるために化学的に充分に不活性であるだけでなく、燃料電池の酸素還元反応のための電子移動を容易にするために導電性であることも必要である。両方の要件を満たす材料を見出すことは、課題であった。
【0004】
発明の概要
非限定的な実施形態によれば、電解槽システムが開示される。電解槽システムは、酸素空孔および式(Ia):
MgTi5-δ (Ia)
[式中、δは、小数部分を含み、酸素空孔を示す0~3の任意の数である]
を有する第1の酸化物を含む、防食性で導電性の材料を含む。また、この材料は、式(II):
Ti (II)
[式中、小数部分を含む場合がある1≦a≦20および1≦b≦30である]
を有する第2の酸化物も含む。式(Ia)および(II)の第1および第2の酸化物は、電解槽システム内で多結晶マトリクスを形成していてよい。多結晶マトリクスは、多孔質であってよい。多孔質の多結晶マトリクスは、触媒担持体として構造化されていてよい。Mg/Ti比は、約0.01~0.8であってよい。このシステムは、防食性で導電性の材料を含む多孔質輸送層(PTL)を含んでよい。多結晶マトリクスは、約10~250nmの直径を有するナノファイバーを含んでよい。Tiは、Tiであってよい。このシステムは、多結晶マトリクスを含むバイポーラプレートを含んでよい。
【0005】
代替的な実施形態では、電気化学セル材料が開示される。電気化学セル材料は、酸素空孔および式(Ib):
Mg1-xTi2+x5-δ (Ib)
[式中、δは、小数部分を含み、酸素空孔を示す0~3の任意の数であり、0≦x≦1である]
を有する第1の金属酸化物を有する防食性で導電性の多結晶マトリクスを含んでよい。
【0006】
防食性で導電性の多結晶マトリクスは、式(II):
Ti (II)
[式中、小数部分を含む場合がある1≦a≦20および1≦b≦30である]
を有する第2の金属酸化物を含んでよい。第1および第2の酸化物は、多結晶マトリクスを形成していてよい。この材料は、多孔質マイクロファイバーであってよい。このマトリクスは、焼結繊維を含んでよい。a、bまたはその両方の小数部分が含まれてよい。このマトリクスは、電気化学セル内の部品の表面層を形成していてよい。電気化学セルは、電解槽であってよい。
【0007】
さらに別の実施形態では、電気化学セル部品が開示される。電気化学セルは、酸素空孔および式(Ib):
Mg1-xTi2+x5-δ (Ib)
[式中、δは、小数部分を含み、酸素空孔を示す0~3の任意の数であり、0≦x≦1である]
を有する第1の金属酸化物を有する防食性で導電性の非化学量論的材料を含む。式(Ib)の材料中のMg/Ti比は、約0.01~約0.8であってよい。この部品は、バイポーラプレートであってよい。この部品は、多孔質輸送層材料であってよい。電気化学セルは、電解槽であってよい。この材料は、0<x≦1となるように、過剰なTiを有してよい。この部品は、触媒担持体であってよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】1つ以上の実施形態に係るプロトン交換膜燃料電池の概略構成を示す図である。
図1B】セルの電解槽スタックの非限定的な例の模式図である。
図1C】電解槽スタック内の電解槽セルの非限定的な例の斜視模式図を示す。
図1D】電解槽セルのバイポーラプレートの詳細な模式図を示す。
図1E】電解原理の摸式図である。
図2】1つ以上の実施形態に係る、バルク部分と、防食性で導電性の材料を含む表面部分とを有するバイポーラプレートの非限定的な例の斜視図を示す。
図3】開示された材料の合成ペレットサンプルの非限定的な例を示す図である。
図4A】絶縁挙動を示すMgTi構造の状態密度(DOS)を示す図である。
図4B】絶縁挙動を示すMgTi4.92の状態密度(DOS)を示す図である。
図5A】(110)MgTiの化学構造を示す図である。
図5B】(110)MgTi5-δの化学構造を示す図である。
図5C】(101)TiO(アナターゼ)の化学構造を示す図である。
図5D】(110)TiO(ルチル)の化学構造を示す図である。
図5E】(001)TiOの化学構造を示す図である。
図6】MgTi5-δについての25℃から80℃までの導電率のアレニウスプロットを示す図である。
図7】未処理で合成されたままのMgTi5-δ、空気中でアニールされた後のMgTi5-δおよびTiOのTi 2p X線光電子分光法(XPS)スペクトルを示す図である。
図8】合成されたままのMgTi5-δ対MgTiのX線回析(XRD)パターンを示す図である。
図9】Aは、合成されたままのMgTi5-δの写真であり、Bは、600℃の空気中でアニールされた後のMgTi5-δの写真であり、Cは、1000℃の空気中でアニールされた後のMgTi5-δの写真である。
図10】未処理のMgTi5-δ、カーボン紙および研磨ステンレス鋼(SS)316の腐食電流密度の比較プロットを示す図である。
図11A】触媒が島状で堆積されている、触媒担持体材料としてのMgTi5-δの摸式図を示す。
図11B】触媒がコア-シェル構造で堆積されている、触媒担持体材料としてのMgTi5-δの摸式図を示す。
図12A】アニーリング前のMgTi5-δペレットの非限定的な例上にスパッタリングされたPtの走査型電子顕微鏡(SEM)断面画像である。
図12B】アニーリング後のMgTi5-δペレットの非限定的な例上にスパッタリングされたPtの走査型電子顕微鏡(SEM)断面画像である。
図13A】MgTi5-δ面とPt面との間のDFT緩和前の第1原理密度汎関数理論(DFT)構造化界面を示す図である。
図13B】MgTi5-δ面とPt面との間のDFT緩和後の第1原理密度汎関数理論(DFT)構造化界面を示す図である。
図13C】MgTi5-δ面とPt面との間のDFT緩和前の第1原理密度汎関数理論(DFT)構造化界面を示す図である。
図13D】MgTi5-δ面とPt面との間のDFT緩和後の第1原理密度汎関数理論(DFT)構造化界面を示す図である。
図13E】MgTi5-δ面とPt面との間のDFT緩和前の第1原理密度汎関数理論(DFT)構造化界面を示す図である。
図13F】MgTi5-δ面とPt面との間のDFT緩和後の第1原理密度汎関数理論(DFT)構造化界面を示す図である。
図14】MgTi5-δ酸化物担持体に付着した種々のPt粒子/ファセットの摸式図を示す。
図15A】単一の水素原子が表面酸素原子に吸着している、(012)Tiの化学構造を示す図である。
図15B】単一の水素原子が表面酸素原子に吸着している、(012)Tiの化学構造を示す図である。
図16】Ti系のDOSを示す図である。
図17】MgTiおよびTiのXRDパターンを横並びで示す図である。
【0009】
発明を実施するための形態
本開示の実施形態は、本明細書に記載される。ただし、開示された実施形態は、単なる例であり、他の実施形態は、種々かつ代替的な形態をとる場合があると理解されたい。図は、必ずしも縮尺どおりではなく、一部の特徴は、特定の構成要素の詳細を示すために、誇張されまたは最小化される場合がある。したがって、本明細書に開示された具体的な構造的および機能的詳細は、限定として解釈されるべきではなく、単に、本実施形態を様々に利用することを、当業者に教示するための代表的な基礎と解釈されるべきである。当業者であれば理解するであろうように、図のいずれか1つを参照して図示され、記載された種々の特徴を、明示的に図示されずまたは記載されていない実施形態を生成するために、1つ以上の他の図に図示された特徴と組み合わせることができる。図示された特徴の組み合わせにより、典型的な用途のための代表的な実施形態が提供される。ただし、本開示の教示と一致する特徴の種々の組み合わせおよび修正が、特定の用途または実装形態に望まれる場合がある。
【0010】
明示的に示されている場合を除き、寸法または材料特性を示す本明細書中の全ての数値量は、本開示の最も広い範囲を説明する際に、「約」という語により修飾されると理解されたい。
【0011】
頭字語または他の略語の最初の定義は、同じ略語の本明細書における全ての後続の使用に適用され、最初に定義された略語の通常の文法的変形形態に準用される。別段の明示的な記載がない限り、特性の測定は、同じ特性について先にまたは後に参照されるのと同じ技術により決定される。
【0012】
「実質的に」または「約」という用語は、本明細書において、開示されまたは特許請求された実施形態を記載するのに使用することができる。「実質的に」または「約」という用語は、本開示において開示されまたは特許請求された値または相対的特性を修飾する場合がある。このような場合、「実質的に」または「約」は、それが修飾する値または相対的特性がその値または相対的特性の±0%、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%または10%以内であることを指定する場合がある。
【0013】
1つ以上の実施形態に関連して所定の目的に適した材料のグループまたはクラスの記載は、グループまたはクラスのメンバーの任意の2つ以上の混合物が適していることを意味する。化学的用語における成分の記載は、説明において特定される任意の組み合わせへの添加時の成分を指し、一旦混合された混合物の成分間の化学的相互作用を必ずしも排除するものではない。頭字語または他の略語の最初の定義は、同じ略語の本明細書における全ての後続の使用に適用され、最初に定義された略語の通常の文法的変形形態に準用される。別段の明示的な記載がない限り、特性の測定は、同じ特性について先にまたは後に参照されるのと同じ技術により決定される。
【0014】
金属は、自動車、建設、家電、工具、パイプ、鉄道線路、硬貨等を含む多くの産業において広く使用されている材料群を提供する。金属は、何千年もの間、利用されてきており、強度および弾性等の特性のために、ずっと特定の用途のために選択される材料であった。しかしながら、金属の腐食は、金属を使用する多くの用途にとって、疲労および寿命の制限の主な原因である。
【0015】
腐食は、精製された金属を、より化学的に安定な形態、例えば、金属の酸化物、水酸化物、硫化物および/または他の塩に変換する天然のプロセスである。この変換は、酸化剤、例えば、酸素または硫酸塩との反応における金属の電気化学的酸化により引き起こされる金属材料の段階的な破壊を示す。腐食は、金属基材を空気中の水分、比較的低いpHを有する溶液、種々の化学物質、例えば、酸、微生物、高温および/または他の要因に曝露することにより引き起こされる場合がある。特に、酸性環境では、腐食は、バルク金属材料(例えば、鋼)と溶液(例えば、バルク材料を分解するように反応する水または水表面層に溶解したイオン)との間の界面で始まる。
【0016】
金属の腐食を防止するかまたは遅らせるために、多くの努力がなされてきた。例えば、種々のタイプの被覆が開発されている。例示的な被覆は、塗工被覆、例えば、塗料、めっき、エナメル;腐食防止剤、例えば、クロメート、リン酸塩、導電性ポリマーを含む反応性被覆、環境と金属基材との間の電気化学反応を抑制するように設計された界面活性剤様化学物質、陽極酸化表面またはバイオフィルム被覆を含む。腐食防止の他の方法は、制御された透過性フレームワーク、カソード防食またはアノード防食を含む。
【0017】
しかしながら、腐食問題に対する最も一般的な解決手段は、依然として脆弱な金属表面を被覆で強化することである。このため、ほとんどの耐食性表面は、腐食を遅らせかつ/または腐食の発生を少なくとも部分的に防止することができる1つ以上の化学的に不活性な被覆または保護層を含む。それでもなお、優れた性能特性を有しながら、環境にも優しく、経済的であろう実質的な防食特性を有する材料を見出すことは、依然として課題であった。
