(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123444
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】ミトコンドリア病の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7076 20060101AFI20230829BHJP
A61K 31/708 20060101ALI20230829BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20230829BHJP
A61K 31/7072 20060101ALI20230829BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20230829BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
A61K31/7076 ZNA
A61K31/708
A61K31/7068
A61K31/7072
A61P3/00
A61P43/00 105
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023088479
(22)【出願日】2023-05-30
(62)【分割の表示】P 2021075504の分割
【原出願日】2016-06-03
(31)【優先権主張番号】15170825.2
(32)【優先日】2015-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】512274953
【氏名又は名称】フンダシオ オスピタル ウニベルシタリ バル デブロン-インスティテュート デ レセルカ
(71)【出願人】
【識別番号】515000409
【氏名又は名称】セントロ デ インベスティガシオン バイオメディカ エン レッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルティ セベス,ラモン
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザレス ビオーク,エミリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】ブラスケス ベルメホ,コラ
(72)【発明者】
【氏名】トーレス トロンテラス,ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】カブレラ ペレス,ラケル
(72)【発明者】
【氏名】カマラ ナヴァッロ,ジョランダ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ミトコンドリアDNA枯渇および/または欠失症候群の治療で使用するための組成物を提供する。
【解決手段】1以上のカノニカルデオキシリボヌクレオシドを含み、前記1以上のカノニカルデオキシリボヌクレオシドが、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシシチジン、及びデオキシチミジンからなる群から選択され、且つ前記デオキシヌクレオシドが等モル比で存在する、DNAポリメラーゼガンマサブユニット1(POLG1)における欠陥に起因するミトコンドリアDNA枯渇および/または欠失症候群の治療で使用するための組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミトコンドリアDNA枯渇および/または欠失症候群の治療で使用するための1以上の
デオキシリボヌクレオシドを含む組成物であって、前記症候群がデオキシリボンクレオチ
ド三リン酸(dNTP)代謝における欠陥に起因しない、前記組成物。
【請求項2】
前記症候群の前記治療がポリメラーゼガンマ活性を増加させることによって達成される
、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記1以上のデオキシリボヌクレオシドがカノニカルヌクレオシドである、請求項1又
は2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記症候群が前記ミトコンドリアDNA複製機構における欠陥に起因するものである、
請求項1~3のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記欠陥が、前記ミトコンドリアDNA複製機構の1以上のタンパク質における1以上
の突然変異に起因する、請求項1~4のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記1以上のタンパク質が、DNAポリメラーゼサブユニットガンマ1(POLG1)
、DNAポリメラーゼサブユニットガンマ2(POLG2)、Twinkleタンパク質
(PEO1)、ミトコンドリアゲノム維持エキソヌクレアーゼ1(MGME1)、及びヒ
トヘリカーゼ/ヌクレアーゼDNA2タンパク質(DNA2)からなる群から選択される
、請求項5に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記症候群がDNAポリメラーゼサブユニットガンマ1(POLG1)タンパク質にお
ける欠陥に起因する、請求項6に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
前記ミトコンドリアDNA枯渇及び欠失症候群が前記ミトコンドリア複製経路における
欠陥によって引き起こされ、前記欠陥がPOLG1タンパク質における以下の突然変異:
R309C、W748S、V1177L、G848S、E1143、及びE1143Gの
1以上に起因し、位置が配列番号1に関して言及される、請求項1~7のいずれかに記載
の使用のための組成物。
【請求項9】
前記1以上のデオキシリボヌクレオシドが、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン
、デオキシシチジン、及びデオキシチミジンからなる群から選択される、請求項1~8の
いずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項10】
デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシシチジン、及びデオキシチミジン
を含む、請求項1~9のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項11】
他の更なるヌクレオシドを含まない、請求項10に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
前記組成物が、ヌクレオシド分解の1以上の薬剤的に許容される阻害剤を更に含む、請
求項1~11のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項13】
前記組成物が、前記ヌクレオシド分解の1つの薬剤的に許容される阻害剤を更に含む、
請求項12に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
前記薬剤的に許容される阻害剤がデオキシアデノシン分解の阻害剤である、請求項12
~13のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項15】
前記阻害剤がエリスロ-9-(2-ヒドロキシ-3-ノニル)アデニン(EHNA)で
ある、請求項14に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬の分野に関し、特にミトコンドリア病の治療に関し、更に詳細には、ミト
コンドリアDNA(mtDNA)の欠失/枯渇に起因するミトコンドリア病に関する。
【背景技術】
【0002】
ミトコンドリアゲノム(mtDNA)は、個々のミトコンドリアにおいて複数のコピー
で通常は存在する16.5kbのDNA分子である。
【0003】
メンデルのミトコンドリア病の重要なグループは、それらの産物がmtDNA複製又は
維持に関与する核遺伝子における突然変異に起因する。このような稀な障害は、ゲノム間
の伝達の欠陥、mtDNA枯渇疾患、mtDNA多重欠失疾患、又はミトコンドリア枯渇
及び欠失疾患(MDDS)としても知られている。これらは特定のオーファンコード(o
rphan code)を有する:ミトコンドリアDNA枯渇症候群についてはORPH
A35698、多重ミトコンドリアDNA欠失症候群についてはORPHA254807
を有し、また、ミトコンドリアDNA枯渇についてはhttp://www.omim.
