(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123725
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】二重特異性抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230829BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20230829BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230829BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230829BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230829BHJP
C12P 21/06 20060101ALI20230829BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230829BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230829BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230829BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230829BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230829BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230829BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230829BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230829BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230829BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230829BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230829BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K16/30 ZNA
C07K16/28
C07K16/46
C12P21/08
C12P21/06
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/19
C12N1/21
C12N1/15
C12N5/10
A61P35/00
A61P43/00 111
A61K39/395 L
A61K47/68
A61K45/00
A61P35/02
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105890
(22)【出願日】2023-06-28
(62)【分割の表示】P 2020529100の分割
【原出願日】2018-08-01
(31)【優先権主張番号】62/539,970
(32)【優先日】2017-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/654,112
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520038611
【氏名又は名称】エービー ストゥーディオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】リュー ユエ
(72)【発明者】
【氏名】カイ ウェンヤン
(72)【発明者】
【氏名】シ チャドン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】異なる結合親和性で2つの異なる抗原に特異的に結合する、二重特異性抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【解決手段】第1の重鎖可変領域、第2の重鎖可変領域、第1の軽鎖可変領域、および第2の軽鎖可変領域を含む、二重特異性抗体またはその抗原結合断片であって、第1の重鎖可変領域と第1の軽鎖可変領域が互いに結合して、特定の濃度よりも高い結合親和性で第1の抗原に特異的に結合する第1の抗原結合領域を形成し、かつ第2の重鎖可変領域と第2の軽鎖可変領域が互いに結合して、特定の濃度よりも低い結合親和性で第2の抗原に特異的に結合する第2の抗原結合領域を形成する、前記二重特異性抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【選択図】
図28
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の重鎖可変領域、
第2の重鎖可変領域、
第1の軽鎖可変領域、および
第2の軽鎖可変領域
を含む、二重特異性抗体またはその抗原結合断片であって、
第1の重鎖可変領域と第1の軽鎖可変領域が互いに結合して、107 M-1、108 M-1、109 M-1、1010 M-1、1011 M-1、または1012 M-1よりも高い結合親和性で第1の抗原に特異的に結合する第1の抗原結合領域を形成し、かつ
第2の重鎖可変領域と第2の軽鎖可変領域が互いに結合して、109 M-1、108 M-1、107 M-1、106 M-1、105 M-1、または104 M-1よりも低い結合親和性で第2の抗原に特異的に結合する第2の抗原結合領域を形成する、
前記二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
前記第2の抗原結合領域が、107 M-1、106 M-1、105 M-1、または104 M-1よりも高い結合親和性で第2の抗原に特異的に結合する、請求項1に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
第1の抗原と結合するときの第1の抗原結合領域の結合親和性が、第2の抗原と結合するときの第2の抗原結合領域の結合親和性よりも少なくとも100倍、1000倍、または10000倍高い、請求項1に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
第1の軽鎖可変領域および第2の軽鎖可変領域が、少なくとも90%、95%、99%、または100%同一である、請求項1に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
第1の重鎖可変領域および第1の軽鎖可変領域を含む第1のアーム;ならびに
第2の重鎖可変領域および第2の軽鎖可変領域を含む第2のアーム
を含む、二重特異性抗体またはその抗原結合断片であって、
該第1のアームが、107 M-1、108 M-1、109 M-1、1010 M-1、1011 M-1、1012 M-1よりも高い結合親和性で第1の抗原と特異的に結合し、かつ該第2のアームが、109 M-1、108 M-1、107 M-1、106 M-1、105 M-1、または104 M-1よりも低い結合親和性で第2の抗原と特異的に結合する、
前記二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
前記第2のアームが、107 M-1、106 M-1、105 M-1、または104 M-1よりも高い結合親和性で第2の抗原と特異的に結合する、請求項5に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
第1の抗原と結合するときの前記第1のアームの結合親和性が、第2の抗原と結合するときの前記第2のアームの結合親和性よりも少なくとも100倍、1000倍、または10000倍高い、請求項5に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
第1の軽鎖可変領域および第2の軽鎖可変領域が、少なくとも90%、95%、99%、または100%同一である、請求項5に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
第1の重鎖可変領域を含む第1の重鎖、
第2の重鎖可変領域を含む第2の重鎖、
第1の軽鎖可変領域を含む第1の軽鎖、および
第2の軽鎖可変領域を含む第2の軽鎖
を含む、二重特異性抗体またはその抗原結合断片であって、
第1の重鎖可変領域および第1の軽鎖可変領域が互いに結合して、107 M-1、108 M-1、109 M-1、1010 M-1、1011 M-1、1012 M-1よりも高い結合親和性で第1の抗原に特異的に結合する第1の抗原結合領域を形成し、かつ
第2の重鎖可変領域および第2の軽鎖可変領域が互いに結合して、109 M-1、108 M-1、107 M-1、106 M-1、105 M-1、または104 M-1よりも低い結合親和性で第2の抗原に特異的に結合する第2の抗原結合領域を形成する、
前記二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
第2の抗原結合領域が、107 M-1、106 M-1、105 M-1、または104 M-1よりも高い結合親和性で第2の抗原に特異的に結合する、請求項9に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
第1の抗原と結合するときの第1の抗原結合領域の結合親和性が、第2の抗原と結合するときの第2の抗原結合領域の結合親和性よりも少なくとも100倍、1000倍、または100000倍高い、請求項9に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
第1の軽鎖および第2の軽鎖が、少なくとも90%、95%、99%、または100%同一である、請求項9に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
第1の重鎖および第2の重鎖が、ノブ・イントゥ・ホール(knobs into holes)法によって互いに結合している、請求項9に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項14】
第1の抗原が、がん特異抗原であり、かつ第2の抗原が、CD3である、請求項1~13のいずれか1項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項15】
第1の抗原がCD20であり、かつ第2の抗原がCD3である、請求項1~13のいずれか1項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項16】
第1の重鎖可変領域が、SEQ ID NO:1と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である配列を含み、第2の重鎖可変領域が、SEQ ID NO:2と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である配列を含み、かつ第1のおよび第2の軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:3と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である配列を含む、請求項15に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項17】
第1の抗原が、がん特異抗原であり、かつ第2の抗原が、がん関連抗原である、請求項1~13のいずれか1項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項18】
第1の抗原がPD-L1であり、かつ第2の抗原がCD55である、請求項1~13のいずれか1項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項19】
第1の重鎖可変領域が、SEQ ID NO:4と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である配列を含み、第2の重鎖可変領域が、SEQ ID NO:5と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である配列を含み、かつ第1のおよび第2の軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:7と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である配列を含む、請求項18に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項20】
二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する方法であって、以下を含む方法:
(a) 第1の抗原および第2の抗原を選択し、かつ該第1の抗原に結合する第1の抗体またはその抗原結合断片および該第2の抗原に結合する第2の抗体またはその抗原結合断片を特定する段階であって、該第1の抗体またはその抗原結合断片が、第1の重鎖可変領域(VHa)および第1の軽鎖可変領域(VLa)を含み、かつ該第2の抗体またはその抗原結合断片が、第2の重鎖可変領域(VHb)および第2の軽鎖可変領域(VLb)を含む、前記段階;
(b) VHa、VLa、VHb、およびVLbのアミノ酸配列を決定する段階;
(c) VLaおよびVLbのアミノ酸配列を整列させ、VLaとVLbとの間の配列相同性が80%より高いと判定する段階;
(d) 共通の軽鎖可変領域(VLc)を設計する段階であって、VLcが、VHaと結合するとき第1の抗原に対する親和性を維持する、前記段階;
(e) VHaおよびVHbの配列を再設計し、それによって、それぞれがVHa’を含む2つのポリペプチドおよびそれぞれがVLcを含む2つのポリペプチドを含む第1のタンパク質と、それぞれがVHb’を含む2つのポリペプチドおよびそれぞれがVLcを含む2つのポリペプチドを含む第2のタンパク質との間の生化学的または生物物理学的特性の差異を増加させるVHa’およびVHb’を得る段階;ならびに
(f) 2つの軽鎖可変領域および2つの重鎖可変領域を有する二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する段階であって、該2つの軽鎖可変領域の各々がVLcを含み、かつ該2つの重鎖可変領域がそれぞれVHa’およびVHb’を含む、前記段階。
【請求項21】
段階(d)において、第2の抗原に対するVLc-VHbの結合親和性が低下し得る、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
さらに以下を含む、請求項20に記載の方法:
(g) 前記二重特異性抗体またはその抗原結合断片を精製するための緩衝系を作る段階。
【請求項23】
二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する方法であって、以下を含む方法:
(a) 第1の抗原および第2の抗原を選択し、かつ該第1の抗原に結合する第1の抗体またはその抗原結合断片および該第2の抗原に結合する第2の抗体またはその抗原結合断片を特定する段階であって、該第1の抗体またはその抗原結合断片が、第1の重鎖可変領域(VHa)および第1の軽鎖可変領域(VLa)を含み、かつ該第2の抗体またはその抗原結合断片が、第2の重鎖可変領域(VHb)および第2の軽鎖可変領域(VLb)を含む、前記段階;
(b) VHa、VLa、およびVLbのアミノ酸配列を決定する段階;
(c) VLaおよびVLbのアミノ酸配列を整列させ、VLaとVLbとの間の配列相同性が80%未満であると判定する段階;
(d) ファージディスプレイ抗体ライブラリー内の全ての軽鎖可変領域をVLaと置き換え、第2の抗原に対してパニングして、第3の重鎖可変領域(VHc)を得る段階;
(e) VHaおよびVHcの配列を再設計し、それによって、それぞれがVHa’を含む2つのポリペプチドおよびそれぞれがVLaを含む2つのポリペプチドを含む第1のタンパク質と、それぞれがVHc’を含む2つのポリペプチドおよびそれぞれがVLaを含む2つのポリペプチドを含む第2のタンパク質との間の生化学的または生物物理学的特性の差異を増加させるVHa’およびVHc’を得る段階;ならびに
(f) 2つの軽鎖可変領域および2つの重鎖可変領域を有する二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する段階であって、該2つの軽鎖可変領域の各々がVLaを含み、かつ該2つの重鎖可変領域がそれぞれVHa’およびVHc’を含む、前記段階。
【請求項24】
さらに以下を含む、請求項23に記載の方法:
(g) 前記二重特異性抗体またはその抗原結合断片を精製するための緩衝系を作る段階。
【請求項25】
二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する方法であって、以下を含む方法:
(a) 第1の抗原および第2の抗原を選択し、かつ該第1の抗原に結合する第1の抗体またはその抗原結合断片および該第2の抗原に結合する第2の抗体またはその抗原結合断片を特定する段階であって、該第1の抗体またはその抗原結合断片が、第1の重鎖可変領域(VHa)および第1の軽鎖可変領域(VLa)を含み、かつ該第2の抗体またはその抗原結合断片が、第2の重鎖可変領域(VHb)および第2の軽鎖可変領域(VLb)を含む、前記段階;
(b) VHa、VLa、VHbおよびVLbのアミノ酸配列を決定する段階;
(c) VLaおよびVLbのアミノ酸配列を整列させ、VLaとVLbとの間の配列相同性が80%未満であると判定する段階;
(d) ファージディスプレイ抗体ライブラリー内の全ての軽鎖可変領域を複数の軽鎖可変領域と置き換える段階であって、該軽鎖可変領域が、VLaまたはVLbと少なくとも80%、85%、90%、95%、または99%同一である、前記段階;
(e) 該第2の抗原に対してパニングする段階;
(f) 共通の軽鎖可変領域(VLc)、および第3の重鎖可変領域(VHc)を選択する段階であって、VHa-VLcが、所望の親和性で第1の抗原に結合し、かつVHc-VLcが、所望の親和性で第2の抗原に結合する、前記段階;
(g) VHaおよびVHcの配列を再設計し、それによって、それぞれがVHa’を含む2つのポリペプチドおよびそれぞれがVLcを含む2つのポリペプチドを含む第1のタンパク質と、それぞれがVHc’を含む2つのポリペプチドおよびそれぞれがVLcを含む2つのポリペプチドを含む第2のタンパク質との間の生化学的または生物物理学的特性の差異を増加させるVHa’およびVHc’を得る段階;ならびに
(h) 2つの軽鎖可変領域および2つの重鎖可変領域を有する二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する段階であって、該2つの軽鎖可変領域の各々がVLcを含み、かつ該2つの重鎖可変領域がそれぞれVHa’およびVHc’を含む、前記段階。
【請求項26】
段階(d)において、複数の軽鎖可変領域が、エラープローンPCRによって作製される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
さらに以下を含む、請求項25に記載の方法:
(i) 前記二重特異性抗体またはその抗原結合断片を精製するための緩衝系を作る段階。
【請求項28】
二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する方法であって、以下を含む方法:
(a) 第1の抗原および第2の抗原を選択し、かつ該第1の抗原に結合する第1の抗体またはその抗原結合断片および該第2の抗原に結合する第2の抗体またはその抗原結合断片を特定する段階であって、該第1の抗体またはその抗原結合断片が、第1の重鎖可変領域(VHa)および第1の軽鎖可変領域(VLa)を含み、かつ該第2の抗体またはその抗原結合断片が、第2の重鎖可変領域(VHb)および第2の軽鎖可変領域(VLb)を含む、前記段階;
(b) VHa、VLa、VHb、およびVLbのアミノ酸配列を決定する段階;
(c) VLaおよびVLbのアミノ酸配列を整列させ、VLaとVLbとの間の配列相同性が80%未満であると判定する段階;
(d) ファージディスプレイ抗体ライブラリー内の全ての軽鎖可変領域を複数の軽鎖可変領域と置き換える段階であって、該軽鎖可変領域が、VLaまたはVLbと少なくとも80%、85%、90%、95%、または99%同一である、前記段階;
(e) 該第2の抗原に対してパニングする段階;
(f) 共通の軽鎖可変領域(VLc)、および第3の重鎖可変領域(VHc)を選択する段階であって、VHc-VLcが、所望の親和性で第2の抗原に結合する、前記段階;
(g) VLaとVLcとの間の相同性が80%より高いと判定する段階;
(h) 共通の軽鎖可変領域(VLd)を設計する段階であって、VLdが、VHaと結合するとき第1の抗原に対する親和性を維持し、VHcと結合するとき、第2の抗原に対する所望の親和性を有する、前記段階;
(i) 任意に、VHaおよびVHcの配列を再設計し、それによって、それぞれがVHa’を含む2つのポリペプチドおよびそれぞれがVLdを含む2つのポリペプチドを含む第1のタンパク質と、それぞれがVHc’を含む2つのポリペプチドおよびそれぞれがVLdを含む2つのポリペプチドを含む第2のタンパク質との間の生化学的または生物物理学的特性の差異を増加させるVHa’およびVHc’を得る段階;ならびに
(j) 任意に、2つの軽鎖可変領域および2つの重鎖可変領域を有する二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する段階であって、該2つの軽鎖可変領域の各々がVLdを含み、かつ該2つの重鎖可変領域がそれぞれVHa’およびVHc’を含む、前記段階。
【請求項29】
二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する方法であって、以下を含む方法:
(a) 第1の抗原および第2の抗原を選択し、かつ該第1の抗原に結合する第1の抗体またはその抗原結合断片および該第2の抗原に結合する第2の抗体またはその抗原結合断片を特定する段階であって、該第1の抗体またはその抗原結合断片が、第1の重鎖可変領域(VHa)および第1の軽鎖可変領域(VLa)を含み、かつ該第2の抗体またはその抗原結合断片が、第2の重鎖可変領域(VHb)および第2の軽鎖可変領域(VLb)を含む、前記段階;
(b) VHa、VLa、VHb、およびVLbのアミノ酸配列を決定する段階;
(c) VLaおよびVLbのアミノ酸配列を整列させ、VLaとVLbとの間の配列相同性が80%より高いと判定する段階;
(d) 共通の軽鎖可変領域(VLc)を設計する段階であって、VLcが、VHaと結合するとき第1の抗原に対する親和性を維持する、前記段階;ならびに
(e) 任意に、2つの軽鎖可変領域および2つの重鎖可変領域を有する二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する段階であって、該2つの軽鎖可変領域の各々がVLcを含み、かつ該2つの重鎖可変領域がそれぞれVHaおよびVHbを含む、前記段階。
【請求項30】
二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する方法であって、以下を含む方法:
(a) 第1の抗原および第2の抗原を選択し、かつ該第1の抗原に結合する第1の抗体またはその抗原結合断片および該第2の抗原に結合する第2の抗体またはその抗原結合断片を特定する段階であって、該第1の抗体またはその抗原結合断片が、第1の重鎖可変領域(VHa)および第1の軽鎖可変領域(VLa)を含み、かつ該第2の抗体またはその抗原結合断片が、第2の重鎖可変領域(VHb)および第2の軽鎖可変領域(VLb)を含む、前記段階;
(b) VHa、VLa、およびVLbのアミノ酸配列を決定する段階;
(c) VLaおよびVLbのアミノ酸配列を整列させ、VLaとVLbとの間の配列相同性が80%未満であると判定する段階;
(d) ファージディスプレイ抗体ライブラリー内の全ての軽鎖可変領域をVLaと置き換え、第2の抗原に対してパニングして、第3の重鎖可変領域(VHc)を得る段階;ならびに
(e) 任意に、2つの軽鎖可変領域および2つの重鎖可変領域を有する二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する段階であって、該2つの軽鎖可変領域の各々がVLaを含み、かつ該2つの重鎖可変領域がそれぞれVHaおよびVHcを含む、前記段階。
【請求項31】
二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する方法であって、以下を含む方法:
(a) 第1の抗原および第2の抗原を選択し、かつ該第1の抗原に結合する第1の抗体またはその抗原結合断片および該第2の抗原に結合する第2の抗体またはその抗原結合断片を特定する段階であって、該第1の抗体またはその抗原結合断片が、第1の重鎖可変領域(VHa)および第1の軽鎖可変領域(VLa)を含み、かつ該第2の抗体またはその抗原結合断片が、第2の重鎖可変領域(VHb)および第2の軽鎖可変領域(VLb)を含む、前記段階;
(b) VHa、VLa、VHb、および/またはVLbのアミノ酸配列を決定する段階;
(c) VLaおよびVLbのアミノ酸配列を整列させ、VLaとVLbとの間の配列相同性が80%未満であると判定する段階;
(d) ファージディスプレイ抗体ライブラリー内の全ての軽鎖可変領域を複数の軽鎖可変領域と置き換える段階であって、該軽鎖可変領域が、VLaまたはVLbと少なくとも80%、85%、90%、95%、または99%同一である、前記段階;
(e) 第1のおよび/または第2の抗原に対してパニングする段階;
(f) 共通の軽鎖可変領域(VLc)、および第3の重鎖可変領域(VHc)を選択する段階であって、VHa-VLcが、所望の親和性で第1の抗原に結合し、かつVHc-VLcが、所望の親和性で第2の抗原に結合する、前記段階;ならびに
(g) 任意に、2つの軽鎖可変領域および2つの重鎖可変領域を有する二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する段階であって、該2つの軽鎖可変領域の各々がVLcを含み、かつ該2つの重鎖可変領域がそれぞれVHaおよびVHcを含む、前記段階。
【請求項32】
相補性決定領域(CDR)1、2、および3を含む重鎖可変領域(VH)であって、VH CDR1領域が、選択されたVH CDR1アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、VH CDR2領域が、選択されたVH CDR2アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、かつVH CDR3領域が、選択されたVH CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、前記重鎖可変領域(VH);ならびに
CDR1、2、および3を含む軽鎖可変領域(VL)であって、VL CDR1領域が、選択されたVL CDR1アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、VL CDR2領域が、選択されたVL CDR2アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、かつVL CDR3領域が、選択されたVL CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、前記軽鎖可変領域(VL)
を含む、CD3に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、
該選択されたVH CDR1、2、3のアミノ酸配列が、SEQ ID NO:22~24にそれぞれ記載され、かつ該選択されたVL CDR1、2、3のアミノ酸配列が、SEQ ID NO:28~30にそれぞれ記載される、
前記抗体またはその抗原結合断片。
【請求項33】
VHが、SEQ ID NO:22、23、24にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含み、VLが、SEQ ID NO:28、29、30にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含む、請求項32に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項34】
ヒトCD3に特異的に結合する、請求項32~33のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項35】
二重特異性抗体である、請求項32~34のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項36】
相補性決定領域(CDR)1、2、および3を含む重鎖可変領域(VH)であって、VH CDR1領域が、選択されたVH CDR1アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、VH CDR2領域が、選択されたVH CDR2アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、かつVH CDR3が、選択されたVH CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、前記重鎖可変領域(VH);ならびに
CDR1、2、および3を含む軽鎖可変領域(VL)であって、VL CDR1領域が、選択されたVL CDR1アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、VL CDR2領域が、選択されたVL CDR2アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、かつVL CDR3領域が、選択されたVL CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、前記軽鎖可変領域(VL)
を含む、PD-L1に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、
該選択されたVH CDR1、2、および3のアミノ酸配列および該選択されたVL CDR1、2、および3のアミノ酸配列が、
(1) 選択されたVH CDR1、2、3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:41~43にそれぞれ記載され、かつ選択されたVL CDR1、2、3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:53~55にそれぞれ記載される;
(2) 選択されたVH CDR1、2、3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:41~43にそれぞれ記載され、かつ選択されたVL CDR1、2、3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:59~61にそれぞれ記載される
のうちの一つである、
前記抗体またはその抗原結合断片。
【請求項37】
VHが、SEQ ID NO:41~43にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含み、かつVLが、SEQ ID NO:59~61にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含む、請求項36に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項38】
ヒトCD3に特異的に結合する、請求項36~37のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項39】
二重特異性抗体である、請求項36~38のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項40】
相補性決定領域(CDR)1、2、および3を含む重鎖可変領域(VH)であって、VH CDR1領域が、選択されたVH CDR1アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、VH CDR2領域が、選択されたVH CDR2アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、かつVH CDR3領域が、選択されたVH CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、前記重鎖可変領域(VH);ならびに
CDR1、2、および3を含む軽鎖可変領域(VL)であって、VL CDR1領域が、選択されたVL CDR1アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、VL CDR2領域が、選択されたVL CDR2アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、かつVL CDR3領域が、選択されたVL CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、前記軽鎖可変領域(VL)
を含む、CD55に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、
該選択されたVH CDR1、2、および3のアミノ酸配列および該選択されたVL CDR1、2、および3のアミノ酸配列が、
(1) 選択されたVH CDR1、2、3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:47~49にそれぞれ記載され、かつ選択されたVL CDR1、2、3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:53~55にそれぞれ記載される;
(2) 選択されたVH CDR1、2、3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:47~49にそれぞれ記載され、かつ選択されたVL CDR1、2、3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:59~61にそれぞれ記載される
のうちの一つである、
前記抗体またはその抗原結合断片。
【請求項41】
VHが、SEQ ID NO:47~49にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含み、かつVLが、SEQ ID NO:59~61にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含む、請求項40に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項42】
ヒトCD3に特異的に結合する、請求項40~41のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項43】
二重特異性抗体である、請求項40~42のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項44】
SEQ ID NO:53~55にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、および3を含むVLを含む免疫グロブリン軽鎖またはその断片
を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸であって、
該VLが、SEQ ID NO:4に記載されるアミノ酸配列を含むVHと対にされる場合はPD-L1と結合し、かつ/またはSEQ ID NO:5に記載されるアミノ酸配列を含むVHと対にされる場合はCD55に結合する、
前記核酸。
【請求項45】
SEQ ID NO:59~61にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、および3を含むVLを含む免疫グロブリン軽鎖またはその断片
を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸であって、
該VLが、SEQ ID NO:4に記載されるアミノ酸配列を含むVHと対にされる場合はPD-L1と結合し、かつ/またはSEQ ID NO:5に記載されるアミノ酸配列を含むVHと対にされる場合はCD55に結合する、
前記核酸。
【請求項46】
二重特異性抗体をコードする、請求項44~45のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項47】
cDNAである、請求項44~45のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項48】
請求項44~47のいずれか1項に記載の核酸のうちの一つまたはそれ以上を含むベクター。
【請求項49】
請求項48に記載のベクターを含む細胞。
【請求項50】
CHO細胞である、請求項49に記載の細胞。
【請求項51】
請求項44~47のいずれか1項に記載の核酸のうちの一つまたはそれ以上を含む細胞。
【請求項52】
SEQ ID NO:1と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域(VH)を含む第1のポリペプチド;
SEQ ID NO:2と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む第2の重鎖可変領域(VH)を含む第2のポリペプチド;
SEQ ID NO:3と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域(VL)を含む第3のポリペプチド;
SEQ ID NO:3と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む第2の軽鎖可変領域(VL)を含む第4のポリペプチド
を含む、CD20およびCD3に結合する二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項53】
第1の重鎖可変領域(VH)が、SEQ ID NO:1を含み;
第2の重鎖可変領域(VH)が、SEQ ID NO:2を含み;
第1の軽鎖可変領域(VL)が、SEQ ID NO:3を含み;かつ
第2の軽鎖可変領域(VL)が、SEQ ID NO:3を含む、
請求項52に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項54】
第1のポリペプチドが、SEQ ID NO:34、35、または36と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み;
第2のポリペプチドが、SEQ ID NO:37、38、または39と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み;
第3のポリペプチドが、SEQ ID NO:40と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み;かつ
第4のポリペプチドが、SEQ ID NO:40と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む、
請求項52に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項55】
第1のポリペプチドが、SEQ ID NO:35に記載されるアミノ酸配列を含み;かつ
第2のポリペプチドが、SEQ ID NO:38に記載されるアミノ酸配列を含む、
請求項52に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項56】
SEQ ID NO:4と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域(VH)を含む第1のポリペプチド;
SEQ ID NO:5と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む第2の重鎖可変領域(VH)を含む第2のポリペプチド;
SEQ ID NO:6または7と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域(VL)を含む第3のポリペプチド;
SEQ ID NO:6または7と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む第2の軽鎖可変領域(VL)を含む第4のポリペプチド
を含む、PD-L1およびCD55と結合する二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項57】
第1の重鎖可変領域(VH)が、SEQ ID NO:4を含み;
第2の重鎖可変領域(VH)が、SEQ ID NO:5を含み;
第1の軽鎖可変領域(VL)が、SEQ ID NO:7を含み;かつ
第2の軽鎖可変領域(VL)が、SEQ ID NO:7を含む、
請求項56に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項58】
第1のポリペプチドが、SEQ ID NO:65と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み;
第2のポリペプチドが、SEQ ID NO:66と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み;
第3のポリペプチドが、SEQ ID NO:67または68と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み;ならびに
第4のポリペプチドが、SEQ ID NO:67または68と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む、
請求項56に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項59】
第1のポリペプチドが、SEQ ID NO:65に記載されるアミノ酸配列を含み;
第2のポリペプチドが、SEQ ID NO:66に記載されるアミノ酸配列を含み;
第3のポリペプチドが、SEQ ID NO:68に記載されるアミノ酸配列を含み;かつ
第4のポリペプチドが、SEQ ID NO:68に記載されるアミノ酸配列を含む、
請求項56に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項60】
治療薬に共有結合した、請求項1~19、32~43、および52~59のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片を含む、抗体-薬物複合体。
【請求項61】
前記治療薬が細胞傷害剤または細胞増殖抑制剤である、請求項60に記載の抗体-薬物複合体。
【請求項62】
がんを患っている対象を治療する方法であって、請求項1~19、32~43、および52~59のいずれか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片、または請求項60もしくは61に記載の抗体-薬物複合体を含む組成物の治療的に有効な量を該対象へ投与することを含む、前記方法。
【請求項63】
前記対象が固形腫瘍を有する、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記がんが、黒色腫、膵臓癌、または血液悪性腫瘍である、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記がんが、非ホジキンリンパ腫、リンパ腫、または慢性リンパ性白血病である、請求項62に記載の方法。
【請求項66】
腫瘍成長の速度を低下させる方法であって、対象に対して、請求項1~19、32~43、および52~59のいずれか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片、または請求項60もしくは61に記載の抗体-薬物複合体を含む組成物の有効量に、腫瘍細胞を接触させることを含む、前記方法。
【請求項67】
