(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123774
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】生理的状態を検知するための超音波後方散乱を用いたインプラント
(51)【国際特許分類】
A61B 5/145 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
A61B5/145
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108643
(22)【出願日】2023-06-30
(62)【分割の表示】P 2018568204の分割
【原出願日】2017-07-07
(31)【優先権主張番号】62/359,672
(32)【優先日】2016-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】マハルビズ,ミケル,エム.
(72)【発明者】
【氏名】カルミナ,ホセ,エム.
(72)【発明者】
【氏名】アンワー,メクハイル
(72)【発明者】
【氏名】オジルゲン,ブラク,エー.
(72)【発明者】
【氏名】セオ,ドンジン
(72)【発明者】
【氏名】ファヴァ,フェデリカ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】対象の生理的状態を検知し超音波後方散乱を用いて報告する埋め込み型デバイスを提供する。
【解決手段】本発明は、被検物質の量、pH、温度、ひずみ、または圧力を検出するよう構成されたセンサと、最大寸法の長さが約5mm以下の超音波トランスデューサであって、上記センサによって検出された、上記被検物質の量、上記pH、上記温度、または上記圧力に基づいて変調された電流を受信し、上記受信された電流に基づいて超音波後方散乱を発するよう構成された、超音波トランスデューサと、を有する、埋め込み型デバイスである。上記埋め込み型デバイスは、動物または植物のような対象に埋め込むことができる。
【選択図】
図34A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、米国仮出願番号62/359,672(2016年7月7日出願、名称「NEURAL DUST AND ULTRASONIC BACKSCATER IMPLANTS AND SYSTEMS, AND APPLICATIONS FOR SUCH SYSTEMS」)に基づく優先権を主張するものであり、該米国仮出願は、すべての目的のため、参照により本明細書に援用される。
【0002】
〔連邦政府資金援助の研究に関する声明〕
本発明は、認可番号HR0011-15-2-0006の下、国防高等研究計画局(DARPA)により与えられた政府支援により成されたものである。政府は本発明に対し一定の権利を有する。
【0003】
〔技術分野〕
本発明は、対象の生理的状態を検知し超音波後方散乱を用いて報告する埋め込み型デバイスに関する。
【0004】
〔背景〕
従来から知られている「ニューラルダスト」システムは、小型の埋め込み型デバイス(「ニューラルダスト」または「モート」と称する)と、超音波送信およびモートから反射される後方散乱送信を用いて該モートのそれぞれと通信する埋め込み型超音波トランシーバと、該埋め込み型超音波トランシーバと無線通信する外部のトランシーバとを有する。「Seo et al., Neural dust: an ultrasonic, low power solution for chronic brain-machine interfaces, arXiv: 1307.2196v1(2013年7月8日)」、「Seo et al., Model validation of untethered, ultrasonic neural ダストモートs for cortical recording, Journal of Neuroscience Methods, vol. 224, pp. 114-122」(2014年8月7日、オンラインで入手可能)、および「Bertrand et al., Beamforming approaches for untethered, ultrasonic ニューラルダスト モート for cortical recording: a simulation study, IEEE EMBC(2014年8月)」を参照のこと。これらの論文に記載されたニューラルダストシステムは、皮質記録(すなわち、脳の電気信号の記録)に用いられる。これらの論文に示された当該用途では、モートが脳組織(皮質)に埋め込まれ、超音波トランシーバ(すなわち「呼びかけ機」)が硬膜の下方、皮質上に埋め込まれ、外部のトランシーバが、患者の頭部の、硬膜下超音波トランシーバが埋め込まれた場所に近接する位置に設置される。このニューラルダストシステムを
図1に示す。
【0005】
対象内の特定の生理的状態を注意深く監視することで、健康および疾患の予後をよりよく理解することができる。例えば、血糖の監視を用いて、糖尿病患者の健康を監視するし、血液酸化レベルはコンパートメント症候群、癌、または臓器移植を監視するのに有用である。しかし、特定の生理的状態を絶えず深層組織監視することは、既知の技術を用いては非実際的である。必要なのは、生理的状態を検知する埋め込み型デバイスである。
【0006】
〔発明の概要〕
本明細書に記載されるのは、対象の生理的状態(例えば、pH、被検物質のレベル、圧力、ひずみ、温度)を検知し、検知した生理的状態を超音波後方散乱を用いて報告する埋め込み型デバイスである。さらに記載されるのは、1つ以上の埋め込み型デバイスと呼びかけ機とを有するシステムである。さらに記載されるのは、生理的状態を検知し該生理的状態を超音波後方散乱を用いて報告する方法である。
【0007】
一態様では、被検物質の量、pH、温度、ひずみ、または圧力を検出するよう構成されたセンサと、最大寸法の長さが約5mm以下の超音波トランスデューサであって、上記センサによって検出された、上記被検物質の量、上記pH、上記温度、上記ひずみ、または上記圧力に基づいて変調された電流を受信し、上記受信された電流に基づいて超音波後方散乱を発するよう構成された、超音波トランスデューサと、を有する、埋め込み型デバイスが提供される。
【0008】
上記埋め込み型デバイスのいくつかの実施形態では、上記超音波トランスデューサは、上記埋め込み型デバイスに電力を供給する超音波を受信するよう構成されている。いくつかの実施形態では、上記超音波トランスデューサは、1つ以上の超音波トランスデューサを含む呼びかけ機からの超音波を受信するよう構成されている。いくつかの実施形態では、上記超音波トランスデューサは、バルク圧電トランスデューサ、圧電マイクロマシン超音波トランスデューサ(PMUT)、または容量性マイクロマシン超音波トランスデューサ(CMUT)である。
【0009】
上記埋め込み型デバイスのいくつかの実施形態では、上記埋め込み型デバイスは最大寸法の長さが約5mm以下である。いくつかの実施形態では、上記埋め込み型デバイスの体積が約5mm3以下である。
【0010】
いくつかの実施形態では、上記埋め込み型デバイスは対象に埋め込まれる。いくつかの実施形態では、上記対象はヒトである。いくつかの実施形態では、上記対象は動物または植物である。
【0011】
上記埋め込み型デバイスのいくつかの実施形態では、上記センサは上記被検物質の量またはpHを検出する。いくつかの実施形態では、上記センサはpHまたは酸素を検出する。
【0012】
上記埋め込み型デバイスのいくつかの実施形態では、上記センサは光センサである。いくつかの実施形態では、上記光センサは光源および光検出器を有する。いくつかの実施形態では、上記光センサは血圧または脈拍を検出する。いくつかの実施形態では、上記光センサは、蛍光色素を含むマトリクスを有し、上記蛍光色素の蛍光強度または蛍光寿命は上記被検物質の量に依存する。いくつかの実施形態では、上記光センサは近赤外線分光法を行うよう構成されている。いくつかの実施形態では、上記センサはグルコースを検出する。
【0013】
いくつかの実施形態では、上記センサは電位差測定化学センサまたは電流測定化学センサである。いくつかの実施形態では、上記センサは酸素、pH、またはグルコースを検出する。
【0014】
上記埋め込み型デバイスのいくつかの実施形態では、上記センサは温度センサである。いくつかの実施形態では、上記温度センサは、サーミスタ、熱電対、または絶対温度比例(PTAT)回路である。上記埋め込み型デバイスのいくつかの実施形態では、上記埋め込み型デバイスはバルク圧電超音波トランスデューサとサーミスタとを有する。
【0015】
上記埋め込み型デバイスのいくつかの実施形態では、上記センサは圧力センサである。いくつかの実施形態では、上記圧力センサはマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)センサである。いくつかの実施形態では、上記埋め込み型デバイスは血圧または脈拍を測定するよう構成されている。
【0016】
上記埋め込み型デバイスのいくつかの実施形態では、上記センサはひずみセンサである。
【0017】
上記埋め込み型デバイスのいくつかの実施形態では、上記埋め込み型デバイスは集積回路をさらに有する。いくつかの実施形態では、上記集積回路は、電源回路と、上記センサに電流を供給するよう構成されたドライバと、上記センサから信号を受信するよう構成されたフロントエンドと、デジタル回路のうち1つ以上を有する。いくつかの実施形態では、上記集積回路は上記デジタル回路を有し、上記デジタル回路は変調回路を作動させるよう構成されている。いくつかの実施形態では、上記デジタル回路は上記変調回路にデジタル化信号を送信するよう構成されており、該デジタル化信号は上記検出された被検物質の量、上記検出された温度、検出されたひずみ、または上記検出された圧力に基づく。
【0018】
上記埋め込み型デバイスのいくつかの実施形態では、上記埋め込み型デバイスは生体適合性物質によって少なくとも部分的に被包されている。
【0019】
上記埋め込み型デバイスのいくつかの実施形態では、上記埋め込み型デバイスは非応答型リフレクタをさらに有する。
【0020】
上記埋め込み型デバイスのいくつかの実施形態では、上記埋め込み型デバイスは2つ以上のセンサを有する。
【0021】
本明細書でさらに提供されるのは、1つ以上の埋め込み型デバイスと、該1つ以上の埋め込み型デバイスに超音波を送信するか、該1つ以上の埋め込み型デバイスから超音波後方散乱を受信するよう構成されている1つ以上の超音波トランスデューサを有する呼びかけ機と、を有する、システムである。いくつかの実施形態では、上記呼びかけ機は1つ以上の超音波トランスデューサアレイを有し、各トランスデューサアレイは2つ以上の超音波トランスデューサを有する。いくつかの実施形態では、上記システムは複数の埋め込み型デバイスを有する。いくつかの実施形態では、上記呼びかけ機は、送信される超音波をビームステアリングして、該送信される超音波を、上記複数の埋め込み型デバイスの第1部分または上記複数の埋め込み型デバイスの第2部分に交互に集中させるよう構成されている。いくつかの実施形態では、上記呼びかけ機は、少なくとも2つの埋め込み型デバイスから超音波後方散乱を同時に受信するよう構成されている。いくつかの実施形態では、上記呼びかけ機は、時間分割多重化、空間多重化、または周波数多重化を用いて、上記複数の埋め込み型デバイスに超音波を送信するか、上記複数の埋め込み型デバイスから超音波後方散乱を受信するよう構成されている。いくつかの実施形態では、上記呼びかけ機は、対象によって着用可能であるよう構成されている。
【0022】
一態様では、被検物質の量、pH、温度、ひずみ、または圧力を検出する方法であって、最大寸法の長さが約5mm以下の超音波トランスデューサを有する1つ以上の埋め込み型デバイスに電力を供給する超音波を受信する工程と、上記超音波から電流へエネルギーを変換する工程と、上記被検物質の量、上記pH、上記温度、ひずみ、または上記圧力を測定するよう構成されたセンサに、上記電流を送信する工程と、上記測定された被検物質の量、上記測定されたpH、上記測定された温度、上記測定されたひずみ、または上記測定された圧力に基づいて、上記電流を変調する工程と、上記変調された電流を、上記測定された被検物質の量、上記測定されたpH、上記測定された温度、上記測定されたひずみ、または上記測定された圧力をエンコードする超音波後方散乱に変換する工程と、上記超音波後方散乱を、該超音波後方散乱を受信するよう構成された1つ以上のトランスデューサを有する呼びかけ機に発する工程と、を含む、方法が提供される。
【0023】
一態様では、被検物質の量、pH、温度、ひずみ、または圧力を検出する方法であって、最大寸法の長さが約5mm以下の超音波トランスデューサを有する1つ以上の埋め込み型デバイスに電力を供給する超音波を受信する工程と、上記超音波から電流へエネルギーを変換する工程と、上記被検物質の量、上記pH、上記温度、上記ひずみ、または上記圧力を、センサを用いて測定する工程と、上記測定された被検物質の量、上記測定されたpH、上記測定された温度、上記測定されたひずみ、または上記測定された圧力に基づいて、上記電流を変調する工程と、上記変調された電流を、上記測定された被検物質の量、上記測定されたpH、上記測定された温度、上記測定されたひずみ、または上記測定された圧力をエンコードする超音波後方散乱に変換する工程と、上記超音波後方散乱を、該超音波後方散乱を受信するよう構成された1つ以上のトランスデューサを有する呼びかけ機に発する工程と、を含む、方法が提供される。
【0024】
上記方法のいくつかの実施形態では、上記方法は上記呼びかけ機を用いて上記超音波後方散乱を受信する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、上記方法は上記超音波を送信するよう構成された上記呼びかけ機を用いて、上記超音波を送信する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、上記超音波は2つ以上のパルスで送信される。
【0025】
上記方法のいくつかの実施形態では、上記方法は、上記超音波後方散乱を分析して、上記被検物質の量、上記測定されたpH、上記測定された温度、上記測定されたひずみ、または上記測定された圧力を決定する工程をさらに含む。
【0026】
上記方法のいくつかの実施形態では、上記1つ以上の埋め込み型デバイスは、血管、移植臓器、腫瘍、または感染部位に接して、またはその内部に、またはそれに近接して埋め込まれる。
【0027】
上記方法のいくつかの実施形態では、上記方法は光を発する工程と蛍光強度または蛍光寿命を検出する工程とをさらに含み、上記蛍光強度または蛍光寿命は上記被検物質の量または上記pHに依存する。いくつかの実施形態では、上記方法は発振発光と検出された蛍光とのあいだの位相シフトを決定する工程を含み、上記位相シフトは上記被検物質の量または上記pHに依存する。いくつかの実施形態では、上記方法はパルス化発光または発振発光に由来する、上記検出された蛍光の蛍光寿命を決定する工程を含む。
【0028】
上記方法のいくつかの実施形態では、上記方法は上記呼びかけ機に対する上記1つ以上の埋め込み型デバイスの位置を決定する工程をさらに含む。
【0029】
上記方法のいくつかの実施形態では、上記方法は上記1つ以上の埋め込み型デバイスの動作を検出する工程をさらに含む。
【0030】
上記方法のいくつかの実施形態では、上記方法は上記埋め込み型デバイスを対象に埋め込む工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、上記対象は動物または植物である。いくつかの実施形態では、上記対象はヒトである。
【0031】
上記方法のいくつかの実施形態では、上記超音波後方散乱はデジタル化信号をエンコードする。
【0032】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、Seo et al., Neural dust: an ultrasonic, low power solution for chronic brain-machine interfaces, arXiv: 1307.2196v1 (July 8, 2013)に開示される、外部のトランシーバ、硬膜下の呼びかけ機、およびニューラルダストモートを含む、ニューラルダストシステムの概略図である。
【0033】
図2Aは、本明細書中で開示されるシステムにおける、例示的な呼びかけ機のブロック図である。図解される呼びかけ機は、複数の超音波トランスデューサを含む超音波トランスデューサアレイを含む。前記超音波トランスデューサアレイ中の各超音波トランスデューサは、チャネルにより作動する。前記チャネルは、前記トランスデューサが、超音波を受信または送信するよう、交互に構成するスイッチを含む。
図2Bは、本明細書中に開示されるシステムにおける、別の例示的な呼びかけ機の概略図である。図解される呼びかけ機は、2つの超音波トランスデューサアレイを含み、それぞれの超音波トランスデューサアレイが、複数の超音波トランスデューサを含む。また、前記呼びかけ機は、集積回路を含む。前記集積回路はデジタル回路を含んでもよく、前記デジタル回路はプロセッサを含んでもよい。前記集積回路は、ユーザインターフェース(ディスプレイ、キーボード、ボタン等を含み得る)、記憶媒体(すなわち、非一時的記憶装置)、入出力装置(無線(例えば、Bluetooth(登録商標))であってよい)、および電源装置(例えば、バッテリ)に接続される。
【0034】
図3Aは、対象により着用可能である、例示的な呼びかけ機のブロック図を表す。前記呼びかけ機は、無線通信システム(図中では、Bluetooth(登録商標)無線)を含む。前記無線通信システムは、コンピュータシステムとの通信のために用いられてよい。
図3Bは、着用可能な呼びかけ機の分解図を表す。前記呼びかけ機は、バッテリ、無線通信システム、およびトランスデューサアレイを含む。
図3Cは、対象へ取り付けるためのハーネスを付けて完全に組み立てた、
図3Bで示した着用可能な呼びかけ機を表す。
図3Dは、対象、すなわちげっ歯類(ただし、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、サル、ラット、マウス等、任意の種類の動物であってよい)に取り付けられた、着用可能な呼びかけ機を示す。前記呼びかけ機は、トランスデューサアレイを含む。前記トランスデューサアレイは、接着材で対象の体に固定される。
図3Eは、
図3A~
図3Dで示した呼びかけ機のトランスデューサアレイの断面図を示す。
【0035】
図4は、呼びかけ機中のトランスデューサと、小型化超音波トランスデューサを有する埋め込み型デバイスとの間の通信を表す概略図である。前記呼びかけ機は、埋め込み型デバイスへ超音波を送信し、小型化超音波トランスデューサは、センサによって変調された超音波後方散乱を発する。そして、呼びかけ機が後方散乱を受信する。
【0036】
図5Aは、呼びかけ機から発せられる超音波パルスの一連のサイクルを表す。呼びかけ機のトランシーバ基板が、前記呼びかけ機(例えば、FPGA)からのトリガーを受信すると、一連の送信パルスを発生させる。送信サイクルの最後に、ASIC上のスイッチは、送信モジュールとの接続を絶ち、受信モジュールと接続する。各サイクルは、100マイクロ秒である。
図5Bは、
図5Aで示した送信パルスシーケンス(つまり、1サイクル)の拡大図を表す。前記サイクルにおいて、1.85MHzの超音波パルスが6つ存在し、前記超音波パルスは、540ナノ秒毎に繰り返し発生する。
図5Cは、埋め込み型デバイスから発せられる超音波後方散乱を示す。超音波後方散乱は、約2tレイリーで呼びかけ機のトランスデューサに届く。
図5Dは、超音波後方散乱の拡大図を示し、該超音波後方散乱は分析可能である。超音波後方散乱の分析は、超音波後方散乱波のフィルタリング工程、整流化工程、および積分工程を含む。
図5Eは、フィルタリングされた超音波後方散乱波の拡大図を示す。前記後方散乱波は、小型化超音波トランスデューサへのインピーダンスの変化に応答する応答領域と、小型化超音波トランスデューサへのインピーダンスの変化に応答しない非応答領域とを含む。
【0037】
図6Aは、小型化超音波トランスデューサおよびセンサを有する、埋め込み型デバイスの概略図を示す。
図6Bは、小型化超音波トランスデューサ、集積回路およびセンサを有する、埋め込み型デバイスの概略図を示す。
【0038】
図7Aは、プリント回路基板(PCB)上に小型化超音波トランスデューサおよびASICを含む、例示的な埋め込み型デバイスの概略図を示す。
図7Bは、プリント回路基板(PCB)上に小型化超音波トランスデューサおよびASICを含む、別の例示的な埋め込み型デバイスの概略図を示す。
【0039】
図8Aは、埋め込み型デバイスにおいて、小型化超音波トランスデューサに取り付けられたASICの一実施形態を示す。
図8Bは、埋め込み型デバイスにおいて、小型化超音波トランスデューサに取り付けられた集積回路の別の一実施形態を示す。
【0040】
図9Aは、光エミッタからの光の組織内での輝度変調に基づいた、埋め込み型デバイスセンサから外部のトランシーバへの後方散乱通信を示す。埋め込み型デバイス上のセンサは、光フィルタによって増強されるセンサであってよい。
図9Bは、光センサを用いたNIR多重波長分光光度分析を実行するために、異なる波長の光を発する素子アレイ(右側)を用いた単色光の交互パルシングを示す。
図9Cは、光源および光検出器を含む光センサを有する、埋め込み型デバイスを示す。前記センサは、統合光エミッタを含む。
【0041】
図10Aは、光源から発せられた光パルスと、光センサ中のマトリクスにおいて光が蛍光色素を励起させたあと光検出器によって検出された、上記光パルスの結果である蛍光減衰とを示す。
図10Bは、光源から発せられた発振光と、光センサ中のマトリクスにおいて光が蛍光色素を励起させたあと光検出器によって検出された、上記発振光の結果である蛍光寿命の結果との間の位相シフトを示す。
図10Cは、
図10Bに示した位相シフトを検出するための、例示的な光センサの概略図を示す。
【0042】
図11Aは、小型化超音波トランスデューサ、集積回路、および光センサを有する埋め込み型デバイスの一実施形態の概略図を示す。
図11Bは、小型化超音波トランスデューサ、集積回路、および光センサを有する埋め込み型デバイスの一実施形態の別の概略図を示す。
【0043】
図12Aは、小型化超音波トランスデューサおよび温度センサを有する埋め込み型デバイスの一実施形態の概略図を示す。
図12Bは、小型化超音波トランスデューサ、集積回路、および温度センサを有する埋め込み型デバイスの一実施形態の概略図を示す。
【0044】
図13Aは、小型化超音波トランスデューサおよび圧力センサを有する埋め込み型デバイスの一実施形態の概略図を示す。
図13Bは、小型化超音波トランスデューサ、集積回路、および圧力センサを有する埋め込み型デバイスの一実施形態の概略図を示す。
【0045】
図14は、本明細書中に記載の埋め込み型デバイスの製造方法を図解する。
【0046】
図15は、非晶質炭化珪素を含む埋め込み型デバイスの被包方法のフローチャートである。
【0047】
図16Aは、埋め込み型デバイスの構成要素を接続するために使用する異なる形状のビアを示す。
図16Bは、変形可能な相互接続用の、蛇行したトレース配置を示す。
【0048】
図17は、銀エポキシを硬化させるための時間と温度の関係を示す。銀エポキシは、埋め込み型デバイスの製造においてワイヤボンドを取り付けるための材料の一例である。
【0049】
図18は、埋め込み型デバイスを炭化珪素中に被包するための概略図を示す。
【0050】
図19は、プロトタイプのアセンブリの概略とPCBを示す。
【0051】
図20A~Eは、所望の大きさの小型化超音波トランスデューサ(PZT)をPCB上に組み立てることを確実にするための処理工程を示す。
図20Aにおいて、エポキシはんだペーストを基板上に配置する。
図20Bにおいて、圧電材料をPCBに取り付ける。
図20Cにおいて、圧電材料をダイシングし、所望のサイズのバルク圧電超音波トランスデューサを形成する。
図20Dにおいて、超音波トランスデューサをPCBにワイヤボンディングする。
図20Eにおいて、PCBおよび超音波トランスデューサをPDMS中に被包する。
【0052】
図21は、ベクトルネットワークアナライザ(VNA)を用いた電気インピーダンス測定の概略図を示す。
【0053】
図22Aは、異なる大きさのバルク圧電超音波トランスデューサにおいて測定された電力伝達効率が、シミュレートされた挙動と一致することを示す。
図22Bは、測定されたPZT結晶のインピーダンス分光が、シミュレーションと一致することを示す。
図22Cは、小型化超音波トランスデューサの得られた電力に対する周波数応答が、約6.1MHzであることを示す。
【0054】
図23は、呼びかけ機の一部として使用することができる、例示的な超音波トランスデューサの概略図である。
【0055】
図24は、電力送達の確認のための、校正済み超音波トランスデューサを用いた音響特徴付け設備の概略図である。超音波受信機は超音波送信機とは別個のものである。
【0056】
図25Aは、ハイドロフォンをトランスデューサの表面から遠ざけたときの5MHzトランスデューサの出力を表す。
図25Bは、軽減出力のピークが水におけるピークに比べて、左にシフトしていることを示す。
【0057】
図26Aは、トランスデューサの出力のXZ断面図を示しており、レイリー距離と、近距離から遠距離への伝播の鮮明な変遷とを図示する。
図26Bは、2.2mmのビームの6dBの帯域を示すXYビーム断面図を示す。
【0058】
図27Aは、XY平面における、トランスデューサアレイからの集束された2次元ビームパターンを示す。測定されるビームは、X方向およびY方向の両方において、シミュレートされたビームに近接している。
図27Bは、超音波トランスデューサアレイ中の各トランスデューサ素子に適用された遅延時間を示す。
図27Cは、シミュレートされた2次元XZ断面のビームパターンを示す。
【0059】
図28Aは、トランスデューサアレイから送信される超音波ビームのビームステアリングを示す。各ビームパターンの下は、
図28Bに示すように、トランスデューサアレイ中の各トランスデューサが測定されたビームパターンを得るのに要する遅延である。
図28Cは、
図28Aで示したそれぞれのビームパターンの、X軸における1次元ビームパターンを示す。測定されたビームパターンは、シミュレートされたビームパターンに非常に近似している。
【0060】
図29は、組織中、5mmの送信距離における、シミュレートされた小型化超音波トランスデューサの連結効率および受信電力を示す。
【0061】
図30Aは、例示的なトランスデューサの表面からの距離の関数としての、低減された正規化ピーク圧力が、1.85MHzの際、約8.9mmで低減された焦点を有することを示す。
図30Bは、近距離、レイリー距離、および遠距離における、XY断面のビームパターンおよびそれに対応するy=0のときの1次元電圧プロットを示す。これらのパターンは、レイリー距離においてビームが集束していることを示す。
図30Cは、トランスデューサの出力圧力は、入力電圧の一次関数であることを示す(最高32Vのピーク間電圧)。
【0062】
図31A(別の文脈において示した
図5Eと同一)は、後方散乱の別々の領域を示す例示的な後方散乱波形である。後方散乱波形は、非応答領域から発生する反射に対応する領域によって(時間的に)両側を挟まれていることがわかる。これらの領域は、他の埋め込み型デバイスの構成要素から反射した波形に対応している。非応答領域(生物学的データをエンコードしていない)からの測定値を基準としてよい。このように示差測定を行うことで、実験における外部のトランスデューサに対する構造全体の移動を、差し引くことができる。
図31Bは、カスタムした水タンク設備から得られる校正曲線であり、ノイズフロアは0.18mV
rmsであることを示す。
図31Cは、ビームパターン出力の減退に続く、横への照準ミスの関数としてのノイズフロアの影響を示す。
図31Dは、レイリー距離における、y=0のときのトランスデューサの軸外し電圧および出力低下の1次元のプロットを示す。
図31Eは、角度の照準ミスの関数としての、有効ノイズフロアの低下のプロットを示す。角度の照準ミスによって、ビームパターンが歪む。つまり、ビームパターンが円ではなく、反対に長円形となる。これにより、焦点の半径が長くなる(そして、より広い範囲へとエネルギーが分散する)。つまり、焦点の歪みが、照準ミスにおける制約を緩和する。
【0063】
図32Aは、組織を模倣するために使用される超音波カップリングゲルに埋め込まれた埋め込み型デバイスを用いた、埋め込み型デバイスからの超音波後方散乱を示す。前記超音波散乱は、26マイクロ秒に集中する送信貫通および終了、および47マイクロ秒付近に集中する小型化超音波トランスデューサ後方散乱を含む。
図32Bは、小型化超音波トランスデューサの後方散乱領域(応答領域)の拡大図である。これは、埋め込み型デバイスへの信号入力の結果、振幅が変調されることを示す。
【0064】
図33は、単極でエンコードすることで、後方散乱の振幅パルスの変調により、埋め込み型デバイスから無線で得られる、ASCII文字「hello world」に対応するデジタルデータを示す。
【0065】
図34Aは、小型化超音波バルク圧電トランスデューサおよびサーミスタを有する埋め込み型デバイスの例図を示す。非応答型リフレクタを埋め込み型デバイスに取り付け、非応答後方散乱波を反射させる。
図34Bは、それぞれが、小型化超音波バルク圧電トランスデューサおよびサーミスタを有する、2つの埋め込み型デバイスを示す。上部のデバイスの体積は、約0.118mm
3である。底部のデバイスの体積は、約1.45mm
3である。
【0066】
図35は、温度センサを有する個々の埋め込み型デバイスの後方散乱を特徴付けるために行う実験設計の断面図を示す。0.5milの厚さのPETシートを、水タンクの上部へ糊付けした。これにより、埋め込み型デバイスを熱的に絶縁しつつ、タンク中に水を保持する。
【0067】
図36は、小型化超音波バルク圧電トランスデューサ、サーミスタ、および高温ならびに低温での非応答型リフレクタを有する埋め込み型デバイスからの超音波後方散乱を示す。埋め込み型デバイスを3.35MHzで呼びかけた。領域[1]は、非応答型リフレクタの寄与に対応しており、一方、領域[2]は、埋め込み型デバイスにおける熱的に変調したトランスデューサの寄与に対応している。温度依存変化が、領域[2]における、信号の振幅(つまりは、整流化信号の曲線より下の面積)における増加から見て取れる。領域[1]は、そのような変化を示さない。
【0068】
図37は、34.5℃~44.5℃の温度の関数としての、サーミスタを有する単一の埋め込み型デバイスの超音波後方散乱の曲線下の平均正規化面積を示す。温度は0.5℃ずつ上昇し、10の収集した後方散乱波形面積を44.5℃において正規化した。エラーバーは、各温度で測定した10の測定値の標準偏差を表す。
【0069】
〔発明の詳細な説明〕
本明細書中に記載の埋め込み型デバイスは、小型化超音波トランスデューサ(小型化圧電トランスデューサ等)および生理センサを含む。前記小型化超音波トランスデューサは、呼びかけ機からの超音波エネルギーを受信し、埋め込み型デバイスに電力を供給する。前記呼びかけ機は、外部の呼びかけ機であっても、埋め込まれた呼びかけ機であってもよい。前記呼びかけ機は、送信器および受信器を含み、前記送信器および受信器は、同一の構成要素上にあってもよく、異なる構成要素上にあってもよい。ここで、送信器および受信器は、複合トランシーバとして統合されていてもよい。生理センサは、生理的状態(圧力、温度、ひずみ、圧力、または1種類以上の被検物質の量等)を検出し、アナログ電気信号またはデジタル電気信号を発生させる。呼びかけ機から送信される超音波の力学的エネルギーが、埋め込み型デバイス上の小型化超音波トランスデューサを振動させ、小型化超音波トランスデューサが電流を発生させる。小型化超音波トランスデューサにおける電流の流れは、埋め込み型デバイス中の電気回路によって、検出された生理的状態に基づいて変調される。小型化超音波トランスデューサは、検知された生理的状態を表す情報を通信する超音波後方散乱を発する。発せられた超音波後方散乱は、呼びかけ機の受信器構成要素によって検知される。
