(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123438
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】組織製造方法
(51)【国際特許分類】
A61L 27/38 20060101AFI20230829BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20230829BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20230829BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20230829BHJP
C12M 3/00 20060101ALN20230829BHJP
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C12N 5/0735 20100101ALN20230829BHJP
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C12N 5/077 20100101ALN20230829BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20230829BHJP
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C07K 14/54 20060101ALN20230829BHJP
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C07K 14/56 20060101ALN20230829BHJP
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C07K 14/57 20060101ALN20230829BHJP
C07K 14/62 20060101ALN20230829BHJP
C12N 15/57 20060101ALN20230829BHJP
【FI】
A61L27/38
C12N5/071
A61L27/36 130
A61L27/18
C12M3/00 Z
C07K14/78
C07K14/475
C12N5/0735
C12N5/10
C12N5/0775
C12N5/074
C12N5/077
C12N5/0783
C12N5/0784
C07K14/485
C07K14/505
C07K14/50
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C07K14/495
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C07K14/54
C07K14/715
C07K14/56
C07K14/565
C07K14/57
C07K14/62
C12N15/57
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023088317
(22)【出願日】2023-05-30
(62)【分割の表示】P 2021087343の分割
【原出願日】2013-09-03
(31)【優先権主張番号】61/696,487
(32)【優先日】2012-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】520169074
【氏名又は名称】セルラリティ インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】モヒト ビー.ブハティア
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ジェイ. ハリリ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルフガング ホフガートナー
(72)【発明者】
【氏名】ジア‐ルン ワング
(72)【発明者】
【氏名】キアン イエ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】インビボにおいて3次元組織を形成する方法を提供する。
【解決手段】一実施態様において、細胞を含有する組成物の少なくとも1種を対象内又は上である表面上に沈着することを含む、インビボにおいて3次元組織を形成する方法、別の実施態様において、細胞を含有する組成物の少なくとも1種及び細胞外マトリクス(ECM)を含有する組成物の少なくとも1種を、対象内又は上である表面上に沈着することを含む、インビボにおいて3次元組織を形成する方法、さらに別の実施態様において、細胞を含有する組成物の少なくとも1種、細胞外マトリクス(ECM)を含有する組成物の少なくとも1種、及び他の追加成分の少なくとも1種を、対象内又は上である表面上に沈着することを含む、インビボにおいて3次元組織を形成する方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の細胞組成物及び細胞外マトリクス(ECM)を、対象内の又は上の表面上に
沈着することを含む、3次元組織を形成する方法。
【請求項2】
前記細胞組成物及び前記ECMが両方とも、前記表面上に沈着される、請求項1記載の方法
。
【請求項3】
前記細胞組成物及び前記ECMが両方とも、前記表面上に印刷される、請求項1記載の方法
。
【請求項4】
前記表面が、人工表面である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記人工表面が、人工装具又は構造である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記表面が、脱細胞化された組織又は脱細胞化された器官である、請求項1記載の方法
。
【請求項7】
前記表面が、前記対象の外側上の表面である、請求項1~6のいずれか記載の方法。
【請求項8】
前記表面が、前記対象の内側内の表面である、請求項1~6のいずれか記載の方法。
【請求項9】
前記表面が、前記対象の体腔、骨、又は器官内の表面である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
表面マップを形成するために前記対象内又は上の該表面を走査すること、及び該表面マ
ップを使用し、前記沈着をガイドすることを含む、請求項1~9のいずれか記載の方法。
【請求項11】
前記走査が、レーザー、電子線、磁気共鳴画像法、電磁波、x-線、又はコンピュータ断
層撮影法の使用を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記ECMが、哺乳動物ECM、軟体動物ECM、魚類ECM、及び/又は植物ECMを含む、請求項1
~11のいずれか記載の方法。
【請求項13】
前記哺乳動物ECMが、胎盤ECMである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記ECMが、テロペプチド胎盤コラーゲンを含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記テロペプチド胎盤コラーゲンが、塩基処理され、界面活性剤処理されたI型テロペ
プチド胎盤コラーゲンを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記コラーゲンが、化学修飾されていないか又はプロテアーゼと接触されていない、請
求項14又は15記載の方法。
【請求項17】
前記胎盤ECMが、化学修飾されていないか又はプロテアーゼと接触されていない、塩基
処理された及び/又は界面活性剤処理されたI型テロペプチド胎盤コラーゲンを含み、こ
こで該ECMが、フィブロネクチン5重量%未満又はラミニン5重量%未満;I型コラーゲン25
重量%~92重量%;及び、III型コラーゲン2重量%~50重量%又はIV型コラーゲン2重量
%~50重量%を含む、請求項13記載の方法。
【請求項18】
前記胎盤ECMが、化学修飾されていないか又はプロテアーゼと接触されていない、塩基
処理され、界面活性剤処理されたI型テロペプチド胎盤コラーゲンを含み、ここで該ECMが
、フィブロネクチン1重量%未満又はラミニン1重量%未満;I型コラーゲン74重量%~92
重量%;及び、III型コラーゲン4重量%~6重量%又はIV型コラーゲン2重量%~15重量%
を含む、請求項13記載の方法。
【請求項19】
ヒドロゲルの沈着を更に含む、請求項1~18のいずれか記載の方法。
【請求項20】
前記ヒドロゲルが、感熱性ヒドロゲルである、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記ヒドロゲルが、感光性ヒドロゲルである、請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記ECM及び前記ヒドロゲルが、約10:1~1:10の重量比で組合せられる、請求項19~21
のいずれか記載の方法。
【請求項23】
合成ポリマーの沈着を更に含む、請求項1~18のいずれか記載の方法。
【請求項24】
前記合成ポリマーが、感熱性である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記合成ポリマーが、感光性である、請求項23記載の方法。
【請求項26】
前記合成ポリマーが、熱可塑性物質を含む、請求項23記載の方法。
【請求項27】
前記合成ポリマーが、ポリ(L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)である、請求項26記載の
方法。
【請求項28】
前記熱可塑性物質が、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリブチレンテレフタレート、
ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、又はポリ
塩化ビニルである、請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記合成ポリマーが、ポリアクリルアミド、ポリ塩化ビニリジン、ポリ(o-カルボキシ
フェノキシ)-p-キシレン)(ポリ(o-CPX))、ポリ(無水ラクチド)(PLAA)、n-イソプロピルア
クリルアミド、ペントエリスリトールジアクリレート、ポリメチルアクリレート、カルボ
キシメチルセルロース、又はポリ(乳酸-グリコール酸共重合体)(PLGA)である、請求項23
記載の方法。
【請求項30】
テナシンC又はそれらの断片の沈着を更に含む、請求項1~30のいずれか記載の方法。
【請求項31】
チタン-アルミニウム-バナジウム(Ti6Al4V)組成物の沈着を更に含む、請求項1~31のい
ずれか記載の方法。
【請求項32】
前記チタン-アルミニウム-バナジウム組成物が、ファイバーの相互接続された多孔質網
の形態で沈着されている、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記テロペプチドコラーゲンが、前記沈着前に誘導体化されている、請求項14~18のい
ずれか一項記載の方法。
【請求項34】
前記テロペプチドコラーゲンが、1種以上の細胞接着ペプチド、細胞接着タンパク質、
サイトカイン、又はグリコサミノグリカンにより誘導体化されている、請求項33記載の方
法。
【請求項35】
前記ECMが、細胞接着ペプチド、細胞接着タンパク質、サイトカイン、又はグリコサミ
ノグリカンを含有するか又はこれらにより誘導体化されている、請求項1記載の方法。
【請求項36】
前記サイトカインが、血管内皮増殖因子(VEGF)、又は骨形態形成タンパク質(BMP)であ
る、請求項34又は35記載の方法。
【請求項37】
前記細胞接着ペプチドが、1以上のRGDモチーフを含む細胞反応性ペプチドである、請求
項34又は35記載の方法。
【請求項38】
前記細胞組成物が、骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)を含有する、請求項1~37のいずれ
か記載の方法。
【請求項39】
前記細胞組成物が、組織培養プラスチック接着性CD34-、CD10+、CD105+、及びCD200+胎
盤幹細胞を含む、請求項1~37のいずれか記載の方法。
【請求項40】
前記胎盤幹細胞が更に、CD45-、CD80-、CD86-、又はCD90+の1以上である、請求項39記
載の方法。
【請求項41】
前記胎盤幹細胞が更に、CD45-、CD80-、CD86-、及びCD90+である、請求項40記載の方法
。
【請求項42】
前記胎盤幹細胞が、前記レシピエントにおいて免疫応答を抑制する、請求項39~41のい
ずれか記載の方法。
【請求項43】
前記胎盤幹細胞が、前記レシピエント内で免疫応答を局所的に抑制する、請求項42記載
の方法。
【請求項44】
前記細胞組成物が、胚性幹細胞、胚性生殖細胞、人工多能性幹細胞、間葉系幹細胞、骨
髄由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系間質細胞、組織プラスチック接着性胎盤幹細胞(PDA
C)、臍帯幹細胞、羊水幹細胞、羊膜由来接着細胞(AMDAC)、骨形成性の胎盤接着細胞(OPAC
)、脂肪幹細胞、角膜上皮幹細胞、歯髄幹細胞、筋芽細胞、内皮前駆細胞、神経幹細胞、
脱落歯由来幹細胞、毛嚢幹細胞、真皮幹細胞、単為生殖由来幹細胞、初期化された幹細胞
、羊膜由来接着細胞、又はサイドポピュレーション幹細胞を含む、請求項1~37のいずれ
か記載の方法。
【請求項45】
前記細胞組成物が、分化した細胞を含む、請求項1~37のいずれか記載の方法。
【請求項46】
前記分化した細胞が、内皮細胞、上皮細胞、真皮細胞、内胚葉細胞、中胚葉細胞、線維
芽細胞、骨細胞、軟骨細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、肝細胞、膵臓細胞、又は
間質細胞を含む、請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記分化した細胞が、
唾液腺粘液性細胞、唾液腺漿液性細胞、フォン・エブネル腺細胞、乳腺細胞、涙腺細胞
、耳道腺細胞、エクリン汗腺暗調細胞、エクリン汗腺明調細胞、アポクリン汗腺細胞、モ
ル腺細胞、脂腺細胞、ボウマン腺細胞、ブルンネル腺細胞、精嚢細胞、前立腺細胞、尿道
球腺細胞、バルトリン腺細胞、リトレ腺細胞、子宮内膜細胞、単離された杯細胞、胃表層
粘液細胞、胃腺酵素原細胞、胃腺酸分泌細胞、膵腺房細胞、パネート細胞、II型肺胞上皮
細胞、クララ細胞、
成長ホルモン産生細胞、乳腺刺激ホルモン産生細胞、甲状腺刺激ホルモン産生細胞、性
腺刺激ホルモン産生細胞、副腎皮質刺激ホルモン産生細胞、下垂体中葉由来の細胞、巨大
細胞神経分泌細胞、腸管細胞、気道細胞、甲状腺上皮細胞、傍濾胞細胞、副甲状腺細胞、
副甲状腺主細胞、好酸性細胞、副腎腺細胞、クロム親和性細胞、ライディッヒ細胞、内卵
胞膜細胞、黄体細胞、顆粒膜黄体細胞、莢膜黄体様細胞、傍糸球体細胞、緻密斑細胞、極
周囲細胞、メサンギウム細胞、
血管及びリンパ管内皮有孔細胞、血管及びリンパ管内皮連続型細胞、血管及びリンパ管
内皮脾細胞、滑膜細胞、漿膜細胞(腹膜の、胸膜の、及び心膜腔の表層)、扁平上皮細胞
、円柱細胞、暗調細胞、前庭膜細胞(耳の内リンパ腔内壁)、血管条基底細胞、血管条周
辺細胞(耳の内リンパ腔内壁)、クラウディウス細胞、ベッチェル細胞、脈絡叢細胞、軟
膜クモ膜扁平上皮細胞、色素毛様体上皮細胞、非色素毛様体上皮細胞、角膜内皮細胞、栓
細胞、
気道線毛細胞、卵管線毛細胞、子宮内膜線毛細胞、精巣網線毛細胞、精巣輸出管線毛細
胞、線毛性上衣細胞、
表皮角化細胞、表皮基底細胞、手指爪及び足指爪の角化細胞、爪床基底細胞、毛幹の毛
髄質細胞、毛幹の毛皮質細胞、毛幹の毛小皮細胞、毛根の毛小皮鞘細胞、毛根ハックスレ
ー層の鞘細胞、毛根ヘンレ層の鞘細胞、外毛根鞘細胞、毛母細胞、
重層扁平上皮の表面上皮細胞、上皮基底細胞、泌尿器上皮細胞、
耳のコルチ器官の内有毛細胞、耳のコルチ器官の外有毛細胞、嗅上皮基底細胞、冷感受
性一次感覚ニューロン、熱感受性一次感覚ニューロン、表皮のメルケル細胞、嗅覚受容体
神経、痛み感受性一次感覚ニューロン、光受容体桿体細胞、光受容体青色感受性錐体細胞
、光受容体緑色感受性錐体細胞、光受容体赤色感受性錐体細胞、固有受容性一次感覚ニュ
ーロン、触覚感受性一次感覚ニューロン、I型頸動脈小体細胞、II型頸動脈小体細胞(血
液pHセンサ)、内耳前庭器官のI型有毛細胞(加速度及び重力)、内耳前庭器官のII型有
毛細胞、I型味蕾細胞、
コリン作動性神経細胞、アドレナリン作動性神経細胞、ペプチド作動性神経細胞、
コルチ器官の内柱細胞、コルチ器官の外柱細胞、コルチ器官の内指骨細胞、コルチ器官
の外指骨細胞、コルチ器官の境界細胞、コルチ器官のヘンゼン細胞、前庭器支持細胞、味
蕾支持細胞、嗅上皮支持細胞、シュワン細胞、サテライト細胞、腸内グリア細胞、
星状細胞、ニューロン、希突起膠細胞、紡錘形ニューロン、
前水晶体上皮細胞、クリスタリン含有水晶体線維細胞、
肝細胞、脂肪細胞、白色脂肪細胞、褐色脂肪細胞、肝臓脂肪細胞、
腎臓糸球体壁細胞、腎臓糸球体有足細胞、腎臓近位尿細管刷子縁細胞、ヘンレ係蹄の細
い部分の細胞、腎臓遠位尿細管細胞、腎臓集合管細胞、I型肺胞上皮細胞、膵管細胞、非
線条導管細胞、導管細胞、腸管刷子縁細胞、外分泌腺線条導管細胞、胆嚢上皮細胞、精巣
輸出管非線毛細胞、精巣上体主細胞、精巣上体基底細胞、
エナメル芽細胞上皮細胞、半月面上皮細胞、コルチ器官歯間上皮細胞、疎性結合組織線
維芽細胞、角膜実質細胞、腱線維芽細胞、骨髄網状組織線維芽細胞、非上皮性線維芽細胞
、周細胞、髄核細胞、セメント芽細胞/セメント細胞、象牙芽細胞、オドントサイト、ヒ
アリン軟骨細胞、線維軟骨細胞、弾性軟骨細胞、骨芽細胞、骨細胞、破骨細胞、骨前駆細
胞、硝子体細胞、星細胞(耳)、肝星細胞(伊東細胞)、膵星細胞、
赤色骨格筋細胞、白色骨格筋細胞、中間体骨格筋細胞、筋紡錘の核袋細胞、筋紡錘の核
鎖細胞、サテライト細胞、固有心筋細胞、結節性心筋細胞、プルキンエ線維細胞、平滑筋
細胞、虹彩の筋上皮細胞、外分泌腺の筋上皮細胞、
網状赤血球、巨核球、単球、結合組織マクロファージ、表皮ランゲルハンス細胞、樹状
細胞、小膠細胞、好中球、好酸球、好塩基球、マスト細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサ
ーT細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、
メラニン形成細胞、網膜色素上皮細胞、
卵原細胞/卵母細胞、精子細胞、精母細胞、精原細胞、精子、卵胞細胞、セルトリ細胞
、胸腺上皮細胞、及び/又は間質性腎臓細胞
を含む、請求項45記載の方法。
【請求項48】
前記細胞組成物中の細胞が、初代培養細胞である、請求項1~47のいずれか記載の方法
。
【請求項49】
前記細胞組成物中の細胞が、インビトロにおいて培養された細胞である、請求項1~48
のいずれか記載の方法。
【請求項50】
前記細胞が、少なくとも1回継代されている、請求項48記載の方法。
【請求項51】
前記細胞が、6回以下継代されている、請求項48記載の方法。
【請求項52】
前記細胞が、前記対象由来の細胞である、請求項48記載の方法。
【請求項53】
前記対象の上又は内の前記表面が、前記沈着を促進するように調製されている、請求項
1~52のいずれか記載の方法。
【請求項54】
前記細胞が、該細胞により天然に生成されないタンパク質若しくはポリペプチドを生成
するように遺伝子操作されているか、又は該細胞により天然に生成される量よりも多い量
でタンパク質若しくはポリペプチドを生成するように遺伝子操作されており、ここで該細
胞組成物が、分化した細胞を含有する、請求項1~52のいずれか記載の方法。
【請求項55】
前記タンパク質又はポリペプチドが、サイトカイン又はそれらの活性部分を含むペプチ
ドである、請求項54記載の方法。
【請求項56】
前記サイトカインが、アドレノメデュリン(AM)、アンジオポエチン(Ang)、骨形態形成
タンパク質(BMP)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、エリスロポエチ
ン(Epo)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、グリア細胞株-由来神経栄養因子(GNDF)、顆粒球コ
ロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、成長分化因
子(GDF-9)、肝細胞増殖因子(HGF)、肝細胞癌由来増殖因子(HDGF)、インスリン-様成長因
子(IGF)、遊走-刺激因子、ミオスタチン(GDF-8)、骨髄単球性増殖因子(MGF)、神経成長因
子(NGF)、胎盤増殖因子(PlGF)、血小板-由来増殖因子(PDGF)、トロンボポエチン(Tpo)、
