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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123742
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】保存製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/22 20060101AFI20230829BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20230829BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230829BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230829BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230829BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230829BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20230829BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230829BHJP
   A61K 38/47 20060101ALI20230829BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20230829BHJP
   A61K 38/38 20060101ALI20230829BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230829BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20230829BHJP
   C07K 14/605 20060101ALN20230829BHJP
【FI】
A61K38/22 ZNA
A61K38/02
A61K47/14
A61K47/10
A61K47/22
A61K47/18
A61K47/04
A61K47/12
A61K38/47
A61K38/17
A61K38/38
A61K9/08
A61P43/00 111
C07K14/605
【審査請求】有
【請求項の数】39
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023106969
(22)【出願日】2023-06-29
(62)【分割の表示】P 2021555499の分割
【原出願日】2020-03-11
(31)【優先権主張番号】62/819,096
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】ミシュラ,ディネシュ シャムデオ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,カン カンイー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】非経口投与に適した、タンパク質またはペプチドと界面活性剤を含有する医薬組成物を提供する。
【解決手段】a)タンパク質またはペプチドと、b)非イオン性界面活性剤と、c)フェノール防腐剤と、d)溶媒変性剤と、を含み、前記非イオン性界面活性剤および前記フェノール防腐剤が、溶媒変性剤の非存在下でそれらの濃度閾値を超える濃度で存在し、前記溶媒変性剤が、溶液が透明なままであることを保証するのに十分な濃度で存在する、水性組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性組成物であって、
a)タンパク質またはペプチドと、
b)非イオン性界面活性剤と、
c)フェノール防腐剤と、
d)溶媒変性剤と、を含み、
前記非イオン性界面活性剤および前記フェノール防腐剤が、溶媒変性剤の非存在下でそれらの濃度閾値を超える濃度で存在し、
前記溶媒変性剤が、溶液が透明なままであることを保証するのに十分な濃度で存在する、水性組成物。
【請求項2】
前記タンパク質またはペプチドが、約0.1~約100mg/mLの範囲の濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記タンパク質またはペプチドが、約0.5~約50mg/mLの範囲の濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記タンパク質またはペプチドが、約1~約10mg/mLの範囲の濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記タンパク質またはペプチドがデュラグルチドである、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
デュラグルチドの濃度が約1.5~約9mg/mLである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記デュラグルチドの濃度が、約1.5、約3.0、約6.0および約9.0mg/mLからなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記非イオン性界面活性剤が、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポロキサマー188、ポロキサマー407およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記非イオン性界面活性剤が、約0.1mg/mL~約0.4mg/mLの濃度のポリソルベート80である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
ポリソルベート80の濃度が、約0.2mg/mLおよび約0.25mg/mLからなる群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記フェノール防腐剤が、フェノール、m-クレゾール、ベンジルアルコールおよびフェノキシエタノールからなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記フェノール防腐剤がフェノールである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
フェノール濃度が約4mg/mLである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記フェノール防腐剤がフェノールとm-クレゾールの混合物である、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記フェノール濃度が約3.5mg/mLであり、前記m-クレゾール濃度が約0.32mg/mLである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記溶媒変性剤が、PPG、グリセロール、PEG400およびNMPからなる群から選択される、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記溶媒変性剤がPPGである、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
PPG濃度が約15mg/mLである、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記溶媒変性剤がグリセロールである、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記グリセロール濃度が約20mg/mLである、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物が緩衝液をさらに含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記緩衝液が、TRIS、リン酸塩およびクエン酸塩からなる群から選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
緩衝液がクエン酸塩である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
クエン酸塩濃度が10mMである、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物のpHが約6~8である、請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物のpHが約6.5である、請求項1~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
a)デュラグルチドと、
b)PS80と、
c)フェノール、m-クレゾールおよびそれらの混合物からなる群から選択されるフェノール防腐剤と、
d)NMP、PEG400、PPGおよびグリセロールからなる群から選択される溶媒変性剤と、を含む、組成物。
【請求項28】
PS80の濃度が約0.2mg/mLである、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
デュラグルチド濃度が、約1.5mg/mL、約3mg/mL、約6mg/mLおよび約9mg/mLからなる群から選択される、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記フェノール防腐剤が約4mg/mLのフェノールである、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記フェノール防腐剤が、約3.5mg/mLのフェノールと約0.32mg/mLのm-クレゾールの組み合わせである、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記溶媒変性剤がPPGである、請求項28~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
PPGの濃度が約15mg/mLである、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記溶媒変性剤がグリセロールである、請求項28~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
