(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123417
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】プロテオグリカン模倣物としての硫酸化グリコサミノグリカン生体材料
(51)【国際特許分類】
C08B 37/00 20060101AFI20230829BHJP
C08B 37/08 20060101ALI20230829BHJP
C08B 37/10 20060101ALI20230829BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20230829BHJP
A61K 47/61 20170101ALI20230829BHJP
A61K 47/62 20170101ALI20230829BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20230829BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230829BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230829BHJP
A61K 31/726 20060101ALI20230829BHJP
A61K 31/727 20060101ALI20230829BHJP
A61K 31/728 20060101ALI20230829BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20230829BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230829BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
C08B37/00 H
C08B37/08 ZNA
C08B37/10
A61K47/54
A61K47/61
A61K47/62
A61K47/42
A61K47/38
A61K47/36
A61K31/726
A61K31/727
A61K31/728
A61P13/10
A61P19/02
A61K45/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023079825
(22)【出願日】2023-05-15
(62)【分割の表示】P 2019515246の分割
【原出願日】2017-09-15
(31)【優先権主張番号】62/395,805
(32)【優先日】2016-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519089428
【氏名又は名称】グリコロジクス、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼフィアク、トーマス、エイチ.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】結合組織の細胞外マトリックスに見出される天然プロテオグリカンの機能を模倣することができるポリマーコンジュゲートおよびポリマーコンジュゲートを調製する方法を提供する。
【解決手段】複数の硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)ポリマー鎖を含むポリマーコンジュゲートであって、それぞれの硫酸化GAGポリマー鎖は、連結剤に由来するリンカーを介して1つまたは複数の硫酸化GAGポリマー鎖に連結され、前記ポリマーコンジュゲートは、水溶液に可溶性であり、かつ、個々の連結されていない硫酸化GAGの分子量の3倍~100倍である分子量を有するポリマーコンジュゲートである。本発明のポリマーコンジュゲートは、軟部組織の状態に苦しむ対象を処置することにおいて有用性を有する。本発明のポリマーコンジュゲートを調製するための簡便かつ規模変更可能な化学プロセスもまた提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)ポリマー鎖を含むポリマーコンジュゲートであって、それぞれの硫酸化GAGポリマー鎖は、連結剤に由来するリンカーを介して1つまたは複数の硫酸化GAGポリマー鎖に連結され、前記ポリマーコンジュゲートは、水溶液に可溶性であり、かつ、個々の連結されていない硫酸化GAGの分子量の3倍~100倍である分子量を有するポリマーコンジュゲート。
【請求項2】
リンカーを介して連結される複数の硫酸化GAGポリマー鎖および少なくとも1つのさらなるポリマーを含む、請求項1に記載のポリマーコンジュゲート。
【請求項3】
前記さらなるポリマーがヒアルロン酸またはカルボキシメチルセルロースである、請求項2に記載のポリマーコンジュゲート。
【請求項4】
前記リンカー剤が二官能性である、請求項1に記載のポリマーコンジュゲート。
【請求項5】
前記リンカー剤がポリマーでない、請求項1に記載のポリマーコンジュゲート。
【請求項6】
前記リンカー剤が1000Da未満の分子量を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマーコンジュゲート。
【請求項7】
前記リンカー剤が500Da未満の分子量を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマーコンジュゲート。
【請求項8】
前記リンカー剤が250Da未満の分子量を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマーコンジュゲート。
【請求項9】
前記リンカー剤が200Da未満の分子量を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマーコンジュゲート。
【請求項10】
前記リンカー剤が150Da未満の分子量を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマーコンジュゲート。
【請求項11】
前記リンカー剤が、ジビニルスルホン(DVS)、ジエポキシド、エピクロロヒドリン(Epi)およびブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)からなる群から選択される、請求項1に記載のポリマーコンジュゲート。
【請求項12】
前記リンカー剤がジビニルスルホン(DVS)である、請求項11に記載のポリマーコンジュゲート。
【請求項13】
前記硫酸化GAGが、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載のポリマーコンジュゲート。
【請求項14】
前記リンカーがGAGポリマー鎖に沿ってランダムに連結される、請求項1~13のいずれか一項に記載のポリマーコンジュゲート。
【請求項15】
分岐型構造を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載のポリマーコンジュゲート。
【請求項16】
瓶洗いブラシ様構造を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載のポリマーコンジュゲート。
【請求項17】
前記さらなるポリマーが、前記複数の硫酸化GAGポリマー鎖が付加されるコアポリマーである、請求項2または3に記載のポリマーコンジュゲート。
【請求項18】
請求項1に記載されるポリマーコンジュゲートを調製する方法であって、
i)2wt%~20wt%の濃度で硫酸化GAGの水溶液を提供する工程、および
ii)前記硫酸化GAGを連結剤と接触させて可溶性の分岐型ポリマーを形成する工程であって、GAGヒドロキシル基の連結剤に対するモル比が、ゲル形成のために要求されるモル比よりも小さい工程
を含む方法。
【請求項19】
前記可溶性の分岐型ポリマーが、15,000Da~1,000,000Daの分子量を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記GAGヒドロキシル基対連結剤のモル比が0.01~0.6である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
請求項1に記載されるコンジュゲートを単一反応での前記硫酸化GAGの逐次導入により調製する方法であって、
i)硫酸化GAGを提供する工程、
ii)前記硫酸化GAGを連結剤と、少量の前記硫酸化GAGが全量の連結剤と反応させられる条件のもとで反応させる工程、および
iii)前記硫酸化GAGの残り部分を加えて、瓶洗いブラシ様構造を有するコンジュゲートを形成する工程
を含む方法。
【請求項22】
請求項1に記載されるポリマーコンジュゲートを調製する方法であって、
i)コアポリマーを希薄溶液において連結剤により活性化して、多価反応性コアポリマー中間体を形成する工程、および
ii)過剰の硫酸化GAGを加えて、可溶性の瓶洗いブラシ様ポリマーを形成する工程
を含む方法。
【請求項23】
工程iが、コアポリマーを連結剤により活性化することを、少量の前記コアポリマーが全量の連結剤と反応させられる条件のもとで行うことを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
工程iが、亜化学量論的量のコアポリマーを希薄溶液において連結剤により活性化して、多価反応性コアポリマー中間体を形成することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
工程iの前記コアポリマーが、工程iiにおいて加えられる硫酸化GAGと同一の硫酸化GAGである、請求項22~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
工程iの前記コアポリマーが、工程iiにおいて加えられる硫酸化GAGとは異なる硫酸化GAGである、請求項22~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
工程iの前記コアポリマーが硫酸化GAGでない、請求項22~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
工程iにおける前記コアポリマーがカルボキシメチルセルロースである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
工程iにおける前記コアポリマーがヒアルロン酸である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
請求項1に記載されるコンジュゲートを調製する方法であって、
i)コアポリマーを希薄溶液において連結剤により官能化して、コアポリマー中間体を形成する工程、
ii)前記コアポリマー中間体を単離する工程、および
iii)前記コアポリマー中間体を高濃度溶液の硫酸化GAGと反応させて、可溶性の瓶洗いブラシ様ポリマーを形成する工程
を含む方法。
【請求項31】
少なくとも1つのGAGポリマー鎖が、結合性調節剤または治療用調節剤から選択される少なくとも1つの調節剤を含む、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項32】
前記結合性調節剤がコラーゲン結合性調節剤である、請求項31に記載のコンジュゲート。
【請求項33】
前記治療用調節剤が抗酸化性調節剤である、請求項31に記載のコンジュゲート。
【請求項34】
請求項1~33のいずれか一項に記載されるコンジュゲートを対象に投与することを含む、対象において軟部組織に関連する疾患、障害または状態を処置する方法。
【請求項35】
間質性膀胱炎(IC)を患者において処置する方法であって、前記患者に請求項1に記載されるコンジュゲートを投与する工程を含む方法。
【請求項36】
前記コンジュゲートが、ガレクチンに対する少なくとも1つのグリカンリガンドにより官能化される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
投与が膀胱内点滴注入である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記結合性調節剤がガレクチン結合性調節剤に対するグリカンリガンドである、請求項31に記載のコンジュゲート。
【請求項39】
間質性膀胱炎(IC)を患者において処置する方法であって、前記患者に請求項31または38に記載されるコンジュゲートを投与する工程を含む方法。
【請求項40】
ガレクチンに対する前記グリカンリガンドがβ-ガラクトシドを含む、請求項38に記載のコンジュゲート。
【請求項41】
変形性関節症(OA)を患者において処置する方法であって、前記患者に請求項1に記載されるポリマーコンジュゲートを投与する工程を含む方法。
【請求項42】
投与が、OAが存在する前記患者の関節への直接注射を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は米国仮特許出願第62/395,805号(2016年9月16日出願)の利益を主張する。上記出願の教示全体が参照によって本明細書中に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
細胞外マトリックス(ECM)により、軟部組織および結合組織の非細胞性足場が形成される。細胞外マトリックスは、常在細胞が必要とする生化学的支持および構造的支持の両方をもたらしており、組織形状を維持すること、および機械的ストレスに耐えることにおいて非常に重要な役割を果たしている。プロテオグリカンは、組織の健全性を維持し、ECMの分解を防ぐECMの天然高分子である。プロテオグリカンは、その強い浸透水和作用(osmotic hydration)、並びに、重要な増殖因子と結合し、これらを調節する能力を通じて、健全なECMの保護体である。加齢、病気または損傷に対する応答として、ECMは機能性を失う。プロテオグリカン含有量が低下すると、それに伴って、コラーゲン繊維および他のマトリックス成分もまた分解が始まる。そのような分解は、ほんの数例を挙げれば、皮膚、脊椎椎間板、軟骨および尿道組織の疾患、障害および/または状態を含めて、多数の軟部組織の疾患、障害および/または状態における根本的な要因である。プロテオグリカン機能性の回復が、ECM機能性の喪失に対処するための1つの選択肢である。
【発明の概要】
【0003】
本開示では、水溶性の生物学的溶液に可溶性であり、かつ、硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)鎖から構成される、中分子量から高分子量のポリマーコンジュゲートが記載される。提供されたポリマーコンジュゲートは生体適合性であり、小口径ニードルを使用して容易に注射することができ、かつ、ある特定のプロテオグリカン機能を軟部組織のECMにおいて模倣することができる。いくつかの場合において、提供されたポリマーコンジュゲートは、硫酸化GAG鎖、並びに生体適合性の天然ポリマーおよび合成ポリマーを含む。いくつかの実施形態において、GAG鎖が、治療的に有用な基により化学的に修飾される。本開示ではまた、前記ポリマーコンジュゲートを製造する方法であって、とりわけ、商業的に妥当な量の材料を製造するために規模変更が可能である簡便な1ポット水性化学プロセスを含む方法が提供される。本開示ではまた、軟部組織変性状態に罹患している対象を処置する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】広範囲架橋ネットワーク物の形成を示す概略図である。
【
図2】可溶性の分岐型ポリマー鎖の形成を示す概略図である。
【
図3】硫酸化GAGが二官能性連結剤により活性化され、その後、活性化された硫酸化GAGが、瓶洗いブラシ様ポリマーコンジュゲートを形成するためにさらなる硫酸化GAG鎖と連結されることを示す。
【
図4】コアポリマー鎖が二官能性連結剤により活性化され、その後、活性化されたコアポリマー鎖が、ハイブリッド型瓶洗いブラシ様ポリマーコンジュゲートを形成するために過剰の硫酸化GAGと反応させられることを示す(すなわち、この場合、コアポリマー鎖は硫酸化GAGではない)。
【
図5】ゲル形成および/または溶解性喪失が認められる条件に注目して、Mw=14kDaのコンドロイチン硫酸についての[DVS]/OH対ポリマーwt%のプロットを示す。
【
図6】ゲル形成および/または溶解性喪失が認められる条件に注目して、Mw=90kDaのカルボキシメチルセルロースについての[DVS]/OH対ポリマーwt%のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
ある特定の実施形態の詳細な説明
軟部組織の疾患、障害および状態の処置における長年にわたる必要性に対処するためには、天然プロテオグリカンの形態および物理的性質を模倣することができるプロテオグリカン模倣物を製造することが望ましい。天然のプロテオグリカンは、硫酸基およびカルボン酸基が存在するために生理学的条件下では非常に負に帯電するGAG鎖から構成されている。
【0006】
本開示以前には、際立って可溶性の生成物(すなわち、広範囲架橋ネットワーク物ではない)を形成するために多官能性連結剤によって連結される硫酸化GAG鎖から構成されるポリマーコンジュゲートは例示されていなかった。本発明では、ある特定の条件のもとでは、硫酸化GAGは、水溶液において依然として可溶性のままである高分子量の分岐した硫酸化GAG組成物を製造するための制御された方法で連結剤と反応することができるという認識が包含される。そのようなポリマーコンジュゲートの分子量は、可溶性ポリマーについての標準的な方法論を使用して、すなわち、ゲル浸透クロマトグラフィーおよび動的光散乱を使用して特徴づけることができる。そのような可溶性で、分枝した高分子量の硫酸化GAGは現時点では入手可能でなく、また、以前に記載されたこともない。そのような可溶性で、分枝した高分子量の硫酸化GAGは、上記で記載されるような数多くの適応症を処置することにおいてプロテオグリカン模倣物としての有用性を有する。
【0007】
定義
本明細書中で使用される場合、表題部および節見出しは構成目的のために提供されており、限定であることは意味されない。したがって、1つの節で記載される実施形態は、別途指定される場合を除き、本出願の全体に当てはまる。
【0008】
用語「およそ」または用語「約」は、問題にしている1つまたは複数の値に適用される場合、述べられた参照値と類似する値を示す。ある特定の実施形態において、用語「およそ」または用語「約」は、別途明記される場合を除き、または文脈から別途明白である場合を除き、述べられた参照値のどちらの方向(超または未満)であっても25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれら未満の範囲に含まれる値の範囲を示す(ただし、そのような数字が、可能な値の100%を超えるであろう場合は除く)。
【0009】
用語「投与」は、本明細書中で使用される場合、組成物を対象または系に投与することを典型的には示す。当業者は、適切な状況では対象(例えば、ヒト)への投与のために利用され得る様々な経路を承知しているであろう。例えば、いくつかの実施形態において、投与は、眼投与、経口投与、非経口投与、局所的投与などである場合がある。いくつかの特定の実施形態において、投与は、気管支投与(例えば、気管支点滴注入によって)、口内投与、経皮投与(これは、例えば、真皮への局所投与、皮内投与、真皮間(interdermal)投与、経皮投与などの1つまたは複数である場合があり、あるいはそれらの1つまたは複数を含む場合がある)、経腸投与、動脈内投与、皮内投与、胃内投与、髄内投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、腹腔内投与、クモ膜下腔内投与、膀胱内投与、静脈内投与、脳室内投与、特定の臓器の内部(例、肝臓内投与)、粘膜投与、鼻腔投与、経口投与、直腸投与、皮下投与、舌下投与、局所投与、気管投与(例えば、気管内点滴注入によって)、膣投与、硝子体投与などである場合がある。いくつかの実施形態において、投与は、間欠的な投薬(例えば、時間において隔てられる複数の服用)および/または周期的な投薬(例えば、常習的な期間によって隔てられる個々の服用)である投薬を伴う場合がある。いくつかの実施形態において、投与は、少なくとも選択された期間にわたる連続投薬(例えば、灌流)を伴う場合がある。
【0010】
本明細書中で使用される場合、「生体適合性(の)」は、最小限の破壊的影響または宿主応答影響を体液または生細胞もしくは生体組織と接触している間に及ぼす材料を表すことが意図される。この用語はまた、認識タンパク質、例えば、生物学的系の天然に存在する抗体、細胞タンパク質、細胞および他の成分との最小限の相互作用をもたらすそのような材料を意味するように解釈され、ただし、そのような相互作用が特に望まれる場合は除く。したがって、上記影響を引き起こすために特に意図され、かつ、インビボ投与より、最小限であり、かつ、医学的に許容され得る炎症、異物反応、免疫毒性、化学的毒性または他のそのような有害影響が誘発される材料および官能基は、生体適合性であるとみなされる。
【0011】
