(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123695
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】静電防止ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 77/06 20060101AFI20230829BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230829BHJP
C08K 5/43 20060101ALI20230829BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20230829BHJP
【FI】
C08L77/06
C08K3/013
C08K5/43
G02B7/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】28
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023104906
(22)【出願日】2023-06-27
(62)【分割の表示】P 2021122317の分割
【原出願日】2015-04-01
(31)【優先権主張番号】61/977,215
(32)【優先日】2014-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500100822
【氏名又は名称】ティコナ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヤン・シン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】成形操作中に静電荷を生成させる傾向が減少したポリマー組成物を提供する。
【解決手段】本組成物は、芳香族ポリマーを含むポリマーマトリクス内に分配されているイオン性液体を含む。導電性であることに加えて、イオン性液体は溶融加工中において液体形態で存在することができ、これによって芳香族ポリマーマトリクス内により均一にブレンドすることが可能である。これによって電気接続性が向上し、これにより組成物がその表面から静電荷を迅速に消散させる能力が増大する。前記ポリマー組成物を含む成形部品および成形部品を含むカメラモジュールも提供する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、ポリマーマトリクス内に分配されているイオン性液体を含み、イオン性液体が、約400℃以下の融点を有し、カチオン種及び対イオンを含む塩であり、ポリマーマトリクスが、約100℃以上のガラス転移温度を有する芳香族ポリマーを含む、前記ポリマー組成物。
【請求項2】
イオン性液体が前記組成物の約0.1重量%~約10重量%を構成する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
芳香族ポリマーが前記組成物の約25重量%~約95重量%を構成する、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
カチオン種が第4級オニウムである、請求項1~3のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項5】
第4級オニウムが、構造:N+R1R2R3R4(式中、R1、R2、及び/又はR3は、独立してC1~C6アルキルであり、R4は、水素又はC1~C4アルキル基である)を有するアンモニウム化合物である、請求項4に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
アンモニウム化合物がトリブチルメチルアンモニウムである、請求項5に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
対イオンが、ハロゲン、スルフェート、スルホネート、スルホスクシネート、アミド、イミド、ボレート、ホスフェート、ホスフィネート、アンチモネート、アルミネート、脂肪酸カルボキシレート、シアネート、アセテート、又はこれらの組み合わせである、請求項1~6のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項8】
対イオンが、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、又はビス(トリフルオロメチル)イミドである、請求項7に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
芳香族ポリマーが半結晶性である、請求項1~8のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項10】
芳香族ポリマーがポリアミドである、請求項9に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
ポリアミドが約200℃以上の融点を有する、請求項10に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
ポリアミドが、芳香族ジカルボン酸から誘導される芳香族繰り返し単位、及び4~14個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンから誘導される脂肪族繰り返し単位を含む、請求項10又は11に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
芳香族ジカルボン酸がテレフタル酸である、請求項12に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
脂肪族ジアミンが、1,9-ノナンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、又はこれらの組合せである、請求項12又は13に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
芳香族ポリマーがポリアリールエーテルケトンである、請求項9に記載のポリマー組成物。
【請求項16】
芳香族ポリマーが実質的にアモルファスである、請求項1~8のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項17】
芳香族ポリマーがポリフェニレンオキシドである、請求項16に記載のポリマー組成物。
【請求項18】
芳香族ポリマーがポリエーテルイミドである、請求項16に記載のポリマー組成物。
【請求項19】
芳香族ポリマーがポリカーボネートである、請求項16に記載のポリマー組成物。
【請求項20】
ポリカーボネートがビスフェノールから誘導される芳香族繰り返し単位を含む、請求項19に記載のポリマー組成物。
【請求項21】
ビスフェノールが4,4’-イソプロピリデンジフェノールである、請求項20に記載のポリマー組成物。
【請求項22】
炭素繊維、黒鉛、カーボンブラック、又はこれらの組み合わせを更に含む、請求項1~21のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項23】
無機繊維、ガラス繊維、又はこれらの組合せを更に含む、請求項1~22のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項24】
請求項1~23のいずれかに記載のポリマーを含む成形部品。
【請求項25】
成型部品であって、ポリマー組成物を含み、ポリマー組成物が、ポリマーマトリクス内に分配されているイオン性液体を含み、ポリマーマトリクスが、約100℃以上のガラス転移温度を有する芳香族ポリマーを含む、前記成形部品。
【請求項26】