グリセロールの濃度が約20mg/mLである、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
10mMクエン酸緩衝液をさらに含み、前記組成物のpHが6.5である、請求項28~35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
請求項1~36のいずれか一項に記載の組成物を調製するための方法であって、
a)緩衝液を調製することまたは得ることと、
b)前記溶媒変性剤を添加することと、
c)前記フェノール防腐剤を添加することと、
d)前記タンパク質またはペプチドを添加することと、
e)前記非イオン性界面活性剤を添加することと、を含む、方法。
【請求項38】
非イオン性界面活性剤およびフェノール防腐剤をそれらの濃度閾値を超えて含む水性組成物を調製する方法であって、前記組成物が透明なままであることを保証するのに十分な濃度の溶媒変性剤を前記組成物中に含むことを含む、方法。
【請求項39】
前記組成物が、請求項1~35に記載の組成物のいずれかを含む、請求項38に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、非経口投与に適した、保存された界面活性剤含有医薬組成物に関する。組成物は、メタクレゾールまたはフェノール等の1つまたは複数の保存剤、ポリソルベート80(PS80)等の1つまたは複数の界面活性剤、デュラグルチド等の1つまたは複数の医薬品有効成分(API)、およびプロピレングリコール(PPG)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ポリエチレングリコール(PEG)400またはグリセロール等の1つまたは複数の溶媒変性剤を含む。
【0002】
タンパク質およびペプチドベースの医薬品は、典型的には、経口投与した場合のタンパク質およびペプチドの消化管でのタンパク質分解に対する感受性のために非経口的に投与されなければならず、場合によっては、保存中および使用中の条件全体を通してタンパク質の安定性を確保するために、非イオン性界面活性剤を用いて製剤化する必要がある。しかしながら、特定のレベルを超える界面活性剤濃度を必要とするそのような界面活性剤含有製剤の限界は、界面活性剤と防腐剤との相互作用が許容できない目に見える沈殿物の形成をもたらすため、それらを複数回使用する形態として十分に保存することができないことである。界面活性剤と防腐剤とのこの非相溶性は以前に認識されている。例えば、S.Kazmi and A.Mitchell,Interaction of Preservatives with Cetomacrogol,23J.PHARM.PHARMAC.482-489(1970);J.Blanchard,Effect of Sorbitol on Interaction of Phenolic Preservatives with Polysorbate 80,66J.PHARM.SCI.10,1471-1472(1977);J.Blanchard,Effect of Polyols on Interaction of Paraben Preservatives with Polysorbate 80,69J.PHARM.SCI.2,169-173(1980);R.Torosantucci,Protein-Excipient Interactions Evaluated via Nuclear Magnetic Resonance Studies in Polysorbate-Based Multidose Protein Formulations:Influence on Antimicrobial Efficacy and Potential Study Approach,107J.PHARM.SCI.10,2531-2537(2018).を参照されたい。しかしながら、その非相溶性に対する解決策は記載されていない。
【0003】
したがって、安定剤として特定の濃度の界面活性剤を必要とする現在入手可能なタンパク質およびペプチドベースの医薬品は、保存されていない単回使用製剤として販売されている。例えば、デュラグルチドは、TRULICITY(商標)の商品名で販売されているグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)受容体アゴニスト融合タンパク質であり、安定化の目的で0.20mg/mLのポリソルベート80を必要とするが、規制要件を満たすのに十分な濃度でフェノール防腐剤を添加した場合に起こる相分離のためにフェノール防腐剤を含まない。皮下使用については、TRULICITY(デュラグルチド)注射、処方情報のハイライトを参照されたい(2014年に最初に米国FDAが承認)。したがって、デュラグルチドは現在、1回使用した後に廃棄しなければならないデバイスで販売されており、保存された複数回使用製品と比較して、売却原価(COPS)の増加および物理的廃棄物の増加等の欠点と関連している。
【0004】
デュラグルチドの現在の市販製剤に使用されているものと同様の濃度の界面活性剤、または無菌性の規制要件を満たすのに十分な濃度の防腐剤を含むタンパク質またはペプチドベースの医薬品の製剤は、両方ではないが、以前に記載されている。例えば、米国特許出願第2009/0232807号は、GLP-1-Fc融合タンパク質の製剤について記載しており、該出願がTween80(登録商標)(ポリソルベート80としても知られる)等の「可溶化剤」およびm-クレゾール等の防腐剤として記載するものを含む様々な賦形剤のカテゴリおよび例を列挙している。しかしながら、該出願は、記載される「可溶化剤」および記載される防腐剤の両方を含む製剤のいずれの例または実施形態も提供していない。米国特許出願第20100196405は、約0.2%(w/v)の濃度でポリソルベート80を含む製剤等のデュラグルチドの製剤について記載している。しかしながら、該出願は、防腐剤を含む製剤については記載していない。
【0005】
タンパク質またはペプチドを安定化するのに十分な濃度の界面活性剤と、複数回使用する注射用製品の抗菌要件を満たすのに十分な濃度の防腐剤を含む製剤の必要性が残っている。
【0006】
一態様では、本発明は、
a)タンパク質またはペプチドと、
b)非イオン性界面活性剤と、
c)フェノール防腐剤と、
d)溶媒変性剤と、を含み、
非イオン性界面活性剤およびフェノール防腐剤が、溶媒変性剤の非存在下でそれらの濃度閾値を超える濃度で存在し、溶媒変性剤が、溶液が透明なままであることを保証するのに十分な濃度で存在する、組成物を提供する。
【0007】
別の態様では、本発明は、溶媒変性剤を組成物中に含むことを含む、溶媒変性剤の非存在下で、非イオン性界面活性剤およびフェノール防腐剤をそれらの濃度閾値を超える濃度で含む透明な製剤を調製する方法を提供する。
【0008】
別の態様では、本発明は、
a)タンパク質またはペプチドと、
b)非イオン性界面活性剤と、
c)フェノール防腐剤と、
d)溶媒変性剤と、を含み、
非イオン性界面活性剤およびフェノール防腐剤が、溶媒変性剤の非存在下でそれらの濃度閾値を超える濃度で存在し、溶媒変性剤が、溶液が透明なままであることを保証するのに十分な濃度で存在する水性組成物を含む、製造物品を提供する。
【0009】
別の態様では、本発明は、非イオン性界面活性剤およびフェノール防腐剤をそれらの濃度閾値を超えて含む組成物を調製する方法であって、組成物が透明なままであることを保証するのに十分な濃度の溶媒変性剤を組成物中に含むことを含む、方法を提供する。
【0010】
上記のように、界面活性剤は、タンパク質またはペプチドのAPIを安定させるために、多くのタンパク質またはペプチドベースの医薬品の製剤に含まれる。本明細書で使用される場合、「タンパク質またはペプチドベースの医薬品」という用語は、対象の疾患または状態を治療または予防する際に使用するための薬学的に許容される組成物を指し、該組成物は、ペプチドまたはタンパク質である少なくとも1つのAPIを含む。ペプチドおよびタンパク質は時々サイズによって区別され、ペプチドが2~50アミノ酸を有し、タンパク質が50アミノ酸超を有するが、本明細書に記載の製剤は、ペプチドまたはタンパク質である1つまたは複数のAPIを含む医薬品に等しく適用できるため、その2つの違いは本発明の目的には関係ない。本発明の製剤は、安定性の目的で非イオン性界面活性剤を必要とする多種多様なタンパク質またはペプチドベースの薬物に適用可能であり得る。
【0011】
本発明の製剤に使用するのに好ましい薬物はデュラグルチドであり、これは、免疫グロブリンのFc部分のアナログのN末端にペプチドリンカーを介してそのC末端で融合しているGLP-1アナログの二量体を含むヒトGLP-1Rアゴニストであり、CAS登録番号923950-08-7で識別され、以下の化学名を提供する:免疫グロブリンG4(合成ヒトFc断片)、二量体を含む、ペプチド(合成16-アミノ酸リンカー)融合タンパク質を含む、7-37-グルカゴン様ペプチドI[8-グリシン、22-グルタミン酸、36-グリシン](合成ヒト)融合タンパク質。デュラグルチドの各単量体は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する:
【化1】
【0012】
2つの単量体は55位と58位のシステイン残基間のジスルフィド結合によって結合して二量体を形成する。デュラグルチドの構造、機能、生成、およびT2DMの治療における使用は、US7,452,966および米国特許出願第US20100196405号により詳細に記載されている。本明細書で使用される場合、用語「デュラグルチド」は、配列番号1のアミノ酸配列を有する2つの単量体の任意のGLP-1Rアゴニストタンパク質二量体を指し、当該タンパク質の承認を求める当事者が実際にそのタンパク質をデュラグルチドとして特定するか、またはいくつかの他の用語を使用するかどうかにかかわらず、Eli Lilly and Companyによって規制当局に提出されたデュラグルチドに関係するデータに全体的または部分的に依存する、GLP-1Rアゴニスト生成物の承認を求める規制提出書類の対象である任意のタンパク質を含む。
【0013】
