(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123559
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】乳タンパク質および乳糖を含む改善された栄養製品の製造方法ならびにこの方法により得られた製品
(51)【国際特許分類】
A23C 9/152 20060101AFI20230829BHJP
A23C 9/142 20060101ALI20230829BHJP
A23C 9/144 20060101ALI20230829BHJP
A23L 33/125 20160101ALI20230829BHJP
A23L 33/19 20160101ALI20230829BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20230829BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20230829BHJP
A23L 5/20 20160101ALI20230829BHJP
【FI】
A23C9/152
A23C9/142
A23C9/144
A23L33/125
A23L33/19
A23L2/00 F
A23L2/38 P
A23L5/20
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023095699
(22)【出願日】2023-06-09
(62)【分割の表示】P 2021165937の分割
【原出願日】2017-06-21
(31)【優先権主張番号】16175594.7
(32)【優先日】2016-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】514140089
【氏名又は名称】アーラ フーズ エエムビエ
【氏名又は名称原語表記】Arla Foods amba
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ホルスト,ハンス ヘンリク
(72)【発明者】
【氏名】アルベルトセン,クリスティアン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品である、小児栄養補給に適した栄養製品、および脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品を製造する方法を提供する。
【解決手段】栄養製品は、全固形分に対して20~90%(重量/重量)の乳糖と、全固形分に対して5~40%(重量/重量)のタンパク質と、全固形分に対して0~40%(重量/重量)の脂質と、総タンパク質に対して少なくとも15%(重量/重量)のホエイタンパク質と、全固形分に対して最大1%(重量/重量)のクエン酸塩とを含むことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
栄養製品を製造する方法において、
a)乳供給物を準備するステップと、
b)前記乳供給物をマイクロろ過(MF)またはマイクロろ過/透析ろ過に供し、それによりミセルカゼインに関して富化されているMF保持液と乳清タンパク質に関して富化されているMF透過液とが得られるステップと、
c)前記MF透過液を、一価イオンの通過を可能にするが乳糖を保持する膜を使用するナノろ過(NF)またはナノろ過/透析ろ過に供して、NF保持液とNF透過液とを得るステップと、
d)前記NF保持液を電気透析に供して、カルシウム、マグネシウムおよびリンのレベルが低下している、脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品を得るステップと、
e)前記脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品にカゼイン供給源と任意選択の1種または複数種の追加成分とを添加して前記栄養製品を得るステップと、
f)任意選択で前記栄養製品を粉末に変換するステップと
を含み、
好ましくは、ステップb)の後の前記乳清タンパク質含有流を、乳糖から乳清タンパク質を分離する限外ろ過に供しない
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記乳供給物は1~10%(重量/重量)の範囲の、好ましくは2~7%(重量/重量)の範囲の、さらにより好ましくは2~6%の範囲の乳糖の総量を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記乳供給物は1~12%(重量/重量)の範囲の、好ましくは2~10%(重量/重量)の範囲の、さらにより好ましくは3~8%の範囲のタンパク質の総量を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の方法において、前記乳供給物は、全乳、脱脂乳、無脂肪乳、低脂肪乳、高脂肪乳または濃縮乳を含む、またはからなることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の方法において、ステップa)は乳供給源の限外ろ過(UF)および任意選択のUF/透析ろ過のステップを含み、このステップにより、
- UF乳保持液と、
- UF乳透過液と
が得られ、前記UF乳保持液の少なくとも一部を前記乳供給物として使用することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の方法において、NF保持液は、
- 最大0.4%(重量/全固形分の重量)のナトリウムの総量と、
- 最大1.3%(重量/全固形分の重量)のカリウムの総量と、
- 最大0.8%(重量/全固形分の重量)の塩素の総量と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の方法において、前記NF保持液のpHは5.5~7.0の範囲であることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の方法において、電気透析に使用する陰イオン交換膜は少なくとも0.01のクエン酸塩の選択透過係数を有することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の方法において、前記脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品は、
- 最大1.0%(重量/全固形分の重量)のカルシウムの総量と、
- 最大0.1%(重量/全固形分の重量)のマグネシウムの総量と、
- 最大0.8%(重量/全固形分の重量)のリンの総量と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、前記脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品は最大1%(重量/全固形分の重量)のクエン酸塩の量を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項に記載の方法において、前記カゼイン供給源は、乳、濃縮乳、粉乳、乳タンパク質濃縮物、ベータ-カゼイン単離物、ミセルカゼイン単離物、カゼイン塩またはこれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか一項に記載の方法において、前記カゼイン供給源は乳のUF保持液および/または乳のMF保持液の形態の濃縮乳であることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか一項に記載の方法において、前記乳糖含有乳清製品およびカゼイン供給源を、50:50~70:30の範囲の、好ましくは55:45~65:45の範囲の、さらにより好ましくは約60:40の範囲の、乳清タンパク質とカゼインとの重量比を得るように混合することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れか一項に記載の方法において、前記栄養製品は有機製品であることを特徴とする方法。
【請求項15】
脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品を製造する方法において、
i)乳供給物を準備するステップと、
ii)前記乳供給物をマイクロろ過(MF)またはマイクロろ過/透析ろ過に供し、それによりMF保持液およびMF透過液を得るステップと、
iii)前記MF透過液をナノろ過またはナノろ過/透析ろ過に供してNF保持液およびNF透過液を得るステップと、
iv)前記NF保持液を電気透析に供し、それにより前記脱ミネラル化された乳糖含有乳糖含有乳清タンパク質製品を得るステップと、
v)任意選択で、前記脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品を乾燥させるステップと
を含み、
好ましくは、ステップii)の後の前記乳清タンパク質含有流を、乳糖から乳清タンパク質を分離する限外ろ過に供しない
ことを特徴とする方法。
【請求項16】
小児栄養補給に適した栄養製品において、
- 20~90%(重量/TSの重量)の炭水化物と、
- 5~40%(重量/TSの重量)のタンパク質と、
- 0~40%(重量/TSの重量)の脂質と、
- 総タンパク質に対して少なくとも15%(重量/重量)のホエイタンパク質と、
- 最大1%(重量/TSの重量)のクエン酸塩と
を含むことを特徴とする栄養製品。
【請求項17】
請求項16に記載の栄養組成物において、炭水化物の総量に対して少なくとも0.01%(重量/重量)の量でシアリルラクトースを含むことを特徴とする栄養組成物。
【請求項18】
請求項16または17に記載の栄養製品において、前記製品は、
- 20~90%(重量/TSの重量)の乳糖と、
- 5~40%(重量/TSの重量)のタンパク質と、
- 0~10%(重量/TSの重量)の脂質と、
- 総タンパク質に対して少なくとも70%(重量/重量)のホエイタンパク質と、
- 総タンパク質に対して最大30%のカゼインと
を含む脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品であることを特徴とする栄養製品。
【請求項19】
請求項16または17に記載の栄養製品において、前記製品は、
- 総タンパク質に対して30~70%(重量/重量)のホエイタンパク質と、
- 総タンパク質に対して30~70%(重量/重量)のカゼインと
を含む乳児用調合乳基剤製品であることを特徴とする栄養製品。
【請求項20】
請求項16または17に記載の栄養製品において、前記製品は、
- 35~70%(重量/TSの重量)の炭水化物と、
- 5~15%(重量/TSの重量)のタンパク質と、
- 20~40%(重量/TSの重量)の脂質と、
- 総タンパク質に対して30~70%(重量/重量)のホエイタンパク質と、
- 総タンパク質に対して30~70%(重量/重量)のカゼインと
を含む乳児用調合乳であることを特徴とする栄養製品。
【請求項21】
請求項16乃至20の何れか一項に記載の栄養製品において、前記カゼインの少なくとも50%(重量/重量)はベータ-カゼインであり、前記カゼインの好ましくは少なくとも60%(重量/重量)は、より好ましくは少なくとも70%(重量/重量)は、さらにより好ましくは少なくとも80%(重量/重量)は、最も好ましくは少なくとも90%(重量/重量)はベータ-カゼインであることを特徴とする栄養製品。
【請求項22】
請求項16乃至21の何れか一項に記載の栄養製品において、前記製品は、下記:
- 最大0.7%(重量/全固形分の重量)のカルシウムの総量、
- 最大0.1%(重量/全固形分の重量)のマグネシウムの総量、
- 最大0.5%(重量/全固形分の重量)のリンの総量、
- 最大0.3%(重量/全固形分の重量)のナトリウムの総量、
- 最大0.8%(重量/全固形分の重量)のカリウムの総量、
および
- 最大0.8%(重量/全固形分の重量)の塩素の総量
のうちの1つまたは複数を含むことを特徴とする栄養製品。
【請求項23】
請求項16乃至22の何れか一項に記載の栄養製品において、前記栄養製品は、最大0.06の、好ましくは最大0.04の、より好ましくは最大0.02の、さらにより好ましくは最大0.01のクエン酸塩と総タンパク質との重量比を有することを特徴とする栄養製品。
【請求項24】
請求項16乃至23の何れか一項に記載の栄養製品において、前記栄養製品は最大0.8%(重量/TSの重量)の、好ましくは最大0.3%(重量/TSの重量)の、さらにより好ましくは最大0.1%(重量/TSの重量)のクエン酸塩の量を含むことを特徴とする栄養製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳タンパク質および乳糖を含む栄養製品(例えば乳児用調合乳(infant formula))の改善された製造方法に関する。本発明は脱ミネラル化栄養製品の製造に特に有用であり、最終栄養製品およびにそのような栄養製品の製造に有用な乳糖含有乳タンパク質血清成分の両方を提供する。
【背景技術】
【0002】
マイクロろ過(MF)は、乳タンパク質の分画(より具体的にはミセルカゼインと乳清タンパク質との分離)にとって効率的なツールと認識されており、ミセルカゼインおよび乳清タンパク質を再配合して最適なアミノ酸プロファイルを有する栄養製品を形成し得る。そのような栄養製品の例は、例えば乳児用調合乳(0~6ヶ月齢の乳児用に最適化されている)、フォローオン調合乳(follow-on formula)(6~12ヶ月齢の乳児用に最適化されている)および成長期用調合乳(growing up formula)(12+月齢の赤ん坊用に最適化されている)または臨床栄養補給用の製品である。
【0003】
国際公開第2013/068653号パンフレットには、下記の組み合わせを使用して脱脂乳を分画する方法が開示されている:1)脱脂乳のMF;2)MF透過液の限外ろ過(UF);3)UF透過液のナノろ過(NF);および4)乳児用調合乳製品を形成するための、UF保持液(retentate)(血清タンパク質)およびNF保持液(ラクトース)および他の成分の再配合。
【0004】
国際公開第2013/137714号パンフレットには、下記の組み合わせを使用する同様の方法が開示されている:1)4~8の体積濃縮係数を使用する脱脂乳のMF;2)3~7の体積濃縮係数を使用するMF透過液の限外ろ過(UF);ならびに3)MF保持液およびUF保持液の配合(これにより、30/70~50/50のカゼイン/ホエイ重量比を有する組成物が得られる)。
【0005】
仏国特許第2809595号明細書には、下記の成分を含む乳誘導体が開示されている:総タンパク質10~80%、ミネラル物質1~5%、ナトリウム0.02~0.4%、カリウム0.1~1.5%、トレオニン 総アミノ酸100g当たり6g未満、およびトリプトファン アミノ酸100g当たり少なくとも1.8g。この乳誘導体は、下記を含む方法により製造される:a)乳の可溶相を得ること、b)ナノろ過による可溶相の選択的脱ミネラル化、およびc)ナノろ過により分離された沈殿物から乳誘導体を得ること。
【0006】
米国特許出願公開第2016/044933A1号明細書は、下記のステップ(a)、(b)および(c)を含む、動物脱脂乳およびスイートホエイ(sweet whey)および/または酸ホエイ(acid whey)を処理する方法に関する。ステップ(a)は、保持液(UFR1)および透過液(UFP1)を得るために1.5~6の体積濃縮係数を使用して2.5~25kDaの分子量カットオフを有する第1の限外ろ過膜に通す、総タンパク質を基準としてカゼインが70~90重量%であり且つホエイタンパク質が10~30重量%である動物脱脂乳を含む第1の液体組成物の限外ろ過(UF1)からなる。ステップ(b)は、保持液(UFR2)および透過液(UFP2)を得るために2~15の体積濃縮係数を使用して2.5~25kDaの分子量カットオフを有する第2の限外ろ過膜に通す、スイートホエイおよび/または酸ホエイを含む第2の液体組成物の限外ろ過(UF2)からなる。ステップ(c)は、ステップ(a)に由来するUF保持液とステップ(b)に由来するUF保持液とを混合してUF保持液の混合物を得ることからなる。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、先行技術の乳児用調合乳基剤(例えば国際公開第2013/068653号パンフレットおよび国際公開第2013/137714号パンフレットのもの)では、二価または三価の金属イオンの形態で供給されるミネラルの生物学的利用能が意図されずに変動するという兆候を見出している。
【0008】
本発明者らは、国際公開第2013/068653号パンフレットおよび国際公開第2013/137714号パンフレットの先行技術の乳児用調合乳基剤のクエン酸塩の含有量は高く、さらに例えば季節性変動、乳汁分泌の一般的な段階およびウシに提供される飼料の種類の変動の影響に起因して顕著な変動を受けることを発見している。
【0009】
本発明者らは、栄養的に完全であり且つマクロ栄養素(タンパク質、脂質および炭水化物)ならびにマイクロ栄養素(例えばビタミンおよびミネラル)の十分に定義され且つ高度に制御された量を乳児に供給すると考えられる最終乳児用調合乳の製剤化の際にクエン酸塩の変動は問題であることをさらに認識している。
【0010】
乳児用調合乳中のクエン酸塩の濃度は、例えば鉄、カルシウム、マグネシウムおよび亜鉛等の重要なミネラルの生物学的利用能に影響を及ぼすことが実証されている(例えばGlahn et alおよびFairweather-Tait et alを参照されたい)。従って、乳児用調合乳製品のクエン酸塩の量の変動により、二価または三価の金属イオンの形態で供給されるミネラルの生物学的利用能が意図されずに変動するだろう。
【0011】
本発明者らは、この問題を、多価イオンの除去のための電気透析(ED)(好ましくは、一価、二価および三価の陰イオンの両方を除去するように構成されたED)を使用することにより解決し得ることを発見している。
【0012】
そのため、本発明の一態様は、栄養製品を製造する方法において、
a)乳供給物を準備するステップと、
b)この乳供給物をマイクロろ過(MF)またはマイクロろ過/透析ろ過に供し、それによりミセルカゼインに関して富化されているMF保持液と血清タンパク質に関して富化されているMF透過液とが得られるステップと、
c)このMF透過液を、一価イオンの通過を可能にするが乳糖を保持する膜を使用するナノろ過(NF)またはナノろ過/透析ろ過に供して、NF保持液とNF透過液とを得るステップと、
d)このNF保持液を電気透析に供して、カルシウム、マグネシウムおよびリンのレベルが低下している、脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品を得るステップと、
e)この脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品にカゼイン供給源と任意選択の1種または複数種の追加成分とを添加して栄養製品を得るステップと、
f)任意選択でこの栄養製品を粉末に変換するステップと
を含む方法に関する。
【0013】
本発明者らはさらに、上記の方法により、例えば乳児用調合乳製品に必要とされるミネラル低減のレベルを依然として達成しつつ、栄養製品および/またはステップd)の脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品の製造が顕著に単純化されることを発見している。特に、本発明は、ステップb)の後の乳清タンパク質含有流の限外ろ過の使用を必要とせず、乳清タンパク質含有流中で脱ミネラル化を直接実施する。
【0014】
さらに、本方法の利点は、乳供給物の非常に高レベルの乳清タンパク質および乳糖が利用されること、ならびに乳清タンパク質および乳糖の両方の非常に高い割合が最終的には栄養製品に入ることである。このことは、例えば有機乳児用調合乳等の有機栄養製品の製造の際に非常に有利であり、なぜならば、有機ラクトース等の精製有機成分は商業的に見出すことが困難だからである、および/または非常に高価だからである。有機乳供給物が利用される場合、この有機乳供給物の乳清タンパク質および乳糖は概して、この乳清タンパク質の少なくとも90%(重量/重量)およびこの炭水化物の少なくとも90%(重量/重量)を一部の栄養製品(例えば乳児用調合乳等)に供給するのに十分である。
