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特開2023-123678ピリジノイルピペリジン5-HT1Fアゴニストに関する組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123678
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】ピリジノイルピペリジン5-HT1Fアゴニストに関する組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4545 20060101AFI20230829BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20230829BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
A61K31/4545
A61P25/06
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104019
(22)【出願日】2023-06-26
(62)【分割の表示】P 2021153729の分割
【原出願日】2017-12-05
(31)【優先権主張番号】62/430,662
(32)【優先日】2016-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519203965
【氏名又は名称】コルシド ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100139310
【弁理士】
【氏名又は名称】吉光 真紀
(72)【発明者】
【氏名】アリエリ,ブリジダ
(72)【発明者】
【氏名】フェイガン,ポール
(72)【発明者】
【氏名】シャープ,エンマ
(72)【発明者】
【氏名】スクワジンスキ,レイモンド,ディー.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】例えば、片頭痛の治療および予防のための医薬組成物において有用である、2,4,6-トリフルオロ-N-[6-(1-メチル-ピペリジン-4-カルボニル)-ピリジン-2-イル]-ベンズアミドのヘミコハク酸塩のある特定の溶媒和物および他の擬似多形形態を提供する。
【解決手段】(a)2,4,6-トリフルオロ-N-[6-(1-メチル-ピペリジン-4-カルボニル)-ピリジン-2-イル]-ベンズアミドのヘミコハク酸塩二水和物の結晶形(形態D);(b)2,4,6-トリフルオロ-N-[6-(1-メチル-ピペリジン-4-カルボニル)-ピリジン-2-イル]-ベンズアミドのヘミコハク酸塩の無水固体結晶形(形態A);および(c)医薬的に許容される担体と、を含む、組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)Cu-Kα放射線を使用したとき、X線回折が18.7±0.2度2θ、26.5±0.2度2θ、27.0±0.2度2θ、27.5±0.2度2θ、および27.8±0.2度2θのピークを含むことを特徴とする2,4,6-トリフルオロ-N-[6-(1-メチル-ピペリジン-4-カルボニル)-ピリジン-2-イル]-ベンズアミドのヘミコハク酸塩二水和物の結晶形(形態D);
(b)Cu-Kα放射線を使用したとき、X線回折が15.3±0.2度2θ、16.4±0.2度2θ、19.3±0.2度2θ、22.1±0.2度2θ、23.6±0.2度2θ、および25.9±0.2度2θのピークを含むことを特徴とする2,4,6-トリフルオロ-N-[6-(1-メチル-ピペリジン-4-カルボニル)-ピリジン-2-イル]-ベンズアミドのヘミコハク酸塩の無水固体結晶形(形態A);および
(c)医薬的に許容される担体と、
を含む、組成物。
【請求項2】
前記形態DのX線回折が、Cu-Kα放射線を使用したとき、8.5,9.7,11.9,13.8,14.0,15.4,15.5,15.8,17.0,17.3,17.7,18.0,18.9,19.3,19.8,20.0,20.8,21.4,21.6,21.9,22.4,22.7,23.0,24.1,24.3,24.7,25.6,25.9,26.1,28.4,29.1,29.6,29.8または31.9度2θ、±0.2度2θの1つ以上の追加のピークを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記形態Dは、100ケルビンでa=25.08Å、b=10.08Å、c=20.84Å、α=90°、β=123.71、およびγ角=90°の単位セルパラメータを有することをさらに特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記形態Dが、非晶質の2,4,6-トリフルオロ-N-[6-(1-メチル-ピペリジン-4-カルボニル)-ピリジン-2-イル]-ベンズアミドのヘミコハク酸の湿式造粒を含む方法によって生成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記形態Dが、実質的に不純物を含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記形態Dが、HPLCにより98.0%を超える化学純度を有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の組成物を含む、哺乳類において片頭痛を治療するために用いられる医薬組成物。
【請求項8】
前記哺乳類が、ヒトである、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
Cu-Kα放射線を使用したとき、X線回折が18.7±0.2度2θ、26.5±0.2度2θ、27.0±0.2度2θ、27.5±0.2度2θ、および27.8±0.2度2θのピークを含むことを特徴とする2,4,6-トリフルオロ-N-[6-(1-メチル-ピペリジン-4-カルボニル)-ピリジン-2-イル]-ベンズアミドのヘミコハク酸塩二水和物の結晶形(形態D)を含む、哺乳類において片頭痛を治療するために用いられる医薬組成物。
【請求項10】
前記哺乳類が、ヒトである、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記形態DのX線回折が、Cu-Kα放射線を使用したとき、8.5,9.7,11.9,13.8,14.0,15.4,15.5,15.8,17.0,17.3,17.7,18.0,18.9,19.3,19.8,20.0,20.8,21.4,21.6,21.9,22.4,22.7,23.0,24.1,24.3,24.7,25.6,25.9,26.1,28.4,29.1,29.6,29.8または31.9度2θ、±0.2度2θの1つ以上の追加のピークを含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記形態Dは、100ケルビンでa=25.08Å、b=10.08Å、c=20.84Å、α=90°、β=123.71、およびγ角=90°の単位セルパラメータを有することをさらに特徴とする、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記形態Dが、非晶質の2,4,6-トリフルオロ-N-[6-(1-メチル-ピペリジン-4-カルボニル)-ピリジン-2-イル]-ベンズアミドのヘミコハク酸の湿式造粒を含む方法によって生成される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記形態Dが、実質的に不純物を含まない、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記形態Dが、HPLCにより98.0%を超える化学純度を有する、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記組成物が、さらに医薬的に許容される担体を含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記組成物がさらに、Cu-Kα放射線を使用したとき、X線回折が15.3±0.2度2θ、16.4±0.2度2θ、19.3±0.2度2θ、22.1±0.2度2θ、23.6±0.2度2θ、および25.9±0.2度2θのピークを含むことを特徴とする2,4,6-トリフルオロ-N-[6-(1-メチル-ピペリジン-4-カルボニル)-ピリジン-2-イル]-ベンズアミドのヘミコハク酸塩の無水固体結晶形(形態A)を含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5-HT1F受容体を活性化させるために、および片頭痛の治療または予防
のために有用である、2,4,6-トリフルオロ-N-[6-(1-メチル-ピペリジン
-4-カルボニル)-ピリジン-2-イル]-ベンズアミドのヘミコハク酸塩のある特定
の溶媒和物および他の擬似多形形態に関する。
【背景技術】
【0002】
片頭痛は、一般的で著しく日常生活に支障をきたす脳障害であり、世界的に成人の10
%超が罹患している(Stovner LI et al.,Cephalalgia2
007;27:193-210)。この疾患は、吐き気、嘔吐、羞明および音響恐怖症(
前兆のない片頭痛)を伴う1~3日間の激しい頭痛の発作、ならびに患者の3分の1にお
いては神経学的前兆症状(前兆のある片頭痛)を典型的に特徴とする(Goadsby
PJ et al.,N Engl J Med2002;346:257-270)。
片頭痛の病因は、不完全に理解されている。従来、血管拡張は、片頭痛において頭痛を引
き起こす上で極めて重要であると考えられていた(Wolff‘s Headache
and Other Head Pain.Ed Silberstein et al
.,Oxford University Press,2001)。確立された抗片頭
痛有効性を有する選択的5-HT1B/1D受容体アゴニストであるトリプタン(Fer
rari MD et al.,Lancet2001:358;1668-1675)
は、5-HT1B受容体媒介頭蓋血管収縮が抗片頭痛有効性のための前提条件であるとい
う仮定に基づいて開発された(Humphrey PPA et al.,Ann NY
Acad Sci1990;600:587-598)。結果として、トリプタンは、
冠状血管収縮を引き起こす危険性も抱えており(MaassenVanDenBrink
A et al.,Circulation1998;98:25-30)、心血管疾
患および脳血管疾患の患者には禁忌である。さらに、トリプタンを使用している多くの患
者は、不安および診断上の混乱を引き起こす、狭心症に似ていることがある胸部症状を報
告している(Welch KMA et al.,Cephalalgia2000;2
0:687-95、Visser WH,et al.,Cephalalgia199
6;16:554-559)。したがって、血管収縮活動がない新規の片頭痛治療が確か
