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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123821
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】地下構造物用蓋体
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/14 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
E02D29/14 A
E02D29/14 B
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111064
(22)【出願日】2023-07-05
(62)【分割の表示】P 2019151595の分割
【原出願日】2019-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】508165490
【氏名又は名称】アクアインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100178951
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 和家
(72)【発明者】
【氏名】大波 豊明
(57)【要約】
【課題】弁蓋が鍵穴を開放する開放状態への回動動作のみならず、弁蓋が鍵穴を閉塞する閉塞状態への回動動作もスムーズになる地下構造物用蓋体を提供する。
【解決手段】蓋本体4と、弁蓋51と軸52とを有し、軸52を中心に閉塞状態と開放状態とに回動可能であって、軸52が内側と外側とに水平移動可能な弁体5と、弁体5を付勢するバネSと、を有するものであり、弁体5は、閉塞状態からバネSの付勢力に抗して回動し、弁蓋51が受枠2の内周面21に接触するとバネSの付勢力に抗して軸52が内側に向かって移動するものであり、外側から内側に向かって断面視直線状に傾斜した第1傾斜部411と、第1傾斜部411に連続し、外側から内側に向かって断面視円弧状に傾斜した第2傾斜部412とからなる本体側傾斜部41aを有するものである。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受枠によって画定される、地下構造物につながる開口を塞ぐ地下構造物用蓋体において、
前記受枠の内周面に支持され外周部分に鍵穴が形成された蓋本体と、
弁蓋と前記蓋本体の裏側に支持された軸とを有し、該軸を中心に該弁蓋が該鍵穴を閉塞する閉塞状態と該弁蓋が該鍵穴を開放する開放状態とに回動可能であって、該軸が内側と外側とに水平移動可能な弁体と、
前記弁蓋が前記閉塞状態に向かう方向と外側に向かう方向に前記弁体を付勢する付勢手段と、を有するものであり、
前記弁体は、前記閉塞状態から前記付勢手段の付勢力に抗して回動し、前記弁蓋が前記受枠の内周面に接触すると該付勢手段の付勢力に抗して前記軸が内側に向かって移動するものであり、
前記蓋本体の、前記鍵穴を画定する鍵穴画定壁における内側部分に設けられ下方に向かうに従い該鍵穴が拡がる方向に傾斜した本体側傾斜部を有するものであり、
前記本体側傾斜部は、外側から内側に向かって断面視直線状に傾斜した第1傾斜部と、該第1傾斜部に連続し、外側から内側に向かって断面視円弧状に傾斜した第2傾斜部とからなるものであることを特徴とする地下構造物用蓋体。
【請求項2】
前記弁蓋は、前記鍵穴を閉塞するパッキンを有し、前記閉塞状態に向かう方向に前記弁体が回動すると、該パッキンの内側端部が前記第2傾斜部に当接した後、該閉塞状態まで移動することができるものであることを特徴とする請求項1記載の地下構造物用蓋体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受枠によって画定される、地下構造物につながる開口を塞ぐ地下構造物用蓋体に関する。
