(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123472
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】触覚系における知覚
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20230829BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
G06F3/01 560
H04R3/00 310
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023090915
(22)【出願日】2023-06-01
(62)【分割の表示】P 2021068374の分割
【原出願日】2016-02-19
(31)【優先権主張番号】62/118,560
(32)【優先日】2015-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/193,234
(32)【優先日】2015-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/206,393
(32)【優先日】2015-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/275,216
(32)【優先日】2016-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517084885
【氏名又は名称】ウルトラハプティクス アイピー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ULTRAHAPTICS IP LTD
【住所又は居所原語表記】The West Wing Glass Wharf Bristol BS2 0EL (GB)
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【弁理士】
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100129263
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 洋之
(72)【発明者】
【氏名】ロング,ベンジャミン ジョン オリバー
(72)【発明者】
【氏名】カーター,トーマス アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】サブラマニアン,スリラム
(72)【発明者】
【氏名】ブレンキンソップ,ロバート チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】シア,スー アン
(72)【発明者】
【氏名】フライアー,ウィリアム ティエリー アライン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ツール、付属物または表面そのもののいずれとも非接触であることを必要とする相互作用表面上方に触覚フィードバックのための多様な向上した知覚技術を提供する。
【解決手段】システムは、人間の身体の一部である知覚部分中の一定範囲の受容体を特定して、均一に知覚可能なフィードバックを生成し、知覚部分内の受容体の範囲内にある振動周波数を選択し、動的に変化させて、受容部分全体において実質的に均一に知覚可能フィードバックを生成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)既知の相対位置および配列を有するトランスデューサーアレイから音響場を生成し、
ii)複数の制御ポイントを定義し、前記複数の制御ポイントはそれぞれ、前記トランスデューサーアレイに対する既知の空間関係を有しており、
iii)前記複数の制御ポイントのそれぞれに振幅を割り当て、
iv)前記音響場内に発生する変化が所定の閾値内に収まるように前記変化を調節しつつ、前記複数の制御ポイントを前記音響場内において移動させることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記音響場は、空中触覚フィードバックシステムによって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の制御ポイントを移動させるステップは、実質的にゼロである平均位相オフセットを用いることにより、平滑な移行を発生させる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の制御ポイントを移動させるステップは、定義された複数の曲線のセット上において行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記定義された曲線はスプライン曲線である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記スプライン曲線は、触覚フィードバックにおいて3次元表面の印象をシミュレートするように定義される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記触覚フィードバックは、前記3次元表面内に顕著に存在しない触覚領域を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記制御ポイントを振幅変調を用いて変調することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記振幅変調により、ステップivによって生成された前記触覚フィードバックと実質的に異なる触覚フィードバックが発生する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
実質的に均一に知覚可能なフィードバックを発生させるように、知覚部分内の受容体の範囲を特定し、前記知覚部分は、人間の身体の部分であり、
前記知覚部分内の前記受容体の範囲内にある少なくとも1つの振動周波数を選択し、
前記少なくとも1つの振動周波数を動的に変化させて、実質的に均一に知覚可能なフィードバックを前記知覚部分全体において発生させることを特徴とする触覚フィードバックを生成するプロセス。
【請求項11】
前記少なくとも1つの振動周波数を動的に変化させるステップは、空中触覚フィードバックシステムにおいて発生する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記少なくとも1つの振動周波数を動的に変化させるステップは、複数の周波数を多重化することを含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記知覚部分は人間の手である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項14】
