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特開2023-123848PD-1阻害剤を投与することによって皮膚がんを処置する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123848
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】PD-1阻害剤を投与することによって皮膚がんを処置する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230829BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230829BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230829BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230829BHJP
   A61K 38/04 20060101ALI20230829BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20230829BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230829BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P35/00 ZNA
A61P35/04
A61K45/00
A61K38/04
C07K16/28
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023112057
(22)【出願日】2023-07-07
(62)【分割の表示】P 2022004089の分割
【原出願日】2017-05-12
(31)【優先権主張番号】62/335,743
(32)【優先日】2016-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/340,142
(32)【優先日】2016-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/348,546
(32)【優先日】2016-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/451,274
(32)【優先日】2017-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/374,020
(32)【優先日】2016-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/364,920
(32)【優先日】2016-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/350,305
(32)【優先日】2016-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ジー・フュリー
(72)【発明者】
【氏名】イザレル・ロウィ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】対象におけるがんを処置する、がんの少なくとも1つの症状もしくは適応を改善する、またはがんの成長を阻害するための医薬組成物を提供する。
【解決手段】腫瘍を処置または腫瘍の成長を阻害する方法で使用するための、プログラム細胞死1(PD-1)に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物であって、前記方法は:(a)脳がんを有する患者を選択する工程;および(b)PD-1に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片の治療上有効量を患者に投与する工程;を含む、前記医薬組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍を処置または腫瘍の成長を阻害する方法であって:
(a)皮膚がんを有する患者を選択する工程;および
(b)PD-1に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片の治療上有効量を、それを必要とする対象に投与する工程であって、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)とを含む、該工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
抗PD-1抗体は単剤療法として投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記皮膚がんはUV関連皮膚がんである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記皮膚がんは、皮膚扁平上皮癌(CSCC)、基底細胞癌(BCC)、メルケル細胞癌、および黒色腫からなる群より選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
但し、前記皮膚がんは頭頸部の扁平上皮癌ではない、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記皮膚がんは、転移性、切除不能、および/または局所進行がんである、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記皮膚がんはBCCであり、前記患者はヘッジホッグ経路阻害剤による処置に不耐性であるか、または処置後に進行している、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記皮膚がんはCSCCであり、前記患者は、抗がん治療による過去の処置に不耐性であるか、または処置後に進行している、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記皮膚がんは転移性CSCCであり、前記患者は、手術、放射線、化学療法、および別の抗PD-1抗体からなる群より選択される少なくとも1つの過去の全身抗がん治療によって治療されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記皮膚がんは局所進行CSCCであり、前記患者は治癒的手術を受け入れられない、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体またはその抗原結合断片は、1つまたはそれ以上の用量として投与され、各用量は直前の用量の0.5~4週間後に投与される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
各用量は、直前の用量の2週間後に投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
各用量は、直前の用量の3週間後に投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
各用量は、患者の体重1kgあたり1、3、または10mgを含む、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
各用量は、患者の体重1kgあたり3mgを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
各用量は、抗PD-1抗体の50~600mgを含む、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
各用量は、抗PD-1抗体の200、250、または350mgを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
対象は、過去の治療に抵抗性であるかもしくは不適切に反応し、または治療後に再燃している、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
投与によって、腫瘍の成長の阻害、腫瘍の退縮、腫瘍サイズの低減、腫瘍細胞数の低減、腫瘍の成長の遅延、アブスコパル効果、腫瘍転移の阻害、転移病変の経時的な低減、化学療法剤または細胞傷害剤の使用の低減、腫瘍負荷の低減、無増悪生存の延長、全生存の延長、完全奏効、部分奏効、および安定からなる群より選択される少なくとも1つの効果が得られる、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
追加の治療剤または治療を、対象に投与することをさらに含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法であって、該追加の治療剤または治療は、手術、放射線、化学療法剤、がんワクチン、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)阻害剤、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)阻害剤、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)阻害剤、グルココルチコイド誘導腫瘍壊死因子受容体(GITR)阻害剤、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有タンパク質3(TIM3)阻害剤、BおよびTリンパ球アテニュエータ(BTLA)阻害剤、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)阻害剤、CD47阻害剤、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、二重特異性CD3/CD20抗体、血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニスト、アンジオポエチン-2(Ang2)阻害剤、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)阻害剤、CD38阻害剤、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、シクロホスファミド、腫瘍特異抗原に対する抗体、カルメットゲラン桿菌ワクチン、細胞毒素、インターロイキン6受容体(IL-6R)阻害剤、インターロイキン4受容体(IL-4R)阻害剤、IL-10阻害剤、IL-2、IL-7、IL-21、IL-15、抗体-薬物コンジュゲート、抗炎症薬、ならびに栄養補助食品からなる群より選択される、前記方法。
【請求項21】
抗PD-1抗体は、静脈内、皮下、または腹腔内に投与される、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、3つのLCDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)とを含み、HCDR1は、配列番号3のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号4のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号5のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号6のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号7のアミノ酸配列を含み;およびLCDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
HCVRは配列番号1のアミノ酸配列を含み、LCVRは配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
抗PD-1抗体は、配列番号1と90%の配列同一性を有するHCVRを含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
抗PD-1抗体は、配列番号2と90%の配列同一性を有するLCVRを含む、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
抗PD-1抗体は、配列番号1と90%の配列同一性を有するHCVRと、配列番号2と90%の配列同一性を有するLCVRとを含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
抗PD-1抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、PCT国際特許出願として2017年5月12日に提出されており、各開示の全体が参照によって本明細書に組み入れられる、2016年5月13日に提出された米国特許仮出願第62/335,743号;2016年5月23日に提出された第62/340,142号;2016年6月10日に提出された第62/348,546号;2016年6月15日に提出された第62/350,305号;2016年7月21日に提出された第62/364,920号;2016年8月12日に提出された第62/374,020号;および2017年1月27日に提出された第62/451,274号に対する優先権の利益を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、2017年5月12日に作成され、8.63キロバイト(KB)のサイズを有する「配列表」と題するテキストファイルとしての電子フォーマットでの配列表を含む。テキストファイル「配列表」の内容物は、参照によって本明細書に組み入れられる。
【0003】
本発明は、プログラム細胞死1(PD-1)受容体に特異的に結合する抗体の治療上有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、皮膚がんを処置する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
皮膚がんは、米国における最も一般的ながんである(非特許文献1)。2012年に米国において診断された基底細胞癌および扁平上皮癌を含む非黒色腫皮膚がんの症例は、推定で540万例であった(非特許文献2)。皮膚扁平上皮癌(CSCC)は、基底細胞癌(BCC)に次いで米国において最も一般的な悪性腫瘍である(非特許文献3)。CSCCの危険因子には、UVの曝露、高齢、および免疫抑制が挙げられる(非特許文献4;非特許文献5)。CSCCまたはBCCの診断を有する大多数の人は非常に好ましい予後を有するが、CSCCは、BCCより侵襲性で再発する傾向がより高い。CSCCと診断された人は、BCCと診断された人とは異なり、年齢をマッチさせた対照と比較して死亡率が増加している(非特許文献6)。
【0005】
外科的切除は、CSCCの臨床での管理の中心である。主な目標は、がんの完全切除であり、許容できる美容上のアウトカムが二次目標である。CSCCの予後不良に関連する要因には、2cm超の腫瘍サイズ、2mm超の腫瘍の深さ、神経周囲の浸潤、宿主の免疫抑制、および再発病変が挙げられる。切除不能の局所再発または転移性の疾患を発症した少数の患者に関して、治療の選択肢は限られている。患者に、術後の放射線療法を投与してもよい。化学療法は、安全性および忍容性の懸念により、多くの患者にとって魅力的な選択肢ではない。
【0006】
最も一般的な臨床サブタイプは結節型BCCである。次いで一般的な臨床サブタイプは表在型、硬化(線維)型、および線維上皮型である。ほとんどの患者は手術によって治癒するが、少数の患者は、切除不能な局所進行または転移性疾患を発症する。実質的に全てのBCCは、最も一般的には、腫瘍抑制因子であるパッチドホモログタンパク質(protein patched homologue)(PTCH)をコードする遺伝子における散発性の機能喪失変異によるヘッジホッグシグナリング経路の異常なシグナリングによって特徴付けられる。PTCH変異によって、Gタンパク質共役受容体スムーズンド(SMO)のパッチド媒介阻害が失われ、それによって、下流のシグナリングが増強され、制御されない細胞増殖が起こる(非特許文献7)。BCCにおけるSMOの発がん性の役割
が認識されたことによって、一般的にヘッジホッグ阻害剤(HHI)と呼ばれる経口で利用可能なSMO阻害剤であるビスモデギブおよびソニデジブが開発された。HHIの有害な副作用に加えて、1つのHHI(ビスモデギブ)で進行した患者は、別のHHI(ソニデジブ)によるその後の処置でも腫瘍の阻害が起こらないことが見出された(非特許文献8)。HHI治療中に疾患の進行を経験した患者、または過去のHHI治療に不耐性である患者におけるBCCに関して承認された作用物質はない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Guyら、2015年、Am.J.Prev.Med.48:183~7頁
【非特許文献2】Rogersら、2015年、JAMA Dermatol.、電子出版、4月30日、2015年
【非特許文献3】Kariaら、2013年、J.Am.Acad.Dermatol.68:957~966頁
【非特許文献4】Alamら、2001年、New Engl.J.Med.344(975~983頁)
【非特許文献5】Madan 2010年、Lancet 375:673~685頁
【非特許文献6】Reesら、2015年、Int.J.Cancer 137:878~84頁
【非特許文献7】Sekulicら、2016年、Cell 164:831頁
【非特許文献8】Danialら、2016年、Clin.Cancer Res.22:1325~29頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、CSCCおよびBCCを含む皮膚がんの安全かつ有効な全身治療が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ある特定の実施形態において、本発明は、対象におけるがんを処置する、がんの少なくとも1つの症状もしくは適応を改善する、またはがんの成長を阻害する方法を提供する。本発明のこの態様に従う方法は、プログラム細胞死1(PD-1)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片の治療上有効量を、場合により放射線療法と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0010】
ある特定の実施形態において、本発明は、がんを有する対象を選択することと、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量を、放射線療法の1つまたはそれ以上の線量と組み合わせて投与することとを含む、固形腫瘍を含むがんを処置する方法を含む。ある特定の実施形態において、組合せの投与によって、抗体または放射線単独のいずれかの投与と比較して、治療効能または抗腫瘍効能の増強が得られる。
【0011】
本発明のある特定の実施形態において、対象におけるがんを処置する、がんの少なくとも1つの症状もしくは適応を軽減する、またはがんの成長を阻害する方法を提供する。本発明のある特定の実施形態において、腫瘍の成長を遅らせるまたは腫瘍の再発を予防する方法を提供する。本発明のある特定の実施形態において、がん患者の全生存または無増悪生存を延長させる方法を提供する。本発明のこの態様に従う方法は、PD-1に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片の治療上有効量の1つまたはそれ以上の用量を連続的に投与することを含む。一実施形態において、抗PD-1抗体は、放射線療法と組み合
わせて投与される。
【0012】
ある特定の実施形態において、がんまたは腫瘍は、固形腫瘍または悪性腫瘍である。ある特定の実施形態において、固形腫瘍は、結腸直腸がん、卵巣がん、前立腺がん、乳がん、脳がん、子宮頸がん、膀胱がん、肛門がん、子宮がん、結腸がん、肝臓がん、膵臓がん、肺がん、子宮内膜がん、骨がん、精巣がん、皮膚がん、腎臓がん、胃がん、食道がん、頭頸部がん、唾液腺がん、および骨髄腫からなる群より選択される。
【0013】
ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体は、過去にがんの全身処置を受けていないがん患者に、「ファーストライン」処置として投与される。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体は、化学療法、手術、および放射線を含むがこれらに限定されない「標準治療」によって過去に処置がん(例えば、転移性がん)患者に、「セカンドライン」処置として投与される。
【0014】
本発明の一実施形態は、皮膚がんの処置に使用するための抗PD-1抗体に関する。ある特定の実施形態において、皮膚がんは、皮膚扁平上皮癌および基底細胞癌を含むがこれらに限定されない非黒色腫皮膚がんである。抗PD-1抗体を、本明細書に記載されるように、転移性または局所進行皮膚扁平上皮癌患者に投与してもよい。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体は、本明細書に記載されるように、ヘッジホッグ経路阻害剤(例えば、ビスモデギブ、ソニデジブ)に対して不耐性であるか、またはヘッジホッグ経路阻害剤によって処置したが進行を示す、進行基底細胞癌患者に投与される。
【0015】
ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の各用量は、対象の体重1kgあたり0.1~20mgを含む。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の各用量は、対象の体重1kgあたり0.3、1、3、5、または10mgを含む。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の各用量は、20~600mgを含む。一実施形態において、抗PD-1抗体の各用量は、約200mgを含む。一実施形態において、抗PD-1抗体の各用量は、約250mgを含む。一実施形態において、抗PD-1抗体の各用量は、約350mgを含む。
【0016】
ある特定の実施形態において、放射線療法は、1つまたはそれ以上の線量で投与される。ある特定の実施形態において、放射線療法の各線量は、2~100グレイ(Gy)を含む。ある特定の実施形態において、放射線療法は、少分割放射線療法である。ある特定の実施形態において、放射線療法は2~12分割を含む。
【0017】
ある特定の実施形態において、本発明の方法は、放射線療法の前、同時、または後に抗PD-1抗体の治療上有効量を投与することを含む。一実施形態において、本発明の方法は、放射線療法の線量の前に抗PD-1抗体を投与することを含む。
【0018】
ある特定の実施形態において、本発明の方法は、抗PD-1抗体の各々0~50治療用量を投与することを含み、各用量は、直前の用量の0.5~12週間後に投与される。一実施形態において、各用量は、直前の用量の1週間後に投与される。一実施形態において、各用量は、直前の用量の2週間後に投与される。一実施形態において、各用量は、直前の用量の3週間後に投与される。
【0019】
ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量、および場合により放射線療法は、処置サイクルに含まれる。本発明のこの態様に従う方法は、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量を含む少なくとも1つの処置サイクルを、それを必要とする対象に投与することを含む。ある特定の実施形態において、最大12処置サイクルが、それを必要とする対象に投与される。ある特定の実施形態において、少なくとも
1つの処置サイクルは、放射線療法の1つまたはそれ以上の線量をさらに含む。ある特定の実施形態において、放射線療法は、1つのみの処置サイクルで投与される。ある特定の実施形態において、放射線療法は、少分割放射線療法である。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体は、放射線療法の前に投与される。
【0020】
ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体および放射線療法は、追加の治療剤または治療(例えば、シクロホスファミド、または本明細書に開示される任意の薬剤もしくは治療)と組み合わせて投与される。
【0021】
ある特定の実施形態において、処置は、腫瘍の退縮、アブスコパル効果、腫瘍転移の阻害、経時的な転移病変の低減、化学療法または細胞傷害剤の使用の低減、腫瘍負荷の低減、無増悪生存の延長、全生存の延長、完全奏効、部分奏効、および安定からなる群より選択される1つまたはそれ以上の治療効果を生じる。
【0022】
ある特定の実施形態に従って、抗PD-1抗体または抗原結合タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)と、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖CDRとを含む。本発明の方法の文脈において使用することができる1つのそのようなタイプの抗原結合タンパク質は、REGN2810のような抗PD-1抗体である。
【0023】
ある特定の実施形態において、本発明は、ヒトを含む対象におけるがんを処置またはがんの成長を阻害するための薬剤の製造における抗PD-1抗体またはその抗原結合断片の使用を提供する。ある特定の実施形態において、がんは固形腫瘍である。ある特定の実施形態において、がんは、結腸直腸がん、卵巣がん、前立腺がん、乳がん、脳がん、子宮頸がん、膀胱がん、肛門がん、子宮がん、結腸がん、肝臓がん、膵臓がん、肺がん、子宮内膜がん、骨がん、精巣がん、皮膚がん、腎臓がん、胃がん、食道がん、頭頸部がん、唾液腺がん、または骨髄腫である。
【0024】
ある特定の実施形態において、本発明は、放射線療法と組み合わせた、ヒトを含む対象におけるがんを処置またはがんの成長を阻害するための薬剤の製造における抗PD-1抗体またはその抗原結合断片の使用を提供する。ある特定の実施形態において、がんは固形腫瘍である。ある特定の実施形態において、がんは、結腸直腸がん、卵巣がん、前立腺がん、乳がん、脳がん、子宮頸がん、膀胱がん、肛門がん、子宮がん、結腸がん、肝臓がん、膵臓がん、肺がん、子宮内膜がん、骨がん、精巣がん、皮膚がん、腎臓がん、胃がん、食道がん、頭頸部がん、唾液腺がん、または骨髄腫である。
【0025】
1つの態様において、本発明は、がんに罹患した対象を処置するためのキットであって、(a)PD-1に特異的に結合して阻害する抗体またはその抗原結合断片の用量と、(b)本明細書に開示の方法に従って対象を処置するために抗PD-1抗体を使用するための説明書とを含むキットを提供する。ある特定の実施形態において、がんは、結腸直腸がん、卵巣がん、前立腺がん、乳がん、脳がん、子宮頸がん、膀胱がん、肛門がん、子宮がん、結腸がん、肝臓がん、膵臓がん、肺がん、子宮内膜がん、骨がん、精巣がん、皮膚がん、腎臓がん、胃がん、食道がん、頭頸部がん、唾液腺がん、および骨髄腫からなる群より選択される。
【0026】
本発明の他の実施形態は、以下の詳細な説明を再検討することにより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】MC38腫瘍を移植したマウスにおける抗PD-1抗体および放射線(XRT)の投与を含む試験デザインを示す(本明細書の実施例1に記載の試験)図である。
図2】本明細書の実施例1に記載の試験における、アイソタイプ対照抗体(●)、抗PD-1抗体(■)、アイソタイプ対照+放射線(XRT)(▲)、または抗PD-1抗体+XRT(▼)によって処置したマウスにおける腫瘍の成長の平均値を示す図である。
図3】本明細書の実施例1に記載の試験における、アイソタイプ対照抗体(●)、抗PD-1抗体(■)、アイソタイプ対照+放射線(XRT)(▲)、または抗PD-1抗体+XRT(▼)によって処置したマウスの全生存を示す図である。
図4】B16F10.9腫瘍を移植したマウスにおける抗PD-1抗体および放射線(XRT)の投与を含む試験デザインを示す(本明細書の実施例2に記載の試験)図である。
図5】本明細書の実施例2に記載の試験における、アイソタイプ対照抗体(●)、抗PD-1抗体(■)、アイソタイプ対照+放射線(XRT)(◆)、または抗PD-1抗体+XRT(○)によって処置したマウスにおける腫瘍の成長の平均値を示す図である。
図6】本明細書の実施例2に記載の試験における、アイソタイプ対照抗体(●)、抗PD-1抗体(■)、アイソタイプ対照+放射線(XRT)(◆)、または抗PD-1抗体+XRT(○)によって処置したマウスの全生存を示す図である。
図7】MC38腫瘍を移植したマウスにおける抗PD-1抗体および放射線(XRT)の投与を含む試験デザインを示す(本明細書の実施例4に記載の試験)図である。
図8】本明細書の実施例4に記載の試験における、アイソタイプ対照抗体(●)、抗PD-1抗体(■)、アイソタイプ対照+放射線(XRT)(▲)、または抗PD-1抗体+XRT(▼)によって処置したマウスにおける第1の腫瘍の成長の平均値を示す図である。
図9】本明細書の実施例4に記載の試験における、アイソタイプ対照抗体(●)、抗PD-1抗体(■)、アイソタイプ対照+放射線(XRT)(▲)、または抗PD-1抗体+XRT(▼)によって処置したマウスの全生存を示す図である。
図10】本明細書の実施例4に記載の試験における、アイソタイプ対照抗体(●)、抗PD-1抗体(■)、アイソタイプ対照+放射線(XRT)(▲)、または抗PD-1抗体+XRT(▼)によって処置したマウスにおける第2の腫瘍の成長を示す図である。
図11】MC38腫瘍を移植したマウスにおける抗PD-1抗体、抗GITR抗体および放射線(XRT)の投与を含む試験デザインを示す(本明細書の実施例5に記載の試験)図である。
図12】本明細書の実施例5に記載の試験における、アイソタイプ対照抗体(●)、抗PD-1抗体(■)、抗GITR抗体(▲)、抗PD-1抗体と抗GITR抗体の組合せ(▼)、アイソタイプ対照+放射線(XRT)(◆)、抗PD-1抗体+XRT(○)、抗GITR抗体+XRT(□)、または抗PD-1抗体、抗GITR抗体+XRTの組合せ(△)によって処置したマウスにおける腫瘍の成長の平均値を示す図である。
図13】本明細書の実施例5に記載の試験における、アイソタイプ対照抗体(●)、抗PD-1抗体(■)、抗GITR抗体(▲)、抗PD-1抗体と抗GITR抗体の組合せ(▼)、アイソタイプ対照+放射線(XRT)(◆)、抗PD-1抗体+XRT(○)、抗GITR抗体+XRT(□)、または抗PD-1抗体、抗GITR抗体+XRTの組合せ(△)によって処置したマウスの全生存を示す図である。
図14A】ベースライン、左、および24週目、右に矢印によって示した基底細胞癌(BCC)患者における肺転移のX線画像を示す図である。
図14B】ベースライン、左、および16週目、右の皮膚扁平上皮癌(CSCC)患者における頸部腫瘍塊のX線画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明を説明する前に、本発明は、記載の特定の方法および実験条件が変化し得ることから、そのような方法および条件に限定されないと理解すべきである。同様に、本明細書において使用した用語は、単に特定の実施形態を説明する目的のためであり、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ制限されることから、制限的ではないと意図されると理解すべきである。
【0029】
