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特開2023-123460半芳香族ポリアミド及び脂肪族ポリアミドを含む混合物中での前記混合物の機械的特性を改善するための円形断面ガラス繊維の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123460
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】半芳香族ポリアミド及び脂肪族ポリアミドを含む混合物中での前記混合物の機械的特性を改善するための円形断面ガラス繊維の使用
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/06 20060101AFI20230829BHJP
   C08L 77/02 20060101ALI20230829BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
C08L77/06
C08L77/02
C08K7/14
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023089877
(22)【出願日】2023-05-31
(62)【分割の表示】P 2019520728の分割
【原出願日】2017-10-18
(31)【優先権主張番号】1660126
(32)【優先日】2016-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】1752407
(32)【優先日】2017-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ブリュレ, ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】ブレイユ, アントワーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ, シオン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】射出又は圧縮成形による加工後に、破断点伸びを含む、組成物の機械的特性を改善するための円形断面ガラス繊維の使用を提供する。
【解決手段】CからC18、特にCからC12脂肪族(Z)ジカルボン酸との、メタ-キシリレンジアミン(MXD)の重縮合から得られる少なくとも一つのMXDZポリアミド、並びに
からC12ラクタム、
からC12アミノ酸、及び
からC18、特にCからC12脂肪族ジアミン(X)と、CからC18、特にCからC12脂肪族ジカルボン酸(Y)、円形断面ガラス繊維及び任意選択的に少なくとも一つの耐衝撃性改良剤及び/又は少なくとも一つの添加剤との重縮合から得られるXY単位から選択される単位の重縮合から得られる少なくとも一つの脂肪族ポリアミドAを含む混合物中の、円形断面ガラス繊維の使用を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に射出又は圧縮成形による加工後に、破断点伸びを含む組成物の機械的特性を改善するための、CからC18、特にCからC12脂肪族(Z)ジカルボン酸との、メタ-キシリレンジアミン(MXD)の重縮合から得られる少なくとも一つのMXDZポリアミド、並びに
- CからC12ラクタム、
- CからC12アミノ酸、及び
- CからC18、特にCからC12脂肪族ジアミン(X)と、CからC18、特にCからC12脂肪族ジカルボン酸(Y)、円形断面ガラス繊維及び任意選択的に少なくとも一つの耐衝撃性改良剤及び/又は少なくとも一つの添加剤との重縮合から得られるXY単位
から選択される単位の重縮合から得られる少なくとも一つの脂肪族ポリアミドAを含む混合物中の、円形断面ガラス繊維の使用であって、
前記円形断面ガラス繊維及び前記混合物が組成物を構成し、
前記円形断面ガラス繊維が、組成物の総重量に対して、30から75重量%、特に40から65重量%を占める、
円形断面ガラス繊維の使用。
【請求項2】
MXDZ/A重量比が0.11から0.83の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記組成物の破断点伸びが、円形断面ガラス繊維の代わりに扁平断面ガラス繊維を含む同じ組成物と比較して、30%まで増加することを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記組成物が