腫瘍細胞を殺滅する方法であって、対象に対して、請求項1~19、32~43、および52~59のいずれか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片、または請求項60もしくは61に記載の抗体-薬物複合体を含む組成物の有効量に、腫瘍細胞を接触させることを含む、前記方法。
【請求項68】
請求項1~19、32~43、および52~59のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項69】
請求項60または61に記載の抗体-薬物複合体と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2017年8月1日に出願された米国仮特許出願第62 / 539,970号および2018年4月6日に出願された米国仮特許出願第62/654,112号における利益を主張するものである。前述の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
技術分野
本開示は、二重特異性抗体またはその抗原結合断片に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
二重特異性抗体とは、2種類の抗原または2種類のエピトープに同時に結合できる人工タンパク質である。この二重の特異性は、T細胞を腫瘍細胞にリダイレクトすること、2つの異なるシグナル伝達経路を同時にブロックすること、異なる疾患メディエーターの二重標的化、標的部位へのペイロードの送達を含む幅広い用途を切り開く。カツマソマブ(抗EpCAMおよび抗CD3)およびブリナツモマブ(抗CD19および抗CD3)の承認は、二重特異性抗体の開発における主要なマイルストーンになった。
【0004】
二重特異性抗体には様々な用途があるため、二重特異性抗体に基づいた様々な治療法の開発を継続する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
概要
本開示は、二重特異性抗体または抗原結合断片が異なる結合親和性で2つの異なる抗原に特異的に結合する、不均衡な二重特異性抗体または抗原結合断片に関するものである。
【0006】
いくつかの態様において、本開示は、第1の重鎖可変領域、第2の重鎖可変領域、第1の軽鎖可変領域、および第2の軽鎖可変領域を含む二重特異性抗体または抗原結合断片に関し、該第1の重鎖可変領域と第1の軽鎖可変領域が互いに結合して、107 M-1、108 M-1、109 M-1、1010 M-1、1011 M-1、または1012 M-1よりも高い結合親和性で第1の抗原に特異的に結合する第1の抗原結合領域を形成し、かつ、該第2の重鎖可変領域および第2の軽鎖可変領域が互いに結合して、109 M-1、108 M-1、107 M-1、106 M-1、105 M-1、または104 M-1よりも低い結合親和性で第2の抗原に特異的に結合する第2の抗原結合領域を形成する。
【0007】
いくつかの実施形態おいて、第2の抗原結合領域は、107 M-1、106 M-1、105 M-1、または104 M-1よりも高い結合親和性で第2の抗原に特異的に結合する。
【0008】
いくつかの実施形態おいて、第1の抗原に結合するときの第1の抗原結合領域の結合親和性は、第2の抗原に結合するときの第2の抗原結合領域の結合親和性より少なくとも100倍、1000倍、または10000倍高い。
【0009】
いくつかの実施形態おいて、第1の軽鎖可変領域と第2の軽鎖可変領域は、少なくとも90%、95%、99%、または100%同一である。
【0010】
いくつかの態様において、本開示は、第1の重鎖可変領域および第1の軽鎖可変領域を含む第1のアーム、ならびに第2の重鎖可変領域および第2の軽鎖可変領域を含む第2のアームを含む二重特異性抗体または抗原結合断片に関し、第1のアームは、107 M-1、108 M-1、109 M-1、1010 M -1、1011 M-1、1012 M-1よりも高い結合親和性で第1の抗原に特異的に結合し、かつ第2のアームは、109 M-1、108 M-1、107 M-1、106 M-1、105 M-1、または104 M-1よりも低い結合親和性で第2抗原に特異的に結合する。
【0011】
いくつかの実施形態おいて、第2のアームは、107 M-1、106 M-1、105 M-1、または104 M-1より高い結合親和性で第2の抗原に特異的に結合する。
【0012】
いくつかの実施形態おいて、第1の抗原に結合するときの第1のアームの結合親和性は、第2の抗原に結合するときの第2のアームの結合親和性より少なくとも100倍、1000倍、または10000倍高い。
【0013】
いくつかの実施形態おいて、第1の軽鎖可変領域および第2の軽鎖可変領域は、少なくとも90%、95%、99%、または100%同一である。
【0014】
いくつかの態様において、本開示は、第1の重鎖可変領域を含む第1の重鎖、第2の重鎖可変領域を含む第2の重鎖、第1の軽鎖可変領域を含む第1の軽鎖、および第2の軽鎖可変領域を含む第2の軽鎖を含む二重特異性抗体または抗原結合断片に関し、該第1の重鎖可変領域と第1の軽鎖可変領域が互いに結合して、107 M-1、108 M-1、109 M-1、1010 M-1、1011 M-1、1012 M-1よりも高い結合親和性で第1の抗原に特異的に結合する第1の抗原結合領域を形成し、かつ、該第2の重鎖可変領域と第2の軽鎖可変領域が互いに結合して、109 M-1、108 M-1、107 M-1、106 M-1、105 M-1、または104 M-1よりも低い結合親和性で第2の抗原に特異的に結合する第2の抗原結合領域を形成する。
【0015】
いくつかの実施形態おいて、第2の抗原結合領域は、107 M-1、106 M-1、105 M-1、または104 M-1より高い結合親和性で第2の抗原に特異的に結合する。
【0016】
いくつかの実施形態おいて、第1の抗原に結合するときの第1の抗原結合領域の結合親和性は、第2の抗原に結合するときの第2の抗原結合領域の結合親和性より少なくとも100倍、1000倍、または10000倍高い。
【0017】
いくつかの実施形態おいて、第1の軽鎖と第2の軽鎖は、少なくとも90%、95%、99%、または100%同一である。
【0018】
いくつかの実施形態おいて、第1の重鎖および第2の鎖は、「ノブ・イントゥ・ホール(knobs into holes)」法によって互いに結合する。
【0019】
いくつかの実施形態おいて、第1の抗原はがん特異抗原であり、第2の抗原はCD3である。
【0020】
いくつかの実施形態おいて、第1の抗原はCD20であり、第2の抗原はCD3である。
【0021】
いくつかの実施形態おいて、第1の重鎖可変領域はSEQ ID NO:1と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である配列を含み、第2の重鎖可変領域はSEQ ID NO:2と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である配列を含み、かつ、第1および第2の軽鎖可変領域はSEQ ID NO:3と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である配列を含む。
【0022】
いくつかの実施形態おいて、第1の抗原はがん特異抗原であり、第2の抗原はがん関連抗原である。
【0023】
いくつかの実施形態おいて、第1の抗原はPD-L1であり第2の抗原はCD55である。
【0024】
いくつかの実施形態おいて、第1の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:4と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である配列を含み、第2の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:5と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である配列を含み、かつ、第1および第2の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:7と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である配列を含む。
【0025】
いくつかの態様において、本開示は、二重特異性抗体または抗原結合断片を作製する方法に関し、この方法は、
第1の抗原および第2の抗原を選択し、かつ該第1の抗原に結合する第1の抗体または抗原結合断片および該第2の抗原に結合する第2の抗体または抗原結合断片を特定する段階であって、該第1の抗体または抗原結合断片が、第1の重鎖可変領域(VHa)および第1の軽鎖可変領域(VLa)を含み、かつ該第2の抗体または抗原結合断片が第2の重鎖可変領域(VHb)および第2の軽鎖可変領域(VLb)を含む、前記段階;
VHa、VLa、VHb、およびVLbのアミノ酸配列を決定する段階;
VLaおよびVLbのアミノ酸配列を整列させ、VLaとVLbとの間の配列相同性が80%より高いと判定する段階;
共通の軽鎖可変領域(VLc)を設計する段階であって、VLcが、VHaと結合するとき第1の抗原に対する親和性を維持する、前記段階;
VHaおよびVHb配列を再設計し、それによって、それぞれがVHa’を含む2つのポリペプチドおよびそれぞれがVLcを含む2つのポリペプチドを含む第1のタンパク質と、それぞれがVHb’を含む2つのポリペプチドおよびそれぞれがVLcを含む2つのポリペプチドを含む第2のタンパク質との間の生化学的または生物物理学的特性の差異を増加させるVHa’およびVHb’を得る段階;ならびに
2つの軽鎖可変領域および2つの重鎖可変領域を有する二重特異性抗体または抗原結合断片を作製する段階であって、該2つの軽鎖可変領域の各々がVLcを含み、かつ該2つの重鎖可変領域がそれぞれVHa’およびVHb’を含む、前記段階
を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、段階(d)において、第2の抗原に対するVLc-VHbの結合親和性は低下し得る。
【0027】
いくつかの実施形態おいて、この方法は更に、二重特異性抗体または抗原結合断片を精製するための緩衝系を作ることを含む。
【0028】
いくつかの態様において、本開示は、二重特異性抗体または抗原結合断片を作製する方法に関し、この方法は、
第1の抗原および第2の抗原を選択し、かつ該第1の抗原に結合する第1の抗体または抗原結合断片および該第2の抗原に結合する第2の抗体または抗原結合断片を特定する段階であって、該第1の抗体または抗原結合断片が、第1の重鎖可変領域(VHa)および第1の軽鎖可変領域(VLa)を含み、かつ該第2の抗体または抗原結合断片が、第2の重鎖可変領域(VHb)および第2の軽鎖可変領域(VLb)を含む、前記段階;
VHa、VLa、およびVLbのアミノ酸配列を決定する段階;
VLaおよびVLbのアミノ酸配列を整列させ、VLaとVLbとの間の配列相同性が80%未満であると判定する段階;
ファージディスプレイ抗体ライブラリー内の全ての軽鎖可変領域をVLaと置き換え、第2の抗原に対してパニングして、第3重鎖可変領域(VHc)を得る段階;
VHaおよびVHc配列を再設計し、それによって、それぞれがVHa'を含む2つのポリペプチドおよびそれぞれがVLaを含む2つのポリペプチドを含む第1のタンパク質と、それぞれがVHc'を含む2つのポリペプチドおよびそれぞれがVLaを含む2つのポリペプチドを含む第2のタンパク質との間の生化学的または生物物理学的特性の差異を増加させるVHa’およびVHc’を得る段階;ならびに
2つの軽鎖可変領域および2つの重鎖可変領域を有する二重特異性抗体または抗原結合断片を作製する段階であって、該2つの軽鎖可変領域の各々がVLaを含み、かつ該2つの重鎖可変領域がそれぞれVHa'およびVHc'を含む、前記段階
を含む。
【0029】
いくつかの実施形態おいて、この方法は更に、二重特異性抗体または抗原結合断片を精製するための緩衝系を作ることを含む。
【0030】
いくつかの態様において、本開示は、二重特異性抗体または抗原結合断片を作製する方法に関し、この方法は、
第1の抗原および第2の抗原を選択し、かつ該第1の抗原に結合する第1の抗体または抗原結合断片および該第2の抗原に結合する第2の抗体または抗原結合断片を特定する段階であって、該第1の抗体または抗原結合断片が、第1の重鎖可変領域(VHa)および第1の軽鎖可変領域(VLa)を含み、該第2の抗体または抗原結合断片が、第2の重鎖可変領域(VHb)および第2の軽鎖可変領域(VLb)を含む、前記段階;
VHa、VLa、VHb、およびVLbのアミノ酸配列を決定する段階;
VLaおよびVLbのアミノ酸配列を整列させ、VLaとVLbとの間の配列相同性が80%未満であると判定する段階;
ファージディスプレイ抗体ライブラリー内の全ての軽鎖可変領域を複数の軽鎖可変領域と置き換える段階であって、該軽鎖可変領域が、VLaまたはVLbと少なくとも80%、85%、90%、95%、または99%同一である、前記段階;
第2の抗原に対してパニングする段階;
共通の軽鎖可変領域(VLc)、および第3の重鎖可変領域(VHc)を選択する段階であって、VHa-VLcが、所望の親和性で第1の抗原に結合し、かつVHc-VLcが、所望の親和性で第2の抗原に結合する、前記段階;
VHaおよびVHc配列を再設計し、それによって、それぞれがVHa'を含む2つのポリペプチドおよびそれぞれがVLcを含む2つのポリペプチドを含む第1のタンパク質と、それぞれがVHc'を含む2つのポリペプチドおよびそれぞれがVLcを含む2つのポリペプチドを含む第2のタンパク質との間の生化学的または生物物理学的特性の差異を増加させるVHa’およびVHc’を得る段階;ならびに、
2つの軽鎖可変領域および2つの重鎖可変領域を有する二重特異性抗体または抗原結合断片を作製する段階であって、該2つの軽鎖可変領域の各々がVLcを含み、かつ該2つの重鎖可変領域がそれぞれVHa'およびVHc'を含む、前記段階
を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、段階(d)において、複数の軽鎖可変領域はエラープローンPCRによって作製される。
【0032】
いくつかの実施形態おいて、この方法は更に、二重特異性抗体または抗原結合断片を精製するための緩衝系を作ることを含む。
【0033】
一態様において、本開示は、二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する方法を提供する。この方法には、次の段階のうちの一つ以上が含まれる:
(a) 第1の抗原および第2の抗原を選択し、かつ該第1の抗原に結合する第1の抗体またはその抗原結合断片および該第2の抗原に結合する第2の抗体またはその抗原結合断片を特定する段階。いくつかの実施形態おいて、該第1の抗体またはその抗原結合断片は、第1の重鎖可変領域(VHa)および第1の軽鎖可変領域(VLa)を含み、かつ、該第2の抗体またはその抗原結合断片は、第2の重鎖可変領域(VHb)および第2の軽鎖可変領域(VLb)を含む;
(b) VHa、VLa、VHb、およびVLbのアミノ酸配列を決定する段階;
(c) VLaおよびVLbのアミノ酸配列を整列させ、VLaとVLbとの間の配列相同性が80%未満であると判定する段階;
(d) ファージディスプレイ抗体ライブラリー内の全ての軽鎖可変領域を複数の軽鎖可変領域と置き換える段階。いくつかの実施形態おいて、該軽鎖可変領域は、VLaまたはVLbと少なくとも80%、85%、90%、95%、または99%同一である;
(e) 第2の抗原に対してパニングする段階;
(f) 共通の軽鎖可変領域(VLc)、および第3の重鎖可変領域(VHc)を選択する段階。いくつかの実施形態おいて、VHc-VLcは、所望の親和性で第2の抗原に結合する;
(g) VLaとVLcとの間の相同性が80%より高いと判定する段階;
(h) 共通の軽鎖可変領域(VLd)を設計する段階。いくつかの実施形態において、VLdは、VHaと結合するとき第1の抗原に対する親和性を維持し、VHcと結合するとき、第2の抗原に対する所望の親和性を有する;
(i) 任意に、VHaおよびVHc配列を再設計し、それによって、それぞれがVHa'を含む2つのポリペプチドおよびそれぞれがVLdを含む2つのポリペプチドを含む第1のタンパク質と、それぞれがVHc'を含む2つのポリペプチドおよびそれぞれがVLdを含む2つのポリペプチドを含む第2のタンパク質との間の生化学的または生物物理学的特性の差異を増加させるVHa’およびVHc’を得る段階;ならびに、
(j) 任意に、2つの軽鎖可変領域および2つの重鎖可変領域を有する二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する段階。いくつかの実施形態おいて、該2つの軽可変領域の各々がVLdを含み、かつ該2つの重鎖可変領域はそれぞれVHa'およびVHc'を含む。
【0034】
一態様において、本開示は、二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する方法を提供する。この方法には、次の段階のうちの一つ以上が含まれる:
(a) 第1の抗原および第2の抗原を選択し、かつ該第1の抗原に結合する第1の抗体またはその抗原結合断片および該第2の抗原に結合する第2の抗体またはその抗原結合断片を特定する段階。いくつかの実施形態おいて、該第1の抗体またはその抗原結合断片は、第1の重鎖可変領域(VHa)および第1の軽鎖可変領域(VLa)を含み、かつ該第2の抗体またはその抗原結合断片は、第2の重鎖可変領域(VHb)および第2の軽鎖可変領域(VLb)を含む;
(b) VHa、VLa、VHb、およびVLbのアミノ酸配列を決定する段階;
(c) VLaおよびVLbのアミノ酸配列を整列させ、VLaとVLbとの間の配列相同性が80%より高いと判定する段階;
(d) 共通の軽鎖可変領域(VLc)を設計する段階。いくつかの実施形態おいて、VLcは、VHaと結合するとき第1の抗原に対する親和性を維持する;ならびに、
(e) 任意に、2つの軽鎖可変領域および2つの重鎖可変領域を有する二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する段階。いくつかの実施形態おいて、該2つの軽可変領域の各々がVLcを含み、かつ該2つの重鎖可変領域はそれぞれVHaおよびVHbを含む。
【0035】
一態様において、本開示はまた、二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する方法を提供する。この方法には、次の段階のうちの一つ以上が含まれる:
(a) 第1の抗原および第2の抗原を選択し、該第1の抗原に結合する第1の抗体またはその抗原結合断片および該第2の抗原に結合する第2の抗体またはその抗原結合断片を特定する段階。いくつかの実施形態おいて、該第1の抗体またはその抗原結合断片は、第1の重鎖可変領域(VHa)および第1の軽鎖可変領域(VLa)を含み、かつ該第2の抗体またはその抗原結合断片は、第2の重鎖可変領域(VHb)および第2の軽鎖可変領域(VLb)を含む;
(b) VHa、VLa、およびVLbのアミノ酸配列を決定する段階;
(c) VLaおよびVLbのアミノ酸配列を整列させ、VLaとVLbとの間の配列相同性が80%未満であると判定する段階;
(d) ファージディスプレイ抗体ライブラリー内の全ての軽鎖可変領域をVLaと置き換え、第2の抗原に対してパニングして、第3重鎖可変領域(VHc)を得る段階;ならびに、
(e) 任意に、2つの軽鎖可変領域および2つの重鎖可変領域を有する二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する段階。いくつかの実施形態おいて、該2つの軽可変領域の各々がVLaを含み、かつ該2つの重鎖可変領域はそれぞれVHaおよびVHcを含む。
【0036】
一態様において、本開示は、二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する方法を更に提供する。この方法には、次の段階のうちの一つ以上が含まれる:
(a) 第1の抗原および第2の抗原を選択し、かつ該第1の抗原に結合する第1の抗体またはその抗原結合断片および該第2の抗原に結合する第2の抗体またはその抗原結合断片を特定する段階。いくつかの実施形態おいて、該第1の抗体またはその抗原結合断片は、第1の重鎖可変領域(VHa)および第1の軽鎖可変領域(VLa)を含み、かつ該第2の抗体またはその抗原結合断片は、第2の重鎖可変領域(VHb)および第2の軽鎖可変領域(VLb)を含む;
(b) VHa、VLa、VHb、およびVLbのアミノ酸配列を決定する段階;
(c) VLaおよびVLbのアミノ酸配列を整列させ、VLaとVLbとの間の配列相同性が80%未満であると判定する段階;
(d) ファージディスプレイ抗体ライブラリー内の全ての軽鎖可変領域を複数の軽鎖可変領域で置き換える段階。いくつかの実施形態おいて、該軽鎖可変領域は、VLaまたはVLbと少なくとも80%、85%、90%、95%、または99%同一である;
(e) 第1のおよび/または第2の抗原に対してパニングする段階;
(f) 共通の軽鎖可変領域(VLc)、および第3の重鎖可変領域(VHc)を選択する段階。いくつかの実施形態おいて、VHa-VLcは、所望の親和性で第1の抗原に結合し、かつVHc-VLcは、所望の親和性で第2の抗原に結合する;ならびに、
(g) 任意に、2つの軽鎖可変領域および2つの重鎖可変領域を有する二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する段階。いくつかの実施形態おいて、該2つの軽可変領域の各々がVLcを含み、かつ2つの重鎖可変領域はそれぞれVHaおよびVHcを含む。
【0037】
別の態様において、本開示は、CD3に結合する抗体またはその抗原結合断片を提供し、これは、
相補性決定領域(CDR)1、2、3を含む重鎖可変領域(VH)であって、VH CDR1領域が、選択されたVH CDR1アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、VH CDR2領域が、選択されたVH CDR2アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、かつVH CDR3領域が、選択されたVH CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、前記重鎖可変領域(VH);ならびに、
CDR1、2、3を含む軽鎖可変領域(VL)であって、VL CDR1領域が、選択されたVL CDR1アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、VL CDR2領域が、選択されたVL CDR2アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、かつVL CDR3領域が、選択されたVL CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、前記軽鎖可変領域(VL)
を含み、ここで、選択されたVH CDR1、2、3のアミノ酸配列および選択されたVL CDR、1、2、3のアミノ酸配列は、次のうちの一つである:
選択されたVH CDR1、2、3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:22~24にそれぞれ記載され、かつ選択されたVL CDR1、2、3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:28~30にそれぞれ記載される。
【0038】
いくつかの実施形態おいて、VHは、SEQ ID NO:22、23、24に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR1、2、3を含み、VLは、SEQ ID NO:28、29、30に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR1、2、3を含む。
【0039】
いくつかの実施形態おいて、抗体または抗原結合断片は、ヒトCD3に特異的に結合する。
【0040】
いくつかの実施形態おいて、抗体または抗原結合断片は二重特異性抗体である。
【0041】
別の態様において、本開示はまた、PD-L1に結合する抗体またはその抗原結合断片も提供し、これは、
相補性決定領域(CDR)1、2、3を含む重鎖可変領域(VH)であって、VH CDR1領域が、選択されたVH CDR1アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、VH CDR2領域が、選択されたVH CDR2アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、かつVH CDR3領域が、選択されたVH CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、前記重鎖可変領域(VH);ならびに、
CDR1、2、3を含む軽鎖可変領域(VL)であって、VL CDR1領域が、選択されたVL CDR1アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、VL CDR2領域が、選択されたVL CDR2アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、かつVL CDR3領域が、選択されたVL CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、前記軽鎖可変領域(VL)
を含み、ここで、選択されたVH CDR1、2、3のアミノ酸配列および選択されたVL CDR、1、2、3のアミノ酸配列は次のうちの一つである:
(1) 選択されたVH CDR1、2、3のアミノ酸配列はSEQ ID NO:41~43にそれぞれ記載され、かつ選択されたVL CDR1、2、3のアミノ酸配列はSEQ ID NO:53~55にそれぞれ記載される;
(2) 選択されたVH CDR1、2、3のアミノ酸配列はSEQ ID NO:41~43にそれぞれ記載され、かつ選択されたVL CDR1、2、3のアミノ酸配列はSEQ ID NO:59~61にそれぞれ記載される。
【0042】
いくつかの実施形態において、VHは、SEQ ID NO:41~43に示されるアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR1、2、3を含み、VLは、SEQ ID NO:59~61に示されるアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR1、2、3を含む。
【0043】
いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合断片は、ヒトCD3に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合断片は二重特異性抗体である。
【0044】
別の態様において、本開示は、CD55に結合する抗体またはその抗原結合断片を提供し、これは、
相補性決定領域(CDR)1、2、3を含む重鎖可変領域(VH)であって、VH CDR1領域が、選択されたVH CDR1アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、VH CDR2領域が、選択されたVH CDR2アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、かつVH CDR3領域が、選択されたVH CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、前記重鎖可変領域(VH);ならびに、
CDR1、2、3を含む軽鎖可変領域(VL)であって、VL CDR1領域が、選択されたVL CDR1アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、VL CDR2領域が、選択されたVL CDR2アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、かつVL CDR3領域が、選択されたVL CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、前記軽鎖可変領域(VL)
を含み、ここで、選択されたVH CDR1、2、3のアミノ酸配列および選択されたVL CDR1、2、3のアミノ酸配列は、次のうちの一つである:
(1) 選択されたVH CDR1、2、3のアミノ酸配列はSEQ ID NO:47~49にそれぞれ記載され、かつ選択されたVL CDR1、2、3のアミノ酸配列はSEQ ID NO:53~55にそれぞれ記載される;
(2) 選択されたVH CDR1、2、3のアミノ酸配列はSEQ ID NO:47~49にそれぞれ記載され、かつ選択されたVL CDR1、2、3のアミノ酸配列はSEQ ID NO:59~61にそれぞれ記載される。
【0045】
いくつかの実施形態において、VHは、SEQ ID NO:47~49に示されるアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR1、2、3を含み、VLは、SEQ ID NO:59~61に示されるアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR1、2、3を含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合断片は、ヒトCD3に特異的に結合する。
【0047】
いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合断片は二重特異性抗体である。
【0048】
一態様において、本開示は、SEQ ID NO:53~55にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、3を含むVLを含む免疫グロブリン軽鎖またはその断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸を提供する。いくつかの実施形態において、VLは、SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列を含むVHと対にされる場合はPD-L1に結合し、かつ/またはSEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列を含むVHと対にされる場合はCD55に結合する。
【0049】
一態様において、本開示は、SEQ ID NO:59~61にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、3を含むVLを含む免疫グロブリン軽鎖またはその断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸を提供する。いくつかの実施形態において、VLは、SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列を含むVHと対にされる場合はPD-L1に結合し、かつ/またはSEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列を含むVHと対にされる場合はCD55に結合する。
【0050】
いくつかの実施形態において、核酸は二重特異性抗体をコードする。いくつかの実施形態において、核酸はcDNAである。
【0051】
一態様において、本開示は、本明細書に記載の核酸の1つまたは複数を含むベクターを提供する。
【0052】
一態様において、本開示は、本明細書に記載のベクターを含む細胞を提供する。いくつかの実施形態において、当該細胞はCHO細胞である。
【0053】
一態様において、本開示は、本明細書に記載の核酸の1つまたは複数を含む細胞を提供する。
【0054】
一態様において、本開示は、SEQ ID NO:1と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域(VH)を含む第1のポリペプチド、SEQ ID NO:2と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む第2の重鎖可変領域(VH)を含む第2のポリペプチド、SEQ ID NO:3と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域(VL)を含む第3のポリペプチド、SEQ ID NO:3と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む第2の軽鎖可変領域(VL)を含む第4のポリペプチドを含む、CD20およびCD3に結合する二重特異性抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0055】
いくつかの実施形態において、第1の重鎖可変領域(VH)はSEQ ID NO:1を含み、第2の重鎖可変領域(VH)はSEQ ID NO:2を含み、第1の軽鎖可変領域(VL)はSEQ ID NO:3を含み、第2の軽鎖可変領域(VL)はSEQ ID NO:3を含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドは、SEQ ID NO:34、35、または36と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチドは、SEQ ID NO:37、38、または39と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み、第3のポリペプチドは、SEQ ID NO:40と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み、かつ第4のポリペプチドは、SEQ ID NO:40と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドは、SEQ ID NO:35に記載のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチドは、SEQ ID NO:38に示されるアミノ酸配列を含む。
【0058】
一態様において、本開示は、SEQ ID NO:4と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域(VH)を含む第1のポリペプチド、SEQ ID NO:5と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む第2の重鎖可変領域(VH)を含む第2のポリペプチド、SEQ ID NO:6もしくは7と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域(VL)を含む第3のポリペプチド、SEQ ID NO:6もしくは7と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む第2の軽鎖可変領域(VL)を含む第4のポリペプチドを含む、PD-L1およびCD55に結合する二重特異性抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0059】
いくつかの実施形態において、第1の重鎖可変領域(VH)はSEQ ID NO:4を含み、第2の重鎖可変領域(VH)はSEQ ID NO:5を含み、第1の軽鎖可変領域(VL)はSEQ ID NO:7を含み、第2の軽鎖可変領域(VL)はSEQ ID NO:7を含む。
【0060】
いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドは、SEQ ID NO:65と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチドは、SEQ ID NO:66と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み、第3のポリペプチドは、SEQ ID NO:67もしくは68と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み、かつ第4のポリペプチドは、SEQ ID NO:67もしくは68と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドは、SEQ ID NO:65に記載のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチドは、SEQ ID NO:66に記載のアミノ酸配列を含み、第3のポリペプチドは、SEQ ID NO:68に記載のアミノ酸配列を含み、第4のポリペプチドは、SEQ ID NO:68に示されるアミノ酸配列を含む。
【0062】
一態様において、本開示は、治療薬に共有結合した本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片を含む抗体薬物複合体を提供する。いくつかの実施形態において、当該治療薬は、細胞傷害剤または細胞増殖抑制剤である。
【0063】
一態様において、本開示は、がんを有する対象を治療する方法を提供する。この方法は、本明細書に記載の抗体もしくはその抗原結合断片、または本明細書に記載の抗体薬物複合体を含む治療有効量の組成物を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、対象は、固形腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、当該がんは、黒色腫、膵臓癌、または血液悪性腫瘍である。いくつかの実施形態において、当該がんは、非ホジキンリンパ腫、リンパ腫、または慢性リンパ性白血病である。
【0064】
一態様において、本開示は、腫瘍成長の速度を低下させる方法を提供する。この方法は、対象に対して、本明細書に記載の抗体もしくはその抗原結合断片または本明細書に記載の抗体薬物複合体を含む組成物の有効量に腫瘍細胞を接触させることを含む。
【0065】
一態様において、本開示は、腫瘍細胞を殺滅する方法を提供する。この方法は、対象に対して、本明細書に記載の抗体もしくはその抗原結合断片、または本明細書に記載の抗体薬物複合体を含む組成物の有効量に腫瘍細胞を接触させることを含む。
【0066】
一態様において、本開示は、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。
【0067】
一態様において、本開示は、本明細書に記載の抗体薬物複合体と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0068】
特別の定めのない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本発明で使用するための方法および材料が本明細書には記載されているが、当技術分野で知られている他の適切な方法および材料も同様に使用することができる。材料、方法、および例は説明することのみを目的としており、限定することを意図したものではない。本明細書で言及されるすべての出版物、特許出願、特許、配列、データベースエントリ、および他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。矛盾が生じた場合は、定義を含む本明細書が優先される。
【0069】
[本発明1001]
第1の重鎖可変領域、
第2の重鎖可変領域、
第1の軽鎖可変領域、および
第2の軽鎖可変領域
を含む、二重特異性抗体またはその抗原結合断片であって、
第1の重鎖可変領域と第1の軽鎖可変領域が互いに結合して、107 M-1、108 M-1、109 M-1、1010 M-1、1011 M-1、または1012 M-1よりも高い結合親和性で第1の抗原に特異的に結合する第1の抗原結合領域を形成し、かつ
第2の重鎖可変領域と第2の軽鎖可変領域が互いに結合して、109 M-1、108 M-1、107 M-1、106 M-1、105 M-1、または104 M-1よりも低い結合親和性で第2の抗原に特異的に結合する第2の抗原結合領域を形成する、
前記二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1002]
前記第2の抗原結合領域が、107 M-1、106 M-1、105 M-1、または104 M-1よりも高い結合親和性で第2の抗原に特異的に結合する、本発明1001の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1003]
第1の抗原と結合するときの第1の抗原結合領域の結合親和性が、第2の抗原と結合するときの第2の抗原結合領域の結合親和性よりも少なくとも100倍、1000倍、または10000倍高い、本発明1001の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1004]
第1の軽鎖可変領域および第2の軽鎖可変領域が、少なくとも90%、95%、99%、または100%同一である、本発明1001の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1005]
第1の重鎖可変領域および第1の軽鎖可変領域を含む第1のアーム;ならびに
第2の重鎖可変領域および第2の軽鎖可変領域を含む第2のアーム
を含む、二重特異性抗体またはその抗原結合断片であって、
該第1のアームが、107 M-1、108 M-1、109 M-1、1010 M-1、1011 M-1、1012 M-1よりも高い結合親和性で第1の抗原と特異的に結合し、かつ該第2のアームが、109 M-1、108 M-1、107 M-1、106 M-1、105 M-1、または104 M-1よりも低い結合親和性で第2の抗原と特異的に結合する、
前記二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1006]
前記第2のアームが、107 M-1、106 M-1、105 M-1、または104 M-1よりも高い結合親和性で第2の抗原と特異的に結合する、本発明1005の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1007]
第1の抗原と結合するときの前記第1のアームの結合親和性が、第2の抗原と結合するときの前記第2のアームの結合親和性よりも少なくとも100倍、1000倍、または10000倍高い、本発明1005の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1008]
第1の軽鎖可変領域および第2の軽鎖可変領域が、少なくとも90%、95%、99%、または100%同一である、本発明1005の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1009]
第1の重鎖可変領域を含む第1の重鎖、
第2の重鎖可変領域を含む第2の重鎖、
第1の軽鎖可変領域を含む第1の軽鎖、および
第2の軽鎖可変領域を含む第2の軽鎖
を含む、二重特異性抗体またはその抗原結合断片であって、
第1の重鎖可変領域および第1の軽鎖可変領域が互いに結合して、107 M-1、108 M-1、109 M-1、1010 M-1、1011 M-1、1012 M-1よりも高い結合親和性で第1の抗原に特異的に結合する第1の抗原結合領域を形成し、かつ
第2の重鎖可変領域および第2の軽鎖可変領域が互いに結合して、109 M-1、108 M-1、107 M-1、106 M-1、105 M-1、または104 M-1よりも低い結合親和性で第2の抗原に特異的に結合する第2の抗原結合領域を形成する、
前記二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1010]
第2の抗原結合領域が、107 M-1、106 M-1、105 M-1、または104 M-1よりも高い結合親和性で第2の抗原に特異的に結合する、本発明1009の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1011]
第1の抗原と結合するときの第1の抗原結合領域の結合親和性が、第2の抗原と結合するときの第2の抗原結合領域の結合親和性よりも少なくとも100倍、1000倍、または100000倍高い、本発明1009の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1012]
第1の軽鎖および第2の軽鎖が、少なくとも90%、95%、99%、または100%同一である、本発明1009の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1013]