前記少なくとも1つの振動周波数を動的に変化させるステップは、前記人間の手の特定の部位を標的として前記少なくとも1つの振動周波数を調節することを含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記少なくとも1つの振動周波数を調節するステップは、前記人間の手掌を標的とする約100Hzの振動と、前記人間の手の指先端を標的とする約200Hzの振動とを含む、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
i)既知の相対位置および配列を有するトランスデューサーアレイから音響場を生成し、
ii)複数の制御ポイントを定義し、前記複数の制御ポイントはそれぞれ、前記トランスデューサーアレイに対する既知の空間関係を有しており、
iii)前記複数の制御ポイントそれぞれに振幅を割り当て、
iv)向上した形状効果を生成することであって、前記向上した形状効果の生成は、
a)前記音響場内の触覚フィードバックを介して複数の形状角部および複数の形状縁を有する複製すべき実世界の形状を定義し、かつ
b)前記複数の形状角部の前記触覚フィードバックを増加させることにより前記実世界の形状の前記触覚フィードバックを変更するように、前記複数の制御ポイントを調節することにより行われることを特徴とする方法。
【請求項17】
前記トランスデューサーアレイから音響場を生成するステップにより、空中触覚フィードバックシステムが生成される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の前記制御ポイントの振幅を動的に変化させることをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記複数の制御ポイントを調節することは、前記複数の形状縁の複製の前記触覚フィードバックを向上させるように、前記複数の制御ポイント間の近接度を変化させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記複数の制御ポイントを調節することをステップは、前記複数の形状縁の複製の前記触覚フィードバックを向上させるように、前記複数の制御ポイントの位置を変化させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
i)既知の相対位置および配列を有するトランスデューサーアレイから音響場を生成し、
ii)複数の制御ポイントを定義し、前記複数の制御ポイントはそれぞれ、前記トランスデューサーアレイに対する既知の空間関係を有しており、
iii)前記複数の制御ポイントそれぞれに振幅を割り当て、
iv)前記複数の制御ポイントのうち少なくとも1つと関連付けられた前記音響場を変調して、所望の可聴音を生成することを特徴とする方法。
【請求項22】
前記音響場は、空中触覚フィードバックシステムによって生成される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記所望の可聴音は、前記複数の制御ポイントのうちの少なくとも1つから発生したものとして知覚される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記所望の可聴音として、概して同じ位置において局在型触覚フィードバックを発生させるように、前記複数の制御ポイントのうちの少なくとも1つと関連付けられた前記音響場を変調することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記所望の可聴音が所定の閾値を下回る知覚可能触覚フィードバックを発生させるように、前記局在型触覚フィードバックが前記所望の可聴音波から分離される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記所望の可聴音は、前記局在型触覚フィードバックによって生成される前記可聴音よりも大きな音としてユーザによって知覚される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
i)既知の相対位置および配列を有するトランスデューサーアレイから音響場を生成し、
ii)前記トランスデューサーアレイに対する既知の空間関係を有する第1の焦点を定義し、
iii)前記第1の焦点へ振幅を割り当て、
iv)前記焦点の経路が前記音響場内において少なくとも1回自己交差するように、前記第1の焦点を移動させることを特徴とする方法。
【請求項28】
前記音響場は、空中触覚フィードバックシステムによって生成される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
v)前記トランスデューサーアレイに対する既知の空間関係を有する第2の焦点を定義し、
vi)前記第2の焦点へ振幅を割り当て、
vii)前記第2の焦点の経路が前記音響場内において前記第1の焦点の経路と少なくとも1回交差するように、前記第2の焦点を移動させること
をさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の焦点および前記第2の焦点を前記音響場内において移動させるステップは、前記基本経路周波数の調波を用いる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の制御ポイントの経路が前記第2の制御ポイントの経路と前記音響場内において交差する空間により、前記音響場内の他の空間と比較して実質的に増加した触覚フィードバックが生成される、請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、以下の4件の米国仮特許出願の利益を主張する。これらの文献全てが参照により組み込まれる。
【0002】
1.米国仮特許出願第62/118,560号(出願日:2015年2月20日)
【0003】
2.米国仮特許出願第62/193,234号(出願日:2015年7月16日)
【0004】
3.米国仮特許出願第62/206,393号(出願日:2015年8月18日)
【0005】
4.米国仮特許出願第62/275,216号(出願日:2016年1月5日)
【背景技術】
【0006】
本開示は、触覚に基づいたシステムにおける向上した知覚技術に主に関する。
【0007】
