(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123782
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】熱遮蔽体を含むガラス製造装置およびガラス製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 17/06 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
C03B17/06
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109134
(22)【出願日】2023-07-03
(62)【分割の表示】P 2020528406の分割
【原出願日】2018-11-28
(31)【優先権主張番号】62/592,036
(32)【優先日】2017-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【弁理士】
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド スコット フランツェン
(72)【発明者】
【氏名】ブレンダン ウィリアム グローヴァー
(72)【発明者】
【氏名】ビュレント コカテュラム
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ブラシアー マッティングリー,ザ サード
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ガラス製装置およびガラスリボンを製造する方法を提供する。
【解決手段】ガラス製造装置101は、内部領域303と容器140とを包含するエンクロージャ301を含み、容器は、エンクロージャの内部領域内に少なくとも部分的に位置決めされている。容器は、トラフ201と、容器の基底部で収束する下向きに傾斜した一対の表面を含む成形ウェッジ209とを含む。引き出し平面213は、容器の基底部142からエンクロージャの開口部315を通って引き出し方向で延在している。装置は、引き出し平面に対し垂直に延在する調節方向に沿って可動な熱遮蔽体335を含む。熱遮蔽体は、非金属外側シェルと断熱コアとを含む。これに加え、ガラス製造装置によってガラスリボンを製造する方法が提供される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス製造装置であって、
内部領域を有するエンクロージャと、
前記エンクロージャの前記内部領域内に少なくとも部分的に位置決めされた容器であって、トラフと、前記容器の基底部で収束する下向きに傾斜した一対の表面を有する成形ウェッジとを有する容器と、
前記エンクロージャの開口部の少なくとも一部分を遮る、非金属外側シェルと断熱コアとを有する熱遮蔽体と
を有し、
前記断熱コアは、前記非金属外側シェルの熱伝導率よりも100倍~200倍低い熱伝導率を有し、
前記熱遮蔽体は、ラグを有し、
該ラグの外表面および前記非金属外側シェルの外表面が、引き出し平面に対して垂直な方向で見た前記熱遮蔽体の断面に関して、前記熱遮蔽体の連続的な外表面を規定し、前記引き出し平面は、前記容器の基底部から前記エンクロージャの前記開口部を通して引き出し方向で延在するガラス製造装置。
【請求項2】
前記断熱コアは、前記非金属外側シェル内に完全に封入されている、請求項1記載のガラス製造装置。
【請求項3】
前記熱遮蔽体は、前記引き出し平面に対し垂直に延在する調節方向に沿って可動である、請求項1または2記載のガラス製造装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項記載のガラス製造装置によってガラスリボンを製造する方法であって、
下向きに傾斜した一対の表面の各表面に沿って溶融材料を流すステップと、
容器の基底部から流れる前記溶融材料を融合してガラスリボンとするステップと、
前記エンクロージャの開口部を通って前記引き出し平面に沿って前記ガラスリボンを引き出すステップと
を含む方法。
【請求項5】
ガラス製造装置であって、
内部領域を有するエンクロージャと、
前記エンクロージャの前記内部領域内に少なくとも部分的に位置決めされた容器であって、トラフと、前記容器の基底部で収束する下向きに傾斜した一対の表面を有する成形ウェッジとを有する容器と、
前記容器の前記基底部から前記エンクロージャの開口部を通って引き出し方向で延在する引き出し平面に対し垂直に延在する調節方向に沿って可動な、非金属外側シェルと、
断熱コアと、
を有する熱遮蔽体と
を有し、
前記断熱コアは、前記非金属外側シェルの熱伝導率よりも100倍~200倍低い熱伝導率を有し、
前記熱遮蔽体は、ラグを有し、
該ラグの外表面および前記非金属外側シェルの外表面が、前記引き出し平面に対して垂直な方向で見た前記熱遮蔽体の断面に関して、前記熱遮蔽体の連続的な外表面を規定する、ガラス製造装置。
【請求項6】
前記非金属外側シェルは、前記非金属外側シェルの外表面を規定する第1の表面と、前記断熱コアに面した第2の表面とを有する、請求項5記載のガラス製造装置。
【請求項7】
請求項5または6記載のガラス製造装置によってガラスリボンを製造する方法であって、開口部の幅を調節するために調節方向に沿って熱遮蔽体を動かすステップを含む方法。
【請求項8】
下向きに傾斜した一対の表面の各表面に沿って溶融材料を流すステップと、容器の基底部から流れる前記溶融材料を融合してガラスリボンとするステップと、前記ガラスリボンを引き出し方向で引き出すステップとをさらに含む、請求項7記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2017年11月29日に出願された米国特許仮出願第62/592,036号に基づく優先権の利益を主張し、その内容に依拠し、その内容全体を参照することにより本明細書に援用する。
また、本願は、2018年11月28日に出願された特願2020-528406号の分割出願である。
【技術分野】
【0002】
本開示は概して、ガラス製装置およびガラスリボンを製造する方法に関し、より詳しくは、熱遮蔽体を含むガラス製造装置およびこのガラス製造装置によってガラスリボンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エンクロージャ、容器および熱遮蔽体を含むガラス製造装置は公知である。これに加え、容器をエンクロージャの内部領域内に少なくとも部分的に位置決めすることが知られており、この場合、容器はトラフと成形ウェッジとを含み、成形ウェッジは、下向きに傾斜し容器基底部で収束する一対の表面を含む。さらに、ガラス製造装置によってガラスリボンを製造する方法は公知である。
【発明の概要】
【0004】
以下では、詳細な説明において説明するいくつかの実施形態について基本的な理解をもたらすように、本開示の概要を紹介する。
【0005】
いくつかの実施形態において、ガラス製造装置は、内部領域を包含するエンクロージャを含むことができる。この装置は、エンクロージャの内部領域内に少なくとも部分的に位置決めされた容器を含むことができ、容器は、トラフと、容器の基底部で収束する下向きに傾斜した一対の表面を含む成形ウェッジとを含むことができる。この装置は、エンクロージャの開口部の少なくとも一部分を遮る、非金属外側シェルと断熱コアとを含むことができる熱遮蔽体を含むことができる。
【0006】
いくつかの実施形態において、非金属外側シェルはセラミック材料を含むことができる。
【0007】
いくつかの実施形態において、セラミック材料は炭化ケイ素を含むことができる。
【0008】
いくつかの実施形態において、非金属外側シェルは、熱遮蔽体の外表面を規定する第1の表面と、断熱コアに面した第2の表面とを含むことができる。第1の表面と第2の表面との間で規定される非金属外側シェルの厚さを、約2.8ミリメートル~約3.5ミリメートルとすることができる。
【0009】
いくつかの実施形態において、第1の表面と第2の表面との間で規定される非金属外側シェルの厚さを、約3ミリメートル~約3.3ミリメートルとすることができる。
【0010】
いくつかの実施形態において、断熱コアを、非金属外側シェル内に完全に封入することができる。
【0011】
いくつかの実施形態において、非金属外側シェルは1つの連続表面を規定することができる。
【0012】
いくつかの実施形態において、熱遮蔽体を、引き出し平面に対し垂直に延在する調節方向に沿って可動とすることができる。引き出し平面を、容器の基底部からエンクロージャの開口部を通して延在させることができる。
【0013】
いくつかの実施形態において、ガラス製造装置によってガラスリボンを製造する方法は、下向きに傾斜した一対の表面の各表面に沿って溶融材料を流すステップと、容器の基底部から流れる溶融材料を融合してガラスリボンとするステップと、容器の基底部からエンクロージャの開口部を通って延在する引き出し経路に沿ってガラスリボンを引き出すステップとを含むことができる。
【0014】
いくつかの実施形態において、ガラス製造装置は、内部領域を包含するエンクロージャを含むことができる。この装置は、エンクロージャの内部領域内に少なくとも部分的に位置決めされた容器を含むことができ、容器は、トラフと、容器の基底部で収束する下向きに傾斜した一対の表面を含む成形ウェッジとを含むことができる。この装置は、引き出し平面に対し垂直に延在する調節方向に沿って可動な熱遮蔽体を含むことができる。引き出し平面を、容器の基底部からエンクロージャの開口部を通して引き出し方向で延在させることができる。熱遮蔽体は、非金属外側シェルを含むことができる。
【0015】
いくつかの実施形態において、非金属外側シェルはセラミック材料を含むことができる。
【0016】
いくつかの実施形態において、セラミック材料は炭化ケイ素を含むことができる。