第1の重鎖および第2の重鎖が、ノブ・イントゥ・ホール(knobs into holes)法によって互いに結合している、本発明1009の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1014]
第1の抗原が、がん特異抗原であり、かつ第2の抗原が、CD3である、本発明1001~1013のいずれかの二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1015]
第1の抗原がCD20であり、かつ第2の抗原がCD3である、本発明1001~1013のいずれかの二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1016]
第1の重鎖可変領域が、SEQ ID NO:1と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である配列を含み、第2の重鎖可変領域が、SEQ ID NO:2と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である配列を含み、かつ第1のおよび第2の軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:3と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である配列を含む、本発明1015の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1017]
第1の抗原が、がん特異抗原であり、かつ第2の抗原が、がん関連抗原である、本発明1001~1013のいずれかの二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1018]
第1の抗原がPD-L1であり、かつ第2の抗原がCD55である、本発明1001~1013のいずれかの二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1019]
第1の重鎖可変領域が、SEQ ID NO:4と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である配列を含み、第2の重鎖可変領域が、SEQ ID NO:5と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である配列を含み、かつ第1のおよび第2の軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:7と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である配列を含む、本発明1018の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1020]
二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する方法であって、以下を含む方法:
(a) 第1の抗原および第2の抗原を選択し、かつ該第1の抗原に結合する第1の抗体またはその抗原結合断片および該第2の抗原に結合する第2の抗体またはその抗原結合断片を特定する段階であって、該第1の抗体またはその抗原結合断片が、第1の重鎖可変領域(VHa)および第1の軽鎖可変領域(VLa)を含み、かつ該第2の抗体またはその抗原結合断片が、第2の重鎖可変領域(VHb)および第2の軽鎖可変領域(VLb)を含む、前記段階;
(b) VHa、VLa、VHb、およびVLbのアミノ酸配列を決定する段階;
(c) VLaおよびVLbのアミノ酸配列を整列させ、VLaとVLbとの間の配列相同性が80%より高いと判定する段階;
(d) 共通の軽鎖可変領域(VLc)を設計する段階であって、VLcが、VHaと結合するとき第1の抗原に対する親和性を維持する、前記段階;
(e) VHaおよびVHbの配列を再設計し、それによって、それぞれがVHa’を含む2つのポリペプチドおよびそれぞれがVLcを含む2つのポリペプチドを含む第1のタンパク質と、それぞれがVHb’を含む2つのポリペプチドおよびそれぞれがVLcを含む2つのポリペプチドを含む第2のタンパク質との間の生化学的または生物物理学的特性の差異を増加させるVHa’およびVHb’を得る段階;ならびに
(f) 2つの軽鎖可変領域および2つの重鎖可変領域を有する二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する段階であって、該2つの軽鎖可変領域の各々がVLcを含み、かつ該2つの重鎖可変領域がそれぞれVHa’およびVHb’を含む、前記段階。
[本発明1021]
段階(d)において、第2の抗原に対するVLc-VHbの結合親和性が低下し得る、本発明1020の方法。
[本発明1022]
さらに以下を含む、本発明1020の方法:
(g) 前記二重特異性抗体またはその抗原結合断片を精製するための緩衝系を作る段階。
[本発明1023]
二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する方法であって、以下を含む方法:
(a) 第1の抗原および第2の抗原を選択し、かつ該第1の抗原に結合する第1の抗体またはその抗原結合断片および該第2の抗原に結合する第2の抗体またはその抗原結合断片を特定する段階であって、該第1の抗体またはその抗原結合断片が、第1の重鎖可変領域(VHa)および第1の軽鎖可変領域(VLa)を含み、かつ該第2の抗体またはその抗原結合断片が、第2の重鎖可変領域(VHb)および第2の軽鎖可変領域(VLb)を含む、前記段階;
(b) VHa、VLa、およびVLbのアミノ酸配列を決定する段階;
(c) VLaおよびVLbのアミノ酸配列を整列させ、VLaとVLbとの間の配列相同性が80%未満であると判定する段階;
(d) ファージディスプレイ抗体ライブラリー内の全ての軽鎖可変領域をVLaと置き換え、第2の抗原に対してパニングして、第3の重鎖可変領域(VHc)を得る段階;
(e) VHaおよびVHcの配列を再設計し、それによって、それぞれがVHa’を含む2つのポリペプチドおよびそれぞれがVLaを含む2つのポリペプチドを含む第1のタンパク質と、それぞれがVHc’を含む2つのポリペプチドおよびそれぞれがVLaを含む2つのポリペプチドを含む第2のタンパク質との間の生化学的または生物物理学的特性の差異を増加させるVHa’およびVHc’を得る段階;ならびに
(f) 2つの軽鎖可変領域および2つの重鎖可変領域を有する二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する段階であって、該2つの軽鎖可変領域の各々がVLaを含み、かつ該2つの重鎖可変領域がそれぞれVHa’およびVHc’を含む、前記段階。
[本発明1024]
さらに以下を含む、本発明1023の方法:
(g) 前記二重特異性抗体またはその抗原結合断片を精製するための緩衝系を作る段階。
[本発明1025]
二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する方法であって、以下を含む方法:
(a) 第1の抗原および第2の抗原を選択し、かつ該第1の抗原に結合する第1の抗体またはその抗原結合断片および該第2の抗原に結合する第2の抗体またはその抗原結合断片を特定する段階であって、該第1の抗体またはその抗原結合断片が、第1の重鎖可変領域(VHa)および第1の軽鎖可変領域(VLa)を含み、かつ該第2の抗体またはその抗原結合断片が、第2の重鎖可変領域(VHb)および第2の軽鎖可変領域(VLb)を含む、前記段階;
(b) VHa、VLa、VHbおよびVLbのアミノ酸配列を決定する段階;
(c) VLaおよびVLbのアミノ酸配列を整列させ、VLaとVLbとの間の配列相同性が80%未満であると判定する段階;
(d) ファージディスプレイ抗体ライブラリー内の全ての軽鎖可変領域を複数の軽鎖可変領域と置き換える段階であって、該軽鎖可変領域が、VLaまたはVLbと少なくとも80%、85%、90%、95%、または99%同一である、前記段階;
(e) 該第2の抗原に対してパニングする段階;
(f) 共通の軽鎖可変領域(VLc)、および第3の重鎖可変領域(VHc)を選択する段階であって、VHa-VLcが、所望の親和性で第1の抗原に結合し、かつVHc-VLcが、所望の親和性で第2の抗原に結合する、前記段階;
(g) VHaおよびVHcの配列を再設計し、それによって、それぞれがVHa’を含む2つのポリペプチドおよびそれぞれがVLcを含む2つのポリペプチドを含む第1のタンパク質と、それぞれがVHc’を含む2つのポリペプチドおよびそれぞれがVLcを含む2つのポリペプチドを含む第2のタンパク質との間の生化学的または生物物理学的特性の差異を増加させるVHa’およびVHc’を得る段階;ならびに
(h) 2つの軽鎖可変領域および2つの重鎖可変領域を有する二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する段階であって、該2つの軽鎖可変領域の各々がVLcを含み、かつ該2つの重鎖可変領域がそれぞれVHa’およびVHc’を含む、前記段階。
[本発明1026]
段階(d)において、複数の軽鎖可変領域が、エラープローンPCRによって作製される、本発明1025の方法。
[本発明1027]
さらに以下を含む、本発明1025の方法:
(i) 前記二重特異性抗体またはその抗原結合断片を精製するための緩衝系を作る段階。
[本発明1028]
二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する方法であって、以下を含む方法:
(a) 第1の抗原および第2の抗原を選択し、かつ該第1の抗原に結合する第1の抗体またはその抗原結合断片および該第2の抗原に結合する第2の抗体またはその抗原結合断片を特定する段階であって、該第1の抗体またはその抗原結合断片が、第1の重鎖可変領域(VHa)および第1の軽鎖可変領域(VLa)を含み、かつ該第2の抗体またはその抗原結合断片が、第2の重鎖可変領域(VHb)および第2の軽鎖可変領域(VLb)を含む、前記段階;
(b) VHa、VLa、VHb、およびVLbのアミノ酸配列を決定する段階;
(c) VLaおよびVLbのアミノ酸配列を整列させ、VLaとVLbとの間の配列相同性が80%未満であると判定する段階;
(d) ファージディスプレイ抗体ライブラリー内の全ての軽鎖可変領域を複数の軽鎖可変領域と置き換える段階であって、該軽鎖可変領域が、VLaまたはVLbと少なくとも80%、85%、90%、95%、または99%同一である、前記段階;
(e) 該第2の抗原に対してパニングする段階;
(f) 共通の軽鎖可変領域(VLc)、および第3の重鎖可変領域(VHc)を選択する段階であって、VHc-VLcが、所望の親和性で第2の抗原に結合する、前記段階;
(g) VLaとVLcとの間の相同性が80%より高いと判定する段階;
(h) 共通の軽鎖可変領域(VLd)を設計する段階であって、VLdが、VHaと結合するとき第1の抗原に対する親和性を維持し、VHcと結合するとき、第2の抗原に対する所望の親和性を有する、前記段階;
(i) 任意に、VHaおよびVHcの配列を再設計し、それによって、それぞれがVHa’を含む2つのポリペプチドおよびそれぞれがVLdを含む2つのポリペプチドを含む第1のタンパク質と、それぞれがVHc’を含む2つのポリペプチドおよびそれぞれがVLdを含む2つのポリペプチドを含む第2のタンパク質との間の生化学的または生物物理学的特性の差異を増加させるVHa’およびVHc’を得る段階;ならびに
(j) 任意に、2つの軽鎖可変領域および2つの重鎖可変領域を有する二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する段階であって、該2つの軽鎖可変領域の各々がVLdを含み、かつ該2つの重鎖可変領域がそれぞれVHa’およびVHc’を含む、前記段階。
[本発明1029]
二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する方法であって、以下を含む方法:
(a) 第1の抗原および第2の抗原を選択し、かつ該第1の抗原に結合する第1の抗体またはその抗原結合断片および該第2の抗原に結合する第2の抗体またはその抗原結合断片を特定する段階であって、該第1の抗体またはその抗原結合断片が、第1の重鎖可変領域(VHa)および第1の軽鎖可変領域(VLa)を含み、かつ該第2の抗体またはその抗原結合断片が、第2の重鎖可変領域(VHb)および第2の軽鎖可変領域(VLb)を含む、前記段階;
(b) VHa、VLa、VHb、およびVLbのアミノ酸配列を決定する段階;
(c) VLaおよびVLbのアミノ酸配列を整列させ、VLaとVLbとの間の配列相同性が80%より高いと判定する段階;
(d) 共通の軽鎖可変領域(VLc)を設計する段階であって、VLcが、VHaと結合するとき第1の抗原に対する親和性を維持する、前記段階;ならびに
(e) 任意に、2つの軽鎖可変領域および2つの重鎖可変領域を有する二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する段階であって、該2つの軽鎖可変領域の各々がVLcを含み、かつ該2つの重鎖可変領域がそれぞれVHaおよびVHbを含む、前記段階。
[本発明1030]
二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する方法であって、以下を含む方法:
(a) 第1の抗原および第2の抗原を選択し、かつ該第1の抗原に結合する第1の抗体またはその抗原結合断片および該第2の抗原に結合する第2の抗体またはその抗原結合断片を特定する段階であって、該第1の抗体またはその抗原結合断片が、第1の重鎖可変領域(VHa)および第1の軽鎖可変領域(VLa)を含み、かつ該第2の抗体またはその抗原結合断片が、第2の重鎖可変領域(VHb)および第2の軽鎖可変領域(VLb)を含む、前記段階;
(b) VHa、VLa、およびVLbのアミノ酸配列を決定する段階;
(c) VLaおよびVLbのアミノ酸配列を整列させ、VLaとVLbとの間の配列相同性が80%未満であると判定する段階;
(d) ファージディスプレイ抗体ライブラリー内の全ての軽鎖可変領域をVLaと置き換え、第2の抗原に対してパニングして、第3の重鎖可変領域(VHc)を得る段階;ならびに
(e) 任意に、2つの軽鎖可変領域および2つの重鎖可変領域を有する二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する段階であって、該2つの軽鎖可変領域の各々がVLaを含み、かつ該2つの重鎖可変領域がそれぞれVHaおよびVHcを含む、前記段階。
[本発明1031]
二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する方法であって、以下を含む方法:
(a) 第1の抗原および第2の抗原を選択し、かつ該第1の抗原に結合する第1の抗体またはその抗原結合断片および該第2の抗原に結合する第2の抗体またはその抗原結合断片を特定する段階であって、該第1の抗体またはその抗原結合断片が、第1の重鎖可変領域(VHa)および第1の軽鎖可変領域(VLa)を含み、かつ該第2の抗体またはその抗原結合断片が、第2の重鎖可変領域(VHb)および第2の軽鎖可変領域(VLb)を含む、前記段階;
(b) VHa、VLa、VHb、および/またはVLbのアミノ酸配列を決定する段階;
(c) VLaおよびVLbのアミノ酸配列を整列させ、VLaとVLbとの間の配列相同性が80%未満であると判定する段階;
(d) ファージディスプレイ抗体ライブラリー内の全ての軽鎖可変領域を複数の軽鎖可変領域と置き換える段階であって、該軽鎖可変領域が、VLaまたはVLbと少なくとも80%、85%、90%、95%、または99%同一である、前記段階;
(e) 第1のおよび/または第2の抗原に対してパニングする段階;
(f) 共通の軽鎖可変領域(VLc)、および第3の重鎖可変領域(VHc)を選択する段階であって、VHa-VLcが、所望の親和性で第1の抗原に結合し、かつVHc-VLcが、所望の親和性で第2の抗原に結合する、前記段階;ならびに
(g) 任意に、2つの軽鎖可変領域および2つの重鎖可変領域を有する二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する段階であって、該2つの軽鎖可変領域の各々がVLcを含み、かつ該2つの重鎖可変領域がそれぞれVHaおよびVHcを含む、前記段階。
[本発明1032]
相補性決定領域(CDR)1、2、および3を含む重鎖可変領域(VH)であって、VH CDR1領域が、選択されたVH CDR1アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、VH CDR2領域が、選択されたVH CDR2アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、かつVH CDR3領域が、選択されたVH CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、前記重鎖可変領域(VH);ならびに
CDR1、2、および3を含む軽鎖可変領域(VL)であって、VL CDR1領域が、選択されたVL CDR1アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、VL CDR2領域が、選択されたVL CDR2アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、かつVL CDR3領域が、選択されたVL CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、前記軽鎖可変領域(VL)
を含む、CD3に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、
該選択されたVH CDR1、2、3のアミノ酸配列が、SEQ ID NO:22~24にそれぞれ記載され、かつ該選択されたVL CDR1、2、3のアミノ酸配列が、SEQ ID NO:28~30にそれぞれ記載される、
前記抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1033]
VHが、SEQ ID NO:22、23、24にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含み、VLが、SEQ ID NO:28、29、30にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含む、本発明1032の抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1034]
ヒトCD3に特異的に結合する、本発明1032~1033のいずれかの抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1035]
二重特異性抗体である、本発明1032~1034のいずれかの抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1036]
相補性決定領域(CDR)1、2、および3を含む重鎖可変領域(VH)であって、VH CDR1領域が、選択されたVH CDR1アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、VH CDR2領域が、選択されたVH CDR2アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、かつVH CDR3が、選択されたVH CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、前記重鎖可変領域(VH);ならびに
CDR1、2、および3を含む軽鎖可変領域(VL)であって、VL CDR1領域が、選択されたVL CDR1アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、VL CDR2領域が、選択されたVL CDR2アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、かつVL CDR3領域が、選択されたVL CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、前記軽鎖可変領域(VL)
を含む、PD-L1に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、
該選択されたVH CDR1、2、および3のアミノ酸配列および該選択されたVL CDR1、2、および3のアミノ酸配列が、
(1) 選択されたVH CDR1、2、3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:41~43にそれぞれ記載され、かつ選択されたVL CDR1、2、3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:53~55にそれぞれ記載される;
(2) 選択されたVH CDR1、2、3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:41~43にそれぞれ記載され、かつ選択されたVL CDR1、2、3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:59~61にそれぞれ記載される
のうちの一つである、
前記抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1037]
VHが、SEQ ID NO:41~43にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含み、かつVLが、SEQ ID NO:59~61にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含む、本発明1036の抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1038]
ヒトCD3に特異的に結合する、本発明1036~1037のいずれかの抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1039]
二重特異性抗体である、本発明1036~1038のいずれかの抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1040]
相補性決定領域(CDR)1、2、および3を含む重鎖可変領域(VH)であって、VH CDR1領域が、選択されたVH CDR1アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、VH CDR2領域が、選択されたVH CDR2アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、かつVH CDR3領域が、選択されたVH CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、前記重鎖可変領域(VH);ならびに
CDR1、2、および3を含む軽鎖可変領域(VL)であって、VL CDR1領域が、選択されたVL CDR1アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、VL CDR2領域が、選択されたVL CDR2アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、かつVL CDR3領域が、選択されたVL CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、前記軽鎖可変領域(VL)
を含む、CD55に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、
該選択されたVH CDR1、2、および3のアミノ酸配列および該選択されたVL CDR1、2、および3のアミノ酸配列が、
(1) 選択されたVH CDR1、2、3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:47~49にそれぞれ記載され、かつ選択されたVL CDR1、2、3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:53~55にそれぞれ記載される;
(2) 選択されたVH CDR1、2、3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:47~49にそれぞれ記載され、かつ選択されたVL CDR1、2、3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:59~61にそれぞれ記載される
のうちの一つである、
前記抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1041]
VHが、SEQ ID NO:47~49にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含み、かつVLが、SEQ ID NO:59~61にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含む、本発明1040の抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1042]
ヒトCD3に特異的に結合する、本発明1040~1041のいずれかの抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1043]
二重特異性抗体である、本発明1040~1042のいずれかの抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1044]
SEQ ID NO:53~55にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、および3を含むVLを含む免疫グロブリン軽鎖またはその断片
を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸であって、
該VLが、SEQ ID NO:4に記載されるアミノ酸配列を含むVHと対にされる場合はPD-L1と結合し、かつ/またはSEQ ID NO:5に記載されるアミノ酸配列を含むVHと対にされる場合はCD55に結合する、
前記核酸。
[本発明1045]
SEQ ID NO:59~61にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、および3を含むVLを含む免疫グロブリン軽鎖またはその断片
を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸であって、
該VLが、SEQ ID NO:4に記載されるアミノ酸配列を含むVHと対にされる場合はPD-L1と結合し、かつ/またはSEQ ID NO:5に記載されるアミノ酸配列を含むVHと対にされる場合はCD55に結合する、
前記核酸。
[本発明1046]
二重特異性抗体をコードする、本発明1044~1045のいずれかの核酸。
[本発明1047]
cDNAである、本発明1044~1045のいずれかの核酸。
[本発明1048]
本発明1044~1047のいずれかの核酸のうちの一つまたはそれ以上を含むベクター。
[本発明1049]
本発明1048のベクターを含む細胞。
[本発明1050]
CHO細胞である、本発明1049の細胞。
[本発明1051]
本発明1044~1047のいずれかの核酸のうちの一つまたはそれ以上を含む細胞。
[本発明1052]
SEQ ID NO:1と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域(VH)を含む第1のポリペプチド;
SEQ ID NO:2と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む第2の重鎖可変領域(VH)を含む第2のポリペプチド;
SEQ ID NO:3と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域(VL)を含む第3のポリペプチド;
SEQ ID NO:3と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む第2の軽鎖可変領域(VL)を含む第4のポリペプチド
を含む、CD20およびCD3に結合する二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1053]
第1の重鎖可変領域(VH)が、SEQ ID NO:1を含み;
第2の重鎖可変領域(VH)が、SEQ ID NO:2を含み;
第1の軽鎖可変領域(VL)が、SEQ ID NO:3を含み;かつ
第2の軽鎖可変領域(VL)が、SEQ ID NO:3を含む、
本発明1052の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1054]
第1のポリペプチドが、SEQ ID NO:34、35、または36と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み;
第2のポリペプチドが、SEQ ID NO:37、38、または39と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み;
第3のポリペプチドが、SEQ ID NO:40と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み;かつ
第4のポリペプチドが、SEQ ID NO:40と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む、
本発明1052の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1055]
第1のポリペプチドが、SEQ ID NO:35に記載されるアミノ酸配列を含み;かつ
第2のポリペプチドが、SEQ ID NO:38に記載されるアミノ酸配列を含む、
本発明1052の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1056]
SEQ ID NO:4と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域(VH)を含む第1のポリペプチド;
SEQ ID NO:5と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む第2の重鎖可変領域(VH)を含む第2のポリペプチド;
SEQ ID NO:6または7と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域(VL)を含む第3のポリペプチド;
SEQ ID NO:6または7と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む第2の軽鎖可変領域(VL)を含む第4のポリペプチド
を含む、PD-L1およびCD55と結合する二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1057]
第1の重鎖可変領域(VH)が、SEQ ID NO:4を含み;
第2の重鎖可変領域(VH)が、SEQ ID NO:5を含み;
第1の軽鎖可変領域(VL)が、SEQ ID NO:7を含み;かつ
第2の軽鎖可変領域(VL)が、SEQ ID NO:7を含む、
本発明1056の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1058]
第1のポリペプチドが、SEQ ID NO:65と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み;
第2のポリペプチドが、SEQ ID NO:66と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み;
第3のポリペプチドが、SEQ ID NO:67または68と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み;ならびに
第4のポリペプチドが、SEQ ID NO:67または68と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む、
本発明1056の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1059]
第1のポリペプチドが、SEQ ID NO:65に記載されるアミノ酸配列を含み;
第2のポリペプチドが、SEQ ID NO:66に記載されるアミノ酸配列を含み;
第3のポリペプチドが、SEQ ID NO:68に記載されるアミノ酸配列を含み;かつ
第4のポリペプチドが、SEQ ID NO:68に記載されるアミノ酸配列を含む、
本発明1056の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
[本発明1060]
治療薬に共有結合した、本発明1001~1019、1032~1043、および1052~1059のいずれかの抗体またはその抗原結合断片を含む、抗体-薬物複合体。
[本発明1061]
前記治療薬が細胞傷害剤または細胞増殖抑制剤である、本発明1060の抗体-薬物複合体。
[本発明1062]
がんを患っている対象を治療する方法であって、本発明1001~1019、1032~1043、および1052~1059のいずれかの抗体もしくはその抗原結合断片、または本発明1060もしくは1061の抗体-薬物複合体を含む組成物の治療的に有効な量を該対象へ投与することを含む、前記方法。
[本発明1063]
前記対象が固形腫瘍を有する、本発明1062の方法。
[本発明1064]
前記がんが、黒色腫、膵臓癌、または血液悪性腫瘍である、本発明1062の方法。
[本発明1065]
前記がんが、非ホジキンリンパ腫、リンパ腫、または慢性リンパ性白血病である、本発明1062の方法。
[本発明1066]
腫瘍成長の速度を低下させる方法であって、対象に対して、本発明1001~1019、1032~1043、および1052~1059のいずれかの抗体もしくはその抗原結合断片、または本発明1060もしくは1061の抗体-薬物複合体を含む組成物の有効量に、腫瘍細胞を接触させることを含む、前記方法。
[本発明1067]
腫瘍細胞を殺滅する方法であって、対象に対して、本発明1001~1019、1032~1043、および1052~1059のいずれかの抗体もしくはその抗原結合断片、または本発明1060もしくは1061の抗体-薬物複合体を含む組成物の有効量に、腫瘍細胞を接触させることを含む、前記方法。
[本発明1068]
本発明1001~1019、1032~1043、および1052~1059のいずれかの抗体またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
[本発明1069]
本発明1060または1061の抗体-薬物複合体と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明確なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】
図1Aは、実施例1で再設計された抗体AがCD20を発現するRaji細胞に結合することを示すグラフである。
図1Bは、実施例1で再設計された抗体BがCD3を発現するJukart細胞に結合することを示すグラフである。
【
図2A】CD20+ Raji細胞結合アッセイの結果。
【
図2B】CD3+ Jurkat細胞結合アッセイの結果。
【
図3】T細胞活性化アッセイ(図中のCD20/3はCD20/CD3 BsMabである。A10およびA11は異なる溶出画分を示す。アイソタイプはIgG1抗体であり、対照として使用された)。
【
図5】末梢血単核細胞(PBMC)の存在下における抗体媒介CD20+ Raji細胞殺滅。
【
図6】T細胞がIL-2およびCD3/CD28ビーズにより4日間活性化された、PBMCの存在下における抗体媒介CD20+ Raji細胞殺滅。
【
図7】T細胞がIL-2およびCD3/CD28ビーズにより7日間活性化された、PBMCの存在下における抗体媒介CD20+ Raji細胞殺滅。
【
図8】PBMCの存在下における抗体媒介CD3+ Jurkat細胞殺滅。
【
図9】T細胞がIL-2およびCD3/CD28ビーズにより4日間活性化された、PBMCの存在下における抗体媒介CD3+ Jurkat細胞殺滅。
【
図10】T細胞がIL-2およびCD3/CD28ビーズにより7日間活性化された、PBMCの存在下における抗体媒介CD3+ Jurkat細胞殺滅。
【
図11】抗体により誘発されるPBMC内の活性化T細胞の枯渇。
【
図12】抗体により誘発されるPBMC内の不活性化T細胞の枯渇。
【
図13】FACSにより測定された、補体依存性細胞傷害(CDC)により媒介されるRaji細胞溶解。
【
図14】カルセイン放出により判定された、CDCにより媒介されるRaji細胞溶解。
【
図15】FACSにより測定された、CDCにより媒介されるJurkat細胞溶解(A11およびB3は異なる溶出画分である)。
【
図16】ヒト補体濃縮血清の存在下におけるPBMC内のT細胞の枯渇。
【
図17】3人の異なるドナーに由来するPBMCに基づくT細胞活性化により媒介される、リツキシマブ耐性細胞の溶解。
【
図18】3人の異なるドナーに由来するPBMCに基づくT細胞活性化により媒介される、リツキシマブ耐性細胞の溶解。
【
図19】3人の異なるドナーに由来するPBMCに基づくT細胞活性化により媒介される、リツキシマブ耐性細胞の溶解。
【
図21A】リン酸塩緩衡食塩水PBS(G1)、CD20/CD3 BsMab(G2、「BIS」)またはリツキシマブ(G3、「RTX」)を注射した後の各グループのマウスの平均体重。
【
図21B】リン酸塩緩衡食塩水PBS(G1)、CD20/CD3 BsMab(G2、「BIS」)またはリツキシマブ(G3、「RTX」)を注射した後の各グループのルシフェラーゼ標識Raji 細胞の平均イメージング強度。
【
図22】
図22A:精製CD20/CD3二重特異性抗体サンプルについての還元キャピラリー電気泳動ドデシル硫酸ナトリウム(Re-CE-SDS)の結果。
図22B:精製CD20/CD3二重特異性抗体サンプルについての非還元CE(Non-Re-CE-SDS)の結果。
【
図23】
図23A:アベルマブ(PD-L1 wt)ならびにPD-L1用のVHa(SEQ ID NO:4)および共通VL(SEQ ID NO:6)を含む設計されたPD-L1単一二量体IgG抗体(PD-L1 V1)についての結合親和性。
図23B:親の抗CD55抗体(CD55 wt)ならびにCD55用のVHb(SEQ ID NO:5)および共通VL(SEQ ID NO:6)を含む設計されたCD55単一二量体IgG抗体(CD55 V1)についての結合親和性。
【
図24】BsMab v1用の共通軽鎖(SEQ ID NO:67)およびBsMab v2用の共通軽鎖(SEQ ID NO:68)の整列。
【
図25】
図25A:アベルマブ(PD-L1 wt)ならびにPD-L1用のVHa(SEQ ID NO:4)および共通VL v2(SEQ ID NO:7)を含む再設計されたPD-L1単一二量体IgG抗体(PD-L1 V2)についての結合親和性。
図25B:親の抗CD55抗体(CD55 wt)ならびにCD55用のVHb(SEQ ID NO:5)および共通VL v2(SEQ ID NO:7)を含む再設計されたCD55単一二量体IgG抗体(CD55 V2)についての結合親和性。
【
図26A】MDA231細胞における抗体媒介CDC。
【
図26B】MDA231細胞における抗体媒介CDC。
【
図27A】MDA231細胞を用いた抗体インターナリゼーションのアッセイの結果。
【
図27B】SIHA細胞を用いた抗体インターナリゼーションのアッセイの結果。
【
図28】
図28は、CD3およびがん抗原(例:がん特異抗原)に結合する二重特異性抗体がどのように腫瘍細胞を認識し殺滅するかを示す模式図である。
【
図29】
図29は、がん特異抗原およびがん関連抗原に結合する二重特異性抗体がどのように腫瘍細胞を認識し殺滅するかを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
詳細な説明
二重特異性抗体またはその抗原結合断片は、異なる2種類の抗原に同時に結合できる人工タンパク質である。いくつかの実施形態で、二重特異性抗体またはその抗原結合断片は2つのアーム(アームAおよびB)を持つことができる。各アームは1つの重鎖可変領域および1つの軽鎖可変領域を持っている。
【0072】
二重特異性抗体またはその抗原結合断片はIgG様および非IgG様であり得る。IgG様の二重特異性抗体は2つのFabアームおよび1つのFc領域を持つことができ、2つのFabアームは異なる抗原に結合する。非IgG様の二重特異性抗体または抗原結合断片は、例えば化学的に結び付いたFab(例えば、2つのFab領域は化学的に結び付いている)および一本鎖可変断片(scFV)であり得る。例えば、scFVは2つの重鎖可変領域および2つの軽鎖可変領域を持つことができる。
【0073】
不均衡な二重特異性抗体またはその抗原結合断片では、2つのアーム(アーム:AおよびB)または2つの抗原結合領域(抗原結合領域:AおよびB)はそれぞれのターゲット抗原に異なる親和性で結合することができる。結合親和性は結合定数(Ka)によって以下のように表すことができる。
Ka = [抗体-抗原] / [抗体] [抗原]
【0074】
高親和性の抗体は通常107 M-1よりも高いKaを有する。1つのアームまたは1つの抗原結合領域に対するKaは、105 M-1、106 M-1、107 M-1、108 M-1、109 M-1、1010 M-1、1011 M-1または1012 M-1よりも高いものであり得る。いくつかの実施形態では、Kaは105 M-1、106 M-1、107 M-1、108 M-1、109 M-1、1010 M-1、1011 M-1または1012 M-1よりも低いものであり得る。
【0075】
第1のアームまたは第1の抗原結合領域の結合親和性(A)は、第2のアームまたは第2の抗原結合領域の結合親和性(B)よりも高いものであり得る。不均衡な親和性のある二重特異性抗体は様々な利点を持ち得る。例えば、不均衡な親和性のある二重特異性抗体はがん細胞上のがん特異抗原およびT細胞上のCD3を標的とするのに利用することができる。このケースではがん特異抗原に対する高い親和性は、T細胞によるがん細胞のより良好な捕捉をもたらすことができ、CD3に対する低い親和性はCD3によるT細胞のシグナルの誘発を回避することができる(
図28)。より多価の様式で二重特異性抗体が標的がん細胞にT細胞に提示される時のみ、T細胞は活性化され、標的がん細胞を殺滅することができる。さらに、不均衡な親和性を有する二重特異性抗体は、がん特異抗原およびがん関連抗原を標的とするのに利用することもできる(
図29)。このケースでは、二重特異性抗体は低いレベルのがん関連抗原を発現する非がん細胞に弱く結合するだけであるが、がん特異抗原および高いレベルのがん関連抗原の両方を発現するがん細胞には強く結合する。
【0076】
不均衡な親和性がある二重特異性抗体について、第1のアームまたは第1の抗原結合領域のKa(A)は、107 M-1、108 M-1、109 M-1、1010 M-1、1011 M-1または1012 M-1よりも高いものであり得る。いくつかの実施形態では、第1のアームまたは第1の抗原結合領域のKa(A)は、第2のアームまたは第2の抗原結合領域のKa(B)よりも10倍、100倍、1000倍、10000倍、または100000倍、高いものであり得る。したがって、いくつかの実施形態では、第2のアームまたは第2の抗原結合領域のKa(B)は、105 M-1、106 M-1、107 M-1、108 M-1または109 M-1よりも低いものであり得る。いくつかの実施形態では、第2のアームまたは第2の抗原結合領域のKa(B)は、依然として妥当な親和性(例:104 M-1、105 M-1または106 M-1よりも高い)で標的抗原に特異的に結合する。
【0077】
結合親和性は解離定数(Kd)によって表すこともできる。
Kd = [抗体] [抗原] / [抗体-抗原]
【0078】