【0018】
さらに、一部の用途は、それらの環境要因のために腐食の影響を非常に受けやすい。このような用途の非限定的な例は、プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)である。PEMFCは、各種の車両、例えば、自動車またはバスのための内燃機関に対する環境に優しい代替物である。PEMFCは、典型的には、比較的高い効率および電力密度を特徴とする。PEMFCエンジンの非常に魅力的な特徴は、水素燃料が環境に優しい方法で得られていれば、炭素排出がないことである。グリーンエンジンであることに加えて、PEMFCを、他の用途、例えば、固定型および携帯型電源で使用することができる。
【0019】
PEMFC自体の動作環境は、各種の理由で腐食をもたらす。例えば、PEMFCの始動と停止との間には、低電圧が存在し、PEMFCは、強酸性環境を有し、フッ素イオンが、PEMFCの動作中にポリマー膜から放出され、HおよびOの両方が、始動および停止の間にアノードに存在する。これにより、カソード腐食、アノードからカソードへまたはその逆の水素または酸素の燃料クロスオーバー等を生じさせる高いカソード電位が発生する。このため、PEMFCには、上記言及された条件に耐えることが可能な耐久性のある部品が必要である。
【0020】
PEMFCの非限定的な例を、図1Aに示す。電子を分離するのに必要な電気化学反応の発生に役立つPEMFC10のコア部品は、膜電極アセンブリ(MEA)12である。MEA12は、補助部品、例えば、電極、触媒およびポリマー電解質膜を含む。MEA12に加えて、PEMFC10は、典型的には、他の部品、例えば、集電材14、ガス拡散層16、ガスケット18およびバイポーラプレート20を含む。
【0021】
バイポーラプレートまたはBPP20は、ガスを分配し、電流を収集し、スタック内の個々のセル同士を分離するために、PEMFCスタック内に実装される。また、BPP20により、追加の機能、例えば、反応生成物および水の除去ならびにPEMFC10内の熱管理も提供される。また、BPP20は、比較的高価な部品であり、PEMFCシステムの劣化の頻繁な理由である。例えば、BPPは、スタック重量の約60~80%、スタック体積の約50%およびスタックコストの約25~45%を構成する場合がある。コストを低く抑えるために、BPP20は、典型的には、金属、例えば、鋼、例えば、ステンレス鋼製である。代替材料、例えば、アルミニウムまたはチタンが使用される場合がある。金属板は、PEMFCシステム内で腐食を受けやすいため、腐食を防止するための努力がなされてきた。
【0022】
さらに、PEMFC10において、BPP20は、酸素還元反応のための電子移動を容易にするために導電性であることも必要とされるため、BPP20には、さらに別の材料上の課題がある。したがって、BPP20の材料は、導電性であるが、PEMFC10環境に存在するイオンとの反応に対して化学的に不活性である必要がある。
【0023】
典型的には、BPP金属表面は、BPP20の耐食性を向上させるために、被覆、例えば、グラファイト様被覆または保護酸化物被覆もしくは保護窒化物被覆を含有する。このため、BPP20の表面は、Fe、Cr、Ni、Mo、Mn、Si、P、C、S、F等の元素またはそれらの組み合わせを含む場合がある。代替的な被覆は、Tiアロイ、ドーピングされたTiO、Cr、TiO、TiN、CrNまたはZrNを含む。しかしながら、厳しい腐食環境、例えば、被覆が他の用途より速く劣化する可能性が高いPEMFC10において、経済的に実現可能であり、耐食性であり、約80℃のPEMFC動作温度で酸、例えば、HFに対して保護的であり、導電性であり、同時に金属基板とのコヒーレントな界面(すなわち、小さい界面接触抵抗)を形成することが可能であろう被覆または材料が依然として必要とされている。
【0024】
燃料電池に加えて、電解槽は、別のタイプの電気化学セルを提供する。電解槽は、化学反応を行うために電気エネルギーを使用する。電解槽は、水を水素と酸素とに分解する電気分解プロセスを受けて、再生可能な資源からの水素生成のための有望な方法を提供する。電解槽、例えば、燃料電池は、電解質膜により分離されたアノードおよびカソード触媒層を含む。電解質膜は、ポリマー、アルカリ溶液または固体セラミックス材料である場合がある。触媒材料は、電解槽のアノードおよびカソードの触媒層に含まれる。
【0025】
電解槽は、水からの水素製造に使用されている。しかしながら、電解槽セルの広範な採用には、これらの電気化学セルに使用される部品についての寿命およびコスト低減をさらに研究する必要である。電解槽部品は、電解質膜と、電解質膜により分離された触媒層とを含む。
【0026】
典型的な単一の電解槽は、電解質膜と、アノード層と、電解質膜によりアノード層から分離されたカソード層とから構成される。電解槽30の非限定的な模式図を、図1B図1Dに示す。電解槽スタック40は、個々の電解槽セル31を含み、それらはそれぞれ、膜32、電極34,36およびバイポーラプレート44を含む。集電材48上に被覆46を有するBPP44の断面図を、図1Dに示す。
【0027】
触媒材料、例えば、Pt系触媒は、電解槽30のアノード層およびカソード層34,36に含まれる。アノード層34において、HOは、OおよびHに加水分解される(2HO→O+4H+4e)。カソード層36において、Hは、電子と結合してHを形成する(4H+4e→2H)。
【0028】
関連する反応を伴う、プロトン交換膜(PEM)電解槽30により利用される電解原理を図1Eに示す。電解槽30は、PEM32と、アノード34と、カソード36とを含む。各電極は、多孔質輸送層(PTL)と、触媒層とを含む。
【0029】
電気分解の間、水は、アノードおよびカソードで電気的に駆動される発生反応において酸素および水素に分解される。反応液水(HO)は、アノード34のPTLを通って、アノード触媒層に浸透し、ここで、酸素発生反応(OER)が起こる。プロトン(H)は、PEM32を介して移動し、電子(e)は、カソード36の触媒層での水素発生反応(HER)中に、外部回路を介して伝導する。アノードでのOERには、カソードでのHERよりはるかに高い過電圧が必要である。それは、その4電子移動の遅い性質のために、水分解の効率を決定するのは、アノードでのOERである。
【0030】
PTLにより、触媒層からバイポーラプレートへの電子の移動が可能となる。同時に、PTLにより、電極から発生するガス輸送および電極に向かう水輸送が可能であるべきである。他のPEM電解槽部品と同様に、PTLは、高電圧動作において、良好な導電率および耐食性を有する必要がある。他の設計基準は、気孔率、機械的安定性、H脆化に対する耐性、低い接触抵抗(触媒層およびBPPとの接触)等を含む。
【0031】
PEM電解槽またはPEME30を製造するために、種々の材料が使用される。PEMFCと同様に、バイポーラプレート(BPP)は、PEME部品の中でも、かなりのコストを占める。実際、PEME BPPは、典型的には、Ti金属(または腐食に対してより安定な他の金属)を使用するため、PEMFC BPPより高価である。また、PEME BPPは、アノード側(Oに対する)およびカソード側(H脆化および酸化に対する)において、良好な耐薬品性を有する必要もある。市販のPEMEスタックでは、使用される金属が、Tiとは異なる金属である場合、アノード側には、被覆層がさらに必要であり、代替的なバルク金属は、ステンレス鋼、銅またはアルミニウムベースの合金系を含む。従来、Au、Ti、TiN、TiN/C、TaNおよびFドーピングされた酸化スズ(FTO)は、PEME BPPにおける化学耐性BPP被覆材料として探求されてきた。
【0032】
電解槽では、局所環境は、カソード側よりアノード側のPTLに対して腐食性が高く、深刻である。したがって、より耐食性の材料および構造が、典型的には、カソードPTLよりアノードPTLに組み込まれる。アノードPTL層材料の例は、チタン(Ti)またはPtである場合がある。カソード側のPTLには、PEMFCにおけるのと同様のタイプの技術を適用することができる。このため、カソードPTL層は、カーボン系材料、例えば、カーボン紙、カーボンフリース等を含む場合がある。PEM32、アノード34およびカソード36は、例えば、Tiまたは金もしくは白金で被覆されたTi金属製である場合があるBPPにより囲まれている場合がある。
【0033】
触媒は、典型的には、半反応プロセスを促進するために、アノード側34およびカソード側36で使用される。カソード36上の典型的な触媒材料は、白金(Pt)であり、一方、アノード34に使用される典型的な触媒は、比較的高い活性および耐久性の組み合わせのために、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、Ir-Ru、酸化ルテニウム(RuO)、酸化イリジウム(IrO)またはイリジウムルテニウム酸化物(Ir-Ru-O)である。ただし、PEM電解槽およびPEM電解槽を利用する燃料電池の大規模な使用および製造には、かなりの量の触媒材料が必要であり、このことは、産業にとって問題となる。全てのPEME部品の中で、アノード触媒は、希少金属であるIrおよび/またはRuの使用ならびにスケールメリット効果によりそのコストを低減する機会の欠如のために、最も高価な成分である。
【0034】
アノード34では、Irは、典型的には、EOR(HO→2H+1/2O+2e)を触媒し、カソード36では、Ptは、典型的には、HER(2H+2e→H)を触媒する。セル温度は、典型的には、約50~約80℃の範囲である。電解槽30内のセル電圧は、燃料電池(1.23V超)と比較してかなり高く、典型的には、全負荷時のSHEに対して1.8~2.2Vの範囲である。比較的高い動作電圧のために、電解槽30の材料は、更なる触媒劣化(例えば、電気化学的に活性な表面積の損失をもたらす場合がある金属溶解)を受ける場合があり、これは、その寿命全体にわたって電解槽スタックシステム40全体に影響を及ぼす場合がある。
【0035】
アノード触媒材料、例えば、Ir/Ru/IrO/RuO等を、PEMEにおける化学的に安定な担持体上に分散させることができる。カーボン系担持体は許容可能であり、PEMFCおよびPEMEのカソードに広く使用されているが、PEMEのアノードは、典型的には、OER反応を行うために、さらに高い電圧で動作させる必要がある。PEMEの高度に酸化性の環境では、担持体材料の腐食により、触媒層の多孔質構造の破壊が潜在的にもたらされる場合がある。これは、PEMEスタックにおける電気伝導を低下させ、水管理効率を低下させる場合がある。したがって、PEMEのアノードにおいて、カーボン系材料の代わりに、金属酸化物が使用される場合がある。例えば、TiO、NbO、SnOおよび他のドーピングされた金属酸化物が、OER触媒に可能性のある担持体材料として検討されてきた。これらの材料は、初期条件でOER触媒の質量活性を改善するのに役立つが、その長期耐久性は、導電性の損失のために欠点であった。
【0036】
本明細書に開示された材料は、上記された1つ以上の課題を解決しかつ/または本明細書で特定された利益を提供する。驚くべきことに、開示された材料は、基材に防食性で導電性の特性を提供することが見出された。基材は、電気化学セル基材、PEMF基材、PEME基材、PEMF触媒担持体、PEMF BPP基材、PEME BPP金属基材、PEME触媒担持体またはPEME PTLを含む場合があるが、これらに限定されない。他のタイプの基材が企図され、以下で検討される。