【0017】
いくつかの実施形態において、非金属外側シェルは1つの連続表面を規定することができる。
【0018】
いくつかの実施形態において、非金属外側シェルの第1の外側位置から非金属外側シェルの第2の外側位置まで引き出し方向に対し平行に延在する熱遮蔽体の寸法を、約1.5センチメートル~約2.5センチメートルとすることができる。
【0019】
いくつかの実施形態において、熱遮蔽体は断熱コアを含むことができ、非金属外側シェルは、熱遮蔽体の外表面を規定する第1の表面と、断熱コアに面した第2の表面とを含むことができる。
【0020】
いくつかの実施形態において、第1の表面と第2の表面との間で規定される非金属外側シェルの厚さを、約2.8ミリメートル~約3.5ミリメートルとすることができる。
【0021】
いくつかの実施形態において、断熱コアを、非金属外側シェル内に完全に封入することができる。
【0022】
いくつかの実施形態において、ガラス製造装置によってガラスリボンを製造する方法は、開口部の幅を調節するために調節方向に沿って熱遮蔽体を動かすステップを含むことができる。
【0023】
いくつかの実施形態において、この方法は、下向きに傾斜した一対の表面の各表面に沿って溶融材料を流すステップと、容器の基底部から流れる溶融材料を融合してガラスリボンとするステップと、ガラスリボンを引き出し平面に沿って引き出し方向で引き出すステップとをさらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
以下の詳細な説明を添付の図面を参照しながら読めば、これらのおよびその他の特徴、実施形態ならびに利点について理解が深まる。
【
図1】本開示の実施形態によるガラス製造装置の1つの例示的な実施形態を概略的に示す図である。
【
図2】本開示の実施形態によるガラス製造装置を、
図1の2-2線に沿って見た断面斜視図として示す図である。
【
図3】本開示の実施形態による
図2のガラス製造装置の断面の一部分を端面拡大図として示す図である。
【
図4】本開示の実施形態による熱遮蔽体の例示的な実施形態を、
図3の4-4線に沿って見た上面図として示す図である。
【
図5】本開示の実施形態による熱遮蔽体を、
図4の5-5線に沿って見た断面図として示す図である。
【
図6】本開示の実施形態による熱遮蔽体を、
図4の6-6線に沿って見た断面図として示す図である。
【
図7】本開示の実施形態による複数の例示的な熱遮蔽体の分析に基づく棒グラフであって、垂直軸は、ガラスリボンの基底部の温度を摂氏(℃)で表し、水平軸は、比較される様々な熱遮蔽体を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、例示的な実施形態が示されている添付の図面を参照しながら、以下でさらに十分に実施形態について説明する。同じ部分または同様の部分を指すために、図面全体を通してできる限り同じ参照番号が用いられる。ただし本開示を多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書で説明する実施形態に限定されるものと解されるべきではない。
【0026】
本明細書で開示される特定の実施形態は例示的なものであることを意図しており、したがってそれらに限定されるものではない、ということを理解されたい。本開示ではいくつかの実施形態において、ガラス製造装置は任意選択的に、所定量の溶融材料からガラスリボンおよび/またはガラスシートを成形するガラス成形装置を含むことができる。たとえばいくつかの実施形態において、ガラス製造装置は任意選択的に、スロットドロー装置、フロートバス装置、ダウンドロー装置、アップドロー装置、プレスローリング装置といったガラス成形装置、または他のガラス成形装置を含むことができる。
【0027】
図1に概略的に示されているように、いくつかの実施形態において、例示的なガラス製造装置101は、所定量の溶融材料121からガラスリボン103を生産するように設計された成形容器140を包含するガラス成形装置を含むことができる。いくつかの実施形態において、ガラスリボン103は、このガラスリボン103の第1のエッジ153および第2のエッジ155に沿って形成された対向する比較的厚いエッジビード間に配置された中央部分151を含むことができる。これに加えいくつかの実施形態において、ガラス分離装置106によってガラスリボン103からガラスシート104を分離することができる。図示されていないものの、いくつかの実施形態において、ガラスリボン103からガラスシート104を分離する前または分離した後に、均一な厚さを有する高品質のガラスシート104として中央部分151を供給するために、第1のエッジ153および第2のエッジ155に沿って形成された比較的厚いエッジビードを取り除くことができる。いくつかの実施形態において、結果として得られた高品質のガラスシート104を様々なディスプレイ用途において使用することができ、以下に限定されるものではないが、そのようなディスプレイ用途には、液晶ディスプレイ(LCD)、電気泳動ディスプレイ(EPD)、有機発光ダイオードディスプレイ(OLED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)および他の電子ディスプレイが含まれる。
【0028】
いくつかの実施形態において、ガラス製造装置101は、貯蔵ビン109からバッチ材料107を受け取るように配向された溶融容器105を含むことができる。バッチ材料107を、モータ113により動力供給されるバッチ送り出し装置111によって導入することができる。いくつかの実施形態において、矢印117によって表されているように、所望の量のバッチ材料107を溶融容器105内に導入するようにモータ113を稼働させるために、任意選択的なコントローラ115を作動させることができる。溶融容器105は、溶融材料121を供給するためにバッチ材料107を加熱することができる。いくつかの実施形態において、立管123内の溶融材料121のレベルを測定し、測定された情報を、通信回線125を介してコントローラ115に伝達するために、ガラス溶融プローブ119を使用することができる。
【0029】
これに加えいくつかの実施形態において、ガラス製造装置101は清澄容器127を含むことができ、これは溶融容器105の下流に配置されており、第1の接続導管129を介して溶融容器105と接続されている。いくつかの実施形態において、溶融容器105から第1の接続導管129を介して清澄容器127へ、溶融材料121を重力で送り込むことができる。たとえばいくつかの実施形態において、重力によって溶融材料121を、溶融容器105から第1の接続導管129の内部経路を通って清澄容器127へと送られるように、押し進めることができる。これに加えいくつかの実施形態において、清澄容器127内の溶融材料121から様々な技術によって気泡を除去することができる。
【0030】
いくつかの実施形態において、ガラス製造装置101はさらに混合室131を含むことができ、これを清澄容器127の下流に配置することができる。溶融材料121の均質な組成をもたらすために、この混合室131を使用することができ、これによって、清澄容器127から出て行く溶融材料121内に存在する可能性のある不均質性が低減され、または取り除かれる。図示されているように、第2の接続導管135を介して清澄容器127を混合室131と接続することができる。いくつかの実施形態において、清澄容器127から第2の接続導管135を介して混合室131へ、溶融材料121を重力で送り込むことができる。たとえばいくつかの実施形態において、重力によって溶融材料121を、清澄容器127から第2の接続導管135の内部経路を通って混合室131へと送られるように、押し進めることができる。
【0031】
これに加えいくつかの実施形態において、ガラス製造装置101は送り出し容器133を含むことができ、これを混合室131の下流に配置することができる。いくつかの実施形態において、送り出し容器133は、流入導管141内に送り込まれる溶融材料121をコンディショニングすることができる。たとえば送り出し容器133は、流入導管141への溶融材料121の一貫した流れを調節および提供するための蓄積器および/または流量コントローラとして、機能することができる。図示されているように、第3の接続導管137を介して混合室131を送り出し容器133と接続することができる。いくつかの実施形態において、混合室131から第3の接続導管137を介して送り出し容器133へ、溶融材料121を重力で送り込むことができる。たとえばいくつかの実施形態において、重力によって溶融材料121を、混合室131から第3の接続導管137の内部経路を通って送り出し容器133へと送られるように、押し進めることができる。
【0032】
さらに図示されているように、いくつかの実施形態において、溶融材料121を成形容器140の流入導管141に送り出すために、送り出し管139を位置決めすることができる。成形容器の様々な実施形態を本開示の特徴に従って設けることができ、そのような本開示の特徴には、融合させてガラスリボンを引き出すためのウェッジを備えた成形容器、ガラスリボンを、スロットを介して引き出すためのスロットを備えた成形容器、または成形容器からガラスリボンをプレスロール成形するためのプレスローラが設けられた成形容器が含まれる。例示として、ガラスリボン103を生産するために成形ウェッジ209の基底部142から溶融材料121を融合させて引き出すために、以下で開示する図示の成形容器140を設けることができる。たとえばいくつかの実施形態において、溶融材料121を流入導管141から成形容器140へと送り出すことができる。次いで、少なくとも部分的に成形容器140の構造に基づき、溶融材料121を成形してガラスリボン103とすることができる。たとえば図示されているように、溶融材料121を、ガラス製造装置101の引き出し方向211に延在する引き出し経路に沿って、成形容器140の底部エッジ(たとえば基底部142)から引き出すことができる。いくつかの実施形態において、ガラスリボン103の幅「W」を、ガラスリボン103の第1の垂直方向エッジ153とガラスリボン103の第2の垂直方向エッジ155との間で延在させることができる。
