(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123728
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】薬剤手撒き装置、薬剤手撒き装置の支援プログラム、および支援プログラムを記録した記録媒体
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
A61J3/00 310K
A61J3/00 310E
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105991
(22)【出願日】2023-06-28
(62)【分割の表示】P 2022145068の分割
【原出願日】2018-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2017095576
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592246705
【氏名又は名称】株式会社湯山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 桂子
(72)【発明者】
【氏名】柴田 知侑
(72)【発明者】
【氏名】松浦 拓也
(57)【要約】 (修正有)
【課題】薬剤を服用時期毎に分けて払い出す薬剤払出装置を提供する。
【解決手段】処方データに基づき、薬剤を1回の服用分毎に分けて払い出す薬剤払出装置(100)は、作業者による入力を受け付ける操作部(64)と、手撒き対象薬品が投入される払出ユニット(2)と、前記処方データおよび作業者からの入力に基づいて、前記作業者の作業を支援する画面を表示するモニタ(63)と、制御部(61)とを備える。制御部(61)は、払い出す薬剤の製造情報を作業者に入力させるための画面をモニタ(63)に表示させて、製造情報の入力を受け付ける。制御部(61)は、一患者に対する薬剤の払出作業において払い出された薬剤の製造情報を、当該患者を特定する情報と関連づけて記憶部(62)へ記憶させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処方データに基づき、薬剤を1回の服用分毎に分けて払い出す薬剤払出装置であって、
作業者による入力を受け付ける入力部と、
手撒き対象薬品が投入される手撒き薬品処理部と、
前記処方データおよび作業者からの入力に基づいて、前記作業者の作業を支援する画面を表示するモニタと、
制御部と、
前記薬剤払出装置における払い出しの履歴を少なくとも一時的に記憶する履歴データベースを格納した記憶部とを備え、
前記制御部は、前記処方データに対応して払い出す薬剤に関する払出薬剤情報であって、当該薬剤の製造時期および/または製造場所を特定することができる払出薬剤情報を作業者に入力させるための入力欄を含む作業支援画面を前記モニタに表示させて、前記処方データに含まれる前記手撒き対象薬品の払出薬剤情報の入力を受け付け、
前記制御部は、一患者に対する薬剤の払出作業において払い出された手撒き対象薬品の前記払出薬剤情報を、当該患者を特定する情報と関連づけて前記履歴データベースへ記憶させ、
前記作業支援画面は、払い出す手撒き対象薬品毎に、前記払出薬剤情報の前記入力欄を複数含む、薬剤払出装置。
【請求項2】
処方データに基づき、薬剤を1回の服用分毎に分けて払い出す薬剤払出装置であって、
作業者による入力を受け付ける入力部と、
手撒き対象薬品が投入される手撒き薬品処理部と、
前記処方データおよび作業者からの入力に基づいて、前記作業者の作業を支援する画面を表示するモニタと、
制御部と、
前記薬剤払出装置における払い出しの履歴を少なくとも一時的に記憶する履歴データベースを格納した記憶部とを備え、
前記制御部は、前記処方データに対応して払い出す薬剤に関する払出薬剤情報であって、当該薬剤の製造時期および/または製造場所を特定することができる払出薬剤情報を作業者に入力させるための入力欄を含む作業支援画面を前記モニタに表示させて、前記処方データに含まれる前記手撒き対象薬品の払出薬剤情報の入力を受け付け、
前記制御部は、一患者に対する薬剤の払出作業において払い出された薬剤の前記払出薬
剤情報を、当該患者を特定する情報と関連づけて前記履歴データベースへ記憶させ、
前記作業支援画面は、払い出す手撒き対象薬品毎に、前記払出薬剤情報の前記入力欄を複数含む、薬剤払出装置。
【請求項3】
前記手撒き薬品処理部は、複数のセルに区切られたトレーであって、前記複数のセルの各々に1回の服用分の薬剤が投入されるトレーを備える、請求項1または2に記載の薬剤払出装置。
【請求項4】
前記制御部が、前記作業支援画面において、払い出す手撒き対象薬品毎に、前記トレーにおいて当該手撒き対象薬品を投入するセルの位置を表す画像を表示する、請求項3に記載の薬剤払出装置。
【請求項5】
錠剤を収容する錠剤カセットを複数有し、前記処方データにしたがって前記錠剤カセットから錠剤を払い出す錠剤供給ユニットをさらに備え、
前記制御部は、前記錠剤カセットへの錠剤の充填作業時に、前記作業支援画面を前記モニタに表示させる、請求項1または2に記載の薬剤払出装置。
【請求項6】
前記トレーは、ブリスターパックを受け入れるよう構成されている、請求項3または4に記載の薬剤払出装置。
【請求項7】
1回の服用分毎に分けて払い出された薬剤を個別の薬包に分包する分包ユニットをさらに備えた、請求項1~6のいずれか一項に記載の薬剤払出装置。
【請求項8】
前記払出薬剤情報がロット番号を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の薬剤払出装置。
【請求項9】
処方データに基づき、薬剤を1回の服用分毎に分けて払い出す薬剤払出装置の制御プログラムであって、
前記制御プログラムは、コンピュータのプロセッサに、
作業者による入力を受け付ける入力処理と、
前記処方データに対応して払い出す薬剤に関する払出薬剤情報であって、当該薬剤の製造時期および/または製造場所を特定することができる払出薬剤情報を作業者に入力させるための入力欄を含む作業支援画面をモニタに表示させて、前記処方データに含まれる手撒き対象薬品の払出薬剤情報の入力を受け付ける処理と、
一患者に対する薬剤の払出作業において払い出された手撒き対象薬品の前記払出薬剤情報を、当該患者を特定する情報と関連づけて、前記薬剤払出装置における払い出しの履歴を少なくとも一時的に記憶する履歴データベースへ記憶させる処理とを実行させ、
前記作業支援画面は、払い出す手撒き対象薬品毎に、前記払出薬剤情報の前記入力欄を複数含む、制御プログラム。
【請求項10】