【0015】
さらに、本発明の一態様は、脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品を製造する方法において、
i)乳供給物を準備するステップと、
ii)この乳供給物をマイクロろ過(MF)またはマイクロろ過/透析ろ過に供し、それによりMF保持液およびMF透過液を得るステップと、
iii)このMF透過液をナノろ過またはナノろ過/透析ろ過に供してNF保持液およびNF透過液を得るステップと、
iv)このNF保持液を電気透析に供し、それにより脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品を得るステップと、
v)任意選択で、この脱ミネラル化された乳糖含有乳糖含有乳清タンパク質製品を乾燥させるステップと
を含む方法に関する。
【0016】
本発明のさらなる態様は、脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品またはホエイタンパク質製品を製造する方法において、
1)乳清タンパク質またはホエイタンパク質を含む液体タンパク質供給源を準備するステップと、
2)この液体タンパク質供給源を無機多価イオンの低減に供し、この低減は、この液体タンパク質供給源を少なくとも6のpHに調整し、少なくとも30℃の温度まで加熱し、得られた沈殿物を液体タンパク質供給源から分離することを含み、それにより、脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品またはホエイタンパク質製品が得られるステップと、
3)任意選択で、この脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品またはホエイタンパク質製品を乾燥させるステップと
を含む方法に関する。
【0017】
本発明の別の態様は、タンパク質、乳糖および脂肪およびミネラルおよび:
- 40~55%(重量/全固形分の重量)の範囲の炭水化物の総量、
- 9~14%%(重量/全固形分の重量)の範囲のタンパク質の総量、
- 40~50%%(重量/全固形分の重量)の範囲の乳糖の総量、
- 50:50~70:30の範囲の、好ましくは55:45~65:45の範囲の、さらにより好ましくは約60:40の乳清タンパク質とカゼインとの重量比、
- 最大0.7%(重量/全固形分の重量)のカルシウムの総量、
- 最大0.1%(重量/全固形分の重量)のマグネシウムの総量、
- 最大0.5%(重量/全固形分の重量)のリンの総量、
- 最大0.3%(重量/全固形分の重量)のナトリウムの総量、
- 最大0.8%(重量/全固形分の重量)のカリウムの総量、
および
- 最大0.8%(重量/全固形分の重量)の塩素の総量
を含む(例えば本明細書で説明されたプロセスにより得られる)栄養製品に関する
【0018】
本発明の文脈において、用語「塩素」は元素塩素および塩素の総量に関し、任意の形態の元素塩素の総量に関する。
【0019】
本発明のさらに別の態様は、
- 65~85%(重量/全固形分の重量)の範囲のラクトースの総量、
- 10~25%(重量/全固形分の重量)の範囲の乳清およびホエイタンパク質の総量、
- 乳清タンパク質とミセルカゼインとの重量比が少なくとも95:5である、
- 最大1.0%(重量/全固形分の重量)のカルシウムの総量、
- 最大0.1%(重量/全固形分の重量)のマグネシウムの総量、
- 最大0.8%(重量/全固形分の重量)のリンの総量、
- 最大0.4%(重量/全固形分の重量)のナトリウムの総量、
- 最大1.3%(重量/全固形分の重量)のカリウムの総量
および
- 最大0.8%(重量/全固形分の重量)の塩素の総量
を含む(例えば本明細書で説明された方法により得られる)脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品に関する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、カゼイン含有栄養製品(例えば乳児用調合乳)の製造のための本発明のプロセスの変形を示す。
【
図2】
図2は、例えば乳児用調合乳の製造に適したカゼインフリーの乳清タンパク質成分の製造のための本発明のプロセスの別の変形を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
そのため、本発明の広い態様は、栄養製品を製造する方法において、
a)乳供給物を準備するステップと、
b)この乳供給物をマイクロろ過(MF)またはマイクロろ過/透析ろ過に供し、それによりミセルカゼインに関して富化されているMF保持液と乳清タンパク質に関して富化されているMF透過液とが得られるステップと、
c)このMF透過液を、一価イオンの通過を可能にするが乳糖および乳清タンパク質を保持する膜を使用するナノろ過またはナノろ過/透析ろ過に供して、ナノろ過(NF)保持液とNF透過液とを得るステップと、
d)このNF保持液を無機多価イオンの低減に供して、カルシウム、マグネシウムおよびリンのレベルが低下している、脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品を得るステップと、
e)この脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品にカゼイン供給源と任意選択の1種または複数種の追加成分とを添加して栄養製品を得るステップと、
f)任意選択でこの栄養製品を粉末に変換するステップと
を含む方法に関する。
【0022】
本発明者らは、分画された乳タンパク質をベースとする、ミネラルが低減された乳タンパク質含有栄養製品(例えば乳児用調合乳)の調製のための先行技術のプロセスを、例えば、単に後の段階で再配合するためにMFステップの後に乳糖から乳清タンパク質を分離する国際公開第2013/068653号パンフレットおよび国際公開第2013/137714号パンフレットとは対照的に、タンパク質分画ステップの後に乳清タンパク質が乳糖から分離されていない本プロセスにより顕著に改善し得ることを発見している。
【0023】
ステップd)が電気透析ステップを含むこと、またはからなることが特に好ましい。
【0024】
そのため、本発明の好ましい態様は、栄養製品を製造する方法において、
a)乳供給物を準備するステップと、
b)この乳供給物をマイクロろ過(MF)またはマイクロろ過/透析ろ過に供し、それによりミセルカゼインに関して富化されているMF保持液と血清タンパク質に関して富化されているMF透過液とが得られるステップと、
c)このMF透過液を、一価イオンの通過を可能にするが乳糖を保持する膜を使用するナノろ過(NF)またはナノろ過/透析ろ過に供して、NF保持液とNF透過液とを得るステップと、
d)このNF保持液を電気透析に供して、カルシウム、マグネシウムおよびリンのレベルが低下している、脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品を得るステップと、
e)この脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品にカゼイン供給源と任意選択の1種または複数種の追加成分とを添加して栄養製品を得るステップと、
f)任意選択でこの栄養製品を粉末に変換するステップと
を含む方法に関する。
【0025】
本発明の文脈において、用語「栄養製品」は、少なくともタンパク質および炭水化物を含み任意選択で脂質も含む食用品に関する。本栄養製品は例えば小児用栄養製品(例えば小児用調合乳、フォローオン調合乳または成長期用調合乳等)であり得る。本栄養製品は、意図された消費者(例えば、0~6ヶ月の乳児または6~12ヶ月の乳児)にとって栄養的に完全であってもよいし、栄養補助食品であってもよい。
【0026】
本栄養製品は、液体製品、濃縮液体製品、ペーストまたは粉末の形態であり得る。
【0027】
本発明の別の利点は、加工乳供給物1kg当たりまたは乳糖含有乳清タンパク質組成物1kg当たりに必要とされるエネルギー消費量が低減されることである。
【0028】
本発明によりさらに、特に先行技術がラクトース結晶化を用いてMF透過液またはUF透過液に由来するラクトースを精製する場合に、先行技術と比べて栄養製品1kg当たりまたは脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品1kg当たりの乳供給物の消費量が低減される。
【0029】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本栄養製品は液体である。液体栄養製品は粉末栄養製品と比べて使用時に便利であると認識されることが多く、摂取の準備ができている。
【0030】
液体栄養製品の場合には、この栄養製品は、この栄養製品の重量に対して少なくとも75%(重量/重量)の量で水を含み、この栄養製品の固形分は、この栄養製品の重量に対して最大25%(重量/重量)である。例えば、この液体栄養製品は、この栄養製品の重量に対して少なくとも85%(重量/重量)の量で水を含み得、この栄養製品の固形分は、この栄養製品の重量に対して最大15%(重量/重量)であり得る。
【0031】
本発明のさらに好ましい実施形態では、本栄養製品は濃縮栄養製品である。
【0032】
濃縮栄養製品の場合には、この栄養製品は、この栄養製品の重量に対して30~74%(重量/重量)の範囲の量で水を含み、この栄養製品の固形分は概して、この栄養製品の重量に対して26~70%(重量/重量)の範囲である。例えば、この濃縮栄養製品は、この栄養製品の重量に対して40~60%(重量/重量)の範囲の量で水を含み得、この栄養製品の固形分は、この栄養製品の重量に対して40~60%(重量/重量)の範囲であり得る。
【0033】
本栄養製品中の水および全固形分の含有量を、NMKL 110 2nd Edition,2005(Total solids(Water)-Gravimetric determination in milk and milk products)に従って測定する。NMKLは「Nordisk Metodikkomite for Naeringsmidler」の略語である。
【0034】
本発明のさらに好ましい実施形態では、本栄養製品はペースト様栄養製品である。
【0035】
ペースト様栄養製品の場合には、この栄養製品は、この栄養製品の重量に対して7~29%(重量/重量)の範囲の量で水を含み、この栄養製品の固形分は概して、この栄養製品の重量に対して71~93%(重量/重量)の範囲である。例えば、このペースト様栄養製品は、この栄養製品の重量に対して15~25%(重量/重量)の範囲の量で水を含み得、この栄養製品の固形分は、この栄養製品の重量に対して75~85%(重量/重量)の範囲であり得る。
【0036】
本発明のさらに好ましい実施形態では、本栄養製品は粉末栄養製品である。
【0037】
粉末栄養製品の場合には、この栄養製品は、この栄養製品の重量に対して1~6%(重量/重量)の範囲の量で水を含み、この栄養製品の固形分は概して、この栄養製品の重量に対して94~99%(重量/重量)の範囲である。例えば、この粉末栄養製品は、この栄養製品の重量に対して2~4%(重量/重量)の範囲の量で水を含み得、この栄養製品の固形分は、この栄養製品の重量に対して96~98%(重量/重量)の範囲であり得る。
【0038】
この方法を好ましくは、a)、b)、c)、d)およびe)の順序で実施する、または本栄養製品を粉末に変換する場合にはa)、b)、c)、d)、e)およびf)の順序で実施する。
【0039】
この方法のステップa)~f)の概略例を
図1に示す。ここで、乳供給物をマイクロろ過に供し、乳清タンパク質、乳糖、水およびミネラルを主に含む透過液(P)と、カゼインミセル、水、ならびにさらに少量の乳清タンパク質、乳糖およびミネラルを主に含む保持液(R)とが得られる。この透過液をナノろ過に供して、一価イオンおよび水を含むNF透過液(P)と、乳清タンパク質、乳糖、水および残余のミネラルを含むNF保持液(R)とが得られる。このNF保持液を、例えばミネラル沈殿または電気透析による多価無機イオンの量の低減に供し、ミネラル含有沈殿物とミネラルが低減された乳糖含有乳清タンパク質とが得られる。この例では、乳糖はラクトースを主に含む。次いで、このミネラルが低減された乳糖含有乳清タンパク質をカゼイン供給源(例えば脱脂乳)と混合し、この混合物を噴霧乾燥により粉末栄養製品に変換する。
【0040】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本栄養製品は、本乳供給物中に存在する乳糖の少なくとも60%を含む。好ましくは、この栄養製品は、この乳供給物中に存在する乳糖の少なくとも70%を含む。さらにより好ましくは、この栄養製品は、この乳供給物中に存在する乳糖の少なくとも80%を含む。
【0041】
本発明の他の別の好ましい実施形態では、本栄養製品は、本乳供給物中に存在する乳糖の少なくとも80%を含む。好ましくは、この栄養製品は、この乳供給物中に存在する乳糖の少なくとも90%を含む。さらにより好ましくは、この栄養製品は、この乳供給物中に存在する乳糖の少なくとも95%を含む。
【0042】
本栄養製品が本乳供給物中に存在する乳糖の少なくとも97%を含むことが特に好ましい。
【0043】
本発明の文脈において、用語「乳糖」は、a)乳糖と称される場合もあるラクトース、b)グルコースおよびガラクトース(これらは、ラクトース加水分解から得られる単糖反応生成物である)、ならびにc)ガラクト-オリゴ糖(GOS)(例えば、いくつかのベータ-ガラクトシダーゼ酵素によるラクトースの加水分解の最中に得ることができる)に関する。
【0044】
乳糖を含む乳供給物および流れは概して、乳糖に加えて乳オリゴ糖も含み、本方法の利点は、ラクトース精製のためにラクトース結晶化を用いる先行技術のプロセスと比べて処理の最中に失われる乳オリゴ糖が少ないことである。
【0045】
GOSは、最初から乳供給物中に存在していてもよいし乳供給物および/またはその後の生成物流の処理の最中に生成されてもよい。GOSは、ラクトース、グルコースおよびガラクトースのトランス-ガラクトシル化の結果であり、概して二糖、三糖および四糖を主に含む。
【0046】
従って、乳糖の総量は、ガラクトース、グルコース、ラクトースおよびGOS(GOS四糖以下)の総量を指す。乳糖の総量を実施例1に従って測定する。
【0047】
ステップa)で準備する乳供給物は、カゼインミセルおよび乳清タンパク質が分離されるマイクロろ過ステップに供される液体供給物である。
【0048】
乳糖の含有量は、例えば乳供給源の季節変動および乳供給物の調製の最中に乳供給源が受けた前処理に応じて、広い範囲で変動し得る。
【0049】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本乳供給物は0.5~10%(重量/重量)の範囲で乳糖の総量を含む。好ましくは、この乳供給物は2~7%(重量/重量)の範囲で乳糖の総量を含む。さらにより好ましくは、この乳供給物は2~6%の範囲で乳糖の総量を含む。
【0050】
本発明の他の好ましい実施形態では、本乳供給物は0.5~7%(重量/重量)の範囲で乳糖の総量を含む。好ましくは、この乳供給物は1.0~5%(重量/重量)の範囲で乳糖の総量を含む。例えば、この乳供給物は1.0~3%の範囲で乳糖の総量を含む。
【0051】
本発明のさらに好ましい実施形態では、本乳供給物は4~10%(重量/重量)の範囲で乳糖の総量を含む。好ましくは、この乳供給物は5~9%(重量/重量)の範囲で乳糖の総量を含む。例えば、この乳供給物は6~8%の範囲で乳糖の総量を含む。
【0052】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本乳供給物は0.5~10%(重量/重量)の範囲でラクトースの総量を含む。好ましくは、この乳供給物は2~7%(重量/重量)の範囲でラクトースの総量を含む。さらにより好ましくは、この乳供給物は2~6%の範囲でラクトースの総量を含む。
【0053】
本発明の他の好ましい実施形態では、本乳供給物は0.5~7%(重量/重量)の範囲でラクトースの総量を含む。好ましくは、この乳供給物は1.0~5%(重量/重量)の範囲でラクトースの総量を含む。例えば、この乳供給物は1.0~3%の範囲でラクトースの総量を含む。
【0054】
本発明のさらに好ましい実施形態では、本乳供給物は4~10%(重量/重量)の範囲でラクトースの総量を含む。好ましくは、この乳供給物は5~9%(重量/重量)の範囲でラクトースの総量を含む。例えば、この乳供給物は6~8%の範囲でラクトースの総量を含む。
【0055】
本乳供給物に他の炭水化物を添加してもよいが、この乳供給物の炭水化物は少なくとも95%の乳糖を含むことが好ましく、さらにより好ましくは本質的に乳糖からなる。
【0056】
本乳供給物は、乳糖に加えて、カゼインおよび乳清タンパク質の両方が挙げられる乳タンパク質を含む。
【0057】
本乳供給物のカゼインは、例えば脱脂乳で見られるカゼインミセルと類似のまたは同一のカゼインミセルの形態で主に存在する。
【0058】
用語「乳清」は、カゼインミセルおよび乳脂肪球が分散している乳の液相に関する。
【0059】
本発明の文脈において、用語「乳清タンパク質」または「血清タンパク質」は、乳清中に見られるタンパク質に関する。乳清タンパク質は概して、ベータ-ラクトグロブリン、アルファ-ラクトアルブミン、ウシ血清アルブミン、免疫グロブリンおよびオステオポンチンならびにラクトフェリンおよびラクトペルオキシダーゼを含む。乳清タンパク質は、乳供給物がタンパク質分画マイクロろ過ステップの前に後に加熱処理することなく低温で貯蔵されている場合に、かなりの量のベータ-カゼインをさらに含む場合がある。
【0060】
用語「タンパク質」は、少なくとも10個のアミノ酸を含むポリペプチドに関し、単一のポリペプチドおよびポリペプチドの凝集体の両方を包含する。
【0061】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本乳供給物の乳清タンパク質は未変性の天然形態で存在し、即ち、変性加熱処理を受けていない生乳中と同一の形態で存在する。従って、乳供給物およびこの乳供給物が由来する生成物流が有意なタンパク質変性をもたらす条件(例えば、長い持続期間にわたる高温)に晒されていないことも好ましい。本発明の文脈において、用語「有意なタンパク質変性」は、ベータ-ラクトグロブリンの変性の程度が少なくとも10%(重量/重量)であることを意味する。ベータ-ラクトグロブリンの変性の程度を、国際公開第2012/010699号パンフレットで説明されている方法に従って測定する。
【0062】
用語「非タンパク質窒素」(NPN)は、タンパク質ではない分子中に見出される窒素に関する。乳中では、このNPNのかなりの部分が尿素、アンモニア塩、および10個未満のアミノ酸を含む小ペプチドを含む。
【0063】
用語「ホエイ」は、例えば(例えば、チーズの製造の最中にレンネット酵素を使用する)酸性化および/またはタンパク質分解によりカゼインが乳中に沈殿する際に液相に残る液体に関する。カゼインのレンネットに基づく沈殿から得られるホエイは概してスイートホエイと称され、カゼインの酸沈殿から得られるホエイは概して、酸ホエイ、サワーホエイ(sour whey)またはカゼインホエイと称される。
【0064】
用語「ホエイタンパク質」は、ホエイ中で見出されるタンパク質に関する。ホエイタンパク質として概して、ベータ-ラクトグロブリン、アルファ-ラクトアルブミン、ウシ血清アルブミンおよび免疫グロブリン、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼおよび乳脂肪球状膜タンパク質が挙げられる。加えて、スイートホエイ中で見出されるホエイタンパク質は概して、カゼイノマクロペプチドも含む。用語ホエイタンパク質は当然のことながら乳清タンパク質も含む。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態では、本乳供給物は1~12%(重量/重量)の範囲でタンパク質の総量を含む。好ましくは、この乳供給物は2~10%(重量/重量)の範囲でタンパク質の総量を含む。さらにより好ましくは、この乳供給物は3~8%の範囲でタンパク質の総量を含む。
