(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123680
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】高周波プラズマ発生装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20230829BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20230829BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20230829BHJP
C23C 16/509 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
H05H1/46 M
H01L21/205
H01L21/302 101B
C23C16/509
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2023104059
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】303034908
【氏名又は名称】村田 正義
(72)【発明者】
【氏名】村田正義
(57)【要約】 (修正有)
【課題】平行平板型(容量結合型)電極を用いた高周波プラズマ発生装置は、給電棒からプラズマ生成領域へ供給される高周波電力波が伝播路の途中の壁で反射し、電力損失が発生してジュール熱が発生するという問題を抱えている。また、大面積プラズマの均一生成は困難という問題がある。これらの問題を解決可能な高周波プラズマ発生装置を提供する。
【解決手段】矩形平行平板型(容量結合型)の高周波プラズマ発生装置に関し、前記非接地電極の前記接地電極に対向する面の角部と辺に高周波電源の出力電圧が印加される給電点15fが設けられ、電流導入端子12fと前記給電点15fを結ぶ給電導体13fは前記電流導入端子12fの芯線の表面積より大きい表面積を有する金属板で形成されることを特徴とする。これにより、電送路の電力損失が抑制され、ゼロ次のベッセル関数型の電界分布が得られ、プラズマの均一化が可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性ガスの供給系及び排気系を備え、床板と壁板と天板で構成される反応容器と、前記反応容器に電気的に絶縁された非接地電極と、前記非接地電極に対向して配置される電気的に接地された接地電極と、高周波電源と整合器と真空装置用電流導入端子と給電導体を有する高周波電力供給手段と、を備え、前記非接地電極に設けられた複数の給電点に前記高周波電源の出力である高周波電力を供給し、前記非接地電極と前記接地電極に挟まれたプラズマ生成領域でプラズマを発生させ、前記プラズマ生成領域に収容された基板にプラズマ処理を施す高周波プラズマ発生装置において、
前記非接地電極は、前記反応ガスを導入する反応ガス導入口と前記反応ガスを拡散させる空洞と前記空洞から輸送される前記反応ガスを噴射する反応ガス噴射孔を有する矩形平板型のシャワープレート電極であり、前記給電点は、前記シャワープレート電極の前記接地電極に対向する面の4つの角部と、前記シャワープレート電極の前記接地電極に対向する面の4つの辺のそれぞれの辺に少なくとも1つずつ設けられ、前記真空装置用電流導入端子は、電圧が印加される芯線と、前記芯線を囲うように配置される接地された管状の外部導体と、前記芯線と前記外部導体の間に挿入された絶縁材で形成され、
前記給電導体は、前記真空装置用電流導入端子の前記芯線の表面積より大きい表面積を有する金属板で形成され、且つ前記真空装置用電流導入端子の前記芯線と前記給電点を接続することを特徴とする高周波プラズマ発生装置。
【請求項2】
前記給電体を形成する金属板は、前記金属板の表面積が前記高周波電源で発生された電力の流れの上流側から下流側へ向かうに従って、順次大きくなるように形成されることを特徴とする請求項1に記載の高周波プラズマ発生装置。
【請求項3】
前記給電導体を形成する金属板は、三角形の形態を有する三角形金属板で形成され、前記三角形金属板の頂点と前記真空装置用電流導入端子の芯線が接続され、前記三角形金属板の底辺と前記シャワープレート電極の前記接地電極に対向する面の端部が接続されることを特徴とする請求項2に記載の高周波プラズマ発生装置。
【請求項4】
前記給電導体を形成する金属板は、半円形の形態を有する半円形金属板で形成され、前記半円形金属板の頂点と前記真空装置用電流導入端子の芯線が接続され、前記半円形金属板の辺と前記シャワープレート電極の前記接地電極に対向する面の端部が接続されることを特徴とする請求項2に記載の高周波プラズマ発生装置。
【請求項5】
前記反応容器は、前記真空装置用電流導入端子の前記芯線から受電した高周波電力を前記給電点に送電する電力伝送路を備え、前記電力伝送路は、前記給電導体と、前記給電体と前記反応容器の前記壁板の間に配置される導波板で形成され、前記導波板は前記反応容器の前記壁板と電気的に接続され、前記壁板に対して傾斜して配置されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の高周波プラズマ発生装置。
【請求項6】
前記高周波電源は、周波数13.56MHz、又は27.12MHz、又は40.68MHz、又は54.24MHz、又は67.8MHzを発生することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の高周波プラズマ発生装置。
【請求項7】
前記反応性ガスは、少なくともシランガス又は有機シランガスを含むことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の高周波プラズマ発生装置。
【請求項8】
前記反応性ガスは、少なくとも水素又は酸素又は塩素を含むことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の高周波プラズマ発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大面積基板を対象にした高周波プラズマ発生装置に関する。特に、プラズマCVDによる薄膜形成、プラズマALDによる薄膜形成及びプラズマエッチングによる微細加工に用いられる大面積高周波プラズマ発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶デイスプレイ、有機ELデイスプレイ及び各種半導体デバイス等の製造には、プラズマCVD装置、プラズマALD装置及びプラズマエッチング装置等が活用されている。
近年、プラズマCVD装置、プラズマALD装置及びプラズマエッチング装置の応用分野では、液晶ディスプレイパネル及び有機ELディスプレイパネルの大画面化、高品質化、低価格化のニーズが更に強くなり、それらの生産に用いるマザーガラスの大型化への取り組みが、鋭意進められている。なお、マザーガラスの寸法は、第10世代:2,880mmx3,100mm、第11世代:3,000mmx3,320mmと言われている。
プラズマ応用分野において、プラズマ処理の高品質化を図るには、プラズマによるダメージ(イオン衝撃による基板の損傷)を抑制することが必要である。プラズマによるダメージ(イオン衝撃による基板の損傷)を抑制する手段として、電源周波数を工業周波数の13.56MHzより高くすることが効果的であることが、一般に知られている。
しかしながら、電源周波数を高くすると、工業周波数である13.56MHz(真空中での波長:22.12m)の場合に比べて、波長が短くなり、プラズマ生成領域である電極間に供給電力の定在波が発生する。前記定在波の発生は、均一なプラズマの生成を阻害する、という問題を起こす。この定在波に起因するプラズマの不均一化という問題は、プラズマを励起する電磁波固有の現象であることから、高周波プラズマ発生装置では避けて通れない問題である。
【0003】
特許文献1には、容量結合型平行平板プラズマ処理装置の電源の高周波数化の問題に関し、以下に示す主旨の記述がある。
従来、上部電極への給電は給電棒を介して行っており、給電棒の周囲をチャンバーと略同一寸法の箱で覆って電磁波を遮蔽している。しかし、給電棒のインダクタンスが非常に大きいため、上部電極への供給高周波電力の周波数が高くなると、プラズマからの反射波の高調波が給電棒のインダクタンス成分のために反射され、さらに給電棒が設置されている箱の中の至るところで反射し、反射した高調波がプラズマに接触している上部電極表面に戻る。電極径が大きい場合、電極表面に定在波が生成されやすい。その結果、電極表面の電界分布が不均一になる。電極径が250mm~300mmの場合に、電極表面に定在波が生成されやすく、このような定在波が生じると電極表面の電界分布が不均一になる、という問題がある。この問題を解決するために、特許文献1は、板状部材を非接地電極に対向配置し、且つ該電極にローパスフィルターを設けることにより給電棒のインダクタンスを低下させるとともに、高調波をグランドに落とすことを特徴とするプラズマCVD装置を提案している。
【0004】
特許文献2には、容量結合型平行平板プラズマ処理装置の電源の高周波数化の問題に関し、以下に示す主旨の記述がある。
印加周波数を上昇させると、高周波電流は電極のごく表面しか流れないようになり、給電棒から電極に供給された高周波電力は、電極裏面を通って電極の円周方向に至り、電極のプラズマ接触面を円周側から中心に向かって徐々に供給される。また、上部電極の円周部分は絶縁体(容量成分)で囲まれており、絶縁体の外側のチャンバーは保安接地されている。このため、上部電極のプラズマ接触面で干渉作用により定在波が形成され、電極径方向での電界分布が不均一になる、という問題がある。この問題を解決するために、特許文献2は、給電部材の給電位置を移動させる移動機構を有する(給電棒の位置を時間的に変化させる)ことを特徴とするプラズマCVD装置を提案している。
【0005】
特許文献3には、容量結合型平行平板プラズマ処理装置の電源の高周波数化の問題に関し、以下に示す主旨の記述がある。