部品が、IEC-60093にしたがって求めて約1×1015Ω以下の表面抵抗率、及び/又はIEC-60093にしたがって求めて約1×1015Ω・m以下の体積抵抗率を示す、請求項24又は25に記載の成形部品。
【請求項27】
請求項24又は25に記載の成形部品を含むカメラモジュール。
【請求項28】
請求項1~23のいずれかに記載のポリマー組成物を含むカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本出願は、2014年4月9日出願の米国仮出願61/977,215(その全
部を参照として本明細書中に包含する)に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
[0001]カメラモジュール(又は部品)は、携帯電話、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等においてしばしば用いられている。例としては、例えば、ベースに取り付けられているレンズバレルを含むコンパクトカメラモジュール、デジタルカメラシャッターモジュール、デジタルカメラの部品、ゲーム機内のカメラ、医療用カメラ、監視カメラ等が挙げられる。カメラモジュールの成形部品のために芳香族ポリマーを用いる種々の試みがなされている。残念なことに、かかる成形部品を芳香族ポリマーから形成することを試みる際には、しばしば種々の問題に遭遇する。例えば、成形部品の間、及び成形部品と回収トレイの間の摩擦によって静電荷が誘導され、これによって、適切に取り扱わなければ(例えば輸送中において)ダスト粒子の形成が引き起こされる可能性がある。コンパクトカメラモジュールのような幾つかの製品においては、これらのダスト粒子は有害であり、重大な製品欠陥を引き起こす可能性がある。したがって、成形操作中に静電荷を生成する傾向が減少したポリマー組成物に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0003】
[0002]本発明の一態様によれば、ポリマーマトリクス内に分配(distributed)されて
いるイオン性液体を含むポリマー組成物を開示する。イオン性液体は約400℃以下の融点を有し、カチオン種及び対イオンを含む塩である。ポリマーマトリクスは、約100℃以上のガラス転移温度を有する芳香族ポリマーを含む。
【0004】
[0003]本発明の他の態様によれば、ポリマー組成物を含む成形部品を開示する。ポリマー組成物はポリマーマトリクス内に分配されているイオン性液体を含み、ポリマーマトリクスは約100℃以上のガラス転移温度を有する芳香族ポリマーを含む。
【0005】
[0004]本発明の他の特徴及び形態を下記においてより詳細に示す。
[0005]当業者に対するそのベストモードを含む本発明の完全且つ実施化可能な程度の開示を、添付の図面の参照を含む明細書の残りの部分においてより詳しく示す。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】[0006]
図1は、本発明にしたがって形成することができるファインピッチ電気コネクターの一態様の拡大斜視図である。
【
図2】[0007]
図2は、
図1のファインピッチ電気コネクターの対向する壁部の正面図である。
【
図3】[0008]
図3は、本発明のポリマー組成物を形成するのに用いることができる押出機スクリューの一態様の概要図である。
【
図4】[0009]
図4は、本発明の一態様にしたがって形成されるアンテナ構造体を用いることができる電子コンポーネントの正面斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の一態様にしたがって形成されるアンテナ構造体を用いることができる電子コンポーネントの背面斜視図である。
【
図6】[0010]
図6は、本発明の一態様にしたがって形成することができるコンパクトカメラモジュール(CCM)の斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の一態様にしたがって形成することができるコンパクトカメラモジュール(CCM)の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0011]本開示は代表的な態様のみの記載であり、本発明のより広い形態を限定するものとは意図しないことは当業者に理解される。
[0012]一般的に言えば、本発明は、成形操作、輸送、組立、取扱い等の間に静電荷を生成する傾向が減少したポリマー組成物に関する。より詳しくは、本組成物は、芳香族ポリマーを含むポリマーマトリクス内に分配されているイオン性液体を含む。本イオン性液体は、導電性であることに加えて溶融加工中に液体形態で存在することができ、これによりポリマーマトリクス内により均一にブレンドすることが可能である。これにより導電性が向上し、それによって組成物がその表面から静電荷を速やかに消散させる能力が増大する。この静電防止挙動は、IEC-60093にしたがって求められる比較的低い表面及び/又は体積抵抗率によって特徴付けることができる。即ち、本ポリマー組成物から形成される成形部品は、約1×1015Ω以下、幾つかの態様においては約1×1014Ω以下、幾つかの態様においては約1×109Ω~約9×1013Ω、幾つかの態様においては約1×1010~約1×1013Ωの表面抵抗率を示すことができる。更に、本成形部品はまた、約1×1015Ω・m以下、幾つかの態様においては約1×109Ω・m~約9×1014Ω・m、幾つかの態様においては約1×1010~約5×1014Ω・mの体積抵抗率を示すこともできる。
【0008】
[0013]本発明者らはまた、ポリマーマトリクス内に速やかに分散するイオン性液体の能力によって、所望の静電防止特性を達成するために比較的低い濃度を用いることを可能にすることができることも見出した。しかしながら、これは比較的低い濃度で用いられるので、組成物の熱的及び機械特性は悪影響を受けない。この点に関し、イオン性液体は、通常は、ポリマー組成物の約0.1重量%~約10重量%、幾つかの態様においては約0.3重量%~約5重量%、幾つかの態様においては約0.4重量%~約3重量%、幾つかの態様においては約0.5重量%~約1.5重量%を構成する。芳香族ポリマーの濃度は概して他の随意的な成分の存在に基づいて変動する可能性があるが、これらは通常は、約25重量%~約95重量%、幾つかの態様においては約30重量%~約80重量%、幾つかの態様においては約40重量%~約70重量%の量で存在する。
【0009】
[0014]ここで、本発明の種々の態様をより詳細に記載する。
I.芳香族ポリマー:
[0015]本ポリマー組成物中において用いる芳香族ポリマーは、一般に、比較的高いガラス転移温度を有し、これにより得られる組成物に相当な程度の耐熱性を与えることができるという点で「高性能」ポリマーである。例えば、芳香族ポリマーは、約100℃以上、幾つかの態様においては約120℃以上、幾つかの態様においては約140℃~約350℃、幾つかの態様においては約150℃~約320℃のガラス転移温度を有していてよい。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて当該技術において周知なように求めることができ、例えばISO試験No.11357にしたがって求めることができる。
【0010】
[0016]芳香族ポリマーは、通常は本来は実質的にアモルファス又は半結晶性である。好適な半結晶性芳香族ポリマーの一例は、例えば芳香族ポリアミドである。特に好適な芳香族ポリアミドは、ISO試験No.11357にしたがって示差走査熱量測定を用いて求めて約200℃以上、幾つかの態様においては約220℃以上、幾つかの態様においては約240℃~約320℃のような比較的高い融点を有するものである。更に、芳香族ポリアミドのガラス転移温度は、概して約110℃~約160℃である。
【0011】
[0017]芳香族ポリアミドは、通常はアミド結合(NH-CO)によって結合している繰り返し単位を含み、ジカルボン酸(例えば芳香族ジカルボン酸)、ジアミン(例えば脂肪