トランスフォーミング増殖因子アルファ(TGF-α)、TGF-β、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-
α)、血管内皮増殖因子(VEGF)、又はWntタンパク質である、請求項55記載の方法。
【請求項57】
前記細胞1×106個が、24時間にわたる成長培地におけるインビトロ培養において前記サ
イトカインを少なくとも1.0~10μM生成する、請求項55又は56記載の方法。
【請求項58】
前記タンパク質又はポリペプチドが、AM、Ang、BMP、BDNF、EGF、Epo、FGF、GNDF、G-C
SF、GM-CSF、GDF-9、HGF、HDGF、IGF、遊走-刺激因子、GDF-8、MGF、NGF、PlGF、PDGF、T
po、TGF-α、TGF-β、TNF-α、VEGF、又はWntタンパク質の可溶性受容体である、請求項5
3記載の方法。
【請求項59】
前記細胞1×106個が、24時間にわたる成長培地におけるインビトロ培養において前記可
溶性受容体を少なくとも1.0~10μM生成する、請求項58記載の方法。
【請求項60】
前記タンパク質が、インターロイキンである、請求項53記載の方法。
【請求項61】
前記インターロイキンが、インターロイキン-1アルファ(IL-1α)、IL-1β、IL-1F1、IL
-1F2、IL-1F3、IL-1F4、IL-1F5、IL-1F6、IL-1F7、IL-1F8、IL-1F9、IL-2、IL-3、IL-4、
IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12 35kDaαサブユニット、IL-12 40k
Daβサブユニット、IL-12α及びβの両サブユニット、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-
17A、IL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E、IL-17Fアイソフォーム1、IL-17Fアイソフォーム
2、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23 p19サブユニット、IL-23 p40サブユニッ
ト、IL-23 p19サブユニット及びIL-23 p40サブユニットが一緒に、IL-24、IL-25、IL-26
、IL-27B、IL-27-p28、IL-27B及びIL-27-p28が一緒に、IL-28A、IL-28B、IL-29、IL-30、
IL-31、IL-32、IL-33、IL-34、IL-35、IL-36α、IL-36β、IL-36γである、請求項60記載
の方法。
【請求項62】
前記細胞1×106個が、24時間にわたる成長培地におけるインビトロ培養において前記イ
ンターロイキンを少なくとも1.0~10μM生成する、請求項60又は61記載の方法。
【請求項63】
前記タンパク質又はポリペプチドが、IL-1α、IL-1β、IL-1F1、IL-1F2、IL-1F3、IL-1
F4、IL-1F5、IL-1F6、IL-1F7、IL-1F8、IL-1F9、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、
IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12 35kDaαサブユニット、IL-12 40kDaβサブユニット、
IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17A、IL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E、IL-17F アイ
ソフォーム1、IL-17F アイソフォーム2、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23 p1
9サブユニット、IL-23 p40サブユニット、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27B、IL-27-p28、IL
-28A、IL-28B、IL-29、IL-30、IL-31、IL-32、IL-33、IL-34、IL-35、IL-36α、IL-36β
、IL-36γの可溶性受容体である、請求項53記載の方法。
【請求項64】
前記細胞1×106個が、24時間にわたる成長培地におけるインビトロ培養において前記可
溶性受容体を少なくとも1.0~10μM生成する、請求項63記載の方法。
【請求項65】
前記タンパク質が、インターフェロン(IFN)である、請求項53記載の方法。
【請求項66】
前記インターフェロンが、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、IFN-λ1、IFN-λ2、IFN-λ3、IFN
-K、IFN-ε、IFN-κ、IFN-τ、IFN-δ、IFN-ζ、IFN-ω、又はIFN-νである、請求項35記
載の方法。
【請求項67】
前記細胞1×106個が、24時間にわたる成長培地におけるインビトロ培養において前記イ
ンターフェロンを少なくとも1.0~10μM生成する、請求項64又は65記載の方法。
【請求項68】
前記タンパク質又はポリペプチドが、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、IFN-λ1、IFN-λ2、IF
N-λ3、IFN-K、IFN-ε、IFN-κ、IFN-τ、IFN-δ、IFN-ζ、IFN-ω、又はIFN-νの可溶性
受容体である、請求項53記載の方法。
【請求項69】
前記細胞1×106個が、24時間にわたる成長培地におけるインビトロ培養において前記可
溶性受容体を少なくとも1.0~10μM生成する、請求項68記載の方法。
【請求項70】
前記タンパク質が、インスリン又はプロインスリンである、請求項53記載の方法。
【請求項71】
前記細胞1×106個が、24時間にわたる成長培地におけるインビトロ培養において前記タ
ンパク質を少なくとも1.0~10μM生成する、請求項70記載の方法。
【請求項72】
前記タンパク質が、インスリン受容体である、請求項53記載の方法。
【請求項73】
前記細胞が、プロホルモン転換酵素1、プロホルモン転換酵素2、又はカルボキシペプチ
ダーゼEの1種以上を生成するよう、追加的に遺伝子操作されている、請求項71又は72記載
の方法。
【請求項74】
前記タンパク質が、レプチン(LEP)である、請求項53記載の方法。
【請求項75】
前記細胞1×106個が、24時間にわたる成長培地におけるインビトロ培養において前記タ
ンパク質を少なくとも1.0~10μM生成する、請求項74記載の方法。
【請求項76】
前記タンパク質が、エリスロポエチンである、請求項53記載の方法。
【請求項77】
前記細胞1×106個が、24時間にわたる成長培地におけるインビトロ培養において前記タ
ンパク質を少なくとも1.0~10μM生成する、請求項76記載の方法。
【請求項78】
前記タンパク質が、トロンボポエチンである、請求項53記載の方法。
【請求項79】
前記細胞1×106個が、24時間にわたる成長培地におけるインビトロ培養において前記タ
ンパク質を少なくとも1.0~10μM生成する、請求項78記載の方法。
【請求項80】
前記タンパク質が、チロシン3-モノオキシゲナーゼである、請求項53記載の方法。
【請求項81】
前記細胞1×106個が、24時間にわたる成長培地におけるインビトロ培養において前記タ
ンパク質を少なくとも1.0~10μM生成する、請求項80記載の方法。
【請求項82】
前記細胞が、芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼを発現するように、更に操作される
、請求項80又は81記載の方法。
【請求項83】
前記細胞1×106個が、24時間にわたる成長培地におけるインビトロ培養において前記芳
香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼを少なくとも1.0~10μM生成する、請求項82記載の方
法。
【請求項84】
前記タンパク質が、ホルモン又はプロホルモンである、請求項53記載の方法。
【請求項85】
前記ホルモンが、抗ミュラー管ホルモン(AMH)、アジポネクチン(Acrp30)、副腎皮質刺
激ホルモン(ACTH)、アンジオテンシン(AGT)、アンジオテンシノゲン(AGT)、抗利尿ホルモ
ン(ADH)、バゾプレシン、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、カルシトニン(CT)、コレ
シストキニン(CCK)、コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)、エリスロポエチン(Epo)、卵
胞刺激ホルモン(FSH)、テストステロン、エストロゲン、ガストリン(GRP)、グレリン、グ
ルカゴン(GCG)、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、成長ホルモン(GH)、成長ホルモン
放出ホルモン(GHRH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、ヒト胎盤性ラクトゲン(HPL)、イ
ンヒビン、黄体形成ホルモン(LH)、メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)、オレキシン、オキ
シトシン(OXT)、副甲状腺ホルモン(PTH)、プロラクチン(PRL)、レラキシン(RLN)、セクレ
チン(SCT)、ソマトスタチン(SRIF)、トロンボポエチン(Tpo)、甲状腺刺激ホルモン(Tsh)
、及び/又は甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)である、請求項84記載の方法。
【請求項86】
前記タンパク質が、シトクロムP450側鎖切断酵素(P450SCC)である、請求項53記載の方
法。
【請求項87】
前記タンパク質が、遺伝的障害又は疾患を有する対象において喪失されている又は機能
不全であるタンパク質である、請求項86記載の方法。
【請求項88】
前記遺伝疾患が、家族性高コレステロール血症であり、及び前記タンパク質が、低密度
リポタンパク受容体(LDLR)であるか;
該遺伝疾患が、多嚢胞腎疾患であり、及び前記タンパク質が、ポリシスチン-1(PKD1)、
PKD-2又はPKD3であるか;或いは
該遺伝疾患が、フェニルケトン尿症であり、及び前記タンパク質が、フェニルアラニン
水酸化酵素である、請求項87記載の方法。
【請求項89】
前記表面が、前記印刷前に、生体分子を含有する組成物を、該表面上へ沈着することに
より調製される、請求項1記載の方法。
【請求項90】
前記生体分子が、コラーゲン型、フィブロネクチン型、ラミニン型又は組織接着剤であ
るか又はこれらを含む、請求項89記載の方法。
【請求項91】
前記表面が、脱細胞化された組織により、該表面の全体又は一部を被覆することにより
、調製される、請求項1記載の方法。
【請求項92】
前記脱細胞化された組織が、脱細胞化された羊膜、脱細胞化された横隔膜、脱細胞化さ
れた皮膚、又は脱細胞化された筋膜である、請求項91記載の方法。
【請求項93】
前記表面が、前記対象における心臓、血管、皮膚、肝臓、膵臓、肺、腎臓、甲状腺、腸
の切片、胃、気管、食道、又は十二指腸の表面である、請求項1~92のいずれか記載の方
法。
【請求項94】
前記表面が、損傷を受けた皮膚である、請求項1~92のいずれか記載の方法。
【請求項95】
前記皮膚が、火傷により損傷を受けている、請求項94記載の方法。
【請求項96】
前記細胞組成物が、上皮細胞を含有する、請求項94又は95記載の方法。
【請求項97】
前記細胞組成物が、真皮細胞を含有する、請求項94又は95記載の方法。
【請求項98】
前記細胞組成物が、間葉系幹細胞を含有する、請求項94又は95記載の方法。
【請求項99】
前記少なくとも1種の細胞組成物が、上皮細胞を含有する第一の細胞組成物、真皮細胞
を含有する第二の細胞組成物、及び間葉系幹細胞を第三の細胞組成物を含む、請求項94又
は95記載の方法。
【請求項100】
前記方法が、(a) 前記表面上への前記間葉系幹細胞の第一の印刷、次に、(b)該表面上
への前記真皮細胞の印刷、次に、(c)該表面上への前記上皮細胞の印刷を含む、請求項99
記載の方法。
【請求項101】
前記方法が、(a) 前記表面上への前記真皮細胞の第一の印刷、次に、(b)該表面上への
前記上皮細胞の印刷を含む、請求項99記載の方法。
【請求項102】
2つ以上の印刷経路において、前記第一の細胞組成物、前記第二の細胞組成物及び/又
は前記第三の細胞組成物を印刷することを含む、請求項99記載の方法。
【請求項103】
前記表面と前記第一の細胞組成物間;前記第一の細胞組成物と前記第二の細胞組成物の
間;前記第二の細胞組成物と前記第三の細胞組成物の間;又はそれらの任意の組合せに、
ECMを沈着することを含む、請求項94~102のいずれか記載の方法。
【請求項104】
前記上皮細胞及び前記真皮細胞;前記真皮細胞及び前記間葉系幹細胞;又は、前記上皮
細胞、前記真皮細胞、及び前記間葉系幹細胞が、同じ細胞組成物内に含まれている、請求
項103記載の方法。
【請求項105】
前記表面が、前記対象における腎臓の表面である、請求項1~92のいずれか記載の方法
。
【請求項106】
前記細胞組成物が、実質細胞の少なくとも1つの型及び間質細胞の1つの型を含む、請求
項105記載の方法。
【請求項107】
前記実質細胞の1つの型及び前記間質細胞の1つの型が、自家又は同種の腎臓組織から脱
凝集された腎臓細胞の集団中に存在する、請求項106記載の方法。
【請求項108】
前記間質細胞の少なくとも1つの型が、間葉系幹細胞である、請求項106又は107記載の
方法。
【請求項109】
前記間質細胞の少なくとも1つの型が、骨髄-由来間葉系幹細胞である、請求項106又は1
07記載の方法。
【請求項110】
前記間質細胞の少なくとも1つの型が、組織培養プラスチック-接着性CD34-、CD10+、CD
105+、CD200+胎盤幹細胞である、請求項106又は107記載の方法。
【請求項111】
前記表面を含む前記腎臓の少なくとも一部が、損傷を受けたか又は機能不全である、請
求項105記載の方法。
【請求項112】
前記腎臓の損傷を受けたか又は機能不全である表面を分析し、該損傷を受けたか又は機
能不全である表面中の腎臓細胞の型を決定すること、並びに該表面上に同じ型の細胞を沈
着することを含む、請求項105記載の方法。
【請求項113】
前記損傷を受けたか又は機能不全である腎臓が、該損傷を受けたか又は機能不全である
部分を除去するように、外科的に代替される、請求項112記載の方法。
【請求項114】
前記表面が、前記外科的代替後に残存する前記腎臓の表面である、請求項113記載の方
法。
【請求項115】
前記表面を含む組織又は器官の標準化されたコンピュータモデルに従う少なくとも一部
に、前記細胞組成物及び/又は前記ECMを沈着することを含む、請求項1~18のいずれか記
載の方法。
【請求項116】
前記表面の走査から得られたデータに従い、前記細胞組成物及び/又は前記ECMを沈着
することを追加的に含む、請求項115記載の方法。
【請求項117】
前記表面の前記走査が、コンピュータ支援断層撮影法、磁気共鳴画像法、電子線、又は
x-線により得られる、請求項116記載の方法。
【請求項118】
前記表面の前記走査が、解像度少なくとも100ミクロンである、請求項117記載の方法。
【請求項119】
前記表面の前記走査が、解像度少なくとも1ミクロンである、請求項117記載の方法。
【請求項120】
前記沈着が、腹腔鏡下で実行される、請求項1~119のいずれか記載の方法。
【請求項121】
前記沈着が、エアロゾル化により達成される、請求項1~119のいずれか記載の方法。
【請求項122】
前記沈着が、噴霧により達成される、請求項1~119のいずれか記載の方法。
【請求項123】
前記沈着が、印刷により達成される、請求項1~119のいずれか記載の方法。
【請求項124】
前記沈着が、インクジェットプリンティングにより達成される、請求項1~119のいずれ
か記載の方法。
【請求項125】
前記インクジェットプリンティングが、複数のプリントヘッド又は複数のプリントジェ
ットを備えるプリンターを使用し、実行される、請求項124記載の方法。
【請求項126】
前記複数のプリントヘッド又はプリントジェットの各々が、個別に制御可能である、請
求項125記載の方法。
【請求項127】
前記プリントヘッド又はプリントジェットの各々が、残りのプリントヘッド又はプリン
トジェットとは独立して作動する、請求項125記載の方法。
【請求項128】
前記複数のプリントヘッド又はプリントジェットの少なくとも1個が、前記細胞組成物
を印刷し、並びに他の該複数のプリントヘッド又はプリントジェットの少なくとも1個が
、前記基板を印刷する、請求項125記載の方法。
【請求項129】
前記合成ポリマーが、前記ECM及び前記細胞組成物を物理的に支持する様式で、沈着さ
れる、請求項23記載の方法。
【請求項130】
前記合成ポリマーが、前記組織内の一連のファイバーとして沈着される、請求項23記載
の方法。
【請求項131】
前記合成ポリマーが、2回以上沈着され、且つ該2回以上のうちの少なくとも1回は、残
りの回(複数)と比べ、異なる方向に沈着される、請求項130記載の方法。
【請求項132】
前記合成ポリマーが、2回以上沈着され、且つ該2回以上の各回は異なる方向に沈着され
る、請求項130記載の方法。
【請求項133】
前記表面は、皮膚、表皮、又は真皮ではない、請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2012年9月4日に出願された米国特許仮出願第61/696,487号の優先権を主張す
るものであり、その出願の開示は、その全体が引用により本明細書中に組み込まれている
。
【0002】
(1. 緒言)
対象に細胞及び細胞外マトリクスの成分を沈着及び/又は投与することを含む、インビ
ボにおいて、3次元組織を作製する方法が、本明細書において提供される。
【背景技術】
【0003】
(2. 背景)
バイオプリンティング(例えば、器官プリンティング)は、生体材料に沈着する、改変
されたインクジェットプリンターなどの印刷装置が関与する、研究及び設計(engineering
)の分野である。この技術は、細胞を含む液滴の迅速な作出及び放出、それに続く基板上
へのそれらの正確な沈着に関与している。バイオプリンティングにより、基本的細胞材料
を使用し設計された組織及び器官は、今日標準的な移植方策において使用されるドナー由
来の組織及び器官の有望な代替品を表している。
【発明の概要】
【0004】
(3. 概要)
インビボにおいて3次元組織を形成する方法が、本明細書において提供される。一実施
態様において、細胞を含有する組成物の少なくとも1種を対象内又は上である表面上に沈
着することを含む、インビボにおいて3次元組織を形成する方法が、本明細書において提
供される。別の実施態様において、細胞を含有する組成物の少なくとも1種及び細胞外マ
トリクス(ECM)を含有する組成物の少なくとも1種を、対象内又は上である表面上に沈着す
ることを含む、インビボにおいて3次元組織を形成する方法が、本明細書において提供さ
れる。別の実施態様において、細胞を含有する組成物の少なくとも1種、細胞外マトリク
ス(ECM)を含有する組成物の少なくとも1種、及び他の追加成分の少なくとも1種を、対象
内又は上である表面上に沈着することを含む、インビボにおいて3次元組織を形成する方
法が、本明細書において提供される。本明細書記載の方法に従い使用することができる細
胞は、下記4.1.1項に説明されている。その上に細胞、ECM、及び/又は他の追加成分が本
明細書記載の方法に従い沈着されることができる組織及び器官は、下記4.1.2項に説明さ
れている。本明細書記載の方法に従い使用することができるECMは、下記4.1.3項に説明さ
れている。本明細書記載の方法に従いその上に細胞、ECM、及び/又は追加成分が沈着さ
れることができる表面は、下記4.1.4項に説明されている。
【0005】
一実施態様において、本明細書記載のインビボにおいて3次元組織を形成する方法にお
いて使用される細胞及びECMは、同じ組成物の一部として沈着される。別の実施態様にお
いて、本明細書記載のインビボにおいて3次元組織を形成する方法において使用される細
胞及びECMは、異なる組成物の一部として沈着される。具体的実施態様において、本明細
書記載のインビボにおいて3次元組織を形成する方法において使用されるECMは、流動性EC
Mを含む。別の具体的実施態様において、本明細書記載のインビボにおいて3次元組織を形
