(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123616
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】有価物を含む流体を分離精製する方法
(51)【国際特許分類】
B01D 61/22 20060101AFI20230829BHJP
B01D 61/14 20060101ALI20230829BHJP
B01D 61/16 20060101ALI20230829BHJP
B01D 65/02 20060101ALI20230829BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20230829BHJP
B01D 69/02 20060101ALI20230829BHJP
B01D 69/08 20060101ALI20230829BHJP
B01D 71/68 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
B01D61/22
B01D61/14 500
B01D61/16
B01D65/02
B01D69/00
B01D69/02
B01D69/08
B01D71/68
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100915
(22)【出願日】2023-06-20
(62)【分割の表示】P 2019046886の分割
【原出願日】2019-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】594152620
【氏名又は名称】ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(72)【発明者】
【氏名】横田 秀輔
(72)【発明者】
【氏名】前田 隼人
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高い濾過流量を維持したまま、流体を分離精製する方法の提供。
【解決手段】原液タンク内の有価物を含む流体を濾過する工程を含み、有価物を含む流体が、濾過処理において20℃、せん断速度25s-1における粘度が30mPa・s以下になるものであり、原液タンクに精製液を戻した後、原液タンク中に電気伝導度が10μS/cm以下の水を入れて希釈することで、濾過処理において有価物を含む流体の20℃、せん断速度25s-1における粘度が30mPa・s以下になるように調整する工程を含み、前記濾過工程が、原液タンク内の有価物を含む流体を内径1.0~1.2mm、分画分子量6,000~10,000の中空糸膜を使用した限外濾過膜モジュールに供給して、クロスフロー方式により濾過圧力0.10~0.18MPa、線速1.0~1.2m/sで濾過する工程であり、濾過後の精製液を原液タンクに戻し、透過液を排水する、精製する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有価物を含む流体の分離精製方法であって、
前記分離精製方法が、原液タンク内の前記有価物を含む流体を濾過する工程を含む方法であり、
前記有価物を含む流体が、前記濾過工程の濾過処理において20℃、せん断速度25s-1における粘度が30mPa・s以下になるものであり、
前記濾過工程が、
前記原液タンクに精製液を戻した後、前記原液タンク中に電気伝導度が10μS/cm以下の水を入れて希釈することで、前記濾過工程の濾過処理において有価物を含む流体の20℃、せん断速度25s-1における粘度が30mPa・s以下になるように調整する工程を含んでおり、
前記濾過工程が、前記原液タンク内の有価物を含む流体を内径1.0~1.2mm、分画分子量6,000~10,000の中空糸膜を使用した限外濾過膜モジュールに供給して、クロスフロー方式により濾過圧力0.10~0.18MPa、線速1.0~1.2m/sの条件で濾過する工程であり、
濾過後の精製液を精製液ラインから原液タンクに戻し、透過液を排水ラインから排水する、有価物を含む流体を分離精製する方法。
【請求項2】
有価物を含む流体の分離精製方法であって、
前記分離精製方法が、原液タンク内の前記有価物を含む流体を濾過する工程を含む方法であり、
前記有価物を含む流体が、前記濾過工程の濾過処理において20℃、せん断速度25s-1における粘度が30mPa・s以下になるものであり、
前記濾過工程が、
濾過開始前の前記有価物を含む流体を希釈して、20℃、せん断速度25s-1における粘度が30mPa・s以下になるように調整する工程を含んでおり、