であるとされる。
【0003】
ここ数十年で、片頭痛発作の間に頭蓋血管拡張が起こる場合(Schoonman G
G et al.,Brain2008;131:192-200)、三叉神経血管系の
活性化による2次的な現象にすぎない可能性があることが明らかになった(Goadsb
y PJ et al.,N Engl J Med2002;346:257-270
)。したがって、血管収縮は、片頭痛を治療するのに必要ではない可能性がある。むしろ
、三叉神経経路の神経抑制は、関心を寄せられる代替的な非血管性抗片頭痛機序を提供す
るであろう。実際、臨床的に関連性のある濃度で血管収縮活性を有しない、神経活性のあ
る選択的5-HT1F受容体アゴニストであるLY334370は、初期の臨床概念実証
試験において片頭痛の一過性の治療に有効であることが証明された(Goldstein
DJ et al.,Lancet2001;358:1230-4)。残念ながら、
LY334370の臨床開発は、動物における長期曝露に対する化合物特異的な安全性の
懸念のため、中止しなければならなかった。
【0004】
2,4,6-トリフルオロ-N-[6-(1-メチル-ピペリジン-4-イルカルボニ
ル)-ピリジン-2-イル]-ベンズアミド(化合物I)は、新規の選択的で非常に強力
な5-HT1F受容体アゴニストであり、2.21nMのヒト5-HT1F受容体のKi
、および他の5-HT受容体サブタイプに対するよりも5-HT1F受容体に対して4
50倍超高い親和性を有する(Nelson DL et al.,Cephalalg
ia2009:29;122)。米国特許第7,423,050号および米国特許公開第
2008/0300407号は、血管収縮を引き起こすことなく、片頭痛の神経仲介性前
臨床モデルにおいて活性である化合物I、および他の選択的ピリジノイルピペリジン5-
HT1Fアゴニスト(すなわち、中性活性抗片頭痛薬(NAANA))を説明している。
上で参照される公開物における実験は、三叉神経尾側核におけるc-Fos誘導の強力な
阻害および三叉神経節の電気刺激後の硬膜血漿タンパク質血管外遊出の阻害を実証してい
る。0.1mMまでの濃度では、化合物Iは、ウサギ伏在静脈を収縮させず、ヒト冠状動
脈血管収縮神経の罹病性に対する代替アッセイである(Nelson DL et al
.,Cephalalgia2009:29;122)。
【0005】
薬物の結晶化度は、他の物理的および機械的特性の中でも、それらの溶解度、溶解速度
、硬度、圧縮性、および融点に影響する。これらの特性は、次に、薬物の製造およびその
有用性に影響することがあるので、薬物の結晶形態の同定および薬物を製造する方法に対
する化学分野および治療分野における必要性が存在する。2,4,6-トリフルオロ-N
-[6-(1-メチル-ピペリジン-4-カルボニル)-ピリジン-2-イル]-ベンズ
アミドのヘミコハク酸塩の結晶形が特徴づけられており、これを形態Aと称する。US8
,697,876を参照されたい。
【0006】
概して多形と称される異なる固体結晶形に加えて、薬物は、溶媒和物および包接化合物
のような、異なる偽多形形態においても存在することがある。溶媒和物という用語は、1
つ以上の溶媒分子と薬物分子との会合によって形成される化合物を包含する。溶媒和物と
いう用語は、非共有結合性分子間力によって結合した化学量論量のまたは非化学量論量の
水を指す水和物、例えば、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物、四水和物などを含
む。包接化合物という用語は、内部に閉じ込められたゲスト分子(例えば、溶媒または水
)を有する空間(例えば、チャネル)を含有する結晶格子の形態の薬物を指す。
【0007】
多形形態および擬似多形形態は、同じ組成の物質が異なる格子配置で結晶化し、その結
果、特定の多形形態に固有の異なる熱力学的特性および安定性を生じる場合に生じる。2
つ以上の多形物質を製造することができる場合、いずれの多形も純粋な形態にする方法を
有することが望ましい。どの多形が好ましいかを決定する上で、多形の数多くの特性を比
較しなければならず、好ましい多形は多くの物理的特性変数に基づいて選択されなければ
ならない。調製の容易さ、安定性などのようなある特定の態様が重要であるとみなされる
いくつかの状況においては、1つの多形形態が好ましくあり得ることは全く可能である。
他の状況において、多かれ少なかれ溶解度および/または優れた薬物動態にとって、異な
る多形が好ましいことがある。化合物の特定の結晶形態は、他の多形形態の特定の結晶形
態とは異なる物理的特性を有することがあり、このような特性は、特に化合物が商業規模
で調製または使用されるときに、化合物の物理化学的および医薬的加工に著しく影響する
ことがある。
【0008】
とりわけ、剤形中の有効医薬成分(「API」)の多形形態または擬似多形形態の明確
な知識を要求する、医薬的使用を意図した薬物に対する厳しい規制要件がある。薬物開発
中の固体形態変化を認識して制御することの重要性は、当該技術分野において認識されて
いる。例えば、Newman and Wenslowによる近年の総説(AAPS O
pen(2016)2:2)を参照されたい。したがって、規制要件を満たし、かつ最終
剤形の品質および一貫性を確実にするために、剤形中の多形形態および/または擬似多形
形態のAPIの特徴づけおよび制御についての必要性がある。
【0009】
本出願は、2,4,6-トリフルオロ-N-[6-(1-メチル-ピペリジン-4-カ
ルボニル)-ピリジン-2-イル]-ベンズアミドのヘミコハク酸塩の新たに発見された
擬似多形形態の同定および特徴づけ、ならびに固体剤形中でのこれらの存在をどのように
制御するかを説明する。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、本明細書で化合物Iまたはラスミチダン(lasmitidan)ヘミスク
シナートとも称される2,4,6-トリフルオロ-N-[6-(1-メチル-ピペリジン
-4-カルボニル)-ピリジン-2-イル]-ベンズアミドのヘミコハク酸塩の擬似多形
形態に関する。本明細書に記載の化合物Iの擬似多形形態は、商業規模の医薬的製造のた
めの製造過程中に期せずして生じた。本明細書に記載の擬似多形形態は、5-HT1F
容体を活性化させるために、および片頭痛の治療または予防に有用である。
【0011】
実施形態において、本開示は、溶媒和物の形態の化合物Iを提供する。実施形態におい
て、溶媒和物は、水和物である。実施形態において、水和物は、二水和物または三水和物
である。実施形態において、本開示は、図1に示されたもののうちの1つと実質的に同様
のX線粉末回折(XRPD)パターンを特徴とする水和物または脱水水和物を提供する。
【0012】
図1Aは、Cu-Kα放射線を使用した、水和物1とも称される二水和物である形態D
のXRPDパターンを示す。実施形態において、形態DについてのXRPDパターンは、
少なくとも約18.7、26.5、27.0、27.5、および27.8度2θ、±0.
2度におけるピークを含む。実施形態において、形態DのXRPDパターンは、表2に示
された1つ以上の追加のピークを含む。実施形態において、本開示は、100ケルビンで
約a=25.08Å、b=10.08Å、c=20.84Å、α=90°、β=123.
71、およびγ角=90°の単位セルパラメータを有することを特徴とする形態Dを提供
する。
【0013】
図1Bは、三水和物である形態FのXRPDパターンを示す。実施形態において、形態
FのXRPDパターンは、表4に示されたピークを含む。
【0014】
図1Cは、脱水した形態Dである形態EのXRPDパターンを示す。実施形態において
、Cu-Kα放射線を使用した形態EについてのXRPDパターンは、少なくとも約9.
2度および10.5度2θ±0.2度においてピークを含む。実施形態において、形態E
のXRPDパターンは、表3に示されたピークを含む。
【0015】
実施形態において、本開示は、二水和物、形態D、三水和物、形態F、または本明細書
で形態Eと称される、形態Dの脱水された水和物の形態にある化合物Iを提供する。実施
形態において、本開示は、形態Aと形態Dとの混合物、または形態Aと形態Eとの混合物
、または形態Dと形態Eとの混合物、または形態Aと形態Dと形態Eとの混合物、を含む
組成物を提供する。
【0016】
実施形態において、本開示は、53.1℃(-158.2J/g)での幅広い吸熱開始
と、92.1℃(24.9J/g)の幅広い発熱開始と、197.9℃(-119.0J
/g)での急激な吸熱開始と、を有する、示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを特
徴とする形態Dの二水和物形態における化合物Iを提供する実施形態において、形態Dは
、実質的に図2に従ったDSCサーモグラムを呈する。
【0017】
実施形態において、本開示は、71.2℃(-198.4J/g)での幅広い吸熱開始
と、95.7℃(-6.4J/g)での浅い吸熱(2ピーク)開始と、103.4℃(2
6.9J/g)での浅い発熱(2ピーク)と、197.8℃(-114.4J/g)での
急激な吸熱開始と、を有する、DSCサーモグラムを特徴とする三水和物形態Fの形態の
化合物Iを提供する。実施形態において、本開示は、図3に示されたものに実質的に従っ
たDSCサーモグラムを特徴とする三水和物形態Fの形態の化合物Iを提供する
【0018】
実施形態において、本明細書に記載の化合物Iの擬似多形形態は、熱重量分析(TGA
)とも称される特徴的な熱重量曲線に基づいて同定可能である。TGAは、温度と時間と
の組み合わせの関数としての材料試料の質量変化の連続記録に基づく。
【0019】
実施形態において、本開示は、実質的に図2に従って、25~110℃の7.5重量%
の喪失を示し、2.0モル当量の水を反映し、分解が約200℃で開始する、TGAを特
徴とする二水和物形態Dの形態の化合物Iを提供する。
【0020】
実施形態において、本開示は、実質的に図3に従って、25~150℃の11.4重量
%の喪失を示し、3.1モル当量の水を反映し、分解が約200℃で開始する、TGAを
特徴とする三水和物形態Fの形態の化合物Iを提供する。
【0021】
実施形態において、本開示は、約18.7、26.5、27.0、27.5および27
.8度2θ、±0.2度におけるピークを含むCu-Kα放射線を使用するXRPDパタ
ーンと、53.1℃(-158.2J/g)での幅広い吸熱開始、92.1℃(24.9
J/g)での幅広い吸熱開始、および197.9℃(-119.0J/g)での急激な吸
熱開始を有するDSCサーモグラムとを特徴とする、二水和物形態Dの形態の化合物Iを
提供する。
【0022】
実施形態において、本開示は、図1Aに示されたものと実質的に同様のX線回折パター
ンと、図2に示されたものと実質的に同様のDSCサーモグラムとを特徴とする、二水和
物形態Dの形態の化合物Iを提供する。
【0023】
実施形態において、本開示は、以下の(1)形態Aで出発する湿式造粒法、(2)形態