本発明の形成に使用され得るタンパク質またはペプチドの他の例として、以下の実施例に記載されるもの、ならびに他のFc融合タンパク質、他のGLP-1アゴニスト、胃抑制ペプチド(GIP)受容体アゴニスト、グルカゴン受容体アゴニスト、ペプチドYY(PYY)およびそれらの変異体、GDF15およびその変異体等の成長分化(GDF)因子、アミリン受容体アゴニスト、カルシトニン受容体アゴニストならびにインターロイキンおよびそれらの変異体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
多くのタンパク質およびペプチドは、水溶液中で製剤化されると変性および/または凝集しやすく、そのような問題を軽減するために、そのようなタンパク質およびペプチドの製剤には界面活性剤が添加されることが多い。界面活性剤は、親水性部分と疎水性部分を有し、かつ、水溶液中で凝集してミセルとして知られる凝集体を形成する傾向がある分子で構成されているペプチドベースまたはタンパク質ベースの医薬品の水溶液に界面活性剤を含めると、溶液の表面張力が低下し、ペプチドまたはタンパク質が容器内のいずれかの酸素と接触するのを防ぐのに役立つ。非経口医薬組成物に使用するために開示された界面活性剤の例として、ポリソルベート20(TWEEN(登録商標)20)およびポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)等のポリソルベート、ならびにポロキサマー188(CAS番号9003-11-6、商品名PLURONIC(登録商標)F-68で販売)およびポロキサマー407(PLURONIC(登録商標)F127)等のブロック共重合体が挙げられる。
【0015】
本発明の製剤は、1つまたは複数の非イオン性界面活性剤を含む。特定の実施形態において、非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート型の界面活性剤である。ポリソルベートは、脂肪酸エステル化されたエトキシ化ソルビタンであり、特定のポリソルベートは、ポリオキシエチレンソルビタンに関連する脂肪酸エステルの種類によって識別される。例えば、ポリソルベート20はモノラウレートを含み、ポリソルベート40はモノパルミテートを含み、ポリソルベート60はモノステアレートを含み、ポリソルベート80はモノオレエートを含む。ポリソルベート20およびポリソルベート80は、非経口投与用の医薬製品において一般的に使用される界面活性剤であり、本発明の特定の好ましい実施形態において界面活性剤(複数可)として含まれる。他の実施形態において、非イオン性界面活性剤はポロキサマーである。ポロキサマーは、ポリオキソプロピレン鎖と2つのポリオキシエチレン鎖で構成されるブロック共重合体であり、一般に、ポリオキシプロピレンコアの質量およびポリオキシエチレンの割合を示す数によって分類される。例として、ポロキサマー188およびポロキサマー407が挙げられる。特に、ポロキサマー188は、非経口投与用の医薬製品において一般的に使用される界面活性剤であり、本発明の特定の好ましい実施形態において界面活性剤(複数可)として含まれる。
【0016】
特定の好ましい実施形態において、非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート80、ポリソルベート20およびポロキサマー188からなる群から選択される。特定の実施形態において、非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート80である。特定の実施形態において、ポリソルベート80の濃度は、約0.01mg/mL~約1mg/mLである。特定の実施形態において、ポリソルベート80の濃度は、約0.05mg/mL~約0.5mg/mLである。特定の実施形態において、ポリソルベート80の濃度は、約0.1mg/mL~約0.4mg/mLである。特定の好ましい実施形態において、ポリソルベート80の濃度は、約0.2mg/mL~約3mg/mLである。特定の実施形態において、ポリソルベート80の濃度は、約0.2mg/mLおよび約0.25mg/mLからなる群から選択される。特定の実施形態において、ポリソルベート80の濃度は、約0.2mg/mLである。特定の実施形態において、ポリソルベート80の濃度は、約0.25mg/mLである。特定の実施形態において、非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート20である。特定の実施形態において、ポリソルベート20の濃度は、約0.01mg/mL~約1mg/mLである。特定の実施形態において、ポリソルベート20の濃度は、約0.05mg/mL~約0.5mg/mLである。特定の実施形態において、ポリソルベート20の濃度は、約0.1mg/mL~約0.4mg/mLである。特定の実施形態において、非イオン性界面活性剤は、ポロキサマー188である。特定の実施形態において、ポロキサマー188の濃度は、約0.01~約2mg/mLの範囲である。特定の実施形態において、ポロキサマー188の濃度は、約0.01~約2mg/mLの範囲である。特定の実施形態において、ポロキサマー188の濃度は、約0.5~約1.5mg/mLの範囲である。しかしながら、当業者は、所与の組成物において十分な安定化効果を提供するために必要な界面活性剤の同一性および濃度を特定することができるため、これらの実施形態は限定的であると解釈されるべきではない。
【0017】
本発明の製剤はまた、抗菌特性を提供するために添加される1つまたは複数の防腐剤を含む。しかしながら、組成物は、最初に生成されたときは無菌であり、組成物が複数回使用するバイアルまたはカートリッジで提供される場合、製剤の他の成分と相溶性のある抗菌性防腐剤化合物または化合物の混合物が、典型的には、規制要件ならびに欧州薬局方(EP)および米国薬局方(USP)によって公開されるもの等の薬局方の抗菌性防腐剤要件を満たすのに十分な強さで添加される。欧州薬局方、第9版、セクション5.1.3、抗菌性防腐剤の有効性、米国薬局方USP<51>、抗菌効果試験(Rockville,MD)を参照されたい。
【0018】
複数回使用の非経口投与に適した医薬製品に一般的に使用される防腐剤は、フェノール化合物、またはそのような化合物の混合物を含む。具体例として、フェノール(CAS番号108-95-2、分子式COH、分子量94.11)、m-クレゾール(CAS番号108-39-4、分子式CO、分子式量108.14)、ベンジルアルコール(CAS番号:100-51-6、分子式CO、分子量108.14g/mol)およびフェノキシエタノール(CAS番号:122-99-6、分子式C10、分子量138.17g/mol)が挙げられる。本発明の特定の実施形態において、フェノール防腐剤は、フェノールおよびm-クレゾールならびにそれらの混合物からなる群から選択される。複数回使用製品の規制要件を満たすのに必要な防腐剤の濃度は、限定されないが、使用するフェノール防腐剤の同一性および溶液のpHを含む複数の要因に依存する。特定の実施形態において、フェノール防腐剤は、約10~約15mg/mLの濃度で存在するフェノキシエタノールである。特定の実施形態において、フェノール防腐剤は、ベンジルアルコールである。特定の実施形態において、フェノール防腐剤は、約10mg/mLの濃度で存在するベンジルアルコールである。特定の実施形態において、フェノール防腐剤はフェノールである。特定の実施形態において、フェノール防腐剤は、約1~約10mg/mLの濃度で存在するフェノールである。特定の実施形態において、フェノール防腐剤は、約3~約6mg/mLの濃度で存在するフェノールである。特定の実施形態において、フェノール防腐剤は、少なくとも約3mg/mLの濃度のフェノールである。特定の実施形態において、フェノール防腐剤は、3、3.5、4、4.5または5mg/mLからなる群から選択される濃度のフェノールである。¥[delete]好ましい実施形態において、フェノール防腐剤は、約4mg/mLの濃度のフェノールである。特定の実施形態において、フェノール防腐剤は、m-クレゾールである。特定の実施形態において、フェノール防腐剤は、約0.1~約10mg/mLの濃度で存在するm-クレゾールである。特定の実施形態において、フェノール防腐剤は、約2~約6mg/mLの濃度で存在するm-クレゾールである。特定の実施形態において、フェノール防腐剤は、約3.5~約5.5mg/mLの濃度で存在するm-クレゾールである。特定の実施形態において、フェノール防腐剤は、約3.15mg/mLの濃度で存在するm-クレゾールである。他の実施形態において、フェノール防腐剤は、フェノールとm-クレゾールの混合物である。特定の実施形態において、フェノール防腐剤は、フェノールとm-クレゾールの混合物であり、フェノールは、約1~約5mg/mLの濃度で存在し、m-クレゾールは、約0.1~約3.5mg/mLの濃度で存在する。特定の実施形態において、フェノール防腐剤は、フェノールとm-クレゾールの混合物であり、フェノールは約1.5mg/mLの濃度で存在し、m-クレゾールは1.58mg/mLの濃度で存在する。特定の実施形態において、フェノール防腐剤は、フェノールとm-クレゾールの混合物であり、フェノールは約2mg/mLの濃度で存在し、m-クレゾールは約1.58mg/mLの濃度で存在する。特定の実施形態において、フェノール防腐剤は、フェノールとm-クレゾールの混合物であり、フェノールは約3.5mg/mLの濃度で存在し、m-クレゾールは約0.32mg/mLの濃度で存在する。特定の実施形態において、フェノール防腐剤は、フェノールとm-クレゾールの混合物であり、フェノールは約3.5mg/mLの濃度で存在し、m-クレゾールは約0.63mg/mLの濃度で存在する。しかしながら、当業者は、既知の技術を使用して規制要件を満たすのに必要なフェノール防腐剤およびその濃度を選択することができるため、これらの実施形態は限定的であると解釈されるべきではない。例えば、欧州薬局方、第9版、セクション5.01.03「抗菌性防腐剤の有効性」、米国薬局方USP40-NF35、第<51>章「抗菌効果試験」を参照されたい。例えば、Meyer,B.K.,et al.,Antimicrobial Preservative use in Parenteral Products:Past and Present,J.PHARM.SCI.,Vol.96,No.12(2007)を参照されたい。
【0019】