前記濾過工程が、前記原液タンク内の有価物を含む流体を内径1.0~1.2mm、分画分子量6,000~10,000の中空糸膜を使用した限外濾過膜モジュールに供給して、クロスフロー方式により濾過圧力0.10~0.18MPa、線速1.0~1.2m/sの条件で濾過する工程であり、
濾過後の精製液を精製液ラインから原液タンクに戻し、透過液を排水ラインから排水する、有価物を含む流体を分離精製する方法。
【請求項3】
前記濾過工程が、
前記有価物を含む流体の温度を上げることで、前記流体の20℃、せん断速度25s-1の粘度が30mPa・s以下になるように調整する工程を含む、請求項1又は2記載の有価物を含む流体を分離精製する方法。
【請求項4】
前記有価物を含む流体を分離精製する方法が洗浄工程を含む工程であり、
前記洗浄工程が、濾過工程を停止して定期的に実施する逆圧洗浄工程であり、逆圧洗浄水として電気伝導度が300μS/cm以下の水を使用し、洗浄排水を前記原液タンクに戻す工程であり、
前記濾過工程と前記洗浄工程の組み合わせを1サイクルとして、これを複数サイクル繰り返す、請求項1~3のいずれか1項に記載の有価物を含む流体を分離精製する方法。
【請求項5】
前記濾過工程が30~60分間濾過運転を実施する工程であり、前記洗浄工程が1~2分間逆圧洗浄する工程である、請求項4に記載の流体を分離精製する方法。
【請求項6】
限外濾過膜モジュールが、濾過膜としてポリエーテルスルホンからなる中空糸膜を使用しているものである、請求項1~5のいずれか1項に記載の流体を分離精製する方法。
【請求項7】
前記有価物を含む流体が、電気活性高分子溶液、顔料分散液、水溶性高分子溶液、塗料、インク、化粧品、果汁から選ばれるものである、請求項1~6のいずれか1項に記載の流体を分離精製する方法。
【請求項8】
前記有価物を含む流体が、カーボンブラックを含む顔料分散体である、請求項1~6のいずれか1項に記載の流体を分離精製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有価物を含む流体を中空糸型分離膜により分離精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気活性高分子溶液、顔料分散液、水溶性高分子溶液、塗料、インク、化粧品、または果汁などの液体は、濃度が高く(または温度が低く)なってくると、チキソトロピー性によって流体粘度が上昇する場合があり、このような高粘度状態となってからも継続して不純物を分離精製する方法が求められている。
【0003】
特許文献1には、ろ過対象物をろ過する方法であって、前記ろ過対象物は、チキソトロピー性を有し、粘度が0.1Pa・s~30Pa・s(100~30,000mPa・s)であり且つ粒子を含み、前記ろ過対象物の一部をフィルターに通し、当該フィルターの孔径よりも径の大きい粒子が除去されたろ過物を得ると共に、前記ろ過対象物の残りによって前記フィルターの表面に流れを発生させることを特徴とするろ過方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、金属ナノ粒子を含む液体から金属ナノ粒子を分離する分離方法であって、前記金属ナノ粒子が、金属および金属化合物からなる平均粒子径が1~300nmの範囲のものであり、前記分離方法が、濾過工程と洗浄工程を含む方法であり、前記濾過工程が、原液タンク内の金属ナノ粒子を含む液体を限外濾過膜モジュールに供給して濾過するとき、クロスフロー方式により濾過圧力50kPa以下で濾過して、金属ナノ粒子を含む精製液は原液タンクに戻し、透過液は排水する工程であり、前記洗浄工程が、濾過工程を中断して定期的に実施する逆圧洗浄工程であり、逆圧洗浄水として電気伝導度が300μS/cm以下の水を使用し、洗浄排水を前記原液タンクに戻す工程であり、前記濾過工程と前記洗浄工程の組み合わせを1サイクルとして、これを複数サイクル繰り返す、金属ナノ粒子の分離方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-170901号公報
【特許文献2】特開2015-006646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高粘度状態となってからも継続して高い濾過流量を維持したまま、流体を分離精製する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、課題の解決手段として、
有価物を含む流体の分離精製方法であって、