Aの25℃および96%相対湿度(RH)での貯蔵、(3)高い水分活性での溶媒/水混
合物からの再結晶、(4)40℃および75%RHでの非晶質化合物Iの貯蔵、(5)高
い水分活性での溶媒/水混合物中の非晶質化合物Iのスラリー、(6)室温以上で水中で
非晶質化合物Iのスラリーを形成すること、(7)37℃で水中で形態Fのスラリーを形
成すること、(8)20℃の形態Fの競合的スラリー、例えば、エタノール-水(50:
50(v/v))を形成すること、のうちのいずれか1つを含む方法によって生成される
二水和物(形態D)の形態の化合物Iを提供する。形態Aは、化合物Iの無水固体結晶質
である。
【0024】
実施形態において、本開示は、非晶質化合物Iで出発することと、5℃の水中でスラリ
ーを形成すること、または20℃の水中で、もしくは5℃のエタノール:水(50:50
)中で形態Fを種とした形態Aで出発する競合的スラリーを形成することとを含む方法に
よって製造される三水和物(形態F)の形態の化合物Iを提供する。
【0025】
本明細書に記載の実施形態に従って、2,4,6-トリフルオロ-N-[6-(1-メ
チル-ピペリジン-4-カルボニル)-ピリジン-2-イル]-ベンズアミド、および化
合物Iであるそのヘミコハク酸塩は、当該技術分野において説明されている方法によって
調製することができる。例えば、US8,697,876およびUS7,423,050
に説明されている。
【0026】
本開示は、二水和物もしくは三水和物のような水和物の形態の、またはそれらの混合物
を含む脱水された水和物の形態の化合物Iと、医薬的に許容され得る担体とを含む医薬組
成物も提供する。実施形態において、医薬組成物は、化合物Iの形態D、形態E、および
形態Fのうちの1つ以上を含む。実施形態において、医薬組成物は、形態Aと形態Dとの
混合物、形態Aと形態Eとの混合物、形態Dと形態Eとの混合物、および形態Aと形態D
と形態Eとの混合物からなる群より選択される混合物を含む。
【0027】
実施形態において、医薬組成物は、不純物を実質的に含まない。実施形態において、医
薬組成物は、HPLCによって決定される、約98%、約99%、または約99.9%の
化学純度を有する化合物Iの形態Dを含む。実施形態において、医薬組成物は、HPLC
によって決定される、約98%、約99%、または約99.9%の化学純度を有する化合
物Iの形態Fを含む。
【0028】
本開示は、哺乳類において片頭痛を治療する方法であって、かかる治療を必要とする哺
乳類に、本明細書に記載の化合物Iの有効量の擬似多形またはそれらの混合物を投与する
ことを含む、方法も提供する。実施形態において、化合物Iの擬似多形は、本明細書に記
載のとおり、化合物Iの形態D、形態E、および形態F、ならびにそれらの混合物から単
独でまたは形態Aとの組み合わせで選択される。本明細書に記載の方法のうちのいずれか
の実施形態において、化合物Iの擬似多形は、本明細書に記載されるとおり、化合物Iの
形態D、形態E、および形態F、ならびに形態D、形態E、および形態Fのうちの1つ以
上と形態Aとの混合物を含むそれらの混合物から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1A】化合物I(2,4,6-トリフルオロ-N-[6-(1-メチル-ピペリジン-4-カルボニル)-ピリジン-2-イル]-ベンズアミド)のヘミコハク酸塩)の種々の擬似多形形態のX線粉末回折パターン(XRPD)。(A)形態D(二水和物)。
図1B】化合物I(2,4,6-トリフルオロ-N-[6-(1-メチル-ピペリジン-4-カルボニル)-ピリジン-2-イル]-ベンズアミド)のヘミコハク酸塩)の種々の擬似多形形態のX線粉末回折パターン(XRPD)。(B)形態F(三水和物)。
図1C】化合物I(2,4,6-トリフルオロ-N-[6-(1-メチル-ピペリジン-4-カルボニル)-ピリジン-2-イル]-ベンズアミド)のヘミコハク酸塩)の種々の擬似多形形態のX線粉末回折パターン(XRPD)。(C)形態E(脱水された形態D)。
図1D】化合物I(2,4,6-トリフルオロ-N-[6-(1-メチル-ピペリジン-4-カルボニル)-ピリジン-2-イル]-ベンズアミド)のヘミコハク酸塩)の種々の擬似多形形態のX線粉末回折パターン(XRPD)。(D)形態Dの実験的および計算上の単結晶XRPDパターン。
図1E】化合物I(2,4,6-トリフルオロ-N-[6-(1-メチル-ピペリジン-4-カルボニル)-ピリジン-2-イル]-ベンズアミド)のヘミコハク酸塩)の種々の擬似多形形態のX線粉末回折パターン(XRPD)。(E)XRPD回折パターンの部分断面(0~13°2θ)、形態D(青色の線)、形態A(緑色)、形態E(赤色)。
図1F】化合物I(2,4,6-トリフルオロ-N-[6-(1-メチル-ピペリジン-4-カルボニル)-ピリジン-2-イル]-ベンズアミド)のヘミコハク酸塩)の種々の擬似多形形態のX線粉末回折パターン(XRPD)。(F)XRPD回折パターンの部分断面(13~19.5°2θ)、形態D(青色の線)、形態A(緑色)、形態E(赤色)。
図1G】化合物I(2,4,6-トリフルオロ-N-[6-(1-メチル-ピペリジン-4-カルボニル)-ピリジン-2-イル]-ベンズアミド)のヘミコハク酸塩)の種々の擬似多形形態のX線粉末回折パターン(XRPD)。(G)XRPD回折パターンの部分断面(18.5~26°2θ)、形態D(青色の線)、形態A(緑色)、形態E(赤色)。
図2】形態DのDSCサーモグラムおよびTGA分析。形態DについてのDSC(青色の線、熱流(W/g)、下側のトレースおよび挿入図)とTGA(緑色、重量(%)尺度、上側のトレース)の結果の重ね合わせ。
図3】形態FのDSCサーモグラムおよびTGA分析。形態FについてのDSC(青色の線、熱流(W/g)、上側のトレース)およびTGA(緑色、重量(%)尺度、下側のトレース)の結果の重ね合わせ。
図4A】(A)化学純度99.93%を示すことを有する形態DのHPLCトレース。
図4B】(B)化学純度99.95%を示す形態FのHPLCトレース。
図5】化合物Iの溶解された形態Dまたは形態Fの溶液状態H-NMRスペクトル
図6】すべて重ね合わせることができる、3サイクルの吸着/脱離を示す、形態DについてのDVS等温図。
図7】3サイクルの吸着/脱着を示す形態FについてのDVS等温図であり、サイクル1の吸着および脱着の線は最上部(赤色および青色)にあり、本質的に重ね合わせることができ、サイクル2の脱離の線は、0~70%RHからプロットされた上から2番目の線(桃色)の吸着線(緑色)であり、サイクル3の吸着(ターコイズブルー色)は、0~40%RHまでプロットした。
【発明を実施するための形態】
【0030】
セロトニン-1F(5-HT1F)受容体を活性化するために、および片頭痛の治療ま
たは予防のために有用なピリジノイルピペリジン化合物は、例えばUS7,423,05
0およびUS2010/0256187に説明されている。このような化合物には、2,
4,6-トリフルオロ-N-[6-(1-メチル-ピペリジン-4-カルボニル)-ピリ
ジン-2-イル]-ベンズアミドのヘミコハク酸塩(「化合物I」)が含まれ、これは、
以下に示される構造式を有しており、ラスミチダンヘミスクシナートとも称されることが
ある。
【化1】
【0031】
化合物Iのある特定の多形形態は、US8,697,876においても説明されている
。説明された形態のうちの1つは、形態Aと称される多形である。形態Aは、化合物Iの
無水固体結晶形態である。本明細書に記載の実施形態に従って、2,4,6-トリフルオ
ロ-N-[6-(1-メチル-ピペリジン-4-カルボニル)-ピリジン-2-イル]-
ベンズアミド、そのヘミ-コハク酸塩(化合物I)、および化合物Iの無水固体結晶形態
は、例えば、’876特許において説明されるように、当該技術分野において説明される
方法によって調製することができる。’876特許は、形態Bおよび形態Cと命名された
2つの追加的なXRPDパターンを説明している。それらの形態のさらなる特徴づけは、
利用可能ではない。参照の容易さのために、本開示は’876特許において確立された命
名パターンを継承する。したがって、本明細書に説明する化合物Iの新たな擬似多形形態
は、形態D、形態E、および形態Fと称される。形態Dは、水和物1または二水和物とも
称される。形態Eは形態Dの脱水された水和物とも称され、形態Dの部分的にまたは完全
に脱水された水和物として存在することがある。形態Fは三水和物とも称される。形態F
の構造は、結晶化研究からの重量喪失に基づいて決定された。
【0032】
本開示に先立って、化合物Iが本明細書に説明されている異なる擬似多形形態で存在す
ることができることは知られていなかった。これらの擬似多形形態は、商業規模の医薬品
製造のために製品を製造する過程の間に生じることが偶然発見された。このような医薬品
の承認および使用を監督する規制当局が、固形医薬剤形中の有効成分の多形形態の決定的
な知識、特徴づけおよび制御を必要とすることを考えると、これらの新たな多形形態であ
る化合物Iの結晶化および特徴づけについて、当該技術分野において必要である。
【0033】
本発明における2,4,6-トリフルオロ-N-[6-(1-メチル-ピペリジン-4
-カルボニル)-ピリジン-2-イル]-ベンズアミドの「多形形態(polymorp
hic form)、多形、多形形態(polymorph form)、擬似多形、結
晶形態、物理的形態または結晶多形」という用語は、X線粉末回折パターン(XRPD)
、示差走査熱量測定(DSC)のような分析方法によって、熱重量分析(TGA)および
重量蒸気吸着(GVS)または同的蒸気吸着(DVS)によって特徴づけることができる
この化合物の結晶改質を指す。
【0034】
本明細書で使用する「水和物」という用語は、非共有結合性分子間力によって結合した
化学量論量または非化学量論量の水をさらに含む本発明の化合物またはその塩を意味する
。水和物は、1分子以上の水と、水がその分子状態をHOとして保持する1分子の物質
との組み合わせによって形成され、このような組み合わせは、1つ以上の水和物を形成す
ることができる。本明細書で使用する場合、化合物Iの水和物は、本明細書に説明する脱
水された水和物を含む「擬似多形」とみなされる。
【0035】
本明細書に説明する擬似多形は、当該技術分野による任意の方法論によって特徴づける
ことができる。例えば、擬似多形は、X線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量測定(D
SC)、熱重量分析(TGA)、顕微鏡法、および分光法(例えば、核磁気共鳴法(NM
R))によって特徴づけることができる。
【0036】
実施形態において、擬似多形はXRPDによって特徴づけられる。XRPDピークの相
対強度は、採用される試料調製技術、試料搭載手順、および特定の機器に応じて変えるこ
とができる。その上、機器の変動および他の因子は、2シータ値に影響を及ぼす可能性が
ある。それゆえ、XRPDピークの割り当ては、プラスマイナス約0.1、0.2、0.