しかしながら、界面活性剤および防腐剤の両方が特定の濃度で組成物に含まれる場合、それらは相分離をもたらすように相互作用し、許容できない目に見える混濁または濁りの形成をもたらす。理論に束縛されることを望まないが、この現象は、フェノール防腐剤の分子が架橋引力を介して非イオン性界面活性剤のミセルと結合するときに起こると考えられる。例えば、Chen,J.,et al.,From the depletion attraction to the bridging attraction:The effect of solvent molecules on the effective colloidal interactions,THE JOURNAL OF CHEMICAL PHYSICS 2015,142,084904;Jie,C.,et al.,Size effects of solvent molecules on the phase behavior and effective interaction of colloidal systems with the bridging attraction.JOURNAL OF PHYSICS:CONDENSED MATTER 2016,28,(45),455102;Yuan,G.;Luo,J.;Han,C.C.;Liu,Y.Gelation transitions of colloidal systems with bridging attractions.PHYSICAL REVIEW E 2016,94,(4),040601を参照されたい。これにより、複数の界面活性剤ミセルが結合し、その結果、溶液から沈殿する。当業者は、ミセルが界面活性剤分子の集合体であり、非イオン性界面活性剤分子の親水性部分が疎水性部分を取り囲む外表面またはシェルを形成し、親水性部分によって形成される外表面またはシェルによって疎水性部分が水性溶媒から保護されることを理解するであろう。そのようなミセルが形成される界面活性剤の濃度は、臨界ミセル濃度、またはCMCとして知られており、当該技術分野で既知の技術を使用して決定することができる。例えば、Kerwin,B.A.Polysorbates 20 and 80 used in the formulation of protein biotherapeutics:Structure and degradation pathways.JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES 2008,97,(8),2924-2935を参照されたい。この場合も、理論に拘束されることを望まないが、本明細書に記載の溶媒変性剤の使用は、防腐剤分子と界面活性剤ミセルとの間の架橋引力を阻害すると考えられる。
【0020】
しかしながら、機構の詳細に関係なく、相分離は、所与の組成物中の界面活性剤と防腐剤の合計濃度が、本明細書でそれらの「濃度閾値」と呼ばれる濃度以上である場合に起こり、それは、界面活性剤と防腐剤の組み合わせが、溶媒変性剤の非存在下で、相分離を引き起こし、混濁したまたは乳白色の外観の形成もたらす濃度を意味する。任意の界面活性剤と防腐剤の組み合わせに一般的に適用できる普遍的な濃度閾値は存在しない。代わりに、濃度閾値は、特に界面活性剤(複数可)および防腐剤(複数可)の同一性を含む、当該製剤の詳細に依存する。
【0021】
任意の所与の製剤における所与の界面活性剤と防腐剤の組み合わせの濃度閾値は、特に目視観察を含む既知の方法を使用して当業者によって決定され得るが、後述の実施例に記載される濁度分析等の定量分析も用いることができる。例えば、欧州薬局方7.0、セクション2.2.1、液体の透明度および混濁の程度を参照されたい。目に見える相分離の形成を直接反映しない可能性があるが、目に見える相分離の最終的な発生または形成のための所与の組成物の可能性に関連し得る他の分析には、以下が含まれる:サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、高精度液体粒子カウンター(HIAC)による分析、およびマイクロフローイメージング(MFI)。
【0022】
さらに、濃度閾値を超える界面活性剤と防腐剤の組み合わせを含むいくつかの組成物における視覚的に検出可能な相分離は、本質的に界面活性剤と防腐剤を組み合わせた直後に起こるが、他の組成物において、相分離は、製剤が調製された後ある程度の時間が経過するまで視覚的に明らかにならない。例えば、m-クレゾール含有製剤では、視覚的に検出可能な相分離がほぼ即時に起こることが観察されているが、特定のフェノール含有製剤では、製剤が調製されてから最大約15分まで製剤は視覚的に検出可能にならない。したがって、溶媒変性剤が、そうでなければその濃度閾値を超えるフェノール防腐剤と界面活性剤の組み合わせによる相分離を十分に低減することを確認するには、製剤が調製されてから少なくとも10分、好ましくは少なくとも15分後に製剤の外観を検査する必要がある。
【0023】
上記のように、所与の界面活性剤と防腐剤の組み合わせの濃度閾値は、界面活性剤(複数可)および防腐剤(複数可)の同一性と濃度の両方に依存し、特定の市販製品は界面活性剤と防腐剤の両方を含むが、それらの製品における界面活性剤と防腐剤の組み合わせがそれらの濃度閾値を下回っているため、透明かつ無色のままである。例えば、LANTUS(登録商標)の商品名で販売されているインスリングラルギンの製剤は、0.02mg/mLのポリソルベート20と2.7mg/mLのm-クレゾールを含み、APIDRA(登録商標)の商品名で販売されているインスリングルリジンの製剤は、0.01mg/mLのポリソルベート20と3.15mg/mLのm-クレゾールを含むが、ポリソルベート20とm-クレゾールの合計濃度がいずれの場合にもこの特定の組み合わせの濃度閾値を下回っているため、これらの製剤はどちらも透明である。実際、後述の実施例に示すように、3.15m-クレゾールの濃度でm-クレゾールを含む製剤では、ポリソルベート20がそのCMCの約2倍以下の濃度で含まれている場合、相分離は起こらないが、CMCの約5倍以上の濃度では相分離が起こる。
【0024】
本明細書で使用される場合、「相分離」という用語は、溶液から沈殿する物理的な微粒子の形成を指す。所与の組成物における相分離の発生の有無は、視覚的に、すなわち、透明な外観とは対照的な、混濁したまたは乳白色の外観によって示されるように、または当業者に既知の分析技術によって決定することができる。同様に、本明細書で使用される場合、「透明」という用語は、混濁したまたは乳白色の外観を有さず、目に見えて検出可能な材料の固体粒子を含まない、透き通った溶液を指す。当業者に既知の分析技術を使用することができるが、製剤が透明で微粒子を含まないかどうかの決定は視覚的に決定することができる。
【0025】
本発明は、界面活性剤(複数可)および防腐剤(複数可)が、そうでなければ(すなわち、溶媒変性剤の非存在下では)それらの濃度閾値以上の濃度で含まれる組成物における相分離の発生を低減するための溶媒変性剤の使用に関与する。本発明の製剤において溶媒変性剤として使用することができる化合物は、PPG(CAS番号57-55-6、分子式C、分子量76.095)、NMP(CAS番号872-50-4、分子式CNO、分子量99.133)およびPEG400(CAS番号25322-68-3、分子式C2n4n+2n+1、n=8.2~9.1、分子量380-420g/mol)グリセロール(CAS番号56-81-5、分子式C、分子量92.09382)を含む。
【0026】
本発明の製剤において溶媒変性剤として使用され得る前段落で特定された化合物は、場合によっては、製剤処方において一般的に使用される賦形剤であり、本発明の製剤における溶媒変性剤としての使用以外の機能を有し得ることに留意されたい。例えば、グリセロールは、等張性の目的で一般的に使用される薬剤であり、LANTUS(登録商標)(インスリングラルギン)、APIDRA(登録商標)(インスリングルリジン)、HUMALOG(登録商標)(インスリンリスプロ)、NOVOLOG(登録商標)(インスリンアスパルト)、TRESIBA(登録商標)(インスリンデグルデク)、HUMULIN(登録商標)(ヒトインスリン)、およびTOUJEO(登録商標)(インスリングラルギン)等のインスリン含有製品の製剤に含まれる。しかしながら、これらのインスリン含有製品は、いずれの界面活性剤も含まないか、または界面活性剤を含むが、それらの製剤中のフェノール防腐剤(複数可)と組み合わせてそれらの濃度閾値を下回るかのいずれかである。同様に、PPGもまた、溶媒変性剤としての使用以外の機能に一般的に使用される医薬品添加剤であり、例えば、VICTOZA(登録商標)(リラグルチド)は14mg/mLのPPGを含むが、非イオン性界面活性剤は含まない。PEG400もまた一般的な賦形剤であり、例えばATIVAN(登録商標)(ロラゼパム)に含まれるが、その製品は非イオン性界面活性剤を含まない。最後に、グリセロールまたはPPGほど一般的には使用されていないものの、NMPがELIGARD(酢酸リュープロリド)と称される製品に使用されるが、その製品は非水性であり、フェノール防腐剤または界面活性剤を含まない。
【0027】
界面活性剤および防腐剤がそれらの濃度閾値を超える濃度で含まれる相分離を低減するために必要な溶媒変性剤の濃度に関して、濃度閾値が所与の界面活性剤と防腐剤の組み合わせによって異なるように、必要な溶媒変性剤の濃度も、以下の同一性および濃度を含む複数の変数に依存する:(a)使用される特定の界面活性剤(複数可)および防腐剤(複数可)、(b)使用されている特定の溶媒変性剤(複数可)、ならびに(c)製剤中の他の賦形剤、特に後により詳細に記載する等張化剤。本発明の特定の実施形態において、溶媒変性剤はグリセロールである。本発明の特定の実施形態において、溶媒変性剤は、約10~約100mg/mLの濃度で存在するグリセロールである。特定の実施形態において、グリセロールの濃度は、約20~約80mg/mLである。特定の実施形態において、グリセロールの濃度は、約20、約25または約80mg/mLからなる群から選択される。特定の実施形態において、グリセロールの濃度は、約20mg/mLである。本発明の特定の実施形態において、溶媒変性剤はPPGである。本発明の特定の実施形態において、溶媒変性剤は、約10~約100mg/mLの濃度で存在するPPGである。特定の実施形態において、PPGの濃度は、約15~約60mg/mLである。特定の実施形態において、PPGの濃度は、約15、約20または約60mg/mLからなる群から選択される。特定の実施形態において、PPGの濃度は、約15mg/mLである。本発明の特定の実施形態において、溶媒変性剤はNMPである。本発明の特定の実施形態において、溶媒変性剤は、約10mg/mL~約100mg/mLの濃度で存在するNMPである。特定の実施形態において、NMPの濃度は、約20~約90mg/mLである。特定の実施形態において、NMPの濃度は、約27~約80mg/mLである。特定の実施形態において、NMPの濃度は、約27、約54、および約80mg/mLからなる群から選択される。本発明の特定の実施形態において、溶媒変性剤は、PEG400である。本発明の特定の実施形態において、溶媒変性剤は、約5~約150mg/mLの濃度で存在するPEG400である。特定の実施形態において、PEG400の濃度は、約40~約120mg/mLである。特定の実施形態において、PEG400の濃度は、約40、約80、約110および約120mg/mLからなる群から選択される。しかしながら、所与の組成物に使用する溶媒変性剤の適切な濃度の選択は、目視観察および濁度ならびに後述の実施例に記載されるような微粒子分析を含む既知の技術を使用して、当業者によって容易に決定され得るため、これらの濃度は限定的であると解釈されるべきではない。