【0037】
この材料は、種々の含量の酸素空孔を有する、各種もしくは一連のMg-Ti化合物またはすなわち、各種の酸素欠乏化学量論を有するMg-Ti化合物を含む第1の酸化物材料、第2の酸化物材料またはその両方を包含する。
【0038】
BPP20の非限定的な例を、図2に示す。BPP20は、PEMFC BPPまたはPEME BPPである場合がある。BPP20は、固定体またはバルク部分22および表面部分24を有する基材の非限定的な例を表す。バルク部分22を、金属、例えば、鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、2種以上の金属のアロイ等またはそれらの組み合わせから形成することができる。代替的には、バルク部分22を、複合材料、例えば、カーボン-カーボン複合材料またはカーボン-ポリマー複合材料から形成することができる。代替的には、さらに、バルク部分22を、グラファイトまたは別の炭素同素体から作製することができる。別の実施形態では、バルク部分22は、開示された材料も含む場合がある。
【0039】
表面部分24は、本明細書に開示された防食性で、化学的に不活性で、導電性でかつ熱力学的に安定な材料を含むことができる。表面部分24の全領域が、この材料を含むことができる。代替的には、表面部分24は、この材料を含まない1つ以上の補助部分を含む場合がある。例示的な実施形態では、BPP 20全体が腐食から保護されるように、表面部分24全体が、この材料を含む場合がある。他の用途、例えば、非BPP用途では、表面部分24のわずかな部分のみが、この材料を含む場合があり、例えば、表面部分の約1/2未満、1/4未満、1/8未満、1/16未満、1/32未満等が、この材料を含む場合がある。
【0040】
表面部分24、バルク部分22またはその両方が、開示された材料の1つ以上の層を含む場合がある。表面部分24上の材料の厚さを、特定の用途の必要性に応じて調整することができる。材料層の厚さの非限定的な例は、約0.1~0.8μm、0.2~0.6μmまたは0.3~0.5μmであってよい。代替的には、この材料は、表面部分24上に1μm超、例えば、約もしくは少なくとも約1.25、1.5、1.75、2.0、2.25、2.5、2.75、3.0、3.25、3.5、3.75、4.0、4.25、4.5、4.75、5.0、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、200、250μmまたは約1.25、1.5、1.75、2.0、2.25、2.5、2.75、3.0、3.25、3.5、3.75、4.0、4.25、4.5、4.75、5.0、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、200、250、300、350、400、450もしくは500nmの寸法を有する比較的厚い堆積物を形成するように積層されている場合がある。この材料は、バルク部分22上に1つ以上の層または複数の層を形成することができる。この材料は、バルク部分22上に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の層を形成することができる。各層は、表面部分24の厚さに関して本明細書に列挙されるナノスケールまたはマイクロスケール内の厚さを有する場合がある。
【0041】
開示された材料は、第1の酸化物であるMg-Ti-O系材料を含む。開示された材料は、式(Ia)、式(Ib)またはその両方:
MgTi5-δ (Ia)
Mg1-xTi2+x5-δ (Ib)
[式中、0≦x≦1であり、このため、xは、0と1との間ならびに0および1を含む任意の数であってよい]
を有することができる。xは、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.30、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.40、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49、0.50、0.51、0.52、0.53、0.54、0.55、0.56、0.57、0.58、0.59、0.60、0.61、0.62、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.70、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.80、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.90、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1.0であってよい。xは、0<x<1となるように、0超かつ1未満である場合がある。式(Ib)は、0<x≦1となるように、過剰なTiを有する場合がある。0≦x<1も企図される。
【0042】
式(Ia)および(Ib)において、δは、0~3の任意の数であり、小数部分、例えば、小数および/または100分の1を含み、酸素空孔を示す。δは、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9または3.0であってよい。δは、10分の1、100分の1またはその両方を含む、0~3の任意の数である場合がある。δは、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.30、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.40、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49、0.50、0.51、0.52、0.53、0.54、0.55、0.56、0.57、0.58、0.59、0.60、0.61、0.62、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.70、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.80、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.90、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1.0、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.20、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.29、1.30、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.40、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.50、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.60、1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68、1.69、1.70、1.71、1.72、1.73、1.74、1.75、1.76、1.77、1.78、1.79、1.80、1.81、1.82、1.83、1.84、1.85、1.86、1.87、1.88、1.89、1.90、1.91、1.92、1.93、1.94、1.95、1.96、1.97、1.98、1.99、2.0、2.01、2.02、2.03、2.04、2.05、2.06、2.07、2.08、2.09、2.1、2.11、2.12、2.13、2.14、2.15、2.16、2.17、2.18、2.19、2.20、2.21、2.22、2.23、2.24、2.25、2.26、2.27、2.28、2.29、2.30、2.31、2.32、2.33、2.34、2.35、2.36、2.37、2.38、2.39、2.40、2.41、2.42、2.43、2.44、2.45、2.46、2.47、2.48、2.49、2.50、2.51、2.52、2.53、2.54、2.55、2.56、2.57、2.58、2.59、2.60、2.61、2.62、2.63、2.64、2.65、2.66、2.67、2.68、2.69、2.70、2.71、2.72、2.73、2.74、2.75、2.76、2.77、2.78、2.79、2.80、2.81、2.82、2.83、2.84、2.85、2.86、2.87、2.88、2.89、2.90、2.91、2.92、2.93、2.94、2.95、2.96、2.97、2.98、2.99または3.00であってよい。δは、この材料が小数部分を含むように、任意でない場合がある。
【0043】
δは、上記呼ばれた任意の数を含むが、上記言及された少なくとも1つの数を除いた範囲である場合がある。例えば、δは、1および2を除いて、0.1~3.0である場合がある。代替的な例では、δは、0.1~0.9、1.1~1.9または2.1~2.9のうちの1つ以上の範囲を含む場合がある。さらに別の非限定的な例では、δは、0.01~0.99、1.01~1.99または2.01~2.99のうちの1つ以上の範囲を含む場合がある。
【0044】
1つ以上の実施形態において、第1の酸化物内の酸素空孔は、この材料の有益な特性に寄与する。このため、酸素空孔が形成され、目的に応じて保存され、酸素空孔の存在を排除するであろうプロセスは、材料の合成および/または使用中に回避されまたは排除される場合がある。
【0045】
第1の酸化物中の酸素空孔を、材料中に存在する酸素原子の量が親材料の結晶格子中に予想される量より少ないこととして特徴付けることができる。酸素空孔は、典型的には、酸素の化合物から酸素を除去することにより、例えば、N、アルゴン等の還元性雰囲気中でアニールすることにより形成される。別の実施形態では、アニーリングを、真空炉中で行うことができる。酸素空孔は、材料の元素組成が明確に定義された自然数の比により表すことができないように、材料を非化学量論的にするかまたは化学量論から逸脱させる場合がある。一方、この材料は、化学量論的であってもよい。
【0046】
一部の用途では、酸素空孔は、構造的、電気的、光学的、解離的および還元的特性または種々の用途に適していない様式で他の特性に影響を及ぼす望ましくない欠陥として認識される場合がある。対照的に、本明細書に開示された材料は、酸素空孔が存在するため、望ましい特性を有する。ベース化合物または親化合物および酸素空孔を有する材料が、ある程度、共通の形態、構造または格子を有する場合があるが、それらの特性は、明らかに異なる場合がある。これは、酸素欠乏化学量論を有する開示された材料の場合である。第1の酸化物は、親MgTi相と同様の結晶構造を有する。ただし、その結晶構造でさえ、酸素欠乏のために異なる。例えば、第1の酸化物の格子は、親相が結合を含む空間において、余分な結合を含むかまたは結合を欠く場合がある。親MgTi相と第1の酸化物との構造の相違の例を、図5に示すことができる。図5において、濃い灰色の大きい円は、Ti原子を表し、薄い灰色の大きい円は、Mgを表し、小さい黒色の円は、O原子を表し、小さい薄い灰色の円は、H原子を表す。
【0047】
