(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123741
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】眼科の疾患の個別化された治療
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20230829BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230829BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230829BHJP
C07K 16/22 20060101ALI20230829BHJP
C07K 16/26 20060101ALI20230829BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230829BHJP
【FI】
C07K16/46
A61P27/02 ZNA
A61K39/395 N
C07K16/22
C07K16/26
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023106954
(22)【出願日】2023-06-29
(62)【分割の表示】P 2021552902の分割
【原出願日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】62/883,499
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】リン,ヒュー
(72)【発明者】
【氏名】オズボーン,アーロン
(72)【発明者】
【氏名】シルバーマン,デイビッド・アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ウェイカート,ロバート・ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリス,ジェフリー・アール
(57)【要約】 (修正有)
【課題】糖尿病性黄斑浮腫の満たされていない高い医療ニーズに対処するために、追加の経路を標的とし、硝子体内注入の負担を軽減する新しい治療法を提供する。
【解決手段】本発明は、新生血管AMD(nAMD)(加齢黄斑変性症[AMD]に続発する脈絡膜血管新生[CNV]またはウェット型AMDとしても知られる)、糖尿病性網膜症、特に、糖尿病性黄斑浮腫(DME)または網膜静脈閉塞症(RVO)に続発する黄斑浮腫などの眼科の血管疾患の治療に使用するためのVEGFおよびANG2に結合する二重特異性抗体を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
新生血管AMD(nAMD)および糖尿病性黄斑浮腫(DME)から選択される眼科の血管疾患の治療、または血管新生AMD(nAMD)および糖尿病黄斑浮腫(DME)から選択される眼科の血管疾患に罹患している患者の治療において使用するための、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)およびヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)に結合する二重特異性抗体であって、前記治療が、個別化された治療間隔(PTI)を含む、二重特異性抗体。
【請求項2】
新生血管加齢黄斑変性症(nAMD)の治療、またはnAMDに罹患している患者の治療に使用するための、請求項1に記載の(使用のための)二重特異性抗体。
【請求項3】
前記治療が、個別化された治療間隔を含み、
a)患者が、最初に、4回、4週ごと(Q4W)の投与間隔で、二重特異性VEGF/ANG2抗体で治療され、
b)20週目および24週目に疾患活動性が評価され、前記疾患活動性は、以下の基準:
i)20週目の評価の場合は12週目および16週目であり、24週目の評価の場合は16週目および20週目である、前の2回のスケジュールされた訪問での平均中心サブフィールド厚(CST)値と比較して、CSTの50μmを超える増加があること、または
ii)前の2回のスケジュールされた訪問のいずれかで記録された最低CST値と比較して、75μm以上のCSTの増加があること、
iii)前の2回のスケジュールされた訪問での平均最良矯正視力(BCVA)値と比較して、5文字以上のBCVAの減少があること、
iv)前の2回のスケジュールされた訪問のいずれかで記録された最高BCVA値と比較して、10文字以上のBCVAの減少があること、または
v)nAMD活動性に起因する、新しい黄斑出血の存在、のうちの1つが満たされた場合に決定され、
c)次いで、前記患者
i)20週目に前記疾患活動性基準を満たす患者が、20週目以降8週ごと(Q8W)の投与間隔で治療され(20週目に最初のQ8W投与)、
ii)24週目に前記疾患活動性基準を満たす患者が、24週目以降12週ごと(Q12W)の投与間隔で治療され(24週目に最初のQ12W投与)、
iii)20週目および24週目に疾患活動性基準を満たさない患者が、28週目以降16週ごと(Q16W)の投与間隔で治療される(28週目に最初のQ16Wの投与)、請求項2に記載の(使用のための)二重特異性抗体。
【請求項4】
前記個別化された治療間隔が、60週目の後に延長、短縮、または維持され、
a)以下の基準のすべてが満たされる場合、間隔が、(最大Q16Wまで)4週間延長され、
i)最後の2回の研究薬物投与訪問の平均と比較して、安定したCSTであって、安定性は、最低の研究中薬物投与訪問測定値と比較して、CSTの変化が30μm未満であり、かつ、CSTが50μm以上増加しないこととして定義される、安定したCST、
ii)最後の2回の研究薬物投与訪問の平均と比較して、5文字以上のBCVAの減少がなく、かつ、最高の研究中薬物投与訪問測定値と比較して、10文字以上のBCVAの減少がないこと、
iii)新しい黄斑出血がないこと、
b)
以下の基準のうちの1つが満たされた場合、間隔が、(最小Q8Wに)4週間短縮され、
または
以下の基準のうちの2つ以上が満たされる場合、もしくは1つの基準が新しい黄斑出血を含む場合は、間隔が、8週間間隔に短縮される、
i)最後の2回の投与訪問からの平均と比較して、50μm以上のCSTの増加があるか、または最低の投与訪問測定値と比較して、75μm以上の増加があること、
ii)最後の2回の投与訪問の平均と比較して、5文字以上のBCVAの減少があるか、または最高の投与訪問測定値と比較して、10文字以上のBCVAの減少があること、
iii)新しい黄斑出血があること、
請求項3に記載の使用のための二重特異性抗体。
【請求項5】
糖尿病性黄斑浮腫(DME)の治療またはDMEに罹患している患者の治療に使用するための、請求項1に記載の使用のための二重特異性抗体。
【請求項6】
前記治療が、個別化された治療間隔(PTI)を含み、
a)前記中心サブフィールド厚(CST)が、12週目以降に測定される、予め定義された参照CST閾値を満たすまで、患者が、4週ごと(Q4W)の投与間隔で、前記二重特異性VEGF/ANG2抗体により最初に治療され、
b)次いで、前記投与間隔が4週間増加されて、初期Q8W投与間隔とし、
c)この時点以降、前記投与間隔が、それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較したCSTおよび最良矯正視力(BCVA)の相対的変化に基づく前記投与訪問で行われた評価に基づいて延長、短縮、または維持され、
i)
-前記CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、前記間隔が、4週間延長され、
ii)
-前記CSTが10%超減少した場合、または
-前記CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、または
-前記CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、前記間隔が、維持され、
iii)
-前記CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上~10文字未満のBCVAの減少を伴う場合、または
-前記CST値が20%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、前記間隔が、4週間短縮され、
iv)前記CST値が10%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、前記間隔が、8週間短縮され、
前記それぞれの参照中心サブフィールド厚(CST)が、初期CST閾値基準が満たされたときのCST値であり、前記参照CSTは、2回の連続した投与訪問についてCSTが前の参照CSTから10%超減少し、得られる値が30μm以内である場合、後の訪問で得られるCST値が新しい参照CSTとして機能するように調整され、
前記参照最良矯正視力(BCVA)が、任意の以前の投与訪問で得られた3つの最良BCVAスコアの平均である、請求項5に記載の使用のための二重特異性抗体。
【請求項7】
前記投与間隔が、最大16週ごと(Q16W)および最小Q4Wに、4週間の増分で調整され得る、請求項6に記載の使用のための二重特異性抗体。
【請求項8】
網膜中心静脈閉塞症に続発する、半側網膜静脈閉塞症に続発する、もしくは分枝静脈閉塞症に続発する黄斑浮腫から選択される眼科の血管疾患の治療、または網膜中心静脈閉塞症に続発する、半側網膜静脈閉塞症に続発する、もしくは分枝静脈閉塞症に続発する黄斑浮腫から選択される眼科の血管疾患に罹患している患者の治療に使用するための、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)およびヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)に結合する二重特異性抗体であって、前記治療が、個別化された治療間隔(PTI)を含み、
a)患者が、最初に、1日目~20週目まで4週ごと(Q4W)の投与間隔で、前記二重特異性VEGF/ANG2抗体で治療され、
b)24週目から、前記中心サブフィールド厚(CST)が予め定義された参照CST閾値を満たすまで、患者が、Q4Wの頻度で、前記二重特異性VEGF/ANG2抗体を受け、
c)この時点以降、前記投与間隔が、それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較した前記CSTおよび最良矯正視力(BCVA)の相対的変化に基づく前記投与訪問で行われた評価に基づいて、延長、短縮、または維持され、
i)
前記CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、前記間隔が、4週間延長され、または
ii)以下の基準のうちのいずれかが満たされた場合:
前記CST値が10%超減少した場合、もしくは
前記CST値が10%以下減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、もしくは
前記CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、前記間隔が、維持され、
iii)以下の基準のうちのいずれかが満たされた場合:
前記CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上~10文字未満のBCVAの減少を伴う場合、もしくは
前記CST値が20%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、もしくは
前記CST値が10%以下増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、前記間隔が、4週間短縮され、
iv)
前記CST値が10%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、前記間隔が、Q4Wに短縮され、
前記それぞれの参照中心サブフィールド厚(CST)が、初期CST閾値基準が満たされたときのCST値であり、前記参照CSTは、2回の連続した投与訪問についてCSTが前の参照CSTから10%超減少し、得られる値が30μm以内である場合、後の訪問で得られるCST値が新しい参照CSTとして機能するように調整され、
前記参照最良矯正視力(BCVA)が、任意の以前の投与訪問で得られた3つの最良BCVAスコアの平均である、二重特異性抗体。
【請求項9】
前記投与間隔が、最大16週ごと(Q16W)および最小Q4Wに調整され得る、請求項8に記載の(使用のための)二重特異性抗体。
【請求項10】
ヒトVEGFおよびヒトANG2に結合する前記二重特異性抗体が、ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位およびヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位を含む、二重特異性二価抗VEGF/ANG2抗体であり、
i)VEGFに特異的に結合する前記第1の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号1のCDR3H領域、配列番号2のCDR2H領域、および配列番号3のCDR1H領域、ならびに軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号4のCDR3L領域、配列番号5のCDR2L領域、および配列番号6のCDR1L領域を含み、
ii)ANG-2に特異的に結合する前記第2の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号9のCDR3H領域、配列番号10のCDR2H領域、および配列番号11のCDR1H領域、ならびに軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号12のCDR3L領域、配列番号13のCDR2L領域、および配列番号14のCDR1L領域を含み、
iii)前記二重特異性抗体が、変異I253A、H310A、およびH435A、ならびに変異L234A、L235A、およびP329Gを含む、ヒトIgG1サブクラスの定常重鎖領域を含み、番号付けが、KabatのEUインデックスによる、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための二重特異性抗体。
【請求項11】
i)VEGFに特異的に結合する前記第1の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインVHとして配列番号7のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインVLとして配列番号8のアミノ酸配列を含み、
ii)ANG-2に特異的に結合する前記第2の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインVHとして配列番号15のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインVLとして配列番号16のアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の使用のための二重特異性抗体。
【請求項12】
ヒトVEGFおよびヒトANG2に結合する前記二重特異性抗体が、配列番号17、配列番号18、配列番号19、および配列番号20のアミノ酸配列を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための二重特異性抗体。
【請求項13】
前記二重特異性抗体が、ファリシマブである、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための二重特異性抗体。
【請求項14】
前記二重特異性抗体が、約5~7mgの用量で投与される、請求項10~13のいずれか一項に記載の使用のための二重特異性抗体。
【請求項15】
前記二重特異性抗体が、約6mgの用量で投与される、請求項10~13のいずれか一項に記載の使用のための二重特異性抗体。
【請求項16】
前記二重特異性抗体が、約120mg/mlの濃度で投与される、請求項14または15に記載の使用のための二重特異性抗体。
【請求項17】
眼科の血管疾患に罹患している患者が、以前に抗VEGF治療で治療されていない、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用のための二重特異性抗体。
【請求項18】
眼科の血管疾患に罹患している患者が、以前に抗VEGF治療で治療されている、請求項1~17のいずれか一項に記載の使用のための二重特異性抗体。
【請求項19】
前記抗体が、ソフトウェアツールの決定に従って投与される、請求項1~18のいずれか一項に記載の使用のための二重特異性抗体。
【請求項20】
nAMDに罹患している患者の治療のための個別化された治療間隔(PTI)に従う個別化された投与スケジュールを提供する方法であって、前記方法が、
コンピューティングシステムにおいて、患者のCSTおよび最良矯正視力(BCVA)、ならびに任意選択により新しい黄斑出血の評価に関する情報を含む患者データを受信することと、
前記コンピューティングシステムを使用して、それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較して、前記受信した患者データに基づいて投与間隔を延長、短縮、または維持することと、
前記投与間隔からPTIを生成することと、を含み、
a)以下の基準のすべてが満たされる場合、前記間隔が、(最大Q16Wまで)4週間延長され、
i)最後の2回の研究薬物投与訪問の平均と比較して、安定したCSTであって、安定性は、最低の研究中薬物投与訪問測定値と比較して、CSTの変化が30μm未満であり、かつ、CSTが50μm以上増加しないこととして定義される、安定したCST、
ii)最後の2回の研究薬物投与訪問の平均と比較して、5文字以上のBCVAの減少がなく、かつ、最高の研究中薬物投与訪問測定値と比較して、10文字以上のBCVAの減少がないこと、
iii)新しい黄斑出血がないこと、
b)以下の基準のうちの1つが満たされる場合、間隔が、(最小Q8Wに)4週間短縮され、
または
以下の基準のうちの2つ以上が満たされる場合、もしくは1つの基準が新しい黄斑出血を含む場合は、間隔が、8週間間隔に短縮される、
i)最後の2回の投与訪問からの平均と比較して、50μm以上のCSTの増加があるか、または最低の投与訪問測定値と比較して、75μm以上の増加があること、
ii)最後の2回の投与訪問の平均と比較して、5文字以上のBCVAの減少があるか、または最高の投与訪問測定値と比較して、10文字以上のBCVAの減少があること、
iii)新しい黄斑出血があること、
方法。
【請求項21】
DMEに罹患している患者の治療のための個別化された治療間隔(PTI)に従う個別化された投与スケジュールを提供する方法であって、前記方法が、
コンピューティングシステムにおいて、患者のCSTおよび最良矯正視力(BCVA)を含む患者データを受信することと、
前記コンピューティングシステムを使用して、それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較して、前記受信した患者データに基づいて投与間隔を延長、短縮、または維持することと、
前記投与間隔からPTIを生成することと、を含み、
i)
-前記CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、前記間隔が、4週間延長され、
ii)
-前記CSTが10%超減少した場合、または
-前記CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、または
-前記CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、前記間隔が、維持され、
iii)
-前記CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上~10文字未満のBCVAの減少を伴う場合、または
-前記CST値が20%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、前記間隔が、4週間短縮され、
iv)前記CST値が10%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、前記間隔が、8週間短縮される、方法。
【請求項22】
網膜中心静脈閉塞症に続発する、半側網膜静脈閉塞症に続発する、または分枝静脈閉塞症に続発する黄斑浮腫から選択される眼科の血管疾患に罹患している患者の治療のための個別化された治療間隔(PTI)に従う個別化された投与スケジュールを提供する方法であって、前記方法が、
コンピューティングシステムにおいて、患者のCSTおよび最良矯正視力(BCVA)を含む患者データを受信することと、
前記コンピューティングシステムを使用して、それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較して、前記受信した患者データに基づいて投与間隔を延長、短縮、または維持することと、
前記投与間隔からPTIを生成することと、を含み、
i)
前記CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、前記間隔が、4週間延長され、または
ii)以下の基準のうちのいずれかが満たされた場合:
前記CST値が10%超減少した場合、もしくは
前記CST値が10%以下減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、もしくは
前記CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、前記間隔が、維持され、
iii)以下の基準のうちのいずれかが満たされた場合:
前記CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上~10文字未満のBCVAの減少を伴う場合、もしくは
前記CST値が20%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、もしくは
前記CST値が10%以下増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、前記間隔が、4週間短縮され、
iv)
前記CST値が10%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、前記間隔が、Q4Wに短縮される、方法。
【請求項23】
前記コンピューティングシステムにおいて、更新された患者データを受信することと、
前記コンピューティングシステムを使用して、前記更新された患者データに基づいて前記投与間隔を継続的に更新または維持することと、
前記更新または維持された投与間隔に基づいて、視覚化、ユーザーインターフェース、または通知を生成することと、をさらに含む、請求項20、21、または22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
(nAMDの治療のための)個別化された治療間隔(PTI)に従う個別化された投与スケジュールの使用であって、コンピューティングシステムが、
コンピューティングシステムにおいて、患者のCSTおよび最良矯正視力(BCVA)、ならびに任意選択により新しい黄斑出血の評価に関する情報を含む患者データを受信することと、
それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較して、前記受信した患者データに基づいて投与間隔を延長、短縮、または維持することと、によって前記PTIを生成し、
a)以下の基準のすべてが満たされる場合、前記間隔が、(最大Q16Wまで)4週間延長され、
i)最後の2回の研究薬物投与訪問の平均と比較して、安定したCSTであって、安定性は、最低の研究中薬物投与訪問測定値と比較して、CSTの変化が30μm未満であり、かつ、CSTが50μm以上増加しないこととして定義される、安定したCST、
ii)最後の2回の研究薬物投与訪問の平均と比較して、5文字以上のBCVAの減少がなく、かつ、最高の研究中薬物投与訪問測定値と比較して、10文字以上のBCVAの減少がないこと、
iii)新しい黄斑出血がないこと、
b)
以下の基準のうちの1つが満たされた場合、前記間隔が、(最小Q8Wに)4週間短縮され、
または
以下の基準のうちの2つ以上が満たされる場合、もしくは1つの基準が新しい黄斑出血を含む場合は、前記間隔が、8週間間隔に短縮される、
i)最後の2回の投与訪問からの平均と比較して、50μm以上のCSTの増加があるか、または最低の投与訪問測定値と比較して、75μm以上の増加があること、
ii)最後の2回の投与訪問の平均と比較して、5文字以上のBCVAの減少があるか、または最高の投与訪問測定値と比較して、10文字以上のBCVAの減少があること、
iii)新しい黄斑出血があること、
使用。
【請求項25】
(DMEの治療のための)個別化された治療間隔(PTI)に従う個別化された投与スケジュールの使用であって、コンピューティングシステムが、
患者のCSTおよび最良矯正視力(BCVA)を含む患者データを受信することと、
それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較して、前記受信した患者データに基づいて投与間隔を延長、短縮、または維持することと、によって前記PTIを生成し、
i)
-前記CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、前記間隔が、4週間延長され、
ii)
-前記CSTが10%超減少した場合、または
-前記CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、または
-前記CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、前記間隔が、維持され、
iii)
-前記CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上~10文字未満のBCVAの減少を伴う場合、または
-前記CST値が20%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、前記間隔が、4週間短縮され、
iv)前記CST値が10%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、前記間隔が、8週間短縮される、使用。
【請求項26】
(網膜中心静脈閉塞症に続発する、半側網膜静脈閉塞症に続発する、または分枝静脈閉塞症に続発する黄斑浮腫の治療のための)個別化された治療間隔(PTI)に従う個別化された投与スケジュールの使用であって、コンピューティングシステムが、
患者のCSTおよび最良矯正視力(BCVA)を含む患者データを受信することと、
それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較して、前記受信した患者データに基づいて投与間隔を延長、短縮、または維持することと、によって前記PTIを生成し、
i)
前記CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、前記間隔が、4週間延長され、または
ii)以下の基準のうちのいずれかが満たされた場合:
前記CST値が10%超減少した場合、もしくは
前記CST値が10%以下減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、もしくは
前記CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、前記間隔が、維持され、
iii)以下の基準のうちのいずれかが満たされた場合:
前記CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上~10文字未満のBCVAの減少を伴う場合、もしくは
前記CST値が20%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、もしくは
前記CST値が10%以下増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、前記間隔が、4週間短縮され、
iv)
前記CST値が10%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、前記間隔が、Q4Wに短縮される、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新生血管AMD(nAMD)(加齢黄斑変性症[AMD]に続発する脈絡膜血管新生[CNV]またはウェット型AMDとしても知られる)、糖尿病性網膜症、特に、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、または網膜静脈閉塞症(RVO)に続発する黄斑浮腫などの眼科の血管疾患の治療に使用するためのVEGFおよびANG2に結合する抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
新生血管AMD(nAMD)(加齢黄斑変性症[AMD]に続発する脈絡膜血管新生[CNV]またはウェット型AMDとしても知られる)、糖尿病性網膜症、特に糖尿病性黄斑浮腫(DME)などの眼科の血管疾患は、しばしば視力喪失および失明に至る重度の疾患である。
【0003】
新生血管加齢黄斑変性症(nAMD)(加齢黄斑変性症[AMD]に続発する脈絡膜血管新生[CNV]またはウェット型AMDとしても知られる)は、急速かつ重度の視力喪失を引き起こし、高齢者における視覚障害の主な原因となり続けている、進行型AMDの一形態である(Bourne et al.Lancet Glob Health 2013;1:e339-49;Wong et al.Lancet Glob Health 2014;2:e106-16)。
【0004】
血管新生、炎症、酸化ストレスなどのいくつかの生化学的および生物学的プロセスは、ブルッフ膜を貫通して、かつ、網膜色素上皮へ、またはこれを通って移動する脈絡膜毛細血管の異常増殖によって特徴付けられるnAMDの病因における役割を果たすことが知られている。CNVは、体液、脂質、および血液を網膜の外側に漏出し、治療せずに放置した場合、重度の不可逆的な中心視野の喪失を引き起こす。
【0005】
抗血管内皮増殖因子(抗VEGF)剤の前は、レーザー光凝固療法およびベルテポルフィンによる光線力学療法が標準治療であり、視力を安定化させることが示されていた。そのような治療は、依然として選択された患者のための治療選択肢であるが、nAMDの治療は、病理学的血管新生の重要な因子であるVEGF-Aを標的とする生体分子の導入によって著しく改善された(Brown et al.N Engl J Med 2006;355:1432-44;Rosenfeld et al.N Engl J Med 2006;355:1419-31;Heier et al.Ophthalmology 2012;119:2537-48)。2006年にLucentis(登録商標)(ラニビズマブ)が最初に承認されて以来、抗VEGF療法の素晴らしい利益および視力を回復するその能力が広く認識されている(米国眼科学会2015)。
【0006】
現在利用可能な抗VEGF治療の重要な課題は、視力向上(vision gain)を維持するための頻繁かつ長期の投与の必要性である(Heier et al.Ophthalmology 2012;119:2537-48;the Comparison of Age-Related Macular Degeneration Treatment Trials[CATT]Research Group 2016 Ophthalmology 2016;123:1751-61)。リアルワールドデータは、nAMDを有する多くの患者が最適な頻度で治療を受けていないことを示唆しており、臨床診療でのこの治療不足は、投与された臨床試験で観察されたものと比較して低い視力(VA)向上に関連している(Cohen et al.Retina 2013;33:474-81;Finger et al.Acta Ophthalmol 2013;91:540-6;Holz et al.Br J Ophthalmol 2015;99:220-6;Rao et al.Ophthalmology 2018;125:522-28)。臨床診療におけるnAMDの治療不足は、患者、介護者、および医療システムに対する頻繁な治療の負担を反映している(Gohil et al.PLoS One 2015;10:e0129361;Prenner et al.Am J Ophthalmol 2015;160:725-31;Varano et al.Clin Ophthalmol 2015;9:2243-50;CATT Research Group et al.Ophthalmology 2016;123:1751-61;Vukicevic et al.Eye 2016;30:413-21)。
【0007】
糖尿病性網膜症(DR)の合併症である糖尿病性黄斑浮腫(DME)は、網膜微小血管系の基礎疾患の任意の段階で発症し得る(Fong et al.Diabetes Care 2004;27:2540-53)。DMEは、基礎となるDRが悪化するにつれて、非増殖性DR(NPDR)から増殖性DR(PDR)へと、より頻度が高く発生する(Henricsson et al.Acta Ophthalmol.Scand.1999:77:218-223;Johnson Am J Ophthalmol 2009;147:11-21)。DMEは、DRを有する患者における中等度および重度の視覚障害の最も一般的な原因であり(Ciulla et al.Diabetes Care 2003;26:2653-64;Davidson et al.Endocrine 2007;32:107-16;Leasher et al.Diabetes Care 2016;39:1643-9)、治療せずに放置した場合、患者の約50%において2年以内に10文字以上の視力(VA)喪失をもたらし得る(Ferris and Patz Surv Ophthamol 1984;28 Suppl:452-61;Diabetes Care 2003;26:2653-64et al.2003)。DMEは、糖尿病患者の約14%に罹患し、1型糖尿病および2型糖尿病の両方の患者に見られ得る(Girach and Lund-Andersen Int J Clin Practice 2007;61:88-97)。2013年では、糖尿病を有する世界の患者集団は約3億8200万人であり、2035年までに5億9200万人に増加すると推定されている(国際糖尿病連合2013)。
【0008】
画像技術の進歩により、DMEは現在、従来の早期治療糖尿病性網膜症研究(ETDRS)の検眼鏡検査に基づく基準ではなく、光干渉断層撮影(OCT)によってしばしば診断される。分子レベルでは、DMEは、血管内皮増殖因子-A(VEGF-A)媒介性の血管透過性の増加および周皮細胞の喪失の結果であり、血管新生促進、透過性亢進、および炎症誘発性メディエーターの低酸素媒介性放出をもたらす(Antonetti et al.Semin Ophthalmol 1999;14:240-8)。VEGFはまた、内皮細胞上のTie2受容体チロシンキナーゼのアンタゴニストとして作用する恒常性因子であるアンジオポエチン-2(Ang-2)をアップレギュレートし、Ang-1依存性Tie2活性化によって維持される血管の安定化を妨げる。したがって、Ang-2は、血管不安定化因子として機能し、血管系をより弾力性にし、内皮バリアの破壊および発芽を起こしやすくする。網膜組織における過剰なAng-2およびVEGFは、血管の不安定化、血管漏出、および血管新生を促進する。Ang-2はまた、リンパ球動員などの炎症経路に関与している。要約すると、VEGF-AおよびAng-2の両方が、糖尿病性眼疾患の病因を媒介する重要な要因として認識されている(Aiello et al.N Engl J Med 1994;331:1480-7;Davis et al.Cell 1996;87:1161-9;Maisonpierre et al.Science 1997;277:55-60;Gardner et al.Surv Ophthalmol 2002;47(Suppl 2):S253-62;Joussen et al.Am J Path 2002;160:501-9;Fiedler et al.J Biol Chem 2003;278:1721-7)。
【0009】
黄斑レーザーは、DME治療の標準治療(SOC)であったが、過去10年間の抗VEGF薬物療法の開発により、DMEを有する患者の視覚的結果が劇的に改善された。現在利用可能なDMEのための抗VEGF療法には、ラニビズマブおよびアフリベルセプトが含まれる。DMEの治療に利用できる他の承認された選択肢には、眼周囲または硝子体内(IVT)ステロイドおよびステロイドインプラントが含まれる。
【0010】
DMEにおける抗VEGF療法により達成された強力な有効性にもかかわらず、かなりの割合の患者が、リアルワールドでの臨床的に意義のある視力の改善を経験していない。DME治療の観察された早期の利益を長期間にわたって達成し、いくつかの場合では、それを維持するために、頻繁なIVT投与が必要である。抗VEGF注入の投与のための現在のSOCでは、患者は頻繁な臨床検査およびIVT注入を受ける必要がある。これは、患者、介護者、治療を行う医師、および医療システムに大きな負担をかける。
【0011】
DMEにおける抗VEGF剤の大規模な第III相試験により、治療の初年度後に、視力向上の維持に必要な注入の数を減らすことができることが示された(Diabetic Retinopathy Clinical Research Network et al.Ophthalmology 2010:117:1064-77.Epub:28 April 2010;Schmidt-Erfurth et al.Ophthalmology 2014;121:193-201;Elman et al.Ophthalmology 2015;122:375-81)。しかしながら、治療頻度の検証済み予測バイオマーカーがない場合において最適な結果を達成するために、DMEにおける標準的な抗VEGF手法は、依然として頻繁なモニタリング訪問に依存しており、患者および医療提供者に大きな負担をかける。さらに、抗VEGF単剤療法は、炎症および周皮細胞の不安定化を含む、糖尿病性眼疾患の悪化に寄与する他の経路に十分に対処していない。
【0012】
