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特開2023-123463疼痛障害の治療のための組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123463
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】疼痛障害の治療のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20230829BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20230829BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230829BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230829BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
C12N15/113 120Z
A61K31/713 ZNA
A61P25/04
A61P21/00
C12N15/85 Z
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023090166
(22)【出願日】2023-05-31
(62)【分割の表示】P 2019556910の分割
【原出願日】2018-04-19
(31)【優先権主張番号】62/487,398
(32)【優先日】2017-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】519318030
【氏名又は名称】マンセル、ジョン
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マンセル、ジョン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】線維筋痛症および他の関連疼痛障害に伴う症状に対処する医薬組成物を提供する。
【解決手段】特定の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、疼痛障害と診断された被験体を治療するための医薬組成物であり、前記疼痛障害が、線維筋痛症または複合性局所疼痛症候群であり、前記被験体の脳脊髄液または複数の圧痛点へ導入される、医薬組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:1~配列番号:55のうちの任意のものを有するオリゴヌクレオチドからなる群から選択される遺伝子発現修飾物質、および脳脊髄液適合性希釈物質を含む、製剤。
【請求項2】
前記遺伝子発現修飾物質の機能的バリアントを含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
配列番号:1~配列番号:30のうちの任意のものを有するオリゴヌクレオチドからなる群から選択される遺伝子発現修飾物質を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
配列番号:31~配列番号:55のうちの任意のものを有するオリゴヌクレオチドからなる群から選択される遺伝子発現修飾物質を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
被験体の脳脊髄液中のサブスタンスPの濃度を低減するオリゴヌクレオチドを含む組成物を、前記被験体の脳脊髄液へ導入することを含む、疼痛障害と診断された前記被験体を治療する方法。
【請求項6】
前記オリゴヌクレオチドが、配列番号:31~配列番号:55のうちの任意のものを有する群から選択される遺伝子発現修飾物質である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記オリゴヌクレオチドが、配列番号:31~配列番号:55のうちの任意のものに少なくとも70%の配列相同性を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記オリゴヌクレオチドが配列番号:31を含む遺伝子発現修飾物質である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記疼痛障害が線維筋痛症である、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記疼痛障害が複合性局所疼痛症候群である、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
カルシトニン遺伝子関連タンパク質の濃度を低減する遺伝子発現修飾物質を、被験体の複数の圧痛点へ導入することを含む、疼痛障害と診断された被験体を治療する方法。
【請求項12】
前記オリゴヌクレオチドが、配列番号:1~配列番号:30のうちの任意のものを有するオリゴヌクレオチドからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記オリゴヌクレオチドが、配列番号:1~配列番号:30のうちの任意のものに少なくとも70%の配列相同性を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記オリゴヌクレオチドが配列番号:1を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記疼痛障害が線維筋痛症である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記疼痛障害が複合性局所疼痛症候群である、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
レポーター遺伝子を含む構築物を細胞の中へ導入し、遺伝子発現修飾物質を被験体の体液の中へ導入することを含む、疼痛障害と診断された前記被験体を治療する方法。
【請求項18】
前記疼痛障害が線維筋痛症である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記疼痛障害が複合性局所疼痛症候群である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記構築物がpol IIベクターを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記遺伝子発現修飾物質が、配列番号:1~配列番号:55のうちの任意のものを有するオリゴヌクレオチドからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
疼痛障害と診断された被験体の治療のためのオリゴヌクレオチドを含む組成物の使用であって、前記オリゴヌクレオチドを含む前記組成物を被験体の脳脊髄液の中へ導入して、前記被験体の脳脊髄液中のサブスタンスPの濃度を低減することを含む、前記使用。
【請求項23】
前記オリゴヌクレオチドが、配列番号:31~配列番号:55のうちの任意のものを有する群から選択される遺伝子発現修飾物質である、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記オリゴヌクレオチドが、配列番号:31~配列番号:55のうちの任意のものに少なくとも70%の配列相同性を有する、請求項22に記載の使用。
【請求項25】
前記オリゴヌクレオチドが配列番号:31を含む遺伝子発現修飾物質である、請求項22に記載の使用。
【請求項26】
前記疼痛障害が線維筋痛症である、請求項22に記載の使用。
【請求項27】
前記疼痛障害が複合性局所疼痛症候群である、請求項22に記載の使用。
【請求項28】
疼痛障害と診断された被験体の治療のための遺伝子発現修飾物質の使用であって、遺伝子発現修飾物質を前記被験体の複数の圧痛点の中へ導入して、カルシトニン遺伝子関連タンパク質の濃度を低減することを含む、前記使用。
【請求項29】
前記オリゴヌクレオチドが、配列番号:1~配列番号:30のうちの任意のものを有するオリゴヌクレオチドからなる群から選択される、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記オリゴヌクレオチドが、配列番号:1~配列番号:30のうちの任意のものに少なくとも70%の配列相同性を有する、請求項28に記載の使用。
【請求項31】
前記疼痛障害が線維筋痛症である、請求項28に記載の使用。
【請求項32】
前記疼痛障害が複合性局所疼痛症候群である、請求項28に記載の使用。
【請求項33】
疼痛障害と診断された被験体の治療における、レポーター遺伝子を含む構築物および遺伝子発現修飾物質の使用であって、前記レポーター遺伝子を含む前記構築物を細胞の中へ、および前記遺伝子発現修飾物質を前記被験体の体液の中へ導入することを含む、前記使用。
【請求項34】
前記疼痛障害が線維筋痛症である、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
前記疼痛障害が複合性局所疼痛症候群である、請求項33に記載の使用。
【請求項36】