成する方法において使用される使用される細胞及びECMは、異なる組成物の一部として沈
着され、例えば、そこでECMは、例えば細胞の沈着前に細胞とは別に沈着されるか、及び
/又はそこでECMは、細胞の沈着に先立ち脱水される。ECMが脱水される実施態様において
、これは、その後所望の時点で、例えばECM及び細胞が沈着されている表面上に、細胞が
沈着される時点で、再水和されてよい。
【0006】
特定の実施態様において、本明細書記載のインビボにおいて3次元組織を形成する方法
において使用される細胞及び/又はECMは、例えば、増殖因子(類)、架橋剤(類)、重
合可能なモノマー(類)、ポリマー、ヒドロゲル(類)などの1種以上の追加成分の沈着
と同時に、その前に、又はその後に、対象内又は上の表面上に沈着される。特定の実施態
様において、1種以上の追加成分は、本明細書記載の方法に従い該表面上にバイオプリン
トされる。
【0007】
特定の実施態様において、本明細書記載のインビボにおいて3次元組織を形成する方法
において使用される細胞及び/又はECMは、生体分子の沈着と同時に、その前に、又はそ
の後に、対象内又は上の表面上に沈着され、ここで該生体分子は、コラーゲン型、フィブ
ロネクチン型、ラミニン型、又は組織接着剤である。特定の実施態様において、生体分子
(類)は、本明細書記載の方法に従い該表面上にバイオプリントされる。
【0008】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞及び/又はECMは
、対象内又は上の表面上に、バイオプリントされず、例えば、細胞及びECMは、バイオプ
リントされないが、むしろバイオプリンティングを含まない方法により該表面へ塗布され
る。特定の実施態様において、対象内又は上の表面上へバイオプリントされない細胞及び
/又はECMは、バイオプリントされた表面に塗布され、例えば、細胞及び/又は流動性ECM
は、足場、例えば対象内又は上にバイオプリントされた合成マトリクスなどの合成足場へ
、塗布される。具体的実施態様において、細胞及び/又はECMは、足場(例えば表面)の
一部のみ、例えば片側に塗布される。別の具体的実施態様において、細胞及び/又はECM
は、足場の全ての側に塗布され、すなわち、足場全体は、それに塗布された細胞及び/又
はECMを有する。別の具体的実施態様において、足場は、ポリカプロラクトン(PCL)である
。
【0009】
特定の実施態様において、本明細書記載のインビボにおいて3次元組織を形成する方法
において使用される細胞及び/又は流動性ECM(並びに追加成分)は、該表面上に印刷さ
れ、例えば、細胞及びECMは、バイオプリントされる(例えば、インクジェットプリンター
により)。特定の実施態様において、本明細書記載のインビボにおいて3次元組織を形成す
る方法において使用される細胞及び流動性ECM(並びに追加成分)は、該表面上に噴霧され
る。特定の実施態様において、本明細書記載のインビボにおいて3次元組織を形成する方
法において使用される細胞及び/又は流動性ECM(並びに追加成分)は、エアロゾル化によ
り、該表面上へ沈着される。
【0010】
特定の実施態様において、その上に細胞、ECM、及び/又は追加成分が沈着され得る表
面は、人工表面、すなわち、人為的に製造された表面を含む。別の具体的実施態様におい
て、その上に細胞、ECM、及び/又は追加成分が沈着され得る表面は、対象(例えばヒト
対象)の組織又は器官(又はそれらの一部分)を含む。特定の実施態様において、該組織
又は器官の表面は、脱細胞化されてよく、例えば、組織又は器官の表面の全て又は一部か
ら細胞を除去するように処理されてよい。具体的実施態様において、その上に細胞、ECM
、及び/又は追加成分が本明細書記載の方法に従い沈着され得る表面は、バイオプリント
された表面、例えば、本明細書記載の方法に従いバイオプリントされた表面である。具体
的実施態様において、表面は、ポリカプロラクトン(PCL)である。
【0011】
具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、治療目的で使用され、例えばこれら
の方法は、具体的組織型に対応している細胞、又は複数の組織型に対応している細胞を、
該細胞の沈着により恩恵を受けるであろう該対象の表面(すなわち、組織又は器官)上へ
沈着するために使用される。そのような方法は、該対象の該表面上へのECM(例えば、流
動性ECM)及び/又は追加成分の沈着を追加的に含む。
【0012】
別の態様において、細胞及びECM(例えば流動性ECM)を含有する組成物が、本明細書に
おいて提供され、ここで該組成物は、本明細書記載の方法における使用に適している。同
じく、1個以上の容器、該組成物、並びに本明細書記載の1以上の方法に従う該組成物の使
用に関する指示書を含むキットも、本明細書において提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
(3.1. 図面の簡単な説明)
【
図1】
図1は、様々な角度でバイオプリントされたポリカプロラクトン(PCL)を含有する足場、及び様々な細孔サイズの足場が製造されたそのような方法を描いている。
【0014】
【
図2】
図2は、その上に細胞外マトリクス(ECM)が、足場の両側に塗布され、引き続き脱水されたバイオプリントされた足場の複数の図を描いている。
【0015】
【
図3】
図3は、細胞増殖アッセイの結果を描いている。バイオプリントされたPCL及び脱水されたECMを含むハイブリッド足場上で培養された胎盤幹細胞は、8日培養期間にわたり増殖する。
【0016】
【
図4】
図4は、細胞生存能アッセイの結果を描いている。バイオプリントされたPCL及び脱水されたECMを含むハイブリッド足場上で培養された胎盤幹細胞は、8日培養期間にわたり、増殖して生存を維持する。
【0017】
【
図5】
図5は、PCL、ECM、及び胎盤幹細胞を含み、それらのそれぞれは、層(PCL及びECM/細胞の層)としてバイオプリントされた、損傷がない3次元ハイブリッド足場を描いている。
【0018】
【
図6】
図6は、胎盤幹細胞が、7日培養期間中、3次元バイオプリントされた足場内に分散することを明らかにしている。
【0019】
【
図7】
図7は、細胞生存度アッセイの結果を描いている。ECM及びPCLにバイオプリントされて3次元ハイブリッド足場を形成する胎盤幹細胞は、7日培養期間中、増殖して生存を維持する。
【0020】
【
図8】
図8は、ECM及びPCLと共にバイオプリントされて3次元ハイブリッド足場を形成する幹細胞が、7日培養期間中、ハイブリッド足場内のECM内に広がることを明らかにしている。
【0021】
【
図9】
図9は、細胞増殖アッセイの結果を描いている。PCL、ECM、及び胎盤幹細胞のバイオプリンティングにより製造された3次元ハイブリッド足場内で培養された胎盤幹細胞は、7日培養期間中増殖する。
【0022】
【
図10】
図10は、PCL、胎盤のECM、及びインスリン-産生細胞(β-TC-6細胞)を含むバイオプリントされた足場を描いている。
【0023】
【
図11】
図11は、細胞増殖アッセイの結果を描いている。PCL、胎盤のECM、及びインスリン-産生細胞を含むバイオプリントされた足場内のインスリン-産生細胞(β-TC-6細胞)の数は、14日培養期間にわたって、一定であり続けた。
【0024】
【
図12】
図12は、PCL、胎盤のECM、及びインスリン-産生細胞(β-TC-6細胞)を含むバイオプリントされた足場からのインスリン生成のレベルを描いている。
【0025】
【
図13】
図13は、グルコースチャレンジへの曝露後(A)又は対照条件下(B、C)の、PCL、胎盤のECM、及びインスリン-産生細胞(β-TC-6細胞)を含むバイオプリントされた足場からのインスリン生成のレベルを描いている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(4. 詳細な説明)
インビボにおいて3次元組織を形成する方法を、本明細書において提供する。一実施態
様において、細胞を含有する少なくとも1種の組成物を、対象内又は上である表面上に沈
着することを含む、インビボにおいて3次元組織を形成する方法が、本明細書において提
供される。別の実施態様において、細胞を含有する少なくとも1種の組成物及び細胞外マ
トリクス(ECM)を含有する少なくとも1種の組成物を、対象内又は上である表面上に沈着す
ることを含む、インビボにおいて3次元組織を形成する方法が、本明細書において提供さ
れる。別の実施態様において、細胞を含有する少なくとも1種の組成物、細胞外マトリク
ス(ECM)を含有する少なくとも1種の組成物、及び少なくとも1種の他の追加成分を、対象
内又は上である表面上に沈着することを含む、インビボにおいて3次元組織を形成する方
法が、本明細書において提供される。本明細書記載の方法に従い使用されることができる
細胞は、下記4.1.1項に説明されている。その上に細胞、ECM、及び/又は他の追加成分が
本明細書記載の方法に従い沈着されることができる組織及び器官は、下記4.1.2項に説明
されている。本明細書記載の方法に従い使用されることができるECMは、下記4.1.3項に説
明されている。本明細書記載の方法に従いその上に細胞、ECM、及び/又は追加成分が沈
着されることができる表面は、下記4.1.4項に説明されている。
【0027】
一実施態様において、細胞を含有する少なくとも1種の組成物を、対象内又は上である
表面上に沈着することを含む、インビボにおいて3次元組織を形成する方法が、本明細書
において提供される。具体的実施態様において、該細胞は、バイオプリンターを用いて沈
着される。別の具体的実施態様において、該細胞は、単独の細胞型を含む。別の具体的実
施態様において、該細胞は、2種以上の細胞型を含む。
【0028】
別の実施態様において、細胞を含有する少なくとも1種の組成物及び細胞外マトリクス(
ECM)を含有する少なくとも1種の組成物を、対象内又は上である表面上に沈着することを
含む、インビボにおいて3次元組織を形成する方法が、本明細書において提供され、ここ
で該ECMは、流動性ECMを含む。具体的実施態様において、該細胞及び該ECMは、バイオプ
リンターを用いて沈着される。別の具体的実施態様において、該細胞は、単独の細胞型を
含む。別の具体的実施態様において、該細胞は、2種以上の細胞型を含む。
【0029】
別の実施態様において、細胞及び細胞外マトリクス(ECM)を含有する組成物を、対象内
又は上である表面上に沈着することを含む、インビボにおいて3次元組織を形成する方法
が、本明細書において提供され、ここで該ECMは、流動性ECMを含む。具体的実施態様にお
いて、該細胞及び該ECMは、バイオプリンターを用いて沈着される。別の具体的実施態様
において、該細胞は、単独の細胞型を含む。別の具体的実施態様において、該細胞は、2
種以上の細胞型を含む。
【0030】
別の実施態様において、細胞、細胞外マトリクス(ECM)、及び少なくとも1種の追加成分
を、対象内又は上である表面上に沈着することを含む、インビボにおいて3次元組織を形
成する方法が、本明細書において提供される。具体的実施態様において、該細胞、該ECM
、及び該1種以上の追加成分は、バイオプリンターを用いて沈着される。別の具体的実施
態様において、該細胞は、単独の細胞型を含む。別の具体的実施態様において、該細胞は
、2種以上の細胞型を含む。別の具体的実施態様において、該細胞、該ECM、及び該1種以
上の追加成分は、同じ組成物の一部として配合される。別の具体的実施態様において、該
細胞、該ECM、及び該1種以上の追加成分は、個別の組成物の一部として配合される。別の
具体的実施態様において、該1以上の追加成分は、増殖因子、重合可能なモノマー、架橋
剤、ポリマー、又はヒドロゲルである。
【0031】
特定の実施態様において、その上に細胞、ECM、及び/又は追加成分が本明細書記載の
方法に従い沈着され得る表面は、人工表面、すなわち、人為的に製造された表面(例えば
、人工装具)を含む。別の具体的実施態様において、その上に細胞、ECM、及び/又は追加
成分が本明細書記載方法に従い沈着され得る表面は、対象(例えばヒト対象)内の組織又
は器官(又はそれらの一部分)を含む。特定の実施態様において、対象内の該組織及び器
官の表面は、脱細胞化されてよく、例えば、組織又は器官の表面の全て又は一部から細胞
を除去するように処理されてよい。具体的実施態様において、その上に細胞、ECM、及び
/又は追加成分が本明細書記載の方法に従い沈着され得る表面は、バイオプリントされた
表面、例えば、本明細書記載の方法に従いバイオプリントされた表面である。具体的実施
態様において、表面は、合成材料、例えば合成ポリマーを含む。別の具体的実施態様にお
いて、合成ポリマーは、PCLである。
【0032】
特定の実施態様において、細胞及びECM(例えば流動性ECM)は、同時に沈着されないが
、層状に沈着される。具体的実施態様において、細胞の層が、対象内又は上の表面上に沈
着され、それに対象内又は上の表面上のECM層の沈着が続く。別の具体的実施態様におい
て、ECM層が、対象内又は上の表面上に沈着され、それに対象内又は上の表面上への細胞
層の沈着が続く。特定の実施態様において、ECMの複数層が、対象内又は上の表面上に沈
着され、それに対象内又は上の表面上への細胞の複数層の沈着が続くことができ、その逆
もまたあてはまる。同様に、細胞及び/又はECMの沈着と同時、その前に又はその後に沈
着される追加成分は、本明細書記載の方法に従い細胞とECMの間に層化され得る。
【0033】
特定の実施態様において、細胞及びECM(例えば、流動性ECM)は、その上に沈着される
対象内又は上の表面が、細胞及びECMの両方により全体が被覆されるように、沈着される
。他の実施態様において、細胞及びECM(例えば、流動性ECM)は、その上に沈着される対
象内又は上の表面が、細胞及びECMの両方により部分的に被覆されるように、沈着される
。
【0034】
特定の実施態様において、細胞及びECM(例えば流動性ECM)は、その上に沈着される対
象内又は上の表面が、特定の所望の領域において細胞により被覆され;並びに、特定の所
望の領域においてECMにより被覆されるように、沈着され、ここでそのような特定の領域
は、重なってもよく、重ならなくともよい。
【0035】
特定の実施態様において、細胞及びECM(例えば流動性ECM)は、3次元的に表面上に沈
着/印刷されてよい。本明細書において使用される「3次元プリンティング」又は「3次元
沈着」とは、例えば、バイオプリンターのプリントヘッドが、3次元表面(例えば、対象
内の器官又は骨)の下、上、及び周りを移動するような、例えばプリンターヘッドが、特
定された経路に沿って回転するように、機械的に制御される、印刷/沈着プロセスをいう
。本明細書において使用される3次元プリンティング及び3次元沈着は、プリンティングが
、平坦/平面/2次元表面上に組織を構築するために開始することにより実行される、当
該技術分野において公知であるバイオプリンティングの標準方法とは対照的である。
【0036】
(4.1 バイオプリンティング)
本明細書において使用される「バイオプリンティング」は一般に、例えば、インクジェ
ットプリンティング技術等の標準的又は改変された印刷技術を使用する、生細胞に加え、
他の成分(例えば、流動性ECM;合成マトリクス)の表面上への沈着をいう。ヒドロゲル
と組み合わせた細胞を含む、表面上への細胞沈着及び細胞バイオプリンティングの基本的
方法は、Warrenらの米国特許第6,986,739号、Bolandらの米国特許第7,051,654号、Yooら
の米国特許出願2009/0208466及びXuらの米国特許出願2009/0208577に記載されており、こ
れら各文献の開示はそれらの全体が引用により本明細書中に組み込まれている。加えて、
本明細書記載の方法に適したバイオプリンターは、例えばEnvisiontec社(Gladbeck、ドイ
ツ国)製3D-Bioplotter(登録商標)、及びOrganovo社(San Diego、CA)製NovoGen MMXバイオ
プリンター(登録商標)等市販されている。
【0037】
本明細書記載の方法において使用されるバイオプリンターは、例えば、プリンタードラ
イバーソフトウェア及び/又はプリンターの物理的組成(makeup)の改変により、温度、湿
度、剪断力、印刷速度、及び/又は吐出頻度(firing frequency)を制御することが可能で
ある機構及び/又はソフトウェアを含むことができる。特定の実施態様において、バイオ
プリンターのソフトウェア及び/又はハードウェアは、好ましくは、印刷時、細胞温度を
約37℃に維持するように構築及び/又は設定され得る。
【0038】
特定の実施態様において、インクジェット印刷装置は、2次元又は3次元プリンターを含
んでよい。特定の実施態様において、バイオプリンターは、DCソレノイドインクジェット
バルブ、例えばインクジェットバルブに連結された、印刷前に例えば、流動性組成物中の
細胞などの1種以上の細胞型、及び/又はECM(例えば流動性ECM)を含むための1個以上の
貯留器を備える。バイオプリンターは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれより
も多い貯留器、例えば本明細書記載の組織及び器官の構築に使用される各細胞型又は各EC
Mについて1個を有することができる。これらの細胞は、空気圧、機械圧によるか、又は他
の手段により、貯留器から、インクジェットバルブへ送達されることができる。典型的に
は、バイオプリンター、例えばバイオプリンター内のプリントヘッドは、1種以上の細胞
型、及び該ECMが、予め決められたパターンで沈着されるように、コンピュータ制御され
ている。予め決定された該パターンは、それから細胞が誘導されるか又は入手される器官
又は組織内の該1種以上の細胞型の天然の配置を再現又は反復するパターンであるか、あ
るいは該1種以上の細胞型の天然の配置とは異なるパターンであることができる。
【0039】
特定の実施態様において、本明細書に提供される方法において使用されるバイオプリン
ターは、例えばNiklasenらの米国特許第6,537,567号を参照し、感熱式バブルインクジェ
ットプリンターであるか、又は例えば周波数最大30kHz及び12~100ワットの範囲の電源を
使用する、圧電結晶発振式プリントヘッドであることができる。バイオプリンターのプリ
ントヘッドノズルは、一部の実施態様においては、各々独立して直径0.05~200μm、又は
直径0.5~100μm、又は直径10~70μm、又は直径20~60μmである。更なる実施態様にお
いて、ノズルは、各々独立して直径約40又は50μmである。同じ又は異なる直径の複数の
ノズルを使用することができる。一部の実施態様においては、ノズルは、円形開孔部を有
し;他の実施態様においては、本発明の精神から逸脱しない、例えば楕円形、正方形、長
方形などの、その他の好適な形状が使用される。
【0040】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用されるバイオプリンターは、
複数のプリントヘッド及び/又は複数のプリントジェットを備え、ここで該複数のプリン
トヘッド又はプリントジェットは、特定の実施態様において、個別に制御可能であること
ができる。特定の実施態様において、該プリントヘッド又はプリントジェットの各々は、
残りの該プリントヘッド又はプリントジェットから独立して作動する。特定の実施態様に
おいて、該複数のプリントヘッド又は複数のプリントジェットの少なくとも1つは、細胞
を含有する組成物を印刷することができ、且つ該複数のプリントヘッド又は複数のプリン
トジェットの少なくとも1つは、ECMを含有する組成物を印刷することができる。特定の実
施態様において、該複数のプリントヘッド又は複数のプリントジェットの少なくとも1つ
は、細胞を含有する組成物を印刷することができ、該複数のプリントヘッド又は複数のプ
リントジェットの少なくとも1つは、ECMを含有する組成物を印刷することができ、及び該
複数のプリントヘッド又は複数のプリントジェットの少なくとも1つは、追加成分を含有
する組成物を印刷することができる。
【0041】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用されるバイオプリンターの1
つ以上のプリントヘッド又はプリントジェットは、特定の表面上への印刷に適するように
、改変されることができる。例えば、プリントヘッド又はプリントジェットは、これを特
定の外科的器具、例えば腹腔鏡などに取り付けることにより、改変され得る。そのような
実施態様に従い、外科的器具は、例えばカメラなどの、印刷手順を補助する1種以上の他
の部品に取り付けられ得る。
【0042】
特定の実施態様において、印刷されるべき組織又は器官の解剖学的画像は、ソフトウェ
