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特開2023-123440合成リジンアナログ及び模倣物の抗ウイルス用途のための方法及び組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123440
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】合成リジンアナログ及び模倣物の抗ウイルス用途のための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/195 20060101AFI20230829BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230829BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230829BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20230829BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20230829BHJP
   A61K 31/4172 20060101ALI20230829BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20230829BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20230829BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20230829BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
A61K31/195
A61P43/00 121
A61P25/28
A61K31/454
A61K31/198
A61K31/4172
A61P31/16
A61P31/22
A61P31/18
A61P31/20
【審査請求】有
【請求項の数】30
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023088440
(22)【出願日】2023-05-30
(62)【分割の表示】P 2020532845の分割
【原出願日】2018-08-09
(31)【優先権主張番号】62/550,656
(32)【優先日】2017-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/664,555
(32)【優先日】2018-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520064746
【氏名又は名称】アンタイ-ヴァイラル テクノロジーズ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マードック, フランク
(72)【発明者】
【氏名】マードック, ロンエア
(72)【発明者】
【氏名】スチュワート, ダブリュ. ポール
(57)【要約】      (修正有)
【課題】一時的な又は再発性のウイルスのアウトブレイクを治療、予防、又は低減するため、慢性ウイルス感染の発症又は増殖を抑制するため、或いはウイルス感染の予防又は治療のための医薬を提供する。
【解決手段】ウイルスの複製又は拡散に必要とされるアミノ酸又は他の生物学的薬剤と拮抗又は競合する、合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物を含み、前記合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物が、トラネキサム酸であり、合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物が溶液中にあり、溶液が、約3から約30重量%の濃度の合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物を有し、前記ウイルスが、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、水痘・帯状疱疹ウイルス(帯状ヘルペス)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、風邪ウイルス又はインフルエンザウイルスからなる群から選択される、医薬とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一時的な又は再発性のウイルスのアウトブレイクを治療、予防、又は低減するため、慢性ウイルス感染の発症又は増殖を抑制するため、或いはウイルス感染の予防又は治療のための方法であって、
ウイルスの複製又は拡散に必要とされるアミノ酸又は他の生物学的薬剤と拮抗又は競合する、合成リジンアナログ又は模倣物を投与することを含む、
方法。
【請求項2】
合成リジンアナログ又は模倣物が、トラネキサム酸、イプシロン-アミノカプロン酸(EACA)、又はAZD6564である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
一時的な又は再発性のウイルスのアウトブレイクが、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、又は水痘・帯状疱疹ウイルス(帯状ヘルペス)によって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
慢性ウイルス感染が、ヒト免疫不全ウイルスによって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ウイルス感染が、風邪ウイルス、インフルエンザウイルス、又は他の一過性ウイルスによって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
合成リジンアナログ又は模倣物が溶液中にある、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
溶液が、約0.5から約30重量%の濃度の合成リジンアナログ又は模倣物を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
溶液が、スプレー、ミスト、エアロゾル、又は洗口剤として処方される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
合成リジンアナログ又は模倣物が、ヒトの皮膚に溶け込むビヒクルの一部として適用される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
合成リジンアナログ又は模倣物を含む溶液が静脈内投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
溶液が、合成リジンアナログ又は模倣物を徐放性の態様で送達可能にするビヒクルを介して適用される、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
合成リジンアナログ又は模倣物が経口送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
合成リジンアナログ又は模倣物が徐放性の態様で送達される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
合成リジンアナログ又は模倣物の投与が少なくとも1日に1回行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
合成リジンアナログ又は模倣物の投与が週1回又は週2回行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
合成リジンアナログ又は模倣物の投与が月1回又は月2回行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
合成リジンアナログ又は模倣物が、機械的デバイスによって、永久材料又は再吸収性の材料を介して、或いはビヒクルで投与され、それによって合成リジンアナログ又は模倣物が徐放性の態様で送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
合成リジンアナログ又は模倣物がアルツハイマー病の発症を予防又は抑制する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
合成リジンアナログ又は模倣物が少なくとも1つのアミノ酸をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
合成リジンアナログ又は模倣物が、少なくとも1つの他の天然又は合成のアミノ酸アナログ又は模倣物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
一時的な又は再発性のウイルスのアウトブレイクを治療、予防、又は低減するため、慢性ウイルス感染の発症又は増殖を抑制するため、或いはウイルス感染を予防又は治療するための組成物であって、
ウイルスの複製又は拡散に必要とされるアミノ酸又は他の生物学的薬剤と拮抗又は競合する、合成リジンアナログ又は模倣物を含む、
組成物。
【請求項22】
一時的な又は再発性のウイルスのアウトブレイクが、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、又は水痘・帯状疱疹ウイルス(帯状ヘルペス)によって引き起こされる、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
慢性ウイルス感染がヒト免疫不全ウイルスによって引き起こされる、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
予防されるウイルス感染が、風邪ウイルス、インフルエンザウイルス、又は他の一過性ウイルスによって引き起こされる、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
合成リジンアナログ又は模倣物が経口送達される、請求項21に記載の組成物。
【請求項26】
合成リジンアナログ又は模倣物が局所的に適用される、請求項21に記載の組成物。
【請求項27】
組成物が、局所投与の改善のため、皮膚浸透の改善のため、又は持続放出のための粘度をもたらす成分を含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
合成リジンアナログ又は模倣物が静脈内投与される、請求項21に記載の組成物。
【請求項29】
合成リジンアナログ又は模倣物が、スワブ、鼻腔ミスト、吸入、又は洗口剤によって投与される、請求項21に記載の組成物。
【請求項30】
合成リジンアナログ又は模倣物が、機械的デバイスによって、永久材料又は再吸収性の材料を介して、或いはビヒクルで投与され、それによって合成リジンアナログ又は模倣物が徐放性の態様で送達される、請求項21に記載の組成物。
【請求項31】
合成リジンアナログ又は模倣物が経皮パッチを介して投与される、請求項21に記載の組成物。
【請求項32】
合成リジンアナログ又は模倣物が、注射又は移植されたリポソーム送達デポを介して投与される、請求項21に記載の組成物。
【請求項33】
合成リジンアナログ又は模倣物が、トラネキサム酸、イプシロン-アミノカプロン酸(EACA)、又はAZD6564である、請求項21に記載の組成物。
【請求項34】
組成物が、急速な全身浸透又は持続放出をもたらす成分を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項35】
合成リジンアナログ又は模倣物がアルツハイマー病の発症を予防又は抑制する、請求項21に記載の組成物。
【請求項36】
組成物が少なくとも1つのアミノ酸を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項37】
組成物が、少なくとも1つの他の天然又は合成のアミノ酸アナログ又は模倣物を含む、請求項21に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2017年8月27日出願の米国仮特許出願第62/550,656号及び2018年4月30日出願の米国仮特許出願第62/664,555号の優先権を主張し、参照することによってこれらの開示全体を援用する。
【0002】
本開示は、概して、リジンのアナログ及び模倣物に関し、より詳細には、合成リジンアナログ及び模倣物の抗ウイルス用途のための方法及び組成物に関するが、これらに限定されない。
【背景技術】
【0003】