前記構築物がpol IIベクターを含む、請求項33に記載の使用。
【請求項37】
前記遺伝子発現修飾物質が、配列番号:1~配列番号:55のうちの任意のものを有するオリゴヌクレオチドからなる群から選択される、請求項33に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して疼痛障害の治療のための組成物および方法論に関する。より具体的には、本開示はオリゴヌクレオチドの予防的および/または治療的な利用に関する。
【背景技術】
【0002】
線維筋痛症は部分的に理解されている症候群であり、何百万もの人々に影響し、決定的な治療はないものである。一般的に、この症候群は、他のすべての可能性のある診断の除外後に、病歴および健康診断に基づいて、臨床的に診断される。線維筋痛症と高く関連する唯一の検査室での所見は、脳脊髄液(CSF)中の高濃度のサブスタンスP(SP)である。SPの構造は図1中で示される。SPは、疼痛伝達および疼痛状態の増進と関連する11のアミノ酸のポリペプチドである。線維筋痛症患者は、無症候性の被験体のCSF中のSPの約3倍の濃度のCSF中のSPの濃度を提示することが示された。SPのCSFでの濃度の上昇は、レイノー症候群、複合性局所疼痛症候群、ストレス、およびいくつかの精神障害とも関連していた。
【0003】
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は、疼痛の発生および鎮痛において役割を持つことが知られている別のペプチドである。CGRPはペプチドのカルシトニンファミリーのメンバーであり、それはヒトにおいて2つの形態(α-CGRPおよびβ-CGRP)で存在する。α-CGRPは37のアミノ酸のペプチドであり、染色体11上に所在するカルシトニン/CGRP遺伝子のオルタナティブスプライシングから形成される。α-CGRPの構造は図2中で示される。CGRPおよびSPは同時に侵害受容性C線維から放出されることが知られている。CGRPは強力な血管拡張物質であり、表皮血流の持続的な増加を誘導するが、SPは短時間の血管拡張のみを誘導し、有意な血漿溢出を起こす。CGRPおよびSPは、様々な疼痛状態の病態生理学において重要な役割を持ち得るが、それらの相互作用についてはほとんど知られていない。
【0004】
線維筋痛症および他の関連疼痛障害に伴う症状に対処する組成物および方法についての継続的な必要性が存在する。
【発明の概要】
【0005】
いくつかの態様において、製剤は、配列番号:1~配列番号:55のうちの任意のものを有するオリゴヌクレオチドからなる群から選択される遺伝子発現修飾物質、および脳脊髄液適合性希釈物質を含む。
【0006】
いくつかの態様において、疼痛障害と診断された被験体を治療する方法は、被験体の脳脊髄液中のサブスタンスPの濃度を低減するオリゴヌクレオチドを含む組成物を、被験体の脳脊髄液へ導入することを含む。
【0007】
いくつかの態様において、疼痛障害と診断された被験体を治療する方法は、被験体の脳脊髄液中のカルシトニン遺伝子関連タンパク質の濃度を低減する遺伝子発現修飾物質を、被験体の複数の圧痛点へ導入することを含む。
【0008】
いくつかの態様において、疼痛障害と診断された被験体を治療する方法は、レポーター遺伝子を含む構築物を細胞の中へ導入し、遺伝子発現修飾物質を被験体の体液の中へ導入することを含む。
【0009】
いくつかの態様において、疼痛障害と診断された被験体の治療のためのオリゴヌクレオチドを含む組成物の使用は、オリゴヌクレオチドを含む組成物を被験体の脳脊髄液の中へ導入して、被験体の脳脊髄液中のサブスタンスPの濃度を低減することを含む。
【0010】
いくつかの態様において、疼痛障害と診断された被験体の治療のための遺伝子発現修飾物質の使用は、遺伝子発現修飾物質を被験体の複数の圧痛点の中へ導入して、被験体の脳脊髄液中のカルシトニン遺伝子関連タンパク質の濃度を低減することを含む。
【0011】
いくつかの態様において、疼痛障害と診断された被験体の治療における、レポーター遺伝子を含む構築物および遺伝子発現修飾物質の使用は、レポーター遺伝子を含む構築物を細胞の中へ導入し、遺伝子発現修飾物質を被験体の体液の中へ導入することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】サブスタンスPの構造を図示する。
図2】α-カルシトニン遺伝子関連ペプチドの構造を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1つまたは複数の疼痛障害を治療する方法が、本明細書において開示される。疼痛障害は症候群としてDSM-IV分類およびICD-10分類において定義され、そこで、臨床所見の注目点は、職業的もしくは社会的な機能の重大な不全、著しい苦痛、または両方を引き起こす疼痛である。1つまたは複数の解剖学的部位における疼痛が、被験体の主な愁訴であり、多くの場合医学的または治療的な介入を要求するのに十分なほど重度である。一態様において、本明細書において開示される治療は、疼痛障害を有する被験体の体液中に存在するSP、CGRP、または両方の量に影響する。本開示の治療方法論は、遺伝子発現修飾物質(GEM)によって媒介されるような、SP、CGRPまたは両方の発現の時間的な低減によって特徴づけられる。
【0014】
「治療する」、「治療すること」または「治療」という用語は、本明細書において使用される時、疾患もしくは病態またはその症状を緩和、軽減、または寛解すること;疾患もしくは病態またはその症状を管理すること;追加の症状を予防すること;症状の根本にある代謝原因を寛解または予防すること;疾患または病態を抑制すること(例えば疾患または病態の発生を阻止すること);疾患または病態を救済すること;疾患または病態の退行を引き起こすこと;疾患または病態によって引き起こされた症状を救済すること;疾患または病態の症状を停止すること;およびこれらの組み合わせを包含する。治療は、本明細書において使用される時、組成物の任意の医薬用途(pharmaceutical or medicinal use)も包含される。
【0015】
「被験体」という用語は、本明細書において使用される時、治療、観察または実験の対象である動物を指す。単なる例としてではあるが、被験体は哺乳動物であり得るがこれに限定されず、ヒトが挙げられるがこれに限定されない。一態様において、被験体は、疼痛障害の1つまたは複数の症状を治療、予防、および/または寛解するのに十分な治療有効量で、本明細書において開示される組成物を投与される。本明細書において使用される時、持続的または一過性かにかかわらず、本明細書において開示されるタイプの特定の組成物の投与による疼痛障害の症状の寛解は、その症状の任意の低下を指し、それは本明細書において開示されるタイプの組成物の投与に帰属され得るか、または投与と関連し得る。治療有効量は、被験体に影響する特定の因子を考慮して、1名または複数名の医療従事者によって至適化され得ることが企図される。
【0016】
本明細書において使用される時、「RNA干渉」または「RNAi」という用語は、サイレンシングされる遺伝子の配列に相補的なiRNAガイド鎖中のシード領域配列を有するiRNA剤によって開始される、動植物における配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングのプロセスを経由して、iRNA剤(例えばsiRNA、miRNAs、shRNA)によって遺伝子発現をサイレンシングまたは減少させることを指す。本明細書において使用される時、「iRNA剤」(「干渉RNA剤」についての略称)という用語は、標的遺伝子の発現をダウンレギュレートできるRNA剤または化学的に修飾されたRNAを指す。「化学的修飾」という語句は、本明細書において使用される時、当技術分野において一般的に容認される意味を指す。本開示の核酸分子を参照して使用される場合に、「化学的修飾」は、もたらされた化学構造が一般に元のsiRNAまたはRNAのヌクレオチドのものとは異なるような、ヌクレオチドの化学構造の任意の修飾を指す。例えば「化学的修飾」という用語は、本明細書において記載されるような、またはそうでなければ当技術分野において知られているような、糖、塩基またはヌクレオチド間結合での、元のsiRNAまたはRNAの追加、置換または修飾を包含する。ある特定の態様において、「化学的修飾」という用語は、ある特定の生物学的系において天然に存在する、RNAのある特定の形態(例えば2’-O-メチル修飾またはイノシン修飾)を指すことができる。理論に拘束されることを望むものではないが、iRNA剤は、多くの機構(標的mRNAの転写後切断または転写前もしくは翻訳前の機構が挙げられる)のうちの1つまたは複数によって作用し得る。iRNA剤は一本鎖(ss)であり得るか、または2つ以上の鎖を含み得る(例えばそれは二本鎖(ds)iRNA剤であり得る)。本明細書において使用される時、「siRNA」は小分子干渉RNAを指す。siRNAは、約15~60、15~50または15~40(二重らせん)ヌクレオチドの長さ、より典型的には約15~30、15~25または19~25(二重らせん)ヌクレオチドの長さの短鎖干渉RNAを含み、あるいは約20~24または約21~22もしくは21~23(二重らせん)ヌクレオチドの長さである(例えば二本鎖siRNAの各々の相補配列は、15~60、15~50、15~40、15~30、15~25または19~25ヌクレオチドの長さ、あるいは約20~24または約21~22もしくは21~23ヌクレオチドの長さ、あるいは19~21ヌクレオチドの長さであり、二本鎖siRNAは、約15~60、15~50、15~40、15~30、15~25または19~25、あるいは約20~24または約21~22もしくは19~21もしくは21~23塩基対の長さである)。siRNA二重らせんは、約1~約4ヌクレオチド、あるいは約2~3ヌクレオチドの3’突出部分、および5’ホスフェート末端を含み得る。いくつかの態様において、siRNAは末端ホスフェートを欠損する。いくつかの態様において、siRNAの1つまたは両方の端部は、2または3ヌクレオチドの長さである一本鎖3’突出部分(例えば標的配列に相補的でないデオキシチミジン(dTdT)またはウラシル(UU)等)を含み得る。いくつかの態様において、siRNA分子は、ヌクレオチドアナログ(例えばチオホスフェートまたはG-クランプヌクレオチドアナログ)、代替の塩基リンケージ(例えばホスホロチオエート、スホノアセテートまたはチオスホノアセテート)、およびヌクレアーゼ耐性の促進、二重らせん安定性の促進、細胞取込みの促進または細胞標的化のために有用な他の修飾を含み得る。