Kdは、10-5 M、10-6 M、10-7 M、10-8 M、10-9 M、10-10 M、10-11 Mまたは10-12 Mよりも低いものであり得る。いくつかの実施形態では、Kdは10-5 M、10-6 M、10-7 M、10-8 M、10-9 M、10-10 M、10-11 Mまたは10-12 Mよりも高いものであり得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、第1のアームまたは第1の抗原結合領域の結合親和性(A)は、第2のアームまたは第2の抗原結合領域の結合親和性(B)よりも高いものであり得る。例えば、第2のアームまたは第2の抗原結合領域のKd(B)は、第1のアームまたは第1の抗原結合領域のKd(A)よりも10倍、100倍、1000倍、10000倍または100000倍、高い(したがって、親和性がより低い)ものであり得る。したがって、いくつかの実施形態では、第1のアームまたは第1の抗原結合領域のKd(A)は、10-7 M、10-8 M、10-9 M、10-10 M、10-11 Mまたは10-12 Mよりも低いものであり得る。そして、第2のアームまたは第2の抗原結合領域のKd(B)は、10-5 M、10-6 M、10-7 M、10-8 Mまたは10-9 Mよりも高いものであり得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体またはその抗原結合断片は、2つの軽鎖および2つの重鎖を含む。2つの軽鎖にはそれぞれ、1つの軽鎖可変領域(VL)および1つの軽鎖定常領域(CL)がある。2つの重鎖にはそれぞれ、1つの重鎖可変領域(VH)および3つの重鎖定常領域(CH1、CH2、CH3)がある。いくつかの実施形態では、アームAおよびアームBの2つの軽鎖は同じである。したがって、2つの軽鎖のVL内にあるCDRは同じになり得る。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体またはその抗原結合断片内の2つの重鎖は異なっている。したがって、2つの重鎖のVH内にあるCDRは異なっている。
【0081】
二重特異性抗体を作製する際に同じ重鎖が互いに結合しないことを確実にするには、様々な方法を利用することができる。例えば、「ノブ・イントゥ・ホール」法は、大きな側鎖を有するアミノ酸の突然変異を一方の重鎖に導入し、小さな側鎖を有するアミノ酸の突然変異をもう一方の重鎖に導入する。したがって、同じ重鎖は互いに結合しにくく、2つの異なる重鎖は互いに結合する可能性が高い。「ノブ・イントゥ・ホール」法は、例えばRidgway、John BB、Leonard G. Presta、Paul Carter、「‘Knobs-into-holes’ engineering of antibody CH3 domains for heavy chain heterodimerization.」 Protein Engineering, Design and Selection」9.7(1996)において説明されており、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【0082】
T細胞特異的抗原およびがん抗原に結合する不均衡な二重特異性抗体
T細胞を動員および活性化することのできるT細胞特異的抗原(例:CD3、CD4またはCD8)結合アームを持つ二重特異性抗体(BsAbまたはBsMab)は、がん治療のために広く研究されてきた。しかし、このような二重特異性抗体の多くのエフェクター機能は、安全の懸念という理由で排除されている。ADCCおよびCDC等の抗体のエフェクター機能はがん細胞の殺滅において重要な役割を果たすことが示されているため、抗体のエフェクター機能を「安全に」維持することで抗体のがん殺滅の機能が改善するとともに、治療用抗体の作用メカニズムが拡大する。エフェクター機能を「安全に」維持し、このような二重特異性抗体の応用を拡大するために、コンピューターによる抗体設計に基づき、不均衡な二重特異性抗体技術のプラットフォームが開発されてきている。
【0083】
この設計では、第1の抗原結合領域ががん特異抗原を標的とし、第2の抗原結合領域はT細胞特異的抗原(例:CD3、CD4またはCD8)を標的として、がん特異抗原でがんを攻撃するためのT細胞を形成する(
図28)。
【0084】
本明細書で使用されている通り、「がん特異抗原」という用語は、がん細胞の表面に特異的に発現する抗原を指している。これらの抗原は腫瘍細胞を識別するのに使用することができる。正常な細胞はがん特異抗原を発現することは滅多にない。いくつかの典型的ながん特異抗原は、例えばCD20、PSA、PSCA、PD-L1、Her2、Her3、Her1、β-カテニン、CD19、CEACAM3、EGFR、c-Met、EPCAM、PSMA、CD40、MUC1およびIGF1R等を含む。PSAは主に前立腺がん細胞に発現し、Her2は主に乳がん細胞に発現する。
【0085】
CD20およびCD3に結合する二重特異性抗体は本明細書に記載されている。この二重特異性抗体は、CD20陽性非ホジキンリンパ腫(NHL)等の複数のCD20陽性がんを標的にするのに適用することができ、したがって、対象の非ホジキンリンパ腫の治療に使用することができる。二重特異性抗体は、治療用抗体の標的CD20単独と比較して、がんを治療する働きの異なるメカニズムに適合するため、CD20陽性がんの補完治療として、特に現在のCD20療法(リツキシマブ耐性NHL等)にうまく反応しないCD20陽性がんに適用することができる。
【0086】
CD3に対して高い親和性を有する抗体はT細胞のシグナルを誘発し、望ましくない免疫反応を引き起こす可能性がある。したがって、抗体のエフェクター機能を「安全に」維持しながらCD3によるT細胞のシグナル誘発のリスクを低減するには、CD3に対する低い親和性(例:Kaは105 M-1、106 M-1または107 M-1未満であり得る)が必要である。本明細書で使用されるように、「抗体のエフェクター機能を安全に維持する」という用語は抗体が正常細胞(例:非がん細胞)にADCCまたはCDCを誘導しないという意味である。複数の二重特異性抗体が標的がん細胞(例:クラスター内)上に提示され、がん細胞とT細胞間の相互作用の橋渡しをする時は、これらの二重特異性抗体は多価の形状でCD3を介してT細胞のシグナルを誘発することができ、活性化されたT細胞が標的がん細胞を殺滅する。
【0087】
したがって、本明細書では2つの重鎖可変領域および2つの軽鎖可変領域を含む二重特異性抗体またはその抗原結合断片を開示しており、その第1の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:1と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である配列を含み、第2の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:2と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である配列を含む。また、第1および第2の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:3と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である配列を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、CD20に結合するためのCDR配列は、重鎖可変ドメインのCDR、SEQ ID NO:16~18、および軽鎖可変ドメインのCDR、SEQ ID NO:28~30(Kabat番号付けで定義)を含む。Chothia番号付けでは、重鎖可変ドメインのCDR配列はSEQ ID NO:19~21に示され、軽鎖可変ドメインのCDRはSEQ ID NO:31~33に示されている。
【0089】
いくつかの実施形態では、CD3に結合するためのCDRの配列は、重鎖可変ドメインのCDR、SEQ ID NO:22~24、および軽鎖可変ドメインのCDR、SEQ ID NO:28~30(Kabat番号付けで定義)を含む。Chothia番号付けでは、重鎖可変ドメインのCDR配列はSEQ ID NO:25~27に示され、軽鎖可変ドメインのCDRはSEQ ID NO:31~33に示されている。
【0090】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO:34、35または36と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である第1の重鎖アミノ酸配列;SEQ ID NO:37、38または39と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である第2の重鎖アミノ酸配列;SEQ ID NO:40と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である第1の軽鎖アミノ酸配列;およびSEQ ID NO:40と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である第2の軽鎖アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の軽鎖アミノ酸配列および第2の軽鎖アミノ酸配列は同一である。
【0091】
がん特異抗原およびがん関連抗原に結合する不均衡な二重特異性抗体
本明細書では、がん特異抗原を標的とする第1の抗原結合領域、およびがん関連抗原を標的とする第2の抗原結合領域を持つ不均衡な二重特異性抗体も開示している。
【0092】
本明細書で使用されている通り、「がん関連抗原」という用語は、がん細胞上に比較的高レベルで発現するが、正常細胞上でも比較的低レベルで発現する場合のある抗原を指している。CD55、CD59、CD46、およびN-カドヘリン、VE-カドヘリン、NCAM、Mel-CAM、ICAM、NrCAM、VCAM1、ALCAM、MCAM等の様々な接着分子は、がん関連抗原である。がん特異抗原およびがん関連抗原の両方ががん細胞の表面上に発現する一方、がん特異抗原とがん関連抗原の違いは、がん関連抗原は正常細胞にも発現するが、がん細胞上のレベルに比べて比較的低いレベルで発現するということである。一方、がん特異抗原は正常細胞に発現することは滅多になく、正常細胞に発現しても、その量は極めて低い。がん特異抗原を標的とする抗体は通常、正常細胞上に抗体依存性細胞傷害(ADCC)または補体依存性細胞傷害(CDC)を誘発することはない。対照的に、高い親和性でがん関連細胞を標的とする抗体は、正常細胞に細胞傷害効果を引き起こす場合がある。したがって、二重特異性抗体が比較的低い親和性でがん関連抗原に結合することが重要である(
図29)。
【0093】
PD-L1およびCD55に結合する二重特異性抗体が実施例に記載されている。この抗体は、ADCCまたはCDCを通して、ならびにPD-L1/PD1の相互作用をブロックしてT細胞依存性の免疫応答を活性化させることおよびCDCに対するCD55の抑制を低下させることを通して、PD-L1およびCD55陽性がんを有する対象者を治療するために使用することができる。さらに、がん細胞がPD-L1抗体に耐性を持つようになる場合があるため、第2のアームとがん細胞上のCD55との間の結合は、付加的な治療効果を提供することができる。
【0094】
したがって、本開示は、2つの重鎖可変領域および2つの軽鎖可変領域を含む二重特異性抗体またはその抗原結合断片について開示しており、その第1の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:4と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である配列を含み、第2の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:5と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である配列を含み、かつ第1および第2の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:6または7と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である配列を含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、PD-L1に結合するためのCDR配列は、重鎖可変ドメインのCDR(SEQ ID NO:41~43)、および軽鎖可変ドメインのCDR(SEQ ID NO:53~55または59~61)(Kabat番号付けで定義)を含む。Chothia番号付けでは、重鎖可変ドメインのCDR配列はSEQ ID NO:44~46に示され、軽鎖可変ドメインのCDRはSEQ ID NO:56~58または62~64に示されている。
【0096】
いくつかの実施形態では、CD55に結合するためのCDR配列は、重鎖可変ドメインのCDR、SEQ ID NO:47~49、および軽鎖可変ドメインのCDR、SEQ ID NO:53~55または59~61(Kabat番号付けで定義)を含む。Chothia番号付けでは、重鎖可変ドメインのCDR配列はSEQ ID NO:50~52に示され、軽鎖可変ドメインのCDRはSEQ ID NO:56~58または62~64に示されている。
【0097】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO:65と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である第1の重鎖アミノ酸配列;SEQ ID NO:66と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である第2の重鎖アミノ酸配列;SEQ ID NO:67または68と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である第1の軽鎖アミノ酸配列;およびSEQ ID NO:67または68と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である第2の軽鎖アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の軽鎖アミノ酸配列および第2の軽鎖アミノ酸配列は同一である。
【0098】
不均衡な二重特異性抗体もしくは抗原、またはその抗原結合断片を作製する
二重特異性抗体もしくは抗原、またはその抗原結合断片は、以下の方法で作製することができる:
(1) 2つの標的抗原を選択し、かつ第1の抗原に結合する抗体(抗体A)の重鎖可変領域の配列(VHa)および軽鎖可変領域の配列(VLa)を決定し、かつ第2の抗原に結合する抗体(抗体B)の重鎖可変領域の配列(VHb)および軽鎖可変領域の配列(VLb)を決定する。
(2) VLaおよびVLbを整列させ、配列相同性が80%を超える場合はコンピューターのモデリングツール(マサチューセッツ州CambridgeにあるSchordingerm社のBioLuminate(バイオルミネート)等)を利用して共通 VLを設計する。設計プロセス中はVLaの親和性を維持するように努めるが、ある程度VLbの親和性を犠牲にする可能性がある。共通VLはVLaまたはVLbそのものであることができ、またはその配列がVLaおよびVLbに対して高い相同性を共有する新しいVLcであることができる。VLaおよびVLbの3次元構造は、例えば構造モデル化または結晶構造といったものから決定することができる。このプロセスはVLaの配列で開始することができる。3次元構造に基づいている場合、軽鎖内のアミノ酸は第2の抗原との結合に重要であると識別され(例えばVHbと組み合わせる場合)、第1の抗原との結合には関与せず(例えばVHaと組み合わせる場合)、VLa内のアミノ酸はVLb内の対応するアミノ酸に変更することができる。このプロセスを数回くり返した後、共通VLcを得ることができる。
(3) VLaおよびVLbの相同性が80%に満たない場合は、既存のヒトナイーブScFVライブラリのVLを抗体AのVLと置き換えることによって、ヒトScFVまたはFabファージライブラリを作製し、次いでエラープローンPCRを用いて20%未満のヌクレオチド変異をVL内に誘発し、抗体Bの抗原に対してパニングして、そのVLとしてVLaまたはその相同体(80%を超える相同性)を有する新しい抗体B’を得る。VLがVLaでなく、VLa相同体(例:80%を超える相同性を有する)である場合、手順(2)をくり返し、共通VLを設計する。
(4) AとBの生化学的および生物物理学的特性(3次元等電点(PI)等)の差異を増加させるために、コンピューターのモデリングツールを用いてVHaおよびVHbの配列をそれぞれ再設計する。このプロセスの間、Aの親和性は減少することができず、Bの親和性はある程度まで減少することができる。
(5) 緩衝系を作り、不均衡な二重特異性抗体を精製する。
【0099】
ペプチドの等電点(PI)は、統計的平均で特定の分子が正味の電荷を持たないpHである。ペプチドを構成するアミノ酸は陽性、陰性、中性または極性の性質であり得、組み合わさるとタンパク質にその全体的な電荷を与える。しかし、タンパク質内の一定のアミノ酸はタンパク質内に埋まっており、それを取り囲む溶液と相互作用しない。3次元PIはタンパク質の3次元構造を考慮に入れ、正しく折り畳まれた場合にタンパク質が統計的平均で正味の電荷を持たないpH値の、より優れた推計を提供する。(本発明者らは公表文献から勾配pH緩衝材を使用したため、緩衝材は本発明者らの発明ではない。しかし、なお浄化プロセスを最適化する必要がある。)
【0100】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体もしくは抗原、またはその抗原結合断片は、以下の方法で作製することもできる:
(a) 第1の抗原および第2の抗原を選択し、かつ第1の抗原に結合する第1の抗体またはその抗原結合断片および第2の抗原に結合する第2の抗体またはその抗原結合断片を特定する段階であって、該第1の抗体またはその抗原結合断片が、第1の重鎖可変領域(VHa)および第1の軽鎖可変領域(VLa)を含み、かつ該第2の抗体またはその抗原結合断片が、第2の重鎖可変領域(VHb)および第2の軽鎖可変領域(VLb)を含む、前記段階;
(b) VHa、VLaおよびVLbのアミノ酸配列を決定する段階;
(c) VLaおよびVLbのアミノ酸配列を整列させ、VLaとVLbとの間の配列相同性が80%未満であると判定する段階;
(d) ファージディスプレイ抗体ライブラリ内の全ての軽鎖可変領域をVLaと置き換え、第2の抗原に対してパニングして、第3の重鎖可変領域(VHc)を得る段階;
(e) VHaおよびVHcの配列を再設計し、それによって、それぞれがVHa’を含む2つのポリペプチドおよびそれぞれがVLaを含む2つのポリペプチドを含む第1のタンパク質と、それぞれがVHc’を含む2つのポリペプチドおよびそれぞれがVLaを含む2つのポリペプチドを含む第2のタンパク質との間の生化学的または生物物理学的特性の差異を増加させるVHa’およびVHc’を得る段階;ならびに
(f) 2つの軽鎖可変領域および2つの重鎖可変領域を有する二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する段階であって、該2つの軽鎖可変領域の各々がVLaを含み、かつ該2つの重鎖可変領域がそれぞれVHa'およびVHc'を含む、前記段階。
【0101】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体もしくは抗原、またはその抗原結合断片は以下の方法で作製することもできる:
(a) 第1の抗原および第2の抗原を選択し、かつ第1の抗原に結合する第1の抗体またはその抗原結合断片および第2の抗原に結合する第2の抗体またはその抗原結合断片を特定する段階であって、該第1の抗体またはその抗原結合断片が、第1の重鎖可変領域(VHa)および第1の軽鎖可変領域(VLa)を含み、かつ該第2の抗体またはその抗原結合断片が、第2の重鎖可変領域(VHb)および第2の軽鎖可変領域(VLb)を含む、前記段階;
(b) VHa、VLa、VHbおよびVLbのアミノ酸配列を決定する段階;
(c) VLaおよびVLbのアミノ酸配列を整列させ、VLaとVLbとの間の配列相同性が80%未満であると判定する段階;
(d) ファージディスプレイ抗体ライブラリ内の全ての軽鎖可変領域を複数の軽鎖可変領域と置き換える段階であって、該軽鎖可変領域が、VLaまたはVLbと少なくとも80%、85%、90%、95%、または99%同一である、前記段階;
(e) 第1および/または第2の抗原(例:第2の抗原)に対してパニングする段階;
(f) 共通の軽鎖可変領域(VLc)、および第3の重鎖可変領域(VHc)を選択する段階であって、VHa-VLcが、所望の親和性で第1の抗原に結合し、かつVHc-VLcが、所望の親和性で第2の抗原に結合する、前記段階;
(g) VHaおよびVHcの配列を再設計し、それによって、それぞれがVHa’を含む2つのポリペプチドおよびそれぞれがVLcを含む2つのポリペプチドを含む第1のタンパク質と、それぞれがVHc’を含む2つのポリペプチドおよびそれぞれがVLcを含む2つのポリペプチドを含む第2のタンパク質との間の生化学的または生物物理学的特性の差異を増加させるVHa’およびVHc’を得る段階;ならびに
(h) 2つの軽鎖可変領域および2つの重鎖可変領域を有する二重特異性抗体またはその抗原結合断片を作製する段階であって、該2つの軽鎖可変領域の各々がVLcを含み、かつ該2つの重鎖可変領域がそれぞれVHa'およびVHc'を含む、前記段階。
【0102】
いくつかの実施形態では、VHa-VLcが所望の親和性で第1の抗原に結合できない場合、追加の手順を行うことができる。例えば、VLcがVLaと少なくとも80%同一である場合、新しい共通の軽鎖を設計することができる。いくつかの実施形態では、プロセスはVLaで始まり、本明細書に記載の方法に基づいて(例:VLaおよびVLcの3次元構造に基づいて)、アミノ酸をVLc内のアミノ酸に変異させることができる。
【0103】
いくつかの実施形態では、共通の軽鎖可変領域の設計は、VLaおよびVLbを整列させ、同じKabat位置でのVLaとVLbとの間の異なる残基を研究することを伴う。VLb上の異なる残基がCDR、界面残基、正準的な残基またはB Fv構造上のバーニアゾーン残基に接触しない場合、VLb上の残基はVLa上の同じKabat位置での残基に変異する。そうでなければ、VLb上の残基は保たれる。
【0104】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域の再設計は、BioLuminate(バイオルミネート)を用いてFv AおよびFv Bの3次元PIを計算し、非CDR、非正準、非界面および非バーニアゾーンの残基を変異させて、高い3次元PIを持つFvをより高く、かつ低い3次元PIを持つFvをより低くすることを伴う。
【0105】
BioLuminate(バイオルミネート)の使用法は、例えば参照用にBioLuminate(バイオルミネート)のユーザーガイドに記載されており、参照することにより全体が本明細書に組み込まれている。
【0106】
抗体および抗原結合断片
本開示は、本開示において記載される相補性決定領域(CDR)、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、重鎖、または軽鎖を含む抗体およびその抗原結合断片を提供する。いくつかの実施形態では、この抗体およびその抗原結合断片は、不均衡な二重特異性抗体およびその抗原結合断片である。
【0107】
一般的に、抗体(免疫グロブリンとも呼ばれる)は、2つのクラスのポリペプチド鎖である、軽鎖および重鎖から構成される。本開示での非限定的な抗体は、完全なままの、2つの重鎖および2つの軽鎖より成る4つの免疫グロブリン鎖抗体であることができる。この抗体の重鎖は、IgM、IgG、IgE、IgA、もしくはIgDを含むアイソタイプ、またはIgG1、IgG2、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgG4、IgE1、IgE2、等を含むサブアイソタイプであることができる。前記軽鎖は、κ軽鎖またはλ軽鎖であり得る。抗体は、軽鎖の2つの同一のコピーおよび/または重鎖の2つの同一のコピーから構成されることができ、それぞれが、1つの可変ドメイン(または可変領域、VH)、および複数の定常ドメイン(または定常領域)を含み、互いに、その定常ドメイン内のジスルフィド結合を介して結合して、抗体の「ステム」を形成する。軽鎖は、それぞれが1つの可変ドメイン(または可変領域、VL)、および1つの定常ドメイン(または定常領域)を含み、それぞれが1つの重鎖にジスルフィド結合を介して結合している。このそれぞれの軽鎖の可変領域は、それが結合する重鎖の可変領域と整列している。これらの軽鎖および重鎖の両方の可変領域は、より保存されたフレームワーク領域(FR)に挟まれた3つの超可変領域を含む。
【0108】
これらの相補性決定領域(CDR)として知られる、超可変領域は、抗体の主要な抗原結合表面を含むループを形成する。この4つのフレームワーク領域は、ほとんどのβ-シートコンフォーメーションを受け入れ、および前記CDRは、このβ-シート構造と結合するループ、またはある場合にはその一部分を形成するループを形成する。それぞれの鎖のCDRは、フレームワーク領域および他の鎖のCDRにより、ごく近接して保持され、抗原結合領域の形成に貢献する。
【0109】
抗体のアミノ酸配列を解析することにより、その抗体のCDR領域を同定するための方法は良く知られており、および一連のCDRの定義が通常用いられている。Kabat定義は、配列の可変性に基づき、およびChothia定義は、構造的なループ領域の位置に基づく。これらの方法および定義は、例えば、Martin, “Protein sequence and structure analysis of antibody variable domains,” Antibody engineering, Springer Berlin Heidelberg, 2001. 422-439; Abhinandan, et al. “Analysis and improvements to Kabat and structurally correct numbering of antibody variable domains,” Molecular immunology 45.14(2008):3832-3839; Wu, T.T. and Kabat, E.A.(1970) J. Exp. Med. 132:211-250;Martin et al.,MethodsEnzymol. 203:121-53(1991); Morea et al., Biophys Chem. 68(1-3):9-16(Oct. 1997); Morea et al., J Mol Biol. 275(2):269-94(Jan .1998); Chothia et al., Nature 342(6252):877-83(Dec. 1989); Ponomarenko and Bourne, BMC Structural Biology 7:64(2007);に記載されており、それぞれの引用文献の全体が、引用により本出願に含まれる。本開示においては、特段に示されない限り、Kabatナンバリングがデフォルトとして用いられる。
【0110】
CDRは、抗原のエピトープを認識するために重要である。本明細書において用いられるものとして、「エピトープ」とは、抗体の抗原結合ドメインにより特異的に結合される能力を有する標的分子の最小部分である。エピトープの最小のサイズは、おおむね、3、4、5、6、または7アミノ酸であるが、エピトープは抗原の二次および三次構造に基づいた三次元のコンフィグレーションに基づくことができるために、抗原の一次構造中において、これらのアミノ酸は、連続的な直線的配列にある必要はない。
【0111】
いくつかの実施形態では、これらの抗体は、完全なままの免疫グロブリン分子(例えば、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgM、IgD、IgE、IgA)であることができる。IgGサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)高度に保存されており、それらの定常領域、とくにそれらのヒンジおよび上部CH2ドメインにおいて異なる。IgGサブクラスの配列および差異は、当技術分野では周知であり、および例えば、Vidarsson, et al, “IgG subclasses and allotypes:from structure to effector functions.” Frontiers in immunology 5(2014); Irani, et al. “Molecular properties of human IgG subclasses and their implications for designing therapeutic monoclonal antibodies against infectious diseases.” Molecular immunology 67.2(2015):171-182; Shakib, Farouk, ed. The human IgG subclasses:molecular analysis of structure, function and regulation. Elsevier, 2016;に記載されており、それぞれの引用文献の全体が、引用により本出願に含まれる。
【0112】
前記抗体は任意の種から導出された免疫グロブリン分子であってよい(例えば、ヒト、齧歯類、マウス、ラット、ラクダ類)。本明細書において開示される抗体は、それらに限定はされないがポリクローナル、モノクローナル、単一特異性、多特異性抗体、および免疫グロブリン結合ドメインが別のポリペプチドと融合したものを含むキメラ抗体も含む。用語「抗原結合ドメイン」または「抗原結合断片」は、完全なままの抗体の特異的な結合活性を保持する抗体の一部分であり、すなわち、完全なままの抗体の標的分子上のエピトープに特異的に結合する能力を有する抗体の任意の部分である。それらは、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびこれらの断片の変異である。従って、いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、例えば、scFv、aFv、aFd、adAb、二重特異性抗体、二重特異性scFv、ダイアボディ(diabody)、直線状(linear)抗体、単鎖抗体分子、抗体断片から形成される多特異性抗体、および抗体結合ドメインであるかまたは抗体結合ドメインと同種の結合ドメインを含む任意のポリペプチドであってよい。抗原結合ドメインの非限定的な例としては、例えば、完全なままの抗体の重鎖および/または軽鎖CDR、完全なままの抗体の重鎖および/または軽鎖可変領域、完全なままの抗体の、完全な長さの重鎖および/または軽鎖、または完全なままの抗体の重鎖および/または軽鎖のいずれかからのCDRが挙げられる。
【0113】
いくつかの実施形態では、scFVは2つの重鎖可変ドメイン、および2つの軽鎖可変ドメインを有する。いくつかの実施形態では、このscFVは2つの抗原結合領域(抗原結合領域:AおよびB)、およびこれらの2つの抗原結合領域は、それぞれの標的抗原に、異なる親和性で結合できる。
【0114】
いくつかの実施形態では、これらの抗原結合断片は、キメラ抗原受容体(CAR)の一部分を形成できる。いくつかの実施形態では、このキメラ抗原受容体は、CD3-ζ(zeta)膜貫通および内部領域に融合した、本明細書において開示される単鎖可変断片(scFv)の融合物である。いくつかの実施形態では、このキメラ抗原受容体は、様々な共刺激性受容体(例えば、CD28、41BB、ICOS)からの細胞内シグナル伝達ドメインも含む。いくつかの実施形態では、このキメラ抗原受容体は、複数のシグナル伝達ドメイン、例えば、強度が増す順に、CD3z-CD28-41BBまたはCD3z-CD28-OX40を含む。従って、一態様では、本開示は本明細書に記載されるキメラ抗原受容体を発現する細胞(例えば、T細胞)を更に提供する。
【0115】
いくつかの実施形態では、前記抗体またはその抗原結合断片は、2つの異なる抗原または2つの異なるエピトープに結合できる。
【0116】
いくつかの実施形態では、前記抗体またはその抗原結合断片は、表1、表2、表11および表12から選ばれる、1つ、2つ、または3つの重鎖可変領域CDRを含むことができる。いくつかの実施形態では、前記抗体またはその抗原結合断片は、表3、表13および表14から選ばれる、1つ、2つ、または3つの軽鎖可変領域CDRを含むことができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、前記抗体は、
相補性決定領域(CDR)1、2、3を含む重鎖可変領域(VH)であって、CDR1領域が、選択されたVHCDR1のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を含むかまたは該アミノ酸配列からなり、CDR2領域が、選択されたVHCDR2のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を含むかまたは該アミノ酸配列からなり、かつCDR3領域が、選択されたVHCDR3のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を含むかまたは該アミノ酸配列からなる、前記重鎖可変領域(VH)、ならびに
CDR1、2、3を含む軽鎖可変領域(VL)であって、CDR1領域が、選択されたVLCDR1アミノ酸配列と、少なくとも80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を含むかまたは該アミノ酸配列からなり、CDR2領域が、選択されたVLCDR2アミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を含むかまたは該アミノ酸配列からなり、かつCDR3領域が、選択されたVLCDR3のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を含むかまたは該アミノ酸配列からなる、前記軽鎖可変領域(VL)
を有することができる。前記選択されたVHCDR1、2、3のアミノ酸配列は、表1、表2、表11および表12に示されており、かつ前記選択されたVLCDR、1、2、3のアミノ酸配列は、表3、表13および表14に示されている。
【0118】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載された前記抗体または抗原結合断片は、表1、表2、表11および表12から選ばれる1つの、2つの、または3つのCDRを含む重鎖可変ドメイン、および0、1つまたは2つのアミノ酸挿入、削除、または置換を含むことができる。
【0119】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載された前記抗体または抗原結合断片は、表3、表13および表14から選ばれる1つの、2つの、または3つのCDRを含む軽鎖可変ドメイン、および0、1つまたは2つのアミノ酸挿入、削除、または置換を含むことができる。
【0120】
前記挿入、削除、および置換は、CDR配列内部、またはCDR配列の1つまたは両方の末端にあることができる。
【0121】
本開示の抗体および抗体断片の、Fc領域は、所望のエフェクター機能または血中半減期を提供するために改変できる。
【0122】
抗体の多量体化は、抗体の自然的凝集を介して、または化学的もしくは組み換え連結技法を介して達成できる。例えば、精製された抗体製剤(例えば、精製されたIgG1分子)の数パーセントは、抗体ホモダイマーおよび他の高次の抗体多量体を含むタンパク質凝集物を自然発生的に形成する。
【0123】
本明細書に記載された任意の抗体または抗原結合断片は、安定化分子(例えば、対象または溶液中の抗体またはその抗原結合断片の半減期を増加させる分子)と連結し得る。安定化分子非限定的な例には:ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)またはタンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン等の血清アルブミン)を含む。安定化分子との連結は、半減期を増大させるか、またはインビトロでの(例えば、組織培養中で、または薬学的な組成物として保存されたときに)またはインビボ(例えば、ヒト中で)の抗体または抗原結合断片の生物学的活性を延長させる。
【0124】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載された前記抗体または抗原結合断片(例えば、二重特異性抗体)は、治療剤と接合できる。この抗体またはその抗原結合断片を含む抗体薬剤接合体は、共有結合的に、または非共有結合的に治療薬と結合できる。いくつかの実施形態では、前記治療剤は細胞傷害剤または細胞増殖抑制剤(例えば、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エミチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアンスラシン(dihydroxyanthracin)、DM-1およびDM-4などのマイタンシノイド(maytansinoid)、ジオン(dione)、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、エピルビシン、およびシクロホスファミドおよび同族体)である。
【0125】
抗体特性
本明細書に記載される抗体またはその抗原結合断片(例えば、二重特異性抗体)は、免疫反応を増大できる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体またはその抗原結合断片は、免疫反応、T細胞(例えば、CD3+細胞、CD8+および/またはCD4+細胞)の活性または数を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、2倍、3倍、5倍、10倍、または20倍に増やすことができる。
【0126】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体またはその抗原結合断片は、T細胞の活性または数を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、2倍、3倍、5倍、10倍、または20倍減少させることができる。
【0127】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体またはその抗原結合断片は、正常細胞(例えば、非腫瘍細胞)において、または腫瘍細胞の不在下では、免疫反応を誘導しない。
【0128】
いくつかの実施形態では、前記抗体またはその抗原結合断片(例えば、二重特異性抗体)は、PD-L1またはPD-L2に結合できる。従って、本明細書に記載された抗体またはその抗原結合断片は、PD-1およびPD-L1の間の結合および/またはPD-1およびPD-L2間の結合をブロックできる。いくつかの実施形態では、PD-L1またはPD-L2との結合により、この抗体は、PD-1シグナル伝達経路を阻害して、免疫反応を上方調節することができる。従って、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体または抗原結合断片は、PD-1アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、前記抗体またはその抗原結合断片は、PD-1アゴニストである。
【0129】
いくつかの実施形態では、前記抗体またはその抗原結合断片(例えば、二重特異性抗体)は、CD3に結合できる。従って、本明細書に記載された抗体またはその抗原結合断片は、T細胞を標的細胞に対して動員できる。
【0130】
いくつかの実施形態では、前記抗体(またはその抗原結合断片)は、解離速度(koff)が、0.1s-1未満、0.01s-1未満、0.001s-1未満、0.0001s-1未満、または0.00001s-1未満の抗原(例えば、ヒトタンパク質、サルタンパク質、および/またはマウスタンパク質)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、解離速度(koff)は、0.01s-1を超え、0.001s-1を超え、0.0001s-1を超え、0.00001s-1を超えるか、または0.000001s-1を超える。いくつかの実施形態では、動力学的結合速度(kon)は、1x102/Msを超え、1x103/Msを超え、1x104/Msを超え、1x105/Msを超え、または1x106/Msを超える。いくつかの実施形態では、動力学的結合速度(kon)は、1x105/Ms未満であり、1x106/Ms未満であり、または1x107/Ms未満である。
【0131】
親和性は、動力学的速度定数の商から推定できる(Kd=koff/kon)。いくつかの実施形態では、Kdは、1x10-4M未満であり、1x10-5M未満であり、1x10-6M未満であり、1x10-7M未満であり、1x10-8M未満であり、1x10-9M未満であり、または1x10-10M未満である。いくつかの実施形態では、Kdは、50nM、30nM、20nM、15nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、または1nM未満である。いくつかの実施形態では、Kdは、1x10-4Mを超え、1x10-5Mを超え、1x10-6Mを超え、1x10-7Mを超え、1x10-8Mを超え、1x10-9Mを超え、1x10-10Mを超え、1x10-11Mを超え、または1x10-12Mを超える。更に、Kaは、Kdから、式Ka=1/Kdにより算出できる。
【0132】
抗体の抗原に対する親和性を測定する一般的な技法としては、例えば、ELISA、RIA、および表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance:SPR)が挙げられる。
【0133】
いくつかの実施形態では、熱安定性が決定される。本明細書に記載される抗体または抗原結合断片は、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、または95℃を超えるTmを有することができる。
【0134】
IgGは、多重ドメインタンパク質と記載され得るために、融解曲線は、時に、2つの転移、または3つの転移を示し、第一の変性温度、Tm D1、第二の変性温度Tm D2、および随意的に第三の変性温度Tm D3を伴う。
【0135】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体または抗原結合断片は、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、または95℃を超えるTm D1を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体または抗原結合断片は、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、または95℃を超えるTm D2を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体または抗原結合断片は、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、または95℃を超えるTm D3を有する。
【0136】
いくつかの実施形態では、Tm、Tm D1、Tm D2、Tm D3は、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、または95℃未満である。
【0137】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体または抗原結合断片は、温度が、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、または95℃未満では、凝集物の形成を開始しない。いくつかの実施形態では、Tagg266またはTagg473は、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、または95℃未満である。
【0138】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体または抗原結合断片は、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、または9.9を超えるpIを有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体または抗原結合断片は、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、または9.9未満のpIを有する。