マルチタッチ型表面は、公共の場において一般的になっており、大型ディスプレイがホテルロビー、ショッピングモールおよび他の人の出入りの多いエリアにおいて用いられている。これらのシステムは、インターフェースを動的に変化させることが可能であるため、複数のユーザが同時に相互作用することができ、指示も極めて少なくてすむ。
【0008】
このような表面にタッチする前に、触覚フィードバックを受け取ると有用である状況が有る。例えば、運転中などのディスプレイの視野が制限される場合や、ユーザが(例えば手が汚れているため)デバイスに触りたくない場合などがある。表面上方にフィードバックを提供できれば、視覚以外のさらなる情報チャンネルも得られる。
【0009】
空中触覚フィードバックシステムは、空気中に触感(tactile sensations)を生成する。空中触覚フィードバックを生成する1つの方法として、超音波の使用がある。すなわち、超音波トランスデューサーのフェーズドアレイを用いて、音響放射力を標的に付加する。このような音エネルギーの連続分布は、本明細書中において「音響場」と呼ばれ、触覚フィードバックなどの一定範囲の用途において有用である。
【0010】
よって、相互作用表面上方の触覚フィードバックのための多様な向上した知覚技術を提供し、ツール、付属物または表面そのもののいずれとも接触することが不要なシステムが所望されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
添付の図面において、別個の図面を通して類似の参照符号は、同一または機能的に類似のエレメントを指す。これらの図面と以下の詳細な説明は、本明細書に組み込まれかつ本明細書の一部を形成し、特許請求の範囲に記載の発明を含む概念の実施形態をさらに例示し、これらの実施形態の多様な原理および利点を説明する。
【0012】
図1は、触覚系において作製された形状の表現である。
【0013】
図2は、相互作用面内に同時生成された例示的な一連の5個の触覚制御ポイントを示す図である。
【0014】
図3は、制御ポイントが相互作用面を通じて移動される音響場シミュレーションの選択である。
【0015】
図4は、制約されていないトランスデューサーおよび制約されたトランスデューサーを例示する。
【0016】
当業者であれば、図中のエレメントは、簡潔さおよび明確さのために図示したものであり、必ずしも縮尺通りではないことを理解する。例えば、図中のエレメントのうちいくつかの寸法は、本発明の実施形態の理解を深めるため、他のエレメントに相対して誇張されている場合がある。
【0017】
適切な場合、本開示を当業者が本明細書中の記載の恩恵を受ければ容易に明らかである詳細によって不明瞭にしないために、装置および方法の構成要素を図面中の従来の記号によって示し、本発明の実施形態の理解に関連する特定の詳細のみを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
I.触覚系における音響場生成における課題
【0019】
音響場が内部に存在し得る空間中に1つ以上の制御ポイントを定義することにより音響場を制御することが、公知である。各制御ポイントには、制御ポイントにおける音響場の所望の振幅に等しい振幅値が割り当てられる。その後、トランスデューサーが、制御ポイントそれぞれにおいて所望の振幅を示す音響場を生成するように制御される。
【0020】
A.人間の手の特性
【0021】
振動は、皮膚内の機械受容器によって検出される。皮膚内の機械受容器は、0.4Hz~500Hzの範囲内の振動に応答する。人間の手が検出することが可能な最適な周波数範囲内の振動を生成するために、放射された超音波が変調され得る。変調周波数を変化させることにより、手における振動の周波数も変化可能となり、これにより、異なる触覚特性を生成することができる。異なる焦点を異なる周波数において変調させると、各ポイントのフィードバックを固有の個々の「感触」として付与することができる。このようにして、触覚および視覚フィードバックを相関させることができ、また、情報を触覚フィードバックを介してユーザへ転送できるように、著しく異なるテクスチャに意味を付与することができる。
【0022】
詳細には、人間の皮膚が音響場と相互作用すると、皮膚の振動は、機械受容器が刺激され、信号が神経系を介して脳へ送られることによって解釈される。例えば、手の掌表面には、4種類の異なる機械受容器があり、これらの機械受容器はそれぞれ、異なる範囲の周波数に応答する。これらの受容体それぞれをトリガするために必要な力は、振動周波数と共に変動する。例えば、パチーニ小体の最低活性化閾値は約200Hzであるのに対し、マイスナー小体は最も感度が高く、10~50Hzである。
【0023】
これらの受容体は、皮膚全体において、異なる密度で分布している。例えば、パチーニ小体は手の方が高密度で存在するため、200Hzの振動は、指先端においては、手掌ほど強くは感じられない。
【0024】
超音波触覚フィードバックシステムは、システムのユーザの皮膚上において振動触感(vibro-tactile sensation)を発生させる。集束超音波は、充分な力を交差ポイントに生成し、ユーザの皮膚を若干変位させる。典型的には、超音波触覚フィードバックシステムは、皮膚内の受容体の感知の閾値を越えた40kHz以上の周波数において超音波を用いる。そのため、ユーザは、集束超音波の開始および中断のみを検出することができる。皮膚内の受容体が検出することが可能な感覚を提供するために、集束超音波は、受容体の検出可能な範囲内においてより低周波数において変調される。この範囲は典型的には、1Hz~500Hzである。
【0025】
空中触覚フィードバックを用いたシステムを生成する場合、標的となる皮膚の部分に対して、振動の正しい周波数を選択することが重要となる。例えば、手が標的である場合、振動周波数を110Hzにすることは、強度の変動に関わらず手の全部分において感じることが可能となるため、良い選択である。
【0026】
B.触覚フィードバックのための超音波信号の送信
【0027】
人間の皮膚上の触感は、空中の標的上に音響放射力を付与する超音波トランスデューサーのフェーズドアレイを用いることにより、生成することができる。超音波の複数の波は、トランスデューサーから送られ、各トランスデューサーから放射された位相は、付与される音響放射力を最大化できるようにこれらの波が標的ポイントに同時に到着するように、調節される。
【0028】
1つ以上の制御ポイントを空間中に定義することにより、音響場を制御することができる。各ポイントには、制御ポイントにおける所望の振幅に等しい値を割り当てられ得る。その後、物理的な1組のトランスデューサーを制御して、制御ポイントにおいて所望の振幅を示す音響場を生成することができる。
【0029】