【0033】
図2には、ガラス製造装置101を
図1の2-2線に沿って見た断面斜視図が示されている。いくつかの実施形態において、成形容器140は、流入導管141から溶融材料121を受け取るように配向されたトラフ201を含むことができる。図示の都合上、溶融材料121のクロスハッチングは、見やすくするため
図2から除かれている。成形容器140はさらに成形ウェッジ209を含むことができ、これは下向きに傾斜して収束する一対の表面部分207a,207bを含み、これらの表面部分207a,207bは、成形ウェッジ209の対向する端部間に延在している。成形ウェッジ209の下向きに傾斜して収束する一対の表面部分207a,207bを、成形ウェッジ209の底部エッジに沿って交差して成形容器140の基底部142を規定するように、引き出し方向211に沿って収束させることができる。ガラス製造装置101の引き出し平面213を、引き出し方向211に沿って基底部142を通して延在させることができる。いくつかの実施形態において、ガラスリボン103を、引き出し平面213に沿って引き出し方向211に引き出すことができる。図示されているように引き出し平面213を基底部142と交差させることができるが、いくつかの実施形態において、引き出し平面213を基底部142に対し相対的に他の配向で延在させることができる。
【0034】
これに加えいくつかの実施形態において、溶融材料121を方向159で成形容器140のトラフ201内に流すことができる。次いで溶融材料121をトラフ201から溢流させることができ、これと同時に溶融材料121は、対応する堰203a,203bを越えて、これら対応する堰203a,203bの外面205a,205b上を下向きに流れる。次いで溶融材料121の個々の液流を、成形ウェッジ209の下向きに傾斜して収束する表面部分207a,207bに沿って流すことができ、それらは成形容器140の基底部142から引き出され、そこで流れが収束し融合してガラスリボン103となる。次いでガラスリボン103を、引き出し方向211に沿って引き出し平面213において、基底部142から融合させて引き出すことができる。その後、いくつかの実施形態において、これに続いてガラスシート104(
図1参照)をガラスリボン103から分離することができる。
【0035】
図2に示されているように、それぞれ反対方向を向きガラスリボン103の厚さ「T」を規定しているガラスリボン103の第1の主面215aとガラスリボン103の第2の主面215bとを伴って、ガラスリボン103を基底部142から引き出すことができる。いくつかの実施形態において、ガラスリボン103の厚さ「T」を、約2ミリメートル(mm)未満、約1ミリメートル未満、約0.5ミリメートル未満、約500マイクロメートル(μm)未満とすることができ、たとえば約300マイクロメートル未満、約200マイクロメートル未満、または100マイクロメートル未満とすることができ、ただし、さらに別の実施形態において他の厚さを規定することができる。これに加え、ガラスリボン103は様々な組成物を含むことができ、以下に限定されるものではないが、そのような組成物には、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、アルカリ含有ガラス、または無アルカリガラスが含まれる。
【0036】
図1~
図3に概略的に示されているように、いくつかの実施形態において、ガラス製造装置101は、エンクロージャ301(たとえばハウジング)を含むことができ、これは、エンクロージャ301の内部領域303を規定する内部容積を含む。いくつかの実施形態において、エンクロージャ301は、成形容器140の成形ウェッジ209を含め、成形容器140を少なくとも部分的に取り囲むことができ、これら成形ウェッジ209および成形容器140を、エンクロージャ301の内部領域303内に少なくとも部分的に位置決めすることができる。
図3に示されているように、いくつかの実施形態において、エンクロージャ301は、上部壁305と、この上部壁305に取り付けられた対向する側壁307,309とを含むことができ、上部壁305は、トラフ201内の溶融材料121の自由表面122に面した上部壁305の内面で、成形容器140の上部の上方に延在している。対向する側壁307,309は各々内面を含むことができ、この内面を、対応する堰203a,203bの個々の外面205a,205bの上を流れる溶融材料121の対応する液流311a,311bと向き合わせることができる。
図1を参照すると、エンクロージャ301はさらに端壁161a,161bを含むことができ、これらは少なくとも部分的に、エンクロージャ301の内部領域303内に成形容器140と成形容器140の成形ウェッジ209とを含む。したがっていくつかの実施形態において、エンクロージャ301の内部領域303(たとえば内部領域303の容積)を、上部壁305と側壁307,309と端壁161a,161bとによって、少なくとも部分的に規定することができる。
【0037】
いくつかの実施形態において、ガラス製造装置101はさらに、エンクロージャ301に対して取り付けられたクロージャ313を含むことができる。いくつかの実施形態において、クロージャ313は、エンクロージャ301の内部領域303と、エンクロージャ301の内部領域303外の(たとえば引き出し方向211に沿って内部領域303の下流の)領域を規定する容積との間の境界(たとえば構造的境界および/または熱的境界)を、少なくとも部分的に規定することができる。これに加えいくつかの実施形態において、クロージャ313は、エンクロージャ301の内部領域303からエンクロージャ301の内部領域303外の領域への、クロージャ313によって少なくとも部分的に規定される境界を越える熱伝達(たとえば放射熱伝達、対流熱伝達および伝導熱伝達のうちの1つ以上)を制御するための熱障壁をもたらすことができる。いくつかの実施形態においてたとえば、ガラス製造装置101の動作中、エンクロージャ301の内部領域303内に少なくとも部分的に位置決めされた1つ以上の特徴(たとえばガラスリボン103、成形容器140、基底部142)を含むエンクロージャ301の内部領域303の温度を、エンクロージャ301の内部領域303外に位置決めされた1つ以上の特徴(たとえば引き出し方向211に沿ってクロージャ313の下流に位置するガラスリボン103)を含む内部領域303外の温度よりも、相対的に熱くすることができる。したがっていくつかの実施形態において、クロージャ313の1つ以上の特徴は、エンクロージャ301の内部領域303の相対的に高い温度と、内部領域303外の相対的に低い温度との間の熱的境界を、少なくとも部分的に規定することができ、これによって、内部領域303の相対的に高い温度と内部領域303外の相対的に低い温度との間の熱伝達(たとえば放射熱伝達、対流熱伝達および伝導熱伝達のうちの1つ以上)が制御される。
【0038】
いくつかの実施形態において、クロージャ313は一対の扉317a,317bを含むことができ、エンクロージャ301の内部領域303内への開口部315のサイズを制限するために、これらの扉を任意選択的に可動とすることができる。たとえばいくつかの実施形態において、一対の扉317a,317bを、引き出し平面213に向かう伸長方向319a,319bで、または引き出し平面213から離れる後退方向321a,321bで、任意選択的に可動とすることができる。いくつかの実施形態において、伸長方向319a,319bおよび/または後退方向321a,321bを、引き出し平面213に対し垂直に延在させることができる。たとえばいくつかの実施形態において、伸長方向319a,319bのうち少なくとも1つの方向成分、および/または後退方向321a,321bのうち少なくとも1つの方向成分を、引き出し平面213に対し垂直に延在させることができる。いくつかの実施形態において、エンクロージャ301の内部領域303内への開口部315のサイズを調節し、内部領域303の相対的に高い温度と内部領域303外の相対的に低い温度との間の熱伝達を制御する目的で、伸長方向319a,319bおよび後退方向321a,321bのうちの少なくとも1つに沿って一対の扉317a,317bを動かすために、アクチュエータ323a,323bを設けることができる。
【0039】
いくつかの実施形態において、一対の扉317a,317bが設けられている場合には、これらの扉はさらに、上述のガラスリボン103の所望の特徴をもたらすために、溶融材料121の一部分の温度を調節するように設計された付加的な特徴を含むことができる。たとえばいくつかの実施形態において、扉317a,317bの一方または両方は、冷却装置325を含むことができる。冷却装置325の1つの実施形態について、一対の扉317a,317bのうち第1の扉317aに関して説明するが、
図3に示されているように、本開示の範囲から逸脱することなく、一対の扉317a,317bのうち第2の扉317bにも、同一または類似の冷却装置325を組み込むことができるということを理解されたい。いくつかの実施形態において、冷却装置325は、扉317aの内部領域329内に配置された流体ノズル327を含むことができる。流体ノズル327は、冷却流体流331(たとえば空気流)を、引き出し平面213に面した扉317aの前面壁333に向かわせることができる。いくつかの実施形態において、冷却流体流331は、対流熱伝達に少なくとも部分的に基づき前面壁333を冷却することができる一方、前面壁は、成形容器140から引き出されるガラスリボン103からの放射熱伝達に少なくとも部分的に基づく熱を吸収することができる。したがっていくつかの実施形態において、ガラスリボン103の温度を、冷却装置325を用いることで調節して、ガラスリボン103の温度および粘度を制御することができ、これによって所望の特性(たとえば厚さ「T」)がガラスリボン103にもたらされる。