【0070】
埋め込み型デバイスの重要な利点は、無線で電力を供給されながら、深層組織における1つ以上の生理的状態を検出できる点、およびそれらの生理的状態を呼びかけ機へ無線で送信できる点である。前記呼びかけ機は、外部の呼びかけ機であってもよく、外部の構成要素へ情報を中継する呼びかけ機であってもよい。以上のことから、埋め込み型デバイスは、バッテリを充電する必要もなく、またはデバイスに保存された情報を回収する必要もなく、長期間、対象の中に留めておくことができる。上述の利点によって、今度は、デバイスの小型化、および製造コスト削減が可能となる。別の利点として、超音波を使用することで、データ通信の相対的時間と距離を関連付けることができ、これは、埋め込み型デバイスのリアルタイムの位置または移動の決定に役立つ。
【0071】
電磁(EM)力伝達は、小さな埋め込み型デバイスに電力を供給するには実用的でない。なぜなら、組織およびそれらのエネルギーを得るのに必要とされる比較的大きな開口部(例えば、アンテナまたはコイル等)において力が減衰するからである。例えば、Seo et al., Neural dust: an ultrasonic, low power solution for chronic brain-machine interfaces, arXiv paper (July 2013)を参照のこと。埋め込まれたデバイスへの十分な電力供給のためにEMを使用するには、インプラントを浅い位置に埋め込む必要があり、EM波が組織中を通って埋め込み型デバイスに到達するために、組織を余分に加熱する必要がある。EMとは反対に、超音波伝達は、組織内での電力の減衰が低い。これは、組織による超音波エネルギーの吸収量が比較的低く、(電磁波に比べて)超音波の波長が短いためである。
【0072】
超音波トランスデューサは、画像化、高強度集束超音波(HIFU)、物質の非破壊検査、スチールウォールを通しての通信および電力供給、水中通信、経皮的電力供給、およびエネルギー収集を含む、種々の分野における用途が発見されている。例えば、Ishida et al., Insole Pedometer with Piezoelectric Energy Harvester and 2 V Organic Circuits, IEEE J. Solid-State Circuits, vol. 48, no. 1, pp. 255-264 (2013)、Wong et al., Advantages of Capacitive Micromachined Ultrasonics Transducers (CMUTs) for High Intensity Focused Ultrasound (HIFU), IEEE Ultrasonics Symposium, pp. 1313-1316 (2007)、Ozeri et al., Ultrasonic Transcutaneous Energy Transfer for Powering Implanted Devices, Ultrasonics, vol. 50, no. 6, pp. 556-566 (2010)、およびRichards et al., Efficiency of Energy Conversion for Devices Containing a Piezoelectric Component, J. Micromech. Microeng., vol. 14, pp. 717-721 (2004)を参照のこと。電磁とは異なり、エネルギー伝達方法として超音波を使用することは、広く普及した民生的用途に含まれることはなく、しばしば見逃されていた。なぜなら、短距離で大きな開口部がある場合、電磁の効率の方が優れているからである。しかし、本明細書中で論じられる埋め込み型デバイスの大きさであって組織内にある場合、低音速であることで劇的に低い周波数による作動が可能であり、かつ、一般的に、組織中の音波のロスは、組織中の電磁の減衰よりも実質的に少ない。
【0073】
超音波は比較的に低音速であることから、EMと比較して波長が実質的に短い。よって、同じ送信距離の場合、超音波システムは、遠距離においてより作動しやすく、そのために、EM送信器よりも広い空間を範囲とすることができる。さらに、組織中の音波のロスは、基本的に組織中の電磁の減衰よりも小さい。これは、音波の伝達が、組織の表面に変位電流を発生させる時間依存的な電場および/または磁場よりも、組織の圧縮や希薄化に依存しているためである。
【0074】
超音波は、小型化超音波トランスデューサ(バルク圧電性物質、PMUT、またはCMUT等)とセンサとを含む小型化埋め込み型デバイスに電力を供給し該小型化埋め込み型デバイスと通信するために使用できることがわかっている。
【0075】
本明細書中に記載される埋め込み型デバイスは、対象(例えば、動物または植物)の中に埋め込まれてもよく、また、対象の中で使用されてもよい。いくつかの実施形態では、対象は、哺乳類である。例えば、対象は、げっ歯類(マウス、ラット、またはモルモット等)、ネコ、イヌ、ニワトリ、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ウサギ等が挙げられる。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。また、埋め込み型デバイスは、生理的状態を測定するために、農業作物等の植物に埋め込まれてもよい。
【0076】
<定義>
本明細書中に使用される場合、単数形(a、an、およびthe)は、文脈中で特に明記されていない場合、複数形を含む。
【0077】
本明細書中の値やパラメータにおける「約」とは、当該値およびパラメータ自体を対象としたばらつきを含む(かつ、意味する)。例えば、「約X」との記載は、「X」の記載を含む。
【0078】
「小型化」なる用語は、最大寸法の長さが約5ミリメートル以下(例えば、約4mm以下、約3mm以下、約2mm以下、約1mm以下、または約0.5mm以下)である任意の材料または構成要素を表す。特定の実施形態において、「小型化」材料または「小型化」構成要素の最大寸法の長さは、約0.1mm~約5mm(例えば、約0.2mm~約5mm、約0.5mm~約5mm、約1mm~約5mm、約2mm~約5mm、約3mm~約5mm、または約4mm~約5mm)である。また、「小型化」は、体積が約5mm3以下(例えば、約4mm3以下、3mm3以下、2mm3以下、または1mm3以下)の任意の物質または構成要素を表すことができる。特定の実施形態において、「小型化」物質または「小型化」構成要素の体積は、約0.5mm3~約5mm3、約1mm3~約5mm3、約2mm3~約5mm3、約3mm3~約5mm3、または約4mm3~約5mm3である。
【0079】
「圧電トランスデューサ」は、圧電材料を含む超音波トランシーバの1種である。圧電材料は、水晶、セラミック、ポリマー、またはその他の任意の天然圧電材料もしくは合成圧電材料であってよい。
【0080】
「非応答型」超音波は、検出信号から独立した反射率を有する超音波である。「非応答型リフレクタ」は、反射された波形が検出信号から独立するように超音波を反射する、埋め込み型デバイスの一構成要素である。
【0081】
本明細書に記載の発明の各態様および各変形例は、各態様および各変形例から「構成される(consisting)」および/または「本質的に構成される(cosisting essentially of)」ことを含むと理解されたい。
【0082】
値の範囲が示される場合、その範囲の上限値および下限値の間に介在する各値、および、記載された範囲内でその他に記載された値もしくは介在する値は、本開示の範囲に包含されることを理解されたい。記載された範囲が上限値または下限値を含む場合、これらの上限値および下限値を除外した範囲もまた、本開示に含まれる。
【0083】
本明細書に記載される種々の実施形態における1つ以上またはすべての特性を組み合わせて、本発明の他の実施形態を形成してもよい。本明細書で使用される見出しは構成上のものであり、記載された発明の主題を限定すると解釈されるべきでない。
【0084】
「実施形態」に関して上述した特徴および好ましい構成は、別個の好ましい構成であって、当該特定の実施形態のみに限定されるものではない。特徴および好ましい構成は、技術的に可能であれば、その他の実施形態の特徴と自由に組み合わせてよく、各特徴の好ましい組み合わせを形成してもよい。
【0085】
本明細書は、当業者が本発明を実施および使用できるようにするためのものであり、特許出願およびその各要件の文脈において提示される。記載される各実施形態に対する種々の変更は、当業者にとって容易に理解できるものであり、本明細書中の一般的原理をその他の実施形態に適用してもよい。そのため、本発明は示される実施形態に限定されることを意図しておらず、本明細書に記載の原理および特徴と一致する最も広い範囲を有すると認められるべきである。また、見出しは構成上のものであり、限定的なものと見なされるべきではない。最後に、本願に引用されるすべての特許文献および刊行物の開示は、すべての目的のため、参照により本明細書中に援用される。
【0086】
<呼びかけ機>
呼びかけ機は、超音波を用いて、1つ以上の埋め込み型デバイスと無線通信することができる。超音波は、埋め込み型デバイスへ電力を供給し、かつ/または埋め込み型デバイスを作動させるために使用される。呼びかけ機は、さらに、埋め込み型デバイスからの超音波後方散乱を受信することができる。超音波後方散乱は、検知された生理的状態を表す情報をエンコードする。呼びかけ機は、1つ以上の超音波トランスデューサを含む。超音波トランスデューサは、超音波送信器および/または超音波受診器(または、超音波を交替で送信または受信するよう構成され得るトランシーバ)として作動できる。1つ以上のトランスデューサは、トランスデューサアレイとして配置されてもよく、呼びかけ機は、任意で1つ以上のトランスデューサアレイを含んでもよい。いくつかの実施形態では、超音波送信機能は、別のデバイス上の超音波受信機能から分離されている。つまり、任意で、呼びかけ機は、埋め込み型デバイスへ超音波を送信する第1デバイス、および埋め込み型デバイスから超音波後方散乱を受信する第2デバイスを含む。いくつかの実施形態では、アレイ中の各トランスデューサは、規則的な間隔で配置されてもよく、不規則的な間隔で配置されてもよく、またはまばらに配置されてもよい。いくつかの実施形態では、アレイは柔軟性に富んでいる。いくつかの実施形態では、アレイは平面であり、いくつかの実施形態では、アレイは非平面である。
【0087】
例示的な呼びかけ機を、
図2Aに示す。図解される呼びかけ機は、複数の超音波トランスデューサを有するトランスデューサアレイを示す。いくつかの実施形態では、トランスデューサアレイは、1つ以上、2つ以上、3つ以上、5つ以上、7つ以上、10以上、15以上、20以上、25以上、50以上、100以上、250以上、500以上、1000以上、2500以上、5000以上、または10,000以上のトランスデューサを含む。いくつかの実施形態では、トランスデューサアレイは、100,000以下、50,000以下、25,000以下、10,000以下、5000以下、2500以下、1000以下、500以下、200以下、150以下、100以下、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下、40以下、30以下、25以下、20以下、15以下、10以下、7つ以下、または5つ以下のトランスデューサを含む。トランスデューサアレイは、例えば、超音波トランスデューサピクセルを50以上含むチップであってもよい。
図2Aに示される呼びかけ機は、1つのトランスデューサアレイを図解している。しかし、呼びかけ機は、1つ以上、2つ以上、または3つ以上の別個のアレイを含んでもよい。いくつかの実施形態では、呼びかけ機は、10以下のトランスデューサアレイ(例えば、9つ、8つ、7つ、6つ、5つ、4つ、3つ、2つ、または1つのトランスデューサアレイ)を含む。別個のトランスデューサアレイは、例えば、対象の異なる部分に配置することができ、かつ、同じ埋め込み型デバイス、または異なる埋め込み型デバイスと通信することができる。いくつかの実施形態では、トランスデューサアレイを、埋め込み型デバイスの両側に配置する。呼びかけ機は、ASICを含んでいてもよい。ASICは、トランスデューサアレイ中の各トランスデューサのためのチャネルを含む。いくつかの実施形態では、チャネルはスイッチを含む(
図2A中、「T/Rx」として示される)。スイッチは、チャネルに接続されたトランスデューサを、超音波を送信または超音波を受信するよう交互に構成することができる。スイッチは、超音波受信回路を、より高電圧の超音波送信回路から絶縁することができる。いくつかの実施形態では、チャネルに接続されたトランスデューサは、超音波を受信するのみに構成されるか、または超音波を送信するのみに構成され、スイッチは任意でチャネルから省かれる。チャネルは、遅延制御部を含んでいてもよい。遅延制御部は、送信される超音波を制御するために作動する。遅延制御部は、例えば、位相シフト、時間遅延、パルス周波数、および/または波形(振幅および波長を含む)を制御することができる。遅延制御部は、レベルシフタに接続されていてもよい。レベルシフタは、遅延制御部からの入力パルスを、トランスデューサが超音波を送信するために用いるより高い電圧へとシフトさせる。いくつかの実施形態では、各チャネルにおいて波形および周波数を示すデータを、「波形表(wave table)」に保存してもよい。これにより、各チャネルにおける送信波形が異なっていてもよい。そして、遅延制御部およびレベルシフタを用いて、このデータを、トランスデューサアレイへ送る実際の送信信号へと「ストリーム」出力してよい。いくつかの実施形態では、各チャネルにおける送信波形が、マイクロコントローラまたはその他のデジタルシステムからの高速シリアル出力から直接的に生成され、レベルシフタまたは高電圧増幅器を介してトランスデューサ素子へ送られてもよい。いくつかの実施形態では、ASICは、ASICへ供給される第1電圧をより高電圧の第2電圧へ変換する、チャージポンプを含む(
図2Aに図示)。第2電圧はチャネルへ印加される。チャネルを、遅延制御部を作動させるコントローラ(例えば、デジタルコントローラ)によって制御することができる。超音波受信回路において、受信された超音波は、(受信モードに設定された)トランスデューサによって電流へ変換され、該電流はデータ収集回路に送信される。いくつかの実施形態では、受信回路中に、組織における損失を補う増幅器、アナログ・デジタル変換器(ADC)、可変利得増幅器(variable-gain-amplifier)または時間利得制御可変利得増幅器(time-gain-controlled variable-gain-amplifier)、および/またはバンドパスフィルタを含む。ASICは、電源から電力を引き込むことができる。電源の例はバッテリであり、これは、呼びかけ機が着用可能である実施形態で好ましい。
図2Aに示す実施形態では、1.8Vの電源からASICへ電圧が供給され、チャージポンプによって32Vまで増大される。しかし、任意の適切な電圧を使用することができる。いくつかの実施形態では、呼びかけ機は、プロセッサおよび/または非一時的でコンピュータで読み取り可能な記憶装置を含む。いくつかの実施形態では、上述のチャネルは、T/Rxスイッチを含まないが、その代わりに独立したTx(送信)、および優れた飽和回復を有する低ノイズ増幅器の形態である高電圧Rx(受信回路)を有するRx(受信)を含む。いくつかの実施形態では、T/Rx回路は、サーキュレータを含む。いくつかの実施形態では、トランスデューサアレイは、呼びかけ機の送信回路/受信回路における処理チャネルよりも多くのトランスデューサ素子を含み、マルチプレクサが、パルス毎に異なる組の送信素子を選択する。例えば、64の送受信チャネルを、3:1マルチプレクサを介して、192の物理的トランスデューサ素子に接続し、任意のパルスに対して64のトランスデューサ素子のみが作動するようにする。
【0088】
図2Bは、呼びかけ機の別の実施形態を示す。
図2Bに示すように、呼びかけ機は、1つ以上のトランスデューサ202を含む。各トランスデューサ202は、送信/受信スイッチ204に接続されている。送信/受信スイッチ204は、トランスデューサが超音波を送信するように、または超音波を受信するように、交互に構成することができる。送信/受信スイッチは、プロセッサ206(例えば、中央演算処理装置(CPU)、カスタム専用処理プロセッサASIC、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、マイクロコントローラユニット(MCU)、またはグラフィック処理装置(GPU))に接続される。いくつかの実施形態では、呼びかけ機は、さらに、アナログ・デジタル変換器(ADC)またはデジタル・アナログ変換器(DAC)を含む。また、呼びかけ機は、ユーザインターフェース(ディスプレイや、呼びかけ機を制御する1つ以上のボタン等)、記憶装置、電源(バッテリ等)、および/または入出力ポート(有線であっても、無線であってもよい)を含んでもよい。
【0089】
いくつかの実施形態では、呼びかけ機は埋め込み型である。埋め込み型デバイスが、容易に超音波を送信しない障害物によって妨害された領域に埋め込まれている場合は、埋め込まれた呼びかけ機が好ましいときもある。例えば、呼びかけ機は、頭蓋下(硬膜下または硬膜上)に埋め込まれてよい。頭蓋下の呼びかけ機は、脳内に埋め込まれた埋め込み型デバイスと通信することができる。超音波は頭蓋骨によって妨害されるため、頭蓋下に埋め込まれた呼びかけ機は、脳内に埋め込まれた埋め込み型デバイスと通信が可能である。別の実施例において、埋め込み型呼びかけ機は、別の埋め込み型デバイス(例えば、骨プレート)の一部またはその裏側もしくはその内部に埋め込むことができる。埋め込まれた呼びかけ機は、外部のデバイスと、例えばEMまたはRF信号によって、通信できる。
【0090】
いくつかの実施形態では、呼びかけ機は外部の(つまり、埋め込まれていない)呼びかけ機であってよい。一実施例として、外部の呼びかけ機は着用可能であり得、ストラップまたは接着材で身体に固定してよい。別の実施例において、外部の呼びかけ機は、棒状であり得、ユーザ(医療従事者等)によって保持されてよい。いくつかの実施形態では、呼びかけ機を、縫合糸、簡単な表面張力、風呂敷のような被服における固定器具、スリーブ、ゴムバンド、または、皮下固定を介して身体に保持させることができる。呼びかけ機のトランスデューサまたはトランスデューサアレイは、残りのトランスデューサから離れて配置されてもよい。例えば、トランスデューサアレイを対象の皮膚の第1位置(1つ以上の埋め込み型デバイスに近接した位置等)に固定することができ、そして、呼びかけ機の残りを第2位置に配置し、トランスデューサまたはトランスデューサアレイを、呼びかけ機の残りとワイヤでつないでもよい。
図3A~
図3Eは、着用可能な外部の呼びかけ機の例を示す。
図3Aは呼びかけ機のブロック図を示し、当該呼びかけ機は、複数のトランスデューサを含むトランスデューサアレイと、当該トランスデューサアレイ中の各トランスデューサ用のチャネルを含むASICと、バッテリ(図示された実施例では、リチウムポリマーバッテリ(LiPo))と、無線通信システム(Bluetooth(登録商標)システム等)とを有する。
図3Bは着用可能な呼びかけ機の分解図を示し、当該着用可能な呼びかけ機は、プリント回路基板(PCB)302(ASICを含む)と、無線通信システム304と、バッテリ306と、超音波トランスデューサアレイ308と、ワイヤ310(超音波トランスデューサアレイ308をASICにつないでいる)とを有する。
図3Cは、
図3Bに示す着用可能な呼びかけ機312にハーネス314を取り付けた状態を示し、当該ハーネス314は呼びかけ機を対象に取り付けるために使用できる。
図3Dは、組み立てられ、対象に取り付けられた呼びかけ機316を示し、トランスデューサアレイ308を第1位置に取り付け、呼びかけ機の残りを第2位置に取り付けてある。
図3Eは例示的な超音波トランスデューサアレイ308の断面概略図を示し、当該超音波トランスデューサアレイ308は、回路基板318と、各トランスデューサ322を回路基板318に取り付けているビア320と、金属化ポリエステルフィルム324と、吸収性支持体層326とを有する。金属化ポリエステルフィルム324は、各トランスデューサに対して共通の土台となり音響的に整合しており、一方、吸収性支持体層326(タングステン粉末を注入したポリウレタン等)は、個々のトランスデューサの共鳴を低減させることができる。
【0091】
トランスデューサアレイの特定の設計は、所望の侵入深度、開口部の大きさ、およびトランスデューサアレイ中の個々のトランスデューサの大きさに依存する。トランスデューサアレイのレイリー距離「R」は、下記式で計算される。
【0092】
【0093】
式中、Dは開口部の大きさであり、λは伝播媒体(すなわち、組織)中の超音波の波長である。当該技術分野において理解されるように、レイリー距離はトランスデューサアレイによって放射されるビームが完全に形成される距離である。つまり、受信される電力を最大限にするために、加えられた圧力は、レイリー距離の自然焦点に集束する。そのため、いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスのトランスデューサからの距離は、およそレイリー距離と同じである。
【0094】
トランスデューサアレイ中の個々のトランスデューサを変調して、当該トランスデューサアレイによって発せられる超音波のビームのレイリー距離および位置を、ビームフォーミングまたはビームステアリングのプロセスにより制御することができる。線形拘束付最小分散型(LCMV)ビームフォーミングのような技術を用いて、複数の埋め込み型デバイスを外部の超音波トランシーバと通信させることができる。例えば、Bertrand et al., Beamforming Approaches for Untethered, Ultrasonic Neural Dust Motes for Cortical Recording: a Simulation Study, IEEE EMBC (Aug. 2014)を参照のこと。いくつかの実施形態では、ビームステアリングは、トランスデューサアレイ中のトランスデューサから発せられる超音波の出力または位相を調整することで行われる。
【0095】
いくつかの実施形態では、呼びかけ機は、1つ以上のトランスデューサを用いて超音波をビームステアリングする命令、1つ以上の埋め込み型デバイスの相対的位置を特定する命令、1つ以上の埋め込み型デバイスの相対的移動を監視する命令、1つ以上の埋め込み型デバイスの相対的移動を記録する命令、および複数の埋め込み型デバイスからの後方散乱をデコンヴォルーションする命令のうち1つ以上を有する。
【0096】
<埋め込み型デバイスおよび呼びかけ機間の通信>
埋め込み型デバイスおよび呼びかけ機は、超音波を用いて互いに無線で通信する。埋め込み型デバイスは、当該埋め込み型デバイス上の小型化超音波トランスデューサを介して、呼びかけ機からの超音波を受信する。埋め込み型デバイス上の小型化超音波トランスデューサの振動が、当該トランスデューサの電気端子間で電圧を発生させ、(センサ、および/または存在すれば、ASICを含む)デバイス中に、電流が流れる。センサによって検出される生理的状態に応じて、生理的状態に関する情報が電流を変えることができ、今度は当該電流が、小型化超音波トランスデューサからの後方散乱を変調する。センサシステム(任意でASICを含む)は、トランスデューサ上の電気端子に電気インピーダンスを供給する。このインピーダンスが変化すれば、(デバイスの外側から確認できる)トランスデューサの機械的インピーダンスが変化し、その結果、後方散乱が変化する。このように、センサシステムはトランスデューサに供給される電気インピーダンスを変調して、後方散乱通信を遂行する。それから、後方散乱は、外部の超音波トランシーバ(最初の超音波を送信した外部の超音波トランシーバと同じであっても異なっていてもよい)によって受信される。このように、センサからの情報を、後方散乱超音波の振幅、周波数、または位相の変化によってエンコードすることができる。
【0097】
図4は、埋め込み型デバイスと通信する呼びかけ機を示す。外部の超音波トランシーバは超音波(「搬送波」)を発し、当該超音波は組織を通過することができる。上記搬送波は、小型化超音波トランスデューサ(例えば、小型化バルク圧電トランスデューサ、PMUT、またはCMUT)上で機械的振動を発生させる。小型化超音波トランスデューサで電圧が発生し、それにより、埋め込み型デバイス上のセンサに電流が流れる。いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスはASICを含み、小型化超音波トランスデューサからの電流は、ASICを介して放射検出器に流れ、ASICに戻り、そして、小型化超音波トランスデューサへと戻る。小型化超音波トランスデューサ中を流れる電流によって、埋め込み型デバイス上のトランスデューサから後方散乱超音波が発せられる。小型化超音波トランスデューサ中を流れる電流は、超音波トランスデューサから発せられるまたは反射される後方散乱超音波の振幅、周波数、および/または位相を変化させる。生理的状態は、ASICおよび/または小型化超音波トランスデューサに戻ってくる電流に影響を与えるため、後方散乱波は生理的状態に関する情報をエンコードする。後方散乱波は、呼びかけ機によって検出されることができ、後方散乱波を解読して、生理的状態または生理的状態における変化を決定することができる。
【0098】
呼びかけ機と埋め込み型デバイスとの間の通信は、超音波を送受信するパルス・エコー法を使用することができる。パルス・エコー法において、呼びかけ機は、所定の周波数の一連の呼びかけパルスを送信し、それから、埋め込み型デバイスから後方散乱エコーを受信する。いくつかの実施形態では、パルスの長さは、約200ナノ秒(ns)~約1000ns(例えば、約300ns~約800ns、約400ns~約600ns、または約540ns)である。いくつかの実施形態では、パルスの長さは、約100ns以上(例えば、約150ns以上、200ns以上、300ns以上、400ns以上、500ns以上、540ns以上、600ns以上、700ns以上、800ns以上、900ns以上、1000ns以上、1200ns以上、または1500ns以上)である。いくつかの実施形態では、パルスの長さは、約2000ns以下(例えば、1500ns以下、1200ns以下、1000ns以下、900ns以下、800ns以下、700ns以下、600ns以下、500ns以下、400ns以下、300ns以下、200ns以下、または150ns以下)である。いくつかの実施形態では、パルスは滞留時間によって分離される。いくつかの実施形態では、滞留時間の長さは、約100ns以上(例えば、約150ns以上、200ns以上、300ns以上、400ns以上、500ns以上、540ns以上、600ns以上、700ns以上、800ns以上、900ns以上、1000ns以上、1200ns以上、または1500ns以上)である。いくつかの実施形態では、滞留時間の長さは、約2000ns以下(例えば、約1500ns以下、1200ns以下、1000ns以下、900ns以下、800ns以下、700ns以下、600ns以下、500ns以下、400ns以下、300ns以下、200ns以下、または150ns以下)である。いくつかの実施形態では、パルスは、正方形、長方形、三角形、鋸歯状、または正弦である。いくつかの実施形態では、パルスの出力は、2段階(GNDおよびPOS)、3段階(GND、NEG、POS)、5段階、または他の任意の複数段階(例えば、24ビットDACを使用する場合)である。いくつかの実施形態では、パルスは、作動中に呼びかけ機から連続的に送信される。いくつかの実施形態では、パルスが呼びかけ機から連続的に送信される場合、呼びかけ機上のトランスデューサの一部は、超音波を受信するよう構成されており、呼びかけ機上のトランスデューサの一部は超音波を送信するように構成されている。超音波を受信するよう構成されたトランスデューサと、超音波を送信するよう構成されたトランスデューサは、呼びかけ機中の同じトランスデューサアレイ上にあってもよく、異なるトランスデューサアレイ上にあってもよい。いくつかの実施形態では、呼びかけ機上の1つのトランスデューサは、超音波を交互に送信したり受信したりするよう構成されてもよい。例えば、1つのトランスデューサは、1つ以上のパルスを送信する期間と一時停止する期間をサイクルとして繰り返すことができる。上記トランスデューサは、1つ以上のパルスを送信する際に超音波を送信するよう構成され、その後、一時停止する期間中は受信モードに切り替わることができる。いくつかの実施形態では、上記サイクルにおける上記1つ以上のパルスは、任意のサイクルにおいて約1つ~約10(例えば、約2つ~約8つ、または約4つ~約7つ、または約6つ)の超音波パルスを含む。いくつかの実施形態では、上記サイクルにおける上記1つ以上のパルスは、任意のサイクルにおいて約1つ以上、2つ以上、4つ以上、6つ以上、8つ以上、または10以上の超音波パルスを含む。いくつかの実施形態では、上記サイクルにおける上記1つ以上のパルスは、上記サイクルにおいて約20以下、約15以下、約10以下、約8つ以下、または約6つ以下を含む。パルスサイクルは、規則的に、例えば、動作中に約50マイクロ秒(μs)~約300μs毎(例えば、約75μs~約200μs毎、または約100μs毎)で繰り返されてもよい。いくつかの実施形態では、サイクルは、50μs以上毎、100μs以上毎、150μs以上毎、200μs以上毎、250μs以上毎、または300μs以上毎に繰り返される。いくつかの実施形態では、サイクルは300μs以下毎、250μs以下毎、200μs以下毎、150μs以下毎、または100μs以下毎に繰り返される。サイクル周波数は、例えば、呼びかけ機と埋め込み型デバイスとの間の距離、および/またはトランスデューサが送信モードと受信モードとを切り替えられる速さに基づいて設定されてよい。
【0099】
図5は、呼びかけ機と埋め込み型デバイスとの間のパルス・エコー超音波通信のサイクルを示す。
図5Aは、100マイクロ秒毎の周波数の一連のパルスサイクルを示す。パルスを送信している間、トランスデューサアレイ中のトランスデューサは、超音波を送信するように構成されている。パルスが送信された後、トランスデューサは、後方散乱超音波を受信するように構成されている。
図5Bは、サイクルの拡大図を示し、540ナノ秒毎の周波数の6つの超音波パルスを示す。呼びかけ機によって検出された後方散乱超音波を
図5Cに示す。また、その内の1つのパルスの拡大図を
図5Dに示す。
図5Dに示されるように、埋め込み型デバイスによって受信された超音波後方散乱を分析することができる。前記分析は、後方散乱波のフィルタリング(例えば、音波の減衰を取り除く)工程と、後方散乱波の整流化工程と、音波を積分して当該音波によりエンコードされたデータを決定する工程とを含む。いくつかの実施形態では、後方散乱波を、機械学習アルゴリズムを用いて分析する。
図5Eは、フィルタリングした後方散乱波の拡大版を示す。
図5Eに示す後方散乱波は、機械的境界面から発生する反射に対応する4つの別個の領域を含む。(1)埋め込み型デバイスを被包する生体適合性物質からの反射、(2)小型化超音波トランスデューサの上面からの反射、(3)プリント回路基板と小型化超音波トランスデューサとの間の境界面からの反射、(4)プリント回路基板の背面からの反射である。小型化トランスデューサの表面から反射された後方散乱波の振幅は、小型化超音波トランスデューサへ戻る電流のインピーダンスにおける変化の関数として変化し、「応答型後方散乱」と称することができる。なぜなら、後方散乱のこの領域は、検知された生理的状態に関する情報をエンコードするからである。超音波後方散乱のその他の領域は、「非応答型後方散乱」と称することができ、以下に説明するように、埋め込み型デバイスの位置、埋め込み型デバイスの移動、および/または埋め込み型デバイス近辺の温度変化を決定するのに役立つ。いくつかの実施形態では、デバイスは、さらに、非応答型リフレクタを含む。いくつかの実施形態では、非応答型リフレクタは立方体である。いくつかの実施形態では、非応答型リフレクタは珪素を含む。いくつかの実施形態では、非応答型リフレクタは剛体材料の表面である。非応答型リフレクタは、埋め込み型デバイスに取り付けられているが、電気的に絶縁されている。そして、例えば、センサによって検知される生理的状態によるセンサまたはASICインピーダンスにおける変化に応答しない超音波を反射することができる。