前記分離精製方法が、原液タンク内の前記有価物を含む流体を濾過する工程を含む方法であり、
前記有価物を含む流体が、前記濾過工程の濾過処理により20℃、せん断速度25s-1における粘度が30mPa・s以下になるものであり、
前記濾過工程が、前記原液タンク内の有価物を内径0.8~1.4mmの中空糸膜を使用した限外濾過膜モジュールに供給して濾過する方法であり、
前記濾過方法が、クロスフロー方式により濾過圧力0.08~0.2MPa、線速0.7~1.4m/sの条件で濾過する方法であり、
濾過後の精製液を精製液ラインから原液タンクに戻し、透過液を排水ラインから排水する、有価物を含む流体を分離精製する方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の有価物を含む流体を分離精製する方法によれば、分離精製の過程での流体粘度が高粘度状態であっても、高い濾過流量を維持したまま、流体から不純物を除去して、純度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の流体を分離精製する方法を実施するためのフロー図。
【
図2】実施例1において有価物を含む流体を濾過するときの流体中の有価物の濃度と流体の温度、流体の粘度、せん断速度の関係を示したグラフ。
【
図3】参考試験例の濾過圧力を一定で、線速を変動させた際の濾過流量をプロットしたグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の分離精製方法は、有価物を含む流体から不純物(目的の化合物の合成工程で副生する塩類やイオン分などの不純物など)を濾過工程により分離することで、有価物の純度を高めるための分離方法である。
以下、本発明の分離精製方法を
図1の分離精製方法のフロー図により説明する。
【0011】
原液タンク1には、原液ライン10から供給された原液となる有価物を含む流体(以下、単に「流体」という)が入っている。原液タンク1には、撹拌装置を付設することができる。
原液タンク1内の原液は、濾過流量を高いレベルで維持し、不純物を除去し易くするため、濾過運転の開始前において希釈することができる。
このときに使用する希釈水は、電気伝導度が10μS/cm以下の純水が好ましく、1μS/cm以下の純水がより好ましい。
原液タンク1内の流体を希釈するときは、濾過工程における粘度上昇を考慮すると、20℃、せん断速度25s-1での粘度が30mPa・s未満となるように希釈することが好ましく、より好ましくは10mPa・s以下、さらに好ましくは5mPa・s以下に希釈する。
【0012】
本発明の分離精製対象となる流体は、前記濾過工程の濾過処理により20℃、せん断速度25s-1における粘度が30mPa・s以下になるものであれば特に制限されるものではなく、前記粘度は10~30mPa・sが好ましい。
濾過工程の濾過処理により20℃、せん断速度25s-1における粘度が30mPa・sを超える場合には、中空糸膜を使用した限外濾過膜モジュールで濾過することが困難になる。
【0013】
本発明の分離精製対象となる流体は、化合物(無機化合物、有機化合物)、天然物、それらの混合物からなる有価物を含有しているものであり、有価物は、高分子量のもの、水に溶解していない分散粒子である。
前記流体としては、電気活性高分子溶液(導電性ポリマーなどを含む溶液)、顔料分散液、水溶性高分子溶液(ポリフェノール、コンドロイチン、ゼラチンなどの天然高分子、またはポリビニルアルコールなどの合成高分子を含む溶液)、塗料、インク、化粧品、果汁などを挙げることができる。
【0014】
原液タンク1内の原液(有価物を含む流体)は、原液送水ライン11から中空糸膜を使用した限外濾過膜モジュール2に供給して濾過分離される。ライン11にはポンプ21が設置されている。
【0015】
濾過膜(分離膜)は、本発明の濾過運転や逆圧洗浄が容易であることから、中空糸膜であり、中空糸膜は、内圧型、外圧型のいずれでも使用できるが、適切な膜面線速の確保や、逆圧洗浄の容易性の面から内圧型が好ましい。
中空糸膜の内径は、0.8~1.4mmであり、0.9~1.3mmが好ましい。
中空糸膜の内径が、0.8mm未満の場合は、高粘度状態(流体の粘度が30mPa・sを超える場合)における濾過流量確保が困難になり、中空糸膜の内径が、1.4mmを上回る場合には、限外濾過膜モジュール内の有効濾過面積が減るため単位面積当たりの濾過流量が低下することで、精製目的を満足できない場合がある。
中空糸膜の分画分子量は、精製目的に合わせ決定されるが、濾過膜の分画分子量3,000~300,000のものが挙げられ、さらには6,000~200,000のものが挙げられる。