処方データに基づき、薬剤を1回の服用分毎に分けて払い出す薬剤払出装置の制御プログラムであって、
前記制御プログラムは、コンピュータのプロセッサに、
作業者による入力を受け付ける入力処理と、
前記処方データに対応して払い出す薬剤に関する払出薬剤情報であって、当該薬剤の製造時期および/または製造場所を特定することができる払出薬剤情報を作業者に入力させるための入力欄を含む作業支援画面をモニタに表示させて、前記処方データに含まれる手撒き対象薬品の払出薬剤情報の入力を受け付ける処理と、
一患者に対する薬剤の払出作業において払い出された薬剤の前記払出薬剤情報を、当該患者を特定する情報と関連づけて、前記薬剤払出装置における払い出しの履歴を少なく
とも一時的に記憶する履歴データベースへ記憶させる処理とを実行させ、
前記作業支援画面は、払い出す手撒き対象薬品毎に、前記払出薬剤情報の前記入力欄を複数含む、制御プログラム。
【請求項11】
前記薬剤払出装置は、複数のセルに区切られたトレーであって、前記複数のセルの各々に1回の服用分の薬剤が投入されるトレーを備え、
前記制御プログラムは、
前記制御部が、前記作業支援画面において、払い出す手撒き対象薬品毎に、前記トレーにおいて当該手撒き対象薬品を投入するセルの位置を表す画像を表示する、請求項9または10に記載の制御プログラム。
【請求項12】
前記払出薬剤情報がロット番号を含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の制御プログラム。
【請求項13】
請求項9~12のいずれか一項に記載の制御プログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤を服用時期毎に分けて払い出す薬剤払出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、処方された薬剤を1回の服用分ずつに分けて払い出す薬剤払出装置が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。薬剤払出装置によれば、処方された薬剤が、例えば、起床時、朝食後、昼食後、夕食後、または寝る前、等の服薬タイミングに分けて、1回分ずつ払い出される。払い出された薬剤は、1回分ずつ分包紙に包装した状態や、1週間分をブリスターパックに収納した状態で、患者に提供される。このように、薬剤を1回の服用分ずつに分けて包装することにより、薬の飲み忘れや飲み間違いを防止できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
薬剤払出装置によって薬剤が払い出された後に、薬剤の製造時に特定のロットに何らかの問題があったことが判明した場合等に、当該ロットの薬剤がどの患者に処方されたかを、容易に追跡できる仕組みがあることが望ましい。
【0005】
上記の要求を鑑み、本発明は、各患者へ払い出した薬剤の製造情報を管理する機能を備えた薬剤払出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、以下に開示する薬剤払出装置は、
処方データに基づき、薬剤を1回の服用分毎に分けて払い出す薬剤払出装置であって、
作業者による入力を受け付ける入力部と、
手撒き対象薬品が投入される手撒き薬品処理部と、
前記処方データおよび作業者からの入力に基づいて、前記作業者の作業を支援する画面を表示するモニタと、
制御部とを備え、
前記制御部は、払い出す薬剤の製造情報を作業者に入力させるための画面を前記モニタに表示させて、製造情報の入力を受け付け、
前記制御部は、一患者に対する薬剤の払出作業において払い出された薬剤の製造情報を、当該患者を特定する情報と関連づけて記憶部へ記憶させる。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成によれば、分包した薬剤の製造情報を管理する機能を備えた薬剤払出装置を提供することができる。これにより、払い出した薬剤に何らかの不都合があったことが後日判明した場合に、払い出された薬剤を追跡することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態にかかる薬剤払出装置の外観図である。
【
図2】
図2は、薬剤払出装置において、払出ユニットの上部カバーを開けて、引き出し部を手前に引き出した状態を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、ブリスターパックの外観を示す上面図である。
【
図4】
図4は、コンピュータとバーコードリーダが取り付けられた薬剤払出装置の外観図である。
【
図5】
図5は、薬剤払出装置の制御に関する概略構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、カセットモニタ画面の一例を示す説明図である。
【
図7】
図7は、錠剤カセットに薬剤を充填する際の処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、錠剤充填明細画面の一例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、薬剤払い出し処理の手順を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、手撒き錠剤補助画面の一例を示す説明図である。
【
図11】
図11は、履歴データベースを検索するための検索画面の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の構成にかかる薬剤分包装置は、
処方データに基づき、薬剤を1回の服用分毎に分けて払い出す薬剤払出装置であって、
作業者による入力を受け付ける入力部と、
手撒き対象薬品が投入される手撒き薬品処理部と、
前記処方データおよび作業者からの入力に基づいて、前記作業者の作業を支援する画面を表示するモニタと、
制御部とを備え、
前記制御部は、払い出す薬剤の製造情報を作業者に入力させるための画面を前記モニタに表示させて、製造情報の入力を受け付け、
前記制御部は、一患者に対する薬剤の払出作業において払い出された薬剤の製造情報を、当該患者を特定する情報と関連づけて記憶部へ記憶させる。
【0010】
この第1の構成において、「製造情報」とは、薬剤の製造時期および/または製造場所(製造地域、製造工場、または製造ライン等)等を特定することができる情報を意味する。例えば、製薬メーカーが薬品の容器等に付与するロット番号等を、この製造情報として用いることができる。これにより、例えば、手撒き対象薬品として払い出したある薬品について、特定の時期に製造された製品に何らかの問題があったことが後日判明した場合、または、特定の工場で製造された製品に何らかの問題があったことが後日判明した場合等に、問題のある薬品がどの患者に払い出されたかを、記憶部に記憶された情報に基づいて、追跡することが可能となる。