基板の大型化に伴う電極の大型化には、定在波の問題がある。高周波電源として、通常13.56MHz又は27.12MHzの周波数の高周波電源が用いられ得る。基板のサイズが1m×1m以下では、堆積すべき膜の種類に応じて成膜条件を最適化することにより、得られる膜厚分布は±10%以下にすることができる。しかし、基板サイズが1m×1m以上になると、定在波の発生により、膜厚分布の所望の均一性を確保することができなくなる、という問題がある。この問題を解決するために、特許文献3は、非接地電極に複数個の誘電体が埋め込まれ、 前記電極に供給する高周波電力の周波数の波長をλとする時、電極の中心を中心とする直径がλ/8~λ/4の範囲に設定された第1の円形領域では、前記電極の表面における金属の表面積と前記誘電体の表面積の割合が7:3~5:5であることを特徴とするプラズマCVD装置を提案している。
【0006】
特許文献4には、容量結合型平行平板プラズマ処理装置の電源の高周波数化の問題に関し、以下に示す主旨の記述がある。
従来のプラズマCVD装置では、シャワープレート電極の裏側の面(プラズマ発生領域から見て裏側の面)の中心1点を介して高周波電圧を印加している。この従来の方法では、該シャワープレート電極の面積が増大すると、成膜ガスを均一にプラズマ化することが原理的に困難である。これは高周波特有の定在波の問題である。この問題を解決するために、特許文献4は、シャワーヘッド電極の構造が、原料ガスを大面積状態に拡散させ、流れ分布を均一化する手段を内包した容器状のヘッド本体と、前記ヘッド本体の開口を覆い、ガス噴出孔を備えた一枚のシャワープレートを備えること、複数の電源装置を有し、各前記電源装置には位相制御装置が接続され、前記位相制御装置は、各前記電源装置が出力する高周波電圧の位相をそれぞれ制御するように構成され、各前記電源装置は、前記ヘッド本体の底面に中心から等距離で異なる位置に配置された給電点にそれぞれ接続されること、を特徴とするプラズマCVD装置を提案している。
【0007】
他方、電源周波数がVHF帯域(30MHz~300MHz)であるVHFプラズマCVD装置に関し、定在波に起因する膜厚の不均一性の問題を解決する方法が、いくつか提案されている。大まかに分類すると、次に示す2つの方法に分けられる。なお、以下に示す数式は、電源から電極に供給される電力の電圧波の伝搬を、一次元的に表現している。
第1の方法は、位相変調法である。例えば、特許文献5に開示された方法である。この方法は、互いに対向する電極端面に設けられた、例えば、梯子型電極の対向する2つの辺に設けられた給電点から連続波の高周波電力の電圧波W1(x、t)とW2(x、t)を供給し、該高周波電力の電圧波W1(x、t)とW2(x、t)の位相差Δθを時間的に変調させる方法である。原理的には、下記式(1)のΔθを時間的に変化させる、例えば、Δθ=sin(Ωt)で変動させるものである。ただし、Ωは角周波数である。
W1(x、t)=Asin{ωt+2πx/λ+θ1}
W2(x、t)=Asin{ωt-2πx/λ+θ2}
ただし、Aは振幅、ωは角周波数、xは電極端面からの伝搬距離、λは電力波の波長、tは時間、θ1、θ2は位相である。
一対の電極間の電力の強さは、下記式(1)で表されるI(x)の分布となる。 II(x)∝cos2{2π(x-L0/2)/λ-Δθ/2} ・・・(1)
ただし、L0は一対の電極の長さ、Δθ=θ1―θ2である。
この方法では、式(1)のΔθを、Δθ=sin(Ωt)で変動させることにより、プラズマの強い部分(極大値の位置)を時間的、空間的に、変動させる。その結果、平均化されるので、プラズマの強さの分布が均一化される。なお、式(1)で表されるプラズマの強さの分布は、Δθを変動しなければ、時間的に不変であり、cos2{2π(x-L0/2)/λ-Δθ/2}となる。
上記位相変調法は、梯子型電極の対向する2つの辺の、互いに対向した地点に給電点を設けて互いに対向して進行する電圧波を供給する。その結果、この方法により発生される定在波の形態は、該電極の中心を通り、且つ前記給電点が配置された前記2つの辺に平行な線に対して対称形となり、且つ前記2つの辺に直交する方向を軸とする正弦波(あるいは余弦波)状の特性を持つ、という特徴がある。
なお、上記位相変調法のプラズマCVDによるSi系膜の形成への応用において、サイズ1.4mx1.0mx厚み2~4mmのガラス基板に対し、膜の均一性±17~18%のデータが得られたことが知られている。
【0008】
第2の方法は、定在波重畳法である。この方法は、例えば、特許文献6及び特許文献7に開示されているように、互いに対向する矩形電極の端面に設けられた対向する2つの給電点から第1の時間帯に、電圧波W11(x、t)と電圧波W12(x、t)を供給して第1の定在波を生成し、前記第1の時間帯と異なる第2の時間帯に、電圧波W21(x、t)と電圧波W22(x、t)を供給して第2の定在波を生成し、その2つの定在波を重畳させることを特徴とする。この方法は、時間帯が異なる2つのパルス状電圧波を用いることにより、実現される。
この方法は、電圧波W11(x、t)とW12(x、t)の位相を同相状態に設定し、即ち、式(1)のΔθ=θ1―θ2をΔθ=0に設定し、第1の時間帯に次式(2)で表される定在波を発生させる。その際、プラズマの強さは式(2)になる。
I1(x、t)∝cos2{2π(x-L0/2)/λ-Δθ/2}
=cos2{2π(x-L0/2)/λ} ・・・(2)
上記式(2)のプラズマ発生時間と異なる第2の時間帯に、電圧波W11(x、t)とW
12(x、t)の位相を逆相状態に設定し、即ち、式(1)のΔθ=θ1―θ2をΔθ=180°に設定し、第2の時間帯に次式(3)で表される定在波を発生させる。その際、プラズマの強さは式(3)になる。
I2(x、t)∝cos2{2π(x-L0/2)/λ-Δθ/2}
=cos2{2π(x-L0/2)/λ-180°/2}
=sin2{2π(x-L0/2)/λ} ・・・(3)
発生時間が異なる2つの定在波を重畳することにより、一定値のプラズマ強度分布が形成される。即ち、式(2)で表される余弦波状の電界分布で生成されたプラズマと、式(3)で表される正弦波状の電界分布で生成されたプラズマを重畳させる。その結果、次式(4)で表される強さ一様なプラズマが生成される。
I(x、t)∝cos2{2π(x-L0/2)/λ}
+sin2{2π(x-L0/2)/λ}
=1 ・・・(4)
上記定在波重畳法は、矩形電極の対向する2つの辺の、互いに対向した地点に給電点を設けて互いに対向して進行する電圧波を供給する。その結果、この方法により発生される定在波の形態は、該矩形電極の中心を通り、且つ前記給電点が配置された前記2つの辺に平行な線に対して対称形となり、且つ直交する方向を軸とする正弦波(あるいは余弦波)状の特性を持つ、という特徴がある。
なお、上記定在波重畳法は、高周波電源としてパルス変調が可能で、且つ位相制御が可能という仕様を有する装置が必要なため、一般的な高周波電源に比べて、コストが高いという短所がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000-331996
【特許文献2】特開2001-060581
【特許文献3】特開2006-324603
【特許文献4】特開2005-220368、
【特許文献5】特許3316490
【特許文献6】特許4207131
【特許文献7】特許5489803
【0010】
【非特許文献1】高橋秀俊、電磁気学(1963)、裳華房、319-322
【非特許文献2】R.P.Feynman, R.B.Leightion, M.L.Sands著(戸田盛和訳)、ファインマン物理学、四:電磁波と物性(1971)、岩波書店、24-28
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来、高周波プラズマ発生装置に関する問題として、定在波に起因するプラズマの不均一化の問題が指摘されている。この定在波の問題を解決可能な装置としては、例えば、特許文献5に記載の上記の位相変調法を用いる高周波プラズマ発生装置、そして、例えば、特許文献6及び特許文献7に記載の上記の定在波重畳法を用いる高周波プラズマ発生装置がある。しかしながら、これらの装置は、前記給電点に供給する電力の電圧の位相を所定の条件に制御することは可能であるが、前記一対の電極の端部から反射して戻る反射波の制御は出来ない。反射波を弱くするために供給電力を弱い条件で応用する場合、互いに対向する地点から供給される電力が弱くなり、正弦波(あるいは余弦波)状の定在波が形成されない。その結果、前記一対の電極端部からの反射波の影響を避けることは困難であり、プラズマの均一化が困難という問題がある。
また、従来の平行平板電極型の高周波プラズマ発生装置では、前記プラズマの不均一化の問題の他に、プラズマ発生のための電力供給系における電力損失の発生及びジュール熱の発生という問題がある。即ち、非接地電極に設けられた給電点からプラズマ生成領域へ電力を送電する電力伝播路(電力伝送路)において、以下に説明するように、電磁波の反射に係わる電力損失の発生及びジュール熱の発生という問題がある。
【0012】
例えば、特許文献1及び特許文献2に記載の高周波プラズマ発生装置は、
図11に示されるように、床板100a-2と壁板100a-3と天板100a-1で構成される円筒型の真空容器100a、円板型の非接地電極101a及び円板型の接地電極102aからなる一対の平行平板型電極(容量結合型平行平板電極)、高周波電源103a、整合器104a、給電棒105a、給電点106aを備え、該一対の平行平板型電極間にプラズマ107aを生成し、基板108aにプラズマ処理を行う。なお、非接地電極101aは、図示しない空洞を有する非接地電極本体と図示しないガス噴出孔を有するシャワープレート電極で構成される。
図11に示されるプラズマ発生装置において、高周波電源103aの出力である高周波電力は、給電棒105aから放射され、円板型の天板100a-1と円板型の非接地電極101aの裏面(プラズマ107aから見て裏側の面)の間、及び該真空容器100aの壁板100a-3と該非接地電極101aの側面の間を伝播し、非接地電極101aと接地電極102aの間に供給される。即ち、
図11において、給電棒105aから放射された高周波電力波は、円筒型の真空容器100aの内壁と非接地電極101aの間の空間を電磁波として伝播する。なお、真空容器100aの内壁と非接地電極101aの間の空間には、一般にセラミックス及び電気絶縁樹脂等の誘電体が配置され、該空間での放電発生が抑制される。また、誘電体を配置しない場合には、真空容器100aの内壁と非接地電極101aの間の距離dを放電抑制の条件を満たす所要の値に設定され、該空間での放電が抑制される。なお、放電開始の電圧は、圧力pと距離dの積p・dに依存する(パッシェン則)ことが知られている。
給電棒105aから放射された高周波数の電力波は、