3、または0.4度で変えることができる。例えば、いくつかの実施形態において、本明
細書に記載の形態の2-θ値は、プラスマイナス約0.4度だけ変えてもよい。他の実施
形態において、本明細書に説明する形態の2-θ値は、プラスマイナス約0.2度だけ変
えてもよい。さらに他の実施形態において、本明細書に説明する形態の2-θ値は、プラ
スマイナス約0.1度だけ変えてもよい。本明細書に説明する擬似多形を含む医薬組成物
は、組成物のX線粉末回折パターンと純粋な多形のX線粉末回折パターンとの比較によっ
て同定することができる。本明細書に説明する特定の擬似多形を含む医薬組成物が、純粋
な多形のX線粉末回折パターンと比較して、非同一のX線粉末回折パターンを呈すること
があることは認識されるであろう。
【0037】
本明細書に説明する擬似多形はまた、図面に示すような特徴的な示差熱量計走査(DS
C)トレースによって同定することもできる。DSCについては、観察される温度が、温
度変化速度ならびに試料調製技術および採用される特定の機器によるであろうことは既知
である。したがって、DSCサーモグラムに関して本明細書に報告されている値は、プラ
スマイナス約4、6、8または10℃だけ変わることができる。例えば、その値は、プラ
スマイナス約6℃だけ変わることができる。
【0038】
本発明の疑似多形形態は、非晶質材料または他の多形形態のものとは異なる熱的挙動も
引き起こすことがある。熱的挙動は、いくつかの多形を他の多形と区別するために使用さ
れることがある熱重量分析(TGA)によって実験室で測定することができる。一態様に
おいて、疑似多形は、熱重量分析によって特徴づけることができる。
【0039】
本発明による疑似多形は、試料による溶媒吸収の速度および量を測定する重量蒸気吸着
(GVS)によっても同定することができる。一態様において、擬似多形は、重量蒸気吸
着分析によって特徴づけることができる。
【0040】
多形形成
結晶化溶媒は、化合物Iのどの多形または擬似多形が形成されるかを決定する上での重
要な因子である。例えば、水分活性が低い溶媒、例えば、エタノールは、主に形態Aを与
える。異なる多形形態は様々なレベルの水和を有するので、水分含有量も重要である。水
と水混和性溶媒との混合物において、水の量は、約6.1容積%~約95容積%、好まし
くは約10容積%~約20容積%、より好ましくは約5容積%~約10容積%、最も好ま
しくは約5%~約1%の水で変わることができる。化合物Iの形態Dおよび形態Fは水和
物であり、したがって、化合物Iがこれらの形態のいずれかとして結晶化するために存在
しなければならない水の最小閾値がある。加えて、水の冷却速度および単離温度および量
は、より詳細に後述するように、どの多形形態および/または水和物が形成されるかを決
定する上で役割を担い得る。
【0041】
化合物Iの形態Aまたは非晶質形態のうちのいずれかで出発して、水単独または水/溶
媒混合物の添加は、形態Aまたは非晶質形態から新規疑似多形形態D、E、またはFのう
ちの1つへの変換を結果的に生じることが発見された。形態Aは、任意の温度で、水の非
存在下で(最大10容積%の水;およそ0.6の水分活性)または低い水分活性で、例え
ば純粋なエタノール中で優勢な形態である。より高い水分活性においては、温度および水
分含有量は、決定的である。
【0042】
形態Aから形態Dへの変換は、水が、例えば高湿条件を通じて、または高い水分活性を
有する溶媒-水混合物中で水が導入されるにつれて起こる。形態Dは、中程度の水分活性
およびより高い温度(すなわち室温~およそ40℃)で最も安定した形態である。
【0043】
実施形態において、本開示は、二水和物形態Dの形態の化合物Iを提供する。化合物I
の単結晶の表面X線回折(SXRD)分析は、当該単結晶が1分子の化合物I、2分子の
水、および半分子のコハク酸塩を含有することを示す。この結晶構造に基づいた模倣粉末
パターンは、図1Dに呈される形態D、または水和物1についてのXRPDと一致し、し
たがって形態Dが化合物Iの二水和物であることを確定する。バルク試料からの実験パタ
ーン(RT)は赤色で(最上部のトレース)、単結晶X線構造(100K)から計算され
たパターンは黒色で示されている(最下部のトレース)。ピーク位置のわずかな差異は、
温度および好ましい向きによる格子の変化に起因している。
【0044】
実施形態において、本開示は、形態Dを含む、または形態Dと形態Aとの混合物を含む
組成物を提供する。
【0045】
実施形態において、本開示は、形態E(脱水した形態D)としての化合物Iを提供する
。形態Eは、およそ40℃で変換が出発して、化合物Iの形態Dをおよそ60℃へと加熱
することによって生成することができる。加熱がおよそ70~75℃を超えて継続すると
、形態Eは、無水形態である形態Aに変換する。したがって、形態Eは、準安定形態とみ
なすことができる。形態Eがその形成後におよそ35℃以下に冷却される場合、形態Eは
形態Dに変換する。実施形態において、本開示は、形態E、または形態Eと形態Aとの混
合物、または形態Eと形態Dとの混合物を含む、組成物を提供する。
【0046】
形態Fは概して、より低い温度(例えば、およそ5℃~20℃)および非常に高い水分
活性において最も安定した形態である。しかし、出発混合物の組成もまた、影響を有する
。形態Fは、出発混合物中に存在するか否かにかかわらず、5℃で純水中で安定した形態
であるが、水中で20℃では、形態Dと形態Fとの混合物を使用するとき、形態Fがより
安定した形態である。しかしながら、形態Aと形態Dとの混合物が使用されるとき、形態
Dは、速度論的により安定した形態である。
【0047】
したがって、形態Fは、非晶質化合物Iもしくは形態Aを水単独中で5℃でスラリー化
することによって、または非晶質化合物Iをt-ブタノール:水(50:50(v/v)
)混合物から凍結乾燥することによって生成することができる。形態Fは、形態Aまたは
形態Dのいずれかを用いて形態Fの種が出発混合物中に存在する場合、エタノール:水混
合物(50:50(v/v)中で5℃で生成することもできるが、形態Aと形態Dとの混
合物が使用されるとき、形態Dは5℃で安定した形態である。
【0048】
水中20℃では、形態Dと形態Fとの混合物を出発材料として使用するとき、形態Fは
、より安定した形態である。水中20℃では、形態Aと形態Dとの混合物を使用するとき
、形態Dは、安定した形態である。
【0049】
これらの結果は、5℃の純水中では形態Fが最も安定した形態であるが、20℃では形
態Fの種が、安定した形態Fへの変換をさせるために存在する必要があることを示してい
る。同様に、エタノール:水50:50(v/v)中5℃では、形態Fの種が出発混合物
中に存在するとき、形態Fは安定した形態であるが、形態Aと形態Dとの混合物が使用さ
れるとき、形態Dは5℃で速度論的に安定している。低温および高い水分活性での形態F
の観察された自発的結晶化に基づいて、形態Fは、最初は形態Dであるかまたは形態Aと
形態Dとの混合物である化合物Iの製剤中で形成されることがある。したがって、実施形
態において、本開示は、形態F、または形態Dと形態Fとの混合物、または形態Aと形態
Dと形態Fとの混合物を含む組成物を提供する。
【0050】
室温で真空オーブン中で形態Fを乾燥させることは、結果的に、非晶質化合物Iへの変
換を生じる。形態Fは、(a)加熱の際に、(b)40℃/20%相対湿度への曝露によ
って、または(c)室温でのデシケーターの中で非常に低湿での貯蔵の際に、形態Aに変
換する。加えて、重量蒸気吸着実験におけるような、湿度を周期化することは、形態Fを
形態Dへと変換することを結果的に生じる。
【0051】
実施形態において、本開示は、造粒媒体として精製水を使用して化合物Iの形態Aを湿
式造粒過程に供することによって生成される二水和物形態Dの形態の化合物Iを提供する
。実施形態において、湿式造粒過程は、高剪断混合工程(例えば、1Lおよび4Lのボウ
ルを装備したDiosna(登録商標)P1/6のような装置)と、それに続く穏やかな
粉砕(例えばComil(登録商標)のような装置の中で顆粒を粉砕すること)とを含む
。実施形態において、この過程は、顆粒を(例えば、Strea Pro(登録商標)流
動床乾燥機を使用して)乾燥させる工程をさらに含む。実施形態において、顆粒は、4%
w/w以下(例えば、水分平衡によって測定されるように)の水分含有量まで乾燥させら
れる。
【0052】
実施形態において、1つ以上の賦形剤は、医薬分野における知識に従って、造粒過程の
間に、造粒前または顆粒が乾燥した後のいずれかに添加される。実施形態において、1つ
以上の賦形剤は、充填剤材料(例えば、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニト
ール、ソルビトール、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、および微結晶セルロースを含
むセルロース)、液状結合剤(例えば、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプ
ロピルメチルセルロースのようなセルロース誘導体、ポリエチレングリコール、スクロー
ス、およびデンプン)、乾燥結合剤(例えば、セルロース、メチルセルロース、ポリビニ
ルピロリドン、およびポリエチレングリコール)、崩壊剤(例えば、デンプン、セルロー
ス、架橋ポリビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウム、およびクロスカルメ
ロースナトリウムのような架橋型カルボキシメチルセルロースナトリウムを含むカルボキ
シメチルセルロースナトリウム)、湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、および
滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ポリエチレングリコール、
およびラウリル硫酸ナトリウム)のうちの1つ以上から選択される。
【0053】
医薬組成物
本開示は、単独でまたは上述のような形態Aとの混合物においてのいずれかで、化合物
Iの形態D、E、またはFのうちの1つ以上と、医薬的に許容され得る担体または賦形剤
と、を含む、医薬組成物も提供する。「医薬的に許容され得る」という用語は、健全な医
学的判断の範囲内で、妥当な利益/リスク比に相応して、過度な毒性、刺激、アレルギー
反応、またはその他の問題もしくは合併症なく、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用
するのに好適である、化合物、材料、組成物、担体、および/または剤形を指す。
【0054】
「医薬的に許容され得る賦形剤」は、概して安全で、無毒であり、生物学的にもその他
の点でも望ましくないことのない医薬組成物を調製する上で有用である賦形剤を意味し、
また、獣医学的症ならびにヒトの医薬的使用に許容され得る賦形剤を含む。医薬的に許容
され得る賦形剤の例は、後に提供されている。
【0055】
医薬組成物は、バルクでまたは薬用量単位形態で提供することができる。投与の容易さ
および薬用量の均一性のために、医薬組成物を薬用量単位形態で製剤することが特に有利
である。本明細書で使用する場合の「薬用量単位形態」という用語は、治療されることに
なっている対象のための単位薬用量として適した物理的に離散した単位を指し、各単位は
、必要とされる医薬担体とともに所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性
化合物を含有する。本発明の薬用量単位形態についての詳細は、活性化合物の独特の特徴
および達成されるべき特定の治療効果によって決定され、それらに直接依存する。薬用量
単位形態は、アンプル剤、バイアル剤、坐剤、糖衣錠、錠剤、カプセル剤、静脈内バッグ
、またはエアゾール吸入器の単一ポンプであることができる。
【0056】
実施形態において、医薬組成物の化学成分は化学的不純物を実質的に含まない。「化学
的純度」という用語は、化合物の試料中の特定の化合物の、通常重量百分率として与えら
れる量を指す。別段の記載がない限り、本明細書を通して記載される百分率は重量/重量
(w/w)百分率である。実施形態において、医薬組成物は、HPLCによって決定され
るように98.0%を超える化学純度を有する化合物Iの擬似多形を含む。実施形態にお
いて、擬似多形は99.0%の化学純度を有する。実施形態において、擬似多形は99.