【0011】
前記第1の構成において、
前記手撒き薬品処理部は、複数のセルに区切られたトレーであって、前記複数のセルの各々に1回の服用分の薬剤が投入されるトレーを備え、
前記制御部は、前記トレーへ手撒きにより薬剤の払い出しが行われる場合、払い出す薬剤毎に、前記製造情報入力欄を含む作業支援画面を前記モニタに表示させることが好ましい(第2の構成)。
【0012】
この第2の構成によれば、手撒きで払い出される薬剤については、作業者が払い出しの都度に製造情報を入力することとなる。これにより、手撒き作業によって払い出される薬剤についても、製造情報を漏れなく記憶しておくことが可能となる。
【0013】
前記第1または第2の構成において、
錠剤を収容する錠剤カセットを複数有し、前記処方データにしたがって前記錠剤カセットから前記トレーへ錠剤を払い出す錠剤供給ユニットをさらに備え、
前記制御部は、前記錠剤カセットへの錠剤の充填作業時に、前記製造情報入力欄を含む作業支援画面を前記モニタに表示させることが好ましい(第3の構成)。
【0014】
この第3の構成によれば、錠剤カセットを使用して自動的に錠剤を払い出す装置において、錠剤カセットで払い出す薬品の製造情報を漏れなく記憶しておくことができる。
【0015】
前記第1~第3のいずれかの構成において、前記トレーは、ブリスターパックのトレーを受け入れるよう構成されていることが好ましい(第4の構成)。
【0016】
あるいは、前記第1~第3のいずれかの構成において、前記トレーの前記複数のセルの各々に投入された薬剤を個別の薬包に分包する分包ユニットをさらに備えた構成とすることが好ましい(第5の構成)。
【0017】
本発明の一実施形態に係る制御プログラムは、
処方データに基づき、薬剤を1回の服用分毎に分けて払い出す薬剤払出装置の制御プログラムであって、
前記制御プログラムは、コンピュータのプロセッサに、作業者による入力を受け付ける入力処理と、
手撒き対象薬品として払い出す薬剤の製造情報を作業者に入力させるための画面をモニタに表示させて、製造情報の入力を受け付ける処理と、
一患者に対する薬剤の払出作業において払い出された薬剤の製造情報を、当該患者を特定する情報と関連づけて記憶部へ記憶させる処理とを実行させる。
【0018】
また、本発明は、上記の制御プログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体としても実施することができる。
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0020】
以下の実施形態では、ブリスターパックに薬剤を払い出す薬剤払出装置を例にあげて説明を行う。
図1は、この実施形態にかかる薬剤払出装置100の外観図である。
図1に示すように、薬剤払出装置100は、フレーム10の上半部に錠剤供給ユニット1が設けられる。フレーム10の下半分には、前記上半部より前方に突き出した払出ユニット2(
図2参照)が設けられる。さらにその下部には、未使用のブリスターパック等を収容するための収納部3が設けられる。錠剤供給ユニット1には、錠剤カセット11・12を多段状に収納することができる。錠剤供給ユニット1は、正面に設けられたシャッター13によって上下方向に開閉される。
図1は、シャッター13を約半分だけ開けた状態を示している。
【0021】
錠剤カセット11は、あらかじめ定められた特定種類の錠剤を1錠(単位量)ずつ必要量だけ払い出すことが可能である。錠剤カセット12は、必要に応じて任意の錠剤を充填して用いることができる点において、特定種類の錠剤専用の錠剤カセット11とは異なっているが、錠剤カセット11と同様に、錠剤を1錠(単位量)ずつ必要量だけ払い出すことができる。錠剤カセット11の各々は、特定種類の錠剤を払い出すため、錠剤の排出口の形状や大きさが、その錠剤に適した形状や大きさに設計されている。錠剤カセット12は、排出口の大きさ等を、払い出す薬剤に応じて調整可能に設計されており、必要に応じて、必要な薬剤を都度充填して用いられる。錠剤カセット11・12から払い出された錠
剤は、錠剤供給ユニット1内に設けられたホッパー14(
図1において破線にて図示)を通って、払出ユニット2へ送り出される。なお、錠剤であっても、錠剤カセット11・12を用いることができない薬剤、あるいは、錠剤カセット11・12の使用が効率的ではないまたは適さない薬剤等は、後述する手撒き作業によって払い出される。
【0022】
言い方を変えれば、錠剤カセット11で払い出される特定種類の薬品以外の薬品については、(1)薬剤師が処方を見ながら手撒き作業で払い出す、(2)錠剤カセット12へ充填して錠剤供給ユニット1から払い出す、のいずれかの方法で払い出しが行われる。(1)および(2)のいずれの方法を用いるかは、薬品の特性・取り扱い条件および作業効率を考慮して、薬剤師が決定することができる。したがって、本明細書においては、錠剤カセット11から払い出される特定種類の薬品以外の薬品を、「手撒き対象薬品」と称する。また、例えば、錠剤カセット11が、払い出し作業がもうすぐ終わる時点で空になった場合、残りの数錠を手撒き作業で払い出してしまった方が、作業効率が良い場合がある。このように、錠剤カセット11から払い出される薬品であっても、これが手撒き作業で払い出された場合は、これを「手撒き対象薬品」と呼ぶ。
【0023】
錠剤カセット12のような、任意の錠剤を充填して用いられる錠剤カセットを利用した薬剤分包装置については、本出願人による先願(PCT/JP2016/054349、WO2016/136523)に詳細に説明されており、参照によりこの先願の内容を本願に取り込む。
【0024】
払出ユニット2(手撒き薬品処理部)は、上部カバー21と引き出し部22とを備えている。
図2は、払出ユニット2において、上部カバー21を開けて、引き出し部22を手前に引き出した状態を示す斜視図である。
図2に示すように、払出ユニット2は、内部に、分割トレー23(詳細は後述する。)を備えている。また、引き出し部22は、手前に引き出した状態で、ブリスターパック5のトレー51を受け入れる。すなわち、引き出し部22は、トレー51のセル形状に適合した載置部を備えている。
【0025】
ここで、
図3を参照し、ブリスターパック5について説明する。
図3は、ブリスターパック5の外観を示す上面図である。