単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)及び単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)は、ヒト集団における非常に一般的なウイルスであり、さまざまな推定では、最大で世界の人口の80%がHSV-1の保菌者であることが示唆されている。同様に、アメリカ疾病予防管理センターは、40歳以上の米国で生まれた人々の約99.5%が野生型の水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)に感染していると推定している。HSV-1、HSV-2、及びVZVに加えて、現在、約3670万人がヒト免疫不全ウイルス(HIV)と共生していると推定されている。世界中の多くの人々がHSV-1、HSV-2、VZV、及びHIVに罹患しているが、風邪ウイルス及びインフルエンザウイルスはさらに顕著であり、さまざまな年齢層又はウイルス感染の影響を受けやすい人々に対し、深刻な又は生命を脅かす影響を及ぼす可能性がある。治療に対する手法の1つは抗ウイルス薬の使用であるが、幾つかの抗ウイルス薬は、HSV-1、HSV-2、VZV、HIV、又は風邪ウイルス及びインフルエンザウイルスの治療、予防、及び抑制には効果がないという制限を示している。
【発明の概要】
【0004】
一時的な又は再発性のウイルスのアウトブレイクを治療、予防、又は低減するため、慢性ウイルス感染の発症又は増殖を抑制するため、若しくはウイルス感染を予防又は治療するための方法であって、該方法は、ウイルスの複製又は拡散に必要とされるアミノ酸又は他の生物学的薬剤と拮抗又は競合する、合成リジンアナログ又は模倣物を投与することを含む。
【0005】
一時的な又は再発性のウイルスのアウトブレイクを治療、予防、又は低減するため、慢性ウイルス感染の発症又は増殖を抑制するため、若しくはウイルス感染を予防又は治療するための組成物であって、該組成物は、合成リジンアナログ又は模倣物は、ウイルスの複製又は拡散に必要とされるアミノ酸又は他の生物学的薬剤と拮抗又は競合する、合成リジンアナログ又は模倣物を含む。
【発明を実施するための形態】
【0006】
人体に慢性的に残留し、再発性のアウトブレイクを示すウイルスの例は、ヒト集団において非常に一般的なウイルスである単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)及び単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)である。HSV-1は通常、口唇ヘルペス、又は再発性の口唇疱疹(RHL)に関連しているが、HSV-2もまた関与している可能性がある。HSV-2は通常、陰部ヘルペスに関連しているが、同様にHSV-1もまた関与している可能性がある。HSV-1は、より一般的であり、さまざまな推定では、その非常に伝染性の性質に起因して、最大で世界の人口の80%がHSV-1ウイルスを保菌しており、世界の人口の40%が定期的に再発性のRHLのアウトブレイクを繰り返していることが示唆されている。RHLの場合には一般的に口唇又は口の近くの領域に影響を及ぼすアウトブレイクが起こるまでは、通常、人がヘルペスウイルスを保菌しているという兆候はない。目に見えるアウトブレイクは、炎症を起こし、荒れて痛みを伴う可能性がある、びらんの形態をとりうる。ウイルスのアウトブレイクの過程及びそれに関連する目に見える病変は、通常、約2から4週間の間に、薬物治療なしで人体の自然治癒過程によって完全に消散する。
【0007】
これらのアウトブレイクの重症度を軽減し、持続期間を短縮するように設計された現在の治療は、主に、経口治療であるVALTREX(登録商標)及び軟膏であるABREVA(登録商標)などの抗ウイルス薬で構成されている。これらの治療はある程度有効であることが示されているが、通常、アウトブレイクの最初の兆候を対象として使用した場合であっても、最長2週間までは、痛む部位は目視でき、症状がある。再発に関しては、重症度又は治癒時間とは対照的に、2016年のコクランレビューでは、経口抗ウイルス薬による臨床的利点は限定的であり、局所的抗ウイルス薬又は他の任意の治療法では有効性がないか、又は有効性が確認されていないことが分かった。
【0008】
研究によると、さまざまなアミノ酸のそれぞれを培地から除外したときにウイルスの増殖を測定した試験に基づいて、ヒスチジンとアルギニンが、この順で、HSV-1ウイルスの複製に必要とされる11のアミノ酸のうちの最も重要な2つであることが示唆されている。さらには、リジンはウイルスの複製には必要ではなく、実際にはウイルスの増殖に対して阻害効果を示した。他の研究では、体内のアルギニンと比較してリジンの優位性を高めることにより、ウイルスの複製が抑制されることが示されている。したがって、例えば、リジンのサプリメントを服用するか、又はリジンを含むクリーム又は軟膏を投与することにより、アルギニンが豊富な食品を減らし、リジンが豊富な食品を増やすように食事を変えることにより、ヘルペスのアウトブレイクの重症度及び持続期間が短縮される可能性がある。さらには、食事又はサプリメントを長期的に変更することにより、HSV-1のアウトブレイクの発生率が低下する可能性がある。したがって、さまざまなリジン栄養補助製品が販売されている。しかしながら、1975年から1987年まで、経口リジンの補充に対し、5つの研究、主に二重盲検、プラセボ対照並行又はクロスオーバー研究が行われた。研究のうちの3件は、長期にわたる毎日のリジンの補充により、アウトブレイクの重症度及び再発が低減することを見出した一方で、1件は再発のみを減少させることを見出し、もう1件は重症度又は再発のいずれにも利益を見出さなかった。現在、通常アウトブレイクの兆候に対して医師が推奨する主な治療法は、経口及び局所的な抗ウイルス薬である。
【0009】
さらには、SUPERLYSINE+(商標)ヘルペス治療法などのリジンを含む複数の局所用クリーム及び軟膏が存在するが、これは、痛みを緩和し、火傷及びかゆみを止めるのを補助し、感染部位に潤いを与えることによって、治癒時間を半分に短縮することを促す。しかしながら、この製品では、有効成分はメントールであり、アミノ酸L-リジンは、さまざまな植物系の抽出物、ビタミン、及び酸化亜鉛とともに、不活性成分として列挙されている。加えて、治癒時間が半減されたとしても、依然として、1から2週間のアウトブレイクを被る可能性がある。この製品をサポートする臨床研究は、30人の被験体のほぼ半分が、4日目まで治癒せず、30の被験体の全てが治癒するのに11日を要したことを示した。
【0010】
HSV-1の共通性に起因して、体内でのHSV-1の相互作用を特定し、よりよく理解して、治療を促進し、かつ再発を抑制するために、さらなる研究が行われている。In vitro試験では、HSV-1にはアミノ酸の栄養要件があり、上記で簡単に説明したように、リジン、ヒスチジン、及びアルギニンが特に、ヘルペスウイルスの複製に重要な役割を果たしていることを示している。しかしながら、ヒスチジン欠乏は顕著な細胞変性効果をもたらしたため、さらなる研究は行われず、その後の研究は、アルギニンに拮抗して細胞障害性なしにウイルス阻害を達成することに焦点が当てられた。
【0011】
HSV-1の培養にアルギニンを加えることにより、最適なHSV-1ウイルス増殖レベルが維持されることが実証されており、さらに、HSV-1が増殖をアルギニンに依存していることも実証されている。研究では、HSV-1は培地中でアルギニンなしでは増殖しないことが報告されている。アルギニン欠乏培地では、HSV-1は、ビリオン合成の阻害、タンパク質合成量の減少、及び細胞質から核へのウイルスペプチド輸送の阻害を示した。これは、複製のアルギニン依存性に依拠することにより、再発の治療及び予防の両方を強化するための有望な結果を示している。
【0012】
研究は、アルギニン欠乏培地では、HSV-1のエンベロープポリペプチド(II)が細胞質から核へと非常にゆっくりと輸送されることを示している。ポリペプチド(VII)は、合成についてアルギニン依存性である、アルギニンが豊富なタンパク質である。アルギニンなしでは、ほとんどのウイルス構造タンパク質、とりわけウイルスカプシドポリペプチドIIは、細胞質内に残される。加えて、核内のHSV-1-DNAはコーティングされておらず、複製することができない。細胞質内の残留ウイルスタンパク質は急速に分解される。
【0013】
アルギニンがHSV-1の増殖を支援すること、及び、リジンがin vitroでこのアルギニンの作用に拮抗することを検証するために、さまざまな研究が行われている。リジンの作用は多因子性であるように思われる。1つのメカニズムは、宿主真核細胞のDNAの周りのヒストン層を包含するように思われる。5つの異なるタイプのヒストンが特定されており、これらはDNA複製中にのみ合成され、ここで、リジンが豊富なヒストンは、中期及び間期にクロマチンのDNAフィブリルをクロスリンクし、クロマチンをよりコンパクトにし、したがってヒト染色体の構造的完全性を維持する。HSV-1のDNAヌクレオシド組成物は、リジンに対して高比率のアルギニンを含み、感染した細胞はリジンに対してアルギニンの比率が高いタンパク質を合成する。HSV-1ではグアニン(G)含有コドンが頻繁に利用されるのに対し、ヒト宿主細胞ではシトシン(C)-グアニンはあまり利用されない。6つのアルギニンコドンと、たった2つのリジンコドンが存在する。1ヌクレオチドの単純なシフトによってアルギニンが生成される。これは、感染した宿主細胞の翻訳装置内で非常に急速に行われうる。リジンが豊富な宿主細胞タンパク質は、ウイルスDNAによって変化し、新しいアルギニルの、tRNAを合成する、アルギニンが豊富なタンパク質が生成される。
【0014】
研究では、リジンはまた、アルギニンの代謝拮抗物質及びアナログであるように思われ、尿細管での再吸収をめぐって競合し、アルギニンの排泄の増加をもたらし、腸壁を横切る輸送をめぐって競合し、アルギナーゼ誘導因子として作用し、アルギニンの分解をもたらし、かつ、輸送システムに入ることによって組織細胞中のアルギニンの細胞内含有量を低減させることによって、アルギニンに拮抗するようにも思われることが示唆されている。
【0015】
In vitro試験に加えて、幾つかの臨床試験が実施されており、それによれば、適切な用量及び適切な条件で摂取する(例えば、消費されるアルギニン含有食品の量を制御する)と、長期間経口摂取されたリジンによってヘルペスのアウトブレイクの再発が首尾よく低減されることが示唆された。しかしながら、おそらくは天然リジンの継続的な摂取が望ましくない副作用をもたらす可能性があるという懸念の理由から、この一連の研究は終了した。したがって、関連する組織に直接影響を及ぼし、全身への影響を軽減するように、リジンの抗ウイルス効果を模倣するため又はヘルペスウイルスに対する天然のリジンの効果を高めるために、合成(人工)リジンのアナログ又は模倣物を使用することは、局所的に送達されるリジンのアナログ又は模倣物を含めて、有益でありうる。
【0016】
上で詳述したように、経口及び局所的なリジン治療は限られた利益をもたらすことが示されており、経口及び局所的な抗ウイルス薬の一次的な医師主導の治療もまた、HSV-1のアウトブレイクの重症度、持続期間、及び再発の軽減における限られた有効性を示している。しかしながら、上記の調査及び研究に照らして、HSV-1のアウトブレイクの重症度及び持続期間をより顕著に低減させる抗ウイルス剤の治療的処置が有益であると証明されよう。さらには、上で詳細に説明したさまざまな研究で得られた情報を利用して、HSV-1のアウトブレイクの再発を回避するための抗ウイルス薬の長期の又は予防的使用がさらに有益であると証明されよう。
【0017】
HSV-1のアウトブレイクの再発の治療及び抑制に加えて、リジン及びそのアナログ又は誘導体が、例えば、とりわけ、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザウイルス、及び風邪ウイルスなどの他のウイルス感染への予防的使用に有益であることを証明することができる。HIVは、人体に慢性的に残留し、アウトブレイクを示さないが、時間の経過とともに発症し、深刻な悪影響をもたらすウイルスの一例である。HIVウイルスの継続的な複製は最終的に免疫系を破壊し、身体を他の生命を脅かす疾患にかかりやすくする。研究では、ヘルペスウイルスとは異なり、HIVは複製にリジンを必要とし、HIVに感染した患者の血漿にリジンを加えると、ウイルスの複製が急速に増加したことが示されている。その一方で、アルギニンを添加した場合には効果はなかった。合成リジンアナログ又は模倣物を利用して、天然リジンの活性と競合する(ブロック)することによってHIVの複製を阻害することができると考えられ、以下に記載されるin vitro試験は、この効果を裏付けているように思われる。
【0018】
さらには、感染を回避するための抗ウイルス剤の長期的又は予防的使用は、有益であり、例えば、インフルエンザウイルス及び風邪ウイルス又は他の一過性ウイルスを包含する可能性があり、かつ、教師又は旅行者などの感染症に曝露されるリスクが増大している対象にとって、及び高齢者又は幼児などの感染症によって重篤な事態となるリスクが高い個人にとっては、とりわけ有利でありうる。自然医学業界の文献には、リジンの補給がインフルエンザウイルス及び風邪ウイルスの治療及び回避に有益であることが示されている。したがって、感染症を治療するための抗ウイルス剤の使用もまた有益であることが証明されるであろうし、例えば、インフルエンザウイルス及び風邪ウイルス又は他の一過性ウイルスの治療が含まれるであろう。
【0019】