用語「生体分子」は、本明細書中で使用される場合、天然に存在するものであろうと、あるいは(例えば、合成または組換えによる方法によって)人工的に作製されたものであろうと、細胞および組織において一般に見出される化学化合物の様々なクラスに属する分子(例えば、タンパク質、アミノ酸、ペプチド、ポリヌクレオチド、ヌクレオチド、炭水化物、糖、脂質、核タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、ステロイドなど)を示す。例示的なタイプの生体分子には、ペプチド、酵素、受容体、神経伝達物質、ホルモン、サイトカイン、細胞応答調節剤(例えば、増殖因子および走化性因子など)、抗体、ワクチン、インターフェロン、リボザイム、アンチセンス剤、プラスミド、DNA、そしてRNAが含まれるが、これらに限定されない。
【0012】
用語「処置」(同様に「処置する」(“treat”または“treating”))は、本明細書中で使用される場合、特定の疾患、障害および/または状態を部分的または完全に軽減し、改善し、緩和し、抑制し、その発症を遅らせ、その重篤度を低減させ、ならびに/あるいは、その1つまたは複数の症状、特徴および/または原因の発生を低減させる物質(例えば、医薬組成物)を投与することをどのような投与であっても示す。そのような処置は、関連性のある疾患、障害および/または状態の徴候を示さない対象の処置、ならびに/あるいは、関連性のある疾患、障害および/または状態の初期徴候のみを示す対象の処置である場合がある。代替において、または加えて、そのような処置は、関連性のある疾患、障害および/または状態の1つまたは複数の立証された徴候を示す対象の処置である場合がある。いくつかの実施形態において、処置は、関連性のある疾患、障害および/または状態に罹患していると診断された対象の処置である場合がある。いくつかの実施形態において、処置は、関連性のある疾患、障害および/または状態を発症する増大した危険性と統計的に相関づけられる1つまたは複数の感受性因子を有することが知られている対象の処置である場合がある。
【0013】
本明細書中で使用される場合、「対象」は生物体を意味し、典型的には哺乳動物(例えば、ヒト)を意味する。いくつかの実施形態において、対象は、関連性のある疾患、障害または状態に罹患している。いくつかの実施形態において、対象は、疾患、障害または状態に罹患しやすい。いくつかの実施形態において、対象は、疾患、障害または状態の1つまたは複数の症状または特徴を示す。いくつかの実施形態において、対象は、疾患、障害または状態の症状または特徴を何ら示さない。いくつかの実施形態において、対象は、疾患、障害または状態に対する感受性またはその危険性に特徴的な1つまたは複数の特徴を有する人である。いくつかの実施形態において、対象は患者である。いくつかの実施形態において、対象は、診断および/または治療が施される、および/または施されたことがある個体である。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される方法のいずれのためにであっても、対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される方法のいずれのためにであっても、対象はヒトである。
【0014】
用語「グリコサミノグリカン」および用語「GAG」は、本明細書中では交換可能に使用されているように、アミノ糖(例えば、N-アセチルグルコサミンまたはN-アセチルガラクトサミンなど)と、ウロン(uronic)糖(例えば、グルクロン酸またはイズロン酸など)またはガラクトースとを含む反復する二糖単位から構成される多糖を示す。本発明において使用されるためのGAGはサイズが異なっていてもよく、硫酸化型または非硫酸化型のどちらでもあってもよい。本発明の方法において使用され得るGAGには、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸(例えば、コンドロイチン6-硫酸およびコンドロイチン4-硫酸)、ヘパラン、ヘパラン硫酸、ヘパリン、デルマタン、デルマタン硫酸およびケラタン硫酸などが含まれるが、これらに限定されない。
【0015】
本明細書中で使用される場合、用語「改善する(improve)」、用語「増大させる(increase)」もしくは用語「減少させる(reduce)」、またはそれらの文法的等価体は、ベースライン測定値(例えば、本明細書中に記載される処置を開始する前の同じ個体における測定値、または本明細書中に記載される処置が行われない対照個体(もしくは多数の対照個体)における測定値など)を基準とする値を示す。
【0016】
本明細書中で使用される場合、用語「調節剤(modifier)」は、ポリマーコンジュゲートに共有結合により結合させられる有機部分、無機部分または生物有機部分を示す。調節剤は小分子または高分子が可能であり、どのような化学的または薬学的なクラスにであっても属することができ、例えば、ヌクレオチド、化学療法剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、免疫調節剤、ホルモンまたはそのアナログ、酵素、阻害剤、アルカロイドおよび治療用放射性核種、治療用放射性核種(例えば、アルファ放射体、ベータ放射体または陽電子放射体)に属することができる。ある特定の実施形態において、本発明による調節剤には、例をいくつか挙げると、生体分子、小分子、治療剤、医薬的に有用な基または実体、高分子、診断用標識、キレート化剤、親水性部分、分散剤、電荷調整剤、粘度調整剤、界面活性剤、凝固剤および凝集剤が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、調節剤は、特定の生体分子または組織について親和性を有する標的ペプチドであり、ポリマーコンジュゲートの送達および/または効力を高める場合がある。調節剤は、1つまたは複数の医薬的機能(例えば、生物学的活性および薬物動態学改変)を有することができる。薬物動態学調節剤には、例えば、抗体、抗原、受容体リガンド、親水性基、疎水性基または荷電基が含まれ得る。生物学的に活性な調節剤には、例えば、治療用薬物およびプロドラッグ、抗原、免疫調節剤が含まれる。検出可能な調節剤には、診断用標識、例えば、利用可能な臨床的方法または実験室方法(例えば、シンチグラフィー、NMR分光法、MRI、X線断層撮影法、ソノトモグラフィー(sonotomography)、フォトイメージング、放射免疫アッセイ)の1つによって検出可能である放射性物質、蛍光性物質、常磁性物質、超常磁性物質、強磁性物質、X線変調物質、X線不透過物質、超音波反射物質および他の物質などが含まれる。
【0017】
用語「防止する」または用語「防止」は、本明細書中で使用される場合、疾患、障害および/または状態の発生に関連して使用されるときには、疾患、障害および/または状態を発症する危険性を低減させること、ならびに/あるいは、疾患、障害または状態の1つまたは複数の特徴または症状の発症を遅らせることを示す。防止は、疾患、障害または状態の発症が所定の期間にわたって遅らされたときには完全であるとみなされる場合がある。
【0018】
用語「参照(物)」は、本明細書中で使用される場合、比較が行われる基準物または対照物を表す。例えば、いくつかの実施形態において、問題としている作用因、動物、個体、集団、サンプル、配列または値が、参照物または対照物である作用因、動物、個体、集団、サンプル、配列または値と比較される。いくつかの実施形態において、参照物または対照物が、目的とする試験または測定と実質的に同時に試験および/または測定される。いくつかの実施形態において、参照物または対照物は、必要な場合には有形の媒体で具体化される履歴的な参照物または対照物である。典型的には、当業者によって理解されるであろうように、参照物または対照物は、評価中の条件または状況と同等の条件または状況のもとで測定され、または特徴づけられる。当業者は、特定の可能な参照物または対照物に対する信頼および/または比較を正当化することを、十分な類似性が存在するときに理解するであろう。いくつかの実施形態において、参照物はアグリカンである。いくつかの実施形態において、参照物はポリマー出発物質である。いくつかの実施形態において、参照物は、コンジュゲート化がない反応物である。いくつかの実施形態において、参照物は、リンカー剤の省略を除いて、提供されたポリマーコンジュゲートの形成とすべての点で同一である、コンジュゲート化がない反応物である。
【0019】
用語「ゲル」は、そのレオロジー特性により溶液または固体から区別される粘弾性材料を示す。組成物は、定常状態または低剪断条件のもとでは流動せず、しかし、撹拌されたときにはいくらかの流動性または流れを示すならば、ゲルであるとみなされる。ゲルは、流体相(ヒドロゲルの場合には水)が分散される連続する固相を構成する3次元の広範囲広がったネットワーク物からなる。一般には、流体相が固相よりもはるかに大量に存在する。広範囲架橋ネットワーク物が、化学的な共有結合、または溶液中での物理的会合のどちらを介してでも形成され得る。
【0020】
用語「分子量」は、別途指定される場合を除き、重量平均分子量または「Mw」(これは本明細書では「Mw」と交換可能に使用される)を示す。
【0021】
用語「可溶性(の)」は、分子(溶質)が別の分子(溶媒)に分子レベルで完全に分散され、強い相互作用が溶質分子間に存在しない化学的状態を示す。
【0022】
プロテオグリカン
プロテオグリカンは、身体のすべての結合組織の細胞外マトリックス(ECM)に見出される糖タンパク質である。非常に多数のプロテオグリカンおよびそれらの組織特異的な発現が特定されている。かなり多様な構造が存在するにもかかわらず、すべてのプロテオグリカンの共通した構造的要素が、1つまたは多くの硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)鎖によりグリコシル化されるタンパク質コアである。このタンパク質コアは、様々な生物学的機能のために重要であるいくつかのモジュール状構造的要素(例えば、IgG様、EGF様、HA結合モチーフ、ロイシンリッチモチーフなど)を含有し得る。共有結合した硫酸化GAG鎖は最も典型的には、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸またはヘパラン硫酸である。これらは多くの場合、コアタンパク質鎖においてセリン部分に結合するO-結合型グリカンとしてタンパク質コアに結合している。
【0023】
水和が、ECM恒常性のために極めて重要である。水分含有量により、組織の体積および圧縮に対する抵抗性が決定される。水和はまた、細胞遊走、ECMの構造的成分(例えば、コラーゲンおよびエラスチンなど)の組織化、ならびに生体分子の輸送のために要求される空間をもたらしている。ECMにおけるプロテオグリカンの主要な構造的機能が水和の維持である。これは、多数の硫酸化GAG鎖を有する大きな凝集性プロテオグリカンについては特に関連している。ヒアレクタン(hyalectan)ファミリーにおけるプロテオグリカン、例えば、アグリカンおよびバーシカンなどは、コアタンパク質の特定のサブユニットの内部に集中した多数(例えば、約10~100)のGAG鎖を含有する。これらの特異なバイオポリマー構造体は、瓶洗いブラシ様ポリマー構造と、小さい体積に集中するGAG鎖表面の多数のスルファート部分およびカルボキシラート部分に由来する非常に高密度のアニオン電荷とを有する。非常に重要な水和および構造的支持をECMにおいて提供することに加えて、プロテオグリカンは、重要な役割を細胞外のシグナル伝達において果たすことが知られている。プロテオグリカンは、いくつかの増殖因子、ケモカインおよびサイトカインと強く結合し、アポトーシス、細胞の発達、細胞運動性および細胞接着のためのシグナル伝達経路に影響を与えることが知られている。
【0024】
ますます増える一連の科学的証拠により、結合組織の一体性を維持すること、組織分解から保護すること、傷害後の治癒を促進させること、および疾患を阻止することにおけるプロテオグリカンについての著しい役割が裏づけられている。プロテオグリカンが、結合組織の物理的特性を決定する際に果たす重要な役割、および、結合組織(例えば、真皮など)における加齢性変化がプロテオグリカン分解と相関するという理解のために、プロテオグリカンに基づく治療法(例えば、プロテオグリカン補充療法など)が、加齢性変化および創傷治癒を処置するための、また、皮膚科学、泌尿器科学、心臓血管および整形外科の領域における満たされていない医療ニーズに対処する際の有望な取り組みである。
【0025】
プロテオグリカンは、軟骨および軟部組織のECMにおける極めて重要な生体分子であると理解されているにもかかわらず、ほとんどの組織には少量でしか存在していない。プロテオグリカンは、天然の供給源から単離し、大規模で精製することが困難である。そのため、アグリカンなどの生体分子が現在、少量での研究用ツールとしてでのみ利用可能であるにすぎない。組織から単離されたプロテオグリカンを治療剤として使用することは、法外な費用がかかり、非実用的である。そのうえ、生体異物組織(ウシ、ブタ、海洋性)から抽出されるプロテオグリカンは、免疫学的な宿主応答のために、ヒト医療における直接使用には不適切である場合がある。
【0026】
プロテオグリカン模倣材料
天然に存在するプロテオグリカン(PG)の重要な構造的機能および/または生物学的機能を結合組織において模倣することができる組成物を設計しようとする研究がいくつか行われてきた。これらの取り組みはいくつかのカテゴリーに分類される。
【0027】
a.合成ポリマーまたは天然多糖の硫酸化。例えば、PG模倣物を合成するための最も簡便な取り組みの1つが、炭水化物(例えば、デキストランなど)の硫酸化である[D Papy-Garcia他、Macromolecules、2005、38:4647~4654]。合成ポリマー(例えば、芳香族ポリフェノールなど)の硫酸化もまた、GAGまたはPGの生物活性を有する分子を製造するために報告されている[UR Desai、Future Med.Chem.、2013、5:1363~1366]。
【0028】
b.表面または粒子への硫酸化GAGの結合。例えば、コンドロイチン硫酸が、GAG-機能性ナノ粒子を軟骨置換のためのヒドロゲル構築物におけるPG模倣物として提供するためにカーボンナノチューブの表面にコンジュゲート化された[J Wei他、Materials Chemistry and Physics、2015、166:66~72]。コンドロイチン硫酸が、コンドロイチン硫酸の還元性末端でセリン部分と反応することができる反応性シアナートエステルによるアガロースゲルの活性化の後でアガロースゲルの表面に結合させられた[KJ Mattern他、Carbohydrate Research、2007、342:2192~2201]。コンドロイチン硫酸がポリ(エチレンテレフタラート)繊維表面およびキトサン被覆PET繊維表面に結合させられた[C-H Jou他、Polym.Adv.Technol.、2005、16:821~826]。
【0029】
c.アニオン性硫酸化GAGをカチオン性ポリマーと複合体化することによる不溶性粒子の作製。高度にアニオン性のGAGと、ポリカチオン(例えば、キトサンなど)との間における複合体の形成が、FGF-2と結合することができるナノ粒子を得るための方法として記載されている[S Boddohi他、Biomacromolecules、2009、10:1402~1409][LW Place他、Biomacromolecules、2014、15:3772~3780]。ヘパランが、医療機器の表面に塗布される不溶性被覆剤を形成するために様々な反応性ポリマーと複合体化された[米国特許出願公開第2005/0281857号]。
【0030】
d.ある特定の生物活性ペプチドを、明確に定義された可溶性ペプチドグリカン誘導体を提供するために硫酸化GAGとコンジュゲート化すること。例えば、デルマタン硫酸を、II型コラーゲンまたはヒアルロン酸のどちらかと結合することができるペプチドとコンジュゲート化することが、広範に検討され、記載されている[S Sharma他、Acta Biomaterialia、2013、9:4618~4625][JC Bernhard他、Acta Biomaterialia、2012、8:1543~1550][米国特許第9,200,039号]。
【0031】
e.硫酸化された二糖またはオリゴ糖を有するモノマーの重合。例えば、コンドロイチン硫酸のポリマー模倣物が、単純なコンドロイチン硫酸二糖単位により置換されるROMP重合性モノマーの合成を経て作製されている[S-G Lee他、Chem.Sci.、2010、1:322~325]。
【0032】
f.多価オリゴ糖グリカンの合成。単一実体のヘパラン硫酸(HS)構造モチーフを表す特定の二糖および四糖が調製され、4アーム型の樹枝状連結分子に結合させられている。これらのヘパラン硫酸模倣物は、ある特定の治療用タンパク質とのそれらの相互作用において長鎖の天然HSの能力を模倣することができることが見出された[PC Tyler他、Angew.Chem.Int.Ed.、2015、54:2718~2723]。
【0033】
g.GAGを他のポリマーとコンジュゲート化すること。例えば、いくつかの小糖およびオリゴ糖が、その還元性末端を合成ポリマーコアにおける相補的官能基と反応させることによって合成ポリマーにコンジュゲート化されている[K Godula他、J.Am.Chem.Soc.、2010、132:9963~9965]。関連した取り組みでは、剛毛としての全長の天然型のヘパラン鎖またはコンドロイチン硫酸鎖の還元性末端と反応することができるポリマーコアとしてヒアルロン酸誘導体を使用するアグリカン様の瓶洗いブラシ型組成物が報告されている[LW Place他、Biomacromolecules、2014、15:3772~3780]。瓶洗いブラシ型構造物を形成するための別の取り組みでは、O-結合型セリングリカンを鎖の還元性末端に有するコンドロイチン硫酸が、ポリ(アクリル酸)をコアとして用いるアミド形成反応を含むいくつかの反応状況においてモノテレケリック(monotelechelic)アミンとして使用されている[米国特許出願公開第20130052155号(A1)]。
【0034】
プロテオグリカン模倣物の領域との何らかの関連性がある異なった研究分野は、架橋GAGヒドロゲルに集中している。これらの場合には、可溶性のポリマー化合物でなく、むしろ、広範囲架橋ネットワーク物が得られている。架橋ネットワーク物の特性は最も基本的には、その架橋密度および粒子サイズに由来する。対照的に、可溶性ポリマーは、その分子量および分岐度によって特徴づけられる。一般に、架橋ゲルは弾性率が大きく、注射によって投与することが困難である可能性がある。
【0035】
GAG材料を架橋することにより調製される水膨潤ヒドロゲル粒子は、GAGに富む表面を生物学的環境においてもたらす。しかしながら、組織内に注入された後では、これらの架橋ゲルはECM内において個別の粒子として挙動し、したがって、プロテオグリカン模倣材料として機能することができない。これらの架橋ゲルは、例えば、プロテオグリカン(例えば、バーシカンなど)が真皮において一体化し、相互作用することが知られているように軟部組織に一体化し、ECMの他の成分と相互作用することができない。
【0036】
架橋GAGネットワーク物に関する大多数の研究は、細菌培養からのその大規模産生、同様にまた、天然の供給源および商業的な入手可能性のために、ヒアルロン酸(HA)に集中している。さらに、HAは一般には非常に高分子量の形態で、通常の場合には500,000Daを超え、数百万Daにまで及ぶ高分子量形態で入手可能である。大きい分子量は、広範囲ヒドロゲル構造の形成に有利に働く。この理由のために、意義深い研究が、HAに基づく架橋ヒドロゲルの合成および使用に関して行われており、ヒアルロン酸が、バイオ医薬品および医療機器製品の開発における飛び抜けて最も広く使用されているGAGである。様々なHAゲルが、皮膚充填剤、関節内補充薬および化粧品として広く知られている。
【0037】
HAとは対照的に、硫酸化GAG(例えば、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸およびケラタン硫酸)が現時点では、天然の供給源から、しかも、一般にははるかにより少ない量で入手可能であるにすぎない。高品質のGMP材料の商用供給元は限られている。加えて、天然組織から抽出される場合、これらの硫酸化GAGは、HAよりもはるかに低分子量であることが見出されている。例えば、ウシ起源のコンドロイチン硫酸は、一般には分子量が50,000Da未満であること、最も典型的には25,000Da未満であることが見出されている。これらのバイオポリマーが低分子量であること、同様にまた、高純度材料を調達することが困難であることにより、バイオ医薬品および医療機器製品の開発におけるそれらの使用は限定されていた。
【0038】
架橋HAヒドロゲルに関する研究報告および特許は、他のGAGがHAの代わりに利用され得ることを指摘している。しかしながら、硫酸化GAGとHAとの間における著しい相違点、最も顕著には分子量における非常に大きな違いを考えると、HAとのゲルを形成するための既存の合成方法は、硫酸化GAGに適用可能であると想定することができない。また、硫酸化GAGから得られる架橋ヒドロゲルの性質は、HA架橋ヒドロゲルの性質に似ていると想定することができない。
【0039】