【背景技術】
【0002】
下水道や上水道、あるいは電力、ガス、通信等における地下埋設物や地下施設等の地下構造物が地上につながる箇所には、地下構造物につながる開口を画定する受枠が設けられ、この受枠に支持されることで開口を塞ぐ地下構造物用蓋体が設置される場合がある。本明細書では、地下構造物用蓋体を、単に蓋体と略称することがある。
【0003】
蓋体は、外周部分に切欠き状の鍵穴(バール孔)が形成された蓋本体を有するものが一般的である。この鍵穴にT字型あるいはフック型の開閉工具を挿入して蓋本体の裏面に引っかけ、この蓋体を持ち上げて開けることにより地下構造物の開口を開放することができる。また、蓋体には、不用意に開けられるのを防ぐとともに、土砂等が地下構造物内に大量に流れ込まないように、鍵穴を閉塞する弁蓋を備えた弁体が設けられている。この弁体は、蓋体の裏側に軸が支持され、この軸を中心に弁蓋が鍵穴を閉塞する状態(以下、閉塞状態と称することがある)と弁蓋が鍵穴を開放する状態(以下、開放状態と称することがある)とに回動可能であって、バネ等の付勢手段により弁蓋が鍵穴を閉塞する方向に付勢されている。鍵穴を閉塞している弁蓋を、開閉工具の先端で押してバネ等の付勢力に抗して弁蓋を押し下げることにより鍵穴が開放され、鍵穴内に開閉工具の先端を挿入することができる。弁体はまた、不法投棄や不法侵入の防止、さらには、地下構造物内の圧力による開蓋を防止するためのロック部を有している。閉塞状態のときには、ロック部の爪が受枠の爪受け部に係合し、蓋本体の開蓋が阻止される。また、開閉工具によって、弁体を押し下げ、爪が爪受け部に係合しない状態に弁体を回動させることで蓋本体の開蓋が可能になる。
【0004】
ところで、土砂などの流れ込み等を十分に防止するためには、弁蓋が鍵穴を完全にまたはほぼ完全に閉塞するように構成するのが好ましい。しかしながら、このような構成であると、弁蓋を押し下げる際に、弁蓋の先端が受枠の内周面に引っかかってしまい、それ以上弁蓋を押し下げることができなくなってしまう虞がある。このため、本出願人は、弁蓋が鍵穴を全面的にまたはほぼ全面的に閉塞するように構成しても、鍵穴の開放作業に支障が生じることがない蓋体を提案している(例えば、特許文献1等参照)。
【0005】
特許文献1記載の蓋体は、弁体の軸を支持する支持溝を備えている。この支持溝は、蓋体の外側から内側に向かう方向に水平に延びており、弁体の軸が外側から内側に移動可能に構成されている。このため、弁蓋を押して閉塞状態から回動させ、弁蓋が受枠の内周面に接触するとバネ等の付勢力に抗して軸が内側に向かって移動する。この結果、蓋が鍵穴を全面的にまたはほぼ全面的に閉塞するように構成しても、弁蓋の先端が受枠の内周面に引っかかってしまい、それ以上弁蓋を押し下げることができなくなってしまうといった問題を解消することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4524036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の蓋体のように、弁体の軸が外側から内側に移動可能な構成であると、開閉工具等によって弁体を開放状態に回動させた後、バネ等の付勢力によって閉塞状態に戻る際に、弁蓋が、蓋体の裏面における鍵穴の縁等に干渉してしまう場合がある。
【0008】
本発明は前記事情に鑑み、弁蓋が鍵穴を開放する開放状態への回動動作のみならず、弁蓋が鍵穴を閉塞する閉塞状態への回動動作もスムーズになる地下構造物用蓋体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を解決する本発明の地下構造物用蓋体は、受枠によって画定される、地下構造物につながる開口を塞ぐ地下構造物用蓋体において、
前記受枠の内周面に支持され外周部分に鍵穴が形成された蓋本体と、
弁蓋と前記蓋本体の裏側に支持された軸とを有し、該軸を中心に該弁蓋が該鍵穴を閉塞する閉塞状態と該弁蓋が該鍵穴を開放する開放状態とに回動可能であって、該軸が内側と外側とに水平移動可能な弁体と、
