(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123773
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】少なくとも1種のプロテインキナーゼ阻害剤及び少なくとも1種のポリマー性安定化マトリックス形成性成分の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20230829BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230829BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230829BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230829BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20230829BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230829BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230829BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P27/02
A61P35/00
A61P43/00 111
A61K9/16
A61K47/34
A61K47/38
A61K47/32
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108576
(22)【出願日】2023-06-30
(62)【分割の表示】P 2021031869の分割
【原出願日】2013-01-11
(31)【優先権主張番号】1250015-3
(32)【優先日】2012-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(31)【優先権主張番号】61/586,187
(32)【優先日】2012-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】1251160-6
(32)【優先日】2012-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(31)【優先権主張番号】61/713,120
(32)【優先日】2012-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MYRJ
2.SOLUPLUS
3.CREMOPHOR
4.KOLLIPHOR
5.LABRASOL
6.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】514174707
【氏名又は名称】エックススプレイ ファーマ パブリーク・アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】XSpray Pharma AB(publ)
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ブリサンデル,マグヌス
(72)【発明者】
【氏名】デミルビュケル,ムスタファ
(72)【発明者】
【氏名】イェソン,ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】マルムステン,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】デランド,ヘレーネ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】難水溶性化合物であるプロテインキナーゼ阻害剤(PKI)を含有する、バイオアベイラビリティの向上した医薬組成物を提供する。
【解決手段】1000nm未満の平均粒子径を有するPKIの非晶質の固体分散体粒子及び、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルセルロース、コポリビドンなど、少なくとも1種のポリマー性安定化マトリックス形成性成分を含み、任意で少なくとも1種の薬学的に許容できる可溶化剤をさらに含む医薬組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定な非晶質の固体分散体粒子を含む医薬組成物であって、
前記固体分散体粒子が、ニロチニブ、ニロチニブ水和物、ニロチニブ溶媒和物、ニロチニブ塩、及びその組み合わせからなる群から選択されるプロテインキナーゼ阻害剤、並びに、少なくとも1種のポリマー性安定化マトリックス形成性成分からなり、
前記固体分散体粒子の非晶性の程度が、100%であり、
前記固体分散体粒子中の前記プロテインキナーゼ阻害剤の量が、約10重量%から約70重量%である
ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記医薬組成物が、d-α-トコフェロール酸ポリエチレングリコール1000サクシネート、PEG-40水添ヒマシ油、及びPEG-35ヒマシ油からなる群から選択される、少なくとも1種の薬学的に許容できる可溶化剤をさらに含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の医薬組成物において、前記可溶化剤が、d-α-トコフェロール酸ポリエチレングリコール1000サクシネートであることを特徴とする医薬組成物。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の医薬組成物において、前記可溶化剤が、前記固体分散体粒子の表面に分布していることを特徴とする医薬組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の医薬組成物において、前記少なくとも1種のポリマー性安定化マトリックス形成性成分が、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテートフタレート、コポリビドン、クロスポビドン、メタクリル酸とエチルアクリラートのコポリマー、メタクリル酸とメチルメタクリラートのコポリマー、ポリエチレングリコール、DLラクチド/グリコリドコポリマー、ポリDL-ラクチド、セルロースアセテートフタレート、カルボマーホモポリマーA型、カルボマーホモポリマーB型、アミノアルキルメタクリラートコポリマー、及びポロキサマーからなる群から選択されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の医薬組成物において、前記ポリマー性安定化マトリックス形成性成分が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルセルロース、コポリビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ポリビニルアセテートフタレート、セルロースアセテートフタレート、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の医薬組成物において、前記安定な非晶質の固体分散体粒子が、約1000nm未満の平均粒径を有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の医薬組成物において、前記粒径が、約500nm未満、好ましくは250nm未満であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項9】
療法に使用するための、請求項1乃至8の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
増殖性疾患の治療に使用するための、請求項1乃至8の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の医薬組成物において、前記増殖性疾患が、神経線維腫症、結節性硬化症、血管腫及びリンパ管新生、子宮頸癌、肛門癌、及び口腔癌、眼又は眼の癌、胃癌、結腸癌、膀胱癌、直腸癌、肝臓癌、すい臓癌、肺癌、乳癌、子宮頚癌、子宮体癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、腎癌、脳の癌、中枢神経系の癌、頭頸部癌、咽頭癌、皮膚メラノーマ、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、ユーイング肉腫、カポジ肉腫、基底細胞癌及び扁平上皮癌、小細胞肺癌、絨毛癌、横紋筋肉腫、血管肉腫、血管内皮腫、ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、口腔/咽頭癌、食道癌、喉頭癌、リンパ腫、多発性骨髄腫;心臓肥大、加齢黄斑変性、及び糖尿病性網膜症から選択されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の医薬組成物において、前記医薬組成物が食品の摂取の間に与えられることを特徴とする医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難水溶性薬物を含む医薬組成物の分野に関する。詳細には、本発明は、プロテインキナーゼ阻害剤(PKI)及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む医薬組成物に関する。さらに、本発明は、治療上有効な量の前記組成物を投与することを含む、治療の必要のある患者の増殖性疾患を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
正常な細胞の成長及び分化を制御する細胞シグナル伝達経路の成分は、調節不全の場合、細胞増殖性疾患及び癌を起こす。細胞シグナル伝達タンパク質の変異は、そのようなたんぱく質を、不適切なレベルで、又は細胞周期の間の不適切な時に、発現又は活性化するようにさせることがあり、それは、制御されない細胞成長又は細胞間接着性質の変化につながることがある。
【0003】
腫瘍及び癌などの多くの増殖性疾患は、プロテインキナーゼ活性の過剰発現又は上向き調節を含むことが示されてきた。プロテインキナーゼは、リン酸基を化学的に付加することにより(リン酸化)、タンパク質を修飾するキナーゼ酵素である。リン酸化は、通常、酵素活性、細胞部位、又は他のタンパク質との会合を変えることにより、標的タンパク質の機能の変化を起こす。プロテインキナーゼは、自身がリン酸化を制御する標的タンパク質のアミノ酸により細分又は特徴づけることができる。ほとんどのキナーゼはセリンとスレオニンの両方に作用し、チロシンキナーゼはチロシンに作用するが、いくつか(二重特異性キナーゼ)は3種全てに作用する。ヒスチジン残基をリン酸化するヒスチジンキナーゼなど、他のアミノ酸をリン酸化するプロテインキナーゼもある。ヒトゲノムは、約500のプロテインキナーゼ遺伝子を含み、ヒトのタンパク質全ての30%までがプロテインキナーゼにより修飾され得る。キナーゼは、特にシグナル伝達に関与するものを含む、細胞経路の大部分を制御することが知られている。受容体とリガンドの両方の変異、遺伝子再構成、遺伝子増幅、及び過剰発現によるプロテインキナーゼの調節不全は、ヒトの癌の発生及び進行に関与している。したがって、プロテインキナーゼ阻害化合物又はプロテインキナーゼ阻害剤(PKI)は、プロテインキナーゼの過剰発現又は上向き調節により起こるか、又は悪化する疾病の治療に有用である。例えば、チロシンキナーゼ阻害剤(チルホスチンとしても知られるTKI)は、効果的な抗腫瘍剤及び抗白血病剤であることが示されている(Lowery A et.al.,Front Biosci.2011 Jun 1;17:1996-2007)。
【0004】
製剤化学の大きな目的は、例えば、バイオアベイラビリティー及び安定性並びに患者にとっての簡便さを向上させることにより、薬物の効率及び安全性を向上させることである。バイオアベイラビリティーは、活性物質又は治療剤が医薬形態から吸収され、作用部位で利用可能になる速度及び程度を意味する。簡便さ、摂取の容易さ、及び治療に対する患者のコンプライアンスの高さにより最も普通で好ましい送達方法は、経口経路の薬物送達である。しかし、特定の薬物では、消化管からの薬物吸収は、薬物分子の水に対する低い溶解度及び/又は低い膜透過性により限定されている。
【0005】
PKIは、一般に、低いpHでわずかしか溶解せず(例えば、100~1000mg/L)、中性pHでは実際上不溶性の(例えば、0.1~10mg/L)弱塩基である。したがって、PKI系薬物の溶解度及び溶解速度を上げることが、これら薬物のほとんどのバイオアベイラビリティー及び有効性を向上させるために重要である。典型的なPKIは非ポリペチド(non-polypetide)構造を示し、10000ダルトン以下又は5000ダルトン以下など分子量が比較的低い。
【0006】
難水溶性薬物の溶解特性を向上させる方法は、微粒子化、塩又は溶媒和物、錯体及び微小球体の形成などいくつか報告されている。さらに、薬物を含む粒子を形成すること又は難水溶性薬物を親水性賦形剤と混合することによる、固体剤形により与えられるバイオアベイラビリティーを向上させる取り組みがなされている。しかし、従来、これらの方法は、貯蔵時の粒子の物理的安定性、粉砕に関する問題、又は毒性のあることが多い溶媒の除去の困難さに関して本質的な限界を有する。さらに、沈殿するとバイオアベイラビリティーが低下するので、固相から放出される薬物が消化管中で沈殿せず、可能な限り沈殿を少なくし、消化管の水性流体中で水溶性のままでいることが重要である(例えば、Herve J.et al.Pharm Dev Technol.2011 Jun;16(3):278-86参照)。
【0007】
薬物の吸収のほとんどはpHが中性に近い小腸及び大腸で起こるので、pH依存性の溶解度は、PKIなどの難水溶性物質の多くの経口製剤にとって周知の問題である。そのため、PKI系の薬物の経口固体剤形を開発し、その溶解特性を向上させる必要が絶えず存在する(Budha NR,Frymoyer A,Smelick GS,Jin JY,Yago MR,Dresser MJ,Holden SN,Benet LZ,Ware JA.Clin Pharmacol Ther.2012 Aug;92(2):203-13)。したがって、中性(腸内の)pHでのPKI系薬物並びに他の難水溶性薬物の溶解性を向上させる方法が非常に望ましい。
【0008】
米国特許出願公開第20090203709号明細書は、少なくとも1種のチロシンキナーゼ阻害剤、少なくとも1種の薬学的に許容できるポリマー、及び少なくとも1種の薬学的に許容できる可溶化剤の固体分散体生成物を含む医薬剤形を開示している。さらに、その参考文献は、少なくとも1種のチロシンキナーゼ阻害剤、少なくとも1種の薬学的に許容できるポリマー、及び少なくとも1種の薬学的に許容できる可溶化剤の均質なメルトを調製すること及びメルトを固化して固体分散体生成物を得ることを含む、上述の医薬剤形を調製する方法を開示している。
【0009】
EP2105130号明細書は、ポリマー及び非晶質形態の活性薬剤を含む固体分散体又は固溶体を含む医薬製剤を開示している。さらに、製剤は、溶液を安定化させる外部ポリマーを、外部ポリマーの重量%が医薬製剤の全重量の20%未満であるように含む。さらに、その参考文献は、上述の製剤の製造のためのホットメルト押出方法を開示している。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、少なくとも1種のプロテインキナーゼ阻害剤及び少なくとも1種のポリマー性安定化マトリックス形成性成分を含む安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む医薬組成物に関する。任意に、粒子とは別に、又は粒子内に存在する1種以上の可溶化剤を粒子に加えてよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の代表的な組成物中のニロチニブの見かけの溶解度を示すグラフを与える。ニロチニブ塩基とニロチニブHClの両方によるさらなる実験が実施例1に見られる。粒子の詳細は、それぞれ実験3、30、及び37に関して実施例1、表1に記載されている。簡単に述べると、実験30は、ニロチニブHCl及びHPMCP HP55を含む安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子であって、可溶化剤ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーがハイブリッドナノ粒子とは別に存在するものを表す。実験3は、未処理の結晶性ニロチニブHClを表し、実験37は、ニロチニブHCl、HPMCP HP55、及びハイブリッドナノ粒子内に存在する可溶化剤ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーのハイブリッドナノ粒子を表す。グラフで表した実験は、FaSSIF中pH6.5で実施した。
【
図2】
図2は、本発明の代表的な組成物中のエルロチニブの見かけの溶解度を示すグラフを与える。エルロチニブによるさらなる実験が実施例2に見られる。安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子の詳細は、それぞれ実験58、65、及び67に関して実施例2、表7に記載されている。簡単に述べると、実験65は、エルロチニブHCl及びHPMC-ASを含む安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子であって、可溶化剤ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーが安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子と別に存在するものを表す。実験58は、未処理の結晶性エルロチニブHClを表し、実験67は、エルロチニブHCl、HPMC-AS、及びハイブリッドナノ粒子内に存在する可溶化剤ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーの安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を表す。グラフで示した実験は、FaSSIF中pH6.5で実施した。
【
図3】
図3は、本発明の代表的な組成物中のパゾパニブの見かけの溶解度を示すグラフを与える。パゾパニブによるさらなる実験が実施例3に見られる。安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子の詳細は、それぞれ実験84、91、及び93に関して、実施例3、表13に記載されている。簡単に述べると、実験91は、パゾパニブ及びPVP 90Kを含む安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子であって、可溶化剤ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーが安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子と別に存在するものを表し、実験93は、パゾパニブ、PVP 90K、及び安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子内に存在する可溶化剤ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーを含むハイブリッドナノ粒子を表す。実験84は、未処理の結晶性パゾパニブを表す。グラフで示した実験は、FaSSIF中pH6.5で実施した。