架橋GAGヒドロゲルの形成のために、いくつかの1段階直接的連結剤が文献に記載されており、生体適合性ヒドロゲルをもたらすことが見出されている。これらの架橋HAヒドロゲルが、様々な市販製品において、例えば、皮膚充填剤(例えば、HYLAFORM(登録商標)、PREVELLE(登録商標)、RESTYLANE(登録商標)、JUVEDERM(登録商標))および関節内補充薬(例えば、SYNVISC(登録商標)、SYNVISC-ONE(登録商標)、SUPARTZ(登録商標)、EUFLEXXA(登録商標)、JONEXA(登録商標)、MONOVISC(登録商標)、ORTHOVISC(登録商標))ならびに接着バリア(例えば、INCERT(登録商標)、INCERT-S(登録商標)、HYALOBARRIER(登録商標))などにおいて利用されている。直接的連結剤の限定されない例には、ジビニルスルホン(DVS)、エピクロロヒドリン(epi)、ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)、ジエポキシオクタン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニレン-ビス(エチルカルボジイミド)、1,1’カルボニルジイミダゾール(CDI)がある。
【0040】
様々な直接的架橋剤の硫酸化GAGとの反応が、強いヒドロゲルを形成するために知られている。しかしながら、出願人らは、そのようなゲル形成は反応条件に敏感であり、予想外の結果がもたらされ得ることを認めている。例えば、DVSのコンドロイチン硫酸との反応は、いくつかの結果をもたらす場合がある。いくつかの場合には、強くて透明なゲルが得られる。いくつかの場合には、粘性の透明な流体が得られる。いくつかの場合には、不溶性の修飾されたコンドロイチン硫酸の濁った懸濁物が得られる。いくつかの場合には、濁ったゲルが得られる。出願人は、可溶性のポリマーコンジュゲートを製造するために、これらの様々な結果を制御するための、また、管理するための方法を本明細書中に開示する。
【0041】
プロテオグリカン模倣材料を開発することを目指すいくつかの試みにもかかわらず、天然プロテオグリカンの有益な物理的機能および生物学的機能を効果的にもたらす、生体適合性があることが知られているか、または予想される、可溶性であり、かつ、拡散によって軟部組織内に一体化されることが可能である、注射または投与が容易である、軟部組織に長期間にわたって保持される、しかも、商用量にまで規模変更が可能である効率的かつ簡便な化学プロセスを使用して作製することができるポリマーコンジュゲートは現在、全く知られていない。
【0042】
ポリマーコンジュゲート
本発明は、プロテオグリカン模倣物を作製するためのいくつかの異なる戦略の使用に関する。本発明では、硫酸化GAG(および他のポリマー)は、適切な連結剤と反応して、分岐構造および瓶洗いブラシ様構造を有するポリマーコンジュゲートを含めて、可溶性の高次ポリマーコンジュゲートを形成することができる多数の官能性部分を含有するという認識が包含される。そのような官能性部分は、ポリマー鎖を1つまたは複数の他のポリマー鎖とのコンジュゲート化のために「活性化」するように連結剤と反応させられる場合がある。この領域に関する以前の努力では、ゲルであるGAG組成物が作製されていたが、本発明は、ゲルではなく、水溶液に依然として可溶性のままであるポリマーコンジュゲートを提供する。いくつかの実施形態において、本発明の可溶性ポリマーコンジュゲートは、連結剤および硫酸化GAGの化学量論、硫酸化GAGの濃度、硫酸化GAGの分子量、ならびに/あるいは反応時間を制御することによって製造される。
【0043】
本明細書中に記載される連結化学反応において利用され得るGAGまたは他のポリマーにおける官能性部分には、限定されないが、ヒドロキシル基、アミン、チオールおよびカルボキシル基が含まれる。いくつかの実施形態において、官能性部分は、GAGポリマー骨格鎖に沿った1つまたは複数のヒドロキシル基であり、あるいはGAGポリマー骨格鎖に沿った1つまたは複数のヒドロキシル基を含む。いくつかの実施形態において、官能性部分は、GAGポリマー骨格鎖に沿った1つまたは複数のカルボキシル基であり、あるいはGAGポリマー骨格鎖に沿った1つまたは複数のカルボキシル基を含む。
【0044】
いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは、連結剤を介して連結される複数の硫酸化GAGポリマー鎖を含む。いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは、連結剤を介して連結される複数の硫酸化GAGポリマー鎖および少なくとも1つのさらなるポリマーを含む。いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは、連結剤を介して連結される複数の硫酸化GAGポリマー鎖および少なくとも2つのさらなるポリマーを含む。いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは、連結剤を介して連結される複数の硫酸化GAGポリマー鎖および少なくとも3つのさらなるポリマーを含む。いくつかの実施形態において、硫酸化GAGはコンドロイチン硫酸である。いくつかの実施形態において、さらなるポリマーは、コンドロイチン硫酸以外の硫酸化GAGである。いくつかの実施形態において、さらなるポリマーは非硫酸化GAGである。いくつかの実施形態において、さらなるポリマーはヒアルロン酸(HA)またはカルボキシメチルセルロース(CMC)である。
【0045】
本発明のポリマーコンジュゲートは、個々のGAGポリマー鎖と比較してより高い(例えば、増大した)分子量を一般には有することになり、しかし、広範囲架橋ネットワークを有するゲルを形成しないことが理解されるであろう。いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは、分子量が、出発物質として使用される連結されていない硫酸化GAGと比較した場合、特定の範囲にある(例えば、ポリマーコンジュゲートは、個々の連結されていない硫酸化GAGの3倍~100倍の分子量を有する)。いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは、分子量が特定の範囲にある(例えば、個々の連結されていない硫酸化GAGの3倍~100倍の分子量を有する)分岐した多鎖コンジュゲートである。いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは、分子量が特定の範囲にある(例えば、個々の連結されていない硫酸化GAGの3倍~100倍の分子量を有する)瓶洗いブラシ様の多鎖コンジュゲートである。いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは、分子量が、個々の連結されていない硫酸化GAGの分子量の約3倍~100倍、3倍~75倍、3倍~50倍、3倍~25倍、5倍~100倍、5倍~75倍、5倍~50倍、および5倍~25倍の間の範囲にある。いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは、分子量が、個々の連結されていない硫酸化GAGの分子量の5倍~25倍の範囲にある。
【0046】
いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは水溶液に可溶性である。いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは複数の硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)ポリマー鎖を含み、この場合、それぞれの硫酸化GAGがリンカー剤を介して1つまたは複数の硫酸化GAGポリマー鎖に連結され、かつ、ポリマーコンジュゲートは水溶液に可溶性であり、個々の連結されていない硫酸化GAGの分子量の3倍~100倍である分子量を有する。
【0047】
どのような理論であれ特定の理論によってとらわれることを望まないが、ポリマーコンジュゲートの変化には、様々な長さ、硫酸化パターン、分子量および化学的組成などが含まれるが、これらに限定されない。これらの変化は、本明細書中に提供される方法を使用して制御されることがある一方で、ポリマーコンジュゲートの立体配座、分子量、水和、機械的機能、および細胞のシグナル伝達機能に影響を及ぼし得る。
【0048】
リンカー剤
当業者は、本発明に従って使用されるGAGポリマーおよび他のポリマーを連結するために適切である様々なタイプの直接的リンカー剤に精通しているであろう。リンカーが、リンカー剤との反応に由来するコンジュゲートの一部であるという理解とともに、用語「連結剤」および用語「リンカー」は交換可能であることが理解されるであろう。
【0049】
いくつかの実施形態において、リンカー剤は二官能性である。いくつかの実施形態において、リンカー剤はポリマーでない。いくつかの実施形態において、リンカー剤は、モノマー単位が10回以下で反復するポリマーにすぎない。いくつかの実施形態において、リンカー剤は、モノマー単位が5回以下で反復するポリマーにすぎない。いくつかの実施形態において、リンカー剤は分子量が約150Da未満であり、200Da未満であり、250Da未満であり、300Da未満であり、350Da未満であり、400Da未満であり、450Da未満であり、500Da未満であり、600Da未満であり、700Da未満であり、800Da未満であり、900Da未満であり、または1000Da未満である。いくつかの実施形態において、リンカー剤はポリマーでなく、約150Da未満であり、200Da未満であり、250Da未満であり、300Da未満であり、350Da未満であり、400Da未満であり、450Da未満であり、500Da未満であり、600Da未満であり、700Da未満であり、800Da未満であり、900Da未満であり、または1000Da未満である。いくつかの実施形態において、リンカー剤はポリマーでなく、約1000Da未満である。いくつかの実施形態において、リンカー剤はポリマーでなく、約500Da未満である。いくつかの実施形態において、リンカー剤はポリマーでなく、約250Da未満である。いくつかの実施形態において、リンカー剤はポリマーでなく、約200Da未満である。いくつかの実施形態において、リンカー剤はポリマーでなく、約150Da未満である。いくつかの実施形態において、リンカー剤はポリマーでなく、150Da未満であり、200Da未満であり、250Da未満であり、300Da未満であり、350Da未満であり、400Da未満であり、450Da未満であり、500Da未満であり、600Da未満であり、700Da未満であり、800Da未満であり、900Da未満であり、または1000Da未満である。
【0050】
いくつかの実施形態において、リンカー剤が、ジビニルスルホン(DVS)、ジエポキシド、エピクロロヒドリン(Epi)、ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)およびそれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、リンカー剤はエピクロロヒドリン(Epi)である。いくつかの実施形態において、リンカー剤はブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)である。いくつかの実施形態において、リンカー剤はビスカルボジイミドである。いくつかの実施形態において、リンカー剤はフェニレン-ビス(エチルカルボジイミド)である。いくつかの実施形態において、リンカー剤は1,1’-カルボニルジイミダゾールである。いくつかの実施形態において、リンカー剤はジビニルスルホン(DVS)である。いくつかの実施形態において、リンカー剤は、ブロモアセチックNHSエステル、6-(ヨードアセトアミド)カプロン酸NHSエステル、マレイミド酢酸NHSエステル、マレイミド安息香酸NHSエステル、またはMMCCH(4-(マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシルヒドラジド)である。
【0051】
いくつかの実施形態において、リンカーは、2個~約20個のアミノアシル残基を含むペプチド性フラグメント、直鎖または分岐鎖のアルキルカルボン酸エステルまたはアリールカルボン酸エステル、あるいはC1~20の飽和または不飽和の直鎖炭化水素鎖または分岐型炭化水素鎖であり、この場合、リンカーの1つまたは複数のメチレンユニットが必要に応じて、かつ独立して、シクロプロピレン、-CHOH-、-NR-、-N(R)C(O)-、-C(O)N(R)-、-N(R)SO2-、-SO2N(R)-、-O-、-C(O)-、-OC(O)-、-C(O)O-、-S-、-SO-、-SO2-、-C(=S)-または-C(=NR)-によって置換される。
【0052】
いくつかの実施形態において、リンカーまたはリンカー剤は短いポリ(アルキレンオキシド)鎖を含有する。いくつかの実施形態において、リンカーまたはリンカー剤は、エポキシド基を両末端に有する短いポリ(エチレンオキシド)鎖であり、例えば、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテルなどである。
【0053】
硫酸化GAG
いくつかの実施形態において、本発明に従って使用されるための硫酸化GAGが、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリンおよびそれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、硫酸化GAGがコンドロイチン硫酸である。コンドロイチン硫酸は、N-アセチルガラクトサミン(GalN)と、グルクロン酸(GlcN)との反復する二糖単位からなる。いくつかの実施形態において、コンドロイチン硫酸は、100を超える糖を有することができ、そのそれぞれがそれぞれ異なる位置および量で硫酸化され得る(例えば、コンドロイチン硫酸A、C、D、およびE)。いくつかの実施形態において、硫酸化GAGの分子量は、約1,000Da、5,000Da、10,000Da、15,000Da、20,000Da、30,000Da、40,000Da、50,000Da、100,000Da、またはこれらの数字のいずれか2つを含む範囲よりも大きい場合がある。いくつかの実施形態において、コンドロイチン硫酸の分子量は、約1,000Da、5,000Da、10,000Da、15,000Da、20,000Da、30,000Da、40,000Da、50,000Da、100,000Da、200,000Da、またはこれらの数字のいずれか2つを含む範囲よりも大きい場合がある。
【0054】
修飾GAG
いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは、少なくとも1つの調節剤が少なくとも1つのポリマーGAG鎖に導入されている修飾されたGAGを使用することによって調製することができる。上記で記載されるように、GAGは多数のヒドロキシル官能基およびカルボキシル官能基を鎖に沿って有する。加えて、GAGの還元性末端は、ただ1つで、かつ、特有の化学的官能基を提供する。本発明において記載される新規組成物の治療的利益を拡大し、増強するために、本発明では、調節剤が連結剤との反応の前にGAG鎖上に導入され得るという認識が包含される。化学修飾されたGAG、すなわち、GAG複合糖質を用いて本発明の方法を実施することにより、調節剤によってもたらされるさらなる利点を有する高分子量のプロテオグリカン模倣物が提供されるであろう。例えば、I型コラーゲン、II型コラーゲン、他のコラーゲンイソ型、エラスチン、インテグリン受容体、あるいは、各種ガレクチン(これらに限定されない)を含めて、他のECM成分または細胞表面タンパク質について親和性があるペプチドを有する硫酸化GAGは、標的生体分子に対するプロテオグリカン模倣物のより特異的な結合を可能にするであろう。文献には、GAGの共有結合修飾のいくつかの例が記載されており、そのような修飾のための好適な化学反応が当業者には知られている。
【0055】
いくつかの実施形態において、硫酸化GAGがGAGポリマー鎖に沿って修飾される場合がある。いくつかの実施形態において、調節剤が、当業者に知られている様々な方法によって、GAG鎖骨格を連結剤と連結する前に硫酸化GAGに導入される場合がある。いくつかの実施形態において、調節剤が、当業者にはよく知られている還元性末端化学反応(例えば、還元的アミノ化)を使用してその還元性末端において硫酸化GAGに導入される場合がある。
【0056】
いくつかの実施形態において、硫酸化GAGが、GAGポリマー鎖に沿ったカルボキシル基を介して修飾される。いくつかの実施形態において、カルボキシル基が、アミド結合を形成し、それにより調節剤を導入するためにペプチドカップリング条件にさらされる。好適なペプチドカップリング条件がこの技術分野では広く知られており、これらには、Han他、Tetrahedron、60、2447~67(2004)、および、VR Pattabiraman他、Nature、480、471~479(2011)に詳しく記載される条件が含まれる(それらの全体が本明細書により参照によって組み込まれる)。いくつかの実施形態において、好適なペプチドカップリング条件は、塩基(例えば、DIEA、または当業者にはよく知られている他の塩基など)の存在下において、カルボジイミド系またはトリアゾール系の活性化試薬から選択されるペプチドカップリング試薬を含む。ある特定の実施形態において、ペプチドカップリング条件は、HOBt、HOAt、DMAP、BOP、HBTU、HATU、BOMI、DCC、EDC、IBCF、またはそれらの組合せを加えることを含む。いくつかの実施形態において、ペプチドカップリング剤が、トリアジン系の活性化剤(例えば、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMTMM)など)から選択される。
【0057】
いくつかの実施形態において、可溶性の高分子量の硫酸化GAG組成物が、その意図された用途におけるその能力を高めるために様々な基により化学的に置換されているポリマーを用いて調製される場合がある。いくつかの実施形態において、そのような調節剤による置換がGAG多糖鎖に沿ってランダムに行われ、または鎖の還元性末端においてだけ行われる。いくつかの実施形態において、提供されたポリマーコンジュゲートは、強い親和性をECMの所与成分(例えば、コラーゲン、エラスチン)について有することが知られているペプチド調節剤により置換される硫酸化GAG(例えば、コンドロイチン硫酸(ChS)など)を含む。他の実施形態において、提供されたポリマーコンジュゲートは、その治療的利益を高めるために抗酸化性調節剤または他の分子により置換される硫酸化GAGを含む。ペプチドのコンジュゲート化は、生物学的な認識および機能を合成ポリマーおよび生体材料に付加する手段としてこの技術分野では広く知られている。多くの短いペプチドモチーフが、本発明のためのGAGコンジュゲートの形成において有用であり得る生体材料用途において特定され、利用されている。これらのペプチドの多くが、所望の親和性を所与の標的生体分子について有する天然タンパク質に由来する。
【0058】
いくつかの実施形態において、提供されたポリマーコンジュゲートは、インテグリン結合性調節剤により置換される硫酸化GAGを含む。最も広く知られているものが、細胞表面のインテグリンに結合するためのペプチドモチーフであり、フィブロネクチンに由来するものである:GRGDS(配列番号1)、PHSRN(配列番号2)、REDV(配列番号3)およびLVD。これらのペプチドおよびそれらの誘導体は細胞表面のインテグリンについて親和性を有しており、細胞を固定化するために生体材料マトリックスに共有結合させられている。ラミニンに由来するインテグリン結合ペプチドもまた、細胞を生体材料内に引き寄せるために使用されている:YIGSR(配列番号4)、GIIFFL(配列番号5)、IKVAV(配列番号6)およびそれらの誘導体など。
【0059】
いくつかの実施形態において、提供されたポリマーコンジュゲートは、コラーゲン結合剤により置換される硫酸化GAGを含む。コラーゲン表面に結合することが知られているペプチドがいくつか存在する。一部がデコリンから導かれている:SYIRIADTNITGC(配列番号7)(これはdc-13として知られている)、LRELHLNNN(配列番号8)(IS-6)およびLHERHLNNN(配列番号9)。別の広く知られているコラーゲン結合ペプチドが[GPO]7であり、これは、グリシン-プロリン-ヒドロキシプロリンのコラーゲンモチーフの7量体反復であり、線維状コラーゲンに対するヘリコジェニック(helicogenic)親和性を有している。ペプチドGLRSKSKKFRRPDIQYPDA(配列番号10)が米国特許第9133246号(B2)に記載され、この特許では、このペプチドが、コラーゲンを標的とする融合タンパク質の一部として使用された。米国特許第9,200039号(B2)には、コラーゲン結合ペプチドのRRANAALKAGELYKSILYGC(配列番号11)(これはSILYとして知られている)およびWYRGRLGC(SEQ ID NO:12)、ならびに他のいくつかの例が記載される。加えて、米国特許第8846003号(B2)には、III型コラーゲンの表面での結合について特異性を有するペプチド、例えば、KELNLVYTGC(配列番号13)およびGSITTIDVPWNVGC(配列番号14)などが記載される。コラーゲンについて親和性を有するいくつかの環状ペプチドが、WHCYTYFPHHYCVYG(配列番号15)、GWHCYTYFPHHYCTYG(配列番号16)、AWHCYTYFPHHYCVYG(配列番号17)、LWHCYTYFPHHYCVYG(配列番号18)、YWHCYTYFPHHYCVYG(配列番号19)を含めて米国特許第8034898号(B2)に記載される。