前記弁蓋が前記閉塞状態に向かう方向と外側に向かう方向に前記弁体を付勢する付勢手段と、を有するものであり、
前記弁体は、前記閉塞状態から前記付勢手段の付勢力に抗して回動し、前記弁蓋が前記受枠の内周面に接触すると該付勢手段の付勢力に抗して前記軸が内側に向かって移動するものであり、
前記蓋本体の、前記鍵穴を画定する鍵穴画定壁における内側部分に設けられ下方に向かうに従い該鍵穴が拡がる方向に傾斜した本体側傾斜部を有するものであり、
前記本体側傾斜部は、外側から内側に向かって断面視直線状に傾斜した第1傾斜部と、該第1傾斜部に連続し、外側から内側に向かって断面視円弧状に傾斜した第2傾斜部とからなるものであることを特徴とする。
【0010】
ここで、前記地下構造物用蓋体は、上記特許文献1記載の蓋体のように、前記弁体がロック部を有しているものであってよいし、特開2019-112827記載の蓋体のように、弁体とは別体のロック部材を有する構成であってもよい。
【0011】
本発明の地下構造物用蓋体によれば、前記弁蓋が前記受枠の内周面に接触すると前記付勢手段の付勢力に抗して前記軸が内側に向かって移動するものであるため、前記弁体の前記開放状態への回動動作がスムーズになる。さらに、本発明の地下構造物用蓋体は、前記弁体が、前記付勢手段の付勢力により前記開放状態から前記閉塞状態に回動する際に、前記弁蓋と前記蓋本体との干渉が回避しやすくなる。また、前記弁蓋が前記蓋本体の裏面に当接しても、前記本体側傾斜部または前記弁蓋側傾斜部によって、該弁蓋を前記閉塞状態にスムーズにガイドすることができる。
【0012】
本発明の地下構造物用蓋体において、前記弁蓋は、前記鍵穴を閉塞するパッキンを有し、前記閉塞状態に向かう方向に前記弁体が回動すると、該パッキンの内側端部が前記第2傾斜部に当接した後、該閉塞状態まで移動することができるものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、弁蓋が鍵穴を開放する開放状態への回動動作のみならず、弁蓋が鍵穴を閉塞する閉塞状態への回動動作もスムーズになる地下構造物用蓋体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は、本発明の一実施形態である蓋体(地下構造物用蓋体)が受枠に支持された様子を示す平面図であり、(b)は、(a)のA-A線断面図である。
図2】(a)は、図1(b)における破線の円で囲んだ部分を拡大して示す図である。(b)は、(a)に示す弁体を外側(図では左側)から見た図である。
図3】開閉工具を用いて、弁体を回動させる様子を説明するための図である。
図4】軸を最大移動距離移動させた場合の弁体の回動を説明するための図である。
図5】(a)は、第1参考例の蓋体における、図2(a)と対応する部分を示す図であり、(b)は、(a)に示す第1参考例の蓋体における、軸が最大移動距離移動するまで回動した様子を示す図である。
図6】(a)は、第2参考例の蓋体における、図2(a)と対応する部分を示す図であり、(b)は、(a)に示す第2参考例の蓋体における、軸が最大移動距離移動するまで回動した様子を示す図である。
図7】比較例の蓋体における、軸が接触移動距離移動した後、閉鎖状態に回動する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1(a)は、本発明の一実施形態である蓋体(地下構造物用蓋体)が受枠に支持された様子を示す平面図であり、同図(b)は、同図(a)のA-A線断面図である。なお、図1(b)では地面Gを示しているが、他の図では、図を簡略化するため地面Gを省略している。
【0017】