族ジアミン)等の重縮合によって合成される。例えば、芳香族ポリアミドには、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,4-フェニレンジオキシ二酢酸、1,3-フェニレンジオキシ二酢酸、ジフェン酸、4,4’-オキシ二安息香酸、ジフェニルメタン-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルスルホン-4,4’-ジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸等、並びにこれらの組合せのような芳香族ジカルボン酸から誘導される芳香族繰り返し単位を含ませることができる。テレフタル酸が特に好適である。勿論、脂肪族ジカルボン酸単位、多官能性カルボン酸単位等のような他のタイプの酸単位を用いることもできることも理解すべきである。芳香族ポリアミドにはまた、通常は4~14個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンから誘導される脂肪族繰り返し単位を含ませることもできる。かかるジアミンの例としては、1,4-テトラメチレンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン等のような線状脂肪族アルキレンジアミン;2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、3-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、5-メ
チル-1,9-ノナンジアミン等のような分岐脂肪族アルキレンジアミン;並びにこれらの組合せが挙げられる。1,9-ノナンジアミン及び/又は2-メチル-1,8-オクタ
ンジアミンから誘導される繰り返し単位が特に好適である。勿論、脂環式ジアミン、芳香族ジアミンのような他のジアミン単位を用いることもできる。
【0012】
[0018]特に好適なポリアミドとしては、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(PA9T)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド/ノナメチレンデカンジアミド)(PA9T/910)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド/ノナメチレンドデカンジアミド)(PA9T/912)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド/11-アミノウンデカンアミド(PA9T/11)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド/12-アミノドデカンアミド)(PA9T/12)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/11-アミノウンデカンアミド)(PA10T/11)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/12-アミノドデカンアミド)(PA10T/12)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/デカメチレンドデカンジアミド)(PA10T/1010)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/デカメチレンドデカンジアミド)(PA10T/1012)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/テトラメチレンヘキサンジアミド)(PA10T/46)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/カプロラクタム)(PA10T/6)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンヘキサンジアミド)(PA10T/66)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド/ドデカメチレンドデカンジアミド)(PA12T/1212)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド/カプロラクタム)(PA12T/6)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンヘキサンジアミド(PA12T/66)などを挙げることができる。好適な芳香族ポリアミドの更に他の例は、Harderらの米国特許8,324,307に記載されている。
【0013】
[0019]本発明において用いることができる他の好適な半結晶性芳香族ポリマーは、ポリアリールエーテルケトンである。ポリアリールエーテルケトンは、約300℃~約400℃、幾つかの態様においては約310℃~約390℃、幾つかの態様においては約330℃~約380℃のような比較的高い融点を有する半結晶性ポリマーである。更に、ガラス転移温度は約110℃~約200℃であってよい。特に好適なポリアリールエーテルケトンは、主としてフェニル基をケトン及び/又はエーテル基と組み合わせて含むものである。かかるポリマーの例としては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)
、ポリエーテル-ジフェニル-エーテル-エーテル-ジフェニル-エーテル-フェニル-ケトン-フェニル等、並びにこれらのブレンド及びコポリマーが挙げられる。
【0014】
[0020]勿論、上記に示したように、識別できる融点を有しない実質的にアモルファスのポリマーをポリマー組成物中において用いることもできる。好適なアモルファスポリマーとしては、例えば、ポリフェニレンオキシド(PPO)、芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエーテルイミド等を挙げることができる。例えば芳香族ポリカーボネートは、通常は約130℃~約160℃のガラス転移温度を有し、1以上の芳香族ジオールから誘導される芳香族繰り返し単位を含む。特に好適な芳香族ジオールは、2つのフェノール基が二価接続基の単一の炭素原子に結合しているgem-ビスフェノールのようなビスフェノールである。かかるビスフェノールの例としては、例えば、4,4’-イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノールA)、4,4’-エチリデンジフェノール、4,4’-(4-クロロ-a-メチルベンジリデン)ジフェノール、4,4’-シクロヘキシリデンジフェノール、4,4-(シクロヘキシルメチレン)ジフェノール等、並びにこれらの組合せを挙げることができる。芳香族ジオールはホスゲンと反応させることができる。例えば、ホスゲンは、式:C(O)Cl2を有する塩化カルボニルであってよい。芳香族ポリカーボネートの合成に至る他の経路には、炭酸ジフェニルによる芳香族ジオール(例えばビスフェノール)のトランスエステル化を含ませることができる。
【0015】
II.イオン性液体:
[0021]本発明のイオン性液体は、芳香族ポリマーと一緒に溶融加工する際に液体の形態であることができるのに十分に低い融点を有する塩であってよい。例えば、イオン性液体の融点は、約400℃以下、幾つかの態様においては約350℃以下、幾つかの態様においては約1℃~約100℃、幾つかの態様においては約5℃~約50℃であってよい。塩は、カチオン種及び対イオンを含む。カチオン種は、「カチオン中心」として少なくとも1つのヘテロ原子(例えば窒素又はリン)を有する化合物を含む。かかるヘテロ原子化合物の例としては、例えば次の構造:
【0016】
【0017】