上記を考慮すれば、合成リジンアナログ又は模倣物は、ヘルペスウイルスのようなウイルスの治療におそらくは有益であり、ヘルペスウイルスのようなウイルスのアウトブレイクの再発を阻害し、HIVのようなウイルスの発症を阻害し、かつインフルエンザウイルス及び風邪ウイルスなどのウイルス又は他の一過性ウイルスによる感染を回避又は治療し、ここで、リジンのアナログ又は模倣物は、ウイルス複製に必要な他のアミノ酸に拮抗するリジンの効果を模倣し増強するか、あるいはウイルスの複製に必要な場合に天然リジンと競合してブロックする。加えて、抗ウイルス性の合成リジンアナログ又は模倣物は、すべてのタンパク質及びある特定の他の代謝活動の基本的な構成要素であるアミノ酸の基本的なレベルで作用することから、特定のタンパク質又はその活動に作用する通常の抗ウイルス薬よりも、ウイルス耐性の影響(例えば、薬剤の活動の周辺の変異)を受ける可能性がはるかに少ない。
【0020】
本明細書の開示は、リジンの合成アナログ又は模倣物の薬理学を利用して、ある特定のウイルスの複製に必要なアミノ酸に拮抗する、又はウイルスの複製に必要な場合に天然のリジンと競合しようというものである。本開示は、ヘルペスウイルスのアウトブレイクの重症度及び持続期間を最小限に抑え、合成リジンアナログ又は模倣物を使用して、風邪ウイルス及びインフルエンザウイルス又は他の一過性ウイルスなどの頻繁に感染するある特定のウイルスによる感染症を治療するための方法及び組成物を含む。さらには、本開示は、HIVなどの人体に慢性的に残留して、時間の経過とともにますます否定的な結果を伴って複製及び発症し続けるウイルスの発症及び増殖を阻害する、口唇ヘルペス及び陰部ヘルペスのアウトブレイクに関与するHSV-1及びHSV-2などの人体に慢性的に残留するウイルスのアウトブレイクの予防又は発生率の低減のための合成リジンアナログ又は模倣物の予防的使用のため、並びに風邪ウイルス及びインフルエンザウイルス又は他の一過性ウイルスなどの頻繁に感染するある特定のウイルスによる感染の予防のための方法及び組成物を含む。
【0021】
アミノ酸リジンは、ある特定のウイルスの複製にとって重要であること、並びに、リジンの補給はある特定のウイルスの複製に必要な他のアミノ酸の活動に拮抗するか又はそれをブロックすることができることを示す研究及び調査に基づいて、並びに、合成リジンアナログ又は模倣物が、幾つかの事例ではどのように模倣することができ、他の事例では天然のリジンとどのように競合するかについての知識に基づいて、本開示は、合成リジンアナログ又は模倣物を慢性的又は予防的に使用して、ウイルス複製を阻害し、それによってHSV-1及びHSV-2のようなある特定のウイルスの再発性のアウトブレイクの発生率を低下させて、HIVのような他の慢性ウイルスの発症を抑制し、インフルエンザウイルス及び風邪ウイルスなどのある特定のウイルス又は他の一過性ウイルスによる感染を回避する方法及び組成物を含む。
【0022】
幾つかの実施態様では、合成リジンアナログはトラネキサム酸でありうる。さまざまな実施態様では、合成リジンアナログはイプシロン-アミノカプロン酸(EACA)でありうる。他の実施態様では、リジン-模倣物、例えば、AZD6564、あるいは、トラネキサム酸などの合成リジンアナログと同じ態様で、ウイルスのアウトブレイクを治療、予防、又は低減する、慢性ウイルス感染の発症又は増殖を抑制する、若しくは、ウイルス感染を予防又は治療することによって、リジンの機能を再現又は模倣する任意の他の化合物などである、さまざまな薬剤を利用することができる。
【0023】
以下にさらに詳細に記載される実験室の試験では、少なくとも1つの合成リジンアナログであるトラネキサム酸がHSV-1及びHSV-2の複製の阻害に有効であることが示唆されている。加えて、以下にさらに詳しく記載されるように、実験室の試験は、HIVに感染した細胞にトラネキサム酸を加えることにより、ウイルスの複製が阻害されたことを示唆している。したがって、このウイルスの場合、トラネキサム酸は明らかに天然のリジンと競合する、すなわち、トラネキサム酸の抗線維素溶解効果と同様のウイルス複製メカニズムによって(プラスミノーゲン上の通常の結合位置を占めることにより天然のリジンと競合し、それによってプラスミノーゲンがプラスミンに変換するのを防ぐ)、リジンを通常の使用に対してブロックする。
【0024】
加えて、実験室の試験は、トラネキサム酸がインフルエンザAウイルス(H3N2)の複製の阻害に対して有効であることを示唆しており、トラネキサム酸の明確な抗ウイルス機能を実証している。さらには、実験室でのさらなる試験では、3つの塩基性アミノ酸(リジン、アルギニン、ヒスチジン、若しくはそれらの類似体又は模倣物)のうちの1つが過剰量だと、他の2つの活性が妨げられ、また、それらのうちの2つの組合せが過剰量のときは、3つ目にも同じ効果があり、さらには、細胞障害性なしに、より大用量の組合せが可能となることが示唆された。以下に詳しく論じられるように、細胞障害性をほんの少し下回るレベルでアルギニン及びトラネキサム酸を加えることにより、ヘルペスウイルスで最高レベルのウイルス阻害がもたらされるのに対し、同量のトラネキサム酸を単独で加えると、阻害は実質的に低くなり、同量のアルギニンを単独で加えると、ウイルスの複製が増加した。
【0025】
研究は、リジンがアルギニンに拮抗することを示しているが、以前の研究はヒスチジンがヘルペスの複製に関与する重要なアミノ酸であることを示唆していた。この研究及び観察された実験室の結果に基づいて、3つの塩基性アミノ酸のうち1つの塩基性(非酸性)アミノ酸若しくはそのアナログ又は模倣物が過剰に存在すると、他の2つの塩基性アミノ酸に拮抗する可能性があると考えられる。さらには、2つの塩基性アミノ酸若しくはそれらのアナログ又は模倣物が過剰に存在すると、第3の塩基性アミノ酸に拮抗すると考えられる。以下に論じられる実験室での結果は、十分な量を所与として、トラネキサム酸がアルギニンとヒスチジンに拮抗するのに対し、トラネキサム酸とアルギニンとの組合せはヒスチジンに拮抗し、トラネキサム酸とヒスチジンとの組合せはアルギニンに拮抗することを示唆している。
【0026】
以下に詳細に論じられる実験室での試験、並びに上に提示される研究及び調査に基づいて、本開示の目的は、ヘルペスウイルスのアウトブレイクの重症度及び持続期間を最小限に抑えるための方法及び組成物を提供することである。本開示によれば、アウトブレイクの最初の兆候が認められるとすぐに、治療的に安全かつ有効な量の合成リジンアナログ又は模倣物が感染領域で利用可能になり、例えば1から14日間など、アウトブレイクが適切に収まるまで継続される。
【0027】
本開示の別の目的は、RHL(口唇ヘルペス)の発生など、ウイルスのアウトブレイクを予防するための方法及び組成物を提供することである。本開示によれば、治療的に安全かつ有効な量の合成リジンアナログ又は模倣物を、予防的使用のために反復投与に利用可能でありうる。
【0028】
治療及び予防的使用の両方を、例えば経口での薬剤の全身投与で実施することができるが、有効な濃度及びレジメンで、局所形態で適用することもできると考えられる。本開示の特定のバリエーションでは、合成リジンアナログには、アルギニン及びヒスチジンに拮抗し、HSV-1及びHSV-2ウイルスの複製を抑制することが具体的に示されているトラネキサム酸が含まれる。本開示の別のバリエーションでは、合成リジンアナログには、ヒスチジンに拮抗し、HSV-1及びHSV-2ウイルスの複製を抑制することが具体的に示されている、トラネキサム酸とアルギニンとの組合せが含まれ。幾つかの実施態様では、組成物及びその使用方法には、ヘルペスウイルスなどの再発するウイルスのアウトブレイクを治療、予防、又は低減するため、HIVなどの慢性ウイルス感染の発症又は増殖を抑制するため、若しくはインフルエンザウイルス及び風邪ウイルスなどのウイルス又は他の一過性ウイルスの感染を予防又は治療するために1つ以上のアミノ酸と組み合わせた合成リジンアナログ又は模倣物が含まれうる。
【0029】
さらに、合成リジンアナログ及び模倣物を利用して、体内に慢性的に残留し、HIVなどの経時的に発症し続けるウイルスの複製を阻害することができると考えられる。したがって、本開示の別の目的は、予防的に使用するために反復投与に利用可能でありうる、治療的に安全かつ有効量の合成リジンアナログ又は模倣物を提供して、HIVウイルスの複製及び発症を抑制することである。HSV-1及びHSV-2を阻害するメカニズムとは異なるが、HSV-1及びHSV-2が複製に必要とするアルギニン及びヒスチジンに拮抗するのではなく、プラスミノーゲンがプラスミンへと活性化するのをトラネキサム酸が防ぐ方法と同様に(例えば、プラスミノーゲンのリジン結合部位を占有することによって)、トラネキサム酸はHIVが複製に必要とする天然のリジンと競合し、それに取って代わると考えられる。
【0030】
さらに、合成リジンアナログ又は模倣物を利用して、例えば、感染への曝露が増加した、又は感染による深刻な結果のリスクが増加した個体に薬剤を投与することによって、インフルエンザウイルス及び風邪ウイルスなどのある特定のウイルス又は他の一過性ウイルスによる感染の重症度を回避又は軽減することができると考えられる。加えて、合成リジンアナログ又は模倣物を使用して、インフルエンザウイルス及び風邪ウイルスなどのある特定のウイルス又は他の一過性ウイルスによる感染症を治療することができると考えられる。合成リジンアナログ又は模倣物のこれらの用途はすべて、適切な場合には他の抗ウイルス治療薬と組み合わせて使用することができることが理解される。
【0031】
さらには、合成リジンアナログ又は模倣物によるヘルペスウイルスのようなウイルスに対する阻害性質に起因して、合成リジンアナログ又は模倣物を使用して、アルツハイマー病の予防を促進し、進行を低下させ、可能性のある治療を行う(又は他の治療と組み合わせて使用する)ことができることがさらに想定される。最近の研究は、2つの極めて一般的なヘルペスウイルスがアルツハイマー病に関与する遺伝子の挙動に影響を与えることを示唆している。エビデンスは、脳がウイルス又は他の細菌からそれ自体を積極的に防御していることを示唆しており、実験は、粘着性のベータアミロイドが侵入する細菌を飲み込むことによって捕捉し、これがプラークの形成を開始する理由であることを示している。アルツハイマー病の特徴の1つは、脳のニューロン間にアミロイドプラークが蓄積することである。アミロイドとは、身体が通常産生するタンパク質断片の総称である。ベータアミロイドは、アミロイド前駆体タンパク質から切断されたタンパク質断片である。健康な脳では、これらのタンパク質断片は分解され、除去されるが、アルツハイマー病では、断片は蓄積されて、硬い不溶性のプラークを形成する。特定の実験では、ヘルペス(この場合はヒトヘルペスウイルス6A(HHV6a)及びヒトヘルペスウイルス7(HHV7))を枯渇させる分子がない場合に、アミロイドプラークがより容易に形成されることが示された。これは、ウイルスとアルツハイマー病との関係が存在することを示唆している。さらには、HHV6及び、口唇ヘルペスを引き起こすヘルペスウイルスは、アミロイドプラークの形成を誘発又は結実させる可能性があると考えられている。したがって、再発性のヘルペスのアウトブレイクを治療及び抑制するために本明細書に提示された方法及び組成物は、アルツハイマー病の予防又は治療の可能性として、若しくは進行を遅らせるために有益であることが証明される可能性がある。合成リジンアナログ又は模倣物のこれらの用途は、適切な場合には、アルツハイマー病の他のレジメン及び治療と組み合わせて使用することができることが理解される。
【0032】
感染していない培養細胞に通常必要とされるアミノ酸によるウイルス阻害は珍しいことではない。例えば、リジンは、GD VIIマウス脳脊髄炎ウイルスを阻害することも示されている。グリシンは、グリシンが必要なアミノ酸であるサルの腎臓細胞において、ポリオウイルスの複製を阻害することがわかっている。同様に、グルタミンは、ヘルペスウイルスのウイルス複製を継続するために必要とされるが、ある特定の条件下では、グルタミンはウイルス収量の低減に実際に影響を及ぼした。他の研究では、十分な量及びある特定の条件でアルギニンを加えることにより、HSV-1が阻害されることがわかった。アルギニンはまた、インフルエンザウイルスA(H3N2)及びポリオウイルス1型も阻害した。このように、トラネキサム酸、又は他の合成リジンアナログ又は模倣剤を有する組成物にアルギニン、グルタミン、又は他のアミノ酸を加えることは、ヘルペスウイルスなどの一時的な又は再発性のウイルスのアウトブレイクの治療、予防、又は低減、HIVなどの慢性ウイルス感染症の発症又は増殖の抑制、若しくはインフルエンザウイルス及び風邪ウイルスなどのウイルス又は他の一過性ウイルスへの感染の予防又は治療に役立つと考えられる。
【0033】
これより、本開示のより具体的な実施態様並びにこのような実施態様のサポートを提供するデータについて説明する。しかしながら、以下の開示は例示のみを目的とするものであり、特許請求される主題の範囲をいかようにも限定することを意図するものではないことに留意すべきである。
【0034】
本開示の実施態様は、薬剤/組成物の薬理活性及び目に見えるアウトブレイクに対するその効果を利用することにより、迅速な治癒及び通常の美容的外観への回復をもたらすための合成リジンアナログ又は模倣物の適用に関する。合成リジンアナログ又は模倣物は、単純な水溶液、不活性な賦形剤を含む溶液、若しくは、任意選択的に他の治療成分を含みうる、ゲル、クリーム、又はローションなどのビヒクルと組み合わせた形態でありうる。粘性溶液を介して、若しくは、合成リジンアナログ又は模倣物を遅延送達又はゆっくりと/予測可能に送達するように設計された溶液を介してなど、取り扱い又は治療送達を改善するための追加の実施態様は、当業者によって予想されており、知られているであろう。溶液/組成物は、アウトブレイクの兆候を示している皮膚領域に直接投与することができ、容易に適用することができ、患部に容易に溶け込むであろう。幾つかの実施態様では、組成物は、ウイルスのアウトブレイクの最初の兆候での薬剤/組成物の活性を利用して、アウトブレイクの重症度及び持続期間を低減し、迅速な治癒プロセスを促進する。
