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特開2023-123704ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体活性化剤
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  • 特開-ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体活性化剤 図1A
  • 特開-ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体活性化剤 図1B
  • 特開-ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体活性化剤 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123704
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体活性化剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/428 20060101AFI20230829BHJP
   A61K 31/277 20060101ALI20230829BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230829BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
A61K31/428
A61K31/277
A61P1/16
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105254
(22)【出願日】2023-06-27
(62)【分割の表示】P 2019554256の分割
【原出願日】2018-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2017220362
(32)【優先日】2017-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018132701
(32)【優先日】2018-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000228590
【氏名又は名称】日本ケミファ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】平野 益治
(72)【発明者】
【氏名】武藤 貴史
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れたペルオキシソーム増殖剤応答性受容体αの活性化作用を有し、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体αに媒介される疾患、例えば高脂血症、脂質異常症、糖尿病等の疾患に対する治療又は予防剤を提供する。
【解決手段】2-[[7-(4-シアノフェニル)ベンゾ[d]チアゾール-6-イル]チオ]-2-メチルプロパン酸、2-[[1-(4-シアノフェニル)ナフタレン-2-イル]チオ]-2-メチルプロパン酸等の化合物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-[[7-(4-シアノフェニル)ベンゾ[d]チアゾール-6-イル]チオ]-2-メチルプロパン酸、2-[[7-(4-シアノフェニル)ベンゾ[d]イソチアゾールー6-イル]チオ]ー2-メチルプロパン酸、2-[[6-(4-シアノフェニル)ベンゾ[d]チアゾール-5-イル]オキシ]-2-メチルプロパン酸、2-[[1-(4-シアノフェニル)ナフタレン-2-イル]チオ]-2-メチルプロパン酸、2-[[7-(4-シアノフェニル)-3-メチルベンゾ[d]イソチアゾール-6-イル]チオ]-2-メチルプロパン酸、2-[[7-(4-シアノフェニル)-2-(トリフルオロメチル)ベンゾ[d]チアゾール-6-イル]チオ]-2-メチルプロパン酸、2-[[7-(4-シアノフェニル)-2-メチルベンゾ[d]チアゾール-6-イル]チオ]-2-メチルプロパン酸、1-[[7-(4-シアノフェニル)ベンゾ[d]イソチアゾール-6-イル]チオ]シクロブタン-1-カルボン酸、2-メチル-2-[[7-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンゾ[d]イソチアゾール-6-イル]チオ]プロパン酸、2-[[7-(4-シアノフェニル)-4-フルオロベンゾ[d]イソチアゾール-6-イル]チオ]-2-メチルプロパン酸、1-[[7-(4-シアノフェニル)ベンゾ[d]イソチアゾール-6-イル]チオ]シクロペンタン-1-カルボン酸、2-[[7-(4-クロロフェニル)ベンゾ[d]イソチアゾール-6-イル]チオ]-2-メチルプロパン酸、2-[[7-(4-シアノ-3-メチルフェニル)ベンゾ[d]イソチアゾール-6-イル]チオ]-2-メチルプロパン酸、1-[[7-(4-シアノフェニル)-3-メチルベンゾ[d]イソチアゾール-6-イル]チオ]シクロブタン-1-カルボン酸、2-[[7-(4-シアノフェニル)ベンゾ[d]イソチアゾール-6-イル]チオ]-2-エチルブタン酸、2-[[7-(4-シアノフェニル)ベンゾ[d]イソチアゾール-6-イル]チオ]-3,3-ジメチルブタン酸、若しくは1-[[7-(4-シアノフェニル)ベンゾ[d]イソチアゾール-6-イル]チオ]シクロヘキサン-1-カルボン酸から選択される化合物又はその塩を有効成分として含有する、脂肪肝又は非アルコール性脂肪肝炎の治療剤および/または予防剤。
【請求項2】