この技術の副作用として、超音波が崩壊し、変調周波数において音を発生させる点がある。そのため、200Hzの変調周波数により触覚フィードバックを生成する場合、200Hzの音も発生する。この可聴音は、ユーザにとって迷惑となる可能性があり、超音波触覚技術(ultrasound haptic technology)が適用される障壁となり得る。
【0030】
単一の周波数の音響場を生成するための最適な条件は、各トランスデューサーの初期状態を表すように活性化係数を割り当てることにより、実現することができる。しかし、触覚フィードバックを生成するために、潜在的により低い周波数の信号により、フィールドを変調することができる。例えば、200Hzの振動触覚効果(vibro-tactile effect)を達成するには、40kHzの音響場を200Hzの周波数で変調すればよい。この振動触覚効果を発生させるための方法を用いた場合、離散的で互いに素な複数組の制御ポイント間のトランスデューサー活性化係数を平滑に補間することにより、可聴内容が低減する場合があり、その結果、平滑な正弦振幅推移(sinusoidal amplitude variations)が制御ポイント位置において発生し得る。これらの正弦振幅推移に起因して、純音が発生する。純音は、トランスデューサーの状態の急激な変化に起因する周波数内容の変化よりも知覚ラウドネスはずっと低いものの、可聴状態のままである。
【0031】
生成された可聴ノイズの音量を低下させるように変調波形を形成することが可能であることが公知である(例えば、英国特許出願第1415923.0号に記載)。一般的に、焦点における圧力レベルの急激な変化を低減および回避した場合、可聴音のラウドネスが低下する。例えば、変調を純粋な矩形波によって行うと、純粋な正弦波によって変調した場合よりも大きな可聴音が発生する。
【0032】
さらに、この音響場において、1つ以上の制御ポイントが定義され得る。これらの制御ポイントを信号によって振幅変調させることができ、その結果、振動触覚フィードバックが空中に発生する。フィードバック生成のための別の方法として、以下のような制御ポイントを生成する方法がある。すなわち、これらの制御ポイントは、振幅変調が不要である代わり、これらの制御ポイントを空間的に周回移動させることにより、感じることが可能な空間時間変調(spatio-temporal modulation)を発生させる。どちらの方法も、別個または共に用いて、音および異なるテクスチャを発生させることができる。
【0033】
II.触覚系における均一な感覚の生成
【0034】
A.最適な触覚フィードバックを生成するためのステップ
【0035】
多重化周波数を用いて最適な触覚フィードバックを生成するステップは、以下を含む。
【0036】
1.皮膚内の受容体の分布および周波数応答範囲を知り、均一に知覚可能なフィードバックを生成する。
【0037】
2.全受容体の範囲内にある周波数を選択する。
【0038】
3.知覚可能でありかつ強力なまたは高品質の感覚のための最良の可能な振動周波数となるように、振動周波数を最適化する。
【0039】
4.振動周波数を常に最適な周波数になるように動的に調節する。
【0040】
5.標的領域全体にわたって最適なレベルの強度および品質が得られる振動を生成するように、複数の周波数を多重化する。
【0041】
B.触覚フィードバックの最適化
【0042】
フィードバックの品質および知覚強度を最適化するために、相互作用実行時に振動周波数を動的に変化させることが可能である。例えば、触覚閾値の状況において、手が何らかの固定面を通過し、その手および当該面の交差において発生した振動線が得られた場合、その振動の周波数をリアルタイムで調節して、その現在振動している手の領域に対して最適化を行うことができる。1つの可能性として、掌中心が受けるのは200Hzの振動であるのに対し、指が受ける振動を100Hzとすることがある。
【0043】
この動的な調節は、複数のポイントのフィードバックを用いても可能である。例えば、ボタンの空中アレイを、各ボタンについて空気中の振動の1つの局在型ポイントによって表すことができる。ボタンの位置および配列を調べるために、手をボタンアレイ上方において移動させると、各ボタンの振動周波数をリアルタイムで調節して、標的となる手の部分に対して最適な周波数を整合させることができる。
【0044】
動的な調節が不可能であるかまたは望ましくない状況が、実際に多数存在する。例えば、手の別個の部分を決定するように追跡システムを高度化することができない場合もあれば、必要な処理出力が高すぎる場合もある。
【0045】
これらの状況において、標的である皮膚領域にわたって一定の均一な網羅範囲が得られるように、周波数を多重化することが可能である場合がある。例えば、手を標的とする場合、フィードバックポイントを100Hzおよび200Hz双方で多重化することができる。掌は200Hz成分に対して強く反応する一方、指先端は100Hz成分に対して強く反応する。このようにすることにより、手にわたって均一に感じることが可能なフィードバックポイントが確立される。
【0046】
III.明瞭な形状および角部の生成
【0047】
空中触覚形状を生成するために振動を用いた場合、角部について困難が生じる。触覚縁検出は、極めて局在型の皮膚変位(伸張)が必要となることが分かっており、現在使用されている超音波周波数においては、これは不可能である。縁の検出は確実にできるものの、角部については、容易に認識できるほど充分に大きなフィーチャではない。
【0048】
超音波フィールドにおいて高圧力ポイントを使用すると、振動が伝わり、これを「制御ポイント」と呼ぶ。これらのポイントは、小直径(例えば、40kHzにおいて8.6mm)の波長周囲の領域内において局所的フィードバックを提供する。これらの制御ポイントは、形状の感覚を空間に生成するように、プログラムに従って3D空間内に配置され得る。
【0049】
忠実度のリターン減少の代わりに、ノイズ増加が発生するため、約2波長(40kHzにおいて~2cm)離れた制御ポイントの事実上の最大密度がある。すなわち、曲率依存制御ポイント密度(curvature-dependent control point density)を用いた場合、角部ポイントを目立たせるためには、縁忠実度を犠牲にしなくてはならなくなる。多くの状況において、これでも、触覚形状内の角部を区別できるようにするには不十分である。
【0050】
角部を向上させるには、空間中の角部を強調するように形状の縁を内方にゆがめることができ、その結果、空間目印から角部を知覚することが可能になるような様態で強調された触覚表現が生成される。
【0051】
図1を参照して、左側のボックス10中に示すのは、角部強調ゆがみ無しの形状である。