【
図4】
図4は、本発明の代表的な組成物中のラパチニブの見かけの溶解度を示すグラフを与える。ラパチニブ塩基とラパチニブトシル酸塩の両方によるさらなる実験は実施例4に見られる。安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子の詳細は、それぞれ実験110、122、及び126に関して、実施例4、表19に記載されている。簡単に述べると、実験122は、ラパチニブ塩基及びHPC EFを含む安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子であって、可溶化剤ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーが安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子とは別に存在しているものを表す。実験110は、未処理のラパチニブ塩基を表し、実験126は、ラパチニブ塩基、HPC LF、及びハイブリッドナノ粒子内に存在する可溶化剤ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーの安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を表す。グラフに示した実験は、FaSSIF中pH6.5で実施した。
【
図5】
図5は、本発明の代表的な組成物中のニロチニブの見かけの溶解度を示すグラフを与える。安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子の詳細は、それぞれ実験127、128、及び129について実施例5、表21に記載されている。簡単に述べると、実験129は、未処理の結晶性ニロチニブHCl、HPMCP HP55、及び可溶化剤ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーの物理的混合物を表す。実験128は、ニロチニブHCl及びHPMCP HP55を含む安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子であって、可溶化剤ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーが安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子と別に存在するものを表す。実験127は、ニロチニブHClとHPMCP HP55の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を表す。グラフに示された実験は、SGF中pH1.4で実施した。
【
図6】
図6は、本発明の代表的な組成物中のゲフィチニブの見かけの溶解度を示すグラフを与える。ゲフィチニブによるさらなる実験は実施例6に見られる。組成物の詳細は、それぞれ実験131、133、135、及び137に関して実施例6、表22に記載される。簡単に述べると、実験131は、未処理の結晶性ゲフィチニブを表す。実験133は、未処理の結晶性ゲフィチニブ、HPMCP HP55、及び可溶化剤ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーの混合物を表す。実験135は、ゲフィチニブとHPMCP HP55の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を表す。実験137は、ゲフィチニブとHPMCP HP55の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子であって、可溶化剤ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーが安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子と別に存在するものを表す。グラフに示された実験は、FaSSIF中pH6.5で実施した。
【
図7】
図7は、本発明の代表的な組成物中のダサチニブの見かけの溶解度を示すグラフを与える。安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子の詳細は、実験138~141に関して実施例7、表24に記載されている。簡単に述べると、実験138は、未処理の結晶性ダサチニブを表す。実験139は、未処理の結晶性ダサチニブ、Kollidon VA64、及び可溶化剤ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーの混合物を表す。実験140は、ダサチニブとKollidon VA64のハイブリッドナノ粒子を表す。実験141は、ダサチニブとKollidon VA64の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子であって、可溶化剤ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーが安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子と別に存在するものを表す。グラフに示された実験は、FaSSIF中pH6.5で実施した。
【
図8】
図8は、本発明の代表的な組成物中のソラフェニブの見かけの溶解度を示すグラフを与える。安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子の詳細は、実験142~145に関して実施例8、表26に記載されている。簡単に述べると、実験142は、未処理の結晶性トシル酸ソラフェニブを表す。実験143は、未処理の結晶性トシル酸ソラフェニブ、HPMCP HP55、及び可溶化剤ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーの混合物を表す。実験144は、トシル酸ソラフェニブとHPMCP HP55の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を表す。実験145は、トシル酸ソラフェニブとHPMCP HP55のハイブリッドナノ粒子であって、可溶化剤ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーが安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子と別に存在するものを表す。グラフに示された実験は、FaSSIF中pH6.5で実施した。
【
図9】
図9は、本発明の代表的な組成物中のクリゾチニブの見かけの溶解度を示すグラフを与える。クリゾチニブによるさらなる実験は実施例10に見られる。組成物の詳細は、それぞれ実験150、152、153、及び156に関して実施例10、表30に記載されている。簡単に述べると、実験150は、未処理の結晶性クリゾチニブを表す。実験152は、未処理の結晶性クリゾチニブ、PVP 30K、及び可溶化剤Cremophor RH40の混合物を表す。実験153は、クリゾチニブとPVP 30Kの安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を表す。実験156は、クリゾチニブとPVP 30Kの安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子であって、可溶化剤Cremophor RH40が安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子と別に存在するものを表す。グラフに示された実験は、FaSSIF中pH6.5で実施した。
【
図10】
図10は、本発明の代表的な組成物中のアキシチニブの見かけの溶解度を示すグラフを与える。アキシチニブによるさらなる実験は実施例11に見られる。組成物の詳細は、それぞれ実験157、158、160、及び162に関して実施例11、表32に記載されている。簡単に述べると、実験157は未処理の結晶性アキシチニブを表す。実験158は、未処理の結晶性アキシチニブ、Kollidon VA64、及び可溶化剤ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーの混合物を表す。実験160は、アキシチニブとKollidon VA64の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を表す。実験162は、アキシチニブとKollidon VA64の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子であって、可溶化剤ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーが安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子と別に存在するものを表す。グラフに示された実験は、FaSSIF中pH6.5で実施した。
【
図11】
図11は、本発明の代表的な組成物中のベムラフェニブの見かけの溶解度を示すグラフを与える。ベムラフェニブによるさらなる実験は実施例12に見られる。組成物の詳細は、それぞれ実験164、166、168、及び170に関して実施例12、表34に記載されている。簡単に述べると、実験164は未処理の結晶性ベムラフェニブを表す。実験166は、未処理の結晶性ベムラフェニブ、CAP、及び可溶化剤ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーの混合物を表す。実験168は、ベムラフェニブとCAPの安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を表す。実験170は、ベムラフェニブとCAPの安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子であって、可溶化剤ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーが安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子と別に存在するものを表す。グラフに示された実験は、FaSSIF中pH6.5で実施した。
【
図12】
図12は、本発明の代表的な組成物中のニロチニブ塩基のシンク条件下で測定された溶解速度を示すグラフを与える。詳細は、実験500及び501に関して実施例13及び13.1、並びに表36に見られる。簡単に述べると、実験500は未処理のニロチニブHClを表す。実験501は、ニロチニブ塩基とHPMCP HP55の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を表す。グラフに示された実験は、FaSSIF中pH6.5で実施した。
【
図13】
図13は、本発明の方法の代表的な組成物中のエルロチニブのシンク条件下で測定された溶解速度を示すグラフを与える。詳細は、実験510及び511に関して実施例13及び13.2、表37に見られる。簡単に述べると、実験510は未処理のエルロチニブHClを表す。実験511は、エルロチニブHClとHPMC ASの安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を表す。
【
図14】
図14は、本発明の代表的な組成物中のパゾパニブのシンク条件下で測定された溶解速度を示すグラフを与える。詳細は、実験520及び521に関して実施例13及び13.3、表38に見られる。簡単に述べると、実験520は未処理のパゾパニブHClを表す。実験521は、パゾパニブHClとPVP90Kの安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を表す。
【
図15】
図15は、本発明の代表的な組成物中のラパチニブのシンク条件下で測定された溶解速度を示すグラフを与える。詳細は、実験530及び531に関して実施例13及び13.4、表39に見られる。簡単に述べると、実験530は未処理のトシル酸ラパチニブを表す。実験531は、ラパチニブ塩基とHPC lfの安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を表す。
【
図16】
図16は、本発明の代表的な組成物中のゲフィチニブのシンク条件下で測定された溶解速度を示すグラフを与える。詳細は、実験540及び541に関して実施例13及び13.5.、表40に見られる。簡単に述べると、実験540は未処理のゲフィチニブを表す。実験541は、ゲフィチニブ及びHPMCP HP55の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を表す。
【
図17】
図17は、本発明の代表的な組成物中のダサチニブのシンク条件下で測定された溶解速度を示すグラフを与える。詳細は、実験550及び551に関して実施例13及び13.6.、表41に見られる。簡単に述べると、実験550は未処理のダサチニブを表す。実験551は、ダサチニブとKollidon VA64の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を表す。
【
図18】
図18は、本発明の代表的な組成物中のソラフェニブのシンク条件下で測定された溶解速度を示すグラフを与える。詳細は、実験560及び561に関して実施例13及び13.7.、表42に見られる。簡単に述べると、実験560は未処理のトシル酸ソラフェニブを表す。実験561は、トシル酸ソラフェニブとHPMCP HP55の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を表す。
【
図19】
図19は、本発明の代表的な組成物中のクリゾチニブのシンク条件下で測定された溶解速度を示すグラフを与える。詳細は、実験570及び571に関して、実施例13及び13.8.、表43に見られる。簡単に述べると、実験570は未処理のクリゾチニブを表す。実験571は、クリゾチニブとPVP 30Kの安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を表す。
【
図20】
図20は、本発明の代表的な組成物中のアキシチニブのシンク条件下で測定された溶解速度を示すグラフを与える。詳細は、実験580、581、及び582に関して実施例13及び13.9.、表44に見られる。簡単に述べると、実験580は未処理のアキシチニブを表す。実験581は、アキシチニブとKollidon VA64のハイブリッドナノ粒子を表し、実験582は、アキシチニブとHPMC ASの安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を表す。
【
図21】
図21は、本発明の代表的な組成物中のベムラフェニブのシンク条件下で測定された溶解速度を示すグラフを与える。詳細は、実験590、591、及び592に関して実施例13及び13.10.、表45に見られる。簡単に述べると、実験590は未処理のベムラフェニブを表す。実験591は、ベムラフェニブとKollidon VA64のハイブリッドナノ粒子を表し、実験592は、ベムラフェニブとCAPの安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を表す。
【
図22】
図22は、それぞれPVAP及びHP55と称される、ニロチニブ塩基とポリマー性安定化マトリックス形成性成分PVAP及びHPMCP HP55の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子(I/P)並びにそれぞれHP55s及びPVAPsと称される、可溶化剤ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーが加えられた安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子(I/P+S)を含む代表的な組成物のビーグル犬への経口投与の後の血漿中レベルのインビボ測定を示すグラフを与える。実験は、中性の胃の内容物を持つように前処理されたビーグル犬で実施した。安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子は実験146及び147(実施例9)でさらに記載され、インビボ実験の詳細は実施例14に述べられる。実験は、基準としてニロチニブHCl(「Tasigna」)を含む市販の製剤を使用した。
【
図23】
図23は、それぞれPVAP及びHP55と称される、ニロチニブ塩基とポリマー性安定化マトリックス形成性成分PVAP及びHPMCP HP55の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子(I/P)並びにそれぞれPVAPs及びHP55sと称される、可溶化剤ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーが加えられた安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子(I/P+S)を含む代表的な組成物のビーグル犬への経口投与後の血漿中レベルのインビボ測定を示すグラフを与える。実験は、酸性の胃の内容物を持つように前処理されたビーグル犬で実施した。安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子は実験146及び147(実施例9)でさらに記載され、インビボ実験の詳細は実施例14に述べられる。実験は、基準としてニロチニブHCl(「Tasigna」)を含む市販の製剤を使用した。
【
図24】
図24は、それぞれPVAP及びHP55と称される、ニロチニブ塩基とポリマー性安定化マトリックス形成性成分PVAP及びHPMCP HP55の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子(I/P)並びにそれぞれPVAPs及びHP55sと称される、可溶化剤ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーがハイブリッドナノ粒子の形成後に加えられた、安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子(I/P+S)を含む代表的な組成物のビーグル犬への経口投与後の血漿中レベルのインビボ測定を示すグラフを与える。実験は、酸性又は中性の胃の内容物を持つように前処理されたビーグル犬で実施した。安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子は実験146及び147(実施例9)でさらに記載され、インビボ実験の詳細は実施例14に述べられる。
【
図25】