図5から分かるように、親MgTi相の格子は、それぞれ酸素原子に対して正確に4つの結合を有するTi原子と、それぞれ酸素原子に対して3つまたは5つのいずれかの結合を有するMg原子とを含む。対照的に、Mg1-xTi2+x5-δおよび/またはMgTi5-δの構造格子は、5つの酸素原子に対する結合を有する少なくとも1個のTi原子および/または酸素原子に対する4つの結合のみ有する少なくとも1つのMgを含む。
【0048】
本開示を単一の理論に限定するものではないが、酸素空孔の存在に起因して、開示された第1の酸化物は、親相とは非常に異なる特性、例えば、導電率を有すると考えられる。なぜならば、酸素空孔が材料中の電気伝導のための主要な電荷キャリアとして機能するためである。その物理的外観において、更なる差異を観察することができる。親MgTi相は、白色であるが、開示された第1の酸化物は、酸素空孔を示す濃い青色の色調を伴った黒色から灰色の外観を有する。合成された第1の酸化物の例を、図3に見ることができ、酸素空孔を示す色差を、図9A図9Cに見ることができる。
【0049】
開示された材料は、良好な導電率を有する。第1の酸化物および第2の酸化物は、開示された材料全体の良好な導電率に寄与する。Mg1-xTi2+x5-δおよび/またはMgTi5-δは、室温での周囲環境において、約0.01~15、1.5~12または2~10S/mの導電率を有する場合がある。Mg1-xTi2+x5-δおよび/またはMgTi5-δは、室温での周囲環境において、約、少なくとも約もしくは最大約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.12、0.15、0.17、0.20、0.22、0.25、0.27、0.30、0.32、0.35、0.37、0.40、0.42、0.45、0.47、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1.0、1.2、1.5、1.7、2.0、2.2、2.5、2.7、3.0、3.2、3.5、3.7、4.0、4.2、4.5、4.7、5.0、5.2、5.5、5.7、6.0、6.2、6.5、6.7、7.0、7.2、7.5、7.7,8.0、8.2、8.5、8.7、9.0、9.2、9.5、9.7、10、10.2、10.5、10.7、11、11.2、11.5、11.7、12、12.2、12.5、12.7、13、13.2、13.5、13.7、14、14.2、14.5、14.7もしくは15S/mまたはそれらの間の任意の範囲の導電率を有する場合がある。
【0050】
導電率を、エネルギーギャップとも呼ばれるバンドギャップ(E)により表現することができる。バンドギャップは、価電子帯の上部と伝導帯の下部との間のエネルギー差を指す。大きなバンドギャップを有する物質は、典型的には、絶縁体であり、より小さなバンドギャップを有する物質は、半導体と呼ばれる。導体は、バンドギャップを有さないかもしくはゼロのバンドギャップを有する(すなわち、金属)かまたは非常に小さなバンドギャップ、例えば、(<1eV)を有する(すなわち、半金属)かのいずれかである。
【0051】
Mg1-xTi2+x5-δおよび/またはMgTi5-δの導電挙動を調べるために、第1原理DFT計算を行った。この計算を、投影増強波ポテンシャルおよび一般化勾配近似(GGA)のPerdew-Burke-Ernzerhof(PBE)式を使用して、Vienna Ab-initioシミュレーションパッケージ(VASP)内で行った。520eVの平面波基底系カットオフエネルギーを使用した。
【0052】
原子論的シミュレーションのために、12の化学単位を有する斜方晶Cmcm MgTi(空間群番号63)のスーパーセルを、3×3×3のkポイントメッシュで使用した。図4Aの状態密度(DOS)シミュレーションから、バルク-MgTiのDFTバンドギャップは、2eVより大きいことが分かった、これは、親構造MgTiが絶縁体であることを示す。フェルミ準位(E)を、x=0に設定した。フェルミ準位(E)の下は、占有状態であり、フェルミ準位の上は、非占有状態である。
【0053】
対照的に、図4Bに示されたように、バルクMgTi構造中に酸素空孔が存在すると、材料の導電率が変化する。開示された第1の酸化物MgTi4.92の例示的な標本のフェルミ準位(E)は、親MgTi相と比較してシフトしている。Eは占有されている(すなわち、金属)。これは、Mg1-xTi2+x5-δおよび/またはMgTi5-δがその導電挙動を示していることを示す。これを、以下で検討される実験によりさらに検証した。
【0054】
また、DFT計算も、開示された第1の酸化物の防食挙動を評価するのに利用した。DFTスラブモデルを、水素吸着および解離反応で試験した。水素解離反応を、(110)MgTi、(110)MgTi5-δ、(101)TiO(アナターゼ)、(110)TiO(ルチル)および(001)TiOについて試験した。その構造を、図5に示す。各スラブモデルを、最大水素被覆率について試験した。以下の表1に、各スラブモデルにおける水素吸着エネルギー(ΔEads、H)および最大水素被覆率(θH,cov)を示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示されたように、(110)MgTi5-δは、他の試験された化学種と比較して、最大の水素吸着エネルギーを有する。この知見は、試験された種の群の中で、(110)MgTi5-δについての最も高いH抵抗と直接的に相関する。加えて、(110)MgTi5-δは、最小の水素被覆率(すなわち、最小の水素解離)を示す。
【0057】
開示された第1の酸化物は、約25~40、28~35または30~33モル%のMgOと、75~60、72~65または70~66モル%のTiO+TiO混合物との名目上の化学成分を有する場合がある。MgとTiとのモル比であるMg/Tiは、約0.01~0.8、0.1~0.60または0.25~0.5である場合がある。MgとTiとのモル比であるMg/Tiは、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.30、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.40、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49、0.50、0.51、0.52、0.53、0.54、0.55、0.56、0.57、0.58、0.59、0.60、0.61、0.62、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.70、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.80またはここで挙げられた任意の2つの数を含む範囲である場合がある。Mg/Ti比の値の非限定的な例は、以下、0.15のMg/Ti比を有するMg0.4Ti2.6、0.2のMg/Ti比を有するMg0.5Ti2.5、0.25のMg/Ti比を有するMg0.6Ti2.4、0.30のMg/Ti比を有するMg0.7Ti2.3、0.36のMg/Ti比を有するMg0.8Ti2.2または0.43のMg/Ti比を有するMg0.9Ti2.1を含む。
【0058】
1つ以上の実施形態において、第1の酸化物を製造する方法が開示される。合成は、MgO、TiOおよび/またはTiOの乾燥粉末を製造することを含む場合がある。この方法は、MgO、TiOおよび/またはTiOの混合物を形成することを含む場合がある。この方法は、MgOの第1の粉末と、TiO/TiOまたはTiOの第2の粉末予備混合物とを混合することを含む場合がある。この方法は、混合物中に含まれる1種以上の化合物を乾燥させることを含む場合がある。乾燥を、真空または超高真空、N、ArまたはAr/H環境中で行うことができる。超高真空は、約10-7パスカルまたは100ナノパスカル(10-9mbar、約10-9torr)より低い圧力の状態を指す。
【0059】
この混合物を、任意の形状または構成に、例えば、型内で圧縮することができる。非限定的な例は、圧縮ペレットであってよい。圧縮された混合物を、ある期間の間、焼結により加熱することができる。焼結は、液化点または材料の融点まで材料を融解させることなく、熱および/または圧力により材料を圧縮し、固体塊を形成するプロセスである。
【0060】
時間の長さは、粉末粒子同士が融合して、固体片を形成しかつ/または圧縮された材料が薄い灰色から青黒色に外観が変化するのに必要な長さであってよい。焼結を、粉末混合物の融点未満の温度で行うことができる。温度は、真空、N、Ar、Ar/H環境中、約400~2000℃、800~1800℃または1200~1500℃の範囲であってよい。
【0061】
開示された材料を、発泡体としてまたは例えば、ポリマーバインダーを含む複合材料として形成することができる。
【0062】
開示された材料は、ナノ材料またはマイクロ材料として調製することができる。ナノ材料またはマイクロ材料は、繊維、ロッド、網状構造、布、フェルト等の形態であってよい。ナノファイバーは、約10~250、30~200または50~100nmの直径および約50~950、100~800または200~600nmの軸長を有することができる。マイクロファイバーは、約50nm~5μm、250nm~2μmまたは500nm~1μmの直径および約500nm~500μm、250nm~250μmまたは100nm~100μmの軸長さを有することができる。ナノ材料および/またはマイクロ材料は、ファセット(110)、(023)、(002)、(020)、(200)、(023)および/または(021)を含む(がこれに限定されない)増加したファセットの存在を示す場合がある。ナノサイズの材料、マイクロサイズの材料または両方とも、多孔性であってよい。ナノサイズの材料、マイクロサイズの材料または両方とも、焼結されていることができる。ナノサイズの材料、マイクロサイズの材料または両方とも、PEM電解槽におけるPTL用途に有益である場合がある。PTLは、カソードPTL、アノードPTLまたはその両方であってよい。
【0063】
酸素空孔の量を、特定の用途の必要性に応じて調整することができる。酸素空孔の量を、焼結温度を制御し、調整または制御することにより導入し、制御または変更することができる。酸素空孔の量を、粉末混合物中のTiO/TiO比により制御することができる。TiO/TiO比は、約0:100、1:99、10:90、20:80、30:70、40:60、50:50、60:40、70:30、80:20、90:10、99:1または100:0であってよい。
【0064】
驚くべきことに、焼結とは対照的に、アニーリングにより、開示された材料中の酸素空孔が破壊されることが見出された。開示された材料では、酸素空孔が望ましいため、熱処理により結晶欠陥を最小限に抑え、材料をその再結晶化温度を超えて加熱し、適切な温度を一定時間維持し、ついで、空気中で冷却するプロセスとしてのアニーリングは避けるべきである。
【0065】
実施例
設定A
DFT由来の結果を検証するために、第1の酸化物を合成し、以下に記載される方法に従って試験した。
【0066】