図1には、蓋体3と、その蓋体3を支持する受枠2とを備えた蓋受枠セット10が示されている。本特許出願では、図1における、蓋体3の中心側を内側と称し、蓋体3の外周側を外側と称して説明する。地下埋設物である下水道用排水管は地表から所定の深さの位置に埋設されており、その下水道用排水管の途中に、地下施設として、マンホールが設けられている。下水道用排水管もマンホールも地下構造物に相当する。マンホールは、既製のコンクリート成型品を積み上げた躯体によって、下水道用排水管から地表へ向かう縦穴として形成されている。受枠2はその躯体の上に設けられたものであり、マンホール(地下構造物)につながる開口Hを画定する内周面21を有している。
【0018】
蓋体3は、平面視で円形の蓋本体4の他に、弁体5と、蝶番6とを有するものである。蓋本体4は、受枠2の内周面21に支持されて開口Hを開閉自在に塞ぐものであり、図1に示す蓋体3は、蓋本体4が受枠2に嵌合することで開口Hを塞いでいる。蓋本体4は、鋳鉄製のものであり、その下面に補強用のリブ44が設けられている。なお、蓋本体4は、鋳鉄以外の鉄製であってもよく、鉄以外の金属、樹脂もしくはコンクリート製であってもよい。また、蓋本体4における一端側(図1では左側)の外周部分には、開閉工具T(図3(a)等参照)を挿入するための鍵穴41が形成されている。
【0019】
図1(b)に示すように、蝶番6は、蓋本体4の下面における他端側(図では右側)の周縁部に回動軸63によって回動自在に連結されている。この蝶番6は、その中間部分に形成された鉤状突起61と、その下端部分に形成された抜止突起62とを備えている。また、受枠2の他端側における、内周面21の下方位置には、蝶番座23が設けられている。この蝶番座23には、蝶番6が上下方向に貫通する貫通孔231と、被係合部232とが設けられている。これら蝶番6と蝶番座23とによって蝶番構造が構成され、蓋本体4を360度旋回あるいは180度転回させることができる。また、内圧(マンホール内の圧力)が所定以上に高くなると蓋体3が持ち上がり、閉蓋状態から蓋本体4が浮上するとともに、詳しくは後述するように爪531が爪受け部22に係合し、蝶番6の鉤状突起61が蝶番座23の被係合部232に係合する。なお、抜止突起62は、蓋体3を持ち上げると蝶番座23に当接する部分であり、抜止突起62が蝶番座23に当接するまで蓋体3を持ち上げると、蓋本体4を垂直反転させることができる。
【0020】
弁体5は、蓋本体4の下面における一端側の周縁部に設けられている。また、受枠2の一端側における、内周面21の下方位置には、爪受け部22が設けられている。この爪受け部22は、図1(b)の断面では斜め下方に突き出た部分である。
【0021】
図2(a)は、図1(b)における破線の円で囲んだ部分を拡大して示す図である。
【0022】
図2(a)に示すように、弁体5は、弁蓋51と、蓋本体4の裏側に支持された一対の軸52,52(図2(b)参照)と、弁蓋51の下部に設けられたロック部53を有している。弁蓋51は、弁座511と、弁座511上に配置されたパッキン512と、パッキン512上に配置された押え板513とを有している。具体的には、パッキン512および押え板513が、ボルトとナットからなる固定部材514によって弁座511に固定されている。弁体5は、一対の軸52,52を中心に、弁蓋51が鍵穴41を閉塞する閉塞状態と、弁蓋51が鍵穴41を開放する開放状態とに回動可能なものである。ロック部53は、弁蓋51の下側に設けられ、受枠2の爪受け部22に係合する爪531と、閉塞状態に向かう方向の力を弁体5に付与する錘532とを有している。
【0023】
図2(b)は、同図(a)に示す弁体を外側(図では左側)から見た図である。この図2(b)では、弁体5の軸52が蓋本体4に支持される状態を概念的に示している。
【0024】
図2(a)および同図(b)に示すように、蓋本体4の裏面には、軸52を支持する支持溝421が形成されたブラケット42が一対設けられている。支持溝421は、高さが軸52の径とほぼ等しく設定され、水平方向に延在して形成されたものである。支持溝421の内側には、挿通孔422に挿通されたボルトとナットからなるストッパ43が設けられ、軸52は、支持溝421における、外側の端部から、内側のストッパ43に当接するまでの範囲で水平移動することができる。この範囲の軸52の移動距離が、最大移動距離D2(図4(b)参照)に相当する。