- 5から30重量%、特に5から20重量%のMXDZ、
- 20から60重量%、特に25から50重量%の前記少なくとも一つのポリアミドA、
- 30から75重量%、特に40から65重量%の円形断面ガラス繊維、
- 0から10%の少なくとも一つの耐衝撃性改良剤、
- 0から2%の少なくとも一つの添加剤
を含み、
組成物の各構成要素の割合の合計が、100%に等しいことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
MXDZがMXD10に相当することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
脂肪族ポリアミドAがXY単位の重縮合から得られ、Yがセバシン酸に相当することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
脂肪族ポリアミドAがXY単位の重縮合から得られ、XがCからC10C-ジアミンに相当することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
脂肪族ポリアミドAがXY単位の重縮合から得られ、Xがヘキサメチレンジアミン及びデカンジアミンから選択されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記少なくとも一つの添加剤が、充填剤、染料、安定剤、可塑剤、界面活性剤、核化剤、顔料、光沢剤、酸化防止剤、潤滑剤、難燃剤、天然ワックス及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つのMXDZポリアミド及び少なくとも一つの、特に半結晶性の、脂肪族ポリアミドの混合物中での、特に射出又は圧縮成形による加工後の破断点伸びを含む前記組成物の機械的特性を改善するための円形断面ガラス繊維の使用に関する。
【0002】
本発明は、円形断面ガラス繊維を含む半芳香族ポリアミド及び脂肪族ポリアミド混合物で得られる組成物と、特に電気及び/又は電子(E/E)分野での単層構造又は多層構造の少なくとも一つの層の構成におけるその使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
E/E分野における多くの用途は、非常に硬い材料(電話機シェル、コンピュータ部品...)を必要とする。市場動向が電子機器の重量の減少へ向かい、したがって部品の厚さの減少に向かっているため、硬さはさらに重要である。
【0004】
しかしながら、薄い部品の製造は他の問題を生み出す:射出能力、特に型を完全に満たすのに十分な流体である材料、特に前記部品の厚さが減少されるものが、製品の寿命期間中負荷に耐えるように、特に射出又は圧縮成形による加工後に十分な機械的特性、特に破断点伸びを有しなければならない。
【0005】
これらの用途において、硬質ポリアミド(PA)(弾性率>12GPa)は重要な役割を果たす。しかしながら、繊維含有量が30%超であるとき、非円形又は扁平断面繊維(FF)の使用は、全ての仕様、特に反り及び機械的特性を満たすよう選択される解決策である。
【0006】
よって、特許出願EP2789591号の[0003]は、非円形断面ガラス繊維は、前記非円形断面ガラス繊維で強化された樹脂の機械的特性、寸法精度及び反りを改善することを可能にすることを示している。機械的特性の改善については、この出願によれば、これは、非円形断面ガラス繊維は円形断面繊維よりも大きな接触面積を有するという事実による。
【0007】
米国特許公開第2011/0105655号は、成形中に低いひずみ率を有し、25から72重量%のポリアミド、2から8のL/D比を有する20から65重量%の扁平断面ガラス繊維、及び8から25%の難燃剤からなる組成物を記載している(Lは繊維の断面の大寸法を表し、Dは前記繊維の断面の小寸法を表す)。使用されるポリアミドは、ポリアミドの総数に対して、55~90重量%の脂肪族ポリアミド及び10~45重量%のMACM10-18、MACMI、MACMT、MXDI、MXDT、MXDX/MXDI、PACM10-18、6I、6T、6I/6T及び6T/66から選択される別のポリアミドである。