限外濾過膜モジュール2で使用する濾過膜(分離膜)は公知の材質からなるものを使用できるが、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリルなどを挙げることができ、ポリエーテルスルホンが好ましい。
【0016】
濾過は、クロスフロー方式により濾過圧力0.08~0.2MPa、線速0.7~1.4m/sの条件で濾過する。
濾過圧力は、好ましくは0.10~0.18MPaであり、線速は、好ましくは0.8~1.2m/sである。
濾過圧力が0.08MPa未満の場合は、高粘度状態における線速確保が困難になり、線速が確保できなければ益々濾過流量の確保ができなくなる。
濾過圧力が0.2MPaを上回る場合でも、電気消費量の割に濾過流量は上昇せず、エネルギー効率が落ちる。
線速が0.7m/s未満の場合は、高粘度状態においては流体粘度が高いため濾過流量の確保が困難となり、線速が1.4m/sを上回った場合でも、流体粘度が極端に低下するわけではないので濾過流量が大幅には上昇せず、エネルギー効率が落ちる。
【0017】
濾過後、目的の有価物を含む精製液(濃縮液)は、精製液ライン12から原液タンク1に戻し、不純物を含む透過液は透過液ライン13、14から透過液タンク3に送った後、排水する。なお、透過液ライン13と透過液ライン14との分岐部分には開閉弁(電磁弁など)を設けることができる。
濾過工程は30~60分間の間隔で実施することが好ましい。
【0018】
濾過工程において20℃、せん断速度25s-1での流体粘度が30mPa・sを上回ると、濾過流量の確保が困難になる。その場合は、原液送水ライン11または限外濾過膜モジュール2に設けた加温装置により流体温度を上げることによって流体粘度を下げ、20℃、せん断速度25s-1で測定した場合における流体粘度が30mPa・s未満になるようにすることが好ましい。
【0019】
本発明の分離精製方法は、洗浄工程を含むことが好ましい。
洗浄工程は、所定時間だけ濾過工程を実施した後、濾過工程を中断して、逆圧洗浄を実施することが好ましい。
逆圧洗浄は、ポンプ22を駆動させ、逆圧洗浄水タンク4内の水を逆圧洗浄ライン(一部を透過液ライン13と共用している)13から限外濾過膜モジュール2に供給して実施する。
逆圧洗浄は1~2分間実施する。
逆圧洗浄時の圧力は、濾過圧力(最大で0.2MPa)よりも高い圧力であり、0.1~0.22MPaであることが好ましく、0.12~0.2MPaであることがより好ましい。
逆圧洗浄水タンク4の水(逆圧洗浄水)は、洗浄水(純水)供給ライン15から供給された電気伝導度が300μS/cm以下の水であり、好ましくは10μS/cm以下の水であり、より好ましくは1μS/cm以下の水である。
逆圧洗浄後の排水(逆圧洗浄排水)は、限外濾過膜モジュール2の膜面に付着していた微量の有価物を含んでおり、原液送水ライン11の一部と、逆圧洗浄排水ライン15から原液タンク1に戻す。
このようにして微量の有価物を含む逆圧洗浄排水を原液タンク1に戻すことによって、有価物の回収率が高められるほか、原液濃度(原液粘度)を低下させることができるので好ましい。
なお、原液送水ライン11と逆圧洗浄排水ライン15との分岐部分には開閉弁(電磁弁など)を設けることができる。
【0020】
本発明の分離精製方法では、濾過工程と洗浄工程の組み合わせを1サイクルとして、これを複数サイクル繰り返すことが好ましい。
繰り返すサイクル数は、好ましくは2~5サイクルであり、より好ましくは2~4サイクルである。
【0021】
本発明の分離精製方法では、原液タンク1に精製液を戻した後、原液タンク1中に電気伝導度が10μS/cm以下の水を入れて希釈することで、濾過工程の濾過処理において有価物を含む流体の20℃、せん断速度25s
-1における粘度が30mPa・s以下、好ましくは10mPa・s以下、より好ましくは5mPa・s以下になるように調整する希釈工程を含むことができる。
希釈工程は、
図1には示していないが、原液タンク1と希釈液供給源を接続するラインから供給することができる。
希釈量は、例えば、排水する透過液量と同量以上を希釈することができる。
【0022】
原液タンク1に水を入れる希釈工程と洗浄工程における洗浄排水を原液タンク1に戻す工程は、両方を組み合わせて実施することが好ましいが、いずれか一方のみを実施することもできる。
なお、洗浄工程において浄排水を原液タンク1に戻す工程を実施しないときは、前記洗浄排水はそのまま排出する。
このように原液タンク1内の原液を希釈しながら濾過運転を実施することで、限外濾過膜モジュールで使用している中空糸膜の閉塞が抑えられ、濾過流量が高いレベルで維持される。