【0017】
本明細書において使用される時、GEMはRNAを含有する分子のみに限定される必要はなく、化学的に修飾されたヌクレオチドおよび非ヌクレオチドをさらに包含し得る。ある特定の態様において、本開示のGEMは分離したセンスおよびアンチセンスの配列または領域を含み、そこで、センス領域およびアンチセンス領域は、ヌクレオチドまたは非ヌクレオチドを連結する分子によって当技術分野において公知のような共有結合で連結されるか、またはあるいはイオン相互作用、水素結合、ファン・デル・ワールス相互作用、疎水性相互作用、および/もしくはスタッキング相互作用によって非共有結合で連結される。ある特定の態様において、本開示のGEMは、標的遺伝子のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含む。別の態様において、本開示のGEMは、標的遺伝子の発現の抑制を引き起こす様式で標的遺伝子のヌクレオチド配列と相互作用する。
【0018】
本明細書において使用される時、「パーセント修飾」は、GEM(例えばiRNA、またはsiRNAもしくは集合的なdsRNAの鎖の各々)中の修飾されたヌクレオチドの数を指す。例えば、GEMのアンチセンス鎖の19%の修飾は、21ヌクレオチドの配列(21量体)中の4つヌクレオチド/bpまでの修飾を指す。100%の修飾は完全に修飾されたdsRNAを指す。化学的修飾の程度は、様々な因子(例えば標的mRNA、標的外のサイレンシング、エンドヌクレアーゼ分解の程度等など)に依存するだろう。
【0019】
本明細書において使用される時、「shRNA」または「短鎖ヘアピンRNA」という用語は、RNAi装置によってsiRNAへとプロセシングされるステムループ構造を採用する個別の転写物を指す。典型的なshRNA分子は、ループ配列によって分離されたセンス標的配列およびアンチセンス標的配列を含有する2つの逆向き反復を含む。塩基対セグメントは17~29ヌクレオチドで変動し、そこで、塩基対になったステムのうちの1つの鎖は標的遺伝子のmRNAに相補的である。shRNAステムループ構造のループは、インビボの標的遺伝子の不活性化を可能にする任意の好適な長さであり得る。ループは3~30ヌクレオチドの長さであり得るが、典型的にはそれは1~10ヌクレオチドの長さである。塩基対になったステムは完全に塩基対になり得るか、または1もしくは2のミスマッチ塩基対を有し得る。二重らせん部分は、1つまたは複数の非対合ヌクレオチドからなる1つまたは複数の膨らみを含有し得るが、典型的にはない。shRNAは、塩基対になったステムから伸長する塩基対になっていない5’配列および3’配列を有し得る。しかしながら典型的には5’伸長はない。ポリメラーゼIIIによって転写された第1のヌクレオチドがGであるので、5’端部でのshRNAの第1のヌクレオチドはGである。Gが標的配列中の第1の塩基として存在しないならば、Gは特異的標的配列の前に添加され得る。5’Gは、典型的には塩基対になったステムの一部を形成する。典型的には、shRNAの3’端部は、転写終結シグナルであり塩基対になった構造を形成しないポリウリジル酸セグメントである。本出願中で記載され、当業者に知られているように、shRNAは保存された細胞のRNAi装置によってsiRNAへとプロセシングされる。したがって、一般にshRNAはsiRNAの前駆体であり、標的mRNAの転写物の発現を類似して抑制することが可能である。
【0020】
本明細書において使用される時、単離された核酸分子(例えばGEM)の文脈における「単離された」という用語は、天然状態からヒトの介入を介して変更されるかまたは取り出されるものである。例えば、生きている動物中に天然に存在するRNAは「単離されていない」。その天然状態の共存する材料から部分的または完全に分離された合成RNAまたはdsRNAまたはマイクロRNA分子は「単離されている」。
【0021】
本明細書において使用される時、「相補的」という用語は、スタンダードのワトソン-クリックの相補的ルールに従う塩基対合が可能な核酸配列を指す。すなわち、より大きなプリンはより小さなピリミジンを塩基対になって、シトシンと対合したグアニン(G:C)、およびDNAの事例においてチミンと対合したアデニン(A:T)、またはRNAの事例においてウラシルと対合したアデニン(A:U)いずれかの組み合わせを形成する。
【0022】
本明細書において使用される時、「遺伝子」という用語は、RNAおよび/またはポリペプチドの産生のために必要なコーディング配列に加えて、コーディング配列の5’末端および3’末端を囲む非コード配列(非翻訳領域)を含む、核酸(例えばDNAまたはRNA)配列またはその前駆物質を指す。「遺伝子」という用語は、遺伝子のcDNA形態およびゲノム形態の両方を包含する。機能性ポリペプチドは、全長コーディング配列によって、またはポリペプチドの所望される活性もしくは機能的特性(例えば酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達、抗原性提示)が保持される限り、コーディング配列のうちの任意の部分によって、コードされ得る。コーディング領域の5’に所在し、mRNA上に存在する配列は、5’非翻訳配列(「5’UTR」)と称される。コーディング領域の3’または下流に所在し、mRNA上に存在する配列は、3’非翻訳配列または(「3’UTR」)と称される。
【0023】
一態様において、本明細書において開示される組成物は、TAC1遺伝子(それはSPをコードする)の発現のダウンレギュレーションまたは低減をもたらすGEMを含む。代替の態様において、本明細書において開示される組成物は、CALCA遺伝子(それはCGRPをコードする)の発現のダウンレギュレーションまたは低減をもたらすGEMを含む。一態様において、GEMは、SPをコードする遺伝子の発現を抑制するか、またはSPをコードする遺伝子の発現を実質的にサイレンシングさせるオリゴヌクレオチドを含む。別の態様において、GEMは、CGRPもしくはあるいはα-CGRPの発現を抑制するか、またはCGRPについてコードする遺伝子の発現を実質的にサイレンシングさせるか、あるいはα-CGRPについてコードする遺伝子の発現を実質的にサイレンシングさせるオリゴヌクレオチドを含む。
【0024】
本明細書において使用される時、「実質的なサイレンシング」という用語は、GEMが存在しない場合に観察される発現のレベルに比較して、標的化された遺伝子の発現が約10%~100%まで低減されるように、標的化された遺伝子(例えばTAC1またはCALCA)のmRNAが、導入されたGEMの存在によって抑制および/または分解されることを意味する。一般的に、遺伝子が実質的にサイレンシングされる場合に、遺伝子の発現は、GEMが存在しない場合に比較して、少なくとも40%まで、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%(例えば71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、79%、78%まで)、少なくとも80%(例えば81%~84%)、少なくとも85%(例えば86%、87%、88%、89%)、少なくとも90%(91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)、または場合によっては100%まで低減されるだろう。本明細書において使用される時、「実質的に正常な活性」という用語は、GEMが導入されていない場合の遺伝子の発現のレベルを意味する。本明細書において使用される時、「抑制する」、「ダウンレギュレートする」、または「低減する」という用語は、当技術分野において一般的に容認されるようなそれらの意味を指す。本開示の例示的な核酸分子を参照して、この用語は、一般的に本開示の核酸分子(例えばGEM)の非存在下において観察されるもの未満の、遺伝子の発現、またはRNA分子または1つもしくは複数のタンパク質もしくはタンパク質サブユニットをコードする等価なRNA分子のレベル、または1つもしくは複数のタンパク質もしくはタンパク質サブユニットの活性の低減を指す。ダウンレギュレーションは、DNAメチル化パターンの変更による、またはDNAクロマチン構造による、転写後サイレンシング(RNAi媒介性切断等)とも関連し得る。GEMによる抑制、ダウンレギュレーションまたは低減は、不活性分子、弱化分子、スクランブル化配列を備えたオリゴヌクレオチド、もしくはミスマッチを備えたオリゴヌクレオチドに関し得るか、またはあるいはオリゴヌクレオチドの非存在下における系に関し得る。