【0066】
本乳供給物は好ましくは、70:30~90:10の範囲(例えば75:25~85:15の範囲、典型的には77:23~83:17の範囲)でカゼインと乳清タンパク質との重量比を有する。
【0067】
本乳の脂肪含有量は変動し得るが、約6%未満であること好ましいことが多い。本発明のいくつかの実施形態では、本乳供給物は0.01~5%(重量/重量)の範囲で脂肪の総量を含む。好ましくは、この乳供給物は0.01~2%(重量/重量)の範囲で脂肪の総量を含む。さらにより好ましくは、この乳供給物は0.01~0.5%(重量/重量)の範囲で脂肪の総量を含む。
【0068】
本乳供給物の固形分は、使用される供給物に応じて変動し得るが典型的には1~30%(重量/重量)の範囲である。好ましくは、この乳供給物の固形分は4~25%(重量/重量)の範囲である。さらにより好ましくは、この乳供給物の固形分は5~15%(重量/重量)の範囲である。
【0069】
本発明では、多数の異なる供給物タイプを使用し得る。例えば、本乳供給物は例えば、全乳、脱脂乳、無脂肪乳、低脂肪乳、高脂肪乳(full fat milk)および濃縮乳を含む、またはからなる。
【0070】
用語「濃縮乳」は、蒸発によりまたは限外ろ過、ナノろ過および/または逆浸透により濃縮されている乳に関する。濃縮乳が濃縮された非蒸発乳(即ち、ろ過により濃縮されている乳)であることが特に好ましい。
【0071】
本乳供給物のpHは好ましくは少なくとも5.0であり、典型的にはこの乳供給物のpHは脱脂乳のpHに類似しており、即ち25℃で測定した場合に6.1~6.8の範囲である。
【0072】
本乳供給物は通常、反芻動物の乳に由来し、例えばウシ、ヒツジ、ヤギ、スイギュウ、ラクダ、トナカイおよび/またはラマに由来する。ウシ由来の乳供給物が現在は好ましい。
【0073】
本供給物は概して、少なくとも数種のクエン酸塩を含む。この乳供物は例えば、この乳供給物の重量に対して0.01~1.0%(重量/重量)の範囲で、好ましくは0.05~0.5%の範囲で、さらにより好ましくはこの乳供給物の重量に対して0.1~0.4%(重量/重量)の範囲でクエン酸の量を含み得る。
【0074】
本発明は、有機栄養製品への有機乳の加工に特に有用である。従って、本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本乳供給物は、有機乳供給源に由来する有機乳供給物である。本発明のいくつかの特に好ましい実施形態では、この乳供給物は有機脱脂乳または有機濃縮脱脂乳である。
【0075】
本発明の文脈において、用語「有機乳」は、下記に従って飼育されたウシにより産生された乳に関する:このウシは、放牧シーズン全体にわたり認証された有機牧草地に自由にアクセスできなければならない。この期間は農場の地理的な気候に固有であるが、年間少なくとも120日でなければならず、好ましくは少なくとも150日でなければならない。天候、季節または気候に起因して、放牧シーズンは連続していてもよいし連続していなくてもよい。有機ウシの食餌は、認証された有機牧草地由来の乾物を(平均して)少なくとも30パーセント含まなければならない。乾物摂取量(DMI)は、水分フリー基準で1日当たりに動物が消費する飼料の量である。この動物の食餌の残余(例えば干し草、穀物および他の農産物)も有機認証を受けていなければならない。家畜を、抗生物質、追加の成長ホルモン、哺乳類もしくは鳥類の副産物、または他の禁止されている飼料成分(例えば尿素およびヒ素化合物)を使用することなく管理すべきである。
【0076】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップa)での乳供給物の準備は、乳供給源の限外ろ過(UF)および任意選択のUF/透析ろ過のステップを含み、それにより
- UF乳保持液と、
- UF乳透過液と
が得られ、
このUF乳保持液の少なくとも一部を乳供給物として使用する。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態では、このUF乳保持液の一部を乳供給物として使用し、残余のUF乳保持液の少なくとも一部をステップe)でのカゼイン供給源として使用する。例えば、このUF乳保持液の一部を乳供給物として使用し得、全ての残余のUF乳保持液をステップe)でのカゼイン供給源として使用し得る。
【0078】
このUF乳保持液を、それ自体を乳供給物として使用してもよいし、乳供給物として使用する前に水、NF透過液および/またはRO透過液で希釈してもよい。
【0079】
体積濃縮係数は好ましくは相当に低く抑えられ、典型的には最大で3であり、好ましくは最大で2.5であり、さらにより好ましくは最大で2.0である。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、この乳供給源のUF処置は透析ろ過を含まない。
【0080】
有用なUF膜は、ラクトースおよび小ペプチドの通過を可能にするが乳清タンパク質を保持する。
【0081】
UF乳透過液のラクトースを例えば、乾物に対して少なくとも90%(重量/重量)のラクトースの、好ましくは少なくとも95%(重量/重量)のラクトースの濃度まで精製し得る。
【0082】
タンパク質フリーUF乳/ホエイ透過液流からのラクトースの精製技術は当分野で公知であり、例えばラクトース結晶化および脱ミネラル化を含み得る(例えば、APV Systems,2000,ISBN 87-88016 757で公開された”Membrane filtration and related molecular separation technologies”を参照されたい)。
【0083】
ステップb)では、本乳供給物を、血清タンパク質、乳糖およびミネラルの通過を可能にするがカゼインミセルを保持する膜タイプを使用するマイクロろ過(MF)またはマイクロろ過/透析ろ過(MF/DIA)に供する。従って、ステップb)により、ミセルカゼインに関して富化されているMF保持液と、乳清タンパク質、ラクトースおよびミネラルに関して富化されているMF透過液とが得られる。
【0084】
用語「マイクロろ過/透析ろ過」は、保持液流からの乳清タンパク質および乳糖の除去を促進するために、マイクロろ過プロセスの最中に乳供給物および/または1種もしくは複数種の中間保持液流を希釈することを含む。
【0085】
MF/DIAの最中の希釈に使用し得る希釈液の有用で非限定的な例は、水道水、脱ミネラル化水、逆浸透(RO)透過液、ステップc)からのNF透過液である。RO透過液は例えば、ステップc)のNF透過液のRO処理により得られたRO透過液であり得る。
【0086】
当業者には明らかであるように、ステップb)のMFまたはMF/DIAを、単一のMF膜を使用して実施してもよいし例えば連続して配置された数枚のMF膜を使用することにより実施してもよい。MF/DIAの場合、ステップb)の最中に同一のMF膜を数回使用し得る。
【0087】
用語「MF保持液」および「MF透過液」は、MFまたはMF/DIAから得られた最終保持液およびまとめた透過液に関する。
【0088】
ステップb)のMFまたはMF/DIAを広範囲の体積濃縮係数(VCF)内で作動させ得る。本発明のいくつかの実施形態では、ステップb)のMFまたはMF/DIAの体積濃縮係数(VCF)は0.3~5の範囲である。好ましくは、ステップb)のMFまたはMF/DIAのVCFは0.5~4の範囲である。さらにより好ましくは、ステップb)のMFまたはMF/DIAのVCFは0.5~3の範囲である。
【0089】
このVCFを、本供給物体積を保持液体積で除算することにより算出する。
【0090】
MFまたはMF/DIAを好ましくは、MF保持液の総重量に対して最大15%(重量/重量)の、好ましくは最大12%(重量/重量)の、さらにより好ましくは最大10%(重量/重量)のMF保持液中の総タンパク質濃度を得るように作動させる。MF保持液のタンパク質の総濃度は概して、MF保持液の総重量に対して1~15%(重量/重量)の範囲であり、好ましくは3~12%の範囲であり、さらにより好ましくはMF保持液の総重量に対して5~10%(重量/重量)の範囲である。
【0091】
本発明のいくつかの実施形態では、ステップb)のMFまたはMF/DIAの最中の本乳供給物の温度は1~66℃の範囲である。好ましくは、ステップb)のMFまたはMF/DIAの最中のこの乳供給物の温度は45~66℃の範囲である。さらにより好ましくは、ステップb)のMFまたはMF/DIAの最中の乳供給物の温度は55~66℃の範囲である。
【0092】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップb)のMFまたはMF/DIAの最中の本乳供給物の温度は45~55℃の範囲である。
【0093】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップb)のMFまたはMF/DIAの最中の本乳供給物の温度は1~20℃の範囲であり、さらにより好ましくは4~15℃(例えば5~10℃)の範囲である。低温MFまたは低温MF/DIAは、この乳供給物をMFまたはMF/DIAの直前に少なくとも0.5時間にわたり最大10℃で貯蔵する場合に特に有用である。好ましくは、この乳供給物を、MFまたはMF/DIAの直前に少なくとも1時間にわたり最大5℃で貯蔵する。冷却した乳供給物を好ましくは、30℃を超える温度まで加熱することなくMFまたはMF/DIAに移し、好ましくは20℃を超える温度まで加熱することなくMFまたはMF/DIAに移し、さらにより好ましくは15℃を超える温度まで加熱することなくMFまたはMF/DIAに移す。
【0094】
ベータ-カゼインは低温でカゼインミセルから解離し、より高い温度でカゼインミセルに会合する。従って、本乳供給物が低温で貯蔵される場合、より多くのベータ-カゼインがカゼインミセルから乳清中へと放出される。冷却した乳供給物を低温でMFまたはMF/DIAにより分画する場合、解離したベータ-カゼインはMF透過液に移る。ヒトの母乳はベータ-カゼインおよび乳清タンパク質から主になることから、ベータ-カゼインは乳児の栄養補給においてカゼインミセルの魅力的な代替物であると考えられる。従って、カゼインの総量に対する乳児用調合乳中でのベータ-カゼインの増加した量の使用により、乳児用調合乳製品がヒト乳へと近づく。
【0095】
MFまたはMF/DIAに使用される膜間差圧(trans-membrane pressure)(TMP)は通常、0.1~5バールの範囲であり、好ましくは0.2~2バールの範囲であり、さらにより好ましくは0.3~1(例えば0.3~0.8バール)の範囲である。
【0096】
上述したように、MFまたはMF/DIAに使用されるMF膜は、乳清タンパク質、ラクトースおよびミネラルの透過を可能にしつつカゼインミセルを保持する能力を有するべきである。
【0097】
このMF膜の孔径は概して0.01~1.0ミクロンの範囲である。好ましくは、このMF膜の孔径は0.05~0.8ミクロンの範囲である。さらにより好ましくは、このMF膜の孔径は0.1~0.5ミクロンの範囲である。
【0098】
このMF膜のろ過特性が分子量カットオフの用語で規定される場合、このMF膜は概して200~2000kDaの範囲の分子量カットオフを有する。好ましくは、このMF膜は300~1500kDaの範囲の分子量カットオフを有する。さらにより好ましくは、このMF膜は400~1000kDaの範囲の分子量カットオフを有する。
【0099】
このMF膜は、例えばポリマー膜であってもよいしセラミック膜であってもよい。
【0100】
有用な膜の比限定的な例は、例えば、約0.14ミクロンの孔径を有するセラミック膜(Inside Ceram(商標),Tami Industries,Nyons,France)または約800kDaの分子量カットオフを有するポリマーFR膜(PVDF 800kDa;Synder Filtration,USA)である。
【0101】
本乳供給物の乳糖の相当な量がMF透過液に移ることが特に好ましい。
【0102】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、MFまたはMF/DIAを十分に適用して、本乳供給物の乳糖の総量の少なくとも80%(重量/重量)をMF透過液に移す。好ましくは、MFまたはMF/DIAを十分に適用して、この乳供給物の乳糖の総量の少なくとも90%(重量/重量)をMF透過液に移す。さらにより好ましくは、MFまたはMF/DIAを十分に適用して、この乳供給物の乳糖の総量の少なくとも95%(重量/重量)をMF透過液に移す。最も好ましくは、MFまたはMF/DIAを十分に適用して、この乳供給物の乳糖の総量の少なくとも98%(重量/重量)(例えば約100%(重量/重量))をMF透過液に移す。
【0103】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、MFまたはMF/DIAを十分に適用して、本乳供給物のラクトースの総量の少なくとも80%(重量/重量)をMF透過液に移す。好ましくは、MFまたはMF/DIAを十分に適用して、この乳供給物のラクトースの総量の少なくとも90%(重量/重量)をMF透過液に移す。さらにより好ましくは、MFまたはMF/DIAを十分に適用して、この乳供給物のラクトースの総量の少なくとも95%(重量/重量)をMF透過液に移す。最も好ましくは、MFまたはMF/DIAを十分に適用して、この乳供給物のラクトースの総量の少なくとも98%(重量/重量)(例えば約100%(重量/重量))をMF透過液に移す。
【0104】
本乳供給物の乳清タンパク質のかなりの量がMF透過液に移ることがさらに好ましい。
【0105】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、MFまたはMF/DIAを十分に適用して、本乳供給物の乳清タンパク質の総量の少なくとも50%(重量/重量)をMF透過液に移す。好ましくは、MFまたはMF/DIAを十分に適用して、この乳供給物の乳清タンパク質の総量の少なくとも60%(重量/重量)をMF透過液に移す。さらにより好ましくは、MFまたはMF/DIAを十分に適用して、この乳供給物の乳清タンパク質の総量の少なくとも70%(重量/重量)をMF透過液に移す。例えば、MFまたはMF/DIAを十分に適用して、この乳供給物の乳清タンパク質の総量の少なくとも80%(重量/重量)をMF透過液に移し得る。あるいは、MFまたはMF/DIAを十分に適用して、この乳供給物の乳清タンパク質の総量の少なくとも90%(重量/重量)をMF透過液に移し得る。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、MFまたはMF/DIAを十分に適用して、この乳供給物の乳清タンパク質の総量の少なくとも95%(重量/重量)をMF透過液に移す。
【0106】
MFまたはMF/DIAの実施に関するさらなる詳細を、本“Dairy processing Handbook”,2015,(ISBN 978-9176111321)および“Membrane filtration and related molecular separation technologies”,Werner Kofod Nielsen,APV Systems,2000,ISBN 87-88016757で見出し得、これらは全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0107】
ステップc)は、MF透過液を、一価イオンの通過を可能にするが少なくともラクトースおよび乳清タンパク質を保持する膜を使用するナノろ過(NF)またはナノろ過/透析ろ過(NF/DIA)に供して、ナノろ過(NF)保持液とNF透過液とを得ることを含む。従って、NFまたはNF/DIAは、MF透過液からの一価イオンおよび小さいNPN分子(例えば尿素)の除去ならびに任意選択でMF透過液の濃縮の両方の効率的な方法をもたらす。
【0108】
用語「ナノろ過/透析ろ過」は、ナノろ過プロセスの最中にMF透過液および/または1種もしくは複数種の中間保持液流を希釈して保持液流からの一価イオンの除去を増強することを含む。
【0109】
NF/DIAの最中の希釈に使用され得る希釈液の有用で非限定的な例は、水道水、脱ミネラル化水、逆浸透(RO)透過液である。RO透過液は例えば、ステップc)のNF透過液のRO処理により得られたRO透過液であり得る。
【0110】
当業者には明らかであるように、ステップc)のNFまたはNF/DIAを、単一のNF膜を使用して実施してもよいし例えば連続して配置された数枚のNF膜を使用することにより実施してもよい。NF/DIAの場合、ステップc)の最中に同一のNF膜を数回使用し得る。
【0111】
用語「NF保持液」および「NF透過液」は、NFまたはNF/DIAから得られた最終保持液およびまとめた透過液に関する。
【0112】
MF透過液を、NFまたはNF/DIAに直接供してもよいし、MF透過液の固形分の組成を実質的に変更しないNF前のまたはNF/DIA前の処理ステップに供してもよい。そのような処理ステップは、例えば低温殺菌、抗菌マイクロろ過、遠心除菌、希釈または濃縮の可能性がある。
【0113】
マイクロろ過と同様に、当業者は、ナノろ過またはナノろ過/透析ろ過の実施のためのガイダンスを本”Dairy processing Handbook”,2015,(ISBN 978-9176111321)および“Membrane filtration and related molecular separation technologies”,Werner Kofod Nielsen,APV Systems,2000,ISBN 87-88016757中に見出し得、これらは全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0114】
NFまたはNF/DIAのVCFは、この方法の実際の実施に依存する。NFまたはNF/DIAのVCFは0.1~30の範囲(例えば0.5~20の範囲または1~15の範囲)であることが多いが必ずしも常ではない。
【0115】
NF/DIAの最中の本乳供給物の温度は概して1~20℃の範囲であり、好ましくは2~18℃の範囲であり、さらにより好ましくは5~15℃の範囲である。
【0116】
NFまたはNF/DIAに使用される膜間差圧は、この方法の実際の実施および使用される膜に依存する。膜間差圧は5~35バールの範囲であることが多く、好ましくは15~22バールの範囲である。
【0117】
NFまたはNF/DIAに使用されるNF膜は、一価の塩からラクトースを分離するのにならびに任意選択でグルコースおよびガラクトースも分離するのに有用であるあらゆるNF膜タイプの可能性がある。そのような膜の有用な例は、NF245膜(DOW Filmtec,USA)またはDL膜(GE Water,USA)である。
【0118】
使用されるNF膜は概して、少なくとも80%(好ましくは少なくとも90%)のラクトースの保持率と、最大約50%のNa、KおよびClの保持率とを有する。有用なNF膜は、150~500ダルトンの範囲(好ましくは150~300ダルトンの範囲)の分子量カットオフを有することが多い。
【0119】
本発明のいくつかの実施形態では、NF透過液の少なくとも一部をステップb)のMF/DIAの最中の透析ろ過希釈液として使用する。
【0120】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、NFまたはNF/DIAを十分に適用して、MF透過液のナトリウム、カリウムおよび塩素のそれぞれの少なくとも50%(mol/mol)を除去する。好ましくは、NFまたはNF/DIAを十分に適用して、MF透過液からナトリウム、カリウムおよび塩素のそれぞれの少なくとも60%(mol/mol)を除去する。さらにより好ましくは、NFまたはNF/DIAを十分に適用して、MF透過液からナトリウム、カリウムおよび塩素のそれぞれを少なくとも70%(mol/mol)を除去する。