[0022](上式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、独立して、水素;置換又は非置換のC1~C10アルキル基(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル等);置換又は非置換のC3~C14シクロアルキル基(例えば、アダマンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチル、シクロヘキセニル等);置換又は非置換のC1~C10アルケニル基(例えば、エチレン、プロピレン、2-メチルプロピレン、ペンチレン等);置換又は非置換のC2~C10アルキニル基(例えば、エチニル、プロピニル等);置換又は非置換のC1~C10アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、t-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペントキシ等);置換又は非置換のアシルオキシ基(例えば、メタクリロキシ、メタクリロキシエチル等);置換又は非置換のアリール基(例えばフェニル);置換又は非置換のヘテロアリール基(例えば、ピリジル、フラニル、チエニル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、イソキサゾリル、ピロリル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、キノリル等);などからなる群から選択される)
を有する第4級オニウムが挙げられる。例えば1つの特定の態様においては、カチオン種は、構造:N+R1R2R3R4(式中、R1、R2、及び/又はR3は、独立してC1~C6アルキル(例えば、メチル、エチル、ブチル等)であり、R4は、水素又はC1~
C4アルキル基(例えばメチル又はエチル)である)を有するアンモニウム化合物であってよい。例えば、カチオン成分は、トリブチルメチルアンモニウム(R1、R2、及びR3はブチルであり、R4はメチルである)であってよい。
【0018】
[0023]カチオン種に対する好適な対イオンとしては、例えば、ハロゲン(例えば、塩素、臭素、ヨウ素等);スルフェート又はスルホネート(例えば、硫酸メチル、硫酸エチル、硫酸ブチル、硫酸ヘキシル、硫酸オクチル、ハイドロジェンスルフェート、メタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ドデシルスルフェート、トリフルオロメタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、ナトリウムドデシルエトキシスルフェート等);スルホスクシネート;アミド(例えばジシアンアミド);イミド(例えば、ビス(ペンタフルオロエチル-スルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメチル)イミド等);ボレート(例えば、テトラフルオロボレート、テトラシアノボレート、ビス[オキサラト]ボレート、ビス[サリチラト]ボレート等);ホスフェート又はホスフィネート(例えば、ヘキサフルオロホスフェート、ジエチルホスフェート、ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィネート、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、トリス(ノナフルオロブチル)トリフルオロホスフェート等);アンチモネート(例えばヘキサフルオロアンチモネート);アルミネート(例えばテトラクロロアルミネート);脂肪酸カルボキシレート(例えば、オレエート、イソステアレート、ペンタデカフルオロオクタノエート等);シアネート;アセテート;など、並びに上記の任意のものの組み合わせを挙げることができる。芳香族ポリマーとの相溶性の向上を促進するために、イミド、脂肪酸カルボキシレート等のような本来概して疎水性の対イオンを選択することが望ましい可能性がある。特に好適な疎水性対イオンとしては、例えば、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、及びビス(トリフルオロメチル)イミドを挙げることができる。
【0019】
III.随意的な成分:
A.導電性充填剤:
[0024]イオン性液体に加えて、その静電防止特性の向上を促進させるために他の導電性充填剤をポリマー組成物中において用いることもできる。好適な導電性充填剤の例としては、例えば、金属粒子(例えばアルミニウムフレーク)、金属繊維、炭素粒子(例えば、黒鉛、膨張黒鉛、グラフェン、カーボンブラック、黒鉛化カーボンブラック等)、カーボンナノチューブ、炭素繊維などを挙げることができる。炭素繊維及び黒鉛が特に好適である。幾つかの態様においては、イオン性液体と導電性充填剤を組み合わせて用いることによって相乗効果を達成することができる。理論によって限定されることは意図しないが、本発明者らは、イオン性液体は溶融加工中に速やかに流動して、幾つかの導電性充填剤(例えば、炭素繊維、黒鉛等)とポリマーマトリクスとの間のより良好な接続及び電気流路を与えることを促進して、それによって表面抵抗を更に減少させることができると考える。用いる場合には、導電性充填剤は、通常は、ポリマー組成物の約0.5重量%~約30重量%、幾つかの態様においては約1重量%~約25重量%、幾つかの態様においては約2重量%~約20重量%を肯定する。
【0020】
B.繊維状充填剤:
[0025]概して導電性でない繊維状充填剤をポリマー組成物中において用いて強度の向上を促進させることもできる。かかる繊維状充填剤の例としては、ガラス、セラミクス(例えば、アルミナ、シリカ、二酸化チタン等)、鉱物(例えば、珪灰石、ゾノトライト、ドーソナイト等)、アラミド(例えば、E.I. du Pont de Nemours, Wilmington, Delaware
によって市販されているKevlar(登録商標))、ポリオレフィン、ポリエステル等のようなポリマー、並びにこれらの混合物から形成されるものを挙げることができる。
【0021】
[0026]特に好適なガラス繊維としては、例えば、E-ガラス、A-ガラス、C-ガラス、D-ガラス、AR-ガラス、R-ガラス、S1-ガラス、S2-ガラス等、及びこれらの混合物を挙げることができる。かかるガラス繊維の体積平均長さは比較的小さく、例えば約10~約500マイクロメートル、幾つかの態様においては約100~約400マイクロメートル、幾つかの態様においては約150~約350マイクロメートル、幾つかの態様においては約200~約325マイクロメートルであってよい。ガラス繊維はまた、狭い長さ分布を有していてもよい。即ち、繊維の少なくとも約70体積%、幾つかの態様においては繊維の少なくとも約80体積%、幾つかの態様においては繊維の少なくとも約90体積%は、上述の範囲内の長さを有する。かかる小さい長さ及び/又は狭い分布によって、強度、流動性、及び表面品質の望ましい組合せの達成を更に促進させることができ、これによって小さい寸法公差を有する成形部品に特に適するようにすることができる。上述の長さ特性を有することに加えて、ガラス繊維はまた、得られるポリマー組成物の機械特性及び表面品質の向上を促進させるために比較的高いアスペクト比(平均長さを公称径で割った値)を有していてもよい。例えば、繊維は、約1~約100、幾つかの態様においては約10~約60のアスペクト比を有していてよく、幾つかの態様においては約30~約50が特に有益である。繊維は、例えば約1~約35マイクロメートル、幾つかの態様においては約2~約20マイクロメートル、幾つかの態様においては約3~約10マイクロメートルの公称径を有していてよい。
【0022】