特に定義していなければ、本明細書において使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書において使用される、特定の列挙された数値を参照して使用する場合の用語「約」は、その値が列挙された値から1%以下変動してもよいことを意味する。例えば、本明細書において使用されるように、「約100」という表現は、99および101、ならびにその間の全ての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4等)を含む。
【0030】
本明細書に記載の方法および材料と類似または同等の任意の方法および材料を、本発明の実践に使用することができるが、好ましい方法および材料を以下に記載する。本明細書において言及した全ての刊行物は、その全体を記載するために参照によって本明細書に組み入れられる。
【0031】
がんを処置またはがんの成長を阻害する方法
本発明は、対象におけるがんを処置する、がんの少なくとも1つの症状もしくは適応を改善もしくはその重症度を低減する、またはがんの成長を阻害する方法を含む。本発明のこの態様に従う方法は、PD-1に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片の治療上有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体は、抗腫瘍治療(本明細書において他所で記述されている)と組み合わせて投与される。一実施形態において、抗腫瘍治療は放射線療法である。本明細書において使用される「処置する」、「処置している」等の用語は、症状を軽減する、一時的または永続的に症状の原因を除去する、腫瘍の成長を遅らせるもしくは阻害する、腫瘍細胞量もしくは腫瘍負荷を低減する、腫瘍の退縮を促進する、腫瘍の縮小、壊死、および/もしくは消失を引き起こす、腫瘍の再発を防止する、転移を予防もしくは阻害する、転移性の腫瘍の成長を阻害する、ならびに/または対象の生存期間を延長させることを意味する。
【0032】
本明細書において使用される、「それを必要とする対象」という表現は、がんの1つまたはそれ以上の症状または適応を示す、ならびに/または固形腫瘍を含むがんと診断されている、およびがんの処置を必要とするヒトまたは非ヒト哺乳動物を意味する。多くの実施形態において、用語「対象」は、用語「患者」と互換的に使用することができる。例えば、ヒト対象は、原発または転移性腫瘍を有すると診断されていてもよく、および/または説明できない体重減少、全身虚弱、持続性の疲労、食欲減退、発熱、寝汗、骨痛、息切れ、腹部膨満、胸痛/圧痛、脾臓肥大、およびがん関連バイオマーカー(例えば、CA125)のレベルの上昇を含むがこれらに限定されない1つまたはそれ以上の症状または適応を有すると診断されていてもよい。この表現は、原発または確立された腫瘍を有する対象を含む。特定の実施形態において、表現は、固形腫瘍、例えば、結腸がん、乳がん、肺がん、前立腺がん、皮膚がん、肝臓がん、骨がん、卵巣がん、子宮頸がん、膵臓がん、頭頸部がん、および脳がんを有するおよび/またはそれらの処置を必要とするヒト対象を含む。用語は、原発または転移性腫瘍(進行悪性腫瘍)を有する対象を含む。ある特定の実施形態において、「それを必要とする対象」という表現は、過去の治療(例えば、抗がん剤による処置)に耐性もしくは抵抗性である、または制御が不適切である固形腫瘍を有する患者を含む。例えば、表現は、化学療法(例えば、カルボプラチンまたはドセタキセル)による処置のような過去の治療の1つまたはそれ以上によって処置されている対象を含む。ある特定の実施形態において、「それを必要とする対象」という表現は、過去の治療の1つまたはそれ以上によって処置されているが、その後再燃または転移した、固形腫瘍
を有する患者を含む。例えば、腫瘍の退縮に至る1つまたはそれ以上の抗がん剤による処置を受けているが、その後1つまたはそれ以上の抗がん剤に対して耐性である(例えば、化学療法耐性がん)がんが再燃している、固形腫瘍を有する患者を、本発明の方法によって処置する。表現はまた、従来の抗がん治療が、例えば毒性の副作用により勧められない固形腫瘍を有する対象も含む。例えば、表現は、毒性の副作用を有する化学療法の1つまたはそれ以上のサイクルを受けている患者を含む。
【0033】
ある特定の実施形態において、本発明の方法は、1つまたはそれ以上のがん関連バイオマーカー[例えば、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)、CA125、CA19-9、前立腺特異抗原(PSA)、乳酸デヒドロゲナーゼ、KIT、癌胎児性抗原、上皮成長因子受容体(EGFR)、ALK遺伝子再構成]のレベルの上昇を示す患者を処置するために使用してもよい。例えば、本発明の方法は、抗PD-1抗体の治療上有効量を、放射線療法と組み合わせて、PD-L1および/またはEGFRのレベルが上昇した患者に投与することを含む。好ましい実施形態において、本発明の方法は、がん組織におけるPD-L1発現に基づいて選択したがん患者に使用される。ある特定の実施形態において、本発明の方法は、がん組織および/または免疫細胞における少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%のPD-L1発現に基づいて選択したがん患者を処置するために使用される。がん組織および/または免疫細胞におけるPD-L1発現を決定する方法は、当技術分野で周知である。ある特定の実施形態において、腫瘍組織におけるPD-L1の発現は、PCT出願国際公開第2016124558号または国際公開第2016191751号または米国特許出願公開第20160305947号に記述される、当技術分野で公知の任意のアッセイ、例えばELISAアッセイまたは免疫組織化学(IHC)アッセイによって決定される。ある特定の実施形態において、PD-L1の発現は、RNA発現を定量することによって、例えばインサイチューハイブリダイゼーション、またはRT-PCRによって決定される。ある特定の実施形態において、PD-L1の発現は、例えば免疫ポジトロン放射断層撮影またはiPETによる標識抗PD-L1抗体によるイメージングによって決定される[例えば、The Oncologist,12:1379頁(2007);Journal of Nuclear Medicine,52(8):1171頁(2011);2016年12月1日に提出された米国特許仮出願第62/428,672号を参照されたい]。
【0034】
ある特定の実施形態において、本発明の方法は、固形腫瘍を有する対象において使用される。用語「腫瘍」、「がん」、および「悪性腫瘍」は、本明細書において互換的に使用される。
【0035】
本明細書において使用される用語「固形腫瘍」は、通常、嚢胞または液体領域を含まない異常な組織塊を指す。固形腫瘍は、良性(がんではない)または悪性(がん)であり得る。本発明の目的に関して、用語「固形腫瘍」は、悪性の固形腫瘍を意味する。用語は、それらを形成する細胞タイプから名付けられた様々なタイプの固形腫瘍、すなわち肉腫、癌腫、およびリンパ腫を含む。しかし、用語は白血病を含まない。様々な実施形態において、用語「固形腫瘍」は、結合または支持組織(例えば、骨または筋肉)から生じるがん(肉腫と呼ばれる)、体の腺細胞および体組織の内側に沿って並ぶ上皮細胞から生じるがん(癌腫と呼ばれる)、ならびにリンパ節、脾臓、および胸腺のようなリンパ系臓器のがん(リンパ腫と呼ばれる)を含む。リンパ系の細胞は体のほぼ全ての組織に存在し、したがってリンパ腫は広く多様な臓器に発症し得る。ある特定の実施形態において、用語「固形腫瘍」は、結腸直腸がん、卵巣がん、前立腺がん、乳がん、脳がん、子宮頸がん、膀胱がん、肛門がん、子宮がん、結腸がん、肝臓がん、膵臓がん、肺がん、子宮内膜がん、骨がん、精巣がん、皮膚がん、腎臓がん、胃がん、食道がん、頭頸部がん、唾液腺がん、および骨髄腫を含むがこれらに限定されないがんを含む。ある特定の実施形態において、用
語「固形腫瘍」は、肝細胞癌、非小細胞肺がん、頭頸部扁平上皮がん、基底細胞癌、乳癌、皮膚扁平上皮癌、軟骨肉腫、血管肉腫、胆管癌、軟部組織肉腫、結腸直腸がん、黒色腫、メルケル細胞癌、および多形膠芽腫を含むがこれらに限定されないがんを含む。ある特定の実施形態において、用語「固形腫瘍」は、処置を必要とする対象において、互いに離れて存在する1つ超の固形腫瘍病変、例えば2個、2個超、5個超、10個超、15個超、20個超、または25個超の病変を含む。ある特定の実施形態において、1つ超の病変は、同じ臓器において互いに遠位に存在する。ある特定の他の実施形態において、腫瘍病変は、異なる臓器に存在し得る。
【0036】
ある特定の実施形態において、本発明は、結腸直腸がん、卵巣がん、前立腺がん、乳がん、脳がん、子宮頸がん、膀胱がん、肛門がん、子宮がん、結腸がん、肝臓がん、膵臓がん、肺がん、子宮内膜がん、骨がん、精巣がん、皮膚がん、腎臓がん、胃がん、食道がん、頭頸部がん、唾液腺がん、および骨髄腫を含むがこれらに限定されないがんを処置またはがんの成長を阻害する方法を含む。ある特定の実施形態において、本発明は、肝細胞癌、非小細胞肺がん、頭頸部扁平上皮がん、基底細胞癌、皮膚扁平上皮癌、軟骨肉腫、血管肉腫、胆管癌、軟部組織肉腫、結腸直腸がん、黒色腫、メルケル細胞癌、および多形膠芽腫を含むがこれらに限定されないがんを処置またはがんの成長を阻害する方法を含む。ある特定の実施形態において、本発明は、転移性皮膚扁平上皮癌(CSCC)、切除不能局所進行CSCC、転移性結腸直腸がん、進行または転移性肝細胞がん、進行非小細胞肺がん、基底細胞癌、再発性多形膠芽腫、去勢後再発前立腺がん、およびファーストライン治療に抵抗性である任意の進行固形腫瘍を含むがこれらに限定されない進行固形腫瘍を処置する方法を含む。この態様に従う方法は、抗PD-1抗体の治療上有効量を投与することを含む。ある特定の実施形態において、方法は、抗PD-1抗体の治療上有効量を、抗腫瘍治療と組み合わせて投与することを含む。抗腫瘍治療は、化学療法、放射線、手術のような従来の抗腫瘍治療を含むがこれらに限定されない。他の抗腫瘍治療は、本明細書において他所で記述されている。一実施形態において、抗腫瘍治療は放射線療法を含む。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量を、それを必要とする対象に投与し、各用量は、直前の用量の0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10週間後に投与される。ある特定の実施形態において、各用量は、対象の体重1kgあたり0.1~10mg(例えば、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、または10mg/kg)を含む。ある特定の他の実施形態において、各用量は、抗PD-1抗体の20~600mg、例えば、抗PD-1抗体の50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、400mg、または500mgを含む。
【0037】
ある特定の実施形態において、本発明は、マイクロサテライト不安定性(MSI)を有するがんを処置するまたはがんの成長を阻害する方法を含む。本明細書において使用される用語「マイクロサテライト不安定性」は、「MSI」としても知られ、腫瘍細胞におけるマイクロサテライト反復配列の変化またはDNAミスマッチ修復の欠損によって引き起こされる遺伝的高変異性を指す。単純反復配列としても知られるマイクロサテライトは、長さが1~6塩基対の反復単位を含むDNAの反復配列である。マイクロサテライトの長さは、人によって非常に多様であり、DNAフィンガープリントに寄与するが、各個体は一定の長さのマイクロサテライトを有する。MSIは、ミスマッチ修復(MMR)タンパク質がDNA複製エラーを修復することができないことに起因する。MSIは、複製エラーが配列ではなくて長さが異なるDNA多型を含む。MSIは、挿入もしくは欠失、または高度メチル化のいずれかを通してのフレームシフト変異を含み、それによって遺伝子の沈黙化が起こる。マイクロサテライト不安定性によって、結腸がん、胃がん、子宮内膜がん、卵巣がん、肝胆管がん、尿路がん、脳がん、および皮膚がんが起こり得ることは当技術分野で公知である。本発明は、抗PD-1抗体の治療上有効量を、場合により放射線療法と組み合わせて、それを必要とする患者に投与することを含む、MSIを有するがんを
処置する方法を含む。
【0038】
本発明の一実施形態は、MSIを有する転移性結腸直腸がん、MSIを有する転移性子宮内膜がん、およびMSIを有する去勢後再発前立腺がんを含むがこれらに限定されない、MSIを有する進行固形腫瘍の処置に使用するための抗PD-1抗体(例えば、REGN2810)に関する。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量を、MSIを有する進行固形腫瘍を有する対象に投与し、各用量は、対象の体重1kgあたり0.1~20mgを含み、各用量は、直前の用量の0.5~4週間後に投与される。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量を、MSIを有する進行固形腫瘍を有する対象に投与し、各用量は、抗PD-1抗体の20~600mgを含み、各用量は、直前の用量の0.5~4週間後に投与される。
【0039】
本明細書において使用される用語「放射線療法」は、「XRT」とも呼ばれ、一般的に抗がん治療の一部として、がん細胞を殺滅するために電離放射線を使用することを意味する。X線、ガンマ線、または荷電粒子(例えば、陽子または電子)を使用して、電離放射線を生成する。放射線療法は、患者の体外に配置される機器(体外照射療法)もしくは患者の体内に配置される発生源(体内照射療法または小線源療法)によって送達してもよく、または静脈内もしくは経口に送達された全身の放射性同位元素(全身放射性同位元素療法)によって送達してもよい。放射線療法は、投与すべき放射線の線量および位置を正確に決定するために、コンピューター断層撮影(CT)、磁気共鳴イメージング(MRI)のようなイメージングに基づく技術と共に計画および投与してもよい。様々な実施形態において、放射線療法は、全身照射療法、従来の体外照射療法、定位放射線手術、定位放射線療法、三次元原体照射療法、強度変調放射線療法、画像誘導放射線療法、トモセラピー、小線源療法、および全身放射線療法からなる群より選択される。ある特定の実施形態において、その意図に応じて、放射線療法は、治癒的、補助的、または緩和的である。特定の実施形態において、用語「放射線療法」は、少分割放射線療法を指す。少分割放射線療法は、放射線線量が2つ以上の分割に含まれる放射線療法を指す。様々な実施形態において、各分割は、2~20Gyを含む。例えば、50Gyの放射線線量を、各々が5Gyを含む10分割に分割してもよい。ある特定の実施形態において、2回以上の分割を連続してまたは連続する日に投与する。ある特定の他の実施形態において、2つ以上の分割を、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、7日に1回、またはその組合せで投与する。
【0040】
ある特定の実施形態に従って、本発明は、腫瘍を処置する、または腫瘍の成長を遅らせるもしくは阻害する方法を含む。ある特定の実施形態において、本発明は、腫瘍の退縮を促進する方法を含む。ある特定の実施形態において、本発明は、腫瘍細胞量を低減する、または腫瘍負荷を低減する方法を含む。ある特定の実施形態において、本発明は、腫瘍の再発を予防する方法を含む。本発明のこの態様に従う方法は、抗PD-1抗体の治療上有効量を、放射線療法と組み合わせて、それを必要とする対象に連続的に投与することを含み、抗体は、例えば特異的治療投与レジメンの一部として複数用量で対象に投与される。例えば、治療投与レジメンは、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量を、対象に約1日1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1ヶ月に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、4ヶ月に1回またはそれより少ない回数で投与することを含んでもよい。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量を、放射線療法の1つまたはそれ以上の線量と組み合わせて投与し、放射線の1つまたはそれ以上の線量は、対象に約1日1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1ヶ月に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、4ヶ月に1回またはそれより少ない回数で投与される。
【0041】
ある特定の実施形態において、1つまたはそれ以上の用量は、処置サイクルに含まれる。本態様に従う方法は、少なくとも1つの処置サイクルを、それを必要とする対象に投与することを含み、少なくとも1つの処置サイクルは、抗PD-1抗体の1~10用量を含み、場合により放射線療法の1つまたはそれ以上の線量を含む。ある特定の実施形態において、2~12処置サイクルを、それを必要とする対象に投与する。
【0042】
特定の実施形態において、本発明は、抗腫瘍効能を増加させるまたは腫瘍の阻害を増加させる方法を提供する。本発明のこの態様に従う方法は、放射線の線量を投与する前に抗PD-1抗体の治療上有効量を、固形腫瘍を有する対象に投与することを含み、抗PD-1抗体は、放射線療法の、約1日、1日超、2日超、3日超、4日超、5日超、6日超、7日超、または8日超前に投与してもよい。ある特定の実施形態において、方法は、抗PD-1抗体の前に放射線の線量を投与した対象と比較して、例えば約20%、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、または80%超の腫瘍の阻害の増加を提供する。ある特定の実施形態において、放射線療法は、少分割放射線療法を含む。
【0043】
ある特定の実施形態において、本発明は、がんを処置する方法であって、第1の腫瘍病変と少なくとも第2の腫瘍病変とを有する対象を選択する工程、および両方の病変が処置されるように、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量を放射線療法と組み合わせて投与する工程を含む、方法を提供する。特定の実施形態において、方法は、第1の腫瘍病変に放射線療法を投与するが、第2の腫瘍病変には投与せず、投与によって、両方の腫瘍病変に腫瘍の退縮が起こる(アブスコパル効果)ことを含む。ある特定の実施形態において、方法は、第1の腫瘍病変と少なくとも第2の腫瘍病変とを有する対象を選択する工程、および抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量を少分割放射線療法と組み合わせて投与する工程を含み、少分割放射線療法は、第1の病変に投与されるが、第2の病変には投与されず、両方の病変がそのような投与によって処置される。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体は、放射線療法の前に投与される。
【0044】
ある特定の実施形態において、本発明は、がんを処置する方法であって、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の治療下用量を、1つまたはそれ以上の抗腫瘍治療、例えば放射線療法と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む、方法を含む。本明細書において他所で定義するように、用語「治療下用量」は、治療用量より低い用量を指し、投与される治療の毒性を低減するために使用することができる。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の治療下用量を放射線療法と組み合わせて投与することによって、抗PD-1抗体単独の治療下用量の投与と比較して治療的抗腫瘍効能が得られる。ある特定の他の実施形態において、本発明の方法は、抗PD-1抗体の治療上有効量を、化学療法または放射線のような抗腫瘍治療の治療下用量と組み合わせて投与することを含む。例えば、抗PD-1抗体の治療上有効量を、いずれかの単剤療法と比較して効能を増加させるために、シクロホスファミドの治療下用量と組み合わせて投与してもよい。
【0045】
ある特定の実施形態において、本発明は、末梢臓器への腫瘍の転移または腫瘍の浸潤を阻害する、遅らせる、または停止させる方法を含む。この態様に従う方法は、抗PD-1抗体の治療上有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体は、放射線と組み合わせて投与される。一実施形態において、放射線は、少分割放射線である。一実施形態において、放射線は、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の線量の投与後に投与される。
【0046】
ある特定の実施形態において、本発明の方法は、抗PD-1抗体の治療上有効量を、進行固形腫瘍を有する対象に投与することを含む。ある特定の実施形態において、進行固形腫瘍は、転移性肺がん、頭頸部がん、肝細胞がん、または乳がんである。ある特定の他の実施形態において、進行固形腫瘍は、皮膚扁平上皮がんである。ある特定の実施形態にお
いて、進行固形腫瘍は、緩慢性または侵襲性である。ある特定の実施形態において、対象は、過去の治療に反応しない、または過去の治療(例えば、カルボプラチンによる)後に再燃している。ある特定の実施形態において、対象は、ファーストライン化学療法に対して抵抗性である進行固形腫瘍を有する。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の方法は、放射線および/またはシクロホスファミドを、進行固形腫瘍を有する対象に投与することをさらに含む。
【0047】
ある特定の実施形態において、本発明は、結腸直腸がん、卵巣がん、前立腺がん、乳がん、脳がん、子宮頸がん、膀胱がん、肛門がん、子宮がん、結腸がん、肝臓がん、膵臓がん、肺がん、子宮内膜がん、骨がん、精巣がん、皮膚がん、腎臓がん、胃がん、食道がん、頭頸部がん、唾液腺がん、および骨髄腫を含むがこれらに限定されないがんを処置する、またはがんの成長を阻害する方法を含む。ある特定の実施形態において、本発明は、肝細胞癌、非小細胞肺がん、頭頸部扁平上皮がん、基底細胞癌、皮膚扁平上皮癌、軟骨肉腫、血管肉腫、胆管癌、軟部組織肉腫、結腸直腸がん、黒色腫、メルケル細胞癌、および多形膠芽腫を含むがこれらに限定されないがんを処置するまたはがんの成長を阻害する方法を含む。ある特定の実施形態において、本発明は、転移性皮膚扁平上皮癌(CSCC)、切除不能局所進行CSCC、転移性結腸直腸がん、進行または転移性肝細胞がん、進行非小細胞肺がん、再発性多形膠芽腫、新たに診断された多形膠芽腫、去勢後再発前立腺がん、およびファーストライン治療に対して抵抗性である任意の進行固形腫瘍を含むがこれらに限定されない進行固形腫瘍を処置する方法を含む。
【0048】
一態様に従って、本発明は、腫瘍を処置または腫瘍の成長を阻害する方法であって、(a)(i)患者が局所進行CSCCを有する;(ii)患者が転移性CSCCを有する;(iii)腫瘍が切除不能である;(iv)患者が少なくとも1つの抗腫瘍治療によって過去に処置されている;(v)患者が手術不能であると考えられる疾患を有する;(vi)手術および/または放射線が禁忌である;(vii)患者が過去に放射線によって処置されており、腫瘍が放射線に対して抵抗性であるかまたは非反応性である;(viii)患者が局所進行CSCCを有し、治癒的手術の対象ではない;(ix)腫瘍がuv誘発DNA損傷を含む;ならびに(x)患者が腫瘍細胞において1%以上、5%以上、または10%以上のPD-L1発現を示す、ことからなる群より選択される属性に基づいて選択される、皮膚扁平上皮癌(CSCC)を有する患者を選択する工程;ならびに(b)抗PD-1抗体の治療上有効量を、それを必要とする患者に投与する工程を含む、方法を含む。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量は、直前の用量の1~12週間後に、例えば、直前の用量の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12週間後に投与される。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の各用量は、患者の体重1kgあたり0.1、1、0.3、3、4、5、6、7、8、9、または10mgを含む。ある特定の実施形態において、各用量は、抗PD-1抗体の50~500mg、例えば抗PD-1抗体の200mg、250mg、または350mgを含み、各用量は、直前の用量の0.5、1、2、3または4週間後に投与される。一実施形態において、抗PD-1抗体は、REGN2810である。
【0049】
一態様に従って、本発明は、腫瘍を処置する、または腫瘍の成長を阻害する方法であって、(a)(i)患者が局所進行BCCを有する;(ii)患者が転移性BCCを有する;(iii)腫瘍が切除不能である;(iv)患者が少なくとも1つの抗腫瘍治療によって過去に処置されている;(v)患者がヘッジホッグ経路阻害剤(例えば、ビスモデギブ、ソニデジブ)によって過去に処置されており、処置中に進行している;(vi)患者がヘッジホッグ経路阻害剤に対して不耐性である;(vii)患者が手術不能であると考えられるか、または治癒的手術の対象ではない疾患を有する;(viii)手術および/または放射線が禁忌である;(ix)患者が放射線によって過去に処置されており、腫瘍が放射線に対して抵抗性であるか、または非反応性である;(x)患者が腫瘍細胞において
1%以上、5%以上、または10%以上のPD-L1発現を示す;および(xi)腫瘍がuv誘発DNA損傷を含む、ことからなる群より選択される属性に基づいて選択される、基底細胞癌(BCC)を有する患者を選択する工程;ならびに(b)抗PD-1抗体の治療上有効量を、それを必要とする患者に投与する工程を含む、方法を含む。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量は、直前の用量の1~12週間後に、例えば、直前の用量の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12週間後に投与される。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の各用量は、患者の体重1kgあたり0.1、1、0.3、3、4、5、6、7、8、9、または10mgを含む。ある特定の実施形態において、各用量は、抗PD-1抗体の50~500mg、例えば抗PD-1抗体の200mg、250mg、または350mgを含み、各用量は、直前の用量の0.5、1、2、3または4週間後に投与される。一実施形態において、抗PD-1抗体は、REGN2810である。
【0050】
ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の各用量を、直前の用量の1週間、2週間、3週間、または4週間後に投与し、各用量は、抗PD-1抗体の50~600mgを含む。一実施形態において、各用量は、抗PD-1抗体の200、250、300、または350mgを含む。
【0051】
本発明の一実施形態は、胆管癌の処置に使用するための抗PD-1抗体(例えば、REGN2810)に関する。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量を、胆管癌を有する対象に投与し、各用量は、対象の体重1kgあたり0.1~20mgを含み、各用量は、直前の用量の0.5~4週間後に投与される。ある特定の実施形態において、各用量は、抗PD-1抗体の50~500mg、例えば抗PD-1抗体の200mg、250mg、または350mgを含み、各用量は、直前の用量の0.5、1、2、3、または4週間後に投与される。
【0052】
本発明の一実施形態は、進行肝細胞がん(HCC)の処置に使用するための抗PD-1抗体(例えば、REGN2810)に関する。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量を、HCCを有する対象に投与し、各用量は、対象の体重1kgあたり0.1~20mgを含み、各用量は、直前の用量の0.5~4週間後に投与される。ある特定の実施形態において、各用量は、抗PD-1抗体の50~500mg、例えば抗PD-1抗体の200mg、250mg、または350mgを含み、各用量は、直前の用量の0.5、1、2、3、または4週間後に投与される。
【0053】
本発明の一実施形態は、軟部組織肉腫の処置に使用するための抗PD-1抗体(例えば、REGN2810)に関する。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量を、軟部組織肉腫を有する対象に投与し、各用量は、対象の体重1kgあたり0.1~20mgを含み、各用量は、直前の用量の0.5~4週間後に投与される。ある特定の実施形態において、各用量は、抗PD-1抗体の50~500mg、例えば抗PD-1抗体の200mg、250mg、または350mgを含み、各用量は、直前の用量の0.5、1、2、3、または4週間後に投与される。
【0054】
本発明の一実施形態は、非小細胞肺がん(NSCLC)の処置に使用するための抗PD-1抗体(例えば、REGN2810)に関する。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量を、NSCLCを有する対象に投与し、各用量は、対象の体重1kgあたり0.1~20mg/kgを含み、各用量は、直前の用量の0.5~4週間後に投与される。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量を、NSCLCを有する対象に投与し、各用量は、抗PD-1抗体の50~600mgを含み、各用量は、直前の用量の0.5~4週間後に投与される。
【0055】
一態様に従って、本発明は、腫瘍を処置する、または腫瘍の成長を阻害する方法であって、脳がんを有する対象を選択する工程と、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片の治療上有効量を、それを必要とする対象に投与する工程とを含む方法を含む。ある特定の実施形態において、脳がんは、多形膠芽腫である。一実施形態において、対象は、新たに診断された多形膠芽腫を有する。一実施形態において、対象は年齢65歳以上である。一実施形態において、抗PD-1抗体は、1つまたはそれ以上の用量として投与され、各用量は、直前の用量の0.5~4週間後に投与される。一実施形態において、抗PD-1抗体の各用量は、対象の体重1kgあたり1、3、または10mgを含む。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体は、放射線療法と組み合わせて投与される。一実施形態において、放射線療法は、少分割放射線療法である。一実施形態において、対象は20~60Gyを2~20分割で投与される。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量は、1つまたはそれ以上の処置サイクルに含まれ、各処置サイクルは、抗PD-1抗体の1~6用量を含む。一実施形態において、少なくとも1つの処置サイクルは、放射線療法をさらに含む。さらなる実施形態において、放射線療法は、少分割放射線療法である。ある特定の実施形態において、対象は、第1の処置サイクルにおいて少分割放射線療法を投与され、少分割放射線療法は、20~60Gyの2~20分割を含む。一実施形態において、対象は、第1の処置サイクルにおいて抗PD-1抗体投与の1週間後に少分割放射線療法を投与される。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の投与後に対象が頭蓋内浮腫を発症する場合、本発明の方法は、抗血管新生剤を対象に投与することをさらに含む。一実施形態において、抗血管新生剤は、血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤である。一実施形態において、抗血管新生剤は、アンジオポエチン-2(Ang-2)阻害剤(例えば、ネスバクマブのような抗Ang-2抗体)である。ある特定の実施形態において、VEGF阻害剤は、VEGF阻害融合タンパク質(例えば、米国特許第7,087,411号に記載のアフリベルセプトのような「VEGF-Trap」または他のVEGF阻害融合タンパク質)、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)、およびVEGF受容体の低分子キナーゼ阻害剤(例えば、スニチニブ、ソラフェニブ、またはパゾパニブ)からなる群より選択される。
