(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123877
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】養子細胞療法のための腫瘍浸潤リンパ球
(51)【国際特許分類】
C12N 5/078 20100101AFI20230829BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20230829BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230829BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230829BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
C12N5/078
C12Q1/02
A61K35/17
A61P35/00
A61P35/04
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113229
(22)【出願日】2023-07-10
(62)【分割の表示】P 2020121328の分割
【原出願日】2015-03-20
(31)【優先権主張番号】61/955,970
(32)【優先日】2014-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/973,002
(32)【優先日】2014-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】304021853
【氏名又は名称】エイチ リー モフィット キャンサー センター アンド リサーチ インスティテュート インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】398014333
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ オブ サウス フロリダ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】サーナイク アモッド エー.
(72)【発明者】
【氏名】パイロン-トーマス シャリ
(72)【発明者】
【氏名】マクラフリン マーク
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ハオ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】養子細胞療法(ACT)に用いる腫瘍浸潤リンパ球のエキソビボ拡大培養のための組成物及び該拡大培養方法、拡大培養された腫瘍浸潤リンパ球を用いるがんの治療方法を提供する。
【解決手段】拡大培養されたリンパ球の腫瘍特異性を向上させるために有効な量のToll様受容体(TLR)アゴニストを含む培地中で、腫瘍浸潤リンパ球を培養して拡大培養されたリンパ球を製造することを含む、エキソビボ拡大培養方法、拡大培養されたリンパ球を投与することを含む、がんの治療方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
養子細胞療法(ACT)に用いる腫瘍浸潤リンパ球のエキソビボ拡大培養方法であって、前記拡大培養されるリンパ球の腫瘍特異性を向上させるために有効な量のToll様受容体(TLR)アゴニストを含む培地中で、前記腫瘍浸潤リンパ球を培養して前記拡大培養されたリンパ球を製造することを含む、前記方法。
【請求項2】
対象におけるがんの治療方法であって、
a)前記対象から自己腫瘍浸潤リンパ球を得るステップと、
b)Toll様受容体(TLR)アゴニストを含む培地中で前記リンパ球を培養して、拡大培養されたリンパ球を製造するステップと、
c)骨髄非破壊的リンパ球枯渇化学療法によって前記対象を処置するステップと、
d)前記哺乳動物に対して前記拡大培養されたリンパ球を投与するステップと
を含む、前記治療方法。
【請求項3】
前記TLRアゴニストが、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、及びTLR9からなる群より選択されるTLRに対するリガンドである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記TLRアゴニストが、Pam3CSK4、Pam3CSK4、poly I:C、Ribomunyl、及びCpG ODNからなる群より選択されるリガンドを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記がんが固形腫瘍である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記がんが黒色腫、卵巣がん、乳がん、及び大腸がんからなる群より選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記がんが転移性である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記がんが再発性である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記対象がヒトである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
養子細胞療法(ACT)に用いる腫瘍浸潤リンパ球のエキソビボ拡大培養のための作用剤の特定方法であって、
腫瘍浸潤リンパ球を、前記腫瘍浸潤リンパ球に選択的に結合する能力に関するペプチドまたはペプチド模倣体のライブラリー由来の候補ペプチドまたはペプチド模倣体と接触させることと、
結合ペプチドまたはペプチド模倣体の前記腫瘍浸潤リンパ球の増殖に及ぼす効果をスクリーニングすることと
を含み、
前記腫瘍浸潤リンパ球の増殖を増加させる候補ペプチドまたはペプチド模倣体の特定が、ACTに用いる腫瘍浸潤リンパ球のエキソビボ拡大培養のための作用剤を特定する、前記方法。
【請求項11】
養子細胞療法(ACT)に用いる腫瘍浸潤リンパ球のエキソビボ拡大培養方法であって、ペプチドまたはペプチド模倣体を含む培地中で、前記リンパ球を培養して拡大培養されたリンパ球を製造することを含む前記方法。
【請求項12】
前記ペプチドまたはペプチド模倣体が請求項9に記載の方法によって特定される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ペプチド模倣体がペプトイドまたはペプチド-ペプトイドハイブリッドである、請求項10~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ペプトイドまたはペプチド-ペプトイドハイブリッドが炭化水素ステープルによって安定化される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2014年3月20日出願の米国仮出願第61/955,970号、及び2014年3月31日出願の米国仮出願第61/973,002号の優先権を主張し、上記出願は、本明細書によって、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
[背景技術]