第1の酸化物を、乾燥MgO、TiOおよびTiO粉末混合物を使用して、以下の方法により合成した。MgO粉末を、Ar環境中において、120℃で2時間乾燥させた。代替的には、炭酸Mgまたは別のタイプのMg含有前駆体を使用することができる。ついで、乾燥粉末を、TiO/TiO粉末と混合して、混合物を形成した。代替的には、TiOまたは他のタイプのTi含有前駆体(TiO、硝酸Ti、塩化物等)を使用することができる。この混合物を、3000psiの一軸荷重下で、直径約12mmおよび厚さ2mmのペレットに圧縮した。プレスされたままのペレットは、薄い灰色を有していた。ついで、圧縮されたペレットを、Alるつぼに入れ、真空環境(10-3torr)中で10時間、反応焼結(例えば、1450℃)のために加熱した。代替的には、還元ガス剤、例えば、N、アルゴン、Hまたはそれらの混合物を使用することができる。焼結後、ペレットは、青色の色調を伴った黒色であるように見えた。この方法を使用して、5バッチのペレットを調製した。各バッチは、3~4個のペレットを含有した。
【0067】
各バッチから1つずつの5つの焼結ペレットの表面の両側に、Auをスパッタリングした。その後、ペレットを、EL-Cell(登録商標)ECCセルに組み合わせた。定電流を印加し、電圧値を、電圧読取値が安定するまで、約10分後に記録した。この工程を異なる電流で数回繰り返した。抵抗およびDC導電率を、V-Iデータをフィッティングさせて、線形勾配により計算した。
【0068】
図6に、25℃から80℃までの導電率のアレニウスプロットを示す。平均導電率およびエラーバーを、異なるバッチから作製した7つの異なるサンプルから計算した。開示された結晶性Mg1-xTi2+x5-δおよび/またはMgTi5-δは、室温の周囲環境において、約2~10S/mの導電率を示した。測定された導電率は、半導体、例えば、GeおよびSiより高いが、炭素、鉄および金よりわずかに低い。第1の酸化物の活性化エネルギーは、25℃~80℃の温度範囲で約0.13eVであった。活性化エネルギーを、追加の酸素空孔を導入するかまたは材料を非化学量論的、すなわち、Ti過剰にすることにより、130meV未満より小さくすることができる。
【0069】
X線光電子分光法(XPS)および光学顕微鏡法を使用して、2つの異なるバッチからの幾つかのペレット中の第1の酸化物の物理的特性を評価した。観察の目的で、ペレットの一部をアニールした。ペレットを、TiOの比較ペレットと比較した。ペレットのXPS研究を、Al X線源(1486.7eVの入射光子エネルギー)を備えたPHI XPSシステムを使用して行った。開口サイズを、直径約1.1mmに設定した。得られたXPSスペクトルの結合エネルギーを、284.8eVの不定炭素のC1sピークに対して較正した。
【0070】
図7に、未処理状態にある第1の酸化物を含有するペレット、空気中でアニールされた第1の酸化物を含むペレットおよびTiO参照ペレットのTi 2p XPSスペクトルを示す。収集されたデータから、未処理状態にある第1の酸化物を含有するペレット中のTiは、空気中でアニールされた第1の酸化物を含むペレット中およびTiO参照ペレット中のTiと同様に、主にTi4+状態にあることが示唆された。また、図8から分かるように、観察およびXRD分析から、第1の酸化物が、MgTiと類似するが、同一でない結晶構造を有することが示唆される。
【0071】
焼結ペレットを、光学的に評価した。焼結ペレットの表面を、図9Aに見ることができる。図9Aに、ペレット表面上に黒色および青色の色調を特徴とする合成ペレットを示す。3つの焼結ペレットを、空気中、600℃で10時間アニールした。図9Bで観察することができるように、アニールされたペレットの表面は、ペレットの縁部で部分的に変化し、ペレットの表面領域の一部は、白色に変わったが、表面の一部は黒色のままであった。アニールされたペレットを、空気中、1000℃で10時間さらにアニールした。図9Cから分かるように、ペレットの表面全体が、第2ラウンドのアニーリング後に白色に変わった。図9A図9Cに示されたペレットの光学画像を、Keyence VHX顕微鏡を使用して、100×~1000×の範囲の倍率で収集した。
【0072】
導電率を、合成されたままのペレットについて、約1.7~8S/mで評価し、一方、図9Bに示されたアニールされたペレットは、0.36S/mで合成されたままのペレットより導電性が低いことが見出された。図9Cに示されたアニールされたペレットは、絶縁性であると評価された。これらの結果から、色およびその電気伝導が、第1の酸化物中の酸素空孔と相関することが示唆される。本開示を単一の理論に限定するものではないが、空気中でのアニーリングにより、酸素空孔が除去され、ついで、その結果、色変化および導電率の損失がもたらされると考えられる。図9A図9Cは、酸素空孔が第1の酸化物における電気伝導のための主な電荷キャリアであることを意味する。酸素空孔が、空気中、1000℃等でのアニーリングプロセスにより除去されると、第1の酸化物は、絶縁体に移行する。
【0073】
合成されたままのペレットを、耐食性についてさらに試験した。腐食電流測定を、3電極液体セルセットアップで行った。カウンター電極を、約16cmのPtメッシュとした。参照電極は、KCl溶液中の標準的なAg/AgCl電極とした。ペレットを、約0.5cmの実効面積を有する作用電極として使用した。各測定について、1つのペレットを一度に測定した。合計で、3つのペレットを測定した。静的腐食電流測定のために、pH=2の硫酸を、電解質として60℃で使用した。静的腐食電流を、1.0Vバイアス対Ag/AgCl参照電極で記録した。腐食電圧試験は、PEMEにおけるOER条件に適した、基準電極に対して2Vまでであってよい。
【0074】
腐食電流測定の結果を、図10に示す。合成されたままの未処理の第1の酸化物についての腐食電流密度を、下部に示し、カーボン紙を上部に示し、研磨ステンレス鋼(SS)316を中央に示す。未処理のMg1-xTi2+x5-δおよび/またはMgTi5-δ材料の腐食電流密度は、研磨SS316およびカーボン紙より約2桁良好/低いと評価された。すなわち、Mg1-xTi2+x5-δおよび/またはMgTi5-δで測定された腐食電流は、SS316と比較した場合、Mg1-xTi2+x5-δおよび/またはMgTi5-δが100倍小さい定常腐食電流を発生させることを示した。全体として、結晶性Mg1-xTi2+x5-δおよび/またはMgTi5-δは、酸性環境において、良好な耐食性を示した。
【0075】
Mg1-xTi2+x5-δおよび/またはMgTi5-δは、pH2、約0~80℃、10~60℃または20~40℃の温度で、約0.5~5、1~3または1.5~2.5μAcm-2未満の耐食性(静的腐食電流密度)を有することができる。Mg1-xTi2+x5-δおよび/またはMgTi5-δは、pH2、約0~80℃、10~60℃または20~40℃の温度で、約5.0、4.0、3.0、2.5、2.0、1.8、1.6、1.4、1.2、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2または0.1μAcm-2未満の耐食性を有することができる。
【0076】
また、ペレットを、化学的耐性または不活性についても試験した。化学的不活性は、酸性燃料電池環境に存在する化合物、例えば、H、FおよびSO との第1の酸化物の反応性に関する。1つの未処理のペレットを、粉末に粉砕し、この粉末を、100~150℃に加熱した王水(3:1の比率の濃HNOとHClとの混合物)中で試験した。粉末は溶解せず、良好な化学的安定性を示した。
【0077】
1つ以上の非限定的な実施形態において、式(Ia)、(Ib)の第1の酸化物もしくはその両方および/または式(II)の第2の酸化物を含む開示された材料を、電気化学セル、PEMFCまたはPEME中の触媒担持体として使用することができる。PEMFCでは、アノードおよびカソードはそれぞれ、酸素と水素との反応を促進する触媒を含むことができる。アノード触媒は、アノードにおいて、燃料を水素プロトンおよび電子に酸化し、一方、カソード触媒は、水の形成をもたらす酸素還元反応を触媒する。カソードにおけるより複雑な化学作用のため、反応速度を向上させるために、アノードにおけるよりカソードにおいて、より高い触媒の装填が通常必要とされる。
【0078】
適切な触媒は、カソードにおける腐食環境に耐えるのに十分安定でありかつOを還元することが可能なように十分に化学的に活性でなければならない。また、触媒は、望ましくない中間体の生成を最小限に抑えながら、所望の生成物を生成するのに十分に選択的である必要もある。また、触媒層は、反応が完了すると、触媒表面からの生成物である水の放出を促進して、触媒部位を解放することも可能であるべきである。
【0079】
各種の貴金属が、触媒として使用されてきた。最も一般的に使用される触媒は、その優れた触媒活性およびその過酷な動作条件に耐えるための中程度の安定性のために、白金(Pt)である。実際、Ptは、燃料電池の酸性(PH<2)動作環境に耐えることが可能な数少ない元素の1つである。
【0080】
典型的には、触媒の安定性を向上させ、この系からのそれらの物理的脱離を防ぐために、触媒材料は、典型的には、触媒担持体材料に固定される。触媒担持体材料は、典型的には、広い表面積を有する固体材料である。触媒担持体自体は、触媒反応に影響を及ぼすのを防ぐために不活性である必要がある。PEMFC用の最も一般的な触媒担持体は、グラファイト、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、ナノスフェア、ナノ楕円体、ナノロッド等またはそれらの組み合わせを含む。しかしながら、燃料電池の動作条件下でのこれらの担持体材料の酸化が、特に、始動/停止プロセス中に生じるおそれがある。次に、この酸化は、PEMFC寿命を制限してしまうおそれがある触媒の劣化につながるおそれがある。さらに、上記言及されたように、上記されたカーボン系担持体材料は、PEMFCおよびPEMEのカソードにおいて許容され、広く使用されているが、PEMEのアノードは、OER反応を行うために、さらに高い電圧で動作させる必要がある。このため、高度に酸化性のPEME環境のために、担持体材料の腐食の加速をもたらされるおそれがある。次に、これは、触媒層の多孔質構造の機能を低下させてしまうおそれがある。カーボン系担持体について、この現象は、炭素腐食として公知である。したがって、種々の金属酸化物が、触媒安定性および更なる酸化に対する耐性を改善する傾向のために、カーボンとは対照的に、可能性のある代替的な触媒担持体として研究されてきた。例えば、TiO、NbO、SnOおよび他のドーピングされた金属酸化物が、OER触媒のための可能性のある担持体材料として検討されてきた。しかしながら、これらの金属酸化物でさえ、経時的に導電性を失ってしまう。
【0081】
任意の触媒担持体材料は、通常は酸性(すなわち、pH1~4の低pH)であるPEMFCおよびPEMEの動作条件において安定であり、電気化学セルに印加されている種々の電圧:典型的には、PEMFCについてSHEに対して0V~最大1.2V、PEMEについてSHEに対して1.6V超に耐えるという、特定の基準を満たす必要がある。
【0082】
PEMFC電極において触媒担持体材料として使用される種々の金属酸化物の中でも、TiOおよびSnOが、有力な候補として開示されている。これは、TiOおよびSnOについての水系電気化学システムにおけるそれらの安定性:pHが1~4(すなわち、酸性)で変化する場合がある箇所で安定な酸化物を形成し、また、0~1.23Vの電圧もPEMFC動作中の局所環境に影響を及ぼす場合があることに起因する。近年、SnドーピングされたTiOも、Pt触媒用の触媒担持体材料として試験され、以下のことが報告された:1)TiO中に最大10%のSnをドーピングすると、質量活性が向上した;2)TiO中に23~40%のSnをドーピングされた触媒担持体は、必要な白金がはるかに少なくなった;3)SnドーピングされたTiOは、TiO中に28%未満でSnをドーピングすると、80℃での酸性条件において安定であった。