【0056】
ある特定の実施形態において、本発明の方法は、「ファーストライン」処置(例えば、初回処置)として、抗PD-1抗体を放射線療法と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む。他の実施形態において、放射線療法と組み合わせた抗PD-1抗体は、「セカンドライン」処置(例えば、過去の治療後)として投与される。例えば、放射線療法と組み合わせた抗PD-1抗体は、例えば化学療法による過去の治療後に再燃した対象に「セカンドライン」処置として投与される。
【0057】
ある特定の実施形態に従って、本発明の方法は、抗PD-1抗体の治療上有効量および放射線を、追加の治療剤または治療レジメンもしくは手順と組み合わせて対象に投与することを含む。追加の治療剤または治療レジメンもしくは手順は、抗腫瘍効能を増加させるため、1つまたはそれ以上の治療の毒性作用を低減するため、および/または1つまたはそれ以上の治療の用量を低減するために投与してもよい。様々な実施形態において、追加の治療剤または治療レジメンもしくは手順は、例えば、化学療法、シクロホスファミド、手術、がんワクチン、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)阻害剤(例えば、抗PD-L1抗体)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)阻害剤(例えば、抗LAG3抗体)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)阻害剤(例えば、イピリムマブ)、グルココルチコイド誘導腫瘍壊死因子受容体(GITR)阻害剤(例えば、抗GITR抗体)、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有タンパク質3(TIM3)阻害剤、BおよびTリンパ球アテニュエータ(BTLA)阻害剤、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)阻害剤、CD47阻害剤、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニスト、アンジオポエチン-2(Ang2)阻害剤、トランスフォーミング増殖因
子ベータ(TGFβ)阻害剤、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤、腫瘍特異抗原[例えば、CA9、CA125、黒色腫関連抗原3(MAGE3)、癌胎児性抗原(CEA)、ビメンチン、腫瘍-M2-PK、前立腺特異抗原(PSA)、ムチン-1、MART-1、およびCA19-9]に対する抗体、抗CD3/抗CD20二重特異性抗体、ワクチン(例えば、カルメットゲラン桿菌)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子、細胞毒素、化学療法剤、IL-6R阻害剤、IL-4R阻害剤、IL-10阻害剤、IL-2、IL-7、IL-21、およびIL-15のようなサイトカイン、コルチコステロイドおよび非ステロイド性抗炎症剤のような抗炎症剤、ならびに抗酸化剤のような栄養補助食品からなる群より選択される。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体は、化学療法剤を含む治療および手術と組み合わせて投与してもよい。本明細書において使用される「組み合わせる」という語句は、抗PD-1抗体が放射線療法および追加の治療剤の投与と同時、直前、または直後に対象に投与されることを意味する。ある特定の実施形態において、追加の治療剤は、抗PD-1抗体と同一製剤として投与される。
【0058】
本発明の一実施形態は、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)の処置に使用するための抗PD-1抗体(例えば、REGN2810)、放射線療法、シクロホスファミド、およびGM-CSFの組合せに関する。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量を、HNSCCを有する対象に投与し、各用量は、対象の体重1kgあたり0.1~20mgを含み、各用量は、直前の用量の0.5~4週間後に投与される。ある特定の実施形態において、各用量は、抗PD-1抗体の50~500mg、例えば抗PD-1抗体の200mg、250mg、または350mgを含み、各用量は、直前の用量の0.5、1、2、3、または4週間後に投与される。
【0059】
本発明の一実施形態は、乳がんの処置に使用するための抗PD-1抗体(例えば、REGN2810)、放射線療法、およびシクロホスファミドの組合せに関する。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量を、乳がんを有する対象に投与し、各用量は、対象の体重1kgあたり0.1~20mgを含み、各用量は、直前の用量の0.5~4週間後に投与される。
【0060】
本発明の一実施形態は、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体によって過去に処置されている患者における進行固形腫瘍の処置に使用するための抗PD-1抗体(例えば、REGN2810)、放射線療法、シクロホスファミド、およびGM-CSFの組合せに関する。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量を、それを必要とする患者に投与し、各用量は、対象の体重1kgあたり0.1~20mgを含み、各用量は、直前の用量の0.5~4週間後に投与される。
【0061】
本発明の一実施形態は、ファーストライン化学療法に対して抵抗性である進行固形腫瘍の処置に使用するための抗PD-1抗体(例えば、REGN2810)、ドセタキセル、および場合によりカルボプラチンの組合せに関する。ある特定の実施形態において、ドセタキセルは低用量で投与される。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量を、それを必要とする対象に投与し、各用量は、対象の体重1kgあたり0.1~20mgを含み、各用量は、直前の用量の0.5~4週間後に投与される。
【0062】
本発明の一実施形態は、新たに診断されたまたは再発性の多形膠芽腫(GBM)の処置に使用するための抗PD-1抗体(例えば、REGN2810)および放射線療法の組合せに関する。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量を、それを必要とする対象に投与し、各用量は、対象の体重1kgあたり0.1~20mgを含み、各用量は、直前の用量の0.5~4週間後に投与される。ある特定の実施形態において、放射線は、本明細書に記載される少分割放射線療法である。
【0063】
本発明のある特定の実施形態は、子宮頸部扁平上皮癌、肛門扁平上皮癌、メルケル細胞癌、小腸腺癌、または卵巣漿液性癌の処置に使用するための抗PD-1抗体(例えば、REGN2810)および放射線療法の組合せに関する。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量を、それを必要とする対象に投与し、各用量は、対象の体重1kgあたり0.1~20mgを含み、各用量は、直前の用量の0.5~4週間後に投与される。ある特定の実施形態において、放射線は、本明細書に記載の少分割放射線療法である。
【0064】
ある特定の実施形態において、本発明は、大きい腫瘍または進行した悪性腫瘍を処置する方法であって、放射線療法と組み合わせた抗PD-1抗体および追加の治療剤を、それを必要とする対象に投与することを含み、調節性T細胞(Treg)媒介免疫抑制を克服するために追加の治療剤が投与される、方法を含む。ある特定の実施形態において、追加の治療剤は、抗GITR抗体、抗LAG3抗体、シクロホスファミド、およびGM-CSFからなる群より選択される。
【0065】
本明細書において使用される用語「大きい腫瘍」は、腫瘍のサイズを指す。これは典型的に高い腫瘍負荷または腫瘍量に相関する。ある特定の実施形態において、これは疾患、例えば進行した悪性腫瘍の病期に相関する。ある特定の実施形態において、これは転移の可能性の増加に相関する。
【0066】
ある特定の実施形態において、本発明は、放射線療法と組み合わせた抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量およびシクロホスファミドの治療下用量を投与することを含む方法を含む。本明細書において使用される、シクロホスファミドの治療下用量(本明細書において「低用量シクロホスファミド」とも呼ばれる)は、それ自身治療効果を付与しないが、好ましくは毒性を引き起こさないシクロホスファミドの量を意味する。本発明の文脈において「治療下」であると考えられるシクロホスファミドの例示的な用量には、100mg/m、90mg/m、80mg/m、またはそれ未満が挙げられる。
【0067】
一態様において、本発明は、放射線と組み合わせた抗PD-1抗体の治療上有効量を、背景治療の抗がん治療レジメンを受けている対象に投与することを含む方法を含む。背景治療の抗がん治療レジメンは、例えば化学療法剤の一連の投与を含んでもよい。放射線療法と組み合わせた抗PD-1抗体は、背景治療の抗がん治療レジメンの外に追加してもよい。一部の実施形態において、背景治療の抗がん治療を経時的に対象から徐々に減少させる(段階的に)が、抗PD-1抗体を、一定用量で、または経時的に漸増用量もしくは漸減用量で対象に投与する、「背景治療のステップダウン」スキームの一部として、抗PD-1抗体を追加する。例えば、背景治療の抗がん治療は、低用量または治療下用量で投与される化学療法剤を含んでもよい。ある特定の実施形態において、本発明は、放射線療法と組み合わせた抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量、および化学療法剤の1つまたはそれ以上の用量を投与することを含む、がんを治療する方法を含み、化学療法剤は治療下用量で投与される。
【0068】
ある特定の実施形態において、放射線療法は、第1の腫瘍病変に投与されるが、第2の腫瘍病変には投与されず、抗PD-1抗体との組合せ投与によって、第1および第2の腫瘍病変の両方に腫瘍の退縮が起こる(アブスコパル効果)。ある特定の実施形態において、本発明の方法は、持続的なアブスコパル効果を生じるために、放射線療法と組み合わせた抗PD-1抗体の投与を含む。
【0069】
ある特定の実施形態において、本発明の方法は、抗PD-1抗体の治療上有効量を、場合により放射線療法と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含み、組合せの投与によって、腫瘍の成長の阻害が増加する。ある特定の実施形態において、腫瘍の
成長は、未処置の対象、または抗体もしくは放射線のいずれかを単剤療法として投与した対象と比較して、少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、または約80%阻害される。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の投与および/または放射線療法によって、腫瘍の退縮、腫瘍の縮小および/または消失の増加が起こる。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の投与および/または放射線療法によって、腫瘍の成長および発達の遅延が起こり、例えば腫瘍の成長は、未処置の対象または抗体もしくは放射線のいずれかの単剤療法によって治療した対象と比較して、約3日、3日超、約7日、7日超、15日超、1ヶ月超、3ヶ月超、6ヶ月超、1年超、2年超、または3年超遅延し得る。ある特定の実施形態において、放射線療法と組み合わせた抗PD-1抗体の投与は、腫瘍の再発を予防し、および/または対象の生存期間を延長させ、例えば未処置の対象または抗体もしくは放射線のいずれかを単剤療法として投与した対象と比較して、15日超、1ヶ月超、3ヶ月超、6ヶ月超、12ヶ月超、18ヶ月超、24ヶ月超、36ヶ月超、または48ヶ月超、生存期間を延長させる。ある特定の実施形態において、放射線療法と組み合わせた抗PD-1抗体の投与は、無増悪生存または全生存を延長させる。ある特定の実施形態において、放射線療法と組み合わせた抗PD-1抗体の投与は、未処置の対象または抗体もしくは放射線のいずれかを単剤療法として受けた対象と比較して、対象における反応および奏効期間を、例えば2%超、3%超、4%超、5%超、6%超、7%超、8%超、9%超、10%超、20%超、30%超、40%超、または50%超増加させる。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体および/または放射線療法の、がんを有する対象への投与によって、腫瘍細胞の全ての証拠の完全な消失(「完全奏効」)が起こる。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体および/または放射線療法の、がんを有する対象への投与によって、腫瘍細胞または腫瘍サイズの少なくとも30%または30%超の減少が起こる(「部分奏効」)。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体および/または放射線療法の、がんを有する対象への投与によって、新規の測定可能な病変を含む腫瘍細胞/病変の完全または部分的な消失が起こる。腫瘍の低減は、当技術分野で公知の方法のいずれか、例えばX線、ポジトロン断層撮影(PET)、コンピューター断層撮影(CT)、磁気共鳴イメージング(MRI)、細胞学、組織学、または分子遺伝子解析によって測定することができる。
【0070】
ある特定の実施形態において、本発明の方法は、抗PD-1抗体の治療上有効量を、それを必要とする対象に投与することを含み、抗PD-1抗体の投与によって、標準治療(SOC)療法(例えば、化学療法、手術、または放射線)を投与された患者と比較して患者の全生存(OS)または無増悪生存(PFS)の延長が起こる。ある特定の実施形態において、PFSは、任意の1つまたはそれ以上のSOC治療を投与された患者と比較して少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも1年、少なくとも2年、または少なくとも3年延長する。ある特定の実施形態において、OSは、任意の1つまたはそれ以上のSOC治療を投与された患者と比較して少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも1年、少なくとも2年、または少なくとも3年延長する。
【0071】
本発明はまた、治療的使用のための抗PD-1抗体を含むキットも提供する。キットは典型的に、キットの内容の意図される使用を示すラベルと、使用説明書とを含む。用語ラベルは、キットと共に供給されるまたはキットに付属の、またはそうでなければキットに添付される任意の書面のまたは記録された材料を含む。したがって、本開示は、がんに罹患した対象を処置するためのキットであって、(a)PD-1に特異的に結合して、PD-1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分の用量と、(b)本明細書に開示の治療方法のいずれかにおいて抗PD-1抗体を使用するための説明書とを含むキットを提供す
る。ヒト患者を治療するためのある特定の実施形態において、キットは、本明細書に開示の抗ヒトPD-1抗体、例えばREGN2810を含む。他の実施形態において、抗PD-1抗体は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、または本明細書において開示される抗PD-1抗体のいずれかのうちのいずれか1つであり得る。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の用量は、0.1~10mg/kg体重の範囲である。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の用量は、50~600mgを含む。
【0072】
調節性T細胞を抑制する方法
ある特定の態様に従って、本発明は、調節性T(Treg)細胞の活性化および/または増殖を抑制または阻害する方法を提供する。ある特定の実施形態において、本発明は、Treg細胞の活性を抑制する方法を提供する。これらの態様に従う方法は、固形腫瘍を有する対象を選択する工程、ならびに抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を、(i)放射線療法、および(ii)グルココルチコイド誘導腫瘍壊死因子受容体(GITR)アンタゴニストのうちの少なくとも1つと組み合わせて対象に投与する工程を含む。ある特定の実施形態において、方法は、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を、放射線療法およびGITRアンタゴニストと組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0073】
ある特定の実施形態において、GITRアンタゴニストは、抗GITR抗体またはその抗原結合断片である。本発明のある特定の例示的な実施形態に従って、抗GITR抗体またはその抗原結合断片は、その内容の全体が本明細書に組み入れられる、米国特許出願第62/256,922号(2015年11月18日提出)に記載の抗GITR抗体のいずれかのアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、および/または相補性決定領域(CDR)を含む。本発明の方法の文脈において使用することができる他の抗GITR抗体は、例えば米国特許第9228016号、第8709424号、第8591886号、第7812135号、または米国特許出願公開第20150368349号に記載される抗GITR抗体のいずれかを含む。
【0074】
ある特定の実施形態において、本発明は、Treg活性を抑制または除去する方法であって、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を、放射線の1つまたはそれ以上の線量、および細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA)アンタゴニストと組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。ある特定の実施形態において、CTLAアンタゴニストは、抗CTLA抗体(例えば、イピリムマブ)である。
【0075】
ある特定の実施形態において、本発明は、Treg活性を抑制または除去する方法であって、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を、放射線の1つまたはそれ以上の線量およびリンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)アンタゴニストと組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。ある特定の実施形態において、LAG-3アンタゴニストは、抗LAG-3抗体である。本発明の方法の文脈において使用することができる抗LAG-3抗体は、その内容の全体が本明細書に組み入れられている、米国特許出願第15/289,032号(2016年10月7日提出)に開示されている。
【0076】
ある特定の実施形態において、本発明は、Treg活性を抑制または除去する方法であって、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を、放射線の1つまたはそれ以上の線量およびシクロホスファミドと組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
【0077】
一態様において、本発明の方法は、抗PD-1抗体を、放射線療法、ならびにGITRアンタゴニスト、抗LAG-3抗体、およびシクロホスファミドからなる群より選択される追加の治療剤と組み合わせて、固形腫瘍を有する対象に投与することを含み、投与によ
って、腫瘍の成長の阻害、腫瘍サイズの低減、腫瘍の成長の遅延、腫瘍転移の阻害、転移性病変の経時的な低減、化学療法剤または細胞傷害剤の使用の低減、生存の延長、完全奏効、部分奏効、および安定からなる群より選択される効果が得られる。ある特定の実施形態において、投与によって、対象における腫瘍負荷の低減が起こる。ある特定の実施形態において、対象は大きい腫瘍を有する。本明細書において他所で定義されているように、用語「大きい腫瘍」は、腫瘍のサイズを指し、腫瘍負荷の増加および転移の発生の可能性の増加に相関している。ある特定の実施形態において、用語は進行した悪性腫瘍を指す。
【0078】
抗PD-1抗体およびその抗原結合断片
本発明のある特定の例示的な実施形態に従って、方法は、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片の治療上有効量を投与することを含む。本明細書において使用される用語「抗体」は、4つのポリペプチド鎖、すなわちジスルフィド結合によって相互接続された2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子、ならびにその多量体(例えば、IgM)を含む。典型的な抗体において、各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてHCVRまたはVと省略する)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は3つのドメイン、C1、C2、およびC3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてLCVRまたはVと省略される)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は1つのドメイン(C1)を含む。VおよびV領域はさらに、より保存されたフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域の間に介在する相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性領域に細分することができる。各VおよびVは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で整列する3つのCDRと4つのFRで構成される。本発明の異なる実施形態において、抗IL-4R抗体(またはその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一であってもよく、または天然もしくは人為的に改変されてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2つ以上のCDRの並列解析に基づいて定義してもよい。
【0079】
本明細書において使用される用語「抗体」はまた、完全な抗体分子の抗原結合断片も含む。本明細書において使用される、抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」等という用語は、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、任意の天然に存在する、酵素によって得ることができる、合成の、または遺伝子操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合断片は、例えば、タンパク質分解消化のような任意の適した標準的な技術、または抗体の可変および場合により定常ドメインをコードするDNAの操作および発現を伴う組み換え遺伝子操作技術を使用して、例えば完全な抗体分子から誘導してもよい。そのようなDNAは、公知であり、および/または例えば販売元、DNAライブラリ(例えば、ファージ-抗体ライブラリを含む)から容易に入手可能であるか、または合成することができる。例えば、1つまたはそれ以上の可変および/または定常ドメインを適した形状に整列させるため、またはコドンを導入するため、システイン残基を作製するため、アミノ酸を改変、付加、または欠失させるために、DNAをシークエンシングして化学的にまたは分子生物学技術を使用して操作してもよい。
【0080】
抗原結合断片の非制限的な例には、(i)Fab断片;(ii)F(ab’)2断片;(iii)Fd断片;(iv)Fv断片;(v)一本鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAb断片;および(vii)抗体の超可変領域(例えば、CDR3ペプチドなどの単離された相補性決定領域(CDR))を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位、または限定的なFR3-CDR4-FR4ペプチドが挙げられる。ドメイン特異性抗体、シングルドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価のナノボディ、二価のナノボディ等)、低分子モジュール免疫薬剤(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインのような他の操作された分子も同様に、本明細書において使用される表現「抗原結合断片」内に包含される。
【0081】
抗体の抗原結合断片は、典型的に、少なくとも1つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成のドメインであってもよく、一般的に1つまたはそれ以上のフレームワーク配列に隣接するまたはインフレームである少なくとも1つのCDRを含む。Vドメインに会合したVドメインを有する抗原結合断片において、VおよびVドメインは、互いに、任意の適した配置で存在し得る。例えば、可変領域は二量体であってもよく、V-V、V-V、またはV-V二量体を含んでもよい。あるいは、抗体の抗原結合断片は、単量体のVまたはVドメインを含んでもよい。
【0082】
ある特定の実施形態において、抗体の抗原結合断片は、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合した少なくとも1つの可変ドメインを含み得る。本発明の抗体の抗原結合断片内に見出すことができる可変および定常ドメインの非制限的な例示的な構成には、(i)V-C1;(ii)V-C2;(iii)V-C3;(iv)V-C1-C2;(v)V-C1-C2-C3;(vi)V-C2-C3;(vii)V-C;(viii)V-C1;(ix)V-C2;(x)V-C3;(xi)V-C1-C2;(xii)V-C1-C2-C3;(xiii)V-C2-C3;および(xiv)V-Cが挙げられる。上記の例示的な構成のいずれかを含む可変および定常ドメインの任意の構成において、可変および定常ドメインを、互いに直接連結してもよく、または完全なもしくは部分的なヒンジもしくはリンカー領域によって連結してもよい。ヒンジ領域は、単一のポリペプチド分子において隣接する可変および/または定常ドメイン間で可動性または半可動性の結合が起こるように、少なくとも2つ(例えば、5、10、15、20、40、60個または60個超)のアミノ酸からなり得る。その上、本発明の抗体の抗原結合断片は、互いにおよび/または1つまたはそれ以上の一価のVまたはVドメインに非共有結合した(例えば、ジスルフィド結合によって)上記の可変および定常ドメイン構成のいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含み得る。
【0083】
本明細書において使用される用語「抗体」はまた、多重特異性(例えば、二重特異性)抗体も含む。多重特異性抗体または抗体の抗原結合断片は、典型的に少なくとも2つの異なる可変ドメインを含み、各可変ドメインは、個別の抗原または同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合することができる。任意の多重特異性抗体フォーマットを、当技術分野で利用可能な通例の技術を使用して、本発明の抗体または抗体の抗原結合断片の状況において使用するために適合させてもよい。例えば、本発明は、免疫グロブリンの1つのアームがPD-1またはその断片に対して特異的であり、免疫グロブリンの他方のアームが第2の治療標的に対して特異的であるかまたは治療部分にコンジュゲートされている、二重特異性抗体の使用を含む方法を含む。本発明の文脈において使用することができる例示的な二重特異性フォーマットには、例えばscFvベースのまたはダイアボディ型二重特異性フォーマット、IgG-scFv融合体、二重可変ドメイン(DVD)-Ig、クアドローマ、ノブ・イントゥ・ホール(knobs-into-holes)、共通の軽鎖(例えば、ノブ・イントゥ・ホールを有する共通の軽鎖)、CrossMab、CrossFab、(SEED)抗体、ロイシンジッパー、Duobody、IgG1/IgG2、二作用Fab(DAF)-IgG、およびMab二重特異性フォーマット(例えば、前述のフォーマットの総説に関して、Kleinら、2012年、mAbs 4:6、1~11頁、およびその中で引用される参考文献を参照されたい)が挙げられるがこれらに限定されない。二重特異性抗体はまた、例えば直交の化学反応性を有する非天然アミノ酸を使用して、部位特異的抗体オリゴヌクレオチドコンジュゲートを生成し、次にこれが規定の組成、価数、および形状を有する多量体複合体へと自己アセンブルする(例えば、Kazane et al.,J.Am.Chem.Soc.[Epub:12月4日、2012]を参照されたい)、ペプチド/核酸コンジュゲーションを使用して構築することもできる。
【0084】
本発明の方法に使用される抗体は、ヒト抗体であり得る。本明細書において使用される用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する抗体を含むと意図される。本発明のヒト抗体は、それにもかかわらず、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的変異誘発、またはインビボでの体細胞変異によって導入された変異)を、例えばCDRおよび特にCDR3に含んでもよい。しかし、本明細書において使用される用語「ヒト抗体」は、マウスのような別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されている抗体を含まないと意図される。
【0085】