【0040】
図3に示されているように、ガラス製造装置101のクロージャ313はさらに、エンクロージャ301の内部領域303内への開口部315の少なくとも一部分を遮る熱遮蔽体335(たとえばマッフル扉、スライドゲート)を含むことができる。いくつかの実施形態において、熱遮蔽体335は、一対の扉317a,317bの上方で引き出し方向211に対し相対的に垂直に位置決めされた熱遮蔽体上部ペア337a,337bを含むことができる。たとえばいくつかの実施形態において、熱遮蔽体上部ペア337a,337bを、一対の扉317a,317bに対し相対的に上流に(すなわち引き出し方向211とは逆方向に)位置決めすることができる。これに加えまたは択一的に、いくつかの実施形態において、熱遮蔽体335は、扉317a,317bの下方で引き出し方向211に対し相対的に垂直に位置決めされた熱遮蔽体下部ペア339a,339bを含むことができる。たとえばいくつかの実施形態において、熱遮蔽体下部ペア339a,339bを、一対の扉317a,317bに対し相対的に下流に(すなわち引き出し方向211に)位置決めすることができる。さらに、図示されていないものの、いくつかの実施形態において、熱遮蔽体335(たとえば熱遮蔽体ペア337a,337b,339a,339b)を、引き出し方向211に対し相対的な扉317a,317bの垂直方向高さ以内に配置することができる。よって、
図3に示されている実施形態は、完全に扉317a,317bの上方で引き出し方向211に対し相対的に垂直に配置された熱遮蔽体上部ペア337a,337bと、完全に扉317a,317bの下方で引き出し方向211に対し相対的に垂直に配置された熱遮蔽体下部ペア339a,339bとを示しているものの、いくつかの実施形態において、引き出し方向211に対し相対的な扉317a,317bの垂直方向高さ以内に、1つ以上の熱遮蔽体335を配置することができる。これに加え、図示されていないものの、いくつかの実施形態において、ガラス製造装置101に扉317a,317bを設けなくてもよく、この場合、たとえば、エンクロージャ301の内部領域303内への開口部315のサイズを規定し、エンクロージャ301の内部領域303とエンクロージャ301の内部領域303外の領域との間に境界(たとえば構造的境界および/または熱的境界)をもたらすために、熱遮蔽体335(たとえば単一の熱遮蔽体ペア337a,337bまたは複数の熱遮蔽体ペア337a,337b,339a,339b)を、扉317a,317bを設けずに使用することができる。
【0041】
しかもいくつかの実施形態において、エンクロージャ301の内部領域303内への開口部315のサイズを調節し、内部領域303の相対的に高い温度と内部領域303外の相対的に低い温度との間の熱伝達(たとえば放射熱伝達、対流熱伝達および伝導熱伝達のうちの1つ以上)を制御するために、調節方向に沿って可動となるように、1つ以上の熱遮蔽体335を取り付けることができる。たとえばいくつかの実施形態において、ガラスリボン103の第1の主面215aに対応する各熱遮蔽体337a,339aを、相応のアクチュエータ341によって伸長方向319aおよび/または後退方向321aで可動とすることができる。これに加えいくつかの実施形態において、ガラスリボン103の第2の主面215bに対応する各熱遮蔽体337b,339bを、相応のアクチュエータ341によって伸長方向319bおよび/または後退方向321bで可動とすることができる。したがって一対の扉317a,317bに加え、またはこれに対し択一的に、いくつかの実施形態において、エンクロージャ301の内部領域303内への開口部315のサイズを調節し、内部領域303の相対的に高い温度と内部領域303外の相対的に低い温度との間の熱伝達を制御する目的で、熱遮蔽体335を同様に伸長方向319a,319bおよび/または後退方向321a,321bで動かすことができる。
【0042】
いくつかの実施形態において、たとえば、基底部142の温度および基底部142におけるガラスリボン103の温度を含め、エンクロージャ301の内部領域303における雰囲気条件(たとえば温度)の制御を支援するために、成形ウェッジ209の基底部142の下方で引き出し方向211に対し相対的に垂直に、熱遮蔽体ペア337a,337b,339a,339bの各熱遮蔽体335を位置決めすることができる。いくつかの実施形態において、成形ウェッジ209を完全に内部領域303内に配置することができる。択一的にいくつかの実施形態において、成形ウェッジ209の一部(たとえば基底部142)を、熱遮蔽体337a,337b,339a,339bのうちの1つ以上よりも下方に延在させることができる。したがっていくつかの実施形態において、熱遮蔽体335は、たとえば、内部領域303内に位置決めされた1つ以上の構成要素(たとえば成形ウェッジ209およびガラスリボン103の全てまたは一部)の温度を含め、エンクロージャ301の内部領域303における雰囲気条件(たとえば温度)の制御を支援することができる。
【0043】
さらに、エンクロージャ301の内部領域303内への開口部315のサイズを縮小するために、扉317a,317bおよび熱遮蔽体337a,337b,339a,339bのうちの1つまたは任意の組み合わせを、個々の伸長方向319a,319bで動かすことができる。たとえばいくつかの実施形態において、内部領域303内への開口部315のサイズを縮小することによって、内部領域303の相対的に高い温度と内部領域303外の相対的に低い温度との間の熱障壁を越える熱伝達(たとえば放射熱伝達、対流熱伝達および伝導熱伝達のうちの1つ以上)を減少させることができる。いくつかの実施形態において、たとえばガラス製造装置101の動作中、放射熱伝達を、内部領域303の相対的に高い温度と内部領域303外の相対的に低い温度との間の熱伝達の主モードとすることができ、内部領域303内への開口部315のサイズを縮小することによって、放射熱伝達に基づく内部領域303からの熱の伝達を減少させることができる。これに加え、いくつかの実施形態において、内部領域303内への開口部315のサイズを縮小することによって、対流熱伝達に基づく内部領域303の中および/または外への空気の流れを減少させることができる。したがっていくつかの実施形態において、扉317a,317bおよび熱遮蔽体337a,337b,339a,339bのうちの1つまたは任意の組み合わせによって、内部領域303内への開口部315のサイズを縮小することで、内部領域303の相対的に高い温度と内部領域303外の相対的に低い温度との間の熱障壁を越える放射熱伝達および対流熱伝達のうちの少なくとも一方を減少させることができる。いくつかの実施形態において、熱障壁を越える熱伝達を減少させることによって、たとえば、内部領域303内のガラスリボン103の一部分の温度を維持するまたは上昇させることができ、かつ/または内部領域303外のガラスリボン103の一部分の温度を維持するまたは低下させることができる。
【0044】
択一的に、エンクロージャ301の内部領域303内への開口部315のサイズを拡大するために、扉317a,317bおよび熱遮蔽体337a,337b,339a,339bのうちの1つまたは任意の組み合わせを、個々の後退方向321a,321bで動かすことができる。たとえばいくつかの実施形態において、内部領域303内への開口部315のサイズを拡大することによって、内部領域303の相対的に高い温度と内部領域303外の相対的に低い温度との間の熱障壁を越える熱伝達(たとえば放射熱伝達、対流熱伝達および伝導熱伝達のうちの1つ以上)を増加させることができる。いくつかの実施形態において、たとえばガラス製造装置101の動作中、放射熱伝達を、内部領域303の相対的に高い温度と内部領域303外の相対的に低い温度との間の熱伝達の主モードとすることができ、内部領域303内への開口部315のサイズを拡大することによって、放射熱伝達に基づく内部領域303からの熱の伝達を増加させることができる。これに加え、いくつかの実施形態において、内部領域303内への開口部315のサイズを拡大することによって、対流熱伝達に基づく内部領域303の中および/または外への空気の流れを増加させることができる。したがっていくつかの実施形態において、扉317a,317bおよび熱遮蔽体337a,337b,339a,339bのうちの1つまたは任意の組み合わせによって、内部領域303内への開口部315のサイズを拡大することで、内部領域303の相対的に高い温度と内部領域303外の相対的に低い温度との間の熱障壁を越える放射熱伝達および対流熱伝達のうちの少なくとも一方を増加させることができる。いくつかの実施形態において、熱障壁を越える熱伝達を増加させることによって、たとえば、内部領域303内のガラスリボン103の一部分の温度を維持するまたは低下させることができ、かつ/または内部領域303外のガラスリボン103の一部分の温度を維持するまたは上昇させることができる。
【0045】
したがっていくつかの実施形態において、エンクロージャ301の内部領域303内への開口部315のサイズを調節することによって、成形容器140から引き出されるガラスリボン103に対し所望の属性をもたらすように、内部領域303内におけるガラスリボン103の一部分の温度も、内部領域303外におけるガラスリボン103の一部分の温度も、調節することができる。たとえばいくつかの実施形態において、成形ウェッジ209から引き出される溶融材料121の温度を低下させることによって、溶融材料121の粘度を上昇させることができ、その結果、成形ウェッジ209の基底部142から引き出されるガラスリボン103の厚さ「T」を増大させることができる。択一的にいくつかの実施形態において、成形ウェッジ209から引き出される溶融材料121の温度を上昇させることによって、溶融材料121の粘度を低下させることができ、その結果、成形ウェッジ209の基底部142から引き出されるガラスリボン103の厚さ「T」を低減させることができる。
