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特開2023-123544細菌及び真菌に対して有効な抗菌性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123544
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】細菌及び真菌に対して有効な抗菌性組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 43/16 20060101AFI20230829BHJP
   A01N 59/14 20060101ALI20230829BHJP
   A01N 59/02 20060101ALI20230829BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20230829BHJP
   C11D 3/40 20060101ALI20230829BHJP
   C11D 3/04 20060101ALI20230829BHJP
   C11D 7/10 20060101ALI20230829BHJP
   C11D 3/48 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
A01N43/16 C
A01N59/14
A01N59/02 Z
A01P3/00
C11D3/40
C11D3/04
C11D7/10
C11D3/48
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023094554
(22)【出願日】2023-06-08
(62)【分割の表示】P 2020523686の分割
【原出願日】2018-07-12
(31)【優先権主張番号】62/531,528
(32)【優先日】2017-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/531,538
(32)【優先日】2017-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520011256
【氏名又は名称】テルミル,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブロマー,チャド エル.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】迅速に作用し、効果が高く、毒性が低く、且つ抗生物質抵抗性を生じる可能性が少ない抗菌性化合物を提供する。
【解決手段】本発明は、キサンテン染料と、キサンテン染料と相乗的に作用する構成要素とを提供する抗菌性組成物、並びに生体組織の処置に抗菌性組成物を使用する方法に関する。具体的には、キサンテン染料と相乗的に作用する構成要素は、有機染料、ホウ酸塩、無機塩、及びそれらの組み合わせである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キサンテン染料と、
有機染料、ホウ酸塩、無機塩、及び/又はそれらの組み合わせのうちの1種以上と、
を含む抗菌性組成物であって、
有機染料、ホウ酸塩、無機塩、及び/又はそれらの組み合わせがキサンテン染料と相乗的に作用する、抗菌性組成物。
【請求項2】
キサンテン染料がフルオレセイン、エオシン、ローダミン、及び/又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
キサンテン染料が式(I)~(XXIX)のいずれかに記載の化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
キサンテン染料がフロキシンBである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
キサンテン染料と構成要素とが約0.001:1~約1:0.001の比で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
キサンテン染料が約0wt.%~約50wt.%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
相乗的に作用する構成要素が有機染料である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
相乗的に作用する構成要素が、フルオレセイン(3',6'-ジヒドロキシスピロ[2-ベンゾフラン-3,9'-キサンテン]-1-オン)、フルオレセインイソチオシアネート、NHS-フルオレセイン、カルボキシフルオレセイン、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル類、テトラフルオロフェニルエステル類、保護フルオレセイン化合物、及びそれらの組み合わせである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
構成要素がフルオレセインである、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
構成要素が少なくとも50マイクロモルの量で存在する、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
構成要素が約0wt.%~約60wt.%の量で存在する、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
構成要素がホウ酸塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
構成要素が、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸二ナトリウム、又はそれらの組み合わせである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
構成要素が少なくとも2ミリモルの量で存在する、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
構成要素が約50wt.%~約95wt.%の量で存在する、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
構成要素が無機塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
構成要素が、アルミニウム塩、アンモニウム塩、バリウム塩、ベリリウム塩、カルシウム塩、セシウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、ナトリウム塩、ストロンチウム塩、及びそれらの組み合わせである、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
構成要素がアルミニウム塩である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
構成要素が硫酸アルミニウムである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
構成要素が少なくとも75ミリモルの量で存在する、請求項16に記載の組成物。
【請求項21】
構成要素が約50wt.%~約100wt.%の量で存在する、請求項16に記載の組成物。
【請求項22】
少なくとも1種の付加的機能性成分を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
少なくとも1種の付加的機能性成分が、抗菌性化合物、界面活性剤、増量剤、溶媒、自然生長促進剤、担体、乳化剤、分散剤、防霜剤、日光保護剤、増粘剤、及びアジュバント、並びに昆虫の食物源の群から選択される、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
少なくとも1種の付加的機能性成分が、活性化合物の約0.01重量%~約95重量%の量で含まれる、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
細菌及び/又は真菌感染を処置及び/又は予防する方法であって、
キサンテン染料、及び有機染料、ホウ酸塩、無機塩、及びそれらの組み合わせのうちの1種以上を含む抗菌性組成物を形成するステップと、
標的を組成物に接触させるステップと、を含み、
有機染料、ホウ酸塩、無機塩、及び/又はそれらの組み合わせがキサンテン染料と相乗的に作用する、方法。
【請求項26】
標的が植物及び/又はその根系である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
標的が果実、野菜、穀物の表面、又はその他の食品の表面である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
標的が動物組織である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
標的が水である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
各種線虫病、各種さび病、各種黒穂病、各種いちょう病、各種斑点病、各種胴枯れ病、各種ウドンコ病、各種腐敗病、各種葉焼病及びモザイク病、各種カビ病、各種カンキツグリーニング病の標的の処置を更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
接触ステップが、堆肥処理施設、堆肥保管施設、畜舎、動物飼育業務施設、又は排水処理施設で実施される、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
接触ステップが食品加工施設で実施される、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
組成物を所望の処理濃度に希釈する希釈ステップを更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
組成物を規定の期間にわたり標的に接触させておくことを更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項35】
組成物を標的から濯ぎ落とすことを更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項36】
接触が、スプレー、塗抹、コーティング、塗布、噴霧、浸漬、混合、コーティング、及びそれらの組み合わせのいずれかによって実施される、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年7月12日に出願された米国仮出願第62/531,528号、及び2017年7月12日に出願された米国仮出願第62/531,538号の優先権を主張するものであり、上記仮出願の内容全体は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、概して、抗菌性組成物の分野に関する。具体的には、本発明は、キサンテン染料とキサンテン染料と相乗的に作用する構成要素とを含む抗菌性組成物、並びに生体組織の処置に抗菌性組成物を使用する方法に関する。具体的には、キサンテン染料と相乗的に作用する構成要素は、有機染料、ホウ酸塩、無機塩、及びそれらの組み合わせである。
【背景技術】
【0003】
感染性疾患、特に昆虫、有害生物、細菌、ウイルス、真菌などによって引き起こされる感染性疾患を防除することは、産業上、特に、作物生産業及び畜産業、ヒト及び動物の医療及びヘルスケア業、並びに環境処理業、例えば、バイオレメディエーションや水処理において常に必要とされている。しかしながら、更なる懸案事項として、昆虫、細菌、及び真菌において、現在利用できる化学的防除処理に対する殺虫剤抵抗性、細菌抵抗性、及び殺真菌剤抵抗性の増加が認められることがあり、これは、そのような化学物質の有効性を低下させ、作物及び動物を病気の危険にさらし、更には使用後にその化学的防除処理が無効であるとわかった場合には、栽培者、農場経営者、牧場経営者、製造者、及び購入者に経済的負担を与える。従来及び現在使用されている化学的防除処理は、抵抗性への対処にある程度成功してきたが、抵抗性の影響を受けにくい、効果的な広域スペクトラム抗菌性組成物が必要とされている。
【0004】
更に、細菌及び真菌の双方に対して有効な医療用及び農業用の抗菌剤も必要とされている。化合物、例えば、キサンテン染料及びフロキシンB(PhlB)は、細菌種と真菌種とで生じる効果が異なる。
【0005】
細菌の場合、キサンテン染料ファミリーのメンバーそれぞれは、異なるグラム陽性(グラム(+))菌LD50濃度を有するが、これらは、グラム陰性(グラム(-))菌に対しては効果が小さい。そのような関連細菌株は、産業の性質によるが、典型的には、アクチノミセス(Actinomyces)、バチルス(Basillus)、クロストリジウム(Clostridium)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、エンテロコッカス(Enterococcus)、ガードネルラ(Gardenerella)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、リステリア(Listeria)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、ノカルジア(Norcardia)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、ブドウ球菌(Stphylococcus、Streptococcus)、ストレプトミセス(Streptomyces)などの科のグラム陽性菌、及びボレリア(Borellia)、ボルデテラ(Bortadella)、バークホルデリア(Burkholderia)、カンピロバクター(Campylobacter)、クラミジア(Chlamydia)、エンテロバクター(Enterobacter)、大腸菌(Eschericia)、フソバクテリウム(Fusobacterium)、ヘリコバクター(Heliobacter)、ヘモフィルス(Hemophilus)、クレブシエラ(Klebsiella)、レジオネラ(Legionella)、レプトスピラ(Leptospriria)、ナイセリア(Neisseria)、硝酸菌(Nitrobacter)、プロテウス(Proteus)、シュードモナス(Pseudomonas)、リケッチア(Rickettsia)、サルモネラ(Salmonella)、セラチア(Serratia)、シゲラ(Shigella)、チオバクター(Thiobacter)、トレポネーマ(Treponema)、ビブリオ(Vibrio)、エルシニア(Yersinia)などの科のグラム陰性菌が含まれる。
【0006】
PhlBは、ミリモルからマイクロモルの濃度で、グラム(+)菌を防除することが示されている。PhlBを用いた研究は、PhlBがグラム(+)菌に対する抗細菌剤であることを立証している。しかしながら、PhlB単独では、グラム(-)菌を防除しない。植物及び動物の病原性細菌又は防除が困難な細菌の多くは、グラム(-)である。グラム(-)型の細胞壁を有する微生物の防除におけるPhlBの主な問題は、取り込みに関連するものである。染料は、細菌の細胞内膜及び細胞機構上で活性であるためには、細胞壁を通過できなければならない。グラム(-)菌の防除のためのハロゲン化キサンテン染料の影響を促進するのに有用であることが証明されている添加剤はいくつかある。これらには、細胞壁分解性化学物質、キレート化化学物質、又は標的細菌に施される超高圧が含まれる。外膜を不安定化すると、染料がより多く取り込まれ、グラム(-)菌の感受性が向上する。これらの改善措置は、有効ではあるが、商業的に有用ではなく、又は毒性の問題を伴う。PhlB及びその他のキサンテン染料の防除の更なる課題は、化合物が吸収しなければならない光の波長、及びコア分子に結合するハロゲン原子の数/種類である。生体組織を通過する光、光の強度(曇りの日)、及び細胞取り込み前に染料が入れられる溶液は、光反応を変化させ、ひいてはその染料が標的生物に与えることができる細胞損傷のレベルを変化させる。
【0007】
細菌防除は、グラム(+)及びグラム(-)両方の防除活性を有さなければ、歴史的に、商業用に開発する価値がなかった。PhlBを有効且つ商業用として経済的なものにするためには、現在利用できるよりも大幅に細菌及びその他の微生物を防除するよう、これを強化しなければならない。キサンテン染料、特にPhlBの微生物防除機能を強化するためには、本発明者らが発見したように、PhlBと相乗的に作用する構成要素を使用しなければならない。
【0008】