【0008】
本出願の実施例で提示される破断点伸びは、繊維の形状、扁平又は円形断面にかかわらず、ガラス繊維を含むPAXY(PA66)及びPA6又はPA6I/6Tの混合物(MXDZは例示されない)について、1.3から1.5%の範囲である。加えて、扁平断面ガラス繊維の使用は、常に、円形断面ガラス繊維で得られるものよりも、大きな破断点伸びをもたらす。
【0009】
特許公報第5523520号は、電気特性及び耐変形性を有するポリアミド顆粒を記載している。
【0010】
顆粒は、5~40重量部の難燃剤、5~200重量部の、少なくとも2.3のL/D比を有する扁平断面ガラス繊維及び0~40重量部の、MXD10のような脂肪族ポリアミドと半芳香族ポリアミドの混合物であり得るポリアミドからなる。
【0011】
しかしながら、先行技術及び特に扁平断面ガラス繊維を有するこれらの異なる組成物は、E/E用途には不十分であり得る機械的特性を有する組成物をもたらす。
【0012】
さらに、円形断面ガラス繊維と比較して、扁平断面ガラス繊維には相当な追加費用がかかる。加えて、扁平断面ガラス繊維の供給業者は、円形断面ガラス繊維の供給業者よりもはるかに少ない。両方の態様は、ガラス繊維強化樹脂の工業生産の観点から不可欠である。
【発明の概要】
【0013】
したがって、円形断面ガラス繊維を使用して組成物を有し、よって、前記組成物の費用を削減し、円形断面ガラス繊維の長期にわたる供給を保証し、扁平断面ガラス繊維と比較して、特に射出又は圧縮成形による加工後に破断点伸びを含む機械的特性が改善された組成物を有することを可能にすることが必要である。
【0014】
これらの様々な問題は、脂肪族ポリアミド及びMXDZに基づく特定の混合物との円形断面ガラス繊維の使用によって解決されてきた。
【0015】
発明者は、少なくとも一つのMXDZポリアミド及び少なくとも一つの脂肪族ポリアミド、特に半結晶性ポリアミドを含む混合物中の円形断面ガラス繊維の添加は、円形断面ガラス繊維の代わりに扁平断面ガラス繊維を含む同じ組成物と比較して、特に射出又は圧縮成形による加工後に、前記組成物の機械的特性、特に破断点伸びを改善することを驚くべきことに発見した。
【0016】
本発明の別の利点は、前記組成物が、特に組成物の射出又は圧縮成形による実装中に制限された反りを示すこと、つまり、100*100*1mmプレートで決定された場合に、2mm未満、特に1mm未満の反りを示すことである。
【0017】
反りは、完全に除去することができるが、原則として、2mm未満、特に1mm未満である。
【0018】
本発明は、特に射出又は圧縮成形による加工後に、破断点伸びを含む前記組成物の機械的特性を改善するための、CからC18、特にCからC12脂肪族(Z)ジカルボン酸との、メタ-キシリレンジアミン(MXD)の重縮合から得られる少なくとも一つのMXDZポリアミド、並びに
- CからC12ラクタム、
- CからC12アミノ酸、及び
- CからC18、特にCからC12脂肪族ジアミン(X)と、CからC18、特にCからC12脂肪族ジカルボン酸(Y)、円形断面ガラス繊維及び任意選択的に少なくとも一つの耐衝撃性改良剤及び/又は少なくとも一つの添加剤との重縮合から得られるXY単位
から選択される単位の重縮合から得られる少なくとも一つの脂肪族ポリアミドAを含む混合物中の円形断面ガラス繊維の使用であって、
前記円形断面ガラス繊維及び前記混合物が組成物を構成し、
前記円形断面ガラス繊維が、組成物の総重量に対して、30から75重量%、特に40から65重量%を占める、
円形断面ガラス繊維の使用に関する。
【0019】
メタ-キシレンジアミン(MXD、CAS No.1477-55-0)は、単独で使用されても、その異性体に相当するパラ-キシレンジアミン(PXD、CAS No.539-48-0)と組み合わせて使用されてもよい。しかし、後者の場合、及び全体的な記載においては、MXDの量は、PXDと比較して高くなければならない。
【0020】
有利には、MXDは単独で使用され、したがって組成物にはPXDが存在しない。
【0021】
からC18脂肪族ジカルボン酸(Z)は、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸から選択され得る。
【0022】