【0121】
例えば、NFまたはNF/DIAを十分に適用して、MF透過液からナトリウム、カリウムおよび塩素のそれぞれの少なくとも80%(mol/mol)を除去し得る。NFまたはNF/DIAを例えば十分に適用して、MF透過液からナトリウム、カリウムおよび塩素のそれぞれの少なくとも85%(mol/mol)を除去し得る。あるいは、NFまたはNF/DIAを十分に適用して、MF透過液からナトリウム、カリウムおよび塩素のそれぞれの少なくとも90%(mol/mol)を除去し得る。
【0122】
Na、K、Ca、Mg、ClおよびPの濃度を、Induced Coupled Plasma-Atomic Emission Spectroscopy(ICP-AES)により測定する。
【0123】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、NF保持液は、
- 最大0.4%(重量/全固形分の重量)のナトリウムの総量、
- 最大1.3%(重量/全固形分の重量)のカリウムの総量、
および
- 最大0.8%(重量/全固形分の重量)の塩素の総量
を含む。
【0124】
好ましくは、NF保持液は、
- 最大0.4%(重量/全固形分の重量)のナトリウムの総量、
- 最大1.1%(重量/全固形分の重量)のカリウムの総量、
および
- 最大0.7%(重量/全固形分の重量)の塩素の総量
を含む。
【0125】
例えば、NF保持液は、
- 最大0.2%(重量/全固形分の重量)のナトリウムの総量、
- 最大0.5%(重量/全固形分の重量)のカリウムの総量、
および
- 最大0.4%(重量/全固形分の重量)の塩素の総量
を含み得る。
【0126】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、NF保持液は、
- 0.01~0.4%(重量/全固形分の重量)の範囲のナトリウムの総量、
- 0.01~1.3%(重量/全固形分の重量)の範囲のカリウムの総量、
および
- 0.01~0.8%(重量/全固形分の重量)の範囲の塩素の総量
を含む。
【0127】
好ましくは、NF保持液は、
- 0.05~0.4%(重量/全固形分の重量)の範囲のナトリウムの総量、
- 0.0.5~1.1%(重量/全固形分の重量)の範囲のカリウムの総量、
および
- 0.02~0.7%(重量/全固形分の重量)の範囲の塩素の総量
を含む。
【0128】
例えば、NF保持液は、
- 0.05~0.2%(重量/全固形分の重量)の範囲のナトリウムの総量、
- 0.1~0.5%(重量/全固形分の重量)の範囲のカリウムの総量、
および
- 0.02~0.4%(重量/全固形分の重量)の範囲の塩素の総量
を含む。
【0129】
ステップd)では、NF保持液を無機多価イオンの低減に供して、NF保持液と比較してカルシウム、マグネシウムおよびリンのレベルが低下している、脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品を得る。
【0130】
本発明の文脈において、用語「多価無機イオンの低減」は、二価陽イオンCa2+、Mg2+、およびリンを含む無機分子の低減に関する。
【0131】
NF保持液を、多価無機イオンの低減に直接供してもよいし、NF保持液の固形分の組成を実質的に変更しない低減前の処理ステップに供してもよい。そのような処理ステップは、例えば低温殺菌、抗菌マイクロろ過、遠心除菌、希釈および/または濃縮の可能性がある。
【0132】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップb)の後の乳清タンパク質含有流を限外ろ過に供しない。ステップb)の後の乳清タンパク質含有流を乳糖から乳清タンパク質を分離する限外ろ過に供しないことが特に好ましい。
【0133】
本発明者らは、このことは、乳糖の流れおよび乳清タンパク質の流れの別々の取り扱いが回避されることから有利であることを発見している。
【0134】
多価無機イオンの低減は好ましくは、NF保持液から相当な量の乳糖または乳清タンパク質を除去しない。
【0135】
例えば、ステップd)の多価無機イオンの低減は、電気透析、ミネラル沈殿および/またはイオン交換を含み得る。
【0136】
本発明のいくつかの実施形態では、ステップd)の多価無機イオンの低減は電気透析(ED)を含む、またはからなる。電気透析は当業者に公知であり、例えば下記で説明されており:例えば、APV Systems,2000,ISBN 87-88016 757で公開された“Membrane filtration and related molecular separation technologies”、および“Ion exchange membranes Fundamentals and Applications”,Yoshinobu Tanaka,2nd edition,Elsevier,2015,ISBN:978-0-444-63319-4、および“Ion Exchange Membranes Preparation,characterisation,modification and application”,Toshikatsu Sata,The Royal Society of Chemistry,2004,ISBN 0-85404-590-2、これらは全ての目的のために本明細書に組み込まれる。
【0137】
電気透析を多くの異なる構成で実施し得、本発明にとっては、EDが、小さい一価の金属陽イオンおよび陰イオンだけでなく多価イオン(例えばCa2+、Mg2+)およびリン酸塩も除去するように構成されていることが重要である。本明細書で説明されているように、EDはクエン酸塩を除去するように構成されることがさらに好ましい。
【0138】
簡潔に説明すると、EDは概して、印加されたDC電場の影響下での、イオン交換膜を通った供給溶液から1つまたは複数の隣接溶液へのイオンの輸送を利用する。このことは、電気透析セルと呼ばれる構成で行われる。このセルは概して、陰イオン交換膜および陽イオン交換膜で画定される供給区画(希釈区画とも称されることが多い)で構成され、2つの濃縮区画(ブライン区画とも称されることが多い)に挟まれている。DC電場は、供給物の陽イオンを負極に引き付け且つ陰イオンを正極に引き付け、少なくともより小さい陽イオンおよび陰イオンはそれぞれ、陽イオン交換膜および陰イオン交換膜を透過し得る。このようにして、この供給物から荷電分子種が除去される。
【0139】
ほとんど全ての実用的な電気透析プロセスでは、複数の電気透析セルが電気透析スタックと呼ばれる立体配置で配置されており、交互の陰イオン交換膜および陽イオン交換膜が複数の電気透析セルを形成する。
【0140】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、電気透析装置は、粒子状のイオン交換材料(例えばイオン交換樹脂)を含む供給区画を少なくとも含み、任意選択で濃縮区画も含む。粒子状のイオン交換材料はイオンを保持するように作用し、このイオンがイオン交換膜を横切って輸送されることを可能にし、低導電性液体で特に有用である。電気透析のこの変形は電気脱イオン化と称されることがある。
【0141】
本発明者らは、クエン酸塩の輸送を可能にする陰イオン交換膜を使用することが特に好ましいことを発見している。
【0142】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、この陰イオン交換膜は、少なくとも0.01の、好ましくは少なくとも0.05の、より好ましくは少なくとも0.1の、さらにより好ましくは少なくとも0.2のクエン酸塩の選択透過係数を有する。例えば、この陰イオン交換膜は、少なくとも0.3の、好ましくは少なくとも0.4の、より好ましくは少なくとも0.5の、さらにより好ましくは少なくとも0.6のクエン酸塩の選択透過係数を有する。
【0143】
陰イオン交換膜の「クエン酸塩の選択透過係数」を実施例1.2に従って測定する。この膜のクエン酸塩の選択透過係数の測定は参照陰イオンとして陰イオン塩化物を使用し、従って、用語「クエン酸塩の選択透過係数」は「塩化物に対するクエン酸塩の選択透過係数」とも称され得る。
【0144】
イオン交換膜はまた、この選択透過性、即ち共イオンの透過(例えば、陰イオン交換膜を通る陽イオンの透過)と比較した対イオンの透過(例えば、陰イオン交換膜を通る陰イオンの透過)に対する選択性に関しても特徴付けられ得る。
【0145】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、電気透析に使用される陰イオン交換膜は少なくとも0.4の、好ましくは少なくとも0.5の、より好ましくは少なくとも0.6の、さらにより好ましくは少なくとも0.7の選択透過性を有する。電気透析に使用される陰イオン交換膜は好ましくは、少なくとも0.8の、より好ましくは少なくとも0.9の、さらにより好ましくは少なくとも0.95の選択透過性を有する。
【0146】
陽イオン交換膜が比較的高い選択透過性を有することも同様に望ましい。そのため、本発明のいくつかの好ましい実施形態では、電気透析に使用される陽イオン交換膜は少なくとも0.4の、好ましくは少なくとも0.5の、より好ましくは少なくとも0.6の、さらにより好ましくは少なくとも0.7の選択透過性を有する。電気透析に使用される陽イオン交換膜は好ましくは、少なくとも0.8の、より好ましくは少なくとも0.9の、さらにより好ましくは少なくとも0.95の選択透過性を有する。
【0147】
有用な膜の非限定的な例は、例えばMEGA(Czech Republic)のRalex CM(H)-PES陽イオン膜およびRalex AM(H)-PES陰イオン膜である。膜の他の例をTanaka 2015で見出し得る。
【0148】
NF透過液のpHは概して、電気透析に最初に供された際に少なくとも5.5であり、好ましくは少なくとも6.0である。本発明のいくつかの実施形態では、NF透過液のpHは、沈殿に使用される電気透析に最初に供された際に5.5~7.0の範囲であり、5.7~6.8の範囲であり、より好ましくは6.0~6.5の範囲である。
【0149】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、EDの濃縮液流は、最大6.0の、好ましくは最大5.6の、より好ましくは最大5.2の、最も好ましくは最大5.0のpHを有する。この濃縮液流の比較的低いpHにより、この濃縮液流中でのリン酸カルシウムの沈殿が妨げられる。
【0150】
電気透析の最中の液体供給物および濃縮液の温度は概して、0~70℃の範囲である。好ましくは、電気透析の最中の液体供給物および濃縮液の温度は2~40℃の範囲である。さらにより好ましくは、電気透析の最中の液体供給物および濃縮液の温度は4~15℃の範囲であり、例えば好ましくは5~10℃の範囲である。
【0151】
EDの電圧はEDシステムの実際の設定に依存しており、例えば1~500Vの範囲、例えば50~400Vの範囲、例えば100~300Vの範囲であり得る。本発明のいくつかの実施形態では、EDの電気透析ステップの最中ではEDの電圧は一定に保持される。
【0152】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップd)のEDを、NF保持液の導電率が少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%低下するまで行う。
【0153】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップd)のEDを、NF保持液の導電率が少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%低下するまで行う。
【0154】
クエン酸塩の低減レベルによりEDプロセスを制御することも可能である。そのため、本発明のいくつかの実施形態では、ステップd)のEDを、最初のNF保持液のクエン酸塩の量が少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%低減するまで行う。
【0155】
本発明のいくつかの実施形態では、ステップc)により供給されるNF保持液から除去されるシアリルラクトースが限られた量のみであることが好ましい。このことを、シアリルラクトースに対して不透過性である陰イオン交換膜を選択することによりおよび/またはシアリルラクトースを除去する前にEDプロセスを停止することにより達成し得る。好ましくは、ステップd)のEDプロセスは、NF保持液のシアリルラクトースの最大50%(重量/重量)、好ましくは最大40%(重量/重量)、より好ましくは最大30%(重量/重量)、さらにより好ましくは最大20%(重量/重量)、最も好ましくは最大10%(重量/重量)を除去する。好ましくは、ステップd)のEDプロセスはシアリルラクトースを全く除去しない。
【0156】
本発明の他の実施形態では、ステップd)の多価無機イオンの低減はイオン交換を含む、またはからなる。イオン交換も当業者には公知であり、例えばProtein Purification:Principles and Practice;Robert K.Scopes;3rd edition,Springer Verlag New York,Inc.,ISBN 0-387-94072-3またはAPV Systems,2000,ISBN 87-88016 757で公開された“Membrane filtration and related molecular separation technologies”で説明されており、これらは全ての目的のために本明細書に組み込まれる。
【0157】
しかしながら、本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップd)の多価無機イオンの低減は電気透析を含まない。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップd)の多価無機イオンの低減はイオン交換を含まない。
【0158】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップd)の多価無機イオンの低減は、乳清タンパク質から乳糖を分離した電気透析、イオン交換または限外ろ過を何れも含まない。
【0159】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップd)の多価無機イオンの低減は、下記のうちの少なくとも1つを使用してミネラル含有沈殿物を形成することを含むミネラル沈殿と:
- NF保持液のpHを少なくとも6.0に調整すること、
- NF保持液を少なくとも30℃の温度まで加熱すること、
および
- NF保持液を濃縮すること、
NF保持液からミネラル沈殿物を分離して、脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品およびミネラル含有沈殿物を得ることと
を含む、またはからなる。
【0160】
沈殿に使用されるpHは少なくとも6.0であり、好ましくは少なくとも6.3である。本発明のいくつかの実施形態では、沈殿に使用されるpHは少なくとも6.5である。好ましくは、沈殿に使用されるpHは少なくとも7.0である。さらにより好ましくは、沈殿に使用されるpHは少なくとも8.0である。
【0161】
本明細書に記載されているpH値は、別途規定されていない限り25℃で測定されている。
【0162】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、沈殿に使用されるpHは、乳中で通常見られるpHと同一である。このことは特に有利であり、なぜならばpH調整の必要性が低減されるか排除されるからである。アルカリ化剤(例えばNaOHまたはKOHの形態)の添加も、その後に除去される可能性があるより多くのミネラル陽イオンに寄与する。
【0163】
そのため、本発明のいくつかの好ましい実施形態では、沈殿に使用されるpHは6.0~7.0の範囲である。好ましくは、沈殿に使用されるpHは6.2~6.9の範囲である。さらにより好ましくは、沈殿に使用されるpHは6.3~6.8の範囲である。
【0164】
本発明の他の好ましい実施形態では、沈殿に使用されるpHは、乳中で通常見られるpHと比べて高い。
【0165】
そのため、本発明の他の好ましい実施形態では、沈殿に使用されるpHは6.9~9の範囲である。好ましくは、沈殿に使用されるpHは7.2~8.5の範囲である。さらにより好ましくは、沈殿に使用されるpHは7.5~8.0の範囲である。pHの上昇により沈殿がより効率的になり、および/またはより低いpHが使用された場合と比べて低い温度で沈殿ステップを操作することが可能になる。
【0166】
本発明のさらに好ましい実施形態では、沈殿に使用されるpHは6.0~9の範囲であり、好ましくは6.2~8.0であり、さらにより好ましくは6.5~7.5の範囲である。
【0167】
沈殿に使用される温度は少なくとも30℃である。好ましくは、沈殿に使用される温度は少なくとも40℃である。さらにより好ましくは、沈殿に使用される温度は少なくとも50℃である。
【0168】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、沈殿に使用される温度は30~75℃の範囲である。好ましくは、沈殿に使用される温度は45~65℃の範囲である。さらにより好ましくは、沈殿に使用される温度は55~65℃の範囲である。
【0169】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、沈殿用のpHは6.1~6.8の範囲であり、好ましくは6.3~6.7であり、温度は55~75℃の範囲で保持される。例えば、沈殿用のpHは6.3~6.7の範囲であり得、温度は60~70℃の範囲で保持される。
【0170】
本発明の他の好ましい実施形態では、沈殿用のpHは6.9~9の範囲であり、好ましくは7.0~8.0であり、温度は55~75℃の範囲で保持される。例えば、沈殿の最中のpHは7.0~8.0の範囲であり得、温度は60~70℃の範囲で保持される。
【0171】
沈殿物の形成条件を好ましくは、相当な量のカルシウム、マグネシウムおよびリンを沈殿させるのに十分な持続期間にわたり維持するべきである。例えば、沈殿物の形成条件を概して、少なくとも1分にわたり維持し、好ましくはさらにより長く維持し、例えば少なくとも10分または少なくとも15分にわたり維持する。
【0172】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、沈殿物の形成条件を少なくとも20分にわたり維持する。好ましくは、沈殿物の形成条件を少なくとも30分にわたり維持する。例えば、沈殿物の形成条件を少なくとも1時間にわたり維持する。
【0173】
本発明のいくつかの実施形態では、沈殿物の形成条件を1分から48時間にわたり維持する。例えば、沈殿物の形成条件を5分から5時間にわたり維持する。あるいは、沈殿物の形成条件を10分から2時間にわたり維持する。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、沈殿物の形成条件を15分から1時間にわたり維持する。
【0174】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、沈殿物の形成条件を、NF保持液のカルシウムの少なくとも30%(重量/重量)、好ましくは少なくとも35%(重量/重量)、さらにより好ましくは少なくとも40%(重量/重量)を沈殿させるのに十分な持続時間にわたり維持する。
【0175】
より多くのカルシウムを沈殿させ得、本発明のいくつかの好ましい実施形態では、沈殿物の形成条件を、NF保持液のカルシウムの少なくとも50%(重量/重量)、好ましくは少なくとも60%(重量/重量)、さらにより好ましくは少なくとも70%(重量/重量)を沈殿させるのに十分な持続時間にわたり維持する。
【0176】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、沈殿物の形成条件を、NF保持液のリンの少なくとも30%(重量/重量)、好ましくは少なくとも35%(重量/重量)、さらにより好ましくは少なくとも40%(重量/重量)を沈殿させるのに十分な持続時間にわたり維持する。