図3に示すように、ブリスターパック5は、トレー51の複数のセル511に錠剤(図示せず)が投入された状態で、トレー51の開放面に蓋シート52が貼り付けられた構成である。トレー51は、払い出された薬剤が処方どおりであるか否かをブリスターパック5の裏面から鑑査できるように、透明な樹脂で形成されている。なお、
図3においては、説明のために、蓋シート52の一部を切り欠いた状態を示しているが、実際のブリスターパック5は、トレー51の開放面全体が蓋シート52によって完全に封止されている。
【0026】
図3に例示したブリスターパック5は、日曜日から月曜日までの1週間に、「あさ」、「ひる」、「ゆう」、および「ねる前」の1日4回の合計28回の服薬時期に対応して、28個のセル511を有している。
【0027】
蓋シート52には、28個のセル511の開口部に適合するように、破断線521で囲まれた除去部522が設けられている。蓋シート52の裏面において、除去部522の周囲は接着剤が付与されており、この接着剤によって蓋シート52をトレー51に貼り付けることができる。なお、トレー51に貼り付ける前の蓋シート52の裏面には、前記の接着剤を保護するために、剥離紙(図示せず)が設けられている。蓋シート52の除去部522のそれぞれには、患者氏名522a等が印刷される。なお、患者氏名の他に、服用時期や服用量等の任意の他の情報を印刷するようにしても良い。また、蓋シート52の余白部分には、七曜表示523およびこれに対応した日付表示524と、服用時表示525とが印刷される。
【0028】
患者(または看護師等)は、服薬時において、該当する日の4回の服用時毎に、該当する除去部522を指で押し込む等して破断線521で破断し、該当するセル511内の錠剤を取り出す。このように、服用時期毎に錠剤が分けて収容されており、かつ、曜日や日付が印字されているので、薬の飲み間違いを防止することができる。また、服用された箇所は除去部522が破断されているので、薬の飲み忘れの有無を容易に確認することができる。
【0029】
ここで、
図2に戻って、払出ユニット2の説明を続ける。払出ユニット2は、前述のように、上部カバー21の内部に分割トレー23を備えている。分割トレー23は、ブリスターパック5のトレー51のセル511と同じ行数・列数のセルを備えている。また、分割トレー23は、払出ユニット2内において、モータ駆動等によってXYZの3軸方向に移動するように構成されている。分割トレー23は、錠剤供給ユニット1のホッパー14の錠剤排出口に対してXY軸方向に移動することにより、ホッパー14から送り出される薬剤を、当該薬剤が投入されるべきセル511に対応するセルに収容する。
【0030】
分割トレー23のセルの底面は、開閉可能に構成されている。処方データに基づいて、錠剤供給ユニット1から払い出すべき薬剤がすべて分割トレー23に払い出されると、分割トレー23は、払出ユニット2内でトレー51の上方に移動し、セルの底面のシャッターを開放する。これにより、分割トレー23の各セルの薬剤が、トレー51の対応するセル511へ送り込まれる。
【0031】
このような分割トレー23の構成および動作については、本出願人による先願(PCT/JP2011/077179、WO2012/070643)に詳細に説明されており、参照によりこの先願の内容を本願に取り込む。
【0032】
なお、本実施形態においては、ブリスターパック5のトレー51とは別体として、払出ユニット2内に分割トレー23を備えた構成を例示した。しかし、分割トレー23は必須ではなく、省略することが可能である。すなわち、分割トレー23を省略し、錠剤供給ユニット1からトレー51へ薬剤を直接払い出す構成としても良い。
【0033】
また、処方データに、錠剤供給ユニット1の錠剤カセット11・12からは払出ができない錠剤が含まれている場合は、トレー51がセットされた引き出し部22を引き出した状態で、トレー51へ手撒きによって薬剤の払い出しを行う。なお、処方データに、錠剤供給ユニット1から払い出される薬剤と、手撒きによって払い出される薬剤との両方が含まれている場合は、どちらの払い出しを先に行うかを、作業者(薬剤師)が任意に選択することができる。
【0034】
図4に示すように、薬剤払出装置100は、フレーム10に取り付けられた支持台10aを有しており、支持台10a上にコンピュータ6A(後述する制御ユニット6に相当)およびバーコードリーダ7を取り付けることができる。作業者は、コンピュータ6Aのモニタに表示される作業支援画面を見ながら、コンピュータ6Aのキーボードやタッチパネル等を操作して入力を行うことができる。
図4では、コンピュータ6Aとしてノート型のパーソナルコンピュータを例示しているが、タブレットやスマートフォン等を利用しても良い。コンピュータ6Aと薬剤払出装置100との通信は、有線/無線のいずれであっても良い。バーコードリーダ7は、薬剤の容器等からバーコードを読み取るために用いられる。読み取り対象のコードの特性に応じて、バーコードリーダ7の代わりに、あるいは、バーコードリーダ7に加えて、QRコード(登録商標)リーダやICタグリーダ等の任意の他の読み取り手段を備えていても良い。
【0035】
図5は、薬剤払出装置100の制御に関する概略構成を示すブロック図である。薬剤払出装置100は、前述の錠剤供給ユニット1および払出ユニット2に加えて、制御ユニット6を備えている。なお、本実施形態においては、コンピュータ6Aが、制御ユニット6の機能を具現するが、これに限らず、薬剤払出装置100の内部のプロセッサやメモリ等が制御ユニット6の全部または一部として機能するようにしても良い。以下、制御ユニット6、錠剤供給ユニット1、および払出ユニット2の機能的構成について説明する。
【0036】
[制御ユニット6]
制御ユニット6は、処方データを読み込み、操作画面を表示して作業者の指示を受け付ける。このため、制御ユニット6は、制御部61、記憶部62、モニタ63、入力装置64、および通信IF65等を備える。本実施形態においては、これらの構成はコンピュータ6Aによって実現されている。
【0037】
モニタ63は任意のディスプレイで実現することができる。入力装置64は、キーボードやタッチパネル等で実現することができる。入力装置64は、音声入力を受け付ける構成としても良い。また、制御ユニット6は、スピーカを備えて音声を出力可能としても良い。
【0038】
制御部61は、CPU、RAM、ROMおよびEEPROM(いずれも図示せず)などを有する。制御部61は、前記ROM、前記EEPROM、または記憶部62などに予め記憶された各種のプログラムを、前記CPUによって実行する。なお、前記RAMおよび前記EEPROMは、前記CPUによって各種の処理を実行する際に、一時記憶メモリ(作業領域)として利用される。なお、制御部61は、ASICまたはDSPなどの集積回路であってもよい。