有利には、脂肪族ジカルボン酸(Z)は、CからC18であり、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸から選択され得る。
【0023】
脂肪族ジカルボン酸(Z)は、上に規定されたCからC18、又はCからC18脂肪族ジカルボン酸の混合物ではなく、したがって、MXDZはホモポリアミドに相当する。
【0024】
しかしながら、MXDZはMXDZの混合物であり得る。
【0025】
MXDがPXDと混合される場合、MXDZは、コポリアミド中のMXDZモル比がPXDZよりも大きいことを条件として、MXDZ/PXDZコポリアミドに相当する。
【0026】
有利には、MXDにはPXDが存在せず、MXDZはホモポリアミドである。
【0027】
有利には、CからC12脂肪族ジカルボン酸(Z)は、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸又はドデカン二酸から選択され得る。
【0028】
より有利には、CからC12脂肪族ジカルボン酸(Z)は、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸又はドデカン二酸から選択され得る。
【0029】
用語「脂肪族ポリアミド」とは、ホモポリアミドを指すが、コポリアミドは例外である。それは、脂肪族ポリアミドの混合物であり得ると理解される。したがって、脂肪族ポリアミドAはホモポリアミドである。
【0030】
ポリアミドを定義するために使用される命名法は、ISO 1874-1:2011 「Plastics - Polyamide(PA)Materials for Moulding and Extrusion - Part 1:Designation」、特に第3ページ(表1及び2)に記載されており、当業者によく知られている。
【0031】
脂肪族ポリアミドAはラクタムの重縮合から得られ、前記ラクタムは、ピロリジノン、2-ピペリジノン、カプロラクタム、エナントラクタム、カプロラクタム、ぺラルゴラクタム、デカノラクタム、ウンデカノラクタム、及びラウリルラクタムから選択され、特にラウリルラクタムであり得る。
【0032】
脂肪族ポリアミドAがアミノ酸の重縮合から得られるとき、脂肪族ポリアミドは、9-アミノノナン酸、10-アミノデカン酸、10-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸及び11-アミノウンデカン酸、並びにこれらの誘導体から選択されてもよく、特にN-ヘプチル-11-アミノウンデカン酸、特に11-アミノウンデカン酸である。
【0033】
脂肪族ポリアミドAがXY単位の重縮合から得られるとき、XYポリアミド中で使用されるCからC18ジアミン(X)は、直鎖状又は分岐状ジアミンであり、特に1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,13-トリデカンジアミン、1,14-テトラデカンジアミン、1,16-ヘキサデカンジアミン及び1,18-オクタデカンジアミンから選択され得る。
【0034】
有利には、使用されるジアミン(X)は、CからC12、特に1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタメチルジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン及び1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン、1,12-ドデカンジアミンから選択される。
【0035】
有利には、使用されるジアミン(X)は、CからC10、特に2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,10-デカンジアミンから選択される。
【0036】
脂肪族ポリアミドAがXY単位の重縮合から得られるとき、ポリアミドXYに使用されるCからC18、特にCからC12脂肪族ジカルボン酸(Y)は上記の通りである。
【0037】
本発明の目的で、ガラス繊維とは、前記繊維が円形断面であることを条件として、任意のガラス繊維、特にFrederick T. Wallenberger, James C. Watson and Hong Li, PPG Industries Inc.(ASM Handbook, Vol 21:composites(# 06781G), 2001 ASM International)により記載されるようなものを指す。