DMEの満たされていない高い医療ニーズに対処するために、追加の経路を標的とし、IVT注入の負担を軽減する新しい治療が必要である。
【発明の概要】
【0013】
本発明の一態様によれば、方法、使用、(使用のための)二重特異性抗体、医薬品、または医薬製剤は、新生血管AMD(nAMD)および糖尿病性黄斑浮腫(DME)から選択される眼科の血管疾患に罹患している患者の治療のために提供され、該方法は、有効量の、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)およびヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)に結合する二重特異性抗体を、個別化された治療間隔(PTI)レジメンで、患者に投与することを含み、nAMDおよびDMEから選択される眼科の血管疾患に罹患している患者の治療には、疾患が安定して存在しない場合に投与間隔を延長するか、または疾患活動性がある場合に間隔を短縮する投与スケジュールが含まれる。このようにして、患者は、最適に治療され、視力の改善および/または維持を確実にし、同時に不必要な治療負担が軽減される。
【0014】
本発明の別の態様によれば、方法、使用、(使用のための)二重特異性抗体、医薬品、または医薬製剤は、特定の新生血管AMD(nAMD)(ウェット型AMD(wAMD)とも呼ばれる)に罹患している患者の治療のために提供され、該方法は、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)およびヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)に結合する有効量の二重特異性抗体を、個別化された治療間隔(PTI)レジメンで、患者に投与することを含み、nAMDに罹患している患者の治療には、疾患が安定していない場合に投与間隔を延長するか、または疾患活動性がある場合は間隔を短縮する投与スケジュールが含まれる。このようにして、患者は、最適に治療され、視力の改善および/または維持を確実にし、同時に不必要な治療負担が軽減される。
【0015】
本発明の一態様によれば、方法、使用、(使用のための)二重特異性抗体、医薬品、または医薬製剤は、罹患している患者の治療のために提供され、該方法は、有効量の、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)およびヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)に結合する二重特異性抗体を患者に投与することを含み、
【0016】
AMDに罹患している患者の治療は、治療開始後、疾患が安定して存在しない場合に投与間隔を延長するか、または疾患活動性がある場合に間隔を短縮する投与スケジュールを含む。
【0017】
一実施形態は、新生血管AMD(nAMD)に罹患している患者の治療のためのそのような方法、使用、(使用のための)二重特異性抗体、医薬品、または医薬製剤であり、該方法は、有効量の、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)およびヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)に結合する二重特異性抗体を、個別化された治療間隔で、患者に投与することを含み、
a)患者は、最初に、4回、4週ごと(Q4W)の投与間隔で、二重特異性VEGF/ANG2抗体で治療され、
b)20週目および24週目に疾患活動性が評価され、疾患活動性は、以下の基準:
i)20週目の評価の場合は12週目および16週目であり、24週目の評価の場合は16週目および20週目である、前の2回のスケジュールされた訪問の平均中心サブフィールド厚(CST)値と比較して、CSTの50μmを超える増加があること、または
ii)前の2回のスケジュールされた訪問のいずれかで記録された最低CST値と比較して、75μm以上のCSTの増加があること、
iii)nAMD疾患活動性に起因して、前の2回のスケジュールされた訪問での平均最良矯正視力(BCVA)値と比較して、5文字以上のBCVAの減少があること、
iv)nAMD疾患活動性に起因して、前の2回のスケジュールされた訪問のいずれかで記録された最高BCVA値と比較して、10文字以上のBCVAの減少があること、または
v)nAMD活動性に起因する、新しい黄斑出血の存在、のうちの1つが満たされた場合に決定され、
c)次いで、患者
i)20週目に疾患活動性基準を満たす患者は、20週目以降8週ごと(Q8W)の投与間隔で治療され(20週目に最初のQ8W投与)、
ii)24週目に疾患活動性基準を満たす患者は、24週目以降12週ごと(Q12W)の投与間隔で治療され(24週目に最初のQ12W投与)、
iii)20週目および24週目に疾患活動性基準を満たさない患者は、28週目以降16週間(Q16W)の投与間隔で治療される(28週目に最初のQ16Wの投与)。
【0018】
一実施形態では、個別化された治療間隔は、60週目の後に延長、短縮、または維持され、
a)以下の基準のすべてが満たされる場合、間隔は、(最大Q16Wまで)4週間延長され、
i)最後の2回の研究薬物投与訪問の平均と比較して、安定したCSTであって、安定性は、最低の研究中薬物投与訪問測定値と比較して、CSTの変化が30μm未満であり、かつ、CSTが50μm以上増加しないこととして定義される、安定したCST、
ii)最後の2回の研究薬物投与訪問の平均と比較して、5文字以上のBCVAの減少がなく、かつ、最高の研究中薬物投与訪問測定値と比較して、10文字以上のBCVAの減少がないこと、
iii)新たな黄斑出血がないこと、
b)以下の基準のうちの1つが満たされた場合、間隔は、(最小Q8Wに)4週間短縮され、
または
以下の基準のうちの2つ以上が満たされる場合、もしくは1つの基準が新しい黄斑出血を含む場合は、間隔は、8週間間隔に短縮される、
i)最後の2回の投与訪問からの平均と比較して、50μm以上のCSTの増加があるか、または最低の投与訪問測定値と比較して、75μm以上の増加があること、
ii)最後の2回の投与訪問の平均と比較して、5文字以上のBCVAの減少があるか、または最高の投与訪問測定値と比較して、10文字以上のBCVAの減少があること、
iii)新しい黄斑出血があること。
【0019】
本発明の別の態様によれば、方法、使用、(使用のための)二重特異性抗体、医薬品、または医薬製剤は、糖尿病性網膜症、特に糖尿病性黄斑浮腫(DME)に罹患している患者の治療のために提供され、該方法は、有効量の、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)およびヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)に結合する二重特異性抗体を、個別化された治療間隔(PTI)レジメンで、患者に投与することを含み、DMEに罹患している患者の治療は、疾患が安定していない場合は投与間隔を延長し、疾患活動性がある場合は間隔を短縮する投与スケジュールを含む。このようにして、患者は、最適に治療され、視力の改善および/または維持を確実にし、同時に不必要な治療負担が軽減される。
【0020】
一実施形態は、糖尿病性黄斑浮腫(DME)に罹患している患者の治療のためのそのような方法、使用、(使用のための)二重特異性抗体、医薬品、または医薬製剤であり、該方法は、有効量の、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)およびヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)に結合する二重特異性抗体を、個別化された治療間隔で、患者に投与することを含み、
a)中心サブフィールド厚(CST)が、(12週目以降に測定される)予め定義された参照CST閾値(Spectralisスペクトルドメイン-中心サブフィールド厚SD-OCTの場合はCST<325μm、またはCirrus SD-OCTもしくはTopcon SD-OCTの場合はCST<315μm)を満たすまで、患者は、4週ごと(Q4W)の投与間隔で、二重特異性VEGF/ANG2抗体により最初に治療され、
b)次いで、投与間隔は、4週間増加されて、初期8週ごと(Q8W)の投与間隔とし、
c)この時点以降、投与間隔は、それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較したCSTおよび最良矯正視力(BCVA)の相対的変化に基づく投与訪問で行われた評価に基づいて、延長、短縮、または維持され、
i)
-CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、4週間延長され、
ii)
-CSTが10%超減少した場合、または
-CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、または
-CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、維持され、
iii)
-CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上~10文字未満のBCVAの減少を伴う場合、または
-CST値が20%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、4週間短縮され、
iv)CST値が10%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、間隔は、8週間短縮され、
それぞれの参照中心サブフィールド厚(CST)は、初期CST閾値基準が満たされたときのCST値であり、参照CSTは、2回の連続した投与訪問についてCSTが前の参照CSTから10%超減少し、得られる値が30μm以内である場合、後の訪問で得られるCST値が新しい参照CSTとして機能するように調整され、
参照最良矯正視力(BCVA)は、任意の以前の投与訪問で得られた3つの最良BCVAスコアの平均である。
【0021】
一実施形態では、そのような投与間隔は、最大16週間ごと(Q16W)および最小Q4Wに、4週間の増分で調整され得る。
【0022】
本発明の別の態様によれば、方法、使用、(使用のための)二重特異性抗体、医薬品、または医薬製剤は、網膜中心静脈閉塞症に続発する、半側網膜静脈閉塞症に続発する、または分枝静脈閉塞症に続発する黄斑浮腫に罹患している患者の治療のために提供され、該方法は、有効量の、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)およびヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)に結合する二重特異性抗体を、個別化された治療間隔(PTI)レジメンで、患者に投与することを含み、網膜中心静脈閉塞症に続発する、半側網膜静脈閉塞症に続発する黄斑浮腫、または分枝静脈閉塞症に続発する黄斑浮腫に罹患している患者の治療は、疾患が安定していない場合に投与間隔を延長するか、または疾患活動性がある場合は間隔を短縮する投与スケジュールを含む。このようにして、患者は、最適に治療され、視力の改善および/または維持を確実にし、同時に不必要な治療負担が軽減される。
【0023】
一実施形態は、網膜中心静脈閉塞症に続発する、半側網膜静脈閉塞症に続発する、または分枝静脈閉塞症に続発する黄斑浮腫に罹患している患者の治療のためのそのような方法、使用、(使用のための)二重特異性抗体、医薬品、または医薬製剤であり、該方法は、有効量の、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)およびヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)に結合する二重特異性抗体を、個別化された治療間隔レジメンで、患者に投与することを含み、
a)患者は、最初に、1日目~20週目まで4週ごと(Q4W)の投与間隔で、二重特異性VEGF/ANG2抗体で治療され、
b)24週目から、中心サブフィールド厚(CST)が予め定義された参照CST閾値を満たすまで、患者は、Q4Wの頻度で、二重特異性VEGF/ANG2抗体を受け、
c)この時点以降、投与間隔は、それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較したCSTおよび最良矯正視力(BCVA)の相対的変化に基づく投与訪問で行われた評価に基づいて、延長、短縮、または維持され、
i)
CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、4週間延長され、または
ii)以下の基準のうちのいずれかが満たされた場合:
CST値が10%超減少した場合、もしくは
CST値が10%以下減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、もしくは
CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、維持され、
iii)以下の基準のうちのいずれかが満たされた場合:
CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上~10文字未満のBCVAの減少を伴う場合、もしくは
CST値が20%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、もしくは
CST値が10%以下増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、間隔は、4週間短縮され、
iv)
CST値が10%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、間隔は、Q4Wに短縮され、
それぞれの参照中心サブフィールド厚(CST)は、初期CST閾値基準が満たされたときのCST値であり、参照CSTは、2回の連続した投与訪問についてCSTが前の参照CSTから10%超減少し、得られる値が30μm以内である場合、後の訪問で得られるCST値が新しい参照CSTとして機能するように調整され、
参照最良矯正視力(BCVA)は、任意の以前の投与訪問で得られた3つの最良BCVAスコアの平均である。
【0024】
一実施形態では、そのような投与間隔は、最大16週間ごと(Q16W)および最小Q4Wに、4週間の増分で調整され得る。本発明の一実施形態では、ヒトVEGFおよびヒトANG2に結合する二重特異性抗体は、ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位およびヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位を含む、二重特異性二価抗VEGF/ANG2抗体であり、
i)VEGFに特異的に結合する上記第1の抗原結合部位は、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号1のCDR3H領域、配列番号2のCDR2H領域、および配列番号3のCDR1H領域、ならびに軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号4のCDR3L領域、配列番号5のCDR2L領域、および配列番号6のCDR1L領域を含み、
ii)ANG-2に特異的に結合する上記第2の抗原結合部位は、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号9のCDR3H領域、配列番号10のCDR2H領域、および配列番号11のCDR1H領域、ならびに軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号12のCDR3L領域、配列番号13のCDR2L領域、および配列番号14のCDR1L領域を含み、
iii)二重特異性抗体は、変異I253A、H310A、およびH435A、ならびに変異L234A、L235A、およびP329G(KabatのEUインデックスによる番号付け)を含む、ヒトIgG1サブクラスの定常重鎖領域を含む。
【0025】
本発明の一実施形態では、眼科の血管疾患に罹患している患者は、以前に抗VEGF治療(例えば、単剤療法)で治療されていない(治療未経験である)。
【0026】
本発明の一実施形態では、眼科の血管疾患に罹患している患者は、以前に抗VEGF治療(例えば、単剤療法)で治療されている。
【0027】
本発明の一実施形態では、開示された二重特異性抗体は、ソフトウェアツールの決定に従って投与される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、nAMDの研究設計の概要を示す。 a 20週目および24週目に、患者は、疾患活動性評価を受ける。これらの時点で、疾患活動性の解剖学的または機能的兆候を有する患者は、Q16W投与ではなく、Q8WまたはQ12W投与をそれぞれ受ける。 b 主要エンドポイントは、40週目、44週目、および48週目での平均に基づく、BCVAのベースラインからの変化(4メートルの開始距離でのETDRS視力表で評価される)である。 c 60週目以降(A群のすべての患者が、ファリシマブを受けることをスケジュールされている場合)、A群の患者はPTI投与レジメン(Q8W~Q16W)に従って治療される。 BCVA=最良矯正視力、ETDRS=早期治療糖尿病性網膜症研究、IVT=硝子体内、PTI=個別化された治療間隔、Q8W=8週ごと、Q12W=12週ごと、Q16W=16週ごと、W=週。
【
図2】
図2は、DMEの研究設計の概要を示している。 A群(Q8Wで投与される):A群にランダム化された患者は、20週目までQ4Wで6mgのIVT RO6867461(ファリシマブ)注入を受け、続いて96週目までQ8Wで6mgのIVT RO6867461(ファリシマブ)注入を受け、続いて100週目に最後の研究訪問を行う。 B群(個別化された治療間隔PTI):B群にランダム化された患者は、少なくとも12週目までQ4Wで6mgのIVT RO6867461(ファリシマブ)注入を受け、続いて96週目まで6mgのIVT RO6867461(ファリシマブ)注入のPTI投与(以下のPTI投与基準を参照のこと)を受け、続いて100週目に最後の研究訪問を行う。 C群(対照薬群)(Q8Wで投与される):C群にランダム化された患者は、16週目までQ4Wで2mgのIVTアフリベルセプト注入を受け、続いて96週目までQ8Wで2mgのIVTアフリベルセプト注入を受け、続いて100週目に最後の研究訪問を行う。 3つの治療群すべての患者は、研究期間全体(100週間)にわたってQ4Wでスケジュールされた研究訪問を完了する。治療群間の盲検を維持するために、該当する訪問時に3つの治療群すべての患者に偽処置が行われる。 IVT=硝子体内、Q8W=8週ごと、PTI=個別化された治療間隔(追加の詳細については項目3.1.2を参照のこと)、W=週。 a 主要有効性エンドポイントに使用される1年の定義-1年時に、4メートルの開始距離でETDRS視力表で測定された、BCVAのベースラインからの変化として定義される-は、48、52、および56週目での平均である。
【
図3】DMEのための個別化された治療間隔の概略図-
図3は、参照CSTおよび参照BCVAと比較したCSTおよびBCVAの相対的な変化に基づく間隔決定のアルゴリズムの概要を示している。
図3における*および**の有意性 * 参照中心サブフィールド厚(CST):初期CST閾値基準が満たされたときのCST値。参照CSTは、2回の連続した研究薬物投与訪問時にCSTが前の参照CSTから10%超減少し、得られた値が30μm以内である場合に調整される。後者の訪問で得られたCST値は、その訪問ですぐに開始される新しい参照CSTとして機能する。 ** 参照最良矯正視力(BCVA): 以前の研究薬物投与訪問で得られた3つの最良BCVAスコアの平均。
【
図4】公表された結果に基づく、DMEおよびnAMDの持続期間(再治療までの時間)および有効性(DME)と、DMEおよびnAMDの他の治療選択肢との概略比較(比較薬剤Lucentis(登録商標)(ラニビズマブ)、Eylea(登録商標)(アフリベルセプト)、ブロルシズマブ、およびVA2(RO6867461/ファリシマブ)。
【
図5】12週間および16週間間隔での、二重特異性抗VEGF/ANG2抗体RO6867461(ファリシマブ)と、4週間間隔でのラニビズマブ(Lucentis(登録商標))とを比較した、新生血管加齢黄斑変性症(nAMD)を有する患者のベースラインからのBCVAの獲得。
【
図6】以下の両方によって評価された疾患活動性に基づく、糖尿病性黄斑浮腫(DME)の必要な再治療までの時間: 5文字以上のBCVAの減少、および50μm以上のCSTの増加(投与中止後(20週間または6ヶ月間の毎月の投与後=最後の硝子体内(IVT)投与後の時間)。二重特異性抗VEGF/ANG2抗体RO6867461(ファリシマブ)は、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))と比較して、より長い再治療までの時間を示した。
【
図7】
図1は、網膜静脈閉塞症(RVO)に続発する黄斑浮腫の治療のための研究設計の概要を提供する。 IVT=硝子体内、PTI=個別化された治療間隔、Q4W=4週ごと、W=週。
【
図8】網膜静脈閉塞症(RVO)に続発する黄斑浮腫の治療のための個別化された治療間隔の概略図-
図8は、参照CSTおよび参照BCVAと比較したCSTおよびBCVAの相対的変化に基づく間隔決定のアルゴリズムの概要を示している。 BCVA=最良矯正視力、CST=中心サブフィールド厚、Q4W=4週ごと。 a 初期参照CST=初期CST閾値基準が満たされたときのCST値、ただし、20週目まで。参照CSTは、2回の連続したファリシマブ投与訪問でCSTが前の参照CSTから10%超減少し、得られた値が30μm以内の場合に調整される。後の訪問で得られたCST値は、その訪問ですぐに開始される新しい参照CSTとして機能する。 b 参照BCVA=任意の以前の投与訪問で得られた3つの最良BCVAスコアの平均。
【発明を実施するための形態】
【0029】
nAMDおよびDMEから選択される眼科の血管疾患の治療に使用するための方法、使用、(使用のための)二重特異性抗体、医薬品、または医薬製剤は、初期用量を連続的に投与すること(「治療開始」)を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、初期用量は、3~7ヶ月間の毎月の投与など、変動してもよく、一実施形態では、治療開始は、3~4ヶ月間の毎月の投与を含み、一実施形態では、治療開始は、4~5ヶ月間の毎月の投与を含み、一実施形態では、治療開始は、4~6ヶ月間の毎月の投与を含み、一実施形態では、治療開始は、少なくとも4ヶ月間の毎月の投与を含み、一実施形態では、治療開始は、5~7ヶ月間の毎月の投与を含み、一実施形態では、治療開始は、6ヶ月間の毎月の投与を含む。
【0031】
本発明の一実施形態では、二重特異性抗体、医薬品、または医薬製剤は、(各治療において)約5~7mgの用量で投与される。一実施形態では、二重特異性抗体は、(各治療において)6mg+/-10%の用量で投与される。一実施形態では、二重特異性抗体は、(各治療において)約6mgの用量(一実施形態では、(各治療において)6mgの用量)で投与される。
【0032】
本発明の一実施形態では、二重特異性抗体、医薬品、または医薬製剤は、約120mg/ml(+/-12mg/ml)の二重特異性抗体の濃度で投与される。
【0033】
黄斑変性症は、網膜の黄斑領域として既知である、眼の内層の中心が薄くなり、萎縮し、いくつかの場合では出血する、主に高齢者に見られる病状である。これにより、中心視野が喪失する可能性があり、細部を見ること、読書すること、または顔を認識することができなくなる。米国眼科学会によると、これは、50歳以上の人々にとって、今日の米国における中心視野の喪失(失明)の主な原因である。若い個人に罹患するいくつかの黄斑ジストロフィーは、黄斑変性症と呼ばれる場合があるが、この用語は、一般に、加齢黄斑変性症(AMDまたはARMD)を指す。
【0034】
本明細書で使用される「加齢黄斑変性症(AMD)」は、黄斑として既知である網膜の小さな中央部分が悪化するときの深刻な眼の状態を指す。
【0035】
AMDには、ウェット型AMDおよび新生血管AMDが含まれる。ウェット形態AMD(ウェット型AMD、wAMD、または新生血管AMD、nAMDとも呼ばれる)は、黄斑下の脈絡膜からの異常な血管の成長を特徴とする。これは脈絡膜血管新生と呼ばれる。これらの血管は、血液および体液を網膜に(および網膜下で)漏出し、(網膜の隆起および)視野の歪みを引き起こし、直線を波打つように見えるようにし、盲点および中心視野の喪失を引き起こす。これらの異常な血管は、最終的に瘢痕化し、中心視野が永久に喪失する。AMDの症状には、視覚中心における暗くてぼやけた領域、および色知覚の低下または変化が含まれる。AMDは、定期的な目の検査で検出することができる。黄斑変性症の最も一般的な初期の兆候の1つは、網膜の下の小さな黄色の沈着物ドルーゼンの存在および色素性変化(pigment clumping)である。
【0036】
重度の視力喪失の原因となる進行性AMDには、ドライおよびウェットの2つの形態がある。進行性AMDのドライ形態である中心地理的萎縮は、網膜下の網膜色素上皮層への萎縮に起因し、これが眼の中央部分の光受容体(杆体および錐体)の喪失による視力低下を引き起こす。この状態についての治療方法はないが、抗酸化物質であるルテインおよびゼアキサンチンを高用量含むビタミンサプリメントは、国立眼学研究所などによって、ドライ型黄斑変性症の進行を遅らせ、一部の患者では視力を改善することが実証されている。
【0037】
本明細書で使用される「糖尿病性黄斑浮腫」(DME)は、糖尿病(1型または2型)を有する人が患う深刻な眼の状態を指す。黄斑浮腫は、網膜の血管が黄斑に漏出し、体液およびタンパク質沈着物が眼の黄斑の上または下に集まり、黄斑が肥厚化して膨潤したときに発生する(浮腫)。黄斑は眼球の後ろの網膜の中心近くにあるため、膨潤は、人々の中心視野を歪め得る。DMEの主な症状には、かすみ目、飛蚊症、コントラストの喪失、複視、および最終的な視力喪失が含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
DMEの病態は、通常は網膜における体液の動きを妨げる内側血液網膜関門が破壊され、これにより、網膜組織に体液が蓄積することが可能となること、および網膜肥厚の存在により特徴付けられる。DMEは、現在、標準視力表で人が読むことができる最小の文字を決定する視力検査、疾患の兆候を調べるための拡張眼科検査、光干渉断層撮影(OCT)またはフルオレセイン血管造影(FA)および眼圧測定などの画像化検査、眼内圧力を測定する機器からなる、眼科検査中に診断される。治療を決定するために、以下の研究:光干渉断層撮影(OCT)、蛍光眼底造影、およびカラー立体眼底写真も行う。DMEは、局所性およびびまん性の2つの主要な分類に特徴付けすることができる。局所性DMEは、十分な黄斑血流を伴う黄斑における別々の区別される漏出の特定の領域によって特徴付けられる。びまん性DMEは、眼の内側血液網膜関門の破壊に起因する、黄斑を取り囲む毛細血管床全体の漏出に起因する。
【0039】
局所性およびびまん性に加えて、DMEはまた、臨床検査の所見に基づき、臨床的に重要な黄斑浮腫(CSME)、非CSME、および中心窩を含む、中心障害(central involvement)を伴うCSME(CSME-CI)に分類される。本発明は、上記の分類のDMEを治療するための方法を含む。
【0040】
網膜静脈閉塞症(RVO)は、最も一般的な網膜血管障害の1つであり、様々な程度の視力喪失に関連している(Hayreh and Zimmerman 1994)。RVOは、糖尿病性網膜症(DR)に続く、網膜血管疾患を有する患者の失明の2番目の主な原因として報告されている(Cugati S,Wang JJ,Rochtchina E,et al.Arch Ophthalmol 2006 ;124 :726-732;Klein R,Knudtson MD,Lee KE,et al.Ophthalmology 2008 ;115 :1859-1868;Rogers S,McIntosh RL,Cheung N,et al.Ophthalmology 2010 Feb;117:313-9.e1;Yasuda M,Kiyohara Y,Arakawa S,et al.Invest Ophtahlmol Vis Sci 2010;51:3205-3209)。
【0041】
RVOの主な種類には、分枝静脈閉塞症(BRVO)、半側網膜静脈閉塞症(HRVO)、および網膜中心静脈閉塞症(CRVO)が含まれる。RVOの最も一般的な症状は、黄斑浮腫に起因する中心視野の突然の痛みのない低下である。
【0042】
RVOに続発する黄斑浮腫の主な種類には、分枝静脈閉塞症(BRVO)に続発する黄斑浮腫、半側網膜静脈閉塞症(HRVO)に続発する黄斑浮腫、および網膜中心静脈閉塞症(CRVO)に続発する黄斑浮腫が含まれる。
頻繁ではないが、患者は、数秒から数分続く一過性の視力喪失の病歴を示し、視力が完全に回復し得る。これらの症状は、数日から数週間にわたって再発し、続いて、視力が永久に低下し得る。変視症および視野欠損も記載されている(Achiron A,Lagstein O,Glick M,et al.Acta Ophthalmologica 2015;93:e649-53;Manabe K,Osaka R,Nakano Y,et al.PLoS One 2017;12 :e0186737)。
【0043】
これらの患者における黄斑浮腫の病因は、血管閉塞に起因する腔内圧の上昇から始まり、これが減少した灌流および虚血の領域を生じさせる。虚血は、血管内皮増殖因子(VEGF)(Boyd SR,Zachary I,Chakravarthy U,et al.Arch Ophthalmol 2002;12:1644-1650;Noma H,Minamoto A,Funatsu H,et al.Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 2006;244:309-315)およびアンジオポエチン-2(Ang-2)のアップレギュレーションおよび分泌をもたらし、両方とも血管新生促進および血管透過性亢進サイトカイン、Ang-2が寄与するさらなる炎症誘発性および血管不安定化の特性が知られている(Maisonpierre PC,Suri C,Jones PF,et al.Science 1997;277:55-60;Hackett SF,Ozaki H,Strauss RW,et al.J Cell Physiol 2000 ;184 :275-284;Fiedler U,Reiss Y,Scharpfenecker M,et al.Nat Med 2006;12:235-239.Epub:5 February 2006)。RVOを有する患者は、すべての網膜血管疾患の中でAng-2およびVEGFの両方の最も高い硝子体レベルを有することが見出された(Aiello LP,Avery RL,Arrigg PG,et al.N Engl J Med 1994;331:1480-1487;Regula JT,Lundh von Leithner P,Foxton R,et al.EMBO Mol Med 2016;8:1265-1288)。網膜組織におけるAng-2およびVEGFのレベルの増加は、網膜の病理学的変化をもたらし、多くの患者ではまた、視力低下を伴う黄斑浮腫をもたらす。RVOの特徴は、網膜の患部にわたって蛇行しかつ拡張した網膜静脈である、網膜出血の特徴的なパターン(BRVOでは1四分円、HRVOでは2四分円、CRVOでは網膜全体)である。
【0044】
より重症の場合、患者は、その後の網膜血管新生、出血、ルベオーシスまたは血管新生緑内障を生じさせる前眼部における血管新生とともに、網膜虚血を発症し得、一部の患者は、視神経乳頭浮腫を発症し得る。
【0045】
RVOに起因する黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫(DME)は、異なる端緒を有するが、共通の病態生理を有している。両方とも、血液網膜関門の破壊の結果としての体液蓄積に起因する黄斑の肥厚化および網膜血管透過性の病理学的増加を特徴とし、これらは両方の疾患において不可逆的な視力喪失をもたらし得る。
【0046】
抗VEGF薬物療法は、RVOに起因する黄斑浮腫の現在の治療の主流であり、いくつかの重要なランダム化臨床研究で有効性を実証しているが、黄斑レーザーおよび硝子体内(IVT)ステロイド-特にステロイドインプラント-もいくつかの場合では使用される。抗VEGFがRVOに起因する黄斑浮腫の最も有効な治療であるにもかかわらず、抗VEGF臨床試験のデータは、多くの患者が、最適な最良矯正視力(BCVA)および解剖学的結果を達成せず、多くの患者が、初期の集中治療中に達成された利益を維持するためには頻繁な長期にわたる注入を必要とすることを示した。さらに、リアルワールドデータ分析では、RVOを有する多くの患者は、注入頻度が最適ではないため、臨床試験で達成された利益を達成できないことが示唆された(Vaz-Pereira,S,Marques IP,Matias J,et al.Eur J Ophthalmol 2017;27:756-761;Wecker T,Ehlken C,Buhler A,et al.Br J Ophthalmol 2017;101:353-359;Jumper JM,Dugel PU,Chen S,et al.Clin Ophthalmol 2018;12:621-629)。データは、BRVOに起因する黄斑浮腫の多くの患者およびCRVOに起因する黄斑浮腫を有する患者の大多数が長期間の綿密なモニタリングおよび治療を必要とし、より持続可能で効果的な治療選択肢が必要であることを示唆している(Bhisitkul RB,Campochiaro PA,Shapiro H,et al.Ophthalmology 2013;120:1057-1063;Scott IU,Neal NL,VanVeldhuisen,et al.JAMA Ophthalmol 2019;E1-E10)。
【0047】
非臨床研究は、Ang-2およびVEGFが協調して作用し、血管系を調節し、かつ、インビトロでの網膜内皮細胞の透過性を高めることが示している。
【0048】
二重特異性モノクローナル抗体ファリシマブによるAng-2およびVEGFの同時阻害は、モル当量の抗VEGF(ラニビズマブ)または抗Ang-2単独と比較して、非ヒト霊長類のレーザー誘発CNVモデルにおける脈絡膜血管新生(CNV)病変の漏出および重症度の大幅な低下をもたらした。自発性CNVのマウスモデルを使用した初期の実験では、血管増殖、漏出、浮腫、白血球浸潤、および光受容体喪失の減少に関して、Ang-2およびVEGFの二重阻害がいずれかの標的単独の単剤療法阻害よりも一貫して優れていることが示された(Regula JT,Lundh von Leithner P,Foxton R,et al.EMBO Mol Med 2016;8:1265-1288)。
【0049】
さらに、Ang-2およびVEGFの両方の房水および硝子体濃度は、新生血管加齢黄斑変性症(nAMD)、DR、およびRVOを有する患者でアップレギュレートされることが示された(Tong JP,Chan WM,Liu DT,et al.Am J Ophthalmol 2006;141:456-462;Penn JS,Madan A,Caldwell RB,et al.Prog Retin Eye Res 2008;27:331-371.;Kinnunen K,Puustjarvi T,Terasvirta M,et al.Br J Ophthalmol 2009;93:1109-1115;Tuuminen R,Loukovaara S.Eye(Lond)2014 ;28 :1095-1099;Regula JT,Lundh von Leithner P,Foxton R,et al.EMBO Mol Med 2016;8:1265-1288;Ng DS,Yip YW,Bakthavatsalam M,et al.Sci Rep 2017;7:45081)。したがって、Ang-2およびVEGFの両方の標的を同時に中和することにより、抗VEGF療法単独と比較して、病理学的眼血管系がさらに正常化し得る。
【0050】
DMEおよびnAMDにおける完了した第II相研究のデータ(以下を参照)は、Ang-2を標的化することは、網膜血管系に影響を与える疾患において、抗VEGF療法単独を上回る効果の持続性を拡張する可能性を有するという仮説も支持している。
【0051】
ファリシマブは、2つの第I相研究におけるnAMDおよびDMEの治療(nAMDにおけるBP28936、ならびにnAMDおよびDMEにおけるJP39844)ならびに3つの第II相研究におけるnAMDおよびDMEの治療(nAMDに関するBP29647[AVENUE]およびCR39521[STAIRWAY])、ならびにDMEに関するBP30099[BOULEVARD])について研究されている。4つの広範な第III相研究:DMEにおけるGR40349(YOSEMITE)およびGR40398(RHINE)、ならびにnAMDにおけるGR40306(TENAYA)およびGR40844(LUCERNE)が進行中である。
【0052】
ファリシマブの作用機序、非臨床および臨床試験からのデータ、ならびにRVOに起因する黄斑浮腫の病態生理学に基づいて、ファリシマブは、抗VEGF単剤療法と比較して、病理学的眼血管系の安定化ならびにRVOの視覚的および解剖学的結果の改善をもたらし得ると仮定されている。
【0053】
RVOに続発する/起因する黄斑浮腫は、網膜血管疾患で最も高いものの1つである(Aiello LP,Avery RL,Arrigg PG,et al.N Engl J Med1994;331:1480-1487;Regula JT,Lundh von Leithner P,Foxton R,et al.EMBO Mol Med 2016;8:1265-1288)。
【0054】
血管新生および炎症の非臨床モデルにおけるAng-2およびVEGF阻害の効果(Regula JT,Lundh von Leithner P,Foxton R,et al.EMBO Mol Med 2016;8:1265-1288)、ならびnAMDおよびDMEを有する患者を対象とした第I相および第II相ファリシマブ研究のデータは、nAMD、DME/DR、およびRVOに起因する黄斑浮腫の3つすべての網膜血管疾患に共通する病理学的経路に対する有効性の証拠(第I相研究であるnAMDにおけるBP28936;第II相研究であるnAMDにおけるAVENUE、nAMDにおけるSTAIRWAY、およびDMEにおけるBOULEVARD)を提供する。