真菌の場合、例えば、PhlB及びキサンテン染料の光感作によって生成されるフリーラジカル及び酸素が、生体細胞膜と反応する。微生物中の不飽和部位及び脂質は、光酸化に対して分解される。フリーラジカル及び酸素がもたらす影響は、細胞及び/又は膜損傷、すなわち、内膜及び外膜の完全性の喪失である。従来の薬理的殺真菌剤及び一部の農業用の殺真菌剤は、標的生物の特定の結合部位及び生化学経路の酵素を標的とするが、このことは、真菌が突然変異する際に抵抗性をもたらす。この酵素標的化はまた、従来の殺真菌剤の作用を遅延させることにつながり、防除が達成される前に増殖を継続させることになり得る。農業環境で使用される非特異的活性部位殺真菌剤は、有効であり得るが、宿主生物及び散布者に対して毒性を有し得る。植物の全身獲得免疫反応を標的とすることは、予防処置としては有効であり得るが、感染後の真菌負荷量は減少させない。そのような関連真菌株には、産業の性質によるが、典型的には、アルテルナリア(alternaria)属、ボトリチス(botrytis)属、コレトトリカム(colletotrichum)属、エルウィニア(erwinia)属、フサリウム(fusarium)属、ジムノスポランジウム(gymnosporangium)属、モニリニア(monilinia)属、フラグミジウム(phragmidium)属、フィトフトラ(phytophthora)属、プラスモジオフォラ(plasmodiophora)属、プラスモパラ(plasmopara)属、フハイカビ(pythium)属、リゾクトニア(rhizoctonia)属、タフリナ(taphrina)属、ウスチラゴ(ustilago)属、ベンツリア(venturia)属などのものが含まれる。
【0009】
歴史的に、親水性の化合物及び染料、例えば、PhlBは、これらが細胞壁を介して真菌内に入ることが困難であり、真菌感染を防除できないことから、従来の殺真菌剤では一般的ではない。キサンテン染料、特にPhlBの微生物防除機能を強化するためには、本発明者らが発見したように、PhlBと相乗的に作用する構成要素を使用しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
当該技術分野では、迅速に作用し、効果が高く、毒性が低く、且つ抗生物質抵抗性を生じる可能性が少ない抗菌性化合物の開発が長年望まれている。本発明は、この需要を満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
出願人は、有機染料、ホウ酸塩、若しくは無機塩、及び/又はそれらの組み合わせのうちの1種以上の相乗剤と組み合わせてキサンテン染料を含む、新規の抗菌性組成物を特定した。本発明の一実施形態によれば、キサンテン染料は、フルオレセイン、エオシン、ローダミン、及び/又はそれらの組み合わせである。キサンテン染料と相乗的に作用する構成要素は、フルオレセイン(3',6'-ジヒドロキシスピロ[2-ベンゾフラン-3,9'-キサンテン]-1-オン)」、フルオレセインイソチオシアネート、NHS-フルオレセイン、カルボキシフルオレセイン、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル類、テトラフルオロフェニルエステル類、保護フルオレセイン化合物、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸二ナトリウム、アルミニウム塩、アンモニウム塩、バリウム塩、ベリリウム塩、カルシウム塩、セシウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、ナトリウム塩、ストロンチウム塩、及びそれらの組み合わせである。本発明の更なる実施形態では、キサンテン染料とキサンテン染料と相乗的に作用する構成要素とは、約0.001:1~約1:0.001の比で存在する。また更なる実施形態によれば、組成物は、少なくとも1種の付加的機能性成分、例えば、増量剤、溶媒、自然生長促進剤(spontaneity promoter)、担体、乳化剤、分散剤、防霜剤、増粘剤、及びアジュバント、並びに昆虫の食物源を更に含む。
【0012】
本発明の別の実施形態では、細菌及び/又は真菌感染を処置及び/又は予防する方法が本明細書に含まれ、本方法は、キサンテン染料と、有機染料、ホウ酸塩、無機塩、及び/又はそれらの組み合わせから選択された、キサンテン染料と相乗的に作用する少なくとも1種の構成要素とを含む抗菌性組成物を取得又は形成するステップと、その後、標的を上記組成物に接触させるステップとを含む。好適な実施形態では、標的は、植物及び/若しくはその根系、果実の表面、野菜の表面、穀物の表面、若しくはその他の食品の表面、動物組織、又は水である。本発明のまた更なる実施形態では、本方法は、スプレー、塗抹、コーティング、塗布、噴霧、浸漬、混合、コーティング、及びそれらの組み合わせのいずれかによって、本発明の組成物を付与するステップを更に含む。更なる実施形態では、本方法は、本発明の組成物を所望の処理濃度に希釈する、希釈ステップを含む。更なる実施形態では、本方法は、組成物を規定の期間にわたり標的に接触させておく。また更なる実施形態では、本方法は、組成物を標的から濯ぎ落とすステップを含む。
【0013】
複数の実施形態が開示されるが、本発明の例示的実施形態を図示及び記載する下記の詳細な説明から、本発明のまた別の実施形態が当業者に明らかとなる。したがって、図面及び詳細な説明は、本質的に例示的なものであり、限定するものではないとみなすべきである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、概して、抗菌性組成物の分野に関する。具体的には、本発明は、有機染料、ホウ酸塩、無機塩、又はそれらの組み合わせとの相乗的に組み合わせたキサンテン染料を含む抗菌性組成物、並びに抗菌性組成物の使用方法に関する。本発明による組成物及び方法は、既存の抗菌性組成物に勝る利点を多数有するが、これには、例えば、微生物、例えば、細菌及び/又は真菌に対する染料の防除範囲を増しながら染料の用量を減らすこと、防除レベルを向上させること、及び防除に必要な時間を短縮することが含まれる。
【0015】
本発明の実施形態は、特定の組成物又は方法に限定されず、これらは変更可能であり、当業者はこれを理解する。本明細書で使用する専門用語はすべて、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、いかなる形又は範囲でも限定するものではないということを更に理解されたい。例えば、本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用するとき、単数形(「a」、「an」、及び「the」)は、内容により明らかにそうでないことが示されない限り、複数の指示対象を含み得る。更に、すべての単位、接頭辞、及び記号は、そのSI承認形式で示される場合がある。
【0016】
本明細書内に記載する数値範囲は、範囲を規定している数値を含み、規定範囲内の各整数を含む。本開示全体を通して、本発明のさまざまな態様は、範囲形式で提示する。範囲形式での記載が便宜上及び簡潔性のために過ぎず、本発明の範囲の変更不能な制限と解釈すべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、その範囲内のすべての可能な部分範囲、分数、及び個々の数値を具体的に開示したものとみなすべきである。例えば、範囲、例えば1~6の記載は、部分範囲、例えば、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6など、更に範囲内の個々の数値、例えば、1、2、3、4、5、及び6、並びに少数及び分数、例えば、1.2、3.8、11/2、及び43/4を具体的に開示したものとみなすべきである。これは、範囲の広さに関わらず適用される。
【0017】
定義
本発明がより容易に理解できるように、一部の用語をまず定義する。別途定めのない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明の実施形態が関連する技術分野の当業者が一般に理解しているのと同様の意味を有する。本明細書に記載の方法及び材料の多くの類似形態、変更形態、又は同等形態は、過度の実験を行わずに、本発明の実施形態を実施する際に使用することができるが、好適な材料及び方法を本明細書に記載する。本発明の実施形態を説明及び特許請求するにあたり、以下の専門用語は、下記に記載の定義に従って使用される。
【0018】
「約」という用語は、本明細書において使用するとき、モル、減少、質量、重量などを含むがこれらに限定されない定量化できる変動に関して、例えば、典型的な測定技術及び設備によって生じ得る数量の変動を指す。更に、実際に使用されている固体及び液体の取扱い手順を仮定すると、一定の不注意による誤差及び組成物の作製や方法の実施などに使用される原料の製造、供給源、又は純度の違いにより生じ得る変動がある。「約」という用語はまた、個々の初期混合物から生じる組成物の平衡条件が異なることに起因する量の違いも包含する。「約」という用語はまた、これらの変形形態も包含する。「約」という用語で修飾されているかどうかに関わらず、特許請求の範囲は、それらの数量と同等の数量を含む。
【0019】
「活性」又は「パーセント活性」又は「重量パーセント活性」又は「活性濃度」という用語は、本明細書において同義で使用され、不活性成分、例えば、水又は塩を差し引いたパーセンテージとして表される、清浄に関わる成分の濃度を指す。
【0020】
本明細書において使用するとき、「農業用」又は「獣医用」の物体又は表面には、動物用飼料、動物用給水所及び囲い地、獣舎、獣医診療所(例えば、手術又は処置領域)、動物の手術部などが含まれる。
【0021】
本明細書において使用するとき、「アルキル」又は「アルキル基」という用語は、1つ以上の炭素原子を有する飽和炭化水素を指し、直鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなど)、環状アルキル基(又は「シクロアルキル」、又は「脂環式」基、又は「炭素環式」基)(例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなど)、分岐鎖状アルキル基(例えば、イソプロピル、tert-ブチル、sec-ブチル、イソブチルなど)、及びアルキル置換アルキル基(例えば、アルキル置換シクロアルキル基及びシクロアルキル置換アルキル基)が含まれる。
【0022】
特に明記しない限り、「アルキル」という用語は、「非置換アルキル」及び「置換アルキル」の両者を含む。本明細書において使用するとき、「置換アルキル」という用語は、炭化水素骨格の1つ以上の炭素上の1つ以上の水素を置き換える置換基を有するアルキル基を指す。そのような置換基としては、例えば、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲノ基、ヒドロキシル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルボキシレート基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルキルチオカルボニル基、アルコキシル基、ホスフェート基、ホスホネート基、ホスフィネート基、シアノ基、アミノ基(アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、及びアルキルアリールアミノ基を含む)、アシルアミノ基(アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルバモイル基、及びウレイド基を含む)、イミノ基、スルフヒドリル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオカルボキシレート基、サルフェート基、アルキルスルフィニル基、スルホネート基、スルファモイル基、スルホンアミド基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、アジド基、複素環基、アルキルアリール基、芳香族基(複素環芳香族基を含む)が挙げられる。
【0023】
一部の実施形態では、置換アルキルは、複素環基を含む。本明細書において使用するとき、「複素環基」という用語は、環の炭素原子のうちの1つ以上が炭素以外の元素、例えば、窒素、硫黄、又は酸素である、炭素環基と類似する閉環構造を含む。複素環基は、飽和していても、又は不飽和であってもよい。例示的複素環基としては、限定するものではないが、アジリジン、エチレンオキシド(エポキシド、オキシラン)、チイラン(エピスルフィド)、ジオキシラン、アゼチジン、オキセタン、チエタン、ジオキセタン、ジチエタン、ジチエト、アゾリジン、ピロリジン、ピロリン、オキソラン、ジヒドロフラン、及びフランが挙げられる。
【0024】
本明細書において使用するとき、「清浄」という用語は、汚物除去、漂白、微生物数の低減、及びそれらの任意の組み合わせを促進又は援助するために使用する方法を指す。本明細書において使用するとき、「微生物」という用語は、非細胞又は単細胞(群体を含む)生物を指す。微生物には、すべての原核生物が含まれる。微生物には、細菌(ラン藻類を含む)、胞子、地衣類、真菌、原虫、ビリノ(virino)、ウイロイド、ウイルス、ファージ、及び一部の藻類が含まれる。本明細書において使用するとき、「微生物(microbe)」という用語は、微生物(microorganism)と同義である。
【0025】
本明細書において使用するとき、「消毒剤」という用語は、A.O.A.C. Use Dilution Methods、Official Methods of Analysis of the Association of Official Analytical Chemists、第955.14段落及び該当項、第15版、1990(EPA Guideline 91-2)に記載の手順を用いて、最もよく認識されている病原性微生物を含めた栄養細胞を死滅させる薬剤を指す。本明細書において使用するとき、「高レベル消毒」又は「高レベル消毒剤」という用語は、高レベルの細菌胞子を除く実質的にすべての生物を死滅させる化合物又は組成物を指し、これは、食品医薬品局(Food and Drug Administration)により滅菌剤として市販が許可されている化学的殺病原菌剤を用いて達成される。本明細書において使用するとき、「中レベル消毒」又は「中レベル消毒剤」という用語は、環境保護庁(Environmental Protection Agency:EPA)により殺結核菌剤として登録されている化学的殺病原菌剤で、マイコバクテリア、ほとんどのウイルス、及び細菌を死滅させる化合物又は組成物を指す。本明細書において使用するとき、「低レベル消毒」又は「低レベル消毒剤」という用語は、EPAにより病院用消毒剤として登録されている化学的殺病原菌剤で、一部のウイルス及び細菌を死滅させる化合物又は組成物を指す。
【0026】
本明細書において使用するとき、「食品加工表面」という表現は、食品加工、調理、又は保存業務の一環として使用される、道具、機械、設備、構造物、建物などの表面を指す。食品加工表面の例としては、食品加工又は調理設備(例えば、スライス設備、缶詰設備、又はフルーム(flume)を含む輸送設備)の表面、食品加工用品(例えば、調理用具、食器、洗浄用品、及びバー用グラス)の表面、及び食品加工を行う構造物の床、壁、又は備品の表面が挙げられる。食品加工表面は、食品腐敗防止空気循環システム、無菌梱包材の衛生化、食品冷蔵及び冷却器クリーナー及びサニタイザー、用品洗浄の衛生化、ブランチャーの清浄及び衛生化、食品包装材料、まな板の添加剤、サードシンク(third-sink)の衛生化、飲料冷却装置及び保温装置、肉冷却水又は煮沸水、自動食器サニタイザー、衛生用ゲル、冷却塔、食品加工用抗菌衣類スプレー、並びに非水~低含水食品調理用潤滑剤、油、及びリンス添加剤に認められ、使用される。
【0027】
本明細書において使用するとき、「食品」という用語は、抗菌剤又は組成物での処理を必要とし得る、更に調理して又は調理せずに食べることができるあらゆる食材を含む。食品には、肉(例えば、赤身の肉及び豚肉)、魚介類、鶏肉、農産物(例えば、果実及び野菜)、卵、生きている卵、卵製品、調理済み食品、小麦、種子、根、塊茎、葉、茎、穀粒、花、芽、調味料、及びそれらの組み合わせが含まれる。「農産物」という用語は、典型的には未調理で、多くの場合包装されずに販売され、生で食べることができる場合もある食品、例えば、果実及び野菜、並びに植物及び植物由来物質を指す。
【0028】
「硬質表面」という用語は、固体の実質的に非可撓性の表面、例えば、カウンタートップ、タイル、床、壁、パネル、窓、配管設備、台所及びトイレの備品、機器、エンジン、配電盤、及び食器を指す。硬質表面は、例えば、ヘルスケア表面及び食品加工表面を含み得る。