【0060】
いくつかの実施形態において、提供されたポリマーコンジュゲートは、ヒアルロナン結合性調節剤により置換される硫酸化GAGを含む。ECMにおけるヒアルロナンへの結合について親和性を有するペプチドが米国特許第9,200,039号(B2)に記載される。これらには、GAHWQFNALTVRGGGC(配列番号20)(これはGAHとして知られている)および他の例が含まれる。
【0061】
好ましくは、本発明によるポリマーコンジュゲートは、ガレクチンに対する少なくとも1つのグリカンリガンドにより置換される少なくとも1つの硫酸化GAGポリマー鎖を含み、例えば、少なくとも1つのβ-ガラクトース残基(例えば、β-ガラクトシド)を含む硫酸化GAGポリマー鎖を含む。
【0062】
いくつかの実施形態において、提供されたポリマーコンジュゲートは上記のペプチドまたはグリカンのいずれかを調節剤として含む。
【0063】
さらなるポリマー
提供されたポリマーコンジュゲートのいくつかの実施形態において、硫酸化GAGは他のポリマーおよび生体分子と直接にコンジュゲート化される。いくつかの実施形態において、ヒアルロン酸(HA)またはカルボキシメチルセルロース(CMC)が、ハイブリッド型の高分子量の可溶性ポリマー組成物を形成するために組み込まれる。いくつかの実施形態において、硫酸化GAGが、約250kDa、300kDa、350kDa、400kDa、450kDa、500kDa、1,000kDa、またはこれらの数字のいずれか2つを含む範囲を超える分子量を有する他のポリマーおよびバイオポリマーと一緒に直接にコンジュゲート化される場合がある。例示的なそのようなコンジュゲートが下記においてさらに詳しく記載される。
【0064】
GAGポリマーコンジュゲートを調製する方法
上記で記載されるように、本発明のポリマーコンジュゲートが合成試薬および合成方法の適切な選択によって合成される。下記の議論が、本発明のポリマーコンジュゲートを組み立てる際の使用のために利用可能である多様な方法のいくつかを例示するために提供される。しかしながら、下記の議論は、本発明の化合物を調製することにおいて有用である反応または反応系列の範囲を限定するためには意図されない。
【0065】
下記に例示されるようなスキームAでは、硫酸化GAG(例えば、コンドロイチン硫酸)、およびリンカー剤(例えば、DVS)が結合し得る様々な位置が示される。
【0066】
【0067】
下記に例示されるようなスキームBでは、ポリマーコンジュゲートを形成するために、リンカー剤(DVS)が結合している第2の硫酸化GAGと反応させられる硫酸化GAGの一例が示される。
【0068】
【0069】
出願人は、硫酸化GAGが高濃度で存在する条件下では、強い透明なゲルが急速に形成され得ることを認めている。例えば、Mw=14,000Daである市販のウシ起源のコンドロイチン硫酸材料を使用する場合、コンドロイチン硫酸が8wt%超の濃度であり(8gのポリマーが100gの溶液に含有される)、かつ、十分なDVSが使用されるとき、ヒドロゲルを、0.1NのNaOH溶液でのDVSを加えた1時間後~2時間後のうちに形成させることができる。
【0070】
図5および
図6には、DVS/OH比と、溶液中のポリマーの重量%として表されるようなポリマー濃度との様々な組合せが例示される。これらの図は、いくつかの組合せではゲルが形成され、他の組合せではゲルが形成されないことを示す。加えて、ゲルを形成させるために要求されるおおよその時間が図には含まれており、そのような反応を、ゲルが形成される前に停止させることが可能である。
図5および
図6にはまた、反応混合物が透明のままである条件、および、反応液が、不溶性の非常に修飾されたポリマー誘導体の形成のために濁る、または不透明になる条件が示されている。
【0071】
本発明はとりわけ、ポリマーコンジュゲートを調製するための方法であって、主生成物が、水溶液に可溶性である硫酸化GAGポリマーコンジュゲートである方法を提供する。本発明の1つの局面によれば、硫酸化GAGが、ゲルの形成を回避するために選択される濃度で、本明細書中に提供される方法において使用される。
【0072】
いくつかの実施形態において、硫酸化GAGは、濃度が、約1wt%、2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、6wt%、7wt%、8wt%、9wt%、10wt%、11wt%、12wt%、13wt%、14wt%、15wt%、16wt%、17wt%、18wt%、19wt%、20wt%、またはこれらの数字のいずれか2つを含む範囲を超えている。いくつかの実施形態において、硫酸化GAGは、濃度が、2wt%~20wt%の範囲の間であり、2wt%~18wt%の範囲の間であり、2wt%~16wt%の範囲の間であり、2wt%~14wt%の範囲の間であり、2wt%~12wt%の範囲の間であり、2wt%~10wt%の範囲の間であり、4wt%~20wt%の範囲の間であり、6wt%~20wt%の範囲の間であり、8wt%~20wt%の範囲の間であり、10wt%~20wt%の範囲の間であり、5wt%~15wt%の範囲の間であり、5wt%~10wt%の範囲の間であり、8wt%~16wt%の範囲の間であり、8wt%~12wt%の範囲の間である。いくつかの実施形態において、コンドロイチン硫酸(ChS)が、約1wt%、2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、6wt%、7wt%、8wt%、9wt%、10wt%、11wt%、12wt%、13wt%、14wt%、15wt%、16wt%、17wt%、18wt%、19wt%、20wt%、またはこれらの数字のいずれか2つを含む範囲を超える濃度で使用される。
【0073】
いくつかの実施形態において、ChSが約8wt%~16wt%の間の範囲で行われた実験により、ゲル形成速度が、使用されるChSの濃度およびDVSの量の両方とともに増大することが明らかにされる。例えば、バイオポリマーに対して利用可能なDVS/ヒドロキシル基相当物のモル比が0.1未満であるときには、ゲルが、ChSのより高濃度の溶液(10~12wt%)についてでさえ、90分後に形成されない。
【0074】
いくつかの実施形態において、これらの反応が、DVS/ヒドロキシル比が体系的に増大させられる条件のもとで行われたときには、ゲル形成速度が加速されたことが認められた。そのうえ、DVS/ヒドロキシルレベルが高いとき(1.0に近い、または1.0を超えるとき)には、いくつかの反応液が濁ったこと、または、それどころか、白色の固体沈殿物を形成したことが見出された。NMR分光法によるこの不溶性生成物の特徴づけにより、この不溶性生成物が、ビニルスルホン基により非常に置換されるコンドロイチン硫酸誘導体であることが見出された。
【0075】
「分岐型」ポリマーコンジュゲート
いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは分岐型構造を有する。例えば、
図2を参照のこと。いくつかの実施形態において、GAG濃度および連結剤対GAGのモル比が、広範囲架橋ネットワーク物ではなく、むしろ、可溶性の分岐型ポリマーを提供するように選択されている条件のもとで、硫酸化GAGが連結剤と反応させられる。いくつかの実施形態において、リンカー剤がDVSであり、DVS/ヒドロキシル比が約0.01~0.6の範囲の間である。いくつかの実施形態において、DVS/ヒドロキシル比が、0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、またはこれらの数字のいずれか2つを含む範囲である。
【0076】
ある特定の実施形態において、本発明は、ポリマーコンジュゲートを調製する方法であって、i)約2wt%~20wt%の濃度で硫酸化GAGの水溶液を提供する工程と、ii)硫酸化GAGを連結剤と接触させて、可溶性の分岐型ポリマーを形成する工程であって、GAGヒドロキシル基対連結剤のモル比が、ゲル形成のために要求されるモル比よりも小さい工程とを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、工程iにおける硫酸化GAGは分子量が10,000Da~100,000Daである。いくつかの実施形態において、GAGヒドロキシル基対連結剤のモル比(例えば、DVS/ヒドロキシル比)が0.01~0.6である。
【0077】
いくつかの実施形態において、広範囲架橋ネットワーク物が形成される前に反応を終了させることができる条件のもとで、硫酸化GAGが直接的連結剤と反応させられる。これらの場合において、連結反応が、pHを中性値にまで下げるために酸(例えば、HClなど)を加えることによって容易に停止させられる。再度ではあるが、広範囲架橋ネットワーク物ではなく、むしろ、可溶性の分岐型ポリマーが得られる。いくつかの実施形態において、反応は、反応が終了させられるまでの一定の期間にわたって行われる。いくつかの実施形態において、反応は約1分間~120分間行われる。いくつかの実施形態において、反応は約25分間~40分間行われる。いくつかの実施形態において、反応は約40分間行われる。いくつかの実施形態において、反応は約90分間行われる。
【0078】
いくつかの実施形態において、分岐型ポリマーコンジュゲートは、分子量が、約15,000Da、20,000Da、30,000Da、40,000Da、50,000Da、100,000Da、200,000Da、300,000Da、400,000Da、500,000Da、1,000,000Da、またはこれらの数字のいずれか2つを含む範囲よりも大きい。
【0079】
「瓶洗いブラシ様」ポリマーコンジュゲート
いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは瓶洗いブラシ様構造を有する。例えば、
図3を参照のこと。いくつかの実施形態において、反応物が逐次導入される条件のもとで、硫酸化GAGが連結剤と反応させられる。いくつかの実施形態において、反応物のこの段階的な添加は生成物の分子構造および性質に大きく影響する。例えば、1ポット手順において、少量の硫酸化GAGを希薄溶液において連結剤により活性化して、多価反応性コアポリマー中間体を形成することができる。過剰の同じ硫酸化GAGまたは異なる硫酸化GAGを続いて加えることにより、瓶洗いブラシ様構造を有する可溶性の、高分子量の硫酸化GAG組成物の形成がもたらされる。
【0080】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、ポリマーコンジュゲートを単一反応での硫酸化GAGの逐次導入により調製する方法であって、i)硫酸化GAGを提供する工程と、ii)硫酸化GAGを連結剤と、少量の硫酸化GAGが全量の連結剤と反応させられる条件のもとで反応させる工程と、iii)硫酸化GAGの残り部分を加えて、瓶洗いブラシ様構造を有する可溶性コンジュゲートを形成する工程とを含む方法を提供する。
【0081】
いくつかの実施形態において、連結剤との直接反応が可能である高分子量のコアポリマー(例えば、CMC、HA)が、2段階合成手順の最初の工程で反応させられる。硫酸化GAGがその後、瓶洗いブラシ様ポリマー組成物を1ポット手順で形成する修飾されたコアポリマーと反応させるために導入される場合がある。
【0082】
いくつかの実施形態において、本発明は、ポリマーコンジュゲートを調製する方法であって、i)コアポリマーを、希薄溶液において連結剤により活性化して、多価反応性コアポリマー中間体を形成する工程と、ii)過剰の硫酸化GAGを、可溶性の瓶洗いブラシ様ポリマーを形成するために加える工程とを含む方法を提供する。ある特定の実施形態において、工程iは、コアポリマーを連結剤により活性化することを、少量のコアポリマーが全量の連結剤と反応させられる条件のもとで行うことを含む。ある特定の実施形態において、工程iは、亜化学量論的量のコアポリマー(すなわち、ポリマーのヒドロキシル基を超える過剰の連結剤)を、希薄溶液において連結剤により活性化して、多価反応性コアポリマー中間体を形成することを含む。いくつかの実施形態において、工程iのコアポリマーは、工程iiにおいて加えられる硫酸化GAGと同一の硫酸化GAGである。いくつかの実施形態において、工程iのコアポリマーは、工程iiにおいて加えられる硫酸化GAGとは異なる硫酸化GAGである。いくつかの実施形態において、工程iのコアポリマーは硫酸化GAGでない。ある特定の実施形態において、工程iにおけるコアポリマーはカルボキシメチルセルロースである。ある特定の実施形態において、工程iにおけるコアポリマーはヒアルロン酸である。
【0083】
いくつかの実施形態において、提供されたポリマーコンジュゲートが、コアポリマーが最初に希薄溶液において連結剤により官能化され、その後、沈殿化または他の手段によって単離される2段階反応で調製される。連結剤により修飾されるコアポリマー中間体は特徴づけおよび/または精製を行うことができる。高濃度溶液での硫酸化GAGとの第2の反応におけるこのコアポリマー中間体のその後の反応により、可溶性の瓶洗いブラシ様ポリマー組成物がもたらされる。
【0084】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、ポリマーコンジュゲートを調製する方法であって、i)コアポリマーを希薄溶液において連結剤により官能化して、コアポリマー中間体を形成する工程と、ii)コアポリマー中間体を単離する工程と、iii)コアポリマー中間体を高濃度溶液での硫酸化GAGと反応させて、可溶性の瓶洗いブラシ様ポリマーを形成する工程とを含む方法を提供する。
【0085】
いくつかの実施形態において、瓶洗いブラシ様ポリマーコンジュゲートは、分子量が、約15,000Da、20,000Da、30,000Da、40,000Da、50,000Da、100,000Da、200,000Da、300,000Da、400,000Da、500,000Da、1,000,000Da、2,000,000Da、またはこれらの数字のいずれか2つを含む範囲よりも大きい。
【0086】
特徴づけ技術
上記で記載されるように、いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは水溶液に可溶性である。そのようなコンジュゲートは、広範囲架橋ネットワークを有するゲルである知られているGAGポリマーコンジュゲートとは対照的である。当業者は、ゲルである材料と、ゲルでない材料とを区別することができるが、疑念を避けるために、均質溶液における重合については、広範囲架橋ネットワーク物の形成が溶液特性の喪失によって特徴づけられるであろうことには留意される。例えば、反応混合物はもはや流動することはないであろうし、ゲルが大量の水に加えられるときには、ゲルは膨潤することがあり、しかし、ゲルは溶解しないであろう。そのようなゲルは固体または粘弾性材料の性質を呈する。加えて、そのようなゲルは、レオメトリーを使用して定量することができる粘弾性特性を有する。例えば、多くの強いゲルは、その損失弾性率(G’’)よりも大きい貯蔵弾性率(G’)を有する。
【0087】
いくつかの実施形態において、提供されたポリマーコンジュゲートは、水に溶解されたときには溶液流動特性を維持するであろう。いくつかの実施形態において、提供されたポリマーコンジュゲートは、合成方法に特徴的であろう分子量分布および分岐度を有するであろうし、また、バッチからバッチに再現性があるであろう。いくつかの実施形態において、提供されたポリマーコンジュゲートは、ゲルではなく、透明な粘性流体が、提供されたポリマーコンジュゲートの製造の期間中に認められることを特徴とする。いくつかの実施形態において、ポリマーコンジュゲートは水溶液における透明な粘性流体である。
【0088】
提供されたポリマーコンジュゲートの特徴づけが、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)および動的光散乱(DLS)によってもたらされる場合がある。いくつかの実施形態において、流動に関連づけられるパラメーター(例えば、粘度または弾性率など)が粘度測定法およびレオロジーによって求められる場合がある。
【0089】
流体力学的半径(Rh)がDLSによって求められ、分子量および分子構造(分岐のタイプ/程度)に直接に関係づけられる。いくつかの実施形態において、出発物質のRhを超えるRhの増強または増大が達成されるであろう。いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは、参照物の流体力学的半径と比較して、増大した流体力学的半径を有するであろう。いくつかの実施形態において、アグリカンが、分子量およびRhの両方についての上限をモデル化するために使用される参照物である場合がある。いくつかの実施形態において、出発物質(例えば、連結されていない硫酸化GAG)が参照物として使用される場合がある。
【0090】
DLSは、溶液中のポリマーの大きさ(Rh)を直接に求めるための便利な方法であり、しかしながら、分子量を直接に測定するものではない。流体力学的半径を知ることにより、分子量を推定することが可能である。DYMANICS(登録商標)ソフトウェア(Wyatt technologies)では、形状モデルが、MwをRhから推定するために使用される。この計算を、一般的なポリマー構造モデル(球状、コイル状、分岐状)を入力した後で行うことができる。
【0091】
ポリマーコンジュゲートの精製
いくつかの実施形態において、ポリマーコンジュゲートが、当業者に知られている様々な方法によって精製される場合がある。いくつかの実施形態において、ポリマーコンジュゲートが透析によって精製される場合がある。いくつかの実施形態において、ポリマーコンジュゲートがタンジェンシャルフローろ過によって精製される場合がある。いくつかの実施形態において、ポリマーコンジュゲートが粗反応生成物から沈殿させられる場合がある。いくつかの場合において、ポリマーコンジュゲートが反応混合物から沈殿化させられ、集められ、水に再溶解され、そして再び沈殿化させられる場合がある。数サイクルの再溶解/沈殿化が実施される場合がある。
【0092】
使用方法
軟部組織(例えば、血管組織、皮膚組織または筋骨格組織)に対する傷害は極めて一般的である。身体における軟部組織の欠損および/または損傷を矯正するための外科的取り組みは一般には、欠損機能を置き換えようとする、または欠損機能の代用として使用しようとする生体適合性の不活性な材料から作製される構造体の移植を伴う。非生分解性材料の移植は、異物として体内に留まる永続的な構造体をもたらす。吸収性材料から作製される様々なインプラントが、一時的な代用物としての使用のために提案されており、この場合、その目的が、治療プロセスが吸収材料を置き換えることを許すことである。しかしながら、これらの取り組みでは、体内における構造の長期的矯正についての成功はこれまで限定的であった。
【0093】
人が年をとるにつれて、顔のしわ(rhytide(wrinkle))およびひだが、顔面脂肪の喪失および皮膚弾力の低下に応答して現れる。皮膚は形を失い、急性創傷は、治癒するためにより長い期間を必要とし、より容易に瘢痕化する。医師は長年にわたり、顔の軟部組織の顔面容量喪失に対処するために様々な方法および材料を試みてきた。科学者および医師は、理想的な皮膚充填剤を絶えず探している。
【0094】
軟部組織状態にはさらに、例えば、皮膚の状態(例えば、瘢痕修正または外傷性創傷の処置、重度熱傷、皮膚潰瘍(例えば、褥瘡性(圧迫性)潰瘍、静脈性潰瘍および糖尿病性潰瘍)、および手術創傷(例えば、皮膚ガンの切除に伴う手術創傷など))、血管状態(例えば、血管疾患(例えば、末梢動脈疾患、腹部大動脈瘤、頸動脈疾患および静脈疾患など);血管傷害;不適切な血管発達)、声帯に影響を及ぼす状態、美容上の状態(例えば、修復、増強または美化を伴う状態)、筋疾患、結合組織(例えば、歯周靭帯および前十字靭帯(これらに限定されない)を含む腱および靭帯など)の状態、ならびに、臓器および/または筋膜(例えば、膀胱、腸、骨盤底)の状態が含まれる。
【0095】
筋骨格系の変性した軟部組織および損傷した軟部組織は、激しい痛みおよび制限された動きをもたらす様々な医学的合併症の原因であり、また、それらの危険性を増大させる。例えば、脊椎の変性した軟部組織および損傷した軟部組織は、世界中で何百万人について背部痛の主な源となっている。靭帯および椎間円板の軟部組織変性はまた、関節突起間関節(zygapophysical)(椎間関節)、肋椎関節、仙腸関節、仙椎関節および環軸関節を含めて局所的な脊椎関節に対する損傷および局所的な脊椎関節から生じる背部痛の危険性を増大させる。
【0096】
いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは、医療において使用されるためのものである。いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは、哺乳動物において軟部組織に関連する疾患、障害または状態を処置する際に使用されるためのものである。いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは、軟部組織の欠損および/または障害に伴う疾患、障害または状態を処置する際に使用されるためのものであり、この場合、本発明のコンジュゲートを軟部組織部位に投与することにより、軟部組織の機能的回復が全体的または部分的にもたらされる。
【0097】
いくつかの実施形態において、本発明に従って処置される軟部組織が、椎間円板、皮膚、心臓弁、関節軟骨、軟骨、半月板、脂肪組織、頭蓋顔面、眼球、腱、靭帯、筋膜、線維組織、滑膜、筋肉、神経、血管、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは、皮膚修復、整形外科的修復、泌尿器科学、創傷修復および局所的化粧品において使用されるためのものである。
【0098】
いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは、哺乳動物においてECMの分解に伴う疾患、障害または状態を処置する際に使用されるためのものである。いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは、ECMの欠損および/または障害に伴う疾患、障害または状態を処置する際に使用されるためのものであり、この場合、本発明のコンジュゲートをECMに投与することにより、ECMの機能的回復が全体的または部分的にもたらされる。
【0099】
いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは、軟部組織喪失の発症を遅らせる(例えば、軟部組織喪失を妨げる)方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは、軟部組織を増強するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは美容的増強のための方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは、結合組織の加齢性変性、または結合組織の変性に関連づけられる疾患に罹患している対象を処置する方法を提供する。
【0100】
いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは、急性創傷の治癒において使用されるためのものである。いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは、再生医療において使用されるためのものである。
【0101】
間質性膀胱炎(IC)または膀胱痛症候群(BPS)は、合衆国では400万人から1200万人(主に女性)が冒される慢性疾患である。IC/BPSは、頻尿、増大した尿意切迫、および膀胱充満に伴う痛みによって特徴づけられる。したがって、本発明のポリマーコンジュゲートは好ましくは、有痛性の膀胱症候群または間質性膀胱炎に罹患している患者に見出される膀胱の損傷した尿路上皮を処置する際に使用されるためのものである。いくつかの実施形態において、前記ポリマーが好ましくは、膀胱内点滴注入により膀胱に投与される。
【0102】
病因が不明であるにもかかわらず、また、いずれかの特定の理論に限定されることはなく、1つの有力な理論では、膀胱痛症状が、尿路上皮を神経支配する内臓求心性線維の活性化を引き起こす膀胱内腔表面での密な不浸透性バリアの喪失から生じることが提案されている。膀胱の不透過性に関わる内腔細胞層を構成する「アンブレラ細胞」が存在しない可能性、または完全に分化していない可能性があり、表面におけるグリコサミノグリカン(GAG)の正常な層が損なわれており、また、タイトジャンクション構成タンパク質の発現が変化している。Parsonsにより、IC患者は、膀胱内に流れ込む尿素の吸収が対照者よりも有意に大きいことを示すことが明らかにされた。Hurstは、IC/BPS患者の尿路上皮は透過性が正常な対照者よりも有意に大きいことを、MRIを使用して曖昧さなく示した。不明なことは、膀胱がどのようにしてその不透過性を失うかである。証拠は、そのことが、おそらくは炎症細胞によって調節されるかもしれない神経連絡を介して内因的に、そして、尿中の物質から、またはカチオン捕捉剤の喪失から、それらの両方で生じ得ることを示唆する。
【0103】
IC/BPSのための治療選択肢が、試みられてきた広範囲の様々な薬剤にもかかわらず、限定されている。いくらかの成功が、GAG補充療法による尿路上皮不透過性の回復を介してもたらされている(30~32)。GAG補充では、コンドロイチン硫酸およびヒアルロナン(単独または一緒でのどちらでも)、ヘパリン、またはペントサンポリ硫酸(ELMIRON(登録商標))の小胞内投与が伴う。残念ながら、奏効率が50%~60%を超えることはまれである。現在のGAG補充療法の限定的な効力は、これらの薬剤が尿路上皮の天然GAG層を再現することができないことによって説明されるかもしれない。尿路上皮のGAG層はプロテオグリカン(PG)(主にビグリカンおよびパールカン)から構成される。PGは、通常の場合には硫酸化GAG鎖のクラスターにより置換され、それにより、これらの硫酸化GAGと、他の生体分子との相互作用を増大させ、アニオン電荷が非常に大きい領域をもたらす糖タンパク質である。生じる浸透圧により、PGに富む組織および界面のための非常に効果的な水和が保証される。IC/BPSにおけるGAG補充のための現在の取り組みでは、線状の単鎖GAG(例えば、ヒアルロン酸(これは硫酸化されていない)、または低MW(50kDa未満)である硫酸化GAG(例えば、コンドロイチン硫酸など)など)のみがもたらされるだけである。これらの単鎖GAGは、生来的な尿路上皮の表面にPGによって提供されるクラスター化された硫酸化GAG環境を模倣することができない。PGは、組織からの単離および精製が困難である複雑な生体分子であるため、PGそのものは実用的な治療剤でない。
【0104】
しかしながら、本発明のプロテオグリカン模倣コンジュゲート化ポリマーは、単一の線状GAG鎖については起こり得ない方法で生物学的表面と結合するための硫酸化GAG鎖の多価アレイを表すことによってPG構造を模倣する。膀胱の不透過性をIC/BPSにおいて回復するためには、膀胱内皮に結合することが非常に重要であり、したがって、本発明のプロテオグリカン模倣コンジュゲート化ポリマーによってもたらされる硫酸化GAG鎖のこの多価呈示は、意味のある革新を表している。好ましくは、本発明のプロテオグリカン模倣物は、IC/BPSの標的化された処置を、例えば、ガレクチンに対するグリカンリガンド(例えば、β-ガラクトシドを含むリガンドなど)によるさらなる官能化によって提供する。例えば、β-ガラクトシドにより「装飾」されるそのようなポリマーコンジュゲートは、膀胱上皮に存在するガレクチンを標的とするであろう。したがって、本発明は、間質性膀胱炎(IC)を患者において処置する方法であって、本発明のポリマーコンジュゲートを、好ましくは、少なくとも1つの硫酸化GAGポリマー鎖がガレクチンに対する少なくとも1つのグリカンリガンド(例えば、β-ガラクトシド)を含む本発明のポリマーコンジュゲートを患者に投与する工程を含む方法を提供する。
【0105】
いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは、変性した椎間板を処置する際に使用されるためのものである。いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは、ポリマーコンジュゲートを、椎間板の浸透ポテンシャルを増大させるために変性椎間板の核内に投与する方法において使用されるためのものである。ポリマーコンジュゲートの材料を変性椎間板の核内に投与することにより、正常な椎間板の高さおよび機能を回復させることができる。好ましくは、本発明のポリマーコンジュゲートは椎間円板内への直接の注射によって投与される。そのような投与は、欠損椎間円板の耐荷重特性および粘弾性特性の全体的または部分的な回復をもたらすことができる。
【0106】
いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは、膝関節および他の関節の変形性関節症OAにおいて使用されるためのものである。OAは、変性関節疾患としてもまた知られており、関節炎の最も一般的な形態であり、加齢に随伴する軟骨のゆっくりした崩壊から生じている。典型的には、OAは、外傷、または何らかの他のタイプの関節炎(例えば、関節リウマチなど)に起因する慢性的な関節傷害に続いて生じる。あるいは、OAが特定の関節の酷使から生じ得る。OAは最も一般的には、肘、指、腰、膝、肩、手首、脊椎および足指の関節が関わる。臨床的には、OAは、関節痛、圧痛、運動制限、捻髪音および容赦ない進行性の身体障害によって特徴づけられる。OAは、これらの関節の単に1つだけに、またはこれらの関節のすべてに存在する可能性がある。ほとんどの身体組織は傷害後に修復を行うことができるにもかかわらず、軟骨の修復が、制限された血液供給と、軟骨再成長のための効果的機構の欠如とによって妨げられていると考えられている。好ましくは、本発明は、OA罹患患者に本発明のポリマーコンジュゲートを投与する方法を提供する。好ましくは、本発明のポリマーコンジュゲートが、罹患関節への直接注射によって患者に投与される場合がある。好ましくは、本発明のポリマーコンジュゲートは、ヒアルロン酸(HA)含有の関節内補充薬、例えば、EUFLEXXA(登録商標)、HYALGAN(登録商標)、ORTHOVISC(登録商標)、SUPARTZ(登録商標)およびSYNVISC(登録商標)など(これらに限定されない)を含むさらなる関節内補充療法との組合せで罹患関節への直接注射によって患者に投与される場合がある。
【0107】
本発明のポリマーコンジュゲートは、哺乳動物において椎間板の疾患または状態を処置するいずれかの知られている方法またはこれまで知られていない方法と併せて使用することができる。好ましくは、対象はヒトである。
【0108】
投与
いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは、1つまたは複数の賦形剤、緩衝剤、キャリア、安定剤、保存剤および/または増量剤と一緒に配合される場合がある。いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは、完全に生体適合性(すなわち、非毒性)である賦形剤を使用して配合される場合がある。いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは、賦形剤を使用して配合される場合があり、かつ、塩(例えば、リン酸ナトリウム塩)によって生理学的pHで緩衝化される。本発明のポリマーコンジュゲートは、この技術分野において知られている様々な方法を使用して、また、この技術分野において知られている様々な配合物で、対象において軟部組織部位に、その機能的回復のために投与される場合がある。投与方法が、処置されている状態および医薬組成物に依存して選定される。本発明のポリマーコンジュゲートの投与を、皮膚、皮下、静脈内、経口、局所的、経皮、腹腔内、筋肉内および膀胱内(これらに限定されない)を含めて様々な方法で行うことができる。例えば、マイクロ粒子配合物、ミクロスフェア配合物およびマイクロカプセル配合物が、経口投与、筋肉内投与または皮下投与のために有用である。加えて、リポソームおよびナノ粒子が、静脈内投与のために好適である。本発明のポリマーコンジュゲートの投与が、ただ1つの経路を介して行われる場合があり、またはいくつかの経路によって同時に行われる場合がある。例えば、経口投与には、静脈内注射または非経口注射が伴い得る。
【0109】
好ましくは、主題組成物が膀胱内点滴注入によって投与される。この手順は一般には、カテーテルを尿路に挿入し、膀胱を、主題組成物を含有する好適な希釈剤で満たすことを伴う。満たすことが、手動注入または腎臓ポンプによって行われる場合がある。電動薬物投与は膀胱内薬物送達をさらに補助することができる(例えば、Riedl,C.R.他、J.Endourol.、12:269~72(1998)を参照のこと;これは参照によって組み込まれる)。
【0110】
好ましくは、本発明のコンジュゲートは、小口径ニードルまたはマイクロニードルまたはマイクロニードルアレイを使用する真皮内への直接注射によって投与される。分岐型バイオポリマーとしての本発明のポリマーコンジュゲートは、小口径ニードルによる注射を容易にする、溶液であるときには低粘度であるという利点を有する。
【0111】
いくつかの実施形態において、本発明のポリマーコンジュゲートは投与後に感知できるほどに分解しないことが好ましい。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、迅速に、またはゆっくりとそのどちらであっても組織において分解することが好ましい。したがって、体内に投与されたとき、ポリマーコンジュゲートは永続的である場合があり、酵素分解される場合があり、または溶媒(例えば、水など)の存在下で分解される場合がある。
【0112】
本発明の方法は、IC症状を処置するための化合物および医薬組成物の最適な用量を決定することを含み、この場合、最適な用量は、動物実験の結果を考慮して決定される場合がある。より具体的な用量は、投与方法、対象の状態、例えば、年齢、体重、性別、感受性、摂食食物、投薬間隔、併用で投与される薬剤、ならびにICの重症度および程度などに明白に依存して変化する。所与の条件のもとでの最適用量および投与頻度は、これらの指針に基づいて医療専門家の適切な投薬量試験によって決定されなければならず、当業者にとっては過度の実験とならない。
【0113】
本発明のポリマーコンジュゲートはまた、当業者には広く知られている持続放出法または長期送達法を使用して投与される場合がある。本明細書中で使用されるような「持続放出」または「長期放出」によって、送達システムにより、医薬的に治療的な量のポリマーコンジュゲートが1日超にわたって、好ましくは1週間超にわたって、最も好ましくは少なくとも約30日~60日またはそれ以上にわたって投与されることが意味される。長期放出システムは、ポリマーコンジュゲートを含有する埋め込み可能な固体またはゲル(例えば、生分解性ポリマーなど)を含む場合がある。
【0114】
本発明のポリマーコンジュゲートは、1つまたは複数の他の薬物との組合せで(または、それらの任意の組合せとして)投与される場合がある。本発明のポリマーコンジュゲートは、ICおよび/または有痛性膀胱症候群および/または膀胱痛症候群に伴う痛みおよび/または下部尿路症状(LUTS)を処置するために、別の薬理学的に活性な化合物と、または2つ以上の他の薬理学的に活性な化合物と役立つように組み合わされる場合がある。例えば、本発明のポリマーコンジュゲートは、下記の薬剤から選択される1つまたは複数の薬剤との組合せで同時に、逐次的に、または別々に投与される場合がある:
オピオイド鎮痛剤、例えば、モルヒネ、ヘロイン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、レボルファノール、レバロルファン、メタドン、メペリジン、フェンタニル、コカイン、コデイン、ジヒドロコデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、プロポキシフェン、ナルメフェン、ナロルフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、ナルブフィンまたはペンタゾシン;
非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、例えば、アスピリン、ジクロフェナク、ジフルシナール(diflusinal)、エトドラク、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルフェニサール、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メクロフェナム酸、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、ニメスリド、ニトロフルルビプロフェン(nitroflurbiprofen)、オルサラジン、オキサプロジン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スルファサラジン、スリンダク、トルメチンまたはゾメピラック;
バルビツール酸系鎮静剤、例えば、アモバルビタール、アプロバルビタール、ブタバルビタール、ブタビタール(butabital)、メホバルビタール、メタルビタール、メトヘキシタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、セコバルビタール、タルブタール、テアミラール(theamylal)またはチオペンタール;
鎮静作用を有するベンゾジアゼピン系薬剤、例えば、クロルジアゼポキシド、クロラゼパート、ジアゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム、テマゼパムまたはトリアゾラム;
鎮静作用を有するH1アンタゴニスト、例えば、ジフェンヒドラミン、ピリラミン、プロメタジン、クロルフェニラミンまたはクロルシクリジン;
鎮静剤、例えば、グルテチミド、メプロバマート、メタクアロンまたはジクロラルフェナゾンなど;
骨格筋弛緩剤、例えば、バクロフェン、カリソプロドール、クロルゾキサゾン、シクロベンザプリン、メトカルバモールまたはオルフレナジン(orphrenadine);
NMDA受容体アンタゴニスト、例えば、デキストロメトルファン((+)-3-ヒドロキシ-N-メチルモルフィナン)またはその代謝産物のデキストロルファン((+)-3-ヒドロキシ-N-メチルモルフィナン)、ケタミン、メマンチン、ピロロキノリンキニン、シス-4-(ホスホノメチル)-2-ピペリジンカルボン酸、ブジピン、EN-3231(MorphiDex(登録商標)、モルヒネとデキストロメトルファンとの組合せ配合物)、トピラマート、ネラメキサンまたはペルジンホテル、加えて、NR2Bアンタゴニスト、例えば、イフェンプロジル、トラキソプロジルまたは(-)-(R)-6-{2-[4-(3-フルオロフェニル)-4-ヒドロキシ-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシエチル-3,4-ジヒドロ-2(1H)-キノリノン;
アルファ-アドレナリン作動性薬剤、例えば、ドキサゾシン、タムスロシン、クロニジン、グアンファシン、デクスメタトミジン(dexmetatomidine)、モダフィニル、テラゾシン、インドラミン、アルフゾシン、シロドシンまたは4-アミノ-6,7-ジメトキシ-2-(5-メタン-スルホンアミド-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノール-2-イル)-5-(2-ピリジル)キナゾリン;プラゾシン;
三環系抗うつ剤、例えば、デシプラミン、イミプラミン、アミトリプチリンまたはノルトリプチリン;
抗痙攣剤、例えば、カルバマゼピン、ラモトリギン、トピラトマートまたはバルプロアート;
タキキニン(NK)アンタゴニスト、特にNK-3アンタゴニスト、NK-2アンタゴニストまたはNK-1アンタゴニスト、例えば、(αR,9R)-7-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジル]-8,9,10,11-テトラヒドロ-9-メチル-5-(4-メチルフェニル)-7H-[1,4]ジアゾシノ[2,1-g][1,7]-ナフチリジン-6-13-ジオン(TAK-637)、5-[[(2R,3S)-2-[(1R)-1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ-3-(4-フルオロフェニル)-4-モルホリニル]-メチル]-1,2-ジヒドロ-3H-1,2,4-トリアゾール-3-オン(MK-869)、アプレピタント、ラネピタント、ダピタントまたは3-[[2-メトキシ-5-(トリフルオロメトキシ)フェニル]-メチルアミノ]-2-フェニルピペリジン(2S,3S);
ムスカリンアンタゴニスト、例えば、オキシブチニン、トルテロジン、フェソテロジン、5-ヒドロキシメチルトルテロジン、プロピベリン、塩化トロスピウム、ダリフェナシン、ソリフェナシン、テミベリンおよびイプラトロピウム;
COX-2選択的阻害剤、例えば、セレコキシブ、ロフェコキシブ、パレコキシブ、バルデコキシブ、デラコキシブ、エトリコキシブまたはルミラコキシブ;
コールタール鎮痛剤、特にアセトアミノフェン/パラセタモール;
神経遮断剤、例えば、ドロペリドール、クロルプロマジン、ハロペリドール、ペルフェナジン、チオリダジン、メソリダジン、トリフルオペラジン、フルフェナジン、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、ジプラシドン、クエチアピン、セルチンドール、アリピプラゾール、ソネピプラゾール、ブロナンセリン、イロペリドン、ペロスピロン、ラクロプリド、ゾテピン、ビフェプルノクス、アセナピン、ルラシドン、アミスルプリド、バラペリドン(balaperidone)、パリンドール(palindore)、エプリバンセリン、オサネタント(osanetant)、リモナバント、メクリネルタント(meclinertant)、MIRAXION(登録商標)またはサリゾタン;