【0035】
ある特定の実施態様では、合成リジンアナログ又は模倣剤の治療は、例えば、1日4グラムまでで7日間の薬剤の全身投与で実施することができるが、迅速な活性及び利益を提供するために、有効な濃度及びレジメンで、例えば、3から5%(w/v)の濃度の薬剤を0.25から5mLの体積で1日あたり2から3回、局所的な形態でさらに適用することもできる。幾つかの実施態様では、薬剤の濃度は、例えば、最高で30%(w/v)の濃度でありうる。さまざまな実施態様では、リジンのアナログ又は模倣物は、アルギニン及びヒスチジンに拮抗して、HSV-1ウイルスの複製を抑制することができ、また、プラスミノーゲンと結合してそうでなければ組織への外傷に関連して生じるプラスミンを生成することができないため、その領域で天然のリジンの量を維持することができ、プラスミン及びセリンプロテアーゼの形成をブロックし、それによって抗炎症効果をもたらし、コラーゲン及びコラーゲンマトリクスの分解を回避することができる。
【0036】
さらには、本開示の実施態様は、薬剤/組成物の薬理活性を利用することによってウイルスのアウトブレイクの予防を提供するための合成リジンアナログ又は模倣剤の適用を対象とする。薬剤は、単純な水溶液、不活性な賦形剤を含む溶液、若しくは、任意選択的に他の治療成分を含みうる、ゲル、クリーム、又はローションなどのビヒクルとの組合せでありうる。粘性溶液を介して、若しくは、合成リジンアナログ又は模倣剤を遅延送達又は予測可能に送達するように設計された溶液を介してなど、取り扱い及び/又は予防的送達を改善する追加の実施態様もまた、当業者によって予想されており、知られているであろう。溶液及び/又は組成物は、アウトブレイクが起こることが知られている皮膚の領域に直接投与することができ、容易に適用することができ、かつ、所望の適用領域に容易に溶け込むであろう。幾つかの実施態様では、溶液及び/又は組成物は、3から10%(w/v)の濃度の合成リジンアナログ又は模倣物、若しくは最高で30%(w/v)の合成リジンアナログ又は模倣物でありうる。
【0037】
幾つかの実施態様では、組成物は、例えば、曝露のリスクが高い人、又はこのようなウイルスによる感染に曝露されたがまだ感染の症状を示していない人、又はこのようなウイルスによる感染が生命を脅かす事象を呈する可能性がある人などにおける、一般的な風邪ウイルス及びインフルエンザウイルス又は他の一過性ウイルスを含むがこれらに限定されない他のウイルスによって引き起こされる感染症及び疾患の予防又は治療に使用することができる。これらのウイルスの幾つかは喉の奥及び鼻腔に付着するため、幾つかの実施態様では、組成物は、スプレー、ミスト、エアロゾル、及び洗口剤、若しくは、鼻腔を含めた、口、鼻、及び/又は喉の領域に適用することができる拭き取り溶液に配合することができる。幾つかの実施態様では、溶液及び/又は組成物は、3から10%(w/v)の濃度の合成リジンアナログ又は模倣物、若しくは最高で30%(w/v)の合成リジンアナログ又は模倣物でありうる。
【0038】
他の実施態様では、本明細書に提示される組成物は、ウイルスのアウトブレイクの予防又はウイルス感染症の発症の抑制に利用することができ、例えば、丸剤、錠剤、カプセル、又は注射など、経腸的及び非経口的方法によって投与することができる。さらなる実施態様では、組成物は、長期投与のために、注射又は移植されたリポソーム送達デポ(delivery depot)を介して投与することができる。幾つかの実施態様では、組成物は、皮膚接触を介して薬物を投与する経皮パッチの形態でありうる。
【0039】
加えて、本開示の幾つかの実施態様は、リジンのアナログ又は模倣物とアルギニンとの過剰量での組合せの薬理活性を利用することによる、ヘルペスウイルスなどのウイルスのアウトブレイクの治療及び予防、HIVなどの他の慢性ウイルスの発症の抑制、並びに、例えばインフルエンザウイルス及び風邪ウイルスなどのある特定のウイルス又は他の一過性ウイルスの感染の回避又は治療を支援するための、アルギニンと組み合わせた合成リジンアナログ又は模倣剤の組成物及びそれらの使用方法を対象とする。幾つかの実施態様では、ウイルス複製に必要とされるタンパク質を構築するために必要な他のアミノ酸を、トラネキサム酸などの合成リジンアナログ又は模倣物と組み合わせて使用して、合成リジンアナログ又は模倣物の抗ウイルス機能を改善することができる。
【0040】
さらには、本開示のさまざまな実施態様は、ヘルペスウイルスなどのウイルスのアウトブレイクの治療及び予防、HIVなどの他の慢性ウイルスの発症の抑制、並びに、例えばインフルエンザウイルス及び風邪ウイルスなどのある特定のウイルス又は他の一過性ウイルスの感染の回避又は治療のために、例えば、トラネキサム酸と、リジン、アルギニン、又はヒスチジンとを組み合わせた合成リジンアナログなど、1つ以上のアミノ酸と組み合わせた合成リジンアナログ又は模倣剤の組成物及びそれらの使用方法を対象とする。さまざまな実施態様では、ウイルスのアウトブレイクの治療及び予防、HIVなどの他の慢性ウイルスの発症の抑制、並びに、例えばインフルエンザウイルス及び風邪ウイルスなどのある特定のウイルス又は他の一過性ウイルスの感染の回避又は治療のために、合成リジンアナログ又は模倣物を、1つ以上の合成アミノ酸、アナログ、又はそれらの模倣物と組み合わせて使用することができる。
【0041】
幾つかの実施態様では、ヘルペスウイルスなどのウイルスのアウトブレイクの治療及び予防、HIVなどの他の慢性ウイルスの発症の抑制、並びに、例えばインフルエンザウイルス及び風邪ウイルスなどのある特定のウイルス又は他の一過性ウイルスの感染の回避又は治療のために、合成リジンアナログ又は模倣物を、任意のアミノ酸(例えば、脂肪族、芳香族、酸性、塩基性、中性、又は特有のアミノ酸)の1つ以上又はそれらの組合せと組み合わせることができる。
【0042】
さまざまな実施態様では、本開示は、ヘルペスウイルスなどの再発性ウイルスのアウトブレイクの治療、予防、又は低減、HIVなどの慢性ウイルスへの感染の発症又は増殖の抑制、若しくは、インフルエンザウイルス及び風邪ウイルスなどのウイルス又は他の一過性ウイルスへの感染の予防又は治療のための、グルタミンと組み合わせた合成リジンアナログ又は模倣剤の組成物及びそれらの使用方法を対象とする。特定の実施態様では、組成物はトラネキサム酸及びグルタミンを含みうる。他の実施態様では、組成物は、トラネキサム酸、グルタミン、並びに、リジン、アルギニン、又はヒスチジンなどの1つ以上のアミノ酸を含みうる。
【0043】
トラネキサム酸の抗ウイルス活性
トラネキサム酸の抗ウイルス活性、すなわちウイルス複製の減少の評価を、HSV-1、HSV-2、HIV、及びインフルエンザAウイルス(H3N2)について行った。各評価は、高ウイルス接種及び低ウイルス接種、並びにLog10減少及び対応する複製減少率を決定する際の入力ウイルス力価に用いられる入力ウイルス対照(トラネキサム酸なし)で構成されていた。
【0044】
加えて、2%(w/v)トラネキサム酸、L-アルギニン(さまざまな濃度で)、及び2%(w/v)のトラネキサム酸とL-アルギニン(さまざまな濃度で)との混合物の抗ウイルス活性の評価を、HSV-1及びHSV-2について実施して、トラネキサム酸とL-アルギニンとの組合せがウイルスの減少率に及ぼす影響を実証し、トラネキサム酸がHSV-1及びHSV-2の複製をどのように阻害するのかを特定した。各評価は、複製減少率を決定する際の入力ウイルス力価に用いられる入力ウイルス対照(余剰のトラネキサム酸又はL-アルギニンなし)で構成されていた。
【0045】
以下にさらに詳しく論じるように、0.5%(w/v)、1.0%(w/v)、及び2.0%(w/v)のトラネキサム酸を、HSV-1及びHSV-2の複製減少の評価に使用し、一方、2.0%(w/v)、3.0%(w/v)、及び4.0%(w/v)のトラネキサム酸を、2つの異なる種類のウイルスについての細胞培地の細胞毒性限界に基づいたHIV複製減少の評価に使用した。6%(w/v)、8%(w/v)、及び10%(w/v)のトラネキサム酸を、H3N2の複製減少の評価に使用した。
【0046】
以下にさらに詳しく説明するように、HSV-1及びHSV-2で5,000μM、10,000μM、及び25,000μMのL-アルギニンを評価したが、HSV-1及びHSV-2で2%(w/v)トラネキサム酸と5,000μMのL-アルギニンとの組合せ、2%(w/v)トラネキサム酸と10,000μMのL-アルギニンとの組合せ、及び2%(w/v)トラネキサム酸と25,000μMのL-アルギニンとの組合せの評価とは対照的であり、HSV-1及びHSV-2の複製の阻害におけるトラネキサム酸の根底にある作用機序が実証され、トラネキサム酸とL-アルギニンとの組合せ混合物によるウイルスの減少率の効果の増大を示した。
【0047】
以下にさらに詳しく説明するように、さまざまな濃度のL-アルギニン、さまざまな濃度のL-ヒスチジン、2%(w/v)トラネキサム酸とさまざまな濃度のL-アルギニンとの組合せ、2%(w/v)トラネキサム酸とさまざまな濃度のL-ヒスチジンとの組合せ、及び2%(w/v)トラネキサム酸とさまざまな濃度のL-アルギニン及びL-ヒスチジンとの組合せを、HSV-1を用いて評価して、トラネキサム酸がアルギニン及びヒスチジンに拮抗することを確認し、一方、十分な量では、トラネキサム酸とアルギニンとの混合物はヒスチジンに拮抗し、トラネキサム酸とヒスチジンとの混合物はアルギニンに拮抗することを確認した。本質的に、以下に示すように、トラネキサム酸に1つ以上のアミノ酸を加えることにより、抗ウイルス活性の有効性を顕著に改善することができる。この有効性の改善は、他のアミノ酸に拮抗するアミノ酸が過剰に存在することによって達成される(例えば、リジンとして作用するトラネキサム酸とアルギニンとの組合せはヒスチジンに拮抗する)。
【0048】
単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)に対するトラネキサム酸の抗ウイルス活性
以下に示される試験した各試料はそれぞれ、3回反復されており、かつ、低及び高ウイルス接種物について、0%(w/v)トラネキサム酸の入力ウイルス対照、0.5%(w/v)、1.0%(w/v)、及び2.0%(w/v)のトラネキサム酸で構成されていた。各試料の接触時間は48±8時間であり、入力ウイルス力価(Log10TCID50)及び出力ウイルス力価(Log10TCID50)を使用して減少係数を生成し、結果的にLog10減少係数と相関減少率とを得た。
【0049】
低ウイルス接種物についてのHSV-1に対するトラネキサム酸の抗ウイルス活性を評価するための調製物を、以下のように調製した:0.25mLのウイルス接種物(106.26のTCID50単位を含む)を、各用量のトラネキサム酸又は入力ウイルス対照について、3つのウェルに加えた。接種物を5±3%CO、36±2℃で90分間、インキュベートした。接種物を除去し、ウェルをPBSで3回洗浄した。1.0mLの各用量のトラネキサム酸(又は入力ウイルス対照についてはDM)を各ウェルに加えた。プレートを5±3%CO、36±2℃で48±8時間、インキュベートした。その後、プレートを-60から-90℃で一晩凍結し、解凍し、各ウェルの内容物を2,000RPMで10分間、遠心分離した。各ウェルから上清を回収し、感染性ウイルスについてアッセイした。
【0050】
力価の結果が下記の表1に示されており、低ウイルス接種物についての入力ウイルス対照力価(Log10TCID50/mL)は5.95±0.10から6.55±0.10の範囲であり、平均6.26±0.10であり、ウイルス株の力価対照は2.30±0.19の力価を有していた。以下に示す力価値(Log10TCID50/mL)を有する0.5%(w/v)、1.0%(w/v)、及び2.0%(w/v)の試料量のトラネキサム酸を試験に使用した。
【0051】
高ウイルス接種物についてのHSV-1に対するトラネキサム酸の抗ウイルス活性の評価のための調製物を、以下のように調製した:0.25mLのウイルス接種物(106.46のTCID50単位を含む)を、各用量のトラネキサム酸又は入力ウイルス対照について、3つのウェルに加えた。接種物を5±3%CO、36±2℃で90分間、インキュベートした。接種物を除去し、ウェルをPBSで3回洗浄した。1.0mLの各用量のトラネキサム酸(又は入力ウイルス対照についてはDM)を各ウェルに加えた。プレートを5±3%CO、36±2℃で48±8時間、インキュベートした。その後、プレートを-60から-90℃で一晩凍結し、解凍し、各ウェルの内容物を2,000RPMで10分間、遠心分離した。各ウェルから上清を回収し、感染性ウイルスについてアッセイした。
【0052】
力価の結果が下記の表2に示されており、高ウイルス接種についての入力ウイルス対照力価(Log10TCID50/mL)は6.37±0.13から6.55±0.14の範囲であり、平均6.46±0.13であり、ウイルス株の力価対照は2.30±0.19の力価を有していた。以下に示す力価値(Log10TCID50/mL)を有する0.5%(w/v)、1.0%(w/v)、及び2.0%(w/v)の試料量のトラネキサム酸を試験に使用した。