【0029】
本明細書において使用するとき、「ヘルスケア表面」という表現は、ヘルスケア業務の一環として使用される器具、装置、カート、ケージ、備品、構造物、建物などの表面を指す。ヘルスケア表面の例としては、医療又は歯科器具の表面、医療又は歯科装置の表面、患者の健康状態をモニターするために使用する電子器械の表面、及びヘルスケアを行う構造物の床、壁、又は備品の表面が挙げられる。ヘルスケア表面は、病室、手術室、療養室、分娩室、霊安室、及び臨床診断室に見られる。これらの表面は、「硬質表面」として類型化されるもの(例えば、壁、床、病人用便器など)、又は布表面、例えば、編布、織布、及び不織布の表面(例えば、手術衣、カーテン、ベッドシーツ類、包帯など)、又は患者ケア用設備(例えば、人工呼吸器、診断用設備、シャント、ボディスコープ(body scope)、車いす、ベッドなど)、又は手術及び診断用設備であってよい。ヘルスケア表面には、動物のヘルスケアに使用される物品及び表面が含まれる。
【0030】
本明細書において使用するとき、「器具」という用語は、本発明による組成物での清浄が有益となり得る、さまざまな医療又は歯科器具又は装置を指す。
【0031】
本明細書において使用するとき、「医療器具」、「歯科器具」、「医療装置」、「歯科装置」、「医療設備」、又は「歯科設備」という表現は、医療及び歯科で使用される器具、装置、道具、機器、器械、及び設備を指す。そのような器具、装置、及び設備は、非加熱滅菌、浸漬、又は洗浄を行ったあと、加熱滅菌してもよく、又は本発明の組成物中での清浄が有益となり得る。これらのさまざまな器具、装置、及び設備としては、限定するものではないが、診断用器具、トレイ、皿、ホルダー、ラック、鉗子、剪刀、ハサミ、鋸(例えば、骨鋸及びその刃)、止血鉗子、メス、ノミ、骨鉗子、ヤスリ、ニッパー、ドリル、ドリルビット、ラスプ、穿子、開大器、破砕機、起子、クランプ、持針器、キャリア、クリップ、フック、骨ノミ、キュレット、開創器、ストレートナー、穿孔器、抽出器、ヘラ、角膜切開刀、スパチュラ、エクスプレッサー(expressor)、外套針、拡張器、ケージ、ガラス器具、チューブ、カテーテル、カニューレ、栓子、ステント、スコープ(例えば、内視鏡、聴診器、及び関節鏡)、及び関連設備など、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0032】
本明細書において使用するとき、「肉製品」という表現は、胴体、筋肉、脂肪、臓器、皮、骨、及び体液、並びに動物を形成する同様の構成要素を含む、すべての形態の獣肉を指す。獣肉には、限定するものではないが、哺乳類、鳥類、魚類、爬虫類、両生類、巻貝類、二枚貝類、甲殻類、その他の可食種、例えば、ロブスター、カニなど、又はその他の形態の魚介類が含まれる。獣肉の形態には、例えば、単独の又は他の成分と組み合わせた、獣肉全体若しくはその一部が含まれる。典型的な形態としては、例えば、加工肉、例えば、塩漬け肉、切断・成形製品、細切り製品、みじん切り製品、挽き肉及び挽き肉を含む製品、丸ごとの製品などが挙げられる。
【0033】
本特許出願では、微生物減少の成功は、微生物数が少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、又は接触によって達成されるよりも有意に大幅に減少した場合に達成される。微生物数のより大幅な減少は、より高レベルの防御をもたらす。
【0034】
「植物」という用語は、植物全体、植物の任意の部分、種子、果実、零余子、及び植物の子孫を含むものとする。作物植物及び農業植物は、ヒト及び動物の食糧生産又は家畜飼料生産にとって経済的に重要であり、これは、主に柑橘類を含むが、穀物、果実、及び野菜、並びに牧草も含み得る。園芸植物には、芝草用、防風用、及び造園用のものが含まれ、また観賞植物、例えば、花、灌木、つる植物なども含まれる。
【0035】
本明細書において使用するとき、「植物組織」という用語は、植物の分化した組織及び未分化の組織を含み、これには、根、芽、葉、花粉、種子、及び腫瘍、並びに培養細胞(例えば、単一細胞、プロトプラスト、胚、カルスなど)に存在するものが含まれる。植物組織は、植物体、器官培養物、組織培養物、又は細胞培養物として存在してもよい。
【0036】
本明細書において使用するとき、「標的」とは、細菌の減少及び/又は処理が有益となり得る生体表面又は硬質表面を幅広く指す。
【0037】
本明細書において使用するとき、「処理すること」又は「処理」とは、植物又は動物の病気を根絶、軽減、除去、治癒、若しくは治療するため、又は硬質表面の細菌を除去、清浄、若しくは衛生化するための本発明の組成物の使用を指す。
【0038】
有効性の程度を示す定義である、抗菌剤の「殺~(-cidal)」若しくは「静~(-static)」活性の区別、及びこの有効性を測定するための公式検査手順は、抗菌剤及び組成物の妥当性を理解するために考慮すべき事柄である。抗菌性組成物は、2種類の微生物細胞損傷に影響を与え得る。1つ目は、完全な微生物細胞破壊又は無能力化をもたらす、致死的な不可逆的作用である。2つ目のタイプの細胞損傷は、可逆的であり、生物は、その薬剤から解放された場合、再び増殖することができる。前者は、殺菌性と称され、殺細菌性又は殺真菌性と同義で使用することができ、後者は、静菌性と称され、静細菌性又は静真菌性と同義で使用することができる。サニタイザー及び消毒剤は、定義上は、抗菌又は殺菌活性を提供する薬剤である。対照的に、保存剤は、一般に阻害剤又は静菌性組成物とされる。
【0039】
本明細書において使用するとき、「実質的に含まない」という用語は、その構成要素を全く含まない組成物、又はその構成要素を組成物の能力に影響を与えないような少ない量で含む組成物を指す。この構成要素は、不純物として、又は混入物として存在してもよく、これは0.5wt.%未満であるべきである。別の実施形態では、この構成要素の量は0.1wt.%未満であり、また別の実施形態では、この構成要素の量は0.01wt.%未満である。
【0040】
本明細書において使用するとき、「水」という用語は、食品加工又は輸送用の水を含む。食品加工又は輸送用の水には、農産物輸送用水(例えば、フルーム、パイプ輸送、切断機、スライサー、ブランチャー、レトルトシステム、洗浄機など)、食品輸送ライン用のベルトスプレー、長靴及び手洗い用ディップパン(dip-pan)、サードシンク濯ぎ水などが含まれる。水にはまた、家庭用又は娯楽用の水、例えば、プール、スパ、娯楽用ウォーターシュート及びウォータースライド、噴水なども含まれる。
【0041】
「水溶性」及び「水分散性」という用語は、本明細書においてポリマーに関連して使用するとき、そのポリマーが、本発明の組成物中の水に可溶性又は分散性であることを意味する。一般に、ポリマーは、25℃で、水溶液及び/又は水担体の0.0001重量%、好ましくは0.001重量%、より好ましくは0.01重量%、最も好ましくは0.1重量%の濃度で、可溶性又は分散性であるべきである。
【0042】
「重量パーセント(weight percent)」、「wt.%」、「重量パーセント(percent by weight)」、「重量%」という用語、又はそれらの変化形は、本明細書において使用するとき、その物質の重量を組成物の総重量で除して100を乗じた、物質の濃度を指す。本明細書において使用するとき、「パーセント」や「%」などは、「重量パーセント」や「wt.%」などと同義であるものと理解されたい。
【0043】
本発明の方法、システム、器械、及び組成物は、本発明の構成要素及び成分、並びに本明細書に記載の他の成分を含んでもよく、これらから本質的になってもよく、又はこれらからなってもよい。本明細書において使用するとき、「~から本質的になる」とは、その方法、システム、器械、及び組成物が、付加的なステップ、構成要素、又は成分を含んでもよいことを意味するが、ただし、その付加的なステップ、構成要素、又は成分が、特許請求の範囲に記載の方法、システム、器械、及び組成物の基本的且つ新規の特徴を実質的に変更しない場合に限る。
【0044】
また、本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用するとき、「構成された」という用語が、特定のタスクを実行するように、又は特定の構成を採用するように構築若しくは構成されたシステム、器械、又は他の構造物を表すことにも留意されたい。「構成された」という用語は、他の類似の表現、例えば、配置構成された、構築配置された、適合構成された、適合された、構築された、製造配置されたなどと同義で使用することができる。
【0045】
組成物
本発明の一実施形態は、抗菌性組成物において、植物栽培、家畜施設、及び製造システムに存在する細菌及び/又は真菌の防除に有用であることが判明した。本発明による抗菌性組成物は、キサンテン染料及びキサンテン染料と相乗的に作用する構成要素、例えば、有機染料、ホウ酸塩、及び/又は無機塩を含む。場合により、抗菌性組成物は、その抗菌性組成物の所望の特性に応じて存在し得る、付加的機能性成分を含んでもよい。
【0046】
本発明により構成要素をキサンテン染料に追加すると、上記構成要素とキサンテン染料との相乗作用を生じることによって、細菌、真菌、及び微生物に対するこの染料の防除範囲を増しながら、染料の用量が減り、防除レベルが向上し、且つ防除に必要な時間が短縮することが、予想外にも判明した。構成要素を染料に追加することにより、低モル用量で、グラム陽性菌及びグラム陰性菌の両細菌並びに真菌の予想外の優れた防除が可能になる。本製剤は、動物、真菌、及び植物の脈管系(vascular system)内で移動する独特の能力を有する。この輸送は、その生物のさまざまな領域内への染料の沈着を促進する。抗生物質は、生物、特に植物内で移動することが困難な場合がある。本製剤の防除の速度もまた独特である。染料は、太陽光、環境電気照明、及びフラックスパルス(flux pulse)によって活性化され、標的微生物内で光酸化し始める。これらの製剤を使用した防除は、抗生物質を使用した防除の場合にかかる数週間又は数か月ではなく、数時間で行うことが可能である。また、従来の抗生物質の農業での使用は、抗生物質抵抗性の予防措置として、徐々に減らされていることにも留意されたい。これらの独特な化学混合物は、従来の抗生物質に伴う抵抗性発生の可能性が低い、新規の作用機序による微生物防除の独特の機会を提供する。
【0047】
キサンテン染料
本発明の実施形態によれば、抗菌性組成物は、キサンテン染料、キサンテン誘導体染料、及びそれらの組み合わせを含む。どの適切なキサンテン染料又は適切なキサンテン誘導体染料も、抗菌性組成物に使用することができることを理解されたい。具体的には、適切なキサンテン誘導体染料としては、限定するものではないが、キサンテン染料の一般構造は維持しながら、さまざまな若しくは複数の位置として、置換ハロゲン又はR基を有するキサンテン染料が挙げられる。
【0048】
カチオン性及びアニオン性のいずれのキサンテン染料も効果的な蛍光化合物として知られており、それらの色は、キサンテン部分の官能基により制御される。
【0049】
キサンテン(9H-キサンテン、10H-9-オキサアントラセン)は、黄色染料を生じる有機複素環化合物である。キサンテンの誘導体には、フルオレセイン、エオシン、ローダミンなどが含まれる。
【0050】
式Iに示すフルオレセインには、3',6'-ジヒドロキシスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9'-[9H]キサンテン]-3-オン、フルオレセインイソチオシアネート、NHS-フルオレセイン、カルボキシフルオレセイン、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル類、テトラフルオロフェニルエステル類、保護フルオレセイン化合物、例えば、6-FAMホスホロアミダイト、フロキシンBなどが含まれる。好適な実施形態では、キサンテン染料は、フロキシンB(PhlB)であり、これは主に、2',4',5',7'-テトラブロモ-4,5,6,7-テトラクロロフルオレセインの二ナトリウム塩として特定される。
【0051】
【化1】
【0052】
エオシンは、式IIに示される蛍光性酸化合物であり、塩基性又はエオシン好性の化合物、例えば、アミノ酸残基を含むタンパク質と結合して塩を形成する。適切なエオシンには、エオシンY及びエオシンBが含まれる。
【0053】
【化2】
【0054】
式IIIに示されるローダミンは、フルオロン染料であり、適切な化合物、例えば、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミン123、カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)、テトラメチルローダミン(TMR)及びそのイソチオシアネート誘導体(TRITC)、及びスルホローダミン101(及びその塩化スルホニル形態のテキサスレッド)、及びローダミンレッドが含まれる。TRITCは、構造下部の環の水素原子が置き換えられてイソチオシアネート基(-N=C=S)で官能化された塩基ローダミン分子である。この誘導体は、細胞内のタンパク質のアミン基に対して反応性である。ローダミンコアに結合し、NHS-ローダミンを生じるスクシンイミジル-エステル官能基は、また別の一般的なアミン反応性誘導体を形成する。その他のローダミン誘導体としては、より新しいフルオロフォア、例えば、Alexa 546、Alexa 555、Alexa 633(Thermo Fisher Scientific社より入手可能)、DyLight 550及びDyLight 633(Thermo Fisher Scientific社より入手可能)、HiLyte fluor 555、HiLyte 59(AnaSpec社より入手可能)が挙げられる。
【0055】
【化3】
【0056】
その他の適切なキサンテン染料は、式(IV)~(XXIX)により定義される。
【0057】
【化4】
【0058】
本発明の一態様では、抗菌性組成物は、有機染料、ホウ酸塩、無機塩、又はそれらの組み合わせをキサンテン染料との比約0.001:1~約1:0.001、約0.005:1~約1:005、約0.05:1~約1:0.05、約0.1:1~約1:0.1、及び約0.5:1~約1:0.5で含む。
【0059】
本発明の更なる態様では、キサンテン染料は、約0wt.%~約50wt.%、より好ましくは、約0wt.%~約20wt.%、より好ましくは、約0.1wt.%~約10wt.%、更に好ましくは約0.1wt.%~約0.5wt.%の量で組成物中に存在する。
【0060】
有機染料
抗菌性組成物は、キサンテン染料と組み合わせて存在する場合に相乗的防除をもたらす、少なくとも1種の化合物を含む。本発明の一態様では、これは、有機染料、ホウ酸塩、無機塩、及びそれらの組み合わせである。
【0061】
本発明の一実施形態では、キサンテン染料との組み合わせで相乗的防除をもたらす化合物は、天然源、植物源、又は合成源由来の少なくとも1種の有機染料である。どの適切な有機染料も、本発明による組成物に使用することができる。そのような天然又は植物染料は、根、漿果、樹皮、葉、木材、真菌類、地衣類などに由来する。更に、合成反応を利用して、適切な有機染料を生成してもよい。そのような技法及び適切な有機染料は、Zollinger、Color Chemistry:Syntheses, Properties, and Applications of Organic Dyes and Pigments、Wiley (2003)に開示されており、この文献は、参照によりその内容全体が本明細書に援用される。
【0062】
本発明の好適な実施形態では、有機染料は、フルオレセイン(3',6'-ジヒドロキシスピロ[2-ベンゾフラン-3,9'-キサンテン]-1-オン)、フルオレセイン誘導体、及びそれらの組み合わせである。そのような誘導体には、フルオレセインイソチオシアネート、NHS-フルオレセイン、カルボキシフルオレセイン、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル類、テトラフルオロフェニルエステル類、保護フルオレセイン化合物、例えば、6-FAMホスホロアミダイトなどが含まれる。
【0063】
本発明の一態様では、少なくとも1種の有機染料が抗菌性組成物に含まれる。更なる態様では、少なくとも2種、少なくとも3種、又は少なくとも4種の有機染料が抗菌性組成物に含まれる。
【0064】
キサンテン染料と相乗的に作用する構成要素が有機染料である本発明の一態様では、抗菌性組成物は、少なくとも50マイクロモル、好ましくは、少なくとも60マイクロモル、より好ましくは、少なくとも62マイクロモルを含有する。
【0065】
本発明の一態様では、有機染料は、組成物中に、約0wt.%~約99wt.%、約0wt.%~約80wt.%、約0wt.%~約60wt.%、約0wt.%~約35wt.%、約0wt.%~約10wt.%、及び約0wt.%~約5wt.%の量で存在する。