本発明の方法に使用される抗体は、組み換えヒト抗体であってもよい。本明細書において使用される用語「組み換えヒト抗体」は、宿主細胞にトランスフェクトした組み換え発現ベクターを使用して発現させた抗体(以下に詳細に説明する)、組み換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離した抗体(以下に詳細に説明する)、ヒト免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックである動物(例えばマウス)から単離した抗体[例えば、Taylor et al.(1992)Nucl.Acids Res.20:6287~6295頁を参照されたい]、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを伴う任意の他の手段によって調製、発現、作製、もしくは単離された抗体のような、組み換え手段によって調製、発現、作製、または単離された全てのヒト抗体を含むと意図される。そのような組み換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する。しかし、ある特定の実施形態において、そのような組み換えヒト抗体は、インビトロ変異誘発(またはヒトIg配列に関してトランスジェニックである動物を使用する場合は、インビボ体細胞変異誘発)を受け、このため、組み換え抗体のVおよびV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VおよびV配列に由来して関連するが、インビボでのヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然には存在しない配列である。
【0086】
ある特定の実施形態に従って、本発明の方法に使用される抗体は、PD-1に特異的に結合する。用語「特異的に結合する」等は、抗体またはその抗原結合断片が、生理的条件下で比較的安定である、抗原との複合体を形成することを意味する。抗体が抗原に特異的に結合するか否かを決定する方法は、当技術分野で周知であり、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴等が挙げられる。例えば、本発明の文脈において使用されるPD-1に「特異的に結合する」抗体は、表面プラズモン共鳴アッセイにおいて測定した場合に、約500nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約4nM未満、約3nM未満、約2nM未満、約1nM未満、または約0.5nM未満のKで、PD-1またはその一部に結合する抗体を含む。しかし、ヒトPD-1に特異的に結合する単離抗体は、他の(非ヒト)種からのPD-1分子のような他の抗原に対して交差反応性を有してもよい。
【0087】
本発明のある特定の例示的な実施形態に従って、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、全体が本明細書に組み入れられている、米国特許出願公開第20150203579号に記載の抗PD-1抗体のいずれかのアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、および/または相補性決定領域(CDR)を含む。ある特定の例示的な実施形態において、本発明の方法の文脈において使用することができる抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)と、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)とを含む。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、3つのLCDR(LCDR1、LCDR2、および
LCDR3)とを含み、HCDR1は、配列番号3のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号4のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号5のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号6のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号7のアミノ酸配列を含み;およびLCDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。なお他の実施形態において、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1を含むHCVRと配列番号2を含むLCVRとを含む。ある特定の実施形態において、本発明の方法は、抗PD-1抗体の使用を含み、抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。一部の実施形態において、抗PD-1抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む例示的な抗体は、REGN2810として知られ、エムプルマブ(emplumab)としても知られる完全なヒト抗PD-1抗体である。ある特定の例示的な実施形態に従って、本発明の方法は、REGN2810またはその生物学的同等物の使用を含む。本明細書において使用される用語「生物学的同等物」は、単回用量または複数用量のいずれかで、類似の実験条件で同じモル用量で投与した場合に、その吸収の速度および/または程度がREGN2810の吸収の速度および/または程度と有意差を示さない薬学的同等物または薬学的代替物である抗PD-1抗体もしくはPD-1結合タンパク質、またはその断片を指す。本発明の文脈において、用語は、その安全性、純度、および/または効力においてREGN2810と臨床的に意味がある差を有しない、PD-1に結合する抗原結合タンパク質を指す。
【0088】
本発明のある特定の実施形態に従って、抗ヒトPD-1またはその抗原結合断片は、配列番号1と90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有するHCVRを含む。
【0089】
本発明のある特定の実施形態に従って、抗ヒトPD-1またはその抗原結合断片は、配列番号2と90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有するLCVRを含む。
【0090】
本発明のある特定の実施形態に従って、抗ヒトPD-1またはその抗原結合断片は、5個以下のアミノ酸置換を有する配列番号1のアミノ酸配列を含むHCVRを含む。本発明のある特定の実施形態に従って、抗ヒトPD-1またはその抗原結合断片は、2個以下のアミノ酸置換を有する配列番号2のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。
【0091】
配列同一性は、当技術分野で公知の任意の方法(例えば、GAP、BESTFIT、およびBLAST)によって測定することができる。
【0092】
本発明はまた、がんを処置するための方法における抗PD-1抗体の使用を含み、抗PD-1抗体は、1つまたはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有する、本明細書において開示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかの変種を含む。例えば、本発明は、本明細書に開示のHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかと比較して、例えば10個または10個未満、8個または8個未満、6個または6個未満、4個または4個未満等の保存的アミノ酸置換を有するHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列を有する抗PD-1抗体の使用を含む。
【0093】
本発明の方法の文脈において使用することができる他の抗PD-1抗体は、例えば、当技術分野でニボルマブ(米国特許第8008449号)およびペンブロリズマブ(米国特許第8354509号)、MEDI0608(米国特許第8609089号)、ピジリズマブ(米国特許第8686119号)と呼ばれ、公知である抗体、または米国特許第6808710号、第7488802号、第8168757号、第8354509号、第8779105号、もしくは第8900587号に記載の抗PD-1抗体のいずれかを含む。
【0094】
本発明の方法の文脈において使用される抗PD-1抗体は、pH依存的結合特徴を有し得る。例えば、本発明の方法において使用するための抗PD-1抗体は、中性pHと比較して酸性pHではPD-1に対する結合の低減を示し得る。あるいは、本発明の抗PD-1抗体は、中性pHと比較して酸性pHでその抗原に対する結合の増強を示し得る。表現「酸性pH」は、約6.2未満のpH値、例えば約6.0、5.95、5.9、5.85、5.8、5.75、5.7、5.65、5.6、5.55、5.5、5.45、5.4、5.35、5.3、5.25、5.2、5.15、5.1、5.05、5.0、またはそれ未満を含む。本明細書において使用される表現「中性pH」は、約7.0から約7.4のpHを意味する。表現「中性pH」は、約7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、および7.4のpH値を含む。
【0095】
ある特定の例において、「中性pHと比較して酸性pHでPD-1に対する結合の低減」は、酸性pHでのPD-1に結合する抗体のK値の、中性pHでのPD-1に結合する抗体のK値に対する比率(またはその逆)に関して表記される。例えば、抗体またはその抗原結合断片は、抗体またはその抗原結合断片が、約3.0または3.0超の酸性/中性K比を示す場合、本発明の目的に関して「中性pHと比較して酸性pHでPD-1に対する結合の低減」を示すと考えることができる。ある特定の例示的な実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片の酸性/中性K比は、約3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、20.0、25.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、100.0、または100.0超であり得る。
【0096】
pH依存的結合特徴を有する抗体は、例えば、中性pHと比較して酸性pHで特定の抗原に対する結合の低減(または増強)に関して抗体集団をスクリーニングすることによって得ることができる。加えて、アミノ酸レベルでの抗原結合ドメインの改変は、pH依存的特徴を有する抗体を生じ得る。例えば、抗原結合ドメイン(例えば、CDR内)の1つまたはそれ以上のアミノ酸を、ヒスチジン残基に置換することによって、中性pHと比較して酸性pHで抗原結合が低減された抗体を得てもよい。本明細書において使用されるように、表現「酸性pH」は、pH6.0または6.0未満を意味する。
【0097】
組合せ療法
ある特定の実施形態に従う本発明の方法は、抗PD-1抗体の治療上有効量を対象に投与することを含む。ある特定の実施形態において、本発明の方法は、がんを治療するための相加的または相乗的活性のために、放射線療法を、抗PD-1抗体と組み合わせて投与することを含む。本明細書において使用される表現「と組み合わせる」は、放射線療法が、抗PD-1抗体の前、後、または同時に投与されることを意味する。用語「と組み合わせる」はまた、抗PD-1抗体と放射線療法の連続的または同時投与も含む。例えば、放射線療法の「前に」投与する場合、抗PD-1抗体は、放射線療法の投与の150時間超前、約150時間前、約100時間前、約72時間前、約60時間前、約48時間前、約36時間前、約24時間前、約12時間前、約10時間前、約8時間前、約6時間前、約4時間前、約2時間前、約1時間前、または約30分前、約15分前、もしくは約10分前に投与してもよい。放射線療法の「後に」投与する場合、抗PD-1抗体は、放射線療法の投与の約10分後、約15分後、約30分後、約1時間後、約2時間後、約4時間後、約6時間後、約8時間後、約10時間後、約12時間後、約24時間後、約36時間後、約48時間後、約60時間後、約72時間後、または72時間超後に投与してもよい。放射線療法と「同時の」投与は、放射線療法の投与の10分未満以内に(前、後、または同時に)抗PD-1抗体が対象に投与されることを意味する。
【0098】
ある特定の実施形態において、本発明の方法は、抗がん剤である追加の治療剤の投与を含む。本明細書において使用される「抗がん剤」は、細胞毒素、ならびに抗代謝剤、アルキル化剤、アントラサイクリン、抗生物質、抗分裂剤、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、アスパラギナーゼ、コルチコステロイド、ミトタン(O,P’-(DDD))、バイオ医薬品(例えば、抗体およびインターフェロン)、および放射活性剤のような作用物質を含むがこれらに限定されない、がんを治療するために有用である任意の作用物質を意味する。本明細書において使用される「細胞毒素または細胞傷害剤」はまた、化学療法剤を指し、細胞に対して有害である任意の作用物質を意味する。例には、Taxol(登録商標)(パクリタキセル)、テモゾロミド、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロミド、エメチン、シスプラチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、ならびにそのアナログまたはホモログが挙げられるがこれらに限定されない。
【0099】
ある特定の実施形態において、本発明の方法は、手術、放射線、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)阻害剤(例えば、米国特許出願公開第2015/0203580号に開示の抗PD-L1抗体またはアテゾリズマブ)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)阻害剤(例えば、抗LAG-3抗体)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)阻害剤(例えば、イピリムマブ)、グルココルチコイド誘導腫瘍壊死因子受容体(GITR)阻害剤(例えば、抗GITR抗体)、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有タンパク質3(TIM3)阻害剤、BおよびTリンパ球アテニュエータ(BTLA)阻害剤、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)阻害剤、CD47阻害剤、別のT細胞同時阻害剤またはリガンドのアンタゴニスト(例えば、CD28、2B4、LY108、LAIR1、ICOS、CD160、またはVISTAに対する抗体)、CD20阻害剤(例えば、抗CD20抗体、または二重特異性CD3/CD20抗体)、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニスト[例えば、米国特許第7,087,411号に記載のアフリベルセプトのような「VEGF-Trap」もしくは他のVEGF阻害融合タンパク質、または抗VEGF抗体もしくはその抗原結合断片(例えば、ベバシズマブまたはラニビズマブ)、またはVEGF受容体の低分子キナーゼ阻害剤(例えばスニチニブ、ソラフェニブ、もしくはパゾパニブ)]、アンジオポエチン-2(Ang2)阻害剤(例えば、ネスバクマブ)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)阻害剤、CD38阻害剤、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤(例えば、エルロチニブ、セツキシマブ)、共刺激受容体に対するアゴニスト(例えば、グルココルチコイド誘導TNFR関連タンパク質に対するアゴニスト)、腫瘍特異抗原[例えば、CA9、CA125、黒色腫関連抗原3(MAGE3)、癌胎児性抗原(CEA)、ビメンチン、腫瘍-M2-PK、前立腺特異抗原(PSA)、ムチン-1、MART-1、およびCA19-9]に対する抗体、ワクチン(例えば、カルメットゲラン桿菌、がんワクチン)、シクロホスファミド、抗原提示を増加させるためのアジュバント(例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)、細胞毒素、化学療法剤(例えば、ダカルバジン、テモゾロミド、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、ゲムシタビン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、およびビンクリスチン)、インターロイキン-6受容体(IL-6R)阻害剤(例えば、サリルマブ)、IL-4R阻害剤(例えば、デュピルマブ)、IL-10阻害剤、IL-2、IL-7、IL-21、およびIL-15などのサイトカイン、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)(例えば、抗CD19-DAM4 ADC、および抗DS6-DM4 ADC)、キメラ抗原受容体T細胞(例えば、CD19標的化T細胞)、抗炎症薬(例えば、コルチコステロイドおよび非ステロイド性抗炎症薬)、ならびに抗酸化剤などの栄養補
助食品からなる群より選択される、追加の治療剤の投与、または治療レジメンもしくは手順を含む。
【0100】
ある特定の実施形態において、本発明の方法は、長期の持続可能な抗腫瘍反応を生じるため、および/またはがん患者の生存を延長するために、抗PD-1抗体を、放射線療法および場合により抗GITR抗体と組み合わせて投与することを含む。一部の実施形態において、本発明の方法は、抗PD-1抗体および抗GITR抗体をがん患者に投与する前、同時、または後に放射線療法を投与することを含む。例えば、放射線療法を、抗体の1つまたはそれ以上の用量の投与後に、腫瘍病変に1つまたはそれ以上の線量で投与してもよい。一部の実施形態において、放射線療法は、抗PD-1抗体および/または抗GITR抗体の全身投与後に、患者の腫瘍の局所免疫原性を増強するために(補助的放射線)および/または腫瘍細胞を殺滅するために(焼灼放射線)、腫瘍病変に局所投与してもよい。ある特定の実施形態において、放射線療法は、第1の腫瘍病変に投与されるが、第2の腫瘍病変には投与されず、抗PD-1抗体と組み合わせた投与によって、第1および第2の腫瘍病変の両方に腫瘍の退縮が起こる(アブスコパル効果)。ある特定の実施形態において、本発明の方法は、持続的なアブスコパル効果を生じるように、抗PD-1抗体を、放射線療法および場合により抗GITR抗体と組み合わせて投与することを含む。
【0101】
ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体は、放射線療法および化学療法剤(例えば、テモゾロミドまたはシクロホスファミド)、VEGFアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプト)、または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子と組み合わせて投与してもよい。
【0102】
医薬組成物および投与
本発明は、対象に、放射線と組み合わせて抗PD-1抗体を投与することを含む方法であって、抗PD-1抗体が医薬組成物内に含まれる方法を含む。本発明の医薬組成物は、適した輸送、送達、忍容性などを提供する、適した担体、賦形剤、および他の作用物質と共に製剤化してもよい。多数の適切な製剤を、全ての創薬化学者に公知の処方集:Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PAにおいて見出すことができる。これらの製剤には、例えば散剤、ペースト、軟膏、ゼリー、ロウ、油、脂質、脂質(陽イオンまたは陰イオン)含有小胞(LIPOFECTIN(商標)のような)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油型および油中水型エマルジョン、エマルジョン・カーボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、およびカーボワックスを含む半固体混合物が挙げられる。同様に、Powellら、「Compendium of excipients for parenteral formulations」PDA(1998) J Pharm Sci Technol 52:238~311頁も参照されたい。
【0103】
様々な送達システム、例えばリポソームへのカプセル化、マイクロ粒子、マイクロカプセル、変異体ウイルスを発現することができる組み換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシスが公知であり、本発明の医薬組成物を投与するために使用することができる(例えば、Wu et al.,1987,J.Biol.Chem.262:4429~4432頁を参照されたい)。投与方法には、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻孔内、硬膜外、および経口経路が挙げられるがこれらに限定されない。組成物は、任意の簡便な経路、例えば注入もしくはボーラス注射、上皮もしくは皮膚粘膜内層(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜等)を通しての吸収によって投与してもよく、他の生物活性剤と共に投与してもよい。
【0104】
本発明の医薬組成物は、標準的な針とシリンジによって皮下または静脈内送達すること
ができる。加えて、皮下送達に関して、本発明の医薬組成物を送達するために、ペン型送達デバイスが容易に適用される。そのようなペン型送達デバイスは再使用可能であり、または使い捨てであってもよい。再使用可能なペン型送達デバイスは一般的に、医薬組成物を含む交換可能なカートリッジを利用する。カートリッジ内の全ての医薬組成物が投与されてカートリッジが空になると、空のカートリッジを容易に廃棄し、医薬組成物を含む新しいカートリッジと交換することができる。このようにして、ペン型送達デバイスを再使用することができる。使い捨てペン型送達デバイスでは交換可能なカートリッジがない。むしろ、使い捨てペン型送達デバイスは、デバイス内のリザーバ中に収容される医薬組成物が予め充填されている。リザーバの医薬組成物が空になると、デバイス全体が廃棄される
【0105】
ある特定の状況では、医薬組成物は、徐放システムで送達することができる。一実施形態において、ポンプを使用してもよい。別の実施形態において、ポリマー材料を使用することができる;Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),1974,CRC
Pres.,Boca Raton,Floridaを参照されたい。なお別の実施形態において、徐放システムは、組成物の標的の近位に配置することができ、このため、全身用量の一部のみを必要とするに過ぎない(例えば、Goodson,1984、「Medical Applications of Controlled Release」、上記、vol.2、115~138頁を参照されたい)。他の徐放システムは、Langer,1990,Science 249:1527~1533頁による総説において考察されている。
【0106】
注射可能調製物は、静脈内、皮下、皮内、および筋肉内注射、点滴注入等のための投与剤形を含んでもよい。これらの注射可能調製物は、公知の方法によって調製してもよい。例えば、注射可能調製物は、例えば上記の抗体またはその塩を、注射のために通常使用される滅菌水性媒体または油性媒体中で、溶解、懸濁、または乳化させることによって調製してもよい。注射用の水性媒体として、例えば、生理食塩水、グルコースおよび他の補助剤を含む等張溶液等があり、これらは、アルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(硬化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50モル)付加物)]等のような適切な溶解剤と組み合わせて使用してもよい。油性媒体として、例えばゴマ油、ダイズ油等が使用され、これらを安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等のような溶解剤と組み合わせて使用してもよい。このように調製された注射剤は、好ましくは適切なアンプルに充填される。
【0107】
上記の経口または非経口で使用するための医薬組成物は、活性成分の用量に適合させるために適した単位用量の投与剤形で調製することが有利である。そのような単位用量での投与剤形には、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤等が挙げられる。
【0108】
ある特定の実施形態において、本発明は、抗PD-1抗体の治療量と薬学的担体とを含む医薬製剤を提供する。ある特定の実施形態において、本発明は、静脈内投与に使用するための医薬組成物に製剤化された抗PD-1抗体を提供する。
【0109】
投与レジメン
本発明は、治療反応が達成される限り、抗PD-1抗体を、約1週間に4回、1週間に2回、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回。6週間に1回、8週間に1回、12週間に1回の投与回数、またはそれより少ない回数で対象に投与することを含む方法を含む。ある特定の実施形態において、本発明は、治療反応が
達成される限り、放射線療法を、約1週間に7回、約1週間に4回、1週間に2回、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回、6週間に1回、8週間に1回、12週間に1回の投与回数、またはそれより少ない回数で対象に投与することを含む方法を含む。ある特定の実施形態において、方法は、治療反応が達成される限り、約1週間に7回、約1週間に4回、1週間に2回、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回、6週間に1回、8週間に1回、9週間に1回、12週間に1回の投与回数、またはそれより少ない回数の放射線療法と組み合わせた抗PD-1抗体の投与を含む。
【0110】
ある特定の実施形態において、本発明の方法は、少分割放射線療法である放射線療法を投与することを含む。ある特定の実施形態において、少分割放射線療法は、2~12分割を含む。ある特定の実施形態において、2~12分割は、連続する日に投与される。ある特定の実施形態において、放射線療法は、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量の投与後に投与される。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体は、放射線療法の1つまたはそれ以上の分割の投与の0.5~2週間前に投与される。
【0111】
本発明のある特定の実施形態に従って、放射線療法と組み合わせた抗PD-1抗体の複数用量を、規定の時間経過で対象に投与してもよい。本発明のこの態様に従う方法は、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量を、放射線の1つまたはそれ以上の線量と組み合わせて対象に連続的に投与することを含む。本明細書において使用される「連続的に投与する」とは、抗体の各用量が、異なる時点で、例えば既定の間隔(例えば、数時間、数日、数週間、または数ヶ月)をあけた異なる日に対象に投与されることを意味する。ある特定の実施形態において、本発明の方法は、各用量が直前の用量の0.5~12週間後に投与される、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量を連続的に投与することを含む。ある特定のさらなる実施形態において、方法は、放射線療法を投与することをさらに含む。放射線療法は、少分割放射線療法であってもよい。ある特定の実施形態において、放射線療法は、2~12分割を含む。一部の実施形態において、放射線の分割は、連続する日または交互の日に投与される。ある特定の実施形態において、放射線の分割は、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、7日に1回またはその組合せで投与される。
【0112】
ある特定の実施形態において、本発明は、抗PD-1抗体の単一の初回用量の後に、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の2回目の用量、および場合により、その後に抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の3回目の用量を患者に連続的に投与することを含む方法を含む。ある特定の実施形態において、方法は、放射線療法の単一の初回線量の後に、放射線療法の1つまたはそれ以上の2回目の線量、および場合により放射線療法の1つまたはそれ以上の3回目の線量を患者に連続的に投与することをさらに含む。代替の実施形態において、方法は、少分割放射線療法の1つまたはそれ以上の分割を連続的に投与することをさらに含む。
【0113】
本発明のある特定の実施形態に従って、抗PD-1抗体および放射線療法の複数の用量を、規定の時間経過で対象に投与してもよい。本発明のこの態様に従う方法は、抗PD-1抗体および放射線の複数用量を対象に連続的に投与することを含む。本明細書において使用される「連続的に投与する」は、放射線療法と組み合わせた抗PD-1抗体の各用量が、異なる時点、例えば既定の間隔(例えば、時間、日、週、または月)をあけた異なる日に対象に投与されることを意味する。
【0114】
用語「初回用量」、「2回目の用量」、および「3回目の用量」は、投与の時間的順序を指す。このため、「初回用量」は、処置レジメンの開始時に投与される用量(「ベースライン用量」とも呼ばれる)であり;「2回目の用量」は、初回用量後に投与される用量
であり;および「3回目の用量」は、2回目の用量後に投与される用量である。初回、2回目、および3回目の用量は全て、抗体(抗PD-1抗体)の同じ量を含んでもよい。しかし、ある特定の実施形態において、初回、2回目および/または3回目の用量に含まれる量は、処置過程の間に互いに異なる(例えば、必要に応じて上または下に調節する)。ある特定の実施形態において、1つまたはそれ以上(例えば、1、2、3、4、または5つ)の用量を、処置レジメンの開始時に「負荷用量」として投与した後に、より少ない回数でその後の用量を投与する(例えば、「維持用量」)。例えば、抗PD-1抗体は、患者の体重1kgあたり約1~3mgの負荷用量の後に約0.1~約20mg/kgの1つまたはそれ以上の維持用量でがん患者に投与することができる。
【0115】
本発明の1つの例示的な実施形態において、各2回目および/または3回目の用量は、直前の用量の1/2から14週間(例えば、1/2、1、1と1/2、2、2と1/2、3、3と1/2、4、4と1/2、5、5と1/2、6、6と1/2、7、7と1/2、8、8と1/2、9、9と1/2、10、10と1/2、11、11と1/2、12、12と1/2、13、13と1/2、14、14と1/2、または14と1/2週間超)後に投与される。本明細書において使用される「直前の用量」という語句は、一連の複数の投与において、用量が介在することなく、順序がまさに次の用量の投与の前に患者に投与される抗PD-1抗体(および/または放射線)の用量を意味する。
【0116】