【0046】
図4には、
図3の4-4線に沿って見た例示的な熱遮蔽体335の上面図が示されている。いくつかの実施形態において、熱遮蔽体337a,337b,339a,339bを、同一または互いに鏡像のものとすることができる。たとえばいくつかの実施形態において、
図4~
図6に示されている熱遮蔽体335の例示的な実施形態は、熱遮蔽体337a,339aを表すことができる。同様にいくつかの実施形態において、
図4~
図6に示されている熱遮蔽体335の例示的な実施形態の鏡像は、熱遮蔽体337b,339bを表すことができる。
【0047】
図4を参照すると、いくつかの実施形態において、熱遮蔽体335は任意選択的に、終端部分335b,335c間に配置された中央部分335aを含むことができる。たとえばいくつかの実施形態において、終端部分335b,335cを、
図1に示したエッジディレクタ163a,163bを備えた実施形態に設けることができる。いくつかの実施形態において、終端部分335b,335cは、成形ウェッジ209の基底部142の下方に延在させることができるエッジディレクタ163a,163bの一部分のための空隙を提供することができる。いくつかの実施形態において、終端部分335b,335cを、単一または複数のアクチュエータによって一緒に後退および/または伸長させることができる。たとえばいくつかの実施形態において、各終端部分335b,335cを、対応するアクチュエータ341b,341cにより個々の伸長方向319aおよび個々の後退方向321aに沿って別個に伸長および/または後退させることができる。これに加えいくつかの実施形態において、中央部分335aを、単一のアクチュエータ(たとえばアクチュエータ341a)または複数のアクチュエータによって、個々の伸長方向319aおよび個々の後退方向321aに沿って、終端部分335b,335cと一緒に伸長および/または後退させることができる。いくつかの実施形態において、終端部分335b,335cを一緒に、中央部分335aに対し相対的に別個に調節することができ、または各終端部分335b,335cを、互いに別個にかつ中央部分335aとは別個に調節することができる。
【0048】
いくつかの実施形態において、熱遮蔽体335の中央部分335aは突出部401aを含むことができ、いくつかの実施形態において、この突出部401aを中央部分335aの全長「L1」に沿って延在させることができる。同様にいくつかの実施形態において、終端部分335b,335cが設けられている場合には、これらの部分は、中央部分335aの突出部401aと同様のまたは同一の個々の突出部401b,401cを含むことができる。いくつかの実施形態において、終端部分335b,335cの個々の突出部401b,401cを終端部分335b,335cの全長「L2」,「L3」に沿って延在させることができる。これに加えいくつかの実施形態において、熱遮蔽体335の突出部401a,401b,401cは、単独でまたは組み合わせで、熱遮蔽体335の外端部402を少なくとも部分的に規定することができる。いくつかの実施形態において、外端部402は、エンクロージャ301の内部領域303内への開口部315の境界を少なくとも部分的に規定することができる。たとえば
図3に示されているように、いくつかの実施形態において、熱遮蔽体ペア337a,337b,339a,339bの外端部402を向き合わせることによって、エンクロージャ301の内部領域303内への開口部315の境界343の幅を規定することができる。いくつかの実施形態において、たとえば中央部分335aの全長「L1」に沿って、かつ/または終端部分335b,335cの全長「L2」,「L3」に沿って、開口部315の境界343の実質的に一定の幅を規定するために、熱遮蔽体335の外端部402を、互いに平行な直線状の経路に沿って延在させることができる。
【0049】
以下では、熱遮蔽体335の中央部分335aの付加的な特徴について説明するが、特段の記載がない限りは、本開示の範囲から逸脱することなく、終端部分335b,335cは中央部分335aと同じまたは同様の特徴を含むことができるということを理解されたい。たとえば
図5には、
図4の5-5線に沿って見た熱遮蔽体335の断面図が示されており、
図6には、
図4の6-6線に沿って見た熱遮蔽体335の断面図が示されている。
【0050】
図5を参照すると、いくつかの実施形態において、熱遮蔽体335は非金属外側シェル501と断熱コア505とを含むことができる。いくつかの実施形態において、非金属外側シェル501は、熱遮蔽体335の外表面を規定する第1の表面502と、断熱コア505に面した第2の表面503とを含むことができる。いくつかの実施形態において、非金属外側シェル501の第1の外側位置502aから、非金属外側シェル501の第2の外側位置502bまで、引き出し方向211に対し平行に延在する熱遮蔽体335の寸法「d」を、約1.5センチメートル~約2.5センチメートルとすることができる。たとえば
図3に示されているように、いくつかの実施形態において、熱遮蔽体335をガラス製造装置101内で使用することができ、この場合、熱遮蔽体335の形状、サイズおよび配向に関する特徴(たとえば寸法「d」)を、少なくとも、他の構造的特徴(たとえば成形容器140、扉317a,317b)の存在にも、ガラス製造装置101の動作に関連する特徴または機能の存在にも基づいて与えることができる。
【0051】
再び
図5および
図6に戻りこれらの図面を参照すると、いくつかの実施形態において、非金属外側シェル501は1つの連続表面を規定することができる。たとえばいくつかの実施形態において、非金属外側シェル501(たとえば第1の表面502および第2の表面503の少なくとも一方)は、たとえば露出したジョイント、継ぎ目、留め具(たとえばねじ、ボルト)または他の不連続部分が全くない1つの連続的な材料層を規定することができる。いくつかの実施形態において、非金属外側シェル501の厚さ「t」(たとえば非金属外側シェル501の平均厚さ)を、第1の表面502と第2の表面503との間で規定することができる。いくつかの実施形態において、断熱コア505を、非金属外側シェル501内に完全に封入することができる。たとえばいくつかの実施形態において、引き出し平面213に対し垂直な方向で見た熱遮蔽体335の断面に関して(たとえば
図5および
図6)、非金属外側シェル501を断熱コア505の周囲において完全に延在(たとえば外接)させることができ、したがって断熱コア505を非金属外側シェル501内に完全に封入することができる。これに加えいくつかの実施形態において、外端部402の互いに反対側(たとえば突出部401a,401b,401cのうちの1つ以上の互いに反対側)のところで規定される熱遮蔽体335の横方向終端部分を封入するために、1つ以上の任意選択的な終端キャップ(図示せず)を設けることができる。よって、本開示では特段の記載がない限りは、熱遮蔽体335の横方向終端分を封入するために任意選択的な終端キャップが設けられているか否かにかかわらず、引き出し平面213に対し垂直な方向で見た熱遮蔽体335の断面に関して、非金属外側シェル501が断熱コア505の周囲において完全に延在している場合には、断熱コア505は非金属外側シェル501内に完全に封入されているものと見なされる。
【0052】
これに加え、
図6に示されているように、いくつかの実施形態において、熱遮蔽体335は、非金属外側シェル501に接続された、かつ/またはジョイント605のところで断熱コア505に面したかつ/または隣接したラグ602を含むことができる。いくつかの実施形態において、留め具603によってシャフト601をラグ602に接続することができる。いくつかの実施形態において、シャフト601を手動または自動のアクチュエータと接続することができる。たとえば
図3に示されているように、いくつかの実施形態において、開口部315の境界343の幅を調節するために、アクチュエータ341aと、シャフト601とラグ602と留め具603とを含め非金属外側シェル501および断熱コア505のうちの少なくとも一方との間の連接に基づき、伸長方向319aおよび後退方向321aのうちの少なくとも一方に沿って、少なくともアクチュエータ341aの動作に基づき、熱遮蔽体335を動かすことができる。
【0053】
本開示では、ラグ602は、本開示の実施形態に従い非金属外側シェル501と接続可能な1つ以上の構造的特徴を表すことができる。したがってここで理解されたいのは、いくつかの実施形態において、本開示の範囲から逸脱することなく、1つの連続表面を規定する非金属外側シェル501(たとえば第1の表面502および第2の表面503のうちの少なくとも一方)を熱遮蔽体335に設けるために、他の構造的特徴(図示せず)を非金属外側シェル501と接続することができる、ということである。いくつかの実施形態において、中実構造をもたらすために、ラグ602と非金属外側シェル501とを、同じ材料から、あるいは材料的に一緒に繋ぎ合わせ可能または結合可能な1種以上の異なる材料から製造することができる。たとえばいくつかの実施形態において、熱遮蔽体335の非金属外側シェル501は、ひとたび一緒に接続されると構造的かつ材料的に単一の構成要素として機能する、複数の構成要素を含むことができる。いくつかの実施形態において、中実構造をたとえば同時焼成によってもたらすことができる。いくつかの実施形態において、同時焼成される特徴は、非金属(たとえばセラミック)の支持構造を含むことができ、この場合、導電性、抵抗性および誘電性の材料が同時に焼成される(たとえば焼成窯内で加熱される)。よって、本開示では、同時焼成される特徴は、1つの連続表面を規定する1つの連続構造の構造的および材料的な特性を含むことができる。