【0066】
無機塩
本発明の一実施形態では、キサンテン染料との組み合わせで相乗的防除をもたらす化合物は、少なくとも1種の無機塩である。どの適切な無機塩も、本発明による組成物に使用することができる。本発明の一態様では、無機塩は、アルミニウム塩、アンモニウム塩、バリウム塩、ベリリウム塩、カルシウム塩、セシウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、ナトリウム塩、ストロンチウム塩など、及びそれらの組み合わせである。その他の適切な無機塩としては、硫酸アルミニウムカリウム、リン酸マグネシウムアンモニウム、リン酸アンモニウムナトリウム、アセチルリン酸リチウムカリウム、塩化マンガン(II)、硫酸マンガン(II)、スカンジウム(III)塩素水素(scandium (III) chlorine hydrogen)が挙げられる。本発明の一態様では、無機塩は、酢酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、臭化アンモニウム、塩化アンモニウム、フッ化アンモニウム、ギ酸アンモニウム、ヘキサフルオロリン酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、スルファミン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫化アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、チオ硫酸アンモニウム、トリフルオロ酢酸アンモニウム、トリフルオロメタン硫酸アンモニウム(ammonium trifluoromethanesulfate)、硝酸ヒドロキシルアンモニウムである。本発明の好適な実施形態では、無機塩は、硫酸アンモニウムである。
【0067】
本発明の一態様では、少なくとも1種の無機塩が抗菌性組成物に含まれる。更なる態様では、少なくとも2種、少なくとも3種、又は少なくとも4種の無機塩が抗菌性組成物に含まれる。
【0068】
本発明の一態様では、抗菌性組成物は、少なくとも2ミリモル、好ましくは、少なくとも5ミリモル、より好ましくは、少なくとも10ミリモルを含有する。
【0069】
本発明の一態様では、無機塩は、組成物中に、0wt.%~約100wt.%、約30wt.%~約100wt.%、約50wt.%~約100wt.%、約70wt.%~約100wt.%、及び約90~約100wt.%の量で存在する。
【0070】
ホウ酸塩
本発明の一態様では、キサンテン染料との組み合わせで相乗的防除をもたらす化合物は、ホウ酸塩、ホウ酸塩誘導体、及びそれらの組み合わせである。ホウ酸塩は、ホウ素含有オキシアニオン、四面体ホウ素アニオン(tetrahedral boron anion)、及び/又はホウ酸アニオンを含有する化合物として分類される。最も単純な形態では、ホウ酸塩は、オルトホウ酸イオンBO3 3-を含有する。適切なホウ酸塩化合物としては、ホウ酸塩、ホウ酸エステルなどが挙げられる。適切な化合物としては、限定するものではないが、ホウ酸塩鉱石、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリフェニル、ホウ酸亜鉛、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリエタノールアミン、ホウ酸トリス(トリメチルシリル)、ホウ酸トリ-tert-ブチル、ホウ酸ランタン、ホウ酸フェニル水銀、ホウ酸トリヘキサデシル、ホウ酸イットリウム、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートエチルエーテラート、テトラキス(4-クロロフェニル)ホウ酸カリウム、テトラ(p-トリル)ホウ酸ナトリウム、テトラキス(4-フルオロフェニル)ホウ酸ナトリウム二水和物、テトラドデシルアンモニウムテトラキス(4-クロロフェニル)ボラート、水素[4-ジ-tert-ブチルホスフィノ-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル]ヒドロビス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ボラート、テトラキス(1-イミダゾリル)ホウ酸ナトリウム、テトラキス(4-tert-ブチルフェニル)ホウ酸カリウム、テトラキス(4-ビフェニリル)ホウ酸カリウム、テトラキス(2-チエニル)ホウ酸カリウム、ホウ酸ランタンカルシウム、ビス(オキサレート)ホウ酸リチウム、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)ボラート、ホウ酸イットリウムアルミニウム、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(I)テトラキス[ビス(3,5-トリフルオロメチル)フェニル]ボラート、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸ナトリウム、テトラキス[3,5-ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトキシ-2-プロピル)フェニル]ホウ酸ナトリウム三水和物、トリフルオロ[(ピロリジン-1-イル)メチル]ホウ酸カリウム、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸二ナトリウム、ホウ酸2-アミノエチルジフェニル、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス[オキサレート(2-)-O,O']ボラート、四ホウ酸ナトリウム十水和物、ホウ砂、メタホウ酸カルシウム、テトラフェニルホウ酸カリウム、ジフェニルホウ酸2-アミノエチル、2-ナフタレントリフルオロホウ酸カリウム、アリルトリフルオロホウ酸カリウム、1-メチル-1H-ピラゾール-5-トリフルオロホウ酸カリウム、キノリン-6-トリフルオロホウ酸カリウムなどが挙げられる。本発明の好適な実施形態では、ボラートは、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、若しくは四ホウ酸二ナトリウム、又はそれらの組み合わせである。
【0071】
本発明の一態様では、少なくとも1種のホウ酸塩が抗菌性組成物に含まれる。更なる態様では、少なくとも2種、少なくとも3種、又は少なくとも4種のホウ酸塩が抗菌性組成物に含まれる。
【0072】
キサンテン染料と相乗的に作用する構成要素が無機塩である本発明の一態様では、抗菌性組成物は、少なくとも75ミリモル、好ましくは、少なくとも85ミリモル、より好ましくは、少なくとも90ミリモル含有する。
【0073】
本発明の一態様では、ホウ酸塩は、組成物中に、0wt.%~約100wt.%、約30wt.%~約100wt.%、約50wt.%~約95wt.%、約70wt.%~約95wt.%、及び約90~約95wt.%の量で存在する。
【0074】
付加的機能性成分
本発明の実施形態では、抗菌性組成物に付加成分が含まれていてもよい。付加成分は、組成物に所望の特性及び機能性をもたらす。本出願では、「機能性成分」という用語には、特定の用途で有益な特性をもたらす材料が含まれる。機能性材料のいくつかの具体例について、より詳細に下記に記載するが、記載される具体的な材料は、例として示すに過ぎず、多様な他の機能性成分が使用可能である。例えば、下記に記載する機能性材料の多くは、抗菌用途、特に植物処理用途で使用される材料に関連する。
【0075】
しかしながら、他の実施形態は、他の用途で使用するための機能性成分を含み得る。本発明の一態様は、供給源として使用して植物に注入することができる、又は界面活性剤、抗細菌性成分、増量剤、溶媒、自然生長促進剤、担体、乳化剤、分散剤、防霜剤、日光保護剤、増粘剤、及びアジュバントからなる群から選択される少なくとも1種の助剤を更に含む代替的な供給源を作製するために添加することができる、上述のような組成物を提供することである。それらの組成物は製剤と称され、昆虫の食物源に添加することもできる。
【0076】
したがって、本発明の一態様では、そのような製剤及びそれらから調製された施用形態は、本発明の組成物を含む作物保護剤及び/又は殺有害生物剤、例えば、浸漬液、滴下液、及びスプレー液として提供される。施用形態は、更なる作物保護剤及び/又は殺有害生物剤、及び/又は活性促進アジュバント、例えば、浸透剤、例としては、植物油、例えば、菜種油、ヒマワリ油、鉱物油、例えば、流動パラフィン、植物脂肪酸のアルキルエステル、例えば、菜種油又は大豆油のメチルエステル、又はアルカノールアルコキシレート、及び/又は展着剤、例えば、アルキルシロキサン及び/又は塩、例としては、有機若しくは無機アンモニウム塩又はホスホニウム塩、例としては、硫酸アンモニウム又はリン酸水素二アンモニウム、及び/又は保持促進剤(retention promoter)、例えば、ジオクチルスルホスクシネート若しくはヒドロキシプロピルグアーポリマー、及び/又は湿潤剤、例えば、グリセロール、及び/又は肥料、例えば、アンモニウム、カリウム、若しくはリン肥料を含んでもよい。
【0077】
典型的な製剤の例には、水溶性液剤(SL)、乳剤(EC)、水中エマルション剤(EW)、濃厚懸濁剤(SC、SE、FS、OD)、顆粒水和剤(WG)、粒剤(GR)、及び濃厚カプセル剤(CS)があり、これら及びその他の可能なタイプの製剤は、例えば、Crop Life Internationalにより、またPesticide Specifications、Manual on development and use of FAO and WHO specifications for pesticides、FAO Plant Production and Protection Papers-173、prepared by the FAO/WHO Joint Meeting on Pesticide Specifications、2004、ISBN:9251048576に記載されている。製剤は、本発明の1種以上の活性化合物の他に、活性農薬化合物を含んでもよい。
【0078】
当該製剤又は施用形態は、好ましくは、助剤、例えば、界面活性剤、抗細菌性成分、増量剤、溶媒、自然生長促進剤、担体、乳化剤、分散剤、防霜剤、日光保護剤、殺生物剤、増粘剤、及び/又はその他の助剤、例えば、アジュバントを含む。この文脈では、アジュバントとは、製剤の効果を強化するような構成要素であり、その構成要素自体が所望の効果を生じるのではない。アジュバントの例は、保持、展着、葉表面への付着、又は浸透を促進するような薬剤である。
【0079】
これらの製剤は、既知の方法で、例えば、活性化合物を助剤、例えば、増量剤、溶媒、及び/若しくは固体担体など、並びに/又は更なる助剤、例えば、界面活性剤と混合することによって調製される。製剤は、適切な工場で、又は施用前若しくは施用中に調製される。
【0080】
助剤
助剤としての使用に適しているのは、活性化合物の製剤又はそのような製剤から調製された施用形態(例えば、使用に適した作物保護剤、例えば、スプレー液又は種子粉衣)に特定の特性、例えば、一定の物理的、技術的、及び/又は生物学的特性を与えるのに適した物質である。
【0081】
増量剤
適切な増量剤は、例えば、水、極性及び非極性有機薬液、例えば、芳香族及び非芳香族炭化水素(パラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、クロロベンゼンなど)、アルコール及びポリオール(これらは、適切な場合には、置換、エーテル化、及び/又はエステル化されていてもよい)、ケトン(アセトン、シクロヘキサノンなど)、エステル(脂肪及び油を含む)及び(ポリ)エーテル、非置換及び置換アミン、アミド、ラクタム(例えば、N-アルキルピロリドン)、及びラクトン、スルホン及びスルホキシド(ジメチルスルホキシドなど)の群のものである。
【0082】
使用される増量剤が水の場合、例えば、有機溶媒を助溶媒として使用することも可能である。本質的に、適切な液体溶媒は、芳香族化合物、例えば、キシレン、トルエン、又はアルキルナフタレン、塩素化芳香族及び塩素化脂肪族炭化水素、例えば、クロロベンゼン、クロロエチレン、又は塩化メチレン、脂肪族炭化水素、例えば、シクロヘキサン又はパラフィン、例えば、石油留分、鉱物油、及び植物油、アルコール、例えば、ブタノール又はグリコール並びにそれらのエーテル及びエステル、ケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、又はシクロヘキサノン、高極性溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド及びジメチルスルホキシド、並びに水である。
【0083】
溶媒及び担体
原則として、すべての適切な溶媒を使用することができる。適切な溶媒は、例えば、芳香族炭化水素、例えば、キシレン、トルエン、又はアルキルナフタレン、例えば、塩素化芳香族又は脂肪族炭化水素、例えば、クロロベンゼン、クロロエチレン、又は塩化メチレン、例えば、脂肪族炭化水素、例えば、シクロヘキサン、例えば、パラフィン、石油留分、鉱物油及び植物油、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、又はグリコール、並びにそれらのエーテル及びエステル、ケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、又はシクロヘキサノン、例えば、高極性溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド、並びに水である。
【0084】
すべての適切な担体は、原則として、使用することができる。適切な担体は、具体的には、例えば、アンモニウム塩、及び粉砕天然鉱物、例えば、カオリン、クレイ、タルク、チョーク、石英、アタパルジャイト、モンモリロナイト、又は珪藻土、及び粉砕合成鉱物、例えば、微粉シリカ、アルミナ、及び天然又は合成ケイ酸塩、樹脂、蝋、及び/又は固体肥料である。そのような担体の混合物も同様に使用することができる。粒剤に適した担体としては、例えば、粉砕し分別した天然鉱物、例えば、方解石、大理石、軽石、セピオライト、ドロマイト、並びに無機及び有機粗びき粉の合成顆粒、さらに有機材料、例えば、おがくず、紙、ヤシ殻、トウモロコシの穂軸、及びタバコの茎の顆粒が挙げられる。
【0085】
また、液化ガス増量剤又は溶媒も使用することができる。特に適しているのは、標準温度及び標準気圧下で気体である増量剤又は担体であり、例としては、エアロゾル噴射剤、例えば、ハロゲン化炭化水素、並びにブタン、プロパン、窒素、及び二酸化炭素が挙げられる。
【0086】
乳化剤、泡形成剤、分散剤、ウェッティング剤
イオン性若しくは非イオン性の特性を有する、乳化剤及び/若しくは泡形成剤、分散剤、又はウェッティング剤、又はこれら界面活性物質の混合物の例は、キサンタンガム、グアー誘導体、ポリアクリル酸の塩、リグノスルホン酸の塩、フェノールスルホン酸若しくはナフタレンスルホン酸の塩、エチレンオキシドと脂肪アルコール若しくは脂肪酸若しくは脂肪アミンとの、置換フェノール(好ましくは、アルキルフェノール又はアリールフェノール)との重縮合物、スルホコハク酸エステルの塩、タウリン誘導体(好ましくは、アルキルタウレート)、ポリエトキシル化アルコール若しくはフェノールのリン酸エステル、ポリオールの脂肪酸エステル、並びにサルフェート、スルホネート、及びホスフェートを含有する化合物の誘導体、例としては、アルキルアリールポリグリコールエーテル、アルキルスルホネート、アルキルサルフェート、アリールスルホネート、タンパク質加水分解物、リグニン-スルファイト廃液、及びメチルセルロースである。界面活性物質の存在は、活性化合物のうちの1種及び/又は不活性担体のうちの1種が水溶性でない場合、及び水中で使用する場合に有利である。
【0087】
染料
製剤中及びそれらから得られる施用形態中に存在してもよい更なる染料としては、着色剤、例えば、無機顔料、例としては、酸化鉄、酸化チタン、プルシアンブルー、及び有機染料、例えば、アリザリン染料、アゾ染料、及び金属フタロシアニン染料、並びに栄養素及び微量栄養素、例えば、鉄、マンガン、ホウ素、銅、コバルト、モリブデン、及び亜鉛の塩が挙げられる。
【0088】
安定剤
また、安定剤、例えば、低温安定剤、保存剤、抗酸化剤、光安定剤、又は化学的及び/又は物理的安定性を改善するその他の薬剤も存在してよい。付加的に、泡形成剤又は消泡剤も存在してよい。
【0089】