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)による養子細胞療法(ACT)は、T細胞に基づく免疫療法の有望な形態である。TILの調製は、外科的切除及びメラノーマ腫瘍由来のTILの拡大培養を含む。TILが十分に拡大培養された時点で、患者はリンパ球枯渇化学療法、及びTIL養子移入、続いてIL-2の大量投与を受ける。米国立がん研究所外科部門が転移性黒色腫に対する本治療法を開拓し、治療を受けた患者において概略50%の奏功率であり、患者の約20%が永続的な完全奏功を達成したことを報告している(Rosenberg SAら、Clinical cancer research: an official journal of the American Association for Cancer Research. 2011 17(13):4550-7)。このACTの奏功の優れた永続性がこの治療法の顕著な特徴であり、黒色腫に対する既存の治療法に対して優ると思われる。ACTは、採取する前の時点でのT細胞の腫瘍中への浸潤、TILのエキソビボ拡大培養の成功、及び移入後の強力な抗腫瘍作動因子機能に左右される。TILのACTは黒色腫に対して有効ではあるが、永続的奏功率には更なる改良を要する。最初のTIL増殖のための拡大培養期間を短縮すること及び拡大培養されたTILの腫瘍特異性を向上させることで、自己TILによる治療を受ける患者における奏効率を増加させ得る。
[概要]
養子細胞療法(ACT)に用いる腫瘍浸潤リンパ球のエキソビボ拡大培養のための組成物及び該拡大培養方法が開示される。いくつかの実施形態において、当該方法は、拡大培養されたリンパ球の腫瘍特異性を向上させるために有効な量のToll様受容体(TLR)アゴニストを含む培地中で、上記腫瘍浸潤リンパ球を培養して上記拡大培養されたリンパ球を製造することを含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、刺激性ペプチドまたはペプチド模倣体を含む培地中で、上記リンパ球を培養して拡大培養されたリンパ球を製造することを含む。いくつかの実施形態において、上記ペプチド模倣体はペプトイドまたはペプチド-ペプトイドハイブリッドである。いくつかの実施形態において、上記ペプトイドまたはペプチド-ペプトイドハイブリッドは炭化水素ステープルによって安定化される。
【0002】
上記開示される方法によって拡大培養された腫瘍浸潤リンパ球を用いるがんの治療方法も開示される。いくつかの実施形態において、上記方法は、上記対象から自己腫瘍浸潤リンパ球を得ることと、Toll様受容体(TLR)アゴニストを含む培地中で上記リンパ球を培養して、拡大培養されたリンパ球を製造することと、骨髄非破壊的リンパ球枯渇化学療法によって上記対象を処置することと、上記哺乳動物に対して上記拡大培養されたリンパ球を投与することとを含む。
【0003】
いくつかの実施形態において、上記がんは固形腫瘍である。いくつかの場合において、上記がんは黒色腫、卵巣がん、乳がん、及び大腸がんである。上記がんは転移性、再発性、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0004】
上記TLRアゴニストは、いくつかの実施形態において、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、及びTLR9からなる群より選択されるTLRに対するリガンドである。
例えば、上記TLRアゴニストは、Pam3CSK4、Pam3CSK4、poly I:C、Ribomunyl、及びCpG ODNからなる群より選択されるリガンドであってもよい。
【0005】
ACTに用いる腫瘍浸潤リンパ球のエキソビボ拡大培養のための作用剤の特定のための組成物及び該特定方法も開示される。上記方法は、腫瘍浸潤リンパ球を、該腫瘍浸潤リンパ球に選択的に結合する能力に関するペプチドまたはペプチド模倣体のライブラリー由来の候補ペプチドまたはペプチド模倣体と接触させることを含んでもよい。いくつかの実施形態において、上記ペプチド模倣体はペプトイドまたはペプチド-ペプトイドハイブリッドである。いくつかの実施形態において、上記ペプトイドまたはペプチド-ペプトイドハイブリッドは炭化水素ステープルによって安定化される。上記方法は、結合ペプチドまたはペプチド模倣体の上記腫瘍浸潤リンパ球の増殖に及ぼす効果をスクリーニングすることを更に含んでもよい。いくつかの実施形態において、上記腫瘍浸潤リンパ球の増殖を増加させる候補ペプチドまたはペプチド模倣体の特定は、ACTに用いる腫瘍浸潤リンパ球のエキソビボ拡大培養のための作用剤を特定する。これらの方法によって特定される作用剤はACTに用いる腫瘍浸潤リンパ球を拡大するために使用してもよい。
【0006】
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細が、添付の図面及び以下の説明中に記載される。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、この説明及び図面から、並びに特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】樹脂に結合しているリンカー及びペプトイド-ペプトイド配列を含む第2のリンカーを含むペプトイド体の調製に関する概略図を示す図である。
【
図3】樹脂に結合しているリンカー及びβターン促進剤である第2のリンカーを含むペプトイド体の調製に関する概略図を示す図である。
【
図4A】ステープルされたペプトイド-ペプチドハイブリッドの例を示す図である。
【
図4B】ステープルされたペプトイド-ペプチドハイブリッドの例を示す図である。
【
図4C】ステープルされたペプトイド-ペプチドハイブリッドの例を示す図である。
【
図5】位置ライブラリー走査プレートの例を示す図である。
【
図6】メタ-キシレニル基を用いた、環状βヘアピン様ペプトイド-ペプチドハイブリッド骨格を安定化させるための反応スキームの例を示す図である。
【
図7】より近接したペプチド側鎖上に存在するプロパルギル側鎖をステープリングすることによって、環状βヘアピン様ペプトイド-ペプチドハイブリッド骨格を安定化させるための反応スキームの例を示す図である。
【
図8】アジド及びアルキンを用いた、環状βヘアピン様ペプトイド-ペプチドハイブリッド骨格を安定化させるための反応スキームの例を示す図である。
【
図9】閉環メタセシス(RCM)を用いた、環状βヘアピン様ペプトイド-ペプチドハイブリッド骨格を安定化させるための反応スキームの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[詳細な説明]
養子細胞移入(ACT)は免疫療法の非常に有効な形態であり、抗腫瘍活性を有する免
疫細胞のがん患者への移入を伴う。ACTは、抗腫瘍活性を有するリンパ球の、インビトロでの特定、これらの細胞の多数の細胞へのインビトロでの拡大培養、及び担がん宿主への該細胞の注入を含む治療手法である。養子移入に用いられるリンパ球は、切除した腫瘍の間質に由来することができる(腫瘍浸潤リンパ球、すなわちTIL)。このリンパ球は、該リンパ球が抗腫瘍T細胞受容体(TCR)若しくはキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子操作されている、混合リンパ球腫瘍細胞培養物(MLTC)が富化されている、または自己の抗原提示細胞及び腫瘍由来のペプチドを用いてクローン化されている場合には、血液由来であることもできる。上記リンパ球が注入を受けることとなる担がん宿主に由来するACTは、自家ACTと呼ばれる。US2011/0052530は、主として転移性黒色腫に罹患した患者の治療のための、がんの退縮を促進するための養子細胞療法の実施方法に関し、該特許文献は、これらの方法に関してその全体が参照により援用される。
【0009】
ACTに用いる腫瘍浸潤リンパ球(TIL)のエキソビボ拡大培養のための組成物及び該拡大培養方法が開示される。いくつかの実施形態において、上記方法は、拡大培養されたリンパ球の腫瘍特異性を向上させるために有効な量のToll様受容体(TLR)アゴニストを含む培地中で、上記腫瘍浸潤リンパ球を培養して上記拡大培養されたリンパ球を製造することを含む。上記TLRアゴニストは、いくつかの実施形態において、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、及びTLR9からなる群より選択されるTLRに対するリガンドである。例えば、上記TLRアゴニストは、Pam3CSK4、Pam3CSK4、poly I:C、Ribomunyl、及びCpG ODNからなる群より選択されるリガンドであってもよい。
【0010】