図25は、それぞれPVAP及びHP55と称される、ニロチニブ塩基とポリマー性安定化マトリックス形成性成分PVAP及びHPMCP HP55の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子(I/P)を含む代表的な組成物のビーグル犬への経口投与後の血漿中レベルのインビボ測定を示すグラフを与える。実験は、酸性又は中性の胃の内容物を持つように前処理されたビーグル犬で実施した。安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子は実験146及び147(実施例9)でさらに記載され、インビボ実験の詳細は実施例14に述べられる。
【
図26】
図26は、室温での11か月の保存の前及び後の、代表的な組成物の見かけの溶解度を示すグラフを与える。実験は、実験171及び実験172として、可溶化剤ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーが添加された、ニロチニブ塩基、HPMCP HP55を含む安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子(I/P+S)を与え、さらなる詳細は実施例15に述べられている。
【
図27】
図27は、40%薬物充填量(drug load)での安定なハイブリッドナノ粒子、I/Pニロチニブ塩基/HPMCP HP55の重ね合わせたX線粉末回折パターン(XRPD)を与える。最初(上)及び周囲温度での12か月の保存後(下)。XRPDパターンは、目視での比較を向上させるために相殺されている。さらなる詳細は実施例15に述べられている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書に引用した特許、特許出願、及び刊行物は全て、その全体として引用により本明細書に組み込まれる。
【0013】
本明細書では、「ハイブリッドナノ粒子」という句は、一方はPKIであり他方はポリマー性安定化マトリックス形成性成分である少なくとも2種の成分から構成された、典型的には平均サイズの範囲が1から1000nmである一群の粒子を意味する。粒子は、結晶性でも、非晶質でも、それらの混合物でもよい。典型的には、本開示の意味では、粒子は、「非晶質」又は「基本的に非晶質」である。これは、全てでないとしてもほとんど全ての粒子の中身が、非晶質プロテインキナーゼ阻害剤及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分を含むことを意味する。非晶性のレベル又は程度は、少なくとも60%、70%など、80%又は85%など、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%超などであり、100%は全ての物質が粒子中で非晶質であることを表す。
【0014】
結晶性PKIの定量化又は結晶性(crysalline)PKIが存在しないことは、Saleki-Gerhardt A et al.Int J Pharm.1994;101:237-247)に記載されるX線粉末回折法(metods)又はDash AK et al.J Pharm Sci.2002 Apr;91(4):983-90に記載される水蒸気収着により測定できる。
【0015】
「固体分散体粒子」という用語は、先に定義された「ハイブリッドナノ粒子」に関連するが、固体分散体粒子は、典型的には大きさが大きいか、又ははるかに大きい(典型的には、μm~mm、Wu K.et al.J Pharm Sci.2009 Jul;98(7):2422-3に記載の通り)。ハイブリッドナノ粒子がより小さいことは、結晶化を防ぐようにPKIをさらに安定化するように寄与する。典型的には、ハイブリッドナノ粒子は、平均的な大きさの範囲が、500nm未満など1から1000nm、好ましくは250nm未満である。
【0016】
「安定な」という句は、本発明の方法により製造された粒子の安定性のレベルを意味し、ハイブリッドナノ粒子が、周囲温度(例えば18~25℃)で6~12か月の保存の間その物理的状態に留まる能力として測定できる。安定性のレベルは、そのような保存の後の、例えば80分にわたる粒子の溶解速度のAUC測定により測定できる。
【0017】
「プロテインキナーゼ阻害剤」又は「PKI」という句は、1種以上のプロテインキナーゼの作用を特異的に阻害する1種の酵素阻害剤を意味する。PKIには、プロテインキナーゼ阻害剤及びチロシンキナーゼ阻害剤、例えば、アキシチニブ、アファチニブ、ボスチニブ、クリゾチニブ、セディラニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、フォスタマチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、レスタウルチニブ、モテサニブ、ムブリチニブ、ニロチニブ、パゾパニブ、ペガプタニブ、ルキソリチニブ、ソラフェニブ、セマクサニブ、スニチニブ、タンデュニチブ(tandunitib)、チピファミブ(tipifamib)、バンデタニブ、及びベムラフェニブ;又はその塩若しくは水和物若しくは溶媒和物、又はそれらの組み合わせがあるが、これらに限定されない。
【0018】
「ポリマー性安定化マトリックス形成性成分」という句は、PKIと共にハイブリッドナノ粒子に存在する成分を意味する。典型的には、前記ポリマー性安定化マトリックス形成性成分は、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、HPC ef、HPC lf、及びHPC jf)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、Methocel E3及びE15並びにPharmacoat)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC AS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(例えば、HPMCP-HP55)、ポリビニルピロリドン(例えば、PVP 30K及びPVP 90K)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、コポリビドン(例えば、Kollidon VA 64)、クロスポビドン(crospovidon)(例えば、Kollidon CL)、メタクリル酸とエチルアクリレートのコポリマー(例えば、Kollicoat ME)、メタクリル酸とメチルメタクリラートのコポリマー(例えば、Eudragit L100)、ポリエチレングリコール(PEG)、DLラクチド/グリコリドコポリマー、ポリDL-ラクチド、セルロースアセテートフタレート(CAP)、アミノアルキルメタクリラートコポリマー(例えば、Eudragit RL100、RL PO、又はRS PO)、カルボマーホモポリマーA型(例えば、Carbopol 971P)、カルボマーホモポリマーB型(例えば、Carbopol 974P)、及びポロキサマー(例えば、Pluronics、Kolliphor)があるが、これらに限定されないポリマー構造を示す。
【0019】
「ポリマー」又は「ポリマー性」という用語は、本明細書において、互いに結合してより大きな分子を形成したモノマーでできている化合物を意味するように使用される。ポリマーは、一般的に、互いに結合した20以上のモノマーからなるが、互いに結合した20未満のモノマーも本明細書においてポリマーと称される。
【0020】
「可溶化剤」という用語は、物質の溶解度を高める化合物を意味するように本明細書において使用され、例えば、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマー(Soluplus)、d-α-トコフェロール酸ポリエチレングリコール1000サクシネート(TPGS)、PEG-40水添ヒマシ油(Cremophor RH40)、PEG-35ヒマシ油(Cremophor EL)、PEG-40ステアレート(MYRJ 540)、ハードファット(例えば、Gelucire 33/01)、ポリオキシルグリセリド(例えば、Gelucire 44/14)、ステアロイルポリオキシルグリセリド(例えば、Gelucire 50/13)、PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリド(例えば、Labrasol)、及びポロキサマー(例えば、Pluronics、Kolliphor)があるが、これらに限定されない。
【0021】
本明細書では、「一次粒子」という句は、沈殿プロセスの間に形成される最小の粒状物体を指す。粒子の境界はSEM顕微鏡法により分析される。プロセスパラメーターによって、一次粒子は、共に、より密度の高い又は密度の低い多孔性ネットワークを作り、より大きな塊状の粒子又は橋架け粒子を形成することがある。集塊に影響するパラメーターは、例えば、一次粒子の柔らかさを変え得る温度;沈殿時間、PKI溶液の濃度に影響する溶媒/逆溶媒の比;及びポリマー性安定化及びマトリックス形成化剤(類)の性質である。一次粒子の平均サイズは、典型的には、1から1000nm、好ましくは500nm未満、より好ましくは250nm未満である。
【0022】
本明細書では、「超臨界」及び「超臨界流体」という句は、臨界温度(Tc)以上の温度と臨界圧力(Pc)以上の圧力の両方に設定されている化学物質を指す。
【0023】
本明細書では、「亜臨界」及び「亜臨界流体」という句は、臨界温度(Tc)と臨界圧力(Pc)の一方が、それぞれその臨界温度(Tc)又は臨界圧力(Pc)より高い温度又は圧力に設定され、臨界温度(Tc)と臨界圧力(Pc)の他方が、それぞれその臨界温度(Tc)又は臨界圧力(Pc)より低い温度又は圧力に設定されることを本明細書では指す。
【0024】
「曲線下面積(AUC)」という句は、x軸が時間を表しy軸が可溶化された薬物濃度を表す、濃度時間曲線下面積を意味する。
【0025】
「見かけの溶解度」という句は、見かけの平衡にある物質の濃度を意味する。実施例の項をさらに参照されたい。
【0026】
「過飽和」という用語は、本明細書において、通常の状況下で溶媒又は媒体により溶け得るよりも多く溶解した物質を含む溶媒を意味するように使用される。
【0027】
本明細書では、「Soluplus」又は「ソルプラス」という用語は、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーを意味する。
【0028】
本明細書では、「TPGS」という用語は、d-α-トコフェロール酸ポリエチレングリコール1000サクシネートを意味する。
【0029】
本明細書では、「Chremophor RH40」という用語は、PEG-40水添ヒマシ油を意味する。
【0030】
本明細書では、「PVAP」という用語は、ポリビニルアセテートフタレートを意味する。
【0031】
本明細書では、「PVP 90K」という用語は、ポリビニルピロリドンK-90を意味する。
【0032】
本明細書では、「PVP 30K」という用語は、ポリビニルピロリドンK-30を意味する。
【0033】
本明細書では、「HPMC-AS」という用語は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートを意味する。
【0034】
本明細書では、「HPMCP HP55」という用語は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートを意味する。
【0035】
本明細書では、「HPC」という用語は、HPC EF及びHPC LFなどのヒドロキシプロピルセルロースを意味する。
【0036】
本明細書では、「Kollidon VA64」という用語は、コポリビドンを意味する。
【0037】
本明細書では、「CAP」という用語は、セルロースアセテートフタレートを意味する。
【0038】
本発明のハイブリッドナノ粒子を試験する目的で使用される溶解媒体には、FaSSIFと称される空腹時人工腸液、FeSSIFと称される摂食時人工腸液、及びSGFと称される人工胃液がある。FaSSIF媒体は、空腹状態を表すように調整されており、約6.5のpH並びに特定の浸透圧性質を有する。FeSSIF媒体は、摂食状態を表すように調整されており、約5のpH並びに特定の浸透圧性質を有する。SGFは胃液を表すように調整されており、約1.4のpH並びに特定の浸透圧性質を有する。FaSSIF、FeSSIF、及びSGF媒体は、一般的に、難水溶性薬物の溶解のインビトロモデルに使用される。媒体の選択は、粒子が溶解して吸収されることが望ましい消化管内の位置及び条件(空腹又は摂食)に依存するだろう。これらの流体に関するさらなる詳細は、例えば、Herve J.et al.Pharm Dev Technol.2011 Jun;16(3):278-86及びJantratid,E.,and Dressman,J.Dissolut.Technol.2009 8,21-25に記載されている。
【0039】
「非晶質形態」という句は、非結晶性固体形態を意味する。溶解の容易さは、少なくとも部分的に、結晶又は非晶質の固相からの成分の溶解に要するエネルギーの量に起因し得る。非晶質粒子は、同じ化合物の結晶性粒子と比べて、溶解のために要するエネルギーが低い。
【0040】
本発明の組成物は、PKI又は2種以上のPKIの組み合わせによる粒子を含む。しかし、粒子は、1種以上のPKIと1種以上の薬物など少なくとも1種のさらなる有効成分を含み得る。様々な種類のPKIを効果的に利用できる。
【0041】
PKI(プロテインキナーゼ阻害剤)という用語は、本明細書では、そのようなプロテインキナーゼ阻害化合物の水和物、溶媒和物(アルコラート)、薬学的に許容できる酸性塩、塩基性塩、又は共結晶も含むものとする。
【0042】
本明細書では、水不溶性又は難水溶性(又は疎水性)化合物という用語は、25℃の水に対する溶解度が1g/100ml未満、特に中性pHの純水に対して0.1g/100ml未満である化合物を意味する。
【0043】
本発明の組成物に含まれる安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子は、典型的には、本明細書の別の場所に記載される粒子の形態である。より大きい粒子を形成する異なる方法がいくつかあり、例えば、造粒、溶融押出、噴霧乾燥、沈殿などであるが、これらは全て、典型的には、医薬品有効成分(API)とポリマー性安定化マトリックス形成性成分の混合物の形成で始まることを包含する。本発明の組成物中に含まれる粒子は、ハイブリッドナノ粒子を生成する連続的プロセスにより製造される。この文脈での連続的プロセスは、粒子形成が連続的に進行するのと同時に、その形成後に混合物からハイブリッドナノ粒子が連続的に引き抜かれ、回収され、貯留されることを意味する。好ましい方法において、すなわち沈殿方法において、これは、好ましくは流体の流れの形態である、PKIの溶液である流体が、好ましくは逆溶媒流体の流れの形態である、逆溶媒の流体と混合されることを意味する。ポリマー性安定化マトリックス形成性成分は、その溶解度特性に応じて、2つの流体の一方にでも両方にでも存在してよい。2つの流体の混合は、混合機能、例えば、混合チャンバー内で実施される。プロセスが連続的である場合、すなわち2つの流体が流体の流れである場合、混合機能は、典型的には、混合された流体の流れが通過すると同時にハイブリッドナノ粒子が貯留される粒子形成分離機能に関連する。粒子に取り込まれずに粒子の特性を変化させる作用剤を、混合工程の前に、2つの流体の一方にでも両方にでも加えることができる。流体は、典型的には、従来の液体又は超臨界流体であり、超臨界流体は亜臨界流体(すなわち、圧力と温度の一方のみがその超臨界値を超えている流体)も含む。典型的な組み合わせは、a)API溶液と逆溶媒の両方に従来の(すなわち非超臨界)液体、b)APIの超臨界溶液と組み合わせた逆溶媒用の従来の液体、c)API溶液用の従来の液体と組み合わせた逆溶媒用の超臨界流体、及びd)2つの流体の両方に超臨界流体である。特定の変形体において、逆溶媒は省略できる。次いで、APIとポリマー性安定化マトリックス形成性成分の両方を含む、好ましくは超臨界である流体の流れは、粒子形成機能内に広げられる。上述の沈澱方法において、流体の少なくとも一方が超臨界状態であることが好ましい。このような種類の沈澱方法は、国際公開第2005061090号パンフレット(Censdelivery AB)、国際公開第2009072950号パンフレット(XSpray Microparticles AB)、国際公開第2009072953号パンフレット(XSpray Microparticles AB)、国際公開第2011159218号パンフレット(XSpray Microparticles AB)、及びこれらの公報に引用されている参考文献において議論されている。
【0044】
「溶液」という用語は、溶質が、真の溶質と、コロイド状寸法(典型的には1~1000nm)で製造すべき粒子より小さい微小な粒子のいずれかであることを包含する。
【0045】
好ましい粒子形成システムは、XSpray Microparticles AB,Swedenにより開発された「Right Size system」である。この技術の詳細な説明は、先の段落の国際公開特許公報に見出すことができる。系の重要な特性は、2つの流体の流れが、45°~135°の区間、優先的には約90°の角度で、ノズル内で一体化し、粒子形成/分離機能中に噴霧されるべきことである。原則として、系は所定の大きさ/形態の粒子を製造できる。本明細書では、Right Size system及び装置は、薬物としてのPKI及び超臨界流体逆溶媒としてのCO2の非限定的な例を使用して説明されるだろう。
【0046】
系は、API溶液と称される液体溶媒に溶解したPKI用の1つのポンプ輸送構成及び逆溶媒、例えばCO2用の1つのポンプ輸送構成からなるが、他の逆溶媒も適宜利用できる。各ポンプ輸送構成は、プロセス条件の制御に使用される流量計及び圧力計などの装置を含む。これら2つのポンプ輸送構成は、スプレーノズルで、流体的に接続している。
【0047】
液体API溶液の流れは、スプレーノズル内で、流動状態下でCO2の流れと混合される。ポリマー性安定化マトリックス形成性成分は、API溶液と、CO2の流れのいずれかに存在する。これらの流れはノズルの出口で、制御された条件下(典型的には圧力及び温度)で沈殿容器に噴霧される。CO2は逆溶媒として作用し、APIをポリマー性安定化マトリックス形成性成分と共に沈殿させて微粒子にする。粒子は、濾過構成により容器中に貯留される。典型的には、背圧調整弁が、沈殿容器内の圧力調整に使用される。
【0048】
限定はされないが例えばパゾパニブ及びエルロチニブなど特定の薬物のハイブリッドナノ粒子を調製するには、モディファイアと称される追加の溶媒をCO2中に注入するための余分なポンプ輸送構成を備えることが有利になり得る。ここで、ポンプ輸送構成制御装置がモディファイアのために設置され、モディファイアは、ノズルに入る前にミキサー中でCO2と混合される。
【0049】
系を使用する際に、系のオペレーターは、典型的には、流量、圧力、及び温度が望ましい定常状態に達するまで、CO2、「PKI様溶液」(PKI溶液に組成が似ているがPKIも賦形剤も含まない溶液)、及びモディファイア(使用される場合)をポンプ輸送して系に通すことにより、系を平衡化することから開始する。系の設定のための重要なパラメーターは、PKI溶液組成、PKI溶液流量、CO2流量、CO2の圧力及び温度、モディファイアが使用される場合その性質及びその流量である。