【0139】
いくつかの実施形態では、前記抗体は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、または200%を超える、腫瘍成長阻害パーセンテージ(TGI%)を有する。いくつかの実施形態では、前記抗体は、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、または200%未満の腫瘍成長阻害パーセンテージを有する。このTGI%は、例えば、治療開始後、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30日後に決定できるか、または治療開始後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12ヵ月後に決定できる。本明細書において用いられるものとしての、腫瘍成長阻害パーセンテージ(TGI%)は、以下の式を用いて計算される:
TGI(%)=[1-(Ti-T0)/(Vi-V0)]×100
【0140】
Tiはi日目における治療群の平均腫瘍容積である。T0は0日目における治療群の平均腫瘍容積である。Viはi日目における対照群の平均腫瘍容積である。V0は0日目における対照群の平均腫瘍容積である。
【0141】
いくつかの実施形態では、前記抗体または抗原結合断片は、補体依存性細胞傷害(CDC)を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、2倍、3倍、5倍、10倍、または20倍増大できる。
【0142】
いくつかの実施形態では、前記抗体または抗原結合断片は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、2倍、3倍、5倍、10倍、または20倍増大できる。
【0143】
いくつかの実施形態では、前記抗体または抗原結合断片は、インターナリゼーション速度を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、2倍、3倍、5倍、10倍、または20倍増大できる。
【0144】
いくつかの実施形態では、前記抗体または抗原結合断片は、貪食速度(phagocytosis rate)を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、2倍、3倍、5倍、10倍、または20倍増大できる。
【0145】
いくつかの実施形態では、前記抗体または抗原結合断片は、T細胞機能を、例えば、エフェクターT細胞増殖の増加および/またはエフェクターT細胞によるγインターフェロン生産の増加(例えば、前記抗体または抗原結合断片による治療に先立つ増殖および/またはサイトカイン生産に比較することによる)により増強できる。
【0146】
いくつかの実施形態では、前記抗体または抗原結合断片は、CD4+エフェクターT細胞機能を、例えば、CD4+エフェクターT細胞増殖の増加および/またはCD4+エフェクターT細胞によるγインターフェロン生産の増大(例えば、前記抗体または抗原結合断片による治療に先立つ増殖および/またはサイトカイン生産に比較することによる)により増強できる。いくつかの実施形態では、前記サイトカインはγインターフェロンである。いくつかの実施形態では、前記抗体または抗原結合断片は、例えば、抗体または抗原結合断片による治療に先立つ腫瘍内(浸潤)CD4+T細胞数に比較して、腫瘍内(浸潤)CD4+エフェクターT細胞(例えば、CD4+エフェクターT細胞の合計数、または例えば、CD4+細胞のCD45+細胞中でのパーセンテージ)の数を増大する。いくつかの実施形態では、前記抗体または抗原結合断片は、例えば治療前のγインターフェロンを発現する腫瘍内(浸潤)CD4+T細胞の数と比較して、γインターフェロンを発現する腫瘍内(浸潤)CD4+エフェクターT細胞の数(例えば、合計のγインターフェロン発現CD4+細胞、または例えば、合計のCD4+細胞中のγインターフェロン発現CD4+細胞のパーセンテージ)を増大させる。
【0147】
いくつかの実施形態では、前記抗体または抗原結合断片は、例えば、抗体または抗原結合断片による治療に先立つ腫瘍内(浸潤)CD8+T細胞数に比較して、腫瘍内(浸潤)CD8+エフェクターT細胞(例えば、CD8+エフェクターT細胞の合計数、または例えば、CD8+細胞のCD45+細胞中でのパーセンテージ)の数を増大する。いくつかの実施形態では、前記抗体または抗原結合断片は、例えば前記抗体を用いた治療前のγインターフェロンを発現する腫瘍内(浸潤)CD8+T細胞の数と比較して、γインターフェロンを発現する腫瘍内(浸潤)CD8+エフェクターT細胞の数(例えば、合計のCD8+細胞中のγインターフェロン発現CD8+細胞のパーセンテージ)を増大させる。
【0148】
いくつかの実施形態では、前記抗体または抗原結合断片は、記憶T細胞機能を、例えば記憶T細胞増殖の増加、および/またはサイトカイン(例えば、γインターフェロン)生産の記憶細胞による増加により増強する。
【0149】
いくつかの実施形態では、前記抗体または抗原結合断片は機能的Fc領域を有する。いくつかの実施形態では、前記機能的Fc領域のエフェクター機能は抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)である。いくつかの実施形態では、前記機能的Fc領域のエフェクター機能は、貪食である。いくつかの実施形態では、機能的Fc領域のエフェクター機能は、ADCCおよび貪食である。いくつかの実施形態では、前記Fc領域は、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、またはヒトIgG4である。
【0150】
いくつかの実施形態では、前記抗体または抗原結合断片はアポトーシスを誘導できる。
【0151】
いくつかの実施形態では、前記抗体または抗原結合断片は機能的Fc領域を有さない。例えば、前記抗体または抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断片である。
【0152】
いくつかの実施形態では、前記抗体または抗原結合断片はヒト化抗体である。ヒト化のパーセンテージとは、重鎖または軽鎖可変領域配列をInternational Immunogenetics Information System(IMGT)データベース中のヒト抗体 配列と比べたときのパーセンテージ同一性を意味する。いくつかの実施形態では、ヒト化のパーセンテージは、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、または95%を超える。ヒト化のパーセンテージの決定法に関する詳細な記載は、当技術分野で周知であり、および、例えば、Jones,Tim D., et al. “The INNs and outs of antibody nonproprietary names.” MAbs. Vol. 8. No. 1. Taylor & Francis, 2016,に記載されており、その全体が引用により本明細書に組み込まれる。高いヒト化のパーセンテージは、しばしば様々な利点を有し、例えば、ヒトにおいてより安全であり、およびより効果的であり、ヒト対象において、より耐用性が高い可能性があり、および/または副作用発現が少なくなる可能性がある。いくつかの実施形態では、前記抗体または抗原結合断片はヒト抗体である。
【0153】
組み換えベクター
本開示は、本明細書において開示される単離されたポリヌクレオチド(例えば、本明細書において開示されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)を含む組み換えベクター(例えば、発現ベクター)、この組み換えベクターが(すなわち、宿主細胞がポリヌクレオチド、および/またはこのポリヌクレオチドを含むベクターを含むように)導入された宿主細胞、および組み換え技法による、組み換え抗体ポリペプチドまたはその断片の生成も提供する。
【0154】
本明細書において用いられるものとしての、「ベクター」とは、それが宿主細胞に導入されると、目的の1つ以上のポリヌクレオチドを宿主細胞に送達する能力を有する任意の構築物である。「発現ベクター」は、それが宿主細胞中に導入されたときに、1つ以上の目的のポリヌクレオチドを送達して、コードされたポリペプチドとして発現させる能力を有する。従って、発現ベクターにおいては、目的のポリヌクレオチドが、発現ベクトルが導入された宿主細胞中で翻訳されるように、目的のポリヌクレオチドは、ベクター中または宿主細胞のゲノム中で、目的のポリヌクレオチドの挿入部位またはその近傍もしくは側方でプロモーター、エンハンサーおよび/またはポリAテール等の調節要素と機能的に連結することにより、発現のためにベクター中に配置される。
【0155】
ベクターは、宿主細胞中に、例えば、電気泳動、化学的転移(例えば、DEAE-デキストラン)、形質転換、トランスフェクション、ならびに感染および/または導入(例えば、組み換えウイルスによる)等の当技術分野で周知の方法により導入できる。従って、ベクターの非限定的な例は、ウイルスベクター(組み換えウイルスの生成に用いることができる)、裸のDNAまたはRNA、プラスミド、コスミド、ファージベクター、およびカチオン性の縮合剤と結合したDNAまたはRNA発現ベクターを含む。
【0156】
いくつかの実施では、本明細書において開示されるポリヌクレオチド(例えば、本明細書において開示されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)が、ウイルス発現系(例えば、牛痘または他のポックス・ウイルス、レトロウイルス、またはアデノウイルス)を用いて導入され、これらのウイルスは、非病原性(欠損)、複製可能ウイルス、または複製不能ウイルスの使用を含むことができる。後者の場合、ウイルスの増殖は、一般的に相補ウイルスパッケージング細胞中でのみ生じる。適切なシステムは、例えば、Fisher-Hoch et al.,1989,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:317-321; Flexner et al.,1989,Ann. N.Y. Acad Sci. 569:86-103; Flexner et al.,1990,Vaccine,8:17-21;米国特許第4,603,112号、第4,769,330号および第5,017,487号;国際公開公報第89/01973号;米国特許出願第4,777,127号;英国特許出願第2,200,651号;欧州特許出願第0,345,242号;国際公開公報第91/02805号;Berkner-Biotechniques, 6:616-627, 1988; Rosenfeld et al., 1991, Science, 252:431-434; Kolls et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91:215-219; Kass-Eisler et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:11498-11502; Guzman et al., 1993, Circulation, 88:2838-2848;およびGuzman et al., 1993, Cir. Res., 73:1202-1207に記載されている。DNAをそのような発現システムに組み入れる技法は、当技術分野の当業者にはよく知られている。前記DNAは、例えば、Ulmer et al., 1993, Science, 259:1745-1749およびCohen, 1993, Science, 259:1691-1692に記載されるように「裸」であってもよい。裸のDNAの取り込みは、このDNAを、細胞中に効率的に運送される生物分解性のビーズで被覆することにより増大できる。
【0157】
発現のために、前記DNA挿入物は、本明細書において開示される抗体エンコーディングまたはポリペプチドエンコーディングポリヌクレオチドは、いくつか例を挙げれば、ファージλPLプロモーター、E. coli lac、trpおよびtacプロモーター、SV40 初期および後期プロモーター、およびレトロウイルスLTRのプロモーター等の適切なプロモーター(例えば、異種プロモーター)に機能的に連結される。適切なプロモーターは、当業者に周知である。構築物の発現は、更に転写開始、終了部位を含み、および転写された領域中では、翻訳のためのリボソーム結合部位を含む。構築物により成熟した転写産物のコーディング部分は、開始部分に翻訳開始を含み、および適切に配置された終始コドン(UAA、UGA、またはUAG)を翻訳されるポリペプチドの末端に含み得る。
【0158】
示されたように、前記発現ベクターは、少なくとも1つの選択可能なマーカーを含み得る。そのようなマーカーとしては、真核細胞培養物に対するジヒドロ葉酸還元酵素、またはネオマイシン抵抗性、および大腸菌(E. coli)および他の細菌中での培養物中のテトラサイクリンまたはアンピシリン抵抗性遺伝子が挙げられる。適切な宿主の代表的な例は、限定はされないが、大腸菌、ストレプトマイセス属(Streptomyces)等の細菌細胞、およびネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)細胞;酵母細胞等の真菌細胞;Drosophila S2およびSpodoptera Sf9細胞等の昆虫細胞;CHO、COS、Bowes黒色腫、およびHK293 細胞等の動物細胞;および植物細胞を含む。本明細書に記載された宿主細胞の適切な培養培地および条件は当技術分野では周知である。
【0159】
細菌中で使用するための非限定的なベクターは、Qiagenから入手可能なpQE70、pQE60およびpQE-9、;ストラタジーン(Stratagene)から入手可能な、pBSベクター、Phagescriptベクター、Bluescriptベクター、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A、;およびファルマシア(Pharmacia)から入手可能なptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5が挙げられる。非限定的な真核ベクターは、ストラタジーン(Stratagene)から入手可能な、pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1およびpSG;およびファルマシア(Pharmacia)から入手可能なpSVK3、pBPV、pMSGおよびpSVLを含む。他の適切なベクターは、当業者には直ちに明白である。
【0160】
使用に適切な非限定的な細菌プロモーターは、E. coli lacIおよびlacZプロモーター、T3およびT7プロモーター、gptプロモーター、λPRおよびPLプロモーターおよびtrpプロモーターを含む。適切な真核プロモーターは、CMV最初期プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、初期および後期SV40プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)等のレトロウイルスLTRのプロモーター、およびマウスメタロチオネイン-Iプロモーター等のメタロチオネインプロモーターを含む。
【0161】
酵母、サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)では、α-因子、アルコールオキシダーゼ、およびPGH等の構成的または誘導プロモーターを含む一連のベクターを使用できる。総説としては、Ausubel et al.(1989) Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York、N.Y、およびGrant et al.,Method Enzymol.,153:516-544(1997)を参照されたい。
【0162】
宿主細胞への構築物の導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン仲介トランスフェクション、カチオン性脂質仲介トランスフェクション、電気泳動、形質導入、感染または他の方法により達成可能である。そのような方法は、Davis et al., Basic Methods In Molecular Biology(1986) 等の標準的実験室マニュアルに記載されており、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0163】
本開示の抗体をコードするDNAの高等真核生物による転写は、エンハンサー配列のベクターへの挿入により増加できる。エンハンサーはDNAのシス作用エレメントであり、通常、約10~300bpであり、所与の宿主細胞タイプにおいてプロモーターの転写活性を増加するために作用する。エンハンサーの例としては、塩基対100~270における複製起点の後期側に配置されるSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス早期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。
【0164】
翻訳されたタンパク質の小胞体内腔、細胞膜周辺腔または細胞外環境への分泌のために、発現されるポリペプチドに適切な分泌シグナルが組み込まれてもよい。このシグナルは、ポリペプチドに対して内因性であるか、またはそれらは異種のシグナルである。
【0165】
前記ポリペプチド(例えば、抗体)は、融合タンパク質(例えば、GST-融合)またはヒスチジン標識を伴うなど、改変された形態で発現されることができ、および分泌シグナルだけではなく、他の異種機能領域も含み得る。例えば、追加的なアミノ酸の領域が、特に電荷のあるアミノ酸が、ポリペプチドのN末端に追加されることができ、精製の間、または後続する処理もしくは保存の間の、宿主細胞での安定性および持続性を改善する。更に、ペプチド部分を、精製を促進するためにポリペプチドに追加できる。そのような領域は、ポリペプチドの最終的な精製に先立って除去できる。分泌または排出を生み出すための、安定性を改善し、および精製を促進するためのペプチド部分のポリペプチドへの追加は、とりわけ、当技術分野ではなじみ深くルーチンの技法である。
【0166】
本開示は、本明細書に記載される任意のヌクレオチド配列に対して少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である核酸配列を提供し、および本明細書に記載される任意のアミノ酸配列に対して少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一であるアミノ酸配列も提供する。
【0167】
本開示は、本明細書に記載される任意のヌクレオチド配列に対して少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の相同性を有する核酸配列も提供し、および本明細書に記載される任意のアミノ酸配列に対して少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の相同性を有するアミノ酸配列も提供する。
【0168】
いくつかの実施形態では、本開示は本明細書に記載される任意のペプチドをコードするヌクレオチド配列に関係するか、または本明細書に記載される任意のヌクレオチド配列によりコードされる任意のアミノ酸配列に関係する。いくつかの実施形態では、前記核酸配列は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、150、200、250、300、350、400、500、または600ヌクレオチド未満である。いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、または400アミノ酸残基未満である。
【0169】
いくつかの実施形態では、前記アミノ酸配列は、(i)あるアミノ酸配列を含む;または(ii)あるアミノ酸配列からなり、このアミノ酸配列は本明細書に記載される配列の任意の一つである。
【0170】
いくつかの実施形態では、前記核酸配列は、(i)ある核酸配列を含む;または(ii)ある核酸配列からなり、この核酸配列は、本明細書に記載される配列の任意の一つである。
【0171】
2つのアミノ酸配列、または2つの核酸配列のパーセント同一性の決定のために、これらの配列は最適な比較の目的のために整列される(例えば、比較の目的のために、最適な整列、および非同種配列が無視できるように、第一の、および第二のアミノ酸または核酸配列の内の1つまたは両方に、ギャップを導入できる)。比較の目的のために整列された参照配列の長さは、その参照配列の長さの少なくとも80%であり、およびいくつかの実施形態では少なくとも90%、95%、または100%である。対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドが次いで比較される。第一の配列の位置が、第二の配列の対応する位置と、同じアミノ酸残基またはヌクレオチドで占められていると、次いでこの分子はその位置で同一である(本明細書において用いられるものとして、アミノ酸または核酸の「同一性」は、アミノ酸または核酸の「相同性」と等しい)。2つの配列の間のパーセント同一性は、2つの配列の最適な配列のために導入される必要があるギャップ数およびギャップの長さを考慮に入れると、配列により共有される同一の位置の数の関数である。本発明の目的のために、2つの配列の間の配列の比較およびパーセント同一性の決定は、Blossum62スコアリング・マトリックスで、12のギャップ・ペナルティー(gap penalty)、4のギャップ延長ペナルティ(gap extend penalty)、および5のフレームシフト・ギャップ・ペナルティー(frameshift gap penalty)を用いて達成できる。
【0172】
配列相同性のパーセンテージ(例えば、アミノ酸配列相同性または核酸相同性)も決定できる。配列相同性パーセンテージの決定法は、当技術分野で周知である。いくつかの実施形態では、同様の物理化学的性質で保存されているアミノ酸残基(パーセント相同性)、例えば、ロイシンとイソロイシンは配列の同様性を計算するために用いることができる。同様の物理化学的性質を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野では定義されている。これらのファミリーは、例えば、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。多くの場合に、相同性パーセンテージは、同一性パーセンテージより高い。
【0173】
抗体の作製法
ヒトタンパク質の単離された断片(例えば、CD55、CD3、がん特異抗原またはがん関連抗原)は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体調製のための標準技法を用いる、抗体を生成するための免疫原として用いられ得る。ポリクローナル抗体は、抗原性ペプチドまたはタンパク質の複数回の注射(例えば、皮下または腹腔内注射)により、動物内で生じさせることができる。いくつかの実施形態では、前記抗原性ペプチドまたはタンパク質は、少なくとも1つのアジュバントと共に注射される。いくつかの実施形態では、前記抗原性ペプチドまたはタンパク質は、免疫化される種において免疫原性である作用物質と結合される。動物には、抗原性ペプチドまたはタンパク質を2回以上(例えば、2回、3回、または4回)注射できる。
【0174】
全長のポリペプチドまたはタンパク質を使うことができるか、または代替的に、その抗原性ペプチド断片を免疫原として使うことができる。タンパク質の抗原性ペプチドは、このタンパク質のアミノ酸配列の少なくとも8個(例えば、少なくとも10、15、20、または30個)のアミノ酸残基を含み、およびそのペプチドに対して生じた抗体がそのタンパク質と特異的な免疫複合体を形成できるような、タンパク質のエピトープを包含する。
【0175】
免疫原は、典型的には、適切な対象(例えば、少なくとも1つのヒト免疫グロブリン遺伝子座を発現するヒトまたはトランスジェニック動物)を免疫化することにより抗体を調製するために用いられる。適切な免疫原性調製物は、例えば、組み換えにより発現された、または化学的に合成されたポリペプチドを含み得る。前記調製物は、更にフロイント完全アジュバントまたは不完全アジュバント等のアジュバント、または同様の免疫刺激薬を含み得る。
【0176】
ポリクローナル抗体は、上述のように、適切な対象をポリペプチド、またはその抗原性ペプチド(例えば、タンパク質の一部分)を免疫原として使用して免疫化することにより調製できる。免疫化された対象中の、前記抗体力価は、固定化したポリペプチドまたはペプチドを用いる、酵素免疫吸着法(ELISA)等の標準技法により経時的にモニターできる。所望の場合は、前記抗体分子は、哺乳類(例えば、その血液)から単離され、および更に、IgG分画を得るためのタンパク質Gクロマトグラフィーのタンパク質A等の、よく知られた技法により精製される。免疫化の後で、適切な時間が経過後に、例えば、抗体価が最高の時に、抗体産生細胞を前記対象から得て、およびモノクローナル抗体を、最初にKohler et al.,(Nature 256:495-497,1975)が記載したハイブリドーマ技法、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kozbor et al.,Immunol.Today 4:72,1983)、EBV-ハイブリドーマ 技法(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R.Liss, Inc.,pp. 77-96,1985)、またはトリオーマ技法のような標準技法を用いて調製するために使うことができる。ハイブリドーマを産生する技術はよく知られている(一般的にCurrent Protocols in Immunology, 1994, Coligan et al.(Eds.), John Wiley & Sons,Inc.,New York, NYを参照されたい)。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、ハイブリドーマ培養物の上澄み液を、目的のポリペプチドまたはエピトープと結合する抗体について、例えば、ELISAアッセイを用いてスクリーニングすることにより検出できる。
【0177】
本明細書に記載された前記抗体または抗原結合断片の変異は、適切なヌクレオチド変化を、ヒト、ヒト化、またはキメラ抗体、または本明細書に記載されたその抗原結合断片をコードするDNAに導入するか、またはペプチド合成により調製できる。そのような変異は、例えば、抗体の抗原-結合部位または抗原-結合ドメインを形成するアミノ酸配列内部の残基の削除、挿入、または置換を含む。そのような変異の母集団では、いくつかの抗体または抗原結合断片は、標的タンパク質への親和性を増大する。削除、挿入、および/または組み合わせの任意の組み合わせは、標的に対して増大した結合親和性を有する抗体、またはその抗原結合断片に到達するために作ることができる。抗体または抗原結合断片に導入されたアミノ酸変化は、グリコシル化部位の数の変化(例えば、増大または減少)、グリコシル化部位の変化(例えば、異なる糖が細胞中に存在する酵素により結合されるようなアミノ酸配列の変更)、または新しいグリコシル化部位の導入などの抗体または抗原結合断片の翻訳後修飾を変更するか、または新しい翻訳後修飾を導入することができる。
【0178】
本明細書において開示される抗体は、哺乳類を含む、任意の種の動物から誘導できる。自然抗体非限定的な例は、ヒト、霊長類、例えば、サルおよび類人猿、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ラクダ類(例えば、ラクダおよびラマ)、ニワトリ、ヤギ、およびヒト抗体を産生するように遺伝子工学的に操作されたトランスジェニック齧歯類を含む齧歯類(例えば、ラット、マウス、ハムスターおよびウサギ)から誘導される抗体を含む。
【0179】
ファージ提示法(パニング:panning)が、所望の結合親和性を有する抗体配列を最適化するために用い得られる。この技法では、単鎖Fv(VHまたはVLを含む)をコードする遺伝子をファージコートタンパク質遺伝子に挿入することができ、それにより、ファージの外側にscFvを提示させ、同時に、前記タンパク質の遺伝子はファージの内側に含有され、その結果、遺伝子型と表現型との間の関連をもたらす。これらの提示ファージは、提示された抗原結合部位および標的抗原との相互作用を検出するために、次いで標的抗原に対してスクリーニングできる。従って、タンパク質の大きなライブラリーをインビトロ選択と呼ばれるプロセスにおいてスクリーニングおよび増幅することができ、所望の結合親和性を有する抗体配列を得ることができる。
【0180】
ヒトおよびヒト化抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列から誘導された(またはそれらの誘導されたものと同一であるアミノ酸配列を有する)可変および定常領域を有する抗体を有する。ヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロの、ランダムな、または部位特異的な突然変異生成、またはインビボの体細胞変異による)を、例えばCDR中に含み得る。
【0181】
ヒト化抗体は、典型的には非ヒトCDRがグラフトされたヒトフレームワーク(FR)を有する。従って、ヒト化抗体は、非ヒト起源からそれに導入された1つ以上のアミノ酸配列を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「移入」(import)残基と称され、これらは典型的には「移入」可変ドメインから取られている。ヒト化は、本質的には、例えば、齧歯類CDRまたはCDR配列に、ヒト抗体の対応する配列を置換することで行われ得る。これらの方法は、例えば、Jonesetal.,Nature,321:522-525(1986);Riechmannetal.,Nature,332:323-327(1988);Verhoeyenetal.,Science,239:1534-1536(1988);に記載されており、それぞれが、引用により本明細書に組み込まれる。従って、「ヒト化」抗体はキメラ抗体であり、完全なままのヒトVドメインより大幅に少ないものが、非ヒト種からの対応する配列により置換されている。実際面では、ヒト化抗体は、典型的にはマウス抗体であり、この抗体では、いくつかのCDR残基、およびいくつかのFR残基が、ヒト抗体の相似の部位からの残基により置換されている。
【0182】
抗体が抗原に対する高度の特異性および親和性、および他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化されることは、更に重要である。この目標を達成するために、ヒト化抗体は、親およびヒト化配列の三次元モデルを用いる、親配列および様々な概念的なヒト化生成物の分析プロセスにより、調製することができる。三次元免疫グロブリンモデルは、通常入手可能であり、および当技術分野の当業者は熟知している。選ばれた候補の免疫グロブリン配列の可能性のある三次元コンフォーメーション構造を図示して、表示するコンピュータプログラムが入手可能である。これらの表示の検査は、候補の免疫グロブリン配列の機能における、残基の可能性のある役割の分析、すなわち、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響する残基の分析を可能する。この方法で、受容者からFR残基が選択され、および移入配列と組み合わされ抗原に対する増大された親和性等の、所望の抗体特性が達成される。
【0183】
オリジナルの配列に関する同一性または相同性は、ヒト、ヒト化、またはキメラ抗体または断片中に存在する配列と同一の、候補配列中に存在するアミノ酸残基のパーセンテージであり、最大パーセントの配列同一性を達成するために、配列を整列し、および必要であればギャップを導入して、および従来の置換のどれをも配列同一性の部分とは考慮しない。
【0184】
いくつかの実施形態では、共有結合的修飾を抗体またはその抗原結合断片に対して行い得る。これらの共有結合的修飾は、化学的または酵素的合成により、または酵素的または化学的開裂により生成され得る。分子中に導入される抗体または抗体断片の他のタイプの共有結合的修飾は、抗体または断片の標的とされたアミノ酸残基を、選択された側鎖、またはN-またはC-末端残基と反応する能力のある有機的誘導化剤と反応させることにより誘導できる。
【0185】
いくつかの実施形態では、抗体変異は、Fc領域に(直接的または間接的に)結合するフコースが欠如した炭水化物構造を有して提供される。例えば、そのような抗体中のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%または20%~40%であることができる。フコースの量は、WO第2008/077546号に記載されるMALDI-TOF質量分析により測定される、Asn297に結合した全ての糖構造の合計(例えば、複合体、ハイブリッドおよび高マンノース構造)に比較したAsn297における糖鎖中のフコースの平均量を計算することにより決定できる。例えば、Asn297は、Fc領域のおよそ297位(Fc領域残基のEuナンバリング;またはKabatナンバリングでは314位)に位置するアスパラギン残基を称するが;Asn297は、抗体中でのマイナーな配列変異に起因して、297位の約±3アミノ酸分上流または下流にあることができ、すなわち、294位および300位の間にあることができる。そのようなフコース化の変異は、ADCC機能を改善する。いくつかの実施形態では、グリカン不均一を減少させるために、前記抗体のFc領域を、297位のアスパラギンをアラニン(N297A)で置換するために更に操作できる。
【0186】
いくつかの実施形態では、Fab-アーム交換(Fab-arm exchange)を避けることにより、産生効率を促進するために、抗体のFc領域を、IgG4の228位(EUナンバリング)のセリンをプロリン(S228P)で置換するために更に操作できる。S228変異に関する詳細な記載は、例えば、Silva et al.”The S228P mutation prevents in vivo and in vitro IgG4 Fab-arm exchange as demonstrated using a combination of novel quantitative immunoassays and physiological matrix preparation.“Journal of Biological Chemistry 290.9(2015):5462-5469、中にあり、その全体が参照により組み込まれる。
【0187】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、二重特異性抗体を作製するために設計される。二重特異性抗体は、組み換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体のパーセンテージを最大化するために抗体分子のペアの間のインターフェースを操作することにより作製できる。例えば、前記インターフェースは、抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含み得る。この方法では、第一の抗体分子のインターフェースからの1つ以上の小さなアミノ酸側鎖が、より大きな側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置換される。より大きな側鎖のための同一または同様のサイズの補償「空洞」が、第二の抗体分子のインターフェース上に大きなアミノ酸側鎖を小さなもの(例えば、アラニンまたはトレオニン)で置き換えることにより作製される。これは、ヘテロ二量体の、ホモ二量体などの他の望ましくない最終生成物に比較した収率を増加するためのメカニズムを提供する。この方法は、例えば、WO第96/27011号に記載されており、参照によりその全体が組み込まれる。
【0188】
いくつかの実施形態では、IgGのCH3部分の1つ以上のアミノ酸残基が置換される。いくつかの実施形態では、1つの重鎖は、1つ以上の以下の置換を有する;Y349CおよびT366W。他の重鎖は、1つ以上の以下の置換を有する;E356C、T366S、L368A、およびY407V。更に、置換(-ppcpScp-->-ppcpPcp-)は、両方の置換されたIgGヒンジ領域にも導入できる。いくつかの実施形態では、1つの重鎖はT366Y(ノブ:knob)置換、および他の重鎖はY407T(ホール:hole)置換を有する。
【0189】
更に、アニオン交換クロマトグラフィーを二重特異性抗体の生成に使い得る。アニオン交換クロマトグラフィーは、物質をその電荷に基づき、ジエチルアミノエチル(DEAE)基等の正に荷電した基を含むイオン交換樹脂を用いて分離するプロセスである。溶液中で、この樹脂は正に荷電したカウンターイオン(カチオン)により覆われている。アニオン交換樹脂は、負に荷電した分子に結合し、カウンターイオンを置き換える。アニオン交換クロマトグラフィーは、等電点(pI)に基づいて、タンパク質を精製するために用い得る。等電点は、タンパク質が合計で電荷をもたないpHとして定義される。pH>pIのとき、タンパク質は、全体として負の電荷をもち、およびpH<pIのときには、タンパク質は全体として正の電荷を持つ。従って、いくつかの実施形態では、異なるアミノ酸置換を2つの重鎖に導入でき、2つのアームAを含むホモ二量体に対するpI、および2つのアームBを含むホモ二量体に対するpIは異なる。アームAおよびアームBを有する二重特異性抗体に対するpIは、ホモ二量体の2つのpIの間のどこかにある。従って、2つのホモ二量体および前記二重特異性抗体は、異なるpH条件で放出される。本開示はいくつかのアミノ酸残基の置換が、重鎖にpI調整を導入できることを示す。
【0190】
従って、いくつかの実施形態では、Kabatナンバリング83位のアミノ酸残基は、リジン、アルギニン、またはヒスチジンである。いくつかの実施形態では、1、6、43、81、および105(Kabatナンバリング)位の1つ以上の位置のアミノ酸残基は、アスパラギン酸またはグルタミン酸である。
【0191】
いくつかの実施形態では、13位および105位(Kabatナンバリング)のうちの一つ以上のアミノ酸残基は、アスパラギン酸またはグルタミン酸である。いくつかの実施形態では、1つ以上の13位および42位(Kabatナンバリング)のアミノ酸残基は、リジン、アルギニン、ヒスチジン、またはグリシンである。
【0192】
二重特異性抗体は、例えば、架橋されたまたは「ヘテロ共役」(heteroconjugate)抗体を含み得る。例えば、ヘテロ共役中の抗体の1つは、アビジンと連結でき、および他はビオチンと結合できる。ヘテロ共役抗体は、任意の都合の良い架橋法を用いて作製することもできる。適切な架橋剤および架橋技法は当技術分野ではよく知られており、および米国特許第4,676,980号に記載されており、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0193】
抗体断片から二重特異性抗体を生成するための方法も当技術分野ではよく知られている。例えば、二重特異性抗体は化学的連結を用いて調製し得る。Brennanet al.(Science 229:81,1985)は、完全なままの抗体をタンパク質分解的に開裂し、F(ab’)2断片を生成する操作手順を記載している。これらの断片は、隣接ジチオールの安定化および分子間ジスルフィド結合の形成を防止するために、ジチオール錯化剤、亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元される。生成されたFab’断片は、次いでチオニトロ安息香酸(TNB)誘導体に変換される。Fab’TNB誘導体の1つは、次いでメルカプトエチルアミンとの還元によりFab’チオールに再変換され、および二重特異性抗体を形成するために、等モル量の別のFab’TNB誘導体を混合される。
【0194】
治療法
本明細書に記載された方法は、がんに関連する疾患の治療のための方法を含む。一般的に、この方法は、本明細書に記載される操作された二重特異性抗体(例えば、不均衡な二重特異性抗体)またはその抗原結合断片の治療的な有効量を、それを必要とする対象、またはそのような治療を必要とすると決定された対象に投与することを含む。
【0195】
この文脈で用いられる「治療する(treat)」は、がんに関連する疾患の少なくとも1つの症状を改善することを意味する。しばしば、がんは死をもたらす;従って、治療は増加した平均余命をもたらす(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヵ月、または少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10年)。がんに関連した病状の治療のための明細書に記載された薬剤(例えば、不均衡な二重特異性抗体)の治療的な有効量の投与は、減少したがん細胞数、および/または緩和された症状をもたらす。
【0196】
本明細書において用いられるものとして、用語「がん」は、自律的な成長能力を有する細胞、すなわち、急速に増殖する細胞成長により特性付けられる異常な状態または条件を指す。この用語は、組織病理学的タイプまたは侵襲性のステージに関係なく全てのタイプのがん性成長または発がんプロセス、転移性組織または悪性形質転換した細胞、組織、または臓器を含むことを意味する。本明細書において用いられるものとしての用語「腫瘍」は、がん性細胞、例えば、がん性細胞の塊を指す。本明細書に記載された方法を用いることにより、治療または診断が可能ながんは、肺、乳房、甲状腺、リンパ、消化器、および尿生殖器管に影響する様々な臓器系の悪性腫瘍と同時に、殆どの結腸がん、腎細胞癌、前立腺がんおよび/または精巣腫瘍、肺の非小細胞癌、小腸のがんおよび食道がん等の腺癌を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載された薬剤は、対象の癌を治療するか、または診断するために設計される。「癌」は、当該技術分野において承認されており、および呼吸器系癌、消化器系癌、尿生殖器管系癌、精巣癌、乳癌、前立腺癌、内分泌系癌、および黒色腫を含む、上皮または内分泌組織の悪性腫瘍を指す。いくつかの実施形態では、前記がんは腎癌または黒色腫である。例示的な癌は、頸部、肺、前立腺、乳房、頭および頸部、結腸および卵巣の組織から形成されるものを含む。この用語は、例えば、癌性および肉腫性の組織から構成される悪性腫瘍を含む癌肉腫も含む。「腺癌」は、腺組織から誘導されるか、または腫瘍細胞が、その中に認識可能な腺構造を形成する癌を指す。用語「肉腫」は、当該技術分野において承認されており、および間葉から誘導される悪性腫瘍を指す。
【0197】
いくつかの実施形態では、前記がんはリツキシマブ(Rituximab)(Rituxan(登録商標))抵抗性がんである。
【0198】
一態様では、本開示は、対象中のがんを治療するための方法、対象中の腫瘍の経時的な増大速度を低下させる方法、転移を発生させるリスクを低下させる方法、または対象中の追加的な転移を発生させるリスクを低下させる方法も提供する。いくつかの実施形態では、前記治療は、がんの増悪を、停止、減速、遅らせる、または阻害することができる。いくつかの実施形態では、前記治療は、対象中のがんの症状の数、重症度、および/または持続期間の1つ以上の減少をもたらし得る。
【0199】
一態様では、本開示は抗体またはその抗原結合断片の治療的に有効な量を、または本明細書において開示される抗体薬剤接合体を、それを必要とする対象、例えば、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん)、カルチノイドがん、頸部がん、子宮内膜がん、神経膠腫、頭頚部がん、肝がん、肺がん、小細胞肺がん、リンパ腫、黒色腫、卵巣がん、すい臓がん、前立腺がん、腎がん、結腸直腸がん、消化器がん、精巣がん、甲状腺がん、膀胱がん、尿道がん、または血液悪性腫瘍等のがんを有するか、または特定されたか、または診断された対象に投与することを含むことを特徴とする。
【0200】
本明細書において用いられるものとして、用語「対象」および「患者」は、本明細書を通じて互換可能に用いられることがき、および本発明の方法に従った治療が提供される動物、ヒトまたは非ヒトを表す。獣医学的および非獣医学的適用は、本発明により企図される。ヒト患者は成人のヒトまたは年少者のヒト(例えば、18歳未満のヒト)であることができる。患者は、ヒトに加えて、限定はされないが、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、フェレット、ネコ、イヌ、および霊長類等を含む。含まれるものは、例えば、非ヒト霊長類(例えば、サル、チンパンジー、ゴリラ等)、齧歯類(例えば、ラット、マウス、アレチネズミ、ハムスター、フェレット、ウサギ)、ウサギ類、豚類(例えば、ブタ、ミニブタ)、ウマ科、イヌ、ネコ科、ウシ属、および他の家畜、および動物園の動物を含む。