更に、製剤及びそれらから得られる施用形態はまた、付加的助剤として、固着剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、粉末状、顆粒状、若しくはラテックス状の天然及び合成ポリマー、例えば、アラビアガム、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、並びに天然リン脂質、例えば、セファリン及びレシチン、及び合成リン脂質を含んでもよい。更なる可能な助剤としては、鉱物油及び植物油が挙げられる。
【0090】
製剤及びそれらから得られる施用形態中に、更なる助剤が存在してもよい場合もある。そのような添加剤の例としては、芳香剤、保護コロイド、バインダー、粘着剤、増粘剤、チキソトロピー物質、浸透剤、保持促進剤、安定剤、金属イオン封鎖剤、錯化剤、湿潤剤、及び展着剤が挙げられる。一般的には、活性化合物は、製剤の目的で一般に使用されているどの固体又は液体添加剤と混合してもよい。
【0091】
保持促進剤
適切な保持促進剤には、動的表面張力を減少させるすべての物質、例えば、ジオクチルスルホスクシネート、又は粘弾性を増加させるすべての物質、例えば、ヒドロキシプロピルグアーポリマーが含まれる。
【0092】
浸透剤
この文脈での適切な浸透剤には、活性農薬化合物の植物への浸透を向上させるために典型的に使用されているすべての物質が含まれる。この文脈での浸透剤は、(一般に水性の)施用液(application liquor)及び/又はスプレーコーティング剤から植物のクチクラに浸透し、それによってクチクラ内での活性化合物の移動性を向上させることができるということにより定義される。この特性は、文献(Baurら、1997、Pesticide Science 51、131~152頁)に記載の方法を使用して測定することができる。例としては、アルコールアルコキシレート、例えば、ココナッツ脂肪エトキシレート(10)若しくはイソトリデシルエトキシレート(I2)、脂肪酸エステル、例えば、菜種油若しくは大豆油メチルエステル、脂肪アミンアルコキシレート、例えば、獣脂アミンエトキシレート(I5)、又はアンモニウム及び/若しくはホスホニウム塩、例えば、硫酸アンモニウム又はリン酸水素二アンモニウムが挙げられる。
【0093】
製剤から調製した施用形態(作物保護製品)の活性化合物含有量は、広い範囲内で変更可能である。施用形態の付加的機能性成分は、抗菌性組成物の所望の用途及び機能に応じて、典型的には、約0.01wt.%~約95wt.%、0.01wt.%~50wt.%、0.01wt.%~約25wt.%、及び約0.01wt.%~15wt.%であってもよい。
【0094】
界面活性剤
一部の実施形態では、本発明の組成物は、場合により、界面活性剤を含む。本発明の組成物との使用に適した界面活性剤としては、限定するものではないが、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤が挙げられる。本発明の好適な実施形態では、任意選択の界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。本発明の特定の理論に制限されることは意図しないが、非イオン性界面活性剤の存在は、本発明による組成物の取り込みを助ける。
【0095】
非イオン性界面活性剤
有用な非イオン性界面活性剤は、一般に、有機疎水基及び有機親水基の存在を特徴とし、典型的には、有機脂肪族、アルキル芳香族、又はポリオキシアルキレン疎水性化合物と親水性アルカリオキシド部分(一般的には、エチレンオキシド又はその多水和生成物(polyhydration product)、ポリエチレングリコール)との縮合により製造される。事実上、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基と反応性水素原子とを有するどの疎水性化合物も、エチレンオキシド、又はその多水和付加物、又はそのアルコキシレン(例えばプロピレンオキシド)との混合物と縮合して、非イオン性界面活性剤を形成することができる。任意の特定の疎水性化合物と縮合する親水性ポリオキシアルキレン部分の長さは、所望の程度の親水性と疎水性とのバランスを有する水分散性又は水溶性の化合物が得られるように、容易に調整することができる。有用な非イオン性界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。
【0096】
開始剤反応性水素化合物としての、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、及びエチレンジアミンに基づくポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー化合物。開始剤を逐次プロポキシル化及びエトキシル化することによって作製されるポリマー化合物の例には、BASF Corp社より市販されているものがある。化合物の1つの群は、エチレンオキシドを、プロピレングリコールのヒドロキシル基2個にプロピレンオキシドを付加することによって形成された疎水性塩基と縮合することによって形成される二官能性(反応性水素が2個)化合物である。分子のこの疎水性部分の重量は、約1,000~約4,000である。次いで、最終分子の約10重量%~約80重量%を構成するように長さを調節して、エチレンオキシドを付加して、この疎水性部(hydrophobe)を親水基の間に挟むようにする。別の化合物群は、プロピレンオキシド及びエチレンオキシドをエチレンジアミンに逐次付加することにより得られる四官能性ブロックコポリマーである。このプロピレンオキシドハイドロタイプの分子量は、約500~約7,000の範囲であり、親水性部分であるエチレンオキシドは、分子の約10重量%~約80重量%を構成するように付加される。
【0097】
直鎖若しくは分岐鎖構造、又は1個若しくは2個のアルキル構成要素のアルキル鎖が約8~約18個の炭素原子を有するアルキルフェノール1モルとエチレンオキシド約3~約50モルとの縮合生成物。アルキル基は、例えば、ジイソブチレン、ジアミル、重合プロピレン、イソオクチル、ノニル、及びジノニルであってもよい。これらの界面活性剤は、アルキルフェノールのポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリブチレンオキシド縮合物であってもよい。この化学的性質を有する市販の化合物の例は、Rhone-Poulenc社製のIgepal(登録商標)及びUnion Carbide社製のTriton(登録商標)の商品名で市場で入手できる。
【0098】
約6~約24個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖アルコール1モルとエチレンオキシド約3~約50モルとの縮合生成物。アルコール部分は、上述の炭素範囲のアルコールの混合物からなってもよく、又はこの範囲内の特定の数の炭素原子を有するアルコールからなってもよい。同様の市販の界面活性剤の例は、BASF社製のLutensol(商標)、Dehydol(商標)、Shell Chemical Co.社製のNeodol(商標)、及びVista Chemical Co.社製のAlfonic(商標)の商品名で入手できる。
【0099】
約8~約18個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖カルボン酸1モルとエチレンオキシド約6~約50モルとの縮合生成物。酸部分は、上述の炭素原子範囲の酸の混合物からなってもよく、又はこの範囲内の特定の数の炭素原子を有する酸からなってもよい。この化学的性質を有する市販の化合物の例は、BASF社製のDisponil又はAgnique、及びLipo Chemicals、Inc.社製のLipopeg(商標)の商品名で市場で入手できる。
【0100】
一般にポリエチレングリコールエステルと称されるエトキシル化カルボン酸に加えて、グリセリド、グリセリン、及び多価(糖類又はソルビタン/ソルビトール)アルコールとの反応により形成されるその他のアルカン酸エステルも、特殊な実施形態、特に間接食品添加物用途のための本発明において適用される。これらのエステル部分はすべて、それらの分子上に1つ以上の反応性水素部位を有し、これらの部位を、更にアシル化又はエチレンオキシド(アルコキシド)付加することで、これらの物質の親水性を調節することができる。これらの脂肪酸エステル又はアシル化炭水化物を、アミラーゼ及び/又はリパーゼ酵素を含有する本発明の組成物に付加する場合には、適合性がない可能性があるため、注意しなければならない。
【0101】
非イオン性低発泡界面活性剤の例としては、以下のものが挙げられる。
エチレンオキシドをエチレングリコールに付加して指定された分子量の親水性部分をもたらし、その後プロピレンオキシドを付加して、分子の外側(端部)に疎水性ブロックを得ることにより、修飾され、本質的に逆転した(reversed)、(1)の化合物。分子の疎水性部分の重量は、約1,000~約3,100であり、中央の親水性部分は最終分子の10重量%~約80重量%を含む。これら逆転型(reverse)Pluronics(商標)は、BASF Corporation社により、Pluronic(商標) R界面活性剤の商品名で製造されている。同様に、Tetronic(商標) R界面活性剤は、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドをエチレンジアミンに逐次付加することによって、BASF Corporation社により製造されている。分子の疎水性部分の重量は、約2,100~約6,700であり、中央の親水性部分は、最終分子の10重量%~80重量%を含む。
【0102】
(多官能性部分の)1つ又は複数の末端ヒドロキシ基を「キャッピング」又は「末端ブロック」することによって修飾して、小さい疎水性分子、例えば、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、塩化ベンジル、及び1個~約5個の炭素原子を有する短鎖脂肪酸、アルコール、又はハロゲン化アルキル、並びにそれらの混合物との反応による発泡を低減させた、(1)、(2)、(3)、及び(4)群の化合物。また、反応物質、例えば、末端ヒドロキシ基をクロリド基に変換させる塩化チオニルも含まれる。そのような末端ヒドロキシ基への修飾は、オール-ブロック(all-block)、ブロック-ヘテリック(block-heteric)、ヘテリック-ブロック(heteric-block)、又はオール-ヘテリック(all-heteric)非イオン性物質をもたらし得る。
【0103】
有効な低発泡非イオン性物質の更なる例としては、以下が挙げられる。
1959年9月8日にBrownらに交付された米国特許第2,903,486号のアルキルフェノキシポリエトキシアルカノールであって、式
【0104】
【化5】
(式中、Rは、炭素原子8~9個のアルキル基であり、Aは、炭素原子3~4個のアルキレン鎖であり、nは、7~16の整数であり、mは、1~10の整数である)に示されるアルキルフェノキシポリエトキシアルカノール。
【0105】
交互に親水性オキシエチレン鎖と疎水性オキシプロピレン鎖とを有し、末端の疎水性鎖の重量、中間の疎水性単位の重量、及び連結している親水性単位の重量がそれぞれ、縮合物の約3分の1に相当する、1962年8月7日にMartinらに交付された米国特許第3,048,548号のポリアルキレングリコール縮合物。
【0106】
1968年5月7日にLissantらに交付された米国特許第3,382,178号に開示されている、一般式Z[(OR)nOH]z(式中、Zはアルコキシル化が可能な物質であり、Rは、エチレン及びプロピレンであってもよい、アルキレンオキシドから誘導される基であり、nは、例えば、10~2,000又はそれ以上の整数であり、zは、反応性のオキシアルキル化が可能な基の数によって決定される整数である)を有する、消泡非イオン性界面活性剤。
【0107】
1954年5月4日にJacksonらに交付された米国特許第2,677,700号に記載されている、式Y(C3H6O)n (C2H4O)mH(式中、Yは、約1~6個の炭素原子及び1個の反応性水素原子を有する有機化合物の残基であり、nは、ヒドロキシル数により決定される少なくとも約6.4の平均値を有し、mは、オキシエチレン部分が分子の約10重量%~約90重量%を構成するような値を有する)に相当する、共役ポリオキシアルキレン化合物。
【0108】
1954年4月6日にLundstedらに交付された米国特許第2,674,619号に記載されている、式Y[(C3H6On (C2H4O)mH]x(式中、Yは、約2~6個の炭素原子を有し、x個の反応性水素原子を含有する有機化合物の残基であり、このとき、xは、少なくとも約2の値を有し、nは、ポリオキシプロピレン疎水性塩基の分子量が少なくとも約900となるような値を有し、mは、分子のオキシエチレン含有量が約10重量%~約90重量%となるような値を有する)を有する、共役ポリオキシアルキレン化合物。Yの定義の範囲に含まれる化合物は、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミンなどである。オキシプロピレン鎖は、場合によるが有利には、少量のエチレンオキシドを含有し、オキシエチレン鎖も、場合によるが有利には、少量のプロピレンオキシドを含有する。
【0109】
本発明の組成物に有利に使用される更なる共役ポリオキシアルキレン界面活性剤は、式P[(C3H6O)n (C2H4O)mH]x(式中、Pは、約8~18個の炭素原子を有し、x個の反応性水素原子を含有する有機化合物の残基であり、このとき、xは、1又は2の値を有し、nは、ポリオキシエチレン部分の分子量が少なくとも約44となるような値を有し、mは、分子のオキシプロピレン含有量が約10重量%~約90重量%となるような値を有する)に相当する。いずれの場合にも、オキシプロピレン鎖は、場合によるが有利には、少量のエチレンオキシドを含有してもよく、オキシエチレン鎖は、やはり場合によるが有利には、少量のプロピレンオキシドを含有してもよい。
【0110】
本組成物での使用に適したポリヒドロキシ脂肪酸アミド界面活性剤には、構造式R2CONR1Z(式中、R1は、H、C1-C4ヒドロカルビル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、エトキシ基、プロポキシ基、又はそれらの混合物であり、R2は、C5-C31ヒドロカルビルであり、これは直鎖であってもよく、Zは、少なくとも3個のヒドロキシルが直接鎖に結合した直鎖状ヒドロカルビル鎖を有するポリヒドロキシヒドロカルビル、又はそのアルコキシル化(好ましくは、エトキシル化又はプロポキシル化)誘導体である)を有するものが含まれる。Zは、還元アミノ化反応で還元糖から誘導されてもよく、これは例えば、グリシチル(glycityl)部分である。
【0111】
約0~約25モルのエチレンオキシドを有する脂肪族アルコールのアルキルエトキシレート縮合生成物は、本組成物での使用に適している。脂肪族アルコールのアルキル鎖は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、第1級であっても第2級であってもよく、一般に、6~22個の炭素原子を含有する。
【0112】
エトキシル化C6-C18脂肪アルコール及びC6-C18エトキシル化・プロポキシル化混合脂肪アルコールは、本組成物、特に水溶性のものでの使用に適した界面活性剤である。適切なエトキシル化脂肪アルコールには、エトキシル化度3~50のC6-C18エトキシル化脂肪アルコールがある。
【0113】
特に本組成物での使用に適した非イオン性のアルキル多糖界面活性剤には、1986年1月21日にLlenadoに交付された米国特許第4,565,647号に開示されているものがある。これらの界面活性剤は、約6~約30個の炭素原子を含有する疎水基、及び約1.3~約10個の糖単位を含有する、多糖(例えばポリグリコシド)親水基を含む。5個又は6個の炭素原子を含有するどの還元糖類を使用してもよく、例えば、グルコース、ガラクトース、及びガラクトシル部分は、グルコシル部分に置き換えてもよい。(場合により、疎水基は、2位、3位、4位などで結合することにより、グルコシド又はガラクトシドではなく、グルコース又はガラクトースを生じてもよい。)糖間結合は、例えば、追加の糖単位の1位と前の糖単位の2位、3位、4位、及び/又は6位との間にあってもよい。
【0114】
本組成物での使用に適した脂肪酸アミド界面活性剤には、式:R6CON(R7)2(式中、R6は、7~21個の炭素原子を含有するアルキル基であり、各R7は、独立して、水素、C1-C4アルキル、C1-C4ヒドロキシアルキル、又は--(C2H4O)XHであり、このとき、xは、1~3の範囲である)を有するものが含まれる。
【0115】