【0038】
有利には、前記ガラス繊維は、4μmから25μm未満、好ましくは4から15ミクロンの直径及び2未満、特に1.5未満のL/D比(Lは繊維の横断面の大寸法を表し、Dは前記繊維の横断面の小寸法を表す)を有する。
【0039】
有利には、L/D比は約1に等しい。
【0040】
用語「耐衝撃性改良剤」とは、ISO178:2010に従って23℃で測定した100MPa未満の曲げ弾性率と、0℃未満のTg(DSCサーモグラムの変曲点でUS Pat.standard 11357-2に従って測定)とを有するポリオレフィン系ポリマー、特に、結合しているか又は<200MPaの曲げ弾性率を有するPeba(ポリエーテルブロックアミド)を有しない、ポリオレフィンを意味するものと理解される。組成物中でPebaを耐衝撃性改良剤として単独で使用することは、本発明の範囲外とはならないであろう。
【0041】
耐衝撃性改良剤のポリオレフィンは、官能化されていてもされていなくてもよく、あるいは、少なくとも一つの官能化及び/又は少なくとも一つの非官能化ポリオレフィンの混合物であってもよい。
【0042】
特に、一部又はすべてのポリオレフィンは、カルボン酸、カルボン酸無水物及びエポキシド官能基から選択される官能基を有し、特にエラストマーエチレン-プロピレンゴムコポリマー(EPR)、エラストマーエチレン-プロピレン-ジエンコポリマー(EPDM)、及びエチレン/アルキル(メタ)アクリレートコポリマー、高級エチレン-アルケンコポリマー、特にエチレン-オクテンコポリマー、エチレン-アルキルアクリレート-無水マレイン酸ターポリマーから選択される。
【0043】
有利には、耐衝撃性改良剤は、F493(登録商標)、Pebax(登録商標)、特にPebax(登録商標)40R53 SP 01、Lotader(登録商標)、特にLotader(登録商標)5500若しくはLotader(登録商標)7500、Exxelor VA1803(登録商標)、又はこれらの混合物から選択される。この場合、それらは、0.1/99.9から99.9/0.1、好ましくは二つの混合物に存在するときは1/2から2/1の範囲の比で存在する。
【0044】
例えば耐衝撃性改良剤は、以下の混合物から選択される:F493(登録商標)/Lotader(登録商標)、特にF493(登録商標)/Lotader(登録商標)5500又はF493(登録商標)/Lotader(登録商標)7500。
【0045】
耐衝撃性改良剤はまた、「コアシェル」改良剤であってもよく、「コアシェルコポリマー」とも称される。
【0046】
「コアシェル」タイプの改良剤は、エラストマーコア及び少なくとも一つの熱可塑性シェルを有する微粒子の形態であり、粒子のサイズは、一般的には1μm未満、有利には150から500nmである。
【0047】
「コアシェル」タイプの改良剤は、ポリオレフィンベースを有する耐衝撃性改良剤とは対照的に、アクリル又はブタジエンベースを有する。
【0048】
有利には、耐衝撃性改良剤の割合は、組成物の総重量に対して、0から10重量%である。
【0049】
少なくとも一つのMXDZ及び少なくとも一つの脂肪族ポリアミドを含む混合物中での円形断面ガラス繊維の使用は、組成物を構成する。
【0050】
有利には、前記組成物には難燃剤は存在しない。
【0051】
有利には、前記組成物にはPA66は存在しない。
【0052】
有利には、前記組成物には難燃剤及びPA66は存在しない。
【0053】
有利には、前記組成物には難燃剤、PA6及びPA66は存在しない。
【0054】
MXDZ及び脂肪族ポリアミドAの混合物中でのガラス繊維の使用により得られる組成物中に任意選択的に使用される添加剤は、ポリアミドに使用される従来の添加剤であり、当業者によく知られている。
【0055】
「前記組成物の機械的特性、特に破断点伸びを改善する」という表現は、適用中に十分な変形に耐えることを意味する。
【0056】
有利には、前記組成物中のMXDZ/A重量比は、0.11から0.83の範囲、特に0.11から0.66である。
【0057】
したがって、この実施態様では、半芳香族ポリアミドMXDZは、脂肪族ポリアミドA又は脂肪族ポリアミドAの混合物よりも、常に低い割合である。