図11に電磁波Wi11、Wi12として示されるように、給電棒105aから天板100a-1と非接地電極101aの間を、真空容器100aの壁板100a-3へ向けて進行し、その大部分は真空容器100aの壁板100a-3で反射されて退行波Wr11、Wr12として退行し、前記真空容器100aの他方の壁板100a-3との間で反射を繰り返す。その結果、給電棒105aから放射された電力波の大部分は、真空容器100aの天板100a-1と非接地電極101aに挟まれた空間で消費され、ジュール熱が発生する。電磁波が金属板にその法線方向から入射した場合の反射率は80%以上と高いことから、
図11に示されるプラズマ発生装置では、給電棒105aから放射された高周波数の電力波の大部分は、前記天板100a-1と非接地電極101aの間の空間で消費され、ジュール熱が発生する。
前記電磁波Wi11、Wi12の一部分は、回折して進行方向を90°曲げて前記真空容器100aの壁板100a-3に沿って進み、非接地電極101aと接地電極102aの間に電力波109aa、109abとして伝播する。そして、プラズマ107aを生成し基板のプラズマ処理に用いられる。
したがって、特許文献1及び特許文献2に記載のプラズマ発生装置では、非接地電極101aの裏面に設けられた給電点とプラズマ生成領域を結ぶ電力伝播路(電力伝送路)における電力損失の発生及びジュール熱の発生という問題がある。
【0013】
例えば、特許文献3及び特許文献4に記載の高周波プラズマ発生装置は、
図12に示されるように、床板100b-2と壁板100b-3と天板100b-1で構成される矩形筒型の真空容器100b、矩形板型の非接地電極101b及び矩形板型の接地電極102bからなる一対の平行平板型電極(容量結合型平行平板電極)、複数の高周波電源103b-1、103b-2、図示しない103b-3、図示しない103b―4、複数の整合器104b-1、104b-2、図示しない104b-3、図示しない104b-4、電極中心から等距離で異なる複数の位置に配置された複数の給電棒105b-1、105b-2、図示しない105b-3、図示しない105b―4、複数の給電点106b-1、106b-2、図示しない106b-3、図示しない106b-4、を備え、該一対の平行平板型電極間にプラズマ107bを生成し、基板108bにプラズマ処理を行う。なお、非接地電極101bは、図示しない空洞を有する非接地電極本体と、図示しないガス噴出孔を有するシャワープレート電極で構成される。
図12に示される高周波プラズマ発生装置において、高周波電源103b-1、103b-2の出力である高周波電力は、給電棒105b-1、105b-2から放射され、矩形型の天板100b-1と矩形型の非接地電極101bの裏面(プラズマ107bから見て裏側の面)の間、及び該真空容器100bの壁板100b-3と該非接地電極101bの側面の間を伝播し、該非接地電極101bと接地電極102bの間に供給される。
即ち、
図12において、給電棒105b-1、105b-2から放射された高周波数の電力波は、天井板100b-1と非接地電極101bの間の空間を電磁波として伝播する。なお、天井板100b-1と非接地電極101bの間の空間には、一般にセラミックス及ぶ電気絶縁樹脂等の誘電体が配置され、該空間での放電が抑制される。また、誘電体を配置しない場合には、天井板100b-1と非接地電極101bの間の距離dが放電抑制の条件を満たす所要の値に設定され、該空間での放電が抑制される。なお、放電開始の電圧は、圧力pと距離dの積p・dに依存する(パッシェン則)ことが知られている。
給電棒105b-1、105b-2から放射された電力波は、
図12に電磁波Wi21、Wi22として示されるように、給電棒105b-1、105b-2から天井板100b-1と非接地電極101bの間を、真空容器100bの壁板100b-3へ向けて進行し、その大部分は該壁板100b-3で反射されて退行波Wr21、Wr22として退行し、真空容器100bの他方の壁板100b-3との間で反射を繰り返す。その結果、給電棒105b-1、105b-2から放射された電力波の大部分は、真空容器100bの天板100b-1と非接地電極101bに挟まれた空間で消費され、ジュール熱が発生する。電磁波が金属板にその法線方向から入射した場合の反射率は80%以上と高いことから、
図12に示されるプラズマ発生装置では、給電棒105b-1、105b-2から放射された電力波の大部分は、上記天板100b-1と非接地電極101bの間の空間で消費され、ジュール熱が発生する。
前記電磁波Wi21、Wi22の一部分は回折して、前記真空容器100bの壁板100b-3に沿って進み、非接地電極101bと接地電極102bの間に電力波109ba、109bbとして伝播する。そして、プラズマ107bを生成し基板のプラズマ処理に用いられる。
したがって、特許文献3及び特許文献4に記載のプラズマ発生装置では、非接地電極の裏面に設けられた給電点とプラズマ生成領域を結ぶ電力伝播路(電力伝送路)における電力損失の発生及びジュール熱の発生という問題がある。
【0014】
本発明は、上述した従来の代表的装置である容量結合型電極を用いた高周波プラズマ発生装置の電力伝播路における電磁波の反射に起因する電力損失発生及びジュール熱発生という問題を解決可能な高周波プラズマ発生装置を提供することを目的とする。また、従来の装置で問題である定在波に起因するプラズマの不均一化という問題を解決することを目的とする。
即ち、本発明は、プラズマCVD、プラズマALD及びプラズマエッチング等のプラズマ処理に用いられる容量結合型電極を用いた高周波プラズマ発生装置に関し、上記電力電送路(電力伝播路)における電力損失を抑制し、且つ均一なプラズマの発生が可能である高周波プラズマ発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、反応性ガスの供給系及び排気系を備え、床板と壁板と天板で構成される反応容器と、前記反応容器に電気的に絶縁された非接地電極と、前記非接地電極に対向して配置される電気的に接地された接地電極と、高周波電源と整合器と真空装置用電流導入端子と給電導体を有する高周波電力供給手段と、を備え、前記非接地電極に設けられた複数の給電点に前記高周波電源の出力である高周波電力を供給し、前記非接地電極と前記接地電極に挟まれたプラズマ生成領域でプラズマを発生させ、前記プラズマ生成領域に収容された基板にプラズマ処理を施す高周波プラズマ発生装置において、
前記非接地電極は、前記反応ガスを導入する反応ガス導入口と前記反応ガスを拡散させる空洞と前記空洞から輸送される前記反応ガスを噴射する反応ガス噴射孔を有する矩形平板型のシャワープレート電極であり、前記給電点は、前記シャワープレート電極の前記接地電極に対向する面の4つの角部と、前記シャワープレート電極の前記接地電極に対向する面の4つの辺のそれぞれの辺に少なくとも1つずつ設けられ、前記真空装置用電流導入端子は、電圧が印加される芯線と、前記芯線を囲うように配置される接地された管状の外部導体と、前記芯線と前記外部導体の間に挿入された絶縁材で形成され、
前記給電導体は、前記真空装置用電流導入端子の前記芯線の表面積より大きい表面積を有する金属板で形成され、且つ前記真空装置用電流導入端子の前記芯線と前記給電点を接続することを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明において、前記給電体を形成する金属板は、前記金属板の表面積が前記高周波電源で発生された電力の流れの上流側から下流側へ向かうに従って、順次大きくなるように形成されることを特徴とする。
第3の発明は、第2の発明において、前記給電導体を形成する金属板は、三角形の形態を有する三角形金属板で形成され、前記三角形金属板の頂点と前記真空装置用電流導入端子の芯線が接続され、前記三角形金属板の底辺と前記シャワープレート電極の前記接地電極に対向する面の端部が接続されることを特徴とする。
第4の発明は、第2の発明において、前記給電導体を形成する金属板は、半円形の形態を有する半円形金属板で形成され、前記半円形金属板の頂点と前記真空装置用電流導入端子の芯線が接続され、前記半円形金属板の辺と前記シャワープレート電極の前記接地電極に対向する面の端部が接続されることを特徴とする。
第5の発明は、第1の発明から第4の発明のいずれか一つの発明において、前記反応容器は、前記真空装置用電流導入端子の前記芯線から受電した高周波電力を前記給電点に送電する電力伝送路を備え、前記電力伝送路は、前記給電導体と、前記給電体と前記反応容器の前記壁板の間に配置される導波板で形成され、前記導波板は前記反応容器の前記壁板と電気的に接続され、前記壁板に対して傾斜して配置されることを特徴とする。
第6の発明は、第1の発明から第5の発明のいずれか一つの発明において、前記高周波電源は、周波数13.56MHz、又は27.12MHz、又は40.68MHz、又は54.24MHz、又は67.8MHzを発生することを特徴とする。
第7の発明は、第1の発明から第6の発明のいずれか一つの発明において、前記反応性ガスは、少なくともシランガス又は有機シランガスを含むことを特徴とする。
第8の発明は、第1の発明から第6の発明のいずれか一つの発明において、前記反応性ガスは、少なくとも水素又は酸素又は塩素を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記のように構成された本発明の高周波プラズマ発生装置は、複数の給電点が、前記シャワープレート電極の前記接地電極に対向する面の4つの角部と、前記シャワープレート電極の前記接地電極に対向する面の4つの辺のそれぞれの辺に少なくとも1つずつ設けられ、且つ前記給電導体は、前記真空装置用電流導入端子の前記芯線の表面積より大きい表面積を有する金属板で形成され、前記真空装置用電流導入端子の前記芯線と前記給電点を接続するという構成を有することから、前記真空装置用電流導入端子と前記給電点を結ぶ電力伝送路(電力伝播路)のキャパシタンスが大きくなる。その結果、前記真空装置用電流導入端子と前記給電点を結ぶ電力伝送路(電力伝播路)のインピーダンス小さくなり、電力損失が抑制され、該電力伝送路での電力損失が少なくなり、前記高周波電源の出力をプラズマ生成領域へ効果的に送電可能という効果を奏する。これにより、従来の高周波プラズマ発生装置が抱える給電棒から放射された電力波の反射に起因する電力損失発生及びジュール熱発生という問題を解決可能という効果を奏する。
また、本発明の高周波プラズマ発生装置は、矩形型の非接地電極と接地電極から成る一対の電極の間へ供給される高周波電力を、前記一対の電極の中心部方向へ集中して矩形筒波の形態で伝播させることが可能であることから、前記非接地電極と前記接地電極の間の電界分布の形態を、ゼロ次のベッセル関数型分布の形態に制御することが可能である。その結果、均一性の良いプラズマを生成可能である。即ち、高周波プラズマの均一生成を容易に実現することが可能という効果を奏する。