org/phenotypicSeries/PS603041、多重ミトコンドリアD
NA欠失についてはhttp://www.omim.org/phenotypicS
eries/PS157640のOMIMデータベースで認識されている。これらの疾患
は、罹患組織(例えば、骨格筋、肝臓、脳)の1つ又は組み合わせにおけるmtDNA異
常の存在によって特徴づけられる遺伝的及び臨床的に異質な疾患の複雑な群である。
【0004】
これらの障害の重症度及び進行はまた、軽度の兆候(例えば進行性外眼筋麻痺)から、
有名なmtDNA枯渇症候群で見られるような乳幼児期での死に至る可能性がある重度の
表現型に至るまで非常に多様性がある。
【0005】
これまで、ゲノム間の伝達における欠陥に関連する殆どの遺伝子は、mtDNA複製に
直接関与するか、又はDNA合成のビルディングブロックであるデオキシリボヌクレオシ
ド三リン酸(dNTP)の代謝に関与している。しかしながら、MDDSに至る益々増加
する突然変異が、未知の病理学的機序によるmtDNA不安定性を引き起こす遺伝子にお
いて特定されている(OPA1、MPV17、FBXL4等)。ある遺伝子における欠陥
は特異的に枯渇又は多重mtDNA欠失のいずれかに至ると古くから考えられてきた。例
えば、DGUOK欠陥は通常、mtDNA枯渇に至り、一方、OPA1欠陥は典型的には
多重mtDNA欠失を引き起こす。それにもかかわらず、mtDNA枯渇及び多重欠失が
mtDNA複製および修復に影響を及ぼす同じ病原経路の考えられる兆候であり得るとい
う証拠が増えてきている。最近まで幼児期に発症するmtDNA枯渇にのみ関連する遺伝
子(TK2、DGUOK)における突然変異は、現在では更に多重mtDNA欠失を引き
起こし、場合によっては成人で発症することが判明している。
【0006】
MDDSは多臓器障害であるので、関連する合併症の支援的ケア及び対症療法を提供す
るために、様々な専門医を含む集学的チームが必要である。
【0007】
現在までに、これらの非常に複雑な疾患の治療に有効な療法は開発されていない。これ
は基本的に、そのような疾患を引き起こす正確な要因及びメカニズムに関する情報がない
こと、1つの症候群と別の症候群との間の多様性等のためである。
【0008】
上記にもかかわらず、dNTP利用可能性が損なわれることが知られているdNTP代
謝における欠陥によって引き起こされるMDDSの適切な療法を見出すいくつかの試みが
なされている。例えば、最近の実験研究により、デオキシリボヌクレオチド生合成におけ
る欠陥のある段階を回避することで、mtDNA枯渇を克服できることが示された。特に
、プリンdN一リン酸(dNMP)の添加は、TK2-KOマウスにおけるmtDNA枯
渇を救済できることが報告されている(非特許文献1)。更に、非特許文献2は、デオキ
シリボヌクレオシド及び/又はそれらの異化作用の特異的阻害剤の使用が、dNTPホメ
オスタシスにおける欠陥のための異なるMDDSを治療するための有効な薬理学的アプロ
ーチであり得ることを報告している。
【0009】
試みがなされたにもかかわらず、これらや他のMDDS異型のための治療的アプローチ
が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Garone C,Garcia-Diaz B,Emmanuele V,Lopez LC,Tadesse S,et al.(2014)Deoxypyrimidine monophosphate bypass therapy for thymidine kinase 2 deficiency.EMBO Molecular Medichine 6:1016-1027.
【非特許文献2】Camara Y,Gonzalez-Vioque E,Scarpelli M,Torres-Torronteras J,Caballero A,et al.(2014)Administration of deoxyribonucleosides or inhibition of their catabolism as a pharmacological approach for mitochondrial DNA depletion syndrome.Human Molecular Genetics 23:2459-2467.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、デオキシリボヌクレオシドの投与によって、dNTP代謝における欠陥
によって引き起こされないMDDS疾患におけるmtDNAレベルの回復が可能になるこ
とを見出した。
【0012】
これまで、ヌクレオシドの投与は、dNTP代謝における欠陥によって引き起こされる
ミトコンドリア病の治療においてのみ有効であると一般的に考えられていた。実際、先行
技術は、dNTP代謝における欠陥によって引き起こされる疾患を、「欠陥のある」ヌク
レオシドの投与によって克服できると仮定した[2]。従って、現在まで、特定のヌクレ
オチドにおける欠陥によって引き起こされる疾患のみが、問題になっている「欠陥のある
」ヌクレオチド/ヌクレオシドの充分な量を投与して治療できることが予想された。
【0013】
先行技術の教示とは逆に、本発明者らは、ポリメラーゼガンマタンパク質1(mtDN
A複製機構に関与する酵素の1つ)の触媒サブユニットに影響を及ぼすある突然変異を有
するMDDSと以前に診断された患者由来の線維芽細胞サンプルにデオキシリボヌクレオ
シドを投与した。驚くべきことに、デオキシリボヌクレオシドをそれらのサンプルに投与
することによって、患者が保有する突然変異とは独立に、mtDNAレベルが「正常」(
健常)レベルに回復されることが判明した(表3、下記参照)。異なる突然変異によって
引き起こされる、POLG1酵素の異常機能(最終的に、複製機構の正しい働きにマイナ
スの影響を及ぼす)は、3人の患者由来の細胞全てについてデオキシリボヌクレオシドを
投与することによって同じ程度まで克服することができることは予測できなかった。デオ
キシリボヌクレオシドの投与でのmtDNAレベルの回復は、mtDNA複製機構欠陥の
原因となる突然変異とは無関係であることを示す。
【課題を解決するための手段】
【0014】
従って、第1の態様において、本発明は、ミトコンドリアDNA枯渇及び/又は欠失症