【0201】
いくつかの実施形態では、前記がんは、切除不能な黒色腫または転移性黒色腫、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC)、膀胱がん、または転移性ホルモン抵抗性前立腺がんである。いくつかの実施形態では、前記対象は固形腫瘍を有する。いくつかの実施形態では、前記がんは、頭頚部の扁平上皮細胞癌(SCCHN)、腎細胞癌(RCC)、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、または結腸直腸癌である。いくつかの実施形態では、前記対象はホジキンリンパ腫を有する。いくつかの実施形態では、前記対象は、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、消化器がん、尿路上皮がん、メルケル(Merkel)細胞癌、または頭頚部がんを有する。いくつかの実施形態では、前記がんは黒色腫、膵臓癌、中皮腫、血液悪性腫瘍、特に非ホジキンリンパ腫、リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、または進行した固形腫瘍を有する。
【0202】
いくつかの実施形態では、本明細書において開示される組成物および方法は、様々な当技術分野で周知の方法により特定できるがんのリスクのある患者、およびがん患者の治療に用い得る。
【0203】
本明細書において用いられるものとして、「有効な量」は、疾患、例えばがんの増悪の、停止、減速、遅らせる、または阻害等を含む、利益のあるか、または所望の結果を実現するために十分な量または用量を意味する。有効な量は、例えば、抗体、抗原結合断片、抗体-薬物複合体、抗体エンコーディングポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含むベクター、および/またはそれらの組成物が投与される対象の年齢および体重、症状の重症度および投与経路に依存し、および従って投与は、個人的な基準に基づいて決定される。
【0204】
有効な量を、1回以上の投与において、投与できる。例として、抗体、抗原結合断片、または抗体-薬物複合体の有効な量は、患者の自己免疫疾患またはがんの増悪の、寛解、停止、安定化、逆転、阻害、減速、および/または遅延させるために十分な量であるか、またはインビトロで、細胞(例えば、生検された細胞、本明細書に記載される任意のがん細胞、または細胞株(例えば、がん細胞株))の増殖を、寛解、停止、安定化、逆転、減速、および/または遅延させるために十分な量である。当技術分野で理解されているように、抗体、抗原結合断片、または抗体-薬物複合体の有効な量は、とりわけ、患者の病歴ならびに使用される抗体のタイプ(および/または用量)などの他の因子に依存して変動し得る。
【0205】
本明細書において開示される抗体、抗体エンコーディングポリヌクレオチド、抗体-薬物複合体、および/または組成物の投与のための有効な量およびスケジュールは、経験的に決定されることができ、およびそのような決定を下すのも当業者である。当業者は、投与されるべき用量が、例えば、本明細書で開示される抗体、抗体エンコーディングポリヌクレオチド、抗体-薬物複合体、および/または組成物を受ける哺乳類、投与経路、使用される、本明細書において開示される抗体、抗体エンコーディングポリヌクレオチド、抗原結合断片、抗体-薬物複合体および/または組成物の特定のタイプ、および前記哺乳類に投与される他の薬剤に依存して変動することを理解するであろう。抗体または抗原結合断片についての適切な用量を選択するガイダンスは、抗体および抗原結合断片の治療的使用についての文献、例えば、Handbook of Monoclonal Antibodies,Ferroneetal.,eds.,Noges Publications,Park Ridge,N.J.,1985,ch.22 and pp.303-357;Smithetal.,Antibodies in Human Diagnosis and Therapy,Haber etal.,eds.,Raven Press,New York,1977,pp.365-389中に見出される。
【0206】
抗体の有効な量の一日の用量は、0.01mg/kg~100mg/kgである。いくつかの実施形態では、用量は100mg/kg、10mg/kg、9mg/kg、8mg/kg、7mg/kg、6mg/kg、5mg/kg、4mg/kg、3mg/kg、2mg/kg、1mg/kg、0.5mg/kg、または0.1mg/kg未満である。いくつかの実施形態では、用量は10mg/kg、9mg/kg、8mg/kg、7mg/kg、6mg/kg、5mg/kg、4mg/kg、3mg/kg、2mg/kg、1mg/kg、0.5mg/kg、0.1mg/kg、0.05mg/kg、または0.01mg/kgを超える。いくつかの実施形態では、用量は約10mg/kg、9mg/kg、8mg/kg、7mg/kg、6mg/kg、5mg/kg、4mg/kg、3mg/kg、2mg/kg、1mg/kg、0.9mg/kg、0.8mg/kg、0.7mg/kg、0.6mg/kg、0.5mg/kg、0.4mg/kg、0.3mg/kg、0.2mg/kg、または0.1mg/kgである。
【0207】
本明細書に記載される任意の方法では、少なくとも1つの抗体、その抗原結合断片、抗体-薬物複合体、または薬学的組成物(例えば、本明細書に記載される抗体、抗原結合断片、抗体-薬物複合体、または薬学的組成物のうちの任意のもの)、および随意的に、少なくとも1つの追加的な治療剤は、前記対象に、少なくとも一週間に1回(例えば、一週間に1回、一週間に2回、一週間に3回、一週間に4回、1日に1回、1日に2回、または1日に3回)投与できる。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの異なる抗体および/または抗原結合断片を同一の組成物(例えば、液体組成物)中で投与できる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗体、抗原結合断片、抗体-薬物複合体、および少なくとも1つの追加的な治療剤を同一組成物(例えば、液体組成物)中で投与できる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗体または抗原結合断片および少なくとも1つの追加的な治療剤を2つの異なる組成物(例えば、少なくとも1つの抗体または抗原結合断片を含む液体組成物、および少なくとも1つの追加的な治療剤を含む固体の経口用組成物)。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加的な治療剤を、丸薬、錠剤、またはカプセルとして投与できる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加的な治療剤は、持続性の経口製剤として投与される。
【0208】
いくつかの実施形態では、前記1つ以上の追加的な治療剤は、前記対象に、少なくとも1つの抗体、抗原-結合抗体断片、抗体-薬物複合体、または薬学的組成物(例えば、本明細書に記載される抗体、抗原-結合抗体断片、または薬学的組成物のいずれか)の投与に先立つか、またはその後に投与できる。いくつかの実施形態では、前記1つ以上の追加的な治療剤および少なくとも1つの抗体、抗原-結合抗体断片、抗体-薬物複合体、または薬学的組成物(例えば、本明細書に記載される抗体、抗原-結合抗体断片、または薬学的組成物のいずれか)を、前記対象の体内で生物活性期間に重なりがあるように、1つ以上の追加的な治療剤および少なくとも1つの抗体または抗原結合断片(例えば本明細書に記載される前記抗体または抗原結合断片のいずれか)を前記対象に投与できる。
【0209】
いくつかの実施形態では、前記対象に少なくとも1つの抗体、抗原-結合抗体断片、抗体-薬物複合体、または薬学的組成物(例えば、本明細書に記載される抗体、抗原-結合抗体断片、または薬学的組成物のいずれか)を、延長された時間の期間にわたって(例えば、少なくとも1週間、2週間、3週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月、7ヵ月、8ヵ月、9ヵ月、10ヵ月、11ヵ月、12ヵ月、1年、2年、3年、4年、または5年)投与できる。熟練した医学専門家は、本明細書に記載された任意の診断方法を用いるか、または治療の有効性を追求することにより(例えば、がんの少なくとも1つの症状の観察)により、治療期間を決定できる。本明細書に記載される、熟練した医学専門家は、対象に投与した、抗体または抗原-結合抗体断片、抗体-薬物複合体(および/または1つ以上の追加的な治療剤)の独自性および数(例えば、増加または減少)も変更でき、および前記対象への、少なくとも1つの抗体または抗原-結合抗体断片(および/または1つ以上の追加的な治療剤)の用量(例えば、増加または減少)、または投与の頻度を、治療の有効性の評価に基づいて調整できる(例えば、本明細書に記載される方法、および当技術分野で周知の方法を用いて)。
【0210】
いくつかの実施形態では、1つ以上の追加的な治療剤を前記対象に投与できる。この追加的な治療剤は以下から選ばれる1つ以上の阻害剤を含み得る:B-Raf阻害剤、EGFR阻害剤、MEK阻害剤、ERK阻害剤、K-Ras阻害剤、c-Met阻害剤、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤、ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ(PI3K)阻害剤、Akt阻害剤、mTOR阻害剤、PI3K/mTOR二重阻害剤、Brutonのチロシンキナーゼ(BTK)阻害剤、およびイソクエン酸脱水素酵素1(IDH1)阻害剤および/またはイソクエン酸脱水素酵素2(IDH2)。いくつかの実施形態では、前記追加的な治療剤は、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ-1)(IDO1)阻害剤(例えば、エパカドスタット)である。
【0211】
いくつかの実施形態では、前記追加的な治療剤は、HER3阻害剤、LSD1阻害剤、MDM2阻害剤、BCL2阻害剤、CHK1阻害剤、活性化ヘッジホッグシグナル伝達経路阻害剤、およびエストロゲン受容体を選択的に分解する薬剤より成る群から選ばれる1つ以上の阻害剤を含み得る。
【0212】
いくつかの実施形態では、前記追加的な治療剤は、トラベクテジン(Trabectedin)、ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル(nab-paclitaxel)、トレバナニブ(Trebananib)、パゾパニブ(Pazopanib)、セジラニブ(Cediranib)、パルボシクリブ(Palbociclib)、エベロリムス(everolimus)、フルオロピリミジン(fluoropyrimidine)、IFL、レゴラフェニブ(regorafenib)、レオリシン(Reolysin)、アリムタ(Alimta)、ジカディア(Zykadia)、スーテント(Sutent)、テムシロリムス(temsirolimus)、アキシチニブ(axitinib)、エベロリムス(everolimus)、ソラフェニブ(sorafenib)、ヴォトリエント(Votrient)、パゾパニブ(Pazopanib)、IMA-901、AGS-003、カボザンチニブ(cabozantinib)、ビンフルニン(Vinflunine)、Hsp90阻害剤、Ad-GM-CSF、テモゾロミド(Temazolomide)、IL-2、IFNa、ビンブラスチン(vinblastine)、サロミド(Thalomid)、ダカルバジン(dacarbazine)、シクロフォスファミド(cyclophosphamide)、レナリドミド(lenalidomide)、アザシチジン(azacytidine)、レナリドミド(lenalidomide)、ボルテゾミブ(bortezomid)、アムルビシン(amrubicine)、カーフィルゾミブ(carfilzomib)、プララトレキセート(pralatrexate)、およびエンザスタウリン(enzastaurin)から成る群から選ばれる1つ以上の治療剤を含み得る。
【0213】
いくつかの実施形態では、前記追加的な治療剤は、アジュバント、TLRアゴニスト、腫瘍壊死因子(TNF)α、IL-1、HMGB1、IL-10アンタゴニスト、IL-4アンタゴニスト、IL-13アンタゴニスト、IL-17アンタゴニスト、HVEMアンタゴニスト、ICOSアゴニスト、治療標的CX3CL1、治療標的CXCL9、治療標的CXCL10、治療標的CCL5、LFA-1アゴニスト、ICAM1アゴニスト、およびセレクチンアゴニストから成る群から選ばれる1つ以上の治療剤を含み得る。
【0214】
いくつかの実施形態では、カルボプラチン(carboplatin)、ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル、パクリタキセル(paclitaxel)、シスプラチン、ペメトレキセド(pemetrexed)、ゲムシタビン(gemcitabine)、FOLFOX、またはFOLFIRIが前記対象に投与される。
【0215】
いくつかの実施形態では、前記追加的な治療剤は、抗OX40抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、抗LAG-3抗体、抗TIGIT抗体、抗BTLA抗体、抗CTLA-4抗体、または抗GITR抗体である。
【0216】
薬学的組成物および投与経路
本明細書により更に提供されるものは、本明細書に記載される抗体、抗原結合断片、または抗体-薬物複合体のうちの少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、または4つ)を含む薬学的組成物である。本明細書に記載された抗体、抗原結合断片、または抗体-薬物複合体のうちの任意のものの2つ以上(例えば、2つ、3つ、または4つ)が、薬学的組成物中に任意の組み合わせで存在できる。前記薬学的組成物は、当技術分野で周知の任意の方法で製剤化され得る。
【0217】
薬学的組成物は、意図された投与経路(例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、皮内、皮下、または腹腔内)と適合できるように製剤化される。前記組成物は、滅菌希釈剤(例えば、滅菌水または食塩水)、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等の抗菌または抗真菌剤、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム等の抗酸化剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート化剤、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩等の緩衝剤、および糖(例えば、デキストロース)、ポリアルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール)等の等張剤、または塩類(例えば、塩化ナトリウム)、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。リポソーム懸濁液も薬学的に許容される担体(例えば、米国特許第4,522,811号を参照)として使い得る。前記組成物の製剤は、製剤化されおよびアンプル、使い捨て注射器、または多重用量バイアル中に封入できる。必要な場合には(例えば、注射製剤におけるような)、適正な流動性が、例えば、レシチンまたは界面活性剤等のコーティングにより維持できる。抗体またはその抗原結合断片の吸収は、吸収を遅延化する薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を含ませることで、長くできる。その代わりに、制御された放出は、生物分解性の生体適合性のあるポリマー(例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸;Alza CorporationおよびNova Pharmaceutical,Inc.)を含み得る、インプラント、およびマイクロエンカプセル化した送達システムにより達成できる。
【0218】
本明細書に記載された抗体、抗原結合断片、抗体-薬物複合体のうちの任意のものの1つ以上を含む組成物は、非経口的(例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、皮内、皮下、または腹腔内)投与のために、単位形態用量(すなわち、投与の容易さのためおよび用量の均一性のために、活性化合物の所定の量を含む物理的に分割された単位)で製剤できる。
【0219】
組成物の毒性および治療効果は、細胞培養物または実験動物(例えば、サル)での、標準的薬学的操作手順により決定できる。LD50(母集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(母集団の50%に治療的に有効な用量)を決定でき:治療指数はLD50:ED50の比である。高い治療指数を示す薬剤が好適である。薬剤が望まれない副作用を示すときは、潜在的な損傷を最小化するためのケア(すなわち、望ましくない副作用を減少させる)を行わなければならない。毒性および治療効果は、他の標準的薬学的操作手順により決定できる。
【0220】
細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータは、対象(例えば、ヒト)において用いられる所与の任意の薬剤の適切な用量を策定するために用いられる。1つ以上の(例えば、1つの、2つの、3つの、または4つの)抗体またはその抗原結合断片(例えば、本明細書に記載される抗体または抗体断片の任意のもの)の治療的に有効な量は、対象(例えば、がんを有すると特定されたヒト対象)中の疾患を治療する(例えば、がん細胞を殺滅する)量であるか、または疾患を発展させるリスクがあると特定された対象(例えば、以前にがんを患ったが今は治癒している対象)において、対象(例えば、ヒト)の重症性、頻度および/または持続期間の1つ以上の疾患の症状を減少させる量である。本明細書に記載された前記抗体または抗原結合断片の任意のものの有効性または用量は、医療専門家または獣医学的専門家が当技術分野で周知の方法を用いて決定できると同時に、対象(例えば、ヒト)における疾患の1つ以上の症状を観察することにより決定できる。特定の因子が、効果的に対象を治療するために必要な用量およびタイミングに影響する可能性がある(例えば、疾患または病気の重症度、以前の治療、対象の全般的な健康および/または年齢、および他の疾患の存在)。
【0221】
例示的な用量は、対象の体重1Kg当たりミリグラムまたはマイクログラムの本明細書に記載された抗体または抗原結合断片、または抗体-薬物複合体を含む(例えば、約1μg/kg~約500mg/kg;約100μg/kg~約500mg/kg;約100μg/kg~約50mg/kg;約10μg/kg~約5mg/kg;約10μg/kg~約0.5mg/kg;または約1μg/kg~約50μg/kg)。これらの用量は、広い範囲をカバーするが、当業者は、それらの力価が変化する、抗体およびその抗原結合断片を含む治療剤の有効量が、当技術分野で周知の方法により決定できることを理解する。典型的には、比較的低い用量が第一に投与され、および主治医または獣医学的専門家(治療的な用途の場合)または研究者(いまだに開発段階で作業している場合)は、後続しておよび適切な反応が得られるまで徐々に用量を増加する。その上、任意の特定の対象に対する特定の用量レベルが、用いられる特定の化合物の活性、年齢、体重、全般的な健康、性別、および対象の食事、投与の時間、投与経路、排泄率、およびインビボでの抗体または抗体断片の半減期を含む、様々な因子に依存することが理解されている。
【0222】
前記薬学的組成物は、容器、パックまたは分注器に、投与の指示書と共に含めることができる。本開示は本明細書に記載される様々な用途のための、抗体またはその抗原結合断片、または抗体-薬物複合体の製造方法も提供する。
【実施例0223】
本発明が、更に以下の実施例の中で記載されるが、それらは請求項に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
【0224】
実施例1:方法および材料
以下のアッセイが実施例において用いられる。
【0225】
結合アッセイ
(a) 50μLの培地中の5x105細胞を96ウエルプレートの各ウエルに分注する。
(b) 100μLの抗体を、異なる希釈でウエル中に加える。
(c) プレートを室温(RT)で60分間インキュベートする。
(d) 遠心分離で細胞を沈下させ、および0.1ウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄する。
(e) 細胞ペレットを、1:500 Cy3複合体化ヤギ抗ヒトIgG抗体を含む100μLのPBSと0.1%BSA中に再懸濁する。
(f) 暗所で室温で30分間インキュベートする。
(g) 細胞を3回洗浄し、および蛍光標識細胞分取(FACS)緩衝液中で再懸濁する。
(h) 細胞をフローサイトメーターで分析する。
【0226】
抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)アッセイ
(a) カルセインAM標識の前に標的細胞をPBSで1回洗浄する。
(b) 1:333の2.5mMカルセインAM保存液を標的細胞の標識のために用いる。
(c) 遮光して、細胞を37℃で30分間インキュベートする。
(d) 細胞をPBSで3回洗浄する。
(e) 1x104カルセインAM標識標的細胞の50μLを各ウエルに分注する。
(f) 100μLの希釈抗体をウエルに加える。
(g) プレートを室温で60分間インキュベートする。
(h) 5x104のPBMS(細胞に効果を与える)を各ウエル中の50μL培地中に加える(E/T比は5)。
(i) このプレートを37℃で4時間インキュベートする。
(j) 細胞を遠心分離で沈下させ、180μLの上澄み液を底が半透明で壁が黒い別の96ウエルプレートに移す。
(k) 485励起および520発光の波長でプレートを読む。
【0227】
補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイ
(a) 標的細胞を収集し、およびADCC(カルセイン放出だけのアッセイ)として、カルセインAMで染色する。
(b) 50μLの標的細胞(1x105細胞)を96ウエルプレートの各ウエルに播種する。
(c) 異なる濃度で100μL抗体をウエル中に加える。
(d) プレートを室温で15分間インキュベートする。
(e) 50μLの10%補体濃縮ヒト血清を各ウエルに加える(最終濃度5%)。
(f) プレートを室温で45分間インキュベートする。
(g) 180μLの上澄み液を底が半透明で壁が黒い別の96ウエルプレートに移す(カルセイン放出アッセイに対してのみ)。
(h) 細胞を0.1%BSAを含むPBSで3回洗浄する。
(i) 細胞を、ウエルごとに2μLの7-アミノアクチノマイシンD(7AAD)を用いて、室温で15分間暗所で染色する。
(j) 細胞を3回洗浄し、および細胞をフローサイトメーターで分析する。
【0228】
T細胞活性化
事前に活性化した末梢血単核球細胞(PBMC)をいくつかのADCC実験に用いた。
(a) Dynabeads(ヒトT細胞賦活化剤CD3/CD28)をPBMCの活性化に用いる。
(b) 緩衝液で洗浄後、DynabeadsをPBMCに1:1の比で30U/mLのインターロイキン-2(IL2)と共に加える。
(c) 細胞混合物を十分な期間インキュベートする。
(d) インキュベーションの最後に、磁石でビーズを除去し、賦活化されたPBMCを、次いでADCCアッセイに用いる。
【0229】
MDA231細胞を含む細胞結合アッセイ
(a) MDA231細胞を培地中で、1x106細胞/mLの濃度で調製する。
(b) 抗体サンプルを適切な濃度に希釈する。
(c) 50μLの細胞を96ウエルV底プレートの各ウエルに移す。
(d) 50μLの抗体を、96ウエルV底プレートの各ウエルに移す。
(e) 細胞混合物を60分間室温でインキュベートする。
(f) 細胞を遠心分離で沈下させ、およびFACS緩衝液で2回洗浄する。
(g) 各ウエル中のCy3複合体化ヤギ抗ヒト(GAH)IgG抗体を含む100μLのFACS緩衝液中で細胞を再懸濁(1:500)する。
(h) 室温で30分間インキュベートし、およびFACS緩衝液で2回洗浄する。
(i) FACS分析。
【0230】
MDA231およびSIHA細胞を含むインターナリゼーションアッセイ
(a) 50μLの細胞懸濁物(MDA231またはSIHA細胞)を1x106/mで96ウエルプレートの各ウエルに加える。
(b) 50μLのAbを対応するウエルに加える。
(c) 37℃で30分間インキュベートする。
(d) 100μLのpHrodo Red標識GAHIgGを各ウエルに加え、および37℃で24時間インキュベートする。
(d) トリプシン消化しおよび細胞を収集し、2回洗浄し、FACSを行う。
【0231】
MDA231細胞を含む補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイ
(a) 標的細胞:MDA231細胞をPBSで2回洗浄し、および次いでPBS中で0.5x106/mLの濃度に調整する。
(b) 平底24ウエルプレートに、300μL/ウエルで細胞を播種する。
(c) 20μg/mL抗体の300μLを対応するウエルに加えて、10μg/mLの最終濃度にする。
(d) プレートを37℃で48時間インキュベートする。
(e) インキュベーションの最後に、細胞をトリプシン消化し単純培地で2回洗浄する。
(f) 細胞ペレットを100μL単純培地に再懸濁し、および細胞を96ウエルプレートに移す。
(g) 100μLの10%補体濃縮血清を各ウエルに加える。
(h) 細胞を4時間、37℃でインキュベートする。
(i) 細胞を2回FACS緩衝液で洗浄する。
(j) 100μLトリプシンを加えて3分間細胞を分離する。
(k) 細胞ペレットを7AADを含む(1:50希釈)FACS緩衝液中で再懸濁する。
(l) 室温で15分間インキュベーション後に細胞を2回洗浄する。
(m) FACS分析を行う。
【0232】
実施例2:CD20およびCD3に結合する二重特異性抗体
二重特異性抗体が、CD20およびCD3に結合するために設計された。この二重特異性抗体は、2つの共通軽鎖(同一の配列を持つ)および2つの異なる重鎖を有する。2つの重鎖の可変領域および共通軽鎖の配列が以下に示される。
【0233】
CD20に対するVHa(リツキシマブVHから設計):
CD3に対するVHb(MAb12F6VHから設計):
共通VL(リツマキシブのVL)
【0234】
12F6抗体は、例えば、Construction and characterization of a humanized anti-human CD3 monoclonal antibody 12F6 with effective immunoregulation functions, Immunology, 116(4),487-498(2005)に記載されており、これは引用によりその全体が本明細書に組み込まれる。親の抗体に対する配列も以下に比較の目的のために示される。
【0235】
親のCD20VH(リツマキシブVH):
親のCD20VL(リツマキシブ):
親のCD3VH(MAb12F6VH):
親のCD3VL(MAb12F6VL):
【0236】
再設計されたVHおよびVLのCDR配列も以下の表にまとめられている。
【0237】
【0238】
【0239】
【0240】
リツマキシブFv(VH+VL)の3D(3次元)等電点(PI)は9.9であり、および12F6Fvの3DPIは9.8である。配列を再設計後、VHa+共通VLの3DPIは10.0であり、およびVHb+共通VLの3DPI9.1であった。PI変化はCD20の結合親和性に影響せず、および第二の抗原結合領域は、CD3に対する妥当な結合親和性を未だに維持している。2つのVH鎖中の突然変異は以下の表中に示されている。
【0241】
【0242】
【0243】
図1Aおよび1Bでは、再設計されたリツマキシブ(抗体A)および再設計された12F6(抗体B)の抗原結合能力がそれぞれ試験された。
図1Aは、再設計されたリツマキシブ(抗体A)が、CD20陽性Raji細胞に結合することを示す。抗体Aは、2つのVHa(SEQ ID NO:1)、および2つの共通VL(SEQ ID NO:3)を有するホモ二量体である。
図1Bは、再設計された12F6(抗体B)がCD3陽性Jurkart細胞に結合することを示す。抗体Bも、2つのVHb(SEQ ID NO:2)および2つの共通VL(SEQ ID NO:3)を有するホモ二量体である。これらのデータは、再設計されたリツマキシブ重鎖、再設計された12F6重鎖、および共通軽鎖が、例えば、「ノブ・イントゥ・ホール」技術を介して機能的二重特異性抗体へと結合されることを示唆する。
【0244】
従って、CD20/CD3「不均衡な二重特異性抗体」が設計された。Knobandhole突然変異は、重鎖の定常領域にも導入され、二重特異性抗体の形成を促進する。
【0245】
重鎖および軽鎖の全長配列が以下に示される。
【0246】
CD20重鎖バージョン1の全長(野生型IgG1Fc)
CD20重鎖バージョン2の全長(Y407T(ホール)突然変異を伴うIgG1Fc):
CD20重鎖バージョン3の全長(T366Y(ノブ)突然変異を伴うIgG1Fc):
CD3重鎖バージョン1の全長(野生型IgG1Fc):
CD3重鎖バージョン2の全長(T366Y(ノブ)突然変異を伴うIgG1Fc):
CD3重鎖バージョン3の全長(Y407T(ホール)突然変異を伴うIgG1Fc):
共通軽鎖の全長:
【0247】
Y407T(EUナンバリング)を持つCD20に対するIgG1重鎖(バージョン2;SEQ ID NO:35)、およびCD3に対するIgG1重鎖は、T366Y(EUナンバリング)突然変異(バージョン2;SEQ ID NO:38)が、更なる実験のための二重特異性抗体を作製するために選ばれた。この二重特異性抗体は2つの共通軽鎖(SEQ ID NO:40)も有する。
【0248】
この不均衡な二重特異性抗体は以下の特徴も含む:(1)安全性を増加させるために、CD3結合親和性は有意に低下されている;(2)臨床的な実施を広げるためにADCC/CDCエフェクター機能は維持されている;(3)下流の精製プロセスの間の二重特異性抗体のより良好な分離を可能にするためにCD20結合アームおよびCD3結合アームの生化学的および生物物理学的特性が差別化されている。
【0249】
以下の実施例で示されるように、この抗体は、ヒトPBMC存在下で、CD20ホモ二量体およびリツマキシブよりも良好なCD20+Raji細胞殺滅有効性を有した。一方、同じ条件下で、この抗体は、CD3+Jurkat細胞または枯渇した正常T細胞を殺滅することに失敗した。従って、この抗体は、現在の抗CD20がん治療法よりも広範囲の臨床的応用を持つ見込みのあることを示した:(1)リツマキシブと比較して、この抗体はT細胞動員機能を有する;(2)CAR-T/他のT細胞動員治療法と比べて、この抗体は機能的エフェクター機能を維持する;(3)この抗体はinvitroで、何らの安全性の懸念も示さない。総合すれば、本開示で述べられた、CD20/CD3二重特異性抗体およびそのプラットフォームは、がん標的治療法の分野において満たされていないニーズに取り組むことができる。
【0250】
本明細書において開示される二重特異性抗体は、2つの段階を通じて精製された:タンパク質Aを用いる親和性精製(ラウンド1)およびmonoQ5/50を用いるアニオン交換精製(ラウンド2)。第二のラウンドでは、勾配pH緩衝液(例えば、PBS)が、抗体を溶出するために用いられた。T細胞活性化アッセイは、溶出後に異なる分画に対して評価された。
図20では、数は、異なる分画を示す。CD20/CD3二重特異性抗体だけがT細胞を活性化でき、従ってT細胞活性化アッセイは、各分画中のCD20/CD3二重特異性抗体の純度と含量を評価できる。結果は分画4~7が比較的純粋なCD20/CD3二重特異性抗体を有することを示し、およびCD20/CD3二重特異性抗体が本明細書に記載される方法により精製されることを実証した。
【0251】
更に、本明細書に記載された抗体のpIも測定された。この情報は溶出のために適切なpHを選ぶために有用であり得る。
【0252】
【0253】
実施例3:二重特異性抗体の結合親和性
コンピュータによる設計の後に、設計されたVH配列(SEQ ID NO:1)および共通VL配列(SEQ ID NO:3)を含むCD20ホモ二量体IgGは、親の抗CD20IgG(親CD20)と比較して、同様のCD20に対する結合能力を示した。細胞結合親和性アッセイがRaji細胞(CD20を発現する)を用いて行われた。その結合結果は
図2Aに示されている。
【0254】
設計されたVH配列(SEQ ID NO:2)および共通VL配列(SEQ ID NO:3)を含むCD3ホモ二量体IgGは、親の抗CD3IgG(親CD3)に比べて減少したCD3に対する結合能力を有した。細胞結合親和性アッセイがJurkat細胞(CD3を発現する)を用いて行われた。結合結果は
図2Bに示されている。
【0255】
実施例4:不均衡なCD20/CD3二重特異性抗体によるT細胞の活性化
不均衡なCD20/CD3二重特異性モノクローナル抗体(BsMab)は、標的腫瘍細胞の存在下で、T細胞のみを活性化した。Raji細胞をCD20+標的腫瘍細胞として、293細胞をCD20対照細胞として、およびJurkat細胞をT細胞モデルとして使用することにより、以下の実験が、T細胞および標的腫瘍細胞の両方に結合する複数のBsMabsから形成されたクラスターのためにCD20/CD3 BsMabが標的腫瘍細胞の存在下でT細胞を活性化できるかどうかを試験するために行われた。対照的に、CD20対照細胞の存在下では、T細胞上のCD3への1つのアームによる弱い結合に起因して、CD20/CD3 BsMabはT細胞を活性化しなかった。
【0256】
この実施例では以下の実験手順が用いられた:
(1) Raji&Jurkat、Jurkat&293の1x105を別々にU底の96ウエルプレートに播種する。
(2) 試験抗体を加えて、一晩(19時間)インキュベートする。
(3) 細胞をPBS+0.1%BSAで1回洗浄する。
(4) 抗ヒトCD69抗体(PEにより標識)(1.5μL/ウエル)を加え、および室温で30分間インキュベートする。
(5) 細胞を1回洗浄する。
(6) 読み取る。
【0257】
結果が
図3に示される。Raji細胞存在下での異なる濃度の試験抗体による、T細胞活性化有効性が
図4に示される。アイソタイプ抗体(非特異的IgG1抗体)が、対照として用いられた。T細胞活性化は、Jurkat細胞表面でのCD69の発現により測定された。
【0258】
実施例5:不均衡なCD20/CD3 BsMabはPBMC媒介細胞殺滅を誘起する
不均衡なCD20/CD3 BsMabは、T細胞活性化の前と後で、リツマキシブおよびCD20ホモ二量体抗体よりも良好なPBMC媒介細胞殺滅を示した。
【0259】
T細胞活性化前:健康なドナーからの新鮮な末梢血単核細胞(PBMC)を、37℃で終夜放置し、および図に示されている異なる抗体の存在下でカルセイン標識CD20+Raji細胞と4時間インキュベートした。細胞死率がカルセイン放出により測定された。その結果が
図5に示される。
【0260】
T細胞活性化後(4日間):健康なドナーからの新鮮なPBMCを、組み換えIL-2およびCD3/CD28ビーズと4日間インキュベートし、T細胞を活性化した後で、図に示されている異なる抗体の存在下でカルセイン標識CD20+Raji細胞と2時間インキュベートした。細胞死率がカルセイン放出により測定された。その結果が
図6に示される。
【0261】
T細胞活性化後(7日間):健康なドナーからの新鮮なPBMCsを組み換えIL-2およびCD3/CD28と7日間インキュベートし、T細胞を活性化した後で、図に示されている異なる抗体の存在下でカルセイン標識CD20+Raji細胞と2時間インキュベートした。細胞死率がカルセイン放出により測定された。その結果が
図7に示される。
【0262】
PBMC殺滅アッセイに示されたのと同じ条件下で、不均衡なCD20/CD3 BsMabがCD3+T細胞も殺滅するかどうかという安全性の懸念に取り組むために、各実験で、CD3+Jurkat細胞が対照として用いられた。最高抗体濃度(10μg/mL)のみが試験された。T細胞活性化の結果が
図8に示される。T細胞活性化後(4日間)の結果が
図9に示される。T細胞活性化後(7日間)の結果が
図10に示される。PBSにより処理された群のJurkat細胞の数をベースラインに設定した。従って、Jurkat細胞の数がPBS処理群と等しい場合には殺滅のパーセンテージは0になる。細胞の数がPBS処理群より多い場合には殺滅のパーセンテージはマイナスになる。
【0263】
結果としてT細胞活性化前、およびT細胞活性化4日後では、Jurkat細胞の殺滅は観察されなかった。しかしながら、Jurkat細胞の殺滅が、T細胞活性化7日後に観察され、同じ条件下ではリツマキシブおよびCD20ホモ二量体IgGはRaji細胞の殺滅を引き起こさなかった。このことは、7日後のJurkat細胞の殺滅は、T細胞スーパー活性化により引き起こされたことを示唆する。7日間活性化されたナチュラルT細胞自身も不均衡なCD20/CD3 BsMabの存在下で殺滅されたのかを更に試験するために、同じ7日間活性化されたPBMCを、図に示した異なる抗体と一晩インキュベートし、およびT細胞枯渇状況をチェックした。その結果を
図11に示す。図中のLALAはL234AおよびL235A突然変異(EUナンバリング)を伴ったCD20/CD3 BsMabである。L234AおよびL235A突然変異を伴う抗体はFcエフェクター機能を持たず、陰性対照に用いられた。
【0264】
実施例6:不均衡な二重特異性CD20/CD3抗体によるT細胞枯渇
事前に活性化されたT細胞が、不均衡なCD20/CD3 BsMabにより枯渇し得るかを試験するための実験も行われた。
【0265】
図12は、PBMC中の非活性化T細胞が、不均衡なCD20/CD3 BsMabとの一晩のインキュベーションにより枯渇することが無かったことを示す。
【0266】
実施例7:補体依存性細胞傷害の誘導
CD20/CD3 BsMabが、高い親和性でCD20と結合するアームを持つことから、CD20-アーム結合が、補体依存性細胞傷害の誘導に十分かどうかを試験するために実験を行った。この抗体を、ヒト補体濃縮血清およびCD20+Raji細胞とインキュベートした。不均衡なCD20/CD3 BsMabは、CDC有効性をリツマキシブおよびCD20ホモ二量体抗体に比べて減少させた。FACS(7AAD)による検出結果を
図13に示す。カルセイン放出による検出結果を
図14に示す。
【0267】
実施例8:安全性評価
CD3+Jurkat細胞および正常T細胞が、不均衡なCD20/CD3 BsMabにより殺滅されるかどうかも試験した。
図15は、高い用量の不均衡なCD20/CD3 BsMabがJurkat細胞に対してCDCを誘導しなかったことを示す。
【0268】
図16は、不均衡なCD20/CD3 BsMabがPBMCおよびヒト補体濃縮血清を含むヒト血清との共インキュベーション後にT細胞の死を誘導しなかったことを示す。
【0269】
実施例9:不均衡なCD20/CD3 BsMabはリツマキシブ抵抗性Raji細胞を殺滅することができる
不均衡なCD20/CD3 BsMabが、リツマキシブ抵抗性Raji細胞(RRCL)を殺滅するかどうかを試験するために、図に示される抗体の存在下で、3人の異なるドナーからの7日間活性化されたPBMCと共にRRCLをインキュベートした。不均衡なCD20/CD3 BsMabの存在下での顕著なRRCLの殺滅が観察された(
図17~19)。
【0270】
実施例10:不均衡なCD20/CD3 BsMabに対する動物試験
CD20/CD3 BsMabの動物での効果を評価するために実験を行った。
【0271】
Raji細胞、ヒトPBMC、および不均衡なCD20/CD3 BsMabを混合し、および静脈内投与により、マウスに注入した。これらのRaji細胞はルシフェラーゼにより標識されていた。治療群の各マウス(B-NDG、Biocytogen、北京、Cat#201811808)は、5x105 Raji細胞、2.5x106ヒトPBMC細胞、および60μgの抗体を投与された。0日目、2日目、3日目、および3日目の後は3日後ごとに、Raji細胞枯渇を追跡するためにマウスを画像化した。
【0272】
0日目には、ルシフェラーゼ標識Raji細胞およびヒトPBMC細胞を、リン酸緩衝生理食塩水PBS(G1群;参照;n=4)、CD20/CD3 BsMab(G2群;n=4)、またはリツマキシブ(抗CD20抗体;G3群;n=4)のいずれかと混合した。これらのマウスは静脈内(i.v.)注射の15分後に最初の画像化を行い、その後2日目、3日目、および3日目の後は3日ごとに画像化した。
【0273】
図21Aは、CD20/CD3 BsMabおよびリツマキシブは明白な毒性効果を持たなかったことを示す。
図21Bは、CD20/CD3 BsMabおよびリツマキシブの両方が腫瘍阻害効果を有し、リツマキシブは、CD20/CD3 BsMabほどは有効でなかったことを示す。腫瘍阻害効果における差は、16日目の注射後に観察された。
【0274】
実施例11:不均衡な二重特異性抗体の特性付け
精製されたCD20/CD3二重特異性抗体サンプルを特性付ける実験を行った。
【0275】
第一の、還元キャピラリー電気泳動ドデシル硫酸ナトリウム(Re-CE-SDS)が、精製されたCD20/CD3二重特異性抗体サンプルに対して行われた。結果は、3つのメインのピークがあることを示した。分子量に基づき、ピーク#1は共通軽鎖(LC)、ピーク#2および#3が2つの異なる重鎖(HC)であった(
図22A)。
【0276】
非還元CE(非Re-CE-SDS)も行った。結果は、CD20/CD3二重特異性IgGの1つのメインのピークがあることを示した(
図22B)。
図22Aおよび22Bにおける結果は、1CD20/CD3二重特異性抗体サンプルが良好な純度を持つことを示唆する。
【0277】
第二に、示差走査蛍光定量法(DSF)が、タンパク質融解温度(Tm)の測定のために行われ、および静的光散乱(SLS)が、266nmでの凝集温度(Tagg266)および473nmでの凝集温度(Tagg473)を測定するために行われた。これらのサンプルは分析のためにUNcleシステムに提出された。1℃/minの温度勾配が、DSFおよびSLSについて、20℃~95℃でのモニタリングを伴って行われた。UNcleはSLSを266nmおよび473nmで測定した。TmおよびTaggが計算され、およびUNcle分析ソフトウエアを用いて解析された。
【0278】
いくつかの試験された抗体は、2つのTmを有し、およびいくつかは3つのTmを有していた。これは、IgGが多重ドメイン構造であるためであり、CH2ドメインはPBS中で通常約70℃のTmを有し、およびCH3はより安定であり、そのTmは約80℃である。Fabは、その大きな配列変動のために約50~85℃の広い範囲のTmを有する。従って、様々な分析手法で測定されたTmの値は、通常は正式な融解温度というよりも「見かけの」転移温度である。抗体がIgG全体の場合は、しばしば2~3つのTm値がDSF測定において存在する。どのTmが、どのドメインを表すかを決定することは容易ではない。
【0279】
この二重特異性抗体の場合、86.7℃のTmがCH3ドメインのみを表す可能性がある。他のより低い1つまたは2つのTmは、Fab、CH2、またはFab+CH2を表す。
【0280】
Taggは、SLSが凝集を検出し始める温度である。Tagg266はSLSを266nmにおいて測定し、これは、より感度が高く、より小さな粒子を検出することに向いている。Tagg473は473nmで測定し、より大きな粒子を測定することに向いている。
【0281】
DSFおよびSLSデータの両方が、CD20/CD3二重特異性抗体が良好な熱安定性を有することを示している。
【0282】
【0283】
第三に、動的光散乱(DLS)は、1つのサイズ(10.15nm)の分子粒子だけを検出した。この結果は、前記サンプル中に凝集がないことを示した。
【0284】
【0285】
これらの特性付けデータは、CD20/CD3二重特異性抗体が治療的抗体として良好な発展性を有することを示唆する。