本発明による高周波プラズマ発生装置は、大画面液晶デイスプレイ、大画面有機ELデイスプレイ、大面積太陽電池及び各種半導体デバイス等の分野にける大面積均一のプラズマ生成が可能であり、製品製造コストの低減及び性能向上への貢献度は著しく大きいことから、産業上の貢献度は著しく大きい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の構成を示す模式的断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の給電点の位置を示す模式的斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の電力供給系の構成図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の構成部材である真空装置用電流導入端子及び給電導体の構成を示す模式的外観図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の電力伝送路(電力伝播路)を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の供給電力の流れを示すポインテイングベクトルPの模式図である。
【
図7】
図7は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の電界分布表示に用いられる座標xの説明図である。
【
図8】
図8は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の一対の電極間の電界分布を示すゼロ次のベッセル関数のグラフ(横軸line-x)である。
【
図9】
図9は、本発明の第2の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の構成部材である真空装置用電流導入端子及び給電導体の構成を示す模式的外観図である。
【
図10】
図10は、本発明の第2の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の電力伝送路(電力伝播路)を示す断面図である。
【
図11】
図11は、円筒型真空容器と円板型電極を用いる従来の高周波プラズマ発生装置の模式的断面図である。
【
図12】
図12は、矩形筒型真空容器と矩形板型電極を用いる従来の高周波プラズマ発生装置の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、同様の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、適宜変更可能である。また、以下に示す図面は、説明の便宜上、各部材の縮尺が、実際と異なる場合がある。また、各図面間においても、縮尺が、実際と異なる場合がある。
【0019】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の構成について、
図1~
図8を参照して、説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の構成を示す模式的断面図である。
図2は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の給電点の位置を示す模式的斜視図である。
図3は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の電力供給系の構成図である。
図4は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の構成部材である真空装置用電流導入端子及び給電導体の構成を示す模式的外観図である。
図5は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の電力伝送路(電力伝播路)を示す断面図である。
図6は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の供給電力の流れを示すポインテイングベクトルPの模式図である。
図7は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の電界分布表示に用いられる座標xの説明図である。
図8は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の一対の電極間の電界分布を示すゼロ次のベッセル関数のグラフ(横軸line-x)である。
【0020】
本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置は、
図1に示されるように、図示しない排気系を有する反応容器1と、図示しない反応性ガス供給系と、前記反応性ガスをプラズマ化する高周波電力供給手段を備えている。
図1において、反応容器1は、天板1aと壁板1bと床板1cで構成される矩形筒型の反応容器である。即ち、反応容器1は、形状が矩形筒型の壁板1bの上側に形状が矩形型の天板1aを連結し、下側に形状が矩形型の床板1cを連結した構造を有する。
反応容器1の内部には、後述の非接地電極の電極本体2aと後述のシャワープレート電極2bから成る非接地電極2と、後述の接地電極3が、後述の反応性ガスをプラズマ化するための一対の電極として配置される。非接地電極2は、図示しない絶縁材を介して図示しない片持ち梁の棚により反応容器の壁板1bに固定される。なお、非接地電極2の反応容器1への固定手段として、例えば、図示しない絶縁材を介して図示しないボルトを用い、反応容器の天板1aに吊り下げて固定することも出来る。
反応容器1は、図示しない真空ポンプに接続された排気口9a、9bを備えている。排気口9a、9bは、図示しない真空ポンプと組み合わせて稼働させることにより、反応容器1の内部を所定の圧力に調整し、該圧力を保持することが可能である。また、反応容器1内部を高真空度に真空引きすることが可能である。
【0021】
接地電極3は、反応容器1の所定の場所に、例えば、真空容器の底面である床板1cに配置される。 接地電極3と後述のシャワープレート電極2bは互いに対向して配置される。
接地電極3には基板5が載置される。接地電極3は、前記排気口9a、9bと連携して用いられる通気穴9aa、9baを備えている。接地電極3は、主面3aを有し、該主面3aで基板5と接し、保持する。基板5の温度は、接地電極3の内部に設けられた図示しない基板ヒータにより所定の温度に制御される。接地電極3の形状は、例えば、後述のシャワープレート電極2bと同様に、矩形である。寸法は、後述の非接地電極2より一回り大きい寸法で、ここでは、例えば、3.2mx3.2mである。
基板5は、図示しない基板搬入搬出用バルブを開閉することにより、大気側から接地電極3の主面3aに搬入、載置され、目的とするプラズマ処理が行なわれた後、大気側へ搬出される。ここで、基板5のサイズを、例えば、3mx3mx厚み1.8mmとする。
【0022】
非接地電極2は、
図1に示されるように、 接地電極3の主面3aに対向して配置される。非接地電極2は、図示しない反応性ガス供給源から反応性ガスを導入する反応性ガス導入口7と前記反応性ガスを拡散する空洞2cを有する矩形の非接地電極本体2aと、前記反応性ガスを噴出する多数の反応性ガス噴出孔2dを有する矩形平板型のシャワープレート電極2bとを図示しないボルトで締め付けて組み立てられる、という構造を有する。即ち、前記非接地電極本体2aと前記シャワープレート電極2bは図示しない複数のボルトを用いて、締め付けられて、連結される。
なお、非接地電極本体2aは、反応性ガス導入口7から導入された反応性ガスを拡散する空洞2cを介して、前記反応性ガスを後述の多数の反応性ガス噴出孔2dへ輸送する。
シャワープレート電極2bは、
図1に示されるように、多数の反応性ガス噴出孔2dを備え、前記反応性ガス導入口7から導入され、前記電極本体2aの空洞2cで拡散されて輸送された反応性ガスを噴出する。反応性ガス噴出孔2dは、直径略0.4mm~略1mmの円形に形成される。ここでは、例えば、0.8mmとする。
シャワープレート電極2bの寸法は、基板5の大きさに対応して選ばれるが、例えば、基板5のサイズが3mx3mx厚み1.8mmの場合、ほぼ同様のサイズに、例えば、3mx3mとする。
シャワープレート電極2bには、後述の高周波電源の出力の高周波電力が供給される地点である複数の給電点が設けられる。ここでは、
図2に示されるように、前記非接地電極2の接地電極3の主面3aと対向する面、即ちシャワープレート電極2bの面の4つの角部に、それぞれ第1、第2、第3及び第4の給電点15a、15b、15c、15dが設けられ、前記シャワープレート電極2bの4つの辺のそれぞれの辺中央に1箇所ずつ、第5、第6、第7及び第8の給電点15e、15f、15g、15hが設けられる。
シャワープレート電極2bと接地電極3の間隔D、ガス圧力p、及びプラズマ発生開始電圧との関係は、予め、後述の高周波電力供給手段を用いて実験を行い、そのデータに基いて選ばれる。なお、プラズマ発生に必要な印加電圧と、真空容器内部の圧力pと該間隔Dの積(即ち、p・D)の関係は、パッシェン則に従う、ことが知られている。
【0023】
本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置は、以下に説明する高周波電源と整合器と真空装置用電流導入端子と給電導体と給電点から成る高周波電力供給手段を備える。