本発明の分離精製方法は、流体粘度が高粘度状態になる過程を含む流体から目的の有価物を分離、精製する方法として適している。
【実施例0023】
実施例1
<濾過工程>
市販の顔料分散液(MF-5630 Black、大日精化(株)製、カーボンブラック固形分濃度32質量%)に対して、カーボンブラックの濃度が16.5質量%になるように純水(電気伝導度1μS/cm)で希釈した。さらに不純物として硫酸ナトリウムを0.5質量%になるように添加・溶解して未精製原液(原液)(2mPa・s)とした。
この未精製原液を、ポリエーテルスルホン素材でできた中空糸膜の内径が1.2mm、分画分子量が1万の限外濾過中空糸膜モジュール(FB03-VC-FUS15C1;ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製)を用いて、濾過圧力0.1MPa、線速1.0m/s、液温度25℃にてクロスフロー濾過を行った。このとき原液タンク内の原液は撹拌した。
このクロスフロー濾過により透過液側に硫酸ナトリウムが移行し、精製液側にカーボンブラックが移行した。
精製液は原液タンクに戻し、透過液は透過液タンクに送った。
【0024】
<洗浄工程>
濾過運転を30分継続した後、濾過運転を停止して、逆圧洗浄を1分間実施した。逆圧洗浄に使用した逆圧洗浄水は電気伝導度1μS/cmであった。逆圧洗浄排水の全量を原液タンクに戻した。
【0025】
上記の濾過工程と洗浄工程の組み合わせを1サイクルとして繰り返し行いながら、未精製原液を対液量比で2倍まで濃縮を実施した。その後、精製液に純水(電気伝導度1μS/cm)を希釈倍率が2倍となるように加えた。
希釈後、上記の濾過工程と洗浄工程の組み合わせのサイクルを繰り返し行うことで、加水量と同量を濾過処理し、再度加水する操作を合計2回繰り返した。
未精製原液の濾過時の平均濾過流量は7g/分、1回目の加水後の濾過時の平均濾過流量は15g/分、2回目の加水後の濾過時の平均濾過流量は18g/分であった。
未精製原液の電気伝導度は3100μS/cmであり、全操作後のカーボンブラックを含む最終精製液の電気伝導度は1400μS/cmであった。
この結果から、高い濾過流量を維持したまま、不純物(硫酸ナトリウム)が除去され、カーボンブラックの純度が高められたことが確認された。
また、最終精製液を英弘精機(株)製のコーンプレート型粘度計DV2Tを用いて、20℃における、せん断速度25s
-1での粘度を測定したところ、18mPa・sであり、流体粘度が高粘度状態になる過程を含んでいることを確認した。最終精製液の温度が10℃、30℃の粘度測定結果を併せ、
図2に示した。
図2は、顔料分散液中のカーボンブラック濃度と顔料分散液の違いとせん断速度(横軸)と粘度(縦軸)との関係を示すグラフである。
図2中、
30は、濃度10質量%、温度10℃、
31は、濃度10質量%、温度20℃、
32は、濃度10質量%、温度30℃、
33は、濃度20質量%、温度20℃、
34は、濃度20質量%、温度30℃、
35は、濃度32質量%、温度10℃、
36は、濃度32質量%、温度20℃、
37は、濃度32質量%、温度30℃を示す。
【0026】
比較例1
実施例1と同じ未精製原液を用いて、濾過工程において、濾過圧力を0.75MPa、線速を0.6m/sにてクロスフロー濾過を行った以外は、実施例1と同様の方法でカーボンブラックの分離精製を行った。
未精製原液の濃縮時の平均濾過流量は2g/分、1回目の加水後の濃縮時の平均濾過流量は5g/分、2回目の加水後の濃縮時の平均濾過流量は8g/分であり、実施例1と比較して実質的な処理効率が得られなかった。
【0027】
参考試験例
実施例1と同じ未精製原液を純水(電気伝導度1μS/cm)で2倍希釈した液体を用いて、実施例1の濾過工程に記載の濾過方法で、濾過圧力を0.03、0.05、0.075、0.1、0.13MPaの5点にそれぞれ固定し、線速を変動させた際の濾過流量をプロットしたグラフを
図3に示す。
図3の結果より、実施例1の未精製原液を2倍希釈した場合でも、濾過圧力が0.08MPa未満の場合、線速を上げても、濾過流量は上昇しないことが分かった。
本発明の有価物を含む流体を分離精製する方法は、電気活性高分子溶液(導電性ポリマーなどを含む溶液)、顔料分散液、水溶性高分子溶液(ポリフェノール、コンドロイチン、ゼラチンなどの天然高分子、または変性ポリビニルアルコールなどの合成高分子を含む溶液)、塗料、インク、化粧品、果汁などから不純物を除去して精製する方法に利用することができる。