【0055】
DMEおよびRVOに起因する黄斑浮腫の間の病態生理学の類似性のため、第II相BOULEVARD研究のデータをここに報告する。糖尿病患者およびRVO患者における黄斑浮腫の誘発は異なるが、低酸素症によって引き起こされる黄斑浮腫の下流の病態およびその後の視力喪失は類似しており、同じ血管新生促進性、炎症誘発性、血管不安定化、ならびにAng-2、VEGF、およびインターロイキン-6(IL-6)を含む、血管透過性因子によって引き起こされる。
【0056】
BOULEVARD研究は、DMEを有する患者に対するファリシマブ6mgのIVT注入の使用についての正のベネフィット-リスクプロファイルの予備的証拠を提供し、第III相DME研究におけるファリシマブのさらなる評価を支持した。この研究は、主要有効性エンドポイントを満たし、0.3mgのラニビズマブと比較して6mgのファリシマブで治療された抗VEGF治療未経験の患者において、24週目のBCVAのベースラインからの平均変化が統計的に有意に改善したことを実証している。最良矯正視力(BCVA)は、4メートルの早期治療糖尿病性網膜症研究[ETDRS]プロトコル(早期治療糖尿病性網膜症研究(ETDRS)様の視力表を使用)から適合させ、かつ、それぞれの文字スコアが得られる、方法論を使用して決定される。一実施形態では、そのような方法、使用、(使用のための)二重特異性抗体、医薬品、または医薬製剤におけるBCVAの決定は、糖尿病性網膜症研究(ETDRS)プロトコルに適合した視力表に基づき、4メートルの開始距離で評価される。
【0057】
疾患活動性は、例えば、BCVA/ETDRの文字スコアの減少、および/または、例えば、中心サブフィールド厚(CST)(中心窩下(center subfoveal)厚としても既知である)として黄斑の中心を含むスペクトルドメイン光干渉断層撮影(SD-OCT)による黄斑の肥厚化により決定される。1つの好ましい実施形態では、中心サブフィールド厚(CST)は、スペクトルドメイン光干渉断層撮影(SD-OCT)を使用して決定される。1つの好ましい実施形態では、CSTは、Spectralis(商標)デバイスを用いたスペクトルドメイン光干渉断層撮影(SD-OCT)によって測定される。1つの好ましい実施形態では、CSTは、Cirrus(商標)デバイスを用いたスペクトルドメイン光干渉断層撮影(SD-OCT)によって測定される。一実施形態では、CSTは、Topcon(商標)デバイスを用いたスペクトルドメイン光干渉断層撮影(SD-OCT)によって測定される。一実施形態では、CSTは、Optovue(商標)デバイスを用いたスペクトルドメイン光干渉断層撮影(SD-OCT)によって測定される。本明細書で使用される場合、「罹患している患者」という用語は、本明細書に記載の眼科の血管疾患の1つ以上の症状または徴候を示す、および/またはそれを有すると診断されたヒトを指す。
【0058】
「罹患している患者」という用語は、また、例えば、治療前に、例えば、網膜血管新生、血管新生、血管漏出、中心窩の中心部の網膜肥厚化、隣接する網膜肥厚化を伴う中心窩の中心部の硬い黄色の滲出液、および網膜肥厚の少なくとも1つの乳頭面積、中心窩の中心部の1つの乳頭直径内にある任意の部分、かすみ目、飛蚊症、コントラストの喪失、複視、および最終的な視力の喪失などの血管眼疾患の1つ以上の徴候を示す(または示した)対象を含み得る。
【0059】
本明細書で使用される場合、nAMDまたはDMEなどの眼科の血管疾患に「罹患している患者」という用語は、nAMDもしくはDMEに対する感受性が高いか、または高いレベルのnAMDに関連するもしくはDMEに関連するバイオマーカーを示し得る集団のサブセットを含み得る。例えば、「DMEに罹患している患者」は、10年を超えて糖尿病に罹患し、頻繁に高い血糖レベルまたは高い空腹時血糖レベルを有する対象を含み得る。特定の実施形態では、「DMEに罹患している患者」という用語は、二重特異性抗VEGF/ANG2抗体の投与前または投与時に、糖尿病に罹患しているか、または糖尿病であると診断されている対象を含む。特定の実施形態では、「nAMDに罹患している患者」という用語は、抗VEGF/ANG2抗体の投与前または投与時に50歳を超える対象を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、「罹患している患者」という用語は、喫煙者である対象、または高血圧もしくは高コレステロールを有する対象を含む。
【0061】
本明細書で使用される場合、分枝静脈閉塞症(BRVO)に続発する黄斑浮腫、半側網膜静脈閉塞症(HRVO)に続発する黄斑浮腫、または網膜中心静脈閉塞症(CRVO)に続発する黄斑浮腫などの、眼科の血管疾患に「罹患している患者」という用語は、分枝静脈閉塞症(BRVO)に続発する黄斑浮腫、半側網膜静脈閉塞症(HRVO)に続発する黄斑浮腫、もしくは網膜中心静脈閉塞症(CRVO)に続発する黄斑浮腫に対する感受性が高いか、または高いレベルのRVOに関連するバイオマーカーを示し得る集団のサブセットを含み得る。例えば、「RVOまたはRVOに続発する黄斑浮腫に罹患している患者」は、VEGF、ANG2、またはIL-6のレベルが上昇している対象を含み得る。いくつかの実施形態では、「罹患している患者」という用語は、喫煙者である対象、または高血圧もしくは高コレステロールを有する対象を含む。本発明は、眼科の血管疾患を治療、予防、もしくは重症度を軽減するための方法、または(使用のための)二重特異性抗体、医薬品、もしくは医薬製剤を含み、治療有効量の、二重特異性抗VEGF/ANG2抗体(または二重特異性抗VEGF/ANG2抗体を含む医薬品または医薬製剤)をそれを必要とする対象に投与することを含み、そのような二重特異性抗VEGF/ANG2抗体を含む二重特異性抗体、医薬品、または医薬製剤は、例えば、特定の治療投与レジメンの一部として、複数用量で対象に(硝子体内)投与される。
【0062】
本発明の一実施形態は、眼科の血管疾患に罹患している患者が、以前に抗VEGF治療(例えば、単剤療法)で治療されていない(治療未経験である)、本明細書に記載の治療、使用、(使用のための)二重特異性抗体、医薬品、または医薬製剤の方法である。
【0063】
本発明の一実施形態は、眼科の血管疾患を患っている患者が、以前に抗VEGF治療(例えば、単剤療法、例えば、ラニビズマブ、アフリベルセプト、またはブロロシズマブによる)で治療されている、本明細書に記載の治療、使用、(使用のための)二重特異性抗体、医薬品、または医薬製剤の方法である。
【0064】
本発明の一実施形態は、新生血管AMD(nAMD)に罹患している患者の治療に使用するための方法、使用、(使用のための)二重特異性抗体、医薬品、または医薬製剤であり、該方法は、有効量の、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)およびヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)に結合している二重特異性抗体を、個別化された治療間隔で、患者に投与することを含み、
a)患者は、最初に、4回、4週ごと(Q4W)の投与間隔で、二重特異性VEGF/ANG2抗体で治療され、
b)20週目および24週目に疾患活動性が評価され、疾患活動性は、以下の基準:
i)20週目の評価の場合は12週目および16週目であり、24週目の評価の場合は16週目および20週目である、前の2回のスケジュールされた訪問の平均中心サブフィールド厚(CST)値と比較して、CSTの50μmを超える増加があること、または
ii)前の2回のスケジュールされた訪問のいずれかで記録された最低CST値と比較して、75μm以上のCSTの増加があること、
iii)nAMD疾患活動性に起因して、前の2回のスケジュールされた訪問での平均BCVA値と比較して、5文字以上の最良矯正視力(BCVA)の減少があること、
iv)nAMD疾患活動性に起因して、前の2回のスケジュールされた訪問のいずれかで記録された最高BCVA値と比較して、10文字以上のBCVAの減少があること、または
v)nAMD活動性に起因する、新しい黄斑出血の存在、
c)次いで、患者
i)20週目に疾患活動性基準を満たす患者は、20週目以降Q8W投与間隔で治療され(20週目に最初のQ8W投与を行う)、
ii)24週目に疾患活動性基準を満たす患者は、24週目以降Q12W投与間隔で治療され(24週目に最初のQ12Wを行う)、
iii)20週目および24週目に疾患活動性基準を満たさない患者は、28週目以降Q16W投与間隔で治療される(28週目に最初のQ16Wを行う)。
【0065】
一実施形態では、個別化された治療間隔は、60週目の後に延長、短縮、または維持され、
a)以下の基準のすべてが満たされる場合、間隔は、(最大Q16Wまで)4週間延長され、
i)最後の2回の研究薬物投与訪問の平均と比較して、安定したCSTであって、安定性は、最低の研究中薬物投与訪問測定値と比較して、CSTの変化が30μm未満であり、かつ、CSTが50μm以上増加しないこととして定義される、安定したCST、
ii)最後の2回の研究薬物投与訪問の平均と比較して、5文字以上のBCVAの減少がなく、かつ、最高の研究中薬物投与訪問測定値と比較して、10文字以上のBCVAの減少がないこと、
iii)新たな黄斑出血がないこと、
b)
以下の基準のうちの1つが満たされた場合、間隔は、(最小Q8Wに)4週間短縮され、
または
以下の基準のうちの2つ以上が満たされる場合、もしくは1つの基準が新しい黄斑出血を含む場合は、間隔は、8週間間隔に短縮される、
i)最後の2回の投与訪問からの平均と比較して、50μm以上のCSTの増加があるか、または最低の投与訪問測定値と比較して75μm以上の増加があること、
ii)最後の2回の投与訪問の平均と比較して、5文字以上のBCVAの減少があるか、または最高の投与訪問測定値と比較して、10文字以上のBCVAの減少があること、
iii)新しい黄斑出血。
【0066】
一実施形態では、個別化された治療間隔前の疾患活動性評価は、16週目および20週目、または24週目および28週目である。
【0067】
一実施形態では、さらなる延長、縮小、または維持を伴う個別化された治療間隔は、異なる時点、例えば、50週~70週後、例えば、疾患活動性に依存して、52週後または65週後に開始する。本発明の別の実施形態は、糖尿病性黄斑浮腫(DME)に罹患している患者の治療に使用するための方法、使用、(使用のための)二重特異性抗体、医薬品、または医薬製剤であり、該方法は、有効量の、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)およびヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)に結合している二重特異性を、個別化された治療間隔で患者に投与することを含み、
a)中心サブフィールド厚(CST)が、(12週目以降に測定される)予め定義された参照CST閾値(Spectralisスペクトルドメイン-中心サブフィールド厚SD-OCTの場合はCST<325μm、またはCirrus SD-OCTもしくはTopcon SD-OCTの場合はCST<315μm)を満たすまで、患者は、4週ごと(Q4W)の投与間隔で、二重特異性VEGF/ANG2抗体により最初に治療され、
b)次いで、投与間隔が4週間増加されて、初期Q8W投与間隔とし、
c)この時点以降、投与間隔は、それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較したCSTおよび最良矯正視力(BCVA)の相対的変化に基づく投与訪問時に行われた評価に基づいて、延長、短縮、または維持され、
i)
-CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、4週間延長され、
ii)
-CSTが10%超減少した場合、または
-CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、または
-CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、維持され、
iii)
-CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上~10文字未満のBCVAの減少を伴う場合、または
-CST値が20%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、4週間短縮され、
iv)CST値が10%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、間隔は、8週間短縮され、
それぞれの参照中心サブフィールド厚(CST)は、初期CST閾値基準が満たされたときのCST値であり、参照CSTは、2回の連続した投与訪問についてCSTが前の参照CSTから10%超減少し、得られる値が30μm以内である場合、後の訪問で得られるCST値が新しい参照CSTとして機能するように調整され、
参照最良矯正視力(BCVA)は、任意の以前の投与訪問で得られた3つの最良BCVAスコアの平均である。
【0068】
一実施形態では、そのような投与間隔は、最大16週間ごと(Q16W)および最小Q4Wに、4週間の増分で調整され得る。
【0069】
本発明の別の実施形態は、網膜中心静脈閉塞症に続発する、半側網膜静脈閉塞症に続発する、もしくは分枝静脈閉塞症に続発する黄斑浮腫から選択される眼科の血管疾患の治療、または網膜中心静脈閉塞症に続発する、半側網膜静脈閉塞症に続発する、もしくは分枝静脈閉塞症に続発する黄斑浮腫から選択される眼科の血管疾患に罹患している患者の治療に使用するための方法、使用、(使用のための)二重特異性抗体、医薬品、または医薬製剤であり、治療は、個別化された治療間隔(PTI)を含み、
a)患者は、最初に、1日目~20週目まで4週ごと(Q4W)の投与間隔で、二重特異性VEGF/ANG2抗体で治療され、
b)24週目から、中心サブフィールド厚(CST)が、(24週目以降に測定される)予め定義された参照CST閾値(Spectralisスペクトルドメイン-中心サブフィールド厚SD-OCTの場合はCST<325μm、またはCirrus SD-OCTもしくはTopcon SD-OCTの場合はCST<315μm)を満たすまで、患者は、Q4Wの頻度で、二重特異性VEGF/ANG2抗体を受け、
c)この時点以降、投与間隔は、それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較したCSTおよび最良矯正視力(BCVA)の相対的変化に基づく投与訪問時に行われた評価に基づいて、延長、短縮、または維持され、
i)
CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、4週間延長され、または
ii)以下の基準のうちのいずれかが満たされた場合:
CST値が10%超減少した場合、もしくは
CST値が10%以下減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、もしくは
CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、維持され、
iii)以下の基準のうちのいずれかが満たされる場合:
CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上~10文字未満のBCVAの減少を伴う場合、もしくは
CST値が20%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、もしくは
CST値が10%以下増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、間隔は、4週間短縮され、
iv)
CST値が10%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの低下がある場合、間隔は、Q4Wに短縮され、
それぞれの参照中心サブフィールド厚(CST)は、初期CST閾値基準が満たされたときのCST値であり、参照CSTは、2回の連続した投与訪問についてCSTが前の参照CSTから10%超減少し、得られる値が30μm以内である場合、後の訪問で得られるCST値が新しい参照CSTとして機能するように調整され、
参照最良矯正視力(BCVA)は、任意の以前の投与訪問で得られた3つの最良BCVAスコアの平均である。
【0070】
一実施形態では、そのような投与間隔は、最大16週間ごと(Q16W)および最小Q4Wに、4週間の増分で調整され得る。本明細書で使用される場合、「抗体」は、抗原結合部位を含む結合タンパク質を指す。
【0071】
本明細書で使用される「結合部位」または「抗原結合部位」という用語は、リガンドが実際に結合する抗体分子の領域(複数可)を示す。「抗原結合部位」という用語は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)および抗体軽鎖可変ドメイン(VL)(VH/VLの対)を含む。
【0072】
抗体の特異性は、抗原の特定のエピトープに対する抗体の選択的認識を指す。例えば、天然の抗体は、単一特異性である。
【0073】
本発明による「二重特異性抗体」は、2つの異なる抗原結合特異性を有する抗体である。本発明の抗体は、2つの異なる抗原、第1の抗原としてのVEGF、および第2の抗原としてのANG-2に特異的である。
【0074】
本明細書で使用される「単一特異性」抗体という用語は、同じ抗原の同じエピトープにそれぞれ結合する1つ以上の結合部位を有する抗体を示す。
【0075】
「価数」という用語は、本出願で使用される場合、抗体分子中の特定された結合部位数の存在を表す。したがって、「二価」、「四価」、および「六価」という用語は、抗体分子中に、それぞれ2つの結合部位、4つの結合部位、および6つの結合部位の存在を表す。本発明による二重特異性抗体は、好ましくは「二価」である。
【0076】
本明細書で使用される「ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)およびヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)に結合する二重特異性抗体」、「二重特異性抗VEGF/ANG2抗体」、および「二重特異性<VEGF/ANG2>抗体」という用語は、互換可能であり、1つ目はVEGFに結合し、2つ目はANG2に結合する、少なくとも2つの異なる抗原結合部位を有する抗体を指す。
【0077】
二重特異性抗VEGF/ANG2抗体は、例えば、WO2010/040508、WO2011/117329、WO2012/131078、WO2015/083978、WO2017/197199、およびWO2014/009465に記載されている。WO2014/009465は、眼科の血管疾患の治療のために特に設計された二重特異性抗VEGF/ANG2抗体を記載している。WO2014/009465(本明細書にその全体が組み込まれる)の二重特異性抗VEGF/ANG2抗体は、本明細書に記載される眼科の血管疾患の治療および治療スケジュールにおいて特に有用である。
【0078】
一実施形態では、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)およびヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)に結合する二重特異性抗体は、ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位およびヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位を含む、二重特異性抗VEGF/ANG2抗体であり、
i)VEGFに特異的に結合する上記第1の抗原結合部位は、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号1のCDR3H領域、配列番号2のCDR2H領域、および配列番号3のCDR1H領域、ならびに軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号4のCDR3L領域、配列番号5のCDR2L領域、および配列番号6のCDR1L領域を含み、
ii)ANG-2に特異的に結合する上記第2の抗原結合部位は、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号9のCDR3H領域、配列番号10のCDR2H領域、および配列番号11のCDR1H領域、ならびに軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号12のCDR3L領域、配列番号13のCDR2L領域、および配列番号14のCDR1L領域を含み、
iii)二重特異性抗体は、変異I253A、H310A、およびH435A、ならびに変異L234A、L235A、およびP329G(KabatのEUインデックスによる番号付け)を含む、ヒトIgG1サブクラスの定常重鎖領域を含む。
【0079】
一実施形態では、そのような二重特異性抗VEGF/ANG2抗体は、二価である。
【0080】
一実施形態では、そのような二重特異性抗VEGF/ANG2抗体は、
i)VEGFに特異的に結合する上記第1の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインVHとして配列番号7のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインVLとして配列番号8のアミノ酸配列を含み、
ii)ANG-2に特異的に結合する上記第2の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインVHとして配列番号15のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインVLとして配列番号16のアミノ酸配列を含むことを特徴とする。
【0081】
本発明の一態様では、本発明によるそのような二重特異性二価抗体は、
a)VEGFに特異的に結合する第1の完全長抗体の重鎖および軽鎖、
b)定常ドメインCLおよびCH1が互いに置き換えられた、ANG-2に特異的に結合する第2の完全長抗体の修飾された重鎖および修飾された軽鎖、を含むことを特徴とする。
【0082】
ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)およびヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)に特異的に結合する二重特異性抗体のためのこの二重特異性二価抗体フォーマットは、WO2009/080253に記載されている(Knobs-into-Holes修飾CH3ドメインを含む)。
【0083】
二重特異性二価抗体フォーマットに基づく抗体は、CrossMAbと命名されている。
【0084】
一実施形態では、そのような二重特異性二価抗VEGF/ANG2抗体は、以下:
a)第1の完全長抗体の重鎖として配列番号17のアミノ酸配列、および第1の完全長抗体の軽鎖として配列番号18のアミノ酸配列、ならびに
b)第2の完全長抗体の修飾された重鎖として配列番号19のアミノ酸配列、および第2の完全長抗体の修飾された軽鎖として配列番号20のアミノ酸配列、を含むことを特徴とする。
【0085】
一実施形態では、そのような二重特異性二価抗VEGF/ANG2抗体は、配列番号17、配列番号18、配列番号19、および配列番号20のアミノ酸配列を含むことを特徴とする。1つの好ましい実施形態では、二重特異性二価抗VEGF/ANG2抗体は、ファリシマブである。
【0086】
したがって、本発明の一実施形態は、ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位、およびヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位を含む、二重特異性二価抗体であり、配列番号17、配列番号18、配列番号19、および配列番号20のアミノ酸配列を含むことを特徴とする。1つの好ましい実施形態では、二重特異性二価抗VEGF/ANG2抗体は、ファリシマブである。
【0087】
一実施形態では、本発明による二重特異性二価抗体のCH3ドメインは、「knob-into-holes」技術によって改変され、該技術は、いくつかの例、例えば、WO96/027011,Ridgway J.B.,et al.,Protein Eng 9(1996)617-621;およびMerchant,A.M.,et al.,Nat Biotechnol 16(1998)677-681に詳細に記載されている。この方法では、2つのCH3ドメインの相互作用表面が、これら2つのCH3ドメインを含む両方の重鎖のヘテロ二量体化を増加させるように改変される。(2つの重鎖の)2つのCH3ドメインのそれぞれが「knob」がであり得、他方が「hole」である。ジスルフィド架橋の導入により、ヘテロ二量体が安定化され(Merchant,A.M,et al.,Nature Biotech 16(1998)677-681;Atwell,S.,et al.J.Mol.Biol.270(1997)26-35)、収率が上がる。
【0088】
本発明の好ましい態様では、本発明による二重特異性抗VEGF/ANG2抗体は、
一方の重鎖のCH3ドメインおよび他方の重鎖のCH3ドメインがそれぞれ、抗体のCH3ドメイン間の元の界面を含む界面で面するという特徴を有し、
上記界面は、二重特異性抗体の形成を促進するように改変され、該改変は、
a)
二重特異性抗体内の他の重鎖のCH3ドメインの元の界面に面する一方の重鎖のCH3ドメインの元の界面内で、
アミノ酸残基が、より大きな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えられ、それにより、他方の重鎖のCH3ドメインの界面内の空洞において配置可能である一方の重鎖のCH3ドメインの界面内に突起が生成されるように、一方の重鎖のCH3ドメインが改変され、
かつ、
b)
二重特異性抗体内の第1のCH3ドメインの元の界面に面する第2のCH3ドメインの元の界面内で、
アミノ酸残基が、より小さな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えられ、それにより、第2のCH3ドメイン内で第1のCH3ドメインの界面内の突起が配置可能である、第2のCH3ドメインの界面内に空洞を生成するように、他方の重鎖のCH3ドメインが改変されるという特徴を有する。
したがって、本明細書に記載の使用のための二重特異性抗VEGF/ANG2抗体は、好ましくは、
a)の完全長抗体の重鎖のCH3ドメインおよびb)の完全長抗体の重鎖のCH3ドメインはそれぞれ、抗体CH3ドメイン間の元の界面における改変を含む界面で面し、
i)一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、
アミノ酸残基が、より大きな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えられ、それにより、他方の重鎖のCH3ドメインの界面内の空洞において配置可能である一方の重鎖のCH3ドメインの界面内に突起が生成され、
かつ
ii)他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、
アミノ酸残基が、より小さな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えられ、それにより、第2のCH3ドメイン内で第1のCH3ドメインの界面内の突起が配置可能である、第2のCH3ドメインの界面内に空洞を生成するという特徴を有する。
【0089】
好ましくは、より大きな側鎖体積を有する上記アミノ酸残基は、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)からなる群から選択される。
【0090】
好ましくは、より小さな側鎖体積を有する上記アミノ酸残基は、アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、バリン(V)からなる群から選択される。
【0091】
本発明の一態様では、両方のCH3ドメインは、両方のCH3ドメイン間にジスルフィド架橋が形成され得るように、各CH3ドメインの対応する位置にアミノ酸としてシステイン(C)を導入することによってさらに改変される。
【0092】
一実施形態では、二重特異性抗体は、「knob鎖」のCH3ドメインにおけるT366W変異、および「hole鎖」のCH3ドメインにおけるT366S、L368A、Y407V変異を含む。例えば、S354C変異を一方のCH3ドメインに導入し、Y349C変異を他方のCH3ドメインに導入することによって、CH3ドメイン間の追加の鎖間ジスルフィド架橋も使用することができる(Merchant,A.M,et al.,Nature Biotech 16(1998)677-681)。
【0093】
別の好ましい実施形態では、二重特異性抗体は、2つのCH3ドメインのうちの一方におけるS354CおよびT366W変異を含み、2つのCH3ドメインのうちの他方におけるY349C、T366S、L368A、Y407V変異を含む。別の好ましい実施形態では、二重特異性抗体は、2つのCH3ドメインのうちの一方におけるY349C、T366W突異を含み、2つのCH3ドメインのうちの他方におけるS354C、T366S、L368A、Y407V変異を含む(鎖間ジスルフィド架橋を形成する、一方のCH3ドメインにおける追加のY349CまたはS354C変異、および他方のCH3ドメインにおける追加のS354CまたはY349C変異を含む)(番号付けは、常に、KabatのEUインデックスによる(Kabat,E.A.,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991))。
【0094】
ヘテロ二量体化を達成するためのCH3修飾の他の技術は、本発明の代替として企図され、例えば、WO96/27011、WO98/050431、EP1870459、WO2007/110205、WO2007/147901、WO2009/089004、WO2010/129304、WO2011/90754、WO2011/143545、WO2012/058768、WO2013/157954、およびWO2013/096291に記載されている。
【0095】
一実施形態では、EP1870459A1に記載されるヘテロ二量体化手法が代替的に使用される。この手法は、両方の重鎖間のCH3/CH3ドメイン界面の特定のアミノ酸位置に反対の電荷を有する荷電アミノ酸の置換/変異の導入に基づく。上記多重特異性抗体の1つの好ましい実施形態は、多重特異性抗体の一方の重鎖のCH3ドメインにおけるアミノ酸R409DおよびK370E変異、ならびに多重特異性抗体の他方の重鎖のCH3ドメインにおけるアミノ酸D399KおよびE357K変異(Kabat EUインデックスによる番号付け)である。
【0096】
別の実施形態では、上記多重特異性抗体は、「knob鎖」のCH3ドメインにおけるアミノ酸T366W変異、ならびに「hole鎖」のCH3ドメインにおけるアミノ酸T366S、L368A、およびY407V変異を含み、「knob鎖」のCH3ドメインにおけるアミノ酸R409DおよびK370E変異、ならびに「hole鎖」のCH3ドメインにおけるアミノ酸D399KおよびE357K変異をさらに含む。
【0097】
一実施形態では、WO2013/157953に記載されるヘテロ二量体化手法が代替的に使用される。一実施形態では、一方の重鎖のCH3ドメインは、アミノ酸T366K変異を含み、他方の重鎖のCH3ドメインは、アミノ酸L351D変異を含む。さらなる実施形態では、一方の重鎖のCH3ドメインは、アミノ酸L351K変異をさらに含む。さらなる実施形態では、他の重鎖のCH3ドメインは、Y349E、Y349D、およびL368E(一実施形態ではL368E)から選択されるアミノ酸変異をさらに含む。
【0098】
一実施形態では、WO2012/058768に記載されるヘテロ二量体化手法が代替的に使用される。一実施形態では、一方の重鎖のCH3ドメインは、アミノ酸L351YおよびY407A変異を含み、他方の重鎖のCH3ドメインは、アミノ酸T366AおよびK409F変異を含む。さらなる実施形態では、他の重鎖のCH3ドメインは、位置T411、D399、S400、F405、N390、またはK392にアミノ酸変異をさらに含む。一実施形態では、上記アミノ酸変異は、
a)T411N、T411R、T411Q、T411K、T411D、T411E、およびT411W、
b)D399R、D399W、D399Y、およびD399K、
c)S400E、S400D、S400R、およびS400K、
d)F405I、F405M、F405T、F405S、F405V、およびF405W、
e)N390R,N390K、およびN390D,
f)K392V、K392M、K392R、K392L、K392F、およびK392Eからなる群から選択される。
【0099】
さらなる実施形態では、一方の重鎖のCH3ドメインは、アミノ酸L351YおよびY407A変異を含み、他方の重鎖のCH3ドメインは、アミノ酸T366VおよびK409F変異を含む。さらなる実施形態では、一方の重鎖のCH3ドメインは、アミノ酸Y407A変異を含み、他方の重鎖のCH3ドメインは、アミノ酸T366AおよびK409F変異を含む。さらなる実施形態では、他の重鎖のCH3ドメインは、アミノ酸K392E、T411E、D399R、およびS400R変異をさらに含む。
【0100】
一実施形態では、WO2011/143545に記載されるヘテロ二量体化手法が代替的に使用される。一実施形態では、WO2011/143545によるアミノ酸修飾は、368および409からなる群から選択される位置で重鎖のCH3ドメインに導入される。
【0101】
一実施形態では、上記のknob-into-hole技術がまた使用されるWO2011/090762に記載されるヘテロ二量体化手法が代替的に使用される。一実施形態では、一方の重鎖のCH3ドメインは、アミノ酸T366W変異を含み、他方の重鎖のCH3ドメインは、アミノ酸Y407A変異を含む。一実施形態では、一方の重鎖のCH3ドメインは、アミノ酸T366Y変異を含み、他方の重鎖のCH3ドメインは、アミノ酸Y407T変異を含む。
【0102】
一実施形態では、多重特異性抗体は、IgG2アイソタイプのものであり、WO2010/129304に記載されるヘテロ二量体化手法が代替的に使用される。
【0103】
一実施形態では、WO2009/089004に記載されるヘテロ二量体化手法が代替的に使用される。一実施形態では、一方の重鎖のCH3ドメインは、負に荷電したアミノ酸(一実施形態では、グルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D))によるK392またはN392のアミノ酸置換;さらなる実施形態では、K392DまたはN392D変異)を含み、他の重鎖のCH3ドメインは、正に荷電したアミノ酸(一実施形態では、リジン(K)またはアルギニン(R);さらなる実施形態では、D399K、E356K、D356KまたはE357K置換;さらにさらなる実施形態では、D399KまたはE356K変異)によるD399、E356、D356、またはE357のアミノ酸置換を含む。さらなる実施形態では、一方の重鎖のCH3ドメインは、負に荷電したアミノ酸(一実施形態では、グルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D);さらなる実施形態では、K409DまたはR409D変異)によるK409またはR409のアミノ酸置換をさらに含む。さらなる実施形態では、一方の重鎖のCH3ドメインは、さらにまたは代替的に、負に荷電したアミノ酸(一実施形態では、グルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D))によるK439および/またはK370のアミノ酸置換を含む。
【0104】
一実施形態では、WO2007/147901に記載されるヘテロ二量体化手法が代替的に使用される。一実施形態では、一方の重鎖のCH3ドメインは、アミノ酸K253E、D282K、およびK322D変異を含み、他の重鎖のCH3ドメインは、アミノ酸D239K、E240K、およびK292D変異を含む。
【0105】
一実施形態では、WO2007/110205に記載されるヘテロ二量体化手法が代替的に使用される。
【0106】
一実施形態では、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)およびヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)に結合する二重特異性抗体は、ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位およびヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位を含む、二重特異性抗VEGF/ANG2抗体であり、
i)VEGFに特異的に結合する上記第1の抗原結合部位は、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号1のCDR3H領域、配列番号2のCDR2H領域、および配列番号3のCDR1H領域、ならびに軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号4のCDR3L領域、配列番号5のCDR2L領域、および配列番号6のCDR1L領域を含み、
ii)ANG-2に特異的に結合する上記第2の抗原結合部位は、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号9のCDR3H領域、配列番号10のCDR2H領域、および配列番号11のCDR1H領域、ならびに軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号12のCDR3L領域、配列番号13のCDR2L領域、および配列番号14のCDR1L領域を含み、
iii)二重特異性抗体は、変異I253A、H310A、およびH435Aと変異L234A、L235A、およびP329Gを含む(KabatのEUインデックスによる番号付け)、ヒトIgG1サブクラスの定常重鎖領域を含み、
iv)定常重鎖領域において、T366W変異は、一方のCH3ドメインに含まれ、T366S、L368A、Y407V変異は、他方のCH3ドメインに含まれる(KabatのEUインデックスによる番号付け)。
【0107】