【0054】
たとえば
図6に示されているように、いくつかの実施形態において、ラグ602(または他の構造的特徴、図示せず)を、非金属外側シェル501と共に同時焼成することができ、これによって、ラグ602の外表面606(または他の構造的特徴、図示せず)および非金属外側シェル501の外表面(たとえば第1の表面502)が、熱遮蔽体335の1つの連続的な外表面を規定することができる。同様にいくつかの実施形態において、ラグ602(または他の構造的特徴、図示せず)を、非金属外側シェル501と共に同時焼成することができ、これによって、ラグ602の内表面607(または他の構造的特徴、図示せず)および非金属外側シェル501の内表面(たとえば第2の表面503)が、断熱コア505に面したかつ/または隣接した1つの連続的な表面を規定することができる。したがって本開示ではいくつかの実施形態において、特段の記載がない限りは、1つの連続表面は、たとえば露出したジョイント、継ぎ目、留め具(たとえばねじ、ボルト)または他の不連続部分が全くない1つの連続的な材料層を規定する単一の構造的特徴も含むことができるし、たとえば露出したジョイント、継ぎ目、留め具(たとえばねじ、ボルト)または他の不連続部分が全くない1つの連続的な材料層を規定するために互いに同時焼成される複数の構造的特徴も含むことができる。
【0055】
いくつかの実施形態において、非金属外側シェル501はセラミック材料を含むことができる。たとえばいくつかの実施形態において、非金属外側シェル501を、セラミック材料を含む材料から製造することができる。いくつかの実施形態において、セラミック材料は炭化ケイ素を含むことができ、さらにいくつかの実施形態において、炭化ケイ素は、押出成形された炭化ケイ素(たとえばプリフォームにより製造され、次いで焼成された炭化ケイ素)および反応焼結された炭化ケイ素(たとえばSSC702)のうちの少なくとも一方を含むことができる。これに加えいくつかの実施形態において、断熱コア505は、断熱材料の熱伝達(たとえば放射熱伝達、伝導熱伝達)に関して1つ以上の断熱特性をもたらす断熱材料を含むことができる。いくつかの実施形態において、断熱コア505は断熱耐火材料を含むことができる。たとえばいくつかの実施形態において、断熱コア505を、断熱耐火材料を含む材料から製造することができる。本開示では、特段の記載がない限りは、断熱コア505の断熱耐火材料を、非金属外側シェル501の材料の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有する非金属の断熱材料として規定することができる。いくつかの実施形態において、断熱耐火材料は、duraboard(登録商標)、ラスボード、または炭化ホウ素を含む他の耐火断熱材料(たとえばFiberfrax(登録商標)、Durablanket(登録商標)、Duraboard(登録商標) 3000)を含むことができる。これに加えいくつかの実施形態において、断熱コア505の断熱耐火材料の熱伝導率を、非金属外側シェル501のセラミックの熱伝導率よりも約100倍~約200倍低くすることができる。たとえばいくつかの実施形態において、断熱コア505の断熱耐火材料の熱伝導率を、メートルケルビンあたり約1W(W/mK)以下とすることができ、非金属外側シェル501のセラミック材料の熱伝導率を、約170W/mKとすることができるが、ただし本開示の範囲から逸脱することなく、いくつかの実施形態において別の値を規定することができる。
【0056】
よって、本開示ではいくつかの実施形態において、セラミック材料は、高温および化学的腐食に耐性のある非金属外側シェル501を提供することができる。たとえばいくつかの実施形態において、セラミック材料を含む非金属外側シェル501は、たとえば、以下に限定されるものでないが、数種の金属および金属合金(たとえば鋼、ニッケル)を含む他の材料、および以下に限定されるものではないが、断熱耐火材料を含む数種の耐火材料よりも、上昇した温度(たとえば1300℃以下の温度)、腐食性化学物質(たとえばボロン、リン、酸化ナトリウム)および外力のうちの1つ以上に晒されることにより引き起こされる構造劣化および変形(たとえば反り、弛み、クリープ、疲労、腐食、破損、損傷、クラッキング、熱衝撃、構造的衝撃など)に対し、いっそう良好に耐えることができる。したがっていくつかの実施形態において、以下に限定されるものではないが、数種の金属および数種の断熱耐火材料を含む他の材料に比べて、セラミック材料は、ガラス製造装置101の動作中、構造劣化が少なく構造的完全性が高められた熱遮蔽体335の非金属外側シェル501を提供することができる。
【0057】
同様に本開示ではいくつかの実施形態において、断熱耐火材料は、放射熱伝達および伝導熱伝達のうちの少なくとも一方に関して断熱特性(たとえば低い熱伝導率)を有する断熱コア505を提供することができる。たとえばいくつかの実施形態において、断熱耐火材料を含む断熱コア505は、たとえば、数種の金属および金属合金(たとえば鋼、ニッケル)および以下に限定されるものではないが、炭化ケイ素を含む数種のセラミック材料よりも、エンクロージャ301の内部領域303をいっそう良好に断熱することができ、したがって内部領域303とエンクロージャ301外の領域との間にいっそう良好な熱障壁をもたらすことができる。したがっていくつかの実施形態において、以下に限定されるものではないが、数種の金属および数種のセラミック材料を含む他の材料に比べて、断熱耐火材料は、ガラス製造装置101の動作中、いっそう良好な断熱特性を備えた熱遮蔽体335の断熱コア505を提供することができる。
【0058】
熱遮蔽体335に非金属外側シェル501と断熱コア505とを設けることによって、いくつかの利点をもたらすことができる。たとえば既述のように、非金属外側シェル501のセラミック材料は、高温および化学的腐食に対し耐性のある熱遮蔽体335を提供することができ、断熱コア505の断熱耐火材料は、放射熱伝達および伝導熱伝達のうちの少なくとも一方に関して高められた断熱特性を含む断熱特性(たとえば低い熱伝導率)を有する熱遮蔽体335を提供することができる。しかもいくつかの実施形態において、断熱コア505を少なくとも部分的にまたは完全に非金属外側シェル501内に封入することによって、非金属外側シェル501のセラミック材料は、ガラス製造装置101の動作中、上昇した温度(たとえば1300℃以下の温度)、腐食性化学物質(たとえばボロン、リン、酸化ナトリウム)および外力のうち1つ以上に晒されないよう、断熱コア505を隔離することで、断熱コア505の断熱耐火材料を保護することができる。同様にいくつかの実施形態において、断熱コア505を少なくとも部分的にまたは完全に非金属外側シェル501内に封入することによって、断熱コア505の断熱耐火材料は、ガラス製造装置101の動作中、非金属外側シェル501のセラミック材料よりも良好な断熱特性を有する熱遮蔽体335を提供することができる。
【0059】
いくつかの実施形態において、セラミック材料を含む非金属外側シェル501と断熱耐火材料を含む断熱コア505とを熱遮蔽体335に設けることによって、比較的軽量で高強度の熱遮蔽体335を提供することができ、この熱遮蔽体335を、たとえば他の熱遮蔽体よりも比較的コストをかけずいっそう軽量なものとすることができ、さらにこの熱遮蔽体335はいっそう高い強度重量比を有することができる。さらにいくつかの実施形態において、セラミック材料を含む非金属外側シェル501と断熱耐火材料を含む断熱コア505とを熱遮蔽体335に設けることによって、内部領域303の相対的に高い温度と内部領域303外の相対的に低い温度との間において、少なくとも部分的にクロージャ313によって規定される熱的境界に関して、所望の断熱特性をもたらすことができる。よって、本開示の実施形態に従い、セラミック材料を含む非金属外側シェル501と断熱耐火材料を含む断熱コア505とを熱遮蔽体335に設けることによって、セラミック材料を含む非金属外側シェル501と断熱耐火材料を含む断熱コア505とを含まない熱遮蔽体では達成不可能ないくつかの利点をガラス製造装置101の動作中に達成する熱遮蔽体335を提供することができる。
【0060】
しかもいくつかの実施形態において、セラミック材料を含む非金属外側シェル501と断熱耐火材料を含む断熱コア505とを熱遮蔽体335に設け、その際に非金属外側シェル501(たとえば第1の表面502および第2の表面503の少なくとも一方)が1つの連続表面を規定することで、いくつかの利点をもたらすことができる。たとえばいくつかの実施形態において、たとえば露出したジョイント、継ぎ目、留め具(たとえばねじ、ボルト)または他の不連続部分が全くない1つの連続的な材料層を規定する非金属外側シェル501を熱遮蔽体335に設けることによって、以下のような熱遮蔽体335を提供することができる。すなわちこの遮蔽体335は、たとえば、以下に限定されるものではないが、露出したジョイント、継ぎ目、留め具(たとえばねじ、ボルト)または他の不連続部分を含む構造、を含む他の構造に比べて、上昇した温度(たとえば1300℃以下の温度)、腐食性化学物質(たとえばボロン、リン、酸化ナトリウム)および外力のうちの1つ以上に晒されることにより引き起こされる構造劣化および変形(たとえば反り、弛み、クリープ、疲労、腐食、破損、損傷、クラッキング、熱衝撃、構造的衝撃など)に耐えることができ、このような他の構造は、いくつかの実施形態において、1つの連続表面を規定する構造よりも、構造欠陥および変形の公算が高い可能性がある。したがって、セラミック材料を含む非金属外側シェル501と断熱耐火材料を含む断熱コア505とを熱遮蔽体335に設け、その際に本開示の実施形態に従い、非金属外側シェル501(たとえば第1の表面502および第2の表面503の少なくとも一方)が1つの連続表面を規定することで、1つの連続表面を含まない熱遮蔽体では達成不可能ないくつかの利点をガラス製造装置101の動作中に達成する熱遮蔽体335を提供することができる。