5%の化学純度を有する。実施形態において、擬似多形は99.9%の化学純度を有する
【0057】
「好適な溶媒」という用語は、反応物を十分に可溶化してその中に所望の反応をもたら
す媒体を与える、進行中の反応に対して不活性である何らかの溶媒または溶媒の混合物を
指す。
【0058】
「懸濁液」という用語は、液体または分散媒体、通常は溶媒中に分散(懸濁)された非
晶質、結晶形態、またはそれらの混合物における微細固体からなる二相系を指す。「スラ
リー」という用語は、ある量の粉末が液体に混合され、その中で個体がわずかに可溶性で
あるにすぎない(または可溶性ではない)ときに形成される懸濁液を指す。「スラリー化
すること」は、スラリーをつくることを指す。
【0059】
本明細書で使用する場合の「非晶質」という用語は、規則的に繰り返される分子または
外部表面の配置が本質的にないことを意味する。
【0060】
粉末X線回折パターンにおけるピーク高は変動することがあり、分析ウェル中の温度、
結晶の大きさ、結晶習慣、試料調製または試料高のような変数に依存するであろうことは
理解されるよう意図される。
【0061】
異なる放射線源を用いて測定するときにピーク位置が異なることがあることも理解され
るよう意図される。
【0062】
本発明の方法において採用される多形の投与に使用される製剤の種類は、投与経路およ
び患者の状態から望まれる薬物動態特性の種類によって決定されることがある。
【0063】
経口投与、舌下投与、経鼻投与、または注射投与に適した製剤は、医薬分野において周
知の様式で調製され、少なくとも1つの活性化合物を含む。例えば、REMINGTON
’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,(16th ed.1980
)を参照されたい。
【0064】
概して、本開示は、本明細書に説明する化合物Iの擬似多形である少なくとも1つの有
効成分を含む製剤または医薬組成物を提供する。製剤および医薬組成物は、追加の有効医
薬成分(API)をさらに含んでもよい。製剤または医薬組成物は、典型的には賦形剤を
含み、賦形剤によって希釈されるか、またはカプセル、サシェ、紙もしくは他の容器の形
態であることができるそのような担体内に封入される。賦形剤が希釈剤として役立つとき
、賦形剤は有効成分のためのビヒクル、担体または媒体として作用する固体、半固体、ま
たは液体の材料であることができる。したがって、製剤は、錠剤、丸剤、散剤、ロゼンジ
剤、サシェ剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ剤、エアゾール
剤(固体としてまたは液体媒体中にある)、例えば10重量%までの活性化合物を含有す
る軟膏剤、軟質および硬質ゼラチンカプセル剤、ゲル剤、坐剤、滅菌注射用液剤、ならび
に滅菌包装粉末の形態であることができる。
【0065】
製剤を調製する上で、他の成分と組み合わせる前に有効成分を粉砕して適切な粒径を提
供することは必要であることがある。有効成分が実質的に不溶性である場合、通常200
メッシュ未満の粒径に粉砕される。有効成分が実質的に水溶性である場合、粒径は通常、
製剤中に実質的に均一な分布を提供するよう粉砕すること、例えば約40メッシュによっ
て調整される。本発明の一実施形態において、粒径範囲は約0.1μm~約100μmで
ある。
【0066】
好切な賦形剤のいくつかの例には、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビ
トール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、ト
ラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、
セルロース、水、シロップ、およびメチルセルロースが含まれる。製剤には、ラクトース
、スクロース、グルコース、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、炭酸カル
シウム、およびセルロース(微結晶セルロースを含む)のような充填剤;タルク、ステア
リン酸マグネシウム、鉱油のような滑沢剤;湿潤剤;乳化剤および懸濁剤;ゼラチン、ポ
リビニルピロリドン、セルロース、メチルセルロース、セルロース誘導体(例、ヒドロキ
シプロピルメチルセルロース)、ポリエチレングリコール、スクロース、デンプン、およ
びポリエチレングリコールのような液状結合剤または乾燥結合剤;デンプン、セルロース
、架橋型ポリビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウム、およびカルボキシメ
チルセルロースナトリウム(クロスカルメロースナトリウムのような架橋型カルボキシメ
チルセルロースナトリウムを含む)のような崩壊剤;メチルヒドロキシ安息香酸塩および
プロピルヒドロキシ安息香酸塩のような保存料;甘味料;ならびに着香料を含んでもよい
【0067】
本発明の化合物は、当該技術分野において既知の手順を採用することによって患者への
投与後に有効成分の迅速な、持続的な、または遅延した放出を提供するように製剤するこ
とができる。
【0068】
次の製剤例は例示にすぎず、本発明の範囲を制限するよう意図するものではない。「有
効成分」という用語は、本明細書に説明する擬似多形を指す。
【0069】
本明細書に説明する方法においていかなる製剤もなしに直接採用される有効成分を投与
することは可能であるが、有効成分は通常、医薬的に許容され得る賦形剤と少なくとも1
つの有効成分とを含む医薬製剤の形態で投与される。このような製剤は、経口、頬側、直
腸内、鼻腔内、皮内、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、および鼻腔内を含む様々な経路によ
って投与することができる。本明細書に説明する方法において採用される製剤は、注射用
組成物および経口組成物のいずれとしても有効である。
【0070】
経皮投与するためには、経皮送達装置(「パッチ」)がしばしば必要とされる。このよ
うな経皮パッチは、制御された量で本発明の多形の連続的または不連続的な注入を提供す
るために使用されることがある。医薬剤の送達のための経皮パッチの構築および使用は、
当該技術分野において周知である。例えば、米国特許第5,023,252号を参照され
たい。このようなパッチは、医薬剤の連続的送達、パルス送達、または必要に応じた送達
のために構築することができる。
【0071】
しばしば、医薬組成物を直接的または間接的のいずれかで脳へ導入することは望ましい
かまたは必要であろう。直接的な技術は通常、血液脳関門を迂回するために宿主の心室系
内への薬物送達カテーテルの配置を包含する。身体の特定の解剖学的部域への生物学的因
子の輸送のために使用される1つのこのような植え込み可能な送達システムは、参照によ
り本明細書に組み入れられる米国特許第5,011,472号に説明されている。親水性
薬物の送達は、一時的に血液脳関門を開くことができる高張液の動脈内注入によって増強
されてもよい。
【0072】
実施形態において、頬側投与および/または舌下投与、または経鼻投与に適合した製剤
中に上述の少なくとも1つの有効成分を含む医薬製剤が提供される。この実施形態は、胃
系によるおよび/または肝臓を通じての初回通過代謝のような胃の合併症を回避する様式
における有効成分の投与を提供する。この投与経路は、吸収時間を短縮し、治療有益性の
より迅速な開始も提供することができる。
【0073】
実施形態において、本開示は、1日に1回、2回、または3回投与される用量あたり最
大500mgの範囲の量の有効成分と、医薬的に許容され得る希釈剤または担体と、を含
む、医薬組成物を提供する。
【0074】
実施形態において、本開示は、1日1回、2回または3回投与される用量当たり最大5
00mgの範囲の量の本明細書に説明する有効成分と、医薬的に許容され得る希釈剤また
は担体とを含む、経口または直腸投与用の医薬組成物を提供する。実施形態において、本
開示は、本明細書に説明する量の有効成分を含む医薬組成物を提供し、量は1用量あたり
50mg~500mgである。実施形態において、本開示は、本明細書に説明する量の有
効成分を含む医薬組成物を提供し、量は1用量あたり50mg~400mgである。実施
形態において、本開示は、本明細書に説明する量の有効成分を含む医薬組成物を提供し、
量は1用量あたり50mgである。実施形態において、本開示は、本明細書に説明する量
の有効成分を含む医薬組成物を提供し、量は1用量あたり100mgである。実施形態に
おいて、本開示は、本明細書に説明する量の有効成分を含む医薬組成物を提供し、量は1
用量あたり200mgである。実施形態において、本開示は、本明細書に説明する量の有
効成分を含む医薬組成物を提供し、量は1用量あたり400mgである。
【0075】
実施形態において、本開示は、本明細書に説明する有効成分を含む医薬組成物を提供し
、投与は経口である。実施形態において、本開示は、本明細書に説明する量の有効成分を
含む医薬組成物を提供し、投与は直腸である。
【0076】
実施形態において、本開示は、1日1回、2回、または3回投与される1用量あたり最
大200mgの範囲の量の本明細書に説明する有効成分と、医薬的に許容され得る希釈剤
または担体とを含む、頬側、舌下、経鼻/鼻腔内、経皮、皮下、注射、静脈内または筋肉
内投与用の医薬組成物を提供する。
【0077】
実施形態において、本開示は、本明細書に説明する有効成分を含む医薬組成物を提供し
、量は1用量あたり2~100mgである。実施形態において、本発明は、本明細書に説