【0100】
トランスデューサによって送信される超音波の周波数は、埋め込み型デバイス上の小型化超音波トランスデューサの駆動周波数または共振周波数に依存して設定し得る。いくつかの実施形態では、小型化超音波トランスデューサは広帯域デバイスである。いくつかの実施形態では、小型化超音波トランスデューサは、狭帯域である。例えば、いくつかの実施形態では、パルスの周波数は、小型化超音波トランスデューサの共振周波数の約20%以内、約15%以内、約10%以内、約5%以内である。いくつかの実施形態では、パルスは、小型化超音波トランスデューサの共振周波数とおよそ同じ周波数に設定される。いくつかの実施形態では、超音波の周波数は、約100kHz~約100MHz(例えば、約100kHz~約200kHz、約200kHz~約500kHz、約500kHz~約1MHz、約1MHz~約5MHz、約5MHz~約10MHz、約10MHz~約25MHz、約25MHz~約50MHz、または約50MHz~約100MHz)である。いくつかの実施形態では、超音波の周波数は、約100kHZ以上、約200kHz以上、約500kHz以上、約1MHz以上、約5MHz以上、約10MHz以上、約25MHz以上、または約50MHz以上である。いくつかの実施形態では、超音波の周波数は、約100MHz以下、約50MHz以下、約25MHz以下、約10MHz以下、約5MHz以下、約1MHz以下、約500kHz以下、または約200kHz以下である。周波数が高いほど、埋め込み型デバイス上の小型化超音波トランスデューサを小さくし得る。しかし、周波数が高いほど、超音波トランスデューサおよび埋め込み型デバイスの間の通信の深度が制限される。いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスと超音波トランスデューサとは、約0.1cm~約15cm(例えば、約0.5cm~約10cm、または約1cm~約5cm)離れている。いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスと超音波トランスデューサとは、約0.1cm以上、約0.2cm以上、約0.5cm以上、約1cm以上、約2.5cm以上、約5cm以上、約10cm以上、または約15cm以上離れている。いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスと超音波トランスデューサとは、約20cm以下、約15cm以下、約10cm以下、約5cm以下、約2.5cm以下、約1cm以下、または約0.5cm以下離れている。
【0101】
いくつかの実施形態では、後方散乱した超音波は、埋め込み型デバイスによってデジタル化される。例えば、埋め込み型デバイスは、オシロスコープまたはアナログ・デジタル変換器(ADC)および/または記憶装置を含んでいてもよく、これらは、電流(またはインピーダンス)の変動として情報をデジタル的にエンコードすることができる。デジタル化された電流の変動は、センサによって検知されたデータを反映しており、超音波トランスデューサによって受信される。そして、超音波トランスデューサは、デジタル化された音波を送信する。デジタル化されたデータは、例えば、特異値分解(SVD)および最小自乗法圧縮(least squares-based compression)を用いて、アナログデータを圧縮し得る。いくつかの実施形態では、圧縮は、相関計またはパターン検出アルゴリズムによって行われる。後方散乱信号は、後方散乱領域の4次バターワースバンドパスフィルタ整流一体化(4th order Butterworth bandpass filter rectification integration)のような、一連の非線形変換を経て、単一時間における再構築データポイントを形成してもよい。そのような変換は、ハードウェア(すなわち、ハードコードされたもの)またはソフトウェアにおいて行われてよい。
【0102】
いくつかの実施形態では、呼びかけ機は、複数の埋め込み型デバイスと通信する。前記通信は、例えば、マルチ入力・マルチ出力(MIMO)システム理論を用いて行うことができる。例えば、呼びかけ機および複数の埋め込み型デバイス間の通信は、時間分割多重化、空間多重化、または周波数多重化を用いる。いくつかの実施形態では、2つ以上(例えば、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10以上、12以上、約15以上、約20以上、約25以上、約50以上または約100以上)の埋め込み型デバイスが、呼びかけ機と通信する。いくつかの実施形態では、約200以下の埋め込み型デバイス(例えば、約150以下、約100以下、約50以下、約25以下、約20以下、約15以下、約12以下、または約10以下の埋め込み型デバイス)が呼びかけ機と通信する。呼びかけ機は、複数の埋め込み型デバイスからの組み合わされた後方散乱を受信できる。組み合わされた後方散乱はデコンヴォルーションされ、それにより、それぞれの埋め込み型デバイスからの情報を抽出できる。いくつかの実施形態では、呼びかけ機は、トランスデューサアレイから送信される超音波を、ビームステアリングを介して、特定の埋め込み型デバイスへ集束させる。呼びかけ機は、送信された超音波を第1埋め込み型デバイスへ集束させ、第1埋め込み型デバイスから後方散乱を受信し、送信された超音波を第2埋め込み型デバイスへ集束させ、第2埋め込み型デバイスから後方散乱を受信する。いくつかの実施形態では、呼びかけ機は、超音波を複数の埋め込み型デバイスへ送信し、そして、超音波を当該複数の埋め込み型デバイスから受信する。
【0103】
いくつかの実施形態では、呼びかけ機を用いて埋め込み型デバイスの位置または速度を決定する。例えば、ある一定時間におけるデバイスの位置または移動を測定することによって、速度を決定することができる。埋め込み型デバイスの位置は、相対的位置、例えば、呼びかけ機上のトランスデューサに対する位置であってよい。複数のトランスデューサが、1つの埋め込み型デバイスからの後方散乱を収集することができる。当該複数のトランスデューサは、同じトランスデューサアレイ上に配置されてもよく、2つ以上の異なるトランスデューサアレイ上に配置されてもよい。同じ埋め込み型デバイスから発生した後方散乱波の波形と、すでに明らかである各トランスデューサの位置との差異を基に、埋め込み型デバイスの位置を決定できる。これは、例えば、三角測量、またはクラスタリングと最大尤度により行うことができる。後方散乱の差異は、応答型後方散乱波、非応答型後方散乱波、またはこれらの組み合わせに基づいてもよい。
【0104】
いくつかの実施形態では、呼びかけ機を用いて埋め込み型デバイスの移動を追跡する。呼びかけ機によって追跡できる埋め込み型デバイスの移動は、横移動および角移動を含む。このような移動は、例えば、肝臓、胃、小腸または大腸、腎臓、膵臓、胆嚢、膀胱、卵巣、子宮、または脾臓のような1つ以上の器官の位置の変化(これは、例えば、対象の呼吸または動作の結果であり得る)、または(例えば、脈拍による)血流の変化により生じ得る。そのため、いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスは、臓器の移動または脈拍数を追跡するのに役立つ。埋め込み型デバイスの移動は、例えば、非応答型後方散乱波の変化を監視することによって追跡することができる。いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスの移動は、第1時点での埋め込み型デバイスの相対的位置を、第2時点での埋め込み型デバイスの相対的位置と比較することで判断される。例えば、上述のように、埋め込み型デバイスの位置を、呼びかけ機上の複数のトランスデューサ(1つのトランスデューサアレイ上にあってもよく、2つ以上のトランスデューサアレイ上にあってもよい)を用いて決定することができる。埋め込み型デバイスの第1位置を第1時点において決定することができ、埋め込み型デバイスの第2位置を第2時点において決定することができる。そして、移動ベクトルを、第1時点での第1位置、および第2時点での第2位置を基にして決定することができる。
【0105】
<埋め込み型デバイス>
埋め込み型デバイスは、小型化超音波トランスデューサ(例えば、小型化圧電トランスデューサ、容量性マイクロマシン超音波トランスデューサ(CMUT)、または圧電マイクロマシン超音波トランスデューサ(PMUT))と、生理センサ(例えば、温度センサ、酸素センサ、pHセンサ、ひずみセンサ、圧力センサ、またはグルコースセンサ)とを有する。いくつかの実施形態では、生理センサと小型化超音波トランスデューサとの間で通信できる特定用途向け集積回路(ASIC)が埋め込み型デバイスに含まれる。呼びかけ機が超音波を送り、該超音波により、埋め込み型デバイス上の小型化超音波トランスデューサを介して、該埋め込み型デバイスに電力を供給するとともに該埋め込み型デバイスと通信することができる。変化したインピーダンスが小型化超音波トランスデューサ内を流れる電流に影響を与え、それが超音波後方散乱に影響を与える。このように、生理的状態の変化が超音波後方散乱に影響を与え、それを呼びかけ機によって検出することができる。
図6Aは、小型化超音波トランスデューサ602と生理センサ604とを有する埋め込み型デバイスの概略図を示す。
図6Bは、小型化超音波トランスデューサ606とASIC608と生理センサ610とを有する埋め込み型デバイスの概略図を示す。
【0106】
埋め込み型デバイスは小型化されており、それにより、快適で長期にわたる埋め込みを可能にするとともに、埋め込み型デバイスとしばしば関連する組織の炎症を制限する。いくつかの実施形態では、デバイスの最大寸法の長さは約5mm以下、約4mm以下、約3mm以下、約2mm以下、約1mm以下、約0.5mm以下、約0.3mm以下、約0.1mm以下である。いくつかの実施形態では、デバイスの最大寸法は、約0.05mm以上、約0.1mm以上、約0.3mm以上、約0.5mm以上、約1mm以上、約2mm以上、または約3mm以上である。いくつかの実施形態では、デバイスの最大寸法の長さは、約0.04mmから約5mm、約0.05mmから約4mm、約0.07mmから約3mm、約0.08mmから約3mm、または約1mmから約2mmである。
【0107】
いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスは、体積が、約5mm3以下(例えば、約4mm3以下、3mm3以下、2mm3以下、または1mm3以下)である。特定の実施形態では、埋め込み型デバイスは、体積が、約0.5mm3から約5mm3、約1mm3から約5mm3、約2mm3から約5mm3、約3mm3から約5mm3、または約4mm3から約5mm3である。埋め込み型デバイスはサイズが小さいので、生検針を用いて埋め込むことができる。
【0108】
いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスは対象に埋め込まれる。対象は、例えば、哺乳類のような動物であり得る。いくつかの実施形態では、対象はヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、サル、ラット、またはマウスである。いくつかの実施形態では、対象は植物である。植物に埋め込まれた埋め込み型デバイスは、例えば、農業作物の状態を監視するのに有用で有り得る。
【0109】
いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスまたは埋め込み型デバイスの一部分(例えば、小型化超音波トランスデューサ、ASIC、またはセンサのすべてもしくは一部分)は、生体適合性物質(例えば、生体適合性ポリマー)、例えば、N‐ビニル‐2‐ピロリドン(NVP)とn‐ブチルメタクリレート(BMA)のコポリマー、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、パリレン、ポリイミド、窒化珪素、二酸化珪素、アルミナ、ニオビウム、ヒドロキシアパタイト、または炭化珪素によって被包される。炭化珪素は非晶質炭化珪素でもよく、結晶質炭化珪素でもよい。生体適合性物質は、デバイス内の電子回路を損傷または干渉するのを避けるため不透水性であることが好ましい。いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスまたは埋め込み型デバイスの一部分は、セラミック(例えば、アルミナまたはチタニア)もしくは金属(例えば、スチールまたはチタニウム)で被包される。
【0110】
いくつかの実施形態では、小型化超音波トランスデューサおよび、もしあるならばASICは、プリント回路基板(PCB)上に配置される。センサを任意でPCB上に配置してよく、あるいはASICと接続してよい。
図7Aおよび
図7Bは、PCBを有する埋め込み型デバイスの例示的な構成を示す。
図7Aは、PCB708の第1側面706に配置された圧電トランスデューサ702とASIC704を示す。第1電極710および第2電極712がPCB708の第2側面714上に配置されている。第1電極710および第2電極712は、例えば、センサの構成要素であり得る。
図7Bは、PCB718の第1側面716上の圧電トランスデューサ714と、PCB718の第2側面722上のASIC720を示す。第1電極724がPCBの第1側面716上に配置され、第2電極726がPCB718の第2側面722上に配置されている。第1電極724および第2電極726は、例えば、センサの構成要素であり得る。
【0111】
埋め込み型デバイスの小型化超音波トランスデューサは、マイクロマシン超音波トランスデューサ(例えば、容量性マイクロマシン超音波トランスデューサ(CMUT)または圧電マイクロマシン超音波トランスデューサ(PMUT))でよく、あるいはバルク圧電トランスデューサでよい。バルク圧電トランスデューサは任意の天然物質または合成物質(例えば、水晶、セラミック、またはポリマー)でよい。バルク圧電トランスデューサ材料の例としては、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、酸化亜鉛(ZO)、窒化アルミニウム(AlN)、石英、ベルリナイト(AlPO4)、トパーズ、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、オルトリン酸ガリウム(GaPO4)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、タングステン酸ナトリウム(Na2WO3)、ビスマスフェライト(BiFeO3)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、およびニオブ酸鉛マグネシウム‐チタン酸鉛(PMN-PT)が挙げられる。
【0112】
いくつかの実施形態では、小型化バルク圧電トランスデューサはほぼ立方体(すなわち、約1:1:1(長さ:幅:高さ)のアスペクト比)である。いくつかの実施形態では、圧電トランスデューサは板状であり、長さまたは幅のアスペクトにおいて、アスペクト比が約5:5:1以上、例えば約7:5:1以上、または約10:10:1以上である。いくつかの実施形態では、小型化バルク圧電トランスデューサは長細く、アスペクト比が約3:1:1以上であり、最大寸法は超音波搬送波の伝播方向と並んでいる。いくつかの実施形態では、バルク圧電トランスデューサの一寸法は、トランスデューサの駆動周波数または共振周波数に相当する波長(λ)の二分の一に等しい。共振周波数では、トランスデューサの両方の面に衝突する超音波が180°位相シフトし、反対側の位相に達し、2つの面のあいだに最大のずれを生じさせる。いくつかの実施形態では、圧電トランスデューサの高さは、約10μmから約1000μm(例えば、約40μmから約400μm、約100μmから約250μm、約250μmから約500μm、または約500μmから約1000μm)である。いくつかの実施形態では、圧電トランスデューサの高さは、約5mm以下(例えば、約4mm以下、約3mm以下、約2mm以下、約1mm以下、約500μm以下、約400μm以下、約250μm以下、約100μm以下、または約40μm以下)である。いくつかの実施形態では、圧電トランスデューサの高さは、約20μm以上(例えば、約40μm以上、約100μm以上、約250μm以上、約400μm以上、約500μm以上、約1mm以上、約2mm以上、約3mm以上、または約4mm以上)である。
【0113】
いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサは、最大寸法の長さが約5mm以下(例えば、約4mm以下、約3mm以下、約2mm以下、約1mm以下、約500μm以下、約400μm以下、約250μm以下、約100μm以下、または約40μm以下)である。いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサは、最大寸法の長さが約20μm以上(例えば、約40μm以上、約100μm以上、約250μm以上、約400μm以上、約500μm以上、約1mm以上、約2mm以上、約3mm以上、または約4mm以上)である。
【0114】
小型化超音波トランスデューサは2つの電極と接続されている。第1電極はトランスデューサの第1面に取り付けられており、第2電極はトランスデューサの第2面に取り付けられており、第1面と第2面は、1つの寸法に沿ったトランスデューサの向かい合う両側面である。いくつかの実施形態では、電極は、銀、金、白金、白金黒、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、導電性ポリマー(例えば、導電性PDMSまたはポリイミド)、またはニッケルを含む。いくつかの実施形態では、トランスデューサは、トランスデューサの金属面(すなわち、電極)間の軸がトランスデューサの動きに対して垂直であるせん断モードで作動する。
【0115】
小型化超音波トランスデューサはセンサに接続しており、いくつかの実施形態では、AISCにも接続している。ASICは、存在する場合、センサと一体化していてもよいし、センサとは別個に設けられてもよい。
【0116】
埋め込み型デバイスで用いられるASICは、取り付けられているセンサに部分的には左右される。いくつかの実施形態では、AISCはセンサと完全に一体化しており、いくつかの実施形態では、センサは、埋め込み型デバイスの、別個の、しかし取り付けられている構成要素として設けられる。いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスは2つ以上のセンサを有し、1つ以上のASICを該2つ以上のセンサとともに用い得る。例えば、いくつかの実施形態では、単一のASICを、2つ以上、3つ以上、4つ以上、または5つ以上のセンサとともに用いる。
【0117】
いくつかの実施形態では、ASICは電源回路を有し、該電源回路は埋め込み型デバイスの各構成要素に電力を供給するよう構成されている。電源回路は、例えば、整流器、チャージポンプ、および/またはエネルギー蓄積コンデンサを有し得る。いくつかの実施形態では、エネルギー蓄積コンデンサは、別個の構成要素として含まれている。小型化超音波トランスデューサ内に電圧差を生じさせる超音波は、埋め込み型デバイスに電力を供給する。該電力は電源回路によって制御し得る。
【0118】
いくつかの実施形態では、ASICは1つ以上のアナログ回路を有する。該1つ以上のアナログ回路は、トランスデューサの供給する電力を用いて1つ以上のアナログ増幅器に電力を供給し、後方散乱インピーダンスへ変調される信号の変調深度を深める。いくつかの実施形態では、ASICは1つ以上のデジタル回路を有し、該1つ以上のデジタル回路は、記憶装置と、埋め込み型デバイスを作動させるための1つ以上の回路ブロックまたはシステムを含み得る。これらのシステムは、例えば、インプラントに保存されているプログラムまたは呼びかけ機とインプラントとの超音波通信を介して提供されるプログラムを実行できる、オンボードマイクロコントローラ、有限状態機械実装、またはデジタル回路を有し得る。いくつかの実施形態では、デジタル回路は、センサからのアナログ信号をデジタル信号に変換できるアナログ・デジタル変換器(ADC)を有する。いくつかの実施形態では、デジタル回路は、信号を変調器に向ける前にデジタル信号をアナログ信号に変換するデジタル・アナログ変換器(DAC)を有する。
【0119】
デジタル回路は、小型化超音波トランスデューサに接続している変調回路(「後方散乱回路」とも称し得る)を動作させることができる。変調回路はスイッチ(例えば、オン/オフスイッチまたは電界効果トランジスタ(FET))を有している。埋め込み型デバイスのいくつかの実施形態とともに用いることができるFETの例として、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)が挙げられる。変調回路は小型化超音波トランスデューサに供給されるインピーダンスを変えることができ、トランスデューサ内を通る電流の変化が、デジタル回路によって送信される信号をエンコードする。デジタル回路は、スイッチに向けられる電流を増幅する1つ以上の増幅器も作動させることができる。デジタル回路がない実施形態では、変調回路内のインピーダンスはセンサによって直接に制御することができる。
【0120】
いくつかの実施形態では、ASICは、1つ以上のセンサに電流を供給する駆動回路を含む。デジタル回路がある場合、駆動回路は該デジタル回路によって作動されることができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の増幅器が、駆動回路とデジタル回路のあいだに配置されている。いくつかの実施形態では、ASICは、センサからの信号を受信できるフロントエンド回路(例えば、CMOSフロントエンド)を含む。フロントエンド回路によって受信された信号はデジタル回路にリレーされることができる。
【0121】
図8Aは、ASICに接続された小型化超音波トランスデューサ(「圧電素子」として示す)の一実施形態を含む。ASICは、電源回路、変調回路(または「後方散乱回路」)、およびドライバ(「刺激回路」)を含む。電源回路はエネルギー蓄積コンデンサ(「cap」)を含む。
【0122】
図8Bは、小型化超音波トランスデューサ804に接続されたASIC802の他の例を示す。例示された実施形態では、小型化超音波トランスデューサ804は電源回路806に接続されている。電源回路806は、電力をASICの他の構成要素(変調回路808、デジタル回路810、ドライバ812、およびフロントエンド814を含む)に供給する。デジタル回路810はドライバ812を作動させ、該ドライバ812はセンサ(不図示)に接続し得る。フロントエンド回路814はセンサから信号を受信し、該信号をデジタル回路810へ送信する。それから、デジタル回路810は変調回路808を制御することができ、該変調回路808は小型化超音波トランスデューサ804に戻る電流のインピーダンスを制御する。
【0123】
<センサ>
埋め込み型デバイスは1つ以上のセンサを有する。センサは、生理的状態(例えば、温度、酸素濃度、pH、被検物質(例えばグルコース)、ひずみ、または圧力)を検出するよう構成されている。生理的状態の変化がインピーダンスを変調させ、今度はインピーダンスが埋め込み型デバイス上の小型化超音波トランスデューサを流れる電流を変調させる。先に説明したように、これにより、呼びかけ機で検出される超音波後方散乱が生成される。超音波後方散乱波の変化は、生理的状態に関する情報を反映している。いくつかの実施形態では、システムは、生理的システムの変化を検出するよう構成されている。いくつかの実施形態では、システムは、例えば超音波後方散乱を既知の値に校正することにより、生理的状態の値または近似値を検出するよう構成されている。
【0124】
埋め込み型デバイスは、1つ以上の(例えば、2つ、3つ、4つ、5つあるいはそれ以上の個数の)センサを有してよく、該1つ以上のセンサは同じ生理的状態を検出してもよいし、異なる生理的状態を検出してもよい。いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスは、10、9つ、8つ、7つ、6つ、または5つ以下のセンサを有する。例えば、いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスは、温度を検出するよう構成された第1センサと、酸素を検出するよう構成された第2センサとを有する。両方の生理的状態の変化を超音波後方散乱波にエンコードすることができ、該超音波後方散乱波を外部のコンピューティングシステムによって解読することができる。
【0125】
いくつかの実施形態では、センサは光検出器を含む。光源(例えば、発光ダイオードまたは垂直共振器面発光レーザ(VCSEL))が光を発し、該光が光検出器によって検出される。光検出器によって検出される光の量は、検出された生理的状態を示す。フロントエンド(例えば、CMOSフロントエンド)は、検出器からの信号を受信でき、該信号が、超音波トランスデューサに提供されるインピーダンスを変化させることができる。いくつかの実施形態では、デジタル回路がフロントエンド回路からの信号を受信し変調回路を作動させ、該変調回路が超音波トランスデューサに提供されるインピーダンスを変調させる。小型化超音波トランスデューサから呼びかけ機へ送信される超音波後方散乱が、検出された生理的状態の情報をこのようにエンコードする。
【0126】
光源は組織の外に配置してもよく、組織内に埋め込んでもよく、あるいは埋め込み型デバイスそれ自体の一部(ASIC上のドライバによって制御してよい)であってもよい。いくつかの実施形態では、光源は近赤外線範囲(例えば、約780nmから約2500nmの波長)の光を発する。いくつかの実施形態では、複数の光源が含まれ、該複数の光源は異なる波長の光を発してよい。いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスは近赤外線分光法に用いられ、血中または間質組織中における特定の被検物質(例えば、グルコース)の検出に用いることができる。いくつかの実施形態では、光源は赤外線範囲外(例えば、約780nm未満の波長または約2500nmを超える波長)の光を発する。組織を通して光を伝える際には距離の限界(通常、約2cm未満)があるので、埋め込み型デバイスを約2cmを超える深さで用いる場合は、光源を埋め込み型デバイスに含ませることが通常好ましい。いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスは約2cm以上(例えば、約3cm以上、約4cm以上、または約5cm以上)の深さで埋め込まれる。
【0127】
図9Aは、組織に埋め込まれ、光を検出し、超音波後方散乱波を発する埋め込み型デバイス902を示す。埋め込み型デバイス902は、外部の超音波トランスデューサ(不図示)から超音波をさらに受信する。埋め込み型デバイスは、外部光源904から受光する。生理的状態の変化によって生じた、埋め込み型デバイスによって検出された光の量の変化が、超音波後方散乱を変調させる。
図9Aは、組織に埋め込まれ外部光源と光通信する光検出器を有する埋め込み型デバイスを有するシステムを示す。もっとも単純な形態では、埋め込み型デバイスは、光検知用の外部の光エミッタ(可視光、NIR、近紫外線またはその他)とともに組織内に埋め込んでよい。外部の光エミッタは外部のトランシーバと結合してよく、あるいは別個の構成要素であってもよい。
図9Aに示す実施形態は、光フィルタを用いて、単一波長のみの強度または複数の選択された波長のみの強度を検出するようにしたものである。この光エミッタは単色光源でもよいし、広帯域の光源でもよい。さらに、光エミッタは身体内に埋め込み得る。エミッタはオンボードでもよいし、独立して埋め込んでもよい。光エミッタを患者の体内に埋め込む場合は、電力の伝達、局所温度上昇、およびインプラントのサイズを考慮する必要がある。
【0128】
いくつかの実施形態では、光源は広帯域の光を発する。いくつかの実施形態では、光源は狭帯域の光を発する。例えば、光源は光フィルタを有し得、1つ以上の所定の波長の狭帯域の光を発し得る。いくつかの実施形態では、光源は、1つ以上、2つ以上、3つ以上、または4つ以上の異なる波長の狭帯域の光を発する。いくつかの実施形態では、光源は、複数の異なる波長の狭帯域の光を発し、少なくとも1つの狭帯域の光の波長はエラー修正に用いられる。NIRスペクトル領域の3つの波長の単色光を交互にパルスし、4番目の波長のNIR光をエラー修正に用いることで、組織酸化レベルを、ヘモグロビン、ミオグロビン、およびシトクロムaa3の吸収パターンに基づき監視することができることが実証されている。このことを
図9Bに示す。
図9Bでは、埋め込み型デバイス906が組織に埋め込まれ、4つの異なる光源(光源908、光源910、光源912、および光源914)からの狭帯域の光を受光する。各光源は、異なる狭帯域の光波長を発する。図示されたように、光源908、光源910、光源912、および光源914は組織の外部に位置している。埋め込み型デバイス906は、外部の超音波トランスデューサ(不図示)から超音波をさらに受信する。生理的状態の変化による、埋め込み型デバイスによって検出された光の量の変化が、超音波後方散乱を変調させる。
【0129】
被検物質の測定は、NIR分光法以外の手段で行ってもよい。そのような例の1つは、化学検知用のオプトードを用いることによる。NIRスペクトル領域外の光を用いる場合、散乱を考慮に入れるべきである。
【0130】
図9Cは、光源918を有する埋め込み型デバイス916を示す。埋め込み型デバイスは、光源918から光を受光できる光検出器(不図示)をさらに有する。埋め込み型デバイス906は、外部の超音波トランスデューサ(不図示)から超音波をさらに受信する。該外部の超音波トランスデューサは、埋め込み型デバイス916(光源918を含む)に電力を供給できる。生理的状態の変化による、埋め込み型デバイスによって検出された光の量の変化が、超音波後方散乱を変調させる。
【0131】
光センサを有する埋め込み型デバイスは、さまざまな目的に役立ち得る。例えば、埋め込み型デバイスは、対象における酸素レベル(血液酸素レベルまたは間質液酸素レベルを含む)の監視、腫瘍酸化の監視、脳機能イメージング、血液被検物質測定、組織工学(例えば、酸素欠乏症および低酸素症を監視するため)、およびpH測定に用いることができる。いくつかの実施形態では、光センサは血圧または脈拍数を測定するのに用いることができる。
【0132】
いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイス上のセンサは、酸素センサまたはpHセンサである。酸素センサまたはpHセンサを有する埋め込み型デバイスは、生理的酸素濃度(例えば、血液酸素または間質液酸素)あるいは生理的pH(例えば、血液pHまたは間質液pH)を監視するのに役立ち得る。酸素濃度またはpHは、埋め込み型デバイスの近辺に限定してもよいし、あるいは、デバイスのネットワークが用いられる場合は、測定された酸素濃度またはpHは全身の生理的測定値であってもよい。これは、例えば低酸素症または酸性血症を監視するのに役立ち得る。埋め込み型デバイスは、小型化超音波トランスデューサ(例えば、バルク圧電トランスデューサ、PMUT、またはCMUT)と、ASIC(ドライバおよびフロントエンドを含んでよい)と、酸素センサまたはpHセンサとを有し得る。
【0133】
いくつかの実施形態では、酸素センサはクラーク電極を含む。クラーク電極は、細胞膜に囲まれた触媒表面(例えば、白金表面)上の酸素を測定するものであり、小型化して埋め込み型デバイスに含ませることができる。クラーク電極は埋め込み型デバイス上のASICに取り付けることができ、埋め込み型デバイスによって検知された酸素(血液酸素または間質液酸素でよい)量の変化が超音波後方散乱を変調することができる。
【0134】