一実施形態では、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)およびヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)に結合する二重特異性抗体は、ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位およびヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位を含む、二重特異性抗VEGF/ANG2抗体であり、
i)VEGFに特異的に結合する上記第1の抗原結合部位は、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号1のCDR3H領域、配列番号2のCDR2H領域、および配列番号3のCDR1H領域、ならびに軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号4のCDR3L領域、配列番号5のCDR2L領域、および配列番号6のCDR1L領域を含み、
ii)ANG-2に特異的に結合する上記第2の抗原結合部位は、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号9のCDR3H領域、配列番号10のCDR2H領域、および配列番号11のCDR1H領域、ならびに軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号12のCDR3L領域、配列番号13のCDR2L領域、および配列番号14のCDR1L領域を含み、
iii)二重特異性抗体は、変異I253A、H310A、およびH435Aと変異L234A、L235A、およびP329Gを含む(KabatのEUインデックスによる番号付け)、ヒトIgG1サブクラスの定常重鎖領域を含み、
iv)定常重鎖領域において、S354CおよびT366W変異が、一方のCH3ドメインに含まれ、Y349C、T366S、L368A、およびY407V変異が、他方のCH3ドメインに含まれる(KabatのEUインデックスによる番号付け)。
【0108】
一実施形態では、そのような二重特異性抗VEGF/ANG2抗体は、二価である。
【0109】
一実施形態では、そのような二重特異性抗VEGF/ANG2抗体は、
i)VEGFに特異的に結合する上記第1の抗原結合部位は、重鎖可変ドメインVHとして配列番号7のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインVLとして配列番号8のアミノ酸配列を含み、
ii)ANG-2に特異的に結合する上記第2の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインVHとして配列番号15のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインVLとして配列番号16のアミノ酸配列を含むことを特徴とする。
【0110】
本発明の一態様では、本発明によるそのような二重特異性二価抗体は、
a)VEGFに特異的に結合する第1の完全長抗体の重鎖および軽鎖、
b)定常ドメインCLおよびCH1が互いに置き換えられた、ANG-2に特異的に結合する第2の完全長抗体の修飾された重鎖および修飾された軽鎖を含むことを特徴とする。
【0111】
本明細書で使用される「VEGF」という用語は、Leung,D.W.,et al.,Science 246(1989)1306-9;Houck et al.,Mol.Endocrin.5(1991)1806-1814;Keck,P.J.,et al.,Science 246(1989)1309-12 and Connolly,D.T.,et al.,J.Biol.Chem.264(1989)20017-24に記載されるような、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF/VEGF-A)、165アミノ酸のヒト血管内皮細胞増殖因子(ヒトVEGF165の前駆体配列のアミノ酸27~191:配列番号:24; アミノ酸1~26は、シグナルペプチドを表す)、および関連する121、189、および206の血管内皮細胞増殖因子アイソフォーム、ならびにそれらの増殖因子の天然に存在する対立遺伝子およびプロセシングされた形態を指す。VEGFは、腫瘍および眼内障害に関連する正常および異常な血管新生および新生血管形成の調節に関与している(Ferrara,N.,et al.,Endocr.Rev.18(1997)4-25;Berkman,R.A.,et al.,J.Clin.Invest.91(1993)153-159;Brown,L.F.,et al.,Human Pathol.26(1995)86-91;Brown,L.F.,et al.,Cancer Res.53(1993)4727-4735;Mattern,J.,et al.,Brit.J.Cancer.73(1996)931-934;およびDvorak,H.F.,et al.,Am.J.Pathol.146(1995)1029-1039)。VEGFは、いくつかの供給源から単離されたホモ二量体糖タンパク質であり、いくつかのアイソフォームを含む。VEGFは、内皮細胞に対して非常に特異的なマイトジェン活性を示す。VEGFアンタゴニスト/阻害剤は、受容体VEGFRへのVEGFの結合を阻害する。既知のVEGFアンタゴニスト/阻害剤には、WO2014/009465に記載される二重特異性抗VEGF/ANG2抗体が含まれる。
【0112】
本明細書で使用される「ANG-2」という用語は、例えば、Maisonpierre,P.C.,et al,Science 277(1997)55-60 and Cheung,A.H.,et al.,Genomics 48(1998)389-91)に記載される、ヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)(あるいは、ANGPT2またはANG2と略される)(配列番号25)を指す。アンジオポエチン-1(配列番号26)およびアンジオポエチン-2は、血管内皮内で選択的に発現されるチロシンキナーゼのファミリーであるTiesのリガンドとして発見された(Yancopoulos,G.D.,et al.,Nature 407(2000)242-48)。現在、アンジオポエチンファミリーの4つの決定的なメンバーがある。アンジオポエチン-3および-4(Ang-3およびAng-4)は、マウスおよびヒトにおける同じ遺伝子座の広範に分岐した対応物を表し得る(Kim,I.,et al.,FEBS Let,443(1999)353-56;Kim,I.,et al.,J Biol Chem 274(1999)26523-28)。ANG-1およびANG-2は、組織培養実験において、それぞれアゴニストおよびアンタゴニストとして最初に同定された(ANG-1Davis,S.,et al.,Cell 87(1996)1161-69;and for ANG-2:Maisonpierre,P.C.,et al.,Science 277(1997)55-60を参照のこと)。既知のアンジオポエチンはすべて、主に、その受容体TIE2(配列番号27)に結合し、Ang-1およびAng-2の両方は、3nM(Kd)の親和性でTIE2に結合する(Maisonpierre,P.C.,et al.,Science 277(1997)55-60)。ANG2アンタゴニスト/阻害剤は、受容体TIE2へのANG2の結合を阻害する。既知のANG2アンタゴニスト/阻害剤には、WO2014/009465に記載される二重特異性抗VEGF/ANG2抗体が含まれる。
【0113】
本発明の二重特異性抗体の抗原結合部位は、抗原に対する結合部位の親和性に様々な程度で寄与する6つの相補性決定領域(CDR)を含む。3つの重鎖可変ドメインCDR(CDRH1、CDRH2、およびCDRH3)および3つの軽鎖可変ドメインCDR(CDRL1、CDRL2、およびCDRL3)がある。CDRおよびフレームワーク領域(FR)の範囲は、アミノ酸配列のコンパイルされたデータベースと比較することによって決定され、それらの領域は、配列間の変動に従って定義される。
【0114】
本発明の抗体は、1つ以上の免疫グロブリンクラスのヒト起源に由来する免疫グロブリン定常領域を含み、そのような免疫グロブリンクラスには、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEクラス、ならびにIgGおよびIgAの場合、それらのサブクラス、特にIgG1およびIgG4が含まれる。
【0115】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一のアミノ酸組成物の抗体分子の調製物を指す。
【0116】
「キメラ抗体」という用語は、通常は組換えDNA技術によって調製される、ある供給源または種に由来する可変領域、すなわち結合領域、および異なる供給源または種に由来する定常領域の少なくとも一部を含む抗体を指す。
【0117】
マウス可変領域およびヒト定常領域を含むキメラ抗体が好ましい。本発明に包含される「キメラ抗体」の他の好ましい形態は、特にC1q結合および/またはFc受容体(FcR)結合に関して、本発明による特性を作り出すために、定常領域が、元々の抗体の定常領域から修飾または変更されたものである。このようなキメラ抗体は、「クラススイッチ(class-switched)抗体」とも称される。キメラ抗体は、免疫グロブリン可変領域をコードするDNAセグメントおよび免疫グロブリン定常領域をコードするDNAセグメントを含む発現された免疫グロブリン遺伝子の産物である。キメラ抗体を産生するための方法は、従来の組換えDNAを含み、遺伝子トランスフェクション技術は当技術分野で周知である。例えば、Morrison,S.L.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81(1984)6851-6855;US 5,202,238およびUS 5,204,244を参照のこと。
【0118】
「ヒト化抗体」という用語は、フレームワークまたは「相補性決定領域」(CDR)が、親免疫グロブリンと比較して、異なる特異性を有する免疫グロブリンのCDRを含むように修飾された抗体を指す。好ましい実施形態では、マウスCDRがヒト抗体のフレームワーク領域に接合され、「ヒト化抗体」を調製する。Riechmann,L.,et al.,Nature 332(1988)323-327およびNeuberger,M.S.,et al.,Nature 314(1985)268-270を参照のこと。特に好ましいCDRは、キメラ抗体について上に示した抗原を認識する配列を表すものに対応する。本発明に包含される「ヒト化抗体」の他の形態は、特に、C1q結合および/またはFc受容体(FcR)結合に関して、本発明による特性を作り出すために、定常領域が、元々の抗体の定常領域からさらに修飾または変更されたものである。
【0119】
本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むことを意図している。ヒト抗体は、当該技術分野において周知である(van Dijk,M.A.,and van de Winkel,J.G.,Curr.Opin.Chem.Biol.5(2001)368-374)。ヒト抗体はまた、免疫化時に、内因性免疫グロブリン産生の非存在下で完全なレパートリーまたは一連のヒト抗体を産生することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)で産生することができる。そのような生殖系列変異マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの移入は、抗原チャレンジ時にヒト抗体の産生をもたらす(例えば、Jakobovits,A.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90(1993)2551-2555;Jakobovits,A.,et al.,Nature 362(1993)255-258;Brueggemann,M.,et al.,Year Immunol.7(1993)33-40)。ヒト抗体はファージディスプレイライブラリで産生することができる(Hoogenboom,H.R.,and Winter,G.,J.Mol.Biol.227(1992)381-388;Marks,J.D.,et al.,J.Mol.Biol.222(1991)581-597を参照のこと)。
【0120】
Cole,A.,et al.およびBoerner,P.,et al.の技術はまた、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である(Cole,A.,et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Liss,A.L.,p.77(1985);およびBoerner,P.,et al.,J.Immunol.147(1991)86-95)。本発明によるキメラ抗体およびヒト化抗体について既に述べたように、本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語はまた、特にC1q結合および/またはFcR結合に関して、例えば、「クラススイッチング」、すなわちFc部分の変更または変異(例えば、IgG1からIgG4への変異および/またはIgG1/IgG4変異)により、本発明による特性を作り出すために定常領域で修飾されるような抗体を含む。
【0121】
本明細書で使用される「組換え抗体」という用語は、ヒト免疫グロブリン遺伝子または宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現される抗体についてトランスジェニックである、NS0またはCHO細胞などの宿主細胞または動物(例えば、マウス)から単離された抗体などの、組換え手段によって調製、発現、作成、または単離されたすべてのヒト抗体を含むことを意図している。このような組換え抗体は、再構成された形態の可変領域および定常領域を有する。本発明による組換え抗体は、インビボでの体細胞超変異に供されている。したがって、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VHおよびVL配列に由来し、それらに関連するが、インビボでヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然では存在しないものであり得る配列である。
【0122】
本明細書で使用される「可変ドメイン」(軽鎖(VL)の可変ドメイン、重鎖(VH)の可変ドメイン)は、抗体の抗原への結合に直接関与する軽鎖および重鎖の対のそれぞれを示す。
【0123】
可変ヒト軽鎖および重鎖のドメインは、同じ一般構造を有し、各ドメインは、配列が広く保存され、3つの「超可変領域」(または相補性決定領域、CDR)によって接続された4つのフレームワーク(FR)領域を含む。βシートコンフォメーションおよびCDRは、βシート構造を接続するループを形成し得る。各鎖におけるCDRは、フレームワーク領域によって3次元構造に保持され、他の鎖由来のCDRと一緒に抗原結合部位を形成する。抗体の重鎖および軽鎖CDR3領域は、本発明による抗体の結合特異性/親和性において特に重要な役割を果たし、したがって、本発明のさらなる目的を提供する。
【0124】
本明細書で使用される場合の「超可変領域」または「抗体の抗原結合部分」という用語は、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。
【0125】
超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」由来のアミノ酸残基を含む。「フレームワーク」または「FR」領域は、本明細書で定義される超可変領域残基以外のそれらの可変ドメイン領域である。したがって、抗体の軽鎖および重鎖は、N末端からC末端まで、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4を含む。各鎖上のCDRは、このようなフレームワークアミノ酸によって分離されている。特に、重鎖のCDR3は、抗原結合に最も寄与する領域である。CDRおよびFR領域は、Kabat,E.A.,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)の標準的な定義に従って決定される。
【0126】
「完全長の抗体」という用語は、2つの「完全長の抗体重鎖」および2つの「完全長の抗体軽鎖」からなる抗体を示す。「完全長の抗体重鎖」とは、N末端からC末端への方向において、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、抗体定常重鎖ドメイン1(CH1)、抗体ヒンジ領域(HR)、抗体重鎖定常ドメイン2(CH2)、および抗体重鎖定常ドメイン3(CH3)からなるポリペプチドであり、VH-CH1-HR-CH2-CH3と略記され、ならびに任意選択により、下位クラスIgEの抗体の場合においては抗体重鎖定常ドメイン4(CH4)からなる。好ましくは、「完全長の抗体重鎖」とは、N末端からC末端への方向においてVH、CH1、HR、CH2およびCH3からなるポリペプチドである。「完全長の抗体軽鎖」とは、N末端からC末端への方向において、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、および抗体軽鎖定常ドメイン(CL)からなるポリペプチドであり、VL-CLと略記される。抗体軽鎖定常ドメイン(CL)は、κ(カッパ)またはλ(ラムダ)であり得る。2つの完全長抗体鎖は、CLドメインとCH1ドメインとの間の、および完全長抗体重鎖のヒンジ領域間のポリペプチド間ジスルフィド結合を介してまとまって連結される。典型的な完全長抗体の例は、IgG(例えば、IgG1およびIgG2)、IgM、IgA、IgD、およびIgEのような天然の抗体である。本発明による完全長抗体は、単一の種、例えば、ヒト由来であり得るか、またはキメラ化抗体もしくはヒト化抗体であり得る。本発明による完全長抗体は、同じ抗原に特異的に結合するVHおよびVLの対によってそれぞれ形成される2つの抗原結合部位を含む。完全長抗体の重鎖または軽鎖のC末端は、重鎖または軽鎖のC末端の最後のアミノ酸を示す。上記完全長抗体の重鎖または軽鎖のN末端は、上記重鎖または軽鎖のN末端における最後のアミノ酸を示す。
【0127】
本出願で使用されている「定常領域」という用語は、可変領域以外の抗体のドメインの合計を示す。定常領域は、抗原の結合に直接関与していないが、様々なエフェクター機能を示す。重鎖の定常領域のアミノ酸配列に応じて、抗体は、以下のクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMに分類され、これらのうちのいくつかは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4、IgA1、およびIgA2などのサブクラスにさらに分類され得る。異なるクラスの抗体に対応する重鎖定常領域は、それぞれ、α、δ、ε,γ、およびμと呼ばれる。5つの抗体クラスすべてに見られる軽鎖定常領域は、κ(カッパ)およびλ(ラムダ)と呼ばれる。
【0128】
本出願で使用される用語「ヒト由来の定常領域」または「ヒト定常領域」とは、サブクラスIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4のヒト抗体の定常重鎖領域、および/または定常軽鎖カッパもしくはラムダ領域を示す。かかる定常領域は当該技術分野で公知であり、例えば、Kabat,E.A.,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)に記載されている(例えば、Johnson,G.,and Wu,T.T.,Nucleic Acids Res.28(2000)214-218;Kabat,E.A.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 72(1975)2785-2788も参照のこと)。位置および変異の番号付けについて本出願内で、Kabat,E.A.,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)によるEU番号付けシステム(EUインデックス)、MD(1991)が使用され、「KabatのEUインデックスによる番号付け」と称する。
【0129】
一実施形態では、本発明による二重特異性抗体は、ヒトIgG1サブクラス(ヒトIgG1サブクラスに由来する)の定常領域を有する。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)またはC末端グリシン(Gly446)およびC末端リジン(Lys447)は、存在してもよいし、または存在しなくてもよい。
【0130】
一実施形態では、本明細書に記載の二重特異性抗体は、IgG1アイソタイプ/サブクラスのものであり、配列番号23の定常重鎖ドメイン、または配列番号17の重鎖アミノ酸配列の定常部分および配列番号18の重鎖アミノ酸配列の定常部分を含む。一実施形態では、さらに、C末端グリシン(Gly446)が存在する。一実施形態では、さらに、C末端グリシン(Gly446)およびC末端リジン(Lys447)が存在する。
【0131】
本明細書で特に明記されない限り、定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、Kabat,E.A.et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)、NIH Publication 91-3242に記載されるような、EU番号付けシステム(KabatのEUインデックスとも呼ばれる)に従う。
【0132】
一実施形態では、本発明による二重特異性抗体は、変異L234A(Leu235Ala)、L235A(Leu234Ala)、およびP329G(Pro329Gly)を有するヒトIgG1サブクラスのものである。このような抗体では、FcR結合が低下している(特に、それらは、FcRgammaI、FcRgammaIIおよびFcRgammaIIIへの結合を示さない)。これは、例えば、血栓症のような潜在的な副作用を低減するのに有用である(Meyer,T.,et al.,J.Thromb.Haemost.7(2009)171-81)。
【0133】
すでに記載したPro329Ala変異は、FcgammaRIIIaサンドイッチ相互作用の3分の2だけを除去するが、本発明による抗体におけるPro329Glyは、FcgammaRIIIへのFc部分の結合を十分に付与する。FcgammaRIIIへの結合が、細胞死を引き起こし、癌疾患の治療に役立ち得るが、他の血管疾患または免疫疾患の抗体ベースの治療に深刻な副作用を引き起こし得る、ADCC(抗体依存性細胞傷害)に関与するため、これは、特に有用である。したがって、変異L234A、L235A、およびP329Gを有するIgG1サブクラス、ならびに変異S228P、L235E、およびP329Gを有するIgG4サブクラスを有する本発明による抗体は、それらが両方ともFcRgammaI、FcRgammaII、およびFcRgammaIIIへの結合を示さないので、特に有用である。
【0134】
薬剤、例えば医薬製剤または二重特異性抗VEGF/ANG2抗体の「有効量」は、所望の治療結果または予防結果を達成するために必要な投与量および期間で有効な量を指す。
【0135】
本発明の一実施形態では、本明細書に記載の二重特異性抗体、医薬品、または医薬製剤は、硝子体内適用、例えば、硝子体内適用より、例えば、硝子体内注入により投与される(「硝子体内」投与される)。
【0136】
これは、当該技術分野で既知である標準的な手順に従って実施することができる。例えば、Ritter et al.,J.Clin.Invest.116(2006)3266-76; Russelakis-Carneiro et al.,Neuropathol.Appl.Neurobiol.25(1999)196-206およびWray et al.,Arch.Neurol.33(1976)183-5を参照のこと。
【0137】
いくつかの実施形態では、本発明の治療用キットは、医薬品または医薬製剤に存在する記載される二重特異性抗体の1つ以上の用量、医薬品または医薬製剤の硝子体内注入のための適切なデバイス、ならびに好適な対象および注入を行うためのプロトコルを詳述した説明書を含むことができる。
【0138】
これらの実施形態では、医薬品または医薬製剤は、典型的には、硝子体内注入により、治療を必要とする対象に投与される。これは、当該技術分野で既知の標準的な手順に従って実施することができる。例えば、Ritter et al.,J.Clin.Invest.116(2006)3266-76;Russelakis-Carneiro et al.,Neuropathol.Appl.Neurobiol.25(1999)196-206およびWray et al.,Arch.Neurol.33(1976)183-5を参照のこと。
【0139】
選択された投与経路に関係なく、本明細書に記載の二重特異性抗体は、当業者に既知の従来の方法によって、薬学的に許容される剤形に製剤化される。
【0140】
一実施形態は、抗体が、ソフトウェアツールの決定に従って投与される、先行する請求項のいずれか1つに記載の眼科の血管疾患の治療に使用するための治療方法または二重特異性抗体(医薬品または医薬製剤)である。
【0141】
別の実施形態は、nAMDに罹患している患者の治療のための個別化された治療間隔(PTI)に従う個別化された投与スケジュールを提供する方法であり、該方法は、
コンピューティングシステムにおいて、患者のCSTおよび最高矯正視力(BCVA)、ならび任意選択により新しい黄斑出血の評価に関する情報を含む患者データを受信することと、
コンピューティングシステムを使用して、それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較して、受信した患者データに基づいて、投与間隔を延長、短縮、または維持することと、
nAMD、DME、またはRVOに続発する黄斑浮腫などの様々な眼科の血管疾患について本明細書に記載される基準に基づいて、投与間隔からPTIを生成することと、を含む。
【0142】
別の実施形態は、そのような方法の使用/実施のためのコンピュータデバイス/コンピューティングシステムである。
【表1】
【0143】
以下に、本発明の実施形態を列挙する。
【0144】
1.新生血管AMD(nAMD)および糖尿病性黄斑浮腫(DME)から選択される眼科の血管疾患の治療、または血管新生AMD(nAMD)および糖尿病黄斑浮腫(DME)から選択される眼科の血管疾患に罹患している患者の治療において使用するための、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)およびヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)に結合する二重特異性抗体(または二重特異性抗体を含む医薬品もしくは医薬製剤、または医薬品の調製における使用のための二重特異性抗体)であって、治療が、個別化された治療間隔(PTI)を含む、二重特異性抗体。
【0145】
2.新生血管加齢黄斑変性症(nAMD)の治療、またはnAMDに罹患している患者の治療に使用するための、実施形態1に記載の(使用のための)二重特異性抗体(医薬品または医薬製剤)。
【0146】
3.治療が、個別化された治療間隔を含み、
a)患者は、最初に、4回、4週ごと(Q4W)の投与間隔で、二重特異性VEGF/ANG2抗体で治療され、
b)20週目および24週目に疾患活動性が評価され、疾患活動性は、以下の基準:
i)20週目の評価の場合は12週目および16週目であり、24週目の評価の場合は16週目および20週目である、前の2回のスケジュールされた訪問での平均中心サブフィールド厚(CST)値と比較して、CSTの50μmを超える増加があること、または
ii)前の2回のスケジュールされた訪問のいずれかで記録された最低CST値と比較して、75μm以上のCSTの増加があること、
iii)nAMD疾患活動性に起因して、前の2回のスケジュールされた訪問での平均最良矯正視力(BCVA)値と比較して、5文字以上のBCVAの減少があること、
iv)nAMD疾患活動性に起因して、前の2回のスケジュールされた訪問のいずれかで記録された最高BCVA値と比較して、10文字以上のBCVAの減少があること、または
v)nAMD活動性に起因する、新しい黄斑出血の存在、のうちの1つが満たされた場合に決定され、
c)次いで、患者
i)20週目に疾患活動性基準を満たす患者は、20週目以降Q8W投与間隔で治療され(20週目に最初のQ8W投与)、
ii)24週目に疾患活動性基準を満たす患者は、24週目以降Q12W投与間隔で治療され(24週目に最初のQ12W投与)、
iii)20週目および24週目に疾患活動性基準を満たさない患者は、28週目以降Q16W投与間隔で治療される(28週目に最初のQ16W投与)、実施形態2に記載の(使用のための)二重特異性抗体(医薬品または医薬製剤)。
【0147】
4.個別化された治療間隔は、60週目の後に延長、短縮、または維持され、
a)以下の基準のすべてが満たされる場合、間隔は、(最大Q16Wまで)4週間延長され、
i)最後の2回の研究薬物投与訪問の平均と比較して、安定したCSTであって、安定性は、最低の研究中薬物投与訪問測定値と比較して、CSTの変化が30μm未満であり、かつ、CSTが50μm以上増加しないこととして定義される、安定したCST、
ii)最後の2回の研究薬物投与訪問の平均と比較して、5文字以上のBCVAの減少がなく、かつ、最高の研究中薬物投与訪問測定値と比較して、10文字以上のBCVAの減少がないこと、
iii)新たな黄斑出血がないこと、
b)
以下の基準のうちの1つが満たされた場合、間隔は、(最小Q8Wに)4週間短縮され、
または
以下の基準のうちの2つ以上が満たされる場合、もしくは1つの基準が新しい黄斑出血を含む場合は、間隔は、8週間間隔に短縮される、
i)最後の2回の投与訪問からの平均と比較して、50μm以上のCSTの増加があるか、または最低の投与訪問測定値と比較して、75μm以上の増加があること、
ii)最後の2回の投与訪問の平均と比較して、5文字以上のBCVAの減少があるか、または最高の投与訪問測定値と比較して、10文字以上のBCVAの減少があること、
iii)新しい黄斑出血があること、
実施形態3に記載の(使用のための)二重特異性抗体(医薬品または医薬製剤)。
【0148】
5.糖尿病性黄斑浮腫(DME)の治療またはDMEに罹患している患者の治療に使用するための、実施形態1に記載の(使用のための)二重特異性抗体(医薬品または医薬製剤)。
【0149】
6.治療が、個別化された治療間隔(PTI)を含み、
a)中心サブフィールド厚(CST)が、(12週目以降に測定される)予め定義された参照CST閾値(Spectralisスペクトルドメイン-中心サブフィールド厚SD-OCTの場合はCST<325μm、またはCirrus SD-OCTもしくはTopcon SD-OCTの場合はCST<315μm)を満たすまで、患者は、4週ごと(Q4W)の投与間隔で、二重特異性VEGF/ANG2抗体により最初に治療され、
b)次いで、投与間隔が4週間増加されて、初期Q8W投与間隔とし、
c)この時点以降、投与間隔は、それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較したCSTおよび最良矯正視力(BCVA)の相対的変化に基づく投与訪問時に行われた評価に基づいて、延長、短縮、または維持され、
i)
-CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、4週間延長され、
ii)
-CSTが10%超減少した場合、または
-CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、または
-CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、維持され、
iii)
-CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上~10文字未満のBCVAの減少を伴う場合、または
-CST値が20%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、4週間短縮され、
iv)CST値が10%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、間隔は、8週間短縮され、
それぞれの参照中心サブフィールド厚(CST)は、初期CST閾値基準が満たされたときのCST値であり、参照CSTは、2回の連続した投与訪問についてCSTが前の参照CSTから10%超減少し、得られる値が30μm以内である場合、後の訪問で得られるCST値が新しい参照CSTとして機能するように調整され、
参照最良矯正視力(BCVA)は、任意の以前の投与訪問で得られた3つの最良BCVAスコアの平均である、実施形態5に記載の(使用のための)二重特異性抗体(医薬品または医薬製剤)。
【0150】
7.投与間隔が、最大16週ごと(Q16W)および最小Q4Wに4週間の増分で調整され得る、実施形態6に記載の(使用のための)二重特異性抗体(医薬品または医薬製剤)。
【0151】
8.網膜中心静脈閉塞症に続発する、半側網膜静脈閉塞症に続発する、もしくは分枝静脈閉塞症に続発する黄斑浮腫から選択される眼科の血管疾患の治療、または網膜中心静脈閉塞症に続発する、半側網膜静脈閉塞症に続発する、もしくは分枝静脈閉塞症に続発する黄斑浮腫から選択される眼科の血管疾患に罹患している患者の治療に使用するための、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)およびヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)に結合する二重特異性抗体であって、治療が、個別化された治療間隔(PTI)を含み、
a)患者は、最初に、1日目~20週目まで4週ごと(Q4W)の投与間隔で、二重特異性VEGF/ANG2抗体で治療され、
b)24週目から、中心サブフィールド厚(CST)が予め定義された参照CST閾値(Spectralisスペクトルドメイン-中心サブフィールド厚SD-OCTの場合はCST<325μm、またはCirrus SD-OCTもしくはTopcon SD-OCTの場合は315μm)を満たすまで(24週目以降に測定される)、患者は、Q4Wの頻度で、二重特異性VEGF/ANG2抗体を受け、
c)この時点以降、投与間隔は、それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較したCSTおよび最良矯正視力(BCVA)の相対的変化に基づく投与訪問時に行われた評価に基づいて、延長、短縮、または維持され、
i)
CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、4週間延長され、または
ii)以下の基準のうちのいずれかが満たされた場合:
CST値が10%超減少した場合、もしくは
CST値が10%以下減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、もしくは
CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、維持され、
iii)以下の基準のうちのいずれかが満たされる場合:
CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上~10文字未満のBCVAの減少を伴う場合、もしくは
CST値が20%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、もしくは
CST値が10%以下増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、間隔は、4週間短縮され、
iv)
CST値が10%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、間隔は、Q4Wに短縮され、
それぞれの参照中心サブフィールド厚(CST)は、初期CST閾値基準が満たされたときのCST値であり、参照CSTは、2回の連続した投与訪問についてCSTが前の参照CSTから10%超減少し、得られる値が30μm以内である場合、後の訪問で得られるCST値が新しい参照CSTとして機能するように調整され、
参照最良矯正視力(BCVA)は、任意の以前の投与訪問で得られた3つの最良BCVAスコアの平均である、二重特異性抗体。
【0152】
9.投与間隔が、最大16週ごと(Q16W)および最小Q4Wに調整され得る、実施形態8に記載の(使用のための)二重特異性抗体(医薬品または医薬製剤)。
【0153】
10.ヒトVEGFおよびヒトANG2に結合する二重特異性抗体が、ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位およびヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位を含む、二重特異性二価抗VEGF/ANG2抗体であり、
i)VEGFに特異的に結合する上記第1の抗原結合部位は、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号1のCDR3H領域、配列番号2のCDR2H領域、および配列番号3のCDR1H領域、ならびに軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号4のCDR3L領域、配列番号5のCDR2L領域、および配列番号6のCDR1L領域を含み、
ii)ANG-2に特異的に結合する上記第2の抗原結合部位は、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号9のCDR3H領域、配列番号10のCDR2H領域、および配列番号11のCDR1H領域、ならびに軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号12のCDR3L領域、配列番号13のCDR2L領域、および配列番号14のCDR1L領域を含み、
iii)二重特異性抗体は、変異I253A、H310A、およびH435A、ならびに変異L234A、L235A、およびP329G(KabatのEUインデックスによる番号付け)を含む、ヒトIgG1サブクラスの定常重鎖領域を含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載の(使用のための)二重特異性抗体(医薬品または医薬製剤)。
【0154】
11.