【0050】
次に、「PKI様溶液」はPKI溶液に代えられて、溶液が製造され、混合の下流、例えば、ノズル出口の下流で貯留される。その後、系は、典型的には、「PKI様溶液」をポンプ輸送して系に通すことにより洗浄される。粒子は、残存溶媒を除くために、貯留された粒子に大量のCO2を流すことにより乾燥される。次いで、沈殿容器は圧力を除かれ、粒子が回収できる。
【0051】
溶液/溶媒及び逆溶媒は、典型的には互いに混和性である。粒子形成機能、及び/又は混合機能中などこの機能の上流の圧力及び温度が、逆溶媒に関して超臨界又は亜臨界状態を生み出す。
【0052】
溶液中のPKIの濃度は、典型的には、飽和濃度の50%以下など、60%以下など、75%以下など、85%以下など、又は95%以下など飽和濃度より下である。好適な濃度は、典型的には、下限を005%以下、又は0.1%として、20%以下の区間で、10%以下、又は5%以下、又は3%以下(全てw/v%)などに見出される。溶媒に関する「揮発性」という用語は、大気圧で、150℃以下、又は100℃以下などの200℃以下の沸点を意味する。例は、無機溶媒及び有機溶媒であり、ジメチルスルホキシド及びトリフルオロエタノール及びそれらの混合物が特に強調される。溶媒という用語は、互いに混和性である液体の混合物を含む。溶液は、PKIの溶解度を増加又は減少させる作用剤、例えば、酸性、アルカリ性、緩衝成分及び/又は他の有機溶媒を含み得る。
【0053】
逆溶媒として使用できる実例となる流体は、
a)室温及び大気圧で気体であるか、又は
b)室温及び大気圧で液体である。
【0054】
逆溶媒は、典型的には、小さい液滴中に容易に分散する能力並びに噴霧剤及び溶液中のPKIに対する逆溶媒として作用する能力に関して選択される。
【0055】
グループ(a)による化合物/元素は、二酸化炭素(Pc=74バール及びTc=31℃)(好ましい)、亜酸化窒素(Pc=72バール及びTc=36℃)、六フッ化硫黄(Pc=37バール及びTc=45℃)、エタン(Pc=48バール及びTc=32℃)、エチレン(Pc=51バール及びTc=10℃)、キセノン(Pc=58バール及びTc=16℃)、トリフルオロメタン(Pc=47バール及びTc=26℃)、クロロトリフルオロメタン(Pc=39バール及びTc=29℃)、及び窒素(Pc=34バール及びTc=-147℃)、並びにこれらの化合物/元素を含む混合物から選択してよい。Pcは臨界圧力を意味し、Tcは臨界温度を意味する。グループ(b)による化合物は、典型的には、先に溶媒に関して議論されたものと同じ一般的なタイプであるが、溶液中に存在するPKIが逆溶媒中に難溶性でなくてはならないという点が異なる従来の液体から選択される。グループ(b)の特定の溶媒は、メタノール、エタノール、アセトン、水及びこれらの流体の1種以上を含む混合物を含む。
【0056】
上記グループ(a)の逆溶媒は、典型的には、粒子形成機能及び/又はこの機能の上流、例えば混合機能及びこの後者の機能の上流などにおいて、i)超臨界状態(超臨界流体)又はii)亜臨界状態(亜臨界流体)を与える圧力及び温度で使用される。
【0057】
変形体(i)は、典型的には、使用される逆溶媒の臨界圧力Pc及び臨界温度Tcを超える圧力及び温度を意味する。圧力に関して、これは、典型的には、(1.0-7.0)×Pcの区間内、又は10バール以上の区間内、好適には20バール以上、優先的には30バール以上Pcより高い圧力で、実例となる上限がPcより100バール、200バール、及び300バール高い。温度に関して、これは、典型的には、(1.0-4.0)×Tc以内、又はTcの5℃以上の区間、好適には10℃以上、優先的には15℃以上であり、実例となる上限がTcより10℃上、40℃上、及び50℃上である。
【0058】
変形体(ii)は、温度と圧力の少なくとも一方が、優先的には温度のみが、臨界値(それぞれTc及びPc)より下であることを意味する。そのため、温度は、(0.1-1)×Tcの区間内、(0.5-1)×Tc、又はそれより低くなり得る。さらに、温度は、-10℃又は-30℃など低いことがある。これらの温度は、先の段落で定義された圧力とも、利用される逆溶媒のPcよりも低い圧力とも組み合わせることができる。二酸化炭素に関して、これは、粒子形成機能中の温度が+31℃未満、約+25℃など、又はそれより低く、74バールより高い圧力又はそれより低い圧力と組み合わされることを意味する。
【0059】
先のグループ(b)の逆溶媒は、典型的には、亜臨界状態において、すなわち亜臨界流体として使用される。
【0060】
本発明の一態様において、少なくとも1種のプロテインキナーゼ阻害剤及び少なくとも1種のポリマー性安定化マトリックス形成性成分の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む医薬組成物であって、任意に、少なくとも1種の薬学的に許容できる可溶化剤をさらに含む医薬組成物が提供される。
【0061】
この態様の一実施形態において、少なくとも1種のプロテインキナーゼ阻害剤及び少なくとも1種のポリマー性安定化マトリックス形成性成分の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む医薬組成物であって、少なくとも1種の薬学的に許容できる可溶化剤をさらに含む医薬組成物が提供される。典型的には、前記可溶化剤は、組成物中でハイブリッドナノ粒子とは離れて存在する。又は、典型的には、前記可溶化剤は、ハイブリッドナノ粒子の表面に分布する。前記可溶化剤は、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマー、d-α-トコフェロール酸ポリエチレングリコール1000サクシネート、及びPEG-40水添ヒマシ油又はPEG-35水添ヒマシ油などの水添ヒマシ油から選択できる。さらに、前記可溶化剤はポロキサマーでよい。
【0062】
少なくとも1種のプロテインキナーゼ阻害剤及び少なくとも1種のポリマー性安定化マトリックス形成性成分を含む安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物は、増加した溶解速度を示す。
【0063】
その結果、この態様の他の実施形態において、少なくとも1種のプロテインキナーゼ阻害剤及び少なくとも1種のポリマー性安定化マトリックス形成性成分を含む安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物であって、未処理の結晶性形態の前記プロテインキナーゼ阻害剤の溶解速度と比べて前記プロテインキナーゼ阻害剤の増加した溶解速度を示すハイブリッドナノ粒子を含む組成物が提供される。
【0064】
典型的には、前記溶解速度は、例えば、米国薬局方(USP4)に従って、シンク条件のフロースルーセルシステムにより測定される。ハイブリッドナノ粒子のシンク条件での溶解測定は、希望する量の粉末を、フロースルーセルシステム(SOTAX,Allschwill,Switzerland)に加え、セルをその装置に取り付け、次いで、ポンプにより適切な媒体(典型的には、FaSSIF、FeSSIF、SGF)を粉末に通すことからなる方法で測定できる。装置の温度は、典型的には37℃に設定される。セルに加えられる粉末の量は、粉末の薬物充填量に依存する。粉末の正確な量は、粉末の薬物充填量分析から得られる結果から計算できる。PKIをフロースルーセルに加えることができ、5から25ml媒体/分の流量が、ポンプ輸送により粉末に通される。セルを通る媒体の1mlの試料が所定の時点で回収され、その後HPLC(例えば、C18カラムEclipse、4.6mm×15cm、1ml/分、検出254から400nm)により分析される。試料は、典型的には、媒体がフロースルーセルから出てきた瞬間から0、0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、及び40分後に採取される。フロースルーセルに加えられた活性物質の量のうち可溶化された累積%を計算して時間(分)に対してプロットできる。グラフの初期の傾き(「初期溶解速度」、0~10分に相当)を見積もり、ある溶解媒体における37℃のシンク条件での物質の溶解速度として採用することができる。
【0065】
好ましくは、溶解速度は、溶解の最初の0から10分以内に測定される。
【0066】
増加した溶解速度は、好ましくは、前記安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子と未処理の結晶性形態の前記プロテインキナーゼ阻害剤の溶解速度比として溶液中で測定される。好ましくは、前記比は、約1.5:1~約500:1、約10:1~約30:1などである。
【0067】
好ましくは、溶解速度は、FaSSIF若しくはFeSSIFなどの腸内pHの溶液中で、又はSGFなどの胃内pHの溶液中で測定される。
【0068】
典型的には、前記溶解速度は、例えば、シンク条件においてフロースルーセルシステムにより測定される。安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子のシンク条件の溶解測定は、希望する量の粉末を、フロースルーセルシステム(SOTAX,Allschwill,Switzerland)に加え、セルをその装置に取り付け、次いで、ポンプにより適切な媒体(典型的には、FaSSIF、FeSSIF、SGF)を粉末に通すことからなる方法で測定できる。装置の温度は、典型的には37℃に設定される。セルに加えられる粉末の量は、粉末の薬物充填量に依存する。粉末の正確な量は、粉末の薬物充填量分析から得られる結果から計算できる。PKIをフロースルーセルに加えることができ、5から25ml媒体/分の流量が、ポンプ輸送により粉末に通される。セルを通る媒体の1mlの試料が所定の時点で回収され、その後HPLC(例えば、C18カラムEclipse、4.6mm×15cm、1ml/分、検出254から400nm)により分析される。試料は、典型的には、媒体がフロースルーセルから出てきた瞬間から0、0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、及び40分後に採取される。フロースルーセルに加えられた活性物質の量のうち可溶化された累積%を計算して時間(分)に対してプロットできる。グラフの初期の傾き(「初期溶解速度」、0~10分に相当)を見積もり、ある溶解媒体における37℃のシンク条件での物質の溶解速度として採用することができる。
【0069】
この態様の他の実施形態において、少なくとも1種のプロテインキナーゼ阻害剤及び少なくとも1種のポリマー性安定化マトリックス形成性成分を含む安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物であって、溶液中の阻害剤の溶解度増加を生み出し、前記増加が、未処理の結晶性形態の阻害剤の曲線下面積(AUC)に比べて、前記溶液中の約40分から約90分の間のAUCとして測定される組成物が提供される。典型的には、前記増加は、約2:1から約10000:1であり、ここで、1は未処理の結晶性形態の阻害剤のAUCを表す。増加は、FaSSIF若しくはFeSSIFなどの腸内pHの溶液中で測定することも、又はSGFなどの胃内pHの溶液中で測定することもできる。
【0070】
本発明のポリマー性安定化マトリックス形成性成分には、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、HPC ef、HPC lf、及びHPC jf)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、Methocel E3及びE15並びにPharmacoat)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC AS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(例えば、HPMCP HP55)、ポリビニルピロリドン(例えば、PVP 30K及びPVP 90K)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、コポリビドン(例えば、Kollidon VA 64)、クロスポビドン(例えば、Kollidon CL)、メタクリル酸とエチルアクリレートのコポリマー(例えば、Kollicoat ME)、メタクリル酸とメチルメタクリラートのコポリマー(例えば、Eudragit L100)、ポリエチレングリコール(PEG)、DLラクチド/グリコリドコポリマー、ポリDL-ラクチド、セルロースアセテートフタレート(CAP)、カルボマーホモポリマーA型(例えば、Carbopol 971P)、カルボマーホモポリマーB型(例えば、Carbopol 974P)、アミノアルキルメタクリラートコポリマー(例えば、Eudragit RL100、RL PO、又はRS PO)、及びポロキサマー(例えば、Pluronics、Kolliphor)があるが、これらに限定されない。
【0071】
したがって、この態様の他の実施形態において、前記ポリマー性安定化マトリックス形成性成分は、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテートフタレート、コポリビドン、クロスポビドン、メタクリル酸とエチルアクリレートのコポリマー、メタクリル酸とメチルメタクリラートのコポリマー、ポリエチレングリコール、DLラクチド/グリコリドコポリマー、ポリDL-ラクチド、セルロースアセテートフタレート、カルボマーホモポリマーA型、カルボマーホモポリマーB型、アミノアルキルメタクリラートコポリマー、及びポロキサマーから選択される。好ましくは、前記ポリマー性安定化マトリックス形成性成分は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルセルロース、コポリビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ポリビニルアセテートフタレート、セルロースアセテートフタレート、及びポリビニルピロリドンから選択される。
【0072】
この態様の他の実施形態において、非晶質の粉末X線回折パターンを与えることにより特徴づけられる、少なくとも1種のプロテインキナーゼ阻害剤及び少なくとも1種のポリマー性安定化マトリックス形成性成分を含む安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物が提供される。
【0073】
この態様の他の実施形態において、室温で6か月以上の保存の後に前記安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子の溶解速度が少なくとも約90%に安定のままである、少なくとも1種のプロテインキナーゼ阻害剤及び少なくとも1種のポリマー性安定化マトリックス形成性成分を含む安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物が提供される。
【0074】
この態様の他の実施形態において、前記プロテインキナーゼ阻害剤は、ラパチニブ、パゾパニブ、ニロチニブ、エルロチニブ、ダサチニブ、ゲフィチニブ、ソラフェニブ、クリゾチニブ、ベムラフェニブ、及びアキシチニブからなる群から選択されるチロシンキナーゼ阻害剤;又はその塩若しくは水和物若しくは溶媒和物、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、他のPKIを使用することが有利になり得る。PKIの例には、アファチニブ、ボスチニブ、セディラニブ、フォスタマチニブ、イマチニブ、レンバチニブ、レスタウルチニブ、モテサニブ、ムブリチニブ、ペガプタニブ、ルキソリチニブ、セマクサニブ、スニチニブ、タンデュニチブ、チピファミブ、及びバンデタニブ;又はその塩若しくは水和物若しくは溶媒和物、又はそれらの組み合わせがあるが、これらに限定されない。
【0075】
この態様の他の実施形態において、前記安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子は、平均粒径が、約500nm未満などの約1000nm未満、好ましくは250nm未満である。
【0076】
この態様の他の実施形態において、前記溶媒は、DMSO及びトリフルオロエタノールから選択される有機溶媒、又はこれらの溶媒の混合物、又はこれらの溶媒と他の有機溶媒の混合物、例えばDMSO/アセトン、DMSO/テトラヒドロフラン、又はトリフルオロエタノール/酢酸エチルなどである。
【0077】
本発明の組成物は溶解することができ、プロテインキナーゼ阻害剤は、周囲環境においてpHに依存せずに、特に、約pH1.2から約pH2.1、好ましくは約1.7などの胃内pHと、約pH4.5から約pH8、好ましくは約6のpHなどの腸内pHとで典型的にはおよそ等しい量で全身吸収され得る。全身吸収されるとは、プロテインキナーゼ阻害剤が安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子から放出され、全身の血流により吸収されることを意味する。したがって、この態様の他の実施形態において、前記プロテインキナーゼ阻害剤が、pHに依存せずに全身吸収される組成物が提供される。典型的には、前記プロテインキナーゼ阻害剤は、胃内pHと腸内pHの両方でおよそ等しい量で全身吸収される。好ましくは、前記酸性pHは約pH1.4であり、好ましくは、前記中性pHは約pH6.5である。
【0078】
およそ等しい量とは、曝露の後の血流中のプロテインキナーゼ阻害剤の濃度がおよそ似通っていることを意味する。これは、血流中のプロテインキナーゼ阻害剤の濃度が、胃内pH条件(A)での投与後に測定されて、腸内pH条件での投与後に測定される(N)血流中のプロテインキナーゼ阻害剤の濃度と比較される比率により表すことができる。典型的には、比率A:Nは、約0.75:1から約1.5:1、好ましくは約1:1から約1.25:1である。血流中のプロテインキナーゼ阻害剤の濃度測定は、0~24時間の間の曲線下面積(AUC)、最大濃度(Cmax)、又はバイオアベイラビリティーとして実施できる。
【0079】
したがって、この態様の他の実施形態において、少なくとも1種のプロテインキナーゼ阻害剤及び少なくとも1種のポリマー性安定化マトリックス形成性成分を含む安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物であって、胃内pH条件で全身吸収されたプロテインキナーゼ阻害剤の濃度を、腸内pH条件で全身吸収されたプロテインキナーゼ阻害剤の濃度と比較したものが、約0.75:1から約1.5:1、好ましくは約1:1から約1.25:1である組成物が提供される。典型的には、前記胃内pH条件は約1.4のpHを表し、前記腸内pH条件は約6のpHを表す。典型的には、濃度は、組成物曝露の0~24時間の間の曲線下面積(AUC)として、又は最大濃度(Cmax)として測定される。
【0080】
全身吸収されたプロテインキナーゼ阻害剤の量は、種々の方法で測定できる。本開示の実施例14において、種々のpHで、すなわち酸性及び中性条件の両方で、全身吸収されたプロテインキナーゼ阻害剤を測定する方法が提供されている。
【0081】