他の実施形態において、上記方法は、拡大培養されたリンパ球の腫瘍特異性を向上させるのに有効な量のペプチドまたはペプチド模倣体を含む培地中で、上記腫瘍浸潤リンパ球を培養して上記拡大培養されたリンパ球を製造することを含む。いくつかの実施形態において、上記ペプチド模倣体はペプトイドまたはペプチド-ペプトイドハイブリッドである。例えば、いくつかの実施形態において、上記ペプトイドまたはペプチド-ペプトイドハイブリッドは炭化水素ステープルによって安定化される。
【0011】
ペプトイド部分はタンパク質分解に対する耐性を与えることができ、上記ペプトイド-ペプチドハイブリッドのペプチド部分は、βヘアピン様二次構造を得る能力を与えることができる。これら二つの寄与が、タンパク質分解が一般的に制約となる治療のための良好な薬物の候補であるハイブリッドに繋がり得る。本明細書に開示されるように、これらのペプチド-ペプトイドハイブリッドもまた、ACTに用いる腫瘍浸潤リンパ球(TIL)のエキソビボ拡大培養に用いることができる。
【0012】
ペプチド-ペプトイドハイブリッドの例が、McLaughlinらによるWO2013/192628に記載され、該特許文献は、そこに記載されたペプトイド体のライブラリーに関して、参照により本明細書に援用される。WO2013/192628におけるペプトイド体は環状ペプトイド-ペプチドハイブリッドであり、該ハイブリッドは、対による組み合わせ(pairwise combinatorial)手法を用いて、骨格ライブラリーを提供することができる。上記環状ペプトイド-ペプチドハイブリッドは、βヘアピン様二次構造をとることができる。この環状βヘアピン様の構造は、2の逆平行のβ鎖中のペプチド-ペプトイドサブユニットの交互性に起因する。例えば、開示されるペプチド-ペプトイドハイブリッドは、例えば、式I
【0013】
【化1】
に示す化学構造またはその薬学的に許容される塩若しくは水和物形態を有することができ、但し、R
1~R
6は独立に有機基である。
【0014】
いくつかの実施形態において、上記環状ペプトイド-ペプチドハイブリッドは、式II
【0015】
【化2】
に示す化学構造またはその薬学的に許容される塩若しくは水和物形態を有し、但し、R基は独立に有機基であり、R’は有機基、または樹脂若しくは他の基質との有機架橋基であり、xは1~3である。
【0016】
いくつかの実施形態において、上記環状ペプトイド-ペプチドハイブリッドは、式III
【0017】
【化3】
に示す化学構造またはその薬学的に許容される塩若しくは水和物形態を有し、但し、R基は独立に有機基であり、R’は有機基、または樹脂若しくは他の基剤との有機架橋基であり、xは1~3である。
【0018】
いくつかの実施形態において、上記環状ペプトイド-ペプチドハイブリッドは、式IV
【0019】
【化4】
に示す化学構造またはその薬学的に許容される塩若しくは水和物の形態を有し、但し、R基は独立に有機基であり、R’は有機基、または樹脂若しくは他の基質との有機架橋基であり、xは1~3である。
【0020】
いくつかの実施形態において、上記環状ペプトイド-ペプチドハイブリッドは、式V
【0021】
【化5】
に示す化学構造またはその薬学的に許容される塩若しくは水和物の形態を有し、但し、R基は独立に有機基であり、R’は有機基、または樹脂若しくは他の基質との有機架橋基であり、xは1~3である。
【0022】
いくつかの実施形態において、上記環状ペプトイド-ペプチドハイブリッドは、式VI
【0023】
【化6】
に示す化学構造またはその薬学的に許容される塩若しくは水和物の形態を有し、但し、R基は独立に有機基であり、R’は独立に有機基、または樹脂若しくは他の基質との有機架橋基であり、xは1~3である。
【0024】
いくつかの実施形態において、上記環状ペプトイド-ペプチドハイブリッドは、式VII
【0025】
【化7】
に示す化学構造またはその薬学的に許容される塩若しくは水和物の形態を有し、但し、R基は独立に有機基であり、R’は独立に有機基、または樹脂若しくは他の基質との有機架橋基であり、xは1~3である。
【0026】
いくつかの実施形態において、上記環状ペプトイド-ペプチドハイブリッドは、式VIII
【0027】
【化8】
に示す化学構造またはその薬学的に許容される塩若しくは水和物の形態を有し、但し、R基は独立に有機基であり、R’は独立に有機基、または樹脂若しくは他の基質との有機架橋基であり、xは1~3である。
【0028】
いくつかの実施形態において、上記環状ペプトイド-ペプチドハイブリッドは、式IX
【0029】
【化9】
に示す化学構造またはその薬学的に許容される塩若しくは水和物の形態を有し、但し、R基は独立に有機基であり、R’は有機基、または樹脂若しくは他の基質との有機架橋基であり、xは1~3である。
【0030】
いくつかの実施形態において、上記環状ペプトイド-ペプチドハイブリッドは、式X
【0031】
【化10】
に示す化学構造またはその薬学的に許容される塩若しくは水和物の形態を有し、但し、R基は独立に有機基であり、R’は有機基、または樹脂若しくは他の基質との有機架橋基であり、xは1~3である、。
【0032】
いくつかの実施形態において、少なくとも2の隣接するペプトイド-グリシン配列のR基は4-ピペリジニル基、例えば、xが2である式IIの化合物
【0033】
【0034】
上記式I~XIIの環状ペプトイド-ペプチドハイブリッドのR基は、上記の環状ペプトイド-ペプチドハイブリッド内のβシート構造の相補的水素結合を阻害する部分を含まないような、ほぼ任意の構造であってよい。上記R基は、アミノ酸の側鎖、アミノ酸の非アミン部分、またはアミノ酸の改変された非アミン部分に相当することができる。上記R基は、限定されないが、単糖若しくは二糖などの糖、または脂肪酸、あるいはそれらの改変された変形であってよい。上記R基は、C1~C12アルキル、C1~C12ヒドロキシアルキル、C1~C12アミノアルキル、C1~C12カルボン酸置換アルキル、C2
~C12アルキルオキシアルキル、C2~C12アルケニル、C2~C12ヒドロキシアルケニル、C2~C12アミノアルケニル、C1~C12カルボン酸置換アルケニル、C3~C14アルキルオキシアルケニル、C6~C14アリール、C6~C14ヒドロキシアリール、C6~C14アミノアリール、C6~C14カルボン酸置換アリール、C7~C15アルキルオキシアリール、C4~C14ヘテロアリール、C4~C14ヒドロキシヘテロアリール、C4~C14アミノヘテロアリール、C4~C14カルボン酸置換ヘテロアリール、C5~C15アルコキシヘテロアリール、C7~C15アルキルアリール、C7~C15ヒドロキシアルキルアリール、C7~C15アミノアルキルアリール、C7~C15カルボン酸置換アルキルアリール、C8~C15アルコキシアルキルアリール、または、エステル、チオエステル、チオール、アミド、またはスルホンアミドなどの、これらのR基のいずれかの化学的に転換された生成物であってよく、但し、アルキル基は直鎖状、分枝鎖状、複数の分岐鎖状、環状、または多環式とすることができる。例えば、Rは、限定はされないが、4-アミノピペリジン、エタノールアミン、アリルアミン、1,4-ジアミノブタン、ピペロニルアミン、4,(2-アミノエチル)ベンゼン、イソブチルアミン、トリプタミン、4-モルホリノアニリン、5-アミノ-2-メトキシピリシン、(R)-メチルベンジルアミン、1-(2-アミノプロピル)-2-ピロリジノン、フルフリルアミン、ベンジルアミン、4-クロロベンジルアミン、4-メトキシベンジルアミン、メトキシエチルアミン、2-アミノアジピン酸、N-エチルアスパラギン、3-アミノアジピン酸、ヒドロキシリシン、β-アラニン、アロ-ヒドロキシリシンプロピオン酸、2-アミノ酪酸、3-ヒドロキシプロリン、4-アミノ酪酸、4-ヒドロキシプロリンピペリジン酸、6-アミノカプロン酸、イソデスモシン、2-アミノヘプタン酸、アロ-イソロイシン、2-アミノイソ酪酸、N-メチルグリシン、3-アミノイソ酪酸、N-メチルイソロイシン、2-アミノピメリン酸、6-N-メチルリシン、2,4-ジアミノ酪酸、N-メチルバリン、デスモシン、ノルバリン、2,2’-ジアミノピメリン酸、ノルロイシン、2,3-ジアミノプロピオン酸、オルニチン、N-エチルグリシン、またはそれらの保護された等価体の、上記環状ペプトイド-ペプチドハイブリッド中のペプトイドN-R単位としての組み込みに由来する基であってよい、第一級アミンの残基とすることができる。