本発明のこの態様に従う方法は、抗PD-1抗体(および/または放射線療法)の2回目および/または3回目の用量のいずれかの数を患者に投与することを含み得る。例えば、ある特定の実施形態において、単一の2回目の用量のみを患者に投与する。他の実施形態において、2つまたは2つ超(例えば、2、3、4、5、6、7、8つまたは8つ超)の2回目の用量を患者に投与する。同様に、ある特定の実施形態において、単一の3回目の用量のみを患者に投与する。他の実施形態において、2つまたは2つ超(例えば、2、3、4、5、6、7、8つ、または8つ超)の3回目の用量を患者に投与する。
【0117】
複数の2回目の用量を伴う実施形態において、各2回目の用量を、他の2回目の用量と同じ回数で投与してもよい。例えば、各2回目の用量を、直前の用量の1~2週間後に患者に投与してもよい。同様に、複数の3回目の用量を伴う実施形態において、各3回目の用量を、他の3回目の用量と同じ回数で投与してもよい。例えば、各3回目の用量を、直前の用量の2~4週間後に患者に投与してもよい。あるいは、2回目および/または3回目の用量を患者に投与する回数は、処置レジメンの経過の中で変化させることができる。投与回数は、診察後の個々の患者の必要性に応じて医師が処置過程の間に調節してもよい。
【0118】
ある特定の実施形態において、抗PD-1l抗体および/または放射線の1つまたはそれ以上の用量は、より頻繁な「導入用量」として治療レジメンの開始に投与され(1週間に2回、1週間に1回、または2週間に1回)、その後により少ない回数でその後の用量(「地固め用量」または「維持用量」)を投与する(例えば、2~12週間に1回)。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体および/または放射線の1つまたはそれ以上の用量を、より多くの回数で(1週間に2回、1週間に1回、または2週間に1回)「誘導用量」として処置レジメンの開始時に投与し、その後抗PD-1抗体の次の用量を投与する。
【0119】
本発明は、1つまたはそれ以上の用量が1つまたはそれ以上の処置サイクルに含まれる、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量を、放射線療法の1つまたはそれ以上の線量と組み合わせて連続的に投与することを含む方法を含む。
【0120】
本発明のある特定の実施形態に従って、方法は、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上
の用量、および場合により放射線療法の1つまたはそれ以上の線量の投与を含む、少なくとも1つの処置サイクルを投与することを含む。ある特定の実施形態において、処置サイクルは、抗PD-1抗体の1~10用量を含み、抗PD-1抗体の各用量は、直前の用量の0.5~8週間後に投与される。ある特定の実施形態において、本発明の方法は、最大6または8処置サイクルの投与を含む。ある特定の他の実施形態において、本発明の方法は、治療効果に応じて、最大12または12超の処置サイクルの投与を含む。ある特定の実施形態において、少なくとも1つの処置サイクルは、放射線療法をさらに含む。一部の実施形態において、放射線療法は、少分割放射線療法であり、少分割放射線療法は、2~12分割を含む。ある特定の実施形態において、2~12分割は、連続する日に投与される。
【0121】
本発明は、がん(例えば、固形腫瘍)を処置するために、放射線療法と組み合わせて抗PD-1抗体の患者への連続的投与を含む方法を含む。一部の実施形態において、本発明の方法は、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量を投与した後に放射線療法を行うことを含む。ある特定のさらなる実施形態において、放射線療法は、分割して投与される(少分割放射線療法)。ある特定の実施形態において、本発明の方法は、抗PD-1抗体の単回用量の後に、放射線療法の2~10分割を行い、その後抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量の投与を含む。一部の実施形態において、がん(例えば、固形腫瘍)を有する対象における腫瘍の成長を阻害するために、および/または腫瘍の再発を予防するために、抗PD-1抗体の約0.1mg/kg~約20mg/kgの1つまたはそれ以上の用量を投与した後に、放射線療法を行ってもよい。一部の実施形態において、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量を投与した後、放射線療法を行い、それによって抗腫瘍効能の増加(例えば、未治療の対象または単剤療法としての抗体もしくは放射線のいずれかを投与した対象と比較して腫瘍の成長のより大きい阻害、腫瘍の再発の予防の増加)が起こる。本発明の代替の実施形態は、抗PD-1抗体と比較して類似または異なる回数で投与される、抗PD-1抗体と放射線の同時投与に関する。一部の実施形態において、放射線療法は、抗PD-1抗体の前、後、または同時に投与される。
【0122】
投薬
本発明の方法に従って対象に投与される抗PD-1抗体の量は一般的に、治療上有効量である。本明細書において使用される用語「治療上有効量」は、(a)がん、例えば固形腫瘍の症状または適応の重症度または期間の低減;(b)腫瘍の成長の阻害または腫瘍壊死、腫瘍縮小および/または腫瘍消失の増加;(c)腫瘍の成長および発達の遅延;(d)腫瘍転移の阻害;(e)腫瘍の成長の再発の予防;(f)がんを有する対象の生存の延長;および/または(g)未処置の対象または単剤療法の抗体を投与された対象と比較して、従来の抗がん治療の使用の低減(例えば、化学療法剤または細胞傷害剤の使用の低減または消失)の1つまたはそれ以上が起こる抗体(抗PD-1抗体)の量を意味する。
【0123】
抗PD-1抗体の場合、治療上有効量は、抗体の約0.05mg~約600mg、約1mg~約500mg、約10mg~約450mg、約50mg~約400mg、約75mg~約350mg、または約100mg~約300mgであり得る。例えば、様々な実施形態において、抗PD-1抗体の量は、抗PD-1抗体の約0.05mg、約0.1mg、約1.0mg、約1.5mg、約2.0mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約400mg、約410mg、約420mg、約430mg、約440mg
、約450mg、約460mg、約470mg、約480mg、約490mg、約500mg、約510mg、約520mg、約530mg、約540mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mg、または約600mgである。一実施形態において、本発明の方法に従って抗PD-1抗体の250mgが投与される。一実施形態において、本発明の方法に従って抗PD-1抗体の200mgが投与される。一実施形態において、本発明の方法に従って抗PD-1抗体の350mgが投与される。
【0124】
個々の用量に含まれるいずれかの抗PD-1抗体の量は、対象の体重1キログラムあたりの抗体のミリグラム(すなわち、mg/kg)に関して表記することができる。ある特定の実施形態において、本発明の方法において使用される抗PD-1抗体は、対象の体重1キログラムあたり約0.0001~約100mgの用量で対象に投与することができる。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体は、対象の体重1キログラムあたり約0.1mg~約20mgの用量で投与することができる。ある特定の実施形態において、本発明の方法は、患者の体重1キログラムあたり約1mg、3mg、5mg、または10mgの用量の抗PD-1抗体の投与を含む。
【0125】
ある特定の実施形態において、患者に投与される抗PD-1抗体の量は、治療上有効量未満、すなわち治療下用量であってもよい。例えば、抗PD-1抗体の治療上有効量が3mg/kgを含む場合、治療下用量は、3mg/kg未満の量、例えば2mg/kg、1.5mg/kg、1mg/kg、0.5mg/kg、または0.3mg/kgを含む。本明細書において定義される「治療下用量」は、単独では治療効果に至らない抗PD-1抗体の量を指す。しかし、ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体の治療下用量は、治療効果を促進するために第2の治療剤および場合により第3の治療剤と共に投与される。
【0126】
ある特定の実施形態において、それを必要とする対象に投与される放射線療法は、2~100Gray(Gy)を含む。ある特定の実施形態において、放射線療法は、5、7、8、9、10、11、12、15、20、23、25、27、30、35、40、または45Gyを含む。ある特定の他の実施形態において、放射線療法は、50~100、60~90、または70~80Gyを含む。ある特定の実施形態において、放射線療法は、2~12分割で投与され(少分割放射線療法)、各分割は2~10Gyを含む。例えば、各分割が6Gyを含む5分割に含まれる30Gyの放射線を投与する。
【0127】
選択される実施形態
本発明の選択される実施形態には、以下が挙げられる:
【0128】
一部の実施形態において、本開示は、対象における腫瘍を処置または腫瘍の成長を阻害する方法であって:
(a)がんを有する対象を選択する工程;および
(b)放射線療法の1つまたはそれ以上の線量を、プログラム細胞死1(PD-1)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片の治療上有効量の1つまたはそれ以上の用量と組み合わせて、それを必要とする対象に投与する工程であって、組合せの投与によって、抗体または放射線単独の投与と比較して治療効能の増強が得られる工程、
を含む方法を提供する。
【0129】
一実施形態において、抗PD-1抗体の各用量は、対象の体重1kgあたり0.1~20mgを含む。
【0130】
別の実施形態において、抗PD-1抗体の各用量は、対象の体重1kgあたり0.3、1、3、5、または10mgを含む。
【0131】
他の実施形態において、抗PD-1抗体の各用量は、20~400mgを含む。
【0132】
一部の実施形態において、抗PD-1抗体の各用量は200mgを含む。
【0133】
一実施形態において、放射線の各線量は、2~80グレイ(Gy)を含む。
【0134】
別の実施形態において、抗PD-1抗体の各用量は、対象の体重1kgあたり1、3、または10mgを含み、放射線療法の各線量は、20~50Gyを含む。
【0135】
他の実施形態において、放射線療法は、分割放射線療法である。
【0136】
一部の実施形態において、分割放射線療法は、2~10分割を含む。
【0137】
一実施形態において、分割放射線療法は、30Gyの5分割を含む。
【0138】
別の実施形態において、分割放射線療法は、27Gyの3分割を含む。
【0139】
他の実施形態において、抗PD-1抗体の4~50用量が投与され、各用量は、直前の用量の0.5~4週間後に投与される。
【0140】
一部の実施形態において、抗PD-1抗体の各用量は、直前の用量の2週間後に投与される。
【0141】
一実施形態において、抗PD-1抗体は、放射線療法の前、同時、または後に投与される。
【0142】
別の実施形態において、抗PD-1抗体は、放射線療法の前に投与される。
【0143】
他の実施形態において、抗PD-1抗体は、放射線療法の1週間前に投与される。
【0144】
一部の実施形態において、治療効能の増強は、腫瘍の退縮、アブスコパル効果、腫瘍転移の阻害、経時的な転移病変の低減、化学療法剤または細胞傷害剤の使用の低減、腫瘍負荷の低減、無増悪生存の延長、全生存の延長、完全奏効、部分奏効、および安定からなる群より選択される効果を含む。
【0145】
一実施形態において、治療効能の増強は、放射線を照射した腫瘍に対して遠位の腫瘍における腫瘍の退縮を含む。
【0146】
別の実施形態において、腫瘍の成長は、抗体または放射線単独のいずれかを投与された対象と比較して少なくとも50%阻害される。
【0147】
他の実施形態において、腫瘍の成長は、抗PD-1抗体の前に放射線の線量を投与された対象と比較して少なくとも50%阻害される。
【0148】
一部の実施形態において、本開示は、(a)がんを有する対象を選択する工程;および(b)少なくとも1つの処置サイクルを対象に投与する工程であって、少なくとも1つの処置サイクルが抗PD-1抗体の1~6用量を含み、各用量が直前の用量の2週間後に投与される工程を含む、腫瘍を治療する方法を提供する。
【0149】
一実施形態において、抗PD-1抗体の各用量は、対象の体重1kgあたり1、3、5または10mgを含む。
【0150】
別の実施形態において、少なくとも1つの処置サイクルは放射線療法をさらに含む。
【0151】
他の実施形態において、放射線療法は約20~50Gyを含む。
【0152】
一部の実施形態において、放射線療法は約27Gyを含む。
【0153】
一実施形態において、放射線療法は約30Gyを含む。
【0154】
別の実施形態において、放射線療法は分割放射線療法である。
【0155】
他の実施形態において、分割放射線療法は2~6分割を含む。
【0156】
一部の実施形態において、分割放射線療法は3分割を含む。
【0157】
一実施形態において、分割放射線療法は5分割を含む。
【0158】
別の実施形態において、放射線療法は約27Gyの3分割を含む。
【0159】
他の実施形態において、放射線療法は約30Gyの5分割を含む。
【0160】
一部の実施形態において、分割は、連続した日で投与される。
【0161】
一実施形態において、抗PD-1抗体は、放射線療法の1週間前に投与される。
【0162】
別の実施形態において、最大10の処置サイクルが、それを必要とする対象に投与される。
【0163】
他の実施形態において、6処置サイクルが、それを必要とする対象に投与される。
【0164】
一部の実施形態において、放射線療法は、第1の処置サイクルで投与される。
【0165】
一実施形態において、放射線療法は約20~50Gyを含む。
【0166】
別の実施形態において、放射線療法は少分割放射線療法を含む。
【0167】
他の実施形態において、分割放射線療法は2~6分割を含む。
【0168】
一部の実施形態において、放射線療法は約27Gyの3分割を含む。
【0169】
一実施形態において、放射線療法は約30Gyの5分割を含む。
【0170】
別の実施形態において、分割は、連続した日に投与される。
【0171】
他の実施形態において、抗PD-1抗体は、放射線療法の1週間前に投与される。
【0172】
一部の実施形態において、各処置サイクルは、抗PD-1抗体の4用量を含む。
【0173】
一実施形態において、処置は、腫瘍の成長の阻害、腫瘍の退縮、腫瘍サイズの低減、腫瘍細胞数の低減、腫瘍の成長の遅延、アブスコパル効果、腫瘍転移の阻害、経時的な転移病変の低減、化学療法剤または細胞傷害剤の使用の低減、腫瘍負荷の低減、無増悪生存の延長、全生存の延長、完全奏効、部分奏効、および安定な疾患からなる群より選択される治療効果を生じる。
【0174】
別の実施形態において、処置効果は、対象において放射線を照射した腫瘍に対して遠位の腫瘍における腫瘍の退縮を含む。
【0175】
別の実施形態において、腫瘍の成長は、未処置の対象と比較して少なくとも10日間遅れる。
【0176】
一部の実施形態において、腫瘍の成長は、未処置の対象と比較して少なくとも50%阻害される。
【0177】
一実施形態において、腫瘍の成長は、抗体または放射線単独のいずれかを投与した対象と比較して少なくとも50%阻害される。
【0178】
一部の実施形態において、本開示は、(a)第1の固形腫瘍病変および第2の固形腫瘍病変を有する対象を選択する工程であって、第2の固形腫瘍病変が第1の固形腫瘍病変から遠位に位置する工程;ならびに(b)抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を、放射線療法と組み合わせて投与する工程を含む、腫瘍を処置する方法を提供する。
【0179】
他の実施形態において、放射線療法は、第1の腫瘍病変に投与されるが、第2の腫瘍病変には投与されず、投与によって第1および第2の腫瘍病変の両方に腫瘍の退縮が起こる。
【0180】
一実施形態において、抗PD-1抗体は、放射線療法の前に投与される。
【0181】
別の実施形態において、対象は、治療に抵抗性であるかもしくは不適切に反応し、または過去の治療後に再燃している。
【0182】
他の実施形態において、がんは再発または転移性がんである。
【0183】
一部の実施形態において、方法は、追加の治療剤または治療を対象に投与することをさらに含み、追加の治療剤または治療は、手術、化学療法剤、がんワクチン、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)阻害剤、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)阻害剤、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)阻害剤、グルココルチコイド誘導腫瘍壊死因子受容体(GITR)阻害剤、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有タンパク質3(TIM3)阻害剤、BおよびTリンパ球アテニュエータ(BTLA)阻害剤、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)阻害剤、CD47阻害剤、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、二重特異性抗CD3/抗CD20抗体、血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニスト、アンジオポエチン-2(Ang2)阻害剤、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)阻害剤、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、シクロホスファミド、腫瘍特異抗原に対する抗体、カルメットゲラン桿菌ワクチン、細胞毒素、インターロイキン6受容体(IL-6R)阻害剤、インターロイキン4受容体(IL-4R)阻害剤、IL-10阻害剤、IL-2、IL-7、IL-21、IL-15、抗体-薬物コンジュゲート、抗炎症薬、ならびに栄養補助食品からなる群より選択される。
【0184】
一実施形態において、追加の治療剤は、抗GITR抗体である。
【0185】
別の実施形態において、追加の治療剤はシクロホスファミドである。
【0186】
他の実施形態において、追加の治療剤はGM-CSFである。
【0187】
一部の実施形態において、追加の治療剤は、ドセタキセル、カルボプラチン、パクリタキセル、シスプラチン、ゲムシタビン、およびペメトレキセドからなる群より選択される。
【0188】
一実施形態において、抗PD-1抗体は、静脈内、皮下または腹腔内に投与される。
【0189】
別の実施形態において、がんは固形腫瘍を含む。
【0190】
他の実施形態において、固形腫瘍は、結腸直腸がん、卵巣がん、前立腺がん、乳がん、脳がん、子宮頸がん、膀胱がん、肛門がん、子宮がん、結腸がん、肝臓がん、膵臓がん、肺がん、子宮内膜がん、骨がん、精巣がん、皮膚がん、腎臓がん、胃がん、食道がん、頭頸部がん、唾液腺がん、および骨髄腫からなる群より選択される。
【0191】
一部の実施形態において、固形腫瘍は、肝細胞癌、非小細胞肺がん、頭頸部扁平上皮がん、基底細胞癌、乳癌、皮膚扁平上皮癌、軟骨肉腫、血管肉腫、胆管癌、軟部組織肉腫、結腸直腸がん、黒色腫、メルケル細胞癌、および多形膠芽腫からなる群より選択される。
【0192】
一実施形態において、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)とを含む。
【0193】
別の実施形態において、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、3つのLCDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)とを含み、HCDR1は、配列番号3のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号4のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号5のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号6のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号7のアミノ酸配列を含み;およびLCDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0194】
他の実施形態において、HCVRは、配列番号1のアミノ酸配列を含み、LCVRは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。
【0195】
別の実施形態において、抗PD-1抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0196】
一部の実施形態において、本開示は、調節性T(Treg)細胞の活性化および/または増殖を阻害する方法であって、(a)固形腫瘍を有する対象を選択する工程、ならびに(b)(i)抗PD-1抗体またはその抗原結合断片、(ii)放射線療法、および(iii)グルココルチコイド誘導腫瘍壊死因子受容体(GITR)に特異的に結合する抗体もしくはその抗原結合断片、シクロホスファミド、GM-CSF、抗LAG3抗体、ドセタキセル、またはカルボプラチンのうちの少なくとも1つを、対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0197】
一実施形態において、対象は大きい腫瘍を有する。
【0198】
別の実施形態において、放射線の線量は2~50Gyである。
【0199】
他の実施形態において、投与によって、腫瘍の成長の阻害、腫瘍の退縮、腫瘍サイズの低減、腫瘍細胞数の低減、腫瘍の成長の遅延、アブスコパル効果、腫瘍転移の阻害、経時的な転移病変の低減、化学療法剤または細胞傷害剤の使用の低減、腫瘍負荷の低減、無増悪生存の延長、全生存の延長、完全奏効、部分奏効、および安定からなる群より選択される少なくとも1つの効果が得られる。
【0200】
一部の実施形態において、固形腫瘍は、結腸直腸がん、卵巣がん、前立腺がん、乳がん、脳がん、子宮頸がん、膀胱がん、肛門がん、子宮がん、結腸がん、肝臓がん、膵臓がん、肺がん、子宮内膜がん、骨がん、精巣がん、皮膚がん、腎臓がん、胃がん、食道がん、頭頸部がん、唾液腺がん、および骨髄腫からなる群より選択される。
【0201】
一実施形態において、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)とを含む。
【0202】
別の実施形態において、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、3つのLCDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)とを含み、HCDR1は、配列番号3のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号4のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号5のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号6のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号7のアミノ酸配列を含み;およびLCDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0203】
他の実施形態において、HCVRは、配列番号1のアミノ酸配列を含み、LCVRは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。
【0204】
一実施形態において、抗PD-1抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0205】
一部の実施形態において、本開示は、腫瘍を処置するまたは腫瘍の成長を阻害する方法であって:
(a)皮膚がんを有する対象を選択する工程;および
(b)PD-1に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片の治療上有効量を、それを必要とする対象に投与する工程、
を含む方法を提供する。
【0206】
一実施形態において、PD-1に特異的に結合する前記抗体またはその抗原結合断片は、単剤療法として投与される。
【0207】
別の実施形態において、前記皮膚がんは、UV関連皮膚がんである。
【0208】
他の実施形態において、前記皮膚がんは、皮膚扁平上皮癌(CSCC)、基底細胞癌(BCC)、メルケル細胞癌および黒色腫からなる群より選択される。
【0209】
一部の実施形態において、但し、前記皮膚がんは頭頸部扁平上皮癌ではない。
【0210】
一実施形態において、前記皮膚がんは、転移性、切除不能、および/または局所進行がんである。
【0211】
別の実施形態において、前記皮膚がんはBCCであり、前記患者は、ヘッジホッグ経路阻害剤による処置に不耐性であるか、または処置後に進行している。
【0212】
他の実施形態において、前記抗体またはその抗原結合断片は、1つまたはそれ以上の用量として投与され、各用量は、直前の用量の0.5~4週間後に投与される。
【0213】
一部の実施形態において、各用量は直前の用量の2週間後に投与される。
【0214】
一実施形態において、各用量は、対象の体重1kgあたり1、3、または10mgを含む。
【0215】
別の実施形態において、PD-1に特異的に結合する前記抗体またはその抗原結合断片は、先行実施形態のいずれか1つに定義した抗体である。
【0216】
一部の実施形態において、本開示は、対象における腫瘍を処置するまたは腫瘍の成長を阻害する方法であって、脳がんを有する対象を選択する工程;およびPD-1に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片の治療上有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0217】
一実施形態において、対象は、多形膠芽腫(GBM)を有する。
【0218】
別の実施形態において、対象は、新たに診断されたGBMを有する。
【0219】
他の実施形態において、対象は年齢65歳以上である。
【0220】
一実施形態において、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、1つまたはそれ以上の用量として投与され、各用量は、直前の用量の0.5~4週間後に投与される。
【0221】
一実施形態において、各用量は、直前の用量の2週間後に投与される。
【0222】
別の実施形態において、各用量は、対象の体重1kgあたり1、3、または10mgを含む。
【0223】
他の実施形態において、方法は、放射線療法を、それを必要とする対象に投与することをさらに含む。
【0224】
一部の実施形態において、放射線療法は、少分割放射線療法である。
【0225】
一実施形態において、対象は、放射線の20~50Gyを2~20分割で投与される。
【0226】
別の実施形態において、対象は、抗PD-1抗体の初回用量の1週間後に放射線療法を投与される。
【0227】
他の実施形態において、抗PD-1抗体の1つまたはそれ以上の用量は、1つまたはそれ以上の処置サイクルに含まれ、各サイクルは抗PD-1抗体の1~6用量を含む。
【0228】
一部の実施形態において、各処置サイクルは、抗PD-1抗体の4用量を含み、各用量
は直前の用量の2週間後に投与される。
【0229】
一実施形態において、各用量は、対象の体重1kgあたり1、3、または10mgを含む。
【0230】
別の実施形態において、第1の処置サイクルは放射線療法をさらに含む。
【0231】
他の実施形態において、放射線療法は少分割放射線療法である。
【0232】
一部の実施形態において、対象は、放射線の20~50Gyを2~20分割で投与される。
【0233】
一実施形態において、対象は30Gyを5分割で毎日投与される。
【0234】
別の実施形態において、放射線療法は、抗PD-1抗体の投与の1週間後に投与される。
【0235】
他の実施形態において、対象が、抗PD-1抗体の投与後に頭蓋内浮腫を発症する場合、方法は、抗血管新生剤を対象に投与することをさらに含む。
【0236】
一部の実施形態において、抗血管新生剤は、血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤およびアンジオポエチン-2(Ang-2)阻害剤からなる群より選択される。
【0237】
一実施形態において、抗血管新生剤は、ベバシズマブまたはアフリベルセプトである。
【0238】
他の実施形態において、PD-1に特異的に結合する前記抗体またはその抗原結合断片は、先行実施形態のいずれか1つに定義した抗体である。
【実施例0239】
以下の実施例は、当業者に完全な開示、ならびに本発明の方法および組成物を作製および使用する方法の説明を提供するために述べており、本発明者らが本発明であると見なすものの範囲を制限すると意図されない。使用した数値(例えば、量、温度等)に関しては正確を期すように努力しているが、何らかの実験誤差および逸脱を斟酌すべきである。特に示していなければ、分量は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度はセ氏であり、圧力は、大気圧またはほぼ大気圧である。
【実施例0240】
MC38腫瘍に対する、放射線療法と組み合わせた抗PD-1抗体のインビボ効能
本実施例において、放射線療法と組み合わせたPD-1遮断の効果を、マウスにおける確立されたMC38腫瘍に対して調べた。
【0241】
MC38結腸癌細胞5×10個を、雌性C57BL/6マウス(Jackson Laboratory)の右脇腹の皮下に移植した。腫瘍体積の平均値がおよそ100mmに達する移植後9日目に処置を開始した。マウスを、アイソタイプ対照(2A3、BioXcell)またはPD-1ブロッキング抗体(RMP1-14、BioXcell)の5mg/kgのいずれかを週に2回、全体で5回の腹腔内注射を受ける群に無作為に割付した。抗体処置の開始後1日目に、放射線療法群に割付したマウスの右脇腹の腫瘍に対して12Gyの放射線を照射した。放射線療法は、RS2000 Biological
Research Irradiator(Rad Source)を使用して、部分的体照射フィクスチャ(Precision X-ray)および鉛のシート(Imag
es Scientific Instruments)によって遮蔽し、麻酔したマウス(ケタミン/キシラジン)に送達した。腫瘍の成長を、70~80日まで週に3回評価し、その後全てのマウスを安楽死させた。図1は、抗PD-1抗体の投与および放射線を含む実験の試験デザインを示す。
【0242】
図2および表1は、抗PD-1抗体単独または放射線と組み合わせて投与したマウスにおける腫瘍体積の平均値を示す。
【0243】
【表1】
【0244】
PD-1(RMP1-14)の遮断は、局所放射線照射(XRT)と相乗効果を示し、XRT+アイソタイプ対照処置マウス(マウス6匹中2匹)と比較すると、MC38腫瘍を有するマウスにおいて腫瘍の退縮を有意に誘導した(マウス6匹中4匹)。腫瘍の成長は、放射線と組み合わせた抗PD-1抗体によって処置したマウスでは阻害または遅延した。抗PD-1抗体および放射線によって処置したマウスは、500mmの腫瘍体積に達するのに要した日数が20日未満であった単剤療法のマウスと比較して、500mmに達するのに40日超を要した。腫瘍の退縮は、XRT+アイソタイプ処置群(腫瘍を拒絶した2匹中1匹が再燃した)での1.5週間と比較して、コンボ(XRT+抗PD-1抗体)処置群(腫瘍を拒絶した4匹中1匹がこの時点で再燃した)では最大4週間持続した。この腫瘍モデルでは、単剤療法としてのPD-1の遮断は、第1の腫瘍の成長に対して効果を有しなかった。