【0025】
ロック部53の内側部分の上部には、付勢手段としてのバネSが設けられている。限定されるものではないが、本実施形態では、バネSにダブルトーションスプリングを採用している。このバネSによって、弁蓋51が閉塞状態に向かう方向と軸52が外側に向かう方向に弁体5が付勢されている。
【0026】
図2(a)において、鎖線の楕円で囲んだ部分を拡大して示すように、蓋本体4の、鍵穴41を画定する鍵穴画定壁における内側部分には、下方に向かうに従い鍵穴41が拡がる方向に傾斜した本体側傾斜部41aが形成されている。本実施形態では、本体側傾斜部41aは、外側から内側に向かって断面視直線状に傾斜した第1傾斜部411と、この第1傾斜部411に連続し、外側から内側に向かって断面視円弧状に傾斜した第2傾斜部412とからなり、本体側傾斜部41aの水平方向の長さL1は、最大移動距離D2(図4(b)参照)よりも長く設定されている。また、詳しくは後述する接触移動距離D1(図3(b)参照)は、最大移動距離D2よりも短いため、本体側傾斜部41aの水平方向の長さL1は、当然に接触移動距離D1よりも長い。
【0027】
図3は、開閉工具を用いて、弁体を回動させる様子を説明するための図である。
【0028】
図3(a)に示すように、開閉工具Tによって弁蓋51を押し込むと、弁体5は、軸52を中心に図では反時計回りに回動していく。弁体5が回動していくと、弁蓋51の外側端部(図ではパッキン512の外側端部)が、受枠2の内周面21に接触して内側に押される。これにより、白抜きの矢印で示すように、バネSの付勢力に抗して、軸52が内側に移動する。なお、弁体5を回動させ、ロック部53の爪531が、受枠2の爪受け部22から解除された状態で、開閉工具Tの先端を蓋本体4の裏面に引っかけ、この蓋体3を持ち上げて開けることにより開口H(図1(a)参照)を開放することができる。
【0029】
さらに、開閉工具Tを押し込むと、一点鎖線で示すように、弁蓋51の外側端部が、受枠2の内周面21における下端に達するまで、受枠2の内周面21に押されて、軸52がさらに内側に移動する。このように、弁蓋51が受枠2の内周面21に接触するとバネSの付勢力に抗して軸52が内側に向かって移動するものであるため、弁体5の開放状態への回動動作がスムーズになる。なお、図3(a)では、図を簡略化するため、一点鎖線で示す弁体5については、ロック部53やバネSを省略している。また、以後の図においても、図を簡略化するため、適宜部材を省略する。
【0030】
図3(b)では、同図(a)における、軸52の移動を、概念的に示している。図3(b)に示す軸52の移動距離が、接触移動距離D1に相当する。図3(b)では、一点鎖線で示す軸52がストッパ43まで到達しておらず、さらに内側に移動可能であり、製造誤差等を考慮し、接触移動距離D1は、最大移動距離D2(図4(b)参照)よりも短く設定されている。
【0031】
軸52が接触移動距離D1移動した状態で開閉工具Tを引き抜くと、バネSの付勢力により軸52が外側に移動していくが、その前に、図3(c)に示すように、バネSの付勢力により、弁蓋51が閉塞状態に向かう方向に弁体5が回動する場合がある。本実施形態では、蓋本体4に本体側傾斜部41aを有しているため、軸52が接触移動距離D1移動した状態で、閉塞状態に向かう方向に弁体5が回動しても、弁蓋51の内側端部(図面ではパッキン512の内側端部)が本体側傾斜部41aに当接する。このため、バネSの付勢力により軸52が外側に移動するにつれて弁蓋51の内側端部が本体側傾斜部41aを滑り、弁蓋51が引っかかってしまうことなく閉鎖状態まで弁蓋51が移動することができる。特に、本実施形態では、本体側傾斜部41aの長さL1は、接触移動距離D1よりも長く設定されているため、弁蓋51の内側端部を、本体側傾斜部41aに安定して当接させることができる。さらに、本実施形態の本体側傾斜部41aでは、内側部分に、断面視円弧状に傾斜した第2傾斜部412(図2(a)参照)を有しているため、弁蓋51の閉鎖状態までの移動をよりスムーズにすることができる。