ア、例えばコンピュータ-支援設計(CAD)ソフトウェアプログラムを使用し、構築されるこ
とができる。そのような実施態様に従い、印刷されるべき組織又は器官の構造の代表であ
る3次元表面上の3次元プリンティングを可能にするプログラムが作製されることができる
。例えば、骨を印刷することが望ましい場合、骨の解剖学的画像が構築され、且つバイオ
プリンターのプリンターヘッドが、印刷時に対象の表面の内側の3次元骨表面の周りを回
転するように指示するプログラムが作製されてよい。
【0043】
特定の実施態様において、その上が印刷されるべき組織又は器官の表面は、表面マップ
を形成するために、該対象内又は上が走査され、並びに該表面マップは、印刷されるべき
細胞、ECM、及び/又は任意の追加成分の沈着をガイドするために使用される。そのよう
な走査は、レーザー、電子線、磁気共鳴画像法、電磁波、又はコンピュータ断層撮影法の
使用を含むが、これらに限定されるものではない。該表面の走査は、解像度少なくとも10
00、100、10、1、又は0.1ミクロンを含むことができる。
【0044】
特定の実施態様において、本明細書に提供されるバイオプリンティングの方法は、細胞
(例えば、単独の細胞を含有する組成物又は複数の細胞を含有する組成物)及び流動性細
胞外マトリクス(ECM)の個別の液滴の、対象内又は上の表面上への送達/沈着を含む。
【0045】
特定の実施態様において、本明細書に提供されるバイオプリンティングの方法は、単独
の細胞型及び流動性ECMの対象内又は上の表面上への沈着を含む。そのような方法に従い
使用することができる細胞型の例は、下記4.1.1項に提供される。流動性ECMを含むECMは
、下記4.1.3項に説明される。
【0046】
他の実施態様において、本明細書に提供されるバイオプリンティングの方法は、複数の
(例えば、2、3、4、5種又はそれよりも多い)細胞型及び流動性ECMの、対象内又は上の
表面上への沈着を含む。具体的実施態様において、複数の細胞型は、同じ組成物の一部と
して沈着され、すなわち、細胞の給源は、複数の細胞型を含む単独の組成物である。別の
具体的実施態様において、複数の細胞型は、異なる組成物の一部として沈着され、すなわ
ち、細胞の給源は、複数の細胞型を含む個別の組成物である。別の具体的実施態様におい
て、複数の細胞型の一部分は、一つの組成物(例えば、2種以上の細胞型が単独の組成物
中にある)の一部として沈着され、並びに複数の型の別の一部分は、異なる組成物(例え
ば、1種以上の細胞型が単独の組成物中にある)として沈着される。そのような方法に従
い使用することができる細胞型の例は、下記4.1.2項に提示される。
【0047】
具体的実施態様において、沈着されるべき細胞及び流動性ECMは、同じ組成物の一部と
して一緒に(例えば、同時に)対象内又は上の表面上に沈着される。別の具体的実施態様
において、沈着されるべき細胞及び流動性ECMは、異なる組成物の一部として一緒に対象
内又は上の表面上に沈着される。別の具体的実施態様において、沈着されるべき細胞及び
流動性ECMは、個別に(例えば異なる時点で)対象内又は上の表面上に沈着される。
【0048】
特定の実施態様において、細胞及び流動性ECMは、1種以上の追加成分と共に対象内又は
上の表面上に沈着される。一実施態様において、1種以上の追加成分は、これらの細胞と
同じ組成物中に配合される。別の実施態様において、1種以上の追加成分は、ECMと同じ組
成物中に配合される。別の実施態様において、1種以上の追加成分は、細胞及びECMと同じ
組成物中に配合される(すなわち、単独の組成物が、細胞、流動性ECM、及び1種以上の追
加成分を含む)。別の実施態様において、1種以上の追加成分は、細胞及び/又はECMを含
有する組成物とは個別である組成物中に配合され、且つ細胞及び/又はECMの対象内又は
上の表面上への沈着と同時に、その前に、又はその後に沈着される。具体的実施態様にお
いて、1種以上の追加成分は、細胞(類)の生存、分化、増殖などを促進する。別の具体
的実施態様において、1種以上の追加成分は、架橋剤(4.1.3.2項参照)を含む。別の具体
的実施態様において、1種以上の追加成分は、ヒドロゲルを含む。別の具体的実施態様に
おいて、1種以上の追加成分は、合成ポリマーを含む。
【0049】
当業者は、細胞及び流動性ECM、並びに本明細書記載の方法に従い使用される任意の追
加成分は、形成される特定の組織又は器官に応じ、プリンターの個別のノズルから、又は
共通の組成物中でプリンターの同じノズルを通して、印刷され得ることを認識するであろ
う。当業者により、本印刷は、同時に若しくは連続して、又はそれらの任意の組合せであ
ることができること、並びに一部の成分(例えば、細胞、流動性ECM、又は追加成分)は
、第一のパターンの形状で印刷されることができ、及び一部の成分は、第二のパターンの
形状で印刷されることができることなども、認識されるであろう。印刷の特定の組合せ及
び様式は、印刷されるべき対象内の特定の組織又は器官によって決まるであろう。
【0050】
特定の実施態様において、細胞、ECM、及び/又は任意の他の材料(例えば、合成マト
リクス、例えばPCL)は、所望の結果を得るために、特定されたパターンでバイオプリン
トされ得る。例えばバイオプリントされる材料(例えば細胞、ECM、マトリクス、及び本
明細書記載の他の成分)は、特定の細孔サイズを有する3次元構造など、特定の望ましい
パターンを作製するために、変動する角度で層状に、バイオプリントされてよい。具体的
実施態様において、バイオプリントされる材料(例えば、細胞、ECM、マトリクス、及び
本明細書記載の他の成分)は、箱様に見える所望のサイズの細孔を伴うバイオプリントさ
れた構造を作製するために、十字交差様式で、印刷される。別の具体的実施態様において
、バイオプリントされる材料(例えば、細胞、ECM、マトリクス、及び本明細書記載の他
の成分)は、三角形又は菱形様に見える所望のサイズの細孔を作製するために、角度をつ
けて、印刷される。例えば、バイオプリントされる材料(例えば、細胞、ECM、マトリク
ス、及び本明細書記載の他の成分)は、所望のパターンを作製するために、特定の角度で
、例えば角度30°、角度45°、角度60°で、印刷される。そのような印刷方法に従い、所
望の品質を有するバイオプリントされた構造、例えば、細胞成長及び増殖を助長する能力
を有するバイオプリントされた構造が、作製され得る。下記実施例1を参照されたい。具
体的実施態様において、マトリクス、例えば合成マトリクスは、該バイオプリントされた
マトリクス上の細胞の成長及び増殖の支援に貢献する特定のパターンで、バイオプリント
される。具体的実施態様において、合成マトリクスは、PCLである。
【0051】
(4.1.1 細胞)
原核細胞及び真核細胞を含む、当該技術分野において公知の任意の細胞の型を、本明細
書記載の方法に従い使用することができる。
【0052】
本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、同系(すなわち、組織移植拒絶反応を最
小化するために、レシピエント対象の細胞に関して遺伝的に同一であるか又は近い)、異
系(すなわち、レシピエント対象と同じ種の遺伝的に同一でないメンバーに由来)、又は
異種(すなわち、レシピエント対象とは異なる種のメンバーに由来)であることができる
。同系細胞は、自家(すなわち、レシピエント対象由来)及び同質(isogeneic)(すなわ
ち、遺伝的に同一であるが異なる対象に由来、例えば同じ双子に由来)である細胞を含む
。細胞は、例えば、ドナー(生存又は死体のいずれか)から入手するか、又は樹立された
細胞株若しくは細胞系統から誘導することができる。例えば、細胞は、当該技術分野にお
いて公知の標準の生検技術を使用し、ドナー(例えば、可能性のあるレシピエント)から
収集することができる。
【0053】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、流動性の生理
的に許容し得る組成物、例えば、水、緩衝液(例えば、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液な
ど)、液体培地(例えば、0.9N食塩水、クレブス液、改変クレブス液、イーグル培地、改
変イーグル培地(MEM)、ダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)、ハンクス平衡塩溶液など
)などの中に含まれる。
【0054】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、1種以上の当
該技術分野において公知のプロテアーゼ、例えば、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、トリプ
シン、LIBERASEなどを使用し、組織又は器官から単離されている初代細胞を含んでよい。
器官組織は、組織をプロテアーゼで処理する前、その間、又はその後、例えば、さいの目
に切る、浸解する(macerating)、ろ過する等により物理的に分散できる。細胞は、例えば
、均一な又は実質的に均一な細胞集団を製造するため、特別な細胞型を選ぶため等に、本
明細書記載の方法で細胞を使用する前に、標準的な当分野で公知の細胞培養技術を使用し
て培養できる。
【0055】
一実施態様において、本明細書記載の方法において使用される細胞型(類)は、幹細胞
を含む。本明細書記載の方法に従い使用することができる幹細胞の非限定的例は、以下を
含む:胚性幹細胞、胚性生殖細胞、人工多能性幹細胞、間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹
細胞(BM-MSC)、組織プラスチック接着性胎盤幹細胞(PDAC)、臍帯幹細胞、羊水幹細胞、羊
膜由来接着性細胞(AMDAC)、骨形成性の胎盤接着性細胞(OPAC)、脂肪幹細胞、角膜上皮幹
細胞、歯髄幹細胞、筋芽細胞、内皮前駆細胞、神経幹細胞、脱落歯由来幹細胞、毛嚢幹細
胞、真皮幹細胞、単為生殖由来幹細胞、初期化された幹細胞、羊膜由来接着性細胞、又は
サイドポピュレーション幹細胞。
【0056】
具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、胎盤幹細胞(例えば、米国特許第7,
468,276号及び米国特許第8,057,788号に記載された胎盤幹細胞)の使用を含む。別の具体
的実施態様において、該胎盤幹細胞は、PDAC(登録商標)である。一実施態様において、該
PDACは、CD34-、CD10+、CD105+、及びCD200+である。別の実施態様において、該PDACは、
CD34-、CD10+、CD105+、及びCD200+であり、並びに追加的にCD45-、CD80-、CD86-、及び
/又はCD90+である。
【0057】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、AMDAC(例えば、国際公開公報
第WO10/059828号に記載のAMDAC)の使用を含む。一実施態様において、該AMDACは、Oct4-
である。別の実施態様において、該AMDACは、CD49f+である。別の実施態様において、該A
MDACは、Oct4-及びCD49f+である。
【0058】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、PDAC及びAMDACの使用を含む。
【0059】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、BM-MSCの使用を含む。
【0060】
別の実施態様において、本明細書記載の方法において使用される細胞型(類)は、分化
した細胞を含む。具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される分化し
た細胞(類)は、内皮細胞、上皮細胞、真皮細胞、内胚葉細胞、中胚葉細胞、線維芽細胞
、骨細胞、軟骨細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、肝細胞、膵臓細胞、及び/又は
間質細胞を含む。別の具体的実施態様において、細胞は、インスリン-産生細胞、例えば
、膵臓細胞(例えば島細胞)、又はインスリン-産生細胞株、例えば、β-TC-6細胞である
。
【0061】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される分化した細胞(類
)は、唾液腺粘液性細胞、唾液腺漿液性細胞、フォン・エブネル腺細胞、乳腺細胞、涙腺
細胞、耳道腺細胞、エクリン汗腺暗調細胞、エクリン汗腺明調細胞、アポクリン汗腺細胞
、モル腺細胞、脂腺細胞、ボウマン腺細胞、ブルンネル腺細胞、精嚢細胞、前立腺細胞、
尿道球腺細胞、バルトリン腺細胞、リトレ腺細胞、子宮内膜細胞、単離された杯細胞、胃
表層粘液細胞、胃腺酵素原細胞、胃腺酸分泌細胞、膵腺房細胞、パネート細胞、II型肺胞
上皮細胞、及び/又はクララ細胞を含む。
【0062】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される分化した細胞(類
)は、成長ホルモン産生細胞、乳腺刺激ホルモン産生細胞、甲状腺刺激ホルモン産生細胞
、性腺刺激ホルモン産生細胞、副腎皮質刺激ホルモン産生細胞、下垂体中葉由来の細胞、
巨大細胞神経分泌細胞、腸管細胞、気道細胞、甲状腺上皮細胞、傍濾胞細胞、副甲状腺細
胞、副甲状腺主細胞、好酸性細胞、副腎腺細胞、クロム親和性細胞、ライディッヒ細胞、
内卵胞膜細胞、黄体細胞、顆粒膜黄体細胞、莢膜黄体様細胞、傍糸球体細胞、緻密斑細胞
、極周囲細胞、及び/又はメサンギウム細胞を含む。
【0063】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される分化した細胞(類
)は、血管及びリンパ管内皮有孔細胞、血管及びリンパ管内皮連続型細胞、血管及びリン
パ管内皮脾細胞、滑膜細胞、漿膜細胞(腹膜の、胸膜の、及び心膜腔の内壁)、扁平上皮
細胞、円柱細胞、暗調細胞、前庭膜細胞(耳の内リンパ腔内壁)、血管条基底細胞、血管
条周辺細胞(耳の内リンパ腔内壁)、クラウディウス細胞、ベッチェル細胞、脈絡叢細胞
、軟膜クモ膜扁平上皮細胞、色素毛様体上皮細胞、非色素毛様体上皮細胞、角膜内皮細胞
、栓細胞、気道線毛細胞、卵管線毛細胞、子宮内膜線毛細胞、精巣網線毛細胞、精巣輸出
管線毛細胞、及び/又は線毛性上衣細胞を含む。
【0064】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される分化した細胞(類
)は、表皮角化細胞、表皮基底細胞、手指爪及び足指爪の角化細胞、爪床基底細胞、毛幹
の毛髄質細胞、毛幹の毛皮質細胞、毛幹の毛小皮細胞、毛根の毛小皮鞘細胞、毛根ハック
スレー層の鞘細胞、毛根ヘンレ層の鞘細胞、外毛根鞘細胞、毛母細胞、重層扁平上皮の表
面上皮細胞、上皮基底細胞、及び/又は泌尿器上皮細胞を含む。
【0065】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される分化した細胞(類
)は、耳のコルチ器官の内有毛細胞、耳のコルチ器官の外有毛細胞、コルチ器官の内柱細
胞、コルチ器官の外柱細胞、コルチ器官の内指骨細胞、コルチ器官の外指骨細胞、コルチ
器官の境界細胞、コルチ器官のヘンゼン細胞、前庭器支持細胞、味蕾支持細胞、嗅上皮支
持細胞、シュワン細胞、サテライト細胞、腸内グリア細胞、嗅上皮基底細胞、冷感受性一
次感覚ニューロン、熱感受性一次感覚ニューロン、表皮のメルケル細胞、嗅覚受容体神経
、痛み感受性一次感覚ニューロン、光受容体桿体細胞、光受容体青色感受性錐体細胞、光
受容体緑色感受性錐体細胞、光受容体赤色感受性錐体細胞、固有受容性一次感覚ニューロ
ン、触覚感受性一次感覚ニューロン、I型頸動脈小体細胞、II型頸動脈小体細胞(血液pH
センサ)、内耳前庭器官のI型有毛細胞(加速度及び重力)、内耳前庭器官のII型有毛細
胞、I型味蕾細胞、コリン作動性神経細胞、アドレナリン作動性神経細胞、及び/又はペ
プチド作動性神経細胞を含む。
【0066】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される分化した細胞(類
)は、星状細胞、ニューロン、希突起膠細胞、紡錘形ニューロン、前水晶体上皮細胞、ク
リスタリン含有水晶体線維細胞、肝細胞、脂肪細胞、白色脂肪細胞、褐色脂肪細胞、肝臓
脂肪細胞、腎臓糸球体壁細胞、腎臓糸球体有足細胞、腎臓近位尿細管刷子縁細胞、ヘンレ
係蹄の細い部分の細胞、腎臓遠位尿細管細胞、腎臓集合管細胞、I型肺胞上皮細胞、膵管
細胞、非線条導管細胞、導管細胞、腸管刷子縁細胞、外分泌腺線条導管細胞、胆嚢上皮細
胞、精巣輸出管非線毛細胞、精巣上体主細胞、及び/又は精巣上体基底細胞を含む。
【0067】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される分化した細胞(類
)は、エナメル芽細胞上皮細胞、半月面上皮細胞、コルチ器官歯間上皮細胞、疎性結合組
織線維芽細胞、角膜実質細胞、腱線維芽細胞、骨髄網状組織線維芽細胞、非上皮性線維芽
細胞、周細胞、髄核細胞、セメント芽細胞/セメント細胞、象牙芽細胞、オドントサイト(
odontocyte)、ヒアリン軟骨細胞、線維軟骨細胞、弾性軟骨細胞、骨芽細胞、骨細胞、破
骨細胞、骨前駆細胞、硝子体細胞、星細胞(耳)、肝星細胞(伊東細胞)、膵星細胞、赤
色骨格筋細胞、白色骨格筋細胞、中間体骨格筋細胞、筋紡錘の核袋細胞、筋紡錘の核鎖細
胞、サテライト細胞、固有心筋細胞、結節性心筋細胞、プルキンエ線維細胞、平滑筋細胞
、虹彩の筋上皮細胞、及び/又は外分泌腺の筋上皮細胞を含む。
【0068】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される分化した細胞(類
)は、網状赤血球、巨核球、単球、結合組織マクロファージ、表皮ランゲルハンス細胞、
樹状細胞、小膠細胞、好中球、好酸球、好塩基球、マスト細胞、ヘルパーT細胞、サプレ
ッサーT細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞
、メラニン形成細胞、網膜色素上皮細胞、卵原細胞/卵母細胞、精子細胞、精母細胞、精
原細胞、精子、卵胞細胞、セルトリ細胞、胸腺上皮細胞、及び/又は間質性腎臓細胞を含
む。
【0069】
本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、組成物中に配合されることができる。特
定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、単独の細胞型のみ
を含む組成物中に配合され、すなわち、この組成物中の細胞の集団は、均一である。他の
実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、2種以上の細胞型を含
む組成物中に配合され、すなわち、この組成物中の細胞の集団は、不均一である。
【0070】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、追加的に流動
性ECMを含有する組成物中に配合される(4.1.3項参照)。あるいは、該流動性ECMは、本
明細書記載の方法に従う個別の組成物の一部として、該細胞の沈着と同時に、その前に、
又はその後に沈着されてよい。特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用
される細胞は、追加的に1種以上の合成モノマー又はポリマーを含有する組成物中に配合
される。あるいは、該合成モノマー又はポリマーは、本明細書記載の方法に従う個別の組
成物の一部として、該細胞の沈着と同時に、その前に、又はその後に沈着されてよい。特
定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、流動性ECM及び1種
以上の合成モノマー又はポリマーを追加的に含有する組成物中に配合される。特定の実施
態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、架橋剤を追加的に含有する
組成物中に配合される。あるいは、該架橋剤は、本明細書記載の方法に従う個別の組成物
の一部として、該細胞の沈着と同時に、その前に、又はその後に沈着されてよい。
【0071】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、1種以上の追
加成分、例えば細胞(類)の生存、分化、増殖などを促進する成分を追加的に含有する組
成物中に配合される。そのような成分は、栄養素、塩類、糖類、生存因子、及び増殖因子
を含むことができるが、これらに限定されるものではない。本明細書記載の方法に従い使
用することができる増殖因子の例は、インスリン-様成長因子(例えばIGF-1)、トランス