候群の治療で使用するための1つ以上のカノニカルデオキシリボヌクレオシドを含む組成
物を提供するが、但し、前記症候群はデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)代
謝における欠陥に起因しないものとする。この態様はまた、ミトコンドリアDNA枯渇及
び/又は欠失症候群の治療用薬剤を製造するための1つ以上のカノニカルデオキシリボヌ
クレオシドを含む組成物の使用として処方することもできるが、但し、前記症候群はデオ
キシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)代謝における欠陥に起因しないものとする。
この態様は、別法として、デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)代謝における
欠陥に起因しないミトコンドリアDNA枯渇及び/又は欠失症候群の治療法として処方す
ることができ、当該方法は、治療上有効な量の1つ以上のカノニカルデオキシリボヌクレ
オシドを、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0015】
実験データは、POLGにおける欠陥のために異なる臨床症状に苦しむ患者由来の細胞
で得られた。
【0016】
POLGは、DNAポリメラーゼガンマと呼ばれるミトコンドリアDNAポリメラーゼ
の触媒サブユニットをコードする遺伝子である。真核細胞では、ミトコンドリアDNAは
、POLG遺伝子によってコードされる140kDaの触媒サブユニット及びPOLG2
遺伝子によってコードされる55kDaの二量体補助サブユニットで構成される三量体タ
ンパク質複合体であるDNAポリメラーゼガンマによって複製される。触媒サブユニット
は、3つの酵素活性、つまり、DNAポリメラーゼ活性、誤って組み込まれたヌクレオチ
ドを校正する3’-5’エキソヌクレアーゼ活性、及び塩基除去修復に必要な5’-dR
Pリアーゼ活性を含む。下記実施例では、患者は、エキソヌクレアーゼ又はポリメラーゼ
ドメイン(R309C(エキソヌクレアーゼドメイン中)、並びにG848S及びV11
77L(ポリメラーゼドメイン中))及びリンカー領域(W748S)における突然変異
に起因するPOLG欠損症を患っていた。
【0017】
本発明者らは驚くべきことに、デオキシリボヌクレオシドの投与は試験した全てのPO
LG突然変異体について「作用する」こと、突然変異がPOLGの機能又は構造のいずれ
に影響を及ぼすかに関係なく、mtDNAレベルが回復されて健常な対象によって示され
るものと同じくらいになる程度で、突然変異POLG形態の酵素活性が実質的に改善され
ることを見出した。即ち、デオキシリボヌクレオシドの投与は、前記投与前にポリメラー
ゼ活性が部分的に欠如したPOLG酵素形態を過刺激する。
【0018】
以下で提示する実験データ(下表3にまとめる)により、デオキシリボヌクレオシドの
投与が、POLG遺伝子における突然変異とは関係なくmtDNA重合速度を加速するた
めに充分であり得ると結論づけることができる。しかし、これらの知見はまた、(mtD
NAコピー数の減少又は多重mtDNA欠失のいずれかによる)mtDNAの減少によっ
て特徴づけられることが知られ、そして複製機構自体からのタンパク質(ポリメラーゼガ
ンマの補助単位をコード化するPOLG1、POLG2;とりわけ、PEO1、MGME
1、及びDNA2)又はmtDNA複製に間接的に関与するタンパク質(例えばMPV1
7)における突然変異に起因する他のMDDS疾患はまた、デオキシリボヌクレオシドの
投与によりPOLG酵素活性を過刺激することによって効率的に治療することができる:
即ち、POLG活性を増強することで、mtDNAレベルにおいて実質的な増加があり、
これは、そのような損失(特定のタンパク質における特定の突然変異)の原因とは関係な
く、mtDNAの損失を「中和」することができ、また「正常な」レベルを回復すること
ができることも示唆する。
【0019】
従って、dNに基づく治療方針は、部分的又は完全に活性なポリメラーゼ活性のいずれ
かによって提供される、mtDNAの複製が攻撃される任意の欠陥におけるmtDNA枯
渇を部分的又は完全に相殺することができる。
【0020】
以下に示す実験から、ミトコンドリアDNAレベルの回復は、患者の疾患の重症度とは
無関係である可能性があると結論づけることもでき、このことは本発明に大きな治療的価
値を付与する。
【0021】
本発明のMDDS対象の治療においてデオキシリボヌクレオシドの投与に関連するさら
なる利点はコストであり(安価である)、それらの保存のために特別な要件がないことで
ある。加えて、カノニカルデオキシリボヌクレオシドは全ての生物において通常存在する
天然の化合物である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】NCBIデータベースによるPOLG1タンパク質のアミノ酸。強調表示されているのは以下の突然変異である:位置309→システインによるアルギニンの突然変異、位置748→セリンによるトリプトファンの突然変異、位置848→セリンによるグリシンの突然変異、位置1143→グリシンによるグルタミン酸の突然変異、位置1177→ロイシンによるバリンの突然変異。
【
図2】mtDNA枯渇および欠失症候群(MDDS)に関与する代謝経路の図。その機能不全がMDDSと関連するタンパク質は番号1(dNTP代謝に関与)、番号2(複製機構に属する)または番号3(未知の病理学的機序によってMDDSに関連付けられる)で表示されている。SUCLA2およびSUCLG1とヌクレオチド二リン酸キナーゼとの関連性は実証されているが、それらのdNTP代謝との関係は明らかにされていない。dNTP代謝に関与するが、MDDSおよびデオキシリボヌクレオシド異化酵素の特異的阻害剤とはまだ関連づけられていない他のタンパク質も図示されている:テトラヒドロウリジン(THU);5-クロロ-6-[1-(2-イミノピロリジニル)メチル]ウラシル塩酸塩(TPI)、イムシリンH(IH)及びエリスロ-9-(2-ヒドロキシ-3-ノニル)アデニン(EHNA)。