この態様の他の実施形態において、少なくとも1種のプロテインキナーゼ阻害剤及び少なくとも1種のポリマー性安定化マトリックス形成性成分を含む安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物であって、溶液中の阻害剤の溶解度増加を過飽和まで生み出す組成物であって、前記増加が、前記溶液中で90分の間の曲線下面積(AUC)として測定され、結晶性形態の阻害剤のAUCと比較される組成物が提供される。前記増加は、約2:1から約1000:1になり得るが、1は結晶性形態の阻害剤のAUCを表す。
【0082】
本発明の組成物中のハイブリッドナノ粒子が、胃、小腸、大腸、及び結腸の異なる環境中で、インビボで溶解する様子を理解するために、インビトロ溶解試験に適切な溶液を選択することが重要である。インビトロ試験条件が、インビボの環境、例えばpH及び浸透圧を可能な限り近く摸することが肝要である。典型的には、腸内の取り込みでは、pHは6から7である。したがって、溶液は、約pH6.5など、約pH6から約pH7を保持し得る。
【0083】
したがって、本発明の実施形態において、試験用の溶液は、約pH6.5又は約pH5などの約pH4.5から約pH8のpHを有する。溶液は、空腹時人工腸液(FaSSIF)でも、摂食時人工腸液(FeSSIF)でもよい。
【0084】
典型的には、胃内の取り込みでは、pHは1から2である。したがって、溶液は、約pH1.4などの約pH1から約pH2のpHを保持し得る。したがって、本発明の実施形態において、試験用の溶液は人工胃液(SGF)でよい。
【0085】
溶液の選択は、組成物が溶解して吸収されることが望ましい消化管内の位置及び条件(空腹又は摂食)に依存するだろう。これらの溶液の処方及び調製は、製造業者(Biorelevant,Croydon,U.K.)から得られる。さらなる詳細は、Jantratid,E.,and Dressman,J.(2009)Dissolut.Technol.8,21-25)にも開示されている。
【0086】
本発明の組成物中のハイブリッドナノ粒子中のPKIの量は、ハイブリッドナノ粒子中のPKIの量が約0.01重量%から約99.9重量%である場合など、少なくても多くてもよい。
【0087】
この態様の他の実施形態において、本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物であって、ハイブリッドナノ粒子中のPKIの量が約10重量%から約70重量%である組成物が提供される。
【0088】
この態様の他の実施形態において、本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物であって、ハイブリッドナノ粒子中のPKIの量が約10重量%から約50重量%である組成物が提供される。
【0089】
いくつかの実施形態において、安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子中のPKIの量が、5重量%から約50重量%、10重量%から約40重量%、約10重量%から約30重量%、又は約10重量%から約20重量%であることが有利になり得る。
【0090】
粒子の特性の制御は、特定の用途のために便利になり得る。粒径、粒子集塊、粒子多孔性、並びにポリマー性安定化マトリックス形成性作用剤の選択及び比率は、粒子の表面積対体積比又は消化管流体中の粒子の挙動を増加又は減少させるために変更することができ、溶解速度の増加又は減少をもたらす。所望の溶解特性に応じて、そのような粒子特性を適合させることができる。さらに、異なる特性の粒子が同じ医薬組成物中に存在して、有効成分の初期の投与量及び長期又は遅延した投与量を与えることができる。さらに、各有効成分(類)に所望の溶解速度を与えるように適合された異なる特性を持つ異なる一次粒子の異なるPKI及び/又は他の有効成分(類)を与えることが有利になり得る。
【0091】
本発明の他の実施形態は、安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む医薬組成物を提供する。そのような組成物は、少なくとも1種の薬学的に許容できる可溶化剤をさらに含み得る。前記可溶化剤は、組成物中で安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子とは分離して存在していても(すなわち、予備調製された固体のナノ粒子と物理的に混合されていても)、医薬組成物中で安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子内に無作為に混合されていてもよい。医薬組成物は、ハイブリッドナノ粒子が可溶化剤とは分離しているように、数層からなる剤形、例えば積層錠又は多層錠でもよい。可溶化剤は、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマー、d-α-トコフェロール酸ポリエチレングリコール1000サクシネート、及びPEG-40水添ヒマシ油又はPEG-35水添ヒマシ油などの水添ヒマシ油から選択できる。前記可溶化剤は、ポロキサマーでもよい。
【0092】
この態様の他の実施形態において、前記阻害剤は、ラパチニブ、パゾパニブ、ニロチニブ、エルロチニブ、ダサチニブ、ゲフィチニブ、ソラフェニブ、アキシチニブ、クリゾチニブ、及びベムラフェニブからなる群から選択されるチロシンキナーゼ阻害剤;又はその塩若しくは水和物若しくは溶媒和物、又はその組み合わせである。
【0093】
この態様の他の実施形態において、前記阻害剤はニロチニブであり;前記ポリマー性安定化マトリックス形成性成分は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート又はポリビニルアセテートフタレートである。
【0094】
この態様の他の実施形態において、前記阻害剤はニロチニブであり;前記ポリマー性安定化マトリックス形成性成分は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート又はポリビニルアセテートフタレートであり;前記可溶化剤は、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマー又はd-α-トコフェロール酸ポリエチレングリコール1000サクシネートである。
【0095】
この態様の他の実施形態において、前記阻害剤はエルロチニブであり、前記ポリマー性安定化マトリックス形成性成分は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートである。
【0096】
この態様の他の実施形態において、前記阻害剤はエルロチニブであり;前記ポリマー性安定化マトリックス形成性成分はヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートであり;前記可溶化剤は、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマー又はd-α-トコフェロール酸ポリエチレングリコール1000サクシネートである。
【0097】
この態様の他の実施形態において、前記阻害剤はパゾパニブであり;前記ポリマー性安定化マトリックス形成性成分はポリビニルピロリドンである。
【0098】
この態様の他の実施形態において、前記阻害剤はパゾパニブであり;前記ポリマー性安定化マトリックス形成性成分はポリビニルピロリドンであり;前記可溶化剤は、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマー又はd-α-トコフェロール酸ポリエチレングリコール1000サクシネートである。
【0099】
この態様の他の実施形態において、前記阻害剤はラパチニブであり;前記ポリマー性安定化マトリックス形成性成分はヒドロキシプロピルセルロースである。
【0100】
この態様の他の実施形態において、前記阻害剤はラパチニブであり;前記ポリマー性安定化マトリックス形成性成分はヒドロキシプロピルセルロースであり;前記可溶化剤は、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマー又はd-α-トコフェロール酸ポリエチレングリコール1000サクシネートである。
【0101】
この態様の他の実施形態において、前記阻害剤はゲフィチニブであり;前記ポリマー性安定化マトリックス形成性成分は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート又はポリビニルアセテートフタレート又はポリビニルピロリドンである。
【0102】
この態様の他の実施形態において、前記阻害剤はゲフィチニブであり;前記ポリマー性安定化マトリックス形成性成分は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート又はポリビニルアセテートフタレート又はポリビニルピロリドンであり;前記可溶化剤はポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーである。
【0103】
この態様の他の実施形態において、前記阻害剤はダサチニブであり;前記ポリマー性安定化マトリックス形成性成分はコポリビドンである。
【0104】
この態様の他の実施形態において、前記阻害剤はダサチニブであり;前記ポリマー性安定化マトリックス形成性成分はコポリビドンであり;前記可溶化剤はポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーである。
【0105】
この態様の他の実施形態において、前記阻害剤はソラフェニブであり;前記ポリマー性安定化マトリックス形成性成分はヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートである。
【0106】
この態様の他の実施形態において、前記阻害剤はソラフェニブであり;前記ポリマー性安定化マトリックス形成性成分はヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートであり;前記可溶化剤はポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーである。
【0107】
この態様の他の実施形態において、前記阻害剤はニロチニブ塩基であり;前記ポリマー性安定化マトリックス形成性成分はヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート又はポリビニルアセテートフタレートである。
【0108】
この態様の他の実施形態において、前記阻害剤はニロチニブ塩基であり;前記ポリマー性安定化マトリックス形成性成分はヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート又はポリビニルアセテートフタレートであり;前記可溶化剤はポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーである。
【0109】
この態様の他の実施形態において、前記阻害剤はアキシチニブであり;前記ポリマー性安定化マトリックス形成性成分は、コポリビドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートである。
【0110】
この態様の他の実施形態において、前記阻害剤はアキシチニブであり;前記ポリマー性安定化マトリックス形成性成分は、コポリビドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートであり;前記可溶化剤はポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーである。
【0111】
この態様の他の実施形態において、前記阻害剤はクリゾチニブであり;前記ポリマー性安定化マトリックス形成性成分は、コポリビドン又はポリビニルピロリドンである。
【0112】
この態様の他の実施形態において、前記阻害剤はクリゾチニブであり;前記ポリマー性安定化マトリックス形成性成分は、コポリビドン又はポリビニルピロリドンであり;前記可溶化剤は、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマー又はPEG-40水添ヒマシ油である。
【0113】
この態様の他の実施形態において、前記阻害剤はベムラフェニブであり;前記ポリマー性安定化マトリックス形成性成分は、コポリビドン又はセルロースアセテートフタレートである。
【0114】
この態様の他の実施形態において、前記阻害剤はベムラフェニブであり;前記ポリマー性安定化マトリックス形成性成分は、コポリビドン又はセルロースアセテートフタレートであり;前記可溶化剤はポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールである。
【0115】
この態様の他の実施形態において、前記プロテインキナーゼ阻害剤は、約1から約2のpHで、好ましくは約pH1.4で、組成物から部分的に放出される。
【0116】
本発明の他の態様において、本開示に定義される、少なくとも1種のプロテインキナーゼ阻害剤及び少なくとも1種のポリマー性安定化マトリックス形成性成分を含む安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子が提供される。
【0117】
この態様の他の実施形態において、療法に使用するための本発明の組成物が提供される。
【0118】
この態様の他の実施形態において、増殖性疾患の治療に使用するための本発明の組成物が提供される。典型的には、前記増殖性疾患は、神経線維腫症、結節性硬化症、血管腫及びリンパ管新生、子宮頸癌、肛門癌、及び口腔癌、眼(eye)又は眼(ocular)の癌、胃癌、結腸癌、膀胱癌、直腸癌、肝臓癌、すい臓癌、肺癌、乳癌、子宮頚癌、子宮体癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、腎癌、脳の癌、中枢神経系の癌、頭頸部癌、咽頭癌、皮膚メラノーマ、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、ユーイング肉腫、カポジ肉腫、基底細胞癌及び扁平上皮癌、小細胞肺癌、絨毛癌、横紋筋肉腫、血管肉腫、血管内皮腫、ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、口腔/咽頭癌、食道癌、喉頭癌、リンパ腫、多発性骨髄腫を含むがこれらに限定されない腫瘍及び癌;心臓肥大、加齢黄斑変性、及び糖尿病性網膜症から選択される。
【0119】
この態様の他の実施形態において、食品の摂取の間に与えられる、本発明の組成物が提供される。
【0120】
本発明の他の態様において、治療を必要とする患者の増殖性疾患を治療する方法であって、治療上有効な量の本発明の組成物を投与することを含む方法が提供される。前記増殖性疾患は、典型的には、神経線維腫症、結節性硬化症、血管腫及びリンパ管新生、子宮頸癌、肛門癌、及び口腔癌、眼又は眼の癌、胃癌、結腸癌、膀胱癌、直腸癌、肝臓癌、すい臓癌、肺癌、乳癌、子宮頚癌、子宮体癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、腎癌、脳の癌、中枢神経系の癌、頭頸部癌、咽頭癌、皮膚メラノーマ、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、ユーイング肉腫、カポジ肉腫、基底細胞癌及び扁平上皮癌、小細胞肺癌、絨毛癌、横紋筋肉腫、血管肉腫、血管内皮腫、ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、口腔/咽頭癌、食道癌、喉頭癌、リンパ腫、多発性骨髄腫を含むがこれらに限定されない腫瘍及び癌;心臓肥大、加齢黄斑変性、及び糖尿病性網膜症から選択される。
【0121】
本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子中のプロテインキナーゼ阻害剤の、治療に使用するために要求される量は、選択される特定の阻害剤だけでなく、投与経路、治療が必要な状態の性質、並びに患者の年齢、体重、及び状態によっても変わり、最終的には担当医師の判断によることが認識されるだろう。しかし、一般的に、好適な投与量は、1日あたり体重kgあたり約0.005から約30mgの範囲、好ましくは0.05から10mg/kg/日の範囲であり得る。
【0122】
所望の投与量は、簡便には、単一の投与量で、又は適切な間隔で投与される分割した投与量、例えば1日あたり2、3、4、又はそれを上回る投与量で呈される。治療及び/又は予防の必要性に応じて、所望の投与量は、例えば、2日に1回、3日に1回、又はさらには週に1回にもなり得る。
【0123】
組成物は、簡便には、例えば単位剤形あたり0.5から1500mg、簡便には1から1000mg、最も簡便には5から700mgの有効成分を含む単位剤形で投与される。本発明の組成物は、通常、薬学的に許容できる剤形で、経口、非経口、静脈内、筋肉内、皮下、又は他の注射可能な方法で、頬側、直腸、膣内、経皮及び/又は鼻腔内経路により、及び/又は吸入により投与される。治療すべき疾患及び患者並びに投与経路によって、組成物はさまざまな投与量で投与され得る。
【0124】
医薬組成物には、経口、直腸、鼻腔内、局所(頬側及び舌下含む)、経皮、膣内、若しくは非経口(筋肉内、皮下、及び静脈内含む)投与に好適なもの又は吸入若しくは吹送による投与に好適な形態のものがあるが、これらに限定されない。組成物は、必要に応じて、簡便には個別の用量単位で呈され、調剤の分野において周知である方法のいずれによっても調製できる。経口投与に好適な医薬組成物は、簡便には、カプセル、カシェ、又は錠剤などの個別の単位として呈され、それぞれが所定量の活性物質を含む。
【0125】
経口投与用の錠剤及びカプセルは、結合剤、充填剤、滑沢剤、崩壊剤、又は湿潤剤などの従来の賦形剤を含み得る。錠剤は、当分野において周知である方法により被覆されていてもよい。
【0126】
組成物は、非経口投与用に製剤化でき(例えば、注射、例えばボーラス注入又は連続的な注入による)、アンプル、プレフィルドシリンジ、小容量注入、又は保存剤が加えられた多用量容器の投薬単位形態で呈され得る。組成物は、油性若しくは水性ビヒクル中の懸濁剤、液剤、又は乳剤の形態をとることもあり、懸濁化剤、安定剤、及び/又は分散剤などの製剤化剤を含むことがある。
【0127】
上述の組成物は、活性阻害剤の持続放出を与えるように変えることができる。
【0128】
以下の例は、本発明の種々の実施形態を説明するために与えられ、範囲を限定すると考えないものとする。
【実施例0129】
以下に、安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物のいくつかの非限定的な例を挙げる。表中で、「組成」に対する以下の略語を適用する。
【0130】
「I」は、プロテインキナーゼ阻害剤(PKI)を表す;
「P」は、ポリマー性安定化マトリックス形成性成分を表す;
「S」は、可溶化剤を表す;
「I+P」は、阻害剤とポリマー性安定化マトリックス形成性成分の物理的な混合物、すなわちさらなる処理がないものを表す;
「I+S」は、阻害剤と可溶化剤の物理的な混合物を表す;
「I+P+S」は、阻害剤と、ポリマー性安定化マトリックス形成性成分と、可溶化剤の物理的混合物を表す;