バニロイド受容体のアゴニスト(例えば、レシンフェラトキシン(resinferatoxin))またはアンタゴニスト(例えば、カプサゼピン);
ベータ-アドレナリン作動性薬剤、例えば、プロプラノロールなど;
局所麻酔剤、例えば、メキシレチンなど;
コルチコステロイド、例えば、デキサメタゾンなど;
5-HT受容体のアゴニストまたはアンタゴニスト(例えば、ピゾチフェン)、特に5-HT1B/1Dアゴニスト、例えば、エレトリプタン、スマトリプタン、ナラトリプタン、ゾルミトリプタンまたはリザトリプタンなど;
5-HT2A受容体アンタゴニスト、例えば、R(+)-アルファ-(2,3-ジメトキシ-フェニル)-1-[2-(4-フルオロフェニルエチル)]-4-ピペリジンメタノール(MDL-100907)など;
コリン作動性(ニコチン性)鎮痛剤、例えば、イスプロニクリン(TC-1734)、(E)-N-メチル-4-(3-ピリジニル)-3-ブテン-1-アミン(RJR-2403)、(R)-5-(2-アゼチジニルメトキシ)-2-クロロピリジン(ABT-594)またはニコチンなど;
Tramadol(商標);
PDE-5阻害剤、例えば、5-[2-エトキシ-5-(4-メチル-1-ピペラジニル-スルホニル)フェニル]-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン(シルデナフィル)、(6R,12aR)-2,3,6,7,12,12a-ヘキサヒドロ-2-メチル-6-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-ピラジノ[2’1’,1:6,1]ピリド[3,4-b]インドール-1,4-ジオン(IC-351またはタダラフィル)、2-[2-エトキシ-5-(4-エチル-ピペラジン-1-イル-1-スルホニル)-フェニル]-5-メチル-7-プロピル-3H-イミダゾ[5,1-f][1,2,4]トリアジン-4-オン(バルデナフィル)、5-(5-アセチル-2-ブトキシ-3-ピリジニル)-3-エチル-2-(1-エチル-3-アゼチジニル)-2,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン、5-(5-アセチル-2-プロポキシ-3-ピリジニル)-3-エチル-2-(1-イソプロピル-3-アゼチジニル-2,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン、5-[2-エトキシ-5-(4-エチルピペラジン-1-イルスルホニル)ピリジン-3-イル]-3-エチル-2-[2-メトキシエチル]-2,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン、4-[(3-クロロ-4-メトキシベンジル)アミノ]-2-[(2S)-2-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-1-イル]-N-(ピリミジン-2-イルメチル)ピリミジン-5-カルボキサミド、3-(1-メチル-7-オキソ-3-プロピル-6,7-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-5-イル)-N-[2-(1-メチルピロリジン-2-イル)エチル]-4-プロポキシベンゼンスルホンアミドなど;
アルファ-2-デルタリガンド、例えば、ガバペンチン、プレガバリン、3-メチルガバペンチン、(1α,3α,5α)(3-アミノ-メチル-ビシクロ[3.2.0]ヘプタ-3-イル)-酢酸、(3S,5R)-3-アミノメチル-5-メチル-ヘプタン酸、(3S,5R)-3-アミノ-5-メチル-ヘプタン酸、(3S,5R)-3-アミノ-5-メチル-オクタン酸、(2S,4S)-4-(3-クロロフェノキシ)プロリン、(2S,4S)-4-(3-フルオロベンジル)プロリン、[(1R,5R,6S)-6-(アミノメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプタ-6-イル]酢酸、3-(1-アミノメチル-シクロヘキシルメチル)-4H-[1,2,4]オキサジアゾール-5-オン、C-[1-(1H-テトラゾール-5-イルメチル)-シクロヘプチル]メチルアミン、(3S,4S)-(1-アミノメチル-3,4-ジメチル-シクロペンチル)-酢酸、(3S,5R)-3-アミノ-5-メチル-ノナン酸、(3R,4R,5R)-3-アミノ-4,5-ジメチル-ヘプタン酸、および(3R,4R,5R)-3-アミノ-4,5-ジメチル-オクタン酸など;(3S,5R)-3-アミノメチル-5-メチルオクタン酸;
カンナビノイド;
代謝型グルタミン酸サブタイプ1受容体(mGluR1)アンタゴニスト;
セロトニン再取り込み阻害剤、例えば、セルトラリン、セルトラリン代謝産物のデスメチルセルトラリン、フルオキセチン、ノルフルオキセチン(フルオキセチンのデスメチル代謝産物)、フルボキサミン、パロキセチン、シタロプラム、シタロプラム代謝産物のデスメチルシタロプラム、エスシタロプラム、d,l-フェンフルラミン、フェモキセチン(femoxetine)、イホキセチン(ifoxetine)、シアノドチエピン(cyanodothiepin)、リトキセチン(litoxetine)、ダポキセチン、ネファゾドン、セリクラミン(cericlamine)およびトラゾドンなど;
ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)再取り込み阻害剤、例えば、マプロチリン、ロフェプラミン、ミルタゼピン(mirtazepine)、オキサプロチリン、フェゾラミン、トモキセチン、ミアンセリン、ブプロプリオン、ブプロプリオン代謝産物のヒドロキシブプロプリオン、ノミフェンシンおよびビロキサジン(VIVALAN(登録商標))、とりわけ、選択的なノルアドレナリン再取り込み阻害剤、例えば、レボキセチン(特に(S,S)-レボキセチン)など;
二重セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤、例えば、ベンラファキシン、ベンラファキシン代謝産物のO-デスメチルベンラファキシン、クロミプラミン、クロミプラミン代謝産物のデスメチルクロミプラミン、デュロキセチン、ミルナシプランおよびイミプラミンなど;
誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の阻害剤、例えば、S-[2-[(1-イミノエチル)アミノ]エチル]-L-ホモシステイン、S-[2-[(1-イミノエチル)-アミノ]エチル]-4,4-ジオキソ-L-システイン、S-[2-[(1-イミノエチル)アミノ]エチル]-2-メチル-L-システイン、(2S,5Z)-2-アミノ-2-メチル-7-[(1-イミノエチル)アミノ]-5-ヘプテン酸、2-[[(1R,3S)-3-アミノ-4-ヒドロキシ-1-(5-チアゾリル)ブチル]チオ]-5-クロロ-3-ピリジンカルボニトリル;2-[[(1R,3S)-3-アミノ-4-ヒドロキシ-1-(5-チアゾリル)ブチル]チオ]-4-クロロベンゾニトリル、(2S,4R)-2-アミノ-4-[[2-クロロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル]チオ]-5-チアゾールブタノール、2-[[(1R,3S)-3-アミノ-4-ヒドロキシ-1-(5-チアゾリル)ブチル]チオ]-6-(トリフルオロメチル)-3-ピリジンカルボニトリル、2-[[(1R,3S)-3-アミノ-4-ヒドロキシ-1-(5-チアゾリル)ブチル]チオ]-5-クロロベンゾニトリル、N-[4-[2-(3-クロロベンジルアミノ)エチル]フェニル]チオフェン-2-カルボキサミジン、またはグアニジノエチルジスルフィドなど;
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、例えば、ドネペジルなど;
プロスタグランジンE2サブタイプ4(EP4)アンタゴニスト、例えば、N-[({2-[4-(2-エチル-4,6-ジメチル-1H-イミダゾ[4,5-c)ピリジン-1-イル)フェニル]エチル}アミノ)-カルボニル]-4-メチルベンゼンスルホンアミドまたは4-[(1S)-1-({[5-クロロ-2-(3-フルオロフェノキシ)ピリジン-3-イル]カルボニル}アミノ)エチル]安息香酸など;
ロイコトリエンB4アンタゴニスト、例えば、1-(3-ビフェニル-4-イルメチル-4-ヒドロキシ-クロマン-7-イル)-シクロペンタンカルボン酸(CP-105696)、5-[2-(2-カルボキシエチル)-3-[6-4-メトキシフェニル)-5E-ヘキセニル]オキシフェノキシ]-吉草酸(ONO-4057)またはDPC-11870など;
5-リポキシゲナーゼ阻害剤、例えば、ジロートン、6-[(3-フルオロ-5-[4-メトキシ-3,4,5,6-テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)フェノキシ-メチル]-1-メチル-2-キノロン(ZD-2138)、または2,3,5-トリメチル-6-(3-ピリジルメチル),1,4-ベンゾキノン(CV-6504)など;
ナトリウムチャネル遮断剤、例えば、リドカインなど;またはブピビカイン(bupivicaine)
5-HT3アンタゴニスト、例えば、オンダンセトロンなど;
グリコサミノグリカン層代替物および抗炎症剤、例えば、ペントサンポリ硫酸(Elmiron-商標)など;
ベータ-3アゴニスト、例えば、YM-178(ミラベグロンまたは2-アミノ-N-[4-[2-[[(2R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル]アミノ]エチル]フェニル]-4-チアゾールアセトアミド)、ソラベグロン、KUC-7483(リトベグロンまたは2-[4-[2-[[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ]エチル]-2,5-ジメチルフェノキシ]-酢酸)またはAK-134など;
抗ヒスタミン剤、例えば、ヒドロキシジンなど;
H2-アンタゴニスト、例えば、シメチジンなど;またはラニチジン
硝酸銀;
ステロイド;
ドキソルビシン;
コンドロイチン硫酸;
クロモグリク酸二ナトリウム(disodium chromoglycate);
オキシクロロセン(Clorpactin-商標);および
免疫抑制剤、例えば、シクロスポリンなど。
【0115】
例
下記の例は、本発明のある特定の実施形態を例示することを意味しており、本発明の範囲を限定することは意味していない。
【0116】
材料および方法
コンドロイチン硫酸をBioibericaから得た:EP注射用規格品(供給者からのGPCデータ:Mn=11,400、Mw=13,700Da、PDI=1.21)。コンドロイチン硫酸A二ナトリウムの構造繰り返し単位の当量重量が503.35g/当量(C14H19O14SNa2)であり、ヒドロキシル当量重量が、503.35/3=167.78g/OH当量である。ジビニルスルホン(99%)を、ACROS Organicsから購入した。カルボキシメチルセルロース(MW=250kDaおよび90kDa、置換度=0.80、226.16g/当量、113.08g/OH当量)を、Sigma Aldrichから購入した。
【0117】
DLSのためのプロトコル
動的光散乱分析を、Wyatt社の環状オレフィンコポリマー使い捨てマイクロキュベットを使用してDynaPro Nanostar装置(Wyatt Technology)で行った。データを10秒の取得時間により25℃で集め、流体力学的半径を20回の取得について平均化した。データのフィッティングを、DYNAMICSソフトウェア(バージョン7.5;Wyatt Technology)を使用して行って、流体力学的半径を得るとともに、モル質量を推定した。
【0118】
例1. ゲルが形成されない条件のもとでのDVSとの直接反応による可溶性の高MWのコンドロイチン硫酸組成物の合成。
コンドロイチン硫酸ナトリウム(0.34g、2.0mmol当量のヒドロキシル基)を8mLの反応容器において2.25mLのDI水に溶解した。透明な無色溶液が得られた。DVS(0.034g、30uL、0.28mmol)をマイクロリットルピペットにより容量測定的に加えた。穏やかな混合の後、溶液は透明かつ無色であった。反応を、マイクロリットルピペットを使用して0.25mLの1.0N NaOHを加えることによって開始させた。NaOHを加えることにより、溶液は色が直ちに淡黄色になり、一方で、透明のままであった。反応はコンドロイチン硫酸が12wt%であり、NaOHが0.1Mである(およそpH13)。反応液をロティサリー(rotisserie)で穏やかに混合した。反応液は、時間が経過するにつれ、流動性かつ透明のままであった。これらの反応条件(12wt%のポリマー、DVS/ヒドロキシル=0.14)のもとでは、ゲル形成が1時間超の期間にわたって認められなかった。反応を、0.25mLの1.0N HClを加えることによって開始後40分で停止させた。中和後のpHがおよそ5.0であることが見出された。反応液をPBSにより希釈して、25mLの総容量にした。
【0119】
希釈された反応液を、動的光散乱を使用して分析し、DVSを省いたこと以外はすべての点で同一であるヌル(null)反応から得られる対照サンプルと比較した。下記の流体力学的半径およびMw値が見出された(表1):
【表1】
【0120】
例2. ゲル形成前の反応停止を伴うDVSとの直接反応による可溶性の高MWのコンドロイチン硫酸組成物の合成。
コンドロイチン硫酸ナトリウム(0.34g、2.0mmol当量のヒドロキシル基)を8mLの反応容器において2.25mLのDI水に溶解した。透明な無色溶液が得られた。DVS(0.067g、60uL、0.57mmol)をマイクロリットルピペットにより容量測定的に加えた。穏やかな混合の後、溶液は透明かつ無色であった。反応を、マイクロリットルピペットを使用して0.25mLの1.0N NaOHを加えることによって開始させた。NaOHを加えることにより、溶液は色が直ちに淡黄色になり、一方で、透明のままであった。反応はコンドロイチン硫酸が12wt%であり、DVS/ヒドロキシル=0.28であり、NaOHが0.1Mである(pH13)。反応液をロティサリーで穏やかに混合した。反応液は、時間が経過するにつれ、粘性が大きくなり、一方で、透明のままであった。反応開始後40分で、急速な粘度上昇が認められ、反応を、0.25mLの1.0N HClを加えることによってゲル化直前に停止させた。中和後のpHがおよそ5.0であることが見出された。粘性の反応液をPBSにより希釈して、25mLの総容量にした。
【0121】
希釈された反応液を、動的光散乱を使用して分析し、DVSを省いたこと以外はすべての点で同一であるヌル反応から得られる対照サンプルと比較した。下記の流体力学的半径およびMw値が見出された(表2):
【表2】
【0122】
例3. ゲル形成前の反応停止を伴うDVSとの直接反応による、II型コラーゲン結合ペプチドにより修飾された可溶性の高MWのコンドロイチン硫酸組成物の合成。
ペプチド修飾されたコンドロイチン硫酸を、文献[Caravan、米国特許第9,386,938号(B2)][Panitch、米国特許第9,200,039号(B2)]に記載される方法を使用して調製することができる。このペプチド修飾されたコンドロイチン硫酸(2.0mmol当量のヒドロキシル基)を8mLの反応容器において2.25mLのDI水に溶解して、透明な無色溶液を得る。DVS(0.067g、60uL、0.57mmol)をマイクロリットルピペットにより容量測定的に加え、穏やかに混合して、透明かつ無色の溶液を得る。反応を、マイクロリットルピペットを使用して0.25mLの1.0N NaOHを加えることによって開始させる。反応は、ペプチド修飾コンドロイチン硫酸が12wt%を超えており、NaOHが0.1Mである(pH13)。反応液をロティサリーで穏やかに混合する。反応液は、時間が経過するにつれ、粘性がわずかに大きくなり、しかし、透明のままである。反応開始後20分~40分で、急速な粘度上昇が認められる場合があり、そのとき、反応を、0.25mLの1.0N HClを加えることによってゲル化直前に停止させる。中和後のpHがおよそ5.0である。粘性の反応液をPBSにより希釈して、25mLの総容量にすることができる。
【0123】
希釈された反応液は、動的光散乱を使用して分析し、DVSを省いたこと以外はすべての点で同一であるヌル反応から得られる対照サンプルと比較することができる。例3の生成物は、ヌル反応の比較物に対して、有意により大きい流体力学的半径およびMwを有するであろう。
【0124】
例4.DVSとの直接反応による可溶性のコンドロイチン硫酸/カルボキシメチルセルロース組成物の合成。
カルボキシメチルセルロース(0.050g、0.44mmol当量のヒドロキシル基)およびコンドロイチン硫酸(0.600g、3.58mmol当量のヒドロキシル基)を8mLの反応容器において4.5mLのDI水に溶解する。透明な無色溶液が得られる。DVS(0.100g、85uL、0.85mmol)をマイクロリットルピペットにより容量測定的に加える。穏やかな混合の後、溶液は透明かつ無色である。反応を、マイクロリットルピペットを使用して0.5mLの1.0N NaOHを加えることによって開始させる。NaOHを加えることにより、溶液は色が直ちに淡黄色になり、一方で、溶液は透明のままであった。反応はCMCが0.88wt%であり、コンドロイチン硫酸が10.62wt%であり、NaOHが0.1Mである(およそpH13)。反応液をロティサリーで穏やかに混合する。反応液は、時間が経過するにつれ、粘性が大きくなり、一方で、透明のままである。反応開始後数分で、急速な粘度上昇が認められ、反応を、0.25mLの1.0N HClを加えることによって停止させる。中和後のpHがおよそ5.0であることが見出される。粘性の反応液をPBSにより希釈して、25mlの総容量にする。
【0125】
希釈された反応液は、動的光散乱を使用して分析され、DVSを省いたこと以外はすべての点で同一であるヌル反応から得られる対照サンプルと比較される。下記の流体力学的半径およびMw値が見出される(表3):
【表3】
【0126】
例5. 1ポットでの反応物の段階的添加による、瓶洗いブラシ様構造を有する可溶性の高MWのコンドロイチン硫酸の合成。
コンドロイチン硫酸ナトリウム(0.11g、0.66mmol当量のヒドロキシル基)を8mLの反応容器において4.5mLのDI水に溶解した。透明な無色溶液が得られた。DVS(0.097g、82uL、0.82mmol)をマイクロリットルピペットにより容量測定的に加えた。穏やかな混合の後、溶液は透明かつ無色であった。反応を、マイクロリットルピペットを使用して0.5mLの1.0N NaOHを加えることによって開始させた。NaOHを加えることにより、溶液は色が直ちに淡黄色になり、一方で、透明のままであった。反応はコンドロイチン硫酸が2.15wt%であり、NaOHが0.1Mである(pH13)。反応液をロティサリーで穏やかに混合した。30分後、さらなるコンドロイチン硫酸ナトリウムを加え(0.572g、3.41mmol当量のヒドロキシル基)、反応混合物をロティサリーで撹拌した。反応液は粘性が大きくなり、しかし、透明のままであった。開始後5時間において、反応液はゲルを形成していなかった。反応液は淡黄色透明かつ粘性の溶液のままであり、反応を、0.5mLの1.0N HClを加えることによって停止させた。中和後のpHがおよそ5.0であることが見出された。
【0127】
比較反応を並行して行った(表4)。比較反応では、すべてのコンドロイチン硫酸(0.682g、4.1mmol当量のヒドロキシル基)を反応開始時に一度に加えた。この反応混合物もまた、透明で、淡黄色で、かつ粘性であった。反応混合物は粘度が大きくなり、52分後にゲル化した。
【表4】
【0128】
例6. CMC、それに続くコンドロイチン硫酸の1ポット法での段階的添加による、瓶洗いブラシ様構造を有する可溶性の高MWのプロテオグリカン模倣ポリマーの合成。
カルボキシメチルセルロースナトリウム(250kDa、0.050g、0.44mmol当量のヒドロキシル基)を8mLの反応容器において4.5mLのDI水に溶解する。透明な無色溶液が得られる。DVS(0.100g、85uL、0.85mmol)をマイクロリットルピペットにより容量測定的に加える。穏やかな混合の後、溶液は透明かつ無色である。反応を、マイクロリットルピペットを使用して0.5mLの1.0N NaOHを加えることによって開始させる。NaOHを加えることにより、溶液は色が直ちに淡黄色になり、一方で、溶液は透明のままであった。反応はCMCが0.88wt%であり、NaOHが0.1Mである(pH13)。反応液をロティサリーで穏やかに混合する。30分後、コンドロイチン硫酸ナトリウムを加える(0.600g、3.58mmol当量のヒドロキシル基)。コンドロイチン硫酸が、ロティサリーでのおよそ5分間の撹拌の後で完全に溶解する。反応液は粘性が大きくなり、しかし、透明のままである。コンドロイチン硫酸を加えた90分後、透明な粘性反応液を、0.5mLの1.0N HClを加えることによって反応停止させる。中和後のpHがおよそ5.0であることが見出される。
【0129】