【0083】
1つ以上の実施形態において、式(Ia)、(Ib)もしくは両方の第1の酸化物および/または式(II)の第2の酸化物を含む本明細書に開示された材料を、燃料電池用途におけるPEMFC触媒のための担持体として、カソード、アノードもしくは両方上でまたはPEMEにおけるカソードおよび/またはアノードの触媒担持体として使用することができる。触媒は、貴金属または貴金属を含まない触媒であってよい。触媒の非限定的な例は、Pt、Pd、Au、Ir、Rh、Ruまたはそれらの組み合わせであってよい。触媒は、酸化還元反応(ORR)触媒であってよい。
【0084】
開示された材料は、高表面積カーボン(約1~700m/gのBET表面積を有する)と同様の多孔度を有する場合がある。開示された材料は、カーボンより多孔性が低い場合がある。開示された担持体材料は、約200nm未満の平均粒径を有する場合がある。粒径は、約20~200nm、25~150nmまたは30~100nmである場合がある。代替的には、粒径は、約200~600nm、300~550nmまたは400~500nmである場合がある。開示された材料を含む触媒担持体の粒径は、約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600nmまたは上記開示された任意の2つの数を含む範囲である場合がある。
【0085】
触媒を、図11Aに示されたように、触媒担持体上に触媒の1つ以上の島を形成するかまたは図11Bに示されたように、コアを形成する開示された材料とシェルを形成する触媒とのコア-シェル型構成のいずれかで、開示された材料を含む担持体上に堆積させることができる。図11Aおよび図11Bにおいて、50は、触媒担持体を示し、52は、触媒を示す。電気化学セル、PEMFCもしくはPEME装置および/またはスタックシステムの期待される性能、コストおよび寿命に応じて、特定の構成を調整することができる。触媒担持体材料としての役割を果たすMg1-xTi2+x5-δおよび/またはMgTi5-δと触媒として使用されたPtとの走査型電子顕微鏡(SEM)断面画像を、図12Aおよび図12Bに示す。触媒担持体材料は、均一または不均一な表面を有することができる。触媒担持体材料は、触媒材料用の基材としての役割を果たす場合がある。触媒担持体材料は、触媒を物理的にかつ/または化学的に結合することができる。
【0086】
Mg1-xTi2+x5-δおよび/またはMgTi5-δを含む触媒担持体材料は、酸性環境において化学的に安定であり、本明細書で実証されるように、燃料電池の動作状態中の腐食および酸化環境に対して高度な電気化学的安定性を有する。
【0087】
Pt金属触媒とMg1-xTi2+x5-δおよび/またはMgTi5-δとの間の界面を構築するために、DFT計算を行った。DFT計算を、投影増強波ポテンシャルおよび一般化勾配近似(GGA)のPerdew-Burke-Ernzerhof(PBE)式を使用して、Vienna Ab-initioシミュレーションパッケージ(VASP)内で行った。520eVの平面波基底系カットオフエネルギーを使用した。DFT計算を、PtおよびMg1-xTi2+x5-δおよび/またはMgTi5-δが安定な界面を形成することができることを検証するために使用した。これにより、PEMFCまたはPEME触媒のための酸化物担持体材料として、Mg1-xTi2+x5-δおよび/またはMgTi5-δの利用が可能となる。
【0088】
以下の表2に、Pt触媒とMg1-xTi2+x5-δおよび/またはMgTi5-δ担持体との間のDFT計算された界面エネルギーを示す。具体的には、エネルギー的に安定なPt表面ファセット(111)、(100)および(110)を、(110)MgTi5-δ上で調べた。表2に、(110)MgTi5-δとPt触媒(ファセットに関係なく)との間の計算されたDFT界面エネルギーが負の値であると予測されることを示す。負のDFT界面エネルギーは、2つの化学系が安定な界面を形成しているであろうことを示す。表2に、比較のために、TiOおよびSnO上のPtのDFT界面エネルギーをさらに示す。表2から分かるように、MgTi5-δおよびSnO/TiOについての界面エネルギーは同等である。DFT計算は、ΔEint=E0,total-(E0,Pt,surf+E0、MOx)であり、式中、内部エネルギー(E)を、DFT計算から得ることができる。
【0089】
【表2】
【0090】
図13A図13Fに、DFT緩和計算前後での、種々のPt表面ファセットと(110)MgTi5-δとの間に構築された界面を示す。具体的には、図13A図13Cに、DFT緩和前の構築された界面を示す。図13D図13Fに、DFT緩和後の界面を示す。図13D図13Fから明らかなように、DFT緩和後、MgTi5-δ上のPt(100)およびPt(111)は、互いに非常に類似して見える。
【0091】
表1に、(100)Ptが(110)MgTi5-δに最も強く結合することができ、一方、(110)Ptが(110)MgTi5-δにあまり強く結合しない場合があることをさらに示す。(111)ファセットは、Ptナノ粒子において最もエネルギー的に好まれる表面ファセットであると考えられるが、(110)および(100)も、Pt粒子の角および縁において観察される。合成温度、時間、pH、前駆体材料および経路に応じて、図14に示されたように、Ptナノ粒子のサイズおよび形状を制御することが可能である。表2に、全てのPtファセットがMgTi5-δ上に結合し、(100)および(111)ファセットが(110)より強く結合する場合があることを示す。このため、Pt触媒粒子の大きさおよび形状にかかわらず、DFT計算から、Pt触媒とMgTi5-δとの間の安定な界面が形成されているであろうことが示唆される。
【0092】
触媒担持体としての開示された材料の導電性および防食性挙動をさらに調査した。以下の表3に、種々の金属酸化物担持体により担持されたPt上でのHOおよびHOのDFT結合エネルギー(ΔE)を示す。相対結合エネルギー(Δerel,b)も提供され、純粋なPt(111)上での結合エネルギーを、参照(すなわち、ゼロエネルギー)として使用する。MgTi5-δ上に担持されたPtのHOとHOの計算された結合エネルギーは、SnO上に担持されたPtとTiO上に担持されたPtとの間である。これは、MgTi5-δ上のPtがSnO上に担持されたPtより安定性を提供することができ、一方、TiO上に担持されたPtと比較して、より高い反応性を提供することができることを示す。
【0093】
【表3】
【0094】
表3から分かるように、MgTi5-δ上のPtについてのHOの相対的な結合エネルギーは、-0.063~-0.157eVである。HOの場合には、結合エネルギーは、-0.090eVから-0.027eVまで変化する。どちらの場合も、結合エネルギーは、TiO上に担持されたPtより低く、一方、SnO上に担持されたPtより高い。このため、前述のように、MgTi5-δ上のPtは、SnO上に担持されたPtより反応物に対してより「安定性」を有することができ、TiO上のPtより「反応性」を有することができる。さらに、上記検討され、図6および図10それぞれで参照されているMgTi5-δの防食性挙動および向上した電子導電性により、現在の最新のTiOおよびSnO触媒担持体系より触媒担持体として使用されるMgTi5-δに更なる利点が提供される。
【0095】
開示された触媒担持体材料を、各種の方法により調製することができる。この方法は、溶液ベースのプロセス、固体状態プロセス、熱処理および/または電気化学的方法を含むが、これらに限定されない。触媒担持体材料は、電子導電性をさらに向上させるために、ドーピングされていない場合がありかつ/または窒素、炭素、フッ素等もしくは他の元素で部分的にドーピングされている場合がある。他の元素の非限定的な例は、d金属、例えば、Zr4+、Hf4+、V5+および/もしくはCr6+ならびに/またはd10金属、例えば、Zn2+、Ga3+および/もしくはPb4+ならびにAl3+(d電子なし)を含むことができる。ここで、dおよびd10金属ならびにAl3+は、典型的には、酸化がより困難である。
【0096】
非限定的で例示的な調製方法は、金属含有前駆体化学物質、例えば、M(NO、MCl、M(OH)およびMO(式中、M=MgおよびTiである)を溶媒に溶解して、初期混合物を形成することを含む場合がある。溶媒は、水または有機溶媒であってよい。溶液のpHを、酸化性または還元性化学物質の存在により、調整、維持または制御する場合がある。初期混合物を、約100~2000℃、200~1500℃または300~1000℃で、約1、2、3、4、8、12、16、24、36、48、60または72時間の種々のエージング時間熱処理して、触媒担持体材料を形成することができる。熱処理中、気体環境を、N、Ar、H、O、空気および/または真空により制御することができる。その後、触媒材料、例えば、Ptを、固体状態、溶液ベースの方法および/または種々の堆積技術のいずれかを使用して、触媒担持体材料上に堆積させることができる。
【0097】
種々のサイズの酸化物前駆体材料、例えば、MgO、TiO、TiO、Mg(OH)等を、固体状態法、例えば、ボールミリング法、共沈プロセス(例えば、溶液ベースのプロセス)、ゾル-ゲルプロセス、熱水プロセス等により混合し、合成し、続けて、二次熱処理することができる。
【0098】
本明細書に開示された触媒担持体を、熱水法により、続けて、酸素を含まない雰囲気中で後続のアニーリングプロセスを行うことにより、高表面積粒子に調製することができる。本明細書に開示された触媒担持体の非限定的で例示的なBETは、約100~1500、150~850または200~550m/gであってよい。本明細書に開示された触媒担持体の非限定的で例示的なBETは、約、少なくとも約もしくは最大約100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450もしくは1500m/gまたはそれらの間の任意の範囲であってよい。比較すると、Vulcan XC-72材料は、典型的には、250m/gのBET比面積を有し、高表面積カーボン、例えば、Ketjen Black EC 600JD、超高表面積カーボン(USAC)等は、最大約1,500m/gのBET比面積を有する場合がある。
【0099】
本明細書に開示された触媒担持体の別の非限定的で例示的なBET面積は、100m/g未満、例えば、0.1~99、1~50または5~25m/gであってよい。本明細書に開示された触媒担持体のBET面積は、約、少なくとも約もしくは最大約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.2、2.4、2.6、2.8、3.0、3.2、3.4、3.6、3.8、4.0、4.2、4.4、4.6、4.8、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95もしくは99m/gまたはそれらの間の任意の範囲であってよい。
【0100】
代替的には、本明細書に開示された触媒担持体材料は、約400~2000℃、800~1800℃または1200~1500℃の比較的高温下で、真空、N、ArまたはAr/H環境中において化学反応させ、続けて、機械的に粉砕することにより調製することができる。調製雰囲気は、酸素が反応中に供給されず、反応環境から能動的に除去されるように、酸素を含まないように保たれるべきである。本明細書に開示された触媒担持体を、コロイド合成経路、続けて、種々の雰囲気中での後続のアニーリング工程により調製することができる。本明細書に開示された触媒担持体を、燃焼合成法または火炎合成法、続けて、酸素を含まない環境における後続のアニーリング工程により調製することができる。