符号10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hは、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の高周波電源である。第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の高周波電源10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hは、それぞれ高周波の電力、例えば、1KW~20KWの電力を発生する。第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の高周波電源10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hは、後述の第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の整合器11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g、11hと、後述の第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の真空装置用電流導入端子12a、12b、12c、12d、12e、12f、12g、12hと、後述の第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の給電導体13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13hと、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の給電点15a、15b、15c、15d、15e、15f、15g、15hと、連携して、後述のプラズマ6を生成するために用いられる。
第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の高周波電源10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hの出力周波数は、13.56MHz、又は27.12MHz、又は40.68MHz、又は54.24MHz、又は67.8MHzから選ばれる。その選定理由は、工業周波数13.56MHz及びその倍波に相当する電源は安価に入手できるから、である。上記工業周波数13.56MHz及びその2倍波、3倍波及び4倍波以外の周波数を、VHF(30MHz~300MHz)帯域から任意に選ぶこともできる。
なお、高周波プラズマ発生装置の応用においては、基板へのイオンダメージを抑制するために周波数をより高くすることが求められるが、ここでは、基板が大面積基板への応用であることから、長波長の、例えば、工業周波数13.56MHzを選ぶ。13.56MHzの電磁波の波長は、真空中では22.1mであるが、プラズマ中では、波長が短縮するので、真空中の波長より短い。波長短縮率0.7として、略15.4mである。
符号16は同期信号発生器である。同期信号発生器16は、同期信号を第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の高周波電源10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hに送信し、前記高周波電源10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hで発生される正弦波電圧を同期させる。即ち、同期信号発生器16は、前記高周波電源10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hの正弦波電圧の発生タミングを同期させる。
【0024】
符号11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g、11hは、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の整合器である。第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の整合器11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g、11hは、それぞれ第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の高周波電源10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hとその負荷のインピーダンスを整合する。即ち、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の整合器11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g、11hにそれぞれに内蔵のインピーダンス整合回路を調整して、各給電点15a、15b、15c、15d、15e、15f、15g、15h側から反射して戻ってくる反射波(退行波)を最小の状態に調整する。
符号12a、12b、12c、12d、12e、12f、12g、12hは、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の真空装置用電流導入端子である。前記真空装置用電流導入端子12a、12b、12c、12d、12e、12f、12g、12hは、真空漏れがない状態で、前記整合器11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g、11hから送電された高周波電源10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hの出力を、それぞれ、後述の給電導体13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13hに送電する。
前記真空装置用電流導入端子12a~12hは、
図4に符号12で示されるように、電圧が印加される芯線12inと、前記芯線12inを囲うように配置される接地された管状の外部導体12outと、前記芯線12inと前記外部導体12outの間に挿入された絶縁材12insで形成される。
【0025】
符号13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13hは、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の給電導体である。第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の給電導体は、それぞれ第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の真空装置用電流導入端子12a、12b、12c、12d、12e、12f、12g、12hから送電された高周波電源10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hの出力を、それぞれ各給電点15a、15b、15c、15d、15e、15f、15g、15hに供給する。
第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の給電導体13a、13b、13
c、13d、13e、13f、13g、13h(符号13a~13hは同じ仕様の部材であるので、符号13と記す)は、
図4に示されるように、前記真空装置用電流導入端子の前記芯線12inの表面積より大きい表面積を有する金属板13で形成される。金属板13は、前記金属板の表面積が前記高周波電源で発生された電力の流れの上流側から下流側へ向かうに従って、順次大きくなるように形成されることを特徴とする、例えば、三角形金属板を用いる。
前記給電導体を形成する金属板13は、前記三角形金属板の頂点と前記真空装置用電流導入端子の芯線12inが接続端子13inを介して接続され、前記三角形金属板の底辺と前記シャワープレート電極2bの前記接地電極に対向する面の端部が接続される、という構造を有する。
前記金属板13in、13の表面積が前記真空装置用電流導入端子の前記芯線12inの表面積に比べて大きくなることにより、キャパシタンス(静電容量)成分が増加し、各前記真空装置用電流導入端子12a、12b、12c、12d、12e、12f、12g、12hと各給電点15a、15b、15c、15d、15e、15f、15g、15hを結ぶ電力伝送路(電力伝播路)のインピーダンスが小さくなる。その結果、高周波電力伝送損失を抑制することが可能となる。
なお、
図4において、符号13(13a~13h)で示される三角形の形態を有する三角形金属板13の頂点と前記真空装置用電流導入端子の芯線12inは、接続端子13inを介してボルトで締め付けて接続され、前記三角形金属板13の辺と前記シャワープレート電極2bの前記接地電極に対向する面の端部が接続される。ここで、前記三角形金属板の厚みは、高周波電力の電流が表面層(深さ約10μm)を流れることから、例えば、0.1mm~0.5mmとする。
なお、前記接続端子13inは、反応容器1に組み立て配置される以前に、予め、前記真空装置用電流導入端子の前記芯線12inに溶接により接続される。また、三角形金属板13の底辺とシャワープレート電極2bの前記接地電極に対向する面の端部は、反応容器1に組み立て配置される以前に、予め、溶接により接続される。
【0026】
符号15a、15b、15c、15dは、第1、第2、第3、第4の給電点である。第1、第2、第3及び第4の給電点15a、15b、15c、15dは、それぞれシャワープレート電極2bの接地電極3と対向する面の4つの角部に設けられる。第1、第2、第3及び第4の給電点15a、15b、15c、15dは、前記第1、第2、第3、第4の高周波電源10a、10b、10c、10dの出力である高周波電力を、それぞれ前記第1、第2、第3、第4の給電導体13a、13b、13c、13dから供給受けする。第1、第2、第3及び第4の給電点15a、15b、15c、15dに供給された高周波電力は、シャワープレート電極2bと接地電極3の間に流入して、プラズマ6を生成する。
符号15e、15f、15g、15hは、第5、第6、第7及び第8の給電点である。第5、第6、第7及び第8の給電点15e、15f、15g、15hは、それぞれ前記シャワープレート電極2bの接地電極3と対向する面の4つの辺のそれぞれの辺中央に設けられる。第5、第6、第7及び第8の給電点15e、15f、15g、15hは、前記第5、第6、第7、第8の高周波電源10e、10f、10g、10hの出力である高周波電力を、それぞれ前記第5、第6、第7、第8の給電導体13e、13f、13g、13hから供給受けする。第5、第6、第7及び第8の給電点15e、15f、15g、15hに供給された高周波電力は、シャワープレート電極2bと接地電極3の間に流入して、プラズマ6を生成する。
なお、ここでは、シャワープレート電極2bの4つの辺に設けられる給電点の個数は1辺に1個ずつ、合計4個であるが、シャワープレート電極2bの4つの辺にそれぞれ2個ずつ、合計8個を設けてもよい。また、前記8個以上に増加してもよい。