【0053】
入力ウイルス対照の平均を入力ウイルス力価として使用して、結果的に得られた減少係数が、以下の表3に示されている。表3に見られるように、減少率は、低ウイルス接種において、0.5%(w/v)のトラネキサム酸では90.5%、1.0%(w/v)のトラネキサム酸では98.8%、及び2.0%(w/v)のトラネキサム酸では99.7%が最大であった。データは、低ウイルス接種では、予想どおり、トラネキサム酸の割合が増加するにつれて減少率が高くなることを示しており、高ウイルス接種では、トラネキサム酸の割合が0.5%(w/v)と2.0%(w/v)の間で減少率の増加が観察された。減少率は、高ウイルス接種において、0.5%(w/v)のトラネキサム酸では45.9%、1.0%(w/v)のトラネキサム酸では5.9%、及び2.0%(w/v)のトラネキサム酸では90.8%が最大であった。とりわけ、99%を超える減少を示した低ウイルス接種において示唆されるように、2.0%(w/v)のトラネキサム酸の減少率に特に注目すべきである。アウトブレイク前は、ウイルス感染のレベルは比較的低いであろうことから、このレベルにおけるトラネキサム酸の有効性はアウトブレイクの抑制により大きく関連している。
【0054】
単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)に対するトラネキサム酸の抗ウイルス活性
以下に示される試験した各試料はそれぞれ、3回反復されており、かつ、低及び高ウイルス接種物について、0%(w/v)トラネキサム酸の入力ウイルス対照、0.5%(w/v)、1.0%(w/v)、及び2.0%(w/v)のトラネキサム酸で構成されていた。各試料の接触時間は48±8時間であり、入力ウイルス力価(Log10TCID50)及び出力ウイルス力価(Log10TCID50)を使用して減少係数を生成し、結果的にLog10減少係数と相関減少率とを得た。
【0055】
低ウイルス接種物についてのHSV-2に対するトラネキサム酸の抗ウイルス活性の評価のための調製物を、以下のように調製した:0.25mLのウイルス接種物(102.1のTCID50単位を含む)を、各用量のトラネキサム酸又は入力ウイルス対照について、3つのウェルに加えた。接種物を5±3%CO、36±2℃で90分間、インキュベートした。接種物を除去し、ウェルをPBSで3回洗浄した。1.0mLの各用量のトラネキサム酸(又は入力ウイルス対照についてはDM)を各ウェルに加えた。プレートを5±3%CO、36±2℃で48±8時間、インキュベートした。その後、プレートを-60から-90℃で6日間凍結し、解凍し、各ウェルの内容物を2,000RPMで10分間、遠心分離した。各ウェルから上清を回収し、感染性ウイルスについてアッセイした。
【0056】
力価の結果が下記表4に示されており、低ウイルス接種についての入力ウイルス対照力価(Log10TCID50/mL)は6.13±0.09から6.31±0.08の範囲であり、平均6.22±0.08であり、ウイルス株の力価対照は2.68±0.20の力価を有していた。以下に示す力価値(Log10TCID50/mL)を有する0.5%(w/v)、1.0%(w/v)、及び2.0%の試料量のトラネキサム酸を試験に使用した。
【0057】
高ウイルス接種物についてのHSV-2に対するトラネキサム酸の抗ウイルス活性の評価のための調製物を、以下のように調製した:0.25mLのウイルス接種物(103.8のTCID50単位を含む)を、各用量のトラネキサム酸又は入力ウイルス対照について、3つのウェルに加えた。接種物を5±3%CO、36±2℃で90分間、インキュベートした。接種物を除去し、ウェルをPBSで3回洗浄した。1.0mLの各用量のトラネキサム酸(又は入力ウイルス対照についてはDM)を各ウェルに加えた。プレートを5±3%CO、36±2℃で48±8時間、インキュベートした。その後、プレートを-60から-90℃で6日間凍結し、解凍し、各ウェルの内容物を2,000RPMで10分間、遠心分離した。各ウェルから上清を回収し、感染性ウイルスについてアッセイした。
【0058】
力価の結果が下記の表5に示されており、高ウイルス接種についての入力ウイルス対照力価(Log10TCID50/mL)は7.74±0.11から7.92±0.09の範囲であり、平均7.83±0.09であり、ウイルス株の力価対照は4.43±0.18の力価を有していた。以下に示す力価値(Log10TCID50/mL)を有する0.5%(W/v)、1.0%(w/v)、及び2.0%(w/v)の試料量のトラネキサム酸を試験に使用した。
【0059】
入力ウイルス対照の平均を入力ウイルス力価として使用して、結果的に得られた減少係数が、以下の表6に示されている。表6に見られるように、減少率は、低ウイルス接種において、0.5%(w/v)のトラネキサム酸では78.94%、1.0%(w/v)のトラネキサム酸では75.82%、及び2.0%(w/v)のトラネキサム酸では98.67%が最大であった。データは、低ウイルス接種では2.0%(w/v)のトラネキサム酸の減少率が高くなり、高ウイルス接種ではトラネキサム酸の割合が増加するにつれて減少率が一般的に増加することを示している。減少率は、高ウイルス接種において、0.5%(w/v)のトラネキサム酸では52.85%、1.0%(w/v)のトラネキサム酸では64.24%、及び2.0%(w/v)のトラネキサム酸では99.98%が最大であった。とりわけ、98%を超える減少を示す低及び高ウイルス接種において示唆されるように、2.0%(W/v)のトラネキサム酸の減少率に特に注目すべきである。
【0060】
ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)に対するトラネキサム酸の抗ウイルス活性
以下に示される試験した各試料はそれぞれ、3回反復されており、かつ、低及び高ウイルス接種物について、0%(w/v)トラネキサム酸の入力ウイルス対照、2.0%(w/v)、3.0%(w/v)、及び4.0%(w/v)のトラネキサム酸で構成されていた。各試料の接触時間は48±8時間であり、入力ウイルス力価(Log10TCID50)及び出力ウイルス力価(Log10TCID50)を使用して減少係数を生成し、結果的にLog10減少係数と相関減少率とを得た。
【0061】
低ウイルス接種物についてのHIV-1に対するトラネキサム酸の抗ウイルス活性の評価のための調製物を、以下のように調製した:0.5mLのウイルス接種物(102.0のTCID50単位を含む)を、各用量のトラネキサム酸又は入力ウイルス対照について、3つのウェルに加えた。1.0mLの各用量のトラネキサム酸(又は入力ウイルス対照についてはDM)を各ウェルに加えた。プレートを5±3%CO、36±2℃で48±8時間、インキュベートした。その後、プレートを-60から-90℃で1日凍結し、解凍し、各ウェルの内容物を2,000RPMで10分間、遠心分離した。各ウェルから上清を回収し、感染性ウイルスについてアッセイした。
【0062】
力価の結果が下記表7に示されており、低ウイルス接種では入力ウイルス対照力価(Log10TCID50/mL)は4.34±0.10から4.46±0.10の範囲であり、平均4.40±0.08であり、ウイルス株の力価対照は2.30±0.19の力価を有していた。以下に示す力価値(Log10TCID50/mL)を有する2.0%(w/v)、3.0%(w/v)、及び4.0%(w/v)の試料量のトラネキサム酸を試験に使用した。
【0063】
高ウイルス接種物についてのHIV-1に対するトラネキサム酸の抗ウイルス活性の評価のための調製物を、以下のように調製した:0.5mLのウイルス接種物(103.88のTCID50単位を含む)を、各用量のトラネキサム酸又は入力ウイルス対照について、3つのウェルに加えた。1.0mLの各用量のトラネキサム酸(又は入力ウイルス対照についてはDM)を各ウェルに加えた。プレートを5±3%CO、36±2℃で48±8時間、インキュベートした。その後、プレートを-60から-90℃で1日凍結し、解凍し、各ウェルの内容物を2,000RPMで10分間、遠心分離した。各ウェルから上清を回収し、感染性ウイルスについてアッセイした。
【0064】
力価の結果が下記の表8に示されており、高ウイルス接種では入力ウイルス対照力価(Log10TCID50/mL)は5.71±0.10から6.31±0.08の範囲であり、平均6.06±0.09であり、ウイルス株の力価対照は4.18±0.18の力価を有していた。以下に示す力価値(Log10TCID50/mL)を有する2.0%(w/v)、3.0%(w/v)、及び4.0%(w/v)の試料量のトラネキサム酸を試験に使用した。
【0065】
入力ウイルス対照の平均を入力ウイルス力価として使用して、結果的に得られた減少係数が、下記表9に示されている。表9に見られるように、減少率は、低ウイルス接種において、2.0%(w/v)のトラネキサム酸では56.6%、3.0%(w/v)のトラネキサム酸では66.3%、及び4.0%(w/v)のトラネキサム酸では98.6%が最大であった。データは、低ウイルス接種では、予想通り、トラネキサム酸の割合が増加するにつれて減少率が高くなり、高ウイルス接種ではトラネキサム酸の割合が増加するにつれて減少率が増加することを示している。減少率は、高ウイルス接種において、2.0%(w/v)のトラネキサム酸では41.1%、3.0%(w/v)のトラネキサム酸では55.3%、及び4.0%(w/v)のトラネキサム酸では97.1%が最大であった。とりわけ、95%を超える減少が示されている低及び高ウイルス接種の両方で示唆されるように、4.0%(w/v)のトラネキサム酸の減少率に特に注目すべきである。
【0066】
感染系として発育鶏卵を使用したインフルエンザAウイルス(H3N2)に対するトラネキサム酸の抗ウイルス活性
以下に示される試験した各試料はそれぞれ、4回反復されており、かつ、低及び高ウイルス接種物について、0%(w/v)トラネキサム酸の入力ウイルス対照、6%(w/v)、8%(w/v)、及び10%(w/v)のトラネキサム酸で構成されていた。各試料の接触時間は72±8時間であり、入力ウイルス力価(Log10TCID50)及び出力ウイルス力価(Log10TCID50)を使用して減少係数を生成し、結果的にLog10減少係数と相関減少率とを得た。
【0067】
低ウイルス接種についてのH3N2に対するトラネキサム酸の抗ウイルス活性の評価のための調製物を、以下のように調製した:0.2mLのトラネキサム酸-ウイルス混合物(103.0のTCID50/mLを含む)を、各用量のトラネキサム酸又は入力ウイルス対照について、4つの発育鶏卵に加えた。卵を36±2℃で72±8時間、インキュベートした。その後、卵を1から10℃で一晩保持した。その後、尿膜腔液を採取し、アッセイまで-60から-90℃で保持し、アッセイの際に試料を解凍し、2,000RPMで15分間、遠心分離した。各試料から上清を回収し、感染性ウイルスについてアッセイした。
【0068】
力価の結果が下記表10に示されており、低ウイルス接種では入力ウイルス対照力価(Log10TCID50/mL)は7.00±0.28から8.00±0.28の範囲であり、平均7.64±0.27であり、ウイルス株の力価対照は3.50±0.00の力価を有していた。以下に示す力価値(Log10TCID50/mL)を有する6%(w/v)、8%(w/v)、及び10%(w/v)の試料量のトラネキサム酸を試験に使用した。
【0069】
高ウイルス接種物についてのH3N2に対するトラネキサム酸の抗ウイルス活性の評価のための調製物を、以下のように調製した:0.2mLのトラネキサム酸-ウイルス混合物(105.0のTCID50/mLを含む)を、各用量のトラネキサム酸又は入力ウイルス対照について、4つの発育鶏卵に加えた。卵を36±2℃で72±8時間、インキュベートした。その後、卵を1から10℃で一晩保持した。その後、尿膜腔液を採取し、アッセイまで-60から-90℃で保持し、アッセイの際に試料を解凍し、2,000RPMで15分間、遠心分離した。各試料から上清を回収し、感染性ウイルスについてアッセイした。
【0070】
力価の結果が下記表11に示されており、高ウイルス接種では入力ウイルス対照力価(Log10TCID50/mL)は6.00±0.28から7.00±0.28の範囲であり、平均6.74±0.28であり、ウイルス株の力価対照は5.50±0.00の力価を有していた。以下に示す力価値(Log10TCID50/mL)を有する、6%(w/v)、8%(w/v)、及び10%(w/v)の試料量のトラネキサム酸を試験に使用した。
【0071】
入力ウイルス対照の平均を入力ウイルス力価として使用して、結果的に得られた減少係数が、下記表12に示されており、ここで、低ウイルス接種は103.0TCID50/mLであり、高ウイルス接種は105.0TCID50/mLであった。表12に見られるように、減少率は、低ウイルス接種において、6%(w/v)のトラネキサム酸では95.96%、8%(w/v)のトラネキサム酸では99.98%、及び10%(w/v)のトラネキサム酸では99.99%が最大であった。データは、低ウイルス接種では、予想通り、トラネキサム酸の割合が増加するにつれて減少率が高くなり、高ウイルス接種ではトラネキサム酸の割合が増加するにつれて減少率が増加することを示しているが、6%(w/v)のトラネキサム酸では、4回の複製のうち3回はウイルスの減少を示さなかった。減少率は、高ウイルス接種において、6%(w/v)のトラネキサム酸では42.50%、8%(w/v)のトラネキサム酸では81.82%、及び10%(w/v)のトラネキサム酸では99.82%が最大であった。とりわけ、99%を超える減少を示す低及び高ウイルス接種において示唆されるように、10%(w/v)のトラネキサム酸の減少率に特に注目すべきである。