i)VEGFに特異的に結合する上記第1の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインVHとして配列番号7のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインVLとして配列番号8のアミノ酸配列を含み、
ii)ANG-2に特異的に結合する上記第2の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインVHとして配列番号15のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインVLとして配列番号16のアミノ酸配列を含む、実施形態10に記載の(使用のための)二重特異性抗体(医薬品または医薬製剤)。
【0155】
12.ヒトVEGFおよびヒトANG2に結合する二重特異性抗体が、配列番号17、配列番号18、配列番号19、および配列番号20のアミノ酸配列を含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載の(使用のための)二重特異性抗体(医薬または製剤)。
【0156】
13.二重特異性抗体が、ファリシマブである、実施形態1~9のいずれか1つに記載の(使用のための)二重特異性抗体(医薬品または医薬製剤)。
【0157】
14.二重特異性抗体が、(各治療において)約5~7mgの用量で投与される、実施形態10~13のいずれか1つに記載の(使用のための)二重特異性抗体(医薬品または医薬製剤)。
【0158】
15.二重特異性抗体が、(各治療において)約6mgの用量で投与される、実施形態8~13のいずれか1つに記載の(使用のための)二重特異性抗体(医薬品または医薬製剤)。
【0159】
16.二重特異性抗体が、約120mg/mlの濃度で投与される、実施形態14または15に記載の(使用のための)二重特異性抗体(医薬品または医薬製剤)。
【0160】
17.眼科の血管疾患に罹患している患者が、以前に抗VEGF治療で治療されていない、先行する実施形態のいずれか1つに記載の(使用のための)二重特異性抗体(医薬品または医薬製剤)。
【0161】
18.眼科の血管疾患に罹患している患者が、以前に抗VEGF治療で治療されている、先行する実施形態のいずれか1つに記載の(使用のための)二重特異性抗体(医薬品または医薬製剤)。
【0162】
19.抗体が、ソフトウェアツールの決定に従って投与される、先行する実施形態のいずれか1つによる使用のための二重特異性抗体(医薬品または医薬製剤)。
【0163】
20.nAMDに罹患している患者の治療のための個別化された治療間隔(PTI)に従う個別化された投与スケジュールを提供する方法であって、該方法は、
コンピューティングシステムにおいて、患者のCSTおよび最良矯正視力(BCVA)、ならびに任意選択により新しい黄斑出血の評価に関する情報を含む患者データを受信することと、
コンピューティングシステムを使用して、それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較して、受信した患者データに基づいて投与間隔を延長、短縮、または維持することと、
投与間隔からPTIを生じさせることと、を含み、
a)以下の基準のすべてが満たされる場合、間隔は、(最大Q16Wまで)4週間延長され、
i)最後の2回の研究薬物投与訪問の平均と比較して、安定したCSTであって、安定性は、最低の研究中薬物投与訪問測定値と比較して、CSTの変化が30μm未満であり、かつ、CSTが50μm以上増加しないこととして定義される、安定したCST、
ii)最後の2回の研究薬物投与訪問の平均と比較して、5文字以上のBCVAの減少がなく、かつ、最高の研究中薬物投与訪問測定値と比較して、10文字以上のBCVAの減少がないこと、
iii)新たな黄斑出血がないこと、
b)
以下の基準のうちの1つが満たされた場合、間隔は、(最小Q8Wに)4週間短縮され、
または
以下の基準のうちの2つ以上が満たされる場合、もしくは1つの基準が新しい黄斑出血を含む場合は、間隔は、8週間間隔に短縮される、
i)最後の2回の投与訪問からの平均と比較して、50μm以上のCSTの増加があるか、または最低の投与訪問測定値と比較して、75μm以上の増加があること、
ii)最後の2回の投与訪問の平均と比較して、5文字以上のBCVAの減少があるか、または最高の投与訪問測定値と比較して、10文字以上のBCVAの減少があること、
iii)新しい黄斑出血があること、方法。
【0164】
21.DMEに罹患している患者の治療のための個別化された治療間隔(PTI)に従う個別化された投与スケジュールを提供する方法であって、該方法は、
コンピューティングシステムにおいて、患者のCSTおよび最良矯正視力(BCVA)を含む患者データを受信することと、
コンピューティングシステムを使用して、それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較して、受信した患者データに基づいて投与間隔を延長、短縮、または維持することと、
投与間隔からPTIを生じさせることと、を含み、
i)
-CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、4週間延長され、
ii)
-CSTが10%超減少した場合、または
-CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、または
-CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、維持され、
iii)
-CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上~10文字未満のBCVAの減少を伴う場合、または
-CST値が20%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、4週間短縮され、
iv)CST値が10%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、間隔は、8週間短縮される、方法。
【0165】
22.網膜中心静脈閉塞症に続発する、半側網膜静脈閉塞症に続発する、もしくは分枝静脈閉塞症に続発する黄斑浮腫から選択される眼科の血管疾患に罹患している患者の治療のための個別化された治療間隔(PTI)に従う個別化された投与スケジュールを提供する方法であって、該方法は、
コンピューティングシステムにおいて、患者のCSTおよび最良矯正視力(BCVA)を含む患者データを受信することと、
コンピューティングシステムを使用して、それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較して、受信した患者データに基づいて投与間隔を延長、短縮、または維持することと、
投与間隔からPTIを生じさせることと、を含み、
i)
CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔が、4週間延長され、または
ii)以下の基準のうちのいずれかが満たされた場合:
CST値が10%超減少した場合、または
CST値が10%以下減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、または
CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、
iii)以下の基準のうちのいずれかが満たされる場合:
CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上~10文字未満のBCVAの減少を伴う場合、または
CST値が20%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、または
CST値が10%以下増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、間隔は、4週間短縮され、
iv)
CST値が10%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、間隔は、Q4Wに短縮される、方法。
【0166】
23.
コンピューティングシステムにおいて、更新された患者データを受信することと、
コンピューティングシステムを使用して、更新された患者データに基づいて投与間隔を継続的に更新または維持することと、
更新または維持された投与間隔に基づいて、視覚化、ユーザーインターフェース、または通知を生成することと、をさらに含む、実施形態20、21または22のいずれか1つに記載の方法。
【0167】
24.(nAMDの治療のための)個別化された治療間隔(PTI)に従う個別化された投与スケジュールの使用であって、コンピューティングシステムは、
コンピューティングシステムにおいて、患者のCSTおよび最良矯正視力(BCVA)、ならびに任意選択により新しい黄斑出血の評価に関する情報を含む患者データを受信することと、
それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較して、受信した患者データに基づいて投与間隔を延長、短縮、または維持することと、によってPTIを生成し、
a)以下の基準のすべてが満たされる場合、間隔は、(最大Q16Wまで)4週間延長され、
i)最後の2回の研究薬物投与訪問の平均と比較して、安定したCSTであって、安定性は、最低の研究中薬物投与訪問測定値と比較して、CSTの変化が30μm未満であり、かつ、CSTが50μm以上増加しないこととして定義される、安定したCST、
ii)最後の2回の研究薬物投与訪問の平均と比較して、5文字以上のBCVAの減少がなく、かつ、最高の研究中薬物投与訪問測定値と比較して、10文字以上のBCVAの減少がないこと、
iii)新しい黄斑出血がないこと、
b)
以下の基準のうちの1つが満たされた場合、間隔は、(最小Q8Wに)4週間短縮され、
または
以下の基準のうちの2つ以上が満たされる場合、もしくは1つの基準が新しい黄斑出血を含む場合は、間隔は、8週間間隔に短縮される、
i)最後の2回の投与訪問からの平均と比較して、50μm以上のCSTの増加があるか、または最低の投与訪問測定値と比較して、75μm以上の増加があること、
ii)最後の2回の投与訪問の平均と比較して、5文字以上のBCVAの減少があるか、または最高の投与訪問測定値と比較して、10文字以上のBCVAの減少があること、
iii)新しい黄斑出血があること、使用。
【0168】
25.(DMEの治療のための)個別化された治療間隔(PTI)に従う個別化された投与スケジュールの使用であって、コンピューティングシステムは、
患者のCSTおよび最良矯正視力(BCVA)を含む患者データを受信することと、
それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較して、受信した患者データに基づいて投与間隔を延長、短縮、または維持することと、によってPTIを生成し、
i)
-CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、4週間延長され、
ii)
-CSTが10%超減少した場合、または
-CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、または
-CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、維持され、
iii)
-CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上~10文字未満のBCVAの減少を伴う場合、または
-CST値が20%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、4週間短縮され、
iv)CST値が10%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、間隔は、8週間短縮される、使用。
【0169】
26.(網膜中心静脈閉塞症に続発する、半側網膜静脈閉塞症に続発する、または分枝静脈閉塞症に続発する黄斑浮腫の治療のための)個別化された治療間隔(PTI)に従う個別化された投与スケジュールの使用であって、コンピューティングシステムは、
患者のCSTおよび最良矯正視力(BCVA)を含む患者データを受信することと、
それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較して、受信した患者データに基づいて投与間隔を延長、短縮、または維持することと、によってPTIを生成し、
i)
CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔が、4週間延長され、または
ii)以下の基準のうちのいずれかが満たされた場合:
CST値が10%超減少した場合、または
CST値が10%以下減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、または
CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、
iii)以下の基準のうちのいずれかが満たされる場合:
CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上~10文字未満のBCVAの減少を伴う場合、または
CST値が20%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、または
CST値が10%以下増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、間隔は、4週間短縮され、
iv)
CST値が10%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、間隔は、Q4Wに短縮される、使用。
【0170】
以下に、本発明の実施形態を列挙する。
【0171】
1.新生血管AMD(nAMD)および糖尿病性黄斑浮腫(DME)から選択される眼科の血管疾患に罹患している患者を治療する方法であって、有効量の、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)およびヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)に結合する二重特異性抗体を患者に投与することを含み、治療は、個別化された治療間隔(PTI)を含む、方法。
【0172】
2.眼科の血管疾患が、新生血管加齢黄斑変性症(nAMD)である、実施形態1に記載の方法。
【0173】
3.治療が、個別化された治療間隔を含み、
a)患者は、最初に、4回、4週ごと(Q4W)の投与間隔で、二重特異性VEGF/ANG2抗体で治療され、
b)20週目および24週目に疾患活動性が評価され、疾患活動性は、以下の基準:
i)20週目の評価の場合は12週目および16週目であり、24週目の評価の場合は16週目および20週目である、前の2回のスケジュールされた訪問の平均中心サブフィールド厚(CST)値と比較して、CSTの50μmを超える増加があること、または
ii)前の2回のスケジュールされた訪問のいずれかで記録された最低CST値と比較して、75μm以上のCSTの増加があること、
iii)nAMD疾患活動性に起因して、前の2回のスケジュールされた訪問での平均BCVA値と比較して、5文字以上の最良矯正視力(BCVA)の減少があること、
iv)nAMD疾患活動性に起因して、前の2回のスケジュールされた訪問のいずれかで記録された最高BCVA値と比較して、10文字以上のBCVAの減少があること、または
v)nAMD活動性に起因する、新しい黄斑出血の存在、
c)次いで、患者
i)20週目に疾患活動性基準を満たす患者は、20週目以降Q8W投与間隔で治療され(20週目に最初のQ8W投与を行う)、
ii)24週目に疾患活動性基準を満たす患者は、24週目以降Q12W投与間隔で治療され(24週目に最初のQ12Wを行う)、
iii)20週目および24週目に疾患活動性基準を満たさない患者は、28週目以降Q16W投与間隔で治療される(28週目に最初のQ16Wを行う)、実施形態2に記載の方法。
【0174】
4.個別化された治療間隔が、60週目の後に延長、短縮、または維持され、
a)以下の基準のすべてが満たされる場合、間隔は、(最大Q16Wまで)4週間延長され、
i)最後の2回の研究薬物投与訪問の平均と比較して、安定したCSTであって、安定性は、最低の研究中薬物投与訪問測定値と比較して、CSTの変化が30μm未満であり、かつ、CSTが50μm以上増加しないこととして定義される、安定したCST、
ii)最後の2回の研究薬物投与訪問の平均と比較して、5文字以上のBCVAの減少がなく、かつ、最高の研究中薬物投与訪問測定値と比較して、10文字以上のBCVAの減少がないこと、
iii)新たな黄斑出血がないこと、
b)
以下の基準のうちの1つが満たされた場合、間隔は、(最小Q8Wに)4週間短縮され、
または
以下の基準のうちの2つ以上が満たされる場合、もしくは1つの基準が新しい黄斑出血を含む場合は、間隔は、8週間間隔に短縮される、
i)最後の2回の投与訪問からの平均と比較して、50μm以上のCSTの増加があるか、または最低の投与訪問測定値と比較して75μm以上の増加があること、
ii)最後の2回の投与訪問の平均と比較して、5文字以上のBCVAの減少があるか、または最高の投与訪問測定値と比較して、10文字以上のBCVAの減少があること、
iii)新しい黄斑出血があること、
実施形態3に記載の方法。
【0175】
5.糖尿病性黄斑浮腫(DME)の治療またはDMEに罹患している患者の治療に使用するための、実施形態1に記載の方法。
【0176】
6.治療が、個別化された治療間隔(PTI)を含み、
a)中心サブフィールド厚(CST)が、(12週目以降に測定される)予め定義された参照CST閾値(Spectralisスペクトルドメイン-中心サブフィールド厚SD-OCTの場合はCST<325μm、またはCirrus SD-OCTもしくはTopcon SD-OCTの場合はCST<315μm)を満たすまで、患者は、4週ごと(Q4W)の投与間隔で、二重特異性VEGF/ANG2抗体により最初に治療され、
b)次いで、投与間隔が4週間増加されて、初期Q8W投与間隔とし、
c)この時点以降、投与間隔は、それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較したCSTおよび最良矯正視力(BCVA)の相対的変化に基づく投与訪問時に行われた評価に基づいて、延長、短縮、または維持され、
i)
-CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、4週間延長され、
ii)
-CSTが10%超減少した場合、または
-CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、または
-CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、維持され、
iii)
-CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上~10文字未満のBCVAの減少を伴う場合、または
-CST値が20%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、4週間短縮され、
iv)CST値が10%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、間隔は、8週間短縮され、
それぞれの参照中心サブフィールド厚(CST)は、初期CST閾値基準が満たされたときのCST値であり、参照CSTは、2回の連続した投与訪問についてCSTが前の参照CSTから10%超減少し、得られる値が30μm以内である場合、後の訪問で得られるCST値が新しい参照CSTとして機能するように調整され、
参照最良矯正視力(BCVA)は、任意の以前の投与訪問で得られた3つの最良BCVAスコアの平均である、実施形態5に記載の方法。
【0177】
7.投与間隔が、最大16週ごと(Q16W)および最小Q4Wに4週間の増分で調整され得る、実施形態6に記載の方法。
【0178】
8.網膜中心静脈閉塞症に続発する、半側網膜静脈閉塞症に続発する、または分枝静脈閉塞症に続発する黄斑浮腫から選択される眼科の血管疾患に罹患している患者を治療する方法であって、該方法は、有効量の、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)およびヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)に結合する二重特異性抗体を患者に投与することを含み、治療は、個別化された治療間隔(PTI)を含み、
a)患者は、最初に、1日目~20週目まで4週ごと(Q4W)の投与間隔で、二重特異性VEGF/ANG2抗体で治療され、
b)24週目から、患者は、中心サブフィールド厚(CST)が予め定義された参照CST閾値(Spectralisスペクトルドメイン-中心サブフィールド厚SD-OCTの場合はCST<325μm、またはCirrus SD-OCTもしくはTopcon SD-OCTの場合はCST<315μm)を満たすまで(24週目以降に測定される)、Q4Wの頻度で、二重特異性VEGF/ANG2抗体を受け、
c)この時点以降、投与間隔は、それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較したCSTおよび最良矯正視力(BCVA)の相対的変化に基づく投与訪問時に行われた評価に基づいて、延長、短縮、または維持され、
CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、4週間延長され、または
ii)以下の基準のうちのいずれかが満たされた場合:
CST値が10%超減少した場合、もしくは
CST値が10%以下減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、もしくは
CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、維持され、
iii)以下の基準のうちのいずれかが満たされる場合:
CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上~10文字未満のBCVAの減少を伴う場合、もしくは
CST値が20%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、もしくは
CST値が10%以下増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、間隔は、4週間短縮され、
iv)
CST値が10%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、間隔は、Q4Wに短縮され、
それぞれの参照中心サブフィールド厚(CST)は、初期CST閾値基準が満たされたときのCST値であり、参照CSTは、2回の連続した投与訪問についてCSTが前の参照CSTから10%超減少し、得られる値が30μm以内である場合、後の訪問で得られるCST値が新しい参照CSTとして機能するように調整され、
参照最良矯正視力(BCVA)は、任意の以前の投与訪問で得られた3つの最良BCVAスコアの平均である、方法。
【0179】
9.投与間隔が、最大16週ごと(Q16W)および最小Q4Wに調整され得る、実施形態8に記載の方法。
【0180】
10.ヒトVEGFおよびヒトANG2に結合する二重特異性抗体が、ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位およびヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位を含む、二重特異性二価抗VEGF/ANG2抗体であり、
i)VEGFに特異的に結合する上記第1の抗原結合部位は、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号1のCDR3H領域、配列番号2のCDR2H領域、および配列番号3のCDR1H領域、ならびに軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号4のCDR3L領域、配列番号5のCDR2L領域、および配列番号6のCDR1L領域を含み、
ii)ANG-2に特異的に結合する上記第2の抗原結合部位は、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号9のCDR3H領域、配列番号10のCDR2H領域、および配列番号11のCDR1H領域、ならびに軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号12のCDR3L領域、配列番号13のCDR2L領域、および配列番号14のCDR1L領域を含み、
iii)二重特異性抗体は、変異I253A、H310A、およびH435A、ならびに変異L234A、L235A、およびP329G(KabatのEUインデックスによる番号付け)を含む、ヒトIgG1サブクラスの定常重鎖領域を含む、実施形態1~9のいずれか一つに記載の方法。
【0181】
11.
i)VEGFに特異的に結合する上記第1の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインVHとして配列番号7のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインVLとして配列番号8のアミノ酸配列を含み、
ii)ANG-2に特異的に結合する上記第2の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインVHとして配列番号15のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインVLとして配列番号16のアミノ酸配列を含む、実施形態10に記載の方法。
【0182】
12.ヒトVEGFおよびヒトANG2に結合する二重特異性抗体が、配列番号17、配列番号18、配列番号19、および配列番号20のアミノ酸配列を含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0183】
13.二重特異性抗体が、ファリシマブである、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0184】
14.二重特異性抗体が、(各治療において)約5~7mgの用量で投与される、実施形態10~13のいずれか1つに記載の方法。
【0185】
15.二重特異性抗体が、(各治療において)約6mgの用量で投与される、実施形態10~13のいずれか1つに記載の方法。
【0186】
16.二重特異性抗体が、約120mg/mlの濃度で投与される、実施形態14または15に記載の方法。
【0187】
17.眼科の血管疾患に罹患している患者が、以前に抗VEGF治療で治療されていない、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0188】
18.眼科の血管疾患に罹患している患者が、以前に抗VEGF治療で治療されている、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0189】
19.抗体が、ソフトウェアツールの決定に従って投与される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0190】
20.nAMDに罹患している患者の治療のための個別化された治療間隔(PTI)に従う個別化された投与スケジュールを提供する方法であって、該方法が、
コンピューティングシステムにおいて、患者のCSTおよび最良矯正視力(BCVA)、ならびに任意選択により新しい黄斑出血の評価に関する情報を含む患者データを受信することと、
コンピューティングシステムを使用して、それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較して、受信した患者データに基づいて投与間隔を延長、短縮、または維持することと、
投与間隔からPTIを生じさせることと、を含み、
a)以下の基準のすべてが満たされる場合、間隔は、(最大Q16Wまで)4週間延長され、
i)最後の2回の研究薬物投与訪問の平均と比較して、安定したCSTであって、安定性は、最低の研究中薬物投与訪問測定値と比較して、CSTの変化が30μm未満であり、かつ、CSTが50μm以上増加しないこととして定義される、安定したCST、
ii)最後の2回の研究薬物投与訪問の平均と比較して、5文字以上のBCVAの減少がなく、かつ、最高の研究中薬物投与訪問測定値と比較して、10文字以上のBCVAの減少がないこと、
iii)新しい黄斑出血がないこと、
b)
以下の基準のうちの1つが満たされた場合、間隔は、(最小Q8Wに)4週間短縮され、
または
以下の基準のうちの2つ以上が満たされる場合、もしくは1つの基準が新しい黄斑出血を含む場合は、間隔は、8週間間隔に短縮される、方法:
i)最後の2回の投与訪問からの平均と比較して、50μm以上のCSTの増加があるか、または最低の投与訪問測定値と比較して、75μm以上の増加があること、
ii)最後の2回の投与訪問の平均と比較して、5文字以上のBCVAの減少があるか、または最高の投与訪問測定値と比較して、10文字以上のBCVAの減少があること、
iii)新しい黄斑出血があること。
【0191】
21.DMEに罹患している患者の治療のための個別化された治療間隔(PTI)に従う個別化された投与スケジュールを提供する方法であって、該方法は、
コンピューティングシステムにおいて、患者のCSTおよび最良矯正視力(BCVA)を含む患者データを受信することと、
コンピューティングシステムを使用して、それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較して、受信した患者データに基づいて投与間隔を延長、短縮、または維持することと、
投与間隔からPTIを生じさせることと、を含み、
i)
-CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、4週間延長され、
ii)
-CSTが10%超減少した場合、または
-CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、または
-CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、維持され、
iii)
-CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上~10文字未満のBCVAの減少を伴う場合、または
-CST値が20%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、4週間短縮され、
iv)CST値が10%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、間隔は、8週間短縮される、方法。
【0192】
22.網膜中心静脈閉塞症に続発する、半側網膜静脈閉塞症に続発する、または分枝静脈閉塞症に続発する黄斑浮腫から選択される眼科の血管疾患に罹患している患者の治療のための個別化された治療間隔(PTI)に従う個別化された投与スケジュールを提供する方法であって、該方法は、
コンピューティングシステムにおいて、患者のCSTおよび最良矯正視力(BCVA)を含む患者データを受信することと、
コンピューティングシステムを使用して、それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較して、受信した患者データに基づいて投与間隔を延長、短縮、または維持することと、
投与間隔からPTIを生じさせることと、を含み、
i)
CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔が、4週間延長され、または
ii)以下の基準のうちのいずれかが満たされた場合:
CST値が10%超減少した場合、または
CST値が10%以下低下し、関連する10文字以上のBCVAの低下がある場合、または
CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、維持され、
iii)以下の基準のうちのいずれかが満たされる場合:
CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上~10文字未満のBCVAの減少を伴う場合、もしくは
CST値が20%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、または
CST値が10%以下増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、間隔は、4週間短縮され、
iv)
CST値が10%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、間隔は、Q4Wに短縮される、方法。
【0193】
23.