「I/P」は、阻害剤とポリマー性安定化マトリックス形成性成分の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を表す;
「I/P+S」は、阻害剤とポリマー性安定化マトリックス形成性成分の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子であって、別に可溶化剤が加えられたものを表す;
「I/P/S」は、阻害剤と、ポリマー性安定化マトリックス形成性成分と、可溶化剤の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を表す。
「Exp」は、実験番号を表す。
【0131】
安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子は、以下に表Aに示す例示的なPKI、ポリマー性安定化マトリックス形成性成分(「ポリマー」)、可溶化剤、溶液濃度、比率、溶媒、逆溶媒、温度、及び圧力で製造した。
【0132】
PKI/ポリマー比が約20~70%w/wである、溶媒中の3~6%w/vPKI/ポリマー溶液を、高速液体クロマトグラフィーポンプを使用して、1ml/分の流量で、100g/分のCO2(超臨界又は亜臨界)流と共にポンプ輸送して、XSprayのRightSizeノズルに通した。沈殿チャンバー中の圧力を約100~175バールに設定し、温度を約10から50℃に設定した。両方の流れはノズル内で接触し、ハイブリッドナノ粒子が形成し、その後、回収チャンバーにおいて粒子中に回収した。CO2及び溶媒は回収チャンバーの濾過システムを通り、沈殿チャンバー及び回収チャンバー内の圧力を維持する背圧調整出口により排出された。PKI/ポリマー溶液をポンプ輸送し、PKI/ポリマー溶液の調製に使用したのと同じ溶媒で配管を洗浄した後、沈殿チャンバーと回収チャンバーの両方の中に残存する溶媒は、これらのチャンバーに純粋なscCO2を大量に流して除去した。大量に流すプロセスの後、CO2を回収チャンバーからゆっくりと排出した。CO2が完全に除去されると、濾過システムについている粒子を分析のために回収した。
【0133】
I/P/Sタイプの粒子では、定義された量の可溶化剤をPKI/ポリマー溶液に加えて溶解させてから、上述の方法による沈殿のためのノズルに溶液をポンプ輸送して通した。
【0134】
I/P+Sタイプの粒子では、定義された量の可溶化剤をガラスバイアル中で安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子に加える。ガラスバイアルをゆっくりと回転させて、可溶化剤をハイブリッドナノ粒子と混合する。
【0135】
溶解測定試験の全般的な説明
方法は、希望する量の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子の粉末をガラスバイアルに加え、次いでそれに適切な媒体(典型的にはFaSSIF、FeSSIF、又はSGF)を注ぐことからなる。媒体は、製造業者の説明書に従って調製した。加える粉末の量は、希望する「全PKI濃度」による。高い薬物充填量の粉末を試験し比較するいくつかの実験では、安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子中のPKIの実際の量を考慮に入れなかった。他の実験では、薬物充填量を最初にHPLCにより見積もって、薬物濃度を得るための粉末の量を計算した。
【0136】
典型的には、粉末を8mLガラス瓶に加え、7mLの溶液を加えた(典型的にはFaSSIF、FeSSIF、又はSGF)。ガラス瓶を振とう器に置いて(1分あたりおよそ1回転)溶解させた。500μlの試料を異なる時点で採取し、その後およそ15000gで3分間遠心分離した。次いで、得られた上清をHPLCにより分析した(C18カラムEclipse、4.6mm×15cm、1mL/分、検出254~400nM。全般的に、試料を、5、30、及び90分後、最後に150分後に採取した。
【0137】
実施例1.ニロチニブを含む安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物-pH6.5及びpH5での溶解度
ニロチニブ塩基又はニロチニブHClがプロテインキナーゼ阻害剤の一例であるいくつかの実験を実施した。実験は、約pH6.5の溶液、すなわちFaSSIF(空腹時人工腸液)における溶解の5、30、及び90分後に可溶化したPKIの濃度(mg/L)を測定して実施した。さらに、約pH5の別な溶液、すなわちFeSSIF(摂食時人工腸液)で実験を実施した。溶液の試料を種々の時間間隔で採取し、プロテインキナーゼ阻害剤の量を、上述の溶解測定試験により測定した。
【0138】
FaSSIF溶液での代表的な結果を以下の表1及び2に与えるが、表1は、溶解の5、30、及び90分後のニロチニブHClの濃度(mg/L)のデータを与え、表2は、溶解30分後の可溶化したニロチニブHClの%、溶解90分間の曲線下面積(AUC-mg/分/L)、及び溶液に加えられた未処理の結晶性形態のニロチニブHClと比較した安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子のAUC増加のデータを与える(実験1~40)。表3及び4において、表1及び2と同様に示した、FeSSIF溶液での溶解データを与える(実験41~55)。表5は、それぞれFaSSIF及びFeSSIFで実施した類似の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子による比較実験のデータを与える(実験56~57)。表6は、それぞれFaSSIF及びFeSSIFで実施した実験のさらなる比較データを表す。
【0139】
実施例1の結論
実験17~23は、溶解度増加が、ニロチニブHCl及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分による安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物で得られることを示す。特別な増加が、ポリマー性安定化マトリックス形成性成分、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP HP55)及びポリビニルアセテートフタレート(PVAP)で達成される。これらの向上は、ニロチニブHClをポリマー性安定化マトリックス形成性成分と物理的に混合する場合には得られない。実験24~36は、さらなる溶解度増加が、独立した可溶化剤が加えられる場合の、ニロチニブHCl及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分による安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子で得られることを明確に示している。特別な向上は、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマー(Soluplus)又はd-α-トコフェロール酸ポリエチレングリコール1000サクシネート(TPGS)などの独立した可溶化剤の添加により達成される。これらの向上は、ニロチニブHCl、可溶化剤、及び/又はポリマー性安定化マトリックス形成性成分を物理的に混合した時には得られなかった(I+S又はI+P+S)。ニロチニブHCl、ポリマー性安定化マトリックス形成性、及び可溶化剤による安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子(I/P/S)では、特別な向上は全く得られなかった。
【0140】
FaSSIF及びFeSSIFにおいてそれぞれ実施した結果は、本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子が、溶解度の類似な増加を与えることを示す。PKI製剤による1つの問題は、食事の影響である。食品がほとんどの場合PKIのバイオアベイラビリティーを増加させるという事実にもかかわらず、PKIのいくつかは空腹状態で投与するように表示されている。低いバイオアベイラビリティーは、PKIに関連する消化の問題を部分的に説明するかもしれない。FaSSIFとFeSSIFにおける類似の溶解速度は、本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子(例えば、実験56/57)が、その溶解度向上により、食事の影響及び患者の消化の問題を低減することができ、それにより用量の低減が可能であることを示す。このように、本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子は、食品の摂取とともに与えることができる。
【0141】
実施例2.エルロチニブHClを含む安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物-pH6.5及びpH5での溶解度
エルロチニブHClがPKIの一例であるいくつかの実験を実施した。実験は、約pH6.5の溶液、すなわちFaSSIF(空腹時人工腸液)における溶解5、30、及び90分後にPKIの濃度(mg/L)を測定して実施した。さらに、約pH5の別な溶液、すなわちFeSSIF(摂食時人工腸液)において実験を実施した。溶液の試料を種々の時間間隔で採取し、PKIの量を、上述の溶解測定試験により測定した。
【0142】
FaSSIF溶液での代表的な結果を以下の表7及び8に与えるが、表7は、溶解5、30、及び90分後のエルロチニブHClの濃度(mg/L)のデータを与え、表8は、溶解30分後の可溶化したエルロチニブHClの%、溶解90分間の曲線下面積(AUC-mg/分/L)、及び溶液に加えられた未処理の結晶性形態のエルロチニブHClと比較した、安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子のAUC増加のデータを与える(実験58~68)。表9及び10において、表7及び8と同様に示した、FeSSIF溶液での溶解データを与える(実験69~73)。表11において、それぞれFaSSIF及びFeSSIFで実施した類似の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子による比較実験のデータ(実験74~83)。表12は、それぞれFaSSIF及びFeSSIFで実施した実験のさらなる比較データを表わす。
【0143】
実施例2の結論
実験は、溶解度の増加が、エルロチニブHCl及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分による安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物で得られることを示す。特別な向上は、ポリマー性安定化マトリックス形成性成分、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)により達成される。実験65~66及び72は、さらなる溶解度増加が、独立した可溶化剤が加えられる場合の、エルロチニブHCl及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分による安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子で得られることを示す。特別な向上は、独立した可溶化剤の添加により達成されるが、この場合、前記可溶化剤は、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマー(Soluplus)及びd-α-トコフェロール酸ポリエチレングリコール1000サクシネート(TPGS)から選択される。この向上は、可溶化剤が安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子に組み込まれた場合には観察されなかった。
【0144】
エルロチニブHClと可溶化剤及び/又はHPMC ASとの物理的混合も、FaSSIFにおいては溶解度を向上させるが(実験59、60~61、62~63)、FeSSIFにおいてはそうではない(実験69~72)。PKI製剤による1つの問題は食事の影響である。食品がほとんどの場合PKIのバイオアベイラビリティーを増加させるという事実にもかかわらず、PKIのいくつかは空腹状態で投与するように表示されている。低いバイオアベイラビリティーは、PKIに関連する消化の問題を部分的に説明するかもしれない。データは、安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子が、FaSSIFとFeSSIFの両方におけるその等しい溶解度向上により、食事の影響及び患者の消化の問題を低減し(実験76/77、及び82/83)、さらに潜在的に用量の低減を可能に得ることを示す。このように、これらの安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物は、食品の摂取とともに与えることができる。
【0145】
実施例3.パゾパニブを含む安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物-pH6.5及びpH5での溶解度
パゾパニブがPKIの一例であるいくつかの実験を実施した。実験は、約pH6.5の溶液、すなわちFaSSIF(空腹時人工腸液)における溶解5、30、及び90分後にPKIの濃度(mg/L)を測定して実施した。さらに、約pH5の別な溶液、すなわちFeSSIF(摂食時人工腸液)において実験を実施した。溶液の試料を種々の時間間隔で採取し、PKIの量を、上述の溶解測定試験により測定した。
【0146】
FaSSIF溶液での代表的な結果を以下の表13及び14に与えるが、表13は、溶解5、30、及び90分後のパゾパニブの濃度(mg/L)のデータを与え、表14は、溶解30分後の可溶化したパゾパニブの%、溶解90分間の曲線下面積(AUC-mg/分/L)、及び溶液に加えられた未処理の結晶性形態のパゾパニブと比較した、安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子によるAUC増加のデータを与える(実験84~93)。表15及び16において、表13及び14と同様に示した、FeSSIF溶液での溶解データを与える(実験94~101)。表17において、それぞれFaSSIF及びFeSSIFで実施した、類似の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子による比較実験のデータ(実験102~109)。表18は、それぞれFaSSIF及びFeSSIFで実施した、安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子による実験のさらなる比較データを表す。
【0147】
実施例3の結論
実験は、溶解度の増加が、パゾパニブ及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分による安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物で得られることを示す。特別な向上は、ポリマー性安定化マトリックス形成性成分、ポリビニルピロリドンK-90(PVP 90K)により達成される。実験91~92は、さらなる溶解度の増加が、独立した可溶化剤が加えられる場合の、パゾパニブ及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分による安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子で得られることを示す。特別な向上は、独立した可溶化剤の添加により達成されるが、この場合、前記可溶化剤は、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマー(Soluplus)及びd-α-トコフェロール酸ポリエチレングリコール1000サクシネート(TPGS)から選択される。この向上は、可溶化剤が本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子に組み込まれた場合には観察されなかった。
【0148】
FaSSIF及びFeSSIFにおいてそれぞれ実施した結果は、本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子が、溶解度の類似の増加を与えることを示す。PKI製剤による1つの問題は食事の影響である。食品がほとんどの場合PKIのバイオアベイラビリティーを増加させるという事実にもかかわらず、PKIのいくつかは空腹状態で投与するように表示されている。低いバイオアベイラビリティーは、PKIに関連する消化の問題を部分的に説明するかもしれない。FaSSIFとFeSSIFにおける類似の溶解速度は、安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子が、FaSSIFとFeSSIFの両方におけるその等しい溶解度向上により、食事の影響及び患者の消化の問題を低減することができ(例えば、実験89/100及び104/105)、さらに用量の低減が可能であることを示す。このように、本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子は、食品の摂取とともに与えることができる。
【0149】
実施例4.ラパチニブを含む安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物-pH6.5での溶解度
ラパチニブ塩基又はトシル酸ラパチニブがPKIの一例であるいくつかの実験を実施した。実験は、約pH6.5の溶液、すなわちFaSSIF(空腹時人工腸液)における溶解5、30、及び90分後にPKIの濃度(mg/L)を測定して実施した。溶液の試料を種々の時間間隔で採取し、PKIの量を上述の溶解測定試験により実施した。
【0150】
FaSSIF溶液での代表的な結果を以下の表19及び20に与えるが、表19は、溶解5、30、及び90分後のラパチニブの濃度(mg/L)のデータを与え、表20は、溶解30分後の可溶化したラパチニブの%、溶解90分間の曲線下面積(AUC-mg/分/L)、及び溶液に加えられた製剤化されてないトシル酸ラパチニブと比較した、本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子によるAUC増加のデータを与える(実験110~126)。
【0151】
実施例4の結論
実験122~125は、溶解度増加が、独立した可溶化剤が組成物に加えられる場合の、ラパチニブ、特にラパチニブ塩基及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分による、本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子で得られることを明らかに示す。特別な向上は、ポリマー性安定化マトリックス形成性成分、ヒドロキシプロピルセルロースEF及びヒドロキシプロピルセルロースLFで達成される。さらに、独立した可溶化剤の添加により向上が達成されるが、この場合、前記可溶化剤は、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマー(Soluplus)及びd-α-トコフェロール酸ポリエチレングリコール1000サクシネート(TPGS)から選択される。