【0072】
単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)に対するトラネキサム酸/L-アルギニンの抗ウイルス活性
以下に示される試験した各試料はそれぞれ、3回反復されており、それぞれ、入力ウイルス対照(余剰のトラネキサム酸又はL-アルギニンなし)、2%(w/v)のトラネキサム酸、5,000μMのL-アルギニン、10,000μMのL-アルギニン、25,000μMのL-アルギニン、並びに、2%(w/v)のトラネキサム酸と、5,000μMのL-アルギニン、10,000μMのL-アルギニン、及び25,000μMのL-アルギニンとの混合物で構成されていた。トラネキサム酸とL-アルギニンとの混合物を各成分の2倍の濃度値で調製し、各成分を同量で希釈して上記の最終濃度を得た。各試料の接触時間は48±8時間であり、入力ウイルス力価(Log10TCID50)及び出力ウイルス力価(Log10TCID50)を使用して減少係数を生成し、対応するLog10力価の差が示された、相関した減少率又は促進率を結果的に得た。
【0073】
HSV-1に対するトラネキサム酸/L-アルギニンの抗ウイルス活性の評価のための調製物を、以下のように調製した:0.25mLのウイルス接種物(103.0のTCID50単位を含む)を、各用量のトラネキサム酸、L-アルギニン、トラネキサム酸とL-アルギニンとの組合せ、又は入力ウイルス対照についての3つのウェルに加えた。1.0mLの各用量のトラネキサム酸、L-アルギニン、トラネキサム酸とL-アルギニンとの組合せ、又はDM(入力ウイルス対照)を各ウェルに加えた。プレートを5±3%CO、36±2℃で48±8時間、インキュベートした。その後、プレートを-60から-90℃で1日凍結し、解凍し、各ウェルの内容物を2,000RPMで10分間、遠心分離した。各ウェルから上清を回収し、感染性ウイルスについてアッセイした。
【0074】
力価の結果が下記の表13に示されており、ウイルス接種では入力ウイルス対照力価(Log10TCID50/mL)は6.25±0.11から6.55±0.12の範囲であり、平均6.39±0.10であり、ウイルス株の力価対照は3.68±0.20の力価を有していた。以下に示す力価値(Log10TCID50/mL)を有する、2%(w/v)の試料量のトラネキサム酸、5,000μMのL-アルギニン、10,000μMのL-アルギニン、25,000μMのL-アルギニン、及び2%(w/v)のトラネキサム酸と5,000μMのL-アルギニン、10,000μMのL-アルギニン、及び25,000μMのL-アルギニンとの混合物を試験に使用した。
【0075】
入力ウイルス対照の平均を入力ウイルス力価として使用して、結果的に得られた減少係数が、下記表14に示されている。表14に見られるように、減少率は、2%(w/v)のトラネキサム酸では95%が最大であったのに対し、L-アルギニン(5,000μM、10,000μM、及び25,000μMで)を含む試料は、ウイルスの減少を示さず、むしろウイルスの促進を示した。ウイルスの促進は、5,000μMのL-アルギニンでは54%、10,000μMのL-アルギニンでは85%、及び25,000μMのL-アルギニンでは85%が最大であった。2%(w/v)のトラネキサム酸とL-アルギニンとを含む試料は、ウイルスの減少において、L-アルギニンのみを含む試料と比較して対照的な結果を示した。ウイルスの減少は、2%(w/v)トラネキサム酸と5,000μMのL-アルギニンとの組合せでは88%、2%(w/v)トラネキサム酸と10,000μMのL-アルギニンとの組合せでは99%、及び2%(w/v)トラネキサム酸と25,000μMのL-アルギニンとの組合せでは99.99%が最大であった。以下に示すデータに実証されているように、2%(w/v)トラネキサム酸と25,000μMのL-アルギニンとの組合せでは、99%を越えるウイルスの減少を示した。
【0076】
単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)に対するトラネキサム酸/L-アルギニンの抗ウイルス活性
以下に示される試験した各試料はそれぞれ、3回反復されており、それぞれ、入力ウイルス対照(余剰のトラネキサム酸又はL-アルギニンなし)、2%(w/v)のトラネキサム酸、5,000μMのL-アルギニン、10,000μMのL-アルギニン、25,000μMのL-アルギニン、並びに、2%(w/v)のトラネキサム酸と、5,000μMのL-アルギニン、10,000μMのL-アルギニン、及び25,000μMのL-アルギニンとの混合物で構成されていた。トラネキサム酸とL-アルギニンとの混合物を各成分の2倍の濃度値で調製し、各成分を同量で希釈して上記の最終濃度を得た。各試料の接触時間は48±8時間であり、入力ウイルス力価(Log10TCID50)及び出力ウイルス力価(Log10TCID50)を使用して減少係数を生成し、対応するLog10力価の差が示された、相関した減少率又は促進率を結果的に得た。
【0077】
HSV-2に対するトラネキサム酸/L-アルギニンの抗ウイルス活性の評価のための調製物を、以下のように調製した:0.25mLのウイルス接種物(103.0のTCID50単位を含む)を、各用量のトラネキサム酸、L-アルギニン、トラネキサム酸とL-アルギニンとの組合せ、又は入力ウイルス対照についての3つのウェルに加えた。1.0mLの各用量のトラネキサム酸、L-アルギニン、トラネキサム酸とL-アルギニンとの組合せ、又はDM(入力ウイルス対照)を各ウェルに加えた。プレートを5±3%CO、36±2℃で48±8時間、インキュベートした。その後、プレートを-60から-90℃で1日凍結し、解凍し、各ウェルの内容物を2,000RPMで10分間、遠心分離した。各ウェルから上清を回収し、感染性ウイルスについてアッセイした。
【0078】
力価の結果が下記表15に示されており、ウイルス接種では入力ウイルス対照力価(Log10TCID50/mL)は4.82±0.11から5.00±0.13の範囲であり、平均4.93±0.10であり、ウイルス株の力価対照は3.18±0.18の力価を有していた。以下に示す力価値(Log10TCID50/mL)を有する、2%(w/v)の試料量のトラネキサム酸、5,000μMのL-アルギニン、10,000μMのL-アルギニン、25,000μMのL-アルギニン、及び2%(w/v)のトラネキサム酸と5,000μMのL-アルギニン、10,000μMのL-アルギニン、及び25,000μMのL-アルギニンとの混合物を試験に使用した。
【0079】
入力ウイルス対照の平均を入力ウイルス力価として使用して、結果的に得られた減少係数が、下記表16に示されている。表16に見られるように、減少率は、2%(w/v)のトラネキサム酸では99.7%が最大であったのに対し、L-アルギニン(5,000μM、10,000μM、及び25,000μM)を含む試料は、それぞれ32%及び66%のウイルスの減少を示した、反復3の5,000μMのL-アルギニン試料及び反復2の25,000μMのL-アルギニン試料の記載を除き、大抵はウイルスの促進を示した。ウイルスの促進は、5,000μMのL-アルギニンでは76%、10,000μMのL-アルギニンでは76%、及び25,000μMのL-アルギニンでは3%が最大であった。2%(w/v)のトラネキサム酸とL-アルギニンとを含む試料は、ウイルスの減少において、L-アルギニンのみを含む試料と比較して対照的な結果を示した。ウイルスの減少は、2%(w/v)トラネキサム酸と5,000μMのL-アルギニンとの組合せでは99.8%、2%(w/v)トラネキサム酸と10,000μMのL-アルギニンとの組合せでは99.9%、及び2%(w/v)トラネキサム酸と25,000μMのL-アルギニンとの組合せでは99.96%が最大であった。以下に示すデータに実証されているように、2%(w/v)トラネキサム酸とL-アルギニン(5,000μM、10,000μM、及び25,000μM)との組合せでは、99%を越えるウイルスの減少を示した。
【0080】
アルギニン及びヒスチジンを使用する単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)に対するトラネキサム酸の抗ウイルス活性
以下に示される試験した各試料はそれぞれ、3回反復されており、それぞれ、入力ウイルス対照(余剰の化合物なし)、2%(w/v)のトラネキサム酸、0.5mMのL-アルギニン、2mMのL-アルギニン、5mMのL-アルギニン、及び2%(w/v)のトラネキサム酸と0.5mMのL-アルギニン、2mMのL-アルギニン、及び5mMのL-アルギニンとの混合物で構成されていた。トラネキサム酸とL-アルギニンとの混合物を各成分の2倍の濃度値で調製し、各成分を同量で希釈して上記の最終濃度を得た。各試料の接触時間は48±2時間であり、入力ウイルス力価(Log10TCID50)及び出力ウイルス力価(Log10TCID50)を使用してLog10力価低下を生成した。
【0081】
HSV-1に対するトラネキサム酸/L-アルギニンの抗ウイルス活性の評価のための調製物を、以下のように調製した:0.25mLのウイルス接種物(103.0のTCID50単位を含む)を、各用量のトラネキサム酸、L-アルギニン、トラネキサム酸とL-アルギニンとの組合せ、又は入力ウイルス対照についての3つのウェルに加えた。1.0mLの各用量のトラネキサム酸、L-アルギニン、トラネキサム酸とL-アルギニンとの組合せ、又はDM(入力ウイルス対照)を各ウェルに加えた。プレートを5±3%CO、36±2℃で48±2時間、インキュベートした。次に、プレートを-60から-90℃で凍結し、解凍し、各ウェルの内容物を2,000RPMで10分間、遠心分離した。各ウェルから上清を回収し、感染性ウイルスについてアッセイした。
【0082】
力価の結果が下記の表17に示されており、ウイルス接種では入力ウイルス対照力価(Log10TCID50/mL)は8.34±0.10から8.64±0.06の範囲であり、平均8.50±0.09であり、ウイルス株の力価対照は3.68±0.20の力価を有していた。以下に示す力価値(Log10TCID50/mL)を有する、2%(w/v)の試料量のトラネキサム酸、0.5mMのL-アルギニン、2mMのL-アルギニン、5mMのL-アルギニン、及び2%(w/v)のトラネキサム酸と0.5mMのL-アルギニン、2mMのL-アルギニン、及び5mMのL-アルギニンとの混合物を試験に使用した。
【0083】
以下に示される試験した各試料はそれぞれ、3回反復されており、かつ、それぞれ、0.5mMのL-ヒスチジン、1mMのL-ヒスチジン、5mMのL-ヒスチジン、10mMのL-ヒスチジン、25mMのL-ヒスチジン、及び2%(w/v)のトラネキサム酸と0.01mMのL-ヒスチジン、0.05mMのL-ヒスチジン、0.1mMのL-ヒスチジン、0.25mMのL-ヒスチジン、及び0.5mMのL-ヒスチジンとの混合物で構成されていた。トラネキサム酸とL-ヒスチジンとの混合物を各成分の2倍の濃度値で調製し、各成分を同量で希釈して上記の最終濃度を得た。各試料の接触時間は48±2時間であり、入力ウイルス力価(Log10TCID50)及び出力ウイルス力価(Log10TCID50)を使用してLog10力価低下を生成した。
【0084】
HSV-1に対するトラネキサム酸/L-ヒスチジンの抗ウイルス活性の評価のための調製物を、以下のように調製した:0.25mLのウイルス接種物(103.0のTCID50単位を含む)を、各用量のL-ヒスチジン又はトラネキサム酸とL-ヒスチジンとの組合せについての3つのウェルに加えた。1.0mLの各用量のL-ヒスチジン又はトラネキサム酸とL-ヒスチジンとを各ウェルに加えた。プレートを5±3%CO、36±2℃で48±2時間、インキュベートした。次に、プレートを-60から-90℃で凍結し、解凍し、各ウェルの内容物を2,000RPMで10分間、遠心分離した。各ウェルから上清を回収し、感染性ウイルスについてアッセイした。
【0085】
力価の結果が下記の表18に示されている。以下に示す力価値(Log10TCID50/mL)を有する、0.5mMの試料量のL-ヒスチジン、1mMのL-ヒスチジン、5mMのL-ヒスチジン、10mMのL-ヒスチジン、25mMのL-ヒスチジン、及び2%(w/v)のトラネキサム酸と0.01mMのL-ヒスチジン、0.05mMのL-ヒスチジン、0.1mMのL-ヒスチジン、0.25mMのL-ヒスチジン、及び0.5mMのL-ヒスチジンとの混合物を試験に使用した。
【0086】
以下に示される試験した各試料はそれぞれ、3回反復されており、かつ、2%(w/v)のトラネキサム酸と、それぞれ、0.5mMのL-アルギニン及び0.5mMのL-ヒスチジン、0.5mMのL-アルギニン及び5mMのL-ヒスチジン、0.5mMのL-アルギニン及び10mMのL-ヒスチジン、2mMのL-アルギニン及び0.05mMのL-ヒスチジン、2mMのL-アルギニン及び0.5mMのL-ヒスチジン、2mMのL-アルギニン及び5mMのL-ヒスチジン、5mMのL-アルギニン及び0.05mMのL-ヒスチジン、5mMのL-アルギニン及び0.5mMのL-ヒスチジン、及び5mMのL-アルギニン及び5mMのL-ヒスチジンとの混合物で構成されていた。トラネキサム酸とL-アルギニン及びL-ヒスチジンとの混合物を各成分の3倍の濃度値で調製し、各成分を同量で希釈して上記の最終濃度を得た。各試料の接触時間は48±2時間であり、入力ウイルス力価(Log10TCID50)及び出力ウイルス力価(Log10TCID50)を使用してLog10力価低下を生成した。