【0061】
本開示の実施形態による熱遮蔽体335の特徴を特定するために、熱分析シミュレーションを実施した。たとえば
図7には、本開示の実施形態による例示的な熱遮蔽体の分析に基づく棒グラフが示されており、この場合、垂直軸は、ガラスリボンの基底部の温度を摂氏(℃)で表し、水平軸は、比較される様々な熱遮蔽体を表す。たとえば
図3を参照すると、
図7の垂直軸は、成形ウェッジ209の基底部142におけるガラスリボン103の温度を摂氏(℃)で表すことができ、水平軸は、比較される様々な熱遮蔽体337a,337bを表すことができる。熱分析シミュレーションの目的で、約20.65ミリメートルの寸法「d」(
図5および
図6を参照)を含む熱遮蔽体335が評価された。ただし特段の記載がない限りは、熱分析シミュレーションに少なくとも部分的に基づく特定を、約20.65ミリメートルよりも小さい寸法「d」を含む熱遮蔽体335に関しても、約20.65ミリメートルよりも大きい寸法「d」を含む熱遮蔽体335に関しても、同じまたは同様の手法で適用することができる。
【0062】
図7を参照すると、棒グラフ701は、約3.175ミリメートルの厚さ(たとえば平均厚さ)を有する金属外側シェルと、断熱コアと、引き出し平面213に面した比較的厚い(たとえば20.65mm×28.575mmの)中実金属突出部とを含む熱遮蔽体(図示せず)のシミュレーションに基づき、ガラス製造装置101の動作中に得られた1222℃の基底部温度を表している。この場合、金属外側シェルおよび中実金属突出部は、約0.2の放射率を有するものとした。棒グラフ702は、約3.175ミリメートルの厚さ(たとえば平均厚さ)を有する金属外側シェルと、断熱コアと、引き出し平面213に面した比較的厚い(たとえば20.65mm×28.575mmの)中実金属突出部とを含む熱遮蔽体(図示せず)のシミュレーションに基づき、ガラス製造装置101の動作中に得られた1200℃の基底部温度を表している。この場合、金属外側シェルおよび中実金属突出部は、約0.9の放射率を有するものとした。0.2であるとした放射率(棒グラフ701)は、たとえば、ガラス製造装置101の動作開始時における熱遮蔽体の外表面に相応する、比較的汚れのない金属表面を表している。これとは逆に、0.9であるとした放射率(棒グラフ702)は、たとえば、ガラス製造装置101の動作中における熱遮蔽体の外表面に相応する、比較的ひどく酸化した金属表面を表している。いくつかの実施形態において、1200℃という相対的に低い温度によって認められるように、比較的ひどく酸化した金属表面を有するシミュレートされた熱遮蔽体(棒グラフ702)は、たとえば、1222℃という相対的に高い温度によって認められるように、比較的汚れのない金属表面を有するシミュレートされた熱遮蔽体(棒グラフ701)よりも、いっそう多くの熱を吸収し、それゆえ基底部温度を低下させた。
【0063】
いくつかの実施形態において、予め決められた基底部温度を維持する能力によっていくつかの利点をもたらすことができ、それらの利点には、以下に限定されるものではないが、いっそう良好な品質のガラスリボン103、たとえばガラスリボン103の幅「W」(
図1を参照)にわたりいっそう均一な温度分布、および予め決められた基底部温度を維持するためにいっそう僅かな追加の熱入力(たとえばいっそう低いエネルギー使用量)が含まれる。よって、棒グラフ701により表された熱遮蔽体について得られた1222℃の基底部温度を比較の基本と見なして、付加的な熱遮蔽体をシミュレートして比較した。
【0064】
棒グラフ703は、中実セラミック(たとえばSSC702)構造として規定された熱遮蔽体(図示せず)のシミュレーションに基づき、ガラス製造装置101の動作中に得られた1168℃の基底部温度を表している。いくつかの実施形態において、中実セラミック構造は、上述のように高い温度と化学的腐食に対する耐性をもたらすことができる。ただし1168℃といういっそう低い基底部温度により認められるように、いくつかの実施形態において、中実セラミック構造の熱伝導率は、熱遮蔽体の断熱特性に関して高すぎる可能性がある。よって、いくつかの実施形態において、中実セラミック構造の化学的腐食に対する耐性は望ましいかもしれないものの、中実セラミック構造の断熱特性(棒グラフ703)は、基本ケース(棒グラフ701)に比べて、基底部温度の不所望な低減をもたらす結果となる可能性がある。
【0065】
棒グラフ704、棒グラフ705および棒グラフ706は、本開示の実施形態(
図4~
図6を参照)による熱遮蔽体335のシミュレーションに基づき、ガラス製造装置101の動作中に得られた基底部温度を表している。特に棒グラフ704は、約1.5875ミリメートルの非金属外側シェル501の厚さ「t」(たとえば非金属外側シェル501の平均厚さ)を含む熱遮蔽体335のシミュレーションに基づき、ガラス製造装置101の動作中に得られた1227℃の基底部温度を表している。棒グラフ705は、約3.175ミリメートルの非金属外側シェル501の厚さ「t」(たとえば非金属外側シェル501の平均厚さ)を含む熱遮蔽体335のシミュレーションに基づき、ガラス製造装置101の動作中に得られた1220℃の基底部温度を表している。棒グラフ706は、約6.35ミリメートルの非金属外側シェル501の厚さ「t」(たとえば非金属外側シェル501の平均厚さ)を含む熱遮蔽体335のシミュレーションに基づき、ガラス製造装置101の動作中に得られた1207℃の基底部温度を表している。
【0066】
基本ケース(棒グラフ701)について得られた1222℃という基底部温度に比べて、いくつかの実施形態において、約1.5875ミリメートルの非金属外側シェル501の厚さ「t」(たとえば非金属外側シェル501の平均厚さ)を含む熱遮蔽体335(棒グラフ704)は、棒グラフ704により表された1227℃という相対的に高い基底部温度によって実証されたように、基底部温度を維持することに関して望ましい断熱特性をもたらすことができる。ただし本開示では、この基底部温度は望ましいかもしれないが、約1.5875ミリメートルの非金属外側シェル501の厚さ「t」(たとえば非金属外側シェル501の平均厚さ)を含む熱遮蔽体335(棒グラフ704)は、相対的に脆すぎて砕けやすく構造的に安定しない可能性があり、これによってガラス製造装置101の動作中、非金属外側シェル501のクラッキング、割れまたは破壊が発生するおそれがあるということが特定された。したがっていくつかの実施形態において、棒グラフ704に比べて、相対的に厚い非金属外側シェル501(たとえば棒グラフ705、棒グラフ706)によって、相対的に薄い非金属外側シェル501(たとえば棒グラフ704)よりも、脆くなくかつ砕けやすくないようにすることが可能な、構造的にいっそう安定した非金属外側シェル501を備えた熱遮蔽体335を提供することができる。それゆえいくつかの実施形態において、相対的に薄い非金属外側シェル501(たとえば棒グラフ704)のクラッキング、割れまたは破壊に比べて、相対的に厚い非金属外側シェル501(たとえば棒グラフ705、棒グラフ706)のクラッキング、割れまたは破壊を、ガラス製造装置101の動作中に発生しにくくすることができる。
【0067】
しかしながら、エンクロージャ301の内部領域303の相対的に高い温度と、内部領域303外の相対的に低い温度との間に熱的境界をもたらす熱遮蔽体335の能力に関して、非金属外側シェル501の構造的完全性と断熱コア505の断熱特性との点で、トレードオフが発生する可能性がある。たとえば
図3を参照しながら述べたように、いくつかの実施形態において、熱遮蔽体335をガラス製造装置101内で使用することができ、この場合、熱遮蔽体335の形状、サイズおよび配向に関する特徴(たとえば寸法「d」、
図5および
図6を参照)を、少なくとも、他の構造的特徴(たとえば成形容器140、扉317a,317b)の存在にも、ガラス製造装置101の動作に関連する特徴または機能の存在にも基づいて与えることができる。よって、熱遮蔽体335が既定の寸法「d」であることを考慮して、非金属外側シェル501の厚さ「t」が増大すれば、断熱コア505の厚さ(たとえば体積)が相応に減少する。これとは逆に、熱遮蔽体335が既定の寸法「d」であることを考慮して、非金属外側シェル501の厚さ「t」が減少すれば、断熱コア505の厚さ(たとえば体積)が相応に増大する。
【0068】
したがって熱遮蔽体335が既定の寸法「d」である場合には、非金属外側シェル501の厚さ「t」が増大すると、非金属外側シェル501の構造的完全性が高まり、断熱コア505の厚さが減少し、それゆえ断熱障壁をもたらす熱遮蔽体335の能力も同様に減少する。これとは逆に、熱遮蔽体335が既定の寸法「d」である場合には、非金属外側シェル501の厚さ「t」が減少すると、非金属外側シェル501の構造的完全性が減少し、断熱コア505の厚さが増大し、それゆえ断熱障壁をもたらす熱遮蔽体335の能力も同様に増大する。
【0069】
再び