【0028】
界面活性剤と防腐剤との非相溶性を低減することに加えて、溶媒変性剤は、特に等張化剤として等、特定の組成物において追加の機能を有し得る。本発明の製剤は非経口投与用であるため、体液とほぼ等張ではない溶液を投与した際に、痛みを伴う刺すような感覚を引き起こし得るので、組成物を投与する際には注入部位の体液の張度(すなわち、浸透圧)と可能な限り厳密にほぼ一致させることが望ましい。組成物の浸透圧が組織の浸透圧よりも十分に低い場合(血液の場合、約300mOsmol/kg;浸透圧に関する欧州薬局方要件は>240mOsmol/kg)、組成物の張度を約300mOsmol/kgに増加させる必要がある。グリセロールおよびPPGは本発明の製剤に使用するための溶媒変性剤の例であるが、非経口製品の等張化剤としても一般的に使用されるため、このような効果は、十分な濃度の溶媒変性剤の添加によって達成することができる。したがって、グリセロールおよび/またはPPGは、本発明の組成物において、溶媒変性剤および/または等張化剤の両方として機能するように使用され得る。例えば、後述の実施例に記載のデュラグルチド含有組成物において、グリセロールおよびPPGは、組成物の張度を注射部位で体液とほぼ等張になるように増加させるため、およびそれらの組成物中の界面活性剤(複数可)と防腐剤(複数可)との非相溶性を低減するために十分な濃度で添加されている。
【0029】
組織の浸透圧よりも低い組成物の張度を増加させることは、追加の等張化剤を添加することによっても達成することができる。しかしながら、一般的に使用される等張化剤には、塩化ナトリウムおよびマンニトールが含まれ、特定の製剤において、これらの薬剤は、相分離につながる界面活性剤と防腐剤との相互作用を悪化させ、したがって、濃度閾値に達する界面活性剤および/もしくは防腐剤の最小濃度を低下させる、ならびに/または相分離を回避するためにより高い濃度の溶媒変性剤を必要とする可能性があることが発見された。いずれにせよ、等張化剤の添加が必要な場合、添加する等張化剤の量は、標準的な技術を使用して容易に決定される。Remington:The Science and Practice of Pharmacy,David B.Troy and Paul Beringer,eds.,Lippincott Williams&Wilkins,2006,pp.257-259;Remington:Essentials of Pharmaceutics,Linda Ed Felton,Pharmaceutical Press,2013,pp.277-300。さらに、塩化ナトリウムまたはマンニトール等の等張化剤の添加が必要であり、その添加が界面活性剤と防腐剤との相互作用を悪化させる場合、望ましくない相分離を防止するために添加する必要のある溶媒変性剤の量は、後述の実施例に記載されるような既知の技術を使用して当業者によって容易に決定され得る。
【0030】
上記のように、本発明の製剤に使用するための界面活性剤、防腐剤および溶媒変性剤の濃度は、後述の実施例に記載されるような既知の技術を使用して当業者によって決定され得る。例えば、タンパク質またはペプチドベースの医薬品の複数回使用製剤を調製しようとする処方者は、場合によっては、最初に十分な安定化効果を提供するために必要な非イオン性界面活性剤の同一性および濃度を決定し、次に十分な抗菌能力を提供するために必要な防腐剤の同一性および濃度を決定し、相分離が起こったかどうかを観察することができる。相分離が起こらなかった場合、非イオン性界面活性剤と防腐剤の組み合わせはその濃度閾値を下回っており、溶媒変性剤は必要ない。相分離が起こった場合、処方者は、異なる界面活性剤と防腐剤の組み合わせを使用できるかどうかを決定するか、またはその特定の組み合わせでそのような相分離が起こらないようにする本発明による溶媒変性剤の同一性および濃度の決定に注意を向ける。あるいは、処方者は、代わりに、最初に抗菌能力を提供するために必要な防腐剤の同一性および濃度を決定し、次に十分な安定化効果を提供するために必要な界面活性剤の同一性および濃度を決定し、次にそれらの賦形剤が組み合わされたときに相分離が起こったかどうかを観察することができる。前のシナリオと同様に、相分離が起こらなかった場合、界面活性剤と防腐剤の組み合わせはその濃度閾値を下回っており、溶媒変性剤は必要ない。しかしながら、相分離が起こり、そのような相分離を回避する代替の防腐剤+界面活性剤の組み合わせを特定できない場合、処方者は、本発明による溶媒変性剤の同一性および濃度の決定に注意を向ける。
【0031】
特定の実施形態において、本発明の製剤は、pHを制御するための1つまたは複数の緩衝液を含み、使用される任意の緩衝液(複数可)の同一性および濃度は、特定の場合において、所与の界面活性剤+保存剤系の濃度閾値および/またはそのシステムの相分離を回避するために必要な溶媒変性剤を決定することに関連し得る。「緩衝剤」は、その酸塩基共役体成分の作用によってpHの変化に抵抗する物質である。ある特定の実施形態において、本発明の製剤は、約4.0~約8.0、好ましくは約5.5~約7.5、より好ましくは約6.0~約7.0のpHを有する。特定の好ましい実施形態において、本発明の製剤は、約6.5のpHを有する。特定の好ましい実施形態において、本発明の製剤は、約7のpHを有する。本発明の組成物のpHを所望の範囲内に制御するのに好適な緩衝剤として、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、またはそれらの酸、アルギニン、TRIS、およびヒスチジン緩衝液、ならびにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。「TRIS」は、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3,-プロパンジオール、およびその任意の薬理学的に許容される塩を指す。遊離塩基および塩酸塩形態(即ち、TRIS-HCl)は、2つの一般的なTRISの形態である。TRISは、当該技術分野では、トリメチロールアミノメタン、トロメタミン、およびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとしても知られる。本発明の組成物中に好ましい緩衝剤は、クエン酸塩またはクエン酸、およびリン酸塩である。濃度閾値および/または溶媒変性剤の決定に対する任意の緩衝液の潜在的な関連性を考慮して、処方者は、前の段落に記載されるように使用される界面活性剤および/または防腐剤の同一性および濃度を決定する前に、必要な緩衝液を決定することを望む場合がある。
【0032】
上記の説明は、処方者が製剤に含まれる界面活性剤、防腐剤および溶媒変性剤の同一性および濃度を決定できる方法に関係するが、これらの同一性および濃度が決定された後、製剤が最終的にどのように組み立てられるかには必ずしも関係しない。どの成分をどの順序で添加するかという操作の順序には多少のばらつきがあってもよいが、溶媒変性剤は通常、フェノール防腐剤と界面活性剤の両方の全濃度が添加される前、すなわち相分離が起こる前に添加される。特定の好ましい実施形態において、溶媒変性剤は、製剤に添加される最初の成分であり、続いてフェノール防腐剤、続いてタンパク質またはペプチド、続いて界面活性剤が添加される。
【0033】
上記の成分に加えて、本発明の製剤は、他の賦形剤を含み得る。例えば、特定のタンパク質またはペプチドベースの医薬品は、酸化または微量金属に対する感受性のために、追加の安定剤を必要とする場合がある。そのような安定剤には、それぞれ、メチオニン等の抗酸化剤、またはEDTA等のキレート剤が含まれる。
【0034】
タンパク質およびペプチドは、胃腸管におけるタンパク質分解に対する感受性および不十分な吸収のために、経口バイオアベイラビリティが低く、そのため、ほとんどのタンパク質およびペプチドは非経口的に投与される。本発明の製剤は非経口投与用であり、静脈内(IV)注射、皮下(SC)注射、筋肉内(IM)注射、または腹腔内(IP)注射による投与を含み得る。好ましい実施形態において、本発明の製剤は、SC注射用に設計されている。本発明の製剤は複数回使用の投与に適しているため、それらは通常、バイアルまたはカートリッジ等の容器閉鎖システムで提供され、そこから複数の用量を取り出して投与することができる。本発明の製剤は、例えば、バイアル内に提供することができ、そこから、患者に投与するための複数の用量を注射器によって引き出すことができる。本発明の製剤はまた、ペンデバイスに使用するためのカートリッジで提供され得、そこから複数の用量が投与され得る。本発明の製剤はまた、複数の用量を送達することができる自動注射器または注入ポンプで使用するためのカートリッジ等の容器閉鎖物で提供され得る。
【0035】
本発明の追加の実施形態を以下に説明する。
以下を含む水性組成物:タンパク質またはペプチド、非イオン性界面活性剤、フェノール防腐剤、および溶媒変性剤。
【0036】
組成物が無菌である上記の実施形態の組成物。
【0037】
非イオン性界面活性剤およびフェノール防腐剤が、溶媒変性剤の非存在下でそれらの濃度閾値を超える濃度で存在する、上記の実施形態のいずれかの組成物。
【0038】
溶媒変性剤が、溶液が透明なままであることを保証するのに十分な濃度で存在する、上記の実施形態のいずれかの組成物。
【0039】
溶液が少なくとも15分間透明なままである、上記の実施形態の組成物。溶液が少なくとも24時間透明なままである、先行する実施形態の組成物。溶液が少なくとも1週間透明なままである、先行する実施形態の組成物。溶液が少なくとも1ヶ月間透明なままである、先行する実施形態の組成物。溶液が少なくとも6ヶ月間透明なままである、先行する実施形態の組成物。溶液が少なくとも1年間透明なままである、先行する実施形態の組成物。