【0087】
HSV-1に対するトラネキサム酸とL-アルギニン及びL-ヒスチジンとの組合せの抗ウイルス活性の評価のための調製物を、以下のように調製した:0.25mLのウイルス接種物(103.0のTCID50単位を含む)を、各用量のトラネキサム酸とL-アルギニン及びL-ヒスチジンとの組合せについての3つのウェルに加えた。1.0mLの各用量のトラネキサム酸とL-アルギニン及びL-ヒスチジンとを各ウェルに加えた。プレートを5±3%CO、36±2℃で48±2時間、インキュベートした。次に、プレートを-60から-90℃で凍結し、解凍し、各ウェルの内容物を2,000RPMで10分間、遠心分離した。各ウェルから上清を回収し、感染性ウイルスについてアッセイした。
【0088】
力価の結果が下記の表19に示されている。以下に示す力価値(Log10TCID50/mL)を有する、2%(w/v)の試料量のトラネキサム酸と、0.5mMのL-アルギニン及び0.5mMのL-ヒスチジン、0.5mMのL-アルギニン及び5mMのL-ヒスチジン、0.5mMのL-アルギニン及び10mMのL-ヒスチジン、2mMのL-アルギニン及び0.05mMのL-ヒスチジン、2mMのL-アルギニン及び0.5mMのL-ヒスチジン、2mMのL-アルギニン及び5mMのL-ヒスチジン、5mMのL-アルギニン及び0.05mMのL-ヒスチジン、5mMのL-アルギニン及び0.5mMのL-ヒスチジン、並びに5mMのL-アルギニン及び5mMのL-ヒスチジンとの組合せを試験に使用した。
【0089】
2%(w/v)トラネキサム酸、0.5mMのL-アルギニン、2mMのL-アルギニン、5mMのL-アルギニン、並びに2%(w/v)のトラネキサム酸と、0.5mMのL-アルギニン、2mMのL-アルギニン、及び5mMのL-アルギニンとの混合物についての、入力ウイルス対照の平均を入力ウイルス力価として使用した、結果的に得られたLog10力価低下が、下記表20に示されている。以下に示すように、Log10力価低下は、2%(w/v)トラネキサム酸では1.29、0.5mMのL-アルギニンでは0.28、2mMのL-アルギニンでは0.04が最大であったが、5mMのL-アルギニンはLog10力価低下を示さなかった。さらには、Log10力価低下は、2%(w/v)トラネキサム酸と0.5mMのL-アルギニンとの組合せでは0.88、2%(w/v)トラネキサム酸と2mMのL-アルギニンとの組合せでは0.88、及び2%(w/v)トラネキサム酸と5mMのL-アルギニンとの組合せでは1.47が最大であった。
【0090】
0.5mMのL-ヒスチジン、1mMのL-ヒスチジン、5mMのL-ヒスチジン、及び10mMのL-ヒスチジンについての、入力ウイルス対照の平均を入力ウイルス力価として使用した、結果的に得られるLog10力価低下が、以下の表21に示されている。以下に示すように、L-ヒスチジンのLog10力価低下は、0.5mMのL-ヒスチジンでは0.04、1mMのL-ヒスチジンでは0.10が最大であったが、残りの試料はLog10力価低下を示さなかった。
【0091】
2%(w/v)のトラネキサム酸と、0.01mMのL-ヒスチジン、0.05mMのL-ヒスチジン、0.1mMのL-ヒスチジン、0.25mMのL-ヒスチジン、及び0.5mMのL-ヒスチジンとを組み合わせた、入力ウイルス対照の平均を入力ウイルス力価として使用した、結果的に得られるLog10力価低下が、下記表22に示されている。以下に示すように、Log10力価低下は、2%(w/v)トラネキサム酸と0.01mMのL-ヒスチジンとの組合せでは1.77、2%(w/v)トラネキサム酸と0.05mMのL-ヒスチジンとの組合せでは1.53、2%(w/v)トラネキサム酸と0.1mMのL-ヒスチジンとの組合せでは1.53、2%(w/v)トラネキサム酸と0.25mMのL-ヒスチジンとの組合せでは1.59、及び2%(w/v)トラネキサム酸と0.5mMのL-ヒスチジンとの組合せでは1.89が最大であった。
【0092】
2%(w/v)トラネキサム酸と、0.5mMのL-アルギニン及び0.5mMのL-ヒスチジン、0.5mMのL-アルギニン及び5mMのL-ヒスチジン、0.5mMのL-アルギニン及び10mMのL-ヒスチジン、2mMのL-アルギニン及び0.05mMのL-ヒスチジン、2mMのL-アルギニン及び0.5mMのL-ヒスチジン、2mMのL-アルギニン及び5mMのL-ヒスチジン、5mMのL-アルギニン及び0.05mMのL-ヒスチジン、5mMのL-アルギニン及び0.5mMのL-ヒスチジン、並びに5mMのL-アルギニン及び5mMのL-ヒスチジンとを組み合わせた、入力ウイルス対照の平均を入力ウイルス力価として使用した、結果的に得られるLog10力価低下が、下記表23に示されている。以下に示すように、Log10力価低下は、2%(w/v)トラネキサム酸と0.5mMのL-アルギニン及び0.5mMのL-ヒスチジンとの組合せでは0.40、2%(w/v)トラネキサム酸と0.5mMのL-アルギニン及び5mMのL-ヒスチジンとの組合せでは1.00、2%(w/v)トラネキサム酸と0.5mMのL-アルギニン及び10mMのL-ヒスチジンとの組合せでは2.73、2%(w/v)トラネキサム酸と2mMのL-アルギニン及び0.05mMのL-ヒスチジンとの組合せでは0.94、2%(w/v)トラネキサム酸と2mMのL-アルギニン及び0.5mMのL-ヒスチジンとの組合せでは1.00、2%(w/v)トラネキサム酸と2mMのL-アルギニン及び5mMのL-ヒスチジンとの組合せでは1.83、2%(w/v)トラネキサム酸と5mMのL-アルギニン及び0.05mMのL-ヒスチジンとの組合せでは0.88、2%(w/v)トラネキサム酸と5mMのL-アルギニン及び0.5mMのL-ヒスチジンとの組合せでは0.76、及び2%(w/v)トラネキサム酸と5mMのL-アルギニン及び5mMのL-ヒスチジンとの組合せでは1.59が最大であった。
【0093】
結果の概要
上記論述において先に示したように、さまざまな割合のトラネキサム酸を使用して、HSV-1、HSV-2、HIV、及びH3N2のウイルス複製の減少を実証してきた。概して、HSV-1及びHSV-2に関しては、低及び高ウイルス接種の両方において、2.0%(w/v)のトラネキサム酸が最良の結果を示しているが、トラネキサム酸の割合が低くても、HSV-1は高い減少率を示した。HIVに関しては、例えば4.0%(w/v)などのより高い割合のトラネキサム酸は、低及び高ウイルス接種の両方において非常に良好な結果を示した。H3N2に関しては、トラネキサム酸の抗ウイルス性能は用量依存的であり、かつ、ウイルス負荷に関連していることが示された。例えば、8%(w/v)及び10%(w/v)のトラネキサム酸は、低いウイルス負荷(103.0TCID50/mL)で高い減少率を示すが、一方、10%(w/v)のトラネキサム酸は、高いウイルス負荷(105.0TCID50/mL)で高い減少率を示す。
【0094】
さらには、前述の説明に示されているように、アルギニンの添加は、HSV-1及びHSV-2におけるトラネキサム酸の抗ウイルス性能を大幅に向上させる。HSV-1に関しては、データは、2%(w/v)トラネキサム酸と10,000μMのL-アルギニンとの組合せが、2%(w/v)トラネキサム酸単独でのピークの95%の減少とは対照的に、ウイルスの減少率を99%に増大させることを示唆している。さらには、データは、2%(w/v)トラネキサム酸と25,000μMのL-アルギニンとの組合せにより、ウイルスの減少率が99.99%まで増大することを示している。HSV-2に関しては、データは、2%(w/v)トラネキサム酸と5,000μM、10,000μM、及び25,000μMのL-アルギニンとの組合せが99%を超えるウイルスの減少を実証することを示唆している。
【0095】
アルギニンに拮抗することによりHSV-1及びHSV-2の複製を抑制するトラネキサム酸の作用機構を実証するために、トラネキサム酸とアルギニンとを組合せする実験室での試験を設計した。トラネキサム酸処理した細胞にさまざまな量のアルギニンを加え、これがウイルスの複製を助けるかどうかを確かめた。驚くべくことに、結果は、少なくともより高いレベルのアルギニンと組み合わせたトラネキサム酸が、トラネキサム酸単独よりもウイルスを阻害したことを示唆した。これらの結果はさらなる検討を促した。
【0096】
以前の研究では、ヒスチジンはヘルペスの複製に関与する重要なアミノ酸であり、その後にアルギニンが続くことが示されていたが、その後の研究では、ヒスチジンではなく、アルギニンに拮抗するリジンに焦点が当てられた。リジン、アルギニン、及びヒスチジンは3つの基本的な(非酸性)アミノ酸であり、それらの構造は非常に類似しており、一部の人々はそれら、特にリジンとアルギニンとを互いにアナログと見なしている。
【0097】
上に示す実験室データに基づいて、3つの塩基性アミノ酸のうち、1つの塩基性アミノ酸が過剰になると、他の2つの塩基性アミノ酸に拮抗する可能性があると考えられる。さらには、2つの塩基性アミノ酸が過剰になると、3つ目の塩基性アミノ酸に拮抗すると考えられる。同様に、リジンの代わりに、トラネキサム酸などのアナログ又は模倣物にも同じことが当てはまる。前述の実験室での試験及び研究に基づいて、十分な量では、トラネキサム酸はアルギニン及びヒスチジンに拮抗する一方で、トラネキサム酸とアルギニンとの混合物はヒスチジンに拮抗し、トラネキサム酸とヒスチジンとの混合物はアルギニンに拮抗すると考えられる。本質的に、トラネキサム酸に1つ以上のアミノ酸を添加することにより、抗ウイルス活性の有効性を顕著に改善することができる。この有効性の改善は、他のアミノ酸に拮抗するアミノ酸が過剰に存在することによって達成される(例えば、リジンとして作用するトラネキサム酸とアルギニンとの組合せはヒスチジンに拮抗する)。
【0098】
細胞内のアルギニン及びヒスチジンの正常な生理的濃度は、約0.1から1mM、又は平均でおよそ0.5mMである。ヘルペスウイルスは、効率的に複製するためには約0.5mMのアルギニン及び0.5mMのヒスチジンの両方を必要とし、それぞれ0.5mMでは、アルギニンとヒスチジンは互いに拮抗しない。しかしながら、上述の研究は、2%(w/v)のトラネキサム酸がアルギニン及びヒスチジンの両方に拮抗し、アルギニン及びヒスチジンの有効利用可能濃度を、それぞれ0.5mMを大幅に下回るまで減少させることを示している。理論に縛られはしないが、アルギニンは一次的、又は最も直接的な標的でありうる一方、ヒスチジンは二次的、又は間接的な標的でありうると考えられる。
【0099】
上記の研究は、0.5mMのアルギニンを加え戻すと、アルギニンの「ブロッキング効果」を緩和するのに役立つが、ヒスチジンはまだ回復していないため、部分的な救済しか存在しないことを示している。直接の標的であるアルギニンが依然として「ブロック」されているため、0.5mMのヒスチジンを加え戻しても救済には役立たない。しかしながら、0.5mMのアルギニン及び0.5mMのヒスチジンの両方を加え戻すと、トラネキサム酸の作用が緩和されて、ヘルペスウイルスの複製がほぼ完全に救済される。
【0100】
上記研究に基づいて、アルギニン及びヒスチジンの両方が10mM以上(例えば、生理的レベルと比較して過剰)で互いに拮抗し始めるという指標が提供される。このように、2%(w/v)のトラネキサム酸と10又は25mMのアルギニンとの組合せにより、2%(w/v)のトラネキサム酸単独よりも高いレベルのウイルス阻害を示すことが想定される。これは、2%(w/v)トラネキサム酸と0.5mMのアルギニン及び10mMのヒスチジンとの組合せ試料が2%(w/v)のトラネキサム酸単独よりも高いレベルのウイルス阻害を示すことによるものである。実施された研究では、細胞障害性のため、2%(w/v)トラネキサム酸と10mMのヒスチジンとの組合せについては評価することができなかったことに留意すべきである。さらには、2%(w/v)のトラネキサム酸よりもある程度の救済効果を示すことができることから、2から5mMのアルギニン又はヒスチジンの濃度は、境界レベルに近い可能性がある。
【0101】
トラネキサム酸を1つ以上のアミノ酸と組み合わせることにより、トラネキサム酸の抗ウイルス効果を高めることができると予想される。組合せは、トラネキサム酸と、脂肪族アミノ酸、芳香族アミノ酸、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸、中性アミノ酸、固有のアミノ酸、アミノ酸のアナログ又は模倣物、若しくはそれらの任意の組合せとの組合せを含みうるが、これらに限定されない。さらには、トラネキサム酸(又は他の合成リジン又は模倣物)とアミノ酸とのさまざまな組合せにより、毒性のない高用量の組成物が可能になると考えられる。
【0102】