【0152】
実施例5.ニロチニブHClを含む安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物-pH1.4での溶解度
ニロチニブHClがPKIの一例であるいくつかの実験を実施した。実験は、約pH1.4の溶液、すなわちSGF(人工胃液)における溶解5、30、及び90分後にPKIの濃度(mg/L)を測定して実施した。溶液の試料を種々の時間間隔で採取し、PKIの量を上述の溶解測定試験により実施した。
【0153】
SGF溶液での代表的な結果を以下の表21に与えるが、これは、溶解後5、30、及び90分後の、未処理の結晶性形態であるニロチニブHClとの物理的混合物と本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子の両方からの可溶化されたニロチニブHClのパーセンテージを与える。未処理のニロチニブHClと、ポリマー性安定化マトリックス形成性成分PVAPと、可溶化剤Soluplusの物理的混合物中に存在するニロチニブ(実験129)は、SGFに5分以内に完全に溶解した一方で、本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子ではニロチニブはSGFに90分後に部分的にしか溶解しないが、ここで、成分は、可溶化剤を加えた(実験128)又は可溶化剤を加えない(実験127)安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子から構成されている。
【0154】
実施例5の結論
実験127~129は、本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子中のニロチニブHCl(実験127及び128)が、pH1.4で部分的に可溶化されることを示す。PVAPなどのポリマー性安定化マトリックス形成性成分による安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子は、酸性環境から部分的に保護されている。
【0155】
実施例6.ゲフィチニブを含む安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物-pH6.5での溶解度
ゲフィチニブがPKIの一例であるいくつかの実験を実施した。実験は、約pH6.5の溶液、すなわちFaSSIF(空腹時人工腸液)において、溶解の3、40、及び80分後のPKIの濃度(mg/L)を測定することにより実施した。溶液の試料を種々の時間間隔で採取し、PKIの量を上述の溶解測定試験により実施した。
【0156】
FaSSIF溶液における代表的な結果を以下の表22及び23に与えるが、表22は、溶解の3、40、及び80分後のゲフィチニブの濃度(mg/L)のデータを与え、表23は、溶解40分後の可溶化されたゲフィチニブの%、80分の溶解中の曲線下面積(AUC-mg/分/L)、及び溶液に加えられた製剤化されていないゲフィチニブと比較した、本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子によるAUC増加のデータを与える(実験131~137)。
【0157】
実験131~137は、溶解度増加が、独立した可溶化剤が組成物に加えられる場合の、ゲフィチニブ、特にゲフィチニブ及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分による、本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物で得られることを示す。特別な向上は、ポリマー性安定化マトリックス形成性成分、ポリビニルピロリドンK-30(PVP 30K)及びヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP HP55)により達成される。さらに、向上は、独立した可溶化剤の添加により達成され、この場合、前記可溶化剤は、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマー(Soluplus)である。
【0158】
実施例7.ダサチニブを含む安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物-pH6.5での溶解度
ダサチニブがPKIの一例であるいくつかの実験を実施した。実験は、約pH6.5の溶液、すなわちFaSSIF(空腹時人工腸液)において、溶解3、40、及び80分後のPKIの濃度(mg/L)を測定して実施した。溶液の試料を種々の時間間隔で採取し、PKIの量を上述の溶解測定試験により実施した。
【0159】
FaSSIF溶液における代表的な結果を表24及び25に与えるが、表24は、溶解3、40、及び80分後のダサチニブの濃度(mg/L)のデータを与え、表25は、溶解40分後の可溶化されたダサチニブの%、80分の溶解中の曲線下面積(AUC-mg/分/L)、及び溶液に加えられた製剤化されていないダサチニブと比較した、本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子によるAUC増加のデータを与える(実験138~141)。
【0160】
実験138~141は、溶解度増加が、独立した可溶化剤が組成物に加えられる場合の、ダサチニブ、特にダサチニブ及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分による、本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物により得られることを示す。特別な向上は、ポリマー性安定化マトリックス形成性成分、コポリビドン(Kollidon VA64)により達成される。さらに、向上は、独立した可溶化剤の添加により達成されるが、この場合、前記可溶化剤は、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマー(Soluplus)である。
【0161】
実施例8.トシル酸ソラフェニブを含む安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物-pH6.5での溶解度
トシル酸ソラフェニブがPKIの一例であるいくつかの実験を実施した。実験は、約pH6.5の溶液、すなわちFaSSIF(空腹時人工腸液)において、溶解3、40、及び80分後のPKIの濃度(mg/L)を測定して実施した。溶液の試料を種々の時間間隔で採取し、PKIの量を上述の溶解測定試験により実施した。
【0162】
FaSSIF溶液における代表的な結果を以下の表26及び27に与えるが、表26は、溶解3、40、及び80分後のソラフェニブの濃度(mg/L)のデータを与え、表27は、溶解40分後の可溶化されたソラフェニブの%、80分の溶解中の曲線下面積(AUC-mg/分/L)、及び溶液に加えられた製剤化されていないトシル酸ソラフェニブと比較した、組成物のAUC増加のデータを与える(実験142~145)。
【0163】
実験138~141は、溶解度増加が、独立した可溶化剤が組成物に加えられる場合の、ダサチニブ、特にダサチニブ及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分による、本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物により得られることを示す。特別な向上は、ポリマー性安定化マトリックス形成性成分、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP HP55)により達成される。さらに、向上は、独立した可溶化剤の添加により達成されるが、この場合、前記可溶化剤は、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマー(Soluplus)である。
【0164】
実施例9.ニロチニブ塩基を含む安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物-pH6.5での溶解度
ニロチニブ塩基がPKIの一例であるいくつかの実験を実施した。実験は、約pH6.5の溶液、すなわちFaSSIF(空腹時人工腸液)において、溶解3、40、及び80分後のPKIの濃度(mg/L)を測定して実施した。溶液の試料を種々の時間間隔で採取し、PKIの量を上述の溶解測定試験により実施した。
【0165】
FaSSIF溶液における代表的な結果を以下の表28及び29に表すが、表28は、溶解3、40、及び80分後のニロチニブ塩基の濃度(mg/L)のデータを与え、表29は、溶解40分後の可溶化されたニロチニブ塩基の%、80分の溶解中の曲線下面積(AUC-mg/分/L)、及び溶液に加えられた製剤化されていないニロチニブ塩基と比較した、組成物のAUC増加のデータを与える(実験146~149)。
【0166】
実施例10.クリゾチニブを含む安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物-pH6.5での溶解度
クリゾチニブがPKIの一例であるいくつかの実験を実施した。実験は、約pH6.5の溶液、すなわちFaSSIF(空腹時人工腸液)において、溶解3、40、及び80分後のPKIの濃度(mg/L)を測定して実施した。溶液の試料を種々の時間間隔で採取し、PKIの量を上述の溶解測定試験により実施した。FaSSIF溶液における代表的な結果を以下の表30及び31に表すが、表30は、溶解3、40、及び80分後のクリゾチニブの濃度(mg/L)のデータを与え、表31は、溶解40分後の可溶化されたクリゾチニブの%、80分の溶解中の曲線下面積(AUC-mg/分/L)、及び溶液に加えられた製剤化されていないクリゾチニブと比較した、本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子によるAUC増加のデータを与える(実験150~156)。
【0167】
実験150~156は、溶解度増加が、独立した可溶化剤が組成物に加えられる場合の、クリゾチニブ、特にクリゾチニブ及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分による、本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物で得られることを示す。特別な向上は、ポリマー性安定化マトリックス形成性成分、ポリビニルピロリドンK-30(PVP 30K)及びコポリビドン(Kollidon VA64)で達成される。さらに、向上は、独立した可溶化剤の添加により達成されるが、この場合、前記可溶化剤は、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマー(Soluplus)及びPEG-40水添ヒマシ油(Cremophor RH40)から選択される。
【0168】
実施例11.アキシチニブを含む安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物-pH6.5での溶解度
アキシチニブがPKIの一例であるいくつかの実験を実施した。実験は、約pH6.5の溶液、すなわちFaSSIF(空腹時人工腸液)において、溶解3、40、及び80分後のPKIの濃度(mg/L)を測定して実施した。溶液の試料を種々の時間間隔で採取し、PKIの量を上述の溶解測定試験により実施した。FaSSIF溶液における代表的な結果を以下の表32及び33に表すが、表32は、溶解3、40、及び80分後のアキシチニブの濃度(mg/L)のデータを与え、表33は、溶解40分後の可溶化されたアキシチニブの%、80分の溶解中の曲線下面積(AUC-mg/分/L)、及び溶液に加えられた製剤化されていないアキシチニブと比較した、本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子によるAUC増加のデータを与える(実験157~163)。
【0169】
実験157~163は、溶解度増加が、独立した可溶化剤が組成物に加えられる場合の、アキシチニブ、特にアキシチニブ及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分による本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物で得られることを示す。特別な向上は、ポリマー性安定化マトリックス形成性成分、コポリビドン(Kollidon VA64)及びヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC AS)により達成される。さらに、向上は、独立した可溶化剤の添加により達成されるが、この場合、前記可溶化剤は、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマー(Soluplus)である。
【0170】
実施例12.ベムラフェニブを含む安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子の組成物-pH6.5での溶解度
ベムラフェニブがPKIの一例であるいくつかの実験を実施した。実験は、約pH6.5の溶液、すなわちFaSSIF(空腹時人工腸液)において、溶解3、40、及び80分後のPKIの濃度(mg/L)を測定して実施した。溶液の試料を種々の時間間隔で採取し、PKIの量を上述の溶解測定試験により実施した。
【0171】
FaSSIF溶液における代表的な結果を以下の表34及び35に表すが、表34は、溶解3、40、及び80分後のベムラフェニブの濃度(mg/L)のデータを与え、表35は、溶解の40分後の可溶化されたベムラフェニブの%、80分の溶解中の曲線下面積(AUC-mg/分/L)、及び溶液に加えられた製剤化されていないベムラフェニブと比較した、本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子によるAUC増加のデータを与える(実験164~170)。
【0172】
実験164~170は、溶解度増加が、独立した可溶化剤が組成物に加えられる場合の、ベムラフェニブ、特にベムラフェニブ及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分による本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物で得られることを示す。特別な向上は、ポリマー性安定化マトリックス形成性成分、コポリビドン(Kollidon VA64)及びセルロースアセテートフタレート(CAP)で達成される。さらに、向上は、独立した可溶化剤の添加により達成されるが、この場合、前記可溶化剤は、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマー(Soluplus)である。
【0173】
実施例13.本発明の組成物のシンク条件での溶解速度測定
本発明の組成物のシンク条件での溶解測定を、希望する量の粉末を、フロースルーセルシステム(SOTAX,Allschwill,Switzerland)に加え、セルをその装置に取り付け、次いで、ポンプにより適切な媒体(典型的には、FaSSIF、FeSSIF、SGF)を粉末に通すことからなる方法で測定した。装置の温度は、37℃に設定した。セルに加えられる粉末の量は、粉末の薬物充填量に依存する。粉末の正確な量は、粉末の薬物充填量分析から得られる結果から計算した。
【0174】
典型的には、3.5から7mgのPKIをフロースルーセルに加え、8から16ml媒体/分(好ましくは約8ml媒体/分)の流量を、ポンプ輸送で粉末に通した。セルを通る媒体の1mlの試料を所定の時間に回収した。これらの試料をHPLCにより分析した(例えば、C18カラムEclipse、4.6mm×15cm、1ml/分、検出254-400nm)。フロースルーセルから媒体が出る瞬間から0、0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、及び40分後に試料を採取した。フロースルーセルに加えた活性物質の量の可溶化された累積%を計算し、時間(分)に対してプロットした。0から10分に測定したグラフの初期の傾き(「初期溶解速度」)を見積もり、ある溶解媒体におけるシンク条件37℃での物質の溶解速度として採用した。
【0175】
各実験は、未処理の形態のPKIと、阻害剤及び代表的なポリマー性安定化マトリックス形成性成分による本発明の安定な非晶質のハイブリッド粒子を含む組成物との比較を含む。
【0176】
実施例13.1.ニロチニブHClを含む本発明の組成物のシンク条件での溶解速度測定
ニロチニブHClによる実験において、フロースルーセル中で4mgを秤量して(実験500)、ニロチニブ塩基及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分HPMCP HP55による本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子(実験501)と比較した。結果を以下の表36に表す。
【0177】
実験500~501は、ニロチニブ塩基による本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子の初期溶解速度が、未処理の結晶性形態のニロチニブHClの初期溶解速度より優れていることを示す。
【0178】
実施例13.2.エルロチニブHClを含む本発明の組成物のシンク条件での溶解速度測定
エルロチニブHClによる実験において、フロースルーセル中で3.5mgを秤量して(実験510)、エルロチニブHCl及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分HPMC ASによる本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子(実験511)と比較した。結果を以下の表37に表す。
【0179】
実験510~511は、エルロチニブHCl及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分HPMC ASによる本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物の初期溶解速度が、未処理の結晶性形態のエルロチニブHClの初期溶解速度より優れていることを示す。
【0180】
実施例13.3.パゾパニブHClを含む本発明の組成物のシンク条件での溶解速度測定
パゾパニブHClによる実験において、フロースルーセル中で3.5mgを秤量して(実験520)、パゾパニブHCl及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分PVP90Kによる本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子(実験521)と比較した。結果を以下の表38に表す。
【0181】
実験520~521は、パゾパニブHCl及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分PVP90Kによる本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物の初期溶解速度が、未処理の結晶性形態のパゾパニブHClの初期溶解速度より優れていることを示す。