【0245】
【表2】
【0246】
組合せ処置(XRT+抗PD-1抗体)の治療効能は、他の全ての処置群:アイソタイプ対照(70日目で0%生存)、抗PD-1抗体処置(70日目で0%生存)、およびXRT+アイソタイプ処置マウス(70日目で17%生存)と比較して、この群の全生存の統計学的な増加(腫瘍移植後70日目で50%生存)によって証明された(図3;表2)。
【実施例0247】
B16腫瘍に対する抗PD-1抗体および放射線療法のインビボ効能
本実施例において、放射線療法と組み合わせた抗マウスPD-1抗体の抗腫瘍効果を、マウスにおいて確立されたB16腫瘍に対して試験した。
【0248】
B16F10.9黒色腫細胞2×10個を、雌性C57BL/6マウス(Jackson Laboratory)の右脇腹の皮下に移植した。腫瘍体積の平均値がおよそ150mmに達すると処置を開始した。マウスを、アイソタイプ対照(2A3、BioXcell)またはPD-1ブロッキング抗体(RMP1-14、BioXcell)の5mg/kgのいずれかを週に2回、全体で5回の腹腔内注射を受ける群に無作為に割付した。抗体処置の開始後1日目に、放射線療法群に割付したマウスの右脇腹の腫瘍に対して8Gyの放射線を照射した。放射線療法は、RS2000 Biological Research Irradiator(Rad Source)を使用して、部分的体照射フィクスチャ(Precision X-ray)および鉛のシート(Images Scientific Instruments)によって遮蔽し、麻酔したマウス(ケタミン/キシラジン)に送達した。腫瘍の成長を、70~80日まで週に3回評価し、その後全てのマウスを安楽死させた。図4は、抗PD-1抗体の投与および放射線を含む実験の試験デザインを示す。
【0249】
局所放射線照射(XRT)と組み合わせたPD-1(RMP1-14)ブロッキング抗体処置は、XRTまたは抗PD-1抗体の単剤療法と比較して第1のB16腫瘍の成長を遅らせた(図5;表3)。
【0250】
【表3】
【0251】
【表4】
【0252】
XRTと抗PD-1抗体処置との組合せは、XRT単独(50日目で0%生存)、抗PD-1抗体単独(40日目で0%生存)、およびアイソタイプ単独(30日目で0%生存)と比較して、全生存(移植後50日目で50%生存)を増加させた(図6;表4)。
【実施例0253】
転移性肺腫瘍に対する放射線療法と組み合わせた抗PD-1抗体のインビボ効能
本実施例において、放射線療法と組み合わせたPD-1遮断の効果を、マウスにおける確立されたおよび転移性の腫瘍に対して調べた。
【0254】
4T1乳癌細胞1.5×10個を、雌性Balb/cマウス(Jackson Laboratory)の右脇腹の皮下に移植した。腫瘍体積の平均値がおよそ100mmに達する移植後12日目に処置を開始した。マウスを、アイソタイプ対照(2A3、BioXcell)またはPD-1ブロッキング抗体(RMP1-14、BioXcell)の5mg/kgのいずれかを週に2回、全体で5回の腹腔内注射を受ける群に無作為に割付した。抗体処置の開始後1日目に、放射線療法群に割付したマウスの右脇腹の腫瘍に対
して8Gyの放射線を照射した。放射線療法は、RS2000 Biological Research Irradiator(Rad Source)を使用して、部分的体照射フィクスチャ(Precision X-ray)および鉛のシート(Images Scientific Instruments)によって遮蔽し、麻酔したマウス(ケタミン/キシラジン)に送達した。腫瘍の成長を、28日まで週に3回評価し、その後、クローン原性アッセイを使用して肺の転移負荷を評価するために、全てのマウスを安楽死させた。簡単に説明すると、肺組織をDNアーゼ/リベラーゼTL(Roche)によって解離して、60μM 6-チオグアニンを補充した培地中で培養した。培養2週間後、プレートをメチレンブルーで対比染色し、コロニー数を計数した(1つのコロニーは1つの転移性4T1細胞を表す)。
【0255】
放射線と組み合わせた抗PD-1抗体による処置は、腫瘍の退縮を促進すると共に、転移性成長の抑制を媒介する予想される。
【実施例0256】
放射線療法と組み合わせた抗ヒトPD-1抗体のインビボ効能は遠位の腫瘍に対するアブスコパル効果を促進する
本実施例において、放射線療法と組み合わせたPD-1遮断の効果を、抗ヒトPD-1抗体を使用してPD-1に関してヒト化したマウスにおける第1のおよび遠位MC38腫瘍に対して調べた。
【0257】
本実施例で使用した例示的な抗PD-1抗体は、REGN2810(米国特許出願公開第20150203579号に開示されるH4H7798Nとしても知られる)であり、これは、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖;配列番号1/2を含むHCVR/LCVRアミノ酸配列対;ならびに配列番号3~8を含む重鎖および軽鎖CDR配列を含む完全なヒトモノクローナル抗PD-1抗体であった。
【0258】
PD-1に関してヒト化したマウスを、VelociGene(登録商標)技術(Valenzuela et al 2003、Nat.Biotechnol.21:652~659頁;米国特許出願公開第2015/0366174号)を使用して操作した。
【0259】
MC38結腸癌細胞5×10個を、雌性ヒト化PD-1/C57BL/6マウスの皮下に0日目に(右脇腹の第1の腫瘍)、および3日目(左脇腹の腫瘍;遠位の腫瘍)に移植した。第1の腫瘍体積の平均値がおよそ150mmに達すると処置を開始した。マウスを、アイソタイプ対照またはPD-1ブロッキング抗体(REGN2810)の5mg/kgのいずれかを週に2回、全体で8回の腹腔内注射を受ける群に無作為に割付した。抗体処置の開始後1日目に、放射線療法群に割付したマウスの右脇腹の腫瘍に対して8Gyの放射線を照射した。放射線療法は、RS2000 Biological Research Irradiator(Rad Source)を使用して、部分的体照射フィクスチャ(Precision X-ray)および鉛のシート(Images Scientific Instruments)によって遮蔽し、麻酔したマウス(ケタミン/キシラジン)に送達した。第1および第2の腫瘍の成長を、70~80日まで週に3回評価し、その後全てのマウスを安楽死させた。図7は、抗PD-1抗体の投与および放射線を含む実験の試験デザインを示す。
【0260】
結果
第1の腫瘍:PD-1遮断(REGN2810)処置は、第1のMC38腫瘍の拒絶において、XRT+アイソタイプ対照処置マウス(6匹中1匹が腫瘍なし)と比較して局所放射線照射(XRT)と相乗効果を示した(6匹中4匹が腫瘍なし)。腫瘍の退縮は、X
RT+アイソタイプ処置群では持続が3週間であった(拒絶した腫瘍がこの時点で再燃した)のに対し、コンボ処置群では、実験終了まで8週間持続した(図8;表5)。
【0261】
【表5】
【0262】
単剤療法としてのPD-1遮断は、マウス5匹中2匹において拒絶を媒介したが、その第1の腫瘍を拒絶したマウス1匹が第2の腫瘍成長に屈し、実験の終了時に生存しているマウスは1匹のみであった。組合せ処置(XRT+REGN2810)の強力な治療効能は、他の全ての群:アイソタイプ対照またはXRT単独(70日目で0%生存)、および単剤療法としてのREGN2810(70日目で20%生存)と比較して統計学的に増加した全生存(腫瘍の移植後70日目で約67%生存)によって証明された(図9;表6)
【0263】
【表6】
【0264】
遠位腫瘍:XRTと組み合わせたREGN2810は、XRT単独(6匹中2匹が遠位腫瘍なし)、REGN2810単独(6匹中1匹が遠位腫瘍なし)、およびアイソタイプ対象処置マウス(6匹中1匹が遠位腫瘍なし)と比較すると、6匹中5匹のマウスが腫瘍なしであり、アブスコパル効果(遠位部位に移植した腫瘍の拒絶)を有意に促進した(図10;表7)。
【0265】
【表7】
【実施例0266】
MC38腫瘍に対する放射線療法およびGITRアンタゴニストと組み合わせた抗PD-1抗体のインビボ効能
本実施例において、放射線療法およびグルココルチコイド誘導腫瘍壊死因子受容体(GITR)アンタゴニスト(抗GITR抗体)と組み合わせたPD-1遮断の効果を、マウスにおける大きい確立されたMC38腫瘍に対して調べた。
【0267】
MC38結腸癌細胞5×10個を、雌性C57BL/6マウス(Jackson Laboratory)の右脇腹の皮下に移植した。腫瘍体積の平均値がおよそ150~200mm(「大きい腫瘍」として分類される)に達すると、処置を開始した。マウスを、アイソタイプ対照抗体(2A3またはLTF-2;BioXcell)、抗PD-1抗体(RMP1-14;BioXcell)、抗GITR抗体(DTA-1;BioXcell)、または抗PD-1抗体と抗GITR抗体の5mg/kgの両方の組合せのいずれかを週に2回、全体で5回の腹腔内注射を受ける群に無作為に割付した。抗体処置の開始後1日目に、放射線療法群に割付したマウスの右脇腹の腫瘍に対して8Gyの放射線を照射した。放射線療法は、RS2000 Biological Research Irradiator(Rad Source)を使用して、部分的体照射フィクスチャ(Precision X-ray)および鉛のシート(Images Scientific Instruments)によって遮蔽し、麻酔したマウス(ケタミン/キシラジン)に送達した。腫瘍の成長を、70~80日まで週に3回評価し、その後全てのマウスを安楽死させた。図11は、抗PD-1抗体、抗GITR抗体の投与、および放射線を含む実験の試験デザインを示す。
【0268】
抗PD-1抗体(RMP1-14)処置は、大きいMC38腫瘍の拒絶において、XRT+抗GITR抗体(6匹中2匹が腫瘍なし)、XRT+抗PD-1抗体(6匹中2匹が
拒絶)、またはXRT単独(6匹中0匹が腫瘍なし)処置マウスと比較して、局所放射線(XRT)および抗GITR抗体と相乗効果を示した(6匹中4匹のマウスが腫瘍なし)。単剤療法(抗PD-1抗体または抗GITR抗体)、または組合せ処置(抗PD-1抗体+抗GITR抗体)は、腫瘍の成長に対してほとんど効果がなく、抗PD-1抗体または抗GITR抗体処置は、マウス5匹中1匹において拒絶を媒介し、2つの抗体の組合せは5匹中2匹において拒絶を媒介した。腫瘍の退縮は、3コンボ処置マウスに関しては処置開始後最大6.5週間持続したのに対し、XRT+抗GITR抗体処置マウスでは2週間の持続であった(図12)。
【0269】
【表8】
【0270】
表8および図13は、抗PD-1抗体を放射線療法および抗GITR抗体と組み合わせて投与したマウスの生存を示す。さらに、抗PD-1抗体+XRTの投与は、非常に大きい腫瘍(約300mm)の腫瘍退縮を引き起こした。
【実施例0271】
B16腫瘍に対する放射線療法およびGITRアンタゴニストと組み合わせた抗PD-1抗体のインビボ効能
本実施例において、放射線療法およびGITRアンタゴニスト(抗GITR抗体)と組み合わせたPD-1遮断の効果を、マウスにおける確立されたB16腫瘍に対して調べた。
【0272】
B16F10.9黒色腫細胞2.5×10個を、雌性C57BL/6マウス(Jackson Laboratory)の右脇腹の皮下に移植した。腫瘍体積の平均値がおよそ100mmに達すると、処置を開始した。マウスを、アイソタイプ対照(2A3、LTF-2;BioXcell)、抗PD-1抗体(RMP1-14;BioXcell)、抗GITR抗体(DTA-1;BioXcell)、または抗PD-1抗体と抗GITR抗体の5mg/kgの両方の組合せのいずれかを週に2回、全体で5回の腹腔内注射を受ける群に無作為に割付した。抗体処置の開始後1日目に、放射線療法群に割付したマウスの右脇腹の腫瘍に対して8Gyの放射線を照射した。放射線療法は、RS2000 Biological Research Irradiator(Rad Source)を使用して、部分的体照射フィクスチャ(Precision X-ray)および鉛のシート(Images Scientific Instruments)によって遮蔽し、麻酔したマウス(ケタミン/キシラジン)に送達した。腫瘍の成長を、70~80日まで週に3回評価し、その後全てのマウスを安楽死させた。
【0273】
抗GITR抗体および放射線療法と組み合わせた抗PD-1抗体は、単剤療法または放
射線療法と組み合わせた抗PD-1抗体より腫瘍の退縮を促進し、腫瘍の成長の遅延を促進すると予想された。
【実施例0274】
進行固形腫瘍を有する患者における抗PD-1抗体および放射線療法に関する臨床試験
本試験は、進行固形腫瘍を有する成人患者における、単独および他の抗がん治療(放射線療法を含む)と組み合わせた抗PD-1抗体の効能、安全性、および忍容性を調べるための複数の用量漸増および用量拡大群を有するオープンラベル多施設用量漸増試験であった。
【0275】
本試験で使用した例示的な抗PD-1抗体は、REGN2810(米国特許出願公開第20150203579号に開示されるH4H7798Nとしても知られる)であり、これは、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖;配列番号1/2を含むHCVR/LCVRアミノ酸配列対;ならびに配列番号3~8を含む重鎖および軽鎖CDR配列を含む、完全なヒトモノクローナル抗PD-1抗体であった。
【0276】
試験の目的
本試験の主要目的は、進行悪性腫瘍を有する患者における、単剤療法として、または標的化放射線(主に腫瘍焼灼療法ではなくて免疫刺激としての役割を果たす意図で)、低用量シクロホスファミド(調節性T細胞応答を阻害することが示されている治療)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、カルボプラチン、ドセタキセル、またはその組合せと組み合わせて静脈内(IV)に投与したREGN2810の安全性、忍容性、用量制限毒性(DLT)を特徴付けすることである。
【0277】
本試験の副次目的は:(1)単剤療法としておよび他の抗がん治療(標的化放射線、低用量シクロホスファミド、または両方)と組み合わせたREGN2810の第2相推奨用量(RP2D)を決定すること;(2)REGN2810の単独、および各組合せパートナーの予備的な抗腫瘍活性を記述すること;(3)単剤療法および他の抗がん治療(標的化放射線、低用量シクロホスファミド、または両方)と組み合わせたREGN2810のPKを特徴付けすること;ならびに(4)REGN2810の免疫原性を評価することであった。
【0278】
試験デザインの正当性
本試験の用量漸増相の3+3モデルは、異なる用量レベルでの単剤療法として、および免疫増強治療であるシクロホスファミド;2つの投与レジメンの1つで送達される限定的な標的化放射線;または放射線とシクロホスファミドの組合せと組み合わせた場合のREGN2810の安全性の評価を可能にするためにデザインした。
【0279】
REGN2810の忍容性は、単独でならびに放射線および/またはシクロホスファミドとの組合せにおいて確立されていることから、選択した適応[NSCLC、BC、HNSCC、CSCC、MSIを有する腫瘍(結腸直腸、子宮内膜、前立腺、または他の腫瘍タイプ)、HCC、および他の進行固形腫瘍]において様々な組合せまたは単剤療法を使用する複数の拡大コホートを、安全性をさらに確認するため、および抗腫瘍活性の増強を評価するために追加した。顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、カルボプラチン、および/またはドセタキセルを、これらの組合せの一部に追加した。
【0280】
表9は、単剤のおよび他の症モダリティと組み合わせたREGN2810を使用するコホートの一部を記載する。
【0281】
【表9】
【0282】
REGN2810について最初に計画された処置は、14日毎に最大48週間、24週間の経過観察であった。放射線は、REGN2810の初回投与の1週間後に投与した。低用量シクロホスファミドは、REGN2810の最初の4用量の各々の1日前にシクロ
ホスファミドに割付された患者に投与した。
【0283】
試験期間
患者に、最大48週間の処置を行い、その後24週間の追跡期間を設けた。患者は、48週間の処置期間が完了するまで、または進行、許容できない毒性、同意の撤回、または別の試験中止基準を満たすまで、処置を受けた。少なくとも24週間の処置後、完全奏効(CR)であると確定した患者は、処置を中止して、全ての関連する試験評価(例えば、効能の評価)を継続するように決定してもよい。少なくとも24週間の処置後、3回連続する腫瘍の評価が不変であった、安定(SD)または部分奏効(PR)の腫瘍負荷評価を有する患者も同様に、処置を中止して、全ての関連する試験評価(例えば、効能の評価)を継続するように決定してもよい。
【0284】
試験集団
本試験の目標集団は、標準治療の候補ではない、標準治療を受ける意思がない、または利用可能な治療が臨床上の利益を伝えると予想されない進行悪性腫瘍を有する患者、ならびに不治である、および標準治療に反応しなかった、または標準治療にもかかわらず腫瘍の進行を示した、悪性腫瘍を有する患者を含んだ。
【0285】
組み入れ基準:患者は、試験の参加に関して適格であるためには以下の基準を満たさなければならない:(1)利用可能な代替の標準治療の治療選択肢がない固形腫瘍の進行が証明されている;(2)反応を評価するための少なくとも1つの病変。放射線療法に割付される患者は、指標病変を残しながら安全に照射することができ、企図される限定された、緩和線量の放射線が医学的に適切であると考えられる少なくとも1つの追加の病変を必要とする;(3)患者は、再発または転移性疾患の状況においてファーストライン治療(および最大2回の過去の治療)後に再燃していなければならないか、または抵抗性でなければならず、緩和放射線療法が適応される疾患を有しなければならない;(4)最大2回の過去の治療に対して抵抗性である、マイクロサテライト不安定性(MSI)を有する転移性がんを有する患者;(5)Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータスは1以下;(6)年齢18歳超;(7)肝機能:a.総ビリルビンは1.5×正常値の上限以下(ULN、肝転移が3×ULN以下である場合)、b.トランスアミナーゼは3×ULN以下(または肝転移の場合5.0×ULN以下)、c.アルカリホスファターゼ(ALP)は2.5×ULN以下(または肝転移の場合は5.0×ULN以下);(8)腎機能:血清中クレアチニンは1.5×ULN以下;(9)好中球数(ANC)は1.5×10個/L以上、c.血小板数は75×10個/L以上;(10)署名したインフォームドコンセントを提供できること;ならびに(11)予定来院、処置計画、臨床検査、および他の試験関連手順に同意することができ、および同意する意思があること。
【0286】
試験処置
REGN2810は、滅菌の1回使用バイアル中で液体として供給される。各バイアルは、濃度25mg/mLのREGN2810 10mLを引き抜くために十分な容量を含む。REGN2810は、30分のIV注入として外来患者の状況で投与した。各患者の用量は個々の体重に依存した。体重が10%以上変化した場合、REGN2810の用量を各サイクルで調節した。REGN2810は、単独で、または放射線および/またはシクロホスファミドと組み合わせて投与した。シクロホスファミドは、200mg/mまたは低用量(100mg/m)で投与した。
【0287】
単剤療法
REGN2810は、48週間の間、14日毎(すなわち、56日サイクルの1日目、15±3、29±3、および43±3日目)に30分にわたるIV注入によって外来患者
の状況で投与した。割付される計画された単剤療法レジメンは、以下を含み得る:(i)1mg/kgの30分にわたるIV注入を14日毎に48週間;(ii)3mg/kgの30分にわたる注入を14日毎に48週間;(iii)10mg/kgの30分にわたる注入を14日毎に48週間;(iv)0.3mg/kgの30分にわたる注入を14日毎に48週間(MTDが、1mg/kg未満であると決定された場合);および(v)200mgの固定用量の30分にわたるIV注入を14日毎に48週間。
【0288】
組合せ療法
同時の放射線療法、シクロホスファミド、GM-CSF、カルボプラチン、およびドセタキセルは、処方を通して供給され、その使用、用量、用量の変更、低減、または遅延、ならびにその使用に起因する任意の起こり得るAEを、REGN2810と共に追跡した。
【0289】
REGN2810および放射線の同時投与:REGN2810を、8日から12日目まで放射線処置と組み合わせて14日毎に48週間の間、30分にわたるIV注入によって投与した。計画された組合せREGN2810および放射線療法レジメンは以下を含み得る:
・ REGN2810の1mg/kgの30分にわたる注入を14日毎に48週間プラス
30Gyの放射線療法(6Gy×5回/週;REGN2810の初回用量の1週間後に、好ましくは連続する日に投与する)
・ REGN2810 1mg/kgの30分にわたる注入を14日毎に48週間プラス
27Gyの放射線療法(9Gy×3回/週;REGN2810の初回用量の1週間後に、好ましくは連続しない日に投与する)
・ REGN2810 3mg/kgの30分にわたる注入を14日毎に48週間プラス
30Gyの放射線療法(6Gy×5回/週;REGN2810の初回用量の1週間後に、好ましくは連続する日に投与する)
・ REGN2810 3mg/kgの30分にわたる注入を14日毎に48週間プラス
27Gyの放射線療法(9Gy×3回/週;REGN2810の初回用量の1週間後に、好ましくは連続しない日に投与する)
【0290】
患者は、REGN2810の初回用量の1週間後に開始する30Gyを5分割した6Gyの毎日投与、またはREGN2810の初回用量の1週間後に開始する27Gyを3分割した9Gyの1日おきに投与のいずれかを受けた。放射線のために選択される病変は、指標病変を残しながら局所照射によって安全に照射することができる病変であるべきであり、企図される限定された緩和用量での照射が医学的に適切であると考えられる病変であるべきである。
【0291】
REGN2810およびシクロホスファミドの同時投与:REGN2810を、低用量シクロホスファミド100mg/mの14日毎の4用量のIV注入と組み合わせて30分にわたるIV注入によって14日(2週間)毎に48週間投与した。4つのシクロホスファミド用量の各々は、最初の4つのREGN2810の用量の各々の1日前(最初の56日サイクルの-1、14、28、および42日目)に投与した。
【0292】
計画されたREGN2810とシクロホスファミドレジメンの組合せは:
・ シクロホスファミド100mg/mまたは200mg/mのIVを14日毎(最初の56日サイクルの-1、14、28、および42日目)に全体で4用量;プラス
・ REGN2810 3mg/kgの30分にわたる注入を14日毎に48週間(但し、単剤療法の用量3mg/kgはMTDより低い;3mg/kgがMTDより高ければ、用量は1mg/kgである)
であった。
【0293】
REGN2810、放射線、およびシクロホスファミドの同時投与:計画された組合せREGN2810、放射線、およびシクロホスファミドレジメンは:
・ シクロホスファミド100mg/m(低用量)のIVを14日毎(最初の56日サイクルの-1、14、28、および42日目)に全体で4用量;プラス
・ 27Gyの放射線療法(9Gy×3回/週;REGN2810の初回用量の7または8日後に、好ましくは連続しない日に投与する)、または30Gyの放射線療法(6Gy×5回/週;REGN2810の初回用量の7または8日後に、好ましくは連続する日に投与する);プラス
・ REGN2810 3mg/kgの30分にわたる注入を14日毎に48週間(但し、単剤療法の用量3mg/kgはMTDより低い;3mg/kgがMTDより高ければ、用量は1mg/kgである)
を含んだ。
【0294】
REGN2810、放射線、およびGM-CSFの同時投与:計画された組合せREGN2810、放射線、およびGM-CSFレジメンは:
・ GM-CSF250mcgのSCを、7日間毎日、7日間間隔で4回(最初の56日サイクルの1日目から7日目、15日目から21日目、29日目から35日目、および43日目から49日目に)投与する;プラス
・ 27Gyの放射線療法(9Gy×3回/週;REGN2810の初回用量の1週間後に、好ましくは連続しない日に投与する);プラス
・ REGN2810 3mg/kgの30分にわたる注入を14日毎に48週間(但し、単剤療法の用量3mg/kgはMTDより低い;3mg/kgがMTDより高ければ、用量は1mg/kgである)
を含んだ。
【0295】
REGN2810、放射線、GM-CSF、およびシクロホスファミドの同時投与:計画された組合せREGN2810、放射線、GM-CSF、およびシクロホスファミドレジメンは:
・ GM-CSF 250mcgのSCを、7日間毎日、7日間間隔で4回(最初の56日サイクルの1日目から7日目、15日目から21日目、29日目から35日目、および43日目から49日目)投与する;プラス
・ 27Gyの放射線療法(9Gy×3回/週;REGN2810の初回用量の1週間後に、好ましくは連続しない日に投与する);プラス
・ シクロホスファミド100mg/mまたは200mg/mのIVを14日毎(最初の56日サイクルの-1、14、28、および42日目)に全体で4用量;プラス
・ REGN2810 3mg/kgの30分にわたる注入を14日毎に48週間(但し、単剤療法の用量3mg/kgはMTDより低い;3mg/kgがMTDより高ければ、用量は1mg/kgである)
を含んだ。
【0296】
カルボプラチンを伴うまたは伴わないREGN2810およびドセタキセルの同時投与:薬物投与の提案される順序は、ドセタキセルの後にカルボプラチン(カルボプラチン含有コホートに登録されている場合)、その後にREGN2810であった:
・ ドセタキセル30mg/mのおよそ1時間超のIVを、最初の56日サイクルの1、8、29、および36日目に投与する。デキサメタゾン8mgのIVを、ドセタキセ
ルの初回用量の前に投与する。その後のドセタキセル処置に関しては、デキサメタゾン前投薬の用量は、治験責任医師の裁量に従って8mgまたは4mgであり得る。
・ カルボプラチンAUC2のおよそ30分にわたるIVを、最初の56日サイクルの1、8、29および36日目に投与する。カルボプラチンの投与は、カルボプラチンのラベルにあるCalvertの式を使用すべきである。Cockcroft-Gault式を使用してクレアチニンクリアランスを計算すべきである。
・ REGN2810 3mg/kgのおよそ30分にわたる注入を、14日毎に48週間行う。
【0297】
手順および評価
実施すべきスクリーニング手順は、血清中ベータ-HCG、脳のMRI、および胸部X線を含んだ。
【0298】
安全性手順は、既往、身体診察、バイタルサイン、心電図(ECG)、凝固、免疫安全性アッセイ(REGN2810によって処置した患者)、B症状の評価およびパフォーマンスステータスの評価、臨床検査、AE、および併用薬を含む。
【0299】
腫瘍の評価のために実施すべき効能手順は、CTまたはMRIスキャン、18F-フルオロデオキシグルコース-ポジトロン断層撮影(FDG-PET)スキャン、および/または腫瘍生検を含んだ。腫瘍評価のためのCTまたはMRIは、スクリーニング来院(注入前の28日以内)および56±3日目のサイクル間(およそ8週間毎)、および進行が疑われる場合に実施した。さらに、試験中に進行しなかった患者に関しては、追跡調査来院3、5、および7で腫瘍の評価を実施した。CTスキャンまたはMRIを使用する選択を行った後、その後の評価は同じモダリティを使用して行った。腫瘍反応の評価は、固形がんの治療効果判定に関する新ガイドライン(Response Evaluation
Criteria in Solid Tumors(RECIST)バージョン1.1(Eisenhauer et al 2009,Eur.J.Cancer 45:228~247頁))に従って実施した。RECIST測定のための標的病変として選択した測定可能な病変はまた、免疫関連効果判定基準(irRC;Nishino et al 2013,Clin.Cancer Res.19:3936~3943頁)に関する指標病変としても含めた。RECISTの反応は奏効率の統計学的評価として優先される。個々の患者に関して、irRCは、通常ではない反応の可能性により治験責任医師の裁量で処置を継続するか否かに関する決定を通知することができる。
【0300】
PKおよび抗薬物抗体(ADA)評価のために血液試料を採取した。
【0301】
試験の変数
試験の主要変数は、48週間の処置を通してのDLTの発生、ならびにTEAEおよび異常な臨床所見の発生および重症度であった。
【0302】
副次変数は:
・ 適応(本明細書において他所で記述)に関して適切な基準を使用して評価した抗腫瘍活性:
CTまたはMRIによって測定した固形がんの治療効果判定のための新ガイドライン(RECIST;Eisenhauer et al 2009,Eur.J.Cancer 45:228~247頁)基準
RECIST測定が標準でない特定の腫瘍に関しては他の評価基準も使用する
RECIST測定に適用されている免疫関連効果判定基準(Immune-Related Response Criteria)(irRC;Nishino et al
2013,Clin.Cancer Res.19:3936~3943頁)。全ての
症例において、RECIST(または他の腫瘍特異的基準)は、PD、SD、CR、またはPRを決定するための優先的ツールである。irRCは、臨床での決定および情報目的のために収集した。
・ 抗REGN2810抗体の発生頻度
・ PFSおよび全生存によって測定した抗腫瘍活性
であった。
【0303】
本試験の目的に関して、患者を8週間毎に反応に関して再評価した。客観的奏効または進行が最初に報告された4週間後に、確定スキャンも同様に得た。反応および進行は、本試験において、改訂された固形がんの治療効果判定のための新ガイドライン(RECIST)(バージョン1.1;Eisenhauer et al 2009,Eur.J.Cancer 45:228~247頁)によって提唱される国際基準を使用して評価した。悪性リンパ節の場合には、腫瘍病変の長径(一次元測定)および短径の変化を、RECIST基準において使用した。
【0304】
病変の選択
測定可能な疾患:測定可能な病変は、少なくとも1つの寸法(記録すべき最長径)で胸部X線によって20mm以上(2cm以上)としてまたはCTスキャン、MRI、もしくは臨床検査によるキャリパーで10mm以上(1cm以上)として正確に測定することができる病変として定義した。全ての腫瘍測定は、ミリメートル(またはセンチメートルの小数)で記録しなければならない。注意:放射線を照射した標的病変の評価に関しては以下を参照されたい。
【0305】
悪性のリンパ節:病理学的に肥大して測定可能であると考えられるためには、リンパ節は、CTスキャン(CTスキャンのスライスの厚さは、5mm[0.5cm]以下であることが推奨される)によって評価した場合に短軸で15mm以上(1.5cm以上)でなければならない。ベースラインおよび追跡期間において、短軸のみを測定して追跡した。
【0306】