明する量の有効成分を含む医薬組成物に関し、量は、1用量あたり約10、15、25、
30、45、50、60、75、90、または100mgである。
【0078】
実施形態において、本開示は、投与が頬側である医薬組成物を提供する。実施形態にお
いて、本開示は、投与が舌下である医薬組成物を提供する。実施形態において、本開示は
、投与が経鼻または鼻腔内である医薬組成物を提供する。実施形態において、本開示は、
投与が経皮である医薬組成物を提供する。実施形態において、本開示は、投与が皮下であ
る医薬組成物を提供する。実施形態では、本開示は、投与が注射による医薬組成物を提供
する。実施形態において、本開示は、投与が静脈内である医薬組成物を提供する。実施形
態において、本開示は、投与が筋肉内である医薬組成物を提供する。
【0079】
実施形態において、本開示は、本明細書に説明する有効成分の用量は1日1回投与され
る医薬組成物を提供する。実施形態において、本開示は、本明細書に説明する用量の有効
成分が1日2回投与される医薬組成物を提供する。実施形態において、本開示は、本明細
書に説明する用量の有効成分が1日3回投与される医薬組成物を提供する。
【0080】
使用方法
本開示は、哺乳類において片頭痛を治療する方法であって、かかる治療を必要とする哺
乳類に、本明細書に説明されるように、有効量の化合物Iの擬似多形およびそれらの混合
物を投与することを含む、方法も提供する。実施形態において、化合物Iの擬似多形は、
本明細書に説明するように、化合物Iの形態D、形態E、および形態F、ならびにそれら
の混合物から単独でまたは形態Aとの組み合わせで選択される。本明細書に説明する方法
のいずれかの実施形態において、化合物Iの擬似多形体は、本明細書に説明するように、
形態D、E、およびFのうちの1つ以上の混合物を含む、化合物Iの形態D、形態E、お
よび形態F、ならびにそれらの混合物から選択される。実施形態では、哺乳類は、ヒトで
ある。
【0081】
実施形態において、本開示は、哺乳類におけるセロトニンの神経伝達の低下と関連した
様々な障害を治療するために、有効量の本明細書に説明する、形態Aとの混合物を含む、
化合物Iの擬似多形およびそれらの混合物を投与することによって、血管収縮活動を回避
しながら、5-HT1F受容体の活性化を高めるための方法も提供する。これらの障害に
含まれるのは、片頭痛、全身性疼痛、三叉神経痛、歯痛または顎関節機能不全痛、不安、
全身性不安障害、パニック障害、うつ、睡眠障害、慢性疲労症候群、月経前症候群または
後期黄体期症候群、外傷後症候群、記憶喪失、加齢性認知症を含む認知症、社会恐怖症、
自閉症、注意欠陥多動障害、破壊的行動障害、衝動制御障害、境界性パーソナリティ障害
、強迫性障害、早漏、勃起障害、過食、神経性食思不振症、アルコール依存症、タバコの
乱用、無言、および抜毛癖である。本明細書に説明する擬似多形は、片頭痛の予防的処置
としても有用である。
【0082】
セロトニンアゴニストによって治療することができる障害が確立され認められた分類に
よって既知の場合、それらの分類は様々な情報源において認めることができる。例えば、
現在、Diagnostic and Statistical Manual of
Mental Disorders(DSM-IV(商標))(1994,Americ
an Psychiatric Association,Washington,D.
C.)の第4版は、本明細書に説明する障害のうちの多くを特定するための診断ツールを
提供している。また、国際疾病分類第10版(ICD-10)は、本明細書に説明する障
害のうちの多くについての分類を提供している。当業者は、DSM-IVおよびICD-
10に説明されているものを含む、本明細書に説明の障害についての代替的なの命名法、
命名法、および分類システムがあること、ならびに用語および分類システムが医科学の進
歩とともに進化することを認識するであろう。
【0083】
5-HT1F受容体の活性化のための、概してもしくは特に三叉神経痛の刺激によるニ
ューロンペプチドの血管外遊出の阻害のための、ならびに/または上述の障害のうちのい
ずれかの治療のための、本明細書に説明する、化合物Iの形態D、E、および形態Fから
選択される化合物Iの擬似多形、ならびに形態Aとの混合物を含むこれらの混合物の使用
はすべて、本発明の実施形態である。
【0084】
「有効量」という用語は、5-HT1F受容体を活性化することができるおよび/また
はニューロンタンパク質の血管外遊出を阻害することができる、本明細書に説明する擬似
多形の量を意味する。
【0085】
本明細書で使用する場合、「治療すること」または「治療および処置」は、容態、疾患
、障害などの改善を結果的に生じる何らかの効果、例えば低減、軽減、調節、または排除
を含む。疾患状態の「治療すること」または「治療および処置」は、哺乳類、特にヒトに
おける病状の治療を意味し、(a)既存の病状を抑制すること、すなわちその発症もしく
はその臨床症状を停止させること、および/または(c)病状を緩和させること、すなわ
ち病状の後退を引き起こすことを含む。
【0086】
本明細書中で使用する場合、「予防すること」は、病状に曝露されることがあるかまた
は罹患しやすくなることがあるが、病状の症状をまだ経験していないかまたは表していな
い対象において、疾患の開始を発症させない病状の臨床的症状を引き起こすこと、すなわ
ち疾患の開始を抑制することを意味する。
【実施例0087】
以下の実施例は、例示であり、いかようにも本発明の範囲を制限するようには解釈され
るべきではない。
【0088】
実施例1:形態D(水和物1)の調製
形態Dは、例えば、(1)形態Aで出発する湿式造粒法、(2)25℃および96%相
対湿度(RH)での形態Aの貯蔵、(3)高い水分活性を有する溶媒/水混合物からの再
結晶、(4)40℃および75%RHでの非晶質化合物Iの貯蔵、(5)高い水分活性を
有する溶媒/水混合物中の非晶質化合物Iのスラリー(6)室温以上の水中で非晶質化合
物Iのスラリーを形成すること、(7)37℃の水中で形態Fのスラリーを形成すること
、(8)形態F、例えばエタノール-水(50:50(v/v))の競合スラリーを20
℃で形成すること、を含む、以上の方法のうちのいずれか1つによって調製することがで
きる。
【0089】
具体的な例において、水和物1(形態D)を、Diosna P1/6高剪断造粒機を
使用した湿式造粒法を通じて生成した。4Lのボウル中の約40~90%(w/v)の量
で、200gの化合物Iの形態Aを水と混合した。流体添加前の配合物の初期乾式混合は
、定常因子(2分、関連した試行によるインペラ速度、チョッパーはオフ)として維持さ
れた。4.6~10.3m/秒の先端速度に相当する400~900rpmのインペラ速
度で、20~60の噴霧速度(g×kg/分)を用いた。Roto P10における臨床
製造において、この先端速度範囲の中心点は、Roto P10における先端速度(7.
3m/秒)に対応する。PMA65で製造するとき、対応する先端速度は9.8m/秒で
ある。こね時間は0~2分である。これらのパラメータを変えた実験の結果を以下に示し
、これらの試行はすべて、予備乾燥段階で分析したところ、水和物1(形態D)を生成し
た。試行9のみが乾燥の際に脱水された水和物(形態E)を生成し、他の試行すべてによ
って生成された結晶は、乾燥の際に水和物1として残存した。
【表1】
顆粒を次の設定で流動床システムへと乾燥させた。
●吸気量:60m/時
●吸気温:70℃
●出口生成物温度:22→34℃
●生成物温度:23→50℃
●乾燥時間および乾燥減量(LOD):
○70分LOD=13.2%
○160分LOD=5.1%
○235分LOD=4.9%
○290分LOD=4.3%
LODは、70℃で15分後の重量喪失を測定することによって熱天秤で測定した。
【0090】
顆粒試料を、こね時間後(湿式顆粒)および乾燥工程の間(160および235分)に
採取した。試料は、XRPDおよびTGAによって検査した。すべてのサンプルは、水ス
ラリーによって得られた水和物1(形態D)のそれと一致するXRPDパターンを示した
。TGAデータは、160分後および235分後の試料について同様の重量喪失を示すの
に対し、湿式顆粒剤についてのより多量の重量喪失を、こね時間の終了時に採取された湿
式顆粒について示した。
【0091】
別の具体的な例において、形態Dは、次のように形態Aをスラリー化することによって
生成される。化合物III形態Aの飽和溶液(50mg/ml)をXRPD、DSC、T
GAおよび光学顕微鏡検査について十分な固体残渣で調整した。スラリーを4時間撹拌し
た後、固体を単離し分析した。固体を「湿式」で、XRPDで乾燥した後、および他の技
術で乾燥した後にのみ検査した。スラリーの後に「水和物1」(形態D)と呼ばれる新た
な形態が認められた。材料の乾燥後に形態は同じままであった。
【0092】
別の具体的な例において、形態Dは、5℃でMEK(メチルエチルケトン)/水95/
5(v/v)中で非晶質材料をスラリー化することによる規模拡大生成から製造される。
水中で形態Aをスラリー化することは、形態D材料も生成するが、再結晶の間、試料は粘
着性になり、このことは大規模での撹拌に問題を引き起こし得る。加えて、長時間の撹拌
は、形態Dの材料を完全に結晶化するために必要とされた。高い水分活性の溶媒/水混合
物とともに、入力材料として非晶質材料を使用すると、5℃で一晩撹拌した後に、高結晶
性形態Dの材料が得られた。結晶性および収率についての最良の溶媒としてMEK/水を
選択した。
【0093】