2-[[7-(4-シアノフェニル)ベンゾ[d]チアゾール-6-イル]チオ]-2-メチルプロパン酸、2-[[7-(4-シアノフェニル)ベンゾ[d]イソチアゾールー6-イル]チオ]ー2-メチルプロパン酸、2-[[6-(4-シアノフェニル)ベンゾ[d]チアゾール-5-イル]オキシ]-2-メチルプロパン酸、2-[[1-(4-シアノフェニル)ナフタレン-2-イル]チオ]-2-メチルプロパン酸、2-[[7-(4-シアノフェニル)-3-メチルベンゾ[d]イソチアゾール-6-イル]チオ]-2-メチルプロパン酸、2-[[7-(4-シアノフェニル)-2-(トリフルオロメチル)ベンゾ[d]チアゾール-6-イル]チオ]-2-メチルプロパン酸、2-[[7-(4-シアノフェニル)-2-メチルベンゾ[d]チアゾール-6-イル]チオ]-2-メチルプロパン酸、1-[[7-(4-シアノフェニル)ベンゾ[d]イソチアゾール-6-イル]チオ]シクロブタン-1-カルボン酸、2-メチル-2-[[7-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンゾ[d]イソチアゾール-6-イル]チオ]プロパン酸、2-[[7-(4-シアノフェニル)-4-フルオロベンゾ[d]イソチアゾール-6-イル]チオ]-2-メチルプロパン酸、1-[[7-(4-シアノフェニル)ベンゾ[d]イソチアゾール-6-イル]チオ]シクロペンタン-1-カルボン酸、2-[[7-(4-クロロフェニル)ベンゾ[d]イソチアゾール-6-イル]チオ]-2-メチルプロパン酸、2-[[7-(4-シアノ-3-メチルフェニル)ベンゾ[d]イソチアゾール-6-イル]チオ]-2-メチルプロパン酸、1-[[7-(4-シアノフェニル)-3-メチルベンゾ[d]イソチアゾール-6-イル]チオ]シクロブタン-1-カルボン酸、2-[[7-(4-シアノフェニル)ベンゾ[d]イソチアゾール-6-イル]チオ]-2-エチルブタン酸、2-[[7-(4-シアノフェニル)ベンゾ[d]イソチアゾール-6-イル]チオ]-3,3-ジメチルブタン酸、若しくは1-[[7-(4-シアノフェニル)ベンゾ[d]イソチアゾール-6-イル]チオ]シクロヘキサン-1-カルボン酸から選択される化合物又はその塩を有効成分として含有する、脂肪肝又は非アルコール性脂肪肝炎から選ばれるペルオキシソーム増殖剤活性化受容体αに媒介される疾患の治療剤および/または予防剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はペルオキシソーム増殖剤応答性受容体αの活性化剤に関する。
本願は、2017年11月15日に日本に出願された、特願2017-220362号及び2018年7月12日に日本に出願された、特願2018-132701に基づき優先権主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ペルオキシソーム(peroxisome)は動植物の細胞中に見られる小器官で、そのマトリックスにはカタラーゼをはじめとした種々の酵素が含まれている。ペルオキシソーム増殖剤(peroxisome proliferator)はこのペルオキシソームの増殖を誘発する物質で、高脂血症治療薬(フィブラート類)、除草剤、フタル酸塩可塑剤等の投与により、ペルオキシソームの増加、カタラーゼ等の遺伝子発現の誘導が生じることが知られている。
イッセマン(Isseman)らによりこのペルオキシソーム増殖剤によって活性化される核内受容体が同定され、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(peroxisome proliferator activated receptor:以下、PPAR)と命名された(非特許文献1)。
PPARはこれまでPPARα、PPARγ及びPPARδの3種のサブ・タイプの存在が確認されている(非特許文献2)。このうちPPARαは、腎臓、肝臓、心臓及び骨格筋など脂肪酸を多量に消費する臓器に高度に発現していることが報告されている(非特許文献3)。
上述したフィブラート系薬剤は、このPPARαに対しリガンド効果を有し、強い血清TG(トリグリセリド)の低下作用を有するため、高脂血症治療薬として用いられている。
フィブラート系薬剤としては、例えば次式、
【0003】
【化1】
【0004】
で表されるクリノフィブラート(特許文献1)、
次式、
【0005】
【化2】
【0006】
で表されるフェノフィブラート(特許文献2)、
次式、
【0007】
【化3】
【0008】
で表されるベザフィブラート(特許文献3)等が知られている。
またPPARαには、高脂血症以外にも例えば動脈硬化や肥満、糖尿病、メタボリック・シンドローム、心不全、慢性腎臓病等に関連することが報告されており(非特許文献4)、これらの疾患治療/予防薬として期待される。また、これらの疾患には酸性尿を伴う場合が多く、尿路結石、特に尿酸結石のリスクを上昇させることが知られているが(非特許文献5、非特許文献6)、フィブラート系薬剤には酸性尿の改善効果があることも報告されている(非特許文献7)。
ところで本発明者らは、次式で示される誘導体が尿酸トランスポーターURAT1を介する尿酸の再吸収を阻害し、痛風又は高尿酸血症の予防及び治療剤として有用であることを見出し、特許出願している(特許文献4)。
【0009】
【化4】
【0010】
(式中、点線は単結合又は2重結合を表し、
QはCR、NR又はNを表し、
QがCRの場合、RとRとが結合し、点線からなる環と一緒になって、ナフタレン環、若しくはキノリン環を形成するか、
又は、RとR、RとR及びRとRから選択される何れか1つの組み合わせで結合し、これらが結合している2個の炭素原子と一緒になって、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される1~3個のヘテロ原子を環構成元素として含有する5員環のヘテロアリール環を形成し、さらに該ヘテロアリール環は点線からなる環とで縮合環を形成し、
ここで、点線からなる環は、環内の2重結合の数が最大となる環であり、
QがNの場合、RとRが結合し、点線からなる環と一緒になってキノリン環を形成し、
QがNRの場合、RとR又はRとRが結合し、点線からなる環と一緒になって、イミダゾ[1,2-a]ピリジン環を形成し、
、R,R及びRは、環を構成しない場合は、同一又は異なっていても良く、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~8のアルキル基、3~7員環のシクロアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルキル基、1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数2~8のアルキニル基、炭素数1~8のアルキルアミノ基、炭素数2~12のジアルキルアミノ基、アルキル基の炭素数が1~8であるアルキルオキシカルボニル基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、CONR’R’’、SR’、又はSONR’R’’を表し、