【0032】
図4は、軸を最大移動距離移動させた場合の弁体の回動を説明するための図である。
【0033】
図4(a)に示すように、軸52を接触移動距離D1移動させた後も、開閉工具Tを押し込むと、同図(b)に概念的に示すように、軸52はストッパ43に当接するまで外側に移動する。ストッパ43に当接するまでの軸52の移動距離が、最大移動距離D2となる。前述したように、本実施形態では、本体側傾斜部41aの水平方向の長さL1を、最大移動距離D2よりも長く設定している。このため、図4(c)に示すように、軸52が最大移動距離D2移動した後、閉塞状態に向かう方向に弁体5が回動しても、弁蓋51の内側端部が本体側傾斜部41aに当接する。このため、弁蓋51が引っかかってしまうことなく本体側傾斜部41aにガイドされて、弁蓋51が閉鎖状態まで移動することができる。なお、蓋本体4の肉厚や鍵穴41の形状等によっては、本体側傾斜部41aの長さL1を、接触移動距離D1よりも長く、最大移動距離D2よりも短く設定してもよい。
【0034】
次に、図1図4に示す実施形態の蓋体における参考例について説明する。以下に説明する参考例および比較例においては、図1図4に示す実施形態との相違点を中心に説明し、図1図4に示す実施形態における構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号を付して説明し、重複する説明は省略することがある。
【0035】
図5(a)は、参考例1の蓋体における、図2(a)と対応する部分を示す図であり、図5(b)は、同図(a)に示す参考例1の蓋体における、軸が最大移動距離移動するまで回動した様子を示す図である。
【0036】
図5(a)に示すように、本参考例の蓋体3では、実施形態の蓋体3における、本体側傾斜部41a(図2(a)参照)に代えて、弁蓋51における内側部分に設けられ上方に向かうに従い外側に傾斜した弁蓋側傾斜部51aを採用している。本参考例の弁蓋側傾斜部51aは、具体的には、パッキン512と押え板513の内側部分に形成され、水平方向の長さL2が、最大移動距離D2(図4(b)参照)よりも長く設定されている。このため、図5(b)に示すように、軸52が最大移動距離D2移動した状態で、図では時計回りとなる閉鎖状態に向かう方向に弁体5が回動しても、蓋本体4の鍵穴41における裏面側の縁41bに弁蓋側傾斜部51aが当接する。このため、弁蓋51が引っかかってしまうことなく、鍵穴41における裏面側の縁41bが弁蓋側傾斜部51aを滑って、弁蓋51が閉鎖状態まで移動することができる。なお、弁蓋側傾斜部51aについても、本体側傾斜部41aと同様に、その水平方向の長さL2を、接触移動距離D1(図3(b)参照)よりも長く、最大移動距離D2よりも短く設定してもよい。
【0037】
図6(a)は、参考例2の蓋体における、図2(a)と対応する部分を示す図であり、図6(b)は、同図(a)に示す参考例2の蓋体における、軸が最大移動距離移動するまで回動した様子を示す図である。
【0038】
本参考例の蓋体3は、本体側傾斜部41aと、参考例1の蓋体3と同様の弁蓋側傾斜部51aの両方を備えている。また、本体側傾斜部41aの水平方向の長さL1’と、弁蓋側傾斜部51aの水平方向の長さL2’は、その合計の長さが、最大移動距離D2(図4(b)参照)よりも長く設定されている。このため、図6(b)に示すように、軸52が最大移動距離D2移動した状態で、図では時計回りとなる閉鎖状態に向かう方向に弁体5が回動しても、本体側傾斜部41aに弁蓋側傾斜部51aが当接する。このため、弁蓋51が引っかかってしまうことなく、弁蓋51が閉鎖状態まで移動することができる。なお、本体側傾斜部41aの水平方向の長さL1’と、弁蓋側傾斜部51aの水平方向の長さL2’は、その合計の長さが、接触移動距離D1(図3(b)参照)よりも長く、最大移動距離D2よりも短く設定してもよい。