有用な非イオン性界面活性剤の群には、アルコキシル化アミン、又はとりわけ、アルコールアルコキシル化/アミノ化/アルコキシル化界面活性剤として定義される群が含まれる。これらの非イオン性界面活性剤は、少なくとも部分的に、一般式:R20--(PO)SN--(EO)tH、R20--(PO)SN--(EO)tH(EO)tH、及びR20--N(EO)tH(式中、R20は、アルキル、アルケニル、若しくはその他の脂肪族基、又は炭素原子8~20個、好ましくは12~14個のアルキル-アリール基であり、EOは、オキシエチレンであり、POは、オキシプロピレンであり、sは、1~20、好ましくは2~5であり、tは、1~10、好ましくは2~5であり、uは、1~10、好ましくは2~5である)によって表され得る。これらの化合物の範囲についてのその他の変形形態は、代替式:R20--(PO)V--N[(EO)wH][(EO)zH](式中、R20は、上記に定義する通りであり、vは、1~20(例えば、1、2、3、又は4(好ましくは2))であり、w及びzは、独立して、1~10、好ましくは2~5である)によって表され得る。これらの化合物は、市販では、非イオン性界面活性剤としてHuntsman Chemicals社により販売されている一連の製品に代表される。この群の好適な化学物質には、Surfonic(商標) PEA25アミンアルコキシレートがある。本発明の組成物に好適な非イオン性界面活性剤としては、アルコールアルコキシレート、EO/POブロックコポリマー、アルキルフェノールアルコキシレートなどが挙げられる。
【0116】
専門書のNonionic Surfactants、Schick、M. J.編、Surfactant Science Series第1巻、Marcel Dekker, Inc.、New York、1983は、本発明を実施する際に一般に使用される幅広い非イオン性化合物についての優れた参考文献である。非イオン性界面活性剤群及びこれらの界面活性剤の種の典型的な一覧は、1975年12月30日にLaughlin及びHeuringに交付された米国特許第3,929,678号に示されている。更なる例は、「Surface Active Agents and detergents」(第I巻及び第II巻、Schwartz、Perry、及びBerch)に示されている。
【0117】
半極性非イオン性界面活性剤
半極性タイプの非イオン性界面活性剤は、本発明の組成物で有用な非イオン性界面活性剤の別の群である。一般に、半極性非イオン性物質は、高発泡剤及び泡安定剤であり、このことは、CIPシステムでのそれらの使用を制限し得る。しかしながら、高発泡清浄法用に設計された本発明の組成物の実施形態では、半極性非イオン性物質は、直接的に役に立つ。半極性非イオン性界面活性剤としては、アミンオキシド、ホスフィンオキシド、スルホキシド、及びそれらのアルコキシル化誘導体が挙げられる。
【0118】
アミンオキシドは、一般式:
【0119】
【化6】
(式中、矢印は、半極性結合の慣例的表現であり、R1、R2、及びR3は、脂肪族、芳香族、複素環式、脂環式、又はそれらの組み合わせであってもよい)に相当する、第3級アミンオキシドである。一般に、洗剤目的のアミンオキシドの場合、R1は、炭素原子約8個~約24個のアルキル基であり、R2及びR3は、炭素原子1~3個のアルキル若しくはヒドロキシアルキル、又はそれらの混合物であり、R2及びR3は、例えば酸素原子若しくは窒素原子によって、互いに結合して環状構造を形成していてもよく、R4は、2~3個の炭素原子を含有するアルカリ性基又はヒドロキシアルキレン基であり、nは、0~約20である。
【0120】
有用な水溶性アミンオキシド界面活性剤は、ココナッツ又は獣脂アルキルジ-(低級アルキル)アミンオキシドから選択され、これらの具体例は、ドデシルジメチルアミンオキシド、トリデシルジメチルアミンオキシド、テトラデシルジメチルアミンオキシド、ペンタデシルジメチルアミンオキシド、ヘキサデシルジメチルアミンオキシド、ヘプタデシルジメチルアミンオキシド、オクタデシルジメチルアミンオキシド、ドデシルジプロピルアミンオキシド、テトラデシルジプロピルアミンオキシド、ヘキサデシルジプロピルアミンオキシド、テトラデシルジブチルアミンオキシド、オクタデシルジブチルアミンオキシド、ビス(2-ヒドロキシエチル)ドデシルアミンオキシド、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-ドデコキシ-1-ヒドロキシプロピルアミンオキシド(bis(2-hydroxyethyl)-3-dodecoxy-1-hydroxypropylamine oxide)、ジメチル-(2-ヒドロキシドデシル)アミンオキシド、3,6,9-トリオクタデシルジメチルアミンオキシド、及び3-ドデコキシ-2-ヒドロキシプロピルジ-(2-ヒドロキシエチル)アミンオキシドである。
【0121】
有用な半極性非イオン性界面活性剤には、以下の構造を有する水溶性ホスフィンオキシドも含まれる。
【0122】
【化7】
(式中、矢印は、半極性結合の慣用的表現であり、R1は、鎖長が炭素原子10個~約24個のアルキル部分、アルケニル部分、又はヒドロキシアルキル部分であり、R2及びR3はそれぞれ、1~3個の炭素原子を含有するアルキル基又はヒドロキシアルキル基から別々に選択されたアルキル部分である)。
【0123】
有用なホスフィンオキシドの例としては、ジメチルデシルホスフィンオキシド、ジメチルテトラデシルホスフィンオキシド、メチルエチルテトラデシルホスホンオキシド、ジメチルヘキサデシルホスフィンオキシド、ジエチル-2-ヒドロキシオクチルデシルホスフィンオキシド、ビス(2-ヒドロキシエチル)ドデシルホスフィンオキシド、及びビス(ヒドロキシメチル)テトラデシルホスフィンオキシドが挙げられる。
【0124】
本明細書において有用な半極性非イオン性界面活性剤にはまた、以下の構造を有する水溶性スルホキシド化合物も含まれる。
【0125】
【化8】
(式中、矢印は、半極性結合の慣用的表現であり、R1は、炭素原子約8個~約28個、エーテル結合0~約5個、及びヒドロキシル置換基0~約2個のアルキル部分又はヒドロキシアルキル部分であり、R2は、1~3個の炭素原子を有するアルキル基及びヒドロキシアルキル基からなるアルキル部分である。)
【0126】
これらスルホキシドの有用な例としては、ドデシルメチルスルホキシド、3-ヒドロキシトリデシルメチルスルホキシド、3-メトキシトリデシルメチルスルホキシド、及び3-ヒドロキシ-4-ドデコキシブチルメチルスルホキシドが挙げられる。
【0127】
本発明の組成物のための半極性非イオン性界面活性剤としては、ジメチルアミンオキシド、例えば、ラウリルジメチルアミンオキシド、ミリスチルジメチルアミンオキシド、セチルジメチルアミンオキシド、それらの組み合わせなどが挙げられる。有用な水溶性アミンオキシド界面活性剤は、オクチル、デシル、ドデシル、イソドデシル、ココナッツ、又は獣脂アルキルジ-(低級アルキル)アミンオキシドから選択され、これらの具体例は、オクチルジメチルアミンオキシド、ノニルジメチルアミンオキシド、デシルジメチルアミンオキシド、ウンデシルジメチルアミンオキシド、ドデシルジメチルアミンオキシド、イソドデシルジメチルアミンオキシド、トリデシルジメチルアミンオキシド、テトラデシルジメチルアミンオキシド、ペンタデシルジメチルアミンオキシド、ヘキサデシルジメチルアミンオキシド、ヘプタデシルジメチルアミンオキシド、オクタデシルジメチルアミンオキシド、ドデシルジプロピルアミンオキシド、テトラデシルジプロピルアミンオキシド、ヘキサデシルジプロピルアミンオキシド、テトラデシルジブチルアミンオキシド、オクタデシルジブチルアミンオキシド、ビス(2-ヒドロキシエチル)ドデシルアミンオキシド、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-ドデコキシ-1-ヒドロキシプロピルアミンオキシド、ジメチル-(2-ヒドロキシドデシル)アミンオキシド、3,6,9-トリオクタデシルジメチルアミンオキシド、及び3-ドデコキシ-2-ヒドロキシプロピルジ-(2-ヒドロキシエチル)アミンオキシドである。
【0128】
本発明の組成物との使用に適した適切な非イオン性界面活性剤には、アルコキシル化界面活性剤が含まれる。適切なアルコキシル化界面活性剤としては、EO/POコポリマー、キャップドEO/POコポリマー、アルコールアルコキシレート、キャップドアルコールアルコキシレート、それらの混合物などが挙げられる。溶媒としての使用に適したアルコキシル化界面活性剤としては、EO/POブロックコポリマー、例えば、Pluronic及び逆転型Pluronic界面活性剤、アルコールアルコキシレート、例えば、Dehypon LS-54(R-(EO)5(PO)4)及びDehypon LS-36(R-(EO)3(PO)6)、及びキャップドアルコールアルコキシレート、例えば、Plurafac LF221及びTegoten EC11、それらの混合物などが挙げられる。
【0129】
アニオン性界面活性剤
同様に本発明で有用なのは、疎水性部の電荷が負であるためアニオン性物質に分類される界面活性物質、又は分子の疎水性セクションが、pHが中性以上に上がらない限り電荷を有さない界面活性剤(例えば、カルボン酸)である。カルボキシレート、スルホネート、サルフェート、及びホスフェートは、アニオン性界面活性剤に見られる極性(親水性)可溶化基である。これらの極性基と会合しているカチオン(対イオン)のうち、ナトリウム、リチウム、及びカリウムは、水溶性を与え、アンモニウム及び置換アンモニウムイオンは、水溶性及び油溶性の双方をもたらし、カルシウム、バリウム、及びマグネシウムは、油溶性を促進する。当業者が理解しているように、アニオン性物質は、優れた洗浄用界面活性剤であり、したがって、重質洗剤組成物への好ましい添加物である。
【0130】
本組成物での使用に適したアニオン性サルフェート界面活性剤としては、アルキルエーテルサルフェート、アルキルサルフェート、直鎖状及び分岐状の第1級及び第2級アルキルサルフェート、アルキルエトキシサルフェート、脂肪オレイルグリセロールサルフェート、アルキルフェノールエチレンオキシドエーテルサルフェート、C5-C17アシル-N-(C1-C4アルキル)及び-N-(C1-C2ヒドロキシアルキル)グルカミンサルフェート、並びにアルキル多糖類のサルフェート、例えば、アルキルポリグルコシドのサルフェートなどが挙げられる。また、アルキルサルフェート、アルキルポリ(エチレンオキシ)エーテルサルフェート、及び芳香族ポリ(エチレンオキシ)サルフェート、例えば、エチレンオキシドとノニルフェノールとのサルフェート又は縮合生成物(通常は、1分子当たり1~6個のオキシエチレン基を有する)も含まれる。
【0131】
本組成物での使用に適したアニオン性スルホネート界面活性剤にはまた、アルキルスルホネート、直鎖状及び分岐状の第1級及び第2級アルキルスルホネート、並びに置換基を有する、又は置換基を有さない芳香族スルホネートも含まれる。
【0132】
本組成物での使用に適したアニオン性カルボキシレート界面活性剤としては、カルボン酸(及び塩)、例えば、アルカン酸(及びアルカノエート)、エステルカルボン酸(例えば、アルキルスクシネート)、エーテルカルボン酸、スルホン化脂肪酸、例えば、スルホン化オレイン酸などが挙げられる。そのようなカルボキシレートとしては、アルキルエトキシカルボキシレート、アルキルアリールエトキシカルボキシレート、アルキルポリエトキシポリカルボキシレート界面活性剤、及び石鹸(例えば、アルキルカルボキシル)が挙げられる。本組成物に有用な第2級カルボキシレートとしては、第2級炭素に結合したカルボキシル単位を含有するものが挙げられる。第2級炭素は、環状構造中、例えば、p-オクチル安息香酸中、又はアルキル置換シクロヘキシルカルボキシレート中にあってもよい。第2級カルボキシレート界面活性剤は、典型的には、エーテル結合もエステル結合もヒドロキシル基も含有しない。更に、これらは、典型的には、頭部基(head group)(両親媒性部分)に窒素原子を含まない。適切な第2級石鹸界面活性剤は、典型的には、計11~13個の炭素原子を含有するが、より多数の炭素原子(例えば、最大16個)が存在してもよい。適切なカルボキシレートにはまた、アシルアミノ酸(及び塩)、例えば、アシルグルタメート、アシルペプチド、サルコシネート(例えば、N-アシルサルコシネート)、タウレート(例えば、N-アシルタウレート及びメチルタウリド(methyl tauride)の脂肪酸アミド)なども含まれる。
【0133】
適切なアニオン性界面活性剤としては、以下の式のアルキル又はアルキルアリールエトキシカルボキシレートが挙げられる。
R-O-(CH2CH2O)n(CH2)m-CO2X(3)
(式中、Rは、C8-C22アルキル基、又は
【0134】
【化9】
であり、このとき、R1は、C4-C16アルキル基であり、nは、1~20の整数であり、mは、1~3の整数であり、Xは、対イオン、例えば、水素、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、又はアミン塩、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、若しくはトリエタノールアミンである)。一部の実施形態では、nは4~10の整数であり、mは1である。一部の実施形態では、RはC8-C16アルキル基である。一部の実施形態では、RはC12-C14アルキル基であり、nは4であり、mは1である。
【0135】
他の実施形態では、Rは、
【0136】
【化10】
であり、R1は、C6-C12アルキル基である。また別の実施形態では、R1はC9アルキル基であり、nは10であり、mは1である。
【0137】
そのようなアルキル及びアルキルアリールエトキシカルボキシレートは市販されている。これらのエトキシカルボキシレートは、典型的には、酸の形態で入手でき、それらは、アニオン性又は塩の形態に容易に変換することができる。市販のカルボキシレートとしては、C12-13アルキルポリエトキシ(4)カルボン酸であるNeodox 23-4(Shell Chemical社)、及びC9アルキルアリールポリエトキシ(10)カルボン酸であるEmcol CNP-110(Witco Chemical社)が挙げられる。カルボキシレートはまた、Clariant社からも、例えば、C13アルキルポリエトキシ(7)カルボン酸である製品Sandopan(登録商標) DTCが入手可能である。
【0138】
両性界面活性剤
両性(amphoteric又はampholytic)界面活性剤は、塩基性及び酸性の双方の親水基と、有機疎水基とを含有する。これらのイオン体は、他のタイプの界面活性剤について本明細書に記載されるいずれのアニオン性又はカチオン性基であってもよい。塩基性窒素及び酸性カルボキシレート基は、塩基性及び酸性親水基として使用される典型的な官能基である。少数の界面活性剤では、スルホネート、サルフェート、ホスホネート、又はホスフェートは、負電荷をもたらす。
【0139】
両性界面活性剤は、概して、脂肪族基が直鎖又は分岐状であってもよく、脂肪族置換基のうちの1つが約8~18個の炭素原子を含有し、1つがアニオン性水溶性基、例えば、カルボキシ基、スルホ基、スルファト基、ホスファト基、又はホスホノ基を含有する、脂肪族第2級及び第3級アミンの誘導体ということができる。両性界面活性剤は、当業者に既知であり、「Surfactant Encyclopedia」Cosmetics & Toiletries, Vol. 104 (2) 69~71頁(1989)(その内容全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている、2つの主な群に更に分類される。1つ目の群には、アシル/ジアルキルエチレンジアミン誘導体(例えば、2-アルキルヒドロキシエチルイミダゾリン誘導体)、及びそれらの塩が含まれる。2つ目の群には、N-アルキルアミノ酸及びそれらの塩が含まれる。一部の両性界面活性剤は、両群に当てはまるとも考えられる。
【0140】
両性界面活性剤は、当業者に既知の方法で合成することができる。例えば、2-アルキルヒドロキシエチルイミダゾリンは、長鎖カルボン酸(又は誘導体)とジアルキルエチレンジアミンを縮合して閉環することによって合成される。市販の両性界面活性剤は、その後、例えばクロロ酢酸又は酢酸エチルを用いて、アルキル化により、イミダゾリン環を加水分解して開環することによって誘導体化される。アルキル化において、1つ又は2つのカルボキシ-アルキル基が反応して、第3級アミン及び異なるアルキル化剤とのエーテル結合を形成し、異なる第3級アミンを生じる。
【0141】
本発明に適用される長鎖イミダゾール誘導体は、一般に、一般式:
【0142】
【化11】