【0025】
TAC1、CALCAまたはそれぞれの遺伝子産物のダウンレギュレーションの程度は、任意の好適なアッセイを使用して決定され得る。好適なアッセイとしては、例えば任意の好適な技法(ドットブロット、ノーザンブロット、in situハイブリダイゼーション、ELISA、マイクロアレイハイブリダイゼーション、免疫沈降、酵素機能等)を使用するタンパク質またはmRNAのレベルの検査に加えて、当業者に既知の表現型分析が、限定されずに挙げられる。遺伝子サイレンシングの程度を検討するために、試験サンプル(例えば標的遺伝子(複数可)を発現する対象となる生物体からの生物学的サンプル、または標的遺伝子(複数可)を発現する培養における細胞のサンプル)は、標的遺伝子(複数可)の発現をサイレンシング、低減、または抑制するGEMと接触させられる。試験サンプルにおける標的遺伝子の発現は、GEMと接触させられない対照サンプル(例えば標的遺伝子を発現する対象となる生物体からの生物学的サンプル、または標的遺伝子を発現する培養における細胞のサンプル)における標的遺伝子の発現に比較される。対照サンプル(すなわち標的遺伝子を発現するサンプル)は、100%の値を割り当てられる。一態様において、試験サンプルの値が、対照サンプルに比べて、約95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%または10%である場合に、標的遺伝子の発現の実質的なサイレンシング、抑制、ダウンレギュレーションまたは低減が達成される。
【0026】
一態様において、GEMはマイクロRNA(miRNAまたはmiR)である。miRNAは、一般的に遺伝子発現を調節する21~23ヌクレオチドの長さの一本鎖RNA分子を指す。miRNAは、プリmiRNAとして公知の一次転写物から、前駆体(プレmiRNA)と呼ばれる短いステムループ構造へ、および最終的に機能的で成熟したmiRNAへプロセシングされる。成熟したmiRNA分子は、1つまたは複数のメッセンジャーRNA分子に部分的に相補的であり、それらの主要な機能はRNAi経路を介して遺伝子発現をダウンレギュレートすることである。
【0027】
一態様において、GEMは小分子干渉RNA(siRNA)である。天然に存在するRNAi(二本鎖RNA(dsRNA))は、小分子干渉RNA(siRNA)分子(3’末端での2ヌクレオチド(nt)の突出部分を備えた19~27ntのdsRNA)へと、RNase III/ヘリカーゼタンパク質(ダイサー)によって切断される。一態様において、siRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と呼ばれる多構成要素のリボヌクレアーゼの中へ取込まれる。siRNAの1つの鎖はRISCと会合したままで、RISC中のガイド装置のss-siRNAに相補的な配列を有する同起源のRNAに向けて複合体をガイドする。このsiRNA指令型エンドヌクレアーゼはRNAを消化し、それによってRNAを不活性化する。RISC、siRNA分子およびRNAiのこれらのおよび他の特徴は、記載されている。
【0028】
本開示の態様において、GEMはアンチセンスオリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)は、相補的な標的に結合し、その標的の機能を抑制する合成核酸である。典型的には、ASOを使用して、RNA標的(特にメッセンジャーRNA(mRNA)種またはマイクロRNA(miRNA)種)の発現を低減または変更する。一般的な原理として、ASOは、1)ASOが標的核酸を緊密に結合し、その種を不活性化し、細胞生物学におけるその参加を防止する、立体的なブロッキングによるもの、または、2)ASOが標的を結合し、標的化された核酸種を分解する細胞ヌクレアーゼの活性化を導く、分解の引き金となることによるものを包含する、2つの異なる作用メカニズムを経由して遺伝子発現を抑制することができる。あるクラスの「標的分解」ASOは、「RNase Hに活性のある」と称される。DNAを含有する「RNase Hに活性のある」ASOは標的RNAとハイブリダイズして、酵素RNase Hについての基質として供されるヘテロ二重らせん核酸を形成する。RNase Hはヘテロ二重らせん分子のRNA部分を分解し、それによって標的RNAの発現を低減する。標的RNAの分解はASO(それは分解されない)を放出し、それは次いで自由に再利用され、同じ配列の別のRNA標的を結合することができる。
【0029】
一態様において、GEMは、マイクロRNA、siRNA、ASO、iRNA、iRNA剤、shRNA、その機能的バリアント;またはその組み合わせを含む。いくつかの態様において、本明細書において開示されるオリゴヌクレオチドの機能的バリアントは、本明細書において開示される任意の配列と、少なくとも70%、あるいは少なくとも75%、あるいは少なくとも80%、あるいは少なくとも85%、あるいは少なくとも90%、またはあるいは少なくとも95%の配列同一性を含む。一般に、「同一性」は、2つのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列の正確なヌクレオチド対ヌクレオチドの対応を指す。パーセント同一性は、配列をアライメントさせること、2つのアライメントさせた配列の間の一致の正確な数をカウントすること、より短い配列の長さによって割ること、および結果に100を掛けることによって、2つの分子の間の配列情報の直接的な比較によって決定され得る。容易に入手可能なコンピュータープログラムを使用して分析を支援することができ、それらはWisconsin Sequence Analysis Package、バージョン8(Genetics Computer Group、Madison、Wis.から入手可能)等であり、例えばBESTFITプログラム、FASTAプログラムおよびGAPプログラム(それはSmith and Watermanアルゴリズムを土台とする)である。これらのプログラムは、製造者によって推奨されるデフォルトパラメーターにより容易に利用され、上で参照されるWisconsin Sequence Analysis Package中で記載される。例えば、参照配列に対する特定のヌクレオチド配列のパーセント同一性は、デフォルトスコアリング表および6つのヌクレオチド位置のギャップペナルティにより、Smith and Watermanの相同性アルゴリズムを使用して決定され得る。
【0030】
あるいは、相同性は、相同領域間の安定的な二重らせんを形成する条件下でのポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション、続いて一本鎖特異的ヌクレアーゼ(複数可)による消化、および消化された断片のサイズ決定によって、決定され得る。実質的に相同なDNA配列は、特定のその系について定義されるような、例えばストリンジェントな条件下で、サザンハイブリダイゼーション実験において同定され得る。適切なハイブリダイゼーション条件の定義は、当業者の技能の範囲内である。
【0031】
配列リスト中で以下に同定されるように、配列番号:1~配列番号:55(すなわち<210>1~<210>55)は本明細書において記載されるGEMの代表である。一態様において、GEMは、配列番号:1~配列番号:55のうちの任意の1つを有する分子、あるいはその機能的バリアントを含む。いくつかの態様において、本開示における使用に好適なGEMは、本明細書において開示される任意の配列と、少なくとも70%、または少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%の配列同一性を含む。
【0032】
一態様において、GEMは、約20%~約90%の修飾、またはあるいは約40%~約60%の修飾を有する。
【0033】
一態様において、本開示のGEM(修飾または非修飾)は化学的に合成される。オリゴヌクレオチド(例えばリボヌクレオチドを欠損する特定の修飾されたオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの部分)は、例えばCaruthers et al.,1992,Methods in Enzymology 211,3-19、Thompson et al.、国際PCT特許出願公開第WO99/54459号、Wincott et al.,1995,Nucleic Acids Res.23,2677-2684、Wincott et al.,1997,Methods Mol. Bio.,74,59、Brennan et al.,1998,Biotechnol.Bioeng.61,33-45、およびBrennan、米国特許第6,001,311号中で記載されるような、当技術分野において公知のプロトコールを使用して、合成される。オリゴヌクレオチドの合成は、通常の核酸の保護基およびカップリング基(5’端部でのジメトキシトリチルおよび3’端部でのホスホロアミダイト等)を利用する。