測定不能疾患:小さい病変(最長径10mm未満[1cm未満]または病的リンパ節では、短軸が10mm以上15mm未満[1cm以上1.5cm未満])を含む他の全ての病変(または疾患部位)は、測定不能疾患と考えられた。骨病変、軟膜疾患、腹水、胸膜/心膜滲出液、皮膚/肺リンパ管症、炎症性乳がん、および腹部腫瘍塊(CTまたはMRIによって追跡不能)は測定不能であると考えられた。注意:放射線により明らかにされた単純嚢胞の基準を満たす嚢胞性病変は、それらが、定義により単純嚢胞であることから、悪性病変(測定可能または測定不能のいずれも)として考えるべきではない。嚢胞性転移を表すと考えられる「嚢胞性病変」は、それらが上記の測定可能性の定義を満たしていれば、測定可能な病変として考えることができる。しかし、非嚢胞性病変が同じ患者に存在する場合、これらは標的病変として選択するために好ましい。
【0307】
標的病変:全ての罹患臓器を代表する、1臓器あたり最大2個および全体で5個の全ての測定可能な病変を、標的病変として同定して、ベースラインで記録および測定すべきである。標的病変は、そのサイズ(病変の最長径)に基づいて選択され、全ての罹患臓器を代表するが、さらに、それらを再現可能に繰り返し測定することができる病変を含んだ。時に、最大の病変を再現可能に測定することができない場合があり、そのような状況では、再現可能に測定することができる次に大きい病変を選択した。全ての標的病変の直径(非節病変では最長径、節病変では短軸)の和を計算して、ベースライン長径和として報告した。リンパ節が和に含まれる場合には、短軸のみを和に加えた。ベースライン長径和は、疾患の測定可能な寸法での任意の客観的腫瘍退縮をさらに特徴付けするために参照として使用した。
【0308】
非標的病変:5個の標的病変に加えて任意の測定可能な病変を含む他の全ての病変(または疾患部位)を、非標的病変として同定し、ベースラインで記録した。これらの病変の測定は必要ではないが、各々の存在、非存在、またはまれな場合では、明確な進行を、追跡期間で注目する。
【0309】
測定可能な疾患の評価方法
全ての測定は、定規またはキャリパーを使用してメートル法で行い、記録した。全てのベースライン評価は、可能な限り、処置開始時に行い、処置開始前4週間を超えてはならない。ベースラインおよび追跡期間の間に、各々の同定および報告された病変を特徴付けするために、同じ評価方法および同じ技術を使用すべきである。イメージングに基づく評価は、追跡すべき病変が撮像できないが臨床検査によって評価可能である場合を除き、臨床検査による評価より好ましい。
【0310】
臨床病変:臨床病変は、それらが表層部にあり(例えば、皮膚結節または触診可能なリンパ節)、キャリパーを使用して評価した場合に直径が10mm以上(1cm以上)である(例えば、皮膚結節)場合に限り、測定可能であると考えられた。皮膚病変の場合、病変のサイズを評価するための定規を含むカラー写真による報告が推奨された。
【0311】
胸部X線:胸部X線での病変は、それらの輪郭が明確であり、空気を含む肺によって囲まれている場合に測定可能な病変として許容可能であった。しかし、CTが好ましい。
【0312】
通常のCTおよびMRI:このガイドラインは、CTスライスの厚さが5mm(0.5cm)またはそれ未満であるという仮定に基づいてCTスキャン上での病変の測定可能性を定義している。CTスキャンのスライスの厚さが5mm(0.5cm)超である場合、測定可能な病変の最小のサイズは、スライスの厚さの2倍であるべきである。MRIもまた、特定の状況では許容可能である。
【0313】
PET-CT:PET-CTの一部として実施したCTが、診断的CT(IVおよび経口造影剤を含む)と同一の診断的品質のものである場合、PET-CTのCT部分をRECIST測定のために使用することができ、がん病変を経時的に正確に測定するために、通常のCTと互換的に使用することができる。
【0314】
超音波:超音波は、病変サイズの評価に有用ではなく、測定方法として使用してはならない。新規病変が、試験の経過において超音波によって同定された場合、CTまたはMRIによる確定が推奨される。CT時の放射線曝露に関する懸念がある場合、選択された例ではCTの代わりにMRIを使用してもよい。
【0315】
内視鏡、腹腔鏡:客観的腫瘍評価のためにこれらの技術を利用することは推奨されない。しかし、そのような技術は、生検を得て病理学的完全奏効を確定するため、または完全奏効(CR)もしくは外科的切除後の再発が評価項目である臨床試験では再燃を決定するために有用であり得る。
【0316】
腫瘍マーカー:腫瘍マーカーのみを、反応を評価するために使用してはならない。マーカーが、当初正常範囲の上限を超えている場合、患者を臨床的完全奏効であると考えるためには、それらは正常化しなければならない。
【0317】
細胞学、組織学:これらの技術は、まれな症例(例えば、既知の残存良性腫瘍が残っている場合がある胚細胞腫瘍のような腫瘍タイプにおける残存病変)において、部分奏効(PR)と完全奏効(CR)とを識別するために使用することができる。測定可能な腫瘍が反応または安定な疾患の基準を満たしている場合に、処置中に出現または悪化する任意の
滲出液が新生物起源であるか否かを細胞学的に確認することは、反応または安定(滲出液が処置の副作用であり得る)と進行とを識別するために必須である
【0318】
FDG-PET:FDG-PET反応評価が追加の試験を必要とする場合、時に、進行(特に起こり得る「新規」疾患)の評価においてCTスキャンを補うためにFDG-PETスキャンの使用を組み入れることは妥当である。FDG-PETイメージングに基づく新規病変は、以下のアルゴリズムに従って同定することができる:a.ベースラインでFDG-PET陰性で、追跡期間にFDG-PET陽性である場合は、新規病変に基づくPDの兆候である。b.ベースラインでのFDG-PETがなく、追跡期間でFDG-PET陽性:追跡期間でのFDG-PET陽性が、CTによって確定された疾患の新規部位に対応する場合、これはPDである。追跡期間でのFDG-PET陽性が、CT上で疾患の新規部位として確定されなかった場合、その部位で真に進行が起こっているか否かを決定するためにさらなる追跡CTスキャンが必要である(そのような場合、PDの日付は、初回の異常なFDG-PETスキャンの日付である)。追跡期間でのFDG-PET陽性が、解剖学的画像に基づいて進行していない、CT上の疾患の既存の部位に対応する場合、これはPDではない。c.X線撮影上の残存物の異常が線維症または瘢痕形成を表すと考えられる症例では、生検と同様に、反応をCRに等級を引き上げるためにFDG-PETを使用してもよい。このような状況でのFDG-PETの使用は、プロトコールに予め記載すべきであり、適応に関する疾患特異的医学論文によって裏付けされるべきである。しかし、いずれのアプローチもFDG-PETの限界および生検の解像度/感度により偽陽性CRが起こり得ることを認識しなければならない。注意:FDG-PETスキャン「陽性」病変は、吸収補正後の画像において周辺組織より2倍大きい取り込みを有するFDG要求性の病変を意味する。
【0319】
標的病変の評価に関する効果判定基準
・ 完全奏効(CR):全ての標的病変の消失。いかなる病的なリンパ節(標的または非標的によらず)も、短軸が10mm未満(1cm未満)に低減しなければならない。
・ 部分奏効(PR):ベースライン長径和を参照とした、標的病変の長径和の少なくとも30%の減少。
・ 進行(PD):試験の最小の長径和(これは、試験の最小値である場合、ベースライン長径和を含む)を参照とした、標的病変の長径和の少なくとも20%の増加。20%の相対的増加に加えて、和はまた、少なくとも5mm(0.5cm)の絶対的増加を証明しなければならない。(注意:1つまたはそれ以上の新規病変の出現もまた、進行であると考えられる)。
・ 安定(SD):試験の最小の長径和を参照として、PRに適格となるほど十分な縮小がなく、またはPDに適格となるほど十分な増加もないこと。
【0320】
非標的病変の評価に関する効果判定基準
・ 完全奏効(CR):全ての非標的病変の消失および腫瘍マーカーレベルの正常化。全てのリンパ節のサイズは、非病的でなければならない(短軸が10mm未満(1cm未満))。注意:腫瘍マーカーが、当初正常範囲の上限を超えている場合、患者を臨床的完全奏効であると考えるためにはそれらは正常化しなければならない。
・ 非CR/非PD:1つまたはそれ以上の非標的病変の存続および/または正常上限を超えたレベルでの腫瘍マーカーの維持。
・ 進行(PD):1つまたはそれ以上の新規病変の出現および/または既存の非標的病変の明白な進行。明白な進行は通常、標的病変の状態に依存してはならない。これは、単一の病変の増加ではなく、全体的な疾患状態の変化を表さなければならない。
【0321】
免疫関連効果判定基準
免疫関連効果判定基準は、全ての標的病変およびもし存在する場合は新規病変の最長径
和を使用して、効果を決定するという点において、RECIST(バージョン1.1)とは異なる。新規病変の存在それ自体は、進行を決定しない:全腫瘍負荷を考慮する。
【0322】
標的病変の評価
・ 完全奏効(CR):全ての標的病変の消失。いかなる病的なリンパ節(標的または非標的によらず)も、短軸が10mm未満(1cm未満)に低減しなければならない。
・ 部分奏効(PR):ベースライン長径和を参照とした、新規病変を含む標的病変の長径和の少なくとも30%の減少。
・ 進行(PD):試験の最小の長径和(これは、試験の最小値である場合、ベースライン長径和を含む)を参照とした、新規病変を含む標的病変の長径和の少なくとも20%の増加。20%の相対的増加に加えて、和はまた、少なくとも5mm(0.5cm)の絶対的増加を証明しなければならない。
・ 安定(SD):試験中の最小の長径和を参照として、および新規病変の測定を含む、PRに適格となるほど十分な縮小がなく、またはPDに適格となるほど十分な増加もないこと。
【0323】
非標的病変の評価
・ 完全奏効(CR):全ての非標的病変の消失および腫瘍マーカーレベルの正常化。全てのリンパ節のサイズは、非病的でなければならない(短軸が10mm未満(1cm未満))。注意:腫瘍マーカーが当初正常範囲の上限を超えている場合、患者を臨床的完全奏効であると考えるためにはそれらは正常化しなければならない。
・ 非CR/非PD:1つまたはそれ以上の非標的病変の存続および/または正常上限を超えたレベルでの腫瘍マーカーの維持。
・ 進行(PD):既存の非標的病変の明白な進行。明白な進行は、通常、標的病変の状態に依存してはならない。これは、単一の病変の増加ではなく、全体的な疾患状態の変化を表さなければならない。「非標的」病変のみの明白な進行は例外的であるが、そのような状況では、主治医の意見を優先すべきであり、進行の状態を後で確定しなければならない。
【0324】
総合効果判定基準の評価
最良総合効果は、処置療開始から進行/再発までに記録された最良効果である(処置開始後に記録された最小の測定値を進行の参照とする)。患者の最良効果の割付は、測定および確定基準の両方に達することに依存する。改訂された固形がんの治療効果判定のための新ガイドライン(RECIST)バージョン1.1;(Eisenhauer et al 2009,Eur.J.Cancer 45:228~247頁)および免疫関連効果判定基準(irRC;Nishino et al 2013,Clin.Cancer Res.19:3936~3943頁)を、以下の表10および11に要約する。
【0325】
【表10】
【0326】
【表11】
【0327】
放射線照射標的病変の評価
放射線照射標的病変は、固形がんの治療効果判定(RECIST)委員会によって提唱される国際基準の改変版、バージョン1.1によって評価した。局所制御を定義するために、RECIST1.1ガイドラインの外に、本プロトコールに特異的な追加の定義を組み入れた。
【0328】
放射線照射病変の効果判定基準は以下のとおりであった。
【0329】
局所増大(LE):処置開始以降に記録された、最小LDを参照とした、標的病変のLDの少なくとも20%の増加。理想的には、この決定は、CT画像評価に基づいてなされる。
【0330】
局所再発(LF):プロトコール治療後の主に処置した腫瘍を指し、以下の2つの判定基準の両方を満たすものに対応する:(1)局所増大(LE)に関する上記の定義の20%の腫瘍寸法の増加;(2)LEの基準を満たす測定可能な腫瘍は、ポジトロン断層撮影(PET)イメージングにおいて処置前の病期分類PETと類似の強度の取り込みであるべきである。または癌が生存していることを確認するために測定可能な腫瘍の生検を採取すべきである。
【0331】
局所制御(LC):局所再発が存在しないこと。
【0332】
処置計画CTスキャンから計算した放射線照射標的病変の最長径(LD)を、適切な組織特異的ウィンドウを使用して、ベースラインLDとして報告した。ベースラインLDは、客観的な腫瘍を特徴付けするための参照として使用した。追跡評価に関して、5mmの連続的再構築アルゴリズムを使用して、予定プロトコール追跡調査の一部として得た肺のウィンドウを使用して実施する診断的CTスキャンが、反応の評価方法として好ましい。CTスキャンが利用できない場合、標的病変が明白に可視可能である限り、MRIまたはX線による決定が許容される。
【0333】
結果
REGN2810単独および組合せは、安全で患者によって良好に忍容された。REGN2810の単独または他の処置モダリティと組み合わせた投与は、進行固形腫瘍患者において腫瘍の成長を阻害し、および/または腫瘍の退縮を促進した。全奏効率は、単剤療法と比較すると、放射線との組合せ療法に関して良好であった。
【0334】
進行した固形の悪性腫瘍(47%が4回または4回超の過去の治療を受けていた)を有する患者60人を今日まで処置してきた。進行固形悪性腫瘍は、結腸直腸がん、頭頸部がん、乳がん、軟部組織肉腫、副腎がん、肛門がん、虫垂のがん、膀胱がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、食道がん、肝臓がん、非小細胞肺腺癌、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、腎肉腫様がん、唾液腺がん、非黒色腫皮膚がん、メルケル細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、小腸がん、甲状腺がん、および子宮がんを含んだ。
【0335】
患者42人(70%)が1つまたはそれ以上の処置関連有害事象(AE)を経験した。最も一般的な処置関連AEは、疲労(28.3%)、関節痛(11.7%)、および嘔気(11.7%)であった。腫瘍の反応に関して評価した患者60人中、客観的奏効(PR/CR)は11人(18.3%)であったが、患者31人(51.7%)は、疾患制御(CR/PR/SD)を示した。放射線療法を含む組合せ療法を受けた患者36人において、客観的奏効は、患者6人(16.7%)に認められ、疾患制御は患者19人(52.8%)に認められた。放射線療法を受けなかった患者24人に関して、客観的奏効は患者5人(20.8%)に認められ、疾患制御は患者12人(50%)に認められた。表12は、反応者の要約を示す。
【0336】
【表12】
【0337】
反応者の中で、単剤療法に反応する時間の中央値は113日(範囲52~226日)であり、放射線療法を行った患者では59日(範囲56~113日)であった。
【実施例0338】
転移性非黒色腫皮膚がん、基底細胞癌、および皮膚扁平上皮癌における持続可能な客観的奏効を達成したモノクローナル抗体REGN2810によるPD-1遮断の症例報告
緒言
基底細胞癌(BCC)および皮膚扁平上皮癌(CSCC)は、主要な危険因子としてUV光に対する曝露を共通に有しており、したがってこれらの腫瘍は高頻度で変異する(Chalmers et al 2016,AACR Ann.Meeting,Abs 3576)。他の悪性腫瘍において、高頻度の変異負荷は、PD-1免疫チェックポイントに対する抗体による治療による臨床上の利益に関連している[Le et al 2015,New Engl.J.Med.May 30(出版前の電子出版)]。高頻度変異腫瘍は、PD-1免疫チェックポイントの遮断によって解放することができるエフェクターT細胞を誘引する免疫原性腫瘍ネオ抗原を発現する可能性がより高い(Mandal
and Chan 2016,Cancer Discov.6:1~12頁)。本実施例は、進行中の第1相臨床試験(NCT02383212;本明細書において実施例7に記載する)において完全なヒト抗PD-1モノクローナル抗体であるREGN2810によって処置した転移性BCC患者および転移性CSCC患者について記載する。
【0339】
症例報告1
患者は、顎の左側に生じたステージ1BCCと診断され、モーズ手術によって切除した66歳女性であった。同じ部位での局所再発がその2年後に同定され、広範囲の局所切除により、左下顎への浸潤および18個のリンパ節のうち1つへの転移が明らかとなった。患者は、アジュバント放射線を受け、4年間寛解状態であるが、監視肺イメージングにおいて観察された肥大する肺結節を生検採取したところ、転移性BCCの存在が確認された。患者はその後、ヘッジホッグ経路阻害剤(HHI)であるビスモデギブを5ヶ月間投与された。患者は当初反応したが、進行のために中止した。
【0340】
ビスモデギブ療法の6ヶ月後で、なおもゆっくり進行し続けているため、患者はREGN2810の第1相試験に登録し、10mg/kgのIVを2週間毎に受けるコホートに
割付され、初回用量を投与された。2つの肺転移を標的病変として追跡した。8週間(3%増加)および16週間(10%増加)終了時の反応の評価は、RECIST基準により安定であると証明された。24週間終了時の反応評価は、腫瘍測定値の37%の低減を証明し(図14A)、これは32週目でも確認された。患者は処置を良好に忍容し、REGN2810による処置をさらに10ヶ月継続中である。
【0341】
症例報告2
患者は、左頬の皮膚扁平上皮癌と診断された52歳男性であった。患者は断端を確保したモーズ手術を受けた。患者は複数の再発を経験し、少なくとも9回の追加のモーズ手術を受けた。患者は4年後に左下顎全体の広範囲局所切除を受け、その後20ヶ月目に左耳下腺切除を受けた。同様にアジュバント放射線療法を左頬、左下顎、左の首に(同時のセツキシマブと共に)、および両側の首に(同時のカルボプラチンと共に)投与した。他の全身治療は、カペシタビン、およびシスプラチン+ドセタキセルであった。初回診断の10年後、患者は、左首の2.2cmの瘢痕内再発のために断端を確保した切除を受けた。その後、C4~C5椎体での浸潤性CSCCにより、C4~C5前方固定およびC4~C6後方椎弓切除を伴う頸椎の緊急減圧手術を必要とした。患者はまた、神経周囲の罹患によると考えられる下肢の筋虚弱も発症し、歩行のために歩行器の使用を必要とした。
【0342】
患者は、第1相試験の最初のコホートに登録し、REGN2810の1mg/kgを2週間毎に投与された。処置開始後数週間以内に、患者の下肢の筋力は徐々に回復し、歩行器の使用をもはや必要としなくなった。16週での反応を図14Bに示す。左頸部病変のX線による完全奏効が40週目に達成された。患者は、REGN2810による計画された48週間のプロトコール処置を終了した。患者は、現在、腫瘍内科医による積極的経過観察を継続中であるが、疾患再発の臨床またはX線での証拠はない。
【0343】
考察
本実施例は、PD-1阻害剤(REGN2810)によって処置した転移性BCC患者における部分奏効、ならびに転移性CSCC患者における進行中の持続性の完全奏効を初めて確認した。これらの多数の前処置歴を有する患者がこの第1相試験において抗PD-1単剤療法に対して深く持続的に反応したことは、BCCおよびCSCCにおける高頻度の変異負荷が、PD-1/PD-L1チェックポイント経路の遮断によって解放することができる抗腫瘍細胞性免疫を誘発するという仮説と一貫した。
【0344】
本実施例は、黒色腫以外のUV関連皮膚がんがPD-1遮断に対して感受性があるという一般的原理を支持する。還元主義モデルにより、非同義的変異負荷がより高いUV関連腫瘍が、変異負荷がより低い腫瘍よりPD-1遮断に対して反応性であることが予測された。
【実施例0345】
切除不能局所進行または転移性皮膚扁平上皮癌(CSCC)患者における抗PD-1抗体の安全性および効能
背景
切除不能局所進行または転移性CSCCに関する確立された標準治療はない。UV誘発DNA損傷により、ほとんどのCSCCは、高頻度で変異している。したがって、これらの腫瘍は、PD-1チェックポイント遮断に反応し得る。本実施例は、進行中の第1相試験(NCT02383212;本明細書において実施例7に記述)における完全なヒト抗PD-1モノクローナル抗体であるREGN2810によって処置した、局所進行または転移性CSCC患者について記述する。
【0346】
方法
REGN2810の第1相試験の拡大コホート(EC)は、遠位転移CSCC(EC7)、および局所進行CSCC(EC8)(表9)患者を登録した。患者には全員、REGN2810 3mg/kgを2週間毎に最大48週間静脈内投与した。研究的生検をベースラインおよび29日目(および可能であれば、進行時)に実施した。全奏効率を決定するために、腫瘍の測定をRECIST1.1に従って8週間毎に実施した。
【0347】
結果
患者25人が登録した(EC7に10人およびEC8に15人):年齢の中央値、72.5歳(範囲、56~88歳);PSの中央値1(範囲、0~1);男性20人、女性5人;過去の全身治療レジメンの回数の中央値1(範囲、0~3)。REGN2810への曝露の中央値は6用量(範囲、1~22)であった。いずれかのグレードの最も一般的な処置関連有害事象は、疲労(16.7%)、嘔気、関節痛、および発疹(各8.3%)であった。以下のグレード3以上の関連有害事象(AE)の各々が1回発生した:AST上昇、ALT上昇、関節痛、および発疹。
【0348】
全奏効率(uPR+PR+CR)および疾患制御率(ORR+SD)はそれぞれ、48%(23人中11人;uPR3人、PR5人、CR2人、uCR1人)および70%(SD5人を含む23人中16人)であった。患者2人はまだ評価不能であった。PFSの中央値およびOSの中央値を計算し、患者1人のみが、初回反応後でREGN2810処置中にPDを経験した。全エクソーム腫瘍DNAシークエンシングを含む相関科学的研究が進行中である。
【0349】
結論
REGN2810は、進行CSCC患者において強い抗腫瘍活性を証明した。
【実施例0350】
新たに診断された膠芽腫を有する年齢65歳以上の患者における少分割放射線療法と組み合わせた抗PD-1抗体を標準治療と比較する臨床試験
緒言
膠芽腫は、新たに診断された患者(nGBM)の生存期間の中央値がおよそ16ヶ月、再発状況(rGBM)ではおよそ9ヶ月の致死性疾患である(Friedman et al,2009,J.Clin.Oncol.27:4733~4740頁)。新たに診断された膠芽腫患者の現在の標準治療は、放射線(60Gyを6週間)と、同時のテモゾロミド(TMZ)、その後のアジュバントテモゾロミド(Stupp et al,2005,N.Engl.J.Med.352:987~996頁)であるが、サブグループ解析により、テモゾロミドを追加しても、高齢の患者では効能を改善しない可能性があることが示唆された(Laperriere et al,2013,Cancer Treat.Rev.39:350~357頁)。
【0351】
本実施例は、nGBMを有する年齢65歳以上の患者における全生存に関して、少分割放射線療法(hfRT)と組み合わせた抗PD-1抗体の効能を標準治療(SoC)と比較して評価するために第3相臨床試験を記述する。
【0352】
本試験で使用した例示的な抗PD-1抗体は、REGN2810(米国特許出願公開第20150203579号に開示されるH4H7798Nとしても知られる)であり、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖;配列番号1/2を含むHCVR/LCVRアミノ酸配列対;ならびに配列番号3~8を含む重鎖および軽鎖CDR配列を含む、完全なヒトモノクローナル抗PD-1抗体であった。
【0353】
試験目的
試験の主要目的は、nGBMを有する年齢65歳以上の患者に関してhfRTと組み合わせたREGN2810の全生存(OS)に関する効能を標準治療と比較して評価することであった。
【0354】
本試験の副次目的は、無増悪生存(PFS)の改善を決定することであった。
【0355】
試験の他の目的は:(i)客観的奏効率(ORR)、反応の持続、疾患制御の持続の改善;(ii)神経腫瘍学における神経学的評価(Neurologic Assessment in Neuro-Oncology)(NANO)尺度を使用する臨床評価(iii)安全性;(iv)クオリティオブライフ(QoL)および精神状態の改善;(v)浮腫の変化およびステロイド使用;(vi)血清中のREGN2810濃度および抗REGN2810抗体;ならびに(vii)潜在的な薬力学的、予測的、または予後的バイオマーカーの探索であった。
【0356】
試験デザイン
これは、新たに診断された膠芽腫を有する年齢65歳以上の患者における、少分割放射線療法と組み合わせたPD-1に対する完全なヒト抗体であるREGN2810と、標準治療を、2:1で無作為化して比較する第3相試験である。患者を、層化因子としてメチル化状態(メチル化、非メチル化、不明を比較)および切除の程度(部分切除と肉眼的全摘とを比較)によって、少分割放射線療法と組み合わせたREGN2810と標準治療に対して2:1で無作為化した。全生存によって効能を評価した。
【0357】
放射線療法の候補であるnGBM患者を、2:1の比率で以下の処置の1つを受けるように無作為化した:
・ 被験薬治療:REGN2810 3mg/kg IV(2週間毎)プラス少分割RT(6Gy×5、2週目のみ)。放射線療法は、サイクル1の2週目に提供したが、その後のサイクルでは提供しなかった。
・ 比較治療:標準的なRT(2Gyの分割放射線を1週間に5日毎日照射)と組み合わせた6週間の標準治療TMZ(経口、75mg/m、毎日)後に、アジュバントTMZ(経口、150mg/m~200mg/mを28日間で5日間)を6サイクル。放射線療法は最初の6週間サイクルのみに提供した。
【0358】
試験期間
試験は、28日のスクリーニング期間からなり、その後に適格患者は、最大12の56日間(8週間)処置サイクルの全体で最大96週間の処置を受けた。スクリーニング期間(-28日から-1日)の間、全ての適格患者は、処置前の腫瘍が切除可能(部分切除または全摘)であること、中央検査室による病理確認のための生検、ならびにMGMTメチル化の決定および確認を受ける必要があった。
【0359】
1日目/ベースライン後、患者は、サイクル1の間、8±3、15±3、29±3、43±3、および56±3日目に来院した。その後の各8週間のサイクル(サイクル2~12)に関して、患者は1、15±3、29±3、43±3、および56±3日目に来院した。腫瘍の評価(脳のMRI、iRANO、およびNANO評価、MMSE、およびEORTC QLQ-C30/BN20質問票)は、1日目/ベースラインおよび各処置サイクルの終了時に行った。広範囲の安全性評価を、各サイクルの1日目に行い、通例の安全性評価を各来院時に行った。REGN2810の処置的曝露に関連するバイオマーカー(本明細書において記述される細胞または分子マーカー)、臨床活性、または基礎疾患の評価のための試料も同様に収集した。
【0360】
24週間の追跡期間の間に、患者は、最初の追跡調査来院のために、最後の処置治療の
21~42日後に来院した。その後の追跡調査来院(追跡調査来院2から追跡調査来院7)は、28日±7日毎に行った。腫瘍の評価(脳のMRI、iRANO、およびNANO評価、MMSE、およびEORTC QLQ-C30/BN20質問票)は、追跡調査来院3、追跡調査来院5、および追跡調査来院7に行った。広範囲の安全性評価を、最初の追跡調査来院の間に行い、通例の安全性評価をその後の追跡調査来院時に行った。REGN2810の処置的曝露に関連するバイオマーカー(本明細書において記述される細胞または分子マーカー)、臨床活性、または基礎疾患の評価のための試料を収集した。
【0361】
目標集団
目標集団は、nGBMを有する年齢65歳以上の患者を含んだ。
【0362】
組み入れ基準:患者は、試験への参加に関して適格であるためには以下の基準を満たさなければならない:(1)部分的または完全な外科的切除を受けている、組織学的に確認された最長径5cm以下の新たに診断された原発性膠芽腫;(2)Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータス0~2;(3)年齢65歳以上;(4)肝機能:(a)総ビリルビンは1.5×正常値の上限以下;(b)ALTおよびASTは3×ULN以下;(c)アルカリホスファターゼ(ALP)は2.5×ULN以下;(5)腎機能:血清中クレアチニンは1.5×ULN以下;(6)骨髄機能:ヘモグロビンは9.0g/dL以上;絶対好中球数(ANC)は1.5×10個/L以上、血小板数は75×10個/L以上;(7)読んで理解することができ、ICFに署名する意思があること;ならびに(8)予定来院、処置計画、臨床検査、および他の試験関連手順に同意することができ、および同意する意思があること。
【0363】
除外基準:以下の基準のいずれかを満たす患者は試験から除外される:(1)GBMに対する任意の過去の処置(手術以外);(2)Gd-MRIに対する既知の禁忌を有する;(3)免疫関連有害事象(irAE)のリスクを示唆し得る、全身の免疫抑制処置による処置を必要とする、進行中または最近(5年以内)の有意な自己免疫疾患の証拠。以下は除外されない:白斑、寛解した小児喘息、ホルモン代替治療のみを必要とする残存甲状腺機能低下症、または全身処置を必要としない乾癬;(4)進行中の全身コルチコステロイド処置、他の(非腫瘍および非免疫抑制)適応のための最大10mg/日のプレドニゾンまたは同等物のコルチコステロイドの使用を除く;(5)脳幹、脊髄に位置する原発腫瘍、またはヒト免疫不全ウイルスによる既知の感染症、もしくはB型もしくはC型肝炎ウイルスによる活動性感染症を含む、治療を必要とする任意の副次的脳腫瘍活動性感染症;(6)過去5年以内の肺炎の既往;(7)REGN2810の初回投与前30日以内の任意の治験薬または抗腫瘍処置;(8)抗体治療全般、または特に試験に使用する作用物質に起因する、アレルギー反応または急性過敏反応の報告歴;(9)高血圧症(収縮期圧150mmHg超および/または拡張期圧100mmHg超として定義される)の不適切な制御;(10)ドキシサイクリンまたはテトラサイクリンに対する公知のアレルギー(REGN2810における微量の構成要素の存在による予防措置);(11)高血圧クリーゼまたは高血圧性脳症の既往;(12)本試験で処置する腫瘍以外の過去5年以内の侵襲性悪性腫瘍の既往、但し切除/焼灼された皮膚の基底細胞癌もしくは扁平上皮癌もしくは子宮頸部上皮内癌、または局所処置によって治癒したと考えられる他の局所腫瘍を例外とする;(13)治験責任医師の評価の際に、患者の参加が不適となる急性または慢性の精神上の問題;(14)スクリーニングでのNovocure Tumor Treating Fields(Optune NovoTTF-100Aデバイス)の使用。試験参加中の計画または予想されるNovocure Tumor Treating Fieldsの使用;(15)カルムスチンウェハーによる過去の処置;(16)試験中に適切な避妊を実施する意思がない男性における継続的な性的活動。
【0364】
試験処置
患者は、以下の処置レジメンの1つを投与される:
【0365】
被験薬治療:REGN2810 3mg/kg(30分にわたるIV注入として2週間毎に最大96週間投与)プラスサイクル1の2週目のhfRT。
【0366】
比較治療:標準治療:標準的なRT(2Gyの分割放射線を1週間に5日毎日照射)と組み合わせたTMZ(経口、75mg/m、毎日)を6週間の後に、アジュバントTMZ(経口、150mg/m~200mg/m、28日中5日間)を6サイクル。放射線療法は、最初のサイクルのみに提供した。
【0367】