図1の真ん中のボックス20に示すのは、角部強調ゆがみ機能を角部を触覚的に強調させるために適用した様子である。
図1の右側のボックス30中に示すのは、さらなるゆがみを付加した様子であり、状況および所望の効果に応じて効果が調整可能であることを示す。
【0052】
形状ゆがみを達成した後、角部を強調させるための他の技術も使用することができる。詳細には、所望の効果が得られるように、曲率依存制御ポイント密度およびポイントの時間的回転を変更することができる。この形状ゆがみを3Dジオメトリの断面へ適用して、触覚3Dジオメトリを明瞭な角部と共に生成して、触覚忠実度を増加させることができる。これは、注目を集めるために形状中の顕著なフィーチャを強調表示するプロセスとしても、適用することができる。
【0053】
IV.パルシングポイントの生成
【0054】
制御ポイントのデフィニションおよび密度には事実上制限があることが分かっているため、触覚的に心地良いパルシングポイントを生成することが可能である。制御ポイントを強制的に近密に集合させることにより、これらの制御ポイントはマージし、より小型でありかつより弱い振動になる。これらの制御ポイントを回転させ、さらに近密に集合させてさらに離隔させることにより、局在型のパルシング感覚を発生させることができる。この局在型のパルシング感覚は、スタンバイまたは準備完了のプロンプトを触覚的に与えることができる。
【0055】
図2を参照して、図示されているのは、相互作用面内に同時生成された、例示的な一連の5個の制御ポイントである。図中、これらのポイントは、波長の直径を有する。これら5個のポイントは高速で回転するため、区別することができない。
図2の左側のパネル40において、5個のポイントが回転し、単一の大型触覚ポイントとして知覚されるように充分に離隔される。中央パネル50から分かるように、これらのポイントが旋回して集合すると、触覚ポイントは縮んで弱くなる。右側パネル60において、5個の制御ポイントはマージされて、単一の制御ポイントとなる。その後、このプロセスを逆転させて、触覚ポイントのサイズおよび強度を増加させ、次にこのシステムを繰り返して、パルシング感覚を生成する。その結果、経時的により大きくおよび小さく感じられるポイントが得られ、その結果、触覚的に心地良いパルシング効果が発生する。そのため、
図2は、直径が経時的に小さく/大きくなる円内において回転する1組のポイントを示す。回転円に対する別の方法として、焦点を2つの位置間において移動させる方法がある。
【0056】
図3を参照して、(挿入図として境界が黒いボックスによって主に示す)相互作用面を通じて制御ポイントを移動させる、選択された音響場シミュレーションが図示されている。各図の下縁に沿って小さな塗りつぶされた黒丸は、制御ポイントを再現するように構成されたトランスデューサーエレメントを示す。左側のパネル70において制御ポイントを相互作用面の下側において発生させると、相互作用空間中において焦点合わせは発生しない。焦点が上方移動すると、相互作用空間は、中央パネル80に示すような制御ポイントを含むようになる。最後に、右側パネル90において、焦点が、相互作用空間を通じて上方移動し、相互作用空間から出て行く。その後、このプロセスを逆転させ、繰り返して、パルシング感覚を発生させる。よって、制御ポイントを挿入図ボックスを通じて前後に移動させることにより、中央領域全体においてパルシング感覚を生成することができる。このシナリオにおけるユーザ検出は、相当粗雑になり得る(例えば、中央領域中の光センサー)。
【0057】
これらの図に示すような目的は、「パルス状の」感覚を生成することである。「パルス状の」という用語は、経時的により強く/弱くかつより大きく/小さくなる感覚として定義される。比較のため、簡単な変調の場合、経時的により強く/弱くなるだけである。
【0058】
さらに、
図3に示す1つの可能な例において、焦点を2つの位置間において線形補間する。2つの位置のうちの1つは相互作用ゾーンの垂直方向に下側にあり、他方は垂直方向に上側にある。焦点が上下に移動すると、相互作用ゾーンにおいて経験される感覚は、超音波焦点が円錐形状になるように、より小さく/大きくなる(図中、左側の画像70および右画像90上において大きくなり、中間画像80中において小さくなる)。これは、(中間画像80中に示す)最適な焦点から離隔して強度が低下すると、感覚をより強く/弱くする効果も有する。
【0059】
相互作用ゾーンを通じて上下に移動させると、追跡システムについて恩恵も得られる。より低い精度が、垂直方向において要求される。
図3に示すように、相互作用ゾーンが上下に移動されるときも、経時的により大きく/小さくかつより強く/弱くなる感覚も経験する。すなわち、追跡システムからの垂直軸においてより低い精度が必要になり、その結果、より廉価な追跡システムの使用が可能になる。
【0060】
あるいは、焦点合わせ位置を変化させると、パルシング感覚の生成が可能になる。これは、制御ポイントを交互に焦点合わせおよび焦点はずれさせる効果を有し、その結果、低忠実度パルシング(lower fidelity pulsing)が生成する。これは効果が小さいものの、アクティブセンシングが不要なプリベークされたオフライン応答が必要となる状況において有用になり得る。
【0061】
V.可聴および触覚フィードバックの組み合わせおよび設計
【0062】
A.可聴フィードバックの設計
【0063】
可聴音が変調波形によって生成されるため、発生される音を設計することができる。例えば、集束超音波を純粋な波形で変調する代わりに、「クリック」音の波形で変調を行うと、可聴「クリック」音が生成される。そのため、変調波形を設計し、動的に変化させて、任意の可聴音を生成することができる。
【0064】
集束超音波キャリア波を用いる場合、可聴音が焦点において最高強度で生成され、指向性になる。ユーザにとって、これは、音が焦点から発生しているようにみえることを意味する。これは、触覚系において極めて有用であり得る。例えば、超音波をユーザの指先端上に焦点合わせすることにより、空中ボタンが生成され得る。次に、超音波は、「クリック」音の波形によって変調され得る。ユーザは、その指先端から発生した触覚クリック感覚および可聴「クリック」音双方を知覚する。そのため、触覚および音声フィードバック双方が、空中において同一位置において生成される。
【0065】
B.音声および触覚フィードバックの分離
【0066】
最適な触覚フィードバックを提供する変調波形は、最適な可聴音を提供するものと異なることが多い。例えば、心地良い「クリック」音を発生させる変調波形は、極めて弱い触感を生成し得、または、強力な触感を提供する変調波形は、不快な音を提供し得る。触覚および音声フィードバックの組み合わせについて設計する場合、これら2つの間のトレードオフが必要になる。