[0027]無機繊維(「ウィスカー」としても知られる)も、本発明において用いるのに好適である。無水硫酸カルシウム、及びNyco MineralsからNYGLOS(登録商標)(例えば、NYGLOS(登録商標)4W又はNYGLOS(登録商標)8)の商品名で入手できるもののような珪灰石繊維が特に好適である。かかる無機繊維の体積平均長さは比較的小さく、例えば約1~約200マイクロメートル、幾つかの態様においては約2~約150マイクロメートル、幾つかの態様においては約5~約100マイクロメートル、幾つかの態様においては約10~約50マイクロメートルであってよい。上述の長さ特性を有することに加えて、無機繊維はまた、得られるポリマー組成物の機械特性及び表面品質を更に向上させることを促進させるために比較的高いアスペクト比(平均長さを公称径で割った値)を有していてもよい。例えば、無機繊維は、約1~約50、幾つかの態様においては約2~約20、幾つかの態様においては約4~約15のアスペクト比を有していてよい。ウィスカーは、例えば約1~約35マイクロメートル、幾つかの態様においては約2~約20マイクロメートル、幾つかの態様においては約3~約15マイクロメートルの公称径を有していてよい。
【0023】
[0028]用いる特定のタイプに関係なく、ポリマー組成物中における繊維状充填剤の相対量は、その流動性のような組成物の他の特性に悪影響を与えることなく所望の機械特性の達成を促進するように選択的に制御することができる。例えば、繊維状充填剤(例えば、ガラス繊維、無機繊維等、並びにこれらの組み合わせ)は、通常はポリマー組成物の約2重量%~約40重量%、幾つかの態様においては約5重量%~約35重量%、幾つかの態様においては約6重量%~約30重量%を構成する。繊維は上述の範囲内で用いることができるが、本発明の1つの特定の有益な特徴は、所望の機械的特性をなお達成しながら、小さい繊維含量を用いることができることである。理論によって限定されることは意図しないが、繊維の狭い長さ分布によって優れた機械特性を達成することを促進することができ、これによってより少ない量の繊維を用いることが可能になると考えられる。
【0024】
C.粒子状充填剤:
[0029]概して導電性ではない粒子状充填剤をポリマー組成物中において用いて、所望の特性及び/又は色の達成を促進することもできる。用いる場合には、かかる粒子状充填剤は、通常はポリマー組成物の約5重量%~約40重量%、幾つかの態様においては約10重量%~約35重量%、幾つかの態様においては約10重量%~約30重量%を構成する。クレイ鉱物は本発明において用いるのに特に好適である可能性がある。かかるクレイ鉱
物の例としては、例えば、タルク(Mg3Si4O10(OH)2)、ハロイサイト(Al2Si2O5(OH)4)、カオリナイト(Al2Si2O5(OH)4)、イライト((K,H3O)(Al,Mg,Fe)2(Si,Al)4O10[(OH)2,(H2O)]、モンモリロナイト(Na,Ca)0.33(Al,Mg)2Si4O10(OH)2・nH2O)、バーミキュライト((MgFe,Al)3(Al,Si)4O10(OH)2・4H2O)、パリゴルスカイト((Mg,Al)2Si4O10(OH)・4(H2O))、パイロフィライト(Al2Si4O10(OH)2)等、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。クレイ鉱物に代えて、又はこれに加えて、更に他の粒子状充填剤を用いることもできる。例えば、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、マイカ、珪藻土、珪灰石などのような他の好適なシリケート充填剤を用いることもできる。例えば、マイカは本発明において用いるのに特に好適な鉱物である可能性がある。地質学的存在状態における相当な相違を有する幾つかの化学的に異なるマイカ種が存在するが、全て実質的に同じ結晶構造を有する。本明細書において用いる「マイカ」という用語は、モスコバイト(KAl2(AlSi3)O10(OH)2)、バイオタイト(K(Mg,Fe)3(AlSi3)O10(OH)2)、フロゴパイト(KMg3(AlSi3)O10(OH)2)、レピドライト(K(Li,Al)2~3(AlSi3)O10(OH)2)、グローコナイト(K,Na)(Al,Mg,Fe)2(Si,Al)4O10(OH)2)等、並びにこれらの組み合わせのような任意のこれらの種を総称的に包含すると意図される。
【0025】
D.他の添加剤:
[0030]組成物中に含ませることができる更に他の添加剤としては、例えば、抗菌剤、顔料、酸化防止剤、安定剤、界面活性剤、ワックス、固体溶媒、難燃剤、垂れ防止剤、並びに特性及び加工性を向上させるために加える他の材料を挙げることができる。また、実質的に分解することなく芳香族ポリマーの処理条件に耐えることができる潤滑剤を、ポリマー組成物中において用いることもできる。かかる潤滑剤の例としては、脂肪酸エステル、その塩、エステル、脂肪酸アミド、有機ホスフェートエステル、及びエンジニアリングプラスチック材料の処理において潤滑剤として通常用いられているタイプの炭化水素ワックス、並びにこれらの混合物が挙げられる。好適な脂肪酸は、通常は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、モンタン酸、オクタデカン酸(octadecinic acid)、パリナリン酸などのように、約12~約60個の炭素原子の骨格炭素鎖を有する。好適なエステルとしては、脂肪酸エステル、脂肪アルコールエステル、ワックスエステル、グリセロールエステル、グリコールエステル、及びコンプレックスエステルが挙げられる。脂肪酸アミドとしては、脂肪酸第1級アミド、脂肪酸第2級アミド、メチレン及びエチレンビスアミド、並びにアルカノールアミド、例えば、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、N,N’-エチレンビスステアラミドなどが挙げられる。また、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどのような脂肪酸の金属塩;パラフィンワックス、ポリオレフィン及び酸化ポリオレフィンワックス、並びに微結晶質ワックスなどの炭化水素ワックス;も好適である。特に好適な潤滑剤は、ステアリン酸の酸、塩、又はアミド、例えばペンタエリトリトールテトラステアレート、カルシウムステアレート、又はN,N’-エチレンビスステアラミドである。用いる場合には、1種類又は複数の潤滑剤は、通常は、ポリマー組成物の約0.05重量%~約1.5重量%、幾つかの態様においては約0.1重量%~約0.5重量%(重量基準)を構成する。
【0026】
IV.形成:
[0031]芳香族ポリマー、イオン性液体、及び他の随意的な添加剤は、約250℃~約450℃、幾つかの態様においては約280℃~約400℃、幾つかの態様においては約300℃~約380℃の温度範囲内で一緒に溶融加工又はブレンドしてポリマー組成物を形成することができる。一般に、任意の種々の溶融加工技術を本発明において用いることが
できる。例えば、成分(例えば、芳香族ポリマー、イオン性液体等)を、バレル(例えば円筒形のバレル)内に回転可能に取り付けられて収容されている少なくとも1つのスクリューを含み、スクリューの長さに沿って、供給セクション及び供給セクションの下流に配置される溶融セクションを画定することができる押出機に別々か又は組み合わせて供給することができる。
【0027】
[0032]押出機は一軸又は二軸押出機であってよい。例えば
図3を参照すると、ハウジング又はバレル114、及び好適な駆動装置124(通常はモーター及びギヤボックスを含む)によって一端の上で回転可能に駆動されるスクリュー120を含む一軸押出機80の一態様が示されている。所望の場合には、2つの別々のスクリューを含む二軸押出機を用いることができる。スクリューの形状は本発明に対して特に重要ではなく、当該技術において公知なように任意の数及び/又は配向のネジ山及びネジ溝を含んでいてよい。例えば、