ここで、R’及びR’’は、同一又は異なっていても良く、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基であり、
、R,R及びRが環を構成する場合は、該環は1~4個の同一又は異なっても良い、前記の環を構成しない場合のRと同じ置換基を有していても良く、
Aは1~5個の同一又は異なっていても良い前記の環を構成しない場合のRと同じ置換基を有していても良いフェニル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、ピリダジル基、キノリル基又はイソキノリル基を表し、
ここで、Aは環を構成する炭素原子を介して点線からなる環と結合し、
Xは、NR11、酸素原子又は硫黄原子を表し、
ここで、R11は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基又は1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルキル基を表し、
Yは、炭素数1~8のアルキレン鎖を表し、
ここで、該アルキレン鎖は、1~4個の同一又は異なる炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルキル基、1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルコキシ基、3~7員環のシクロアルキル基又は環構成元素として酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択される1~2個のヘテロ原子を含む4~7員環の飽和ヘテロ環で置換されていても良く、また該アルキレン鎖は、直鎖アルキレン鎖であっても分枝鎖アルキレン鎖であってもよく、分枝鎖アルキレン鎖は、同一又は異なる炭素原子に結合する側鎖が、これらが結合している炭素原子と一緒になって3~7員環を形成しても良く、さらに該アルキレン鎖が炭素数2~8のアルキレン鎖の場合、途中で2重結合を有していても良く、
Zは、COH,CON(R12)(R13),CO(R14),SON(R15)(R16)又はテトラゾリル基を表す。
ここで、R12、R14、及びR15は水素原子、炭素数1~8のアルキル基又は1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルキル基を表し、
13及びR16は水素原子、炭素数1~8のアルキル基、1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルキル基、置換基を有していても良いフェニル基、置換基を有していても良いピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、若しくはピラジル基又は置換基を有していても良い窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される1~3個のヘテロ原子を環構成元素として含有する5員環のヘテロアリール環を表す。
但し、RとRとが結合し、点線からなる環と一緒になってナフタレン環を形成し、Xが酸素原子で、Aがナフタレンで、Aの1位で点線からなる環と結合する場合、Aの2位は、炭素数1~8のアルコキシ基又はヒドロキシ基でなく、更にまた3-[[1-(2-フルオロフェニル)ナフタレン-2-イル]チオ]プロパン酸エチルでない。)
しかしながら、前記特許文献には、明確にこれらの化合物がペルオキシソーム増殖剤応答性受容体の活性作用を有する旨の記載はない。また、URAT1阻害等を機序とする尿酸排泄促進薬は尿中への尿酸の排泄を促進するため尿酸結石のリスクを有するが、酸性尿ではリスクがさらに高まることが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭48-54047号公報
【特許文献2】特開昭54-81244号公報
【特許文献3】特公昭51-12618号公報
【特許文献4】国際公開第2016/108282号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Nature,347,p645-650,1990
【非特許文献2】Proc.Nati.Acad.Sci.USA,91,p7335-7359,1994
【非特許文献3】Endocrinology,137,p354-366,1996
【非特許文献4】The Lipid,Vol.27,No.4,P336-371,2016
【非特許文献5】泌尿器科紀要,Vol.57,No.1,P43-47,2011
【非特許文献6】Clin J Am Soc Nephrol,Vol.5,P1277-1281,2010
【非特許文献7】Gout and Nucleic Acid Metaboli sm,Vol.30,No.2,P211-215,2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、優れたペルオキシソーム増殖剤応答性受容体αの活性化作用を有し、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体αに媒介される疾患、例えば高脂血症、脂質異常症、糖尿病等の疾患に対する治療又は予防剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、特許文献4に開示されたURAT1阻害活性を有する化合物に、優れたペルオキシソーム増殖剤応答性受容体αの活性化作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明は、以下の態様を有する。
(1)次の一般式、
【0016】
【化5】