【0040】
溶液が貯蔵寿命を通して透明なままである、上記の実施形態のいずれかの組成物。
【0041】
溶媒変性剤が、非イオン性界面活性剤とフェノール防腐剤との相互作用による相分離を防止するのに十分な濃度で存在する、上記の実施形態のいずれかの組成物。
【0042】
タンパク質またはペプチドが約0.1~約100mg/mLの範囲の濃度で存在する、上記の実施形態のいずれかの組成物。
【0043】
タンパク質またはペプチドが約0.5~約50mg/mLの範囲の濃度で存在する、上記の実施形態のいずれかの組成物。
【0044】
タンパク質またはペプチドが約1~約10mg/mLの範囲の濃度で存在する、上記の実施形態のいずれかの組成物。
【0045】
タンパク質またはペプチドが、GLP-1受容体アゴニスト、インスリン、GIP受容体アゴニスト、グルカゴン受容体アゴニスト、PYY、GDF、アミリン受容体アゴニスト、カルシトニン受容体アゴニストおよびインターロイキンからなる群から選択される、上記の実施形態のいずれかの組成物。タンパク質またはペプチドがFc融合タンパク質である、先行する実施形態の組成物。
【0046】
タンパク質またはペプチドがデュラグルチドである、上記の実施形態のいずれかの組成物。デュラグルチドの濃度が約1.5~約9mg/mLである、先行する実施形態の組成物。デュラグルチドの濃度が、1.5、3.0、6.0および9.0mg/mLからなる群から選択される、先行する実施形態の組成物。
【0047】
非イオン性界面活性剤がポリソルベート型界の面活性剤である、上記の実施形態のいずれかの組成物。非イオン性界面活性剤が、PS20、PS80、ポロキサマー188およびポロキサマー407からなる群から選択される、先行する実施形態の組成物。非イオン性界面活性剤がPS20またはPS80のいずれかである、先行する実施形態の組成物。
【0048】
非イオン性界面活性剤がPS80である上記の実施形態のいずれかの組成物。PS80の濃度が約0.01mg/mL~約1mg/mLである、先行する実施形態の組成物。PS80の濃度が約0.05mg/mL~約0.5mg/mLである、先行する実施形態の組成物。PS80の濃度が約0.1mg/mL~約0.4mg/mLである、先行する実施形態の組成物。PS80の濃度が約0.2mg/mL~約0.3mg/mLである、先行する実施形態の組成物。ポリソルベート80の濃度が0.2mg/mLまたは0.25mg/mLのいずれかである、先行する実施形態の組成物。
【0049】
非イオン性界面活性剤がPS20である、上記の実施形態のいずれかの組成物。PS20の濃度がそのCMCの約2倍よりも大きい、先行する実施形態の組成物。ポリソルベート20の濃度が約0.01mg/mL~約1mg/mLである、先行する実施形態の組成物。PS20の濃度が約0.05mg/mL~約0.5mg/mLである、先行する実施形態の組成物。PS20の濃度が約0.1mg/mL~約0.4mg/mLである、先行する実施形態の組成物。
【0050】
非イオン性界面活性剤がポロキサマー188である、上記の実施形態のいずれかの組成物。ポロキサマー188の濃度が約0.01~約2mg/mLの範囲である、先行する実施形態の組成物。ポロキサマー188の濃度が約0.5~約1.5mg/mLの範囲である、先行する実施形態の組成物。
【0051】
フェノール防腐剤が、規制および薬局方の抗菌防腐剤の要件を満たすのに十分な濃度で存在する、上記の実施形態のいずれかの組成物。
【0052】
フェノール防腐剤が、フェノール、m-クレゾール、ベンジルアルコールおよびフェノキシエタノールからなる群から選択される、上記の実施形態のいずれかの組成物。フェノール防腐剤がベンジルアルコールである、先行する実施形態の組成物。ベンジルアルコールが約10mg/mLの濃度で存在する、先行する実施形態の組成物。
【0053】
特定の実施形態において、フェノール防腐剤はフェノキシエタノールである。フェノキシエタノールが約10~約15mg/mLの濃度で存在する、先行する実施形態の組成物。
【0054】
フェノール防腐剤が、フェノールおよびm-クレゾールならびにそれらの混合物からなる群から選択される、上記の実施形態のいずれかの組成物。
【0055】
フェノール防腐剤がフェノールである、上記の実施形態のいずれかの組成物。フェノールの濃度が約1~約10mg/mLである、先行する実施形態の組成物。フェノールの濃度が約3~約6mg/mLである、先行する実施形態の組成物。フェノールの濃度が少なくとも約3mg/mLである、先行する実施形態の組成物。フェノール防腐剤が、3、3.5、4、4.5または5mg/mLからなる群から選択される濃度のフェノールである、先行する実施形態の組成物。フェノールの濃度が約5mg/mLである、先行する実施形態の組成物。
【0056】
フェノール防腐剤がm-クレゾールである、上記の実施形態のいずれかの組成物。フェノール防腐剤がm-クレゾールであり、約0.1~約10mg/mLの濃度で存在する、上記の実施形態のいずれかの組成物。フェノール防腐剤がm-クレゾールであり、約2~約6mg/mLの濃度で存在する、先行する実施形態の組成物。フェノール防腐剤がm-クレゾールであり、約3.5~約5.5mg/mLの濃度で存在する、先行する実施形態の組成物。
【0057】
フェノール防腐剤がフェノールとm-クレゾールの混合物である、上記の実施形態のいずれかの組成物。フェノール防腐剤がフェノールとm-クレゾールの混合物であり、フェノールが約1~約5mg/mLの濃度で存在し、m-クレゾールが約0.1~約3.5mg/mLの濃度で存在する、先行する実施形態の組成物。フェノール防腐剤がフェノールとm-クレゾールの混合物であり、フェノールが約1.5~約2mg/mLの濃度で存在し、m-クレゾールが1.58mg/mLの濃度で存在する、先行する実施形態の組成物。
【0058】
フェノール防腐剤がフェノールとm-クレゾールの混合物であり、フェノールが約3.5~約4mg/mLの濃度で存在し、m-クレゾールが約0.32mg/mL~約0.63mg/mLの濃度で存在する、上記の実施形態のいずれかの組成物。フェノールの濃度が約3.5mg/mLであり、m-クレゾールの濃度が約0.32mg/mLである、先行する実施形態の組成物。
【0059】
溶媒変性剤が、PPG、NMP、PEG400およびグリセロールからなる群から選択される、上記の実施形態のいずれかの組成物。
【0060】
溶媒変性剤がグリセロールである、上記の実施形態のいずれかの組成物。溶媒変性剤がグリセロールであり、約10~約100mg/mLの濃度で存在する、上記の実施形態のいずれかの組成物。グリセロールの濃度が約20~約80mg/mLである、先行する実施形態の組成物。グリセロールの濃度が、約20、約25または約80mg/mLからなる群から選択される、先行する実施形態の組成物。グリセロールの濃度が約20mg/mLである、先行する実施形態の組成物。
【0061】
溶媒変性剤がPPGである、上記の実施形態のいずれかの組成物。溶媒変性剤がPPGであり、約10~約100mg/mLの濃度で存在する、上記の実施形態のいずれかの組成物。PPGの濃度が約15~約60mg/mLである、先行する実施形態の組成物。PPGの濃度が、約15、約20または約60mg/mLからなる群から選択される、先行する実施形態の組成物。PPGの濃度が約15mg/mLである、先行する実施形態の組成物。
【0062】
溶媒変性剤がNMPである、上記の実施形態のいずれかの組成物。溶媒変性剤がNMPであり、約10mg/mL~約100mg/mLの濃度で存在する、上記の実施形態のいずれかの組成物。NMPの濃度が約20~約90mg/mLである、先行する実施形態の組成物。NMPの濃度が約27~約80mg/mLである、先行する実施形態の組成物。NMPの濃度が、約27、約54、および約80mg/mLからなる群から選択される、先行する実施形態の組成物。
【0063】
溶媒変性剤がPEG400である、上記の実施形態のいずれかの組成物。溶媒変性剤がPEG400であり、約5~約150mg/mLの濃度で存在する、上記の実施形態のいずれかの組成物。PEG400の濃度が約40~約120mg/mLである、先行する実施形態の組成物。PEG400の濃度が、約40、約80、約110および約120mg/mLからなる群から選択される、先行する実施形態の組成物。
【0064】
組成物が等張化剤をさらに含む、上記の実施形態のいずれかの組成物。等張化剤が、NaClおよびマンニトールからなる群から選択される、先行する実施形態の組成物。
【0065】
組成物が緩衝液をさらに含む、上記の実施形態のいずれかの組成物。緩衝液が、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、またはそれらの酸、アルギニン、TRIS、およびヒスチジンからなる群から選択される、先行する実施形態の組成物。緩衝液がリン酸塩である、先行する実施形態の組成物。リン酸塩の濃度が約10mMである、先行する実施形態の組成物。
組成物がクエン酸塩である緩衝液をさらに含む、上記の実施形態のいずれかの組成物。クエン酸塩の濃度が約10mMである、先行する実施形態の組成物。
【0066】
組成物のpHが約4~約8である、上記の実施形態のいずれかの組成物。組成物のpHが約5.5~約7.5である、先行する実施形態の組成物。組成物のpHが約6.0~7.0である、先行する実施形態の組成物。組成物のpHが約6.5または約7である、先行する実施形態の組成物。
【0067】
組成物が追加の安定剤をさらに含む、上記の実施形態のいずれかの組成物。追加の安定剤が抗酸化剤またはキレート剤である、先行する実施形態の組成物。抗酸化剤がメチオニンであり、キレート剤がEDTAである、先行する実施形態の組成物。
【0068】
非経口投与に適した水性組成物は、デュラグルチド、PS80、PPGおよびグリセロールからなる群から選択される溶媒変性剤、ならびにフェノール、m-クレゾールおよびそれらの混合物からなる群から選択されるフェノール防腐剤を含む。デュラグルチド濃度が、1.5、3、6または9mg/mLからなる群から選択される、先行する実施形態の組成物。PS80の濃度が0.2または0.25mg/mLのいずれかである、先行する実施形態の組成物。溶媒変性剤が15mg/mLのPPGまたは20mg/mLのグリセロールのいずれかである、先行する実施形態の組成物。フェノール防腐剤が4mg/mLフェノール、または3.5mg/mLフェノールと0.32mg/mLm-クレゾールの組み合わせのいずれかである、先行する実施形態の組成物。緩衝液をさらに含む、先行する実施形態の組成物。緩衝液がクエン酸塩である、先行する実施形態の組成物。クエン酸塩の濃度が10mMである、先行する実施形態の組成物。組成物のpHが約6.5である、先行する実施形態の組成物。