(式中、Rは、約8~18個の炭素原子を含有する非環式疎水基であり、Mは、アニオンの電荷を中和するカチオン、通常はナトリウムである)を有する。本組成物に使用することができる、市販の著名なイミダゾリン系両性化合物としては、例えば、ココ両性プロピオネート、ココ両性カルボキシ-プロピオネート、ココ両性グリシネート、ココ両性カルボキシ-グリシネート、ココ両性プロピル-スルホネート、及びココ両性カルボキシ-プロピオン酸が挙げられる。両性カルボン酸は、脂肪イミダゾリンから生成することができ、両性ジカルボン酸のジカルボン酸官能基は、二酢酸及び/又は二プロピオン酸である。
【0143】
上記に記載のカルボキシメチル化化合物(グリシネート)は、しばしばベタインと称される。ベタインは、「双性イオン界面活性剤」と題する項で後述する特殊な両性物質群である。
【0144】
長鎖N-アルキルアミノ酸は、RNH2(式中、R=C8-C18直鎖又は分岐鎖アルキルである)の脂肪族アミンとハロゲン化カルボン酸との反応により容易に調製される。アミノ酸の第1級アミノ基のアルキル化は、第2級及び第3級アミンをもたらす。アルキル置換基は、2種以上の反応性窒素中心を提供する更なるアミノ基を有してもよい。ほとんどの市販のN-アルキルアミン酸は、ベータ-アラニン又はベータ-N(2-カルボキシエチル)アラニンのアルキル誘導体である。本発明に適用される市販のN-アルキルアミノ酸両性物質の例としては、アルキルベータ-アミノジプロピオネート、RN(C2H4COOM)2、及びRNHC2H4COOMが挙げられる。一実施形態では、Rは、約8~約18個の炭素原子を含有する非環式疎水基であってもよく、Mは、アニオンの電荷を中和するカチオンである。
【0145】
適切な両性界面活性剤としては、ココナッツ生成物、例えば、ココナッツ油又はココナッツ脂肪酸に由来するものが挙げられる。更なる適切なココナッツ由来界面活性剤は、それらの構造の一部として、エチレンジアミン部分、アルカノールアミド部分、アミノ酸部分、例えば、グリシン、又はそれらの組み合わせ、並びに炭素原子約8~18個(例えば、12個)の脂肪族置換基を含む。そのような界面活性剤はまた、アルキル両性ジカルボン酸とみなすこともできる。これらの両性界面活性剤は、C12-アルキル-C(O)-NH-CH2-CH2-N+(CH2-CH2-CO2Na)2-CH2-CH2-OH、又はC12-アルキル-C(O)-N(H)-CH2-CH2-N+(CH2-CO2Na)2-CH2-CH2-OHとして表される化学構造を含み得る。ココ両性二プロピオン酸二ナトリウムは、適切な両性界面活性剤の1つであり、Miranol(商標) FBSの商品名でRhodia Inc.社(Cranbury、N.J)から市販されている。化学名ココ両性二酢酸二ナトリウムの別の適切なココナッツ由来両性界面活性剤は、Mirataine(商標) JCHAの商品名でRhodia Inc.社(Cranbury、N.J)から販売されている。
【0146】
両性界面活性剤群及びこれらの界面活性剤の種の典型的な一覧は、1975年12月30日にLaughlin及びHeuringに交付された米国特許第3,929,678号に示されている。更なる例は、「Surface Active Agents and Detergents」(第I巻及び第II巻、Schwartz、Perry、及びBerch)に示されている。これらの参考文献はそれぞれ、その内容全体が参照により本明細書に援用される。
【0147】
双性イオン界面活性剤
双性イオン界面活性剤は、両性界面活性剤のサブセットと考えることができ、アニオン性電荷を有し得る。双性イオン界面活性剤は、概して、第2級及び第3級アミンの誘導体、複素環式第2級及び第3級アミンの誘導体、又は第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム、若しくは第3級スルホニウム化合物の誘導体ということができる。典型的には、双性イオン界面活性剤は、正電荷を帯びた第4級アンモニウム、又は場合により、スルホニウム若しくはホスホニウムイオン、負電荷を帯びたカルボキシル基、及びアルキル基を含む。双性イオン物質は、一般に、分子の等電点領域でほぼ同程度にイオン化し、正電荷中心と負電荷中心との間に強い「分子内塩」引力を生じ得る、カチオン性基及びアニオン性基を含有する。そのような双性イオン合成界面活性剤の例としては、脂肪族基が直鎖又は分岐状であってもよく、脂肪族置換基のうちの1つが8~18個の炭素原子を含有し、1つがアニオン性水溶性基、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、又はホスホン酸基を含有する、脂肪族第4級アンモニウム、ホスホニウム、及びスルホニウム化合物の誘導体が挙げられる。
【0148】
ベタイン及びスルタイン(sultaine)界面活性剤は、本明細書で使用するための例示的双性イオン界面活性剤である。これらの化合物の一般式は、
【0149】
【化12】
であり、式中、R1は、0~10個のエチレンオキシド部分及び0~1個のグリセリル部分を有する、炭素原子8~18個のアルキル基、アルケニル基、又はヒドロキシアルキル基を含有し、Yは、窒素、リン、及び硫黄原子からなる群から選択され、R2は、1~3個の炭素原子を含有するアルキル基又はモノヒドロキシアルキル基であり、xは、Yが硫黄原子である場合には1であり、Yが窒素又はリン原子である場合には2であり、R3は、炭素原子1~4個のアルキレン又はヒドロキシアルキレン又はヒドロキシアルキレンであり、Zは、カルボキシレート基、スルホン酸基、硫酸基、ホスホン酸基、及びリン酸基からなる群から選択された基である。
【0150】
上記に記載の構造を有する双性イオン界面活性剤の例としては、4-[N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)-N-オクタデシルアンモニオ]-ブタン-1-カルボキシレート、5-[S-3-ヒドロキシプロピル-S-ヘキサデシルスルホニオ]-3-ヒドロキシペンタン-1-サルフェート、3-[P,P-ジエチル-P-3,6,9-トリオキサテトラコサンホスホニオ]-2-ヒドロキシプロパン-1-ホスフェート、3-[N,N-ジプロピル-N-3-ドデコキシ-2-ヒドロキシプロピル-アンモニオ]-プロパン-1-ホスホネート、3-(N,N-ジメチル-N-ヘキサデシルアンモニオ)-プロパン-1-スルホネート、3-(N,N-ジメチル-N-ヘキサデシルアンモニオ)-2-ヒドロキシ-プロパン-1-スルホネート、4-[N,N-ジ(2(2-ヒドロキシエチル)-N(2-ヒドロキシドデシル)アンモニオ]-ブタン-1-カルボキシレート、3-[S-エチル-S-(3-ドデコキシ-2-ヒドロキシプロピル)スルホニオ]-プロパン-1-ホスフェート、3-[P,P-ジメチル-P-ドデシルホスホニオ]-プロパン-1-ホスホネート、及びS[N,N-ジ(3-ヒドロキシプロピル)-N-ヘキサデシルアンモニオ]-2-ヒドロキシ-ペンタン-1-サルフェートが挙げられる。上記洗浄性界面活性剤に含まれるアルキル基は、直鎖状又は分岐状であってもよく、飽和又は不飽和であってもよい。
【0151】
本組成物での使用に適した双性イオン界面活性剤としては、一般構造:
【0152】
【化13】
のベタインが挙げられる。これらの界面活性剤ベタインは、典型的には、極端なpHで、カチオン性又はアニオン性の強い特性を示さず、またそれらの等電点領域で、水溶性の低下を示さない。「外部」第4級アンモニウム塩とは異なり、ベタインは、アニオン性物質と適合性を有する。適切なベタインの例としては、ココナッツアシルアミドプロピルジメチルベタイン、ヘキサデシルジメチルベタイン、C12-14アシルアミドプロピルベタイン、C8-14アシルアミドヘキシルジエチルベタイン、4-C14-16アシルメチルアミドジエチルアンモニオ-1-カルボキシブタン、C16-18アシルアミドジメチルベタイン、C12-16アシルアミドペンタンジエチルベタイン、及びC12-16アシルメチルアミドジメチルベタインが挙げられる。
【0153】
本発明で有用なスルタインとしては、式(R(R1)2 N+ R2SO3-(式中、Rは、C6-C18ヒドロカルビル基であり、各R1は、典型的には、独立して、C1-C3アルキル、例えば、メチルであり、R2は、C1-C6ヒドロカルビル基、例えば、C1-C3アルキレン又はヒドロキシアルキレン基である)を有する化合物が挙げられる。
【0154】
双性イオン界面活性剤群及びこれらの界面活性剤の種の典型的な一覧は、1975年12月30日にLaughlin及びHeuringに交付された米国特許第3,929,678号に示されている。更なる例は、「Surface Active Agents and Detergents」(第I巻及び第II巻、Schwartz、Perry及びBerch)に示されている。これらの参考文献はそれぞれ、その内容全体が本明細書に援用される。
【0155】
緩衝剤
他の構成要素と適合性を有する一般に知られているどの緩衝剤も使用することができ、例としては、生物学的緩衝剤(biological buffer)、トリズマ緩衝剤、リン酸緩衝剤、クエン酸緩衝液、酢酸ナトリウム-酢酸緩衝液、リン酸ナトリウム緩衝剤、イミダゾール-塩化水素緩衝剤、炭酸ナトリウム-重炭酸ナトリウム緩衝剤などが挙げられる。本開示の更なる態様では、任意の適切な緩衝剤を有用なpHである5~9以内、より好ましくは6~8、より好ましくは約7で使用することができる。
【0156】
光抑制剤
本開示の一態様では、組成物は、抗紫外線化合物としても知られている光抑制剤を含む。そのような化合物を添加することで、活性成分の作用を遅らせ、植物及び/又は生物全体に組成物がより良好に移動できるように促し、それにより本開示による組成物の有効性が向上する。適切な化合物としては、例えば、p-アミノ安息香酸、パディメートO、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、シノキセート、ジオキシベンゾン、オキシベンゾン、ホモサラート、メンチルアントラニラート、オクトクリレン、オクチルメトキシシンナメート、オクチルサリチレート、スルイソベンゾン、トロラミンサリチレート、アボベンゾン、エカムスル、二酸化チタン、酸化亜鉛、4-メチルベンジリデンカンファー、ビスオクトリゾール、アニソトリアジン(anisotraizine)、トリス-ビフェニルトリアジン、ビスイミダジレート、ドロメトリゾールトリシロキサン、ベンゾフェノン-9、オクチルトリアゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルブタミドトリアゾン、ジメチコ-ジエチルベンザルマロネート、イソペンチル-4-メトキシシンナメート、それらの組み合わせなどが挙げられる。
【0157】
抗菌性構成要素
抗菌剤は、製品、材料、媒体(例えば、水処理ストリーム)、及びシステムの微生物汚染及び劣化を防止するために使用される化学組成物である。抗菌剤及び組成物は、例えば、硬質表面清浄、食品調理、動物用飼料、冷却水、接客サービス、病院及び医療用途、パルプ及び紙製造、繊維の清浄、並びに水処理に関連して、消毒剤又はサニタイザーとして使用される。任意の適切な抗細菌性構成要素を使用することができ、これには、限定するものではないが、アルコール、アルデヒド、ハロゲン放出化合物、過酸化物、ガス状物質、アニリド、ビグアニド、ビスフェノール、ハロフェノール、フェノール、クレゾール、第4級アンモニウム化合物、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0158】
細菌若しくは真菌感染の予防又は改善
本開示は、一部の実施形態では、植物病害(例えば、カンキツ病、胴枯れ病、ウドンコ病など)及び/又は植物病害の少なくとも1つの症状を予防、改善、及び/又は処置するための組成物、システム、及び方法に関する。特許請求の範囲に記載の発明による組成物は、細菌、ウイルス、真菌、昆虫、有害生物などによって病気が引き起こされた病変生体組織に該組成物を適用した場合に、その病気の処置、予防、及び改善をもたらす。
【0159】
本発明は、抗菌処置組成物として使用する前に使用溶液に希釈される、本発明の濃縮組成物を企図している。抗菌性組成物の重量パーセンテージに関する例示的実施形態を表1に示す。
【0160】
【表1】
【0161】
本発明は、非常に多様なpH領域での細菌及び真菌の防除に有効な組成物を企図している。本発明の一実施形態では、組成物は、全pH領域、すなわち0~14にわたって、細菌及び/又は真菌の防除に有効である。本発明の更なる実施形態では、組成物は、pH領域2~12、より好ましくは2~10、より好ましくは4~10、より好ましくは6~8にわたって有効である。
【0162】
本発明の組成物は、生体組織、具体的には植物及び動物組織に、さまざまな技法で適用することができる。水溶液は、植物上若しくは植物中、水耕基質上若しくは水耕基質中、農業土壌上若しくは農業土壌中、又は家畜の身体上に、スプレー、塗布、塗抹、噴霧、又は浸漬することができる。代替的に、組成物は、スプレー、混合、コーティング、又はスラリーにより、動物用飼料に組み込むこともできる。更に、組成物は、固体にして、摂食により家畜の生体組織と接触させてもよい。
【0163】
本発明の一実施形態では、標的は、植物及び/又はその根系である。本発明の更なる実施形態では、標的は、果実、野菜、若しくは穀物の表面、又はその他の食品の表面である。本発明の更なる実施形態では、標的は、動物組織である。本発明のまた更なる実施形態では、標的は、水である。また更なる実施形態では、標的は、産業用食品加工及び/又は製造硬質表面である。
【0164】
植物病害の例は、病変部によって大別され、種子腐敗病、苗の病気、根の病気、幹の病気、茎腐敗病、穂腐敗病、葉の病気、果実に見られるように過剰な緑色を生じる病気によって分類することができる。そのような例としては、限定するものではないが、各種線虫病、各種さび病、各種黒穂病、各種いちょう病、各種斑点病、各種胴枯れ病、各種ウドンコ病、各種腐敗病、各種葉焼病及びモザイク病、各種カビ病、各種カンキツグリーニング病が挙げられる。一部の実施形態によれば、植物病害及び/又は植物病害の少なくとも1つの症状を予防、改善、及び/又は処置することは、植物の1つ以上の壊滅的な細菌性及び/又は真菌性病害を処置及び/又は治療することを含み得る。
【0165】
本開示はまた、一部の実施形態では、家畜を内面的若しくは外面的に予防、改善、及び/又は処置するための組成物、システム、及び方法に関する。例えば、方法は、本発明による組成物でスプレー、コーティング、又は洗浄することによって、動物の皮膚を処置するステップを含んでもよい。
【0166】
本開示はまた、一部の実施形態では、堆肥処理施設、堆肥保管施設、畜舎、動物飼育業務施設(animal rearing operation facility)、又は排水処理施設を予防、改善、及び/又は処理するための組成物、システム、及び方法に関する。例えば方法は、本発明による組成物でスプレー、コーティング、被覆することにより、施設の表面を処理するステップを含んでもよい。
【0167】
本開示はまた、一部の実施形態では、産業用食品加工及び/又は製造施設を予防、改善、及び/又は処理するための組成物、システム、及び方法に関する。具体的には、本開示は、細菌及び/又は真菌感染を起こしやすい農業材料、例えば、限定するものではないが、穀物、果実、野菜、酪農製品、肉製品、及び畜産製品を取り扱う、産業用食品加工及び/又は製造施設の処理に関する。
【0168】
本発明の組成物は、さまざまな家庭用途又は産業用途に使用して、例えば、表面上、物体上、体内、又は水流中の微生物数若しくはウイルス数を減少させることができる。この化合物は、台所、トイレ、工場、病院、歯科医院、及び食品工場を含めたさまざまな場所で使用することができ、また平滑、でこぼこ、又は多孔質の外形を有するさまざまな硬質若しくは軟質表面に使用することができる。適切な硬質表面としては、例えば、構造的表面(例えば、床、壁、窓、シンク、テーブル、カウンター、及び看板)、食器、硬質表面医療若しくは手術器具及び装置、並びに硬質表面梱包材が挙げられる。そのような硬質表面は、例えば、セラミック、金属、ガラス、木材、又は硬質プラスチックを含めたさまざまな材料で作られていてもよい。適切な軟質表面としては、例えば、紙、濾過材、病院用及び手術用リネン及び衣類、軟質表面医療若しくは手術器具及び装置、並びに軟質表面梱包材が挙げられる。そのような軟質表面は、例えば、紙、繊維、織布又は不織布、軟質プラスチック、及びエラストマーを含めたさまざまな材料で作られていてもよい。本発明の組成物はまた、軟質表面、例えば、食品及び皮膚(例えば、手)に使用することもできる。本化合物は、発泡又は非発泡環境サニタイザー又は消毒剤として使用してもよい。
【0169】
本発明の組成物は、製品、例えば、滅菌剤、サニタイザー、消毒剤、保存剤、脱臭剤、防腐剤、殺真菌剤、殺病原菌剤、殺胞子剤、殺ウイルス剤、洗剤、漂白剤、硬質表面クリーナー、ハンドソープ、水不要のハンドサニタイザー、潤滑剤、リンス助剤、ツーインワン及び/又はスリーインワン製品、例えば、殺虫剤/クリーナー/サニタイザー、サードシンク塗布剤、及び手術前又は手術後の洗浄剤に含まれていてもよい。