【0286】
実施例12:PD-L1およびCD55に結合する二重特異性抗体
2つのバージョンの二重特異性抗体が、PD-L1およびCD55に結合するために設計された(PD-L1/CD55 BsMab v1およびPD-L1/CD55 BsMab v2)。これらの二重特異性抗体は2つの共通軽鎖および2つの異なる重鎖を有する。
【0287】
第一のバージョンの二重特異性抗体(PD-L1/CD55 BsMab v1)の2つの重鎖および共通軽鎖の可変領域の配列が以下に示される。
【0288】
PD-L1に対するVHa(アベルマブから設計):
CD55に対するVHb(CD55 ScFVから設計):
共通VL(CD55 ScFVから設計):
【0289】
CD55 ScFVは、例えば、Identification of a human anti-CD55 single-chain Fv by subtractive panning of a phage library using tumor and nontumor cell lines, Cancer Res. 59(11), 2718-2723(1999)に記載されており、これは引用によりその全体が本明細書に組み込まれる。この親抗体の配列も、以下に比較の目的で示す。
【0290】
親PD-L1VH:
親PD-L1VL:
親CD55VH:
親CD55VL:
【0291】
アベルマブFv(VH+VL)の3DPIは9.4であり、および抗CD55Fvの3DPIは9.8である。配列の再設計後に、VHa+共通VLの3DPIは9.9であり、およびVHb+共通VLの3DPIは9.3であった。2つのVH鎖に対する突然変異が下記の表に示される。
【0292】
【0293】
【0294】
実施例13:新たに設計されたPD-L1およびCD55抗体の結合親和性
新たに設計されたPD-L1およびCD55抗体の結合親和性を決定するための実験を行った。
【0295】
設計されたVH配列(SEQ ID NO:4)および共通VL配列(SEQ IDNO:6)を含む抗PD-L1ホモ二量体IgG(PD-L1v1)は、親抗PD-L1抗体(PD-L1wt)よりも、より弱い結合親和性を有していた(
図23A)。設計されたVH配列(SEQ ID NO:5)および共通VL配列(SEQ ID NO:6)を含む抗CD55ホモ二量体IgG(CD55v1)は、親抗CD55抗体(CD55wt)と比較して同様の結合親和性を有していた(
図23B)。
【0296】
前記二重特異性抗体は、前記がん特異抗原(PD-L1)に高い親和性で結合しなければならず、かつ前記二重特異性抗体の他のアームは前記がん関連抗原(CD55)と低い親和性で結合しなければならないために、前記抗体(CD55v1およびPD-L1v1)は、この要求を満たさなかった。
【0297】
従って、前記二重特異性抗体第二のバージョンが、PD-L1およびCD55(PD-L1/CD55 BsMab v2)に結合するために設計された。第二のバージョンの二重特異性抗体用のVHaおよびVHbは、同一の第一のバージョンの二重特異性抗体のVHaおよびVHbと同一であった。しかしながら、共通軽鎖は、本明細書に記載される方法に基づいて再設計された。再設計された共通軽鎖の配列が以下に示される。
【0298】
【0299】
共通VL(SEQINNO:6)および共通VL2(SEQ ID NO:7)のアラインメントが
図24に示されている。下線のある配列が軽鎖定常領域の配列である。
【0300】
再設計されたVHおよびVLのCDR配列が下記に示される。
【0301】
【0302】
【0303】
【0304】
【0305】
更に、λ軽鎖は、ヒト血清中のκ軽鎖と比較して共通性が少ないために、実施例では、λ軽鎖の定常領域はκ軽鎖の定常領域で置き換えられた。
【0306】
第二のバージョンの抗体の結合親和性を決定するための実験を行った。設計されたVH配列(SEQ ID NO:4)および共通VL2配列(SEQ ID NO:7)を含む抗PD-L1ホモ二量体IgG(PD-L1v2)は、親抗PD-L1抗体(PD-L1wt)と比較して、同様の結合親和性を有した(
図25A)。設計されたVH配列(SEQ ID NO:5)および共通VL2配列(SEQ ID NO:7)を含む抗CD55ホモ二量体IgG(CD55v2)は、親抗CD55抗体(CD55wt)と比較して、より弱い結合親和性を有した(
図25B)。従って、再設計された配列を持った抗体の結合親和性は要求を満たし、PD-L1/CD55 BsMab v2が、更なる実験のために選ばれた。PD-L1/CD55 BsMab v2は、SEQ ID NO:7を含む2つの共通軽鎖(κ鎖)、SEQ ID NO:4を含む1つのIgG1重鎖、およびSEQ ID NO:5を含む1つのIgG1重鎖を有する。更に、PD-L1に対する重鎖はY407T突然変異(EUナンバリング)を有し、およびCD55に対するIgG1重鎖は、T366Y突然変異(EUナンバリング)を有する。
【0307】
これらの重鎖および軽鎖の全長の配列を下記に示す。
【0308】
PD-L1重鎖の全長:
CD55重鎖の全長:
CD55共通軽鎖バージョン1の全長:
CD55共通軽鎖バージョン2の全長:
【0309】
更に、本明細書に記載された抗体のpIも測定した。この情報は、溶出のための適切なpHを選択するために重要である。
【0310】
【0311】
実施例14:PD-L1/CD55二重特異性抗体についての補体依存性細胞傷害(CDC)
PD-L1/CD55二重特異性抗体についての補体依存性細胞傷害を試験する実験を行った。これらの親抗体が、比較の目的で含まれた。アッセイは、本明細書に記載されるプロトコルに基づいてMDA231細胞で行われ、および各抗体の濃度は10μg/mLであった。結果が
図26A~26Bに示されている。
【0312】
図に示されるように、抗PD-L1(PD-L1wt)および抗CD55(CD55wt)親抗体の両方がCDCを誘導できる。PD-L1/CD55二重特異性抗体v1は、親抗PD-L1抗体(PD-L1wt)および親抗CD55抗体(CD55wt)に比較して、遥かに弱いCDCを有した。対照的に、PD-L1/CD55二重特異性抗体v2は、第一のバージョン、親抗PD-L1抗体(PD-L1wt)および親抗CD55抗体(CD55wt)に比べて遥かに高いCDCを有していた。PD-L1/CD55二重特異性抗体v2のCDC効果は、第一のバージョンの二重特異性抗体のCDCの有効性に比べて約4.5倍高かった。
【0313】
実施例15:PD-L1/CD55二重特異性抗体により誘導されるインターナリゼーション
PD-L1/CD55二重特異性抗体により誘導されるインターナリゼーションを評価するために実験を行った。
【0314】
インターナリゼーションアッセイは、2つのバージョンのPD-L1/CD55二重特異性抗体およびそれらの親抗体に対して行われた。MDA231細胞が第一のインターナリゼーション実験(
図27A)に用いられ、およびSIHA細胞が第二のインターナリゼーション実験(
図27B)に用いられた。細胞は、20μg/mL抗体と混合され、および37℃で30分間インキュベートされた。次いでpHrodo標識二次抗体を加え、細胞を37℃で24時間インキュベートした。細胞を次いで収集しFACSで分析した。
【0315】
CD55はエコーウイルスおよびコクサッキーBウイルス感染の受容体であり、インターナリゼーション能を持った受容体として知られる。従って、抗CD55親モノクローナル抗体(CD55wt)は、CD55の早いインターナリゼーションを引き起こす。
図27Aに示されるように、同様のPD-L1およびCD55発現レベルを有するMDA231細胞では、抗PD-L1抗体により引き起こされたインターナリゼーションは、CD55のものよりも遥かに遅かった。しかしながら、PD-L1/CD55二重特異性抗体v1およびv2の両方がインターナリゼーションを引き起こすことができ、およびこのインターナリゼーション速度は抗CD55親モノクローナル抗体のものに匹敵した。
【0316】
図27Bでは、SIHA細胞においてCD55の発現はPD-L1よりも高い。PD-L1/CD55二重特異性抗体v1およびv2は、親抗PD-L1抗体および親抗CD55抗体よりも、より良好なインターナリゼーションを誘導できる。それにもかかわらず、PD-L1/CD55 BsMab v2のv1に比較して低下したCD55との結合を考慮すると、PD-L1/CD55 BsMab v2は、インビボでより良好な効力/安全性バランスを持つはずであり、かつPD-L1/CD55 BsMab v1よりも安全であるはずである。従って、PD-L1/CD55 BsMabが、標的がん細胞の死を3つの異なるレベルで誘導することが期待される:(1)PD1/PD-L1相互作用をブロックする;(2)PD-L1インターナリゼーションを誘導する;3)薬剤と複合体化されたときに、抗体薬剤複合体ががん細胞を殺滅し得る。
【0317】
その他の実施例
本発明は、その詳細な説明と合わせて説明されたが、前述の説明は添付の特許請求の範囲によって定義される発明の範囲を例示するものであり、限定するものではないことを理解されたい。その他の態様、利点および修正は、添付の特許請求の範囲内である。
【0318】
配列情報
SEQUENCE LISTING
<110> AB STUDIO INC.
<120> BISPECIFIC ANTIBODIES AND USES THEREOF
<150> US 62/654,112
<151> 2018-04-06
<150> US 62/539,970
<151> 2017-08-01
<160> 68
<170> PatentIn version 3.5
<210> 1
<211> 121
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic polypeptide
<400> 1
Gln Val Gln Leu Gln Gln Pro Gly Ala Glu Leu Val Lys Pro Gly Ala
1 5 10 15
Ser Val Lys Met Ser Cys Lys Ala Ser Gly Tyr Thr Phe Thr Ser Tyr
20 25 30
Asn Met His Trp Val Lys Gln Thr Pro Gly Arg Gly Leu Glu Trp Ile
35 40 45
Gly Ala Ile Tyr Pro Gly Asn Gly Asp Thr Ser Tyr Asn Gln Lys Phe
50 55 60
Lys Gly Lys Ala Thr Leu Thr Ala Asp Lys Ser Ser Ser Thr Ala Tyr
65 70 75 80
Met Gln Leu Ser Ser Leu Arg Ser Glu Asp Ser Ala Val Tyr Tyr Cys
85 90 95
Ala Arg Ser Thr Tyr Tyr Gly Gly Asp Trp Tyr Phe Asn Val Trp Gly
100 105 110
Ala Gly Thr Thr Val Thr Val Ser Ala
115 120
<210> 2
<211> 119
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic polypeptide
<400> 2
Glu Val Gln Leu Gln Glu Ser Gly Ala Glu Leu Ala Arg Pro Gly Ala
1 5 10 15
Ser Val Lys Met Ser Cys Lys Ala Ser Gly Tyr Thr Phe Thr Ser Tyr
20 25 30
Thr Met His Trp Val Lys Gln Arg Pro Gly Glu Gly Leu Glu Trp Ile
35 40 45
Gly Tyr Ile Asn Pro Ser Ser Gly Tyr Thr Lys Tyr Asn Gln Lys Phe
50 55 60
Lys Asp Lys Ala Thr Leu Thr Ala Asp Lys Ser Ser Ser Thr Ala Tyr
65 70 75 80
Met Glu Leu Ser Ser Leu Thr Ser Glu Asp Ser Ala Val Tyr Tyr Cys
85 90 95
Ala Arg Trp Gln Asp Tyr Asp Val Tyr Phe Asp Tyr Trp Gly Glu Gly
100 105 110
Thr Thr Leu Thr Val Ser Ser
115
<210> 3
<211> 107
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic polypeptide
<400> 3
Gln Ile Val Leu Ser Gln Ser Pro Ala Ile Leu Ser Ala Ser Pro Gly
1 5 10 15
Glu Lys Val Thr Met Thr Cys Arg Ala Ser Ser Ser Val Ser Tyr Ile
20 25 30
His Trp Phe Gln Gln Lys Pro Gly Ser Ser Pro Lys Pro Trp Ile Tyr
35 40 45
Ala Thr Ser Asn Leu Ala Ser Gly Val Pro Val Arg Phe Ser Gly Ser
50 55 60
Gly Ser Gly Thr Ser Tyr Ser Leu Thr Ile Ser Arg Val Glu Ala Glu
65 70 75 80
Asp Ala Ala Thr Tyr Tyr Cys Gln Gln Trp Thr Ser Asn Pro Pro Thr
85 90 95
Phe Gly Gly Gly Thr Lys Leu Glu Ile Lys Arg
100 105
<210> 4
<211> 120
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic polypeptide
<400> 4
Glu Val Gln Leu Leu Glu Ser Gly Gly Gly Leu Val Glu Pro Gly Gly
1 5 10 15
Ser Leu Arg Leu Ser Cys Ala Ala Ser Gly Phe Thr Phe Ser Ser Tyr
20 25 30
Ile Met Met Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Lys Gly Leu Glu Trp Val
35 40 45
Ser Ser Ile Tyr Pro Ser Gly Gly Ile Thr Phe Tyr Ala Asp Thr Val
50 55 60
Lys Gly Arg Phe Thr Ile Ser Arg Asp Asn Ser Lys Asn Thr Leu Tyr
65 70 75 80
Leu Gln Met Asn Ser Leu Arg Ala Glu Asp Thr Ala Val Tyr Tyr Cys
85 90 95
Ala Arg Ile Lys Leu Gly Thr Val Thr Thr Val Asp Tyr Trp Gly Glu
100 105 110
Gly Thr Leu Val Thr Val Ser Ser
115 120
<210> 5
<211> 121
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic polypeptide
<400> 5
Gln Val Lys Leu Gln Glu Ser Gly Gly Gly Leu Val Lys Pro Gly Gly
1 5 10 15
Ser Leu Lys Leu Ser Cys Ala Ala Ser Gly Phe Thr Phe Ser Gly Tyr
20 25 30
Gly Met Ser Trp Ile Arg Gln Thr Pro Gly Lys Arg Leu Glu Trp Val
35 40 45
Ala Thr Ile Asn Ser Gly Gly Ser Tyr Thr Tyr Tyr Ser Asp Ser Val
50 55 60
Lys Gly Arg Phe Thr Ile Ser Arg Asp Asn Val Lys Asn Thr Leu Tyr
65 70 75 80
Leu Gln Met Ser Ser Leu Lys Ser Glu Asp Thr Ala Met Tyr Tyr Cys
85 90 95
Ala Arg Arg Asn Gly Thr Leu Tyr Tyr Tyr Leu Met Asp Tyr Trp Gly
100 105 110
Arg Gly Thr Leu Val Thr Val Ser Ser
115 120
<210> 6
<211> 111
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic polypeptide
<400> 6
Gln Ser Ala Leu Thr Gln Pro Ala Ser Val Ser Gly Ser Pro Gly Gln
1 5 10 15
Ser Ile Thr Ile Ser Cys Thr Gly Thr Ser Ser Asp Val Gly Gly Tyr
20 25 30
Asn Tyr Val Ser Trp Tyr Gln Gln His Pro Gly Lys Ala Pro Lys Leu
35 40 45
Met Ile Tyr Asp Val Ser Lys Arg Pro Ser Gly Val Ser Asn Arg Phe
50 55 60
Ser Gly Ser Lys Ser Gly Asn Thr Ala Ser Leu Thr Ile Ser Gly Leu
65 70 75 80
Gln Ala Glu Asp Glu Ala Asp Tyr Tyr Cys Ser Ser Tyr Thr Ser Ala
85 90 95
Ser Thr Arg Ile Phe Gly Gly Gly Thr Lys Val Thr Val Leu Arg
100 105 110
<210> 7
<211> 111
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic polypeptide
<400> 7
Gln Ser Ala Leu Thr Gln Pro Ala Ser Val Ser Gly Ser Pro Gly Gln
1 5 10 15
Ser Ile Thr Ile Ser Cys Thr Gly Thr Ser Ser Asp Val Gly Gly Tyr
20 25 30
Asn Tyr Val Ser Trp Tyr Gln Gln His Pro Gly Lys Ala Pro Lys Leu
35 40 45
Met Ile Tyr Asp Val Ser Asn Arg Pro Ser Gly Val Ser Asn Arg Phe
50 55 60
Ser Gly Ser Lys Ser Gly Asn Thr Ala Ser Leu Thr Ile Ser Gly Leu
65 70 75 80
Gln Ala Glu Asp Glu Ala Asp Tyr Tyr Cys Ser Ser Tyr Thr Ser Ser
85 90 95
Ser Thr Arg Ile Phe Gly Gly Gly Thr Lys Val Thr Val Leu Arg
100 105 110
<210> 8
<211> 121
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic polypeptide
<400> 8
Gln Val Gln Leu Gln Gln Pro Gly Ala Glu Leu Val Lys Pro Gly Ala
1 5 10 15
Ser Val Lys Met Ser Cys Lys Ala Ser Gly Tyr Thr Phe Thr Ser Tyr
20 25 30
Asn Met His Trp Val Lys Gln Thr Pro Gly Arg Gly Leu Glu Trp Ile
35 40 45
Gly Ala Ile Tyr Pro Gly Asn Gly Asp Thr Ser Tyr Asn Gln Lys Phe
50 55 60
Lys Gly Lys Ala Thr Leu Thr Ala Asp Lys Ser Ser Ser Thr Ala Tyr
65 70 75 80
Met Gln Leu Ser Ser Leu Thr Ser Glu Asp Ser Ala Val Tyr Tyr Cys
85 90 95
Ala Arg Ser Thr Tyr Tyr Gly Gly Asp Trp Tyr Phe Asn Val Trp Gly
100 105 110
Ala Gly Thr Thr Val Thr Val Ser Ala
115 120
<210> 9
<211> 107
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic polypeptide
<400> 9
Gln Ile Val Leu Ser Gln Ser Pro Ala Ile Leu Ser Ala Ser Pro Gly
1 5 10 15
Glu Lys Val Thr Met Thr Cys Arg Ala Ser Ser Ser Val Ser Tyr Ile
20 25 30
His Trp Phe Gln Gln Lys Pro Gly Ser Ser Pro Lys Pro Trp Ile Tyr
35 40 45
Ala Thr Ser Asn Leu Ala Ser Gly Val Pro Val Arg Phe Ser Gly Ser
50 55 60
Gly Ser Gly Thr Ser Tyr Ser Leu Thr Ile Ser Arg Val Glu Ala Glu
65 70 75 80
Asp Ala Ala Thr Tyr Tyr Cys Gln Gln Trp Thr Ser Asn Pro Pro Thr
85 90 95
Phe Gly Gly Gly Thr Lys Leu Glu Ile Lys Arg
100 105
<210> 10
<211> 119
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic polypeptide
<400> 10
Gln Val Gln Leu Gln Gln Ser Gly Ala Glu Leu Ala Arg Pro Gly Ala
1 5 10 15
Ser Val Lys Met Ser Cys Lys Ala Ser Gly Tyr Thr Phe Thr Ser Tyr
20 25 30
Thr Met His Trp Val Lys Gln Arg Pro Gly Gln Gly Leu Glu Trp Ile
35 40 45
Gly Tyr Ile Asn Pro Ser Ser Gly Tyr Thr Lys Tyr Asn Gln Lys Phe
50 55 60
Lys Asp Lys Ala Thr Leu Thr Ala Asp Lys Ser Ser Ser Thr Ala Tyr
65 70 75 80
Met Gln Leu Ser Ser Leu Thr Ser Glu Asp Ser Ala Val Tyr Tyr Cys
85 90 95
Ala Arg Trp Gln Asp Tyr Asp Val Tyr Phe Asp Tyr Trp Gly Gln Gly
100 105 110
Thr Thr Leu Thr Val Ser Ser
115
<210> 11
<211> 107
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic polypeptide
<400> 11
Gln Ile Val Leu Ser Gln Ser Pro Ala Ile Leu Ser Ala Ser Pro Gly
1 5 10 15
Glu Lys Val Thr Met Thr Cys Arg Ala Ser Ser Ser Val Ser Tyr Met
20 25 30
His Trp Tyr Gln Gln Lys Pro Gly Ser Ser Pro Lys Pro Trp Ile Tyr
35 40 45
Ala Thr Ser Asn Leu Ala Ser Gly Val Pro Ala Arg Phe Ser Gly Ser
50 55 60
Gly Ser Gly Thr Ser Tyr Ser Leu Thr Ile Ser Arg Val Glu Ala Glu
65 70 75 80
Asp Ala Ala Thr Tyr Tyr Cys Gln Gln Trp Ser Ser Asn Pro Pro Thr
85 90 95
Phe Gly Gly Gly Thr Lys Leu Glu Thr Lys Arg
100 105
<210> 12
<211> 120
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic polypeptide
<400> 12
Glu Val Gln Leu Leu Glu Ser Gly Gly Gly Leu Val Gln Pro Gly Gly
1 5 10 15
Ser Leu Arg Leu Ser Cys Ala Ala Ser Gly Phe Thr Phe Ser Ser Tyr
20 25 30
Ile Met Met Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Lys Gly Leu Glu Trp Val
35 40 45
Ser Ser Ile Tyr Pro Ser Gly Gly Ile Thr Phe Tyr Ala Asp Thr Val
50 55 60
Lys Gly Arg Phe Thr Ile Ser Arg Asp Asn Ser Lys Asn Thr Leu Tyr
65 70 75 80
Leu Gln Met Asn Ser Leu Arg Ala Glu Asp Thr Ala Val Tyr Tyr Cys
85 90 95
Ala Arg Ile Lys Leu Gly Thr Val Thr Thr Val Asp Tyr Trp Gly Gln
100 105 110
Gly Thr Leu Val Thr Val Ser Ser
115 120
<210> 13
<211> 110
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic polypeptide
<400> 13
Gln Ser Ala Leu Thr Gln Pro Ala Ser Val Ser Gly Ser Pro Gly Gln
1 5 10 15
Ser Ile Thr Ile Ser Cys Thr Gly Thr Ser Ser Asp Val Gly Gly Tyr
20 25 30
Asn Tyr Val Ser Trp Tyr Gln Gln His Pro Gly Lys Ala Pro Lys Leu
35 40 45
Met Ile Tyr Asp Val Ser Asn Arg Pro Ser Gly Val Ser Asn Arg Phe
50 55 60
Ser Gly Ser Lys Ser Gly Asn Thr Ala Ser Leu Thr Ile Ser Gly Leu
65 70 75 80
Gln Ala Glu Asp Glu Ala Asp Tyr Tyr Cys Ser Ser Tyr Thr Ser Ser
85 90 95
Ser Thr Arg Val Phe Gly Thr Gly Thr Lys Val Thr Val Leu
100 105 110
<210> 14
<211> 121
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic polypeptide
<400> 14
Gln Val Lys Leu Gln Glu Ser Gly Gly Gly Leu Val Gln Pro Gly Gly
1 5 10 15
Ser Leu Lys Leu Ser Cys Ala Ala Ser Gly Phe Thr Phe Ser Gly Tyr
20 25 30
Gly Met Ser Trp Ile Arg Gln Thr Pro Asp Lys Arg Leu Glu Trp Val
35 40 45
Ala Thr Ile Asn Ser Gly Gly Ser Tyr Thr Tyr Tyr Ser Asp Ser Val
50 55 60
Lys Gly Arg Phe Thr Ile Ser Arg Asp Asn Val Lys Asn Thr Leu Tyr
65 70 75 80
Leu Gln Met Ser Ser Leu Lys Ser Glu Asp Thr Ala Met Tyr Tyr Cys
85 90 95
Ala Arg Arg Asn Gly Thr Leu Tyr Tyr Tyr Leu Met Asp Tyr Trp Gly
100 105 110
Arg Gly Thr Leu Val Thr Val Ser Ser
115 120
<210> 15
<211> 110
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic polypeptide
<400> 15
Gln Ser Val Leu Thr Gln Pro Pro Ser Ala Ser Gly Ser Pro Gly Gln
1 5 10 15
Ser Val Thr Ile Ser Cys Thr Gly Thr Ser Ser Asp Val Gly Gly Tyr
20 25 30
Asn Tyr Val Ser Trp Tyr Gln Gln His Pro Gly Lys Ala Pro Lys Phe
35 40 45
Met Ile Tyr Asp Val Ser Lys Arg Pro Ser Gly Val Ser Asn Arg Phe
50 55 60
Ser Gly Ser Lys Ser Gly Asn Thr Ala Ser Leu Thr Ile Ser Gly Val
65 70 75 80
Gln Ala Glu Asp Glu Ala Asp Tyr Tyr Cys Ser Ser Tyr Thr Ser Ala
85 90 95
Ser Thr Val Ile Phe Gly Gly Gly Thr Lys Leu Thr Val Leu
100 105 110
<210> 16
<211> 5
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 16
Ser Tyr Asn Met His
1 5
<210> 17
<211> 17
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 17
Ala Ile Tyr Pro Gly Asn Gly Asp Thr Ser Tyr Asn Gln Lys Phe Lys
1 5 10 15
Gly
<210> 18
<211> 12
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 18
Ser Thr Tyr Tyr Gly Gly Asp Trp Tyr Phe Asn Val
1 5 10
<210> 19
<211> 7
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 19
Gly Tyr Thr Phe Thr Ser Tyr
1 5
<210> 20
<211> 6
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 20
Tyr Pro Gly Asn Gly Asp
1 5
<210> 21
<211> 12
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 21
Ser Thr Tyr Tyr Gly Gly Asp Trp Tyr Phe Asn Val
1 5 10
<210> 22
<211> 5
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 22
Ser Tyr Thr Met His
1 5
<210> 23
<211> 17
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 23
Tyr Ile Asn Pro Ser Ser Gly Tyr Thr Lys Tyr Asn Gln Lys Phe Lys
1 5 10 15
Asp
<210> 24
<211> 10
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 24
Trp Gln Asp Tyr Asp Val Tyr Phe Asp Tyr
1 5 10
<210> 25
<211> 7
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 25
Gly Tyr Thr Phe Thr Ser Tyr
1 5
<210> 26
<211> 6
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 26
Asn Pro Ser Ser Gly Tyr
1 5
<210> 27
<211> 10
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 27
Trp Gln Asp Tyr Asp Val Tyr Phe Asp Tyr
1 5 10
<210> 28
<211> 10
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 28
Arg Ala Ser Ser Ser Val Ser Tyr Ile His
1 5 10
<210> 29
<211> 7
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 29
Ala Thr Ser Asn Leu Ala Ser
1 5
<210> 30
<211> 9
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 30
Gln Gln Trp Thr Ser Asn Pro Pro Thr
1 5
<210> 31
<211> 10
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 31
Arg Ala Ser Ser Ser Val Ser Tyr Ile His
1 5 10
<210> 32
<211> 7
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 32
Ala Thr Ser Asn Leu Ala Ser
1 5
<210> 33
<211> 9
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 33
Gln Gln Trp Thr Ser Asn Pro Pro Thr
1 5
<210> 34
<211> 451
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic polypeptide
<400> 34
Gln Val Gln Leu Gln Gln Pro Gly Ala Glu Leu Val Lys Pro Gly Ala
1 5 10 15
Ser Val Lys Met Ser Cys Lys Ala Ser Gly Tyr Thr Phe Thr Ser Tyr
20 25 30
Asn Met His Trp Val Lys Gln Thr Pro Gly Arg Gly Leu Glu Trp Ile
35 40 45
Gly Ala Ile Tyr Pro Gly Asn Gly Asp Thr Ser Tyr Asn Gln Lys Phe
50 55 60
Lys Gly Lys Ala Thr Leu Thr Ala Asp Lys Ser Ser Ser Thr Ala Tyr
65 70 75 80
Met Gln Leu Ser Ser Leu Arg Ser Glu Asp Ser Ala Val Tyr Tyr Cys
85 90 95
Ala Arg Ser Thr Tyr Tyr Gly Gly Asp Trp Tyr Phe Asn Val Trp Gly
100 105 110
Ala Gly Thr Thr Val Thr Val Ser Ala Ala Ser Thr Lys Gly Pro Ser
115 120 125
Val Phe Pro Leu Ala Pro Ser Ser Lys Ser Thr Ser Gly Gly Thr Ala
130 135 140
Ala Leu Gly Cys Leu Val Lys Asp Tyr Phe Pro Glu Pro Val Thr Val
145 150 155 160
Ser Trp Asn Ser Gly Ala Leu Thr Ser Gly Val His Thr Phe Pro Ala
165 170 175
Val Leu Gln Ser Ser Gly Leu Tyr Ser Leu Ser Ser Val Val Thr Val
180 185 190
Pro Ser Ser Ser Leu Gly Thr Gln Thr Tyr Ile Cys Asn Val Asn His
195 200 205
Lys Pro Ser Asn Thr Lys Val Asp Lys Lys Val Glu Pro Lys Ser Cys
210 215 220
Asp Lys Thr His Thr Cys Pro Pro Cys Pro Ala Pro Glu Leu Leu Gly
225 230 235 240
Gly Pro Ser Val Phe Leu Phe Pro Pro Lys Pro Lys Asp Thr Leu Met
245 250 255
Ile Ser Arg Thr Pro Glu Val Thr Cys Val Val Val Asp Val Ser His
260 265 270
Glu Asp Pro Glu Val Lys Phe Asn Trp Tyr Val Asp Gly Val Glu Val
275 280 285
His Asn Ala Lys Thr Lys Pro Arg Glu Glu Gln Tyr Asn Ser Thr Tyr
290 295 300
Arg Val Val Ser Val Leu Thr Val Leu His Gln Asp Trp Leu Asn Gly
305 310 315 320
Lys Glu Tyr Lys Cys Lys Val Ser Asn Lys Ala Leu Pro Ala Pro Ile
325 330 335
Glu Lys Thr Ile Ser Lys Ala Lys Gly Gln Pro Arg Glu Pro Gln Val
340 345 350
Tyr Thr Leu Pro Pro Ser Arg Glu Glu Met Thr Lys Asn Gln Val Ser
355 360 365
Leu Thr Cys Leu Val Lys Gly Phe Tyr Pro Ser Asp Ile Ala Val Glu
370 375 380
Trp Glu Ser Asn Gly Gln Pro Glu Asn Asn Tyr Lys Thr Thr Pro Pro
385 390 395 400
Val Leu Asp Ser Asp Gly Ser Phe Phe Leu Tyr Ser Lys Leu Thr Val
405 410 415
Asp Lys Ser Arg Trp Gln Gln Gly Asn Val Phe Ser Cys Ser Val Met
420 425 430
His Glu Ala Leu His Asn His Tyr Thr Gln Lys Ser Leu Ser Leu Ser
435 440 445
Pro Gly Lys
450
<210> 35
<211> 451
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic polypeptide
<400> 35
Gln Val Gln Leu Gln Gln Pro Gly Ala Glu Leu Val Lys Pro Gly Ala
1 5 10 15
Ser Val Lys Met Ser Cys Lys Ala Ser Gly Tyr Thr Phe Thr Ser Tyr
20 25 30
Asn Met His Trp Val Lys Gln Thr Pro Gly Arg Gly Leu Glu Trp Ile
35 40 45
Gly Ala Ile Tyr Pro Gly Asn Gly Asp Thr Ser Tyr Asn Gln Lys Phe
50 55 60
Lys Gly Lys Ala Thr Leu Thr Ala Asp Lys Ser Ser Ser Thr Ala Tyr
65 70 75 80
Met Gln Leu Ser Ser Leu Arg Ser Glu Asp Ser Ala Val Tyr Tyr Cys
85 90 95
Ala Arg Ser Thr Tyr Tyr Gly Gly Asp Trp Tyr Phe Asn Val Trp Gly
100 105 110
Ala Gly Thr Thr Val Thr Val Ser Ala Ala Ser Thr Lys Gly Pro Ser
115 120 125
Val Phe Pro Leu Ala Pro Ser Ser Lys Ser Thr Ser Gly Gly Thr Ala
130 135 140
Ala Leu Gly Cys Leu Val Lys Asp Tyr Phe Pro Glu Pro Val Thr Val
145 150 155 160
Ser Trp Asn Ser Gly Ala Leu Thr Ser Gly Val His Thr Phe Pro Ala
165 170 175
Val Leu Gln Ser Ser Gly Leu Tyr Ser Leu Ser Ser Val Val Thr Val
180 185 190
Pro Ser Ser Ser Leu Gly Thr Gln Thr Tyr Ile Cys Asn Val Asn His
195 200 205
Lys Pro Ser Asn Thr Lys Val Asp Lys Lys Val Glu Pro Lys Ser Cys
210 215 220
Asp Lys Thr His Thr Cys Pro Pro Cys Pro Ala Pro Glu Leu Leu Gly
225 230 235 240
Gly Pro Ser Val Phe Leu Phe Pro Pro Lys Pro Lys Asp Thr Leu Met
245 250 255
Ile Ser Arg Thr Pro Glu Val Thr Cys Val Val Val Asp Val Ser His
260 265 270
Glu Asp Pro Glu Val Lys Phe Asn Trp Tyr Val Asp Gly Val Glu Val
275 280 285
His Asn Ala Lys Thr Lys Pro Arg Glu Glu Gln Tyr Asn Ser Thr Tyr
290 295 300
Arg Val Val Ser Val Leu Thr Val Leu His Gln Asp Trp Leu Asn Gly
305 310 315 320
Lys Glu Tyr Lys Cys Lys Val Ser Asn Lys Ala Leu Pro Ala Pro Ile
325 330 335
Glu Lys Thr Ile Ser Lys Ala Lys Gly Gln Pro Arg Glu Pro Gln Val
340 345 350
Tyr Thr Leu Pro Pro Ser Arg Glu Glu Met Thr Lys Asn Gln Val Ser
355 360 365
Leu Thr Cys Leu Val Lys Gly Phe Tyr Pro Ser Asp Ile Ala Val Glu
370 375 380