【0034】
あるいは、SPおよび/またはCGRPと相互作用しダウンレギュレートする本開示のGEMは、DNAベクターまたはRNAベクターの中へ挿入された転写物から発現および送達され得る。組換えベクターはDNAプラスミドまたはウイルスベクターであり得る。GEM発現ウイルスベクターの非限定例は、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、またはアルファウイルスに基づいて構築され得る。
【0035】
いくつかの態様において、pol IIIベースの構築物を使用して、本開示のGEMを発現させる。siRNA分子配列の転写は、真核生物のRNAポリメラーゼI(pol I)、RNAポリメラーゼII(pol II)、またはRNAポリメラーゼIII(pol III)についてのプロモーターから駆動され得る(例えばThompson、米国特許第5,902,880号および同第6,146,886号を参照)。pol IIプロモーターまたはpolIIIプロモーターからの転写物はすべての細胞中で高いレベルで発現され、所与の細胞タイプにおける所与のpol IIプロモーターのレベルは、近くに存在する遺伝子調節配列(エンハンサー、サイレンサーなど)の性質に依存する。原核生物のRNAポリメラーゼ酵素が適切な細胞中で発現されるならば、原核生物のRNAポリメラーゼプロモーターも使用され得る。これらの例示的な転写単位は、哺乳動物細胞の中への導入のために、多様なベクター(プラスミドDNAベクター、ウイルスDNAベクター(アデノウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルスベクター等)またはウイルスRNAベクター(レトロウイルスベクターまたはアルファウイルスベクター等)が挙げられるがこれらに限定されない)の中へ取込まれ得る。
【0036】
ベクターを使用して、siRNA二重らせんのうちの1つもしくは両方の鎖をコードし得る本開示のGEM、またはsiRNA二重らせんへと自己ハイブリダイズする単一の自己相補的な鎖を発現させる。本開示のGEMをコードする核酸配列は、GEMの発現を可能にする様式で作動可能に連結され得る。いくつかの態様において、GEMを含む構築物は、レポーター遺伝子(例えば緑色蛍光タンパク質)および選択遺伝子(例えば抗生物質耐性のための)を追加で含み得る。本開示のいくつかの態様において、細胞(例えば幹細胞)は、本開示のGEMを含む構築物によりトランスフェクションされる。かかる態様において、構築物は、GEMの誘導可能発現または構成的発現を可能にするように構成され得る。かかる細胞は疼痛関連障害を治療するために被験体に導入され得る。
【0037】
代替の態様において、本開示のGEMは、陽イオン性脂質へ直接添加されるかもしくはそれと複合体化されるか、リポソーム内にパッケージングされるか、またはGEMを発現する組み換えプラスミドもしくはウイルスベクターとしてであるか、またはそうでなければ標的細胞または組織へ送達される。核酸分子は任意の好適な方法によって細胞に投与され得、リポソーム中のカプセル化、イオン導入によるもの、または他のベヒクル(生体分解性ポリマー、ハイドロゲル、シクロデキストリン、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)およびPLCAマイクロスフェア、生物分解性ナノカプセル、ならびに生体接着性マイクロスフェア等)の中への取込みによるもの、またはタンパク性ベクターによるものが挙げられるがこれらに制限されない。一態様において、本開示は、本明細書において記載されるGEMを含有する担体系を提供する。いくつかの態様において、担体系は、脂質ベースの担体系、陽イオン性脂質もしくはリポソーム核酸複合体、リポソーム、ミセル、ビロゾーム、脂質ナノ粒子、またはその混合物である。他の態様において、担体系は、ポリマーベースの担体系(陽イオン性ポリマー-核酸複合体等)である。追加の態様において、担体系は、シクロデキストリンベースの担体系(シクロデキストリンポリマー-核酸複合体等)である。さらなる態様において、担体系は、タンパク質ベースの担体系(陽イオン性ペプチド-核酸複合体等)である。
【0038】
他の態様において、細胞膜を横切って治療化合物を移行させること、薬物動態を変更すること、および/または本開示の核酸分子の局在化を調節することによって、治療活性を与えることができれば、GEMはコンジュゲートまたは複合体の構成要素である。例えばコンジュゲートは、GEMへ共有結合で付加されたポリエチレングリコール(PEG)を含み得る。付加されたPEGは、例えば約100~約50,000ダルトン(Da)の任意の分子量であり得る。
【0039】
さらに他の態様において、GEMは、ポリ(エチレングリコール)脂質を含有する表面修飾されたリポソーム(例えば、PEG修飾リポソームまたは長期血中循環リポソームまたはステルスリポソーム)およびGEMを含む、組成物または製剤の構成要素である。いくつかの態様において、本開示のsiRNA分子は、ポリエチレンイミンおよびその誘導体(ポリエチレンイミン-ポリエチレングリコールN-アセチルガラクトサミン(PEI-PEG-GAL)誘導体またはポリエチレンイミン-ポリエチレングリコールトリ-N-アセチルガラクトサミン(PEI-PEG-triGAL)誘導体等)とも、製剤化または複合体化され得る。
【0040】
一態様において、本開示のGEMは、被験体への投与のために組成物または製剤へと調製される。「組成物」および「製剤」という用語は、本明細書において使用される時、当技術分野において一般的に容認される意味を指す。これらの用語は、薬剤が細胞の中へまたは被験体(例えばヒト)への投与(例えば全身投与または局部投与)に好適な形態で(薬学的に許容される担体または希釈物質中で等)ある形態を、一般的に指す。好適な形態は、使用または投入経路(例えば経口、経皮、吸入、または注射によって)に部分的に依存する。かかる形態は、薬剤が標的細胞(すなわち核酸を送達することが所望される細胞)に到着するのを妨げてはならない。例えば、血流の中へ注射された組成物は可溶性でなくてはならない。適切な形態の決定における考慮のための他の因子としては、薬剤が意図される効果を有することを妨げる毒性および形態等の考慮が挙げられる。本開示の核酸分子による使用のための製剤および/または組成物の非限定例としては、脂質ナノ粒子(例えばSemple et al.,2010,Nat Biotechnol.,February;28(2):172-6を参照);P-糖タンパク質阻害物質(Pluronic P85等);生体分解性ポリマー(持続放出送達のためのポリ(DL-ラクチド-コグリコリド)マイクロスフェア(Emerich,D F et al,1990,Cell Transplant,8,47-58)等);およびロードされたナノ粒子(ポリブチルシアノアクリレートから作製するもの等)が挙げられる。本開示の核酸分子のための送達ストラテジーの他の非限定例としては、Boado et al.,1998,J.Pharm.Sci.,87,1308-1315;Tyler et al.,1999,FEBS Lett.,421,280-284;Partridge et al.,1995,PNAS USA.,92,5592-5596;Boado,1995,Adv.Drug Delivery Rev.,15,73-107;Aldrian-Herrada et al.,1998,Nucleic Acids Res.,26,4910-4916;およびTyler et al.,1999,PNAS USA.,96,7053-7058中で記載される材料が挙げられる。「薬学的に許容される組成物」または「薬学的に許容される製剤」は、それらの所望される活性のために最も好適な身体的な所在位置への本開示の核酸分子の有効な分布を可能にする形態を指し得る。
【0041】
一態様において、GEMを含む製剤は、追加の活性薬剤をさらに含む。製剤中への組み入れのための追加の活性薬剤の例としては、麻酔物質、催眠物質、鎮静物質および睡眠導入物質、抗精神物質、抗鬱物質、抗アレルギー物質、抗狭心性物質、抗関節炎物質、抗喘息物質、抗糖尿病物質、抗痒薬、抗痙攣物質、抗痛風薬、抗ヒスタミン物質、抗掻痒物質、催吐性物質、抗催吐性物質、抗発作物質、食欲抑制物質、神経作動性物質、神経伝達物質のアゴニスト、アンタゴニスト、受容体遮断物質および再取込み調節物質(β-アドレナリン遮断物質、カルシウムチャンネル遮断物質、ジスルフラム(disulfuram)およびジスルフラム様薬、筋弛緩物質、鎮痛物質、解熱物質、刺激物質、抗コリンエステラーゼ剤、副交感神経作動剤、ホルモン、抗凝固物質、抗血栓物質、血栓溶解物質、免疫グロブリン、免疫抑制物質、ホルモンのアゴニスト/アンタゴニスト、ビタミン、抗微生物剤、抗新生物物質、制酸物質、消化物質、緩下剤、下剤、防腐物質、利尿物質、消毒物質、殺真菌物質、殺外部寄生虫物質、抗寄生虫物質、重金属、重金属アンタゴニスト、キレート剤、気体および蒸気、アルカロイド、塩、イオン、オータコイド、ジギタリス、強心配糖体、抗不整脈物質、抗高血圧物質、血管拡張物質、血管収縮物質、抗ムスカリン、神経節刺激剤、自律神経節遮断剤、神経筋遮断剤、アドレナリン作動性神経阻害物質、抗酸化性物質、ビタミン、化粧品、抗炎症物質、創傷ケア産物、抗血栓剤、抗腫瘍剤、抗血管新生剤、麻酔物質、抗原性薬剤、創傷治癒剤、植物抽出物、増殖因子、皮膚軟化物質、保湿物質、拒絶/抗拒絶薬物、殺精子物質、コンディショナー、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗生物質、トランキライザー、コレステロール還元薬、鎮咳物質、ヒスタミン遮断薬、ならびにモノアミンオキシダーゼ阻害物質が挙げられるがこれらに限定されない。