略語:ABAT:4-アミノ酪酸アミノトランスフェラーゼ;ADA:アデノシンデアミナーゼ;ANT1:アデニンヌクレオチドトランスロケータ1;CDA:シチジンデアミナーゼ;cdN:細胞質デオキシリボヌクレオチダーゼ;dAdo:デオキシアデノシン;dCK:デオキシシチジンキナーゼ;dCTD:dCMPデアミナーゼ;dCtd:デオキシシチジン;dGK:デオキシグアノシンキナーゼ;dGuo:デオキシグアノシン;dlno:デオキシイノシン;DNA2:DNA複製ヘリカーゼ2;dThd:チミジン;dUrd:デオキシウリジン;ENT1:平衡型ヌクレオシドトランスポータ1;FBXL4:F-ボックス及びロイシンリッチな反復タンパク質4;mdN:ミトコンドリアデオキシリボヌクレオチダーゼ;MFN2:マイトフュージン-2;MGME1:ミトコンドリアゲノム維持エキソヌクレアーゼ1;MPV17:ミトコンドリア内膜MPV17;NDPK:ヌクレオチド二リン酸キナーゼ;NMPK:ヌクレオチド一リン酸キナーゼ;OPA1:視神経萎縮1;PNP:プリンヌクレオシドホスホリラーゼ;POLG1:ポリメラーゼガンマサブユニット1;POLG2:ポリメラーゼガンマサブユニット2;RNR:リボヌクレオチドレダクターゼ;SAMHD1:SAMドメイン及びHDドメイン含有タンパク質1;SUCLA2:β-サブユニット、スクシネート-CoAリガーゼ;SUCLG1:α-サブユニット、スクシネート-CoAリガーゼ;TK1:チミジンキナーゼ1;TK2:チミジンキナーゼ2;TP:チミジンホスホリラーゼ;TS:チミジル酸シンターゼ;Twinkle:ミトコンドリアTwinkleヘリカーゼ。
【
図3】表示された時間(t0、t7、t14、t21およびt26)で集められた細胞におけるmtDNAレベルを決定するために従った実験設計のスキーム。dNの安定性を培養の2~3日後(t16~t17)に細胞培地でモニターした。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、dNTP代謝における欠陥以外の欠陥に起因するMDDSを患っている患者
にデオキシリボヌクレオシドを投与すると、mtDNAレベルの回復を達成できるという
知見に基づく。ヌクレオシドは、リン酸基のないヌクレオチドとして考えることができる
グリコシルアミンである。ヌクレオシドは、単に核酸塩基(窒素含有塩基とも称する)及
び五炭糖(リボースまたはデオキシリボースのいずれか)からなるのに対して、ヌクレオ
チドは、核酸塩基と五炭糖と1つ以上のリン酸基とから構成される。ヌクレオシドにおい
て、塩基は、ベータ-グリコシド結合を介してリボース又はデオキシリボースのいずれか
と結合する。ヌクレオシドの例としては、シチジン、ウリジン、アデノシン、グアノシン
、チミジン、及びおよびイノシンが挙げられる。
【0024】
上記で説明したように、MDDS疾患はミトコンドリアDNA(mtDNA)複製にお
ける欠陥に起因する疾患群であり、mtDNAコピー数の減少(mtDNA枯渇症候群)
又は多重mtDNA欠失(mtDNA欠失症候群)のいずれかにより特徴づけられる障害
を包含する。それらは、これらの種類の病理学の技術に関する参照サイトであるリンク先
が存在しない(orphaned)サイト及びOnline Mendelian In
heritance in Man catalogueでよく認識されたものである。
【0025】
このミトコンドリア病群は、所定の遺伝子群における突然変異に起因する充分に認識さ
れた障害群を構成し、従ってミトコンドリア障害に関する専門家に周知である。いくつか
の例では、この疾患群が呼ばれている名称は様々であり得る:mtDNA枯渇及び欠失症
候群[3,4];ゲノム間の伝達(又はシグナル伝達)の欠陥[5];mtDNA複製欠
陥[6];等。場合によってはこれらの名称の2以上が同じ刊行物中で共存する。
【0026】
mtDNA複製における欠陥に起因する疾患は、以下のものにおける突然変異に起因し
得る:
A:mtDNA複製機構に属するタンパク質をコード化する遺伝子(
図2において番号
「2」で表示)[7、8、9、10、11]
B:ヌクレオシド/ヌクレオチド異化作用又は同化作用に関与するタンパク質をコード
化する遺伝子(
図2において番号「1」で表示)[12、13、14、15]
C:機能が未知であるか、あるいはその機能がカテゴリーA又はBに属さず、mtDN
A複製プロセスと生化学的に関連づけることができないタンパク質をコード化する遺伝子
(
図2において番号「3」で表示)。[16、17、18、19、20、21、22、2
3、24]
【0027】
この分類は当業者には明確に認識されている[3、4、6、25、26、27]。
【0028】
dNTPはDNA合成の基質として複製フォークで必要とされる。哺乳類細胞は、2つ
の異なる代謝源、細胞質デノボ合成及びサルベージ経路からDNA合成及び修復のための
前駆体を取得し、後者は細胞質及びミトコンドリアマトリックスに位置する酵素の2つの
平行なセットに基づく。dNTPの合成は、DNA前駆体に関する細胞要求が最高である
時点の、核DNA複製にカップリングされる。dNTPプールは複製相(S相)が終わっ
たら、又は非分裂細胞においては、著しく減少する。デノボ合成はリボヌクレオチドレダ
クターゼ(RNR)の細胞質活性に基づく(それについて最近ミトコンドリアチミジル酸
シンターゼが特定されたdTMPを除いて)。RNRは4つのリボヌクレオシド二リン酸
全ての対応するデオキシリボヌクレオシド(dN)へのアロステリックに均衡のとれた還
元を触媒して、細胞周期のS相の間に高濃度のdNTPを有する細胞を提供する。RNR
は2コピーの大サブユニット(R1)と2つの小サブユニット(R2またはp53R2)
とを含むヘテロ四量体である。R2は有糸分裂後期においてプロテアソーム依存的分解を
受けるが、p53R2は細胞周期全体にわたって存在し、その発現は非分裂細胞において
も安定なままである。核ゲノム複製とは異なって、mtDNA合成は細胞分裂から独立し
て起こる。p53R2によって支持される細胞質デノボ合成は、S相中にR2によって提
供されるものと比較するとはるかに低いが、p53R2遺伝子上の突然変異はmtDNA
枯渇に至るので、mtDNA維持に対して必須であることが証明された。
【0029】
サルベージ合成経路は、前駆体ヌクレオシドのdNMP、dNDPおよび最終的にはd
NTPへの一連のリン酸化に基づく。この経路における最初の律速段階はデオキシヌクレ
オシドキナーゼによって不可逆的に触媒される。チミジンキナーゼ1(TK1)及びデオ
キシシチジンキナーゼ(dCK)はサイトゾルで機能し、一方、チミジンキナーゼ2(T
K2)及びデオキシグアノシンキナーゼ(dGK)はミトコンドリア内に局在化する。サ
ルベージ経路に関与するミトコンドリアキナーゼの突然変異は、重度のMDDSを引き起
こし、そのDNA維持及び修復のためのdNTPのサルベージ供給に関するミトコンドリ
ア依存性を証明する。更なるヌクレオチドキナーゼは4つのdNMP全てを完全にリン酸
化して、DNA合成に必要である最終的な対応するdNTPにする。サイトゾル及びミト
コンドリアマトリックスは独立した区画であるが、それらは活発に連絡し、今まであまり
明らかにされていない担体によりミトコンドリア内膜を超えてプール成分を双方向に交換
する。このクロストークの結果として、dNTPプールサイズの変化は、両区画で平行し
て起こると考えられる。従って、ミトコンドリアは分裂終了細胞におけるdNTPのそれ
ら自身のサルベージ供給に関する欠陥の影響をより受けやすくなり、この場合、サイトゾ
ルプールは大幅に減少した。
【0030】
dNTPプールサイズは、上記同化経路、DNAへの取り込み速度及びdNTP分解の
原因となる分解産物反応の間のバランスに依存する。
【0031】
dNTPは、ミトコンドリアポリメラーゼガンマ(POLG)によってDNAに取り込
まれる基質として複製フォークで必要とされる。mtDNA複製の正確なモードは現在議
論中であるが、ポリメラーゼガンマ(POLG1によってコード化される触媒サブユニッ
トとPOLG2によってコード化される2つの補助サブユニットとによって構成される)
、Twinkleヘリカーゼ及び一本鎖結合(SSB)タンパク質によって形成される基
本的なミトコンドリアレプリソームがインビトロで再構成された[28]。更なる充分に
特徴づけられていない活動は、mtDNA分子(例えば、プライマーゼ、トポイソメラー
ゼ)の完全なインビボ複製のため、そして異なる刺激及びストレスに反応したプロセスの
開始及び調整のために必要である。いくつかの例は、複製プロセス(それぞれ7SRNA
、ヘリカーゼ活性の成熟)においてあるレベルで関与するタンパク質をコード化するMG
ME1及びDNA2遺伝子であり、その突然変異は最近、MDDSと関連づけられた。
【0032】
一実施形態において、症候群の治療は、ポリメラーゼガンマ活性を増加させることによ
って達成される。
【0033】
一実施形態において、1以上のデオキシリボヌクレオシドはカノニカルデオキシリボヌ
クレオシドである。有利なことには、そのようなデオキシリボヌクレオシドを用いると、
効果の開始は、代謝産物の余分なプロセッシングが必要ないので、更に早くなり得る。加
えて、カノニカルデオキシリボヌクレオシドは内在性デオキシリボヌクレオシドと実質的
に同一であるので、この疾患の治療に関連する副作用の危険性が低減し得る。
【0034】
本発明の第1の態様の一実施形態において、症候群は、ミトコンドリアDNA複製機構
における欠陥に起因する。
【0035】
本発明の第1の態様の別の実施形態において、欠陥は、ミトコンドリアDNA複製機構
の1以上のタンパク質における1つ以上の突然変異に起因する。
【0036】
さらに別の実施形態において、タンパク質は、DNAポリメラーゼサブユニットガンマ
1(POLG1)、DNAポリメラーゼサブユニットガンマ2(POLG2)、Twin
kleタンパク質(PEO1)、ミトコンドリアゲノム維持エキソヌクレアーゼ1(MG
ME1)、及びヒトヘリカーゼ/ヌクレアーゼDNA2タンパク質からなる群から選択さ
れる。別の実施形態において、タンパク質はDNAポリメラーゼサブユニットガンマ1(
POLG1)またはTwinkleタンパク質である。
【0037】
ポリメラーゼガンマは、1つの触媒サブユニット(POLG1によってコードされる)
と処理能力因子及びDNA結合のモジュレータとして作用する2つの補助サブユニット(
POLG2によってコードされる)とによって構成されるヘテロ三量体である。そのNC
BIデータベースの受入番号はNP_001119603.1である(
図1及び配列番号
1としても提供)。
【0038】
POLG関連障害は、幼少期から後期成人期まで存在する広範且つ重複した一連の表現
型を提示する。POLG関連障害の臨床表現型には、常染色体劣性及び優性成人発症PE
O、ミオクローヌてんかん、ミオパシー、感覚性運動失調(MEMSA)症候群、ミトコ
ンドリア劣性運動失調症候群(MIRAS)、及び感覚性運動失調を含む運動失調-神経
障害スペクトラム、神経障害、構音障害、眼筋麻痺(SANDO)症候群、及び肝脳MD
S(Alpers-Huttenlocher症候群)が含まれる。最近、MNGIEの
臨床的特徴を有するが白質脳症を有さない個体においてPOLG突然変異が特定された。
【0039】
Alpers-Huttenlocher症候群の発生率は約1:50,000である
と推定されている。それは、POLG突然変異に関連し、難治性てんかん及び精神運動遅
滞、神経障害、及び肝不全を伴う進行性脳症によって特徴づけられる、最も重度の表現型
である。罹患者は、通常、2歳から4歳の間で発作(局所、全身性、ミオクローヌス、持
続性部分てんかん、またはてんかん重積症)、典型的には視覚または視覚的前兆に関連す
る頭痛、低血圧、及び精神運動発達退行を提示する。疾患経過の早期で、反射消失および
低血圧が存在し、後に痙攣性不全対麻痺が続いて起こり、これは数か月から数年に及び、
精神運動発達退行に至る。罹患者は、トランスアミナーゼ上昇を伴う肝臓機能不全、低ア
ルブミン血症、凝血異常、低血糖症、及び高アンモニア血を発症する。肝臓合併症は急速
に進行して数ヶ月以内に末期肝不全となる可能性がある。CSFタンパク質は概して上昇
する。神経画像処理は、グリオーシス及び全身性脳萎縮を示し得る。肝臓組織学は、大滴
性及び小滴性脂肪肝、小葉中心性壊死、線維症、肝硬変、胆管増殖、及びミトコンドリア
増殖を示し得る。mtDNA量は肝臓で減少する。疾患進行は様々であり、発症からの平
均余命は3ヶ月から12年まで及ぶ。
【0040】
一実施形態において、ミトコンドリアDNA枯渇及び/又は欠失症候群はミトコンドリ
ア複製経路における欠陥に起因し、前記欠陥はPOLG1タンパク質における以下の突然
変異の1つ以上に起因する:システインによるアルギニンの位置309での突然変異[2