【0039】
記憶部62は、ハードディスク装置またはSSD(Solid State Drive)などである。記憶部62には、制御部61のCPUに所定の処理を実行させるためのプログラムが予め記憶されている。
【0040】
なお、前記プログラムは、例えばCD、DVD、または半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、不図示のディスクドライブなどの読取装置によって前記記録媒体から読み取られて記憶部62にインストールされる。本発明は、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な前記記録媒体の発明としても捉えることができる。
【0041】
また、記憶部62には、例えば医薬品マスタ、患者マスタ、実装薬品マスタ、作業者マスタ、および薬局マスタなどの各種のデータベースも記憶されている。なお、制御部61は、例えばCD、DVD、または半導体メモリなどの記録媒体から不図示のディスクドライブなどの読取装置によって読み取られたデータに基づいて、記憶部62に記憶されている前記各種のデータベースを更新することが可能である。また、制御部61は、操作部64に対するユーザー操作に応じて前記各種のデータベースの内容を変更することも可能である。
【0042】
前記医薬品マスタには、薬ID、薬品コード、薬品名、JANコード(またはRSSコード)、薬瓶コード、区分(剤形:散薬、錠剤、水剤、外用薬など)、錠剤のサイズ(高さおよび幅)、比重、薬品種(普通薬、毒薬、麻薬、劇薬、抗精神薬、治療薬など)、配合変化、賦形薬品、注意事項などの医薬品各々に関する情報が含まれる。また、医薬品マスタには、錠剤の画像が含まれていても良い。前記患者マスタには、患者ID、氏名、性別、年齢、既往歴、処方薬履歴、家族情報、診療科、病棟、および病室などの患者に関する情報が含まれる。前記薬局マスタには、薬局名、薬剤師の氏名、薬剤師のIDなどの薬
局に関する情報が含まれる。
【0043】
前記実装薬品マスタには、錠剤供給ユニット1の錠剤カセット11・12の各々に付与されているカセット識別情報(カセット番号)と、各カセットに収容されている薬品についての情報(例えば、薬品コード、薬品名、最大実装量、充填基準量、使用量、在庫量、製造番号(製造情報)、および使用期限等)とが含まれる。最大実装量とは、カセットに収容可能な錠剤の最大個数である。充填基準量とは、薬品を補充対象とする基準の数であり、在庫量がこの充填基準量を下回ると、当該カセットは補充の対象とされる。使用量は、薬品の払い出し量である。在庫量は、カセット内の薬品の残数である。製造番号は、薬品の製造場所、製造時期、および製造ライン等を特定するために薬品メーカーが薬品に付与している情報であって、例えばロット番号等である。使用期限は、薬品メーカーが薬品の使用期限として設定している期限である。
【0044】
実装薬品マスタの情報は、薬剤払出装置100の初期設定時に、操作部64のユーザー操作に応じて制御部61によって登録される。また、薬剤払出装置100の使用中に錠剤カセット11・12へ錠剤の充填を行う都度、充填が行われたカセットについて、実装薬品マスタの情報が更新される。錠剤の充填時の動作については、後に詳述する。
【0045】
また、記憶部62には、薬剤払出装置100における払い出しの履歴を少なくとも一時的に記憶する履歴データベースも設けられている。履歴データベースには、どの患者に、いつ、どのような薬剤を処方したかが記録されている。すなわち、履歴データベースには、患者を特定する情報(患者ID、氏名等)と関連づけて、各患者に対して払い出された薬剤を特定する情報(薬品ID、薬品名等)が記録されている。また、履歴データベースには、払い出された薬剤のそれぞれの製造番号(例えばロット番号)および使用期限も記録されている。本実施形態においては、制御ユニット6(コンピュータ6A)内の記憶部62に履歴データベースが設けられた構成としているが、履歴データベースが制御ユニット6以外の記憶装置に設けられているものとしても良い。また、記憶部62に設けられた履歴データベースの内容を、定期的に薬剤払出装置100の外部の記憶装置へ退避させるようにしても良い。
【0046】
モニタ63には、制御部61が処方データおよび作業者による入力に基づいた制御を行うことにより、作業支援画面が表示される。
【0047】
操作部64は、ユーザー操作を受け付けるキーボード、マウスおよびタッチパネル等の操作手段であり、ユーザー操作に対応する操作信号を制御部61に入力する。通信IF65は、薬剤払出装置100を、通信網を介して外部の処方入力端末200に接続するための通信インタフェースである。通信IF65は、処方入力端末200などの上位システムとの間でデータ通信を実行する。処方入力端末200は、例えば病院および老健施設などに配置される電子カルテシステム、院内または院外の薬局に配置される調剤管理システムなどである。通信IF65は、バーコードリーダ7等の各種の無線通信機器との間で無線データ通信を行う無線通信カードなどの無線通信インタフェースも備えている。
【0048】
通信IF65は、処方入力端末200から処方データを取得し、取得した処方データを制御部61に入力する。例えば、通信IF65は、処方入力端末200に設けられた記憶手段の所定の記憶領域に処方データが記憶されたか否かを監視しており、前記所定の記憶領域に処方データが記憶された場合に、その処方データを前記所定の記憶領域から読み出す。通信IF65は、処方入力端末200から送信された処方データを受信するものであってもよい。
【0049】
[錠剤供給ユニット1]
図5に示すように、錠剤供給ユニット1は、カセット制御部15と払出数カウント部16とを備えている。カセット制御部15は、処方データに基づいた制御ユニット6からの指示に従い、錠剤カセット11・12からの錠剤の払い出し動作を制御する。錠剤カセット11・12のそれぞれには、それぞれのカセットを識別するカセット識別情報や収容薬剤を特定する薬剤情報等を記憶するために、例えばRFIDタグ(図示せず)が付与されている。錠剤供給ユニット1には、錠剤カセット11・12のRFIDタグを読み取るためのタグリーダが設けられており、処方データにしたがって、錠剤カセット11・12から、目標の錠剤が収容されているカセットを選び出す。選び出されたカセットは、錠剤供給ユニット1内で、カセット制御部15の制御により、モータ機構等によってホッパー14の受け口まで移送され、処方データにしたがって、錠剤が必要量ずつ払い出される。払出数カウント部16は、払い出した錠数をカウントし、薬剤を払い出した錠剤カセットのカセット識別情報と共に、制御ユニット6へ送信する。制御ユニット6においては、払出数カウント部16でカウントされた払出数に基づいて、記憶部62の実装薬品マスタにおける在庫量を更新する。これにより、実装薬品マスタにおける各カセット内の錠剤の在庫量は、最新の状態に更新される。