【0035】
いくつかの実施形態において、上記ペプトイド-ペプチドハイブリッドは、樹脂などの固体の支持体上に生成させることができる。次いで、上記ハイブリッドを支持樹脂から切り離すことができ、本開示の方法に用いる。
図1及び2は、樹脂に結合した中間体としてのペプトイド-ペプチドハイブリッドの例を図解する。
例としてのペプトイド-ペプチドハイブリッド
実施形態1:複数の交互のペプトイド-ペプチド配列を含み、上記配列のそれぞれが少なくとも1つのペプトイド残基及びアミノ酸残基を有する、βヘアピン様コンフォメーションを有するペプトイド-ペプチドハイブリッドであって、上記ペプトイド-ペプチド配列が、複数のリンカー間に少なくとも2の逆平行なβ鎖を形成し、少なくとも1つのリンカーがβターン促進剤である、上記ハイブリッド。
【0036】
実施形態2:少なくとも1つの上記リンカーが、構造
【0037】
【化12】
(但し、R’は有機基、または樹脂若しくは他の基質に結合する有機架橋基であり、R’’はHまたはカルボン酸保護基である)のリンカー前駆体の縮合由来のアミノ酸残基である、実施形態1に係るハイブリッド。
【0038】
実施形態3:R’’がt-ブチル、アリル、またはベンジルである、実施形態2に係るハイブリッド。
実施形態4:樹脂若しくは他の基質に結合する上記有機架橋基が-NH(CH2)2-架橋基を含む、実施形態2に係るハイブリッド。
【0039】
実施形態5:上記リンカーの1つが2個のペプトイド残基である、実施形態1に係るハイブリッド。
実施形態6:上記環状ペプトイド-ペプチドハイブリッドが、
【0040】
【化13】
但し、R基は独立に有機基であり、R’は独立に有機基または樹脂に結合する有機架橋基であり、xは1~3である、実施形態1に係るハイブリッド。
【0041】
実施形態7:Rが独立に、C1~C12アルキル、C1~C12ヒドロキシアルキル、C1~C12アミノアルキル、C1~C12カルボン酸置換アルキル、C2~C12アルキルオキシアルキル、C2~C12アルケニル、C2~C12ヒドロキシアルケニル、C2~C12アミノアルケニル、C1~C12カルボン酸置換アルケニル、C3~C14アルキルオキシアルケニル、C6~C14アリール、C6~C14ヒドロキシアリール、C6~C14アミノアリール、C6~C14カルボン酸置換アリール、C7~C15アルキルオキシアリール、C4~C14ヘテロアリール、C4~C14ヒドロキシヘテロアリール、C4~C14アミノヘテロアリール、C4~C14カルボン酸置換ヘテロアリール、
C5~C15アルコキシヘテロアリール、C7~C15アルキルアリール、C7~C15ヒドロキシアルキルアリール、C7~C15アミノアルキルアリール、C7~C15カルボン酸置換アルキルアリール、C8~C15アルコキシアルキルアリール、またはそれらから化学的に転換された任意の構造である、実施形態6に係るハイブリッド。
【0042】
実施形態8:上記化学的に転換された構造が、エステル、チオエステル、チオール、アミド、またはスルホンアミドを含む、実施形態7に係るハイブリッド。
実施形態9:Rが独立に、第一級アミンの残基:4-アミノピペリジン、エタノールアミン、アリルアミン、1;4-ジアミノブタン、ピペロニルアミン、4;(2-アミノエチル)ベンゼン、イソブチルアミン、トリプタミン、4-モルホリノアニリン、5-アミノ-2-メトキシピリシン、(R)-メチルベンジルアミン、1-(2-アミノプロピル)-2-ピロリジノン、フルフリルアミン、ベンジルアミン、4-クロロベンジルアミン、4-メトキシベンジルアミン、メトキシエチルアミン、2-アミノアジピン酸、N-エチルアスパラギン、3-アミノアジピン酸、ヒドロキシリシン、β-アラニン、アロ-ヒドロキシリシンプロピオン酸、2-アミノ酪酸、3-ヒドロキシプロリン、4-アミノ酪酸、4-ヒドロキシプロリンピペリジン酸、6-アミノカプロン酸、イソデスモシン、2-アミノヘプタン酸、アロ-イソロイシン、2-アミノイソ酪酸、N-メチルグリシン、3-アミノイソ酪酸、N-メチルイソロイシン、2-アミノピメリン酸、6-N-メチルリシン、2,4-ジアミノ酪酸、N-メチルバリン、デスモシン、ノルバリン、2,2’-ジアミノピメリン酸、ノルロイシン、2,3-ジアミノプロピオン酸、オルニチン、N-エチルグリシン、またはそれらの任意の保護された等価体である、実施形態6に係るハイブリッド。
【0043】
実施形態10:少なくとも1つのRが4-アミノピペリジンの残基である、実施形態6に係るハイブリッド。
実施形態11:上記アミノ酸残基の全てがグリシン残基である、実施形態1に係るハイブリッド。
【0044】
ペプトイド-ペプチドハイブリッドは更に、アミノ酸側鎖及び/またはグリシン上のN置換基間の架橋、及び/または骨格環化によって安定化させることができる。かかるペプトイドは本明細書において「ステープルされたペプトイド」というのに対して、かかるペプトイド-ペプチドハイブリッドは本明細書において「ステープルされたペプトイド-ペプチドハイブリッド」という。
【0045】
ペプトイドまたはペプトイド-ペプチドハイブリッドのステープリングは、側鎖-側鎖連結及び/または骨格の環化を伴って当該のペプトイドまたはペプトイド-ペプチドハイブリッドを安定化する。従って、本発明は、安定化された側鎖の連結を用いるペプチドの安定化の手法を、ペプトイドまたはペプトイド-ペプチドハイブリッドの安定化に拡張する。
【0046】
本発明の目的のために、「側鎖」という用語は、アミノ酸上の側鎖並びにN置換グリシンのN原子に結合した部分を包含する。
いくつかの可能な側鎖-側鎖連結(以下、分子内架橋という。)を設計することができる。本発明のペプトイドまたはペプトイド-ペプチドハイブリッドの2の側鎖間の分子内架橋は、更なる化学物質を伴ってもよい、当該側鎖間の化学反応によって媒介することができる。
【0047】
例えば、上記分子内架橋は、当該側鎖の一部ではない化学的部分によって媒介されてもよく、ここで上記側鎖は上記化学的部分を介して相互に結合する。上記分子内架橋を形成する上記化学的部分の例が
図6~9に記載される。
【0048】
いくつかの実施形態において、上記分子内架橋は、米国特許第5,811,515号に記載される、Aileron社によるRCM(閉環メタセシス)手法、またはクリック反応(例えば、銅によって触媒される3+2付加環化)によって確立され、該特許文献は、その全体が参照により本明細書に援用される。RCM手法によって媒介される分子内架橋の例が
図9に記載される。
【0049】
更なる実施形態において、上記2の側鎖間の分子内架橋は、当該の側鎖上に存在する官能基間の、例えば、縮合反応による化学結合の形成によって構築される。縮合反応は、2の分子または部分(官能基)が化学結合を介して結び付く化学反応であり、該反応は1または複数のより小さい分子を失うことを伴う。本発明に係る分子内架橋の生成に用いることができる側鎖間の縮合反応の例は当業者に周知であり、かかる実施形態は本発明の範囲内である。
【0050】
ある特定の分子内架橋によってステープルされたペプトイドの更なる例が
図4A~4Cに示される。
ペプチドにおける架橋の更なる例が、米国特許第8,592,377号、第8,324,428号、第8,198,405号、第7,786,072号、第7,723,469号、第7,192,713号に開示され、それらの内容はその全体が参照により本明細書に援用される。当業者は、これらの特許文献に記載の様々な架橋を、本発明に係るステープルされたペプトイド及びステープルされたペプトイド-ペプチドハイブリッドの調製において使用することを想定することができ、かかる実施形態は本発明の範囲内である。
【0051】