いくつかの実施形態では、酸素センサは光源(例えば、発光ダイオードまたは垂直共振器面発光レーザ(VCSEL))と光検出器(例えば、光トランジスタ、光電池、または光トランジスタもしくは光電池のアレイ)とを有する。酸素感受性蛍光色素またはpH感受性蛍光色素を含むマトリクスが、光源および光検出器上に配置され、または、光源と光検出器とを結ぶ位置に配置される。光源によって検出される光の量は、周辺の体液中の酸素量または該体液のpHに依存する。そのようなデバイスをオプトロード(optrodes)と称することができる。マトリクスは、例えば、ポリマー中に酸素感受性蛍光色素(例えば、ルテニウム蛍光色素)またはpH感受性蛍光色素を含むことができる。酸素の増大またはpHの上昇または低下(蛍光色素の選択次第である)により、蛍光の減衰が速まり、光強度が低下し得る。光強度または蛍光の減衰の寿命におけるこうした酸素またはpHに依存した変化を、光検出器によって検出できる。いくつかの実施形態では、マトリクスは、ルテニウム蛍光色素を含むヒドロゲルまたはポリジメチルシロキサン(PDMS)ポリマーである。いくつかの実施形態では、ルテニウム蛍光色素は、マトリクス内部に含まれるシリカ粒子またはシリカ表面に結合している(これらは、例えばゾルゲルプロセスによって生成し得る)。マトリクスは、蛍光色素を細胞外液中の構成要素から保護し、酸素のマトリクス内への拡散に影響し得るタンパク質、細胞、およびその他の細胞片の接着を防ぐ。さらに、ルテニウム金属をマトリクス内に被包することで、ルテニウムの潜在的毒性が減少する。光源および/または光検出器は、発光または検出された光を狭い帯域に限定するフィルタを任意で有し得る。ASICは光源を駆動してパルス光信号または正弦光信号を発せさせることができ、該パルス光信号または正弦光信号が光源に光を発せさせる。光源が発した光により、マトリクス中の蛍光色素が蛍光を発する。例えば、いくつかの実施形態では、光源は青色光またはUV光を発し、蛍光色素はオレンジ光または赤色光を発することができる。蛍光強度および/または蛍光の寿命(減衰)は、マトリクスの酸素濃度またはpHの関数であり、周囲の体液(例えば、血液または間質液)によって影響される。蛍光の減衰から、蛍光寿命減衰定数を決定することができ、該蛍光寿命減衰定数は酸素量またはpHを反映し得る。
【0135】
光源から発せられた光パルスを用いることで、pHまたは酸素濃度に依存する蛍光減衰または蛍光寿命を観察することができる。これを
図10Aに示す。したがって、いくつかの実施形態では、光源からの光パルスに続く蛍光の減衰(蛍光寿命)を用いて、センサを取り巻く酸素濃度またはpHを測定する。
【0136】
発振光源を用いることで、蛍光の減衰(蛍光寿命)により、蛍光発光を光源からオフセットすることができる。光源波と蛍光検出とのあいだの位相シフトは、酸素濃度またはpHに依存する。これを
図10Bに示す。位相シフトφは以下のように決定できる。
【0137】
【0138】
式中、fは光源から発せられた光の発振周波数であり、τは蛍光減衰の寿命である(これは酸素濃度またはpHに依存する)。したがって、いくつかの実施形態では、発振光源が用いられ、蛍光に対する光源の位相シフトを用いて、センサを取り巻くpHまたは酸素濃度を決定する。位相シフトの測定に用いることのできる光検出器の例を
図10Cに示す。光源1002は発振器1004を有し、マトリクス1006に向けて光を発する。マトリクス1006は酸素感受性蛍光色素またはpH感受性蛍光色素を有し、これが光検出器1008によって検出される。光検出器1008は光ダイオード(または光ダイオードアレイ)1010を有し、これが電流を電流・電圧変換モジュール(例えば、トランスインピーダンス増幅器(TIA)または電圧バッファ)1012に送る。光検出器1008は増幅器1014をさらに有してよい。位相検出器1016が含まれており、これは光源1002が発した発振光と光検出器1008が検出した光とのあいだの位相差を決定できる。任意の光フィルタ(例えば、ロングパスフィルタ)1018を、マトリクス1006と光検出器1008とのあいだに設けることができる。いくつかの実施形態では、光源をパルス発光することができ、光源が消えたときに(すなわち、パルスの立下りから)蛍光をサンプルして蛍光寿命を測定することができる。
【0139】
光検出器は蛍光色素が発した光を検出し、該光はASICによって読まれる。いくつかの実施形態では、ASICは、小型化超音波トランスデューサへの電流を、光検出器からの未加工信号(または未加工信号の一部分)の関数として変調させ、小型化超音波トランスデューサは検出された信号を反映する後方散乱超音波を発することができる。いくつかの実施形態では、ASICは、トランスデューサに提供されるインピーダンスを、未加工信号または圧縮信号のデジタル表現として変調させる。いくつかの実施形態では、ASICそれ自体が酸素濃度またはpHを計算し、信号を、該信号をエンコードする小型化超音波トランスデューサへ送る。いくつかの実施形態では、外部の超音波トランシーバが超音波をパルス発信し、それにより、埋め込み型デバイスを通る電流パルスを生じさせる(そして今度は光パルスを生じさせる)。電流パルスの合間に、小型化超音波トランスデューサは超音波後方散乱エコーを発する。
【0140】
図11Aは、酸素センサまたはpHセンサを有する埋め込み型デバイスの一実施形態を示す。埋め込み型デバイスは、小型化超音波トランスデューサ1102と、ASIC1104と、pHまたは酸素センサ1106とを有する。センサ1106は、光源(例えば、発光ダイオード)1108と、pH感受性または酸素感受性マトリクス1110と、光検出器1112(例えば、光電池、光トランジスタ、または本技術分野で周知の任意の他の適切な光検出器)とを有する。マトリクス1110は、酸素感受性蛍光色素(酸素センサ用)またはpH感受性蛍光色素(pHセンサ用)を含む。任意で、フィルタ1114は光源1108とマトリクス1110とのあいだに配置される。当該フィルタは、狭帯域の光がマトリクス1110に送られるように構成できる。いくつかの実施形態では、フィルタ1114に加えて、あるいはフィルタ1114の代わりに、フィルタ1116をマトリクス1110と光検出器1112とのあいだに配置する。フィルタ1116は、狭帯域の光が光検出器1112に入るように構成できる。光源1108はドライバ1118によって電力を供給され、光検出器1112が、フロントエンド(例えば、CMOSフロントエンド)1120が受信した信号を送信する。フロントエンド1120とドライバ1118はデジタル回路1122に接続されており、該デジタル回路1122が変調回路1124を制御する(デジタル回路は、検出信号を適切に測定しサンプリングする適切な変換回路を有し得る)。変調回路は小型化超音波トランスデューサ1102に提供されるインピーダンスを制御し、該小型化超音波トランスデューサ1102は呼びかけ機に後方散乱波を発する。ASIC1104は電源回路1126も有し、該電源回路1126はASICの各構成要素に電力を供給する。電源回路は電力をトランスデューサから得る。
図11Aに示す実施形態では、光源1108と光検出器1112とは同じ方向を向いている。
図11Bは、酸素センサまたはpHセンサを有し、光源1108と光検出器1112が互いに向き合っている埋め込み型デバイスの代替的構成を示す。
【0141】
いくつかの実施形態では、光センサを用いて血圧または脈拍数を測定できる。例えば、光センサは細胞膜を含み得る。光源からの光が細胞膜上に集束され、細胞膜が光を反射し、それが光検出器に検出される。細胞膜は圧力で変形し、その変形が反射光に変化を生じさせる。
【0142】
いくつかの実施形態では、温度センサを有する埋め込み型デバイスは、小型化超音波トランスデューサ(例えば、バルク圧電トランスデューサ、PMUT、またはCMUT)と温度センサ(例えば、絶対温度比例(PTAT)回路、熱電対、またはサーミスタ)とを有する。いくつかの実施形態では、サーミスタは負温度係数(NTC)サーミスタである。いくつかの実施形態では、サーミスタは正温度係数(NTC)サーミスタである。いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスはASIC(該ASICは、任意で、フロントエンド(例えばCMOSフロントエンド)またはドライバを含む)をさらに有し、該ASICは温度センサと一体化されてもよいし、温度センサと別個のものでもよい。いくつかの実施形態では、ASICはデジタル回路、変調回路、または電源回路を有する。電源回路はトランスデューサから電力を得る。いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスはASICを有さない。温度センサによってトランスデューサに提供されるインピーダンスは測定温度に依存し、超音波トランスデューサを流れる電流を変調させる。超音波トランスデューサを流れる電流は、外部のトランシーバによって検出される超音波後方散乱に変化を生じさせるので、温度センサを有する埋め込み型デバイスを用いて温度を測定することができる。温度センサを有する埋め込み型デバイスを用いて、例えば、対象の体内の臓器(例えば、肝臓、胃、小腸または大腸、腎臓、膵臓、胆嚢、膀胱、卵巣、子宮、脾臓など)の温度を、例えば、組織(例えば癌)のアブレーション(例えば、無線周波アブレーション、マイクロ波高温治療アブレーション、または凍結治療アブレーション)のあいだ、監視することができる。いくつかの実施形態では、臓器は移植臓器である。いくつかの実施形態では、温度センサを有する埋め込み型デバイスを用いて、感染部位の温度を監視する。いくつかの実施形態では、温度センサを有する埋め込み型デバイスは、約2℃以内(例えば、約1℃以内、または約0.5℃以内)で温度を決定できる。
【0143】
図12Aは、小型化超音波トランスデューサ1202(例えば、バルク圧電トランスデューサ、PMUT、またはCMUT)と温度センサ1204(例えば、PTAT回路またはサーミスタ)とを有する埋め込み型デバイスの一実施形態を示す。呼びかけ機が送信した超音波が小型化超音波トランスデューサ1202を振動させ、それが、温度センサ1204を流れる電流を生成する。温度センサ1204は、該センサ1204の温度に応じて抵抗を生成し、それが小型化超音波トランスデューサ1202を流れる電流を変調させる。小型化超音波トランスデューサ1202が呼びかけ機に送信する超音波後方散乱は、センサのインピーダンスおよびその結果生じたトランスデューサの電流の変化に依存する。このように、超音波後方散乱は温度センサ1204の温度に依存しており、それを用いて、周辺組織の温度を決定することができる。
【0144】
図12Bは、小型化超音波トランスデューサ1206(例えば、バルク圧電トランスデューサ、PMUT、またはCMUT)と、温度センサ1208(例えば、PTAT回路またはサーミスタ)と、ASIC1210とを有する埋め込み型デバイスの実施形態を示す。ASIC1210はデジタル回路1212を含み得、該デジタル回路1212は温度センサ1208を作動させ温度センサ1208から信号を受信することができる。デジタル回路1212は、温度センサ1208からのアナログ信号をデジタル信号に変換することもできる。デジタル回路1212は変調回路1214(例えば、スイッチ(例えば、FET))を作動させる。変調回路1214は小型化超音波トランスデューサ1206に接続している。デジタル回路1212は信号(デジタル信号またはアナログ信号)を変調回路1214に送信することができ、変調回路1214は小型化超音波トランスデューサ1206を流れる電流のインピーダンスを変える。いくつかの実施形態では、デジタル回路1212は温度センサ1208が検出した温度を計算し、該温度は、変調回路1214へ送信される信号にエンコードされる。いくつかの実施形態では、デジタル回路1212は未加工信号を温度センサ1208から変調回路1214へ送信する。小型化超音波トランスデューサ1206が後方散乱超音波を発し、それが温度情報をエンコードする。ASIC1210は電源回路1216も含み得、該電源回路1216はASICの各構成要素に電力を供給できる。電源回路はトランスデューサから電力を得る。任意で、ASICはドライバおよび/またはフロントエンド(例えば、CMOSフロントエンド)を含み得、これを用いて温度センサ1208を制御し温度センサ1208から信号を集めることができる。
【0145】
いくつかの実施形態では、センサは圧力センサである。圧力センサを有する埋め込み型デバイスを用いて、例えば、血圧、脈拍数、組織炎症、血管収縮、コンパートメント症候群、消化(GI)管監視、創傷回復、眼圧、または頭蓋圧を監視することができる。埋め込み型デバイスは、小型化超音波トランスデューサ(例えば、バルク圧電トランスデューサ、PMUT、またはCMUT)と圧力センサとを有し得る。いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスはASIC(該ASICは、任意で、フロントエンド(例えばCMOSフロントエンド)またはドライバを含む)をさらに有し、該ASICは圧力センサと一体化されてもよいし、圧力センサと別個のものでもよい。いくつかの実施形態では、ASICはデジタル回路、変調回路、または電源回路を有する。いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスはASICを有さない。圧力センサは、例えば、印加された圧力に応じて電流(電流は、ASICが存在する場合はASICを流れる)を変調できるマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)であり得る。
【0146】
図13Aは、小型化超音波トランスデューサ1302(例えば、バルク圧電トランスデューサ、PMUT、またはCMUT)と圧力センサ1304(例えば、MEMS)とを有する埋め込み型デバイスの一実施形態を示す。呼びかけ機によって送信される超音波が小型化超音波トランスデューサ1302を振動させ、それが圧力センサ1304を通る電流を生成する。圧力センサ1304は圧力依存性のインピーダンス1304を示し、それが小型化超音波トランスデューサ1302に戻る電流を変調させる。小型化超音波トランスデューサ1302によって呼びかけ機に送信される超音波後方散乱は、戻る電流に依存する。このように、超音波後方散乱は圧力センサ1304に検知される圧力に依存しており、これを用いて周囲の組織の圧力を測定できる。
【0147】
図13Bは、小型化超音波トランスデューサ1306(例えば、バルク圧電トランスデューサ、PMUT、またはCMUT)と、圧力センサ1308(例えば、MEMS)と、ASIC1310とを有する埋め込み型デバイスの一実施形態を示す。ASIC1310はデジタル回路1312を含み得、該デジタル回路1312は圧力センサ1308を作動させ、圧力センサ1308から信号を受信し得る。デジタル回路1312は、圧力センサ1308からのアナログ信号をデジタル信号に変換することもできる。デジタル回路1312は変調回路1314(例えば、スイッチ(例えば、FET))を作動させる。変調回路1314は小型化超音波トランスデューサ1306に接続している。デジタル回路1312は信号(デジタル信号またはアナログ信号)を変調回路1314に送信することができ、変調回路1314は小型化超音波トランスデューサ1306に提供される電流のインピーダンスを変える。いくつかの実施形態では、デジタル回路1312は圧力センサ1308が検出した圧力を計算し、該圧力は、変調回路1314へ送信される信号にエンコードされる。いくつかの実施形態では、デジタル回路1312は未加工信号を圧力センサ1208から変調回路1314へ送信する。小型化超音波トランスデューサ1306が後方散乱超音波を発し、それが圧力情報をエンコードする。ASIC1310は電源回路1316も含み得、該電源回路1316はASICの各構成要素に電力を供給できる。電源回路はトランスデューサから電力を得る。任意で、ASICはドライバおよび/またはフロントエンド(例えば、CMOSフロントエンド)を含み得、これを用いて圧力センサ1308を制御し圧力センサ1308から信号を集めることができる。
【0148】
いくつかの実施形態では、センサはグルコースセンサである。糖尿病は、血糖値が長時間にわたって上昇し、脱水症状、心血管の損傷、神経損傷などに至る、一群の代謝病である。現在、糖尿病には治療法はなく、罹患者はその血中グルコースレベルを常時監視しなければならない。グルコース状態を注意深く調節することで糖尿病性合併症を抑えることができるからである。従来のグルコース監視は、患者がランセットを用いて血液を抜き、血液サンプルをグルコースモニタに通して行われる。これは、患者にとっては不快であり、ランセットやテストストリップの購入は極めて高額に成り得る。なぜなら、糖尿病患者は自分のグルコースレベルを1日に6~7回、監視しなければならないからである。グルコース監視の代替的な方法は、針を繰り返し挿入するという問題に対し、常時グルコース監視を行うことで対応しようとするが、これらの方法は、さらに高価で依然として針の挿入を必要とするか、あるいは、非侵襲的だが正確さに劣る。ここで、本明細書に記載された埋め込み型デバイスは、常時グルコース監視で役割を果たすことができる。グルコースの酸化により後方散乱が変調される長期埋め込み型デバイスならば、呼びかけ機を導電性ゲルで身体上に貼り付けるだけで、常時グルコース監視が可能になる。
【0149】
電気化学的方法によるグルコース監視は、長い間、特異性を確保するグルコースオキシダーゼのような酵素で覆われた電極を用いた電流測定によって行われてきた。残念ながら、そのようなデバイスはデバイス寿命が短い傾向にある。市販の皮下タイプの常時グルコースモニタは、体温での酵素層の不安定さのため、3~7日の寿命しか持たないことがしばしばである。この対策として、例えば電位差測定化学センサのような、非酵素プローブが開発されてきた。残念ながら、これらのデバイスの失敗の主な要因の1つは、単に、皮下組織に異物を入れるということなのである。異物反応の問題は、長期にわたる神経インターフェースの埋め込みにおいて直面した困難と同様である。本明細書に記載の埋め込み型デバイス(例えば、SiCでコーティングされた埋め込み型デバイス)は、強力な解決策を提供する。
【0150】
いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスは、小型化超音波トランスデューサ(例えば、バルク圧電トランスデューサ、PMUT、またはCMUT)と、ASICと、グルコースセンサとを有する。グルコースセンサは、血液または間質液中のグルコースを検出することができ、センサから流れる電流は該センサによって検出されるグルコース濃度に依存し得る。小型化超音波トランスデューサによって発せられる後方散乱超音波はグルコース濃度情報をエンコードすることができる。例えば、グルコースセンサは第1電極と第2電極とを有し得、センサ中のグルコースの量に基づいて電圧差を生じさせることができる。いくつかの実施形態では、第1電極はグルコースオキシダーゼによって機能化される。いくつかの実施形態では、センサは、電極を周囲の組織から隔てるグルコース透過膜を有する。いくつかの実施形態では、ASICはフロントエンド(例えば、CMOSフロントエンド)またはドライバを有する。いくつかの実施形態では、ASICは、デジタル回路、変調回路、または電源回路を有する。ASICはグルコースセンサを作動させて、該センサ中のグルコース濃度に依存する信号を受信することができる。例えば、サイクリック・ボルタンメトリーを用いて、グルコース濃度に依存する電圧を生成することができ、それが、AISCが受信する信号に反映される。いくつかの実施形態では、デジタル回路はグルコースセンサを作動させる。グルコースセンサからの信号は変調回路(例えば、スイッチ(例えば、FET))に送られ、それが、小型化超音波トランスデューサに提供されるインピーダンスを変調する。いくつかの実施形態では、デジタル回路は変調回路を制御する。いくつかの実施形態では、デジタル回路は未加工信号を変調回路に送信できる。デジタル回路は、グルコースセンサから受信した未加工信号からグルコース濃度を測定して変調回路に信号を送り、変調回路が測定されたグルコース濃度をエンコードする。
【0151】
いくつかの実施形態では、センサはひずみセンサ(またはひずみ計測器)である。ひずみセンサは、物質(例えば、組織または臓器)が基準となる長さに比べてどれほど伸びているかを測定する。ひずみセンサは、例えば、伸びるにつれて抵抗が変化する薄膜導体または薄膜半導体を含み得る。
【0152】
<埋め込み型デバイスの製造>
埋め込み型デバイスは、小型化超音波トランスデューサ(例えば、CMUT、PMUT、またはバルク圧電トランスデューサ)を圧電トランスデューサの第1面上の第1電極に取り付け、第2電極を圧電トランスデューサの第2面(第1面と第2面は圧電トランスデューサの互いに反対側にある)に取り付けて製造することができる。第1電極および第2電極は特定用途向け集積回路(ASIC)に取り付けられてよく、該ASICはプリント回路基板(PCB)上に配置されてよい。構成要素のPCBへの取り付けとして、ワイヤボンディング、はんだ付け、フリップチップボンディング、または金バンプボンディングを挙げ得る。ASICは1つ以上のセンサを有し得る。
【0153】
さまざまな厚みの金属化PZTシートのような、特定の圧電材料(例えば、PSI-5A4E, Piezo Systems, Woburn, MA、またはPZT 841, APC Internationals, Mackeyville, PA)を購入できる。いくつかの実施形態では、圧電材料シートを所望のサイズにダイスカットし、ダイシングした圧電材料を電極に取り付ける。いくつかの実施形態では、電極を圧電材料シートに取り付け、圧電材料シートを、電極が圧電材料に取り付けられた所望のサイズにダイスカットする。圧電材料を、セラミック刃を有するダイシングソーでダイスカットして、圧電材料のシートを個々の圧電トランスデューサにカットすることができる。いくつかの実施形態では、レーザカッターを用いて圧電材料をダイスカットまたは単体化する。いくつかの実施形態では、パターンエッチングを用いて圧電材料をダイスカットまたは単体化する。
【0154】
電極を、圧電トランスデューサの上面および下面に取り付けることができる。電極間の距離が圧電トランスデューサの高さとして定義される。例示的な電極は、銀、金、白金、白金黒、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、導電性ポリマー(例えば、導電性PDMSまたはポリイミド)、またはニッケルを含み得る。いくつかの実施形態では、電極材料を圧電トランスデューサの面上に電気メッキまたは真空蒸着することによって、電極を圧電トランスデューサに取り付ける。いくつかの実施形態では、電極は、適切なはんだおよびフラックスを用いて圧電トランスデューサにはんだ付けされる。いくつかの実施形態では、電極は、エポキシ(例えば、銀エポキシ)または低温はんだ付け(例えば、はんだペーストによる)を用いて圧電トランスデューサに取り付けられる。
【0155】
例示的な実施形態では、ASICのPCBへの取り付け前またはあとに、はんだペーストがプリント回路基板(PCB)上のパッドに塗布される。回路基板上のパッドのサイズは、圧電トランスデューサの所望のサイズに依存する。あくまでも例として、圧電トランスデューサの所望のサイズが約100μm×100μm×100μmである場合、パッドは約100μm×100μmであり得る。パッドは埋め込み型デバイス用の第1電極として機能する。圧電材料(パッドより大きくてもよい)をパッド上に置き、塗布したはんだペーストでパッドに固定すると、圧電PCBアセンブリとなる。圧電PCBアセンブリを加熱してはんだペーストを硬化させ、それにより、圧電トランスデューサをPCBに接着させる。圧電材料がパッドより大きい場合、圧電材料を、例えばウェハダイシングソーまたはレーザカッターを用いて所望のサイズにカットする。圧電材料の非接着部分(例えば、圧電材料のうち、パッドにかぶさらない部分)を取り除く。第2電極を圧電トランスデューサおよびPCBに取り付ける。これは、例えば、圧電トランスデューサの上部とPCBとのあいだにワイヤボンドを形成することにより行われる。これにより、回路が完成する。ワイヤボンドは、任意の導電性材料(例えば、アルミニウム、銅、銀、または金)でできたワイヤを用いて形成される。
【0156】
集積回路と小型化超音波トランスデューサとは、PCBの同じ側に取り付けてよく、PCBの互いに反対側に取り付けてもよい。いくつかの実施形態では、PCBは柔軟性PCBであり、集積回路と超音波トランスデューサとは、PCBの同じ側に取り付けられ、PCBを折り曲げることで、集積回路と超音波トランスデューサとがPCBの互いに反対側にある埋め込み型デバイスが得られる。
【0157】
任意で、デバイスまたはデバイスの一部分を生体適合性物質(例えば、生体適合性ポリマー)で包む。生体適合性物質は、例えば、N‐ビニル‐2‐ピロリドン(NVP)とn‐ブチルメタクリレート(BMA)のコポリマー、ポリジメチルシロキサン(PDMS、例えば、Sylgard 184, Dow Corning, Midland, MI)、パリレン、ポリイミド、窒化珪素、二酸化珪素、アルミナ、ニオビウム、ヒドロキシアパタイト、または炭化珪素である。炭化珪素は、非晶質炭化珪素でもよく、結晶質炭化珪素でもよい。いくつかの実施形態では、生体適合性物質(例えば、非晶質炭化珪素)を、プラズマ助長化学蒸着(PECVD)またはスパッタリングによってデバイスに塗布する。PECVDは、炭化珪素を生成するために、SiH4やCH4のような前駆体を用いてよい。いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスまたは埋め込み型デバイスの一部分を、医療用移植に適切なセラミック(例えば、アルミナまたはチタニア)または金属(例えば、スチールまたはチタニウム)で包む。
【0158】
図14は、本明細書に記載の埋め込み型デバイスを製造する例示的な方法を示す。工程1402で、ASICをPCBに取り付ける。はんだ(例えば、銀エポキシ)をPCBに(例えば、PCB上に配置された第1パッドにおいて)塗布することができ、ASICをはんだ上に置くことができる。はんだは、例えば、ASICを有するPCBを加熱することで、硬化させることができる。いくつかの実施形態では、ASICを有するPCBを、約50℃ないし約200℃まで、例えば、約80℃ないし約170℃まで、または約150℃まで、加熱する。いくつかの実施形態では、ASICを有するPCBを、約5分間ないし約600分間、例えば、約10分間ないし約300分間、約10分間ないし約100分間、約10分間ないし約60分間、約10分間ないし約30分間、または約15分間、加熱する。任意で、ASICを追加のはんだでコーティングする。工程1404で、圧電トランスデューサ(
図14の「圧電素子」)をPCBに取り付ける。はんだ(例えば、銀エポキシ)をPCBに(例えば、PCB上に配置された第2パッドにおいて)塗布することができ、圧電材料を該はんだ上に置くことができる。圧電材料は完全に形成された(すなわち、「ダイスカットされた」)圧電トランスデューサでよく、または、PCBに取り付けたらカットして圧電トランスデューサを形成する圧電材料シートでもよい。はんだは、例えば圧電材料を有するPCBを加熱することで、硬化することができる。いくつかの実施形態では、圧電材料を有するPCBを、約50℃ないし約200℃まで、例えば、約80℃ないし約170℃まで、または約150℃まで、加熱する。いくつかの実施形態では、圧電材料を有するPCBを、約5分間ないし約600分間、例えば、約10分間ないし約300分間、約10分間ないし約100分間、約10分間ないし約60分間、約10分間ないし約30分間、または約15分間、加熱する。圧電材料は、ソーまたはレーザカッターを用いて所望の寸法にカットすることができる。いくつかの実施形態では、圧電材料はゾルゲル(例えば、PZTゾルゲル)であり、トランスデューサ材料は深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)で成形することができる。
図14では、工程1402でASICをPCBに取り付け、それから工程1404で圧電材料をPCBに取り付けているが、当業者ならば、ASICと圧電材料とは任意の順序で取り付けてよいとわかるであろう。工程1406において、ASICと圧電トランスデューサとはPCBにワイヤボンディングされる。
図14に示す方法では、ASICと圧電トランスデューサとがPCBに取り付けられたあとのPCBに対するASICと圧電トランスデューサとを示しているが、当業者ならば、ASICはPCBに取り付けたあとでPCBにワイヤボンディングすることができ、かつ、ASICは圧電トランスデューサの取り付けの前またはあとのいずれでもワイヤボンディングできるとわかるであろう。同様に、圧電トランスデューサは、ASICのPCBに対する取り付けまたはワイヤボンディングの前またはあとのいずれでもPCBにワイヤボンディングしてよい。工程1408において、センサがPCBに取り付けられる。センサは、本明細書に記載の任意のセンサであり得る。はんだ(例えば、銀エポキシ)をPCBに(例えば、PCB上に配置した第3パッドにおいて)塗布することができ、センサを該はんだ上に置くことができる。はんだは、例えばセンサを有するPCBを加熱することによって、硬化することができる。いくつかの実施形態では、センサを有するPCBを、約50℃ないし約200℃まで、例えば、約80℃ないし約170℃まで、または約150℃まで、加熱する。いくつかの実施形態では、センサを有するPCBを、約5分間ないし約600分間、例えば、約10分間ないし約300分間、約10分間ないし約100分間、約10分間ないし約60分間、約10分間ないし約30分間、または約15分間、加熱する。
図14では、圧電トランスデューサとASICとをPCBに取り付けたあとでセンサをPCBに取り付けているが、当業者ならばセンサがPCBに取り付けられるのは、ASICと圧電トランスデューサとがPCBに取り付けられる前でもあとでもよいとわかるであろう。センサの種類に応じて、センサはPCBにワイヤボンディングしてよく、それは、センサがPCBに取り付けられてからでよく、かつ、圧電トランスデューサおよび/またはASICのPCBに対するワイヤボンディングの前でもあとでもよい。工程1410において、デバイスの少なくとも一部分が生体適合性物質でコーティングされる。好ましくは、少なくとも圧電トランスデューサとASICとが生体適合性物質でコーティングされる。いくつかの実施形態では、センサは、あるいはセンサの少なくとも一部分は、生体適合性物質でコーティングされない。例えば、いくつかの実施形態では、センサは、生体適合性物質でコーティングされていない一組の電極を有し、それにより、該電極は、生理的状態の変化を検出できる。いくつかの実施形態では、生体適合性物質が、例えばUV光に露出することにより、または加熱により、硬化される。
【0159】
いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスは非晶質炭化珪素(a-SiC)フィルムで被包される。
図15は、a-SiCフィルムに被包された埋め込み型デバイスを製造する方法を示す。工程1502において、ポリイミド層を滑らかな表面に塗布する。工程1504において、a-SiC層をポリイミド層に塗布する。これは、例えば、プラズマ助長化学蒸着(PECVD)を用いて、SiH
4およびCH