【0067】
これに対する解決法として、焦点の複数のポイントを音響場内に生成する方法がある。これらのポイントはそれぞれ、触覚効果の生成または可聴フィードバックの生成を意図し得る。簡単なボタンクリック例において、1つのポイントを触覚効果を生成するように指先端上に位置決めする一方、別のポイントを可聴音を生成するように音響場内のどこかに位置決めすることができる。このシナリオにおいて、可聴ポイントは、ユーザとの接触を回避するように位置決めされるため、感じることができない。
【0068】
C.触覚効果の聴覚音による聴覚マスキング
【0069】
音の聴覚マスキングは、1つの音の知覚が別の音によって影響を受けるかまたは被覆される場合に発生する。集束超音波からの音が指向性であるため、可聴ポイントをトランスデューサーとユーザの頭または耳との間の経路に沿った、その音の知覚音量が最大化されるどこかに位置決めすることができる。これと対照的に、触覚ポイントによって生成される可聴音が、ユーザから離隔方向に、指から反射される。そのため、これは、より小さな音として知覚される。そのため、触覚ポイントからの可聴音が可聴ポイントからの可聴音によってマスクされ、ユーザは可聴ポイントだけを聴くことができる。
【0070】
触覚および可聴ポイントはそれぞれ、固有の個々の変調波形を持ち得る。その結果、各種のポイントを個々の所望の効果のために最適な波形によって変調させることができる。実際、システムは、2つの同時ポイントのみを有することに限定されない。触覚フィードバックおよび可聴フィードバック双方の多数の独立した同時ポイントを持つことが可能である。
【0071】
VI.触覚系における空間時間変調
【0072】
A.絶対的な位相オフセット
【0073】
トランスデューサー活性化係数の任意の2つの複合空間(complex spaces)間の平滑な移行を生成するには、これらのトランスデューサー活性化係数間の差をできるだけ小さくする必要がある。全ての組のトランスデューサー活性化係数は、他の活性化係数パターンに対する絶対位相という予備の自由度を1つ有する。双方を一定の任意のゲージポイントに結びつけること(例えば、双方をできるだけゼロ位相オフセットにすること)により、2つのパターン間の移動に必要なトランスデューサーにおける周波数シフトが最小になる。
【0074】
これを
図4に示す。
図4は、2つのトランスデューサーの例示的アレイを示す。このアレイの焦点合わせは、双方のトランスデューサー間の波の相対的位相オフセットに起因し、これを両者間の角度によって記述する。左側の制約されていない例において、時間t=1(110)について規定された複素活性化係数に到達するには、t=0(100)のときの位相を大幅に変化させる必要がある。その結果、多数のトランスデューサーにわたってスケーリングされた場合において、過渡挙動、周波数シフトおよび出力非効率が発生する。しかし、右側の制約された例において、トランスデューサー係数の合計は、t=0(120)およびt=1(130)において実数直線へ制約され、適切な相対位相を得るための角度の小さな変化が促進される。
【0075】
任意の特定のパターンの複素値トランスデューサー活性化係数(complex-valued transducer activation coefficients)の合計を用いて、平均を生成することができる。演算後、この平均の複素共役をとることが出来、単位振幅複素値(unit amplitude complex value)にすることができる。その後、各トランスデューサー活性化係数をこの値で乗算することにより、平均位相オフセットがゼロになる。これは、予備の自由度を用いて、各トランスデューサーに発生する変化を線形的に最小化して、微小の異なるパターンに対するトランスデューサー活性化係数の複素位相空間(complex phase spaces)間の差をゼロに近づけることである。これは、音響場およびトランスデューサー電力消費の急激な変化の低減に主に1番必要となることである。
【0076】
B.ポイント、線および形状の空間時間変調
【0077】
制御ポイントの生成および崩壊(ゼロから振幅が増加するかまたはゼロへ振幅が低減すること)は、振幅変動と共に発生するノイズと関連付けられる。ノイズ低減を最大化するために、非変調制御ポイントを生成し、パラメータ的に定義された複数組の曲線ピースの周囲において移動させる。非変調制御ポイントはノイズ低減を最大化させるものの、「より変調されていない」制御ポイントを用いた場合も、ノイズをより小さな範囲まで低減することができる(すなわち、0~1ではなく0.5~1で振幅を変調する)。
【0078】
定義された曲線は、ポイントが曲線上において連続的に循環する場所においては閉じ、ポイントが逆転する場所においては開く。あるいはまた、これらのポイントは、曲線端部に到達すると、「消滅」し得る。複数のポイントが単一の開曲線を強調する場合、出力の知覚的または物理的低下を回避するために、これらのポイントが単一のポイントとして知覚できるほど近密に集合したときにこれらのポイントの位置を交換すると有用であり得る。
【0079】
この開または閉の経路曲線は、3次元のスプライン曲線として実行され得、空間時間に変調されたフィードバックを生成するためのシステムのきわめて重要な基礎的要素である。これらの曲線のうち多くは、3次元空間を通じて延び、外形として機能し得、形状または表面の印象を生成するために用いられ得る。半径が極めて小さな円形経路を用いて、ポイントの印象を生成することができる。
【0080】
この技術の場合、同一応答の生成において焦点合わせ時間が少なくて済むため、より大きな面積を触覚的に作動させることができる。例えば、制御ポイントを用いた領域の「塗装」を用いて、空間中に感受可能なより広い領域を生成して、皮膚中のより多数の受容体を刺激することができる。
【0081】
作動できる領域を拡張できれば、ネガティブスペースの印象を発生させる場所からフィードバックを除去することができる。例えば、あるピースが欠如している円を生成して、触覚基準(haptic fiducial)を表現することもできるし、あるいは、著しく欠如している領域を含む感覚領域を生成することもできる。空間の周囲において触覚を放出することにより、1つの領域を(直接感受できなくても)強調することができる(例えば、視界の理由のため、当該領域から手または腕を離しておく必要がある場合)。
【0082】
C.制御ポイントからのパラメトリックサウンド
【0083】