9]、セリンによるトリプトファン残基の位置748の突然変異(rs11399409
7)、セリンによるグリシンの位置848の突然変異(rs113994098)、グリ
シンによるグルタミン酸の位置1143での突然変異(rs2307441)、及びロイ
シンによるバリンの位置1177での突然変異。
【0041】
あるいは、本発明の第1の態様の別の実施形態において、欠陥は、ANT1、MPV1
7、SUCLA2、FBXL4、ABAT、SUCLG1、MFN2、及びOPA1から
なる群から選択される1つ以上のタンパク質における1つ以上の突然変異に起因する。第
1の態様の別の実施形態において、欠陥は、OPA1、SUCLA2、及びSUCLG1
からなる群から選択されるタンパク質における1つ以上の突然変異に起因する。
【0042】
別の実施形態において、1つ以上のデオキシリボヌクレオシドはカノニカルデオキシリ
ボヌクレオシドである。別の実施形態において、1つ以上のデオキシリボヌクレオシドは
、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシシチジン、及びデオキシチミジン
からなる群から選択される。更に別の実施形態において、組成物は4つのカノニカルデオ
キシリボヌクレオシドを含む。更に別の実施形態において、組成物は4つのカノニカルデ
オキシリボヌクレオシドを含み、更なるヌクレオシドを含まない(このことは、組成物が
「デオキシリボヌクレオシド成分」としてこれら4つのデオキシリボヌクレオシドを一意
的に含むが、賦形剤、担体等を含み得ることを意味する)。更に別の実施形態において、
組成物は、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシシチジン、及びデオキシグ
アノシンを含む。更に別の実施形態において、組成物は、デオキシアデノシン、デオキシ
チミジン、デオキシシチジン、及びデオキシグアノシンを含み、更なるヌクレオシドを含
まない(このことは、組成物が「ヌクレオシド成分」としてこれら4つのヌクレオシドを
一意的に含むが、賦形剤、担体等を含み得ることを意味する)。
【0043】
当業者は、mtDNAレベルを回復するためのデオキシリボヌクレオシドの一つひとつ
の量(即ち、ミトコンドリア障害の兆候及び症状を改善するために治療上有効な量)を決
定することができる。別の実施形態において、組成物が複数のカノニカルデオキシリボヌ
クレオシドを含む場合、ヌクレオシドは等モル比で存在する。
【0044】
一実施形態において、組成物は、デオキシアデノシン(dAdo)、デオキシシチジン
(dCtd)、デオキシグアノシン(dGuo)、及びデオキシチミジン(通常、チミジ
ン、dThdと呼ばれる)からなり、全てのヌクレオシドが等モル比である組み合わせを
含む。
【0045】
別の実施形態において、組成物は、1以上のヌクレオシド分解の薬剤的に許容される阻
害剤を更に含む。
【0046】
最新技術の周知のヌクレオシド分解阻害剤がある。非限定的実例としては以下のものが
挙げられる:dGuo分解阻害剤としてはインムシリン(Inmucilin)H又はフ
ォロデシン、dCtd分解阻害剤としてはテトラヒドロウリジン、dThd分解阻害剤と
しては5-クロロ-6-[1-(2-イミノピロリジニル)メチル]ウラシル塩酸塩(T
PI)、及びdAdo分解阻害剤としてはエリスロ-9-(2-ヒドロキシ-3-ノニル
)アデニン(EHNA)。
図1はこれらの阻害剤の作用様式を示す。
【0047】
当業者は、mtDNAレベルを回復するための(1又は複数の)ヌクレオシドの生物学
的利用能を保証するために必要な(1又は複数の)阻害剤の量を決定することができる。
【0048】
一実施形態において、組成物は、1つの薬剤的に許容されるヌクレオシド分解阻害剤を
更に含む。別の実施形態において、薬剤的に許容される阻害剤は、デオキシアデノシン分
解の阻害剤である。別の実施形態において、阻害剤はエリスロ-9-(2-ヒドロキシ-
3-ノニル)アデニン(EHNA)である。
【0049】
本明細書中での使用について記載されている活性成分は、そのような組成物が経口、直
腸、非経口(例えば、静脈内、筋肉内、動脈内、腹腔内等)、又は吸入経路、浸透圧ポン
プ、局所、眼等による送達に適するように選択された薬剤的に好適な賦形剤又は担体を用
いて処方することができる。
【0050】
軟膏は、脂肪状、ワックス状、又は合成基剤中に組み込まれた活性成分からなる半固体
製剤である。
【0051】
好適なクリームの例としては、油中水及び水中油エマルジョンが挙げられるが、これら
に限定されるものではない。油中水クリームは、セチルアルコール又はセトステアリルア
ルコール等の脂肪族アルコールの乳化剤及び乳化ワックスに類似しているが、これらに限
定されない特性を有する好適な乳化剤を使用することによって処方することができる。水
中油クリームは、セトマクロゴール乳化ワックス等の乳化剤を使用して処方することがで
きる。好適な特性には、エマルジョンの粘度を修飾する能力並びに広範囲のpHにわたる
物理的及び化学的安定性が含まれる。水溶性又は混和性クリーム基剤は、防腐系を含んで
もよく、また緩衝して許容される生理的pHを維持することができる。
【0052】
上記局所投与法に加えて、本発明の化合物を全身投与する様々な方法がある。1つのそ
のような手段は、対象者が吸引する活性化合物からなる呼吸域粒子のエアゾル懸濁液を含
む。活性化合物は肺を介して血流中に吸収され、薬剤的に有効な量で体循環と接触する。
呼吸域粒子は、吸入に際して口及び喉頭を通過するのに十分小さい粒子サイズを有する液
体又は固体であり得る。
【0053】
対象に活性化合物を全身投与する別の手段は、液剤の点鼻薬の形態の液体/液体懸濁液
、又は対象が吸入する呼吸域粒子の鼻腔用スプレーの形態での投与を含む。鼻腔用スプレ
ー又は点鼻薬を製造するための活性化合物の液体医薬組成物は、当業者に公知の技術によ
って滅菌パイロジェンフリー水又は滅菌食塩水等の好適なビヒクルと活性化合物とを組み
合わせることによって調製することができる。
【0054】
活性化合物の全身投与の他の手段は、式Iの化合物を含む医薬組成物が、固体、溶液、
エマルジョン、分散液、ミセル、リポソーム等の形態である経口投与を含み、結果として
得られる処方は、鼻、経腸、又は非経口適用に適した有機又は無機担体又は賦形剤との混