また、ここでは、上記第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の給電点15a、15b、15c、15d、15e、15f、15g、15hのそれぞれに、各第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の整合器11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g、11hと、各第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の高周波電源10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hを配置しているが、それらの個数は、減らしてもよい。例えば、電力分配器を用いて、2分配された電力、あるいは4分配された電力を、上記真空装置用電流導入端子12a、12b、12c、12d、12e、12f、12g、12hへ送電するようにしてもよい。
【0027】
符号20は導波板である。導波板20は長方形状の金属板あるいは三角形の金属板あるいは台形状の金属板で製作され、各第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の給電導体13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13hと壁板1bの間に、距離を置いて、
図5に示されるように壁板1bに対して傾斜して配置される。そして、導波板20は、反応容器と電気的に導通にされる。
第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の真空装置用電流導入端子12a、12b、12c、12d、12e、12f、12g、12hにそれぞれに、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の高周波電源10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hで発生された高周波電力が供給されると、
図5に示されるように、各第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の給電導体13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13hと各前記導波板20の間に、それぞれに電気力線21が形成される。電気力線21は導波板20と天板1a間にも形成されが、後述のセラミックスあるいは合成樹脂等の絶縁物27を配置されているので、異常放電は抑制される。
即ち、導波板20は、各第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の給電導体13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13hと連携して、電力伝送路(電力伝播路)を形成し、各第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の高周波電源10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hで発生する高周波電力をシャワープレート電極2bの周辺から前記シャワープレート電極2bと接地電極3の間に矩形筒波状の形態の電力波22を流入させる。
符号22は電力波である。電力波22は1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の高周波電源10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hで発生された高周波電力が、各第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の給電導体13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13hと導波板20及び壁板1bで形成される電力伝播路(電力伝送路)を伝播する電力波である。
符号27は絶縁物である。絶縁物27は、セラミックスあるいは合成樹脂等で形成される。絶縁物27は、非接地電極2aと天板1aの間に配置されて、その空間での異常放電を抑制する。
【0028】
次に、
図1において、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の高周波電源10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hの出力が第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の給電点15a、15b、15c、15d、15e、15f、15g、15hに供給される際に発生するシャワープレート電極2bと接地電極3の間の電界分布及び生成されるプラズマの形態について、以下説明する。
第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の高周波電源10a、10b、1
0c、10d、10e、10f、10g、10hの出力である高周波電力は、それぞれ第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の給電導体13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13hを介して、
図5に示されるように、電力波22として各前記給電導体13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13hと導波板20の間を伝播した後、各前記給電導体13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13hの曲面に沿って伝播し、シャワープレート電極2bの周辺から前記シャワープレート電極2bと接地電極3の間に流れ込む。この高周波電力は、シャワープレート電極2bの周辺から前記シャワープレート電極2bの内側へ伝播する矩形筒状の形態の波となる。
シャワープレート電極2bの周辺から一対の電極であるシャワープレート電極2bと接地電極3の間に流れ込むという矩形筒状の形態の高周波電力Pは、電磁気学の知見によると(例えば、非特許文献1参照)、ポインテイングベクトルP=ExB(joule/m
2・s)で表される。ただし、Eは電界(ベクトル表示)、Bは磁界(ベクトル表示)である。
図1~
図5に示される高周波プラズマ発生装置の場合、高周波電力Pの伝播の形態は、
図6に、模式的に符号22で示されるように、矩形筒状の波である。
なお、ここでは、矩形筒型の反応容器の内部の3次元的空間を伝播する電力波22の波面の形状が矩形筒型になるので、このような波を矩形筒波と呼ぶ。
即ち、
図6において、一対の矩形板型電極(容量結合型平行平板電極)2b、3間の電界Eは、該一対の電極2b、3の互いに対向する面の法線方向を向き、磁界Bは該一対の電極2b、3の中心軸23を中心にした円25の接線方向を向いている。ここで、磁界Bは、アンペールの法則により、電界E方向に流れる変位電流の方向に対して右ネジを回転する方向に発生することにより、円25で表されるように、渦巻き状に発生する。
したがって、ポインテイングベクトルP=ExBは、該電極周辺から中心軸23の方向を向いている。これは、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の高周波電源10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hの出力である電力Pが、一対の矩形板型電極2b、3の周辺から中心軸23へ集中するように、矩形筒波の形態で流れ込む、ということを意味している。矩形筒波の形態で流れ込む高周波電力は、該一対の電極2b、3間にプラズマ6を生成する。
【0029】
高周波プラズマ発生装置が、
図1に示されるような矩形筒型の反応容器1に配置され、矩形平板型の一対の電極2、3を備え、該一対の矩形平板型電極2、3の周辺部から矩形筒波の形態で電力が供給されるという構造を有する場合、該一対の電極2、3間の電界は、例えば、非特許文献2に記載されているように、ゼロ次のベッセル関数J
0(2πr/λ)で表される。
なお、一対の平板電極の間で正と負の電界が発生するのは、非特許文献2に記載されているように、一対の電極において高周波数の変位電流が流れると磁場が発生し、磁場が時間的に変化すると電界が発生するという電磁波の基本的な現象である。
即ち、
図6において、電力波の波長をλ、中心軸からの距離をrで表すと、該一対の電極2、3間に発生する電界Eは、波長λと中心軸からの距離rに依存し、次式で表される。
E=E
0・J
0(2πr/λ) ・・・(5)
ただし、E
0は定数、J
0(2πr/λ)はゼロ次のベッセル関数である。ゼロ次のベッセル関数J
0(2πr/λ)は、2πr/λ=2.405、5.520、8.634を満たす場合、J
0(2πr/λ)=0となる。
式(5)は、電界の方向(正と負)が中心軸23からの距離rにおいて、交互に変化することを示している。
また、式(5)は、
図7に示される矩形平板型の非接地電極2bの対角線(line-x)におけるその中心から角(頂点)まで距離Lが、L=(λ/2π)x2.405=0.383λより大きいサイズの場合は、電界がゼロという領域が発生することを意味している。
したがって、一対の矩形平板型電極の対角線において、その中心から角(頂点)まで距離Lが、L=(λ/2π)x2.405=0.383λ以上である場合、電界がゼロの領域を含むことから、電界分布の均一化は電磁気学的に無理がある、ということを示している。
逆に考えれば、一対の矩形平板型電極の対角線においてその中心から角(頂点)まで距離Lが、L=(λ/2π)x2.405=0.383λ以下である場合、均一化が可能というメリットがある。
【0030】
上記式(5)を、
図7に示されるシャワープレート電極2bの接地電極3と対向する面の対角線(line-x)を横軸に、縦軸に電界を、最大値1.0に基準化してグラフ化すると、
図8が得られる。
図8は、シャワープレート電極2bの中心点を原点とし、シャワープレート電極2bの対角線(line-x)上の電界分布を示している。
図8によれば、line-x=0~略0.15λにおいて、E=1.0~略0.9である。したがって、電界がほぼ一様な領域は、電極中心からline-x=略0.3λと見ることができる。
即ち、シャワープレート電極2bと接地電極3の間に発生するプラズマは、該電極の中心から半径0.15λ程度の領域は一様なプラズマが発生する。これは、