制御ポイントからの触覚感覚は、空間時間ストロボ効果(spatio-temporal strobe effect)の作用を通じて生成される。触覚効果の発生源は、振幅変調と別個で異なるため、同一のポイント、線または形状中において高品質の触覚感覚を生成しつつ、同時に振幅変調を非触覚可聴内容と共に用いることができる。
【0084】
本技術の究極の目的は、サイレント動作を可能にすることである。可聴出力は音響場の時間的変化と相関するため、可聴出力をできる限り平滑にし、また最小化する必要もある。この効果を得るために、超音波集束パターンの制御ポイントをずっと高強度の超音波デバイスと共に時間的に不変のまま生成するかまたはその時間振幅を操作するのではなく、これらの制御ポイントを高速更新(好適には2kHzを越える速度)で平滑に周回させて、感覚を標的ポイント、線および形状において生成することができる。
【0085】
このように変調を行うことにより、機械受容器または焦点が合わされた時間出力の密度を簡単に考慮して予測されるよりもずっと低いストローブ周波数の利用が可能になる。そのため、制御ポイントの空間時間および振幅変調双方を同時に組み合わせることにより、より強力な触覚フィードバックの生成も可能になる。異なるリズムの制御ポイント運動を用いて異なるテクスチャを提供することができるため、振幅変調によってテクスチャを空間時間的に変調された制御ポイントへ提供でき、その逆も可能になる。
【0086】
VII.自己交差曲線を用いた周波数制御
【0087】
ポイントを生成し、振幅変調無しに移動させると、空気中に経路を触覚的に作動させることができる。ポイントを経路に所与の速度および一定の周波数で繰り返し追随させることにより、触覚効果を空気中の経路上に発生させることができる。経路を長くすると、経路距離も増加するため、ポイントが所与の周波数を達成するための速度が必要になる。その結果、フィードバック生成に利用することが可能な出力密度が低下する。複数のポイントにより経路を触覚的に作動させて、経路周囲においてさらに均等な分布を所与の周波数で生成することができる。しかし、その場合、これらのポイントにおいて発生させることのできる出力が低下する。さらなる大きな制約として、開経路中に発生する不連続性(例えば、別個のポイントまたは線セグメント)に起因して、経路を閉じる必要があるかまたは可聴音が発生する点がある。
【0088】
これらの問題を解消するための1つの方法として、ポイントが曲線に沿って移動しているときにポイントを低速化または加速させる方法がある。しかし、空間時間変調と併用した場合、経路に沿った異なるポイントにおいて周波数を異ならせることができない点と、ポイントの低速化が過度になった場合、ポイントが触覚的に知覚可能な周波数範囲から外れるため、知覚しにくくなる点との双方において制約が発生する。逆に、ポイントの経路に沿った移動が高速過ぎる場合、さらなる空気障害が生じ、よって可聴ノイズの原因になり得る。
【0089】
ポイントの速度を簡単に変更する代わりに、空間中において1回以上自己交差する自己交差曲線の構築を通じて、経路上の所与のポイントにおける出力量の増加を実現することができる。交差ポイントの局所的近隣において、基本経路周波数(base path frequency)の調波を表現することができる。その結果、このように周波数挙動を変化させると、交差点における出力も増加し、その結果、経路に沿った他の位置と対照的な交差領域において、豊富な種類の挙動を実現することができる。この交差は、人間が触って検出することが可能な周波数範囲内の交差のみに設計されるかまたは周波数範囲の外、すなわち触覚的に検出不可能な公差のみに設計されることもできる。その結果、皮膚内の異なる機械受容器の特定の広範な標的化も可能になる。多くのシナリオにおいて、触覚フィードバックによって包囲される領域内に触覚フィードバックが無い場合、フィードバックそのものよりもより強く感受され得る。
【0090】
1回以上交差する複数の経路も、生成され得る。その結果、特定のリズムまたはテクスチャを具現化する触覚カデンツ(haptic cadence)のパターンが得られる。これは、経路(単数または複数)を反復可能にすべきであるかまたは同一位置における曲線の交差点を都度設けることを必ずしも意味しない。場合によっては、個々に考慮されるポイントの運動が高速過ぎるかまたは弱すぎて感受できないことに起因して、交差点(単数または複数)が自己交差により触覚的に強調させるように設計されることができる。各場合において、これらの複数の交差するかまたは自己交差する曲線は、曲線が同一空間を占有する、ポイント領域および経路セグメントのいずれかまたは双方を含み得る。
【0091】
高精度の位置において定義された曲線に沿って移動するポイントは、実際の物理的サイズを有する。「曲線」の抽象的概念はポイントのサイズを反映しないため、多くの場合、抽象的な曲線は交差しなくてよく、その代わりに、平均出力および周波数の増加を実現するために、ポイントの効果領域を重複させるだけでよい。これに起因して、1組の経路または自己交差曲線が予期しない触覚結果に繋がる場合もある。そのため、発生した触覚パターンを周波数/占有グラフを用いて最良に視覚化するとよく、また、このような周波数/占有グラフを代表的触覚曲線との間で変換することができる。
【0092】
VII.結論
【0093】
上記実施形態の多様な特徴は、向上した触覚系システムの多数の変形例が得られるように選択および組み合わせることができる。
【0094】
上記明細書において、特定の実施形態について述べてきた。しかし、当業者であれば、以下の特許請求の範囲中に記載のような発明の範囲から逸脱することなく多様な改変および変更が可能であることを理解する。よって、本明細書および図は、限定的なものではなく例示的なものとしてみなされるべきであり、このような改変は全て、本教示の範囲内に収まるものとして意図される。
【0095】
恩恵、利点、問題の解決法、ならびに任意の恩恵、利点または解決法をもたらし得るかまたはより顕著にさせ得る任意のエレメント(単数または複数)は、上記の特許請求の範囲のうち一部または全ての重要な、必須のまたは本質的な特徴またはエレメントとして解釈されるべきではない。本発明は、本出願の係属時に行われる任意の補正および発行された特許請求の範囲の全ての均等物を含む添付の特許請求の範囲のみによって定義されるものである。
【0096】