4を前駆体として用いて、行うことができる。工程1506において、1つ以上のポートをa-SiC層にエッチングする。いくつかの実施形態では、ポートはポリイミド層にもエッチングする。ポートは、埋め込み型デバイスのうち、a-SiCに被包されていない部分、例えば、埋め込み後、組織、血液、または間質液に接触するセンサまたは電極の部分へのアクセスを提供する。いくつかの実施形態では、エッチングは反応性イオンエッチングを含む。工程1508において、埋め込み型デバイスをa-SiC層に取り付ける。埋め込み型デバイスはa-SiC層に取り付ける前にあらかじめ組み立てておいてもよいし、a-SiC上で作ってもよい。いくつかの実施形態では、プリント回路基板(PCB)、小型化超音波トランスデューサ、およびセンサをa-SiC層に取り付ける。小型化超音波トランスデューサおよびセンサはa-SiC層と直接接触する必要はない。小型化超音波トランスデューサおよびセンサはPCBに取り付けられてよいからである。小型化超音波トランスデューサまたはセンサのPCBへの取り付けは、PCBをa-SiC層に取り付ける前でもあとでもよい。いくつかの実施形態では、小型化超音波トランスデューサまたはセンサのPCBへの取り付けは、小型化超音波トランスデューサまたはセンサをPCBにワイヤボンディングすることを含む。いくつかの実施形態では、センサは、a-SiC層にエッチングされたポートと交流する部分を含む。いくつかの実施形態では、ASICがPCBに取り付けられ、それはPCBをa-SiC層に取り付ける前でもあとでもよい。工程1510において、埋め込み型デバイスの露出した部分はa-SiC層でコーティングされる。いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスの露出した部分は、PECVDを用いてa-SiC層でコーティングされる。工程1512において、被包された埋め込み型デバイスを浮き出させ、埋め込み型デバイスをSiC層から離す。
【0160】
〔例示的な実施形態〕
実施形態1.被検物質の量、pH、温度、ひずみ、または圧力を検出するよう構成されたセンサと、
最大寸法の長さが約5mm以下の超音波トランスデューサであって、上記センサによって検出された、上記被検物質の量、上記pH、上記温度、または上記圧力に基づいて変調された電流を受信し、上記受信された電流に基づいて超音波後方散乱を発するよう構成された、超音波トランスデューサと、
を有する、埋め込み型デバイス。
【0161】
実施形態2.上記超音波トランスデューサは、上記埋め込み型デバイスに電力を供給する超音波を受信するよう構成されている、実施形態1に記載の埋め込み型デバイス。
【0162】
実施形態3.上記超音波トランスデューサは、1つ以上の超音波トランスデューサを含む呼びかけ機からの超音波を受信するよう構成されている、実施形態2に記載の埋め込み型デバイス。
【0163】
実施形態4.上記超音波トランスデューサは、バルク圧電トランスデューサである、実施形態1から3のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0164】
実施形態5.上記バルク超音波トランスデューサはほぼ立方体である、実施形態4に記載の埋め込み型デバイス。
【0165】
実施形態6.上記超音波トランスデューサは、圧電マイクロマシン超音波トランスデューサ(PMUT)、または容量性マイクロマシン超音波トランスデューサ(CMUT)である、実施形態1から5のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0166】
実施形態7.最大寸法の長さが約5mm以下である、実施形態1から6のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0167】
実施形態8.体積が約5mm3以下である、実施形態1から7のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0168】
実施形態9.体積が約1mm3以下である、実施形態1から8のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0169】
実施形態10.対象に埋め込まれる、実施形態1から9のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0170】
実施形態11.上記対象は動物である、実施形態10に記載の埋め込み型デバイス。
【0171】
実施形態12.上記対象はヒトである、実施形態10または11に記載の埋め込み型デバイス。
【0172】
実施形態13.上記対象は植物である、実施形態10に記載の埋め込み型デバイス。
【0173】
実施形態14.上記センサは上記被検物質の量またはpHを検出する、請求項1から3のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0174】
実施形態15.上記センサは光センサである、実施形態14に記載の埋め込み型デバイス。
【0175】
実施形態16.上記光センサは光源および光検出器を有する、実施形態15に記載の埋め込み型デバイス。
【0176】
実施形態17.上記光センサは血圧または脈拍を検出する、実施形態15または16に記載の埋め込み型デバイス。
【0177】
実施形態18.上記光センサは、蛍光色素を含むマトリクスを有し、上記蛍光色素の蛍光強度または蛍光寿命は上記被検物質の量に依存する、実施形態15または16に記載の埋め込み型デバイス。
【0178】
実施形態19.上記センサはpHまたは酸素を検出する、実施形態15、16、または18のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0179】
実施形態20.上記光センサは近赤外線分光法を行うよう構成されている、実施形態15または16に記載の埋め込み型デバイス。
【0180】
実施形態21.上記センサはグルコースを検出する、実施形態20に記載の埋め込み型デバイス。
【0181】
実施形態22.上記光センサは上記光源または上記光検出器上に光フィルタを有する、実施形態16から21のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0182】
実施形態23.上記光センサは上記光源および上記光検出器上に光フィルタを有する、実施形態16から22のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0183】
実施形態24.上記センサは電位差測定化学センサである、実施形態1から13のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0184】
実施形態25.上記センサは電流測定化学センサである、実施形態1から13のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0185】
実施形態26.上記センサは酸素、pH、またはグルコースを検出する、実施形態24または25に記載の埋め込み型デバイス。
【0186】
実施形態27.上記センサは温度センサである、実施形態1から13のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
[0183]
実施形態28.上記温度センサは、サーミスタ、熱電対、または絶対温度比例(PTAT)回路である、実施形態27に記載の埋め込み型デバイス。
【0187】
実施形態29.バルク圧電超音波トランスデューサとサーミスタとを有する、実施形態1から13のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0188】
実施形態30.上記センサは圧力センサである、実施形態1に記載の埋め込み型デバイス。
【0189】
実施形態31.上記圧力センサはマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)センサである、実施形態30に記載の埋め込み型デバイス。
【0190】
実施形態32.血圧または脈拍を測定するよう構成されている、実施形態30または31に記載の埋め込み型デバイス。
【0191】
実施形態33.集積回路をさらに有する、実施形態1から32に記載の埋め込み型デバイス。
【0192】
実施形態34.上記集積回路は、電源回路を有する、実施形態33に記載の埋め込み型デバイス。
【0193】
実施形態35.上記集積回路は、上記センサに電流を供給するよう構成されたドライバを有する、実施形態33または34に記載の埋め込み型デバイス。
【0194】
実施形態36.上記集積回路は、1つ以上の光源に電流を供給するよう構成されたドライバを有する、実施形態33から35のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0195】
実施形態37.上記集積回路は、上記センサから信号を受信するよう構成されたフロントエンドを有する、実施形態34から36のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0196】
実施形態38.上記集積回路は、光検出器から信号を受信するよう構成されたフロントエンドを有する、実施形態34から37のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0197】
実施形態39.上記フロントエンドはCMOSフロントエンドである、実施形態37または38に記載の埋め込み型デバイス。
【0198】
実施形態40.上記集積回路は、スイッチを有する変調回路を有する、実施形態33から39のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0199】
実施形態41.上記スイッチは電界効果トランジスタ(FET)を有する、実施形態40に記載の埋め込み型デバイス。
【0200】
実施形態42.上記集積回路は、アナログ・デジタル変換器(ADC)を有する、実施形態33から41のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0201】
実施形態43.上記集積回路はデジタル回路を有する、実施形態33から42のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0202】
実施形態44.上記デジタル回路は変調回路を作動させるよう構成されている、実施形態43に記載の埋め込み型デバイス。
【0203】
実施形態45.上記デジタル回路は上記変調回路にデジタル化信号を送信するよう構成されており、該デジタル化信号は上記検出された被検物質の量、上記検出された温度、または上記検出された圧力に基づく、実施形態43または44に記載の埋め込み型デバイス。
【0204】
実施形態46.生体適合性物質によって少なくとも部分的に被包されている、実施形態1から45のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0205】
実施形態47.上記生体適合性物質は、N‐ビニル‐2‐ピロリドン(NVP)とn‐ブチルメタクリレート(BMA)のコポリマー、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、パリレン、ポリイミド、窒化珪素、二酸化珪素、アルミナ、ニオビウム、ヒドロキシアパタイト、炭化珪素、チタニア、スチール、またはチタニウムである、実施形態46に記載の埋め込み型デバイス。
【0206】
実施形態48.上記生体適合性物質はセラミックまたは金属を含む、実施形態46に記載の埋め込み型デバイス。
【0207】
実施形態49.非応答型リフレクタをさらに有する、実施形態1から48のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0208】
実施形態50.2つ以上のセンサを有する、実施形態1から49のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0209】
実施形態51.実施形態1から50のいずれか一つに記載の1つ以上の埋め込み型デバイスと、該1つ以上の埋め込み型デバイスに超音波を送信するか、該1つ以上の埋め込み型デバイスから超音波後方散乱を受信するよう構成されている1つ以上の超音波トランスデューサを有する呼びかけ機と、を有する、システム。
【0210】
実施形態52.上記呼びかけ機は、超音波を送信するよう構成された第1超音波トランスデューサと、上記1つ以上の埋め込み型デバイスから超音波後方散乱を受信するよう構成された第2超音波トランスデューサと、を有する、実施形態51に記載のシステム。
【0211】
実施形態53.上記呼びかけ機は2つ以上の別個の呼びかけデバイスを含み、第1呼びかけデバイスは超音波を上記1つ以上の埋め込み型デバイスに送信するよう構成され、第2呼びかけデバイスは上記1つ以上の埋め込み型デバイスから超音波後方散乱を受信するよう構成されている、実施形態51または52に記載のシステム。
【0212】
実施形態54.上記呼びかけ機は2つ以上の超音波トランスデューサアレイを有し、各トランスデューサアレイは2つ以上の超音波トランスデューサを有する、実施形態51から53のいずれか一つに記載のシステム。
【0213】
実施形態55.上記少なくとも1つ以上の超音波トランスデューサのうち少なくとも1つは、上記1つ以上の埋め込み型デバイスへの超音波の送信と、上記1つ以上の埋め込み型デバイスからの超音波後方散乱の受信を交互に行うよう構成されており、上記トランスデューサの構成は上記呼びかけ機上のスイッチによって制御される、実施形態51から54のいずれか一つに記載のシステム。
【0214】
実施形態56.複数の埋め込み型デバイスを有する、実施形態51から55のいずれか一つに記載のシステム。
【0215】
実施形態57.上記呼びかけ機は、送信される超音波をビームステアリングして、該送信される超音波を、上記複数の埋め込み型デバイスの第1部分または上記複数の埋め込み型デバイスの第2部分に交互に集中させるよう構成されている、実施形態56に記載のシステム。
【0216】
実施形態58.上記呼びかけ機は、少なくとも2つの埋め込み型デバイスから超音波後方散乱を同時に受信するよう構成されている、実施形態56に記載のシステム。
【0217】
実施形態59.上記呼びかけ機は、時間分割多重化を用いて、上記複数の埋め込み型デバイスに超音波を送信するか、上記複数の埋め込み型デバイスから超音波後方散乱を受信するよう構成されている、実施形態56に記載のシステム。
【0218】
実施形態60.上記呼びかけ機は、空間多重化を用いて、上記複数の埋め込み型デバイスに超音波を送信するか、上記複数の埋め込み型デバイスから超音波後方散乱を受信するよう構成されている、実施形態56に記載のシステム。
【0219】
実施形態62.上記呼びかけ機は、周波数多重化を用いて、上記複数の埋め込み型デバイスに超音波を送信するか、上記複数の埋め込み型デバイスから超音波後方散乱を受信するよう構成されている、実施形態56に記載のシステム。
【0220】
実施形態63.上記呼びかけ機は、対象によって着用可能であるよう構成されている、実施形態51から62のいずれか一つに記載のシステム。
【0221】
実施形態64.被検物質の量、pH、温度、または圧力を検出する方法であって、
最大寸法の長さが約5mm以下の超音波トランスデューサを有する1つ以上の埋め込み型デバイスに電力を供給する超音波を受信する工程と、
上記超音波から電流へエネルギーを変換する工程と、
上記被検物質の量、上記pH、上記温度、または上記圧力を測定するよう構成されたセンサに、上記電流を送信する工程と、
上記測定された被検物質の量、上記測定されたpH、上記測定された温度、または上記測定された圧力に基づいて、上記電流を変調する工程と、
上記変調された電流を、上記測定された被検物質の量、上記測定されたpH、上記測定された温度、または上記測定された圧力をエンコードする超音波後方散乱に変換する工程と、
上記超音波後方散乱を、該超音波後方散乱を受信するよう構成された1つ以上のトランスデューサを有する呼びかけ機に発する工程と、
を含む、方法。
【0222】
実施形態65.被検物質の量、pH、温度、または圧力を検出する方法であって、
最大寸法の長さが約5mm以下の超音波トランスデューサを有する1つ以上の埋め込み型デバイスに電力を供給する超音波を受信する工程と、
上記超音波から電流へエネルギーを変換する工程と、
上記被検物質の量、上記pH、上記温度、または上記圧力を、センサを用いて測定する工程と、
上記測定された被検物質の量、上記測定されたpH、上記測定された温度、または上記測定された圧力に基づいて、上記電流を変調する工程と、
上記変調された電流を、上記測定された被検物質の量、上記測定されたpH、上記測定された温度、または上記測定された圧力をエンコードする超音波後方散乱に変換する工程と、
上記超音波後方散乱を、該超音波後方散乱を受信するよう構成された1つ以上のトランスデューサを有する呼びかけ機に発する工程と、
を含む、方法。
【0223】
実施形態66.上記呼びかけ機を用いて上記超音波後方散乱を受信する工程をさらに含む、実施形態64または65に記載の方法。
【0224】
実施形態67.上記超音波を送信するよう構成された上記呼びかけ機を用いて、上記超音波を送信する工程をさらに含む、実施形態64から66のいずれか一つに記載の方法。
【0225】
実施形態68.上記超音波は2つ以上のパルスで送信される、実施形態67に記載の方法。
【0226】
実施形態69.上記超音波後方散乱を分析して、上記測定された被検物質の量、上記測定されたpH、上記測定された温度、または上記測定された圧力を決定する工程を含む、実施形態64から68のいずれか一つに記載の方法。
【0227】
実施形態70.上記被検物質の量またはpHを測定する工程を含む、実施形態64から69のいずれか一つに記載の方法。
【0228】
実施形態71.酸素の量またはpHを測定する工程を含む、実施形態64から70のいずれか一つに記載の方法。
【0229】
実施形態72.組織酸化レベルを監視する工程を含む、実施形態64から71のいずれか一つに記載の方法。
【0230】
実施形態73.上記1つ以上の埋め込み型デバイスは、血管、移植臓器、または腫瘍に接して、またはその内部に、またはそれに近接して埋め込まれる、実施形態72に記載の方法。
【0231】
実施形態74.光を発する工程と蛍光強度または蛍光寿命を検出する工程とを含み、上記蛍光強度または蛍光寿命は上記被検物質の量または上記pHに依存する、実施形態64から73のいずれか一つに記載の方法。
【0232】
実施形態75.発振発光と検出された蛍光とのあいだの位相シフトを決定する工程を含み、上記位相シフトは上記被検物質の量または上記pHに依存する、実施形態74に記載の方法。
【0233】
実施形態76.パルス化発光または発振発光に由来する、上記検出された蛍光の蛍光寿命を決定する工程を含む、実施形態74または75に記載の方法。
【0234】
実施形態77.グルコースの量を測定する工程を含む、実施形態64から70のいずれか一つに記載の方法。
【0235】
実施形態78.上記温度を測定する工程を含む、実施形態64から69のいずれか一つに記載の方法。
【0236】
実施形態79.上記1つ以上の埋め込み型デバイスは、血管、移植臓器、または腫瘍に接して、またはその内部に、またはそれに近接して埋め込まれる、実施形態78に記載の方法。
【0237】
実施形態80.臓器または感染部位の温度を監視する工程を含む、実施形態78または79に記載の方法。
【0238】
実施形態81.上記圧力を測定する工程を含む、実施形態64から69のいずれか一つに記載の方法。
【0239】
実施形態82.脈拍数または血圧を測定する工程を含む、実施形態81に記載の方法。
【0240】
実施形態83.上記1つ以上の埋め込み型デバイスの相対的な位置を決定する、実施形態64から82のいずれか一つに記載の方法。
【0241】
実施形態84.上記1つ以上の埋め込み型デバイスの角運動または平行運動を検出する工程を含む、実施形態53から83のいずれか一つに記載の方法。
【0242】
実施形態85.上記超音波後方散乱を分析して、上記測定された被検物質の量、上記測定された温度、または上記測定された圧力を決定する工程であって、該分析は上記埋め込み型デバイスの角運動または平行運動を説明することを含む、実施形態84に記載の方法。
【0243】
実施形態86.上記埋め込み型デバイスを対象に埋め込む工程を含む、実施形態64から85のいずれか一つに記載の方法。
【0244】
実施形態87.上記対象は動物である、実施形態86に記載の方法。
【0245】
実施形態88.上記対象はヒトである、実施形態86または87に記載の方法。
【0246】
実施形態89.上記対象は植物である、実施形態86に記載の方法。
【0247】
実施形態90.上記超音波後方散乱はデジタル化信号をエンコードする、実施形態64から89のいずれか一つに記載の方法。
【0248】
実施形態91.上記超音波後方散乱を受信する工程を含む、実施形態64から90のいずれか一つに記載の方法。
【0249】
実施形態92.上記超音波後方散乱は複数の埋め込み型デバイスから受信される、実施形態91に記載の方法。
【0250】
実施形態93.上記超音波後方散乱は上記複数の埋め込み型デバイスから時間分割多重化を用いて受信される、実施形態92に記載の方法。
【0251】
実施形態94.上記超音波後方散乱は上記複数の埋め込み型デバイスから空間多重化を用いて受信される、実施形態92に記載の方法。
【0252】
実施形態95.上記超音波後方散乱は上記複数の埋め込み型デバイスから周波数多重化を用いて受信される、実施形態92に記載の方法。
【0253】
実施形態96.周波数、振幅、位相、およびデューティサイクルの少なくとも1つが調節可能な超音波呼びかけパルスを生成し、送信された超音波呼びかけパルスによって生成された超音波後方散乱を受信するよう構成された超音波トランシーバと、
身体状態を検知するリード線と、受信した超音波呼びかけパルスを該リード線によって検知された身体状態に基づいて変調して反射する回路と、を有する埋め込み型デバイスと、
を有する、医療システム。
【0254】
実施形態97.上記超音波トランシーバは埋め込み可能であり、外部のトランシーバと無線で通信するようさらに構成されている、実施形態96に記載の医療システム。
【0255】
実施形態98.生成された超音波呼びかけパルスの周波数、振幅、位相、およびデューティサイクルの上記少なくとも1つは、超音波トランシーバと埋め込み型デバイスとの決定された距離に基づいて適切に設定される、実施形態96および97のいずれか一つに記載の医療システム。
【0256】
実施形態99.周波数、振幅、位相、およびデューティサイクルの上記少なくとも1つは、超音波トランシーバと埋め込み型デバイスとの上記決定された距離に基づいて適切に定められた超音波送信の焦点距離に対応する、実施形態98に記載の医療システム。
【0257】
実施形態100.上記システムは、超音波トランシーバ間の距離を決定するよう構成されている、実施形態98および99のいずれか一つに記載の医療システム。
【0258】
実施形態101.上記距離の決定は外部のトランシーバによって行われる、実施形態97から100のいずれか一つに記載の医療システム。
【0259】
実施形態102.超音波呼びかけパルスを生成し、送信された超音波呼びかけパルスによって生成された超音波後方散乱を受信するよう構成された超音波トランシーバと、
生物学的状態を検知するリード線と、該リード線によって検知された生物学的状態に応じる少なくとも1つの応答型領域と、上記検知された生物学的状態に応じない少なくとも1つの非応答性領域と、を有する埋め込み型デバイスと、を有し、
上記埋め込み型デバイスは受信された超音波呼びかけパルスを反射して、特定のパルスシグネチャーを生成し、該特定のパルスシグネチャーは、該シグネチャーの少なくとも1つの部分が上記少なくとも1つの応答型領域に対応し、該シグネチャーの少なくとも1つの他の部分が上記少なくとも1つの非応答型領域に対応している、医療システム。
【0260】
実施形態103.上記システムは、上記応答型領域および非応答型領域が異なる構成を有する複数の埋め込み型デバイスを有し、異なるパルスシグネチャーを生成する、実施形態102に記載の医療システム。
【0261】
実施形態104.超音波反射を生成した上記埋め込み型デバイスの正体を、上記パルスシグネチャーを用いて特定する、実施形態103に記載の医療システム。
【0262】
実施形態105.各トランスデューサが超音波呼びかけパルスを生成するよう構成されたトランスデューサのアレイを有する超音波トランシーバであって、各トランスデューサはマイクロマシン構造およびバルク圧電クリスタルのうち1つを有し、該トランシーバは送信された超音波呼びかけパルスによって生成された超音波後方散乱を受信するようさらに構成されている、超音波トランシーバと、
複数の埋め込み型デバイスであって、各埋め込み型デバイスは、身体状態を検知するリード線と、受信した超音波呼びかけパルスを、該リード線が検知した身体状態に基づいて変調して反射する回路と、を有する、複数の埋め込み型デバイスと、
を有する、医療システム。
【0263】
実施形態106.上記超音波トランシーバは、上記トランスデューサが生成した超音波ビームをステアリングする、実施形態105に記載の医療システム。
【0264】
実施形態107.上記超音波トランシーバと上記複数の埋め込み型デバイスとの通信は時間分割多重化を用いる、実施形態105または106に記載の医療システム。
【0265】
実施形態108.上記超音波トランシーバと上記複数の埋め込み型デバイスとの通信は空間多重化を用いる、実施形態105または106に記載の医療システム。
【0266】
実施形態109.上記超音波トランシーバと上記複数の埋め込み型デバイスとの通信は周波数多重化を用いる、実施形態105または106に記載の医療システム。
【0267】
実施形態110.超音波送信を生成し、生成された超音波送信によって生成された超音波後方散乱を受信するよう構成された超音波トランシーバと、
身体内生物学的状態を検知する光センサと、反射超音波後方散乱通信において、上記身体内生物学的状態を示す情報を変調させる超音波後方散乱通信システムと、を有する身体埋め込み型デバイスと、
を有する、身体内状態検知システム。
【0268】
実施形態111.上記身体埋め込み型デバイスは光エミッタをさらに有する、実施形態110に記載の身体内生物学的状態検知システム。
【0269】
実施形態112.上記光センサは組織酸化レベルを測定するよう構成されている、実施形態110に記載の身体内生物学的状態検知システム。
【0270】
実施形態113.上記光センサは近赤外線分光法を行うよう構成されている、実施形態110または111に記載の身体内生物学的状態検知システム。
【0271】
実施形態114.上記光センサは血中被検物質を測定するよう構成されている、実施形態110に記載の身体内生物学的状態検知システム。
【0272】
実施形態115.上記被検物質はグルコースである、実施形態113に記載の身体内生物学的状態検知システム。
【0273】
実施形態116.上記被検物質はpHである、実施形態113に記載の身体内生物学的状態検知システム。
【0274】
実施形態117.上記光センサは血圧を測定するよう構成されている、実施形態110に記載の身体内生物学的状態検知システム。
【0275】
実施形態118.身体内生物学的状態を検知する方法であって、
身体内生物学的状態を検知する光センサを有する身体埋め込み型デバイスを所定の位置に埋め込む工程であって、該身体埋め込み型デバイスは反射された生物学的状態を変調させる超音波後方散乱通信システムをさらに有する、工程と、
超音波送信を生成し、生成された超音波送信によって生成された超音波後方散乱を受信するよう構成された超音波トランシーバを用いて、上記身体埋め込み型デバイスに、上記検知された内部生物学的状態を示す情報を得るよう呼びかける工程と、
を含む、方法。
【0276】
実施形態119.上記光センサは組織酸化レベルを測定するよう構成されている、実施形態118に記載の方法。
【0277】
実施形態120.上記身体埋め込み型デバイスは腫瘍の位置または腫瘍に近い位置に埋め込まれて、腫瘍の酸化を監視する、実施形態118に記載の方法。
【0278】
実施形態121.複数の上記身体埋め込み型デバイスが脳内のさまざまな位置に埋め込まれ、上記方法は脳内の上記検知された生物学的状態を示す情報を脳機能イメージングする工程をさらに含む、実施形態118に記載の方法。
【0279】
実施形態122.上記光センサは血中被検物質を測定するよう構成されている、実施形態118に記載の方法。
【0280】
実施形態123.上記被検物質はグルコースである、実施形態122に記載の方法。
【0281】
実施形態124.上記被検物質はpHである、実施形態123に記載の方法。
【0282】
実施形態125.上記光センサは血圧を測定するよう構成されている、実施形態118に記載の方法。
【0283】
実施形態126.超音波送信を生成し、生成された超音波送信によって生成された超音波後方散乱を受信するよう構成された超音波トランシーバと、
身体内生物学的状態を検知する圧力センサと、反射超音波後方散乱通信において、上記身体内生物学的状態を示す情報を変調させる超音波後方散乱通信システムと、を有する身体埋め込み型デバイスと、
を有する、身体内状態検知システム。
【0284】
実施形態127.生成された超音波送信によって生成された超音波後方散乱と、
身体内生物学的状態を検知する温度センサと、反射超音波後方散乱通信において、上記身体内生物学的状態を示す情報を変調させる超音波後方散乱通信システムと、を有する身体埋め込み型デバイスと、
を有する、身体内状態検知システム。
【0285】
実施形態128.超音波送信を生成し、生成された超音波送信によって生成された超音波後方散乱を受信するよう構成された超音波トランシーバと、
身体内生物学的状態を検知する電位差測定化学センサと、反射超音波後方散乱通信において、上記身体内生物学的状態を示す情報を変調させる超音波後方散乱通信システムと、を有する身体埋め込み型デバイスと、
を有する、身体内状態検知システム。
【0286】
実施形態129.超音波送信を生成し、生成された超音波送信によって生成された超音波後方散乱を受信するよう構成された超音波トランシーバと、
身体内生物学的状態を検知する電流測定化学センサと、反射超音波後方散乱通信において、上記身体内生物学的状態を示す情報を変調させる超音波後方散乱通信システムと、を有する身体埋め込み型デバイスと、
を有する、身体内状態検知システム。
【0287】
〔実施例〕
(実施例1)埋め込み型デバイスの製造
短縮された形態では、埋め込み型デバイスの組み立て工程は以下の通りである。
1.ASICをPCBに取り付ける。
2.ASICのポートをPCBにワイヤボンディングする。
3.圧電素子をPCBに取り付ける。
4.圧電素子のポートをPCBにワイヤボンディングする。
5.導出電極以外、デバイス全体を被包する。
【0288】
ASICは、450μm×500μm×500pmの大きさであり、Taiwan Semiconductor Manufacturing Companyの65nmプロセスによって組み立てられる。各チップは2つのトランジスタを有し、各トランジスタは5つのポート(ソース、ドレイン、ゲート、センター、バルク)を有する。各FETは同じバルクを用いるので、どのバルクパッドを接続してもよいが、上記トランジスタは、上列にパッドを出したトランジスタは抵抗バイアスネットワークを有さないが、下列にパッドを出したトランジスタは抵抗バイアスネットワークを有するという点で異なる。チップはさらに、電気メッキ用のより小さいパッドも有する。同じプロセスは、より複雑な回路を有し、したがってより多くのパッドを有するASICにも適用できる。これらのパッドは本実施例では用いなかった。FETの3つのバージョンをテープアウトした。
ダイ1:閾値電圧500mVの長チャネルFET。
ダイ2:閾値電圧500mVの短チャネルFET。
ダイ3:閾値電圧0mVのネイティブFET。
【0289】
これらのFETの電気的特性の確認は、ワイヤボンディングの対象としての一組のパッドと、ワイヤがはんだ付けされた第2の組のパッドとから成る、特別に設計したCMOSキャラクタライゼーションボードを用いて測定した。ソースメータ(2400 Sourcemeter, Keithley Instruments, Cleveland, OH)を用いてVDSをFETに供給しIDSを測定した。調節可能な電源(E3631A, Agilent, Santa Clara, CA)を用いてVGSを変調させ、FETのI‐V特性を得た。タイプ2のダイについて特徴的でないIV曲線が絶えず測定され、インピーダンス測定をすると、ダイ2の短チャネルはFETをショートさせるだろうとわかった。
【0290】