REGN2810は、滅菌の1回使用バイアル中の液体として供給された。各バイアルは、25mg/mLの濃度のREGN2810 10mLを引き抜くために十分な容量を含む。REGN2810は、30分のIV注入として投与した。各患者の用量は個々の体重に依存した。体重が10%以上変化した場合、REGN2810の用量を各サイクルで調節しなければならない。
【0368】
放射線療法:対照群の患者には、標準的な放射線療法(60Gyを6週間)を投与した。実験的処置群の患者にはhfRT(6Gy×5日間毎日の分割照射)を、REGN2810の初回用量の1週間後に投与した。
【0369】
REGN2810プラス放射線療法(被験薬処置):REGN2810の30分にわたるIV注入を、8日目から12日目までのhfRTと組み合わせて14日毎に96週間投与した。
【0370】
計画されたREGN2810とhfRTレジメンの組合せ:REGN2810 3mg/kgの30分にわたる注入を14日毎に96週間プラス放射線療法(6Gy×5日間毎日の分割照射のhfRTを、REGN2810の初回用量の1週間後に、好ましくは連続する日に照射する)
【0371】
放射線療法に関する詳細:患者には、REGN2810の初回用量の1週間後に開始して30Gyを5分割した6Gyを毎日照射した。
【0372】
比較治療:標準治療:標準的なRT(2Gyの分割放射線を1週間に5日毎日照射)と組み合わせたTMZ(経口、75mg/m、毎日)を6週間の後、アジュバント経口TMZ。TMZの用量は、最初のアジュバントサイクルの最初の5日間は150mg/mであり、最初のアジュバントサイクルで許容できない血液毒性が存在しなければ、第2のサイクルの開始と共に200mg/mの28日中5日間投与へと増大させた。
【0373】
最初のアジュバントサイクルの間、観察された全ての非血液毒性がグレード2以下(脱毛、嘔気、および嘔吐を除く)かつ血小板数が100×10個/L以上かつANCが1.5×10個/L以上であれば、TMZの用量を用量レベル1(200mg/m)に増大させるべきであり、この用量を、その後のサイクルの開始用量として使用すべきである。サイクル1の後に、進行中のグレード2以上の非血液毒性のためにTMZを遅らせる必要がある場合、増大させないことが可能である。第2のサイクルで用量を増大させなかった場合、その後のサイクルでも用量を増大させてはならない。
【0374】
CNS浮腫の処置:試験中の症候性の頭蓋内浮腫を発症するいかなる患者も、浮腫が沈静化するまでREGN2810の投与および放射線療法を中止した。
【0375】
頭蓋内浮腫を発症した患者に関して、禁忌である場合を除き(例えば、患者が過去28日以内に手術を受けていた場合を除き)、ベバシズマブを必要に応じて(PRN)標準用量から低減された用量(提案される用量は5mg/kgを週に2回、最大3用量であり、用量あたり10mg/kgの週に2回を超えない)でIV投与した。
【0376】
ベバシズマブによって頭蓋内浮腫が寛解しない場合、ベバシズマブに加えてまたはベバシズマブの代替として、全身性のコルチコステロイドを症状の管理にとって適切と思われる最低用量で投与してもよい。ベバシズマブ不耐性である患者の場合、コルチコステロイドを、症状の管理にとって適切であると思われる用量で使用した。
【0377】
試験の変数
効能に関する主要評価項目は、無作為化日から任意の原因による死亡日までの時間間隔として定義される全生存(OS)であった。
【0378】
重要な副次評価項目は、無作為化日から、進行が最初に観察された日付または死亡日(任意の原因による)までの時間間隔として定義される無増悪生存(PFS)であった。進行はiRANO基準によって決定した。
【0379】
他の効能に関する副次評価項目は:
【0380】
客観的奏効率(ORR):解析集団における患者の総数と比較した、Immunotherapy Response Assessment in Neuro-Oncology(iRANO)基準によって定義される、完全奏効(CR)が確定した患者または部分奏効(PR)が確定した患者の割合として定義される。
【0381】
奏効期間:CRまたはPRの最良総合効果を有する患者に関して決定する。奏効期間は、CR/PR(最初に記録された方)に関する測定基準を最初に満たした時期から再発もしくは進行(X線による)の最初の日、または任意の原因による死亡までの時間で測定される。
【0382】
疾患制御期間:SD、CR、またはPRの最良総合効果を有する患者に関して決定する。疾患制御期間は、処置開始から、再発もしくは進行(X線による)の最初の日、または任意の原因による死亡までの時間で測定される。
【0383】
クオリティオブライフおよび症状制御変数:クオリティオブライフおよび症状制御変数は:
・ 試験中、EORTC QLQ-C30質問票を使用する、機能の5尺度、症状の3尺度、全般的健康状態の1尺度、および症状を評価する6単一項目尺度
・ 試験中、EORTC QLQ-BN20質問票を使用する、4尺度および7単一項目
・ NANOを使用する臨床評価
・ 試験中のMMSEの総スコア
・ ベースラインでのコルチコステロイドの使用、試験中のコルチコステロイドの累積使用、および試験の無増悪期間の間のステロイドを使用しなかった期間または低用量ステロイドを使用した期間
・ ベースラインでのベバシズマブPRNの使用、試験中の累積ベバシズマブPRN、および無増悪期間の間のベバシズマブを使用しなかった期間
であった。
【0384】
探索的バイオマーカー変数:他の評価項目は、薬力学、予後、および臨床反応に関連す
る予測バイオマーカー、作用機序、および処置後のREGN2810に関連する起こり得るAEを含んだ。バイオマーカー変数は:
・ 腫瘍試料中の免疫チェックポイント受容体PD-L1、GITR、およびLAG3ならびに他の潜在的バイオマーカー(例えば、EGFRvIII、Ki67等)の発現レベル;
・ 腫瘍試料中のTILの数および分布
・ 腫瘍試料中の1DH1変異状態、マイクロサテライト不安定性(MSI)、および変異負荷;
・ サイトカインおよび血管新生因子を含む循環中のバイオマーカー;
・ PBMC中の細胞サブセットおよび目的のバイオマーカーの発現レベル;
・ MGMTプロモーターのメチル化状態(層化のためにも使用する)
を含んだ。
【0385】
他の変数は、血清中のREGN2810濃度(薬物動態変数)および抗REGN2810抗体の発生を含んだ。
【0386】
手順および評価
最大28日までのスクリーニング期間の後、患者に最大12回の56日間処置サイクルを全体で最大96週間の処置で提供し、その後24週間の追跡期間を設けた。効能、安全性、PK、ADA、および探索的バイオマーカー分析を実施した。
【0387】
効能の手順
MRI:腫瘍評価のためのMRIを、術後72時間目、スクリーニング来院時(注入前の28日以内)、サイクル毎の56±3日目(およそ8週間毎)、およびPDが疑われる場合に実施した。疾患が進行していない患者は、追跡調査来院3、5、および7でさらなる腫瘍の評価を実施した。注意:PDが確定している場合、追跡調査来院の際の追加のスキャンは必要ではない。術前および術後のMRIを、試験の登録前に行った場合、腫瘍の体積および腫瘍の進行の決定に役立つよう、それらのスキャンもまた試験に提出しなければならない。
【0388】
腫瘍反応評価は、iRANOに従って実施し、臨床での神経学評価はNANOによって実施した。RANOに従う評価もまた、補助的探索として実施した。しかし、個々の患者の進行の主要な決定はiRANOに従って行った。
【0389】
欧州がん治療研究機構のクオリティオブライフ質問票(The European Organization for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire(EORTC QLQ-C30)およびEORTC脳がんモジュール(EORTC QLQ-BN20)質問票):EORTC QLQ-C30は、15尺度(単一項目または多項目)で、がん患者における健康関連クオリティオブライフ(HRQoL)を評価する30項目の質問票であり、各々は、0から100までの範囲の起こり得るスコアを有する。30項目のうち、24項目を、様々なHRQoL次元を表す9の多項目尺度:機能の5尺度(身体、役割、情緒、認知、および社会生活)、症状の3尺度(疲労感、疼痛、および嘔気)、および全般的健康状態の1尺度に集計する。残りの6単一項目尺度は、症状:呼吸困難、食欲不振、不眠、便秘および下痢、ならびに疾患処置の経済的影響の認識を評価する。高いスコアは、全般的健康状態の測定および機能の尺度ではよりよいHRQoLを示し、症状の尺度ではより悪いHRQoLを示す。
【0390】
EORTC QLQ-BN20は、脳の新生物に対して特異的な20項目のQoL評価であり、健康関連クオリティオブライフを評価する場合には、EORTC QLQ-C3
0を補足すると意図される。EORTC QLQ-BN20質問票は、4尺度(将来の不安、視覚障害、運動機能障害、およびコミュニケーション欠如を評価する)および7単一項目(他の疾患症状[例えば、頭痛および発作]ならびに処置の毒性作用[例えば、脱毛]を評価する)を使用して、疾患の症状、処置の副作用、および脳がん患者にとって重要な一部の特定の精神社会的問題を評価する。起こり得るスコアは0から100の範囲であり;高いスコアは悪いHRQoLを示している。
【0391】
ミニ精神状態評価:ミニ精神状態検査(MMSE(登録商標))は、成人における認知状態の簡単な定量的測定である。これは、認知機能障害をスクリーニングするため、所定の時点での認知機能障害の重症度を推定するため、および個体における認知力の変化の過程を経時的に追跡するために使用することができる。本試験において、MMSEスコアは、疾患評価の状況で実施される神経学検査の一部であった。
【0392】
MMSEを、1日目/ベースライン、各処置サイクルの終了時、および追跡調査期間の間の8週間毎に実施した。MMSE評価は、疾患評価のスケジュールと一致するが、それらは、X線評価の結果を患者に知らせる前に記入しなければならない。MMSEは、次の予定される処置投与の開始時に記入してもよい。生存追跡調査期間の間、MMSEは、患者がまだ進行していなければ、1回おきの生存来院時(8週間毎)に実施し続けるべきである。
【0393】
MMSEの総スコアは、0(最も悪い)から30(最も良い)の可能性がある範囲を有する。
【0394】
安全性手順
サイクル1の1日目およびその後の全ての処置日に、体温、安静時血圧、脈拍、および呼吸数を含むバイタルサインを、体重と共に注入前および注入終了のおよそ15分後に収集した。全身の身体診察および12-リードECGを各サイクルの開始時に実施した。
【0395】
探索的腫瘍バイオマーカー手順
免疫組織化学(IHC)によって分析される目的のバイオマーカーには、EGFRvIIIおよび細胞増殖のバイオマーカー(例えば、Ki67)が挙げられるがこれらに限定されない。PD-L1、GITR、およびLAG-3の発現レベル(mRNAおよび/またはタンパク質)ならびに腫瘍浸潤リンパ球の系列マーカー(CD4、CD8、CD25、FoxP3)を、腫瘍生検試料において分析して、REGN2810の潜在的効果を探索した。
【0396】
腫瘍組織試料を、腫瘍DNAおよびRNAを抽出するため、ならびに試験処置および膠芽腫に関連する推定の遺伝子バイオマーカーのその後の解析のために使用してもよい。血液試料を、生殖系列DNAを単離するために、1日目/ベースライン(投与前)、または1日目/ベースラインでの採取が可能でない場合は任意の試験来院時に採取した。腫瘍DNAの解析は、MGMTプロモーターのメチル化状態、1DH1変異状態、マイクロサテライト不安定性(MSI)、および腫瘍の変異負荷(いずれもREGN2810および他の免疫治療剤に対する反応を予測し得る)を含む(がこれらに限定されない)。進行、薬物反応、および起こり得る毒性に影響を及ぼし得る腫瘍(体細胞)DNAおよび生殖系列DNAにおける遺伝子変種の分析を実施した。生殖系列DNAはまた、悪性のプロセスの基礎となる潜在的新規遺伝子変種を探索するために、腫瘍DNAとの比較のためにも使用した。
【0397】
結果
REGN2810とhfRTとの組合せは、安全でnGBM患者に良好に忍容された。
hfRTと組み合わせたREGN2810の投与は、標準治療と比較して、nGBM患者において腫瘍の成長を阻害し、および/または腫瘍の退縮を促進した。REGN2810およびhfRTによって処置したnGBM患者は、標準治療と比較してより長いOSを示した。
【実施例0398】
進行皮膚扁平上皮癌患者におけるREGN2810の臨床試験
本実施例は、第1相試験で進行CSCC患者において認められた陽性結果を確認するために実施した第2相試験を記述する(本明細書における実施例7、8および9を参照されたい)。
【0399】
試験目的
本試験の主要目的は、全奏効率(ORR)によって測定した場合の、転移性(結節性または遠位)皮膚扁平上皮癌(CSCC)患者(1群)または切除不能局所進行CSCC患者(2群)に関するREGN2810単剤療法の臨床上の利益を推定することであった。
【0400】
試験の副次目的は:(i)ORRを推定すること;(ii)奏効期間、無増悪生存(PFS)、および全生存(OS)を推定すること;(iii)完全奏効(CR)率を推定すること;(iv)REGN2810の安全性および忍容性を評価すること;(v)REGN2810の薬物動態(PK)を評価すること;(vi)REGN2810の免疫原性を評価すること;ならびに(vii)EORTC QLQ-C30を使用してクオリティオブライフに及ぼすREGN2810の影響を評価することであった。
【0401】
試験デザイン
本試験は、進行CSCC患者において3mg/kgの用量を2週間毎に静脈内(IV)投与するREGN2810の第2相、非無作為化、2群、多施設試験であった。試験は2群を有した。群1は、転移性CSCC患者であった。群2は、切除不能局所進行CSCC患者であった。患者は全て、REGN2810の初回投与前の28日以内に適格性を決定するためにスクリーニング手順を受けた。
【0402】
最大28日間のスクリーニング期間の後、患者は、最大12回の56日間(8週間)処置サイクルの最大96週間の処置を受けた。各患者に、各処置サイクルの間、1、15±3、29±3、および43±3日目にREGN2810 3mg/kgをIV投与した。腫瘍の評価は、各処置サイクルの終了時に行った。広範囲の安全性評価を各サイクルの1日目に行い、通例の安全性評価を各REGN2810の投与のための来院時に実施した。
【0403】
患者は、96週間の処置期間が完了するまで、または進行、許容できない毒性、同意の撤回、またはCRが確定するまで処置を受けた。少なくとも48週間の処置後にCRが確定した患者は、処置を中止して全ての関連する試験評価(例えば、効能の評価)を継続するように選択してもよい。
【0404】
試験期間
スクリーニング(最大4週間)、最大96週間の処置、および最大6ヶ月間の追跡調査。
【0405】
試験集団
転移性CSCCまたは切除不能局所進行CSCC患者。
【0406】
試験処置
REGN2810 3mg/kgの30分にわたるIV投与を14日毎に96週間。
【0407】
試験の変数
本試験の効能に関する主要評価項目は、12処置サイクルの間のORRであった。全奏効率を、転移性CSCCまたは切除不能局所進行CSCC患者に関して個別に評価した。1群の患者では、固形がんの治療効果判定のための新ガイドライン(RECIST)バージョン1.1を使用してORRを決定した。2群の患者では、複合効果判定基準を使用してORRを決定した。CRを達成した患者において、完全奏効か部分奏効(PR)かを最終的に決定するために腫瘍生検を使用した。
【0408】
効能に関する副次評価項目測定は:奏効期間;疾患制御期間;PFS、OS、CR率:EORTC QLQ-C30における患者報告アウトカムのスコアの変化;有害事象(AE);REGN2810の血清中濃度;および抗REGN2810抗体であった。
【0409】
手順および評価
腫瘍のイメージング(コンピューター断層撮影[CT]または磁気共鳴イメージング[MRI])およびデジタル医用画像(外部から見える病変)を実施して、腫瘍負荷を測定し、効果判定基準を使用して試験処置の効能プロファイルを特徴付けした。
【0410】
患者の安全性を確保するためおよび試験処置の安全性プロファイルを特徴付けするために、身体診察、臨床検査、バイタルサイン、心電図(ECG)、妊娠可能女性の妊娠検査、ならびにAEおよび併用薬の記録を実施した。
【0411】
他の評価は:PKのための末梢血試料;抗REGN2810抗体を評価するための末梢血試料;腫瘍生検;およびクオリティオブライフの評価を含んだ。
【0412】
結果
試験は、予定数が登録し、現在までの結果は、第1相試験の結果(本明細書において実施例7、8および9に記述する)と一致し、患者はREGN2810の投与によって腫瘍成長の阻害を示した。過去の治療で処置されているが、手術を受けていない転移性CSCC患者は、抗PD-1抗体REGN2810による処置によって、完全奏効、部分奏効、または安定を示した。
【実施例0413】
進行基底細胞癌患者におけるREGN2810の臨床試験
第1相試験における進行BCC患者において認められた陽性結果(本明細書における実施例7および8を参照されたい)を確認するために第2相試験を実施した。
【0414】
試験目的
本試験の主要目的は、ヘッジホッグ経路阻害剤(HHI)によって進行したまたは過去のHHI治療に不耐性であった患者における、REGN2810単剤療法で処置した場合の転移性基底細胞癌(BCC)(群I)または切除不能局所進行BCC(群II)の全奏効率(ORR)を推定することであった。
【0415】
群Iおよび群IIの両方の副次目的は:(i)治験責任医師の調査に従ってORRを推定すること;(ii)奏効期間、無増悪生存(PFS)、および全生存(OS)を推定すること;(iii)完全奏効(CR)率を推定すること;(iv)REGN2810の安全性および忍容性を評価すること;(v)REGN2810の薬物動態(PK)を評価すること;(vi)REGN2810の免疫原性を評価すること;ならびに(vii)欧州がん治療研究機構のクオリティオブライフ質問票コア30(EORTC QLQ-C30)およびSkindex-16を使用してクオリティオブライフに及ぼすREGN281
0の影響を評価することであった。
【0416】
試験デザイン
本試験は、HHI治療中に疾患の進行を経験した、または過去のHHI治療に不耐性であった進行BCC患者におけるREGN2810の350mg用量を静脈内(IV)に3週間毎(Q3W)に投与する、第2相、非無作為化、2群、多施設試験であった。試験は2群を有した。群1は、転移性BCC患者であった。群2は、切除不能局所進行BCC患者であった。患者は全て、REGN2810の初回投与前の28日以内に適格性を決定するためにスクリーニング手順を受けた。無作為化を行わず、またはプラセボ対照はなかった。
【0417】
最大28日間のスクリーニング期間の後、患者は、最大93週間の処置を受けた。各患者に、REGN2810の350mg用量を週に3回IV投与した。REGN2810の注入時間はおよそ30分間(±10分間)であった。腫瘍の評価は、各処置サイクルの終了時、9週目の5処置サイクル時、その後12週目の4処置サイクル時に行った。広範囲の安全性評価を各サイクルの1日目に行い、通例の安全性評価を、各REGN2810の投与のための来院時に実施した。
【0418】
患者は、93週間の処置期間が完了するまで、または進行(PD)、許容できない毒性、同意の撤回、またはCRが確定するまで処置を受けた。少なくとも48週間の処置後にCRが確定した患者は、処置を中止して全ての関連する試験評価(例えば、効能の評価)を継続するように選択してもよい。PDにより試験処置を中止した患者は、試験終了時(EOS)評価を完了するために、最後の試験処置の30日(範囲:28日から42日)後に来院した。EOS来院後、患者を、死亡するまで、追跡不能となるまで、または試験終了まで生存状態に関して追跡した。
【0419】
試験期間
最大28日間のスクリーニング期間の後、患者は最大93週間の処置を受けた。試験終了時来院後、28日間の追跡調査期間を設けた。患者を、死亡するまで、追跡不能となるまで、または試験終了まで生存状態に関して追跡した。
【0420】
試験集団
HHI治療中に疾患の進行を経験した、または過去のHHI治療に不耐性であった、転移性(群1)または切除不能局所進行(群2)BCC患者。
【0421】
試験処置
試験処置は、REGN2810 350mgの30分間(±10分間)にわたるIVを3週間毎(q3w)に最大93週間投与することを含んだ。
【0422】
評価項目
本試験の効能に関する主要評価項目は、ORRであった。ORRは、転移性BCC患者(群1)または切除不能局所進行BCC患者(群2)に関して個別に評価した。
・ 群1(転移性BCC)の患者では、固形がんの治療効果判定のための新ガイドライン(RECIST)バージョン1.1を使用して、ORRを決定した。全ての転移性病変がRECISTによって測定可能でない場合(骨のみの転移を有する患者に起こり得る)、外部から見える標的病変を有する患者に関しては臨床効果判定基準を使用してもよい。
・ 群2(切除不能局所進行BCC)の患者では、臨床判定基準を使用してORRを決定した。臨床効果判定基準およびRECIST1.1の両方によって測定可能である病変を有する患者に関しては、複合効果判定基準を使用した。
【0423】
副次的評価項目は:(i)反応の持続;(ii)PFS;(iii)OS;(iv)CR率;(v)EORTC QLQ-C30およびSkindex-16における患者報告アウトカムのスコアの変化;(vi)有害事象(AE);(vii)REGN2810の血清中濃度;および(viii)抗REGN2810抗体であった。
【0424】
手順および評価
腫瘍負荷を測定し、効果判定基準を使用して試験処置の効能プロファイルを特徴付けするために、腫瘍のイメージング(コンピューター断層撮影[CT]または磁気共鳴イメージング[MRI])およびデジタル医用画像(外部から見える病変)を実施した。患者の安全性を確保するためおよび試験処置の安全性プロファイルを特徴付けするために、身体診察、臨床検査、バイタルサイン、心電図(ECG)、妊娠可能女性の妊娠検査、ならびにAEおよび併用薬の記録を実施した。他の評価は、PKのための血液試料、抗REGN2810抗体を評価するための血液試料、腫瘍生検、バイオマーカー、およびクオリティオブライフの評価を含んだ。
【0425】
結果
第1相試験の結果(本明細書において実施例7、8および9を参照されたい)と一致して、ヘッジホッグ経路阻害剤(HHI)による処置中に疾患の進行を示した、または過去のHHI治療に対して不耐性であった進行基底細胞癌患者において、REGN2810の投与は腫瘍の退縮を引き起こすと予想された。患者は、REGN2810による処置によって、完全奏効、部分奏効、または安定を示した。
【0426】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態による範囲に限定されない。実際に、本明細書に記載の実施形態に加えて本発明の様々な変更が、前述の説明および添付の図面から当業者に明らかとなるであろう。そのような変更は、添付の特許請求の範囲内に含まれると意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
【配列表】
2023123848000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-07-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍を処置または腫瘍の成長を阻害する方法で使用するための、プログラム細胞死1(PD-1)に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物であって、前記方法は:
(a)脳がんを有する患者を選択する工程;および
(b)PD-1に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片の治療上有効量を患者に投与する工程;
を含み、
前記抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変領域(HCVR)の3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、軽鎖可変領域(LCVR)の3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)とを含み、前記HCDR1は、配列番号3のアミノ酸配列を含み;前記HCDR2は、配列番号4のアミノ酸配列を含み;前記HCDR3は、配列番号5のアミノ酸配列を含み;前記LCDR1は、配列番号6のアミノ酸配列を含み;前記LCDR2は、配列番号7のアミノ酸配列を含み;および前記LCDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を含む、
前記医薬組成物。
【請求項2】
前記脳がんは、多形膠芽腫(GBM)を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記GBMは、新たに診断されたGBMまたは再発性のGBMである、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記抗体またはその抗原結合断片は、1つまたはそれ以上の用量での投与のためのものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
各用量は、患者の体重1kgあたり0.1~20mgを含む、、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
各用量は、患者の体重1kgあたり1、3、または10mgを含む、請求項4または5
に記載の医薬組成物。
【請求項7】
(a)各用量は、直前の用量の0.5~4週間後に投与されるためのものである;または
(b)各用量は、直前の用量の2週間後に投与されるためのものである、
請求項4~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記抗体またはその抗原結合断片は、単剤療法として投与されるためのものである、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記方法は、患者への放射線療法の投与をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記放射線療法は、小分割放射線療法である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
20~50Gyの放射線療法は、2~20分割で患者に投与されるためのものである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
30Gyの放射線療法は、5分割で毎日患者に投与されるためのものである、請求項10または11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記放射線療法は、前記抗体またはその抗原結合断片の最初の用量の1週間後に投与されるためのものである、請求項9~12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記抗体またはその抗原結合断片の1つまたはそれ以上の用量は、1またはそれ以上の処置サイクルで患者に投与され、各サイクルは、抗体またはその抗原結合断片の1~6用量を含む、請求項9~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
各治療サイクルは、前記抗体またはその抗原結合断片の4用量を含み、各用量は、直前の用量の2週間後に患者に投与されるためのものである、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記方法は、患者が前記抗体またはその抗原結合断片の投与後に頭蓋内浮腫を発症する場合、抗血管新生剤を患者に投与することをさらに含む、請求項9~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記抗血管新生剤は、血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤およびアンジオポエチン-2(Ang-2)阻害剤から選択される、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記抗血管新生剤は、ベバシズマブまたはアフリベルセプトである、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記投与によって、腫瘍の成長の阻害、腫瘍の退縮、腫瘍サイズの低減、腫瘍細胞数の低減、腫瘍の成長の遅延、アブスコパル効果、腫瘍転移の阻害、転移病変の経時的な低減、化学療法剤または細胞傷害剤の使用の低減、腫瘍負荷の低減、無増悪生存の延長、全生存の延長、完全奏効、部分奏効、および安定からなる群より選択される少なくとも1つの効果が得られる、請求項1~18のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
さらに前記患者への追加の治療剤の投与または治療を含み、
前記追加の治療剤または治療は、ヘッジホッグ経路阻害剤、手術、放射線、化学療法剤
、がんワクチン、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)阻害剤、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)阻害剤、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)阻害剤、抗グルココルチコイド誘導腫瘍壊死因子受容体(GITR)抗体、T細胞免疫グロブ リンおよびムチンドメイン含有タンパク質3(TIM3)阻害剤、BおよびTリンパ球アテニュエータ(BTLA)阻害剤、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)阻害剤、CD47阻害剤、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、二重特異性CD3/CD20抗体、血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニスト、アンジオポエチン-2(Ang2)阻害剤、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)阻害剤、CD38阻害剤、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、シクロホスファミド、腫瘍特異抗原に対する抗体、カルメットゲラン桿菌ワクチン、細胞毒素、インターロイキン6受容体(IL-6R)阻害剤、インターロイキン4受容体(IL-4R)阻害剤、IL-10阻害剤、IL-2、IL-7、IL-21、IL-15、抗体-薬物コンジュゲート、抗炎症薬、ならびに栄養補助食品からなる群より選択される、
請求項1~7および9~18のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記抗体またはその抗原結合断片は、静脈内、皮下、または腹腔内に投与されるためのものである、請求項1~20のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記HCVRは配列番号1のアミノ酸配列を含み、前記LCVRは配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1と90%の配列同一性を有するHCVR、および/または、配列番号2と90%の配列同一性を有するLCVRを含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【外国語明細書】