【0058】
有利には、脂肪族ポリアミドAは、半結晶性ポリアミド又は半結晶性ポリアミドの混合物である。
【0059】
有利には、脂肪族ポリアミドAは半結晶性ポリアミドである。
【0060】
本発明の範囲内の表現「半結晶性ポリアミド」とは、20K/分の加熱速度で、ISO11357-1:2009並びにISO11357-2及び3:2013に従ってDSCにより決定された場合の融点(Tf)及びΔH>10J/g、特に>12J/gの熱交換並びにガラス転移温度(Tg)を有するポリアミドを指す。
【0061】
有利には、特に射出又は圧縮成形による加工後の前記組成物の破断点伸びは、円形断面ガラス繊維の代わりに扁平断面ガラス繊維を含む同じ組成物に対して、30%まで増加する。
【0062】
特に、前記破断点伸びの前記増加は、10から30%の間である。
【0063】
有利には、前記混合物と共に前記円形断面ガラス繊維の使用により構成される前記組成物は、以下を含む:
- 5から30重量%、特に5から20重量%のMXDZ、
- 20から60重量%、特に25から50重量%の前記少なくとも一つのポリアミドA、
- 30から75重量%、特に40から65重量%の円形断面ガラス繊維、
- 0から10%の少なくとも一つの耐衝撃性改良剤、
- 0から2%の少なくとも一つの添加剤。
【0064】
組成物の各構成要素の割合の合計は、100%に等しい。
【0065】
有利には、上記で構成される前記組成物は、以下の一つである(割合は重量で示される):
【0066】
各組成物1から8の構成要素の合計は、100%に等しい。
【0067】
上記の組成物1から8のそれぞれは、さらに、少なくとも一つの耐衝撃性改良剤を最大10重量%含んでもよく、構成要素の合計は100%に等しい。
【0068】
上記の組成物1から8のそれぞれは、さらに、少なくとも一つの添加剤を最大2重量%含んでもよく、構成要素の合計は100%に等しい。
【0069】
上記の組成物1から8のそれぞれは、さらに、少なくとも一つの耐衝撃性改良剤を最大10重量%及び少なくとも一つの添加剤を最大2重量%含んでもよく、構成要素の合計は100%に等しい。
【0070】
有利には、上記の組成物の一つに使用されるMXDZは、MXD10を含む。
【0071】
したがって、MXD10は、少なくとも一つの他のMXDZと組み合わされており、Zは、CからC18C-ジカルボン酸、特に、上記のようなCからC18、特にMXDZポリアミドの合計に対して50重量%超の割合である。
【0072】
有利には、上記の組成物の一つに使用されるMXDZは、MXD10及びMXD6を含む。
【0073】
有利には、上記の組成物の一つに使用されるMXDZは、MXD10からなる。
【0074】
有利には、脂肪族ポリアミドAは、XY単位の重縮合から得られる脂肪族ポリアミドを含み、ここでジカルボン酸(Y)はセバシン酸である。
【0075】
有利には、ジカルボン酸(Y)がセバシン酸である、XY単位の重縮合から得られる前記脂肪族ポリアミドAは、脂肪族ポリアミドAの総重量に対して、50重量%超の割合である。
【0076】
有利には、XY単位の重縮合から得られる前記脂肪族ポリアミドAは、ジカルボン酸(Y)がセバシン酸である単一ポリアミドに相当する。
【0077】
有利には、脂肪族ポリアミドAは、ジアミン(X)がCからC10の範囲であるXY単位の重縮合から得られる脂肪族ポリアミドを含む。
【0078】
したがって、脂肪族ポリアミドAは、ジアミン(X)の範囲がCからC10であり、ジアミンが互いにほぼ異なる少なくとも二つのXYポリアミドの混合物である。
【0079】
有利には、ジアミン(X)の範囲がCからC10であるXY単位の重縮合から得られる前記脂肪族ポリアミドAは、XYポリアミドの総重量に対して、50重量%超の割合である。
【0080】
有利には、XY単位の重縮合から得られる前記脂肪族ポリアミドAは、ジアミン(X)がCからC10であるXYポリアミドからなる。
【0081】
特に、ジアミン(X)はヘキサメチレンジアミン及びデカンジアミンから選択される。
【0082】
有利には、前記少なくともMXDZは、0重量%から49重量%のMXD6及び51から100重量%のMXD10からなり、XY単位の重縮合から得られる前記脂肪族ポリアミドAは、0から49重量%のPA610及び51から100重量%のPA1010からなる。