【0050】
[払出ユニット2]
払出ユニット2は、セル開閉制御部23、引出開閉検知部24、および分割トレー制御部25を備えている。セル開閉制御部23は、分割トレー23のセル底面のシャッターの開閉を制御する。引出開閉検知部24は、引き出し部22が引き出された場合にこれを検知し、検知信号を制御ユニット6へ出力する。分割トレー制御部25は、処方データに基づいた制御ユニット6からの指示に従い、払出ユニット2内のモータ等を駆動制御することにより、分割トレー23の動きを制御する。
【0051】
次に、以上の構成にかかる薬剤払出装置100の動作について説明する。最初に、錠剤の払い出しを開始する前に、錠剤カセット11・12に錠剤が充填される際の動作について説明する。
【0052】
図6は、コンピュータ6Aのモニタ63に表示されるカセットモニタ画面の一例を示す説明図である。カセットモニタ画面は、薬剤カセット11・12に収容されている薬剤の情報を表示する画面である。作業者が、メインメニュー画面からカセットモニタ画面に遷移する操作を行うと(
図7のS1においてYes)、制御部61は、記憶部62の実装薬品マスタを参照し、在庫量が充填基準量を下回っている錠剤カセットを抽出し(S2)、抽出されたカセットに関する情報を、カセット薬品表示領域602に一覧表示する(S3)。
【0053】
そして、作業者が、カセット薬品表示領域602に表示されたカセットのうち、充填するカセットを選択し、充填開始ボタン604をクリックすると、制御部61はこの操作を受け付けて(S4)、モニタ63の表示を、
図8に示すような錠剤充填明細画面に切り替える(S5)。
【0054】
図8に示した錠剤充填明細画面は、カセット番号表示欄701、薬品コード表示欄702、薬品名表示欄703、充填者選択画面表示ボタン704、充填者名表示欄705、作業日付入力欄706、充填量入力欄707、製造番号入力欄708、使用期限入力欄709、バーコード入力欄710、在庫量表示欄711、カセット位置表示欄712、登録ボタン713、音声オフボタン714、およびリターンキー715を有している。
【0055】
カセット番号表示欄701には、充填されるカセットの番号が表示される。薬品コード表示欄702には、充填される薬剤の薬品コードが表示される。薬品名表示欄703には、充填される薬剤の薬品名が表示される。薬品コードおよび薬品名は、実装薬品マスタか
ら取得される。充填者選択画面表示ボタン704は、これをクリックすると、充填作業を行う作業者を選択するための別画面が表示される。作業者は、記憶部62に予め登録されており、登録されていない作業者を新たに追加することも可能である。充填者名表示欄705は、選択された作業者のIDや氏名を表示する。作業日付入力欄706は、充填作業を行う日付を入力するための欄である。
【0056】
充填量入力欄707は、作業者が、充填する薬剤の量を入力するための欄である。製造番号入力欄708は、充填する薬剤の製造番号を入力するための欄である。錠剤充填明細画面が開かれたときには、実装薬品マスタに記憶されている製造番号が取得され、ここに表示される。使用期限入力欄709は、充填する薬剤の使用期限を入力するための欄である。錠剤充填明細画面が開かれたときには、実装薬品マスタに記憶されている使用期限が取得され、使用期限入力欄709に表示される。バーコード入力欄710は、充填する薬剤のバーコードを入力するための欄である。錠剤充填明細画面が開かれたときには、実装薬品マスタに記憶されているバーコードが取得され、ここに表示される。
【0057】
在庫量表示欄711には、当該薬剤について実装薬品マスタに記憶されている在庫量が表示される。カセット位置表示欄712には、当該錠剤カセットの位置が赤色の点滅で表示される。なお、
図8においては、赤色の点滅表示をハッチングで表現している。登録ボタン713は、入力が完了したときにクリックされるボタンである。音声オフボタン714は、音声出力をオフにするためのボタンである。リターンキー715は、
図6に示したカセットモニタ画面に戻るためのボタンである。
【0058】
作業者は、この錠剤充填明細画面の充填量入力欄707へ、キーボード等を用いて、充填する錠剤の個数を入力する(S6)。また、充填する錠剤の製造番号および使用期限を、製造番号入力欄708および使用期限入力欄709に表示されている情報から変更する場合には、これらの欄に新しい情報を入力する。
【0059】
入力が終わると、作業者は、錠剤供給ユニット1から、薬剤を充填する錠剤カセットを引き出す。この際、作業者は、カセット位置表示欄712の表示を見ることにより、錠剤供給ユニット1における該当カセットの位置を容易に確認することができる。そして、作業者は、引き出した錠剤カセットへ錠剤を充填した後、元通りの位置に取り付ける(S7)。
【0060】
次に、作業者は、充填した薬剤が入っていた容器に付与されているバーコードを、バーコードリーダ7に読み取らせる(S8)。容器に付与されているバーコードには、薬品を特定する情報が含まれているので、制御部61は、読み取られたバーコードの情報に基づいて記憶部62の医薬品マスタから薬品IDや薬品名を抽出して実装薬品マスタの情報と対比することにより、正しい薬剤が充填されたかどうかを確認する(S9)。ここで、バーコードの情報が実装薬品マスタの情報と一致し(S9においてYes)、作業者が、登録ボタン713をクリックすると、充填処理が完了する(S11)。S9においてバーコードの情報が実装薬品マスタの情報と一致しなければ、制御部61は、モニタ63へエラーメッセージを出力させる(S10)。
【0061】
以上の充填処理は、通常、薬剤の払い出し作業を開始する前に行われる。なお、薬剤の払い出し作業を行っている途中に、錠剤カセット11・12のいずれかにおける薬剤の在庫量が充填基準量を下回ると、制御部61がこれを検知し、その薬剤についての錠剤充填明細画面をモニタ63に表示する。また、制御部61は、「錠剤を補充してください」等の音声または警告音をスピーカから出力する。ここで、作業者が、音声オフボタン714をクリックすると、制御部61は、音声等の出力を停止する。その後は、
図7のS6~S11と同じ手順によって、欠品した錠剤カセットに対して錠剤の充填処理が行われた後、
払い出し処理が再開される。
【0062】
ここで、薬剤払出装置100による薬剤払い出し処理の手順について、
図9のフローチャートを参照しながら説明する。