(式中、R、R、R、R、R及びR(ただし、R、R、R及びRは環を構成しない場合)は、同一又は異なっていても良く、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルキル基、1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、炭素数1~8のアルキルスルファニル基、ニトロ基又はシアノ基を表し、
、R、R及びRが環を構成する場合は、RとR、RとR及びRとRから選択される何れか1つの組み合わせで結合し、これらが結合している2個の炭素原子と一緒になって、ベンゼン環、ピリジン環又は窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される1~3個のヘテロ原子を環構成元素として含有する5員環のヘテロアリール環を形成し、
ここで、かかるベンゼン環、ピリジン環及びヘテロアリール環は、無置換又は1~4個の同一又は異なるハロゲン原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルキル基、1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、炭素数1~8のアルキルスルファニル基、ニトロ基又はシアノ基から選択される置換基を有していても良く、
及びRは、R及びRが結合している2個の炭素原子と一緒になってベンゼン環を形成するか、又は前述したRと同じものを表し、
ここで、かかるベンゼン環は、無置換又は1~4個の同一又は異なるハロゲン原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルキル基、1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、炭素数1~8のアルキルスルファニル基、ニトロ基又はシアノ基から選択される置換基を有していても良く、
Wは、CR又はNを表し、
ここで、Rは前述したRと同じものを表し、
Xは、NR10、酸素原子又は硫黄原子を表し、
ここで、R10は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基又は1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルキル基を表し、
Yは、炭素数1~8のアルキレン鎖又は炭素数2~6のアルケニレン鎖を表し、
ここで、該アルキレン鎖及びアルケニレン鎖は、無置換又は1~4個の炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルキル基、1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルコキシ基で置換されていても良く、また該アルキレン鎖は、直鎖アルキレン鎖であっても分枝鎖アルキレン鎖であってもよく、分枝鎖アルキレン鎖は、同一又は異なる炭素原子に結合する側鎖が、これらが結合している炭素原子と一緒になって3~7員環を形成しても良く、さらに該アルキレン鎖が炭素数2~8のアルキレン鎖の場合、途中で2重結合を有していても良く、
Zは、COH、CO11、テトラゾリル基又はSONR1213を表し
ここで、R11は炭素数1~8のアルキル基を表し、R12及びR13は同一又は異なっていても良く水素原子、炭素数1~8のアルキル基又は1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルキル基を表す。
但し、R及びRが、R及びRが結合している2個の炭素原子と一緒になってベンゼン環を形成し、Xが酸素原子で、R及びRが、R及びRが結合している2個の炭素原子と一緒になってベンゼン環を形成する場合、Rは炭素数1~8のアルコキシ基又はヒドロキシ基でない。)で表される化合物、該化合物の互変異性体、立体異性体、若しくはその薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を含有するペルオキシソーム増殖剤活性化受容体αの活性化剤。
(2)R及びRが、R及びRが結合している2個の炭素原子と一緒になって、ベンゼン環又はピリジン環を形成する前記化合物、該化合物の互変異性体、立体異性体、若しくはその薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を含有する前記(1)記載のペルオキシソーム増殖剤活性化受容体αの活性化剤。
(3)R及びRが、R及びRが結合している2個の炭素原子と一緒になって、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される2個のヘテロ原子を環構成元素として含有する5員環のヘテロアリール環を形成する前記化合物、該化合物の互変異性体、立体異性体、若しくはその薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を含有する前記(1)記載のペルオキシソーム増殖剤活性化受容体αの活性化剤。
(4)R及びRが、R及びRが結合している2個の炭素原子と一緒になって、チアゾール又はイソチアゾールを形成する前記化合物、該化合物の互変異性体、立体異性体、若しくはその薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を含有する前記(1)又は(3)記載のペルオキシソーム増殖剤活性化受容体αの活性化剤。
(5)R、R、R、及びRが、同一又は異なっていても良く、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルキル基、1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルコキシ基又はシアノ基である前記化合物、該化合物の互変異性体、立体異性体、若しくはその薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を含有する前記(1)~(4)記載のペルオキシソーム増殖剤活性化受容体αの活性化剤。
(6)Rがハロゲン原子、1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルキル基、シアノ基である前記化合物、該化合物の互変異性体、立体異性体、若しくはその薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を含有する前記(1)~(5)記載のペルオキシソーム増殖剤活性化受容体αの活性化剤。