【0042】
CMBPCにおける使用のために好適な具体的な化合物としては、スルファジアジン銀、ナイスタチン、ナイスタチン/トリアムシノロン、バシトラシン、ニトロフラゾン、ニトロフラントイン、ポリミキシン(例えばコリスチン、サーファクチン、ポリミキシンEおよびポリミキシンB)、ドキシサイクリン、抗微生物ペプチド(例えば天然起源および合成起源)、NEOSPORIN.RTM.(すなわちバシトラシン、ポリミキシンBおよびネオマイシン)、POLYSPORIN.RTM.(すなわちバシトラシンおよびポリミキシンB)が挙げられる。追加の抗微生物物質としては局所的な抗微生物物質(すなわち防腐物質)が挙げられ、その例としては、銀塩、ヨウ素、塩化ベンザルコニウム、アルコール、過酸化水素、クロルヘキシジン、アセトアミノフェン;塩酸アルフェンタニル;アミノ安息香酸カリウム;アミノ安息香酸ナトリウム;アニドキシム;アニレリジン;塩酸アニレリジン;塩酸アニロパム;アニロラク;アンチピリン;アスピリン;ベノキサプロフェン;塩酸ベンジダミン;塩酸ビシファジン;塩酸ブリフェンタニル;マレイン酸ブロマドリン;ブロムフェナクナトリウム;塩酸ブプレノルフィン;ブタセチン;ブチキシラート;ブトルファノール;酒石酸ブトルファノール;カルバマゼピン;カルバスピリンカルシウム;塩酸カルビフェン;クエン酸カーフェンタニル;コハク酸シプレファドール;シラマドール;塩酸シラマドール;クロニキセリル;クロニキシン;コデイン;リン酸コデイン;硫酸コデイン;塩酸コノルフォン;チクラゾシン;塩酸デキソキサドロール;デキスペメドラク;デゾシン;ジフルニサル;酒石酸水素ジヒドロコデイン;ジメファダン;ディピロン;塩酸ドキシピコミン;ドリニデン;塩酸エナドリン;エピリゾール;酒石酸エルゴタミン;塩酸エトキサゼン;エトフェナマート;オイゲノール;フェノプロフェン;フェノプロフェンカルシウム;クエン酸フェンタニル;フロクタフェニン;フルフェニサル;フルニキシン;フルニキシンメグルミン;マレイン酸フルピルチン;フルプロクアゾン;塩酸フルラドリン;フルルビプロフェン;塩酸ヒドロモルホン;イブフェナック;インドプロフェン;ケタゾシン;ケトルファノール;ケトロラクトロメタミン;塩酸レチミド;酢酸レボメタジル;酢酸レボメタジル塩酸塩;塩酸レボナントラドール;酒石酸レボルファノール;塩酸ロフェミゾール;シュウ酸ロフェンタニル;ロルシナドール;ロモキシカム(Lomoxicam);サリチル酸マグネシウム;メフェナム酸;塩酸メナビタン;塩酸メペリジン;塩酸メプタジノール;塩酸メタドン;酢酸メサジル;メトフォリン;メトトリメプラジン;酢酸メトケファミド;塩酸ミンバン;塩酸ミルフェンタニル;モリナゾン;硫酸モルヒネ;モキサゾシン;塩酸ナビタン;塩酸ナルブフェン;塩酸ナルメキソン;ナモキシレート;塩酸ナントラドール;ナプロキセン;ナプロキセンナトリウム;ナプロキソール;塩酸ネオパム;塩酸ネキセリジン;塩酸ノルアシメサドール;オクフェンタニル塩酸塩;オクタザミド;オルバニル;フマル酸オキセトロン;オキシコドン;塩酸オキシコドン;テレフタル酸オキシコドン;塩酸オキシモルホン;ペメドラク;ペンタモルホン;ペンタゾシン;塩酸ペンタゾシン;乳酸ペンタゾシン;塩酸フェナゾピリジン;塩酸フェニラミドール;塩酸ピセナドール;ピナドリン;ピルフェニドン;ピロキシカムオラミン;マレイン酸プラバドリン;塩酸プロジリジン;塩酸プロファドール;フマル酸プロピラルン(Propirarn Fumarate);塩酸プロポキシフェン;ナプシル酸プロポキシフェン;プロキサゾール;クエン酸プロキサゾール;酒石酸プロキソルファン;塩酸ピロリフェン;塩酸レミフェンタニル;サルコレクス;マレイン酸サレタミド;サリチルアミド;サリチル酸メグルミン;サルサレート;サリチル酸ナトリウム;メシル酸スピラドリン;サフェンタニル;クエン酸サフェンタニル;タルメタシン;タルニフルマート;タロサラート;コハク酸タザドレン;テブフェロン;テトリダミン;チフラクナトリウム;塩酸チリジン;チオピナク;メシル酸トナゾシン;塩酸トラマドール;塩酸トレフェンタニル;トロラミン;塩酸ベラドリン;塩酸ベリロパム;ボラゾシン;メシル酸キソルファノール;塩酸キシラジン;メシル酸ゼナゾシン;ゾメピラックナトリウム;ズカプサイシン、塩酸アフリゾシン(Aflyzosin Hydrochloride);アリパミド;アルチジド;塩酸アミキンシン;ベシル酸アムロジピン;マレイン酸アムロジピン;酢酸アナリチド;マレイン酸アチプロシン;ベルホスジル;ベミトラジン;メシル酸ベンダカロール;ベンドロフルメサイアザイド;ベンズチアジド;塩酸ベタキソロール;硫酸ベタニジン;塩酸ベバントロール;塩酸ビクロジル;ビソプロロール;フマル酸ビソプロロール;塩酸ブシンドロール;ブピコミド;ブチアジド:カンドキサトリル;カンドキサトリラト;カプトプリル;カルベジロール;セロナプリル;クロロサイアザイドナトリウム;シクレタニン;シラザプリル;クロニジン;塩酸クロニジン;クロパミド;シクロペンチアジド;シクロチアジド;ダロジピン;硫酸デブリソキン;塩酸デラプリル;ジアパミド;ジアゾキシド;塩酸ジレバロール;リンゴ酸ジルチアゼム;ジテキレン;メシル酸ドキサゾシン;エカドトリル(Eeadotril);マレイン酸エナラプリル;エナラプリラト;エナルキレン;メシル酸エンドララジン;エピサイアザイド;エプロサルタン;メシル酸エプロサルタン;メシル酸フェノルドパム;マレイン酸フラボジロール;フロルジピン;フロセキナン;フォシノプリルナトリウム;ホシノプリラト;グアナベンズ;酢酸グアナベンズ;硫酸グアナクリン;硫酸グアナドレル;グアンシジン;モノ硫酸グアネチジン;硫酸グアネチジン;塩酸グアンファシン;硫酸グアニソキン;硫酸グアノクロル;塩酸グアノクチン;グアノキサベンズ;硫酸グアノキサン;硫酸グアノキシフェン;塩酸ヒドララジン;ヒドララジンポリスチレクス;ヒドロフルメチアジド;インダクリノン;インダパミド;塩酸インドラプリフ(Indolaprif Hydrochloride);インドラミン;塩酸インドラミン;塩酸インドレナート;ラシジピン;レニキンシン;レブクロマカリム;リシノプリル;塩酸ロフェキシジン;ロサルタンカリウム;塩酸ロスラジン;メブタメート;塩酸メカミラミン;メドロキサロール;塩酸メドロキサロール;メタルチアジド;メチクロチアジド;メチルドパ;塩酸メチルドパ;メチプラノロール;メトラゾン;フマル酸メトプロロール;コハク酸メトプロロール;メチロシン;ミノキシディル;マレイン酸モナテピル;ムゾリミン;ネビボロール;ニトレンジピン;オホルニン;塩酸パルジリン;パゾキシド;塩酸ペランセリン;ペリンドプリルエルブミン;塩酸フェノキシベンザミン;ピナシジル;ピボプリル;ポリチアジド;塩酸プラゾシン;プリミドロール;塩酸プリジジロール;塩酸キナプリル;キナプリラト;塩酸キナゾシン;塩酸キネロラン;塩酸キンピロール;臭化キヌクリウム;ラミプリル;Rauwolfia Serpentina;レセルピン;サプリサルタンカリウム;酢酸サララシン;ニトロプルシドナトリウム;塩酸スルフィナロール;タソサルタン;塩酸テルジピン;塩酸テモカプリル;塩酸テラゾシン;テルラキレン;チアメニジン;塩酸チアメニジン;チエリナフェン(Tierynafen);チナビノール;チオダゾシン;塩酸チペントシン;トリクロルメチアジド;塩酸トリマゾシン;カンシル酸トリメタファン;塩酸トリモキサミン;トリパミド;キシパミド;塩酸ザンキレン;ゾフェノプリラトアルギニン、アルクロフェナク;ジプロピオン酸アルクロメタゾン;アルゲストンアセトニド;αアミラーゼ;アメイナファル(Ameinafal);アメイナフィド(Ameinafide);アンフェナクナトリウム;塩酸アミプリロース;アナキンラ;アニロラク;アニトラザフェン;アパゾン;バルサラジド二ナトリウム;ベンダザック;ベノキサプロフェン;塩酸ベンジダミン;ブロメライン;ブロペラモール;ブデソニド;カルプロフェン;シクロプロフェン;シンタゾン;クリプロフェン;プロピオン酸クロベタゾール;酪酸クロベタゾン;クロピラク;プロピオン酸クロチカゾン;酢酸コルメタゾン;コルトドキソン;デフラザコルト;デソニド;デソキシメタゾン;ジプロピオン酸デキサメタゾン;ジクロフェナクカリウム;ジクロフェナクナトリウム;酢酸ジフロラゾン;ジフルミドンナトリウム;ジフルニサル;ジフルプレドナート;ジフタロン;ジメチルスルホキシド;ドロシノニド;エンドリゾン;エンリモマブ;エノリカムナトリウム;エピリゾール;エトドラク;エトフェナマート;フェルビナク;フェナモール;フェンブフェン;フェンクロフェナク;フェンクロラク;フェンドサール;フェンピパロン;フェンチアザク;フラザロン;フルアザコルト;フルフェナム酸;フルミゾール;酢酸フルニソリド;フルニキシン;フルニキシンメグルミン;フルオコルチンブチル;酢酸フルオロメトロン;フルクァゾン;フルルビプロフェン;フルレトフェン;プロピオン酸フルチカゾン;フラプロフェン;フロブフェン;ハルシノニド;プロピオン酸ハロベタゾール;酢酸ハロプレドン;イブフェナック;イブプロフェン;イブプロフェンアルミニウム;イブプロフェンピコノール;イロニダプ;インドメタシン;インドメタシンナトリウム;インドプロフェン;インドキソール;イントラゾール;酢酸イソフルプレドン;イソキセパク;イソキシカム;ケトプロフェン;塩酸ロフェミゾール;ロルノキシカム;エタボン酸ロテプレドノール;メクロフェナム酸ナトリウム;メクロフェナム酸;ジブチル酸メクロリゾン;メフェナム酸;メサラミン;メセクラゾン;スレプタン酸メチルプレドニゾロン;モミフルメート(Momiflumate);ナブメトン;ナプロキセン;ナプロキセンナトリウム;ナプロキソール;ニマゾン;オルサラジンナトリウム;オルゴテイン;オルパノキシン;オキサプロジン;オキシフェンブタゾン;塩酸パラニリン;ポリ硫酸ペントサンナトリウム;フェンブタゾンナトリウムグリセラート;ピルフェニドン;ピロキシカム;桂皮酸ピロキシカム;ピロキシカムオラミン;ピルプロフェン;プレドナザート;プリフェロン;プロドール酸;プロクァゾン;プロキサゾール;クエン酸プロキサゾール;リメキソロン;ロマザリット;サルコレクス;サルナセジン;サルサレート;塩化サングイナリウム;セクラゾン;セルメタシン;スドキシカム;スリンダク;スプロフェン;タルメタシン;タルニフルマート;タロサラート;テブフェロン;テニダプ;テニダプナトリウム;テノキシカム;テシカム;テシミド;テトリダミン;チオピナク;ピバル酸チキソコルトール;トルメチン;トルメチンナトリウム;トリクロニド;トリフルミダート;ジドメタシン;およびゾメピラックナトリウムが挙げられる。
【0043】
一態様において、組成物および/または製剤は追加の成分を含有し得る。本明細書において使用される時、「追加の成分」としては、以下の:賦形剤;界面活性剤;分散剤;不活性希釈物;造粒剤および崩壊剤;結合剤;滑沢剤;甘味剤;香味剤;着色剤;防腐物質;生理学的に分解可能な組成物(ゼラチン等);水性のベヒクルおよび溶媒;油性のベヒクルおよび溶媒;懸濁化剤;分散剤または湿潤剤;乳化剤、粘滑物質;バッファー;塩;増粘剤;充填物質;乳化剤;抗酸化物質;抗生物質;抗真菌剤;安定化剤;ならびに薬学的に許容されるポリマー材料または疎水性材料のうちの1つまたは複数が挙げられるがこれらに限定されない。
【0044】
特定の態様において、疼痛障害(線維筋痛症または複合性局所疼痛症候群等)と診断された被験体は、本明細書において開示されるタイプのGEMを含む製剤および/または組成物を使用して治療される。GEMを含む製剤および/または組成物は、被験体の圧痛点へ導入される。本明細書において、「圧痛点」は、筋肉、筋腱接合部、滑液包または脂肪体において生じる圧痛の領域を指す。一態様において、圧痛点は(1)低位頸部:C5-C7脊椎骨の近くのあごのちょうど下の首の前面領域;(2)第2肋骨:肩関節から約2インチの鎖骨の下の胸の前面領域;(3)後頭部:頭蓋の基部の首の後部;(4)僧帽筋:肩の後部領域(この大きな筋肉が肩の上部にわたって覆う);(5)棘上筋:肩甲骨のちょうど上部での肩甲骨領域;(6)外側上顆:腕の折り目の内部の肘領域;(7)臀筋:臀部の4半上外側の後方端部;(8)大転子:背部の後方股関節および(9)膝:脂肪体がある内側上の膝領域、を含む。
【0045】
かかる態様において、GEMはSP阻害物質を含む。別のかかる態様において、GEMはCGRP阻害物質を含む。さらに別の態様において、GEMはSP阻害物質およびCGRP阻害物質を含む。別の態様において、GEMは、CSF模倣体により製剤化される。
【0046】
理論に限定されることを望むものではないが、オリゴヌクレオチドのこれらの異なる形態は、SP mRNAまたはCGRP mRNAの効率的な転写を減じ、翻訳へのガイド鎖mRNAの成功した動きを低減し、SPまたはCGRPを産生するmRNAの効率的な翻訳を干渉するだろう。一態様において、被験体の体液中のCGRPタンパク質および/またはmRNAのレベルを低減する本開示のためのGEMは、配列番号:1~配列番号:30のうちの任意の1つを有する。一態様において、被験体の体液中のSPタンパク質および/またはmRNAのレベルを低減する本開示のためのGEMは、配列番号:31~配列番号:55のうちの任意の1つを有する。
【0047】
医薬品の当業者に公知の従来の方法を使用して、医薬製剤を哺乳動物被験体へ投与することができる。医薬製剤は、経口経路、皮下経路、肺内経路、経粘膜経路、腹腔内経路、子宮内経路、舌下経路、髄腔内経路、または筋肉内経路を経由して投与され得る。
【0048】
具体的な態様において、製剤は、配列番号:1~配列番号:55のうちの任意のものを有するオリゴヌクレオチドからなる群から選択される遺伝子発現修飾物質、および脳脊髄液適合性希釈物質を含む。製剤は、遺伝子発現修飾物質の機能的バリアントをさらに含み得る。遺伝子発現修飾物質は、配列番号:1~配列番号:30のうちの任意のものを有するオリゴヌクレオチドからなる群から選択され得る。遺伝子発現修飾物質は、配列番号:31~配列番号:55のうちの任意のものを有するオリゴヌクレオチドからなる群から選択され得る。
【0049】
追加でまたはあるいは、具体的な態様において、疼痛障害と診断された被験体を治療する方法は、被験体の脳脊髄液中のサブスタンスPの濃度を低減するオリゴヌクレオチドを含む組成物を、被験体の脳脊髄液の中へ導入することを含む。オリゴヌクレオチドは、配列番号:31~配列番号:55のうちの任意のものを有する群から選択される遺伝子発現修飾物質であり得る。オリゴヌクレオチドは、配列番号:31~配列番号:55のうちの任意のものに少なくとも70%の配列相同性を有し得る。オリゴヌクレオチドは配列番号:31を含む遺伝子発現修飾物質であり得る。疼痛障害は線維筋痛症であり得る。疼痛障害は複合性局所疼痛症候群であり得る。
【0050】
追加でまたはあるいは、具体的な態様において、疼痛障害と診断された被験体を治療する方法は、カルシトニン遺伝子関連タンパク質の濃度を低減する遺伝子発現修飾物質を、被験体の複数の圧痛点へ導入することを含む。オリゴヌクレオチドは、配列番号:1~配列番号:30のうちの任意のものを有するオリゴヌクレオチドからなる群から選択され得る。オリゴヌクレオチドは、配列番号:1~配列番号:30のうちの任意のものに少なくとも70%の配列相同性を有し得る。オリゴヌクレオチドは配列番号:1を含み得る。疼痛障害は線維筋痛症であり得る。疼痛障害は複合性局所疼痛症候群であり得る。
【0051】
追加でまたはあるいは、具体的な態様において、疼痛障害と診断された被験体を治療する方法は、レポーター遺伝子を含む構築物を細胞の中へ導入し、遺伝子発現修飾物質を被験体の体液の中へ導入することを含む。疼痛障害は線維筋痛症であり得る。疼痛障害は複合性局所疼痛症候群であり得る。構築物はpol IIベクターを含み得る。遺伝子発現修飾物質は、配列番号:1~配列番号:55のうちの任意のものを有するオリゴヌクレオチドからなる群から選択され得る。
【0052】
追加でまたはあるいは、具体的な態様において、疼痛障害と診断された被験体の治療のためのオリゴヌクレオチドを含む組成物の使用は、オリゴヌクレオチドを含む組成物を被験体の脳脊髄液の中へ導入して、被験体の脳脊髄液中のサブスタンスPの濃度を低減することを含む。当該オリゴヌクレオチドは、配列番号:31~配列番号:55のうちの任意のものを有する群から選択される遺伝子発現修飾物質であり得る。オリゴヌクレオチドは、配列番号:31~配列番号:55のうちの任意のものに少なくとも70%の配列相同性を有し得る。オリゴヌクレオチドは配列番号:31を含む遺伝子発現修飾物質であり得る。疼痛障害は線維筋痛症であり得る。疼痛障害は複合性局所疼痛症候群であり得る。
【0053】
追加でまたはあるいは、具体的な態様において、疼痛障害と診断された被験体の治療のための遺伝子発現修飾物質の使用は、遺伝子発現修飾物質を被験体の複数の圧痛点の中へ導入して、カルシトニン遺伝子関連タンパク質の濃度を低減することを含む。オリゴヌクレオチドは、配列番号:1~配列番号:30のうちの任意のものを有するオリゴヌクレオチドからなる群から選択され得る。オリゴヌクレオチドは、配列番号:1~配列番号:30のうちの任意のものに少なくとも70%の配列相同性を有し得る。疼痛障害は線維筋痛症であり得る。疼痛障害は複合性局所疼痛症候群であり得る。
【0054】
具体的な態様において、疼痛障害と診断された被験体の治療における、レポーター遺伝子を含む構築物および遺伝子発現修飾物質の使用は、レポーター遺伝子を含む構築物を細胞の中へ導入し、遺伝子発現修飾物質を被験体の体液の中へ導入することを含む。疼痛障害は線維筋痛症であり得る。疼痛障害は複合性局所疼痛症候群であり得る。構築物はpol IIベクターを含み得る。遺伝子発現修飾物質は、配列番号:1~配列番号:55のうちの任意のものを有するオリゴヌクレオチドからなる群から選択され得る。