【0063】
作業者が、モニタ63に表示される画面から、薬剤払い出し処理を行う処方を選択すると、制御部61は、処理待ちの処方のリスト(図示省略)を、モニタ63に表示する(S21)。処方データは、1人の患者に対する処方に関するデータであって処方入力端末200から入力されて、薬剤払出装置100に読み込まれる。ここで、作業者がいずれかの処方を選択すると、制御部61はその選択を受け付け(S22)、選択された処方の処方データに基づき、払出ユニット2を制御することにより、処方データに含まれる薬剤を、錠剤カセット11・12から払い出す(S23)。また、制御部61は、処方データに含まれる1種類の薬剤を払い出すごとに、払い出した薬剤を特定する情報(薬品ID、薬品名等)と共にその薬剤の製造番号および使用期限を実装薬品マスタから抽出し、患者を特定する情報(患者ID、患者名等)や処方日付等と関連付けて、記憶部62の履歴データベースへ登録する(S24)。これらの情報を履歴データベースに登録することにより、後日、薬剤の製造時に何らかの不都合があったことが判明した場合等に、不都合があった製造ロットの薬剤がいつどの患者に処方されたかを、履歴データベースを用いて容易に検索することができる。
【0064】
処方データに含まれる薬剤のうち、錠剤カセット11・12からの払い出しが可能な薬剤の全てについて払い出しと履歴データベースへの登録が完了すると(S25においてYes)、制御部61は、処方データを参照し、手撒きで払い出される薬剤の有無を判断する(S26)。手撒きで払い出される薬剤が処方データに含まれている場合(S26においてYes)、制御部61は、
図10に示すような手撒き錠剤補助画面を、モニタ63に表示する(S27)。手撒きで払い出される薬剤が無い場合(S26においてNo)は、制御部61は処理を終了する。
【0065】
図10に示した手撒き錠剤補助画面は、表示切替ボタン901、薬品名表示欄902、手撒き指示領域903、製造番号入力欄904、使用期限入力欄905、手撒き完了ボタン906等を有している。表示切替ボタン901は、クリックするたびに、手撒き錠剤補助画面の表示状態を、「薬品ごと」、「手撒きのみ」、「全薬品」に順に切り替える。また、表示切替ボタン901内に、画面がどの表示状態にあるかが表示される。
図10の画面例は、「薬品ごと(View per Medication)」の表示状態である。薬品名表示欄902
は、処方データに含まれる薬品をプルダウンリストで表示可能となっており、作業者がプルダウンリストから選択した薬品名が表示される。
【0066】
手撒き指示領域903には、トレー51の複数のセル511を表すマス目が、トレー51を引き出し部22にセットしたときの向きと同じ並びで、模式的に表示されている。
図10に示しているように、手撒き指示領域903には、薬剤を投入すべきセルの位置に、投入すべき薬剤の量(
図10の例では、3/4錠ずつ)が表示されている。このように、トレー51において薬剤を投入すべきマス目に、投入すべき薬剤の量を表示することにより、手撒き作業におけるミスを防止することができる。
【0067】
なお、引き出し部22に、トレー51の複数のセル511のそれぞれに対応させてLED等の発光素子を取り付けて、処方データに基づき、薬剤を投入すべきセル511に対応するLEDを点灯させるようにしても良い。ここで、LED等の発光素子は、セル511の縁部で発光するように取り付けられていても良いし、セル511全体を光らせるように取り付けられていても良い。
【0068】
製造番号入力欄904は、作業者が、手撒きする薬剤の製造番号(例えばロット番号)を入力するための欄である。使用期限入力欄905は、作業者が
、手撒きする薬剤の使用期限を入力するための欄である。作業者は、手撒きする薬剤を容器から取り出してトレー51に撒く前(撒いた後でも良い)に、容器に記載されている製造番号と使用期限とを、製造番号入力欄904および使用期限入力欄905に入力する。
【0069】
手撒き完了ボタン906は、1種類の薬剤の手撒き作業を完了するごとに、作業者がクリックするためのボタンである。手撒き作業中は、手撒き完了ボタン906には「未完了(Incomplete)」と表示されており、手撒きが完了してこのボタンをクリックすることにより、その表示が「完了(Complete)」に切り替わる。手撒き完了ボタン906を「完了(Complete)」状態にすることにより、次に手撒きする薬剤を、薬品名表示欄902のプルダウンリストにおいて選択することが可能となる。また、手撒きを完了してこのボタンをクリックした際に、製造番号入力欄904および使用期限入力欄905にデータが入力されていなければ、エラーメッセージを出力するように構成することが好ましい。
【0070】
図10に示した例では、製造番号入力欄904および使用期限入力欄905には、1つの薬剤につき、製造番号および使用期限を3セット(すなわち3箱分)入力することができるが、入力可能な欄の数は任意である。
【0071】
手撒き錠剤補助画面において、1つの薬剤について製造番号入力欄904および使用期限入力欄905に入力された製造番号および使用期限は、当該薬剤を特定する情報(薬品ID、薬品名等)と関連付けられて、制御ユニット6内のメモリに一旦記憶される(S28)。そして、手撒きで払い出される薬剤の全てについての手撒き作業が完了したと判断すると(S29にてYes)、制御部61は、前記メモリに記憶されていた製造番号および使用期限を読み出して、患者を特定する情報(患者ID、患者名等)や処方日付等と関連付けて、記憶部62の履歴データベースへ登録する(S30)。これらの情報を履歴データベースに登録することにより、後日、手撒きの薬剤についても、製造時に何らかの不都合があったことが判明した場合等に、不都合があった製造ロットの薬剤がいつどの患者に処方されたかを、履歴データベースを用いて容易に検索することができる。
【0072】
図11に、履歴データベースを検索するための検索画面の一例を示す。
図11に示すように、履歴データベースの検索画面は、検索対象範囲を指定する時期指定欄801、患者名を指定する患者指定欄802、施設名を指定する施設指定欄803、作業者名を指定する作業者指定欄804、製造番号を指定する製造番号指定欄805、を有している。そして、これらの欄に所望の検索条件を指定して、検索開始ボタン806をクリックすると、制御部61が、指定された検索条件にしたがって履歴データベースを検索することにより、検索結果表示欄807へ検索結果を表示する。
【0073】
図11の例では、製造番号指定欄805に、検索キーとして「31001」が入力されている。制御部61は、この検索キーに合致(前方一致)する製造番号を含むレコードを履歴データベースから抽出し、検索結果表示欄807に表示する。