従って、本発明は、複数のN置換グリシンを含むステープルされたペプトイドであって、上記N置換グリシンの少なくとも2つが分子内架橋によって互いに結合し、上記分子内架橋の長さ及び幾何学が当該ペプトイドに安定性を与える、上記ステープルされたペプトイドを提供する。
【0052】
いくつかの場合において、上記ステープルされたペプトイド-ペプチドハイブリッドは、複数のアミノ酸及び複数のN置換グリシンを含むことができ、上記複数のアミノ酸及び複数のN置換グリシン由来の少なくとも2つの残基は、分子内架橋によって互いに結合し、該分子内架橋の長さ及び幾何学は、当該ペプトイド-ペプチドハイブリッドに安定性を与える。
【0053】
一実施形態において、2つのN置換グリシン残基または2つのアミノ酸残基が架橋によって互いに結合する。別の実施形態において、N置換グリシン残基が架橋によってアミノ酸残基と結合する。
【0054】
更なる実施形態において、上記ステープルされたペプトイド-ペプチドハイブリッドは環状ペプトイド-ペプチドハイブリッドである。環状ペプトイド-ペプチドハイブリッドは複数の交互のペプトイド-ペプチド配列を含み、該配列のそれぞれは少なくとも1つのペプトイド残基及びアミノ酸残基を有し、上記ペプトイド-ペプチド配列は少なくとも2つの逆平行のβ鎖を形成する。
【0055】
いくつかの実施形態において、上記分子内架橋は全てが炭化水素の架橋である。
いくつかの実施形態において、上記ペプトイドまたはペプトイド-ペプチドハイブリッドは、複数の分子内架橋、例えば、2、3、または4の分子内架橋を含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、上記架橋は、βシートの同一の側上に位置する2以上のアミノ酸残基、またはN置換グリシン残基間に存在し、それによって、上記ペプトイドま
たはペプトイド-ペプチドハイブリッドに安定性を与える。更なる実施形態において、上記分子内架橋は、βシートの残基上に位置する2以上のアミノ酸残基、またはN置換グリシン残基間に存在し、それによって、上記ペプトイドまたはペプトイド-ペプチドハイブリッドに安定性を与える。
【0057】
いくつかの実施形態において、上記側鎖は、環状若しくは非環状、分枝鎖状若しくは非分枝鎖状、置換環状若しくは非環状、分枝鎖状若しくは非分枝鎖状、置換若しくは非置換のアルキレン、環状若しくは非環状、分枝鎖状若しくは非分枝鎖状、置換若しくは非置換のアルケニレン、環状若しくは非環状、分枝鎖状若しくは非分枝鎖状、置換若しくは非置換のアルキニレン、環状若しくは非環状、分枝鎖状若しくは非分枝鎖状、置換若しくは非置換のヘテロアルキレン、環状若しくは非環状、分枝鎖状若しくは非分枝鎖状、置換若しくは非置換のヘテロアルケニレン、環状若しくは非環状、分枝鎖状若しくは非分枝鎖状、置換若しくは非置換のヘテロアルキニレン、置換若しくは非置換のアリーレン、置換若しくは非置換のヘテロアリーレン、または置換若しくは非置換のアシレンから選択することができる。
【0058】
本発明において適用可能な側鎖及び架橋の更なる例が、例えば、米国特許第8,592,377号の37欄26行~43欄14行、米国特許第8,198,405号の3欄54行~10欄2行及び25欄14行~26欄21行、米国特許第7,786,072号の5欄44行~9欄43行及び11欄16行~12欄8行、米国特許第7,723,469号の5欄30行~9欄12行及び24欄60行~26欄3行、並びに米国特許第7,192,713号の4欄26行~9欄45行及び11欄23行~12欄18行に記載される。
【0059】
本発明のステープルされたペプトイド、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、及びステープルされた環状ペプトイド-ペプチドハイブリッドはまた、更に任意選択で、アミノ酸残基及び/またはN置換グリシン残基の側鎖中に置換基を含むことができ、該側鎖中の置換基は更に、上記ペプトイド、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、及び環状ペプトイド-ペプチドハイブリッドを安定化させる。本発明において用いることができる種々の置換の非限定的な例が表2に記載される。
【0060】
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の製造は以下の2段階プロセスである。すなわち、1)RPMIなどの標準的な実験室培地中で上記細胞を培養し、TILを、放射線照射したフィーダー細胞、及び抗CD3抗体などの試薬で処理して所望の効果を得る前REP(迅速拡大培養(Rapid Expansion))段階、及び2)患者の治療に十分な大きさの培養量でTILを拡大培養するREP段階である。REP段階はcGMPグレードの試薬及び30~40Lの培地を必要とする。但し、前REP段階は、(実験室グレードの試薬がREP段階中に希釈されるとの前提で)実験室グレードの試薬を利用することができ、このことでTIL製造を改良するための別な戦略を採用し易くなる。従って、いくつかの実施形態において、前REP段階で、開示されるTLRアゴニスト及び/またはペプチド若しくはペプチド模倣体を培地に含むことができる。
【0061】
ACTは、(i)哺乳動物から自己リンパ球を得ること、(ii)上記自己リンパ球を培養して、拡大培養されたリンパ球を製造すること、及び(ii)上記哺乳動物に対して上記拡大培養されたリンパ球を投与することによって実施することができる。上記リンパ球は腫瘍由来、すなわち該リンパ球はTILであり、治療を受ける哺乳動物から単離される、すなわち自家移入であることが好ましい。
【0062】
本明細書に記載の自家ACTはまた、(i)自己リンパ球を培養して拡大培養されたリンパ球を製造すること、(ii)上記哺乳動物に骨髄非破壊的リンパ球枯渇化学療法を施すこと、及び(iii)骨髄非破壊的リンパ球枯渇化学療法を施した後、上記哺乳動物に
上記拡大培養されたリンパ球を投与することによっても実施することができる。自己TILは、切除した腫瘍の間質から得ることができる。腫瘍試料を患者から得て単一細胞浮遊液を得る。単一細胞浮遊液は、任意且つ適宜の方法で、例えば、機械的に(例えば、gentleMACS(商標)分離機、ミルテニーバイオテク社、カリフォルニア州オーバーン、を用いて腫瘍を分散させる)または酵素的に(例えば、コラゲナーゼまたはDNアーゼ)得ることができる。
【0063】
T細胞などの腫瘍浸潤リンパ球を始めとするリンパ球の拡大培養は、当技術分野で公知の、いくつかの方法のいずれかによって実現することができる。例えば、T細胞は、フィーダーリンパ球及びインターロイキン-2(IL-2)、IL-7、IL-15、IL-21、またはそれらの組み合わせの存在下、非特異的T細胞受容体刺激を用いて、迅速に拡大培養することができる。上記非特異的T細胞受容体刺激剤は、例えば、約30ng/mlの、マウスモノクローナル抗CD3抗体であるOKT3(オーソ-マクニール(登録商標)社、ニュージャージー州ラリタン、またはミルテニーバイオテク社、ドイツ国ベルギッシュ・グラートバッハ、より入手可能)を含むことができる。あるいは、T細胞は、約200~400Ill/ml、例えば300lU/mlのIL-2またはIL-15などの、但しIL-2が好ましい、T細胞増殖因子の存在下、インビトロでの1種または複
数種の(エピトープ(複数可)などの抗原の抗原性部分、または任意選択でヒト白血球抗原A2(HLA-A2)結合ペプチドなどのベクターから発現させることができるがんの細胞、例えば、概略0.3μΜのMART-1:26~35(27L)またはgp 100:209~217(210M)を始めとする)抗原による末梢血単核細胞(PBMC)の刺激によって迅速に拡大培養することができる。インビトロで誘導されたT細胞は、HLA-A2を発現する抗原提示細胞上へパルスされた、同一のがんの抗原(複数可)による再刺激によって迅速に拡大培養される。あるいは、上記T細胞は、例えば、放射線照射した自己リンパ球または放射線照射したHLA-A2+同種異系リンパ球及びIL-2で再刺激することができる。
【0064】