合物で、本明細書における使用について想定された活性化合物を含む。活性成分は、例え
ば、錠剤、ペレット、カプセル、トローチ、ロゼンジ、水性又は油性懸濁液、分散可能な
粉末又は顆粒、坐剤、溶液、エマルジョン、懸濁液、ハード又はソフトカプセル、カプレ
ット又はシロップ又はエリキシル及び使用に適した任意の他の形態のための通常の非毒性
の薬剤的又は生理学的に許容される担体と配合することができる。使用できる担体として
は、アカシアゴム、ゼラチン、マンニトール、デンプンペースト、三ケイ酸マグネシウム
、タルク、コーンスターチ、ケラチン、コロイド状シリカ、ジャガイモデンプン、尿素、
中鎖長トリグリセリド、デキストラン、及び固体、半固体、又は液体形態の、製剤の製造
で使用するのに適した他の担体が挙げられる。更に、補助剤、安定剤、増粘剤、及び着色
剤を使用することができる。本明細書中での使用のために想定される活性化合物は、投与
されると所望の効果をもたらすために充分な量(即ち、治療上有効な量)で製剤処方中に
含まれる。
【0055】
経口送達システム開発の当業者は慣習的基準を用いて選択できるので、粉末、溶液、懸
濁液、又は錠剤は生理学的に適合性のビヒクル中に活性化合物を含む。例えば、そのよう
な処方は、薬剤的に洗練された味の良い製剤を提供するために、香味剤(例えばペパーミ
ント、ウィンターグリーン油、又はチェリー)、着色剤、保存剤等から選択される1以上
の薬剤を含んでもよい。非毒性で薬剤的に許容される賦形剤との混合物中に活性成分を含
む錠剤は公知方法によって製造することもできる。使用する賦形剤は、例えば、(1)炭
酸カルシウム、ラクトース、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウム等の不活性希釈剤、(
2)コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸等の造粒剤および崩壊剤、(3)
トラガカントガム、コーンスターチ、ゼラチン、アカシア等の結合剤、並びに(4)ステ
アリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク等の潤滑剤であってよい。錠剤はコーティ
ングされていなくてもよいし、又は公知技術によってコーティングして、胃腸管中での崩
壊及び吸収を遅らせ、それによってより長時間にわたって作用を持続させることができる
。例えば、グリセリルモノステアレート又はグリセリルジステアレート等の時間遅延材料
を用いてもよい。
【0056】
経口使用のための処方がハードゼラチンカプセルの形態である場合、活性成分を、不活
性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、カオリン等と混合すること
ができる。それらはまた、活性成分が水又は油媒体、例えば、ピーナッツ油、液体パラフ
ィン、オリーブ油等と混合されているソフトゼラチンカプセルの形態であってもよい。
【0057】
対象に対して活性化合物を全身投与する更なる手段は、治療上有効な量の化合物が体循
環に達するような活性化合物の坐剤形態を含む。
【0058】
投与される活性化合物の特定の処方の溶解度に応じて、ミトコンドリア障害の兆候及び
症状を改善する一日用量を1又は複数の単位用量投与に分割することができる。
【0059】
明細書及び特許請求の範囲全体にわたって、「含む(comprise)」の語及びこ
の語の変化形は、他の技術的特徴、添加剤、成分、又はステップを排除することを意図し
ない。更に、「含む(comprise)」の語は、「からなる(consisting
of)」の場合を包含する。発明の更なる目的、利点、及び特徴は、記載の精査により
当業者には明らかになるか、又は発明の実施によりわかる可能性がある。以下の実施例を
実例として提供し、それらは発明を限定することを意図しない。更に、本発明は本明細書
中で記載する特定の好ましい実施形態のあらゆる可能な組み合わせを対象とする。
【実施例0060】
1.方法
患者
POLG欠損症を患っている3人の患者由来の細胞を実験に採用した。全ての対象は我
々の治験審査委員会及びヘルシンキ宣言に従ってインフォームドコンセントを提出した。
POLGにおける突然変異(RefSeq NP_001119603.1)はサンガー
法シーケンシングによって3人の患者全てにおいて特定された。全DNAを、線維芽細胞
からQiaAMP Mini(Qiagen)を用いて単離し、関心対象の突然変異部位
を含む約500bpのフラグメントを、下記プライマー対及びrTaq(Takara)
を用いて従来型PCRによって増幅した:
【0061】
使用したプライマーは以下のとおりであった:
プライマー1(R309C、925 c→t)
順方向プライマー GTCCACACCACCAAGCAGT(配列番号2)
逆方向プライマー GGTCCCAAGCACTATGCTCC(配列番号3)
プライマー2 (W748S c.2243G→C)
順方向プライマー CCTTGCTGAATGCAGGTGCT(配列番号4)
逆方向プライマー TGTGCCTGAAATCACACTCTGT(配列番号5)
プライマー3(G848S c.2542G→A)
順方向プライマー ATGGTCTGCTGAGTGGTTGT(配列番号6)
逆方向プライマー CCCTCAGAGCCCAGTTTCTAC(配列番号7)
プライマー3(E1143G c.3428A→G)
順方向プライマー CCCAGTTTATGACCAGCCGT(配列番号8)
逆方向プライマー CAAGGAACGCTCACCCAAAG(配列番号9)
プライマー4(V1177L c.3529G→C)
順方向プライマー AGGGGAAGCCCTGCTCTAAG(配列番号10)
逆方向プライマー ACAAATGTGTTGTGCTCACCC(配列番号11)
【0062】
シーケンシング反応を、同じプライマー及びBigDye v3.1シーケンシングキ
ット(Life Technologies)を用いて実施し、BigDye X-Te
rminator精製キット(Life Technologies)によって精製し、
そしてABI 3130シーケンサー(Applied Biosystems)で配列
決定した。患者1(p.R309C突然変異についてホモ接合性)は重度の神経学的表現
型(神経障害、脳症、MNGIE様)を患っていて、20歳で死に至った;患者2(p.