フォーミング増殖因子-β(TGF-β)、骨形態形成タンパク質、線維芽細胞増殖因子、血小
板由来増殖因子(PDGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、結合組織増殖因子(CTGF)、塩基性線維
芽細胞増殖因子(bFGF)、上皮細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子(FGF)(1、2及び3)、オ
ステオポンチン、骨形態形成タンパク質-2、ソマトトロピンなどの成長ホルモン、細胞誘
引物質及び付着物質など、並びにそれらの混合物を含むが、これらに限定されるものでは
ない。あるいは、細胞(類)の生存、分化、増殖などを促進する1種以上の該追加成分は
、本明細書記載の方法に従う個別の組成物の一部として、該細胞の沈着と同時に、その前
に、又はその後に沈着されてよい。
【0072】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、初代培養細胞
、例えばインビトロにおいて培養された細胞である。そのような初代細胞は、1回又は複
数回、例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回又は11回以上、継代され
得る。具体的実施態様において、該初代細胞は、6回以下継代される。別の具体的実施態
様において、該初代細胞は、その内又は上に印刷される対象に由来している。
【0073】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、その細胞によ
り天然には生成されないタンパク質(類)若しくはポリペプチド(類)を生成するように
遺伝子操作されているか、又はその細胞により天然に生成されるよりもより多い量のタン
パク質(類)若しくはポリペプチド(類)を生成するように遺伝子操作されている。具体
的実施態様において、そのような細胞は、分化した細胞を含む又はからなる。別の具体的
実施態様において、該細胞は、該タンパク質又はポリペプチドの生成を指示するプラスミ
ドを含む。そのような細胞は、タンパク質又はポリペプチドの量が、制御されるか及び/
又は最適化されることができるような方式で培養されてよい。例えば、該細胞約1×106個
が、約24時間にわたる成長培地中のインビトロ培養において、該タンパク質又はポリペプ
チドの約又は少なくとも0.01~0.1、0.1~1.0、1.0~10.0、又は10.0~100.0μMを生成す
るように、該細胞は操作されてよい。
【0074】
具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、サイトカイン
又はそれらの活性部分を含むペプチドを生成するように遺伝子操作される。そのように操
作された細胞により生成され得るサイトカインの例は、アドレノメデュリン(AM)、アンジ
オポエチン(Ang)、骨形態形成タンパク質(BMP)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、上皮細胞増
殖因子(EGF)、エリスロポエチン(Epo)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、グリア細胞株-由来神
経栄養因子(GNDF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺
激因子(GM-CSF)、成長分化因子(GDF-9)、肝細胞増殖因子(HGF)、肝細胞癌由来増殖因子(H
DGF)、インスリン-様成長因子(IGF)、遊走-刺激因子、ミオスタチン(GDF-8)、骨髄単球性
増殖因子(MGF)、神経成長因子(NGF)、胎盤増殖因子(PlGF)、血小板-由来増殖因子(PDGF)
、トロンボポエチン(Tpo)、トランスフォーミング増殖因子α(TGF-α)、TGF-β、腫瘍壊
死因子α(TNF-α)、血管内皮増殖因子(VEGF)、又はWntタンパク質を含むが、これらに限
定されるものではない。
【0075】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法において使用される細胞は、タンパ
ク質又はポリペプチドの可溶性受容体、例えばサイトカインの可溶性受容体を生成するよ
うに遺伝子操作される。そのような細胞により生成され得る可溶性受容体の例は、AM、An
g、BMP、BDNF、EGF、Epo、FGF、GNDF、G-CSF、GM-CSF、GDF-9、HGF、HDGF、IGF、遊走-刺
激因子、GDF-8、MGF、NGF、PlGF、PDGF、Tpo、TGF-α、TGF-β、TNF-α、VEGF、及びWnt
タンパク質の可溶性受容体を含むが、これらに限定されるものではない。
【0076】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、インター
ロイキンを生成するように遺伝子操作される。そのような細胞により生成され得るインタ
ーロイキンの例は、インターロイキン-1α(IL-1α)、IL-1β、IL-1F1、IL-1F2、IL-1F3、
IL-1F4、IL-1F5、IL-1F6、IL-1F7、IL-1F8、IL-1F9、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL
-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12 35kDa αサブユニット、IL-12 40kDa βサブユニ
ット、IL-12α及びβの両サブユニット、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17A、IL-17B
、IL-17C、IL-17D、IL-17E、IL-17Fアイソフォーム1、IL-17Fアイソフォーム2、IL-18、I
L-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23 p19サブユニット、IL-23 p40サブユニット、IL-23 p
19サブユニット及びIL-23 p40サブユニットが一緒に、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27B、IL
-27-p28、IL-27B及びIL-27-p28が一緒に、IL-28A、IL-28B、IL-29、IL-30、IL-31、IL-32
、IL-33、IL-34、IL-35、IL-36α、IL-36β、並びにIL-36γを含むが、これらに限定され
るものではない。
【0077】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、インター
ロイキンの可溶性受容体を生成するように遺伝子操作される。そのような細胞により生成
され得るインターロイキンの可溶性受容体の例は、IL-1α、IL-1β、IL-1F1、IL-1F2、IL
-1F3、IL-1F4、IL-1F5、IL-1F6、IL-1F7、IL-1F8、IL-1F9、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL
-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12 35kDa αサブユニット、IL-12 40kDa βサ
ブユニット、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17A、IL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E、
IL-17Fアイソフォーム1、IL-17Fアイソフォーム2、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22
、IL-23 p19サブユニット、IL-23 p40サブユニット、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27B、IL-
27-p28、IL-28A、IL-28B、IL-29、IL-30、IL-31、IL-32、IL-33、IL-34、IL-35、IL-36α
、IL-36β、及びIL-36γの可溶性受容体を含むが、これらに限定されるものではない。
【0078】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、インター
フェロンを生成するように遺伝子操作される。そのような細胞により生成され得るインタ
ーフェロンの例は、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、IFN-λ1、IFN-λ2、IFN-λ3、IFN-K、IFN-
ε、IFN-κ、IFN-τ、IFN-δ、IFN-ζ、IFN-ω、及びIFN-νを含むが、これらに限定され
るものではない。
【0079】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、インター
フェロンの可溶性受容体を生成するように遺伝子操作される。そのような細胞により生成
され得るインターフェロンの可溶性受容体の例は、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、IFN-λ1、I
FN-λ2、IFN-λ3、IFN-K、IFN-ε、IFN-κ、IFN-τ、IFN-δ、IFN-ζ、IFN-ω、又はIFN-
νの可溶性受容体を含むが、これらに限定されるものではない。
【0080】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、インスリ
ン又はプロインスリンを生成するように遺伝子操作される。別の具体的実施態様において
、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、インスリンの受容体を生成するように遺
伝子操作される。特定の実施態様において、インスリン若しくはプロインスリン、及び/
又はインスリンの受容体を生成するように遺伝子操作される該細胞は、プロホルモン転換
酵素1、プロホルモン転換酵素2、又はカルボキシペプチダーゼEの1種以上を生成するよう
に追加的に遺伝子操作される。
【0081】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、レプチン
を生成するように遺伝子操作される。別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法
に従い使用される細胞は、エリスロポエチン(EPO)を生成するように遺伝子操作される。
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、トロンボポ
エチンを生成するように遺伝子操作される。
【0082】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、l-チロシ
ンからL-DOPAを生成することが可能なタンパク質である、チロシン3-モノオキシゲナーゼ
を生成するように遺伝子操作される。特定の実施態様において、該細胞は、L-DOPAからド
パミンを生成する芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼを発現するように、更に操作され
る。
【0083】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、ホルモン
又はプロホルモンを生成するように遺伝子操作される。そのような細胞により生成される
ホルモンの例は、抗ミュラー管ホルモン(AMH)、アジポネクチン(Acrp30)、副腎皮質刺激
ホルモン(ACTH)、アンジオテンシン(AGT)、アンジオテンシノゲン(AGT)、抗利尿ホルモン
(ADH)、バゾプレシン、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、カルシトニン(CT)、コレシ
ストキニン(CCK)、コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)、エリスロポエチン(Epo)、卵胞
刺激ホルモン(FSH)、テストステロン、エストロゲン、ガストリン(GRP)、グレリン、グル
カゴン(GCG)、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、成長ホルモン(GH)、成長ホルモン放
出ホルモン(GHRH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、ヒト胎盤性ラクトゲン(HPL)、イン
ヒビン、黄体形成ホルモン(LH)、メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)、オレキシン、オキシ
トシン(OXT)、副甲状腺ホルモン(PTH)、プロラクチン(PRL)、レラキシン(RLN)、セクレチ
ン(SCT)、ソマトスタチン(SRIF)、トロンボポエチン(Tpo)、甲状腺刺激ホルモン(Tsh)、
及び甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)を含むが、これらに限定されるものではない
。
【0084】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、シトクロ
ムP450側鎖切断酵素(P450SCC)を生成するように遺伝子操作される。
【0085】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、低密度リ
ポタンパク受容体(LDLR)を生成するように遺伝子操作される。
【0086】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、ポリシス
チン-1(PKD1)、PKD-2又はPKD3を生成するように遺伝子操作される。
【0087】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、フェニル
アラニン水酸化酵素を生成するように遺伝子操作される。
【0088】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、重合可能なモ
ノマー(類)を追加的に含有する組成物中に配合される。そのような実施態様において、
例えば、重合触媒が、バイオプリンティングの直前に添加されてよく、その結果一旦細胞
が印刷されると、このモノマーは重合し、細胞を捕捉するか及び/又は物理的に支持する
ゲルを形成する。例えば、細胞を含有する組成物は、アクリルアミドモノマーを含むこと
ができ、その際、TEMED及び過硫酸アンモニウム、又はリボフラビンが、バイオプリンテ
ィングの直前に、この組成物へ添加される。組成物中の細胞の表面上への沈着時に、アク
リルアミドは重合し、細胞を隔離し支持する。
【0089】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、接着剤を追加
的に含有する組成物中に配合される。具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従
い使用される細胞は、非限定的に、シアノアクリレートエステル、フィブリンシーラント
、及び/又はゼラチン-レゾルシノール-ホルムアルデヒド接着剤を含む、軟部組織付着剤
を追加的に含有する組成物中に配合される。別の具体的実施態様において、本明細書記載
の方法に従い使用される細胞は、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)リガンド、
細胞外タンパク質、及び/又は細胞外タンパク質類縁体を追加的に含有する組成物中に配
合される。
【0090】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、細胞が単独の
細胞として対象内又は上の表面上に沈着され得る(すなわち、細胞は、一度に1個の細胞
が沈着される)ように、組成物中に配合される。
【0091】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、細胞が複数の
細胞を含む凝集体として、対象内又は上の表面上に沈着され得るように、組成物中に配合
される。そのような凝集体は、単独の型の細胞を含むことができるか、又は複数の細胞型
、例えば、2、3、4、5種若しくはそれよりも多い細胞型を含むことができる。
【0092】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、細胞が組成物
の一部として組織を形成するように、組成物中に配合され、ここで該組織は、本明細書記
載の方法を使用し、対象内又は上の表面上に沈着され得る。そのような組織は、単独の型
の細胞を含むことができるか、又は複数の細胞型、例えば、2、3、4、5種若しくはそれよ
りも多い細胞型を含むことができる。
【0093】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、小さい容積、
例えば、0.5~500ピコリットル/液滴を有する細胞及び/又は組成物の個別の液滴として
対象内又は上の表面上へ沈着される。様々な実施態様において、細胞、又は細胞を含む組
成物の容積は、約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、20、35、40、45、
50、55、60、65、70、75、80、85、90、95若しくは100ピコリットル、又は約1~90ピコリ
ットル、約5~85ピコリットル、約10~75ピコリットル、約15~70ピコリットル、約20~6
5ピコリットル、若しくは約25~約60ピコリットルである。
【0094】
(4.1.2 組織及び器官)
本明細書に提供される1以上の方法を使用し、対象内又は上に組織及び器官をバイオプ
リンティングする方法が、本明細書において提供される。同じく、対象内又は上に新規組
織をバイオプリンティングする方法が、本明細書において提供される。同じく、対象内に
存在する器官内の又は上の組織をバイオプリンティングする方法、更には対象内において
新規器官を作製する方法が、本明細書において提供される。
【0095】
当該技術分野において公知のいずれかの型の組織を、本明細書記載の方法を使用し対象
内又は上に印刷することができる。特定の実施態様において、対象内又は上に印刷される
組織は、単独の細胞型を含む。他の実施態様において、対象内又は上に印刷される組織は
、複数の細胞型である。特定の実施態様において、対象内又は上に印刷される組織は、2
種以上の型の組織を含む。
【0096】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法は、対象内又は上の表面上への細胞、EC
M、及び/又は他の成分の沈着を含み、ここで該表面は、対象由来の組織を含む。特定の
実施態様において、本明細書記載の方法は、対象内又は上の表面上への細胞、ECM、及び
/又は他の成分の沈着を含み、ここで該表面は、対象の器官を含む。
【0097】
具体的実施態様において、対象内又は上に印刷される細胞は、結合組織細胞を含む。特
定の実施態様において、該結合組織細胞は、該対象の結合組織(すなわち、対象内又は上
の結合組織)上に印刷される。
【0098】
別の具体的実施態様において、対象内又は上に印刷される細胞は、筋肉組織細胞を含む
。特定の実施態様において、該筋肉組織細胞は、該対象の筋肉組織(すなわち、対象内又
は上の筋肉組織)上に印刷される。筋肉組織は、内臓筋(平滑筋)組織、骨格筋組織、又
は心筋組織を含むことができる。
【0099】
別の具体的実施態様において、対象内又は上に印刷される細胞は、神経組織細胞を含む
。特定の実施態様において、該神経組織細胞は、該対象の神経組織(すなわち、対象内又
は上の神経組織)上に印刷される。神経組織は、中枢神経系組織(例えば、脳組織又は脊
髄組織)又は末梢神経系組織(例えば、脳神経及び脊髄神経)を含むことができる。
【0100】
別の具体的実施態様において、対象内又は上に印刷される細胞は、上皮組織細胞を含む
。特定の実施態様において、該上皮組織細胞は、該対象の上皮組織(すなわち、対象内又
は上の上皮組織)上に印刷される。上皮組織は、内皮を含むことができる。
【0101】
特定の実施態様において、対象内又は上に印刷される細胞、ECM、及び/又は他の成分
は、対象の器官上に印刷される。細胞、ECM、及び/又は他の成分は、既知の哺乳動物の
器官系のいずれか、すなわち、消化器系、循環器系、内分泌系、排泄系、免疫系、外皮系
、筋肉系、神経系、生殖器系、呼吸器系、及び/又は骨格系に関連される対象の器官の内
又は上に印刷されることができる。本明細書記載の方法に従い作製又は形成され得る器官
の例は、肺、肝臓、心臓、脳、腎臓、皮膚、骨、胃、膵臓、膀胱、胆嚢、小腸、大腸、前