コンピューティングシステムにおいて、更新された患者データを受信することと、
コンピューティングシステムを使用して、更新された患者データに基づいて投与間隔を継続的に更新または維持することと、
更新または維持された投与間隔に基づいて、視覚化、ユーザーインターフェース、または通知を生成することと、をさらに含む、実施形態20、21または22のいずれか1つに記載の方法。
【0194】
24.(nAMDの治療のための)個別化された治療間隔(PTI)に従う個別化された投与スケジュールの使用であって、コンピューティングシステムは、
コンピューティングシステムにおいて、患者のCSTおよび最良矯正視力(BCVA)、ならびに任意選択により新しい黄斑出血の評価に関する情報を含む患者データを受信することと、
それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較して、受信した患者データに基づいて投与間隔を延長、短縮、または維持することと、によってPTIを生成し、
a)以下の基準のすべてが満たされる場合、間隔は、(最大Q16Wまで)4週間延長され、
i)最後の2回の研究薬物投与訪問の平均と比較して、安定したCSTであって、安定性は、最低の研究中薬物投与訪問測定値と比較して、CSTの変化が30μm未満であり、かつ、CSTが50μm以上増加しないこととして定義される、安定したCST、
ii)最後の2回の研究薬物投与訪問の平均と比較して、5文字以上のBCVAの減少がなく、かつ、最高の研究中薬物投与訪問測定値と比較して、10文字以上のBCVAの減少がないこと、
iii)新しい黄斑出血がないこと、
b)
以下の基準のうちの1つが満たされた場合、間隔は、(最小Q8Wに)4週間短縮され、
または
以下の基準のうちの2つ以上が満たされる場合、もしくは1つの基準が新しい黄斑出血を含む場合は、間隔は、8週間間隔に短縮される、
i)最後の2回の投与訪問からの平均と比較して、50μm以上のCSTの増加があるか、または最低の投与訪問測定値と比較して、75μm以上の増加があること、
ii)最後の2回の投与訪問の平均と比較して、5文字以上のBCVAの減少があるか、または最高の投与訪問測定値と比較して、10文字以上のBCVAの減少があること、
iii)新しい黄斑出血があること、使用。
【0195】
25.(DMEの治療のための)個別化された治療間隔(PTI)に従う個別化された投与スケジュールの使用であって、コンピューティングシステムは、
患者のCSTおよび最良矯正視力(BCVA)を含む患者データを受信することと、
それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較して、受信した患者データに基づいて投与間隔を延長、短縮、または維持することと、によってPTIを生成し、
i)
-CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、4週間延長され、
ii)
-CSTが10%超減少した場合、または
-CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、または
-CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、維持され、
iii)
-CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上~10文字未満のBCVAの減少を伴う場合、または
-CST値が20%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、4週間短縮され、
iv)CST値が10%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、間隔は、8週間短縮される、使用。
【0196】
26.(網膜中心静脈閉塞症に続発する、半側網膜静脈閉塞症に続発する、または分枝静脈閉塞症に続発する黄斑浮腫の治療のための)個別化された治療間隔(PTI)に従う個別化された投与スケジュールの使用であって、コンピューティングシステムは、
患者のCSTおよび最良矯正視力(BCVA)を含む患者データを受信することと、
それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較して、受信した患者データに基づいて投与間隔を延長、短縮、または維持することと、によってPTIを生成し、
i)
CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、4週間延長され、または
ii)以下の基準のうちのいずれかが満たされた場合:
CST値が10%超減少した場合、もしくは
CST値が10%以下減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、もしくは
CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は、維持され、
iii)以下の基準のうちのいずれかが満たされる場合:
CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上~10文字未満のBCVAの減少を伴う場合、もしくは
CST値が20%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、もしくは
CST値が10%以下増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、間隔は、4週間短縮され、
iv)
CST値が10%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、間隔は、Q4Wに短縮される、使用。
【実施例0197】
ヒトVEGFおよびヒトANG2に結合する二重特異性抗体による血管眼疾患に罹患している患者の治療
実施例1:
個別化された治療間隔を使用した新生血管加齢黄斑変性症(nAMD)に罹患している患者の治療の有効性および持続期間
特に、治療経験のないnAMD患者に12週間および16週間の間隔で投与されたRO6867461(ファリシマブ)の有効性を調査するための初期の第II相の52週間の研究で、関与したすべての患者に対してより長い持続期間(可能性として再治療までのより長い時間)が見られた。3つの群を研究した:
-A群(Q12W):最大12週目まで4週ごとに6mg RO6867461硝子体内(IVT)(4回の注入)、続いて最大48週目まで12週ごとに6mg RO6867461 IVT(24、36、および48週目に注入;3回の注入)……………………………………
-B群(Q16W):最大12週目まで4週ごとに6mg RO6867461 IVT(4回の注入)、続いて最大48週目まで16週ごとに6mg RO6867461 IVT(28週目および44週目までの注入;2回の注入)……… ……………………………………。
-C群(対照薬群):0.5 mgのラニビズマブIVTを4週ごとに48週間(13回の注入)片方の眼のみを研究用眼として選択する。
【0198】
BCVAに関する結果を
図5に示す。
図5は、12週間および16週間の間隔での二重特異性抗VEGF/ANG2抗体RO6867461(ファリシマブ)および4週間間隔のラニビズマブ(Lucentis(登録商標)((0.3mgの用量で硝子体内投与))を比較した、新生血管加齢黄斑変性症(nAMD)患者のベースラインからのBCVA向上を示している。
【0199】
フォローアップ第III相研究が開始され、最大16週間間隔で(特定の個別化された治療間隔(PTI)スケジュールで)投与された6mg用量のファリシマブの有効性、安全性、持続期間、および薬物動態を、nAMDとして既知であるAMDに続発するCNVを有する患者において、アフリベルセプト単剤療法Q8Wと比較して評価した。
【0200】
ファリシマブを約120mg/mlの濃度で投与する。
【0201】
研究の具体的な目的および対応エンドポイントは、表1に概要説明される。
【表2】
【表3】
【表4】
【0202】
新生血管加齢黄斑変性症(nAMD)(加齢黄斑変性症(ウェットAMD)とも呼ばれる)に罹患している患者は、配列番号17、配列番号18、配列番号19、および配列番号20のアミノ酸配列を含むヒトVEGFおよびヒトANG2に結合する二重特異性抗体(この抗体VEGFang2-0016およびその産生は、参照により組み込まれるWO2014/009465にも詳細に記載されている)で治療される。本明細書におけるこの二重特異性抗VEGF/ANG2抗体の呼称は、RO6867461もしくはRG7716もしくはVEGFang2-0016またはファリシマブである。治療における陽性対照薬として、例えば、アフリベルセプトを使用する。患者には、抗VEGF治療経験のない患者(例えば、アフリベルセプトおよび/またはラニビズマブおよび/または他の抗VEGF治療による抗VEGF治療で以前に治療されていない))が含まれる。6mg用量の硝子体内(IVT)投与のためのRO6867461(ファリシマブ)の無菌の無色から茶色がかった防腐剤を含まない溶液のバイアルを使用する。
【0203】
研究設計
これは、治療経験のないnAMDを有する患者に最大16週間間隔で投与されたファリシマブの有効性、安全性、持続期間、および薬物動態を調査するための、多施設共同、ランダム化、陽性対照薬、二重盲検、並行群間、112週間の研究である。
【0204】
全体では約640人の患者が登録され、2つの治療群のうちの1つに1:1の比率でランダム化される。
【0205】
A群(最大Q16Wのファリシマブ)(n=320):A群にランダム化された患者は、最大12週目まで6mgのIVTファリシマブQ4Wを投与される(4回の注入)。20週目に、プロトコルで定義された疾患活動性評価では、活動性疾患を有するA群の患者(基準については以下を参照)がその訪問時に治療され、ファリシマブのQ8W投与レジメンを継続する必要がある。24週目の第2のプロトコルで定義された疾患活動性評価では、活動性疾患を有するA群の患者(20週目に活動性疾患を有する患者を除外し、したがって、ファリシマブのQ8W投与レジメンを受けている)がその訪問時に治療され、ファリシマブのQ12W投与レジメンを継続する必要がある。20週目および24週目にプロトコルで定義された基準に従って活動性疾患を有しないファリシマブを受ける患者は、ファリシマブのQ16W投与レジメンで治療される。患者は、20週目および24週目に行う疾患活動性評価に従って、60週目まで、8週目、12週、または16週ごとに固定レジメンでファリシマブの投与を継続する。60週目以降(A群のすべての患者が、ファリシマブを受けることをスケジュールされている場合)、A群のすべての患者は、個別化された治療間隔(PTI)投与レジメン(PTI投与基準については表2を参照)に従って最大108週まで治療される。
【0206】
B群 (対照薬群)(Q8W):B群にランダム化された患者は、最大8週目まで2mgのIVTアフリベルセプトQ4W(3回の注入)を受け、続いて最大108週目まで2mgのIVTアフリベルセプトQ8Wを受ける。
【0207】
両方の治療群の患者は、研究期間全体(112週間)にわたってQ4Wのスケジュールされた研究訪問を完了する。偽処置は、治療群間の盲検を維持するために、研究治療投与せずに、研究訪問時に両方の治療群の患者に投与される。
【0208】
【0209】
a20週目および24週目に、患者は、疾患活動性評価を受ける。これらの時点で、疾患活動性の解剖学的または機能的兆候を有する患者は、Q16W投与ではなく、Q8WまたはQ12W投与をそれぞれ受ける。
【0210】
b主要エンドポイントは、40週目、44週目、および48週目での平均に基づく、BCVAのベースラインからの変化(4メートルの開始距離でのETDRS視力表で評価される)である。
【0211】
c60週目以降(A群のすべての患者が、ファリシマブを受けることをスケジュールされている場合)、A群の患者は、PTI投与レジメン(Q8WとQ16Wとの間)に従って治療される。
【0212】
BCVA=最良矯正視力、ETDRS=早期治療糖尿病性網膜症研究、IVT=硝子体内、PTI=個別化された治療間隔、Q8W=8週ごと、Q12W=12週ごと、Q16W=16週ごと、W=週。
【0213】
片方の眼のみを研究用眼として割り当てる。両方の眼が(包含および除外基準に従って)適格であるとみなされる場合、スクリーニングで評価された、より悪いBCVAを有する眼が研究用眼として選択される(医学的理由に基づかなければ、調査者は、他方の眼が研究における治療により適切であるとみなす)。
【0214】
研究の盲検要件を満たすために、サイトごとに最低2人の調査者がいる。少なくとも1人の調査者が、各患者の治療割り当てに盲検化され、眼の評価を評価する評価医として指定される。少なくとも1人の他の調査員が非盲検化され、研究治療を行う。
【0215】
研究は、最長28日(-28日目~-1日目)のスクリーニング期間および約108週間の治療期間で構成され、続いて112週目(最後の研究治療投与から少なくとも28日後)に最後の研究訪問が行われる。
【0216】
20週目および24週目の疾病活動基準
以下の基準のうちのいずれかが満たされる場合、20週目および24週目で活動性疾患の決定を行う:
・前の2回のスケジュールされた訪問(第20週目の評価では12週目および16週目、ならびに第24週目の評価では16週目および第20週目)にわたり平均CST値と比較して、50μmを超えるCSTの増加、または
・前の2回のスケジュールされた訪問のいずれかで記録された最低CST値と比較して、75μm以上のCSTの増加、または
・nAMD疾患活動性(調査者によって決定される)に起因して、前の2回のスケジュールされた訪問にわたり平均BCVA値と比較して、5文字以上のBCVA減少、または
・nAMD疾患活動性(調査者によって決定される)に起因して、前の2回のスケジュールされた訪問のいずれかで記録された最高BCVA値と比較して、10文字以上のBCVAの減少、または
・nAMD活動に起因して、新しい黄斑出血の存在(調査者によって決定される)。
【0217】
24週目での追加の考慮事項:24週目に上記の基準を満たさないが調査者の意見では治療が必要である有意なnAMD疾患活動性がある場合、A群にランダム化された患者は、24週目に6mgのファリシマブを受け、12週間毎週の治療を繰り返し受けることを継続する。20週目に疾患活動性基準を満たすA群にランダム化された患者は、Q8W投与スケジュールのままであり、24週目には治療を受けない。B群にランダム化された患者は、Q8W投与スケジュールを維持し、24週目にアフリベルセプトを受ける。
【0218】
個別化された治療間隔(PTI)疾患活動性基準
A群のすべての患者がファリシマブを受けることをスケジュールされている60週目に開始して、A群の患者のための研究薬投与間隔は、研究薬物投与訪問時に行われた評価に基づいて延長される。A群(およびそれぞれのアルゴリズム)のPTIレジメン相中の研究薬投与間隔の決定を表2に示す。決定は、患者が薬を受けた訪問からのデータに基づいて行われる。患者は、ファリシマブによる治療を受けていない場合、研究訪問時に偽処置を受ける。
【表5】
【0219】
上記の表2で概説したように、個別化された薬物治療間隔決定のアルゴリズムは、それぞれ参照CSTおよびBCVAと比較したCSTの相対的変化およびBCVAの相絶対的変化、さらに、新しい黄斑出血の評価/発見に基づく。
アルゴリズムは、コンピューティングシステムまたはデバイスによって実施され得る。そのようなコンピューティングシステムまたはデバイスは、ウェブインターフェース、モバイルアプリ、ソフトウェアプログラム、または任意の臨床決定支援ツールを含み得る。例えば、患者のCSTおよびBCVAスコアは、個別化された投与間隔ソフトウェアツールのWebインターフェースにアップロードし得る。
【0220】
アップロードされたCSTとBVCAを使用して、ツールは、以下の投与のタイミングを自動的に計算して出力し得る。ツールは、投与スケジュールまたは通知をさらに提供し、所与の患者の投与間隔変化の視覚化を監視および生成し、患者群の投与間隔変化の視覚化を生成し、受信したCSTおよびBCVAデータを集約して傾向を決定し、またはそれらの組み合わせを提供し得る。
【0221】
投与スケジュールまたは通知は、スケジュールされた投与訪問のカレンダー日付の表示、および臨床医または患者に近づいている投与訪問を通知するカレンダーアラートを含み得る。投与間隔変化の視覚化には、例えば、表2の概略図の表示が含まれ得る。ある場合では、患者の投与間隔調整が1つの色で示され、患者の直前の投与間隔調整が別の色で示され得る。
【0222】
説明のために、患者は最初に間隔を4週間延長し、次いで個別化された治療間隔を維持し得る。ツールは、表2の回路図の「間隔が維持される」領域を緑色で示し、「間隔が4週間延長される」ことを黄色で示すことにより、患者の個別化された間隔の進行を視覚化することができる。緑は、患者の最新の間隔計算を反映し、黄色は、患者の直前の間隔計算の結果を示し得る。この視覚化により、ツールのユーザーは、患者の疾患の進行が改善しているが、治療間隔がさらに延長されるほど改善していないことを素早く確認し得る。
【0223】
ツールは、患者および投与スケジュールのデータをさらに集約し、集約されたデータの視覚化を生成し得る。このようなデータ分析には、前述の色分けの例と同様に、1人の患者の投与変更の視覚化が含まれ得る。あるいは、視覚化により、患者群にわたる投与調整が示され得る。例えば、ある視覚化では、どの患者が延長された間隔を有し、どの患者が短縮された間隔を有するかを示し得る。
【0224】
この視覚化は、患者の年齢、以前の治療、病状、投与された抗体、臨床試験群などの様々な特徴によって編成し得る。ツールはまた、患者のCSTおよびBCVAデータから視覚化を集約および作成し得る。視覚化により、データにおける傾向が示され、縦断的分析が容易化または生成され得る。これらの視覚化には、アラート、プロット、分析ワークフローインターフェース、または任意のグラフィカルインターフェースが含まれ得る。
【0225】
ツールは、眼の評価および画像に応答して、またはそれらと一緒に、投与スケジュールの出力または視覚化を生成し得る。一実施形態では、ツールは、患者のCSTまたはBVCAを直接計算し得る。CSTの場合、ツールは眼球画像を受信または直接キャプチャーする。ツールはさらに、画像セグメンテーション、画像認識、または機械学習技術を使用して、眼の画像からCSTを計算し得る。BCVAの場合、ツールは、眼の評価を仮想的に行い、ユーザーインターフェースまたは視線追跡メカニズムにより患者のユーザー入力を促進および収集し得る。あるいは、ツールは、眼の評価データを受信、保存、および追跡し得る。このようにして、ツールは、各患者の疾患の進行を追跡し、それに応じて投与スケジュールを調整し得る。
【0226】
本実施形態は、nAMDに罹患している患者の治療のための個別化された治療間隔(PTI)に従う個別化された投与スケジュールを提供する方法であって、コンピューティングシステムにおいて、患者のCSTおよび最良矯正視力(BCVA)を含む患者データを受信することと、コンピューティングシステムを使用して、それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較して、受信した患者データに基づいて投与間隔を延長、短縮、または維持することと、投与間隔からPTIを生じさせることと、を含む、方法を含み得る。以下のすべての基準が満たされる場合、例示的な投与間隔は、(最大Q16Wまで)4週間延長される:i)安定性が、最低の研究中薬物投与訪問測定値と比較して30μm未満のCSTおよび50μm以上のCSTの増加なしとの変化として定義される場合、最後の2回の研究薬物投与訪問の平均と比較してCSTが安定していること、ii)最後の2回の研究薬物投与訪問の平均と比較して、BCVAにおいて5文字以上の減少がなく、最高の研究中薬物投与訪問測定値と比較して10文字以上のBCVAの減少がないこと、iii)新たな黄斑出血がないこと。
【0227】
以下の基準のうちの1つが満たされる場合、例示的な投与間隔は、(最小Q8Wに)4週間短縮され、または以下の基準のうちの2つ以上が満たされる場合もしくは1つの基準が新たな黄斑出血を含む場合、例示的な投与間隔は、8週間間隔に短縮される:i)最後の2回の投与訪問からの平均と比較して、50μm以上のCSTの増加があるか、または最低投与訪問測定値と比較して、75μm以上のCSTの増加があること、ii)最後の2回の投与訪問の平均と比較して、5文字以上のBCVAの減少があるか、または最高投与訪問測定値と比較して10文字以上のBCVAの減少があること、iii)新しい黄斑出血があること。
【0228】
nAMDに罹患している患者の治療のための個別化された治療間隔(PTI)に従う個別化された投与スケジュールを提供するそのような方法は、コンピューティングシステムにおいて、更新された患者データを受信することと、コンピューティングシステムを使用して、更新された患者データに基づいて投与間隔を継続的に更新または維持することと、更新または維持された投与間隔に基づいて、視覚化、ユーザーインターフェース、または通知を生成することをさらに含み得る。
【0229】
本実施形態はまた、(nAMDの治療のための)個別化された治療間隔(PTI)に従う個別化された投与スケジュールの使用であって、コンピューティングシステムは、患者のCSTおよび最良矯正視力(BCVA)を含む患者データを受信することによってPTIを生成し、それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較して、受信した患者データに基づいて、投与間隔を延長、短縮、または維持する、使用を含む。以下のすべての基準が満たされる場合、例示的な投与間隔は、(最大Q16Wまで)4週間延長される:i)安定性が、最低の研究中薬物投与訪問測定値と比較して30μm未満のCSTおよび50μm以上のCSTの増加なしとの変化として定義される場合、最後の2回の研究薬物投与訪問の平均と比較してCSTが安定していること、ii)最後の2回の研究薬物投与訪問の平均と比較して、5文字以上のBCVAの減少がなく、最高の研究中薬物投与訪問測定値と比較して10文字以上のBCVAの減少がないこと、iii)新たな黄斑出血がないこと。以下の基準のうちの1つが満たされる場合、例示的な投与間隔は、(最小Q8Wに)4週間短縮され、または以下の基準のうちの2つ以上が満たされる場合もしくは1つの基準が新たな黄斑出血を含む場合、例示的な投与間隔は、8週間間隔に短縮される:i)最後の2回の投与訪問からの平均と比較して、50μm以上のCSTの増加があるか、または最低投与訪問測定値と比較して、75μm以上のCSTの増加があること、ii)最後の2回の投与訪問の平均と比較して、5文字以上のBCVAの減少があるか、または最高投与訪問測定値と比較して10文字以上のBCVAの減少があること、iii)新しい黄斑出血があること。
【0230】
眼の評価
眼の評価は、以下を含み、指定された時点で行われる:
・BCVAは、3つのPrecision Vision(商標)またはLighthouse距離視力表(修正されたETDRS視力表1、2、およびR)のセットを使用して測定される。VAマニュアルを調査員に提供した。VA審査官およびVA審査室の認定は、VA審査を行う前に確保した。BCVA検査官は、眼および治療の割り当てを研究するために盲検化され、屈折およびBCVA評価のみを行う(例えば、視力仕様マニュアル)。BCVA検査官はまた、患者の以前の訪問のBCVA文字スコアについて盲検化され、以前の訪問からの患者の屈折データのみを知っていた。BCVAの審査官は、直接的な患者ケアを伴う他の作業を行うことは許可されていない。
・4メートルの低輝度最良矯正視力検査の開始距離でETDRS視力表で評価された低輝度BCVA。付録4に記載される最良矯正視力と同じ要件がある。しかしながら、低輝度最良矯正視力は、2.0ログユニットニュートラルデンシティフィルター(2.0 log-unit neutral density filter)(Kodak Wratten 2.0ニュートラルデンシティフィルター)をその眼の最良矯正にわたって置き、参加者に通常の輝度での早期治療糖尿病性網膜症研究視力表を読ませることによって測定される。
・両眼の治療前IOP(眼圧)測定(眼の拡張前に行う)。
・細隙灯検査(前部および硝子体細胞の等級付け尺度についてはCS,Kothari S,Anesi SD,et al.The Ocular and Uveitis Foundation preferred practice patterns of uveitis management.Surv Opthalmol 61(2016)1-17)を参照のこと。
・双眼倒像鏡高倍率眼底検査
・非盲検の治療投与者のみによる研究用眼での研究治療後から15分以内に、指数え検査、続いて手の動きおよび光知覚検査(必要な場合)を実施した。
・研究治療訪問時での、非盲検の役割に割り当てられた資格担当者による30(±15)分以内の研究用眼のみにおける治療後IOP測定。研究治療の30分(±15)後に安全上の懸念がない場合、患者は診療所を離れることが許可される。IOP値が治療投与者にとって懸念される場合、患者は診療所に留まり、治療投与者の臨床判断に従って管理される。有害事象は、必要に応じて有害事象症例報告電子書(eCRF)に記録される。
【0231】
患者に使用されるIOP測定の方法は、研究全体を通して一貫している必要がある。
【0232】
眼の画像化
中央読書センター(CRC)は、特定の研究用眼の画像化のための中央読書センターのマニュアルおよびトレーニング資料をサイトに提供する。任意の研究画像を取得する前に、サイトの担当者、試験画像、システム、およびソフトウェア(該当する場合)は、中央読書センターのマニュアルで指定されているように、読書センターによって認定および検証される。すべての眼の画像の結果は、訓練を受けたサイト担当者によって研究サイトで取得され、独立した分析および/または保管のために中央読書センターに転送される。
【0233】
ランダム化後、眼の画像がスケジュールされているときに、患者が研究訪問を逃した場合、またはスケジュールされた訪問時に画像が撮影されなかった場合(例えば、機器の故障により)、患者は、以下のスケジュールされた訪問時に画像を取得する必要がある。
【0234】
眼の画像には以下のものが含まれる:
・両眼のカラー眼底写真(CFP)。ステレオカラー眼底写真は、研究サイトにおいて訓練を受けた担当者によって両眼から取得する。眼底撮影は、活動スケジュールにおいて指定された間隔で行われる。
・蛍光眼底造影(両眼のFFA(検査試料を取得した後に行う)。蛍光眼底造影は、中央読書センターによって認定された訓練を受けた担当者によって、研究サイトにおいて、両眼で実行される。蛍光眼底造影図は、プロトコルにおいて指定された間隔で取得される。
・両眼のスペクトルドメイン光干渉断層撮影(SD OCT)または掃引光源OCT(SS-OCT)画像。
・合意されたOCT-A機能を備えたサイトでの両眼の任意選択による光OCT血管造影(OCT-A)。
・合意されたICGA機能を備えた選択されたサイトでの両眼の任意選択によるインドシアニングリーン血管造影(ICGA)(実験室試料が取得された後に行われる)。インドシアニングリーン血管造影(ICGA)は、指定された間隔で中央読書センターによって認定された訓練を受けた担当者によって両眼で行われる。
【0235】
結果
主要有効性分析には、ランダム化されたすべての患者が含まれ、患者はランダム化で割り当てられた治療に従ってグループ化された。
【0236】
主要有効性変数は、BCVAの変化である。主要有効性分析は、例えば、反復測定による混合モデル(MMRM)モデルを使用して行われる。
【0237】
最良矯正視力
記載のようにしてBCVAを測定する。主な有効性結果の測定値は、主要有効性エンドポイントを表す図に示されている。BCVAは、患者のベースラインから経時的に変化する。配列番号17、配列番号18、配列番号19、および配列番号20のアミノ酸配列を含む二重特異性抗VEGF/ANG2抗体RO6867461(ファリシマブ)(個別化された治療間隔を使用して、A群で記載されるように、6.0mgで硝子体内投与)が、例えば、上記の研究スキームに従ったB群(アフリベルセプト(Eylea(登録商標))Q8W投与)と比較される。
【0238】
中心サブフィールド厚(CST)ベースラインからの変化(研究用眼)
重要な副次的エンドポイントは、中心サブフィールド厚CSTのベースラインからの変化である。CST(および網膜の厚さ)は、光干渉断層撮影(OCT)により測定される。結果は図に示され、該図では、CSTの変化が、配列番号17、配列番号18、配列番号19、および配列番号20のアミノ酸配列を含む二重特異性抗VEGF/ANG2抗体RO6867461(ファリシマブ)(個別化された治療間隔を使用して、A群で記載されるように、6.0mgで硝子体内投与)について経時的に示され、例えば、上記の研究スキームに従ったB群(アフリベルセプト(Eylea(登録商標))Q8W投与)と比較されている。
【0239】
それに応じて、眼の評価のさらなる結果および画像化を表示することができる。
【0240】
実施例2:
個別化された治療間隔を使用した糖尿病性黄斑浮腫(DME)に罹患している患者の二重特異性抗VEGF/ANG2治療の有効性および持続期間
糖尿病性黄斑浮腫(DME)を有する患者における初期第II相の36週間の研究で、関与するすべての患者にわたって、より長い持続時間(可能性として再治療までのより長い時間)のいくつかの可能性が見られた。3つの研究群は以下のように治療した:A群:0.3mgのラニビズマブ硝子体内(IVT);B群:1.5mgのRO6867461(ファリシマブ)IVT;C群:6mgのRO6867461(ファリシマブ)IVT。
【0241】
RO6867461(ファリシマブ、VA2)の再治療までの潜在的なより長い時間に関する結果を
図6に示す。
図6は、以下の両方によって評価された疾患活動性に基づいて、投与が中止された後(20週間または6ヶ月の投与後=最後の硝子体内(IVT)投与後の時間)におけるDMEを有する患者での再治療までの時間を示している:BCVAが5文字以上減少およびCSTが50μm以上増加(=事象を有する患者)。二重特異性抗VEGF/ANG2抗体RO6867461(ファリシマブ)(6.0mgまたは1.5mgの用量で硝子体内投与)を、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))(0.3mgの用量で硝子体内投与)と比較した。
【0242】
DMEを有する患者におけるアフリベルセプト(Eylea(登録商標))単剤療法と比較した、8週ごと(Q8W)および個別化された治療間隔(PTI)レジメンで、患者に投与したときのRO6867461(ファリシマブ)の有効性、安全性、および薬物動態を評価するフォローアップ第III相研究を開始した。最良矯正視力(BCVA)(すなわち、ETDRS文字の数)のベースラインからの変化を測定することにより、視覚機能に対する影響を評価する。網膜の画像化(スペクトルドメイン光干渉断層撮影[SD-OCT]、カラー眼底写真[CFP]、蛍光眼底造影[FFA])、ならびにDMEおよびDRの両方の結果を評価するための他の画像診断法により、網膜の解剖学的構造に対する効果を評価する。さらに、安全性、患者が報告する結果(PRO)、およびRO6867461の薬物動態を評価する。
【0243】
この研究では、DMEを有する患者におけるアフリベルセプト(Eylea(登録商標))単剤療法と比較して、Q8WおよびPTIレジメンで投与した場合のRO6867461の有効性、安全性、および薬物動態を評価する。本研究の具体的な目的および対応エンドポイントを表3に概説する。
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0244】
DMEに罹患している患者(例えば、中心窩を含む(center-involving)糖尿病性黄斑浮腫(CI-DME))は、配列番号17、配列番号18、配列番号19、および配列番号20のアミノ酸配列を含むヒトVEGFおよびヒトANG2に結合する二重特異性抗体(この抗体VEGFang2-0016およびその産生はまた、参照により組み込まれるWO2014/009465に詳細に記載されている)で治療される。本明細書におけるこの二重特異性抗VEGF/ANG2抗体の呼称は、RO6867461もしくはRG7716もしくはVEGFang2-0016またはファリシマブである。治療における陽性対照薬として、例えば、アフリベルセプトを使用する。患者には、抗VEGF治療経験のない患者(抗VEGF治療、例えば、アフリベルセプトおよび/またはラニビズマブおよび/または他の抗VEGF治療により、以前に治療されていない)および以前に抗VEGF治療を受けた患者群が含まれる。6mg用量の硝子体内(IVT)投与のためのRO6867461(ファリシマブ)の無菌の無色から茶色がかった防腐剤を含まない溶液のバイアルを使用する。RO6867461(ファリシマブ)を約120mg/mlの濃度で投与する。