いくつかの実施形態において、当該の哺乳動物に対して拡大培養された腫瘍浸潤リンパ球を投与する前に、該哺乳動物に対して骨髄非破壊的リンパ球枯渇化学療法が施される。リンパ球枯渇の目的は、特に、恒常的なサイトカインに関して競合する制御性T細胞及び他の非特異的T細胞を除去することによって、注入されたリンパ球のために道を開けることにある。骨髄非破壊的リンパ球枯渇化学療法は任意且つ適宜のかかる療法とすることができ、当業者に公知の任意且つ適宜の経路により施すことができる。上記骨髄非破壊的リンパ球枯渇療法は、特に当該のがんが、転移性であってもよい黒色腫である場合に、例えば、シクロホスファミド及びフルダラビンの投与を含んでもよい。シクロホスファミド及びフルダラビンを投与する好ましい経路は静脈内投与である。同様に、任意且つ適宜の用量のシクロホスファミド及びフルダラビンを投与することができる。特に当該のがんが黒色腫である場合には、約40~80mg/kg、例えば約60mg/kgのシクロホスファミドが概略2日間投与され、その後、約15~35mg/m2、例えば約25mg/m2のフルダラビンが約5日間投与されることが好ましい。
【0065】
拡大培養されたTILの特異的な腫瘍反応性は、本技術分野で公知の任意の方法によって、例えば、腫瘍細胞との共培養後にサイトカイン放出(例えば、インターフェロンγ)を測定することによって試験することができる。一実施形態において、上記自家ACT法は、細胞の迅速拡大培養の前に、培養したTILをCD8+T細胞に関して富化させることを含む。IL-2中でのTILの培養に続いて、例えば、CD8マイクロビーズ分離(例えば、CliniMACS<plus>CD8マイクロビーズシステム(ミルテニーバイオテク社)を用いる)を用いて、T細胞からCD4+細胞を枯渇させ、該T細胞をCD8+細胞に関して富化させる。上記方法の一実施形態において、当該の哺乳動物に対して、自己T細胞の増殖及び活性化を促進するT細胞増殖因子が、自己T細胞と同時または自
己T細胞の後のいずれかで投与される。上記T細胞増殖因子は、自己T細胞の増殖及び活性化を促進する任意且つ適宜の増殖因子であってよい。好適なT細胞増殖因子の例としては、インターロイキン(IL)-2、IL-7、IL-15、IL-12及びIL-21が挙げられ、これらは単独でまたは、IL-2とIL-7、IL-2とIL-15、IL-7とIL-15、IL-2、IL-7及びIL-15、IL-12とIL-7、IL-12及びIL-15、またはIL-12とIL-2などの種々の組み合わせで用いることができる。IL-12が好ましいT細胞増殖因子である。
【0066】
これらの方法によって製造された拡大培養されたリンパ球は、好ましくは約30~約60分間継続する動脈内または静脈内注入として投与されることが好ましい。投与経路の他の例としては、腹腔内、髄腔内及びリンパ内が挙げられる。同様に、任意且つ適宜の用量のリンパ球を投与することができる。一実施形態において、約1×1010のリンパ球~約15×1010のリンパ球が投与される。
【0067】
開示される組成物及び方法によって治療されるがんは、急性リンパ性がん、急性骨髄性白血病、胞巣状横紋筋肉腫、骨肉腫、脳がん、乳がん、肛門、肛門管、または肛門直腸のがん、眼のがん、肝内胆管がん、関節のがん、頸部、胆嚢、または胸膜のがん、鼻、鼻腔、または中耳のがん、外陰部のがん、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄がん、子宮頸がん、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、腎臓がん、喉頭がん、肝臓がん、肺がん、悪性中皮腫、黒色腫、多発性骨髄腫、鼻咽頭がん、非ホジキンリンパ腫、卵巣がん、腹膜、網、及び腸間膜がん、咽頭がん、前立腺がん、直腸がん、腎がん、皮膚がん、軟組織がん、精巣がん、甲状腺がん、尿管がん、膀胱がん、並びに、例えば、食道がん、胃がん、膵臓がん、胃がん、小腸がん、消化管カルチノイド腫瘍、口腔のがん、大腸がん、及び肝胆道がんなどの消化管がんのいずれをも含む任意のがんであってよい。
【0068】
上記のがんは再発性がんであってもよい。上記のがんは固形がんであることが好ましい。上記のがんは黒色腫、卵巣がん、乳がん及び大腸がんであることが好ましく、更により好ましくは黒色腫、特には転移性黒色腫である。
定義
「対象」という用語は、投与または治療のターゲットである任意の個体を指す。対象は脊椎動物、例えば、哺乳動物であってよい。従って、対象はヒトまたは獣医学上の患者であってよい。「患者」という用語は、臨床医、例えば内科医の治療下にある対象を指す。
【0069】
「治療上有効な」という用語は、1つ若しくは複数の疾患または障害の原因あるいは症状を改善するために十分な量である、用いられる組成物の量を指す。かかる改善は低減または改変のみを要し、必ずしも排除を要しない。
【0070】
「治療」という用語は、疾患、病態、若しくは障害を治癒、改善、安定化、または予防することを目的とする、患者の医学的管理をいう。この用語は、積極的治療、すなわち、特に疾患、病態、または障害の改善を対象とする治療を包含し、また、原因治療、すなわち、関連する疾患、病態、または障害の原因の除去を対象とする治療も包含する。更にこの用語は、緩和療法、すなわち、疾患、病態、または障害の治癒ではなく、むしろ症状の軽減のために設計された治療;予防的治療、すなわち、関連する疾患、病態、若しくは障害の発症を最小化するまたは部分的に若しくは完全に阻止することを対象とする治療;及び支持療法、すなわち、関連する疾患、病態、または障害の改善を対象とする別な特定の療法を補完するために用いられる治療を包含する。
【0071】
「ペプチド」、「タンパク質」及び「ポリペプチド」という用語は同義で用いられ、一つのアミノ酸のカルボキシル基によって別のアミノ酸のα-アミノ基に結合された、2以上のアミノ酸を含む、天然または合成分子を指す。
【0072】
本明細書において用いられる「ペプチド模倣体」は、通常のペプチド化学構造のいくつかの改変を含むペプチドの模倣体を意味する。ペプチド模倣体は、一般的には、増加した安定性、増加した有効性、改善された送達、増加した半減期等の、元のペプチドの一部の特性を向上させる。既知のポリペプチド配列に基づいてペプチド模倣体を作製する方法は、例えば、米国特許第5,631,280号、第5,612,895号、及び第5,579,250号に記載される。ペプチド模倣体の使用は、所与の位置に非アミド結合をによる非アミノ酸残基の組み込みを伴うことができる。本発明の一実施形態は、当該化合物が、適宜の模倣体で置換された結合、ペプチド骨格またはアミノ酸成分を有するペプチド模倣体である。好適なアミノ酸模倣体となり得る非天然アミノ酸のいくつかの非限定的な例としては、β-アラニン、L-α-アミノ酪酸、L-γ-アミノ酪酸、L-α-アミノイソ酪酸、L-ε-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、Ν-ε-Boc-N-α-CBZ-L-リシン、Ν-ε-Boc-N-α-Fmoc-L-リシン、L-メチオニンスルホン、L-ノルロイシン、L-ノルバリン、N-α-Boc-N-δCBZ-L-オルニチン、Ν-δ-Boc-N-α-CBZ-L-オルニチン、Boc-p-ニトロ-L-フェニルアラニン、Boc-ヒドロキシプロリン、及びBoc-L-チオプロリンが挙げられる。
【0073】
「ペプトイド」という用語は、その側鎖が、(アミノ酸におけるような)α-炭素にではなく、ペプチド骨格の窒素原子に付加した一群のペプチド模倣体を指す。
「腫瘍浸潤リンパ球」すなわち「TIL」という用語は、血流から離れて腫瘍中に遊走した白血球を指す。
【0074】
「退縮」という用語は、必ずしも100%すなわち完全な退縮を意味するものではない。むしろ、当業者が、その潜在的な利点または治療上の効果を有するものとして認識する退縮の様々な程度がある。この用語はまた、疾患、またはその症状若しくは状態の発症を遅延させることも包含する。
【0075】