【0069】
上記の組成物のいずれかを含む、容器閉鎖システム。容器閉鎖システムがバイアルまたはカートリッジである、先の実施形態の容器閉鎖システム。
【0070】
上記の組成物のいずれかを含む、複数用量ペンデバイス。
【0071】
上記の組成物のいずれかを含む複数用量自動注射器。
【0072】
上記の組成物のいずれかを含む注入ポンプ。
【0073】
緩衝液を調製または入手し、次に溶媒変性剤を添加し、次にフェノール防腐剤を添加し、次にタンパク質またはペプチドベースのAPIを添加し、次に界面活性剤を添加することを含む、上記の組成物のいずれかを調製する方法。
【0074】
非イオン性界面活性剤およびフェノール防腐剤をそれらの濃度閾値を超えて含み、組成物が透明なままであることを保証するのに十分な濃度の溶媒変性剤を組成物中に含むことを含む、非経口投与に適した水性組成物を調製する方法。
【0075】
組成物が上記の組成物のいずれかを含む、上記の実施形態の方法。
【0076】
本発明の実施形態は、以下の実施例にさらに記載されるが、これは限定として解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1】さまざまな濃度のm-クレゾールとPS80を含む組成物の濁度を示す。
図2】さまざまな濃度のポリソルベート80を含む製剤の濁度を示す。
図3】さまざまな濃度のポリソルベート80を含む製剤の濁度を示す。
図4】さまざまな濃度のポリソルベート80を含む製剤の濁度を示す。
図5】さまざまな濃度のポリソルベート80を含む製剤の濁度を示す。
図6】さまざまな濃度のポリソルベート80を含む製剤の濁度を示す。
図7】さまざまな濃度のポリソルベート80を含む製剤の濁度を示す。
図8】さまざまな濃度のポリソルベート80を含む製剤の濁度を示す。
【実施例0078】
0.2mg/mLのPS80を含む組成物の濃度閾値
TRULICITY(登録商標)の商品名で販売されているデュラグルチドの市販製剤には、安定剤として0.2mg/mLのPS80が含まれる。フェノール防腐剤の添加効果を調べるために、pH6.5の10mMクエン酸緩衝液に0.2mg/mLのPS80を含むプラセボ溶液を調製し、この溶液の試料に十分な量のm-クレゾールまたはフェノールを添加することにより被験物質を調製し、0.2mg/mLと、3.15mg/mLのm-クレゾールまたは5mg/mLのフェノールのいずれかとを含む製剤を得る。プラセボおよび被験物質を目視検査する。プラセボ溶液は透明かつ無色であるのに対し、被験物質はそれぞれ急速に混濁したまたは乳白色の外観となる。したがって、2つの防腐剤含有溶液のそれぞれの濃度閾値を超えたことになる。
【0079】
m-クレゾールおよびPS20を含む組成物の濃度閾値
PS20とm-クレゾールの組み合わせの濃度閾値を決定するために試験が行われ、これらは、LANTUS(登録商標)の商品名で販売されているインスリングラルギンと、APIDRA(登録商標)の商品名で販売されているインスリングルリジンである市販製剤に使われる非イオン性界面活性剤およびフェノール防腐剤であり、0.02mg/mLおよび0.01mg/mLの濃度のPS20と、2.7および3.15mg/mLの濃度のm-クレゾールをそれぞれ含む。プラセボ溶液は、3.15mg/mLのm-クレゾールと、そのCMCの1/4から10倍までの範囲のさまざまな濃度のPS20を含むpH7の10mMリン酸緩衝液中で調製される。バイアルは目視検査によって分析する。結果を以下の表1に提供する。
【表1】
【0080】
結果は、ポリソルベート20がそのCMCの約2倍以下の濃度で含まれている場合、これらの組成物では相分離は起こらなかったが、CMCの約5倍以上の濃度では起こることを示している。したがって、CMCの5倍以上の濃度の3.15mg/mLのm-クレゾールとポリソルベート20の組み合わせは、m-クレゾールとポリソルベート20の濃度閾値を上回っているのに対し、CMCの2倍以下の濃度の3.15mg/mLのm-クレゾールとポリソルベート20の組み合わせは(例えば、LANTUSおよびAPIDRAで使用される0.02および0.01mg/mL)は、m-クレゾールとポリソルベート20の濃度閾値を下回っている。
【0081】
さまざまな濃度のm-クレゾールとPS80を含む組成物の濁度
相分離の発生に対するm-クレゾールとPS80の両方の濃度の関連性を評価するための試験を行う。pHを6.5に調整したものを含む10mMクエン酸緩衝液のバッチを調製し、被験物質の製剤用の対照および緩衝液マトリックスとして使用する。M-クレゾールを緩衝液マトリックスの一部に添加して、1.58mg/mL、2.70mg/mL、または3.15mg/mLの濃度のm-クレゾールを含む溶液を調製する。ポリソルベート80を測定し、クエン酸緩衝液の別々の部分に溶解して、1つは10mg/mLのポリソルベート80を有し、もう1つは40mg/mLのポリソルベートを有する2つのストック溶液を調製する。界面活性剤のストック溶液を、以下の表2に示す量で、さまざまな量のフェノール防腐剤含有溶液に徐々に添加して、幅広い濃度のポリソルベート80を含む製剤を生成する。
【表2】
【0082】
得られた製剤の濁度は、HACH濁度計(モデル:2100AN、タグ番号:K349924)を使用して測定する。機器は、使用前に濁度標準を使用して校正する。ガラス管の微細な欠陥を隠すために、シリコーンオイルの薄いコーティングを試験管の外面に塗布する。濁度測定には約7mLの溶液を使用する。結果を図1に提供する。図1に示すように、濁りの発生と大きさは、m-クレゾールとPS80の両方の濃度に依存する。
【0083】
さまざまな濃度の溶媒変性剤、一般的に使用される等張化剤、防腐剤および界面活性剤の影響。
タンパク質およびペプチドベースの製剤に等張化剤として一般的に使用されるさまざまな濃度の溶媒変性剤および他の賦形剤を含めることが、溶液状態の防腐剤と界面活性剤の相溶性に及ぼす影響を評価するための試験を行う。
【0084】
ある試験では、pHを6.5に調整した10mMリン酸緩衝液のバッチを、緩衝液マトリックスとして使用した。続いて、3.15mg/mLのm-クレゾールと、溶媒変性剤または一般的に使用される等張化剤のいずれかを含む緩衝液を、表3に示すように調製する。
【表3】
【0085】
ポリソルベート80を測定し、リン酸緩衝液に溶解して、1つは10mg/mLのポリソルベート80を有し、もう1つは40mg/mLのポリソルベートを有する2つのストック溶液を調製し、上記の表2に示す量で、さまざまな量の上記の表3に記載の溶媒変性剤または等張化剤含有製剤に徐々に添加して、幅広い濃度のポリソルベート80をそれぞれ含む製剤を生成する。得られた製剤の濁度を上記のように測定する。
【0086】
結果を図2に提供する。図2に示すように、マンニトールおよびNaClを添加すると、対照と比較して、それぞれ濁度データの左方向へのシフトをもたらし、この試験では、それらを含めることにより所与のPS80濃度でより多くの濁りの発生がもたらされることが示唆される一方で、PPG、グリセロールおよびNMPを添加すると、対照と比較して、それぞれ濁度データの右方向へのシフトをもたらし、PEG400が濁りの発生を防ぎ、この試験では、それらを含めることにより所与のPS80濃度で濁りの発生が低減されたことが示唆される。
【0087】
別の一連の試験では、2.723mg/mLのクエン酸と0.1422のクエン酸ナトリウムを含み、pHを6.5に調整した10mMクエン酸緩衝液の10Lバッチを調製し、緩衝液マトリックスとして使用する。続いて、表4に要約されているように、m-クレゾールとさまざまな賦形剤を含む緩衝液を調製する。クエン酸、クエン酸ナトリウム二水和物、ポリソルベート80、m-クレゾール、液化フェノール、マンニトール、および塩化ナトリウムは、Eli Lilly(Indianapolis,Indiana)から入手する。グリセロール、プロピレングリコール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、およびポリエチレングリコール400(PEG400)は、Sigma-Aldrich(Milwaukee,Wisconsin)から入手する。
【表4】
【0088】
ポリソルベート80を測定し、リン酸緩衝液に溶解して、1つは10mg/mLのポリソルベート80を有し、もう1つは40mg/mLのポリソルベートを有する2つのストック溶液を調製し、上記の表2に示す量で、さまざまな量の上記の表4に記載の溶媒変性剤または等張化剤含有製剤に徐々に添加して、幅広い濃度のポリソルベート80をそれぞれ含む製剤を生成する。得られた製剤の濁度を上記のように測定する。結果を図3図8に提供する。
【0089】
界面活性剤と防腐剤の両方の濃度の寄与、およびマンニトールとNaClの有害な影響を図3および図4に見ることができる。図3および図4に見られるように、1.58mg/mLのm-クレゾールを含む製剤は、マンニトールまたはNaClの存在下を含め、調べたいずれのPS80濃度でも濁らない。したがって、この試験で調べた1.58mg/mLのm-クレゾールを含むいずれの組成物でも濃度閾値には達しなかった。しかしながら、m-クレゾールの濃度を3.15mg/mLに上昇させると、ポリソルベート80の濃度が上昇するにつれて濁りの発生が見られる。最後に、マンニトールまたはNaClのいずれかの存在は、用量依存的様式で濁りの発生を悪化させる。
【0090】
特定の界面活性剤および防腐剤の濃度での濁りの発生に対するグリセロールとPPGの影響は図5に見ることができる。図5に示すように、PPGを含めると、用量依存的様式で濁りの発生が低減する。一方、グリセロールは、対照と比較して濁度データの左方向へのシフトをもたらし、この試験で調べた組成物の濁度を低減しなかったことが示唆される。
【0091】
NMPの影響は図6に見ることができる。図6に示すように、NMPは用量依存的様式で濁りの発生を低減する。
【0092】
特定のPS80およびm-クレゾール濃度で濃度閾値に達した時点でのPEG400の影響は図7に見ることができる。図7に示すように、PEG400は用量依存的様式で濁りの発生を低減する。
【0093】
最後に、マンニトールまたはNaClのいずれかの存在下での、PS80とm-クレゾールまたはフェノールの組み合わせの濃度閾値の比較を図8に見ることができる。図8に示すように、両方の防腐剤が濁りの発生を引き起こしたが、フェノールは調べた全ての濃度でm-クレゾールよりもPS80との相溶性が高く、マンニトールはNaClよりも有害な影響を及ぼす。