非晶質材料をガラス製反応管に移し、秤量して、882mgの非晶質材料の出発量を得
た。固体を5℃に冷却し、7.5mlの予め冷却したMEK:水95:5(v/v)を添
加し、懸濁液を形成した。およそ10分間の撹拌後、試料を、予め調製した形態D材料と
ともに播種した。試料を5℃(300rpm)で2と1/2日間撹拌した。XRPDによ
る分析の前に、少量の懸濁液を濾過し、10分間風乾した。バルク試料を0.22μmの
ナイロンフィルタで濾過し、フィルタ上で吸引下で約1時間乾燥させた。ケークをスパチ
ュラで破砕し、粉末を雰囲気条件で一晩乾燥させておいた。乾燥させた固体を秤量して、
843.3mgの収量を得た。
【0094】
特徴づけ形態Dの規模拡大は、形態Dの参照ディフラクトグラムと一致する結晶性の粗
い白色粉末を生成した。H NMRおよびKF分析により、この形態が化合物Iのヘミ
コハク酸塩の二水和物であることを確認した。試料は化学的に純粋であり、HPLCによ
り、純度は99.9%であった。顕微鏡検査は、試料が、小さな一次粒子間の間隙のため
に多孔質である、凝集体に配置された非常に小さい粒子からなることを明らかにした。個
々の粒子は、滑らかな表面を有する不規則的な形状であった
【0095】
実施例2:形態Fの調製
形態Fは、例えば、非晶質化合物Iから出発して5℃の水中でスラリーを形成すること
によって調製することができるか、または、20℃の水中、もしくは5℃のエタノール:
水(50:50)中に形態Fとともに形態Aを播種して出発する競合スラリーを形成する
ことができる。
【0096】
A.規模拡大化合物Iの非晶質試料をガラス製反応管に移し、秤量して、913mgの
非晶質材料の出発塊を得た。固体を5℃に冷却し、12.5mlの予め冷却した水を添加
し、濃厚な懸濁液を形成した。およそ10分間の撹拌後、試料に、約10mgの予め調製
した形態F材料とともに播種した。試料を、5℃(300rpm)で2日半の間撹拌した
。XRPDによる分析の前に、少量の懸濁液を濾過し、10分間風乾した。バルク試料を
0.22μmのナイロンフィルタで濾過し、フィルタ上で吸引下で約1時間乾燥させた。
ケークをスパチュラで粉砕し、粉末を雰囲気条件で一晩乾燥させておいた。乾燥した固体
を秤量して、874.5mgの収量を得た。
【0097】
B.特徴づけ。形態Fの規模拡大は、形態Fの参照ディフラクトグラムと一致する結晶
質の微細な白色粉末を生成した。H NMRおよびKF分析は、この形態が化合物Iの
ヘミコハク酸塩の非溶媒和三水和物であることを確認した。試料は化学的に純粋であり、
HPLCによると100%純粋であった。試料は、ゆるく結合した凝集体に配置された非
常に小さな粒子から構成されていた。個々の粒子は滑らかな表面を有する不規則な形状で
あり、細かい結晶で覆われたいくつかの粒子があった。
【0098】
実施例3:形態DおよびFのX線粉末回折分析
A.Bruker AXS C2 GADDS
X線粉末回折(XRPD)パターンは、Cu Kα放射線(40kV、40mA)、自
動XYZステージ、自動試料位置決め用のレーザービデオ顕微鏡およびHiStar2次
元領域検出器を使用する、Bruker AXS C2 GADDS回折計で収集した。
X線光学器械は、0.3mmのピンホールコリメータと連結された単一のゴベル多層ミラ
ーからなる。ビーム拡散、すなわち試料上のX線ビームの有効径はおよそ4mmであった
。θ-θ連続走査モードを20cmの試料-検出器間の距離で採用し、これは3.2°~
29.7°の有効2θ範囲を与える。典型的には、試料は、X線ビームに120秒間曝露
されるであろう。データ収集に使用したソフトウェアは、XP/2000 4.1.43
用のGADDSであり、データはDiffrac Plus EVA v15.0.0.
0を使用して解析および提示した。
【0099】
雰囲気条件下で行う試験のために、示された形態の粉末を用いて試料を平板標本として
調製した。およそ1~2mgの試料をスライドガラス上に軽く押し付けて平坦な表面を得
た。非雰囲気条件下で行う試験のために、非雰囲気条件下で試行された試料は、熱伝導性
化合物を用いてシリコンウェハ上に搭載した。次いで、試料を10℃/分で適切な温度へ
加熱した後、データ収集を開始する前に1分間等温で保持した。
【0100】
B.Bruker AXS D8 Advance
XRPDパターンは、Cu Kα放射線(40kV、40mA)、θ-2θゴニオメー
ター、ならびにV4および受光スリットの拡散を用いたBruker D8回折計、Ge
モノクロメーターおよびLynxeye検出器で収集した。データ収集に使用したソフト
ウェアはDiffrac Plus XRD Commander第2.6.1版であり
、データはDiffrac Plus EVA第15.0.0.0を使用して解析および
提示した。
【0101】
示された形態の粉末を使用して、試料を平板標本として雰囲気条件下で試行した。試料
を、研磨されたゼロバックグラウンド(510)シリコンウェハへと切断された空洞に静
かに詰めた。分析中に試料をそれ自体の平面内で回転させた。データ収集の詳細は次のと
おりである。
角度範囲:2~42°2θ、ステップサイズ:0.05°2θ、収集時間:0.5秒/ス
テップ。
【0102】
C.PANalytical Empyrean
XRPDパターンは、透過幾何的性質におけるCu Kα放射線(45kV、40mA
)を使用してPANalytical Empyrean回折計で収集した。集束鏡を備
えた0.5°スリット、4mmマスクおよび0.04rad Sollerスリットを入
射ビームに使用した。回折ビーム上に配置されたPIXcel3D検出器に、受光スリッ
トおよび0.04rad Sollerスリットを取り付けた。データ収集に使用するソ
フトウェアは、X‘Pert Data Collector第5.3版であり、データ
をDiffrac Plus EVA第15.0.0.0版またはHighscore
Plus第4.5版を用いて解析および提示した。
【0103】
試料を調製し、金属または透過モードのMillipore 96ウェルプレートのい
ずれかで分析した。金属ウェルプレートは、2枚の金属板の間に挟まれたX線透過フィル
ムからなる。乾燥粉末(約5mg)を分析のためにウェルに軽く押し込んだ。Milli
poreプレートを使用して、少量の懸濁液をプレートに直接添加した後、軽い真空下で
濾過することにより、懸濁液から固体を単離および分析した。
【0104】
金属板の走査モードはゴニオ走査軸を用いたのに対し、Millipore板には2θ
走査を用いた。
【0105】
データ収集の詳細は次のとおりである。角度範囲:2.5~32.0°2θ、ステップ
サイズ:0.0130°2θ、収集時間:2.07分の総収集時間。より長い方法も使用
した:角度範囲:2.5~42.0°2θ、ステップサイズ:0.0130°2θ、収集
時間:8.0分の総収集時間。
【0106】
可変温度XRPD(VT-XRPD)実験は、熱伝導性化合物とともに(シリコンイン
サートを有する)金属試料ホルダー上に試料を搭載して行った。次いで、試料を空気中で
5℃/分で適切な温度へと空気中で加熱した。試料を選択された温度で8分法を用いて分
析した(上述のとおり)。
【0107】
形態Dおよび形態Fについての結果。形態DについてのXRPDを図1Aに示し、形態
Fについては図1Bにある。形態Dについては、VT-XRPDは、加熱の際に形態Eへ
と徐々に変換する(40~60C)のを示し、これは、35℃への冷却の際に形態Eが形
態Dに戻ったため可逆的であった。追加の加熱(80~95C)は、形態Eを形態Aへと
変換させた。形態Fについては、VT-XRPDは70Cで結晶度の喪失、75Cまでに
部分的結晶形態Aへの変換を示したが、形態Aへと完全に結晶化するためにさらなる加熱
(100Cまで)を必要とした。
【0108】
実施例4:単結晶X線回折(SCXRD)
データは、Oxford Cryosystems Cobra冷却装置を装備したR
igaku Oxford Diffracion Supernova Dual S
ource,Cu at Zero,Atlas CCD回折計で収集した。データは、
CuKα放射線を用いて収集した。構造は、SHELXTL(Sheldrick,20
13)プログラムを用いて解明され、Bruker AXS SHELXTL一式(V6
.10)の一部としてSHELXTLプログラムで精密化した。別段の記載がない限り、
炭素に結合した水素原子は幾何学的に配置されており、ライディング等方性変位パラメー
タで精密化させておいた。ヘテロ原子に結合した水素原子は、差分フーリエ合成に位置し
ており、等方性変位パラメータで自由に精密化させておいた。形態DのSCXRDを図1
Dに示す。
【表2】
【表3】
【0109】
形態DについてのX線回折パターンの代表的なピークは、Cu-Kα放射線を使用した
約18.7、26.5、27.0、27.5および27.8度2θにおけるピークを含む

【表4】
【0110】
形態EについてのX線回折パターンの代表的なピークは、Cu-Kα放射線を使用した
約9.2および10.5度2θでのピークを含む。
【表5】
【0111】
CarniauxのUS8,697,876に報告されている化合物I形態Aの観察さ
れたピークおよび代表的なピークについてのデータをそれぞれ表5および表6に、参照の
ために提示する。
【表6】
【表7】
【0112】
実施例5:形態A、DおよびEについて選択されたXRPDピークの比較分析
比較のために、図1E図1Gは形態D(青色の線)、形態A(緑色)、形態E(赤色
)の部分的XRPDパターンを示す。形態Aについては、およそ(±0.2°2θ)7.