【0177】
より多くのリンを沈殿させ得、本発明のいくつかの好ましい実施形態では、沈殿物の形成条件を、NF保持液のリンの少なくとも50%(重量/重量)、好ましくは少なくとも60%(重量/重量)、さらにより好ましくは少なくとも70%(重量/重量)を沈殿させるのに十分な持続時間にわたり維持する。
【0178】
ミネラル沈殿物を、伝統的な分離技術(例えば遠心分離、マイクロろ過またはデカンテーション)により、残余のNF保持液から分離し得る。
【0179】
本発明の文脈において、用語「脱ミネラル化された」および「ミネラルが低減された」は互換的に使用され、少なくとも一部のミネラルが供給物から除去されて問題の組成物に達していることを意味する。「脱ミネラル化された」および「ミネラルが低減された」製品または組成物は好ましくは、最大0.6%(重量/TSの重量)のカルシウム、好ましくは最大0.4%(重量/重量)のカルシウム、さらにより好ましくは最大0.2%(重量/重量)のカルシウム、例えば好ましくは最大0.1%(重量/重量)のカルシウムを含む。
【0180】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップd)から得られる脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品は、
- 最大1.0%(重量/全固形分の重量)のカルシウムの総量、
- 最大0.1(重量/全固形分の重量)のマグネシウムの総量、
および
- 最大0.8%(重量/全固形分の重量)のリンの総量
を含む。
【0181】
例えば、ステップd)から得られる脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品は、
- 最大0.6%(重量/全固形分の重量)のカルシウムの総量、
- 最大0.1(重量/全固形分の重量)のマグネシウムの総量、
および
- 最大0.4%(重量/全固形分の重量)のリンの総量を
を含み得る。
【0182】
ステップd)から得られる脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品は、例えば
- 0.01~1.0%(重量/全固形分の重量)の範囲のカルシウムの総量、
- 0.001~0.1(重量/全固形分の重量)の範囲のマグネシウムの総量、
および
- 0.01~0.6%(重量/全固形分の重量)の範囲のリンの総量
を含み得る。
【0183】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップd)から得られる脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品は、
- 0.1~0.6%(重量/全固形分の重量)の範囲のカルシウムの総量、
- 0.01~0.1(重量/全固形分の重量)の範囲のマグネシウムの総量、
および
- 0.05~0.4%(重量/全固形分の重量)の範囲のリンの総量
を含む。
【0184】
ステップe)では、脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品にカゼイン供給源および任意選択の1種または複数種の追加成分を添加して栄養製品を得る。ステップe)は、混合、均質化、蒸発および/または加熱処理等の処理ステップをさらに含み得る。
【0185】
様々なカゼイン供給源を使用し得る。本発明のいくつかの実施形態では、このカゼイン供給源は、乳、濃縮乳、粉乳、乳のUF保持液、乳タンパク質濃縮物、ベータ-カゼイン単離物、ミセルカゼイン単離物、カゼイン塩またはこれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含む。このカゼイン供給源のカゼインは、例えば脱脂乳中で見出されるミセルカゼインおよび/またはベータ-カゼインであることが好ましい。
【0186】
液体脱脂乳または乾燥脱脂乳粉末の形態の脱脂乳が特に好ましい。
【0187】
加えて、脱脂乳のUF保持液はカゼインの特に好ましい供給源である。
【0188】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップe)のカゼイン供給源およびステップa)の乳供給物の両方が乳のUF保持液であり、例えば、同一の乳バッチまたは同一カテゴリーの乳(例えば有機乳)に由来する。
【0189】
本栄養製品に含まれ得る1種または複数種の追加成分は有利には、小児用製品で概して使用される成分の中から選択され得る。
【0190】
例えば、栄養製品(例えば乳児用調合乳の形態)は、ヒト乳オリゴ糖(HMO)(例えば2’-FLおよびLNnT)のうちの少なくとも1種を含み得る。中枢神経系(CNS)機能の改善におけるHMOの複数の役割が研究により分かっている。上記で説明した2’-FLおよびLNnTのうちの少なくとも1つの含有に加えて、ある特定の態様では、本栄養製品は追加のシアル化されたまたはフコシル化されたヒト乳オリゴ糖(HMO)を含む。
【0191】
本栄養製品で使用されるHMOの何れかまたは全ては、哺乳類(ヒト種、ウシ種、ヒツジ種、ブタ種またはヤギ種が挙げられるがこれらに限定されない)から分泌される乳から単離され得る、または富化され得る。このHMOを、微生物発酵、酵素プロセス、化学合成またはこれらの組み合わせによっても製造し得る。
【0192】
乳児用調合乳中の含有に適したシアル化HMOは、例えばオリゴ糖骨格中に少なくとも1つのシアル酸残基を含み得る。ある特定の態様では、シアル化HMOは2つ以上のシアル酸残基を含む。
【0193】
あるいは、または加えて、本栄養製品は、他の種類のオリゴ糖(例えばトランス-ガラクト-オリゴ糖(GOS)、フルクトース-オリゴ糖(FOS)および/またはポリデキストロース)も含み得る。
【0194】
本栄養製品(例えば乳児用調合乳の形態)は、1種または複数種の多価不飽和脂肪酸(PUFA)(例えば、ドコサヘキサエン酸(DHA)、アラキドン酸(AA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、リノール酸、リノレン酸(アルファリノレン酸)およびガンマ-リノレン酸)をさらに含み得る。
【0195】
乳児の脳および視覚の発達の支持でのPUFAの複数の役割が研究により分かっている。乳児用調合乳中にDHAおよびAAを含めることにより神経機能(例えば、CNSに関連する認知、学習および記憶)を改善し得ると本出願人は考えている。
【0196】
ある特定の態様では、PUFAは、遊離脂肪酸として、トリグリセリド形態で、ジグリセリド形態で、モノグリセリド形態で、リン脂質形態で、または上記のうちの1つまたは複数の混合物として、好ましくはトリグリセリド形態で供給される。PUFAは油源(例えば植物油、海洋プランクトン、真菌油および魚油)に由来し得る。ある特定の態様では、PUFAは、魚油(例えばメンハーデン油、サケ油、アンチョビ油、タラ油、オヒョウ油、マグロ油またはニシン油)に由来する。
【0197】
本栄養製品(例えば乳児用調合乳の形態)は1種または複数種のヌクレオチドをさらに含み得、このヌクレオチドとして、例えばヌクレオチドイノシンモノホスフェート、シチジン5’-モノホスフェート、ウリジン5’-モノホスフェート、アデノシン5’-モノホスフェート、グアノシン5’-1-モノホスフェートが挙げられ、より好ましくはシチジン5’-モノホスフェート、ウリジン5’-モノホスフェート、アデノシン5’-モノホスフェートおよびグアノシン5’-モノホスフェートが挙げられる。
【0198】
本栄養製品(例えば乳児用調合乳の形態)の炭水化物濃度は例えば、本栄養製品の重量で約5%~約40%(重量/重量)、例えば約7%~約30%、例えば約10%~約25%の範囲であり得る。存在する場合、脂肪濃度は最も典型的には、本乳児用調合乳の重量で約1%~約30%、例えば約2%~約15%および例えば約3%~約10%の範囲である。存在する場合、タンパク質濃度は最も典型的には、本栄養製品の重量で約0.5%~約30%、例えば約1%~約15%および例えば約2%~約10%の範囲である。
【0199】
本発明のいくつかの実施形態では、本栄養製品(例えば乳児用調合乳の形態)は、上記で説明したPUFAに加えて脂肪の1種または複数種の供給源を含む。本明細書での使用に適した脂肪の供給源として、経口の乳児用調合乳での使用に適しており且つそのような調合乳の必須要素および特徴と適合するあらゆる脂肪または脂肪供給源が挙げられる。
【0200】
本明細書で説明された栄養製品での使用に適した脂肪またはその供給源の追加の非限定的な例として下記が挙げられる:ココナツ油、分画ココナツ油、ダイズ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ベニバナ油、高オレイン酸ベニバナ油、オレイン酸(EMERSOL 6313 OLEIC ACID,Cognis Oleochemicals,Malaysia)、MCTオイル(中鎖トリグリセリド)、ヒマワリ油、高オレイン酸ヒマワリ油、パーム油およびパーム核油、パームオレイン、キャノーラ油、海産油(marine oil)、魚油、真菌油、藻類油、綿実油およびこれらの組み合わせ。
【0201】
本栄養製品は、乳清タンパク質およびカゼインに加えて、他の種類のタンパク質も含み得る。本栄養製品(例えば乳児用調合乳の形態)での使用に適したタンパク質またはその供給源の非限定的な例として、加水分解された、部分的に加水分解されたまたは加水分解されていないタンパク質またはタンパク質供給源が挙げられ、これらは、あらゆる既知のまたは適切な供給源(例えば、動物(例えば肉、魚)、穀物(例えばイネ、トウモロコシ)、野菜(例えばダイズ)またはこれらの組み合わせ)に由来し得る。そのようなタンパク質の非限定的な例として、広範囲に加水分解されたカゼイン、ダイズタンパク質単離物、および大豆タンパク質濃縮物が挙げられる。
【0202】
本栄養製品は、例えば加水分解タンパク質(即ちタンパク質加水分解物)を含み得る。この文脈において、用語「加水分解タンパク質」または「タンパク質加水分解物」は本明細書において互換的に使用され、広範囲に加水分解されたタンパク質を含み、加水分解の程度はほとんどの場合、少なくとも約20%、例えば約20%~約80%、および例えば約30%)~約80%)、さらにより好ましくは約40%>~約60%>である。加水分解の程度は、加水分解法によりペプチド結合が破壊される程度である。これらの実施形態の広範囲に加水分解されたタンパク質成分を特徴付ける目的のためのタンパク質加水分解の程度は、選択された液剤のタンパク質成分のアミノ窒素対全窒素比(AN/TN)を定量することにより、製剤分野の当業者により容易に決定される。アミノ窒素成分は、アミノ窒素含有量を測定するためのUSP滴定法により定量され、全窒素成分はTecator Kjeldahl法により決定され、これらは全て、分析化学分野の当業者に公知の方法である。
【0203】
適切な加水分解タンパク質として下記が挙げられる:ダイズタンパク質加水分解物、カゼインタンパク質加水分解物、ホエイタンパク質加水分解物、イネタンパク質加水分解物、ジャガイモタンパク質加水分解物、魚タンパク質加水分解物、卵白加水分解物、ゼラチンタンパク質加水分解物、動物タンパク質加水分解物および植物タンパク質加水分解物の組み合わせ、ならびにこれらの組み合わせ。特に好ましいタンパク質加水分解物として、ホエイタンパク質加水分解物および加水分解カゼイン酸ナトリウムが挙げられる。
【0204】
本栄養製品は、乳糖に加えて追加の炭水化物を含み得る。適切な炭水化物またはその供給源の非限定的な例として下記が挙げられる:マルトデキストリン、加水分解されたまたは加工されたデンプンまたはコーンスターチ、グルコースポリマー、コーンシロップ、コーンシロップ固形物、イネ由来炭水化物、エンドウ由来炭水化物、ジャガイモ由来炭水化物、タピオカ、スクロース、フルクトース、ラクトース、高フルクトースコーンシロップ、蜂蜜、糖アルコール(例えばマルチトール、エリスリトール、ソルビトール)、人工甘味料(例えばスクラロース、アセスルファムカリウム、ステビア)およびこれらの組み合わせ。特に望ましい炭水化物は低デキストロース当量(DE)マルトデキストリンである。
【0205】
カゼイン供給源は概して、本栄養製品中のカゼインと乳清タンパク質との間に所望の重量比を得るのに十分な量で、脱ミネラル化された乳糖含有乳清製品に添加される。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、1~9の、好ましくは1~3の、さらにより好ましくは1.2~1.9の、例えば約1.5の範囲で乳清タンパク質とカゼインとの重量比を得るように、乳糖含有乳清製品とカゼイン供給源とを混合する。
【0206】
本発明の文脈において、2種の成分AおよびBの重量比は、成分Bの重量で除算した成分Aの重量として決定される。そのため、ある組成物が9%(重量/重量)のAと6%(重量/重量)のBを含む場合には、重量比は9%/6%=1.5となるだろう。
【0207】
本発明のいくつかの実施形態では、ステップa)で得られたUF乳透過液由来の精製済乳糖(例えばラクトース)の少なくとも一部を、ステップe)の最中に成分として添加する。
【0208】
本発明のいくつかの実施形態では、本栄養製品の乳糖(例えばラクトース)は、乳供給物と同一の乳供給源(即ち乳バッチ)に由来する。
【0209】
本発明のいくつかの実施形態では、本栄養製品のタンパク質は、乳供給物と同一の乳供給源に由来する。
【0210】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本栄養製品のタンパク質および乳糖は有機成分により供給される。好ましくは、本栄養製品は有機製品である。
【0211】
本栄養製品が液体製品として販売されることまたは使用されることが意図されている場合、本栄養製品を15秒にわたる少なくとも72℃に相当するF0値またはさらに良いのは4秒にわたる少なくとも142℃に相当するF0値を有する加熱処理に供することが好ましい場合がある。この加熱処理は例えば、液体栄養製品を滅菌するUHT処理であり得る。
【0212】
本栄養製品のpHは好ましくは6~7の範囲であり、さらにより好ましくは6.0~7.0の範囲(例えば6.2~7.0の範囲)である。
【0213】
本栄養製品のpHを、本製品を90gの脱ミネラル化水中の約10gの固体に相当する固形分まで標準化して25℃でpHを測定することにより測定する。
【0214】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本方法は、ステップe)から得られた栄養製品を液体形態から粉末形態へと変換するステップf)をさらに含む。任意の有用な粉末変換プロセス(例えば噴霧乾燥または凍結乾燥)を使用し得る。適切な方法および実施の詳細を、例えばWestergaard,Milk Powder Technology-evaporation and spray drying,5th edition,2010,Gea Niro,Copenhagen中に見出し得る。
【0215】
本栄養製品(液体形態、濃縮形態または粉末形態の何れか)が包装されていることがさらに好ましい。この包装を例えば無菌条件下または滅菌条件下で実施し得、この包装は、例えば滅菌容器に本栄養製品を充填して密封することを含み得る。
【0216】
本発明者らはまた、ミネラルが低減された乳糖含有乳清タンパク質製品を製造するために上記のステップa)~d)を使用するプロセスを中断することが有利であり得ることも発見している。そのような乳清タンパク質製品は、例えば乳児用調合乳製品の製造の興味深い成分であり、本発明を使用して効率的に製造され得る。
【0217】
そのため、本発明のさらなる態様は、脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品を製造する方法において、
i)乳供給物を準備するステップと、
ii)この乳供給物をマイクロろ過(MF)またはマイクロろ過/透析ろ過に供し、それによりMF保持液およびMF透過液を得るステップと、
iii)このMF透過液をナノろ過(NF)またはナノろ過/透析ろ過(NF/DIA)に供してNF保持液およびNF透過液を得るステップと、
iv)このNF保持液を無機多価イオンの低減に供し、それにより脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品を得るステップと、
v)任意選択で、この脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品を乾燥させるステップと
を含む方法に関する。
【0218】
ステップi)はステップa)と同一であり、ステップa)の文脈で述べた全ての特徴はステップi)にも当てはまる。
【0219】
ステップii)はステップb)と同一であり、ステップb)の文脈で述べた全ての特徴はステップii)にも当てはまる。
【0220】
ステップiii)はステップc)と同一であり、ステップc)の文脈で述べた全ての特徴はステップiii)にも当てはまる。
【0221】
ステップiv)はステップd)と同一であり、ステップd)の文脈で述べた全ての特徴はステップiv)にも当てはまる。
【0222】
この方法のステップi)~iv)の概略例を
図2に示す。ここで、乳供給物をマイクロろ過に供し、乳清タンパク質、乳糖、水およびミネラルを主に含む透過液(P)と、カゼインミセル、水、ならびにさらに少量の乳清タンパク質、乳糖およびミネラルを主に含む保持液(R)とが得られる。この透過液をナノろ過に供して、一価イオンおよび水を含むNF透過液(P)と、乳清タンパク質、乳糖、水および残余のミネラルを含むNF保持液(R)とが得られる。このNF保持液を例えばミネラル沈殿による多価無機イオンの量の低減に供し、ミネラル含有沈殿物とミネラルが低減された乳糖含有乳清タンパク質とが得られる。この例では、乳糖はラクトースを主に含む。このミネラルが低減された乳糖含有乳清タンパク質を、それ自体液体成分として使用してもよいし例えば噴霧乾燥により粉末に変換してもよい。
【0223】
そのため、この方法は、脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品を乾燥させ、それにより粉末に変換するステップv)をさらに含み得る。あらゆる有用な粉末変換プロセス(例えば噴霧乾燥または凍結乾燥)を使用し得る。適切な方法および実施の詳細を、例えばWestergaard,Milk Powder Technology-evaporation and spray drying,5th edition,2010,Gea Niro,Copenhagen中に見出し得る。
【0224】
脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品(典型的には粉末形態)が包装されていることがさらに好ましい。この包装を例えば無菌条件下または滅菌条件下で実施し得、この包装は、例えば滅菌容器に本栄養製品を充填して密封することを含み得る。
【0225】
本発明者らは、上記で説明されたミネラル沈殿物を上記のステップa)~c)により提供されるもの以外の種類の乳タンパク質溶液(特に、他の種類の乳清タンパク質溶液またはホエイタンパク質溶液)に使用し得ることも発見している。
【0226】
本発明のさらなる態様は、脱ミネラル化された乳清タンパク質またはホエイタンパク質製品を製造する方法において、
1)乳清タンパク質またはホエイタンパク質を含み、好ましくは乳糖も含む液体タンパク質供給源を準備するステップと、
2)この液体タンパク質供給源を無機多価イオンの低減に供し、この低減は、この液体タンパク質供給源を少なくとも6のpHに調整し、少なくとも30℃の温度まで加熱し、得られた沈殿物をNF保持液から分離することを含み、それにより乳清タンパク質製品またはホエイタンパク質製品を得るステップと、
3)任意選択で、この乳清タンパク質製品またはホエイタンパク質製品を乾燥させるステップと
を含む方法に関する。
【0227】