(7)Wが、CHである前記化合物、該化合物の互変異性体、立体異性体、若しくはその薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物含有する前記(1)~(6)記載のペルオキシソーム増殖剤活性化受容体αの活性化剤。
(8)Xが、酸素原子又は硫黄原子である前記化合物、該化合物の互変異性体、立体異性体、若しくはその薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を含有する前記(1)~(7)記載のペルオキシソーム増殖剤活性化受容体αの活性化剤。
(9)Yが、次の一般式(II)、
【0017】
【化6】
(式中、R,Rは同一又は異なっていても良く、炭素数1~8のアルキル基を表すか、又はR及びRが結合し、これらが結合している炭素原子と一緒になって3~7員環を形成し、そして-は結合手を表す。)
で表される前記化合物、該化合物の互変異性体、立体異性体、若しくはその薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を含有する前記(1)~(8)記載のペルオキシソーム増殖剤活性化受容体αの活性化剤。
(10)ZがCOHである前記化合物、該化合物の互変異性体、立体異性体、若しくはその薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を含有する前記(1)~(9)記載のペルオキシソーム増殖剤活性化受容体αの活性化剤。
(11)前記(1)~(10)の何れか記載の化合物又はその塩を必要とする患者に治療学的な有効量を投与することを特徴とするペルオキシソーム増殖剤活性化受容体αに媒介される疾患の治療および/または予防方法。
(12)ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体αに媒介される疾患が、高脂血症、脂質異常症、高コレステロール血症、高TG血症、低HDL血症、高LDL血症、non-HDL血症、高VLDL血症、リポタンパク異常症、低アポリポタンパクA-I血症、アテローム動脈硬化症、動脈硬化性疾患、冠動脈性疾患、脳血管障害、末梢血管障害、メタボリック・シンドローム、シンドロームX、内臓脂肪型肥満を含む肥満、糖尿病、高血糖、インスリン抵抗性、耐糖能異常、高インスリン血症、糖尿病性合併症、心不全、心筋梗塞、心筋症、高血圧、慢性腎臓病、脂肪肝、非アルコール性脂肪肝炎、血栓、アルツハイマー病、神経変性疾患、脱髄性疾患、多発性硬化症、副腎白質ジストロフィー、皮膚炎、乾癬、にきび、皮膚老化、発毛異常、炎症、関節炎、喘息、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病、膵炎並びに結腸癌、大腸癌、皮膚癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌及び肺がんを含む癌であることを特徴とする前記(11)記載の治療および/または予防方法。
(13)ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体αに媒介される疾患が種々の脂質異常症、メタボリック・シンドローム、内臓脂肪型肥満を含む肥満、アテローム動脈硬化症およびその関連疾患又は糖尿病であることを特徴とする前記(11)又は(12)に記載の治療および/または予防方法。
(14)ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体αに媒介される疾患の治療および/または予防のための前記(1)~(10)の何れか記載の化合物又はその塩の使用。
(15)ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体αに媒介される疾患が高脂血症、脂質異常症、高コレステロール血症、高TG血症、低HDL血症、高LDL血症、non-HDL血症、高VLDL血症、リポタンパク異常症、低アポリポタンパクA-I血症、アテローム動脈硬化症、動脈硬化性疾患、冠動脈性疾患、脳血管障害、末梢血管障害、メタボリック・シンドローム、シンドロームX、内臓脂肪型肥満を含む肥満、糖尿病、高血糖、インスリン抵抗性、耐糖能異常、高インスリン血症、糖尿病性合併症、心不全、心筋梗塞、心筋症、高血圧、慢性腎臓病、脂肪肝、非アルコール性脂肪肝炎、血栓、アルツハイマー病、神経変性疾患、脱髄性疾患、多発性硬化症、副腎白質ジストロフィー、皮膚炎、乾癬、にきび、皮膚老化、発毛異常、炎症、関節炎、喘息、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病、膵炎並びに結腸癌、大腸癌、皮膚癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌及び肺がんを含む癌である前記(14)記載の使用。
(16)PPARに媒介される疾患が種々の脂質異常症、メタボリック・シンドローム、内臓脂肪型肥満を含む肥満、アテローム動脈硬化症およびその関連疾患又は糖尿病である前記(14)又は(15)記載の使用。
(17)ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体αに媒介される疾患に伴う酸性尿を改善するために前記(1)~(10)記載の化合物又はその塩の有効量を投与することを特徴とする酸性尿の改善方法。
(18)ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体αに媒介される疾患に伴う酸性尿を改善するための前記(1)~(10)記載の化合物又はその塩の使用。
(19)尿路結石、尿酸結石を治療および/または予防するための前記(17)記載の方法。
(20)尿路結石、尿酸結石を治療および/または予防するための前記(18)記載の使用。
(21)尿路結石、尿酸結石による腎障害を治療および/または予防するための前記(17)または(19)記載の方法。
(22)尿路結石、尿酸結石による腎障害を治療および/または予防するための前記(18)または(20)記載の使用。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A図1Aは、試験例における肝障害の指標である血漿中ALTの測定結果を示す図である。