7°2θに特徴的なピークが見られる。形態Dについては、およそ(±0.2°2θ)1
8.7°2θ、26.5°2θ、27.0°2θ、27.5°2θおよび27.8°2θ
におけるピークが特徴的である。形態Eについては、およそ(±0.2°2θ)9.2°
2θおよび10.5°2θに特徴的なピークが見られる。
【0113】
先に提示したデータによって証明されるように、化合物Iの形態D、E、およびFは各
々、化合物Iの形態Aからこれらの形態の各々を区別するために使用することができる独
特のXRPDパターンを有する。
【0114】
実施例6:核磁気共鳴(NMR)
オートサンプラーを装備され、DRX400コンソールによって制御されたBruke
r400MHz機でNMRスペクトルを収集した。自動化実験は、標準的なBruker
負荷実験を用いてTopspin第1.3版を用いて実行するICON-NMR第4.0
.7版を用いて行った。非ルーチン分光法については、データはTopspin単独の使
用を通じて得られた。別段の記載がない限り、試料は、DMSO-d6中で調製した。A
CD Spectrus Processor2014を使用してオフライン解析を行っ
た。
【0115】
図5に示すように、溶解形態DまたはFの溶液状態H-NMRスペクトルは、メチル
エチルケトンから結晶化した化合物Iのヘミコハク酸塩と一致し(0.03モル当量、0
.4重量%で存在)、0.5モル当量のコハク酸を示す。
【0116】
実施例7:熱分析
(A)示差走査熱量測定(DSC)
DSCデータは、50位オートサンプラーを装備したTA Instruments
Q2000で収集した。熱容量についての較正はサファイアを使用して行い、エネルギー
および温度についての較正は公認インジウムを使用して行った。典型的には、ピンホール
アルミニウムパン中の各試料0.5~3mgを25℃から250℃まで10℃/分で加熱
した。50ml/分での乾窒素のパージを試料上で維持した。
【0117】
調節温度DSCは、60秒(周期)毎に2℃/分の基礎加熱速度および±0.64℃(
振幅)の温度調節パラメータを使用して実施した。
【0118】
機器制御ソフトウェアは、Advantage for Qシリーズ第2.8.0.3
94版およびThermal Advantage第5.5.3版とし、データはUni
versal Analysis第4.5Aを用いて解析した。
【0119】
(B)熱重量分析(TGA)
TGAデータは、16位オートサンプラーを装備したTA Instruments
Q500 TGAで収集した。機器は、認定アルメルおよびニッケルを使用して温度較正
した。典型的には5~10mgの各試料を予め風袋引きしたアルミニウムDSC皿に載せ
、雰囲気温度から350℃まで10℃/分で加熱した。試料上で60ml/分の窒素パー
ジを維持した。機器制御ソフトウェアはAdvantage for Qシリーズ第2.
5.0.256版およびThermal Advantage第5.5.3版とし、デー
タはUniversal Analysis第4.5A版を使用して解析した。
【0120】
(C)形態Dおよび形態FについてのDSCおよびTGAの結果
形態DのDSCおよびTGAの結果の重ね合わせを図2に示し、形態Fについては図3
に示す。
【0121】
形態Dについて、TGAは、200C付近で分解しながら、2.0モル当量の水に相当
する25~110Cから7.5重量%の喪失を示した。DSC分析は、53.1C(-1
58.2J/g)で幅広い吸熱開始を示し、これは、水の喪失、再結晶の際の92.1C
(-24.9J/g)の幅広い発熱開始、および197.9C(-119.0J/g)で
の融解を反映する急激な吸熱開始を示した。
【0122】
形態Fについて、TGAは25~150Cでの11.4重量%の喪失を示し、3.1モ
ル当量の水に相当し、200C付近で分解した。DSC分析は71.2C(約198.4
J/g)で幅広い吸熱開始、95.7C(-6.4J/g)での浅い吸熱(2ピーク)の
開始、103.4C(26.9J/g)での浅い吸熱(2ピーク)の開始および197.
8C(-114.4J/g)での急激な吸熱開始を示し、融解を反映する。
【0123】
実施例8:顕微鏡検査
A.偏光顕微鏡(PLM)
A.1.Leica LM/DM偏光顕微鏡
画像捕獲のためにデジタルビデオカメラを備えたLeica LM/DM偏光顕微鏡で
試料を試験した。少量の各試料をスライドガラス上に置き、油浸でマウントし、カバーガ
ラスで覆い、個々の粒子を可能な限り分離した。試料をλ偽カラーフィルタに連結した適
切な倍率および部分偏光で観察した。
【0124】
A.2.ニコンLM/DM偏光顕微鏡
デジタルビデオカメラを画像捕獲のためのDS Camera制御部DS-L2に接続
してニコンSMZ1500偏光顕微鏡で試料を試験した。少量の各試料をスライドガラス
上に置き、油浸でマウントし、個々の粒子をできるだけ分離した。試料をλ偽カラーフィ
ルタに連結した適切な倍率および部分偏光で観察した。
【0125】
B.走査電子顕微鏡(SEM)
データをPhenom Pro走査型電子顕微鏡で収集した。導電性両面接着テープを
使用して少量の試料をアルミニウムスタブ上に載せた。スパッタコーター(20mA、1
20秒)を用いて金の薄層を塗布した。
【0126】
実施例9:カールフィッシャー滴定(KF)による水の測定
各試料の水分含有量は、Hydranal Coulomat AGオーブン試薬およ
び窒素パージを使用して、851Titrano Coulometerを用いて150
℃でMetrohm874オーブンサンプルプロセッサで測定した。秤量した固体試料を
密封試料バイアルに入れた。滴定あたりおよそ10mgの試料を使用し、二つ組測定を行
った。Tiamo第2.2版を使用したデータ収集と分析。
【0127】
形態Dについては、2.0モル当量の水に相当する7.6重量%の喪失が検出され、し
たがって二水和物形態と確定とした。形態Fについては、3.2モル当量の水に相当する
11.6重量%の喪失が検出され、したがって三水和物形態と確定した。
【0128】
実施例10:HPLCによる化学純度決定
図4Aに示すように、形態DのHPLCトレースは、99.93%の化学純度を示し、
図4Bにおいては、形態FのHPLCトレースは、99.95%の化学純度を示した。
【0129】
純度分析は、ダイオードアレイ検出器を備えたAgilent HP1100シリーズ
のシステムで、ChemStationソフトウェア第B.04.03版を用いて、以下
に詳述する方法を用いて行った。
【表8】
【0130】
実施例11:動的蒸気吸着(DVS)
吸着等温線は、DVS Intrinsic Controlソフトウェア第1.0.
1.2版(または第1.0.1.3版)によって制御されるSMS DVS Intri
nsic水分吸着分析装置を使用して得た。試料温度は、機器制御により25℃に維持し
た。湿度は、乾窒素と湿窒素の流れを混合し、総流量を200ml/分とすることによっ
て制御した。相対湿度は、試料近くに配置された較正済みのRotronicプローブ(
1.0~100%RHの動的範囲)によって測定した。%RHの関数としての試料の重量
変化(質量緩和)は、微量天秤(精度±0.005mg)によって常に監視した。典型的
には、5~20mgの試料を雰囲気条件下で風袋引きメッシュステンレススチールバスケ
ットに入れた。試料を40%RHおよび25℃(典型的な室内条件)で負荷および負荷解
除した。吸湿等温線は、以下に概略するように実施した(2回の走査で1回の完全なサイ
クルを付与)。標準等温線は、0~90%RHの範囲にわたって10%RHの間隔で25
℃で実施した。データ分析は、DVS Analysis Suite第6.3版を用い
てマイクロソフトエクセルを用いて実施した。
【表9】
【0131】
結果.
形態Dは、10%RH工程中に大きな重量喪失を示したが、湿度が20%RHに上昇す
るとすぐに重量が増加した。DVS実験からの残渣は、主として形態Dであったが、形態
Fと一致するいくつかのピークが見られ、形態Dは、低い相対湿度では完全に安定ではな
いことを示した。
【0132】
形態Fは、実験がタイムアウトする前に9.6重量%の喪失(2.6モル当量の水)が
観察されたとき、最初の0%RH工程まで質量の変化をほとんど示さなかった(図7)。
試料を最大ステップ時間の6時間より長く0%RHで保持した場合、3モルの水が完全に
喪失されるであろう可能性がある。湿度が上昇すると、重量増加に続いて(結晶化事象の
典型である)重量喪失があったとき、試料は70%RHまで着実に重量が増加した。次い
で、十分な水を得ると、70%RH工程で結晶化した。第2のサイクルにおける挙動は類
似していたが、全体的な重量喪失を伴っており、結晶化した材料が二水和物であって三水
和物出発材料ではないことと一致していた。このことは、DVS実験からの残渣(これは
カリカリした固体であった)を分析することによって確認され、主として形態Dであった
が一部は形態Fであった。これらの結果は、形態Fが低い相対湿度で安定ではないことを
示している。
【0133】
実施例12:熱力学的水中溶解度
方法.水中溶解度は、化合物の親自由形態の23mg/ml以上の最大終濃度を得るた
めに、水中で十分な化合物を懸濁することによって決定した。懸濁液を37℃で24時間
平衡化し、次いでpHを測定した。次いで、懸濁液をガラス繊維Cフィルタで濾過した。
次いで、濾液を適切な係数で希釈した。定量化は、DMSO中およそ0.2mg/mlの
標準溶液に関してHPLCにより行った。異なる容積の標準物質、希釈および未希釈試料
溶液を注入した。標準注入における主ピークと同じ保持時間で認められたピークの積分に
よって決定されたピーク面積を用いて溶解度を計算した。引用した溶解度は、化合物Iの
親の「遊離型」についてのものである。
【表10】
【0134】
結果
37℃の水中で形態Dをスラリー化しても形態の変化は生じず、熱力学的溶解度は6.
2~6.4mg/mlで測定された(遊離形態、水およびヘミコハク酸塩二水和物の対イ
オン含有量に対して補正)。三水和物形態Fへの変換はこの温度では生じなかった。濾過
されていない飽和溶液のpHは7.0であった。
【0135】
37℃の水中で形態Fをスラリー化すると形態Dへの変換が生じた。最初に試料は非常
に可溶性であった(形態Fの動的溶解度約32mg/ml)が、経時的に形態Dと一致す
る固体がゆっくり沈殿し始めた。この試料(形態D)の熱力学的水中溶解度を24時間後
に8.6mg/mlで測定した(遊離形態、水およびヘミコハク酸塩二水和物の対イオン
含有量に対して補正)。形態Fは形態Dに変換すると、形態Fはこれらの条件下で安定で
はないので、37℃で形態Fの熱力学的水中溶解度の値を測定することは可能ではない。
濾過していない飽和溶液のpHは7.2であった。
【0136】
本発明をその発明を実施するための形態とともに説明してきたが、上述の説明は、本発
明の範囲を例示することを意図しており、添付の特許請求の範囲の範疇により定義される
本発明の範囲を制限しない。他の態様、利点、および改変は、以下の特許請求の範囲の範
疇内である。添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することな
く、形態および詳細の様々な変更がなされることがあることは、当業者によって理解され
るであろう。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7