【0094】
要約すると、これらの試験のデータは、濃度閾値が組成物中の界面活性剤および防腐剤の同一性および濃度に固有であり、そのような組成物で濁りを生じさせる相分離の発生は、溶媒変性剤を含めることにより用量依存的な様式で低減されるか、または特定の一般に使用される等張化剤を含めることにより用量依存的な様式で悪化するかのいずれかであり得ることを示している。
【0095】
さまざまな分子量のモデルタンパク質を含む組成物中の濃度閾値および溶媒変性剤の効果
組成物中に濁りを発生させる界面活性剤と防腐剤との相互作用、および溶媒変性剤を含めることによってその現象を低減する能力が、組成物中のタンパク質の同一性に依存しないことを確認するための試験を行う。この試験に含めるために特定されたタンパク質は、以下の表5に示すように、幅広い分子量を含むように選択される。
【表5】
【0096】
リン酸一ナトリウム一水和物、リン酸水素二ナトリウム七水和物、PS80、およびm-クレゾールは、Eli Lilly(Indianapolis,Indiana)から入手する。N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、チトクロムC、リゾチーム、β-ラクトグロブリン、およびサイログロブリンは、Sigma-Aldrich(Milwaukee,Wisconsin)から入手する。ウシ血清アルブミンはAkronから入手する。全ての材料はそのまま使用する。
【0097】
0.7821mg/mLのリン酸水素二ナトリウムと0.62mg/mLのリン酸一ナトリウムを水中で組み合わせ、pHを7.0に調整することにより10mMリン酸緩衝液の2Lバッチを調製し、試験の緩衝液マトリックスとして使用する。続いて、PS80、m-クレゾールおよび/またはNMPを含むタンパク質製剤を調製し、目視検査する。組成と結果の詳細を以下の表6に提供する。
【表6】
【0098】
表6のデータは、複数の濃度のBSAを含む検査した全てのタンパク質について、溶媒変性剤の非存在下での0.2mg/mLのポリソルベート80と3.15mg/mLのm-クレゾールの組み合わせが相分離を引き起こし、混濁した外観をもたらす一方で、81mg/mLのNMPを含めると、そのような相分離の発生が防止されることを示している。
【0099】
デュラグルチドの保存製剤に関する安定性試験
試験は、本発明に従って溶媒変性剤で調製されたデュラグルチドの保存製剤の安定性を調べるように設計されている。現在入手可能なTRULICITY(登録商標)(デュラグルチド)の市販製剤は、10mMクエン酸緩衝液(pH6.5)中に3mg/mLのデュラグルチド、0.2mg/mLのPS80、および46.4mg/mLのマンニトールが含まれている。上記のように、フェノール防腐剤の添加によってこの製剤を保存するための以前の努力は、PS80とフェノール防腐剤との非相溶性のために相分離をもたらした。しかしながら、本明細書に記載の溶媒変性剤を使用することにより、十分な抗菌効果を達成するのに十分な防腐剤と、安定性の目的に必要な0.2mg/mLのPS80とを含めることができるが、非溶媒変性剤含有製剤で観察された相分離を伴わない、改善された製剤が開発された。それらの製剤の組成を以下の表7に示す。
【表7】
【0100】
試験は、これらの組成物中のデュラグルチドの安定性を調べるように設計されている。5mM、pH=6.5のクエン酸緩衝液を調製し、そのまま使用する。適切な量のクエン酸緩衝液を500mLメスフラスコに移す。次に、計算された量の防腐剤と溶媒変性剤を同じフラスコに加え、混合して溶解させ、均一な溶液を確保する。メスシリンダーを使用して、38.5mLのデュラグルチド原薬を測定し、メスフラスコに移す。溶液が均一になるまで混合する。同時に、100mg/mLのポリソルベート80のストック溶液を調製する。約1000mgのポリソルベートをガラスビーカーに移し、10mLの緩衝液に溶解する。トランスファーピペットを使用して、1mLのポリソルベート80ストック溶液をメスフラスコに移す。次に、液体メニスカスが500mLのマークに達するまで、適切な量の緩衝液を添加する。溶液をさらに混合して均一性を確保し、0.22μmフィルターで濾過する。濾過した医薬品を3mLカートリッジに充填する。カートリッジ内の溶液は透明であることが視覚的に確認され、界面活性剤と防腐剤との相互作用による相分離が起こらなかったことが示唆される。
【0101】
さらに、充填したカートリッジを、安定性試験のために5℃で保存する。5℃の保存温度は、デュラグルチド医薬品の推奨保管温度である2~8℃を代表するものである。事前に指定された時点で、試料を保存場所から取り出し、透明で微粒子を含まないことを視覚的に確認し、以下に記載するさまざまな方法で試験する。
【0102】
HIAC。HIAC試験は、目に見えない微粒子含有量を測定するために使用され、USP<787>(治療用タンパク質注射における目に見えない微粒子)および<788>(注射における微粒子)に記載されている試験試料に対して実行される。これらは、欧州薬局方2.9.19および日本の薬局方6.07と調和している。各時点で、0.5mLの溶液の5つのアリコートが3mLのカートリッジから取り出されてプールされるため、測定結果(複数可)は平均5つの試料を反映している。結果を以下の表8に提供する。
【表8】
【0103】
USP<788>(注射液中の微粒子)に準拠するには、デュラグルチド等の治療用タンパク質注射剤を含む非経口製品が、コンテナ当たり10μm以上の6000個以下の微粒子、および25μm以上の600個以下の微粒子を有する必要がある。表8に示すように、調べた全ての試料は、非経口製品のFDA制限内に十分収まった。
【0104】
MFI.MFI試験は、注射液および非経口溶液中に存在する気泡以外の微粒子を検出するために使用される。この方法は、情報のみを目的とした安定性を示す特性評価方法であり、フローイメージング技術を使用して、サイズ、濃度、および形態に関して肉眼では見ることができない粒子を列挙および分類する目的で行われる。試料を保存場所から取り出し、12ヶ月後に検査する。結果を以下の表9に提供する。0.85を超えるアスペクト比(AR)を有する5μm以上の微粒子は、形状が非常に円形であり、タンパク質の粒子とは対照的に、ストッパーからのシリコーンである可能性がある。
【表9】
【0105】
表9のデータは、過去のデュラグルチド医薬品のデータに匹敵する。
【0106】
SEC。サイズ排除(SEC)HPLC法を使用して、デュラグルチドの単量体純度を測定する。この方法により、凝集体および断片化された種を無傷の単量体タンパク質から分離する。
【0107】
デュラグルチド医薬品の単量体純度は、サイズ排除HPLCで測定する。この方法では、200オングストロームのポアサイズのシリカゲルカラムでのアイソクラティック分離を214nmでのUV検出と合わせて使用するが、これは、医薬品のペプチド骨格の最大吸光度に近いため、応答係数の補正は必要ない。この方法により、高分子量の形態(総凝集体)を単量体のデュラグルチドから分離する。この方法は、特異的であり、かつ安定性を示すことが実証されており、高分子量の形態をデュラグルチド単量体から分離する。単量体および凝集体は、総面積に対するピーク面積パーセントとして報告される。データを表10に提供する。
【表10】
【0108】
表10のデータは、デュラグルチド医薬品の許容範囲内である。
【0109】
RP-HPLC。この方法は、デュラグルチド医薬品の純度および関連物質/不純物を決定するために設計されている。グリコシル化、N末端切断、リンカー切断、およびFc領域の酸化から生じる関連不純物は、逆相グラジエントHPLCを214nmでのUV検出と併せて使用して未修飾のデュラグルチドから分離するが、これは、医薬品のペプチド骨格の最大吸光度に近いため、応答係数の補正は必要ない。この方法は、特異的であり、かつ安定性を示すことが実証されており、分解生成物を主要ピークから分離する。
【表11】
【0110】
表11のデータは、デュラグルチドの許容範囲内である。
【0111】
制限消化。制限消化法は、デュラグルチド医薬品中のGLP-1アナログへの修飾を決定するために設計されている。医薬品試料をトリプシンによる穏やかな消化条件に曝露し、GLP-1アナログとリンカーを分子のFc部分から遊離させる。GLP-1アナログは3つの小さなペプチドに消化される。この方法では、逆相グラジエントHPLC分離214nmでのUV検出と併せて使用するが、これは、医薬品のペプチド骨格の最大吸光度に近いため、応答係数の補正は必要ない。この方法により、N末端切断、N末端修飾(Des H/HG、ピルビル化)、25位のトリプトファンの酸化および28位のリジンのヒドロキシル化に起因する関連不純物を、未修飾のデュラグルチドペプチドから分離する。この方法は、特異的であり、かつ安定性を示すことが実証されており、関連物質と不純物をそれぞれの未修飾ペプチドから分離する。結果を表12に提供する。
【表12】
【0112】
表11のデータは、デュラグルチドの許容範囲内である。
【0113】
CE-SDS NR.キャピラリー電気泳動ドデシル硫酸ナトリウムを用いた非還元(CE-SDS NR)試験は、デュラグルチド医薬品の純度を決定するために使用される。デュラグルチド分子は変性され、分子変異体は、コーティングされていないキャピラリーに動電学的にロードされた独自のゲルマトリックスを介してサイズによって分離される。キャピラリーに電流を印加すると分離が起こり、214nmのUVで分子変異体が検出されるが、これは、医薬品のペプチド骨格の最大吸光度に近いため、応答係数の補正は必要ない。この方法により、高分子量および単鎖の形態を単量体のデュラグルチドから分離する。この方法は、特異的であり、かつ安定性を示すことが実証されており、凝集体と単鎖の形態をデュラグルチド単量体から分離する。
【0114】
【表13】
【0115】
表13のデータは、デュラグルチド医薬品の許容範囲内である。
【0116】
要約すると、上記の研究は、現在利用可能なTRULICITYの市販製剤で十分な安定性を提供するために使用されるのと同じPS80含有量を含むデュラグルチドの保存製剤は、溶媒変性剤の使用によって防腐剤と界面活性剤との相互作用による相分離なしで調製することができ、そのような製剤中のタンパク質が十分に安定なままであるという結論を支持するものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
2023123742000001.app
【外国語明細書】