図1B図1Bは、試験例における脂肪肝の指標である肝臓中TG量測定の結果を示す図である。
図2図2は、試験例における糖尿病の指標である尿pHの測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に本発明を詳細に説明する。
本明細書において、R~R13、R及びRで表される炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、iso-プロピル基、ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基又はヘキシル基等が挙げられ、好ましくは炭素数1~3のメチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
及びR13で表される1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルキル基としては、1~3個のフッ素原子、塩素原子若しくは臭素原子等のハロゲン原子により置換された前記アルキル基が挙げられ、好ましくはトリフルオロメチル基、クロロメチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基又は2-フルオロエチル基等が挙げられ、より好ましくはトリフルオロメチル基が挙げられる。
~Rで表される炭素数1~8のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、iso-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基又はヘキシルオキシ基等が挙げられ、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
~Rで表される1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルコキシ基としては、1~3個のフッ素原子、塩素原子若しくは臭素原子等のハロゲン原子により置換されたメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、iso-プロポキシ基、ブトキシ基又はtert-ブトキシ基等が挙げられ、好ましくはトリフルオロメトキシ基、クロロメトキシ基、2-クロロエトキシ基、2-ブロモエトキシ基又は2-フルオロエトキシ基等が挙げられる。
~Rで表されるアルキルスルファニル基としては、炭素数1~8の直鎖又は分岐鎖のものが挙げられ、例えばメチルスルファニル基、エチルスルファニル基、プロピルスルファニル基、ブチルスルファニル基、iso-ブチルスルファニル基、tert-ブチルスルファニル基等が挙げられ、好ましくはメチルスルファニル基、エチルスルファニル基が挙げられる。
~Rで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子、塩素原子である。
、R,R及びRが環を構成する場合において、RとRの組み合わせで結合することが好ましい。かかる場合、R及びRが結合している2個の炭素原子と一緒になって窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される1~3個のヘテロ原子を環構成元素として含有する5員環のヘテロアリール環を形成する場合のヘテロアリール環としては、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、2,1,3-チアジアゾール等が挙げられ、好ましくはチアゾール、イソチアゾールが挙げられる。
、R,R及びRが環を構成する場合において、前記ベンゼン環、ピリジン環及びヘテロアリール環の環上の置換基としては、1~4個の同一又は異なるハロゲン原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルキル基、1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、炭素数1~8のアルキルスルファニル基、ニトロ基又はシアノ基が挙げられ、好ましくはハロゲン原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、ニトロ基又はシアノ基が挙げられ、より好ましくは炭素数1~8のアルキル基、1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルキル基等が挙げられる。
及びRが結合している2個の炭素原子と一緒になって形成してもよいベンゼン環の環上の置換基としては、1~4個の同一又は異なるハロゲン原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルキル基、1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、炭素数1~8のアルキルスルファニル基、ニトロ基又はシアノ基が挙げられ、好ましくはハロゲン原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、ニトロ基又はシアノ基が挙げられ、より好ましくはハロゲン原子、炭素数1~8のアルキル基、ヒドロキシ基が挙げられる。
及びRが結合し、これらが結合している炭素原子と一緒になって表される3~7員環のシクロアルカンとしては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等が挙げられ、好ましくはシクロブタン環、シクロペンタン環が挙げられる。
Yで表されるアルキレン鎖としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、iso-ブチレン等の炭素数1~8の直鎖又は分岐鎖のものが挙げられ、好ましくはメチレン、エチレン、プロピレンが挙げられる。
Yで表されるアルケニレン鎖としては、1~3個の二重結合を有する炭素原子数2~6の直鎖又は分岐鎖のものを意味し、例えば、ビニレン、アリレン、1-プロペニレン、イソプロペニレン、1-、2-または3-ブテニレン、1,3-ブタジエニレン等が挙げられ、好ましくはビニレン、アリレンが挙げられる。
Yで表されるアルキレン鎖及びアルケニレン鎖上の置換基としては、1~4個の炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルキル基、1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルコキシ基が挙げられ、好ましくは炭素数1~8のアルキル基が挙げられる。
また、置換基の数としては2が好ましい。
Yで表される分枝鎖アルキレン鎖において、同一又は異なる炭素原子に結合する側鎖が、これらが結合している炭素原子と一緒になって形成しても良い3~7員環としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン等が挙げられる。
【0020】
本発明に用いられる化合物(I)のうち好ましい態様としては、WがCRであり、R、R、R、R、R及びRが水素原子、炭素数1~8のアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基であり、Rがハロゲン原子、1~3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~8のアルキル基、シアノ基であり、R及びRが、R及びRが結合している2個の炭素原子と一緒になって、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される2個のヘテロ原子を環構成元素として含有する5員環のヘテロアリール環を形成し、Xが酸素原子又は硫黄原子であり、YにおいてR及びRが炭素数1~8のアルキル基であり、ZがCOHである場合が挙げられる。
【0021】
更に、本発明に用いられる化合物(I)のうち好ましい態様としては、WがCRであり、R、R、R、R及びRが水素原子であり、Rは水素原子又はフッ素原子であり、Rがフッ素原子又は塩素原子、トリフルオロメチル基、シアノ基であり、R及びRが、R及びRが結合している2個の炭素原子と一緒になって形成されるヘテロアリール環がチアゾール又はイソチアゾールであり、Xが硫黄原子であり、YにおいてR及びRが炭素数1~3のアルキル基であり、ZがCOHである場合が挙げられる。
【0022】
上記一般式(I)の塩としては、製薬的に許容される塩であれば特に制限されないが、例えば塩酸、硫酸などの鉱酸との塩、ギ酸、酢酸、クエン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、フマール酸、マレイン酸などの有機カルボン酸との塩、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メシチレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などのスルホン酸との塩等の酸付加塩、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩、アンモニウム塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、ジエチルアミン、シクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N-ベンジル-β-フェネチルアミン、1-エフェナミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミンなどの含窒素有機塩基との塩等の塩基付加塩を挙げることができる。
また化合物(I)には、シス・トランス異性体や光学活性体、ラセミ体等の立体異性体が存在する場合もあるが、何れも本発明に用いることができる。
また、化合物(I)としては、互変異性体、水和物、アルコール等の有機溶媒との溶媒和物、重水素などの安定同位体で置換された誘導体さらにはプロドラッグであっても良い。
【0023】
本発明に用いられる化合物(I)は、特許文献4記載の方法により製造することができる。
【0024】
化合物(I)又はその塩は、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体αの活性化剤として、固形若しくは液体形態での経口投与等のための製薬上許容し得る担体とともに組成物を処方することができる。
【0025】
経口投与のための固形製剤にはカプセル剤、錠剤、丸剤、散剤及び顆粒剤等が挙げられる。この固形製剤の調製にあたっては一般に本発明化合物を少なくとも1種の不活性希釈剤、例えばスクロース、乳糖又はでんぷんと混和する。この製剤はまた通常の製剤化において不活性希釈剤以外の追加の物質例えば滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム等)を用いてもよい。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合には、更に、緩衝剤を用いてもよい。錠剤及び丸剤には腸溶性被膜を施してもよい。
【0026】
経口投与のための液体製剤には、当業者間で普通に使用される不活性希釈剤、例えば水を含む製薬上許容し得る乳剤、溶液、懸濁剤、シロップ剤及びエリキシール剤が挙げられる。かかる不活性希釈剤に加えて、組成物には補助剤例えば湿潤剤、乳化、懸濁剤、ならびに甘味、調味及び香味剤も配合することができる。
【0027】
本発明化合物(I)の投与量は投与される化合物の性状、投与経路、所望の処置期間及びその他の要因によって左右されるが、一般に成人で一日当り約0.1~1000mg/kg、特に約0.5~100mg/kgが好ましい。また、所望によりこの一日量を2~4回に分割して投与することもできる
実施例
【0028】
次に試験例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
(試験例1)
(1) PPARαに対するアゴニスト活性の測定