【0101】
第1の酸化物および第2の酸化物を含む開示された材料を、PEMFC、アニオン交換膜燃料電池(AEMFC)、カソードもしくはアノードのいずれか、プロトン交換膜電解槽(PEME)、化学合成、内燃機関からの排気の浄化を含む空気浄化、水分解セルのための光触媒作用または水洗浄のための酸化還元媒体の光触媒作用を含む、各種の用途における触媒作用に使用することができる。
【0102】
本明細書に開示された触媒担持体材料を、導電性を向上させるために、カーボンおよび/または別のタイプの導電性ポリマーとさらに混合することができる。カーボンは、非晶質カーボン、Denka black、Ketjen Black、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、グラフェン、グラファイト、グラフィン(graphyne)、グラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン等を含むが、これらに限定されない。この混合物の比は、約1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1または2:1であってよい。代替的には、カーボンおよび/または別のタイプの追加の担持体材料は、開示された材料のための担持体としての役割を果たす1つ以上の追加の副層を形成することができる。
【0103】
本明細書に開示された触媒担持体材料を、1種以上のタイプの触媒担持体材料、例えば、追加の酸化物、炭化物または金属間化合物等と混合することができる。例示的な酸化物材料は、SnO、MoO、Nb、Ta、TiO、WO、SnMoおよび/もしくはTiNb、GeO、MoO、NbO、SnO、Ti、SnWO、WO、NbSnO、SnWO、SnGeO、TaSnO、TiSn、TiOまたはそれらの混合物を含むことができる。例示的な炭化物は、Nb、MoC、TaC、Ti、WC、TaC、NbSnC、TiGeC、TiSnC、TiGeC、MoCまたはそれらの混合物を含むことができる。二元または三元金属間化合物の非限定的な例は、MoW、NbSn、NbSn、SnMo、TaSn、TaSn、TaW、TiMo、TiMo、TiMo、TiMo、TiNb、TiSn、TiSn、TiSn、TiSn、NbMoW、TaMoW、TiMoW、TiNbSn、GeMo、GeMo、NbGe、NbGe、SnGe、TaGe、TaGe、TaGe、TiGe、TiGe、TiGeまたはそれらの混合物であってよい。二次熱処理条件、例えば、温度、酸化剤/還元剤の存在に応じて、金属間成分の表面膜およびバルク領域における酸化物の量(およびその組成)をさらに制御することができる。
【0104】
実施例
設定B
DFT計算結果を検証するために、MgTi5-δを使用して、上記実施例、設定Aに記載された方法によりペレットを形成した。続けて、Ptを含む触媒材料を、ペレット上にスパッタリングし、触媒を有する触媒担持体を、600℃で10時間アニーリングした。図12Aに、アニーリングプロセス前の、スパッタリングされた触媒を含むペレットのうちの1つの例を示す。図12Bに、アニーリングプロセス後のペレットのうちの1つを示す。破線は、図12Aおよび図12Bの両方において、PtとMgTi5-δとの間の界面を示す。図12Aおよび図12Bは、走査型電子顕微鏡(SEM)断面画像である。図12Bに、Pt触媒がMgTi5-δ担持体表面上に非常に良好に結合していることを示す。相分離は観察されなかった。実験から、Ptは、MgTi5-δ材料と良好な接触を形成することが示された。600℃、10時間の熱処理後でも、Ptは、MgTi5-δ材料表面に密着したままであった。これは、良好な接触を示唆している。
【0105】
本明細書に開示された防食性で導電性の材料は、上記された式(Ia)、(Ib)またはその両方の第1の酸化物を、一般式(II):
Ti (II)
[式中、1≦a≦20および1≦b≦30であり、aおよびbはそれぞれ、小数部分、例えば、小数を含む場合がある1~20または30の任意の数であってよい]
を有する第2の酸化物と組み合わせて含むことができる。aおよび/またはbは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29もしくは30または1~20もしくは1~30それぞれの範囲内の数の任意の範囲であってよい。
【0106】
式(II)を有する第2の酸化物の非限定的で例示的な化合物は、TiO、TiO、Ti、Ti、TiO、TiO、TiO、Ti、Ti11、Ti、Ti13、Ti1930、Ti13、TiおよびTi1322を含む。第2の酸化物は、Tiであってよい。第2の酸化物は、上記された酸化物であってよい。第2の酸化物は、上記された酸化物のうちの少なくとも1つを除いて、上記された任意かつ全ての酸化物であってよい。第2の酸化物は、各種のファセット、例えば、(012)、(110)、(010)、(001)等を含むことができる。
【0107】
Tiの組成および結晶構造に応じて、式(II)の第2の酸化物は、金属(E=0)、半金属(0<E≦1eV)、半導体(1≦E≦2eV)または絶縁(E>2eV)であってよい。
【0108】
式(II)の第2の酸化物は、式(Ia)、(Ib)またはその両方の第1の酸化物を含む、開示される材料またはマトリクスの一部を形成している場合がある。第2の酸化物は、多結晶構造の一部として存在する場合があり、MgTiマトリクスの一部である場合がありまたはその中に存在する場合がある。第2の酸化物は、偏析多結晶相として存在する場合がありかつ/または粒界に、粒界上にまたは粒界の近く、すなわち、粒界から1nm~100μm(100,000nm)、10nm~10μm(10,000nm)または100nm~1μm(1,000nm)内に位置する場合がある。第2の酸化物は、粒界から約1、5、10、50、100、500、1000、5000、10,000、50,000または100,000nmの距離内の偏析多結晶相として存在する場合がある。材料系に応じて、粒径は、約1~100、5~80または10~60μmの範囲であってよい。
【0109】
粒径は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98または100μmの範囲であってよい。代替的には、転位のサイズが、粒径に近づき始めてもよい。約5~15、7~12または8~10nmの粒径では、1つまたは2つの転位が、粒内に適合する場合がある。粒径は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15nmであってよい。さらに、式(II)の第2の酸化物は、式(Ia)、(Ib)またはその両方の第1の酸化物の粒界に隣接して、サイズが約10~50、15~40または20~30μmで変化する場合がある粒子を形成することができる。粒径は、約10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48または50μmであってよい。
【0110】
開示された材料、マトリクスまたは複合材料全体内の第2の酸化物の量は、材料、マトリクスまたは複合材料の総量に基づいて、約、少なくとも約または最大約0.5~50、2~30または3~15重量%であってよい。この量は、材料、マトリクスまたは複合材料の総量に基づいて、約、少なくとも約または最大約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、20.5、21、21.5、22、22.5、23、23.5、24、24.5、25、25.5、26、26.5、27、27.5、28、28.5、29、29.5、30、30.5、31、31.5、32、32.5、33、33.5、34、34.5、35、35.5、36、36.5、37、37.5、38、38.5、39、39.5、40、40.5、41、41.5、42、42.5、43、43.5、44、44.5、45、45.5、46、46.5、47、47.5、48、48.5、49、49.5または50重量%であってよい。
【0111】
X線回折技術を使用して検出可能な第2の酸化物の量は、材料、マトリクスまたは複合材料の総量に基づいて、約5重量%超であってよい。別の実施形態では、シンクロトロンベースの分析、誘導結合プラズマ質量分光法、x線光子分光法または高分解能透過型電子顕微鏡を含む高度な技術で検出可能な第2の酸化物の量は、約0.5、1.5または2.5重量%未満であってよい。
【0112】
式(II)の酸化物は、同時に導電性かつ防食性であってよく、式(Ia)(Ib)またはその両方の第1の酸化物を含むマトリクス、材料または組成物の望ましい特性に寄与することができる。DFT計算を行って、第2の酸化物の導電性および防食性挙動を確認した。
【0113】
例えば、図15Aおよび図15Bに、Tiの化学構造、具体的には、単一の水素原子が表面酸素原子に吸着されているTi(012)の化学構造を示す。大、中および小の円はそれぞれ、Ti、O、およびH原子を表す。図15Aに、(012)Tiの上面図を示し、一方、図15Bに、(012)Tiの側面図を示す。
【0114】
上記されたDFT計算から、(012)ファセットは、R-3c Tiについて最も支配的な表面ファセットであり、1.01J/mの計算された表面エネルギーを有することが証明された。また、(012)Tiファセットの防食挙動を評価するのにも、DFT計算を使用した。以下の表3に、TiOおよびMgTi5-δについての単原子水素吸着エネルギーの比較を示す。
【0115】
【表4】
【0116】
負のDFT計算された吸着エネルギーは、吸着質(例えば、単一の水素原子)が基材により強く結合することを示す。このため、水素(すなわち、酸性環境)から基板を保護するために、高い吸着エネルギーを有することが最も望ましい。上記表4に示されたように、Tiは、他のTi-O含有化合物の中でも、最も高い吸着エネルギーを有する。上記され、表4で確認されたように、MgTi5-δについての単一水素のDFT計算された吸着エネルギーは、計算された材料の中で最も正である。
【0117】
解離エネルギーに関して、防食性および導電性挙動のために、高い水素解離エネルギーおよび低い水素被覆率を有することが最も望ましい。図5A図5Eに、MgTi、MgTi5-δ、アナターゼTiO、ルチルTiO、TiOの化学構造を示す。側面図と上面図との両方を、図5A図5Eに示す。上記言及されたように、図15Aおよび図15Bに、第2の酸化物の非限定的な例、具体的には、Tiの化学構造を示す。図5A図5Eおよび図15A図15Bの示された化学構造において、各表面は、水素原子により完全に不動態化される(すなわち、水素解離)。水素被覆率、すなわち、水素原子と表面酸素原子との間の比率は、TiOおよびTiOでは100%であるが、MgTiおよびMgTi5-δは両方とも、それぞれ71.4および30.8%に低下した水素被覆率を有する。第1の酸化物であるMgTi5-δの場合、水素解離エネルギー(eV/H)は、1.159eV/Hで最も高い。同様に、Tiも、50%に低下した水素被覆率を有する一方、水素解離エネルギーは0.966eV/Hと同等である。種々の酸化物についてのDFT計算された水素解離エネルギーおよび水素被覆率を、上記表1にまとめる。表1の数値と比較して、第2酸化物、具体的には、Tiの解離エネルギーは、0.966ev/Hであり、水素被覆率は、50%であり、これにより、酸性環境における保護が可能となる。