Trp Glu Ser Asn Gly Gln Pro Glu Asn Asn Tyr Lys Thr Thr Pro Pro
385 390 395 400
Val Leu Asp Ser Asp Gly Ser Phe Phe Leu Thr Ser Lys Leu Thr Val
405 410 415
Asp Lys Ser Arg Trp Gln Gln Gly Asn Val Phe Ser Cys Ser Val Met
420 425 430
His Glu Ala Leu His Asn His Tyr Thr Gln Lys Ser Leu Ser Leu Ser
435 440 445
Pro Gly Lys
450
<210> 36
<211> 451
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic polypeptide
<400> 36
Gln Val Gln Leu Gln Gln Pro Gly Ala Glu Leu Val Lys Pro Gly Ala
1 5 10 15
Ser Val Lys Met Ser Cys Lys Ala Ser Gly Tyr Thr Phe Thr Ser Tyr
20 25 30
Asn Met His Trp Val Lys Gln Thr Pro Gly Arg Gly Leu Glu Trp Ile
35 40 45
Gly Ala Ile Tyr Pro Gly Asn Gly Asp Thr Ser Tyr Asn Gln Lys Phe
50 55 60
Lys Gly Lys Ala Thr Leu Thr Ala Asp Lys Ser Ser Ser Thr Ala Tyr
65 70 75 80
Met Gln Leu Ser Ser Leu Arg Ser Glu Asp Ser Ala Val Tyr Tyr Cys
85 90 95
Ala Arg Ser Thr Tyr Tyr Gly Gly Asp Trp Tyr Phe Asn Val Trp Gly
100 105 110
Ala Gly Thr Thr Val Thr Val Ser Ala Ala Ser Thr Lys Gly Pro Ser
115 120 125
Val Phe Pro Leu Ala Pro Ser Ser Lys Ser Thr Ser Gly Gly Thr Ala
130 135 140
Ala Leu Gly Cys Leu Val Lys Asp Tyr Phe Pro Glu Pro Val Thr Val
145 150 155 160
Ser Trp Asn Ser Gly Ala Leu Thr Ser Gly Val His Thr Phe Pro Ala
165 170 175
Val Leu Gln Ser Ser Gly Leu Tyr Ser Leu Ser Ser Val Val Thr Val
180 185 190
Pro Ser Ser Ser Leu Gly Thr Gln Thr Tyr Ile Cys Asn Val Asn His
195 200 205
Lys Pro Ser Asn Thr Lys Val Asp Lys Lys Val Glu Pro Lys Ser Cys
210 215 220
Asp Lys Thr His Thr Cys Pro Pro Cys Pro Ala Pro Glu Leu Leu Gly
225 230 235 240
Gly Pro Ser Val Phe Leu Phe Pro Pro Lys Pro Lys Asp Thr Leu Met
245 250 255
Ile Ser Arg Thr Pro Glu Val Thr Cys Val Val Val Asp Val Ser His
260 265 270
Glu Asp Pro Glu Val Lys Phe Asn Trp Tyr Val Asp Gly Val Glu Val
275 280 285
His Asn Ala Lys Thr Lys Pro Arg Glu Glu Gln Tyr Asn Ser Thr Tyr
290 295 300
Arg Val Val Ser Val Leu Thr Val Leu His Gln Asp Trp Leu Asn Gly
305 310 315 320
Lys Glu Tyr Lys Cys Lys Val Ser Asn Lys Ala Leu Pro Ala Pro Ile
325 330 335
Glu Lys Thr Ile Ser Lys Ala Lys Gly Gln Pro Arg Glu Pro Gln Val
340 345 350
Tyr Thr Leu Pro Pro Ser Arg Glu Glu Met Thr Lys Asn Gln Val Ser
355 360 365
Leu Tyr Cys Leu Val Lys Gly Phe Tyr Pro Ser Asp Ile Ala Val Glu
370 375 380
Trp Glu Ser Asn Gly Gln Pro Glu Asn Asn Tyr Lys Thr Thr Pro Pro
385 390 395 400
Val Leu Asp Ser Asp Gly Ser Phe Phe Leu Tyr Ser Lys Leu Thr Val
405 410 415
Asp Lys Ser Arg Trp Gln Gln Gly Asn Val Phe Ser Cys Ser Val Met
420 425 430
His Glu Ala Leu His Asn His Tyr Thr Gln Lys Ser Leu Ser Leu Ser
435 440 445
Pro Gly Lys
450
<210> 37
<211> 449
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic polypeptide
<400> 37
Glu Val Gln Leu Gln Glu Ser Gly Ala Glu Leu Ala Arg Pro Gly Ala
1 5 10 15
Ser Val Lys Met Ser Cys Lys Ala Ser Gly Tyr Thr Phe Thr Ser Tyr
20 25 30
Thr Met His Trp Val Lys Gln Arg Pro Gly Glu Gly Leu Glu Trp Ile
35 40 45
Gly Tyr Ile Asn Pro Ser Ser Gly Tyr Thr Lys Tyr Asn Gln Lys Phe
50 55 60
Lys Asp Lys Ala Thr Leu Thr Ala Asp Lys Ser Ser Ser Thr Ala Tyr
65 70 75 80
Met Glu Leu Ser Ser Leu Thr Ser Glu Asp Ser Ala Val Tyr Tyr Cys
85 90 95
Ala Arg Trp Gln Asp Tyr Asp Val Tyr Phe Asp Tyr Trp Gly Glu Gly
100 105 110
Thr Thr Leu Thr Val Ser Ser Ala Ser Thr Lys Gly Pro Ser Val Phe
115 120 125
Pro Leu Ala Pro Ser Ser Lys Ser Thr Ser Gly Gly Thr Ala Ala Leu
130 135 140
Gly Cys Leu Val Lys Asp Tyr Phe Pro Glu Pro Val Thr Val Ser Trp
145 150 155 160
Asn Ser Gly Ala Leu Thr Ser Gly Val His Thr Phe Pro Ala Val Leu
165 170 175
Gln Ser Ser Gly Leu Tyr Ser Leu Ser Ser Val Val Thr Val Pro Ser
180 185 190
Ser Ser Leu Gly Thr Gln Thr Tyr Ile Cys Asn Val Asn His Lys Pro
195 200 205
Ser Asn Thr Lys Val Asp Lys Lys Val Glu Pro Lys Ser Cys Asp Lys
210 215 220
Thr His Thr Cys Pro Pro Cys Pro Ala Pro Glu Leu Leu Gly Gly Pro
225 230 235 240
Ser Val Phe Leu Phe Pro Pro Lys Pro Lys Asp Thr Leu Met Ile Ser
245 250 255
Arg Thr Pro Glu Val Thr Cys Val Val Val Asp Val Ser His Glu Asp
260 265 270
Pro Glu Val Lys Phe Asn Trp Tyr Val Asp Gly Val Glu Val His Asn
275 280 285
Ala Lys Thr Lys Pro Arg Glu Glu Gln Tyr Asn Ser Thr Tyr Arg Val
290 295 300
Val Ser Val Leu Thr Val Leu His Gln Asp Trp Leu Asn Gly Lys Glu
305 310 315 320
Tyr Lys Cys Lys Val Ser Asn Lys Ala Leu Pro Ala Pro Ile Glu Lys
325 330 335
Thr Ile Ser Lys Ala Lys Gly Gln Pro Arg Glu Pro Gln Val Tyr Thr
340 345 350
Leu Pro Pro Ser Arg Glu Glu Met Thr Lys Asn Gln Val Ser Leu Thr
355 360 365
Cys Leu Val Lys Gly Phe Tyr Pro Ser Asp Ile Ala Val Glu Trp Glu
370 375 380
Ser Asn Gly Gln Pro Glu Asn Asn Tyr Lys Thr Thr Pro Pro Val Leu
385 390 395 400
Asp Ser Asp Gly Ser Phe Phe Leu Tyr Ser Lys Leu Thr Val Asp Lys
405 410 415
Ser Arg Trp Gln Gln Gly Asn Val Phe Ser Cys Ser Val Met His Glu
420 425 430
Ala Leu His Asn His Tyr Thr Gln Lys Ser Leu Ser Leu Ser Pro Gly
435 440 445
Lys
<210> 38
<211> 449
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic polypeptide
<400> 38
Glu Val Gln Leu Gln Glu Ser Gly Ala Glu Leu Ala Arg Pro Gly Ala
1 5 10 15
Ser Val Lys Met Ser Cys Lys Ala Ser Gly Tyr Thr Phe Thr Ser Tyr
20 25 30
Thr Met His Trp Val Lys Gln Arg Pro Gly Glu Gly Leu Glu Trp Ile
35 40 45
Gly Tyr Ile Asn Pro Ser Ser Gly Tyr Thr Lys Tyr Asn Gln Lys Phe
50 55 60
Lys Asp Lys Ala Thr Leu Thr Ala Asp Lys Ser Ser Ser Thr Ala Tyr
65 70 75 80
Met Glu Leu Ser Ser Leu Thr Ser Glu Asp Ser Ala Val Tyr Tyr Cys
85 90 95
Ala Arg Trp Gln Asp Tyr Asp Val Tyr Phe Asp Tyr Trp Gly Glu Gly
100 105 110
Thr Thr Leu Thr Val Ser Ser Ala Ser Thr Lys Gly Pro Ser Val Phe
115 120 125
Pro Leu Ala Pro Ser Ser Lys Ser Thr Ser Gly Gly Thr Ala Ala Leu
130 135 140
Gly Cys Leu Val Lys Asp Tyr Phe Pro Glu Pro Val Thr Val Ser Trp
145 150 155 160
Asn Ser Gly Ala Leu Thr Ser Gly Val His Thr Phe Pro Ala Val Leu
165 170 175
Gln Ser Ser Gly Leu Tyr Ser Leu Ser Ser Val Val Thr Val Pro Ser
180 185 190
Ser Ser Leu Gly Thr Gln Thr Tyr Ile Cys Asn Val Asn His Lys Pro
195 200 205
Ser Asn Thr Lys Val Asp Lys Lys Val Glu Pro Lys Ser Cys Asp Lys
210 215 220
Thr His Thr Cys Pro Pro Cys Pro Ala Pro Glu Leu Leu Gly Gly Pro
225 230 235 240
Ser Val Phe Leu Phe Pro Pro Lys Pro Lys Asp Thr Leu Met Ile Ser
245 250 255
Arg Thr Pro Glu Val Thr Cys Val Val Val Asp Val Ser His Glu Asp
260 265 270
Pro Glu Val Lys Phe Asn Trp Tyr Val Asp Gly Val Glu Val His Asn
275 280 285
Ala Lys Thr Lys Pro Arg Glu Glu Gln Tyr Asn Ser Thr Tyr Arg Val
290 295 300
Val Ser Val Leu Thr Val Leu His Gln Asp Trp Leu Asn Gly Lys Glu
305 310 315 320
Tyr Lys Cys Lys Val Ser Asn Lys Ala Leu Pro Ala Pro Ile Glu Lys
325 330 335
Thr Ile Ser Lys Ala Lys Gly Gln Pro Arg Glu Pro Gln Val Tyr Thr
340 345 350
Leu Pro Pro Ser Arg Glu Glu Met Thr Lys Asn Gln Val Ser Leu Tyr
355 360 365
Cys Leu Val Lys Gly Phe Tyr Pro Ser Asp Ile Ala Val Glu Trp Glu
370 375 380
Ser Asn Gly Gln Pro Glu Asn Asn Tyr Lys Thr Thr Pro Pro Val Leu
385 390 395 400
Asp Ser Asp Gly Ser Phe Phe Leu Tyr Ser Lys Leu Thr Val Asp Lys
405 410 415
Ser Arg Trp Gln Gln Gly Asn Val Phe Ser Cys Ser Val Met His Glu
420 425 430
Ala Leu His Asn His Tyr Thr Gln Lys Ser Leu Ser Leu Ser Pro Gly
435 440 445
Lys
<210> 39
<211> 449
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic polypeptide
<400> 39
Glu Val Gln Leu Gln Glu Ser Gly Ala Glu Leu Ala Arg Pro Gly Ala
1 5 10 15
Ser Val Lys Met Ser Cys Lys Ala Ser Gly Tyr Thr Phe Thr Ser Tyr
20 25 30
Thr Met His Trp Val Lys Gln Arg Pro Gly Glu Gly Leu Glu Trp Ile
35 40 45
Gly Tyr Ile Asn Pro Ser Ser Gly Tyr Thr Lys Tyr Asn Gln Lys Phe
50 55 60
Lys Asp Lys Ala Thr Leu Thr Ala Asp Lys Ser Ser Ser Thr Ala Tyr
65 70 75 80
Met Glu Leu Ser Ser Leu Thr Ser Glu Asp Ser Ala Val Tyr Tyr Cys
85 90 95
Ala Arg Trp Gln Asp Tyr Asp Val Tyr Phe Asp Tyr Trp Gly Glu Gly
100 105 110
Thr Thr Leu Thr Val Ser Ser Ala Ser Thr Lys Gly Pro Ser Val Phe
115 120 125
Pro Leu Ala Pro Ser Ser Lys Ser Thr Ser Gly Gly Thr Ala Ala Leu
130 135 140
Gly Cys Leu Val Lys Asp Tyr Phe Pro Glu Pro Val Thr Val Ser Trp
145 150 155 160
Asn Ser Gly Ala Leu Thr Ser Gly Val His Thr Phe Pro Ala Val Leu
165 170 175
Gln Ser Ser Gly Leu Tyr Ser Leu Ser Ser Val Val Thr Val Pro Ser
180 185 190
Ser Ser Leu Gly Thr Gln Thr Tyr Ile Cys Asn Val Asn His Lys Pro
195 200 205
Ser Asn Thr Lys Val Asp Lys Lys Val Glu Pro Lys Ser Cys Asp Lys
210 215 220
Thr His Thr Cys Pro Pro Cys Pro Ala Pro Glu Leu Leu Gly Gly Pro
225 230 235 240
Ser Val Phe Leu Phe Pro Pro Lys Pro Lys Asp Thr Leu Met Ile Ser
245 250 255
Arg Thr Pro Glu Val Thr Cys Val Val Val Asp Val Ser His Glu Asp
260 265 270
Pro Glu Val Lys Phe Asn Trp Tyr Val Asp Gly Val Glu Val His Asn
275 280 285
Ala Lys Thr Lys Pro Arg Glu Glu Gln Tyr Asn Ser Thr Tyr Arg Val
290 295 300
Val Ser Val Leu Thr Val Leu His Gln Asp Trp Leu Asn Gly Lys Glu
305 310 315 320
Tyr Lys Cys Lys Val Ser Asn Lys Ala Leu Pro Ala Pro Ile Glu Lys
325 330 335
Thr Ile Ser Lys Ala Lys Gly Gln Pro Arg Glu Pro Gln Val Tyr Thr
340 345 350
Leu Pro Pro Ser Arg Glu Glu Met Thr Lys Asn Gln Val Ser Leu Thr
355 360 365
Cys Leu Val Lys Gly Phe Tyr Pro Ser Asp Ile Ala Val Glu Trp Glu
370 375 380
Ser Asn Gly Gln Pro Glu Asn Asn Tyr Lys Thr Thr Pro Pro Val Leu
385 390 395 400
Asp Ser Asp Gly Ser Phe Phe Leu Thr Ser Lys Leu Thr Val Asp Lys
405 410 415
Ser Arg Trp Gln Gln Gly Asn Val Phe Ser Cys Ser Val Met His Glu
420 425 430
Ala Leu His Asn His Tyr Thr Gln Lys Ser Leu Ser Leu Ser Pro Gly
435 440 445
Lys
<210> 40
<211> 213
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic polypeptide
<400> 40
Gln Ile Val Leu Ser Gln Ser Pro Ala Ile Leu Ser Ala Ser Pro Gly
1 5 10 15
Glu Lys Val Thr Met Thr Cys Arg Ala Ser Ser Ser Val Ser Tyr Ile
20 25 30
His Trp Phe Gln Gln Lys Pro Gly Ser Ser Pro Lys Pro Trp Ile Tyr
35 40 45
Ala Thr Ser Asn Leu Ala Ser Gly Val Pro Val Arg Phe Ser Gly Ser
50 55 60
Gly Ser Gly Thr Ser Tyr Ser Leu Thr Ile Ser Arg Val Glu Ala Glu
65 70 75 80
Asp Ala Ala Thr Tyr Tyr Cys Gln Gln Trp Thr Ser Asn Pro Pro Thr
85 90 95
Phe Gly Gly Gly Thr Lys Leu Glu Ile Lys Arg Thr Val Ala Ala Pro
100 105 110
Ser Val Phe Ile Phe Pro Pro Ser Asp Glu Gln Leu Lys Ser Gly Thr
115 120 125
Ala Ser Val Val Cys Leu Leu Asn Asn Phe Tyr Pro Arg Glu Ala Lys
130 135 140
Val Gln Trp Lys Val Asp Asn Ala Leu Gln Ser Gly Asn Ser Gln Glu
145 150 155 160
Ser Val Thr Glu Gln Asp Ser Lys Asp Ser Thr Tyr Ser Leu Ser Ser
165 170 175
Thr Leu Thr Leu Ser Lys Ala Asp Tyr Glu Lys His Lys Val Tyr Ala
180 185 190
Cys Glu Val Thr His Gln Gly Leu Ser Ser Pro Val Thr Lys Ser Phe
195 200 205
Asn Arg Gly Glu Cys
210
<210> 41
<211> 5
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 41
Ser Tyr Ile Met Met
1 5
<210> 42
<211> 17
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 42
Ser Ile Tyr Pro Ser Gly Gly Ile Thr Phe Tyr Ala Asp Thr Val Lys
1 5 10 15
Gly
<210> 43
<211> 11
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 43
Ile Lys Leu Gly Thr Val Thr Thr Val Asp Tyr
1 5 10
<210> 44
<211> 7
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 44
Gly Phe Thr Phe Ser Ser Tyr
1 5
<210> 45
<211> 6
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 45
Tyr Pro Ser Gly Gly Ile
1 5
<210> 46
<211> 11
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 46
Ile Lys Leu Gly Thr Val Thr Thr Val Asp Tyr
1 5 10
<210> 47
<211> 5
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 47
Gly Tyr Gly Met Ser
1 5
<210> 48
<211> 17
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 48
Thr Ile Asn Ser Gly Gly Ser Tyr Thr Tyr Tyr Ser Asp Ser Val Lys
1 5 10 15
Gly
<210> 49
<211> 12
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 49
Arg Asn Gly Thr Leu Tyr Tyr Tyr Leu Met Asp Tyr
1 5 10
<210> 50
<211> 7
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 50
Gly Phe Thr Phe Ser Gly Tyr
1 5
<210> 51
<211> 6
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 51
Asn Ser Gly Gly Ser Tyr
1 5
<210> 52
<211> 12
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 52
Arg Asn Gly Thr Leu Tyr Tyr Tyr Leu Met Asp Tyr
1 5 10
<210> 53
<211> 14
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 53
Thr Gly Thr Ser Ser Asp Val Gly Gly Tyr Asn Tyr Val Ser
1 5 10
<210> 54
<211> 7
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 54
Asp Val Ser Lys Arg Pro Ser
1 5
<210> 55
<211> 10
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 55
Ser Ser Tyr Thr Ser Ala Ser Thr Arg Ile
1 5 10
<210> 56
<211> 14
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 56
Thr Gly Thr Ser Ser Asp Val Gly Gly Tyr Asn Tyr Val Ser
1 5 10
<210> 57
<211> 7
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 57
Asp Val Ser Lys Arg Pro Ser
1 5
<210> 58
<211> 10
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 58
Ser Ser Tyr Thr Ser Ala Ser Thr Arg Ile
1 5 10
<210> 59
<211> 14
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 59
Thr Gly Thr Ser Ser Asp Val Gly Gly Tyr Asn Tyr Val Ser
1 5 10
<210> 60
<211> 7
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 60
Asp Val Ser Asn Arg Pro Ser
1 5
<210> 61
<211> 10
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 61
Ser Ser Tyr Thr Ser Ser Ser Thr Arg Ile
1 5 10
<210> 62
<211> 14
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 62
Thr Gly Thr Ser Ser Asp Val Gly Gly Tyr Asn Tyr Val Ser
1 5 10
<210> 63
<211> 7
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 63
Asp Val Ser Asn Arg Pro Ser
1 5
<210> 64
<211> 10
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic peptide
<400> 64
Ser Ser Tyr Thr Ser Ser Ser Thr Arg Ile
1 5 10
<210> 65
<211> 450
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic polypeptide
<400> 65
Glu Val Gln Leu Leu Glu Ser Gly Gly Gly Leu Val Glu Pro Gly Gly
1 5 10 15
Ser Leu Arg Leu Ser Cys Ala Ala Ser Gly Phe Thr Phe Ser Ser Tyr
20 25 30
Ile Met Met Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Lys Gly Leu Glu Trp Val
35 40 45
Ser Ser Ile Tyr Pro Ser Gly Gly Ile Thr Phe Tyr Ala Asp Thr Val
50 55 60
Lys Gly Arg Phe Thr Ile Ser Arg Asp Asn Ser Lys Asn Thr Leu Tyr
65 70 75 80
Leu Gln Met Asn Ser Leu Arg Ala Glu Asp Thr Ala Val Tyr Tyr Cys
85 90 95
Ala Arg Ile Lys Leu Gly Thr Val Thr Thr Val Asp Tyr Trp Gly Glu
100 105 110
Gly Thr Leu Val Thr Val Ser Ser Ala Ser Thr Lys Gly Pro Ser Val
115 120 125
Phe Pro Leu Ala Pro Ser Ser Lys Ser Thr Ser Gly Gly Thr Ala Ala
130 135 140
Leu Gly Cys Leu Val Lys Asp Tyr Phe Pro Glu Pro Val Thr Val Ser
145 150 155 160
Trp Asn Ser Gly Ala Leu Thr Ser Gly Val His Thr Phe Pro Ala Val
165 170 175
Leu Gln Ser Ser Gly Leu Tyr Ser Leu Ser Ser Val Val Thr Val Pro
180 185 190
Ser Ser Ser Leu Gly Thr Gln Thr Tyr Ile Cys Asn Val Asn His Lys
195 200 205
Pro Ser Asn Thr Lys Val Asp Lys Lys Val Glu Pro Lys Ser Cys Asp
210 215 220
Lys Thr His Thr Cys Pro Pro Cys Pro Ala Pro Glu Leu Leu Gly Gly
225 230 235 240
Pro Ser Val Phe Leu Phe Pro Pro Lys Pro Lys Asp Thr Leu Met Ile
245 250 255
Ser Arg Thr Pro Glu Val Thr Cys Val Val Val Asp Val Ser His Glu
260 265 270
Asp Pro Glu Val Lys Phe Asn Trp Tyr Val Asp Gly Val Glu Val His
275 280 285
Asn Ala Lys Thr Lys Pro Arg Glu Glu Gln Tyr Asn Ser Thr Tyr Arg
290 295 300
Val Val Ser Val Leu Thr Val Leu His Gln Asp Trp Leu Asn Gly Lys
305 310 315 320
Glu Tyr Lys Cys Lys Val Ser Asn Lys Ala Leu Pro Ala Pro Ile Glu
325 330 335
Lys Thr Ile Ser Lys Ala Lys Gly Gln Pro Arg Glu Pro Gln Val Tyr
340 345 350
Thr Leu Pro Pro Ser Arg Glu Glu Met Thr Lys Asn Gln Val Ser Leu
355 360 365
Tyr Cys Leu Val Lys Gly Phe Tyr Pro Ser Asp Ile Ala Val Glu Trp
370 375 380
Glu Ser Asn Gly Gln Pro Glu Asn Asn Tyr Lys Thr Thr Pro Pro Val
385 390 395 400
Leu Asp Ser Asp Gly Ser Phe Phe Leu Tyr Ser Lys Leu Thr Val Asp
405 410 415
Lys Ser Arg Trp Gln Gln Gly Asn Val Phe Ser Cys Ser Val Met His
420 425 430
Glu Ala Leu His Asn His Tyr Thr Gln Lys Ser Leu Ser Leu Ser Pro
435 440 445
Gly Lys
450
<210> 66
<211> 451
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic polypeptide
<400> 66
Gln Val Lys Leu Gln Glu Ser Gly Gly Gly Leu Val Lys Pro Gly Gly
1 5 10 15
Ser Leu Lys Leu Ser Cys Ala Ala Ser Gly Phe Thr Phe Ser Gly Tyr
20 25 30
Gly Met Ser Trp Ile Arg Gln Thr Pro Gly Lys Arg Leu Glu Trp Val
35 40 45
Ala Thr Ile Asn Ser Gly Gly Ser Tyr Thr Tyr Tyr Ser Asp Ser Val
50 55 60
Lys Gly Arg Phe Thr Ile Ser Arg Asp Asn Val Lys Asn Thr Leu Tyr
65 70 75 80
Leu Gln Met Ser Ser Leu Lys Ser Glu Asp Thr Ala Met Tyr Tyr Cys
85 90 95
Ala Arg Arg Asn Gly Thr Leu Tyr Tyr Tyr Leu Met Asp Tyr Trp Gly
100 105 110
Arg Gly Thr Leu Val Thr Val Ser Ser Ala Ser Thr Lys Gly Pro Ser
115 120 125
Val Phe Pro Leu Ala Pro Ser Ser Lys Ser Thr Ser Gly Gly Thr Ala
130 135 140
Ala Leu Gly Cys Leu Val Lys Asp Tyr Phe Pro Glu Pro Val Thr Val
145 150 155 160
Ser Trp Asn Ser Gly Ala Leu Thr Ser Gly Val His Thr Phe Pro Ala
165 170 175
Val Leu Gln Ser Ser Gly Leu Tyr Ser Leu Ser Ser Val Val Thr Val
180 185 190
Pro Ser Ser Ser Leu Gly Thr Gln Thr Tyr Ile Cys Asn Val Asn His
195 200 205
Lys Pro Ser Asn Thr Lys Val Asp Lys Lys Val Glu Pro Lys Ser Cys
210 215 220
Asp Lys Thr His Thr Cys Pro Pro Cys Pro Ala Pro Glu Leu Leu Gly
225 230 235 240
Gly Pro Ser Val Phe Leu Phe Pro Pro Lys Pro Lys Asp Thr Leu Met
245 250 255
Ile Ser Arg Thr Pro Glu Val Thr Cys Val Val Val Asp Val Ser His
260 265 270
Glu Asp Pro Glu Val Lys Phe Asn Trp Tyr Val Asp Gly Val Glu Val
275 280 285
His Asn Ala Lys Thr Lys Pro Arg Glu Glu Gln Tyr Asn Ser Thr Tyr
290 295 300
Arg Val Val Ser Val Leu Thr Val Leu His Gln Asp Trp Leu Asn Gly
305 310 315 320
Lys Glu Tyr Lys Cys Lys Val Ser Asn Lys Ala Leu Pro Ala Pro Ile
325 330 335
Glu Lys Thr Ile Ser Lys Ala Lys Gly Gln Pro Arg Glu Pro Gln Val
340 345 350
Tyr Thr Leu Pro Pro Ser Arg Glu Glu Met Thr Lys Asn Gln Val Ser
355 360 365
Leu Thr Cys Leu Val Lys Gly Phe Tyr Pro Ser Asp Ile Ala Val Glu
370 375 380
Trp Glu Ser Asn Gly Gln Pro Glu Asn Asn Tyr Lys Thr Thr Pro Pro
385 390 395 400
Val Leu Asp Ser Asp Gly Ser Phe Phe Leu Thr Ser Lys Leu Thr Val
405 410 415
Asp Lys Ser Arg Trp Gln Gln Gly Asn Val Phe Ser Cys Ser Val Met
420 425 430
His Glu Ala Leu His Asn His Tyr Thr Gln Lys Ser Leu Ser Leu Ser
435 440 445
Pro Gly Lys
450
<210> 67
<211> 217
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic polypeptide
<400> 67
Gln Ser Ala Leu Thr Gln Pro Ala Ser Val Ser Gly Ser Pro Gly Gln
1 5 10 15
Ser Ile Thr Ile Ser Cys Thr Gly Thr Ser Ser Asp Val Gly Gly Tyr
20 25 30
Asn Tyr Val Ser Trp Tyr Gln Gln His Pro Gly Lys Ala Pro Lys Leu
35 40 45
Met Ile Tyr Asp Val Ser Lys Arg Pro Ser Gly Val Ser Asn Arg Phe
50 55 60
Ser Gly Ser Lys Ser Gly Asn Thr Ala Ser Leu Thr Ile Ser Gly Leu
65 70 75 80
Gln Ala Glu Asp Glu Ala Asp Tyr Tyr Cys Ser Ser Tyr Thr Ser Ala
85 90 95
Ser Thr Arg Ile Phe Gly Gly Gly Thr Lys Val Thr Val Leu Arg Thr
100 105 110
Val Ala Ala Pro Ser Val Phe Ile Phe Pro Pro Ser Asp Glu Gln Leu
115 120 125
Lys Ser Gly Thr Ala Ser Val Val Cys Leu Leu Asn Asn Phe Tyr Pro
130 135 140
Arg Glu Ala Lys Val Gln Trp Lys Val Asp Asn Ala Leu Gln Ser Gly
145 150 155 160
Asn Ser Gln Glu Ser Val Thr Glu Gln Asp Ser Lys Asp Ser Thr Tyr
165 170 175
Ser Leu Ser Ser Thr Leu Thr Leu Ser Lys Ala Asp Tyr Glu Lys His
180 185 190
Lys Val Tyr Ala Cys Glu Val Thr His Gln Gly Leu Ser Ser Pro Val
195 200 205
Thr Lys Ser Phe Asn Arg Gly Glu Cys
210 215
<210> 68
<211> 217
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic polypeptide
<400> 68
Gln Ser Ala Leu Thr Gln Pro Ala Ser Val Ser Gly Ser Pro Gly Gln
1 5 10 15
Ser Ile Thr Ile Ser Cys Thr Gly Thr Ser Ser Asp Val Gly Gly Tyr
20 25 30
Asn Tyr Val Ser Trp Tyr Gln Gln His Pro Gly Lys Ala Pro Lys Leu
35 40 45
Met Ile Tyr Asp Val Ser Asn Arg Pro Ser Gly Val Ser Asn Arg Phe
50 55 60
Ser Gly Ser Lys Ser Gly Asn Thr Ala Ser Leu Thr Ile Ser Gly Leu
65 70 75 80
Gln Ala Glu Asp Glu Ala Asp Tyr Tyr Cys Ser Ser Tyr Thr Ser Ser
85 90 95
Ser Thr Arg Ile Phe Gly Gly Gly Thr Lys Val Thr Val Leu Arg Thr
100 105 110
Val Ala Ala Pro Ser Val Phe Ile Phe Pro Pro Ser Asp Glu Gln Leu
115 120 125
Lys Ser Gly Thr Ala Ser Val Val Cys Leu Leu Asn Asn Phe Tyr Pro
130 135 140
Arg Glu Ala Lys Val Gln Trp Lys Val Asp Asn Ala Leu Gln Ser Gly
145 150 155 160
Asn Ser Gln Glu Ser Val Thr Glu Gln Asp Ser Lys Asp Ser Thr Tyr
165 170 175
Ser Leu Ser Ser Thr Leu Thr Leu Ser Lys Ala Asp Tyr Glu Lys His
180 185 190
Lys Val Tyr Ala Cys Glu Val Thr His Gln Gly Leu Ser Ser Pro Val
195 200 205
Thr Lys Ser Phe Asn Arg Gly Glu Cys
210 215