図3に示すように、スクリュー120は、スクリュー120のコアの周りに放射状に伸びる概して螺旋状のネジ溝を形成するネジ山を含む。バレル114内の開口を通してポリマー及び/又は他の材料(例えば無機粒子)を供給セクション132に供給するためのホッパー40が、駆動装置124に隣接して配置されている。駆動装置124の反対側は押出機80の出口端144であり、ここで押出されたプラスチックが更なる加工のために排出される。
【0028】
[0033]供給セクション132及び溶融セクション134が、スクリュー120の長さに沿って画定されている。供給セクション132はバレル114の入口部分であり、ここで芳香族ポリマー及び/又はイオン性液体が加えられる。溶融セクション134は相変化セクションであり、この中で芳香族ポリマーが固体から液体に変化する。押出機を製造する際にはこれらのセクションは明確に規定されて示されていないが、供給セクション132、及び固体から液体への相変化を行う溶融セクション134を確実に識別することは十分に当業者の範囲内である。必ずしも必須ではないが、押出機80にはまた、バレル114の出口端に隣接して且つ溶融セクション134の下流に配置されている混合セクション136を与えることもできる。所望の場合には、押出機の混合及び/又は溶融セクション内において、1以上の分配及び/又は分散混合部材を用いることができる。一軸押出機のために好適な分配ミキサーとしては、例えば、Saxon、Dulmage、キャビティートランスファーミキサー等を挙げることができる。更に、好適な分散ミキサーとしては、ブリスターリング、Leroy/Maddock、CRDミキサー等を挙げることができる。当該技術において周知なように、混合は、Bussニーダー押出機、キャビティートランスファーミキサー、及びボルテックスインターメッシュピンミキサーにおいて用いられているもののようなポリマー溶融体の折り畳み及び再配向を生起させるバレル内のピンを用いることによって更に向上させることができる。
【0029】
[0034]用いる場合には、繊維(例えば、炭素繊維のような導電性充填剤、および又はガラス繊維のような繊維状充填剤)は、ホッパー40に、又はその下流の位置において加えることもできる。1つの特定の態様においては、繊維は、芳香族ポリマーを供給する位置の下流であるが、溶融セクションの前の位置で加えることができる。例えば
図3においては、押出機80の供給セクション132の区域内に配置されているホッパー42が示されている。ホッパー42に供給される繊維は、最初は比較的長く、例えば約1,000~約5,000マイクロメートル、幾つかの態様においては約2,000~約4,500マイクロメートル、幾つかの態様においては約3,000~約4,000マイクロメートルの体積平均長さを有していてよい。しかしながら、芳香族ポリマーが未だ固体状態である位置においてこれらの長繊維を供給することによって、ポリマーを、繊維の寸法を上記に示されている体積平均長さ及び長さ分布に減少させるための研磨剤として機能させることができる。しかしながら、任意の随意的な繊維を、所望の長さで押出機に単純に供給することができることを理解すべきである。かかる態様においては、繊維は、例えば押出機の混
合及び/又は溶融セクションにおいてか、又は更に芳香族ポリマーと組み合わせて供給セクションにおいて供給することができる。更に他の態様においては、繊維は全く用いなくてもよい。
【0030】
[0035]本発明者らは、それを形成する特定の方法には関係なく、得られるポリマー組成物は優れた熱特性を有することができることを見出した。例えば、ポリマー組成物を小さい寸法を有する金型のキャビティ中に容易に流入させることができるように、ポリマー組成物の溶融粘度を十分に低くすることができる。1つの特定の態様においては、ポリマー組成物は、1000秒-1の剪断速度において測定して約0.1~約80Pa・秒、幾つかの態様においては約0.5~約50Pa・秒、幾つかの態様においては約1~約30Pa・秒の溶融粘度を有することができる。溶融粘度は、ISO試験No.11443にしたがって、組成物の融点(例えば350℃)よりも15℃高い温度で測定することができる。組成物はまた、比較的高い融点も有することができる。例えば、ポリマーの融点は、約250℃~約400℃、幾つかの態様においては約280℃~約395℃、幾つかの態様においては約300℃~約380℃にすることができる。
【0031】
V.成形部品:
[0036]形成したら、ポリマー組成物は、当該技術において公知の技術を用いて任意の種々の異なる成形部品に成形することができる。例えば、成形部品は、乾燥して予備加熱したプラスチック顆粒を金型中に射出する1成分射出成形プロセスを用いて成形することができる。用いる成形技術に関係なく、良好な静電防止特性、高い流動性、及び良好な機械特性の独特の組合せを有する本発明のポリマー組成物は、小さい寸法公差を有する電子部品に特に良く適していることが見出された。例えばかかる部品は、概して、約500マイクロメートル以下、幾つかの態様においては約50~約450マイクロメートル、幾つかの態様においては約100~約400マイクロメートルのような少なくとも1つのミクロサイズの寸法(例えば、厚さ、幅、高さ等)を含む。
【0032】
[0037]1つのかかる部品は、ファインピッチ電気コネクターである。より詳しくは、かかる電気コネクターは、中央処理装置(CPU)を印刷回路基板に取り外し可能に実装するためにしばしば用いられている。コネクターには、コンタクトピンを受容するように構成されている挿入通路を含ませることができる。これらの通路は、熱可塑性樹脂から形成することができる対向する壁部によって画定される。所望の電気特性を達成することを促進するために、これらのピンのピッチは、与えられたスペース内に求められる多数のコンタクトピンが収容されるように一般に小さい。このため、ピン挿入通路のピッチ、及びこれらの通路を仕切る対向する壁部の幅も小さいことが求められる。例えば、壁部は、約500マイクロメートル以下、幾つかの態様においては約50~約450マイクロメートル、幾つかの態様においては約100~約400マイクロメートルの幅を有していてよい。過去においては、かかる薄い幅の金型に熱可塑性樹脂を適正に充填することはしばしば困難であった。しかしながら、その独特の特性のために、本発明のポリマー組成物はファインピッチコネクターの壁部を形成するのに特に良く適している。
【0033】
[0038]1つの特に好適なファインピッチ電気コネクターを
図1に示す。回路基板Pの表面上に実装することができる基板側部分C2を含む電気コネクター200が示されている。コネクター200にはまた、基板側のコネクターC2に結合させることによって別々の配線3を回路基板Pに接続するような構造を有する配線材料側部分C1も含ませることができる。基板側部分C2には、その中に配線材料側コネクターC1を嵌合させる嵌合凹部10a、及びハウジング10の幅方向において細くて長い形状を有する第1のハウジング10を含ませることができる。更に、配線材料側部分C1には、ハウジング20の幅方向において細くて長い第2のハウジング20を含ませることができる。第2のハウジング20においては、複数の端子受容キャビティー22を幅方向において平行に与えて、上側及
び下側端子受容キャビティー22を含む2列配置を生起させることができる。別々の配線3の遠位末端に実装されている端子5は、端子受容キャビティー22のそれぞれの中に収容することができる。所望の場合には、締着部28(噛合部)を、基板側コネクターC2上の接続部材(図示せず)に対応するハウジング20の上に与えることもできる。
【0034】
[0039]上記で議論したように、第1のハウジング10及び/又は第2のハウジング20の内壁は、比較的小さい幅寸法を有する可能性があり、本発明のポリマー組成物から形成することができる。例えば、壁部を