【0039】
最後に、本体側傾斜部41a(図2(a)参照)も弁蓋側傾斜部51a(図5(a)参照)も有していない比較例について説明する。
【0040】
図7は、比較例の蓋体における、軸が接触移動距離移動した後、閉鎖状態に回動する様子を示す図である。
【0041】
図7に示すように、比較例の蓋体9は、本体側傾斜部41aも弁蓋側傾斜部51aも有していないため、軸52が、例えば接触移動距離D1(図3(b)参照)移動した状態で、図では時計回りとなる閉鎖状態に向かう方向に弁体5が回動すると、蓋本体4の鍵穴41における裏面側の縁41bと、弁蓋51の内側部分が干渉し、弁蓋51が引っかかってしまう虞がある。
【0042】
以上説明した蓋体3によれば、弁蓋51が鍵穴41を開放する開放状態への回動動作のみならず、弁蓋51が鍵穴41を閉塞する閉塞状態への回動動作もスムーズにすることができる。
【0043】
本発明は前述した実施形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。また、以上説明した各実施形態の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を、他の実施形態に適用してもよい。
【0044】
(付記1)他の地下構造物用蓋体は、受枠によって画定される、地下構造物につながる開口を塞ぐ地下構造物用蓋体において、
前記受枠の内周面に支持され外周部分に鍵穴が形成された蓋本体と、
弁蓋と前記蓋本体の裏側に支持された軸とを有し、該軸を中心に該弁蓋が該鍵穴を閉塞する閉塞状態と該弁蓋が該鍵穴を開放する開放状態とに回動可能であって、最大移動距離の範囲内で該軸が内側と外側とに水平移動可能な弁体と、
前記弁蓋が前記閉塞状態に向かう方向と外側に向かう方向に前記弁体を付勢する付勢手段と、を有するものであり、
前記弁体は、前記閉塞状態から前記付勢手段の付勢力に抗して回動し、前記弁蓋が前記受枠の内周面に接触すると該付勢手段の付勢力に抗して前記軸が内側に向かって前記最大移動距離よりも短い接触移動距離移動するものであり、
前記蓋本体の、前記鍵穴を画定する鍵穴画定壁における内側部分に設けられ下方に向かうに従い該鍵穴が拡がる方向に傾斜した本体側傾斜部、または、前記弁蓋における内側部分に設けられ上方に向かうに従い外側に傾斜した弁蓋側傾斜部のうち、少なくとも一方を有するものであることを特徴とする。
【0045】
(付記2)付記1記載の地下構造物用蓋体において、前記本体側傾斜部および前記弁蓋側傾斜部は、前記閉塞状態における水平方向の長さが、前記接触移動距離よりも長いものであってもよい。
【0046】
こうすることで、開閉工具等によって前記弁体が押し込まれ、前記軸が外側から内側に向かって前記接触移動距離移動した場合であっても、前記弁蓋と前記蓋本体との干渉が回避しやすくなる、あるいは、該弁蓋を前記閉塞状態にスムーズにガイドすることができる。
【0047】
(付記3)付記1記載の地下構造物用蓋体において、前記本体側傾斜部および前記弁蓋側傾斜部を有し、該本体側傾斜部の水平方向の長さと該弁蓋側傾斜部の水平方向の長さとの合計の長さが、前記接触移動距離よりも長いものであってもよい。
【0048】
こうすることでも、前記軸が外側から内側に向かって前記接触移動距離移動した場合に、前記弁蓋と前記蓋本体との干渉が回避しやすくなる、あるいは、該弁蓋を前記閉塞状態にスムーズにガイドすることができる。
【符号の説明】
【0049】
2 受枠
21 内周面
3 蓋体
4 蓋本体
41 鍵穴
41a 本体側傾斜部
421 支持溝
5 弁体
51 弁蓋
51a 弁蓋側傾斜部
52 軸
53 ロック部
6 蝶番
D1 接触移動距離
D2 最大移動距離
S バネ
T 開閉工具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7