【0245】
約900人の患者が、研究の全登録期中、全体で約240の調査サイトで、3つの治療群のうちの1つに1:1:1の比率でランダム化される(
図2を参照)研究では、最後の治療が1日目の訪問(最初の研究治療)の少なくとも3ヶ月前であったという条件で、研究用眼において抗VEGF療法を経験していないDMEを有する患者、および以前に研究用眼において抗VEGF療法で治療されている患者をランダム化する。サイト調査員は網膜の専門家であろう。
【0246】
研究治療群は以下の通りである(
図2も参照のこと)。
【0247】
A群(Q8W投与):A群にランダム化された患者は、20週目までQ4Wでの6mgのIVT RO6867461(ファリシマブ)注入を受け、続いて96週目までQ8Wでの6mgのIVT RO6867461(ファリシマブ)注入を受け、続いて100週目に最終研究訪問が行われる。
【0248】
B群(個別化された治療間隔PTI):B群にランダム化された患者は、少なくとも12週目までQ4Wで6mgのIVT RO6867461(ファリシマブ)注入を受け、続いて96週目まで6mgのIVT RO6867461(ファリシマブ)注入のPTI投与(下記のPTI投与基準を参照)を受け、続いて100週目に最終研究訪問を受ける。
【0249】
C群(対照薬群)(Q8W投与):C群にランダム化された患者は、16週目までQ4Wに2mgのIVTアフリベルセプト注入を受け、続いて96週目までQ8Wに2mgのIVTアフリベルセプト注入を受け、続いて100週目に最終研究を受ける。
【0250】
3つの治療群すべての患者は、研究期間全体(100週間)にわたってQ4Wでスケジュールされた研究訪問を完了する。治療群間の盲検を維持するために、偽処置が、適用可能な訪問時に3つの治療群すべての患者に実施される(
図2-研究治療スキームを参照)。
【0251】
片方の眼のみを研究用眼として割り当てる。両方の眼が適格であるとみなされる場合、調査者が他方の眼が研究における治療により適切であるとみなさない限り、スクリーニングで評価されるより悪いBCVAを有する眼が、研究用眼として選択される。
【0252】
研究の盲検要件を満たすために、サイトごとに最低2人の調査者がいる。少なくとも1人の調査者が、各患者の治療割り当てに盲検化され、眼の評価を評価する評価医として指定される。少なくとも1人の他の調査員が非盲検化され、研究治療を行う(追加の盲検の詳細については項目4.2.2を参照のこと)。
【0253】
個別化された治療間隔(PTI)群の患者の治療スケジュール(B群)
この項目では、PTI群の投与間隔の決定を記載する。
【0254】
研究中薬物投与訪問は、患者がファリシマブ(RO6867461)を受けるように割り当てられたときの訪問である。
【0255】
研究薬投与間隔の決定
患者の12週目以降のCSTが予め定義された参照CST閾値(Spectralis SD-OCTの場合はCST<325μm、またはCirrus SD-OCTもしくはTopcon SD-OCTの場合はCST<315μm)に達するまで、PTI群(B群)にランダム化された患者は、Q4W投与間隔で、ファリシマブで治療される。
【0256】
参照CSTは、間隔決定のために研究中薬物投与訪問で使用される。
【0257】
患者の最初の参照CSTが確立された後、研究薬投与間隔は、4週間増加して初期Q8W投与間隔になる。この時点以降、研究薬投与間隔は、薬物投与訪問時に行われた評価に基づいて延長、短縮、または維持される。
【0258】
図3は、参照CSTおよび参照BCVAと比較したCSTおよびBCVAの相対的な変化に基づく間隔決定のアルゴリズムの概要を示している。
図3中、*および**は以下を意味する:
* 参照中心サブフィールド厚(CST):初期CST閾値基準が満たされたときのCST値。2回の連続した研究薬物投与の訪問についてCSTが以前の参照CSTから10%超減少し、得られた値が30μm以内である場合、参照CSTは調整される。後者の訪問で得られたCST値は、その訪問ですぐに開始される新しい参照CSTとして機能する。
** 参照最良矯正視力(BCVA):任意の以前の研究薬物投与訪問で得られた3つの最良BCVAスコアの平均。
【0259】
すべての比較は、参照CST*および参照BCVA**に対して行われる。薬物投与訪問から得られたCSTおよびBCVAデータに基づく、薬物投与間隔の決定。
【0260】
4週間の間隔の延長:
・CST値が10%以上増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合。
【0261】
間隔の維持:
・CSTが10%超減少した場合、または
・CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、または
・CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上のBCVAの減少を伴わない場合。
【0262】
4週間の間隔の短縮:
・CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上~10文字以下のBCVAの減少を伴う場合、または
・CST値が20%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合。
【0263】
8週間の間隔の短縮:
・CST値が10%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合
* 参照中心サブフィールド厚(CST):初期CST閾値基準が満たされたときのCST値。2回の連続した研究薬物投与の訪問についてCSTが以前の参照CSTから10%超減少し、得られた値が 30μm以内である場合、参照CSTは調整される。後の訪問で得られたCST値は、その訪問ですぐに開始される新しい参照CSTとして機能する。
** 参照最良矯正視力(BCVA):任意の以前の研究薬物投与訪問で得られた3つの最良BCVAスコアの平均。
【0264】
個別化された薬物投与間隔は、最大16週ごと(Q16W)までおよび最小Q4Wに、4週間の増分で調整され得る。個別化された薬物治療間隔の決定のアルゴリズムは、それぞれ参照CSTおよびBCVAと比較したCSTの相対的変化およびBCVAの絶対的変化に基づく。
【0265】
アルゴリズムは、コンピューティングシステムまたはデバイスによって実施され得る。そのようなコンピューティングシステムまたはデバイスは、ウェブインターフェース、モバイルアプリ、ソフトウェアプログラム、または任意の臨床決定支援ツールを含み得る。例えば、患者のCSTおよびBCVAスコアは、個別化された投与間隔ソフトウェアツールのWebインターフェースにアップロードし得る。アップロードされたCSTとBVCAを使用して、ツールは、以下の投与のタイミングを自動的に計算して出力し得る。ツールは、投与スケジュールまたは通知をさらに提供し、所与の患者の投与間隔変化の視覚化を監視および生成し、患者群の投与間隔変化の視覚化を生成し、受信したCSTおよびBCVAデータを集約して傾向を決定し、またはそれらの組み合わせを提供し得る。
【0266】
投与スケジュールまたは通知は、スケジュールされた投与訪問のカレンダー日付の表示、および近づいている投与訪問を臨床医または患者に通知するカレンダーアラートを含み得る。投与間隔の変化の視覚化には、例えば、
図3の概略図の表示が含まれ得る。ある場合では、患者の投与間隔調整が1つの色で示され、患者の直前の投与間隔調整が別の色で示され得る。説明のために、患者は最初に間隔を4週間延長し、次いで個別化された治療間隔を維持し得る。ツールは、
図3の回路図の「間隔が維持される」領域を緑色で表示し、「間隔が4週間延長される」ことを黄色で表示すことにより、患者の個別化された間隔の進行を視覚化し得る。緑は、患者の最新の間隔計算を反映し、黄色は、患者の直前の間隔計算の結果を示し得る。この視覚化により、ツールのユーザーは、患者の疾患の進行が改善しているが、治療間隔がさらに延長されるほど改善していないことを素早く確認し得る。
【0267】
ツールは、患者および投与スケジュールのデータをさらに集約し、集約されたデータの視覚化を生成し得る。このようなデータ分析には、前述の色分けの例と同様に、1人の患者の投与変更の視覚化が含まれ得る。あるいは、視覚化により、患者群にわたる投与調整が示され得る。例えば、ある視覚化では、どの患者が延長された間隔を有し、どの患者が短縮された間隔を有するかを示し得る。この視覚化は、患者の年齢、以前の治療、病状、投与された抗体、臨床研究群などの様々な特徴によって編成し得る。ツールはまた、患者のCSTおよびBCVAデータから視覚化を集約および作成し得る。視覚化により、データにおける傾向が示され、縦断的分析が容易化または生成され得る。これらの視覚化には、アラート、プロット、分析ワークフローインターフェース、または任意のグラフィカルインターフェースが含まれ得る。
【0268】
ツールは、眼の評価および画像に応答して、またはそれらと一緒に、投与スケジュールの出力または視覚化を生成し得る。一実施形態では、ツールは、患者のCSTまたはBVCAを直接計算し得る。CSTの場合、ツールは眼球画像を受信または直接キャプチャーする。ツールはさらに、画像セグメンテーション、画像認識、または機械学習技術を使用して、眼の画像からCSTを計算し得る。BCVAの場合、ツールは、眼の評価を仮想的に投与し、ユーザーインターフェースまたは視線追跡メカニズムにより患者のユーザー入力を促進および収集し得る。あるいは、ツールは、眼の評価データを受信、保存、および追跡し得る。このようにして、ツールは、各患者の疾患の進行を追跡し、それに応じて投与スケジュールを調整し得る。
【0269】
本実施形態は、DMEに罹患している患者の治療のための個別化された治療間隔(PTI)に従う個別化された投与スケジュールを提供する方法であって、コンピューティングシステムにおいて、患者のCSTおよび最良矯正視力(BCVA)を含む患者データを受信することと、コンピューティングシステムを使用して、それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較して、受信した患者データに基づいて投与間隔を延長、短縮、または維持することと、投与間隔からPTIを生じさせることと、を含む、方法を含み得る。CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、例示的な投与間隔は4週間延長される。CSTが10%超減少するか、CST値が10%以下増加もしくは減少し、10文字以上のBCVAの減少を伴うか、またはCST値が10%超~20%以下で増加し、関連する5文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、例示的な投与間隔は維持される。CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上~10文字未満のBCVAの減少を伴う場合、または、CST値が20%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、例示的な投与間隔は、4週間短縮される。CST値が10%超増加し、関連する10文字以上のBCVAが減少する場合、例示的な投与間隔は8週間短縮される。
【0270】
DMEに罹患している患者の治療のための個別化された治療間隔(PTI)に従う個別化された投与スケジュールを提供するそのような方法は、コンピューティングシステムにおいて、更新された患者データを受信することと、コンピューティングシステムを使用して、更新された患者データに基づいて投与間隔を継続的に更新または維持することと、更新または維持された投与間隔に基づいて、視覚化、ユーザーインターフェース、または通知を生成することと、をさらに含み得る。
【0271】
本実施形態はまた、(DMEの治療のための)個別化された治療間隔(PTI)に従う個別化された投与スケジュールの使用であって、コンピューティングシステムは、患者のCSTおよび最高矯正視力(BCVA)を含む患者データを受信することと、受信した患者データに基づいて、それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較して、投与間隔を延長、短縮、または維持することによってPTIを生じる。CST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、例示的な投与間隔は4週間延長される。CSTが10%超減少するか、またはCST値が10%以下増加もしくは減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、あるいは
【0272】
CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、例示的な投与間隔は維持される。
-CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上~10文字未満のBCVAの減少を伴う場合、またはCST値が20%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、例示的な投与間隔は4週間短縮される。CST値が10%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、例示的な投与間隔は、8週間短縮される。A群およびC群と同様に、PTI群(B群)にランダム化された患者は、該患者がファリシマブによる治療を受けていない場合、研究訪問時の偽処置を受ける。
【0273】
眼の評価
眼の評価は、以下が含み、活動のスケジュールに従って指定された時点で両眼に対して行われる:
・4メートルの開始距離でETDRS視力表で評価された屈折およびBCVA。BCVAは、3つのPrecision Vision(商標)またはLighthouse距離視力表(修正されたETDRS視力表1、2、およびR)のセットを使用して測定される。VAマニュアルを調査員に提供した。VA審査官およびVA審査室の認定は、VA審査を行う前に確保した。BCVA検査官は、眼および治療の割り当てを研究するために盲検化され、屈折およびBCVA評価のみを行う(例えば、視力仕様マニュアル)。BCVA検査官はまた、患者の以前の訪問のBCVA文字スコアについて盲検化され、以前の訪問からの患者の屈折データのみを知っていた。BCVAの審査官は、直接的な患者ケアを伴う他の作業を行うことは許可されていない。
・両眼の治療前IOP(眼圧)測定(眼の拡張前行う)。
・細隙灯検査(前部および硝子体細胞の等級付け尺度についてはCS,Kothari S,Anesi SD,et al.The Ocular and Uveitis Foundation preferred practice patterns of uveitis management.Surv Opthalmol 61(2016)1-17)を参照のこと)。
・双眼倒像鏡高倍率眼底検査
・非盲検の治療投与者のみによる研究用眼における研究治療後約15分以内に行われた指数え検査、続いて手の動きおよび光知覚検査(必要な場合)。
・研究治療の訪問時に、非盲検の役割に割り当てられた資格のある担当者による30(±15)分時での研究用眼における治療後IOP測定。研究治療の30(±15)分後に安全上の懸念がない場合、患者は診療所を離れることが許可される。IOP値が治療投与者にとって懸念される場合、患者は診療所に留まり、この医師の臨床判断に従って投与される。有害事象は、必要に応じて有害事象症例報告電子書(eCRF)に記録される。
【0274】
患者に使用されるIOP測定の方法は、研究全体を通して一貫している必要がある。
【0275】
眼の画像化
中央読書センター(CRC)は、特定の研究用眼の画像化のためのCRCマニュアルおよびトレーニング資料をサイトに提供する。任意の研究画像を取得する前に、サイトの担当者、試験画像、システム、およびソフトウェア(該当する場合)は、CRCのマニュアルで指定されているように、CRCによって認定および検証される。すべての眼の画像の結果は、訓練を受けたサイト担当者によって研究サイトで取得され、独立した分析および/または保管のためにCRCに転送される。
【0276】
ランダム化後、CFPおよびFFA画像がスケジュールされているときに、患者が研究訪問を逃した場合、または画像がスケジュールされた訪問時に撮影されなかった場合(例えば、機器の故障により)、患者は、以下のスケジュールされた訪問時に画像を取得する必要がある。
【0277】
眼の画像には以下のものが含まれる:
・両眼の必須のカラー眼底写真(CFP)(7または4広視野。試験参加全体を通して、一貫して患者に対してこれらの方法のうちの1つを行う)。ステレオカラー眼底写真は、研究サイトにおいて訓練を受けた担当者によって両眼から取得する。眼底撮影は、活動スケジュールにおいて指定された間隔で行われる。
・両眼の任意選択による超広視野(UWF;Optos(登録商標))CFP(UWF CFP機能を備え、必須のCFP画像に加えてこれらの画像を撮影することに同意したサイトにおける)
・両眼の蛍光眼底造影(FFA)(推奨される方法は、サイトが機能を有する場合はUWF(Optos)FFAである。試験参加全体を通じて一貫して同じ方法を使用して7または4広視野をキャプチャーするためのUWF(Optos)FFAを有していないサイト)(該当する場合は、血液試料を採取した後に行われる)は、訓練を受けた担当者によって研究サイトで両眼について行われる。UWF(Optos)は、蛍光眼底造影(FFA)キャプチャーに好ましい方法である。Optos機器および認証のない研究サイトは、7または4広視野FFAキャプチャーを使用する必要がある。
・両眼のスペクトルドメイン光干渉断層撮影(SD-OCT)または掃引光源OCT(SS-OCT)画像。
・OCT-A機能を備え、かつ、およびこれらの画像を撮影するためのサイトによる合意がある、サイトでの両眼の任意選択によるOCT血管造影(OCT-A)。
【0278】
結果
主要有効性分析には、ランダム化されたすべての患者が含まれ、該患者はランダム化で割り当てられた治療に従ってグループ化された。
【0279】
主要有効性変数は、本明細書に記載されるBCVAの変化である。主要有効性分析は、例えば、反復測定による混合モデル(MMRM)モデルを使用して行われる。
【0280】
最良矯正視力
記載のようにしてBCVAを測定する。主な有効性結果の測定値は、主要有効性エンドポイントを表す図に示されている。BCVAは、患者のベースラインから経時的に変化する。配列番号17、配列番号18、配列番号19、および配列番号20のアミノ酸配列を含む二重特異性抗VEGF/ANG2抗体RO6867461(ファリシマブ)(個別化された治療間隔を使用して、B群で記載されているように、6.0mgで硝子体内投与)が、例えば、上記の研究スキームに従ったA群(Q8W投与でのファリシマブ)および/またはC群(アフリベルセプト(Eylea(登録商標)Q8W投与)と比較される。
【0281】
中心サブフィールド厚(CST)ベースラインからの変化(研究用眼)
重要な副次的エンドポイントは、中心サブフィールド厚CSTのベースラインからの変化である。CST(および網膜の厚さ)は、光干渉断層撮影(OCT)により測定される。結果は図に示され、該図では、CSTの変化が、配列番号17、配列番号18、配列番号19、および配列番号20のアミノ酸配列を含む二重特異性抗VEGF/ANG2抗体RO6867461(ファリシマブ)(個別化され治療間隔を使用して、B群で記載されているように、6.0mgで硝子体内投与)について経時的に示されが、例えば、上記の研究スキームに従ったA群(ファリシマブのQ8W投与)および/またはC群(アフリベルセプト(Eylea(登録商標))のQ8W投与)と比較されている。
【0282】
眼の評価および画像のさらなる結果は、それに応じて示すことができる。
【0283】
実施例3:
個別化された治療間隔を使用した、網膜静脈閉塞症(RVO)に続発する黄斑浮腫(網膜中心静脈閉塞症(CRVO)に続発する、半側網膜静脈閉塞症(HRVO)に続発する、または分枝静脈閉塞症(BRVO)に続発する黄斑浮腫)の患者の二重特異性抗VEGF/ANG2治療の有効性および持続期間
非臨床研究は、Ang-2およびVEGFが協調して作用し、血管系を調節し、かつ、インビトロでの網膜内皮細胞の透過性を高めることが示している。二重特異性モノクローナル抗体ファリシマブによるAng-2およびVEGFの同時阻害は、モル当量の抗VEGF(ラニビズマブ)または抗Ang-2単独と比較して、非ヒト霊長類のレーザー誘発CNVモデルにおける脈絡膜血管新生(CNV)病変の漏出および重症度の大幅な低下をもたらした。自発性CNVのマウスモデルを使用した初期の実験では、血管増殖、漏出、浮腫、白血球浸潤、および光受容体喪失の減少に関して、Ang-2およびVEGFの二重阻害がいずれかの標的単独の単剤療法阻害よりも一貫して優れていることが示された(Regula JT,Lundh von Leithner P,Foxton R,et al.EMBO Mol Med 2016;8:1265-1288)。
【0284】
さらに、Ang-2およびVEGFの両方の房水および硝子体濃度は、新生血管加齢黄斑変性症(nAMD)、DR、およびRVOを有する患者でアップレギュレートされることが示された(Tong JP,Chan WM,Liu DT,et al.Am J Ophthalmol 2006;141:456-462;Penn JS,Madan A,Caldwell RB,et al.Prog Retin Eye Res 2008;27:331-371.;Kinnunen K,Puustjarvi T,Terasvirta M,et al.Br J Ophthalmol 2009;93:1109-1115;Tuuminen R,Loukovaara S.Eye(Lond)2014 ;28 :1095-1099;Regula JT,Lundh von Leithner P,Foxton R,et al.EMBO Mol Med 2016;8:1265-1288;Ng DS,Yip YW,Bakthavatsalam M,et al.Sci Rep 2017;7:45081)。したがって、Ang-2およびVEGFの両方の標的を同時に中和することにより、抗VEGF療法単独と比較して、病理学的眼血管系がさらに正常し得る。DMEおよびnAMDでの完了した第II相研究のデータ(以下を参照)は、Ang-2を標的化することは、網膜血管系に影響を与える疾患において、抗VEGF療法単独を上回る効果の持続性を拡張する可能性を有するという仮説も支持している。
【0285】
ファリシマブは、2つの第I相研究におけるnAMDおよびDMEの治療(nAMDにおけるBP28936、ならびにnAMDおよびDMEにおけるJP39844)および3つの第II相研究におけるnAMDおよびDMEの治療(nAMDに関するBP29647[AVENUE]およびCR39521[STAIRWAY])、ならびにDMEに関するBP30099[BOULEVARD])について研究されている。4つの広範な第III相研究:DMEにおけるGR40349(YOSEMITE)およびGR40398(RHINE)、ならびにnAMDにおけるGR40306(TENAYA)およびGR40844(LUCERNE)が進行中である。
【0286】
ファリシマブの作用機序、非臨床および臨床試験からのデータ、ならびにRVOに起因する黄斑浮腫の病態生理学に基づいて、ファリシマブは、抗VEGF単剤療法と比較して、病理学的眼血管系の安定化ならびにRVOの視覚的および解剖学的結果の改善をもたらし得ると仮定されている。
【0287】
RVOに続発する/起因する黄斑浮腫は、網膜血管疾患で最も高いものの1つである(Aiello LP,Avery RL,Arrigg PG,et al.N Engl J Med1994;331:1480-1487;Regula JT,Lundh von Leithner P,Foxton R,et al.EMBO Mol Med 2016;8:1265-1288)。血管新生および炎症の非臨床モデルにおけるAng-2およびVEGF阻害の効果(Regula JT,Lundh von Leithner P,Foxton R,et al.EMBO Mol Med 2016;8:1265-1288)、ならびnAMDおよびDMEを有する患者を対象とした第I相および第II相ファリシマブ研究のデータは、nAMD、DME/DR、およびRVOに起因する黄斑浮腫の3つすべての網膜血管疾患に共通する病理学的経路に対する有効性の証拠(第I相研究であるnAMDにおけるBP28936;第II相研究であるnAMDにおけるAVENUE、nAMDにおけるSTAIRWAY、およびDMEにおけるBOULEVARD)を提供する。
【0288】
DMEおよびRVOに起因する黄斑浮腫の間の病態生理学の類似性のため、第II相BOULEVARD研究のデータをここに報告する。糖尿病患者およびRVO患者における黄斑浮腫の誘発は異なるが、低酸素症によって引き起こされる黄斑浮腫の下流の病態およびその後の視力喪失は類似しており、同じ血管新生促進性、炎症誘発性、血管不安定化、ならびにAng-2、VEGF、およびインターロイキン-6(IL-6)を含む、血管透過性因子によって引き起こされる。RO6867461(ファリシマブ、VA2)の再治療までの潜在的なより長い時間に関する結果を
図6に示す。
図6は、以下の両方によって評価された疾患活動性に基づいて、投与が中止された後(20週間または6ヶ月の投与後=最後の硝子体内(IVT)投与後の時間)におけるDMEを有する患者での再治療までの時間を示している:BCVAが5文字以上減少およびCSTが50μm以上増加(=事象を有する患者)。二重特異性抗VEGF/ANG2抗体RO6867461(ファリシマブ)(6.0mgまたは1.5mgの用量で硝子体内投与)を、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))(0.3mgの用量で硝子体内投与)と比較した。
【0289】
BOULEVARD研究は、DMEを有する患者のためのファリシマブの6mg IVT注入の使用の肯定的な利益/リスクプロファイルの予備的な証拠を提供し、第III相DME研究におけるファリシマブのさらなる評価を支持した。研究は、主要有効性エンドポイントを満たし、0.3mgのラニビズマブと比較して6mgのファリシマブで治療された抗VEGF治療未経験の患者において、24週目においてBCVAのベースラインからの平均変化が統計的に有意に改善したことを実証した。
【0290】
治療なしの研究の観察期間の結果は、抗VEGF単剤療法と比較して、ファリシマブによる効果の持続期間の延長の証拠を提供した。
【0291】
最後の投与から最大16週間後までの疾患再活動までの時間の評価は、治療未経験の患者集団において、用量依存的に、DMEによる5つ以上の早期治療糖尿病性網膜症研究(ETDRS)の文字の喪失までの時間によって測定される、ラニビズマブを上回るファリシマブの効果の持続時間の改善、および中心サブフィールド厚(CST)の50μm以上の増加を示した。
【0292】
ラニビズマブを上回るファリシマブの効果の持続期間のこの改善は、以前に治療された群および全体的な患者群でも見られた。この非臨床的および臨床的証拠の全体に基づいて、ファリシマブによる治療は、RVOに起因する黄斑浮腫を有する患者において抗VEGF標準治療を上回る有効性の改善をもたらし得る。さらに、この研究は、より頻繁に投与される抗VEGF単剤療法(例えば、4~8週ごと)に匹敵するBCVAの結果を提供し得る、個々のニーズに合わせた頻度の低い(最大16週ごと)治療投与スケジュールを調べる。同時に、これらは、現在利用可能な治療法と比較して、重要かつ意味のある進歩を表すであろう。
【0293】
研究設計
CRVOまたはHRVOまたはBRVOに起因する黄斑浮腫を有する患者において、24週目まで、4週間間隔でIVT注入により投与されるファリシマブ(配列番号17、配列番号18、配列番号19、および配列番号20のアミノ酸配列を含むヒトVEGFおよびヒトANG2に結合する二重特異性抗体(VEGFang2-0016 WO2014/009465(参照により組み込まれる)。本明細書でのこの二重特異性抗VEGF/ANG2抗体の呼称は、RO6867461またはRG7716またはVEGFang2-0016、またはファリシマブである。)の有効性、安全性、および薬物動態を評価する、第III相、多施設共同、ランダム化、二重盲検、陽性対照薬制御、並行群間研究、
【0294】
続いて、PTI投与レジメンに従って投与されるファリシマブを評価するための陽性対照なしの二重盲検研究期間を開始した。
【0295】
研究設計の概要
この研究は、2つの部分で構成される。パート1(1日目~24週目)は、ファリシマブQ4Wとアフリベルセプト(陽性対照薬)Q4Wとを比較する;パート2(24~72週目)は、PTI投与基準に基づいて、Q4W~Q16Wの盲検治療間隔で投与されたファリシマブを評価する。
【0296】
パート1(Q4W投与)では、約680人の患者が、研究の全登録相中に、2つの治療群のうちの1つに1:1の比率でランダム化され、治療は以下のように定義される。
-A群(n=340)A群にランダムに割り当てられた患者は、1日目~20週目までファリシマブ6mgをIVT Q4Wで投与される(6回の注入)。
-B群(対照薬群、n=340):B群にランダムに割り当てられた患者は、1日目~20週目までアフリベルセプト2mgをIVT Q4Wで投与される(6回の注入)。
【0297】
パート2(PTIレジメン)では、A群およびB群の両方の患者が、24週目~68週目まで、PTI投与レジメンに従ってファリシマブ6mgをIVTで投与される。
【0298】
すべての患者は、研究期間全体(72週間)にわたってQ4Wのスケジュールされた研究訪問を完了する。24週目~68週目までのファリシマブ治療間隔の盲検を維持するために、研究訪問中に偽処置が実施され、該研究訪問時には(PTI投与レジメンに従って)ファリシマブ治療が行われない。
【0299】
【0300】
片方の眼のみを研究用眼として割り当てる。両方の眼が適格であるとみなされる場合、調査者が他方の眼が研究において治療により適切であると判断しない限り、スクリーニングで評価される、より悪いBCVAを有する眼が研究用眼として選択される。研究の盲検要件を満たすために、サイトごとに最低2人の調査者がいる。少なくとも1人の調査者が、各患者の治療割り当てに盲検化され、眼の評価を評価する評価医として指定される。少なくとも1人の他の調査員が盲検化を外され、研究治療を行う。
【0301】
研究は、28日まで(-28日~-1日)のスクリーニング期間および約68週間の治療期間で構成され、続いて72週目に最終研究訪問が行われる。
【0302】
目的およびエンドポイント
この研究では、24週目の主要エンドポイントまでのCRVOまたはHRVOまたはBRVOに続発する黄斑浮腫を有する患者における、アフリベルセプトと比較したファリシマブの有効性、安全性、および薬物動態を評価する。PTI投与レジメン(すなわち、Q4W~Q16W)に従って投与されたファリシマブの有効性、安全性、および薬物動態を24週~72週までの研究期間中に評価する。本研究の具体的な目的および対応エンドポイントを以下に概説する。このプロトコルでは、「研究薬」は、ファリシマブまたはアフリベルセプトを指し、「研究治療」は、ファリシマブ、アフリベルセプト、または偽処置を指す。
【0303】
有効性目的
有効性エンドポイントの評価のために、4メートルの開始試験距離でのETDRS視力表で、BCVAを評価する。
【0304】
主な有効性目的
この研究の主な有効性目的は、以下のエンドポイントに基づいて、アフリベルセプト2mg IVT Q4Wと比較したファリシマブ6mg IVT Q4Wの有効性を評価することである。
-24週目でのBCVAのベースラインからの変化
【0305】
副次的な有効性目的
この研究のパート1(24週目まで)の副次的な有効性目的は、以下のエンドポイントに基づいて、アフリベルセプトと比較したファリシマブの有効性を評価することである。
-24週目までの指定された時点でBCVAのベースラインからの変化
-24週目でベースラインから15文字以上のBCVAの増加があった患者の割合
-24週目までの指定された時点でベースラインから15文字以上、10文字以上、5文字以上、または0文字超のBCVAの増加があった患者の割合
-24週目までの指定された時点でベースラインから15文字以上、10文字以上、5文字以上、または0文字超のBCVAの喪失がなかった患者の割合
-24週目までの指定された時点で84文字以上のBCVA(20/20スネレン相当)を達成した患者の割合
-24週目までの指定された時点でBCVAスネレンが20/40以上である患者の割合