立腺、睾丸、卵巣、脊髄、咽頭、喉頭、気管、気管支、横隔膜、尿管、尿道、食道、結腸
、胸腺、及び脾臓又はそれらの一部を含むが、これらに限定されるものではない。具体的
実施態様において、膵臓は、本明細書記載の方法に従い作製又は形成される。
【0102】
具体的実施態様において、対象内又は上に印刷される細胞、ECM、及び/又は他の成分
は、骨の上に印刷される。別の具体的実施態様において、対象内又は上に印刷される細胞
、ECM、及び/又は他の成分は、皮膚の上に印刷される。別の具体的実施態様において、
対象内又は上に印刷される細胞、ECM、及び/又は他の成分は、皮膚の上に印刷されない
。別の具体的実施態様において、対象内又は上に印刷される細胞、ECM、及び/又は他の
成分は、肺組織、又は肺若しくはそれらの一部の上に印刷される。別の具体的実施態様に
おいて、対象内又は上に印刷される細胞、ECM、及び/又は他の成分は、肝臓組織、又は
肝臓若しくはそれらの一部の上に印刷される。別の具体的実施態様において、対象内又は
上に印刷される細胞、ECM、及び/又は他の成分は、神経組織、又は神経若しくはそれら
の一部の上に印刷される。
【0103】
(4.1.3 細胞外マトリクス(ECM))
本明細書記載の方法は、対象内又は上の表面上に細胞(例えば、単独の細胞を含有する
組成物及び/又は複数の細胞を含有する組成物)及び流動性ECMを含む細胞外マトリクス(
ECM)の沈着を含む。ECMは、任意の公知のECM給源から誘導されることができ、且つ当該技
術分野において公知の任意の方法を用い流動性とされることができる。具体的実施態様に
おいて、ECMは、流動性ECMを含む。ECMは、例えば、下記4.1.3.1項に記載の方法を用い、
流動性とされることができる。特定の実施態様において、ECMは、例えば、下記4.1.3.2項
に記載の方法を用い、架橋されることができる。
【0104】
本明細書記載の方法に従い使用されるECM(例えば流動性ECM)は、本明細書に提供され
る方法に従い使用するための組成物の一部として配合されることができる。
【0105】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用されるECMは、哺乳動物ECM、
植物ECM、軟体動物ECM、及び/又は魚類ECMを含む。
【0106】
具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用されるECMは、哺乳動物ECMを
含む。別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用されるECMは、哺乳
動物ECMを含み、ここで該哺乳動物ECMは、胎盤(例えばヒト胎盤)から誘導される。別の
具体的実施態様において、該胎盤由来のECMは、テロペプチドコラーゲンを含む。
【0107】
別の具体的実施態様において、該胎盤由来のECMは、化学修飾されていないか又はプロ
テアーゼと接触されていない、塩基処理された及び/又は界面活性剤処理されたI型テロ
ペプチド胎盤コラーゲンを含み、ここで該ECMは、フィブロネクチン5重量%未満又はラミ
ニン5重量%未満;I型コラーゲン25重量%~92重量%;及び、III型コラーゲン2重量%~
50重量%又はIV型コラーゲン2重量%~50重量%を含む。
【0108】
別の具体的実施態様において、該胎盤由来のECMは、化学修飾されていないか又はプロ
テアーゼと接触されていない、塩基処理され、界面活性剤処理されたI型テロペプチド胎
盤コラーゲンを含み、ここで該ECMは、フィブロネクチン1重量%未満又はラミニン1重量
%未満;I型コラーゲン74重量%~92重量%;及び、III型コラーゲン4重量%~6重量%又
はIV型コラーゲン2重量%~15重量%を含む。
【0109】
本明細書記載の方法に従い使用される胎盤ECM、例えば、胎盤テロペプチドコラーゲン
を含むECMは、当該技術分野において公知の方法を使用し調製されるか、又は下記のよう
に調製されてよい。第一に、胎盤組織(胎盤全体又はそれらの一部のいずれか)は、例え
ば無菌的に、例えば帝王切開又は正常分娩の実施直後の収集など、常法により得られる。
胎盤組織は、可溶性若しくは不溶性のいずれか又は両方の羊膜、絨毛膜、臍帯を含む胎盤
の任意の部分に由来、あるいは全胎盤に由来することができる。特定の実施態様において
、コラーゲン組成物は、臍帯を伴わないヒト胎盤全体から調製される。胎盤は、室温で、
又は温度約2℃~8℃で、更なる処理時まで貯蔵されてよい。胎盤は、好ましくは放血され
、すなわち、娩出後残存する胎盤及び臍帯血が完全に排出される。特定の実施態様におい
て、妊婦は、例えば、HIV、HBV、HCV、HTLV、梅毒、CMV、及び胎盤組織に夾雑することが
わかっている他のウイルス病原体について、出産前にスクリーニングされる。
【0110】
胎盤組織は、ECMの製造前に脱細胞化されてよい。胎盤組織は、米国特許出願公開第200
40048796号及び第20030187515号に詳述されているような、当業者に公知の任意の技術に
従い脱細胞化されることができ、これらの出願の内容はそれらの全体が引用により本明細
書中に組み込まれている。
【0111】
胎盤組織は、浸透圧ショックに供されてよい。浸透圧ショックは、任意の透明化工程に
追加され得るか、又は当業者の判断に従い単独の透明化工程であることができる。浸透圧
ショックは、当業者に公知の任意の浸透圧ショック条件で実行され得る。そのような条件
は、高浸透ポテンシャル溶液中、又は低浸透ポテンシャル溶液中、又は高及び低の交互の
浸透ポテンシャル溶液中で、組織をインキュベーションすることを含む。高浸透ポテンシ
ャル溶液は、NaCl(例えば、0.2~1.0M又は0.2~2.0M)、KCl(例えば、0.2~1.0又は0.2
~2.0M)、硫酸アンモニウム、単糖、二糖(例えば20%ショ糖)、親水性ポリマー(例え
ばポリエチレングリコール)、グリセロールなどの1種以上を含有する溶液など、当業者
に公知の任意の高浸透ポテンシャル溶液であることができる。特定の実施態様において、
高浸透ポテンシャル溶液は、塩化ナトリウム溶液、例えば少なくとも0.25M、0.5M、0.75M
、11.0M、1.25M、1.5M、1.75M、2M、又は2.5M NaClである。一部の実施態様において、塩
化ナトリウム溶液は、約0.25~5M、約0.5~4M、約0.75~3M、又は約1.0~2.0M NaClであ
る。低浸透ポテンシャル溶液は、水、例えば当業者に公知の任意の方法に従い脱イオンさ
れた水など、当業者に公知の任意の低浸透ポテンシャル溶液であることができる。一部の
実施態様において、浸透圧ショック溶液は、50mM NaCl未満の浸透圧ショックポテンシャ
ルを有する水を含む。特定の実施態様において、浸透圧ショックは、塩化ナトリウム溶液
と、それに続く水溶液である。特定の実施態様において、1又は2種のNaCl溶液処理に、水
洗浄が続く。
【0112】
この浸透圧ショックから生じる組成物は、次に、特定の実施態様において、界面活性剤
と共にインキュベーションされてよい。界面活性剤は、細胞膜又はオルガネラ膜を破壊す
ることが可能である、当業者に公知の任意の界面活性剤、例えば、イオン性界面活性剤、
非イオン性界面活性剤、デオキシコール酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、TritonX100、TW
EENなどであることができる。界面活性剤処理は、約0℃~約30℃、約5℃~約25℃、約5℃
~約20℃、約5℃~約15℃、約0℃、約5℃、約10℃、約15℃、約20℃、約25℃、又は30℃
で実行することができる。界面活性剤処理は、例えば、約1~24時間、約2~20時間、約5
~15時間、約8~12時間、又は約2~5時間実行することができる。
【0113】
この界面活性剤処理から生じる組成物は、次に、特定の実施態様において、塩基性条件
下でインキュベーションされてよい。塩基性処理のための特定の塩基は、例えば濃度0.2
~1.0Mの、生体適合性塩基、揮発性塩基、又は任意の有機若しくは無機塩基を含む。特定
の実施態様において、塩基は、NH4OH、KOH及びNaOH、例えば、0.1M NaOH、0.25M NaOH、0
.5M NaOH、又は1M NaOHからなる群から選択される。この塩基処理は、例えば、0℃~30℃
、5℃~25℃、5℃~20℃、5℃~15℃、約0℃、約5℃、約10℃、約15℃、約20℃、約25℃
、又は約30℃で、例えば、約1~24時間、約2~20時間、約5~15時間、約8~12時間、又は
約2~5時間実行することができる。
【0114】
ECMは、塩基処理をせずに製造することができ;塩基処理工程の省略は、通常、塩基処
理を含み製造されたECM組成物よりも、より多量のエラスチン、フィブロネクチン及び/
又はラミニンを含有するECM組成物を生じる。
【0115】
通常、ヒト胎盤組織に関する前述のプロセスは、化学修飾されていないか又はプロテア
ーゼと接触されていない、塩基処理された及び/又は界面活性剤処理されたI型テロペプ
チド胎盤コラーゲンを含有する、胎盤ECMの製造を生じ、ここで該ECMは、フィブロネクチ
ン5重量%未満又はラミニン5重量%未満;I型コラーゲン25重量%~92重量%;III型コラ
ーゲン2重量%~50重量%;IV型コラーゲン2重量%~50重量%;及び/又は、エラスチン
40重量%未満を含む。より具体的実施態様において、本プロセスは、塩基処理され、界面
活性剤処理されたI型テロペプチド胎盤コラーゲンの製造を生じ、ここで該コラーゲンは
、化学修飾されていないか又はプロテアーゼと接触されておらず、並びにここで該組成物
は、フィブロネクチン1重量%未満;ラミニン1重量%未満;I型コラーゲン74重量%~92
重量%;III型コラーゲン4重量%~6重量%;IV型コラーゲン2重量%~15重量%;及び/
又は、エラスチン12重量%未満を含有する。
【0116】
特定の実施態様において、流動性ECMを含有する本明細書において提供される組成物は
、追加的に他の成分を含有してよい。特定の実施態様において、流動性ECMを含有する本
明細書において提供される組成物は、追加的に、1種以上の細胞型、例えば上記4.1.1項に
おいて詳述された1種以上の細胞型を含有している。あるいは、該細胞は、該ECMの沈着と
同時に、その前に、又はその後に、本明細書記載の方法に従い個別の組成物の一部として
沈着されてよい。
【0117】
特定の実施態様において、流動性ECMを含有する本明細書に提供される組成物は、追加
的にヒドロゲル(例えば、感熱性ヒドロゲル及び/又は感光性ヒドロゲル)を含有する。
あるいは、ヒドロゲルは、該ECMの沈着と同時に、その前に、又はその後に、本明細書記
載の方法に従い個別の組成物の一部として沈着されてよい。
【0118】
特定の実施態様において、流動性ECMを含有する本明細書において提供される組成物は
、追加的に、1種以上の細胞型、例えば上記4.1.1項において詳述された1種以上の細胞型
、及びヒドロゲルを含有している。具体的実施態様において、流動性ECM及びヒドロゲル
(例えば、感熱性ヒドロゲル及び/又は感光性ヒドロゲル)を含有する本明細書に提供さ
れる組成物は、ECM:ヒドロゲルの比が、重量で約10:1~約1:10であるように、配合さ
れる。
【0119】
ヒドロゲルの例は、水分子を捕獲しゲルを形成する3次元開放-格子構造を作出するよう
に、共有結合、イオン結合、又は水素結合を介して架橋されることができる、有機ポリマ
ー(天然又は合成)を含むことができる。そのような組成物に好適なヒドロゲルは、RAD1
6などの自己集成ペプチドを含む。ヒドロゲル-形成材料は、イオン的に架橋されるアルギ
ン酸塩及びそれらの塩などの多糖、ペプチド、ポリホスファジン、及びポリアクリレート
、又は温度若しくはpHにより各々架橋されるポリエチレンオキシド-ポリプロピレングリ
コールブロック共重合体などのブロックポリマーを含む。一部の実施態様において、ヒド
ロゲル又はマトリクスは、生分解性であってよい。
【0120】
特定の実施態様において、流動性ECMを含有する本明細書において提供される組成物は
、追加的に合成ポリマーを含む。具体的実施態様において、合成ポリマーは、ポリアクリ
ルアミド、ポリ塩化ビニリジン、ポリ(o-カルボキシフェノキシ)-p-キシレン)(ポリ(o-CP
X))、ポリ(無水ラクチド)(PLAA)、n-イソプロピルアクリルアミド、ペントエリスリトー
ルジアクリレート、ポリメチルアクリレート、カルボキシメチルセルロース、及び/又は
ポリ(乳酸-グリコール酸共重合体)(PLGA)である。別の具体的実施態様において、合成ポ
リマーは、熱可塑性物質、例えば、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸、ポリブチレン
テレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ酢酸
ビニル、及び/又はポリ塩化ビニルを含む。あるいは、1種以上の合成ポリマーは、該ECM
の沈着と同時に、その前に、又はその後に、本明細書記載の方法に従い個別の組成物の一
部として沈着されてよい。具体的実施態様において、合成ポリマーは、PCLである。
【0121】
特定の実施態様において、流動性ECMを含有する本明細書において提供される組成物は
、追加的に、フィブロネクチンと相互作用することがわかっているヒトタンパク質である
テナシンC、又はその断片を含有する。あるいは、テナシンCは、該ECMの沈着と同時に、
その前に、又はその後に、本明細書記載の方法に従い個別の組成物の一部として沈着され
てよい。
【0122】
特定の実施態様において、流動性ECMを含有する本明細書において提供される組成物は
、追加的に、チタン-アルミニウム-バナジウム(Ti6Al4V)を含有する。あるいは、Ti6Al4V
は、該ECMの沈着と同時に、その前に、又はその後に、本明細書記載の方法に従い個別の
組成物の一部として沈着されてよい。
【0123】
特定の実施態様において、本明細書に提供される組成物中のECM及び/又は合成ポリマ
ーなどの本組成物の追加成分は、誘導体化されてよい。ECM及び合成ポリマーの誘導体化
の方法は、当該技術分野において公知であり、且つ非限定的に、細胞接着ペプチド(例え
ば、1以上のRGDモチーフを含むペプチド)を使用する誘導体化、細胞接着タンパク質を使
用する誘導体化、サイトカイン(例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)、又は骨形態形成タン
パク質(BMP))を使用する誘導体化、及びグリコサミノグリカンを使用する誘導体化を含
む。
【0124】
(4.1.3.1 流動性ECMの作製方法)
本明細書記載の方法に従い使用されるECMは、当該技術分野において公知の方法及び本
明細書記載の方法を用いて、流動性とすることができる。
【0125】
一実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用されるECMは、酸又は塩基と、例
えば該ECMを可溶化するのに十分である量の該酸又は塩基を含有する酸性又は塩基性溶液
と、ECMを接触させることにより、流動性とされる。一旦ECMが流動性とされたならば、望
ましいならば、このECM含有組成物は、当該技術分野において公知の方法を用い、中性で
あるか、又は所望のpHとされることができる。
【0126】
別の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用されるECMは、例えば、プロテ
アーゼ、例としてトリプシン、キモトリプシン、ペプシン、パパイン、及び/又はエラス
ターゼなどの酵素又は酵素の組合せと、ECMを接触させることにより、流動性とされるこ
とができる。一旦ECMが流動性とされたならば、望ましいならば、酵素は、当該技術分野
において公知の方法を用い、失活されることができる。
【0127】
別の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用されるECMは、物理的方策を使
用し、流動性とされる。具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される
ECMは、ECMの摩砕により、すなわち、内部結合力を克服するためのECMの研磨により、流
動性とされる。別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用されるECM
は、例えば、ブレンダー又は他の給源により、ECMを剪断することにより、流動性とされ
る。別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用されるECMは、ECMを切
断することにより、流動性とされる。特定の実施態様において、物理的方策の使用により
ECMがより流動性とされる場合、このECMは、凍結状態で操作されてよい(例えば、ECMは
、凍結乾燥されるか、又は液体窒素中で凍結される)。
【0128】
(4.1.3.2 ECMの架橋方法)
本明細書記載の方法に従い使用されるECMは、当該技術分野において公知の方法及び本
明細書記載の方法を使用し、架橋されることができる。
【0129】
特定の実施態様において、ECMは、対象内又は上の表面へ塗布される前に架橋され、す
なわち、ECMは、印刷前に架橋されてよい。そのような実施態様に従い、架橋剤は、ECMを
含有する組成物中に含まれてよく、且つ必要ならばECM及び架橋剤を含有する組成物は、E
CMの印刷前にECMの架橋を生じる条件下で処理されてよい。
【0130】
他の実施態様において、ECMは、対象内又は上の表面へ塗布された後に架橋され、すな
わち、ECMは、印刷後に架橋されてよい。一実施態様において、ECMは、該表面上へのECM
の最初の印刷により対象内又は上の表面に塗布された後に架橋され、引き続き該表面へ架
橋剤が印刷される(すなわち、ECM及び架橋剤は、個別の組成物として印刷される)。こ
の実施態様に従い、必要ならば、ECMの架橋を生じる条件下でのECM及び架橋剤の処理によ
り、ECMは引き続き架橋され得る。
【0131】
別の実施態様において、ECM及び架橋剤の両方を含有する組成物を表面上へ印刷し、且
つ該印刷後、ECMの架橋を生じる条件下でECM及び架橋剤を処理することにより、ECMは対
象内又は上の表面へ塗布された後に架橋される。
【0132】
具体的実施態様において、ECMは、ECM成分であるヒアルロン酸の化学架橋により、架橋
される。別の具体的実施態様において、ECMは、ECMタンパク質の化学架橋により、架橋さ
れる。ヒアルロン酸及びECM成分の化学架橋の手段の例は、例えば、Burdick及びPrestwic
hの文献(2011, Adv. Mater. 23:H41-H56)に更に記載されているものを含む。
【0133】
別の具体的実施態様において、ECMは、例えば、メタクリル酸無水物及び/又はグリシ
ジルメタクリレートなどを使用する、ヒアルロン酸の光重合により、架橋される(例えば
、Burdick及びPrestwichの文献、2011, Adv. Mater. 23:H41-H56参照)。
【0134】
別の具体的実施態様において、ECMは、酵素の使用により、架橋される。ECMの架橋に適
した酵素は、リシルオキシダーゼ(例えば、Leventalらの文献、2009, Cell 139:891-906
参照)及び組織型トランスグルタミナーゼ(例えば、Griffinらの文献、2002, J. Bioche
m. 368:377-96参照)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0135】
当業者は、生体適合性の化学架橋剤、すなわち、対象(例えばヒト対象)における使用
に関して安全であると考えられる架橋剤を選択する必要があることは理解するであろう。
【0136】
(4.1.4 表面)
いずれか好適な対象内又は上の表面を、本明細書記載の方法に従い、その上に細胞、流
動性ECM、及び/又は任意の追加成分が沈着(例えば、印刷)され得る表面として使用す
ることができる。
【0137】
一実施態様において、その上に細胞、流動性ECM、及び/又は任意の追加成分が沈着さ
れる対象内又は上の表面は、該対象へ移植された人工表面、すなわち、人為的に製造され
た表面を含む。具体的実施態様において、該人工表面は、人工装具である。そのような人
工表面は、対象、例えばヒト対象における投与及び/又は移植に関するその適性を基に選
択されてよい。例えば、免疫原性でないことがわかっている人工表面(すなわち宿主免疫
応答を誘発しない表面)は、使用のために選択されてよい。特定の実施態様において、人
工表面は、対象、例えばヒト対象における投与及び/又は移植にそれが適した状態にする
ために、処理されてよい。
【0138】
一実施態様において、その上に細胞、流動性ECM、及び/又は任意の追加成分が沈着さ
れる対象内又は上の表面は、塑性表面を含む。その上に該細胞、ECM、及び/又は追加成