図1に示される本実施例における高周波プラズマ発生装置では、直径0.3λ=0.3x15.4m=4.6mの円で囲まれる領域は一様なプラズマが生成されることを意味している。
なお、
図1に示される装置において、本実施例では、上記電力波の波長λは、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の高周波電源10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hの周波数が13.56MHzであるので、プラズマの波長短縮率0.7として、プラズマ中の波長λ=15.4mである。
【0031】
次に、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の薄膜形成への応用について、
図1~
図8を参照して説明する。説明の便宜上、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の代表的応用例としてプラズマCVDによる微結晶シリコン膜の形成を例にとり、以下に説明する。
なお、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置を用いたプラズマCVDによる微結晶シリコン膜形成に関する予備試験として、電極間隔、基板温度、シランガスの流量、水素ガスの流量、圧力、電力等の関係に係わるデータとして、例えば、プラズマ生成の電力依存性・圧力依存性、膜厚の電力依存性及び膜厚みの原料ガス流量依存性等のデータを、予め実験により把握し、上記微結晶シリコン膜形成に備えておくのが好ましい。
図示しない原料ガスの供給源から原料ガスが選ばれる。ここでは、例えば、微結晶シリコン膜を形成することから、ガス供給条件は、例えば、シランガスと水素を選び、流量比を水素流量/シランガス流量=100/1とする。
先ず、反応容器1の図示しない基板搬入搬出バルブを開いて、基板5を接地電極3の主面3aに載置する。次に、基板搬入搬出バルブを閉じた後、図示しない真空ポンプにより、排気口9a及び排気口9bを介して、反応容器1内部を所定の真空度にする。
その後、図示しないシランガス源及び図示しない水素ガス源から、それぞれ図示しないシランガス及び水素ガスのマスフローコントローラで所定の流量を制御されたシランガス及び水素ガスを反応ガス導入管7へ輸送し、前記シランガス及び前記水素ガスを、空洞2cを介して、反応ガス噴出孔2dから噴出させる。
次に、図示しない排気バルブ制御装置により図示しない排気バルブの開閉度を制御し、反応容器1の内部圧力を、略133Pa~略1333Paに保つ。なお、反応容器1の真空引きに用いる真空ポンプと製膜時に用いる真空ポンプは、異なるものを別々に用いてもよい。ここでは、例えば、250Paに設定し、維持する。
【0032】
次に、予め得られているデータに基づいて、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の高周波電源10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hの出力を、それぞれ、例えば、2.5KWとして合計20KWを、各第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の給電点15a、15b、15c、15d、15e、15f、15g、15hに印加する。
そうすると、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の高周波電源10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hの出力は、
図5及び
図6に示されるように、電力波22として、各第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の給電導体13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13hの曲面に沿って伝播する。電力波22は、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の給電導体13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13hが緩やかに90°曲げられた曲面を有することから、伝播方向を緩やかに90°変化して、シャワープレート電極2bと接地電極3の間へ流れ込む。
この際、前記各第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の給電導体13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13hと導波板20の間、及び前記各第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の給電導体13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13hと壁板1bとの間に、電界集中が発生しない状態で電気力線21が形成される。また、各第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の真空装置用電流導入端子12a、12b、12c、12d、12e、12f、12g、12hと各第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の給電点15a、15b、15c、15d、15e、15f、15g、15hの電力伝播路に、キャパシタンス(静電容量)成分が大きい各第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の給電導体13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13hが用いられることから、電力伝播路での電力損失が小さくなる。
なお、各第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の給電導体13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13hが形成する電力伝播路において、給電導体13の表面積が前記真空装置用電流導入端子の前記芯線12inの表面積に比べて大きいことから、前記電力伝播路のキャパシタンス(静電容量)成分が増加し、インピーダンスが小さくなる。その結果、高周波電力の損失を抑制することが可能である。
各第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の給電点15a、15b、15c、15d、15e、15f、15g、15hに供給された電力は、
図6に示されるように、シャワープレート電極2bの中心軸23へ向けて集中するように流入する。シャワープレート電極2bと接地電極3の間に高周波電源の出力が供給されると、
図8に示される分布を持つ電界が発生する。この電界が発生すると、該電界の二乗に比例した強さを持つ電力が得られる。前記電界がプラズマ発生条件を満たせば、シャワープレート電極2bと接地電極3の間にプラズマ6が生成される。
即ち、原料ガスのSiH
4、水素H
2がプラズマ化される。その結果、SiH
4、水素H
2が解離し、微結晶シリコン膜形成の前駆体であるSiHラジカル、Hラジカル等を発生する。SiHラジカル、Hラジカルは拡散して、基板5の表面に堆積する。
【0033】
次に、微結晶シリコン膜の厚みは該プラズマ生成時間に比例するので、前記高周波電源の出力供給開始から所定の時間が経過した時点で、その出力をゼロにする。
製膜時間は、予め取得されたデータに基づいて決められる。ここでは、1分~20分、例えば2分とする。
目的とする微結晶シリコン膜の製膜が終了後、上記シランガスガス及び水素ガスの供給を停止し、反応容器1内部を、一旦、高い真空度に真空引きする。その後、反応容器1を大気条件に戻す。反応容器1が大気条件に戻された後、図示しない基板搬入搬出バルブを開とし、基板5を取り出す。反応容器1から取り出された基板5には、均一な微結晶シリコン膜が形成されている。
【0034】
なお、上述した本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の薄膜形成への応用では、プラズマCVDによる微結晶シリコン膜形成を例にとり、説明したが、有機シランガスを含む反応性ガスを用いたプラズマCVDによる薄膜形成あるいはプラズマALDによる薄膜形成への応用も可能である。また、水素、酸素又は塩素を含む反応性ガスを用いたプラズマエッチングへの応用も可能である。
【0035】
本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置を用いた薄膜形成装置は、上述の通り、一対の平行平板電極2、3の間に、ゼロ次のベッセル関数J0(2πr/λ)で表せる形態を持つプラズマを生成可能である。
本実施例では、周波数13.56MHzの高周波電源を用い、非接地電極2のサイズを3mx3mの矩形平板型とし、反応ガスを導入する反応ガス導入口と前記反応ガスを拡散させる空洞と前記空洞から輸送される前記反応ガスを噴射する反応ガス噴射孔を有する矩形平板型のシャワープレート電極を用いた。給電点は、前記シャワープレート電極の前記接地電極に対向する面の4つの角部と、前記シャワープレート電極の前記接地電極に対向する面の4つの辺のそれぞれの辺に少なくとも1つずつ設けられた。真空装置用電流導入端子は、電圧が印加される芯線と、前記芯線を囲うように配置される接地された管状の外部導体と、前記芯線と前記外部導体の間に挿入された絶縁材で形成され、給電導体は、前記真空装置用電流導入端子の前記芯線の周長より大きい周長を有する金属板を用いた。その結果、従来の矩形平板電極を用いた高周波プラズマ発生装置において発生する供給電力の伝播路での電力損失問題及びジュール熱発生問題を解消することが可能であることが示された。
また、矩形平板電極を用いた高周波プラズマ発生装置で発生するプラズマの強さの分布はゼロ次のベッセル関数で表され、非接地電極の中心点から直径で0.15λ(λは、プラズマ中の波長)の領域はプラズマの均一化可能であることを示した。
本発明による高周波プラズマ発生装置は、大画面液晶デイスプレイ、大画面有機ELデイスプレイ、大面積太陽電池及び各種半導体デバイス等の分野にける大面積均一のプラズマ生成が可能であり、製品製造コストの低減及び性能向上への貢献度は著しく大きいことから、産業上の貢献度は著しく大きい。