ステップ2)はステップd)と同一であり、ステップd)の文脈で述べた全ての特徴はステップ2)にも当てはまり、唯一の違いは、液体タンパク質供給源が無機多価イオンの低減に供されており且つNF保持液ではないことである。
【0228】
本発明のいくつかの実施形態では、この液体タンパク質供給源は、1~15%(重量/重量)の範囲の乳清タンパク質およびホエイタンパク質の総量を含む。好ましくは、この液体タンパク質供給源は、2~10%(重量/重量)の範囲の乳清タンパク質およびホエイタンパク質の総量を含む。さらにより好ましくは、この液体タンパク質供給源は、3~8%の範囲の乳清タンパク質およびホエイタンパク質の総量を含む。
【0229】
この液体タンパク質供給源は、5%(重量/総タンパク質の重量)未満のカゼインを好ましくは含み、好ましくはカゼインを実質的に含まず、この場合、この液体タンパク質供給源は最大1%のカゼイン(重量/総タンパク質の重量)を含む。
【0230】
本発明の追加の態様は、例えば本明細書で説明した方法により得られる栄養製品において、
- 20~90%(重量/TSの重量)の炭水化物、
- 5~40%(重量/TSの重量)のタンパク質、
- 0~40%(重量/TSの重量)の脂質、
および
- 総タンパク質に対して少なくとも15%(重量/重量)のホエイタンパク質
および
- 最大1%(重量/TSの重量)のクエン酸塩
を含む栄養製品に関する。
【0231】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、この栄養製品は小児栄養補給に適している。
【0232】
この栄養製品は、少なくとも1種のタンパク質である反芻動物の乳タンパク質を好ましくは含む。好ましくは、この栄養製品の少なくともホエイタンパク質は反芻動物のホエイタンパク質であり、好ましくはウシのホエイタンパク質である。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、この栄養製品のタンパク質はウシ起源であり、好ましくは牛乳に由来する。
【0233】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、この栄養製品は栄養製品(例えば乳児用調合乳、フォローオン調合乳および成長期用調合乳)である。
【0234】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、この栄養製品は乳児用調合乳である。
【0235】
好ましくは、この栄養製品は、
- 35~70%(重量/TSの重量)の炭水化物、
- 5~15%(重量/TSの重量)のタンパク質、
- 20~40%の脂質(重量/TSの重量)、
- 総タンパク質に対して30~70%(重量/重量)のホエイタンパク質、
および
- 総タンパク質に対して30~70%(重量/重量)のカゼイン
を含む乳児用調合乳である。
【0236】
本発明の文脈において、用語「乳児用調合乳」は、2015年4月1日に施行のUS Code of Federal Regulations,Title 21,CHAPTER I,SUBCHAPTER B,PART 107(INFANT FORMULA),Subpart D(Nutrient Requirements);Sec.107.100 Nutrient specificationsに適合する食品である、0~6ヶ月の乳児用の栄養的に完全な食品に関する。
【0237】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、この栄養製品(例えば乳児用調合乳の形態)はタンパク質、乳糖および脂肪およびミネラルを含み、且つ
・ 40~55%(重量/全固形分の重量)の範囲の炭水化物の総量、
・ 9~14%%(重量/全固形分の重量)の範囲のタンパク質の総量、
・ 40~55%%(重量/全固形分の重量)の範囲の乳糖の総量、
・ 50:50~70:30の範囲の、好ましくは55:45~65:45の範囲の、さらにより好ましくは約60:40の乳糖タンパク質とカゼインとの重量比、
・ 最大0.7%(重量/全固形分の重量)のカルシウムの総量、
・ 最大0.1%(重量/全固形分の重量)のマグネシウムの総量、
・ 最大0.5%(重量/全固形分の重量)のリンの総量、
・ 最大0.3%(重量/全固形分の重量)のナトリウムの総量、
・ 最大0.8%(重量/全固形分の重量)のカリウムの総量、
および
・ 最大0.8%(重量/全固形分の重量)の塩素の総量
を含む。
【0238】
本発明の他の好ましい実施形態では、この栄養製品は、栄養的に完全な乳児用調合乳を生成するのに必要ないくつかの成分を概して欠く乳児用調合乳成分(乳児用調合乳基剤とも称される)である。
【0239】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、この栄養製品は、
- 総タンパク質に対して30~70%(重量/重量)のホエイタンパク質、
および
- 総タンパク質に対して30~70%(重量/重量)のカゼイン
を含む乳児用調合乳基剤製品である。
【0240】
好ましくは、この乳児用調合乳基剤は、
- 35~70%(重量/TSの重量)の乳糖、
- 5~15%(重量/TSの重量)のタンパク質、
- 20~40%の脂質(重量/TSの重量)、
- 総タンパク質に対して30~70%(重量/重量)の乳清タンパク質、
および
- 総タンパク質に対して30~70%(重量/重量)のカゼイン
を含む。
【0241】
さらにより好ましくは、この乳児用調合乳基剤は、
- 35~70%(重量/TSの重量)の乳糖、
- 5~15%(重量/TSの重量)のタンパク質、
- 20~40%の脂質(重量/TSの重量)、
- 総タンパク質に対して50~70%(重量/重量)の乳清タンパク質、
および
- 総タンパク質に対して30~50%(重量/重量)のカゼイン
を含む。
【0242】
本発明の文脈において、用語「乳児用調合乳基剤」は、乳児用調合乳に必要なタンパク質炭水化物を少なくとも含み、任意選択で脂質も含むが、栄養学的に完全ではない(このことは、2015年4月1日に施行のUS Code of Federal Regulations,Title 21,CHAPTER I,SUBCHAPTER B,PART 107(INFANT FORMULA),Subpart D(Nutrient Requirements);Sec.107.100 Nutrient specificationsに従って要求される微量栄養素のうちの少なくともいくつかを欠くことを意味する)成分に関する。
【0243】
好ましくは、この乳児用調合乳基剤は乳固形分のみを含み、即ち、乳に由来する固形分のみを含む。
【0244】
本発明のいくつかの実施形態では、この栄養製品はフォローオン調合乳または成長期用調合乳である。
【0245】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、この栄養製品は、
- 20~90%(重量/TSの重量)の乳糖、
- 5~40%(重量/TSの重量)のタンパク質、
- 0~10%の脂質(重量/TSの重量)、
- 総タンパク質に対して少なくとも60%(重量/重量)のホエイタンパク質、
および
- 総タンパク質に対して最大40%のカゼイン(好ましくはカゼインの少なくとも50%(重量/重量)はベータ-カゼインである)
を含む脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品である。
【0246】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、この脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品は、
- 20~90%(重量/TSの重量)の乳糖、
- 5~40%(重量/TSの重量)のタンパク質、
- 0~10%の脂質(重量/TSの重量)、
- 総タンパク質に対して少なくとも70%(重量/重量)のホエイタンパク質、
および
- 総タンパク質に対して最大30%のカゼイン
を含む。
【0247】
あるいは、しかしまた好ましくは、この脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品は、
- 20~90%(重量/TSの重量)の乳糖、
- 5~40%(重量/TSの重量)のタンパク質、
- 0~10%の脂質(重量/TSの重量)、
- 総タンパク質に対して60~80%(重量/重量)のホエイタンパク質、
および
- 総タンパク質に対して20~40%(重量/重量)のカゼイン(カゼインの少なくとも50%(重量/重量)はベータ-カゼインである)
を含み得る。
【0248】
この脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品は、例えば
- 20~80%(重量/TSの重量)の乳糖、
- 10~30%(重量/TSの重量)のタンパク質、
- 0~10%の脂質(重量/TSの重量)、
- 総タンパク質に対して少なくとも90%(重量/重量)のホエイタンパク質、
および
- 総タンパク質に対して最大10%のカゼイン
を含み得る。
【0249】
例えば、この栄養製品は、例えば本明細書で定義した方法により得られる脱ミネラル化された乳糖含有血清タンパク質製品において、
・ 65~85%の範囲のラクトースの総量、
・ 10~25%の範囲の乳清およびホエイタンパク質の総量、
・ 少なくとも95:5である乳清タンパク質とミセルカゼインとの重量比、
・ 最大1.0%(重量/全固形分の重量)のカルシウムの総量、
・ 最大0.1%(重量/全固形分の重量)のマグネシウムの総量、
・ 最大0.8%(重量/全固形分の重量)のリンの総量、
・ 最大0.4%(重量/全固形分の重量)のナトリウムの総量、
・ 最大1.3%(重量/全固形分の重量)のカリウムの総量、
および
・ 最大0.8%(重量/全固形分の重量)の塩素の総量
を含む脱ミネラル化された乳糖含有血清タンパク質製品であり得る。
【0250】
本発明の文脈において、成分の百分率は、別途規定されない限り問題の組成物の総重量に対するこの成分の重量百分率である。
【0251】
この栄養組成物の炭水化物は任意の栄養的に有用な炭水化物から選択され得、単糖、二糖、オリゴ糖および/または多糖の両方を含み得る。
【0252】
本発明のいくつかの特に好ましい実施形態では、この栄養組成物(特に乳児用調合乳基剤および/または脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品)の炭水化物は、炭水化物の総量に対して少なくとも80%(重量/重量)の乳糖を含み、好ましくは炭水化物の総量に対して少なくとも90%(重量/重量)の乳糖を含み、さらにより好ましくは炭水化物の総量に対して少なくとも95%(重量/重量)の乳糖を含む。
【0253】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、炭水化物は乳糖およびシアリルラクトースで構成され、微量の他のウシ乳オリゴ糖のみを含む。
【0254】
乳糖は概して、相当な量の可食化乳糖(即ち、ラクトース、グルコースおよびガラクトースの合計)を含む。本発明のいくつかの特に好ましい実施形態では、この栄養組成物(特に乳児用調合乳基剤および/または脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品)の炭水化物は、炭水化物の総量に対して少なくとも80%(重量/重量)の可食化乳糖を含み、好ましくは炭水化物の総量に対して少なくとも90%(重量/重量)の可食化乳糖を含み、さらにより好ましくは炭水化物の総量に対して少なくとも95%(重量/重量)の可食化乳糖を含む。
【0255】
ラクトースは特に好ましい種類の乳糖であり、本発明のいくつかの実施形態では、この栄養組成物(特に乳児用調合乳基剤および/または脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品)の炭水化物は、炭水化物の総量に対して少なくとも50%(重量/重量)のラクトースを含み、好ましくは炭水化物の総量に対して少なくとも80%(重量/重量)のラクトースを含み、さらにより好ましくは炭水化物の総量に対して少なくとも95%(重量/重量)のラクトースを含む。
【0256】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、この栄養組成物は、炭水化物の総量に対して少なくとも0.01%(重量/重量)の量でシアリルラクトースを含む。好ましくは、この栄養製品は、炭水化物の総量に対して少なくとも0.02%(重量/重量)の量で、より好ましくは少なくとも0.03の量で、さらにより好ましくは少なくとも0.06%(重量/重量)の量でシアリルラクトースを含む。
【0257】
シアリルラクトースの量は3’-シアリルラクトースおよび6’-シアリルラクトースの合計として決定され、Lee at al,J Dairy Sci.2015 November;98(11):7644-7649に従って決定される。試験される試料がタンパク質および/または脂肪を含む場合、これを、約3kDaの名目分子量カットオフ(例えば、Amicon Ultra-0.5 Centrifugal Filter 3K;Merck KGaA)を有する遠心フィルタで試料(またはこの試料の溶液)をろ過して透過液を分析に供することにより除去し得る。
【0258】
シアリルラクトースのより高い濃度がさらにより好ましい。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、この栄養組成物は、炭水化物の総量に対して少なくとも0.10%(重量/重量)の量でシアリルラクトースを含む。好ましくは、この栄養製品は、炭水化物の総量に対して少なくとも0.15%(重量/重量)の量で、より好ましくは少なくとも0.2%(重量/重量)の量で、さらにより好ましくは少なくとも0.3%(重量/重量)でシアリルラクトースを含む。
【0259】
例えばこの栄養組成物に余分なシアリルラクトースが補充されていない本発明のいくつかの好ましい実施形態では、この栄養組成物は、炭水化物の総量に対して0.01~0.5%(重量/重量)の範囲の量でシアリルラクトースを含む。好ましくは、この栄養性製品は、炭水化物の総量に対して0.02~0.4%(重量/重量)の範囲の量で、より好ましくは0.03~0.3%(重量/重量)の範囲の量で、さらにより好ましくは0.05~0.3%(重量/重量)の範囲の量でシアリルラクトースを含む。
【0260】
このことは、この栄養製品が乳児用調合乳基剤または乳清タンパク質である場合に特に有利であり、なぜならば、牛乳のシアリルラクトースの天然含有量を利用することにより、ヒトの母乳のシアリルラクトースの濃度に達するために乳児用調合乳に添加する必要がある追加のシアリルラクトースの量が低減されるからである。
【0261】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、この栄養製品(例えば乳児用調合乳、乳児用調合乳基剤または脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品)のカゼインの少なくとも50%(重量/重量)はベータ-カゼインであり、好ましくはカゼインの少なくとも60%(重量/重量)が、より好ましくは少なくとも70%(重量/重量)が、さらにより好ましくは少なくとも80%(重量/重量)が、最も好ましくは少なくとも90%(重量/重量)がベータ-カゼインである。より高い含有量のベータ-カゼインにより、この栄養製品のタンパク質組成がヒト乳のタンパク質組成に近づくことから、この実施形態が特に好ましい。
【0262】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、この栄養製品は、下記のうちの1つまたは複数を含む:
- 最大0.7%(重量/全固形分の重量)のカルシウムの総量、
- 最大0.1%(重量/全固形分の重量)のマグネシウムの総量、
- 最大0.5%(重量/全固形分の重量)のリンの総量、
- 最大0.3%(重量/全固形分の重量)のナトリウムの総量、
- 最大0.8%(重量/全固形分の重量)のカリウムの総量、
および
- 最大0.8%(重量/全固形分の重量)の塩素の総量。
【0263】
好ましくは、この栄養製品は、
- 最大0.7%(重量/全固形分の重量)のカルシウムの総量、
- 最大0.1%(重量/全固形分の重量)のマグネシウムの総量、
- 最大0.5%(重量/全固形分の重量)のリンの総量、
- 最大0.3%(重量/全固形分の重量)のナトリウムの総量、
- 最大0.8%(重量/全固形分の重量)のカリウムの総量、
および
- 最大0.8%(重量/全固形分の重量)の塩素の総量
を含む。
【0264】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、この栄養製品(例えば乳児用調合乳基剤または脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品)は、最大0.8%(重量/TSの重量)の、好ましくは最大0.6%(重量/TSの重量)の、さらにより好ましくは最大0.4%(重量/TSの重量)のクエン酸塩の量を含む。クエン酸塩のさらに低い含有量が好ましい場合がある。そのため、本発明のいくつかの好ましい実施形態では、この栄養製品は、最大0.3%(重量/TSの重量)の、好ましくは最大0.2%(重量/TSの重量)の、さらにより好ましくは最大0.1%(重量/TSの重量)のクエン酸塩の量を含む。
【0265】
この栄養製品は例えば、最大0.06の、好ましくは最大0.04の、より好ましくは最大0.02の、さらにより好ましくは最大0.01のクエン酸塩と総タンパク質との重量比を有し得る。
【0266】
本発明者らは、ステップd)の最中に起こり得るミネラル沈殿中に形成された沈殿物を乳ミネラル供給源(例えば、乳供給物が有機である場合には有機乳ミネラル供給源)として使用し得るという兆候を見出している。
【0267】
そのため、本発明のさらなる態様は、本明細書で説明した方法により得られる乳ミネラル製品に関する。より具体的には、この乳ミネラル製品は、このミネラル沈殿物の乾物を含み、またはからなり、最大で10%(重量/重量)の水を含む粉末形態でまたは少なくとも11%(重量/重量)の水を含む湿式スラッジの形態で存在し得る。
【0268】
さらなる態様は、栄養製品(例えば乳児用調合乳)を製造する方法において、
本明細書で定義した乳児用調合乳基剤および/または脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品を準備するステップと、
この乳児用調合乳基剤および/または脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品と、1種または複数種の追加成分とを組み合わせるステップと、
この乳児用調合乳基剤および/または脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品と1種または複数種の追加成分との組み合わせを処理して栄養製品(例えば乳児用調合乳)を得るステップと
を含む方法に関する。
【0269】
栄養製品(例えば乳児用調合乳)の製造に使用される追加成分は例えば、2015年4月1日に施行のUS Code of Federal Regulations,Title 21,CHAPTER I,SUBCHAPTER B,PART 107(INFANT FORMULA),Subpart D(Nutrient Requirements);Sec.107.100 Nutrient specificationsで言及された栄養素のうちの1つまたは複数であり得る。例えば、この追加成分を、実施例9の表8中で言及した栄養素から選択し得る。
【0270】
この組み合わせを処理するステップは概して、下記のステップのうちの1つまたは複数を含む:混合、均質化、加熱、乾燥および/または包装。
【0271】
本発明のさらなる態様は、乳清を脱ミネラル化するための電気透析の使用に関し、この乳清は任意選択でナノろ過により濃縮されており、この電気透析は、少なくとも0.01のクエン酸塩の選択透過係数を有する陰イオン交換膜を使用する。
【0272】