【0083】
有利には、MXDZはMXD10からなり、XY単位の重縮合から得られる前記脂肪族ポリアミドAは、0から49重量%のPA610及び51から100重量%のPA1010からなる。
【0084】
有利には、MXDZはMXD10からなり、XY単位の重縮合から得られる前記脂肪族ポリアミドAはPA1010からなる。
【0085】
有利には、前記少なくともMXDZは、0重量%から49重量%のMXD6及び51から100重量%のMXD10からなり、XY単位の重縮合から得られる前記脂肪族ポリアミドAは、0から49重量%のPA1010及び51から100重量%のPA610からなる。
【0086】
有利には、MXDZはMXD10からなり、XY単位の重縮合から得られる前記脂肪族ポリアミドAは、0から49重量%のPA1010及び51から100重量%のPA610からなる。
【0087】
有利には、MXDZはMXD10からなり、XY単位の重縮合から得られる前記脂肪族ポリアミドAはPA610からなる。
【0088】
有利には、前記脂肪族ポリアミドAは、ラクタム又はアミノ酸、特にラウリルラクタム又はアミノウンデカン酸の重縮合から得られる。
【0089】
有利には、MXDZはMXD10からなり、前記脂肪族ポリアミドAはラウリルラクタムの重縮合から得られる。
【0090】
有利には、MXDZはMXD10からなり、前記脂肪族ポリアミドAは11-アミノウンデカン酸の重縮合から得られる。
【0091】
有利な実施態様では、前記混合物と共に前記円形断面ガラス繊維の使用により構成される前記組成物の前記少なくとも一つの添加剤は、充填剤、染料、安定剤、可塑剤、界面活性剤、核化剤、顔料、光沢剤、酸化防止剤、潤滑剤、難燃剤、天然ワックス及びそれらの混合物から選択される。
【0092】
有利な実施態様では、前記混合物と共に前記円形断面ガラス繊維の使用により構成される前記組成物は、以下を含む:
- メタ-キシリレンジアミン(MXD)、又はメタ-キシリレンジアミンとセバシン酸の混合物及びパラ-キシリレンジアミンとセバシン酸の混合物の重縮合から得られる、5から30重量%、特に5から20重量%のMXD10ポリアミド、
- デカンジアミン及びセバシン酸の重縮合から得られる、20から60重量%、特に25から50%のPA1010、
- 30から75重量%、特に40から65重量%の円形断面ガラス繊維、
- 0から10重量%の少なくとも一つの耐衝撃性改良剤、
- 0から2重量%の少なくとも一つの添加剤。
【0093】
有利な実施態様では、前記混合物と共に前記円形断面ガラス繊維の使用により構成される前記組成物は、以下を含む:
- メタ-キシリレンジアミン(MXD)、又はメタ-キシリレンジアミンとセバシン酸の混合物及びパラ-キシリレンジアミンとセバシン酸の混合物の重縮合から得られる、5から30重量%、特に5から20重量%のMXD10ポリアミド、
- ヘキサメチレンジアミン及びセバシン酸の重縮合から得られる、20から60重量%、特に25から50%のPA610、
- 30から75重量%、特に40から65重量%の円形断面ガラス繊維、
- 0から10重量%の少なくとも一つの耐衝撃性改良剤、
- 0から2重量%の少なくとも一つの添加剤。
【0094】
有利には、上記の組成物1から8のMXDZはMXD10であり、PAXYはPA1010である。
【0095】
有利には、上記の組成物1から8のMXDZはMXD10であり、PAXYはPA610である。
【0096】
有利には、上記の組成物1から8のMXDZはMXD10であり、脂肪族ポリアミドAはPA1012である。
【0097】
有利には、上記の組成物1から8のMXDZはMXD10であり、脂肪族ポリアミドAはPA12である。
【0098】
有利には、上記の組成物1から8のMXDZはMXD10であり、脂肪族ポリアミドAはPA11である。
【0099】
上記の組成物は、単層構造又は多層構造の少なくとも一つの層を形成するために使用することができる。
【0100】
特に、前記構造は、射出部品の形態である。
【0101】
上記の組成物は、物体を構成するために使用することもできる。
【0102】
前記物体は、前記組成物の射出成形工程を含む方法によって成形されてもよい。
【0103】