また、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置は、プラズマCVDを用いた微結晶シリコン膜の形成への応用であるが、これに限定されず、反応性ガスとして、水素又は酸素又は塩素等を用いるプラズマエッチング装置及びプラズマALD装置としての応用が可能であることは、当然のことである。
【0036】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係わる高周波プラズマCVD装置について、
図9及び
図10を参照して、説明する。
図1~
図8も参照する。
図9は、本発明の第2の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の構成部材である真空装置用電流導入端子及び給電導体の構成を示す模式的外観図である。
図10は、本発明の第2の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の電力伝送路(電力伝播路)を示す断面図である。
先ず、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマCVD装置の構成を説明する。本発明の第2の実施形態に係わる高周波プラズマ装置の構成の特徴は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ装置における第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の給電導体13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13h(形状が三角形)に代えて、形状が半円形である
図9に示される半円形状の給電導体13Mを用いることに加えて、
図10に示される第1の導波板20Mと第2の導波板20MMを用いることである。
半円形状の給電導体13Mを用いて、各第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の真空装置用電流導入端子12a、12b、12c、12d、12e、12f、12g、12hと各第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の給電点15a、15b、15c、15d、15e、15f、15g、15hがそれぞれ接続されると、前記半円形状の給電導体13Mの表面積が大きいことからキャパシタンスが増大されて、高周波電電力の伝播路のインピーダンスが小さくなる。その結果、各第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の真空装置用電流導入端子12a、12b、12c、12d、12e、12f、12g、12hから、各第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の給電点15a、15b、15c、15d、15e、15f、15g、15hへの電力伝播路(電力伝送路)における電力損失が小さくなる。即ち、電力損失が抑制される。
第1の導波板20Mは、
図10に示されるように、接続端子13inと壁板1bの間に前記壁板1bに傾斜する形態で配置される。第2の導波板20MMは、
図10に示されるように、曲面を有する前記半円形状の給電導体13Mと壁板1bの間に前記壁板1bに傾斜する形態で配置される。これにより、各第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の真空装置用電流導入端子12a、12b、12c、12d、12e、12f、12g、12hから供給される電力は、
図10に符号22で示されるように、電力の進行方向を緩やかに進路変更が可能である。その結果、各第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の真空装置用電流導入端子12a、12b、12c、12d、12e、12f、12g、12hと各第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の給電点15a、15b、15c、15d、15e、15f、15g、15hを結ぶ電力伝播路(電力伝送路)の電力損失が抑制される。
【0037】
次に、本発明の第2の実施形態に係わる高周波プラズマCVD装置で生成されるプラズマの発生及びそのプラズマ処理への応用であるが、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマCVD装置の場合と同様である。
即ち、本発明の第2の実施形態に係わる高周波プラズマCVD装置は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマCVD装置の場合と同様に、前記装置の構成部材である一対の矩形型非接地電極2と接地電極3の間に、次式(5)で表される電界を発生することが可能である。電力波22の波長をλ、前記非接地電極の中心軸からの距離をrで表すと、該一対の電極2b、3間に発生する電界Eは、波長λと中心軸からの距離rに依存し、次式で表される。
E=E
0・J
0(2πr/λ) ・・・(5)
ただし、E
0は定数、J
0(2πr/λ)はゼロ次のベッセル関数である。ゼロ次のベッセル関数J
0(2πr/λ)は、2πr/λ=2.405、5.520、8.634を満たす場合、J
0(2πr/λ)=0となる。
これは、一対の矩形平板型電極2、3の対角線において、その中心から角(頂点)まで距離Lが、L=(λ/2π)x2.405=0.383λ以下である場合、均一化が可能であることを意味している。
上記式(5)を、
図7に示されるシャワープレート電極2bの接地電極3と対向する面の対角線(line-x)を横軸に、縦軸に電界を、最大値1.0に基準化してグラフ化すると、
図8が得られる。
図8は、シャワープレート電極2bの中心点を原点とし、シャワープレート電極2bの対角線(line-x)上の電界分布を示している。
図8によれば、line-x=0~略0.15λにおいて、E=1.0~略0.9である。したがって、電界がほぼ一様な領域は、電極中心からline-x=略0.3λと見ることができる。
即ち、シャワープレート電極2bと接地電極3の間に発生するプラズマは、該電極の中心から半径0.15λ程度の領域は一様なプラズマが発生する。これは、直径0.3λの円で囲まれる領域は一様なプラズマが生成されることを意味している。
従って、電源周波数が、13.56MHzの場合、真空中の波長λ=22.1m、プラズマ中の波長λ=15.4(波長短縮率0.7)として、直径0.3λ=4.6mの領域ではプラズマが均一に生成可能である。
電源周波数が、27.12MHzの場合、真空中の波長λ=11.06m、プラズマ中の波長λ=7.19m(波長短縮率0.65)として、直径0.3λ=2.16mの領域ではプラズマが均一に生成可能である。
電源周波数が、40.68の場合、真空中の波長λ=7.37m、プラズマ中の波長λ=4.79m(波長短縮率0.65)として、直径0.3λ=1.44mの領域ではプラズマが均一に生成可能である。
電源周波数が、54.24MHzの場合、真空中の波長λ=5.53m、プラズマ中の波長λ=3.59m(波長短縮率0.65)として、直径0.3λ=1.08mの領域ではプラズマが均一に生成可能である。
【0038】
上述のとおり、本発明の第2の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置は、前記本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置と同様に、一対の平行平板電極2、3の間に、ゼロ次のベッセル関数J
0(2πr/λ)で表せる形態を持つプラズマを生成可能である。
本発明の第2の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置では、形状が半円形である
図9に示される半円形状の給電導体13Mを用いることに加えて、
図10に示される第1の導波板20Mと第2の導波板20MMを用いたことにより、各前記第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の真空装置用電流導入端子12a、12b、12c、12d、12e、12f、12g、12hから、各前記第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8の給電点15a、15b、15c、15d、15e、15f、15g、15hへの電力伝送路における電力損失が小さくなるという特徴がある。即ち、電力損失が抑制される。
本発明の第2の実施形態に係わるによる高周波プラズマ発生装置は、大画面液晶デイスプレイ、大画面有機ELデイスプレイ、大面積太陽電池及び各種半導体デバイス等の分野にける大面積均一のプラズマ生成が可能であり、製品製造コストの低減及び性能向上への貢献度は著しく大きいことから、産業上の貢献度は著しく大きい。
また、本発明の第2の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置は、プラズマCVDを用いた微結晶シリコン膜の形成への応用であるが、これに限定されず、反応性ガスとして、水素又は酸素又は塩素等を用いるプラズマエッチング装置及びプラズマALD装置としての応用が可能であることは、当然のことである。
【符号の説明】
【0039】
1・・・反応容器、
1a・・・天板、
1b・・・壁板、
1c・・・床板、
2・・・非接地電極、
2a・・・非接地電極本体、
2b・・・シャワープレート電極、
2c・・・空洞、
2d・・・反応性ガス噴出孔、
3・・・接地電極、
5・・・基板、
10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10h・・・高周波電源、
11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g、11h・・・整合器、
12a、12b、12c、12d、12e、12f、12g、12h・・・真空装置用電流導入端子、
15a、15b、15c、15d、15e、15f、15g、15h・・・給電点、
12in・・・真空装置用電流導入端子の芯線、
13in・・・接続端子、
13、13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13h・・・給電導体、
20、20M、20MM・・・導波板、
22・・・電力波。