【0182】
実施例13.4.トシル酸ラパチニブを含む本発明の組成物のシンク条件での溶解速度測定
トシル酸ラパチニブによる実験において、フロースルーセル中で4mgを秤量して(実験530)、ラパチニブ塩基及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分HPC lfによる本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子(実験531)と比較した。結果を以下の表39に表す。
【0183】
実験530~531は、ラパチニブ塩基及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分HPC lfによる本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物の初期溶解速度が、未処理の結晶性形態のトシル酸ラパチニブの初期溶解速度より優れていることを示す。
【0184】
実施例13.5.ゲフィチニブを含む本発明の組成物のシンク条件での溶解速度測定
ゲフィチニブによる実験において、フロースルーセル中で3.5mgを秤量して(実験540)、ゲフィチニブ及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分HPMCP HP55による本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子(実験541)と比較した。結果を以下の表40に表す。
【0185】
実験540~541は、ゲフィチニブ及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分HPMCP HP55による本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物の初期溶解速度が、未処理の結晶性形態のゲフィチニブの初期溶解速度より優れていることを示す。
【0186】
実施例13.6.ダサチニブを含む本発明の組成物のシンク条件での溶解速度測定
ダサチニブによる実験において、フロースルーセル中で3.5mgを秤量して(実験550)、ダサチニブ及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分コポリビドン-Kollidon VA64による本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子(実験551)と比較した。結果を以下の表41に表す。
【0187】
実験550~551は、ダサチニブ及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分コポリビドン(Kollidon VA64)による本発明の安定な非晶質のハイブリッドを含む組成物の初期溶解速度が、未処理の結晶性形態のダサチニブの初期溶解速度より優れていることを示す。
【0188】
実施例13.7.トシル酸ソラフェニブを含む本発明の組成物のシンク条件での溶解速度測定
トシル酸ソラフェニブによる実験において、フロースルーセル中で3.5mgを秤量して(実験560)、トシル酸ソラフェニブ及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分HPMCP HP55による本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子(実験561)と比較した。結果を以下の表42に表す。
【0189】
実験560~561は、トシル酸ソラフェニブ及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分HPMCP HP55による本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物の初期溶解速度が、未処理の結晶性形態のトシル酸ソラフェニブの初期溶解速度より優れていることを示す。
【0190】
実施例13.8.クリゾチニブを含む本発明の組成物のシンク条件での溶解速度測定
クリゾチニブによる実験において、フロースルーセル中で3.5mgを秤量して(実験570)、クリゾチニブ及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分PVP 30Kによる本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子(実験571)と比較した。結果を以下の表43に表す。
【0191】
実験570~571は、クリゾチニブ及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分PVP 30Kによる本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物の初期溶解速度が、未処理の結晶性形態のクリゾチニブの初期溶解速度より優れていることを示す。
【0192】
実施例13.9.アキシチニブを含む本発明の組成物のシンク条件での溶解速度測定
アキシチニブによる実験において、フロースルーセル中で3.5mgを秤量して(実験580)、アキシチニブ及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分であるKollidon VA64(実験581)又はHPMC AS(実験582)による、本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子と比較した。結果を以下の表44に表す。
【0193】
実験580~582は、アキシチニブ及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分であるKollidon VA64又はHPMC ASによる本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物の初期溶解速度が、未処理の結晶性形態のアキシチニブの初期溶解速度より優れていることを示す。
【0194】
実施例13.10.ベムラフェニブを含む本発明の組成物のシンク条件での溶解速度測定
ベムラフェニブによる実験において、フロースルーセル中で3.5mgを秤量して(実験590)、ベムラフェニブ及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分であるKollidon VA64(実験591)又はCAP(実験592)による、本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子と比較した。結果を以下の表45に表す。
【0195】
実験590~592は、ベムラフェニブ及びポリマー性安定化マトリックス形成性成分であるKollidon VA64又はCAPによる本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む組成物の初期溶解速度が、未処理の結晶性形態のベムラフェニブの初期溶解速度より優れていることを明確に示す。
【0196】
実施例14.本発明の組成物の経口投与後の血漿中レベルのインビボ測定
4匹のビーグル犬のいくつかの群に、任意に可溶化剤ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーを加えた、ニロチニブ塩基とポリマー性安定化マトリックス形成性成分であるPVAPとHPMCP HP55のいずれかによる本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含むカプセル組成物の単回経口投与量(5mg/kg)を与え、ニロチニブHClを含む市販の製剤と比べた。試験した安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を、実施例9の実験146~149に記載する。犬の胃の内容物は、カプセル投薬の5分前に重炭酸ナトリウム溶液で中和するか、投与10分前にHCl-KCl緩衝剤で酸性化した。1群の犬には、ニロチニブの単回静脈内投与(1mg/kg)も与えた。ニロチニブの血漿中レベルを、選択的LC-MS/MS法により決定した。試験したどの動物にも副作用は全く観察されなかった。
【0197】
結果及び結論
ニロチニブ塩基の平均±SEM血漿中濃度-時間プロファイルを
図22~25に、薬物動態パラメーター及び結果を表46A及び46Bに示す。
【0198】
外れ値を計算し、グラブス検定に従い、ある値が95%信頼区間(α=5%)でその他からの有意な外れ値であるかどうかに基づいて除外した。n=4で95%信頼区間でグラブス検定の棄却限界値Zは1.48である。Z=(平均-疑わしい値)/SD
【0199】
酸性の胃に与えた市販のニロチニブ製剤のT1/2は2つの値しか得られなかったので、それを例外として、値を平均±SDで表す。
【0200】
静脈内(IV)データは、pHを3.3から3.5に調整した10%HPβCD中の0.2mg/mLのニロチニブ溶液を1mg/kgで一定速度でIV注入して得た。Co:511±46ng/mL;T
1/2:3.3±1.8時間;AUC0-24時間:1000±300ng*時間/mL。
【0201】
値を平均±SDで与える。静脈内(IV)データは、pHを3.3から3.5に調整した10%HPβCD中の0.2mg/mLのニロチニブ溶液を1mg/kgで一定速度でIV注入して得た。Co:511±46ng/mL;T1/2:3.3±1.8時間;AUC0-24時間:1000±300ng*時間/mL。
【0202】
酸性化された胃に投与した市販のニロチニブ製剤は、同じ製剤を中和された胃に投与した後の約2倍の血漿中レベルを示した。ニロチニブ塩基とポリマー性安定化マトリックス形成性成分としてのPVAP及びHPMCP HP55による、本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を含む両製剤は、血漿曝露の著しい向上を示し、酸性化された胃に与えた市販の製剤の約2倍の血漿中レベルであった。さらに、本発明の方法により製造された安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を組み合わせると、程度の差はあるが胃内pHに依存しない血漿曝露を与えることができるだろう。
【0203】
経口アベイラビリティーのさらなる向上は、本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子による製剤を、可溶化剤ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーと組み合わせた場合に見られた。このように、ニロチニブ塩基とポリマー性安定化マトリックス形成性成分としてのPVAP及びHPMCP HP55による本発明の組成物であって、可溶化剤ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーが加えられ、酸性化された胃に投与されたものは、市販の製剤より血漿中レベルが2.3倍から3.1倍高くなった。この試験において、ニロチニブ塩基とポリマー性安定化マトリックス形成性成分としてのHPMCP HP55による本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子であって、可溶化剤ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーが加えられ(I/P+S)、中和された胃の内容物に投与された場合に、高い経口バイオアベイラビリティーが達成された。この試験において、曝露は、同じ中和された条件下で投与された市販の経口製剤よりも約7倍増加した。この試験において最高のバイオアベイラビリティー、36±24%は、ニロチニブ塩基とポリマー性安定化マトリックス形成性成分としてのPVAPによる本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子が中和された胃に投与された時に達成された。しかし、この試験の行程は、この試験での最高の標準偏差も伴った。
【0204】
剤形の物性の最適化による吸収及びバイオアベイラビリティーの向上に基づく、ニロチニブ安定な非晶質ハイブリッドナノ粒子による本発明の組成物のインビボ性能の向上があった。イヌ-ヒトの胃腸の薬物吸収プロセスには密接な関係がありそうなので(Persson,E.M.et al.Pharm.Res.2005,22,2141-2151)、イヌでのインビボ試験の結果により、本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子の患者での類似の吸収性が予測され得る。有利な吸収性を有する本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子は、現在の診療で利用される経口投与量が低減され得ることも予測する。さらに、本発明の安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子は、PKIの吸収及びバイオアベイラビリティーにおけるpH依存症を低くし得る。
【0205】
実施例15.本発明のハイブリッドナノ粒子による組成物の安定性の程度/レベルの測定
本発明のハイブリッドナノ粒子を含む組成物の安定性試験において、X線粉末回折及びAUCの測定による溶解速度を測定して、粒子が、室温で(18~25℃)少なくとも11か月にわたり安定であることが示された。
【0206】
ニロチニブ及びHPMCP HP55を含む本発明の方法により製造された安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子による一連の実験において、生じた粒子は、XRPD並びにAUCの測定による溶解速度を測定して、薬物充填量40%で安定な非晶質のハイブリッドナノ粒子を与えた(I/Pニロチニブ塩基/HPMCP HP55:実験146)。物質は、およそ127℃で1つのガラス転移温度を示したが、それは固有の安定性を持つ単一の非晶相を示す。部分的に結晶性のバッチも、類似の固有な安定性を処理した(processed)。薬物充填量40%の部分的に結晶性のハイブリッドナノ粒子、I/Pニロチニブ塩基/HPMCP HP55の室温での(18~25℃)の6か月の保存は、物理的な不安定性の徴候を全く示さなかった。
【0207】
熱重量測定では、周囲温度から120℃で1.7%の質量減少が示された。
【0208】
25℃での動的水蒸気吸収分析では、0から90%RHでおよそ7%の相対的質量増加があった(0から90%RHへのサイクルを3回したが、相変化は起こらなかった)。
【0209】
高いガラス転移温度、室温から120℃への1.7%の質量増加、及び中程度の吸湿性(hygrospopicity)は固有の安定性を提案する。これは、種々の条件でのいくつかのバッチの安定性試験により支持される。最長の安定点は、室温で(18~25℃)12か月である。どのバッチも条件も、物理的不安定性の徴候を示さなかった(
図27)。
【0210】
変調示差走査熱量測定(mDSC)
変調示差走査熱量測定(mDSC)分析を、RC90冷蔵冷却システム(Home Automation,New Orleans,USA)を備えたTA Instruments Q200型(New Castle,USA)で実施した。試料を、Tzeroローマスアルミニウムパン中で7±2mgに秤量し、Tzeroリッドで密封した。次いで、それらを、従来の変調温度の振幅1℃及び変調期間40秒で、3℃/分の加熱速度で0から170℃に加熱した。超高純度窒素をパージガスとして50mL/分の流量で使用した。データ分析は全てTA Universal Analysisソフトウェア、バージョン4.7Aを使用して実施した。セル定数及び温度較正は、装置操作の前に、インジウム標準を使用して実施した。DSCの結果を、ヒートフローのフォワード成分及びリバース成分(forward and reverse components)の両方の点で評価した。
【0211】
熱重量分析(TG)は、Seiko TG/DTA 6200で、およそ10から20mgの試料を含む開放90μlPtパンで、200mL/分の窒素流で実施した。温度プログラムは、周囲温度(20℃)から400℃であり、加熱速度は10℃/分であった。ブランクを差し引き、TGデータを試料のサイズに対して規格化し、Muse Standard Analysisソフトウェア、バージョン6.1 Uを使用して分析した。
【0212】
動的水蒸気収着(DVS)
試料の吸湿性を、DVS-1(Surface Measurement Ltd.,UK)を使用して、動的水蒸気収着重量測定(DVS)により試験した。およそ10mgの物質をガラスカップに秤量した。試料上の目標相対湿度(RH)がステップあたり10%RHで0%から90%に段階的に上昇し、次いで同様に0%RHに減少する時に、相対重量を20秒間隔で記録した。各試料を、連続した3回の完全サイクルで試験した。次のレベルのRHに進む条件は、15分以内で0.002%以下の重量変化であり、ステップごとの最大総時間は24時間であった。このタイプの実験におけるゆっくりとした平衡のため、得られた数は、水の吸収の低めの見積もりであるとみなすべきである。温度は25℃に保った。
【0213】
X線粉末回折(XRPD)
XRD実験を、ブラッグ・ブレンターノ型に設定したX’Pert Pro回折計(PANanalytical,Almelo,Netherlands)で実施した。回折計には、20μmニッケルフィルター及び2.122°2θの有効長(active length)を有するX’Celerator RTMS検出器を備えていた。代表的な試料を、ゼロバックグラウンド石英単結晶検体支持台(Siltronix,Archamps,France)の上に置いた。実験は、周囲温度及び湿度で、Cu Kα放射線(45kV及び40mA)を利用して実施した。走査は、連続モードで、4.5~40°の2θの範囲で、自動発散スリット及び散乱防止スリットを使用し、観測長(observed length)10mm、通常の計数時間(common counting time)299.72秒、及びステップサイズ0.0167°2θで実施した。データ収集は、アプリケーションソフトウェア、X’Pert Data Collector V.2.2j及び装置制御ソフトウェアV.2.1Eを使用して実施し、パターン分析は、X’Pert Data Viewer V.1.2cを使用して実施した(ソフトウェアは全て、PANanalytical,Almelo,Netherlandsから得た)。
【0214】
AUCの測定による溶解速度
以下に述べる実験171及び実験172に記載の安定なハイブリッドナノ粒子(I/P)を、実験148に従って、ニロチニブ塩基、HPMCP HP55により製造し、室温で11か月保存した。非シンク溶解速度を異なる時点で試験し、結果を表47及び
図26に表す。ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマーを加えて、溶解度を高めた。80分にわたるAUCの比較は、粒子の溶解速度プロファイルが、11か月の保存の後実際的に変化しておらず、例えば、製造し、試験し、11か月保存した粒子と比べた、製造し、試験した粒子のAUCの比は97%を超えることを明確に示した。