前記物体は、電気及び/又は電子分野で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
図1A】本発明の組成物I1又はI2により射出された2つのプレート(100×100×1mm)で得られ、実施例2に記載するように測定された反りを示す。射出プレートI1又はI2の反りは1mm未満に制限されている。
図1B】組成物C1又はC4により射出された2つのプレート(100×100×1mm)で得られ、実施例2に記載するように測定された反りを示す。射出プレートC1又はC4の反りは非常に高く、5mm超である。
【実施例0105】
実施例1:機械的特性
合成
当業者によく知られる技術に従って、ヘキサメチレンジアミン及びセバシン酸、デカンジアミン及びセバシン酸、並びにメタ-キシリレンジアミン及びセバシン酸の重縮合により、PA610、PA1010及びMXD10を別々にそれぞれ調製した。
【0106】
コンパウンディング
ポリマー顆粒の溶融ブレンドにより、組成物を調製した。270℃でフラットTプロファイルを有する共回転二軸押出機MC26型上でコンパウンディングすることによって、混合を実施した。スクリュー速度は250rpmであった。
【0107】
円形断面又は扁平断面ガラス繊維の導入を、横方向に力を供給することによって実施した。
【0108】
射出
様々な組成物の射出によって100*100*1mmプレートを調製した。
-射出温度(供給/ノズル):250/270℃及び270/300℃
-成形温度:65℃及び90℃及び100℃
-温度継続時間:10秒
-冷却時間:20及び30秒
【0109】
以下の組成物を調製した(表1):
【0110】
ISO規格527に従って、組成物C2、C3及びI1の破断点伸びを決定した。
【0111】
機械はINSTRON 5966である。クロスヘッド速度は1mm/分である。試験条件は、23℃、50% RHである。ISO 527 1Aの形態の試料を、23℃、50%RHで2週間にわたり、予め調整した。変形を接触伸び計により測定する。
【0112】
結果を以下の表2に示す(5試料試験):
【0113】
表2は、本発明の組成物が、円形断面ガラス繊維の代わりに扁平断面ガラス繊維を有する同じ組成物又はPA610及び扁平断面ガラス繊維からなる組成物と比較して、30%増加した破断点伸び割合を有することを示す。
【0114】
実施例2:PA610又はPA1010、MXD10及び円形又は扁平断面ガラス繊維に基づくポリアミド組成物の反りの評価
以下に記載される方法に従って反りを評価した。
【0115】
射出プレートをテーブル上に置く。オペレータは4番目を上げるためにプレートの3つの角度を押す。その後、テーブル表面と試料の間の間隙を測定した。図1の矢印を参照のこと。図1Aの左の試料では、反りは制限されており、1mm未満であることを意味する。
【0116】
結果を以下の表3に示す。
【0117】
表3は、MXDZを含まない脂肪族XYポリアミドへの円形断面ガラス繊維を導入すると著しい反りが誘発されるが、円形断面ガラスの50重量%程度の割合であっても、MXDZの導入によって事実上除去されることを示す。
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-06-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に射出又は圧縮成形による加工後に、破断点伸びを含む組成物の機械的特性を改善するための、CからC18、特にCからC12脂肪族(Z)ジカルボン酸との、メタ-キシリレンジアミン(MXD)の重縮合から得られる少なくとも一つのMXDZポリアミド、並びに
- CからC12ラクタム、
- CからC12アミノ酸、及び
- CからC18、特にCからC12脂肪族ジアミン(X)と、CからC18、特にCからC12脂肪族ジカルボン酸(Y)、円形断面ガラス繊維及び任意選択的に少なくとも一つの耐衝撃性改良剤及び/又は少なくとも一つの添加剤との重縮合から得られるXY単位
から選択される単位の重縮合から得られる少なくとも一つの脂肪族ポリアミドAを含む混合物中の、円形断面ガラス繊維の使用であって、
前記円形断面ガラス繊維及び前記混合物が組成物を構成し、
前記円形断面ガラス繊維が、組成物の総重量に対して、30から75重量%、特に40から65重量%を占める、
円形断面ガラス繊維の使用。
【外国語明細書】