-指定された時点から24週目までで20/200以下のBCVAスネレン相当を有する患者の割合
-指定された時点から24週目までのCSTのベースラインからの変化
-指定された時点から24週目までの国立眼学研究所の25項目の視覚機能質問票(NEI VFQ-25)複合スコアのベースラインの変化
【0306】
この研究のパート2(すなわち、24週から72週)の副次的な有効性目的は、以下のエンドポイントに基づいて、PTI投与レジメンに従って投与されたファリシマブの有効性を評価することである。
-24週目~72週目までの指定された時点でのBCVAのベースラインからの変化
-24週目でベースラインから15文字以上のBCVAの増加があった患者の割合
-24週目~72週目までの特定の時点で、ベースラインから15文字以上、10文字以上、5文字以上、または0文字超のBCVAの増加があった患者の割合
-24週目~72週目までの指定された時点で、ベースラインから15文字以上、10文字以上、5文字以上、または0文字超のBCVAの喪失がなかった患者の割合
-24週目~72週目までの指定された時点で84文字以上のBCVA(20/20スネレン相当)を達成した患者の割合
-24週目~72週目までの特定の時点でのBCVAスネレンが20/40以上である患者の割合
-24週目~72週目までの特定の時点で20/200以下のBCVAスネレン相当を有する患者の割合
-24週目~72週目までの特定の時点でのBCVAの変化
-24週目~72週目までで15文字以上、10文字以上、5文字以上、または0文字超のBCVAの喪失がなかった患者の割合
-72週目でQ4W、8週ごと(Q8W)、12週ごと(Q12W)、またはQ16Wの治療間隔の患者の割合
-24週目~72週目までに受けた研究薬物注入の数
-24週目~72週目までの指定された時点でのCSTのベースラインからの変化
-24週目~72週目までの指定された時点でのNEI VFQ-25複合スコアのベースラインからの変化
【0307】
探索的な有効性目的
この研究の探索的な有効性目的は、以下のエンドポイントに基づいてファリシマブの有効性を評価することである。
-フルオレセイン眼底血管造影(FFA)および光干渉断層撮影血管造影(OCT-A)(任意選択による)での網膜虚血を有しない患者の経時的(指定された時点での)割合
-FFAおよびOCT-A(任意選択による)での網膜虚血領域のベースラインからの経時的な変化
-FFAおよびOCT-A(任意選択による)での血管漏出を有する患者の経時的な割合
-FFAおよびOCT-A(任意選択による)での血管漏出領域のベースラインからの経時的な変化
-OCT-A(任意選択による)での中心窩無血管域およびSAP(統計分析プラン)で定義される他の探索的出力のベースラインからの経時的な変化
-網膜血管新生を有しない患者の経時的な割合(調査者の評価に従う)
-硝子体、網膜前、または網膜下出血を有しない患者の経時的な割合(調査者の評価に従う)
-前眼部(虹彩および前房隅角)血管新生を有しない患者の経時的な割合
-研究中いつでも汎網膜光凝固を必要とする患者の割合
-Spectralis SD-OCTの場合はCST≦325μm、またはCirrus SD-OCTもしくはTopcon SD-OCTの場合はCST≦315μmとして定義される、黄斑浮腫を有しない患者の割合。
-網膜内液がない患者の経時的な割合
-網膜下液がない患者の経時的な割合
-網膜内液および網膜下液の両方がない患者の経時的な割合
-網膜内嚢胞がない患者の経時的な割合
-NEI VFQ-25近距離活動-サブスケールスコア、および遠距離活動-サブスケールスコアのベースラインからの経時的な変化
【0308】
パート1の治療スケジュール(Q4W投与)
研究のパート1では、患者は、以下のように治療を受ける。
-A群にランダムに割り当てられた患者は、1日目から20週目までファリシマブをQ4Wで受ける。
-B群にランダムに割り当てられた患者は、1日目から20週目までアフリベルセプトをQ4Wで受ける。
【0309】
パート2の治療スケジュール(個別化された治療間隔(PTI)レジメン)
研究のパート2では、すべての患者が24週目から68週目までQ4Wでクリニックを訪問し、PTI投与レジメンに応じて、偽治療またはファリシマブ6mg IVTのいずれかを受ける。
【0310】
ファリシマブPTIの決定は、この項目で説明されるPTI基準に基づいて自動的に計算される。
【0311】
PTI群における研究薬物投与間隔の決定は、この項目で説明されるアルゴリズムに基づく。ファリシマブ投与訪問は、患者がファリシマブ6mg IVTを受けたときの訪問として定義される。
【0312】
24週目に開始して、患者は、CSTがCRCによって決定される予め定義された参照CST閾値(Spectralis SD-OCTの場合は<325mm、またはCirrus SD-OCTおよびTopcon SD-OCTの場合は<315mm)を満たすまで、Q4Wの頻度でファリシマブを受ける。参照CST(
図8の説明および以下で定義される)は、ファリシマブ投与間隔を決定するために、ファリシマブ投与訪問時に使用される。患者の最初の参照CSTが確立された後、CST値が安定し(すなわち、10%超増加また減少していない)、参照BCVA(
図8の説明および以下で定義されている)に関して10文字以上の関連する視力喪失がない場合、患者は、ファリシマブ投与間隔を4週間の増分で増加させる資格がある。
【0313】
参照CSTおよび参照BCVA(
図8および図の説明では、文字
aおよび
bを参照のこと)は、以下を意味する。
a *参照中心サブフィールド厚(CST):初期CST閾値基準が満たされたときのCST値。2回の連続した研究薬物投与の訪問についてCSTが以前の参照CSTから10%超減少し、得られた値が 30μm以内である場合、参照CSTは調整される。後の訪問で得られたCST値は、その訪問ですぐに開始される新しい参照CSTとして機能する。
b **参照最良矯正視力(BCVA):任意の以前の研究薬物投与訪問で得られた3つの最良BCVAスコアの平均。
割り当てられ得る最大および最小の治療間隔は、それぞれQ16WおよびQ4Wである。投与間隔が以前に延長されていて、間隔短縮を引き起こす疾患の悪化を経験した患者は、投与間隔がQ4Wに短縮された患者を除き、間隔を再度延長することはできない。それらの間隔は再び延長され得るが、元の最大延長より4週間短い間隔に限られる。例えば、患者の間隔がQ12WからQ8Wに短縮された場合、この患者の間隔は、残りの治療期間中に、Q8Wを超えて延長されることはない。患者の間隔がQ16WからQ4Wに短縮された場合、この患者の間隔は、Q12Wまで延長することができるが、Q16Wに戻すことはできない。
【0314】
ファリシマブ(RO6867461/RG7716/VEGFang2-0016)間隔の決定
参照CSTおよび参照BCVAと比較したファリシマブ投与訪問時のCSTおよびBCVAの相対的変化に基づく、間隔決定に使用されるアルゴリズムの概要を以下および
図8に示す。ファリシマブの投与間隔は、以下のように延長、維持、または短縮される。
-CST値が10%以下増加または減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、投与間隔は、4週間延長される。
-以下の条件のうちのいずれかが満たされる場合:
CST値が10%超減少した場合、
CST値が10%以下減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、
CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、間隔は維持される。
-以下の基準のうちのいずれかが満たされる場合:
CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上~10文字未満のBCVAの減少を伴う場合
関連する10文字以上のBCVAの減少なしに、CST値が20%超増加した場合
CST値が10%以下増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、間隔は、4週間短縮される。
-CST値が10%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、間隔がQ4Wに短縮される。
【0315】
上記で概説したように、個別化された薬物治療間隔の決定のアルゴリズムは、それぞれ参照CSTおよびBCVAと比較したCSTの相対的変化およびBCVAの絶対的変化に基づく。
【0316】
アルゴリズムは、コンピューティングシステムまたはデバイスによって実施され得る。そのようなコンピューティングシステムまたはデバイスは、ウェブインターフェース、モバイルアプリ、ソフトウェアプログラム、または任意の臨床決定支援ツールを含み得る。例えば、患者のCSTおよびBCVAスコアは、個別化された投与間隔ソフトウェアツールのWebインターフェースにアップロードし得る。アップロードされたCSTとBVCAを使用して、ツールは、以下の投与のタイミングを自動的に計算して出力し得る。ツールは、投与スケジュールまたは通知をさらに提供し、所与の患者の投与間隔変化の視覚化を監視および生成し、患者群の投与間隔変化の視覚化を生成し、受信したCSTおよびBCVAデータを集約して傾向を決定し、またはそれらの組み合わせを提供し得る。
【0317】
投与スケジュールまたは通知は、スケジュールされた投与訪問のカレンダー日付の表示、および近づいている投与訪問を臨床医または患者に通知するカレンダーアラートを含み得る。投与間隔の変化の視覚化には、例えば、
図8の概略図の表示が含まれ得る。ある場合では、患者の投与間隔調整が1つの色で示され、患者の直前の投与間隔調整が別の色で示され得る。説明のために、患者は最初に間隔を4週間延長し、次いで個別化された治療間隔を維持し得る。ツールは、
図8の回路図の「間隔が維持される」領域を緑色で表示し、「間隔が4週間延長される」ことを黄色で表示すことにより、患者の個別化された間隔の進行を視覚化し得る。緑は、患者の最新の間隔計算を反映し、黄色は、患者の直前の間隔計算の結果を示し得る。この視覚化により、ツールのユーザーは、患者の疾患の進行が改善しているが、治療間隔がさらに延長されるほど改善していないことを素早く確認し得る。
【0318】
ツールは、患者および投与スケジュールのデータをさらに集約し、集約されたデータの視覚化を生成し得る。このようなデータ分析には、前述の色分けの例と同様に、1人の患者の投与変更の視覚化が含まれ得る。あるいは、視覚化により、患者群にわたる投与調整が示され得る。例えば、ある視覚化では、どの患者が延長された間隔を有し、どの患者が短縮された間隔を有するかを示し得る。この視覚化は、患者の年齢、以前の治療、病状、投与された抗体、臨床研究群などの様々な特徴によって編成し得る。ツールはまた、患者のCSTおよびBCVAデータから視覚化を集約および作成し得る。視覚化により、データにおける傾向が示され、縦断的分析が容易化または生成され得る。これらの視覚化には、アラート、プロット、分析ワークフローインターフェース、または任意のグラフィカルインターフェースが含まれ得る。
【0319】
ツールは、眼の評価および画像に応答して、またはそれらと一緒に、投与スケジュールの出力または視覚化を生成し得る。一実施形態では、ツールは、患者のCSTまたはBVCAを直接計算し得る。CSTの場合、ツールは眼球画像を受信または直接キャプチャーする。ツールはさらに、画像セグメンテーション、画像認識、または機械学習技術を使用して、眼の画像からCSTを計算し得る。BCVAの場合、ツールは、眼の評価を仮想的に投与し、ユーザーインターフェースまたは視線追跡メカニズムにより患者のユーザー入力を促進および収集し得る。あるいは、ツールは、眼の評価データを受信、保存、および追跡し得る。このようにして、ツールは、各患者の疾患の進行を追跡し、それに応じて投与スケジュールを調整し得る。
【0320】
本実施形態は、網膜中心静脈閉塞症に続発する、半側網膜静脈閉塞症に続発する、または分枝静脈閉塞症に続発する黄斑浮腫から選択される眼科の血管疾患に罹患している患者の治療のための個別化された治療間隔(PTI)に従う個別化された投与スケジュールを提供する方法であって、該方法は、コンピューティングシステムにおいて、患者のCSTおよび最良に矯正された視力(BCVA)を含む患者データを受信することと、コンピューティングシステムを使用して、それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較して、受信した患者データに基づいて投与間隔を延長、短縮、または維持することと、投与間隔からPTIを生成することと、を含む、方法を含み得る。
【0321】
CST値が10%以下増加または減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、例示的な投与間隔は、4週間延長される。以下の基準のうちのいずれかが満たされる場合:CST値が10%超減少した場合、またはCST値が10%以下減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、またはCST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、例示的な投与間隔は維持される。以下の基準のうちのいずれかが満たされる場合:CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上~10文字未満のBCVAの減少を伴う場合、またはCST値が20%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、またはCST値が10%以下増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、例示的な投与間隔は、4週間短縮される。CST値が10%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、例示的な投与間隔は、Q4Wに短縮される。
【0322】
網膜中心静脈閉塞症に続発する、半側網膜静脈閉塞症に続発する、または分枝静脈閉塞症に続発する黄斑浮腫から選択される眼科の血管疾患に罹患している患者の治療のための個別化された治療間隔(PTI)に従う個別化された投与スケジュールを提供するそのような方法は、コンピューティングシステムで、更新された患者データを受信することと、コンピューティングシステムを使用して、更新された患者データに基づいて投与間隔を継続的に更新または維持することと、更新または維持された投与間隔に基づいて、視覚化、ユーザーインターフェース、または通知を生成することと、をさらに含み得る。
【0323】
本実施形態はまた、(網膜中心静脈閉塞症に続発する、半側網膜静脈閉塞症に続発する、または分枝静脈閉塞症に続発する黄斑浮腫の治療のための)個別化された治療間隔(PTI)に従う個別化された投与スケジュールの使用を含み、コンピューティングシステムは、患者のCSTおよび最良矯正視力(BCVA)を含む患者データを受信することと、受信した患者データに基づいて、それぞれの参照CSTおよびBCVAと比較して投与間隔を延長、短縮、または維持することと、によってPTIを生じる。CST値が10%以下増加または減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、例示的な投与間隔は、4週間延長される。以下の基準のうちのいずれかが満たされる場合:CST値が10%超減少した場合、またはCST値が10%以下減少し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、またはCST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、例示的な投与間隔は維持される。以下の基準のうちのいずれかが満たされる場合:CST値が10%超~20%以下増加し、関連する5文字以上~10文字未満のBCVAの減少を伴う場合、またはCST値が20%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴わない場合、またはCST値が10%以下増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、例示的な投与間隔は、4週間短縮される。CST値が10%超増加し、関連する10文字以上のBCVAの減少を伴う場合、例示的な投与間隔は、Q4Wに短縮される。
【0324】
眼の評価
眼の評価は、特に明記されていない限り、活動性のスケジュールに従って指定された時点で両眼に対して行われる。評価には以下が含まれる:
-4メートルの開始試験距離でのETDRS視力表で評価される屈折およびBCVA(眼の拡張前に行う)
-両眼の投与前IOP測定(眼の拡張前行う)
-細隙灯検査(前部および硝子体細胞の等級付け尺度のため)
-双眼倒像鏡高倍率眼底検査
-指数え検査、続いて手の動きおよび光知覚検査(必要な場合)を、研究用眼のみにおいて研究治療の約15分以内に行った。
-研究治療投与の30(±15)分後に撮影された研究用眼のみにおける投与後IOP(眼圧)測定
【0325】
研究治療投与の30(±15)分後に安全上の懸念がない場合、患者は診療所を離れることが許可される。IOP値が治療投与者/非盲検調査者にとって懸念される場合、患者は診療所に留まり、治療投与者/非盲検調査者の臨床判断に従って投与される。有害事象は、必要に応じて有害事象症例報告電子書(eCRF)に記録される。
--患者に使用されるIOP測定の方法は、研究眼画像全体にわたって一貫している必要がある。
【0326】
ランダム化後、カラー眼底写真(CFP)または蛍光眼底造影(FFA)の眼画像がスケジュールされているときに患者が研究訪問を逃した場合、またはスケジュールされた訪問時に画像が撮影されなかった場合(例えば、機器が壊れたため)、患者が出席する以下のスケジュールされた訪問時に眼画像を得る必要がある。
【0327】
眼の画像には以下のものが含まれる。
-研究用眼のFFA
-研究用眼のCFP
--研究用眼のスペクトルドメイン光干渉断層撮影(SD-OCT)または掃引光源OCT(SS-OCT)画像
--OCT-A機能を備えたサイトでの研究用眼の任意選択によるOCT-A(ただし、サイトが、任意選択によるサンプリングを承認していること)
【0328】
スクリーニングで両側RVOを有すると診断された患者の場合、CFPおよびOCT画像がまた、僚目でキャプチャーされ、CRCに保存される。
【0329】
結果
主要有効性分析には、ランダム化されたすべての患者が含まれ、患者はランダム化で割り当てられた治療に従ってグループ化された。
【0330】
主要有効性変数は、BCVAの変化である。主要有効性分析は、例えば、反復測定による混合モデル(MMRM)モデルを使用して行われる。
【0331】
最良矯正視力
記載のようにしてBCVAを測定する。主な有効性結果の測定値は、主な有効性エンドポイントを表す図に示されている。BCVAは、患者のベースラインから経時的に変化する。配列番号17、配列番号18、配列番号19、および配列番号20のアミノ酸配列を含む二重特異性抗VEGF/ANG2抗体RO6867461(ファリシマブ)(個別化された治療間隔を使用して、A群で記載されているように、6.0mgで硝子体内投与)が、例えば、上記の研究スキームに従ったB群(研究のパート1におけるアフリベルセプト(Eylea(登録商標))と比較される。
【0332】
中心サブフィールド厚(CST)ベースラインからの変化(研究用眼)
重要な副次的エンドポイントは、中心サブフィールド厚CSTのベースラインからの変化である。CST(および網膜の厚さ)は、光干渉断層撮影(OCT)により測定される。結果は図に示され、該図では、CSTの変化が、配列番号17、配列番号18、配列番号19、および配列番号20のアミノ酸配列を含む二重特異性抗VEGF/ANG2抗体RO6867461(ファリシマブ)(個別化された治療間隔を使用して、A群に記載されているように、6.0mgで硝子体内投与)について経時的に示され、例えば、上記の研究スキームに従ったB群(研究のパート1におけるアフリベルセプト(Eylea(登録商標)))と比較されている。
【0333】
それに応じて、眼の評価のさらなる結果および画像化を表示することができる。
【0334】
実施例4
VEGF、Ang2、FcgammaR、およびFcRnへの抗VEGF/ANG2抗体の結合
種交差反応性の評価を含むVEGFアイソフォームの速度論的親和性
捕捉システムの約12000レゾナンスユニット(RU)(10μg/mlヤギ抗ヒトF(ab)’2;注文コード:28958325;GE Healthcare Bio-Sciences AB、スウェーデン)を、GE Healthcareによって供給されるアミンカップリングキットを使用して、pH5.0において、CM5チップ(GE Healthcare BR-1005-30)にカップリングさせた。試料およびシステムバッファーは、PBS-T(0.05%Tween(登録商標)20を含む10mMリン酸緩衝生理食塩水)pH7.4であった。フローセルを25℃に設定し、試料ブロックを12℃に設定し、ランニングバッファーで2回プライミングした。二重特異性抗体は、50nM溶液を5μl/分の流量で30秒間注入することにより捕捉された。溶液中の様々な濃度のヒトhVEGF121、マウスmVEGF120、またはラットrVEGF164を、1:3希釈中300nMから開始して、30μl/分の流量で、300秒間注入することによって、会合を測定した。解離段階は、最大1200秒間モニタリングされ、試料溶液からランニングバッファーに切り替えることで誘発された。グリシン pH2.1溶液で30μl/分の流速で60秒間洗浄することにより、表面を再生した。ヤギの抗ヒトF(ab’)2表面から得られた応答を差し引くことにより、バルク屈折率の差を補正した。ブランク注入も差し引いた(二重参照)。見かけのKDおよびその他の速度論的パラメータの計算には、Langmuir 1:1モデルを使用した。結果を表5に示す。
【0335】
種交差反応性の評価を含むAng2溶液の親和性
溶液親和性は、平衡混合物中の遊離相互作用パートナーの濃度を決定することにより、相互作用の親和性を測定する。溶液親和性アッセイは、一定濃度に保たれた<VEGF-ANG-2>二重特異性抗体を様々な濃度のリガンド(=Ang2)と混合することを含む。抗体の可能な最大共鳴単位(例えば、17000共鳴単位(RU))を、GE Healthcareによって供給されるアミンカップリングキットを使用して、pH5.0において、CM5チップ(GE Healthcare BR-1005-30)表面上に固定化した。試料およびシステムバッファーは、HBS-P pH7.4であった。フローセルを25℃に設定し、試料ブロックを12℃に設定し、ランニングバッファーで2回プライミングした。検量線を作成するために、増加させた濃度のAng2を、固定化されたVEGF-ANG-2>二重特異性抗体を含むBIAcore(商標)フローセルに注入した。結合したAng2の量を共鳴単位(RU)として決定し、濃度に対してプロットした。各リガンド(VEGF-ANG-2>二重特異性抗体の場合、0~200nMの11個の濃度)の溶液を10nM Ang2とともにインキュベートし、室温で平衡に到達させた。既知量のAng2を含む溶液の応答を測定する前および後に作成された検量線から、遊離Ang2濃度を決定した。遊離Ang2濃度をy軸として使用し、阻害用の抗体の濃度をx軸として使用して、モデル201を使用して、XLfit4(IDBSソフトウェア)で4パラメータフィッティングを設定した。この曲線の変曲点を決定することによって、親和性を計算した。0.85%H3PO4溶液で30μl/分の流速で30秒間1回洗浄することにより、表面を再生した。ブランクカップリング表面から得られた応答を差し引くことによって、バルク屈折率の差を補正した。結果を以下の表に示す。
【0336】
FcRn定常状態親和性
FcRn測定では、定常状態親和性を使用して、二重特異性抗体を互いに対して比較した。ヒトFcRnをカップリングバッファー(10μg/ml、酢酸ナトリウムpH5.0)に希釈し、200RUの最終応答に対するBIAcore(商標)ウィザードを使用して標的化固定化手順によってC1チップ(GE Healthcare BR-1005-35)に固定化した。フローセルを25℃に設定し、試料ブロックを12℃に設定し、ランニングバッファーで2回プライミングした。試料およびシステムバッファーは、PBS-T(0.05%Tween(登録商標)20を含む10mMリン酸緩衝生理食塩水)pH6.0であった。各抗体について異なるIgG濃度を評価するために、62.5nM、125nMおよび250nM、500nMの濃度を調製した。流速を30μl/分に設定し、180秒の会合時間を選択して、異なる試料をチップ表面に連続的に注入した。30μl/分の流速でPBS-T pH8を60秒間注入することにより、表面を再生した。ブランク表面から得られた応答を差し引くことにより、バルク屈折率の差異を補正した。バッファー注入も差し引いた(=二重参照)。定常状態親和性の計算には、Bia-Evaluationソフトウェアの方法を使用した。簡単に説明すると、RU値(RUmax)を分析した濃度に対してプロットし、用量反応曲線を作成した。2パラメトリックフィッティング(parametric fit)に基づいて、上漸近線を計算して、最大RU値の半分、したがって親和性を決定することができる。結果を下表に示す。同様に、サル、マウス、およびウサギのFcRnに対する親和性を決定することができる。
【0337】
FcgammaRIIIa測定
FcgammaRIIIa測定では、直接結合アッセイを使用した。捕捉システム(1μg/ml Penta-His;Qiagen)の約3000レゾナンスユニット(RU)を、GE Healthcareによって供給されるアミンカップリングキットを使用することにより、pH5.0において、CM5チップ(GE Healthcare BR-1005-30)に結合した。試料およびシステムバッファーは、HBS-P+pH7.4であった。フローセルを25℃に設定し、試料ブロックを12℃に設定し、ランニングバッファーで2回プライミングした。100nMの溶液を5μl/分の流量で60秒間注入することにより、FcgammaRIIIa-His受容体を捕捉した。100nMの二重特異性抗体または単一特異性対照抗体(IgG1サブクラスおよびIgG4サブクラス抗体に対する抗Dig)を30μl/の流量で180秒間注入することにより、結合を測定した。グリシンpH2.5溶液で30μl/分の流速で120秒間洗浄することにより、表面を再生した。FcgammaRIIIaの結合はLangmuir1:1モデルとは異なるため、このアッセイを用いて結合のみ/結合なしを決定した。同様の方法で、FcgammaRIaおよびFcgammaRIIaの結合を決定することができる。結果が以下の表に示され、該表では、変異P329G LALAを導入することにより、FcgammaRIIIaへの結合が検出できなかった。
【0338】
<VEGF-ANG-2>二重特異性抗体への独立したVEGFおよびAng2結合の評価
捕捉システム(10μg/mlヤギ抗ヒトIgG;GE Healthcare Bio-Sciences AB、スウェーデン)の約3500レゾナンスユニット(RU)を、GEヘルスケアが提供するアミンカップリングキットを使用することにより、pH5.0において、CM4チップ(GE Healthcare BR-1005-34)にカップリングさせた。試料およびシステムバッファーは、PBS-T(0.05%Tween(登録商標)20を含む10mMリン酸緩衝生理食塩水)pH7.4であった。フローセルの温度を25℃に設定し、試料ブロックの温度を12℃に設定した。捕捉前に、フローセルをランニングバッファーで2回プライミングした。
【0339】
10nM溶液を5μl/分の流量で60秒間注入することによって、二重特異性抗体を捕捉した。二重特異性抗体への各リガンドの独立した結合を、順次または同時に追加された(30μl/分の流量)各リガンドの活性結合能を決定することによって分析した。
1.200nMの濃度のヒトVEGFを180秒間注入する(抗原の単一結合を同定する)。
2.100nMの濃度のヒトAng2を180秒間注入する(抗原の単一結合を同定する)。
3.200nMの濃度のヒトVEGFを180秒間注入し、続いて100nMの濃度のヒトAng2を180秒間追加注入する(VEGFの存在下でのAng2の結合を同定する)。
4.100nMの濃度のヒトAng2を180秒間注入し、続いて200nMの濃度のヒトVEGFをさらに注入する(Ang2の存在下でのVEGFの結合を同定する)。
5.200nMの濃度のヒトVEGFおよび100nMの濃度のヒトAng2の180秒間の同時注入(VEGFとAng2の結合を同時に同定する)。
【0340】
30μl/分の流速で3mMのMgCl2溶液で60秒間洗浄することにより、表面を再生した。ヤギ抗ヒトIgG表面から得られた応答を差し引くことにより、バルク屈折率の差を補正した。
【0341】
手法3、4、および5の結果として得られる最終シグナルが、手法1および2の個々の最終シグナルの合計に等しいかまたは類似している場合、二重特異性抗体は、両方の抗原を互いに独立して結合することができる。結果を以下の表に示し、この表では、VEGFang2-0016(=RO6867461)が、VEGFおよびANG2に互いに独立して結合できることが示されている。
【0342】
<VEGF-ANG-2>二重特異性抗体へのVEGFおよびAng2の同時結合の評価
第1に、約1600のVEGF(20μg/ml)のレゾナンスユニット(RU)を、GE Healthcareによって供給されるアミンカップリングキットを使用することにより、pH5.0において、CM4チップ(GE Healthcare BR-1005-34)にカップリングさせた。試料およびシステムバッファーは、PBS-T(0.05%Tween(登録商標)20を含む10mMリン酸緩衝生理食塩水)pH7.4であった。フローセルを25℃に設定し、試料ブロックを12℃に設定し、ランニングバッファーで2回プライミングした。第2に、二重特異性抗体の50nM溶液を30μl/分の流量で180秒間注入した。第3に、hAng-2を30μl/分の流量で180秒間注入した。hAng-2の結合応答は、VEGFに結合した二重特異性抗体の量に依存し、同時結合を示す。0.85% H3PO4溶液で30μl/分の流速で60秒間洗浄することにより、表面を再生した。同時結合は、前のVEGF結合<VEGF-ANG-2>二重特異性抗体へのhAng2の追加の特異的結合シグナルによって示される。
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
糖尿病性黄斑浮腫(DME)を患っている患者の処置に使用するための、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)とヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)とに結合する二重特異的抗体を含む医薬組成物であって、
ここで、VEGFとANG-2とに結合する二重特異的抗体が、ファリシマブであり、前記二重特異的抗体が、前記患者に6mgの用量で硝子体内投与(IVT)され、及び
前記治療が、個別化された治療間隔(PTI)を含み、
ここで、
a)患者が、4週ごと(Q4W)の投与間隔で、前記二重特異性VEGF/ANG2抗体で最初に4回治療され、
b)20週目及び24週目に疾患活動性が評価され、疾患活動性は、以下の基準:
i)20週目の評価の場合は12週目および16週目であり、24週目の評価の場合は16週目および20週目である、前の2回のスケジュールされた訪問の平均中心サブフィールド厚(CST)値と比較して、CSTの50μmを超える増加、
ii)前の2回のスケジュールされた訪問のいずれかで記録された最低CST値と比較して、75μm以上のCSTの増加、
iii)nAMD疾患活動性に起因して、前の2回のスケジュールされた訪問での平均最良矯正視力(BCVA)値と比較して、5文字以上のBCVAの減少、
iv)nAMD疾患活動性に起因して、前の2回のスケジュールされた訪問のいずれかで記録された最高BCVA値と比較して、10文字以上のBCVAの減少、又は
v)nAMD活動性に起因する、新しい黄斑出血の存在、
のうちの1つが満たされた場合に決定され、
c)次いで、
i)20週目に疾患活動性基準を満たす患者は、20週目以降8週ごと(Q8W)の投与間隔で治療され(20週目に最初のQ8W投与)、
ii)24週目に疾患活動性基準を満たす患者は、24週目以降12週ごと(Q12W)の投与間隔で治療され(24週目に最初のQ12W投与)、
iii)20週目および24週目に疾患活動性基準を満たさない患者は、28週目以降16週間(Q16W)の投与間隔で治療される(28週目に最初のQ16Wの投与)、前記医薬組成物。