【0055】
一態様において、被験体は、本明細書において開示されるタイプのGEM(例えばマイクロRNA)を、CSFの中へ点滴を経由して、または形質導入GEM分泌細胞(例えば本明細書において開示されるタイプのマイクロRNAを分泌する)による埋込みを経由して、鞘腔内投与される。本開示のいくつかの態様において、GEMは髄腔内ポンプの利用を経由して投与される。髄腔内投与のためのGEMの製剤は、CSF適合性希釈物質(約0.5ml~約5mlの範囲の体積で注射できる滅菌等張液)をさらに含み得る。理論に限定されることを望むものではないが、かかるGEMSはそれらの小さなサイズおよび他の基本的な特徴に起因して中枢神経系細胞膜に侵入し得る。mRNAは、全血液、血漿および間質液中で多量に見出されている。一旦治療用mRNAおよびオリゴペプチドが細胞内にあったら、SPおよび/またはCGRPの産生チェーンの核、細胞質およびリボソームの要素成分との親和性ダイナミックスから、SPおよび/またはCGRPの産生を低減させることおよび症候群関連症状の強度を減少させることにおけるそれらの有効性が、決定されるだろう。
【0056】
GEM組成物の注射可能製剤または本開示の製剤は、様々な担体を含有し得る。生理学的に許容される賦形剤としては、例えば5%のデキストロース、0.9%の食塩水、リンガー溶液、または他の好適な賦形剤が挙げられ得る。筋肉内調製物(例えば本開示の化合物の滅菌製剤)は、注射用水、0.9%の食塩水または5%のグルコース溶液として医薬賦形剤中で溶解し投与され得る。
【0057】
仮想実施例
以下の仮想実施例は、本開示の特定の態様としてならびに実践およびその利点を実証するために与えられる。実施例が例証の手段として与えられること、および任意の様式に従うように明細書または請求項を限定するようには意図されないことが理解される。
【0058】
ヒト末梢血単球/マクロファージの培養はスタンダードの技法を使用して確立されるだろう。4ウェルプレート中で培養された単球/マクロファージは、サブスタンスPおよび/またはCGRPの特異的産生について、ELISAアッセイをいずれかの材料のために使用することによって等で、アッセイされ得る。例えば、単球/マクロファージおよび/または単球由来マクロファージの培養は適切なトリガー(例えばカプサイシン)によりインキュベーションされ、サブスタンスP、CGRPまたはそのmRNAのレベルは任意の好適な方法論を用いてアッセイされ得る。
【0059】
サブスタンスPおよび/またはCGRPが存在する程度は、全濃度、およびトリガーの導入からの時間の関数としての濃度の両方に関して、好適な分析的アッセイによって決定され得る。GEMの非存在下における単球/マクロファージは、サブスタンスPおよび/またはCGRPのタンパク質およびmRNAの両方のレベルで、発現の増加を示すことが予想される。GEMの存在下において、サブスタンスPおよび/またはCGRPについて産生されるmRNAまたはタンパク質の量の低減が予想される。GEMの存在下において、サブスタンスPおよび/またはCGRPの生産の増加についての時間における潜伏期も観察され得る。
【0060】
当業者は、本開示の考察に際して、本明細書において開示される主題の1つまたは複数の追加の態様および/または変形を認識するだろう。それゆえ、前述のものが本明細書において開示される態様または実施例へ限定されることは、一切意図されない。当業者によって行われる本明細書において開示される態様の変形、組み合わせ、および/または修飾は、本開示の範囲内である。態様の特色を組み合わせること、組み込むこと、および/または省くことから生じる代替の態様も、本開示の範囲内である。数値の範囲または限定が明示的に述べられる場合に、かかる明示の範囲または限定は、明示的に述べられる範囲または限定内に収まる同様の大きさの反復的な範囲または限定を含むことを理解すべきである(例えば約1~約10は2、3、4などを含み;0.10を超えるものは0.11、0.12、0.13などを含む)。例えば、下限(Rl)および上限(Ru)と共に数値範囲を開示する場合は常に、範囲内に収まる任意の数も具体的に開示する。特に、範囲内の以下の数が具体的に開示される。R=Rl+k*(Ru-Rl)、式中、kは、1パーセントずつ増分する1パーセント~100パーセントの範囲の変数であり、すなわち、kは、1パーセント、2パーセント、3パーセント、4パーセント、5パーセント、…、50パーセント、51パーセント、52パーセント、…、95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセント、99パーセントまたは100パーセントである。さらに、上述したものの中で定義されるような2つのR数によって定義される任意の数値範囲も具体的に開示される。請求項の任意の要素に関して、「随意に」という用語の使用は、要素が要求されること、またはあるいは要素が要求されないことを意味し、両方の選択肢は請求項の範囲内である。「含む」、「包含する」および「有する」等のより広義の用語の使用は、「~からなる」、「~から本質的になる」および「~から実質的になる」等のより狭義の用語についての支持を提供することが理解されるべきである。
【0061】
したがって、保護の範囲は上で設定された記載によって限定されないが、続く請求項によって定義され、その範囲は請求項の主題のすべての等価物を包含する。各々およびすべての請求項はさらなる開示として明細書の中へ援用され、請求項は現時点で開示される主題の態様である。
図1
図2
【配列表】
2023123463000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-06-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:1~30、46~50、および52のうちのいずれかの塩基配列を有するオリゴヌクレオチド、または配列番号:1~30、46~50、および52のうちのいずれかの塩基配列に少なくとも95%の配列相同性を有するオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
配列番号:1~30、46~50、および52のうちのいずれかの塩基配列を有する、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
請求項1または2に記載するオリゴヌクレオチドを含む、医薬組成物。
【請求項4】
疼痛障害と診断された被験体を治療するための請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記疼痛障害が、線維筋痛症または複合性局所疼痛症候群である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記被験体の脳脊髄液または複数の圧痛点へ導入される、請求項4または5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
レポーター遺伝子と、配列番号:1~30、46~50、および52のうちのいずれかを有するオリゴヌクレオチド、ならびに配列番号:1~~30、46~50、および52のうちのいずれかに少なくとも95%の配列相同性を有するオリゴヌクレオチドからなる群から選択される遺伝子発現修飾物質とを含む構築物を含む、疼痛障害と診断された被験体を治療するための医薬組成物。
【請求項8】
前記疼痛障害が、線維筋痛症または複合性局所疼痛症候群である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記構築物がpol IIベクターを含む、請求項7または8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
疼痛障害と診断された被験体の治療のための医薬を製造するための、請求項1または2に記載のオリゴヌクレオチド、あるいは請求項3に記載の医薬組成物の使用。
【請求項11】
前記疼痛障害が、線維筋痛症または複合性局所疼痛症候群である、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
疼痛障害と診断された被験体の治療のための医薬を製造するための、レポーター遺伝子と、配列番号:1~30、46~50、および52のうちのいずれかを有するオリゴヌクレオチド、ならびに配列番号:1~30、46~50、および52のうちのいずれかに少なくとも95%の配列相同性を有するオリゴヌクレオチドからなる群から選択される遺伝子発現修飾物質とを含む構築物の使用。
【請求項13】
前記疼痛障害が、線維筋痛症または複合性局所疼痛症候群である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記構築物がpol IIベクターを含む、請求項12または13に記載の使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
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【外国語明細書】