【0118】
Tiの導電挙動を調べるために、第1原理DFT計算を行った。この計算を、投影増強波ポテンシャルおよび一般化勾配近似(GGA)のPerdew-Burke-Ernzerhof(PBE)式を使用して、Vienna Ab-initioシミュレーションパッケージ(VASP)内で行った。520eVの平面波基底系カットオフエネルギーを使用した。
【0119】
Tiの計算された電子構造を示す図16のDOSシミュレーションから、Ti化合物のフェルミ準位(E)が占有されていることが見出された。これは、構造が金属であることを示す。フェルミ準位(E)を、x=0で設定した。フェルミ準位(E)の下は、占有状態であり、フェルミ準位の上は、非占有状態である。電気化学セル用途、例えば、PEMFCもしくはPEME BPP、酸化物触媒担持体またはPTLでは、酸化物候補が、防食性および導電性挙動の両方を示すことが重要である。いかなる材料修飾も伴わないTiは、ゼロバンドギャップ材料である。これは、電気化学セル用途に利用される場合、導電性挙動を示す。
【0120】
図17に、斜方晶系MgTi(Cmcm)および三方晶系Ti(R-3c)相の両方についてのXRDパターンを示す。MgTi5-δおよびTiの複合材料では、MgTiが相の大部分であるが、XRDパターンは、図17の左側のパネルからのMgTiについての全ての主要なピークを含む。同時に、図17の右側のパネルに示された(012)、(104)、(110)等を含む(が、これらに限定されない)Tiの主要なピークは、所定の2シータ位置で不純物ピークを示す場合がある。典型的には、XRDの分解能は、X線源、電流(mAまたはA)、電圧(kV)、走査速度等に応じて変動する。図17で提供されたXRDパターンは、1.5406ÅのX線波長に対応する、最も一般的に使用されるCu-Kα x線周波数に基づいて計算される。2つの相の間のXRDピーク位置および実際の組成割合に応じて、種々のタイプのピーク形状、例えば、二重ピーク、フィート、ショルダー、ピーク広がり等を観察することができる。これは、TiピークがMgTiピークと合体し、そのピーク形状を変化させることがありえるからである。
【0121】
Tiの材料特性を、例えば、酸素空孔を導入することにより、カチオンドーピングによりまたはアニオンドーピングにより、式(Ia)、(Ib)の酸化物と同様に調整することができる。材料特性の変更を、各種の方法により、例えば、種々の化学物質前駆体を使用することによりまたは熱処理環境を制御することにより(例えば、酸化ガス/還元ガスの使用)提供することができる。
【0122】
カチオンドーパントの非限定的な例は、Ge、Nb、Mo、Sn、Ta、Wまたはそれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されない。式(II)の酸化物を、1種以上の導電剤、例えば、カーボンおよび/または1種以上の導電性ポリマーと混合することができる。
【0123】
第1および第2の酸化物を含む開示された材料を製造する方法が、本明細書に開示される。この方法は、式(Ia)、(Ib)またはその両方の第1の酸化物の調製に関して上記されたのと同様に、第1の酸化物を生成することを含むことができる。
【0124】
この方法は、式(II)の第2の酸化物を調製することを含むことができる。第2の酸化物を、ナノ粒子として調製することができる。調製方法は、例えば、水加水分解および沈殿法、続けて、真空中または還元環境、例えば、N、Ar、H、H/N、H/Ar等中でのアニーリングを含むことができる。
【0125】
代替的には、第2の酸化物のナノ粒子を、熱水反応、続けて、真空中または還元環境、例えば、N、Ar、H、H/N、H/Ar等中でアニールすることにより調製することができる。
【0126】
この方法は、第2の酸化物を数nmから250μmの厚さの薄膜被膜として調製することを含むことができる。この薄膜被膜を、物理蒸着、続けて、真空中または還元環境、例えば、N、Ar、H、H/N、H/Ar等中でのアニーリング工程により生成することができる。膜厚は、約、最大約または少なくとも約5nm~250μm(250,000nm)、50nm~25μm(25,000nm)または500~2.5μm(2,500nm)であってよい。膜厚は、約、最大約または少なくとも約5、10、25、50、100、250、500、1000、1200、5000、10,000、25,000、50,000、100,000または250,000nmであってよい。
【0127】
この方法は、第1の金属酸化物および第2の金属酸化物を組み合わせること、例えば、第1の酸化物のマトリクス内に、第2の酸化物を埋め込むことを含むことができる。この方法は、Tiの酸化状態を制御するために、酸化環境/還元環境を制御することを含むことができる。例えば、より多くのTi2+を合成するために(TiOと同様)、この方法は、還元状態を向上させることを含み得る。この向上は、ガス流、高温合成、前駆体の選択等またはそれらの組み合わせを含む(が、これらに限定されない)幾つかの要因を制御することを含むことができる。より多くのTi4+特性を誘引するために、この方法は、酸化状態を向上させることを含むことができる。Tiと同様、Ti3+の酸化状態を、アニーリング条件、焼結条件、ガス環境を制御し、種々のTi含有前駆体を選択することによっても誘引することができる。
【0128】
加えて、この方法は、単一バッチ内で異なる酸化状態を誘導するのに役立つ場合がある少なくとも2種類のTi前駆体を使用することを含むことができる。例えば、種々の比のTiOとTiOとを、出発前駆体として混合することにより、種々の酸化状態を生じさせることができる。前駆体材料は、金属塩化物、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属炭酸塩等を含むことができるが、これらに限定されない。代替的には、この方法を、局所環境を変化させるためにドーパント(p型またはn型)を使用して実現することができる。例えば、Tiが埋め込まれたMg1-xTi2+x5-δおよび/またはMgTi5-δの平均酸化状態が、3.7+であることが見出された場合、この方法は、4+以上の一般的な酸化状態を有する金属ドーパント(例えば、Sn4+、Mn4+、Ge4+、Si4+、Ru5+、V5+、Nb5+等)を添加して、ドーパントの隣に隣接するTiをより低い酸化状態に低下させることを含むことができる。さらに代替的には、この方法は、より低い酸化状態(例えば、2+、3+等)を有する別のドーパントを添加して、4+に向かってTi酸化状態を向上させることを含むことができる。
【0129】
開示された材料を、耐食性と良好な導電率との両方を必要とする用途に使用することができる。例えば、開示される材料を、BPP被覆として、BPPバルク部分において、BPP表面部分においてまたはそれらの組み合わせで使用することができる。代替的には、開示された材料を、自動車部品、航空機部品、石油およびガスプラントまたは大規模製造における防食被覆として使用することができる。代替的な実施形態では、開示された材料を、上記検討されたように、例えば、PEMFCおよびPEME用途または他の触媒用途のための触媒担持体材料として使用することができる。また、開示された材料を、カソード側、アノード側またはその両方におけるPEMEの多孔質輸送層(PTL)として利用することができる。
【0130】
金属BPP上に、開示された材料を被覆することを、種々の堆積技術により実現することができる。非限定的な例は、開示された材料を含有する溶媒を、BPP上にスプレー被覆すること、続けて、乾燥プロセスを含むことができる。酸化物を、合成プロセス中にまたは後処理工程として、指定された担持体材料(カーボン、金属、セラミックス等)上に堆積させることができる。代替的には、この方法は、物理蒸着または化学蒸着を含むことができる。さらに別の代替として、金属基板への原子層堆積(ALD)または溶液ベースのアプローチを行うことができる。前駆体、酸化環境または還元環境、湿気および基材の選択に応じて、Mg1-xTi2+x5-δおよび/またはMgTi5-δ中の酸素空孔の程度を変化させることができる。これにより、種々の導電性および防食挙動がもたらされる場合がある。熱処理温度は、約150~約1,500℃の範囲であり、所望の三元酸化物またはドーピングされた組成物を得ることができる。熱処理時間は、約30秒~約48時間で変化させることができる。
【0131】
本明細書に開示されたプロセス、方法またはアルゴリズムを、処理デバイス、コントローラまたはコンピュータに送信可能/実装可能である場合がある。この処理デバイス、コントローラまたはコンピュータは、任意の既存のプログラマブル電子制御ユニットまたは専用電子制御ユニットを含むことができる。同様に、プロセス、方法またはアルゴリズムを、書き込み不可能な記憶媒体、例えば、ROMデバイスに永続的に記憶された情報および書き込み可能な記憶媒体、例えば、フロッピーディスク、磁気テープ、CD、RAMデバイスならびに他の磁気媒体および光媒体に変更可能に記憶された情報を含む(が、これらに限定されない)多くの形態にあるコントローラまたはコンピュータにより実行可能なデータおよび命令として記憶することができる。また、プロセス、方法またはアルゴリズムを、ソフトウェア実行可能オブジェクトにおいても実装することができる。代替的には、プロセス、方法またはアルゴリズムを、適切なハードウェアコンポーネント、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ステートマシン、コントローラまたは他のハードウェアコンポーネントもしくはデバイスまたはハードウェア、ソフトウェアおよびファームウェアコンポーネントの組み合わせを使用しても、全体的または部分的に実装することができる。
【0132】
例示的な実施形態が上記されているが、これらの実施形態が、特許請求の範囲により包含される全ての可能性のある形態を説明することを意図するものではない。本明細書に使用された語は、限定ではなく説明の語であり、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、種々の変更を行うことができることが理解される。前述のように、種々の実施形態の特徴を組み合わせて、明示的に説明されずまたは図示されていない場合がある更なる実施形態を形成することができる。種々の実施形態が、1つ以上の所望の特性に関して、他の実施形態または先行技術の実装を上回る利点を提供するかまたは好ましいものとして説明されてきている場合があるが、当業者であれば、1つ以上の特徴または特性が、特定の用途および実装に応じた所望の全体的なシステム属性を達成するために損なわれる場合があることを認識する。これらの属性は、コスト、強度、耐久性、ライフサイクルコスト、市場性、外観、包装、サイズ、保守性、重量、製造性、組み立ての容易さ等を含む場合があるが、これらに限定されない。そのようなものとして、任意の実施形態が1つ以上の特性に関して他の実施形態または先行技術の実装より望ましくないものとして説明される程度まで、これらの実施形態は、本開示の範囲外ではなく、特定の用途に望ましい場合がある。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図13F
図14
図15A
図15B
図16
図17
【外国語明細書】