本発明を、具体的な実施形態を参照して上記で説明している。しかしながら、上記以外の実施形態も本発明の範囲内で同様に可能である。別途明記しない限り、本発明の様々な実施形態および態様の異なる特徴およびステップを本明細書で説明したもの以外の方法で組み合わせ得る。
【実施例0273】
実施例1.1:乳糖の定量
下記の方法を使用して、本栄養製品中の乳糖を定量する。
【0274】
分析する本栄養製品の試料10gを、脱ミネラル化水の添加により(または低圧蒸発により)約10%(重量/重量)の固形分に調整し、調整した試料の副試料2gを採取する。
【0275】
この副試料に、全ての固体の凝固を引き起こすのに十分な量でCarrez試薬1および2を添加する。その後の二相混合物を標準的なろ紙を使用してろ過し、使い捨てPTFEシリンジマイクロフィルタ(孔径0.45ミクロン)を使用して再度ろ過する。この時点で、透明溶液を加熱して(10分にわたり90℃)あらゆる残余のタンパク質を変性させ、この溶液を使い捨てPFVDシリンジマイクロフィルタ(孔径0.1ミクロン)を使用してろ過する。次いで、糖の最終的な透明溶液をHPLCバイアルに入れて分析する。
【0276】
使用するHPLC法は下記のとおりである:
システム:Agilent Column Agilent HiPlex Naポリマーイオン交換カラム
溶出液:MilliQ水
カラム:温度:85℃
流速:0.2mL/分
圧力:21バール(このカラムの場合は最大25)
検出器:35℃でのRID
【0277】
グルコース、ガラクトース、二糖(例えばラクトースおよびDP2ガラクトオリゴ糖)、三糖(DP3ガラクトオリゴ糖)ならびに四糖(DP4ガラクトオリゴ糖)の定量はピーク面積に基づく。全ての糖に関する応答係数も算出する。上記の糖の保持時間および対応する応答係数を、グルコース、ガラクトース、ラクトース(DP2)、GOS三糖(4-ガラクトシルラクトース)およびGOS四糖(マルトテトラオース、DP4 GOSのモデルとして使用)の分析標準を使用して決定する。これらの標準を、例えばCarbosynth(UK)またはDextra Laboratories Ltd(UK)から入手し得る。
【0278】
ラクトースの量をCOULIER et al,J.Agric.Food Chem.2009,57,8488-8495に従って測定する。
【0279】
これらの分析から得た結果は本栄養製品の試料の分析された質量と相関しており、グルコース、ガラクトース、ラクトース、二糖(例えばラクトース)、三糖および四糖の濃度を、本栄養製品の総重量に対する糖の種類の重量パーセントとして示す。
【0280】
実施例1.2:膜のキャラクタリゼーション:クエン酸塩の選択透過係数の決定
陰イオン交換膜のクエン酸塩の選択透過係数を、Tanaka 2015(Ion exchange membranes Fundamentals and Applications;2nd edition,Elsevier,2015,ISBN:978-0-444-63319-4,pages 41-43)に従って決定する。
【0281】
決定用の参照陰イオンは塩化物であり、試験に使用される電解質溶液は、塩を脱ミネラル化水に溶解させることにより調製した0.5Mのクエン酸ナトリウム水溶液および0.5Mの塩化ナトリウム水溶液である。
【0282】
このプロセスの最中の液体の温度を25℃に設定する。
【0283】
陰イオン交換膜のクエン酸塩の選択透過係数を下記のように決定する:
式中、
は、Tanaka 2015で説明されているリザーブタンクの電解質のクエン酸塩の濃度と塩化物の濃度との比であり、
は、濃縮溶液の電解質溶液が一定になった時点での濃縮溶液のクエン酸塩の濃度と塩化物の濃度との比である。
【0284】
実施例1.3:クエン酸塩濃度の測定
クエン酸塩の濃度を、(Biocontrol, Italy)の試験キット“Enzyplus EZA 785+,Citric Acid”を使用して測定し、このキットは下記のキット構成要素を含む:
R1:(凍結乾燥された)グリシルグリシン緩衝液、ZnCl2、NADH、L-MDH、L-LDH、防腐剤としてのアジ化ナトリウム(0.1%)。再構成する。
R2:(粉末)クエン酸リアーゼ(13U)。再構成する。
R3:(1mL)クエン酸標準溶液(0.30g/L)。すぐに使用可能。
【0285】
この方法は、クエン酸塩の測定のためにUV吸収を利用する。
【0286】
クエン酸塩の量を、元々の試料の総重量に対する重量パーセントで示す。
【0287】
分析の原理:
クエン酸塩は、酵素クエン酸リアーゼ(CL)に触媒される下記の反応においてオキサロ酢酸塩および酢酸塩に変換される。反応(1)を参照されたい。
(1)クエン酸塩+CL => オキサロ酢酸塩+酢酸塩+CL
【0288】
酵素L-リンゴ酸デ供給物ロゲナーゼ(L-MDH)およびL-酢酸デ供給物ロゲナーゼ(L-LDH)は、ニコチンアミド-アデニンジヌクレオチド(NADH)の還元によりオキサロ酢酸塩およびその脱炭酸誘導体であるピルビン酸塩をL-リンゴ酸塩およびL-乳酸塩に還元する。反応(2、3)を参照されたい。
(2)オキサロ酢酸塩+NADH+H++L-LDH -> L-リンゴ酸塩+NAD+
(3)ピルビン酸塩+NADH+H+L-MDH -> L-乳酸塩+NAD+
【0289】
反応(2)または(3)からの酸化NADHの量は、初期の試料中のクエン酸塩の量に化学量論的に対応する。NADHの濃度を、波長340nmでのNADHの吸光度により決定する。
【0290】
試料の前処理:
試験する粉末1gを150mLのビーカーに移す。グラムでの粉末試料の正確な重量(m元々の試料)を4桁で示す。試料が液体試料である場合、1gの全固形分に対応する試料体積を使用し、全固形分の正確な量をm元々の試料として示す。
【0291】
1Mの過塩素酸20mLを添加し、この試料および混合物を5分にわたり穏やかな撹拌下に置く。
【0292】
超純水40mLを添加し、2MのKOH溶液によりpHを10.0に調整する。次いで、この混合物を、超純水で洗浄した100mLのメスフラスコに移し、このメスフラスコに超純水を添加して液体の体積を100mLにする。脂肪層が形成される場合、この脂肪層はこのメスフラスコの100mLマークより上にあるべきである。このメスフラスコを閉じて振盪し、このメスフラスコの内容物を完全に混合する。
【0293】
このメスフラスコを20分にわたり冷蔵して脂肪層を残余の液体から分離させ、次いでこの混合物をろ過に供する。フィルタを通過した液体の最初のmLを廃棄するが、残余のろ過をその後の分析のために集めて希釈試料と称する。
【0294】
酵素反応および吸光度の測定:
酵素反応および吸光度の測定を、下記の表に従って実施する。この表中の用語「試料」は「希釈試料」を指すことに注意されたい。
【0295】
算出:
ブランクおよび試料の両方に関する吸光度差(A1-A2)を決定する。試料の吸光度差からブランクの吸光度差を減算し、それによりΔAクエン酸を得る。
ΔAクエン酸=(A1-A2)試料または標準-(A1-A2)ブランク
【0296】
十分に正確な結果を達成するためには、ΔA酢酸の値は概して、少なくとも0.100吸光度単位であるべきである。
【0297】
希釈試料のクエン酸塩の濃度C希釈試料を下記のとおりに算出し得る。
C希釈試料=((V*MW)/(ε*d*v*1000))*ΔA酢酸[g/L]
式中、
V=最終体積(mL)[3.02mL]
v=希釈試料の体積(mL)[0.02mL]
MW=クエン酸の分子量[192.10g/mol]
ε=340nmでのNADPHの吸光係数=6.3[1×mmol-1×cm-1]
d=光路(cm)[1cm]
【0298】
下記という結果になる。
C希釈試料=(3.02×192.10)/(6.3×1×0.2×1000))×ΔAクエン酸[g/L]=0.4604×ΔAクエン酸[g/L]
【0299】
元々の試料のクエン酸塩の濃度(%重量/重量)C元々の試料を下記式で決定する。
C元々の試料[%重量/重量]=(0.46×ΔAクエン酸)/m元々の試料)
【0300】
クエン酸塩の測定を常に二重で実施する。
【0301】
実施例1.5:タンパク質の総量の測定
試料の総タンパク質含有量(真のタンパク質)を下記により測定する:
1)ISO 8968-1/2|IDF 020-1/2-Milk-Determination of nitrogen content-Part 1/2:Determination of nitrogen content using the Kjeldahl methodに従う試料の総窒素の測定。
2)ISO 8968-4|IDF 020-4-Milk-Determination of nitrogen content-Part 4:Determination of non-protein-nitrogen contentに従う試料の非タンパク質窒素の測定。
3)(m総窒素-m非タンパク質窒素)*6.38としてのタンパク質の総量の算出。
【0302】
実施例1.6:カゼインの量の測定
ISO 17997-1:2004,Milk-Determination of casein-nitrogen content-Part 1:Indirect method(Reference method)に従ってカゼインの量を測定する。
【0303】
実施例1.7:乳清タンパク質の量の測定
試料の乳清タンパク質(またはホエイタンパク質)の量を、総タンパク質の量-カゼインの量として算出する。
【0304】
実施例2:有機脱脂乳の処理
乳供給物:
低温殺菌された(73℃/15秒)有機脱脂乳(乳供給物)1200kgを52℃まで余熱する。この乳供給物のpHは6.7である。
【0305】
マイクロろ過:
余熱した乳供給物を、50℃および膜貫通圧(TMP)0.45バールにて、Synder Filtration(USA)のポリマーFR膜(800kDaの孔径を有する)によるバッチモードのマイクロろ過(MF)に供する。透過液720リットルを集めた後、このMF透過液の流速と同一の流速で保持液に逆浸透(RO)ろ過水道水を添加することにより透析ろ過が始まる。ROろ過水道水3.000リットルの添加後、ろ過を終了させる。MF保持液480kgおよびMF透過液3.720kgを集める。この乳供給物由来のラクトースの98%および乳清タンパク質の79%がMF透過液中に集められ、この乳供給物由来のミセルカゼインの97%がMF保持液中に集められる。
【0306】
ナノろ過:
このMF透過液をナノろ過(NF)により濃縮し、19バールのTMPを使用してDOW ChemicalのNF245膜による10℃でのバッチモードのNF/透析ろ過に供する。NF透過液3.000リットルを集めた後、NF透過液の流速と同一の流速でNF保持液にROろ過水道水を添加することにより透析ろ過が始まる。ROろ過水道水1.420リットルの添加後、透析ろ過を終了させる。透析ろ過したNF保持液を最後に濃縮して、NF保持液360kgを得る。濃縮されたNF保持液は、乳供給物由来のラクトースの97%および乳清タンパク質の66%を含む。NF/DIAプロセスの最中に、MF透過液の一価イオン(Na、KおよびCl)の約86%および多価イオン(Ca、MgおよびP)の13%がNF透過液に移る。このNF保持液のpHは約6.7である。
【0307】
無機多価イオンの低減:
次いで、このNF保持液を65℃まで加熱し、40分にわたりこの温度で保持し、その後に10℃まで冷却する。この加熱処理によりカルシウム塩およびマグネシウム塩を沈殿させ、沈殿した塩を、TMP勾配が組み込まれたTamiのCeramic 1.4 my膜による10℃でのバッチモードのMFろ過により除去する。透過液330リットルを集めた際、透過液の流速と同一の流速で添加するROろ過水道水30リットルで保持液を透析ろ過する。合計でMF透過液(脱ミネラル化NF保持液と称する)360kgおよびMF保持液30kgを集める。乳供給物由来のラクトースの97%および乳清タンパク質の66%が脱ミネラル化NF保持液中に集められる。このMFろ過の最中に、多価イオン(Ca、MgおよびP)の約44%がMF保持液中に移る。
【0308】
有機乳児用調合乳製品の調製:
脱ミネラル化NF保持液360kgを、有機脱脂乳202kgおよび有機植物性脂肪ミックス36.3kgと混合する。このブレンドを低温殺菌し、蒸発させ、そして噴霧乾燥させて、乳清タンパク質/カゼイン比が62/38およびエネルギー含有量が2130kj pr粉末100grの最終有機乳児用調合乳粉末128kgを製造する。乳供給物、清澄化NF保持液および乳児用調合乳の組成を表1に示す。
【0309】
典型的には、この乳児用調合乳に、さらなる有機機能性成分(例えばビタミン、ヌクレオチド、オリゴ糖および多価不飽和脂肪酸(PUFA))を添加する。
【0310】
有機乳リン酸カルシウム製品の調製:
無機多価イオンを低減させるステップから得られたMF保持液30kgを蒸発させ、噴霧乾燥させて、相当な量のカルシウム、マグネシウムおよびリンを含む有機乳ミネラル製品1.1kgを得る。この製品を使用して、乳ミネラル(特にカルシウム、マグネシウムおよびリン)で全ての種類の自然食品を強化し得る。
【0311】
実施例3:濃縮された有機脱脂乳の処理
乳供給物:
6.4%(重量/重量)のタンパク質、4.7%(重量/重量)のラクトースおよび0.1%(重量/重量)の脂肪および12.5%(重量/重量)の全固形分を含む、低温殺菌された(73℃/15秒)有機濃縮脱脂乳(乳供給物)500kgを52℃まで余熱する。この乳供給物のpHは6.7である。
【0312】
マイクロろ過:
余熱した乳供給物を、50℃および膜貫通圧(TMP)0.45バールにて、Synder Filtration(USA)のポリマーFR膜(800kDaの孔径を有する)によるバッチモードのマイクロろ過(MF)に供する。透過液100リットルを集めた後、このMF透過液の流速と同一の流速で保持液に逆浸透(RO)ろ過水道水を添加することにより透析ろ過が始まる。ROろ過水道水3.000リットルの添加後、ろ過を終了させる。MF保持液400kgおよびMF透過液3.100kgを集める。この乳供給物由来のラクトースの96%および乳清タンパク質の78%がMF透過液中に集められ、この乳由来のミセルカゼインの98%がMF保持液中に集められる。
【0313】
ナノろ過:
このMF透過液をナノろ過(NF)により濃縮し、19バールのTMPを使用してDOW ChemicalのNF245膜による10℃でのバッチモードのNF/透析ろ過に供する。NF透過液2.790リットルを集めた後、NF透過液の流速と同一の流速でNF保持液にROろ過水道水を添加することにより透析ろ過が始まる。ROろ過水道水775リットルの添加後、透析ろ過を終了させる。透析ろ過したNF保持液を最後に濃縮して、NF保持液155kgを得る。濃縮されたNF保持液は、乳供給物由来のラクトースの95%および乳清タンパク質の72%を含む。NF/DIAプロセスの最中に、MF透過液の一価イオン(Na、KおよびCl)の約78%および多価イオン(Ca、MgおよびP)の約11%がNF透過液に移る。このNF保持液のpHは約6.7である。
【0314】
無機多価イオンの低減:
次いで、この濃縮されたNF保持液を65℃まで加熱し、40分にわたりこの温度で保持し、その後に10℃まで冷却する。この加熱処理によりカルシウム塩およびマグネシウム塩を沈殿させ、沈殿した塩を、TMP勾配が組み込まれたTamiのCeramic 1.4 my膜による10℃でのバッチモードのMFろ過により除去する。透過液140リットルを集めた際、透過液の流速と同一の流速で添加するROろ過水道水15リットルで保持液を透析ろ過する。合計でMF透過液155kg(脱ミネラル化NF保持液と称する)およびMF保持液15kgを集める。乳供給物由来のラクトースの94%および乳清タンパク質の72%が脱ミネラル化NF保持液中に集められる。このMFろ過の最中に、多価イオン(Ca、MgおよびP)の約54%がMF保持液中に移る。
【0315】
乳児用調合乳製品の調製:
脱ミネラル化NF保持液155kgを、脱脂乳42kg、植物性脂肪ミックス17.6kg、および乾物が71%のGOSシロップ8.1kgと混合する。このブレンドを低温殺菌し、蒸発させ、そして噴霧乾燥させて、乳清タンパク質/カゼイン比が81/19およびエネルギー含有量が2160kj pr粉末100grの最終乳児用調合乳粉末60kgを製造する。脱脂乳、乳供給物、脱ミネラル化NF保持液および乳児用調合乳の組成を表2に示す。
【0316】
典型的には、この乳児用調合乳に、さらなる有機機能性成分(例えばビタミン、ヌクレオチドおよび多価不飽和脂肪酸(PUFA))を添加する。
【0317】
有機乳リン酸カルシウム製品の調製:
無機多価イオンを低減させるステップから得られたMF保持液15kgを蒸発させ、噴霧乾燥させて、相当な量のカルシウム、マグネシウムおよびリンを含む有機乳ミネラル製品0.7kgを得る。この製品を使用して、乳ミネラル(特にカルシウム、マグネシウムおよびリン)で全ての種類の自然食品を強化し得る。
【0318】
結論:
実施例2および実施例3の両方から、マイクロろ過、ナノろ過およびその後の(例えばミネラル沈殿)による無機多価イオンの除去の組み合わせは驚くべきことに、マイクロろ過、限外ろ過およびナノろ過の組み合わせに対する効率的な代替を提供すると結論付けられる。基本的に、本発明は、マイクロろ過ステップ後の乳清タンパク質を含む流れ中の乳清タンパク質からの乳糖の分離を回避することを可能にし、従って、はるかに簡単なプロセスが得られる。
【0319】
実施例4:有機の低ミネラル-ラクトース濃縮液(LMLC)の調製
本実施例は、実施例5で使用される有機の低ミネラル-ラクトース濃縮液(LMLC)の製造を説明する。
【0320】
乳供給源:
低温殺菌された(73℃/15秒)有機脱脂乳(乳供給物)2.000kgを10℃まで余熱する。この乳供給物のpHは6.7である。
【0321】
予熱した乳供給物を、10℃および膜貫通圧(TMP)4.0バールにて、Alfa Laval(Denmark)のポリマーGR73PE膜(10kDaの孔径を有する)によるバッチモードの限外ろ過(UF)に供する。UF透過液1000リットルを集めた後、このろ過を終了させる。UF保持液1.000kgおよびUF透過液1.000kgを集める。この乳供給物由来のラクトースの49%およびNPNの45%がUF透過液中に集められ、この乳供給物由来のカゼインおよび乳清タンパク質の>99%がUF保持液中に集められる。
【0322】
タンパク質フリーUF透過液をナノろ過(NF)により濃縮し、19バールのTMPを使用してDOW ChemicalのNF245膜により10℃にてバッチモードのNF/透析ろ過に供する。NF透過液730リットルを集めた後、NF透過液の流速と同一の流速でNF保持液にROろ過水道水を添加することにより透析ろ過が始まる。ROろ過水道水3.000リットルの添加後、透析ろ過を終了させる。透析ろ過NF保持液を最後に濃縮してNF保持液270kgを得る。NF保持液のpHは約6.7である。この濃縮NF保持液は、UF透過液由来のラクトースの98%およびNPNの48%を含む。NF/DIAプロセスの最中に、UF透過液の一価イオン(Na、KおよびCl)の約73%ならびに多価イオン(Ca、MgおよびP)の約10%がNF透過液に移る。
【0323】
次いで、この濃縮NF保持液を80℃まで加熱し、45分にわたりこの温度で保持し、その後に10℃まで冷却する。この加熱処理によりカルシウム塩およびマグネシウム塩を沈殿させ、沈殿した塩を、TMP勾配が組み込まれたTamiのCeramic 1.4 my膜による10℃でのバッチモードのMFろ過により除去する。透過液240リットルを集めた際、透過液の流速と同一の流速で添加するROろ過水道水30リットルで保持液を透析ろ過する。合計でMF透過液270kg(低ミネラルラクトース濃縮液(LMLC)と称する)を集める。UF透過液由来のラクトースの98%およびNPNの45%がLMLC中に集められる。このMFろ過の最中に、多価イオン(Ca、MgおよびP)の約61%がMF保持液中に移る。
【0324】
乳児用調合乳でのLMLCの使用:
このLMLCのミネラル含有量が低く且つ乾物のラクトースが93%と高いことから、このLMLCを乳児用調合乳でのラクトース供給源として使用し得る。この乳供給源(有機脱脂乳)およびLMLCの組成を表3に示す。
【0325】
実施例5:乳児用調合乳製品の調製
乳児用調合乳製品の調製:
実施例4からのLMLC 157kgを、実施例3からの乳供給物(カゼイン供給源)80kg、実施例3からの脱ミネラル化NF保持液155kg、および植物性脂肪27.3kgと混合する。このブレンドを低温殺菌し、蒸発させ、そして噴霧乾燥させて、乳清タンパク質/カゼイン比が63/37およびエネルギー含有量が2145kj pr粉末100grの最終乳児用調合乳粉末99kgを製造する。実施例2からの乳供給物、実施例3からの脱ミネラル化NF保持液、実施例4からのLMLC、および乳児用調合乳の組成を表4に示す。
【0326】
典型的には、この乳児用調合乳に、さらなる有機機能性成分(例えばビタミン、ヌクレオチド、オリゴ糖および多価不飽和脂肪酸(PUFA))を添加する。
【0327】
結論:
この実施例および実施例4から、濃縮脱脂乳(実施例3から)、低ミネラルラクトース濃縮液(実施例4から)および脱ミネラル化NF保持液(実施例3から)を組み合わせることにより低ミネラル栄養製品(例えば乳児用調合乳)を効率的に製造し得ると結論付けることができる。
【0328】
実施例6:有機乳児用調合乳成分の調製
有機乳児用調合乳製品での使用のための有機成分の調製:
実施例2からの乳供給物218kgを実施例2からの脱ミネラル化NF保持液360kgと混合する。この混合物を蒸発させ、低温殺菌し、噴霧乾燥させて乳清タンパク質/カゼイン比率が60/40の有機乳児用調合乳成分92kgを得、この成分を使用して、この成分に植物性脂肪および/またはクリームを添加することにより最終乳児用調合乳製品を製造し得る。乳供給物、脱ミネラル化NF保持液および乳児用調合乳成分の組成を表5に示す。
【0329】
結論:
この実施例から、脱ミネラル化NF保持液(本発明に係る脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品の一例)およびカゼイン供給源(例えば脱脂乳)の組み合わせは、栄養製品(例えば乳児用調合乳製品)の製造に魅力的な成分であると結論付けられる。
【0330】
実施例7:脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品の調製
乳児用調合乳製品での使用のための成分の調製:
実施例3からの脱ミネラル化NF保持液155kgを低温殺菌し、蒸発させ、そして噴霧乾燥させて乳清タンパク質/カゼイン比が95:5の脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品30kgを得、この製品を使用して、この成分にカゼイン供給源、植物性脂肪および/またはクリームを添加することにより最終乳児用調合乳製品を製造し得る。脱ミネラル化NF保持液および乳児用調合乳成分の組成を表6に示す。
【0331】
結論:
この実施例から、脱ミネラル化NF保持液(本発明に係る脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品の一例)自体が、栄養製品(例えば、乳糖および未変性乳清タンパク質の組み合わせから利益を得る乳児用調合乳製品および他の製品)の製造に魅力的な成分であると結論付けられる。
【0332】
実施例8:有機脱脂乳をベースとする乳児用調合乳の調製
乳供給源:
低温殺菌された(73℃/15秒)有機脱脂乳(乳供給物)1.500kgを10℃まで余熱した。この乳供給物のpHは約6.7であった。
【0333】
この乳供給源の濃縮:
余熱した乳供給源を、10℃および膜貫通圧(TMP)4.0バールにて、Alfa Laval(Denmark)のポリマーGR73PE膜(10kDaの孔径を有する)を使用するバッチモードのろ過により濃縮した。濃縮透過液1.000リットルを集めた後、このろ過を停止させた。濃縮保持液500kgおよび濃縮透過液1.000kgを集めた。この乳供給源由来のラクトースの67%およびNPNの65%が濃縮透過液中に集められ、この乳供給源由来のカゼインおよび乳清タンパク質の>99%が濃縮保持液中に集められた。
【0334】
ラクトースを精製するための濃縮透過液のナノろ過:
この濃縮透過液をナノろ過(NF)により濃縮し、19バールのTMPを使用するDOW ChemicalのNF-FF膜による10℃でのバッチモードのNF/透析ろ過に供した。NF透過液の最初の300kgを集め、後に使用して濃縮保持液を希釈した。NF透過液440リットルを集めた後、NF透過液の流速と同一の流速でNF保持液にROろ過水道水を添加することにより透析ろ過を開始させた。ROろ過水道水1.680リットルを添加した後、NFろ過を停止させてNF保持液560kgを得た。濃縮NF保持液は、濃縮透過液由来のラクトースの98%およびNPNの47%を含んだ。このNF/DIAプロセスの最中に、この濃縮透過液の一価イオン(Na、KおよびCl)の約53%および多価イオン(Ca、MgおよびP)の約5%がNF透過液に移った。
【0335】
この濃縮透過液に由来するラクトースのさらなる精製:
次いで、濃縮NF保持液(水、ラクトース、多価イオンおよび残余の一価イオンを主に含む)を80℃まで加熱し、45分にわたりこの温度で保持し、その後に10℃まで冷却した。この加熱処理により、リンを含む塩、カルシウムを含む塩およびマグネシウムを含む塩を沈殿させ、沈殿した塩を、TMP勾配が組み込まれたTamiのCeramic 1.4 my膜による10℃でのバッチモードのMFにより除去した。透過液520リットルを集めた際、透過液の流速と同一の流速で添加するROろ過水道水40リットルで保持液を透析ろ過した。合計でMF透過液(低ミネラルラクトース濃縮液LMLCと称する)560kgを集め、濃縮透過液由来のラクトースの97%およびNPNの47%がLMLC中に集められた。このMFろ過の最中に、多価イオン(Ca、MgおよびP)の約40%がMF保持液中に移った。
【0336】
乳供給物:
上記の濃縮保持液500kgと上記のNF透過液300kgとを混合し、この混合物を52℃まで余熱することにより乳供給物を調製した。この乳供給物800kgは、9.3%の乾物(5.6%(重量/重量)のタンパク質および2.7%(重量/重量)のラクトースを含む)を含んだ。この乳供給物のpHは約6.7であった。
【0337】
乳供給物のマイクロろ過:
余熱した乳供給物を、50℃および膜貫通圧(TMP)0.45バールにて、Synder Filtration(USA)のポリマーFR膜(800kDaの孔径を有する)によるバッチモードのマイクロろ過(MF)に供した。透過液300リットルを集めた後、MF透過液の流速と同一の流速で本MF保持液に濃縮透過液のナノろ過からの上述したNF透過液を添加することにより、透析ろ過を開始させた。NF透過液2.000リットルの添加後、ろ過を停止させた。MF保持液500kgおよびMF透過液2.300kgを集めた。この乳供給物のラクトースの96%および総血清タンパク質の75%がMF透過液に集められ、この乳由来のミセルカゼインの97%がMF保持液に集められた。
【0338】
MF透過液のナノろ過:
MF透過液をナノろ過(NF)で濃縮し、下記のようなDOW ChemicalのNF-FF膜による10℃でのバッチモードのNF/透析ろ過に供した:NF透過液300リットルを集めた後、このNFプロセスは、MF透過液の流れと同一の流れで乳供給物のMF/DIA用の希釈液としてNF透過液を供給し始めた。TMPは6バールで始まり、15バールまで上昇させた。
【0339】
MF/DIAを停止させた際に、NFはMF透過液を濃縮して透析ろ過し続けた。最初に、このMF透過液を9%乾物まで濃縮した。次いで、NF透過液の流速と同一の流速でNF保持液にROろ過水道水を添加することにより、NF/透析ろ過を開始させた。ROろ過水道水900リットルの添加後、この透析ろ過を終了させた。透析ろ過NF保持液を最後に濃縮してNF保持液180kgを得た。この濃縮NF保持液は、乳供給物由来のラクトースの95%および乳清タンパク質の62%を含んだ。
【0340】
乳清タンパク質含有NF濃縮液中の無機多価イオンの低減:
この濃縮NF保持液を65℃まで加熱し、40分にわたりこの温度で保持し、その後に10℃まで冷却した。この加熱処理により、カルシウムを含む塩、マグネシウムを含む塩およびリンを含む塩を沈殿させ、沈殿した塩を遠心分離により除去した。得られた上清を脱ミネラル化NF保持液と称する。乳供給物由来のラクトースの94%および総血清タンパク質の61%が、本発明に係る脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質製品の一例である脱ミネラル化NF保持液中に集められた。
【0341】
乳児用調合乳製品の調製:
脱ミネラル化NF保持液180kgと、上記の濃縮保持液(濃縮脱脂乳)70kgと、LMLC 374kgと、植物性脂肪ミックス33.2kgと、71%の乾物を含むGOSシロップ15.1kgとを混合することにより、上記の製品流から乳児用調合乳製品を調製し得る。このブレンドを低温殺菌し、蒸発させ、そして噴霧乾燥させて、乳清タンパク質/カゼイン比が62/38およびエネルギー含有量が2070kJ pr粉末100grの最終乳児用調合乳粉末118kgを製造する。脱脂乳(乳供給源)、濃縮保持液(乳児用調合乳用のカゼイン供給源およびMF分画用の乳供給物の両方として使用する)、LMLC、脱ミネラル化NF保持液ならびに乳児用調合乳の組成を表7に示す
【0342】
上述したように、この乳児用調合乳に、さらなる有機機能性成分(例えばビタミン、ヌクレオチド、多価不飽和脂肪酸(PUFA))を概して添加する。
【0343】
結論:
乳供給物のMF分画の後に乳清タンパク質含有流に対して限外ろ過を使用することなくMF分画により有機乳児用調合乳製品を製造し得ることが実証されている。本方法により、乳供給物の乳清タンパク質およびラクトースの高収率が実現され、それにもかかわらず栄養製品(例えば乳児用調合乳)の製造に有用であるのに十分な程度の脱ミネラル化も実現されることが実証されている。ミネラル沈殿による多価無機イオンの低減は特に有用であることが証明されており、先行技術の方法と比較して本方法が顕著に単純化されている。
【0344】
ステップb)でのより多くのMF/DIAにより、乳清タンパク質をさらに高い収率で得ることができる。また、ステップc)のNF/DIAの最中により多種の一価イオンを洗浄することにより、上記の乳児用調合乳製品または上記の脱ミネラル化NF保持液の一価イオンのレベルをさらに低減し得る。
【0345】
実施例9:電気透析を使用する、有機脱脂乳をベースとする低クエン酸塩乳児用調合乳の調製
乳供給源:
低温殺菌された(73℃/15秒)有機脱脂乳67,962kg
【0346】
限外ろ過(UF)による乳供給物の事前濃縮
この乳供給源を、10℃および膜貫通圧(TMP)3.5バールにてKoch(USA)のポリマーHFK131膜(10kDaのカットオフ値を有する)による連続モードの限外ろ過(UF)に供した。UF保持液のBrix度を、屈折計により制御される調整弁により17.6に調整した。保持液27,202kgおよび透過液41,950kgを集め、その結果、2.53の濃縮係数(CF)を得た。
【0347】
ナノろ過(NFI)によるUF透過液の濃縮:
UF透過液をCO2で5.8にpH調整し、19バールのTMPを使用するDOW ChemicalのNF245膜による10℃での連続モードのナノろ過(NF)により濃縮した。NF保持液のBrix度を、屈折計により制御される調整弁により23.0に調整した。保持液7,350kgを集め、透過液を廃棄した。
【0348】
電気透析(EDI)によるNFI保持液の脱ミネラル化:
NFIからのNF保持液を、10℃にてMEGA(Czech Republic)のElectrodialysis(ED)ユニットP15 EWDU 1xEDR-II/250-0.8によりバッチモードで脱ミネラル化した。このEDユニットは、Ralex CM(H)-PES陽イオン膜およびRalex AM(H)-PES陰イオン膜を備えていた。
【0349】
電極流に使用する電解質は15.6g/LのNaNO3を含んだ。
【0350】
AM(H)-PES陰イオン膜のクエン酸塩の選択透過係数は0.01と比べて有意に大きいと推定した。
【0351】
導電率(cm/S)とBrix度(Brixで除算された導電率)との比が希釈液(生成物)中で0.034(約85%の(2.78mSから0.424mSへの)導電率低下に相当する)に達した場合に、このEDプロセスは停止する。脱ミネラル化NF保持液(ラクトース)6,615kgを集めて6℃まで冷却した。最終製品でのラクトース標準化に使用したラクトースの組成を表8中に見出し得る。
【0352】
このEDを停止させた際に、濃縮流は下記の特徴を有していた:
灰分:1.83%(重量/重量);クエン酸塩の量:1.61%(重量/重量);Caの量:測定せず;Mgの量:0.054%(重量/重量);Clの量:0.04%(重量/重量);Naの量:0.106%(重量/重量);Kの量:0.331%(重量/重量);およびPの量:0.14%(重量/重量)。
【0353】
脱ミネラル化希釈液(脱ミネラル化乳糖製品)は概して0.02gのシアリルラクトース/100gを含むことが示されていた。
【0354】
UF保持液のマイクロろ過(微生物ろ過(germfiltration)):
UF保持液を55℃まで予熱し、0.5バールで始まり0.8バールまで上昇するTMPを使用して50℃にて連続モードでTAMI(France)の1.4ミクロンセラミックアイソフラックス膜(ceramic isoflux membrane)に通してろ過した。このマイクロろ過を40の濃縮係数(CF)で作動させた。
【0355】
透過液(MPC)27,100kgを6℃まで冷却して集めた。最終製品でカゼイン供給源として使用するMPCの組成を表8中に見出し得る。微生物ろ過UF透過液を、MFに基づくタンパク質分画用の乳供給物として使用する。
【0356】
乳供給物のタンパク質画分マイクロろ過:
冷却した乳供給物(微生物ろ過UF保持液)27,000kgを55℃まで予熱し、50℃および膜貫通圧(TMP)0.45バールにて、約0.1ミクロンの孔径および狭い孔径分布を有するポリマーMF膜を使用する連続モードのマイクロろ過(MF)に供した。4つのループのろ過プラント中での連続ろ過の最中に、500%透析ろ過水を添加した。このろ過の最中はCFが1.0であった。MF保持液27,500kgを6℃まで冷却して集めた。この保持液は、微生物ろ過UF保持液由来のミセルカゼインタンパク質の>99%および球状ホエイタンパク質の20%を含んだ。透過液を10℃まで冷却し、次のセクションで説明するように同時に濃縮した。
【0357】
ナノろ過(NFII)によるMF透過液の濃縮:
MF透過液を、19バールのTMPを使用するDOW ChemicalのNF245膜による10℃での連続モードのナノろ過(NF)により濃縮した。NF保持液のBrix度を、屈折計により制御される調整弁により27.0に調整した。保持液5,450kgを集め、透過液を50℃まで加熱し、先のMFセクションでの透析ろ過水として使用した。過剰な透過液を廃棄した。
【0358】
電気透析(EDII)によるNFII保持液の脱ミネラル化:
NFIIからのNF保持液を、10℃にてElectrodialysis(ED)ユニットP15 EWDU 1xEDR-II/250-0.8によりバッチモードで脱ミネラル化した。このEDユニットは、Ralex CM(H)-PES陽イオン膜およびRalex AM(H)-PES陰イオン膜を備えていた。導電率とBrix度との比が希釈液(生成物)中で0.028(約82%の(3.02mS/cmから0.541mS/cmへの)導電率低下に相当する)に達した場合に、このEDプロセスは停止した。脱ミネラル化NF保持液(脱ミネラル化された乳糖含有乳清タンパク質濃縮液、SPC)4,905kgを集めて6℃まで冷却した。最終製品でのホエイタンパク質供給源に使用したSPCの組成を表8中に見出し得る。
【0359】
このSPCは概して0.02gのシアリルラクトース/100gを含むことが示されていた。
【0360】
このEDを停止させた際に、濃縮流は下記の特徴を有していた:
灰分:1.45%(重量/重量);クエン酸塩の量:1.3%(重量/重量);Caの量:0.286%(重量/重量);Mgの量:0.05%(重量/重量);Clの量:測定せず;Naの量:0.127%(重量/重量);Kの量:0.19%(重量/重量);およびPの量:0.073%(重量/重量)。
【0361】
液体乳児用調合乳基剤製品の調製:
50lのステンレス鋼容器中で穏やかに撹拌することにより、脱ミネラル化NFII保持液(SPC)10.0kg、微生物ろ過UF保持液(MPC)4.5kgおよび脱ミネラル化NFI保持液(ラクトース)8.5kgを混合する。このブレンドは、乳児用調合乳中にタンパク質の65%ホエイおよび全ての乾物の60%で乳児用調合乳に必要な全てのカゼインタンパク質、ホエイタンパク質およびラクトースを含むことから乳児用基剤製剤として使用され得る。この液体乳児用調合乳基剤製品の組成を表8に示す。
【0362】
粉末乳児用調合乳基剤製品の調製:
この液体乳児用調合乳基剤製品5.0kgをTelstar,Lyobeta Micrositelab 3.0凍結乾燥機で凍結乾燥させて粉末1.0kgを得る。この粉末乳児用調合乳基剤製品の組成を表8に示す。
【0363】
結論:
本発明者らは、乳のMF分画に基づく先行技術の乳児用調合乳が驚くほど高い含有量のクエン酸塩を含むという兆候を見出した。本発明者らはこの理由を調査し、ラクトースも除去するNF孔径が選択されない限り、NFに基づく脱ミネラル化により血清タンパク質流またはラクトース含有流からクエン酸塩が除去されないことを発見した。
【0364】
しかしながら、本発明者らは、電気透析を利用し且つ塩化物およびリン酸塩だけでなくクエン酸塩も通過させる電気透析膜を選択することにより、乳児用調合乳にとって有用な炭水化物であるラクトースを失うことなくクエン酸を低減させ得ることを発見した。本発明は、クエン酸塩の含有量が低い低クエン酸塩乳児用調合乳基剤および最終乳児用調合乳を調製する効率的な方法を提供し、乳清タンパク質流からの乳糖の分離を回避する。
【0365】
本発明はまた、生乳のクエン酸塩の含有量の変動が低減され、得られた乳児用調合乳がクエン酸塩をより安定な含有量で有するという明確な利点も有する。クエン酸塩は、例えば鉄、カルシウム、マグネシウムおよび亜鉛の生物学的利用能への影響を有することが分かっている(Glahn et al,Fairweather-Tait)。従って、本発明により、上述した金属イオンのより均一な生物学的利用能を乳児にもたらす乳児用調合乳を製造することが可能になる。
【0366】
参考文献:
APV APV Systems,2000,ISBN 87-88016 757で公開された“Membrane filtration and related molecular separation technologies”
Fairweather-Tait et al, Iron and Calcium Bioavailability of Fortified Foods
and Dietary Supplements,Nutrition Reviews(登録商標),Vol.60,No.12,November 2002:360-367
Glahn et al, Decreased Citrate Improves Iron Availability from Infant Formula:Application of an In Vitro Digestion/Caco-2 Cell Culture Model,J.Nutr.128:257-264,1998
Sata 2004 “Ion Exchange Membranes Preparation,characterisation,modification and application”,Toshikatsu Sata,The Royal Society of Chemistry,2004,ISBN 0-85404-590-2
Tanaka 2015 “Ion exchange membranes Fundamentals and Applications”,Yoshinobu Tanaka,2nd edition,Elsevier,2015,ISBN:978-0-444-63319-4,