図11の例では、検索結果表示欄807に検索結果として表示されるレコードは、処方日付(Date and Time)
、処方ナンバー(Rx. No)、患者ID(Patient ID)、患者名(Patient Full Name)、
施設名(Institution Name)、作業者名(User Name)、薬品コード(PDE)、薬品名(Medication Name)、製造番号(Lot No)、使用期限(Validity Date)を含む。
【0074】
以上のとおり、上記の実施形態にかかる薬剤払出装置100によれば、1人の患者に対する処方に基づいて薬剤払い出しを行うたびに、履歴データベースに、当該患者に対して、いつ、どのような薬剤を払い出したかについての履歴情報を登録する。この履歴情報には、払い出された薬剤のそれぞれについて、製造番号および使用期限の情報が含まれてい
る。これにより、後日、どの患者にどのような薬剤を払い出したかを、履歴データベースを参照することにより、確認することができる。また、払い出した薬剤の製造番号を検索することも可能であるので、払い出した薬剤に、製造時に何らかの不都合があったことが判明した場合に、どの患者に処方されたかを容易に追跡することが可能となる。
【0075】
[変形例]
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明の実施形態は上記で説明した態様に限定されず、種々の変更が可能である。
【0076】
例えば、上記の実施形態においては、ブリスターパックに錠剤を払い出す薬剤払出装置を例示した。しかし、薬剤の払い出し態様は、ブリスターパックに限定されない。例えば、1回の服用分を分包紙に個別包装して払い出す分包ユニットを備えた薬剤払出装置にも、本発明を適用することができる。また、錠剤だけでなく、散薬等を払い出す薬剤払出装置にも、本発明を適用することができる。
【0077】
また、上記の実施形態においては、薬品の製造情報(例えばロット番号)と共に使用期限も一緒に入力させるようにしているが、使用期限の入力は必須ではない。
【0078】
また、制御ユニット6の記憶部62に各種マスタおよび履歴データベースが格納されている構成を例示したが、通信IFおよび外部ネットワーク等を介して、装置外部にある記憶部に、各種マスタや履歴データベースを格納する構成としても良い。
【0079】
上記各実施形態で説明した処理の一部または全部は、プログラムにより実現されるものであってもよい。この場合、各処理の一部または全部は、コンピュータにおいて、中央演算装置(CPU)、マイクロプロセッサ、プロセッサ等により行われる。それぞれの処理を行うためのプログラムは、ハードディスク、ROMなどの記憶装置に格納されており、ROMにおいて、あるいはRAMに読み出されて実行される。記憶装置(記憶媒体)は、一時的でない有形のものであり、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。
【0080】
上記の各実施形態で説明した各処理をハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェア(OS(オペレーティングシステム)、ミドルウェア、あるいは、所定のライブラリとともに実現される場合を含む。)により実現してもよい。さらに、ソフトウェアおよびハードウェアの混在処理により実現しても良い。なお、上記実施形態に係る表示装置の表示処理をハードウェアにより実現する場合、各処理を行うためのタイミング調整を行う必要があるのは言うまでもない。上記実施形態においては、説明便宜のため、実際のハードウェア設計で生じる各種信号のタイミング調整の詳細については省略している。
【符号の説明】
【0081】
1…錠剤供給ユニット
15…カセット制御部
16…払出数カウント部
2…払出ユニット(手撒き薬品処理部)
23…セル開閉制御部
24…引出開閉検知部
25…分割トレー制御部
6…処方制御ユニット
61…制御部
62…記憶部
63…モニタ
64…入力装置
65…通信IF
6A…コンピュータ
7…バーコードリーダ
100…薬剤払出装置
200…処方入力端末
【手続補正書】
【提出日】2023-07-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処方データに基づいて薬剤を払い出す薬剤払出装置であって、
作業者による入力を受け付ける入力部と、
前記作業者に画面を表示するモニタと、
制御部と、
前記薬剤払出装置における払い出しの履歴を記憶する履歴データベースを格納した記憶部とを備え、
前記制御部は、前記処方データに対応して払い出す薬剤の製造に関する薬剤情報であって、当該薬剤の製造時にメーカーにより付与された薬剤情報を作業者に入力させるための入力欄を含む前記画面を前記モニタに表示させて、前記薬剤情報の入力を前記入力部により受け付け、
前記制御部は、一患者に対する薬剤の払出作業において払い出された薬剤の前記薬剤情報を、当該患者を特定する情報と関連づけて前記履歴データベースへ記憶させる、
薬剤払出装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記処方データ取得後、前記薬剤情報の入力を前記入力部により受け付ける、請求項1に記載の薬剤払出装置。
【請求項3】
錠剤を収容する錠剤カセットを複数有し、前記処方データにしたがって前記錠剤カセットから錠剤を払い出す錠剤供給ユニットをさらに備え、
前記制御部は、前記錠剤カセットへの錠剤の充填作業時に、前記画面を前記モニタに表示させる、請求項1または2に記載の薬剤払出装置。
【請求項4】
払い出された薬剤を個別の薬包に分包する分包ユニットをさらに備えた、請求項1~3のいずれか一項に記載の薬剤払出装置。
【請求項5】
処方データに基づき、薬剤を払い出す薬剤払出装置の制御プログラムであって、
前記制御プログラムは、コンピュータのプロセッサに、
作業者による入力を受け付ける入力処理と、
前記処方データに対応して払い出す薬剤に関する薬剤情報であって、当該薬剤の製造時にメーカーにより付与された薬剤情報を作業者に入力させるための入力欄を含む画面をモニタに表示させて、前記薬剤情報の入力を受け付ける処理と、
一患者に対する薬剤の払出作業において払い出された薬剤の前記薬剤情報を、当該患者を特定する情報と関連づけて、前記薬剤払出装置における払い出しの履歴を記憶する履歴データベースへ記憶させる処理とを実行させる、
制御プログラム。
【請求項6】
請求項5に記載の制御プログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。