圧電素子はチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)である。これは、APC Internationalからディスクとして購入したものであり、セラミックの刃(PN CX-010-'270-080-H)を有するウェハソー(DAD3240, Disco, Santa Clara, CA)を用いて、750μm×750μm×750μmの立方体にダイシングした。このモートサイズが選ばれたのは、電力伝達効率を最大にしたからである。さらなる詳細については、Seo et al., Neural dust: an ultrasonic, low power solution for chronic brain-machine interfaces, arXiv: 1307.2196v1 (July 8, 2013)を参照のこと。
【0291】
埋め込み型デバイス基板は、ASICを圧電素子および導出電極と一体化させている。埋め込み型デバイスの第1のバージョンは、The Boardworks(Oakland, CA)から購入した特注のPCBを基板として用いた。上記PCBはFR‐4から作られており、厚さ30mil(約0.762mm)であった。基板の寸法は3mm×1mmであった。この設計は、通信検知一体化プラットフォームの最初の試みであったので、サイズを大きくするという代償のもと、組み立てを容易にするようなパッドサイズおよびパッド間隔を選んだ。PCB占有面積を保つため、PCBの各面は、圧電素子またはASIC用およびそのそれぞれのPCBへの接続のためのパッドを有した。さらに、2つの導出パッドを基板のASIC面に置いた。露出した電極はすべて、The BoardworksのENIGでメッキした。ASICを置くパッドは500μm×500μmであり、ダイのサイズに合うように選ばれた。ワイヤボンディングの対象であるパッドのサイズは200μm×200μmとなるように選ばれ、ダイの端部から約200μm離して、ワイヤボンディングに十分な空きを作った(以下で説明する)。電極のサイズおよび間隔を変え、経験的に最適化した。
【0292】
埋め込み型デバイスの2回目の繰り返しでは、3つの主な関心事項に応えた。1)サイズ、2)ワイヤボンディングの容易さ、3)埋め込み/通信である。まず、基板の厚みを減らすため、FR‐4基板を2mil(約50.8μm)の厚さのポリイミド柔軟性PCB(AltaFlex, Santa Clara, CA)と交換し、ASIC(Grinding and Dicing Services Inc., San Jose, CA)を100μmまで薄くした。ボンディングを容易にするため、ASICとPZTクーポンとを同じ側に移動させ、基板の裏側には導出電極だけを残した。基板の同じ側にASICとPZTクーポンとを置くことで、基板のサイズの減少が制約されるが、電極同士の間隔により基板の長さを少なくとも2mmに制限した。最小化の試みを押し進めるため、ASICボンディングパッドを100μm×100μmまで小さくしたが、ボンディングパッドとASIC自体との間隔200μmは、ワイヤボンディング用の空間を与えるために維持しなければならなかった。PZTクーポン用の取り付けパッドも縮小し基板の端部により近づけて位置させた。これは、PZTクーポンは基板の上に完全に乗る必要はなく、基板からはみ出してよいという理由によるものである。さらに、ASICに対するパッドの位置も修正して、ボンディングを容易にした。もともとの設計では、ASICを囲むボンディングパッドのレイアウトは2本のワイヤボンドが交差する必要があった。これは不可能ではないが、パッド同士の短絡を避けるのは極めて困難である。そのため、パッドのレイアウトを変えて、ボンドが比較的まっすぐな経路となるようにした。最後に、動物実験中、埋め込み型デバイスを並べるのは極めて困難であることがわかった。これに対処するため、基板から伸びる1インチのテストリード線4本を加え、そのうちの2本をデバイスのソースおよびドレインに直接接続して、測定できる電力を得、それをアライメントメトリックとして用いた。グラウンド・トゥルース信号を得るため、他の2本のリード線はゲートと中央ポートに接続した。どのリード線がどのポートに属するのか混乱するのを防ぐため、ビアには独自の形状を与えた。
図16Aを参照のこと。
【0293】
力を加えられると、試験用のリード線は容易に破断するか、容易にモートの位置を動かすかもしれないという恐れがいくらかあった。そのため、蛇行したトレースを用いたバージョンを設計した。蛇行したトレース(
図16B)は、変形可能な相互接続を可能にするためにしばしば用いられてきたものである。その構造により、「アコーディオンのように広げる」ことが可能だからである。概念的には、蛇行したトレースの設計は、一連の片持ち梁を、接続梁を介して直列につなげて得られる。
【0294】
上記提示した設計とともに、基板の両側を用いた埋め込み型デバイスの小型化バージョンも設計し、組み立てた。この設計では、基板は約1.5mm×0.6mm×1mmのサイズである。基板の小型化のため、5milの銀のワイヤの「尾部」をデバイスに記録のため取り付けた。このバージョンはインビボではテストしなかった。
【0295】
ASICとPZTクーポンとを、接着材を用いてPCB基板に取り付けた。接着材の選択には、3つの主な関心事項がある。1)接着材は、ASICとPZTを、ワイヤボンディングからの超音波力が当該構成要素を揺らさないほどしっかりと固定する必要がある。2)構成要素/基板パッドのサブミリメートルのスケールおよびピッチのため、接着材の塗布は比較的正確に行われた。3)接着材は導電性である必要がある。
【0296】
ASICおよびダイシングしたPZTはもともと、低温硬化はんだペーストを用いてPCB基板に取り付けた。はんだペーストは、フラックス中に球として懸濁した粉末状の金属はんだから成る。熱が加えられると、はんだボールが融け始め、融合する。しかし、はんだペーストの硬化はしばしば、リフロー中、PZTクーポンまたはモートを平行移動させたり回転させたりすることがわかった。このことは、PZTの配置および電力の収集に問題をもたらすとともに、ワイヤボンディングにも問題をもたらす。なぜなら、ボンドパッドはもはやチップに対して適切に位置していないからである。しかし、2成分銀エポキシ(エポキシ中に懸濁した銀粒子だけから成る)は、チップまたはPZTクーポンの位置を変えることなしに硬化できることがわかった。そのため、ASICおよびダイシングしたPZTは、2成分導電性銀エポキシ(H20E, Epotek, Billerica, MA)を用いてPCBにペーストした。それから、カプトンテープ(Polyimide Film Tape 5413, 3M, St. Paul, MN)を用いて、PCBをガラススライドに固定し、150℃の対流式オーブンに15分間入れて、エポキシを硬化させた。温度が高いほど硬化を速められる(
図17)けれども、PZTを160℃(PZTのキュリー温度の半分)を超えて加熱しないよう注意した。PZTをさらに高い温度で加熱することは、PZTを消極する危険を冒すことになる。150℃での硬化はCMOSの性能に何の影響も及ぼさないことがわかった。
【0297】
PZTの上部とPCBとの接続、およびASICとPCBとの接続は、1milのAlワイヤを超音波ウェッジボンダー(740DB, West Bond, Scotts Valley, CA)を用いてワイヤボンディングすることで行った。このボンディング方法では、ボンドヘッドのウェッジにAlワイヤを通し、超音波エネルギーがAlワイヤを基板に対して「擦り」、摩擦により熱を生じさせる。この熱が2つの物質を溶接してくっつける。
【0298】
ASICに対するワイヤボンディングは、CMOSパッドのサイズおよびワイヤボンドの末端のサイズにより、短絡を避けることが困難であった。この問題は、埋め込み型デバイス基板の第1のバージョンでのワイヤボンディングの対象の位置決めにより顕著となった。この位置決めでは、2つのボンドの末端が、ASICパッドの長さ方向を横切るのではなくむしろ短い幅方向を横切るように配置した。より細い金のワイヤをボンディングに用いることもできたが、ウェッジボンダーを用いて金をサーモソニックボンディングする困難さから、金のワイヤをこの装置によるボンディングに用いることは非実際的であった。さらに、効果的にワイヤボンドするために、基板を平らにし、かつ固定することが重要である。このため、ASICとPZTとを基板の異なる側に設けるという発明者らの当初の設計は、発明者らの埋め込み型基板の第1のバージョンでのワイヤボンディングプロセスの際、しばしば問題を生じさせた。この理由から、埋め込み型デバイスの第2の繰り返しで行った基板設計の選択(ASICとPZTを同じ側に移動させ、パッドを再配置して、ワイヤボンディングの対象にまっすぐな経路を提供する)により、ワイヤボンディングの収率が大幅に上がった。
【0299】
最後に、超音波ボンダーを用いたので、PZTへのボンディングは電荷の蓄積をもたらし、PZTが基板に完全にボンディングされると、そうした電荷の蓄積がチップにダメージを与えるだろうとわかった。これを避けるため、PZTをワイヤボンディングする直前に、デバイスのソースおよびドレインのテスト用リード線をアースにつないだ。
【0300】
埋め込み型デバイス組み立ての最終的な工程は、被包である。この工程は2つの目的を達する。1)PZT、ボンドパッド、およびASICを水性環境から絶縁する。2)ASIC/PZTクーポンとPCBとのあいだのワイヤボンドを保護する。同時に、被包材料が導出電極を覆うのを取り除く、あるいは被包材料が導出電極を覆うのを妨げる何らかの方法が必要である。さらに、被包材料はデバイスの埋め込みを妨げてはならない。最後に、被包中に何らかの損傷が生じた場合にデバイスに物理的な欠陥がないか検査できるよう視覚的に透明な被包材料を選ぶことが、不可欠ではないけれども重要である。
【0301】
最初に用いた被包材料はCrystalbond(509', SPI Supplies, West Chester, PA)であった。Crystalbondは、室温では固体だが71℃で軟化し始め、121℃で融けて粘性の液体となる接着材である。Crystalbondから熱を取り除くと、Crystalbondは数分のうちに再び固まり、うまく制御できる。埋め込み型デバイスを被包するために、Crystalbondの小さな薄片を剃刀でそぎ取り、デバイスの上に直接置いた。それから、ホットプレートで基板を加熱した。まず、温度を、薄片が変形し始める約70℃にし、それから、Crystalbondが完全に液体となるまで徐々に温度を上げた。液体のCrystalbondの滴の端が広がって最遠のワイヤボンドを過ぎたが導出パッドはまだ過ぎていないとき、ホットプレートのスイッチを切り、基板をプレートから冷却チャックへすばやく移し、そこでCrystalbondを再び固まらせた。
【0302】
Crystalbondは効果的であったが、UV硬化性エポキシドの方が選択性と生体適合性、それに硬化の急速さでもすぐれていることがわかった。まず、紫外線に露出することで硬化する光硬化性アクリル(3526, Loctite, Dusseldorf; Germany)を試した。精度を高めるため、縫い針を塗布具として用い、エポキシを405nmのレーザポイントで2分間、硬化した。このエポキシはうまく働いたが、医療用グレードではなく、生体内埋め込みには不向きであった。このため、医療用グレードのUV硬化性エポキシ(OG116-31, EPO-TEK, Billercia, MA)を試した。このエポキシを、365nmで92mW/cm2のUVチャンバ(Flash, Asiga, Anaheim Hills, CA)内で、5分間、硬化した。このエポキシはLoctiteエポキシより粘性がわずかに低かったが、縫い針を再び塗布具として用いることで、選択的な被包を行うことができた。ワイヤボンドの絶縁および保護機構として、エポキシは極めて効果的であったが、水中に長期間(~1時間)潜らせると水漏れすることがわかった。1年にも及ぶ安定性を宣伝する第2の医療用グレードエポキシを検討した(301-2, EPO-TEK, Billerica, MA)が、十分な粘性を有さないとわかり、硬化のためオーブンで焼くことが必要であった。上記のUVエポキシは不安定ではあるが、使用期間は急性のインビボ実験には適当であった。
【0303】
被包の安定性を高めるため、パリレン‐Cも被包材料として検討した。パリレン‐Cは、FDAが承認した、化学的・生物学的に不活性である生体適合性ポリマーであり、すぐれたバリアであり電気絶縁体であり、蒸着時には極めてコンフォーマルである。パリレン‐Cの蒸着は、粉末のパリレン‐Cダイマーを、150℃を上回る温度で気化することにより行われる。それから、気相のパリレン‐Cダイマーを690℃で加熱して熱分解を生じさせ、パリレン‐Cダイマーを割ってモノマーにする。それから、モノマーが、室温に保たれたチャンバに充満する。モノマーは、ひとたび任意の表面と接触すると、ほとんど即座にポリマー化する。すべてのデバイスについて、パリレン‐Cを、パリレン蒸着システム(SCS Labcoter 2 Parylene Deposition System, Specialty Coating Systems, Indianapolis, IN)を用いて、表1に示すパラメータで蒸着した。表1はチャンバゲージ温度を135℃として示していることに留意されたい。これは、実際のチャンバ温度から明瞭である。むしろ、チャンバゲージは、単に、プロセスチャンバの真空ゲージである。パリレンがゲージに蒸着するのを防ぐため、温度を少なくとも135℃に保つのが重要である。FR‐4基板の第1のバッチでは、カプトンテープを用いてパリレンを選択的に扱い、電極が覆われないようにした。しかし、導出電極とASICワイヤボンディングの対象とのピッチが小さいため、テープが基板にしっかり貼り付くのに十分な表面積がなく、テープはしばしば滑り落ち、電極パッドが覆われる結果となった。埋め込み型デバイスの第2の繰り返しでは、基板全体をコーティングし、それから探針の先端で電極からパリレンを取り除くという方法を用いて、パリレンのコーティングを試みた。パリレンがデバイス全体をコーティングするよう、埋め込み型デバイスを二層のガラススライドのあいだで湿らせて、空中に吊るした。
【0304】
【0305】
以下で、埋め込み型デバイスの製造についてさらに詳述する。
【0306】
PCB、ASIC、またはPZTクーポンで作業を開始する前に、ダスト基板用の2つのサンプルホルダを用意する。そのために、2枚のガラススライド(3mm×1mm×1mmスライドがよい)を取り、スライドの長さ方向に一片の両面テープを貼る。残りの工程が行えるよう、テープを用いてダストモートを所定の位置に固定する。スライドの一枚の上、両面テープの上に、一片のカプトンテープ(3M)を、粘着面を上にして加える。このスライドは、硬化用のスライドとして用いる。硬化の高温が、両面テープの接着材に問題を生じさせる可能性があるからである。
【0307】
次に、秤量ボートでA部とB部とが1:1の比の重さとなるよう量り、少量の銀ペーストを混合する。組み立てプロセスには大量の銀エポキシは必要ない。以下に示すのは約10gのエポキシ(各部5g)であり、3つの基板には十分以上である。なお、混合銀エポキシは、4℃で置かれると、貯蔵寿命は2週間である。したがって、残ったエポキシは、使われないときは、冷蔵することができるし、またそうすべきである。さらに、時間の経ったエポキシ(数日から1週間)は、新鮮なエポキシよりも粘性がわずかに高い傾向にあり、それによって塗布をより簡単にできる。
【0308】
基板はパネル化しており、取り除く必要がある。各基板は、テストリード線およびビア上のいくつかの取り付け点でパネルに接続されている。これらの取り付け点は、超小型の外科用メス(Feather Safety Razor Co., Osaka, Japan)を用いて切断できる。PCBを単体化したら、先端がカーボンファイバーであるピンセットまたはESDプラスチックピンセットを用いて、単体化したPCBを高温サンプルホルダに置く。
【0309】
ダイシングした/薄膜化したダイはダイシングテープに付けて運ぶが、これによりダイを取るのが難しくなることがある。ダイとテープとの粘着を減らすために、テープを変形させるのが役に立つ。先端がカーボンであるピンセットまたはESDプラスチックピンセットを用いて、テープを優しく押し、ピンセットをダイの周囲で円状に動かす。ダイが外れたかどうか確認するため、ピンセットの先端でチップを優しくつつく。ダイが簡単に外れなかったら、チップの周囲のテープを押し続ける。チップが外れたら、その基板の隣にある高温サンプルホルダに注意深く置く。チップが移動しないよう、サンプルホルダをチップまで運ぶ方が、その反対よりも望ましい。この工程では、ダイをなくしたり損傷したりしないよう注意する必要がある。力を加えてダイをテープから外してはならない。過剰な力を加えると、チップがテープから吹き飛ぶ可能性があるからである。
【0310】
次に、銀エポキシを用いてダイを取り付ける。顕微鏡下で、ピンまたは同様に細かいものを用いて、少量の銀エポキシをPCB上のCMOSパッドに塗布する。この工程では、誤って少なすぎる量のエポキシを塗布する方が、誤って多すぎる量のエポキシを塗布するよりもましである。銀ペーストを追加で塗布することはいつでもできるが、銀ペーストを除去することは些細なことではないからである。少量の未硬化のエポキシなら、塗布に用いたのと同じ器具を用いて削り取ることができる。エポキシを器具から確実に拭い取っておかなければならない。
【0311】
エポキシをパッドに置いたら、ASICをエポキシの上に置いてよい。CADエラーにより、チップのうちいくつかは跳ね返っている。跳ね返ったチップは基板上で正しい方向を向かせ、ワイヤボンディングの際、ワイヤが交差しなくてもよいよう注意することが重要である。
【0312】
ASICを基板上で正確に配置したら、150℃のオーブンに15分間置いて銀エポキシを硬化してよい。必要なら異なる温度を用いてもよい。詳しくは
図17を参照のこと。銀エポキシが硬化したら、念のため、各ダイを優しく押して粘着の度合をチェックする。ダイが動いた場合は、銀エポキシの第2コートが必要となる。
【0313】
ワイヤボンディングを準備するため、デバイスを高温サンプルホルダからレギュラーサンプルホルダへ移動させる。この変更が必要なのは、両面テープの粘着の方がカプトンテープよりも強く、そのためワイヤボンディングがより簡単に行われるからである。両面テープの一片は、サンプルホルダをワイヤボンダーのワークホルダに固定するのに十分であるべきである。テストリード線がたまたま何かに引っ掛かることのないよう、ワークホルダはそれ以前に両面テープに覆われたことがないことがもっともよい。必要なら、クリーンルームテープを用いて、サンプルホルダをさらに留めてもよい。
【0314】
デフォルトの設定を用いて、設けられたテスト基板上でボンディングを行うことで、ワイヤボンダーをよい状態に保つようにする。ワイヤボンダーをよい状態に保つことが重要である。損傷したウェッジはうまくボンディングせず、ASICパッドを結局は損傷するだけだからである。順ボンディング(まずダイにボンディングし、次に基板にボンディングする)を、以下の順序で行うべきである。1.ゲート。2.バルク。3.センター。4.ドレイン。5.ソース。ボンドをこの順序で形成することは重要ではないが、この順序は基板の向きの再設定の回数を最小限にし、ボンドヘッドによりボンドが偶然に損傷することを防ぐ。ボンディングを容易にするために、ワークホルダの角度を小さく調節してよい。このボンドはできる限りまっすぐであることが必須である。第2のボンドの末端が基板から浮く場合、ボンドの数を1つにし、末端を再度ボンディングするとうまくいくかもしれない。接着が適切にできない場合、可能な解決策の一つは、ボンドの末端と基板とを銀エポキシを用いて接続することである。また、2つのボンドの末端が接触して生じる短絡は、つながっている金属を超小型の外科用メスを用いて非常に注意深く切断することにより解決できる。
【0315】
既知の実用的なボンディングパラメータを、下の表2に記す。これらのパラメータは単にガイドラインであり、必要に応じて変更すべきである。過剰な電力(490を上回る)を必要とすることは、通常、問題があることを示す。基板の固定(PCBのガラススライドへの固定およびCMOSのPCBへの固定の両方)、ウェッジの状態、パッドの状態のすべてを確認すべきである。パッドの状態の場合、それ以前のワイヤボンディングにより損傷したパッドは、通常、より多い電力を必要とする。デバイスを救える場合もあるが、600を超える電力でボンディングをしようとする失敗した試みは通常、よいボンディングをするには多すぎる損傷をパッドに与えることになる。
【0316】
【0317】
ワイヤボンディングを行ったあと、デバイスに電気テストを行って、ボンディングが適切に成されたことを確実にすべきである。タイプ1のダイを用いた場合、I‐V特性は、およそ表3に示すようになるべきである。
【0318】
【0319】
I‐V特性が正しく思えない場合は、有益なトラブルシューティング法(valuable troubleshooting method)を用いて、ドレインとセンターとのあいだ、ソースとセンターとのあいだ、ドレインとソースとのあいだの抵抗を確認する。ダイが適切に作動している場合は、ドレインとセンターとのあいだ、およびソースとセンターとのあいだの抵抗はおよそ90kΩ、ドレインとソースとのあいだの抵抗はおよそ180kΩになると予期される。
【0320】
FETが適切に接続されていることを確かめたあと、PZTクーポンを取り付けるべきである。これは、ASICを取り付けるのと同様のやり方で行う。縫い針を用いて、少量の銀エポキシを適切なパッド上に置く。少量のエポキシを、パッドの後端(基板の端に向かう方向)に置くのがもっともよい。なぜなら、PZTクーポンはパッドの中央に位置せず、押し戻されてクーポンが基板から外れるだろうからである。PZTクーポンの極性はその効率に少ししか影響しないことに留意されたい。クーポンが正しい位置にあるかどうか判定するため、底面が上面より大きいかどうかを確認する。ダイシングソーの経路により、クーポンの底部は上部よりわずかに大きい。したがって、底面の端を上から見ることができる。このとき、クーポンは、ディスクがダイシングされたときにあったのと同じ向きに置かれている。
【0321】
PZTのワイヤボンディングは、ASICと同様のやり方(順ボンディング、PZTをPCBにボンディング)で行う。しかし、1つの重要な違いは、ドレインおよびソースのビアをアースすることである。Westbondの隣にはアースポートがあり、バナナコネクタを介してアクセスできる。ガイドラインとして、表4に示すパラメータが使えることが知られている。
【0322】
【0323】
ボンドがうまく形成されるには、PZTクーポンがどれほどよく基板に取り付けられたかに応じて、何度かボンディングを試みる必要があるかもしれない。ボンディングを試みる回数が多いほど、PZTの機械的構造は悪化する(銀コーティングが損傷する)。したがって、プロセスを極めて素早く最適化することが最善である。末端がはがれたことにより失敗したボンドは、一般に、電力が十分でないことを示す。ワイヤが破断したことにより失敗したボンドは、一般に、電力が高すぎることを示す。
【0324】
ボンドがうまく形成されたら、さらに電気テストを行って、PZTのボンディングがASICを損傷していないことを確かめるのがよい。
【0325】
最後の工程として、テストワイヤをビアにはんだ付けし、デバイスを被包する。テストワイヤは3milの銀ワイヤである。これらのワイヤは絶縁されている。絶縁の除去は、ワイヤを炎のそばに(炎の中ではない)近づけ、プラスチックが溶け後退するのを観察して行うことができる。
【0326】
ワイヤをはんだ付けしたあと、デバイスを被包してよい。被包材料はOG116-31医療用グレードUV硬化性エポキシであり、縫い針を用いて塗布するべきである。効果的なやり方は、エポキシの大粒をPZTクーポンの上に置き、大粒をASICの上に置くことである。清潔な針を用い、小滴を基板上に押し付け、基板の上面全体がコーティングされるようにする。エポキシは基板を濡らすが、その表面張力によりこぼれ落ちることはない。基板の本体をコーティングしたら、ビアおよび圧電素子の側面もコーティングする。それから、基板をUVチャンバ内でおよそ5分間、硬化し得る。テストワイヤがときおり、UVチャンバ内の何かと接触しASICを短絡させ得ることがわかっている。したがって、基板をチャンバに置く前に、ワイヤを包むか基板を何らかのテープに載せて、ワイヤをチャンバのいかなる表面からも絶縁するとよい。
【0327】
硬化後、裏側をコーティングすべきである。特に、基板を覆う露出したPZTクーポンと、テストビアの裏側と、電極を基板の上側に接続する基板の裏側の2つのビアの裏側とを、コーティングすべきである。この部分は、裏側のビアと電極とのあいだの空間が小さいため、少し困難なことがある。そこで、ごく少量のエポキシで始め、それを基板の端近くに置き、それからエポキシをビアに向けて引くことが最善である。基板の裏側は、上側と同様に硬化すべきである。基板を完全に被包したら、最終的な電気テストを行うべきである。テストに合格したら、埋め込み型デバイスの完成である。
【0328】
(実施例2)埋め込み型デバイスのテストのための設定
埋め込み型デバイスのテストは、基板から伸びるテストリード線が細いために、困難であるのが常であった。I‐V測定のためにこれらのビアにクリップを取り付けたり取り外したりすると、リード線をデバイスの本体から引っ張って外す結果となることが多かった。さらに、テストリード線のため、水タンクテスト測定を行うのが困難である。水中に露出した電子機器は短絡するからである。この問題を回避するため、埋め込み型デバイス測定のテストベッドとなるようPCBを設計した。PCB(Bay Area Circuits, Fremont, CA)はFR‐4から作製し、60milの厚さであった。該PCBは、バージョン2埋め込み型デバイス基板のレイアウトに合うように基板上に配置した4つのビアを有する。
【0329】
金のヘッダーピン(Pin Strip Header, 3M, Austin, TX)を、基板の両側から伸びるようにビアにはんだ付けした。これにより、本発明者らのデバイスをテストベッドに設置することができ、ヘッダーピンにアクセスすることで埋め込み型デバイスと接触することができた。次に、ビアを絶縁するため、ポリエチレンテレフタレート(PETG)製のプラスチックキャップを3Dプリントした(Flashforge Creator X, FlashForge, Jinhua, China)。これらのキャップは溝を付けてプリントし、Oリングを溝の内側にはめ、ヘッダーピンの周囲を防水密封できるようにした。キャップを基板に接続し、マイクロミル(47158, Harbor Freight, Camarillo, CA)を用いてPCBおよびキャップに2mmの穴を開け、キャップと基板とを一緒にねじ止めして圧縮した。テストベッドから伸びるワイヤをヘッダーピンにはんだ付けし、それからピンを被包した。密封の有効性を測定するため、基板を6MのNaCl水溶液に浸け、ピン同士のあいだの抵抗値を、Keithley 2400を用いて測定した。経時的な抵抗値を自動的に記録しプロットするようMATLABスクリプトを書いた。抵抗値の下落は、密封が破れたことを示す。追加のテストとして、一片のリトマス紙もプラスチックキャップの下に置いた。これは、キャップが液漏れしたら、リトマス紙の色が変化するという意図によるものであった。埋め込み型デバイス基板の被包に用いたのと同じ医療用グレードのエポキシを用いてピンを被包し、完全な防水バリアを作るため、テストボードの裏側のエポキシ上にパリレンを蒸着した。塩水溶液に浸けたテストベッドの隣り合う2つのピン間の抵抗値を、エポキシ絶縁のみの時間関数およびエポキシ+パリレン絶縁の時間関数として測定した。パリレンのバリアがない場合、エポキシは漏れ始め、テストベッドのピンが塩水により短絡した。
【0330】
(実施例3)炭化珪素に被包した埋め込み型デバイス
エポキシ被包材料よりも炭化珪素(SiC)の方が、埋め込み型デバイスを絶縁し保護するのに有効な材料かもしれない。SiCは、SiとCとの共有結合により形成され、結合長さの短い四面体分子を形成し、したがって結合強度が高く、化学的・機械的安定性が高い。非晶質SiC(a-SiC)は、生物医学のコミュニティでコーティング材料として歓迎されてきた。a-SiCは、結晶質のSiCが通常必要とする温度よりずっと低い温度で蒸着でき、電気絶縁体であるからである。a-SiCの蒸着は、一般的に、プラズマ助長化学蒸着(PECVD)またはスパッタリングによって行う。スパッタリングしたa-SiCを用いた現在進行中の研究によれば、ピンホールのないSiC層を形成するのは困難である。むしろ、SiH4およびCH4を前駆体として用いたPECVDが、目覚ましい、ピンホールのないSiCフィルムを作り出せる。
【0331】
さらに、埋め込まれたa-SiCは目覚ましい生体適合性を示した。これまでの研究によれば、a-SiCでコーティングした50μmのイリジウムシャフトをウサギの大脳皮質に~20日間埋め込んだところ、挿入部位に集められたマクロファージ、リンパ球、単球による通常の慢性的な炎症反応は見られなかった。Hess et al., PECVD silicon carbide as a thin film packaging material for microfabricated neural electrodes, Materials Research Society Symposium Proceedings, vol. 1009, doi: 10.1557/PROC-1009-U04-03 (2007)を参照のこと。
【0332】
真に長期的なインプラントのためにデバイスを珪素上に炭化珪素被包材料で作成することを伴う埋め込み型デバイスのアプローチを検討するのは興味深い。考えられるプロセスを
図18に示す。ここでの最大の難問の1つは、SiCのPECVDが圧電材料をデポール(depole)しないようにすることである。汚染のないフィルムを得るために、最低温度200℃、かつ圧電トランスデューサのキュリー温度未満で蒸着することが重要である。
【0333】
(実施例4)小型化超音波トランスデューサの電力伝達および後方散乱
さまざまな構造のPZT結晶を得るのが比較的容易であることから、PZTを用いて一組の実験を行った。いくつかの厚さの金属化PZTシートを得た(PSI-5A4E, Piezo Systems, Woburn, MA and PZT84, APC Internationals, Mackeyville, PA)。PZTの最小の厚さは127μmであった。生体適合性のため、PZTをPDMS珪素の中に完全に被包した。
【0334】
PZTセラミックをダイシングするもっとも一般的に使用される方法は、適切なセラミック刃を有するウェハダイシングソーを用いてPZTシートを個々のPZT結晶に切断することである。切断の最小の分解能は刃の切断カーフによって決まり、30μmまで小さくし得る。
【0335】
他に考えられる方法はレーザカッターを用いることである。ダイシングソーとは異なり、レーザカッティングは、高出力のレーザビームを材料に集束させ、該レーザビームがピースを融かし、蒸発させ、取り除き、線を引くことによって、切断を行う。レーザカッティングの精度は10μmまで細かくでき、レーザの波長に制限される。しかし、PZTセラミックのような傷つきやすいサンプルを扱う場合、切断部位の温度が材料の圧電性能を損なう可能性がある。セラミックのエキシマーレーザカッティングは、UVレーザを用いて希ガスのエキシマーで切断するが、そのようなレーザカッターは極めて高価であり、現在のところ、利用できる適切な設備はない。そのため、すべての切断にダイシングソーを用いた。
【0336】
電気エネルギーをPZTから駆動するまたは引き出すために、上部プレートと底部プレートとの両方に電気接続を行う。PZTの電極として通常用いられる材料は、銀またはニッケルである。一般的に、銀は、さまざまな種類の非磁性的AC用途に用いられ、ガラスフリットに懸濁したフレーク状の銀を、通常、セラミックでふるい分けして(screen onto the ceramic)焼成する。高電界DC用途の場合、銀は2つのプレート間を移動し橋渡しする可能性が高い。そのため、腐食抵抗が高く容易に電子移動しないニッケルを、代替材料として電気メッキまたは蒸着し得る。
【0337】
どちらの材料も、適切なはんだおよびフラックスを用いてはんだ付けできる。例えば、銀は錫に対して可溶であるが、銀を含んだはんだは電極中で銀の捕捉を防ぐために用いることができる。ニッケルメッキの燐成分がはんだ付けを困難にするが、的確なフラックスを用いることで表面の酸化を防げる。しかし、はんだ付けの場合、キュリー点を超えるのを防ぎPZTサンプルをデポールするのを避けるため、はんだ付け温度は240℃から300℃のあいだでなければならない。こうした温度においても、PZTは焦電性でもあるので、はんだ付け時間は2~4秒を超えないよう注意しなければならない。