PPARαに対するアゴニスト活性の測定にはEnBio RCAS for PPARα kit (PPARA-CBP、 藤倉化成株式会社) を用い、キットプロトコルに従い吸光度測定を行った。試料はジメチルスルホキシドに溶解し、評価濃度が10 μMとなるように96ウェルプレートに添加した。最大反応ウェルにはGW7647を0.5 μMとなるように添加した。バックグラウンドウェルにはジメチルスルホキシドを添加した。各試料添加ウェルの吸光度からバックグラウンドウェルの吸光度を差引いた後、最大反応ウェルに対する各試料添加ウェルの比を算出してPPARαに対するアゴニスト活性 (Binding ratio, %)を評価した。なお、各試料添加ウェル及びバックグラウンドウェルはduplicate、最大反応ウェルはquadruplicateとした。陽性対照として既知のPPARαアゴニストであるFenofibric acid (東京化成工業株式会社) 10 μMを用いた。
上記試験に基づき[表1-1]及び[表1-2]中の(化合物1)~(化合物17)についてPPARαに対するアゴニスト活性を評価した。
【0030】
【表1-1】
【0031】
【表1-2】
【0032】
(2) 試験結果
試験結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
以上の結果より、本発明において用いた上記化合物には優れたPPARα活性化作用を有することが確認された。
【0035】
(試験例2)
(1)メチオニン・コリン欠乏飼料誘発による非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)モデルラットを用いた評価
NAFLDモデルとして、メチオニン・コリン欠乏(MCD)飼料摂餌ラットを用い実験を行った。MCD飼料摂餌モデルはNAFLD/NASHのモデルとして汎用されている。
Wistarラット(雄性、8週齢、日本チャールス・リバー株式会社)に、MCD飼料(A02082002B, Research Diets, Inc.)を5週間摂餌させた。上記の飼料を1週間摂餌させた時点から、群間で体重に差が無いようにVehicle群、化合物2(50 mg/kg)群、及びFenofibrate(100 mg/kg)群に群分けした(各群4例)。Normal群にはMCD飼料のコントロール飼料であるMCS飼料を同期間摂餌させた(A02082003B, Research Diets, Inc.)。投与容量は10 mL/kgとし、Vehicle群及びNormal群には1% メチルセルロース溶液を、化合物2群及びFenofibrate群にはそれぞれの薬液を1日1回4週間反復経口投与した。
最終投与終了後翌日、非絶食、イソフルラン吸入麻酔下で後大静脈より採血し、血漿を分取した。さらに肝臓を採取し、一部を凍結保存した。血漿中ALTはJSCC標準化対応法で測定した。肝臓中トリグリセリド(TG)量は肝臓からクロロホルム:メタノール混液(2:1, v/v)で抽出し、蒸発乾固後2-プロパノールで溶解してトリグリセライドEテストワコーを用いて測定した。結果はそれぞれ平均値 ± 標準偏差で表した。有意差検定は、Normal群とVehicle群間ではWelchのt検定法(Unpaired)にて行い(: p < 0.05及び ###: p < 0.001)、Vehicle群と被験物質投与群間ではDunnett法にて行った(: p < 0.05, **: p < 0.01及び***: p < 0.001)。
【0036】
(2) 試験結果
試験結果を図1A及び図1Bに示す。肝障害の指標である血漿中ALTは、MCS飼料を摂餌させたNormal群と比べMCD飼料を摂餌させたVehicle群で有意に増加した。一方でVehicle群と比べ化合物2群及びFenofibrate群では有意に低値を示した(図1A)。さらに、脂肪肝の指標である肝臓中TG量もNormal群と比べVehicle群で有意に増加したが、Vehicle群と比べ化合物2群及びFenofibrate群では有意に低値を示した(図1B)。
これらの結果より本発明化合物は、MCD飼料摂餌ラットに反復経口投与することで血漿中ALT減少及び肝臓中TG量減少が認められ、NAFLD病態改善作用を有することが明らかになった。
【0037】
(試験例3)
(1)糖尿病モデルZucker diabetic fatty(ZDF)ラットを用いた評価
本実施例では、低pH尿を呈する糖尿病モデル動物ZDFラットを用いて化合物2の低pH尿改善作用の評価を行った。比較対照化合物として既知のURAT1阻害剤であるVerinuradの評価も併せて行った(VerinuradのPPARα活性化作用は試験例1記載の方法により評価した結果、評価濃度10 μMにおけるBinding ratioが3.80%であり、効果は確認されなかった)。
ZDF(Leprfa/Leprfa)ラット(雄性、投与開始時7週齢、日本チャールス・リバー株式会社)を、群間で体重に差が無いようにVehicle群、化合物2(25 mg/kg)群、化合物2(50 mg/kg)群、及びVerinurad(50 mg/kg)群に群分けした(各群5例)。Lean群としてZDF(Leprfa/Leprfa)ラットのコントロール動物であるZDF(Lean)ラットを用いた(5例)。投与容量は10 mL/kgとし、Vehicle群及びLean群には1%メチルセルロース溶液を、化合物2群及びVerinurad群にはそれぞれの薬液を1日1回15日間反復経口投与した。
投与期間中、蓄尿により得た尿試料のpHを、コンパクトpHメータ(B-712,株式会社堀場製作所)を用いて測定した。畜尿は投与開始6日前(pre)、投与初日、7日目及び14日目に行い、代謝ケージ内で24時間蓄尿した。結果はそれぞれ平均値±標準偏差で表した。有意差検定は、各時点においてLean群とVehicle群間ではStudentのt検定法(Unpaired)にて行い(###: p < 0.001)、Vehicle群と被験物質投与群間では一元配置分散分析後、Dunnett法にて行った(: p < 0.05,**: p < 0.01及び***: p < 0.001)。
【0038】
(2)試験結果
試験結果を図2に示す。Vehicle群では投与開始前から試験期間を通してLean群と比べて有意に低く、低pH尿を呈した。化合物2群ではVehicle群と比べ25 mg/kgでは投与7日目から、50 mg/kgでは投与初日から尿pHの有意な上昇がみられ、用量依存的な低pH尿改善作用を示した。一方で、Verinurad群では投与期間を通して低pH尿改善作用はみられなかった。
これらの結果より本発明化合物は、低pH尿を呈するZDFラットに経口投与することで低pH尿改善作用を有することが明らかとなった。
図1A
図1B
図2