本明細書において用いられる「ステープル」または「炭化水素ステープル」という用語は、合成ペプチドまたはペプチド模倣体の二次構造を安定化するための炭化水素の使用を指す。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態が記載された。それにも拘わらず、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、種々の変更がなされ得ることが理解されよう。従って、他の実施形態は後述の特許請求の範囲内である。
[実施例]
実施例1:TILの拡大培養及び活性を向上させるためのTLRの標的化
Toll様受容体(TLR)は多種多様な微生物の分子を認識するパターン認識受容体である。マクロファージ及び樹状細胞(DC)上に発現するTLRに対するTLRリガンドの結合は、T細胞及び宿主免疫の活性化に有効な抗原提示に繋がる。腫瘍環境においては、マクロファージ及びDCの機能が阻害される。本明細書中に開示されるように、この抑制された状態は、TLRリガンド(表1)の投与によって好転させることができる。TIL培養物に添加された外因性TLRリガンドは、DC及びマクロファージの機能を向上させることができ、これがTILの拡大培養の増加及び腫瘍特異的免疫応答の向上に繋がる。
【0077】
【表1】
TIL培養物に添加された外因性TLRがTILの拡大培養を増加させ、且つ腫瘍選択性を向上させることができるかを判定するために、新鮮なメラノーマ腫瘍を6000IU/mlのIL-2を補った培地中で1~2mm
2の断片に細分化する。12個の断片をIL-2単独中で培養する。更なる12個の断片の群をそれぞれ以下のTLRリガンドで処理する:TLR1/2リガンドであるPam3CSK4(1μg/ml)、TLR3リガ
ンドであるPoly(I:C)(12.5μg/ml)、臨床グレードの細菌抽出物であるTLR4リガンドのRibomunyl(1μg/ml)、TLR9リガンドであるCpG ODN2006(10ug/ml)。2~3日毎に培地を新鮮な培地と交換する。TILを、コンフルエントの状態に達した時点で新しいウェルに分け取る。10、20、及び30日の培養後に、TILの増殖をもたらした腫瘍断片の総数を記録する。更に、各断片から細胞を回収して計数する。これらの細胞数をIL-2対照群とTLRリガンド処理群間で比較する。個々の、各断片由来のTILをプールしたものを、自己またはHLA適合及びHLA非適合黒色腫細胞と24時間共培養する。培養上清を回収し、IFN-γを標準的なELISAによって測定する。これらの実験の目的は、TLRリガンドの添加が、断片由来のTILの増殖の増加、TILの増殖の増加、及び/またはTILの腫瘍特異的活性化の増加をもたらすかどうかを判定することにある。
実施例2:TILの増殖及び活性化のためのペプトイドの特定
TLRアゴニストに加えて、他の共刺激分子をTILによって発現させることができる。ペプトイドのライブラリーをスクリーニングして、TILの増殖及び活性化を向上させる化合物を特定することができる。およそ200,000種の化合物を含むペプトイドのライブラリーを、384ウェル様の形式でスクリーニングする。TIL細胞株を赤色の量子ドットで標識してスクリーニングし、選択的に赤色の細胞に結合するライブラリーの的中化合物を特定する。数種の結合ペプトイドが特定されると、当該ペプトイドの存在下でTILの増殖を試験する。TILの増殖をもたらすペプトイド(刺激性ペプトイド)を、機能アッセイにおいて更に試験する。
【0078】
ヒトT細胞株(AS1)を用いて、T細胞の機能に及ぼす刺激性ペプトイドの効果を測定する。AS1細胞は、624黒色腫細胞株に対して特異性を示すが、HLA非適合888黒色腫細胞株に対しては特異性を示さない、活性化されたヒトCD8+T細胞である。AS1細胞を、漸増用量の刺激性ペプトイドの存在下、6000IU/mlのIL-2中で培養する。第3日、第7日、第10日、第14日、及び第21日に細胞を計数して、AS1細胞の増殖の増加に繋がる上記刺激性ペプトイドの用量を判定する。刺激性ペプトイドを用いた培養がT細胞の機能の向上に繋がるかを判定するために、活性化されたT細胞によって分泌されるサイトカインであるIFN-γを測定する。AS1細胞を上で判定された最適用量の刺激性ペプトイド体で処理する。対照としては、AS1細胞単独及び抗4
1BB抗体で処理したAS1細胞が含まれる。7日後にAS1細胞を回収し、624黒色腫細胞と共培養する。陰性対照として、AS1細胞を888黒色腫細胞と共培養する。24時間後に上清を回収し、ELISAによってIFN-γ産生を測定する。AS1単独と刺激性ペプトイドで処理したAS1との間で比較を行う。刺激性ペプトイドの有効性を更に調査するために、進行中のIRB認可の臨床治験に参加している10名の転移性黒色腫の患者の腫瘍からT細胞を収取する。腫瘍の断片を6000IU/mlのIL-2を含有する培地中で培養して、以前に記載されたようにT細胞のプールを生成させる(Pilon-Thomas S,et.al J Immunother. 2012 35(8):615-20)。1条件当たり12個の断片に、無関係なペプトイドまたは刺激性ペプトイドを添加する。アイソタイプIgGまたは抗41BB抗体(10μg/ml)で処理した断片を対照として用いる。21日後にT細胞を回収して計数する。活性化を測定するために、T細胞を自己またはHLA適合腫瘍細胞と共培養する。T細胞単独及びHLA非適合腫瘍細胞と共培養したT細胞が陰性対照として含まれる。CD3/CD28の存在下で培養したT細胞が陽性対照として含まれる。24時間後に上清を回収し、ELISAによってIFN-γ産生を測定する。更に、第7日、第14日及び第21日にT細胞の増殖を測定して、刺激性ペプトイドとの共培養が腫瘍浸潤T細胞の増殖の増加をもたらすかを判定する。これらの試験は、抗PD1ペプトイド体によるT細胞の処理が、抗黒色腫T細胞の増殖及び活性化を向上させるかを判定する。
実施例3:マウスモデルにおけるTIL活性の評価
TILの検討の主たる欠点は、インビボ・モデルにおいてTILを試験することができないことである。TILの有効性を測定するためのマウスモデルを開発する。NSGマウス(B及びT細胞を欠失するマウス、ジャクソン・ラボラトリーズ社より購入)を用いて、原発性の患者メラノーマ腫瘍を腹部に移植する。腫瘍が直径5mmに達した時点で、適合する患者の試料から、1×10
7の拡大培養したTILを移入する。腫瘍増殖及び生存率を測定する。このモデルを用いて、標準的なIL-2培地、TLRリガンドを含む培地、または刺激性ペプトイドを含む培地中で増殖したTILが、インビボでより良好な腫瘍拒絶をもたらすかを試験する。
実施例4:69種の異なる置換基による位置走査
いくつかの実施形態において、(表2に掲載される)種々の置換基をR
1、またはR
2、R
3の位置のいずれかに有する、
図4Aの一般構造によって定義される69種の化合物の混合物を表示する分子ライブラリーを調製した。ここで、残存するR
1及びR
2、またはR
1及びR
3またはR
2及びR
3の位置の全てが、可能な69×69の組み合わせのそれぞれを表示する。これは、69×69×3、すなわち14,283の異なるスポットに等しい。この数字は、プレート当たり345スポットで952.2プレートを要することとなる、69×69×69、すなわち328,509スポットの全ての可能な組み合わせを作製しなくてはならない場合よりも大幅に少ない。上記の位置走査手法は僅か41.4プレートしか要しない。
【0079】
上記の位置走査手法のこの実施形態においては、スポット当たり僅かに約1/69の純物質しか表示されない。選別によって的中化合物を見つけた場合、該的中化合物を改めて調製してその活性を検証する。この手法は、ウェル当たり示される特定の配列の約1.4%を与え、上記3の側鎖のそれぞれにおける側鎖を個別的に表示する他のプレート由来の的中化合物と比較することによって、好ましい側鎖を判定することができる。
【0080】
【表2】
図5は位置走査に用いるプレートの一例である。スポット1~69は、全てのスポットにおいて同一のR
1及び個々のそれぞれを、R
2において異なる69種の側鎖を、R
3の位置において表示される全ての69種の化合物の混合物を有することとなる。スポット70~138は同様に、側鎖2を表示する全てのR