分が沈着され得る塑性表面の例証的種類は、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート
、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリスチレン
、ポリアミド、ポリカーボネート、及びポリウレタンを含むが、これらに限定されるもの
ではない。
【0139】
一実施態様において、その上に細胞、流動性ECM、及び/又は任意の追加成分が沈着さ
れる対象内又は上の表面は、金属表面を含む。その上に該細胞、ECM、及び/又は追加成
分が沈着され得る塑性表面の例証的種類は、アルミニウム、クロム、コバルト、銅、金、
鉄、鉛、マグネシウム、マンガン、水銀、ニッケル、白金、銀、錫、チタン、タングステ
ン、及び亜鉛を含むが、これらに限定されるものではない。
【0140】
特定の実施態様において、その上に細胞、流動性ECM、及び/又は任意の追加成分が沈
着される対象内又は上の人工表面は、それらが特定の形状を形成するように、設計される
。例えば人工表面は、骨の形状(例えば、耳の骨)であるように設計され、並びに好適な
細胞(例えば、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞及び他の骨-関連細胞)、流動性ECM、及び/
又は任意の追加成分が、該表面の上及び/又は中に沈着されることができる。
【0141】
別の実施態様において、対象内又は上の該表面は、対象(例えばヒト対象)の組織若し
くは器官を含む。特定の実施態様において、対象由来の該組織又は器官の対象内又は上の
表面は、脱細胞化、例えば、組織又は器官の表面の全て又は一部から細胞を除去するよう
処理される。
【0142】
別の実施態様において、対象内又は上の該表面は、該印刷前に、生体分子を含有する組
成物を該表面上に沈着することによる、本明細書記載の方法のために調製され、ここで該
生体分子は、コラーゲン型、フィブロネクチン型、ラミニン型、又は組織接着剤であるか
又はこれらを含む。
【0143】
別の実施態様において、対象内又は上の該表面は、脱細胞化された組織、例えば脱細胞
化された羊膜、脱細胞化された横隔膜、脱細胞化された皮膚、又は脱細胞化された筋膜に
より、該表面の全て又は一部を被覆することによる、本明細書記載の方法のために調製さ
れる。
【0144】
本明細書記載の方法に従い、細胞、流動性ECM、及び/又は任意の追加成分が、対象の
任意の好適な組織又は器官上に沈着(例えば、上に印刷)されてよい。具体的実施態様に
おいて、印刷表面を提供する対象の組織は、結合組織(骨を含む)、筋肉組織(内臓筋(
平滑筋)組織、骨格筋組織、及び心筋組織を含む)、神経組織(中枢神経系組織(例えば
、脳組織又は脊髄組織)又は末梢神経系組織(例えば、脳神経及び脊髄神経)又は上皮組
織(内皮を含む)である。別の具体的実施態様において、印刷表面を提供する対象の器官
は、消化器系、循環器系、内分泌系、排泄系、免疫系、外皮系、筋肉系、神経系、生殖器
系、呼吸器系、及び/又は骨格系を含む、既知の哺乳動物の器官系のいずれかに由来して
いる。別の具体的実施態様において、印刷表面を提供する対象の器官は、肺、肝臓、心臓
、脳、腎臓、皮膚、骨、胃、膵臓、膀胱、胆嚢、小腸、大腸、前立腺、睾丸、卵巣、脊髄
、咽頭、喉頭、気管、気管支、横隔膜、尿管、尿道、食道、結腸、胸腺、及び脾臓の全て
又は一部である。別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法のための、印刷表面
を提供する対象の膵臓である。
【0145】
具体的実施態様において、細胞、流動性ECM、及び/又は追加成分は、骨を含むか又は
骨からなる対象内又は上の表面上に沈着される(例えば、上に印刷される)。その上に印
刷され得る骨の例は、長骨、短骨、扁平骨、不規則形骨、及び種子(seismoid)骨を含む。
その上に印刷することができる具体的な骨は、頭蓋骨、顔面骨、耳の骨、指の骨、腕の骨
、脚の骨、肋骨、手指の骨、足及びつま先の骨、距骨、手根骨、胸の骨(例えば胸骨)な
どを含むが、これらに限定されるものではない。
【0146】
具体的実施態様において、細胞、流動性ECM、及び/又は任意の追加成分は、対象内又
は上の表面上に沈着され(例えば、上に印刷され)、ここでこの表面は、該対象の外側上
である。具体的実施態様において、細胞、流動性ECM、及び/又は任意の追加成分は、対
象内又は上の表面上に沈着され(例えば、上に印刷され)、ここで該表面は、該個体の内
側内である。具体的実施態様において、細胞、流動性ECM、及び/又は任意の追加成分は
、対象内又は上の表面上に沈着され(例えば、上に印刷され)、ここで該表面は、該個体
の体腔又は器官内である。
【0147】
特定の実施態様において、細胞、流動性ECM、及び/又は任意の追加成分の沈着(例え
ば、バイオプリンティングによるか又は他の手段による沈着)のための足場として働く本
明細書記載の対象内又は上の表面は、バイオプリントされていない表面である。特定の実
施態様において、細胞、流動性ECM、及び/又は任意の追加成分の沈着(例えば、バイオ
プリンティングによるか又は他の手段による沈着)のための足場として働く本明細書記載
の対象内又は上の表面は、バイオプリントされている表面、例えば本明細書記載の方法に
従いバイオプリントされている表面である。具体的実施態様において、バイオプリントさ
れた表面は、合成材料を含む。具体的実施態様において、合成材料は、PCLである。
【0148】
(4.2 組成物)
本明細書記載の方法に従い使用することができる組成物が、本明細書において提供され
る。一実施態様において、本明細書記載の方法に従う使用に適している細胞(例えば、上
記4.1.1項に記載された細胞)を含有する組成物が、本明細書において提供される。別の
実施態様において、本明細書記載の方法に従う使用に適している流動性ECM(例えば、上
記4.1.3項に記載された流動性ECM)を含有する組成物が、本明細書において提供される。
別の実施態様において、本明細書記載の方法に従う使用に適している1種以上の架橋剤(
例えば、上記4.1.3.2項に記載された架橋剤)を含有する組成物が、本明細書において提
供される。
【0149】
一実施態様において、細胞(例えば、上記4.1.1項に記載された細胞)及び流動性ECM(
例えば、上記4.1.3項に記載された流動性ECM)を含有する組成物が、本明細書において提
供される。具体的実施態様において、細胞は、幹細胞、例えば骨髄由来間葉系幹細胞(BM-
MSC)、組織プラスチック接着性胎盤幹細胞(PDAC)、及び/又は羊膜由来付着細胞(AMDAC)
を含む。別の具体的実施態様において、流動性ECMは、胎盤(例えばヒト胎盤)から誘導
される。
【0150】
別の実施態様において、流動性ECM(例えば、上記4.1.3項に記載された流動性ECM)及
び1種以上の架橋剤(例えば、上記4.1.3.2項に記載された架橋剤)を含有する組成物が、
本明細書において提供される。
【0151】
別の実施態様において、細胞(例えば、上記4.1.1項に記載された細胞)及び1種以上の
架橋剤(例えば、上記4.1.3.2項に記載された架橋剤)を含有する組成物が、本明細書に
おいて提供される。
【0152】
別の実施態様において、細胞(例えば、上記4.1.1項に記載された細胞)、流動性ECM(
例えば、上記4.1.3項に記載された流動性ECM)及び1種以上の架橋剤(例えば、上記4.1.3
.2項に記載された架橋剤)を含有する組成物が、本明細書において提供される。
【0153】
具体的実施態様において、本明細書において提供される組成物は、幹細胞及び流動性EC
Mを含有し、ここで該幹細胞はPDACであり、並びにここで該流動性ECMは、胎盤から誘導さ
れる。別の具体的実施態様において、本明細書において提供される組成物は、幹細胞及び
架橋剤を含有し、ここで該幹細胞はPDACである。別の具体的実施態様において、本明細書
において提供される組成物は、幹細胞、流動性ECM、及び架橋剤を含有し、ここで該幹細
胞はPDACであり、並びにここで該流動性ECMは、胎盤から誘導される。
【0154】
別の具体的実施態様において、本明細書において提供される組成物は、幹細胞及び流動
性ECMを含有し、ここで該幹細胞はAMDACであり、並びにここで該流動性ECMは、胎盤から
誘導される。別の具体的実施態様において、本明細書において提供される組成物は、幹細
胞及び架橋剤を含有し、ここで該幹細胞はAMDACである。別の具体的実施態様において、
本明細書において提供される組成物は、幹細胞、流動性ECM、及び架橋剤を含有し、ここ
で該幹細胞はAMDACであり、並びにここで該流動性ECMは、胎盤から誘導される。
【0155】
別の具体的実施態様において、本明細書において提供される組成物は、幹細胞及び流動
性ECMを含有し、ここで該幹細胞はBM-MSCであり、並びにここで該流動性ECMは、胎盤から
誘導される。別の具体的実施態様において、本明細書において提供される組成物は、幹細
胞及び架橋剤を含有し、ここで該幹細胞はBM-MSCである。別の具体的実施態様において、
本明細書において提供される組成物は、幹細胞、流動性ECM、及び架橋剤を含有し、ここ
で該幹細胞はBM-MSCであり、並びにここで該流動性ECMは、胎盤から誘導される。
【0156】
本明細書において提供される組成物は、細胞(例えば、上記4.1.1項に記載された細胞
)及び/又は流動性ECM(例えば、上記4.1.3項に記載された流動性ECM)及び/又は1種以
上の架橋剤(例えば、上記4.1.3.2項に記載された架橋剤)を含有することに加え、他の
成分を追加的に含有してよい。特定の実施態様において、本明細書において提供される組
成物は、ヒドロゲル(例えば、感熱性ヒドロゲル及び/又は感光性ヒドロゲル)を追加的
に含有する。あるいは、ヒドロゲルは、本明細書において提供される細胞及びECM含有組
成物とは別の組成物中に配合されてよい。特定の実施態様において、本明細書において提
供される組成物は、ポリアクリルアミド、ポリ塩化ビニリジン、ポリ(o-カルボキシフェ
ノキシ)-p-キシレン)(ポリ(o-CPX))、ポリ(無水ラクチド)(PLAA)、n-イソプロピルアクリ
ルアミド、ペントエリスリトールジアクリレート、ポリメチルアクリレート、カルボキシ
メチルセルロース、ポリ(乳酸-グリコール酸共重合体)(PLGA)、及び/又は熱可塑性物質
(例えば、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン
テレフタレート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、及び/又はポリ塩化ビ
ニル)などの、合成ポリマーを、追加的に含有する。あるいは、合成ポリマーは、本明細
書において提供される細胞及びECM含有組成物とは別の組成物中に配合されてよい。特定
の実施態様において、本明細書において提供される組成物は、テナシンC又はそれらの断
片を追加的に含有する。あるいは、テナシンC又はそれらの断片は、本明細書において提
供される細胞及びECM含有組成物とは別の組成物中に配合されてよい。特定の実施態様に
おいて、チタン-アルミニウム-バナジウム(Ti6Al4V)を追加的に含有する組成物が、本明
細書において提供される。あるいは、Ti6Al4Vは、本明細書において提供される細胞及びE
CM含有組成物とは別の組成物中に配合されてよい。
【0157】
特定の実施態様において、本明細書において提供される組成物は、組成物中で使用され
る細胞(類)の生存、分化、増殖などを促進する1種以上の追加成分を追加的に含有する
。そのような成分は、栄養素、塩類、糖類、生存因子、及び増殖因子を含むことができる
が、これらに限定されるものではない。本明細書記載の方法に従い使用することができる
増殖因子の例は、インスリン-様成長因子(例えばIGF-1)、トランスフォーミング増殖因
子-β(TGF-β)、骨形態形成タンパク質、線維芽細胞増殖因子、血小板由来増殖因子(PDGF
)、血管内皮増殖因子(VEGF)、結合組織増殖因子(CTGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF
)、上皮細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子(FGF)(1、2及び3)、オステオポンチン、骨
形態形成タンパク質-2、ソマトトロピンなどの成長ホルモン、細胞誘引物質及び付着物質
など、並びにそれらの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。あるいは、細
胞(類)の生存、分化、増殖などを促進する1種以上の追加成分は、本明細書において提
供される細胞及びECM含有組成物とは別の組成物中に配合されてよい。
【0158】
(4.3 使用)
本明細書記載の方法は、いずれか好適な目的のために使用することができる。具体的実
施態様において、本明細書記載の方法は、治療目的で使用され、例えば、細胞、ECM、及
び/又は他の追加成分が、該対象において治療効果を生じるために、対象内又は上に印刷
される。
【0159】
(4.3.1 治療上の使用)
特定の実施態様において、本明細書記載の方法は、移植(例えば、組織又は器官移植)を
必要とする対象を治療するために使用される。特定の実施態様において、本明細書記載の
方法は、グラフティング(例えば植皮)を必要とする対象を治療するために使用される。
グラフティング(例えば植皮)及び外科的移植手法を含む移植方法は、当業者に周知であ
り、且つ本明細書記載の方法に順応するように改変することができる。
【0160】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法において使用される細胞及び/又はECM
は、移植レシピエントに由来している。他の実施態様において、本明細書記載の方法にお
いて使用される細胞及び/又はECMは、移植レシピエントに由来しないが、別の対象、例
えば、ドナー、死体などに由来する。特定の実施態様において、本明細書記載の方法にお
いて使用される細胞は、移植レシピエントに由来し、且つ本明細書記載の方法において使
用されるECMは、移植レシピエントに由来しないが、別の給源に由来する。具体的実施態
様において、本明細書記載の方法において使用されるECMは、胎盤(例えばヒト胎盤)に
由来している。特定の実施態様において、本明細書記載の方法において使用されるECMは
、移植レシピエントに由来し、且つ本明細書記載の方法において使用される細胞は、移植
レシピエントに由来しないが、他の給源に由来する。
【0161】
具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、対象内又は上の表面上の上皮組織(
例えば、皮膚、真皮、又は表皮)を作製するために使用され、ここで該対象は、そのよう
な上皮組織を必要としている(例えば、対象は、火傷被害者であるか、又はある形の皮膚
疾患を有するか若しくは有した)。具体的実施態様において、該対象はヒトである。別の
具体的実施態様において、本方法において使用される少なくとも1種の細胞組成物は、上
皮細胞を含む。別の具体的実施態様において、本方法において使用される少なくとも1種
の細胞組成物は、真皮細胞を含む。別の具体的実施態様において、本方法において使用さ
れる少なくとも1種の細胞組成物は、間葉系幹細胞を含む。別の具体的実施態様において
、本方法において使用される細胞組成物(類)は、上皮細胞、真皮細胞、及び間葉系幹細
胞を含む。別の具体的実施態様において、対象の表面は、対象の皮膚の一部である。
【0162】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、対象内又は上の表面上に上皮組
織(例えば、皮膚、真皮、又は表皮)を作製するために使用されない。
【0163】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、対象内又は上の表面上に結合組
織(例えば、骨)を作製するために使用され、ここで該対象は、そのような結合組織を必
要としている(例えば、対象は、骨粗鬆症又は骨癌を有するか若しくは有した)。具体的
実施態様において、該対象はヒトである。別の具体的実施態様において、対象の表面は、
1種以上の対象の骨である。
【0164】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、対象内又は上の表面上に神経組
織(例えば、脳組織又は脊髄組織)を作製するために使用され、ここで該対象は、そのよ
うな神経組織を必要としている。具体的実施態様において、該対象は、神経疾患(すなわ
ち、中枢又は末梢神経系の疾患)を有すると診断されている。別の具体的実施態様におい
て、該対象は、対象の中枢又は末梢神経系を損傷している外傷に罹患しており、例えば対
象は、外傷性脳損傷(TBI)又は脊髄損傷(SCI)に罹患している。別の具体的実施態様におい
て、該対象はヒトである。別の具体的実施態様において、対象の表面は、対象の脳である
。別の具体的実施態様において、対象の表面は、対象の脊髄である。
【0165】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、対象内又は上の表面上に肝臓組
織を作製するために使用され、ここで該対象は、そのような肝臓組織を必要としている(
例えば、対象は、肝臓の硬変、肝炎、又は肝臓癌を有するか若しくは有した)。具体的実
施態様において、該対象はヒトである。別の具体的実施態様において、対象の表面は、対
象の肝臓である。
【0166】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、対象内又は上の表面上に肺組織
を作製するために使用され、ここで該対象は、そのような肺組織を必要としている(例え
ば、対象は、肺癌、気腫、又はCOPDを有するか若しくは有した)。具体的実施態様におい
て、該対象はヒトである。別の具体的実施態様において、対象の表面は、対象の肺である
。
【0167】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、対象内又は上の表面上に循環系
組織(例えば、心臓組織、動脈、又は静脈)を作製するために使用され、ここで該対象は
、そのような循環系組織を必要としている(例えば、対象は、心臓疾患、冠動脈疾患、又
は心臓の弁の問題を有するか若しくは有した)。具体的実施態様において、該対象はヒト
である。別の具体的実施態様において、対象の表面は、対象の心臓である。別の具体的実
施態様において、対象の表面は、1種以上の対象の動脈又は静脈である。
【0168】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、対象内又は上の表面上に腎臓組
織を作製するために使用され、ここで該対象は、そのような腎臓組織を必要としている(
例えば、対象は、ある形の腎疾患を有するか若しくは有した)。具体的実施態様において
、該対象はヒトである。別の具体的実施態様において、本方法において使用される細胞組
成物は、少なくとも1つの型の実質細胞及び1つの型の間質細胞を含む。別の具体的実施態
様において、該1つの型の実質細胞及び該1つの型の間質細胞は、自家又は同種異系の腎臓
組織から脱凝集された腎臓細胞の集団中に存在する。別の具体的実施態様において、対象
の表面は、対象の腎臓の一方又は両方である。
【0169】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、対象内又は上の表面上に膵臓組
織を作製するために使用され、ここで該対象は、そのような膵臓組織を必要としている(
例えば、対象は、膵臓癌を有するか若しくは有した)。具体的実施態様において、該対象
はヒトである。別の具体的実施態様において、対象の表面は、対象の膵臓である。
【0170】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、対象内又は上の表面上に前立腺
組織を作製するために使用され、ここで該対象は、そのような前立腺組織を必要としてい
る(例えば、対象は、前立腺癌を有するか若しくは有した)。具体的実施態様において、
該対象はヒトである。別の具体的実施態様において、対象の表面は、対象の前立腺である
。
【0171】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、対象内又は上の表面上に胃組織
を作製するために使用され、ここで該対象は、そのような胃組織を必要としている(例え
ば、対象は、胃癌を有するか若しくは有した)。具体的実施態様において、該対象はヒト
である。別の具体的実施態様において、対象の表面は、対象の胃である。