【0170】
組成物はまた、獣医用製品、例えば、哺乳動物の皮膚処置剤に、又は動物の囲い地、おり、給水所、並びに獣医処置領域、例えば、検査台及び手術室を衛生化若しくは消毒するための製品に使用することもできる。本組成物は、家畜又はヒトの抗菌フットバスに使用することができる。
【0171】
一部の態様では、本発明の組成物は、病原性微生物、例えば、ヒトや動物などの病原体の数を減少させるために使用することができる。化合物は、真菌、カビ、細菌、胞子、及びウイルス、例えば、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、大腸菌(E. coli)、レンサ球菌(Streptococci)、レジオネラ(Legionella)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、マイコバクテリア、結核、ファージなどを含む病原体に対して活性を示す。そのような病原体は、乳腺炎又はその他の哺乳動物の泌乳系疾患、結核などを含む、さまざまな疾患及び障害を引き起こし得る。本発明の組成物は、動物の皮膚若しくはその他の外部表面若しくは粘膜表面上の微生物数を減少させることができる。加えて、本化合物は、水、空気、又は表面基質による移動を介してまん延する病原性微生物を死滅させることができる。組成物は、動物の皮膚、その他の外部、若しくは粘膜表面、水、空気、又は表面に使用するだけでよい。
【0172】
本発明の方法によれば、予防、改善、及び/又は処置方法は、本発明による組成物を形成するステップ、及び当該清浄溶液を標的に接触させるステップを含む。方法は、場合により、本発明による組成物を所望の濃度まで希釈するステップを更に含んでもよい。方法は、場合により、接触を所望の時間持続させておくステップを更に含んでもよい。方法は、場合により、濯ぎ落とすステップを更に含んでもよい。方法は、場合により、スプレー、塗抹、コーティング、塗布、噴霧、浸漬、混合、コーティングなど、及びそれらの組み合わせのいずれかによって接触させるステップを更に含んでもよい。
【0173】
本明細書で引用する参考文献及び特許文献はすべて、当業者の水準を示すものであり、本開示と矛盾しない限りにおいて、それらの内容全体が参照により援用される。本明細書に提示する例は、例示を目的とし、特許請求される本発明の範囲を制限することは意図しない。当業者が思いつく例示的組成物、設備、及び方法のいかなる変形形態も、本発明の範囲に含まれるものとする。
【実施例0174】
本発明の実施形態は、以下の非限定的な実施例で更に明確にされる。これらの例は、本発明の一部の実施形態を示しているが、説明のために示されるに過ぎないことを理解されたい。上記の説明及びこれらの実施例から、当業者は、本発明の本質的特徴を確かめることができ、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明の実施形態にさまざまな変更及び修正を加えて、さまざまな用途及び条件に適合させることができる。したがって、本明細書に図示及び記載されているものに加え、本発明の実施形態のさまざまな修正形態が、前述の説明から当業者に明らかになる。そのような修正形態もまた、添付の特許請求の範囲の範囲に含まれるものとする。
【0175】
以下の実施例で使用される材料をここに提示する。
ミュラーヒントンブロス
リゾビウム・ラジオバクター(Rhizobium radiobacter)ATCC 700691 グラム(-)菌
枯草菌(Bacillus subtilis) ATCC 15841 グラム(+)菌
ラルストニア・インシディオーサ(Ralstonia insidiosa) ATCC 49129 グラム(-)菌
ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia) ATCC 13637 グラム(-)菌
アスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis) AATCC 6275
アルテルナリア・アルテナータ(Alternaria alternate) ATCC 66981
クルブラリア・ルナータ(Curvularia lunata) ATCC 12017
カンジダ・アルビカンス(Candida albicans) ATCC 10231
【0176】
[実施例1]
試験は、2015 Clinical and Laboratory Standards Institute Method M07-A10:Methods for dilution antimicrobial susceptibility tests for bacteria that grow aerobicallyに従って実施する。さまざまな量の試験化合物を含むミュラーヒントンブロスを各ウェルに入れて(1ウェル当たり100μL)、滅菌96ウェルマイクロプレートを準備する。次いで、CLSI M07-A10の微量希釈アッセイに従って、試験生物と試験化合物との各組み合わせに対し、10種の異なる濃度の試験化合物を含む2倍段階希釈系列1行を調製し、更にその複製3行を調製する。CLSI M07-A10微量希釈組み合わせ(チェッカーボード)アッセイに従い、化合物2の各組み合わせにつき各濃度の化合物1が1回調製されるように、2種の試験化合物の2倍段階希釈系列2つを互いに垂直に配置した8×8ウェルマトリクスを調製する。8種の異なる濃度の試験化合物1を含む2倍段階希釈系列1列を調製し、更に8種の異なる濃度の試験化合物2を含む2倍段階希釈系列1列を調製する。試験生物と試験化合物の対との各組み合わせにつき1つのマイクロプレートを調製し、さらにミュラーヒントン寒天上で成長した新鮮な単離コロニーを用いて、各試験微生物の0.5マクファーランド濁度標準液に相当する細胞懸濁液を調製する。各細胞懸濁液を1:20の比率でミュラーヒントンブロスで希釈し、各ウェルに10μLを添加することにより、マイクロプレートに接種する。次いで、CLSI M07-A10に従って、マイクロプレートをインキュベートする。
【0177】
マイクロプレートを読み取り、以下の手順に従ってデータを解釈する。最小発育阻止濃度(MIC)とは、生物の増殖を停止させるのに必要とされる試験化合物の最小濃度であり、これは、微生物死の他に微生物の分裂及び増殖能力の喪失を含む。24時間のインキュベーション期間中、補助光を使用した。照度は、1259~4203ルクスの範囲とした。
【0178】
下記の表2~5に結果を示す。表に示されるPhlB減少は、本発明の上記構成要素を加えることによって表れる相乗作用によりPhlBの従来の用量が減少した割合を示す。
【0179】
【表2】
【0180】
【表3】
【0181】
【表4】
【0182】
【表5】
【0183】
表2~5に示されるように、本発明の組成物による相乗作用が存在し、それは、本発明による相乗剤と組み合わせた場合に、必要とされるPhlB量の減少を可能にする。本発明の特定の理論に制限されることは意図しないが、本発明による組成物を使用した場合、取り込みの向上、光捕捉活性の強化、及び異なる動態学的反応が可能になると考えられる。付加的相乗剤は、活性成分の細菌取り込みの強化を助けながら、問題の細菌の生化学的防除にも寄与する。これら及びその他の要素の組み合わせは、従来の方法と比較して、グラム陽性菌及びグラム陰性菌の迅速な防除を可能にすると考えられる。
【0184】
[実施例2]
酵母:カンジダをサブローデキストロース寒天(SDA)上、35±1℃で、コロニーの直径がおよそ2~3mmになるまで24~48時間培養する。約5個のコロニーを滅菌0.8~0.9%生理食塩水5mLに浮遊させる。15秒間ボルテックスする。細胞密度を0.5マクファーランド濁度標準液相当に調整する。調整した接種菌液を調製する:細胞懸濁液をRPMI 1640で1:2000に希釈する。該当する各ウェルに100μLを添加することにより、マイクロプレートに接種する。
【0185】
カビ:クルブラリア及びアスペルギルスをSDA上、35±1℃で、7日間又は十分な胞子形成が得られるまで培養する。アルテルナリアを30±1℃で、7日間又は十分な胞子形成が得られるまで培養する。0.8~0.9%生理食塩水で胞子形成コロニーを採取し、新しい試験管に移す。重い粒子を5分間沈殿させ、上部の均一懸濁液を滅菌試験管に移し、15秒間のボルテックスにより混合する。光学密度を読み取り、以下のOD(530nm)に調整する。
・アルテルナリア:0.25~0.30
・アスペルギルス:0.09~0.13
・クルブラリア:0.25~0.30
【0186】
カンジダの調整接種菌液を調製する際、0.5マクファーランド濁度標準液相当の光学密度と等しい光学密度の生理食塩水細胞懸濁液をRPMI 1640で、CLSI M27-A3で指示されている1:2000ではなく、1:1000に希釈した。アルテルナリアを30±1℃で、7日間又は十分な胞子形成が得られるまで培養した。
【0187】
データ解析/報告:マイクロプレートの目視可能な増殖(濁度)を読み取る。最小発育阻止濃度(MIC)を使用する。
【0188】
結果を以下の表6~9に示す。表に示されるPhlB減少は、本発明の上記構成要素を加えることによって表れる相乗作用によりPhlBの従来の用量が減少した割合を示す。
【0189】
【表6】
【0190】
【表7】
【0191】
【表8】
【0192】
【表9】
【0193】
表6~9に示されるように、本発明の組成物による相乗作用が存在し、それは、本発明による相乗剤と組み合わせた場合に、必要とされるPhlB量の減少を可能にする。本発明の特定の理論に制限されることは意図しないが、本発明による組成物を使用した場合、取り込みの向上、光捕捉活性の強化、及び異なる動態学的反応が可能になると考えられる。付加的相乗剤は、活性成分の細菌取り込みの強化を助けながら、問題の細菌の生化学的防除にも寄与する。これら及びその他の要素の組み合わせは、従来の方法と比較して、真菌の迅速な防除を可能にすると考えられる。
【0194】
本発明について上記のように記載したが、本発明がいろいろな形で変更できることは明らかである。そのような変形形態は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱するとはみなされず、そのような修正形態はすべて、以下の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【0195】
上記の明細書は、開示される組成物及び方法の製造及び使用の説明を提供する。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく多くの実施形態が可能であるため、本発明は特許請求の範囲内にあるものとする。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0195
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0195】
上記の明細書は、開示される組成物及び方法の製造及び使用の説明を提供する。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく多くの実施形態が可能であるため、本発明は特許請求の範囲内にあるものとする。
本開示の態様として、以下のものを挙げることができる。
[1]
キサンテン染料と、
有機染料、ホウ酸塩、無機塩、及び/又はそれらの組み合わせのうちの1種以上と、
を含む抗菌性組成物であって、
有機染料、ホウ酸塩、無機塩、及び/又はそれらの組み合わせがキサンテン染料と相乗的に作用する、抗菌性組成物。
[2]
キサンテン染料がフルオレセイン、エオシン、ローダミン、及び/又はそれらの組み合わせである、態様1に記載の組成物。
[3]
キサンテン染料が式(I)~(XXIX)のいずれかに記載の化合物である、態様1に記載の組成物。
[4]
キサンテン染料がフロキシンBである、態様1に記載の組成物。
[5]
キサンテン染料と構成要素とが約0.001:1~約1:0.001の比で存在する、態様1に記載の組成物。
[6]
キサンテン染料が約0wt.%~約50wt.%の量で存在する、態様1に記載の組成物。
[7]
相乗的に作用する構成要素が有機染料である、態様1に記載の組成物。
[8]
相乗的に作用する構成要素が、フルオレセイン(3',6'-ジヒドロキシスピロ[2-ベンゾフラン-3,9'-キサンテン]-1-オン)、フルオレセインイソチオシアネート、NHS-フルオレセイン、カルボキシフルオレセイン、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル類、テトラフルオロフェニルエステル類、保護フルオレセイン化合物、及びそれらの組み合わせである、態様7に記載の組成物。
[9]
構成要素がフルオレセインである、態様7に記載の組成物。
[10]
構成要素が少なくとも50マイクロモルの量で存在する、態様7に記載の組成物。
[11]
構成要素が約0wt.%~約60wt.%の量で存在する、態様7に記載の組成物。
[12]
構成要素がホウ酸塩である、態様1に記載の組成物。
[13]
構成要素が、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸二ナトリウム、又はそれらの組み合わせである、態様12に記載の組成物。
[14]
構成要素が少なくとも2ミリモルの量で存在する、態様12に記載の組成物。
[15]
構成要素が約50wt.%~約95wt.%の量で存在する、態様12に記載の組成物。
[16]
構成要素が無機塩である、態様1に記載の組成物。
[17]
構成要素が、アルミニウム塩、アンモニウム塩、バリウム塩、ベリリウム塩、カルシウム塩、セシウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、ナトリウム塩、ストロンチウム塩、及びそれらの組み合わせである、態様16に記載の組成物。
[18]
構成要素がアルミニウム塩である、態様17に記載の組成物。
[19]
構成要素が硫酸アルミニウムである、態様18に記載の組成物。
[20]
構成要素が少なくとも75ミリモルの量で存在する、態様16に記載の組成物。
[21]
構成要素が約50wt.%~約100wt.%の量で存在する、態様16に記載の組成物。
[22]
少なくとも1種の付加的機能性成分を更に含む、態様1に記載の組成物。
[23]
少なくとも1種の付加的機能性成分が、抗菌性化合物、界面活性剤、増量剤、溶媒、自然生長促進剤、担体、乳化剤、分散剤、防霜剤、日光保護剤、増粘剤、及びアジュバント、並びに昆虫の食物源の群から選択される、態様22に記載の組成物。
[24]
少なくとも1種の付加的機能性成分が、活性化合物の約0.01重量%~約95重量%の量で含まれる、態様22に記載の組成物。
[25]
細菌及び/又は真菌感染を処置及び/又は予防する方法であって、
キサンテン染料、及び有機染料、ホウ酸塩、無機塩、及びそれらの組み合わせのうちの1種以上を含む抗菌性組成物を形成するステップと、
標的を組成物に接触させるステップと、を含み、
有機染料、ホウ酸塩、無機塩、及び/又はそれらの組み合わせがキサンテン染料と相乗的に作用する、方法。
[26]
標的が植物及び/又はその根系である、態様25に記載の方法。
[27]
標的が果実、野菜、穀物の表面、又はその他の食品の表面である、態様25に記載の方法。
[28]
標的が動物組織である、態様25に記載の方法。
[29]
標的が水である、態様25に記載の方法。
[30]
各種線虫病、各種さび病、各種黒穂病、各種いちょう病、各種斑点病、各種胴枯れ病、各種ウドンコ病、各種腐敗病、各種葉焼病及びモザイク病、各種カビ病、各種カンキツグリーニング病の標的の処置を更に含む、態様25に記載の方法。
[31]
接触ステップが、堆肥処理施設、堆肥保管施設、畜舎、動物飼育業務施設、又は排水処理施設で実施される、態様25に記載の方法。
[32]
接触ステップが食品加工施設で実施される、態様25に記載の方法。
[33]
組成物を所望の処理濃度に希釈する希釈ステップを更に含む、態様25に記載の方法。
[34]
組成物を規定の期間にわたり標的に接触させておくことを更に含む、態様25に記載の方法。
[35]
組成物を標的から濯ぎ落とすことを更に含む、態様25に記載の方法。
[36]
接触が、スプレー、塗抹、コーティング、塗布、噴霧、浸漬、混合、コーティング、及びそれらの組み合わせのいずれかによって実施される、態様25に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キサンテン染料と、
有機染料、ホウ酸塩、無機塩、及び/又はそれらの組み合わせのうちの1種以上と、
を含む抗菌性組成物であって、
有機染料、ホウ酸塩、無機塩、及び/又はそれらの組み合わせがキサンテン染料と相乗的に作用する、抗菌性組成物。
【外国語明細書】