これらの実験室での試験に用いられたトラネキサム酸の割合は、用いられた特定の細胞培地によって制限されたことに留意すべきである。例えば、2%(w/v)のトラネキサム酸は、細胞障害性なしにHSV-1及びHSV-2に使用することができるトラネキサム酸の最大濃度であり、4%(w/v)のトラネキサム酸は、HIV-1に使用することができる最大濃度であった。しかしながら、例えば活発な代謝など、異なる生物学的挙動を示す人体では、はるかに高い濃度の合成リジンアナログを使用することができる。典型的な局所的使用の範囲は3から10%(w/v)の濃度であり、研究では、最高で30%(w/v)までの濃度を安全に投与できることが示されている。したがって、上述の実験室での試験は、これらのウイルスを抑制するトラネキサム酸の有効性の強力な証拠を提供しており、臨床使用ではさらに高濃度の合成リジン剤が想定されている。さらには、トラネキサム酸とアルギニンの組合せは、ヒスチジンに拮抗することによって、ヒスチジンの活性を妨げる可能性があることが上述のように実証されている。これにより、細胞障害性なしに、より大用量のトラネキサム酸とアルギニンとの組合せを可能にすることができる。
【0103】
ヒト被験体における治療及び予防的使用
上述の実験室での試験に加えて、ヒト被験体のために、さまざまな治療及び予防的使用の研究が実施され、記録されている。例えば、唇又はその近くに口唇ヘルペスの再発性のアウトブレイクの既往歴を有する54歳の女性被験者を通じた治療活動が示されている。この事例では、被験者は、アウトブレイクの最初の兆候、この場合は赤い傷とそれを取り巻く小さな白い斑点、それに伴ううずき、痛み、及び過敏症に気づき、すぐに、その領域に約0.25mLの少量の5%(w/v)のトラネキサム酸水溶液を単純なスワブで適用した。これを36時間の間に5回繰り返し実施したが、驚くべきことに、その36時間以内に、口唇ヘルペスは小さい赤い点だけが見えるようになるまで治癒し、その後まもなく完全に消散した。この活性は、ABREVA(登録商標)などの局所性の抗ウイルス治療を使用した場合あっても通常は約14日間続いた被験者のアウトブレイクの典型的な期間の著しい改善であった。5%(w/v)濃度のトラネキサム酸が有効であることが証明されたが、例えば1から14日間の間に0.25から5mLの増分で送達される、0.5から30%(w/v)などのある範囲の濃度及び総投与量も、同様に有益であると証明することができる。
【0104】
上記の治療研究に加えて、通常約2週間続く口唇ヘルペスの再発を経験した3人のヒト被験体に、アウトブレイクの開始の検出時に3%(w/v)のトラネキサム酸を1日に数回、局所的に適用するという、さらなる研究を行ったが、アウトブレイクの症状は48時間以内に消散した。通常より大規模のアウトブレイクを回避するためだけに数日間ABREVA(登録商標)を適用した、口唇ヘルペスの再発を経験した4人目の被験者には、アウトブレイクの兆候を感じ、非常に小さな水ぶくれに気づいたときに、10%(w/v)のトラネキサム酸を局所に1回適用したところ、翌朝水ぶくれが消失し、アウトブレイクが止まった。さらには、被験者の1人は、約1年間、毎日3又は10%(w/v)のトラネキサム酸を顔に塗布しており、その年の口唇ヘルペスのアウトブレイクは、通常の3から5回のアウトブレイクではなく、1回のみであった。
【0105】
さらには、3%(w/v)のトラネキサム酸の溶液を6時間から8時間ごとに鼻腔及び喉に塗布した個人は、風邪又はインフルエンザの感染症の症状を感じたが、約2週間という通常の期間ではなく、36から48時間以内に解消したという事例が3例あった。
【0106】
本開示のさまざまな実施態様が添付の表に示され、前述の詳細な説明に記載されているが、本開示は、本明細書に開示される実施形態に限定されず、本明細書に記載される本開示の趣旨から逸脱することなく、多くの再構成、修正、及び置換が可能であることが理解されよう。
【0107】
「実質的に」という用語は、当業者に理解されるように、大部分が指定されているが、必ずしもすべてが指定されているわけではないものとして定義される。開示された任意の実施態様では、「実質的に」、「およそ」、「概して」、及び「約」という用語は、指定されたものの「[あるパーセンテージ]以内」と置き換えることができ、該パーセンテージには0.1、1、5、及び10%が含まれる。
【0108】
上記は、当業者が本開示の態様をさらによく理解することができるように、幾つかの実施態様の特徴を概説している。当業者は、本開示を、本明細書に導入された実施態様の同じ目的を実行するため及び/又は同じ利点を達成するための他の方法及び組成物を設計又は修正するための基礎として容易に使用できることを認識するはずである。また、当業者は、このような同等の構造が本開示の趣旨及び範囲から逸脱していないこと、並びに、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書にさまざまな変更、置換、及び修正を行うことができることも認識するはずである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲の文言によってのみ決定されるべきである。特許請求の範囲内における「含む」という用語は、特許請求の範囲内の列挙された要素のリストがオープンな群であるように、「少なくとも含む」ことを意味することが意図されている。用語「a」、「an」、及び他の単数形の用語は、特に除外されない限り、それらの複数形を含むことが意図されている。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一時的な又は再発性のウイルスのアウトブレイクを治療、予防、又は低減するため、慢性ウイルス感染の発症又は増殖を抑制するため、或いはウイルス感染の予防又は治療のための医薬であって、
ウイルスの複製又は拡散に必要とされるアミノ酸又は他の生物学的薬剤と拮抗又は競合する、合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物を含み、前記合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物が、トラネキサム酸であり、合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物が溶液中にあり、溶液が、約3から約30重量%の濃度の合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物を有し、前記ウイルスが、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、水痘・帯状疱疹ウイルス(帯状ヘルペス)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、風邪ウイルス又はインフルエンザウイルスからなる群から選択される、医薬
【請求項2】
溶液が、約4から約30重量%の濃度の合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物を有する、請求項1に記載の医薬
【請求項3】
溶液が、約5から約30重量%の濃度の合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物を有する、請求項1に記載の医薬
【請求項4】
溶液が、スプレー、ミスト、エアロゾル、又は洗口剤として処方される、請求項1に記載の医薬
【請求項5】
合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物が、ヒトの皮膚に溶け込むビヒクルの一部として適用される、請求項1に記載の医薬
【請求項6】
合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物を含む溶液が静脈内投与される、請求項1に記載の医薬
【請求項7】
溶液が、合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物を徐放性の態様で送達可能にするビヒクルを介して適用される、請求項1に記載の医薬
【請求項8】
合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物が経口送達される、請求項1に記載の医薬
【請求項9】
合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物が徐放性の態様で送達される、請求項8に記載の医薬
【請求項10】
合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物の投与が少なくとも1日に1回行われる、請求項1に記載の医薬
【請求項11】
合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物の投与が週1回又は週2回行われる、請求項1に記載の医薬
【請求項12】
合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物の投与が月1回又は月2回行われる、請求項1に記載の医薬
【請求項13】
合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物が、機械的デバイスによって、永久材料又は再吸収性の材料を介して、或いはビヒクルで投与され、それによって合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物が徐放性の態様で送達される、請求項1に記載の医薬
【請求項14】
合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物がアルツハイマー病の発症を予防又は抑制する、請求項1に記載の医薬
【請求項15】
少なくとも1つのアミノ酸をさらに含む、請求項1に記載の医薬
【請求項16】
アルギニン、グルタミン及び/又はヒスチジンをさらに含む、請求項1に記載の医薬
【請求項17】
一時的な又は再発性のウイルスのアウトブレイクを治療、予防、又は低減するため、慢性ウイルス感染の発症又は増殖を抑制するため、或いはウイルス感染を予防又は治療するための組成物であって、
ウイルスの複製又は拡散に必要とされるアミノ酸又は他の生物学的薬剤と拮抗又は競合する、合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物を含み、前記合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物が、トラネキサム酸であり、合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物が溶液中にあり、溶液が、約3から約30重量%の濃度の合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物を有し、前記ウイルスが、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、水痘・帯状疱疹ウイルス(帯状ヘルペス)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、風邪ウイルス又はインフルエンザウイルスからなる群から選択される、組成物
【請求項18】
合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物が経口送達される、請求項17に記載の組成物
【請求項19】
合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物が局所的に適用される、請求項17に記載の組成物
【請求項20】
組成物が、局所投与の改善のため、皮膚浸透の改善のため、又は持続放出のための粘度をもたらす成分を含む、請求項19に記載の組成物
【請求項21】
合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物が静脈内投与される、請求項17に記載の組成物
【請求項22】
合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物が、スワブ、鼻腔ミスト、吸入、又は洗口剤によって投与される、請求項17に記載の組成物
【請求項23】
合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物が、機械的デバイスによって、永久材料又は再吸収性の材料を介して、或いはビヒクルで投与され、それによって合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物が徐放性の態様で送達される、請求項17に記載の組成物
【請求項24】
合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物が経皮パッチを介して投与される、請求項17に記載の組成物
【請求項25】
合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物が、注射又は移植されたリポソーム送達デポを介して投与される、請求項17に記載の組成物
【請求項26】
合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物が、トラネキサム酸又はAZD6564である、請求項17に記載の組成物
【請求項27】
組成物が、急速な全身浸透又は持続放出をもたらす成分を含む、請求項17に記載の組成物
【請求項28】
合成リジンアナログ、誘導体又は模倣物がアルツハイマー病の発症を予防又は抑制する、請求項17に記載の組成物
【請求項29】
少なくとも1つのアミノ酸をさらに含む、請求項17に記載の組成物
【請求項30】
アルギニン、グルタミン及び/又はヒスチジンをさらに含む、請求項17に記載の組成物
【外国語明細書】