図2により詳細に示す。示されているように、対向する壁部224の間に、コンタクトピンを収容することができる挿入通路又は空間225が画定されている。壁部224は、上述の範囲内の幅「w」を有する。繊維(例えば成分400)を含むポリマー組成物から壁部224を形成する場合、かかる繊維は、壁部の幅に最も良く適合する特定の範囲内の体積平均長さ及び狭い長さ分布を有していてよい。例えば、繊維の体積平均長さに対する少なくとも1つの壁部の幅の比は、約0.8~約3.2、幾つかの態様においては約1.0~約3.0、幾つかの態様においては約1.2~約2.9である。
【0035】
[0040]壁部に加えて又は壁部に代えて、ハウジングの任意の他の部分を本発明のポリマー組成物から形成することもできることも理解すべきである。例えば、コネクターには、ハウジングを被包するシールドを含ませることもできる。シールドの一部又は全部を本発明のポリマー組成物から形成することができる。例えば、ハウジング及びシールドは、それぞれポリマー組成物から一体成形されるワンピース構造体であってよい。更に、シールドは、第1のシェル及び第2のシェルを含むツーピース構造体であってよく、これらのそれぞれを本発明のポリマー組成物から形成することができる。
【0036】
[0041]勿論、ポリマー組成物はまた、広範囲の他のコンポーネントにおいて用いることもできる。例えば、ポリマー組成物は、電子コンポーネントにおいて用いる平面基板に成形することができる。基板は薄くてよく、例えば約500マイクロメートル以下、幾つかの態様においては約50~約450マイクロメートル、幾つかの態様においては約100~約400マイクロメートルの厚さを有することができる。例えば一態様においては、平面基板に、種々の公知の技術(例えばレーザーダイレクトストラクチャリング、電気メッキ等)を用いて1以上の導体素子を施すことができる。導体素子は、種々の異なる目的を果たすことができる。例えば一態様においては、導体素子は、SIMSカードにおいて用いるもののような集積回路を形成する。他の態様においては、導体素子は、パッチアンテナ構造体、インバーテッドFアンテナ構造体、密閉型及び開放型スロットアンテナ構造体、ループアンテナ構造体、モノポール、ダイポール、平面状インバーテッドFアンテナ構造体、これらのデザインの複合体等から形成される共振素子を有するアンテナのような種々の異なるタイプのアンテナを形成する。得られるアンテナ構造体は、上記に記載したような、その中の利用できる内部空間が比較的小さい比較的小型の携帯電子コンポーネントのハウジング中に含ませることができる。
【0037】
[0042]
図4~5に示されるアンテナ構造体を含む1つの特に好適な電子コンポーネントは、携帯電話の機能を有する携帯用デバイス410である。
図4に示されるように、デバイス410は、プラスチック、金属、他の好適な誘電材料、他の好適な導電性材料、又はかかる複数の材料の組み合わせから形成されるハウジング412を有することができる。タッチスクリーンディスプレイのようなディスプレイ414を、デバイス410の前面上に与えることができる。デバイス410にはまた、スピーカーポート440及び他の入出力ポートを与えることもできる。1以上のボタン438及び他のユーザー入力デバイスを用いてユーザー入力を集めることができる。
図5に示されるように、デバイス410の背面442上にアンテナ構造体426も与えられているが、アンテナ構造体は一般にデバイスの任意の所望の位置に配置することができることを理解すべきである。上記に示したよ
うに、アンテナ構造体426には、本発明のポリマー組成物から形成される平面基板を含ませることができる。アンテナ構造体は、任意の種々の公知の技術を用いて電子デバイス内の他のコンポーネントに電気的に接続することができる。例えば、ハウジング412又はハウジング412の一部を、アンテナ構造体426のための導電性接地層として機能させることができる。
【0038】
[0043]本発明のポリマー組成物から形成される平面基板は、他の用途において用いることもできる。例えば一態様においては、平面基板を用いて、無線通信デバイス(例えば携帯電話)において通常的に用いられるコンパクトカメラモジュール(CCM)のベースを形成することができる。例えば
図6~7を参照すると、コンパクトカメラモジュール500の1つの特定の態様がより詳細に示されている。示されているように、コンパクトカメラモジュール500は、ベース506の上に配されているレンズアセンブリ504を含む。次にベース506は、場合によって用いるメインボード508の上に配される。これらの比較的薄い特徴のために、ベース506及び/又はメインボード508は、上記に記載の本発明のポリマー組成物から形成するのに特に適している。レンズアセンブリ504は、当該技術において公知の任意の種々の構造を有していてよく、固定焦点タイプのレンズ及び/又は自動焦点タイプのレンズを挙げることができる。例えば一態様においては、レンズアセンブリ504は、レンズ604を収容する中空のバレルの形態であり、これはメインボード508の上に配置されて回路601によって制御されている画像センサー602と連絡している。バレルは、長方形、円筒形等のような任意の種々の形状を有していてよい。幾つかの態様においては、バレルも本発明のポリマー組成物から形成することができ、上述の範囲内の壁厚さを有していてよい。カメラモジュールの他の部品も本発明のポリマー組成物から形成することができることを理解すべきである。例えば、示されているように、ポリマーフィルム510(例えばポリエステルフィルム)及び/又は断熱キャップ502によってレンズアセンブリ504を覆うことができる。幾つかの態様においては、フィルム510及び/又はキャップ502も本発明のポリマー組成物から形成することができる。
【0039】
[0044]本ポリマー組成物を用いることができる更に他の可能な電子コンポーネントとしては、例えば、携帯電話、ラップトップコンピューター、小型ポータブルコンピューター(例えば超軽量型コンピューター、ネットブックコンピューター、及びタブレットコンピューター)、腕時計型機器、ペンダント型機器、ヘッドホン又はイヤホン型機器、無線通信機能を有するメディアプレイヤー、携帯型コンピューター(時には携帯情報端末とも呼ばれる)、リモートコントローラー、全地球測位システム(GPS)機器、携帯ゲーム機器、バッテリーカバー、スピーカー、カメラモジュール、集積回路(例えばSIMカード)、電子機器用のハウジング、電気制御装置、回路遮断器、スイッチ、パワーエレクトロニクス、プリンター部品等が挙げられる。
【0040】
[0045]それを用いる特定の方法に関係なく、本発明者らは、本発明のポリマー組成物から形成される成形部品は、優れた機械特性及び熱特性を有することができることを見出した。上記に示したように、これは部分的には、ポリマーマトリクス内に均一にブレンド及び分散されるイオン性液体の独特の能力によるものである。例えば、成形部品は、ISO試験179-1(ASTM-D256方法Bと技術的に同等)にしたがって23℃において測定して約4kJ/m2以上、幾つかの態様においては約2~約60kJ/m2、幾つかの態様においては約2~約40kJ/m2、幾つかの態様においては約3~約30kJ/m2の比較的高い衝撃強さ(シャルピーノッチ付き衝撃強さ)を有することができる。部品の引張及び曲げ機械特性も良好にすることができる。例えば、本部品は、約20~約500MPa、幾つかの態様においては約50~約400MPa、幾つかの態様においては約80~約350MPaの引張り強さ;約0.5%以上、幾つかの態様においては約0.6%~約20%、幾つかの態様においては約0.8%~約3.5%の引張破断歪み;及