希釈された反応液は、動的光散乱を使用して分析され、DVSを省いたこと以外はすべての点で同一であるヌル反応から得られる対照サンプルと比較される。例6の生成物は、ヌル反応の比較物に対して、はるかにより大きい流体力学的半径およびMwを有することが見出される。
【0130】
例7. 瓶洗いブラシ様構造を有する可溶性の高MWのコンドロイチン硫酸の、2段階反応列での合成。
7A.ビニルスルホン修飾コンドロイチン硫酸の合成および特徴づけ
コンドロイチン硫酸ナトリウム(0.11g、0.66mmol当量のヒドロキシル基)を8mLの反応容器において4.5mLのDI水に溶解した。透明な無色溶液が得られた。DVS(0.097g、82uL、0.82mmol)をマイクロリットルピペットにより容量測定的に加えた。穏やかな混合の後、溶液は透明かつ無色であった。反応を、マイクロリットルピペットを使用して0.5mLの1.0N NaOHを加えることによって開始させた。NaOHを加えることにより、溶液は色が直ちに淡黄色になり、一方で、透明のままであった。反応はコンドロイチン硫酸が2.15wt%であり、NaOHが0.1Mであった(pH13)。反応液をロティサリーで穏やかに混合した。30分後、透明な反応液を、0.5mLの1.0N HClを加えることによって反応停止させた。その後、反応混合物を、25mlのエタノールを含有する50mlの円錐形の遠心分離チューブに滴下した。白色固体が直ちに形成された。固体を遠心分離によって集め、続いて上清を除いた。この固体を同じチューブにおいて別の25mL量のエタノールに懸濁し、振とうし、その後、再び遠心分離した。固体を上清除去後に集め、高真空下に置いて、残留するエタノールおよび水を除いた。
【0131】
DVS官能化コンドロイチン硫酸はH-NMRによる特徴づけを行うことができ、DVS官能化の程度をペンダント状ビニル基の積分によって定量化することができる。
【0132】
7B.コンドロイチン硫酸をビニルスルホン修飾コンドロイチン硫酸と反応させることによる、瓶洗いブラシ様構造を有する可溶性の高MWのプロテオグリカン模倣ポリマーの形成。
【0133】
反応7Aで形成される白色固体を8mLの反応容器において4.5mLのDI水に溶解する。透明な無色溶液が得られる。コンドロイチン硫酸ナトリウムを加え(0.572g、3.41mmol当量のヒドロキシル基)、反応混合物を、すべてのポリマーが溶解するまで数分間にわたってロティサリーで撹拌する。反応を、マイクロリットルピペットを使用して0.5mLの1.0N NaOHを加えることによって開始させる。反応液をロティサリーで穏やかに混合する。2時間後、反応液は粘性が大きくなり、しかし、透明のままである。反応を、0.5mLの1.0N HClを加えることによって停止させる。中和後のpHがおよそ5.0であることが見出される。粘性の反応液をPBSにより希釈して、25mLの総容量にする。
【0134】
希釈された反応液は、動的光散乱を使用して分析し、出発するコンドロイチン硫酸物質の対照サンプルと比較することができる。例7Bの生成物は、出発物質の比較物に対して、はるかにより大きい流体力学的半径およびMwを有するであろう。
【0135】
例8. 瓶洗いブラシ様構造を有する可溶性の高MWのCMC/コンドロイチン硫酸組成物の、2段階反応列での合成。
8A.ビニルスルホン修飾CMCの合成および特徴づけ
カルボキシメチルセルロースナトリウム(250kDa、0.050g、0.44mmol当量のヒドロキシル基)を8mLの反応容器において4.5mLのDI水に溶解した。透明な無色溶液が得られた。DVS(0.100g、85uL、0.85mmol)をマイクロリットルピペットにより容量測定的に加えた。穏やかな混合の後、溶液は透明かつ無色であった。反応を、マイクロリットルピペットを使用して0.5mLの1.0N NaOHを加えることによって開始させた。NaOHを加えることにより、溶液は色が直ちに淡黄色になり、一方で、溶液は透明のままであった。反応はCMCが0.88wt%であり、NaOHが0.1Mであった(pH13)。反応液をロティサリーで穏やかに混合した。30分後、透明な反応液を、0.5mLの1.0N HClを加えることによって反応停止させた。その後、反応混合物を、25mLのエタノールを含有する50mLの円錐形の遠心分離チューブに滴下した。白色固体が直ちに形成された。固体を遠心分離によって集め、続いて上清を除いた。この固体を同じチューブにおいて別の25mL量のエタノールに懸濁し、振とうし、その後、再び遠心分離した。固体を上清除去後に集め、高真空下に置いて、残留するエタノールおよび水を除いた。
【0136】
DVS官能化CMCはH-NMRによる特徴づけを行うことができ、DVS官能化の程度をペンダント状ビニル基の積分によって定量化することができる。
【0137】
8B.コンドロイチン硫酸をビニルスルホン修飾CMCと反応させることによる、瓶洗いブラシ様構造を有する可溶性の高MWのプロテオグリカン模倣ポリマーの形成。
【0138】
反応8Aで形成される白色固体を8mLの反応容器において4.5mLのDI水に溶解する。透明な無色溶液が得られる。コンドロイチン硫酸ナトリウムを加え(0.572g、3.41mmol当量のヒドロキシル基)、反応混合物を、すべてのポリマーが溶解してしまうまで数分間にわたって撹拌する。反応を、マイクロリットルピペットを使用して0.5mLの1.0N NaOHを加えることによって開始させる。反応液をロティサリーで穏やかに混合する。2時間後、反応液は粘性が大きくなり、しかし、透明のままである。反応を、0.5mLの1.0N HClを加えることによって停止させる。中和後のpHがおよそ5.0であることが見出される。粘性の反応液をPBSにより希釈して、25mLの総容量にする。
【0139】
希釈された反応液は、動的光散乱を使用して分析し、出発するコンドロイチン硫酸物質の対照サンプルと比較することができる。希釈された反応液はまた、CMC出発物質の溶液と比較することができる。例8Bの生成物は、これら2つの出発物質の比較物に対して、有意により大きい流体力学的半径およびMwを有するであろう。
【0140】
例9. 1ポットでの反応物の段階的添加による瓶洗いブラシ様構造を有する可溶性の高MWの分岐型コンドロイチン硫酸組成物の合成、タンジェンシャルフローろ過を使用する生成物の精製、および精製された単離生成物のSEC分析。
9A.段階的添加による反応
コンドロイチン硫酸ナトリウム(0.153g、0.913mmol当量のヒドロキシル基)を8mLの反応容器において4.865gのDI水に溶解した。透明な無色溶液が得られた。DVS(0.127g、108uL、1.07mmol)をマイクロリットルピペットにより容量測定的に加えた。穏やかな混合の後、溶液は透明かつ無色であった。反応を、マイクロリットルピペットを使用して0.51mLの1.0N NaOHを加えることによって開始させた。NaOHを加えることにより、溶液は色が直ちに淡黄色になり、一方で、透明のままであった。反応はコンドロイチン硫酸が2.69wt%であり、NaOHが0.1Mである(pH13)。反応液をロティサリーで穏やかに混合した。10分後、さらなるコンドロイチン硫酸ナトリウムを加え(0.454g、3.62mmol当量のヒドロキシル基)、反応混合物をロティサリーで撹拌した。反応液は粘性が大きくなり、しかし、透明かつ流動性のままであった。NaOHによる開始の2時間後、反応を、マイクロリットルピペットを使用して0.51mLの1.0N HClを加えることによって停止させた。透明な流動性反応混合物を、30gのPBSを含有するバイアルに加え、総重量をPBSの添加により50gにした。
【0141】
9B.タンジェンシャルフローろ過を使用する精製
Spectrum Labs KR2i TFFシステムを、小容量の供給物リザーバー(50ml)と、修飾ポリエーテルスルホンフィルター繊維を含有する20cmの中空繊維フィルターモジュール(1mmの直径、100kDaのMWCO、75cm2の総表面積、部品#D02-E100-10-N)と一緒に使用した。例9Aの希釈された生成物のサンプル(46g)を小容量供給物リザーバーに入れた。タンジェンシャルフローろ過を100ml/分の流速で開始し、流速を、入口圧力を20psig未満に保ちながら300ml/分にまで増大させた(50ml/分毎の増大)。TFFを、透過液に失われる溶液の体積が新鮮な脱イオン水により連続的に補われた透析モードで行った。このようにして、保持液の体積が、6体積(270ml)の透過液が得られる間のろ過処置の期間中、一定のままであった。その後、脱イオン水の補給を中断し、ろ過を濃縮モードで行って、保持液量をおよそ30mLに減らした。その後、TFFを停止させ、系を洗い流して(10mlのDI水)、滞留量を回収した。その後、精製された保持液(およそ40mL)を72時間の凍結乾燥によって乾燥し、これにより、精製された生成物(0.251g、出発するコンドロイチン硫酸重量の43%)を白い綿毛状固体として得た。
【0142】
9C.サイズ排除クロマトグラフィー分析
SEC分析を、Agilent G1312バイナリーポンプ、G1322Aマイクロデガッサー、G1367Aウェルプレートオートサンプラー、G1316カラムコンパートメント、Wyatt Dawn EOS多角度光散乱検出器、およびOptiLab rEx屈折率検出器を備えるAgilent 1100 HPLCシステムで実施した。0.15のdn/dc値を使用した。分離のために選ばれたカラムは、ガードカラムの他にTSK6000であった。サンプルをPBS(pH=7.4)で5mg/mLの濃度に希釈し、0.45ミクロンのPVDFシリンジフィルターでろ過し、下記の表5の条件を使用して分析した。
【表5】
【0143】
生成物のSEC分析を、出発するコンドロイチン硫酸物質のSEC分析と比較した。下記の結果が得られた(表6):
【表6】
【0144】
例9は、段階的添加の反応プロトコルにより、0.45umのメンブレンでろ過可能な可溶性ポリマーが生じ、この可溶性ポリマーは、100kDaのMWCOフィルターを用いるタンジェンシャルフローろ過によって精製することができることを明らかにする。精製ポリマーが良好な収率で得られ、これは出発物質よりも有意に大きい分子量を有しており、分岐型の立体配座を有する。
【0145】
例10. 塩化ナトリウムが2段階目に存在する1ポットでの反応物の段階的添加による瓶洗いブラシ様構造を有する高MWの可溶性のコンドロイチン硫酸組成物の合成、タンジェンシャルフローろ過を使用する生成物の精製、および精製された単離生成物のSEC分析。
10A.塩が2段階目に存在する段階的添加による反応
コンドロイチン硫酸ナトリウム(0.154g、0.920mmol当量のヒドロキシル基)を8mLの反応容器において4.865gのDI水に溶解した。透明な無色溶液が得られた。DVS(0.127g、108uL、1.07mmol)をマイクロリットルピペットにより容量測定的に加えた。穏やかな混合の後、溶液は透明かつ無色であった。反応を、マイクロリットルピペットを使用して0.51mLの1.0N NaOHを加えることによって開始させた。NaOHを加えることにより、溶液は色が直ちに淡黄色になり、一方で、透明のままであった。反応はコンドロイチン硫酸が3.07wt%であり、NaOHが0.1Mである(pH13)。反応液をロティサリーで穏やかに混合した。20分後、さらなるコンドロイチン硫酸ナトリウムを加えた(0.454g、3.63mmol当量のヒドロキシル基)。塩化ナトリウムもまた加え(47.6mg、0.81mmol)、反応混合物をロティサリーで撹拌した。反応液は粘性が大きくなり、しかし、透明かつ流動性のままであった。NaOHによる開始の2時間後、反応を、マイクロリットルピペットを使用して0.51mLの1.0N HClを加えることによって停止させた。透明な流動性反応混合物を、30gのPBSを含有するバイアルに加え、総重量をPBSの添加により50gにした。希釈された反応混合物は0.45umのPVDFシリンジフィルターで容易にろ過された。
【0146】
10B.タンジェンシャルフローろ過を使用する精製
Spectrum Lab KR2i TFFシステムを、小容量の供給物リザーバー(50ml)と、修飾ポリエーテルスルホンフィルター繊維を含有する20cmの中空繊維フィルターモジュール(1mmの直径、100kDaのMWCO、75cm2の総表面積、部品#D02-E100-10-N)と一緒に使用した。例10Aの希釈された生成物のサンプルを小容量供給物リザーバーに入れた。タンジェンシャルフローろ過を100ml/分の流速で開始し、流速を、入口圧力を25psig未満に保ちながら300ml/分にまで増大させた(50ml/分毎の増大)。TFFを、透過液に失われる溶液の体積が新鮮な脱イオン水により連続的に補われた透析モードで行った。このようにして、保持液の体積が、6体積超(270ml超)の透過液が得られる間のろ過処置の期間中、一定のままであった。その後、脱イオン水の補給を中断し、ろ過を濃縮モードで行って、保持液量をおよそ30mLに減らした。その後、TFFを停止させ、系を洗い流して(10mlのDI水)、滞留量を回収した。その後、精製された保持液(およそ40mL)を72時間の凍結乾燥によって乾燥し、これにより、精製された生成物を白色の綿毛状固体として得た。
【0147】
10C.サイズ排除クロマトグラフィー分析
SEC分析を例9Cの場合と全く同様に行った。下記の結果が得られた(表7):
【表7】
【0148】
例10は、段階的添加の反応プロトコルの生成物が、0.45umのメンブレンでろ過可能で、かつ、100kDaのMWCOフィルターを用いるタンジェンシャルフローろ過によって精製される可溶性ポリマーであったことを明らかにする。可溶性ポリマーがTFF精製後の良好な収率で得られ、これは出発物質よりも有意に大きい分子量を有しており、分岐型の立体配座を有する。反応の2段階目における塩の添加は、例9に対して、より大きな分子量をもたらした。
【0149】
例11. 塩化ナトリウムが(段階1および段階2において)存在する1ポットでの反応物の段階的添加による、瓶洗いブラシ様構造を有する可溶性の高MWのコンドロイチン硫酸組成物の合成。最適化されたタンジェンシャルフローろ過プロトコルを使用する生成物の精製。
11A.段階的添加による反応
コンドロイチン硫酸ナトリウム(0.306g、1.823mmol当量のヒドロキシル基)および塩化ナトリウム(85.2mg、1.46mmol)を20mLの反応容器において9.746gのDI水に溶解した。透明な無色溶液が得られた。DVS(0.254g、216uL、2.15mmol)をマイクロリットルピペットにより容量測定的に加えた。穏やかな混合の後、溶液は透明かつ無色であった。反応を、マイクロリットルピペットを使用して1.03mLの1.0N NaOHを加えることによって開始させた。NaOHを加えることにより、溶液は色が直ちに淡黄色になり、一方で、透明のままであった。反応はコンドロイチン硫酸が3.04wt%であり、NaOHが0.1Mである(pH13)。反応液をロティサリーで穏やかに混合した。15分後、さらなるコンドロイチン硫酸ナトリウムを加え(0.909g、7.25mmol当量のヒドロキシル基)、反応混合物をロティサリーで撹拌した。反応液は粘性が大きくなり、しかし、透明かつ流動性のままであった。NaOHによる開始の2時間後、反応を、マイクロリットルピペットを使用して1.03mLの1.0N HClを加えることによって停止させた。透明な流動性反応混合物を、50gのPBSを含有するバイアルに加え、総重量をPBSの添加により80gにした。希釈された反応混合物は0.45umのPVDFシリンジフィルターで容易にろ過された。
【0150】
11B.タンジェンシャルフローろ過を使用する精製
Spectrum Lab KR2i TFFシステムを、250mlの供給物リザーバーと、修飾ポリエーテルスルホンフィルター繊維を含有する20cmの中空繊維フィルターモジュール(1mmの直径、100kDaのMWCO、75cm2の総表面積、部品#D02-E100-10-N)と一緒に使用した。例11Aの希釈された生成物の80g全量を供給物リザーバーに入れた。タンジェンシャルフローろ過を200ml/分の流速で開始し、流速を、入口圧力を25psig未満に保ちながら300ml/分にまで増大させた。TFFを、透過液に失われる溶液の体積がさらなるPBSにより連続的に補われた透析モードで行った。このようにして、保持液の体積が、5体積(400ml)の透過液が得られる間のろ過処置の期間中、一定のままであった。その後、TFFを、供給物リザーバーを(PBSの代わりに)DI水で再び満たし、さらに5体積の透過液(400ml)が得られるまでろ過を続けることによって脱塩モードで続けた。その後、DI水の補給を中断し、ろ過を濃縮モードで行って、保持液量をおよそ50mLに減らした。その後、TFFを停止させ、系を洗い流して(10mlのDI水)、滞留量を回収した。その後、精製された保持液を72時間の凍結乾燥によって乾燥し、これにより、精製された生成物(0.598g、出発するコンドロイチン硫酸重量に対して45%の収率)を白色の綿毛状固体として得た。
【0151】
例11は、0.15Mの塩化ナトリウムの存在下における段階的添加の反応プロトコルにより、0.45umのメンブレンでろ過可能で、かつ、100kDaのMWCOフィルターを用いるタンジェンシャルフローろ過によって精製される可溶性ポリマーがもたらされることを明らかにする。可溶性ポリマーがTFF精製後の良好な収率で得られた。この可溶性ポリマーは、出発物質よりも有意に大きい分子量と、分岐型の立体配座とを有することが予想される。さらに、塩の添加は、例9および例10に対して、より大きな分子量をもたらすことが予想される。
【0152】
例12. ガラクトシルエピトープを含有する瓶洗いブラシ様構造を有する可溶性の高MWのコンドロイチン硫酸組成物の合成。
12A.段階的添加による反応
コンドロイチン硫酸ナトリウム(0.306g、1.823mmol当量のヒドロキシル基)および塩化ナトリウム(85.2mg、1.46mmol)を20mLの反応容器において9.746gのDI水に溶解する。透明な無色溶液が得られる。DVS(0.254g、216uL、2.15mmol)をマイクロリットルピペットにより容量測定的に加える。穏やかな混合の後、溶液は透明かつ無色である。反応を、マイクロリットルピペットを使用して1.03mLの1.0N NaOHを加えることによって開始させる。NaOHを加えることにより、溶液は色が直ちに淡黄色になり、しかし、透明のままである。反応はコンドロイチン硫酸が3.04wt%であり、NaOHが0.1Mである(pH13)。反応液をロティサリーで穏やかに混合する。15分後、さらなるコンドロイチン硫酸ナトリウム(0.909g、7.25mmol当量のヒドロキシル基)と、ラクトシルアミン(36.5mg、0.107mmol)とを加える。反応混合物をロティサリーで撹拌する。反応液は粘性がわずかに大きくなり、しかし、透明かつ流動性のままである。NaOHによる開始の2時間後、反応を、マイクロリットルピペットを使用して1.03mLの1.0N HClを加えることによって停止させる。透明な流動性反応混合物を、50gのPBSを含有するバイアルに加え、総重量をPBSの添加により80gにする。希釈された反応混合物は0.45umのPVDFシリンジフィルターで容易にろ過される。
【0153】
12B.タンジェンシャルフローろ過を使用する精製
Spectrum Lab KR2i TFFシステムを、250mlの供給物リザーバーと、修飾ポリエーテルスルホンフィルター繊維を含有する20cmの中空繊維フィルターモジュール(1mmの直径、100kDaのMWCO、75cm2の総表面積、部品#D02-E100-10-N)と一緒に使用する。例12Aの希釈された生成物の80g全量を供給物リザーバーに入れる。タンジェンシャルフローろ過を200ml/分の流速で開始し、流速を、入口圧力を25psig未満に保ちながら300ml/分にまで増大させる。TFFを、透過液に失われる溶液の体積がさらなるPBSにより連続的に補われる透析モードで行う。このようにして、保持液の体積が、5体積(400ml)の透過液が得られる間のろ過処置の期間中、一定のままである。その後、TFFを、供給物リザーバーをDI水で再び満たし、さらに5体積の透過液(400ml)が得られるまでろ過を続けることによって脱塩モードで続ける。その後、脱イオン水の補給を中断し、ろ過を濃縮モードで行って、保持液量をおよそ50mLに減らす。その後、TFFを停止させ、系を洗い流して(10mlのDI水)、滞留量を回収する。その後、精製された保持液を72時間の凍結乾燥によって乾燥し、これにより、精製された生成物を白色の綿毛状固体として良好な収率で得る。
【0154】
12C.コンドロイチン硫酸とラクトシルアミンとの高分子量コンジュゲートの分析
例12の精製された生成物は、例9および例10について記載されるようなSEC-MALLSによって分析することができる。精製された生成物におけるラクトシルアミン取り込みレベルを、徹底的な加水分解、それに続く、パルスアンペロメトリー検出を使用する高速アニオン交換クロマトグラフィーによる単糖の得られた混合物の分析によって求めることができる。例えば、サンプルを2Mトリフルオロ酢酸において100℃で8時間加水分解し、加水分解物をスピードバック(speed-vac)で乾燥することができる。得られた残渣を水に溶解し、16mMの水酸化ナトリウム溶離液(定組成)を用いてCarbo Pac PA-1カラムで分析することができる。
【0155】