W748S及びp.G848S突然変異について複合ヘテロ接合体)は重症度の低い表現
型であるが主に神経学的(神経障害、神経科的症状、MNGIE様)を患っていた;患者
3(シスp.V1177L及びp.E1143Gにおける2つの優性アミノ酸変化につい
てヘテロ接合体)はPEO(進行性外眼筋麻痺)、神経科的症状及び近位筋脱力の優性遺
伝の周知のパターンを提示した。3人の患者全てからの骨格筋はmtDNA欠失の蓄積を
示したが、顕著な枯渇は示さなかった。
【0063】
細胞培養
初代培養線維芽細胞を患者1~3及び4人の健常ドナーの皮膚バイオプシーから入手し
た。全ての対象は我々の治験審査委員会及びヘルシンキ宣言にしたがってインフォームド
コンセントを提出した。
【0064】
細胞を、37℃及び5%CO
2の加湿インキュベータ中で、2mMのL-グルタミン、
100U/mLのペニシリン及びストレプトマイシンを追加した4.5g/Lのグルコー
ス、並びに10%透析ウシ胎仔血清(FBS)(Invitrogen)を含むダルベッ
コ修飾イーグル培地(DMEM)中、9.5cm
2の6ウェルプレート中に播種した。緊
密なコンフルエンスに達した後、FBSを0.1%まで減じて休止を誘導し、そして5n
g/mlのEtBr(エチジウムブロマイド、Merck)での同時処理を開始した(0
日、t0)。細胞培地を同じ処理で2~3日ごとに2週間置換した。第14日(t14)
に、EtBrを細胞培地から除去し、全ての細胞のセットの処理を200μΜの4つのデ
オキシヌクレオシド(dN)全て:dAdo(デオキシアデノシン、Sigma)、dC
td(デオキシシチジン、Sigma)、dGuo(デオキシグアノシン、Sigma)
、dThd(デオキシチミジン、Sigma)、及び5μΜのEHNA(Sigma)で
開始した。細胞のセットを未処理のままにし、全てのパラメータを平行してモニターした
。細胞培地を同じ処理で2~3日おきに更に12日間置換した。第16又は17日に、培
地を集め、更に使用するまで-20℃で保存した。DNA分析のために、細胞を第0、7
、14、21、及び26日にトリプシン処理によって収集し、リン酸緩衝食塩水で洗浄し
、ペレット化し、そしてDNA単離まで-20℃で保存した(
図2)。QiaAMP D
NA mini kit(Qiagen)を使用して全DNAを単離した。
【0065】
細胞培養培地中のデオキシヌクレオシド安定性の評価
dN及びいくつかの関連する代謝産物を、タンデム質量分析と結合した液体クロマトグ
ラフィー(LC-MS/MS)によって、Acquity UPLC-MS/MS装置(
Acquity UPLC-Xevo(商標)TQ Mass Spectromete
r,Waters,Milford,MA)を使用して、以前に記載されているようにし
て測定した[2]。細胞培地を14,000×g及び4℃で30分間限界ろ過(3kDa
Amicon Ultra filters,Millipore)によってタンパク
質除去した後、LC-MS/MSシステムに注入した。
【0066】
mtDNA調査
mtDNAコピー数は以前に記載されたように定量的PCRにより評価した[2]。
【0067】
PCR条件及びNishigaki et al.[30]で開示されたプライマーに
従ってロングレンジPCRブロットによってmtDNA欠失を調査した:
【0068】
順方向プライマー(F1142~1516):
ACCGCCCGTCACCCTCCTCAAGTATACTTCAAAGG(配列番
号12)
逆方向プライマー(R1180~1146):
ACCGCCAGGTCCTTTGAGTTTTAAGCTGTGGCTCG(配列番
号13)
【0069】
2.結果
EtBr曝露はPOLG欠損休止線維芽細胞においてより大きなmtDNA枯渇を誘導
する。
【0070】
mtDNA枯渇の治療可能性を試験する場合の重要な制限は、多くの場合、MDDS患
者由来の細胞が細胞培養においてmtDNA異常を示さないという事実である。この理由
から、mtDNA複製に影響を及ぼす分子欠陥を証明するために、異なるモデルが開発さ
れた。EtBr曝露は、培養された細胞においてmtDNA枯渇させるため、そして正常
なmtDNAレベルを回復するそれらの複製能力を分析するために、最新技術で繰り返し
用いられてきた(Pontarinet al.“Mammalian ribonuc
leotide reductase subunit p53R2 is requi
red for mitochondrial DNA replication an
d DNA repair in quiescent cells”,2012,PN
AS,v.109(33),pages 13302-13307)。mtDNA枯渇を
健常対照とPOLG欠損静止細胞の両方において、5ng/mlのEtBrに14日間曝
露することによって誘導した。すべての細胞において著しいmtDNA枯渇が観察された
。しかしながら、全てのPOLG欠損細胞は、健常対照から得られた線維芽細胞株におい
て観察されるものと比べて線維芽細胞株においてより高度のmtDNA枯渇を経験した(
mtDNA残留レベル±SEの平均百分率:17.5±2,3%、対照細胞:39.68
±6.6%)。このデータは、POLG突然変異に起因する分子欠陥が複製プロセスのE
tBr障害を悪化させ得ることを示唆する。
【0071】
POLG欠損線維芽細胞は、dN+EHNAの組み合わせで処理された場合、EtBr
強制枯渇後のmtDNAレベルを完全に回復する。
【0072】
EtBr除去後、4つのdN全てで細胞培養培地の補足のmtDNAレベル回復に対す
る影響を調査した。dAdoが細胞外及び細胞内酵素分解に特に敏感であることが、主に
ADA(アデノシンデアミナーゼ)によって以前に報告された[2]。従って、dAdo
異化作用の部分阻害を発揮し、その安定性を改善するために、培地に等モル濃度の全ての
4つのカノニカルdN(200μΜのdGuo、dAdo、dThd、及びdCtd)+
5μΜのEHNA(Sigma)を添加した。Camara Y.et al.,201
4[2]で開示されたものと同じプロトコルにしたがって、16~17日で、添加された
dNの濃度を測定し、また2~3日ならし培地中のそれらの誘導代謝産物の一部を測定し
た。部分分解にもかかわらず、全ての場合で残存する全てのdNの濃度は最初に添加され
たものの70%より高かった(表2)。対照又は患者由来の細胞からの馴らし培地間でd
N安定性における有意差は観察されなかった。
【0073】
【0074】
結果は、3つの異なるPOLG欠損細胞株及び4つの対照細胞株からの平均±SDであ
る。dUrd:デオキシウリジン;dIno:デオキシイノシン。
【0075】
mtDNA回復を、dN補足の存在下または不在下のいずれかでEtBr除去の前後で
モニターした(Camara Y.et al.,2014[2]のプロトコルと同じプ
ロトコルに従う)。対照細胞からのmtDNAコピー数はdN処置に関係なくEtBr除
去の12日後に初期レベルの100%を超える値に達した(mtDNA残留レベル±SE
の平均百分率:129.8±35.2%処置なし、153.9±40.6%処置あり)。
反対に、POLG欠損細胞はdNを追加しなければ正常なmtDNAレベルを回復できな
かった(26.6±1.5%)。
【0076】
【0077】
値は、0日のmtDNAコピー数に対するmtDNAコピー数の百分率として表す。E
tBrで誘発された枯渇の後、細胞を実験第14日からdN+EHNAで処理するか又は
処理しない。
【0078】
表3に示す結果から、カノニカルヌクレオシドの投与により、MDDS患者において健
常な対象で見られるものに匹敵するmtDNAレベルを達成するのが可能になると結論づ
けることができる(150.3±21.9%、表3)。従って、このデータは、ヌクレオ
シドの投与が、dNTP代謝欠陥におけるもの以外の欠陥に起因するMDDSを患ってい
る患者において、mtDNAレベルを「健康な」状態に関連するレベルまで回復できるこ
とを表し、この種類の疾患の治療における組み合わせの治療可能性を表す。
【0079】
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