さらに、本明細書において、関連用語(例えば、第1および第2、上および下)は、ひとえに1つのものまたは動作を別のものまたは動作と区別するために用いられるものであり、このような関係または順序を当該ものまたは動作間に要求または暗示するものでは必ずしもない。「comprises」、「comprising」、「has」、「having」、「includes」、「including」、「contains」、「containing」などの用語またはそれらの他の任意のバリエーションは、エレメントのリストを含むプロセス、方法、物または装置が、当該エレメントのみでなく、当該プロセス、方法、物または装置に対して明示的にリストされていないかまたは固有ではない他のエレメントも含み得るように、非排他的に網羅するものとして意図される。「comprises…a」、「has…a」、「includes…a」、「contains…a」の後に続くエレメントは、さらなる制約無く、当該エレメントを含むプロセス、方法、物または装置中のさらなる同一のエレメントの存在を除外しない。「a」および「an」という用語は、本明細書中他に明記無き限り、1つ以上のものを指す。「実質的に」、「本質的に」、「およそ」、「約」などの用語または他の任意の変形例は、当業者が理解する意味に近い意味で定義される。本明細書中において用いられるような「結合された」とは、接続されたものとして定義されるが、必ずしも直接的または機械的な接続を指さない。特定の様態で「構成された」デバイスまたは構造は、少なくともそのような様態で構成されるが、羅列されていない様態でも構成され得る。
【0097】
本開示の要約は、読者が本技術開示の内容を容易に理解できるようにするためのものであり、特許請求の範囲の範囲または意味を解釈または制限するために用いられるものではないとの理解と共に提出される。加えて、上記の詳細な説明において、本開示の合理化のため、多様な特徴が多様な実施形態において一緒にグループ分けされることが分かる。この開示の方法は、特許請求の範囲の実施形態に各請求項に明示的に記載された特徴よりも多数の特徴が必要であるという意図を反映したものと解釈されるべきではない。そうではなく、下記の特許請求の範囲に反映するように、本発明は、単一の開示の実施形態の全特徴未満の中に存在する。よって、以下の特許請求の範囲は、詳細な説明中に組み込まれるものであり、各請求項は、別個の発明として独立した存在である。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)既知の相対位置および配列を有するトランスデューサーアレイから音響場を生成するステップと、
ii)前記トランスデューサーアレイに対する既知の空間関係を有する第1の焦点を定義するステップと、
iii)前記第1の焦点へ振幅を割り当てるステップと、
iv)前記第1の焦点の経路が、前記音響場内において少なくとも1回自己交差する自己交差曲線を定義して、その交差点で触覚効果が生成されるように、前記第1の焦点を移動させるステップと、を含むことを特徴とする触覚効果を生成する方法。
【請求項2】
前記音響場は、空中触覚フィードバックシステムによって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
v)前記トランスデューサーアレイに対する既知の空間関係を有する第2の焦点を定義するステップと、
vi)前記第2の焦点へ振幅を割り当てるステップと、
vii)前記第2の焦点の経路が、前記音響場内において前記第1の焦点の前記経路と少なくとも1回交差するように、前記第2の焦点を移動させるステップとをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記音響場内において前記第1の焦点および前記第2の焦点を移動させる前記ステップは、基本経路周波数の調波を用いる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第1の制御ポイントの経路が、第2の制御ポイントの経路と前記音響場内において交差する空間は、前記音響場内の他の空間と比較したとき、実質的に増加した触覚フィードバックを生成する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
i)既知の相対位置および配列を有するトランスデューサーアレイから、空中触覚フィードバックシステムによって、音響場を生成するステップと、
ii)第1の効果領域を有し、かつ、前記トランスデューサーアレイに対する既知の空間関係を有する第1の制御ポイントを定義するステップと、
iii)前記第1の制御ポイントへ振幅および第1の初速度を割り当てるステップと、
iv)前記第1の制御ポイントの前記第1の効果領域が、前記音響場内において少なくとも1回重なり合って自己交差し、前記第1の効果領域の経路が自己交差する空間で触覚効果が生成されるように、前記第1の初速度で始まる前記第1の制御ポイントを移動させるステップと、を含むことを特徴とする触覚効果を生成する方法。
【請求項7】
前記音響場内において前記第1の制御ポイントを移動させる前記ステップは、基本経路周波数の調波を用いる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の効果領域の前記経路が自己交差する前記空間は、前記音響場内の他の空間と比較したとき、実質的に増加した触覚フィードバックを生成する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の効果領域の前記経路が自己交差する前記空間は、前記音響場内の他の空間と比較したとき、実質的に減少した触覚フィードバックを生成する、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
v)第2の効果領域を有し、かつ、前記トランスデューサーアレイに対する既知の空間関係を有する第2の制御ポイントを定義するステップと、
vi)前記第2の制御ポイントへ振幅および第2の初速度を割り当てるステップと、
vii)前記第2の効果領域が、前記音響場内において前記第1の効果領域と少なくとも1回交差するように、前記第2の初速度で始まる前記第2の制御ポイントを移動させるステップとをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記音響場内において前記第1の制御ポイントを移動させる前記ステップおよび前記音響場内において前記第2の制御ポイントを移動させる前記ステップは、基本経路周波数の調波を用いる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記音響場内において前記第1の効果領域の前記経路が前記第2の効果領域の経路と交差する空間は、前記音響場内の他の空間と比較したとき、実質的に増加した触覚フィードバックを生成する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記音響場内において前記第1の効果領域の前記経路が前記第2の効果領域の経路と交差する空間は、前記音響場内の他の空間と比較したとき、実質的に減少した触覚フィードバックを生成する、請求項10に記載の方法。
【外国語明細書】