び/又は約5,000MPa~約30,000MPa、幾つかの態様においては約6,000MPa~約20,000MPa、幾つかの態様においては約7,000MPa~約15,000MPaの引張弾性率;を示すことができる。引張特性は、ISO試験527(ASTM-D638と技術的に同等)にしたがって23℃において測定することができる。本成形部品はまた、約20~約500MPa、幾つかの態様においては約50~約400MPa、幾つかの態様においては約100~約350MPaの曲げ強さ;約0.5%以上、幾つかの態様においては約0.6%~約20%、幾つかの態様においては約0.8%~約3.5%の曲げ破断歪み;及び/又は約5,000MPa~約30,000MPa、幾つかの態様においては約6,000MPa~約20,000MPa、幾つかの態様においては約7,000MPa~約15,000MPaの曲げ弾性率;も示すことができる。曲げ特性は、ISO試験178(ASTM-D790と技術的に同等)にしたがって23℃において測定することができる。成形部品はまた、ASTM-D648-07(ISO試験75-2と技術的に同等)にしたがって1.8MPaの規定荷重において測定して約200℃以上、幾つかの態様においては約220℃~約280℃の荷重撓み温度(DTUL)も示すことができる。
【0041】
[0046]成形部品はまた、従来の難燃剤の不存在下においても改良された難燃性能を有することもできる。組成物の難燃性は、例えば「プラスチック材料の燃焼性に関する試験:UL94」と題された保険業者研究所公報94の手順にしたがって求めることができる。下記においてより詳細に記載するように、消火までの時間(全燃焼時間)及び垂れに抵抗する能力に基づいて、幾つかの等級を適用することができる。この手順によれば、例えば本発明の組成物から形成される成形部品は、V0の等級(これは、部品が、所定の部品厚さ(例えば0.25又は0.8mm)において測定して50秒間以下の総燃焼時間及び0の綿を発火させる燃焼粒子のドリップの総数を有することを意味する)を達成することができる。例えば、直火に曝露すると、本発明の組成物から形成される成形部品は、約50秒間以下、幾つかの態様においては約45秒間以下、幾つかの態様においては約1~約40秒間の総燃焼時間を示すことができる。更に、UL94試験中に生成する燃焼粒子のドリップの総数は、3以下、幾つかの態様においては2以下、幾つかの態様においては1以下(例えば0)にすることができる。かかる試験は、23℃及び50%の相対湿度において48時間コンディショニングした後に行うことができる。
【実施例0042】
[0047]本発明は、以下の実施例を参照してより良好に理解できる。
試験法:
[0048]静電防止試験:静電防止挙動に関して試験するために、成形されたディスク/プラークを紙で弱く擦過して、成形部品表面上に静電荷を生成させた。次に、部品を紙の小片の付近に配した。部品表面上に静電荷が生成している場合には、部品と紙との間に引力が生じる。また、静電荷が生成していない場合には、部品を紙により近く移動させても紙の動きは起こらない。紙の移動があった場合には「なし」と記録し、紙が移動しなかった場合には「あり」と記録した。
【0043】
[0049]溶融粘度:溶融粘度(Pa・秒)は、ISO試験No.11443にしたがって、1000秒-1の剪断速度、及び融点(例えば350℃)より15℃高い温度において、Dynisco LCR7001毛細管流量計を用いて求めることができる。流量計オリフィス(ダイ
)は、1mmの直径、20mmの長さ、20.1のL/D比、及び180°の入口角を有していた。バレルの直径は9.55mm±0.005mmであり、ロッドの長さは233.4mmであった。
【0044】
[0050]融点:ポリマー又は組成物の融点(Tm)は、当該技術において公知なように示差走査熱量測定(DSC)によって求めることができる。融点は、ISO試験No.11
357によって求められる示差走査熱量測定(DSC)ピーク融解温度である。DSC手順においては、TA-Q2000装置上で行うDSC測定を用いて、ISO標準規格10350に示されているように試料を20℃/分で加熱及び冷却した。
【0045】
[0051]荷重撓み温度(DTUL):荷重撓み温度は、ISO試験No.75-2(ASTM-D648-07と技術的に同等)にしたがって求めることができる。より詳しくは、80mmの長さ、10mmの厚さ、及び4mmの幅を有する試験片試料を、規定荷重(最大外繊維応力)が1.8メガパスカルである沿層方向3点曲げ試験にかけることができる。試験片をシリコーン油浴中に降下させ、0.25mm(ISO試験No.75-2に関しては0.32mm)歪むまで温度を2℃/分で上昇させることができる。
【0046】
[0052]引張弾性率、引張応力、及び引張伸び:引張特性は、ISO試験No.527(ASTM-D638と技術的に同等)にしたがって試験することができる。80mmの長さ、10mmの厚さ、及び4mmの幅を有する同じ試験片試料について、弾性率及び強度の測定を行うことができる。試験温度は23℃であってよく、試験速度は1又は5mm/分であってよい。
【0047】
[0053]曲げ弾性率、曲げ応力、及び曲げ歪み:曲げ特性は、ISO試験No.178(ASTM-D790と技術的に同等)にしたがって試験することができる。この試験は64mmの支持材スパンに関して行うことができる。試験は、未切断のISO-3167多目的棒材の中央部分について行うことができる。試験温度は23℃であってよく、試験速度は2mm/分であってよい。
【0048】
[0054]ノッチ付きシャルピー衝撃強さ:ノッチ付きシャルピー特性は、ISO試験No.179-1(ASTM-D256方法Bと技術的に同等)にしたがって試験することができる。この試験は、タイプAのノッチ(0.25mmの底半径)、及びタイプ1の試験片寸法(80mmの長さ、10mmの幅、及び4mmの厚さ)を用いて行うことができる。試験片は、一枚歯フライス盤を用いて多目的棒材の中央部分から切り出すことができる。試験温度は23℃であってよい。
【0049】
[0055]表面抵抗率及び体積抵抗率:表面及び体積抵抗率の値は、IEC-60093(ASTM-D257-07と同等)にしたがって求めることができる。この試験は、60×60mmのプラークを用いて行うことができる。この試験は、電位計(Keithley K8009又はETS-823)を用いる電圧電流計法を用いることができる。Keithley K-8009を用いて試験する場合には、4分間の放電時間及び1分間の帯電を用いることができる。ETS-823プ
ローブを用いて試験する場合には、安定化したら直ちに読み値をとることができる。
【0050】
[0056]UL-94:試験片を垂直位置に支持し、試験片の底部に炎を接炎した。炎を1
0秒間接炎した後、燃焼が止まるまで取り外し、その時点において炎を更に10秒間再接炎した後に取り外した。5個の試験片の2つの組を試験した。試料寸法は、125mmの長さ、13mmの幅、及び0.8mmの厚さであった。2つの組は、時効処理の前後にコンディショニングした。未時効試験に関しては、それぞれの厚さを、23℃及び50%の相対湿度において48時間コンディショニングした後に試験した。時効試験に関しては、それぞれの厚さの5つの試料を、70℃において7日間コンディショニングした後に試験した。
【0051】
【0052】
実施例:
[0057]69.2重量%のPA9T(Geneter(登録商標)G1300H)、0.8重量%のイ
オン性液体、及び30重量%のガラス繊維を含むポリマー組成物を形成した。イオン性液体はトリ-n-ブチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(3MからのFC-4400)であった。また、イオン性液体を含まない対照試料も形成した。配
合は、18mmの一軸押出機を用いて行った。試料をプラーク(60mm×60mm)に射出成形し、熱及び機械特性に関して試験した。結果を下表に示す。
【0053】
【0054】
[0058]本発明のこれら及び他の修正及び変更は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく当業者によって実施することができる。更に、種々の態様の幾つかの形態は、全体的又は部分的に交換することができることを理解すべきである。更に、当業者であれば、上記の記載は例示目的のみのものであり、特許請求の範囲において更に記載されている発明を限定することは意図しないことを認識するであろう。