図7を参照すると、基本ケース(棒グラフ701)について得られた1222℃という基底部温度に比べて、1207℃という相対的に低い基底部温度(棒グラフ706)により認められるように、いくつかの実施形態において、約6.35ミリメートルの非金属外側シェル501の厚さ「t」(たとえば非金属外側シェル501の平均厚さ)を含む熱遮蔽体335(棒グラフ706)は、たとえば棒グラフ704よりも構造的に安定しているとはいえ、断熱コア505の厚さを低減させる可能性があり、基底部温度を維持することに関して、あまり望ましくない断熱特性を有する熱遮蔽体335をもたらす可能性がある。本開示では、シミュレートされた熱分析に基づき、約3.175ミリメートルの非金属外側シェル501の厚さ「t」(たとえば非金属外側シェル501の平均厚さ)を含む熱遮蔽体335(棒グラフ705)は、(たとえば少なくとも部分的に非金属外側シェル501の構造特性に基づく)望ましい構造特性も、(たとえば少なくとも部分的に断熱コア505の断熱特性に基づく)望ましい断熱特性も、双方ともに備えた熱遮蔽体335を提供することができるということが特定された。かくして、いくつかの実施形態において、シミュレートされた熱分析に基づき、約3.175ミリメートルの非金属外側シェル501の厚さ「t」(たとえば非金属外側シェル501の平均厚さ)を含む熱遮蔽体335は、エンクロージャ301の内部領域303の相対的に高い温度と、内部領域303外の相対的に低い温度との間に熱障壁をもたらすことができ、これによってガラス製造装置101の動作中、予め決められた基底部温度を維持することができる。
【0070】
したがってシミュレートされた熱分析に基づき、いくつかの実施形態において、第1の表面502と第2の表面503との間で規定される非金属外側シェル501の厚さ「t」(たとえば非金属外側シェル501の平均厚さ)を、約2.8ミリメートル~約3.5ミリメートル(たとえば3.175ミリメートルの±10%、棒グラフ705)とすることができる。これに加えいくつかの実施形態において、非金属外側シェル501の厚さ「t」(たとえば非金属外側シェル501の平均厚さ)を、約3ミリメートル~約3.3ミリメートル(たとえば3.175ミリメートルの±5%、棒グラフ705)とすることができる。同様にいくつかの実施形態において、非金属外側シェル501の厚さ「t」(たとえば非金属外側シェル501の平均厚さ)を、棒グラフ705によって表されているように、約3.175ミリメートルとすることができる。
【0071】
図3に戻りこの図を参照すると、いくつかの実施形態において、本開示の実施形態による1つ以上の特徴を含む熱遮蔽体335は、それゆえにエンクロージャ301内への開口部315の少なくとも一部分を遮ることができ、たとえば、エンクロージャ301の内部領域303の相対的に高い温度と内部領域303外の相対的に低い温度との間に熱障壁(たとえば放射熱伝達および伝導熱伝達のうちの少なくとも一方に関する断熱境界)をもたらすことができる。これに加えいくつかの実施形態において、本開示の実施形態による1つ以上の特徴を含む熱遮蔽体335は、エンクロージャ301の内部領域303内への開口部315の境界343を通って流れる対流空気の量および/または速度を制御することができる。いくつかの実施形態において、エンクロージャ301の中または外への熱伝達(たとえば放射熱伝達、伝導熱伝達および対流熱伝達のうちの1つ以上)を制御することによって、基底部142の温度を含む内部領域303の温度、ならびに内部領域303内のガラスリボン103の温度および内部領域303外のガラスリボン103の温度の調節および維持の少なくとも一方を行うことができる。
【0072】
これに加えいくつかの実施形態において、本開示の実施形態による1つ以上の特徴を含む熱遮蔽体335を提供することで、熱遮蔽体335の反りおよび持続的な変形を低減または回避することができ、これにより突出部401aの外端部402の形状(たとえば直線経路に沿って延在すること)が維持されて、熱遮蔽体335における中央部分335aの全長「L1」に沿って向き合った外端部402において一貫したスペーシングがもたらされる。同様にいくつかの実施形態において、本開示の実施形態による1つ以上の特徴を含む熱遮蔽体335を提供することで、ガラスリボン103の幅「W」に沿っていっそう均質な熱伝達特性をもたらすことができる。しかもいくつかの実施形態において、本開示の実施形態による1つ以上の特徴を含む熱遮蔽体335を提供することで、たとえば、熱遮蔽体の他の設計に基づき発生する可能性があるデブリ(たとえば粒子、酸化)によるガラスリボン103の主面215a,215bの汚染を防止することができる。したがっていくつかの実施形態において、ガラス製造装置101の動作中、いっそう長い生産活動にわたりガラスリボン103の幅「W」に沿って、熱遮蔽体335の全長「L1」にわたって一貫した熱伝達を達成することができる。よって、いくつかの実施形態において、本開示の実施形態による1つ以上の特徴を含む熱遮蔽体335を提供することで、ガラスリボン103の主面215a,215bの汚れのない無傷の状態を維持することができ、ガラスリボン103の厚さ「T」を制御することができ、このことはいくつかの慣用の熱遮蔽体の従来の設計によっては実現することはできず、そのような慣用の熱遮蔽体は、反り、酸化、持続的な変形および不十分な断熱特性のうちの1つ以上をもたらす結果となった。
【0073】
様々な実施形態を、それらのうちいくつかの例示的な特定の実施形態に関して詳しく説明してきたが、以下に続く特許請求の範囲から逸脱することなく、開示された特徴の数多くの変形および組み合わせが可能であることから、本開示はかかる実施形態に限定されるものと見なされるべきではないということを理解されたい。
【0074】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0075】
実施形態1
ガラス製造装置であって、
内部領域を有するエンクロージャと、
前記エンクロージャの前記内部領域内に少なくとも部分的に位置決めされた容器であって、トラフと、前記容器の基底部で収束する下向きに傾斜した一対の表面を有する成形ウェッジとを有する容器と、
前記エンクロージャの開口部の少なくとも一部分を遮る、非金属外側シェルと断熱コアとを有する熱遮蔽体と
を有するガラス製造装置。
【0076】
実施形態2
前記非金属外側シェルはセラミック材料を有する、実施形態1記載のガラス製造装置。
【0077】
実施形態3
前記セラミック材料は炭化ケイ素を有する、実施形態2記載のガラス製造装置。
【0078】
実施形態4
前記非金属外側シェルは、前記熱遮蔽体の外表面を規定する第1の表面と、前記断熱コアに面した第2の表面とを有し、前記非金属外側シェルの厚さは、約2.8ミリメートル~約3.5ミリメートルである、実施形態1から3までのいずれか1つ記載のガラス製造装置。
【0079】
実施形態5
前記非金属外側シェルの厚さは、約3ミリメートル~約3.3ミリメートルである、実施形態4記載のガラス製造装置。
【0080】
実施形態6
前記断熱コアは、前記非金属外側シェル内に完全に封入されている、実施形態1から5までのいずれか1つ記載のガラス製造装置。
【0081】
実施形態7
前記非金属外側シェルは1つの連続表面を規定する、実施形態1から6までのいずれか1つ記載のガラス製造装置。
【0082】
実施形態8
前記熱遮蔽体は、前記容器の前記基底部から前記エンクロージャの前記開口部を通って延在する引き出し平面に対し垂直に延在する調節方向に沿って可動である、実施形態1から7までのいずれか1つ記載のガラス製造装置。
【0083】
実施形態9
実施形態1から8までのいずれか1つ記載のガラス製造装置によってガラスリボンを製造する方法であって、
下向きに傾斜した一対の表面の各表面に沿って溶融材料を流すステップと、
容器の基底部から流れる前記溶融材料を融合してガラスリボンとするステップと、
前記容器の前記基底部からエンクロージャの開口部を通って延在する引き出し経路に沿って前記ガラスリボンを引き出すステップと
を含む方法。
【0084】
実施形態10
ガラス製造装置であって、
内部領域を有するエンクロージャと、
前記エンクロージャの前記内部領域内に少なくとも部分的に位置決めされた容器であって、トラフと、前記容器の基底部で収束する下向きに傾斜した一対の表面を有する成形ウェッジとを有する容器と、
前記容器の前記基底部から前記エンクロージャの開口部を通って引き出し方向で延在する引き出し平面に対し垂直に延在する調節方向に沿って可動な、非金属外側シェルを有する熱遮蔽体と
を有するガラス製造装置。
【0085】
実施形態11
前記非金属外側シェルはセラミック材料を有する、実施形態10記載のガラス製造装置。
【0086】
実施形態12
前記セラミック材料は炭化ケイ素を有する、実施形態11記載のガラス製造装置。
【0087】
実施形態13
前記非金属外側シェルは1つの連続表面を規定する、実施形態10から12までのいずれか1つ記載のガラス製造装置。
【0088】
実施形態14
前記非金属外側シェルの第1の外側位置から前記非金属外側シェルの第2の外側位置まで前記引き出し方向に対し平行に延在する前記熱遮蔽体の寸法は、約1.5センチメートル~約2.5センチメートルである、実施形態10から13までのいずれか1つ記載のガラス製造装置。
【0089】
実施形態15
前記熱遮蔽体は断熱コアを有し、前記非金属外側シェルは、前記熱遮蔽体の外表面を規定する第1の表面と、前記断熱コアに面した第2の表面とを有する、実施形態10から14までのいずれか1つ記載のガラス製造装置。
【0090】
実施形態16
前記非金属外側シェルの厚さは、約2.8ミリメートル~約3.5ミリメートルである、実施形態15記載のガラス製造装置。
【0091】
実施形態17
前記断熱コアは、前記非金属外側シェル内に完全に封入されている、実施形態15または16記載のガラス製造装置。
【0092】
実施形態18
実施形態10から17までのいずれか1つ記載のガラス製造装置によってガラスリボンを製造する方法であって、開口部の幅を調節するために調節方向に沿って熱遮蔽体を動かすステップを含む方法。
【0093】
実施形態19
下向きに傾斜した一対の表面の各表面に沿って溶融材料を流すステップと、容器の基底部から流れる前記溶融材料を融合してガラスリボンとするステップと、前記ガラスリボンを引き出し方向で引き出すステップとをさらに含む、実施形態18記載の方法。