【0172】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、対象内又は上の表面上に結腸組
織を作製するために使用され、ここで該対象は、そのような結腸組織を必要としている(
例えば、対象は、結腸癌を有するか若しくは有した)。具体的実施態様において、該対象
はヒトである。別の具体的実施態様において、対象の表面は、対象の結腸である。
【0173】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、対象内又は上の表面上に腸組織
(例えば、小腸又は大腸に関連した1以上の組織)を作製するために使用され、ここで該
対象は、そのような腸組織を必要としている(例えば、対象は、腸の疾患を有するか若し
くは有した)。具体的実施態様において、該対象はヒトである。別の具体的実施態様にお
いて、対象の表面は、対象の小腸の一部である。別の具体的実施態様において、対象の表
面は、対象の大腸の一部である。
【0174】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、対象内又は上の表面上に食道組
織を作製するために使用され、ここで該対象は、そのような食道組織を必要としている。
具体的実施態様において、該対象はヒトである。別の具体的実施態様において、対象の表
面は、対象の食道である。
【0175】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、対象内又は上の表面上に甲状腺
組織を作製するために使用され、ここで該対象は、そのような甲状腺組織を必要としてい
る。具体的実施態様において、該対象はヒトである。別の具体的実施態様において、対象
の表面は、対象の甲状腺である。
【0176】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、対象において細胞を沈着するた
めに使用され、ここで該細胞は、1種以上の因子(例えば、タンパク質又はポリペプチド
)を発現するように設計され、且つここで該対象は、該1種以上の因子を必要とし、例え
ば対象は、該1種以上の因子を欠損している(例えば、遺伝子変異又は遺伝的素因のため
)。具体的実施態様において、対象は、ヒト、例えば遺伝疾患又は障害を伴うヒトであり
、ここで該遺伝疾患又は障害は、該1種以上の因子の全て又は一部により治療することが
できる。別の具体的実施態様において、対象は、該1種以上の因子の全て又は一部により
治療することができる疾患を伴うヒトである。そのような実施態様に従い、1種以上の因
子が、問題の疾患又は障害を治療するのに十分な量、この細胞により発現される限りは、
これらの細胞は、該対象内又は上の任意の表面上に沈着されることができる。その上に該
細胞が沈着され得る対象内又は上の組織及び器官の例は、上記4.1.2項に説明されている
。該細胞により生成され得る因子の例は、上記4.1.1項に説明されている。
【0177】
(4.3.2 患者集団)
本明細書記載の方法は、様々な患者集団に恩恵があるように使用することができる。一
実施態様において、本明細書記載の方法は、器官移植を必要とする対象において使用され
る。別の実施態様において、本明細書記載の方法は、疾患又は障害の治療を必要とする対
象において使用される。
【0178】
具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、癌と診断された対象において、組織
を設計するために使用され、すなわち、癌に冒されている該対象の1種以上の器官/組織
の全て又は一部を置き換えるために、使用される。具体的実施態様において、本明細書記
載の方法は、骨若しくは結合組織の肉腫、脳腫瘍、乳癌、卵巣癌、腎臓癌、膵臓癌、食道
癌、胃癌、食道癌、肝臓癌、肺癌(例えば、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、
咽喉癌、及び中皮腫)、結腸癌及び/又は前立腺癌と診断された対象において、組織を設
計するために使用される。
【0179】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、呼吸器疾患と診断された対象、
例えば喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫、肺炎、結核、肺癌及び/又は嚢胞性線維症
と診断された対象において、組織を設計するために使用される。
【0180】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、肝臓疾患と診断された対象、例
えば、肝炎(例えば、A型、B型若しくはC型肝炎)、肝臓癌、ヘモクロマトーシス、又は
肝臓の硬変と診断された対象において、組織を設計するために使用される。
【0181】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、骨癌(例えば骨肉腫)、骨壊死
、代謝性骨疾患、進行性骨化性線維形成異常、又は骨粗鬆症と診断された対象において、
組織を設計するために使用される。
【0182】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、神経疾患(すなわち、中枢又は
末梢神経系の疾患)と診断された対象、例えば、脳腫瘍、脳炎、髄膜炎、アルツハイマー
病、パーキンソン病、脳卒中、又は多発性硬化症と診断された対象において、組織を設計
するために使用される。
【0183】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、対象の中枢又は末梢神経系が損
傷された外傷を受けた対象、例えば、外傷性脳損傷(TBI)又は脊髄損傷(SCI)に罹患した対
象において、組織を設計するために使用される。
【0184】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、循環系の疾患と診断された対象
、例えば、冠動脈性心臓病、心筋症(例えば内因性又は外因性心筋症)、心臓麻痺、心臓
発作、炎症性心疾患、高血圧性心疾患、又は心臓弁膜症と診断された対象において、組織
を設計するために使用される。
【0185】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、腎疾患と診断された対象におい
て、組織を設計するために使用される。一実施態様において、対象は、機能不全である1
個の腎臓を有する。別の実施態様において、対象は、機能不全である2個の腎臓を有する
。
【0186】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、遺伝疾患又は障害と診断された
対象、例えば家族性高コレステロール血症、多嚢胞腎疾患、又はフェニルケトン尿症と診
断された対象において、組織を設計するために使用される。
【0187】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、糖尿病と診断された対象におい
て、組織を設計するために使用される。
【0188】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、口蓋裂と診断された対象におい
て、組織を設計するために使用される。
【0189】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、対象の皮膚の穿刺(piercing)を
必要とする通常の手技を受ける対象(例えば、対象は透析患者である)において、組織を
設計するために使用される。
【0190】
一部の実施態様において、それに対し本明細書記載の方法に従い作製された組織又は器
官が移植される対象は、動物である。特定の実施態様において、動物は鳥類である。特定
の実施態様において、動物はイヌである。特定の実施態様において、動物はネコである。
特定の実施態様において、動物はウマである。特定の実施態様において、動物はウシであ
る。特定の実施態様において、動物は哺乳動物、例えばウマ、ブタ、マウス、又は霊長類
、好ましくはヒトである。具体的実施態様において、それに対し本明細書記載の方法に従
い作製された組織又は器官が移植される対象は、ヒトである。
【0191】
特定の実施態様において、それに対し本明細書記載の方法に従い作製された組織又は器
官が移植される対象は、成人である。特定の実施態様において、それに対し本明細書記載
の方法に従い作製された組織又は器官が移植される対象は、乳児である。特定の実施態様
において、それに対し本明細書記載の方法に従い作製された組織又は器官が移植される対
象は、小児である。
【0192】
(4.4 キット)
本明細書記載の組成物の1種以上の構成成分が充填された1個以上の容器を備える、医薬
用パック又はキットが、本明細書において提供される。任意にそのような容器(類)に関
連して、医薬品又は生物学的製品の製造、使用又は販売を規制する政府の規制機関により
規定された形式での注意書が存在することができ、その注意書は、ヒト投与に関する製造
、使用又は販売の規制当局による承認を反映している。
【0193】
具体的実施態様において、本明細書において提供されるキットは、本明細書記載の細胞
及び本明細書記載の流動性ECMを含有する組成物を備える。そのようなキットは、1種以上
の追加成分を含有する組成物を任意に備えてよい。本明細書に包含されるキットは、本明
細書記載の方法に従い使用することができる。
【実施例0194】
(5. 実施例)
(5.1 実施例1:胎盤幹細胞の接着及び成長を支援するバイオプリントされた足場)
この実施例は、制御されたファイバー直径及び細孔サイズの足場を製造するために、合
成材料を、バイオプリントすることができること、並びにそのような足場は、細胞外マト
リクス(ECM)の塗布に適した基板を提供することを明らかにしている。この実施例は、バ
イオプリントされた合成材料及びECMを含む足場(ハイブリッド足場)は、胎盤幹細胞な
どの胎盤細胞を含む細胞の接着及び成長に適した基板を表していることを更に明らかにし
ている。
【0195】
(5.1.1 方法)
合成材料及びECMを含有するハイブリッド足場を組み立てるために、ポリカプロラクト
ン(PCL)(Mn 45,000、Sigma社)を、バイオプリンター(EnvisionTEC、Gladbeck社、独国)を
用い、足場(54×54×0.64mm)へ最初に印刷した。印刷条件は、下記であった:温度90℃、
印刷圧力3~5.5bar、印刷速度2~6mm/秒、好適なサイズの針使用。ECMを、先に説明した
ようにヒト胎盤から単離した(例えば、Bhatia MBの文献、Wounds 20, 29, 2008参照)。
単離されたECMを、バイオプリントされたPCL足場の両側に塗布し、且つ乾燥(脱水)させ
、PCL及びECMを含有するハイブリッド足場を作製した。得られたハイブリッドPCL-ECM足
場を、直径10mmの円盤に打ち抜き、培地により一晩予め湿潤させ、本明細書記載の方法に
従い調製した胎盤幹細胞(例えば、4.1.1項参照)を12,500個細胞/cm2で播種した。細胞
を、8日間培養した。カルセイン染色及びMTS増殖アッセイを、標準プロトコールに従い、
異なる時点で行い(n=3)、細胞生存能及び増殖を決定した。
【0196】
(5.1.2 結果)
印刷条件を最適化することにより、異なるファイバーサイズ、細孔サイズ及び細孔構造
のPCL足場を、作製した(
図1)。印刷したファイバーは、PCL及びECMを含有するハイブリ
ッド足場の作製のための安定した網状構造を形成した。更に、ファイバーサイズ及び細孔
構造を変動する印刷は、様々な比率を含むハイブリッド足場を製造することを可能にした
。
【0197】
バイオプリントされたPCL足場の両側上のECMの脱水は、ハイブリッド足場の作製を生じ
た。PCLとECMの間に、良好な一体化が認められ;ハイブリッド足場が、再水和を含む足場
の処理又は培養により操作された場合は、PCLとECMの間の分離は認められなかった(
図2
)。
【0198】
胎盤幹細胞は、経時的にハイブリッド足場の表面上に拡散され、且つ培養6日目には、
ハイブリッド足場の表面の大部分を被覆した。MTS細胞増殖アッセイは、細胞数は、経時
的に有意に増加したことを明らかにした(
図3)。加えてハイブリッド足場上に播種され
た胎盤幹細胞は、カルセイン染色により指摘されるように(
図4)、8日の培養期間にわた
り良好な生存能を明らかにした。まとめるとこれらのデータは、PCL-ECMハイブリッド足
場は、細胞の接着、生存、及び成長を支援することを指摘している。
【0199】
(5.1.3 結論)
この実験は、ECM及び合成材料(PCL)を含有するハイブリッド足場は、バイオプリンティ
ングを含む方法により作製することができること、並びに細胞はそのような足場へ付着す
るのみではなく、そのような足場上で培養された場合、生存及び増殖することを明らかに
している。
【0200】
(5.2 実施例2:胎盤幹細胞の接着及び成長を支援するバイオプリントされた足場)
この実施例は、合成材料、及び例えば胎盤幹細胞などの胎盤細胞のような細胞を含むEC
Mは、同時にバイオプリントされ、ハイブリッド足場を製造することができることを明ら
かにしている。この実施例により明らかにされたように、このバイオプリントされた細胞
は、バイオプリンティングプロセスを生き残るのみではなく、ハイブリッド足場との培養
において経時的に増殖する。
【0201】
(5.2.1 方法)
ECMを、実施例1に説明したように調製し、且つ100万個/mlの胎盤幹細胞を含有する0.5
%アルギン酸ヒドロゲルと混合した。次にPCL及び細胞-含有ECMを、層状にバイオプリン
トし、PCL及びECMを含むハイブリッド足場を作製した。足場の各層内に、PCLを最初に印
刷し、次にECM/細胞成分を、PCL線の間の間隙を充填するように印刷した。そのような層
を2又は5個印刷し、CaCl2溶液により架橋させ、ハイブリッド足場を作製した。バイオプ
リントされた細胞-含有足場(細胞/ECM/PCL)を、7日間培養し、且つ細胞増殖及び生存
を、カルセイン染色及びMTS細胞増殖アッセイにより様々な時点で評価した。
【0202】
(5.2.2 結果)
このバイオプリントされた足場は、細胞培養期間を通じて、損傷がない構造を維持した
(
図5)。PCLは、ECMヒドロゲルについて良好な構造上の支持体を提供し、これは3次元構
造体の作製を可能にした。バイオプリンティング及び最後までの培養後、細胞は、3次元
構造体全体に良好に分布され;細胞は、培養時に足場の深さを通じて認められた(
図6)
。
【0203】
カルセイン染色により証明されるように(
図7)、胎盤幹細胞は、バイオプリンティン
グプロセスを生き残り、且つ培養を通して3次元バイオプリントされたハイブリッド足場
において増殖し続けた。
図8に示されたように、ほとんどの細胞は、ハイブリッド足場内
のECMの全域に拡散されることが認められ、このことは、ECMは細胞接着及びECMヒドロゲ
ル中の拡散を増強したことを指摘している。これは、アルギン酸単独中の細胞の配置と、
本足場中の細胞の配置を比べることにより、確認された。加えて
図9に示されるように、M
TS細胞増殖アッセイは、2層及び5層の両方の足場について、細胞数の増加を明らかにし、
このことは、これらのハイブリッド足場は細胞増殖を支援したことを示している。
【0204】
(5.2.3 結論)
この実施例は、ECM及び合成材料(PCL)を含有するハイブリッド足場は、ECM及びPCLの同
時バイオプリンティングを含む方法により、作製することができることを明らかにしてい
る。また細胞は、ハイブリッド足場の成分(ECM及びPCL)に沿って、バイオプリントされ得
るという事実、並びに細胞は、このバイオプリンティングプロセスで生き残るという事実
も、この実施例により明らかにされる。更にハイブリッド足場の成分に沿ってバイオプリ
ントされた細胞は、そのような足場の上で培養される場合に、増殖し、且つ細胞マトリク
ス(アルギン酸)単独中で培養される場合よりもより良く足場全体に点在する。
【0205】
(5.3 実施例3:機能性バイオプリントされた足場)
この実施例は、合成材料及び細胞を含有するECMは、バイオプリントされ、機能性足場
を製造することができることを明らかにしている。
【0206】
インスリン産生細胞株であるβ-TC-6細胞は、ヒト胎盤から誘導された細胞外マトリク
ス(ECM)と共に、バイオプリントされた足場へバイオプリントされた。この足場は、寸法1
5×15×2.5mmであり、5層を含んだ。各層において、ポリカプロラクトン(PCL)を最初に印
刷し、引き続きPCL線間に、アルギン酸-ECMヒドロゲル(1%アルギン酸及び12%ECM)中1
500万個細胞/mlで混合したβ-TC-6細胞を印刷した。足場全体は、1%塩化カルシウム溶液
中に浸漬させ、20分間架橋させた。その後足場を、6ウェルプレート(1個のウェルにつき
培地3~5ml)において、細胞培養インキュベーター内で、15%ウシ胎仔血清を含有するDM
EM培地中で培養した。異なる時点で、足場を、カルセイン染色及びMTS増殖アッセイのた
めに収集し、各々、細胞生存能及び細胞増殖を特徴付けた。
図10は、バイオプリントされ
た足場の構造を示している。
【0207】
カルセイン染色は、β-TC-6細胞は、プリンティングプロセスを生き残り、且つ培養時
に生存し続けたことを明らかにした。足場の横断面図は、細胞は、足場全体に均等に分布
されたこと、及び各層において生存し続けたことを示した(
図10参照)。MTSアッセイは
、インスリン産生β-TC-6細胞は、最大3週間生存し続け、生存細胞の総数は一定に維持さ
れた(
図11参照)ことを確認した。
【0208】
このβ-TC-6細胞が、バイオプリントされた足場において機能することができるかどう
かを決定するために、これらの細胞によるインスリン生成を測定した。インスリン生成を
測定するために、バイオプリントされた足場を、新鮮な成長培地(6-ウェルプレート中3m
l/ウェル)に2時間に曝し、各足場からの上清のアリコートを、マウスインスリンELISAキ
ット(Millipore社)を使用し、インスリン濃度について測定した。生成されたインスリン
の最高レベルを、0日目に検出した(
図12参照)。分泌されたインスリンのレベルは、そ
の後の培養時に減少した(3日目及び6日目)が、この培養物中3日目から6日目までは、安
定し続けた(
図12参照)。従ってこのβ-TC-6細胞は、バイオプリントされた後、インス
リンを生成し且つ分泌する能力を維持した。
【0209】
膵臓におけるインスリン産生細胞の重要な機能は、血液中の上昇したグルコースレベル
に反応してインスリンを生成することである。従ってPCL、ECM、及びβ-TC-6細胞を含む
バイオプリントされた足場は、グルコース糖チャレンジに足場を曝すことにより、この機
能を保持するかどうかを試験した(
図13参照)。1個の足場(
図13の“A”)を、グルコー
ス飢餓条件(グルコース非含有IMDM培地、10%FCS)に2日間曝し、その後インスリン生成
条件(50mMグルコース/1mM IBMX)によりチャレンジした。対照としてのバイオプリント
された足場は、安定したグルコースレベルで、通常の培養培地において維持した(
図13の
“B”及び“C”)。これらの対照においては、培地を、インスリン生成条件によるチャレ
ンジを被験足場(すなわち、
図13のA)について行うと同時に交換した。各培養物からの
上清(A、B、及びC)を、30分毎に採取し、各上清からインスリン濃度をELISAにより測定
した。
図13は、異なる時点での各培養物からのインスリン生成のレベルを示し、且つグル
コース飢餓条件に曝され、その後インスリン生成条件によりチャレンジされたバイオプリ
ントされた足場(すなわち、
図13のA)は、チャレンジ後0.5時間でのそのインスリン生成
レベルと比較し、チャレンジ後3時間で、80倍より多くのインスリンを生成したのに対し
、対照(すなわち、
図13のB及びC)は、はるかに少ないインスリンを生成した(培地交換
後0.5時間でのインスリン生成レベルと比べ、培地交換の3時間後にわずかに約2倍多いイ
ンスリン)ことを明らかにしている。
【0210】
この実施例は、合成材料、細胞、及びECMを含有するバイオプリントされた足場が作製
され得ること、並びにバイオプリントされた足場の細胞は、生存能及び機能の両方を維持
していることを明らかにしている。
【0211】
本明細書に明らかにされた組成物及び方法は、本明細書記載の具体的実施態様により範
囲が限定されるものではない。実際、記載された組成物及び方法に加え、組成物及び方法
の様々な改変が、前述の説明及び添付図面から、当業者には明らかになるであろう。その
ような改変は、添付された特許請求の範囲内に収まることが意図されている。
【0212】
様々な出版物、特許及び特許出願が本明細書に挙げられており、これら文献の開示はそ
れらの全体が引用により本明細書中に組み込まれている。