1の位置を、次いでR
2の位置において69種の異なる側鎖のそれぞれを、R
3の位置において表示される69種の異なる側鎖の混合物等々を有し、全ての可能な組み合わせを網羅する。特定のR
2プレートは、R
1の位置において表示される69種の化合物の混合物、次いで化合物1に等しい同一の側鎖を有するR
2に関しては69のスポットの全て、次いで上述のR
1特異的プレートに類似のR
3に対しては、それぞれの個々の69種の化合物、次いで残りの組み合わせを有することとなり、ここでR
1の位置は69種のそれぞれを表示し、R
2は69種の化合物の混合物を表示し、R
3の位置においてはスポット1~69は全て同一の側鎖を有することとなる。
【0081】
上記位置スクリーニングの結果の例も
図5に示す。最初の斜線付きのスポットは最良の
R
1側鎖を有し、該側鎖は化合物2に等しく、R
2は化合物26に等しく、位置R
3には上記69種の可能な化合物の少なくとも1つである。次のスポットは、R
1では化合物3が有効であり、R
2は化合物10を有し、位置R
3には上記69種の可能な化合物の少なくとも1つであることを示す。プレート上の最後のスポットは、R
1は化合物5に等しく、R
2に対しては化合物55であり、位置R
3には上記69種の可能な化合物の少なくとも1であることを示している。定義されたR
2及びR
3の位置のプレートからの類似のスクリーニングの結果を解析することによって、正確な配列を判定することがでる。
【0082】
第二級アミンを製造するためのSN2反応において、類似の反応性を有する69種の化合物が必要である。大きな構造的可変性は可能であるが、いくつかの可能な側鎖を表2に示す。
実施例5:環状βヘアピン様ペプトイド-ペプチドハイブリッド骨格を安定させるステープリング方法
上記環状βヘアピン様ペプトイド-ペプチドハイブリッド骨格を安定させるために用いることができるいくつかの実行可能なステープリング方法がある。2つのペプトイド側鎖のステープリングは、合成上の観点から達成することが最も容易であり、これらの2つのペプトイド側鎖を互いに近接するように予め構築することとなり、この近接していることが、所望の環状βヘアピン様二次構造に対応する全体的な骨格のコンフォメーションを強化する。ステープルすることが最も容易な対は、ペプトイド側鎖中のプロパルギルアミンであって、ステープルされ且つこれらの2つの末端アルキンを、これらのペプトイド側鎖間の距離を跨ぐ安定な有機リンカーを有する二官能ジアジドと反応させるための上記プロパルギルアミンである。上記有機リンカーは、その距離を跨ぐためには更に3つの原子を要する。メタ-キシレニル基を
図6に示すが、任意の安定な原子の組み合せを用いることができる。加えて、上記基は、例えば、薬物動態特性を最適化するために用いることもできることから、上記連鎖は単にリンカーだけである必要はない。
【0083】
これに代わるものとして、
図7に示すように、同一または異なるリンカーを用いて、より近接したペプトイド側鎖上にあるプロパルギル側鎖をステープルすることができる。本明細書に記載のように、アミノ酸側由来の側鎖及び近接したペプトイド側鎖もまた可能であるが、図示していない。アジド及びアルキンを用いるより包括的なスキームを
図8に示す。
図9の包括的な例によって示すように、RCM(閉環メタセシス)反応も用いることができる。
【0084】
別段の定義がなされない限りにおいて、本明細書において用いられる全ての技術及び科学用語は、開示される発明が属する技術分野の当業者によって通常に理解されるものと同様の意味を有する。本明細書に引用される刊行物及び刊行物が引用される資料は、参照により具体的に援用される。
【0085】
当業者は、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態の多数の均等物を認識する、または日常的実験のみを用いて該均等物を確認することができよう。かかる均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
養子細胞療法(ACT)に用いる腫瘍浸潤リンパ球のエキソビボ拡大培養方法であって、前記拡大培養されるリンパ球の腫瘍特異性を向上させるために有効な量のToll様受容体(TLR)アゴニストを含む培地中で、前記腫瘍浸潤リンパ球を培養して前記拡大培養されたリンパ球を製造することを含む、前記方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0085
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0085】
当業者は、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態の多数の均等物を認識する、または日常的実験のみを用いて該均等物を確認することができよう。かかる均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
(1)
養子細胞療法(ACT)に用いる腫瘍浸潤リンパ球のエキソビボ拡大培養方法であって、前記拡大培養されるリンパ球の腫瘍特異性を向上させるために有効な量のToll様受容体(TLR)アゴニストを含む培地中で、前記腫瘍浸潤リンパ球を培養して前記拡大培養されたリンパ球を製造することを含む、前記方法。
(2)
対象におけるがんの治療方法であって、
a)前記対象から自己腫瘍浸潤リンパ球を得るステップと、
b)Toll様受容体(TLR)アゴニストを含む培地中で前記リンパ球を培養して、拡大培養されたリンパ球を製造するステップと、
c)骨髄非破壊的リンパ球枯渇化学療法によって前記対象を処置するステップと、
d)前記哺乳動物に対して前記拡大培養されたリンパ球を投与するステップと
を含む、前記治療方法。
(3)
前記TLRアゴニストが、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、及びTLR9からなる群より選択されるTLRに対するリガンドである、(1)または(2)に記載の方法。
(4)
前記TLRアゴニストが、Pam3CSK4、Pam3CSK4、poly I:C、Ribomunyl、及びCpG ODNからなる群より選択されるリガンドを含む、(1)~(3)のいずれか1項に記載の方法。
(5)
前記がんが固形腫瘍である、(1)~(4)のいずれか1項に記載の方法。
(6)
前記がんが黒色腫、卵巣がん、乳がん、及び大腸がんからなる群より選択される、(1)~(5)のいずれか1項に記載の方法。
(7)
前記がんが転移性である、(1)~(6)のいずれか1項に記載の方法。
(8)
前記がんが再発性である、(1)~(7)のいずれか1項に記載の方法。
(9)
前記対象がヒトである、(1)~(8)のいずれか1項に記載の方法。
(10)
養子細胞療法(ACT)に用いる腫瘍浸潤リンパ球のエキソビボ拡大培養のための作用剤の特定方法であって、
腫瘍浸潤リンパ球を、前記腫瘍浸潤リンパ球に選択的に結合する能力に関するペプチドまたはペプチド模倣体のライブラリー由来の候補ペプチドまたはペプチド模倣体と接触させることと、
結合ペプチドまたはペプチド模倣体の前記腫瘍浸潤リンパ球の増殖に及ぼす効果をスクリーニングすることと
を含み、
前記腫瘍浸潤リンパ球の増殖を増加させる候補ペプチドまたはペプチド模倣体の特定が、ACTに用いる腫瘍浸潤リンパ球のエキソビボ拡大培養のための作用剤を特定する、前記方法。
(11)
養子細胞療法(ACT)に用いる腫瘍浸潤リンパ球のエキソビボ拡大培養方法であって、ペプチドまたはペプチド模倣体を含む培地中で、前記リンパ球を培養して拡大培養されたリンパ球を製造することを含む前記方法。
(12)
前記ペプチドまたはペプチド模倣体が(9)に記載の方法によって特定される、(11)に記載の方法。
(13)
前記ペプチド模倣体がペプトイドまたはペプチド-ペプトイドハイブリッドである、(10)~(12)のいずれか1項に記載の方法。
(14)
前記ペプトイドまたはペプチド-ペプトイドハイブリッドが炭化水素ステープルによって安定化される、(13)に記載の方法。