【0338】
その代わりに、銀エポキシにより、あるいははんだペーストを用いた低温はんだ付けにより、電気接続を行ってもよい。標準的な2成分銀エポキシは十分な導電性を与えることができ、室温でも一晩で硬化できる。しかし、接合部分はもろい傾向があり、テスト中、容易に破断し得る。結合は、非導電性エポキシを被包として用いて補強できるが、この追加の層はPZTに機械的な負荷をかけ、その品質係数を著しく低め得る。一方、低温はんだペーストは150℃から180℃の温度で位相変化を生じ、すぐれた電気接続を提供し得るとともに、フラッシュはんだ付けで達成される結合強度に匹敵する結合強度を提供し得る。したがって、低温はんだ付けによるアプローチを用いた。
【0339】
ウェハダイシングは、PZTを10μm台の小さな結晶に切断できる。しかし、寸法が1mmより小さいサンプルは、ピンセットで扱い結合するのが極めて難しい。さらに、PZT結晶の上部プレートおよび底部プレートとの接続に用いるワイヤの長さが異なるために(したがって、該ワイヤによって導入される寄生インダクタンスおよび寄生容量が異なるために)、また、多数のサンプル間で分配されるはんだペーストの量が異なるために、インピーダンス分光器測定は一貫していなかった。
【0340】
したがって、電気的相互接続のすべてがワイヤおよび基板からの寄生振動を短絡しディエンベディングする、31milの厚さの2層FR‐4PCBを製造した。製造した基板(さまざまなテスト構造、および、127μm、200μm、250μmの厚さのPZT結晶の特性を個別に示すモジュールを有する)を、寸法を付けて
図19に示す。テストモジュール中の各ユニットセルは、PCBの一方の側に、PZT結晶との接続用の、特定の寸法の2つのパッドを有し、他方の側に、後方散乱通信用の個々の要素用のパッドを有する。ユニットセルのあいだのピッチは、個々の要素のサイズに制限され、およそ2.3mm×2mmである。
【0341】
極めて小さなPZT結晶を直接扱うのを避けるため、
図20A~
図20Eは、PZTをPCB上に結合するスケーラブルプロセスフローの概要を示す。
図20Aに示すように、はんだペーストを、ポンプを用いて、一定の圧力下、制限された時間、上側のパッドのうち1つに分配する。パッドは、用いられるPZTの厚さに基づいて、250μm
2、200μm
2、または127μm
2である。
図20Bは、パッドより大きいPZTピース(扱いやすい)を上部に置いてパッドを覆うところを示す。基板および圧電アセンブリをオーブンで焼いてはんだペーストを硬化させる。したがって、PZT結晶は今でははんだ付け前の隆起した電極に結合している。
図20Cは、ウェハダイシングソーが、パッドの端に沿って、はんだペーストを基板上のアライメントマーカーとして用いて、合計4回の切断を行い、結合していない領域は切り落とし、PCBに結合した小さなPZT結晶のアレイを残すところを示す。
図20Dは、単一のワイヤボンドが、PZTの上部プレートとPCBの電極との間で電気的接触を行い、回路を完成させるところを示す。最後に、
図20Eは、ワイヤボンドの保護と絶縁のため、アセンブリ全体をPDMS(Sylgard 184, Dow Corning, Midland, MI)中に被包したところを示す。
【0342】
圧電材料は電気機械的構造物なので、その電気的・機械的特性を示した。以下に、そのような測定を行うためのテスト設定および技術を詳述する。
【0343】
2ポートネットワークパラメータと呼ばれる数学的構成概念を用いて、任意の電気デバイスをブラックボックスとしてモデル化することができる。回路の特性は数のマトリクスによって特定され、デバイスの入力に与えられた信号に対する該デバイスの応答を、ネットワーク中のすべての内部電圧および電流を解くことなく、容易に計算することができる。いくつかの異なる種類の2ポートネットワークパラメータ(例えば、Zパラメータ、Yパラメータ、Sパラメータ、ABCDパラメータなど)があり、異なるパラメータ間の変換は容易に行うことができる。これらのパラメータの抽出を可能にする装置は、ベクトルネットワークアナライザ(VNA)と呼ばれる。VNAは、各ポートの電圧を(インピーダンスミスマッチングに基づいて)入射波および反射波に分解しこれらの波同士のあいだの比を計算して散乱またはSパラメータを計算する方向性結合器を内蔵する。
【0344】
VNAを用いての測定を行う前に、器具を校正する必要がある。内部方向性結合器は非理想的だからである。校正をすることにより、測定の基準面をケーブルの先端に移動できる。すなわち、ケーブルからの寄生振動を校正できる。いくつかの校正基準があるが、もっとも一般的に用いられるのは、オープン、ショート、ロード校正手順である。測定の概略図を
図21に示す。同軸ケーブルの端にはんだ付けしたダブルクリップを用いて、上部プレート/底部プレートと接続する。クリップからの寄生振動は100MHzを大きく下回らない。
【0345】
一例として、VNA(E5071C ENA, Agilent Technologies, Santa Clara, CA)を用いて、(250μm)3PZT結晶の電気的性質を測定した。測定したPZT結晶の容量は、PCBおよび固定物(クリップとコネクタ)からの大きな寄生容量のため、単一パラレルプレート容量モデルから予期される容量とは大きく異なることに気が付いた。先に概略を述べた校正工程のVNA係数は測定面をケーブルの先端に移動させるだけであったため、同じ基板上に作られたオープン/ショート/ロード校正構造物を用いて基板および固定物の寄生振動を含ませた。測定したPZT応答は、校正後の予期された応答とマッチした。
【0346】
この校正技術を用いて、PZTのインピーダンスを周波数の関数としてプロットできる(
図22B参照)。しかし、このプロットからは、電気機械的共鳴があるかどうか判定するのは極めて難しい。エアーバッキング(機械的クランプなし)で得られたシミュレーション結果を重ねると、インピーダンス分光法は低周波数および高周波数での測定値とよくマッチし、その例外は約6MHzの共振周波数およびその調波における目立ったピークであることに気がついた。PCB(FR‐4)を有するPZTの一方の側をクランプしロードすると、エアーバッキングによる共振ピークがかなり弱まることが観察された。測定における観察可能な共振がないにもかかわらず、約6MHzの小さなブリンプが観察された。機械的品質係数Q
mは、以下の式を用いて計算できる。
【0347】
【0348】
式中、faとfrは反共振周波数(インピーダンスが最大)および共振周波数(インピーダンスが最少)を表わし、Zrは共振におけるインピーダンスを表わし、Cpは低周波数容量を表わす。測定から計算された品質係数は、シミュレーションでの5.1に対して、約4.2である。データシートによれば、PZTの無負荷のQは~500であり、これは、FR-4によるバッキングとワイヤボンドとが品質係数を大幅に落としていることを示す。PZT結晶の機械的Qの急激な減少にもかかわらず、実験によれば、後方散乱信号レベルは約~19低下したのみであった。
【0349】
電気特性決定設定では、VNAは、特性決定に必要な入力を提供する内蔵の信号発生器を有する。PZTの音響特性決定を行うため、音波を発生させてサンプルへと発し入力として用いる。これは、市販の広帯域超音波トランスデューサを用いて行うことができる。
【0350】
図23は、圧電能動素子、支持体、当板から成る、代表的なトランスデューサの構成を示す。支持体は通常、高い減衰量と高密度を有する材料から成り、それによって、トランスデューサの振動を、能動素子の背面からのエネルギーを吸収することによって制御し、一方で、当板が、トランスデューサ素子をテスト環境から保護しマッチング層として働くように使用される。
【0351】
図24に示す自家製の設定を用いて、超音波電力伝達テストを行った。5MHzまたは10MHzの単一素子トランスデューサ(それぞれ6.3mmおよび6.3mmの能動領域。焦点距離~30mm。Olympus, Waltham, MA)を、コンピュータ制御の2軸平行移動ステージ(VelMex, Bloomfield, NY)に取り付けた。トランスデューサの出力を、ハイブリッドカプセルハイドロフォン(HGL-0400, Onda, Sunnyvale, CA)を用いて校正した。アセンブリのプロトタイプを、トランスデューサが水中でプロトタイプの直接の上方約3センチの距離で浸かるよう、水の容器中に置いた。プログラマブルパルス発生器(33522B, Agilent Technologies Santa Clara, CA)および無線周波数増幅器(A150, ENI, Rochester, NY)を用いて、トランスデューサを、10サイクルの正弦波パルス列と1kHzのパルス反復周波数(PRF)を有する特定の周波数で駆動した。受信した信号を、オシロスコープ(TDS3014B, Tektronix, Beaverton OR)に接続された無線周波数増幅器(BT00500-AlphaS-CW, Tomco, Stepney, Australia)で増幅し、MATLABを用いて超音波信号を集め記録した。
【0352】
図25Aおよび
図25Bは、5MHzのトランスデューサの出力電力を、該トランスデューサの表面とハイドロフォンとの間の距離(z軸)の関数として測定した代表値を示す。水中でのピーク圧力は、トランスデューサの表面から~33mm離れた地点で得られた(
図25A)。一方、(0.3dB/cm/MHzでの)軽減ピークは~29mmであった(
図25B)。
図26Aは、トランスデューサ出力を軽減したXZスキャンを示し、近距離および遠距離ビームパターンとレイリー距離または~29mmの焦点を示し、
図25Bでの軽減ピークに一致する。
図26Bは、~29mmの焦点でのビームのXY断面スキャンを示し、6dBのビーム幅はおよそ2.2mmであった。
【0353】
ビームの6dB帯域幅に対するさまざまな周波数のトランスデューサの全積分音響出力パワーは、名目上、空間ピーク時間平均ISPTA29.2μW/cm2に保たれ、焦点において全出力パワー~1μWであり、ピーク粗密化圧力25kPa、機械的インデックス(MI)0.005であった。低減ISPTAもMIも、FDAの規制制限である720mW/cm2および1.9(FDA 2008)をそれぞれずっと下回った。
【0354】
図22Aは、さまざまなニューラルダストノードのサイズについて校正した完全に組み立てたケーブルなしのプロトタイプの電力送達効率の測定値を、この同じ設定についての分析予測と比較したものを示す。測定結果は、すべてのトランスデューササイズにおいてシミュレーションモデルのふるまいと非常に近似しており、例外はいくつかの小さなトランスデューサ寸法においてのみであった。これは、トランスデューサ位置および超音波ビーム幅に対する感度によるものと思われる。最小のPZT結晶(127μm)
3のリンクの効率の測定値は2.064×10
-5であり、これはトランスデューサで名目上受信される20.64pWとなった。送信出力電力密度が720mW/cm
2に保たれた場合、トランスデューサにおいて最大で0.51μWが回復できる。PZTによって得られる電力レベルがそのように低いのは、主に、実験に用いられた広帯域トランスデューサが極めて非効率だからである。各トランスデューサ寸法において最適な電気入力インピーダンスを有する専用のカスタムメイドのトランスデューサは、シミュレーションモデルで予測されたように、獲得電力レベルの2桁を超える大幅な改善ができた。
【0355】
(250μm)
3PZT結晶で得られた電圧の周波数応答を
図22Cに示す。共振周波数の測定値は6.1MHzであった。これはポアソン比による立方体について予測された共振周波数のシフト、および、該立方体の3本の軸のそれぞれに沿った共振モード間の対応するモード結合に一致する。さらに、Qの計算値4は、PZTの電気的に測定されたQに一致した。
【0356】
上記の実験結果は、超音波を用いた極小のPZTノードに対する電力結合の分析モデルは、少なくとも~100μmのスケールまで、さらにおそらくそれより小さなスケールに至るまで、正確であることを示す。トランスデューサが機能を失うまでどれぐらい小さく作れるか(how mall a transducer can be fabricated before loss of function)は、今後の課題である。なお、さらに小さなノード(<127μm)の測定は、プロトタイプ組み立てプロセスによってではなく、PZT基板の商業的入手性によって制限された。話を進めると、マイクロエレクトロメカニカルおよびナノエレクトロメカニカルRF共振器について検討したかなりの量の研究および技術(Sadek et al., Wiring nanoscale biosensors with piezoelectric nanomechanical resonators, Nano Lett., vol. 10, pp. 1769-1773 (2010); Lin et al., Low phase noise array-composite micromechanical wine-glass disk oscillator, IEEE Elec. Dev. Meeting, pp. 1-4 (2005)を参照)および薄膜圧電トランスデューサ(Trolier-McKinstry et al., Thin film piezoelectrics for MEMS, J. Electroceram., vol. 12, pp. 7-17 (2004))を用いて、極小(10μm台)のトランスデューサを容易にしスケーリング理論を真に評価した。
【0357】
(実施例5)呼びかけ機超音波トランスデューサアレイを用いたビームフォーミング
本実施例では、分散型超音波ベースの記録プラットフォーム(a distributed, ultrasound-based recording platform)において後方散乱を介して個々の埋め込み型センサに呼びかけることのできる超音波ビームフォーミングシステムを提示する。カスタムASICが、7×2PZTトランスデューサアレイを、特定のプログラム可能な時間遅延を有する3サイクルの32V方形波で駆動し、50mm離れた位置にある800μmのニューラルダストモートにビームを集束させる。水中の受信モートの測定された音‐電気変換効率は0.12%であり、システム全体は26.3%の電力を1.8V電源からトランスデューサ駆動出力へと送達し、各送信位相において0.75μJを消費し、後方散乱回路の入力に印加されるボルト毎に後方散乱が0.5%変化する。送信アレイおよび受信モート双方のさらなる縮小により、ウェアラブルな長期検知・神経調節システムへの道が開ける。
【0358】
埋め込み型デバイスが呼びかけトランシーバよりも数で大幅に上回る、この高度に分散した非対称的なシステムにおいて、ビームフォーミングを用いて、多数の埋め込み型デバイスに効率的に呼びかけることができる。埋め込み型デバイスのプラットフォームにおけるビームフォーミングアルゴリズム、トレードオフ、性能を研究することにより、近隣の埋め込み型デバイスからの干渉を十分に抑えるには、異なる呼びかけ機同士のあいだの協力が役に立つと実証された。Bertrand et al., Beamforming approaches for untethered ultrasonic neural ダストモートs for cortical recording: a simulation study, IEEE EMBC, 2014, pp. 2625-2628 (Aug. 2014)を参照のこと。本実施例は、
図2Aに示す呼びかけ機および埋め込み型デバイスシステム用の超音波ビームフォーミングシステムのハードウェア実装を実証する。ASIC(例えば、Tang et al., Integrated ultrasonic system for measuring body-fat composition, 2015 IEEE International Solid-State Circuits Conference - (ISSCC) Digest of Technical Papers, San Francisco, CA, 2015, pp. 1-3 (Feb. 2015); Tang et al., Miniaturizing Ultrasonic System for Portable Health Care and Fitness, IEEE Transactions on Biomedical Circuits and Systems, vol. 9, no. 6, pp. 767-776 (Dec. 2015)を参照)は7つの同じチャネルを有し、各チャネルは送信ビームフォーミングに5nsの分解能を有する6ビットの遅延制御を有し、高電圧レベルシフタと、任意のフィードスルーを絶縁する受信/送信スイッチとを一体化する。
【0359】
ASICは単一の1.8V電源で作動し、32V方形波を発生させて、一体化されたチャージポンプとレベルシフタとを用いて、圧電トランスデューサを駆動させる。上記システムは、~32.5%の電力を1.8V電源から32V出力電圧へと送達し、~81%の電力を32V電源から出力ロードへと送達する(各トランスデューサ素子は4.6pF)。ASICのブロック図を
図2Aに示す。そのような測定毎の低エネルギー消費を可能にする回路の詳細は、Tang et al., Integrated ultrasonic system for measuring body-fat composition, 2015 IEEE International Solid-State Circuits Conference - (ISSCC) Digest of Technical Papers, San Francisco, CA, 2015, pp. 1-3 (Feb. 2015)に記載されている。ASICは、高電圧トランジスタを有する0.18μmCMOSで作られる。チップ領域は2.0mm
2であり、デジタルコントローラ、ADC、2つのオフチップブロッキングキャパシタを除く全システムを含む。
【0360】
トランスデューサアレイの設計は、所望の貫通深さ、開口サイズ、素子サイズの強い関数である。定量的には、アレイのレイリー距離Rは以下のように計算できる。
【0361】
【0362】
式中、Dは開口のサイズであり、λは伝播媒体中の超音波の波長である。定義上、レイリー距離とは、アレイが放射したビームが完全に形成される距離である。言い換えれば、圧力場はレイリー距離で自然な焦点に収斂し、受信した電力を最大化するために、ビーム拡散が最少であるレイリー距離に受信器を置くのが好ましい。
【0363】
動作の周波数は、素子のサイズに合わせて最適化される。水タンクでの予備的な研究によれば、(800μm)3PZT結晶で最大エネルギー効率が達成され、該(800μm)3PZT結晶は被包後1.6MHzの共振周波数を有し、λが~950μmとなる。各素子間のピッチは、効率的にビームフォーミングするために2分の1波長の奇数倍となるよう選ばれる。その結果、ビームフォーミング能力のこの実証の場合、全体的な開口は~14mmであり、レイリー距離は50mmとなる。50mmでは、素子サイズが800μmならば、各素子は場から十分に離れている(R=0.17mm)。したがって、個々の素子のビームパターンは、ビームフォーミングができるほど全方位的である。
【0364】
いくつかの送信・受信ビームフォーミング技術が実施可能である。本実施例では、時間遅延和送信ビームフォーミングアルゴリズムを選択し、信号が推定的に(constructively)目標方向に干渉するようにする。このアルゴリズムは、さまざまな埋め込み型デバイスへのビームステアリングおよび最大電力送達を実証できる。多数の埋め込み型デバイスへの後方散乱通信に同時に対応するため、より洗練されたアルゴリズムが必要とされるかもしれない。そうしたアルゴリズムとしては、遅延和ビームフォーミング、線形拘束付最小分散型ビームフォーミング、単一ビーム用の凸最適化ビームフォーミング、凸最適化を伴う「マルチキャスト」ビームフォーミング、最大尖度ビームフォーミング、最小分散無歪応答ロバスト適応ビームフォーミング、多項テンソル分解、および多重Rxチャネル時間領域データからのモートインパルス応答のデコンヴォルーションが挙げられる。この問題の一態様の詳細な処置については、Bertrand et al., Beamforming approaches for untethered ultrasonic neural ダストモートs for cortical recording: a simulation study, IEEE EMBC, 2014, pp. 2625-2628 (Aug. 2014)に記載されている。
【0365】
7つのチャネルのそれぞれが、特定のプログラマブル時間遅延を有する3サイクルの32V方形波によって駆動され、エネルギーが観察距離50mmで集束される。各チャネルに適用される時間遅延は、アレイの中心から焦点までの伝播距離の違いおよび媒体中の超音波の伝播時間の違いに基づいて計算される。
【0366】
Ultrasimを用いて、上記の1Dアレイによる水中での超音波の伝播行動の特性を決定した。シミュレートしたXY(
図27A)およびXZ(
図27B)断面ビームパターンは、PDMS被包をモデルにしていないにもかかわらず、示した測定値に近似する。
【0367】
組織と似た音響特性を示すことから、ビームフォーミングシステム測定用の媒体として水を用いる。プレ金属化チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)シート(APC International, Mackeyville, PA)をウェハソーでダイシングして、800μm×800μm×800μmの結晶(それぞれ4.6pFの平行容量)とする。これは各送信素子のサイズである。各PZT素子を、底部端子には導電性銅箔およびエポキシを、上部端子にはワイヤボンドを用いて、ASIC中の対応するチャネルに電気的に接続する。アレイをPDMS(Sylgard 184, Dow Corning, Midland, MI)中に被包して、ワイヤボンドを保護し絶縁する。被包後のPZT結晶の品質係数は~7である。アレイをまとめて2×1素子の7グループにし、ピッチを~5/2λ~2.3mmとする。アレイのサイズは約14mm×3mmである。最後に、アセンブリ全体を、直径25mm高さ60mmの円筒形チューブに入れ、該チューブを水で満たす。
【0368】
トランスデューサアレイの2Dビームパターンおよび出力を、カプセルハイドロフォン(HGL-0400, Onda, Sunnyvale, CA)を用いて校正する。ハイドロフォンは、コンピュータ制御の2D平行移動ステージ(VelMex, Bloomfield, NY)に取り付けられる。ハイドロフォンは30°の取り入れ角(acceptance angle、5MHzで-6dB)を有し、これは、送信距離50mmおよびスキャン範囲(±4mm)で提供されるビームを捕獲するのに十分である。
【0369】
測定したXY断面ビームパターンにアレイを重ねたものを
図27Aに示す。アレイ中の各トランスデューサ(素子)に適用した遅延を
図27Bに示す。焦点における-6dBビーム幅は3.2mm~3λである。ASICの柔軟性は、遅延のワイドプログラミングおよびグラニュラープログラミングの両方を可能にする。ビームフォーミング前後の50mmでのアレイのピーク圧力レベルは、それぞれ~6kPaおよび~20kPaである。ビームフォーミング後の送信出力圧力波における3Xは、シミュレーションに一致する。シミュレーションはまた、アレイのレイリー距離が50mmであることも示す(
図27C参照)。
【0370】
さらに、多数の埋め込み型デバイスに呼びかける性能を確証するために、
図28Aに示すようにアレイのビームステアリング性能を確証した(
図28Aは、XY平面における3つの異なる位置でのビームステアリングを示す)。各ビーム位置での時間遅延は、その下の
図28Bに示す。1Dビームステアリングは、シミュレーションに極めて近似している(
図28Cを参照)。なお、ビームステアリングのレンジは、電子性能よりもむしろ、アレイの機械的構成により、±4mmに限定されている。
【0371】
ハイドロフォンを埋め込み型デバイス(800μm×800μm×800μmバルク圧電トランスデューサを有する)と交換し、送信距離50mmの地点に置いて、電力リンクを確証する。モートで測定されたオープン回路のピーク間電圧は、送信パルス期間2.56μsに対し65mVである。焦点で-6dBビーム幅に統合した空間的ピーク平均音響パワーは750μWであり、これはFDAの定めた安全性限界の0.005%である。モートでの最大獲得可能電力は0.9μWであり、音‐電気変換効率の測定値は0.12%である。測定結果はリンクモデル(Seo et al., Model validation of untethered ultrasonic neural dust motes for cortical recording, J. Neurosci. Methods, vol. 244, pp. 114-122 (2015))と一致する。上記システムは26.3%の電力を、1.8Vの電源からトランスデューサ駆動出力に送達し(駆動効率として定義する)、各送信位相につき0.75μJを消費する。
【0372】
上記システムの超音波後方散乱通信性能は、後方散乱回路への入力としての後方散乱電圧レベルの違いを測定することで確証され(Seo et al., Model validation of untethered ultrasonic neural ダストモートs for cortical recording, J. Neurosci. Methods, vol. 244, pp. 114-122 (2015))、DC電源で調整される。上記システムの送信時間及び期間は3μsと80μsであり、~77μsの受信用の領域が残される。アレイの中心の2×1素子を用いて後方散乱を受信する。受信結晶の出力を、処理のために増幅しデジタル化する。測定された後方散乱感度は、後方散乱回路の入力に印加するボルト毎に~0.5%であり、これはシミュレーションに一致する。上記システムの全体的な性能を表4にまとめる。
【0373】
【0374】
超音波ビームフォーミングシステムを用いた本発明者らの測定は、送信ビームフォーミングのみでも、ニューラルダストプラットフォームにおいて多数のセンサ呼びかけを行うのに十分な信号対雑音比(SNR)を提供できることを示す。ダストモートの縮小によるSNRの減少は、受信ビームフォームを実施することにより、大部分は軽減できる。さらに、呼びかけ比を高めるため、多重化という代替手段を用いることもできる。多重化の例としては、多数のモートが同じ送信ビームで同時に呼びかけられる空間多重化が挙げられる。しかし、処理/通信負荷と電力消費との、システム設計上のトレードオフ関係を考慮することが重要である。さらに、必要なSNRを達成するためには、近傍のダストモートからの干渉を十分に抑えることが必要である。
【0375】
音‐電気効率0.12%が、現在、システム全体の効率
【0376】
【0377】
に影響している。電力リンク効率がそのように低いにもかかわらず、FDAの定める安全規則の~1%(空間ピーク平均1.9W/cm2)が出力できるならば、水中で50mm離れた800μmの超音波トランスデューサに対して0.92Vまでのピーク間電圧および180μWまでを得ることができる。
【0378】
さらに、この実証での電力リンク効率の低さは、アレイの開口および素子のサイズによって定まるそのように大きな送信距離の結果である。末梢神経干渉の場合、例えば、皮膚、組織などの厚みを含む所望の送信距離は約5mmである。アレイの遠距離にあるために、開口は~4.4mmであるべきである。各素子をさらにスケーリングすることにより、アレイ開口および送信距離の全体の寸法を所望の5mmにまで減らすことができる。シミュレーションによれば、1%までの音‐電気効率は、水中で100μmの受信超音波トランスデューサを用いて達成できる。
【0379】
組織内の送信の場合、組織内で3dB/cm/MHzの損失が生じると仮定する。
図29は、FDAの安全制限の1%での動作での、リンク効率および受信電力レベル双方のスケーリングを示す。このかなり控えめな損失にもかかわらず、100μmで、0.6Vまでのピーク間電圧と75μWまでとを得られることをシミュレーションは示す。したがって、このプラットフォームを用いた組織内の無線電力送達は実行可能である。さらに、この電力レベルは、高効率かつ低電力エネルギー消費回路およびチャージポンプ(上述のASICと類似である)を動作させて、近傍のニューロンを電気的に刺激しセンサを用いて生理的状態を検出するのに適した電圧を出力させるのに十分である。
【0380】
(実施例6)埋め込み型デバイスの移動および温度ドリフトの追跡
埋め込み型デバイスを、50μmの厚さのポリイミド柔軟性印刷回路基板(PCB)上に製造し、超音波トランスデューサ圧電結晶(0.75mm×0.75mm×0.75mm)およびカスタムトランジスタ(0.5mm×0.45mm)を基板の上側に導電性銀ペーストで取り付けた。アルミニウムのワイヤボンドと導電性の金のトレースとを用いて、要素間の電気接続を行う。基板の底に露出した金の導出パッド(0.2mm×0.2mm)を、1.8mm間隔で分け、神経または筋肉と接触させて電気生理学的信号を記録する。記録した信号を、マイクロビアを通してトランジスタの入力に送る。さらに、いくつかのインプラントは、0.35mm幅、25mm長の柔軟で規格に準拠したリード線を有し、該リード線は、圧電結晶間の電圧の同時測定、および、超音波トランスデューサによって用いられる電極対間の細胞外電位の直接的有線測定用のテスト点を有した(グラウンド・トゥルース測定としての、細胞外電位のこの直接的有線記録は以下で述べる。これは、超音波再構築データのコントロールとして用いられる)。インプラント全体を医療用グレードのUV硬化性エポキシに被包して、ワイヤボンドを保護し絶縁する。単一の埋め込み型デバイスのサイズは、およそ0.8mm×3mm×1mmである。インプラントのサイズは、本発明者らの市販のポリイミドバックプレーン技術(これは、誰にでも購入できる)の使用によってのみ制限される。自前のポリマーパターニングを有するより積極的な組み立て技術に頼るならば、圧電結晶寸法よりさほど大きくないインプラントが作られるであろう(~1mm3のインプラントを生成する)。
【0381】
外部の超音波トランシーバ基板は、電力を供給(送信(TX)モード)し反射信号を受信(受信(RX)モード)することにより、埋め込み型デバイスとやり取りする。このシステムは、市販の外部超音波トランスデューサ(V323-SU, Olympus, Waltham, MA)を駆動する、低電力でプログラム可能で携帯型のトランシーバ基板である。上記トランシーバ基板は、~8.9mm地点で軽減した圧力焦点を示した(
図30A)。XY断面ビームパターンは、ビームの近距離伝播から遠距離伝播への移行をはっきりと実証した。もっとも狭いビームはレイリー距離にあった(
図30B)。トランスデューサは、1.85MHzで5Vのピーク間電圧信号で駆動した。軽減ピークの疎密圧力の測定値は14kPaであり、メカニカルインデックス(MI)が0.01となった。10kHzのパルス反復における6.37mW/cm
2および0.21mW/cm
2の軽減した空間パルスピーク平均(I
SPPA)および空間ピーク時間平均(I
SPTA)はそれぞれ、FDA規制制限(食品薬品管理局、2008)の0.0034%および0.03%であった。上記トランシーバ基板は、32Vまでのピーク間電圧を出力することができ、出力圧力は入力電圧とともに線的に増加した(
図30C)。
【0382】