例12は、ガラクトースエピトープを有する高分子量のコンドロイチン硫酸組成物の調製、TFFによる精製、および特徴づけがどのように行われ得るかを例示する。本例で例証されるように、高分子量の分岐した硫酸化GAGを製造するための本発明の化学プロセスは、第1段階で調製されるDVS修飾中間体と反応し得る他の生物学的エピトープが第2段階で存在するもとで実施することができる。
【0156】
例13. II型コラーゲン結合ペプチドにより修飾される可溶性の高MWのコンドロイチン硫酸組成物の合成。
13A.段階的添加による反応
コンドロイチン硫酸ナトリウム(0.306g、1.823mmol当量のヒドロキシル基)および塩化ナトリウム(85.2mg、1.46mmol)を20mLの反応容器において9.746gのDI水に溶解する。透明な無色溶液が得られる。DVS(0.254g、216uL、2.15mmol)をマイクロリットルピペットにより容量測定的に加える。穏やかな混合の後、溶液は透明かつ無色である。反応を、マイクロリットルピペットを使用して1.03mLの1.0N NaOHを加えることによって開始させる。NaOHを加えることにより、溶液は色が直ちに淡黄色になり、しかし、透明のままである。反応はコンドロイチン硫酸が3.04wt%であり、NaOHが0.1Mである(pH13)。反応液をロティサリーで穏やかに混合する。15分後、ペプチド修飾されたコンドロイチン硫酸(7.25mmol当量のヒドロキシル基)を加える。反応混合物をロティサリーで撹拌する。反応液は粘性がわずかに大きくなり、しかし、透明かつ流動性のままである。NaOHによる開始の2時間後、反応を、マイクロリットルピペットを使用して1.03mLの1.0N HClを加えることによって停止させる。透明な流動性反応混合物を、50gのPBSを含有するバイアルに加え、総重量をPBSの添加により80gにする。希釈された反応混合物は0.45umのPVDFシリンジフィルターで容易にろ過される。
【0157】
13B.タンジェンシャルフローろ過を使用する精製
Spectrum Lab KR2i TFFシステムを、250mlの供給物リザーバーと、修飾ポリエーテルスルホンフィルター繊維を含有する20cmの中空繊維フィルターモジュール(1mmの直径、100kDaのMWCO、75cm2の総表面積、部品#D02-E100-10-N)と一緒に使用する。例12Aの希釈された生成物の80g全量を供給物リザーバーに入れる。タンジェンシャルフローろ過を200ml/分の流速で開始し、流速を、入口圧力を25psig未満に保ちながら300ml/分にまで増大させる。TFFを、透過液に失われる溶液の体積がさらなるPBSにより連続的に補われる透析モードで行う。このようにして、保持液の体積が、5体積(400ml)の透過液が得られる間のろ過処置の期間中、一定のままである。その後、TFFを、供給物リザーバーをDI水で再び満たし、さらに5体積の透過液(400ml)が得られるまでろ過を続けることによって脱塩モードで続ける。その後、脱イオン水の補給を中断し、ろ過を濃縮モードで行って、保持液量をおよそ50mLに減らす。その後、TFFを停止させ、系を洗い流して(10mlのDI水)、滞留量を回収する。その後、精製された保持液を72時間の凍結乾燥によって乾燥し、これにより、精製された生成物を白色の綿毛状固体として良好な収率で得る。
【0158】
例13は、II型コラーゲン結合ペプチドエピトープを有する高分子量のコンドロイチン硫酸組成物の調製、およびTFFによる精製がどのように行われ得るかを例示する。ペプチド修飾されたコンドロイチン硫酸の様々な物質を、文献[Caravan、米国特許第9,386,938号(B2)][Panitch、米国特許第9,200,039号(B2)]に記載される方法を使用して調製することができる。本例で例証されるように、高分子量の分岐した硫酸化GAGを製造するための本発明の化学プロセスは、様々なペプチド部分または他の生物学的エピトープを有する化学修飾されたGAGを用いて実施することができる。
【0159】
例14.瓶洗いブラシ様構造を有する高MWのコンドロイチン硫酸組成物の、間質性膀胱炎のラットモデルにおける評価。
ラットモデルが、間質性膀胱炎(IC)の発症において主因であると理解されている漏出性膀胱の病理を再現するために使用される。メスの卵巣摘出(OVX)されたSprague-Dawleyラット(250g~300g)を、Charles River Laboratoriesから購入する。ラットは、制御された温度および湿度のもと、ケージあたり2匹で収容される。OVXラットが、ホルモン循環の何らかの影響を避けるために、また、オスのラットは尿道を通してのカテーテル挿入ができないために使用される。すべての動物が食物および水を自由に摂取し、実験前の少なくとも1週間は施設収容に慣れさせられる。実験プロトコルが、関係する施設内動物管理使用委員会によって承認される。
【0160】
経尿道的な硫酸プロタミン(PS)処置
体重が250グラム~300グラムである7週齢のOVXメスのSAS Sprague Dawley(登録商標)ラットを、文献[Towner他、Journal of Urology、2015、第193巻、1394頁~1400頁]に記載されるように漏出性膀胱を誘発するために硫酸プロタミン(PS)により処置する。ラットを、酸素を一定して供給しながら、およそ10分間にわたってイソフルラン(3%)により麻酔し、膀胱を、潤滑剤塗布の18ゲージ静脈内カテーテル(Surflo、Terumo、Elkton、MD)および特注のガイドワイヤーを使用してカテーテル留置後に空にする。カテーテルが恥骨を通り過ぎた直後にカテーテルを止め、カテーテルを「ボトムアウト(bottom out)」させないことによって膀胱を傷つけないように注意する。動物を、膀胱外傷の指標としての血尿についてモニターし、血液が尿または溶液に認められる動物はどれも使用しない。PS(400μlの生理食塩水における1mg/ml)をカテーテルにより膀胱内にゆっくり注入する。15分後、膀胱を、より低い腹圧を加えることによって空にする。その後、膀胱を生理食塩水によりすすぐ(400μl、3回)。その後で、経尿道カテーテルを取り除き、動物をそのホームケージに戻す。
【0161】
膀胱および結腸のMRI画像化
膀胱透過性を磁気共鳴画像法(MRI)によって評価する。ラットを、MRI実験のために800ml~1,000mlのO2とともにイソフルラン(1.5%~3.0%)により麻酔する。MRIを、7テスラの、内径が30cmのBioSpec(登録商標)MRIシステムで行う。膀胱画像のために、インビボ診断用CE-MRIは具体的には、透過性の膀胱尿路上皮喪失を膀胱のコントラスト画像で視覚化するために、膀胱内カテーテルを介して投与されるGd-DTPA(0.2mmol Gd/kgが生理食塩水で800mlに希釈される)を使用する。膀胱のコントラスト画像が、合計で20分間にわたって3分43秒毎に得られる。結腸のコントラスト画像のために、Gd-DTPA(0.2mmol Gd/kgが生理食塩水で200mlに希釈される)を、24ゲージの0.75インチBD Insyte(商標)Autoguard(商標)シールド型静脈内尾静脈カテーテルを介して静脈内投与する。画像が30分間にわたって得られる。すべてのMRI画像が、T1強調RARE(rapid acquisition with relaxation enhancement[緩和増強による迅速取得])MRIパルスシーケンスを、1,200ミリ秒の繰り返し時間、9ミリ秒のエコー時間、4のRARE係数、4回の平均、1mmの画像スライス厚さ、動きおよび脂肪が抑えられる256×256のマトリックスおよび6.5×6.5cm2の視野を含めてある特定のパラメーターとともに使用して取得される。
【0162】
バイオポリマー処置
コンドロイチン硫酸に基づくバイオポリマーをPS処置の24時間後に漏出性膀胱に点滴注入する。群あたり10匹のラット(n=10)を有する3つの処置群が存在する:A群、例11から得られる、瓶洗いブラシ構造を有する高分子量のコンドロイチン硫酸;B群、例12から得られる、ガラクトシルエピトープを有する瓶洗いブラシ構造を有する高分子量のコンドロイチン硫酸;C群、生理食塩水で処置された対照。バイオポリマーをPS暴露の24時間後に経尿道カテーテル法により投与する。バイオポリマーを生理食塩水に溶解し(20mg/ml)、投与前に無菌ろ過する(0.2μmのPVDFシリンジフィルター)。バイオポリマーの投与を、MRI画像化について記載される麻酔プロトコルのもとで行う。
【0163】
MRIを、PS暴露の24時間後で、ポリマー処置の直後に行う。MRIを、PS暴露の5日後で、バイオポリマー処置の4日後に再び行う。
【0164】
データ分析および統計学
MRIシグナル強度を画像において関心領域(ROI)から測定した。4つまたは5つのROIを、膀胱周辺部、結腸粘膜、膀胱を取り囲む脂肪体、周囲の結腸組織、および内側大腿筋における高輝度領域、ならびに対照データセットにおける対応領域において使用する。これらのデータが、ParaVision(商標)(バージョン5.0)を使用して表示される。統計学的分析を、処置群における差異をInStat(Graph-Pad(登録商標))を使用して評価するために、ポストチューキー多重比較検定とともにANOVAを使用して行う。p<0.05、p<0.01、またはp<0.001である群間のシグナル強度差が、統計学的に有意であるとみなされる。
【0165】
例14は、ガラクトースエピトープを伴う場合および伴わない場合の瓶洗いブラシ構造を有する本発明の高分子量のコンドロイチン硫酸組成物が、ラットの硫酸プロタミンモデルにおいて漏出性膀胱に対する不透過性をどのように回復させるかを明らかにする。例11および例12において調製される本発明の物質により処置される動物は、生理食塩水により処置される動物と比較して、有意に大きい膀胱不透過性(少ない漏れ)を示すであろう。
【0166】
例15 コンドロイチン硫酸/DVSモル比の変化:観察研究。
一組の反応バイアルをそれぞれ、様々な量のコンドロイチン硫酸ナトリウムおよびDI水で満たして、4wt%、6wt%、8wt%および10wt%のコンドロイチン硫酸での溶液を得た。バイアルをロティサリーミキサーで穏やかに撹拌し、これにより、一組の透明な無色溶液を得た。その後、様々な量のDVSを、マイクロリットルピペットを用いてそれぞれのバイアルに容量測定的に加え、その結果、コンドロイチン硫酸のそれぞれの濃度物について、利用可能なコンドロイチン硫酸ヒドロキシル基に対するDVSのモル比が、0.98、0.65および0.32であるようにした。穏やかな混合の後、すべての溶液が透明かつ無色であった。反応を、マイクロリットルピペットを使用して1.0N NaOHを加えることによって開始させた。NaOHを加えることにより、溶液は色が直ちに淡黄色になり、一方で、透明のままであった。それぞれの反応はNaOHが0.1Mであった(およそpH13)。この一組の12個の反応液をロティサリーで穏やかに混合し、ゲル化と、透明性の喪失とについて経時的に観察した。透明性の喪失を、曇りまたは不透明の発生を目視判定することによって判断した。ゲル化を、流動の喪失を目視判定することによって判断した。反応により、非流動性のゲルが形成されたときには、ゲル化時間を記録した。
図5は、これら12個の反応液の組成と、それぞれについての均質性および流動性に関して得られた観察結果とを例示する。
【0167】
例16 カルボキシメチルセルロース/DVSモル比の変化:観察研究。
一組の反応バイアルをそれぞれ、様々な量のCMCおよびDI水で満たして、1wt%、2wt%、3wt%、4wt%、5wt%および6wt%のCMCでの溶液を得た。バイアルをロティサリーミキサーで穏やかに撹拌し、これにより、一組の透明な無色溶液を得た。その後、様々な量のDVSを、マイクロリットルピペットを用いてそれぞれのバイアルに容量測定的に加え、その結果、CMCのそれぞれの濃度物について、利用可能なCMCヒドロキシル基に対するDVSのモル比が、1.2、0.6および0.3であるようにした。穏やかな混合の後、すべての溶液が透明かつ無色であった。反応を、マイクロリットルピペットを使用して1.0N NaOHを加えることによって開始させた。NaOHを加えることにより、溶液は色が直ちに淡黄色になり、一方で、透明のままであった。それぞれの反応はNaOHが0.1Mであった(およそpH13)。この一組の18個の反応液をロティサリーで穏やかに混合し、ゲル化と、透明性の喪失とについて経時的に観察した。透明性の喪失を、曇りまたは不透明の発生を目視判定することによって判断した。ゲル化を、流動の喪失を目視判定することによって判断した。反応により、非流動性のゲルが形成されたときには、ゲル化時間を記録した。
図6は、これら18個の反応液の組成と、それぞれについての均質性および流動性に関して得られた観察結果とを例示する。
【0168】
均等物
本開示がその詳細な説明と併せて記載されているが、前述の説明は、本発明の範囲を限定するためではなく、本発明の範囲を例示するために意図されており、本発明の範囲は、添付された請求項の範囲によって定義されることを理解しなければならない。他の局面、利点および改変が下記の請求項の範囲内である。
【0169】
本明細書中で参照される特許および科学文献により、当業者にとって利用可能である知識が明らかにされる。本明細書中に引用されるすべての米国特許および公開または未公開の米国特許出願が参照によって組み込まれる。本明細書中に引用されるすべての公開された国外の特許および特許出願が本明細書により参照によって組み込まれる。本明細書中に引用されるすべての他の公開された参考文献、文書、原稿および科学文献が、本明細書により参照によって組み込まれる。
【配列表フリーテキスト】
【0170】
配列表1~20 <223>人工配列の記載:合成ペプチド
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-06-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のポリマーコンジュゲートまたは方法:
[1] 複数の硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)ポリマー鎖を含むポリマーコンジュゲートであって、それぞれの硫酸化GAGポリマー鎖は、連結剤に由来するリンカーを介して1つまたは複数の硫酸化GAGポリマー鎖に連結され、前記ポリマーコンジュゲートは、水溶液に可溶性であり、かつ、個々の連結されていない硫酸化GAGの分子量の3倍~100倍である分子量を有するポリマーコンジュゲート;
[2] リンカーを介して連結される複数の硫酸化GAGポリマー鎖および少なくとも1つのさらなるポリマーを含む、[1]に記載のポリマーコンジュゲート。
[3] 前記さらなるポリマーがヒアルロン酸またはカルボキシメチルセルロースである、[2]に記載のポリマーコンジュゲート;
[4] 前記リンカー剤が二官能性である、[1]に記載のポリマーコンジュゲート;
[5] 前記リンカー剤がポリマーでない、[1]に記載のポリマーコンジュゲート;
[6] 前記リンカー剤が1000Da未満の分子量を有する、[1]~[5]のいずれか一項に記載のポリマーコンジュゲート;
[7] 前記リンカー剤が500Da未満の分子量を有する、[1]~[5]のいずれか一項に記載のポリマーコンジュゲート;
[8] 前記リンカー剤が250Da未満の分子量を有する、[1]~[5]のいずれか一項に記載のポリマーコンジュゲート;
[9] 前記リンカー剤が200Da未満の分子量を有する、[1]~[5]のいずれか一項に記載のポリマーコンジュゲート;
[10] 前記リンカー剤が150Da未満の分子量を有する、[1]~[5]のいずれか一項に記載のポリマーコンジュゲート;
[11] 前記リンカー剤が、ジビニルスルホン(DVS)、ジエポキシド、エピクロロヒドリン(Epi)およびブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)からなる群から選択される、[1]に記載のポリマーコンジュゲート;
[12] 前記リンカー剤がジビニルスルホン(DVS)である、[11]に記載のポリマーコンジュゲート;
[13] 前記硫酸化GAGが、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸およびそれらの組合せからなる群から選択される、[1]~[12]のいずれか一項に記載のポリマーコンジュゲート;
[14] 前記リンカーがGAGポリマー鎖に沿ってランダムに連結される、[1]~[13]のいずれか一項に記載のポリマーコンジュゲート;
[15] 分岐型構造を有する、[1]~[14]のいずれか一項に記載のポリマーコンジュゲート;
[16] 瓶洗いブラシ様構造を有する、[1]~[14]のいずれか一項に記載のポリマーコンジュゲート;
[17]
前記さらなるポリマーが、前記複数の硫酸化GAGポリマー鎖が付加されるコアポリマーである、[2]または[3]に記載のポリマーコンジュゲート;
[18] [1]に記載されるポリマーコンジュゲートを調製する方法であって、
i)2wt%~20wt%の濃度で硫酸化GAGの水溶液を提供する工程、および
ii)前記硫酸化GAGを連結剤と接触させて可溶性の分岐型ポリマーを形成する工程であって、GAGヒドロキシル基の連結剤に対するモル比が、ゲル形成のために要求されるモル比よりも小さい工程
を含む方法;
[19] 前記可溶性の分岐型ポリマーが、15,000Da~1,000,000Daの分子量を有する、[18]に記載の方法;
[20] 前記GAGヒドロキシル基対連結剤のモル比が0.01~0.6である、[18]に記載の方法;
[21] [1]に記載されるコンジュゲートを単一反応での前記硫酸化GAGの逐次導入により調製する方法であって、
i)硫酸化GAGを提供する工程、
ii)前記硫酸化GAGを連結剤と、少量の前記硫酸化GAGが全量の連結剤と反応させられる条件のもとで反応させる工程、および
iii)前記硫酸化GAGの残り部分を加えて、瓶洗いブラシ様構造を有するコンジュゲートを形成する工程
を含む方法;
[22] [1]に記載されるポリマーコンジュゲートを調製する方法であって、
i)コアポリマーを希薄溶液において連結剤により活性化して、多価反応性コアポリマー中間体を形成する工程、および
ii)過剰の硫酸化GAGを加えて、可溶性の瓶洗いブラシ様ポリマーを形成する工程
を含む方法;
[23] 工程iが、コアポリマーを連結剤により活性化することを、少量の前記コアポリマーが全量の連結剤と反応させられる条件のもとで行うことを含む、[22]に記載の方法;
[24] 工程iが、亜化学量論的量のコアポリマーを希薄溶液において連結剤により活性化して、多価反応性コアポリマー中間体を形成することを含む、[22]に記載の方法;
[25] 工程iの前記コアポリマーが、工程iiにおいて加えられる硫酸化GAGと同一の硫酸化GAGである、[22]~[24]のいずれか一項に記載の方法;
[26]
工程iの前記コアポリマーが、工程iiにおいて加えられる硫酸化GAGとは異なる硫酸化GAGである、[22]~[24]のいずれか一項に記載の方法;
[27] 工程iの前記コアポリマーが硫酸化GAGでない、[22]~[24]のいずれか一項に記載の方法;
[28] 工程iにおける前記コアポリマーがカルボキシメチルセルロースである、[27]に記載の方法;
[29] 工程iにおける前記コアポリマーがヒアルロン酸である、[27]に記載の方法;
[30] [1]に記載されるコンジュゲートを調製する方法であって、
i)コアポリマーを希薄溶液において連結剤により官能化して、コアポリマー中間体を形成する工程、
ii)前記コアポリマー中間体を単離する工程、および
iii)前記コアポリマー中間体を高濃度溶液の硫酸化GAGと反応させて、可溶性の瓶洗いブラシ様ポリマーを形成する工程
を含む方法;
[31] 少なくとも1つのGAGポリマー鎖が、結合性調節剤または治療用調節剤から選択される少なくとも1つの調節剤を含む、[1]に記載のコンジュゲート;
[32] 前記結合性調節剤がコラーゲン結合性調節剤である、[31]に記載のコンジュゲート;
[33] 前記治療用調節剤が抗酸化性調節剤である、[31]に記載のコンジュゲート;
[34] [1]~33のいずれか一項に記載されるコンジュゲートを対象に投与することを含む、対象において軟部組織に関連する疾患、障害または状態を処置する方法;
[35] 間質性膀胱炎(IC)を患者において処置する方法であって、前記患者に[1]に記載されるコンジュゲートを投与する工程を含む方法;
[36] 前記コンジュゲートが、ガレクチンに対する少なくとも1つのグリカンリガンドにより官能化される、[35]に記載の方法;
[37] 投与が膀胱内点滴注入である、[35]に記載の方法;
[38] 前記結合性調節剤がガレクチン結合性調節剤に対するグリカンリガンドである、[31]に記載のコンジュゲート;
[39] 間質性膀胱炎(IC)を患者において処置する方法であって、前記患者に[31]または38に記載されるコンジュゲートを投与する工程を含む方法;
[40] ガレクチンに対する前記グリカンリガンドがβ-ガラクトシドを含む、[38]に記載のコンジュゲート;
[41] 変形性関節症(OA)を患者において処置する方法であって、前記患者に[1]に記載されるポリマーコンジュゲートを投与する工程を含む方法;または
[42] 投与が、OAが存在する前記患者の関節への直接注射を含む、[1]に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
【外国語明細書】