上記システム全体を、手動による6度の自由度(DOF)を有する線的平行移動・回転ステージ(Thorlabs Inc., Newton, NJ)を有するカスタムメイドの水タンクに浸け、特性を示した。伝播媒体として蒸留水を用いた。蒸留水は、1.5MRaylsで組織と同様の音響インピーダンスを示す。上記システムの最初の校正のため、電流源(2400 LV, Keithley, Cleveland, OH)を用いて、電流密度の変化する電流をタンクに浸けた0.127mm厚の白金ワイヤ(773000, A-M システム, Sequim, WA)に通して細胞外信号を模倣させた。ニューラルダストモートを電極間の電流経路に浸した。電流がワイヤ間に印加されるにつれて、インプラントの電極間で電位差が上昇した。タンクテストの間、この電位差を用いて、細胞外電気生理学的信号を模倣した。ニューラルダストモートに呼びかけるため、外部トランスデューサにより、100μs毎に6つの540nsパルスを発信した。これらの発信パルスはニューラルダストモートに反射し、外部トランスデューサに向けて後方散乱パルスを生成した。反射された後方散乱パルスは、同じトランシーバ基板により記録された。受信された後方散乱の波形は、4つの所定の領域を示す。これらは、4つの別個の界面から反射されたパルスである(
図31A)。1)水‐ポリマー被包境界。2)圧電結晶の上面。3)圧電‐PCB境界。4)PCBの背面。予想通り、圧電結晶から反射された信号(第2領域)の後方散乱振幅は、導出電極での電位変化の関数として変化した。他の界面からの反射パルスは、導出電極での電位変化に応じなかった。重要なことは、上記の他の非応答領域からのパルスを信号レベル基準として用いて、上記システムを動きまたは熱によって作られた人為的な結果に対してロバストにすることである(すべての界面から反射されたパルスはニューラルダストモートの物理的または熱的妨害とともに変化するが、第2領域からのパルスだけは、電気生理学的信号の関数として変化するからである)。水タンク内で、上記システムは、電極電位の記録の変化に対する線的な応答と、~0.18mVrmsのノイズフロアを示した(
図31B)。上記システムの全体的なダイナミック・レンジは、トランジスタの入力範囲によって制限され、>500mVより大きい(すなわち、トランジスタが完全にオン(入力がその閾値電圧を超える)または完全にオフされると、電流には増加変化のみが生じる)。ノイズフロアは、ビームの測定された電力低下とともに上昇した。0.7mmの照準ミスにより、ビームが2倍低下した(N=5デバイス。
図31C)。この横の照準ミスにより生じたノイズフロアの増加が、ビームステアリングシステムを用いずに(すなわち、超音波ビームの焦点を埋め込まれたダストモートに合わせることができ、したがって軸上に合わせることができる外部トランスデューサを用いることなしに)神経記録を行うことに対する最大の難題となる。軸上で、埋め込み型デバイスは、入力音響パワーを、圧電素子の負荷抵抗にかかる電力へ、~25%の効率で変換した。
図31Dは、本実施例で用いられたトランスデューサの1つのレイリー距離における電圧および電力の軸外低下をプロットする。同様に、
図31Eは、角度の照準ミスの関数としての効果的なノイズフロアの変化をプロットする。
【0383】
(実施例7)埋め込み型デバイスと呼びかけ機との間のデジタル通信
埋め込み型デバイスと、トランスデューサアレイを有する呼びかけ機とを有するシステムを、インビボ環境を模倣した作業台上の設備を用いて検証する。超音波結合ゲルは、その音響インピーダンスが目標の生物組織の音響インピーダンスに似ている(約1.5MRayl)ことから、組織模型として機能する。埋め込み型デバイスはバルク圧電トランスデューサを有し、該バルク圧電トランスデューサは、該トランスデューサと接触する2つの電極と直接に接続する。上記埋め込み型デバイスを組織模型内に置き、呼びかけ機トランスデューサアレイを上記ゲルに結合する。どちらの素子も、正確な配置のため、正確さを調整したステージに取り付ける。トランスデューサアレイはダストモートから14mm離して配置する。これは、超音波結合ゲル内での、音響速度1,540m/sを想定した18.6μsの往復飛行時間に相当する。トランスデューサアレイは6つの1.8MHz、0~32Vの方形パルスで励起し、後方散乱信号を17Mspsで2000サンプル、12ビットの分解能でデジタル化する。時間領域後方散乱検査のため、全後方散乱波形をデバイス上でリアルタイムでフィルタリングして有線シリアル接続を介してクライアントに送る。通常の動作では、全調節抽出アルゴリズムをデバイス上の後方散乱データに対してリアルタイムで適用して、後方散乱信号を4バイトに圧縮する。処理済みデータをBluetooth(登録商標)のSSPプロトコルを通して遠隔のクライアントに送信し、GUIを介してリアルタイムでストリームする。
【0384】
図32Aは、上述の実験設備によって回収したフィルタリング済み後方散乱信号を示す。ダストモートの圧電結晶電極が短絡および開放配置(the shorted and opened configurations)にあるあいだ、信号を回収する。スイッチ活動によるインピーダンスの変化の結果、開放スイッチ配置における方が11.5mV大きい後方散乱ピーク振幅と、6.45%の調節深度が得られる(
図32B)。モートからの反響が長く続くことは、バッキング層が弱まっているにもかかわらずトランスデューサが響いていることを示す。不十分に弱まったトランスデューサシステム応答が時間領域において後方散乱信号を散開するあいだ、埋め込まれたデバイスからの後方散乱がROIで捕獲される限り、変調は成功している。
【0385】
パルス振幅変調非ゼロ復帰レベルコーディングを用いて、後方散乱センサモートを変調し、所定の11字ASCIIメッセージ(「hello world」)を送る。デバイスの音響インピーダンスの変調は、圧電トランスデューサを、高レベルが開放配置に対応し低レベルが閉鎖配置に対応するデジタル制御スイッチに対して短絡することによって行われる。
図33は、トランスデューサに対する変調値、および、呼びかけ機の対応する抽出変調値を示す。抽出信号値の絶対値およびノイズマージンは、さまざまな要素(例えば、モートの距離、方向、サイズ)に依存する。しかし、抽出した波形は、ダストモートに対する変調信号を表わし続け、線形倍率で変化する。
【0386】
「hello world」によって変調された埋め込み型デバイスの抽出後方散乱値を無線送信することで、該デバイスの埋め込み型デバイスとのリアルタイム通信が実証される。二状態後方散乱システムの呼びかけにより、埋め込み型センサおよびリモートクライアント双方とのシステムの無線通信リンクがしっかりと実証される。この無線通信リンクは、脳を外部デバイスと接続する閉ループ神経変調システムに向けた開発を誘うものである。
【0387】
(実施例7)温度センサ
本実施例は、温度センサ、すなわちサーミスタを有するバルク圧電トランスデューサを有する埋め込み型デバイスを実証する。上記システムは、超音波を用いて埋め込み型デバイスに電力を供給する呼びかけ機を用い、センサによって検出された温度に応じて変調された埋め込み型デバイスからの超音波後方散乱を記録する。本実施例は、体積が1.45mm3および0.118mm3である市販の部品に基づく2つのサイズのセンサを実証する。バルク圧電トランスデューサは、最大寸法でも700μmほど小さくなり得る。個々のセンサは±0.5℃の温度変化を決めることができ、医療診断および監視の目的に適当である。生理的状態についての14日間を超える温度測定での変化は0.3℃未満である。このアプローチは、より洗練された温度センサ(例えば、古典的な絶対温度比例(PTAT)集積回路)およびデジタル後方散乱アプローチとも両立できる。
【0388】
各埋め込み型デバイスは表面取り付け型サーミスタを有し、該サーミスタの電極は、偏向軸に対して垂直な750μmの端部を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)圧電立方体の2つの端子と電気的に接続している。上記サーミスタは、圧電結晶の2つの端子を流れる電流を周囲温度の関数として変化させる負温度係数(NTC)サーミスタである。上記サーミスタの電極対と圧電結晶との間の電気的接触および接着は、EPO-TEK H20E導電性銀エポキシの2つの別個の連続層を適用することによって行われる。未コーティング時の直径が3mil(コーティング時の直径が5.5mil)のA‐MシステムのPFA絶縁銀ワイヤを、水タンク内での特性決定中、圧電立方体によって得られた電圧を測定するため、銀エポキシを用いてサーミスタの各電極に取り付けた。それから、リード線を除いて埋め込み型デバイス全体を、EPO-TEK OG116-31 UV硬化性エポキシの薄い層でコーティングし、短絡を引き起こす可能性ある水の浸透を防ぐようにした。
【0389】
埋め込み型デバイスから受信した後方散乱信号で生じる後方散乱変調を温度の関数として評価するために、追加の製造プロセスを用いてポリ乳酸から小型水タンクを作った。上記タンクは、温度監視およびフィードバック目的でOmega Systems CSI32K benchtop PIDコントローラへの入力として用いられる熱電対に隣接してセンサモートを保持するステージを有するように作られた。加熱素子をタンクに挿入するため、タンクの壁にNPTネジ穴を設けた。タンクを密封しトランスデューサをモートから一焦点距離に保持するため、タンクの第2片が第1要素の先端に合うよう設計した。タンクの底部および上部はどちらもシリコーンを用いて密封し、タンクの上部は正方形の厚さ0.5milのPETフィルムで密封し、トランスデューサをタンクから熱的に絶縁する一方で音響は透過するようにし、それにより、トランスデューサが高い水温のタンクに浸けられた場合に見られるアーティファクトスーパーインポジション(artifact superimposition)の問題を回避するようにした。
【0390】
本例のようなアナログ後方散乱システムにおいてモーションアーティファクト(motion artifact)から生じる信号変化を除去するもっとも単純な方法は、後方散乱を発生させるインプラントに2つのインターフェースを設けることである。1つのインターフェースは応答型圧電トランスデューサに設け、第2のインターフェースは何らかの不変の材料ジャンクションに設ける。インプラント全体に影響する位置または方向の変化は、両方のインターフェースからの後方散乱(すなわち、応答型後方散乱および非応答型後方散乱)に既知の変化を生じさせるが、一方、測定された量の変化は、応答型インターフェースからの後方散乱信号(すなわち、応答型後方散乱)のみに変化を生じさせる。受信した後方散乱の非応答型領域(すなわち、温度に対して変化しない領域)は校正実験(および飛行時間計算)に基づいて決定され、この領域の曲線下の面積の変化は、センサ出力波形の応答型後方散乱変調と比較される。さらに、クラスタ化アルゴリズムを用いて照準ミスを自動的に検出し、後方散乱の変化を(準備中の)測定量の対応する変化とマッピングすることができる。センサ出力に後方散乱の非応答型領域を作るため、非応答型リフレクタ(すなわち、珪素の立方体)を、UV硬化性エポキシを用いて埋め込み型デバイスに固定した。センサ出力波形に後方散乱の固定領域を作るため、新たに加えた立方体をサーミスタから電気的に絶縁した。埋め込み型デバイスを
図34Aに示し、2つの埋め込み型デバイス(体積1.45mm
3と0.118mm
3)の相対的サイズを
図34Bに示す。
【0391】
個々の埋め込み型デバイスの後方散乱の特性を決定するための実験設備を
図35に示す。後方散乱回収プロトコルの標準化を保証し予期される応答の規模を最大化するため、市販の単一要素のトランスデューサ(V323-SU, Olympus)によって生成される超音波ビームに対して個々の埋め込み型デバイスを一直線に並べ、それらを該埋め込み型デバイス上の圧電結晶によって得られるピーク電圧の最大化によって評価した。埋め込み型デバイスは1.8MHzの周波数で呼びかけられ、後方散乱波1kHzでサンプルされる。ただし、より低いサンプリング比も可能である。トランスデューサの焦点距離は0.9cmである。トランスデューサとモートとの距離は、モートが焦点にあるように設定した。タンク内の温度はベンチトップPIDコントローラを用いてきっちりと調節し、0.5℃刻みで34.5℃から45.5℃まで変化させた。各温度値で、Agilent Tech InfiniiVision DSO-X3024Aデジタル保存オシロスコープを用いて、10個の後方散乱波形を記録した。水中の音速の変化により、超音波後方散乱の飛行時間は温度の関数として上昇することが観測された。したがって、各後方散乱データセットにおいて、該当する波形特徴を基準波形と時間的に並べた。基準波形は、各実行につき44.5℃の後方散乱波形となるよう選択した。各試行波形につき、基準波形に対する後方散乱電圧の最大変化の指標を見つけ、それから信号を整流化し、フィルタリングし、後方散乱振幅の最大の変化が生じる特定の時間インデックスのあいだ、積分する。個々のモートについてテストしたすべての温度において、同じ積分範囲を用い、それから、得られた積分を、基準測定値から得られた積分に対して正規化した。
【0392】
後方散乱変調で観察された効果が温度の関数としての外部トランスデューサ特性の変化によるものではないことを検証するため、後方散乱テストを該当の温度において空の水タンク内で行った。受信した後方散乱波形に対する温度の大きな影響は、これらのテスト条件下では認められなかった。サーミスタの長期のドリフトも評価された。5個のPanasonic ERT-J1VR682J サーミスタを個々のプロトタイププリント回路基板(Chip Quik Inc., DC0603T)に取り付け、リード線にはんだ付けし、UV硬化性エポキシで覆った。それから、サーミスタを、脱イオン水を含むビーカーの中に置いた。55Wのコンパクトな浸漬ヒーター(McMaster-Carr, 4668T51)、Omega Systems CSI32K benchtop PIDコントローラ、および熱電対から成る閉ループ温度管理システムを用いて、水温を45.5℃に保った。14日間、約24時間の間隔を置いて、各サーミスタから抵抗値を測定し、平均値のパーセントの変化をサーミスタ毎に計算した。
【0393】
埋め込み型デバイスは、0201SMDパッケージサーミスタ(Panasonic ERT-JZET202J)と、端部長さが400μmのPZT圧電結晶とを有する(
図34B、上側)か、あるいは、0603サーミスタと、端部長さが750μmのPZT圧電結晶とを有する(
図34B、下側)。
【0394】
図36は、非応答型リフレクタと、サーミスタに接続したバルク圧電トランスデューサとの両方を有する埋め込み型デバイスからの典型的な後方散乱プロファイルを示す。領域1は非応答型リフレクタから生じ、領域2は応答型圧電トランスデューサから生じる。図示されているように、どちらの領域も移動および回転で変化するが、温度で変化するのは応答型領域のみである。
【0395】
温度センサを有する単一の埋め込み型デバイスは、生理的に関連のある温度に対して後方散乱の単調に変わる温度依存性の変化を0.5℃の精度で生じさせることができる(
図37参照)。14日間、サーミスタの平均記録における最大偏差は34Ωだと判明した。Steinhart-Hart方程式は、NTCサーミスタの温度と抵抗との関係を模倣する。
【0396】
【0397】
式中、Rは温度Tにおける抵抗の測定値である。0603サーミスタを用いた場合、減衰パラメータβは4250K-1であり、R0は初期温度T0=298Kに対して6.8kΩだと報告された。抵抗の変化に対応する温度変化は、Steinhart-Hart方程式を二度適用して再配置することによって見出される。
【0398】
【0399】
式中、ΔRは温度T2およびT1それぞれにおける抵抗値の変化R2-R1である。34Ωの抵抗の変化は、0.296Kの温度変化に対応することがわかった。この温度変化は、PIDコントローラの測定誤差の範囲内である。
【0400】
本実施例は、市販の部品を用いた、最大寸法でも700μmの小ささの小型化超音波トランスデューサを有する超音波応答可能システムにおける、熱センサを有する埋め込み型デバイスを示す。本方法は、温度の測定値を決定するのに経験的な熱交換モデルに依存せず、したがって、深層組織温度測定の有用な器具と成り得る。完全にするために、臨床医療での標準的な皮膚温度取得手段であるサーミスタが、長時間生理的温度に露出しても大きなドリフトを示さないことを確かめた。個々の埋め込み型デバイスは、トランスデューサから1cmの位置で、温度変化を高い精度で決定することができた。これは医療診断および監視目的には重要である。最後に、すぐに入手可能な小型部品を用いて、複数の埋め込み型デバイスを集めて、完全なサブミリ波のセンサを作り得ることが実証された。組織の内部数センチの深さまで貫く力により、このアプローチは深層組織の温度を検知する直接的な手段を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0401】
【
図1】
図1は、Seo et al., Neural dust: an ultrasonic, low power solution for chronic brain-machine interfaces, arXiv: 1307.2196v1 (July 8, 2013)に開示される、外部のトランシーバ、硬膜下の呼びかけ機、およびニューラルダストモートを含む、ニューラルダストシステムの概略図である。
【
図2A】
図2Aは、本明細書中で開示されるシステムにおける、例示的な呼びかけ機のブロック図である。図解される呼びかけ機は、複数の超音波トランスデューサを含む超音波トランスデューサアレイを含む。前記超音波トランスデューサアレイ中の各超音波トランスデューサは、チャネルにより作動する。前記チャネルは、前記トランスデューサが、超音波を受信または送信するよう、交互に構成するスイッチを含む。
【
図2B】
図2Bは、本明細書中に開示されるシステムにおける、別の例示的な呼びかけ機の概略図である。図解される呼びかけ機は、2つの超音波トランスデューサアレイを含み、それぞれの超音波トランスデューサアレイが、複数の超音波トランスデューサを含む。また、前記呼びかけ機は、集積回路を含む。前記集積回路はデジタル回路を含んでもよく、前記デジタル回路はプロセッサを含んでもよい。前記集積回路は、ユーザインターフェース(ディスプレイ、キーボード、ボタン等を含み得る)、記憶媒体(すなわち、非一時的記憶装置)、入出力装置(無線(例えば、Bluetooth(登録商標))であってよい)、および電源装置(例えば、バッテリ)に接続される。
【
図3A】
図3Aは、対象により着用可能である、例示的な呼びかけ機のブロック図を表す。前記呼びかけ機は、無線通信システム(図中では、Bluetooth(登録商標)無線)を含む。前記無線通信システムは、コンピュータシステムとの通信のために用いられてよい。
【
図3B】
図3Bは、着用可能な呼びかけ機の分解図を表す。前記呼びかけ機は、バッテリ、無線通信システム、およびトランスデューサアレイを含む。
【
図3C】
図3Cは、対象へ取り付けるためのハーネスを付けて完全に組み立てた、
図3Bで示した着用可能な呼びかけ機を表す。
【
図3D】
図3Dは、対象、すなわちげっ歯類(ただし、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、サル、ラット、マウス等、任意の種類の動物であってよい)に取り付けられた、着用可能な呼びかけ機を示す。前記呼びかけ機は、トランスデューサアレイを含む。前記トランスデューサアレイは、接着材で対象の体に固定される。
【
図4】
図4は、呼びかけ機中のトランスデューサと、小型化超音波トランスデューサを有する埋め込み型デバイスとの間の通信を表す概略図である。前記呼びかけ機は、埋め込み型デバイスへ超音波を送信し、小型化超音波トランスデューサは、センサによって変調された超音波後方散乱を発する。そして、呼びかけ機が後方散乱を受信する。
【
図5】
図5Aは、呼びかけ機から発せられる超音波パルスの一連のサイクルを表す。呼びかけ機のトランシーバ基板が、前記呼びかけ機(例えば、FPGA)からのトリガーを受信すると、一連の送信パルスを発生させる。送信サイクルの最後に、ASIC上のスイッチは、送信モジュールとの接続を絶ち、受信モジュールと接続する。各サイクルは、100マイクロ秒である。
図5Bは、
図5Aで示した送信パルスシーケンス(つまり、1サイクル)の拡大図を表す。前記サイクルにおいて、1.85MHzの超音波パルスが6つ存在し、前記超音波パルスは、540ナノ秒毎に繰り返し発生する。
図5Cは、埋め込み型デバイスから発せられる超音波後方散乱を示す。超音波後方散乱は、約2tレイリーで呼びかけ機のトランスデューサに届く。
図5Dは、超音波後方散乱の拡大図を示し、該超音波後方散乱は分析可能である。超音波後方散乱の分析は、超音波後方散乱波のフィルタリング工程、整流化工程、および積分工程を含む。
図5Eは、フィルタリングされた超音波後方散乱波の拡大図を示す。前記後方散乱波は、小型化超音波トランスデューサへのインピーダンスの変化に応答する応答領域と、小型化超音波トランスデューサへのインピーダンスの変化に応答しない非応答領域とを含む。
【
図6】
図6Aは、小型化超音波トランスデューサおよびセンサを有する、埋め込み型デバイスの概略図を示す。
図6Bは、小型化超音波トランスデューサ、集積回路およびセンサを有する、埋め込み型デバイスの概略図を示す。
【
図7】
図7Aは、プリント回路基板(PCB)上に小型化超音波トランスデューサおよびASICを含む、例示的な埋め込み型デバイスの概略図を示す。
図7Bは、プリント回路基板(PCB)上に小型化超音波トランスデューサおよびASICを含む、別の例示的な埋め込み型デバイスの概略図を示す。
【
図8A】
図8Aは、埋め込み型デバイスにおいて、小型化超音波トランスデューサに取り付けられたASICの一実施形態を示す。
【
図8B】
図8Bは、埋め込み型デバイスにおいて、小型化超音波トランスデューサに取り付けられた集積回路の別の一実施形態を示す。
【
図9】
図9Aは、光エミッタからの光の組織内での輝度変調に基づいた、埋め込み型デバイスセンサから外部のトランシーバへの後方散乱通信を示す。埋め込み型デバイス上のセンサは、光フィルタによって増強されるセンサであってよい。
図9Bは、光センサを用いたNIR多重波長分光光度分析を実行するために、異なる波長の光を発する素子アレイ(右側)を用いた単色光の交互パルシングを示す。
図9Cは、光源および光検出器を含む光センサを有する、埋め込み型デバイスを示す。前記センサは、統合光エミッタを含む。
【
図10A】
図10Aは、光源から発せられた光パルスと、光センサ中のマトリクスにおいて光が蛍光色素を励起させたあと光検出器によって検出された、上記光パルスの結果である蛍光減衰とを示す。
【
図10B】
図10Bは、光源から発せられた発振光と、光センサ中のマトリクスにおいて光が蛍光色素を励起させたあと光検出器によって検出された、上記発振光の結果である蛍光寿命の結果との間の位相シフトを示す。
【
図11】
図11Aは、小型化超音波トランスデューサ、集積回路、および光センサを有する埋め込み型デバイスの一実施形態の概略図を示す。
図11Bは、小型化超音波トランスデューサ、集積回路、および光センサを有する埋め込み型デバイスの一実施形態の別の概略図を示す。
【
図12】
図12Aは、小型化超音波トランスデューサおよび温度センサを有する埋め込み型デバイスの一実施形態の概略図を示す。
図12Bは、小型化超音波トランスデューサ、集積回路、および温度センサを有する埋め込み型デバイスの一実施形態の概略図を示す。
【
図13】
図13Aは、小型化超音波トランスデューサおよび圧力センサを有する埋め込み型デバイスの一実施形態の概略図を示す。
図13Bは、小型化超音波トランスデューサ、集積回路、および圧力センサを有する埋め込み型デバイスの一実施形態の概略図を示す。
【
図14】
図14は、本明細書中に記載の埋め込み型デバイスの製造方法を図解する。
【
図15】
図15は、非晶質炭化珪素を含む埋め込み型デバイスの被包方法のフローチャートである。
【
図16】
図16Aは、埋め込み型デバイスの構成要素を接続するために使用する異なる形状のビアを示す。
図16Bは、変形可能な相互接続用の、蛇行したトレース配置を示す。
【
図17】
図17は、銀エポキシを硬化させるための時間と温度の関係を示す。銀エポキシは、埋め込み型デバイスの製造においてワイヤボンドを取り付けるための材料の一例である。
【
図18】
図18は、埋め込み型デバイスを炭化珪素中に被包するための概略図を示す。
【
図19】
図19は、プロトタイプのアセンブリの概略とPCBを示す。
【
図20】
図20A~Eは、所望の大きさの小型化超音波トランスデューサ(PZT)をPCB上に組み立てることを確実にするための処理工程を示す。
図20Aにおいて、エポキシはんだペーストを基板上に配置する。
図20Bにおいて、圧電材料をPCBに取り付ける。
図20Cにおいて、圧電材料をダイシングし、所望のサイズのバルク圧電超音波トランスデューサを形成する。
図20Dにおいて、超音波トランスデューサをPCBにワイヤボンディングする。
図20Eにおいて、PCBおよび超音波トランスデューサをPDMS中に被包する。
【
図21】
図21は、ベクトルネットワークアナライザ(VNA)を用いた電気インピーダンス測定の概略図を示す。
【
図22】
図22Aは、異なる大きさのバルク圧電超音波トランスデューサにおいて測定された電力伝達効率が、シミュレートされた挙動と一致することを示す。
図22Bは、測定されたPZT結晶のインピーダンス分光が、シミュレーションと一致することを示す。
図22Cは、小型化超音波トランスデューサの得られた電力に対する周波数応答が、約6.1MHzであることを示す。
【
図23】
図23は、呼びかけ機の一部として使用することができる、例示的な超音波トランスデューサの概略図である。
【
図24】
図24は、電力送達の確認のための、校正済み超音波トランスデューサを用いた音響特徴付け設備の概略図である。超音波受信機は超音波送信機とは別個のものである。
【
図25A】
図25Aは、ハイドロフォンをトランスデューサの表面から遠ざけたときの5MHzトランスデューサの出力を表す。
【
図25B】
図25Bは、軽減出力のピークが水におけるピークに比べて、左にシフトしていることを示す。
【
図26A】
図26Aは、トランスデューサの出力のXZ断面図を示しており、レイリー距離と、近距離から遠距離への伝播の鮮明な変遷とを図示する。
【
図26B】
図26Bは、2.2mmのビームの6dBの帯域を示すXYビーム断面図を示す。
【
図27A】
図27Aは、XY平面における、トランスデューサアレイからの集束された2次元ビームパターンを示す。測定されるビームは、X方向およびY方向の両方において、シミュレートされたビームに近接している。
【
図27B】
図27Bは、超音波トランスデューサアレイ中の各トランスデューサ素子に適用された遅延時間を示す。
【
図27C】
図27Cは、シミュレートされた2次元XZ断面のビームパターンを示す。
【
図28A】
図28Aは、トランスデューサアレイから送信される超音波ビームのビームステアリングを示す。
【
図28B】各ビームパターンの下は、
図28Bに示すように、トランスデューサアレイ中の各トランスデューサが測定されたビームパターンを得るのに要する遅延である。
【
図28C】
図28Cは、
図28Aで示したそれぞれのビームパターンの、X軸における1次元ビームパターンを示す。測定されたビームパターンは、シミュレートされたビームパターンに非常に近似している。
【
図29】
図29は、組織中、5mmの送信距離における、シミュレートされた小型化超音波トランスデューサの連結効率および受信電力を示す。
【
図30A】
図30Aは、例示的なトランスデューサの表面からの距離の関数としての、低減された正規化ピーク圧力が、1.85MHzの際、約8.9mmで低減された焦点を有することを示す。
【
図30B】
図30Bは、近距離、レイリー距離、および遠距離における、XY断面のビームパターンおよびそれに対応するy=0のときの1次元電圧プロットを示す。これらのパターンは、レイリー距離においてビームが集束していることを示す。
【
図30C】
図30Cは、トランスデューサの出力圧力は、入力電圧の一次関数であることを示す(最高32Vのピーク間電圧)。
【
図31A】
図31A(別の文脈において示した
図5Eと同一)は、後方散乱の別々の領域を示す例示的な後方散乱波形である。後方散乱波形は、非応答領域から発生する反射に対応する領域によって(時間的に)両側を挟まれていることがわかる。これらの領域は、他の埋め込み型デバイスの構成要素から反射した波形に対応している。非応答領域(生物学的データをエンコードしていない)からの測定値を基準としてよい。このように示差測定を行うことで、実験における外部のトランスデューサに対する構造全体の移動を、差し引くことができる。
【
図31B】
図31Bは、カスタムした水タンク設備から得られる校正曲線であり、ノイズフロアは0.18mV
rmsであることを示す。
【
図31C】
図31Cは、ビームパターン出力の減退に続く、横への照準ミスの関数としてのノイズフロアの影響を示す。
【
図31D】
図31Dは、レイリー距離における、y=0のときのトランスデューサの軸外し電圧および出力低下の1次元のプロットを示す。
【
図31E】
図31Eは、角度の照準ミスの関数としての、有効ノイズフロアの低下のプロットを示す。角度の照準ミスによって、ビームパターンが歪む。つまり、ビームパターンが円ではなく、反対に長円形となる。これにより、焦点の半径が長くなる(そして、より広い範囲へとエネルギーが分散する)。つまり、焦点の歪みが、照準ミスにおける制約を緩和する。
【
図32A】
図32Aは、組織を模倣するために使用される超音波カップリングゲルに埋め込まれた埋め込み型デバイスを用いた、埋め込み型デバイスからの超音波後方散乱を示す。前記超音波散乱は、26マイクロ秒に集中する送信貫通および終了、および47マイクロ秒付近に集中する小型化超音波トランスデューサ後方散乱を含む。
【
図32B】
図32Bは、小型化超音波トランスデューサの後方散乱領域(応答領域)の拡大図である。これは、埋め込み型デバイスへの信号入力の結果、振幅が変調されることを示す。
【
図33】
図33は、単極でエンコードすることで、後方散乱の振幅パルスの変調により、埋め込み型デバイスから無線で得られる、ASCII文字「hello world」に対応するデジタルデータを示す。
【
図34A】
図34Aは、小型化超音波バルク圧電トランスデューサおよびサーミスタを有する埋め込み型デバイスの例図を示す。非応答型リフレクタを埋め込み型デバイスに取り付け、非応答後方散乱波を反射させる。
【
図34B】
図34Bは、それぞれが、小型化超音波バルク圧電トランスデューサおよびサーミスタを有する、2つの埋め込み型デバイスを示す。上部のデバイスの体積は、約0.118mm
3である。底部のデバイスの体積は、約1.45mm
3である。
【
図35】
図35は、温度センサを有する個々の埋め込み型デバイスの後方散乱を特徴付けるために行う実験設計の断面図を示す。0.5milの厚さのPETシートを、水タンクの上部へ糊付けした。これにより、埋め込み型デバイスを熱的に絶縁しつつ、タンク中に水を保持する。
【
図36】
図36は、小型化超音波バルク圧電トランスデューサ、サーミスタ、および高温ならびに低温での非応答型リフレクタを有する埋め込み型デバイスからの超音波後方散乱を示す。埋め込み型デバイスを3.35MHzで呼びかけた。領域[1]は、非応答型リフレクタの寄与に対応しており、一方、領域[2]は、埋め込み型デバイスにおける熱的に変調したトランスデューサの寄与に対応している。温度依存変化が、領域[2]における、信号の振幅(つまりは、整流化信号の曲線より下の面積)における増加から見て取れる。領域[1]は、そのような変化を示さない。
【
図37】
図37は、34.5℃~44.5℃の温度の関数としての、サーミスタを有する単一の埋め込み型デバイスの超音波後方散乱の曲線下の平均正規化面積を示す。温度は0.5℃ずつ上昇し、10の収集した後方散乱波形面積を44.5℃において正規化した。エラーバーは、各温度で測定した10の測定値の標準偏差を表す。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物質の量、pH、温度、ひずみ、または圧力を検出するよう構成されたセンサと、
最大寸法の長さが約5mm以下の超音波トランスデューサであって、上記センサによって検出された、上記被検物質の量、上記pH、上記温度、または上記圧力に基づいて変調された電流を受信し、上記受信された電流に基づいて超音波後方散乱を発するよう構成された、超音波トランスデューサと、
を有する、埋め込み型デバイス。